(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-27
(54)【発明の名称】ナノ構造二成分ゲル組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 9/06 20060101AFI20230217BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230217BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230217BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230217BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230217BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230217BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230217BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230217BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230217BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20230217BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20230217BHJP
A61P 29/02 20060101ALI20230217BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20230217BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20230217BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230217BHJP
A61L 27/04 20060101ALI20230217BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20230217BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20230217BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20230217BHJP
A61L 27/52 20060101ALI20230217BHJP
A61L 27/44 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
A61K9/06
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/34
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/36
A61K45/00
A61P31/04 171
A61P31/10
A61P33/00 171
A61P29/02
A61P25/04
A61P3/02 101
A61P17/00
A61L27/04
A61L27/16
A61L27/18
A61L27/20
A61L27/52
A61L27/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022537889
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-12
(86)【国際出願番号】 US2020065994
(87)【国際公開番号】W WO2021127423
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522242454
【氏名又は名称】ベリ ナノ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルイス エスパルサ ヘレーラ、ギレルモ ユー.
(72)【発明者】
【氏名】チャン、カニー
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ケシャン
(72)【発明者】
【氏名】アフェウェルキ、サムソン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB37
4C076CC32
4C076DD27
4C076DD29
4C076DD38
4C076EE07
4C076EE23
4C076EE32
4C081BB04
4C081CA05
4C081CA18
4C081CD02
4C081CD09
4C084AA17
4C084MA27
4C084ZA08
4C084ZB11
4C084ZB35
4C084ZB37
4C084ZC22
(57)【要約】
本発明は、複数のケイ酸塩ナノ粒子と、親水性ポリマーと、水と、を含み、任意選択的に、増粘ポリマー、複数の酸化亜鉛粒子、複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマー、接着性ポリマー、油又はポリオールを更に含む、組成物に関する。本発明はまた、皮膚疾患又は乳腺炎などの、哺乳動物における疾患の予防及び/又は治療における組成物の使用に関する。本発明は更に、当該組成物を含む哺乳動物の体内における管のシーラントに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のケイ酸塩ナノ粒子と、
親水性ポリマーと、
水と、
を含み、
任意選択的に、増粘ポリマー、複数の酸化亜鉛粒子、複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマー、接着性ポリマー、油又はポリオールを更に含む、
組成物。
【請求項2】
1~15重量%の複数のケイ酸塩ナノ粒子と、
0.5~10重量%の親水性ポリマーと、
最大100重量%の水と、を含み、任意選択的に、
3~9重量%の増粘剤と、
0.2~5重量%の複数の酸化亜鉛粒子と、
複数の第4級アンモニウム官能基を含む0.2~2重量%のポリマーと、
0.1~50重量%の接着性ポリマーと、
20~80重量%の油又は1~80重量%のポリオールと、
を更に含み、ここで、重量%は前記組成物の総重量のパーセンテージである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1~15重量%の複数のケイ酸塩ナノ粒子と、
0.5~10重量%の親水性ポリマーと、
0.1~50重量%の接着性ポリマーと、
20~80重量%の油又は1~80重量%のグリセロールと、
最大100重量%の水と、を含み、任意選択的に、
0.2~5重量%の複数の酸化亜鉛粒子、及び/又は
複数の第4級アンモニウム官能基を含む0.2~2重量%のポリマーと、
を更に含み、ここで、重量%は前記組成物の総重量のパーセンテージである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ケイ酸塩ナノ粒子が、リチウム=マグネシウム=ナトリウム=シリカートナノ粒子である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記親水性ポリマーが、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピルセルロース、及びポロキサマーを含む群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記親水性ポリマーが、約1kDa~約10,000kDの分子量を有するポリ(エチレンオキシド)であり、25℃の水中における前記増粘ポリマーの2重量%溶液が、約200mPa~約2,000mPaの粘度を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記増粘ポリマーが、ケイ酸塩ナノ粒子、リチウム=マグネシウム=ナトリウム=シリカートナノ粒子、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及び寒天、又はそれらの誘導体を含む群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
複数の第4級アンモニウム官能基を含む前記ポリマーが、以下の構造Iを有する複数の繰り返し単位を含み、
【化1】
式中、X
-が、Cl
-、Br
-、BF
4
-、及びPF
6
-を含む群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
複数の第4級アンモニウム官能基を含む前記ポリマーが、複数の第4級アンモニウム官能基を含むキトサンである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
1~15重量%の複数のリチウム=マグネシウム=ナトリウム=シリカートナノ粒子と、
約1kDa~約10,000kDaの分子量を有する0.5~10重量%のポリ(エチレンオキシド)と、
0.1~50重量%のポリ酢酸ビニルと、
20~70重量%のグリセロールと、
最大100重量%の水と、を含み、任意選択的に、
0.2~5重量%の複数の酸化亜鉛粒子、及び/又は
複数の第4級アンモニウム官能基を含む0.2~2重量%のキトサン、
を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
1種以上の薬物又は薬剤を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記1種以上の薬物が、抗生物質薬、抗寄生虫薬、抗真菌薬、鎮痛薬又は抗炎症薬、ビタミン、コルチコステロイド薬、及びタンパク質を含む群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記1種以上の薬剤が、着色剤又は染料、及び比色分析pH指示薬を含む群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、約38℃で1.1g/mL~5.0g/mLの密度を有するゲルの形態である、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
哺乳動物における疾患の予防及び/又は治療で使用するための、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
哺乳動物における乳腺炎の予防及び/又は治療で使用するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
哺乳動物における皮膚疾患の予防及び/又は治療で使用するための、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物を含む、哺乳動物の体内の管におけるシーラント。
【請求項19】
前記哺乳動物が、乳牛である、請求項15~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が、乳腺管の内部及び/又は乳房の皮膚上に投与される、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚疾患又は乳腺炎などの哺乳動物における疾患の予防及び/又は治療で使用するための、複数のケイ酸塩ナノ粒子及び親水性ポリマーを含むヒドロゲル組成物に関する。本発明は更に、当該組成物を含む哺乳動物の体内における管のシーラントに関する。
【背景技術】
【0002】
創傷、組織、及び臓器の微生物感染は、組織の生理学的機能及び治癒プロセスに影響を及ぼし得る。微生物感染は生命を脅かす合併症につながり得る。
【0003】
動物疾患の分野では、壊滅的な乳腺炎症プロセスである乳腺炎は、米国の乳牛産業にとって最も一般的で費用のかかる疾患である。
【0004】
乳腺炎は、乳頭管の微生物浸潤に応答して、又は化学的、機械的、若しくは熱的損傷の結果として、免疫細胞によって媒介される局所炎症反応として現れる。微生物感染の場合、毒素及び炎症促進性サイトカインが放出され、その結果、乳分泌組織及び乳腺管が損傷し、乳腺炎を引き起こす。乳頭管が15分間開いたままとなり、これが潜在的に汚れ、糞便、尿、又は他の感染病原体に管を曝すため、微生物感染の可能性は搾乳後に特に増加する。感染病原体が関与する場合、汚染された機器及び材料への繰り返しの曝露後、又は汚染された手袋若しくは手を使用した後に、他の動物への伝染が起こり得る。
【0005】
乳腺炎は、炎症(熱、痛み、発赤、及び腫脹)、臭気、及び潰瘍などの、乳房の腺組織における病理学的変化の観察によって診断され得る。
【0006】
この疾患の結果として、乳の組成及び外観の変化を観察することができるため、乳の品質が低下し、例えば、カルシウム、カゼイン、カリウム、又はラクトフェリンの濃度が低下する可能性があり、いくつかの凝集物を有するより水っぽい乳の稠度を観察することができる。乳中の体細胞レベルの上昇は乳腺炎の診断に使用される。
【0007】
細菌性乳腺炎は抗生物質で治療してもよい。しかしながら、治療された乳牛からの乳は、乳牛の身体から薬物代謝産物が取り除かれるまでは、ヒトが接種するのに適さない。ワクチン接種によって疾患重症度を低下させることができるが、このアプローチは、複数の種類の微生物の存在に起因する乳腺炎を予防しないので、長期的には無力であることが証明されている。
【0008】
感染は、大部分は、滅菌の搾乳ルーチンを用いることによって予防され得る。そのようなルーチンにおける最初の工程は、搾乳の前に清拭し乾燥する第2の工程として、並びに搾乳機器を乳頭管に適用する第3の工程として、スプレーの形態であるヨウ素を乳頭及び周囲領域に適用することを含む。搾乳が終了した際、乳頭を注意深く洗浄して細菌の成長を防ぐ。現在、ToMORROW(登録商標)、Orbenin(著作権)、Orbeseal(著作権)など、乳腺炎を予防又は治療するためのいくつかの市販品が存在し、これらは、物理的障壁を形成し、及び乳頭管の入口を封鎖して内部細菌浸潤を予防するため、又は抗生物質を放出して局所感染を治療するために、搾乳後に適用されることが意図されている。
【0009】
ヒト及び動物において、微生物性乳腺炎を治療若しくは予防するための、又は外傷の微生物感染を治療若しくは予防するための抗菌シーラントが必要とされている。ヒト及び動物における感染した局所的外傷を効果的に治療する必要性もまた存在する。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、上述の問題を少なくとも部分的に克服し、感染症、特に乳牛の乳腺炎の予防及び治療で使用するための改善された組成物を提供することである。
【0011】
この目的は、以下:
複数のケイ酸塩ナノ粒子と、
任意選択的に、複数の酸化亜鉛粒子と、
親水性ポリマーと、
増粘ポリマーと、
任意選択的に、複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマーと、
任意選択的に、接着性ポリマーと、
任意選択的に、油又はポリオールと、
水と、
を含む又はこれらからなる組成物によって達成される。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明は、組成物のpHが5~13である、本明細書に記載の組成物のいずれかに関する。ある特定の態様では、組成物のpHは、7~13、又は8~11である。
【0013】
本発明の態様によれば、組成物は、以下:
複数のケイ酸塩ナノ粒子と、
親水性ポリマーと、水と、
を含む又はこれらからなり、
任意選択的に、増粘ポリマー、複数の酸化亜鉛粒子、複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマー、接着性ポリマー、油又はポリオールを更に含む。
【0014】
ケイ酸塩ナノ粒子の増粘特性のために、増粘ポリマー及びケイ酸塩ナノ粒子は、同じ成分であってもよい。
【0015】
組成物は生体適合性及び生分解性である。組成物は非毒性である。ケイ酸塩ナノ粒子又はナノプレートレットは、インビボで、安定性、安全、及び非過敏性である。これらはまた、抗炎症特性を呈する。これらは表面上で負に帯電しており、これらの縁部では正の電荷を担持している。この固有の電荷分布は表面対縁部(surface-to-edge)静電気的相互作用を可能とし、これにより、三次元の「カードハウス(house-of-cards)」構造がもたらされる。組成物の他の構成成分と組み合わせた場合、物理的に可逆性なゲルが形成される。ある特定の態様では、特定のイオンが組成物中に存在する場合、それらは相互作用を静電気的に遮蔽し、それによってナノプレートレットが集合するのを妨げる可能性がある。例えば、ピロリン酸塩は、正に帯電した縁部で吸収され、それによって三次元構造の形成を損なう。ある特定の態様では、この戦略を採用してゲル化を逆転させることができる。このゲルは塩の添加時に容易に除去され得る。
【0016】
本明細書に記載の組成物は、使用(投与及び除去の両方)の容易さの向上を含む、市場における現在のシーラントを超える利点を提供する。組成物は弾性(柔軟)であり、組成物は粘膜付着性であり、かつ長期持続性の組織粘着性を有する。組成物は注射可能である(剪断減粘性)。組成物は約37℃において急速ゲル化時間を有する。組成物は不活性である。更に、いくつかの態様では、ゾルゲルポリマー組成物は、広範囲の温度範囲にわたる注入の容易さと、乳頭管からの手動剥離による除去とを可能にする、調整可能な剪断減粘特性を実証する。体腔から除去される際、ゾルゲルポリマー組成物は室温で液相に戻ることができる。加えて、現在の市販のシーラントとは異なり、本開示の組成物は、搾乳の初期加工段階中にステンレス鋼パイプ(例えば、乳ライン)又はバルクタンクに付着せず、標準的な冷水又は温水洗浄中に工業用表面から容易に除去することができ、それによって乳の汚染を低減する。
【0017】
いくつかの態様では、ケイ酸塩ナノ粒子は、約1nm~約500nm、例えば約10nm~約100nm、又は約25nmの特徴的なサイズを有する。いくつかの態様では、ケイ酸塩ナノ粒子の量は、0.1重量%~15重量%、又は3重量%~12重量%、又は約10重量%である。いくつかの態様では、ケイ酸塩ナノ粒子は、リチウム=マグネシウム=ナトリウム=シリカート(lithium magnesium sodium silicate)ナノ粒子である。
【0018】
いくつかの態様では、親水性ポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピルセルロース、及びポロキサマーを含む群又はこれらからなる群から選択される。いくつかの態様では、親水性ポリマーが、ポリ(エチレンオキシド)である。いくつかの態様では、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)が、約1kDa~約10,000,000kDa、又は約15kDa~約25kDa、又は約20kDaの分子量を有する。いくつかの態様では、親水性ポリマー又はポリ(エチレンオキシド)の量が、0.5重量%~10重量%、又は1重量%~3重量%、又は約2重量%である。PEOは生体適合性であり、FDAに承認された親水性ポリマーである。フィルム又は物理的障壁として使用される場合、PEOは、表面立体障害排除機構によって作用して、保護された組織から細胞又はフィブリンを排除する。
【0019】
接着性、ゲル形成能、及び抗菌特性などの、ケイ酸塩ナノ粒子及び親水性ポリマーの両方の特性に起因して、複数のケイ酸塩ナノ粒子及び親水性ポリマーを含む又はそれらからなる組成物を得ることができ、本明細書で言及される全ての使用に適用することができる。このような組成物は入手及び製造が簡単である。そのような組成物のコストは比較的低い。組成物は、全ての意図された用途に対して安定であり、生分解性であり、かつ非毒性である。
【0020】
