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特表2023-507744低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-27
(54)【発明の名称】低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 14/26 20060101AFI20230217BHJP
   C08F 8/50 20060101ALI20230217BHJP
   C08F 14/00 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
C08F14/26
C08F8/50
C08F14/00 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537023
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(85)【翻訳文提出日】2022-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2020087391
(87)【国際公開番号】W WO2021130150
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】19219405.8
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】トルテッリ, ヴィート
(72)【発明者】
【氏名】モンツァーニ, クリスティアーノ
(72)【発明者】
【氏名】アンテヌッチ, エマヌエーラ
(72)【発明者】
【氏名】イエバ, エリアナ
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AC26P
4J100CA01
4J100DA01
4J100HA51
4J100HC04
4J100HE20
4J100HE26
4J100JA15
(57)【要約】
本発明は、a)高分子量ポリテトラフルオロエチレンを、式R-O-Rを有するエーテル(式中、R1及びR2は、C~C10の直鎖又は分岐の脂肪族基、C~C10の脂環式又はヘテロ環式基、C~C10の芳香族又はヘテロ芳香族基の中から独立して選択され、R及びRは、任意選択的にヘテロ原子を含んでいてもよいC~C10脂肪族構造を形成していてもよい);(ペル)フッ素化ビニルエーテル;(ペル)フッ素化オレフィン;及び任意選択的な、1つ以上の直鎖又は分岐アルキル若しくはアルコキシ基及び/又はハロゲン原子で置換された芳香族炭化水素;からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤と混合する第1の工程;並びにb)そのようにして得た混合物に電離放射線を照射する第2の工程であって、酸素の不存在下で実質的に行われる第2の工程;を含む、低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)高分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を、
式R-O-Rを有するエーテル(式中、R及びRは、C~C10の直鎖又は分岐の脂肪族基、C~C10の脂環式又はヘテロ環式基、C~C10の芳香族又はヘテロ芳香族基の中から独立して選択され、R及びRは、任意選択的にヘテロ原子、特に酸素原子を含んでいてもよいC~C10脂肪族環状構造を形成していてもよい);(ペル)フッ素化ビニルエーテル;(ペル)フッ素化オレフィン;及び任意選択的な、1つ以上の直鎖又は分岐アルキル若しくはアルコキシ基及び/又はハロゲン原子で置換された芳香族炭化水素;からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤と混合する第1の工程;並びに
b)そのようにして得た混合物に電離放射線を照射する第2の工程であって、
酸素の不存在下で実質的に行われる第2の工程;
を含む、低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の製造方法。
【請求項2】
前記低分子量PTFEが、372℃で10Kgの荷重を加えることによってASTM D1238に準拠して決定される少なくとも0.1g/10分のメルトフローインデックスを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記高分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が、ASTM D4895に準拠して決定される少なくとも2.130の標準比重を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種の添加剤が、式R-O-R(式中、R及びRは、C~Cの直鎖又は分岐脂肪族基、好ましくはC~C直鎖又は分岐脂肪族基の中から独立して選択される)のエーテルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
