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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-24
(54)【発明の名称】二次電池正極材焼成装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/36 20060101AFI20230216BHJP
   F27B 9/02 20060101ALI20230216BHJP
   F27B 9/12 20060101ALI20230216BHJP
   F27B 9/34 20060101ALI20230216BHJP
   F27B 9/36 20060101ALI20230216BHJP
   F27B 9/04 20060101ALI20230216BHJP
   F27D 7/02 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
H01M4/36 Z
F27B9/02
F27B9/12
F27B9/34
F27B9/36
F27B9/04
F27D7/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538290
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(85)【翻訳文提出日】2022-06-20
(86)【国際出願番号】 KR2020017412
(87)【国際公開番号】W WO2021125629
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】10-2019-0171749
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(71)【出願人】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】511038879
【氏名又は名称】ポスコ ケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、 チュンモ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、 キヤン
(72)【発明者】
【氏名】パク、 ユンチョル
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ヨン ウ
(72)【発明者】
【氏名】フワン、 スン チョル
【テーマコード(参考)】
4K050
4K063
5H050
【Fターム(参考)】
4K050AA04
4K050BA16
4K050CA13
4K050CB03
4K050CC09
4K050CC10
4K050CD30
4K050CG04
4K050EA08
4K063AA06
4K063AA15
4K063BA12
4K063CA03
4K063DA13
4K063DA24
4K063DA34
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050GA02
5H050GA29
(57)【要約】
二次電池正極材焼成装置は、順次に連通する昇温空間、温度維持空間、および冷却空間を含む内部空間を含む焼成炉、正極材を収納するサヤを前記昇温空間から前記温度維持空間を経て前記冷却空間に移送する複数のローラー、前記内部空間に沿って配置された複数のヒーター、前記内部空間にガスを供給する複数の給気部、および前記内部空間からガスを排気する複数の排気部を含み、前記温度維持空間の断面積は前記昇温空間の断面積および前記冷却空間の断面積に対比して小さい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次に連通する昇温空間、温度維持空間、および冷却空間を含む内部空間を含む焼成炉;
前記内部空間に沿って配置され、正極材を収納するサヤを前記昇温空間から前記温度維持空間を経て前記冷却空間に移送する複数のローラー;
前記複数のローラーを挟んで前記内部空間に沿って配置された複数のヒーター;
前記内部空間と連結され、前記内部空間にガスを供給する複数の給気部;および
前記内部空間と連結され、前記内部空間からガスを排気する複数の排気部
