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特表2023-507707電極材料、その製造方法およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-27
(54)【発明の名称】電極材料、その製造方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/047 20210101AFI20230217BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20230217BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
C25B11/047
H01M4/86 T
H01M4/88 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522291
(86)(22)【出願日】2020-10-07
(85)【翻訳文提出日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2020078132
(87)【国際公開番号】W WO2021083624
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】102019129070.8
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522140563
【氏名又は名称】フォルシュンクスツェントラム ユーリッヒ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォワ,ゼーフェリン
(72)【発明者】
【氏名】デ ハールト,エル.ジー.ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ビブー,ヴァイバーフ
(72)【発明者】
【氏名】アイヒェル,リュディガー-エー.
【テーマコード(参考)】
4K011
5H018
【Fターム(参考)】
4K011AA02
4K011AA18
4K011DA01
5H018AA01
5H018BB01
5H018BB06
5H018BB11
5H018BB12
5H018EE13
5H018HH01
5H018HH05
5H018HH08
5H018HH10
(57)【要約】
本願は、式(1)
Ni1-xCo4+δ (1)
および/または式(2)
La1-yNi1-xCo4+δ (2)
(式中、MはPrおよび/またはNdを表し、0.0≦x≦0.2、0.25≦δ≦0.3および0<y≦0.5である)で表される化合物を含むか、式(1)および/または式(2)で表される化合物からなる、電極用材料に関する。また、本発明は、その材料を製造するための方法と、その材料の電極としての使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
Ni1-xCo4+δ (1)
および/または式(2)
La1-yNi1-xCo4+δ (2)
(式中、MはPrおよび/またはNdを表し、0.0≦x≦0.2、0.25≦δ≦0.3および0<y≦0.5である)で表される化合物を含むか、式(1)および/または式(2)で表される化合物からなる、電極用材料。
【請求項2】
xは、値が0.0、0、1または0.2である、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
δは、値が0.25、0.28または0.3である、請求項1または2に記載の材料。
【請求項4】
PrNiO4+δ、PrNi0,9Co0,14+δ、PrNi0,8Co0,24+δ、NdNiO4+δ、NdNi0,9Co0,14+δ、NdNi0,8Co0,24+δおよびLa1,5Pr0,5Ni1-xCo4+δ(式中、xおよびδは、請求項1~3で定義した通りである)から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の材料。
【請求項5】
ペロブスカイト構造を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の材料。
【請求項6】
層状ペロブスカイト構造を有する、請求項5に記載の材料。
【請求項7】
平均粒度が0.5μm~1μm、例えば0.8μm~0.9μmまたは0.5μm~0.6μmである、請求項1~6のいずれか1項に記載の材料。
【請求項8】
式(3)
LaNi0,6Fe0,43-δ (3)
(式中、0<δ≦0.05である)で表される化合物をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の材料。
