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特表2023-507496低脂質エンドウマメタンパク質単離物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(54)【発明の名称】低脂質エンドウマメタンパク質単離物
(51)【国際特許分類】
   A23J 1/14 20060101AFI20230215BHJP
   A23L 33/185 20160101ALI20230215BHJP
   C12P 1/00 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
A23J1/14
A23L33/185
C12P1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538061
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(85)【翻訳文提出日】2022-06-20
(86)【国際出願番号】 FR2020052598
(87)【国際公開番号】W WO2021130446
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】1915459
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】カルモン、ルシル
【テーマコード(参考)】
4B018
4B064
【Fターム(参考)】
4B018MD20
4B018ME02
4B018MF01
4B018MF04
4B018MF06
4B018MF12
4B064AG01
4B064CA21
4B064CD19
4B064CE03
4B064CE16
4B064DA10
(57)【要約】

本発明は、マメ科タンパク質単離物、特に低脂質含有量のエンドウマメタンパク質単離物、及びそれらの調製方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質100g当たり7g~9g、好ましくは7.5g~8.5gの総脂質を含有することを特徴とする、マメ科植物タンパク質単離物。
【請求項2】
前記マメ科植物が、エンドウマメ及びファバマメ、より優先的にはエンドウマメから選択される、請求項1に記載のタンパク質単離物。
【請求項3】
そのリノール酸含有量が、前記マメ科植物種子中に存在する含有量と比較して、20%~30%、優先的には25%低減されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のタンパク質単離物。
【請求項4】
有機溶媒を含有しないことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のタンパク質単離物。
【請求項5】
以下の工程:
1)優先的にはエンドウマメとファバマメとの間で選択された、優先的にはエンドウマメであるマメ科植物のタンパク質を水に懸濁させることと、
2)pHを8.5に調整することと、
3)40~50℃の温度まで、優先的には45℃の温度まで加熱することと、
4)ホスホリパーゼとβ-シクロデキストリンとの混合物を含む水溶液を添加することであって、β-シクロデキストリン1g当たりのPLA2活性の単位で表される、前記ホスホリパーゼA2活性とβ-シクロデキストリンの量との比が10~100、優先的には20~80、更により優先的には25~50であることを特徴とする、添加することと、
5)160~200分間、優先的には180分間撹拌することと、
6)pHを4.5に調整することと、
7)50~70℃の温度まで、優先的には60℃で8~12分間、優先的には10分間加熱することと、
8)遠心分離し、次いで、脱塩水で、任意選択で洗浄し、次いで、2回目の遠心分離をすることと、
9)前記タンパク質のペレットを水に懸濁し、次いで、pHを7に調整することと、
10)前記得られたタンパク質単離物を乾燥させることと、を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のタンパク質単離物の調製方法。
【請求項6】