いくつかの態様では、増粘ポリマーは、ケイ酸塩ナノ粒子、ケイ酸塩ナノ粒子(Na0.7[(Mg5.5Li0.3)Si8O20(OH)4]0.7)(ラポナイト(登録商標))、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及び寒天、又はそれらの誘導体を含む群又はこれらからなる群から選択される。いくつかの態様では、増粘ポリマーが、カルボキシメチルセルロースである。いくつかの態様では、25℃の水中における増粘ポリマーの2重量%溶液は、約200mPa~約2,000mPa、又は約400mPa~約900mPaの粘度を有する。いくつかの態様では、増粘剤又はカルボキシメチルセルロースの量は、3重量%~9重量%、又は4重量%~8重量%、又は約6重量%である。増粘剤はケイ酸塩ナノ粒子であってもよい。追加の増粘剤が必要とされる場合、これらを組成物へと容易に添加して、組成物の厚さを更に改善することができる。増粘剤は、低コスト、生分解性、及び非毒性で提供するのが容易である。
【0021】
例として、ナノシリケートであるラポナイト(登録商標)は、生分解性であり、ケイ酸(Si(OH)
4、ナトリウムイオン(Na
+)、マグネシウムイオン(Mg
2+)、及びリチウムイオン(Li
+))などの非毒性生成物へと分解することが以前に実証されている(参考文献:H.Tomas、C.S.Alves、J.Rodrigues、「Laponite(R):A key nanoplatform for biomedical applications?」、「Nanomedicine:Nanotechnology,Biology,and Medicine」、第14巻(2018年)第2407~2420年)。増粘剤であるカルボキシメチルセルロースはまた、以前に提示されたように、生分解性かつ非毒性であることも知られている(参考文献:C.G.VanGinkel、S.Gayton、「The biodegradability and nontoxicity of carboxymethyl cellulose(DS O.7)and intermediates」、Environmental Toxicology and Chemistry、1996年、第15巻第270~274頁)。更に、ラポナイト(登録商標)及びカルボキシメチルセルロースは、様々な配合物のレオロジー特性を改善するためのそれらの増粘特性のために広く採用されている(参考文献:F.R.Fitch、P.K.Jenness、S.E.Rangus、「Rheological study of blends of Laponite and polymeric thickeners」、Advances in Measurement and Control of Colloidal Processess、1991年、第292~307頁)。ラポナイト(登録商標)とは、低コストで得ることができる市販のナノシリケートである(参考文献:B.Y.K.Additives、「Laponite:Performance Additives」、Wesel、ドイツ)。本発明の組成物は、
図23A~
図23B及び
図22A~
図22Bに示すように、細胞傷害性を実証しなかった。
【0022】
いくつかの態様では、複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマーは、以下の構造Iを有する複数の繰り返し単位を含む又はこれらからなり、
【化1】
式中、X
-は、Cl
-、Br
-、BF
4
-、及びPF
6
-を含む群又はこれらからなる群から選択される。いくつかの態様では、複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマーが、複数の第4級アンモニウム官能基を含むキトサンを含む群又はこれらからなる群から選択される。
【0023】
いくつかの態様では、複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマーの量は、0.2重量%~2重量%、又は0.3重量%~10重量%、又は約0.4重量%である。
【0024】
キトサンは、第4級アンモニウム官能基を含むように誘導体化されている場合、抗菌特性及び粘膜付着特性を有してもよい。ポリマーは組成物の粘膜付着特性を改善してもよい。したがって、複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマーは、組成物の抗菌特性又は抗感染症特性を更に改善してもよい。これに関連して、第4級アンモニウム官能化キトサンは、とりわけ、負に帯電した微生物細胞膜との改善された相互作用に起因して、それらの対応するキトサンと比較して改善された抗菌特性を示すことがよく知られている(R.C.Goy、D.de Britto、O.B.G.Assis、「A review of the antimicrobial activity of chitosan」、Polimeros、第19巻#3、2009年、第241~247頁;及び、H.Y.Atay、「Antibacterial Activity of Chitosan-Based Systems.」、Jana S.(編)「Functional Chitosan.」中、Springer、シンガポール、2020年、第457~489頁;及び、Afewerki、S.Bassous、N.Harb、S.Palo-Nieto、C.Ruiz-Esparza、G.U.Marciano、F.R.Webster、T.J.Lobo、A.O.、「Advances in antimicrobial and osteoinductive biomaterials」、「Racing the surface」(B.Liら編)中、Springer Nature、2020年、第3~34頁;及び、Afewerki、S.Bassous、N.Harb、S.Palo-Nieto、C.Ruiz-Esparza、G.U.Marciano、F.R.Webster、T.J.Furtado、A.S.A.Lobo、A.O.、「Advances in Dual Functional Antimicrobial and Osteoinductive Biomaterials for Orthopedic Applications」、Nanomedicine:Nanotechnology,Biology,and Medicine、2020年、第14巻第102143頁)。第4級アンモニウム官能化キトサンの使用による更なる利点は、キトサンが中性及びアルカリ性水溶液中において水に不溶性であるため、その水溶性が改善されることである(D.Zhuら、「Enanced water-solubility and antibacterial activity of novel chitosan derivatives modified with quaternary phophonium salt.」、Mater.Sci.Eng.C Mater.Biol.Appl.、2016年、第1巻;第61号:第79~84頁)。キトサン及びその誘導体はまた、創傷治癒における使用に対する良好な候補であることが示されている(K.Azumaら、「Chitin,Chitosan,and its Derivatives for Wound Healing:Old and New Materials.J.Funct.Biomater.」、2015年、第6巻(第1号):第104~142頁;及び、S.Ahmed、S.Ikram、「Chitosan Based Scaffolds and Their Applications in Wound Healing.Achievements in Life Sciences」、2016年、第10巻第1号第27~37頁。
【0025】
いくつかの態様では、複数の酸化亜鉛粒子の量は、約0.2重量%~5重量%である。酸化亜鉛はFDA承認材料であり、食品及び局所使用において安全であると認識されている。酸化亜鉛(Zink oxide)は抗菌特性及び粘膜付着特性を有し得る。したがって、酸化亜鉛は、組成物の抗菌特性又は抗感染症特性を更に改善し得る。第4級アンモニウム官能化キトサンと組み合わせた酸化亜鉛の使用は、それらが異なる作用機序を有し、また異なる微生物を標的とし得るので、相乗的な抗菌活性を提供するであろう。(Afewerki、S.Bassous、N.Harb、S.Palo-Nieto、C.Ruiz-Esparza、G.U.Marciano、F.R.Webster、T.J.Lobo、A.O.、「Advances in antimicrobial and osteoinductive biomaterials」、「Racing the surface 」(B.Liら編)中、Springer Nature、2020年、第3~34頁;及び、Afewerki、S.Bassous、N.Harb、S.Palo-Nieto、C.Ruiz-Esparza、G.U.Marciano、F.R.Webster、T.J.Furtado、A.S.A.Lobo、A.O.、「Advances in Dual Functional Antimicrobial and Osteoinductive Biomaterials for Orthopedic Applications」、「Nanomedicine:Nanotechnology,Biology,and Medicine」、2020年、第14巻、第102143頁)。例として、ZnOは、作用機序が活性酸素種の生成(酸化ストレス)又は静電機構による細菌表面への結合によるものであると考えられている(Y.Xie、Y.He、P.L.Irwin、T.Jin、X.Shi、「Antibacterial Activity and Mechanism of Action of Zinc Oxide Nanoparticles against Campylobacter jejuni」、Appl.Environ.Microbiol.、2011年、第2325~2331頁;及び、V.Tiwariら、「Mechanism of Anti-bacterial Activity of Zinc Oxide Nanoparticle Against Carbapenem-Resistant Acinetobacter baumannii」、Front.Microbiol.、2018年、第9巻第1218頁)。第4級アンモニウム官能化キトサンの機構は、微生物中でのポリカチオンキトサンとアニオン性構成成分との間の静電相互作用によるものである(H.Tanら、「Quaternized Chitosan as an Antimicrobial Agent:Antimicrobial Activity,Mechanism of Action and Biomedical Applications in Orthopedics」、Int.J.Mol.Sci.、2013年、第14巻第1854~1869頁)。
【0026】
いくつかの態様では、接着性ポリマーは、ポリ(酢酸ビニル)である。いくつかの態様では、接着性ポリマー又はポリ(酢酸ビニル)の量は、0.1重量%~50重量%、又は0.1重量%~5重量%である。ポリ(酢酸ビニル)は、100,000~500,000の範囲にわたる分子量(Mw)を有する非毒性ゴム状合成ポリマーである。ゲル組成物への添加剤として使用される場合、接着性ポリマーは組織接着性を増強してもよい。組成物の最適な接着特性を有するという利点は、ゲルが適用の場所、例えば組織又は乳頭管内に留まり、その場所からゲルが浸出又は脱落するのを防ぐことを確実にするであろう。例として、乳腺炎を予防する用途では、全乾燥期間(120日間)中に浸出することなく、そのまま乳頭管内に留まることができるべきである。接着性ポリマーであるポリ(酢酸ビニル)は、組成物中の他の成分と適合性であり、ゲルの特性及び性能にいかなる悪影響を及ぼすことなく、組成物中に接着特性を誘導するであろう。
【0027】
いくつかの態様では、油は、合成油、鉱物油、植物系油及び動物系油を含む群又はこれらからなる群から選択される。いくつかの態様では、油は、パラフィン、ヤシ油、オリーブ油、パーム油、大豆油、キャノーラ油(ナタネ油)、トウモロコシ油、ピーナッツ油、及びアボカド油を含む群又はこれらからなる群から選択される。いくつかの態様では、油の量は、約20重量%~約80重量%である。いくつかの態様では、ポリオールは、グリセロールである。いくつかの態様では、ポリオール又はグリセロールの量は、1重量%~80重量%、又は20重量%~70重量%である。グリセロール(又はグリセリン)は、ゲルの長期安定性を改善するために、凍結防止剤及び乾燥防止剤として使用されてもよい。
【0028】
いくつかの態様では、組成物は、ゲル又は二成分ゲルの形態である。いくつかの態様では、ゲルは、約38℃において1.0g/mL~3.0g/mLの密度を有する。いくつかの態様では、ゲルは、約38℃において、1.1g/mL~5.0g/mL又は1.5g/mL~2.5g/mLの密度を有する。組成物は広げることができる(伸び広がり可能)。これは、組成物がシリンジに使用される能力のために、及び対象又は動物の皮膚上に組成物を容易かつ均一に広げるために重要である。
【0029】
いくつかの態様では、ゾルゲルポリマー組成物は、組成物が室温にてシリンジ中で変形され得るようなずり減粘特性を有する。ある特定の態様では、ゾルゲルポリマー組成物は、単一バレルシリンジなどを用いて注射することができる。いくつかの態様では、ゲルは、約2.5mL/秒の投与速度にて、約1.5mmの先端直径を有する100N未満の射出力で注射可能である。ある特定の態様では、組成物は、剪断減粘性である。
【0030】
いくつかの態様では、ゲルは、乳又は水の存在下において、37~40℃で最大約120日間まで安定である。いくつかの態様では、組成物は、約10-1%~約103%の歪み値で約102Pa~約105Paの機械的強度を有する。適切な機械的特性を有する安定したゲルの利点により、ゲルは治療中の乳用牛の動的な運動に確実に抵抗できるであろう。ゲル中の固有の組成により、使用環境で安定である、最適な機械的特性が得られる。組成物は、適切な機械的特性、例えば、ゲルが適用される体内の組織の粘弾性に類似する粘弾性を有し、これはゲルが身体の一定の動的/機械的運動に耐えることができることを示唆する。ゲル組成物、特にシリカナノ粒子からの物理的架橋は、これらの特性を促進する。いくつかの態様では、組成物は、
1~15重量%の複数のリチウム=マグネシウム=ナトリウム=シリカートナノ粒子と、
約1kDa~約10,000kDaの分子量を有する0.5~10重量%のポリ(エチレンオキシド)と、
0.1~50重量%のポリ酢酸ビニルと、
20~70重量%のグリセロールと、
最大100重量%の水と、を含む又はこれらからなり、任意選択的に、
0.2~5重量%の複数の酸化亜鉛粒子、及び/又は
複数の第4級アンモニウム官能基を含む0.2~2重量%のキトサン、
を更に含み、
ここで、重量%は、組成物の総重量のパーセンテージである。
【0031】
これらの濃度は、組成物のバイアビリティ、抗菌特性、及び機械的特性の間の最適なバランスを提供するであろう。成分の濃度が高すぎると、組成物の機械的特性が弱くなり、また細胞傷害性にも悪影響を及ぼす可能性がある。いくつかの態様では、本明細書で定義される組成物は、1種以上の薬物又は薬剤を更に含む。これらの薬物又は薬剤は、組成物の有用性若しくは有効性を増加させるか、又は検出を容易にし得る。薬物又は薬剤を組成物の他の成分と単に混合することによって、薬物又は薬剤を組成物へと容易に組み込むことができる。
【0032】
いくつかの態様では、1種以上の薬物が、抗生物質薬、抗寄生虫薬、抗真菌薬、鎮痛薬又は抗炎症薬、ビタミン、コルチコステロイド薬、及びタンパク質を含む群又はこれらからなる群から選択される。組成物中のこれらの薬物の協調は、乳腺炎、皮膚創傷、又は本明細書で言及される任意の他の疾患若しくは障害などの感染症の予防及び治療に対して、相加的効果、又は相乗的効果さえも有し得る。これらの薬物は、組成物(機械的障壁、第4級キトサン、及び酸化亜鉛)の抗菌作用様式とは異なる作用機序を有し、組成物と薬物の組合せは、広範囲の微生物を治療及び/又は予防することを可能にし得る。
【0033】
いくつかの態様では、1種以上の薬物は、ローダミンB又はBSAタンパク質から選択される。
【0034】
いくつかの態様では、1種以上の薬剤が、着色剤又は染料、及び比色分析pH指示薬を含む群又はこれらからなる群から選択される。薬剤は細菌の存在などの指標として有用である。薬剤はまた、投与後の組成物の交換のための指標として、又は組成物の品質のための指標として、有用であり得る。組成物内に指標を有することにより、組成物の性能の監視が簡単になり、利害関係者の用途が簡単になる。ある特定の態様では、組成物は、医学的及び/又は獣医学的使用のためのものである。ヒトへの適用が本開示から明らかになるであろうが、好ましい使用は、動物が乾燥し始めるとき又は乾燥期間中に起こり得る乳房疾患の治療及び/又は予防のために、乳用動物の乳頭管内に物理的障壁を形成するための本明細書で定義される組成物の投与に関し、これは、本明細書で定義される組成物を、動物の乳頭及び/又は乳頭管内に投与することを含む。
【0035】
本発明はまた、哺乳動物における疾患の予防及び/又は治療で使用するための、本明細書で定義される組成物に関する。本発明は、哺乳動物における疾患の予防及び/又は治療で使用するための医薬品の製造において、本明細書で定義される組成物に関する。本発明は、疾患、障害、又は状態を、治療及び/又は予防する方法に関し、これを必要とする哺乳動物、例えば乳牛に、治療有効量の本明細書で定義される組成物を投与することを含む。
【0036】
いくつかの態様では、本明細書で定義される組成物は、哺乳動物における感染症の予防及び/又は治療で使用するためのものである。いくつかの態様では、感染症は、皮膚潰瘍、糖尿病性潰瘍、座瘡、酒さ、膿瘍、又は臓器感染症である。いくつかの態様では、本明細書で定義される組成物は、局所、皮下、又は内部感染の、予防及び/又は治療で使用するためのものである。いくつかの態様では、本明細書で定義される組成物は、哺乳動物の炎症の予防及び/又は治療で使用するためのものである。
【0037】
いくつかの態様では、組成物は、抗菌性又は静菌性である。いくつかの態様では、組成物は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)及び/又は大腸菌(E.coli)に対して、少なくとも40μg/mLのMIC50を呈する。いくつかの態様では、本明細書で定義される組成物は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)及び/又は大腸菌(E.coli)によって引き起こされる感染症の予防及び/又は治療で使用するためのものである。
【0038】
いくつかの態様では、本明細書で定義される組成物は、哺乳動物における乳腺炎/微生物性乳腺炎の、予防及び/又は治療で使用するためのものである。
【0039】
いくつかの態様では、本明細書で定義される組成物は、哺乳動物における皮膚疾患の予防及び/又は治療で使用するためのものである。
【0040】
いくつかの態様では、本明細書で定義される組成物は、組成物を局所的に投与することにより、動物及び又はヒトにおける、局所外傷の予防及び/又は治療、裂傷、擦過傷、穿刺、剥離、潰瘍、及び熱傷などの皮膚創傷の治療で使用するためのものである。
【0041】
いくつかの態様では、本明細書で定義される組成物は、哺乳動物の体内の管のシーラント/障壁として、又は乳腺管のための乳頭シーラント/障壁として使用するためのものである。いくつかの態様は、哺乳動物の体内の管のシーラント、又は本明細書で定義される組成物を含む若しくはそれからなる乳頭シーラントに関する。いくつかの態様では、組成物は、投与の際、物理的障壁を形成し、それによってゲルへの細胞浸潤を実質的に妨げる。いくつかの態様では、組成物は、投与/注射の直後にゲル化する(例えば、又は60秒未満、又は30秒未満、又は10秒未満)。したがって、組成物は、哺乳動物対象への投与又は注射後に、漏れがなく、滴下しないプラグ、又は耐久性のある封を形成することができると考えられる。
【0042】
いくつかの態様では、哺乳動物は、未経産牛又は乳牛などの、乳用家畜動物である。いくつかの態様では、哺乳動物は、ヤギ、ヒツジ、ウマ、及びスイギュウなどである。いくつかの態様では、哺乳動物は、乳牛又は乳用の雌ウシである。
【0043】
いくつかの態様では、組成物は、乳腺管の内部及び/又は乳房の皮膚上に投与される。
【0044】
いくつかの態様では、本明細書で定義されるゾルゲルポリマー組成物の投与は、ゾルゲルポリマー組成物を乳房組織上で局所的に適用すること、又は乳頭管内(乳房内)に適用することを含む。いくつかの態様では、局所投与は、乳頭を組成物に浸漬することを含む。いくつかの態様では、組成物は、乳房内投与を介して、例えば注射又は注入によって投与される。