【請求項9】
電極用材料、特に請求項1~8のいずれか1項に記載の電極用材料を製造するための方法であって、
(a)式(1)または(2)で表される前記所望の化合物に対応する、前記元素Pr、Nd、Ni、Co、Laの前記酸化物を混合する工程と、
(b)工程(a)で得られた前記混合物を乾燥させる工程と、
(c)1000℃~1400℃の温度で、空気中にて4時間~20時間、前記混合物をアニールする工程と、を含む、方法。
【請求項10】
工程(a)における前記酸化物の前記混合は、ボールミルを使用して、液体の存在下、2~6時間、例えば3~5時間、例えば4時間行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)における前記乾燥は、18℃~100℃、例えば70℃~90℃、例えば80℃で、8時間~24時間、例えば10時間~14時間、例えば12時間行われる、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
工程(c)における前記アニールは、約1300℃の温度で約12時間行われる、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程(c)の後、平均粒度を、0.5μm~1μm、例えば0.8μm~0.9μmまたは0.5μm~0.6μm、特に1μmに調整する、請求項9から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか1項に記載の材料の、電極材料としての使用。
【請求項15】
前記電極は、燃料電池または電気分解、特に高温電気分解用の空気電極または酸素電極である、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極材料、電極材料の製造方法ならびに、燃料電池用や電気分解用、特に高温電気分解用の、空気電極または酸素電極としての電極材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
電気分解は、電流によって強制的に酸化還元反応を引き起こすプロセスであり、例えば、純粋な化学的プロセスでは取得が極めて困難であるか、より高価な物質を製造したり、金属を抽出したりするのに用いられる。重要なタイプの電気分解の例として、水素、アルミニウム、塩素、苛性ソーダなどの生成があげられる。
【0003】
電気分解には、電気エネルギーを供給して化学反応を促進する直流電圧源が必要である。電気エネルギーの一部は、化学エネルギーに変換される。電池、蓄電池、燃料電池は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換するという全く逆の目的を担っており、電圧源として機能する。このため、例えば、エネルギーキャリアとして提案されてきた水素と酸素が得られる水の電気分解では、電気分解を利用してエネルギーを蓄積することができる。燃料電池では、水の電気分解を逆転させることで、もともと使用された電気エネルギーの約40%を回収することができる。
【0004】
水の電気分解には、固体電解質上でのいわゆる高温(水蒸気)電気分解(700~1000℃)も利用されている。固体電解質としては、通常、イットリウム安定化二酸化ジルコニウム(YSZ)が用いられる。あるいは、ScもしくはCaをドープしたZrO GdまたはSmをドープしたCeO、ペロブスカイト構造を有する電解質(例えば、Srおよび/またはMgをドープしたLaGaOをベースにしたものなど)を用いることも可能である。動作温度が高くなることで、サーモニュートラルな動作点での必要電圧を1.30Vまで下げることができ、電流密度は0.4A/cmである。さらに、効率も改善される。
【0005】
国際特許出願公開WO2008/061782号には、いわゆる空気電極が一般論で説明されている。この先行技術は、少なくとも多孔質層と、電解質層と、多孔質正極層と、を含み、アノード層とカソード層に、電解質材料と、少なくとも1種の金属と、触媒材料と、を有する、薄型で本質的に無支持の固体酸化物セルに関するものであり、この薄い可逆的セルは総厚が約150μm以下である。
【0006】
空気電極用のペロブスカイトも、例えば、米国特許第7,803,348号から知られている。この文書には、アルカリ電解質燃料電池のカソードにおいて、触媒の存在下で酸素が還元されることが記載されている。式Sr3-x1+xCo4-y10,5-z(式中、x、yおよびzの値は定義された範囲内であり、Aは、Eu、Gd、Tb、Dy、HoまたはYを表し、Bは、Fe、Ga、Cu、Ni、MnおよびCrを表す)で表される触媒は、アルカリ燃料電池における酸素還元触媒として用いられると、高い触媒活性および高い化学安定性を示す。
