IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ケメタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特表2023-507645燃料タンク外部用シーラントとしてのポリウレアコーティングシステム
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-24
(54)【発明の名称】燃料タンク外部用シーラントとしてのポリウレアコーティングシステム
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/24 20060101AFI20230216BHJP
   C09D 175/02 20060101ALI20230216BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230216BHJP
   C09D 5/34 20060101ALI20230216BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20230216BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
B05D7/24 302S
C09D175/02
C09D7/61
C09D5/34
B05D7/14 M
B05D7/24 302T
B32B27/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538135
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2020086945
(87)【国際公開番号】W WO2021123109
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】19218222.8
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517284496
【氏名又は名称】ケメタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】クレマー,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ブルヒェルトザイファー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ボンス,ペーター
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AA84
4D075CA42
4D075DC08
4D075DC41
4D075EA41
4D075EB32
4D075EB38
4D075EB45
4D075EB56
4F100AB10A
4F100AK51B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100CA02B
4F100CA05B
4F100CA07B
4F100CC00B
4F100EH46B
4F100GB16
4F100GB31
4J038DG061
4J038DG131
4J038DG281
4J038DG291
4J038KA08
4J038MA09
4J038NA01
4J038NA11
4J038NA15
4J038NA23
4J038NA27
4J038PA06
4J038PA07
4J038PA18
4J038PB07
4J038PC02
4J038PC08
4J038PC10
(57)【要約】
本発明は、互いに分離した2つのコンポーネント(A)及び(B)からなる、2Kコーティングシステムであって、コンポーネント(A)は、少なくとも1つの芳香族部分を含有し、平均して少なくとも2つの第一級及び/又は第二級アミノ基を有する少なくとも1つの構成成分(a1)を含み、コンポーネント(B)は、少なくとも1つの芳香族部分を含有し、平均して少なくとも2つのイソシアネート基を有する少なくとも1つの構成成分(b1)を含み、コンポーネント(A)及び(B)のそれぞれは、それぞれのコンポーネントの総質量に基づいて、少なくとも95質量%の固形分を有し、コンポーネント(B)中に存在する構成成分(b1)が、カルボジイミド単位及び/又はウレトンイミン単位、ならびに少なくとも1つの構造単位(I)を有する2Kコーティングシステムと、本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)及び(B)を混合することによって得ることができるコーティング組成物と、特に燃料タンクの外部を密封するためのシーラントとしての前記コーティング組成物の使用方法と、前記コーティング組成物を基材に塗布する方法と、特に燃料タンクの外部を密封する方法と、この方法によって得ることができる密封された燃料タンクなどの密封された基材とに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の好ましくはプレコートされた表面、好ましくは燃料タンク、特に航空機用燃料タンクの好ましくはプレコートされた表面を密封する方法であって、少なくともステップ(1)、すなわち
(1)コーティング組成物を、前記基材の好ましくはプレコートされた表面、好ましくは燃料タンクの外部の、特に航空機用燃料タンクの外部の好ましくはプレコートされた表面に塗布するステップ、
を含み、
前記コーティング組成物は、コーティングシステムのコンポーネント(A)及び(B)を互いに混合することによって得ることができ、前記コーティングシステムは、互いに分離している2つのコンポーネント(A)と(B)からなる2コンポーネント(2K)コーティングシステムであり、
コンポーネント(A)は、少なくとも1つの芳香族部分を含有し、少なくとも2つの第一級及び/又は第二級アミノ基を有する少なくとも1つの構成成分(a1)を含み、
コンポーネント(A)中に存在する任意の充填剤の量は、コンポーネント(A)の総質量に基づいて、5質量%を超えず、
コンポーネント(B)は、少なくとも1つの芳香族部分を含有し、少なくとも2つのイソシアネート基を有する少なくとも1つの構成成分(b1)を含み、
コンポーネント(A)と(B)のそれぞれは、それぞれのコンポーネントの総質量に基づいて、少なくとも95質量%の固形分を有し、
コンポーネント(B)中に存在する構成成分(b1)は、少なくとも1つのカルボジイミド単位及び/又はウレトンイミン単位を有し、さらに少なくとも1つの構造単位(I):
【化1】
(式中、RはC~Cアルキレン残基であり、パラメータmは1~200の範囲の整数である)、
を含む、方法。
【請求項2】
構成成分(a1)は、少なくとも2つの芳香族部分を含み、第一級及び/又は第二級アミノ基の少なくとも1つは、これらの少なくとも2つの芳香族部分のぞれぞれに直接結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
構成成分(a1)は、さらに少なくとも1つ構造単位(II):
【化2】
(式中、Rは、C~Cアルキレン残基、より好ましくはC~Cアルキレン残基、特にC~Cアルキレン残基であり、
パラメータnは、1~100の範囲、より好ましくは1~40の範囲、特に1~10の範囲、最も好ましくは1~5の範囲の整数である)、
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
構成成分(a1)は、コンポーネント(A)の総質量に基づいて、50~95質量%の範囲、より好ましくは55~90質量%の範囲の量で、コンポーネント(A)中に存在する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
構成成分(b1)は、コンポーネント(B)中に存在する唯一のイソシアネート基含有構成成分である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
構成成分(b1)は、少なくとも2つのイソシアネート基を有する芳香族ジイソシアネート、好ましくはMDIの、少なくとも1つのプレポリマーを、少なくとも1つのカルボジイミド単位及び/又はウレトンイミン単位の形成下で、脱炭酸縮合反応に供することによって得ることができ、前記プレポリマーは、ポリエーテルポリオールと少なくとも1つの芳香族ジイソシアネート及び/又はそのポリマーとの反応によって調製される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
構成成分(b1)中に存在するNCO含有量は、構成成分(b1)の総質量に基づいて、20~35質量%の範囲である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
コンポーネント(A)の固形分は、コンポーネント(A)の総質量に基づいて、98質量%超であり、コンポーネント(B)の固形分は、コンポーネント(B)の総質量に基づいて、98質量%超である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記コーティング組成物が噴霧可能である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記コーティング組成物は、コンポーネント(A)及び(B)を、5:1~1:2の範囲の質量比(コンポーネント(A)/コンポーネント(B))で混合することによって得ることができる、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記コーティング組成物を調製するために、コーティングシステムのコンポーネント(A)と(B)の混合は、衝突混合原理を利用することによって、向流注入技術を用いた高圧装置で行われる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる、密封された基材、好ましくは外部シールを有する燃料タンク、特に外部シールを有する航空機用燃料タンク。
【請求項13】
特に、好ましくはプレコートされた基材上に、好ましくは、好ましくはプレコートされた燃料タンクの外部に、特に、好ましくはプレコートされた航空機用燃料タンクの外部に、バリアコーティングを提供するための、コーティングシステムのコンポーネント(A)と(B)を混合することで得ることができる、請求項1~11のいずれか1項に記載のコーティング組成物のシーラントとしての使用方法。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか1項に記載のコーティングシステムのコンポーネント(A)と(B)を互いに混合することによって得ることができる、請求項1~11のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項15】