【0045】
本発明は、本明細書で定義される組成物を投与する方法であって、乳頭管内(乳房内)及び/又は局所的に適用する組成物を適用することを含む、又はそれからなる方法に関する。
【0046】
いくつかの態様では、ゾルゲルポリマー組成物は、動物が乾燥し始める際、又は動物の乾燥期間中に投与される。ある特定の態様では、組成物は、乾燥期間中に乳頭管内に留まり、したがって乾燥期間中及び泌乳の第1段階(分娩後)において、乳腺炎の臨床症例及び無症状症例を減少させる。乾燥期間を通して乳頭管内に留まることにより、ゾルゲルポリマー組成物は、搾乳前(pre-fresh)の乳用動物における高リスク期間中の乳頭管への微生物浸潤を最小限に抑える。いくつかの態様では、ゾルゲルポリマー組成物は、健康な動物の感染より前に投与される。いくつかの態様では、ゾルゲルポリマー組成物は、非泌乳動物の産後期間中に投与される。いくつかの他の態様では、ゾルゲルポリマー組成物は、動物の産前期間中に投与される。
【0047】
本発明は、動物が乾燥し始めるとき若しくは動物の乾燥期間中、並びに/又は産後期間中及び/若しくは産前期間中に投与されることを含む、又はこれらからなる、本明細書で定義される組成物を投与するための投与レジメンに関する。
【0048】
一態様では、本明細書で定義される組成物の投与後に動物から得られた乳は、乳製品の生産で使用される。組成物の投与は、乳腺炎の治療を受けている動物から得られた乳の保留時間の短縮を可能にし、それによって、動物に抗生物質を投与する場合に必要とされる標準的な乳廃棄期間を短縮する。
【0049】
いくつかの態様では、本明細書で定義される組成物は、妊娠の遅延又は予防で使用するためのものである。いくつかの態様では、本明細書で定義される組成物は、妊娠の予防で使用するためのものである。本明細書で定義される組成物を、卵巣と子宮との間の哺乳動物の流体連通の卵管へと投与することによって、妨げる又は防止することができる。
【0050】
いくつかの態様では、本発明は、任意選択的にシリンジを使用するためのマニュアルを備えた、シリンジ中に本明細書で定義される組成物を備えるキットに関する。
【0051】
いくつかの態様では、本発明は、表面若しくは皮膚又は乳房若しくは乳頭若しくは乳頭管から組成物を除去するために適合された、1~15重量%のピロリン酸四ナトリウムを任意選択的に含む、シリンジ及び生理食塩水を使用するためのマニュアルを任意選択的に備えた、シリンジ中に本明細書で定義される組成物を含むキットに関する。いくつかの態様では、低分子量グリコールは、50~1000g/molの分子量を有するエチレングリコール又はポリエチレングリコールである。
【0052】
本発明は、本発明の異なる実施形態の説明によって、添付の図面を参照して、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】
図1は、グラム陽性黄色ブドウ球菌(S.aureus)(丸)及びグラム陰性大腸菌(E.coli)(四角)に対する、様々な濃度での第4級キトサン(qCh)の抗菌特性を示すグラフである。*MIC:最小発育阻止濃度、及びMIC
50:50%の成長減少を誘導した最小濃度。*黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対する市販のToMORROW(登録商標)シーラント(セファピリン)で使用されている抗生物質のMICと、大腸菌(E.coli)に対するセファピリンのMIC
50とを、比較として示す。
【
図2A】
図2Aは、8時間後のグラム陽性黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対する、0.5重量%qChなし(ヒドロゲルのみ)及び0.5重量%qChあり(0.5%qChヒドロゲル)(以下の重量比により、例2に記載したように配合:100gの水、10gのラポナイト(登録商標)、8gのカルボキシメチルセルロース(CMC)、3gのPEO、及び0.5gのqChを含む/含まない)の、本発明のヒドロゲル組成物の抗菌特性を示す棒グラフである。
【
図2B】
図2Bは、24時間後のグラム陽性黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対する、0.5重量%qChなし(ヒドロゲルのみ)及び0.5重量%qChあり(0.5%qChヒドロゲル)(以下の重量比により、例2に記載したように配合:100gの水、10gのラポナイト(登録商標)、8gのカルボキシメチルセルロース(CMC)、3gのPEO、0.5gのqChを含む/含まない)の、本発明のヒドロゲル組成物の抗菌特性を示す棒グラフである。
【
図3A】
図3Aは、8時間後のグラム陰性大腸菌(E.coli)に対する、0.5重量%qChなし(ヒドロゲルのみ)及び0.5重量%qChあり(以下の重量比により、例2に記載したように配合:100gの水、10gのラポナイト(登録商標)、8gのカルボキシメチルセルロース(CMC)、3gのPEO、及び0.5gのqChを含む/含まない)の、本発明のヒドロゲル組成物の抗菌特性を示す棒グラフである。
【
図3B】
図3Bは、24時間後のグラム陰性大腸菌(E.coli)に対する、0.5重量%qChヒドロゲルなし(ヒドロゲルのみ)及び0.5重量%qChあり(以下の重量比により、例2に記載したように配合:100gの水、10gのラポナイト(登録商標)、8gのカルボキシメチルセルロース(CMC)、3gのPEO、及び0.5gのqChを含む/含まない)である、ラポナイト(登録商標)組成物の抗菌特性を示す棒グラフである。
【
図4A】
図4Aは、それぞれ8時間後のグラム陰性大腸菌(E.coli)に対する、0.5重量%qCh又は1重量%qChを含む本発明のヒドロゲル組成物の抗菌特性を示す棒グラフである。Orbeseal(登録商標)の抗菌効果を比較群として示す。
【
図4B】
図4Bは、それぞれ24時間後のグラム陰性大腸菌(E.coli)に対する、0.5重量%qCh又は1重量%qChを含む本発明のヒドロゲル組成物の抗菌特性を示す棒グラフである。Orbeseal(登録商標)の抗菌効果を比較群として示す。
【
図5】
図5は、1.0重量%qChを含む本発明のヒドロゲル組成物l(3%PEO(分子量20k)、8%CMC、及び15%ラポナイトを含む)の貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G’’)対振動歪みを実証する、歪み掃引レオロジー実験の結果を示すグラフである。
【
図6】
図6は、0.5重量%qChあり(以下の重量比により、例2に記載したように配合:100gの水、10gのラポナイト(登録商標)、8gのカルボキシメチルセルロース(CMC)、3gのPEO、及び0.5gのqCh)の、本発明のヒドロゲル組成物の剪断減粘特性(粘度対剪断応力)を示す棒グラフである。剪断減粘性生体材料の典型的な挙動である、より高い剪断応力において粘度の低下が観察された。
【
図7】
図7は、0.5重量%qChあり(以下の重量比により、例2に記載したように配合:100gの水、10gのラポナイト(登録商標)、8gのカルボキシメチルセルロース(CMC)、3gのPEO、及び0.5gのqCh)の本発明のヒドロゲル組成物と、Orbeseal(登録商標)との回復性を比較するグラフである。休止状態を5分間の1%歪みに設定し、次いで5分間の高い歪み(100%)を適用した。配合の回収を監視した。
【
図8】
図8は、0.5重量%qCh(以下の重量比により、例2に記載したように配合:100gの水、10gのラポナイト(登録商標)、8gのカルボキシメチルセルロース(CMC)、3gのPEO、及び0.5gのqCh)を有する、本発明のヒドロゲル組成物の射出力を示すグラフである。許容可能な射出力は88N未満である。
【
図9A】
図9Aは、0.5重量%qChヒドロゲルなし(ヒドロゲルのみ)(以下の重量比により、例2に記載したように配合:100gの水、10gのラポナイト(登録商標)、8gのカルボキシメチルセルロース(CMC)、3gのPEOを含む、15μg/mLのリゾチームを含む/含まないPBS中)の、本発明のヒドロゲル組成物の長期安定性を示す棒グラフである。
【
図9B】
図9Bは、0.5重量%qChヒドロゲルあり(以下の重量比により、例2に記載したように配合:100gの水、10gのラポナイト(登録商標)、8gのカルボキシメチルセルロース(CMC)、3gのPEO、及び0.5gのqChを含む)15μg/mLのリゾチームを含む/含まないPBS中)の、本発明のヒドロゲル組成物の長期安定性を示す棒グラフである。
【
図10】
図10は、例14に記載のブタモデルにおける熱外傷の作成を示すグラフである。
【
図11A】
図11Aは、例14に記載されるようなブタモデルにおいて新しく作り出された熱外傷に適用された、本発明のヒドロゲル組成物#1を示すグラフである。
【
図11B】
図11Bは、例14に記載されるような本発明のヒドロゲル組成物#1と直接接触させて適用された、フォームドレッシング(form dressing)を示すグラフである。
【
図11C】
図11Cは、例14に記載されるようなブタモデルにおいて新しく作り出された熱外傷に適用された、本発明のヒドロゲル組成物第2号を示すグラフである。
【
図11D】
図11Dは、例14に記載されるような本発明のヒドロゲル組成物第2号と直接接触させて適用された、フォームドレッシング(form dressing)を示すグラフである。
【
図11E】
図11Eは、例14に記載されるようなブタモデルにおいて新しく作り出された熱外傷に適用された、本発明のヒドロゲル組成物#3を示すグラフである。
【
図11F】
図11Fは、例14に記載されるような本発明のヒドロゲル組成物#3と直接接触させて適用された、フォームドレッシング(form dressing)を示すグラフである。
【
図12】
図12は、ブタモデルにおける熱傷創が閉じた後のグラフである。
【
図13A】
図13Aは、0日目のブタモデルにおける熱傷創の対照実験を示すグラフである。
【
図13B】
図13Bは、創傷が感染症を有していたことを示す、7日目のブタモデルにおける熱傷創の対照実験を示すグラフである。
【
図14A】
図14Aは、0日目に本発明のヒドロゲル組成物#1で処置した、ブタモデルにおける熱傷創を示すグラフである。
【
図14B】
図14Bは、いかなる感染の兆候も示していない、7日目に本発明のヒドロゲル組成物#1で処置した、ブタモデルにおける熱傷創を示すグラフである。
【
図14C】
図14Cは、0日目に本発明のヒドロゲル組成物第2号で処置した、ブタモデルにおける熱傷創を示すグラフである。
【
図14D】
図14Dは、いかなる感染の兆候も示していない、7日目に本発明のヒドロゲル組成物第2号で処置した、ブタモデルにおける熱傷創を示すグラフである。
【
図14E】
図14Eは、0日目に本発明のヒドロゲル組成物#3で処置した、ブタモデルにおける熱傷創を示すグラフである。
【
図14F】
図14Fは、いかなる感染の兆候も示していない、7日目に本発明のヒドロゲル組成物#3で処置した、ブタモデルにおける熱傷創を示すグラフである。
【
図15A】
図15Aは、例7に記載されるように実施された、本発明のヒドロゲル組成物#1~#4、及び市販品であるOrbesealの振幅掃引を示す表である。
【
図15B】
図15Bは、例7に記載される本発明のヒドロゲル組成物#4の掃引振動歪み曲線の典型的なプロットを示すグラフである。
【
図16A】
図16Aは、例7に記載される高い歪み(400%)及び低い歪み(0.1%)により7回のサイクルを実施した、本発明のヒドロゲル組成物#1の回収特性を示すグラフである。
【
図16B】
図16Bは、例7に記載される高い歪み(400%)及び低い歪み(0.1%)により7回のサイクルを実施した、本発明のヒドロゲル組成物第2号の回収特性を示すグラフである。
【
図16C】
図16Cは、例7に記載される高い歪み(400%)及び低い歪み(0.1%)により7回のサイクルを実施した、本発明のヒドロゲル組成物#3の回収特性を示すグラフである。
【
図16D】
図16Dは、例7に記載される高い歪み(400%)及び低い歪み(0.1%)により7回のサイクルを実施した、本発明のヒドロゲル組成物#4の回収特性を示すグラフである。
【
図16E】
図16Eは、例7に記載される高い歪み(400%)及び低い歪み(0.1%)により7回のサイクルを実施した、市販品Orbesealからのゲルの回収特性を示すグラフである。
【
図17A】
図17Aは、ゲル表面を完全に覆うための(例5の通りであるが、100μLの細菌溶液(黄色ブドウ球菌(S.aureus))を(20μLの代わりに)用いた)、ゲル表面抗菌試験を示す画像である。試料を、通常の細菌成長と、本発明のヒドロゲル組成物#1及び#4並びに初期時点での市販品Orbeseal(OB)の培養物への成分の可能な放出(ゲルは例13に記載されるように300kDaのPEOを用いて作製した)とのために、インキュベーション中に120rpmで振盪した。
【
図17B】
図17Bは、ゲル表面を完全に覆うための(例5として、100μLの細菌溶液(黄色ブドウ球菌(S.aureus))を(20μLの代わりに)用いた)、ゲル表面抗菌試験を示す画像である。試料を、通常の細菌成長と、24時間のインキュベーション後の本発明のヒドロゲル組成物#1及び#4並びに市販品Orbeseal(OB)の培養物)への成分の可能な放出(ヒドロゲル組成物は例13に記載されるように300kDaのPEOを用いて作製した)とのために、インキュベーション中に120rpmで振盪した。
【
図17C】
図17Cは、本発明のヒドロゲル組成物#1及び#4(ヒドロゲル組成物は、例13に記載されるように300kDaのPEOを用いて作製された)、市販品Orbeseal(OB)、並びに70%グリセリン(例5の通りであるが、ゲル表面を完全に覆うために100μLの細菌溶液(黄色ブドウ球菌(S.aureus))を(20μLの代わりに)用いた)の、抗菌特性を示す棒グラフである。試料を、正常な細菌成長及び24時間後にグラム陽性黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対する培養物への成分の可能な放出のために、インキュベーション中に120rpmで振盪した。
【
図17D】
図17Dは、本発明のヒドロゲル組成物#1及び#4(ヒドロゲル組成物は、例13に記載されるように300kDaのPEOを用いて作製された)、市販品Orbeseal(OB)、並びに70%グリセリン(例5の通りであるが、ゲル表面を完全に覆うために100μLの細菌溶液(黄色ブドウ球菌(S.aureus))を(20μLの代わりに)用いた)の、抗菌特性を示す棒グラフである。試料を、24時間後にグラム陰性大腸菌(E.coli)に対して、培養物への成分の可能な放出の防止をもたらし得た振盪を行わなかった。
【
図18A】
図18Aは、インキュベーション9日目のグラム陰性大腸菌(E.Coli)に対する、本発明のヒドロゲル組成物#4及び市販品Orbesealに対する抗菌特性を示すグラフである、細菌汚染のレベルは波長600nmにて光学密度測定によって決定した。写真は、本発明ヒドロゲル組成物#4及び市販品Orbesealの両方の細菌プレーティング結果を示す。市販のOrbesealと比較して、より高くより長い抗菌効果が実証される。
【
図18B】
図18Bは、インキュベーション9日目のグラム陽性黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対する、本発明のヒドロゲル組成物#4及び市販品Orbesealに対する抗菌特性を示すグラフである、細菌汚染のレベルは波長600nmにて光学密度測定によって決定した。写真は、本発明ヒドロゲル組成物#4及び市販品Orbesealの両方の細菌プレーティング結果を示す。市販のOrbesealと比較して、より高くより長い抗菌効果が実証される。
【
図18C】
図18Cは、インキュベーション9日目のグラム陰性大腸菌(E.Coli)及びグラム陽性黄色ブドウ球菌(S.aureus)の両方に対する、本発明のヒドロゲル組成物#4及び市販品Orbesealの14日間後の細菌インベーション(invation)の予防(抗菌特性)を示す棒グラフである。 市販のOrbesealと比較して、いかなる抗生物質も使用せずに細菌を死滅させるのに非常に効率的な抗菌効果が実証される。
【
図19A】
図19Aは、24時間後のグラム陽性黄色ブドウ球菌(S.aureus)(10
8CFU/mL)に対する、本発明のヒドロゲル組成物#1、#2、#3、及び#4(ヒドロゲル組成物は、例13に記載されるように8,000,000kDaのPEOを用いて作製された)、並びに市販品Orbeseal(OB)(例5の通り)の、抗菌特性を示す棒グラフである。
【
図19B】
図19Bは、24時間後のグラム陽性黄色ブドウ球菌(S.aureus)(10
8CFU/mL)に対する、本発明のヒドロゲル組成物#1及び#4(ヒドロゲル組成物は、例13に記載されるように300kDaのPEOを用いて作製された)、並びに市販品Orbeseal(OB)(例5の通り)の、抗菌特性を示す棒グラフである。
【
図20A】
図20Aは、細胞におけるZnOの蛍光検出の対照試料を示す画像である。
【
図20B】
図20Bは、0.1%ZnOとの5分間のインキュベーション後の細胞における、ZnOの蛍光検出を示す画像である。
【
図20C】
図20Cは、0.1%ZnOとの30分間のインキュベーション後の細胞における、ZnOの蛍光検出を示す画像である。
【
図20D】
図20Dは、0.1%ZnOとの60分間のインキュベーション後の細胞における、ZnOの蛍光検出を示す画像である。
【
図21】
図21は、本発明のヒドロゲル組成物#1及び#4(ヒドロゲル組成物は、例13に記載されるように300kDa及び8,000,000kDaのPEOを用いて作製された)、並びに市販品Orbeseal(OB)の、射出力を示すグラフである。
【
図22A】
図22Aは、細胞傷害性(線維芽細胞を細胞播種の1日後にインキュベートした)を示すグラフである。細胞(50μL、播種密度10
5CFU/mL)を、Transwellインサート(孔径3μm)に覆われた0.1mLのそれぞれの試料(ヒドロゲル組成物#4及びOrbeseal)に添加した。共培養実験は、細菌及び細胞の共培養系の結果において、閉鎖チャンバ)内で5%CO
2を穏やかに振盪しながら行った。
【
図22B】
図22Bは、用量漸増を伴うヒドロゲル組成物#4の細胞傷害性の結果(例15に記載されるように実施)を示すグラフである。有意な毒性は実証されない。
【
図23A】
図23Aは、質量漸増を伴う、例13に記載されるような300kDaのPEO及び8,000,000kDaのPEOにより製作された、ヒドロゲル組成物#4の細胞傷害性の結果(例15に記載されるように実施)を示すグラフである。有意な毒性及び有意な差異がないことが実証される。
【
図23B】
図23Bは、10%ラポナイト、15%ラポナイト、及びOrbeseal(OB)の細胞傷害性の結果(例15に記載のように実施)を示す棒グラフである。
【
図24】
図24は、研究者の指の間にゲルを配置することで、ヒドロゲル組成物の接着特性を示す画像である。
【
図25】
図25は、本発明のヒドロゲル組成物#3及び#4からの体細胞数(乳中の炎症細胞の数)に基づく、臨床結果(例18に記載の通り)を示すグラフである。試験は、60日間の全乾燥期間中、分解又は漏出の兆候なしに、乳頭チャネル中のヒドロゲル組成物安定性を実証した。ヒドロゲル組成物#3及び#4による臨床試験からは、乳腺炎は観察されなかった。
【
図26】
図26は、ヒドロゲル組成物#3及び#4からのリチウム(Li)元素に基づく、臨床結果(例18に記載の通り)からの乳及び血液の元素分析を示す表である。
【
図27】
図27は、Nanodrop分光光度計(例19~例20に提示)を用いたヒドロゲル組成物(#4)からのBSAの放出の決定を実証する吸光度スペクトルである。
【
図28】
図28は、ヒドロゲル組成物(#4)からのローダミンBの放出の決定で使用した、PBS中のローダミンBの較正曲線である。
【
図29】
図29は、ヒドロゲル組成物#3及び#4からの観察に基づく臨床結果(例18に記載の通り)を示す表である。試験は、いかなる乳腺炎の兆候も実証せず、処置された全ての乳牛の外観もまた正常であることが実証された。
【発明を実施するための形態】
【0054】
定義
本明細書で他に定義されない限り、本出願で使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。以下の定義は、本開示に関連して使用される主要な用語の一般的な意味を例示するためにのみ与えられる。
