IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インターサージカル アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

<>
  • 特表-レスピレータシステムの動作の監視 図1
  • 特表-レスピレータシステムの動作の監視 図2
  • 特表-レスピレータシステムの動作の監視 図3
  • 特表-レスピレータシステムの動作の監視 図4
  • 特表-レスピレータシステムの動作の監視 図5
  • 特表-レスピレータシステムの動作の監視 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(54)【発明の名称】レスピレータシステムの動作の監視
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20230215BHJP
【FI】
A61M16/00 370
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537884
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(85)【翻訳文提出日】2022-08-12
(86)【国際出願番号】 EP2020086729
(87)【国際公開番号】W WO2021122965
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】1919072.7
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507289070
【氏名又は名称】インターサージカル アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、アンドリュー ニール
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、マーク リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ブライアント、リース パトリック
(57)【要約】
呼吸システムにおいて故障を検出する方法が提供される。この方法は、(a)呼吸システムの第1のパラメータの一連の測定値を取得するステップと、(b)第1のパラメータの複数の測定値に応じた第1のパラメータの故障境界を設定するステップとを含む。この方法は、(c)第1のパラメータの1つ又は複数の追加の測定値を取得するステップと、(d)故障境界を更新するステップとを含む少なくとも1つの更新手順をさらに含み、更新された故障境界は、第1のパラメータの更新された測定値のセットに依存し、第1のパラメータの更新された測定値のセットは、第1のパラメータの追加の測定値のうちの少なくとも1つを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸システムにおける故障を検出する方法であって、
(a)前記呼吸システムの第1のパラメータの一連の測定値を取得するステップと、
(b)前記第1のパラメータに対する故障境界を設定するステップであって、前記故障境界は前記第1のパラメータの複数の測定値に依存する、ステップと、を含み、
前記方法は、少なくとも1つの更新手順を含み、前記更新手順は、
(c)前記第1のパラメータの1つ以上の追加の測定値を取得するステップと、
(d)前記故障境界を更新するステップであって、前記更新された故障境界は、前記第1のパラメータの測定値の更新されたセットに依存し、前記第1のパラメータの測定値の前記更新されたセットは、前記第1のパラメータの前記追加の測定値の少なくとも1つを含む、ステップと、を含む、
方法。
【請求項2】
前記第1のパラメータに対する故障境界を設定するステップは、前記故障境界を、複数の前記測定値に依存する測定パラメータからオフセットされるように設定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定パラメータからの前記故障境界の前記オフセットは、予め定めた量、又は複数の前記測定値の分散係数に依存する量である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記第1のパラメータの1つ以上の追加の測定値を取得するステップの後に、前記測定パラメータを更新するステップをさらに含み、
前記更新された測定パラメータは、前記第1のパラメータの前記少なくとも1つ以上の追加の測定値に依存している、
請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のパラメータに対する前記故障境界を更新するステップは、前記更新された故障境界を、前記更新された測定パラメータからオフセットされるように設定することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記更新された測定パラメータからの前記更新された故障境界の前記オフセットは、予め定めた量である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記測定パラメータからの前記故障境界の前記オフセットは、複数の前記測定値の分散係数に依存する量であり、
前記方法は、前記第1のパラメータの1つ以上の追加の測定値を取得するステップの後に、前記分散係数を更新するステップをさらに含み、
前記更新された分散係数は、前記第1のパラメータの測定値の前記更新されたセットに依存し、前記更新された測定パラメータからの前記更新された故障境界の前記オフセットは、前記更新された分散係数に依存する量である、
請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記更新された分散係数は、前記第1のパラメータの前記追加の測定値のうちの少なくとも1つに依存する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記測定パラメータが、前記複数の測定値の平均値であり、かつ/又は、
前記更新された測定パラメータが、前記測定値の更新されたセットの複数分の平均値である、請求項2から請求項8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記更新された測定値のセットは、更新される前記故障境界が依存する測定値のうちの少なくとも1つと、前記追加の測定値のうちの少なくとも1つとを含む、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記更新された測定値のセットは、更新される前記故障境界が依存する複数の前記測定値と、前記追加の測定値のうちの少なくとも1つとを含む、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記更新された測定値のセットにおいて、更新される前記故障境界が依存する前記複数の測定値が、更新される前記故障境界が依存する前記測定値の最も最近に取得された測定値である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記更新された測定値のセットは、更新される前記故障境界が依存する前記複数の測定値と同数の測定値を含む、請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記更新された測定値のセットは、前記追加の測定値のうちの少なくとも1つを含み、少なくとも1つの前記追加の測定値が、更新される前記故障境界が依存する最も初期の測定値のうちの同数の測定値を置き換える、請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記故障境界を設定するステップは、上側故障境界と下側故障境界とを設定することを含む、請求項1から請求項14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記故障境界を更新するステップは、上側故障境界を更新することと、下側故障境界を更新することとを含む、請求項1から請求項15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記測定パラメータからの前記故障境界の前記オフセット、又は前記更新された測定パラメータからの前記更新された故障境界の前記オフセットは、予め定めた最小オフセットと比較され、
前記予め定めた最小オフセットは、前記第1のパラメータの測定値を取得する少なくとも1つのセンサの測定精度に関連付けられる、
請求項2又は請求項5に記載の方法。
【請求項18】
前記測定パラメータからの前記故障境界の前記オフセットが前記予め定めた最小オフセット未満である場合、又は前記更新された測定パラメータからの前記更新された故障境界の前記オフセットが前記予め定めた最小オフセット未満である場合に、前記測定パラメータからの前記故障境界の前記オフセット、又は前記更新された測定パラメータからの前記更新された故障境界のオフセットを、前記予め定めた最小オフセットまで増加させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のパラメータの測定値を、前記故障境界又は前記故障境界が更新された後の前記更新された故障境界と比較するステップと、
前記測定値が前記故障境界又は前記更新された故障境界の外側にあることに応じて、前記呼吸システムの動作の故障を判断するステップと、
をさらに含む、請求項1から請求項18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、前記呼吸システムの動作の故障を判断するステップに応じて、前記故障をユーザに示すステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記更新手順が少なくとも1回繰り返され、