互いに分離している請求項1~8のいずれか1項に記載の2つのコンポーネント(A)と(B)からなる、2コンポーネント(2K)コーティングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに分離している2つのコンポーネント(A)及び(B)からなる2Kコーティングシステムであって、ここで(A)は、少なくとも1つの芳香族部分を含み、平均して少なくとも2つの第一級及び/又は第二級アミノ基を有する少なくとも1つの構成成分(a1)を含み、(B)は少なくとも1つの芳香族部分を含み、平均して少なくとも2つのイソシアナート基を有する少なくとも1つの構成成分(b1)を含み、(A)及び(B)のそれぞれは、それぞれのコンポーネントの総質量に基づいて、少なくとも95質量%の固形分を有しており、コンポーネント(B)に存在している構成成分(b1)は、カルボジイミド単位及び/又はウレトンイミン単位、ならびに少なくとも1つの構造単位(I)を有する2Kコーティングシステムと、本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)及び(B)を混合することによって得られるコーティング組成物と、前記コーティング組成物のシーラントとしての使用、特に燃料タンクの外部を密封するための使用と、基材にコーティング組成物を塗布する方法と、特に燃料タンクの外部を密封する方法と、この方法によって得られる密封された燃料タンクなどの密封された基材と、に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の需要が高まり、航空機の生産率も増加しているため、航空機メーカーは航空機製造におけるプロセス時間を短縮することに関心を有している。加速すべき1つのプロセスは、航空機の燃料タンクへのいわゆる二次燃料バリアコーティング(SFBコーティング)の適用である。プロセス時間は、特に使用される製品によって異なる。このようなSFBコーティングでコーティングされた燃料タンクを得るために、シーラントは航空機の胴体内にある燃料タンクの外部に吹き付けられる。タンクの形状によっては、ブラッシングのような他の塗布方法も可能である。さらに、ブラッシングなどの他の塗布方法は、メンテナンス作業の場合に使用することができる。燃料タンクは通常、ポリサルファイドシーラントなどの適切なシーラントで内部から密封される。追加の保護として、さらなるコーティングが、燃料タンクの外部プレコート表面に、さらに塗布される。内部シールに欠陥が生じた場合、外部に塗布されたシーラントは、燃料又は燃料蒸気がタンクから漏れて貨物エリア及び/又は乗客エリアに入るのを防止する。前記外部塗布シーラントは、前述のSFBコーティングと呼ばれる。シーラントは燃料に対して耐性がなければならない。さらに、シーラントは、タンク表面の亀裂及び/又は損傷全般が、修理されるために、外部から容易にかつ直ちに検出されるように、透明(すなわち、クリア)でなければならない。
【0003】
様々な目的のためのポリウレア及び/又はポリウレタンコーティングは、先行技術、例えば、US2012/0183692A1、US6,605,684B2、US9,328,274B2、JP2012-92266A及びJPH-11130834、ならびにWO2016/059083A1から知られており:無溶媒コーティング組成物から調製された透明ポリウレア及び/又はポリウレタンコーティングは、例えば、US2012/0183692A1から知られている。特に、ポリアスパラギン酸アミン及びポリイソシアネートから調製されるコーティングが、この文献に開示されている。これらのコーティングは、コーティングが適用される基材を保護するために、バリアコーティングとして使用される。基材にコーティング組成物を塗布するために、高容量低圧(HVLP)ガンが使用される。組成物は、約54~65℃などの高温で硬化される。ポリウレアエラストマーの調製は、US6,605,684B2に開示されている。アスパラギン酸エステルは形成され、これは、ポリオキシアルキレンアミンとブレンドされた後に、所望のポリウレアエラストマーを生成するために、イソシアネートと反応される。US9,328,274B2は、イソシアネート末端ウレタン含有付加物とビス(ビニル-スルホニル)アルカノールから調製されたウレタン及び硫黄含有プレポリマーに関し、ならびに、このようなプレポリマーとアミン触媒を含有する組成物に関する。NCO基とアルカノールのOH基の架橋反応によるポリウレタンである硬化したシーラントは、これらの付加体から得られる。脂肪族イソシアネート化合物から調製されるポリウレアコーティングが、JP2012-92266Aに開示されている。必然的に非芳香族のポリアミンを含むポリアミンの混合物から調製されるポリウレアが、JPH-11130834に開示されている。WO2016/059083A1は、エラストマー基材の欠陥を補修するための、及び/又はこれらの基材を共に接着結合するためのポイルウレアコーティングを開示している。
【0004】
航空機のアンテナ又は他の航空機部品用のポリウレアシーラントは、US10,052,817B2とUS9,765,888B2に開示されている。これらのシーラントは難燃性であり、特殊なカートリッジシステムを含むアセンブリを使用して塗布される2つのコンポーネントからなることが可能である。このカートリッジシステムの上にミキシングロッドが設置されている。両コンポーネントは手動でミキシングロッドに押し込まれ、混合される。シーラントは、直鎖ポリウレア成分であり、耐紫外線性を向上させるためにカーボンブラックを含有する場合がある。しかしながら、US10,052,817B2及びUS9,765,888B2に記載されているシーラントは、噴霧可能ではない。
【0005】
ポリウレア、ポリウレタン及び/又はポリウレア-ポリウレタンハイブリッドシーラントである噴霧可能な2コンポーネントシーラントを(航空機)部品に適用するために使用される、Sulzer混合スプレーガンで使用する特殊なカートリッジシステムが、WO2017/172906A2に開示されている。両方のコンポーネントは2つのチャンバで分離され、各チャンバの出口は混合ロッドにつながり、その中で両方のコンポーネントはそれらを混合ロッドに通すことによって(手動又は空気圧で)混合される。このシーラントは耐燃料性であり、したがって、タンク内で漏れが発生した場合に燃料漏れを防ぐために、二次的な燃料蒸気バリアとして使用されることができる。シーラントは透明、すなわちクリアである。しかしながら、塗布後に色変化が観察され、これは、シーラントが二次的な燃料蒸気バリアとして適用される場合に、燃料タンク内の漏れの検出を妨げる可能性があるため、不利である。さらに、開示されているシーラントは、必ずしもVOCを含まない必要がなく、これは環境的観点からも問題がある。WO2017/172906A2に開示されたカートリッジシステムのさらなる欠点は、そこに記載されたSulzer混合システムの使用は、カートリッジ及び混合ロッドがプラスチック製であるため、通常大量のプラスチック廃棄物を生じ、使用後に廃棄されなければならないことである。
【0006】
さらに、市販のポリウレタンベースの製品「PR-1199」のようなSFBコーティングを提供するための市販のコーティングシステムが利用可能であるが、これは、しばしば硬化に比較的に長い時間を必要とし、さらに、通常は有機溶媒を含み、これは少なくとも環境的理由のため及び/又はVOC規制のために望ましくない。例えば、多くの場合、存在する溶媒がゆっくりと蒸発し始めるように、塗布後に約2時間のフラッシュオフ時間を適用し、その後、高温で24時間コーティングを硬化させる必要がある。したがって、このプロセスの待ち時間は少なくとも26時間となり、これは、時間とエネルギーの両方を消費するため、経済的な理由から不利である。さらに、SFBコーティングを提供するための市販のコーティングシステムは、通常、有機溶媒だけでなく、リン含有難燃剤などの難燃剤も含み、これは、少なくとも環境的理由のために不利であるだけでなく、例えば安全規制(これを考慮し実行しなければならない)が適用される場合もあるため、経済的理由でも不利である。安定剤として必然的に有機溶媒を含み、したがって望ましくない高いVOC-含有量を有するポリウレア組成物は、WO00/69943A1からさらに知られている。
【0007】
先行技術から、UV光の照射により硬化するシーラントとしての使用のためのコーティング組成物も知られている。そのようなシーラント及びそれぞれのコーティング方法は、例えば、WO2016/128548A1、WO2016/128547A1、EP2836562B1、EP1478703B1及びEP1385904B1に開示されている。さらに、WO2018/031532A1には、ポリチオール、ならびにウレア及び/又はウレタン含有ポリアルケニルを含有する組成物が開示されている。この文献はさらに、2つの部分からなるシーラントシステムを開示しており、ポリチオールは第1の部分に含有され、ポリアルケニルは第2の部分に含有される。該組成物及びシステムは、航空宇宙産業用の、特にSFBコーティングとして、化学線(actinic radiation)硬化性コーティング及びシーラントを調製するために使用されることができる。WO2018/031532A1の組成物は、硫黄含有組成物であり、これは、少なくとも環境的理由のために不利である。さらに、硬化反応は必然的にUV光で行う必要があるため、高価なUV装置及び追加の作業工程が必要となり、追加のコスト及び時間が発生する。さらに、追加の安全規制が適用される可能性があり、例えば、UV光に対する特別な保護措置が従業員に要求される。さらに、UV光源を使用することにより、コーティングされるいくつかの部品の形状のためにUVランプでアクセスすることが困難な領域で十分な硬化を行うことが必ずしも可能ではなく、その結果、UV光の照射が不十分であるためにシーラントが完全に硬化せず、いわゆる「シャドウエリア」をもたらすリスクを生じる。さらに、このようなUV硬化組成物は依然として有機溶媒を含んでいることが多く、これは少なくとも環境的理由及び/又はVOC規制のために望ましくない。
【0008】
したがって、特に基材が燃料タンクであり、コーティング組成物がSFBコーティングを提供するために使用される場合、前述の欠点を示さない、コーティングシステム、コーティング組成物、及び基材のコーティング方法に対する需要がある。特に、本質的に又は完全にVOCを含まないが、それにもかかわらず、噴霧可能及び/又は手動で処理可能、特に噴霧可能であり、低温での自己触媒による急速硬化、特に従来のコーティングシステム及びコーティング組成物よりも低温及び短時間で行われる硬化を可能にする、それぞれのコーティングシステム及び組成物に対する需要が存在する。同時に、燃料タンク表面に存在し得る亀裂及び/又は損傷は、即時の修理を可能にするために、外部から容易に検出可能であるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US2012/0183692A1
【特許文献2】US6,605,684B2
【特許文献3】US9,328,274B2
【特許文献4】JP2012-92266A
【特許文献5】JPH-11130834
【特許文献6】WO2016/059083A1
【特許文献7】US10,052,817B2
【特許文献8】US9,765,888B2
【特許文献9】WO2017/172906A2
【特許文献10】WO00/69943A1
【特許文献11】WO2016/128548A1
【特許文献12】WO2016/128547A1
【特許文献13】EP2836562B1
【特許文献14】EP1478703B1
【特許文献15】EP1385904B1