工程4で使用されるβ-シクロデキストリンの量が、前記タンパク質単離物中に総脂質1g当たり0.04~0.8gであることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程1で懸濁された前記マメ科植物のタンパク質が、50%超、優先的には70%超、更により優先的には80%超のグロブリンで構成されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
超音波処理工程を含まないことを特徴とする、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ヒト又は動物の栄養のための、請求項1~4に記載のタンパク質単離物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物タンパク質、具体的にはマメ科タンパク質単離物、更に具体的には低脂質含有量のエンドウマメタンパク質単離物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの1日当たりのタンパク質必要量は、食物摂取量のうちの12~20%である。これらのタンパク質は、動物由来の産物(肉、魚、卵、乳製品)によって、及び植物由来の食品(穀物、マメ科植物、海藻)によってのいずれでも得られる。
【0003】
しかしながら、先進国では、タンパク質摂取は主に動物由来のタンパク質によりなされる。しかし、数多くの研究により、動物由来のタンパク質を過剰摂取し、植物タンパク質の摂取が不足することは、がん及び心血管疾患を増加させる原因の1つであることが示されている。
【0004】
更に、特に乳又は卵に由来するタンパク質のアレルゲン性、及び集約農業による環境への悪影響の両方の観点から、動物性タンパク質は多くの欠点を有する。
【0005】
したがって、有益な栄養特性及び機能特性を有するが、動物由来の化合物の欠点は有していない、植物由来の化合物に対し、製造業者からの需要が高まっている。
【0006】
それにもかかわらず、植物性タンパク質によって動物性タンパク質を置き換えることは、それらの物理的及び化学的特性が異なり、これにより、これらのタンパク質が組み込まれる食品の官能品質に影響を及ぼすため、必ずしも容易ではない。
【0007】
1970年代以来、欧州、主にフランスでは、特にエンドウマメを含む豆類植物の開発は、動物及びヒトの食物摂取のための動物性タンパク質に対する代替的なタンパク質資源として劇的に発展を遂げている。エンドウマメは約27重量%のタンパク質を含有する。用語「エンドウマメ」は、本明細書においてその最も広く許容される使用法により考慮され、特に、その品種の通常の使用目的(ヒトの食品、動物用飼料及び/又は他の用途)に関わらず、「丸エンドウマメ」の全ての野生品種、並びに「丸エンドウマメ」及び「しわのあるエンドウマメ」の全ての変異品種を含む。これらの種子は、大豆とは異なり非GMOであり、溶媒を使用する脱油工程を必要としない。
【0008】
いくつかの植物タンパク質、特にマメ科植物のタンパク質、より具体的にはエンドウマメタンパク質の欠点は、それらが無味であることである。したがって、それらは、それらが組み込まれる食品に雑味をもたらし得る。これらの味は、消費者によって「豆味」、エンドウマメ様、又は苦味として頻繁に説明される。
【0009】
この問題に対する既知の解決策は、製造プロセス中に風味などの化合物を導入することによって、これらの不快な風味をマスクすることである。それにもかかわらず、この解決策は、不快な風味を隠すことはできず、わずかに減らすだけであるため、多くの場合、満足のいくものではない。第2の欠点は、追加の成分を添加することにより、食品製造プロセスがよりコスト高になることである。加えて、ますます多くの消費者が、より健康によい食品の方を選び、化合物を含有する製品には目を向けない。
【0010】
より有利な解決策は、不快な味がほとんど又は全くない植物性タンパク質単離物を直接使用することである。そのような単離物を得るための方法のいくつかの例が既に記載されている。例えば、国際公開第2015/071498号は、乳酸発酵と組み合わせて、精製されたエンドウマメタンパク質単離物を抽出する湿式粉砕抽出法について記載している。国際公開第2017/120597号における別の例は、塩の形態で沈殿する方法について記載しており、中性pHの大量の水溶液によりタンパク質を特異的に洗浄することと組み合わされる。それにもかかわらず、これらの方法は、エンドウマメ様の味及び苦味を依然として有するタンパク質単離物をもたらすため、満足のいくものではない。