各後続の更新手順において更新される前記故障境界は、前回の更新手順からの前記更新された故障境界である、請求項1から請求項20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記更新手順は、少なくともガスが前記呼吸システムに供給されている期間、及び/又は治療が患者に提供されている期間を含む前記呼吸システムの動作中に、間隔をおいて繰り返される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記間隔の少なくとも1つが10秒未満である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記呼吸システムの故障を検出する前記方法は、呼吸システムの動作の故障を示す信号、前記呼吸システムの電源をオフすること、任意の付属機器を変更すること、パラメータ設定を変更すること、又は前記呼吸システムによって実施される治療の変更の、いずれか又は任意の組み合わせに応じて再スタートする、請求項1から請求項23までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
ステップ(a)及び/又はステップ(b)が、前記呼吸システムの動作中に起こる、請求項1から請求項24までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記方法は、前記ステップ(a)の前に、前記呼吸システムへのガスの供給を開始するステップを含む、請求項1から請求項25までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
呼吸システムの故障を検出するための装置であって、
第1のパラメータの測定値を取得するためのセンサと、
請求項1から請求項25までのいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されたコントローラと、
を備える装置。
【請求項28】
前記装置は、前記呼吸システムにガスを供給するための装置である、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記装置は、ガス混合器である、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記少なくとも1つのセンサが、前記装置の全体の異なる位置に配置された複数のセンサを含む、請求項27から請求項29までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項31】
呼吸システムにガスを供給するための呼吸器具であって、
前記呼吸システムの第1のパラメータの一連の測定値を取得するように構成され、かつ少なくとも1つの更新手順において、前記第1のパラメータの1つ以上の追加の測定値を取得するように構成された、少なくとも1つのセンサと、
前記第1のパラメータに対し故障境界を設定するように構成され、前記故障境界は前記第1のパラメータの複数の前記測定値に依存し、かつ、少なくとも1つの更新手順において、前記故障境界を更新するように構成され、前記更新された故障境界は、前記第1のパラメータの前記更新された測定値のセットに依存し、前記第1のパラメータの前記更新された測定値のセットは、前記第1のパラメータの前記追加の測定値のうちの少なくとも1つを含む、コントローラと、
を備える呼吸装置。
【請求項32】
レスピレータシステムであって、
請求項31に記載の呼吸器具と、
前記呼吸器具と流体連通する呼吸システムと、を備え、
前記呼吸システムは、
使用中に患者にガスを供給するように構成された患者インタフェースと、
前記呼吸器具から前記患者インタフェースに前記ガスの供給を送達するように構成された呼吸チューブと、を備える、
レスピレータシステム。
【請求項33】
呼吸システムと、前記呼吸システムにガスを供給するための呼吸器具と、を備えるレスピレータシステムであって、
前記呼吸器具は、
前記呼吸システムの第1のパラメータの一連の測定値を取得するように構成され、かつ少なくとも1つの更新手順において、前記第1のパラメータの1つ以上の追加の測定値を取得するように構成された、少なくとも1つのセンサと、
前記第1のパラメータに対し故障境界を設定するように構成され、前記故障境界は前記第1のパラメータの複数の前記測定値に依存し、かつ、少なくとも1つの更新手順において、前記故障境界を更新するように構成され、前記更新された故障境界は、前記第1のパラメータの前記更新された測定値のセットに依存し、前記第1のパラメータの前記更新された測定値のセットは、前記第1のパラメータの前記追加の測定値のうちの少なくとも1つを含む、コントローラと、備え、
前記呼吸システムは、
使用中に患者にガスを供給するように構成された患者インタフェースと、
前記呼吸器具から前記患者インタフェースに前記ガスの供給を送達するように構成された呼吸チューブと、を備える、
レスピレータシステム。
【請求項34】
コンピュータ可読記憶媒体であって、
データプロセッサによって実行されると、データプロセッサに請求項1から請求項26までのいずれか1項の方法を実行させる命令を含む、
コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項35】
呼吸システムにおける故障を検出する方法であって、
(a)前記呼吸システムにガスを供給するステップと、
(b)前記呼吸システムの第1のパラメータの一連の測定値を取得するステップと、
(c)前記第1のパラメータに対して故障境界を設定するステップであって、前記故障境界は前記第1のパラメータの複数の前記測定値に依存する、ステップと、を含み、
前記呼吸システムの第2のパラメータは、前記呼吸システムへのガスの供給中に制御され、前記呼吸システムの前記第1のパラメータは、前記第1のパラメータの変化が前記呼吸システムにおける故障を示すことができるように、前記第2のパラメータ及び前記呼吸システムに依存する、
方法。
【請求項36】
前記第2のパラメータは、センサによって測定可能である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記第2のパラメータは、前記装置又は前記呼吸システム内の流量又は圧力で請求項35又は請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記第1のパラメータは、前記呼吸システムの構成における任意の故障に依存する、請求項35から請求項37までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記第1のパラメータは、前記呼吸システムが前記装置内のガス供給に及ぼす影響に関連するパラメータである、請求項35から請求項37までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記第1のパラメータは、前記装置において制御されないパラメータである、請求項35から請求項39までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記第1のパラメータは、流量、前記呼吸システム内の背圧、又は患者の圧力のいずれかである、請求項35から請求項40までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記第1のパラメータは、前記装置又は前記呼吸システム内の圧力である、請求項35から請求項37までのいずれか1項に記載の方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レスピレータシステム(respiratory systems)の動作の監視に関し、より詳細には、これに限定されるものではないが、ガス混合器のような定流量治療装置によって供給されるガスを有するレスピラトリシステムの動作を監視して、故障又はエラー(fault or error)が発生したときを識別することに関する。
【0002】
空気/酸素の混合器は、患者にガスを供給する信頼性が高く正確な方法を提供するために、様々なヘルスケア用途で使用されていることが知られている。例えば病院では、ガスは一般に壁際の供給源から供給され、これらのガスは所望の割合で混合され、特定の圧力及び/又は流量で患者に供給される必要がある。
【0003】
空気と酸素の混合物を、安全で、容易で、かつ制御された方法で供給する能力は、ますます重要になってきている。したがって、装置から患者へのガスの供給に故障があるかどうか/いつあるかを知ることが重要である。
【0004】
システムの故障の中には、測定可能なパラメータに大きな影響を及ぼすものがある。これにより、故障境界(fault boundaries)、すなわち、これを超えたときに装置に関連するシステムに故障があることを示す測定可能なパラメータの境界を、測定可能なパラメータに関連する正常値からさらに離れたところに設定し、故障を検出することが可能になる。しかしながら、システムの他の故障は、測定可能なパラメータに対する影響が少なく、故障を検出するためには、測定可能なパラメータの正常値の近くに故障境界を設定する必要があることを意味する。
【0005】
このような故障を検出するためには、故障境界を特に狭くする必要がある。しかしながら、このシステムはその寿命を通して、様々な装置アタッチメントや患者とのインタフェースと共に使用されるので、製造時に、多数の誤ったエラーを招くことなく、必要とされる故障境界を事前に決定することは、一般に不可能である。その結果、潜在的なすべてのシステムの故障を捕捉しようとすると、故障境界を特に広く設定しなければならず、上側故障境界及び下側故障境界(upper and lower fault boundaries)を極端に設定する必要があるが、これは多くの場合、効果がないのが現状である。
【0006】
この問題に対する一般的な解決策は、指定された機器が動作のために装置に取り付けられると、オペレータが故障境界を設定できるようにすることである。これにより、故障境界をより狭く設定して、前述のより微妙な潜在的な故障を検出することができる。しかしながら、これは、故障境界を更新するためにオペレータに負担をかけ、オペレータは、a)取り付け可能な各機器について正しい境界を認識することと、b)これらの境界を正しく実装することとの両方を必要とする。
