IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アスクレピオス バイオファーマシューティカル, インコーポレイテッドの特許一覧 ▶ ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒルの特許一覧

特表2023-507741ハンチントン病を処置するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-27
(54)【発明の名称】ハンチントン病を処置するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20230217BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20230217BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230217BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230217BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230217BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230217BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230217BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230217BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20230217BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230217BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20230217BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230217BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20230217BHJP
   A61K 38/44 20060101ALN20230217BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/864 100Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N7/01
C12N15/12
C12Q1/68
A61K35/76
A61P25/14
A61K48/00
A61K31/7105
A61K38/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537012
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-12
(86)【国際出願番号】 US2020066039
(87)【国際公開番号】W WO2021127455
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】62/951,582
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520375033
【氏名又は名称】アスクレピオス バイオファーマシューティカル, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】514299550
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ロウ, シュウフイ
(72)【発明者】
【氏名】シャオ, シャオ
(72)【発明者】
【氏名】シャオ, ビン
(72)【発明者】
【氏名】ムリエ, フィリップ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B063QA19
4B063QQ42
4B063QS28
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084DC23
4C084MA66
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA02
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA02
(57)【要約】
本開示の態様は、ハンチントン病を処置するのに有用な組成物および方法に関する。一部の実施形態では、本開示は、ハンチンチン遺伝子(HTT)を標的とする干渉核酸(例えば、人工miRNA)およびこれを使用してハンチントン病を処置する方法を提供する。したがって、一部の態様では、本開示は、配列番号1~22のいずれか1つに示される配列を含むかまたはコードする単離された核酸を提供する。一態様では、(a)第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)末端逆位反復配列(ITR)、またはそのバリアントを含む第1の領域;および(b)1つまたは複数のmiRNAをコードする導入遺伝子を含む第2の領域であって、各miRNAが、配列番号25に相補的なシード配列を含む、第2の領域を含む単離された核酸が本明細書に記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)末端逆位反復配列(ITR)、またはそのバリアントを含む第1の領域;および
b.1つまたは複数のmiRNAをコードする導入遺伝子を含む第2の領域であって、各miRNAが、配列番号25に相補的なシード配列を含む、第2の領域
を含む単離された核酸。
【請求項2】
a.第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)末端逆位反復配列(ITR)、またはそのバリアントを含む第1の領域;および
b.1つまたは複数のmiRNAをコードする導入遺伝子を含む第2の領域であって、各miRNAが、miRNA骨格配列に挟まれた配列番号1~22のいずれか1つに示される配列を含む配列によってコードされている、第2の領域
を含む単離された核酸。
【請求項3】
前記導入遺伝子が、イントロンに挟まれたタンデムで2つのmiRNAまたは2つの前駆体miRNAを含む、請求項1または2に記載の単離された核酸。
【請求項4】
前記隣接するイントロンが、同一である、請求項3に記載の単離された核酸。
【請求項5】
前記隣接するイントロンが、同じ種に由来する、請求項3に記載の単離された核酸。
【請求項6】
前記隣接するイントロンが、hCGイントロンである、請求項3に記載の単離された核酸。
【請求項7】
前記導入遺伝子が、プロモーターを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項8】
前記プロモーターが、シナプシン(Syn1)プロモーターである、請求項7に記載の単離された核酸。
【請求項9】
前記導入遺伝子が、タンパク質をさらにコードする、請求項1から8のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項10】
前記タンパク質が、CYP46A1である、請求項9に記載の単離された核酸。
【請求項11】
前記1つまたは複数のmiRNAが、前記導入遺伝子の非翻訳部分に位置する、請求項1から10のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項12】
前記非翻訳部分が、イントロンである、請求項11に記載の単離された核酸。
【請求項13】
前記非翻訳部分が、タンパク質をコードする核酸配列の最後のコドンとポリAテール配列の間か、またはプロモーター配列の最後のヌクレオチド塩基とポリAテール配列の間に存在する、請求項11に記載の単離された核酸。
【請求項14】
第2のアデノ随伴ウイルス(AAV)末端逆位反復配列(ITR)、またはそのバリアントを含む第3の領域をさらに含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項15】
前記ITRバリアントが、機能的末端分離部位(TRS)を欠き、必要に応じて、前記ITRバリアントが、ATRS ITRである、請求項1から14のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項16】
前記miRNAの少なくとも1つが、ヒトハンチンチン(例えば、配列番号25)にハイブリダイズし、ヒトハンチンチンの発現を阻害する、請求項1から15のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の単離された核酸を含むベクター。
【請求項18】
プラスミドである、請求項17に記載のベクター。
【請求項19】
請求項1から16のいずれか一項に記載の単離された核酸、または請求項17もしくは18に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項20】
a.キャプシドタンパク質;および
b.請求項1から16のいずれか一項に記載の単離された核酸
を含む組換えAAV(rAAV)。
【請求項21】
前記キャプシドタンパク質が、AAV1、AAV2、AAV3b、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、もしくはAAV13、もしくはAAVrh10キャプシドタンパク質、またはそのいずれかのキメラである、請求項20に記載のrAAV。
【請求項22】
前記キャプシドタンパク質が、AAVrh10キャプシドタンパク質である、請求項20または21に記載のrAAV。
【請求項23】
自己相補的AAV(scAAV)である、請求項20から22のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項24】
中枢神経系(CNS)への送達のために製剤化されている、請求項20から22のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項25】
配列番号1~22のいずれか1つに示される配列をコードする単離された核酸。
【請求項26】
請求項1から16のいずれかに記載の単離された核酸を含む組成物。
【請求項27】
請求項17または18に記載のベクターを含む組成物。
【請求項28】
請求項20から24のいずれかに記載のrAAV細胞を含む組成物。
【請求項29】
それを必要とする対象におけるハンチントン病を処置するための方法であって、ハンチントン病を有するかまたはハンチントン病を発症するリスクを有する対象に、請求項1から16のいずれか一項に記載の単離された核酸、請求項20から24のいずれか一項に記載のrAAV、または請求項25から28のいずれかに記載の組成物の治療有効量を投与することを含む、方法。
【請求項30】
前記対象が、36個より多いCAGリピート、40個より多いリピート、または100個より多いリピートを有するハンチンチン遺伝子を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記対象が、20歳未満である、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記投与が、前記単離された核酸またはrAAVの、前記対象の中枢神経系(CNS)への送達をもたらす、請求項29から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記投与が、注射、必要に応じて静脈内注射または線条体内注射によるものである、請求項29から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記投与が、カテーテルまたは関連するデバイスによるものである、請求項29から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
投与することの前に、ハンチントン病を有するかまたはハンチントン病を発症するリスクを有するとして対象を診断するステップをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
投与することの前に、ハンチントン病を有するかまたはハンチントン病を発症するリスクを有するとして対象を診断するアッセイの結果を受け取るステップをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35 U.S.C.§119(e)の下、その内容が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、2019年12月20日に出願した米国仮出願第62/951,582号の利益を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、EFS-WebによりASCII形式で提出され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、配列表を含有する。2020年12月17日に作成された前記ASCIIコピーは、046192-096790WOPT_SL.txtという名称であり、サイズは40,419バイトである。
【0003】
技術分野
本明細書に記載の技術は、ハンチントン病を処置するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
ハンチントン病(HD)は、ハンチンチン遺伝子のエクソン1におけるCAGリピート領域の伸長によって引き起こされる、破壊的な遺伝性神経変性疾患である。ハンチンチンタンパク質(HTT)は体全体で発現されるが、ポリグルタミン伸長タンパク質は、線条体の中型有棘神経細胞およびそれらの皮質接続に対して特に毒性である。患者は、鬱および不安を含む情動性症状ならびに特徴的な運動障害および舞踏病に苦しんでいる。現在、ハンチントン病には治療法がなく;治療選択肢は疾患症状を改善することに限定される。
【発明の概要】
【0005】
概要
本開示の態様は、ハンチントン病(HD)を処置するのに有用な組成物および方法に関する。一部の実施形態では、ヒトハンチンチン(HTT)に対して特異的にハイブリダイズし、その発現を阻害する、阻害性核酸(例えば、人工miRNAなどのmiRNA)が提供される。
【0006】
したがって、一部の態様では、本開示は、配列番号1~22のいずれか1つに示される配列を含むかまたはそれをコードする、単離された核酸を提供する。
【0007】
一態様では、(a)第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)末端逆位反復配列(ITR)、またはそのバリアントを含む第1の領域;および(b)1つまたは複数のmiRNAをコードする導入遺伝子を含む第2の領域であって、各miRNAが、配列番号25に相補的なシード配列を含む、第2の領域を含む単離された核酸が本明細書に記載される。
【0008】
一態様では、(a)第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)末端逆位反復配列(ITR)、またはそのバリアントを含む第1の領域;および(b)1つまたは複数のmiRNAをコードする導入遺伝子を含む第2の領域であって、各miRNAが、miRNA骨格配列に挟まれた配列番号1~22のいずれか1つに示される配列を含む配列によってコードされている、第2の領域を含む単離された核酸が本明細書に記載される。
【0009】
一部の態様では、本開示は:第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)末端逆位反復配列(ITR)、またはそのバリアントを含む第1の領域;および1つまたは複数のmiRNAをコードする導入遺伝子を含む第2の領域を含む単離された核酸を提供する。
【0010】
一部の実施形態では、各miRNAをコードする配列は、配列番号1~22のいずれか1つに示される配列を含む。一部の実施形態では、各miRNAをコードする配列は、pre-miR由来の配列に挟まれた配列番号1~22のいずれか1つに示される配列を含む。一部の実施形態では、単離された核酸は、配列番号1~22のいずれか1つに示される成熟miRNA配列に対応するpre-miR配列を含む。一部の実施形態では、各miRNAをコードする配列は、miRNA骨格配列をコードする配列に挟まれた配列番号1~22のいずれか1つに示される配列を含む。一部の態様では、本開示は、1つまたは複数のmiRNAをコードする導入遺伝子を含む単離された核酸であって、各miRNAをコードする導入遺伝子の配列が、miRNA骨格配列に挟まれた配列番号1~22に示される配列を含む、単離された核酸を提供する。
【0011】
一部の実施形態では、導入遺伝子は、イントロンに挟まれたタンデムで2つのmiRNAを含む。一部の実施形態では、導入遺伝子は、イントロンに挟まれたタンデムで2つの前駆体miRNAであるpre-miRNA(例えば、配列番号35を参照されたい)を含む。
【0012】
一部の実施形態では、導入遺伝子は、イントロンに挟まれたタンデムで2つのmiRNAまたは2つの前駆体miRNAを含む。
【0013】
一部の実施形態では、隣接するイントロンは、同一である。
【0014】
一部の実施形態では、隣接するイントロンは、同じ種に由来する。
【0015】
一部の実施形態では、隣接するイントロンは、hCGイントロンである。
【0016】
一部の実施形態では、導入遺伝子は、プロモーターをコードする核酸配列をさらに含む。
【0017】
一部の実施形態では、プロモーターは、シナプシン(Syn1)プロモーターである。
【0018】
一部の実施形態では、導入遺伝子は、タンパク質をコードする核酸配列をさらに含む。
【0019】
一部の実施形態では、タンパク質は、CYP46A1である。
【0020】
一部の実施形態では、タンパク質は、治療用タンパク質(例えば、非変異体ハンチンチン)またはリポータータンパク質(例えば、GFPなどの蛍光タンパク質)である。
【0021】
一部の実施形態では、ヒトハンチンチンは、配列番号25に示される配列を含む。
【0022】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号25の少なくとも2つの(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25個の)連続する塩基に対して相補的である核酸(例えば、miRNA)を提供する。
【0023】
一部の実施形態では、1つまたは複数のmiRNAは、導入遺伝子の非翻訳部分に位置する。
【0024】
一部の実施形態では、非翻訳部分は、イントロンである。
【0025】
一部の実施形態では、非翻訳部分は、タンパク質をコードする核酸配列の最後のコドンとポリAテール配列の間に存在する。
【0026】
一部の実施形態では、非翻訳部分は、プロモーター配列の最後の核酸塩基とポリAテール配列の1番目の塩基の間に存在する。
【0027】
一部の実施形態では、ポリA配列は、小ポリA配列である。
【0028】
一部の実施形態では、導入遺伝子はアデノ随伴ウイルス(AAV)末端逆位反復配列(ITR)、またはそのバリアントに挟まれている。
【0029】
一部の実施形態では、単離された核酸は、第2のアデノ随伴ウイルス(AAV)末端逆位反復配列(ITR)、またはそのバリアントを含む第3の領域をさらに含む。
【0030】
一部の実施形態では、第1または第2のITRバリアントは、機能的末端分離部位(TRS)を欠き、必要に応じて、ITRバリアントは、ATRS ITRである。
【0031】
一部の実施形態では、miRNAの少なくとも1つは、ヒトハンチンチン(例えば、配列番号25)にハイブリダイズし、その発現を阻害する。
【0032】
一部の態様では、本開示は、本開示に記載されている単離された核酸を含むベクターを提供する。
【0033】
一部の態様では、本開示は、1つまたは複数のmiRNAをコードする導入遺伝子を含む単離された核酸を含むベクターであって、各miRNAをコードする導入遺伝子の配列が、miRNA骨格配列に挟まれた配列番号1~22に示される配列を含む、ベクターを提供する。
【0034】
一部の実施形態では、ベクターは、プラスミドである。
【0035】
一部の実施形態では、導入遺伝子の各miRNA骨格配列は、mir-155骨格配列、mir-30骨格配列、またはmir-64骨格配列である。
【0036】
一部の態様では、本開示は、本開示に記載されている単離された核酸またはベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0037】
一部の態様では、本開示は、(a)キャプシドタンパク質;および(b)本開示に記載されている単離された核酸を含む組換えAAV(rAAV)を提供する。
【0038】
一部の態様では、本開示は、キャプシドタンパク質を含む組換えAAV(rAAV);および1つまたは複数のmiRNAをコードする導入遺伝子を含む単離された核酸であって、各miRNAをコードする導入遺伝子の配列が、miRNA骨格配列に挟まれた配列番号1~22に示される配列を含む、単離された核酸を提供する。
【0039】
一部の実施形態では、キャプシドタンパク質は、AAV9キャプシドタンパク質である。
【0040】
一部の実施形態では、キャプシドタンパク質は、AAVrh10キャプシドタンパク質である。
【0041】
一部の実施形態では、キャプシドタンパク質は、AAV1、AAV2、AAV3b、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、もしくはAAV13、もしくはAAVrh10キャプシドタンパク質、またはそのいずれかのキメラである。
【0042】
一部の実施形態では、組換えAAV(rAAV)は、一倍体rAAVである。
【0043】
一部の実施形態では、一倍体rAAVは、キメラキャプシドタンパク質を含む。
【0044】
一部の実施形態では、rAAVは、自己相補的AAV(scAAV)である。
【0045】
一部の実施形態では、rAAVは、中枢神経系(CNS)への送達のために製剤化されている。
【0046】
本開示の態様は、本明細書に記載の単離された核酸のいずれかを含む組成物に関する。
【0047】
本開示の態様は、本明細書に記載のベクターのいずれかを含む組成物に関する。
【0048】
本開示の態様は、本明細書に記載のrAAVのいずれかを含む組成物に関する。
【0049】
本開示の態様は、病原性ハンチンチンの発現を低減する(例えば、阻害する)ことが可能な単離された核酸に関し、よって、ハンチントン病の処置に有用であり得る。
【0050】
したがって、一部の態様では、本開示は、それを必要とする対象におけるハンチントン病を処置するための方法であって、ハンチントン病を有するかまたはそれを発症するリスクを有する対象に、本開示に記載されている単離された核酸、rAAV、または組成物の治療有効量を投与することを含む、方法を提供する。
【0051】
一部の態様では、本開示は、それを必要とする対象におけるハンチントン病を処置するための方法であって、ハンチントン病を有するかまたはそれを発症するリスクを有する対象に、本明細書に記載されているrAAV(例えば、1つまたは複数のmiRNAをコードする導入遺伝子を含むrAAVであって、各miRNAをコードする導入遺伝子の配列が、miRNA骨格配列に挟まれた配列番号1~22に示される配列を含む、rAAV)の治療有効量を投与することを含む、方法を提供する。
【0052】
一部の実施形態では、対象は、36個より多いCAGリピート、40個より多いリピート、または100個より多いリピートを有するハンチンチン遺伝子を含む。
【0053】
一部の実施形態では、対象は、20歳未満であるか、または若年性HDを有すると診断されている。
【0054】
一部の実施形態では、投与は、前記単離された核酸またはrAAVの、前記対象の中枢神経系(CNS)への送達をもたらす。
【0055】
一部の実施形態では、投与は、注射、必要に応じて静脈内注射または線条体内注射によるものである。
【0056】
一部の実施形態では、投与は、カテーテルまたは関連するデバイスによるものである。
【0057】
いずれかの態様の一部の実施形態では、方法は、投与することの前に、ハンチントン病を有するかまたはハンチントン病を発症するリスクを有するとして対象を診断するステップをさらに含む。
【0058】
いずれかの態様の一部の実施形態では、投与することの前に、ハンチントン病を有するかまたはハンチントン病を発症するリスクを有するとして対象を診断するアッセイの結果を受け取るステップをさらに含む。ハンチントン病を有するかまたはそれを発症するリスクを有するとして対象を診断するための例示的なアッセイ、例えば、少なくとも36個のCAGリピート、少なくとも40個のCAGリピート、または少なくとも100個のCAGリピート、またはそれより多いCAGリピートの遺伝子スクリーニングが本明細書に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1図1は、人工miRNAの構築物を示す概略図である。pEMBL-D(+)-Syn1-hCGイントロンは対照ベクターであり、これに、エンプティヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)イントロンを挿入して、シナプシンプロモーターで駆動する。対照miRNA前駆体(ランダム配列または非機能性変異)の2つのコピーをベクターpEMBL-D(+)-Syn1-hCGin-2x対照pre-miRのhCGin中に挿入する。人工pre-miR(約100~150bpの隣接上流および下流配列を含む3’-UTR標的配列と完全一致)の2つのコピーをhCGイントロン間へとクローニングする。ベクターpEMBL-D(+)-Syn1-CYP46A1-hCGin-2x人工pre-miRは、組合せ構築物であり、CYP46A1と人工miRNAの両方を同時に生成することができる。pre-miRNAが、成熟miRNAへとプロセシングされて、CAG伸長を含むHTT標的配列(これは、成熟miRNAと完全に相補的である)と組み合わされ得るかどうかを確認するために、HTT標的配列をルシフェラーゼ遺伝子の後に挿入する。パッケージサイズの制限のために、構築物には小ポリAが使用される。
【0060】
図2図2は、ハンチントン病(HD)の機序を示す概略図である。
【0061】
図3図3は、HD処置の例示的な方法を示す概略図である。
【0062】
図4図4は、HDに関する人工miRNAをスクリーニングするためのプロセスを示す概略図である。
【0063】
図5図5は、HTT遺伝子(またはmRNA)における人工miRNAの位置を示す概略図である。miHTT-H2は領域Iに位置し;miHTT-H4およびmiHTT-H5はCAGリピートの5’ジャンパーおよび3’ジャンパーに位置し;miHTT-H14は領域IVに位置し;miHTT-H15、H17、H19およびH21は領域Vに位置する。
【0064】
図6図6は、HTT遺伝子の領域を示す概略図である。CAGリピートは、領域Iに位置する。
【0065】
図7図7は、in vitroでのプラスミドトランスフェクションによる人工miRNAの1回目のスクリーニング(例えば、293細胞系において;第I期)を示す概略図である。
【0066】
図8-1】図8A~8Bは、293細胞におけるin vitroでのプラスミドトランスフェクションによる人工miRNAの1回目のスクリーニング(例えば、第I期)を示す一連の概略図およびグラフである。図8Aは、選択された人工miRNAおよびHTT遺伝子におけるそれらの標的領域を示す概略図である。図8Bは、人工miRNAが、共トランスフェクションによって、標的配列によるルシフェラーゼ遺伝子発現を阻害したことを示す棒グラフである。48時間の共トランスフェクション後に、pEMBL-CMV-hCGin-miHTT-H2およびmiHTT-H5は、pEMBL-CMV-hCGin(対照としての)と比較して、個々に、約46.4%および54.8%のルシフェラーゼ活性を効率的に阻害することができた。Pembl-CMV-hCGinに対して**p<0.01。
図8-2】同上。
【0067】
図9図9は、HDに関する人工miRNAをスクリーニングするためのプロセス(例えば、第I期)を示す概略図である。
【0068】
図10図10は、in vitroでのAAV感染による人工miRNAの2回目のスクリーニングを示す概略図である。
【0069】
図11-1】図11A~11Bは、ヒト神経細胞系U87(ヒト一次神経膠芽腫細胞系)におけるAAVRH10に媒介される人工miRNAの試験を示す一連の棒グラフである。図11Aは、ルシフェラーゼ活性を示し、図11Bは、対照と比較したルシフェラーゼ活性のパーセンテージを示す。図11A~11Bは、AAVRH10に媒介される人工miRNAが、in vitroでの標的配列によるルシフェラーゼ遺伝子発現を阻害したことを示す。そのそれぞれの標的配列と組み合わせたAAVRH10-CMV-hCGin-miHTT-H2およびH5をルシフェラーゼ遺伝子中に挿入し、AAVRH10-CMV-hCGin(対照としての)と比較して、約84.9%および76.9%、ルシフェラーゼ活性を大いに阻害した。AAVRH10-CMV-hCGinに対してp<0.05;***p<0.001。
図11-2】同上。
【0070】
図12図12は、ヒト神経細胞U87におけるHTTタンパク質に対する人工miRNAの阻害の試験(例えば、第I期)を示す概略図である。
【0071】
図13図13は、ヒト神経細胞系U87におけるHTTタンパク質レベルを示すウエスタンブロットを提示する。U87細胞におけるAAVRH10-CMV-hCGin-miHTT-H1~H5による処置後に、AAVRH10-CMV-hCGin-miHTT-H2、-miHTT-H4および-miHTT-H5によってHTTタンパク質発現が低減した。β-アクチンを負荷対照として使用する。
【0072】
図14図14は、ヒト神経細胞系U87におけるHTTウエスタンブロットの定量データを示す棒グラフである(例えば、図12を参照されたい)。HTTタンパク質発現は、AAVRH10-CMV-hCGin-miHTT-H2によって73.2%まで、miHTT-H4によって58.5%、およびmiHTT-H5によって41.5%まで阻害された。(p<0.05、**p<0.01、n=4)。
【0073】
図15図15は、HDに関する人工miRNAをスクリーニングするためのプロセス(例えば、第II期)を示す概略図である。
【0074】
図16図16は、in vitroでのプラスミドトランスフェクションによる人工miRNAの1回目のスクリーニング(例えば、293細胞系において;第II期)を示す概略図である。
【0075】
図17図17は、3’-UTRからの配列による2回目のスクリーニングを示す棒グラフである。人工miRNAは、共トランスフェクションによって標的配列によるルシフェラーゼ遺伝子発現を阻害した。2回目のスクリーニングでは、48時間の共トランスフェクション後に、pEMBL-CMV-hCGin-miHTT-H14、H15、H17、H19(miR-137)およびmiHTT-H21(miR-216)は、pEMBL-CMV-hCGin(対照としての)と比較して、ルシフェラーゼ活性を効率的に阻害した。MiHTT-H2、H4およびH5を陽性対照として使用した。筋強直性ジストロフィープロテインキナーゼ(DMPK)遺伝子を標的とするためのMiDMPK-M5、M7およびM9も、陰性対照として使用した。pEMBL-CMV-hCGinに対して***p<0.001。
【0076】
図18図18は、3’-UTRからの配列による2回目のスクリーニングを示す棒グラフである。人工miRNAは、共トランスフェクションによって標的配列によるルシフェラーゼ遺伝子発現を阻害した。48時間の共トランスフェクション後に、pEMBL-CMV-hCGin-miHTT-H14、H15、H17、H19(miR-137)およびmiHTT-H21(miR-216)は、pEMBL-CMV-hCGin(対照としての)と比較して、ルシフェラーゼ活性を効率的に阻害した。対照(100%)と比較して、ルシフェラーゼ活性は、個々に、2.45%(H14)、8.75%(H15)、9.2%(H17)、12.89%(miR-137)、および4.17%(miR-216)であった。MiHTT-H2、H4およびH5を陽性対照として使用した。DMPK遺伝子を標的とするためのMiDMPK-M5、M7およびM9も、陰性対照として使用した。pEMBL-CMV-hCGinに対して***p<0.001。
【0077】
図19図19は、3’-UTRからの配列による2回目のスクリーニングを示す概略図である。具体的には、概略図は、HTT遺伝子における人工miRNAの位置を示す。miHTT-H2は領域Iに位置し;miHTT-H4およびmiHTT-H5は、それぞれ、CAGリピートの5’ジャンパーおよび3’ジャンパーに位置し;miHTT-H14は領域IVに位置し;ならびにmiHTT-H15、H17、H19およびH21は領域Vに位置する。