及びRがブチル基又はイソプロピル基である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種の添加剤が下記式を有する(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル(MVE)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法:
CF=CFOR
(式中、Rは、C~C(ペル)フルオロアルキル、C~C環状(ペル)フルオロアルキル、及びC~C(ペル)フルオロオキシアルキルからなる群から選択される)。
【請求項7】
前記少なくとも1種の添加剤が下記式を有する(ペル)フルオロ-アルキルメチレンオキシ-ビニルエーテル(MOVE)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法:
CF=CFOCFOR
(式中、Rは、C~C(ペル)フルオロアルキル、C~C環状(ペル)フルオロアルキル、及びC~C(ペル)フルオロオキシアルキルからなる群から選択される)。
【請求項8】
が、好ましくは-CFCF(MOVE1)、-CFCFOCF(MOVE2)、又は-CF(MOVE3)である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1種の添加剤が、下記式を有する(ペル)フッ素化ビニル誘導体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法:
CF=CFR
(式中、Rは、C~C(ペル)フルオロアルキル;C~C環状(ペル)フルオロアルキル、及びC~C(ペル)フルオロオキシアルキルからなる群から選択される)。
【請求項10】
前記少なくとも1種の添加剤が、1つ以上の直鎖又は分岐のアルキル又はアルコキシ基及び/又はハロゲン原子で置換された芳香族炭化水素であり、好ましくは、前記芳香族炭化水素が、1つ以上のC~Cアルキル及び/又はアルコキシ基、好ましくは1つ以上のC~Cアルキル及び/又はアルコキシ基で置換されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1種の添加剤が、直鎖又は分岐アルキル若しくはアルコキシ基及び/又はハロゲン原子から選択される1つ又は2つの基で置換された芳香族炭化水素である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1種の添加剤が、置換C芳香族炭化水素であり、好ましくは前記C芳香族炭化水素がCアルキル及び/又はアルコキシ基で置換されており、好ましくは前記芳香族炭化水素がトルエン又は1,3-ジメトキシベンゼンである、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1種の添加剤が、前記高分子量PTFEの総重量を基準として0.001重量%~10重量%、0.01重量%~10重量%、0.1重量%~10重量%、0.001重量%~5重量%、0.01重量%~5重量%、0.1重量%~5重量%、0.001重量%~4重量%、0.01重量%~4重量%、0.1重量%~4重量%、0.001重量%~2重量%、0.01重量%~2重量%、0.1重量%~2重量%の量である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の工程b)が、不活性ガス及び/又は酸素吸着剤の存在下で行われる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記電離放射線が、電子線、紫外線、ガンマ線、X線、中性子線、及び高エネルギーイオンの中から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法で得られる、それぞれ25ppb以下の質量のC4~C14ペルフルオロカルボン酸及びその塩を含有する、低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年12月23日付けで出願された欧州特許出願第19219405.8号に基づく優先権を主張するものであり、この出願の全ての内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の製造方法に関する。より具体的には、本発明は、C~C14のペルフルオロカルボン酸(PFCA)及びその塩、特にペルフルオロオクタン酸(PFOA)及びその塩の生成が制限され、更には抑制される、低分子量PTFEの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