【0011】
脂質は、リポキシゲナーゼ及び、マメ科植物のタンパク質の雑味の原因となる揮発性化合物の形成につながる酸化反応の基質であるため、脂質抽出は、特に残留脂質の酸化により、これらの雑味がなく、及び/又は保管中により安定した風味を有するタンパク質単離物を生成するための効率的な方法であり得る。実際、収穫、加工、及び保管中にこれらの雑味が発生する主な原因が、不飽和脂肪酸、特にリノール酸及びリノレン酸の酸化であると文献(Sessa and Rackis J.A..OIl Chemists’Soc 1979,56,262-271)に記載されている。
【0012】
抽出のために研究された経路の中には、α-(1,4)結合によって連結されたいくつかのグルコピラノース単位(C6H10O5)から構成される環状オリゴ糖であるシクロデキストリンの使用がある。最も一般的なものは、それぞれ6、7、及び8個のグルコピラノースからなるα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、及びγ-シクロデキストリンである。文献では、β-シクロデキストリンの使用は、脱脂粗挽き粉に由来する大豆タンパク質単離物から残留脂質及びリン脂質を除去するために実験されている。脂質は、リポキシゲナーゼ及び、マメ科植物中の雑味の原因となる揮発性化合物の形成につながる酸化反応の基質であるため、脂質抽出は、これらの雑味がないタンパク質単離物を生成するための効率的な方法であり得る。この領域では、α-シクロデキストリンの使用を提唱しているZhu et alのFood Chemistry,264(2018)、並びにシクロデキストリンの使用と組み合わせた超音波処理の使用を提唱しているAkshay Arora et alのFood Chemistry,127,no.3,2011及び米国特許出願公開第20110045128(A1)号を参照することができる。
【0013】
したがって、マメ科植物のタンパク質、特にマメ科植物タンパク質単離物、更に特に低脂質含有量のエンドウマメタンパク質単離物を得ることが有利である。
【発明の概要】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、マメ科植物タンパク質単離物が提案されており、マメ科植物は特にエンドウマメ及びファバマメ、優先的にはエンドウマメから選択されており、タンパク質100g当たり7g~9g、優先的には7.5g~8.5gの総脂質を含有することを特徴とする。
【0015】
別の態様によれば、本発明によるタンパク質単離物の調製方法が提示され、当該方法は、以下の工程を含むことを特徴とする:
1)優先的にはエンドウマメとファバマメとの間で選択された、優先的にはエンドウマメであるマメ科植物のタンパク質を水に懸濁させることと、
2)pHを8.5に調整することと、
3)40~50℃の温度まで、優先的には45℃の温度まで加熱することと、
4)ホスホリパーゼとβ-シクロデキストリンとの混合物を含む水溶液を添加することであって、β-シクロデキストリン1g当たりのPLA2活性の単位で表される、ホスホリパーゼA2活性とβ-シクロデキストリンの量との比が10~100、優先的には20~80、更により優先的には25~50であることを特徴とする、添加することと、
5)160~200分間、優先的には180分間撹拌することと、
6)pHを4.5に調整することと、
7)50~70℃の温度まで、優先的には60℃で8~12分間、優先的には10分間加熱することと、
8)遠心分離し、次いで、脱塩水で、任意選択で洗浄し、次いで、2回目の遠心分離をすることと、
9)タンパク質のペレットを水に懸濁し、次いで、pHを7に調整することと、
10)得られたタンパク質単離物を乾燥させること。
【0016】
本発明の最後の態様によれば、本発明によるエンドウマメ、ウチワマメ、及びファバマメから選択されるマメ科植物タンパク質単離物、更により優先的にはエンドウマメタンパク質単離物の工業的使用、特に、動物及びヒトの食品における使用が提案される。