【0078】
図20図20は、ヒト神経細胞U87におけるHTTタンパク質に対する人工miRNAの阻害の試験(例えば、第II期)を示す概略図である。
【0079】
図21図21は、HD患者由来のヒト線維芽細胞における人工miRNAの試験を示す概略図である。非限定的な例として、2~3番目に高い性能のmiHTTからトランスフェクトした/感染した試料を、オフターゲット分析を実施するために送ることができる。
【0080】
図22図22は、人工miRNA構築物を示す概略図である。EMBL-D(+)-Syn1-hCGintronは、対照として使用され、シナプシンプロモーターにより駆動される、エンプティヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)イントロン(すなわち、miRNAを有さない)を含む、二本鎖ベクターである。人工miHTT(約100~150bpの隣接する上流および下流配列を含む標的配列と完全一致)の2つのコピーをhCGイントロン間へとクローニングする。miHTTが成熟miRNAへとプロセシングされ得るかどうかを確認するために、CAG伸長を含むHTT標的配列(これは、成熟miRNAと完全に相補的である)は、ルシフェラーゼ遺伝子の後に挿入される。パッケージサイズの制限のために、構築物には小ポリAを使用する。Syn1はシナプシン1を表すことに留意されたい。
【0081】
図23-1】図23は、pEMBL-D(+)-Syn1-hCGin-2x miHTTのマップを示す概略図である。
図23-2】図23は、pEMBL-D(+)-Syn1-hCGin-2x miHTTのマップを示す概略図である。
【0082】
図24図24は、最適化されたCYP46A1の発現ベクターを示す概略図である。pAAV2.1-Syn1-GFP-sPAは、対照として使用される一本鎖ベクターである。pAAV2.1-Syn1-CYP46A1-sPAは、筋肉特異的プロモーターSyn1により駆動されるCYP46A1を過剰発現するために使用される。ベクターpAAV2.1-Syn1-CYP46A1-hCGin-2x miHTTは、組合せ構築物であり、CYP46A1と人工miHTTの2つのコピーの両方を同時に生成することができる。
【0083】
図25-1】図25は、pAAV2.1-Syn1-CYP46A1-hCGin-2x miHTTのマップを示す概略図である。
図25-2】図25は、pAAV2.1-Syn1-CYP46A1-hCGin-2x miHTTのマップを示す概略図である。
【0084】
図26図26は、人工miRNAをスクリーニングするプロセスおよびin vitroでのその標的配列の同定を示す概略図である。人工miRNA前駆体の2つのコピーを切断し、成熟miRNAへとプロセシングする。miRNAは、CAG伸長を含むHTT標的配列とさらに正確にマッチし、ルシフェラーゼ発現を阻害する。同時に、対照miRNAは、プロセシングもされ得るが、HTT標的配列と結びつくことができないため、これは、ルシフェラーゼの発現に影響を及ぼさない。この方法は、通常、in vitroでmiRNAの標的配列を同定するために利用される。
【0085】
図27図27は、miR-30前駆体の骨格に基づく人工miRNAの構築物を示す一連の概略図およびイメージならびに関連するブロットである。
【発明を実施するための形態】
【0086】
詳細な説明
本発明の態様は、対象に送達された場合に、対象における病原性ハンチンチンタンパク質(HTT)の発現を低減するために有効である、ある特定の干渉RNA(例えば、人工miRNAなどのmiRNA)に関する。したがって、本開示によって記載される方法および組成物は、一部の実施形態では、ハンチントン病の処置のために有用である。
阻害性RNA
【0087】
一態様では、ハンチントン病の処置のために使用することができる阻害性RNAが本明細書に記載される。態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、配列番号1~24のうちの1つまたは配列番号1~24の少なくとも1つと同じ機能(例えば、HTT阻害)を維持する、配列番号1~24の少なくとも1つの配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である配列を含む。
【0088】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0089】
記載された阻害性RNA(例えば、配列番号1~24)のいずれかの組合せは、例えば、本明細書に記載されているベクター、rAAV組成物、または処置方法において使用することができる。非限定的な例として、以下の組合せが具体的に企図される:配列番号1~22の少なくとも1つ;配列番号1~10の少なくとも1つ;配列番号1~5の少なくとも1つ;配列番号6~7の少なくとも1つ;配列番号8~10の少なくとも1つ;配列番号11~24の少なくとも1つ;配列番号11~14の少なくとも1つ;配列番号15~24の少なくとも1つ;配列番号15~22の少なくとも1つ;配列番号15~18の少なくとも1つ;配列番号19~22の少なくとも1つ;配列番号23~24の少なくとも1つ;配列番号1もしくは4~9の少なくとも1つ;配列番号2、4、5、14、15、17、19、もしくは21の少なくとも1つ;配列番号2、4、5、14、15、もしくは17の少なくとも1つ;配列番号2、4、もしくは5の少なくとも1つ;配列番号2もしくは5の少なくとも1つ;または配列番号14、15、17、19、もしくは21の少なくとも1つ;配列番号14、15、もしくは17の少なくとも1つ。
【0090】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、配列番号1~22のうちの1つまたは配列番号1~22の少なくとも1つと同じ機能(例えば、HTT阻害)を維持する、配列番号1~10の少なくとも1つの配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である配列を含む。
【0091】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAは、HTT遺伝子の領域I~III(例えば、CAGリピート、CAG5’ジャンパー、CAG3’ジャンパー;5’-UTR;またはエクソン1)のうちの少なくとも1つを標的とする。したがって、態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、配列番号1~10のうちの1つまたは配列番号1~10の少なくとも1つと同じ機能(例えば、HTT阻害)を維持する、配列番号1~10の少なくとも1つの配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である配列を含む。
【0092】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAは、HTT遺伝子の領域I(例えば、CAGリピート、CAG5’ジャンパー、またはCAG3’ジャンパー)を標的とする。したがって、態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、配列番号1~5のうちの1つまたは配列番号1~5の少なくとも1つと同じ機能(例えば、HTT阻害)を維持する、配列番号1~5の少なくとも1つの配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である配列を含む。
【0093】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAは、HTT遺伝子の領域II(例えば、5’-UTR)を標的とする。したがって、態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、配列番号6~7のうちの1つまたは配列番号6~7の少なくとも1つと同じ機能(例えば、HTT阻害)を維持する、配列番号6~7の少なくとも1つの配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である配列を含む。
【0094】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAは、HTT遺伝子の領域III(エクソン1)を標的とする。したがって、態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、配列番号8~10のうちの1つまたは配列番号8~10の少なくとも1つと同じ機能(例えば、HTT阻害)を維持する、配列番号8~10の少なくとも1つの配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である配列を含む。
【0095】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAは、HTT遺伝子の領域VI~V(例えば、エクソン2~67または3’UTR)のうちの少なくとも1つを標的とする。したがって、態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、配列番号11~24のうちの1つまたは配列番号11~24の少なくとも1つと同じ機能(例えば、HTT阻害)を維持する、配列番号11~24の少なくとも1つの配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である配列を含む。
【0096】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAは、HTT遺伝子の領域VI(例えば、エクソン2~67)を標的とする。したがって、態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、配列番号11~14のうちの1つまたは配列番号11~14の少なくとも1つと同じ機能(例えば、HTT阻害)を維持する、配列番号11~14の少なくとも1つの配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である配列を含む。
【0097】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAは、HTT遺伝子の領域IIIおよびVI(例えば、5’-UTRおよびエクソン2~67)を標的とする。したがって、態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、配列番号8または13のうちの1つまたは配列番号8または13の少なくとも1つと同じ機能(例えば、HTT阻害)を維持する、配列番号8または13の少なくとも1つの配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である配列を含む。
【0098】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAは、HTT遺伝子の領域V(例えば、3’UTR)を標的とする。したがって、態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、配列番号15~24のうちの1つまたは配列番号15~24の少なくとも1つと同じ機能(例えば、HTT阻害)を維持する、配列番号15~24の少なくとも1つの配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である配列を含む。
【0099】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAは、HTT遺伝子の領域V(例えば、3’UTR)を標的とする。したがって、態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、配列番号15~22のうちの1つまたは配列番号15~22の少なくとも1つと同じ機能(例えば、HTT阻害)を維持する、配列番号15~22の少なくとも1つの配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である配列を含む。
【0100】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAは、HTT遺伝子の領域V(例えば、3’UTR)を標的とし、人工miRNAである。したがって、態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、配列番号15~18のうちの1つまたは配列番号15~18の少なくとも1つと同じ機能(例えば、HTT阻害)を維持する、配列番号15~18の少なくとも1つの配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である配列を含む。
【0101】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAは、HTT遺伝子の領域V(例えば、3’UTR)を標的とし、ヒト発現miRNAである。したがって、態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、配列番号19~22のうちの1つまたは配列番号19~22の少なくとも1つと同じ機能(例えば、HTT阻害)を維持する、配列番号19~22の少なくとも1つの配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である配列を含む。
【0102】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAは、HTT遺伝子の領域V(例えば、3’UTR)を標的とする。したがって、態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、配列番号23~24のうちの1つまたは配列番号23~24の少なくとも1つと同じ機能(例えば、HTT阻害)を維持する、配列番号23~24の少なくとも1つの配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である配列を含む。態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、配列番号23~24のうちの1つまたは配列番号23~24の少なくとも1つと同じ機能(例えば、HTT阻害)を維持する、配列番号23~24の少なくとも1つの配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である配列を含まない。
【0103】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、配列番号1または4~9のうちの1つまたは配列番号1または4~9の少なくとも1つと同じ機能(例えば、HTT阻害)を維持する、配列番号1または4~9の少なくとも1つの配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である配列を含む。
【0104】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、配列番号2、4、5、14、15、17、19、21のうちの1つまたは配列番号2、4、5、14、15、17、19、21の少なくとも1つと同じ機能(例えば、HTT阻害)を維持する、配列番号2、4、5、14、15、17、19、21の少なくとも1つの配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である配列を含む。
【0105】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、配列番号2、4、5、14、15、17のうちの1つまたは配列番号2、4、5、14、15、17、の少なくとも1つと同じ機能(例えば、HTT阻害)を維持する、配列番号2、4、5、14、15、17の少なくとも1つの配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である配列を含む。
【0106】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、配列番号2、4、5のうちの1つまたは配列番号2、4、5の少なくとも1つと同じ機能(例えば、HTT阻害)を維持する、配列番号2、4、5の少なくとも1つの配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である配列を含む。
【0107】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、配列番号2、5のうちの1つまたは配列番号2または5の少なくとも1つと同じ機能(例えば、HTT阻害)を維持する、配列番号2または5の少なくとも1つの配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である配列を含む。
【0108】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、配列番号14、15、17、19、21のうちの1つまたは配列番号14、15、17、19、21の少なくとも1つと同じ機能(例えば、HTT阻害)を維持する、配列番号14、15、17、19、21の少なくとも1つの配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である配列を含む。
【0109】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、配列番号14、15、17のうちの1つまたは配列番号14、15、17の少なくとも1つと同じ機能(例えば、HTT阻害)を維持する、配列番号14、15、17の少なくとも1つの配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である配列を含む。
【0110】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、miHTT-H2(配列番号2)を含む。態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、miHTT-H4(配列番号4)を含む。態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、miHTT-H5(配列番号5)を含む。態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、miHTT-H14(配列番号14)を含む。態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、miHTT-H15(配列番号15)を含む。態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、miHTT-H17(配列番号17)を含む。態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、miHTT-H19(配列番号19;miR-137)を含む。態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、miHTT-H21(配列番号21;miR-216)を含む。
【0111】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、miRNA)は、HTT核酸(例えば、配列番号25を参照されたい)の少なくとも1部分に結合するおよび/またはそれを標的とする。態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、miRNA)は、HTT核酸(例えば、mRNA)の5’非翻訳領域に結合するおよび/またはそれを標的とする。
【0112】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、miRNA)は、標的(例えば、HTT)のエクソン1(すなわち、ポリペプチドをコードする第1の核酸セグメント)に結合するおよび/またはそれを標的とする。
【0113】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、miRNA)は、HTT核酸(例えば、mRNA)のCAGリピートに結合するおよび/またはそれを標的とする。用語「CAGリピート」は、CAGトリヌクレオチド(すなわち、シトシン、アデニン、およびグアニン)リピートを含むHTT遺伝子のエクソン1の領域を指す。通常、CAGトリヌクレオチドは、HTT遺伝子内で10~35回反復され得る。ハンチントン病を有する個体では、CAGセグメントは、36~120回より多く反復され得る。
【0114】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、miRNA)は、HTT核酸(例えば、mRNA)のCAG5’-ジャンパーに結合するおよび/またはそれを標的とする。用語「CAG5’-ジャンパー」は、エクソン1の3’末端およびCAGリピートの5’末端を含むHTT遺伝子の領域を指す。
【0115】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、miRNA)は、HTT核酸(例えば、mRNA)のCAG3’ジャンパーに結合するおよび/またはそれを標的とする。用語「CAG3’-ジャンパー」は、CAGリピートの3’末端およびエクソン2~67の5’末端を含むHTT遺伝子の領域を指す。
【0116】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、miRNA)は、HTT核酸(例えば、mRNA)のエクソン2~67に結合するおよび/またはそれを標的とする。用語、HTT遺伝子の「エクソン2~67」は、HTT遺伝子のエクソン2~エクソン67からなる領域を指す。態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、miRNA)は:HTT核酸(例えば、mRNA)のエクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、エクソン19、エクソン20、エクソン21、エクソン22、エクソン23、エクソン24、エクソン25、エクソン26、エクソン27、エクソン28、エクソン29、エクソン30、エクソン31、エクソン32、エクソン33、エクソン34、エクソン35、エクソン36、エクソン37、エクソン38、エクソン39、エクソン40、エクソン41、エクソン42、エクソン43、エクソン44、エクソン45、エクソン46、エクソン47、エクソン48、エクソン49、エクソン50、エクソン51、エクソン52、エクソン53、エクソン54、エクソン55、エクソン56、エクソン57、エクソン58、エクソン59、エクソン60、エクソン61、エクソン62、エクソン63、エクソン64、エクソン65、エクソン66、またはエクソン67の少なくとも1つに結合するおよび/またはそれを標的とする。
【0117】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、miRNA)は、HTT核酸(例えば、mRNA)の3’非翻訳領域(UTR)に結合するおよび/またはそれを標的とする。
【0118】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、miRNA)は、標的(例えば、HTT)の5’UTR、エクソン1、CAGリピート、CAG5’-ジャンパー、またはCAG3’ジャンパーに結合するおよび/またはそれを標的とする。態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、miRNA)は、標的(例えば、HTT)のエクソン2~67または3’UTRに結合するおよび/またはそれを標的とする。態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、miRNA)は、標的(例えば、HTT)の5’UTR、エクソン1、CAGリピート、CAG5’-ジャンパー、CAG3’ジャンパーに結合するおよび/またはそれを標的とする。
【0119】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、miRNA)は、HTT核酸(例えば、mRNA)における少なくとも1つの結合部位に結合する。態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、miRNA)は、HTT核酸(例えば、mRNA)における少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または少なくとも20個の結合部位に結合する。
【0120】
態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、miRNA)は、ヒト、非ヒト霊長類、またはマウスのHTT核酸(例えば、mRNA)に結合するおよび/またはそれを標的とする。態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、miRNA)は、ヒト、非ヒト霊長類、およびマウスのHTT核酸(例えば、mRNA)に結合するおよび/またはそれを標的とする。態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、miRNA)は、ヒトのHTT核酸(例えば、mRNA)に結合するおよび/またはそれを標的とする。態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、miRNA)は、非ヒト霊長類のHTT核酸(例えば、mRNA)に結合するおよび/またはそれを標的とする。態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、miRNA)は、マウスのHTT核酸(例えば、mRNA)に結合するおよび/またはそれを標的とする。態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNA(例えば、miRNA)は、ヒトおよび非ヒト霊長類のHTT核酸(例えば、mRNA)に結合するおよび/またはそれを標的とする。
【0121】
態様のいずれかの一部の実施形態では、ハンチントン病を処置する薬剤は、阻害性核酸である。態様のいずれかの一部の実施形態では、所与の遺伝子の発現の阻害剤は、阻害性核酸であってもよい。本明細書で使用される場合、「阻害性核酸」は、標的、例えば、二本鎖RNA(dsRNA)、阻害性RNA(iRNA)などの発現を阻害することができる核酸分子を指す。
【0122】
二本鎖RNA分子(dsRNA)は、RNA干渉(RNAi)として公知の高度に保存された調節機序において遺伝子発現を遮断することが示されている。本明細書に記載の阻害性核酸は、30ヌクレオチド長またはそれより短い、すなわち、15~30ヌクレオチド長、一般に、19~24ヌクレオチド長である領域(この領域は、少なくとも部分的に標的mRNA転写物に対して実質的に相補的である)を有するRNA鎖(アンチセンス鎖)を含み得る。これらのiRNAの使用によって、mRNA転写物の標的化された分解が可能となり、標的の発現および/または活性の低下がもたらされる。
【0123】
本明細書で使用される場合、用語「iRNA」は、RNA(または本明細書において以下に記載されている修飾された核酸)を含有し、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)経路を介するRNA転写物の標的化された切断を媒介する、作用因子を指す。態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されているiRNAは、標的の発現および/または活性の阻害をもたらす。態様のいずれかの一部の実施形態では、細胞を阻害剤(例えば、iRNA)と接触させることにより、iRNAが存在しない細胞中に見られる標的mRNAレベルの少なくとも約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%、最大100%(100%を含む)まで、細胞中の標的mRNAレベルの低下をもたらす。態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害剤(例えば、iRNA)を対象に投与することにより、iRNAが存在しない対象中に見られる標的mRNAレベルの少なくとも約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%、最大100%(100%を含む)まで、対象中の標的mRNAレベルの低下をもたらす。
【0124】
態様のいずれかの一部の実施形態では、iRNAは、dsRNAであってもよい。dsRNAは、dsRNAが使用される条件下で、ハイブリダイズして二本鎖構造を形成するのに十分に相補的である2本のRNA鎖を含む。dsRNAのうちの一方の鎖(アンチセンス鎖)は、標的配列に対して、実質的に相補的であり、一般には、完全に相補的である相補的領域を含む。標的配列は、標的の発現中に形成されるmRNAの配列に由来してもよく、例えば、標的配列は、1つまたは複数のイントロン境界にまたがっていてもよい。他方の鎖(センス鎖)は、2本の鎖がハイブリダイズし、好適な条件下で組み合わされた場合に二本鎖構造を形成するように、アンチセンス鎖に対して相補的である領域を含む。一般に、二本鎖構造は、長さが15から30塩基対の間(両端を含む)、より一般的には長さが18から25塩基対の間(両端を含む)、なおより一般的には長さが19から24塩基対の間(両端を含む)、および最も一般的には長さが19から21塩基対の間(両端を含む)である。同様に、標的配列に対して相補的である領域は、長さが15から30塩基対の間(両端を含む)、より一般的には長さが18から25塩基対の間(両端を含む)、なおより一般的には長さが19から24塩基対の間(両端を含む)、および最も一般的には長さが19から21塩基対のヌクレオチド長の間(両端を含む)である。態様のいずれかの一部の実施形態では、dsRNAは、15から20ヌクレオチド長の間(両端を含む)であり、他の実施形態では、dsRNAは、25から30ヌクレオチド長の間(両端を含む)である。当業者が認識するように、切断のために標的化されるRNAの標的領域は、殆どの場合、より大きなRNA分子(mRNA分子であることが多い)の一部である。関連する場合、mRNA標的の「一部」は、RNAi指向性切断(すなわち、RISC経路を介する切断)のための基質であるのに十分な長さのmRNA標的の連続配列である。9塩基対程度の短い二本鎖を有するdsRNAは、一部の状況下で、RNAi特異的RNA切断を媒介することができる。殆どの場合、標的は、少なくとも15ヌクレオチド長、好ましくは15~30ヌクレオチド長である。
【0125】
阻害性核酸の種類の例示的な実施形態は、例えば、当技術分野で周知である、siRNA、shRNA、miRNA、および/またはamiRNAを含んでもよい。
【0126】
態様のいずれかの一部の実施形態では、ハンチントン病を処置するための阻害性RNAは、miRNAである。microRNA(miRNA)は、17~25ヌクレオチドの小RNAであり、真核生物において遺伝子発現の調節因子として機能する。miRNAは、一次miRNA(pri-miRNA)と呼ばれる長い転写一次産物の一部として、核において最初に発現される。核の内側では、pri-miRNAは、酵素Droshaによって部分的に消化され、65~120ヌクレオチド長のヘアピン前駆体miRNA(pre-miRNA)を形成し、これは、細胞質に輸送され、ダイサー(Dicer)によってさらにプロセシングされて、活性分子であるより短い成熟miRNAとなる。動物では、これらの短いRNAは、miRNAの、標的mRNAの3’非翻訳領域(3’-UTR)に対する対合特異性の一次決定因子であると考えられる、5’近位「シード」領域(2~8ヌクレオチド)を含む。より詳細な説明は、一般的定義を提供する部分において与えられる。
【0127】
本発明の文脈では、miRNA分子またはその等価物もしくは模倣体もしくはisomiRは、合成miRNAもしくは天然miRNAもしくは組換えmiRNAもしくは成熟miRNAもしくは成熟miRNAの一部もしくはヒトmiRNAであってもよく、または一般的定義を提供する部分においてさらに定義されるヒトmiRNAに由来してもよい。ヒトmiRNA分子は、ヒトの細胞、組織、臓器または体液において見られるmiRNA分子(すなわち、内因性ヒトmiRNA分子)である。ヒトmiRNA分子は、ヌクレオチドの置換、欠失および/または付加によって内因性ヒトmiRNA分子に由来するヒトmiRNA分子であってもよい。miRNA分子またはその等価物もしくは模倣体は、一本鎖RNA分子であっても二本鎖RNA分子であってもよい。好ましくは、miRNA分子またはその等価物、もしくは模倣体は、6~30ヌクレオチド長、好ましくは12~30ヌクレオチド長、好ましくは15~28ヌクレオチド長であり、より好ましくは、前記分子は、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長またはそれより大きい長さを有する。
