(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-24
(54)【発明の名称】酵母細胞、ならびにE8,E10-ドデカジエニル補酵素A、コドレモンおよびそれらの誘導体の産生方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/16 20060101AFI20230216BHJP
C12P 7/04 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
C12N1/16 ZNA
C12P7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538148
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2020086975
(87)【国際公開番号】W WO2021123128
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522160620
【氏名又は名称】バイオフェロ エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ボロディナ,イリナ
(72)【発明者】
【氏名】ホルケンブリンク,カリナ
(72)【発明者】
【氏名】ロフステッド,クリステル
(72)【発明者】
【氏名】ディング,バオジアン
(72)【発明者】
【氏名】ウェンニング,レオニー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AC09
4B064CA06
4B064DA11
4B065AA72X
4B065AA73X
4B065AA78X
4B065AA79X
4B065BA22
4B065CA47
(57)【要約】
本発明は、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A、コドレモン(E8,E10-ドデカジエン-1-オール)、および任意によりその誘導体E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールの産生のために操作された酵母細胞に関する。E8,E10-ドデカジエニル補酵素A、コドレモン(E8,E10-ドデカジエン-1-オール)、および任意によりその誘導体E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールを産生するための方法も提供される。そのような酵母細胞を得るために有用な核酸構築物もまた提供される。
【選択図】1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
E8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生できる酵母細胞であって、12の炭素鎖長を有する脂肪アシルCoA中に1つ以上の二重結合を導入できる少なくとも1つの異種デサチュラーゼを発現し、これにより前記脂肪アシルCoAを不飽和脂肪アシルCoAに変換し、前記不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部が、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)であり、
a)前記少なくとも1つのデサチュラーゼが、Cpo_CPRQ(配列番号2)、または配列番号2に対し少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、例えば少なくとも89%など、例えば少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%の同一性などの、それに対し少なくとも80%の同一性を有するその機能的バリアントであり、
b)前記少なくとも1つのデサチュラーゼが、少なくとも2つのデサチュラーゼであり、前記2つのデサチュラーゼの少なくとも1つが、Cpo_CPRQ(配列番号2)、または配列番号2に対し少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%の同一性などの、それに対し少なくとも80%の同一性を有するその機能的バリアントであり、および他のデサチュラーゼが、Z9-12デサチュラーゼなどの、12の炭素鎖長を有する脂肪アシルCoA中に少なくとも1つの二重結合を導入できるデサチュラーゼである、
酵母細胞。
【請求項2】
前記少なくとも1つのデサチュラーゼが、少なくとも2つのデサチュラーゼであり、および前記他のデサチュラーゼが、Cpo_NPVE(配列番号67)、Cpo_SPTQ(配列番号69)および配列番号67または配列番号69に対し少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%の同一性などの、それらに対し少なくとも80%の同一性を有するその機能的バリアントから選択される、請求項1に記載の酵母細胞。
【請求項3】
ブラケスレア、カンジダ、クリプトコッカス、クンニンハメラ、リポマイセス、モルティエラ、ケカビ、フィコマイセス、フィチウム、ロドスポリディウム、ロドトルラ、トリコスポロン、サッカロミセスおよびヤロウイアから選択される属に属し、任意によりブラケスレア・トリスポラ(Blakeslea trispora)、カンジダ・プルチェリマ(Candida pulcherrima)、C. カンジダ・レブカウフィ(Candida revkaufi)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、クリプトコッカス・カルバタス(Cryptococcus curvatus)、クンニンハメラ・エキヌラタ(Cunninghamella echinulata)、C.エレガンズ(C.elegans)、C.ジャポニカ(C.japonica)、リポマイセス・スターキー(Lipomyces starkeyi)、L.リポフェラス(L.lipoferus)、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)、M.イザベリナ(M.isabellina)、M. ラマニアナ(M.ramanniana)、M. ビナセア(M.vinacea)、M. シルシネロイデス(M.circinelloides)、フィコマイセス・ブラケスレアヌス(Phycomyces blakesleanus)、フィチウム・イレギュラレ(Pythium irregulare)、ロドスポリディウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)、ロドトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis)、R.グラシリス(R.gracilis)、R.グラミニス(R.graminis)、R.ムチラギノーザ(R.mucilaginosa)、R.ピニコーラ(R.pinicola)、トリコスポロン・プランズ(Trichosporon pullans)、T.クタネウム(T.cutaneum)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)から選択される種に属し、好ましくはヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)またはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である、先行請求項のいずれか一項に記載の酵母細胞。
【請求項4】
E8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生でき、前記不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部を不飽和脂肪アルコールに変換できる少なくとも1つの異種脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.84)をさらに発現し、前記脂肪アシルCoAレダクターゼが、前記E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)の少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換できる、先行請求項のいずれか一項に記載の酵母細胞。
【請求項5】
前記デサチュラーゼが、S85A変異などの、85位に変異を有するCpo_CPRQの変異体である、かつ/または前記少なくとも1つの異種デサチュラーゼが、配列番号2に示されるCpo_CPRQおよびS85A変異などの85位に変異を有するCpo_CPRQの変異体などの、少なくとも2つの異なる異種デサチュラーゼである、先行請求項のいずれか一項に記載の酵母細胞。
【請求項6】
前記脂肪アシルCoAレダクターゼが、Ase_FAR(配列番号10)、Aip_FAR(配列番号61)、Hs_FAR(配列番号71)、Has_FAR(配列番号73)、Hv_FAR(配列番号75)、Har_FAR(配列番号12)、Cpo_FAR(配列番号76)およびそれらに対し少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%の同一性などの、それらに対し少なくとも80%の同一性を有するそれらの機能的バリアントからなる群から選択され、任意により前記脂肪アシルCoAレダクターゼが、198位または413位に変異、好ましくはT198A変異またはS413A変異を有するなどの、Ase_FARの変異体である、請求項4または5に記載の酵母細胞。
【請求項7】
以下の:
-オオタバコガ由来のシトクロムb5などの、鱗翅目由来のシトクロムb5などの、異種シトクロムb5、好ましくは配列番号4に示されるシトクロムb5HarCyb5またはそれに対し少なくとも85%など、少なくとも90%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%の同一性などの、それに対し少なくとも80%の同一性を有するそれらの機能的バリアントを発現すること;
-オオタバコガなどの、鱗翅目からのシトクロムb5レダクターゼなどの、異種シトクロムb5レダクターゼ(EC1.6.2.2)を発現することであって、好ましくは前記シトクロムb5レダクターゼが、配列番号24に示されるオオタバコガ由来のシトクロムb5レダクターゼまたはそれに対し少なくとも85%など、少なくとも90%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%の同一性などの、それに対し少なくとも80%の同一性を有するそれらの機能的バリアントである、発現すること;
-Vitreoscilla stercoraria由来のヘモグロビンなどの、ヘモグロビン、好ましくは配列番号6に示されるVitreoscilla stercoraria由来のヘモグロビンまたは、それに対し少なくとも85%など、少なくとも90%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%の同一性などの、それに対し少なくとも80%の同一性を有するそれらの機能的バリアントを発現すること;
-エロンガーゼをコードするかつエロンガーゼ活性の部分的または完全な喪失をもたらすELO1遺伝子(配列番号13)の変異などの、Elo1活性の部分的または完全な喪失をもたらす1つ以上の遺伝子の変異を含むことであって、好ましくは前記変異が、欠失である、含むこと;
-チオエステラーゼをコードするかつYAL10_F14729g遺伝子(配列番号19)の変異、YALI0_E18876g遺伝子(配列番号54)の変異、またはYALI0_D03597gの変異(配列番号55)などの、チオエステラーゼ活性の部分的または完全な喪失をもたらす1つ以上の遺伝子の変異を含むことであって、好ましくは前記変異が、欠失である、含むこと;
-Hfd1、Hfd2、Hfd3、Hfd4、Fao1およびPex10の少なくとも1つの低下された活性をもたらす少なくとも1つの変異を含むこと、またはそれらに対し少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%の同一性などの、それらに対し少なくとも80%の同一性を有する少なくとも1つのタンパク質の低下された活性をもたらす1つの変異を有すること;
-改変ケトンシンターゼドメインを有する脂肪アシルシンターゼバリアントを発現することであって、前記脂肪アシルシンターゼバリアントが、123位での変異、好ましくはL123V変異を有する変異体Fas1、または1220位での変異、好ましくはI1220FまたはI1220W変異を有する変異体Fas2などのFas1のバリアント(配列番号16)またはFas2(配列番号18)のバリアントである、発現すること;
-異種チオエステラーゼなどのチオエステラーゼを発現することであって、任意により配列番号33に示されるCuphea palustris由来のチオエステラーゼに対し、配列番号57に示されるクフェア・フッケリアナ由来のチオエステラーゼに対し、配列番号35に示されるクスノキ由来のチオエステラーゼに対し、または配列番号26に示される大腸菌由来のチオエステラーゼに対し少なくとも80%の同一性を有するチオエステラーゼなどの、前記チオエステラーゼが、高レベルで発現され、好ましくは前記チオエステラーゼが、配列番号35に示されるクスノキ由来のチオエステラーゼに対し、または配列番号26に示される大腸菌由来のチオエステラーゼに対し少なくとも80%の同一性を有する、発現すること;
-配列番号59またはそれに対し少なくとも80%の同一性を有するその相同体などの、短縮型脂肪アシルシンターゼおよび短縮型チオエステラーゼの融合タンパク質、を発現すること、
の1つ以上をさらに有する、先行請求項のいずれか一項に記載の酵母細胞。
【請求項8】
Hfd1、Hfd2、Hfd3、Hfd4、Fao1、GPATおよびPex10の少なくとも1つの低下された活性をもたらす少なくとも1つの変異をさらに含む、またはそれらに対し少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%の同一性などの、それらに対し少なくとも80%の同一性を有する少なくとも1つのタンパク質の低下された活性をもたらす少なくとも1つの変異を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の酵母細胞。
【請求項9】
少なくとも0.6mg/Lなど、少なくとも0.7mg/Lなど、少なくとも0.8mg/Lなど、少なくとも0.9mg/Lなど、少なくとも1mg/Lなど、少なくとも1.5mg/Lなど、少なくとも2.5mg/Lなど、少なくとも5.0mg/Lなど、少なくとも10mg/Lなど、少なくとも15mg/Lなど、少なくとも20mg/Lなど、25mg/Lなど、少なくとも50mg/Lなど、少なくとも100mg/Lなど、少なくとも250mg/Lなど、少なくとも500mg/Lなど、少なくとも750mg/Lなど、少なくとも1g/Lなど、少なくとも2g/Lなど、少なくとも3g/Lなど、少なくとも4g/Lなど、少なくとも5g/Lなど、少なくとも6g/Lなど、少なくとも7g/Lなど、少なくとも8g/Lなど、少なくとも9g/Lなど、少なくとも10g/Lなどのまたはそれより大きい、少なくとも0.5mg/Lの力価有するE8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生できる、先行請求項のいずれか一項に記載の酵母細胞。
【請求項10】
前記E8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエニルアセテートに変換できるアセチルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.84)をさらに発現し、これによりE8,E10-ドデカジエニルアセテートを産生でき、好ましくは前記アセチルトランスフェラーゼが、前記酵母細胞から発現される異種アセチルトランスフェラーゼ(AcT)または前記酵母細胞から過剰発現される天然アセチルトランスフェラーゼであり、好ましくは前記アセチルトランスフェラーゼが、Sc_Atf1(配列番号37)またはSc_Atf1(配列番号37)に対し少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%の同一性などの、それに対し少なくとも80%の同一性を有するその機能的バリアントである、先行請求項のいずれか一項に記載の酵母細胞。
【請求項11】
前記E8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエナールに変換できるアルデヒド形成脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.50)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.2)、および/または脂肪アルコールオキシダーゼ(EC1.1.3.20)をさらに発現する、先行請求項のいずれか一項に記載の酵母細胞。
【請求項12】
さらに、
i)1つ以上の天然アシルCoAオキシダーゼの低下された活性をもたらす1つ以上の変異を有し、かつ
ii)脂肪アシルCoAを酸化できる少なくとも1つのアシルCoAオキシダーゼを含む酵素の少なくとも1つの群を発現し、前記酵素の前記群が、第1の炭素鎖長Xの脂肪アシルCoAを第2の炭素鎖長X’を有する短縮された脂肪アシルCoAに短縮でき、式中、X’≦X-2であり、好ましくは、X’=12である、
先行請求項のいずれか一項に記載の酵母細胞。
【請求項13】
CroZ11デサチュラーゼ(配列番号63)またはCpaE11デサチュラーゼ(配列番号65)、または配列番号63もしくは配列番号65に対し少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%の同一性などの、少なくとも80%の同一性を有するそれらの機能的バリアントなどの、炭素鎖長Xの前記脂肪アシルCoA中に少なくとも1つの二重結合を導入できるデサチュラーゼをさらに発現する、先行請求項のいずれか一項に記載の酵母細胞。
【請求項14】
前記酵母細胞中でE8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生するための方法であって、前記酵母細胞を提供するステップと培地中で前記酵母細胞をインキュベートするステップを含み、前記酵母細胞が、
i)12の炭素鎖長を有する脂肪アシルCoA中に1つ以上の二重結合を導入し、これにより前記脂肪アシルCoAを不飽和脂肪アシルCoAに変換できる少なくとも1つの異種デサチュラーゼであって、前記不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部が、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)であり;
a)前記少なくとも1つのデサチュラーゼが、Cpo_CPRQ(配列番号2)、または配列番号2に対し少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%の同一性などの、それに対し少なくとも80%の同一性を有するその機能的バリアントであり、または
b)前記少なくとも1つのデサチュラーゼが、少なくとも2つのデサチュラーゼであり、前記2つのデサチュラーゼの少なくとも1つが、Cpo_CPRQ(配列番号2)、または配列番号2に対し少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%の同一性などの、それに対し少なくとも80%の同一性を有するその機能的バリアントであり、かつ他のデサチュラーゼが、Z9-12デサチュラーゼなどの、炭素鎖長12を有する脂肪アシルCoA中に少なくとも1つの二重結合を導入できるデサチュラーゼ、である;
少なくとも1つの異種デサチュラーゼ
および
ii)任意による前記不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部を不飽和脂肪アルコールに変換できる少なくとも1つの異種脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.84)であって、前記脂肪アシルCoAレダクターゼが、前記E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)の少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換できる、少なくとも1つの脂肪アシルCoAレダクターゼ、
を発現し、
これによりE8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生する、方法。
【請求項15】
前記E8,E10-ドデカジエニル補酵素Aをトリアシルグリセリドなどの脂質または遊離脂肪酸に変換するステップ、前記脂質または遊離脂肪酸を回収するステップおよび前記脂質または遊離脂肪酸をE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記E8,E10-ドデカジエン-1-オールを回収するステップをさらに含み、
好ましくは前記酵母細胞が、請求項1~13のいずれか一項に記載されるとおりである、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
アセチルトランスフェラーゼの発現によりまたは化学変換により前記E8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエニルアセテートに変換し、それによりE8,E10-ドデカジエニルアセテートをさらに産生するステップをさらに含み、かつ任意により前記E8,E10-ドデカジエニルアセテートを回収するステップをさらに含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記E8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエナールに変換できるアルデヒド形成脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.50)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.2)、および/または脂肪アルコールオキシダーゼ(EC1.1.3.20)の発現により、または化学変換により前記E8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエナールに変換し、それによりE8,E10-ドデカジエナールをさらに産生するステップをさらに含み、かつ任意により前記E8,E10-ドデカジエナールを回収するステップをさらに含む、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記培地が、培養温度で培養培地中などの水溶液中のその雲濃度に等しいまたはその濃度を超える量で抽出剤を含み、前記抽出剤が、消泡剤などの非イオン性エトキシル化界面活性剤、好ましくはポリエチレンポリプロピレングリコール、ポリエーテル分散液の混合物、およびシメチコンなどのポリエチレングリコールモノステアレート、脂肪アルコールアルコキシレート、ポリエトキシル化界面活性剤ならびにエトキシル化およびプロポキシル化C
16~C
18アルコールベースの消泡剤ならびにそれらの組み合わせを含む消泡剤から選択されるポリエトキシル化界面活性剤である、請求項14~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記培地が、少なくとも100%など、少なくとも150%など、少なくとも200%など、少なくとも250%など、少なくとも300%など、少なくとも350%など、少なくとも400%など、少なくとも500%など、少なくとも750%など、少なくとも1000%などの、またはそれより多い、少なくとも50%その雲濃度より多い量で前記抽出剤を含み、かつ/または前記培養培地が、その雲濃度の少なくとも3倍など、その雲濃度の少なくとも4倍など、その雲濃度の少なくとも5倍など、その雲濃度の少なくとも6倍など、その雲濃度の少なくとも7倍など、その雲濃度の少なくとも8倍など、その雲濃度の少なくとも9倍など、その雲濃度の少なくとも10倍など、その雲濃度の少なくとも12.5倍など、その雲濃度の少なくとも15倍など、その雲濃度の少なくとも17.5倍など、その雲濃度の少なくとも20倍など、その雲濃度の少なくとも25倍など、その雲濃度の少なくとも30倍などの、その雲濃度の少なくとも2倍の量で前記抽出剤を含み、前記雲濃度が、好ましくは培養温度で、前記培地中で測定される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記E8,E10-ドデカジエニル補酵素Aを脂質または遊離脂肪酸に変換するステップをさらに含み、かつ前記酵母細胞により産生される前記脂質または前記遊離脂肪酸、前記E8,E10-ドデカジエン-1-オール、ならびに任意により前記E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/または前記E8,E10-ドデカジエナールが、発酵ブロス中のエマルジョン中に存在し、前記エマルジョンを破壊し、それにより前記抽出剤と前記脂質または前記遊離脂肪、前記E8,E10-ドデカジエン-1-オール、および任意により前記E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/または前記E8,E10-ドデカジエナールを含む産生物相を含む組成物を得るステップをさらに含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記エマルジョンを破壊するステップが、前記発酵ブロスの、遠心分離のステップなどの、相分離のステップを含むかまたはそのステップからなり、それにより3つの相:水相、細胞および細胞破片を含む相、および抽出剤と脂質または遊離脂肪酸、E8,E10-ドデカジエン-1-オール、および任意によりE8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールを含む産生物相からなる組成物を得る、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記産生物相が、少なくとも55%など、少なくとも60%など、少なくとも65%など、少なくとも70%など、少なくとも75%など、少なくとも80%など、少なくとも85%など、少なくとも90%など、少なくとも95%などのまたはそれより多い、少なくとも50%の前記脂質または遊離脂肪酸、E8,E10-ドデカジエン-1-オール、および任意により発酵ブロス中に最初に存在する前記E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/または前記E8,E10-ドデカジエナールを含む、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
-好ましくは減圧下での蒸留などの蒸留ステップにより、またはカラム精製により前記脂質または前記遊離脂肪酸、前記E8,E10-ドデカジエン-1-オール、および任意により前記E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/または前記E8,E10-ドデカジエナールを回収するステップと、
-前記E8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエナールにおよび/またはE8,E10-ドデカジエニルアセテートに化学変換するステップと、
-任意により、前記E8,E10-ドデカジエナールおよび/または前記E8,E10-ドデカジエニルアセテートを回収するステップ
をさらに含む、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
フェロモン組成物へと前記回収されたE8,E10-ドデカジエン-1-オール、前記E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/または前記E8,E10-ドデカジエナールを配合するステップをさらに含む、請求項14~24のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A、コドレモン(E8,E10-ドデカジエン-1-オール)、および任意によりその誘導体E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールの産生のために操作された酵母細胞に関する。E8,E10-ドデカジエニル補酵素A、コドレモン(E8,E10-ドデカジエン-1-オール)、および任意によりその誘導体E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールを産生するための方法も提供される。そのような酵母細胞を得るために有用な核酸構築物もまた提供される。
【背景技術】
【0002】
総合的有害生物管理(IPM)は、作物の収穫量を増大させるため、および環境への影響を最小限に抑え、かつ有機食品の生産を可能にするために主要な役割を果たすことが期待されている。IPMは、フェロモンを使用する交配の混乱、フェロモンを使用する大量捕獲、益虫などの代替の害虫防除方法を採用する。
【0003】
フェロモンは、昆虫(他の生物と同様)が、配偶者の誘引、警報、トレイルマーキング、および凝集を含む、様々な状況で同じ種の個体と交信するために使用する多様な化学物質の群を構成する。長期の配偶者発見に関連する昆虫フェロモンは、農薬の安全かつ環境に優しい代替品として、害虫の監視および防除のための農業および林業の用途ですでに使用されている。
【0004】
フェロモンは、健康および環境に優しい、農薬の代替品である。野外または果樹園で性フェロモンを分配することは、昆虫の交信を混乱させ、交配を妨げる。したがって、受精卵は産まれず、作物に対する幼虫による損傷は発生しない。この方法は、「交配の混乱」と呼ばれる。フェロモンは、それらが生分解性の種特異的化合物であり、有益な種またはヒトのいずれも害しないため、殺虫薬の魅力的な代替品である。
【0005】
害虫防除のための昆虫フェロモンの適用は、フェロモンの工業規模の合成が数十年前に開始された後にのみ可能になった。それにもかかわらず、化学合成されるフェロモンの価格は、依然として高く、農林業においてそれらの使用を拡大する上で大きな障壁である。フェロモンの化学産生の別の欠点は、前駆体、触媒、および溶媒として使用される有毒な化学物質の必要性、ならびに精製中に発生する大量の有機廃棄物である。したがって、複雑な化学合成ベースプロセスに基づく現在の産生方法は、農林業における潜在的な用途の多くにおいて幅広く使用するために、産生物を極端に高価なものにする。
【0006】
化学的産生方法と比較して、生物学的産生方法にはいくつかの利点がある。まず、すべての反応は、異なる前駆体、触媒、および条件(多くの場合、高温および高圧)を必要とする複数の化学反応ステップの代わりに、発酵タンク内の周囲温度で、操作された細胞によって行われる。さらに、操作された細胞は、前駆体として複数の高価な特殊化学物質を使用する代わりに、砂糖または植物油などの安価な再生可能な材料を使用する。化学反応は多くの場合、低い特異性が欠点であり、そのため、中間化合物の精製および最終産生物の大規模な精製を必要とするが、酵素によって行われる生物学的反応は、典型的には非常に特異的であり、副産生物の形成が制限され、それにより精製するための有機溶媒および他の有毒化学物質の使用を減少させる。さらに、フェロモン活性にとって多くの場合重要である、特定の立体化学は、化学的方法によって達成するのが非常に困難であり得る一方で、酵素的方法は、シスまたはトランス異性体の1つに特異的な酵素を利用できる。
【0007】
目的の特定のフェロモンは、コドレモンであり、これは、式E8,E10-ドデカジエン-1-オール(E8,E10-C12:OH、CAS番号33956-49-9)を有するジ不飽和脂肪アルコールである。コドレモンは、多数の種の性フェロモン成分であり、コドリンガ(Cydia pomonella(codling moth))の主要な性フェロモンである。コドリンガは、鱗翅目に属し、リンゴ、ナシ、モモ、および他の果物の主要な害虫である。
【0008】
Ding 2014は、デサチュラーゼが発現された植物細胞を開示し、それらが蛾のフェロモンを産生できるかを決定するためにテストした。縮重PCRアプローチを使用することにより、コドリンガ由来の3つのデサチュラーゼが発見された(Ding et al.On the way of making plants smell like moths-a synthetic biology approach.Lund University,Faculty of Science,Department of Biology)。
【0009】
したがって、昆虫のフェロモン、特にコドレモンを産生するための生物学的プロセスが必要である。低コストの利点に加えて、発酵プロセスは、化学合成よりも本質的に危険性が低く、より環境に優しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、特許請求の範囲に定義されるとおりである。
【0011】
本明細書では、E8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生できる酵母細胞を提供し、酵母細胞は、1つ以上の二重結合を、炭素鎖長12を有する脂肪アシルCoA中に導入できる少なくとも1つの異種デサチュラーゼを発現し、これにより脂肪アシルCoAを不飽和脂肪アシルCoAに変換し、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部は、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)である。
【0012】
本明細書では、E8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生できる酵母細胞を提供し、酵母細胞は、少なくとも1つの異種デサチュラーゼおよび少なくとも1つの異種脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.84)を発現し、
i)少なくとも1つの異種デサチュラーゼは、1つ以上の二重結合を、炭素鎖長12を有する脂肪アシルCoA中に導入でき、これにより脂肪アシルCoAを不飽和脂肪アシルCoAに変換し、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部は、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)であり;
ii)少なくとも1つの異種脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.84)は、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部を不飽和脂肪アルコールに変換でき、脂肪アシルCoAレダクターゼは、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)の少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換できる。
【0013】
また、酵母細胞においてE8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生するための方法も提供され、本方法は、酵母細胞を提供するステップと、培地中で酵母細胞をインキュベートするステップを含み、酵母細胞は、少なくとも1つの異種デサチュラーゼおよび少なくとも1つの異種脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.84)を発現し、
i)少なくとも1つの異種デサチュラーゼは、1つ以上の二重結合を、炭素鎖長12を有する脂肪アシルCoA中に導入でき、これにより脂肪アシルCoAを不飽和脂肪アシルCoAに変換し、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部は、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)であり;
ii)任意により少なくとも1つの異種脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.84)は、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部を不飽和脂肪アルコールに変換でき、脂肪アシルCoAレダクターゼは、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)の少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換でき、
これによりE8,E10-ドデカジエニル補酵素A、および任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生する。
【0014】
酵母細胞を改変するための核酸構築物も提供され、構築物は、
i)1つ以上の二重結合を、炭素鎖長12を有する脂肪アシルCoA中に導入できる少なくとも1つの異種デサチュラーゼをコードする少なくとも1つの第1のポリヌクレオチドであって、これにより脂肪アシルCoAを不飽和脂肪アシルCoAに変換し、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部が、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)である、第1のポリヌクレオチドと;
ii)任意により不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部を不飽和脂肪アルコールに変換できる少なくとも1つの異種脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.84)をコードする第2のポリヌクレオチドであって、脂肪アシルCoAレダクターゼが、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)の少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換できる、第2のポリヌクレオチド、
を含む。
【0015】
害虫の存在を監視するか、または害虫の交配を妨害する方法も提供され、本方法は、
i)本明細書に記載の方法により、E8,E10-ドデカジエン-1-オールおよび任意によりE8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールを産生するステップと;
ii)フェロモン組成物として、E8,E10-ドデカジエン-1-オールおよび任意によりE8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールを配合するステップと;
iii)総合的病害虫管理組成物としてフェロモン組成物を使用するステップ、
を含む。
【0016】
本明細書に記載の方法によって得られるE8,E10-ドデカジエニル補酵素A、E8,E10-ドデカジエン-1-オール、E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールも、本明細書で提供される。
また本明細書では、使用説明書および
a)本明細書に記載の酵母細胞;および/または
b)酵母細胞を改変するための本明細書に記載の核酸構築物および任意により改変される酵母細胞であって、核酸構築物内に含まれるポリヌクレオチドの発現時に、改変された酵母細胞は、E8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生できる、核酸構築物および任意により改変される酵母細胞
を含む部品のキットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】酵母におけるコドレモン産生(E8,E10-C12:OH)について提唱された生合成経路。ACC:アセチル-CoA-カルボキシラーゼ;FA:脂肪酸;FAS;脂肪酸シンターゼ;TE:チオエステラーゼ;FAA:脂肪アシルシンテターゼ;L:脂質;FAE:脂肪酸エステル;FAD:脂肪アシルデサチュラーゼ;FAR:脂肪アシルレダクターゼ;Comp.β-ox.:組成物完全なβ酸化。
【
図2】(A)空のプラスミドまたは(B)12:Meを供給したベクターを含むCpo_CPRQで形質転換した酵母からのFAME抽出物のGC-MS分析;(C)E9-12:Meの質量スペクトル、(D)空のプラスミド、または(E)E9-12:Meを供給したCpo_CPRQで形質転換した酵母からのFAME抽出物のGC-MS分析、(F)E8,E10-12:Meの質量スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
生物農薬:「生物農薬」という用語は「生物学的農薬」の短縮形であり、捕食性、寄生的、または化学的関係によるいくつかの種類の害虫管理介入を指す。欧州連合では、生物農薬は、「微生物または天然物をベースにした農薬の一形態」と定義されている。米国では、これらはEPAによって、「害虫を防除する天然に存在する物質(生化学農薬)、害虫を防除する微生物(微生物農薬)、および追加の遺伝物質を含む植物によって産生される殺虫物質(植物に組み込まれた保護剤)またはPIPを含む」と定義されている。本開示はより具体的には、天然産物または天然に存在する物質を含む生物農薬に関する。これらは典型的には、細菌および他の微生物、真菌、線虫、タンパク質などを含む、天然に存在する生物および/またはそれらの代謝物を成長させるおよび濃縮することによって作製される。それらは多くの場合、総合的病害虫管理(IPM)プログラムの重要な構成要素と見なされ、合成化学植物保護産生物(PPP)の代替品として多くの実用的な注目を集めている。Manual of Biocontrol Agents(2009年:以前の生物農薬マニュアル)は、利用可能な生物的殺虫剤(および他の生物学に基づく防除)産生物の概観を提供する。