【0017】
本発明は、以下の実施例によって更に良好に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
したがって、本発明の第1の態様によれば、マメ科植物タンパク質単離物が提案されており、マメ科植物は特にエンドウマメ及びソラマメ、優先的にはエンドウマメから選択されており、タンパク質100g当たり7g~9g、好ましくは7.5g~8.5gの総脂質を含有することを特徴とする。優先的には、マメ科植物タンパク質組成物はエンドウマメタンパク質単離物である。
【0019】
用語「タンパク質単離物」は、本出願では、70%超、優先的には80%超、更により優先的には85%超のタンパク質含有量を有する組成物として理解されるべきであり、このパーセンテージは、当該組成物の乾燥物に対するものと理解される。タンパク質含有量は、当業者に既知の任意の技術によって計算される。特に、全キエルダール窒素をアッセイし、その結果に係数6.25を乗算する。したがって、当該組成物は、ペプチド結合によって互いに結合したアミノ酸残基の配列からなる1つ以上のポリペプチド鎖から形成される巨大分子であるタンパク質を含む。エンドウマメタンパク質の特定の文脈において、本発明は、より詳細には、グロブリン(エンドウマメタンパク質の約50~60%)に関する。エンドウマメグロブリンは、主にレグミン、ビシリン及びコンビシリンの3種類のサブファミリーに分類される。
【0020】
「マメ科の植物」又は「マメ科植物」は、本出願において、マメ目の双子葉植物の科を意味することが理解されるであろう。マメ科は、種の数がラン科及びキク科に次いで3番目に多い顕花植物科である。マメ科には約765属、19,500種超が含まれる。大豆、インゲンマメ、エンドウマメ、ヒヨコマメ、ファバマメ、ナンキンマメ、栽培レンズマメ、栽培アルファルファ、各種クローバ、ソラマメ、イナゴマメ、カンゾウ、及びウチワマメなどの、いくつかのマメ科植物は、重要な作物植物である。
【0021】
本出願において用語「エンドウマメ」は、エンドウ属、より詳細には、sativum及びaestivum種に属するエンドウマメ品種を含む。当該変異品種は具体的には、C-L HEYDLEYらの表題”Developing novel pea starches”,Proceedings of the Symposium of the Industrial Biochemistry and Biotechnology Group of the Biochemical Society,1996,77~87ページの論文に記載された”mutants r”、”mutants rb”、”mutants rug3”、”mutants rug4”、”mutants rug5”及び”mutants lam」と命名されたものである。
【0022】
本出願において用語「総脂質」は、区別することなく全脂質分子として定義される。それらには、トリグリセリド、リン脂質、及び遊離脂肪酸が含まれる。脂質の決定は、酸加水分解され、続いてヘキサンで抽出され、優先的にはガスクロマトグラフィーによってこのように抽出された脂質の特異的な決定により、行われる。好ましい方法を以下に記載する。
【0023】
優先的には、タンパク質単離物のマメ科植物はエンドウマメである。
【0024】
優先的には、本発明によるタンパク質単離物は、そのリノール酸含有量が、マメ科植物種子中に存在する含有量と比較して、20%~30%、優先的には25%低減されていることを特徴とする。
【0025】
「リノール酸」とは、本発明によれば、all-cis-Δ9,12 C18:2 n-6酸に対応するオメガ-6多価不飽和脂肪酸を意味する。その構造式は、以下のとおりである。HC-(CH-CH=CH-CH-CH=CH-(CH-COOH。
【0026】
例えば、(Sessa and Rackis 1977)に記載されているように、「収穫、製造、及び保管中に雑味が発生する主な原因は、多価不飽和脂肪酸(例えば、リノール酸及びリノレン酸)の酸化である。」以下の実施例に示されるように、本発明のおかげで、これらの酸の含有量が、かなり低減されていることは注目すべきである。
【0027】
