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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-27
(54)【発明の名称】作動工具
(51)【国際特許分類】
   B25C 1/06 20060101AFI20230217BHJP
【FI】
B25C1/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535971
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(85)【翻訳文提出日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2020085536
(87)【国際公開番号】W WO2021122313
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】19218886.0
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, LIECHTENSTEIN
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】チャフィック アブ アントゥン
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン シュミット
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト ビンダー
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル グート
【テーマコード(参考)】
3C068
【Fターム(参考)】
3C068AA01
3C068BB01
3C068CC08
3C068HH05
(57)【要約】
本発明は、下地表面を加工するための作動工具、特に手持ち式作動工具、特に、下地表面に固定要素を打ち込むための取付工具であって、ステータと、作動軸に沿ってステータに対して移動し下地表面に又は固定要素を下地表面に打ち込むために固定要素に当たるように構成された作動ピストンとを有し、更に、作動ピストンを作動軸に沿って下地表面へと駆動するように設計された駆動部を有する作動工具に関する。駆動部は、作動ピストン上に配置されたピストンコイルコンデンサ及びピストンコイルを有し、ピストンコイルは、ピストンコイルコンデンサの急速放電の際にピストンコイルに電流が流れ、作動ピストンをステータに対して加速させ、特にステータを押しのける磁場が発生するように、ピストンコイルコンデンサに電気的に接続され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を加工するための工具、特に手持ち式工具、特に、前記基材に留め具を打ち込むための取付工具であって、ステータと、作動軸に沿って前記ステータに対して及び前記基材に向かって移動するか又は前記留め具を前記基材に打ち込むために前記留め具に衝突する作動ピストンとを有し、また、前記作動ピストンを前記作動軸に沿って前記基材へと駆動する駆動部を有し、前記駆動部は、前記作動ピストン上に配置されたピストンコイルコンデンサとピストンコイルとを有し、前記ピストンコイルは、前記ピストンコイルコンデンサの急速放電中に、前記ピストンコイルに電流を流し、前記作動ピストンを前記ステータに対して加速させる、特に、前記ステータに反発する磁場を発生させるために、前記ピストンコイルコンデンサに電気的に接続可能である、工具。
【請求項2】
前記駆動部は、前記ステータ上に配置されたステータコイルコンデンサとステータコイルとを有し、前記ステータコイルは、前記ステータコイルコンデンサの急速放電中に、前記ステータコイルに電流を流し、前記作動ピストンを前記ステータに対して加速させる、特に、前記作動ピストンに反発する磁場を発生させるために、前記ステータコイルコンデンサに電気的に接続可能である、請求項1に記載の工具。
【請求項3】
前記ピストンコイルはピストンコイル軸を有し、前記ステータコイルは、前記ピストンコイル軸に対して平行に方向付けられた、特に、前記ピストンコイル軸に一致するステータコイル軸を有する、請求項2に記載の工具。