【0019】
雲濃度:この用語は、本明細書では、溶液中の界面活性剤、特に非イオン性のまたはグリコールの溶液の濃度を指すために使用され、その濃度を超え、所定の温度で、界面活性剤と溶液の混合物が相分離を開始し、2つの相が現れ、したがって曇ったようになる。例えば、所与の温度での水溶液中の界面活性剤の雲濃度は、水溶液と混合されたときに2つの相を生じさせる、界面活性剤の最小濃度である。雲濃度は、界面活性剤の製造業者から入手できるか、または投与量曲線を作成し、混合相が分離する濃度を決定することによって実験的に決定できる。
【0020】
曇点:溶液、例えば水溶液中の界面活性剤、特に非イオン性のまたはグリコールの溶液の曇点は、界面活性剤と溶液、例えば水溶液との混合物の相分離が開始し、2つの相が出現し、したがって曇ったようになる温度である。この挙動は、ポリオキシエチレン鎖を含む非イオン性界面活性剤の特徴であり、それらは水中での温度挙動に対して逆溶解性を呈し、したがって、温度が上昇するとある時点で「曇る」。この挙動を示すグリコールは、「曇点グリコール」として知られている。曇点は、塩分の影響を受け、一般的に塩分の高い液体では低い。
【0021】
コドレモン:この用語は、式E8,E10-ドデカジエン-1-オール(E8,E10-C12:OH)を有するジ不飽和脂肪アルコールを指す。コドレモンは、コドリンガ(codling moth))中でとりわけ多数の種の性フェロモン成分であり、鱗翅目に属し、リンゴ、ナシ、モモ、および他の果物の主要な害虫である。「コドレモン」、「E8,E10-ドデカジエン-1-オール」および「E8,E10-C12:OH」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0022】
不飽和の:「不飽和の」という用語は、本明細書では「非飽和の」という用語と交換可能に使用され、1つ以上の二重または三重炭素-炭素結合を含む化合物を指す。
エトキシル化およびプロポキシル化C16-C18アルコールベースの消泡剤:この用語は、C16-C18のエトキシル化およびプロポキシル化アルコールを含むまたは主にそれらからなるポリエトキシル化非イオン性界面活性剤の群を指し(例えばCAS番号68002-96-0)、また、C16-C18アルキルアルコールエトキシレートプロポキシレートまたはC16-C18アルコールエトキシル化プロポキシレートポリマーとも呼ばれる。
【0023】
抽出剤:本明細書で使用される「抽出剤」という用語は、発酵中に産生される疎水性化合物の回収を容易にする消泡剤などの非イオン性界面活性剤、特に、ポリエチレンポリプロピレングリコール、ポリエーテル分散液の混合物、ならびにシメチコンなどのモノステアリン酸ポリエチレングリコールを含む消泡剤、ならびにエトキシル化およびプロポキシル化C16~C18アルコールベースの消泡剤、ならびにそれらの組み合わせから選択されるポリエトキシル化界面活性剤である。
【0024】
脂肪酸:この用語は、「脂肪酸」は、長い脂肪炭素鎖、すなわち4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個の炭素原子などの、4~28個の炭素原子の脂肪族鎖を有するカルボン酸を指す。ほとんどの天然に存在する脂肪酸は、分岐していない。これらは飽和であり得るかまたは不飽和であり得る。
【0025】
脂肪アルコールアセテート:この用語は、本明細書では「脂肪アセテート」と交換可能に使用され、脂肪炭素鎖、すなわち、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個の炭素原子などの、4~28個の炭素原子の脂肪族鎖を有するアセテートを指す。脂肪アルコールアセテートは、飽和であり得るかまたは不飽和であり得る。
【0026】
脂肪アシルCoA:この用語は、本明細書では「脂肪アシルCoAエステル」と交換可能に使用され、一般式R-CO-SCoAの化合物を指し、式中、Rは、脂肪炭素鎖である。脂肪炭素鎖は、チオエステル結合によって補酵素Aの-SH基に結合される。脂肪アシルCoAは、それが由来する脂肪酸が飽和であるか不飽和であるかに応じて、飽和または不飽和であってよい。
【0027】
脂肪アルコール:「脂肪アルコール」という用語は、本明細書では、4~28個の炭素原子、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28などの炭素原子の炭素鎖長を有する脂肪アシルCoAに由来するアルコールを指す。脂肪アルコールは、飽和または不飽和させ得る。
【0028】
脂肪アルデヒド:この用語は、本明細書では、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個の炭素原子などの、4~28個の炭素原子の炭素鎖長を有する脂肪アシルCoAに由来するアルデヒドを指す。脂肪アルデヒドは、飽和であり得るかまたは不飽和であり得る。
【0029】
異種:タンパク質または酵素などのポリペプチド、またはポリヌクレオチドを指す場合の「異種」という用語は、本明細書では、野生型細胞中に天然に存在しないポリペプチドまたはポリヌクレオチドを指すと解釈されるものとする。例えば、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)に適用される場合の「異種Δ9デサチュラーゼ」という用語は、野生型Y.リポリティカ細胞中に天然に存在しないΔ9デサチュラーゼ、例えばキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)に由来するΔ9デサチュラーゼを指す。
【0030】
ポリエーテル分散液の混合物:この用語は、ポリエーテル分散液の混合物、例えば、Sigma Aldrichの有機消泡剤204(製品番号A6426およびA8311、MDL番号MFCD00130523)を含むか、主にこれらの混合物からなるポリエトキシル化非イオン性界面活性剤の群を指す。
【0031】
天然の:タンパク質または酵素などのポリペプチド、またはポリヌクレオチドを指す場合の「天然の」という用語は、本明細書では、野生型細胞中に天然に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチドを指すと解釈されるものとする。この用語は、「内因性の」という用語と、同義的に使用される。
【0032】
害虫:本明細書で使用される場合、「害虫」という用語は、特に農業または家畜生産の文脈において、ヒトまたはヒトの関係に有害な生物、特に動物を指すものとする。害虫は、侵襲的または多産、有害、厄介、有害、破壊的、植物または動物への妨害、ヒトまたはヒトの懸念、家畜、ヒトの構造、野生の生態系など、任意の生物である。この用語は多くの場合、関連する用語バーミン、雑草、植物および動物の寄生虫および病原体と重複する。ある生物は、ある環境では害虫であり得るが、別の環境では有益である、家畜化される、または許容可能である。
【0033】
フェロモン:フェロモンは、アルコール、アルデヒド、またはアセテート官能基で終わり、脂肪族骨格中に最大3つの二重結合を含む非分岐脂肪族鎖(炭素数9~18)によって指定される、天然に存在する化合物である。フェロモン組成物は、例えば本明細書に記載されるとおり、化学的または生化学的に産生され得る。したがって、フェロモンは、本明細書に記載の方法および細胞によって得ることができるような、不飽和脂肪アルコール、脂肪アルデヒドまたは脂肪アルコールアセテートを含み得る。
【0034】
ポリエトキシル化界面活性剤:本明細書でのこの用語は、ポリエトキシル化界面活性剤、すなわち非イオン性界面活性剤を指す。
【0035】
ポリエチレンポリプロピレングリコール:この用語は、ポリエトキシル化非イオン性界面活性剤の群を指し、これは、PEG-PPG-PEGブロックコポリマー消泡剤、例えば、Kollliphor(登録商標)P407(CAS番号9003-11-6)を含むか、または主にそれらからなり、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)とも呼ばれる。
【0036】
低下された活性:「低下された活性」という用語は、本明細書では、タンパク質または酵素などの、所与のペプチドの活性の完全なまたは部分的な喪失を指し得る。場合によっては、ペプチドは、必須遺伝子によってコードされており、それは欠失され得ない。これらの場合、ペプチドの活性は、転写もしくは翻訳のダウンレギュレーション、またはペプチドの阻害などの当技術分野で知られている方法によって低下され得る。他の場合には、ペプチドは、非必須遺伝子によってコードされ、活性は、低下され得るか、またはそれは、ペプチドをコードする遺伝子の欠失の結果として、完全に喪失され得る。酵素の低下された活性はまた、当技術分野で知られているように、例えば、抑制可能なプロモーターを用いて、酵素をコードする遺伝子の転写を抑制することによって、活性を阻害することによって、または翻訳レベルでサイレンシングすることによって達成され得る。
【0037】
飽和した:「飽和した」という用語は、二重または三重の炭素-炭素結合を含まない化合物を指す。
【0038】
シメチコン:この用語は、シメチコン(CAS番号8050-81-5)、ジメチルポリシロキサン、または活性化ポリメチルシロキサンとも呼ばれるシメチコンを含む、または主にそれらからなるポリエトキシル化非イオン性界面活性剤の群を指す。シメチコンは、1.2~1.6%のポリエチレングリコールモノステアレートも含むシリコーンベースのエマルジョンである。
【0039】
界面活性剤:この用語は、2つの液体間、気体と液体の間、または液体と固体の間の表面張力(または界面張力)を低下させる化合物を指す。界面活性剤は、洗剤、湿潤剤、乳化剤、消泡剤、および分散剤として作用し得る。界面活性剤は通常、両親媒性の有機化合物であり、それらが疎水性基(テール)および親水性基(ヘッド)の両方を含むことを意味する。したがって、界面活性剤は典型的には、水不溶性(または油溶性)成分および水溶性成分の両方を含む。最も一般的には、界面活性剤は、極性ヘッド基に従って分類される。非イオン性界面活性剤は、そのヘッドに荷電基を有しない。
【0040】
力価:化合物の力価は、本明細書において、化合物の産生された濃度を指す。化合物が細胞によって産生される場合、この用語は、細胞によって産生される総濃度、すなわち、化合物の総量を培養培地の体積で割ったものを指す。これは、特に揮発性化合物の場合、力価は培養培地から蒸発した可能性のある化合物の一部分を含むことを意味し、したがって、発酵ブロスからおよび発酵槽からの潜在的なオフガスから、産生された化合物を収集することによって決定される。
【0041】
コドレモン(E8,E10-C12:OH)
コドレモンの生合成は、マロニルCoAへとカルボキシル化される、アセチル補酵素A(CoA)に基づく。この反応は、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)によって触媒される。マロニルCoAおよびアセチルCoAは、鎖長C16/C18以下の脂肪アシルCoAを合成するために、脂肪酸シンターゼ(FAS)によって使用される前駆体である。コドリンガペルオキシソームオキシダーゼ(POX)は、C14:CoAを介してC12:CoA(ラウリル-CoA)へのC16:CoAの鎖短縮(-2C)を触媒すると仮定された(Ding,2014)。コドリンガにおいて、C12:CoAをE9-C12:CoAへと変換するデサチュラーゼの証拠は、早期に発見されたが、このデサチュラーゼをコードする遺伝子は、追加のデサチュラーゼをコードするさらに2つの遺伝子(Cpo_SPTQ/Cpo_NPVE/Cpo_CPRQ)と共に近年やっと同定された。第1の不飽和化ステップは、E/Z9-C12:CoAへのC12:CoAの変換をもたらし、これは、第2の不飽和化ステップでE8,E10-C12:CoA(E8,E10-ドデカジエニル補酵素A)に変換される。脂肪アシルレダクターゼ(FAR)は次に、おそらくジエンE8,E10-C12:CoAを還元して、最終的にコドレモン(E8,E10-C12:OH)を形成する。コドリンガ中のFARをコードする遺伝子は、これまでに同定されていない(Ding 2014,Lofstedt et al.,1988)。
【0042】
コドレモンの生合成について提唱された経路を
図1に示す。
【0043】
コドレモンの産生
本開示は、E8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび任意によりコドレモン(E8,E10-C12:OHまたはE8,E10-ドデカジエン-1-オール)を産生できる酵母細胞、および酵母細胞中においてコドレモン(E8,E10-C12:OHまたはE8,E10-ドデカジエン-1-オール)を産生するための方法に関する。
【0044】
本発明者らは、酵母中においてE8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生するための異種経路(例として
図1に概説される)を設計した。
【0045】
したがって、酵母細胞中でE8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生するための方法が提供され、本方法は、酵母細胞を提供するステップと、培地中で酵母細胞をインキュベートするステップを含み、酵母細胞は、少なくとも1つの異種デサチュラーゼおよび任意により少なくとも1つの異種脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.84)を発現し、
i)少なくとも1つの異種デサチュラーゼは、炭素鎖長12を有する脂肪アシルCoA中に1つ以上の二重結合を導入でき、これにより脂肪アシルCoAの少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)に変換し;
ii)任意による少なくとも1つの異種脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.84)は、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)の少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換でき、
これによりE8,E10-ドデカジエニル補酵素A、および任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生する。
【0046】
したがって、本発明の酵母細胞および方法を使用して、本明細書に記載のE8,E10-ドデカジエニル補酵素Aを産生することによりコドレモンを産生し、それは次に、酵母細胞中でレダクターゼを発現させることにより、in vivoでE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換できるか、またはE8,E10-ドデカジエニル補酵素Aは、トリアシルグリセリドなどの脂質または遊離脂肪酸に変換でき、それは次に、回収され、当技術分野で知られているように、例えばそれらをレダクターゼと接触させることにより、in vitroでE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換できる。いずれの場合も、E8,E10-ドデカジエン-1-オールが産生される。
【0047】
酵母細胞
この方法の第1のステップでは、より長いアシルCoAの生合成にアセチルCoAおよびマロニルCoAを使用できる酵母細胞が提供される。アシルCoAを合成できる任意の酵母細胞が、本明細書に記載のE8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生するために使用され得る。あるいは、酵母細胞は、当技術分野で知られるような好適な炭素源を提供されてよい。酵母細胞は、天然に存在しない酵母細胞、例えば、本明細書に記載のE8,E10-ドデカジエニル補酵素A、ならびに任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オール、E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールを産生するように操作された酵母細胞であり得る。
【0048】
アセチルCoAおよびマロニルCoAは、アシルCoA、特に炭素鎖長12を有するアシルCoAに変換され得る。これは、例えば天然または異種のアシルCoAチオエステラーゼ(EC3.1.2.20)の作用により、ドデカノイル-CoAをドデカン酸(ラウリン酸)に変換するステップを伴い得る。ラウリン酸は次に、天然または異種の脂肪アシル補酵素Aシンテターゼ(FAA)(EC6.2.1.3)の作用によりドデカノイルCoAに変換され得る。
【0049】
酵母細胞はしたがってまた、アセチルCoAおよびマロニルCoAを脂肪アシルCoA、特に炭素鎖長12を有する脂肪アシルCoAに変換することもできる。いくつかの実施形態では、酵母細胞はしたがって、上記反応を実施できる1つ以上の脂肪アシル補酵素シンテターゼ(EC6.2.1.3)および/または1つ以上のアシルCoAチオエステラーゼ(EC3.1.2.20)を発現する。
【0050】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、培養培地中でラウリン酸またはラウリン酸メチルまたはトリラウロイルグリセロールまたは別の脂肪酸誘導体を提供される。酵母細胞が、以下で詳述するβ-酸化を介して炭素鎖を短縮できるように操作されている場合、細胞は、油脂、または12より長い炭素鎖長を有する任意の脂肪酸誘導体を提供され得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、細胞は、例えばゲノム中の遺伝子編集により、ゲノムレベルで改変されている。細胞はまた、少なくとも1つのベクターなどの少なくとも1つの核酸構築物の挿入によって改変され得る。ベクターは、ゲノムへの核酸配列の組み込みを可能にするか、またはゲノムの組み込みなしにベクター中に含まれる核酸配列によってコードされるポリペプチドの発現を可能にするように、当業者に知られているように設計され得る。
【0052】
本開示のいくつかの実施形態では、これらに限定されないが、Blakeslea、カンジダ(Candida)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、クスダマカビ(Cunninghamella)、リポマイセス(Lipomyces)、モルチエレラ(Mortierella)、ケカビ(Mucor)、ヒゲカビ(Phycomyces)、フハイカビ(Pythium)、リノスポリジウム(Rhodosporidium)、ロドトルラ(Rhodotorula)、トリコスポロン(Trichosporon)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、およびヤロウイア(Yarrowia)を含む属の酵母または真菌が使用される。特定の実施形態では、これらに限定されないが、ブラケスレア・トリスポラ(Blakeslea trispora)、カンジダ・プルチェリマ(Candida pulcherrima)、C.レブカウフィ(C.revkaufi)、C.トロピカリス(C.tropicalis)、クリプトコッカス・カルバタス(Cryptococcus curvatus)、クンニンハメラ・エキヌラタ(Cunninghamella echinulata)、C.エレガンズ(C.elegans)、C.ジャポニカ(C.japonica)、リポマイセス・スターキー(Lipomyces starkeyi)、L.リポフェラス(L.lipoferus)、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)、M.イザベリナ(M.isabellina)、M.ラマニアナ(M.ramanniana)、M.ビナセア(M.vinacea)、M.シルシネロイデス(Mucor circinelloides)、フィコマイセス・ブラケスレアヌス(Phycomyces blakesleanus)、フィチウム・イレギュラレ(Pythium irregulare)、ロドスポリディウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)、ロドトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis)、R.グラシリス(R.gracilis)、R.グラミニス(R.graminis)、R.ムチラギノーザ(R.mucilaginosa)、R.ピニコーラ(R.pinicola)、トリコスポロン・プランズ(Trichosporon pullans)、T.クタネウム(T.cutaneum)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia.lipolytica)を含む種の生物が使用される。いくつかの実施形態では、酵母細胞は、ヤロウイア・リポリティカ細胞またはサッカロミセス・セレビシエ細胞である。
【0053】
改変される酵母細胞は、宿主細胞とも呼ばれ、得ることができるE8,E10-ドデカジエン-1-オールの力価に悪影響を有し得る、天然酵素を発現し得る。天然酵素はしたがって、遺伝子編集などの当技術分野で知られている方法によって不活化され得る。例えば、力価に負の影響を有する天然酵素をコードする遺伝子は、本明細書の以下に記載されるとおり、天然酵素の活性の完全なまたは部分的な喪失をもたらすように、消失され得るかまたは変異され得る。
【0054】
デサチュラーゼ
本発明の方法は、炭素鎖長12を有する脂肪アシルCoAをE8,E10-ドデカジエニル補酵素A、および任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換するための必要な酵素を発現する酵母細胞に依存する。このために必要とされる最初の酵素は、デサチュラーゼであり、それは、炭素鎖長12を有する脂肪アシルCoAに1つ以上の二重結合を導入でき、それにより炭素鎖長12を有するおよび1つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪アシルCoAへと脂肪アシルCoAを変換できる。炭素鎖長12の不飽和脂肪アシルCoAは、炭素鎖長12の不飽和脂肪アシルCoAの混合物であり得、混合物は、E8,E10-C12:CoAを含むが、典型的には一不飽和脂肪アシルCoAE9-C12:CoAおよびZ9-C12:CoAも含む。したがって、いくつかの実施形態では、酵母細胞は、炭素鎖長12を有する脂肪アシルCoA中に1つ以上の二重結合を導入できるデサチュラーゼを発現し、それにより脂肪アシルCoAの少なくとも一部をE8,E10-C12:CoA(E8,E10-ドデカジエニル補酵素A)に変換できる。ECクラスEC1.14.19のデサチュラーゼは、そのような反応を実行できる。
【0055】
コドレモンの産生は、2つの不飽和化ステップに依存する。これらは、1つのデサチュラーゼ、例えばCpo_CPRQまたはGmo_CPRQ、以下に記載のその変異体および機能的バリアントにより、または2つの異なるデサチュラーゼにより実施され得る。2つの異なるデサチュラーゼによる実施形態において、デサチュラーゼの少なくとも1つは、以下に記載される、Cpo_CPRQ、その変異体またはその機能的バリアントである。2つの異なるデサチュラーゼによる他の実施形態では、デサチュラーゼの少なくとも1つは、以下に記載される、Gmo_CPRQ、その変異体またはその機能的バリアントである。他のデサチュラーゼは、炭素鎖長12の脂肪アシルCoA中に少なくとも1つの二重結合を導入できるか、または炭素鎖長14の脂肪アシルCoA中に少なくとも1つの二重結合を導入でき、これは以下の「鎖短縮」の項で詳述するように、炭素鎖長12の不飽和脂肪アシルCoAへと短縮され得る。1つの二重結合を有する炭素鎖長12または14の脂肪アシルCoAは次に、例えばその変異体または機能的バリアントであるCpo_CPRQによりさらに不飽和化できる。
【0056】
デサチュラーゼは、好ましくは異種デサチュラーゼである。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、Cpo_CPRQ(配列番号2)であり、これは、コドリンガ中に自然に見られるデサチュラーゼである。実施例16に示されるとおり、E8,E10-C12:CoAを産生するために、Cpo_CPRQの発現のみで十分である。Cpo_SPTQまたはCpo_NPVEのいずれか単独の発現は、E8,E10-C12:CoAを産生しなかった。この発見は、これらの3つのデサチュラーゼの機能アッセイが、それらがコドリンガフェロモン中で共役二重結合を連続的に形成するように機能することを示した、Ding2014から鑑みて、驚くべきことであり、これは、酵母では、そのようにならないようである。
【0057】
異種デサチュラーゼはまた、Cpo_CPRQなどの異種デサチュラーゼの機能的バリアント、すなわち炭素鎖長12の脂肪アシルCoAを炭素鎖長12の不飽和脂肪アシルCoA(E8,E10-C12:CoAなど)に変換する能力を保持するバリアントであり得る。いくつかの実施形態では、機能的バリアントは、Cpo_CPRQ(配列番号2)に対して、少なくとも60%の相同性または同一性、例えば少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有する。
【0058】
異種デサチュラーゼはまた、Cpo_CPRQなどの異種デサチュラーゼの機能的バリアント、すなわち炭素鎖長12の脂肪アシルCoAを炭素鎖長12の不飽和脂肪アシルCoA(E8,E10-C12:CoAなど)に変換する能力を保持するバリアントであり得る。いくつかの実施形態では、機能的バリアントは、Cpo_CPRQ(配列番号2)に対して、少なくとも60%の相同性または同一性、例えば少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有する。
【0059】
デサチュラーゼは、好ましくは異種デサチュラーゼである。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、Gmo_CPRQ(配列番号77)であり、これはナシヒメシンクイ(Grapholita molesta)に自然に見られるデサチュラーゼ、または炭素鎖長が12の脂肪アシルCoAを、炭素鎖長12の不飽和脂肪アシルCoA(E8,E10-C12:CoAなど)に変換する能力を保持するその機能的バリアントである。いくつかの実施形態では、機能的バリアントは、Gmo_CPRQ(配列番号78)に対して、少なくとも60%の相同性または同一性、例えば、Gmo_CPRQ(配列番号78)に対して、少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性などを有する。
【0060】
いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、当技術分野で知られているように、デサチュラーゼをコードする核酸を導入することによって発現される。このような核酸は、当技術分野で知られているように、コドン最適化され得る。特定の実施形態では、デサチュラーゼをコードする核酸は、配列番号1に示されるものであるか、または配列番号1に対して、少なくとも60%の相同性または同一性、例えば配列番号1に対して、少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性などを有するその相同体である。他の実施形態では、デサチュラーゼをコードする核酸は、配列番号78に示されるものであるか、または配列番号78に対して、少なくとも60%の相同性または同一性、例えば配列番号78に対して、少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性などを有するその相同体である。
【0061】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、炭素鎖長12の脂肪アシルCoA中に1つ以上の二重結合を導入できるいくつかのデサチュラーゼを発現する。このような実施形態では、好ましくはいくつかのデサチュラーゼの少なくとも1つは、以下に詳述するとおり、Cpo_CPRQ、その変異体またはその機能的バリアントである。他の実施形態では、好ましくはいくつかのデサチュラーゼの少なくとも1つは、Gmo_CPRQ、その変異体またはその機能的バリアントである。他のデサチュラーゼは、例えばCpo_NPVE(アクセッション番号:AHW98355、配列番号67)またはCpo_SPTQ(アクセッション番号:AHW98356、配列番号69)、またはそれらに対して、少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有する機能的バリアントであり得る。そのようなデサチュラーゼは、酵母細胞に対してコドン最適化され得る核酸の導入後に、酵母細胞において発現され得、核酸は、例えば配列番号66または配列番号68に示される核酸、または配列番号66または配列番号68に対して、少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有するその相同体である。
【0062】
酵母細胞は、異種デサチュラーゼのいくつかのコピーを発現するように操作できる。これは、当技術分野で知られているように行うことができる。デサチュラーゼ(複数可)はまた、例えば強力な発現レベルをもたらす構成的プロモーターの使用により、当技術分野で知られているように高レベルで発現され得る。このようなプロモーターは、当技術分野で知られている。
【0063】
いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、85位に変異を有するCpo_CPRQ変異体などの変異体Cpo_CPRQである。いくつかの実施形態では、変異は、S85A変異である。デサチュラーゼはまた、この変異体の機能的バリアントであり得、S85A変異体などの、85位に変異を有する変異体Cpo_CPRQに対して、少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有するその相同体を有する。いくつかの実施形態では、変異体は、S85T変異体である。
【0064】
いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、82位に変異を有するCpo_CPRQ変異体などの変異体Cpo_CPRQである。いくつかの実施形態では、変異は、S82A変異である。デサチュラーゼはまた、変異体の機能的バリアントであり得、S82A変異体などの、82位に変異を有する変異体Cpo_CPRQに対して、少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有するその相同体を有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、2つ以上の異種デサチュラーゼを発現する。2つ以上のデサチュラーゼは、同一であっても異なっていてもよい。特定の実施形態では、酵母細胞は、配列番号2に示されるCpo_CPRQ、およびS85A変異体などの、85位に変異を有するなどの変異体Cpo_CPRQを発現する。いくつかの実施形態では、酵母細胞は、Cpo_CPRQ(配列番号2)、配列番号2に対して少なくとも65%の相同性または同一性を有する変異体Cpo_CPRQまたはその機能的バリアントを発現し、炭素鎖長12の脂肪アシルCoA中に少なくとも1つの二重結合を導入できる別のデサチュラーゼも発現する。いくつかの実施形態では、酵母細胞は、配列番号77に示されるGmo_CPRQ、配列番号2に示されるCpo_CPRQ、または本明細書に記載の変異体もしくはその機能的バリアントを発現する。
【0066】
いくつかの実施形態では、他のデサチュラーゼは、配列番号67に示されるようなCpo_NPVE、または配列番号67に対して、少なくとも65%の相同性または同一性、例えば、配列番号67に対して、少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有するその変異体またはその機能的バリアントであり得る。いくつかの実施形態では、酵母細胞は、Cpo_CPRQ、その変異体または機能的バリアント、およびCpo_NPVE、その変異体または機能的バリアントを発現する。いくつかの実施形態では、酵母細胞は、Gmo_CPRQ、その変異体または機能的バリアント、およびCpo_NPVEまたはその変異体または機能的バリアントを発現する。
【0067】
他の実施形態では、他のデサチュラーゼは、配列番号69に示されるCpo_SPTQ、または配列番号69に対して、少なくとも65%の相同性または同一性、配列番号69に対して、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有するその変異体またはその機能的バリアントである。いくつかの実施形態では、酵母細胞は、Cpo_CPRQ、その変異体または機能的バリアント、およびCpo_SPTQ、その変異体または機能的バリアントを発現する。いくつかの実施形態では、酵母細胞は、Gmo_CPRQ、その変異体または機能的バリアント、およびCpo_SPTQまたはその変異体または機能的バリアントを発現する。
【0068】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの異種デサチュラーゼは、本明細書で上に記載される、Cpo_CPRQまたはその変異体または機能的バリアントである。
【0069】
本明細書に記載のデサチュラーゼに加えて、炭素鎖長12の脂肪アシルCoAに1つまたは2つの二重結合を導入できる酵母細胞は、12を超える炭素鎖長(14以上の炭素鎖長など)の脂肪アシルCoAに少なくとも1つの二重結合を導入できるデサチュラーゼを発現し、12を超える炭素鎖長の不飽和脂肪性アシルCoAの炭素鎖長を短縮できる他の酵素も発現する必要がある。これについては、以下の「鎖短縮」の項で詳述する。
【0070】
酵母細胞はしたがって、本明細書の上記のデサチュラーゼのいずれか、または脂肪アシルCoAを炭素鎖長12の不飽和脂肪アシルCoAに変換する能力を保持するその機能的バリアントなどの、炭素鎖長12を有する脂肪アシルCoA中に1つ以上の二重結合を導入でき、これにより炭素鎖長12のおよび1つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪アシルCoAに脂肪アシルCoAを変換できるデサチュラーゼを発現する。酵母細胞はさらに、12を超える炭素鎖長(炭素鎖長14以上など)の脂肪アシルCoA中に少なくとも1つの二重結合を導入できるデサチュラーゼ、または12を超える炭素鎖長(炭素鎖長14以上など)の脂肪アシルCoA中に少なくとも1つの二重結合を導入する能力を保持するその機能的バリアントを発現できる。
【0071】
デサチュラーゼまたはその機能的バリアントが所望の活性を有するか否かを試験するために、当技術分野で知られている方法を使用できる。例えば、試験される候補酵素は、酵母細胞、例えばベクター上または酵母細胞のゲノム内に導入され得、適切な培地中で酵母細胞をインキュベートし、ブロスから脂肪アルコールおよび/または脂肪酸メチルエステルを抽出し、不飽和化合物が産生されるか否かを決定するためにGC-MS分析などの分析を実施する。天然のエロンガーゼ遺伝子(複数可)が欠失されている酵母細胞中で活性を試験することは、有利であり得る。このような手順の例は、実施例4またはSchneiter et al.,2000に記載される。
【0072】
脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.84)
「脂肪アシルCoAレダクターゼ」、「レダクターゼ」および「FAR」という用語は、本明細書では互換的に使用される。FARは、次の2段階の反応を触媒する:
アシル-CoA+2NADPH<=>CoA+アルコール+2NADP(+)
ここで、第1の段階において、脂肪アシルCoAは、脂肪アルデヒドに還元され、その後、第2の段階において、脂肪アルデヒドは脂肪アルコールにさらに還元される。脂肪アシルCoAは、不飽和脂肪アシルCoA、特にE8,E10-C12:CoAであり得、これは次にE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換される。
【0073】
このような反応を触媒できるFARは、EC番号1.2.1.84を有するアルコール形成脂肪アシルCoAレダクターゼである。本発明の方法で使用される酵母細胞はしたがって、上記の反応を触媒できる異種FARを発現し得る。あるいは、E8,E10-C12:CoAの回収後に、E8,E10-C12:Co.Aをin vitroでFARと接触させた後、E8,E10-C12:CoAをE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換できる。
【0074】
FARは好ましくは、ヤガ属、Heliothis属、Helicoverpa属またはCydia属の昆虫に固有のFARなどの、昆虫FARである。例えば、FARは、カブラヤガ、タマナヤガ、Heliothis subflexa、タバコガ、Helicoverpa virescens、またはコドリンガに固有である。
【0075】
いくつかの実施形態では、FARは、Ase_FAR(配列番号10)、すなわちカブラヤガ中で自然に発生するFARである。いくつかの実施形態では、異種FARは、Ase_FARの機能的バリアントであり、E8,E10-C12:CoAをE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換する能力を保持する。例えば、機能的バリアントは、Ase_FAR(配列番号10)に対して、少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有する。
【0076】
いくつかの実施形態では、FARは、198位または413位に変異を有する変異体などの、変異体Ase_FARである。いくつかの実施形態では、Ase_FAR変異体は、T198A変異体である。他の実施形態では、Ase_FAR変異体は、S413A変異体である。
【0077】
いくつかの実施形態では、Ase_FARまたはその機能的バリアントは、Ase_FARまたはその機能的バリアントをコードする酵母細胞に核酸を導入することによって発現される。例えば、配列番号9に示される核酸、または配列番号9に対して、少なくとも60%の相同性または同一性、例えば配列番号9に対して、少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性などを有するその相同体が、導入される。
【0078】
他の実施形態では、FARは、Aip_FAR(配列番号61)、すなわちタマナヤガ中で自然に発生するFARである。いくつかの実施形態では、異種FARは、Aip_FARの機能的バリアントであり、E8,E10-C12:CoAをE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換する能力を保持する。例えば、機能的バリアントは、Aip_FAR(配列番号61)に対して、少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有する。
【0079】
いくつかの実施形態では、Aip_FARまたはその機能的バリアントは、Aip_FARまたはその機能的バリアントをコードする酵母細胞に核酸を導入することによって発現される。例えば、配列番号60に示されるような核酸、または配列番号60に対して、少なくとも60%の相同性または同一性、配列番号60に対して、例えば少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性などを有するその相同体が、導入される。
【0080】
他の実施形態では、FARは、Hs_FAR(配列番号71)、すなわちHeliothis subflexa中で自然に発生するFARである。いくつかの実施形態では、異種FARは、Hs_FARの機能的バリアントであり、E8,E10-C12:CoAをE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換する能力を保持する。例えば、機能的バリアントは、Hs_FAR(配列番号71)に対して、少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有する。
【0081】
いくつかの実施形態では、Hs_FARまたはその機能的バリアントは、Hs_FARまたはその機能的バリアントをコードする酵母細胞に核酸を導入することによって発現される。例えば、配列番号70に示されるような核酸、または配列番号70に対して、少なくとも60%の相同性または同一性、例えば少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性などを有するその相同体が、導入される。
【0082】
他の実施形態では、FARは、Has_FAR(配列番号73)、すなわちタバコガ中で自然に発生するFARである。いくつかの実施形態では、異種FARは、Has_FARの機能的バリアントであり、E8,E10-C12:CoAをE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換する能力を保持する。例えば、機能的バリアントは、Has_FAR(配列番号73)に対して、少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有する。
【0083】
いくつかの実施形態では、Has_FARまたはその機能的バリアントは、Has_FARまたはその機能的バリアントをコードする酵母細胞に核酸を導入することによって発現される。例えば、配列番号72に示されるような核酸、または配列番号72に対して、少なくとも60%の相同性または同一性、例えば、配列番号72に対して、少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性などを有するその相同体が、導入される。