タンパク質単離物は、微量の有機溶媒を含有しない、すなわち、単離物の乾燥質量に基づいて100ppm未満の溶媒を含有するという利点を有し得る。優先的には、単離物は、単離物の乾燥重量に基づいて、10ppm未満を含有し、優先的にはまったく含有しない。有機溶媒とは、少なくとも1つの炭素原子を含む分子で作製された溶媒を意味する。代わりに、単離物は、無機溶媒、典型的には水を含み得る。これは、ヘキサンなどの有機溶媒を用いた脂質抽出工程を含む方法によって作製された単離物に対する利点である。
【0028】
本発明のタンパク質単離物は、良好な油又は水の保持によって良好な機能特性を有し得る。
【0029】
別の態様によれば、本発明によるマメ科植物タンパク質組成物の製造方法が提示され、当該方法は以下の工程を含むことを特徴とする。
1)優先的にはエンドウマメとファバマメとの間で選択された、優先的にはエンドウマメであるマメ科植物のタンパク質を水に懸濁させることと、
2)pHを8.5に調整することと、
3)40~50℃の温度まで、優先的には45℃の温度まで加熱することと、
4)ホスホリパーゼとβ-シクロデキストリンとの混合物を含む水溶液を添加することであって、β-シクロデキストリン1g当たりのPLA2活性の単位で表される、ホスホリパーゼA2活性とβ-シクロデキストリンの量との比が10~100、優先的には20~80、更により優先的には25~50であることを特徴とする、添加することと、
5)160~200分間、優先的には180分間撹拌することと、
6)pHを4.5に調整することと、
7)50~70℃の温度まで、優先的には60℃で8~12分間、優先的には10分間加熱することと、
8)遠心分離し、次いで、脱塩水で、任意選択で洗浄し、次いで、2回目の遠心分離をすることと、
9)タンパク質のペレットを水に懸濁し、次いで、pHを7に調整することと、
10)得られたタンパク質単離物を乾燥させること。
【0030】
優先的には、工程1は、マメ科植物のタンパク質を懸濁させることによって実行され、当該マメ科植物は、50%超、優先的には70%超、更により優先的には80%超のグロブリンで構成されることを特徴とする。そのようなグロブリンは、種子を粗挽き粉に粉砕し、それを水に懸濁し、ハイドロサイクロン及び遠心分離を使用して繊維及びデンプンを分離することによって容易に得られ得る。次いで、タンパク質濃縮上澄み溶液を等電pH(約4.5)に調整し、制御された加熱を行い、グロブリンを綿状凝固物に分離する。そのような方法は、本出願人の欧州特許第1400537号に記載されている。
【0031】
工程1及び工程8では、「水」は、食品摂取のためのタンパク質抽出に好適な任意のタイプの水を意味する。好ましくは、脱炭酸水、脱塩水、又は飲料水が使用される。
【0032】
工程4に関して、β-シクロデキストリン1g当たりのPLA2活性の単位で表される、ホスホリパーゼA2活性とβ-シクロデキストリンの量との比は、10~100、優先的には20~80、更により優先的には25~50である。
【0033】
好ましくは、β-シクロデキストリンの量は、タンパク質単離物中の総脂質の量に関して計算される。この量は、脂質1g当たり0.04~0.8gで変化する。ホスホリパーゼの量は、上記の比に従って計算される。
【0034】
ホスホリパーゼは、リン脂質を加水分解する酵素である。本発明による方法で使用することができる1つのホスホリパーゼは、タイプA2ホスホリパーゼ、すなわち、ナガセケムテックスによって製造され、ストレプトマイセス・バイオラセオルバーNBRC15146に由来するPLA2 Nagase 10P/Rである。
【0035】
PLA2活性は、基質として大豆レシチンを用いて測定される。これを37℃及びpH8.0に置き、例えば、Wako NEFA-C試験酵素キット(和光純薬工業)を使用して活性を測定する。酵素活性の1単位は、1分間に1μmolの脂肪酸が加水分解されることに相当する。
【0036】
したがって、PLA2 Nagase 10P/R酵素は、100,000U/gである。
【0037】
シクロデキストリンは、α-(1,4)結合によって連結されたいくつかのグルコピラノース単位(C10)から構成される環状オリゴ糖である。最も一般的なものは、それぞれ6、7、及び8個のグルコピラノースからなるα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、及びγ-シクロデキストリンである。シクロデキストリンの主な利点の1つは、それらの「円錐シリンダー」構造により、様々な化合物と包接複合体を形成する能力である。
