(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-27
(54)【発明の名称】パターン化撥液性ナノセルロースフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20230217BHJP
B32B 3/28 20060101ALI20230217BHJP
B32B 23/08 20060101ALI20230217BHJP
B32B 23/10 20060101ALI20230217BHJP
B32B 23/06 20060101ALI20230217BHJP
B29C 59/04 20060101ALI20230217BHJP
B29C 41/36 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
C08J5/18 CEP
B32B3/28 C
B32B23/08
B32B23/10
B32B23/06
B29C59/04 Z
B29C41/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537352
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(85)【翻訳文提出日】2022-08-12
(86)【国際出願番号】 IB2020062325
(87)【国際公開番号】W WO2021130669
(87)【国際公開日】2021-07-01
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バックフォルク, カイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイスカネン, イスト
(72)【発明者】
【氏名】ミーキ, ニナ
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4F205
4F209
【Fターム(参考)】
4F071AA09
4F071AA67
4F071AA71
4F071AC09
4F071AF30Y
4F071AH04
4F071BA06
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4F071BC08
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4F071BC15
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4F100AK01C
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4F209PB02
4F209PC06
4F209PJ01
4F209PN06
4F209PW05
(57)【要約】
ナノセルロースを含むテクスチャードフィルムが提供される。少なくともフィルムの第1の表面は、突出領域と、前記突出領域間に配置された少なくとも1つの非突出領域とを繰り返すことによって形成される、パターン化されたテクスチャード表面を含む。突出領域と非突出領域との間の特定の高低差は、撥液特性を付与することができる。テクスチャードフィルムを作製するための方法も提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノセルロースを含むテクスチャードフィルム(100)であって、前記テクスチャードフィルムが、第1の平面に延在し、相反する第1の表面(101)および第2の表面(102)を有し、少なくとも前記第1の表面(101)が、突出領域(110)と、前記突出領域(110)間に配置された少なくとも1つの非突出領域(120)との繰り返しパターンを含み、各突出領域(110)が、隣接する非突出領域(120)から高さhを突出し、前記高さhが、前記テクスチャードフィルム(100)の平面に垂直な方向で決定され、前記高さhが、1μmと100μmの間である、テクスチャードフィルム(100)。
【請求項2】
高さhが、50μm未満、好ましくは30μm未満である、請求項1に記載のテクスチャードフィルム(100)。
【請求項3】
テクスチャードフィルム(100)の前記第1の平面で測定した、隣接する突出領域(110)間の最短距離aが、1μmと1000μmの間、好ましくは2μmと500μmの間、より好ましくは3μmと50μmの間である、請求項1または2に記載のテクスチャードフィルム(100)。
【請求項4】
各突出領域(110)が、前記テクスチャードフィルム(100)の第1の平面において、実質的に前記テクスチャードフィルム(100)の一端から実質的に前記テクスチャードフィルム(100)の反対側の端まで延在する、請求項1から3のいずれか一項に記載のテクスチャードフィルム(100)。
【請求項5】
各突出領域(110)が、直交する高さh、幅wおよび長さlの寸法を有する本質的に直方体であり、幅wおよび長さlの寸法が、テクスチャードフィルム(100)の平面で測定され、高さhの寸法が、幅wおよび長さlの両方の寸法に対して垂直に測定される、請求項1から3のいずれか一項に記載のテクスチャードフィルム(100)。
【請求項6】
隣接する突出領域(110)間の最短距離aが、前記長さ寸法lに垂直な方向にある、請求項5に記載のテクスチャードフィルム(100)。
【請求項7】
前記幅寸法wが、0.5μmと1000μmの間、好ましくは0.5μmと500μmの間、より好ましくは0.5μmと50μmの間であり、および/または前記長さ寸法lが、1μmと1000μmの間、好ましくは2μmと500μmの間、より好ましくは3μmと50μmの間である、請求項5または6に記載のテクスチャードフィルム(100)。
【請求項8】
一つの連続した非突出領域(120)が、突出領域(110)の前記パターン間に配置されて突出領域(110)の前記パターンを画定する、請求項1から7のいずれか一項に記載のテクスチャードフィルム(100)。
【請求項9】
前記第1の表面(101)または前記第2の表面(102)、好ましくは前記第2の表面上にコーティング層を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のテクスチャードフィルム(100)。