PTFEワックス又はPTFEマイクロパウダーとも呼ばれる低分子量ポリテトラフルオロエチレンは、1モルあたり数千から数十万グラムの分子量を有しており、1モルあたり10~10グラムのオーダーである、レギュラーPTFEとも呼ばれる高分子量PTFEの分子量よりもはるかに小さい。
【0004】
低分子量PTFEは、レギュラーPTFEの機能を保持することに加えて、高い分散性を備えている。これは、特にゴム及びプラスチックにおいて添加剤として使用できることを意味する。
【0005】
低分子量PTFEは、一般的には、分解反応を起こすために、レギュラーPTFEの断片に照射する方法によって製造される。公知の製造方法は酸素の存在下での照射を採用しており、これは、PTFEの分解速度を急激に増加させ、その結果その溶融粘度を急激に減少させるのに特に効果的である。
【0006】
しかしながら、酸素は、一定量の短鎖ペルフルオロカルボン酸(PFCA)、特にC~C14の範囲のものの生成に関与しており、これらは現在重大な環境への懸念となっている。これらの中でも、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)は、生体内蓄積性が高いことが特に知られている。
【0007】
したがって、これまで、C~C14のペルフルオロカルボン酸を生成する可能性が低い低分子量PTFEの製造方法を提供すること、及びその結果そのようなPFCAを含まないか又は実質的に含まないPTFEマイクロパウダーを提供することのための努力が払われてきた。
【0008】
照射が実質的に酸素の不存在下で行われるが、PTFEを分解させることができる、したがって十分な速度でPTFEの分子量を減少させることができる特定の添加剤の存在下で行われる方法が開発されてきた。例えば、米国特許出願公開第2019/0023818号明細書には、添加剤が炭化水素、塩素化炭化水素、アルコール、及びカルボン酸から選択される低分子量PTFEを製造するための方法が開示されている。
【0009】
~C14のペルフルオロカルボン酸、特にペルフルオロオクタン酸の生成を制限する、更には抑制することができる代替の添加剤に対する要求がますます増加してきている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
a)高分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を、式R-O-Rを有するエーテル(式中、R及びRは、C~C10の直鎖又は分岐の脂肪族基、C~C10の脂環式又はヘテロ環式基、C~C10の芳香族又はヘテロ芳香族基の中から独立して選択され、R及びRは、任意選択的にヘテロ原子、特に酸素原子を含んでいてもよいC~C10脂肪族環状構造を形成していてもよい);(ペル)フッ素化ビニルエーテル;(ペル)フッ素化オレフィン;及び
任意選択的な置換芳香族炭化水素;からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤と混合する第1の工程;
b)そのようにして得た混合物に電離放射線を照射する第2の工程であって、
酸素の不存在下で実質的に行われる第2の工程;
を含む、低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の製造方法に関する。
【0011】
別の態様によれば、本発明は、上で特定した方法で得られる低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に関する。
【0012】
出願人は、驚くべきことに、本発明による方法が、非常に少量のC~C14ペルフルオロカルボン酸(PFCA)、特に非常に少量のペルフルオロオクタン酸(PFOA)しか生成しないことを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書では、a)高分子量PTFEを少なくとも1種の添加剤と混合する第1の工程;及びb)高分子量PTFEと少なくとも1種の添加剤とを含有する混合物に、実質的に酸素の不存在下で電離放射線を照射する第2の工程;を含む、低分子量PTFEの製造方法が記述される。添加剤は、式R-O-Rを有するエーテル(式中、R及びRは、C~C10の直鎖又は分岐の脂肪族基、C~C10の脂環式又はヘテロ環式基、C~C10の芳香族又はヘテロ芳香族基の中から独立して選択され、R及びRは、任意選択的にヘテロ原子、特に酸素原子を含んでいてもよいC~C10脂肪族環状構造を形成していてもよい);(ペル)フッ素化ビニルエーテル;(ペル)フッ素化オレフィン;及び任意選択的な置換芳香族炭化水素;からなる群から選択される。
【0014】
驚くべきことに、これらの添加剤を使用することにより、C~C14のペルフルオロカルボン酸の生成が、それぞれ25ppb、更には25ppb未満に大幅に減少することが見出された。特に、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)の生成は10ppb未満にまで減少した。