【0055】
本明細書で使用される「重量%」という用語は、組成物の総重量のパーセンテージを意味する。
【0056】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒト及び陸生動物を含むものとする。例えば、対象は、家畜種、実験動物種、動物園の動物、コンパニオンアニマル、又はヒトであり得る。特定の態様では、「対象」は、より具体的には任意の泌乳動物を指す。対象は乳牛であってもよい。
【0057】
「有効量」という用語は、疾患又は状態を治療又は予防するという目標を達成する組成物の分量を限定することを意図している。「有効」とはまた、治療なしでの疾患重症度又は発生頻度の改善を指してもよい。
【0058】
「疾患」という用語は、障害、状態、又はそれらの任意の同等物を含むことが意図されている。
【0059】
「局所」という用語は、表皮に適用される任意の組成物を指すものとする。局所用とはまた、マウスウォッシュとして使用される組成物も指すものとする。
【0060】
「乳頭浸漬」又は「乳頭ディッピング」という用語は、広範に、酪農の技術分野で使用される用語に従って解釈されるものとする。したがって、組成物は、乳頭の浸漬を意図するだけでなく、他の方法で、例えば噴霧によって適用することができ、これは、乳頭浸漬又は乳頭ディッピング組成物又は薬剤という認識されている用語の範囲内である。
【0061】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、「抗菌」という用語は、例えば、抗菌、抗真菌、抗ウイルス、静菌、抗原虫、消毒、又は衛生化効果を有し得る、微生物を死滅させる又は微生物の成長を阻害するなどの殺生物効果を表す。
【0062】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、「微生物」という用語は、広く解釈されるべきであり、細菌、真菌、酵母、ウイルス、及び原虫などの病原性微生物を含む。
【0063】
「乳房」という用語は、本明細書では、乳牛、ヤギ、ヒツジ、及びスイギュウなどの雌の反芻動物の腺の乳房構造を指す。乳牛では、乳房は4つの独立した腺を備え、各1つの乳頭及び1つの出口管を伴うが、一方でヒツジ及びヤギは2つの腺を有する。「乳頭」という用語は、本明細書では、乳又は乳頭洞の一部を含有する乳腺の突出部分を指す。
【0064】
「乳頭シーラント」という用語は、本明細書では、動物の乳頭の表面又は内部に物理的障壁を形成するために使用される、組成物及び装置を指す。乳頭シーラントは、乳頭表面上、乳頭線導管(teat streak canal)の内側、及び/又は乳頭槽の内側にあり得る。
【0065】
「溶液」という用語は、本明細書では、特に明記されない限り、溶液、懸濁液、又は分散液を指す。
【0066】
本明細書で使用される「スプレー」という用語は、乳頭の周りの皮膚などの領域にわたって組成物を送達することを意図された目的のために、エアロゾルアプリケータ又はポンプ・スプレー・アプリケータを介して適用されるといった、小さい液滴又は大きい液滴から構成されるなどの霧化された組成物を指す。
【0067】
「注入」という用語は、本明細書では、腔、静脈、又は槽への流体又は溶液の連続的な導入を指す。
【0068】
「哺乳動物」という用語は、本明細書では、皮膚上の髪又は毛、幼動物に栄養を与えるための雌による乳産生乳腺からの分泌乳、及び4つの心室を保有するヒト及び動物の両方を含む、哺乳綱の温血脊椎動物を指す。
【0069】
乳腺炎に関する本開示の態様について、「動物」という用語は、本明細書では、泌乳期間を有する雌の非ヒト哺乳動物を指し、これには、乳牛、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、及びスイギュウなどの家畜動物が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、動物は、乳用の乳牛である。「乳牛」と「未経産牛」のどちらも雌のウシであるが、「未経産牛」という用語は、本明細書では、子ウシを出産していない任意の若い雌の乳牛、典型的には離乳した3歳未満の乳牛を指す。「乳牛」という用語は、多くの場合、子ウシを出産した高齢の雌の動物を指す。
【0070】
「乾燥期間」という用語は、本明細書では、乳牛又は他の乳用動物の泌乳サイクルの非泌乳期を指す。乾燥期間は、1つの泌乳サイクルの終わりと次の泌乳の開始との間に起こる。各泌乳サイクルの終わりに、動物は、動物の非泌乳期間(乾燥期間)のための乳生産の停止に関連した、通常の生理学的、代謝的、及び内分泌的変化を含む乾燥期間に動物が入る際、「乾燥(drying off)」の段階を開始する。
【0071】
「乳製品」という用語は、本明細書では、液体又は粉末形態である任意の量の乳を含有する製品を指す。これにはチーズ及びヨーグルトもまた含まれる。
【0072】
「産後」という用語は、本明細書では、分娩直後から始まり、約6週間までの期間を指す。「産前」という用語は、本明細書では、分娩前である、妊娠中の期間を指す。「周産期」という用語は、本明細書では、分娩の直前及び直後の期間を指す。
【0073】
「退縮」という用語は、本明細書では、乳牛における乳生産の停止後から最初の2~3週間を指す。
【0074】
「乳のための休薬期間」又は「乳のための保留時間」という用語は、通常の使用条件下において動物へと獣医学医薬品を最後に投与してから、そのような動物からの母乳が、規制当局によって確立された最大残留限度を超える分量の残留物を含有しないことが確実となるまでの間隔を意味する。
【0075】
「微生物浸潤」という用語は、本明細書では、例えば、細菌、特に膿形成又は壊死細菌、ウイルス、真菌、酵母、及び原虫などの病原性微生物の、身体組織又は身体の空洞中に増殖する移動を指し、これは、感染症及び/又は疾患へと進行し得る組織傷害をもたらす。「微生物浸潤」とは、「細菌浸潤」を指してもよい。
【0076】
「ゾルゲルポリマー組成物」という用語は、本明細書では、本明細書に記載されるように、ある特定の条件下においてゾルゲル状態を形成するためにゾルゲルプロセスを受けることができる、ポリマー組成物を指す。
【0077】
「ポリマー」という用語は、本明細書では、一組の高分子を含む材料を指す。ポリマーに含まれる高分子は、同じであってもよく、又はいくつかの様式で互いに異なっていてもよい。高分子は様々な骨格構造のいずれかを有することができ、1つ以上の種類のモノマー単位を含むことができる。特に、高分子は、直鎖状又は非直鎖状の骨格構造を有することができる。非直鎖状骨格構造の例としては、星形分岐、櫛形分岐、又は樹状分岐などの分岐状骨格構造、及び網状骨格構造が挙げられる。ホモポリマーに含まれる高分子は、典型的には1種類のモノマー単位を含み、一方でコポリマーに含まれる高分子は、典型的には2種類以上のモノマー単位を含む。コポリマーの例としては、統計コポリマー、ランダムコポリマー、交互コポリマー、周期的コポリマー、ブロックコポリマー、ラジアルコポリマー、及びグラフトコポリマーが挙げられる。
【0078】
ポリマーに関して本明細書で使用される場合、「分子量(MW)」という用語は、ポリマーの数平均分子量、重量平均分子量、又はメルトインデックスを指す。
【0079】
「弾性率」という用語(「ヤング率」又は貯蔵弾性率(G’)とも称される)は、本明細書では、材料における適用された歪み(すなわち、剪断歪み(比例変形)に対する剪断応力(単位面積当たりの力)の比)による応力の変化として定義される。本質的に、弾性率とは、試験された材料がその元の形状及びサイズに戻る能力を測定する、弾性材料の剛性の定量的測定値である。G’は、弾性率が応力対歪みの比(すなわち、サイズのわずかな変化に対する適用圧力の比)に等しいことを述べる、フックの法則から導出された式を用いて計算することができる。弾性率の尺度は、単位面積当たりの力(単位面積に対するニュートンの標準的なメートル比(N/m2)、又は1パスカルが1平方メートル(1m2)の面積にわたって適用される力の1ニュートン(1N)に相当するパスカル(Pa))として報告される。このパスカル単位は、圧力、引張強度、応力、及び弾性の単位を定義するためにしばしば使用される、当技術分野で認識されている用語である。
【0080】
本明細書で使用される場合、「薬物」という用語は、インビボ又はインビトロで、原核細胞若しくは真核細胞又は生物などの生物系に対して、生理学的効果(例えば、治療効果又は予防効果)を有することができる、任意の薬剤を指す。薬物は、例えば、鎮痛薬、麻酔薬、抗炎症剤、駆虫薬、抗不整脈剤、抗喘息剤、抗生物質(ペニシリンを含む)、抗がん剤(タキソールを含む)、抗凝固薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、降圧剤、抗ムスカリン剤、抗マイコバクテリア剤(antimycobacterial agent)、抗悪性腫瘍剤、抗酸化剤、解熱薬、免疫抑制薬、免疫賦活薬、抗甲状腺剤、抗ウイルス剤、抗不安鎮静薬(催眠薬及び神経遮断薬)、収斂薬、静菌剤、ベータアドレナリン受容体遮断剤、血液製剤及び代用血液、気管支拡張薬、緩衝剤、強心剤(cardiac inotropic agent)、化学療法薬、造影剤、コルチコステロイド、咳止め薬(去痰剤及び粘液溶解薬)、利尿薬、ドーパミン作動薬(抗パーキンソン剤)、フリーラジカル捕捉剤、成長因子、止血薬、免疫剤(immunological agent)、脂質調節剤、筋弛緩薬、タンパク質、ペプチド及びポリペプチド、副交感神経刺激薬、副甲状腺カルシトニン及びビホスホネート、プロスタグランジン、放射性医薬品、ホルモン、性ホルモン(ステロイドを含む)、時間放出結合剤、抗アレルギー剤、刺激薬及び食思減退薬、ステロイド、交感神経模倣薬、甲状腺剤、ワクチン、血管拡張薬、タンパク質、抗体、並びにキサンチンを含む、様々な既知のクラスの薬物から選択することができる、
【0081】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」という用語は、少なくとも1つのポリペプチド鎖を含有する任意の大きな生体分子及び高分子を指す。目的のタンパク質は、酵素、抗体、膜貫通タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質(インスリンを含む)、及び構造タンパク質(コラーゲンを含む)を含む、異なる機能を有する様々なタンパク質から選択することができる。
【0082】
本明細書で使用される「ずり減粘」という用語は、流体粘度が剪断速度又は応力の増加と共に減少する、非ニュートン流体の共通の特徴を指す。ずり減粘は、懸濁液、エマルジョン、ポリマー溶液、及びゲルにおいて観察される。ずり減粘特質に起因して、ポリマー、高分子、又はゲルの粘度を低下させることは、剪断速度を増加させることによって可能となる。基本的に、剪断速度の増加時の粘度の減少の結果として、「ずり減粘」特性は、シリンジのピストンから穏やかな手動圧力を適用することによってゲルネットワークが一時的に変形する能力の尺度である。このずり減粘現象は、例として、そうでなければ堅い生体適合性ゲルを不融性にするために使用されてもよい。
【0083】
本明細書で使用される「耐久性のある」という用語は、ある期間の条件への曝露、例えばある期間の生理学的温度での緩衝溶液への曝露時に、材料が有意な質量損失を呈しないことを意味する。例えば、材料は、緩衝溶液に生理学的温度で約4週間曝露した後、その元の質量の10%を超えて失わない。
【0084】
本明細書で使用される「安定な」という用語は、ある期間条件に曝露された際に、示差走査熱量測定(differential scanning calorimetry:DSC)によって決定されるように、材料が相分離を呈しないことを意味する。安定性は、例えば、PBS中、並びに
図9A及び
図9Bに示されるPBS/リゾチーム中において、安定性試験を実施することによって評価されてもよい。
【0085】
「損失正接tanδ」又は「tanδ」という用語は、本明細書では、位相角の正接、すなわち、粘性率(G’’)対弾性率(G’)の比と、流体中の存在及び弾性の程度の有用な定量化とを指す。1未満のtanδ値は弾性的に優性な(すなわち、固体様)挙動を示し、1を超える値は粘性的に優性な(すなわち、液体様)挙動を示す。弾性固体では、tanδ’’=0である。
【0086】
本明細書で使用される場合、「強い」とは、生理学的温度で、一般に、約420Pa以上、又は約600Pa~約10,000Pa、又は約6000Pa~約10,000Paなどの広い範囲であり得る、弾性率G’を意味することを意図している。剛性のレベルに基づいて、固体は、例えば、荷重が加えられると変形する。材料が弾性である場合、本体は、荷重が除去された後に元の形状に戻る。「強固体」とは、一般に、生理学的条件(例えば、37℃及び/又は生理学的pH付近)でのG’が典型的には約560Paを超えるゾルゲル相転移後に形成されるゲル又は固体であるが、強固体は、組成物を製造、滅菌、又は貯蔵するための加工工程における他の要因に応じて、約560Pa未満、又は約10,000Pa超を形成してもよい。
【0087】
本明細書で使用される「生理学的温度」という用語は、哺乳動物の正常な体温範囲、例えば、約35℃~約40℃、約36℃~約40℃、約37℃、及び約37.5℃などを意味することを意図している。
【0088】
「1種以上の生理学的刺激」という用語は、本明細書では、温度(例えば、例えば、約36℃~約40℃、又は約37℃の温度である体温)、pH(例えば、ほぼ生理学的なpH、アルカリ性又は酸性の条件)、及びイオン強度(例えば、低張性又は高張性の状態)などを包含するが、これらに限定されない、1種以上の刺激の選択を指す。他の種類の生理学的刺激には、例えば、母乳又は他の分泌物、及び血液などの体液への曝露が含まれる。別の種類の刺激は、限定されないが、イオン、電解質、カルシウム、ナトリウム、細胞毒、マクロファージ、酵素、抗原、グルコース、エストロゲンなどの、身体の化学物質又は高分子との接触から生じ得る。
【0089】
本明細書で使用される場合、透過型電子顕微鏡(transmission electron microscopy:TEM)によって決定される「特徴的なサイズ」という用語は、特徴的な直径を意味するか、又は複数の粒子については、平均、中央値、若しくはモード径を意味する。いくつかの態様では、複数の粒子の「特徴的なサイズ」は、粒子の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%が、列挙された特徴的なサイズを有することを意味する。
【0090】
「親水性」という用語は、本明細書で使用される場合、約23℃で約10未満のオクタノール/水分配係数(Kow)を有する化合物を指す。
【0091】
本明細書で使用される場合、疾患又は状態を「予防する」治療薬は、統計的試料において、未処置対照試料と比較した処置試料における疾患、障害、若しくは状態の発生を減少させるか、又は未処置対照試料と比較した疾患、障害、若しくは状態の1種以上の症状の発症を遅延させる若しくは重症度を低下させる、化合物又は組成物を指す。
【0092】
「治療すること」という用語は、当該分野で認識されており、疾患、障害、又は状態を寛解すること(すなわち、疾患を停止させること、又はその臨床症状の少なくとも1つの徴候、程度、若しくは重症度を低減すること)を含む。別の態様では、「治療すること」又は「治療」とは、少なくとも1つの物理的パラメータを寛解することを指し、これは、対象によって識別できない可能性がある。更に別の態様では、「治療すること」又は「治療」とは、物理的に、(例えば、識別可能な症状の安定化)、生理学的に、(例えば、物理的パラメータの安定化)のいずれか、又はその両方で、疾患、障害又は、状態を調節することを指す。更なる態様では、「治療すること」又は「治療」とは、疾患の進行を遅らせることに関する。
【0093】
ある特定の態様では、ゲルシーラントは、水性媒体と有機液体(グリセロールなど)との組合せを含む。
【0094】
いくつかの態様では、ゾルゲルポリマー組成物は、粘弾特性及び回復特性を有する。例えば、100%の歪みをゲル(ゲルの粘弾性領域の外側)に5分間加えると、ゲルは変形する。100%の歪みを除去した後、1%の歪みを5分間加え、ゲルはその元の構造へと迅速に回復し、したがってヒドロゲルが永久に変形することは示唆されない。
【0095】
組成物
本発明は、以下:
複数のケイ酸塩ナノ粒子と、
任意選択的に、複数の酸化亜鉛粒子と、
親水性ポリマーと、
増粘ポリマーと、
任意選択的に、複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマーと、
任意選択的に、接着性ポリマーと、
任意選択的に、油又はポリオールと、
水と、
を含む、組成物に関する。
【0096】
ケイ酸塩ナノ粒子はまた、増粘ポリマーであってもよく、この場合、組成物は、以下:複数のケイ酸塩ナノ粒子と、親水性ポリマーと、を含み、任意選択的に、増粘ポリマーと、複数の酸化亜鉛粒子と、複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマーと、接着性ポリマーと、油又はポリオールと、水と、を更に含む。
【0097】
組成物のpHは、5~13、又は6~13、又は8~12、9~11のpHであってもよい。
【0098】
ケイ酸塩ナノ粒子は、いかなる種類のケイ酸塩粒子であってもよい。ケイ酸塩ナノ粒子は、リチウム=マグネシウム=ナトリウム=シリカートナノ粒子であってもよい。粒子のサイズ又は直径は、1nm~500nm、又は10nm~100nm、又は10nm~50nm、又は15nm~30nm、又は約25nmであってもよい。
【0099】
ケイ酸塩ナノ粒子が組成物中で使用される量は、0.1重量%~20重量%、又は5重量%~20重量%、又は5重量%~15重量%、又は7重量%~15重量%で変動してもよい。
【0100】
広範な親水性ポリマーを組成物に使用してもよい。いくつかの非限定的な例は、親水性ポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピルセルロース、及びポロキサマー含む群又はこれらからなる群から選択されてもよい。1種以上の親水性ポリマーを使用してもよい。1種の親水性ポリマーは、分子量が同じであっても異なっていてもよい。例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)は、例えば20kDa及び300kDaの分子量を有する2つのPEOの組合せで使用されてもよい。これらの組合せを有することにより、PEOに、異なる機械的、接着性、及び溶解性の特性が提供されよう。より高分子量のPEOは、改善された機械的強度及び接着特性と、更なる粘性とを提供する。更に、PEOはまた細胞浸潤も防ぐ。
【0101】
又は、例えば20kDaの分子量を有するPEOを使用してもよい。親水性ポリマーが組成物中で使用される量は、0.5重量%~10重量%、又は1~7重量%、又は2~6重量%、又は2~5重量%で変動してもよい。
【0102】
広範な増粘ポリマーを組成物に使用してもよい。増粘ポリマーはケイ酸塩ナノ粒子であってもよい。増粘ポリマーの他の例は、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及び寒天、又はそれらの誘導体であってもよい。1種以上の増粘ポリマーを使用してもよい。増粘ポリマーは、25℃の水中における増粘ポリマーの2重量%溶液中で、約200mPa~約2,000mPa、好ましくは約400mPa~約900mPaの粘度を有してもよい。増粘ポリマーは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、又は25℃の水中にて2%で500~900mPaの粘度を有するCMCナトリウム塩であってもよい。
【0103】
増粘ポリマーが組成物中で使用される量は、3重量%~9重量%、又は3.5重量%~7.5重量%、又は4重量%~8重量%、又は5重量%~7重量%で変動してもよい。
【0104】
複数の第4級アンモニウム官能基は、以下の構造式Iを有する複数の繰り返し単位であってもよく、
【化2】
式中、X
-は、Cl
-、Br
-、BF
4
-、及びPF
6
-を含む群又はこれらからなる群から選択されてもよい。XはClであってもよい。
【0105】
式Iの構造化合物は、複数の第4級アンモニウム官能基を含むキトサンであってもよい。
【0106】