【0007】
現在、装置の動作を監視するための改善された方法が考案されており、この方法によれば、従来技術に関連する上述の及び/又は他の欠点が、克服又は実質的に軽減される。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、呼吸システム(breathing system)における故障を検出する方法が提供される。この方法は、
(a)呼吸システムの第1のパラメータの一連の測定値を取得するステップと、
(b)第1のパラメータに対する故障境界を設定するステップであって、故障境界は第1のパラメータの複数の測定値に依存する、ステップと、を含み、
この方法は、少なくとも1つの更新手順を含み、更新手順は、
(c)第1のパラメータの1つ以上の追加の測定値を取得するステップと、
(d)故障境界を更新するステップであって、更新された故障境界は、第1のパラメータの測定値の更新されたセットに依存し、第1のパラメータの測定値の更新されたセットは、第1のパラメータの追加の測定値の少なくとも1つを含む、ステップと、を含む。
【0009】
本方法は、呼吸システムの構成にかかわらず、故障境界の正確な設定を可能にするという点で有利である。第1のパラメータの故障境界は、本方法の以前のステップで取得された第1のパラメータの測定値に依存しており、呼吸システムと共に使用されている機器又は患者インタフェースにかかわらず、故障境界が適切であることを保証する。
【0010】
さらに、取得された第1のパラメータの追加の測定値に依存して故障境界を更新することにより、故障境界がシステムの使用中ずっと適切であり続けることが保証される。これは、例えば、患者の呼吸速度(breathing rate)及び呼吸システムの構成要素のあらゆる動きが一定ではなく、特に患者が睡眠中であるか又は覚醒期間中であるかに基づいて変化するので、特に有利である。したがって、故障境界を更新することにより、何が故障と見なされるべきか、何が故障と見なされるべきではないかを判断する際に、患者の状態及び/又は呼吸システムの構成要素の任意の動きを考慮することが可能になる。
【0011】
第1のパラメータに対する故障境界の設定は、故障境界を、複数の測定値に依存する測定パラメータからオフセットされるように設定することを含むことができる。1つ以上の追加の測定値を取得した後に、測定パラメータが更新されてもよい。更新された測定パラメータは、少なくとも1つ以上の追加の測定値に依存していてもよい。
【0012】
測定パラメータは、複数の測定値の平均値であってもよい。あるいは、測定パラメータは、一連の測定値の最小値及び/又は最大値であってもよい。第1のパラメータの一連の測定値を取得した後、本方法は、複数の測定値の平均値を決定するステップをさらに含むことができる。複数の測定値の平均値を決定するステップは、複数の測定値の平均値又は中央値を計算すること、又は代表値(central value)の任意の他の機能的に等価な計算を含むことができる。測定パラメータが更新された場合、更新された測定パラメータは、更新された測定値の複数のセットの平均値、又は更新された測定値のセットの最小値及び/又は最大値であってもよい。
【0013】
第1のパラメータに対する故障境界又は更新された故障境界の設定は、測定パラメータ又は更新された測定パラメータ、例えば、一連の測定値の決定された平均値、最小値及び/又は最大値、更新された測定値の複数のセットの平均値、又は更新された測定値のセットの最小値及び/又は最大値と比較して(relative to)故障境界の設定することを含むことができる。故障境界の設定は、上側故障境界及び/又は下側故障境界を設定することを含むことができる。上側故障境界は、測定パラメータよりも大きくてもよく、又は上側故障境界が更新された上側故障境界である場合、更新された測定パラメータ及び下側故障境界は、測定パラメータよりも小さくてもよく、又は下側故障境界が更新された下側故障境界である場合、更新された測定パラメータであってもよい。例えば、上側故障境界は、決定された平均値又は更新された平均値よりも大きくてもよく、下側故障境界は、決定された平均値又は更新された平均値よりも小さくてもよい。
【0014】
故障境界は、測定パラメータから予め定めた量だけオフセットされてもよい。あるいは、故障境界は、複数の測定値の分散係数に依存する量だけ、測定パラメータからオフセットされてもよい。故障境界は、決定された平均値の分数又は割合だけ測定値からオフセットされてもよい。故障境界が更新された故障境界である場合、更新された測定パラメータからの更新された故障境界のオフセットは、予め定めた量、又は更新された測定値の複数のセットの更新された分散係数(variance factor)に依存する量であってもよい。
【0015】
本方法は、第1のパラメータの一連の測定値を取得した後、複数の測定値の分散係数を決定するステップをさらに含むことができる。分散係数は、複数の測定値の分散に依存してもよい。分散係数は、測定パラメータに関する複数の測定値の分散、例えば、決定された平均値に依存することができる。
【0016】
分散係数は、複数の測定値のうちの最も高い測定値と最も低い測定値との間の差を含むことができる。あるいは、分散係数は、複数の測定値のうちのいずれか1つと、測定パラメータ(例えば、決定された平均値)との間の最大の差を含むことができる。あるいは、分散係数は、上側分散係数と下側分散係数とを含み、上側分散係数は、測定パラメータと、測定パラメータの上側にある複数の測定値のうちのいずれか1つとの間の最大の差であり、下側分散係数は、測定パラメータと、測定パラメータの下側にある複数の測定値のうちのいずれか1つとの間の最大の差である。あるいは、分散係数は、複数の測定値の統計的分散、例えば、統計的偏差を含み得る。
【0017】
故障境界は、分散係数に誤差係数を乗じた値だけ、測定パラメータからオフセットされることがある。誤差係数は、システムの通常動作中に許容可能な分散量に相当する場合がある。
【0018】
決定された分散係数が上側分散係数と下側分散係数とを含む場合、故障境界の設定は、測定パラメータから上側分散係数に上側誤差係数を乗じた分だけオフセットした上側故障境界を設定することと、測定パラメータから下側分散係数に下側誤差係数を乗じた分だけオフセットした下側故障境界を設定することとを含むことができる。上側下側の誤差係数は、同じであっても異なっていてもよい。故障境界が更新された故障境界である場合、更新された故障境界は、更新された測定パラメータから、更新された分散係数に誤差係数を乗じた分だけオフセットされてもよい。
【0019】
更新された測定値のセットは、更新される故障境界が依存する測定値のうちの少なくとも1つと、追加の測定値のうちの少なくとも1つとを含むことができる。更新された測定のセットは、更新される故障境界が依存する複数の測定値と、追加の測定値のうちの少なくとも1つとを含むことができる。更新される測定値のセットにおいて、更新される故障境界が依存する複数の測定値は、更新される故障境界が依存する測定値のうち最も最近に取得された測定値であってもよい。更新された測定値のセットは、更新される故障境界が依存する複数の測定値と同数の測定値を含むことができる。更新された測定値のセットは、更新される故障境界が依存している同数の最も初期の測定値に取って代わる、追加の測定値のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0020】
第1のパラメータの1つ以上の追加の測定値は、単一の追加の測定値を含むことができる。この場合、更新された測定値のセットは、更新される故障境界が依存する複数の測定値のうちの1つを除く全てを含むことができる。更新された測定値のセットは、更新される故障境界が依存する複数の測定値のうちの最も初期の測定値を除く全てを含むことができる。あるいは、第1のパラメータの1つ以上の追加の測定値は、一連の追加の測定値を含むことができる。この場合、更新された測定のセットにおいて、一連の追加の測定値は、更新される故障境界が依存する同数の最も初期の測定値のうちの同数の測定値に取って代わることができる。
【0021】
本方法は、第1のパラメータの1つ以上の追加の測定値を取得した後、測定パラメータを更新するステップをさらに含むことができ、更新された測定パラメータは、第1のパラメータの追加の測定値のうちの少なくとも1つに依存する。例えば、本方法は、決定された平均値を更新するステップをさらに含むことができ、更新された平均値は、第1のパラメータの追加の測定値のうちの少なくとも1つに依存する。決定された平均値を更新することは、第1のパラメータの更新された測定値のセットの平均値を決定することを含むことができる。これは、一般に、第1のパラメータの測定値の移動平均(rolling average)を維持することと呼ばれる。
【0022】
これは、第1のパラメータの移動平均が呼吸システムの動作全体にわたって維持され、故障境界が現在の動作に従って更新されることを可能にする点で有利であり得る。
【0023】
本方法は、第1のパラメータの1つ以上の追加の測定値を取得した後、決定された分散係数を更新するステップをさらに含むことができ、更新された分散係数は、第1のパラメータの追加の測定値のうちの少なくとも1つに依存することができる。決定された分散係数を更新することは、第1のパラメータの測定値の更新されたセットに対する分散係数を決定することを含むことができる。更新された分散係数は、更新された測定値のセットの分散に依存することができる。更新された分散係数は、更新された測定パラメータについての更新された測定値のセットの分散、例えば、更新された平均値に依存することができる。
【0024】
