(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-27
(54)【発明の名称】示差的テクスチャ化を有するカバーガラスシート
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20230217BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20230217BHJP
C03C 23/00 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
G09F9/00 313
G09F9/00 338
C03C21/00 101
C03C23/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537406
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-01
(86)【国際出願番号】 EP2020087202
(87)【国際公開番号】W WO2021123295
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】カリアロ, セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ドゴット, ロイク
(72)【発明者】
【氏名】ランブリット, トーマス
【テーマコード(参考)】
4G059
5G435
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AC01
4G059AC16
4G059HB03
4G059HB13
4G059HB14
4G059HB23
5G435AA01
5G435HH05
5G435HH08
5G435HH18
5G435HH20
5G435KK07
5G435LL03
5G435LL17
(57)【要約】
本発明は、外側シート面及び内側シート面を有する、少なくとも1つの表示装置を覆うように構成されたカバーガラスシート(10)に関し、内側シート面は、表示装置に対向し、且つ不透明ペイントの層を含む。外側シート面は、a)表示装置の画面の少なくとも一部分を視覚化することを可能にする少なくとも1つの表示ゾーン(1)であって、境界線P
displayを有する表示ゾーン(1)、b)前記不透明ペイントの層に対応し、且つ表示境界線の少なくとも10~100%を直接取り囲む少なくとも1つの不透明ゾーン(2)であって、不透明算術振幅値Ra
(op)によって定義される平均表面粗度を有する不透明ゾーン(2)を含む。外側シート面は、不透明ゾーンの0.5%~99.5%を覆う少なくとも1つのテクスチャ化ゾーン(3)を更に含み、前記テクスチャ化ゾーンは、表示境界線の少なくとも5%を直接取り囲み、且つテクスチャ化算術振幅値Ra
(tex)によって定義される平均表面粗度を有する。Ra
(op)とRa
(tex)との間の絶対差は、少なくとも25nmである。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側シート面及び内側シート面を有する、少なくとも1つの表示装置を覆うように構成されたカバーガラスシート(10)であって、前記内側シート面は、前記表示装置に対向し、且つ不透明ペイントの層を含み、前記外側シート面は、
a)前記表示装置の画面の少なくとも一部分を視覚化することを可能にする少なくとも1つの表示ゾーン(1)であって、境界線P
displayを有する表示ゾーン(1)、
b)前記不透明ペイントの層に対応し、且つ前記表示境界線の少なくとも10~100%を直接取り囲む少なくとも1つの不透明ゾーン(2)であって、不透明算術振幅値Ra
(op)によって定義される平均表面粗度を有する不透明ゾーン(2)
を含む、カバーガラスシート(10)において、
前記外側シート面は、前記不透明ゾーンの0.5%~99.5%を覆う少なくとも1つのテクスチャ化ゾーン(3)を更に含み、前記テクスチャ化ゾーンは、前記表示境界線の少なくとも5%を直接取り囲み、且つテクスチャ化算術振幅値Ra
(tex)によって定義される平均表面粗度を有すること、及び
Ra
(op)とRa
(tex)との間の絶対差は、少なくとも25nm(│Ra
(op)-Ra
(tex)│≧25nm)であること
を特徴とするカバーガラスシート(10)。
【請求項2】
Ra
(op)とRa
(tex)との間の前記絶対差は、少なくとも50nm(│Ra
(op)-Ra
(tex)│≧50nm)、好ましくは少なくとも100nm(│Ra
(op)-Ra
(tex)│≧100nm)、より好ましくは少なくとも200nm(│Ra
(op)-Ra
(tex)│≧200nm)である、請求項1に記載のカバーガラスシート。
【請求項3】
前記表示ゾーンは、前記テクスチャ化ゾーンの前記平均表面粗度Ra
(tex)に等しい、表示算術振幅値Radによって定義される平均表面粗度(Rad=Ra
(tex))を有する、請求項1又は2に記載のカバーガラスシート。
【請求項4】
前記不透明ペイントの層は、前記表示境界線の少なくとも25%、少なくとも50%、好ましくは75%、より好ましくは90%、更により好ましくは100%を直接取り囲む、請求項1~3のいずれか一項に記載のカバーガラスシート。
【請求項5】
前記テクスチャ化ゾーンは、前記不透明ゾーンの1%~75%、好ましくは前記不透明ゾーンの2%~60%、より好ましくは前記不透明ゾーンの5%~50%を覆う、請求項1~4のいずれか一項に記載のカバーガラスシート。
【請求項6】
前記テクスチャ化ゾーンは、前記不透明ゾーンの80%~99.5%、好ましくは前記不透明ゾーンの90%~98%、より好ましくは前記不透明ゾーンの92%~95%を覆う、請求項1~4のいずれか一項に記載のカバーガラスシート。
【請求項7】
前記少なくとも1つのテクスチャ化ゾーンは、前記表示境界線の少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、より一層好ましくは75%、更により好ましくは90%、理想的には100%を直接取り囲む、請求項1~6のいずれか一項に記載のカバーガラスシート。
【請求項8】
前記外側シート面は、前記表示境界線を間接的に取り囲み、且つ第2テクスチャ化算術振幅値Ra2