第4級アンモニウム化合物が組成物中で使用される量は、0.1重量%~10重量%、又は0.2重量%~5重量%、又は0.2重量%~1重量%、又は0.2重量%~0.9重量%、0.4重量%~0.8重量%、又は約0.5重量%で変動してもよい。
【0107】
広範な接着性ポリマーを組成物に使用してもよい。1種以上の接着性ポリマーを使用してもよい。接着性ポリマーの例は、ポリ(ビニルアセテート)であってもよい。このポリマーは組成物の他の成分と適合性である。
【0108】
接着性ポリマーが組成物中で使用される量は、0.1重量%~50重量%、又は0.1重量%~10重量%、又は0.1重量%~5重量%、0.1重量%~3重量%、0.5重量%~2.5重量%で変動してもよい。
【0109】
複数の酸化亜鉛粒子が組成物中で使用される量は、0.1重量%~5重量%、又は0.2重量%~1重量%、又は0.2重量%~0.75重量%、又は0.25重量%~5.5重量%で変動してもよい。
【0110】
広範な油及びポリオールを組成物に使用してもよい。油の例は、合成油、鉱物油、植物系油及び動物系油、例えば、パラフィン、ヤシ油、オリーブ油、パーム油、大豆油、キャノーラ油(ナタネ油)、トウモロコシ油、ピーナッツ油、又はアボカド油であってもよい。組成物中で油が使用される量は、20重量%~80重量%、又は30重量%~60重量%で変動してもよい。
【0111】
ポリオールの例はグリセロールであってもよい。ポリオールは、凍結防止、乾燥防止、及び抗菌特性などのいくつかの利点及び追加の特性をゲル組成物に加え得る。
【0112】
ポリオール又はグリセロールが組成物中で使用される量は、1重量%~80重量%、又は20重量%~70重量%、又は25重量%~55重量%、又は30重量%~50重量%で変動してもよい。
【0113】
本発明の組成物は、水、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標)XLG)、親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、及び増粘ポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC))を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0114】
本発明の組成物は、水、グリセロール、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標)XLG)、親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、増粘ポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC))を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0115】
本発明の組成物は、水、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標)XLG)、親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、増粘ポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC))、及び接着性ポリマー(例えばポリ(酢酸ビニル))を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0116】
本発明の組成物は、水、グリセロール、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標)XLG)、親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、増粘ポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC))、及び接着性ポリマー(例えばポリ(酢酸ビニル))を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0117】
本発明の組成物は、水、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標)XLG)、親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、増粘ポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC))、及び複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマー(例えば、第4級アンモニウム官能基で官能化されたキトサン)を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0118】
本発明の組成物は、水、グリセロール、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標)XLG)、親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、増粘ポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC))、及び複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマー(例えば、第4級アンモニウム官能基で官能化されたキトサン)を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0119】
本発明の組成物は、水、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標)XLG)、親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、増粘ポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC))、複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマー(例えば、第4級アンモニウム官能基で官能化されたキトサン)、及び接着性ポリマー(例えばポリ(酢酸ビニル))を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0120】
本発明の組成物は、水、グリセロール、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標)XLG)、親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、増粘ポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC))、複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマー(例えば、第4級アンモニウム官能基で官能化されたキトサン)、及び接着性ポリマー(例えばポリ(酢酸ビニル))を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0121】
本発明の組成物は、水、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標))、親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、増粘ポリマー(例えば、CMC)、及び複数の酸化金属粒子(例えば、酸化亜鉛粒子)を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0122】
本発明の組成物は、水、グリセロール、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標))、親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、増粘ポリマー(例えば、CMC)、及び複数の酸化金属粒子(例えば、酸化亜鉛粒子)を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0123】
本発明の組成物は、水、グリセロール、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標))、親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、増粘ポリマー(例えば、CMC)、複数の酸化金属粒子(例えば、酸化亜鉛粒子)、及び接着性ポリマー(例えばポリ(酢酸ビニル))を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0124】
本発明の組成物は、水、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標))、親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、増粘ポリマー(例えば、CMC)、複数の酸化金属粒子(例えば、酸化亜鉛粒子)、又は複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマー(例えば、第4級アンモニウム官能基で官能化されたキトサン)を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0125】
本発明の組成物は、水、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標))、親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、増粘ポリマー(例えば、CMC)、複数の酸化金属粒子(例えば、酸化亜鉛粒子)、及び複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマー(例えば、第4級アンモニウム官能基で官能化されたキトサン)を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0126】
本発明の組成物は、水、グリセロール、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標))、親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、増粘ポリマー(例えば、CMC)、複数の酸化金属粒子(例えば、酸化亜鉛粒子)、接着性ポリマー(例えばポリ(酢酸ビニル))、及び複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマー(例えば、第4級アンモニウム官能基で官能化されたキトサン)を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0127】
本発明の組成物は、水、グリセロール、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標))、親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、増粘ポリマー(例えば、CMC)、複数の酸化金属粒子(例えば、酸化亜鉛粒子)、接着性ポリマー(例えばポリ(酢酸ビニル))、又は複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマー(例えば、第4級アンモニウム官能基で官能化されたキトサン)を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0128】
本発明の組成物は、水、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標))、及び親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0129】
本発明の組成物は、水、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標))、親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、及び接着性ポリマー(例えばポリ(酢酸ビニル))を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0130】
本発明の組成物は、水、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標))、親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、接着性ポリマー(例えばポリ(酢酸ビニル))、及び複数の酸化金属粒子(例えば、酸化亜鉛粒子)を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0131】
本発明の組成物は、水、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標))、親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、接着性ポリマー(例えばポリ(酢酸ビニル))、及び複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマー(例えば、第4級アンモニウム官能基で官能化されたキトサン)を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0132】
本発明の組成物は、水、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標))、親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、接着性ポリマー(例えばポリ(酢酸ビニル))、複数の酸化金属粒子(例えば、酸化亜鉛粒子)、及び複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマー(例えば、第4級アンモニウム官能基で官能化されたキトサン)を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0133】
本発明の組成物は、水、グリセロール、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標))、及び親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0134】
本発明の組成物は、水、グリセロール、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標))、親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、及び接着性ポリマー(例えばポリ(酢酸ビニル))を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0135】
本発明の組成物は、水、グリセロール、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標))、親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、接着性ポリマー(例えばポリ(酢酸ビニル))、及び複数の酸化金属粒子(例えば、酸化亜鉛粒子)を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0136】
本発明の組成物は、水、グリセロール、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標))、親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、接着性ポリマー(例えばポリ(酢酸ビニル))、及び複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマー(例えば、第4級アンモニウム官能基で官能化されたキトサン)を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0137】
本発明の組成物は、水、グリセロール、複数のケイ酸塩ナノ粒子(例えば、ラポナイト(登録商標))、親水性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、接着性ポリマー(例えばポリ(酢酸ビニル))、複数の酸化金属粒子(例えば、酸化亜鉛粒子)、及び複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマー(例えば、第4級アンモニウム官能基で官能化されたキトサン)を含んでもよいか、又はこれらからなってもよい。
【0138】
ゲルシーラントとしての組成物は、水性媒体と有機液体(グリセロールなど)との組合せを含んでもよい。
【0139】
本発明の組成物は、
1~15重量%又は8~15重量%の複数のケイ酸塩ナノ粒子と、
0.5~10重量%若しくは2~6重量%の親水性ポリマーと、
最大100重量%の水と、を含んでもよいか、又はこれらからなってもよく、任意選択的に、
0~9重量%の増粘剤と、
0.2~5重量%又は0.2~0.6重量%の複数の酸化亜鉛粒子と、
複数の第4級アンモニウム官能基を含む0.2~2重量%又は0.3~0.5重量%のポリマーと、
0.1~50重量%又は0.5~2重量%の接着性ポリマーと、
20~80重量%又は35~55重量%のグリセロールと、
を更に含む。
【0140】
本発明の組成物は、
1~15重量%若しくは8~15重量%の複数のケイ酸塩ナノ粒子と、
0.5~10重量%若しくは2~6重量%の親水性ポリマーと、
0.1~50重量%若しくは0.5~2重量%の接着性ポリマーと、
20~80重量%若しくは35~55重量%のグリセロールと、
最大100重量%の水と、を含んでもよいか、又はこれらからなってもよく、任意選択的に、
0.2~5重量%又は0.2~0.6重量%の複数の酸化亜鉛粒子と、
複数の第4級アンモニウム官能基を含む0.2~2重量%又は0.3~0.5重量%のポリマーと、
を更に含む。
本発明の組成物は、
1~15重量%若しくは8~15重量%の複数のリチウム=マグネシウム=ナトリウム=シリカートナノ粒子と、
約1kDa~約10,000kDaの分子量を有する、0.5~10重量%若しくは2~6重量%のポリ(エチレンオキシド)と、
0.1~50重量%若しくは0.5~2重量%のポリ酢酸ビニルと、
20~70重量%若しくは35~55重量%のグリセロールと、
最大100重量%の水と、を含んでもよいか、又はこれらからなってもよく、任意選択的に、
0.2~5重量%若しくは0.2~0.6重量%の複数の酸化亜鉛粒子、及び/又は
複数の第4級アンモニウム官能基を含む0.2~2重量%又は0.3~0.5重量%のキトサン
を更に含む。
【0141】
本明細書で定義される組成物は、1種以上の薬物又は薬剤を更に含んでもよい。
【0142】
1種以上の薬物が、抗生物質薬、抗寄生虫薬、抗真菌薬、鎮痛薬又は抗炎症薬、ビタミン、コルチコステロイド薬、及びタンパク質を含む群から選択されてもよい。1種以上の薬剤が、着色剤又は染料、及び比色分析pH指示薬を含む群から選択されてもよい。
【0143】
組成物は、1種以上の抗生物質薬を更に含んでもよい。抗生物質薬物は、ペニシリン、ペニシリンG、ヘタシリンカリウム、クロキサシリンベンザチン、アンピシリン及びアモキシシリン三水和物などのペニシリン、ノボビオシンなどのアミノクマリン、セファレキシンなどのセファロスポリン、セフチオフルナトリウム、セフチオフル塩酸塩、セフチオフル結晶性遊離酸、チルジピロシン、チロシン、ツラスロマイシン、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、及びアジスロマイシンなどのマクロライド、エンロフロキサシン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、及びオフロキサシンなどのキノロン並びにフルオロキノロン、スルファジメトキシン、コトリモキサゾール、及びトリメトプリムなどのスルホンアミド、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、及びドキシサイクリンなどのテトラサイクリン、ジヒドロストレプトマイシン硫酸塩、ネオマイシン、ゲンタマイシン、及びトブラマイシンなどのアミノグリコシド、ピルリマイシン塩酸塩、リンコマイシン、クリンダマイシン、及びピルリマイシンなどのリンコサミド、並びにフロルフェニコールなどのアンフェニコールを含む群又はこれらからなる群から選択されてもよい。