【請求項10】
前記コーティング層が、ポリマー層または繊維層、好ましくはポリマー層、より好ましくは熱可塑性ポリマー層である、請求項9に記載のテクスチャードフィルム(100)。
【請求項11】
前記フィルムが、ステアリン酸カルシウムなどの1つ以上の疎水性化学物質、ステアリン酸などの脂肪酸、シリコーン、ワックス、AKDもしくはASAなどの炭化水素、または樹脂、好ましくは樹脂もしくはワックスを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のテクスチャードフィルム(100)。
【請求項12】
フィルムのナノセルロース含有量が、前記フィルムの全固形分に基づいて少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%である、請求項1から11のいずれか一項に記載のテクスチャードフィルム(100)。
【請求項13】
前記テクスチャードフィルム(100)が、標準DIN53147に従って、約30gsmの坪量を有するフィルムについて測定した場合に、50%超、好ましくは75%超、より好ましくは85%超の透明度を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載のテクスチャードフィルム(100)。
【請求項14】
前記テクスチャードフィルム(100)が、グリース/油、水分、酸素または芳香の少なくとも1つに対してバリア性を高める、請求項1から13のいずれか一項に記載のテクスチャードフィルム(100)。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載のナノセルロースを含むテクスチャードフィルム(100)を製造するための方法であって、
a.テクスチャードベルトまたはシリンダを提供する工程であって、前記テクスチャードベルトまたは前記シリンダの表面が、凹状領域と、前記凹状領域間に配置された少なくとも1つの非凹状領域との繰り返しパターンを含み、各凹状領域が、隣接する非凹状領域から深さdに窪み、前記深さdが、前記テクスチャードベルトの表面に垂直な方向に決定され、前記深さdが、1~100μmである、工程と、
b.繰り返しパターンを含む前記テクスチャードベルトの表面上にナノセルロースを含む水性懸濁液をキャスト成形し、前記懸濁液を脱水して、ナノセルロースを含む湿潤テクスチャードウェブを形成する工程と、
c.前記湿潤テクスチャードウェブを乾燥させて、請求項1から14のいずれか一項に記載のテクスチャードフィルム(100)を提供する工程
とを含む、方法。
【請求項16】
請求項1から14のいずれか一項に記載のナノセルロースを含むテクスチャードフィルム(100)を製造するための方法であって、
a.実質的に滑らかな脱水表面上にナノセルロースを含む水性懸濁液をキャスティングまたは湿式積層し、前記懸濁液を脱水してナノセルロースを含む湿潤ウェブを形成する工程と、
b.ナノセルロースを含む前記湿潤ウェブをテクスチャードベルトまたはシリンダの表面に加圧する工程であって、前記テクスチャードベルトまたは前記シリンダの前記表面が、凹状領域と、前記凹状領域間に配置された少なくとも1つの非凹状領域との繰り返しパターンを含み、各凹状領域が、隣接する非凹状領域から深さdに窪み、前記深さdが、前記テクスチャードベルトまたは前記シリンダの表面に垂直な方向に決定され、前記深さdが、1μmと100μmの間であり、加圧工程中に、ナノセルロースを含む湿潤ウェブが、不織布、ワイヤまたは膜などの透過性表面に対して加圧され、脱水される、工程と、
c.ナノセルロースを含む前記湿潤テクスチャードウェブを乾燥させて、請求項1から14のいずれか一項に記載のテクスチャードフィルム(100)を形成する工程
とを含む、方法。
【請求項17】
工程b中の圧力が、0.5~100MPa、好ましくは1~50MPaである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
テクスチャードフィルムのテクスチャード第1の表面および/または前記第2の表面を疎水性表面処理組成物などの表面処理組成物でコーティングする工程をさらに含む、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ナノセルロースを含む水性懸濁液が、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも3重量%の固形分を有する、請求項15から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
フィルムのテクスチャード表面が、好ましくは、包装の内容物と接触するように、配置される、請求項1から14のいずれか一項に記載のテクスチャードフィルム(100)の包装材料としての使用、場合によっては少なくとも1つの他の材料との積層体としての使用。
【請求項21】
請求項1から14のいずれか一項に記載のテクスチャードフィルム(100)と、テクスチャードフィルムの一方の表面、好ましくはその第2の表面に積層された紙、板紙またはポリマー層の追加層とを含む積層材料。
【請求項22】
請求項15から19のいずれか一項に記載の方法によって得られるテクスチャードフィルム(100)。
【請求項23】
フィルムのテクスチャード表面が、好ましくは、包装の内容物と接触するように、配置される、請求項22に記載のテクスチャードフィルム(100)の包装材料としての使用、場合によっては少なくとも一つの他の材料との積層体としての使用。
【請求項24】
請求項22に記載のテクスチャードフィルム(100)と、テクスチャードフィルムの一方の表面、好ましくはその第2の表面に積層された紙、板紙またはポリマー層の追加層とを含む積層材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ナノセルロースを含み、撥液性、例えば疎水性を有するテクスチャードフィルムが提供される。テクスチャードフィルムを作製するための方法も提供される。フィルムは、例えば食用液体または食品を包装するのに適している。
【背景技術】
【0002】