【0038】
本発明によれば、組成物の乾燥は、優先的には凍結乾燥、ドラム乾燥、又は噴霧乾燥によって、特に凍結乾燥によって、それ自体既知の任意の方法によって行うことができる。
【0039】
この方法の利点は、超音波処理工程をバイパスすることができることである。それ自体既知の超音波処理工程は、プロセス中に超音波を材料(粗挽き粉、単離物など)に適用する工程である。
【0040】
本発明の最後の態様によれば、本発明によるマメ科植物タンパク質組成物、優先的にはエンドウマメ及びファバマメから選択されるマメ科植物タンパク質単離物、更により優先的にはエンドウマメタンパク質単離物の工業的使用、特に、動物及びヒトの食品における使用が提案される。
【0041】
本発明は、以下の非限定的実施例によって更に良好に理解されるであろう。
【実施例
【0042】
これらの実施例では、黄色エンドウマメを使用し、総脂質含有量は乾燥物の2.3%に等しい。リノール酸は、この粗挽き粉中の総脂肪酸の53.3%に相当する。
【0043】
使用されるΒCD(βシクロデキストリン)は、RoquetteからのKreptose(登録商標)である。
【0044】
使用されるホスホリパーゼは、Nagase PLA2 10P/Rであり、脱塩水で1重量%の濃度に希釈されている。溶液はまた、0.5%のNaCl及び0.1%のCaCl2を含有する。
【0045】
実施例1a:以前に抽出されたグロブリンからの本発明によるマメ科植物タンパク質単離物の生成
【0046】
グロブリンを従来の抽出方法を使用して抽出する。この実施例では、黄色エンドウマメ種子を使用する。ハンマーミルを用いて外側の繊維を脱ぷした後、エンドウマメの種子を粉砕して粗挽き粉を製造する。次いで、この粗挽き粉を、室温で30分間、pH6.5で、当該懸濁液の重量に対して固形分16.5重量%の最終濃度となるまで水に浸漬する。次に、固形分25重量%の粗挽き粉懸濁液を一連のハイドロサイクロンに導入し、これをタンパク質、内部繊維(パルプ)、及び可溶性物質の混合物からなる軽質相と、デンプンを含有する重質相とに分離する。次いで、ハイドロサイクロンの出口における軽質相は、当該懸濁液の重量に対して11.2%の固形分含有量に調整される。内部繊維の分離は、WESTFALIA型のデカンタ型遠心分離機での処理によって行われる。デカンタ型遠心分離機の出口の軽質相は、タンパク質と可溶性物質との混合物を含有し、一方、重質相はエンドウマメの繊維を含有する。デカンタ型遠心分離機の出口の軽質相をpH4.6に調整し、この溶液を70℃で4分間加熱することにより、タンパク質をその等電点で凝固させる。タンパク質の凝固後、主にグロブリンで構成されるタンパク質フロックが得られる。
【0047】
タンパク質フロックを脱塩水に再懸濁し、次いで、反応器に導入して、試薬(βCD及びPLA2)を特定の温度(45℃)及びpH(8.5)条件下で添加する。βCD及びPLA2の量は、アッセイ中の脂質の残留量に対してそれぞれ計算され、脂質1g当たり0.04gのβCD及び脂質1g当たり0.002gのホスホリパーゼNagase PLA2 10P/Rの1%溶液に等しい。180分の反応後、溶液を60℃に10分間加熱して、PLA2を阻害する。次いで、処理した溶液を60℃で10分間、pH4.5で凝集させた後、10分間8000gで2回遠心分離して、βCD複合体を除去した。最後に、グロブリンを脱塩水に再懸濁し、凍結乾燥前にpHを7に上げる。
【0048】
実施例1b:粗挽き粉からのマメ科植物タンパク質単離物の生成
【0049】
この実施例は、エンドウマメ粗挽き粉懸濁工程中に、βCD及びホスホリパーゼの注入点が上流にあるという点で、実施例1aとは異なる。
【0050】