【0084】
他の実施形態では、FARは、Hv_FAR(配列番号75)、すなわちHelicoverpa virescens中で自然に発生するFARである。いくつかの実施形態では、異種FARは、Hv_FARの機能的バリアントであり、E8,E10-C12:CoAをE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換する能力を保持する。例えば、機能的バリアントは、Hv_FAR(配列番号75)に対して、少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有する。
【0085】
いくつかの実施形態では、Hv_FARまたはその機能的バリアントは、Hv_FARまたはその機能的バリアントをコードする酵母細胞に核酸を導入することによって発現される。例えば、配列番号74に示されるような核酸、または配列番号74に対して、少なくとも60%の相同性または同一性、例えば、配列番号74に対して、少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性などを有するその相同体が、導入される。
【0086】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、コドリンガからのFARを発現する。いくつかの実施形態では、FARは、Cpo_FAR(配列番号76)、すなわちコドリンガ中で自然に発生するFARである。いくつかの実施形態では、異種FARは、Cpo_FARの機能的バリアントであり、E8,E10-C12:CoAをE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換する能力を保持する。例えば、機能的バリアントは、Cpo_FAR(配列番号76)に対して、少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有する。
【0087】
いくつかの実施形態では、Cpo_FARまたはその機能的バリアントは、Cpo_FARまたはその機能的バリアントをコードする酵母細胞に核酸を導入することによって発現される。例えば、配列番号76に示されるような核酸、または配列番号76に対して、少なくとも60%の相同性または同一性、例えば、配列番号76に対して、少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性などを有するその相同体が、導入される。
【0088】
いくつかの実施形態では、FARは、Har_FAR(配列番号12)、すなわちオオタバコガ中で自然に発生するFARである。いくつかの実施形態では、異種FARは、Har_FARの機能的バリアントであり、E8,E10-C12:CoAをE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換する能力を保持する。例えば、機能的バリアントは、Har_FAR(配列番号12)に対して、少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有する。
【0089】
いくつかの実施形態では、Har_FARまたはその機能的バリアントは、Har_FARまたはその機能的バリアントをコードする酵母細胞に核酸を導入することによって発現される。例えば、配列番号11に示されるような核酸、または配列番号11に対して、少なくとも60%の相同性または同一性、例えば、配列番号11に対して、少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性などを有するその相同体が、導入される。
【0090】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、FARのいくつかのコピーを発現する。例えば、FARは、当技術分野で知られているように高レベルで発現される。
【0091】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、本明細書に記載のとおり、デサチュラーゼおよびFARを発現する。特定の実施形態では、酵母細胞は、Cpo_CPRQ(配列番号2)または配列番号2に対して少なくとも65%の相同性または同一性を有するその機能的バリアント、およびAse_FAR(配列番号10)または配列番号10に対して少なくとも65%の相同性または同一性を有するその機能的バリアントを発現する。いくつかの実施形態では、酵母細胞は、Cpo_CPRQ(配列番号2)または配列番号2に対して少なくとも65%の相同性または同一性を有するその機能的バリアントを発現し、FARは、198位または413位に変異を有する変異体、例えばT198A変異体またはS413A変異体などの変異体Ase_FARである。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、85位に変異を有する変異体、例えばS85A変異体などの変異体Cpo_CPRQであり、FARは、Ase_FARまたはその機能的バリアントである。他の実施形態では、デサチュラーゼは、S85A Cpo_CPRQ変異体であり、FARは、198位または413位に変異を有する変異体、例えばT198A変異体またはS413A変異体などの変異体Ase_FARである。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、2つの同一のデサチュラーゼ、例えば、Cpo_CPRQまたは85位に変異を有する変異体Cpo_CPRQ、例えば、S85A変異体などの、2つのデサチュラーゼであり、FARは、Ase_FARまたはその機能的バリアントである。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、2つの同一のデサチュラーゼ、例えばCpo_CPRQまたは85位に変異を有する変異体Cpo_CPRQ、例えば、S85A変異体などの、2つのデサチュラーゼであり、FARは、198位または413位に変異を有する変異体、例えばT198A変異体またはS413A変異体などの変異体Ase_FARである。他の実施形態では、デサチュラーゼは、2つの異なるデサチュラーゼ、例えばCpo_CPRQデサチュラーゼおよび85位に変異を有する変異体Cpo_CPRQデサチュラーゼ、例えばS85A変異体であり、FARは、Ase_FARまたはその機能的バリアントである。他の実施形態では、デサチュラーゼは、2つの異なるデサチュラーゼ、例えばCpo_CPRQデサチュラーゼおよび85位に変異を有する変異体Cpo_CPRQデサチュラーゼ、例えばS85A変異体であり、FARは、198位または413位に変異を有する変異体、例えばT198A変異体またはS413A変異体などの変異体Ase_FARである。他の実施形態では、酵母細胞は、Gmo_CPRQ(配列番号77)およびAse_FARまたはその変異体または機能的バリアントを発現する。
【0092】
特定の実施形態では、酵母細胞は、Cpo_CPRQ(配列番号2)または配列番号2に対して少なくとも65%の相同性または同一性を有するその機能的バリアント、およびAip_FAR(配列番号61)または配列番号61に対して少なくとも65%の相同性または同一性を有するその機能的バリアントを発現する。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、85位に変異を有する変異体、例えばS85A変異体などの変異体Cpo_CPRQであり、FARは、Aip_FARまたはその機能的バリアントである。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、2つのデサチュラーゼ、例えばCpo_CPRQデサチュラーゼまたは85位に変異を有する変異体Cpo_CPRQデサチュラーゼ、例えばS85A変異体などの、2つの同一のデサチュラーゼであり、FARは、Aip_FARまたはその機能的バリアントである。他の実施形態では、デサチュラーゼは、2つの異なるデサチュラーゼ、例えばCpo_CPRQデサチュラーゼおよび85位に変異を有する変異体Cpo_CPRQデサチュラーゼ、例えばS85A変異体であり、FARは、Aip_FARまたはその機能的バリアントである。他の実施形態では、酵母細胞は、Gmo_CPRQ(配列番号77)およびAip_FARまたはその変異体または機能的バリアントを発現する。
【0093】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、Cpo_CPRQ(配列番号2)またはそれに対して少なくとも65%の相同性または同一性を有するその機能的バリアント、およびHs_FAR(配列番号71)または配列番号71に対して少なくとも65%の相同性または同一性を有するその機能的バリアントを発現する。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、85位に変異を有する変異体、例えばS85A変異体などの変異体Cpo_CPRQであり、FARは、Hs_FARまたはその機能的バリアントである。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、2つのデサチュラーゼ、例えば2つのCpo_CPRQデサチュラーゼまたは85位に変異を有する2つの変異体Cpo_CPRQデサチュラーゼ、例えば2つのS85A変異体などの、2つの同一のデサチュラーゼであり、FARは、Hs_FARまたはその機能的バリアントである。他の実施形態では、デサチュラーゼは、2つの異なるデサチュラーゼ、例えばCpo_CPRQデサチュラーゼおよび85位に変異を有する変異体Cpo_CPRQデサチュラーゼ、例えばS85A変異体であり、FARは、Hs_FARまたはその機能的バリアントである。他の実施形態では、酵母細胞は、Gmo_CPRQ(配列番号77)およびHs_FARまたはその変異体または機能的バリアントを発現する。
【0094】
特定の実施形態では、酵母細胞は、Cpo_CPRQ(配列番号2)または配列番号2に対して少なくとも65%の相同性または同一性を有するその機能的バリアント、およびHas_FAR(配列番号73)または配列番号73に対して少なくとも65%の相同性または同一性を有するその機能的バリアントを発現する。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、85位に変異を有する変異体、例えばS85A変異体などの変異体Cpo_CPRQであり、FARは、Hs_FARまたはその機能的バリアントである。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、2つのデサチュラーゼ、例えば2つのCpo_CPRQデサチュラーゼまたは85位に変異を有する2つの変異体Cpo_CPRQデサチュラーゼ、例えば2つのS85A変異体などの、2つの同一のデサチュラーゼであり、FARは、Hs_FARまたはその機能的バリアントである。他の実施形態では、デサチュラーゼは、2つの異なるデサチュラーゼ、例えばCpo_CPRQデサチュラーゼおよび85位に変異を有する変異体Cpo_CPRQデサチュラーゼ、例えばS85A変異体であり、FARは、Hs_FARまたはその機能的バリアントである。他の実施形態では、酵母細胞は、Gmo_CPRQ(配列番号77)およびHas_FARまたはその変異体または機能的バリアントを発現する。
【0095】
特定の実施形態では、酵母細胞は、Cpo_CPRQ(配列番号2)または配列番号2に対して少なくとも65%の相同性または同一性を有するその機能的バリアント、およびHv_FAR(配列番号75)または配列番号75に対して少なくとも65%の相同性または同一性を有するその機能的バリアントを発現する。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、85位に変異を有する変異体、例えばS85A変異体などの変異体Cpo_CPRQであり、FARは、Hv_FARまたはその機能的バリアントである。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、2つのデサチュラーゼ、例えば2つのCpo_CPRQデサチュラーゼまたは85位に変異を有する2つの変異体Cpo_CPRQデサチュラーゼ、例えば2つのS85A変異体などの、2つの同一のデサチュラーゼであり、FARは、Hv_FARまたはその機能的バリアントである。他の実施形態では、デサチュラーゼは、2つの異なるデサチュラーゼ、例えばCpo_CPRQデサチュラーゼおよび85位に変異を有する変異体Cpo_CPRQデサチュラーゼ、例えばS85A変異体であり、FARは、Hv_FARまたはその機能的バリアントである。他の実施形態では、酵母細胞は、Gmo_CPRQ(配列番号77)およびHv_FARまたはその変異体または機能的バリアントを発現する。
【0096】
特定の実施形態では、酵母細胞は、Cpo_CPRQ(配列番号2)または配列番号2に対して少なくとも65%の相同性または同一性を有するその機能的バリアント、およびCpo_FAR(配列番号76)または配列番号76に対して少なくとも65%の相同性または同一性を有するその機能的バリアントを発現する。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、85位に変異を有する変異体、例えばS85A変異体などの変異体Cpo_CPRQであり、FARは、Cpo_FARまたはその機能的バリアントである。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、2つのデサチュラーゼ、例えば2つのCpo_CPRQデサチュラーゼまたは85位に変異を有する2つの変異体Cpo_CPRQデサチュラーゼ、例えば2つのS85A変異体などの、2つの同一のデサチュラーゼであり、FARは、Cpo_FARまたはその機能的バリアントである。他の実施形態では、デサチュラーゼは、2つの異なるデサチュラーゼ、例えCpo_CPRQデサチュラーゼおよび85位に変異を有する変異体Cpo_CPRQデサチュラーゼ、例えば、S85A変異体であり、FARは、Cpo_FARまたはその機能的バリアントである。他の実施形態では、酵母細胞は、Gmo_CPRQ(配列番号77)およびCpo_FARまたはその変異体または機能的バリアントを発現する。
【0097】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、上記のデサチュラーゼ、例えばCpo_CPRQまたはGmo_CPRQ、その変異体または機能的バリアント、本明細書に記載のFAR、特にAse_FAR、Aip_FAR、Hs_AR、Has_FARまたはHv_FAR、またはそれらに対して少なくとも65%の相同性または同一性を有する変異体または機能的バリアントを発現し、また炭素鎖長12の脂肪アシルCoAに少なくとも1つの二重結合を導入できる別のデサチュラーゼ、例えばCpo_NPVE(配列番号67)もしくはCpo_SPTQ(配列番号69)、または配列番号67または配列番号69に対して、少なくとも65%の相同性または同一性を有する、例えば配列番号67または配列番号69に対して、少なくとも70%の相同性または同一性、少なくとも71%の相同性または同一性、少なくとも72%など、少なくとも73%など、少なくとも74%など、少なくとも75%など、少なくとも80%など、少なくとも81%など、少なくとも82%など、少なくとも83%など、少なくとも84%など、少なくとも85%など、少なくとも86%など、少なくとも87%など、少なくとも88%など、少なくとも89%など、少なくとも90%など、少なくとも91%など、少なくとも92%など、少なくとも93%など、少なくとも94%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%の相同性または同一性を有する変異体または機能的バリアントを発現する。
【0098】
いくつかの実施形態では、FARは、Har_FAR(オオタバコガ由来のFAR、配列番号12)ではない。いくつかの実施形態では、FARは、Ta_FAR(メンフクロウ由来のFAR、配列番号8)ではない。
【0099】
したがって、酵母細胞は、本明細書の上記のデサチュラーゼのいずれか、または脂肪アシルCoAを炭素鎖長12の不飽和脂肪アシルCoAに変換する能力を保持するその機能的バリアントなどの、炭素鎖長12を有する脂肪アシルCoA中に1つ以上の二重結合を導入でき、これにより脂肪アシルCoAを炭素鎖長12のおよび1つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪アシルCoAに変換できるデサチュラーゼを発現し得る。酵母細胞はさらに、上記のとおり、12を超える炭素鎖長(炭素鎖長14以上など)の脂肪アシルCoA中に少なくとも1つの二重結合を導入できるデサチュラーゼ、または12を超える炭素鎖長(炭素鎖長14以上など)の脂肪アシルCoA中に少なくとも1つの二重結合を導入する能力を保持するその機能的バリアントを発現できる。これらの酵母細胞のいずれも、本明細書において上に記載のレダクターゼ、またはレダクターゼ活性を保持するその機能的バリアントをさらに発現し得る。
【0100】
レダクターゼまたはその機能的バリアントが所望の活性を有するか否かを試験するために、当技術分野で知られている方法を使用できる。例えば、試験される候補酵素は、酵母細胞、例えばベクター上または酵母細胞のゲノム内に導入され得、適切な培地中で酵母細胞をインキュベートし、ブロスから脂肪アルコールを抽出し、不飽和脂肪アルコールが産生されるか否かを決定するためにGC-MS分析などの分析を実施する。天然のエロンガーゼ遺伝子(複数可)が欠失している酵母細胞中で活性を試験することは、有利であり得る。このような手順の例は、実施例4またはSchneiter et al.,2000に記載されている。
【0101】
前駆体の増加された利用可能性
E8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オールおよびその誘導体の産生を改善するために、必要な前駆体、特にE8,E10-C12:CoAの利用可能性を高めるために、酵母細胞中に追加の改変を導入することが、有利であり得る。酵母細胞はしたがって、特に、以下に詳述する改変のいずれかでさらに改変され得る:
-異種シトクロムb5の発現、
-異種シトクロムb5レダクターゼの発現、
-ヘモグロビンの発現、
-活性の完全なまたは部分的な喪失をもたらす天然エロンガーゼ(複数可)の不活性化、
-活性の完全なまたは部分的な喪失をもたらす天然チオエステラーゼ(複数可)の不活性化、
-天然の脂肪アルデヒドデヒドロゲナーゼ(複数可)、脂肪アルコールオキシダーゼ(複数可)、ペルオキシソーム生合成因子および/または脂肪アシルシンターゼ(複数可)の活性の不活性化または改変、
-異種チオエステラーゼ遺伝子の発現、
-脂肪アシルシンターゼとチオエステラーゼの融合タンパク質の発現。
【0102】
酵素、例えばエロンガーゼ、チオエステラーゼ、脂肪アルデヒドデヒドロゲナーゼ、脂肪アルコールオキシダーゼ、ペルオキシソーム生合成因子または脂肪アシルシンターゼは、遺伝子、例えばコード配列、プロモーター、コザック配列、ターミネーターまたは他の調節エレメント中において、例えば完全なもしくは部分的な欠失、挿入、置換、またはナンセンスもしくはミスセンス変異を含む、1つ以上の変異を導入することによって不活性化され得る。例えば天然プロモーターまたは天然ターミネーターは、それぞれ、別のより弱いプロモーターまたは別のターミネーターによって置き換えることができる。活性の部分的または完全な喪失をもたらす他の不活化方法は、転写の抑制、ならびに例えば関連する転写物の分解をもたらすRNAiシステムまたはCRISPR/Casシステムを使用する、サイレンシングなどの、転写後不活化を含み、それにより翻訳を防止するかまたは少なくとも減少させ、ならびにタンパク質の阻害などの、翻訳後の不活性化を含む。酵素活性はあるいは、例えば細胞内局在化などの酵素の特性を改変するために、または当技術分野で知られている方法を使用して活性を増加させるために、改変されてよい。
【0103】
エロンガーゼ活性は、例えばSchneiter et al.,2000に記載されているように、脂肪酸プロファイルを分析することにより試験され得る。
【0104】
チオエステラーゼ活性は、Nancolas et al.,2017に記載のチオエステラーゼ活性アッセイなどの、適切なアッセイにより試験され得る。
【0105】
脂肪アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性は、Iwama et al.,2014に記載の脂肪アルデヒド分解アッセイなどの、適切なアッセイにより試験され得る。
【0106】
脂肪アルコールオキシダーゼ活性は、Iwama et al.,2015に記載の脂肪アルコール分解アッセイなどの、適切なアッセイにより試験され得る。
【0107】
ペルオキシソーム生合成因子活性は、唯一の炭素源として脂肪酸を含む培地中での候補脂肪アルコールオキシダーゼを発現する酵母細胞の成長アッセイなどの、適切なアッセイにより試験され得る。
【0108】
脂肪アシルシンターゼ活性は、脂肪アシルシンターゼが必須遺伝子であるため、細胞成長を試験することにより、試験され得る。
【0109】
上記の改変のいずれかを組み合わせることができ、すなわち酵母細胞は、これらの改変のいくつかを含み得る。
【0110】
異種シトクロムb5の発現
本発明者らがコドレモンおよびその誘導体の産生に有益であることを見出した1つの改変は、酵母細胞における異種シトクロムb5の発現である。この膜結合ヘモプロテインは、いくつかの膜結合オキシゲナーゼの電子担体として機能する。実施例(特に実施例6)に示されるとおり、異種シトクロムb5の発現は、脂肪酸メチルエステル、特にE8,E10-C12:MeおよびE9/Z9-C12:Meの利用可能性を高めることが判明した。このような改変はしたがって、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A、および任意によりコドレモンなどの、炭素鎖長12を有する不飽和脂肪アルコールの産生を増加させると予想される。
【0111】
いくつかの実施形態では、シトクロムb5は、鱗翅目種に固有のシトクロムb5である。特定の実施形態では、シトクロムb5は、Helicoverpa種由来のシトクロムb5、好ましくは配列番号4に示されるものなどの、オオタバコガ由来のシトクロムb5、または配列番号4に対して、少なくとも65%の相同性または同一性、少なくとも70%の相同性または同一性など、少なくとも71%の相同性または同一性など、少なくとも72%など、少なくとも73%など、少なくとも74%など、少なくとも75%など、少なくとも80%など、少なくとも85%など、少なくとも90%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%の相同性または同一性を有するその機能的バリアントである。
【0112】
シトクロムb5は、高レベルで発現され得る。
【0113】
シトクロムb5は、シトクロムb5またはその相同体をコードする酵母細胞中に核酸を導入することによって発現され得る。例えば、配列番号3に示される核酸、または配列番号3に対して、少なくとも60%の相同性または同一性、例えば、配列番号3に対して、少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性などを有するその相同体が、導入される。
【0114】
シトクロムb5の機能的バリアントが所望の活性を保持するか否かを試験するために、当技術分野で知られている方法、例えば、Lamb et al.,1999に記載されているような分光光度アッセイを使用できる。
【0115】
したがって、いくつかの実施形態では、酵母細胞は、上記のようにデサチュラーゼおよび脂肪アシルCoAレダクターゼを発現し、本明細書に記載の異種シトクロムb5をさらに発現する。特に、酵母細胞は、Cpo_CPRQ(配列番号2)、変異体Cpo_CPRQ、例えばS82変異体またはS85変異体など、好ましくはS85A変異体などのS85変異体、およびその機能的バリアントから選択される1つ以上のデサチュラーゼ、Ase_FAR(配列番号10)、変異体Ase_FAR、例えばT198変異体またはS413変異体、好ましくはT198A変異体またはS413A変異体、Aip_FAR(配列番号61)、Hs_FAR(配列番号71)、Has_FAR(配列番号73)、Hv_FAR(配列番号75)、Har_FAR(配列番号12)およびその機能的バリアントから選択される1つ以上のレダクターゼ、ならびに本明細書の上記に記載のシトクロムb5、オオタバコガ(配列番号4)由来のシトクロムb5またはその機能的バリアントなどを発現し得る。酵母細胞は、Cpo_CPRQ、その変異体または機能的バリアントに加えて、上記のとおり、炭素鎖長12の脂肪アシルCoA中に少なくとも1つの二重結合を導入できる別のデサチュラーゼ、例えばCpo_NPVE、Cpo_SPTQ、その変異体または機能的バリアントも発現し得る。
【0116】
酵母細胞は、本明細書に記載の改変のいずれか、特に異種シトクロムb5レダクターゼの発現、ヘモグロビンの発現、活性の完全なまたは部分的な喪失をもたらす天然のエロンガーゼ遺伝子(複数可)の変異、活性の完全なまたは部分的な喪失をもたらす天然のチオエステラーゼ遺伝子(複数可)の変異、脂肪アルデヒドデヒドロゲナーゼ(複数可)、脂肪アルコールオキシダーゼ(複数可)、ペルオキシソーム生合成因子および/または脂肪アシルシンターゼ(複数可)をコードする天然遺伝子(複数可)の変異、異種チオエステラーゼ遺伝子の発現、ならびに/または脂肪アシルシンターゼおよびチオエステラーゼの融合タンパク質の発現により、さらに改変され得る。
【0117】
異種シトクロムb5レダクターゼの発現(EC1.6.2.2)
E8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび任意によりコドレモンおよびその誘導体の増加された産生をもたらし得る別の改変は、異種シトクロムb5レダクターゼ(EC1.6.2.2)の発現である。
【0118】
メトヘモグロビンレダクターゼとしても知られるシトクロムb5レダクターゼは、メトヘモグロビンをヘモグロビンに変換するNADH依存性酵素である。
NADH+H++2フェリシトクロムb5=NAD++2フェロシトクロムb5
【0119】
いくつかの実施形態では、シトクロムb5レダクターゼは、鱗翅目種に固有のシトクロムb5レダクターゼである。特定の実施形態では、シトクロムb5レダクターゼは、Helicoverpa種由来のシトクロムb5レダクターゼ、好ましくはオオタバコガなどのHelicoverpa種由来のシトクロムb5レダクターゼ、例えば配列番号24に示されるシトクロムb5レダクターゼ、または配列番号24に対して、少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有するそれらの機能的バリアントである。
【0120】
シトクロムb5レダクターゼの機能的バリアントが所望の活性を保持するか否かを試験するために、当技術分野で知られている方法、例えばLamb et al.,1999に記載されるような分光光度アッセイを使用できる。
【0121】
シトクロムb5レダクターゼは、高レベルで発現され得る。
【0122】
シトクロムb5レダクターゼは、シトクロムb5レダクターゼまたはその相同体をコードする酵母細胞中に核酸を導入することによって発現させることができる。例えば、配列番号23に示される核酸、または配列番号23に対して、少なくとも60%の相同性または同一性、例えば、配列番号23に対して、少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性などを有するその相同体が、導入される。
【0123】
したがって、いくつかの実施形態では、酵母細胞は、上記のとおりデサチュラーゼおよび脂肪アシルCoAレダクターゼを発現し、本明細書の上に記載のように異種シトクロムb5レダクターゼをさらに発現する。酵母細胞は、本明細書に記載の改変のいずれかでさらに改変され得る。特に、酵母細胞は、Cpo_CPRQ(配列番号2)、Gmo_CPRQ(配列番号77)、変異体Cpo_CPRQ、例えば、S82変異体またはS85変異体などの変異体、好ましくはS85A変異体などのS85変異体、およびその機能的バリアントから選択される1つ以上のデサチュラーゼ、Ase_FAR(配列番号10)、変異体Ase_FAR、例えば、T198変異体またはS413変異体、好ましくはT198A変異体またはS413A変異体、Aip_FAR(配列番号61)、Hs_FAR(配列番号71)、Has_FAR(配列番号73)、Hv_FAR(配列番号75)、Har_FAR(配列番号12)およびその機能的バリアントから選択される1つ以上のレダクターゼ、ならびに本明細書の上に記載のシトクロムb5レダクターゼ、オオタバコガ(配列番号25)由来のシトクロムb5レダクターゼまたはその機能的バリアントなどを発現し得る。酵母細胞は、Cpo_CPRQまたはGmo_CPRQ、その変異体または機能的バリアントに加えて、上記のとおり、炭素鎖長12の脂肪アシルCoA中に少なくとも1つの二重結合を導入できる別のデサチュラーゼ、例えばCpo_NPVE、Cpo_SPTQ、その変異体または機能的バリアントも発現し得る。酵母細胞は、本明細書で上に記載されるとおり、シトクロムb5をさらに発現し得る。
【0124】
酵母細胞は、本明細書に記載の改変のいずれか、特に異種シトクロムb5の発現、ヘモグロビンの発現、活性の完全なまたは部分的な喪失をもたらす天然のエロンガーゼ遺伝子(複数可)の変異、活性の完全なまたは部分的な喪失をもたらす天然のチオエステラーゼ遺伝子(複数可)の変異、脂肪アルデヒドデヒドロゲナーゼ(複数可)、脂肪アルコールオキシダーゼ(複数可)、ペルオキシソーム生合成因子および/または脂肪アシルシンターゼ(複数可)をコードする天然遺伝子(複数可)の変異、異種チオエステラーゼ遺伝子の発現、ならびに/または脂肪アシルシンターゼおよびチオエステラーゼの融合タンパク質の発現により、さらに改変され得る。
【0125】
ヘモグロビンの発現
E8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび任意によるコドレモンおよびその誘導体の産生に有利であり得る別の改変は、酵母細胞中でのヘモグロビン、特に異種ヘモグロビンの発現である。
【0126】
実施例、特に実施例6に示されるとおり、デサチュラーゼを発現する酵母細胞中でのヘモグロビンの発現は、E8,E10-C12:MeおよびE9/Z9-C12:Meの産生を増加させた。
【0127】
いくつかの実施形態では、ヘモグロビンは、Vitreoscilla stercorariaなどのビトレオシラ(Vitreoscilla)種に固有のヘモグロビンである。特定の実施形態では、ヘモグロビンは、配列番号6に示されるもの、または配列番号6に対して、少なくとも65%の相同性または同一性、少なくとも70%の相同性または同一性など、少なくとも71%の相同性または同一性など、少なくとも72%など、少なくとも73%など、少なくとも74%など、少なくとも75%など、少なくとも80%など、少なくとも85%など、少なくとも90%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%の相同性または同一性などを有するその機能的バリアントである。
【0128】
ヘモグロビンの機能的バリアントが所望の活性を保持するか否かを試験するために、比色アッセイなどの、当技術分野で知られている適切な分析を実施できる。
【0129】
ヘモグロビンは、高レベルで発現され得る。
【0130】
ヘモグロビンは、ヘモグロビンまたはその相同体をコードする酵母細胞中に核酸を導入することによって発現され得る。例えば、配列番号5に示される核酸、または配列番号5に対して、少なくとも60%の相同性または同一性、例えば配列番号5に対して、少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性などを有するその相同体が、導入される。
【0131】
したがって、いくつかの実施形態では、酵母細胞は、上記のようにデサチュラーゼおよび脂肪アシルCoAレダクターゼを発現し、本明細書に記載のとおりヘモグロビンをさらに発現する。特に、酵母細胞は、Cpo_CPRQ(配列番号2)、Gmo_CPRQ(配列番号77)、変異体Cpo_CPRQ、例えばS82変異体またはS85変異体など、好ましくはS85A変異体などのS85変異体、およびその機能的バリアントから選択される1つ以上のデサチュラーゼ、Ase_FAR(配列番号10)、変異体Ase_FAR、例えば、T198変異体またはS413変異体、好ましくはT198A変異体またはS413A変異体、Aip_FAR(配列番号61)、Hs_FAR(配列番号71)、Has_FAR(配列番号73)、Hv_FAR(配列番号75)、Har_FAR(配列番号12)およびその機能的バリアントから選択される1つ以上のレダクターゼ、ならびに本明細書の上に記載のヘモグロビン、Vitreoscilla stercoraria(配列番号6)のヘモグロビンまたはその機能的バリアントなどを発現し得る。酵母細胞は、Cpo_CPRQまたはGmo_CPRQ、その変異体または機能的バリアントに加えて、上記のとおり、炭素鎖長12の脂肪アシルCoA中に少なくとも1つの二重結合を導入できる別のデサチュラーゼ、例えばCpo_NPVE、Cpo_SPTQ、その変異体または機能的バリアントも発現し得る。
【0132】
酵母細胞は、本明細書に記載の改変のいずれか、特に異種シトクロムb5の発現、シトクロムb5レダクターゼの発現、活性の完全なまたは部分的な喪失をもたらす天然のエロンガーゼ遺伝子(複数可)の変異、活性の完全なまたは部分的な喪失をもたらす天然のチオエステラーゼ遺伝子(複数可)の変異、脂肪アルデヒドデヒドロゲナーゼ(複数可)、脂肪アルコールオキシダーゼ(複数可)、ペルオキシソーム生合成因子および/または脂肪アシルシンターゼ(複数可)をコードする天然遺伝子(複数可)の変異、異種チオエステラーゼ遺伝子の発現、ならびに/または脂肪アシルシンターゼおよびチオエステラーゼの融合タンパク質の発現により、さらに改変され得る。
【0133】
エロンガーゼ遺伝子(複数可)中の変異
E8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび任意によるコドレモンおよびその誘導体の産生に有利であり得る別の改変は、酵母細胞中の特定の遺伝子の変異、特に1つ以上のエロンガーゼ遺伝子の変異であり、変異は、対応するエロンガーゼの活性の部分的または完全な喪失をもたらす。エロンガーゼは、脂肪酸を含む、いくつかの分子の炭素鎖伸長を触媒する。いくつかの実施形態では、エロンガーゼは、中鎖アシルエロンガーゼである。エロンガーゼをコードするいくつかの遺伝子を自然に含む酵母細胞を使用する場合、酵母細胞は、これらの遺伝子の1つ以上の中に変異を含むようにさらに操作され、1つ以上のエロンガーゼの活性の部分的または完全な喪失をもたらす。
【0134】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、ヤロウイア・リポリティカ細胞であり、エロンガーゼは、ELO1遺伝子(配列番号13)によってコードされる。
【0135】
いくつかの実施形態では、変異は、対応するエロンガーゼの活性の完全な喪失をもたらす欠失である。他の実施形態では、エロンガーゼは、遺伝子、例えばコード配列、プロモーター、コザック配列、ターミネーターまたは他の調節エレメント中において、例えば完全なもしくは部分的な欠失、挿入、置換、またはナンセンスもしくはミスセンス変異を含む、1つ以上の変異を導入することにより不活性化される。例えば天然プロモーターまたは天然ターミネーターは、それぞれ、別のより弱いプロモーターまたは別のターミネーターによって置き換えることができる。活性の部分的なまたは完全な喪失をもたらす他の不活化方法は、転写の抑制、ならびに例えば関連する転写物の分解をもたらすRNAiシステムまたはCRISPR/Casシステムを使用する、サイレンシングなどの、転写後不活化を含み、それにより翻訳を防止するかまたは少なくとも減少させ、ならびにタンパク質の阻害などの、翻訳後の不活性化を含む。タンパク質がエロンガーゼ活性を保持するか否かを試験する方法の例は、実施例4またはSchneiter et al.,2000に記載される。
【0136】
したがって、いくつかの実施形態では、酵母細胞は、上記のようにデサチュラーゼおよび脂肪アシルCoAレダクターゼを発現し、エロンガーゼをコードする1つ以上の遺伝子中に1つ以上の変異をさらに含み、変異は、本明細書に記載の機能の部分的なまたは完全な喪失をもたらす。特に、酵母細胞は、Cpo_CPRQ(配列番号2)、変異体Cpo_CPRQ、例えば、S82変異体またはS85変異体、好ましくは、S85A変異体などのS85変異体、およびその機能的バリアントから選択される1つ以上のデサチュラーゼ、Ase_FAR(配列番号10)、変異体Ase_FAR、例えばT198変異体またはS413変異体、好ましくはT198A変異体またはS413A変異体、Aip_FAR(配列番号61)、Hs_FAR(配列番号71)、Has_FAR(配列番号73)、Hv_FAR(配列番号75)、Har_FAR(配列番号12)およびその機能的バリアントから選択される1つ以上のレダクターゼを発現し、かつ本明細書の上に記載のとおり、エロンガーゼの活性の部分的なまたは完全な喪失をもたらす変異をさらに含み得る。酵母細胞は、Cpo_CPRQまたはGmo_CPRQ、その変異体または機能的バリアントに加えて、上記のとおり、炭素鎖長12の脂肪アシルCoA中に少なくとも1つの二重結合を導入できる別のデサチュラーゼ、例えばCpo_NPVE、Cpo_SPTQ、その変異体または機能的バリアントも発現し得る。
【0137】
酵母細胞は、本明細書に記載の改変のいずれか、特に異種シトクロムの発現、異種シトクロムb5レダクターゼの発現、ヘモグロビンの発現、活性の完全なまたは部分的な喪失をもたらす天然のチオエステラーゼ遺伝子(複数可)の変異、脂肪アルデヒドデヒドロゲナーゼ(複数可)、脂肪アルコールオキシダーゼ(複数可)、ペルオキシソーム生合成因子および/または脂肪アシルシンターゼ(複数可)をコードする天然遺伝子(複数可)の変異、異種チオエステラーゼ遺伝子の発現、ならびに/または脂肪アシルシンターゼおよびチオエステラーゼの融合タンパク質の発現により、さらに改変され得る。
【0138】
チオエステラーゼ遺伝子(複数可)中の変異
E8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび任意によるコドレモンおよびその誘導体の産生に有利であり得る別の改変は、酵母細胞中の特定の遺伝子の変異、特に1つ以上のチオエステラーゼ遺伝子の変異であり、変異は、対応するチオエステラーゼの活性の部分的なまたは完全な喪失をもたらす。チオエステラーゼをコードするいくつかの遺伝子を自然に含む酵母細胞を使用する場合、酵母細胞は、これらの遺伝子の1つ以上の中に変異を含むようにさらに操作され、1つ以上のチオエステラーゼの活性の部分的なまたは完全な喪失をもたらす。
【0139】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、ヤロウイア・リポリティカ細胞であり、チオエステラーゼは、YAL10_F14729g遺伝子(配列番号19)、YALI0_E18876g(配列番号54)、またはYALI0_D03597g(配列番号55)によってコードされる。したがって、いくつかの実施形態では、ヤロウイア・リポリティカ細胞は、YAL10_F14729g遺伝子(配列番号19)の欠失などの変異を含み、対応するチオエステラーゼの部分的なまたは完全な喪失をもたらす。他のいくつかの実施形態では、ヤロウイア・リポリティカ細胞は、YALI0_E18876g遺伝子(配列番号54)の欠失などの変異を含み、対応するチオエステラーゼの部分的なまたは完全な喪失をもたらす。他のいくつかの実施形態では、ヤロウイア・リポリティカ細胞は、YALI0_D03597g(配列番号55)の欠失などの変異を含み、対応するチオエステラーゼの部分的なまたは完全な喪失をもたらす。いくつかの実施形態では、ヤロウイア・リポリティカ細胞は、いくつかのチオエステラーゼ遺伝子中に変異を含む。例えば、細胞は、YAL10_F14729g(配列番号19)の欠失などの変異、およびYALI0_E18876g(配列番号54)の欠失などの変異;またはYAL10_F14729g(配列番号19)、およびYALI0_D03597g(配列番号55)の欠失などの変異;またはYALI0_E18876g(配列番号54)およびYALI0_D03597g(配列番号55)の欠失などの変異を含み得る。いくつかの実施形態では、細胞は、YAL10_F14729g(配列番号19)、YALI0_E18876g(配列番号54)、およびYALI0_D03597g(配列番号55)の欠失などの変異を含む。
【0140】
したがって、いくつかの実施形態では、酵母細胞は、上記のようにデサチュラーゼおよび脂肪アシルCoAレダクターゼを発現し、チオエステラーゼをコードする1つ以上の遺伝子中に1つ以上の変異をさらに含み、変異は、本明細書に記載の機能の部分的なまたは完全な喪失をもたらす。特に、酵母細胞は、Cpo_CPRQ(配列番号2)、Gmo_CPRQ(配列番号77)、変異体Cpo_CPRQ、例えばS82変異体またはS85変異体などの変異体、好ましくはS85A変異体などのS85変異体、およびその機能的バリアントから選択される1つ以上のデサチュラーゼ、Ase_FAR(配列番号10)、変異体Ase_FAR、例えばT198変異体またはS413変異体、好ましくはT198A変異体またはS413A変異体、Aip_FAR(配列番号61)、Hs_FAR(配列番号71)、Has_FAR(配列番号73)、Hv_FAR(配列番号75)、Har_FAR(配列番号12)およびその機能的バリアント、およびチオエステラーゼをコードする1つ以上の遺伝子中の1つ以上の変異から選択される1つ以上のレダクターゼを発現し得、変異は、YAL10_F14729g(配列番号19)、YALI0_E18876g(配列番号54)およびYALI0_D03597g(配列番号55)の1つ以上の中の変異などの、本明細書の上記に記載の機能の部分的なまたは完全な喪失をもたらす。酵母細胞は、Cpo_CPRQまたはGmo_CPRQ、その変異体または機能的バリアントに加えて、上記のとおり、炭素鎖長12の脂肪アシルCoA中に少なくとも1つの二重結合を導入できる別のデサチュラーゼ、例えばCpo_NPVE、Cpo_SPTQ、その変異体または機能的バリアントも発現し得る。