【請求項4】
電流は、前記ピストンコイルコンデンサ及び前記ステータコイルコンデンサの前記急速放電中に反対の磁場を発生させるために、前記ピストンコイルと前記ステータコイルに反対方向に流れる、請求項3に記載の工具。
【請求項5】
前記ピストンコイルコンデンサと前記ステータコイルコンデンサは同一のものである、請求項2~4のいずれか一項に記載の工具。
【請求項6】
前記ピストンコイルと前記ステータコイルは、互いに直列に電気的に接続されている、請求項5に記載の工具。
【請求項7】
前記ステータは2つの電気ステータ接点を有し、前記作動ピストンは、前記ピストンコイルを前記ピストンコイルコンデンサに電気的に接続するために前記電気ステータ接点のうちの1つの上でそれぞれ摺動する2つの電気ピストン接点を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の工具。
【請求項8】
前記電気ステータ接点はいずれの場合においてもコンタクトレールを有し、前記電気ピストン接点はいずれの場合においてもコンタクトブラシ又はスリップリングを有し、この逆もまた然りである、請求項7に記載の工具。
【請求項9】
前記電気ステータ接点及び/又は前記電気ピストン接点は、前記作動軸を基準にして、前記ステータコイル及び/又は前記ピストンコイルの半径方向内側に配置されている、請求項7又は8に記載の工具。
【請求項10】
前記ステータは軟磁性材料のステータフレームを有し、前記ステータフレームは、前記ステータコイルを取り囲み、前記作動軸に対して周方向に延びる、請求項1~9のいずれか一項に記載の工具。
【請求項11】
前記作動ピストンは軟磁性材料のピストンフレームを有し、前記ピストンフレームは、前記ピストンコイルを取り囲み、前記作動軸に対して周方向に延びる、請求項1~10のいずれか一項に記載の工具。
【請求項12】
留め具を受け入れる器具を有し、前記作動ピストンは、前記器具に入れられた留め具を前記作動軸に沿って前記基材に移動させる、請求項1~11のいずれか一項に記載の工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、基材(被打ち込み材)に留め具を打ち込むための取付工具などの作動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
このような工具は、多くの場合、作動軸に沿って移動する作動ピストンを有する。作動ピストンは駆動部によって駆動され、駆動部は作動ピストンを加速させる。特許文献1は、電気コンデンサと、作動ピストンに配置されたかご形ロータと、コンデンサの急速放電中に電流が流れ、作動ピストンを加速させる磁場を生成する励起コイルとを有する駆動部を記述している。
【0003】
取付工具は、通常、留め具のための収容器具を有し、その器具内に入れられた留め具は、器具から作動軸に沿って基材に移動される。それに対し、動作要素は、駆動部により作動軸に沿って留め具に向けて駆動される。特許文献2は、電気コンデンサ及びコイルを有する駆動部を備えた取付工具を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/104406号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6,830,173号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高効率及び/又は良好な取付品質が保証される上記の種類の取付工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、好ましくは基材を加工するための手持ち式工具であって、ステータと、作動軸に沿ってステータに対して移動し、留め具を基材に打ち込むために留め具に衝突する作動ピストンとを有し、また、作動ピストンを作動軸に沿って基材へと駆動する駆動部を有し、駆動部は、作動ピストン上に配置されたピストンコイルコンデンサとピストンコイルとを有し、ピストンコイルは、ピストンコイルコンデンサの急速放電中に、ピストンコイルに電流を流し、作動ピストンをステータに対して加速させる磁場を発生させるために、ピストンコイルコンデンサに電気的に接続可能である、手持ち式工具において達成される。磁場は、好ましくはステータに反発する。本発明の有利な態様では、駆動部がスイッチング回路を含み、スイッチング回路によって、急速放電がトリガーされる及び/又はピストンコイルがピストンコイルコンデンサに電気的に接続されることを特徴とする。