(tex)によって定義される平均表面粗度を有する少なくとも第2テクスチャ化ゾーンを更に含み、好ましくは、Ra
(op)とRa2
(tex)との間の絶対差は、少なくとも25nm(│Ra
(op)-Ra2
(tex)│≧25nm)、より好ましくは少なくとも50nm(│Ra
(op)-Ra2
(tex)│≧50nm)、更により好ましくは少なくとも100nm(│Ra
(op)-Ra2
(tex)│≧100nm)、更により良好には少なくとも200nm(│Ra
(op)-Ra2
(tex)│≧200nm)である、請求項1~7のいずれか一項に記載のカバーガラスシート。
【請求項9】
前記カバーガラスシートは、熱強化ガラスシート又は化学強化ガラスシートである、請求項1~8のいずれか一項に記載のカバーガラスシート。
【請求項10】
前記外側シート面は、反射防止層によって被覆される、請求項1~9のいずれか一項に記載のカバーガラスシート。
【請求項11】
a)相互に反対側に位置する第1主表面及び第2主表面を有する、部分的にテクスチャ化されたマザーガラス基材を提供するステップと、
b)前記ガラス基材から少なくとも1つのカバーガラスシートを分割するために、輪郭線を定義し、且つ深さ方向に前記第1主表面から前記第2主表面まで延在する少なくとも1つの分離線を前記第1主表面上に形成するように、レーザーで前記ガラス基材の少なくとも前記第1主表面を照射するステップであって、前記カバーガラスシートは、前記マザーガラス基材のサイズよりも小さいサイズを有する、ステップと、
c)前記マザーガラス基材を好ましくは化学的に強化するステップと、
d)前記少なくとも1つの分離線に従い、前記マザーガラス基材から前記少なくとも1つの部分的にテクスチャ化されたカバーガラスシートを分離するステップと
を順番に含む製造方法によって得られる、請求項1~10のいずれか一項に記載のカバーガラスシート。
【請求項12】
ステップb)で形成される前記少なくとも1つの分離線は、スポット切断線を形成する複数の隣接する空洞を含む、請求項11に記載のカバーガラスシート。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のカバーガラスシートと、前記表示ゾーンの下方に位置決めされた表示装置とを含む表示ユニット。
【請求項14】
前記表示装置と、前記カバーガラスシートの内側シート面との間に配置された光学接合部を更に含む、請求項13に記載の表示ユニット。
【請求項15】
自動車インテリア用途、家庭電化製品及び/又は統合された対話型ディスプレイのための、請求項1~12のいずれか一項に記載のカバーガラスシート又は請求項13若しくは14に記載の表示ユニットの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、審美的に快適でありつつ、優れた光学特性を示す、表示用途のためのカバーガラスシートに関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の必要な保護を提供するために、ディスプレイ上にカバーガラスを使用することが周知である。自動車産業のためのディスプレイなどのいくつかの表示用途では、カバーガラスシートは、表示装置よりも大きく、且つダッシュボード、中央アームレスト、ドアアームレストなどの自動車内の特定の場所に取り付けられるように特別に設計されることが一般的である。このような用途では、カバーガラスシートが表示装置よりもはるかに大きいことがあり得る。このような用途における設計及び美観は、商業的な成功を得るために非常に重要である。
【0003】
表示装置の機能を最大化するために、表示装置の画面の上方におけるカバーガラスシートの表面は、一般に、グレア及び閃光の低減など、その光学特性を改善するためにテクスチャ化される。通常、カバーガラスシートの残りの表面上では、滑らかであり、光沢があり、且つ黒色である外観が期待される。
【0004】
従って、表示装置の機能を改善するために保護され、且つ部分的にテクスチャ化される表示装置よりも大きいこのようなカバーガラスシートは、特にディスプレイがオフにされた場合、表示装置を覆うカバーガラスシートのゾーンと、表示装置を覆わないゾーンとの間のレンダリングの許容できない相違をもたらす。この外観の差は、表示装置を覆わないカバーガラスシートのゾーンが装飾を目的として滑らかであり、且つ光沢を有する場合、更に増大することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、その優れた光学特性を維持しつつ、部分的にテクスチャ化されたカバーガラスのレンダリングを調和させるという技術的問題に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも1つの表示装置を覆うように構成されたカバーガラスシートに関する。カバーガラスシートは、外側シート面及び内側シート面を有し、内側シート面は、表示装置に対向し、且つ不透明ペイントの層を含む。外側シート面は、
i.表示装置の画面の少なくとも一部分を視覚化することを可能にする少なくとも1つの表示ゾーンであって、境界線Pdisplayを有する表示ゾーン、
ii.前記不透明ペイントの層に対応し、且つ表示境界線の少なくとも10~100%を直接取り囲む少なくとも1つの不透明ゾーンであって、不透明算術振幅値Ra(op)によって定義される平均表面粗度を有する不透明ゾーン
を含む。
【0007】
外側シート面は、不透明ゾーンの0.5%~99.5%を覆う少なくとも1つのテクスチャ化ゾーンを更に含み、前記テクスチャ化ゾーンは、表示境界線の少なくとも5%を直接取り囲み、且つテクスチャ化算術振幅値Ra(tex)によって定義される平均表面粗度を有する。Ra(op)とRa(tex)との間の絶対差は、少なくとも25nm(|Ra(op)-Ra(tex)|≧25nm)である。
【0008】
実施形態の他の態様及び利点は、記述される実施形態の原理を例として示す添付図面と関連して提供される以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1a】本発明の一実施形態によるカバーガラスシートの平面図を示し、不透明ゾーンは、表示ゾーンを完全に取り囲み、且つ不透明ゾーン内に配置されたテクスチャ化ゾーンは、表示ゾーンを完全に取り囲む。
