(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-27
(54)【発明の名称】リン酸塩処理性に優れた高強度冷延鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 26/00 20060101AFI20230217BHJP
【FI】
C23C26/00 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536687
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-08-12
(86)【国際出願番号】 KR2020014051
(87)【国際公開番号】W WO2021125525
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】10-2019-0168775
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ヤン-ハ
(72)【発明者】
【氏名】キム、 クォン-イル
(72)【発明者】
【氏名】カン、 デ-ヤン
【テーマコード(参考)】
4K044
【Fターム(参考)】
4K044AA02
4K044AB02
4K044BA06
4K044BB01
4K044BB03
4K044BC03
4K044CA16
4K044CA18
(57)【要約】
本発明は、素地鋼板と、上記素地鋼板上に形成されたニッケル又はニッケル合金コーティング層と、を含み、上記ニッケル又はニッケル合金の付着量は50mg/m2以下である、冷延鋼板に関するものである。本発明によると、冷間圧延を経た鋼板に金属層をナノ厚さでコーティングした後、焼鈍熱処理し、Feの溶出は抑制されない範囲で、Si及びMnなどの酸化物が鋼板表面に形成されることを抑制して、リン酸塩処理性が向上した高強度冷延鋼板及びその製造方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地鋼板と、
前記素地鋼板上に形成されたニッケル又はニッケル合金コーティング層を含み、
前記ニッケル又はニッケル合金の付着量は50mg/m
2以下である、冷延鋼板。
【請求項2】
前記素地鋼板の厚さが1.0~1.8mmである、請求項1に記載の冷延鋼板。
【請求項3】
前記素地鋼板は0.05~3.0重量%のSi及び0.1~3.0重量%のMnを含む、請求項1に記載の冷延鋼板。
【請求項4】
前記冷延鋼板の表面から0.01μmの深さまでのSi元素の濃度は0.1%以下である、請求項1に記載の冷延鋼板。
【請求項5】
前記冷延鋼板の腐食電流密度が600~800μA/cm
2である、請求項1に記載の冷延鋼板。
【請求項6】
前記冷延鋼板へのリン酸塩処理時に、下記式1によるリン酸塩カバレッジが95%以上である、請求項1に記載の冷延鋼板。
[式1]
リン酸塩カバレッジ=(リン酸塩形成領域の面積/全面積)×100
【請求項7】
素地鋼板に熱間圧延及び冷間圧延を行う段階と、
前記熱間圧延及び冷間圧延された素地鋼板にニッケル又はニッケル合金の付着量が50mg/m
2以下である金属コーティング層を形成する段階と、
前記金属コーティング層が形成された素地鋼板を熱処理する段階と、を含む、冷延鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記金属コーティング層を形成する段階は電気めっき法によって行われる、請求項1に記載の冷延鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸塩処理性に優れた高強度冷延鋼板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、浮上している環境規制に伴い、厳しい自動車燃費規制及び衝突安定性規制の強化に対応するための方法として、超高強度鋼板に対する需要が急増している。国別炭素排出量の削減目標を達成するために燃費の改善が求められている一方、高性能化及び各種の便宜装置の増加により自動車の重量は継続的に増加しており、このような問題を解決するために超高強度鋼板の需要が継続的に増加している。そこで、鉄鋼メーカーでは、Dual Phase(DP)鋼、Transformation Induced Plasticity(TRIP)鋼、Complex Phase(CP)鋼などの高強度鋼板の開発に注力している。
【0003】
一般的に、自動車用鋼板は、塗装工程の際、塗膜密着性を確保するためにリン酸塩処理を事前に行ってから電着塗装を行う。リン酸塩処理時に、形成されたリン酸塩結晶は電着塗装後の耐食性及び塗装密着性に大きな影響を与える。リン酸塩結晶は、そのサイズが小さく、緻密に形成された場合にのみ塗膜との密着力に優れるため、自動車メーカーでは、リン酸塩結晶のサイズ及びリン酸塩の付着量に対する一定の基準を有しており、製品化を可能とするためには、これを通過しなければならない。
【0004】