マイクロパターン化またはナノパターン化された表面および構造は、独自の撥液性表面を提供することができる。通常、最良の効果は、表面粗さ(テクスチャ)と化学の両方を最適化することによって得られる。したがって、基本原理は、小さな空洞または細孔が空気で満たされるため、空気が撥液(水)性表面を提供することである。
【0003】
目下、撥液性表面の大規模製造に利用可能な技術は比較的限られている。商業的解決策の多くは、表面化学に特定の変化をもたらす様々な化学物質を提供す一方、表面パターン形成は通常あまり一般的ではない。
【0004】
紙または包装材料の場合、科学的進歩がなされている。これらには、例えば、下記が含まれる:
-紙または板紙(ステアリン酸で修飾された無機質)の無機質コーティングにおける修飾炭酸カルシウム粒子の使用は、Wang et al.,Journal of Bioresources and Bioproducts2017,2(2):89-92を参照。
-極めて撥水性の表面を形成するための化学物質の原子層堆積(ALD)またはプラズマもしくは液体火炎堆積(liquid flame deposition)の使用は、例えば、Teisala et al.Surface Coatings and Technology,vol.205,2,15 October 2010,pages 436-455を参照。
-超疎水性、例えばPP箔を作成するための熱可塑性コーティング上のエッチングの使用、Telacka et al.,ACS Macro Letters,5(9)、1034-1038を参照。
-ナノ粗さテクスチャなどを作成するための酸化ケイ素などのナノ粒子の使用、例えば、欧州特許第2837736号明細書を参照。
【0005】
セルロース系基材上に超疎水性コーティングを構築するための一般的技術の概要は、Liu et al.Materials 2013,9,124に記載されている。
【0006】
提示された技術および解決策の多くに伴う問題は、それらが食品/液体中に移動し得るナノ粒子または化学物質を使用し、毒性に関する問題を引き起こすことである。別の問題は、撥液性表面の安定性が限られていること、すなわち耐擦傷性(機械的または化学的または物理化学的)が低いことである。
【0007】
さらに、既知の解決策の多くは、短期間の撥液に適しているが、気体および/またはWVTRバリアも提供できるような表面をどのように作製するかを実際に教示していない。
【0008】
また、ほとんどの技術は、変換後に適しており、オンラインまたはインラインのプロセスに統合することはできない。ナノセルロースフィルムなどの「柔軟な」繊維系材料上にパターン化またはテクスチャード表面を作製する問題を解決する必要もある。
【0009】
これらの問題および他の問題は、本発明によって対処される。
【発明の概要】
【0010】
ナノセルロースを含むテクスチャードフィルムが提供され、テクスチャードフィルムは、第1の平面に延在し、相反する第1の表面および第2の表面を有し、少なくとも第1の表面は、突出領域と突出領域間に配置された少なくとも1つの非突出領域との繰り返しパターンを含み、各突出領域は、隣接する非突出領域から高さhを突出し、高さhは、テクスチャードフィルムの平面に垂直な方向で決定され、高さhは、1~100μmである。
【0011】
テクスチャードフィルムを製造するための方法も開示される。包装材料としてのテクスチャードフィルムの使用も提供される。本技術の他の態様は、以下の特許請求の範囲および説明文に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のテクスチャードナノセルロースフィルムの一実施形態の概略図を示す。
【
図2】本発明のテクスチャードナノセルロースフィルムの別の実施形態の概略図を示す。
【
図3】
図2のような2つの突出領域の拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ナノセルロースフィルムなどの「柔軟な」繊維系材料上にパターン化またはテクスチャード表面を提供する。理論に束縛されるものではないが、ナノセルロース構造は、ナノメートルスケールの構造を提供し、テクスチャリングは、撥液材料に必要なマイクロメートルスケールの構造を提供する。ナノスケール構造とは、フィブリル直径および例えば1~100nmの領域の平均サイズを有する細孔を含む粒子を指す。マイクロメートルスケールとは、100nmを超える平均直径を有するような粒子または構造を指す。フィルムの好ましい厚さは、5~200μmである。フィルムは、10~100g/m2(乾燥)の重量坪量を有する。
【0014】
この文脈における「柔軟な」とは、例えば、変形後に少なくとも部分的に元の形状に戻る材料を意味する。このような柔軟な材料では、特徴的な材料特性のために機械的加圧が困難である。
【0015】
したがって、ナノセルロースを含むテクスチャードフィルムが提供される。テクスチャードフィルムの実施形態を大まかに
図1および
図2に示す。テクスチャードフィルムは、第1の平面に延在し、相反する第1の表面101および第2の表面102を有する。少なくともフィルムの第1の表面101は、突出領域110と突出領域110間に配置された少なくとも一つの非突出領域120との繰り返しパターンを含む。突出領域と非突出領域との間の特定の高低差は、撥液特性を付与する。本明細書では、「テクスチャード」という用語は、「パターン化」と同じ意味で使用される。
【0016】
したがって、各突出領域は、隣接する非突出領域から高さhを突出し、高さhは、テクスチャードフィルムの平面に垂直な方向に決定され、高さhは1~100μmである。適切には、高さhは、50μm未満、より好ましくは30μm未満、最も好ましくは0.1~20μm、例えば1~20μmである。一実施形態では、高さhは、50μm未満であるが5μmよりも高く、または50μm未満であるが10μmよりも高く、または50μm未満であるが12μmよりも高く、または50μm未満であるが15μmよりも高く、または50μm未満であるが20μmよりも高い。別の実施形態では、高さhは、30μm未満であるが5μmよりも高く、または30μm未満であるが10μmよりも高く、または30μm未満であるが12μmよりも高く、または30μm未満であるが15μmよりも高く、または30μm未満であるが20μmよりも高い。
