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特表2023-507529ペアド-エンドシークエンシングのための制御された鎖置換
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(54)【発明の名称】ペアド-エンドシークエンシングのための制御された鎖置換
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20230215BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20230215BHJP
   C12Q 1/6874 20180101ALI20230215BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20230215BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20230215BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6874 Z
C12Q1/6876 Z
C12N15/09 200
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538809
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(85)【翻訳文提出日】2022-08-18
(86)【国際出願番号】 CN2020000311
(87)【国際公開番号】W WO2021128441
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】62/952,713
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516122667
【氏名又は名称】深▲セン▼華大智造科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MGI Tech Co.,LTD
【住所又は居所原語表記】Main Building and Second Floor of No.11 Building,Beishan Industrial Zone,Yantian District,Shenzhen,Guangdong 518083,China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ドルマナッチ,ラドイエ
(72)【発明者】
【氏名】キャロウ,マシュー ジェイ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR41
4B063QR62
4B063QS24
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
本出願は、ペアド-エンドシークエンシングに用いられる方法および組成物に関する。この方法は、DNAコンカテマーで固定化された表面を含むDNAアレイを提供することを含む。アレイ上の複数のDNAコンカテマーの各々について、本方法は、DNAコンカテマー上のプライマー結合部位に第1のリードプライマーをアニールすること;第1のリードプライマーの少なくとも一部を伸長させて、dNTPまたはdNTP類縁体を取り込み、それによって第1のリード鎖を生成すること、ここで取り込まれるdNTPまたはdNTP類縁体の各々は、第1のリードを生成するために同定され;鎖置換活性を有するポリメラーゼで第1のリード鎖の少なくとも一部を伸長させて、複数の第2の鎖を生成する制御されたMDAを実行すること、ここで、第2の鎖が各々、DNAコンカテマーにハイブリダイズされる部分、およびハイブリダイズされていない一本鎖分枝を含むこと;前記複数の第2の鎖の一本鎖分枝に第2のリードプライマーをアニーリングし、該第2のリードプライマーを伸長させて第2のリード鎖を生成する工程、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1,000個のDNAコンカテマーが固定化された表面を含むDNAアレイを提供する工程、
(b)該アレイ上の複数のDNAコンカテマーの各々について、
(i)DNAコンカテマー上のプライマー結合部位に第1のリードプライマーをアニーリングする工程、および
(ii)第1のリードプライマーの少なくとも一部を伸長させてdNTPまたはdNTP類縁体を組み込み、それによって第1のリード鎖を生成し、ここで、組み込まれるdNTPまたはdNTP類縁体の各々が、第1のリード鎖を生成するために同定される、工程、
(c)鎖置換活性を有するポリメラーゼで第1のリード鎖の少なくとも一部を伸長させて、複数の第2の鎖を生成することにより制御されたMDAを実行し、ここで、第2の鎖の各々は、DNAコンカテマーにハイブリダイズした部分、およびハイブリダイズしていない一本鎖分枝を含む、工程、
(d)第2のリードプライマーを、複数の第2の鎖の一本鎖分枝にアニーリングする工程、ならびに
(e)第2のリードプライマーを伸長させて、第2のリード鎖を生成する工程
を含む、ペアド-エンドシークエンシング法。
【請求項2】
DNAコンカテマーが複数のモノマーを含み、各モノマーがアダプターおよび標的配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1のリードプライマーが、DNAコンカテマーの各モノマーのアダプターにハイブリダイズする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)で生成された第1のリード鎖が、第1のリード鎖のさらなる伸長を妨げる3’ブロック基を含み、ここで、
工程(b)で制御されたMDAを実行する前に第1のリード鎖から3’ブロック基を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(b)(ii)の前に、複数のMDAプライマーをDNAコンカテマーにハイブリダイズさせる方法であって、
ここで、該MDAプライマーが、MDAプライマーの伸長を阻止するための可逆的ブロッキング基を含み、該可逆的ブロッキング基が、工程(b)(ii)の後、工程(c)の前に除去され、そして
工程(c)が、複数のMDAプライマーおよび第1のリード鎖を伸長させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
複数のMDAプライマーがランダムプライマーを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
DNAコンカテマーが、少なくとも1つのMDAプライマーおよび少なくとも1つの第1のリードプライマーにハイブリダイズするアダプターを含む方法であって、ここで、少なくとも1つのMDAプライマーが、少なくとも1つの第1のリードプライマーの上流にある、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
MDAプライマーが5から10ヌクレオチド長の範囲の長さを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
工程(c)における制御されたMDAが、
(i)DNAポリメラーゼの過剰分子が第1のリード鎖に結合しないような鎖置換型DNAポリメラーゼ濃度の存在下で、第1の期間の間MDAを実行する工程、および
(ii)第1の期間の終了時に鎖置換型DNAポリメラーゼの過剰分子をアレイから除去し、MDAを継続して、それぞれが少なくとも1つのDNAコンカテマーにハイブリダイズする部分、およびハイブリダイズしない一本鎖分枝を含む第2の鎖を生成する工程
を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
鎖置換型DNAポリメラーゼの過剰分子を除去することが、アレイを洗浄することによって行われる方法であって、ここで、工程(ii)が、アレイを洗浄し、組み込まれていないヌクレオチドを含むがDNAポリメラーゼを含まない新鮮なバッファーを添加することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(c)における制御されたMDAを完了する期間の長さに対する第1の期間の長さの比率が、1:30から1:2の範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
工程(c)の制御されたMDAを完了する期間が10~90分である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
第1の期間が1~10分である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
工程(c)における制御されたMDAを行うことが、
(i)伸長阻止条件下でアレイを鎖置換型DNAポリメラーゼと接触させ、次いで
(ii)第1のリード鎖が同時に伸長され、それぞれが少なくとも1つのDNAコンカテマーにハイブリダイズする部分、およびハイブリダイズしない一本鎖分枝を含む複数の第2の鎖を生成するように、伸長阻止条件を逆転させる工程
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
伸長阻止条件が、マグネシウムまたは組み込まれていないヌクレオチドを含まない反応バッファーである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
伸長阻止条件が、ポリマー化阻害剤を含む反応バッファーである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
ポリマー化阻害剤がEDTAである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
伸長阻止条件が20℃未満の温度である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
(i)の鎖置換型DNAポリメラーゼが、DNAポリメラーゼの過剰分子が第1のリードプライマーに結合しないような濃度であり、ここで、該方法が、工程(i)と工程(ii)の間に鎖置換型DNAポリメラーゼの結合していない分子をアレイから除去すること
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
(i)の鎖置換型DNAポリメラーゼが、DNAポリメラーゼの過剰分子が第1のリードプライマーに結合しないような濃度であり、ここで、工程(ii)が、第1のリード鎖を第1の期間の間伸長させ、第1の期間の終わりに鎖置換型DNAポリメラーゼの過剰分子をアレイから除去すること、およびDNAポリメラーゼの過剰分子を含まない反応においてMDAを継続することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
工程(c)における制御されたMDAを完了する期間に対する第1の期間の比率が、1:30から1:2の範囲である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
工程(c)のMDAを完了する期間が10~90分である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
第1の期間が1~10分である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
(a)アレイ上に固定化された複数の一本鎖DNAコンカテマーにハイブリダイズした第1のリードプライマーを、切除可能なヌクレオチドの存在下で伸長させて、複数の一本鎖DNAコンカテマーの第1のリードを生成する工程であって、ここで、前記伸長により切除可能なヌクレオチドが組み込まれた第1のリード鎖を生成する工程;
(b)切除可能な塩基が存在する第1のリード鎖を切断して、伸長可能な3’末端を有する第1のリード鎖のフラグメントを生成する工程;
(c)第1のリード鎖のフラグメントを伸長させて複数の第2の鎖を生成することにより制御されたMDAを行う工程であって、ここで、制御されたMDAが複数の第2の鎖をもたらし、それぞれが複数の一本鎖DNAコンカテマーの1つにハイブリダイズする配列、およびハイブリダイズしない一本鎖分枝を含む、工程;および
(d)複数の第2の鎖の一本鎖分枝にハイブリダイズする第2のリードプライマーを伸長させて、第2のリードを生成する工程
を含む、ペアド-エンドシークエンシング法。
【請求項25】
切除可能なヌクレオチドがウラシルである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
(a)アレイ上に固定化された複数の一本鎖DNAコンカテマー上にハイブリダイズした第1のリードプライマーを伸長させて、複数の一本鎖DNAの第1のリードを生成する工程であって、ここで前記伸長により第1のリード鎖が生成される工程;
(b)該第1のリード鎖を除去する工程;
(c)鎖置換活性を有するポリメラーゼでDNAコンカテマーにハイブリダイズする複数のMDAプライマーを伸長させて、複数の第2の鎖を生成し、それぞれが複数の一本鎖DNAコンカテマーの1つにハイブリダイズする配列と、ハイブリダイズしない一本鎖分枝とを含む制御されたMDAを実行する工程;および
(d)複数の第2の鎖の一本鎖分枝にハイブリダイズする第2のリードプライマーを伸長させて、第2のリードを生成する工程