【特許文献16】WO2018/031532A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の根底にある目的は、特に基材が燃料タンクであり、コーティングシステム及び組成物がSFBコーティングの提供に用いられる場合、先行技術の従来のコーティングシステム及び組成物の欠点を示さない、基材のコーティングに適したコーティングシステム及びコーティング組成物を提供することであった。本発明の根底にある特定の目的は、本質的に又は完全にVOCを含まないが、依然として、噴霧可能であり、低温での自己触媒による急速硬化、特に先行技術で知られている従来のコーティングシステム及びコーティング組成物よりも低温及び短時間で行われる硬化を可能にする、それぞれのコーティングシステム及び組成物を提供することであった。同時に、これらのコーティング及び組成物は、可能な限り迅速な修理を行うために、燃料タンク表面に存在し得る亀裂及び/又は損傷を直ちに検出することを可能にすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、本願の特許請求の範囲の主題によって、ならびに本明細書に開示されるその好ましい実施形態によって、すなわち本明細書に記載された主題によって解決されている。
【0012】
本発明の第1の主題は、互いに分離している2つのコンポーネント(A)及び(B)からなる2コンポーネント(2K)コーティングシステムであって、
コンポーネント(A)は、少なくとも1つの芳香族部分を含有し、少なくとも2つの第一級及び/又は第二級アミノ基を有する少なくとも1つの構成成分(a1)を含み、
コンポーネント(B)は、少なくとも1つの芳香族部分を含有し、少なくとも2つのイソシアネート基を有する少なくとも1つの構成成分(b1)を含み、
コンポーネント(A)及び(B)のそれぞれは、それぞれのコンポーネントの総質量に基づいて、少なくとも95質量%の固形分を有し、
コンポーネント(A)中に存在する任意の充填剤の量は、コンポーネント(A)の総質量に基づいて、5質量%を超えない、2コンポーネント(2K)コーティングシステムにおいて、
コンポーネント(B)中に存在する構成成分(b1)は、少なくとも1つのカルボジイミド単位及び/又はウレトンイミン単位を有し、さらに少なくとも1つの構造単位(I):
【化1】
(ここで、RはC~Cアルキレン残基であり、パラメータmは1~200の範囲の整数である)
を含むことを特徴とする2コンポーネント(2K)コーティングシステムである。
【0013】
本発明のさらなる主題は、本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)及び(B)を互いに混合することによって得ることができるコーティング組成物である。
【0014】
本発明のさらなる主題は、シーラントとしての本発明のコーティング組成物の使用方法、特に好ましくはプレコートされた基材、好ましくはプレコートされた燃料タンクの外部、特に、好ましくはプレコートされた航空機用燃料タンクの外部に、バリアコーティングを提供するためのコーティング組成物の使用方法である。
【0015】
本発明のさらなる主題は、好ましくは基材のプレコートされた表面、好ましくは燃料タンクの外部のプレコートされた表面、特に航空機用燃料タンクの外部のプレコートされた表面、を密封する方法であって、少なくともステップ(1)、すなわち
(1)本発明のコーティング組成物を、基材の好ましくはプレコートされた表面、好ましくは燃料タンクの外部の好ましくはプレコートされた表面、特に航空機用燃料タンクの外部の好ましくはプレコートされた表面、に塗布すること、
を含む方法である。
【0016】
本発明のさらなる主題は、本発明の方法によって得られる、密封された基材、例えば密封された燃料タンク、好ましくは外部シールを有する燃料タンク、特に外部シールを有する航空機用燃料タンクである。
【0017】
驚くべきことに、本発明のコーティングシステム及び本発明のコーティング組成物は、基材、特に航空宇宙及び/又は航空機産業で使用される燃料タンクなどの燃料タンクのコーティングに適していることが見出された。特に、これに関して、本発明のコーティングシステム及び本発明のコーティング組成物は、SFBコーティングをそのような燃料タンクの外部表面に提供するのに、すなわちそのような燃料タンクの外部シールに適していることが見出された。
【0018】
さらに驚くべきことに、本発明のコーティングシステム及び本発明のコーティング組成物は、室温(18~29℃)のような低温での自己触媒による急速硬化、特に、先行技術で知られている従来のコーティングシステム及びコーティング組成物よりも低温及び短時間で行われる硬化を可能にすることが見出された。このような処理時間の短縮は、製品が硬化するまでの顧客の待ち時間を短縮することにつながる。本発明のコーティング組成物の硬化は、2時間以下、特に2時間~1.5時間しかかからないことが見出された。さらに、硬化のために例えば40℃以上の高温を適用する必要がないだけでなく、硬化が行われるためにUV光のような外部的インパルス(刺激)を適用する必要もない。したがって、追加のエネルギーは必要ない。
【0019】
本発明のコーティングシステム及び組成物は、本質的に又は完全にVOCを含まない形態で、特に上記の目的のために提供することができることがさらに見出された。それにもかかわらず、本発明のコーティングシステムは、特に混合及び噴霧が同時に行われることを可能にする向流注入技術を用いて混合及び塗布をするための高圧システムを使用する場合に依然として噴霧可能である。このような高圧システムの使用は、例えば、WO2017/172906A2に開示されているようなSulzer混合スプレーガンを使用する場合とは異なって、プラスチック廃棄物の望ましくない生成をもたらさないことがさらに見出された。さらに、本発明のコーティング組成物は、(燃料タンクなどの基材に塗布されるときは本質的に又は完全にVOCを含まないため)、無溶媒又は本質的に無溶媒系であるために、塗布後に「静置」する必要がない。したがって、フラッシングオフ期間は必要ない。
【0020】
本発明のコーティング組成物は、シーラントとして塗布されたときは透明(クリア)であることがさらに見出された。これは、SFBコーティングの分野でコーティングを使用する場合、燃料タンク表面に潜在的可能に存在する亀裂及び/又は燃料タンク表面への損傷を直ちに検出して、可能な限り迅速な修理を行うことを可能にする。驚くべきことに、本発明のコーティング組成物から得られるコーティングは、例えば多量の充填剤を含むコーティング組成物から得られた従来の不透明ポリウレアコーティングよりも、引張強度、ショアA硬度及び/又は破断伸びに関して、著しく優れた特性を示すことが見出された。
【0021】
さらに、本発明のコーティング組成物は、シーラントとして塗布された場合、例えばWO2017/172906A2に開示されているような塗布後のシーラントとは異なり、色安定的であり、すなわち混合後にその色が変化しないことが見出された。
【発明を実施する形態】
【0022】
発明の詳細な説明
本発明のコーティングシステム及び本発明のコーティング組成物
本発明のコーティングシステムは、互いに分離している2つのコンポーネント(A)及び(B)からなる2コンポーネント(2K)コーティングシステムである。例えば、本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)及び(B)は、特にシーラントとして使用することができるコーティング組成物を調製するために互いに混合されるまで、別々に保管されることができる。
【0023】
本発明のコーティングシステムは、第一級及び/又は第二級アミノ基を有する少なくとも1つの構成成分を含むコンポーネント(A)と、イソシアネート(NCO)基を有する少なくとも1つの構成成分を含むコンポーネント(B)とからなる。したがって、これらの2つのコンポーネントを混合すると、アミノ基とイソシアネート基との反応により、ポリウレア又はポリウレアベースのコーティング組成物が形成される。本発明の意味において、「ポリウレアコーティング組成物」は、コンポーネント(A)がOH-基を有する追加の構成成分を含有しない場合に形成される。本発明の意味において、「ポリウレアベースのコーティング組成物」は、コンポーネント(A)が、OH-基を有する追加の構成成分(しかしながら、前記OH-基は、アミノ基の量よりもかなり低い量で存在する)を含有し、ポリウレア形成の他にイソシアネート基との架橋時にウレタン基の追加の形成をもたらす場合に、形成される。
【0024】
好ましくは、本発明のコーティングシステムは、コンポーネント(A)及び(B)からなるシーラントシステムである。
【0025】
好ましくは、本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)及び(B)のいずれも、硬化触媒を含有しない。好ましくは、もちろん、本発明のコーティング組成物もまた、硬化触媒を含有しない。本発明のコーティングシステムは、好ましくは、自己触媒的に架橋可能であり、すなわち、そこに存在する関連構成成分は、自己触媒反応を介して架橋することができるため、硬化触媒は必要ではない。
【0026】
好ましくは、本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)及び(B)のいずれも、順に1つ以上の硫黄原子を含むいかなる構成成分も含有しない。好ましくは、もちろん、本発明のコーティング組成物もまた、1つ以上の硫黄原子を含むいかなる構成成分も含有しない。1つ以上の硫黄原子を有するいかなる構成成分が、本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)及び(B)の1つ、及び/又は本発明のコーティング組成物中に存在する場合、それは好ましくはメルカプトシランのみからなる群から選択される。
【0027】
好ましくは、本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)及び(B)のいずれも、難燃剤を含有しない。特に、本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)及び(B)のいずれも、リン含有難燃剤を含有しない。好ましくは、もちろん、本発明のコーティング組成物もまた、いかなる難燃剤、特にリン含有難燃剤を含有しない。
【0028】
好ましくは、本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)及び(B)の両方は、有機溶媒を含まないか又は本質的に含まない。好ましくは、同じことが本発明のコーティング組成物にも当てはまる。本発明の意味において、「有機溶媒を含まない」という用語は、好ましくは、有機溶媒が全く存在しないことを意味する。本発明の意味において、「有機溶媒を本質的に含まない」という用語は、好ましくは、有機溶媒が本質的に存在しないことを意味する。これは、少なくとも有機溶媒が、意図的に、本発明で使用されるコンポーネント(A)及び(B)のいずれかに、ならびに本発明のコーティング組成物に、添加されていないことを意味する。しかしながら、本発明で使用されるコンポーネント(A)及び(B)の調製に使用されるいずれかの構成成分の調製時に形成される有機溶媒の残留留分がその中に存在することを排除することはできない。好ましくは、コンポーネント(A)及び(B)のそれぞれに存在する任意の有機溶媒の量は、いずれの場合もコンポーネント(A)又は(B)の総質量に基づいて、10質量%未満、より好ましくは8質量%未満、さらにより好ましくは6質量%未満、さらにより好ましくは5質量%未満、なおより好ましくは2.5質量%未満であり、特に1.0質量%未満、又は0.5質量%未満、最も好ましくは0.1質量%未満又は0.05質量%未満又は0.01質量%未満である。