【0017】
突出領域/非突出領域が平面を有さない場合、高さhは、非突出領域と比較した突出領域の最大高さとして測定されるべきである。
【0018】
典型的には、テクスチャードフィルムの第1の平面で測定された隣接する突出領域間の最短距離aは、1~1000μm、好ましくは2~500μm、より好ましくは3~50μmである。
【0019】
一態様では、各突出領域110は、実質的にテクスチャードフィルムの一端から実質的にテクスチャードフィルムの反対側の端までテクスチャードフィルムの第1の平面に延在する。したがって、第1の表面101上の任意の水滴を所望の方向に選択的に向けることができる。そのような態様を
図1に示す。このような態様では、接触角は一方向のみが高い。この種の構造は、チャネルまたはマイクロチャネルとも呼ばれ、テクスチャは超疎水性と超親水性の両特性を提供することができる。この実施形態では、突出領域の幅wは、0.5~1000μm、好ましくは0.5~500μm、より好ましくは0.5~50μmである。
【0020】
別の態様では、
図2~3に示すように、各突出領域110は、直交する高さh、幅wおよび長さlの寸法を有する本質的に直方体であり、幅wおよび長さlの寸法はテクスチャードフィルム100の平面で測定され、高さhの寸法は幅wおよび長さlの両寸法に垂直に測定される。
図3にも示すように、隣接する突出領域110間の最短距離aは、長さ寸法lに垂直な方向に(すなわち測定される)位置してもよい。
【0021】
この態様では、幅w寸法は0.5~1000μm、好ましくは0.5~500μm、より好ましくは0.5~50μmであり、および/または長さl寸法は、1~1000μm、好ましくは2~500μm、より好ましくは3~50μmである。
【0022】
他の態様では、各突出領域は、例えば半球形、円筒形、角錐形などの別の三次元形状を有することができ、すべての突出領域は高さhを有する。
【0023】
一態様では、1つの連続した非突出領域が、突出領域のパターン間に配置され、これらを画定する。
【0024】
本明細書に記載のマイクロパターンは、十分な撥液性を達成することができる。濡れ挙動/疎水性のより正確な制御のために、周期性、高さ、および長さ/幅の所与の値が好ましい場合がある。
【0025】
さらに、特定の実施形態では、テクスチャードフィルムのテクスチャード第1の表面は、疎水性表面処理組成物などの表面処理組成物でコーティングされる。表面処理組成物は、ステアリン酸カルシウムなどの疎水性化学物質、ステアリン酸などの脂肪酸、シリコーン、ワックス、またはAKD、ASAなどの炭化水素、または樹脂、好ましくはワックスまたは樹脂を含み得る。液体の濡れ挙動および吸収挙動に有意に影響をおよぼす油および他の低極性化学物質もまた、表面処理組成物に含まれ得る。
【0026】
1つの可能性は、表面処理組成物がパターン形成後に適用されることである。しかしながら、テクスチャード表面がコーティング(表面処理)される場合、パターン化効果が失われ、または有意に低下することを回避するように注意する必要がある。
【0027】
この場合、第1の表面の水に対する好ましい接触角は、105度より大きく、より好ましくは110度より大きく、最も好ましくは120度より大きい。120~130度の接触角で十分であり得る。「超疎水性(superhydrophobic)」表面(「超疎水性(ultrahydrophobic)」と呼ばれることもある)は、通常、150度を超える水の静的接触角を有する表面として定義される。接触角は、2~5マイクロリットルの液滴体積および0.5秒の接触時間で、室温および50%RHで測定されるのが好ましい。表面特性を定義する別の方法は、「ロールオフ」角度、すなわち傾斜した場合に液滴が第1の表面から転がり落ちる角度である。水(疎水性)または油(撥油性)について23℃および50%RHで決定されたロールオフ角は、20度未満、好ましくは15度未満、最も好ましくは10度未満である。
【0028】
撥液効果を分析する別の可能な方法は、表面積を測定し、1より大きいはずの粗さ係数を決定することである。粗さ係数は、投影表面積で割った実際の表面積によって決定される。
【0029】
直方体のパターン化表面の一例は、以下の寸法を有する。高さhが10μm、幅wが1μm、突出領域間の距離aが9μmである場合、表面の接触角は少なくとも108度である。これに対応して、直方体寸法が高さh 10μm、幅w 0.5μmおよび距離a 4.5μmである場合、接触角は少なくとも101度でなければならない。したがって、特定の濡れ挙動を目標とする場合、表面化学と微細構造の組み合わせを使用することができる。
【0030】
ナノセルロースフィルムの1つの利点は、可視光に対して透明であり得ることである。したがって、好ましくは、テクスチャードフィルムは、標準DIN 53147を使用して約30gsmの坪量を有するフィルムについて測定した場合に、50%超、好ましくは75%超、より好ましくは85%超の透明度を有する。留意すべきは、ナノセルロースフィルムが、可視光に対しては高い透明性を有し得るが、UV光に対しては低い透明性を有し得ることである。
【0031】
本明細書に記載のテクスチャードフィルムは、グリース/油、水分、酸素または芳香の少なくとも1つに対するバリアを増加させることができる。テクスチャードフィルムは、ASTM D-3985に従って、10~50gsmの坪量で、5000cc/m2/24時間(23℃、50%RH)未満、より好ましくは100~1000cc/m2/24時間の範囲で、酸素透過率(OTR)値を適切に有する。OTRはまた、これらの条件下で、100cc/m2/24時間未満、例えば5~100cc/m2/24時間であり得る。より厚いナノセルロースフィルムまたは高含有量の特定の水溶性ポリマーを含むフィルムを使用すると、0.1~10cc/m2/24時間の範囲であっても酸素バリア特性(OTR)が得られ得る。
【0032】
ナノセルロース