【0144】
組成物は、1種以上の抗寄生虫薬を更に含んでもよい。抗寄生虫薬は、メラルソプロール、エフロルニチン、メトロニダゾール、チニダゾール、ミルテホシンなどの抗原虫薬、メベンダゾール、パモ酸ピランテル、チアベンダゾール、ジエチルカルバマジン、イベルメクチンなどの抗蠕虫薬(駆虫薬)、ニクロサミド、プラジカンテル、アルベンダゾールなどの抗条虫薬(aticestodes)、プラジカンテルなどの抗吸虫薬、リファンピン及びアンホテリシンBなどの抗掻痒薬、並びにニタゾキサニドなどの広域スペクトル薬を含む群又はこれらからなる群から選択されてもよい。
【0145】
組成物は、1種以上の抗真菌薬を更に含んでもよい。抗真菌薬は、アムホテリシンb、カンジシジン、フィリピン、ハマイシン、ナタマイシン、ナイスタチン、及びリモシジンなどのポリエンを含む群又はそれらからなる群から選択されてもよい。イミダゾール、トリアゾール、チアゾール、ビフォナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ルリコナゾール、ミコナゾール、オモコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾール、アルバコナゾール、エフィナコナゾール、エポキシコナゾール、フルコナゾール、イサブコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、プロピコナゾール、ラブコナゾール、テルコナゾール、ボリコナゾール、及びアバフギンなどのアゾール類;アモロールフィン、ブテナフィン、ナフチフィン、及びテルビナフィンなどのアリルアミン;アニデュラファンギン、カスポファンギン、及びミカファンギンなどのエキノカンジン;並びに、オーロン、安息香酸、シクロピロックスオラミン、フルシトシン又は5-フルオロシトシン、グリセオフルビン、ハロプロギン、トルナフタート、ウンデシレン酸、トリアセチン、クリスタルバイオレット、カステラニ塗料、オロトミド(f901318)、ミルテホシン、ヨウ化カリウム、コールタール、硫酸銅(ii)、二硫化セレン、チオ硫酸ナトリウム、ピロクトンオラミン、ヨードキノール、クリオキノール、アクリソルシン、亜鉛ピリチオン、及び硫黄などのその他を含む群又はこれらからなる群から選択されてもよい。
【0146】
組成物は、1種以上の鎮痛薬又は抗炎症薬を更に含んでもよい。鎮痛薬又は抗炎症薬は、アスピリン、イブプロフェン、及びナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、ジクロフェナク、アセトアミノフェン、セレコキシブ、ピロキシカム、インドメタシン、メロキシカム、ケチプロフェン、スリンダク、ジフルニサル、ナブメトン、オキサプロジン、トルメチン、サルサラート、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトロラック、メクロフェナメート、並びにメフェナム酸を含む群又はこれらからなる群から選択されてもよい。
【0147】
組成物は、1種以上のコルチコステロイド薬を更に含んでもよい。コルチコステロイド薬物は、プレドニゾン、ベタメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、及びトリアムシノロンアセトニドを含む群又はこれらからなる群から選択されてもよい。
【0148】
組成物は、1種以上のタンパク質を更に含んでもよい。タンパク質は、酵素、ホルモン(プロゲステロン、エストロゲン)、抗体、CASタンパク質、膜貫通タンパク質、アミノ酸、細胞シグナル伝達タンパク質、並びにコラーゲン、ヒアルロナン、エラスチン、及びトロポエラスチンなどの構造タンパク質含む群又はこれらからなる群から選択されてもよい。
【0149】
組成物は、1種以上の着色剤又は染料を更に含んでもよい。着色剤又は染料は、キノリンイエロー、ポンソー4R、カルモイシン、パテントブルーV、グリーンS、ブリリアントブルーFCF、インジゴチン、ファーストグリーンFCF、エリトロシン、サンセットイエロー、アルラレッドAC、タートラジン、サンセットイエローFCF、スピルリナ、及びベタニン含む群又はこれらからなる群から選択されてもよい。
【0150】
組成物は、1種以上の比色分析pH指示薬を更に含んでもよい。比色分析pH指示薬は、ブロモクレゾールパープル、ブロモチモールブルー、メチルレッド、及びフェノールレッド含む群又はこれらからなる群から選択されてもよい。
【0151】
組成物はゲルの形態である。ゲルは、約38℃において、0.5g/mL~3.0g/mL、又は0.8g/mL~2.0g/mL、又は1g/mL~1.5g/mLの密度を有してもよい。
【0152】
ゾルゲルポリマー組成物は、組成物が室温にてシリンジ中で変形され得るようなずり減粘特性を有する。組成物は単一バレルシリンジなどを用いて注射することができる。組成物は注射の直後にゲル化する(例えば、又は60秒未満、又は30秒未満、又は10秒未満)。
【0153】
組成物は粘弾特性及び回復特性を有する。例えば、100%の歪みをゲル(ゲルの粘弾性領域の外側)に5分間加えると、ゲルは変形する。100%の歪みを除去した後、1%の歪みを5分間加え、ゲルはその元の構造へと迅速に回復し、したがってヒドロゲルが永久に変形することは示唆されない。ゲルは、約2.5mL/秒の投与速度にて、約1.5mmの先端直径を有する100N未満の射出力で注射可能である。
【0154】
組成物は、約10-1%~約103%の歪み値で約102Pa~約105Paの機械的強度を有する。
【0155】
組成物は剪断減粘性である。展延性は、例えば、Lardy,F.ら、「Functionalization of hydrocolloids:Principal component analysis applied to the study of correlations between parameters describing the consistency of hydrogels.」、「Drug development and industrial pharmacy」、第26巻第715~721頁(2000年)、又はGarg,A.ら、「Spreading of semisolid formulations:an update.Pharmaceutical Technology North America」、第26巻第84~84頁(2002年)に記載される手順によって測定されてもよい。
【0156】
組成物は粘膜付着性である(例えば、キトサン構成成分の存在に起因)。粘膜付着特性は、例えば、Shaikh,R.ら、「Mucoadhesive drug delivery systems.」、「J Pharm Bioallied Sci」、第3巻第89~100頁、doi:10.4103/0975-7406.76478(2011年)、Annabi,N.ら、「Engineering a highly elastic human protein-based sealant for surgical applications.」、「Sci Transl Med」、第9巻、eaai7466、doi:10.1126/scitranslmed.aai7466(2017)、又は例12に記載される手順によって測定されてもよい。
【0157】
組成物は約23℃で最大120日間安定であるか、又は組成物は約37℃で最大120日間安定であり、組成物は約39℃で最大120日間安定である。組成物は、乳又は水の存在下において、37~40℃で最大約120日間まで安定である。
【0158】
剪断減粘特性に起因して、組成物の適用は可逆性である。換言すれば、ゲルは、剪断応力(圧搾又は圧力)を加えることによって、それらの適用部位から除去されてもよい。
【0159】
組成物の他の構成成分と組み合わせた場合、物理的に可逆性なゲルが形成される。特定のイオンが組成物中に存在する場合、それらは相互作用を静電気的に遮蔽し、それによってナノプレートレットが集合するのを妨げる可能性がある。例えば、ピロリン酸塩は、正に帯電した縁部で吸収され、それによって三次元構造の形成を損なう。この戦略を採用してゲル化を逆転させることができる。このゲルは塩の添加時に容易に除去され得る。組成物は、任意選択的にピロリン酸四ナトリウム又は低分子量グリコールを含む生理食塩水の添加によって、除去されてもよい。生理食塩水は、1~15重量%のピロリン酸四ナトリウムを含んでもよい。低分子量グリコールは、50~1000g/molの分子量を有するエチレングリコール又はポリエチレングリコールであってもよい。
【0160】
医療用途
本明細書で定義される組成物又はゲルは、物理的微生物性障壁として機能することによって局所的外傷を治療し、感染を予防するために使用されてもよい。ゲルは、乳用牛の乳腺炎を治療又は予防するための乳房内乳頭シーラントとして使用してもよい。ゲルは、例としてシリンジで注射することによって、容易に投与又は適用され得る。
【0161】
組成物は、抗菌性又は静菌性である。組成物は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)若しくは大腸菌(E.coli)、又は両方に対して、少なくとも40μg/mLのMIC50を呈する。
【0162】
本発明は、乳腺炎を治療又は予防する方法であって、それを必要とする対象の乳房内乳頭管内に有効量である本明細書に記載の組成物のいずれかを適用し、それにより、乳腺炎を治療又は予防することを含む、方法に関する。
【0163】
対象は、乳用家畜動物、好ましくは未経産牛又は乳牛であり得るが、ヤギ、ヒツジ、ウマ、及びスイギュウなどの他の動物もまた含み得る。本発明は、対象が乳牛である、本明細書に記載の方法のいずれかに関する。
【0164】
ゾルゲルポリマー組成物は、組成物を乳房組織へと局所的に適用すること、又は乳頭管内にゾルゲルポリマー組成物を適用することを含む投与をされてもよい。局所投与は、乳頭を組成物に浸漬することを含んでもよい。組成物は、乳房内投与を介して、例えば注射又は注入によって投与されてもよい。
【0165】
ゾルゲルポリマー組成物は、動物が乾燥し始める際、又は動物の乾燥期間中に投与されてもよい。組成物は、乾燥期間中に乳頭管内に留まり、したがって乾燥期間中及び泌乳の第1段階(分娩後)において、乳腺炎の臨床症例及び無症状症例を減少させる。乾燥期間を通して乳頭管内に留まることにより、組成物は、搾乳前(pre-fresh)の乳用動物における高リスク期間中の乳頭管への微生物浸潤を最小限に抑える。組成物は、健康な動物の感染前に投与されてもよい。ゾルゲルポリマー組成物は、非泌乳動物の産後期間中に投与されてもよい。組成物は、動物の産前期間中に投与されてもよい。適用後に動物から得られた乳は、乳製品の製造に使用してもよい。
【0166】
本発明は、乳房内乳頭管から組成物を除去することを更に含む、本明細書に記載の方法のいずれかに関する。本発明は、乳頭に剪断応力を加えることによって組成物を除去する、本明細書に記載の方法のいずれかに関する。本発明は、組成物を生理食塩水と接触させることによって組成物を除去する、本明細書に記載の方法のいずれかに関する。
【0167】
本発明は、それを必要とする対象の局所、皮下、又は内部感染を治療又は予防する方法であって、有効量である本明細書に記載の組成物のいずれかを対象に局所的に投与し、それにより感染を治療又は予防することを含む、方法に関する。
【0168】
本発明は、感染が、皮膚潰瘍、糖尿病性潰瘍、座瘡、酒さ、膿瘍、又は臓器感染である、本明細書に記載の方法のいずれかに関する。
【0169】
本発明は、それを必要とする動物及び又はヒト対象における裂傷、擦過傷、穿刺、剥離、潰瘍、及び熱傷などの皮膚創傷を治療する方法であって、本明細書に記載の組成物のいずれかの有効量を対象に局所投与し、それによって皮膚創傷を治療することを含む、方法に関する。
【0170】
組成物は、投与の際、物理的障壁を形成し、それによってゲルへの細胞浸潤を実質的に妨げる。
【0171】
組成物は、ゾルゲルポリマー組成物のための医学的及び獣医学的使用を提供する。ヒトへの適用が本開示から明らかになるであろうが、好ましい使用は、動物が乾燥し始める際又は乾燥期間中に起こり得る乳房疾患を治療又は予防するために、乳用動物の乳頭管内に物理的障壁を形成する方法であって、本明細書に記載のゾルゲルポリマー組成物のいずれかを動物の乳頭又は乳頭管内に投与することを含む、方法に関する。組成物は、乳腺炎を引き起こす微生物による乳腺の浸潤を予防することによって、感染症又は乳腺炎を予防する方法で使用してもよい。組成物は、組成物を局所投与することにより、動物及び/又はヒト対象における、微生物性乳腺炎の治療若しくは予防のため、又は局所的外傷の微生物感染の治療若しくは予防のため、裂傷、擦過傷、穿刺、剥離、潰瘍、及び熱傷などの皮膚創傷の治療で使用してもよい。
【0172】
本発明は、対象の妊娠を遅延又は予防する方法であって、対象の卵管に、卵巣と子宮との間の流体連通を実質的に妨げる又は予防するのに充分な量で本明細書に記載の組成物のいずれかを投与することを含む、方法に関する。
【0173】
本発明は、本明細書で定義される組成物、1つ以上のシリンジを、使用説明書と一緒に含み、任意選択的に、投与後に組成物を除去するための上記で定義された生理食塩水を更に含む、キットに関する。
【0174】
例
本明細書に記載される本発明の態様がより完全に理解され得るように、以下の例を記載する。本出願に記載される例は、本明細書で提供される化合物、医薬組成物、及び方法を例示するために提供され、それらの範囲を限定するいかなる方法としても決して解釈されるべきではない。
【0175】
材料及び方法
化学物質及び溶媒は、商業的供給業者から購入するか、又は標準的な技術によって製作及び精製した。以下の市販の試薬は、いかなる更なる精製をすることなく、購入したまま使用した:キトサン(低分子量、Sigma Aldrich 448869)、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液(20~25%の水を含有、Sigma Aldrich 50053)、ポリ(エチレングリコール)(Mn=20kDa、Sigma-Aldrich 81300)、ポリ(エチレングリコール)(Mn約8,000,000kDa、Sigma-Aldrich 372838)、酸化重水素(Sigma-Aldrich 1133660025)。
【0176】
例1-第4級キトサンの合成
第4級キトサン(qCh)を、わずかな修飾により前述のように調製した(Viviane A.ら、「Preparation and characterization of quaternary chitosan salt:adsorption equilibrium of chromium(VI)ion.」、「Reactive&Functional Polymers」、第61巻(2004年)第347/352頁)。キトサン(50,000~190,000Da(粘度基準);75~85%脱アセチル化)(5.0g)及び100mLの脱イオン(deionized:DI)水を、250mL丸底フラスコに添加した。続いて、混合物を室温(約23℃)で30分間撹拌した(キトサンは完全には溶解しなかった)。その後、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液(90%以上)(5.0g)を添加した。反応フラスコをスリーブストッパで閉じた。次に、ストッパ内の針の粘着を通してシステムを排気するために、真空器(house vacuum)を採用した。次いで、反応混合物を、ホットプレート及び油浴を用いて、100℃まで加熱した。混合物が沸騰し始めた15秒後、真空に接続された針を取り外した。この手順を、不活性雰囲気を作り出すために実施して、反応フラスコ内の酸素を除去した。混合物を記載した温度で24時間撹拌した。次いで、混合物を室温に冷却し、各30mLのエタノールを含有する12×50mL遠心チューブへ、等量で添加した。遠心分離後、上清を廃棄し、沈殿物をエタノールで3回すすいだ。次に、生成物を真空遠心分離機(vacufuge)中で貯蔵し、「D-AQ」モードを用いて、温度を30℃に設定して一晩乾燥させた。反応を、乾燥生成物をD
2O中に溶解することによって
1H-NMR(核磁気共鳴)分光法を用いて特徴付けた。Bruker 600 NMRと互換性のある専用ソフトウェアを用いてデータを分析した。4級化及び脱アセチル化の程度を、約3.23ppm(-N(CH
3)
3
+)、2.81ppm(ピラノース環における1H)、及び2.06ppm(-C(O)CH
3)におけるピークの積分面積から計算した。
【化3】
【0177】
例2-ゲル製作の代表的な例
剪断減粘性抗菌シーラントヒドロゲルを、いくつかの構成成分を混合することによって配合した。最初に、ラポナイト(登録商標)(10g、ラポナイト-XLG XR、BYK)を、80mLの冷水(4℃)に添加し、室温で15分間又はゲルが完全に形成されるまで、実験室ホモジナイザーによって800rpmで混合した。別個のビーカ内で、PEO(Mw=20kDa、Sigma Aldrich 8.21037)(3g、15重量%)、qCh(1g、5重量%)、及び様々な量のカルボキシメチルセルロース(CMCナトリウム塩、25℃の水中において2%で粘度=500~900mPa・s、TCI America C0045)(2g~4g、10~20重量%)を、80℃のDI水(20mL)中において30分間撹拌することによって均質化して、ストック溶液を形成した。次いで、ストック溶液(20mL)をラポナイト(登録商標)ゲル(80mL)に添加し、ホモジナイザーによって約1,200rpmで激しく混合した。得られたヒドロゲルを、使用前に室温で12時間インキュベートすることによって更に安定化させた。
【0178】
例3-ZnO含有ゲルの製作
剪断減粘性抗菌シーラントヒドロゲルを、いくつかの構成成分を混合することによって配合した。最初に、PEO(Mw=20kDa、Sigma Aldrich 8.21037)(3g)をMilli-Q水80mL中に溶解した。この溶液を4℃まで冷却し、ラポナイト(10g、Laponite-XLG XR、BYK)及びZnOナノ粒子(ZnO NP、粒径100nm未満(TEM)、平均粒径40nm以下、H2O中20重量%、Sigma Aldrich 721077)(1g)を添加し、続いて、室温にて800rpmで15分間又はゲルが完全に形成されるまで実験室ホモジナイザーで混合した。別個のビーカ内で、qCh(1g、5重量%)、及び様々な量のカルボキシメチルセルロース(CMCナトリウム塩、25℃の水中において2%で粘度=500~900mPa・s、TCI America C0045)(2g~4g、10~20重量%)を、80℃のDI水(20mL)中において30分間撹拌することによって均質化して、ストック溶液を形成した。次いで、ストック溶液(20mL)をラポナイトゲル(80mL)に添加し、ホモジナイザーによって約1,200rpmで激しく混合した。得られたヒドロゲルを、使用前に室温で12時間インキュベートすることによって更に安定化させた。
【0179】
例4-グリセリン及びZnOによる二成分ゲルの製作
凍結防止、乾燥防止、及び抗菌特性を有する二成分ゲルを、グリセリンの添加によって配合した。PEO(Mw約20kDa、Sigma Aldrich 8.21037)(4g)及び0.4gのPEO(Mw約8,000kDa)を、44gのグリセリン(Sigma Aldrich 1.37028)中に分散させた。この混合物を水浴によって90℃で5分間加熱した。次に、34mLのMilli-Q水を添加し、続いてポリマーが完全に溶解するまで混合した。ZnO NP(2.5g、Sigma Aldrich 721077)を添加し、その温度が室温(約23℃)に達するまで混合物を更に混合した。pH指示薬を含有するゲル製剤の場合、80μLのブロモクレゾールパープル(エタノール中10mg/mL、Sigma Aldrich 114375)は、この工程で任意選択的に添加することができた。次いで、15グラムのラポナイトを添加し、ゲルが形成されるまで上記で調製した溶液と混合し、水浴によって90℃で20分間インキュベートして、ゲルを安定化させた。ゲルを50℃以下に冷却した後、7.167gのqCh溶液(水中7.5w/w%)、11gのグリセリン、及び2.333gのMilli-Q水を添加し、激しく混合した。ゲルを、酢酸エチル(HPLC Plus、Sigma Aldrich 650528)中0.1g/mLポリ(酢酸ビニル)(Mw約100kDa、Sigma Aldrich 189480)12.5mL、及び氷酢酸(HPLC、Sigma Aldrich AX0074)300μLと、更によく混合した。最後に、ゲル混合物を、真空下において60℃で5時間加工した。