【0015】
本明細書において、別段の指示がない限り、以下の用語は、以下の意味を有するものとする。
【0016】
形容詞「脂肪族」は、水素原子と炭素原子とを含む任意の直鎖又は分岐鎖を意味する。脂肪族基は飽和であっても又は不飽和であってもよく、また鎖の中に窒素、酸素、硫黄、及び塩素のような1つ以上のヘテロ原子、典型的には窒素、酸素、又は硫黄を含み得る。
【0017】
形容詞「脂環式」は、飽和又は不飽和のいずれであってもよい全て炭素の1つ以上の環からなる任意の脂肪族環状基を意味する。
【0018】
形容詞「芳香族」は、4n+2(nは0又は任意の正の整数である)に等しい数のπ電子を有する任意の単核又は多核環式基を意味する。
【0019】
脂環式及び芳香族基は、1つ以上の直鎖若しくは分岐アルキル若しくはアルコキシ基及び/又はハロゲン原子で置換されていてもよく、並びに/又は環の中に窒素、酸素、及び硫黄などの1つ以上のヘテロ原子を含むことができる。環内に窒素、酸素、及び硫黄などの1つ以上のヘテロ原子を含む脂環式基は、本明細書では「ヘテロ環基」と呼ばれる。環内に窒素、酸素、及び硫黄のような1つ以上のヘテロ原子を含む芳香族基は、本明細書では「ヘテロ芳香族基」と呼ばれる。ヘテロ環基又はヘテロ芳香族基のヘテロ原子は、酸素、窒素、及び硫黄からなる群から選択される。
【0020】
「炭化水素」という用語は、水素と炭とからなる有機化合物を意味する。「芳香族炭化水素」は、1つのベンゼン環から構成されるか又は2つ以上の隣接環炭素原子を共有することにより一体に縮合した複数のベンゼン環から構成される1つのコアからなる。芳香族炭化水素は、環内に窒素、酸素、及び硫黄のような1つ以上のヘテロ原子を含むことができる。
【0021】
用語「アルキル」、並びに「アルコキシ」などの派生用語は、それらの範囲内に直鎖及び分岐鎖を含む。アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、及びイソブチルである。別段の具体的な指示がない限り、各アルキル基は、無置換であっても、又はヒドロキシ、スルホ、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルチオから選択されるがそれらに限定されない1つ以上の置換基で置換されていてもよい。ただし、置換基が立体的に適合性を有しており、且つ、化学結合及び歪みエネルギーの規則が満たされていることを条件とする。
【0022】
用語「ハロゲン」には、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が含まれる。
【0023】
範囲が示される場合、範囲端は含まれる。
【0024】
「高分子量PTFE」という表現は、少なくとも2.130の標準比重(SSG)を有するPTFEを指す。高分子量PTFEの標準比重(SSG)は2.300を超えない。
【0025】
好ましくは、第1の工程a)が行われる高分子量PTFEは、2.130~2.230の標準比重(SSG)を有する。標準比重(SSG)は、ASTM D4895に準拠して決定される値である。標準比重は、高分子量PTFEの分子量の指標として使用される。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、前記少なくとも1種の添加剤は、式R-O-Rのエーテルである(式中、R及びRは、C~C10の直鎖又は分岐の脂肪族基、好ましくはC~Cの直鎖又は分岐脂肪族基、より好ましくはC~C直鎖又は分岐脂肪族基から独立して選択される)。好ましくは、R及びRはアルキル基である。より好ましくは、R及びRはブチル基又はイソプロピル基である。
【0027】
及びRは、代わりに、任意選択的にヘテロ原子、特に酸素原子を含んでいてもよいC~C10脂環式構造を形成していてもよい。本発明の方法において添加剤として使用するのに適した環状エーテルの特に非限定的な例は、テトラヒドロフラン、ジオキサンである。
【0028】
本発明の別の実施形態によれば、前記少なくとも1種の添加剤は(ペル)フッ素化ビニルエーテルである。
【0029】
好ましい実施形態では、前記(ペル)フッ素化ビニルエーテルは、下記式を有する(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル(MVE)である:
CF=CFOR
(式中、Rは、C~C(ペル)フルオロアルキル、C~C環状(ペル)フルオロアルキル、C~C(ペル)フルオロオキシアルキルからなる群から選択される)。好ましくは、Rは、-CF、-CFCF、-CFCFCFである。
【0030】
別の好ましい実施形態では、前記(ペル)フッ素化ビニルエーテルは、下記式を有する(ペル)フルオロ-アルキルメチレンオキシ-ビニルエーテル(MOVE)である:
CF=CFOCFOR