本発明は、ナノセルロースを含むテクスチャードフィルムを提供する。ナノセルロースは、本技術の観点から、少なくとも一次元、好ましくは直径が1000nm未満のナノスケールのセルロース繊維またはフィブリルを意味するものとする。ナノセルロース懸濁液はまた、部分的または非フィブリル化セルロースまたはリグノセルロース繊維も含み得る。セルロース繊維は、好ましくは、形成されたナノセルロースの最終比表面積が、BET法を用いて溶媒交換され凍結乾燥された材料について決定される場合、約1~約500m2/g、例えば10~300m2/gまたはより好ましくは50~200m2/gである程度までフィブリル化される。ナノセルロースの平均平均フィブリル直径は、1~1000nm、好ましくは10~1000nmである。ナノセルロースは、高分解能SEMまたはESEMの画像を分析することによって特徴付けられ得る。
【0033】
ナノセルロースについては、セルロースミクロフィブリル、フィブリル化セルロース、ナノフィブリル化セルロース(NFC)、フィブリル凝集体、ナノスケールセルロースフィブリル、セルロースナノファイバー、セルロースナノフィブリル、ナノ結晶セルロース、セルロースマイクロファイバー、セルロースフィブリル、セルロースナノフィラメント、ミクロフィブリルセルロース、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)、ミクロフィブリル凝集体およびセルロースミクロフィブリル凝集体などの異なる同義語がある。
【0034】
適切には、テクスチャードフィルムのナノセルロース含有量は、乾燥フィルムの全固形分に基づいて少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%である。一実施形態では、テクスチャードフィルムは、最大50重量%、例えば最大30重量%、適切には最大20重量%の部分的または非フィブリル化セルロースまたはリグノセルロース繊維を含み、乾燥フィルムの全固形分に基づいて1000nmを超える平均平均フィブリル直径を有する。
【0035】
ナノセルロースを作製するために様々な方法が存在し、例えば、シングルパスまたはマルチパス精製、前加水分解、その後の精製または高剪断崩壊またはフィブリルの遊離である。ナノセルロース製造を、エネルギー効率が良く、かつ持続可能にするためには、通常、1つまたはいくつかの前処理工程が必要である。したがって、供給されるパルプのセルロース繊維は、例えばヘミセルロースまたはリグニンの量を減らすために、酵素的または化学的に前処理されてもよい。セルロース繊維は、フィブリル化の前に化学修飾されてもよく、セルロース分子は、元のセルロースに見出される官能基以外の(またはそれ以上の)官能基を含む。そのような基としては、とりわけ、カルボキシメチル、アルデヒドおよび/またはカルボキシル基(N-オキシルが媒介する酸化によって得られるセルロース、例えば「TEMPO」)、または四級アンモニウム(カチオン性セルロース)が挙げられる。上記方法の1つで修飾または酸化された後、繊維をナノセルロースに分解することは容易である。
【0036】
ナノセルロースは、いくつかのヘミセルロースを含む場合があり、量は植物源に依存する。前処理された繊維、例えば加水分解された、予め膨潤された、または酸化されたセルロース原料の機械的分解は、精製機、粉砕機、ホモジナイザ、コロイダ、摩擦粉砕機、超音波処理器、単軸または二軸スクリュー押出機、マイクロフルイダイザ、マクロフルイダイザまたはフルイダイザ型ホモジナイザなどのフルイダイザなどの適切な装置を用いて行われる。ナノセルロースの製造方法に応じて、生成物は、微粒子、またはナノ結晶セルロース、または例えば木質繊維または製紙プロセスに存在する他の化学物質も含有し得る。生成物はまた、効率的にフィブリル化されていない様々な量のミクロンサイズの繊維粒子を含有し得る。
【0037】
ナノセルロースは、木材セルロース繊維から、広葉樹繊維または針葉樹の両繊維から製造することができる。それはまた、微生物源、農業繊維、例えば麦わらパルプ、竹、バガス、または他の非木材繊維源から作製することもできる。好ましくは、未使用繊維からのパルプ、例えば機械パルプ、化学パルプおよび/または熱機械パルプを含むパルプから製造される。また、損紙または再生紙、すなわち消費前および消費後の廃棄物から作製することもできる。
【0038】
ナノセルロースは、天然(すなわち、化学修飾されていない)であり得るか、または化学修飾され得る。リン酸化ナノセルロースは、典型的には、NH4H2PO4、水および尿素の溶液に浸したセルロース繊維を反応させ、続いて繊維をフィブリル化することによって得られる。1つの特定の方法は、水中のセルロースパルプ繊維の懸濁液を提供することと、水懸濁液のセルロースパルプ繊維をリン酸化剤でリン酸化することと、続いて当技術分野で一般的な方法でフィブリル化することとを含む。適切なリン酸化剤としては、リン酸、五酸化リン、オキシ塩化リン、リン酸水素二アンモニウムおよびリン酸二水素ナトリウムが挙げられる。
【0039】
上記のナノセルロースの定義には、ISO/TS 20477:2017規格におけるナノセルロースの定義が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
フィルムは、他のセルロース成分を含んでもよい。例えば、フィルムは、カチオン性またはアニオン性のナノセルロース、例えばカルボキシメチル化ナノセルロースを含み得る。
【0041】
好ましくは、テクスチャードフィルムは、非フィブリル化繊維を実質的に含まない。パルプ繊維および粗粒子の量は、乾燥フィルムの全固形分に基づいて0~60重量%の範囲であり得る。パルプ繊維および微粒子の量は、その後、例えば乾燥または湿潤試料を分解し、続いて分画および画分の粒径の分析によって推定することができる。好ましくは、それぞれ微粒子および繊維の量を決定するために、未乾燥の完成紙料を分画し、分析する。
【0042】
フィルムはまた、乾燥フィルムの全固形分に基づいて1~30重量%の範囲のナノ充填剤などの1つ以上の充填剤も含んでもよい。典型的なナノ充填剤は、ナノクレイ、ベントナイト、シリカまたはシリケート、炭酸カルシウム、タルクなどであり得る。好ましくは、充填剤の少なくとも一部は板状充填剤である。好ましくは、充填剤の一次元は、1nm~10μmの平均厚さまたは長さを有するべきである。例えば、光散乱技術を用いて充填剤の粒径分布を決定する場合、好ましい粒径は、800nm未満の平均粒径を有するべきであり、好ましくは90%超の粒子が800nm未満の直径を有する。