を含み、
前記温度維持空間の断面積は、前記昇温空間の断面積および前記冷却空間の断面積に対比して小さい、二次電池正極材焼成装置。
【請求項2】
前記温度維持空間を形成する前記焼成炉の第1内壁は、前記昇温空間を形成する前記焼成炉の第2内壁および前記冷却空間を形成する前記焼成炉の第3内壁に対比して前記複数のローラーとさらに近い、請求項1に記載の二次電池正極材焼成装置。
【請求項3】
前記複数のヒーターは、
前記第1内壁内部に位置する第1ヒーター;
前記第2内壁と離隔して前記昇温空間に位置する第2ヒーター;および
前記第3内壁と離隔して前記冷却空間に位置する第3ヒーター
を含む、請求項2に記載の二次電池正極材焼成装置。
【請求項4】
前記第1ヒーターは、前記第2ヒーターおよび前記第3ヒーターに対比して小さな容量を有する、請求項3に記載の二次電池正極材焼成装置。
【請求項5】
前記焼成炉の第2内壁から垂直方向に延長された第1隔壁;および
前記焼成炉の第3内壁から垂直方向に延長された第2隔壁
をさらに含み、
前記第1隔壁の端部および前記第2隔壁の端部は前記第2内壁と水平線上に位置する、請求項2に記載の二次電池正極材焼成装置。
【請求項6】
前記複数の給気部は、
前記昇温空間の下部と連結された第1給気部;
前記温度維持空間の下部と連結された第2給気部;および
前記冷却空間の下部と連結された第3給気部
を含む、請求項1に記載の二次電池正極材焼成装置。
【請求項7】
前記複数の排気部は、
前記昇温空間の上部と連結された第1排気部;および
前記冷却空間の上部と連結された第2排気部
を含む、請求項1に記載の二次電池正極材焼成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、二次電池正極材焼成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、二次電池正極材焼成装置は、正極材を収納したサヤ(sagger)を焼成炉で材料の特性によって400℃~1100℃の温度で焼成する装置である。
【0003】
二次電池正極材焼成装置を用いた焼成工程において、サヤに収納された正極材から水蒸気および二酸化炭素ガスなどが発生し、このうちの二酸化炭素ガスの場合、焼成炉雰囲気調節のために使用される酸素や空気に比べて分子量が大きいため、サヤ外部に放出されにくい。サヤ内部に残る二酸化炭素ガスは、正極材から焼成された正極活物質表面のリチウム酸化物と化学反応を起こして炭酸リチウムを生成させる問題点がある。
【0004】
従来の二次電池正極材焼成装置は、サヤに収納された正極材から発生した水蒸気および二酸化炭素ガスをサヤ外部に放出させると同時に焼成反応のために、サヤが位置する焼成空間の下部、上部、および側面に酸素および空気などのガスを供給する。
【0005】
しかし、従来の二次電池正極材焼成装置は、サヤの外部からサヤの内部にガスが流入するサヤのウィンドウ(window)の断面積が、サヤが位置する焼成空間の断面積に対比して非常に小さくて焼成空間の断面を通過するガスの全体流量中の非常に小さな量のみがサヤの内部に流入する問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一実施形態は、二次電池正極材を収納するサヤ内部に流入するガスの流量を増加させてサヤ内部から二酸化炭素ガス排出を向上させると同時に二次電池正極材の焼成反応を向上させる二次電池正極材焼成装置を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一側面は、順次に連通する昇温空間、温度維持空間、および冷却空間を含む内部空間を含む焼成炉、前記内部空間に沿って配置され、正極材を収納するサヤを前記昇温空間から前記温度維持空間を経て前記冷却空間に移送する複数のローラー、前記複数のローラーを挟んで前記内部空間に沿って配置された複数のヒーター、前記内部空間と連結され、前記内部空間にガスを供給する複数の給気部、および前記内部空間と連結され、前記内部空間からガスを排気する複数の排気部を含み、前記温度維持空間の断面積は前記昇温空間の断面積および前記冷却空間の断面積に対比して小さい二次電池正極材焼成装置を提供する。
【0008】
前記温度維持空間を形成する前記焼成炉の第1内壁は、前記昇温空間を形成する前記焼成炉の第2内壁および前記冷却空間を形成する前記焼成炉の第3内壁に対比して前記複数のローラーとさらに近くてもよい。