【
図1b】
図1aのカバーガラスシートを含む表示ユニットの、線AA’に沿った断面図を示す。
【
図2】本発明の一実施形態によるカバーガラスシートの平面図を示し、表示装置は、多面体形状を有し、且つ不透明なゾーン及び対応するテクスチャ化ゾーンは、表示ゾーンと形状において異なる。
【
図3】矩形の表示ゾーンの両方の横方向側部に配置された2つの不透明ゾーンを含む、本発明の一実施形態による矩形カバーガラスシートの平面図を示す。それぞれの不透明ゾーンは、表示ゾーンの横方向側部に隣接する薄いテクスチャ化ゾーンを含む。
【
図4】本発明の一実施形態によるカバーガラスシートの平面図を示し、カバーガラスシートの外側シート面上の対応する不透明ゾーンを定義する不透明ペイントの層は、カバーガラスシートの内側シート面の一部分にのみ追加される。
【
図5】表示ゾーン、不透明ゾーン及びテクスチャ化ゾーン並びに第2テクスチャ化ゾーンを含む、本発明の一実施形態によるカバーガラスシートの平面図を示す。
【
図6】本発明の一実施形態によるカバーガラスシートの平面図を示し、カバーガラスシートは、いくつかの表示ゾーン及びその対応する1つ又は複数のテクスチャ化ゾーン並びにいくつかの第2テクスチャ化ゾーンを含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
優れた美的特性を維持しつつ、優れた光学性能を提供する、表示用途に使用されるカバーガラスシートを提供することが本発明の目的である。
【0011】
本発明は、優れた光学特性を得るためにテクスチャ化される表示ゾーンと、好ましくは黒色であり、且つ輝いている不透明ゾーンとの間のレンダリングの差という技術的問題に対処する。これは、表示装置がオフにされた場合に特に明白である。従って、本発明は、不透明ゾーンを部分的に覆い、且つ表示ゾーンの周りに位置決めされたカバーガラスシートの外側面上に、以下で「テクスチャゾーン」と呼称される少なくとも第3ゾーンを規定することに基づく。このような第3ゾーンは、その平均表面粗度が不透明ゾーンの平均表面粗度と異なるようにテクスチャ化される。表示境界線の周りの不透明ゾーン上におけるこのようなテクスチャ化ゾーンの追加は、レンダリングの差を大幅に低減し、従って優れた光学性能を維持しつつ、カバーガラスシートの美観を大幅に改善する。
【0012】
カバーガラスシートの外側表面上の表示ゾーンは、表示装置を視覚化することを可能にする。従って、表示ゾーンの表面は、通常、グレア防止及び/又は閃光防止特性など、優れた光学性能を提供するためにテクスチャ化される。カバーガラスシートのためのグレア防止/閃光防止解決策を快適でスムーズな(多くの場合にサテン、シルク又はソフトタッチと呼称される)触感と組み合わせるというディスプレイ市場の増大する需要も存在する。表示ゾーンを除いて、カバーガラスシートの内側シート面は、一般に、暗色の外観を提供するために、不透明層によって完全に又は部分的に覆われる。この結果、カバーガラスシートの外側面上において、対応する不透明ゾーンが定義される不透明ゾーンは、通常、特に自動車用途に使用される場合、スムーズであり、且つ光沢を有する表面を有する。表示装置がオフにされた場合、表示ゾーンと不透明ゾーンとの両方は、暗色化し、従って光放射を吸収する。しかし、これらの2つのゾーン間のレンダリングは、非常に異なる。実際に、不透明ゾーンは、光放射を大幅に吸収する一方、表示ゾーンは、光放射を吸収するが、反射及び拡散もする。このような反射の差は、レンダリングの差を付与する。このレンダリングの差は、表示ユニットに対するユーザーの相対的な位置に応じて更に顕著になる。実際に、ユーザーの視野が傾斜するほど、レンダリングの差が問題となる。驚くべきことに、このようなレンダリングの差は、不透明ゾーンの慎重であり且つ特別に位置決めされたテクスチャ化により、大幅に軽減され得ることが見出された。本発明は、この不透明ゾーンと表示ゾーンとの間の反射の差が、表示境界線の周りの不透明ゾーンの一部をテクスチャ化することによって大幅に低減され得るという驚くべき技術的発見に基づく。このようなテクスチャゾーンの特定のテクスチャは、カバーガラスシートの外側面上の反射の拡散を大幅に増大させる。内側面における光の相互作用の差は、隠蔽され、従ってその結果、特に傾斜した角度で観察された場合、表示ゾーンの光学性能の維持を可能にしつつ、レンダリングの差が大幅に軽減される。更に、ユーザー対表示ユニットの相対的な位置に応じて、不透明ゾーンの一部分を異なる方式でテクスチャ化することが本発明の目的である。
【0013】
本発明は、1つ又は複数の表示装置を覆うように構成されたカバーガラスシートに関する。カバーガラスシートは、外側シート面及び内側シート面を有し、内側シート面は、1つ又は複数の表示装置に対向する。
【0014】
疑義を回避するために、本明細書で使用される「取り囲む」という用語は、「外側を取り囲む」を意味する。
図1aに示されるように、カバーガラスシート(10)は、その外側シート面上に以下のゾーンを含む。
(a)対応する表示装置の画面を視覚化することを可能にする少なくとも1つの表示ゾーン(1)。それぞれの表示ゾーンは、境界線P
displayを有する。表示ゾーンのサイズ及び形状は、表示装置の画面の一部又はすべてを視覚化することを可能にする限り、表示装置の画面のサイズ及び形状に対応するか又は異なり得、例えば、そのサイズは、より小さいことが可能であり、及び/又はその形状は、ディスプレイが従来の形態に留まり得る状態で任意の形状を有することが可能である。いくつかの例では、従来の矩形表示装置上に1つ又は複数の円形又は任意の他の形状の表示ゾーンを設計することにより、円形又は任意の他の形状の表示視野を生成することがより便利であり、且つ費用効率の優れたものとなり得る。
(b)内側シート面に追加される不透明ペイントの層に対応する少なくとも1つの不透明ゾーン(2)。定義により、このような不透明ペイントの層は、表示ゾーンを除いて内側シート面に追加される。これは、残りの内側シート面のすべて又は一部分に追加することが可能である。これは、表示境界線の10~100%を取り囲む。いくつかの不透明ゾーンが存在する場合、すべての不透明ゾーンは、好ましくは、同一の不透明算術振幅値Ra