【0043】
フィルムはまた、水溶性ポリマーおよび天然ゴムなどのポリマーを含んでもよい。そのようなポリマーは、強化剤として機能し得る。水溶性ポリマーは、例えばポリビニルアルコールであり得るが、天然ゴムは、例えばグアーガム、セルロース誘導体、ヘミセルロースおよび他の多糖類、デンプン(例えば、カチオン性デンプン、非イオン性デンプン、アニオン性デンプンまたは両性デンプンなどの天然デンプンまたは修飾デンプンを含む)、リグニン、タンパク質または誘導体および/またはそれらの混合物であり得る。
【0044】
ポリマーの1つの好ましい群は、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロースエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、および好ましくはより高い置換度を有するそれらの誘導体である。好ましくは、セルロースエーテルの量は、乾燥フィルムの1~50重量%、より好ましくは5~40重量%、最も好ましくは10~30重量%の範囲である。
【0045】
好ましい一態様では、テクスチャードフィルムは、ステアリン酸カルシウムなどの1つ以上の疎水性化学物質、ステアリン酸などの脂肪酸、シリコーン、ワックス、AKDもしくはASAなどの炭化水素、または樹脂、好ましくは樹脂またはワックスを含む。
【0046】
さらなる態様では、テクスチャードフィルムはまた、カチオン性ポリアクリルアミド、アニオン性ポリアクリルアミド、シリカ、ナノクレイ、ミョウバン、PDADMAC、PEI、PVAmなどの保持および排水の化学物質を含有してもよい。
【0047】
さらに別の実施形態では、テクスチャードフィルムはまた、染料または蛍光増白剤、消泡剤、湿潤強度樹脂、殺生物剤、疎水剤、バリア化学物質、可塑剤、湿潤剤などの他の典型的なプロセスまたは性能化学物質を含有してもよい。
【0048】
第1の表面の超疎水性効果は、ナノセルロースフィルムが、フィルムの乾燥重量に基づいて、上記のAKDワックスなどの少なくとも0.5kg/tnの疎水性化学物質を含有する場合に得ることができる。この処理組成物の量は、少なくとも0.75kg/tn、例えば少なくとも0.9kg/tn、少なくとも1.0kg/tn、少なくとも1.2kg/tn、少なくとも1.5kg/tn、少なくとも2.0kg/tn、少なくとも2.5kg/tn、少なくとも3.0kg/tn、好ましくは少なくとも3.5kg/tnであるが、20kg/tn未満のエマルジョンの乾燥含量/フィルムまたはウェブ全体の乾燥含量である。撥液効果は、本発明のパターンと組み合わせて、言及した量の疎水性化学物質を用いて得られる。
【0049】
方法
テクスチャードフィルムを作製するための方法も提供される。本発明は、好ましくは湿式テクスチャリングまたは湿式パターン形成であるテクスチャリングを使用する。テクスチャリングは、エンボス加工が典型的には製造後(=変換)工程であるという点でエンボス加工とは異なる。本発明は、ナノセルロースを含むフィルム上に微細構造またはパターンを作製するための方法を提供する。テクスチャリングは、ウェブ収縮に関連する問題を解決するとも考えられる。
【0050】
本明細書に記載のナノセルロースを含むテクスチャードフィルムを製造するための第1の方法では、本方法は、
a.テクスチャードベルトまたはシリンダを提供する工程であって、テクスチャードベルトまたはシリンダの表面が、凹状領域と凹状領域間に配置された少なくとも1つの非凹状領域との繰り返しパターンを含み、各凹状領域が、隣接する非凹状領域から深さdに窪み、深さdが、テクスチャードベルトの表面に垂直な方向に決定され、深さdが、1~100μmである、工程と、
b.繰り返しパターンを含むテクスチャードベルトの表面上にナノセルロースを含む水性懸濁液をキャスト成形し、懸濁液を脱水して、ナノセルロースを含む湿潤テクスチャードウェブを形成する工程と、
c.湿潤テクスチャードウェブを乾燥させて、本明細書に記載のテクスチャードフィルムを提供する工程と、を含む。
【0051】
本発明によるナノセルロースを含むテクスチャードフィルムを製造するための第2の方法では、本方法は、
a.実質的に滑らかな脱水表面上にナノセルロースを含む水性懸濁液をキャスティングまたは湿式積層し、懸濁液を脱水してナノセルロースを含む湿潤ウェブを形成する工程と、
b.ナノセルロースを含む湿潤ウェブをテクスチャードベルトまたはシリンダの表面に加圧してナノセルロースを含む湿潤テクスチャードウェブを提供する工程であって、テクスチャードベルトまたはシリンダの表面が、凹状領域と凹状領域間に配置された少なくとも1つの非凹状領域との繰り返しパターンを含み、各凹状領域が、隣接する非凹状領域から深さdに窪み、深さdが、テクスチャードベルトまたはシリンダの表面に垂直な方向に決定され、深さdが、1~100μmであり、加圧工程中に、ナノセルロースを含む湿潤ウェブが、不織布、ワイヤまたは膜などの透過性表面に対して加圧され、脱水される、工程と、
c.ナノセルロースを含む湿潤テクスチャードウェブを乾燥させて、本明細書に記載のテクスチャードフィルムを形成する工程と、を含む。
【0052】
したがって、一態様では、第1の方法および第2の方法はそれぞれ、ナノセルロースを含むテクスチャードフィルムを製造するための方法であり、テクスチャードフィルムは、第1の平面に延在し、相反する第1の表面101および第2の表面102を有し、少なくとも第1の表面101は、突出領域110と突出領域110間に配置された少なくとも1つの非突出領域120との繰り返しパターンを含み、各突出領域110は、隣接する非突出領域120から高さhを突出し、高さhは、テクスチャードフィルムの平面に垂直な方向に決定され、高さhは1~100μmである。
【0053】