【0141】
酵母細胞は、本明細書に記載の改変のいずれか、特に異種シトクロムb5の発現、異種シトクロムb5レダクターゼの発現、ヘモグロビンの発現、活性の完全なまたは部分的な喪失をもたらす天然のエロンガーゼ遺伝子(複数可)の変異、脂肪アルデヒドデヒドロゲナーゼ(複数可)、脂肪アルコールオキシダーゼ(複数可)、ペルオキシソーム生合成因子および/または脂肪アシルシンターゼ(複数可)をコードする天然遺伝子(複数可)の変異、異種チオエステラーゼ遺伝子の発現、ならびに/または脂肪アシルシンターゼおよびチオエステラーゼの融合タンパク質の発現により、さらに改変され得る。
【0142】
追加の改変
酵母細胞は、脂肪酸代謝に関与する酵素の活性の低下をもたらす少なくとも1つの変異などの、他の改変をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、天然の脂肪アルデヒドデヒドロゲナーゼ(複数可)、脂肪アルコールオキシダーゼ(複数可)、ペルオキシソーム生合成因子、および/または脂肪アシルシンターゼ(複数可)の活性が改変され、好ましくは活性は、低下されるまたは消失される。例えば、酵母細胞は、脂肪アルデヒドデヒドロゲナーゼ、脂肪アルコールオキシダーゼ、および/またはペルオキシソーム生合成因子をコードする遺伝子中に1つ以上の変異をさらに含み得る。これらの酵素のいずれかは、遺伝子中で、例えばコード配列、プロモーター、コザック配列、ターミネーターまたは他の調節エレメント中で、例えば完全なもしくは部分的な欠失、挿入、置換、またはナンセンスもしくはミスセンス変異を含む、1つ以上の変異を導入することによって不活性化され得る。例えば天然プロモーターまたは天然ターミネーターは、それぞれ、別のより弱いプロモーターまたは別のターミネーターによって置き換えることができる。活性の部分的なまたは完全な喪失をもたらす他の不活化方法は、転写の抑制、ならびに例えば関連する転写物の分解をもたらすRNAiシステムまたはCRISPR/Casシステムを使用する、サイレンシングなどの、転写後不活化を含み、それにより翻訳を防止するかまたは少なくとも減少させ、ならびにタンパク質の阻害などの、翻訳後の不活性化を含む。酵素活性はさもなければ、例えば細胞内局在化などの酵素の特性を改変するために、または当技術分野で知られている方法を使用して、活性を増加させるために、改変されてよい。
【0143】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、本明細書で上に記載されるヤロウイア・リポリティカ細胞であり、これらの細胞は、HFD1、HFD2、HFD3、HFD4、FAO1、GPATおよびPEX10の少なくとも1つの中に変異などの改変、またはそれに対して、少なくとも60%の相同性または同一性、例えばそれらに対して少なくとも65%の相同性または同一性など、少なくとも70%の相同性または同一性など、少なくとも75%の相同性または同一性など、少なくとも80%の相同性または同一性など、少なくとも81%の相同性または同一性など、少なくとも82%の相同性または同一性など、少なくとも83%の相同性または同一性など、少なくとも84%の相同性または同一性など、少なくとも85%の相同性または同一性など、少なくとも86%の相同性または同一性など、少なくとも87%の相同性または同一性など、少なくとも88%の相同性または同一性など、少なくとも89%の相同性または同一性など、少なくとも90%の相同性または同一性など、少なくとも91%の相同性または同一性など、少なくとも92%の相同性または同一性など、少なくとも93%の相同性または同一性など、少なくとも94%の相同性または同一性など、少なくとも95%の相同性または同一性など、少なくとも96%の相同性または同一性など、少なくとも97%の相同性または同一性など、少なくとも98%の相同性または同一性など、少なくとも99%の相同性または同一性などを有する、少なくとも1つのタンパク質の活性の低下をもたらす変異などの改変をさらに含む。
【0144】
ヤロウイア・リポリティカ中で、脂肪アルデヒドデヒドロゲナーゼHfd1は、HFD1(YALI0_F23793g)によりコードされる。これは、脂肪酸への脂肪アルデヒドの酸化を触媒する。明細書WO2018/109163において詳細に記載されるとおり、Hfd1の低下された活性は、酵母細胞中の不飽和脂肪アルコールの増加された力価をもたらす。本開示によるヤロウイア・リポリティカ細胞はしたがって、HFD1の欠失などの変異をさらに含み得、Hfd1の活性の部分的なまたは完全な喪失をもたらす。Hfd1の活性の低下は、本明細書に記載の他の方法によって達成できる。
【0145】
脂肪アルデヒドデヒドロゲナーゼHfd2は、HFD2(YALI_0E15400g)によりコードされる。これは、脂肪酸への脂肪アルデヒドの酸化を触媒する。本開示によるヤロウイア・リポリティカ細胞はしたがって、HFD2の欠失などの変異をさらに含み得、Hfd2の活性の部分的なまたは完全な喪失をもたらす。Hfd2の活性の低下は、本明細書に記載の他の方法によって達成できる。
【0146】
脂肪アルデヒドデヒドロゲナーゼHfd3は、HFD3(YALI0_A17875g)によりコードされる。これは、脂肪酸への脂肪アルデヒドの酸化を触媒する。本開示によるヤロウイア・リポリティカ細胞はしたがって、HFD3の欠失などの変異をさらに含み得、Hfd3の活性の部分的なまたは完全な喪失をもたらす。Hfd3の活性の低下は、本明細書に記載の他の方法によって達成できる。
【0147】
ヤロウイア・リポリティカ中で、脂肪アルデヒドデヒドロゲナーゼHfd4は、HFD4(YALI0_B01298g)によりコードされる。これは、脂肪酸への脂肪アルデヒドの酸化を触媒する。明細書WO2018/109163において詳細に記載されるとおり、低下されたHfd4の活性は、酵母細胞中の不飽和脂肪アルコールの増加された力価をもたらす。本開示によるヤロウイア・リポリティカ細胞はしたがって、HFD4の欠失などの変異をさらに含み得、Hfd4の活性の部分的なまたは完全な喪失をもたらす。Hfd4の活性の低下は、本明細書に記載の他の方法によって達成できる。
【0148】
いくつかの実施形態では、酵母細胞はさらに、改変、例えば欠失などの、変異を含み、Hfd1、Hfd2、Hfd3またはHfd4に対して少なくとも60%の相同性または同一性、例えばHfd1、Hfd2、Hfd3またはHfd4に対して、少なくとも65%の相同性または同一性など、70%の相同性または同一性など、75%の相同性または同一性など、80%の相同性または同一性など、81%の相同性または同一性など、82%の相同性または同一性など、83%の相同性または同一性など、84%の相同性または同一性など、85%の相同性または同一性など、86%の相同性または同一性など、87%の相同性または同一性など、88%の相同性または同一性など、89%の相同性または同一性など、90%の相同性または同一性など、91%の相同性または同一性など、92%の相同性または同一性など、93%の相同性または同一性など、94%の相同性または同一性など、95%の相同性または同一性など、96%の相同性または同一性など、97%の相同性または同一性など、98%の相同性または同一性など、99%の相同性または同一性などを有する脂肪アルデヒドデヒドロゲナーゼの活性の部分的なまたは完全な喪失をもたらす。
【0149】
ヤロウイア・リポリティカ中で、脂肪アルコールオキシダーゼFao1は、FAO1(YALI0B14014g)によりコードされる。その欠失は、ω-ヒドロキシ脂肪酸の増加された蓄積をもたらす。明細書WO2018/109163において詳細に記載されるとおり、Fao1の低下された活性は、酵母細胞中で不飽和脂肪アルコールの増加された力価をもたらす。本開示によるヤロウイア・リポリティカ細胞はしたがって、FAO1の欠失などの変異をさらに含み得、Fao1の活性の部分的なまたは完全な喪失をもたらす。Fao1の活性の低下は、本明細書に記載の他の方法によって達成できる。
【0150】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、欠失などの変異をさらに含み、Fao1に対して、少なくとも60%の相同性または同一性、例えばFao1に対して、少なくとも65%の相同性または同一性など、少なくとも70%の相同性または同一性など、少なくとも75%の相同性または同一性など、少なくとも80%の相同性または同一性など、少なくとも81%の相同性または同一性など、少なくとも82%の相同性または同一性など、少なくとも83%の相同性または同一性など、少なくとも84%の相同性または同一性など、少なくとも85%の相同性または同一性など、少なくとも86%の相同性または同一性など、少なくとも87%の相同性または同一性など、少なくとも88%の相同性または同一性など、少なくとも89%の相同性または同一性など、少なくとも90%の相同性または同一性など、少なくとも91%の相同性または同一性など、少なくとも92%の相同性または同一性など、少なくとも93%の相同性または同一性など、少なくとも94%の相同性または同一性など、少なくとも95%の相同性または同一性など、少なくとも96%の相同性または同一性など、少なくとも97%の相同性または同一性など、少なくとも98%の相同性または同一性など、少なくとも99%の相同性または同一性などを有する脂肪アルコールオキシダーゼの活性の部分的または完全な喪失をもたらす。
【0151】
ヤロウイア・リポリティカ中で、ペルオキシソーム生合成因子10Pex10は、PEX10(YALI0C01023g)によりコードされる。明細書WO2018/109163において詳細に記載されるとおり、Pex10の低下された活性は、酵母細胞中の不飽和脂肪アルコールの増加された力価をもたらす。本開示によるヤロウイア・リポリティカ細胞はしたがって、PEX10の欠失などの変異をさらに含み得、Pex10の活性の部分的なまたは完全な喪失をもたらす。Pex10の活性の低下は、本明細書に記載の他の方法によって達成できる。
【0152】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、欠失などの変異をさらに含み、Pex10に対して、少なくとも60%の相同性または同一性、例えばPex10に対して、少なくとも65%の相同性または同一性など、少なくとも70%の相同性または同一性など、少なくとも75%の相同性または同一性など、少なくとも80%の相同性または同一性など、少なくとも81%の相同性または同一性など、少なくとも82%の相同性または同一性など、少なくとも83%の相同性または同一性など、少なくとも84%の相同性または同一性など、少なくとも85%の相同性または同一性など、少なくとも86%の相同性または同一性など、少なくとも87%の相同性または同一性など、少なくとも88%の相同性または同一性など、少なくとも89%の相同性または同一性など、少なくとも90%の相同性または同一性など、少なくとも91%の相同性または同一性など、少なくとも92%の相同性または同一性など、少なくとも93%の相同性または同一性など、少なくとも94%の相同性または同一性など、少なくとも95%の相同性または同一性など、少なくとも96%の相同性または同一性など、少なくとも97%の相同性または同一性など、少なくとも98%の相同性または同一性など、少なくとも99%の相同性または同一性などを有するペルオキシソーム生合成因子Pex10の活性の部分的なまたは完全な喪失をもたらす。
【0153】
ヤロウイア・リポリティカ中で、グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼは、GPAT(YALI0_C00209g)によりコードされる。GPATは、グリセロ脂質の生合成に向けた最初の反応を触媒する。この遺伝子は、ヤロウイア・リポリティカにおいて必須である。明細書WO2018/109163において詳細に記載されるとおり、GPATの低下された活性は、酵母細胞中で不飽和脂肪アルコールの増加された力価をもたらす。本開示によるヤロウイア・リポリティカ細胞はしたがって、GPATの変異をさらに含み得、GPATの活性の部分的なまたは完全な喪失をもたらす。GPATの活性の低下は、本明細書に記載される他の方法によって達成できる。
【0154】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、変異をさらに含み、GPATに対して、少なくとも60%の相同性または同一性、例えばGPATに対して、少なくとも65%の相同性または同一性など、少なくとも70%の相同性または同一性など、少なくとも75%の相同性または同一性など、少なくとも80%の相同性または同一性など、少なくとも81%の相同性または同一性など、少なくとも82%の相同性または同一性など、少なくとも83%の相同性または同一性など、少なくとも84%の相同性または同一性など、少なくとも85%の相同性または同一性など、少なくとも86%の相同性または同一性など、少なくとも87%の相同性または同一性など、少なくとも88%の相同性または同一性など、少なくとも89%の相同性または同一性など、少なくとも90%の相同性または同一性など、少なくとも91%の相同性または同一性など、少なくとも92%の相同性または同一性など、少なくとも93%の相同性または同一性など、少なくとも94%の相同性または同一性など、少なくとも95%の相同性または同一性など、少なくとも96%の相同性または同一性など、少なくとも97%の相同性または同一性など、少なくとも98%の相同性または同一性など、少なくとも99%の相同性または同一性などを有するグリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼの活性の部分的なまたは完全な喪失をもたらす。
【0155】
上記の酵素のいずれかの活性の部分的なまたは完全な喪失はまた、遺伝子中に、例えばコード配列、プロモーター、コザック配列、ターミネーターまたは他の調節エレメント中に、例えば完全なもしくは部分的な欠失、挿入、置換、またはナンセンスもしくはミスセンス変異を含む、1つ以上の変異を導入することにより達成され得る。例えば天然プロモーターまたは天然ターミネーターは、それぞれ、別のより弱いプロモーターまたは別のターミネーターによって置き換えることができる。活性の部分的なまたは完全な喪失をもたらす他の不活化方法は、転写の抑制、ならびに例えば関連する転写物の分解をもたらすRNAiシステムまたはCRISPR/Casシステムを使用する、サイレンシングなどの、転写後不活化を含み、それにより翻訳を防止するかまたは少なくとも減少させ、ならびにタンパク質の阻害などの、翻訳後の不活性化を含む。変異などの改変または本明細書の上記に記載の任意の改変が活性の完全なまたは部分的な喪失をもたらすか否かを決定するために、本明細書で上に詳述するような当技術分野で知られている方法を使用できる。例えば、転写の低下をもたらす欠失または改変の場合、PCRなどの増幅方法を使用して、関連する配列が存在しないことを確認できる。タンパク質の発現は、ウエスタンブロットなどの適切なアッセイを使用して、または蛍光マーカーなどのマーカーを使用して発現レベルを測定して調べられてよい。
【0156】
1つ以上の改変脂肪アシルシンターゼを発現することも、酵母細胞にとっては、有利であり得る。これは、代謝フラックスをE8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび不飽和脂肪アルコールおよびその誘導体、コドレモンおよびその誘導体などの、不飽和化産生物の産生に向ける助けとなり得る。したがって、いくつかの実施形態では、酵母細胞は、改変ケトンシンターゼドメインを有する脂肪アシルシンターゼを発現するようにさらに改変される。いくつかの実施形態では、酵母細胞は、本明細書に記載のヤロウイア・リポリティカ細胞であり、細胞は、改変脂肪酸シンターゼ複合体をさらに発現する。一実施形態では、脂肪酸シンターゼ複合体は、複合体のアルファサブユニットをコードする遺伝子を変異させることによって改変される。いくつかの実施形態では、変異は、FAS2(配列番号18)をコードする遺伝子中にある。他の実施形態では、変異は、FAS1(配列番号16)をコードする遺伝子中にある。変異は、配列番号16の残基123(L123)の1つ以上の改変をもたらし得る。変異は、配列番号18の残基1220(I1220)、残基1217(M1217)、または残基1226(M1226)の1つ以上の改変をもたらし、バリアントFAS2をもたらし得る。当業者であれば、そのような変異を設計する方法を知っているであろう。
【0157】
好ましくは、FAS2における変異は、Fas2のI1220Fバリアント、I1220Wバリアント、I1220YバリアントまたはI1220Hバリアントをもたらす。特定の実施形態では、変異は、I1220Fバリアントをもたらす。いくつかの実施形態では、変異は、M1217Fバリアント、M1217Wバリアント、M1217YバリアントまたはM1217Hバリアントをもたらす。他の実施形態では、変異は、M1226Fバリアント、M1226Wバリアント、M1226YバリアントまたはM1226Hバリアントをもたらす。
【0158】
好ましくは、FAS1中の変異は、L123Vバリアントをもたらす。
【0159】
FAS2の残基I1220、M1217またはM1226での2つの変異または3つの変異、および/またはFAS1の残基123での1つの変異などの、上記の変異の2つ以上を有する酵母細胞もまた企図される。
【0160】
したがって、いくつかの実施形態では、酵母細胞は、上記のデサチュラーゼおよび脂肪アシルCoAレダクターゼを発現し、本項に記載の1つ以上の改変をさらに含む。特に、酵母細胞は、Cpo_CPRQ(配列番号2)、Gmo_CPRQ(配列番号77)、変異体Cpo_CPRQ、S82変異体またはS85変異体など、好ましくはS85A変異体などのS85変異体、およびそれらの機能的バリアントから選択される1つ以上のデサチュラーゼ、ならびにAse_FAR(配列番号10)、T198変異体またはS413変異体などの変異体Ase_FAR、好ましくはT198A変異体またはS413A変異体、Aip_FAR(配列番号61)、Hs_FAR(配列番号71)、Has_FAR(配列番号73)、Hv_FAR(配列番号75)、Har_FAR(配列番号12)およびそれらの機能的バリアントから選択される1つ以上のレダクターゼ、上記のように、Hfd1、Hfd2、Hfd3、Hfd4、Fao1およびPex10の1つ以上の機能の部分的または完全な喪失をもたらす変異などの1つ以上の改変を発現し得る、かつ/または上記のように1つ以上の改変脂肪アシルシンターゼをさらに発現し得る。酵母細胞は、Cpo_CPRQまたはGmo_CPRQ、その変異体または機能的バリアントに加えて、上記のとおり、炭素鎖長12の脂肪アシルCoA中に少なくとも1つの二重結合を導入できる別のデサチュラーゼ、例えばCpo_NPVE、Cpo_SPTQ、その変異体または機能的バリアントも発現し得る。
【0161】
酵母細胞は、本明細書に記載の改変のいずれか、特に異種シトクロムb5の発現、異種シトクロムb5レダクターゼの発現、ヘモグロビンの発現、活性の完全なまたは部分的な喪失をもたらす天然のエロンガーゼ(複数可)の不活性化、活性の完全なまたは部分的な喪失をもたらす天然チオエステラーゼ(複数可)の不活性化、異種チオエステラーゼ遺伝子の発現、ならびに/または脂肪アシルシンターゼおよびチオエステラーゼの融合タンパク質の発現により、さらに改変され得る。
【0162】
特に、酵母細胞は、Cpo_CPRQ(配列番号2)、Gmo_CPRQ(配列番号77)、変異体Cpo_CPRQ、例えばS82変異体またはS85変異体など、好ましくはS85A変異体などのS85変異体、およびそれらの機能的バリアントから選択される1つ以上のデサチュラーゼ、ならびにAse_FAR(配列番号10)、変異体Ase_FAR、例えばT198変異体またはS413変異体、好ましくはT198A変異体またはS413A変異体、Aip_FAR(配列番号61)、Hs_FAR(配列番号71)、Has_FAR(配列番号73)、Hv_FAR(配列番号75)、Har_FAR(配列番号12)およびその機能的バリアントから選択される1つ以上のレダクターゼを発現し、以下の中に変異をさらに含み得る:HFD1およびHFD2;HFD1およびHFD3;HFD1およびHFD4;HFD1およびFAO1;HFD1およびPEX10;HFD2およびHFD3;HFD2およびHFD4;HFD2およびFAO1;HFD2およびPEX10;HFD3およびHFD4;HFD3およびFAO1;HFD3およびPEX10;HFD4およびFAO1;HFD4およびPEX10;FAO1およびPEX10;HFD1、HFD2およびHFD3;HFD1、HFD2およびHFD4;HFD1、HFD2およびFAO1;HFD1、HFD2およびPEX10;HFD1、HFD3およびHFD4;HFD1、HFD3およびFAO1;HFD1、HFD3およびPEX10;HFD1、HFD4およびFAO1;HFD1、HFD4およびPEX10;HFD1、FAO1およびPEX10;HFD2、HFD3およびHFD4;HFD2、HFD3およびFAO1;HFD2、HFD3およびPEX10;HFD2、HFD4およびFAO1;HFD2、HFD4およびPEX10;HFD2、FAO1およびPEX10;HFD3、HFD4およびFAO1;HFD3、HFD4およびPEX10;HFD3、FAO1およびPEX10;HFD4、FAO1およびPEX10;HFD1、HFD2、HFD3およびHFD4;HFD1、HFD2、HFD3およびFAO1;HFD1、HFD2、HFD3およびPEX10;HFD1、HFD2、HFD4およびFAO1;HFD1、HFD2、HFD4およびPEX10;HFD1、HFD2、FAO1およびPEX10;HFD1、HFD3、HFD4およびFAO1;HFD1、HFD3、HFD4およびPEX10;HFD1、HFD3、FAO1およびPEX10;HFD1、HFD4、FAO1およびPEX10;HFD2、HFD3、HFD4およびFAO1;HFD2、HFD3、HFD4およびPEX10;HFD2、HFD3、FAO1およびPEX10;HFD2、HFD4、FAO1およびPEX10;HFD3、HFD4、FAO1およびPEX10;HFD1、HFD2、HFD3、HFD4およびFAO1;HFD1、HFD2、HFD3、HFD4およびPEX10;HFD1、HFD3、HFD4、FAO1およびPEX10;HFD2、HFD3、HFD4、FAO1およびPEX10;HFD1、HFD2、HFD3、HFD4、FAO1およびPEX10、またはこれらに対して少なくとも60%の相同性または同一性を有する対応するバリアントの前述の組み合わせ。さらに、酵母細胞は、上記のとおり、改変された脂肪アシルシンターゼ、特に変異体Fas1および/または変異体Fas2をさらに発現し得る。酵母細胞は、Cpo_CPRQまたはGmo_CPRQ、その変異体または機能的バリアントに加えて、上記のとおり、炭素鎖長12の脂肪アシルCoA中に少なくとも1つの二重結合を導入できる別のデサチュラーゼ、例えばCpo_NPVE、Cpo_SPTQ、その変異体または機能的バリアントも発現し得る。
【0163】
異種チオエステラーゼの発現
チオエステラーゼ、特に異種チオエステラーゼを導入することにより、酵母細胞をさらに操作することが有利であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、チオエステラーゼをコードする核酸は、例えばベクター上で、またはゲノムの組み込みによって、酵母細胞に導入される。チオエステラーゼ遺伝子は、誘導性プロモーターの制御下にあり得るか、または構成的プロモーターの制御下にあり得る。チオエステラーゼをコードする核酸は、当技術分野で知られているように、酵母細胞に対してコドン最適化され得る。特に、核酸は、ヤロウイア・リポリティカ細胞などのヤロウイア細胞に対してコドン最適化され得る。チオエステラーゼは、当技術分野で知られているように、高レベルで発現され得る。
【0164】
いくつかの実施形態では、チオエステラーゼは、Cuphea palustris、クフェア・フッケリアナ(Cuphea hookeriana)、クスノキ(Cinnamomum camphora)、または大腸菌(Escherichia coli)から選択される生物に由来する。好ましい実施形態では、チオエステラーゼは、大腸菌またはクスノキに由来する。いくつかの実施形態では、チオエステラーゼは、配列番号33に示されるCuphea palustrisに由来のチオエステラーゼ、配列番号57に示されるクフェア・フッケリアナ由来のチオエステラーゼ、配列番号35に示されるクスノキ由来のチオエステラーゼ、および配列番号26に示される大腸菌由来のチオエステラーゼから選択されるチオエステラーゼに対して少なくとも60%の相同性または同一性を有する。好ましくは、チオエステラーゼは、配列番号35に示されるクスノキ由来または配列番号26に示される大腸菌由来のチオエステラーゼに対して、少なくとも60%の相同性または同一性を有する。一実施形態では、チオエステラーゼは、配列番号35に示されるクスノキ由来のチオエステラーゼに対して、少なくとも60%の相同性または同一性を有する。別の実施形態では、チオエステラーゼは、配列番号26に示される大腸菌由来のチオエステラーゼに対して少なくとも60%の相同性または同一性を有する。
【0165】
別の実施形態では、チオエステラーゼは、配列番号35に示されるクスノキ由来のチオエステラーゼに対して、少なくとも60%の相同性または同一性、配列番号35に示されるクスノキ由来のチオエステラーゼに対して、例えば少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%、例えば100%の相同性または同一性などを有する。
【0166】
別の実施形態では、チオエステラーゼは、配列番号26に示される大腸菌由来のチオエステラーゼに対して、少なくとも60%の相同性または同一性、配列番号26に示される大腸菌由来のチオエステラーゼに対して、少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%、例えば100%の相同性または同一性などを有する。
【0167】
チオエステラーゼをコードする核酸は、当技術分野で知られているようにコドン最適化され得る。一実施形態では、酵母細胞は、ヤロウイア細胞、好ましくはヤロウイア・リポリティカ細胞であり、核酸は、それに応じてコドン最適化される。
【0168】
一実施形態では、少なくとも1つのチオエステラーゼは、配列番号34に示されるクスノキ由来のチオエステラーゼをコードする核酸に対して、少なくとも60%の相同性または同一性、配列番号34に示されるクスノキ由来のチオエステラーゼをコードする核酸に対して、例えば少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%の相同性または同一性、例えば少なくとも73%の相同性または同一性、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%、例えば100%の相同性または同一性などを有する核酸によってコードされる。
【0169】
一実施形態では、少なくとも1つのチオエステラーゼは、配列番号25に示される大腸菌由来のチオエステラーゼをコードする核酸に対して、少なくとも60%の相同性または同一性、配列番号25に示される大腸菌由来のチオエステラーゼをコードする核酸に対して、例えば少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%の相同性または同一性、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%、例えば100%の相同性または同一性などを有する核酸によってコードされる。
【0170】
したがって、いくつかの実施形態では、酵母細胞は、上記のとおりデサチュラーゼおよび脂肪アシルCoAレダクターゼを発現し、本明細書に記載のとおり、1つ以上の異種チオエステラーゼなどの1つ以上のチオエステラーゼをさらに発現する。特に、酵母細胞は、Cpo_CPRQ(配列番号2)、Gmo_CPRQ(配列番号77)、変異体Cpo_CPRQ、例えばS82変異体またはS85変異体など、好ましくはS85変異体、例えばS85A変異体、およびその機能的バリアントから選択される1つ以上のデサチュラーゼ、Ase_FAR(配列番号10)、変異体Ase_FAR、例えばT198変異体またはS413変異体、好ましくはT198A変異体またはS413A変異体、Aip_FAR(配列番号61)、Hs_FAR(配列番号71)、Has_FAR(配列番号73)、Hv_FAR(配列番号75)、Har_FAR(配列番号4)およびそれらの機能的バリアントなどから選択される1つ以上のレダクターゼ、1つ以上の異種チオエステラーゼ、例えば配列番号33、配列番号57、配列番号35および/または配列番号26に示されるチオエステラーゼ、またはそれらの機能的バリアントを発現し得る。酵母細胞は、Cpo_CPRQまたはGmo_CPRQ、その変異体または機能的バリアントに加えて、上記のとおり、炭素鎖長12の脂肪アシルCoA中に少なくとも1つの二重結合を導入できる別のデサチュラーゼ、例えばCpo_NPVE、Cpo_SPTQ、その変異体または機能的バリアントも発現し得る。
【0171】
酵母細胞は、特に異種シトクロムb5、異種シトクロムb5レダクターゼの発現、ヘモグロビンの発現、天然エロンガーゼ遺伝子(複数可)の変異(完全なまたは部分的な活性の喪失をもたらす)、天然チオエステラーゼ遺伝子(複数可)の変異(完全なまたは部分的な活性の喪失をもたらす)、脂肪アルデヒドデヒドロゲナーゼ(複数可)、脂肪アルコールオキシダーゼ(複数可)、ペルオキシソーム生合成因子および/または脂肪アシルシンターゼ(複数可)をコードする天然遺伝子(複数可)の変異、および/または上記のように、脂肪アシルシンターゼおよびチオエステラーゼの融合タンパク質の発現により、本明細書に記載の改変のいずれかでさらに改変され得る。
【0172】
脂肪アシルシンターゼとチオエステラーゼの融合タンパク質の発現
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、短縮型脂肪アシルシンターゼおよび短縮型チオエステラーゼの融合タンパク質、例えば配列番号59に示される融合タンパク質、または配列番号59に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその相同体をさらに発現する。この融合タンパク質は、Y.リポリティカのFas1の短縮型と大腸菌のチオエステラーゼTesAの短縮型の融合である。それは、配列番号58に示されるものなどの、核酸の導入によって発現され得る。融合タンパク質は、高レベルで発現され得る。
【0173】
したがって、いくつかの実施形態では、酵母細胞は、配列番号59に示される融合タンパク質、または配列番号59に対して、少なくとも60%の相同性または同一性、配列番号59に対して、例えば少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性などを有するその相同体をさらに発現する。
【0174】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、配列番号58に示される核酸などの融合タンパク質をコードする核酸、または配列番号58に対して、少なくとも60%の相同性または同一性、配列番号58に対して、例えば少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性などを有するその相同体をコードする核酸を含む。
【0175】
したがって、いくつかの実施形態では、酵母細胞は、上記のようにデサチュラーゼおよび脂肪アシルCoAレダクターゼを発現し、配列番号59に示される融合タンパク質などの、短縮型脂肪アシルシンターゼおよび短縮型チオエステラーゼの融合タンパク質をさらに発現する。特に、酵母細胞は、Cpo_CPRQ(配列番号2)、変異体Cpo_CPRQ、例えばS82変異体またはS85変異体など、好ましくはS85A変異体などのS85変異体、およびそれらの機能的バリアント、ならびにAse_FAR(配列番号10)、変異体Ase_FAR、例えばT198変異体またはS413変異体、好ましくはT198A変異体またはS413A変異体、Aip_FAR(配列番号61)、Hs_FAR(配列番号71)、Has_FAR(配列番号73)、Hv_FAR(配列番号75)、Har_FAR(配列番号12)およびそれらの機能的バリアント、ならびに短縮型脂肪アシルシンターゼおよび短縮型チオエステラーゼの融合タンパク質、例えば配列番号59に記載の融合タンパク質またはその機能的バリアントから選択される1つ以上のデサチュラーゼを発現し得る。酵母細胞は、Cpo_CPRQまたはGmo_CPRQ、その変異体または機能的バリアントに加えて、上記のとおり、炭素鎖長12の脂肪アシルCoA中に少なくとも1つの二重結合を導入できる別のデサチュラーゼ、例えばCpo_NPVE、Cpo_SPTQ、その変異体または機能的バリアントも発現し得る。
【0176】
酵母細胞は、特に異種シトクロムb5の発現、異種シトクロムb5レダクターゼの発現、ヘモグロビンの発現、天然エロンガーゼ遺伝子(複数可)の変異(完全なまたは部分的な活性の喪失をもたらす)、天然チオエステラーゼ遺伝子(複数可)の変異(完全なまたは部分的な活性の喪失をもたらす)、脂肪アルデヒドデヒドロゲナーゼ(複数可)、脂肪アルコールオキシダーゼ(複数可)、ペルオキシソーム生合成因子および/または脂肪アシルシンターゼ(複数可)をコードする天然遺伝子(複数可)の変異、および/または上記のように、異種チオエステラーゼ遺伝子の発現により、本明細書に記載の改変のいずれかでさらに改変され得る。
【0177】
力価
本明細書に開示される酵母細胞は、少なくとも0.2mg/Lの力価でE8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生できる。いくつかの実施形態では、E8,E10-ドデカジエン-1-オールの力価は、少なくとも0.25mg/Lなど、少なくとも0.3mg/Lなど、少なくとも0.4mg/Lなど、少なくとも0.5mg/Lなど、少なくとも0.75mg/Lなど、少なくとも1mg/Lなど、少なくとも1.5mg/Lなど、少なくとも2.5mg/Lなど、少なくとも5.0mg/Lなど、少なくとも10mg/Lなど、少なくとも15mg/Lなど、少なくとも20mg/Lなど、25mg/Lなど、少なくとも50mg/Lなど、少なくとも100mg/Lなど、少なくとも250mg/Lなど、少なくとも500mg/Lなど、少なくとも750mg/Lなど、少なくとも1g/Lなど、少なくとも2g/Lなど、少なくとも3g/Lなど、少なくとも4g/Lなど、少なくとも5g/Lなど、少なくとも6g/Lなど、少なくとも7g/Lなど、少なくとも8g/Lなど、少なくとも9g/Lなど、少なくとも10g/Lであるまたはそれより大きい。
【0178】
力価を決定するための方法は、当技術分野で知られている。
【0179】
E8,E10-ドデカジエニルアセテートの産生
コドレモンはさらに、E8,E10-ドデカジエニルアセテートに変換され得る。これは、当技術分野で知られているとおり、例えば化学変換によってex vivoで行われるか、またはそれは、細胞により産生されるE8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエニルアセテートに変換できるアセチルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.84)の作用によりin vivoで行われ得る。
【0180】
いくつかの実施形態では、酵母細胞はしたがって、それが天然アセチルトランスフェラーゼを過剰発現するように、および/またはそれが任意により高レベルで発現される異種アセチルトランスフェラーゼを発現するように操作される。酵母細胞は、そのような実施形態では、E8,E10-ドデカジエン-1-オールおよびE8,E10-ドデカジエニルアセテートを産生できる。
【0181】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、細胞により産生されるE8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部を、Sc_Atf1アセチルトランスフェラーゼ(配列番号37)、または配列番号37に対して、少なくとも60%の相同性または同一性、配列番号37に対して、例えば少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性などを有するその相同体などのE8,E10-ドデカジエニルアセテートに変換できるアセチルトランスフェラーゼを発現する。
【0182】
アセチルトランスフェラーゼの発現は、配列番号36に示される核酸、または配列番号36に対して、少なくとも60%の相同性または同一性、配列番号36に対して、例えば少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性などを有するその相同体などの、酵母細胞における発現のためにコドン最適化され得る核酸を導入することによって達成され得る。
【0183】
したがって、いくつかの実施形態では、酵母細胞は、本明細書の上記に記載の異種デサチュラーゼ、本明細書の上記に記載の異種脂肪アシルレダクターゼ、および任意により上記の追加の改変のいずれかを発現し、かつ産生されたE8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエニルアセテートに変換できるアセチルトランスフェラーゼも発現する。
【0184】
本明細書に開示される酵母細胞はしたがって、少なくとも0.2mg/Lの力価で、E8,E10-ドデカジエニルアセテートを産生し得る。いくつかの実施形態では、E8,E10-ドデカジエニルアセテートの力価は、少なくとも0.25mg/Lなど、少なくとも0.3mg/Lなど、少なくとも0.4mg/Lなど、少なくとも0.5mg/Lなど、少なくとも0.75mg/Lなど、少なくとも1mg/Lなど、少なくとも1.5mg/Lなど、少なくとも2.5mg/Lなど、少なくとも5.0mg/Lなど、少なくとも10mg/Lなど、少なくとも15mg/Lなど、少なくとも20mg/Lなど、25mg/Lなど、少なくとも50mg/Lなど、少なくとも100mg/Lなど、少なくとも250mg/Lなど、少なくとも500mg/Lなど、少なくとも750mg/Lなど、少なくとも1g/Lなど、少なくとも2g/Lなど、少なくとも3g/Lなど、少なくとも4g/Lなど、少なくとも5g/Lなど、少なくとも6g/Lなど、少なくとも7g/Lなど、少なくとも8g/Lなど、少なくとも9g/Lなど、少なくとも10g/Lであるまたはそれより大きい。
【0185】
力価を決定するための方法は、当技術分野で知られている。
【0186】
E8,E10-ドデカジエナールの産生
細胞によって産生されたE8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部を、E8,E10-ドデカジエナールにさらに変換することもまた興味深い。これは、化学変換により、または酵母細胞をさらに操作することにより行うことができる。
【0187】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、E8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエナールに変換できるようにさらに操作され得る。これは、E8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエナールに変換できる、アルデヒド形成脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.50)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.2)、および/または脂肪アルコールオキシダーゼ(EC1.1.3.20)をさらに発現するように酵母細胞を操作することにより行うことができる。酵母細胞は、そのような実施形態では、E8,E10-ドデカジエン-1-オールおよびE8,E10-ドデカジエナールを産生できる。
【0188】
E8,E10-ドデカジエン-1-オールの一部をE8,E10-ドデカジエナールに変換できるアルデヒド形成脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.50)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.2)および/または脂肪アルコールオキシダーゼ(EC1.1.3.20)をコードする核酸をしたがって、酵母細胞に導入できる。核酸は、コドン最適化されてよく、かつ高レベルで発現されてよい。
【0189】
したがって、いくつかの実施形態では、酵母細胞は、本明細書において上記の異種デサチュラーゼ、本明細書において上記の異種脂肪アシルレダクターゼ、および任意により上記の追加の改変のいずれかを発現し、かつE8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエナールに変換できるアルデヒド形成脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.50)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.2)および/または脂肪アルコールオキシダーゼ(EC1.1.3.20)も発現する。
【0190】