【0029】
本発明によるコーティングシステムのコンポーネント(A)の固形分は、いずれの場合もコンポーネント(A)の総質量に基づいて、少なくとも95質量%、さらにより好ましくは95質量%超、もっと好ましくは97.5質量%超、特に98質量%超又は99質量%超又は99.5質量%超、最も好ましくは100質量%である。本発明によるコーティングシステムのコンポーネント(B)の固形分は、いずれの場合もコンポーネント(B)の総質量に基づいて、少なくとも95質量%、好ましくは95質量%超、より好ましくは97.5質量%超、特に98質量%超又は99質量%超又は99.5質量%超、最も好ましくは100質量%である。本発明によるコーティング組成物の固形分は、いずれの場合もコーティング組成物の総質量に基づいて、好ましくは95質量%超、より好ましくは97.5質量%超、特に98質量%超又は99質量%超又は99.5質量%超、最も好ましくは100質量%である。固形分、すなわち不揮発分の測定は、以下に記載する方法に従って実施される。
【0030】
好ましくは、本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)及び(B)の両方は、水を含まないか又は本質的に含まない。同じことが本発明のコーティング組成物にも当てはまる。本発明の意味において、「水を含まない」という用語は、好ましくは、水が全く存在しないことを意味する。本発明の意味において、「水を本質的に含まない」という用語は、好ましくは、水が本質的に存在しないことを意味する。これは、少なくとも、水が意図的に本発明で使用されるコンポーネント(A)及び(B)のいずれにも、ならびに本発明のコーティング組成物にも、添加されないことを意味する。しかしながら、本発明で使用されるコンポーネント(A)及び(B)の調製に使用されるいずれかの構成成分の調製時に形成される水の残留留分がその中に存在することを排除することはできない。好ましくは、コンポーネント(A)及び(B)のそれぞれに存在する任意の水の量は、いずれの場合もコンポーネント(A)又は(B)の総質量に基づいて、1質量%未満、より好ましくは0.5質量%未満、さらにより好ましくは0.1質量%未満、まだもっとより好ましくは0.05質量%未満、なおより好ましくは0.01質量%未満、特に0.005質量%未満又は0.001質量%未満である。
【0031】
好ましくは、本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)及び(B)のいずれも、紫外線照射のような化学線を介して架橋可能ないかなる構成成分も含有しない。好ましくは、もちろん、本発明のコーティング組成物もまた、紫外線照射のような化学線を介して架橋可能ないかなる構成成分も含有しない。特に、本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)及び(B)のいずれも、(メタ)アクリル基及び/又は不飽和C-C-二重結合を含むいかなる構成成分も含有しない。もちろん、同じことが好ましくは本発明のコーティング組成物にも当てはまる。したがって、好ましくは、本発明のコーティング組成物自体は、紫外線照射などの化学線を介して架橋可能ではない。
【0032】
本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)及び(B)、ならびに本発明によるコーティング組成物に関連する本発明の文脈における「含む(comprising)」は、好ましくは「からなる(consisting of)」の意味を有する。この場合、コンポーネント(A)及び(B)内に存在する構成成分(a1)及び(b1)に加えて、本発明のコーティングシステムの各コンポーネント又は本発明によるコーティング組成物に任意に含有される構成成分(a1)~(a7)などの後述される他の構成成分の1つ以上が、コーティングシステム、そのコンポーネント(A)及び(B)、又は本発明によるコーティング組成物に含有されていてよい。全てのコンポーネントは、それぞれの場合において、後述するそれらの好ましい実施形態において存在し得る。
【0033】
本発明によるコーティングシステム、そのコンポーネント(A)及び(B)、又は組成物中の、構成成分(a1)及び(b1)、ならびにさらに任意に存在する構成成分(a1)~(a7)の質量%単位での割合及び量(質量%)は、それぞれコンポーネント(A)又は(B)の総質量に基づいて、又はコーティング組成物の総質量に基づいて、合計して100質量%になる。
【0034】
コンポーネント(A)と(B)
コンポーネント(A)は、少なくとも1つの芳香族部分を含有し、少なくとも2つの第一級及び/又は第二級アミノ基を有する少なくとも1つの構成成分(a1)を含む。好ましくは、構成成分(a1)は、平均して少なくとも2つの第一級及び/又は第二級アミノ基を含む。好ましくは、構成成分(a1)は、少なくとも2つの、好ましくは正確に2つの芳香族部分、より好ましくは少なくとも2つの、好ましくは正確に2つのフェニル部分を含む。
【0035】
好ましくは、構成成分(a1)は、少なくとも2つの第一級アミノ基を含む。
【0036】
好ましくは、少なくとも2つの第一級及び/又は第二級アミノ基は、構成成分(a1)の少なくとも1つの芳香族部分に直接結合している。より好ましくは、構成成分(a1)が少なくとも2つの、好ましくは正確に2つの芳香族部分(より好ましくは少なくとも2つの、好ましくは正確に2つのフェニル部分)を含む場合、少なくとも2つの、好ましくは正確に2つの第一級及び/又は第二級アミノ基のうちの少なくとも1つ、好ましくは正確に1つは、少なくとも2つの、好ましくは正確に2つの芳香族部分のそれぞれと直接結合している。
【0037】
正確に2つのアミノ基が存在することが好ましく、なぜなら、これによって、コンポーネント(B)の構成成分(b1)との架橋によって直鎖のポリウレアがり得られるからである。
【0038】
好ましくは、構成成分(a1)は、少なくとも1つのポリエーテル部分をさらに含む。好ましくは、前記ポリエーテル部分は、少なくとも2つの前記芳香族部分が存在する場合、構成成分(a1)の少なくとも2つの芳香族部分の間に構造的に配置される。しかしながら、前記少なくとも1つのポリエーテル部分に加えて、又はその代替として、構成成分(a1)は、ポリエステル、ポリブタジエン及び/又はポリ(メタ)アクリレート単位のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0039】
好ましくは、構成成分(a1)の少なくとも1つのポリエーテル部分は、構造単位(II)である:
【化2】
【0040】
ここで、Rは、C~Cアルキレン残基、より好ましくはC~Cアルキレン残基、特にC~Cアルキレン残基であり、
パラメータnは、1~100の範囲、より好ましくは1~40の範囲、特に1~20又は1~10の範囲、最も好ましくは1~5の範囲の整数である。
【0041】
好ましくは、構成成分(a1)は、一般式(III)の構成成分である:
【化3】
【0042】
ここで、Rとnは前述の意味を有し、各アミノ基は、それぞれフェニル環において互いに独立してm、o又はp-位置に、特にいずれの場合もp-位置に配置される。
【0043】
特に好ましいのは、一般式(IV)及び/又は(V)の構成成分(a1)である:
【0044】
【化4】
【0045】
ここで、nはそれぞれの場合において前述の意味を有する。
【0046】
好ましくは、少なくとも1つの構成成分(a1)は、200~7500g/molの範囲、より好ましくは200~5000g/molの範囲、特に250~3000g/mol又は250~2000g/molの範囲、最も好ましくは250~1500g/molの範囲の数平均分子量(M)を有する。Mの決定は、後述する方法に従って実行される。
【0047】
構成成分(a1)(少なくとも2つのアミノ基の他に)は基本的に、OH-基のようなNCO-基に対して反応性のある追加の官能基を有し得る。しかしながら、好ましくは、構成成分(a1)はそのようなさらなる官能基を含まず、すなわち、そこに存在するアミノ基が、NCO基に対して反応性のある唯一の基である。
【0048】
好ましくは、構成成分(a1)は、コンポーネント(A)の総質量に基づいて、50~95質量%の範囲、より好ましくは55~90質量%の範囲、さらにより好ましくは60~85質量%の範囲、まだより好ましくは65~85質量%の範囲、特に70~80質量%の範囲の量で、コンポーネント(A)中に存在する。
【0049】
好ましくは、構成成分(a1)のアミン価は、50~400mgKOH/gの範囲であり、より好ましくは75~300mgKOH/gの範囲である。なお、アミン価は、DIN16945:1989-03に従って決定される。
【0050】
本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)中に存在する任意の充填剤の量は、コンポーネント(A)の総質量に基づいて、5質量%(すなわち、5.0質量%)を超えない。「充填剤」という用語は、例えばDIN 55943(日付:2001年10月)から、当業者には知られている。本発明の目的のための「充填剤」は、好ましくは、それらを囲む媒体に、例えばコンポーネント(A)及び(B)の各々と本発明の組成物などのそれらを囲む媒体に実質的に、好ましくは完全に不溶であり、特に体積を増加させるために使用される、成分である。本発明の意味での「充填剤」は、好ましくは、その屈折率が「顔料」と異なり、充填剤の屈折率は1.7未満であり、顔料の屈折率は1.7以上である。好ましくは、本発明の目的のための「充填剤」は、無機充填剤である。例としては、硫酸バリウム又はタルカムが挙げられる。
【0051】
好ましくは、本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)に存在する任意の充填剤の量は、いずれの場合もコンポーネント(A)の総質量に基づいて、4.5質量%を超えず、より好ましくは4.0質量%を超えず、さらにより好ましくは3.5質量%を超えず、もっとより好ましくは3.0質量%を超えず、なおより好ましくは2.5質量%を超えず、特に2.0質量%又は1.5質量%又は1.0質量%又は0.5質量%を超えない。コンポーネント(A)はいかなる充填剤も含まないことも可能である。本発明の意味において、このことは好ましくは、コンポーネント(A)が充填剤を含まないか、又は少なくとも本質的に含まないことを意味する。これは、少なくとも充填剤が、本発明で使用されるコンポーネント(A)及び本発明のコーティング組成物に意図的に添加されないことを意味する。好ましくは、本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)中に存在する充填剤の量は、いずれの場合もコンポーネント(A)の総質量に基づいて、0~5.0質量%の範囲、より好ましくは0~4.0質量%の範囲、さらにより好ましくは0~3.0質量%の範囲、まだより好ましくは0~2.0質量%の範囲、なおより好ましくは0~1.0質量%又は0~0.5質量%の範囲、特に0~0.1質量%又は0~0.01質量%の範囲である。しかしながら、特に、本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)は、いかなる充填剤も含まない。