【0007】
本発明に於いて、コンデンサは、電荷及び付随するエネルギーを電場に蓄積する電気部品を意味するものと理解されたい。特に、コンデンサは、2つの導電性電極を有し、電極が異なるように帯電された場合、それらの間に電場が生じる。本発明に関連して、固定要素は、例えば釘、ピン、クランプ、クリップ、鋲、特にねじ付きスタッド等を意味するものと理解されたい。
【0008】
本発明の有利な態様では、駆動部は、ステータ上に配置されたステータコイルコンデンサとステータコイルとを有し、ステータコイルは、ステータコイルコンデンサの急速放電中に、ステータコイルに電流を流し、作動ピストンをステータに対して加速させる、好ましくは、作動ピストンに反発する磁場を発生させるために、ステータコイルコンデンサに電気的に接続可能であることを特徴とする。ピストンコイルは好ましくはピストンコイル軸を有し、ステータコイルはステータコイル軸を有し、ピストンコイル軸とステータコイルは互いに平行に方向付けられており、好ましくは一致している。電流は、ピストンコイルコンデンサ及びステータコイルコンデンサの急速放電中に反対の磁場を発生させるために、ピストンコイルとステータコイルに反対方向に流れることが特に好ましい。同様に好ましくは、ピストンコイルコンデンサとステータコイルコンデンサは同一のものであり、ピストンコイルとステータコイルは特に好ましくは互いに直列に電気的に接続されている。
【0009】
有利な態様では、ステータは2つの電気ステータ接点を有し、作動ピストンは、ピストンコイルをピストンコイルコンデンサに電気的に接続するために電気ステータ接点のうちの1つの上でそれぞれ摺動する2つの電気ピストン接点を有することを特徴とする。好ましくは、電気ステータ接点は、いずれの場合においてもコンタクトレールを有し、電気ピストン接点は、いずれの場合においてもコンタクトブラシ又はスリップリングを有し、この逆もまた然りである、すなわち、電気ピストン接点はいずれの場合においてもコンタクトレールを有し、電気ステータ接点は、いずれの場合においてもコンタクトブラシ又はスリップリングを有する。電気ステータ接点及び/又は電気ピストン接点は、作動軸を基準にして、好ましくは、ステータコイル及び/又はピストンコイルの半径方向内側に配置されている。
【0010】
有利な態様では、ステータは軟磁性材料のステータフレームを有し、ステータフレームは、ステータコイルを取り囲み、作動軸に対して周方向に延びることを特徴とする。更に有利な態様では、作動ピストンは軟磁性材料のピストンフレームを有し、ピストンフレームは、ピストンコイルを取り囲み、作動軸に対して周方向に延びることを特徴とする。好ましくは、ステータフレーム及び/又はピストンフレームは、金属又は合金からなる。特に好ましくは、ステータフレーム及び/又はピストンフレームは、鋼、例えば、鉄含有量が少なくとも95%及び/又はシリコン含有量が1%~3%の鋼からなる。
【0011】
本発明に於いて、軟磁性材料は、高い磁気飽和磁束密度、特に、小さい保磁力を有し、したがって、材料を貫通する磁場を強化する材料を意味するものと理解されたい。特に、ステータフレーム及び/又はピストンフレームの軟磁性材料の飽和磁束密度は、少なくとも1.0T、好ましくは少なくとも1.3T、特に好ましくは少なくとも1.5Tである。本発明に関連して、導電材料は、高い比導電率を有するため、材料を通過する磁場が材料中で渦電流を生成する材料を意味するものと理解されたい。軟磁性及び/又は導電材料は、好ましくは、強磁性材料、特に好ましくは強磁性金属、例えば鉄、コバルト、ニッケル、又は1種以上の強磁性金属材料を主成分とする合金からなる。
【0012】
1つの有利な構成は、工具は、基材に留め具を打ち込むための取付工具として構成されており、留め具を受け入れる収容器具を有し、作動ピストンは、この器具に入れられた留め具を作動軸に沿って基材に移動させ、駆動部は、作動ピストンを作動軸に沿って留め具に対して駆動する、ことを特徴とする。
【0013】