【0007】
さらに、先行技術では、ニッケレートも知られている。例えば、国際特許出願公開WO2017/214152号には、アノードと、電解質と、カソードバリア層と、カソードバリア層によって電解質から分離されたニッケレート複合カソードとを備え、カソード集電層が設けられている、固体酸化物形燃料電池が記載されている。ニッケレート複合カソードは、ニッケレート化合物と、イオン伝導体であってもよい第2の酸化物材料とを含む。この複合体には、さらに、第3の酸化物材料が含まれていてもよい。この複合材料を、一般式(LnMlM2n+1(Ni1-t3n+1-A1-xCe(1-w-z)2-δ(式中、AおよびBはセリウム以外の希土類金属であってもよい)で表すことができる。
【0008】
最後に、固体酸化物燃料電池に使用されるランタンコバルトニッケレートが、米国特許出願公開第2012/0064433号から知られている。この先行技術には、ペロブスカイト様の結晶構造を有するランタン金属酸化物と、セリア金属と、を含む固体酸化物燃料電池用の材料が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、先行技術に基づいて、電極、特に高温電気分解用の空気電極のための材料と、その製造方法とを提供することにあり、先行技術から公知の電極と比較して、性能および耐用寿命の点で電極が改善される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、上述した課題は、請求項1に記載の材料、請求項9に記載の方法、請求項14に記載の使用によって解決される。従属請求項には、本発明の別の有利なを見出すことができる。
【0011】
本発明は、式(1)
Ni1-xCo4+δ (1)
および/または式(2)
La1-yNi1-xCo4+δ (2)
(式中、MはPrおよび/またはNdを表し、0.0≦x≦0.2、0.25≦δ≦0.3および0<y≦0.5、特に0.5である)で表される化合物を含むか、式(1)および/または式(2)で表される化合物からなる、電極用材料に関する。
【0012】
このような材料を電極、例えば高温電気分解用の空気電極に使用すると、驚くべきことに、電極の性能と耐用寿命が向上することが見いだされた。この分野では、「空気電極」という用語は一般的であり、特に、高温電気分解の際に酸素の反応が起こる電極を空気電極という。高温電気分解の原理は、当業者に知られている。これらについては、上述した。本発明による材料は、こうしたそれ自体が公知である高温電気分解プロセスおよび装置で使用することができ、その結果、上記の利点が達成される。
【0013】
一実施形態では、xは、値が0.0、0.1または0.2である。別の実施形態では、δは、値が0.25、0.28または0.3である。本発明による材料でxおよびδがこれらの値である場合、耐用寿命が特に長い、特に改良された電極が得られる。
【0014】
一実施形態では、この材料は、PrNiO4+δ、PrNi0,9Co0,14+δ、PrNi0,8Co0,24+δ、NdNiO4+δ、NdNi0,9Co0,14+δ、NdNi0,8Co0,24+δおよびLa1,5Pr0,5Ni1-xCo4+δ(式中、xおよびδは、先に定義した通りである)から選択される。これらの材料は、性能と耐用寿命が良好であるため、特に高温電気分解用の電極として適している。
【0015】
一実施形態では、この材料は、ペロブスカイト構造、特に層状ペロブスカイト構造を有する。この構造は、性能の改善と耐用寿命の点で特に有利であることが証明されている。このようなペロブスカイト構造を有する材料は、後述する本発明の方法によって得ることができる。
【0016】
一実施形態では、電極用材料は、平均粒度が0.5μm~1μm、例えば0.8μm~0.9μmまたは0.5μm~0.6μmである。平均粒度については、粒度分布や走査型電子顕微鏡(SEM)によって決定することができる。このような平均粒度を用いて、特に好ましい電極材料が提供される。
【0017】
本発明による材料は、どのような形態でも電極用として使用することができる。例えば、層の形態で存在してもよい。特に、電極用の本発明による材料が層の形態で存在するとき、式(3)
LaNi0,6Fe0,43-δ (3)
(式中、0<δ≦0.05である)
で表される化合物をさらに含むことができる。この式(3)で表される化合物を、本発明による材料の上に層として適用することができる。
【0018】
式(3)で表される化合物を用いると、集電が改善される。
また、本発明は、電極用材料、特に上述したような電極用材料を製造するための方法であって、
(a)式(1)または(2)で表される所望の化合物に対応する、元素Pr、Nd、Ni、Co、Laの酸化物を混合する工程と、