【0128】
好ましい実施形態では、miRNA分子またはその等価物、模倣体もしくはisomiRは、前記miRNA分子またはその等価物もしくは模倣体もしくはisomiRのシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6ヌクレオチドを含む。好ましくは、この実施形態では、miRNA分子またはその等価物もしくは模倣体もしくはisomiRは、6~30ヌクレオチド長であり、より好ましくは、前記miRNA分子またはその等価物のシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6ヌクレオチドを含む。さらにより好ましくは、miRNA分子またはその等価物もしくは模倣体もしくはisomiRは、15~28ヌクレオチド長であり、より好ましくは、シード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6ヌクレオチドを含み、さらにより好ましくは、miRNA分子は、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長またはそれより大きい長さを有する。
【0129】
したがって、好ましいmiRNA分子またはその等価物もしくは模倣体もしくはisomiRは、配列番号1~24の少なくとも1つとして同定されるシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6ヌクレオチドを含み、より好ましくは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長またはそれより大きい長さを有する。
【0130】
miRNAのための送達ビヒクルとしては、以下に限定されないが:リポソーム、ポリマーナノ粒子、ウイルス系、脂質または受容体結合分子のコンジュゲーション、エキソソーム、およびバクテリオファージが挙げられる;例えば、そのそれぞれの内容が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、Baumann and Winkler, miRNA-based therapies: Strategies and delivery platforms for oligonucleotide and non-oligonucleotide agents, Future Med Chem. 2014, 6(17): 1967-1984;米国特許第8,900,627号;米国特許第9,421,173号;米国特許第9,555,060号;WO2019/177550を参照されたい。
核酸
【0131】
一部の態様では、本開示は、ヒトハンチンチン(HTT)の発現を低減する(例えば、阻害する)ために有用である、単離された核酸を提供する。「核酸」配列は、DNAまたはRNAの配列を指す。一部の実施形態では、本開示のタンパク質および核酸は、単離されている。本明細書で使用される場合、用語「単離された」は、人工的に生じたことを意味する。核酸に関して本明細書で使用される場合、用語「単離された」は:(i)in vitroで、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅された;(ii)クローニングによって組換え生成された;(iii)切断およびゲル分離によってなど、精製された;または(iv)例えば、化学合成によって合成されたことを意味する。単離された核酸は、当技術分野で周知の組換えDNA技法によって容易に操作可能であるものである。よって、5’および3’制限部位が知られているか、またはそれに対するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマー配列が開示されている、ベクター中に含有されるヌクレオチド配列は、単離されたと考えられるが、その天然の宿主中にネイティブの状態で存在する核酸配列はそうではない。単離された核酸は、実質的に精製されていてもよいが、そうである必要はない。例えば、クローニングまたは発現ベクター内で単離された核酸は、その物質が存在している細胞内において、その物質をほんのわずかなパーセンテージしか含まない可能性があるという点で純粋ではない。しかしながら、このような核酸は、当業者に公知の標準的技法によって容易に操作可能であるという理由でこの用語が使用されるため、このような核酸は単離されている。タンパク質またはペプチドに関して本明細書で使用される場合、用語「単離された」は、その天然の環境から単離されたかまたは人工的に生成した(例えば、化学合成によって、組換えDNA技術によってなど)タンパク質またはペプチドを指す。
【0132】
当業者は、キャプシドタンパク質の機能的に等価なバリアント、またはホモログを提供するために、保存的アミノ酸置換がなされ得ることも認識する。一部の態様では、本開示は、保存的アミノ酸置換をもたらす配列の変更を包含する。本明細書で使用される場合、保存的アミノ酸置換は、アミノ酸置換がなされるタンパク質の相対的変化またはサイズの特徴を変更しないアミノ酸置換を指す。バリアントは、このような方法を編集する参照文献、例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, J. Sambrook, et al., eds., Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989、またはCurrent Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel, et al., eds., John Wiley & Sons, Inc., New Yorkに見られるような、当業者に公知のポリペプチド配列を変更するための方法に従って調製され得る。アミノ酸の保存的置換には、以下の群内のアミノ酸の間でなされる置換が含まれる:(a)M、I、L、V;(b)F、Y、W;(c)K、R、H;(d)A、G;(e)S、T;(f)Q、N;および(g)E、D。したがって、本明細書に開示されるタンパク質およびポリペプチドのアミノ酸配列に対して保存的アミノ酸置換がなされ得る。
【0133】
本発明の単離された核酸は、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(rAAVベクター)であってもよい。一部の実施形態では、本開示によって記載されている単離された核酸は、第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)末端逆位反復配列(ITR)、またはそのバリアントを含む領域(例えば、第1の領域)を含む。単離された核酸(例えば、組換えAAVベクター)は、キャプシドタンパク質中にパッケージングされ、対象に投与されてもよいおよび/または選択される標的細胞に送達されてもよい。「組換えAAV(rAAV)ベクター」は、典型的には、最小限、導入遺伝子およびその調節配列、ならびに5’および3’AAV末端逆位反復配列(ITR)から構成される。導入遺伝子は、本明細書の他の箇所に開示されるように、対象の内因性mRNAを標的とする核酸を含む1つまたは複数の阻害性RNA(例えば、miRNA)をコードする1つまたは複数の領域を含んでもよい。導入遺伝子は、本開示の他の箇所に記載されているように、例えば、タンパク質をコードする領域および/または発現対照配列(例えば、ポリAテール)を含んでもよい。
【0134】
一般に、ITR配列は、約145bpの長さである。好ましくは、ITRをコードする全配列が分子中で実質的に使用されるが、これらの配列のある程度のマイナーな修飾は許容される。これらのITR配列を修飾する能力は、当技術分野の技術の範囲内である。(例えば、Sambrook et al., ”Molecular Cloning. A Laboratory Manual”, 2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1989);およびK. Fisher et al., J Virol., 70:520 532 (1996)などの本文を参照されたい)。本発明において用いられるこのような分子の例は、導入遺伝子を含有する「シス作用」プラスミドであり、ここで、選択される導入遺伝子配列および関連する調節エレメントは、5’および3’AAV ITR配列に挟まれている。AAV ITR配列は、本発明によって同定した哺乳動物AAV型を含む、いずれかの公知のAAVから得られてもよい。一部の実施形態では、単離された核酸(例えば、rAAVベクター)は、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAVrh10、およびそのバリアントから選択される血清型を有する少なくとも1つのITRを含む。一部の実施形態では、単離された核酸は、AAV2 ITRをコードする領域(例えば、第1の領域)を含む。
【0135】
一部の実施形態では、単離された核酸は、第2のAAV ITRを含む領域(例えば、第2の領域、第3の領域、第4の領域など)をさらに含む。一部の実施形態では、第2のAAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAVrh10、およびそのバリアントから選択される血清型を有する。一部の実施形態では、第2のITRは、機能的末端分離部位(TRS)を欠く変異体ITRである。用語「末端分離部位を欠く」は、ITRの末端分離部位(TRS)の機能を妨げる変異(例えば、非同義の変異などのセンス変異、またはミスセンス変異)を含むAAV ITR、または機能的TRSをコードする核酸配列を欠く切断されたAAV ITR(例えば、ATRS ITR)を指し得る。いずれかの特定の理論によって拘束されることを望むものではないが、機能的TRSを欠くITRを含むrAAVベクターは、例えばMcCarthy (2008) Molecular Therapy 16(10): 1648-1656に記載されている、自己相補的rAAVベクターを生じる。
【0136】
組換えAAVベクターに関して上記で確認された主要なエレメントに加えて、ベクターは、ベクターによりトランスフェクトされたか、または本発明によって生成されたウイルスに感染した細胞内で、その転写、翻訳および/または発現を可能にするように、導入遺伝子のエレメントと作動可能に連結している従来の制御エレメントも含む。本明細書で使用される場合、「作動可能に連結した」配列は、目的の遺伝子と連続している発現制御配列と目的の遺伝子を制御するためにトランスまたは遠位で作用する発現制御配列との両方を含む。発現制御配列は、適切な転写開始配列、停止配列、プロモーター配列およびエンハンサー配列;スプライシングシグナルおよびポリアデニル化(ポリA)シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を増強する配列(すなわち、コザックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を増強する配列;および所望の場合、コードされた産物の分泌を増強する配列を含む。ネイティブの、構成的な、誘導性のおよび/または組織特異的なプロモーターを含むいくつかの発現制御配列は、当技術分野で公知であり、利用することができる。
【0137】
本明細書で使用される場合、核酸配列(例えば、コード配列)および調節配列は、核酸配列の発現または転写を、調節配列の影響下または制御下に置くように、共有結合によって連結される場合に、作動可能に連結されたと言われる。核酸配列が機能的タンパク質へと翻訳されることが望ましい場合、2つのDNA配列は、5’調節配列におけるプロモーターの誘導によって、コード配列の転写がもたらされる場合、および2つのDNA配列間の連結の性質が(1)フレームシフト変異の導入をもたらさない、(2)プロモーター領域のコード配列の転写を指示する能力を妨げない、または(3)対応するRNA転写物のタンパク質へと翻訳される能力を妨げない場合に、作動可能に連結したと言われる。よって、プロモーター領域は、プロモーター領域が、得られる転写物が所望のタンパク質またはポリペプチドへと翻訳され得るように、そのDNA配列の転写を引き起こすことが可能である場合に、核酸配列に作動可能に連結しているであろう。同様に、2つまたはそれより多いコード領域は、共通のプロモーターからのそれらの転写が、インフレームの翻訳された2つまたはそれより多いタンパク質の発現をもたらすように、それらが連結されている場合に、作動可能に連結されている。一部の実施形態では、作動可能に連結されたコード配列は、融合タンパク質をもたらす。一部の実施形態では、作動可能に連結したコード配列は、機能的RNA(例えば、miRNA)をもたらす。
【0138】
一部の態様では、本開示は、導入遺伝子を含む単離された核酸であって、導入遺伝子が、1つまたは複数のmicroRNA(例えば、miRNA)をコードする核酸配列を含む、単離された核酸を提供する。「microRNA」または「miRNA」は、転写または翻訳後の遺伝子サイレンシングを媒介することが可能な非コードRNAの低分子である。典型的には、miRNAは、pre-miRNAへと酵素的に処理される(例えば、Drosha、DGCR8、Pashaなどによって)、一次miRNA(pri-miRNA)と称される、ヘアピンまたはステムループ(例えば、自己相補的な、一本鎖骨格を有する)二本鎖構造として転写される。pri-miRNAの長さは様々であってよい。一部の実施形態では、pri-miRNAは約100~約5000塩基対(例えば、約100、約200、約500、約1000、約1200、約1500、約1800、または約2000塩基対)の長さの範囲である。一部の実施形態では、pri-miRNAは、200塩基対を超える長さ(例えば、2500、5000、7000、9000、またはそれより多い塩基対の長さ)である。
【0139】
ヘアピンまたはステムループ二本鎖構造によっても特徴付けられるpre-miRNAの長さも様々であってよい。一部の実施形態では、pre-miRNAは、約40塩基対の長さから約500塩基対の長さのサイズの範囲内である。一部の実施形態では、pre-miRNAは、約50~100塩基対の長さのサイズの範囲内である。一部の実施形態では、pre-miRNAは、約50~約90塩基対の長さ(例えば、約50、約52、約54、約56、約58、約60、約62、約64、約66、約68、約70、約72、約74、約76、約78、約80、約82、約84、約86、約88、または約90塩基対の長さ)のサイズの範囲内である。
【0140】
一般に、pre-miRNAは、細胞質中に輸送され、ダイサーによって酵素的に処理され、最初に不完全なmiRNA/miRNA二本鎖、次いで一本鎖の成熟miRNA分子を生じ、これは、次に、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)中に負荷される。典型的には、成熟miRNA分子は、約19~約30塩基対の長さのサイズの範囲内である。一部の実施形態では、成熟miRNA分子は、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、または30塩基対の長さである。一部の実施形態では、本開示の単離された核酸は、配列番号1~24のいずれか1つに示される配列を含むpri-miRNA、pre-miRNA、または成熟miRNAをコードする配列を含む。
【0141】
単離された核酸またはベクター(例えば、rAAVベクター)が、一部の実施形態では、2以上の(例えば、複数、例えば、2、3、4、5、10、またはそれより多い)miRNAをコードする核酸配列を含むことが認識されるべきである。一部の実施形態では、2以上のmiRNAのそれぞれは、同じ標的遺伝子(例えば、各miRNAがHTT遺伝子を標的とする、3つの固有のmiRNAをコードする単離された核酸)を標的とする(例えば、それにハイブリダイズするかまたは特異的に結合する)。一部の実施形態では、2以上のmiRNAのそれぞれは、同じ標的遺伝子(例えば、HTT)の異なる領域を標的とする(例えば、それにハイブリダイズするかまたは特異的に結合する)。一部の実施形態では、2以上のmiRNAのそれぞれは、異なる標的遺伝子を標的とする(例えば、それにハイブリダイズするかまたは特異的に結合する)。
【0142】
一部の態様では、本開示は、1つまたは複数の人工miRNAをコードする単離された核酸およびベクター(例えば、rAAVベクター)を提供する。本明細書で使用される場合、「人工miRNA」または「amiRNA」は、miRNAおよびmiRNA(例えば、miRNA二本鎖のパッセンジャー鎖)の配列が、例えば、Eamens et al. (2014), Methods Mol. Biol. 1062:211- 224に記載されているように、標的遺伝子の非常に効率的なRNAサイレンシングを指示する、対応するamiRNA/amiRNA配列で置き換えられている、内因性pri-miRNAまたはpre-miRNA(例えば、機能的成熟miRNAを生じることが可能な前駆体miRNAである、miRNA骨格)を指す。例えば、一部の実施形態では、人工miRNAは、成熟HTT特異的miRNA(例えば、配列番号1~24のいずれか1つ)をコードする配列が、内因性miR-155成熟miRNAコード配列の代わりに挿入されているmiR-155 pri-miRNA骨格を含む。一部の実施形態では、本開示に記載されているmiRNA(例えば、人工miRNA;例えば、配列番号1~24のうちの1つ)は、miR-155骨格配列、miR-30骨格配列、mir-64骨格配列、またはmiR-122骨格配列を含む。一部の実施形態では、本開示に記載されているmiRNA(例えば、人工miRNA;例えば、配列番号1~24のうちの1つ)は、配列番号35に開示されている骨格を含む。
【0143】
導入遺伝子を含む領域(例えば、第2の領域、第3の領域、第4の領域など)は、単離された核酸のいずれかの好適な場所に置かれてもよい。領域は、例えば、イントロン、5’または3’非翻訳領域などを含む核酸のいずれかの非翻訳部分に置かれてもよい。
【0144】
一部の場合には、領域(例えば、第2の領域、第3の領域、第4の領域など)を、タンパク質をコードする核酸配列(例えば、タンパク質コード配列)の最初のコドンの上流に置くことが望ましい場合がある。例えば、領域は、タンパク質コード配列の最初のコドンと最初のコドンの2000ヌクレオチド上流との間に置かれてもよい。領域は、タンパク質コード配列の最初のコドンと最初のコドンの1000ヌクレオチド上流との間に置かれてもよい。領域は、タンパク質コード配列の最初のコドンと最初のコドンの500ヌクレオチド上流との間に置かれてもよい。領域は、タンパク質コード配列の最初のコドンと最初のコドンの250ヌクレオチド上流との間に置かれてもよい。領域は、タンパク質コード配列の最初のコドンと最初のコドンの150ヌクレオチド上流との間に置かれてもよい。一部の場合には(例えば、導入遺伝子がタンパク質コード配列を欠く場合には)、領域(例えば、第2の領域、第3の領域、第4の領域など)を導入遺伝子のポリAテールの上流に置くことが望ましい場合がある。例えば、領域は、ポリAテールの最初の塩基と最初の塩基の2000ヌクレオチド上流との間に置かれてもよい。領域は、ポリAテールの最初の塩基と最初の塩基の1000ヌクレオチド上流との間に置かれてもよい。領域は、ポリAテールの最初の塩基と最初の塩基の500ヌクレオチド上流との間に置かれてもよい。領域は、ポリAテールの最初の塩基と最初の塩基の250ヌクレオチド上流との間に置かれてもよい。領域は、ポリAテールの最初の塩基と最初の塩基の150ヌクレオチド上流との間に置かれてもよい。領域は、ポリAテールの最初の塩基と最初の塩基の100ヌクレオチド上流との間に置かれてもよい。領域は、ポリAテールの最初の塩基と最初の塩基の50ヌクレオチド上流との間に置かれてもよい。領域は、ポリAテールの最初の塩基と最初の塩基の20ヌクレオチド上流との間に置かれてもよい。一部の実施形態では、領域は、プロモーター配列の最後のヌクレオチド塩基とポリAテール配列の最初のヌクレオチド塩基との間に置かれている。
【0145】
一部の場合には、領域は、導入遺伝子のポリAテールの最後の塩基の下流に置かれてもよい。領域は、ポリAテールの最後の塩基と最後の塩基の2000ヌクレオチド下流の位置との間にあってもよい。領域は、ポリAテールの最後の塩基と最後の塩基の1000ヌクレオチド下流の位置との間にあってもよい。領域は、ポリAテールの最後の塩基と最後の塩基の500ヌクレオチド下流の位置との間にあってもよい。領域は、ポリAテールの最後の塩基と最後の塩基の250ヌクレオチド下流の位置との間にあってもよい。領域は、ポリAテールの最後の塩基と最後の塩基の150ヌクレオチド下流の位置との間にあってもよい。
【0146】
導入遺伝子が2以上のmiRNAをコードする場合には、各miRNAが導入遺伝子内の任意の好適な場所に置かれてもよいことが認識されるべきである。例えば、第1のmiRNAをコードする核酸は、導入遺伝子のイントロン中に置かれてもよく、第2のmiRNAをコードする核酸配列は、別の非翻訳領域(例えば、タンパク質コード配列の最後のコドンと導入遺伝子のポリAテールの最初の塩基との間)に置かれてもよい。
【0147】
一部の実施形態では、導入遺伝子は、1つまたは複数の発現制御配列(例えば、プロモーターなど)をコードする核酸配列をさらに含む。発現制御配列としては、適切な転写開始配列、停止配列、プロモーター配列およびエンハンサー配列;スプライシングシグナルおよびポリアデニル化(ポリA)シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を増強する配列(すなわち、コザックコンセンサス配列);タンパク質安定性を増強する配列;ならびに所望の場合に、コードされた産物の分泌を増強する配列が挙げられる。ネイティブの、構成的な、誘導性のおよび/または組織特異的なプロモーターを含む多数の発現制御配列は、当技術分野で公知であり、利用することができる。
【0148】
「プロモーター」は、遺伝子の特異的転写を開始するために必要とされる、細胞の合成機構によって認識されるか、または合成機構に導入されるDNA配列を指す。句「動作可能に置かれる」、「制御下」または「転写制御下」は、プロモーターが、RNAポリメラーゼの開始および遺伝子の発現を制御するために、核酸に関して正しい位置および方向にあることを意味する。
【0149】
タンパク質をコードする核酸では、ポリアデニル化配列は、一般に、導入遺伝子配列の後であって3’AAV ITR配列の前に挿入される。本開示において有用なrAAV構築物は、プロモーター/エンハンサー配列と導入遺伝子の間に位置することが望ましい、イントロンも含有し得る。1つの可能なイントロン配列は、SV-40に由来し、SV-40 Tイントロン配列と称される。使用することができる別のベクターエレメントは、配列内リボソーム進入部位(IRES)である。IRES配列は、単一の遺伝子転写物から2つ以上のポリペプチドを生成するために使用される。IRES配列は、2つ以上のポリペプチド鎖を含有するタンパク質を生成するために使用されることになる。これらのおよび他の一般的なベクターエレメントの選択は従来通りであり、多くのこのような配列が利用可能である(例えば、Sambrook et al.、およびその中の例えば、3.18 3.26および16.17 16.27頁で引用された参照文献ならびにAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, 1989を参照されたい)。一部の実施形態では、口蹄疫ウイルス2A配列は、ポリタンパク質中に含まれ;これはポリタンパク質の切断を媒介することが示されている小ペプチド(およそ18アミノ酸長)である(Ryan, M D et al., EMBO, 1994; 4: 928-933;Mattion, N M et al., J Virology, November 1996; p. 8124-8127;Furler, S et al., Gene Therapy, 2001; 8: 864-873;およびHalpin, C et al., The Plant Journal, 1999; 4: 453-459)。2A配列の切断活性は、プラスミドおよび遺伝子治療ベクター(AAVおよびレトロウイルス)を含む人工系において以前に実証されている(Ryan, M D et al., EMBO, 1994; 4: 928-933;Mattion, N M et al., J Virology, November 1996; p. 8124-8127;Furler, S et al., Gene Therapy, 2001 ; 8: 864-873;およびHalpin, C et al., The Plant Journal, 1999; 4: 453-459;de Felipe, P et al., Gene Therapy, 1999; 6: 198-208;de Felipe, P et al., Human Gene Therapy, 2000; 11 : 1921- 1931.;およびKlump, H et al., Gene Therapy, 2001 ; 8: 811-817)。
【0150】
構成的プロモーターの例としては、限定されないが、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(必要に応じて、RSVエンハンサーを伴う)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(必要に応じて、CMVエンハンサーを伴う)(例えば、Boshart et al., Cell, 41 :521-530 (1985)を参照されたい)、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸還元酵素プロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、およびEF1プロモーター(Invitrogen)が挙げられる。一部の実施形態では、プロモーターは、増強されたニワトリβ-アクチンプロモーターである。一部の実施形態では、プロモーターは、U6プロモーターである。
【0151】
誘導性プロモーターは、遺伝子発現の調節を可能にし、外因的に供給される化合物、温度などの環境因子、または特定の生理学的状態、例えば急性期の存在、細胞の特定の分化状態によって、または複製細胞においてのみ、調節され得る。誘導性プロモーターおよび誘導性の系は、限定されないが、Invitrogen、ClontechおよびAriadを含む種々の市販の供給源から利用可能である。多くの他の系が記載されており、当業者によって容易に選択され得る。外因的に供給されるプロモーターによって調節される誘導性プロモーターの例としては、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオニン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系(WO98/10088);エクジソン昆虫プロモーター(No et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93:3346-3351 (1996))、テトラサイクリン抑制系(Gossen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:5547-5551 (1992))、テトラサイクリン誘導系(Gossen et al., Science, 268: 1766- 1769 (1995)、Harvey et al., Curr. Opin. Chem. Biol., 2:512-518 (1998)も参照されたい)、RU486誘導系(Wang et al., Nat. Biotech., 15:239-243 (1997)およびWang et al., Gene Ther., 4:432-441 (1997))およびラパマイシン誘導系(Magari et al., J. Clin. Invest., 100:2865-2872 (1997))が挙げられる。この文脈において有用であり得る、また他のタイプの誘導性プロモーターは、特定の生理学的状態、例えば温度、急性期、細胞の特定の分化状態、または複製細胞中のみにより調節されるものである。
【0152】
別の実施形態では、導入遺伝子に関するネイティブのプロモーターが使用される。ネイティブのプロモーターは、導入遺伝子の発現がネイティブの発現を模倣することが望まれる場合に、好ましい場合がある。ネイティブのプロモーターは、導入遺伝子の発現が、時間的にもしくは発生的に、または組織特異的様式で、または特定の転写刺激に応答して、調節されなければならない場合に、使用され得る。さらなる実施形態では、エンハンサーエレメント、ポリアデニル化部位またはコザックコンセンサス配列などの他のネイティブの発現制御エレメントも、ネイティブの発現を模倣するために使用されてよい。
【0153】
一部の実施形態では、調節配列は、組織特異的遺伝子発現能を付与する。一部の場合には、組織特異的調節配列は、組織特異的様式で転写を誘導する組織特異的転写因子に結合する。このような組織特異的調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)は、当技術分野で周知である。例示的な組織特異的調節配列としては、以下に限定されないが、以下の組織特異的プロモーターを含む:肝臓特異的サイロキシン結合性グロブリン(TBG)プロモーター、インスリンプロモーター、グルカゴンプロモーター、ソマトスタチンプロモーター、膵臓ポリペプチド(PPY)プロモーター、シナプシン-1(Syn)プロモーター、クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、哺乳動物デスミン(DES)プロモーター、a-ミオシン重鎖(a-MHC)プロモーター、または心臓トロポニンT(cTnT)プロモーターが挙げられる。他の例示的なプロモーターとしては、当業者にとって明らかである数ある中でも、ベータ-アクチンプロモーター、B型肝炎ウイルスコアプロモーター、Sandig et al., Gene Ther., 3: 1002-9 (1996);アルファ-フェトプロテイン(AFP)プロモーター、Arbuthnot et al., Hum. Gene Ther., 7: 1503-14 (1996)、骨オステオカルシンプロモーター(Stein et al., Mol. Biol. Rep., 24: 185-96 (1997));骨シアロプロテインプロモーター(Chen et al., J. Bone Miner. Res., 11 :654-64 (1996))、CD2プロモーター(Hansal et al., J. Immunol., 161: 1063-8 (1998);免疫グロブリン重鎖プロモーター;T細胞受容体a-鎖プロモーター、ニューロン-特異的エノラーゼ(NSE)などのニューロンプロモーター(Andersen et al., Cell. Mol. Neurobiol., 13:503-15 (1993))、神経フィラメント軽鎖遺伝子プロモーター(Piccioli et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:5611-5 (1991))、およびニューロン特異的vgf遺伝子プロモーター(Piccioli et al., Neuron, 15:373- 84 (1995))が挙げられる。
【0154】
本開示の態様は、2つ以上のプロモーター(例えば、2、3、4、5、またはそれより多いプロモーター)を含む単離された核酸に関する。例えば、タンパク質をコードする第1の領域および阻害性RNA(例えば、miRNA)をコードする第2の領域を含む導入遺伝子を有する構築物の文脈では、第1のプロモーター配列(例えば、第1のプロモーター配列は、タンパク質コード領域に作動可能に連結している)を使用して、タンパク質コード領域の発現を駆動すること、および第2のプロモーター配列(例えば、第2のプロモーター配列は、阻害性RNAコード領域に作動可能に連結している)を有する阻害性RNAコード領域の発現を駆動することが望ましい場合がある。一般に、第1のプロモーター配列および第2のプロモーター配列は、同じプロモーター配列であっても異なるプロモーター配列であってもよい。一部の実施形態では、第1のプロモーター配列(例えば、タンパク質コード領域の発現を駆動するプロモーター)は、RNAポリメラーゼIII(polIII)プロモーター配列である。polIIIプロモーター配列の非限定的な例としては、U6およびHIプロモーター配列が挙げられる。一部の実施形態では、第2のプロモーター配列(例えば、阻害性RNAの発現を駆動するプロモーター配列)は、RNAポリメラーゼII(polII)プロモーター配列である。polIIプロモーター配列の非限定的な例としては、T7、T3、SP6、RSV、およびサイトメガロウイルスプロモーター配列が挙げられる。一部の実施形態では、polIIIプロモーター配列は、阻害性RNA(例えば、miRNA)コード領域の発現を駆動する。一部の実施形態では、polIIプロモーター配列は、タンパク質コード領域の発現を駆動する。