一実施形態では、第1の方法および第2の方法でそれぞれ提供されるテクスチャードベルトまたはシリンダの各凹状領域の深さdは、製造されたテクスチャードフィルムの各突出領域110の50μm未満、より好ましくは30μm未満、最も好ましくは0.1~20μm、例えば1~20μmの高さhを提供するような深さであってもよい。一実施形態では、深さdは、50μm未満であるが5μmよりも深く、または50μm未満であるが10μmよりも深く、または50μm未満であるが12μmよりも深く、または50μm未満であるが15μmよりも深く、または50μm未満であるが20μmよりも深い高さhを提供するような深さであってもよい。別の実施形態では、深さdは、30μm未満であるが5μmよりも深く、または30μm未満であるが10μmよりも深く、または30μm未満であるが12μmよりも深く、または30μm未満であるが15μmよりも深く、または30μm未満であるが20μmよりも深い高さhを提供するような深さであってもよい。
【0054】
第1の方法および第2の方法でそれぞれ提供されるテクスチャードベルトまたはシリンダの隣接する凹状領域間の最短距離は、製造されたテクスチャードフィルムの第1の平面で測定して、1~1000μm、好ましくは2~500μm、より好ましくは3~50μmの隣接する突出領域110間の最短距離aを提供するような長さであってもよい。
【0055】
一実施形態では、第1および第2の方法でそれぞれ提供されるテクスチャードベルトまたはシリンダの各凹状領域は、製造されたテクスチャードフィルムの各突出領域110が実質的にテクスチャードフィルムの一端から実質的にテクスチャードフィルム100の反対側の端までテクスチャードフィルム100の第1の平面に延在するように、延在する。
【0056】
一実施形態では、第1の方法および第2の方法でそれぞれ提供されるテクスチャードベルトまたはシリンダの各凹状領域は、製造されたテクスチャードフィルムの各突出領域110が、直交する高さh、幅wおよび長さlの寸法を有する本質的に直方体であるように、本質的に直方体であり、幅wおよび長さlの寸法は、テクスチャードフィルム100の平面で測定され、高さhの寸法は、幅wおよび長さlの両寸法に垂直に測定される。隣接する突出領域110間の最短距離aは、長さ寸法lに垂直な方向に位置してもよい。幅w寸法は0.5~1000μm、好ましくは0.5~500μm、より好ましくは0.5~50μmであり、および/または長さl寸法は、1~1000μm、好ましくは2~500μm、より好ましくは3~50μmであり得る。
【0057】
一実施形態では、第1および第2の方法でそれぞれ提供されるテクスチャードベルトまたはシリンダの凹状領域および少なくとも一つの非凹状領域は、製造されたテクスチャードフィルムの突出領域110のパターン間に1つの連続した非突出領域120が配置されてこれを画定するように、配置される。
【0058】
ナノセルロースの懸濁液を使用してフィルムをキャスト成形する。ナノセルロースフィルムをキャスト成形するために使用される懸濁液は、水性懸濁液である。懸濁液は、上述のように、追加の成分、例えば、他のセルロース成分、ナノ充填剤などの充填剤、水溶性ポリマーおよび天然ゴムなどのポリマー、および疎水性化学物質を含んでもよい。
【0059】
懸濁液はまた、他の典型的なプロセスまたは性能の化学物質も含有し得る。上記の方法では、ナノセルロースを含む水性懸濁液は、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも3重量%、また30%未満、好ましくは20%未満の固形分を有する。適切には、水性懸濁液のナノセルロース含有量は、全固形分に基づいて少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%である。
【0060】
ナノセルロース懸濁液のpHは限定されないが、好ましくは4~10、より好ましくは5~9である。キャスティング工程は、10~90℃、より好ましくは20~70℃の温度で適切に行われる。
【0061】
懸濁液からのナノセルロースフィルムの形成方法は、キャスト成形であってもよい。この場合、キャスト成形とは、好ましくは非接触堆積法を用いてナノセルロース懸濁液をベルト上に(間接的または直接的に)堆積させることを意味する。キャスティングまたは湿式積層工程に使用される滑らかな脱水表面は、例えばベルトまたはドラムの表面であってもよい。表面は典型的には金属であるが、他の材料、例えばプラスチックを使用してもよい。接触堆積技術を使用することができるが、表面(例えば、金属ベルト)が打痕または傷によって損傷されないように注意する必要がある。テクスチャードフィルムは、1~80gsm、好ましくは10~50gsm、例えば10~40gsmなどの坪量を有する。特定の用途では、坪量は低く、例えば0.1~20gsm、またはより好ましくは0.1~10gsmの乾燥重量でさえあり得る。
【0062】
脱水は、好ましくは、機械的加圧または濾過などの機械的脱水および蒸発の両方によって行われるプロセスである。機械的脱水は、蒸発よりも費用効率よく水を除去するため好ましい。また、機械的脱水は、テクスチャードベルトへの接触が良好であること、およびベルトの表面テクスチャがフィルムまたはウェブにコピーされ得ることを保証する。機械的脱水の別の利点は、加えられた圧力(陰または陽)がウェブまたはフィルムを高密度化し、最終的なバリア特性を促進することである。脱水は高温で行うことができるが、ほとんどの水は機械的に除去される。真空または毛細管に基づく脱水もまた、機械的脱水として別々にまたは同時に使用することができる。脱水工程は、音響または超音波法を適用することによって増強することもできる。機械的脱水にもその限界があり、したがって、残りの水は蒸発によって除去されることが好ましい。この場合、基板は、照射もしくは対流によって、または熱風もしくは蒸気を適用することによって加熱される。
【0063】
湿潤ウェブは、脱水後に0.1~80重量%、例えば0.5~75重量%または1.0~50重量%などの固形分を有し得る。
【0064】
ナノセルロースフィルムにパターンを提供するために使用されるテクスチャードベルト/シリンダは、金属もしくはプラスチック、または適切な材料の組み合わせで作ることができる。テクスチャードベルトは、1~300mの長さおよび0.2~10mの幅を有し得る。テクスチャードベルト/シリンダはまた、例えば表面エネルギーを調整するために、例えばセラミックまたはプラスチックコーティングでコーティングされてもよい。
【0065】