を含む、ペアド-エンドシークエンシング法。
【請求項27】
複数のMDAプライマーがランダムプライマーを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
工程(a)における第1のリードプライマーの伸長および工程(b)における第1のリード鎖の伸長が、単一のDNAポリメラーゼを用いることによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
工程(a)における第1の鎖プライマーの伸長および工程(b)における第1のリード鎖の伸長が、異なるDNAポリメラーゼを用いることによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
工程(a)における第1の鎖プライマーの伸長が、非置換型DNAポリメラーゼによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
第1のリードが、合成によるシークエンシングによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
第1のリードプライマーの伸長を1~15分間継続する、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
標的DNA配列の配列を決定するために、第1のリードおよび第2のリードを結合することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
複数の一本鎖DNAコンカテマーおよび複数のプライマーを含むアレイであって、
ここで、各一本鎖コンカテマーが複数のモノマーを含み、
各モノマーがアダプター配列およびDNA標的配列を含み、
各プライマーが、DNAコンカテマーのアダプター配列に相補的かつハイブリダイズするプライマー配列を含み、
少なくとも1つのプライマーが、切除可能なヌクレオチドを含み、および
少なくとも1つのプライマーが切断されて、切除可能なヌクレオチドを放出し、伸長可能な3’末端を有する2以上のフラグメントを生成することができる、アレイ。
【請求項35】
複数のシークエンシングプライマー、
鎖置換活性を有しないDNAポリメラーゼ、
SBS用可逆的終端化ヌクレオチドの混合物、
鎖置換型DNAポリメラーゼ、および
dNTPの混合物
を含む、キット。
【請求項36】
可逆的終端化ヌクレオチドの混合物がウラシルを含み、キットがDNA鎖からウラシルを除去することができる切断剤をさらに含む、請求項35に記載のキット。
【請求項37】
マグネシウムを含まない緩衝液をさらに含む、請求項35に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年12月23日付出願の米国仮出願第62/952,713号に対する優先権およびその利益を主張するものである。該仮出願は、すべての目的のために引用により本明細書に包含される。
【0002】
発明の分野
本発明は、DNAシークエンシング、ゲノミクスおよび分子生物学の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ペアド-エンドシークエンシング(Paired-End Sequecing)は、DNAフラグメントの両端を配列決定(シークエンシング)することを可能にする。それは、DNAテンプレートおよびその相補鎖を配列決定することによって実行され得る。米国特許第10,227,647号を参照のこと。ペアド-エンドシークエンシングは、シングル-エンドシークエンシングと同じ時間および労力で、2倍のリード数を生成する。ペアド-エンドシークエンシングで生成されたリードペアを用いることにより、正確なリードのアライメントおよびシングル-エンドシークエンシングによる検出が困難な変異(例えば、挿入-欠失変異)の検出が可能となる。
【発明の概要】
【0004】
発明の短い概要
本明細書に記載のペアド-エンドシークエンシング法は、DNAテンプレートに相補的な鎖(第1の鎖)がDNAテンプレートと結合したままとなるように、それらの制御された製造を用いる。これらの相補的な鎖は、第2の鎖と称される。DNAテンプレート(例えば、DNAコンカテマー)のヌクレオチド配列は、DNAテンプレートから第1のリードを生成し、第2の鎖から第2のリードを生成することによって決定することができる。また、第2の鎖の生成を同期させ、第2のリードを生成するのに適した長さの第2の鎖の数を最大化するために用いられる方法もまた開示される。
【0005】
ある面において、本明細書に記載の方法は、アレイ上に固定化された複数の一本鎖DNAコンカテマー上にハイブリダイズした第1のリードプライマーを伸長させて、複数の一本鎖DNAの第1のリードを生成する工程であって、ここで、該伸長により第1のリード鎖が生成される工程;鎖置換活性を有するポリメラーゼを用いて第1のリード鎖またはその一部を伸長することにより制御された多重置換増幅(MDA)を実行して、複数の第2の鎖を生成する工程であって、各々が、(i)複数のDNAコンカテマーの1つにハイブリダイズした配列、および(ii)ハイブリダイズしていない一本鎖分枝(single-stranded branch)を含む、工程;および、複数の第2の鎖の一本鎖分枝にハイブリダイズする第2のリードプライマーを伸長させて、第2のリードを生成する工程、を含む。
【0006】
ある面において、本明細書に記載の方法は、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個、少なくとも10個、少なくとも10個または少なくとも10個のDNAコンカテマーがその上に固定化された表面を含むDNAアレイを提供することを含む。DNAコンカテマーの数は、1000~1013、10~1012、10~1010または10~10の範囲であってよい。アレイ上の複数のDNAコンカテマーのそれぞれについて、DNAコンカテマー上のプライマー結合部位に第1のリードプライマーをアニーリングさせ、第1のリードプライマーの少なくとも一部を伸長させてdNTPまたはdNTP類縁体を組み込み、それにより第1のリード鎖を生成する。組み込まれるdNTPまたはdNTP類縁体の各々は、第1のリードを生成するために同定される。この方法はさらに、鎖置換活性を有するポリメラーゼで第1のリード鎖の少なくとも一部を伸長させて、複数の第2の鎖を生成する工程であって、ここで、第2の鎖は各々、DNAコンカテマーにハイブリダイズする部分、およびハイブリダイズしない一本鎖分枝を含む工程による、制御されたMDAを実行することを含む。この方法は、第2のリードプライマーを複数の第2の鎖の一本鎖分枝にアニーリングし、第2のリードプライマーを伸長させて、第2のリードを生成することをさらに含み得る。
【0007】
ある面において、本明細書に記載の方法は、アレイ上に固定化された複数の一本鎖DNAコンカテマーにハイブリダイズした第1のリードプライマーを、切除可能なヌクレオチドの存在下で伸長させて、複数の一本鎖DNAコンカテマーの第1のリードを生成することであって、ここで、該伸長により切除可能なヌクレオチドが組み込まれた第1のリード鎖が生成されることを含む。この方法は、切除可能な塩基の位置で第1のリード鎖を切断して延長可能な3’末端を有する第1のリード鎖のフラグメントを生成する工程;第1のリードプライマーのフラグメントを伸長させて複数の第2の鎖を生成することにより制御されたMDAを実行し、ここで、該制御されたMDAが、各々が複数のDNAコンカテマーの1つとハイブリダイズしている配列、およびハイブリダイズしていない一本鎖分枝を含む複数の第2の鎖を生成する工程;および、複数の第2の鎖の一本鎖分枝にハイブリダイズする第2のリードプライマーを伸長させて、第2のリードを生成する工程、の1以上をさらに含んでいてよい。
【0008】
また、複数の一本鎖DNAコンカテマーおよび複数のプライマーを含むアレイであって、ここで、各一本鎖コンカテマーが複数のモノマーを含み、各モノマーがアダプター配列およびDNA標的配列を含み、各プライマーが、DNAコンカテマーのアダプター配列に相補的であり、かつハイブリダイズするプライマー配列を含み、少なくとも1つのプライマーが切除可能なヌクレオチドを含み、少なくとも1つのプライマーが切断されて切除可能なヌクレオチドを放出でき、そして伸長可能な3’末端を有する2以上のフラグメントを生成する、アレイも提供する。
【0009】
別の面では、アレイは、ディスクリート(discrete)領域のアレイを含む支持体であって、ここで、複数の領域が、一本鎖DNAコンカテマー、可逆性3’ブロッキング基を有する複数のプライマー、および伸長可能な3’末端を有する複数のプライマーのクローンクラスターを含んでいる。一本鎖コンカテマーは、複数のモノマーを含み、各モノマーは、アダプター配列およびDNA標的配列を含む。各プライマーは、DNAテンプレートのアダプター配列に相補的でハイブリダイズするプライマー配列を含み、少なくとも1つのアダプターは、可逆的3’ブロッキング基を有する1つのプライマーおよび伸長可能な3’末端を有する1つのプライマーにハイブリダイズし、可逆的3’ブロッキング基を有するプライマーは伸長可能な3’末端を有するプライマーより上流である。
【0010】
また、本発明は、複数の配列決定プライマー、非置換型DNAポリメラーゼ、SBS用可逆的終端化(reversibly terminated)ヌクレオチドの混合物、鎖置換型DNAポリメラーゼ、およびdNTPの混合物を含むキットもまた提供する。キットは、以下の1以上をさらに含む:i)マグネシウムを含まない緩衝液(“マグネシウム不含有緩衝液”)およびii)伸長阻害剤(例えば、EDTA、KClおよびNaClなどの過剰塩、デオシコール酸ナトリウム、サルコシル(sarkosyl)およびSDSなどのイオン性界面活性剤、エタノールおよびイソプロパノールなど)。ある態様では、ヌクレオチドの混合物はウラシルをさらに含んでいてもよい。いくつかの態様では、混合物中のチミジンに対するウラシルの比は、1:2~1:10、例えば、1:3~1:8、または1:4~1:5の範囲にある。いくつかの態様では、キットは、3’でブロックされるプライマー(すなわち、3’ブロックプライマー)とブロックされないプライマーとの混合物をさらに含んでもよい。ある態様では、ブロックされていないプライマーに対するブロックされたプライマーの比は、1:1~1:5の範囲、例えば、1:2~1:4の範囲にある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明のペアド-エンドシークエンシング法の一態様を示す。
図2図2は、本明細書に記載の方法の一態様を示し、可逆性ブロッキング基(図中、“*”で示される)を有する多重置換増幅(MDA)プライマーが、第1のリードプライマーの上流でDNAコンカテマー上にハイブリダイズされる。可逆的ブロッキング基の除去後、MDAプライマーおよび第1のリード鎖の両方がMDAで伸長され、複数の第2の鎖が生成される。
図3図3は、本明細書に記載の方法の一態様を示す。第1のリードシークエンシング中に第1のリード鎖が生成された後、鎖置換型DNAポリメラーゼがDNAコンカテマーに結合され、MDAを開始させる。DNAポリメラーゼは、反応中の過剰なDNAポリメラーゼ分子がDNAコンカテマーおよび第1のリード鎖に結合しないように、高濃度で反応に導入される。開始後かつMDAの完了前に、結合していないDNAポリメラーゼ分子が除去され、MDAは第2の鎖の生成を継続する。
図4図4は、本明細書に記載の方法の一態様を示す。第1のリードシークエンシングから第1のリード鎖が形成された後、鎖置換型DNAポリメラーゼが、伸長阻止条件下で反応に添加される。このポリメラーゼは、コンカテマーおよび第1のリード鎖に結合するが、これらの条件下ではプライマーを伸長させない。この図中のアスタリスク(*)は、伸長阻止条件によりプライマーが伸長できないことを示す。
図5図5は、本明細書に記載の方法の一態様を示し、この方法では、切除可能なヌクレオチドが、第1のリードシークエンシング中に第1のリード鎖に組み込まれる。次いで、第1のリード鎖は、これらの切除可能なヌクレオチドが存在する位置で切断され、伸長可能な3’末端を有するフラグメントを生成する。このフラグメントをMDAの伸長用プライマーとして用いて、第2の鎖を生成する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
1.概説
本発明は、DNA鎖を用いた改良されたペアド-エンドシークエンシング法に関する。1つのアプローチにおいて、例えばMDAプライマーを含むことによって、シークエンシングに最適化された長さを有する第2の鎖の数を最大化するための複数工程が行われる。ある場合には、プライマーは切断されて複数のフラグメントを生成し、それぞれが追加の第2の鎖を生成するためのプライマーとして機能する。ある場合には、例えば伸長阻止条件を用いて、同期的(synchronous)に第2の鎖の生成を最適化するための複数工程が行われる。
【0013】
本発明のある面において、ペアド-エンドシーケンスの第1のリードは、アレイ上に固定化されたDNAコンカテマーにハイブリダイズした第1のリードプライマーを伸長することによって生成される(“第1のリードシークエンシング”)。第1のリードシークエンシングでは、DNAコンカテマーに相補的な第1のリード鎖が生成される。次に、伸長プライマーを用いて制御された多重置換増幅(MDA)が行われ、第2の鎖が生成される。伸長プライマーは、追加のMDAプライマー、第1のリード鎖、またはその両方とすることができる。各第2の鎖は、1つのDNAコンカテマーにハイブリダイズした配列、および第2のリードプライマーに相補的な1以上のプライミング配列を有するハイブリダイズしていない一本鎖分枝を含む。第1のリード鎖は、第2の鎖を生成するためにさらに伸長され、第2の鎖の一部となり得る。第2のリードは、第2の鎖上のプライマー結合配列にハイブリダイズした第2のリードプライマーを伸長することによって得られ、このプロセスは本明細書中、“第2のリードシークエンシング”と称される。