【0155】
一部の実施形態では、核酸は、タンパク質をコードする導入遺伝子を含む。タンパク質は、治療用タンパク質(例えば、哺乳動物対象における疾患状態の処置または防止に有用なペプチド、タンパク質、またはポリペプチド)またはリポータータンパク質であってもよい。一部の実施形態では、治療用タンパク質は、ハンチントン病の処置または防止に有用であり、例えば、Marelli et al. (2016) Orphanet Journal of Rare Disease 11 :24に記載されている、CYP46A1、ポリグルタミン結合ペプチド1(QBP1)、PTD-QBP1、ED11、C4細胞内抗体、VL12.3細胞内抗体、MW7細胞内抗体、Happ1抗体、Happ3抗体、mEM48細胞内抗体、ある特定のモノクローナル抗体(例えば、1C2)、およびペプチドP42ならびにそれらのバリアントである。一部の実施形態では、治療用タンパク質は、野生型ハンチンチンタンパク質(例えば、36個より少ないリピートを含むPolyQリピート領域を有するハンチンチンタンパク質)である。
【0156】
いずれかの特定の理論に拘束されることを望むものではないが、変異体ハンチンチン(HTT)の対立遺伝子特異的サイレンシングによって、野生型HTT発現および機能は細胞内で保存されているため、非対立遺伝子特異的サイレンシング(例えば、野生型と変異体HTT対立遺伝子の両方のサイレンシング)と比較して、対象における安全性プロファイルの改善がもたらされ得る。本発明の態様は、硬くなった野生型HTT遺伝子(miRNAによって標的とされない野生型HTT遺伝子)の発現を駆動しながら、非対立遺伝子特異的な様式でHTT遺伝子を標的とする1つまたは複数の阻害性RNA(例えば、miRNA)配列を組み込む単離された核酸およびベクターが、例えば、野生型HTTの発現の増加したCNS組織中で、相伴う変異体HTTノックダウンを達成することが可能であることの、本発明者らの認識および理解に関する。一般に、内因性野生型および変異体HTT mRNAをコードする核酸、ならびに「硬くなった」野生型HTT mRNAをコードする導入遺伝子の核酸の配列は十分に異なっており、その結果、「硬くなった」野生型HTT導入遺伝子のmRNAは、1つまたは複数の阻害性RNA(例えば、miRNA)によって標的とされない。これは、例えば、HTT導入遺伝子配列が、内因性野生型HTT遺伝子と同じタンパク質をコードするが、異なる核酸配列を有するように、1つまたは複数のサイレント変異をHTT導入遺伝子配列中に導入することによって、達成され得る。この場合には、外因性mRNAは、「硬くなった」と称され得る。あるいは、阻害性RNA(例えば、miRNA)は、内因性野生型HTT mRNAの5’および/または3’非翻訳領域を標的とすることができる。次いで、これらの5’および/または3’領域は、導入遺伝子のmRNAが1つまたは複数の阻害性RNAによって標的とされないように、導入遺伝子のmRNAにおいて除去または置き換えられ得る。
【0157】
導入遺伝子中に与えられ得るリポーター配列(例えば、リポータータンパク質をコードする核酸配列)としては、限定されないが、当技術分野で周知のβ-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼなどが挙げられる。それらの発現を駆動する調節エレメントに関連する場合、リポーター配列は、酵素的アッセイ、X線撮影アッセイ、比色アッセイ、蛍光アッセイまたは他の分光写真アッセイ、蛍光活性化細胞選別アッセイならびに酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)および免疫組織化学を含む免疫学的アッセイを含む従来の手段によって検出可能なシグナルをもたらす。例えば、マーカー配列がLacZ遺伝子である場合、シグナルを運ぶベクターの存在は、β-ガラクトシダーゼ活性に関するアッセイによって検出される。導入遺伝子が緑色蛍光タンパク質またはルシフェラーゼである場合、シグナルを運ぶベクターは、ルミノメーターにおける色または光の生成によって視覚的に測定することができる。このようなリポーターは、例えば、核酸の組織特異的標的化能および組織特異的プロモーター調節活性を検証する際に有用であり得る。組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)。一部の態様では、本開示は、単離されたAAVを提供する。AAVに関して本明細書で使用される場合、用語「単離された」は、人工的に生成または得られたAAVを指す。単離されたAAVは、組換え方法を使用して生成することができる。このようなAAVは、本明細書において、「組換えAAV」と称される。組換えAAV(rAAV)は、好ましくは、組織特異的標的化能を有するため、rAAVのヌクレアーゼおよび/または導入遺伝子が、1つまたは複数の所定の組織(複数可)へと特異的に送達される。AAVキャプシドは、これらの組織特異的標的化能を決定する際に重要なエレメントである。よって、組織が標的とされるのに適切なキャプシドを有するrAAVを選択することができる。
【0158】
所望のキャプシドタンパク質を有する組換えAAVを得るための方法は当技術分野で周知である。(例えば、その内容が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、US2003/0138772を参照されたい)。典型的には、本方法は、AAVキャプシドタンパク質をコードする核酸配列;機能的rep遺伝子;AAV末端逆位反復配列(ITR)および導入遺伝子から構成される組換えAAVベクター;ならびに組換えAAVベクターのAAVキャプシドタンパク質中へのパッケージングを可能にするのに十分なヘルパー機能を含有する宿主細胞を培養することに関与する。一部の実施形態では、キャプシドタンパク質は、AAVのキャップ遺伝子によってコードされる構造的タンパク質である。AAVは、3つのキャプシドタンパク質、すなわち、ビリオンタンパク質1~3(VP1、VP2およびVP3と称される)を含み、これらのすべては、選択的スプライシングによって単一のキャップ遺伝子から転写される。一部の実施形態では、VP1、VP2およびVP3の分子量は、それぞれ、約87kDa、約72kDaおよび約62kDaである。一部の実施形態では、翻訳の際に、キャプシドタンパク質は、ウイルスゲノムの周囲に球状の60マーのタンパク質シェルを形成する。一部の実施形態では、キャプシドタンパク質の機能は、ウイルスゲノムを保護する、ゲノムを送達する、および宿主と相互作用することである。一部の態様では、キャプシドタンパク質は、ウイルスゲノムを組織特異的様式で宿主に送達する。
【0159】
一部の実施形態では、AAVキャプシドタンパク質は、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAVrh8、AAV9、AAV10、およびAAVrh10からなる群から選択されるAAV血清型のものである。一部の実施形態では、AAVキャプシドタンパク質は、非ヒト霊長類に由来する血清型、例えば、AAVrh8またはAAVrh10血清型のものである。一部の実施形態では、AAVキャプシドタンパク質は、AAV9血清型のものである。一部の実施形態では、AAVキャプシドタンパク質は、AAVrh10血清型のものである。一部の実施形態では、キャプシドタンパク質は、AAV1、AAV2、AAV3b、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、もしくはAAVrh10キャプシドタンパク質またはそのいずれかのキメラである。一部の実施形態では、組換えAAV(rAAV)は、一倍体rAAVである。一部の実施形態では、一倍体rAAVは、キメラキャプシドタンパク質を含む。
【0160】
一実施形態では、ウイルスキャプシドは修飾されている。一実施形態では、修飾されたウイルスキャプシドは、キメラキャプシドである。「キメラ」キャプシドタンパク質は、本明細書で使用される場合、野生型と比較したキャプシドタンパク質のアミノ酸配列における1つまたは複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10個などの)アミノ酸残基の置換、ならびに野生型と比較したアミノ酸配列における1つまたは複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10個などの)アミノ酸残基の挿入および/または欠失によって修飾されたAAVキャプシドタンパク質(例えば、VP1、VP2またはVP3のうちのいずれか1つまたは複数)を意味する。一部の実施形態では、1つのAAV血清型に由来する完全なまたは部分的なドメイン、機能的領域、エピトープなどは、いずれかの組み合わせで、異なるAAV血清型の対応する野生型ドメイン、機能的領域、エピトープなどを置き換えて、本発明のキメラキャプシドタンパク質を生成する。キメラキャプシドタンパク質の生成は、当技術分野で周知のプロトコールに従って実行することができ、本発明のキャプシドに含まれ得るかなりの数のキメラキャプシドタンパク質が、文献および本明細書中に記載されている。
【0161】
一実施形態では、修飾されたウイルスキャプシドは、一倍体キャプシドである。本明細書で使用される場合、用語「一倍体AAV」は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際出願第WO2018/170310号、または米国出願第US2018/037149号に記載されているようなAAVを意味する。一部の実施形態では、ビリオンの集団は、ビリオン粒子を構築することができる一倍体AAV集団であり、ここで、AAVキャプシドタンパク質、VP1、VP2およびVP3からなる群に由来する少なくとも1つのウイルスタンパク質は、AAVゲノムを封入することが可能なビリオン粒子を形成するために必要とされる、他のウイルスタンパク質の内の少なくとも1つと異なる。各ウイルスタンパク質(VP1、VP2、および/またはVP3)の存在について、そのタンパク質は同じ型(例えば、すべてがAAV2 VP1)である。1つの事例では、ウイルスタンパク質の少なくとも1つはキメラウイルスタンパク質であり、他の2つのウイルスタンパク質の少なくとも1つはキメラではない。一実施形態では、VP1およびVP2はキメラであり、VP3のみがキメラではない。例えば、キメラAAV2/8(AAV2のN末端およびAAV8のC末端)由来のVP1/VP2から構成されるウイルス粒子のみがAAV2由来のVP3のみと対合するか;またはキメラVP1/VP2 28m-2P3(VP3開始コドンの変異を有さないAAV8からのN末端およびAAV2からのC末端)のみがAAV2由来のVP3のみと対合した。別の実施形態では、VP3のみがキメラであり、VP1およびVP2はキメラではない。別の実施形態では、ウイルスタンパク質の少なくとも1つは、完全に異なる血清型に由来する。例えば、キメラVP1/VP2 28m-2P3のみが、AAV3のみに由来するVP3と対合した。別の例では、キメラは存在しない。例えば、そのそれぞれの内容が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、米国特許出願第2019/0002841号、または米国特許第8,906,675号を参照されたい。
【0162】
AAVキャプシド内にrAAVベクターをパッケージングするために宿主細胞中で培養される構成成分は、トランスで宿主細胞に提供され得る。あるいは、必要とされる構成成分(例えば、組換えAAVベクター、rep配列、cap配列、および/またはヘルパー機能)のうちのいずれか1つまたは複数は、当業者に公知の方法を使用して、必要とされる構成成分のうちの1つまたは複数を含有するように操作された安定した宿主細胞によって提供され得る。最も好適には、このような安定した宿主細胞は、誘導性プロモーターの制御下で、必要とされる構成成分(複数可)を含有する。しかし、必要とされる構成成分(複数可)は、構成的プロモーターの制御下にあってもよい。好適な誘導性プロモーターおよび構成的プロモーターの例は、導入遺伝子と共に使用するのに好適な調節エレメントの議論において、本明細書において提供される。さらに別の選択肢では、選択される安定した宿主細胞は、構成的プロモーターの制御下で選択される構成成分(複数可)および1つまたは複数の誘導性プロモーターの制御下で選択される他の構成成分(複数可)を含有し得る。例えば、293細胞(構成的プロモーターの制御下でE1ヘルパー機能を含有する)に由来するが、誘導性プロモーターの制御下ではrepおよび/またはcapタンパク質を含有する、安定した宿主細胞が生成され得る。また他の安定した宿主細胞は、当業者によって生成され得る。一部の実施形態では、本開示は、タンパク質(例えば、野生型ハンチンチンタンパク質、必要に応じて、「硬くなった」野生型ハンチンチンタンパク質)をコードするコード配列を含む核酸を含有する宿主細胞に関する。一部の実施形態では、本開示は、上記の宿主細胞を含む組成物に関する。一部の実施形態では、上記宿主細胞を含む組成物は、凍結保存剤をさらに含む。
【0163】
組換えAAVベクター、rep配列、cap配列、および本開示のrAAVを生成するために必要とされるヘルパー機能は、任意の適切な遺伝子エレメント(ベクター)を使用してパッケージング宿主細胞に送達されてもよい。選択される遺伝子エレメントは、本明細書において記載されるものを含む任意の好適な方法により送達することができる。本開示の任意の実施形態を構築するために使用される方法は、核酸操作における技術を有する当業者に公知であり、遺伝子操作、組み換え操作および合成技術を含む。例えば、Sambrook et al, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y.を参照されたい。同様に、rAAVビリオンを作製する方法は、周知であり、好適な方法の選択は、本開示に関する限定ではない。例えば、K. Fisher et al, J. Virol., 70:520-532 (1993)および米国特許第5,478,745号を参照されたい。
【0164】
一部の実施形態では、組換えAAVは、三重トランスフェクション方法(米国特許第6,001,650号に詳細に記載される)を使用して生成され得る。典型的には、組換えAAVは、宿主細胞を、AAV粒子中にパッケージングされる組換えAAVベクター(導入遺伝子を含む)、AAVヘルパー機能ベクター、およびアクセサリー機能ベクターでトランスフェクトすることによって生成される。AAVヘルパー機能ベクターが「AAVヘルパー機能」配列(すなわち、repおよびcap)をコードし、これは、生成的AAV複製およびキャプシド形成に関してトランスで機能する。好ましくは、AAVヘルパー機能ベクターは、いずれかの検出可能な野生型AAVビリオン(すなわち、機能的repおよびcap遺伝子を含有するAAVビリオン)を生成することなく効率的なAAVベクター生成を支持する。本開示に関して使用するのに好適なベクターの非限定的な例は、両方の全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,001,650号に記載されるpHLP19および米国特許第6,156,303号に記載されるpRep6cap6ベクターを含む。アクセサリー機能ベクターは、AAVが複製に依存する非AAV由来のウイルスおよび/または細胞の機能(すなわち、「アクセサリー機能」)に関するヌクレオチド配列をコードする。アクセサリー機能は、限定されないが、AAV遺伝子転写、段階特異的なAAV mRNAスプライシング、AAV DNA複製、cap発現生成物の合成、およびAAVキャプシドアセンブリーの活性化に関与するこれらの部分を含む、AAV複製に必要とされるこれらの機能を含む。ウイルスベースのアクセサリー機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス1型以外)、およびワクシニアウイルスなどの公知のヘルパーウイルスのいずれかに由来し得る。
【0165】
一部の態様では、本開示は、トランスフェクトされた宿主細胞を提供する。用語「トランスフェクション」は、細胞による外来DNAの取り込みを指すために使用され、細胞は、外因性DNAが細胞膜の内側に導入された場合に「トランスフェクト」されている。いくつかのトランスフェクション技法が、一般に、当技術分野で公知である。例えば、Graham et al. (1973) Virology, 52:456、Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning, a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratories, New York、Davis et al. (1986) Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier、およびChu et al. (1981) Gene 13: 197を参照されたい。このような技法を使用して、ヌクレオチド組込みベクターおよび他の核酸分子などの1つまたは複数の外因性核酸を、好適な宿主細胞中に導入することができる。
【0166】
「宿主細胞」は、目的の物質を保有するか、またはそれを保有することが可能である任意の細胞を指す。宿主細胞は、哺乳動物細胞であることが多い。宿主細胞は、AAVヘルパー構築物、AAVミニ遺伝子プラスミド、アクセサリー機能ベクター、または組換えAAVの生成に関連する他のトランスファーDNAのレシピエントとして使用することができる。この用語は、トランスフェクトされた元の細胞の子孫も含む。よって、「宿主細胞」は、本明細書で使用される場合、外因性DNA配列をトランスフェクトされた細胞を指し得る。単一の親細胞の子孫は、自然の、偶発的な、または計画的な変異を原因として、形態または遺伝子またはDNA相補体全体において、必ずしも元の親と完全に同一でなくてもよいことが理解される。
【0167】
本明細書で使用される場合、用語「細胞系」は、in vitroでの連続的または長期にわたる成長および分裂を可能にする細胞集団を指す。多くの場合、細胞系は、単一の前駆細胞に由来するクローン集団である。自然に起こるかまたは誘導される変化は、このようなクローン集団の保存または移入中に核型に生じ得る。したがって、言及される細胞系に由来する細胞は、祖先の細胞または培養物と正確に同一でなくてもよく、言及される細胞系は、このようなバリアントを含む。
【0168】
本明細書で使用される場合、用語「組換え細胞」は、生物学的に活性なポリペプチドの転写または生物学的に活性なRNAなどの核酸の生成をもたらすDNAセグメントなどの外因性DNAセグメントが導入されている細胞を指す。
【0169】
本明細書で使用される場合、用語「ベクター」は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、人工染色体、ウイルス、ビリオンなどの任意の遺伝エレメントを含み、これは、適当な制御エレメントと関連した場合に複製が可能であり、細胞間で遺伝子配列を移入することができる。よって、この用語は、クローニングビヒクルおよび発現ビヒクル、ならびにウイルスベクターを含む。一部の実施形態では、有用なベクターは、転写される核酸セグメントがプロモーターの転写制御下に置かれる、これらのベクターであることが企図される。「プロモーター」は、細胞の合成機構によって認識されるか、または合成機構に導入される、遺伝子の特異的転写の開始に必要なDNA配列を指す。句「動作可能に置かれる」、「制御下」または「転写制御下」は、プロモーターが、RNAポリメラーゼの開始および遺伝子の発現を制御するために、核酸に関して正しい位置および方向にあることを意味する。用語「発現ベクターまたは構築物」は、核酸コード配列の一部またはすべてが転写されることが可能である核酸を含有する任意のタイプの遺伝子構築物を意味する。一部の実施形態では、発現には、例えば、転写された遺伝子から生物学的に活性なポリペプチド生成物または機能的RNA(例えば、ガイドRNA)を生成するための、核酸の転写が含まれる。
【0170】
本開示のrAAVを生成するために所望のAAVキャプシド中に組換えベクターをパッケージングするための前記方法は限定的であることを意味せず、他の好適な方法は当業者に明らかである。
【0171】
一部の実施形態では、配列表に与えられる配列を含む、本明細書において与えられる配列中のいずれか1つまたは複数のチミジン(T)ヌクレオチドまたはウリジン(U)ヌクレオチドは、アデノシンヌクレオチドと対合するのに(例えば、ワトソンクリック塩基対によって)好適な任意の他のヌクレオチドで置き換えられてもよい。例えば、一部の実施形態では、配列表に与えられる配列を含む、本明細書において与えられる配列中のいずれか1つまたは複数のチミジン(T)ヌクレオチドは、ウリジン(U)ヌクレオチドで置き換えられるのが好適である場合もあり、逆もまた同様である。
【0172】
態様のいずれかの一部の実施形態では、核酸(例えば、miRNA)は、安定性または他の有益な特徴を増強するために化学的に修飾される。本明細書に記載の核酸は、参照によりこれにより本明細書に組み込まれる、”Current protocols in nucleic acid chemistry,” Beaucage, S.L. et al. (Edrs.), John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, USAに記載されるものなどの、当技術分野で十分に確立された方法によって、合成および/または修飾されてもよい。修飾には、例えば、(a)末端の修飾、例えば、5’末端の修飾(リン酸化、コンジュゲーション、逆連結など)、3’末端の修飾(コンジュゲーション、DNAヌクレオチド、逆連結など)、(b)塩基修飾、例えば、安定化塩基、不安定化塩基、または広範囲のレパートリーの相手と塩基対合する塩基での置き換え、塩基の除去(無塩基ヌクレオチド)、またはコンジュゲートされた塩基、(c)糖修飾(例えば、2’位または4’位での)または糖の置き換え、ならびに(d)ホスホジエステル連結の修飾または置き換えを含む骨格修飾が含まれる。本明細書に記載の実施形態において有用な核酸化合物の具体例には、以下に限定されないが、修飾された骨格を含有するか、または、天然のヌクレオシド間連結を含有しない核酸が含まれる。修飾された骨格を有する核酸には、とりわけ、骨格中にリン原子を有さないものが含まれる。本明細書の目的のために、および当技術分野において参照されることがあるように、ヌクレオシド間骨格にリン原子を有さない修飾された核酸はオリゴヌクレオシドであると考えることもできる。態様のいずれかの一部の実施形態では、修飾された核酸は、ヌクレオシド間骨格にリン原子を有する。
【0173】
修飾された核酸骨格には、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’-アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含むメチルホスホネートおよび他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’-アミノホスホルアミデートおよびアミノアルキルホスホルアミデートを含むホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、および通常の3’-5’連結を有するホスフェート、これらの2’-5’連結類似体、およびヌクレオシド単位の隣接対が3’-5’から5’-3’にまたは2’-5’から5’-2’に連結している逆極性を有するもの)が含まれ得る。様々な塩、混合塩、および遊離酸形態もまた含まれる。その中にリン原子を含まない修飾された核酸骨格は、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間連結、混合ヘテロ原子およびアルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間連結、または1つまたは複数の短鎖ヘテロ原子性もしくは複素環式ヌクレオシド間連結により形成される骨格を有する。これらには、モルホリノ連結(部分的にはヌクレオシドの糖部分から形成される);シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファミン酸骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホン酸およびスルホンアミド骨格;アミド骨格;N、O、SおよびCH2の成分が混在している他のもの、ならびに特に、--CH2--NH--CH2--、[メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格として公知の]--CH2--N(CH3)--O--CH2--、-CH2--O--N(CH3)--CH2--、--CH2--N(CH3)--N(CH3)--CH2--および--N(CH3)--CH2--CH2--[式中、ネイティブのホスホジエステル骨格は--O--P--O--CH2--と表される]を有するものが含まれる。
【0174】
他の核酸ミメティックでは、ヌクレオチド単位の、糖とヌクレオシド間連結の両方、すなわち骨格は、新規の基で置き換えられる。塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。1つのこのようなオリゴマー化合物である、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているRNAミメティックは、ペプチド核酸(PNA)と称される。PNA化合物では、RNAの糖骨格は、アミドを含有する骨格、特にアミノエチルグリシン骨格で置き換えられる。核酸塩基は保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接的または間接的に結合する。
【0175】
核酸は、1つまたは複数のロックド核酸(LNA)を含むように修飾されてもよい。ロックド核酸は、リボース部分が2’炭素と4’炭素を接続する余分な架橋を含む、修飾されたリボース部分を有するヌクレオチドである。この構造は、3’-エンド構造配座にリボースを「ロックする」。ロックド核酸のsiRNAへの付加は、血清中のsiRNA安定性を増加させ、かつオフターゲット効果を低下させることが示されている(Elmen, J. et al., (2005) Nucleic Acids Research 33(1):439-447;Mook, OR. et al., (2007) Mol. Canc. Ther. 6(3):833-843;Grunweller, A. et al., (2003) Nucleic Acids Research 31(12):3185-3193)。
【0176】
修飾された核酸は、1つまたは複数の置換された糖部分を含有してもよい。本明細書に記載の核酸は、2’位に以下のうちの1つを含んでもよい:OH;F;O-、S-、もしくはN-アルキル;O-、S-、もしくはN-アルケニル;O-、S-もしくはN-アルキニル;またはO-アルキル-O-アルキル、ここで、アルキル、アルケニルおよびアルキニルは、置換または非置換の、C1~C10アルキルまたはC2~C10アルケニルおよびアルキニルであってよい。例示的に好適な修飾には、O[(CH2)nO]mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、およびO(CH2)nON[(CH2)nCH3)]2が含まれ、ここで、nおよびmは1~約10である。態様のいずれかの一部の実施形態では、核酸は、2’位に以下のうちの1つを含む:C1~C10の低級アルキル、置換された低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O-アルカリルもしくはO-アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、リポーター基、インターカレーター、核酸の薬物動態特性を改善するための基、または核酸の薬力学的特性を改善するための基、および同様の特性を有する他の置換基。態様のいずれかの一部の実施形態では、修飾には、2’メトキシエトキシ(2’-O--CHCHOCH、2’-O-(2-メトキシエチル)または2’-MOEとしても公知)(Martin et al., Helv. Chim. Acta, 1995, 78:486-504)、すなわち、アルコキシ-アルコキシ基が含まれる。別の例示的な修飾は、2’-ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち、本明細書において以下の実施例において記載されている、2’-DMAOEとしても公知のO(CH2)2ON(CH3)2基、およびまた、本明細書において以下の実施例において記載される、2’ジメチルアミノエトキシエトキシ(2’-O-ジメチルアミノエトキシエチルまたは2’-DMAEOEとしても、当技術分野において公知)、すなわち、2’-O--CH2--O--CH2--N(CH2)2である。
【0177】
他の修飾には、2’-メトキシ(2’-OCH3)、2’-アミノプロポキシ(2’-OCH2CH2CH2NH2)および2’-フルオロ(2’-F)が含まれる。同様の修飾は、核酸の他の位置、特に3’末端のヌクレオチドにおける糖の3’位または2’~5’で連結したdsRNAおよび5’末端のヌクレオチドの5’位でなされてもよい。核酸は、ペントフラノシル糖の代わりに、シクロブチル部分などの糖ミメティックを有してもよい。
【0178】
核酸は、核酸塩基(当技術分野において単に「塩基」と称されることが多い)の修飾または置換を含んでもよい。本明細書で使用される場合、「未修飾の」または「天然の」核酸塩基としては、プリン塩基であるアデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)が挙げられる。修飾された核酸塩基としては、以下に限定されないが、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン、5-プロピニルウラシルおよびシトシン、6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(シュードウラシル(pseudouracil))、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルならびに(anal)他の8-置換アデニンおよびグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチルならびに他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニンならびに3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニンを含む他の合成および天然の核酸塩基を含んでもよい。これらの核酸塩基のうちのある特定のものは、本発明の特徴である阻害性核酸の結合親和性を増加させるのに特に有用である。これらには、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジンならびに2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシンを含むN-2、N-6および0~6置換プリンが含まれる。5-メチルシトシン置換は、核酸の二本鎖安定性を0.6~1.2℃増加させることが示されており(Sanghvi, Y. S., Crooke, S. T. and Lebleu, B., Eds., dsRNA Research and Applications, CRC Press, Boca Raton, 1993, pp. 276-278)、さらにより詳細には、2’-O-メトキシエチル糖修飾と組み合わせた場合に、例示的な塩基置換である。態様のいずれかの一部の実施形態では、修飾された核酸塩基は、d5SICSおよびdNAMを含んでもよく、これらは、塩基対として別々にまたは一緒に使用することができる、非天然の核酸塩基の非限定的な例である(例えば、Leconte et. al. J. Am. Chem. Soc.2008, 130, 7, 2336-2343;Malyshev et. al. PNAS. 2012. 109 (30) 12005-12010を参照されたい)。態様のいずれかの一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドタグ(例えば、Oligopaint)は、当技術分野で公知の任意の修飾された核酸塩基、すなわち、未修飾および/または天然の核酸塩基から修飾される任意の核酸塩基を含む。