非導電性または導電性チャネルをエッチングすることによって、テクスチャードベルト/シリンダに凹部のパターンを形成することができる。材料を堆積させて突出領域を形成することも可能である。一例は、テクスチャードベルト/シリンダのエングレービング用にレーザ技術を使用することである。
【0066】
本明細書に記載する方法の一態様では、ナノセルロースフィルムは、乾燥させた後、例えば40~99.5重量%、例えば60~99重量%、80~99重量%または90~99重量%などの固形分を有する間に、表面処理される。
【0067】
本明細書に記載する方法の別の態様では、ナノセルロースフィルムは、脱水および乾燥される前に、例えば、0.1~80重量%、例えば0.5~75重量%または1.0~50重量%などの固形分を有する間に、表面処理される。
【0068】
本明細書に記載する方法の一態様では、ナノセルロースフィルムは、湿式積層によって形成されており、乾燥後に50~99重量%の固形分を有する。本明細書に記載する方法の別の態様では、ナノセルロースフィルムは、キャスティングによって形成されており、乾燥後に50~99重量%の固形分を有する。
【0069】
パターン形成および同時脱水中の圧力は、0.5~100MPa、好ましくは1~50MPaである。圧力プロファイルは、プロセス条件に応じて変更することができ、さらには改変することもできる。
【0070】
湿式ウェブパターン形成の場合、初期の湿式ウェブは、キャスト成形または湿式積層技術のいずれかで作製することができ、湿式ウェブ上にパターンを形成する第2のベルトまたはパターン化されたシリンダ表面が存在しなければならず、好ましくは、さらなる脱水および任意の乾燥が行われると同時である。したがって、パターン形成中、加圧段階では、ナノセルロースフィルムの反対側の表面(すなわち、第2の表面)は、不織布、ワイヤまたは膜などの透過性表面に対して加圧される。(非パターン化)表面のPPS粗さは、好ましくは0.5~100μm、より好ましくは0.1~50μmであり、ISO8791-4規格を用いて測定することができる。
【0071】
意外なことに、本方法は、テクスチャまたはパターンを作成するだけでなく、テクスチャードナノセルロースフィルムのバリア特性を維持することも可能にする。上記の方法は、費用効率が高く、そのようなテクスチャードフィルムまたはパターン化フィルムの大規模な製造を可能にする。作成されたパターンは、例えば、濡れ特性を調整および制御するためだけでなく、光学効果を生み出すためにも使用することができる。
【0072】
乾燥を補助するために、一態様では、第2の方法の加圧工程(工程b)の間に、ナノセルロースを含む湿潤テクスチャードウェブの相反する(第2の)表面を、不織布、ワイヤまたは膜などの透過性表面に対して加圧する。
【0073】
コーティングも使用することができ、これは、パターン化表面を破壊/干渉しないために、好ましくは低い塗工量および低い機械的衝撃で作製される。コーティングされたテクスチャードナノセルロースフィルムを提供するために、上記の方法は、疎水性表面処理組成物などの表面処理組成物でテクスチャード第1の表面および/または第2の表面をコーティングする工程をさらに含み得る。
【0074】
テクスチャードフィルムは、第1の表面または第2の表面、好ましくは第2の表面上にコーティング層を含み得る。コーティング層は、ポリマー層または繊維層、好ましくはポリマー層、より好ましくは熱可塑性ポリマー層であってもよい。
【0075】
本発明はまた、包装材料としての、任意で少なくとも1つの他の材料との積層体としての、本明細書に記載のテクスチャードフィルムの使用も提供し、フィルムのパターン化テクスチャード表面は、包装の内容物と接触するように配置される。
【0076】
本明細書に記載のテクスチャードフィルムと、テクスチャードフィルムの一方の表面、好ましくはその第2の表面に積層された紙、板紙またはポリマー層の追加層とを含む積層材料も提供される。
【0077】
包装材料の一例は、PP、PE、PET、PLAまたは任意の他の熱可塑性ポリマー層などの少なくとも1つの追加層を含む積層体である。熱可塑性ポリマー層は、テクスチャードナノセルロースフィルムの第1または第2の表面に接合される。パターン化表面に接合される場合、得られる積層体は、テクスチャード表面が熱可塑性層とテクスチャードナノセルロースフィルムとの間にマイクロホールまたは「ポケット」を提供することができるため、撥水性積層体ではなく絶縁積層体である。
【0078】
積層材料は、例えば押出、積層または分散コーティングによって作製されたいくつかのポリマー層を含み得る。
【0079】
また、テクスチャードフィルムの非パターン化表面(第2の表面)は、紙もしくは板紙または他のフィルムもしくは基材と積層することができる。このような積層体では、紙の坪量は、例えば20~200gsmであり、板紙またはボール紙の坪量は、例えば100~600gsmであり得る。
【0080】
テクスチャードフィルムの第1の表面および第2の表面の両方を印刷することができ、好ましくは、非パターン化表面(第2の表面)は、印刷表面である。
【0081】
本明細書に示すさらなる態様によれば、本明細書に記載のテクスチャードフィルムを製造するための方法によって得られるナノセルロースを含むテクスチャードフィルムが提供される。
【0082】
本明細書に示す別の態様によれば、包装材料として、任意で少なくとも1つの他の材料との積層体として、本明細書に記載のテクスチャードフィルムを製造するための方法によって得ることができるナノセルロースを含むテクスチャードフィルムの使用が提供され、フィルムのテクスチャード表面は、好ましくはパッケージの内容物と接触するように配置される。
【0083】
本明細書に示すさらなる態様によれば、本明細書に記載のテクスチャードフィルムを製造するための方法によって得られるナノセルロースを含むテクスチャードフィルムと、テクスチャードフィルムの一方の表面、好ましくはその第2の表面に積層される紙、板紙またはポリマー層の追加層とを含む積層材料が提供される。
【0084】
本発明をいくつかの実施形態に関連して説明してきたが、これらは本発明を限定するものと見なされるべきではない。当業者は、必要に応じて、様々な態様および実施形態を組み合わせることによって、特許請求の範囲内に収まる他の実施形態を提供することができる。
【国際調査報告】