本明細書に開示される酵母細胞はしたがって、少なくとも0.2mg/Lの力価で、E8,E10-ドデカジエナールを産生し得る。いくつかの実施形態では、E8,E10-ドデカジエナールの力価は、少なくとも0.25mg/Lなど、少なくとも0.3mg/Lなど、少なくとも0.4mg/Lなど、少なくとも0.5mg/Lなど、少なくとも0.75mg/Lなど、少なくとも1mg/Lなど、少なくとも1.5mg/Lなど、少なくとも2.5mg/Lなど、少なくとも5.0mg/Lなど、少なくとも10mg/Lなど、少なくとも15mg/Lなど、少なくとも20mg/Lなど、25mg/Lなど、少なくとも50mg/Lなど、少なくとも100mg/Lなど、少なくとも250mg/Lなど、少なくとも500mg/Lなど、少なくとも750mg/Lなど、少なくとも1g/Lなど、少なくとも2g/Lなど、少なくとも3g/Lなど、少なくとも4g/Lなど、少なくとも5g/Lなど、少なくとも6g/Lなど、少なくとも7g/Lなど、少なくとも8g/Lなど、少なくとも9g/Lなど、少なくとも10g/Lであるまたはそれより大きい。
【0191】
力価を決定するための方法は、当技術分野で知られている。
【0192】
鎖短縮
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、鎖短縮により所与の鎖長の脂肪アシルCoAの利用可能性を高めるためにさらに改変される。理論に拘束されるものではないが、このような改変は、所望の炭素鎖長を有する、特に炭素鎖長12を有する基質の利用可能性を高めると予想され、これによりE8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オール、および任意によりE8,E10-ドデカジエニルアセテートおよびE8,E10-ドデカジエナールの産生が増加され得る。これは、微生物産生細胞における天然のアシルCoAオキシダーゼの活性を低下させることにより、および特定のアシルCoAオキシダーゼ、デサチュラーゼ、レダクターゼ、およびアセチルトランスフェラーゼを発現させることにより達成できる。このような改変は、欧州特許第19157910.1号(同じ出願人によって2019年2月19日に出願)に詳細に記載されている。
【0193】
したがって、いくつかの実施形態では、酵母細胞は、本明細書で上記に記載の酵母細胞のいずれかであり、さらに、
i)1つ以上の天然アシルCoAオキシダーゼの活性の低下をもたらす1つ以上の変異を有し、かつ
ii)脂肪アシルCoAを酸化できる少なくとも1つのアシルCoAオキシダーゼを含む酵素の少なくとも1つの群を発現し、酵素の群は、第1の炭素鎖長Xの脂肪アシルCoAを第2の炭素鎖長X’を有する短縮された脂肪アシルCoAに短縮でき、式中、X’≦X-2である。
【0194】
酵母細胞中に通常存在するアシルCoAオキシダーゼ、すなわち天然の酵素(複数可)の活性は、そのような実施形態では、細胞内の酵素(複数可)をコードする遺伝子を変異させることにより低下されるまたは消失される。炭素鎖短縮を指示して所望の炭素鎖長の脂肪アルコールおよびその誘導体を得るために、1つ以上のアシルCoAオキシダーゼが、酵母細胞中で発現される。これらのアシルcoAオキシダーゼは、酵母細胞に固有のものであり得、またはこれらのアシルcoAオキシダーゼは、別の生物に由来し得る。所与の鎖長の脂肪アシルCoAを酸化するために必要な他の酵素をコードする遺伝子もまた、細胞がそれらをまだ発現していない場合、または増加された活性もしくは基質特異性が望まれる場合、細胞に導入され得る。このように発現されたアシルCoAオキシダーゼ(複数可)は、脂肪性アシルCoAが酸化され、基質よりも短い炭素鎖長を有する脂肪性アシルCoAに短縮されることを可能にする。したがって、いくつかの実施形態では、1つ以上の天然アシルCoAオキシダーゼの低下された活性は、Xよりも小さい、例えばX’よりも小さい炭素鎖長を有するアシルCoAに対する低下された活性である。
【0195】
本開示におけるアシルCoAオキシダーゼという用語は、以下の反応を触媒できる、EC番号1.3.3.6の酵素などの酵素を指す:
【化1】
【0196】
この酵素は、オキシドレダクターゼのファミリーに属しており、具体的には、アクセプターとして酸素を使用してドナーのCH-CH基に作用する酵素である。この酵素クラスの体系的な名前は、アシルCoA:酸素2-オキシドレダクターゼである。他の名前の使用は、脂肪アシルCoAオキシダーゼ、アシル補酵素Aオキシダーゼ、および脂肪アシル-補酵素Aオキシダーゼを含む。
【0197】
本開示の酵母細胞は、1つ以上の天然アシルCoAオキシダーゼを有する酵母細胞から出発して操作されてよい。本明細書に開示される改変された酵母細胞は好ましくは、1つ以上の天然アシルCoAオキシダーゼの低下された活性を有する。これは、その天然のアシルCoAオキシダーゼの少なくとも1つの低下された活性をもたらす1つ以上の変異を有する酵母細胞を使用することにより達成できる。天然のアシルCoAオキシダーゼは、ペルオキシソーム、ミトコンドリア、または細胞質ゾルであり得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、すべての天然のアシルCoAオキシダーゼの低下された活性をもたらす。低下された活性により、酵母細胞は変異により、上記の反応を触媒する能力、特にアシルCoAを対応するトランス-2,3-デヒドロアシルCoAに変換する低下された能力を有すると理解される。いくつかの実施形態では、「低下された能力」は、反応を触媒する能力が完全にまたは部分的に消失されることを意味する。いくつかの実施形態では、「低下された能力」は、反応を触媒する能力が、通常の状況下において、すなわち通常の能力を有する酵素を使用することにより、反応に使用できる基質のサブグループに限定されることを意味する。
【0198】
本開示の酵母細胞は、脂肪アシルCoAを酸化できる少なくとも1つのアシルCoAオキシダーゼを含む酵素の少なくとも1つの群を発現し得る。酵素の群は、少なくとも1つのアシルCoAオキシダーゼに加えて、所与の炭素鎖長の脂肪アシルCoAをより短い炭素鎖長の脂肪アシルCoAに変換するために必要とされる他の酵素を含む。これらの他の酵素は好ましくは、酵母細胞に固有であり得る。このような実施形態では、アシルCoAオキシダーゼをコードする遺伝子の導入のみが、酵母細胞が酵素の群を発現するために必要とされる。
【0199】
アシルCoAオキシダーゼが酵母細胞に固有である実施形態では、アシルCoAオキシダーゼは、例えば構成的もしくは誘導性プロモーターなどのプロモーター、またはアシルCoAオキシダーゼの過剰発現を可能にするプロモーターの導入によって、当技術分野で知られているように改変され得る。第1の群の酵素に再導入された固有のアシルCoAオキシダーゼは、改変された基質特異性などの、改変された活性および/または反応効率の増加などの、改変された活性を有する変異型であり得る。
【0200】
他の実施形態では、アシルCoAオキシダーゼは、別の生物に由来する。第1の群の酵素に含まれるアシルCoAは、酵母、真菌、昆虫、哺乳動物、鳥、または植物に由来するアシルCoAオキシダーゼであり得、例えば第1の群の酵素は、酵母、真菌、昆虫、哺乳動物、鳥、または植物に由来する。例えば、アシルCoAオキシダーゼは、ヤロウイア(Yarrowia)、サッカロマイセス、ヤガ(Agrotis)、Arabidopsis、アスペルギルス(Aspergillus)、カボチャ(Cucurbita)、ヒト(Homo)、Paenarthrobacter、およびラット(Rattus)から選択される属の生物に由来すし、例えば第1の群の酵素の少なくとも1つのアシルCoAオキシダーゼは、ヤロウイア、サッカロマイセス、ヤガ、Arabidopsis、アスペルギルス、カボチャ、ヒト、Paenarthrobacter、およびラットから選択される属の生物に由来する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の群の酵素は、ヤロウイア・リポリティカ、サッカロミセス・セレビシエ、カブラヤガ、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、セイヨウカボチャ(Cucurbita maxima)、ホモサピエンス(Homo sapiens)、Paenarthrobacter ureafaciensまたはドブネズミ(Rattus norvegicus)由来のアシルCoAオキシダーゼを含む。
【0201】
このように酵母細胞に導入されるアシルCoAオキシダーゼは、ヤロウイア・リポリティカ、カブラヤガ、シロイヌナズナ、アスペルギルス・ニデュランス、セイヨウカボチャ、ホモサピエンス、Paenarthrobacter ureafaciensまたはドブネズミに固有のアシルCoAオキシダーゼであり得る。酵母細胞は、本明細書で上記に記載されたとおりであり得る。
【0202】
本開示の酵母細胞はしたがって、脂肪アシルCoAを酸化できる少なくとも1つのアシルCoAオキシダーゼを含む酵素の少なくとも1つの群を発現し得、少なくとも1つのアシルCoAオキシダーゼは、以下の群から選択される:Yli_POX1(XP_504703)、Yli_POX2(XP_505264)、Yli_POX3(XP_503244)、Yli_POX4(XP_504475)、Yli_POX5(XP_502199)、Yli_POX6(XP_503632)、Ase_POX(配列番号39)、Ath_POX1(配列番号41)、Ath_POX2(配列番号43)、Ani_POX(配列番号45)、Cma_POX(配列番号47)、Hsa_POX1-2(配列番号49)、Pur_POX(配列番号51)、Sc_POX1(配列番号31)およびRno_POX2(配列番号53)、またはそれらに対して、少なくとも60%の相同性または同一性、それらに対して、例えば少なくとも65%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有するその機能的バリアント。
【0203】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのアシルCoAオキシダーゼの発現は、少なくとも1つのアシルCoAオキシダーゼをコードする核酸を導入することによって達成される。例えば、酵母は、Yli_POX1をコードするYALI0_E32835g、Yli_POX2をコードするYALI0_F10857g、Yli_POX3をコードするYALI0_D24750g、Yli_POX4をコードするYALI0_E27654g、Yli_POX5をコードするYALI0_C23859g、Yli_POX6をコードするYALI0_E06567g、配列番号38をコードするAse_POX、配列番号40をコードするAth_POX1、配列番号42をコードするAth_POX2、配列番号44をコードするAni_POX、配列番号46をコードするCma_POX、配列番号48をコードするHsa_POX、配列番号50をコードするPur_POX、配列番号30をコードするSc_POX1、または配列番号52をコードするRno_POX2、またはそれらに対して、少なくとも60%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有するそれらの相同体を発現する。
【0204】
いくつかの実施形態では、X’=12である。
【0205】
好適なアシルCoAオキシダーゼは、国際公開第2020/169389号(同じ出願人によって2020年2月10日に出願)、特に「アシルCoAオキシダーゼ(Acyl-CoA oxidase)」の項に詳細に記載されている。
【0206】
E8,E10-ドデカジエニル補酵素A、および任意によりコドレモンを得るために、鎖短縮が利用される実施形態では、酵母細胞はしたがって、酵素の少なくとも1つの群に加えて、炭素鎖長XまたはX’を有する脂肪アシルCoA中のE/Zコンフォメーションに少なくとも1つの二重結合を導入できる追加の異種デサチュラーゼも発現し得る。XまたはX’は、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22個の炭素原子であり得る。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、X’の鎖長を有する脂肪アシルCoA中のE/Zコンフォメーションにおいて少なくとも1つの二重結合を導入でき、ここでX’は、上で定義されたとおりである。好適なデサチュラーゼは、国際公開第2020/169389号(同じ出願人によって2020年2月10日に出願)、特に「デサチュラーゼ(FAD)(Desaturase (FAD))」の項に詳細に記載されている。特に、C14:CoAをZ11-C14:CoAおよび/またはE11-C14:CoAに変換できるデサチュラーゼが対象である。例えば、ハスオビハマキ(Choristoneura rosaceana)由来のデサチュラーゼCroZ11(配列番号63)またはChoristoneura parallela由来のCpaE11(配列番号65)、または、それらに対して、少なくとも60%の相同性または同一性、それらに対して、例えば少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性などを有するその機能的バリアントが、使用され得る。得られたZ11-C14:CoAおよび/またはE11-C14:CoAは、さらに鎖を短縮されてZ9-C12:CoAおよび/またはE9-C12:CoAを与え、これは、Cpo_CPRQによってさらに不飽和化されて、E8,E10-C12:CoAを与える。
【0207】
このような実施形態では、酵母細胞はしたがって、本明細書の上記の「デサチュラーゼ」の項に記載の少なくとも1つのデサチュラーゼ、例えば、Cpo_CPRQまたはGmo_CPRQ、好ましくは、その変異体または機能的バリアントであるCpo_CPRQを発現し、炭素鎖長XまたはX’を有する脂肪アシルCoA中のE/Zコンフォメーションに少なくとも1つの二重結合を導入できる追加の異種デサチュラーゼをさらに発現する。ここでXおよびX’は、上記のとおりである。特に、デサチュラーゼは、炭素鎖長14を有する脂肪アシルCoA中のE/Zコンフォメーションに少なくとも1つの二重結合を導入でき、それは次いで、本明細書で上記のとおり、炭素鎖長12の脂肪アシルCoAへと短縮され得る。これは次いでE8,E10-C12:CoAへとさらに不飽和化され、これは次に、本明細書で上記のとおり、FARの作用によりE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換され得る。
【0208】
E8,E10-ドデカジエニル補酵素A、E8,E10-ドデカジエン-1-オール、E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエニルアセテートの産生方法
上記の酵母細胞は、E8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび任意により、さらにE8,E10-ドデカジエニルアセテートに変換され得る、E8,E10-ドデカジエン-1-オールおよび/またはE8,E10-ドデカジエニルアセテートを産生するための方法で使用され得る。
【0209】
E8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生するための方法
本明細書では、酵母細胞中でE8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生するための方法が提供され、本方法は、酵母細胞を提供するステップと、培地中で酵母細胞をインキュベートするステップを含み、酵母細胞は、少なくとも1つの異種デサチュラーゼおよび任意により少なくとも1つの異種脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.84)を発現し、
i)少なくとも1つの異種デサチュラーゼは、炭素鎖長12を有する脂肪アシルCoA中に1つ以上の二重結合を導入でき、これにより脂肪アシルCoAを不飽和脂肪アシルCoAに変換し、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部は、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)であり;
ii)任意による少なくとも1つの異種脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.84)は、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部を不飽和脂肪アルコールに変換でき、脂肪アシルCoAレダクターゼは、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)の少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換でき、
これによりE8,E10-ドデカジエニル補酵素A、および任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生する。
【0210】
酵母細胞は、本明細書で上に記載された酵母細胞のいずれかであり得る。
【0211】
本発明の方法では好ましくは、少なくとも0.2mg/Lの力価を有するE8,E10-ドデカジエニル補酵素Aの産生を可能にする。いくつかの実施形態では、E8,E10-ドデカジエン-1-オールの力価は、少なくとも0.25mg/Lなど、少なくとも0.3mg/Lなど、少なくとも0.4mg/Lなど、少なくとも0.5mg/Lなど、少なくとも0.75mg/Lなど、少なくとも1mg/Lなど、少なくとも1.5mg/Lなど、少なくとも2.5mg/Lなど、少なくとも5.0mg/Lなど、少なくとも10mg/Lなど、少なくとも15mg/Lなど、少なくとも20mg/Lなど、25mg/Lなど、少なくとも50mg/Lなど、少なくとも100mg/Lなど、少なくとも250mg/Lなど、少なくとも500mg/Lなど、少なくとも750mg/Lなど、少なくとも1g/Lなど、少なくとも2g/Lなど、少なくとも3g/Lなど、少なくとも4g/Lなど、少なくとも5g/Lなど、少なくとも6g/Lなど、少なくとも7g/Lなど、少なくとも8g/Lなど、少なくとも9g/Lなど、少なくとも10g/Lであるまたはそれより大きい。
【0212】
本発明の方法は、少なくとも0.2mg/Lの力価で、E8,E10-ドデカジエン-1-オールの産生を可能にする。いくつかの実施形態では、E8,E10-ドデカジエン-1-オールの力価は、少なくとも0.25mg/Lなど、少なくとも0.3mg/Lなど、少なくとも0.4mg/Lなど、少なくとも0.5mg/Lなど、少なくとも0.75mg/Lなど、少なくとも1mg/Lなど、少なくとも1.5mg/Lなど、少なくとも2.5mg/Lなど、少なくとも5.0mg/Lなど、少なくとも10mg/Lなど、少なくとも15mg/Lなど、少なくとも20mg/Lなど、25mg/Lなど、少なくとも50mg/Lなど、少なくとも100mg/Lなど、少なくとも250mg/Lなど、少なくとも500mg/Lなど、少なくとも750mg/Lなど、少なくとも1g/Lなど、少なくとも2g/Lなど、少なくとも3g/Lなど、少なくとも4g/Lなど、少なくとも5g/Lなど、少なくとも6g/Lなど、少なくとも7g/Lなど、少なくとも8g/Lなど、少なくとも9g/Lなど、少なくとも10g/Lであるまたはそれより大きい。
【0213】
力価を決定するための方法は、当技術分野で知られている。
【0214】
E8,E10-ドデカジエニルアセテートを産生するための方法
いくつかの実施形態では、この方法は、アセチルトランスフェラーゼの発現によりまたは化学変換により、E8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエニルアセテートに変換するステップをさらに含む。したがって、本明細書では、酵母細胞において、E8,E10-ドデカジエニルアセテートを産生するための方法が開示され、本方法は、
a)酵母細胞を提供しかつ培地中で酵母細胞をインキュベートするステップであって、酵母細胞は、少なくとも1つの異種デサチュラーゼと、少なくとも1つの異種脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.84)を発現し、
i)少なくとも1つの異種デサチュラーゼは、炭素鎖長12を有する脂肪アシルCoA中に1つ以上の二重結合を導入でき、これにより脂肪アシルCoAを不飽和脂肪アシルCoAに変換し、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部は、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)であり;
ii)少なくとも1つの異種脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.84)は、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部を不飽和脂肪アルコールに変換でき、脂肪アシルCoAレダクターゼは、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)の少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換できる、
ステップと、
b)E8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエニルアセテートに変換するステップ、
を含む。
【0215】
いくつかの実施形態では、E8,E10-ドデカジエニルアセテートは、本明細書の上の「E8,E10-ドデカジエニルアセテートの産生」において記載されるように酵母細胞を操作することによって得られる。
【0216】
他の実施形態では、細胞によって産生されたE8,E10-ドデカジエン-1-オールのE8,E10-ドデカジエニルアセテートへの変換は、当技術分野で知られているように、化学的に行われる。例えば、細胞によって産生されたE8,E10-ドデカジエン-1-オールは、回収されてよく、その後、塩化アセチルが、E8,E10-ドデカジエン-1-オールに添加され、混合され、例えば室温でインキュベートされ、これにより細胞によって産生されたE8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部が、E8,E10-ドデカジエニルアセテートに変換される。
【0217】
他の実施形態では、酵母細胞は、E8,E10-ドデカジエニル補酵素Aを産生し、これは、トリアシルグリセリドなどの脂質または遊離脂肪酸に変換され得、脂質または遊離脂肪酸を回収し、これが今度はE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換され得る。E8,E10-ドデカジエン-1-オールは次に、上記のように、in vitroでE8,E10-ドデカジエン-1-オールにさらに変換され得る。このような実施形態では、細胞によって産生されたE8,E10-ドデカジエン-1-オールのE8,E10-ドデカジエニルアセテートへの変換は、当技術分野で知られているように、化学的に行われる。
【0218】
本発明の方法はしたがって、少なくとも0.2mg/Lの力価を有するE8,E10-ドデカジエニルアセテートの産生を可能にする。いくつかの実施形態では、E8,E10-ドデカジエニルアセテートの力価は、少なくとも0.25mg/L、少なくとも0.3mg/Lなど、少なくとも0.4mg/Lなど、少なくとも0.5mg/Lなど、少なくとも0.75mg/Lなど、少なくとも1mg/Lなど、少なくとも1.5mg/Lなど、少なくとも2.5mg/Lなど、少なくとも5.0mg/Lなど、少なくとも10mg/Lなど、少なくとも15mg/Lなど、少なくとも20mg/Lなど、25mg/Lなど、少なくとも50mg/Lなど、少なくとも100mg/Lなど、少なくとも250mg/Lなど、少なくとも500mg/Lなど、少なくとも750mg/Lなど、少なくとも1g/Lなど、少なくとも2g/Lなど、少なくとも3g/Lなど、少なくとも4g/Lなど、少なくとも5g/Lなど、少なくとも6g/Lなど、少なくとも7g/Lなど、少なくとも8g/Lなど、少なくとも9g/Lなど、少なくとも10g/Lなどである、またはそれより大きい。
【0219】
力価を決定するための方法は、当技術分野で知られている。
【0220】
E8,E10-ドデカジエナールを産生するための方法
いくつかの実施形態では、この方法は、酵母細胞をさらに操作することにより、または化学変換により、E8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエナールに変換するステップをさらに含む。したがって、本明細書では、酵母細胞においてE8,E10-ドデカジエナールを産生するための方法が開示され、本方法は、
a) 酵母細胞を提供しかつ培地中で酵母細胞をインキュベートするステップであって、酵母細胞は、少なくとも1つの異種デサチュラーゼと、少なくとも1つの異種脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.84)を発現し、
i) 少なくとも1つの異種デサチュラーゼは、炭素鎖長12を有する脂肪アシルCoA中に1つ以上の二重結合を、導入でき、これにより脂肪アシルCoAを不飽和脂肪アシルCoAに変換し、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部は、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)であり;
ii) 少なくとも1つの異種脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.84)は、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部を不飽和脂肪アルコールに変換でき、脂肪アシルCoAレダクターゼは、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)の少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換できる、
ステップと、
b) E8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエナールに変換するステップ
を含む。
【0221】
いくつかの実施形態では、E8,E10-ドデカジエナールは、本明細書の上の「E8,E10-ドデカジエナールの産生」において記載されるように酵母細胞を操作することによって得られる。
【0222】
他の実施形態では、この方法は、化学変換によりE8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエナールに変換するステップを含む。化学変換は、E8,E10-ドデカジエナールへのE8,E10-ドデカジエン-1-オールの酸化に基づく。この変換を実施するための方法は、当技術分野で知られている。好ましい方法は、環境に優しく、有害廃棄物の量を最小限に抑える。
【0223】
他の実施形態では、酵母細胞は、E8,E10-ドデカジエニル補酵素Aを産生し、これは、上記のように、トリアシルグリセリドなどの脂質または遊離脂肪酸に変換され得、これは次いで、回収され、in vitroでE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換され得る。このような実施形態では、細胞によって産生されたE8,E10-ドデカジエン-1-オールのE8,E10-ドデカジエナールへの変換は、当技術分野で知られているように、化学的に行われる。
【0224】
したがって、いくつかの実施形態では、化学変換は、金属を含まなくてよく、マンガン酸化物、クロム酸化物(Jones ox.PDC、PCC)またはルテニウム化合物(TPAP,Ley-Griffith ox.)などの有毒な重金属ベースの試薬を避ける。いくつかの実施形態では、変換は、スワーン酸化またはフィッツナー・モファット酸化などの活性化ジメチルスルホキシドを含む反応を伴わない。このような反応は、標的産生物から除去するのが困難であり得る硫化ジメチルなど、微量の強烈な臭いのある有機硫黄化合物のステレオタイプの形成(stereotypic formation)を伴い得る。いくつかの実施形態では、この方法は、デスマーチン反応を含む(Yadav et al.,2004,Meyer et al.,1994)。他の実施形態では、化学変換は、水性/有機二相条件下での次亜塩素酸ナトリウムによる酸化を含む(Okada et al.,2014;Tamura et al.,2012;Li et al.,2009)。いくつかの実施形態では、化学酸化は、25%のピリジンを含む塩化メチレンの培地中で1-クロロベンゾトリアゾールを用いて実施できる(Ferrell and Yao、1972)。
【0225】
あるいは、E8,E10-ドデカジエン-1-オールのE8,E10-ドデカジエナールへの酸化は、アルコールデヒドロゲナーゼにより酵素的に実施できる。当業者であれば、酵素的酸化を実施する方法を知っているだろう。例えば、酵素酸化は、E8,E10-ドデカジエン-1-オールと、精製酵素、細胞抽出物、または細胞全体を接触させることにより実施され得る。
【0226】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、少なくとも0.2mg/Lの力価を有するE8,E10-ドデカジエナールの産生を可能にする。いくつかの実施形態では、E8,E10-ドデカジエナールの力価は、少なくとも0.25mg/Lなど、少なくとも0.3mg/Lなど、少なくとも0.4mg/Lなど、少なくとも0.5mg/Lなど、少なくとも0.75mg/Lなど、少なくとも1mg/Lなど、少なくとも1.5mg/Lなど、少なくとも2.5mg/Lなど、少なくとも5.0mg/Lなど、少なくとも10mg/Lなど、少なくとも15mg/Lなど、少なくとも20mg/Lなど、25mg/Lなど、少なくとも50mg/Lなど、少なくとも100mg/Lなど、少なくとも250mg/Lなど、少なくとも500mg/Lなど、少なくとも750mg/Lなど、少なくとも1g/Lなど、少なくとも2g/Lなど、少なくとも3g/Lなど、少なくとも4g/Lなど、少なくとも5g/Lなど、少なくとも6g/Lなど、少なくとも7g/Lなど、少なくとも8g/Lなど、少なくとも9g/Lなど、少なくとも10g/Lであるまたはそれより大きい。
【0227】
力価を決定するための方法は、当技術分野で知られている。
【0228】
回収
いくつかの実施形態では、方法は、得られた産生物を回収するステップをさらに含む。
【0229】
いくつかの実施形態では、方法は、E8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生するためであり、したがって産生されたE8,E10-ドデカジエン-1-オールを回収するステップをさらに含む。他の実施形態では、方法は、E8,E10-ドデカジエニルアセテートを産生するためであり、したがって産生されたE8,E10-ドデカジエニルアセテートを回収するステップをさらに含む。他の実施形態では、方法は、E8,E10-ドデカジエナールを産生するためであり、したがって産生されたE8,E10-ドデカジエナールを回収するステップをさらに含む。
【0230】
本発明の方法によって得られた産生物を回収するための方法は、当技術分野で知られており、デカン、ヘキサンまたは植物油などの疎水性溶媒による抽出を含み得る。
【0231】
あるいは、出願PCT/欧州特許第2020/076351号(同じ出願人によって2020年9月22日に出願された)に記載された方法もまた、所望の生成物を回収するために使用できる。例えば、この方法は、E8,E10-ドデカジエニル補酵素Aの変換から得られるトリアシルグリセリドまたは脂肪酸などの脂質を回収するために、または産生されたE8,E10-ドデカジエン-1-オール、産生されたE8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/もしくは産生されたE8,E10-ドデカジエナールを回収するために使用できる。この方法は、培養温度での培養培地などの水溶液中で測定された雲濃度以上、またはそれを超える量の抽出剤の培養培地への添加を利用し、これにより脂肪アルコール、脂肪アルコールアセテートおよび脂肪アルデヒドなどの疎水性化合物の回収を大いに容易にする。このような方法はしたがって、本発明の方法によって産生されたE8,E10-ドデカジエニル補酵素A、E8,E10-ドデカジエン-1-オール、E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよびE8,E10-ドデカジエナールの変換から得られるトリアシルグリセリドなどの脂質または脂肪酸の回収を容易にするために有利に使用できる。さらに、培養培地中の抽出剤の添加もまた、細胞によって産生される疎水性化合物の力価を一般に増加させ、細胞からの産生された疎水性化合物の分泌を増加させることが見出された。
【0232】
したがって、いくつかの実施形態では、本方法で使用される培地は、培養温度で培養培地などの水溶液中で測定されるその雲濃度以上の量または雲濃度を超える量の抽出剤を含み、抽出剤は、非イオン性界面活性剤であり、好ましくは消泡剤などの非イオン性エトキシル化界面活性剤であり、好ましくはポリエチレンポリプロピレングリコール、ポリエーテル分散液の混合物、ならびにシメチコンなどのポリエチレングリコールモノステアレート、脂肪アルコールアルコキシレート、ポリエトキシル化界面活性剤を含む消泡剤、ならびにエトキシル化およびプロポキシル化C16~C18アルコールベースの消泡剤、ならびにそれらの組み合わせから選択されるポリエトキシル化界面活性剤である。
【0233】
水溶液中の雲濃度は、所与の温度で、好ましくは室温で、または発酵が行われる温度、例えば30℃もしくは室温で決定される。本明細書で使用される「抽出剤」という用語は、非イオン性界面活性剤、特に発酵中に産生された疎水性化合物の回収を容易にする消泡剤を指す。例えば、非イオン性界面活性剤は、非イオン性エトキシル化界面活性剤、例えば、ポリエチレンポリプロピレングリコール、ポリエーテル分散液の混合物、ならびにシメチコンなどのポリエチレングリコールモノステアレート、脂肪アルコールアルコキシレート、ポリエトキシル化界面活性剤を含む消泡剤、ならびにエトキシル化およびプロポキシル化C16~C18アルコールベースの消泡剤、ならびにそれらの組み合わせから選択されるポリエトキシル化界面活性剤である。PCT/欧州特許第2020/076351号の実施例7は、界面活性剤の雲濃度を決定する方法を記載する。
【0234】
好適な抽出剤および好適な量の非イオン性界面活性剤である非イオン性界面活性剤は、出願PCT/EP2020/076351(同じ出願人によって2020年9月22日に出願)、特に「(非イオン性界面活性剤)Non-ionic ethoxylated surfactant」と題された項に詳細に記載されている。
【0235】
いくつかの実施形態では、本方法で使用される培養培地はしたがって、エトキシル化およびプロポキシル化されたC16~C18アルコールベースの消泡剤、例えばC16~C18アルキルアルコールエトキシレートプロポキシレート(CAS番号68002-96-0)を含み、培養培地は、少なくとも1%vol/volのC16~C18アルキルアルコールエトキシレートプロポキシレート、例えば少なくとも1%vol/volのC16~C18アルキルアルコールエトキシレートプロポキシレート、例えば少なくとも1.5%vol/vol、例えば少なくとも2%vol/vol、例えば少なくとも2.5%vol/vol、例えば少なくとも3%vol/vol、例えば少なくとも3.5%vol/vol、例えば少なくとも4%vol/vol、例えば少なくとも5%vol/vol、例えば少なくとも6%vol/vol、例えば少なくとも7%vol/vol、例えば少なくとも8%vol/vol、例えば少なくとも9%vol/vol、例えば少なくとも10%vol/vol、例えば少なくとも12.5%vol/vol、例えば少なくとも15%vol/vol、例えば少なくとも17.5%vol/vol、例えば少なくとも20%vol/vol、例えば少なくとも22.5%vol/vol、例えば少なくとも25%vol/vol、例えば少なくとも27.5%vol/vol、例えば少なくとも30%vol/volの、またはそれより多いC16~C18アルキルアルコールエトキシレートプロポキシレートを含む。
【0236】
他の実施形態では、本方法で使用される培養培地は、ポリエチレンポリプロピレングリコールである非イオン性界面活性剤、例えばKollliphor(登録商標)P407(CAS番号9003-11-6)であり、培養培地は、Kolliphor(登録商標)P407などのポリエチレンポリプロピレングリコールの少なくとも10%vol/vol、例えば少なくとも11%vol/vol、例えば少なくとも12%vol/vol、例えば少なくとも13%vol/vol、例えば少なくとも14%vol/vol、例えば少なくとも15%vol/vol、例えば少なくとも16%vol/vol、例えば少なくとも17%vol/vol、例えば少なくとも18%vol/vol、例えば少なくとも19%vol/vol、例えば少なくとも20%vol/vol、例えば少なくとも25%vol/vol、例えば少なくとも30%vol/vol、例えば少なくとも35%vol/volの、またはそれより多いKolliphor(登録商標)P407などのポリエチレンポリプロピレングリコールを含む。
【0237】
他の実施形態では、本方法で使用される培養培地は、消泡剤204などのポリエーテル分散液の混合物である非イオン性界面活性剤を含み、培養培地は、少なくとも1%vol/volのポリエーテル分散液の混合物を含み、例えば少なくとも1.5%vol/vol、例えば少なくとも2%vol/vol、例えば少なくとも2.5%vol/vol、例えば少なくとも3%vol/vol、例えば少なくとも3.5%vol/vol、例えば少なくとも4%vol/vol、例えば少なくとも5%vol/vol、例えば少なくとも6%vol/vol、例えば少なくとも7%vol/vol、例えば少なくとも8%vol/vol、例えば少なくとも9%vol/vol、例えば少なくとも10%vol/vol、例えば少なくとも12.5%vol/vol、例えば少なくとも15%vol/vol、例えば少なくとも17.5%vol/vol、例えば少なくとも20%vol/vol、例えば少なくとも22.5%vol/vol、例えば少なくとも25%vol/vol、例えば少なくとも27.5%vol/vol、例えば少なくとも30%vol/volの、またはそれより多い消泡剤204などのポリエーテル分散液の混合物を含む。
【0238】
他の実施形態では、本方法で使用される培養培地は、シメチコンなどのポリエチレングリコールモノステアレートを含む非イオン性界面活性剤を含み、培養培地は、少なくとも1%vol/volのポリエチレングリコールモノステアレートまたはシメチコン、例えば少なくとも1.5%vol/vol、例えば少なくとも2%vol/vol、例えば少なくとも2.5%vol/vol、例えば少なくとも3%vol/vol、例えば少なくとも3.5%vol/vol、例えば少なくとも4%vol/vol、例えば少なくとも5%vol/vol、例えば少なくとも6%vol/vol、例えば少なくとも7%vol/vol、例えば少なくとも8%vol/vol、例えば少なくとも9%vol/vol、例えば少なくとも10%vol/vol、例えば少なくとも12.5%vol/vol、例えば少なくとも15%vol/vol、例えば少なくとも17.5%vol/vol、例えば少なくとも20%vol/vol、例えば少なくとも22.5%vol/vol、例えば少なくとも25%vol/vol、例えば少なくとも27.5%vol/vol、例えば少なくとも30%vol/volの、またはそれより多いポリエチレングリコールモノステアレートまたはシメチコンを含む。
【0239】
他の実施形態では、本方法で使用される培養培地は、脂肪アルコールアルコキシレートである非イオン性界面活性剤を含み、培養培地は、少なくとも1%vol/volの脂肪アルコールアルコキシレート、例えば少なくとも1.5%vol/vol、例えば少なくとも2%vol/vol、例えば少なくとも2.5%vol/vol、例えば少なくとも3%vol/vol、例えば少なくとも3.5%vol/vol、例えば少なくとも4%vol/vol、例えば少なくとも5%vol/vol、例えば少なくとも6%vol/vol、例えば少なくとも7%vol/vol、例えば少なくとも8%vol/vol、例えば少なくとも9%vol/vol、例えば少なくとも10%vol/vol、例えば少なくとも12.5%vol/vol、例えば少なくとも15%vol/vol、例えば少なくとも17.5%vol/vol、例えば少なくとも20%vol/vol、例えば少なくとも22.5%vol/vol、例えば少なくとも25%vol/vol、例えば少なくとも27.5%vol/vol、例えば少なくとも30%vol/volの、またはそれより多い脂肪アルコールアルコキシレートを含む。好適な脂肪アルコールアルコキシレートとしては、Plurafac(登録商標)LF300(CAS番号196823-11-7)、Plurafac(登録商標)LF1300(68002-96-0)、Plurafac(登録商標)SLF180(CAS番号196823-11-7)、Dehypon(登録商標)2574(CAS番号68154-97-2)、およびImbentin SG/251(CAS番号68002-96-0)、好ましくはPlurafac(登録商標)LF300またはDehypon(登録商標)2574が挙げられる。
【0240】