【0179】
上記の修飾された核酸、骨格、および核酸塩基の調製は、当技術分野で周知である。
【0180】
本発明の特徴である核酸の別の修飾は、核酸に対する、その核酸の活性、細胞内分布、薬物動態特性、または細胞内取込みを増強する1つもしくは複数のリガンド、部分、またはコンジュゲートへの化学的連結に関与する。このような部分としては、以下に限定されないが、コレステロール部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acid. Sci. USA, 1989, 86: 6553-6556)、コール酸(Manoharan et al., Biorg. Med. Chem. Let., 1994, 4:1053-1060)、チオエーテル、例えば、ベリル-S-トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660:306-309;Manoharan et al., Biorg. Med. Chem. Let., 1993, 3:2765-2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20:533-538)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールまたはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J, 1991, 10:1111-1118;Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259:327-330;Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75:49-54)、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールまたはトリエチル-アンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651-3654;Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18:3777-3783)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14:969-973)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651-3654)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264:229-237)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニルオキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277:923-937)などの脂質部分が挙げられる。
処置方法
【0181】
導入遺伝子(例えば、miRNAなどの阻害性RNA)を対象に送達するための方法が、本開示によって提供される。本方法は、典型的には、対象に、ハンチンチン(htt)タンパク質の発現を低下させることが可能な干渉RNAをコードする単離された核酸、またはハンチンチンタンパク質の発現を低下させることが可能な阻害性RNAを発現させるための核酸を含むrAAVの治療有効量を投与することに関与する。
【0182】
一部の態様では、本開示は、ヒトハンチンチン(例えば、配列番号25)の少なくとも2つ(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、またはそれより多く)の連続する塩基に特異的に結合する(例えば、それとハイブリダイズする)阻害性miRNAを提供する。本明細書で使用される場合、「連続する塩基」は、互いに(例えば、核酸分子の一部として)共有結合によって結合する(例えば、1つまたは複数のホスホジエステル結合など)2つまたはそれより多いヌクレオチド塩基を指す。一部の実施形態では、少なくとも1つのmiRNAは、配列番号25の2つまたはそれより多い(約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、またはそれより多い)連続するヌクレオチド塩基に対して約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%または約100%同一である。一部の実施形態では、阻害性RNAは、配列番号1~24のいずれか1つに示される配列を含むか、またはそれにコードされるmiRNAである。
【0183】
本明細書で使用される場合、「ハンチントン病」、または「HD」は、病原性変異体ハンチンチンタンパク質(HTT、またはmHTT)の産生をもたらすHTT遺伝子におけるトリヌクレオチドリピート伸長(例えば、ポリグルタミン、またはポリQ、トラクトへと翻訳される、CAG)によって引き起こされる、進行的に悪化する運動、認知および行動の変化によって特徴付けられる神経変性疾患を指す。一部の実施形態では、変異体ハンチンチンタンパク質は、脳のある特定の領域におけるニューロン細胞死の速度を加速させる。一般に、HDの重症度は、対象におけるトリヌクレオチドリピート伸長のサイズに相関する。例えば、36から39個の間のリピートを含むCAGリピート領域を有する対象は、「不完全浸透」のHDを有するとして特徴付けられるが、40個より多いリピートを有する対象は「完全浸透」のHDを有するとして特徴付けられる。よって、一部の実施形態では、HDを有するかまたはHDを有するリスクを有する対象は、約36~約39個の間のCAGリピート(例えば、36、37、38または39個のリピート)を含むHTT遺伝子を有する。一部の実施形態では、HDを有するかまたはHDを有するリスクを有する対象は、40個またはそれより多い(例えば、40、45、50、60、70、80、90、100、200、またはそれより多い)CAGリピートを含むHTT遺伝子を有する。一部の実施形態では、100個より多いCAGリピートを含むHTT遺伝子を有する対象は、100個より少ないCAGリピートを有する対象よりも、より早くHDを発症する。一部の実施形態では、100個より多いCAGリピートを含むHTT遺伝子を有する対象は、約20歳以前にHD症状を発症する場合があり、若年性HD(無動-硬直HD、またはWestphalバリアントHDとも称される)を有すると称される。対象のHTT遺伝子の対立遺伝子におけるCAGリピートの数は、当技術分野で公知の任意の好適なモダリティによって決定することができる。例えば、核酸(例えば、DNA)は、対象の生体試料(例えば、血液)から単離することができ、HTT対立遺伝子のCAGリピートの数は、PCRまたは核酸シーケンシング(例えば、Illuminaシーケンシング、Sangerシーケンシング、SMRTシーケンシングなど)などのハイブリダイゼーションに基づく方法によって決定することができる。
【0184】
いずれかの態様の一部の実施形態では、本方法は、投与することの前に、ハンチントン病を有するかまたはハンチントン病を発症するリスクを有するとして対象を診断するステップをさらに含む。
【0185】
いずれかの態様の一部の実施形態では、投与することの前に、ハンチントン病を有するかまたはハンチントン病を発症するリスクを有するとして対象を診断するアッセイの結果を受け取るステップをさらに含む。ハンチントン病を有するかまたはそれを発症するリスクを有するとして対象を診断するための例示的なアッセイ、例えば、少なくとも36個のCAGリピート、少なくとも40個のCAGリピート、または少なくとも100個のCAGリピート、またはそれより多いCAGリピートについての遺伝子スクリーニングが本明細書に記載されている。
【0186】
物質の「有効量」は、所望の効果を生じるのに十分な量である。一部の実施形態では、単離された核酸の有効量は、対象の標的組織の十分な数の標的細胞をトランスフェクトする(またはrAAVに媒介される送達の文脈では感染させる)のに十分な量である。一部の実施形態では、標的組織は中枢神経系(CNS)組織(例えば、脳組織、脊髄組織、脳脊髄液(CSF)など)である。一部の実施形態では、単離された核酸(例えば、rAAVにより送達されてもよい)の有効量は、対象において治療利益を有する、例えば、病原性遺伝子またはタンパク質(例えば、HTT)の発現を低下させる、対象の寿命を延長させる、対象における疾患の1つまたは複数の症状(例えば、ハンチントン病の症状)を改善するなどに十分な量であり得る。有効量は、例えば、対象の種、年齢、重量、健康、および標的とされる組織などの種々の要因に依存し、よって、本開示の他の箇所に記載されているように、対象および組織の間で変化し得る。
投与
【0187】
本開示のrAAVは、当技術分野で公知の任意の適切な方法に従って、組成物中で対象に送達され得る。例えば、rAAVは、好ましくは薬理学的に適合する担体中に懸濁されて(すなわち、組成物中で)、対象、すなわち、ヒト、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウサギ、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、モルモット、ハムスター、ニワトリ、シチメンチョウ、または非ヒト霊長類(例えば、マカク)などの宿主動物に投与され得る。一部の実施形態では、宿主動物はヒトを含まない。
【0188】
哺乳動物対象へのrAAVの送達は、例えば、筋肉内注射によるか、または哺乳動物対象の血流中への投与によるものであってもよい。血流中への投与は、静脈、動脈、または任意の他の血管導管中への注射によるものであってもよい。一部の実施形態では、rAAVは、外科的技術分野において周知の技法である、温熱四肢灌流によって、血流中に投与され、本方法は、本質的に、当業者が、rAAVビリオンの投与前に体循環から四肢を隔離することを可能にする。米国特許第6,177,403号に記載される、温熱四肢灌流技法のバリアントはまた、ビリオンを単離された四肢の脈管構造中に投与して、筋肉細胞または組織中への形質導入を潜在的に増強するために、当業者によって用いられ得る。さらに、ある特定の事例では、ビリオンを対象のCNSに送達することが望ましい場合がある。「CNS」によって、脊椎動物の脳および脊髄のすべての細胞および組織が意味される。よって、この用語は、以下に限定されないが、ニューロン細胞、グリア細胞、星状細胞、脳脊髄液(CSF)、間質空間、骨、軟骨などを含む。組換えAAVは、例えば、心室領域への注射によってCNSまたは脳に、ならびに定位注射によるなど、当技術分野で公知の神経外科的技法を使用して、ニードル、カテーテルまたは関連するデバイスを用いて、線条体(例えば、線条体の尾状核または被殻)、脊髄および神経筋接合部に、または小脳小葉に、直接的に送達されてもよい(例えば、Stein et al., J Virol 73:3424-3429, 1999;Davidson et al., PNAS 97:3428-3432, 2000;Davidson et al., Nat. Genet. 3:219-223, 1993;およびAlisky and Davidson, Hum. Gene Ther. 11 :2315-2329, 2000を参照されたい)。一部の実施形態では、本開示において記載されているrAAVは、静脈内注射によって投与される。一部の実施形態では、rAAVは、脳内注射によって投与される。一部の実施形態では、rAAVは、髄腔内注射によって投与される。一部の実施形態では、rAAVは、線条体内注射によって投与される。一部の実施形態では、rAAVは、頭蓋内注射によって送達される。一部の実施形態では、rAAVは、大槽注射によって送達される。一部の実施形態では、rAAVは、側脳室注射によって送達される。
【0189】
本開示の態様は、キャプシドタンパク質を含む組換えAAVおよび導入遺伝子をコードする核酸を含む組成物であって、導入遺伝子が、1つまたは複数のmiRNAをコードする核酸配列を含む、組成物に関する。一部の実施形態では、各miRNAは、配列番号1~24のいずれか1つに示される配列を含む。一部の実施形態では、核酸は、AAV ITRをさらに含む。一部の実施形態では、ITRは、AAV1、AAV2、AAV3b、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、またはAAVrh10のITRである。一部の実施形態では、組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。本開示の組成物は、rAAVを単独で含んでも、または1つもしくは複数の他のウイルス(例えば、1つまたは複数の異なる導入遺伝子をコードする 有する(encoding having)第2のrAAV)と組み合わせて含んでもよい。一部の実施形態では、組成物は、それぞれ1つまたは複数の異なる導入遺伝子を有する1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多い異なるrAAVを含む。
【0190】
好適な担体は、rAAVが対象とされる指示を考慮して、当業者によって容易に選択され得る。例えば、1つの好適な担体には食塩水が含まれ、様々な緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝食塩水)と共に製剤化することができる。他の例示的な担体としては、滅菌食塩水、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、ピーナッツ油、ゴマ油、および水が挙げられる。担体の選択は、本開示の制限ではない。
【0191】
必要に応じて、本開示の組成物は、rAAVおよび担体(複数可)に加えて、防腐剤、または化学安定剤などの他の従来の医薬成分を含有してもよい。好適な例示的な防腐剤としては、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、およびパラクロロフェノールが挙げられる。
好適な化学安定剤としては、ゼラチンおよびアルブミンが挙げられる。
【0192】
rAAVは、所望の組織の細胞をトランスフェクトする、ならびに過度な有害効果を有することなく、十分なレベルの遺伝子の移入および発現をもたらすのに十分な量で投与される。従来のおよび薬学的に許容される投与経路としては、以下に限定されないが、選択された臓器への直接的送達(例えば、肝臓への門脈内送達)、経口、吸入(鼻腔内および気管内送達を含む)、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腫瘍内、および他の非経口投与経路が挙げられる。望ましい場合、投与経路は組み合わされてもよい。
【0193】
特定の「治療効果」を達成するために必要なrAAVビリオンの用量、例えば、体重1キログラム当たりのゲノムコピー数(GC/kg)での投与単位は、以下に限定されないが:rAAVビリオンの投与経路、治療効果を達成するのに必要とされる遺伝子またはRNAの発現レベル、処置される具体的な疾患または傷害、および遺伝子またはRNA産物の安定性を含むいくつかの要因に基づいて変わる。当業者であれば、前記因子、および当技術分野で周知の他の因子に基づいて、特定の疾患または障害を有する患者を処置するためのrAAVビリオンの用量範囲を容易に決定することができる。
【0194】
rAAVの有効量は、動物を標的とする、動物に感染する、所望の組織を標的とするのに十分な量である。一部の実施形態では、rAAVの有効量は、安定した体細胞トランスジェニック動物モデルを生成するのに十分な量である。有効量は、対象の種、年齢、重量、健康、および標的とされる組織などの因子に主に依存し、よって、動物および組織の間で変化し得る。例えば、rAAVの有効量は、一般に、約10~1016個のゲノムコピーを含有する、約1ml~約100mlの溶液の範囲内にある。一部の場合には、約1011~1013個の間のrAAVゲノムコピーの投与量が適切である。ある特定の実施形態では、1012または1013個のrAAVゲノムコピーが、CNS組織を標的とするのに効果的である。一部の場合には、安定したトランスジェニック動物は、複数用量のrAAVによって生成される。
【0195】
一部の実施形態では、rAAVの用量は、暦日(例えば、24時間の期間)当たり1回以下で対象に投与される。一部の実施形態では、rAAVの用量は、2、3、4、5、6または7暦日当たり1回以下で対象に投与される。一部の実施形態では、rAAVの用量は、暦週(例えば、7暦日)当たり1回以下で対象に投与される。一部の実施形態では、rAAVの用量は、2週間ごとに1回以下(例えば、2暦週の期間に1回)で対象に投与される。一部の実施形態では、rAAVの用量は、暦月当たり1回以下(例えば、30暦日に1回)で対象に投与される。一部の実施形態では、rAAVの用量は、6暦月当たり1回以下で対象に投与される。一部の実施形態では、rAAVの用量は、暦年(例えば、365日またはうるう年には366日)当たり1回以下で対象に投与される。
【0196】
一部の実施形態では、rAAV組成物は、特に高濃度のrAAVが存在する(例えば、1ml当たり-1013個またはそれより多いGC)場合に、組成物中のAAV粒子の凝集を低減するために製剤化されている。rAAVの凝集を低減するための方法は、当技術分野で周知であり、例えば、界面活性剤の添加、pH調整、塩濃度調整などを含む。(例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、Wright FR, et al., Molecular Therapy (2005) 12, 171-178を参照されたい)。
【0197】
薬学的に許容される賦形剤および担体溶液の配合は、好適な投与レジメンおよび処置レジメンの開発が、種々の処置レジメンにおいて本明細書に記載の特定の組成物を使用するためのものであるため、当業者に周知である。
【0198】
典型的には、これらの製剤は、少なくとも約0.1%の活性化合物またはそれより多くを含有してよいが、有効成分のパーセンテージは、当然のことながら変化する場合があり、製剤全体の重量または体積の約1%または2%から約70%または80%またはそれより大きい%の間であることが都合がよい場合がある。本来、各治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、好適な投与量が、化合物のいずれかの所与の単位用量で得られるように、調製され得る。溶解度、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与経路、製品貯蔵寿命などの因子、および他の薬理学的考察は、このような医薬製剤を調製する技術分野の当業者によって企図され、そのように、種々の投薬レジメンおよび処置レジメンが望ましい場合がある。
【0199】
ある特定の状況では、本明細書に開示される好適に製剤化された医薬組成物中のrAAVベースの治療用構築物を、皮下に、膵臓内に(intraopancreatically)、鼻腔内に、非経口的に、静脈内に、筋肉内に、髄腔内に、または経口的に、腹腔内に、または吸入によってのいずれかで、送達することが望ましい。一部の実施形態では、米国特許第5,543,158号;同第5,641,515号および同第5,399,363号(それぞれ参照によりその全体として本明細書に具体的に組み込まれる)に記載されている投与モダリティを使用して、rAAVを送達することができる。一部の実施形態では、好ましい投与方式は、門脈注射による。
【0200】
注射可能な使用に好適な薬剤形態には、滅菌水性液剤または分散液剤および滅菌注射用液剤または分散液剤の即時調製のための滅菌粉剤が含まれる。分散液剤は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびこれらの混合物中、ならびに油中で調製されてもよい。保存および使用についての通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の成長を妨げる防腐剤を含有する。多くの場合、この形態は、無菌であり、易注射性(easy syringability)が存在する程度まで流体である。これは、製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、これらの好適な混合物、および/または植物油を含有する溶媒または分散媒であってもよい。例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液剤の場合には必要とされる粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用によって、適当な流動性が維持されてもよい。微生物の作用の保護は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合には、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物中での使用によってもたらされ得る。
【0201】
注射用水性液剤の投与のために、例えば、液剤は、必要であれば、好適に緩衝されてもよく、液体希釈剤は、最初に、十分な食塩水またはグルコースで等張とされる。これらの特定の水性液剤は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与に特に好適である。この点について、用いることのできる無菌水性媒体は、当業者に公知である。例えば、1回の投与量は、等張なNaCl溶液1ml中に溶解され、皮下注入液1000mlに添加されるかまたは注入の候補部位に注射されるかのいずれかであり得る(例えば、”Remington’s Pharmaceutical Sciences” 15th Edition, pages 1035-1038 and 1570-1580を参照されたい)。投与量におけるいくつかの変更は、宿主の状態に応じて必然的に生じる。投与責任者は、いずれにしても、個々の宿主に適切な用量を決定する。
【0202】
滅菌注射用液剤は、活性rAAVを、本明細書において列挙される様々な他の成分と共に、適切な溶媒中に必要な量で混合し、必要であれば、その後に濾過滅菌することによって、調製される。一般に、分散液剤は、様々な滅菌された有効成分を、基礎分散媒および上記に列挙されたものから必要とされる他の成分を含有する無菌ビヒクル中に混合することによって調製される。滅菌注射用液剤の調製のための滅菌粉剤の場合には、好ましい調製方法は、前もってその滅菌ろ過された溶液から、有効成分といずれかの追加の所望の成分の粉末を得る、真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0203】
本明細書に開示されるrAAV組成物は、中性形態または塩形態で製剤化されてもよい。薬学的に許容される塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基を用いて形成される)が挙げられ、これらは、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸を用いて形成される。遊離カルボキシル基を用いて形成される塩はまた、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基に由来してもよい。製剤化されると、液剤は、投与製剤と適合するように、かつこのような量が治療上有効であるように、投与される。製剤は、注射用液剤、薬物放出カプセル剤などのような種々の剤形で容易に投与される。
【0204】
本明細書で使用される場合、「担体」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、バッファー、担体溶液、懸濁剤、コロイドなどを含む。薬学的に活性な物質に関するこのような媒体および剤の使用は、当技術分野において周知である。補充有効成分も組成物中に組み込まれてもよい。語句「薬学的に許容される」は、宿主に投与された場合に、アレルギー反応や類似する有害反応を生じない分子実体および組成物を指す。
【0205】
リポソーム、ナノカプセル、マイクロ粒子、マイクロスフェア、脂質粒子、ベシクルなどのような送達ビヒクルは、本開示の組成物の、好適な宿主細胞への導入のために使用されてもよい。特に、rAAVベクターにより送達される導入遺伝子は、脂質粒子、リポソーム、ベシクル、ナノスフェア、またはナノ粒子などのいずれかに封入されて、送達するために製剤化されてもよい。
【0206】
このような製剤は、本明細書に開示される核酸またはrAAV構築物の薬学的に許容される製剤の導入に関して好ましい場合がある。リポソームの形成および使用は、一般に、当業者にとって公知である。最近、血清中安定性および循環半減期の改善されたリポソームが開発された(米国特許第5,741,516号)。さらに、潜在的な薬物担体としてのリポソーム調製物およびリポソーム様調製物についての様々な方法が記載されている(米国特許第5,567,434号;同第5,552,157号、同第5,565,213号;同第5,738,868号および同第5,795,587号)。
【0207】
リポソームは、通常、他の手順によるトランスフェクションに対して抵抗性であるいくつかの細胞型に関して使用されることに成功している。さらに、リポソームは、ウイルスベースの送達系に典型的であるDNA長の制約を有さない。リポソームは、遺伝子、薬物、放射性治療剤、ウイルス、転写因子およびアロステリックエフェクターを、種々の培養細胞系および動物中に導入するのに効果的に使用されている。さらに、リポソームに媒介される薬物送達の有効性を調査するいくつかの成功した臨床試験が完了している。
【0208】
リポソームは、水性媒体中に分散されたリン脂質から形成され、多層同心二重層ベシクル(多層ベシクル(MLV)とも呼ばれる)を自然発生的に形成する。MLVは、一般に、25nm~4μmの直径を有する。MLVを超音波処理することにより、コア内に水性液剤を含有する200~500Aの範囲内の直径を有する小さい単層ベシクル(SUV)の形成がもたらされる。
【0209】
あるいは、rAAVのナノカプセル製剤を使用してもよい。ナノカプセルは、一般に、安定した再生可能な方法で物質を捕捉することができる。細胞内ポリマーの過負荷による副作用を回避するために、このような超微粒子(約0.1μmのサイズ)は、in vivoで分解され得るポリマーを使用して設計されるべきである。これらの要求を満たす生分解性ポリアルキル-シアノアクリレートナノ粒子が使用のために企図される。
【0210】
上記送達方法に加えて、rAAV組成物を宿主に送達する代替方法として、以下の技法も企図される。循環系へのおよび循環系を介する、薬物の浸透速度および浸透効率を増強するためのデバイスとして、ソノフォレーシス(すなわち、超音波)が使用されており、米国特許第5,656,016号に記載されている。企図される他の薬物送達の選択肢は、骨内注射(米国特許第5,779,708号)、マイクロチップデバイス(米国特許第5,797,898号)、眼科用製剤(Bourlais et al., 1998)、経皮マトリックス(米国特許第5,770,219号および同第5,783,208号)ならびにフィードバック制御送達(米国特許第5,697,899号)である。
【0211】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、ハンチントン病を有するかまたはそれを有すると診断された対象を、本明細書に記載の核酸で処置することに関する。ハンチントン病を有する対象は、ハンチントン病を診断する現行の方法を使用して医師によって特定され得る。これらの状態を特徴付け、診断の助けとなる、ハンチントン病の症状および/または合併症は当技術分野において周知であり、以下に限定されないが、鬱および不安を含み、ならびに特徴的な運動障害および舞踏病を伴う。ハンチントン病の診断の助けとなり得る検査は、例えば、以下に限定されないが、遺伝子検査を含む。ハンチントン病の家族歴もまた、対象がハンチントン病を有し易いかどうかを決定する際、またはハンチントン病の診断をする際の助けとなり得る。
【0212】
本明細書に記載の組成物および方法は、ハンチントン病を有するか、またはそれを有すると診断された対象に投与することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、本明細書に記載の組成物、例えば、本明細書に記載の核酸の有効量を、ハンチントン病の症状を軽減するために、対象に投与することを含む。本明細書で使用される場合、「ハンチントン病の症状を軽減すること」は、ハンチントン病に関連するいずれかの状態または症状を改善することである。等価な未処置対照と比較した場合、このような低減は、いずれかの標準的技法によって測定した場合に、少なくとも5%、10%、20%、40%、50%、60%、80%、90%、95%、99%またはそれより高い割合までである。
【0213】
有効量、毒性、および治療有効性は、例えば、最小有効用量および/または最大耐用量を決定するために、細胞培養または実験動物において、標準的な薬学的手順によって決定することができる。投与量は、用いられる剤形および利用される投与経路に応じて変わり得る。治療有効用量は、細胞培養アッセイから最初に推定することができる。また、用量は、最小有効用量と最大耐用量の間の投与量範囲を実現するために、動物モデルにおいて処方されてもよい。いずれかの特定の投与量の効果は、好適なバイオアッセイ、例えば、とりわけ腫瘍成長および/またはサイズに関するアッセイによってモニターすることができる。投与量は、医師によって決定され、必要であれば、観察された処置の効果に合わせて調整され得る。
【0214】
所与の用量の本明細書に記載されている単離された核酸(例えば、配列番号1~24の少なくとも1つ)、または所与の用量の本明細書に記載されている単離された核酸を含む組換えAAV(rAAV)の評価を可能にするin vitroおよび動物モデルのアッセイが本明細書において提供される(例えば、図4図9図15を参照されたい)。非限定的な例としては、本明細書に記載されている単離された核酸またはrAAVの用量の有効性は、以下の方法のいずれか1つによって、in vitroで評価され得る:(1)単離された核酸(例えば、配列番号1~24の少なくとも1つを含むプラスミド)および標的配列(例えば、ルシフェラーゼ発現に関連するHTT標的配列)を細胞(例えば、293細胞)中に共トランスフェクトさせ、標的の濃度および/もしくは活性を測定すること(例えば、図7図8B図16~18を参照されたい);(2)細胞(例えば、ヒト神経細胞U87)に、単離された核酸(例えば、CMVプロモーターなどの構成的プロモーターに作動可能に連結した、配列番号1~24の少なくとも1つ)を発現するrAAV(例えば、AAVRH10)、および標的配列(例えば、ルシフェラーゼ発現に関連するHTT標的配列)を発現するrAAVを感染させ、標的の濃度および/もしくは活性を測定すること(例えば、図10、11A~11Bを参照されたい);(3)HTTを発現する細胞(例えば、ヒト神経細胞U87またはHD患者由来のヒト肺線維芽細胞)に、単離された核酸(例えば、CMVプロモーターなどの構成的プロモーターに作動可能に連結した、配列番号1~24の少なくとも1つ)を発現するrAAV(例えば、AAVRH10)を感染させ、HTTタンパク質および/もしくはmRNAの濃度および/もしくは活性を測定すること(例えば、図12~14、図20~21を参照されたい);または(4)HTTを発現する細胞(例えば、ヒト神経細胞U87またはHD患者由来のヒト肺線維芽細胞)に、単離された核酸(例えば、hSyn1などのニューロン特異的プロモーターに作動可能に連結した、配列番号1~24の少なくとも1つ、ここで、rAAVが、CYP46A1などのタンパク質をコードする導入遺伝子を必要に応じてさらに発現する)を発現するrAAV(例えば、AAVRH10)を感染させ、HTTタンパク質および/もしくはmRNAの濃度および/もしくは活性を測定すること(例えば、図4図9図15を参照されたい)。
【0215】
本明細書に記載されている単離された核酸またはrAAVの有効性はまた、動物モデル、例えば、HTTタンパク質を発現するマウスモデルにおいて評価することができる。例えば、以下のHTTマウスモデルを、所望のHTT標的に従って使用することができる(例えば、表3を参照されたい):Hu128;B6CBA-R6/2(CAG 120+/-5);B6CBA-Tg(HDエクソン1)62Gpb/3J;B6CBA-R6/2(CAG 160+/-5);またはB6CBA-Tg(HDエクソン1)62Gpb/1J。非限定的な例として、本明細書に記載されているマウスモデルに、単離された核酸(例えば、hSyn1などのニューロン特異的プロモーターに作動可能に連結した、配列番号1~24の少なくとも1つ、ここで、rAAVが、CYP46A1などのタンパク質をコードする導入遺伝子を必要に応じてさらに発現する)を発現するrAAV(例えば、AAVRH10)を感染させ、マウスにおけるHTTタンパク質および/もしくはmRNAの濃度および/もしくは活性、ならびに/または疾患の病因を測定する。例えば、図4図9図15を参照されたい。
ベクター