(b)工程(a)で得られた混合物を乾燥させる工程と、
(c)1000℃~1400℃の温度で、空気中にて4時間~20時間、上記の混合物をアニールする工程と、を含む、方法に関する。
【0019】
工程(a)で使用する酸化物の例としては、Pr11またはNd、La、NiOおよびCoがあげられる。そこに含まれる水分をほぼ除去するために、これらを乾燥させることが可能である。この乾燥は、例えば、約900℃の温度で、8時間~24時間、特に12時間~16時間行うことができる。使用する酸化物を、別々に乾燥させてもよい。その後、式(1)および(2)で表される所望の化合物に対応する適切な化学量論比で、酸化物同士を混合することができる。これは、固体を通常混合するような方法で、例えばボールミル、特にジルコニアのボールを用いて、既知の方法で行うことができる。ボールミルの回転数は、100~250回転/分、例えば約250回転/分とすることができる。これを、2時間~6時間、特に約4時間行うことができる。さらに、混合を液体の存在下で行ってもよい。この液体が出発物質を懸濁させる液相として機能してもよく、例えば、イソプロパノール、エタノールおよび/またはトルエンなどの有機液相があげられる。
【0020】
乾燥工程(b)は、含まれる液体を除去するために行われる。一実施形態では、工程(b)における乾燥を、18℃~100℃、例えば70℃~90℃、例えば80℃で、8時間~24時間、例えば10時間~14時間、例えば12時間行うことができる。
【0021】
一実施形態では、工程(c)のアニールを、1100℃~1300℃、例えば約1300℃の温度で、約6時間~16時間、例えば約12時間行うことができる。
【0022】
一実施形態では、工程(c)の後、平均粒度を、0.5μm~1μm、例えば0.8μm~0.9μmまたは0.5μm~0.6μm、例えば約1μmに調整することが可能である。平均粒度については、粒度分布や走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて決定することができる。これらの粒度は、従来の固体細分化方法、例えば粉砕方法、特にボールミルを用いる粉砕方法によって得られる。ボールミルには、ジルコニアボールを使用してもよい。粉砕を液体の存在下で行ってもよい。この液体が材料を懸濁させる液相として機能してもよく、例えば、イソプロパノール、エタノールおよび/またはトルエンなどの有機液相があげられる。粉砕は、4時間~12時間、例えば6時間~10時間、例えば8時間行うことができる。粉砕温度については、室温から60℃までとすることができる。
【0023】
得られた粉末を液体およびバインダーと一緒に処理し、ペーストを作ることができる。これらのペーストを、スクリーン印刷、フィルムキャスティング、スプレーなどの手法によってハーフセルに塗布することができる。ハーフセル自体は公知であり、市販されている。これには、電解質層が塗布された電極を必要とする。本発明の電極用材料のペーストを、電解質層の、すでに存在する電極とは反対側の面に塗布することが可能である。
【0024】
その後、例えば1100℃~1200℃、例えば1150℃で、例えば0.5時間~2時間、例えば1時間、空気中で別の焼結工程を実施することができる。
【0025】
一実施形態では、LeNi0-6Fe0,43-δ(式中、0≦δ≦0.05である)の層を、特に本発明による材料の層に適用することができる。これにより、集電を改善することができる。
【0026】
本発明は、上述したような本発明による材料を、燃料電池用および電気分解用、特に高温電気分解用の電極材料として、空気電極または酸素電極として、使用することにも関する。
【0027】
以下、本発明の大枠の概念を限定することなく、以下の記載に基づいて本発明を一層詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、PNO電極、PNCO10電極、PNCO20電極を用いた単セルの800℃と900℃における電圧/電圧密度曲線を示す。
図2図2は、50%H+50%HOの気体混合物で800℃、電流密度-1A.cm-2における単セルPNO、PNCO10、PNCO20の抵抗値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施例:
電極材料の製造と電気化学的特性
材料の製造と特性評価