(式中、Rは、C~C(ペル)フルオロアルキル;C~C環状(ペル)フルオロアルキル;及びC~C(ペル)フルオロオキシアルキルからなる群から選択される)。好ましくは、Rは、-CFCF(MOVE1)、-CFCFOCF(MOVE2)、又は-CF(MOVE3)である。
【0031】
本発明の更なる実施形態によれば、前記少なくとも1種の添加剤は、(ペル)フッ素化オレフィン、好ましくは下記式を有する(ペル)フッ素化ビニル誘導体である:
CF=CFR
(式中、Rは、C~C(ペル)フルオロアルキル、C~C環状(ペル)フルオロアルキル、及びC~C(ペル)フルオロオキシアルキルからなる群から選択される)。
【0032】
また、本発明の一実施形態によれば、前記少なくとも1種の添加剤は置換芳香族炭化水素である。好ましくは、前記置換芳香族炭化水素は、6~18個の炭素原子、好ましくは6~12個の炭素原子、より好ましくは6個の炭素原子を有する。
【0033】
好ましくは、前記芳香族炭化水素は、1つ以上の直鎖又は分岐アルキル基及び/又は直鎖又は分岐アルコキシ基及び/又はハロゲン原子で置換されている。より好ましくは、前記芳香族炭化水素は、1~8個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子、より好ましくは1~3個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖若しくは分岐アルキル又はアルコキシ基で置換されている。芳香族炭化水素が2つ以上の置換基を有する場合、それらは互いに対してオルト位、メタ位、パラ位にある場合がある。好ましくは、前記少なくとも1種の添加剤は、1つの置換基を有する芳香族炭化水素又は2つの置換基を有する芳香族炭化水素である。
【0034】
好ましくは、前記少なくとも1種の添加剤は、置換C芳香族炭化水素である。好ましくは、前記C芳香族炭化水素は、Cアルキル基及び/又はアルコキシ基で置換されている。好ましくは、前記C芳香族炭化水素はトルエン又は1,3-ジメトキシベンゼンである。
【0035】
好ましくは、上で特定された化合物の中から選択される前記少なくとも1種の添加剤は、高分子量PTFEの総重量を基準として0.001重量%~10重量%、0.01重量%~10重量%、0.1重量%~10重量%、0.001重量%~5重量%、0.01重量%~5重量%、0.1重量%~5重量%、0.001重量%~4重量%、0.01重量%~4重量%、0.1重量%~4重量%、0.001重量%~2重量%、0.01重量%~2重量%、0.1重量%~2重量%の量である。
【0036】
既に上で述べたように、高分子量PTFEと少なくとも1種の添加剤とを含む混合物に照射する第2の工程b)は、実質的に酸素の不存在下で行われる。「実質的に酸素の不存在下」という表現は、第2の工程b)が、5.0体積%未満、好ましくは3.0体積%未満、より好ましくは1.0体積%未満、より好ましくは0.1体積%未満、更に好ましくは0.01体積%未満の酸素を含む雰囲気中で実施されることを意味する。
【0037】
好ましくは、高分子量PTFEを少なくとも1種の添加剤と混合する第1の工程a)も、実質的に酸素の不存在下で行われ、ここでの「実質的に酸素の不存在下で」という表現は、上と同じ意味を有する。
【0038】
異なる実施形態によれば、第2の工程b)は、不活性ガスの存在下で、及び/又は酸素吸着剤の存在下で行われる。一実施形態では、不活性ガス及び/又は酸素吸着剤は、第1の工程a)の間に高分子量PTFE及び少なくとも1種の添加剤と混合される。別の実施形態では、不活性ガス及び/又は酸素吸着剤は、第1のa)から得られる混合物、すなわち第2の工程b)に従って混合物に照射する前に得られる混合物に添加される。
【0039】
好ましくは、不活性ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの中から選択される。好ましくは、不活性ガスは窒素である。
【0040】
酸素吸着剤は、酸素を吸着することができる任意の吸着剤であってよい。例えば、酸素吸着剤は、鉄ベース、亜鉛ベース、又はハイドロサルファイトベースの吸着剤などの無機酸素吸着剤、及びアスコルビン酸ベース、多価アルコールベース、又は活性炭ベースの酸素吸着剤などの有機酸素吸着剤の中から選択される。酸素吸着剤は、酸素と反応するために水を必要とする水依存型、又は水を必要としない自己反応型のいずれであってもよい。酸素吸着剤は、好ましくは自己反応型のものである。好ましくは、酸素吸着剤は鉄ベースの自己反応型酸素吸着剤である。
【0041】
好ましくは、電離放射線は、電子線、紫外線、ガンマ線、X線、中性子線、及び高エネルギーイオンの中から選択される。電子線及びガンマ線が好ましい。
【0042】
好ましくは、電離放射線は、1~2500kGy、1~1000kGy、1~750kGy、10~2500kGy、10~1000kGy、10~750kGy、100~2500kGy、100~1000kGy、100~750kGyの曝露線量を有する。