(op)によって定義される平均表面粗度を有する。好適な一実施形態では、不透明ペイントの層は、表示境界線の少なくとも25%、少なくとも50%、好ましくは75%、より好ましくは90%、更により好ましくは100%を直接取り囲む。それぞれの表示ゾーンには、少なくとも1つの不透明ゾーンが対応する。不透明ゾーンは、不透明ペイントの層が追加される内側シード面の対応するゾーンによって定義される、カバーガラスシートの外側シート面上のゾーンである。これは、表示ゾーンを覆わない。これは、内側シート面の残りの表面のすべて又は一部分のみを更に覆っていることができる。カバーガラスシートの外側シート面は、例えば、
図3に描かれるように、矩形の表示ゾーンのそれぞれの横方向側部の不透明ゾーン上で複数の不透明ゾーンを有し得る。
(c)不透明ゾーンの0.5%~99.5%を覆う少なくとも1つのテクスチャ化ゾーン(3)。一実施形態では、テクスチャ化ゾーンは、好ましくは、不透明ゾーンの1%~75%、より好ましくは2%~60%、更により好ましくは不透明ゾーンの5%~50%を覆う。別の実施形態では、テクスチャ化ゾーンは、好ましくは、不透明ゾーンの80%~99.5%、好ましくは不透明ゾーンの90%~98%、より好ましくは不透明ゾーンの92%~95%を覆う。テクスチャ化ゾーンは、表示境界線の周りに位置決めされ、且つそれと直接接触し、従って表示境界線の少なくとも5%、更に良好には10%、好ましくは25%、より好ましくは50%、更により好ましくは75%、更により好ましくは90%、理想的には表示境界線の100%を直接取り囲む。テクスチャ化ゾーンの平均表面粗度は、テクスチャ化算術振幅値Ra
(tex)によって定義される。カバーガラスシートの外側シート面は、
図3に描かれるように、複数のテクスチャ化ゾーンを有し得、不透明ゾーンは、矩形の表示ゾーンのそれぞれの横方向側部にテクスチャ化ゾーンを包含する。テクスチャ化ゾーンは、任意の形状を有することが可能であり、且つ必ずしも
図2に示されるように表示ゾーン及び不透明ゾーンの形状に合致しない。いくつかの実施形態では、テクスチャ化ゾーンが不透明ゾーンの外側に延在することも発生し得る。
【0015】
本発明のカバーガラスシートは、Ra(op)とRa(tex)との間の絶対差が少なくとも25nm(|Ra(op)-Ra(tex)|≧25nm)、好ましくは少なくとも50nm(|Ra(op)-Ra(tex)|≧50nm)、より好ましくは少なくとも100nm(|Ra(op)-Ra(tex)|≧100nm)、更により好ましくは少なくとも200nm(|Ra(op)-Ra(tex)|≧200nm)となるように、不透明ゾーンが、不透明算術振幅値Ra(op)によって定義される平均表面粗度を有し、及びテクスチャ化ゾーンが、テクスチャ化算術振幅値Ra(tex)によって定義される平均表面粗度を有することを特徴とする。疑義を回避するために、Ra(op)は、テクスチャ化ゾーンになるように更にテクスチャ化された不透明ゾーン内で計測されない。通常、Ra(op)とRa(tex)との間の絶対差は、2ミクロン以下、好ましくは1ミクロン以下である。
【0016】
美観的な理由及び/又は処理の容易性のための好適な一実施形態では、表示ゾーンは、テクスチャ化ゾーンの平均表面粗度Ra(tex)に等しい、表示算術振幅値Radによって定義される平均表面粗度(Rad=Ra(tex))を有する。不透明ゾーンの通常の平均表面粗度Ra(op)は、0.1nm~5nm、好ましくは0.1nm~3nmである。テクスチャ化ゾーンの通常の平均表面粗度Ra(tex)は、0.025ミクロン~2ミクロン、好ましくは0.05ミクロン~1ミクロン、より好ましくは0.1ミクロン~1ミクロンである。表示ゾーンの通常の平均表面粗度Radは、0.05ミクロン~2ミクロン、好ましくは0.1ミクロン~1ミクロンである。
【0017】
本発明の好適な一実施形態では、カバーガラスシートは、表示境界線を間接的に取り囲む少なくとも1つの第2テクスチャ化ゾーン(4)を含み得る。第2テクスチャ化ゾーンは、不透明ゾーン内に包含されるが、表示境界線と直接接触しない。第2テクスチャ化ゾーンは、第2テクスチャ化算術振幅値Ra2(tex)によって定義される平均表面粗度を有する。好ましくは、Ra(op)とRa2(tex)との間の絶対差は、少なくとも25nm(|Ra(op)-Ra2(tex)|≧25nm)、より好ましくは少なくとも50nm(|Ra(op)-Ra2(tex)|≧50nm)、更により好ましくは少なくとも100nm(|Ra(op)-Ra2(tex)|≧100nm)、更に良好には少なくとも200nm(|Ra(op)-Ra2(tex)|≧200nm)である。このような第2テクスチャ化表面は、カバーガラスシートの全体的な美観性能に積極的に関与し、且つレンダレングの差を更に軽減することが見出された。更に、1つ又は複数の第2テクスチャ化ゾーンの追加は、ディスプレイ上の機能に到達し且つそれを起動するためのユーザーの指に対するガイダンスを提供するために使用され得ることが見出された。好適な一実施形態では、少なくとも1つの第2テクスチャ化ゾーンは、不透明ゾーンの5%~90%、好ましくは不透明ゾーンの5%~75%、好ましくは不透明ゾーンの5%~60%、より好ましくは不透明ゾーンの5%~50%を覆う。美観的な理由及び/又は処理の容易性のための好適な一実施形態では、第2テクスチャ化ゾーンの平均表面粗度Ra2(tex)は、テクスチャ化ゾーンの平均表面粗度Ra1(tex)に等しい。別の好適な実施形態では、第2テクスチャ化算術振幅値Ra2(tex)は、表示平均表面粗度Radに等しい(Ra2(tex)=Rad)。
【0018】
本発明のカバーガラスシートは、1つ又は複数の表示装置を覆うように構成され、そのそれぞれは、それぞれ個々に表示境界線を有する個々の表示ゾーンを定義する。カバーガラスシートの外側シート面のそれぞれの表示ゾーンには、1つ又は複数の不透明ゾーンが対応し得る。カバーガラスシートの外側シート面のそれぞれの不透明ゾーンには、1つ又は複数のテクスチャ化ゾーンが対応し得る。不透明ゾーンは、1つ又は複数の第2テクスチャ化ゾーンを更に含み得る。従って、表示ゾーン、不透明ゾーン、テクスチャ化ゾーン及び/又は第2テクスチャ化ゾーンの特性を示す技術的特徴を参照した場合、これは、本発明のカバーガラスシートのすべての表示ゾーン、不透明ゾーン、テクスチャ化ゾーン及び第2テクスチャ化ゾーンに適用されることを理解されたい。