【0052】
好ましくは、本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)に存在する任意の顔料の量は、いずれの場合もコンポーネント(A)の総質量に基づいて、0~5.0質量%の範囲、より好ましくは0~4.0質量%の範囲、さらにより好ましくは0~3.0質量%の範囲、まだより好ましくは0~2.0質量%の範囲、なおより好ましくは0~1.0質量%又は0~0.5質量%の範囲、特に0~0.1質量%又は0~0.01質量%の範囲である。しかしながら、特に、本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)及び(B)のいずれも、いかなる顔料も含まない。本発明の意味において、このことは好ましくは、コンポーネント(A)及び(B)の両方が、顔料を含まないか、又は少なくとも本質的に含まないことを意味する。これは、少なくとも顔料が、本発明で使用されるコンポーネント(A)及び(B)のいずれにも、ならびに本発明のコーティング組成物にも、意図的に添加されないことを意味する。好ましくは、コンポーネント(A)及び(B)のそれぞれに存在する顔料の量は、いずれの場合もコンポーネント(A)又は(B)の総質量にそれぞれ基づいて、3質量%未満、より好ましくは2質量%未満、さらにより好ましくは1質量%未満、まだより好ましくは0.5質量%未満、なおより好ましくは0.1質量%未満、特に0.01質量%未満である。「顔料」という用語は、例えばDIN 55943(日付:2001年10月)から当業者には知られている。本発明の意味での「顔料」は、好ましくは、それらを取り囲む媒体(例えばコンポーネント(A)及び(B)の各々ならびに本発明の組成物)に実質的に、好ましくは完全に不溶性であり、それらの磁気的、電気的及び/又は電磁的特性のために顔料として使用することができる着色剤及び/又は物質である、粉末又はフレークの形態のコンポーネントを指す。
【0053】
好ましくは、本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)及び(B)の両方とも、透明、すなわちクリアである。好ましくは、もちろん、本発明のコーティング組成物も透明、すなわちクリアである。特に、本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)及び(B)のいずれも、顔料及び/又は充填剤、特にいかなる色及び/又は効果付与顔料及び/又は充填剤も含有しない。もちろん、同様に好ましくは、同じことが本発明のコーティング組成物にも当てはまる。
【0054】
本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)は、構成成分(a1)の他に、1つ以上のさらなる任意の構成成分を含み得る。これらのさらなる任意の構成成分の全ては、互いに異なり、さらに、構成成分(a1)とも異なる。
【0055】
本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)は、1つ以上のOH基を有する1つ以上の構成成分(a2)をさらに含んでよい。そのような構成成分は、モノマー、オリゴマー及び/又はポリマーであり得る。例としては、OH官能性ポリエステル、OH官能性ポリ(メタ)アクリレート、OH官能性(メタ)アクリルコポリマー及び/又はOH官能性ポリエーテルが挙げられる。しかしながら、好ましくは、コンポーネント(A)は、このような構成成分(a2)を含まない。
【0056】
前述のように、好ましくは、コンポーネント(A)は、リン含有難燃剤などの難燃剤を含有しない。しかしながら、任意で、本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)は、構成成分(a3)として、例えば少なくとも1つのリン含有難燃剤、特に少なくとも1つのリン酸エステルなどの少なくとも1つの難燃剤を含んでもよい。難燃剤を使用する場合、それは好ましくは液体である(1バール及び23℃において)。液体難燃剤は、最終コーティングの所望の透明性を潜在的可能に損なわないため、好ましい。難燃剤がコンポーネント(A)中に存在する場合、好ましくは、コンポーネント(A)の総質量に基づいて、0.1~30質量%、より好ましくは1~25質量%、特に5~20質量%の量でその中に存在する。30質量%より高い量は、最終コーティングの機械的特性が劣化する可能性があるため、望ましくない。難燃剤として好適なホスフェートの例は、ジフェニルクレシルホスフェートである。例えばトリエチルホスフェート、イソプロピル化トリアリールホスフェート及び2-エチルヘキシルジフェニルホスフェートのような他のホスフェートを使用することも可能である。原則として、追加的に又は代替的に、他の難燃剤、例えば、ハロゲンベースの難燃剤、例えば臭素化又は塩素化難燃剤、例えばトリス-(2-クロロイソプロピル)ホスフェートが使用されてもよい。他には、無機液体化合物、例えば液体ナトリウム水ガラスを使用することも可能である。
【0057】
本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)は、構成成分(a4)として、1つ以上の光安定剤、特に1つ以上の紫外線安定剤をさらに含み得る。例としては、例えば立体障害アミン(HALS:ヒンダードアミン光安定剤)がある。原則として、Tinuvin(登録商標)シリーズ又は他のメーカーから市販されている全ての光安定剤を使用することができる。液体光安定剤は、最終コーティングの所望の透明性を潜在的に損なわないため、好ましい。光安定剤がコンポーネント(A)中に存在する場合、好ましくは、コンポーネント(A)の総質量に基づいて、0.05~5質量%、より好ましくは0.1~3.5質量%、特に0.1~2質量%の量でその中に存在する。
【0058】
本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)は、構成成分(a5)として、1つ以上の接着促進剤をさらに含んでよい。特に、有機シランが構成成分(a5)として使用することができる。例としては、例えば(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、N-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン及び/又は(3-グリシジルオキシプロピル)トリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランが挙げられる。追加的に又は代替的に、他の接着促進剤、例えば、チタンアセチルアセトネート(TAA)及び/又はチタン-n-ブタノレート(TnBt)などのチタン酸塩が使用されてよい。構成成分(a5)がコンポーネント(A)中に存在する場合、構成成分(a5)は、好ましくは、コンポーネント(A)の総質量に基づいて、0.05~5質量%、より好ましくは0.1~3.5質量%、特に0.1~2質量%の量でその中に存在する。
【0059】
本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)は、構成成分(a6)として、消泡剤、ビス-オキサゾリジン及び/又はアルジミンのような反応性希釈剤、レオロジー添加剤、フタル酸エステルのような可塑剤、及び粘度低下剤、特に、ナフタレン誘導体及び/又はインデン-クマロン樹脂をベースとする炭化水素混合物、トール油及び菜種メチルエステル(バイオディーゼル)及び菜種油及び/又は他のエステルベースの希釈剤などの非反応性粘度低下剤、ならびにこれらの添加剤の混合物からなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含んでもよい。構成成分(a6)として使用されるこれらの異なる添加剤は、互いに異なるものである。第二級アミノ基などのアミノ基を含む少なくとも1つのビス-オキサゾリジンを、構成成分(a6)として使用することが特に好ましい。ビス-オキサゾリジンは、遊離アミノ基を含有する必要はない。第二級アミノ基などのそこに含まれる任意の遊離アミノ基は、例えば(残留)量の水との反応により、後にコンポーネント(A)内又は本発明のコーティング組成物内で、その場で形成されることが可能であり、好ましい。換言すれば、ビスオキサゾリジンは、保護された形態のアミノ基を含み得る。同じことがビス-オキサゾリジン内に任意に存在するOH-基にも当てはまる。例として、市販品のIncozol(登録商標)LVが挙げられる。少なくとも1つの構成成分(a6)がコンポーネント(A)中に存在する場合、構成成分(a6)はコンポーネント(A)の総質量に基づいて、0.05~40質量%、より好ましくは0.1~30質量%、特に0.1~20質量%の量でその中に存在するのが好ましい。具体的には、少なくとも1つの消泡剤が存在する場合、その量は、コンポーネント(A)の総質量に基づいて、好ましくは0.1~2.5質量%の範囲である。具体的には、少なくとも1つの反応性希釈剤が存在する場合、その量は、好ましくは、コンポーネント(A)の総質量に基づいて、0.1~20質量%の範囲である。具体的には、少なくとも1つのレオロジー添加剤が存在する場合、その量は、好ましくは、コンポーネント(A)の総質量に基づいて、0.1~5質量%の範囲である。具体的には、少なくとも1つの可塑剤が存在する場合、その量は、好ましくは、コンポーネント(A)の総質量に基づいて、0.1~2.5質量%の範囲である。具体的には、少なくとも1種の粘度低下剤が存在する場合、その量は、コンポーネント(A)の総質量に基づいて、0.1~20質量%の範囲である。
【0060】
本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)は、構成成分(a7)として、1つ以上の鎖延長剤をさらに含むことができる。好適な鎖延長剤は、構成成分(a1)とは異なるジアミン及び/又はトリアミンであり、好ましくは、芳香族部分を含有していない。むしろ、これらの鎖延長剤は、脂環式残基を含む脂肪族残基を有するジアミン及び/又はトリアミンである。このような鎖延長剤は、特定の処理及び最終コーティングの最終特性を調整するために使用される。ジアミン及び/又はトリアミンとして、特にダイマー(脂肪)アミン及び/又はトリマー(脂肪)アミンを使用することができ、最も好ましいのはダイマーアミンである。特に、このようなダイマーアミンの使用は、化学的チキソトロピーを導入することによって、本発明のコーティング組成物の噴霧性のさらなる改善をもたらし得る。さらに、より速い乾燥/硬化が達成される。さらに、ダイマージアミンの使用は、コーティングの強度及び耐薬品性を著しく向上させ得る。適切なジアミンの例は、Croda社のPriamine(登録商標)1073である。構成成分(a1)及び任意に存在する構成成分(a2)の他に、鎖延長剤は、コンポーネント(B)の構成成分(b1)のNCO-基と反応する。ジアミン、特にダイマーアミンなどの構成成分(a7)がコンポーネント(A)中に存在する場合、構成成分(a7)は、好ましくは、コンポーネント(A)の総質量に基づいて、0.1~20質量%、より好ましくは0.5~7.5質量%、特に1.0~5質量%の量でその中に存在する。