【0009】
前記複数のヒーターは、前記第1内壁内部に位置する第1ヒーター、前記第2内壁と離隔して前記昇温空間に位置する第2ヒーター、および前記第3内壁と離隔して前記冷却空間に位置する第3ヒーターを含むことができる。
【0010】
前記第1ヒーターは、前記第2ヒーターおよび前記第3ヒーターに対比して小さな容量を有することができる。
【0011】
前記焼成炉の第2内壁から垂直方向に延長された第1隔壁、および前記焼成炉の第3内壁から垂直方向に延長された第2隔壁をさらに含み、前記第1隔壁の端部および前記第2隔壁の端部は前記第2内壁と水平線上に配置できる。
【0012】
前記複数の給気部は、前記昇温空間の下部と連結された第1給気部、前記温度維持空間の下部と連結された第2給気部、および前記冷却空間の下部と連結された第3給気部を含むことができる。
【0013】
前記複数の排気部は、前記昇温空間の上部と連結された第1排気部、および前記冷却空間の上部と連結された第2排気部を含むことができる。
【発明の効果】
【0014】
一実施形態によれば、二次電池正極材を収納するサヤ内部に流入するガスの流量を増加させてサヤ内部から二酸化炭素ガス排出を向上させると同時に二次電池正極材の焼成反応を向上させる二次電池正極材焼成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態による二次電池正極材焼成装置を示した図である。
図2】対比例断面と実験例断面を示した図である。
図3図2に示された対比例断面と実験例断面の実験結果を示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。本発明は様々の異なる形態に実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0017】
本発明を明確に説明するために説明上不必要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一な参照符号を付けるようにする。
【0018】
また、明細書全体で、ある部分がある構成要素を“含む”という時、これは特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含むことができるのを意味する。
【0019】
以下、図1を参照して一実施形態による二次電池正極材焼成装置を説明する。
【0020】
図1は、一実施形態による二次電池正極材焼成装置を示した図である。
【0021】
図1を参照すれば、一実施形態による二次電池正極材焼成装置は二次電池正極材が収納されたサヤSAを焼成炉100の内部空間110で一方向に移動させながら加熱してサヤSAに収納された二次電池正極材を焼成する。一実施形態において、サヤSAは多層で積層されているが、これに限定されず、単層で配置できる。
【0022】
二次電池正極材焼成装置は、昇温区間A1、温度維持区間A2、冷却区間A3を含む。
【0023】
昇温区間A1は、サヤSAに収納された二次電池正極材の特性によって設定された温度(一例として、400℃~1100℃)に昇温される区間である。
【0024】
温度維持区間A2は、設定された温度を維持する区間である。
【0025】
冷却区間A3は、設定された温度から冷却される区間である。
【0026】
二次電池正極材焼成装置は、昇温区間A1、温度維持区間A2、冷却区間A3を構成する焼成炉100、複数のローラー200、複数のヒーター300、複数の給気部400、複数の排気部500を含む。
【0027】
焼成炉100は、内部空間110、第1内壁120、第2内壁130、第3内壁140、第1隔壁150、第2隔壁160を含む。
【0028】
内部空間110は正極材が収納されたサヤSAが一方向に移動する空間であり、一方向に沿って順次に連通する昇温空間S1、温度維持空間S2、冷却空間S3を含む。
【0029】
昇温空間S1は、昇温区間A1に対応する空間である。昇温空間S1の断面積は温度維持空間S2の断面積に対比して大きい。
【0030】
温度維持空間S2は、昇温空間S1と連通し、温度維持区間A2に対応する空間である。温度維持空間S2の断面積は、昇温空間S1の断面積および冷却空間S3の断面積に対比して小さい。
【0031】