【0019】
図の詳細な説明
図1aは、本発明の一実施形態を示し、カバーガラスシート(10)は、1つの矩形の表示装置を覆うように構成され、且つ1つの表示ゾーン(1)を有する。不透明ゾーン(2)は、表示ゾーンではなく、カバーガラスシートのすべての内側シート面に追加された不透明なペイントによって定義される。表示ゾーン(1)は、表示画面の表面よりもわずかに小さい。不透明ゾーン(2)は、表示境界線の100%を直接取り囲む。テクスチャ化ゾーン(3)も表示境界線の100%を直接取り囲み、且つ不透明ゾーン内に完全に包含される。
図1bは、線A-A’に沿った、
図1a(10)のカバーガラスシートと、表示装置(30)とを含む表示ユニット(20)の断面図を示す。
図1bに描かれるように、カバーガラスシート(7)の内側面は、カバーガラスシート(6)の外側面上の対応する表面上で不透明ゾーン(2)を定義する不透明ペイントの層(5)によって覆われる。不透明ペイントは、表示画面上で内側シートの小さい部分を覆い、従って、表示ゾーンは、表示画面の表面よりもわずかに小さいことがわかる。テクスチャ化ゾーン(3)は、表示境界線を直接取り囲み、且つ完全に不透明ゾーン内に包含される。
【0020】
図2は、
図1aの実施形態の変形形態を示し、テクスチャ化ゾーン(3)は、表示ゾーン(1)と異なる形状を有する。
【0021】
図3は、本発明の一実施形態を示し、カバーガラスシート(10)は、1つの矩形表示装置を覆うように構成され、且つ1つの表示ゾーン(1)を有する。不透明なペイントは、表示ゾーンではなく、カバーガラスシートのすべての内側シート面に追加され、且つ表示境界線の横方向側部を直接取り囲む2つの不透明ゾーン(2)を定義する。2つのテクスチャ化ゾーン(3)も、それぞれ対応する不透明ゾーン内で完全に包含された状態で表示境界線の横方向側部を直接取り囲む。
【0022】
図4は、本発明の一実施形態を示し、カバーガラスシート(10)は、1つの矩形の表示装置を覆うように構成され、且つ1つの表示ゾーン(1)を有する。不透明ゾーン(2)は、表示ゾーンを除いて、残りの内側シート面の一部分のみに追加された不透明ペイントによって定義される。不透明ゾーンは、矩形の表示境界線の3つの側部を直接取り囲む。2つのテクスチャ化ゾーン(3)は、表示境界線の横方向側部を直接取り囲む。
【0023】
図5は、本発明の一実施形態を示し、カバーガラスシート(10)は、1つの矩形の表示装置を覆うように構成され、且つ1つの表示ゾーン(1)を有する。不透明ゾーン(2)は、表示ゾーンではなく、カバーガラスシートのすべての内側シート面に追加された不透明ペイントによって定義され、且つ表示境界線の100%を直接取り囲む。2つのテクスチャ化ゾーン(3)は、表示境界線の横方向側部を直接取り囲み、且つ不透明ゾーン内に完全に包含される。カバーガラスシートの外側シート面は、不透明ゾーン内に包含されたいくつかの第2テクスチャ化ゾーン(4)を更に含む。
【0024】
図6は、本発明の一実施形態を示し、カバーガラスシート(10)は、その個々の表示ゾーン(1a)、(1b)、(1c)及び(1d)を有するいくつかの表示装置を覆うように構成される。不透明ゾーン(2)は、表示ゾーンを除いて、残りの内側シート面の一部分にのみ追加された不透明ペイントによって定義される。実際に、カバーガラスシート上の内側シート面の小さい部分は、不透明ペイントによって覆われていない。不透明ゾーンは、表示ゾーン(1b)の表示境界線の約65%を直接取り囲み、且つ表示ゾーン(1a)、(1c)及び(1d)の表示境界線を完全に取り囲む。テクスチャ化ゾーン(3a)は、その個々の表示境界線の約50%を直接取り囲み、且つ完全に不透明ゾーン内に包含される。テクスチャ化ゾーン(3b)は、その個々の表示境界線の約65%を直接取り囲み、且つ不透明ゾーン内に完全に包含される。テクスチャ化ゾーン(3c)及び(3d)は、その個々の表示境界線の100%を直接取り囲み、且つ不透明ゾーン内に完全に包含される。カバーガラスシートは、表示境界線を間接的に取り囲むいくつかの第2テクスチャ化ゾーン(4)を更に含む。
【0025】
本発明は、上述のカバーガラスシートと、表示ゾーンの下方に位置決めされた表示装置とを含む表示ユニットにも関する。好ましくは、表示ユニットは、表示装置と、カバーガラスシートの内側シート面との間に配置された光学接合部を更に含む。
【0026】
本発明は、自動車インテリア用途、家庭用電化製品及び/又は統合された対話型ディスプレイのための、カバーガラスシート又は表示ユニットの使用に関する。本発明によるカバーガラスシート及び表示ユニットは、一層複雑な形状が自動車製造者によって要求されるコンソール、ダッシュボード、自動車の外部ウィンドウ、ガラストリム要素など、車両のインテリアグレージングの場合に特に適する。
【0027】
概説
表示用途の場合、グレア防止及び/又は閃光防止性能並びに特定の優しい触感を提供するために、カバーガラスシートの外側表面をテクスチャ化することが知られている。本発明によれば、カバーガラスシートの外側シート面がテクスチャ化される。「テクスチャ化された表面」は、特定の量のガラス材料を除去し、且つ特定の表面テクスチャ/粗度を付与する機械的又は化学的方法によって処理された表面を意味する。本発明者らは、材料除去が化学的反応/処理(即ち酸エッチング)によって発生した場合の化学的にエッチングされたガラスについて記述する。本発明者らは、材料除去が機械的反応/処理(即ちサンドブラスティング)によって発生した場合の機械的にエッチングされたガラスについて記述する。化学的な(即ちHF及び/又はフッ化物化合物を使用する)エッチングは、ターゲット用途に適切である粗度と、その結果、光学特性及び美観との達成を可能にするために好ましい。
【0028】