【0014】
いくつかのアプローチにおいて、本方法は、第2の鎖の収量(すなわち、第2のリードシークエンシングに適した第2の鎖の数)および第2の鎖の製造効率を高めることができる様々な特徴を含む 。いくつかのアプローチにおいて、本明細書に記載のペアド-エンドシークエンシング法は、第1のリードプライマーの伸長中に組み込まれる、例えばウラシルのような、切除可能なヌクレオチドを用いる。これらの切除可能なヌクレオチドを含む第1のリードプライマーまたは第1のリード鎖は、これらの切除可能なヌクレオチドが存在する位置で切断されて、伸長可能な3’末端を有する複数のフラグメントを生成し、これらの複数のフラグメントは次に伸長されてさらに第2の鎖を生成し得る。
【0015】
いくつかのアプローチにおいて、本方法は、生成された第2の鎖が同様の長さ(例えば、第2のリードシークエンシングに適した長さ)を有するように、複数の第2の鎖の生成を同期させる特徴を含む。このような同期化を達成するために、様々なアプローチが利用可能である。一態様では、第1のリードシークエンシングが完了した後、高濃度のポリメラーゼを導入して、伸長阻止条件下でDNAコンカテマーにハイブリダイズしたプライマー(すなわち、MDAプライマーまたは第1のリード鎖)に結合させる。この伸長阻止条件下での最初の工程により、DNAポリメラーゼのDNAテンプレートおよびプライマーへの結合が最大化される。その後、伸長阻止条件を逆転させ、プライマーからのMDAを同期させることができる。いくつかのアプローチでは、MDAを最初の期間行った後、過剰なDNAポリメラーゼ分子(すなわち、ポリメラーゼ分子は反応中で遊離しており、プライマーおよびDNAテンプレートに結合していない)を除去し、結合していないDNAポリメラーゼ分子の不在下でMDAを継続する。このプロセスにより、遊離したポリメラーゼ分子と新たに形成される第二の鎖の相互作用、および遊離したポリメラーゼ分子とDNAテンプレートとの相互作用を最初の結合期間を超えて最小限に抑え、第2の鎖の同期的伸長および生成を促進することができる。
【0016】
本出願の図面は、本発明の特定の態様を示す。図1は、それぞれがアダプター配列および標的DNA配列を含む複数のモノマーを含むDNAコンカテマーを示す。第1のリードプライマーは、DNAコンカテマーのアダプター中のプライマー結合配列にアニーリングされ、伸長されて、合成による配列決定(SBS)により第1のリードを生成する。第1のリードのプライマーを伸長させることにより、第1のリード鎖が生成される。SBSの最終サイクルの後、第1のリード鎖の末端ヌクレオチドの3’ブロッキング基を除去し、鎖置換ポリメラーゼを付加する。鎖置換ポリメラーゼにより、第1のリード鎖が伸長され、MDAで第2のリード鎖が生成される。MDAは、第2の鎖が部分的にDNAコンカテマーにハイブリダイズし、各第2の鎖がハイブリダイズしていない分枝を構成するように制御される。次に、第2のリードプライマーは、(例えば、分枝上のアダプター配列上の第2のリードプライマー結合配列にハイブリダイズすることによって)分枝にアニーリングされる。これらの第2のリードプライマーは、次に、第2のリードを生成するために伸長される。
【0017】
図2は、3’ブロッキング基を有するMDAプライマーおよび第1のリードプライマーがDNAコンカテマーにハイブリダイズすることを示す。これらのMDAプライマー上のブロッキング基は、SBSの間に組み込まれるヌクレオチド上のブロッキング基とは異なる。SBSの各サイクル中に除去されるヌクレオチド上のブロッキング基とは異なり、MDAプライマー上のブロッキング基は、SBSシークエンシングプロセス全体を通して保持される。第1のリードプライマーは、第1のリードを生成するために伸長され、第1のリード鎖を生成する。第1のリードのシークエンシングが完了すると、MDAプライマー上のブロッキング基は除去され、最後のシークエンシングサイクルで追加された最後のヌクレオチドのブロッキング基も除去される。MDAプライマーおよび第1のリードの両鎖は、制御されたMDA反応において鎖置換型DNAポリメラーゼの存在下で伸長され、DNAコンカテマーに部分的にハイブリダイズする第2の鎖が生成される。第2のリードは、上記と同様の方法で生成することができる。
【0018】
図3は、第1のリードシークエンシングが完了した後、第1のリードシークエンシングによって形成された第1のリード鎖が、DNAコンカテマーにハイブリダイズしたままであることを示す。高濃度のDNAポリメラーゼがアレイに添加され、最初の期間、第1のリード鎖を伸長させる。このとき、反応中のDNAポリメラーゼ分子が過剰であるため、全てではないが一部のDNAポリメラーゼ分子はコンカテマーに結合し、残りのDNAポリメラーゼ分子は遊離であり、すなわちDNAコンカテマーに結合せず、伸長反応に関与しない。その後、アレイを洗浄し、過剰量のDNAポリメラーゼ分子を除去する。ヌクレオチド(DNAポリメラーゼではない)を有するバッファーを反応に加え、MDAがDNAコンカテマーに部分的にハイブリダイズする第2の鎖を生成し続けることができるようにする。
【0019】
図4は、第1のリードシークエンシングが完了した後、第1のリードシークエンシングによって形成された第1のリード鎖が、DNAコンカテマーにハイブリダイズしたままであることを示す。鎖置換型DNAポリメラーゼは、伸長阻止条件下で反応に加えられ、例えば、鎖置換型DNAポリメラーゼは、伸長に必要な少なくとも1つの成分、例えば、マグネシウムを欠く緩衝液中にある。これらの条件下では、鎖置換型DNAポリメラーゼはDNAコンカテマーに結合するが、伸長しない。アレイをこれらの条件下で最初の期間維持した後、これらの条件を逆転させて伸長を可能にする。例えば、除かれていた成分(例えば、マグネシウム)をMDAに適した濃度で反応に再び添加する。次いで、MDAを開始し、第2の鎖を生成する。
【0020】
図5は、第1のリードシークエンシングプロセスが、切除可能なヌクレオチド(例えば、ウラシル)を含む第1のリード鎖を生成することを示す。これらの第1のリード鎖は、切除可能なヌクレオチドを認識する酵素によって切断され、このような切断は、伸長可能な3’末端を有する複数のフラグメントをもたらし、切除可能なヌクレオチドの放出につながる。これらのフラグメントは、MDAにおいて伸長され、複数の第2の鎖を形成する。
【0021】
米国特許第10,227,647号の開示内容は、すべての目的のためにその内容全体が引用により組み込まれる。
【0022】
2.定義
本明細書で用いる“プライマー”とは、ポリヌクレオチドを鋳型として二重鎖を形成する際に、核酸合成の開始点として働き、その3’末端からテンプレートに沿って伸長されて、伸長された二本鎖が形成される、オリゴヌクレオチドを意味する。プライマーは、天然配列または合成配列を含み得る。また、プライマーは、非天然ヌクレオチドを含んでいてもよい。伸長過程で付加されるヌクレオチドの配列は、テンプレートとなるポリヌクレオチドの塩基配列によって決定される。プライマーは、一般的には、DNAポリメラーゼによって伸長される。
【0023】
本明細書で用いる“ランダムプライマー”は、ランダムなヌクレオチド配列を有するプライマーを意味する。
【0024】
本明細書で用いられる、MDAまたは多重置換増幅は、複数のプライマーによる鎖置換複製に基づくDNA増幅を意味する。
【0025】
本明細書で用いられる“ポリヌクレオチド”は、DNA、RNAおよびハイブリッド核酸および合成核酸を意味する用語“核酸”と互換的に用いられ、一本鎖または二本鎖であってもよい。“オリゴヌクレオチド”は、約6~約300ヌクレオチドの長さを有する短いポリヌクレオチドである。“相補的ポリヌクレオチド”は、標的核酸に相補的なポリヌクレオチドを意味する。
【0026】
本明細書で用いる用語“鎖置換活性”は、合成中に生じる下流DNAを置換する能力を意味する。鎖置換活性は、米国特許公開第2010115145号(引用により本明細書に包含される)に、以下のように記載されている:“鎖置換活性”は、生物学的、化学的または物理的な薬剤、例えばDNAポリメラーゼが、テンプレート依存性核酸合成に関連して、かつその近くに、5から3の方向にその相補鎖から対の核酸を解離させる現象を示す。鎖置換は対になる核酸配列の5’末端から始まり、酵素はその置換部位の5’で直ちに核酸合成を行う。新規合成核酸および置換された核酸は一般的に同じ塩基配列を有し、テンプレート核酸鎖と相補的である。鎖置換活性は、核酸合成活性、特にDNA合成活性を付与するものと同一分子上に位置していてもよく、または別個の独立した活性であってもよい。大腸菌DNAポリメラーゼI、DNAポリメラーゼIのKlenowフラグメント、T7またはT5バクテリオファージDNAポリメラーゼおよびHIVウイルス逆転写酵素は、ポリメラーゼ活性および鎖置換活性の両方を有する酵素である。ヘリカーゼなどの薬剤は、鎖置換活性を有さない誘導剤と併用することで、鎖置換効果、すなわち核酸の置換と同一配列の核酸の合成が連動した効果を発揮することができる。同様に、大腸菌または別の生物由来のRec Aまたは一本鎖結合タンパク質などのタンパク質は、他の誘導剤と組み合わせて、鎖置換を生成または促進するために用いられ得る(Kornberg and Baker, 1992, DNA Replication, 2nd Edition, pp 113-225, Freeman, N.Y.)。1つのアプローチにおいて、ポリメラーゼは、中程度の温度(例えば、20~37℃)で強い置換活性を有するPhi29ポリメラーゼである。1つのアプローチでは、Bst DNAポリメラーゼ、ラージフラグメント(例えば、New England Biolabs, Ipswich, MAから入手可能なNEB#MO275)が用いられる。Bst DNAポリメラーゼは、高温(~65℃)で活性である。
【0027】
用語“第1の鎖”は、ペアド-エンドシークエンシングにおいて用いられる一本鎖DNAテンプレートを意味する。
【0028】
用語“第2の鎖”は、第1の鎖に相補的な一本のDNA鎖を意味する。
【0029】
用語“MDAプライマー”とは、DNAテンプレートにハイブリダイズし、置換-伸長反応において第2の鎖を生成するために伸長される伸長プライマーを意味する。本明細書に記載されるMDAプライマーは、シークエンシングプライマー(例えば、第1のリードプライマー)ではない。いくつかの態様では、MDAプライマーおよび第1のリードプライマーは、異なる配列を有する。
【0030】
用語“第1のリードプライマー”は、DNAテンプレートにハイブリダイズするプライマーを意味し、ペアド-エンドシークエンスのための第1のリードを生成するために用いられる。
【0031】
用語“第1のリード”は、第1のリードプライマーを用いてDNAテンプレートを配列決定することによって得られるヌクレオチド配列情報を意味する。
【0032】
用語“第1のリードシークエンシング”は、第1のリードを得るために用いられる配列決定プロセスを意味する。
【0033】
用語“第1のリード鎖”とは、第1のリードシークエンシングによって、すなわち第1のリードプライマーを伸長させることによって生成される一本鎖ポリヌクレオチドを意味する。第1のリード鎖は、伸長第1リードプライマーとも呼ばれる。第1のリード鎖は、第2の鎖を形成するためにさらに伸長することができる。
【0034】
用語“第2のリードプライマー”は、第2の鎖にハイブリダイズするプライマー、すなわち、相補的である鎖を意味する。
【0035】
用語“第2のリード”は、第2の鎖を配列決定することにより得られるヌクレオチド配列情報を意味する。
【0036】
用語“第2のリードシークエンシング”は、第2のリードを得るために用いられる配列決定工程を意味する。
【0037】
用語“第2のリード鎖”とは、第2のリードシークエンシングによって、すなわち第2のリードプライマーを伸長させることによって生成される一本鎖ポリヌクレオチドを意味する。
【0038】
用語“切除可能なヌクレオチド”は、除去することができ、該除去によりDNA鎖が2つのDNAフラグメントに切断されるDNA鎖のヌクレオチドを意味する。DNA鎖からヌクレオチドを除去する1つの例示的な方法は、酵素を介するものである。1つの例示的な切除可能なヌクレオチドはウラシルである。
【0039】
可逆性ターミネーターヌクレオチドの用語“可逆性ブロッキング基”とは、“除去可能なブロッキング基”、“ブロッキング部位”、“ブロッキング基”、“可逆性ターミネーターブロッキング基”等とも称され得る。可逆性ブロッキング基は、ヌクレオチド糖(例えば、デオキシリボース)に、通常は糖部分の3’-OHの位置で結合する化学的部分であり、その位置でのポリメラーゼによるヌクレオチドの付加を阻止するものである。可逆性ブロッキング基は、酵素(例えば、ホスファターゼまたはエステラーゼ)、化学反応、熱、光などによって切断されて、ポリメラーゼによるヌクレオチドの付加が起こり得るようにヌクレオシドまたはヌクレオチドの3’-OHの位置にヒドロキシル基を提供することができる。
【0040】
本明細書で用いる“dNTP”は、天然デオキシリボヌクレオチド三リン酸塩および3’-O開裂可能なブロッキング基を有する類縁体を含むその類縁体の両方を含む。