【0180】
例5-ゲル抗菌特性の評価
全ての実験で使用した黄色ブドウ球菌(S.aureus)及び大腸菌(E.coli)株は、酪農場から単離した。各実験の前に、単一細菌コロニーを3.75%Brain Heart Infusion(BHI、Sigma Aldrich 53286)ブロス中に37℃で対数期中期まで接種することによって、細菌ストック培養物を調製した。次いで、細菌ストック培養物を、10
9コロニー形成単位(colony forming unit:CFU)/mLまで希釈した。溶液中の第4級キトサン(qCh)の抗菌特性を試験するために、10~312μg/mLの異なる濃度のqChを、BHIブロス中に段階希釈した。次いで、細菌溶液を96ウェルプレート上の新たに調製したqCh溶液へ添加した。最終的な細菌播種密度は5×10
5CFU/mLであった。対照試料は、qChを含まないBHIブロス中で成長する細菌を含有していた。24時間のインキュベーション後、細菌密度を600nmの波長(OD 600nm)における光学密度(optical density:OD)によって測定した。
図1を参照のこと。
【0181】
ゲルの抗菌特性を、Orbeseal(登録商標)Dry Cow Teat Sealant(油基剤中の次硝酸ビスマス(65w/w%))と比較した。簡潔には、0.2mLの例2の抗菌ゲル及び0.2mLのOrbesealを、96ウェルプレート(1mLのディープウェル)に(別々のウェルで)添加した。次いで、試料を遠心分離し、20μLの細菌溶液(10
5CFU/mL)を各試料に添加した。対照ウェルは、10
5CFU/mLの上述した細菌株を含有するBHIブロスからなっていた。試料を37℃にて所定の時点でインキュベートした。インキュベーション後、試料をオートクレーブ水中に再懸濁し、リン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4)中に段階希釈し、ヒツジ血液寒天プレートにプレーティングした。次いで、寒天プレートを更に16時間インキュベートした。各試料の細菌密度(CFU/cm
2)を、計数したコロニーの数によって決定した。
図2A~
図2B、
図3A~
図3B、及び
図4A~
図4Bを参照のこと。
【0182】
例6-射出力の決定
材料の注入性を、500Nロードセルを備えた機械試験機(Instron Model 5943、マサチューセッツ州ノーウッド)を用いて分析した。簡単に言えば、ゲルを0.5mL/秒の流速で5mLルアーロックシリンジに添加した。針のないシリンジを特注のホルダに差し込んだ。上部圧縮プラテンを用いてシリンジプランジャを押し下げた。Bluehillバージョン3ソフトウェア(Instron、マサチューセッツ州ノーウッド)を用いて力を記録した。全ての測定を少なくとも3回繰り返した。各繰り返し後にホルダを洗浄した。
図8を参照されたい。
【0183】
例7-レオロジー特性の評価
レオロジー試験は、40mmコーンを用いて37℃でTA Instruments DHR-2 Rheometerにて実施した。試験又は繰り返しのたびに新鮮な新しい試料を採用した。温度浸漬時間は、全ての試料の初回測定から20秒前であった。振動周波数は1Hzであった。2つの方法を以下のように実施した:
【0184】
歪み掃引
株を対数的に0.01%から1000%に増加させた。10個のデータ点を年代毎に取得した。降伏応力及び降伏歪みは、それぞれ、G’、G’’対応力及びG’、G’’対歪みプロットにおける係数クロスオーバによって特定された。
図5を参照のこと。粘度対応力プロットもまた報告した。
図6を参照のこと。歪み掃引実験は、全ての材料について少なくとも3回繰り返した。
【0185】
回収試験
高歪み振動を100%歪み(降伏歪みよりも高い)で300秒間実施し、続いて、低歪み(1%)振動を更に300秒間実施した。この手順を連続して7回繰り返した。試料を強制的に降伏させた後の、試料の機械的特性の回復性を実証した、G’対時間プロットが報告された。
図7を参照のこと。
【0186】
例8-密度及びpHの決定
密度測定は、ゲルの質量を室温における体積で割ることによって実施した。
【0187】
ゲルのpHは、1mLの各ゲル試料を10mLのMilliQ水中へと完全に溶解し、続いて、ゲル懸濁液のpHをpHメータで測定することによって調査した。表1を参照のこと。
【表1】
【0188】
例9-ゲル安定性
ゲル安定性をインビトロの生理学的緩衝液条件で試験した。各ゲル試料1g(ヒドロゲルのみ又は0.5%qChヒドロゲル)を、100μmのフィルタ孔径(米国ノースカロライナ州ファルコン)を有する細胞容器に入れた。空の細胞容器の重量もまた、ゲルを添加する前に測定した。試料を、PBS(カルシウム及びマグネシウムを含むDPBS、pH7.4、Fisher 14080055)又は15μg/mLリゾチームを含むPBS(ニワトリ卵白より、Sigma Aldrich、米国)のいずれかに入れ、37℃で8週間インキュベートした。各所定の時間間隔で、底部の過剰な液体を慎重に除去した後、ゲルを含む各容器を秤量した。次いで、空の容器の重量を差し引くことによってゲルの正味重量を計算した。各実験群は3回繰り返した。
図9A及び
図9Bを参照のこと。
【0189】
例10-熱分析
実験は、TA Instruments DSC Q100示差走査熱量計を用いて実施した。温度は、5℃/分の速度で室温から-50℃まで低下し、次いで、同じく5℃/分の速度で-50℃から100℃まで上昇した。ベースラインは2つの空皿を設けることによって測定した。次いで、空皿の一方に9.5mgのゲルを充填し、他方はそのままで基準として使用した。結果はベースラインを差し引いて報告した。
【0190】
例11-展延性
展延性試験は、平行平板法によるゲルの調製から48時間後に室温で実施した。ガラス板型の中心孔にゲルを充填した。穴の直径は1cmである。具体的には、1.0g±0.01gのゲルを二枚の水平なガラス板(20×20cm)の間に置き、既知の重量の板でゲルをプレスした。続いて、1分後、伸展直径を測定し、以下のように伸展直径に従って分類した:
・流体ゲルO>70mm
・半流動ゲル70≧O>55mm
・半剛性ゲル55≧O>47mm
・剛性ゲル47≧O>40mm
・極めて剛性なゲルO≦40mm
【0191】
例12-重ね剪断実験による組織/粘膜付着特性試験
組織接着性の重ね剪断強度特性について修正ASTM F2255-05規格に従って実施した、重ね剪断実験。新鮮なブタの皮膚を地元の屠殺場から入手し、乾燥を防ぐために使用前にPBSに浸漬した。新鮮なブタの皮膚2片を、長さ4cm、幅1cm、及び厚さ2mmで切断した。これらの2つの部品を、強粘着剤を用いてガラススライド(7.5cm×2.5cm)へと別々に接着した。試験を調製するために、80μLのゲルを一方の組織の1cm2の面積に適用し、他方の片を直ちにゲル上へ置き、測定の前に湿潤プラスチック袋中でクランプを用いて37℃で5分間力を加えた。次いで、試料を10mm/分のクロスヘッド速度で破損するまで直ちに歪ませた。各材料について、少なくとも3回の繰り返しを実施した。
【0192】
例13-ゲル組成物
成分:
#1:ZnOなし、qChなし
#2:ZnOのみ(0.5g)、qChなし
#3:qChのみ(0.5g)、ZnOなし
#4:ZnO(0.5g)及びqCh(0.5g)の両方
【0193】
他の成分を添加した:グリセロール(55g)、水(45g、ただし、その一部は真空乾燥プロセスで蒸発する)、ラポナイト(15g)、PEO 20k(4g)、ポリ(酢酸ビニル)(1.25g)、PEO 300k(0.4g)。
【0194】
ゲル作製プロトコル:
ポリ(酢酸ビニル)10gを酢酸エチル中に溶解して、後の使用のために100mLの溶液を作製した。PEO(分子量20k)4.00g、PEO(分子量300k)0.400g、グリセロール55g(ゲル#3及び#4では44g)、水45g(ゲル#2では43g、ゲル#4では34g)を、600mLガラスビーカに加えた。PTFEコーティングした交差インペラを備えたホモジナイザーを撹拌に用いた。ビーカを温度制御のために溶液に浸漬する熱電対を備えたホットプレート上に置いた。水の蒸発を防ぐために、ビーカを複数の食品ラップで包んだ。混合物を、43分間のPEO溶解プロセスを通して1250rpmで撹拌した。これを最初に最高80℃まで加熱し(13分かかった)、次いで、40℃まで冷却した。これには更に30分かかった。ゲル#2及びゲル#4のみ、2.50gの20%ZnOナノ粒子水性分散液を添加し、1分間撹拌した。15gのラポナイトを添加し、約1分以内にゲルを形成した。温度を40℃に保ち、撹拌速度をゲル形成まで1250rpmに保った。ゲルが形成されたらすぐに、撹拌及び加熱を停止した。ゲル#3及びゲル#4のみ、9.5gのqCh水溶液(0.5gのqCh及び9gの水を含有)及び11gのグリセロールを添加し、次いで、320rpmで10分間撹拌し、ゲルと混合した。12.5mLの10%ポリ(酢酸ビニル)溶液及び70uL(#3及び#4のゲルでは300uL)の氷酢酸を添加し、次いで、320rpmで7分間撹拌した後、2500rpmで更に10分間撹拌した。ゲルはこの時点でビーカに付着するので、非常に粘着性に見えた。ビーカをいくつかの小さな穴を開けた食品ラップで包んだ。次いで、これを真空オーブン(Eppendorf Vacufuge plus)に入れ、酢酸エチル及び水の一部を蒸発させて、ゲルを強化した。設定は60℃及び「D-AQ」であった。75分間蒸発させた後、これを2500rpmで撹拌しながら1分間で取り出し、次いで、更に75分間蒸発させ続けた。最後に、これを2500rpmで5分間撹拌した。
【0195】
例14-ポリンス(porince)モデルにおける熱傷治癒の臨床試験のための実験
1.3cm×3cmの200C金属ブロックの10秒又は20秒間の接触による創傷作製。
2.創傷作製後、完全に死んだ真皮層になるように(点状出血が見られるまで)、手動でデブリードマンを実施しした。しかしながら、熱によって影響を受けた(熱痕跡の色跡を読み取る)表皮境界(創傷縁部)は、熱傷をより現実的にシミュレートするために保存された。例13からのゲル組成物#1~#3を創傷に直接適用し、滅菌スパチュラを用いて広げ、フォームドレッシング(form dressing)をゲル製剤と直接接触させた。
図10~
図14を参照のこと。結果:対照創傷部は感染を実証したが(これらの全て)、ゲル組成物#1~#3を有する創傷部はいずれも感染を実証しなかった。
図13~
図14を参照のこと。
【0196】
例15-インビトロ細胞傷害性研究
最初に、哺乳動物細胞培養物を調製した。NIH 3t3線維芽細胞(86041101、Sigma Aldrich)を、10%新生仔ウシ血清(CS)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充した、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;Fisher、ペンシルベニア州ピッツバーグ)中で培養した。全ての細胞を、37℃、加湿、5%CO2/95%空気環境において、90%のコンフルエンスまで培養した。4~7継代の細胞をこれらの実験で使用した。
【0197】
異なる組成を有する様々なゲルの細胞傷害性を、ISO10993-5に記載されている用量漸増法及び抽出法を用いて調査した。全ての実験について、試料をUV放射線に15分間曝露することによって滅菌した。用量漸増法では、それぞれのゲル試料を滅菌Milli-Q水に10重量%の濃度で分散させ、更に、細胞培養培地中で0.1から1,000μg/mLまで段階希釈した。一方、抽出法では、1gの各ゲル試料又は市販のOrbesealゲルを、5mLの細胞培養培地により、円錐チューブ内において37℃で48時間インキュベートして、シーラント残渣の完全な放出を可能にした。次いで、試料を遠心分離し、上清中の細胞培地を回収した。3T3線維芽細胞を、96ウェルプレートに6,000細胞/cm
2(1,950細胞/ウェル)の細胞密度で播種し、細胞接着のために24時間インキュベートした。次に、指定された時間間隔で用量漸増法又は抽出法のいずれかにより調製した試料を用いて、細胞培地によって細胞を処理した。インキュベーション後、細胞培地中の試料を除去し、細胞をPBSで2回すすいだ。得られた細胞密度を、PrestoBlue(商標)Cell Viability Reagent(A13262、Invitrogen)によって決定した。簡潔には、試薬を細胞培地と1:10の体積比によって混合した。次いで、細胞を、試薬/培地混合物と共に96ウェルプレート中37℃で1時間インキュベートし、各試料の蛍光強度(Em=560nm/Ex=590nm)を測定した。各ウェル内の細胞数を推定するために、細胞密度の範囲と蛍光強度との間の線形相関を表す標準曲線(R
2>0.95)をプロットし、各試料に記録された蛍光強度からこの標準曲線を用いて細胞数を決定した。
図22Bを参照のこと。
【0198】
例16-ヒドロゲル表面抗菌活性の評価
ゲルの抗菌特性を、Orbeseal(登録商標)Dry Cow Teat Sealant(油基剤中の次硝酸ビスマス(65w/w%))と比較した。簡潔には、0.2mLの各ヒドロゲル試料又は0.2mLのOrbesealを、別々の1.5mLエッペンドルフチューブに(別々のウェルで)添加した。次いで、試料を遠心分離し、100μLの細菌溶液(2×107CFU/mL)を各試料に添加した。対照試料を0.2mLのリン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4)中で細菌培養した。試料を120rpmで穏やかに振盪しながら37℃で24時間インキュベートした。インキュベーション後、試料をPBSに再懸濁し、段階希釈し、BHI寒天プレートにプレーティングした。次いで、寒天プレートを更に16時間インキュベートした。各試料の細菌密度(CFU/cm2)を、計数したコロニーの数によって決定した。
【0199】
加えて、細菌生存率はまた、BacTiter-Glo(商標)Microbial Cell Viability Assay(Promega、米国ウィスコンシン州マディソン)によっても評価した。簡潔には、インキュベーション後、各試料をPBS中へ完全に再懸濁し、続いてPBS中で10倍に更に希釈した。アッセイ試薬(50μL)を、白色の不透明96ウェルプレート上の等体積の各試料と混合した。室温で5分間インキュベートした後、各試料の発光を記録した。
【0200】
例17-インビトロでの細菌浸潤に対するヒドロゲルの長期有効性の評価
細菌浸潤を防止するゲルの能力を評価し、インビトロモデルを用いてOrbeseal(登録商標)Dry Cow Teat Sealantと比較した。試験材料に気泡がないことを確実にするために、ゲル又はOrbeseal(登録商標)(2mL)を5mLルアーロックシリンジに充填し、2000rpmで2分間遠心分離した。シリンジは、先端が下向きになるように50mLの円錐チューブに固定した。シリンジ先端(針なし)は、遠心分離中にパラフィルムで密封した。次いで、試験材料を含む全てのシリンジをUVによって15分間滅菌し、シリンジ先端部を開封した。次に、黄色ブドウ球菌(S.aureus)又は大腸菌(E.coli)のいずれかの細菌培養物2mL(105CFU/mL)を、新しい50mL円錐チューブに添加し、上記で調製したシリンジを先端が細菌培養物に浸された状態で下方に置いた。その上、1mLの新鮮なBHI培地を各試験材料の上に添加した。次いで、試料を、120rpmの振盪下において37℃でインキュベートした。24時間毎に、各円錐チューブ内の細菌培養物に新鮮な接種材料を補充した。また、各試料の培地200μLを、OD600測定及び細菌計数のために取り出し、続いて200μLの新鮮な培地を添加した。実験は14日間行い、各実験群は3回繰り返した。
【0201】
例18-インビボ安全性及び有効性研究の典型的な手順
有効性試験:
実験用乳牛
2回目の泌乳を完了したホルスタイン乳牛をこの研究では使用する。毎日15kgを超える乳を生産する泌乳後期(乾燥期間における乳(milk at dry off:DIM)中で355+/-30日間)の乳牛を使用する。選択された乳牛は、乾燥前の30日以内に、親又は乳房内抗生物質若しくは抗炎症の治療を受けておらず、乾燥の日に無症候性又は臨床的乳腺炎が存在しない4つの機能的乳房区を有し、3未満の乳頭端部スコアを有し、かつ過去30日以内に臨床的乳腺炎の病歴がない(ウィスコンシン大学によって提供された基準に基づくスコアリングシステム)。研究開始の1~2週間前に、乳体細胞数(somatic cell count:SCC)、細菌学的培養、及びNAGase活性決定について、乳牛の乳房を検査する。この手順は、研究開始の2日前に繰り返される。乳の200,000細胞/mL未満のSCCである、培養陰性乳のSCCを有する乳牛が含まれる。
【0202】
実験群
動物レベルの治療割り当てを伴う分割群研究設計が使用され、個別の動物における全ての乳頭が同じ処置を受ける。各処置は、各4つの乳頭を有する5頭の乳牛に施される。この研究で試験する5つの実験群は以下に記載する。
(1)2.6gのゲル製剤#1(n=5)
(2)2.6gのゲル製剤#2(n=5)
(3)2.6gのゲル製剤#3(n=5)
(4)2.6gのゲル製剤#4(n=5)
(5)陽性対照群としての2.6gのOrbeseal乳頭シーラント(n=5)
(6)未処置の乳牛は陰性対照群として役立つ(n=5)
【0203】
最初に、群当たり5匹の動物のパイロット研究を実施する(合計25匹の動物)。臨床結果が有意である場合、動物数を群当たり40頭の乳牛に増加させることができた。
【0204】
シーラント試料の投与
処置は、最後の搾乳の直後に乳房内注入によって施される。各処理の前に、乳頭を洗浄し、アルコール系の乳頭ワイプで消毒して固体汚染物質を除去する。注入は、訓練された技術者の小グループ(おそらく、パイロット研究では一人、本研究では10人の技術者)によって行われる。技術者は処置投与に関して盲検化される。シーラントは、注入後に腺実質内へマッサージされない。[1,6,7]
【0205】
乾燥期間におけるシーラント安定性の評価
シーラント安定性は、乾燥期間中の乳頭へのシーラントの保持度によって、乾燥期間中の乳牛において評価される。乳頭端部は、治療割り当てを知らされていない、訓練を受けた二人の獣医師によって観察される。注入後、最初の12時間は2時間毎に、最初の2週間は毎日、観察を記録し、その後の観察は60日目の乾燥期間が終わるまで毎週行う。[6]シーラント保持は、0~1の尺度でスコア化し、0は乳頭端部にシーラントが見えないことに対応し、1は乳頭端部からシーラントが見えていることに対応する。
【0206】
乾燥期間の終わりに、シーラントを乳頭から絞り取り、濾紙上に置いて過剰な液体を吸収し、残りのシーラントの体積及び重量を決定する。
【0207】
乾燥期間中の乳牛の健康の評価
乾燥期間中の乳房炎の発生率は、治療割り当てを知らされていない二人の訓練された獣医師によって、注入後最初の12時間では2時間毎、その後の7日間はで1日1回、60日目の乾燥期間の終わりまでは毎週観察することによって、評価される。臨床的乳腺炎によって引き起こされる炎症は、以下のように乳腺チャートに従って0~2までスコア付けされる:0=正常、1=異常な乳房(腫脹、熱、敏感性、及び浮腫など)、及び2=異常な乳牛(発熱、食欲不振)。直腸温度を決定し、2mLの血液試料を毎日採取する。[7]
【0208】