【0061】
本発明のコーティングシステムのコンポーネント(A)は、例えば非芳香族アミノ基を含有する構成成分及び/又は構成成分(a6)及び/又は(a7)などの構成成分(a1)とは異なる、少なくとも2つの第一級及び/又は第二級アミノ基を有する1つ以上のさらなる構成成分を含み得る。その場合、構成成分(a1)の量は、好ましくは、コンポーネント(A)中の1つ以上の他のアミノ基含有構成成分(複数可)の量よりも多い。好ましくは、コンポーネント(A)中の前記1つ以上の他のアミノ基含有構成成分(複数可)に対する構成成分(a1)の相対質量比は、少なくとも2:1の範囲、又は少なくとも3:1の範囲、又は少なくとも5:1の範囲、又は少なくとも10:1の範囲である。
【0062】
特に、構成成分(a1)は、コンポーネント(A)中に存在する唯一のアミノ基を含有する構成成分である。あるいは、構成成分(a1)は、特に、アミノ基を含有するビス-オキサゾリジン、特に2つのアミノ基を含有するビス-オキサゾリジンなどの構成成分(a6)と組み合わされて使用されることができる。
【0063】
本発明のコーティングシステムのコンポーネント(B)は、少なくとも1つの芳香族部分を含有し、少なくとも2つのイソシアネート基を有する少なくとも1つの構成成分(b1)を含む。好ましくは、構成成分(b1)は、平均して少なくとも2つのイソシアネート基を含む。好ましくは、NCO-官能価は2.0~3.0、より好ましくは2.0~2.8、特に2.0~2.5、最も好ましくは2.0超~2.2である。
【0064】
好ましくは、NCO含有量、すなわち構成成分(b1)中に存在するNCO-基の量は、構成成分(b1)の総質量に基づいて、10~35質量%の範囲、又は20~35質量%の範囲、より好ましくは15~30質量%の範囲、特に20~27.5質量%の範囲である。
【0065】
好ましくは、構成成分(b1)は、芳香族ジイソシアネートをベースとする、又は、芳香族ジイソシアネートを利用することによって調製される。本明細書における芳香族ジイソシアネートという用語は、1分子中に存在する2つのイソシアネート基が芳香環に直接結合しているイソシアネート化合物を指す。好ましい芳香族ジイソシアネートは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート及び2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、o-トルイジンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、及び3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートである。これらは、単独で、又は、その2つ以上を組み合わせて使用してもよい。特に好ましい芳香族ジイソシアネートは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート及び2,6-トリレンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1つである。4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が最も好ましい。
【0066】
構成成分(b1)内の少なくとも1つのカルボジイミド及び/又はウレトンイミン構造単位は、芳香族ジイソシアネートを脱炭酸を伴う脱炭酸縮合反応に供して、カルボジイミド単位及び/又はウレトンイミン単位を含有するイソシアネート末端の構成成分(b1)を生成する種々の方法によって形成されることができる。芳香族ジイソシアネート化合物の脱炭酸縮合反応は、通常、カルボジイミド化触媒及び/又はウレトンイミン化触媒の存在下で進行する。このような触媒の例は、1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-エチル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-2-ホスホレン-1-オキシド、及びこれらの3-ホスホレン異性体などのホスホレンオキシドを含むことができる。触媒の量は、カルボジイミド化及び/又はウレトンイミン化で使用するための芳香族ジイソシアネート化合物に対して、通常0.1~1.0質量%である。
【0067】
コンポーネント(B)中に存在する構成成分(b1)は、少なくとも1つのカルボジイミド単位及び/又はウレトンイミン単位を有する。カルボジイミド単位は、以下の構造式を有し、2つのイソシアネート基の縮合により形成されることができる。
【0068】
【化5】
【0069】
ウレトンイミン単位は以下の構造式を有し、3つのイソシアネート基の縮合により形成されることができる。
【0070】
【化6】
【0071】
好ましくは、構成成分(b1)内のカルボジイミド単位及び/又はウレトンイミン単位、特にウレトンイミン単位の量は、いずれの場合も構成成分(b1)の総質量に基づいて、4~18質量%の範囲、より好ましくは5~16質量%の範囲、特に6~14質量%の範囲、最も好ましい8~12質量%の範囲である。
【0072】
例えば、構成成分(b1)が、芳香族ジイソシアネートとして4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)をベースとする/それを利用することによって調製され、少なくとも1つのカルボジイミド単位を含有する場合、以下の構造を有する/含むことができ、式中、パラメータoは1~50の整数である。
【0073】
【化7】
【0074】
例えば、構成成分(b1)が、芳香族ジイソシアネートとして4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)をベースとする/それを利用することによって調製され、正確に1つのウレトンイミン単位を含有する場合、以下の構造を有する/含むことができる。
【0075】
【化8】
【0076】
上記のように、MDIなどの芳香族ジイソシアネートは、構成成分(b1)を調製するために使用されることができ、少なくとも1つのカルボジイミド及び/又はウレトンイミン構造単位が形成される。追加的に又は代替的に、(モノマーMDI(MMDI)の代わりに又はそれに加えて)PMDIなどのポリマー芳香族ジイソシアネートを使用することが可能である。使用されるPMDIは、好ましくは、400~5000g/molの範囲の数平均分子量(M)を有する。Mの決定は、後述する方法に従って行われる。PMDIは、好ましくは、2.6~3.0の範囲内のNCO官能価を有する。
【0077】
しかし、コンポーネント(B)の本発明で使用される構成成分(b1)は、構成成分(b1)中に少なくとも1つの構造単位(I)が存在するため、必然的にエーテルセグメントを有することになる。
【0078】
したがって、MMI及びPMDIの両方のような(b1)を調製するために使用される芳香族ジイソシアネートは、最初に(すなわち、少なくとも1つのカルボジイミド及び/又はウレトンイミン単位を形成するために縮合反応を行う前に)MMI及び/又はPMDIをOH-官能性増量剤、特にポリエーテルジオールなどのOH-官能性ポリエーテルと反応させることによって、MMI及び/又はPMDDベースのプレポリマーを調製するために供される。その結果、MMI及び/又はPMDDベースのイソシアネート官能性プレポリマーを調製することができ、これは少なくとも2つのNCO-基を有し、例えばポリエーテルセグメントを含む。例えば、MMDIはポリエーテルポリオールを使用することによって「拡張(extended)」することができ、次に得られたプレポリマーは、少なくとも1つのカルボジイミド及び/又はウレトンイミン単位を形成するために縮合反応に供される。
【0079】
好ましくは、構成成分(b1)は、少なくとも2つのイソシアネート基を有する、芳香族ジイソシアネートの、好ましくはMDIの、少なくとも1つのプレポリマー(このプレポリマーは、ポリエーテルポリオールを少なくとも1つの芳香族ジイソシアネート及び/又はそのポリマーと反応させることによって調製される)を、少なくとも1つのカルボジイミド及び/又はウレトンイミン単位の形成下で脱炭酸縮合反応に供することによって得ることができる。
【0080】
MDIプレポリマーなどのプレポリマーは、好ましくは200~75000g/molの範囲、より好ましくは220~50000g/molの範囲、特に300~35000g/mol又は350~20000g/molの範囲の数平均分子量(M)を有する。Mの決定は、後述する方法に従って行われる。MDIプレポリマーなどのプレポリマーは、好ましくは、1.9~3.0の範囲のNCO官能価を有する。
【0081】
少なくとも1つのカルボジイミド及び/又はウレトンイミン単位を含有するイソシアネート末端の構成成分(b1)を製造するために、上記脱炭酸に伴う脱炭酸縮合反応において、上記のようなMDIプレポリマーなどのプレポリマーを使用することが特に好ましい。これにより、少なくとも1つのカルボジイミド及び/又はウレトンイミン単位だけでなく、ポリエーテル単位も有する構成成分(b1)を調製することが可能である。
【0082】
構成成分(b1)は、少なくとも1つのポリエーテル部分を含む。構成成分(b1)の少なくとも1つのポリエーテル部分は、構造単位(I)であり:
【化9】
【0083】
式中、RはC~Cアルキレン残基、より好ましくはC~Cアルキレン残基、特にC~Cアルキレン残基、最も好ましくはC及び/又はCアルキレン残基であり、パラメータmは1~200の範囲、より好ましくは1~100の範囲、特に1~40の範囲、最も好ましくは1~10の範囲の整数である。
【0084】
本発明のコーティングシステムのコンポーネント(B)は、(b1)の他にさらなる構成成分を含んでよい。しかし、好ましくは、本発明のコーティングシステムのコンポーネント(B)は、構成成分(b1)以外のさらなる構成成分を含まない。構成成分(b2)のようなさらなる構成成分が存在する場合、これらは好ましくは、モノマー芳香族ジイソシアネート、例えばMDI自体、及びPMDIなどのポリマー芳香族ジイソシアネートから選択される。
【0085】
本発明のコーティングシステムのコンポーネント(B)は、例えば非芳香族NCO基を含有する構成成分などの構成成分(b1)とは異なる少なくとも2つのイソシアネート基を有する1つ以上のさらなる構成成分を含み得る。その場合、構成成分(b1)の量は、好ましくは、コンポーネント(B)中の1つ以上の他のNCO基を含有する構成成分(複数可)の量よりも多い。好ましくは、コンポーネント(B)中の前記1つ以上の他のNCO基を含有する構成成分(複数可)に対する構成成分(b1)の相対質量比は、少なくとも2:1の範囲、又は少なくとも3:1の範囲、又は少なくとも5:1の範囲、又は少なくとも10:1の範囲である。
【0086】
特に、構成成分(b1)は、コンポーネント(B)中に存在する唯一のNCO基を含有する構成成分である。
【0087】
好ましくは、構成成分(b1)内の構造単位(I)の量は、いずれの場合も、構成成分(b1)の総質量に基づいて、30質量%以下、特に25質量%以下、最も好ましくは20質量%以下である。好ましくは、構造単位(I)は、いずれの場合も、構成成分(b1)の総質量に基づいて、1~30質量%、より好ましくは1.5~25質量%、特に2~20質量%、最も好ましくは2.5~15質量%又は3.0~10質量%の量で構成成分(b1)内に存在する。