【0041】
用語“固体支持体”および“支持体”は互換的に用いられ、剛性(rigid)または半剛性(semi-rigid)の表面(複数可)を有する材料または材料群を意味する。マイクロアレイは、一般的に、ガラス製顕微鏡スライドのような少なくとも1つの平面的固相支持体を含む。
【0042】
本明細書で用いる、プライマー伸長反応に関する用語“同時化(synchronized)”または“同期的(synchronous)”は、同時に開始される複数のプライマーまたは複数の伸長プライマーを伸長させることを意味する。
【0043】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる、単数形“a”、“an”および“the”は、文脈から明らかにそうでないことが示されない限り、複数の意味を含む。したがって、例えば、“ポリメラーゼ(a polymerase)”への言及は、1つの薬剤またはそのような薬剤の混合物を意味し、“方法(the method)”への言及は、当業者に知られている同等の複数の工程および/または複数の方法への言及を含む。
【0044】
他に定義されない限り、本明細書で用いる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で言及される全ての刊行物は、刊行物に記載され、本明細書に記載される本発明に関連して用いられ得る装置、組成物、製剤および方法を記載および開示する目的で、引用により本明細書に包含させる。
【0045】
値の範囲が提供される場合、文脈が明らかに他に指示しない限り、その範囲の上限および下限の間の下限の単位の10分の1までの各間の値、ならびにその記載された範囲内の何れか他の記載された値またはその間の値は、本発明に包含されることが理解される。これらの小さい範囲の上限および下限は、独立して小さい範囲に含まれることも本発明内に包含され、ただし、記載された範囲内で特に除外された限界は除く。記載された範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界の両方のいずれかを除外した範囲もまた本発明に含まれる。
【0046】
本明細書で用いられる、多数の具体的な説明は、本発明をより完全に理解するために記載される。しかしながら、本発明は、これらの具体的な詳細の1以上なしに実行され得ることは、当業者には明らかである。
【0047】
本発明は、主に特定の態様を参照して説明されるが、他の態様が、本明細書を読んで当業者に明らかになることも想定され、そのような態様が本発明の方法内に含まれることが意図される。
【0048】
3.DNAテンプレート
いくつかのアプローチにおいて、本発明で用いられるDNAテンプレートは、DNAコンカテマーである。本文脈中で用いる用語“コンカテマー”または“DNAコンカマー”とは、同じDNA配列の複数コピー(“モノマー”または“サブユニット”が直列に連結されている)を含むDNA分子を意味する。DNAコンカテマーは、少なくとも2個のモノマー、少なくとも3個のモノマー、少なくとも4個のモノマー、少なくとも10個のモノマー、少なくとも25個のモノマー、少なくとも50個のモノマー、少なくとも200個のモノマー、または少なくとも500個のモノマーを含み得る。いくつかのアプローチでは、DNAコンカテマーは、25~1000個のモノマー、例えば50~800個のモノマーまたは300~600個のモノマーを含む)。
【0049】
一態様において、コンカテマーのモノマーは、1つのアダプター配列および1つの標的DNA配列を含む。モノマーは直列に連結されるため、標的DNA配列は2つのアダプター配列に隣接されることになる。いくつかのアプローチでは、モノマー中の標的DNA配列は、コンカテマー中で直列に連結された各標的配列が2つのアダプターに隣接されるように、2つの“半アダプター”配列に隣接されている。いくつかのアプローチでは、モノマー単位は、1つ、2つ、3つまたは4つ、またはそれ以上のアダプターを含む。いくつかのアプローチでは、単量体(およびコンカテマー)のアダプターのすべてが同じ配列を有する。他の態様では、アダプターは、2つ、3つまたは4つの異なる配列のような、異なる配列を有していてもよい。個々のモノマーは、2以上のDNAテンプレート配列を含み得ることが認識され得る。例示的なDNAコンカテマー構造は、米国特許第10,227,647号の表1に記載されている。
【0050】
本明細書に記載の方法で用いられるDNAコンカテマーは、DNAナノボール、または“DNB”であってもよい。本発明をいかなる形でも限定する意図はないが、DNAナノボールは、Drmanac et al., 2010, Science 327:5961, pp. 78-81、およびDrmanac et al. 米国特許第8,592,150号に記載されている。両文献の内容全体は、引用により本明細書に包含させる。
【0051】
DNAナノボール(DNB)は、直鎖状DNA構造に連結されたDNA配列の一本鎖コピーである。一般的には、DNBは、ローリングサークル複製と称されるプロセスにおいて、phi29ポリメラーゼまたはBstポリメラーゼのような鎖置換ポリメラーゼを用いて一本鎖の円形DNAをコピーすることによって製造される。ポリメラーゼは、一本鎖の円にハイブリダイズするプライマーの伸長から始まり、円にハイブリダイズする逆相補鎖を生成する。円の周りを1周すると、ポリメラーゼは新しく作った鎖を進行方向前方にずらして伸長を続ける。ポリメラーゼが鎖を円の周りに伸ばし続けると、複数の逆相補鎖が作られ、互いに直線的に結合していく。この戦略により、多くのプローブまたはプライマー結合部位を有する標的が作成され、円のサブユニットの単一コピーで得られるよりも高いシグナル強度を得ることができる。十分な長さの一本鎖DNAは、一般的に、ランダムコイルを形成し、溶液中(例えば、室温のSSC緩衝液中)でほぼ球状の体積を満たす。いくつかのアプローチでは、DNAナノボールは、一般的には、約100~300nmの直径を有する。一般的には、各モノマーは、少なくとも1つの標的DNA配列を含む。
【0052】
DNAコンカテマー(DNAナノボールを含む)は、何れかの適切な方法によって製造することができる。1つのアプローチでは、単一のゲノムフラグメントを用いて、ゲノム内で連続する、または近接する標的配列間に介在するアダプターを有する一本鎖円形DNAを生成する。円形DNA構築物は、例えば、ローリングサークル複製によって、またはモノマー同士のライゲーションによって、酵素的に増幅されてもよい。例示であって限定するものではないが、DNAナノボールは、米国特許第8,445,194号および米国特許第8,592,150号に記載された方法に従って調製することができる。
【0053】
ローリングサークル複製によるDNAの増幅には、いくつかの利点がある。1)増幅は直線的であり、変異したコピーが元のテンプレート配列を過剰に提示することを防ぐ、2)全てのコピーが1つの単一分子に局在しているため、蛍光プローブまたはレポーターによる顕微鏡分析に最適である、および3)円の複製は等温条件で進行することができ、自動化が容易である。
【0054】
標的DNAは、天然配列(ゲノムDNA、cDNA、ミトコンドリアDNA、無細胞DNAなど)、人工配列(例えば、合成配列、遺伝子シャッフリングまたは分子進化の産物など)またはそれらの組合せを含む何れかの源由来であってよい。標的DNAは、生物または細胞(例えば、植物、動物、ウイルス、細菌、真菌、ヒト、哺乳動物、昆虫)、法医学的起源(forensic source)などに由来していてもよい。標的DNA配列は、腸内細菌の集団のような生物の集団から得てもよい。標的DNA配列は、サンプルから直接得てもよいか、または増幅反応、断片化反応等の産物であってもよい。
【0055】
標的DNAは、長さ50~600ヌクレオチドのような特定のサイズ範囲内の長さを有していてもよい。他の例示的なサイズ範囲には、長さが25~2000ヌクレオチド長、50~1000ヌクレオチド長、100~600ヌクレオチド長、50~100ヌクレオチド長、100~300ヌクレオチド長および100~400ヌクレオチド長が含まれる。2つまたはそれ以上の異なる標的DNAを有するDNAテンプレートポリヌクレオチドにおいて、標的DNAは、同じ長さであってよいか、または異なる長さであってもよい。DNAテンプレートポリヌクレオチドのライブラリーにおいて、ライブラリーメンバーは、あるアプローチでは、同様の長さ(例えば、すべて25~2000ヌクレオチド長の範囲、または別の範囲)を有していてもよい。
【0056】
1つのアプローチでは、標的DNAは、より大きなDNA源(例えば、ゲノムDNA)を断片化して、所望のサイズ範囲のフラグメントを生成することによって調製され得る。あるアプローチでは、サイズ選択工程は、特定のサイズ範囲内のフラグメントプールを得るために用いられる。
【0057】
本明細書に記載のDNAテンプレートは、2以上のアダプター配列を含み得る。アダプターは、DNAテンプレートポリヌクレオチドを基質上に固定化するための要素、配列決定において用いられるオリゴヌクレオチドを結合するための要素(例えば、合成方法による配列決定において伸長されるプライマーの結合部位および/またはcPALもしくは他のライゲーションに基づく配列決定方法用のプローブ等)、または固定化およびシークエンシング用の両要素を含み得る。アダプターは、これに限定されないが、制限エンドヌクレアーゼ認識部位、伸長プライマーハイブリダイゼーション部位(分析における使用のため)、バーコード配列、固有の分子識別子配列、およびポリメラーゼ認識配列などのさらなる特徴を含んでいてもよい。
【0058】
アダプター配列は、特定の配列決定プラットフォームおよび意図された使用に適した長さ、構造および他の特性を有し得る。例えば、アダプターは、一本鎖、二本鎖または部分的に二本鎖であってもよく、意図された使用に適した長さであってよい。例えば、アダプターは、10~200ヌクレオチド長、20~100ヌクレオチド長、40~100ヌクレオチド長または50~80ヌクレオチド長の範囲の長さを有していてもよい。いくつかのアプローチでは、アダプターは、塩基、糖および/またはリン酸部分への修飾を含む1以上の修飾ヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0059】
ライブラリーの異なるメンバーは、一般的には共通のアダプター配列を含むが、ライブラリー中の異なる種または亜属は、亜属特異的バーコードのような固有の特徴を有し得ることは、当業者には理解され得る。
【0060】
個々のアダプター配列は、機能的に異なる複数の部分配列を含み得る。例えば、本明細書中で詳細に記載されるように、単一のアダプター配列は、2つまたはそれ以上のプライマー配列(これらは、異なる相補的なプライマーまたはプローブによって認識され得る)を含み得る。アダプター内の機能的に異なる配列は、重複してもよいか、または重複しなくてもよい。例示のために、40塩基長のアダプターを考慮すると、一態様では、塩基1~20は第1のプライマー結合部位であり、塩基21~40は第2のプライマー結合部位である。異なる態様において、塩基1~15は、第1のプライマー結合部位であり、塩基21~40は、第2のプライマー結合部位である。異なる態様において、塩基5~25は、第1のプライマー結合部位であり、塩基15~35は、第2のプライマー結合部位である。同様に、40塩基長のアダプターが与えられると、塩基1~20は固定配列であってよく、塩基21~40はプライマー結合部位であり得る。DNAテンプレートポリヌクレオチドの同じかまたは異なるアダプター中の異なるプライマー配列は、同じまたは異なる長さを有し得る。
【0061】
アダプター(例えば、第1のアダプター、第2のアダプター、第3のアダプターなど)は、1つ、2つまたは3以上のプライマー結合配列から構成されていてもよい。プライマー結合配列は、プライマー(またはオリゴヌクレオチド)が特異的に結合する部位または配列として機能的に定義される。例えば、2つのプライマー結合配列を有するアダプターは、2つの異なるプライマーによって特異的に結合され得る。あるアプローチでは、同じアダプターにおける2つのプライマー結合配列は、重複している、すなわち、ヌクレオチド配列の一部を共有している。あるアプローチでは、重複領域は、2つの重複プライマー配列のいずれかの50%、または40%、または30%、または20%、または10%、または5%を超えない範囲である。あるアプローチでは、2以上のプライマー結合配列は、重複していない。あるアプローチでは、重複していないプライマー配列は互いにすぐ隣接している。いくつかの他の態様では、重複していないプライマー配列は1~10ヌクレオチド、10~20ヌクレオチド、30~40ヌクレオチドまたは40~50ヌクレオチドで分離されている。
【0062】
所定のDNAテンプレートポリヌクレオチド内で、異なるアダプターは、同じ配列または異なる配列を有してよいか、または同じプライマー結合配列または異なるプライマー配列を有してよいことは明らかであり得る。本発明を説明するために特定の図面(例えば、図1)が提供されるが、同様のクロスハッチング(cross-hatching)等を用いたアダプターの提示は、配列同一性を示すものとして構成されるべきではない。
【0063】
4.プライマー