【0043】
照射温度は、5℃からPTFEの融点まで、好ましくは5℃~320℃、より好ましくは5℃~300℃、更に好ましくは5℃~260℃までの任意の温度であってよい。
【0044】
本発明による方法は、任意選択的には、第2の工程b)から得られた低分子量PTFEを加熱する第3の工程c)を含む。好ましくは、加熱は、50℃~300℃、70℃~300℃、90℃~300℃、100℃~300℃、50℃~230℃、70℃~230℃、90℃~230℃、100℃~230℃、50℃~200℃、70℃~200℃、90℃~200℃、100℃~200℃、50℃~130℃、70℃~130℃、90℃~130℃、100℃~130℃で行われる。
【0045】
本発明の別の目的は、上の方法で得られた低分子量PTFEである。「低分子量PTFE」という表現は、372℃で10Kgの荷重を加えることによってASTM D1238に準拠して決定される、少なくとも0.1g/10分のメルトフローインデックスを有するPTFEを指す。
【0046】
好ましくは、低分子量PTFEは、372℃で10Kgの荷重を加えることによってASTM D1238に準拠して決定される、少なくとも0.2g/10分、より好ましくは少なくとも0.3g/10分、更に好ましくは少なくとも0.5g/10分、更に好ましくは少なくとも1.0g/10分のメルトフローインデックスを有する。メルトフローインデックスは、低分子量PTFEの分子量の指標として使用される。
【0047】
本出願人は、本発明による低分子量PTFEが鎖末端にカルボキシル基を含まないことを見出した。
【0048】
低分子量PTFEは、以下の実験項に記載の方法に従って決定される好ましくは324℃~337℃、より好ましくは330℃~337℃、更に好ましくは333℃~337℃の融点を有する。
【0049】
好ましくは、本発明の低分子量PTFEは、C~C14ペルフルオロカルボン酸(PFCA)及びその塩を、それぞれ25ppb以下、より好ましくはそれぞれ20ppb以下、更に好ましくはそれぞれ15ppb以下、更に好ましくはそれぞれ10ppb以下、最も好ましくはそれぞれ5ppb以下の質量で含む。
【0050】
好ましくは、本発明の低分子量PTFEは、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)及びその塩を、25ppb以下、より好ましくは20ppb以下、更に好ましくは15ppb以下、更に好ましくは10ppb以下、更に好ましくは5ppb以下、最も好ましくは2ppm以下、更には2ppb未満の質量で含む。
【0051】
好ましくは、低分子量PTFEは粉末の形態である。好ましくは、粉末の比表面積は、0.5~20m/gである。好ましくは、粉末の平均粒子サイズは、0.5~200μm、より好ましくは0.5~20μm、更に好ましくは0.5~10μm、更に好ましくは0.5~5μmである。
【0052】
本発明は、非限定的な実施例によって以下の実験の部でより詳細に説明される。
【実施例
【0053】
実験の部
材料
PTFE Algoflon(登録商標)F5FTは、高分子量PTFEであり、Solvay Specialty Polymers Italyから市販されている。
【0054】
ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、トルエン、及び1,3-ジメトキシベンゼンは、Sigma-Aldrichから購入した。
【0055】
ジイソプロピルエーテルはMerckから購入した。
【0056】
MOVE1は、式CF=CFOCFOCFCFの全フッ素化ビニルエーテルであり、Solvay Specialty Polymers Italyから市販されている。
【0057】
エタノールは、Carlo Erba Reagentsから購入した。
【0058】
FreshUS(登録商標)は、FreshUS PACから市販されている酸素吸着剤である。
【0059】
方法
ペルフルオロ-n-オクタン酸(PFOA)及びその塩の量の決定[方法A]
ペルフルオロ-n-オクタン酸及びその塩の量は、液体クロマトグラフィー-質量分析計(Agilent Technologies Infinity 1290 II及びTriple Quad6495)を使用して決定した。測定粉末(1g)はメタノール(3ml)を用いて50℃で16時間抽出した。得られた液相を多重反応モニタリング(MRM)により分析した。ギ酸水溶液(10mmol/L、相A)とアセトニトリル中のギ酸(10mmol/L、相B)をグラジエントで移動相として使用した。分離カラム(Acquity UPLC BEH C18 1.7μm)は、カラム温度50℃、注入量5μlで使用した。イオン化方法として、ネガティブモードのエレクトロスプレーイオン化(ESI)を使用した。生成物イオンの分子量に対する前駆体イオンの分子量の比は、413/369であると測定された。ペルフルオロ-n-オクタン酸及びその塩の量は、内部標準法(内部標準としてペルフルオロ-n-[1,2,3,4-13]オクタン酸)によって計算した。ペルフルオロ-n-[13]オクタン酸はSRS(サロゲート回収標準)として使用した。この測定の検出限界は2ppbである。