本発明は、図面中のいつかの実施例で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】工具を示す長手方向断面図である。
図2】工具の駆動部/作動ピストンユニットを示す図である。
図3】工具の駆動部を示す図である。
図4】経時的な駆動力のプロットを示す図である。
図5】作動ピストンがカバーする距離にわたる駆動力のプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に、基材(図示せず)を加工するための工具10が長手方向断面図で示されている。工具10は、基材に留め具を打ち込むための手持ち式取付工具として構成されている。工具10は、スタッドガイドとして形成された器具20を有し、ここでは釘として形成された留め具30が、作動軸Aに沿って(図1の左側の)基材に打ち込むために、器具20内に入れられる。留め具を器具に供給するために、工具10はマガジン40を含み、マガジン40内に、留め具が留め具ストリップ50の形態で個々に又は集合的に入れられ、器具20に1つずつ搬送される。このために、マガジン40は、ばね装填式供給要素(具体的に図示されない)を有する。
【0016】
工具10は、ピストンプレート70とピストンロッド80とを含む作動ピストン60を有する。作動ピストン60は、留め具30を器具20から作動軸Aに沿って基材に移動する。このプロセスにおいて、作動ピストン60は、ガイドシリンダ95内のそのピストンプレート70により作動軸Aに沿って案内される。図示しない実施例では、作動ピストンは、2つ、3つ又はそれより多いガイド要素、例えばガイドロッドにより作動軸に沿って案内される。作動ピストン60は更に、駆動部65によって駆動される。駆動部65は、スイッチング回路200及びコンデンサ300を含む。スイッチング回路200は、予め充電されたコンデンサ300の急速放電を生じさせ、それにより、駆動部65に流れる放電電流を供給する。
【0017】
工具10はまた、駆動部65が入れられるハウジング110と、トリガーとして形成された作動要素130を有するハンドル120と、蓄電池として形成された電気エネルギー貯蔵部140と、制御ユニット150と、トリガースイッチ160と、圧力スイッチ170と、駆動部65に配置された温度センサ180と、制御ユニット150を電気エネルギー貯蔵部140とトリガースイッチ160と圧力スイッチ170と温度センサ180とスイッチング回路200とコンデンサ300とに接続する電気接続線141、161、171、181、201、301とを含む。図示しない実施例において、工具10は、電気エネルギー貯蔵部140の代わりに又は電気エネルギー貯蔵部140に加えて、電力ケーブルにより電気エネルギーを供給される。制御ユニットは、プリント回路基板上で好ましくは相互接続されて1つ以上の電気制御回路、特に1つ以上のマイクロプロセッサを形成する電子部品を含む。
【0018】
工具10が(図1の左側の)基材(図示しない)に押し付けられると、接触圧力要素(具体的に示されない)が接触圧力スイッチ170を動作し、その結果、接続線171によって制御ユニット150に接触圧力信号を送信する。これによりトリガーされて、制御ユニット150はコンデンサ充電プロセスを開始する。コンデンサ充電プロセスでは、コンデンサ300を充電するために、接続線141によって電気エネルギー貯蔵部140から制御ユニット150に、及び接続線301によって制御ユニット150からコンデンサ300に電気エネルギーが伝導される。この目的のために、制御ユニット150は、電気エネルギー貯蔵部140からの電流をコンデンサ300のための適切な充電電流に変換するスイッチングコンバータ(具体的に示さない)を含む。コンデンサ300が充電されて、作動ピストン60が図1に示されるその取付準備完了位置にあるとき、工具10は取付準備完了状態にある。コンデンサ300の充電は、工具10を基材に押し付けることによってのみ行われるので、周囲の人の安全性を高めるために、取付プロセスは、工具10が基材に押し付けられたときにのみ実行可能になる。図示しない実施例では、制御ユニットは、工具がオンにされるときに、又は工具が基材から持ち上げられるときに、又は先行する打ち込みプロセスが完了するときに、コンデンサ充電プロセスを既に開始している。
【0019】