【0216】
一部の実施形態では、本明細書に記載のmiRNAの1つまたは複数は、組換え発現ベクターまたはプラスミドにおいて発現される。本明細書で使用される場合、用語「ベクター」は、導入遺伝子を宿主細胞中に移入するのに好適なポリヌクレオチド配列を指す。用語「ベクター」は、プラスミド、ミニ染色体、ファージ、ネイキッドDNAなどを含む。例えば、米国特許第4,980,285号;同第5,631,150号;同第5,707,828号;同第5,759,828号;同第5,888,783号;および同第5,919,670号、ならびにSambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Press (1989)を参照されたい。ベクターの一種は「プラスミド」であり、これは、その中に追加のDNAセグメントがライゲーションされる環状二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターは、追加のDNAセグメントがウイルスゲノム中にライゲーションされる、ウイルスベクターである。ある特定のベクターは、その中にそれらが導入される宿主細胞において、自発的複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。さらに、ある特定のベクターは、それらが動作可能に連結している遺伝子の発現を指示することが可能である。このようなベクターを、本明細書において「発現ベクター」と称する。一般に、組換えDNA技法において有用性の発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。本明細書では、「プラスミド」と「ベクター」は、プラスミドがベクターの最も一般的に使用される形態であるため、互換的に使用される。しかし、本発明は、等価な機能を果たす、ウイスルベクター(例えば、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)などの発現ベクターのこのような他の形態を含むことを意図する。
【0217】
クローニングベクターは、自発的に複製することができるか、または宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、ベクターが決定可能な様式で切断され得る、および所望のDNA配列が、新しい組換えベクターが宿主細胞において複製するその能力を保持するようにライゲーションされ得る、1つまたは複数のエンドヌクレアーゼ制限部位によってさらに特徴付けられる、ベクターである。プラスミドの場合には、所望の配列の複製は、プラスミドが、宿主細菌などの宿主細胞内でコピー数を増加させるように多数回起こってもよく、または宿主が有糸分裂によって再生する前に宿主ごとに一回だけ起こってもよい。ファージの場合には、複製は、溶解相中に能動的に起こってもよく、または溶原相中に受動的に起こってもよい。
【0218】
発現ベクターは、所望のDNA配列を、制限およびライゲーションによって挿入することができ、その結果、それが、調節配列に作動可能に接合し(operably joined)、RNA転写物として発現され得る、ベクターである。ベクターは、ベクターで形質転換された、もしくは形質転換された、もしくはトランスフェクトされた、または、形質転換されていない、もしくは形質転換されていない、もしくはトランスフェクトされていない、細胞の同定において使用するのに好適な1つまたは複数のマーカー配列をさらに含有することができる。マーカーは、例えば、抗生物質または他の化合物に対する抵抗性または感受性のいずれかを増加または低下させるタンパク質をコードする遺伝子、その活性が当技術分野で公知の標準的アッセイによって検出可能である酵素をコードする遺伝子(例えば、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼまたはアルカリホスファターゼ)、および形質転換されたかまたはトランスフェクトされた細胞、宿主、コロニーまたはプラークの表現型に視覚的影響を及ぼす遺伝子(例えば、緑色蛍光タンパク質)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書において使用されるベクターは、これらが作動可能に接合しているDNAセグメント中に存在する構造的遺伝子産物の自発的複製および発現が可能である。
【0219】
本明細書で使用される場合、コード配列および調節配列は、それらが、コード配列の発現または転写を調節配列の影響または制御下に置くような方法で、共有結合により連結される場合に、「作動可能に」接合されると言われる。コード配列が機能性タンパク質へと翻訳されるのが望ましい場合には、2つのDNA配列は、5’調節配列におけるプロモーターの誘導がコード配列の転写をもたらす場合、および2つのDNA配列間の連結の性質が、(1)フレームシフト変異の導入をもたらさないか、(2)コード配列の転写を指示するプロモーター領域の能力を妨害しないか、または(3)タンパク質へと翻訳される対応するRNA転写物の能力を妨害しない場合に、作動可能に接合されると言われる。よって、プロモーター領域は、プロモーター領域が、得られる転写物が所望のタンパク質またはポリペプチドへと翻訳され得るように、そのDNA配列の転写を実行することが可能である場合に、コード配列に作動可能に接合されていることになる。
【0220】
本明細書に記載のポリペプチドのいずれかをコードする核酸分子が細胞内で発現される場合、その発現を指示するために種々の転写制御配列(例えば、プロモーター/エンハンサー配列)を使用することができる。プロモーターはネイティブのプロモーター、すなわち、遺伝子の発現の正常な調節をもたらす、その内因的状況における遺伝子のプロモーターであってもよい。一部の実施形態では、プロモーターは構成的であってもよく、すなわち、プロモーターは調節されず、その関連する遺伝子の継続的な転写を可能にする。種々の条件付きプロモーター、例えば、分子の有無によって制御されるプロモーターも使用することができる。
【0221】
遺伝子発現に必要とされる調節配列の正確な性質は、種または細胞の種類間で様々であり得るが、一般に、必要であれば、それぞれ、転写および翻訳の開始に関与する5’非転写配列および5’非翻訳配列、例えば、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列などを含み得る。特に、このような5’非転写調節配列は、作動可能に接合した遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。調節配列は、所望の場合には、エンハンサー配列または上流のアクチベーター配列も含み得る。本発明のベクターは、5’リーダー配列またはシグナル配列を必要に応じて含んでもよい。適切なベクターの選択および設計は、当業者の能力および裁量の範囲内である。
【0222】
発現に必要なエレメントのすべてを含有する発現ベクターは、市販されており、当業者に公知である。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989を参照されたい。細胞は、異種DNA(RNA)の細胞中への導入によって遺伝子操作される。この異種DNA(RNA)は、宿主細胞において異種DNAの発現を可能にする転写エレメントの作動可能な制御下に置かれる。
【0223】
一部の実施形態では、ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)または組換えAAVである。
【0224】
態様のいずれかの一部の実施形態では、ベクターは、pEMBLである。態様のいずれかの一部の実施形態では、ベクターは、pEMBL-D(+)Syn1である。態様のいずれかの一部の実施形態では、ベクターは、pEMBL-D(+)Syn1-hCGイントロンのみである。態様のいずれかの一部の実施形態では、ベクターは、pEMBL-D(+)Syn1-hCGin-2x対照pre-miRである。態様のいずれかの一部の実施形態では、ベクターは、pEMBL-D(+)Syn1-hCGin-2x人工pre-miRである。態様のいずれかの一部の実施形態では、ベクターは、pEMBL-D(+)Syn1-CYP46A1-hCGin-2x人工pre-miRである。態様のいずれかの一部の実施形態では、ベクターは、pEMBL-D(+)Syn1-luc-HTT-3’UTR/変異体である。
【0225】
態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載のベクターまたは単離された核酸は、以下のうちの少なくとも1つを含む:少なくとも1つの(例えば、2個の)ITR;Syn1プロモーター(例えば、配列番号31~32を参照されたい);少なくとも1つの(例えば、2個の)hCGイントロン(例えば、配列番号34を参照されたい);premiRの少なくとも1つの(例えば、2個の)コピー(例えば、配列番号35を参照されたい;例えば、対照pre-miR;人工pre-miR;配列番号1~24の少なくとも1つ);小ポリA(例えば、配列番号36を参照されたい);CYP46A1(例えば、配列番号26~27を参照されたい);ルシフェラーゼ(例えば、配列番号28~29を参照されたい);および/またはHTT標的配列(例えば、配列番号30を参照されたい、例えば、HTT-3’UTR/変異体)。例えば、図1を参照されたい。
【0226】
態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されている単離された核酸またはベクターは、CYP46A1を含む。CYP46A1は、チトクロームP450スーパーファミリーの酵素のメンバーである。チトクロームP450タンパク質は、薬物代謝ならびにコレステロール、ステロイドおよび他の脂質の合成に関与する多くの反応を触媒するモノオキシゲナーゼである。この小胞体タンパク質は、脳内で発現され、ここで、コレステロールを24S-ヒドロキシコレステロールに変換する。コレステロールは、血液脳関門を通過することができないが、24S-ヒドロキシコレステロールは、脳内で循環へと分泌され、異化のために肝臓に戻され得る。態様のいずれかの一部の実施形態では、CYP46A1は、ヒトCYP46A1を含み得る(例えば、NCBI参照番号NG_007963.1 RefSeqGene Range 4881-47884;NM_006668.2;NP_006659.1を参照されたい;例えば、配列番号26~27を参照されたい)。コレステロール分解に関する律速酵素であるCYP46A1は、ハンチントン病において神経保護的である(例えば、そのそれぞれの内容が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、Boussicault et al., CYP46A1, the rate-limiting enzyme for cholesterol degradation, is neuroprotective in Huntington’s disease, Brain. 2016 Mar, 139(Pt 3):953-70;Kacher et al., CYP46A1 gene therapy deciphers the role of brain cholesterol metabolism in Huntington’s disease, Brain. 2019 Aug 1;142(8):2432-2450を参照されたい)。
【0227】
態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されている導入遺伝子(例えば、CYP46A1)は、配列番号27、または配列番号27と同じ機能を維持する(例えば、HDに対する治療用タンパク質)、配列番号27の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0228】
態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されている導入遺伝子(例えば、CYP46A1)は、配列番号26を含む核酸配列、または同じ機能を維持する、配列番号26と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である配列、または配列番号26のコドン最適化バージョンによってコードされる。
【0229】
配列番号26、CYP46A1、1503個のヌクレオチド(nt)(例えば、Homo sapiensチトクロームP450ファミリー46サブファミリーAメンバー1(CYP46A1)、mRNA、NCBI参照配列:NM_006668.2を参照されたい)
【化1】
【0230】
配列番号27、CYP46A1、500個のアミノ酸(aa)(例えば、コレステロール24-ヒドロキシラーゼ前駆体(Homo sapiens)、NCBI参照配列:NP_006659.1を参照されたい)
【0231】
【化2-1】
【化2-2】
【0232】
一部の実施形態では、組換えによって発現された遺伝子の1つまたは複数は、細胞のゲノム中に組み込まれてもよい。
【0233】
態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されている単離された核酸またはベクターは、少なくとも1つのプロモーターを含む。態様のいずれかの一部の実施形態では、プロモーターは、ヒトSyn1プロモーターである。態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されているプロモーター(例えば、Syn1)は、配列番号31~32のうちの1つ、または配列番号31~32のうちの1つと同じ機能を維持する(例えば、組織特異的プロモーター)、配列番号31~32のうちの1つの配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0234】
配列番号31、Syn1プロモーター、477nt
【化3】
【0235】
配列番号32、Syn1プロモーター、448nt
【化4】
【0236】
態様のいずれかの一部の実施形態では、プロモーターは、構成的CMVプロモーターである。態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されているプロモーター(例えば、CMV)は、配列番号33、または、配列番号33と同じ機能を維持する(例えば、構成的プロモーター)、配列番号33の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0237】
配列番号33、CMVプロモーター
【化5-1】
【化5-2】
【0238】
態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されている単離された核酸またはベクターは、少なくとも1つのイントロンを含む。態様のいずれかの一部の実施形態では、イントロンは、hCGイントロンである。態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されているイントロン(例えば、hCGイントロン)は、配列番号34、または、配列番号34と同じ機能を維持する、配列番号34の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されている単離された核酸またはベクターは、配列番号34の少なくとも1つ(例えば、2つ)の部分、例えば、配列番号34のおおよそヌクレオチド1~100、16~100、114~635、および/または122~635を含む。
【0239】
配列番号34、hCGイントロン、635nt(例えば、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)遺伝子6ベータサブユニット、GenBank:X00266.1を参照されたい)
【化6】
【0240】
態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されている単離された核酸またはベクターは、本明細書に記載されている人工miRNA(例えば、配列番号1~24の1つ)の2つのコピーを含むpremiRを含む。態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されているpremiRは、配列番号35、または、配列番号35と同じ機能を維持する(例えば、少なくとも1つのmiRNAの発現)、配列番号35の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されている単離された核酸またはベクターは、配列番号35の一部を、例えば、1つのmiRNAコピーが発現されるように、例えば、配列番号35のおおよそnt1~191、1~199、191~386、または199~386を含む。
【0241】
配列番号35、2x miHTT-H1;太字のテキストは、5’隣接配列(例えば、配列番号35のnt1~65または199~260)を示し;イタリック体のテキストは、miHTTパッセンジャー(例えば、配列番号35のnt69~87または264~282;例えば、非限定的な例として使用される配列番号1の逆相補体を参照されたい;配列番号2~24のいずれか1つの逆相補体は、配列番号35において配列番号1の逆相補体の代わりに使用され得る)を示し;太字のイタリック体のテキストは、miR30aループ(例えば、配列番号35のnt90~104または285~299)を示し;イタリック体の二重下線を付したテキストは、miHTTガイド鎖(例えば、配列番号35のnt107~126または302~321;例えば、非限定的な例として使用される配列番号1を参照されたい;配列番号2~24のいずれか1つは、配列番号35において配列番号1の代わりに使用され得る)を示し;かつ太字の二重下線を付したテキストは、3’隣接配列(例えば、配列番号35のnt130~191または325~386)を示す。
【化7】
【0242】
態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されている単離された核酸またはベクターは、ポリアデニル化領域(例えば、小ポリA)を含む。態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されているポリAは、配列番号36、または配列番号36と同じ機能を維持する(例えば、ポリアデニル化)、配列番号36の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0243】
配列番号36、小ポリA、54nt、
【化8】
【0244】
態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されている単離された核酸またはベクター(例えば、本明細書に記載されているmiRNAを試験するために使用される)は、リポーターとしてのルシフェラーゼを含む。態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されているリポーター(例えば、ルシフェラーゼ)は、配列番号29、または配列番号29と同じ機能を維持する(例えば、ルシフェラーゼ活性およびルミネセンス)、配列番号29の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0245】
態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されているリポーター(例えば、ルシフェラーゼ)は、配列番号28を含む核酸配列、または同じ機能を維持する、配列番号28と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である配列、または配列番号28のコドン最適化バージョンによってコードされる。
【0246】
配列番号28、ルシフェラーゼ核酸、1653nt
【化9】
【0247】
配列番号29、ルシフェラーゼタンパク質、550aa
【化10-1】
【化10-2】
【0248】
態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されている単離された核酸またはベクター(例えば、本明細書に記載されているmiRNAを試験するために使用される)は、HTT標的配列(すなわち、HTT遺伝子に由来する短い核酸配列)を含む。態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されているHTT標的配列は、配列番号30、または配列番号30と同じ機能を維持する(例えば、本明細書に記載されているmiRNAの標的化または試験)、配列番号30の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である核酸配列を含む。
【0249】
配列番号30、HTT標的配列(例えば、HTT-3’UTR/変異体)、417nt
【化11】
【0250】
本特許請求された発明の酵素をコードする核酸分子は、当技術分野において標準的である方法および技法を使用して、細胞(1つまたは複数)中に導入され得る。例えば、核酸分子は、化学的形質転換および電気穿孔を含む形質転換、形質導入、パーティクルガン法などの標準的プロトコールによって導入され得る。本特許請求された発明の酵素をコードする核酸分子の発現は、核酸分子をゲノム中に組み込むことによっても達成され得る。
キット
【0251】
本明細書に記載の薬剤は、一部の実施形態では、治療適用、診断適用または研究適用においてそれらの使用を容易にするために、医薬キットまたは診断用キットまたは研究用キット中に集められてもよい。キットは、本開示の構成成分および使用するための指示を収納する1つまたは複数の容器を含んでもよい。具体的には、このようなキットは、本明細書に記載の1つまたは複数の薬剤を、意図した適用およびこれらの薬剤の適切な使用について説明する指示と一緒に含んでもよい。ある特定の実施形態では、キット中の薬剤は、医薬製剤中に存在してもよく、かつ特定の適用および薬剤の投与方法に関して好適な投与量であってもよい。研究目的のキットは、様々な実験を行うのに適切な濃度または量の構成成分を含有してもよい。
【0252】
一部の実施形態では、本開示は、rAAVを生成するためのキットに関し、キットは、配列番号1~24のいずれか1つに示される配列を含むmiRNAを含むか、またはそれによってコードされる、単離された核酸を収納する容器を含む。一部の実施形態では、キットは、AAVキャプシドタンパク質、例えば、AAV9またはAAVrh10キャプシドタンパク質をコードする単離された核酸を収納する容器をさらに含む。
【0253】
キットは、研究者による本明細書に記載の方法の使用を容易にするように設計されてもよく、多くの形態をとり得る。キットの組成物のそれぞれは、適宜、液体形態(例えば、溶液で)、または固体形態(例えば、乾燥粉末)で提供されてもよい。ある特定の場合には、組成物の一部は、例えば、好適な溶媒または他の種(例えば、水または細胞培養培地)(キットと共に提供されても提供されなくてもよい)を添加することによって、構成可能であるか、またはそうでなければ処理可能(例えば、活性形態に)であってもよい。本明細書で使用される場合、「指示」は、指示および/またはプロモーションの構成要素を規定することができ、典型的には、本開示のパッケージングに関するまたはそれに関連する書面の指示に関する。指示は、ユーザーが、指示がキットに関連すること、例えば、視聴覚による伝達(例えば、ビデオテープ、DVDなど)、インターネットによる伝達、および/またはウェブに基づく伝達などであることを明確に認識するような任意の方法で提供される、任意の口頭による指示または電子的指示も含み得る。書面の指示は、医薬製品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形態であってもよく、この指示は、動物への投与のための製造、使用または販売についての機関による承認も反映し得る。
【0254】
キットは、1つまたは複数の容器内に、本明細書に記載の構成成分のいずれか1つまたは複数を含有してもよい。例として、一実施形態では、キットは、キットの1つもしくは複数の構成成分を混合する、ならびに/または試料を単離および混合する、ならびに対象に適用するための指示を含んでもよい。キットは、本明細書に記載の薬剤を収納する容器を含んでもよい。薬剤は、液体、ゲルまたは固体(粉末)の形態であってもよい。薬剤は、無菌で調製され、シリンジ内にパッケージングされ、および冷蔵で輸送されてもよい。あるいは、薬剤は、保存のためにバイアルまたは他の容器内に収納されてもよい。第2の容器は、無菌で調製された他の薬剤を有してもよい。あるいは、キットは、シリンジ、バイアル、チューブ、または他の容器内でプレミックスされ、輸送される活性剤を含んでもよい。
【0255】
本発明の例示的な実施形態は、以下の例によってより詳細に記載される。これらの実施形態は、本発明の例示であり、当業者は、本発明が例示的実施形態に限定されないことを認識する。
免疫モジュレーター
【0256】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法および組成物は、免疫モジュレーターを投与することをさらに含む。一部の実施形態では、免疫モジュレーターは、投与のとき、投与前、または投与後に投与され得る。対象が、少なくとも2回目の組成物を再投与される場合には、免疫モジュレーターは、少なくとも2回目の投与前、投与と共に、または投与後に投与され得る。
【0257】
一部の実施形態では、免疫モジュレーターは、IdeS、IdeZ、IdeS/Z、Endo S、またはそれらの機能的バリアントなどの免疫グロブリン分解酵素である。そのそれぞれが参照によりその全体として組み込まれる、US7,666,582、US8,133,483、US20180037962、US20180023070、US20170209550、US8,889,128、WO2010/057626、US9,707,279、US8,323,908、US20190345533、US20190262434、およびWO2020/016318に記載されている、このような免疫グロブリン分解酵素およびそれらの使用についての参照文献の非限定的な例。
【0258】
一部の実施形態では、免疫モジュレーターは、プロテアソーム阻害剤である。ある特定の態様では、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブである。実施形態の一部の態様では、免疫モジュレーターは、ボルテゾミブおよび抗CD20抗体であるリツキシマブを含む。実施形態の他の態様では、免疫モジュレーターは、ボルテゾミブ、リツキシマブ、メトトレキサート、および静脈内ガンマグロブリンを含む。そのそれぞれが参照によりその全体として組み込まれる、US10,028,993、US9,592,247、およびUS8,809,282に記載されている、プロテアソーム阻害剤およびそれらのリツキシマブ、メトトレキサートおよび静脈内ガンマグロブリンとの組合せについて開示するこのような参照文献の非限定的な例。
【0259】
代替の実施形態では、免疫モジュレーターは、NF-kB経路の阻害剤である。実施形態のある特定の態様では、免疫モジュレーターは、ラパマイシン、または機能的バリアントである。US10,071,114、US20160067228、US20160074531、US20160074532、US20190076458、US10,046,064に記載される、ラパマイシンおよびその使用について開示する参照文献の非限定的な例は、その全体として組み込まれる。実施形態の他の態様では、免疫モジュレーターは、免疫抑制剤を含む合成ナノ担体である。そのそれぞれが参照によりその全体として組み込まれる、US20150320728、US20180193482、US20190142974、US20150328333、US20160243253、US10,039,822、US20190076522、US20160022650、US10,441,651、US10,420,835、US20150320870、US2014035636、US10,434,088、US10,335,395、US20200069659、US10,357,483、US20140335186、US10,668,053、US10,357,482、US20160128986、US20160128987、US20200038462、US20200038463に記載されている、免疫抑制剤、合成ナノ担体に連結した免疫抑制剤、ラパマイシンを含む合成ナノ担体、および/または寛容原性合成ナノ担体、それらの用量、投与および使用についての参照文献の非限定的な例。
【0260】
一部の実施形態では、免疫モジュレーターは、そのそれぞれがその全体として本明細書に組み込まれる、US20200038463、米国特許第9,006,254号に開示されているラパマイシンを含む合成ナノ担体(ImmTOR(商標)ナノ粒子)(Kishimoto, et al., 2016, Nat Nanotechnol, 11(10): 890-899;Maldonado, et al., 2015, PNAS, 112(2): E156-165)である。一部の実施形態では、免疫モジュレーターは、操作された細胞、例えば、参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、WO2017192786に開示されているSQZ技術を使用して修飾された免疫細胞である。
【0261】
一部の実施形態では、免疫モジュレーターは、ポリ-ICLC、1018 ISS、アルミニウム塩、Amplivax、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、イミキモド、ImuFact IMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、JuvImmune、LipoVac、MF59、モノホスホリルリピドA、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 206、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PEPTEL、ベクター系、PLGAマイクロ粒子、レシキモド、SRL172、ビロソームおよび他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、R848、ベータ-グルカン、Pam3Cys、ならびにAquila’s QS21 stimulonからなる群から選択される。別のさらなる実施形態では、免疫モジュレーターまたはアジュバントは、ポリ-ICLCである。
【0262】
一部の実施形態では、免疫モジュレーターは、クロロキン(TLRシグナル伝達阻害剤)および2-アミノプリン(PKR阻害剤)などの、細胞における自然免疫応答を阻害する小分子であり、本明細書に開示されている少なくとも1つのrAAVを含む組成物と組み合わせて投与することもできる。市販のTLR-シグナル伝達阻害剤のいくつかの非限定的な例には、BX795、クロロキン、CLI-095、OxPAPC、ポリミキシンB、およびラパマイシン(すべてINVIVOGEN(商標)から購入可能)が含まれる。さらに、2-アミノプリン、BX795、クロロキン、およびH-89などのパターン認識受容体(PRR)(自然免疫シグナル伝達に関与する)の阻害剤も、本明細書に開示されているin vivoタンパク質発現に関する、本明細書に開示される少なくとも1つのrAAVベクターを含む組成物および方法において使用することができる。
【0263】
一部の実施形態では、修飾されたウイルスキャプシドを有するrAAVベクターも、NLRX1などの自然免疫の負の調節因子をコードし得る。したがって、一部の実施形態では、rAAVベクターも、NLRX1、NS1、NS3/4A、またはA46Rのうちの1つもしくは複数、またはそのいずれかの組合せを必要に応じてコードし得る。さらに、一部の実施形態では、本明細書に開示されている少なくとも1つのrAAVベクターを含む組成物は、組織または対象によって生じる自然免疫応答を回避するために、自然免疫系の阻害剤をコードする合成の、修飾されたRNAも含み得る。
【0264】
一部の実施形態では、本明細書に開示されている投与方法において使用するための免疫モジュレーターは、免疫抑制剤である。本明細書で使用される場合、用語「免疫抑制薬または免疫抑制剤」は、正常な免疫機能を阻害または妨害する医薬品を含むことを意図する。本明細書に開示される方法に好適な免疫抑制剤の例には、米国特許公開第2002/0182211号に開示されている、CTLA4およびB7経路を介するT細胞およびB細胞のカップリングを妨害する薬剤などの、T細胞/B細胞共刺激経路を阻害する薬剤が含まれる。一実施形態では、免疫抑制剤は、シクロスポリンAである。他の例には、ミオフェニレートモフェチル(myophenylate mofetil)、ラパマイシン、および抗胸腺細胞グロブリンが含まれる。一実施形態では、免疫抑制薬は、本明細書に開示される少なくとも1つのrAAVベクターを含む組成物で投与されるか、または別の組成物で投与することができるが、本明細書に開示されている投与方法に従って、少なくとも1つのrAAVベクターを含む組成物の投与と同時に、またはその前に、またはその後に投与されてもよい。免疫抑制薬は、投与経路に適合する製剤で投与され、所望の治療効果を達成するのに十分な投与量で対象に投与される。一部の実施形態では、免疫抑制薬は、本明細書に開示されているrAAVベクターに対する忍容性を誘導するのに十分な時間、一過的に投与される。