冷却空間S3は、温度維持空間S2と連通し、冷却区間A3に対応する空間である。冷却空間S3の断面積は、温度維持空間S2の断面積に対比して大きい。
【0032】
第1内壁120は、温度維持空間S2を形成する。第1内壁120は、温度維持空間S2を形成する下部壁、上部壁、側壁の内壁である。第1内壁120が形成する温度維持空間S2の第1高さL1は、第2内壁130が形成する昇温空間S1の第2高さL2および第3内壁140が形成する冷却空間S3の第3高さL3に対比して短い。
【0033】
第1内壁120は、第2内壁130および第3内壁140に対比してローラー200とさらに近く位置する。
【0034】
第2内壁130は、昇温空間S1を形成する。第2内壁130は、昇温空間S1を形成する下部壁、上部壁、側壁の内壁である。第2内壁130が形成する昇温空間S1の第2高さL2は、第1内壁120が形成する温度維持空間S2の第1高さL1に対比して長い。
【0035】
第2内壁130は、第1内壁120に対比してローラー200とさらに遠く位置する。
【0036】
第3内壁140は、冷却空間S3を形成する。第3内壁140は、冷却空間S3を形成する下部壁、上部壁、側壁の内壁である。第3内壁140が形成する冷却空間S3の第3高さL3は、第1内壁120が形成する温度維持空間S2の第1高さL1に対比して長い。
【0037】
第3内壁140は、第1内壁120に対比してローラー200とさらに遠く位置する。
【0038】
第1隔壁150は、第2内壁130から垂直方向に延長される。第1隔壁150は昇温空間S1を区画し、第1隔壁150によって区画された空間に沿って温度が上昇できる。
【0039】
第2隔壁160は、第3内壁140から垂直方向に延長される。第2隔壁160は冷却空間S3を区画し、第2隔壁160によって区画された空間に沿って温度が下落できる。
【0040】
第1隔壁150の端部および第2隔壁160の端部は、第2内壁130と仮想の水平線上に配置できる。即ち、第1隔壁150、第2内壁130、第2隔壁160は、同一水平線上に配置できる。
【0041】
複数のローラー200は、焼成炉100の内部空間110に沿って一方向に配置される。複数のローラー200は、正極材を収納するサヤSAを焼成炉100内部の昇温空間S1から温度維持空間S2を経て冷却空間S3に移送する。
【0042】
複数のヒーター300は、複数のローラー200を挟んで内部空間110に沿って一方向に配置された上部ヒーターおよび下部ヒーターを含む。
【0043】
複数のヒーター300は、第1ヒーター310、第2ヒーター320、第3ヒーター330を含む。
【0044】
第1ヒーター310は、温度維持空間S2を挟んで第1内壁120の内部に位置する。第1ヒーター310は第2ヒーター320および第2ヒーター320に対比して小さな容量を有する。
【0045】
第2ヒーター320は、第2内壁130と離隔して昇温空間S1に位置する。
【0046】
第3ヒーター330は、第3内壁140と離隔して冷却空間S3に位置する。
【0047】
複数の給気部400は、内部空間110と連結され、内部空間110にガスGAを供給する。ここで、給気部400が供給するガスGAは空気および酸素ガスを含むことができるが、これに限定されない。
【0048】
複数の給気部400は、第1給気部410、第2給気部420、第3給気部430を含む。
【0049】
第1給気部410は、昇温空間S1の下部と連結されて昇温空間S1にガスGAを供給する。第1給気部410から昇温空間S1に供給されたガスGAは、昇温空間S1、温度維持空間S2、冷却空間S3を選択的に経て第1排気部510または第2排気部520に排気できる。
【0050】
第2給気部420は、温度維持空間S2の下部と連結されて温度維持空間S2にガスGAを供給する。第2給気部420から温度維持空間S2に供給されたガスGAは、昇温空間S1、温度維持空間S2、冷却空間S3を選択的に経て第1排気部510または第2排気部520に排気できる。
【0051】
第3給気部430は、冷却空間S3の下部と連結されて冷却空間S3にガスGAを供給する。第3給気部430から冷却空間S3に供給されたガスGAは、昇温空間S1、温度維持空間S2、冷却空間S3を選択的に経て第1排気部510または第2排気部520に排気できる。
【0052】