工具10が取付準備完了状態にある状態で、作動要素130が、例えばハンドル120を保持する手の人差し指を用いて引っ張られることにより作動されると、作動要素130はトリガースイッチ160を作動させ、その結果、接続線161を介して制御ユニット150にトリガー信号を送信する。これによりトリガーされて、制御ユニット150はコンデンサ放電プロセスを開始する。ここで、コンデンサ300に貯蔵された電気エネルギーはスイッチング回路200を介してコンデンサ300から駆動部65に伝導され、コンデンサ300は放電される。
【0020】
この目的のため、図1に概略的に示されるスイッチング回路200は、コンデンサ300を駆動部65に接続する2つの放電線210、220を含み、このうちの少なくとも1つの放電線210は、常時開の放電スイッチ230によって遮断される。スイッチング回路200は駆動部65及びコンデンサ300と共に、電気発振回路を形成し得る。この発振回路の往復振動及び/又はコンデンサ300の負の充電は、潜在的に駆動部65の効率に悪影響を及ぼし得るが、フリーホイーリングダイオード240を利用して抑制され得る。放電線210、220は、いずれの場合においても、例えば、はんだ付け、溶接、ねじ止め、クランピング又はフォームフィットによって、器具20に面したコンデンサ300の端面360上に配置されたコンデンサ300の電気接点370、380を介して、キャリアフィルム330上に配置されたコンデンサ300の電極310、320に電気的に接続されている。放電スイッチ230は、好ましくは、高い電流強度を有する放電電流を切り替えるのに適しており、例えばサイリスタとして形成されている。加えて、放電線210、220は、互いに近距離にあるため、それによって誘導される寄生磁場は、極力低く抑えられる。例えば、放電線210、220は組み合わされて母線を形成し、適当な手段、例えばホルダ又はクリップによってまとめて保持される。図示しない実施例において、フリーホイーリングダイオードは、放電スイッチと並列に電気的に接続されている。図示しない更なる実施例においては、回路にフリーホイーリングダイオードは設けられていない。
【0021】
コンデンサ放電プロセスを開始するために、制御ユニット150は接続線201によって放電スイッチ230を閉じ、それによりコンデンサ300の高強度放電電流が駆動部65を通って流れ、作動ピストン60を器具20及びその中に入れられた留め具30に向けて駆動する。作動ピストン60のピストンロッド80が留め具30のヘッド(これ以上は具体的に示さない)に接触すると直ちに、留め具30は作動ピストン60によって基材に打ち込まれる。作動ピストン60の余分な運動エネルギーは、作動ピストン60がピストンプレート70と共に制動要素85に対して移動し、停止するまで制動要素85によって制動されることにより、ばね弾性及び/又は減衰材料、例えば、ゴム又はエラストマーの制動要素85によって吸収される。その後、作動ピストン60は、リセットデバイス(これ以上は具体的に示さない)によって取付準備完了位置にリセットされる。
【0022】
図2に、工具、例えば図1に示される工具10の駆動部/作動ピストンユニット400を示す。駆動部/作動ピストンユニット400は、作動軸401に沿って切り開かれて示され、部分的に示される駆動部410と、作動ピストン420と、ステータ430とを含む。作動ピストン420は、ピストンプレート421とピストンロッド422とを有し、作動軸401に沿ってステータ430に対して移動する。駆動部410は、作動ピストン420を作動軸401に沿って駆動する。この目的のため、駆動部410は、作動ピストン420上に配置されたピストンコイルコンデンサ(図示せず)とピストンコイル440とを含む。ピストンコイル440は、ピストンコイルコンデンサの急速放電中に、ピストンコイル440に電流を流し、ピストンコイル440とステータ430との間に斥力を生じさせ、作動ピストン420をステータ430に対して加速させる磁場を発生させるために、ピストンコイルコンデンサに電気的に接続され得る。ピストンコイル440とステータ430との間の斥力は、例えば、ピストンコイル440によって発生した磁場がステータ430を通過してステータ430に電流を誘起し、更に、ピストンコイル440によって発生する磁場と反対の磁場を発生させることによって生じる。この目的のために、ステータ430は、作動軸を環状に取り囲む導電材料、例えば銅、鉄又はそれらの合金からなる。図示しない実施例では、ステータは、フレームと、フレーム上に配置された、好ましくはフレームに締結され、高導電率を有し、作動軸を環状に取り囲むリング導体とを有する。