更新された分散係数は、更新された測定値のセットの最大測定値と最小測定値との間の差を含むことができる。あるいは、更新された分散係数は、更新された測定値のセットのうちのいずれか1つと、更新された測定パラメータ(例えば更新された平均値)との間の最大の差を含むことができる。あるいは、更新された分散係数は、更新された上側分散係数と更新された下側分散係数とを含むことができ、更新された上側分散係数は、更新された測定パラメータと、更新された測定パラメータの上側の更新された測定値のセットのうちのいずれか1つとの間の最大の差であり、更新された下側分散係数は、更新された測定パラメータと、決定された測定パラメータの下側の更新された測定値のセットのうちのいずれか1つとの間の最大の差である。あるいは、更新された分散係数は、更新された一連の測定値の統計的分散、例えば、統計的偏差を含むことができる。
【0025】
決定された分散係数を、取得された第1のパラメータの追加の測定値に依存して更新することにより、故障境界がシステムの使用中ずっと適切なままであり続けることが保証される。これは、患者が睡眠中であるか又は覚醒期間中であるかに大きく依存する、患者の呼吸速度及び呼吸システムの構成要素の動きの変化を考慮する場合に、特に有利である。例えば、患者が眠っているときには、患者の呼吸速度はあまり変化せず、呼吸システムは比較的静止したままであり、したがって、より低い分散係数が決定され、より狭い境界を設定することができるため、閉塞や漏れを示す可能性があるより小さな変化を検出することができる。一方、患者が覚醒期にある場合、又は一般により落ち着きがない場合には、呼吸速度はより変化し、呼吸システムはより多く動くため、より高い分散係数が決定され、より広い境界が設定されて、誤った警報が発生し難くなる。
【0026】
したがって、故障境界を更新することにより、何が故障と見なされるべきか、何が故障と見なされるべきではないかを判断する際に、患者の状態を考慮することが可能になる。
【0027】
第1のパラメータに対する故障境界を更新することは、更新された測定パラメータと比較して故障境界を更新することを含むことができる。例えば、第1のパラメータに対する故障境界を更新することは、更新された平均値と比較して故障境界を更新することを含むことができる。故障境界を更新することは、更新された分散係数に依存して故障境界を更新することを含むことができる。故障境界を更新することは、上側故障境界を更新することと、下側故障境界を更新することと、を含むことができる。
【0028】
本方法は、第1のパラメータの測定値を、故障境界、又は故障境界が更新された場合は、更新された故障境界と比較することと、測定値が故障境界又は更新された故障境界の外側にあることに応じて、呼吸システムの動作に故障があると判断することをさらに含むことができる。故障境界が上側故障境界及び下側故障境界を含む場合、本方法は、第1のパラメータの測定値を、上側故障境界、又は上側故障境界が更新されている場合は更新された上側故障境界と比較することと、測定値が上側故障境界又は更新された上側故障境界を超えていることに応じて、呼吸システムの動作の故障を決定することとを含むことができ、かつ、第1のパラメータの測定値を、下側故障境界、又は下側故障境界が更新されている場合更新された下側故障境界と比較することと、測定値が下側故障境界又は更新された下側故障境界未満であることに応じて、呼吸システムの動作の故障を決定することとを含むことができる。故障境界が更新された場合、第1のパラメータの測定値と最新の更新された故障境界との比較が可能である。
【0029】
呼吸システムの動作の故障を判断することに応じて、本方法は、故障を示すステップをさらに含むことができる。追加的に又は代替的に、呼吸システムは、それに応じて、そのパラメータ及び/又は動作方法及び/又は動作状態を調整するように動作することができる。
【0030】
更新手順は、少なくとも1回繰り返されてもよい。各後続の各更新手順で更新される故障境界は、前回の更新手順からの更新された故障境界であってもよい。更新手順は、呼吸システムの動作の間、間隔をおいて繰り返されてもよい。呼吸システムの動作は、ガスが呼吸システムに供給されている期間、及び/又は治療が患者に提供されている期間と考えることができる。更新手順は、呼吸システム、呼吸システムにガスを供給する装置、及び本発明の第1の態様による方法を実行する装置のいずれか、又はそれらの任意の組合せのための初期較正処理に続いて、間隔をおいて繰り返されてもよい。
【0031】
更新手順は、呼吸システム又は装置の電源を切ること、故障境界のリセットを必要とする任意の付属機器を変更すること、任意のパラメータ設定を変更すること、呼吸システム又は装置によって実行される治療の変更、及び既存の故障のユーザによる確認のうちのいずれか、又はそれらの任意の組合せまで繰り返すことができる。
【0032】
この間隔は、規則的な間隔であってもよい。更新手順は、少なくとも3回、少なくとも5回、少なくとも10回、少なくとも50回、又は少なくとも100回繰り返すことができる。更新手順は、0.01秒毎、0.1秒毎、1秒毎、2秒毎、5秒毎、10秒毎、又は15秒毎に繰り返すことができる。間隔は、0.01秒未満、0.1秒未満、1秒未満、2秒未満、5秒未満、10秒未満、又は15秒未満であってもよい。
【0033】
本発明の第1の態様のステップ(a)及び/又はステップ(b)は、呼吸システムの動作中、すなわち、ガスが呼吸システムに供給されている期間、及び/又は、治療が患者に提供されている期間に生じてもよい。本発明の第1の態様のステップa)の前に、本方法は、呼吸システムへのガスの供給を開始するステップを含むことができる。本方法は、本発明の第1の態様のステップ(a)~(d)を実施しながら、呼吸システムへのガスの供給を継続するステップをさらに含むことができる。ステップ(a)は、呼吸システムへのガスの供給を開始した後、略直ちに開始することができる。
【0034】
「略直ちに(almost immediately)」という用語は、呼吸システムへのガスの供給を開始することと、本発明の第1の態様のステップ(a)の開始との間のわずかな遅延を説明することができ、これにより、一連の測定値が取得される前に、供給されたガスが呼吸システムの大部分又はすべてを通って移動することを可能にする。使用中、呼吸システムは、ガスを供給するための器具(apparatus)に接続されてもよく、この器具は、例えば、ガスボトル又はキャニスタ、又は病院の壁内の固定ガスラインを含むことができる。ガス供給器具から呼吸システムへのガスの供給は、ガス混合器のような適切な装置によって制御されてもよい。ガス供給器具から呼吸システムへのガスの供給は、ガス供給を制御するための少なくとも1つの弁(valve)によって制御されてもよい。適切な装置、例えば、ガス混合器は、少なくとも1つの弁を含んでいてもよい。したがって、呼吸システムにガスを供給し始めることは、少なくとも1つの弁を開放することを含むことができる。例えば、ガスを供給するための器具は、既に「オン」にされていてもよく、すなわち、器具は、ガスを容易に供給することができるが、弁が開放されるまでは、ガスが呼吸システムに供給されないように構成されていてもよい。
【0035】
本発明のさらなる態様によれば、本発明の第1の態様による方法を実施するように構成された装置が提供される。この装置は、呼吸システムにガスを供給するための装置であってもよい。ガスは、呼吸用ガス(respiratory gas)であってもよい。
【0036】
ガスを供給するための装置は、ガスが装置に供給される入口と、ガスが装置が接続される呼吸システムに供給される出口とを含むことができる。呼吸システムは、患者供給チューブ及び患者インタフェースを備えていてもよく、供給チューブは装置から患者インタフェースにガスを供給するように配置される。患者インタフェースは、患者供給チューブに接続するように構成されたコネクタを備えていてもよい。患者供給チューブは、装置の出口に接続するための第1の端部と、患者インタフェースに接続するための第2の端部とを有していてもよい。患者インタフェースは、装置から供給されたガスを、患者供給チューブを介して患者に供給するように構成されてもよい。患者インタフェースは、例えば、呼吸マスク(respiratory mask)であってもよい。
【0037】
第1のパラメータは、患者供給チューブのねじれ、患者供給チューブの閉塞、呼吸システムの構成要素の切断又は除去、又は呼吸システム内の漏れなど、呼吸システムの構成における故障に依存し得る。これは、これら故障の発生の検出が呼吸システムの動作の故障として認識されることを可能にするという点で有利であり得る。
【0038】
この方法は、ガスを供給するための装置に接続された呼吸システムの種類にかかわらず、呼吸システムの動作に関するこれらの故障を認識することを可能にするという点で、さらに有利であり得る。
【0039】
第1のパラメータは、呼吸システム内のガス供給のパラメータであってもよい。第1のパラメータは、呼吸システムのパラメータであってもよく、装置で測定されてもよい。第1のパラメータは、呼吸システムの構成に依存してもよい。したがって、第1のパラメータの変化は、呼吸システムの構成の変化を示すことができる。第1のパラメータの変化は、呼吸システムの故障を示すことができる。第1のパラメータは、呼吸システムが装置内のガス供給に及ぼす影響に関連するパラメータとすることができる。第1のパラメータは、装置において制御されないパラメータであってもよい。すなわち、第1のパラメータは、装置によって調整されず、較正されなくてもよい。第1のパラメータは、装置又は呼吸システム内の圧力であってもよい。第1のパラメータは、装置において、例えば、装置内、装置の出口、又は装置の入口で測定されてもよい。あるいは、第1のパラメータは、呼吸システム内、例えば、呼吸チューブ内、又は患者インタフェースで測定されてもよい。
【0040】
第1のパラメータは、流量、呼吸システム内の背圧、又は患者の圧力のいずれかであってもよい。
【0041】