各系列の3つの組成、すなわちPrNi1-xCo4+δ(PNCO)、NdNi1-xCo4+δ(NNCO)およびLa1,5Pr0,5Ni1-xCo4+δ(LPNCO)、(x=0.0、0.1および0.2)を、固相合成法により製造した。コバルトの含有量がこれより多い場合については、層構造が不安定になるため考慮しなかった。対応する前駆体は、Pr11(Aldrichchem、99.9%)、La(Aldrichchem、99.9%)、Nd(Alfa Aesar、99%)、NiO(Alfa Aesar、99%)およびCo(Alfa Aesar、99%)であった。Pr11、NdおよびLaの粉末は吸湿性が高いため、水分を除去するために、第1の工程で、T=900℃にて一晩、これらの粉末の予備焼成を行った。前駆体をニッケレートの組成に応じて秤量し、ジルコニアボールとイソプロパノール(VWR社製、99.8%)を用いて、250rpmにて4時間、ボール粉砕した。80℃で一晩乾燥させた後、1300℃で空気中にて12時間アニールを行い、純相を得た。焼結温度が低いと、XRDで不純物が検出された。1300℃/12時間の焼結条件では、十分に結晶化した純相が得られる。得られた粉末を、平均粒度約1μmを目標に(粒度分布とSEMで確認済み)二酸化ジルコニウムボールとイソプロパノールを用いて8時間かけて再び細分化し、粉砕した。
【0030】
ヨード滴定とTGA実験により、室温で空気中にてδ値を決定した。まず、粉末を1000℃まで上げた空気中で平衡化した後、低速(2℃.分-1)で室温まで冷却し、このサイクルを2回繰り返すことで、材料の安定した状態すなわち再現性のある酸素含有量になるようにした。その後、材料の分解が、試料を室温まで循環させた後の酸素定数の決定につながるようにして(組成に応じて、La、Nd、Pr、Pr、金属NiおよびCo)、Ar-5%Hを流しながら、極めて遅い加熱速度で(0.5℃.分-1)2サイクル目を実施した。すべてのシリーズで、コバルト置換時にδ値の増加が観察された。例えば、PrNiO4+δ(PNO)、PrNi0,9Co0,14+δ(PNCO10)、PrNi0,8Co0,24+δ(PNCO20)で得られるδ値は、それぞれ、0.25、0.28、0.30である。
【0031】
酸素電極としての電気化学的性能と耐久性
NiO-YSZ担持セル(NiO YSZ///YSZ//GDC//電極、CeramTec(登録商標)、ASC-10Cタイプ)を使用して、電気化学的特性評価を実施した。スクリーン印刷法を使用して酸素電極すなわちアノード層(ニッケレート)を成膜し、1150℃で空気中にて1時間かけて焼結させた。制御された均質な多孔質電極の微細構造を得るために、焼結温度(1150℃)をPNCOシリーズに合わせて最適化した。測定には、酸素電極および燃料電極用の集電体として金およびニッケルのグリッド(1,024cm-2メッシュ)を使用した。温度範囲700~900℃で、50%HOと50%Hの気体混合物を使用して、OCVから1.5Vまでの電気分解モードでi-V特性を測定した。周波数応答分析モジュールを内蔵したIVIUM VERTEXポテンショスタット/ガルバノスタットを使用して、106Hzから10-1Hzまで、AC振幅50mVでポテンショスタット制御した状態で、OCVと、0.1Vの増加で1.0から1.5Vまで、インピーダンスプロットを記録した。
【0032】
コバルト置換によってセルの性能が改善されることが観察された。900℃、1.5Vの印加電圧で得られるセルの電流密度は、PNO、PNCO10、PNCO20単セルで2.11、2.41、3.0A.cm-2であり、800℃ではPNO、PNCO10、PNCO20単セルの電流密度が1.6、1.8、1.9A.cm-2である(図1)。
【0033】
単セルを含むニッケレート電極を用いて、800℃、高電流密度すなわち-1.0A.cm-2、最大250時間、50%HOおよび50%Hを用いるSOEC条件下で、耐久性実験を行った(図2)。耐久性試験中の3つのセルの挙動はすべて異なり、最初は急激な上昇を示す。PNOセルでは、250時間まで連続的な上昇がみられるが、70~80時間以降は上昇率が低くなる。電気分解電圧はPNOで250時間後に1.38Vから1.43Vに上昇し、全体の中で最も劣化が大きかった。電圧対時間曲線で線形調節を行うことにより劣化率を(mV.kh-1で)推定したところ、PNOセルでは約88mV.kh-1であった。しかしながら、他の2つのセルでは劣化率が低く、PNCO10の単セルでは約40mV.kh-1、PNCO20の単セルで約22mV.kh-1である。注目すべきは、PNCO20単セルが、電気分解条件下で250時間後に最も劣化が低いことである。
【0034】
もちろん、本発明は、図示の実施形態に限定されるものではない。従って、上記の説明は限定的なものではなく説明のためのものであると解される。以下の特許請求の範囲は、言及された特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に存在することを意味すると理解されるものである。このことは、さらに別の特徴の存在を否定するものではない。
図1
図2
【国際調査報告】