ガラスシートのテクスチャ化表面は、通常、その表面テクスチャ又は粗度により、且つ特に規格ISO4287-1997で定義された(ミクロン又はnmとして表される)Ra値により特徴付けられる。テクスチャ/粗度は、表面の不規則性/パターンの存在の結果である。これらの不規則性は、「ピーク」と呼称される隆起と、「谷」と呼称される空洞とから構成される。テクスチャ化表面に垂直なセクション上では、ピーク及び谷は、「平均線」とも呼称される「中心線」(代数平均)の両側に分散される。プロファイルにおいて且つ固定された長さ(「評価長」と呼称される)に沿った計測の場合、Ra(振幅値)は、テクスチャの平均差に対応し、これは、ピークと谷との間の差の絶対値の算術平均を意味する。Raは、この平均と「線」との間の距離を計測し、且つテクスチャ化表面上のパターンの高さの指示を与える。
【0029】
本発明による粗度値は、(ISO4287規格に従って)2Dプロファイルを使用するプロファイルメータによって計測することができる。代わりに、2Dプロファイルと隔絶した状態で、ISO04287規格で定義されたパラメータに対するアクセスを後に付与する(ISO25178規格による)3D形状測定の技法を使用することもできる。本発明によれば、粗度値は、ガウスフィルタによって計測され、これは、プロファイルフィルタλcとも呼称される長い波長のフィルタである。これは、プロファイルの波動の成分から粗度/テクスチャの成分を分離するために使用される。本発明による評価長Lは、粗度を評価するために使用されるプロファイルの長さである。ベース長lは、評価する対象のプロファイルを特徴付ける不規則性を識別するために使用される評価長の一部分である。評価長Lは、n個のベース長lに分割/切断され、これらは、プロファイルの不規則性に依存する。ベース長lは、ガウスフィルタ(l=λc)の「カットオフ」波長(又は限度波長)に対応する。通常、評価長は、ベース長の少なくとも5倍を有する。粗度計測では、バックグラウンドノイズである非常に短い波長の影響を除去するために、短波長フィルタ(プロファイルフィルタλs)も一般に使用される。
【0030】
表示ゾーン、不透明ゾーン、テクスチャ化ゾーン及び/又は第2テクスチャ化ゾーン間で示差的な平均表面粗度を生成するために、ガラス表面を選択的にテクスチャ化し、且つそれにより1つ又は複数のテクスチャ化ゾーンを生成することを可能にする任意の既知の方法により、部分的なテクスチャを生成することができる。例えば、化学的エッチングによって本発明によるテクスチャを生成することを検討する場合、化学的エッチング処理に対する抵抗力を有し、且つ後に除去される保護マスクを使用し、それによりエッチング処理に対してガラスの表面の特定の部分/ゾーンのみを曝露することを可能にする既知の方法を使用することができる。この結果としてガラス表面上で得られるエッチングされたテクスチャゾーンは、予め適用されたマスクのネガに対応する。
【0031】
本発明のカバーガラスシートは、
a)相互に反対側に位置する第1主表面及び第2主表面を有する、部分的にテクスチャ化されたマザーガラス基材を提供するステップであって、部分的なテクスチャは、通常、第1主表面上に存在する(且つ第2主表面又は両方の表面上にも存在し得る)、ステップと、
b)ガラス基材から少なくとも1つのカバーガラスシートを分割するために、輪郭線を定義し、且つ深さ方向に第1主表面から第2主表面まで延在する少なくとも1つの分離線を第1主表面上に形成するように、レーザーでガラス基材の少なくとも第1主表面を照射するステップであって、カバーガラスシートは、マザーガラス基材のサイズよりも小さいサイズを有する、ステップと、
c)少なくとも1つの分離線に従い、マザーガラス基材から少なくとも1つの部分的にテクスチャ化されたカバーガラスシートを分離するステップと
を順番に含む方法により、より大きいマザーガラス基材から製造することができる。
【0032】
上述の方法は、照射のステップb)後且つ分離のステップc)前に、マザーガラス基材が化学的に強化される更なるステップを含み得る。この実施形態は、その主表面及び更にそのエッジで1つ又は複数のカバーガラスシートを強化することを可能にするために有利である。従って、カバーガラスシートは、引っ掻き及び機械的応力/負荷に対するより大きい抵抗力を有する。この実施形態によれば、マザーガラス基材が化学的に強化された後、(i)1つ又は複数のカバーガラスシートの第1及び第2主表面におけるカリウム(又は最大侵襲性イオン)のレベルは、1つ又は複数のカバーガラスシートのエッジにおけるカリウム(又は最大侵襲性イオン)のレベルよりも大きく、及び(ii)1つ又は複数のカバーガラスシートのエッジにおけるカリウムのレベルは、カバーガラスシートのバルク内におけるカリウムのレベルよりも大きい。1つ又は複数のカバーガラスシートの端面におけるカリウムのレベルが化学的強化時に増大することから、これらは、外部負荷応力に対してより大きい抵抗力を有する。
【0033】
化学的強化の条件は、特に限定されない。化学的強化は、例えば、1分~72時間にわたり、380℃~500℃で溶融塩中にマザーガラス基材を浸漬することによって実行することができる。溶融塩としては、硝酸塩を使用することができる。例えば、ガラス基材中に含まれるリチウムイオンをより大きいアルカリ金属イオンによって置換する場合、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ルビジウム及び硝酸セシウムの少なくとも1つを含む溶融塩を使用することができる。更に、ガラス基材中に含まれるナトリウムイオンをより大きいアルカリ金属イオンによって置換する場合、硝酸カリウム、硝酸ルビジウム及び硝酸セシウムの少なくとも1つを含む溶融塩を使用することができる。更に、ガラス基材中に含まれるカリウムイオンをより大きいアルカリ金属イオンによって置換する場合、硝酸ルビジウム及び硝酸セシウムの少なくとも1つを含む溶融塩を使用することができる。加えて、炭酸カリウムなどの1つ又は複数の種類の塩を溶融塩に更に追加することもできる。この場合、10nm~1μmの厚さを有する低密度層をマザーガラス基材の表面上に形成することができる。
【0034】
少なくとも1つの分離線が少なくとも1つのカバーガラスシートの輪郭線を定義するマザーガラス基材に化学的強化処理を適用することにより、ガラス基材の第1主表面及び第2主表面において且つ1つ又は複数のガラス物品のエッジにおいて圧縮応力層を形成することができる。圧縮応力層の厚さは、置換のためのアルカリ金属イオンの貫通深さに対応する。例えば、硝酸カリウムを使用してカリウムイオンによってナトリウムイオンを置換する場合、圧縮応力層の厚さは、ソーダ-ライムガラスの場合に5μm~50μmであり得、且つアルミノシリケートガラスの場合の圧縮応力層の厚さは、10μm~100μmである。アルミノシリケートガラスの場合、アルカリ金属イオンの貫通深さは、好ましくは、10μm以上、より好ましくは20μm以上である。