【0060】
~C14ペルフルオロカルボン酸(PFCA)及びその塩の量の決定[方法B]
~C14ペルフルオロカルボン酸及びその塩は、液体クロマトグラフィー-質量分析計(Agilent Technologies Infinity1290及びTriple Quad6460)を使用して検出した。測定粉末(0.35g)をアセトン(3.5g)と混合し、混合物を15分間超音波処理し、45分間撹拌した。得られた液相を留去し、メタノールで戻し、MRMで測定を行った。測定条件は、ペルフルオロ-n-オクタン酸の測定条件に基づいた。前駆体イオンの分子量と生成物イオンの分子量の比は、ペルフルオロブタン酸(C)については213/169、ペルフルオロペンタン酸(C)については263/219、ペルフルオロヘキサン酸(C)については313/169、ペルフルオロヘプタン酸(C)については319/169、ペルフルオロオクタン酸(C)については369/169、ペルフルオロノナン酸(C)については419/219、ペルフルオロデカン酸(C10)については469/269、ペルフルオロウンデカン酸(C11)については519/269、ペルフルオロドデカン酸(C12)については613/569、ペルフルオロトリデカン酸(C13)については663/619、ペルフルオロテトラデカン酸(C14)については713/669であると測定された。各ペルフルオロカルボン酸の量は、外部標準法によって計算した。ペルフルオロ-n-[13]ブタン酸、ペルフルオロ-n-[1,2,3,4,6-13]ヘキサン酸、ペルフルオロ-n-[13]オクタン酸、ペルフルオロ-n-[13]ノナン酸、及びペルフルオロ-n-[1,2,3,4,5,6-13]デカン酸は、SRS(サロゲート回収標準)として使用した。各ペルフルオロカルボン酸についてのこの測定の検出限界は25ppbである。
【0061】
DSC
DSC分析は、ASTM D3418に従って、Mettler Toledo DSC1 Star装置で行った。乾燥した低分子量PTFEの約10mgのサンプルを、10℃/分の速度で220℃~370℃に加熱した。以下で言及する融解温度(T)は、最初の加熱サイクル中に観察された吸熱ピークである。
【0062】
メルトフローインデックス(MFI)の測定
メルトフローインデックス(MFI)は、372℃で10Kgの荷重を加えることにより、ASTM D1238標準法に従って測定した。
【0063】
合成実施例
実施例1(E1)
食品保存用の多層バリアバッグ(FoodSaver(登録商標))に、PTFE Algoflon(登録商標)F5FT(100g)を入れ、真空/N2の3サイクルによって脱気した後、窒素下でジブチルエーテル(4g)を添加した。次いで、バッグを不活性ガス下でヒートシールし、室温で200kGyの放射を照射した。その後、得られた粉末を取り出し、揮発性の副生成物を除去するために真空下で80℃で処理した。得られた低分子量PTFE粉末の溶融温度(T)とメルトフローインデックス(MFI)を決定した。
【0064】
実施例2(E2)
実施例1と同じ手順を適用したが、ジブチルエーテルの代わりにジイソプロピルエーテル(4g)をPTFE Algoflon(登録商標)F5FT(100g)に添加した。得られた低分子量PTFE粉末の溶融温度(T)とメルトフローインデックス(MFI)を決定した。
【0065】
実施例3(E3)
実施例1と同じ手順を適用したが、ジブチルエーテルの代わりにトルエン(4g)をPTFE Algoflon(登録商標)F5FT(100g)に添加した。得られた低分子量PTFE粉末の溶融温度(T)とメルトフローインデックス(MFI)を決定した。
【0066】
実施例4(E4)
実施例1と同じ手順を適用したが、ジブチルエーテルの代わりに1,3-ジメトキシベンゼン(4g)をPTFE Algoflon(登録商標)F5FT(100g)に添加した。得られた低分子量PTFE粉末の溶融温度(T)とメルトフローインデックス(MFI)を決定した。
【0067】
実施例5(E5)
実施例1と同じ手順を適用したが、ジブチルエーテルの代わりにMOVE1(4g)をPTFE Algoflon(登録商標)F5FT(100g)に添加した。得られた低分子量PTFE粉末の溶融温度(T)とメルトフローインデックス(MFI)を決定した。
【0068】
比較例6(CE6)
実施例1と同じ手順を適用したが、ジブチルエーテルの代わりにエタノール(4g)をPTFE Algoflon(登録商標)F5FT(100g)に添加した。得られた低分子量PTFE粉末の溶融温度(T)とメルトフローインデックス(MFI)を決定した。
【0069】