複数の排気部500は、内部空間110と連結され、内部空間110からガスGAを排気する。ここで、排気部500が排気するガスGAは給気部400によって供給された空気および酸素ガスに加えてサヤSAから排出された二酸化炭素ガスおよび水蒸気をさらに含むことができるが、これに限定されない。
【0053】
複数の排気部500は、第1排気部510および第2排気部520を含む。
【0054】
第1排気部510は、昇温空間S1の上部と連結されて昇温空間S1からガスGAを排気する。
【0055】
第2排気部520は、冷却空間S3の上部と連結されて冷却空間S3からガスGAを排気する。
【0056】
このように、一実施形態による二次電池正極材焼成装置は、温度維持空間S2の断面積が昇温空間S1の断面積および冷却空間S3の断面積に対比して小さいため、冷却空間S3および昇温空間S1に対比して温度維持空間S2でサヤSAの外部からサヤSAの内部に流入するガスGAの流量が増加することによって、サヤSA内部から二酸化炭素ガス排出を向上させると同時にサヤSAに収納された二次電池正極材の焼成反応を向上させる。
【0057】
本発明の発明者らは、二次電池正極材焼成装置に含まれている昇温区間A1、温度維持区間A2、冷却区間A3のうちのいずれの区間の内部空間110の断面積を減らすのが効果的なのか判断した。サヤSAに収納された正極材の焼成反応を見てみたところ、正極材から発生する二酸化炭素ガス大部分が昇温区間A1で発生し、温度維持区間A2から二酸化炭素ガス発生が顕著に低減することを確認した。これを考慮して、一実施形態による二次電池正極材焼成装置は、サヤSA内部から二酸化炭素ガス排出を向上させるために、温度維持区間A2に対応する温度維持空間S2の断面積が昇温空間S1の断面積および冷却空間S3の断面積に対比して小さい。
【0058】
また、本発明の発明者らは、温度維持空間S2の断面積が昇温空間S1の断面積および冷却空間S3の断面積に対比して小さいために焼成炉100の第1内壁120を第1隔壁150および第2隔壁160と同一水平線上に配置させれば、第1ヒーター310が焼成炉100の温度維持空間S2に位置しないようになって温度維持空間S2の温度保持が容易でないこともあると判断した。これに対し、量産焼成炉運転中の実際上下部ヒーターの発熱量を確認したところ、実際量産焼成工程で設定された温度条件に到達して正常的に温度を維持している場合、隔壁のない温度維持区間ではヒーターがほとんど作動しなくても内部温度が維持されることを確認した。これを根拠にして、一実施形態による二次電池正極材焼成装置は、温度維持空間S2の断面積が昇温空間S1の断面積および冷却空間S3の断面積に対比して小さくても、温度維持空間S2を形成する第1内壁120の内部に容量が小さな第1ヒーター310が位置して温度維持空間S2の温度維持が可能である。
【0059】
即ち、一実施形態による二次電池正極材焼成装置は、第2ヒーター320および第3ヒーター330に対比して容量が小さい第1ヒーター310が第1内壁120の内部に位置することによって、温度維持空間S2の断面積を最大に減らして温度維持空間S2でサヤSAの内部に流入するガスの流量を最大に増加させることができる。
【0060】
以下、図2および図3を参照して、一実施形態による二次電池正極材焼成装置の効果を確認した実験を説明する。
【0061】
図2は、対比例断面と実験例断面を示した図である。図2の(A)は対比例断面を示し、(B)は実験例断面を示す。
【0062】
図2の(A)に示された対比例断面CS1は、昇温空間および冷却空間の断面積と同一な断面積を有する温度維持空間の断面を示す。
【0063】
図2の(B)に示された実験例断面CS2は、昇温空間および冷却空間の断面積に対比して小さな断面積を有する温度維持空間の断面を示す。実験例断面は、温度維持空間を形成する第1内壁が第1隔壁の端部および第2隔壁の端部と同一水平線上に位置する場合の温度維持空間の断面を示すことができる。
【0064】
図2を参照すれば、熱流動電算解釈を通じて対比例断面CS1および実験例断面CS2に同一な流量のガスGAが流入する場合を計算し、サヤSA側面のウィンドウWIの断面を通過するガス流量の比率を比較した。また、このような流入ガス流量の差によってサヤSAに収納された正極材の焼成反応進行に影響を与える排出ガス(CO)の濃度も比較した。
【0065】
図3は、図2に示された対比例断面と実験例断面の実験結果を示す表である。
【0066】