本明細書に記載の方法で用いられるプライマーは、プライマーのハイブリダイゼーションを可能にするのに十分な長さであり、正確な長さおよび配列は、プライマーの意図する機能(例えば、伸長プライマー、インデックス配列など)によって変わる。プライマー配列は、しばしば、少なくとも10塩基長、少なくとも12塩基長、少なくとも15塩基長または少なくとも18塩基長である。いくつかの態様では、プライマー配列は、8~60ヌクレオチド長、例えば10~25ヌクレオチド長または40~60ヌクレオチド長の範囲にある長さを有する。本発明で用いるためのプライマーを選択または設計することは、当業者の能力の範囲内であり得る。
【0064】
プライマーおよびプローブは、それがハイブリダイズするアダプター中のプライマー結合配列に完全にまたは部分的に相補的であってよいことが理解され得る。例えば、プライマーは、それがハイブリダイズする配列に対して少なくとも85%、90%、95%または100%の配列同一性を有していてもよい。
【0065】
プライマーはまた、アダプター中のプライマー結合配列と相補的でない追加の配列をプライマーの5’末端に含んでいてもよい。プライマーの非相補的部分は、プライマーとそのプライマー結合配列の間のハイブリダイゼーションを妨害しない長さであってよい。一般に、非相補的部分は、1~100ヌクレオチド長である。ある態様において、非相補的部分は、4~8ヌクレオチド長である。プライマーは、DNA部分および/またはRNA部分を含んでいてもよく、いくつかのアプローチにおいて、本発明で用いられるプライマーは、塩基、糖および/またはリン酸部分への修飾を含む1以上の修飾ヌクレオチドを有していてもよい。
【0066】
“配列決定オリゴヌクレオチド”または“配列決定プライマー”は、合成反応による配列決定(“伸長による配列決定”とも呼ばれる)において用いられる伸長プライマーであり得る。“シークエンシングオリゴヌクレオチド”は、すべての目的のために引用により本明細書に包含される米国特許公開第20140213461号に記載の“コンビナトリアルプローブ-アンカーライゲーション反応”(cPAL)(シングル、ダブルおよびマルチプルcPALを含む)等のシークエンシング-バイ-ライゲーション法において用いられるオリゴヌクレオチドであり得る。
【0067】
ある場合において、伸長プライマーはまた、配列決定プライマー、例えば、第1のリードプライマーおよび第2のリードプライマーとしても用いられる。ある場合において、伸長プライマーはまた、プライマー伸長反応の生成物、例えば、さらに伸長され得る第1のリード鎖であり得る。第1のリードプライマーは、DNAコンカテマーにハイブリダイズし、第1のリードを生成するために伸長され、第1のリード鎖を形成するシークエンシングプライマーである。上記のとおり、ある場合において、第1のリード鎖は、伸長プライマーとして機能し、第2の鎖を生成するために伸長される。ある場合において、MDAプライマーと呼ばれる追加の伸長プライマーは、DNAコンカテマーにハイブリダイズするために用いられ、置換-伸長反応において第2の鎖を生成するために伸長される。ある態様において、MDAプライマーおよび第1のリードプライマーは、異なる配列を有する。ある態様では、MDAプライマーは、第1のリードプライマーの上流のDNAコンカテマーにハイブリダイズし得る、すなわち、MDAプライマーは、第1のリードプライマーに対して5’に位置する。ある態様では、1以上のMDAプライマーおよび第1のリードプライマーは、DNAコンカテマーのモノマーの同じアダプターに結合し、1以上のMDAプライマーは、第1のリードプライマーに対して5’に位置する。ある態様において、MDAプライマーは、ランダムプライマーを含む。ある態様において、過剰なランダムプライマー(すなわち、DNAコンカテマーにハイブリダイズしないランダムプライマー)は、MDAが開始される前に(例えば、アレイを洗浄することによって)除去され、過剰なランダムプライマーが第2の鎖に結合してプライミングするのを回避することができる。
【0068】
いくつかの場合、方法において用いられるプライマー(例えば、第1のリードプライマー、第1のリード鎖またはMDAプライマー)は、切除可能なヌクレオチドを含み得、これらのプライマーは、切除可能なヌクレオチドの位置で切断され、新たな伸長可能な3-プライム末端を形成することができる。このような切断により、切除可能なヌクレオチドが放出される。ある場合には、これらの切除可能なヌクレオチドは、A、G、TまたはCのいずれか以外の核酸塩基である。あるいは、またはさらに、これらの切除可能なヌクレオチドは、シークエンシング反応中に所望の間隔で組み込むことができる。切除可能なヌクレオチドは、DNA鎖から切除されて除去され、伸長に利用可能な3-プライム露出末端を生成する能力について選択される。この方法で用いられ得る例示的な切除可能なヌクレオチドはウラシルであり、伸長反応中にチミジンの代わりに取り込まれることができる。一本鎖DNAに組み込まれたウラシルは、ウラシル特異的切除試薬、例えばUSER(商標)で認識され得る。USER(商標)は、ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)およびDNAグリコシラーゼ-リーゼ エンドヌクレアーゼVIIIの混合物からなり、これらが共に、まず脱塩基部位(脱塩基部位)を形成するウラシルの切除を触媒し、次に脱塩基部位のリン酸ジエステル結合を切断して一本鎖DNAに切断を生じさせ、ウラシルを放出させる。Bitinaite et al., USERTM friendly DNA engineering and cloning method by uracil excision, Nucleic Acids Research, Vol. 35, Issue 6, 15 March 2007, pp 1992-2002を参照のこと。これらの切除可能なヌクレオチドを含むプライマーは、まずDNAテンプレートに結合され、次いで切除可能なヌクレオチドが現れる位置で切断されて、複数の第2の鎖の同時伸長を可能にする。
【0069】
ある場合には、1以上のMDAプライマーは、その3’末端にブロッキング基を含み、これが伸長するのを阻止する。DNBあたりの独立して置換された(displaced)鎖の性質および密度を制御するために、3’ブロックされたプライマーの数を制御することができる。ある態様において、3’伸長可能なプライマーの数は、ハイブリダイゼーション中にプライマーを適切な濃度に維持することによって制御される。ある態様において、3’伸長可能なプライマーの数は、3’伸長可能なプライマーおよび3’ブロックされたプライマーを適切な比率で混合することにより制御される。
【0070】
ある場合において、本明細書に記載のる方法において用いられる伸長プライマー(すなわち、MDAプライマー)は、それらの3’末端に可逆性ブロッキング基を含んでいてよく、これらの伸長プライマーは、ブロッキング基が除去されるときにのみ伸長される。ある態様において、1以上のMDAプライマーは、第1のリードプライマーの上流でDNAテンプレートに結合し、第1のリードが生成された後、MDAプライマーの可逆性ブロッキング基が除去されて、MDAプライマーからの複数の第2の鎖の伸長開始を可能にする。図2を参照のこと。ある態様において、MDAプライマーのブロッキング基が第1のリードシークエンシング中を通して残るように、MDAプライマーの3’の可逆的ブロッキング基は、配列決定の各サイクル中に第1のリードプライマーに付加されるブロッキング基とは異なる条件下で除去され得る。ある態様において、MDAプライマーの3’の可逆的ブロッキング基は、MDAプライマーのブロッキング基が第1のリードシークエンシングを通して残るように、配列決定の各サイクル中に第1のリードプライマーに付加されたヌクレオチドのブロッキング基とは異なる。ある場合には、3’ブロッキング基は3’リン酸塩であり、これはホスファターゼによって除去され得る。
【0071】
本明細書に記載の方法において、第2の鎖の生成は、DNAテンプレート、例えば、DNAコンカテマーの逆相補体である配列を含むプライマーをハイブリダイズすることによって開始される。ある場合において、プライマーは、DNAコンカテマーのモノマーのアダプターにハイブリダイズする。ある場合には、第2の鎖合成はまた、ランダムなオリゴヌクレオチドの伸長から、すなわち、ランダムなヌクレオチド配列を有するMDAプライマーを用いて開始され得る。このアプローチでは、多様なプライマーセットが、配列されたDNAコンカテマーにハイブリダイズするために用いられ得る。いくつかのアプローチでは、これらの配列は、長さが5~10塩基、例えば6~10塩基、または5~8塩基のランダムな配列のオリゴヌクレオチドである。ランダムプール内の個々の配列は、DNAコンカテマー内の相補的な配列にハイブリダイズし得る。
【0072】
4.1.プライマーの結合
ある面において、上記の方法および組成物において用いられるプライマー(例えば、第1のリードプライマーまたはMDAプライマー、またはその両方)は、結合された対を形成するように結合される。用語“結合(link)”は、2つの核酸分子が一体とされる、非共有結合および共有結合の相互作用の両方を意味する。ある場合において、連結は、DNAハイブリダイゼーション、化学結合、またはその両方を介して行われる。これらの結合されたプライマーの対は、DNAコンカテマーの連続するまたは非連続のモノマーを結合し、それによってDNAコンカテマーを安定化させることができる。
【0073】
プライマーは、様々な手段を介して結合され得る。ある態様において、それらは化学結合を介して連結される。ある態様において、2つのプライマーは、該プライマーの各々に1つずつある2つの相補的配列(“ハイブリダイゼーション配列”と称される)間のハイブリダイゼーションを介して連結される。ある態様において、ハイブリダイゼーション配列は、非パリンドローム配列である。ある態様において、ハイブリダイゼーション配列は、パリンドローム配列であり、すなわち、配列の一方の半分が配列の他方の半分に相補的である、配列である。プライマーを連結するための方法および結合されたプライマーの組成物は、PCT出願PCT/CN2020/124338に記載されており、その内容全体は、あらゆる目的のために引用により本明細書中に包含される。
【0074】
ハイブリダイゼーション配列の長さは、変化してもよい。ハイブリダイゼーション配列の長さは、ステープラー配列のTmが50℃から72℃の間であるように選択される。これは、結合されたプライマー対がアッセイ法を通してハイブリダイズしたままであり得ることを確実にする。ある態様において、ハイブリダイゼーション配列の長さは、20から150ヌクレオチド、例えば、40から120ヌクレオチド、50から100ヌクレオチドの範囲であり得る。
【0075】
ある態様において、ハイブリダイゼーション配列は、DNAテンプレートに相補的であるプライマー上の配列に対して5’である。
【0076】
5.第1のリードの生成
上記の通り、ある態様において、第1のリードプライマーは、配列決定プライマーとして機能し、第1のリードを生成することによって、DNAテンプレートの配列を決定するために用いられる。第1のリードプライマーはそれ自体、第2の鎖の一部であり、第1のリードプライマーをヌクレオチドで伸長することにより、第2の鎖の多くをさらに生成する。ヌクレオチドによる伸長は、ヌクレオチドの修飾によって1つのヌクレオチドのみを付加することができ、その後、A、C、GおよびT塩基のセットから修飾ヌクレオチドを検出して付加したヌクレオチドを同定するように行われる。例えば、付加される1つのヌクレオチドは、A、C、GまたはTの3’-OH位置に3’-O-ブロッキング基、例えば、3’-O-アジ化メチル基を含んでいてもよい。一連の配列決定サイクルで次の塩基を決定するために、修飾ヌクレオチドを伸長可能な形に変え、別のサイクルで別の塩基を付加して配列を決定する。このような配列決定法では、伸長した第1の鎖プライマーは、各ラウンドのヌクレオチド付加のプライマーとして機能する。配列決定のためのヌクレオチド付加の最終サイクルの後、伸長した第1のリードプライマー(“第1のリード鎖”とも称される)は、ブロックされず、その後、第1のリード鎖の生成に用いたポリメラーゼと同一または異なるポリメラーゼを用いてさらに伸長される。最初のリードプライマーの伸長は、鎖置換活性を有するポリメラーゼ、鎖置換活性を欠くポリメラーゼ、またはポリメラーゼの混合物を含む何れかのDNAポリメラーゼにより実行され得る。いくつかのアプローチでは、DNAポリメラーゼは、鎖置換活性を有しないか、またはほとんど有しないもの、例えば、BG9 DNAポリメラーゼである。
【0077】
6.制御されたMDA
ある態様において、第1のリード鎖をDNAコンカテマーから分離してアレイから除去し、新しい伸長プライマーをMDAで追加して伸長させる。ある態様において、第1のリード鎖の末端ヌクレオチドの3’ブロッキング基(第1のリードシークエンシングの最終サイクルで付加される)が除去され、これらの第1のリード鎖がMDAにおいて伸長プライマーとして用いられる。本明細書に記載のMDA法は、第2の鎖がDNAコンカテマーに部分的にハイブリダイズしたまま、すなわち、第2の鎖がDNAテンプレートにハイブリダイズする配列を介してDNAテンプレートに結合したままであるように制御される。第2の鎖はまた、第2のリードプライマーのためのプライマー結合部位を含む一本鎖分枝も含む。第2のリードプライマーは、第2のリードを生成するための配列決定プライマーとして機能し得る。
【0078】