実施例7(E7)
実施例1と同じ手順を適用して、ジブチルエーテル(4g)及びFreshUS(登録商標)酸素吸着剤をPTFE Algoflon(登録商標)F5FT(100g)に添加した。得られた低分子量PTFE粉末の溶融温度(T)とメルトフローインデックス(MFI)を決定した。
【0070】
実施例8(E8)
実施例1と同じ手順を適用して、ジブチルエーテル(2g)及びFreshUS(登録商標)酸素吸着剤をPTFE Algoflon(登録商標)F5FT(100g)に添加した。得られた低分子量PTFE粉末の溶融温度(T)とメルトフローインデックス(MFI)を決定した。
【0071】
実施例9(E9)
実施例1と同じ手順を適用して、ジブチルエーテル(0.5g)及びFreshUS(登録商標)酸素吸着剤をPTFE Algoflon(登録商標)F5FT(100g)に添加した。得られた低分子量PTFE粉末の溶融温度(T)とメルトフローインデックス(MFI)を決定した。
【0072】
実施例10(E10)
実施例1と同じ手順を適用して、ジブチルエーテル(4g)及びFreshUS(登録商標)酸素吸着剤をPTFE Algoflon(登録商標)F5FT(100g)に添加した。200kGyではなく150kGyの放射を室温でバッグに照射した。得られた低分子量PTFE粉末の溶融温度(T)とメルトフローインデックス(MFI)を決定した。
【0073】
実施例11(E11)
実施例1と同じ手順を適用して、ジブチルエーテル(4g)及びFreshUS(登録商標)酸素吸着剤をPTFE Algoflon(登録商標)F5FT(100g)に添加した。200kGyではなく300kGyの放射を室温でバッグに照射した。得られた低分子量PTFE粉末の溶融温度(T)とメルトフローインデックス(MFI)を決定した。
【0074】
実施例12(E12)
実施例1と同じ手順を適用したが、ジブチルエーテルの代わりにトルエン(4g)及びFreshUS(登録商標)酸素吸着剤をPTFE Algoflon(登録商標)F5FT(100g)に添加した。得られた低分子量PTFE粉末の溶融温度(T)とメルトフローインデックス(MFI)を決定した。
【0075】
実施例13(E13)
実施例1と同じ手順を適用したが、ジブチルエーテルの代わりにトルエン(2g)及びFreshUS(登録商標)酸素吸着剤をPTFE Algoflon(登録商標)F5FT(100g)に添加した。得られた低分子量PTFE粉末の溶融温度(T)とメルトフローインデックス(MFI)を決定した。
【0076】
実施例14(E14)
実施例1と同じ手順を適用したが、ジブチルエーテルの代わりにトルエン(0.5g)及びFreshUS(登録商標)酸素吸着剤をPTFE Algoflon(登録商標)F5FT(100g)に添加した。得られた低分子量PTFE粉末の溶融温度(T)とメルトフローインデックス(MFI)を決定した。
【0077】
実施例15(E15)
実施例1と同じ手順を適用したが、ジブチルエーテルの代わりにトルエン(4g)及びFreshUS(登録商標)酸素吸着剤をPTFE Algoflon(登録商標)F5FT(100g)に添加した。200kGyではなく150kGyの放射を室温でバッグに照射した。得られた低分子量PTFE粉末の溶融温度(T)とメルトフローインデックス(MFI)を決定した。
【0078】
実施例16(E16)
実施例1と同じ手順を適用したが、ジブチルエーテルの代わりにジフェニルエーテル(4g)及びFreshUS(登録商標)酸素吸着剤をPTFE Algoflon(登録商標)F5FT(100g)に添加した。得られた低分子量PTFE粉末の溶融温度(T)とメルトフローインデックス(MFI)を決定した。
【0079】
実施例17(E17)
実施例1と同じ手順を適用したが、ジブチルエーテルの代わりにジフェニルエーテル(2g)及びFreshUS(登録商標)酸素吸着剤をPTFE Algoflon(登録商標)F5FT(100g)に添加した。得られた低分子量PTFE粉末の溶融温度(T)とメルトフローインデックス(MFI)を決定した。
【0080】
結果
表1には、上の方法Bに従って決定した、実施例1~5、7~17(E1~E5、E7~E17)によるサンプル及び比較例6(CE6)によるサンプル中の、C~C14ペルフルオロカルボン酸の質量(ppb)が報告されている。
【0081】
表2には、上の方法Aに従って決定した、実施例1~5、7~17(E1~E5、E7~E17)によるサンプル及び比較例6(CE6)によるサンプル中のペルフルオロオクタン酸の質量(ppb)が報告されている。
【0082】
表3には、実施例1~5、7~17(E1~E5、E7~E17)によるサンプル及び比較例6(CE6)によるサンプルの融点(T)及びメルトフローインデックス(MFI)が報告されている。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【国際調査報告】