【0088】
好ましくは、少なくとも1つの構成成分(b1)は、300~60000g/molの範囲、より好ましくは400~45000g/molの範囲、特に500~35000g/mol又は600~25000g/molの範囲、最も好ましくは1000~15000g/mol又は1500~10000g/molの範囲の数平均分子量(M)を有する。Mの決定は、後述する方法に従って行われる。
【0089】
好ましくは、構成成分(b1)は、コンポーネント(B)の総質量に基づいて、80~100質量%の範囲、より好ましくは85~100質量%の範囲、さらにより好ましくは90~100質量%、まだより好ましくは95~100質量%、特に97.5~100質量%の範囲の量でコンポーネント(B)中に存在する。
【0090】
好ましくは、本発明のコーティングシステムのコンポーネント(B)は、リン含有難燃剤のような難燃剤を含まない。特に、コンポーネント(B)は、リン酸トリエチルのような有機リン酸エステルを含まない。
【0091】
好ましくは、本発明のコーティングシステムのコンポーネント(B)中に存在する任意の充填剤の量は、いずれの場合も、コンポーネント(B)の総質量に基づいて、4.0質量%を超えず、より好ましくは3.5質量%を超えず、さらにより好ましくは3.0質量%を超えず、まだより好ましくは2.5質量%を超えず、なおより好ましくは2.0質量%を超えず、特に、1.5質量%又は1.0質量%を超えない。コンポーネント(B)がいかなる充填剤も含まないことも可能であり、好ましい。本発明の意味において、これは好ましくは、コンポーネント(B)が充填剤を含まないか、又は少なくとも本質的に含まないことを意味する。これは、少なくとも充填剤が、本発明で使用されるコンポーネント(B)及び本発明のコーティング組成物に意図的に添加されないことを意味する。
【0092】
本発明のさらなる主題は、コーティングシステムのコンポーネント(A)及び(B)を互いに混合することによって得ることができるコーティング組成物である。
【0093】
本発明のコーティングシステム及びその好ましい実施形態に関連して本明細書に上記された全ての好ましい実施形態はまた、本発明のコーティング組成物の好ましい実施形態でもある。
【0094】
好ましくは、本発明のコーティング組成物は、シーラントである。
【0095】
好ましくは、本発明のコーティング組成物中に存在する任意の充填剤の量は、いずれの場合も、コーティング組成物の総質量に基づいて、0~4.0質量%の範囲、より好ましくは0~3.5質量%の範囲、さらにより好ましくは0~3.0質量%の範囲、まだより好ましくは0~2.5質量%の範囲、なおより好ましくは0~2.0質量%又は0~1.5質量%の範囲、特に0~1.0質量%又は0~0.5質量%の範囲である。
【0096】
好ましくは、得られたコーティング組成物は、噴霧可能である。
【0097】
好ましくは、コーティング組成物は、コンポーネント(A)及び(B)を、5:1~1:2の範囲の質量比(コンポーネント(A)/コンポーネント(B))で混合することにより得ることができる。より好ましくは、混合は、4.5:1~1:1.5の範囲の質量比で、さらにより好ましくは4:1~1:1.1の範囲の質量比で、特に3.5:1~1:1の範囲の質量比で、最も好ましくは3.25:1~1.1:1の範囲の質量比で行われる。
【0098】
混合は、衝突混合原理を利用することによって、向流注入技術を用いた高圧装置で行われることが好ましい。
【0099】
コンポーネント(A)及び(B)の混合は、特に以下のように行われる:
別々の容器に配置されているコンポーネント(A)及び(B)は、プロポーショニングポンプを介して、ブロックヒーターなどの発熱要素に別々に移送される。コンポーネントの移送は、予熱されたパイプを介して、スプレーガン内の衝突混合チャンバへ行われて達成される。対応するボアを備えたこのような混合チャンバは、コンポーネント(A)及び(B)の体積流を1秒の分数の間に最大の乱流で均質に混合できるように、特殊な形状で製造されている。この目的のために、例えば、互いから数百ナノメートルでオフセットされたギャップが使用される。これは、極めて厳密な製造公差で達成することができる。このようにして生成された反応混合物は、出口ギャップを介して前方に排出され、燃料タンク表面などの基材表面に噴霧される。このことは、好ましくは、静的なミキサー/混合ロッドはこの混合システムに使用されないことを意味する。スプレーガンのトリガーが引かれると、混合チャンバ内のコンポーネント(A)及び(B)は、サブ秒以内に最大の乱流で、高温高圧で混合される。好ましくは、コンポーネント(A)は、95~170バール、特に100超~165バールの範囲の圧力で混合される。この混合は、好ましくは、70~80℃の範囲の温度で行われる。好ましくは、コンポーネント(B)は、80~140バール、特に85超~130バールの範囲の圧力で混合される。この混合は、好ましくは、50~65℃の範囲の温度で行われる。反応性混合物は、次に、ガンのオリフィスで爆発的に放出される。ガンのトリガーが解除されると、混合チャンバの開口部は機械的にブロックされ、混合プロセスは中断される。針状のボルトで混合チャンバを閉じることができるため、機械的な自己洗浄効果を有する。静的ミキサーの原理に対するこの混合技術の基本的な利点は、混合モジュール又は混合チャンバを交換することなく、いつでも短い作業中断が実質的に可能であることである。
【0100】
この混合原理/システムは、WO2017/172906A2に記載されている圧縮空気によって作動するSulzer混合システム(静的なミキサー/混合ロッドを有する)と比較して特に有利である。Sulzer混合システムの欠点は、噴霧が圧縮空気によって行われるため、圧縮空気の使用により、多くの非常に小さな気泡が、噴霧プロセス中にシーラント中に導入されることである。これに対して、向流注入技術によって高圧システムで混合される場合、シーラントには本質的に気泡がなく、つまり追加の気泡がシーラントに導入/注入されることはない。さらに、Sulzer混合システムの使用は、カートリッジと混合ロッドがプラスチック製であり、使用後に廃棄しなければならないため、大量のプラスチック廃棄物を生じる。これに対して、上述した混合システムでは、プラスチック廃棄物を生成しない。
【0101】
コンポーネント(A)及び(B)を混合し、ならびに得られた本発明のコーティング組成物を噴霧するために適した混合技術及びシステムは、例えば、WO2018/050482A1及びEP1264640B1に開示されている。
【0102】
本発明の使用方法、本発明の方法及び本発明のコーティングされた基材
本発明のさらなる主題は、シーラントとしての本発明のコーティング組成物の使用方法、特に、好ましくはプレコートされた基材上に、好ましくは、プレコートされた燃料タンクの外部に、特に、好ましくはプレコートされた航空機用燃料タンクの外部に、バリアコーティングを提供するための使用方法である。
【0103】
本発明のコーティングシステム及び本発明のコーティング組成物ならびにその好ましい実施形態に関連して本明細書に上記された全ての好ましい実施形態はまた、本発明の使用方法の好ましい実施形態でもある。
【0104】
本発明のさらなる主題は、基材の、好ましくは燃料タンクの外部の、特に航空機用燃料タンクの外部の好ましくはプレコートされた表面を密封する方法であって、少なくともステップ(1)、すなわち
(1)基材の、好ましくは燃料タンクの外部の、特に航空機用燃料タンクの外部の、好ましくはプレコートされた表面に、本発明のコーティング組成物を塗布すること、好ましくは噴霧及び/又はブラッシングすること、特に噴霧すること、
を含む。
【0105】
本発明のコーティングシステム及び本発明のコーティング組成物及び本発明の使用ならびにその好ましい実施形態に関連して本明細書に上記された全ての好ましい実施形態はまた、本発明の使用の好ましい実施形態でもある。
【0106】
これは、2K-低圧又は2K-高圧投与システムを備えた2K-圧縮空気サポートカートリッジ装置で行うことができる。手動で行われることもできる。好ましくは、コンポーネント(A)及び(B)を混合するために使用される同じ装置、すなわち、向流注入技術で高圧装置(>150バール)を利用し、及びさらに衝突混合原理を利用してコンポーネント(A)及び(B)を混合するために使用される同じ装置が、ステップ(1)のために使用される。
【0107】
本発明のコーティング組成物は、航空機の胴体内に設置された燃料タンクの外部に好ましくは噴霧される。燃料タンクは、通常、ポリサルファイドシーラントなどの内部シーラントによって内部で密封されている。追加保護として、内部シールに欠陥が生じた場合、外部に塗布された本発明のシーラントは、燃料タンクが航空機用燃料タンクである場合に、燃料又は燃料蒸気がタンクから漏れて貨物エリア及び/又は乗客エリアに入るのを防止する。さらに、本発明のシーラントは燃料に対する耐性がある。さらに、本発明のシーラントは、タンク表面の亀裂及び/又は損傷が、外部から検出され、修理されるように、透明である。本発明のシーラントは修理のために比較的容易に除去することができる。本発明シーラントは、補修が容易に行われるように、様々な基材、例えばエポキシ塗料、アルミニウム及びアルミニウム合金、ポリサルファイドシーラントなどの他のシーラント、ポリウレタン材料、及びそれ自体によく接着する。
【0108】
好ましくは、本発明の方法は、さらに硬化ステップ(2)、すなわち
(2)塗布された、特に噴霧された、本発明のコーティング組成物を、周囲温度(18~23℃)で0.5~5時間、好ましくは1~4時間、硬化させること、
を含む。
【0109】
好ましくは、本発明のコーティング組成物は、15~50μmの範囲、特に20~45μmの範囲の乾燥層厚で基材の表面に塗布される。
【0110】
本発明のさらなる主題は、本発明の方法によって得ることができる、密封された基材、例えば密封された燃料タンク、好ましくは外部シールを有する燃料タンク、特に外部シールを有する航空機用燃料タンクである。
【0111】
本発明のコーティングシステム及び本発明のコーティング組成物及び本発明の使用方法ならびに本発明の方法ならびにその好ましい実施形態に関連して本明細書に上記された全ての好ましい実施形態はまた、本発明のコーティングされた基材の好ましい実施形態でもある。
【0112】
使用される基材は、好ましくは金属基材、特にアルミニウム及び/又はアルミニウム合金基材である。しかしながら、炭素繊維複合材料などの繊維ベースの複合材料も基材として使用することができる。好ましくは、これらの基材は、燃料タンク、特に航空機産業のための燃料タンクである。それらは、本発明のシーラントをそれらに塗布する前に、例えばエポキシベースのコーティングで、前処理及び/又はプレコートすることに供されてもよい。好ましくは、使用される基材は、本発明のコーティング組成物がそれに塗布される前に、エポキシベースのコーティング層などの少なくとも1つの好ましくは硬化したコーティング層を有する。本発明のコーティング組成物がそれに塗布される前に、エポキシベースのコーティング層などのそのような少なくとも1つの好ましくは硬化したコーティング層が基材上に存在する場合、基材はプレコートされた基材である。
【0113】
方法
1.固形分