図3を参照すれば、流動解釈結果、対比例断面ではサヤの側面ウィンドウの面積が全体面積の4.25%に過ぎず、総供給流量に対比してサヤに流入する流量はそれより小さい3.2%である。
【0067】
実験例断面では、サヤの側面ウィンドウの面積が全体面積の18.9%まで増加しながら総供給流量に対比してサヤに流入する流量も16.6%まで増加する。
【0068】
その結果、サヤ内部の焼成反応進行に影響を与える排出ガス(CO)の分圧も比較例に対比して実験例が半分以下に落ちるようになるのを確認した。この結果は、同一供給流量の場合、実験例断面のように断面積を減らす場合、サヤ内部流入流量が増加し、排出ガスの濃度が低まるようになってサヤに収納された正極材の焼成反応が向上するのを確認することができる。
【0069】
以上のように、二次電池正極材を収納するサヤ内部に流入するガスの流量を増加させてサヤ内部から二酸化炭素ガス排出を向上させると同時にサヤに収納された二次電池正極材の焼成反応を向上させる二次電池正極材焼成装置が提供される。
【0070】
また、同一給気流量で焼成反応条件が改善されることによって、正極材装入量を増加させるか(生産量増加)、同一正極材装入量に対してさらに少ない給気流量でも同一な焼成反応を進行させることができて(運転費用削減)、結局、正極材生産単価を下げる二次電池正極材焼成装置が提供される。
【0071】
以上により、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるのではなく、次の請求範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属するのである。
【符号の説明】
【0072】
S1 昇温空間
S2 温度維持空間
S3 冷却空間
100 焼成炉
200 ローラー
300 ヒーター
400 給気部
500 排気部
図1
図2(A)】
図2(B)】
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次に連通する昇温空間、温度維持空間、および冷却空間を含む内部空間を含む焼成炉;
前記内部空間に沿って配置され、正極材を収納するサヤを前記昇温空間から前記温度維持空間を経て前記冷却空間に移送する複数のローラー;
前記複数のローラーを挟んで前記内部空間に沿って配置された複数のヒーター;
前記内部空間と連結され、前記内部空間にガスを供給する複数の給気部;および
前記内部空間と連結され、前記内部空間からガスを排気する複数の排気部
を含み、
前記温度維持空間の断面積は、前記昇温空間の断面積および前記冷却空間の断面積に対比して小さい、二次電池正極材焼成装置。
【請求項2】
前記温度維持空間を形成する前記焼成炉の第1内壁は、前記昇温空間を形成する前記焼成炉の第2内壁および前記冷却空間を形成する前記焼成炉の第3内壁に対比して前記複数のローラーとさらに近い、請求項1に記載の二次電池正極材焼成装置。
【請求項3】
前記複数のヒーターは、
前記第1内壁内部に位置する第1ヒーター;
前記第2内壁と離隔して前記昇温空間に位置する第2ヒーター;および
前記第3内壁と離隔して前記冷却空間に位置する第3ヒーター
を含む、請求項2に記載の二次電池正極材焼成装置。
【請求項4】
前記第1ヒーターは、前記第2ヒーターおよび前記第3ヒーターに対比して小さな容量を有する、請求項3に記載の二次電池正極材焼成装置。
【請求項5】
前記焼成炉の第2内壁から垂直方向に延長された第1隔壁;および
前記焼成炉の第3内壁から垂直方向に延長された第2隔壁
をさらに含み、
前記第1隔壁の端部および前記第2隔壁の端部は前記第2内壁と水平線上に位置する、請求項2~4のいずれか一項に記載の二次電池正極材焼成装置。
【請求項6】
前記複数の給気部は、
前記昇温空間の下部と連結された第1給気部;
前記温度維持空間の下部と連結された第2給気部;および
前記冷却空間の下部と連結された第3給気部
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の二次電池正極材焼成装置。
【請求項7】
前記複数の排気部は、
前記昇温空間の上部と連結された第1排気部;および
前記冷却空間の上部と連結された第2排気部
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の二次電池正極材焼成装置。
【国際調査報告】