自動車用鋼板の高強度化のためには、強度を増加させるために鋼中に多量のSi、Mn、Al等の元素を添加することが一般的であるが、これらの元素を含む鋼板は、焼鈍熱処理過程で上記元素が鋼板表面に酸化物を生成し、リン酸塩処理時に、リン酸塩との反応性を低下させるという問題点がある。鋼板とリン酸塩との間の反応性が低下する場合、鋼板表面のリン酸塩結晶が粗大になる可能性があり、リン酸塩結晶が鋼板全体を覆わない可能性がある。こうなると、電着塗装の後、塗装密着性及び耐食性が低下するおそれがある。
【0005】
上述したSi、Mn、Alが多量添加された鋼板のリン酸塩処理性を向上させるためには、鋼板表面の酸化物の生成を抑制しなければならず、このためには、鋼中におけるSi及びAlの添加量を減らす必要があるが、このような場合には目標とする材質を確保し難いという問題がある。
【0006】
これに関して、鋼中に対するSb等の微量成分の添加によって粒界に優先的に濃化させることにより、Si酸化物等が表面に形成されることを抑制してリン酸塩処理性及び塗装密着性を向上させる技術が提案されている(特許文献1)。しかし、焼鈍熱処理時に、鋼中の合金元素の拡散をより確実に防止可能な技術に対する開発が依然として求められている実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような実情に鑑みて案出されたものであって、焼鈍熱処理前の前処理過程で鋼板上に金属層をナノ(nano)厚さでコーティングし、焼鈍熱処理時に鋼中の合金元素の拡散防止膜としての役割を果たし、鋼板表面に酸化物の形成を抑制することにより、リン酸塩処理性が向上した高強度冷延鋼板及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によると、素地鋼板と、上記素地鋼板上に形成されたニッケル又はニッケル合金コーティング層と、を含み、上記ニッケル又はニッケル合金の付着量は50mg/m2以下(但し、0は除く。)である、冷延鋼板が提供される。
【0010】
上記素地鋼板の厚さは1.0~1.8mmであってもよい。
【0011】
上記素地鋼板は、0.8~3.0重量%のSi及び1.0~3.0重量%のMnを含むことができる。
【0012】
上記冷延鋼板の表面から0.01μmの深さまでのSi元素の濃度は0.1原子%以下(但し、0は除く。)であってもよい。
【0013】
上記冷延鋼板の腐食電流密度は600~800μA/m2であってもよい。
【0014】
上記冷延鋼板へのリン酸塩処理時に、下記式1によるリン酸塩カバレッジが95%以上であってもよい。
[式1]
リン酸塩カバレッジ=(リン酸塩形成領域の面積/全面積)×100
【0015】
本発明の他の側面によると、素地鋼板に熱間圧延及び冷間圧延を行う段階と、上記熱間圧延及び冷間圧延された素地鋼板にニッケル又はニッケル合金の付着量が50mg/m2以下(但し、0は除く。)である金属コーティング層を形成する段階と、上記金属コーティング層が形成された鋼スラブを焼鈍熱処理する段階と、を含む、冷延鋼板の製造方法が提供される。
【0016】
上記金属コーティング層を形成する段階は電気めっき法により行われることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、冷間圧延を経た鋼板に金属層をナノ厚さでコーティングした後、焼鈍熱処理し、Feの溶出は抑制されない範囲で、Si及びMnなどの酸化物が鋼板表面に形成されることを抑制して、リン酸塩処理性が向上した高強度冷延鋼板及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】金属コーティング層が形成されていない鋼板を熱処理してからリン酸塩処理時に、鋼板表面にSi及びMnなどの酸化物が形成される過程を概略的に示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施例に従って、金属コーティング層が形成された鋼板を熱処理してからリン酸塩処理時に、鋼板表面にSi及びMnなどの酸化物の形成が抑制される過程を概略的に示す模式図である。
【
図3】本発明の実施例3の鋼板表面の走査電子顕微鏡(SEM)イメージである。
【
図4】金属コーティング層が形成されていない鋼板表面の走査電子顕微鏡(SEM)イメージである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、様々な実施形態を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な異なる形態に変形することができ、本発明の範囲が以下で説明する実施形態に限定されるものではない。
【0020】
本発明は、リン酸塩処理性に優れた高強度冷延鋼板及びその製造方法に関するものである。
【0021】
図1は、従来の冷延鋼板の表面を熱処理してからリン酸塩処理時に、鋼板表面にSi及びMn等の酸化物が形成される過程を概略的に示す模式図であって、