【0265】
本明細書に開示されている方法および組成物のいずれかの実施形態では、本明細書に開示される組成物を投与される対象は、免疫抑制剤も投与される。AAVを投与される患者の免疫応答の免疫抑制をもたらす様々な方法が公知である。当技術分野で公知の方法は、患者に、免疫抑制剤、例えばプロテアソーム阻害剤を投与することを含む。例えば、その両方が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,169,492号および米国特許出願第15/796,137号に開示される、当技術分野で公知の1つのこのようなプロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブである。一部の実施形態では、免疫抑制剤は、例えば、抗体産生細胞の排除または抑制によって、免疫応答を抑制することが可能である、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、scfvまたは他の抗体由来の分子を含む抗体であり得る。さらなる実施形態では、免疫抑制エレメントは、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)であり得る。このような実施形態では、shRNAのコード領域は、rAAVカセットに含まれ、一般に、ポリAテールの3’の下流に位置する。shRNAは、サイトカイン、成長因子(形質転換成長因子β1およびβ2、TNFならびに公知である他のものを含む)などの免疫刺激剤の発現を低下または排除するために、標的とされ得る。
【0266】
このような免疫モジュレート剤の使用は、何カ月および/または何年にもわたり、複数回の投与(dosing)(例えば、複数回の投与(administration))を使用する者の能力を促進する。これにより、以下に議論される複数の薬剤、例えば、rAAVベクターをコードする複数の遺伝子の使用、または対象への複数回の投与が可能になる。
【0267】
本発明の例示的な実施形態は、以下の実施例によってより詳細に記載される。これらの実施形態は、本発明の例示であり、当業者は、本発明が例示的実施形態に限定されないことを認識する。
定義
【0268】
便宜上、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲において使用されるいくつかの用語および句の意味を以下に提供する。別段に記述されていなければ、または文脈から暗に示されていなければ、以下の用語および句は、以下に提供される意味を含む。定義は、特定の実施形態を説明する際の助けとなるよう提供され、および本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ制限されるので、定義は、特許請求された発明を限定することを意図しない。別段に定義されていなければ、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。当技術分野における用語の使用と本明細書で提供されるその定義との間に明らかな矛盾が存在する場合、本明細書内で提供される定義が優先するこのとする。
【0269】
便宜上、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲において、本明細書で用いられるある特定の用語を、ここに集める。
【0270】
用語「低下させる」、「低減する」、「低減」、または「阻害する」は、統計的に有意な量での低下を意味するために、本明細書においてすべて使用される。一部の実施形態では、「低減する」、「低減」または「低下させる」または「阻害する」は、典型的には、参照レベル(例えば、所与の処置または薬剤の非存在)と比較して、少なくとも10%の低下を意味し、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれより大きい低下を含んでもよい。本明細書で使用される場合、「低減」または「阻害」は、参照レベルと比較して、完全な阻害または低減を包含しない。「完全な阻害」は、参照レベルと比較して、100%の阻害である。低下は、所与の障害を有することなく、個体に対して正常な範囲内として許容されるレベルまでの下降が好ましい場合がある。
【0271】
用語「増加した」、「増加する」、「増強する」、または「活性化する」はすべて、統計的に有意な量での増加を意味するために、本明細書において使用される。一部の実施形態では、用語「増加した」、「増加する」、「増強する」、または「活性化する」は、参照レベルと比較して、少なくとも10%の増加、例えば、参照レベルと比較して、少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%の増加、または最大100%(100%を含む)の増加、または10~100%の間の任意の増加、あるいは参照レベルと比較して、少なくとも約2倍、もしくは少なくとも約3倍、もしくは少なくとも約4倍、もしくは少なくとも約5倍、もしくは少なくとも約10倍の増加、または2倍~10倍もしくはそれを超える倍数の間の任意の増加を意味してもよい。マーカーまたは症状の文脈で、「増加」は、このようなレベルの統計的に有意な増加である。
【0272】
本明細書で使用される場合、「対象」は、ヒトまたは動物を意味する。通常、動物は、霊長類、齧歯類、飼育動物、または狩猟動物などの脊椎動物である。霊長類には、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、およびマカク、例えば、アカゲザルが含まれる。齧歯類には、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギおよびハムスターが含まれる。飼育動物および狩猟動物には、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ科の種、例えば、イエネコ、イヌ科の種、例えば、イヌ、キツネ、オオカミ、鳥類の種、例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ、および魚類、例えば、マス、ナマズおよびサケが含まれる。一部の実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトである。用語「個体」、「患者」および「対象」は、本明細書において互換的に使用される。
【0273】
好ましくは、対象は、哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであってもよいが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、ハンチントン病の動物モデルを表す対象として有利に使用され得る。対象は、雄であっても雌であってもよい。
【0274】
対象は、処置を必要とする状態(例えば、ハンチントン病)またはこのような状態に関連する1つもしくは複数の合併症を有すると以前に診断されたことがあるか、またはそれに罹っていると確認されたことがあるか、またはそれを有する対象であってもよく、必要に応じて、ハンチントン病またはハンチントン病に関連する1つもしくは複数の合併症に対する処置を既に受けたことがあってもよい。あるいは、対象は、ハンチントン病またはハンチントン病に関連する1つもしくは複数の合併症を有すると以前に診断されたことがなくてもよい。例えば、対象は、ハンチントン病またはハンチントン病に関連する1つもしくは複数の合併症に関する1つまたは複数のリスク因子を示す対象、あるいはリスク因子を示さない対象であってもよい。
【0275】
特定の状態に対する処置を「必要とする対象」は、その状態を有するか、その状態を有すると診断されたか、またはその状態を発症するリスクを有する対象であってもよい。
【0276】
本明細書で使用される場合、用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、隣接する残基のアルファ-アミノ基とカルボキシ基の間のペプチド結合によって互いに接続した、一連のアミノ酸残基を示すために、本明細書において互換的に使用される。用語「タンパク質」、および「ポリペプチド」は、そのサイズまたは機能にかかわらず、修飾されたアミノ酸(例えば、リン酸化、糖化、グリコシル化など)およびアミノ酸アナログを含む、アミノ酸のポリマーを指す。「タンパク質」および「ポリペプチド」は、比較的大きなポリペプチドに関して使用されることが多いが、用語「ペプチド」は、小さいポリペプチドに関して使用されることが多く、しかし、これらの用語の使用は、当技術分野において重複している。用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、遺伝子産物およびその断片に言及する場合、本明細書において互換的に使用される。よって、例示的なポリペプチドまたはタンパク質には、遺伝子産物、天然に存在するタンパク質、ホモログ、オルソログ、パラログ、断片および他の等価物、前記のもののバリアント、断片、およびアナログが含まれる。
【0277】
バリアントアミノ酸またはDNA配列は、ネイティブの配列または参照配列と、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれより高い割合で同一であってもよい。ネイティブの配列と変異体の配列の間の相同性(同一性パーセント)の程度は、例えば、ワールドワイドウェブにおいてこのために通常用いられる無料で利用可能なコンピュータープログラム(例えば、デフォルト設定のBLASTpまたはBLASTn)を使用して、2つの配列を比較することによって、決定することができる。
【0278】
ネイティブのアミノ酸配列の変更は、当業者に公知のいくつかの技法のいずれかによって達成することができる。変異は、例えば、ネイティブの配列の断片へのライゲーションを可能にする制限部位に挟まれた、変異体の配列を含有するオリゴヌクレオチドを合成することによって、特定の遺伝子座に導入することができる。ライゲーション後に、得られる再構築された配列は、所望のアミノ酸の挿入、置換、または欠失を有するアナログをコードする。あるいは、オリゴヌクレオチド特異的部位特異的変異誘発の手順を用いて、必要とされる置換、欠失、または挿入によって変更された特定のコドンを有する変更されたヌクレオチド配列をもたらすことができる。このような変更をするための技法は、十分に確立されており、例えば、参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、Walder et al. (Gene 42:133, 1986);Bauer et al. (Gene 37:73, 1985); Craik (BioTechniques, January 1985, 12-19);Smith et al. (Genetic Engineering: Principles and Methods, Plenum Press, 1981);ならびに米国特許第4,518,584号および同第4,737,462号に開示されるものを含む。ポリペプチドの適切な立体構造を維持することに関与しない任意のシステイン残基も、一般的にはセリンで置換され、分子の酸化安定性を改善し、異常な架橋を防ぐことができる。逆に、システイン結合(複数可)は、ポリペプチドに付加され、その安定性を改善するか、またはオリゴマー化を容易にすることができる。
【0279】
本明細書で使用される場合、用語「核酸」または「核酸配列」は、リボ核酸、デオキシリボ核酸またはそのアナログの単位を組み込む、任意の分子、好ましくはポリマー分子を指す。核酸は、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。一本鎖核酸は、変性した二本鎖DNAの1つの核酸鎖であってもよい。あるいは、これは、いずれの二本鎖DNAにも由来しない一本鎖核酸であってもよい。一態様では、核酸は、DNAであってもよい。別の態様では、核酸は、RNAであってもよい。好適なDNAには、例えば、ゲノムDNAまたはcDNAが含まれ得る。好適なRNAには、例えば、mRNA、miRNAが含まれ得る。
【0280】
態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されているポリペプチド、核酸、または細胞は、操作されていてもよい。本明細書で使用される場合、「操作された」は、ヒトの手で操作された態様を指す。例えば、ポリペプチドは、ポリペプチドの少なくとも1つの態様、例えばその配列が、ヒトの手によって、それが天然に存在する態様と異なるように操作されている場合に、「操作された」と考えられる。通常の実践であり、当業者に理解されるように、操作された細胞の後代は、典型的には、依然として、実際の操作が以前の実態で実施されたとしても「操作された」と称される。
【0281】
態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載のmiRNAは、外因性である。態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載のmiRNAは、異所性である。態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載のmiRNAは、内因性ではない。
【0282】
用語「外因性」は、そのネイティブの供給源以外の細胞に存在する物質を指す。用語「外因性」は、本明細書で使用される場合、それが通常見られない、かつ核酸またはポリペプチドをこのような細胞または生物中に導入したい、細胞または生物などの生物システム中に、ヒトの手を含むプロセスによって導入された核酸(例えば、ポリペプチドをコードする核酸)またはポリペプチドを指し得る。あるいは、「外因性」は、それが比較的少ない量でしか見られない、かつ細胞または生物中の核酸またはポリペプチドの量を増加させたい、例えば、異所性の発現またはレベルを創出したい、細胞または生物などの生物システム中に、ヒトの手を含むプロセスによって導入された核酸またはポリペプチドを指し得る。対照的に、用語「内因性」は、生物システムまたは細胞に対してネイティブである物質を指す。本明細書で使用される場合、「異所性」は、普通ではない場所および/または量で見られる物質を指す。異所性の物質は、所与の細胞内で通常見られるが、非常に少ない量および/または異なる時点でしか見られない物質であり得る。異所性はまた、天然には見られないか、またはその天然環境において所与の細胞内で発現される、ポリペプチドまたは核酸などの物質も含む。
【0283】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている阻害性RNAをコードする核酸(例えば、配列番号1~24)は、ベクターによって含まれる。本明細書に記載の態様の一部では、本明細書に記載されている所与のポリペプチドをコードする核酸配列、またはそのいずれかのモジュールは、ベクターに作動可能に連結している。用語「ベクター」は、本明細書で使用される場合、宿主細胞への送達のため、または異なる宿主細胞間での移入のために設計された核酸構築物を指す。本明細書で使用される場合、ベクターは、ウイルスベクターであっても非ウイルスベクターであってもよい。用語「ベクター」は、適当な制御エレメントと関連する場合に複製が可能であり、遺伝子配列を細胞に移入することができる、任意の遺伝エレメントを包含する。ベクターは、以下に限定されないが、クローニングベクター、発現ベクター、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオンなどを含んでもよい。
【0284】
態様のいずれかの一部の実施形態では、ベクターは、組換えベクターであり、例えば、それは、少なくとも2つの異なる供給源を起源とする配列を含む。態様のいずれかの一部の実施形態では、ベクターは、少なくとも2つの異なる種を起源とする配列を含む。態様のいずれかの一部の実施形態では、ベクターは、少なくとも2つの異なる遺伝子を起源とする配列を含み、例えば、それは、融合タンパク質、または少なくとも1つのネイティブではない(例えば、異種の)遺伝制御エレメント(例えば、プロモーター、サプレッサー、アクチベーター、エンハンサー、応答エレメントなど)に作動可能に連結した発現産物をコードする核酸を含む。
【0285】
態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載のベクターまたは核酸は、コドン最適化されており、例えば、核酸配列のネイティブの配列または野生型配列は、変更されたかまたは操作された核酸が、ネイティブの/野生型配列と同じポリペプチド発現産物をコードするが、所望の発現系において改善された効率で転写および/または翻訳されるように、代替のコドンを含むように変更または操作されている。態様のいずれかの一部の実施形態では、発現系は、ネイティブの/野生型配列の供給源以外の生物(またはこのような生物から得られる細胞)である。態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載のベクターおよび/または核酸配列は、哺乳動物または哺乳動物細胞、例えば、マウス、マウス細胞、またはヒト細胞における発現に関してコドン最適化されている。態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載のベクターおよび/または核酸配列は、ヒト細胞における発現に関してコドン最適化されている。態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載のベクターおよび/または核酸配列は、酵母または酵母細胞における発現に関してコドン最適化されている。態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載のベクターおよび/または核酸配列は、細菌細胞における発現に関してコドン最適化されている。態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載のベクターおよび/または核酸配列は、E. coli 細胞における発現に関してコドン最適化されている。
【0286】
本明細書で使用される場合、用語「発現ベクター」は、ベクター上の転写調節配列に連結した配列からRNAまたはポリペプチドの発現を指示するベクターを指す。発現される配列は、必ずしもそうではないが、細胞に対して異種性であることが多い。発現ベクターは、追加のエレメントを含んでもよく、例えば、発現ベクターは、2つの複製系を有してもよく、よって、これは2つの生物において、例えば、発現のためのヒト細胞において、ならびにクローニングおよび増幅のための原核生物宿主において、維持されることが可能になる。
【0287】
本明細書で使用される場合、用語「ウイルスベクター」は、ウイルス起源の少なくとも1つのエレメントを含み、ウイルスベクター粒子中にパッケージングされる能力を有する、核酸ベクター構築物を指す。ウイルスベクターは、必須ではないウイルス遺伝子の代わりに、本明細書に記載されているポリペプチドをコードする核酸を含有し得る。ベクターおよび/または粒子は、in vitroまたはin vivoのいずれかで、何れかの核酸を細胞中に移入するために利用され得る。多数の形態のウイルスベクターが当技術分野で公知である。本発明のウイルスベクターの非限定的な例としては、AAVベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、およびキメラウイルスベクターが挙げられる。
【0288】
本明細書に記載のベクターは、一部の実施形態では、他の好適な組成物および治療と組み合わされてもよいことが理解されるべきである。一部の実施形態では、ベクターは、エピソームベクターである。好適なエピソームベクターの使用により、対象における目的のヌクレオチドを、高コピー数の染色体外DNAにおいて維持する手段がもたらされ、それによって、染色体組み込みの潜在的効果を排除する。
【0289】
本明細書で使用される場合、用語「処置する」、「処置」、「処置すること」、または「改善」は、治療的処置を指し、ここで、その目的は、疾患または障害、例えばハンチントン病に関連する状態の進行または重症度を逆転、軽減、改善、阻害、遅延または停止することである。用語「処置すること」は、ハンチントン病に関連する状態、疾患または障害の少なくとも1つの有害効果または症状を低減または軽減することを含む。処置は、一般に、1つまたは複数の症状または臨床マーカーが低減する場合に、「有効」である。あるいは、処置は、疾患の進行が低下するかまたは停止する場合に、「有効」である。すなわち、「処置」は、単に症状またはマーカーの改善だけではなく、処置の非存在下で期待されるものと比較して、症状の進行または悪化の中断、またはその少なくとも減速を含む。有益であるかまたは所望の臨床結果には、以下に限定されないが、検出可能であっても検出不能であっても、1つもしくは複数の症状の緩和、疾患の程度の減弱、疾患の安定化した(すなわち悪化していない)状態、疾患進行の遅延もしくは減速、疾患状態の改善もしくは緩和、寛解(部分的であっても全体的であっても)、および/または死亡率の低下が挙げられる。用語疾患の「処置」は、疾患の症状またはその副作用からの解放(緩和処置を含む)を提供することも含む。
【0290】
本明細書で使用される場合、用語「医薬組成物」は、薬学的に許容される担体、例えば、製薬産業において通常使用される担体と組み合わせた活性剤を指す。句「薬学的に許容される」は、正当な医学的判断の範囲内で、合理的なベネフィット/リスク比に見合う、過度な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を有することなく人間および動物の組織と接触して使用するのに好適である、これらの化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すために、本明細書において用いられる。態様のいずれかの一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、水以外の担体であってもよい。態様のいずれかの一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、クリーム、エマルション、ゲル、リポソーム、ナノ粒子、および/または軟膏であってもよい。態様のいずれかの一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、人工的なまたは操作された担体、例えば、有効成分が天然に存在することが見出されない担体であってもよい。
【0291】
本明細書で使用される場合、用語「投与すること」は、本明細書に開示されている化合物を、薬剤の所望の部位への少なくとも部分的な送達をもたらす方法または経路によって、対象中に配置することを指す。本明細書に開示される化合物を含む医薬組成物は、対象において有効な処置をもたらす任意の適切な経路によって投与され得る。一部の実施形態では、投与は、物理的なヒトの活動、例えば、注射、摂取行動、適用行動、および/または送達デバイスもしくはマシンの操作を含む。このような活動は、例えば、医療専門家および/または処置される対象によって実施され得る。
【0292】
本明細書で使用される場合、「接触させること」は、薬剤を少なくとも1つの細胞に送達するか、または曝露させるための任意の好適な手段を指す。例示的な送達方法としては、以下に限定されないが、細胞培養培地への直接送達、灌流、注射、または当業者に周知の他の送達方法が挙げられる。一部の実施形態では、接触させることは、物理的なヒト活動、例えば、注射;分散、混合、および/もしくはデカントする行動;ならびに/または送達デバイスもしくはマシンの操作を含む。
【0293】
用語「統計的に有意な」または「有意に」は、統計的有意性を指し、一般に、2標準偏差(2SD)またはより大きな差を意味する。
【0294】
操作例における以外に、または他に示されている場合、本明細書で使用される成分または反応条件の量を表現するすべての数は、すべての事例において、用語「約」で修飾されていると理解されるべきである。用語「約」は、パーセンテージと併せて使用される場合、±1%を意味し得る。
【0295】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprising)」は、表された規定の要素に加えて、他の要素も存在してよいことを意味する。「含む(comprising)」の使用は、限定ではなく包含を示す。
【0296】
用語「からなる(consisting of)」は、本明細書に記載されている組成物、方法、およびそのそれぞれの構成成分を指し、実施形態についてのその記載において列挙されていないすべての要素を除外する。
【0297】
本明細書で使用される場合、用語「本質的に~からなる(consisting essentially of)」は、所与の実施形態に必要とされるこれらの要素を指す。この用語は、本発明の実施形態の基本的かつ新規または機能的な特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさない追加の要素の存在を許容する。
【0298】
本明細書で使用される場合、用語「~に対応する」は、第1のポリペプチドもしくは核酸において列挙された位置におけるアミノ酸もしくはヌクレオチド、または第2のポリペプチドもしくは核酸において列挙されたアミノ酸もしくはヌクレオチドと等価であるアミノ酸もしくはヌクレオチドを指す。等価な列挙されたアミノ酸またはヌクレオチドは、当技術分野で公知の相同性プログラムの程度、例えばBLASTを使用して、候補配列のアライメントによって決定することができる。
【0299】
本明細書で使用される場合、用語「特異的結合」は、第1の実体が第2の実体に結合し、それが標的ではない第3の実体に結合するよりも強い特異性および親和性で実体を標的とする、2つの分子、化合物、細胞および/または粒子の間の化学的相互作用を指す。一部の実施形態では、特異的結合は、第3の非標的実体に対する親和性よりも、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍またはそれより高い倍率である、第1の実体の、第2の標的実体への親和性を指し得る。所与の標的に対して特異的な試薬は、利用されるアッセイの条件下でその標的に対して特異的結合を示す試薬である。
【0300】
単数形の用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が別段に明確に示していなければ、複数の指示対象を含む。同様に、語「または(or)」は、文脈が別段に明確に示していなければ、「および(and)」を含むことを意図する。本明細書に記載のものに類似するかそれと同等な方法および材料は、本開示の実践または試験において使用することができ、好適な方法および材料を以下に記載する。略語「例えば(e.g.)」は、ラテン語の例えば(exempli gratia)に由来し、非限定的な例を示すために本明細書において使用される。よって、略語「例えば(e.g.)」は、用語「例えば(for example)」と同義である。
【0301】
本明細書に開示される本発明の代替の要素または実施形態の群分けは、限定として解釈されるべきではない。各群のメンバーは、個々に、またはその群の他のメンバーもしくは本明細書に見られる他の要素との任意の組合せで、言及されても特許請求されてもよい。群の1つまたは複数のメンバーは、便宜上および/または特許性の理由で、群に含まれても、それから削除されてもよい。いずれかのこのような包含または削除が生じる場合、本明細書は、ここで修正されたその群を含有すると見なされ、よって、添付の特許請求の範囲において使用されるすべてのマーカッシュ群についての書面の記載を満たす。
【0302】
本明細書において別段に定義されていなければ、本出願と併せて使用される科学用語および技術用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって通常理解される意味を有する。本発明は、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコール、および試薬などに限定されず、それ自体変更可能であることが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明の範囲を制限することを意図するものではなく、本発明は、特許請求の範囲によってのみ定義される。免疫学および分子生物学における一般的用語の定義は、そのそれぞれの内容がすべて参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy, 20th Edition, published by Merck Sharp & Dohme Corp., 2018 (ISBN 0911910190, 978-0911910421);Robert S. Porter et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Cell Biology and Molecular Medicine, published by Blackwell Science Ltd., 1999-2012 (ISBN 9783527600908);およびRobert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, published by VCH Publishers, Inc., 1995 (ISBN 1-56081-569-8);Immunology by Werner Luttmann, published by Elsevier, 2006; Janeway’s Immunobiology, Kenneth Murphy, Allan Mowat, Casey Weaver (eds.), W. W. Norton & Company, 2016 (ISBN 0815345054, 978-0815345053);Lewin’s Genes XI, published by Jones & Bartlett Publishers, 2014 (ISBN-1449659055);Michael Richard Green and Joseph Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., USA (2012) (ISBN 1936113414);Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier Science Publishing, Inc., New York, USA (2012) (ISBN 044460149X);Laboratory Methods in Enzymology: DNA, Jon Lorsch (ed.) Elsevier, 2013 (ISBN 0124199542);Current Protocols in Molecular Biology (CPMB), Frederick M. Ausubel (ed.), John Wiley and Sons, 2014 (ISBN 047150338X, 9780471503385), Current Protocols in Protein Science (CPPS), John E. Coligan (ed.), John Wiley and Sons, Inc., 2005;およびCurrent Protocols in Immunology (CPI) (John E. Coligan, ADA M Kruisbeek, David H Margulies, Ethan M Shevach, Warren Strobe, (eds.) John Wiley and Sons, Inc., 2003 (ISBN 0471142735, 9780471142737)、WO2018/057855A、US 10,457,940に見い出すことができる。
【0303】
態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載の本開示は、人間をクローニングするためのプロセス、人間の生殖細胞系列の遺伝的同一性を改変するためのプロセス、産業上もしくは商業上の目的でのヒトの胚の使用、またはヒトもしくは動物に対していかなる実質的な医学的利益もなしに、動物に罹患を引き起こす可能性がある、動物の遺伝的同一性を改変するためのプロセス、およびこのようなプロセスから生じる動物にも、関係しない。
【0304】
他の用語は、本発明の様々な態様についての記載内で、本明細書において定義される。
【0305】