【0023】
加えて、駆動部410は、作動ピストン420上に配置されたステータコイルコンデンサ(図示せず)とステータコイル450とを含む。ステータコイル450は、ステータコイルコンデンサの急速放電中に、ステータコイル450に電流を流し、ステータコイル450と作動ピストン420との間に斥力を生じさせ、作動ピストン420をステータ430から離れる方に加速させる磁場を発生させるために、ステータコイルコンデンサに電気的に接続され得る。ステータコイル450と作動ピストンとの間の斥力は、例えば、ステータコイル450によって発生する磁場がピストンコイル440によって発生する磁場と逆であることによって生じる。この目的のために、ピストンコイルコンデンサ及びステータコイルコンデンサを、例えば制御ユニット(図示しない)によって制御される対応する時限的な手法で放電することによって、ピストンコイル440とステータコイル450に反対方向の電流が、時間的に重なって、特に同時に供給されることが好ましい。ピストンコイル440及びステータコイル450はそれぞれ、ピストンコイル軸及びステータコイル軸を有する。ピストンコイル軸及びステータコイル軸は作動軸401に一致し、したがって、互いに平行に方向付けられている。作動ピストン420を図2に示される開始位置に戻すために、ステータコイル450によって発生する磁場とピストンコイル440によって発生する磁場が同じ方向になるように、ピストンコイル440及びステータコイル450に同じ方向の電流が、時間的に重なって、特に同時に供給されることが好ましい。これにより、ステータコイル450と作動ピストン420との間に引力が生じ、作動ピストン420がステータ430上へと加速する。
【0024】
図3に、工具、例えば図1に示される工具10の駆動部510を示す。駆動部510は、作動軸501に沿って切り開かれて示され、ピストンプレート521とピストンロッドとを有する作動ピストン520を作動軸501に沿って駆動し、ステータ530に対して移動させる。駆動部510は、コンデンサ560と、スイッチ571を備えるスイッチング回路570と、作動ピストン520上に配置されたピストンコイル540と、ステータ530上に配置されたステータコイル550とを含む。ピストンコイル540は、コンデンサ560がピストンコイルコンデンサとなるように、コンデンサ560の急速放電中にピストンコイル540に電流を流すために、コンデンサ560に電気的に接続され得る。ピストンコイル540内を流れる電流は、第1の磁場を発生させる。ステータコイル550はまた、コンデンサ560がまたステータコイルコンデンサとなるように、コンデンサ560の急速放電中にステータコイル550に電流を流すために、コンデンサ560に電気的に接続され得る。ステータコイル550内を流れる電流は、第2の磁場を発生させる。
【0025】
コンデンサ560の一方の電極はスイッチ571の入力に電気的に接続され、コンデンサ560の対電極に対して充電され得る。コンデンサ560の対電極は、第1の地電位572、例えば充電式バッテリー又はバッテリーの負端子に電気的に接続される。スイッチ571の出力は、ステータコイル550の内側にあるステータコイル550の入力に電気的に接続されている、好ましくは永久的に接続されている。ステータコイル550の外側にあるステータコイル550の出力は、コンタクトブラシとして形成され、ステータ530が有する第1の電気ステータ接点531に電気的に接続されている、好ましくは永久的に接続されている。ピストンコイル540の外側にあるピストンコイル540の入力は、コンタクトレールとして形成され、作動ピストン520が有する第1のピストン接点541に電気的に接続されている、好ましくは永久的に接続されている。作動ピストン520が作動軸501に沿って移動すると、第1のピストン接点541は、第1のステータ接点531に沿って電気的に伝導性の状態で摺動する。第1のばね(図示せず)は、第1のピストン接点541に向かって第1のステータ接点531に荷重をかける。図示しない実施例では、追加的に又は代替的に、ばねは第1のステータ接点に向かって第1のピストン接点に荷重をかける。