背圧は、呼吸システム内の任意の点における圧力と周囲圧力、すなわち呼吸システムを取り囲む環境圧力との間の差として定義することができる。呼吸システムの患者インタフェースは、周囲圧力に曝される場合がある。使用中、呼吸システム内の任意の点における圧力は、呼吸システムを通るガスの流れを確保して、装置から患者インタフェースにガスを供給するために、周囲圧力よりも高くなければならない。周囲圧力は、大気圧であってもよい。大気圧は、例えば、約1気圧、約1バール、又は約100kPaに固定されていると仮定することができる。大気圧が固定されていると見なされる場合、呼吸システム内の背圧ではなく、装置内の圧力を測定することができる。背圧は、ガスが、呼吸システム内の抵抗を通って流れる結果として生じることがある。すなわち、背圧は、呼吸システムを通るガスの流れに対する抵抗に依存し、したがって、その関数として変化することがある。このため、流れに対する抵抗の増加は、呼吸システム内の背圧を増加させ得る。背圧はまた、流量に依存してもよく、したがって、流量の関数として変化し得る。同様に、患者圧力は、呼吸システムの患者インタフェースの近傍、例えば、患者インタフェースにおける圧力として定義することができる。
【0042】
本方法は、呼吸システムの第2のパラメータを制御することをさらに含むことができる。呼吸システムの第2のパラメータの制御は、呼吸システムにガスを供給するための装置の制御を含むことができる。第1のパラメータは、さらに第2のパラメータに依存してもよい。
【0043】
呼吸システムの第2のパラメータと、第2のパラメータに依存する第1のパラメータとの制御は、従来技術を超えるさらなる利点を提供することができる。したがって、本発明のさらなる態様によれば、呼吸システムにおける故障を検出する方法が提供される。この方法は、
(a)呼吸システムにガスを供給するステップと、
(b)呼吸システムの第1のパラメータの一連の測定値を取得するステップと、
(c)第1のパラメータに対して故障境界を設定するステップであって、故障境界は第1のパラメータの複数の測定値に依存する、ステップと、を含み、
呼吸システムの第2のパラメータは、呼吸システムへのガスの供給中に制御され、呼吸システムの第1のパラメータは、第1のパラメータの変化が呼吸システムにおける故障を示すことができるように、第2のパラメータ及び呼吸システムに依存する。
【0044】
装置におけるガス供給の第2のパラメータを制御することは、第2のパラメータに対して予め定めた値を有するガスを装置に供給することを含むことができる。装置におけるガス供給の第2のパラメータを制御することは、装置内の第1の位置、例えば、装置の出口で第2のパラメータの値を測定することを含むことができる。装置におけるガス供給の第2のパラメータを制御することは、第1の位置における第2のパラメータの測定値に応じて、装置の第2の位置におけるガス供給の第2のパラメータの値を調整及び/又は較正することを含むことができる。上記の位置は、これらの測定値を区別するために、第1の位置及び第2の位置と呼ばれ、必ずしも互いに対する装置内の位置を示すとは限らないことを理解されたい。
【0045】
第2のパラメータは、装置において制御され得る任意のパラメータとすることができる。第2のパラメータは、装置において又は装置に供給されるときに設定又は定義され得るガス供給の任意のパラメータであり得る。第2のパラメータは、装置で、例えば、装置の入口又は出口で測定可能であってもよい。第2のパラメータは、呼吸システムにおいて、例えば、患者供給チューブ又は患者インタフェースにおいて測定可能であってもよい。第2のパラメータは、センサによって測定可能であってもよい。第2のパラメータは、装置によって調整及び/又は較正されてもよい。第2のパラメータは、流量であってもよい。流量は、典型的にはガスを供給するための装置によって制御されるパラメータであるからである。しかしながら、第2のパラメータが、装置又は呼吸システム内の圧力、例えば、装置の出口における圧力、呼吸システム内の背圧、又は患者の圧力であることも可能である。
【0046】
装置は、呼吸システムの動作を監視するための第2の故障検出システムを有することができる。第2の故障検出システムは、第2のパラメータの変化に応じて故障を通知する(signal)ことができる。例えば、第2のパラメータの測定値、又は第2のパラメータの複数の測定値の平均値と、第2のパラメータに対する予め定めた目標値との間の差が、故障境界を超える場合である。したがって、本発明による方法は、装置自身の別の故障検出システムと共に実装することができる。
【0047】
使用時に、第2のパラメータが流量であり、第1のパラメータが呼吸システム内の背圧又は呼吸システム内の背圧を示す圧力であり、呼吸システム内に変化(例えば、患者供給チューブ内のねじれ)があり、これによって流量が瞬間的に減少する場合、装置は、通常、一定の流量を維持するために、呼吸システム内へのガスの搬送に増加した能力(increased power)を提供する。この配置では、呼吸システム内の変化、例えば患者供給チューブのねじれが、呼吸システム内の背圧を増加させる。したがって、本発明による方法は、システム内の背圧が少なくとも1つの境界の外にある場合に故障を通知するが、第2の故障検出システムは、流量が正常に維持されるので、故障を通知しない。
【0048】
一方、一定の流量を維持するために、装置が、呼吸システム内へのガスの搬送に十分に増加した能力を提供できない場合、本発明による方法が故障を通知するのに十分な背圧の増加がない可能性があるので、本発明による方法は、故障を通知しない可能性がある。一方、装置の第2の故障検出システムは、流量が減少した結果として故障を通知することになる。装置によって提供される増加した能力は、増加した供給圧力に等しくなる場合がある。
【0049】
第1のパラメータは、第3のパラメータに依存し、したがって、第3のパラメータを反映又は示すことができる。第1のパラメータの変化は、第3のパラメータの変化を示す場合がある。第3のパラメータは、呼吸システムの構成に依存してもよい。例えば、第3のパラメータは、上述した故障状態に依存してもよい。第3のパラメータは、例えば、呼吸システム内の背圧、又は患者の圧力であってもよい。これは、装置又は呼吸システム内で、第1のパラメータの簡単な測定が行われることを可能にし、第1のパラメータの任意の変動は第3のパラメータの変動を示し、第3のパラメータは、通常、測定がより困難であるが、呼吸システム内の故障を示すという点で有利であり得る。
【0050】
第1のパラメータは、装置内の圧力であってもよい。第3のパラメータは、呼吸システム内の背圧であってもよい。周囲圧力が固定されている場合、周囲圧力からの圧力オフセットは、呼吸システムを通る背圧を示し、呼吸システム内の背圧が決定されることを可能にするので、第1のパラメータは、装置内の位置で圧力を測定することによって決定されてもよい。したがって、背圧を得るためにさらなる処理又は計算を必要としない場合もある。
【0051】
一連の測定値は、第1の期間にわたって測定されてもよい。第1の期間は、少なくとも10秒、少なくとも20秒、少なくとも30秒、少なくとも45秒、少なくとも1分、少なくとも2分、少なくとも3分、少なくとも4分、又は少なくとも5分であってもよい。第1の期間の間に第1のパラメータを測定することは、少なくとも0.01秒毎、少なくとも0.1秒毎、少なくとも1秒毎、少なくとも2秒毎、少なくとも2秒毎、少なくとも5秒毎、少なくとも10秒毎、又は少なくとも15秒毎に、パラメータを測定することを含んでいてもよい。
【0052】
第1のパラメータを測定することは、少なくとも1つのセンサを使用して第1のパラメータを測定することを含むことができる。少なくとも1つのセンサは、装置全体の異なる位置に配置された複数のセンサを含んでいてもよく、第1のパラメータの各測定は、複数のセンサによって測定された測定値の瞬間的な平均値を取得することを含んでもよい。
【0053】
第1のパラメータは、呼吸システムの構成要素の数又は種類、ガスを供給するための装置の種類、装置及び/又は呼吸システムの動作モード、ならびに呼吸システムによって提供される治療の種類のいずれか、又はそれらの任意の組合せに依存し得る。また、第1のパラメータは、上述した故障状態に依存してもよい。
【0054】
装置が複数のセンサを利用する場合、複数の測定値の平均値を決定することは、第1の期間にわたって測定された瞬間平均(instantaneous averages)の平均を求めること、すなわち、第1の期間にわたって測定された瞬間平均の平均値又は中央値を計算するステップを含むことができる。例示的な実施形態では、故障境界は、決定された平均値から5~50%、10~30%、又は15~25%オフセットされてもよく、例えば、5%、10%、15%、20%、25%、又は30%オフセットされてもよい。さらなる例示的な実施形態では、故障境界は、決定された分散係数の1倍、決定された分散係数の2倍、決定された分散係数の3倍、又は決定された分散係数の4倍だけ、決定された平均からオフセットされてもよい。
【0055】
測定パラメータからの故障境界のオフセット、又は故障境界が更新された場合は更新された測定パラメータからの更新された故障境界のオフセットは、予め定めた最小オフセットと比較されてもよい。予め定めた最小オフセットは、第1のパラメータを測定する少なくとも1つのセンサに関連付けることができる。予め定めた最小オフセットは、第1のパラメータを測定する少なくとも1つのセンサの測定精度に関連付けることができる。すなわち、予め定めた最小オフセットは、第1のパラメータを測定する少なくとも1つのセンサの測定精度に関連する選択された値であってもよい。選択された値は、第1のパラメータを測定する少なくとも1つのセンサが、その測定精度に基づいて、2つの値を誤りなく区別するために、任意の2つの測定値の間に必要な最小の差であってよい。故障境界のオフセット又は更新された故障境界のオフセットが、予め定めた最小オフセット未満である場合、故障境界又は更新された故障境界のオフセットを、予め定めた最小オフセットに一致するように増加してもよい。
【0056】
これは、多数のエラーが誤って通知されるのを防ぐために、境界が十分に広いことを保証するという点で有利であり得る。
【0057】