図1を参照して説明すると、鋼板において、多量のSi及びMn等の合金元素は、焼鈍熱処理過程で鋼板表面に拡散しながら酸化物を形成するようになる。このように、多量の酸化物が形成された冷延鋼板にリン酸塩処理を行う場合、上記酸化物によりリン酸塩結晶が鋼板表面を覆う面積が減少し、リン酸塩カバレッジ(coverage)が低下する可能性があり、これにより、電着塗装の後、塗装密着性及び耐食性が低下するという問題がある。
【0022】
そこで、本発明者らは、リン酸塩処理性を向上させるための方案について鋭意研究した結果、鋼中のSi、Mnなどの合金元素が熱処理過程中に鋼板表面に拡散することを抑制可能な拡散防止膜を、熱処理前段階である前処理過程で電気めっき法を用いて形成し、且つFeの溶出は抑制されない範囲の付着量を有する金属層をコーティングする場合、優れたリン酸塩処理性を確保することができることを認知し、本発明を完成するに至った。
【0023】
本発明の一側面によると、素地鋼板と、上記素地鋼板上に形成されたニッケル又はニッケル合金コーティング層を含み、上記ニッケル又はニッケル合金の付着量が50mg/m
2以下である、冷延鋼板が提供される。
図2は、本発明の一実施例に従い、金属コーティング層が形成された鋼板を熱処理してからリン酸塩処理時に、鋼板表面にSi及びMnなどの酸化物の形成が抑制される過程を概略的に示す模式図であり、以下では、
図2を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0024】
素地鋼板は、特に限定されるものではないが、0.8~3.0重量%のSi及び1.0~3.0%のMnを含むことができ、例えば、重量%でC:0.05~0.30%、Si:0.05~3.0%、Mn:1.0~3.0%、P:0.10%以下、S:0.01%以下、Al:0.01~0.1%、N:0.008%以下、及びSb:0.01~0.10%を含有し、残部はFe及び不可避不純物から構成されることができる。
【0025】
Siは、固溶強化により強度の向上に寄与する重要な元素であり、加工性の劣化を抑制しつつ、強度を向上させる役割を果たす。但し、Si含有量が3.0%を超えると、強度を向上させる効果が飽和するだけでなく、加工性も劣化するという問題があるため、Si含有量は0.05~3.0%であることが好ましく、0.1~2.0%であることがより好ましい。
【0026】
Mnは、固溶強化により強度の向上に寄与するとともに、オーステナイト相の焼入れ性を向上させる元素であり、強度の安定化に効果的に寄与する。所望の強度を安定的に得るためには、Mn含有量を1.0%以上とする必要がある。但し、Mn含有量が3.0%を超えると、加工性が劣化するため、Mn含有量は1.0~3.0%の範囲であることが好ましく、1.5~2.5%の範囲であることがより好ましい。
【0027】
一方、上記素地鋼板は、衝撃構造部材用の自動車用鋼板として使用するために、1.0~1.8mmであることが好ましい。上記素地鋼板上には、ニッケル又はニッケル合金コーティング層が形成され、これは、鋼中のS及びMn等の元素が熱処理過程中に鋼板表面に拡散することを抑制可能な拡散防止膜の役割を果たすことができる。上記ニッケル又はニッケル合金コーティング層は電気めっき法によって形成されることができるが、これに限定されるものではない。
【0028】
また、ニッケル及びニッケル合金を用いた金属めっきは、Local Cellの形成によるFeの溶出速度を増加させてリン酸塩結晶の生成と成長を増加させるため、素地鋼板上にニッケル及びニッケル合金コーティング層を形成することが好ましい。
【0029】
上記ニッケル又はニッケル合金の付着量は、50mg/m2以下(但し、0は除く。)であることが好ましく、5~50mg/m2であることがより好ましい。50mg/m2を超える場合、Feの表面溶出を妨げる可能性があるため、ニッケル又はニッケル合金の付着量は50mg/m2以下であることが好ましい。
【0030】
上記冷延鋼板の表面から0.01μmの深さまでのSi元素の濃度は0.1%以下(但し、0は除く。)であることが好ましい。鋼板表面に濃化したSi元素の濃度が0.1%を超えると、film状のSi-rich酸化物が鋼板表面に形成されるため、リン酸塩処理過程で鋼板Feの溶出を抑制することによりリン酸塩処理性が劣るようになる。
【0031】
上記冷延鋼板の腐食電流密度は600~800μA/m2であってもよい。腐食電流密度が600μA/cm2未満の場合、Fe溶出が円滑に起こらず、リン酸塩皮膜の形成が難しくなったり、皮膜の付着量が減少するようになると、腐食電流密度が800μA/cm2を超える場合、リン酸塩皮膜の析出反応が起こらず、Fe溶出のみが起こるエッチング反応が支配的になるため、リン酸塩処理性が劣るようになる。
【0032】
本発明による上記冷延鋼板は、リン酸塩処理性が著しく改善され、これにより、上記冷延鋼板へのリン酸塩処理時に、下記式1によるリン酸塩カバレッジが95%以上であることができる。
[式1]
リン酸塩カバレッジ=(リン酸塩形成領域の面積/全面積)×100
【0033】