【0026】
ピストンコイル540の内側にあるピストンコイル540の出力は、コンタクトレールとして形成され、作動ピストン520が有する第2のピストン接点542に電気的に接続されている、好ましくは永久的に接続されている。作動ピストン520が作動軸501に沿って移動すると、第2のピストン接点542は、第2のステータ接点532に沿って電気的に伝導性の状態で摺動する。ステータ530は、コンタクトブラシとして形成され、第1の地電位572と好ましくは同一の第2の地電位573に電気的に接続されている第2のステータ接点532を有する。第2のばね(図示せず)は、第2のピストン接点542に向かって第2のステータ接点532に荷重をかける。図示しない実施例では、追加的に又は代替的に、ばねは、第2のステータ接点に向かって第2のピストン接点に荷重をかける。ピストン接点541、542は、作動ピストンの移動全体にわたってステータ接点531、532に必ずしも接触していない。いくつかの用途では、最初の0.5ミリ秒~1ミリ秒の間、特に最初の0.6ミリ秒の間の接触で十分である。ピストン接点541、542は、いくつかの用途領域においては、作動軸501の方向に約10mm~30mmの長さを有する。
【0027】
ピストン接点541、542は、作動ピストンの残り部分に強固に接続されており、作動ピストン520の残り部分と共に移動する。図示しない実施例では、第1及び/又は第2のステータ接点はスリップリングとして形成されている。図示しない更なる実施例では、第1及び/又は第2のステータ接点はコンタクトレールとして形成され、第1又は第2のピストン接点はコンタクトブラシ又はスリップリングとして形成されている。第2のピストン接点542及び第2のステータ接点532は、作動軸501に対して、ステータコイル550及びピストンコイル540の半径方向内側に配置されている。図示しない実施例では、第1のピストン接点及び第1のステータ接点は、追加的に又は代替的に、ステータコイル及び/又はピストンコイルの半径方向内側に配置されている。
【0028】
ピストンコイル540及びステータコイル550によるコンデンサ560の急速放電は、スイッチング回路570によって、コンデンサ560が充電されるとスイッチ571が閉じられ、ピストンコイル540及びステータコイル550がコンデンサ560に電気的に接続されることにより起動され得る。その後、電流がコンデンサ560からスイッチ571を通り、ステータコイル550を通り内側から外側に、第1のステータ接点531及び第1のピストン接点541を通り、ピストンコイル540を通り外側から内側に、最後に、第2のピストン接点542第2のステータ接点532を通って第2の地電位573に流れる。
【0029】
ピストンコイル540及びステータコイル550はそれぞれ、ピストンコイル軸及びステータコイル軸を有する。ピストンコイル軸及びステータコイル軸は作動軸501に一致し、したがって、互いに平行に方向付けられている。ピストンコイル540とステータコイル550は同じ方向に巻かれており、電流はそれらを反対方向に流れる。そのため、第1の磁場と第2の磁場は互いに反対である。図示しない実施例では、コイルは反対方向に巻かれており、電流はそれらを同じ方向に流れる。これにより、ステータコイル550とピストンコイル540との間に、ゆえにステータ530と作動ピストン520との間に斥力が生じるため、作動ピストン520はステータ530に対して加速する。ピストンコイル540とステータコイル550は互いに直列に電気的に接続されている。すなわち、電流はピストンコイル540とステータコイル550を同時に流れる。コイル540、550を流れる電流の電流強度はピストンコイル540とステータコイル550とで同じである。加えて、コイル540、550によって発生する磁場の強さが等しくなるように、ピストンコイル540とステータコイル550は、いずれの場合においても同じコイルターン数を有することが好ましい。
【0030】