決定された平均からの下側故障境界及び/又は上側故障境界のオフセット、又は下側故障境界及び上側故障境界が更新された場合、更新された下側故障境界及び/又は更新された上側故障境界の更新された平均からのオフセットを、最大オフセットと比較することができる。下側故障境界及び/又は上側故障境界のオフセット(、又は下側故障境界及び上側故障境界が更新された場合、更新された下側故障境界及び/又は更新された上側故障境界のオフセット)は、最大オフセットより大きい場合に、下側故障境界及び/又は上側故障境界のオフセット(、又は下側故障境界及び上側故障境界が更新された場合、更新された下側故障境界及び/又は更新された上側故障境界のオフセット)を、最大オフセットに一致するように減少させることができる。
【0058】
上側故障境界は、第1の上側故障境界であってもよく、下側故障境界は、第1の下側故障境界であってもよい。また、第2の上側故障境界及び下側故障境界が実装されてもよい。第2の上側故障境界及び下側故障境界は、従来の幅の広い故障境界であってもよい。第2の上側故障境界は第1の上側故障境界よりも大きくてもよく、第2の下側故障境界は第1の下側故障境界よりも小さくてもよい。あるいは、第2の上側故障境界は第1の上側故障境界以下であってもよく、第2の下側故障境界は第1の下側故障境界以上であってもよい。これは、第1の上側故障境界及び第1の下側故障境界の動的性質と、第1パラメータの追加の測定値へのそれらの依存性の結果として可能である。
【0059】
第1のパラメータの測定値を故障境界又は更新された故障境界と比較することは、第1のパラメータの追加の測定値を取得し続けることと、各測定値を故障境界と比較することと、を含んでいてもよい。さらなる測定は、0.01秒毎、0.1秒毎、1秒毎、2秒毎、5秒毎、10秒毎、又は15秒毎に行うことができる。故障の動作の故障を通知することは、警報信号を発することを含んでいてもよい。警報信号は、音声信号、視覚信号、及び振動のいずれか又は任意の組み合わせを含んでいてもよい。
【0060】
第2の上側故障境界及び下側故障境界が実装される場合、第1のパラメータが第2の上側故障境界を超えるか、又は第2の下側故障境界よりも低いことに応じて、装置の動作の異なる故障を決定することができる。この例では、第1のパラメータが第2の上側故障境界を超えるか、又は第2の下側故障境界よりも低いことに応じて、異なる信号が発生する可能性がある。
【0061】
本方法は、第1のパラメータの1つ以上の追加の測定値が故障境界の内側にある場合にのみ、第1のパラメータの決定された平均値を更新してもよい。平均値が更新された平均値である場合、本方法は、第1のパラメータの1つ以上の追加の測定値が、以前の更新手順からの更新された故障境界の内側にある場合にのみ、更新された平均値を更新してもよい。
【0062】
本方法は、第1のパラメータの1つ以上の追加の測定のそれぞれの後、又は第1のパラメータの一連の追加の測定の後に、決定された平均値を更新してもよい。例えば、第1のパラメータが0.1秒毎に測定される場合、第1のパラメータの平均値と、第1のパラメータの決定された平均値についての測定値の分散係数とは、10回の測定毎に、すなわち、1秒毎に更新されてもよい。
【0063】
これは、第1のパラメータに関連する少なくとも1つの境界が、第1のパラメータの最新の測定値に関して動的に更新されるという点で有利である。
【0064】
呼吸システムの動作に故障があると判断することに応じて、装置は、装置の動作が停止するように一時停止又はシャットダウンしてもよい。呼吸システムの動作を監視する方法は、停止してもよい。呼吸システムの動作を監視する方法は、動作の故障が解決されると、第2のパラメータを設定するステップを再開することができる。呼吸システムの動作の故障は、装置によって自動的に解決されてもよいし、又はオペレータによって解決されてもよい。代替的に、呼吸システムは動作を継続することができ、呼吸システムの動作を監視する方法も継続することができる。この場合、呼吸システムの動作に故障が無くなるまで、警報信号を発生させ続けてもよい。
【0065】
呼吸システムの動作を監視する方法は、また、呼吸システム又は装置の電源を切ること、故障境界のリセットを必要とする任意の付属機器を変更すること、任意のパラメータ設定を変更すること、呼吸システム又は装置によって実行される治療の変更、又は既存の故障に関するユーザの確認のうちのいずれか、又はそれらの任意の組合せに応じて、第2のパラメータを設定するステップを再開することができる。
【0066】
装置は、ガス混合器であってもよい。ガス混合器は、ガス供給源(gas supply)に接続されるように配置された麻酔器(anaesthetic machin)又は独立型ユニットの一部を形成してもよい。ガス混合器は、圧力ラインからガスを供給するための入力ポートを備えていてもよい。あるいは、この装置は、持続陽圧呼吸療法(CPAP:continuous positive airway pressure)ドライバ、又はインファントフロードライバ(infant flow driver)であってもよい。
【0067】
本発明のさらなる態様によれば、データプロセッサによって実行されると、上記で定義された方法をデータプロセッサに実行させる命令を含むコンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【0068】
本発明のさらなる態様によれば、コントローラと、上記で定義された方法を実行するように構成された少なくとも1つのセンサと、を備える呼吸器具(respiratory apparatus)が提供される。
【0069】
呼吸器具は、故障境界の外側にある追加の測定値に応じて呼吸システムの動作の故障を通知するように構成された、少なくとも1つのインジケータをさらに備えていてもよい。
【0070】
呼吸器具は、監視される呼吸システムと一体化されてもよい。呼吸器具は、呼吸システムにガスを供給する装置と一体化されてもよい。代替的に、呼吸器具は、監視されている装置及び呼吸システムから離れていてもよい。
【0071】
本発明のさらなる態様によれば、呼吸システムにガスを供給するための呼吸器具が提供される。呼吸器具は、呼吸システムの第1のパラメータの一連の測定値を取得するように構成され、少なくとも1つの更新手順において、第1のパラメータの1つ以上の追加の測定値を取得するように構成される少なくとも1つのセンサと、第1のパラメータの故障境界を設定するように構成され、故障境界は第1のパラメータの複数の測定値に依存し、かつ、少なくとも1つの更新手順において、故障境界を更新するように構成され、更新された故障境界は第1のパラメータの更新された測定値のセットに依存し、第1のパラメータの更新された測定値のセットは第1のパラメータの追加の測定値のうちの少なくとも1つを含むコントローラと、を備えている。
【0072】
コントローラは、プロセッサを備えていてもよい。コントローラは、第1のパラメータの測定値を故障境界と比較するように構成されてもよい。コントローラは、測定値が故障境界の外側にあることに応じて、呼吸システムの動作の故障を通知するようにさらに構成されてもよい。呼吸器具は、測定値が少なくとも1つの境界の外側にあることに応じて、呼吸システムの動作の故障を通知するように構成された少なくとも1つのインジケータをさらに備えていてもよい。
【0073】
コントローラは、複数の測定値の平均値を決定するようにさらに構成されてもよい。コントローラは、複数の測定値の分散係数を決定するようにさらに構成されてもよい。
【0074】
コントローラは、呼吸器具におけるガス供給の第2のパラメータを制御するように構成されてもよい。第1のパラメータは、さらに第2のパラメータに依存してもよい。ガス供給の第2のパラメータを制御することは、第2のパラメータに対して予め定めた値又はユーザが選択可能な値を有するガスを装置に供給することを含んでいてもよい。
【0075】
呼吸器具は、第2のパラメータを測定するように構成された少なくとも1つのセンサをさらに備えていてもよい。この少なくとも1つのセンサは、第2のパラメータを調整及び/又は較正するために、呼吸器具のコントローラと通信してもよい。この通信は、コントローラを介して行われてもよい。
【0076】
呼吸器具は、設定された第2のパラメータ値、第1のパラメータの複数の測定値の平均値、第1のパラメータの複数の測定値の決定された分散係数、最後に測定された第1のパラメータ値、及び故障境界の、いずれか又は任意の組合せをユーザに示すように構成されたユーザインタフェースをさらに備えていてもよい。
【0077】
少なくとも1つのインジケータは、第1のパラメータが故障境界の外側にあることに応じて音声信号を供給するためのスピーカを備えていてもよい。少なくとも1つのインジケータは、第1のパラメータが故障境界の外側にあることに応じて視覚信号を提供するための光源を備えていてもよい。代替的に、視覚信号は、ユーザインタフェース上に提供されてもよい。少なくとも1つのインジケータは、複数のインジケータ、すなわち前述のインジケータの組合せを含むことができる。
【0078】
呼吸器具は、さらに入口を備えることができる。入口は、外部のガス供給源からガスを受け取るように構成されてもよい。入口は、外部のガス供給源に接続するか、又は取り付けるように構成されてもよい。外部のガス供給源は、例えば、ガスボトル又はキャニスタ、あるいは病院の壁に固定されたガスラインの形態であってもよい。呼吸器具は、さらに出口を備えることができる。出口は、呼吸システムにガスを供給するように構成されてもよい。出口は、呼吸器具が呼吸システムと流体連通するように、呼吸システムに接続又は取り付けるように構成されてもよい。呼吸システムは、患者にガス供給を送達するための患者インタフェースを備えてもよい。呼吸システムは、出口から患者インタフェースにガス供給を送達するように配置された呼吸チューブを備えてもよい。
【0079】
本発明のさらなる態様によれば、上記で定義された呼吸器具と、呼吸器具と流体連通する呼吸システムとを備えるレスピレータシステムが提供される。呼吸システムは、使用中に患者にガスを供給するように構成された患者インタフェースと、呼吸器具から患者インタフェースにガスの供給を送達するように構成された呼吸チューブとを備える。
【0080】