一つの例示的な例を図1に示す。第1のリードプライマーは、DNAコンカテマーにアニールされ、第1のリードを生成するために伸長される。第1のリードシークエンシングにより、第1のリード鎖が生成される。次に、鎖置換活性を有するポリメラーゼで第1のリード鎖を伸長して、複数の第2の鎖を生成することにより、制御されたMDAが実行される。各第2の鎖は、コンカテマーにハイブリダイズする配列と、ハイブリダイズしていない一本鎖分枝を含む。次いで、複数の第2の鎖の一本鎖分枝に第2のリードプライマー(1)をハイブリダイズさせ、伸長させて第2のリードを生成する。
【0079】
6.1.鎖置換型DNAポリメラーゼ
本方法におけるMDAは、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼを必要とする。1つのアプローチにおいて、本発明は、強い5’→3’鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼを用いる。好ましくは、ポリメラーゼは5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有しない。しかしながら、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼは、その活性が本発明の方法の実行を妨げない場合、例えば、エキソヌクレアーゼ活性を阻害する反応条件を用いることにより使用することができる。1つのアプローチにおいて、ポリメラーゼはPhi29ポリメラーゼである。Phi29ポリメラーゼは、中程度の温度(例えば、20~37℃)で強い置換活性を有する。あるアプローチでは、Bst DNAポリメラーゼ、ラージフラグメント(Large Fragment)(例えば、NEB #MO275, New England BioLabs, Ipswich, MAから入手可能)が用いられる。Bst DNAポリメラーゼは、高温(~65℃)で活性である。1つのアプローチにおいて、ポリメラーゼは、Deep-VentR DNAポリメラーゼ(例えば、NEB#MO258)である(Hommelsheim et al., Scientific Reports 4:5052 (2014))。
【0080】
鎖置換ポリメラーゼに加えて、他の鎖置換機構を用いて、鎖変性剤または一般にTm低下試薬と呼ばれる融解温度を下げることができる試薬(例えば、ホルムアミド、ベタイン、プロリン、1,2-プロパンジオールおよびトレハロース)を用いて、ヘリカーゼ酵素などの鎖置換を補助することができる。鎖の融解を促進し、ポリメラーゼの伸長を補助するために、反応の温度もまた調整され得る。ある場合には、温度は、25℃~40℃、例えば28℃~35℃、または約30℃の範囲で変化し得る。
【0081】
本明細書中のペアド-エンドシークエンシングは、第2の鎖の少なくともいくつかが、DNAテンプレートに部分的にハイブリダイズしたままであることを必要とする。これにより、第2の鎖の配列決定から生成された配列リードを第1の鎖と対にして、DNAテンプレートの配列情報を構築することができる。すなわち、第2の鎖が第1の鎖から解離するような完全な置換は、避けるか、または最小限に抑える必要がある。これは、適切な重合速度または他の特性を有するポリメラーゼ(複数可)を選択し、反応温度、反応時間、プライマー組成、DNAポリメラーゼ、プライマーおよびヌクレオチド濃度、添加剤および緩衝液組成物など(ただし、これに限定されない)の種々の反応パラメーターを用いて、反応の進行を制御することにより達成することができる。最適条件は経験的に決定することができる。
【0082】
伸長-置換反応を制御して完全な置換を回避するための1つのアプローチは、第2の鎖を生成するために適切な鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼを用いることである。Phi29、Bst DNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント(Klenow fragment)およびDeep-Vent(登録商標) DNAポリメラーゼなどのDNAポリメラーゼは、鎖置換活性の強さが異なることが知られている。Kornberg and Baker (1992, DNA Replication, Second Edition, pp.113-225, Freeman, N.Y.)を参照のこと。本発明に適するDNAポリメラーゼを選択することは、当業者の能力の範囲内である。
【0083】
別のアプローチにおいて、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼの適切な濃度、またはdNTPの適切な濃度、または第2のプライマーの適切な濃度を用いることにより、伸長-置換反応を制御して完全な置換を回避することができる。
【0084】
ある態様において、伸長プライマーおよびテンプレートDNA間の二重鎖形成に影響を与える薬剤、例えばDMSO(例えば、1%~2%)、ベタイン(例えば、0.5M)、グリセロール(例えば、10%~20%)、T4ファージ由来のGene 32一本鎖DNA結合タンパク質(T4 G32 SSB)(例えば、10~20ng/ul)、および体積排除剤(volume exclusion agent)等を反応緩衝液中に含ませることにより伸長反応を制御する。
【0085】
また、反応温度は、重合および鎖置換の適切な速度を可能にするように選択できる。より高温は、一般的には、より高頻度の鎖置換をもたらす。ある態様において、反応温度は、完全な置換を避けるために、20℃~37℃の範囲内、例えば、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃または37℃に維持される。
【0086】
いくつかのアプローチにおいて、伸長反応は、従来の(伸長可能な)プライマーおよび伸長可能でないプライマー、すなわち3’末端ブロックされたプライマーの混合物を用いることによって制御される。ある態様において、伸長可能でないプライマーは、DNAポリメラーゼによる重合を阻止する化学的ブロッキング基を介して伸長を阻止する。これら2つの異なるプライマーを異なる比率で混合することにより、新たに合成された相補的DNA鎖の二重鎖(ハイブリッド化)部分(継続フラグメント)の長さが制御され得る。例えば、1つのアプローチでは、50~70%が伸長できず(“ブロックされた”)、30~50%が伸長可能(“ブロックされていない”)である第1のプライマーの混合物が用いられる。多くの種類の伸長できないプライマーが当技術分野で知られており、本発明に適し得る。
【0087】
6.2.複数の第2の鎖の生成の同期化
ある鎖は部分的にハイブリッド化されているが、他の鎖は完全に置換されており、さらに他の鎖は十分に伸長されていないというシナリオを回避するために、複数の第2の鎖の伸長および置換を同期させることが望ましい。同期化は様々なアプローチで実行可能である。
【0088】
6.2.1ニ段階の第2の鎖生成
二段階第2の鎖生成のアプローチにおいて、該第2の鎖は二段階で調製することができる。最初の反応ステップは、反応中に遊離DNAポリメラーゼ分子が存在するように、高濃度の鎖置換型DNAポリメラーゼでMDAを行うことを含む。本明細書で用いる“遊離ポリメラーゼ”または“遊離ポリメラーゼ分子”は、アレイ上のDNAコンカテマーに結合しておらず、溶液中に残っている、DNAポリメラーゼ分子を意味する。ある態様において、DNAポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ分子の数がアレイ上のDNAコンカテマー中のアダプターの数よりも多く、アレイに結合していない遊離DNAポリメラーゼが存在するように、高濃度である。この方法に適するDNAポリメラーゼの濃度は、当業者であれば経験的に決定することができる。第1の反応工程は、1~15分、例えば、1~3分または2~5分または3~10分間継続してもよい。第2工程は、未結合酵素および未組み込みヌクレオチドを含む反応成分の除去、および何れかのDNAポリメラーゼを除く新鮮な緩衝液および反応成分の添加を含み、MDA反応の継続を可能にする。これらのアプローチでは、強い結合作用を示すポリメラーゼは伸長鎖に結合したままであり、遊離ポリメラーゼは第1工程のインキュベーション後に除去され得る。この二段階の反応プロセスにより、遊離ポリメラーゼと新しく形成された第2の鎖との相互作用、および遊離ポリメラーゼと第1の鎖との相互作用を最初の結合期間を超えて最小限に抑え、ポリメラーゼによる第2の鎖プライマーの伸長を同期させやすくすることができる。図3を参照のこと。
【0089】
6.2.2.改変された2工程の第2の鎖の生成
改変された二段階の第2の鎖の生成アプローチにおいて、第1のリードシークエンシングが完了した後、高濃度のポリメラーゼを用いて、最初の期間の間、伸長阻止条件下でプライマー(すなわち、MDAプライマーまたは第1のリード鎖)およびDNAコンカテマーに結合させる。“伸長阻止条件”とは、ポリメラーゼによるプライマーの伸長よりも、ポリメラーゼのテンプレートへの結合を有利にする条件である。ある態様において、伸長阻止条件とは、プライマー伸長を実行できない条件を意味する。改変された二段階の第2の鎖の生成アプローチの下でのこの最初の工程は、DNAテンプレートおよびプライマーへのDNAポリメラーゼの結合を最大化する。次いで、伸長阻止条件を逆転させて、プライマーの同期的な伸長を可能にする。
【0090】
伸長阻止条件は、反応からヌクレオチドまたはマグネシウムを除去することによって、反応にEDTAなどの阻害剤を加えることによって、またはその両方によって形成することができる。EDTAの濃度は、0.5mM~5mM、例えば0.8mM~4mM、1mM~3mMの範囲または約1mMで変動してもよい。したがって、ある態様において、伸長阻止条件は、MDAが起こり得ないように、個々のヌクレオチドもしくはマグネシウム、またはその両方を含まない反応バッファーを含む。ある態様において、伸長条件は、3’でブロックされるプライマーを用いることを含む。用語“遊離”または“本質的に遊離”とは、反応混合物中のマグネシウム濃度またはヌクレオチド濃度が、伸長反応に必要なマグネシウムの濃度またはヌクレオチドの濃度の10%未満、5%未満、3%未満、2%未満、1%未満であることを意味する。マグネシウムを含まないバッファーとは、マグネシウム不含有バッファーとも呼ばれる。また、未組み込みのヌクレオチドを含まないバッファーは、ヌクレオチド不含有バッファーとも呼ばれる。ある場合において、伸長阻止条件は、0.2mM未満、0.1mM未満、0.05mM未満、0.02mM未満、0.01mM未満、または0.005mM未満のマグネシウムを含む反応バッファーを含む。ある場合において、ヌクレオチドの各タイプ(A、T、CまたはG)の濃度は、0.02mM未満、0.01mM未満、0.005mM未満、または0.001mM未満とする。最初の反応温度の低下は、結合事象および伸長事象の比率を変更するために用いることもできる。結合は、1~5分または2~10分などの最初の期間、伸長中に促進され得る。その後、さらに10-20分、20-30分、30-60分と伸長を続けることもできる。この二段階プロセスにより、複数の第2の鎖の生成を同期化することができる。
【0091】
本方法の1つの例示的な態様を図4に示す。DNAコンカテマー上にハイブリダイズした第1のリードプライマーを伸長させて第1のリードを得た後、鎖置換型DNAポリメラーゼを、第1のリード鎖(および/またはMDAプライマー)に結合するが第1のリード鎖を伸長しないように伸長阻止条件でアレイに接触させて、制御されたMDAを実行する。アレイを伸長阻止条件下に置く最初の期間の後、伸長阻止条件を逆転させ、第1のリード鎖および/またはMDAプライマーを同期的に伸長させて、複数の第2の鎖を生成させる。
【0092】
6.2.3.改変プライマーを用いる第2の鎖の生成
上記のように、チミジンの代わりにウラシルを含むような改変された第1のリードプライマー(および/またはMDAプライマー)を用いることも、第2の鎖の生成の同期化を促進できる。ある場合には、ウラシルを含むヌクレオチド混合物の存在下で第1の鎖プライマーを伸長させると、様々な位置でチミジンの代わりにウラシルを含む修飾された第1の鎖プライマーが生成される。これらの修飾された第1の鎖プライマーまたは伸長された第1の鎖プライマーは、次に、複数の第2の鎖を同時に伸長することを可能にするために切断される。
【0093】
このアプローチの1つの例示的な例を図5に示し、ここで、第1のリードプライマーを伸長することにより生成される第1のリード鎖は、切断可能なヌクレオチドを含む。第1のリードプライマーは、切除可能なヌクレオチドの位置で切断されて、伸長可能な3’末端を有するフラグメントを生成する。各フラグメントは、プライマーとして用いられ、制御されたMDAによって複数の第2の鎖が生成される。各第2の鎖は、複数のDNAコンカテマーのうちの1つにハイブリダイズする配列と、ハイブリダイズしない一本鎖分枝を含む。第2のリードプライマー(1)は、第2のリードシークエンシングにおいて、第2の鎖にハイブリダイズして伸長される。
【0094】
6.2.4.追加のMDAプライマーを用いる第2の鎖の生成
ある態様において、より多くの第2の鎖を生成するために、追加のMDAプライマーをMDA工程に加える。これらのMDAプライマーは、ハイブリッド構造でない(一本鎖)DNAコンカテマーの領域に結合し、したがって、追加されたプライマーの結合部位として機能し得る。これらのMDAプライマーは、第1のリード鎖と同様に伸長され、合わせて複数の第2のリード鎖を生成する。これらのMDAプライマーを導入することにより、鎖の生成を増加させ、したがって、配列決定データの量を増加させ得る。ある態様において、これらのMDAプライマーは、第1のリードプライマーが導入されるとき同時に導入され、MDAプライマーは、第1のリードプライマーの上流にハイブリダイズされる。図2を参照のこと。これらの態様で用いられるMDAプライマーは、一般的には、第1のリードシークエンシング工程中に伸長しないように、可逆的な3’ブロッキング基を含む。第1のリードシークエンシングの完了後、3’ブロッキング基はMDAプライマーから除去され、これらのMDAプライマーを用いる制御されたMDAを可能にする。