参照文献、発効された特許、公開された特許出願、および同時係属の特許出願を含み;本出願全体を通して引用される;すべての特許および他の刊行物は、例えば、本明細書に記載の技術と併せて使用され得るこのような刊行物において記載される方法論について説明および開示するために、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。これらの刊行物は、本出願の出願日前に、単にそれらの開示を提供するにすぎない。この点において、先行発明によってまたは他のいずれの理由でも、このような開示が先行するために本発明者らが権利を与えられないことの自認として、いずれも解釈されるべきではない。日付についてのすべての記述またはこれらの文書の内容についての表現は、出願人らに利用可能な情報に基づいており、これらの文書の日付または内容の正確性についていずれの自認も構成しない。
【0306】
本開示の実施形態についての記載は、排他的であることも、開示された正確な形態に本開示を限定することも意図しない。本開示の特定の実施形態、およびそれに関する実施例は、例示目的で本明細書に記載されているが、関連する技術分野における当業者が認識するように、様々な同等な修正が本開示の範囲内で可能である。例えば、方法のステップまたは機能は所与の順序で表されるが、代替の実施形態は、異なる順序で機能を実施してもよく、または機能は実質的に同時に実施されてもよい。本明細書に提供される本開示の教示は、適宜他の手順または方法に適用することができる。本明細書に記載の様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を提供することができる。本開示の態様は、必要であれば、上記参照文献および出願の組成物、機能および概念を用いるように修正され、本開示のまたさらなる実施形態を提供することができる。これらの変更および他の変更は、詳細な説明を鑑みて本開示に対してなされ得る。すべてのこのような修正は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【0307】
前記実施形態のいずれかの特定の要素は、他の実施形態の要素と組み合わされても、またはそれの代わりに使用してもよい。さらに、本開示のある特定の実施形態に関連する利点はこれらの実施形態に関して記載されているが、他の実施形態がこのような利点を示してもよく、本開示の範囲内にあるすべての実施形態が必ずしもこのような利点を示す必要もない。
【0308】
本明細書に記載の技術は、決してさらなる限定であると解釈されるべきではない以下の実施例によってさらに例証される。
【0309】
本明細書に記載の技術の一部の実施形態は、以下の番号を付された段落のいずれかによって定義され得る。
1. a.第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)末端逆位反復配列(ITR)、またはそのバリアントを含む第1の領域;および
b.1つまたは複数のmiRNAをコードする導入遺伝子を含む第2の領域であって、各miRNAが、配列番号25に相補的なシード配列を含む、第2の領域
を含む単離された核酸。
2. a.第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)末端逆位反復配列(ITR)、またはそのバリアントを含む第1の領域;および
b.1つまたは複数のmiRNAをコードする導入遺伝子を含む第2の領域であって、各miRNAが、miRNA骨格配列に挟まれた配列番号1~22のいずれか1つに示される配列を含む配列によってコードされている、第2の領域
を含む単離された核酸。
3. 前記導入遺伝子が、イントロンに挟まれたタンデムで2つのmiRNAまたは2つの前駆体miRNAを含む、段落1または2に記載の単離された核酸。
4. 前記隣接するイントロンが、同一である、段落3に記載の単離された核酸。
5. 前記隣接するイントロンが、同じ種に由来する、段落3に記載の単離された核酸。
6. 前記隣接するイントロンが、hCGイントロンである、段落3に記載の単離された核酸。
7. 前記導入遺伝子が、プロモーターを含む、段落1から6のいずれか一項に記載の単離された核酸。
8. 前記プロモーターが、シナプシン(Syn1)プロモーターである、段落7に記載の単離された核酸。
9. 前記導入遺伝子が、タンパク質をさらにコードする、段落1から8のいずれか一項に記載の単離された核酸。
10. 前記タンパク質が、CYP46A1である、段落9に記載の単離された核酸。
11. 前記1つまたは複数のmiRNAが、前記導入遺伝子の非翻訳部分に位置する、段落1から10のいずれか一項に記載の単離された核酸。
12. 前記非翻訳部分が、イントロンである、段落11に記載の単離された核酸。
13. 前記非翻訳部分が、タンパク質をコードする核酸配列の最後のコドンとポリAテール配列の間か、またはプロモーター配列の最後のヌクレオチド塩基とポリAテール配列の間に存在する、段落11に記載の単離された核酸。
14. 第2のアデノ随伴ウイルス(AAV)末端逆位反復配列(ITR)、またはそのバリアントを含む第3の領域をさらに含む、段落1から13のいずれか一項に記載の単離された核酸。
15. 前記ITRバリアントが、機能的末端分離部位(TRS)を欠き、必要に応じて、前記ITRバリアントが、ATRS ITRである、段落1から14のいずれか一項に記載の単離された核酸。
16. 前記miRNAの少なくとも1つが、ヒトハンチンチン(例えば、配列番号25)にハイブリダイズし、ヒトハンチンチンの発現を阻害する、段落1から15のいずれか一項に記載の単離された核酸。
17. 段落1から16のいずれか一項に記載の単離された核酸を含むベクター。
18. プラスミドである、段落17に記載のベクター。
19. 段落1から16のいずれか一項に記載の単離された核酸、または段落17もしくは18に記載のベクターを含む宿主細胞。
20. a.キャプシドタンパク質;および
b.段落1から16のいずれか一項に記載の単離された核酸
を含む組換えAAV(rAAV)。
21. 前記キャプシドタンパク質が、AAV1、AAV2、AAV3b、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、もしくはAAV13、もしくはAAVrh10キャプシドタンパク質、またはそのいずれかのキメラである、段落20に記載のrAAV。
22. 前記キャプシドタンパク質が、AAVrh10キャプシドタンパク質である、段落20または21に記載のrAAV。
23. 自己相補的AAV(scAAV)である、段落20から22のいずれか一項に記載のrAAV。
24. 中枢神経系(CNS)への送達のために製剤化されている、段落20から22のいずれか一項に記載のrAAV。
25. 配列番号1~22のいずれか1つに示される配列をコードする単離された核酸。
26. 段落1から16のいずれかに記載の単離された核酸を含む組成物。
27. 段落17または18に記載のベクターを含む組成物。
28. 段落20から24のいずれかに記載のrAAV細胞を含む組成物。
29. それを必要とする対象におけるハンチントン病を処置するための方法であって、ハンチントン病を有するかまたはハンチントン病を発症するリスクを有する対象に、段落1から16のいずれか一項に記載の単離された核酸、段落20から24のいずれか一項に記載のrAAV、または段落25から28のいずれかに記載の組成物の治療有効量を投与することを含む、方法。
30. 前記対象が、36個より多いCAGリピート、40個より多いリピート、または100個より多いリピートを有するハンチンチン遺伝子を含む、段落29に記載の方法。
31. 前記対象が、20歳未満である、段落29または30に記載の方法。
32. 前記投与が、前記単離された核酸またはrAAVの、前記対象の中枢神経系(CNS)への送達をもたらす、段落29から31のいずれか一項に記載の方法。
33. 前記投与が、注射、必要に応じて静脈内注射または線条体内注射によるものである、段落29から32のいずれか一項に記載の方法。
34. 前記投与が、カテーテルまたは関連するデバイスによるものである、段落29から33のいずれか一項に記載の方法。
35. 投与することの前に、ハンチントン病を有するかまたはハンチントン病を発症するリスクを有するとして対象を診断するステップをさらに含む、段落34に記載の方法。
36. 投与することの前に、ハンチントン病を有するかまたはハンチントン病を発症するリスクを有するとして対象を診断するアッセイの結果を受け取るステップをさらに含む、段落34に記載の方法。
【実施例
【0310】
(実施例1)
一態様では、ハンチントン病の処置のために使用することができる阻害性RNAが本明細書に記載される。態様のいずれかの一部の実施形態では、阻害性RNAの核酸配列は、配列番号1もしくは配列番号4~9のうちの1つまたは配列番号1もしくは配列番号4~9と同じ機能を維持する(例えば、HTT阻害)、配列番号1もしくは配列番号4~9の少なくとも1つの配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である配列を含む。
【0311】
人工miRNAを含む構築物が本明細書に記載されている(例えば、図1を参照されたい)。pEMBL-D(+)-Syn1-hCGイントロンは、対照ベクターであり、これは、エンプティヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)イントロン(hCGin;例えば配列番号34を参照されたい)を挿入され、シナプシンプロモーター(例えば、配列番号31~32を参照されたい)で駆動される。対照miRNA前駆体(ランダム配列または非機能性変異)の2つのコピーをベクターpEMBL-D(+)-Syn1-hCGin-2x対照pre-miRのhCGin中に挿入する。人工pre-miR(例えば、配列番号35を参照されたい;約100~150bpの隣接する上流および下流の配列を含む、3’-UTR標的配列と完全一致)の2つのコピーは、hCGイントロン間にクローニングされる。人工miRNA配列の2つのコピーは、インサーターを切断して、miRNAの前駆体を形成することができる、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)イントロン中に挿入される。pre-miRNAは前駆体であり、これは、ヘアピンループ構築物を有する。pre-miRNAは、エクスポーチン5(Exp5)およびRan-GTPの助けにより、細胞質中に翻訳される。これらのmiRNA前駆体は、核中でリボヌクレアーゼIII酵素Droshaおよび細胞質中でダイサーの助けにより、成熟miRNAへとさらにプロセシングされる(例えば、ダイサーは、前駆体を切断して成熟miRNAとし、これは約20~22bpであり得る)。ベクターpEMBL-D(+)-Syn1-CYP46A1-hCGin-2x人工pre-miRは、組合せ構築物であり、これは、CYP46A1と人工miRNAの両方を同時に生成することができる。pre-miRNAが、成熟miRNAへとプロセシングされて、CAG伸長を含むHTT標的配列(これは、成熟miRNAと完璧に相補的である)と組み合わされ得るかどうかを確認するために、HTT標的配列をルシフェラーゼ遺伝子の後に挿入する。パッケージサイズの制限のために、構築物には小さいポリAを使用する。
【0312】
以下の配列は当技術分野で公知である:pEMBL;シナプシンプロモーター(Syn1);ITR(例えば、AAV1、AAV2、AAV3b、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、またはAAVrh10由来);hCGイントロン;小ポリA;CYP46A1;ルシフェラーゼ;および/またはHTT標的配列(例えば、HTT-3’UTR/変異体)。
【0313】
シナプシン-1(Syn1)は、シナプシン遺伝子ファミリーのメンバーである。シナプシンは、シナプス小胞の細胞質表面と会合するニューロンリンタンパク質をコードする。ファミリーのメンバーは、共通のタンパク質ドメインによって特徴付けられ、これらは、シナプス形成および神経伝達物質放出のモジュレーションに関係し、いくつかの神経精神疾患における潜在的な役割を示唆する。Syn1は、軸索形成およびシナプス形成の調節において役割を果たす。Syn1タンパク質は、いくつかの異なるプロテインキナーゼに関する基質としての役割を果たし、リン酸化は、神経末端におけるこのタンパク質の調節において機能することができる。この遺伝子における変異は、Rett症候群などの主要な神経退化を有するX関連障害に関連し得る。異なるアイソフォームをコードする選択的にスプライシングされた転写物バリアントが同定されている。態様のいずれかの一部の実施形態では、Syn1プロモーターは、ヒトプロモーターSyn1(例えば、NCBI参照番号NG_008437.1 RefSeqGene Range 5001-52957、NM_006950.3、NP_008881.2;NM_133499.2、NP_598006.1と関連するSyn1プロモーターを参照されたい:例えば、配列番号31~32を参照されたい)を含んでもよい。
【0314】
CYP46A1は、チトクロームP450スーパーファミリーの酵素のメンバーである。チトクロームP450タンパク質は、薬物代謝ならびにコレステロール、ステロイドおよび他の脂質の合成に関与する多くの反応を触媒するモノオキシゲナーゼである。この小胞体タンパク質は、脳内で発現され、ここで、コレステロールを24S-ヒドロキシコレステロールに変換する。コレステロールは、血液脳関門を通過することができないが、24S-ヒドロキシコレステロールは、脳内で循環へと分泌され、異化のために肝臓に戻され得る。態様のいずれかの一部の実施形態では、CYP46A1は、ヒトCYP46A1を含んでもよい(例えば、NCBI参照番号NG_007963.1 RefSeqGene Range 4881-47884;NM_006668.2;NP_006659.1を参照されたい;例えば、配列番号26~27を参照されたい)。コレステロール分解のための律速酵素であるCYP46A1は、ハンチントン病において神経保護的である(例えば、そのそれぞれの内容が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、Boussicault et al., CYP46A1, the rate-limiting enzyme for cholesterol degradation, is neuroprotective in Huntington’s disease, Brain. 2016 Mar, 139(Pt 3):953-70;Kacher et al., CYP46A1 gene therapy deciphers the role of brain cholesterol metabolism in Huntington’s disease, Brain. 2019 Aug 1;142(8):2432-2450を参照されたい)。
【0315】
本開示のmiRNAの非限定的な例は、配列番号1または配列番号4~9を含む。
【0316】
配列番号6 CGAGGCCGGGGCGGGGCACA
【0317】
配列番号7 CGGGGCGGGGCCGTGGAGGG
【0318】
配列番号8 ACTGTGCCACTATGTTTTCA
【0319】
配列番号9 GCCTTCATCAGCTTTTCCAG
【0320】
配列番号1 GCTGCTGCTGCTGCTGCTGC
【0321】
配列番号4 TGCTGGAAGGACTTGAGGGA
【0322】
配列番号5 TGTTGCTGCTGCTGCTGCTG
【0323】
態様のいずれかの一部の実施形態では、miRNAは、miRNA骨格配列に挟まれた配列番号25に示される配列の少なくとも2つの(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個の)連続塩基と相補的な配列を含む。態様のいずれかの一部の実施形態では、miRNAは、miRNA骨格配列に挟まれたHTT(例えば、NCBI遺伝子ID:3064を参照されたい;例えば、配列番号25;例えば、表1または2を参照されたい)と関連する、非翻訳領域(例えば、5’UTR、3’UTR)、エクソン、CAGリピート、またはCAGジャンパー(例えば、CAG 5’ジャンパー、CAG 3’ジャンパー)の配列の少なくとも2つの(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個の)連続塩基と相補的な配列を含む。
【0324】
【表2】
【0325】
配列番号25のハンチンチンmRNA(Homo sapiens);NCBI参照配列NM 002111.8(例えば、NG_009378.1 RefSeqGene、例示的なHTT遺伝子に関する5001~174286の範囲)
【化12-1】
【化12-2】
【化12-3】
【化12-4】
【化12-5】
【化12-6】
【化12-7】
【化12-8】
(実施例2)
【0326】
AAVに媒介される人工miRNAおよびハンチントン病(HD)へのそれらの適用
【0327】
HDを処置するために使用することができる人工miRNAが本明細書に記載されている(例えば、図2~3を参照されたい)。人工miRNAを同定および試験するために、いくつかのスクリーニングを実施した。全体として、HDに関する人工miRNAをスクリーニングするプロセスは:(1)人工miR(例えば、24個の人工miRNA構築物;例えば、表1、配列番号1~24、図1図5~6、図8A図19を参照されたい)を設計および合成することを含む。1回目のin vitroスクリーニングは:(2)in vitroでプラスミドを共トランスフェクトすること(例えば、293細胞におけるプラスミド共トランスフェクションにより24個のmiRをスクリーニングする;例えば、図7図8B図16~18を参照されたい);(3)ステップ(2)由来の上位約5個の候補物質に関して、in vitroでAAVRH10に媒介される感染を実施すること(例えば、CMVプロモーターを使用する;例えば、図10~14、図20~21を参照されたい);および/または(4)ステップ(3)由来の上位約2~3個の候補物質に関して、ニューロン特異的プロモーター(例えば、必要に応じてCYP46A1を共発現する、hSyn1プロモーター)によって駆動されるAAVRH10に媒介される感染を実施して、in vitroでのmiRの有効性を試験することを含む。(5)2回目のin vivoでのスクリーニングは、トランスジェニック(Tg)マウス(例えば、Hu-128またはB6CBA-R6/2)においてAAVrh10によって媒介される人工miRNAを試験することを含む、in vivoでのAAVRH10に媒介される処置を含む。(6)次いで、人工miRおよびそれらのCYP46A1との組合せの有効性および安全性についての評価を実施する。例えば、図4図9図15を参照されたい。
I期:領域I~IIIに位置する人工miRNAのスクリーニング
【0328】
領域I~IIIに位置する人工miRNAは、miHTT-H1(配列番号1);miHTT-H2(配列番号2);miHTT-H3(配列番号3);miHTT-H4(配列番号4);miHTT-H5(配列番号5);miHTT-H6(配列番号6);miHTT-H7(配列番号7);miHTT-H8(配列番号8);miHTT-H9(配列番号9);またはmiHTT-H10(配列番号10)を含む;例えば、表1を参照されたい。
【0329】
HDに関する領域I~IIIに位置する人工miRNAをスクリーニングするプロセスは:(1)人工miRを設計および合成することを含む(例えば、9~10個の人工miRNA構築物;例えば、表1、配列番号1~10、図8Aを参照されたい)。1回目のin vitroスクリーニングは:(2)in vitroでプラスミドを共トランスフェクトすること(例えば、293細胞においてプラスミド共トランスフェクションによって9~10個のmiRをスクリーニングすること:例えば、図8Bを参照されたい);(3)ステップ(2)由来の上位約5個の候補物質に関して、in vitroで、AAVRH10に媒介される感染を実施すること(例えば、CMVプロモーターを使用すること;例えば、図10~14を参照されたい);および/または(4)ステップ(3)由来の上位2個の候補物質(例えば、miR-H2およびmiR-H5)に関して、ニューロン特異的プロモーター(例えば、必要に応じてCYP46A1と共発現する、hSyn1プロモーター)によって駆動されるAAVRH10に媒介される感染を実施して、in vitroでのmiRの有効性を試験することを含む。(5)2回目のin vivoでのスクリーニングは、Tgマウス(例えば、Hu-128またはB6CBA-R6/2)においてAAVrh10によって媒介される人工miRNAを試験することを含む、in vivoでのAAVRH10に媒介される処置を含む。(6)次いで、CYP46A1との組合せを用いるかまたはそれを用いない、人工miRの有効性および安全性についての評価を実施する。例えば、図9を参照されたい。本明細書に記載の実験によって、以下の人工miRNAが特に有効であると確認された:miHTT-H2(配列番号2);miHTT-H4(配列番号4);またはmiHTT-H5(配列番号5);例えば、図8A~8B、図11A~11B、図13~14を参照されたい。特に、図13および図14に示されるように、miHTT-H2、H4およびH5は、エンプティベクター(miRNAを有さない)、または試験された他のmiRNA、例えばmiHTT-H1またはmiHTT-H3によるHTT発現と比較して、神経細胞株U87におけるHTT発現を有効に下方調節する。
II期:領域IV~Vに位置する人工miRNAのスクリーニング
【0330】
領域IV~Vに位置するmiRNAは、miHTT-H11(配列番号11);miHTT-H12(配列番号12);miHTT-H13(配列番号13);miHTT-H14(配列番号14);miHTT-H15(配列番号15);miHTT-H16(配列番号16);miHTT-H17(配列番号17);miHTT-H18(配列番号18);miHTT-H19(配列番号19;miR-137);miHTT-H20(配列番号20;miR-455);miHTT-H21(配列番号21;miR-216);またはmiHTT-H22(配列番号22;miR-27a)を含む;例えば、表1を参照されたい。I期に由来する以下のmiRは、陽性対照として使用することができる:miHTT-H2(配列番号2);miHTT-H4(配列番号4);またはmiHTT-H5(配列番号5)。
【0331】
HDに関する領域IV~Vに位置するmiRNAをスクリーニングするプロセスは:(1)人工miRを設計および合成することを含む(例えば、12個の人工miRNA構築物;例えば、表1、配列番号11~22、図19を参照されたい)。1回目のin vitroスクリーニングは:(2)in vitroでプラスミドを共トランスフェクトすること(例えば、293細胞においてプラスミド共トランスフェクションによって12個のmiRをスクリーニングすること:例えば、図16~18を参照されたい);(3)ステップ(2)由来の上位約5個の候補物質(例えば、miHTT-H14;miHTT-H15;miHTT-H17;miHTT-H19;およびmiHTT-H21)に関して、in vitroで、AAVRH10に媒介される感染を実施すること(例えば、CMVプロモーターを使用すること;例えば、図20~21を参照されたい);および/または(4)ステップ(3)由来の上位約2~3個の候補物質に関して、ニューロン特異的プロモーター(例えば、必要に応じてCYP46A1を共発現する、hSyn1プロモーター)によって駆動されるAAVRH10に媒介される感染を実施して、in vitroでのmiRの有効性を試験することを含む。(5)2回目のin vivoでのスクリーニングは、Tgマウス(例えば、Hu-128)においてAAVrh10によって媒介される人工miRNAを試験することを含む、in vivoでのAAVRH10に媒介される処置を含む。(6)次いで、CYP46A1との組合せを用いるかまたはそれを用いない、人工miRの有効性および安全性についての評価を実施する。例えば、図15を参照されたい。本明細書に記載の実験によって、ヒトで発現したmiRNAであるmiHTT-H19(配列番号19;miR-137)およびmiHTT-H21(配列番号21;miR-216)と一緒に、以下の人工miRNAが特に有効であると確認された:miHTT-H14(配列番号14);miHTT-H15(配列番号15);およびmiHTT-H17(配列番号17);例えば、図17~19を参照されたい。
【0332】
miR-137、miR-455、miR-216、およびmiR-27a(例えば、miHTT-H19-H22、配列番号19~22)は、HTTを下方調節する際の有効性について試験された、ヒトで発現するmiRNAの例である。HTTに対するこれらの配列の阻害活性は、以前には公知でなかった。本明細書において示されるように、miR-137(miHTT-H19、配列番号19)およびmiR-216(miHTT-H21、配列番号21)は、HTT 3’-UTRを標的とする2つの特に有効な候補物質であった。
【0333】
miR-137(例えば、miHTT-H19、配列番号19を参照されたい)は、ヒトの第1p22染色体上に位置し、細胞周期制御によって、結腸直腸がん、扁平上皮癌および黒色腫を含むいくつかのがん型における腫瘍抑制因子として作用することが暗に示されている。miR-137は、マウスの胚性幹細胞における神経幹細胞の増殖および分化、ならびにマウス成体の海馬神経前駆細胞由来のニューロンおよびマウス胎仔の海馬ニューロンにおける樹状突起の長さ、分枝点、末端点、および脊椎密度の調節を含むニューロン成熟を調節することが示されている。miR455に関連する疾患には、子宮内膜漿液性腺癌およびペティグルー症候群が含まれる。
【0334】
miR-455(例えば、miHTT-H20、配列番号20を参照されたい)は、ヒトの第9q32染色体上に位置する。miR-455に関連する疾患には、子宮内膜漿液性腺癌およびペティグルー症候群が含まれる。miR-216(例えば、miHTT-H21、配列番号21を参照されたい)は、ヒトの第2p16.1染色体上に位置する。miR-216に関連する疾患には、糖尿病の微小血管合併症および膵管腺癌が含まれる。miR-27a(例えば、miHTT-H22、配列番号22を参照されたい)は、ヒトの第19p13.12染色体上に位置する。miR27Aに関連する疾患には、白血病および胃がんが含まれる。miR-27aは、陽性対照として本明細書において使用され、in vitroで変異体HTTの凝集を低減することが報告されている;例えば、Ban et al., Biochemical and Biophysical Research Communications 488(2), 2017, 316-321を参照されたい。
III期:II期およびII期において同定されたmiRNAに対する領域Vに位置する追加の人工miRNAの試験
【0335】
領域Vに位置する追加の人工miRNAには、miR-451a(配列番号23)またはmiR-155(配列番号24)が含まれる;例えば、表1を参照されたい。miR-451a(配列番号23)は、ヒトの第17q11.2染色体上に位置する。miR-451は、潜在的に、化学療法薬であるパクリタキセルに対する抵抗性を促進する、薬物輸送体タンパク質P-糖タンパク質を調節する。miR451Aに関連する疾患には、神経膠腫感受性および胃がんが含まれる。miR-155(例えば、配列番号24を参照されたい)は、ヒトの第21q21.3染色体上に位置する。miR-155発現のin vivoでの外因性分子制御は、悪性疾患の成長、ウイルス感染症を阻害し、心血管疾患の進行を増強し得る。miR155に関連する疾患には、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫および膵管腺癌が含まれる。例えば、その内容が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、これらの追加の人工miRNAであるmiR-451aおよびmiR-155の議論に関する米国特許第10,767,180号を参照されたい。理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書、例えば表1に開示されている少なくとも1つまたは複数のmiRNAは、同じ標的遺伝子を標的とするmiR-451aまたはmiR-155の阻害効率と比較した場合に、標的遺伝子、例えばHTTを阻害するのにより良好であることが期待される。
【0336】
I期およびII期に由来する以下の人工miRは、上記の追加のmiRNAに対して試験することができる:miHTT-H2(配列番号2);miHTT-H4(配列番号4);およびmiHTT-H5(配列番号5);miHTT-H14(配列番号14);miHTT-H15(配列番号15);miHTT-H17(配列番号17);miHTT-H19(配列番号19;miR-137);またはmiHTT-H21(配列番号21;miR-216)。
【0337】
I期およびII期において同定された人工mRNAに対して、HDに関する追加の人工miRNAを試験するプロセスは:(1)人工miRを設計および合成することを含む(例えば、2個の人工miRNA構築物;例えば、表1、配列番号23~24、図6を参照されたい)。1回目のin vitroでの試験は:(2)in vitroでプラスミドを共トランスフェクトすること(例えば、293細胞においてプラスミド共トランスフェクションによって2個のmiRをスクリーニングすること);(3)in vitroで、AAVRH10に媒介される感染を実施すること(例えば、CMVプロモーターを使用すること);および/または(4)ニューロン特異的プロモーター(例えば、必要に応じてCYP46A1を共発現する、hSyn1プロモーター)によって駆動されるAAVRH10に媒介される感染を実施して、in vitroでのmiRの有効性を試験することを含む。(5)2回目のin vivoでの試験は、Tgマウス(例えば、Hu-128またはB6CBA-R6/2)においてAAVrh10によって媒介される人工miRNAを試験することを含む、in vivoでのAAVRH10に媒介される処置を含む。(6)次いで、CYP46A1との組合せを用いるかまたはそれを用いない、人工miRの有効性および安全性についての評価を実施する。
【0338】
さらに、追加のmiRNAの有効性を、I期およびII期に同定した人工miRNA(例えば、miHTT-H2(配列番号2);miHTT-H4(配列番号4);およびmiHTT-H5(配列番号5);miHTT-H14(配列番号14);miHTT-H15(配列番号15);miHTT-H17(配列番号17);miHTT-H19(配列番号19;miR-137);またはmiHTT-H21(配列番号21;miR-216))の有効性と比較する。例えば、図4を参照されたい。理論に拘束されることを望むものではないが、配列番号2、4、5、14、15、17、または21のうちの少なくとも1つが、配列番号23または24と比較して、in vitroまたはin vivoで効率および/または有効性の増加(例えば、HTT mRNAまたはタンパク質レベルまたは活性の低減において)を示し得ることが予想される。
様々なHTTマウスモデルに関する人工miRNAの選択
【0339】
【表3】
【0340】
導入遺伝子マウスモデルHu128は、5’非翻訳領域(5’-UTR)および3’-UTRを含む、フルサイズのヒトHTT遺伝子のノックインを有する(例えば、図6および表3を参照されたい)。他の導入遺伝子マウスモデル(例えば、B6CBA-R6/2(CAG 120+/-5);B6CBA-Tg(HDエクソン1)62Gpb/3J;B6CBA-R6/2(CAG 160+/-5);またはB6CBA-Tg(HDエクソン1)62Gpb/1J)は、ヒトHTTの1kb 5’-UTR、エクソンI およびイントロン260bpを含み、これらは、1つの他の遺伝子(例えば、Gm12695、第4染色体、chr4:96,409,585~96,414,930)中に挿入される。
【0341】
したがって、特定のmiRを試験するために、選択されるマウスモデルは、HTTの標的領域を含むべきである(例えば、図5~6、表1および3を参照されたい)。非限定的な例として、フルサイズのヒトHTT遺伝子のノックインを有する導入遺伝子マウスモデルHu128を使用して、領域I~Vのうちのいずれか1つを標的とするmiR(例えば、配列番号1~24)を試験することができる。別の非限定的な例として、ヒトHTTの1kb 5’-UTR、エクソンIおよびイントロン260bpを有する他の導入遺伝子マウスモデル(例えば、B6CBA-R6/2またはB6CBA-Tg(HDエクソン1)株)を使用して、領域I~IIIのうちのいずれか1つを標的とするmiR(配列番号1~10)を試験することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23-1】
図23-2】
図24
図25-1】
図25-2】
図26
図27
【配列表】
2023507741000001.app
【国際調査報告】