他の実施形態では、本方法で使用される培養培地は、Agnique BP420(CAS番号68002-96-0)である非イオン性界面活性剤を含み、培養培地は、少なくとも1%vol/volのAgnique BP420、例えば少なくとも1.5%vol/vol、例えば少なくとも2%vol/vol、例えば少なくとも2.5%vol/vol、例えば少なくとも3%vol/vol、例えば少なくとも3.5%vol/vol、例えば少なくとも4%vol/vol、例えば少なくとも5%vol/vol、例えば少なくとも6%vol/vol、例えば少なくとも7%vol/vol、例えば少なくとも8%vol/vol、例えば少なくとも9%vol/vol、例えば少なくとも10%vol/vol、例えば少なくとも12.5%vol/vol、例えば少なくとも15%vol/vol、例えば少なくとも17.5%vol/vol、例えば少なくとも20%vol/vol、例えば少なくとも22.5%vol/vol、例えば少なくとも25%vol/vol、例えば少なくとも27.5%vol/vol、例えば少なくとも30%vol/volの、またはそれより多いAgnique BP420を含む。
【0241】
いくつかの実施形態では、培養培地は、その雲濃度より少なくとも50%、例えば少なくとも100%、例えば少なくとも150%、例えば少なくとも200%、例えば少なくとも250%、例えば少なくとも300%、例えば少なくとも350%、例えば少なくとも400%、例えば少なくとも500%、例えば少なくとも750%、例えば少なくとも1000%、またはそれ以上多い量の抽出剤を含む。および/または培養培地は、その雲濃度の少なくとも2倍、例えばその雲濃度の少なくとも3倍、例えばその雲濃度の少なくとも4倍、例えばその雲濃度の少なくとも5倍、例えばその雲濃度の少なくとも6倍、例えばその雲濃度の少なくとも7倍、例えばその雲濃度の少なくとも8倍、例えばその雲濃度の少なくとも9倍、例えばその雲濃度の少なくとも10倍、例えばその雲濃度の少なくとも12.5倍、例えばその雲濃度の少なくとも15倍、例えばその雲濃度の少なくとも17.5倍、例えばその雲濃度の少なくとも20倍、例えばその雲濃度の少なくとも25倍、例えばその雲濃度の少なくとも30倍の量の抽出剤を含む。
【0242】
抽出剤、すなわちポリエトキシル化界面活性剤などの非イオン性界面活性剤、例えば本明細書に記載の非イオン性界面活性剤、消泡剤またはポリエトキシル化界面活性剤のいずれかの添加は、発酵ブロス中のエマルジョンの産生をもたらし、ここで微生物によって産生される疎水性化合物、すなわち、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(またはE8,E10-ドデカジエニル補酵素Aを変換することによって得られる脂質または遊離脂肪酸)、E8,E10-ドデカジエン-1-オール、E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールは、エマルジョン中に存在する。本発明の方法が抽出剤を含む培養培地を用いて実施される実施形態において、方法はしたがって、エマルジョンを破壊して抽出剤および疎水性化合物を含む産生物相を回収するステップも含み得る。エマルジョンが破壊されると、発酵ブロスは、3つの相:主に水および水性化合物を含む水相、細胞および細胞破片を含む相、ならびに主に抽出剤およびE8,E10ドデカジエニル補酵素A(またはE8,E10-ドデカジエニル補酵素Aを変換することによって得られる脂質または遊離脂肪酸)、E8,E10-ドデカジエン-1-オール、E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールを含む産生物相、に分離される。したがって、3つの相からなる組成物が得られる。これは、出願PCT/欧州特許第2020/076351号(同じ出願人によって2020年9月22日に出願)、特に「疎水性化合物を含む産生物相(Product phase comprising the hydrophobic compound)」と題された項に詳細に記載される。
【0243】
いくつかの実施形態では、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(またはE8,E10-ドデカジエニル補酵素Aを変換することによって得られる脂質または遊離脂肪酸)のほとんど、ならびに任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オール、E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールのほとんどは、産生物相中に存在する。例えば、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(またはE8,E10-ドデカジエニル補酵素Aを変換することによって得られる脂質または遊離脂肪酸)、ならびに任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オール、E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールの少なくとも50%は、産生物相中に存在し、例えばE8,E10-ドデカジエニル補酵素A(またはE8,E10-ドデカジエニル補酵素Aを変換することによって得られる脂質または遊離脂肪酸)、ならびに任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オール、E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールの少なくとも55%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも65%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%、例えば100%は、産生物相中に存在する。いくつかの実施形態では、産生物相は、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(またはE8,E10-ドデカジエニル補酵素Aを変換することによって得られる脂質または遊離脂肪酸)、ならびに任意により最初に発酵ブロス中に存在したE8,E10-ドデカジエン-1-オール、E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールの少なくとも50%、例えばE8,E10-ドデカジエニル補酵素A(またはE8,E10-ドデカジエニル補酵素Aを変換することによって得られる脂質または遊離脂肪酸)、ならびに任意により最初に発酵ブロス中に存在したE8,E10-ドデカジエン-1-オール、E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールの少なくとも55%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも65%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%、例えば100%を含む。
【0244】
エマルジョンを破壊するステップは、当技術分野で知られているように、例えばエマルジョンを相分離のステップに供することにより、例えば遠心分離により実施できる。
【0245】
エマルジョンを破壊するステップの後、抽出剤と、E8,E10-ドデカジエニル補酵素Aを変換することによって得られる脂質または遊離脂肪酸、E8,E10-ドデカジエン-1-オール、および任意によりE8,E10-ドデカジエニルアセテート、および/またはE8,E10-ドデカジエナールを含む産生物相を、組成物から回収できる。この方法は、このような実施形態では、E8,E10-ドデカジエニル補酵素Aを変換することによって得られる脂質または遊離脂肪酸、および任意により、E8,E10-ドデカジエン-1-オール、E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールを抽出剤から分離するステップを、さらに含み得る。これは、蒸留、例えば減圧下での蒸留、またはカラム精製、または任意の他の好適な方法などの当技術分野で知られている方法によって実施できる。抽出剤は、発酵槽またはバイオリアクターに再循環されてよい。
【0246】
核酸構築物
酵母細胞を改変するための核酸構築物も提供され、構築物は、
i)炭素鎖長12を有する脂肪アシルCoA中に1つ以上の二重結合を導入でき、これにより脂肪アシルCoAを不飽和脂肪アシルCoAに変換する少なくとも1つの異種デサチュラーゼをコードする少なくとも1つの第1のポリヌクレオチドであって、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部が、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)である、第1のポリヌクレオチドと;
ii)任意により、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部を不飽和脂肪アルコールに変換できる少なくとも1つの異種脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.84)をコードする第2のポリヌクレオチドであって、脂肪アシルCoAレダクターゼが、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)の少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換できる、第2のポリヌクレオチド、
を含む。
【0247】
核酸構築物を使用して、本明細書に記載の酵母細胞、すなわちE8,E10-ドデカジエニル補酵素A、および任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生できる酵母細胞、を得ることができる。「核酸構築物」という用語は、本明細書では、単一の物理的実体、すなわち単一の分子、例えば第1のポリヌクレオチドおよび任意により第2のポリヌクレオチドが含まれるベクターまたはプラスミドを指し得るか、または複数の核酸分子を指し得、例えば第1のポリヌクレオチドは、1つのプラスミドまたはベクター内に含まれ、第2のポリヌクレオチドは別のプラスミドまたはベクター内に含まれる。
【0248】
核酸構築物は、
iii)異種シトクロムb5をコードするポリヌクレオチド、例えば配列番号3に示されるポリヌクレオチド、または配列番号3に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその相同体;
iv)異種シトクロムb5レダクターゼをコードするポリヌクレオチド、例えば配列番号23に示されるポリヌクレオチドまたは配列番号23に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその相同体など;
v)ヘモグロビンをコードするポリヌクレオチド、例えば配列番号5に示されるポリヌクレオチド、または配列番号5に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその相同体など;および/または
vi)チオエステラーゼをコードするポリヌクレオチド、例えば配列番号25または配列番号34に示されるポリヌクレオチド、または配列番号25もしくは配列番号34に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその相同体
の1つ以上をさらに含み得る。
【0249】
ポリヌクレオチドは、上記の遺伝子のいずれかのいくつかのコピーを含み得、それらが導入される酵母細胞における適切な発現のためにコドン最適化され得る。
【0250】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種デサチュラーゼは、炭素鎖長12を有する脂肪アシルCoA中に1つ以上の二重結合を導入でき、これにより脂肪アシルCoAを不飽和脂肪アシルCoAに変換し、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部は、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)、上記のCpo_CPRQ(配列番号2)または配列番号2に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその機能的バリアントである。そのような実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、上記のように、配列番号1または配列番号1に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその相同体を含む。
【0251】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種デサチュラーゼは、85位に変異を有するCpo_CPRQ変異体などの変異体Cpo_CPRQ、またはそれに対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその機能的バリアントである。いくつかの実施形態では、変異は、S85A変異である。いくつかの実施形態では、デサチュラーゼは、82位に変異を有するCpo_CPRQ変異体などの変異体Cpo_CPRQである。いくつかの実施形態では、変異は、S82A変異体、またはそれに対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその機能的バリアントである。
【0252】
他の実施形態では、少なくとも1つの異種デサチュラーゼは、炭素鎖長12を有する脂肪アシルCoA中に1つ以上の二重結合を導入でき、これにより脂肪アシルCoAを不飽和脂肪アシルCoAに変換し、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部は、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)、上記のGmo_CPRQ(配列番号77)または配列番号77に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその機能的バリアントである。そのような実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、上記のように、配列番号78または配列番号1に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその相同体を含む。
【0253】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、炭素鎖長12の脂肪アシルCoA中に1つ以上の二重結合を導入できるいくつかのデサチュラーゼを発現する。そのような実施形態では、好ましくはいくつかのデサチュラーゼの少なくとも1つは、Cpo_CPRQ、Gmo_CPRQ、それらの変異体、または本明細書に詳述されるその機能的バリアントであり、第1のポリヌクレオチドは、配列番号1、または配列番号1に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその相同体を含むか、またはそれからなる。核酸構築物は、そのような実施形態において、それぞれが上記のようにデサチュラーゼをコードするさらなる第1のポリヌクレオチドを含み得る。例えば、核酸構築物は、Cpo_CPRQ、Gmo_CPRQまたはそれらの相同体をコードする第1のポリヌクレオチドを含み、さらなるデサチュラーゼ、好ましくはCpo_NPVE(配列番号67)またはCpo_SPTQ(配列番号69)、またはそれらに対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその機能的バリアントをコードするさらなる第1のポリヌクレオチドをさらに含む。したがって、いくつかの実施形態では、さらなる第1のポリヌクレオチドは、配列番号66または配列番号68、または配列番号66もしくは配列番号68に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するそれらの相同体を含む。
【0254】
核酸構築物はまた、FARをコードする第2のポリヌクレオチドを含み得る。FARは好ましくは、ヤガ属、Heliothis属、Helicoverpa属またはCydia属の昆虫に固有のFARなどの昆虫FARである。例えば、FARは、カブラヤガ、タマナヤガ、Heliothis subflexa、タバコガ、Helicoverpa virescens、またはコドリンガに固有である。
【0255】
いくつかの実施形態では、FARは、Ase_FAR(配列番号10)、すなわちカブラヤガ中で自然に発生するFARである。いくつかの実施形態では、異種FARは、Ase_FARの機能的バリアントであり、それは、E8,E10-C12:CoAをE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換する能力を保持する。例えば、機能的バリアントは、それに対して少なくとも65%の相同性または同一性を有する。いくつかの実施形態では、FARは、198位または413位に変異を有する変異体などの、変異体Ase_FARである。いくつかの実施形態では、Ase_FAR変異体は、T198A変異体である。他の実施形態では、Ase_FAR変異体は、S413A変異体である。このような実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、配列番号9もしくは配列番号9に対して少なくとも60%の相同性もしくは同一性を有するその相同体を含むかまたはそれらからなる。
【0256】
他の実施形態では、FARは、Aip_FAR(配列番号61)、すなわちタマナヤガ中で自然に発生するFARである。いくつかの実施形態では、異種FARは、Aip_FARの機能的バリアントであり、それは、E8,E10-C12:CoAをE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換する能力を保持する。このような実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、配列番号60もしくは配列番号60に対して少なくとも60%の相同性もしくは同一性を有するその相同体を含むかまたはそれらからなる。
【0257】
他の実施形態では、FARは、Hs_FAR(配列番号71)、すなわちHeliothis subflexa中で自然に発生するFARである。いくつかの実施形態では、異種FARは、Hs_FARの機能的バリアントであり、それは、E8,E10-C12:CoAをE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換する能力を保持する。このような実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、配列番号70もしくは配列番号70に対して少なくとも60%の相同性もしくは同一性を有するその相同体を含むかまたはそれらからなる。
【0258】
他の実施形態では、FARは、Has_FAR(配列番号73)、すなわちタバコガ中で自然に発生するFARである。いくつかの実施形態では、異種FARは、Has_FARの機能的バリアントであり、それは、E8,E10-C12:CoAをE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換する能力を保持する。このような実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、配列番号72もしくは配列番号72に対して少なくとも60%の相同性もしくは同一性を有するその相同体を含むかまたはそれらからなる。
【0259】
他の実施形態では、FARは、Hv_FAR(配列番号75)、すなわちHelicoverpa virescens中で自然に発生するFARである。いくつかの実施形態では、異種FARは、Hv_FARの機能的バリアントであり、それは、E8,E10-C12:CoAをE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換する能力を保持する。このような実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、配列番号74もしくは配列番号74に対して少なくとも60%の相同性もしくは同一性を有するその相同体を含むかまたはそれらからなる。
【0260】
他の実施形態では、FARは、Har_FAR(配列番号12)、すなわちオオタバコガ中で自然に発生するFARである。いくつかの実施形態では、異種FARは、Har_FARの機能的バリアントであり、それは、E8,E10-C12:CoAをE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換する能力を保持する。このような実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、配列番号13もしくは配列番号13に対して少なくとも60%の相同性もしくは同一性を有するその相同体を含むかまたはそれらからなる。
【0261】
他の実施形態では、FARは、コドリンガFAR、例えばCpo_FARまたはその機能的バリアントであり、それは、E8,E10-C12:CoAをE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換する能力を保持する。このような実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、配列番号75もしくは配列番号75に対して少なくとも60%の相同性もしくは同一性を有するその相同体を含むかまたはそれらからなる。
【0262】
いくつかのFARを発現することが望ましい実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、それぞれが1つのFARをコードする複数の第2のポリヌクレオチドであり得る。
【0263】
いくつかの実施形態では、核酸構築物は、少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチドを含み、これらは、第1および/または第2のポリヌクレオチドとは異なる核酸分子であり得るか、または第1および/または第2のポリヌクレオチドと同じ核酸分子の一部であり得る。
【0264】
いくつかの実施形態でさらなるポリヌクレオチドは、配列番号3に示されるシトクロムb5などの、異種シトクロムb5または配列番号3に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその相同体をコードする。いくつかの実施形態では、シトクロムb5は、鱗翅目種に固有のシトクロムb5である。特定の実施形態では、シトクロムb5は、配列番号4に示されるような、Helicoverpa種由来のシトクロムb5、好ましくはオオタバコガ由来のシトクロムb5、または配列番号4に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその機能的バリアントである。このような実施形態では、さらなるポリヌクレオチドは、配列番号3もしくは配列番号3に対して少なくとも60%の相同性を有するその相同体を含むかまたはそれらからなる。
【0265】
いくつかの実施形態でさらなるポリヌクレオチドは、配列番号24に示されるシトクロムb5レダクターゼなどの、異種シトクロムb5レダクターゼまたは配列番号24に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその相同体をコードする。いくつかの実施形態では、シトクロムb5レダクターゼは、Helicoverpa種に固有のシトクロムb5レダクターゼである。特定の実施形態では、シトクロムb5レダクターゼは、配列番号24に示されるような、Helicoverpa種由来のシトクロムb5レダクターゼ、好ましくはオオタバコガ由来のシトクロムb5レダクターゼ、または配列番号24に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその機能的バリアントである。このような実施形態では、さらなるポリヌクレオチドは、配列番号23もしくは配列番号23に対して少なくとも60%の相同性を有するその相同体を含むかまたはそれらからなる。
【0266】
いくつかの実施形態では、さらなるポリヌクレオチドは、配列番号6に示されるヘモグロビンなどの、異種ヘモグロビンまたは配列番号6に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその相同体をコードする。いくつかの実施形態では、ヘモグロビンは、Vitreoscilla種に固有のヘモグロビンである。特定の実施形態では、ヘモグロビンは、配列番号6に示されるような、Vitreoscilla stercoraria由来のヘモグロビン、配列番号6に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその機能的バリアントである。このような実施形態では、さらなるポリヌクレオチドは、配列番号5もしくは配列番号5に対して少なくとも60%の相同性を有するその相同体を含むかまたはそれらからなる。
【0267】
いくつかの実施形態では、さらなるポリヌクレオチドは、配列番号6に示されるチオエステラーゼなどの、チオエステラーゼまたは配列番号6に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその相同体をコードする。いくつかの実施形態では、チオエステラーゼは、クフェア種、ニッケイ種、またはエシェリキア種に固有である。特定の実施形態では、チオエステラーゼは、それぞれ、配列番号33、配列番号57、配列番号35または配列番号26に示されるような、Cuphea palustris、クフェア・フッケリアナ、クスノキ、または大腸菌、またはそれらに対して少なくとも60%の相同性もしくは同一性を有するその機能的バリアント由来のヘモグロビンである。このような実施形態では、さらなるポリヌクレオチドは、配列番号34、配列番号56、配列番号34または配列番号25、またはそれらに対して少なくとも60%の相同性を有するその相同体を含むか、またはそれらからなる。
【0268】
いくつかの実施形態では、核酸構築物は、上記のような第1のポリヌクレオチド、および任意により上記のような第2のポリヌクレオチドを含み、上記の1つ以上のさらなるポリヌクレオチドをさらに発現する。したがって、いくつかの実施形態では、核酸構築物は、第1のポリヌクレオチドおよび任意により第2のポリヌクレオチドを含み、以下の1つをさらに含む:
-異種シトクロムb5をコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;または
-異種シトクロムb5レダクターゼをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;または
-ヘモグロビンをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;または
-チオエステラーゼをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド。
【0269】
他の実施形態では、核酸構築物は、第1のポリヌクレオチドおよび任意により第2のポリヌクレオチドを含み、さらに以下を含む:
-異種シトクロムb5をコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;と
-異種シトクロムb5レダクターゼをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;
または
-異種シトクロムb5をコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;と
-ヘモグロビンをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;
または
-異種シトクロムb5をコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;と
-チオエステラーゼをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;
または;
-異種シトクロムb5レダクターゼをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;と
-ヘモグロビンをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;
または;
-異種シトクロムb5レダクターゼをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;と
-チオエステラーゼをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;
または;
-ヘモグロビンをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;と
-チオエステラーゼをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド。
【0270】
他の実施形態では、核酸構築物は、第1のポリヌクレオチドおよび任意により第2のポリヌクレオチドを含み、さらに以下を含む:
-異種シトクロムb5をコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;と
-異種シトクロムb5レダクターゼをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;と
-ヘモグロビンをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;
または
-異種シトクロムb5をコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;と
-異種シトクロムb5レダクターゼをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;と
-チオエステラーゼをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;
または
-異種シトクロムb5レダクターゼをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;と
-ヘモグロビンをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;と
-チオエステラーゼをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;
または
-異種シトクロムb5をコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;と
-ヘモグロビンをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;と
-チオエステラーゼをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド。
【0271】
いくつかの実施形態では、核酸構築物は、第1のポリヌクレオチドおよび任意により第2のポリヌクレオチドを含み、以下のすべてをさらに含む:
-異種シトクロムb5をコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;と
-異種シトクロムb5レダクターゼをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;と
-ヘモグロビンをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド;と
-チオエステラーゼをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチド。
【0272】
核酸構築物は、本明細書の上記の追加の改変のいずれかを酵母細胞に導入するための追加のポリヌクレオチド、特に酵母細胞に導入時に、天然の脂肪アルデヒドデヒドロゲナーゼ、脂肪アルコールオキシダーゼ、ペルオキシソーム生合成因子および/または脂肪アシルシンターゼの改変された活性(好ましくは、活性は低下されるまたは消失される)をもたらすポリヌクレオチド、をさらに含み得る。
【0273】
核酸構築物は、当技術分野で知られているように、ポリヌクレオチドに含まれるコード配列の上流に位置するプロモーター、例えば誘導性、抑制性または構成的プロモーターなどの、その中に含まれるポリヌクレオチドの発現に必要とされるまたはこれらの発現を容易にする追加のエレメントを含み得る。
【0274】
フェロモン組成物としての製剤
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、当技術分野で知られるとおり、フェロモン組成物として酵母細胞によって産生されるE8,E10-ドデカジエン-1-オール、E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールを配合するステップをさらに含む。
【0275】
本発明の方法によって得ることができるE8,E10-ドデカジエニル補酵素A、E8,E10-ドデカジエン-1-オール、E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナール
本開示はまた、本発明の方法によって得ることができるE8,E10-ドデカジエニル補酵素A(またはE8,E10-ドデカジエニル補酵素Aを変換することによって得られる脂質または遊離脂肪酸)、E8,E10-ドデカジエン-1-オール、E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールも提供する。酵母細胞中で昆虫デサチュラーゼおよび/またはレダクターゼを発現させる場合、結果として生じる産生物の混合物、例えばE8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび/またはE8,E10-ドデカジエン-1-オールを含み細胞によって産生される脂肪アルコールは、昆虫のフェロモン腺で産生されるものと同様の組成を典型的に有する。これは、適切な比率で後で混合する必要がある個々のフェロモン成分を別々のプロセスで産生する代わりに、様々な昆虫に好適なフェロモン混合物の産生を可能にする。それにもかかわらず、結果として生じる産生物、例えばE8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび/または脂肪アルコール、の混合物は、生物学的産生の特徴的な副産物を含み得る。
【0276】
したがって、E8,E10-ドデカジエニル補酵素Aの産生が実施されるいくつかの実施形態では、産生される脂肪アシルCoAは、所望の脂肪アシルCoAとは別の位置に不飽和を有する不飽和脂肪アシルCoAを少なくとも1%、例えば少なくとも2%、例えば少なくとも3%、例えば少なくとも4%、例えば少なくとも5%、例えば少なくとも10%、例えば少なくとも15%、例えば少なくとも20%含む。および/または対応する飽和脂肪アシルCoAを少なくとも1%、例えば少なくとも2%、例えば少なくとも3%、例えば少なくとも4%、例えば少なくとも5%、例えば少なくとも10%、例えば少なくとも15%、例えば少なくとも20%含む。
【0277】
E8,E10-ドデカジエン-1-オールの産生が実施される実施形態では、産生される脂肪アルコールは、所望の脂肪アルコールとは別の位置に不飽和を有する不飽和脂肪アルコールを少なくとも1%、例えば少なくとも2%、例えば少なくとも3%、例えば少なくとも4%、例えば少なくとも5%、例えば少なくとも10%、例えば少なくとも15%、例えば少なくとも20%含み、および/または対応する飽和脂肪アルコールを少なくとも1%、例えば少なくとも2%、例えば少なくとも3%、例えば少なくとも4%、例えば少なくとも5%、例えば少なくとも10%、例えば少なくとも15%、例えば少なくとも20%含む。発酵ブロスから回収された脂肪アルコールの混合物がアルデヒドへと化学的に酸化されるか、または酢酸塩へとアセチル化される場合、アルデヒドおよび酢酸塩の対応する混合物が産生される。
【0278】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、E8,E10-ドデカジエナールを産生するためである。いくつかの実施形態では、本酵母細胞および方法は、E8,E10-ドデカジエナールを含むが奇数鎖脂肪アルデヒドも含む脂肪アルデヒドの混合物の産生をもたらす。「奇数鎖」脂肪アルデヒドという用語は、1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21または23個の炭素原子などの、奇数の炭素原子である炭素鎖長を有する脂肪アルデヒドを指す。「偶数鎖」脂肪アルデヒドという用語は、8、10、12、14、16、18、20または22個の炭素原子などの、偶数の炭素原子である炭素鎖長を有する脂肪アルデヒドを指す。
【0279】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、E8,E10-ドデカジエニルアセテートを産生するためである。いくつかの実施形態では、本酵母細胞および方法は、E8,E10-ドデカジエニルアセテートを含むが奇数鎖脂肪アルコールアセテートも含む脂肪アルコールアセテートの混合物の産生をもたらす。「奇数鎖」脂肪アルコールアセテートという用語は、1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、または23個の炭素原子などの、奇数の炭素原子である炭素鎖長を有する脂肪アルコールアセテートを指す。「偶数鎖」脂肪アルコールアセテートという用語は、8、10、12、14、16、18、20または22個の炭素原子などの、偶数の炭素原子である炭素鎖長を有する脂肪アルコールアセテートを指す。
【0280】
フェロモン組成物
酵母細胞によって産生されるE8,E10-ドデカジエン-1-オール、E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールは、当業者において既知のとおり、フェロモン組成物として配合され得る。このようなフェロモン組成物は、害虫の存在を監視する方法または害虫の交配を妨害する方法において使用できる、総合的病害虫管理産生物として使用され得る。
【0281】
本明細書に開示のフェロモン組成物は、生物農薬として使用され得る。このような組成物は、培養物、畑、または果樹園で、噴霧または分配できる。これらの組成物はまた、当技術分野で知られているとおり、例えばゴム製セプタムに浸すか、または他の成分と混合できる。これは、交配の妨害をもたらし、それにより害虫の繁殖を妨げることができるか、または害虫を捕獲するために捕獲デバイスと組み合わせて使用できる。本発明のフェロモン組成物を使用できる害虫の非限定的な例は、オオタバコガ(cotton bollworm)(オオタバコガ(Helicoverpa armigera))、縞模様シンクイムシ(striped stemborer)(ニカメイガ、Chilo suppressalis)、コナガ(diamond back moth)(Plutella xylostella)、キャベツ蛾(ヨトウガ、Mamestra brassicae)、大きいキャベツ葉の幼虫(ケブカノメイガ、Crocidolomia binotalis)、欧州トウモロコシストークボーラー(セサミア・ノナグリオイデス、Sesamia nonagrioides)、スカシバガ(currant clearwing)(スグリコスカシバ、Synanthedon tipuliformis)、およびアーティチョークトリバガ(artichoke plume moth)(Platyptilia carduidactylal)である。したがって、培養物での本組成物の使用は、実質的に環境へ影響を与えることなく、作物収量の増加をもたらし得る。
【0282】
本発明のフェロモン組成物中の異なる化合物の相対量は、作物の性質および/または防除される害虫の性質に応じて変化し得、地理的変動も存在し得る。最適な相対量を決定することはしたがって、、定期的な最適化を必要とし得る。
【0283】
本開示のいくつかの実施形態では、フェロモン組成物は、液体または固体の担体または基質などの1つ以上の追加の化合物をさらに含み得る。例えば、好適な担体または基質としては、植物油、精製鉱油またはそれらの画分、ゴム、プラスチック、シリカ、珪藻土、ワックスマトリックスおよびセルロース粉末が挙げられる。
【0284】
フェロモン組成物は、当技術分野で知られているように配合され得る。例えば、それは、溶液、ゲル、粉末の形態であり得る。フェロモン組成物は、当技術分野で知られているように、それが容易に分配され得るように配合され得る。
【0285】
キット
本明細書で提供されるのは、本方法を実行するための部品のキットである。部品のキットは、本明細書に記載されるように「すぐに使用できる」酵母細胞を含み得る。一実施形態では、酵母細胞は、ヤロウイア・リポリティカ細胞などのヤロウイア細胞、またはサッカロミセス・セレビシエ細胞などのサッカロミセス細胞である。
【0286】
あるいは、部品のキットはまた、酵母細胞に導入される目的の活性をコードする核酸構築物を含み得る。核酸構築物は、複数のベクターなどの、複数の核酸構築物として提供され得、各ベクターは、1つまたはいくつかの所望の活性をコードする。有用な核酸構築物は、上に記載されている。
【0287】
部品のキットはまた、本明細書で上記に記載された変異のいずれかなどの機能の部分的または完全な喪失をもたらす変異を導入するのに有用な核酸構築物を含み得る。
【0288】
部品のキットは任意により、改変される酵母細胞を含み得る。
【0289】
いくつかの実施形態では、部品のキットは上記のすべてを含む。
【0290】
害虫の存在を監視するためのまたは害虫の交配を妨害するための方法
酵母細胞によって産生されるE8,E10-ドデカジエン-1-オールおよび任意によりE8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールおよび本明細書に開示される方法は、害虫の存在を監視する、または害虫の交配を妨害するための方法で使用できる。