【0035】
方法は、分離ステップc)後、低温曲げのステップを更に含み得る。低温曲げは、特に、ガラスコンソール、ダッシュボード、ドアのためのトリム要素、ピラー、ウィンドシールド、サイドウィンドウ、バックウィンドウ、サンルーフ、分離壁など、自動車の内部及び外部グレージング部分のためにガラス物品を曲げるためのものであることが理解される。低温曲げは、当初、フラットな薄いガラス要素が、組立時に最終的なフラットではない構成に変形される任意の組立作業である。最終的な組立体における薄いガラスは、その2つの主表面間における表面応力の永久的な不均衡を提示する。組立作業は、点状の場所又は全体表面上に適用された糊付け、ラミネーティング、機械的リテーナ(ねじ、リベット、ケーシングなど)のような、フラットではない構成で薄いガラスを維持することを可能にする任意の種類の技術であり得る。
【0036】
上述の方法によって得られるカバーガラスシートは、それぞれ90°±7°に等しい、第1及び第2主表面間に形成される角度を示す少なくとも1つのエッジを有することを特徴とする。更に、上述の方法によって取得されたカバーガラスシートは、ガラス物品のエッジにおけるカリウムのレベルよりも大きい、前記ガラス物品の第1及び第2主表面におけるカリウムのレベルを示し、ガラス物品のエッジにおけるカリウムのレベルは、カバーガラスシートのバルク内のカリウムのレベルよりも大きい。物品のエッジにおけるカリウムのレベルが増大するのに伴い、前記エッジは、より大きい機械的抵抗力を有することになる。
【0037】
本発明によるカバーガラスシートは、0.03~19mm、好ましくは0.03mm~6mmの厚さを有することができる。好ましくは、重量を理由として且つ容易に低温曲げし得るように、カバーガラスシートの厚さは、0.1~2.2mm、0.5~2.1mmであり得る。カバーガラスシートは、通常、8cm~25cm、好ましくは8cm~40cmの表示対角線を有する表示装置を覆う。
【0038】
カバーガラスシートの内側シート面上に追加される不透明ペイントは、エナメル化合物、エポキシに基づく化合物又はポリウレタンに基づく化合物であり得る。
【0039】
本発明によるカバーガラスシートは、そのマトリックス組成が特に限定されず、従って異なるカテゴリに属し得るガラスから製造される。ガラスは、ソーダ-ライム-シリケートガラス、アルミノ-シリケートガラス、無アルカリガラス、ボロ-シリケートガラスなどであり得る。好ましくは、本発明のガラスシートは、ソーダ-ライムガラス又はアルミノ-シリケートガラスから製造される。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、ガラスシートは、ガラスの合計重量の百分率で表される含有量において以下を含む組成を有する。
SiO2 55~85%
Al2O3 0~30%
B2O3 0~20%
Na2O 0~25%
CaO 0~20%
MgO 0~15%
K2O 0~20%
BaO 0~20%
【0041】
好適な一実施形態では、ガラスシートは、ガラスの合計重量の百分率で表される含有量において以下を含む組成を有する。
SiO2 55~78%
Al2O3 0~18%
B2O3 0~18%
Na2O 5~20%
CaO 0~10%
MgO 0~10%
K2O 0~10%
BaO 0~5%
【0042】
より好適な一実施形態では、ガラスシートは、ガラスの合計重量の百分率で表される含有量において以下を含む組成を有する。
SiO2 65~78%
Al2O3 0~6%
B2O3 0~4%
CaO 0~10%
MgO 0~10%
Na2O 5~20%
K2O 0~10%
BaO 0~5%
【0043】
より好適な代替実施形態では、ガラスシートは、ガラスの合計重量の百分率で表される含有量において以下を含む組成を有する。
SiO2 55~70%
Al2O3 6~18%
B2O3 0~4%
CaO 0~10%
MgO 0~10%
Na2O 5~20%
K2O 0~10%
BaO 0~5%
【0044】
理想的には、これらの最後の2つの実施形態によれば、ガラス組成は、B2O3を含まない(これは、これが意図的に追加されないが、非常にわずかな量で望ましくない不純物として存在し得ることを意味する)。このような2つのソーダ-ライムタイプのベースガラス組成の実施形態は、結果的に乏しい機械的抵抗力のみを有するが、廉価であるという利点を有する。
【0045】
ベースガラス組成において上記の実施形態と組合せ可能である本発明の有利な一実施形態によれば、ガラスシートは、0.002~0.06重量%の範囲の(Fe2O3に関して表される)合計鉄含有量を含む組成を有する。(Fe2O3の形式で表される)0.06重量%以下の合計鉄含有量は、可視彩色をほとんど有さず、且つ美的設計で高いレベルの柔軟性を可能にするガラスシートを得ることを可能にする(例えば、スマートフォンのいくつかのガラス要素の白色シルク印刷時に歪が生じない)。最小値は、結果的にガラスの費用にとって過剰に不利にならないことを可能にするが、小さい鉄の値は、多くの場合、高価で非常に純度の高い開始材料と、更にこれらの純化とを必要とする。好ましくは、組成は、(Fe2O3の形式で表される)0.002~0.04重量%の範囲の合計鉄含有量を含む。より好ましくは、組成は、(Fe2O3の形式で表される)0.002~0.02重量%の範囲の合計鉄含有量を含む。最も好ましい実施形態では、組成は、(Fe2O3の形式で表される)0.002~0.015重量%の範囲の合計鉄含有量を含む。
【0046】
Fe2O3含有量に関する上記の実施形態との組合せにおける本発明の別の実施形態によれば、ガラスは、ガラスの合計重量の百分率で表される0.0001%≦Cr2O3≦0.06%などの含有量でクロムを含む組成を有する。好ましくは、ガラスは、0.002%≦Cr2O3≦0.06%などの含有量でクロムを含む組成を有する。このクロム含有量は、より大きいIR透過を有するガラスを取得することを可能にし、従って、これは、例えば、ガラスシートの表面上の1つ又は複数の物体(例えば、指又はスタイラス)の位置を検出するために、平面散乱検出(PSD)又は漏れ全反射(FTIR)(又はIR放射の大きい透過を必要とする任意の他の技術)のような光学IRタッチ技術を使用するタッチパネル内にガラスシートを使用する場合に有利である。