本発明のさらなる態様によれば、呼吸システムと、呼吸システムにガスを供給する呼吸器具と、を備えるレスピレータシステムが提供される。呼吸器具は、呼吸システムの第1のパラメータの一連の測定値を取得するように構成され、かつ、少なくとも1つの更新手順において、第1のパラメータの1つ以上の追加の測定値を取得するように構成された少なくとも1つのセンサと、第1のパラメータに対する故障境界を設定するように構成され、故障境界は第1のパラメータの複数の測定値に依存し、かつ、少なくとも1つの更新手順において、障害境界を更新するように構成され、更新された故障境界は、第1のパラメータの更新された測定値のセットに依存し、第1のパラメータの更新された測定値のセットは、第1のパラメータの追加の測定値のうちの少なくとも1つを含む、コントローラと、を備えている。呼吸システムは、使用中の患者にガスを供給するように構成された患者インタフェースと、呼吸器具から患者インタフェースにガスの供給を送達するように構成された呼吸チューブと、を備えている。
【0081】
コントローラは、プロセッサを備えることができる。コントローラは、第1のパラメータの測定値を故障境界と比較するようにさらに構成されてもよい。コントローラは、測定値が故障境界の外側にあることに応じて、呼吸システムの動作の故障を通知するようにさらに構成することができる。呼吸器具は、測定値が少なくとも1つの境界の外側にあることに応じて、呼吸システムの動作の故障を通知するように構成された少なくとも1つのインジケータをさらに備えていてもよい。
【0082】
コントローラは、複数の測定値の平均値を決定するようにさらに構成されてもよい。コントローラは、複数の測定値の分散係数を決定するようにさらに構成されてもよい
【0083】
コントローラは、呼吸器具におけるガス供給の第2のパラメータを制御するようにさらに構成されてもよい。第1のパラメータは、さらに第2のパラメータに依存してもよい。
【0084】
呼吸システムは、ガス供給源が呼吸器具と流体連通するように、呼吸器具に接続されたガス供給源をさらに備えることができる。ガス供給源は、例えば、ガスボトル又はガスキャニスタ、あるいは病院の壁に固定されたガスラインの形態であってもよい。
【0085】
患者インタフェースは、例えば、フェイスマスク又は鼻マスク(nasal mask)であってもよい。
【0086】
本発明の実施可能な実施形態は、添付の図面を参照して単に例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0087】
図1】第1の実施形態による定流量治療装置におけるガスパラメータの故障境界を動的に更新し、故障を検査する方法を示すフローチャートである。
図2】第2の実施形態による定流量治療装置におけるガスパラメータの故障境界を動的に更新し、故障を検査する方法を示すフローチャートである。
図3図2の方法に関連するパラメータの初期化を示すフローチャートである。
図4】定流量治療装置におけるガスパラメータの故障境界の設定の第1の実施例を示す図表である。
図5】定流量治療装置におけるガスパラメータの故障境界の設定の第2の実施例を示す図表である。
図6】定流量治療装置におけるガスパラメータの故障境界の設定の第3の実施例を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0088】
図1は、第1の実施形態による定流量治療装置(constant flow therapy device)におけるガスパラメータの故障境界が、装置の動作にエラーがあるかどうかを判断し、次いで故障を検査するために、装置の動作中に動的に更新される方法を示す。
【0089】
図1の破線ボックスで示されるステップ100~ステップ120は、センサの長期平均値(long-term average)が決定される初期化処理を示す。
【0090】
ステップ100で、装置が起動モードにあるかどうかが判断される。起動モードとは、装置の電源がオンにされたばかりの状態、装置によって提供される治療が変更されたばかりの状態、又は装置のパラメータがオペレータによって変更されたばかりの状態であると定義される。装置が起動モードにあるとき、破線のボックスによって示される初期化処理は、45秒間、連続ループとして実行される。この期間の正確な値は必須ではなく、合理的な範囲で変更され得ることを理解されたい。
【0091】
ステップ100で、装置が起動モードにあると判断された場合、方法はステップ120に進み、パラメータの測定が行われ、そのパラメータの長期平均値(すなわち、45秒間の平均値)が更新される。
【0092】
測定されたパラメータは、ユーザによって予め定義された別のパラメータの結果として、すなわち、異なる患者インタフェースを使用した結果として、又は提供される治療法の変更の結果として変化するパラメータである。測定されたパラメータは、装置が接続されている呼吸システム(breathing system)における故障の結果として変化するパラメータでもある。以下の実施形態では、この測定されたパラメータは、装置における圧力として例示される。装置における圧力は、装置が接続される呼吸システム内の背圧(back pressure)に依存することが知られており、呼吸システム内の背圧は、その呼吸システム内の任意の故障に依存することが知られている。したがって、装置における圧力の変化は、呼吸システム内の背圧の変化を示し、これが十分に大きい場合には、呼吸システムにおける故障を示し得る。
【0093】
長期平均値が更新されると、方法はステップ130に進む。ステップ130において、装置がまだ起動モードにあるかどうかが判断される。YESの場合、本方法はスタートに戻り、初期化処理を続行する。
【0094】
45秒の初期化処理が実行されると、ステップ130において、装置がもはや起動モードにないと判断され、方法は同時にステップ140及びステップ150に進む。ステップ140及びステップ150では、上側故障境界(upper fault boundary)及び下側故障境界(lower fault boundary)が定義される。これらは、それぞれ、長期平均圧力よりも20%高い値と、長期平均圧力よりも20%低い値として定義される。これらのパーセンテージの正確な値は必須ではなく、合理的な範囲で変更され得ることを理解されたい。
【0095】
ステップ160において、ステップ150で定義された長期平均値からの下側故障境界のオフセットが、予め定めた最小オフセットと比較される。予め定めた最小オフセットは、装置において圧力を測定するセンサの測定精度に関連付けられる。すなわち、予め定めた最小オフセットは、センサがその測定精度に基づいて2つの値を確実に区別するために必要な、センサの任意の2つの測定値間の最小差に等しい。下側故障境界のオフセットが、センサに割り当てられた予め定めた最小オフセットよりも低い場合、ステップ170において、下側故障境界が調整される。これにより、長期平均値について上側故障境界及び下側故障境界が狭くなり過ぎて、特にセンサの精度又は確度(precision or accuracy)が比較的低い場合に、多数の測定値が誤ってエラー測定値と判断されることがないようにする。
【0096】
長期平均値からの下側故障境界のオフセットが予め定めた最小オフセットよりも低いと判断された場合、下側故障境界のオフセット及び上側故障境界のオフセットの両方を、予め定めた最小オフセットまで増加させる。一例として、ステップ120における長期平均値が3である場合、20%の故障境界により、上側境界は3.6となり、下側境界は2.4となる。故障境界のオフセット0.6は、センサに割り当てられた予め定めた最小オフセットと比較される。センサに割り当てられた予め定めた最小オフセットが2である(すなわち、センサが±2の精度である)場合、下側故障境界のオフセット及び上側故障境界のオフセットを2に増加させ、その結果、下側故障境界は1(すなわち、3-2)になり、上側故障境界は5(すなわち、3+2)となる。他の例では、長期平均値からの下側故障境界のオフセットが予め定めた最小オフセットよりも低いことに応じて、故障境界のうちの1つのみがオフセットされ得ることが理解されよう。
【0097】
下側故障境界のオフセットが、センサに割り当てられた予め定めた最小オフセットよりも高い場合、方法は続いて、ステップ180に進む。
【0098】
最大オフセットもまた、故障境界が長期平均値について広くなり過ぎないように、同様の方法で定義されてもよい。
【0099】
ステップ180で、センサは圧力測定値を取得する。この測定値は、ステップ190で、定義された故障境界と比較される。測定された圧力が、それらの故障境界の外側にあることが判明した場合、ステップ200において適応警報故障(adaptive alarm fault)が発生し、警報信号が生成されて、装置の動作に故障があることをオペレータに知らせる。警報信号は、オペレータに装置の構成に故障(fault)があることを警告する視覚信号と音響信号の組み合わせである。測定された圧力が、それらの故障境界の内側にあることが判明した場合、ステップ210において適応警報故障は発生しない。これは、アルゴリズムの終了を意味する。いずれの場合も、アルゴリズムはこの時点で終了し(220)、ステップ100で再スタートする。
【0100】
装置はもはや起動モードにはないので、ステップ100で、方法はステップ110に進む。ステップ110において、前回の方法ループにおいて適応警報故障があったと判断された場合、前回の方法ループ中に測定された圧力は、圧力の長期平均値を更新するために使用されることはない。その代わりに、この方法はステップ130にまっすぐ進み、装置の動作に依然として故障があるかどうか、又は故障が解決されているかどうかを再び判断する。
【0101】
前回の方法ループにおいて、適応警報故障が無かったと判断された場合、前回の方法ループ中に測定された圧力は、ステップ120において、圧力の長期平均値を更新するために使用される。次に、方法はステップ130に進み、ステップ140及びステップ150で、更新された圧力の長期平均値に基づいて上限及び下限を更新し、ステップ180~ステップ210で再び圧力を測定して監視する。
【0102】