【0095】
使用に適した可逆的なブロッキング基は、当技術分野で知られている。ある態様において、好適なブロッキング基は、化学的処理または酵素的処理によって除去され得るものであり、該処理によって3’-OH基が生成されるものである。化学的処理は、テンプレートまたはプライマー伸長鎖を著しく劣化させないことが好ましい。可逆的ターミネーターの3’ブロッキング基については、3’-O-アリル基(Ju et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103: 19635-19640, 2006)、3’-O-アジ化メチル-dNTP(Guo et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 105, 9145-9150, 2008)、アミノアルコキシル基(Hutter et al., Nucleosides, Nucleotides and Nucleic Acids, 29:879-895, 2010)、3’-O-(2-シアノエチル)基(Knapp et al., Chem. Eur. J., 17, 2903-2915, 2011)等が記載されている。例示的なRTブロッキング基としては、-O-アジ化メチルおよび-O-シアノエテニルが挙げられる。使用することができる可逆的ブロッキング基の限定されない例は、PCT/US2018/012425に開示されており、関連部分はその全体が引用により本明細書に包含される。
【0096】
ある態様において、本明細書に記載の方法は、第2の鎖の生成およびペアド-エンドシークエンシングプロセスの効率を改善するために、上記の特徴の1以上を採用する。
【0097】
7.配列決定
DNAテンプレートの配列は、第1の鎖(DNAテンプレート)の配列決定から生成された配列リードおよび第2の鎖の配列決定から生成された配列リードを組み合わせることにより決定することができる。上記の通り、第1の鎖の配列決定は、第1の鎖プライマーが伸長されている間、すなわち、伸長された第2の鎖に相補的である第1の鎖の部分の配列が決定され得るように、伸長された第1の鎖プライマーに組み込まれた各ヌクレオチドが決定される間に実行され得る。第2の鎖を配列決定することは、DNAコンカテマーのモノマーのアダプターの少なくとも一部に相補的な第2の鎖中の配列に配列決定オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせ(例えば、図1中の“(1)”)、第2の鎖の分枝のヌクレオチド配列を決定することを含み得る。ある態様において、第2の鎖の分枝は、第2のリードプライマーを伸長させることによって配列決定される。第2の鎖を配列決定することから生成された配列リードは、DNAテンプレートを配列決定することから生成された配列リードと対になって、標的DNA配列の全体を決定する。
【0098】
上記のプライマーのいずれもが、配列決定オリゴヌクレオチドとして使用できることが理解され得る。
【0099】
第1の鎖および第2の鎖の配列を決定するために、何れかの適切な配列決定方法、例えば、SBS、パイロシーケンシング(pyrosequencing)、ライゲーションによる配列決定、およびその他の方法を用い得る。いくつかのアプローチでは、1以上の配列決定法が用いられる。例えば、DNAテンプレート鎖は、1つの方法(例えば、SBS)を用いて配列決定され、第2の鎖は、異なる方法(例えば、cPAL)を用いて配列決定されてもよい。1つのアプローチでは、配列決定は親和性試薬を用いて行われ、例えば、米国特許第10,851,440号に記載のように行われ、その内容は引用により本明細書に包含させる。
【0100】
いくつかのアプローチでは、第1のリードシークエンシングは、合成による配列決定によって行われる。いくつかのアプローチでは、第2のリード配列決定は、プライマー伸長(例えば、合成反応による配列決定)のためのプライマーとして複数の第2のリードプライマーを用いて行われるか、そのようなプライマーの伸長生成物であるか、ライゲーションによる配列決定のためのアンカーとして作用できるオリゴヌクレオチドであるか、またはそのようなオリゴヌクレオチドとラベル付きプローブ(例えば、ラベル付きcPALプローブ)とのライゲーション生成物である。1つのアプローチにおいて、第2のプライマーは、アダプター配列に相補的な部分を含み、第2の鎖を配列決定するために伸長され得る。
【0101】
SBSは、配列決定反応工程中に鎖伸長を行うために、DNAポリメラーゼ活性に依存し得る。SBSは、当技術分野でよく知られている。例えば、米国特許第6,787,308号および同第8,241,573B2号を参照のこと。DNAナノボール上の配列決定は、様々なプロセスを通して行われ得る。1つのアプローチでは、DNBを生成するために用いられるサークルは、既知の配列のDNA領域(アダプター)と決定されるべき未知の同一性の隣接配列を用いて調製される。アダプターは、伸長にポリメラーゼが使用される場合、プライマーの伸長により、“未知”のまたは“決定されるべき”領域にヌクレオチドが付加されるようなプライマーハイブリダイゼーション部位を提供する。ヌクレオチドは、3’位置で可逆的にブロックされた場合、一度に1位置ずつ付加され、DNBの塩基位置と相補的である。3’ブロック基を除去した後、次のサイクルでさらに別の位置を読み取ることができる。塩基の種類に特徴的な蛍光物質が組み込まれた塩基の検出に用いられるため、DNBのその位置の塩基が明らかになる。
【0102】
あるいは、ライゲーションによる配列決定も使用できる。プライマーまたはアンカーは、未知の配列に伸長する蛍光オリゴヌクレオチドをライゲーションすることによって伸長させ得る。この配列決定法では、塩基が縮重した蛍光オリゴヌクレオチドが開始アンカーにライゲーションされるが、オリゴヌクレオチドの1塩基は定義されており、蛍光部分と結合している。アンカーへのオリゴプローブのライゲーションは、過剰なプローブを洗浄した後に安定した蛍光を生じ、定義された塩基がDNBの同じ位置の塩基と相補的であることの認識によって変わる。ライゲーションによる配列決定は、例えば、Shendure et al., 2005, Science, 309: 1728-1739に記載されている。
【0103】
他の配列決定法、例えば、パイロシーケンシング(例えば、Ronaghi et al., Anal. Biochem. (1996) 242:84-89)およびハイブリダイゼーションによる配列決定(例えば、Drmanac et al, Advances in Biochemical Engineering/Biotechnology (2002) 77: 75-101を参照のこと)も用いることができる。
【0104】
本明細書で概説した特定の態様の変形が用いられ得ることは、読者に明らかであり得る。1つのアプローチにおいて、伸長プライマー(例えば、第1の鎖プライマー)およびシークエンシングオリゴヌクレオチド(例えば、第2の鎖オリゴヌクレオチド)は、アダプター配列の異なる部分に結合する。1つのアプローチにおいて、伸長プライマーおよびシークエンシングオリゴヌクレオチドは、アダプター配列の同じ部分(例えば、伸長用のアダプター配列の一部分および配列決定用のアダプター配列の同じ部分の相補体)に結合する。
【0105】
8.基質およびコンパートメント
DNAテンプレートポリヌクレオチドは、基質上に固定化されている。一般に、固定化は、上記の第2の鎖の合成の前に行われる。例示的な基質は、実質的に平面的(例えば、スライド、ウェル、流動セル)であっても、非平面的であってもよく、単一であっても、複数の異なる単位(例えば、ビーズ)から形成されてもよい。例示的な材料としては、ガラス、セラミック、シリカ、シリコン、金属、エラストマー(例えば、シリコン)、ポリアクリルアミド(例えば、ポリアクリルアミドヒドロゲル;WO2005/065814を参照のこと)などが挙げられる。いくつかのアプローチでは、基質は、固定化部位またはウェルの秩序あるまたは無秩序のアレイを含む。いくつかのアプローチでは、標的DNAポリヌクレオチドは、固定化部位またはウェルの秩序あるまたは無秩序のアレイを含む基質などの、実質的に平面状の基質上に固定化される。いくつかのアプローチでは、標的DNAポリヌクレオチドは、ビーズ上に固定化される。
【0106】
ポリヌクレオチドは、共有結合および非共有結合を含む様々な技術によって基質上に固定化され得る。ポリヌクレオチドは、様々な技術によって基質に固定することができる。一態様において、表面は、アダプターオリゴヌクレオチドなどのポリヌクレオチド分子の構成要素と複合体、例えば二本鎖二重鎖を形成する捕捉プローブを含んでいてよい。別の態様において、表面は、ポリヌクレオチド分子上の相補的な官能基と反応して共有結合を形成する反応性官能基を有していてもよい。DNA分子はまた、-OH基などの様々な反応性官能基の濃度が低い清浄なガラス表面などの疎水性表面に効率的に付着させることができる。さらに別の態様において、ポリヌクレオチド分子は、表面との非特異的相互作用、または水素結合、ファンデルワールス力などの非共有結合相互作用を介して表面に吸着され得る。
【0107】
例えば、DNAナノボールは、米国特許第8,609,335号に記載のように、離れて間隔をあけた領域に固定化することができる。1つのアプローチでは、DNBは、固定化されたプローブ配列へのハイブリダイゼーションによって基質上に固定化され、固相核酸増幅法が、DNAテンプレートポリヌクレオチドを含むクローンクラスターを製造するために用いられる。例えば、WO98/44151およびWO00/18957を参照のこと。
【0108】
いくつかのアプローチでは、DNAテンプレートポリヌクレオチドは、プライマー伸長ステップの前に、エマルジョン、液滴、ビーズ上、および/またはマイクロウェル内で区画化される(Margulies et al. “Genome sequencing in microfabricated high-density picolitre reactors.” Nature 437:7057 (2005); Shendure et al. “Accurate multiplex polony sequencing of an evolved bacterial genome” Science 309, 1728-1732 (2005))。
【0109】
一般に、DNAナノボールは、秩序ある配列またはランダムな配列のいずれかで基質上に配列される。多くの用途において、基質への吸着は、基質-タンパク質-DNA相互作用によって仲介される。さらに、配列決定のサイクルを通して安定したナノボールアレイを達成するために、タンパク質層の付着後の蓄積は、DNAアレイの安定性を改善することができる。WO2013066975A1を参照のこと(その内容全体は引用により本明細書に包含させる)。
【0110】
9.キット
いくつかの面において、DNAテンプレートを配列決定するための第2の鎖を製造する方法は、キットを用いて実行することができる。キットは、鎖置換型DNAポリメラーゼを含む1以上のDNAポリメラーゼ、A、C、T、Gを含むヌクレオチドの混合物、およびプライマーを含んでいてもよい。このキットは、さらに非置換型DNAポリメラーゼおよび合成による配列決定に使用できる可逆的終端化dNTPを含んでいてもよい。本キットは、マグネシウムを含まない緩衝液(“マグネシウム不含有バッファー”)をさらに含んでもよい。キットは、伸長阻害剤(例えば、EDTA、KClおよびNaClを含む過剰塩、デオシクロ酸ナトリウム、サルコシルおよびSDSなどのイオン性界面活性剤、エタノールおよびイソプロパノール)をさらに含んでいてもよい。ある態様において、ヌクレオチドの混合物は、ウラシルをさらに含んでもよい。ある態様において、混合物中のチミジンに対するウラシルの比率は、1:2~1:10、例えば、1:3~1:8または1:4~1:5の範囲である。ある態様において、キットは、3’でブロックされるプライマー(すなわち、3’ブロックプライマー)およびブロックされないプライマーとの混合物をさらに含んでいてもよい。ある態様において、ブロックされたプライマーとブロックされていないプライマーとの比率は、1:1~1:5の範囲、例えば1:2~1:4の範囲にある。
【0111】
10.DNA複合体のアレイ
一面において、本発明は、DNA複合体のアレイを含む。一面において、アレイは、離れた領域のアレイを含む支持体であり、ここで、複数の領域は、一本鎖DNAテンプレートおよび複数のプライマーのクローン性クラスターを含む。ある態様において、DNAテンプレートは、複数のモノマーを含む一本鎖コンカテマーであり、各モノマーは、アダプター配列およびDNA標的配列を含む。複数のプライマーの各々は、DNAテンプレートのアダプター配列に相補的であり、かつハイブリダイズするプライマー配列を含む。ある態様において、複数のプライマーのいくつかの各々は、切除可能なヌクレオチドを含み、プライマーは、切除可能なヌクレオチドが存在する位置で切断されて、伸長可能な3’末端を有する2以上のフラグメントを生成することができる。
【0112】