【0047】
本発明によるカバーガラスシートは、有利には、プリストレストガラスであり得る。プリストレストガラスは、熱強化ガラス、熱強靭化ガラス又は化学強化ガラスを意味する。熱強化ガラスは、ガラス表面を圧縮下において、且つガラスコアを張力下において配置する制御された加熱及び冷却の方法を使用して熱処理される。この熱処理方法は、アニーリングされたガラスよりも大きいが、熱強靭化安全ガラスよりも小さい曲げ強度を有するガラスを供給する。
【0048】
熱強靭化安全ガラスは、ガラス表面を圧縮下において、且つガラスコアを張力下において配置する制御された加熱及び冷却の方法を使用して熱処理される。このような応力は、衝撃が加わった場合、ガラスが、ギザギザのかけらとして砕ける代わりに、小さい顆粒状粒子として砕けるようにする。
【0049】
ガラス物品の化学的な強化は、熱によって誘発されるイオン交換であり、これは、例えば、アルカリカリウムイオンなどのより大きいイオンによるガラスの表面層内のより小さいアルカリナトリウムイオンの置換を伴う。より大きいイオンが、ナトリウムイオンによって以前に占有されていた小さいサイト内に「楔状に打ち込まれる」のに伴い、増大した表面圧縮応力がガラス中に発生する。このような化学的処理は、一般に、温度及び時間の正確な制御を伴って、より大きいイオンの1つ又は複数の溶融塩を含むイオン交換溶融槽中にガラスを浸漬することによって実行される。例えば、旭硝子株式会社のDragonTrail(登録商標)製品ラインのもの又はCorning Inc.のGorilla(登録商標)製品ラインのものなどのアルミノシリケートタイプのガラス組成も、化学焼き戻しのために非常に効率的であることが知られている。
【0050】
より大きいマザーガラス基材から本発明のカバーガラスシートを製造するための好適な方法に関連して、上述の化学的強化及びその結果として得られる特性は、前記製造方法に限定されることを意図されず、使用される製造方法とは無関係にカバーガラスシートに適用することができる。
【0051】
用途、意図された使用及び/又は望ましい特性に従い、様々な1つ又は複数の層/処理を本発明のカバーガラスシート上のカバーガラスシートの1つ又は両方の面上で堆積/実行することができる。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、カバーガラスシートは、少なくとも1つの透明且つ導電性の薄い層によって被覆することができる。本発明による透明且つ導電性の薄い層は、例えば、SnO2:F、SnO2:Sb又はITO(酸化インジウムスズ)、ZnO:Al又は更にZnO:Gaに基づく層であり得る。本発明の別の実施形態によれば、カバーガラスシートは、少なくとも1つの反射防止層によって被覆することができる。この実施形態は、画面のフロントカバーとして本発明のカバーガラスシートを使用する場合に有利である。本発明による反射防止層は、例えば、低屈折率を有する、多孔性シリカに基づく層であり得るか、又はこれは、いくつかの層(積層体)、具体的には低い及び高い屈折率を有し、且つ低い屈折率を有する層で終了する、誘電材料の交互の層の積層体から構成され得る。更に別の実施形態によれば、ガラスシートは、指紋が残ることを低減又は防止するように、少なくとも1つの指紋防止層/処理を有する。有利には、この実施形態によれば、ガラスシートは、第2テクスチャ化表面上に前記指紋防止層/処理を有する。このような層/処理は、反対側の面上に堆積された透明且つ導電性の薄い層と組み合わせることができる。このような層/処理は、同一の面上に堆積された反射防止層と組み合わせることができる。本発明の更に別の実施形態によれば、ガラスシートは、バクテリア防止層/処理を有する。有利には、この実施形態によれば、ガラスシートは、第2テクスチャ化表面上に前記バクテリア防止層/処理を有する。例えば、このようなバクテリア防止処理は、外側表面に近接したガラスシートのバルク中の銀イオンの拡散であり得るであろう。
【0053】
「少なくとも」という用語は、本明細書では、「1つ又は複数」を意味するものと解釈されたい。以下の例は、例示を目的として提供され、本発明の範囲を限定することを意図されない。
【実施例】
【0054】
実施例1
図1の構成のカバーガラスシートが設計され、矩形カバーガラスシートは、300mmの合計長さと、150mmの合計幅とを有する。その外側シート面は、260mmの長さと、120mmの幅とを有する矩形の表示ゾーンを含み、760mmの表示境界線を形成する。不透明ゾーンは、表示ゾーンではなく、内側シート面のすべてに追加された不透明ペイントによって定義され、且つ表示境界線の100%を取り囲む。表示ゾーンは、表示画面の表面の90%を覆う。矩形のテクスチャ化ゾーンは、270mmの長さと、130mmの幅とを有し、且つ表示境界線の100%を取り囲む。テクスチャ化ゾーンは、不透明ゾーンの28%を覆う。
【0055】
【0056】
実施例2
図5の構成のカバーガラスシートが設計され、矩形のカバーガラスシートは、500mmの合計長さと、250mmの合計幅とを有する。その外側シート面は、150mmの長さと、100mmの幅とを有する矩形の表示ゾーンを含み、500mmの表示境界線を形成する。不透明ゾーンは、表示ゾーンではなく、内側シート面のすべてに追加された不透明ペイントによって定義され、且つ表示境界線の100%を取り囲む。2つのテクスチャ化ゾーンは、表示ゾーンのそれぞれの幅に対して直接的に個々に位置決めされ、それぞれは、10mmの長さと、100mmの幅とを有し、且つ協働して表示境界線の40%を取り囲む。テクスチャ化ゾーンは、不透明ゾーンの1.8%を協働して覆う。第2テクスチャ化ゾーンの表面は、不透明ゾーンの約4%を覆う。
【0057】
【符号の説明】
【0058】
10 カバーガラスシート
20 表示ユニット
30 表示装置
1 表示ゾーン
2 不透明ゾーン
3 テクスチャ化ゾーン
4 第2テクスチャ化ゾーン
5 不透明ペイントの層
6 カバーガラスシートの外側面
7 カバーガラスシートの内側面
【国際調査報告】