ステップ100~ステップ220は、装置の電源をオフにすること、方法のリセットを必要とする任意の付属機器(attached equipment)を交換すること、治療において実装されるパラメータを変更すること、装置によって実施される治療の変更を開始すること、又はユーザが既存の警報故障信号を確認することによって中断されるまで、連続ループとして繰り返される。すなわち、これらのイベントのいずれかに応答して、初期化処理をもう一度45秒間繰り返す必要がある。
【0103】
図2は第2の実施形態による定流量治療装置におけるガスパラメータの故障境界が、装置の動作にエラーがあるかどうかを判断し、次いで故障を検査するために、装置の動作中に動的に更新される方法を示す。留意すべきは、センサの長期平均値及びセンサの平均偏差は、まず、以下の図3に関連して説明される初期化処理によって決定されるということである。
【0104】
異なるように図示されているが、説明を簡単にするために、この方法は実際には連続ループであるので、ここではステップ340から始まるものとして説明する。
【0105】
ステップ340では、同じパラメータを測定する複数のセンサから平均読取値が取得される。ステップ350では、センサの短期偏差を決定するために、ステップ340で取得された平均読取値がセンサの長期平均値からどの程度ずれているかが計算される。次に、ステップ340で取得された平均読取値が、センサの長期平均値からの平均偏差の3倍に設定された故障境界の外側にあるかどうかが判断される。すなわち、ステップ340で取得された平均読取値が、第1の故障境界よりも大きいか、又は第2の故障境界よりも小さいかどうかが判断される。
【0106】
図1に関連して説明した方法と同様に、この実施形態の方法も、長期平均値からの平均偏差の3倍に起因する故障境界が狭すぎると判断された場合には、同じ補正手法を使用する。簡潔にするために、ここでは説明を繰り返さない。
【0107】
ステップ340で取得された平均読取値が故障境界内にある場合、方法はステップ360に進み、検査(test)は合格となる。すなわち、動作に故障がないと判断される。ステップ340で取得された平均読取値が故障境界の外側にある場合、方法はステップ370に進み、検査は不合格となる。すなわち、動作に故障があると判断される。
【0108】
いずれの場合も、本方法はステップ300に戻り、本方法の別の繰り返しを実行する。ステップ300では、現在、警報によって通知される動作に故障があるか否かが判断される。故障がある場合、方法はステップ340に進み、センサの長期平均値及びセンサの平均偏差の更新がスキップされるようにする。これは、故障が発生したか否かを判断するために使用されるセンサの長期平均値及びセンサの平均偏差が、それ自体がエラー警報信号に繋がったセンサ値の追加によって歪まないようにするために実行される。
【0109】
現在の警報信号がない場合、方法はステップ310に進む。ステップ310において、センサの長期平均値及びセンサの平均偏差が更新されてから1秒が経過したかどうかが判断される。これにより、読み取りの度に、センサの長期平均値及びセンサの平均偏差を更新する処理能力(processing power)を使用することなく、毎秒、複数のセンサの読み取り値を取得することができる。1秒が経過していない場合、本方法は、前述したように、ステップ340~ステップ370を再び実行する。代替の実施形態では、センサの長期平均値及びセンサの平均偏差が、センサの読み取りが行われるたびに更新されてもよいことが理解されよう。
【0110】
センサの長期平均値及びセンサの平均偏差が更新されてから1秒が経過した場合、この方法はステップ320に進み、センサの長期平均値が更新される。ここで、長期平均値が最後に更新されてから1秒の間に取得された短期平均読取値の平均値が、センサの長期平均値に加えられる。センサの長期平均値は、以前の32個の短期平均値からなる32個の読取値を含み、最新の値が、これら32個の読取値のうちの最も古い値にとって代わる。
【0111】
次に、この方法はステップ330に進み、平均偏差が最後に更新されてから1秒間に計算された短期偏差の平均が、センサの平均偏差に加えられる。センサの平均偏差は、以前の64個の平均短期偏差からなる64個の読取値を含み、最新の値が、これらの64個の読取値のうちの最も古い値にとって代わる。
【0112】
ステップ300~ステップ370は、装置をオフにすること、方法のリセットを必要とする任意の付属機器を交換すること、治療において実装されるパラメータを変更すること、装置によって実施される治療の変更を開始すること、又はユーザが既存の警報故障信号を確認することによって中断されるまで、連続ループとして繰り返される。すなわち、これらのイベントのいずれかに応答して、図3に示す初期化処理をもう一度45秒間繰り返す必要がある。
【0113】
ステップ370では、動作に故障があると判断され、警報信号が生成される。警報信号は、オペレータに装置の構成に故障があることを警報する視覚信号と音響信号の組み合わせである。
【0114】
図3は、図2の連続的な方法が実施される前に、センサの長期平均値及びセンサの平均偏差が決定される初期化処理を示す。
【0115】
ステップ400において、オペレータは、装置に関連付けられたユーザインタフェースを介して、第2のパラメータ(この場合は、装置を通る流量)を定義する。ステップ410では、装置内に配置された圧力センサによって、第1のパラメータ(この場合、装置での圧力)の測定値が、45秒間の間に1秒の間隔で取得される。得られた圧力読取値の平均値が計算され、呼吸システムを通る圧力の基準レベルとして設定される。基準レベルは、ステップ320で参照されるセンサの長期平均値である。
【0116】
同時に、ステップ420では、ステップ410で計算された平均圧力と比較して(relative to)、その45秒間に取得された圧力測定値の偏差が決定される。その45秒間の間に取得された測定値の偏差は、同じ45秒間の間に取得された各読取値の偏差の平均値(すなわち、ステップ410で決定された平均基準レベルと比較されるすべての読取値の平均偏差)であってもよく、45秒間の間に経験された基準レベルからの最大偏差であってもよい。
【0117】
ステップ430では、故障境界が、ステップ420で決定された圧力の偏差の関数として定義される。ステップ410で計算された平均圧力よりも大きい第1の故障境界と、ステップ410で計算された平均圧力よりも低い第2の故障境界の、2つの故障境界が定義される。エラーパラメータの境界を定義するための計算の実施例は、以下により詳細に示される。
【0118】
代替の実施形態では、代替パラメータが、ステップ400で設定され、ステップ410、420、及び340で測定され得ることが予想される。一例では、圧力はステップ400で設定されてもよく、流量はステップ410、420、及び340で測定されてもよい。
【0119】
代替の実施形態では、装置の構成に関する故障は、装置自体によって解決されてもよく、その場合、警報信号は、装置のプロセッサから装置のコントローラに送信される内部信号であってもよい。
【0120】
代替の実施形態では、ステップ430において、1つの故障境界だけが設定されてもよい。この場合、故障境界は、ステップ410で決定された平均圧力よりも大きくても低くてもよい。
【0121】
代替の実施形態では、ステップ370で装置の動作に故障があると判断することに応答して、オペレータが故障を修復するまで、装置の動作を停止することができる。
【0122】
代替の実施形態では、ステップ330で基準として記録される偏差が、センサの長期平均値からの最大偏差であってもよい。
【0123】
図4のステップ410~ステップ430の実施例は、図4図5及び図6に示されている。これらの例では、値は、簡略化のために任意単位(arbitrary units)で与えられている。
【0124】
図4に示される第1の実施例によれば、ステップ410において、45秒間、1秒間隔で圧力が測定され、平均圧力は20であると決定される。したがって、圧力の長期平均値は20に設定される。この45秒間の圧力測定値の長期平均値からの平均偏差は2.4である。
【0125】
この例での故障境界は、長期平均値からの平均偏差の3倍のオフセットとして設定されている。したがって、上側境界は、長期平均値から+7.2の27.2に設定され、下側境界は、長期平均値から-7.2の12.8に設定される。
【0126】
図5及び図6に示す第2の実施例及び第3の実施例では、圧力測定値の長期平均値からの平均偏差を使用して上側境界及び下側境界を計算するのではなく、最大偏差が使用される。図5又は図6には示されていないが、これにより、上側境界及び下側境界は、計算された偏差のより少ない倍数だけオフセットされることが必要となる場合がある。
【0127】
図5では、ステップ410において、45秒間、圧力が測定され、平均圧力は20であると決定される。したがって、センサの長期平均値は20に設定される。圧力測定値は、その45秒間の間に18と23の値の間で変動している。したがって、圧力測定値の長期平均値からの最大偏差は3として記録される。
【0128】
この例での故障境界は、長期平均値からの最大偏差の3倍のオフセットとして設定されている。したがって、上側境界は、長期平均値から+9の29に設定され、下側境界は、長期平均値から-9の11に設定される。
【0129】
図6では、ステップ410において、45秒間、圧力が測定され、平均圧力は20であると決定される。したがって、圧力の長期平均値は20に設定される。圧力測定値は、その45秒間の間に18と23の値の間で変動している。この例では、圧力測定値の長期平均値からの最大偏差は、マイナス方向に2、プラス方向に3として記録される。
【0130】
この例での故障境界は、長期平均値からのその特定の方向における最大偏差の3倍のオフセットとして設定される。したがって、上側境界は、長期平均から+9(3×3)の29に設定され、下側境界は長期平均から-6(3×2)の14に設定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】