本発明の他の側面によると、素地鋼板に熱間圧延及び冷間圧延を行う段階と、上記熱間圧延及び冷間圧延された素地鋼板にニッケル又はニッケル合金の付着量が50mg/m2以下(但し、0は除く。)である金属コーティング層を形成する段階と、上記金属コーティング層が形成された鋼スラブを焼鈍熱処理する段階と、を含む冷延鋼板の製造方法が提供される。
【0034】
素地鋼板に熱間圧延及び冷間圧延を行う段階は、当該技術分野において通常的に使用される方式及び条件に従って行われることができる。例えば、素地鋼板(スラブ)を1100~1300℃の温度で加熱した後、仕上げ圧延温度800~1000℃で熱間圧延して巻き取り、上記巻き取られた熱延鋼板を冷間圧延して冷延鋼板を製造する方式で行われることができる。その後、脱脂及び水洗工程がさらに行われることができる。
【0035】
その後、電気めっき法を用いて、ニッケル又はニッケル合金の付着量が50mg/m2以下(但し、0は除く。)である金属コーティング層を形成する構成は上述したため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0036】
このように、本発明によると、冷間圧延を経た鋼板を前処理段階で脱脂及び水洗し、電気めっきによりニッケルを析出させる過程を通じてナノ厚さのコーティング層が覆われた高強度鋼板を形成し、焼鈍熱処理過程によって延性を付与することで、高強度冷延鋼板を製造することができる。
【実施例】
【0037】
以下では、具体的な実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。下記の実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0038】
実施例1
Mn及びSi含有量の総和が3.3重量%であるスラブを、熱間圧延及び冷間圧延を経て1.4mmの厚さで製造し、電気めっき工程によって表面にニッケルの付着量が43mg/m2であるコーティング層を形成した。
【0039】
その後、脱脂、水洗及び表面調整工程を経た後、リン酸-亜鉛系溶液に約90秒間浸漬させてリン酸塩皮膜を形成させた。リン酸塩皮膜が良好に形成されたかを観察するために、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy)を用いて鋼板表面を約500倍の倍率で3箇所を観察し、リン酸塩結晶が形成された面積分率(カバレッジ)の平均値を算出し、表1に記載した。
【0040】
一方、800℃の熱処理後、鋼板表面に濃化したSi合金元素の量を測定するためにGDOES(Glow Discharge Optical Emision Spectroscopy)によって深さ方向のprofileを測定し、0.01μmの深さまでの積分値を表1に記載した。
【0041】
また、ニッケルコーティング層により表面にリン酸塩の核生成促進によるリン酸塩皮膜の形成の有無を確認し、リン酸塩皮膜の形成に伴うFe溶出速度を比較するために、直線分極抵抗を測定して腐食電流密度を算出し、表1に記載した。
【0042】
実施例2
ニッケルの付着量が5mg/m2であり、熱処理温度が804℃であることを除いては、実施例1と同様の方法で行った。
【0043】
実施例3
ニッケルの付着量が16mg/m2であり、熱処理温度が785℃であることを除いては、実施例1と同様の方法で行った。
【0044】
実施例4
ニッケルの付着量が25mg/m2であり、熱処理温度が802℃であることを除いては、実施例1と同様の方法で行った。
【0045】
実施例5
ニッケルの付着量が12mg/m2であり、熱処理温度が793℃であることを除いては、実施例1と同様の方法で行った。
【0046】
比較例1
ニッケルの付着量が152mg/m2であり、熱処理温度が830℃であることを除いては、実施例1と同様の方法で行った。
【0047】
比較例2
ニッケルの付着量が240mg/m2であり、熱処理温度が815℃であることを除いては、実施例1と同様の方法で行った。
【0048】
比較例3
ニッケルの付着量が365mg/m2であり、熱処理温度が798℃であることを除いては、実施例1と同様の方法で行った。
【0049】
比較例4
ニッケルの付着量が504mg/m2であり、熱処理温度が806℃であることを除いては、実施例1と同様の方法で行った。
【0050】
【0051】
上記表1を参照すると、本発明で限定するニッケルの付着量、表面濃化の積分値、及び腐食電流密度の条件を満たす実施例1~5は、リン酸塩カバレッジが95%以上形成され、優れたリン酸塩処理性を示すことが分かる。しかし、ニッケルの付着量が本発明の条件を超えている比較例1~4及びニッケルコーティング層が形成されていない比較例5は、Siの表面濃化が抑制されないだけでなく、Fe溶出が抑制されることによって、リン酸塩皮膜の形成が円滑に行われず、リン酸塩カバレッジ及びリン酸塩処理性の劣化を招いたことが確認できる。
【0052】
以上のように、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で様々な修正及び変形が可能であることは、当該技術分野における通常の知識を有する者には自明である。
【国際調査報告】