【0291】
したがって、本明細書では、害虫の存在を監視する、または害虫の交配を妨害する方法も提供され、本方法は、以下のステップを含む:
i)本明細書に記載の方法により、E8,E10-ドデカジエン-1-オールおよび任意により、E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールを産生するステップと;
ii)フェロモン組成物として、E8,E10-ドデカジエン-1-オールおよび任意によりE8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールを配合するステップと;
iii)総合的病害虫管理組成物としてフェロモン組成物を使用するステップ、
を含む。
【0292】
本明細書の上に記載の酵母細胞および方法のいずれかは、このような方法において使用できる。
【0293】
実施例
実施例1:バイオブリックの構築
すべての異種遺伝子は、ヤロウイア・リポリティカのコドン最適化版でGeneArt(Life Technologies)により合成された。すべての遺伝子は、Phusion U Hot Start DNAポリメラーゼ(ThermoFisher)を使用して、PCRにより増幅されて、酵母発現ベクターにクローニングするための断片を得た。プライマーを表1に列挙し、得られたDNA断片(バイオブリック)を表2に列挙する。PCR産物は、Midori Green Advance(Nippon Genetics Europe GmbH)含有1%アガロースゲル上で分離された。正確なサイズのPCR産物を、ゲルから切り出し、NucleospinGelおよびPCRClean-upキット(Macherey-Nagel)を使用して精製した。
【表1】
【表2】
【0294】
実施例2:プラスミドの構築
USERカセットを含む組み込み酵母ベクターを、37℃で2時間FastDigest SfaAI(ThermoFisher)で線形化し、65℃で1時間Nb.Bsml(New England Biolabs)でニックを入れた。粘着末端を含む得られたベクターを、ゲル電気泳動によって分離し、ゲルから切り出し、Nucleospin Gel and PCR Clean-upキット(Macherey-Nagel)を使用してゲル精製した。DNA断片を、Holkenbrink et al.,2017に記載のとおりUSERクローニングにより、そのように調製したベクター中にクローニングした。反応物をコンピテント大腸菌 DHα細胞中に化学的に形質転換し、細胞を、100mg/Lアンピシリンを含むLysogeny Broth(LB)寒天プレートにプレーティングした。プレートを、37℃で一晩インキュベートし、得られたコロニーを、コロニーPCRによりスクリーニングした。プラスミドを、一晩の大腸菌液体培養物から精製し、正確なクローニングを、配列決定により確認した。構築されたベクトルを表3に列挙する。
【表3】
【0295】
実施例3:菌株の構築
酵母株を、Holkenbrink et al.,2017に記載のとおり、DNAベクターの形質転換によって構築した。組み込みベクターを、変換前にFastDigestNotIで線形化した。必要に応じて、特定のゲノム領域への組み込みを促進するヘルパーベクターを、表4に列挙される組み込みプラスミドまたはDNA修復断片と同時形質転換した。菌株を、適切な抗生物質を選択した酵母ペプトンデキストロース(YPD)寒天培地で選択した。正確な遺伝子型を、コロニーPCRにより確認し、必要に応じてシーケンシングにより確認した。Y.リポリティカ野生型株を、プラスミドpCfB6364(EP19204554)で形質転換し、ST6029株を作製し、次に遺伝子HFD1(YALI0_F23793g)、HFD2(YALI0_E15400g)、HFD3(YALI0_A17875g)、HFD4(YALI0_B01298g)、FAO1(YALI0_B14014g)、およびPEX10(YALI1_C01416g)を欠失させ、ST6629株を作製した(Borodina et al.,2018)。菌株ST6029およびST6629を、他のすべての菌株を構築するために、親菌株として使用した。得られた菌株を表5に列挙する。
【表4】
【表5】
【0296】
実施例4:菌株の培養、脂肪酸メチルエステルおよび脂肪アルコールの抽出および分析
菌株を、24ウェルプレート(EnzyScreen)で2.5mLYPG培地(10g/L酵母エキス、10g/Lペプトン、40g/Lグリセロール)中に0.1~0.2の初期OD600へと、YPD寒天プレート(10g/L酵母エキス、10g/Lペプトン、20g/Lグルコース、15g/L寒天)からを含む接種した。プレートを、28℃でインキュベートし、300rpmで振とうした。22時間後に、プレートを、4℃、3,000xgで5分間遠心分離した。上清を、廃棄し、細胞を、1.25mL/ウェルの産生培地に再懸濁した(Borodina et al.,2018)。培地に、2.5μLのドデカン酸メチルを添加した。プレートを、28℃で28時間インキュベートし、300rpmで振とうした。
【0297】
脂肪アルコールの分析用に、200μLのブロスを、内部標準として990μLの酢酸エチル:エタノール(84:15)および10μLのZ10-17:Me(2mg/mL)で抽出した。サンプルを、20秒間ボルテックスし、室温で1時間インキュベート後、5分間ボルテックスした。300μLのH2Oを、各サンプルに添加した。サンプルを、ボルテックスし、21℃、3,000xgで5分間遠心分離した。上部有機相を、ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)によって分析した。GC-MS分析を、質量選択検出器HP5973に接続されたHewlett Packard 6890 GCで実施した。GCは、INNOWaxカラム(30mx0.25mmx0.25μm)を備え、ヘリウムをキャリアガスとして使用した(平均速度:33cm/秒)。MSを、電子衝撃モード(70eV)で作動し、m/z30~400でスキャンし、インジェクタを、220℃で、スプリットレスモードで構成した。オーブン温度を1分間、80℃に設定し、次に10℃/分の速度で210℃に上昇させ、その後210℃で15分間保持し、その後10℃/分の速度で230℃に上昇させ、230℃で20分間保持した。化合物を、保持時間と質量スペクトルをラボコレクションで入手可能な参照化合物のものと比較することにより特定した。化合物を、記録された総イオン電流(TIC)により定量化した。データを、Agilent ChemStationソフトウェアおよびiWorkNumbersにより分析した。
【0298】
脂肪酸の分析のために、各バイアルの1mLを、4℃、3,000xgで5分間の遠心分離により回収した。各ペレットを、1000μLの1MHClを含むメタノール(無水)中で抽出した。サンプルを、20秒間ボルテックスし、80℃の水浴に2時間入れた。サンプルを、30分ごとに10秒間ボルテックスした。サンプルを、室温に冷却後、1000μLのメタノール(無水)中の1M NaOH、500μLのNaCl飽和H2O、990μLのヘキサン、10μLのZ10-17:Me(2mg/mL)を、内部標準として添加した。サンプルを、ボルテックスし、21℃、3,000xgで5分間遠心分離した。上部有機相を、上記のようにGC-MSを介して分析した。
【0299】
実施例5:Y.リポリティカ中でのE8,E10-C12:OHの産生
ST6629株に由来するST8494株は、オオタバコガ脂肪アシルレダクターゼHar_FAR(2つのコピー)およびコドリンガデサチュラーゼCpo_CPRQを発現する。ST6629株は、脂肪アルコールの分解および貯蔵脂質の蓄積を減少させるために操作されたY.リポリティカ株である(Holkenbrink et al.,2020)。
【0300】
菌株を、形成された脂肪アルコールの分析のために、6つのバイアル(1.25mL)を組み合わせ4℃、3,000gで5分間遠心分離することにより回収したことを除き、実施例4に記載のとおり培養、抽出、分析した。脂肪アルコールの濃度を、内部標準に基づいて計算した。
【0301】
デサチュラーゼCpoCPRQおよび脂肪アルコールレダクターゼHarFARの発現を組み合わせたST8494株は、低脂肪アルコール分解用に操作された株中で、4.4mg/LのE8,E10-C12:OHの産生を示した(表6)。
【表6】
【0302】
実施例6:Y.リポリティカにおけるE8,E10-C12:MeおよびE8,E10-C12:OHの増加された産生
ST8406株は、ST6629株に由来し、CpoCPRQデサチュラーゼをさらに発現する。ST8406から派生したST9066株は、Cpo_CPRQの2つのコピーを発現する。株を、実施例4に記載のとおり、培養し、抽出し、分析した。脂肪酸メチルエステルおよび脂肪アルコールの濃度を、内部標準に基づいて計算した(表7~10)。
【0303】
コドリンガ(ST9066)由来のデサチュラーゼCpo_CPRQの追加コピーの発現は、それぞれ、E8,E10-C12:MeおよびE9/Z9-C12:Meの産生の2.8倍および1.5倍の増加をもたらした(表7)。これは、デサチュラーゼの過剰発現が、E8,E10-C12:MeおよびE9/Z9-C12:Meの産生の増加をもたらし得ることを示す。
【表7】
【0304】
コドリンガ由来のデサチュラーゼCpo_CPRQの発現と、オオタバコガ由来のシトクロムb5(HarCyb5、配列番号4)、またはV.stercoraria由来のヘモグロビン(VHb、配列番号6)のいずれかの発現を組み合わせたST8411株およびST8416株は、コドリンガ由来のデサチュラーゼのみを発現する参照株ST8406よりもそれぞれ18%および22%多くのE8,E10-C12:Meを産生した。これらの株はまた、E9/Z9-C12:Meの増加された産生を示した(表8)。これらのデータは、シトクロムb5とのまたはヘモグロビンとのデサチュラーゼの発現が、デサチュラーゼのみを発現する株よりも多くのE8,E10-C12:Meを産生できることを示す。
【表8】
【0305】
オオタバコガ(HarCyb5)(ST8411株)由来のシトクロムb5に加えて、V.stercoraria(VHb)(ST9115)由来のヘモグロビンの発現は、E8,E10-C12:MeおよびE9/Z9-C12:Meの力価におけるさらなる21%および41%の改善をもたらした(表9)。これらのデータは、シトクロムb5およびヘモグロビンとのデサチュラーゼの共発現が、3つのうちの1つのみを発現する株よりも多くのE8,E10-C12:MeおよびE9/Z9-C12:Meを産生できることを示す。
【表9】
【0306】
カブラヤガ(Ase_FAR)由来の脂肪アシルレダクターゼを発現するST9250株は、C12:OH、E9/Z9-C12:OHおよびE8,E10-C12:OHの産生を示し、メンフクロウ(Ta_FAR、配列番号8))由来の脂肪アシルレダクターゼを発現するST9249株は、C12:OHの産生のみを示した(表10)。
【表10】
【0307】
実施例7:Δelo1Y.リポリティカ株におけるE8,E10-C12:Meの増加された産生
内因性Y.リポリティカ遺伝子ELO1(YALI0_F06754g、配列番号13)を、ST8406株中で欠失させ、ST9060株をもたらした。株を、実施例4に記載のとおり、培養し、抽出し、分析した。脂肪酸メチルエステルの濃度を、内部標準に基づいて計算した(表11)。ST9060株は、ST8406株と比較して、E8,E10-C12:MeおよびE9/Z9-C12:Meの産生がそれぞれ2.2倍および1.6倍増加したことを示した。これらのデータは、エロンガーゼ遺伝子の欠失がE8,E10-C12:MeおよびE9/Z9-C12:Meの産生を増加させ得ることを示す。
【表11】
【0308】
実施例8:遺伝子YALI0_F14729g、YALI0_E18876gまたはYALI0_D03597gの欠失を含むY.リポリティカ株中でのE8,E10-C12:Meの増加された産生
すべて推定チオエステラーゼをコードする、内因性Y.リポリティカ遺伝子YALI0_F14729g(配列番号19)、YALI0_E18876g(配列番号54)およびYALI0_D03597g(配列番号55)を、ST8406株において欠失させ、それぞれST9061株、ST9062株、およびST9063株をもたらした。株を、実施例4に記載のとおり、培養し、抽出し、分析した。脂肪酸メチルエステルの濃度を、内部標準に基づいて計算した(表12)。ST9061株は、ST8406株と比較して、E8,E10-C12:MeおよびE9/Z9-C12:Meの産生がそれぞれ1.6倍および1.7倍増加したことを示した。ST9062株は、ST8406株と比較して、E8,E10-C12:MeおよびE9/Z9-C12:Meの産生がそれぞれ1.2倍および1.3倍増加したことを示した。ST9063株は、ST8406株と比較して、E8,E10-C12:MeおよびE9/Z9-C12:Meの産生が1.1倍増加したことを示した。これらのデータは、内因性推定チオエステラーゼの欠失がE8,E10-C12:MeおよびE9/Z9-C12:Meの産生を増加させ得ることを示す。
【表12】
【0309】
実施例9:デサチュラーゼCpo_CPRQ中にアミノ酸改変を含むY.リポリティカ株中でのE8,E10-C12:Meの産生
タンパク質Cpo_CPRQ中の85位のアミノ酸を、ST8406株でセリン(S)からアラニン(A)に改変し、ST9072株をもたらした。株を、実施例4に記載のとおり、培養し、抽出し、分析した。脂肪酸メチルエステルの濃度を、内部標準に基づいて計算した(表13)。
【0310】
Cpo_CPRQ_S85Aを発現するST9072株は、ST8406株と比較して、E8,E10-C12:Meの産生が213%増加したことを示した。これらのデータは、Cpo_CPRQを操作してE8,E10-C12:Me、およびE9/Z9-C12:Meの産生を増加させ得ることを示す。
【表13】
【0311】
実施例10:デサチュラーゼCpo_CPRQ(S85A)のアミノ酸改変を他の有益な改変と組み合わせて含むY.リポリティカ株でのE8,E10-C12:MeおよびE8,E10-C12:OHの産生
ST9060から派生したST9278株は、Cpo_CPRQの2つのコピーおよびELO1の欠失を含む。ST9060から派生したST9279株は、Cpo_CPRQの1つのコピー、Cpo_CPRQ_S85Aの1つのコピー、およびELO1の欠失を含む。
【0312】
株を、実施例4に記載のとおり、培養し、抽出し、分析した。脂肪酸メチルエステルの濃度を、内部標準に基づいて計算した(表14)。
【0313】
Cpo_CPRQの2つのコピーを発現しELO1遺伝子内に欠失を有するST9278株は、Cpo_CPRQの1つのコピー、Cpo_CPRQ_S85Aの1つのコピーを発現しELO1遺伝子中に欠失を有するST9279株と比較して、E9/Z9-C12:MeおよびE8,E10-C12:Meの低い産生を示した。
【表14】
【0314】
ST9279から派生したST9355株は、他の改変に加えてVHbおよびHarCyb5を発現する。ST9355に由来するST9356株は、他の改変に加えてHarCyb5およびHarCyb5レダクターゼ(配列番号24)を発現する。ST9356に由来するST9357株は、他の改変に加えて内因性Y.リポリティカ遺伝子YALI0_F14729gの欠失を含む。ST9357から派生した株ST9358は、他の改変に加えてAse_FARを発現する。ST9279から派生した株ST9387は、他の改変に加えてAse_FARを発現する。株を、実施例4に記載のとおり、培養し、抽出し、分析した。脂肪酸メチルエステルおよび脂肪アルコールの濃度を、内部標準に基づいて計算した(表15および16)。
【表15】
【表16】
【0315】
これらのデータは、有益な改変を組み合わせて、E8,E10-C12:MeおよびE9/Z9-C12:Me、ならびにE8,E10-C12:OHおよびE9/Z9-C12:OHのより高い力価を達成できることを示す。
【0316】
実施例11:レダクターゼAse_FARにアミノ酸改変を含む菌株でのE8,E10-C12:OHの産生
タンパク質Ase_FAR中の198位でのアミノ酸を、ST9250株中でスレオニン(T)からアラニン(A)に改変し、ST9335株をもたらす。タンパク質Ase_FAR中の423位のアミノ酸を、ST9250株中でセリン(S)からアラニン(A)に改変し、ST9336株をもたらす。株を、実施例4に記載のとおり、培養し、抽出し、分析する。脂肪アルコールの濃度を、内部標準に基づいて計算する。
【0317】
実施例12:脂肪酸シンターゼ1(FAS1)および脂肪酸シンターゼ2(FAS2)中にアミノ酸改変を含むY.リポリティカ株中でのE8,E10-C12:OHの産生
Y.リポリティカのFAS2中の1220位のアミノ酸(配列番号18)を、ST9387株中でイソロイシン(I)からフェニルアラニン(F)に改変し、ST9388株をもたらす。Y.リポリティカのFAS2中の1220位のアミノ酸を、ST9387株中でイソロイシン(I)からトリプトファン(W)に改変し、ST9420株をもたらす。Y.リポリティカのFAS1中の123位のアミノ酸(配列番号16)を、ST9420株中でロイシン(L)からバリン(V)に改変し、ST9421株をもたらす。株を、ドデカン酸メチルが産生培地に添加されないことを除き、実施例4に記載されるように培養し、抽出し、分析する。脂肪アルコールの濃度を、内部標準に基づいて計算する。
【0318】
実施例13:Y.リポリティカのFAS2中のアミノ酸改変(FAS2(I1220F))およびC12脂肪酸形成のための大腸菌由来のチオエステラーゼを含むY.リポリティカ株中でのE8,E10-C12:OHの産生
ST9397株は、Y.リポリティカ由来のFAS1の短縮型と大腸菌由来のチオエステラーゼTesAの短縮型の融合物を発現する(Xu et al.,2016)(配列番号59)。ST9397株を、Y.リポリティカ由来の脂肪アシルCoAシンターゼを含むプラスミドで形質転換し、ST9398株をもたらす。株を、ガラス管を使用したことおよび全ブロスから脂肪アルコールを抽出したことを除き、実施例4に記載のとおり、培養し、抽出し、分析する。脂肪アルコールの濃度を、内部標準に基づいて計算する(表17)。
【0319】
Y.リポリティカ由来の脂肪アシルCoAシンターゼの発現は、E8,E10-12:OHの産生に有意な影響を与えなかった。
【表17】
【0320】
実施例14:Y.リポリティカのペルオキシソーム中での鎖短縮を介するE8,E10-C12:OHの産生
ST9395株中のC12:CoA前駆体の量を増加させるために、Y.リポリティカの5つの内因性ペルオキシソームオキシダーゼ:POX1、POX2、POX3、POX4、およびPOX5(それぞれ、YALI0_E32835g、YALI0_F10857g、YALI0_E32835g、YALI0_E27654g、YALI0_E27654g)を欠失させ、代わりに、異種ペルオキシソームオキシダーゼ(例えば、セイヨウカボチャ由来のCma_POX)(配列番号47)を発現させる。
【0321】
Δ9-12:CoA前駆体の量を増加させるために、上記の菌株は、例えばハスオビハマキ由来のCroZ11(配列番号63)またはChoristoneura parallela由来のCpaE11(配列番号65)のように、さらにΔ11-14デサチュラーゼを発現する。これにより、Z/E11-14:CoAが、産生され、Z/E9-12:CoAへと短縮され、これは次いでデサチュラーゼCpo_CPRQ(配列番号1)によりE8,E10-C12:Meへとさらに変換される。
【0322】
株を、実施例4に記載のとおり、培養し、抽出し、分析する。ST9600、ST9607、ST9616株の培養物は、ミリスチン酸メチルが添加される。脂肪アルコールの濃度を、内部標準に基づいて計算する。
【0323】
実施例15:サッカロミセス・セレビシエにおけるE8,E10-C12:MeおよびE8,E10-C12:OHの産生
デサチュラーゼ遺伝子Cpo_CPRQを、プライマーattB1_Cpo_CPRQ_FおよびattB1_Cpo_CPRQ_Rを使用して、コドリンガフェロモン腺組織のcDNAから増幅した。
【0324】
PCR産物を、アガロースゲル電気泳動により分離し、Wizard SV GelおよびPCR Cleanupシステム(Promega Biotech AB,Sweden)を使用して精製した。精製したDNAは、Gateway Cloningテクノロジー(Life Technologies)によりpDONR221ベクター中にクローニングした。得られたベクターを、サンガーシーケンシングで確認し、遺伝子をベクターpYEX-CHT(Patel et al、2003)中にサブクローニングし、これを、OLE1およびELO1欠損Saccharomyces cerevisiae株(MATa elo1::HIS3 ole1::LEU2 ade2 his3 leu2 ura3)に形質転換した(Schneiter et al.,2000)。陽性形質転換体を選択するために、細胞を、0.7%YNB(硫酸アンモニウムを含む)、ウラシルおよびロイシンを含まないドロップアウト培地(Formedium LTD,England)、2%グルコース、1%テルジトール(タイプNonidet NP-40,Sigma-Aldrich,Sweden)、0.01%アデニン(Sigma-Aldrich,Sweden)および0.5mMオレイン酸(Sigma-Aldrich,Sweden)を含む合成完全培地で培養した。プレートを30℃で4日間インキュベートした後、個々のコロニーを、10mlの選択培地に接種した。培養物を、30℃で48時間インキュベートし、0.4のOD600へと0.5mM脂肪酸メチルエステル前駆体を補充した2mMCuSO4を含む10mlの選択培地に接種するために使用した。48時間のインキュベーション後に、細胞を、3000rpmでの遠心分離により回収した。培地上清を廃棄し、総脂質を、ガラス管内で3.75mlのメタノール/クロロホルム(2:1、v/v)を使用して抽出した。1mlのHAc(0.15M)および1.25mlの水を加え、ガラス管をボルテックスした。ガラス管を、2000rpmで2分間遠心分離し、下部のクロロホルム相を新しいガラス管に移した。脂質を脂肪酸メチルエステル(FAME)に変換するために、溶媒を、窒素流下で蒸発させた。2%硫酸を含むメタノール1mlを加え、懸濁液を、ボルテックスし、90℃で1時間インキュベートした。その後、1mlの水を加え、混合し、1mlのヘキサンを使用してFAMEを抽出した。サンプルを、質量選択検出器HP5973に接続したHewlett Packard6890GCでのGC-MS分析に供した。GCは、HP-88カラム(30mx0.25mmx0.25μm)を備え、ヘリウムを、キャリアガスとして使用した(平均速度:33ms)。MSを、電子衝撃モード(70eV)で作動させ、インジェクタを、220℃で、スプリットレスモードで構成した。オーブン温度を1分間、80℃に設定し、次に10℃/分の速度で210℃に上昇させ、その後210℃で15分間保持し、その後10℃/分の速度で230℃に上昇させ、230℃で20分間保持した。参照標準として、E8,E10-12:OAcを、Bedoukian(USA)から購入し、メタノール中のKOHの0.5M溶液を使用する加水分解により対応するアルコールに変換した。脂肪アルコールを、記載されるとおり(Bjostad and Roelofs,1984)、ジメチルホルムアミド中のピリジニウムジクロメートで対応する酸に酸化した。
【0325】
図2のクロマトグラムは、12:MeおよびE9-12:Meから、E9-12:MeおよびE8,E10-12:Meが、Cpo_CPRQを発現するS.セレビシエ株中で、それぞれ、産生できることを示す。
【0326】
実施例16:Y.リポリティカにおけるCpo_SPTQ、Cpo_NPVEおよびCpo_CPRQによるE8,E10-C12:Meの産生
ST6629から派生したST10136株は、Cpo_SPTQの1つのコピーを発現する。ST6629から派生したST10137株は、Cpo_NPVEの1つのコピーを発現する。ST8406から派生したST9064株は、Cpo_CPRQの1つのコピーおよびCpo_SPTQの1つのコピーを発現する。ST8406から派生したST9065株は、Cpo_CPRQの1つのコピーおよびCpo_NPVEの1つのコピーを発現する。ST8406から派生したST9066株は、Cpo_CPRQの2つのコピーを発現する。ST9065から派生したST10138株は、Cpo_CPRQの1つのコピー、Cpo_NPVEの1つのコピー、およびCpo_SPTQの1つのコピーを発現する。
【0327】
株を、実施例4に記載のとおり、培養し、抽出し、分析した。脂肪酸メチルエステルの濃度を、内部標準に基づいて計算した(表18)。
【0328】
Cpo_SPTQ(ST10136)の発現は、E9-C12:Me、Z9-C12:MeまたはE8,E10-C12:Meの産生をもたらさなかった。Cpo_NPVE(ST10137)の発現は、E9-C12:MeおよびZ9-C12:Meの産生をもたらしたが、E8,E10-C12:Meは産生されなかった。ST8406中でのCpo_SPTQまたはCpo_NPVEの追加の発現(それぞれ、ST9064およびST9065)は、E8,E10-C12:Meの増加をもたらさなかった。ST8406(ST9066)中でのCpo_CPRQの追加コピーの発現は、E8,E10-C12:Me、およびE9/Z9-C12:Meの産生において、それぞれ、2.8倍および2.1倍の増加をもたらした。Cpo_CPRQ、Cpo_SPTQおよびCpo_NPVE(ST10138)の組み合わせた発現は、ST8406と比較して、E8,E10-C12:Meの増加をもたらさなかった。これは、Cpo_CPRQの発現のみが、E8,E10-C12:Meの産生をもたらすことを示す。
【表18】
【0329】
実施例17:生合成酵素の複数のコピーを発現させることによるE8,E10-C12:OHの産生
ST9358株は、実施例10で説明される。ST9495株は、ST9357株(実施例10に記載)に由来し、デサチュラーゼCpo_CPRQおよび脂肪アシルレダクターゼAse_FARの追加の遺伝子コピーを発現する。株を、ガラス管を使用したことおよび全ブロスから脂肪アルコールを抽出したことを除き、実施例4に記載のとおり、培養し、抽出し、分析する。脂肪アルコールの濃度を、内部標準に基づいて計算する。
【0330】
表19は、Cpo_CPRQおよびAse_FARの追加の遺伝子コピーは、E8,E10-12:OHの産生を7.1mg/Lに増加できることを示す。
【表19】
【0331】
実施例18:様々な脂肪アシルレダクターゼの発現によるコドレモンの産生
ST9358株およびST9623株は、ST9357株に由来する。それらはさらに、それぞれ、カブラヤガおよびタマナヤガの脂肪アシルレダクターゼを発現する。株を、実施例4に記載のとおり、培養し、抽出し、分析した。
【0332】
表20の結果は、両方の脂肪アシルレダクターゼがE9-C12:OHおよびE8,E10-C12:OHを産生できることを示す。
【表20】
【表21】
参考文献
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【0333】
項目
1.E8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生できる酵母細胞であって、炭素鎖長12を有する脂肪アシルCoA中に1つ以上の二重結合を導入できる少なくとも1つの異種デサチュラーゼを発現し、これにより脂肪アシルCoAを不飽和脂肪アシルCoAに変換し、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部は、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)であり、任意によりブラケスレア、カンジダ、クリプトコッカス、クンニンハメラ、リポマイセス、モルティエラ、ケカビ、フィコマイセス、フィチウム、ロドスポリディウム、ロドトルラ、トリコスポロン、サッカロミセスおよびヤロウイアから選択される属に属し、任意によりブラケスレア・トリスポラ(Blakeslea trispora)、カンジダ・プルチェリマ(Candida pulcherrima)、C.カンジダ・レブカウフィ(Candida revkaufi)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、クリプトコッカス・カルバタス(Cryptococcus curvatus)、クンニンハメラ・エキヌラタ(Cunninghamella echinulata)、C.エレガンズ(C.elegans)、C.ジャポニカ(C.japonica)、リポマイセス・スターキー(Lipomyces starkeyi)、L.リポフェラス(L.lipoferus)、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)、M.イザベリナ(M.isabellina)、M.ラマニアナ(M.ramanniana)、M.ビナセア(M.vinacea)、M.シルシネロイデス(M.circinelloides)、フィコマイセス・ブラケスレアヌス(Phycomyces blakesleanus)、フィチウム・イレギュラレ(Pythium irregulare)、ロドスポリディウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)、ロドトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis)、R.グラシリス(R.gracilis)、R.グラミニス(R.graminis)、R.ムチラギノーザ(R.mucilaginosa)、R.ピニコーラ(R.pinicola)、トリコスポロン・プランズ(Trichosporon pullans)、T.クタネウム(T.cutaneum)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)から選択される種に属し、好ましくはヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)またはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である、酵母細胞。
【0334】
2.E8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生できる酵母細胞であって、1つ以上の二重結合を炭素鎖長が12である脂肪アシルCoA中に導入できる少なくとも1つの異種デサチュラーゼを発現し、これにより脂肪アシルCoAを不飽和脂肪アシルCoAに変換し、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部は、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)である、酵母細胞。
【0335】
3.前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞であって、E8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生でき、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部を不飽和脂肪アルコールに変換できる少なくとも1つの異種脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.84)をさらに発現し、脂肪アシルCoAレダクターゼは、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)の少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換できる、酵母細胞。
【0336】
4.E8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生できる酵母細胞であって、少なくとも1つの異種デサチュラーゼおよび少なくとも1つの異種脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.84)を発現し、
i)少なくとも1つの異種デサチュラーゼは、炭素鎖長12を有する脂肪アシルCoA中に1つ以上の二重結合を導入でき、これにより脂肪アシルCoAを不飽和脂肪アシルCoAに変換し、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部は、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)であり;
ii)少なくとも1つの異種脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.84)は、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部を不飽和脂肪アルコールに変換でき、脂肪アシルCoAレダクターゼは、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)の少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換できる、
酵母細胞。
【0337】
5.Blakeslea、カンジダ(Candida)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、クスダマカビ(Cunninghamella)、リポマイセス(Lipomyces)、モルチエレラ(Mortierella)、ケカビ(Mucor)、ヒゲカビ(Phycomyces)、フハイカビ(Pythium)、リノスポリジウム(Rhodosporidium)、ロドトルラ(Rhodotorula)、トリコスポロン(Trichosporon)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、およびヤロウイア(Yarrowia)から選択される属に属する、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0338】
6.ブラケスレア・トリスポラ(Blakeslea trispora)、カンジダ・プルチェリマ(Candida pulcherrima)、C.レブカウフィ(C.revkaufi)、カンジダ・トロピカリス(C tropicalis)、クリプトコッカス・カルバタス(Cryptococcus curvatus)、クンニンハメラ・エキヌラタ(Cunninghamella echinulata)、C.エレガンズ(C.elegans)、C.ジャポニカ(C.japonica)、リポマイセス・スターキー(Lipomyces starkeyi)、L.リポフェラス(L.lipoferus)、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)、M.イザベリナ(M. isabellina)、M.ラマニアナ(M.ramanniana)、M.ビナセア(M.vinacea)、M.シルシネロイデス(Mucor circinelloides)、フィコマイセス・ブラケスレアヌス(Phycomyces blakesleanus)、フィチウム・イレギュラレ(Pythium irregulare)、ロドスポリディウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)、ロドトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis)、R.グラシリス(R.gracilis)、R.グラミニス(R.graminis)、R.ムチラギノーザ(R.mucilaginosa)、R.ピニコーラ(R.pinicola)、トリコスポロン・プランズ(Trichosporon pullans)、T.クタネウム(T. cutaneum)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)から選択される種に属する、前述の項目にいずれかに記載の酵母細胞。
【0339】
7.ヤロウイア属またはサッカロミセス属のものであり、好ましくはヤロウイア・リポリティカ細胞またはサッカロミセス・セレビシエ細胞である、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0340】
8.少なくとも1つのデサチュラーゼは、Gmo_CPRQ(配列番号77)またはCpo_CPRQ(配列番号2)、または配列番号77または配列番号2に対して、少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有するそれらの機能的バリアントであり、好ましくは少なくとも1つのデサチュラーゼは、Cpo_CPRQまたはその機能的バリアントある;または少なくとも1つのデサチュラーゼは、少なくとも2つのデサチュラーゼであり、2つのデサチュラーゼの少なくとも1つは、Gmo_CPRQ(配列番号77)もしくはCpo_CPRQ(配列番号2)、または配列番号77もしくは配列番号2に対して、少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有するそれらの機能的バリアントを有するそれらの機能的バリアントであり、好ましくは少なくとも1つのデサチュラーゼは、Cpo_CPRQまたはその機能的バリアントである;他方のデサチュラーゼは、炭素鎖長12を有する脂肪アシルCoA中に少なくとも1つの二重結合を導入できるデサチュラーゼ、例えばZ9-12デサチュラーゼであり、好ましくはCpo_NPVE(配列番号67)もしくはCpo_SPTQ(配列番号69)、または配列番号67もしくは配列番号69に対して、少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有するそれらの機能的バリアントである、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0341】
9.デサチュラーゼが、S85A変異などの、85位に変異を有するCpo_CPRQの変異体である、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0342】
10.少なくとも1つの異種デサチュラーゼが、配列番号2に示されるCpo_CPRQおよびS85A変異などの85位に変異を有する変異体Cpo_CPRQなどの、少なくとも2つの異なる異種デサチュラーゼである、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0343】
11.脂肪アシルCoAレダクターゼが、Ase_FAR(配列番号10)、Aip_FAR(配列番号61)、Hs_FAR(配列番号71)、Has_FAR(配列番号73)、Hv_FAR(配列番号75)、Har_FAR(配列番号12)、Cpo_FAR(配列番号76)、およびそれらに対して、少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有する機能的バリアントからなる群から選択される、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0344】
12.脂肪アシルCoAレダクターゼが、198位または413位に変異、好ましくはT198A変異またはS413A変異を有するなどの、Ase_FARの変異体である、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0345】
13.異種デサチュラーゼが、高レベルで発現される、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0346】
14.異種脂肪アシルCoAレダクターゼが、高レベルで発現される、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0347】
15.E8,E10-C12:CoAの利用可能性を高めるためにさらに改変される、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0348】
16.オオタバコガ由来のシトクロムb5など、鱗翅目種由来のシトクロムb5などの異種シトクロムb5、好ましくは配列番号4に示されるシトクロムb5 HarCyb5または配列番号4に対して、少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有するその機能的バリアントをさらに発現する、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0349】
17.Helicoverpa armigeraなどの、鱗翅目種由来のシトクロムb5レダクターゼなどの、異種シトクロムb5レダクターゼ(EC1.6.2.2)をさらに発現し、好ましくはシトクロムb5レダクターゼは、配列番号24に示されるオオタバコガ由来のシトクロムb5レダクターゼ、または配列番号24に対して少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有するそれらの機能的バリアントである、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0350】
18.Vitreoscilla stercoraria由来のヘモグロビン、好ましくは配列番号6に示されるVitreoscilla stercoraria由来のヘモグロビンなどの、ヘモグロビン、または配列番号6に対して、少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有するそれらの機能的バリアントをさらに発現する、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0351】