固形分(不揮発性含有量)は、DIN EN ISO 3251:2008-06により、105℃、60分で決定される。
2.VOC含有量
揮発性有機化合物(VOC)の含有量は、ASTM D3960 (05-2018)により決定される。
3.乾燥時間(硬化時間)
乾燥時間は、連邦試験方法標準規格 141D、方法4061.3(2001年3月22日)に開示されているように決定される。
4.硬度
硬度、特にショアA硬度は、タイプAデュロメータを用いてASTM D 2240:2015に従って測定される。
5.剥離強度
剥離強度はASTM B571-18に従って測定される。
6.引張強度と伸び
引張強度と伸びは、ASTM D 412:2016に従って測定される。
7.粘度
粘度は、SAEインターナショナルのAS 5127/1 Rev.Cに従って、スピンドル5を備えたRVFブルックフィールド粘度計を使用して、20rpmで測定される。
8.低温柔軟性試験
低温柔軟性試験は、SAEインターナショナルのAS 5127/1 Rev.Cに記載されているように実施される。
9.圧力破断試験
圧力破断試験は、SAEインターナショナルのAS 5127/1 Rev.Cに従って実施される。
10.曲げ試験
曲げ試験は、ASTM D522-17、方法Aに従って実施される。
11.数平均分子量
数平均分子量(M)は、溶離液としてテトラヒドロフランを使用したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、DIN 55672-1(日付:2007年8月)に基づくポリスチレン標準を使用して決定される。カラム材料としては、スチレン-ジビニルベンゼンコポリマーが使用される。
【実施例
【0114】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。以下では、特に明記されていない限り、表中に示される全ての量は、質量部である。
【0115】
1.本発明で使用されるコンポーネント(A)及び(B)の調製
1.1 表1には、コンポーネント(A)の調製に使用した全構成成分を示している。使用された構成成分は全て無溶媒である。ジイソプロピルナフタレン(異性体混合物)は、沸点が290~300℃であるため、VOC含有量に寄与しない。Versalink(登録商標)P-1000はEvonik社の商品で、オリゴマージアミン、すなわちポリ(1,4-ブタンジオール)ビス(4-アミノベンゾエート)であり、室温(23℃)で液体(アミン当量質量:575-625)である。使用される反応性希釈剤、HALS、紫外線吸収剤I及びII、消泡剤I及びII、脱泡剤I及びIIならびにレオロジー添加剤I及びIIは、いずれの場合も市販の製品である。
【0116】
1.2 表1には、コンポーネント(B)の調製に使用した構成成分も示している。市販の無溶媒製品、すなわちSUPRASEC(登録商標)2029が使用されており、これはHuntsman社の商品で、ポリエーテル部分を含み、平均2.1個のNCO-基(NCO含有量:24.5質量%)を有するウレトンイミン修飾MDIである。
【0117】
2.本発明のコーティング組成物の調製、その特性及びそこから得られるコーティングの特性の調査
例示的なコーティング組成物1~5(実施例1~5)は、表1に記載されたコンポーネント(A)及び(B)から調製した。100質量部のコンポーネント(A)は、それぞれの場合において、33質量部のコンポーネント(B)と混合した。次いで、コンポーネント(A)及び(B)から得られたコーティング組成物を、23℃で基材に噴霧した。
【0118】
混合及び噴霧は次のように行った:それぞれのコンポーネント(A)及び(B)は、プロポーショニングポンプを介してブロックヒーターに別々に移送した。コンポーネント(A)及び(B)の移送は衝突混合チャンバへの加熱されたパイプを介してスプレーガンへと行われて達成した。スプレーガンのトリガーが引かれると、混合チャンバではコンポーネント(A)及び(B)は、サブ秒以内で最大乱流によって、70~80℃で高圧(>150バール)で混合した。その後、反応性混合物をガンの開口部から爆発的に放出した。ガンのトリガーが解放されると、混合チャンバの開口部を機械的にブロックし、混合プロセスは中断する。
【0119】
本発明で使用されるコンポーネント(A)は、本発明で使用されるコンポーネント(B)と反応された場合、非常に良好でユニークなゲル化及び硬化特性を示す。驚くべきことに、長いポットライフと急速硬化を観察した。対照的に、コンポーネント(A)が比較的使用されている構成成分(b1)のみのMDIと反応させた場合(すなわち、非修飾MDIと反応させた場合)、硬化の効果が低く(遅く)、高い粘着性が観察されることが実験的に見い出されている。さらに、そのような硬化した材料の機械的特性は、本発明で使用されるコンポーネント(B)を利用する本発明のコーティングシステムに比べて劣る。
【0120】
基材に塗布されるコーティング組成物は、シーラントを表す。基材として、航空機の燃料タンクが使用されている。このタンクはアルミニウム製で、MIL-DTL-5541、クラス1Aに従って前処理され、その後、市販のエポキシベースのコーティングでコーティングされている。さらに、炭素繊維をベースにした複合基材を使用し、これも市販のエポキシベースのコーティングでコーティングしている。
【0121】
塗布後の硬化時間(乾燥時間)は、いずれの場合も2時間であった。この2時間後に硬化が完了した。硬化は、23℃で行った。
【0122】
全ての本発明のシーラントは、ASTM D522 方法Aによる曲げ試験に合格した。
【0123】
実施例1、2及び5のシーラントについて、以下の特性を決定した:
混合10分後に測定されたシーラントの粘度は、50~150Pa・sであった。
【0124】
23℃での60~90ショアAの硬度が、16~24時間で達成した。この時間の後、粘着性を観察しなかった。最終的な硬度は81ショアAであった(実施例1)。
【0125】
23℃と60℃で7日間燃料と水に保管した後でさえ、剥離強度は1インチ幅あたり5~25ポンドであった。
【0126】
比重は1.14g/cm(範囲:1.0~1.30g/cm)であった(実施例1)。
【0127】
シーラントは、飛行高度で発生しうる低温下でさえも一定の柔軟性を示さなければならない。これは、AS 5127/1 Rev.Cに従った-54℃での低温柔軟性試験によって検証されている。例示したシーラントは、この試験に合格している。シーラントは、いずれの場合も25~38μmの層厚で塗布されている。
【0128】
シーラントは、いずれの場合も透明であり、タンク表面の欠陥はシーラントを通して見ることができる。
【0129】
シーラントは、RT(AS5127/1 Rev.Cに従った圧力破断)において30psiの耐圧性を有する(実施例1)。
【0130】
【表1】
【0131】
3.比較に使用されるコンポーネント(A)及び(B)ならびに比較例1及び2によるコーティング組成物の調製と得られたコーティングの特性の調査
3.1 表2には、比較に使用されるコンポーネント(A)を調製するために使用される全ての構成成分を示している。いずれの場合も、コンポーネント(A)は、相当量の、硫酸バリウム、タルカン、ヒュームドシリカ、三水酸化アルミニウムなどの充填剤を含有した。使用される脱泡剤、レオロジー添加剤、分散剤及び可塑剤は、いずれの場合も市販されている製品である。
【0132】
表2には、比較に使用されるコンポーネント(B)を調製するために使用される構成成分も示している。混合物M1は、SUPRASEC(登録商標)2029、NCO-基を含有するMDIプレポリマー及び安定剤の混合物である。
3.2 比較コーティング組成物1及び2を、表2に示すコンポーネント(A)及び(B)から調製した。比較例1を調製するために、100質量部のコンポーネント(A)に20質量部のコンポーネント(B)を混合した。比較例2を調製するために、100質量部のコンポーネント(A)に10質量部のコンポーネント(B)を混合した。次に、コンポーネント(A)及び(B)から得られたコーティング組成物を基材に噴霧した。
【0133】
塗布方法は、項目2で詳細に説明されているとおりに実施した。この方法によって、それぞれの硬化したコーティングを得ることができる。
3.3 比較コーティング組成物1及び2から得られたコーティングの特性を調査し、本発明のコーティング組成物1、2及び5から得られたコーティングと比較した。
【0134】
表3から、かなりの量の充填剤を含有する比較例1及び2では、本発明の実施例1、2及び5と比較して不十分な引張強度しか達成されないことが分かる。比較例1に関しては、さらに不十分な伸びしか達成されていない。
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
4.さらなる比較及び発明に使用されるコンポーネント(A)及び(B)ならびにこれらから得られるコーティング組成物の調製、ならびに得られるコーティングの特性の調査
4.1 表4には、さらなる比較及び発明に使用されるコンポーネント(A)及び(B)を調製するために使用される全ての構成成分を示している。例示的なコーティング組成物6(実施例6)及び比較コーティング組成物3、4、5及び6(比較例3~6)を、表4に示されるこれらのコンポーネント(A)及び(B)から調製した。
【0138】
反応性希釈剤、紫外線吸収剤I及びII、消泡剤I、ならびにレオロジー添加剤Iは、いずれの場合も市販の製品である。Masterseal(登録商標)M800 PTBは、市販の製品Masterseal(登録商標) M800の硬化剤コンポーネントであり、12質量%のNCO-基含有量を有するMDIベースのプレポリマーである。Masterseal(登録商標)M689 PTBは、市販の製品Masterseal(登録商標)M689の硬化剤コンポーネントであり、15質量%のNCO-基含有量を有するMDIベースのプレポリマーである。Lupranat(登録商標)M20Rは、31.5質量%のNCO-基含有量を有する市販の硬化剤(ポリマーMDI)である。Lupranat(登録商標)M70Rは、31.5質量%のNCO-基含有量を有する市販の硬化剤(ポリマーMDI)でもある。
【0139】
実施例6の場合、100質量部のコンポーネント(A)は、33質量部のコンポーネント(B)と混合した。比較例3の場合、(A)と(B)の混合質量比は、100:66であった。比較例4の場合、(A)と(B)の混合質量比は100:53であった。比較例5及び6のそれぞれの場合、(A)と(B)の質量混合比は100:25であった。
【0140】
次いで、コンポーネント(A)及び(B)から得られた各コーティング組成物を、23℃で基材上に手動で塗布した。項目2.に概説されている基材を使用した。
【0141】
【表4】
【0142】
4.2 実施例6、比較例3~6から得られたコーティングの特性、ならびに組成物自体の特性を調査した。表5から、比較例3~6は、特に、本発明の実施例6と比較して不十分な引張強度しかもたらさないことが分かる。さらに、本発明の実施例6は、より短いゲル化時間をもたらし、これは有利である。ゲル化時間は、コンポーネント(A)及び(B)を混合した後に得られる組成物の粘度が室温(23℃)で15000mPasの値に達するまでの時間として定義され、ここで粘度は「方法」のセクションに開示される方法に従って測定される。
【0143】
【表5】
【国際調査報告】