作動ピストン520はピストンフレーム525を有する。ピストンフレーム525は、例えば鉄又はその合金、例えば鋼などの軟磁性材料からなることが好ましい。ピストンフレーム525はピストンコイル540を取り囲み、作動軸501に対して周方向に延びる。その結果、ピストンコイル540によって発生する第2の磁場はステータコイル550の領域内で強まり、ステータ530と作動ピストン520との間の斥力は増す。ピストンプレート521は好ましくは軟磁性材料からなり、特に好ましくは、ピストンフレームを形成する。ピストンロッド522もまた、好ましくは軟磁性材料からなり、特に好ましくは、ピストンプレート521に一体化されて接続されている。これにより、作動ピストン520の剛性及び/又は機械的な堅牢性が増す場合がある。ステータ530はステータフレーム535を有する。ステータフレームは、例えば鉄又はその合金、例えば鋼などの軟磁性材料からなることが好ましい。ステータフレーム535はステータコイル550を取り囲み、作動軸501に対して周方向に延びる。その結果、ステータコイル550によって発生する第2の磁場はピストンコイル540の領域内で強まり、ステータ530と作動ピストン520との間の斥力は増す。
【0031】
図4は、経時的に駆動部から作動ピストンに伝達される駆動力のプロット600を示す。力プロファイル610は、作動ピストン上に配置され、ステータ又は好ましくは短絡させたステータコイルに反対の磁場を誘起する磁場を発生させるピストンコイルを備えた駆動部に相当する。力は、比較的短時間で伝達される。それでも、作動ピストンの所望の速度を達成するために、比較的大きい最大力が伝達されなければならない。力プロファイル620は、作動ピストン上に配置され、第1の磁場を発生させるピストンコイル、及びステータ上に配置され、第1の磁場と反対方向の第2の磁場を発生させるステータコイルを備えた駆動部に相当する。力は、比較的長時間にわたって伝達される。作動ピストンの所望の速度を達成するには比較的小さい最大力で十分である。この場合、力プロファイル610、620の曲線下の面積は、作動ピストンのインパルスの尺度である。同じインパルス、ゆえに同じピストン質量、作動ピストンの同じ速度、すなわちまた、作動ピストンの同じ運動エネルギーを有すると仮定すると、両方の曲線下の面積は同じである。最大力が小さいほど、駆動部及び駆動部を有する工具にかかる荷重が減少するという利点がある。
【0032】
図5は、作動軸に沿って作動ピストンがカバーする距離にわたって駆動部から作動ピストンに伝達される駆動力のプロット700を示す。力プロファイル710は、作動ピストン上に配置され、ステータに反対方向の磁場を誘起する磁場を発生させるピストンコイルを備えた駆動部に相当する。力は、比較的短距離にわたって伝達される。それでも、作動ピストンの所望の運動エネルギーを達成するために、比較的大きい最大力が伝達されなければならない。力プロファイル720は、作動ピストン上に配置され、第1の磁場を発生させるピストンコイル、及びステータ上に配置され、第1の磁場と反対方向の第2の磁場を発生させるステータコイルを備えた駆動部に相当する。力は、比較的長距離にわたって伝達される。作動ピストンの所望の運動エネルギーを達成するには比較的小さい最大力で十分である。力プロファイル710、720の曲線下の面積は、作動ピストンの運動エネルギーの尺度である。したがって、作動ピストンの同じ運動エネルギーにより、両曲線下の面積は同じになる。
【0033】
最大力が小さいほど、駆動部及び駆動部を有する工具にかかる荷重が減少するという利点がある。加えて、最大電流強さが低下するため、コイルを相互接続するためにより安価な電子部品を使用できる場合がある。更に、工具の使用者の電磁曝露が減少するため、軽量及び/又は安価な遮蔽で十分な場合がある。加えて、ピストンコイルとステータコイルとを備える駆動部の効率は、コイルを1つだけ備える駆動部の効率よりも高い場合があり、そのため、放散される廃熱も減少する。加えて、伝達される力が非常に小さくなる場合には例えば短絡によってコイルを流れる電流をオフにすると有利である。その結果、互いに摺動する電気接点間の望ましくない電気フラッシュオーバ及び/又は火花が低減又は回避され得る。
【0034】
本発明について、図面に示す一連の実施例及び図示しない実施例を用いて記述してきた。各種の実施例の個々の特徴は、互いに矛盾しない限り、個々に又は互いの所望の組み合わせで適用され得る。本発明による工具はまた、例えばハンマードリルなどの他の用途に使用され得ることに留意されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】