この実施例では、黄色エンドウマメ種子を使用する。ハンマーミルを用いて外側の繊維を脱ぷした後、エンドウマメの種子を粉砕して粗挽き粉を製造する。次いで、この粗挽き粉を、当該懸濁液の重量に対して固形分16.5重量%の最終濃度となるまで反応器内で水に浸漬する。試薬(βCD及びPLA2)を反応器に導入し、得られた溶液を温度(45℃)及びpH(8.5)の特定の条件下に置く。βCD及びPLA2の量は、アッセイ中の脂質の残留量に対してそれぞれ計算され、脂質1g当たり0.04gのβCD及び脂質1g当たり0.002gのホスホリパーゼNagase PLA2 10P/Rの1%溶液に等しい。180分の反応後、溶液を60℃に10分間加熱して、PLA2を阻害する。次に、粗挽き粉懸濁液を一連のハイドロサイクロンに導入し、これをタンパク質、内部繊維(パルプ)、及び可溶性物質の混合物からなる軽質相と、デンプンを含有する重質相とに分離する。次いで、ハイドロサイクロンの出口における軽質相は、当該懸濁液の重量に対して11.2%の固形分含有量に調整される。内部繊維の分離は、WESTFALIA型のデカンタ型遠心分離機での処理によって行われる。デカンタ型遠心分離機の出口の軽質相は、タンパク質と可溶性物質との混合物を含有し、一方、重質相はエンドウマメの繊維を含有する。デカンタ型遠心分離機の出口の軽質相をpH4.6に調整し、この溶液を70℃で4分間加熱することにより、タンパク質をその等電点で凝固させる。タンパク質の凝固後、主にグロブリンで構成されるタンパク質フロックが得られる。
【0051】
実施例1c:本発明外のβCD/リパーゼ比を有する以前に抽出されたグロブリンからの本発明によるマメ科植物タンパク質単離物の生成
【0052】
この実施例の目的は、βCD/リパーゼ比の重要性を実証することである。
【0053】
この実施例では、黄色エンドウマメ種子を使用する。ハンマーミルを用いて外側の繊維を脱ぷした後、エンドウマメの種子を粉砕して粗挽き粉を製造する。次いで、この粗挽き粉を、室温で30分間、pH6.5で、当該懸濁液の重量に対して固形分16.5重量%の最終濃度となるまで水に浸漬する。次に、固形分25重量%の粗挽き粉懸濁液を一連のハイドロサイクロンに導入し、これをタンパク質、内部繊維(パルプ)、及び可溶性物質の混合物からなる軽質相と、デンプンを含有する重質相とに分離する。次いで、ハイドロサイクロンの出口における軽質相は、当該懸濁液の重量に対して11.2%の固形分含有量に調整される。内部繊維の分離は、WESTFALIA型のデカンタ型遠心分離機での処理によって行われる。デカンタ型遠心分離機の出口の軽質相は、タンパク質と可溶性物質との混合物を含有し、一方、重質相はエンドウマメの繊維を含有する。デカンタ型遠心分離機の出口の軽質相をpH4.6に調整し、この溶液を70℃で4分間加熱することにより、タンパク質をその等電点で凝固させる。タンパク質の凝固後、主にグロブリンで構成されるタンパク質フロックが得られる。
【0054】
タンパク質フロックを脱塩水に再懸濁し、次いで、反応器に導入して、試薬(βCD及びPLA2)を特定の温度(45℃)及びpH(8.5)条件下で添加する。βCD及びPLA2の量は、アッセイ中の脂質の残留量に対してそれぞれ計算され、脂質1g当たり0.71gのβCD及び脂質1g当たり0.002gのホスホリパーゼNagase PLA2 10P/Rの1%溶液に等しい。180分の反応後、溶液を60℃に10分間加熱して、PLA2を阻害する。次いで、処理した溶液を60℃で10分間、pH4.5で凝集させた後、10分間8000gで2回遠心分離して、βCD複合体を除去した。最後に、グロブリンを脱塩水に再懸濁し、凍結乾燥前にpHを7に上げる。
【0055】
実施例2:本発明による異なる単離物における総脂質の測定
存在する異なる脂肪酸の含有量として、総脂質を分析する。
総脂質の分析手順は、以下のとおりである。
リノール酸含有量の分析手順は、以下のとおりである。
両方の値は、異なる試料を比較するために、タンパク質含有量に関して表される。タンパク質含有量は、試料の窒素含有量を測定することによって得られ、これに係数6.25を乗算する。
【0056】
以下の表は、様々な試験をまとめ、比較するものである。
【表1】
これらのアッセイは、βCD及びホスホリパーゼの注入部位の重要性、並びにβCD対リパーゼの比の重要性の両方を示す。実際、本発明による実施例1aのみが、以下:
タンパク質100gに対して9g未満の総脂質の比になる脂質含有量の大幅な低減、
20%超(23.6%)のリノール酸含有量の大幅な低減を有するタンパク質単離物を得ることが可能である。
【国際調査報告】