19.エロンガーゼをコードしかつElo1活性の部分的または完全な喪失をもたらすELO1遺伝子(配列番号13)の変異などの、エロンガーゼ活性の部分的または完全な喪失をもたらす1つ以上の遺伝子の変異をさらに含み、好ましくは変異は、欠失である、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0352】
20.チオエステラーゼをコードしチオエステラーゼ活性の部分的または完全な喪失をもたらす、YAL10_F14729g遺伝子(配列番号19)の変異、YALI0_E18876g遺伝子(配列番号54)の変異、またはYALI0_D03597gの変異(配列番号55)などの、1つ以上の遺伝子の変異をさらに含み、好ましくは変異は、欠失である、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0353】
21.Hfd1、Hfd2、Hfd3、Hfd4、Fao1、GPATおよびPex10の少なくとも1つの活性の低下をもたらす少なくとも1つの変異などの少なくとも1つの改変、またはそれらに対して少なくとも60%の相同性または同一性、それらに対して例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも75%の相同性または同一性、例えば少なくとも80%の相同性または同一性、例えば少なくとも81%の相同性または同一性、例えば少なくとも82%の相同性または同一性、例えば少なくとも83%の相同性または同一性、例えば少なくとも84%の相同性または同一性、例えば少なくとも85%の相同性または同一性、例えば少なくとも86%の相同性または同一性、例えば少なくとも87%の相同性または同一性、例えば少なくとも88%の相同性または同一性、例えば少なくとも89%の相同性または同一性、例えば少なくとも90%の相同性または同一性、例えば少なくとも91%の相同性または同一性、例えば少なくとも92%の相同性または同一性、例えば少なくとも93%の相同性または同一性、例えば少なくとも94%の相同性または同一性、例えば少なくとも95%の相同性または同一性、例えば少なくとも96%の相同性または同一性、例えば少なくとも97%の相同性または同一性、例えば少なくとも98%の相同性または同一性、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有する少なくとも1つのタンパク質の活性の低下をもたらす少なくとも1つの変異などの少なくとも1つの改変をさらに含む、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0354】
22.改変されたケトンシンターゼドメインを有する脂肪アシルシンターゼバリアントをさらに発現し、脂肪アシルシンターゼバリアントは、Fas1(配列番号16)またはFas2(配列番号18)のバリアント、例えば123位に変異を有する変異体Fas1、好ましくはL123V変異、または1220位での変異を有する変異体Fas2、好ましくはI1220FまたはI1220W変異である、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0355】
23.異種チオエステラーゼなどのチオエステラーゼをさらに発現し、任意によりチオエステラーゼが、高レベルで発現される、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0356】
24.チオエステラーゼが、配列番号33に示されるCuphea palustris由来のチオエステラーゼに対して、配列番号57に示されるクフェア・フッケリアナ由来のチオエステラーゼに対して、配列番号35に示されるクスノキ由来のチオエステラーゼに対して、または配列番号26に示される大腸菌由来のチオエステラーゼに対して、少なくとも60%の相同性または同一性を有する、好ましくはチオエステラーゼは、配列番号35に示されるクスノキ由来のチオエステラーゼに対して、または配列番号26に示される大腸菌由来のチオエステラーゼに対して、少なくとも60%の相同性または同一性を有する、項目23に記載の酵母細胞。
【0357】
25.配列番号59に示される融合タンパク質などの、短縮型脂肪アシルシンターゼおよび短縮型チオエステラーゼの融合タンパク質、または配列番号59に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその相同体をさらに発現する、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0358】
26.異種デサチュラーゼをコードする核酸と、異種脂肪アシルCoAレダクターゼをコードする核酸を含む、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0359】
27.異種デサチュラーゼをコードする核酸および/または異種脂肪アシルCoAレダクターゼをコードする核酸が、高いコピー数で存在する、項目26に記載の酵母細胞。
【0360】
28.異種デサチュラーゼをコードする核酸が、配列番号1に示されるか、または配列番号1に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその相同体、または配列番号78に示されるか、または配列番号78に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその相同体である、項目26または27に記載の酵母細胞。
【0361】
29.異種脂肪アシルCoAレダクターゼをコードする核酸が、配列番号9に示されるか、または配列番号9に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその相同体である、項目26~28のいずれか一項に記載の酵母細胞。
【0362】
30.異種シトクロムb5をコードする核酸、異種シトクロムb5レダクターゼをコードする核酸、ヘモグロビンをコードする核酸、脂肪酸シンターゼバリアントをコードする核酸、チオエステラーゼをコードする核酸、および/または融合タンパク質をコードする核酸を含む、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0363】
31.異種シトクロムb5をコードする核酸、異種シトクロムb5レダクターゼをコードする核酸、ヘモグロビンをコードする核酸、脂肪酸シンターゼバリアントをコードする核酸、および/またはチオエステラーゼをコードする核酸が、高いコピー数で存在する、項目30に記載の酵母細胞。
【0364】
32.異種デサチュラーゼをコードする核酸、異種脂肪アシルCoAレダクターゼをコードする核酸、異種シトクロムb5をコードする核酸、異種シトクロムb5レダクターゼをコードする核酸、ヘモグロビンをコードする核酸、脂肪酸シンターゼバリアントをコードする核酸、および/またはチオエステラーゼをコードする核酸が、酵母細胞における発現のためにコドン最適化される、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0365】
33.異種シトクロムb5をコードする核酸が、配列番号3に示される、または配列番号3に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその相同体である、異種シトクロムb5レダクターゼをコードする核酸が、配列番号23に示される、または配列番号23に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその相同体である、ヘモグロビンをコードする核酸が、配列番号5に示される、または配列番号5に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその相同体である、および/またはチオエステラーゼをコードする核酸が、配列番号25または配列番号34に示される、または配列番号25または配列番号34に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有する配列番号25または配列番号34の相同体である、項目30~32のいずれかに記載の酵母細胞。
【0366】
34.少なくとも0.5mg/L、例えば少なくとも0.6mg/L、例えば少なくとも0.7mg/L、例えば少なくとも0.8mg/L、例えば少なくとも0.9mg/L、例えば少なくとも1mg/L、例えば少なくとも1.5mg/L、例えば少なくとも2.5mg/L、例えば少なくとも5.0mg/L、例えば少なくとも10mg/L、例えば少なくとも15mg/L、例えば少なくとも20mg/L、例えば25mg/L、例えば少なくとも50mg/L、例えば少なくとも100mg/L、例えば少なくとも250mg/L、例えば少なくとも500mg/L、例えば少なくとも750mg/L、例えば少なくとも1g/L、例えば少なくとも2g/L、例えば少なくとも3g/L、例えば少なくとも4g/L、例えば少なくとも5g/L、例えば少なくとも6g/L、例えば少なくとも7g/L、例えば少なくとも8g/L、例えば少なくとも9g/L、例えば少なくとも10g/Lのまたはそれより大きい力価を有するE8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生できる、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0367】
35.E8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエニルアセテートに変換できるアセチルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.84)をさらに発現し、これによりE8,E10-ドデカジエニルアセテートを産生できる、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0368】
36.アセチルトランスフェラーゼが、酵母細胞から発現される異種アセチルトランスフェラーゼ(AcT)、または酵母細胞から過剰発現される天然アセチルトランスフェラーゼである、項目35に記載の酵母細胞。
【0369】
37.アセチルトランスフェラーゼが、Sc_Atf1(配列番号37)またはSc_Atf1(配列番号37)に対して少なくとも60%の相同性または同一性、Sc_Atf1(配列番号37)に対して、例えば少なくとも61%の相同性または同一性、例えば少なくとも62%の相同性または同一性、例えば少なくとも63%の相同性または同一性、例えば少なくとも64%の相同性または同一性、例えば少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも66%の相同性または同一性、例えば少なくとも67%の相同性または同一性、例えば少なくとも68%の相同性または同一性、例えば少なくとも69%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%を有するそのバリアントである、項目35または36に記載の酵母細胞。
【0370】
38.E8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエナールに変換できるアルデヒド形成脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.50)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.2)、および/または脂肪アルコールオキシダーゼ(EC1.1.3.20)をさらに発現する、前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞。
【0371】
39.前述の項目のいずれかに記載の酵母細胞であって、さらに、
i)1つ以上の天然アシルCoAオキシダーゼの活性の低下をもたらす1つ以上の変異を有し、かつ
ii)脂肪アシルCoAを酸化できる少なくとも1つのアシルCoAオキシダーゼを含む酵素の少なくとも1つの群を発現し、酵素の群は、第1の炭素鎖長Xの脂肪アシルCoAを第2の炭素鎖長X’を有する短縮された脂肪アシルCoAに短縮でき、式中、X’≦X-2である、
酵母細胞。
【0372】
40.式中、X’=12である、項目39に記載の酵母細胞。
【0373】
41.炭素鎖長Xの脂肪アシルCoA中に少なくとも1つの二重結合を導入できるデサチュラーゼ、例えばCroZ11デサチュラーゼ(配列番号63)またはCpaE11デサチュラーゼ(配列番号65)、または配列番号63、配列番号65に対して、少なくとも65%の相同性または同一性、例えば少なくとも70%の相同性または同一性、例えば少なくとも71%の相同性または同一性、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有するこれらの機能的バリアントをさらに発現する、項目39または40に記載の酵母細胞。
【0374】
42.i)の天然のアシルCoAオキシダーゼおよび/またはii)のアシルCoAオキシダーゼが、ペルオキシソームのアシルCoAオキシダーゼである、項目39~42のいずれかに記載の酵母細胞。
【0375】
43.ii)の少なくとも1つのアシルCoAオキシダーゼが、天然のアシルCoAオキシダーゼまたは異種アシルCoAオキシダーゼであり、それは、酵素の少なくとも1つの群を発現しない参照酵母株と比較して任意により過剰発現され、好ましくはii)の酵素の群の少なくとも1つのアシルCoAオキシダーゼが、異種アシルCoAオキシダーゼである、項目39~41のいずれか一項に記載の酵母細胞。
【0376】
44.ii)の酵素の群が、ヤロウイア・リポリティカ、カブラヤガ、シロイヌナズナ、アスペルギルス・ニデュランス、セイヨウカボチャ、ホモサピエンス、Paenarthrobacter ureafaciensまたはドブネズミから選択される属の生物に由来するアシルCoAオキシダーゼを含み、好ましくは酵素の少なくとも1つの第1の群が、ヤロウイア・リポリティカ、カブラヤガ、シロイヌナズナ、アスペルギルス・ニデュランス、セイヨウカボチャ、ホモサピエンス、Paenarthrobacter ureafaciensまたはドブネズミに由来のアシルCoAオキシダーゼを含み、好ましくは酵素の第1の群の少なくとも1つのアシルCoAオキシダーゼが、Yli_POX1(XP_504703)、Yli_POX2(XP_505264)、Yli_POX3(XP_503244)、Yli_POX4(XP_504475)、Yli_POX5(XP_502199)、Yli_POX6(XP_503632)、Ase_POX(配列番号39)、Ath_POX1(配列番号41)、Ath_POX2(配列番号43)、Ani_POX(配列番号45)、Cma_POX(配列番号47)、Hsa_POX1-2(配列番号49)、Pur_POX(配列番号51)、Sc_POX1(配列番号31)およびRno_POX2(配列番号53)、またはそれらに対して、少なくとも60%の相同性または同一性、それらに対して、例えば少なくとも65%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有するその機能的バリアントからなる群から選択されるアシルCoAオキシダーゼである、項目39~43のいずれかに記載の酵母細胞。
【0377】
45.酵母細胞中でE8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生するための方法であって、酵母細胞を提供するステップと、培地中で酵母細胞をインキュベートするステップを含み、酵母細胞は、少なくとも1つの異種デサチュラーゼおよび任意による少なくとも1つの異種脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.84)を発現し、
i)少なくとも1つの異種デサチュラーゼは、炭素鎖長12を有する脂肪アシルCoA中に1つ以上の二重結合を導入でき、これにより脂肪アシルCoAを不飽和脂肪アシルCoAに変換し、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部は、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)であり;
ii)任意による少なくとも1つの異種脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.84)は、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部を不飽和脂肪アルコールに変換でき、脂肪アシルCoAレダクターゼは、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)の少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換でき、
これによりE8,E10-ドデカジエニル補酵素A、および任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生する、方法。
【0378】
46.酵母細胞が、項目1~44のいずれかに記載のとおりである、項目45に記載の方法。
【0379】
47.E8,E10-ドデカジエニル補酵素Aをトリアシルグリセリドなどの脂質または遊離脂肪酸に変換するステップと、脂質または遊離脂肪酸を回収するステップと、脂質または遊離脂肪酸をE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換するステップをさらに含む、項目45または46に記載の方法。
【0380】
48.E8,E10-ドデカジエン-1-オールを回収するステップをさらに含む、項目45~47に記載の方法。
【0381】
49.アセチルトランスフェラーゼの発現によりまたは化学変換により、E8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエニルアセテートに変換するステップをさらに含む、項目45~48のいずれかに記載の方法。
【0382】
50.アセチルトランスフェラーゼが、酵母細胞から発現される異種アセチルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.84)または酵母細胞から過剰発現される天然アセチルトランスフェラーゼであり、アセチルトランスフェラーゼが、E8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエニルアセテートに変換でき、それによりさらにE8,E10-ドデカジエニルアセテートを産生する、項目49に記載の方法。
【0383】
51.アセチルトランスフェラーゼが、Sc_Atf1(配列番号37)またはSc_Atf1(配列番号37)に対して、少なくとも75%の相同性または同一性、例えば少なくとも80%の相同性または同一性、例えば少なくとも85%の相同性または同一性、例えば少なくとも90%の相同性または同一性、例えば少なくとも91%の相同性または同一性、例えば少なくとも92%の相同性または同一性、例えば少なくとも93%の相同性または同一性、例えば少なくとも94%の相同性または同一性、例えば少なくとも95%の相同性または同一性、例えば少なくとも96%の相同性または同一性、例えば少なくとも97%の相同性または同一性、例えば少なくとも98%の相同性または同一性、例えば少なくとも99%の相同性または同一性、例えば100%の相同性または同一性を有するバリアントである、項目50に記載の方法。
【0384】
52.E8,E10-ドデカジエニルアセテートを回収するステップをさらに含む、項目45~51のいずれかに記載の方法。
【0385】
53.E8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエナールに変換できるアルデヒド形成脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.50)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.2)、および/または脂肪アルコールオキシダーゼ(EC1.1.3.20)の発現によりまたは化学変換により、E8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエナールに変換するステップをさらに含み、それによりE8,E10-ドデカジエナールをさらに産生することを含む、項目45~52のいずれかに記載の方法。
【0386】
54.E8,E10-ドデカジエナールを回収するステップをさらに含む、項目53に記載の方法。
【0387】
55.項目45~54に記載の方法であって、培地が、水溶液中のその雲濃度以上の量またはその濃度を超える量の抽出剤を含み、抽出剤が、消泡剤などの非イオン性エトキシル化界面活性剤、好ましくはポリエチレンポリプロピレングリコール、ポリエーテル分散液の混合物、ならびにシメチコンなどのポリエチレングリコールモノステアレート、脂肪アルコールアルコキシレート、ポリエトキシル化界面活性剤を含む消泡剤、ならびにエトキシル化およびプロポキシル化C16~C18アルコールベースの消泡剤、ならびにそれらの組み合わせから選択されるポリエトキシル化界面活性剤である、方法。
【0388】
56.項目55に記載の方法であって、
-非イオン性エトキシル化界面活性剤が、エトキシル化およびプロポキシル化されたC16~C18アルコールベースの消泡剤、例えばC16~C18アルキルアルコールエトキシレートプロポキシレート(CAS番号68002-96-0)であり、培養培地が、少なくとも1%vol/volのC16~C18アルキルアルコールエトキシレートプロポキシレート、例えば少なくとも1%vol/volのC16~C18アルキルアルコールエトキシレートプロポキシレート、例えば少なくとも1.5%vol/vol、例えば少なくとも2%vol/vol、例えば少なくとも2.5%vol/vol、例えば少なくとも3%vol/vol、例えば少なくとも3.5%vol/vol、例えば少なくとも4%vol/vol、例えば少なくとも5%vol/vol、例えば少なくとも6%vol/vol、例えば少なくとも7%vol/vol、例えば少なくとも8%vol/vol、例えば少なくとも9%vol/vol、例えば少なくとも10%vol/vol、例えば少なくとも12.5%vol/vol、例えば少なくとも15%vol/vol、例えば少なくとも17.5%vol/vol、例えば少なくとも20%vol/vol、例えば少なくとも22.5%vol/vol、例えば少なくとも25%vol/vol、例えば少なくとも27.5%vol/vol、例えば少なくとも30%vol/volのまたはそれより多いC16~C18アルキルアルコールエトキシレートプロポキシレートを含み、
-非イオン性エトキシル化界面活性剤が、ポリエチレンポリプロピレングリコール、例えばKollliphor(登録商標)P407(CAS番号9003-11-6)であり、培養培地が、Kolliphor(登録商標)P407などのポリエチレンポリプロピレングリコールの少なくとも10%vol/vol、例えば少なくとも11%vol/vol、例えば少なくとも12%vol/vol、例えば少なくとも13%vol/vol、例えば少なくとも14%vol/vol、例えば少なくとも15%vol/vol、例えば少なくとも16%vol/vol、例えば少なくとも17%vol/vol、例えば少なくとも18%vol/vol、例えば少なくとも19%vol/vol、例えば少なくとも20%vol/vol、例えば少なくとも25%vol/vol、例えば少なくとも30%vol/vol、例えば少なくとも35%vol/volのまたはそれより多いKolliphor(登録商標)P407などのポリエチレンポリプロピレングリコールを含み、
-非イオン性エトキシル化界面活性剤が、消泡剤204などのポリエーテル分散液の混合物であり、培養培地が、少なくとも1%vol/volのポリエーテル分散液の混合物を含み、例えば少なくとも1.5%vol/vol、例えば少なくとも2%vol/vol、例えば少なくとも2.5%vol/vol、例えば少なくとも3%vol/vol、例えば少なくとも3.5%vol/vol、例えば少なくとも4%vol/vol、例えば少なくとも5%vol/vol、例えば少なくとも6%vol/vol、例えば少なくとも7%vol/vol、例えば少なくとも8%vol/vol、例えば少なくとも9%vol/vol、例えば少なくとも10%vol/vol、例えば少なくとも12.5%vol/vol、例えば少なくとも15%vol/vol、例えば少なくとも17.5%vol/vol、例えば少なくとも20%vol/vol、例えば少なくとも22.5%vol/vol、例えば少なくとも25%vol/vol、例えば少なくとも27.5%vol/vol、例えば少なくとも30%vol/volのまたはそれより多い消泡剤204などのポリエーテル分散液の混合物を含み、かつ/または
-非イオン性エトキシル化界面活性剤が、シメチコンなどのポリエチレングリコールモノステアレートを含む非イオン性エトキシル化界面活性剤であり、培養培地が、少なくとも1%vol/volのポリエチレングリコールモノステアレートまたはシメチコン、例えば少なくとも1.5%vol/vol、例えば少なくとも2%vol/vol、例えば少なくとも2.5%vol/vol、例えば少なくとも3%vol/vol、例えば少なくとも3.5%vol/vol、例えば少なくとも4%vol/vol、例えば少なくとも5%vol/vol、例えば少なくとも6%vol/vol、例えば少なくとも7%vol/vol、例えば少なくとも8%vol/vol、例えば少なくとも9%vol/vol、例えば少なくとも10%vol/vol、例えば少なくとも12.5%vol/vol、例えば少なくとも15%vol/vol、例えば少なくとも17.5%vol/vol、例えば少なくとも20%vol/vol、例えば少なくとも22.5%vol/vol、例えば少なくとも25%vol/vol、例えば少なくとも27.5%vol/vol、例えば少なくとも30%vol/volのまたはそれより多いポリエチレングリコールモノステアレートまたはシメチコンを含み、
-非イオン性エトキシル化界面活性剤が、脂肪アルコールアルコキシレートであり、好ましくはPlurafac(登録商標)LF300(CAS番号196823-11-7)、Plurafac(登録商標)LF1300(68002-96-0)、Plurafac(登録商標)SLF180(CAS番号196823-11-7)、Dehypon(登録商標)2574(CAS番号68154-97-2)、およびImbentin SG/251(CAS番号68002-96-0)から選択され、好ましくはPlurafac(登録商標)LF300またはDehypon(登録商標)2574であり、培養培地が、少なくとも1%vol/volの脂肪アルコールアルコキシレート、例えば少なくとも1%vol/volの脂肪アルコールアルコキシレート、例えば少なくとも1.5%、例えば少なくとも2%、例えば少なくとも2.5%、例えば少なくとも3%、例えば少なくとも3.5%、例えば少なくとも4%、例えば少なくとも5%、例えば少なくとも6%、例えば少なくとも7%、例えば少なくとも8%、例えば少なくとも9%、例えば少なくとも10%、例えば少なくとも12.5%、例えば少なくとも15%、例えば少なくとも17.5%、例えば少なくとも20%、例えば少なくとも22.5%、例えば少なくとも25%、例えば少なくとも27.5%、例えば少なくとも30%vol/volのまたはそれより多い脂肪アルコールアルコキシレートを含み、
-非イオン性エトキシル化界面活性剤が、Agnique BP420(CAS番号68002-96-0)であり、培養培地が、少なくとも1%vol/volのAgnique BP420、例えば少なくとも1.5%vol/vol、例えば少なくとも2%vol/vol、例えば少なくとも2.5%vol/vol、例えば少なくとも3%vol/vol、例えば少なくとも3.5%vol/vol、例えば少なくとも4%vol/vol、例えば少なくとも5%vol/vol、例えば少なくとも6%vol/vol、例えば少なくとも7%vol/vol、例えば少なくとも8%vol/vol、例えば少なくとも9%vol/vol、例えば少なくとも10%vol/vol、例えば少なくとも12.5%vol/vol、例えば少なくとも15%vol/vol、例えば少なくとも17.5%vol/vol、例えば少なくとも20%vol/vol、例えば少なくとも22.5%vol/vol、例えば少なくとも25%vol/vol、例えば少なくとも27.5%vol/vol、例えば少なくとも30%vol/volのまたはそれより多いAgnique BP420を含む、
方法。
【0389】
57.培養培地が、その雲濃度より少なくとも50%、例えば少なくとも100%、例えば少なくとも150%、例えば少なくとも200%、例えば少なくとも250%、例えば少なくとも300%、例えば少なくとも350%、例えば少なくとも400%、例えば少なくとも500%、例えば少なくとも750%、例えば少なくとも1000%の、またはそれより多い量の抽出剤を含み、かつ/または培養培地が、その雲濃度の少なくとも2倍、例えばその雲濃度の少なくとも3倍、例えばその雲濃度の少なくとも4倍、例えばその雲濃度の少なくとも5倍、例えばその雲濃度の少なくとも6倍、例えばその雲濃度の少なくとも7倍、例えばその雲濃度の少なくとも8倍、例えばその雲濃度の少なくとも9倍、例えばその雲濃度の少なくとも10倍、例えばその雲濃度の少なくとも12.5倍、例えばその雲濃度の少なくとも15倍、例えばその雲濃度の少なくとも17.5倍、例えばその雲濃度の少なくとも20倍、例えばその雲濃度の少なくとも25倍、例えばその雲濃度の少なくとも30倍の量の抽出剤を含む、項目45~56に記載の方法。
【0390】
58.項目45~57のいずれかに記載の方法であって、E8,E10-ドデカジエニル補酵素Aが、脂質または遊離脂肪酸に変換され、脂質または遊離脂肪酸、E8,E10-ドデカジエン-1-オール、および任意により酵母細胞によって産生されるE8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールが、発酵ブロス中のエマルジョン中に存在し、エマルジョンを破壊するステップをさらに含み、それにより抽出剤と、脂質または遊離脂肪酸、E8,E10-ドデカジエン-1-オール、および任意によりE8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールを含む産生物相を含む組成物を得、任意により
-エマルジョンを破壊するステップは、発酵ブロスの遠心分離のステップなどの相分離のステップを含むか、またはそのステップからなり、それにより3つの相:水相、細胞および細胞破片を含む相、および抽出剤と脂質または遊離脂肪酸、E8,E10-ドデカジエン-1-オール、および任意によりE8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールを含む産生物相からなる組成物を得る、かつ/または
-産生物相は、例えば少なくとも55%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも65%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%のまたはそれより多い、少なくとも50%の脂質または遊離脂肪酸、E8,E10-ドデカジエン-1-オール、および任意により発酵ブロス中に最初に存在するE8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールを含む、
方法。
【0391】
59.以下のステップ:
-脂質または遊離脂肪酸、E8,E10-ドデカジエン-1-オール、および任意によりE8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールを、好ましくは減圧下での蒸留などの蒸留ステップにより、またはカラム精製により回収するステップ、
-E8,E10-ドデカジエン-1-オールの少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエナールおよび/またはE8,E10-ドデカジエニルアセテートに化学的に変換するステップ、
-任意により、E8,E10-ドデカジエナールおよび/またはE8,E10-ドデカジエニルアセテートを回収するステップ
をさらに含む、項目45~58のいずれかに記載の方法。
【0392】
60.回収されたE8,E10-ドデカジエン-1-オール、E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールをフェロモン組成物に配合するステップをさらに含む、項目45~59のいずれかに記載の方法。
【0393】
61.フェロモン組成物が、液体または固体の担体または基質などの1つ以上の追加の化合物をさらに含む、項目45~60のいずれかに記載の方法。
【0394】
62.酵母細胞を改変するための核酸構築物であって、
i)炭素鎖長12を有する脂肪アシルCoA中に1つ以上の二重結合を導入できる少なくとも1つの異種デサチュラーゼをコードする少なくとも1つの第1のポリヌクレオチドであって、これにより脂肪アシルCoAを不飽和脂肪アシルCoAに変換し、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部が、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)である、第1のポリヌクレオチドと;
ii)任意により、不飽和脂肪アシルCoAの少なくとも一部を不飽和脂肪アルコールに変換できる少なくとも1つの異種脂肪アシルCoAレダクターゼ(EC1.2.1.84)をコードする第2のポリヌクレオチドであって、脂肪アシルCoAレダクターゼが、E8,E10-ドデカジエニル補酵素A(E8,E10-C12:CoA)の少なくとも一部をE8,E10-ドデカジエン-1-オールに変換できる、第2のポリヌクレオチド、
を含む、核酸構築物。
【0395】
63.項目62に記載の核酸構築物であって、
a)少なくとも1つのデサチュラーゼが、Gmo_CPRQ(配列番号77)、Cpo_CPRQ(配列番号2)、または配列番号77もしくは配列番号2に対して、少なくとも80%の同一性、配列番号77もしくは配列番号2に対して例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%などの同一性を有するその機能的バリアントであり、好ましくは少なくとも1つのデサチュラーゼは、Cpo_CPRQまたはその機能的バリアントである、または
b)少なくとも1つのデサチュラーゼは、少なくとも2つのデサチュラーゼであり、2つのデサチュラーゼの少なくとも1つは、Gmo_CPRQ(配列番号77)、Cpo_CPRQ(配列番号2)、または配列番号77もしくは配列番号2に対して、少なくとも80%の同一性、配列番号2に対して例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%などの同一性を有するその機能的バリアントであり、好ましくは少なくとも1つのデサチュラーゼは、Cpo_CPRQまたはその機能的バリアントであり、好ましくは少なくとも1つのデサチュラーゼは、Cpo_CPRQまたはその機能的バリアントであり、他のデサチュラーゼは、炭素鎖長12を有する脂肪アシルCoAに少なくとも1つの二重結合を導入できるデサチュラーゼ、例えばZ9-12デサチュラーゼである、核酸構築物。
【0396】
64.項目62または63に記載の核酸構築物であって、少なくとも1つの異種デサチュラーゼは、少なくとも2つのデサチュラーゼであり、他のデサチュラーゼは、Cpo_NPVE(配列番号67)、Cpo_SPTQ(配列番号69)、および配列番号67または配列番号69に対して、少なくとも60%の相同性または同一性、または配列番号67または配列番号69に対して、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の同一性を有する機能的バリアントである、核酸構築物。
【0397】
65.項目62~64のいずれかに記載の核酸構築物であって、第1のポリヌクレオチドは、配列番号1または配列番号78、好ましくは配列番号1、または配列番号1もしくは配列番号78に対して、少なくとも60%の相同性または同一性を有する相同体、配列番号1もしくは配列番号78に対して、好ましくは配列番号1に対して、例えば61%、例えば少なくとも62%、例えば少なくとも63%、例えば少なくとも64%、例えば少なくとも65%、例えば少なくとも66%、例えば少なくとも67%、例えば少なくとも68%、例えば少なくとも69%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも71%、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有する相同体を含む、核酸構築物。
【0398】
66.項目62~65のいずれかに記載の核酸構築物であって、少なくとも1つの異種デサチュラーゼが、少なくとも2つの異種デサチュラーゼであり、第1のポリヌクレオチドが、配列番号66または配列番号68に示されるような核酸、または配列番号66もしくは配列番号68に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその相同体、配列番号66もしくは配列番号68に対して例えば61%、例えば少なくとも62%、例えば少なくとも63%、例えば少なくとも64%、例えば少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、例えば少なくとも74%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有するそれらの相同体をさらに含む、核酸構築物。
【0399】
67.異種デサチュラーゼが、項目1~44のいずれかに記載のものである、項目62~66のいずれかに記載の核酸構築物。
【0400】
68.少なくとも1つのデサチュラーゼが、S85A変異などの、85位に変異を有するCpo_CPRQの変異体である、項目62~67のいずれかに記載の核酸構築物。
【0401】
69.異種脂肪アシルCoAレダクターゼが、項目1~44のいずれかに記載のものである、項目62~68のいずれかに記載の核酸構築物。
【0402】
70.項目62~69のいずれかに記載の核酸構築物であって、第2のポリヌクレオチドが、配列番号9、配列番号60、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号11、配列番号76およびそれらに対して少なくとも60%の相同性または同一性、例えばそれらに対して少なくとも65%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも71%、例えば少なくとも72%、例えば少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の相同性または同一性を有するそれらの相同体を含むまたはそれらからなる、核酸構築物。
【0403】
71.項目62~70のいずれかに記載の核酸構築物であって、さらに
iii)異種シトクロムb5をコードするポリヌクレオチド、例えば配列番号3に示されるポリヌクレオチド、または配列番号3に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその相同体;
iv)異種シトクロムb5レダクターゼをコードするポリヌクレオチド、例えば配列番号23に示されるポリヌクレオチドまたは配列番号23に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその相同体;
v)ヘモグロビンをコードするポリヌクレオチド、例えば配列番号5に示されるポリヌクレオチドまたは配列番号5に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその相同体;
vi)改変ケトンシンターゼドメインを有する脂肪アシルシンターゼバリアントをコードするポリヌクレオチド;および/または
vii)チオエステラーゼをコードするポリヌクレオチド、例えば配列番号25または配列番号34に示されるポリヌクレオチド、または配列番号25もしくは配列番号34に対して少なくとも60%の相同性または同一性を有するその相同体
の1つ以上を含む、核酸構築物。
【0404】
72.項目62~71のいずれかに記載の核酸構築物であって、異種シトクロムb5、異種シトクロムb5レダクターゼ、ヘモグロビン、脂肪アシルシンターゼバリアントおよび/またはチオエステラーゼが、項目1~44のいずれに記載されるとおりである、核酸構築物。
【0405】
73.害虫の存在を監視する、または害虫の交配を妨害する方法であって、
i)項目45~61のいずれかに記載の方法により、E8,E10-ドデカジエン-1-オールおよび任意によりE8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールを産生するステップと;
ii)フェロモン組成物として、E8,E10-ドデカジエン-1-オールおよび任意によりE8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナールを配合するステップと;
iii)総合的病害虫管理組成物としてフェロモン組成物を使用するステップ、
を含む、方法。
【0406】
74.項目45~61のいずれかに記載の方法によって得ることができるE8,E10-ドデカジエニル補酵素A、E8,E10-ドデカジエン-1-オール、E8,E10-ドデカジエニルアセテートおよび/またはE8,E10-ドデカジエナール。
【0407】
75.使用説明書と、
a)項目1~44のいずれかに記載の酵母細胞;および/または
b)酵母細胞および任意により改変される酵母細胞を改変するための、項目62~72のいずれかに記載の核酸構築物、
を含む部品のキットであって、核酸構築物内に含まれるポリヌクレオチドの発現時に、改変された酵母細胞が、E8,E10-ドデカジエニル補酵素Aおよび任意によりE8,E10-ドデカジエン-1-オールを産生できる、キット。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】