別の面において、アレイは、離れた領域のアレイを含む支持体であって、複数の領域が、一本鎖DNAコンカテマー、可逆的3’ブロッキング基を有する複数のプライマー、および伸長可能な3’末端を有する複数のプライマーのクローンクラスターを含む。一本鎖コンカテマーは、複数のモノマーを含み、各モノマーは、アダプター配列およびDNA標的配列を含む。各プライマーは、DNAテンプレートのアダプター配列に相補的でハイブリダイズするプライマー配列を含み、少なくとも1つのアダプターは、可逆的3’ブロッキング基を有する1つのプライマーおよび伸長可能な3’末端を有する1つのプライマーにハイブリダイズし、可逆的3’ブロッキング基を有するプライマーは伸長可能な3’末端を有するプライマーより上流である。
【0113】
一面において、本明細書は、離れた領域のアレイを含む反応混合物を開示し、ここで、複数の領域は、一本鎖DNAコンカテマーのクローン性クラスター、複数のプライマー、およびDNAポリメラーゼを含む。一本鎖DNAコンカテマーは、複数のモノマーを含み、各モノマーは、アダプター配列およびDNA標的配列を含む。各プライマーは、DNAテンプレートのアダプター配列に相補的でハイブリダイズするプライマー配列を含む。アレイは、DNAポリメラーゼがDNAテンプレートに結合するが、プライマーを伸長できないような伸長阻止条件下にある反応混合物中にある。ある態様において、伸長阻止条件は、反応混合物が伸長阻害剤(例えば、EDTA、KClおよびNaClを含む塩、デオシコール酸ナトリウム、サルコシルおよびSDSなどのイオン性界面活性剤、エタノールおよびイソプロパノール)、マグネシウムを欠く緩衝液、または両方を含むことである。
【0114】
アレイのDNA複合体は、本明細書に記載の複合体の特性のいずれかを含んでいてもよいか、または本明細書に記載の方法に従って作製されてもよいことが理解され得る。さらに、複合体は、以下の特徴のうちの1以上の何れかの組合せを有していてもよい:(i)アレイが少なくとも10個の離れた領域を含む、(ii)DNAが一本鎖である、(iii)第2のプライマーがアダプター配列の少なくとも10塩基、好ましくは少なくとも12塩基、要すれば少なくとも15塩基を含む、および(iv)第2のプライマーが、それがハイブリダイズする第2のDNA鎖に完全に相補的である。
【実施例
【0115】
11.態様
以下に、本明細書に記載される方法および組成物の例示的な態様を示す。
【0116】
態様1.(a)少なくとも1,000個のDNAコンカテマーがその上に固定化された表面を含むDNAアレイを提供する工程;
(b)該アレイ上の複数のDNAコンカテマーのそれぞれについて、
(i)第1のリードプライマーをDNAコンカテマー上のプライマー結合部位にアニーリングさせる工程、
(ii)第1のリードプライマーの少なくとも一部を伸長させてdNTPまたはdNTP類縁体を組み込み、それによって第1のリード鎖を生成する工程であって、ここで、組み込まれるdNTPまたはdNTP類縁体の各々は、第1のリードを生成するために同定される、工程;
(c)鎖置換活性を有するポリメラーゼで第1のリード鎖の少なくとも一部を伸長させて、複数の第2の鎖を生成することにより制御されたMDAを実行する工程であって、それぞれの第2の鎖が、DNAコンカテマーにハイブリダイズした部分、およびハイブリダイズしていない一本鎖分枝を含む、工程;
(d)第2のリードプライマーを、複数の第2の鎖の一本鎖分枝にアニーリングする工程;および
(e)第2のリードプライマーを伸長させて、第2のリードを生成する工程
を含む、ペアド-エンドシークエンシング法。
【0117】
態様2.DNAコンカテマーが複数のモノマーを含み、各モノマーがアダプターおよび標的配列を含む、態様1に記載の方法。
【0118】
態様3.第1のリードプライマーが、DNAコンカテマーの各モノマーのアダプターにハイブリダイズされる、態様2に記載の方法。
【0119】
態様4.工程(a)で生成された第1のリード鎖が、該第1のリード鎖がさらに伸長されることを阻止する3’ブロック基を含み、ここで、第1のリード鎖からの3’ブロック基の除去を工程(b)で制御されたMDAを実行する前に行う、態様1から3のいずれかに記載の方法。
【0120】
態様5.複数のMDAプライマーが、工程(b)(ii)の前に、DNAコンカテマーにハイブリダイズされ、
ここで、該MDAプライマーが、MDAプライマーの伸長を阻止するための可逆性ブロッキング基を含み、該可逆性ブロッキング基が、工程(b)(ii)の後、かつ工程(c)の前に除去され、そして
工程(c)が、複数のMDAプライマーおよび第1のリード鎖を伸長させることを含む、態様1から4のいずれかに記載の方法。
【0121】
態様6.複数のMDAプライマーが、ランダムプライマーを含む、態様5に記載の方法。
【0122】
態様7.DNAコンカテマーが、少なくとも1つのMDAプライマーおよび少なくとも1つの第1のリードプライマーにハイブリダイズするアダプターを含み、ここで、少なくとも1つのMDAプライマーが、少なくとも1つの第1のリードプライマーの上流にある、態様5または6に記載の方法。
【0123】
態様8.MDAプライマーが、5~10ヌクレオチド長の範囲にある長さを有する、態様5から7のいずれかに記載の方法。
【0124】
態様9.工程(c)における制御されたMDAが、
(i)DNAポリメラーゼの過剰分子が第1のリード鎖に結合しないような鎖置換型DNAポリメラーゼ濃度の存在下で、第1の期間の間MDAを実行すること、および
(ii)第1の期間の終わりに鎖置換型DNAポリメラーゼの過剰分子をアレイから除去し、MDAを継続して、それぞれが少なくとも1つのDNAコンカテマーにハイブリダイズした部分、およびハイブリダイズしていない一本鎖分枝を含む、第2の鎖を生成すること
を含む、態様1から8のいずれかに記載の方法。
【0125】
態様10.鎖置換型DNAポリメラーゼの過剰な分子を除去することが、アレイを洗浄することによって行われる、態様9に記載の方法であって、ここで、工程(ii)が、アレイを洗浄し、未組み込みのヌクレオチドを含むがDNAポリメラーゼを含まない新鮮なバッファーを添加することを含む、方法。
【0126】
態様11.工程(c)における制御されたMDAを完了する期間の長さに対する第1の期間の長さの比率が、1:30から1:2の範囲である、態様9または10に記載の方法。
【0127】
態様12.工程(c)における制御されたMDAを完了する期間が、10~90分である、態様9から11のいずれかに記載の方法。
【0128】
態様13.第1の期間が1~10分である、態様9~12のいずれかに記載の方法。
【0129】
態様14.工程(c)における制御されたMDAを実行することが、
(i)伸長阻止条件下で、アレイを鎖置換型DNAポリメラーゼと接触させる工程、次いで、
(ii)第1のリード鎖が同時に伸長され、それぞれが少なくとも1つのDNAコンカテマーにハイブリダイズされる部分、およびハイブリダイズされていない一本鎖分枝を含む複数の第2の鎖を生成するように、伸長阻止条件を逆転させる工程
を含む、態様1から13のいずれかに記載の方法。
【0130】
態様15.伸長阻止条件が、マグネシウム不含有または組み込みヌクレオチドを含まない反応緩衝液である、態様14に記載の方法。
【0131】
態様16.伸長阻止条件が、重合阻害剤を含む反応緩衝液である、態様14に記載の方法。
【0132】
態様17.重合阻害剤がEDTAである、態様16に記載の方法。
【0133】
態様18.伸長阻止条件が、20℃未満の温度である、態様14に記載の方法。
【0134】
態様19.(i)における鎖置換型DNAポリメラーゼが、DNAポリメラーゼの過剰分子が第1のリードプライマーに結合しないような濃度であり、ここで該方法が、工程(i)と工程(ii)の間で鎖置換型DNAポリメラーゼの結合しない分子をアレイから除去することをさらに含む、態様14に記載の方法。
【0135】
態様20.(i)の鎖置換型DNAポリメラーゼが、DNAポリメラーゼの過剰分子が第1のリードプライマーに結合しないような濃度であり、かつ、工程(ii)が、第1のリード鎖を第1の期間の間伸長させ、第1の期間の終わりに鎖置換型DNAポリメラーゼの過剰分子をアレイから除去すること、かつDNAポリメラーゼの過剰な分子を含まない反応においてMDAを継続することを含む、態様14に記載の方法。
【0136】
態様21.工程(c)における制御されたMDAを完了する期間に対する第1の期間の比率が、1:30から1:2の範囲である、態様20に記載の方法。
【0137】
態様22.工程(c)におけるMDAを完了する期間が10~90分である、態様20または21に記載の方法。
【0138】
態様23.第1の期間が1~10分である、態様20から22のいずれかに記載の方法。
【0139】
態様24.(a)アレイ上に固定化された複数の一本鎖DNAコンカテマーにハイブリダイズした第1のリードプライマーを、切除可能なヌクレオチドの存在下で伸長させて、複数の一本鎖DNAコンカテマーの第1のリードを生成する工程であって、ここで、該伸長により切除可能なヌクレオチドが組み込まれた第1のリード鎖を生成する、工程;
(b)切除可能な塩基が存在する第1のリード鎖を切断して、伸長可能な3’末端を有する第1のリード鎖のフラグメントを生成する工程;
(c)第1のリード鎖のフラグメントを伸長させて複数の第2の鎖を生成することにより制御されたMDAを実行し、該制御されたMDAが、それぞれが複数の一本鎖DNAコンカテマーの1つにハイブリダイズする配列、およびハイブリダイズしない一本鎖分枝を含む複数の第2の鎖を得る、工程;および
(d)複数の第2の鎖の一本鎖分枝にハイブリダイズする第2のリードプライマーを伸長させて、第2のリードを生成する工程
を含む、ペアド-エンドシークエンシング法。
【0140】
態様25.切除可能なヌクレオチドがウラシルである、態様24に記載の方法。
【0141】
態様26.(a)アレイ上に固定化された複数の一本鎖DNAコンカテマー上にハイブリダイズした第1のリードプライマーを伸長させて、複数の一本鎖DNAの第1のリードを生成し、該伸長により第1のリード鎖が生成される工程;
(b)第1のリード鎖を除去する工程;
(c)鎖置換活性を有するポリメラーゼでDNAコンカテマーにハイブリダイズする複数のMDAプライマーを伸長させて、複数の第2の鎖を生成し、それぞれが複数の一本鎖DNAコンカテマーの1つにハイブリダイズする配列、およびハイブリダイズしない一本鎖分枝を含む制御MDAを実行する工程;および
(d)複数の第2の鎖の一本鎖分枝にハイブリダイズする第2のリードプライマーを伸長させて、第2のリードを生成する工程
を含む、ペアド-エンドシークエンシング法。
【0142】
態様27.複数のMDAプライマーが、ランダムプライマーを含む、態様26に記載の方法。
【0143】
態様28.工程(a)における第1のリードプライマーの伸長工程および工程(b)における第1のリード鎖の伸長工程が、単一のDNAポリメラーゼを用いることによって行われる、態様1から27のいずれかに記載の方法。
【0144】
態様29.工程(a)における第1の鎖プライマーの伸長工程および工程(b)における第1のリード鎖の伸長工程が、異なるDNAポリメラーゼを用いることによって行われる、態様1から27のいずれかに記載の方法。
【0145】
態様30.工程(a)における第1の鎖プライマーの伸長工程が、非置換型DNAポリメラーゼによるものである、態様1から27のいずれかに記載の方法。
【0146】
態様31.第1のリードが、合成による配列決定によって決定される、態様1から30のいずれかに記載の方法。
【0147】
態様32.第1のリードプライマーの伸長工程が、1~15分間継続される、態様1から31のいずれかに記載の方法。
【0148】
態様33.標的DNA配列の配列を決定するために、第1のリードおよび第2のリードを組み合わせることをさらに含む、態様1から32のいずれかに記載の方法。
【0149】
態様34.複数の一本鎖DNAコンカテマーおよび複数のプライマーを含むアレイであって、ここで、
各一本鎖コンカテマーは、複数のモノマーを含み、
各モノマーがアダプター配列およびDNA標的配列を含み、
各プライマーが、DNAコンカテマーのアダプター配列に相補的で、かつハイブリダイズするプライマー配列を含み、
少なくとも1つのプライマーが、切除可能なヌクレオチドを含み、そして
少なくとも1つのプライマーが、切断されて切除可能なヌクレオチドを放出し、伸長可能な3’末端を有する2以上のフラグメントを生成し得る、
アレイ。
【0150】
態様35.複数の配列決定プライマー、
鎖置換活性を有しないDNAポリメラーゼ、
SBS用可逆的終端化ヌクレオチドの混合物、
鎖置換型DNAポリメラーゼ、および
dNTPの混合物
を含む、キット。
【0151】
態様36.可逆的に終結したヌクレオチドの混合物がウラシルを含み、キットが、DNA鎖からウラシルを除去することができる切断剤をさらに含む、態様35に記載のキット。
【0152】
態様37.キットが、マグネシウム不含有バッファーをさらに含む、態様35または36に記載のキット。
【0153】
本明細書で引用した全ての刊行物および特許文献は、そのような刊行物または文献のそれぞれが引用により本明細書に包含されることが具体的かつ個別に示されたかのように、引用により本明細書に包含させる。本発明は、主に特定の態様を引用して説明されているが、異なる態様が本明細書の記載を読んだ当業者に明らかになることも想定され、そのような態様も本発明の方法に含まれることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】