LC-MSによる乾燥期間の乳牛血清のメタボロミック分析もまた、無症候性乳腺炎を診断するために行われる。乳牛からの血液試料5ミリリットルを、注入後0、7、14、及び21日目に尾静脈から採取する。血清試料は、血液試料を4℃にて20分間1,600gで遠心分離することによって調製し、次いで、使用前に-80℃で貯蔵する。メタボロミック分析のために、エタノール/メタノール(1:1v/v)で1:4希釈することによって、血清試料から代謝産物を抽出する。次いで、試料をボルテックスし、16,000gにて20分間4℃で遠心分離し、0.22μmの膜で濾過する。血清アミロイドA、ビスファチン、及びα-トコフェロールのレベルを分析する。メタボロミック分析は、3μLの各試料をLC-MSに注入することによって実施する。代謝産物を、Acquity UPLC BEHアミドカラム(2.1mm×150mm、1.7μm、Waters)で分離する。移動相Aは水/アセトニトリル(95:5、体積/体積)からなり、移動相Bは水/アセトニトリル(5:95、体積/体積)である。両方の移動相が0.1%ギ酸を含有する。溶出勾配は、0分、99%B;7.5分、40%B;9分、99%B;10分、99%B;及び、12分、99%Bである。流速は、0.4mL/分である。カラム区画の温度は45℃に設定される。オートサンプラトレイを6℃に維持する。試料分析は、合計12分間の実行時間にわたって実施する。[8]
【0209】
分娩後の臨床的乳腺炎の評価
分娩後、臨床的乳腺炎を30日間毎日記録する。臨床的乳腺炎は、上述したように、臨床的乳腺炎なし(0)、異常な乳(1)、乳房区の炎症又は発赤を伴う異常な乳(2)、又は異常乳牛(3)として定義される。各搾乳前には、各乳房区と、ストリップカップを用いた前ストリッピング中に得られた乳との目視検査により、各乳房区はこれらの兆候について観察されなければならない。臨床的乳腺炎と診断された乳牛は、農場プロトコルに従って診断時に処置される。
【0210】
分娩後の乳中のSCCの測定
体細胞数を、乾燥時、及び泌乳初期に再度決定する。乳試料(200mL)を、乳(DIM)中で、乾燥期、1、3、6、及び12、及び30日目に乳房区から新たに回収する。乳試料をブロノポール錠剤で保存し、SCC試験の前に冷蔵する。細胞を血球計又はフローサイトメトリによって手動で計数する。試料は、得られたSCCが100から200細胞/μL以内になるまで、精密濾過脱脂乳によって希釈されてもよい。無症候性乳腺炎と診断された乳牛は、農場プロトコルによる診断時に処置される。
【0211】
分娩後の乳における微生物学的検査
Orbeseal又は製品なしのいずれかと比較して、IMIの発生率を低下させる際のゲル製剤の有効性を評価するために、乾燥期間の終わりに回収した乳試料(100μL)を、222200 Mastitis SSGN Quad Plate(Eurofins)上にプレーティングする。これにより、ブドウ球菌(Staph)、連鎖球菌(Strep)、大腸菌(E.coli)、及びクレブシエラ(Klebsiella)種を含むコロニーの出現による、乳腺炎原因生物の視覚的識別が可能となる。乳試料を、滅菌綿棒を用いて寒天上に画線接種し、37℃で24~48時間インキュベートする。細菌成長を有するプレートについて、細菌種の同定を記録する。[9]
【0212】
培養のための乳試料を、乳中において、乾燥期、1、3、6、及び12日目、並びに30日目に回収する。その上、臨床的乳腺炎が診断された任意の時点で乳試料を培養する。
【0213】
乳房内感染の症例は、乳中の微生物学的検査結果に基づいて、以下のように分類される。
AI-IMI:乾燥期間中の後天性感染。少なくとも1つの生物が、乾燥時には存在しないが、乾燥期間後の乳房区では同定された。
UI-IMI:乾燥期間中に新たな非感染。1つの生物が、乾燥時には存在せず、乾燥期間後の同じ乳房区で同定されない。
【0214】
乳中のラポナイト残渣の検査
乾燥期間の終わりに回収した乳1.00mL、25%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド溶液2.0mL、及び水2.5mLを、PTFEチューブに添加する。消化混合物を超音波浴中で30分間前処理する。消化は、MLS(Leutkirch、ドイツ)によって供給される加圧消化用のultraCLAVE(商標)マイクロ波オートクレーブを用いて実施する。マイクロ波電力を、600Wで10分間、続いて800Wで30分間に設定する。消化温度は140℃である。これをおよそ30分間保持する。内部標準としてベリリウムを添加した誘導結合高周波プラズマ質量分析法(ICP-MS)を用いて、消化物中のリチウムの量を分析する。[10,11,12]
【0215】
ゲルで処理された乳牛及び処理されていない乳牛からの乳試料のリチウム濃度を、両方とも上記の方法を用いて測定し、それらが有意差を有するかどうかを調べる。
【0216】
安全性試験:
組織学的試験
組織学的試験を行って、シーラントによって誘発された局所炎症反応を評価する。1日当たりおよそ7kgの乳を生成し、前述と同じ健康基準を満たす、10頭の泌乳牛が、この研究では選択される。[1]これらの乳牛は、最後の泌乳期間の後に屠殺される。最後の搾乳後、シーラントを各乳牛の乳頭に注入する。60日間の乾燥期間の後、シーラントを乳房区から除去し、乳牛を屠殺する。実質外組織を除去した後、乳房を回収し、両半分に分離する。各乳房区からの線導管、乳頭槽、及び乳房を回収し、組織学的分析のために加工する。各実質は、乳腺槽に隣接する腺の基部(ゾーン1)、乳腺槽と乳房実質の背側境界の中間(ゾーン2)、及び背側実質境界付近(ゾーン3)でサンプリングされる。[2]組織を10%中性緩衝ホルマリン中で24時間固定し、自動組織加工装置で加工し、パラフィンワックスに包埋する。切片を4μmの厚さで3つのレベルにて切断し、ヘマトキシリン・エオジン(Haematoxylin and Eosin:H&E)染色によって染色する。加えて、ウシPMNの免疫染色を別の実験で行う。白血球接着の検出のために、ホルマリン固定組織切片(厚さ5μm)を、4℃で60分間インキュベートすることによって、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate:FITC)コンジュゲート化マウス抗ウシCD11b mAb(Serotec、IgG2bアイソタイプのクローンCC126)により染色する。PBSで2回洗浄した後、組織試料を共焦点蛍光顕微鏡で画像化する。[3]
【0217】
炎症の程度を、多形核好中球(polymorphonuclear neutrophilic leukocyte:PMN)浸潤のレベルに基づいて、1~3までスコア化する:1=炎症応答の非存在;2=シーラントと組織界面との間の中程度のPMN浸潤;3=シーラントと組織界面との間に顕著なPMN、壊死の兆候あり。[4]
【0218】
参考文献
[1]K.R.Petrovski、A.Caicedo-Caldas、N.B.Williamson、「Efficacy of a novel internal dry period teat sealant containing 0.5% chlorhexidine against experimental challenge with Streptococcus uberis in dairy cattle」、J.Dairy Sci.、第94巻:第3366~3375頁、2011年.
[2]S.C.Nickerson、W.J.Thompson、W.M.Kortumら、「Histological response of bovine mammary tissue to an intracisternal bead device」、J Dairy Sci、第70巻:第687~695頁、1987年.
[3]T.Ozawa、Y.Kiku、M.Mizunoら、「Effect of intramammary infusion of rbGM-CSF on SCC and expression of polymorphonuclear neutrophil adhesion molecules in subclinical mastitis cows」、Vet Res Commun、第36巻:第21~27頁、2012年.
[4]J.Gogoi-Tiwari、V.Williams、C.B.Waryahら、「Mammary gland pathology subsequent to acute infection with strong versus weak biofilm forming staphylococcus aureus bovine mastitis isolates:a pilot study using non-invasive mouse mastitis model」、PLOS ONE|DOI:10.1371/journal.pone.0170668、2017年.
[5]S.Godden、P.Rapnicki、S.Stewartら、「Effectiveness of an internal teat seal in the prevention of new intramammary infections during the dry and early-lactation periods in dairy cows when used with a dry cow intramammary antibiotic」、J.Dairy Sci.、第86巻:第3899~3911頁、2003年.
[6]G.H.Lim、K.E.Leslie、D.F.Keltonら、「Adherence and efficacy of an external teat sealant to prevent new intramammary infections in the dry period.」、J.Dairy Sci.、第90巻:第1289~1300頁、2007年.
[7]S.Lanctot、P.Fustier、A.R.Taherianら、「Effect of intramammary infusion of chitosan hydrogels at drying-off on bovine mammary gland involution」、J.Dairy Sci.、第100巻:第2269~2281頁、2017年.
[8]F.Zandkarimi、J.Vanegas、Fern、C.S.Maier、及びG.Bobe、「Metabotypes with elevated protein and lipid catabolism and inflammation precede clinical mastitis in prepartal transition dairy cows」、J.Dairy Sci.、第101巻:第5531~5548頁.
[9]S.Pyorala、L.Kaartinen、及びH.Kack、「Efficacy of two therapy regimens for treatment of experimentally induced Escherichia coli mastitis in cows」、J Dairy Sci、第77巻:第453~461頁、1994年.
[10]S.Hauptkorn、J.Pavel、及びH.Seltner、「Determination of silicon in biological samples by ICP-OES after non-oxidative decomposition under alkaline conditions」、Fresenius J.Anal.Chem.、第370巻:第246~250頁、2001年.
[11]H.Vanhoe及びC.Vandecasteele、「Determination of lithium in biological samples by inductively coupled plasma mass spectrometry」、Anal.Chim.、第244巻:第259~267頁、1991年.
[12]D.Saribal.、「ICP-MS Analysis of Trace Element Concentrations in Cow’s Milk Sample from Supermarkets in Istanbul,Turkey」、Biol.Trace Elem.Res.、第193巻:第166~173頁、2020年.
【0219】
例19-ゲルへの薬剤(例えば、タンパク質、薬物など)の充填のための典型的な手順
ゲルの製作:
ポリ(酢酸ビニル)10gを酢酸エチル中に溶解して、後の使用のために100mLの溶液を作製した。PEO(分子量20k)4.00g、PEO(分子量300k)0.400g、グリセロール44g、及び水34gを、600mLガラスビーカに加えた。PTFEコーティングした交差インペラを備えたホモジナイザーを撹拌に用いた。ビーカを温度制御のために溶液に浸漬する熱電対を備えたホットプレート上に置いた。水の蒸発を防ぐために、ビーカを複数の食品ラップで包んだ。混合物を370rpmで撹拌しながら90℃に加熱した。これを90℃で5分間保持し、次いで室温まで冷却した。20%のZnOナノ粒子水性分散液2.50gを添加し、1分間撹拌した。ラポナイト15gを添加し、撹拌してよく混合した。ゲルが形成された後、これを90℃の水浴中で20分間加熱した。ゲルを室温まで冷却し、次いで、ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin:BSA)及びローダミンBをそれぞれ組み込むために2等分に分割した。
【0220】
充填タンパク質:
ウシ血清アルブミン(BSA)125mgのBSA、4.75gのqCh水溶液(0.25gのqCh及び4.5gの水を含有)、及び5.5gのグリセロールを添加し、次いで撹拌し、320rpmで10分間ゲルと混合した。6.25mLの10%ポリ(酢酸ビニル)溶液及び150■Lの氷酢酸を添加し、次いで320rpmで7分間撹拌した後、2500rpmで更に10分間撹拌した。
【0221】
薬物充填:
ローダミンB(ローダミンBをモデル薬物として使用した)4.75gのqCh水溶液(0.25gのqCh及び4.5gの水を含有)、及び5.5gのグリセロールを添加し、次いで撹拌し、320rpmで10分間ゲルと混合した。110mgのローダミンB、6.25mLの10%ポリ(酢酸ビニル)溶液及び150■Lの氷酢酸を添加し、次いで320rpmで7分間撹拌した後、2500rpmで更に10分間撹拌した。
【0222】
両方のゲルがこの時点でビーカに付着したので、非常に粘着性に見えた。ビーカをいくつかの小さな穴を開けた食品ラップで包んだ。次いで、これを真空オーブン(Eppendorf Vacufuge plus)に入れ、酢酸エチル及び水の一部を蒸発させて、ゲルを強化した。設定は60℃及び「D-AQ」であった。2時間30分間蒸発させた後、2500rpmで撹拌しながら1分間で取り出した。25mLのPBSを各ビーカに添加した。ビーカをプレート振盪器(Delfia 1296-004)に入れ、「低」設定で10時間振盪した。液体を、21130rcfで10分間遠心分離し、上清を分析のために採取した。
【0223】
例20-ゲルからの様々な薬剤の放出研究
BSAのパーセント放出:
ナノ粒子からのBSAタンパク質放出を、ナノ液滴分光光度計によって定量して、遠心分離でナノ粒子ペレットを作成した後、上清中のタンパク質の濃度を決定した。これらは全て、室温でPBS中において10時間インキュベートした後であった。放出を、PBS中において室温で10時間インキュベートした後に定量したところ、0.111mg/mLの濃度のBSAタンパク質がゲルの上清中に検出された。放出された量は、2.78mg及び2.2%放出に相当する。
図27を参照のこと。
【0224】
ローダミンBのパーセント放出:
ローダミンBの放出された濃度は、10時間後に上清を取り、遠心分離し、溶液を10倍に希釈することによって、決定した。続いて、吸光度を、プレートリーダ(Varioskan Lux)を用いて測定し、較正曲線と比較した。決定された上清中の濃度は252μ/mLであり、6.3mg及び5.7%の放出に対応した。
図28を参照のこと。
【0225】
参照による組込み
本明細書で言及される全ての米国特許出願公開及び米国特許は、あたかも各個別の公開又は特許が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されたかのように、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾する場合、本明細書における任意の定義を含む本出願が支配するであろう。
【0226】
その他の態様
特許請求の範囲において、「a、」、「a、」、及び「the」などの冠詞は、反対のことが示されない限り、又は文脈から明らかでない限り、1以上を意味してもよい。群の1以上のメンバーの間に「又は」を含む特許請求の範囲又は明細書は、反対のことが示されない限り、又は文脈から明らかでない限り、1つ、2つ以上、又は全ての群のメンバーが、所与の生成物若しくはプロセスに存在するか、所与の生成物若しくはプロセスに採用されるか、又は所与の生成物若しくはプロセスに関連する場合に、満たされるものと見なされる。本発明は、群の正確に1つのメンバーが、所与の生成物若しくはプロセスに存在するか、所与の生成物若しくはプロセスで採用されるか、又はそうでなければ所与の生成物若しくはプロセスに関連する、態様を含む。本発明は、1つより多い又は全ての群メンバーが、所与の生成物若しくはプロセスに存在するか、所与の生成物若しくはプロセスで採用されるか、又は所与の生成物若しくはプロセスに関連する、態様を含む。
【0227】
更に、本発明は、列挙された特許請求の範囲の1つ以上からの、1つ以上の限定、要素、節、及び記述的な用語が、別の特許請求の範囲に導入される、全ての変形、組合せ、及び置換を包含する。例えば、別の請求項に従属する任意の請求項は、同じ基本請求項に従属する任意の他の請求項に見られる1つ以上の制限を含むように、修正することができる。要素が、例えばマーカッシュ群形式でリストとして提示される場合、要素の各下位群もまた開示され、任意の要素(複数可)を群から除去することができる。一般に、本発明又は本発明の態様が、特定の要素及び/又は特徴を含むと言及される場合、本発明又は本発明の態様のある特定の態様は、そのような要素及び/若しくは特徴からなるか、又はそのような要素及び/若しくは特徴から本質的になることを理解されたい。簡潔にする目的で、これらの態様は、本明細書では具体的に言葉どおりに(in haec verba)示されていない。「含むこと(comprising)」及び「含有すること(containing)」という用語は、開かれていることを意図しており、追加の要素又は工程の包有を可能にすることにもまた留意されたい。範囲が与えられる場合はエンドポイントが含まれる。更に、別段示されない限り、又は文脈及び当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、本発明の異なる態様において記載された範囲内の任意の特定の値又は部分範囲を、範囲の下限の単位の10分の1まで想定することができる。
【0228】
本出願は、様々な交付済み特許、特許出願公開、雑誌記事、及び他の刊行物を指し、それらの全てが参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれた参考文献のいずれかと本明細書との間に矛盾がある場合、本明細書が優先されるものとする。加えて、先行技術に含まれる本発明の任意の特定の態様は、特許請求の範囲の任意の1つ以上から明示的に除外されてもよい。そのような態様は当業者に知られていると見なされるので、排除が本明細書に明示的に記載されていなくとも、それらが排除されてもよい。本発明の任意の特定の態様は、先行技術の存在に関連するか否かにかかわらず、任意の理由で任意の請求項から除外することができる。
【0229】
当業者は、本明細書に記載された特定の態様に対する多くの等価物を認識するか、又は日常的な実験のみを用いて確認することができるであろう。本明細書に記載された態様の範囲は、上記の明細書に限定されるようには意図されず、添付の特許請求の範囲に記載されたものである。当業者は、以下の特許請求の範囲に定義される本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、この明細書に対する様々な変更及び修正を行うことができることを理解するであろう。
【手続補正書】
【提出日】2021-10-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理的に可逆性なゲルである組成物であって、以下:
複数のケイ酸塩ナノ粒子と、
グリセロールと、
水と、
任意選択的に、複数の酸化亜鉛粒子と、
親水性ポリマーと、
増粘ポリマーと、
複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマーと、
接着性ポリマーと、
を含み、
前記組成物が、剪断減粘性、粘弾性、及び回収可能である、組成物。
【請求項2】
物理的に可逆性なゲルである組成物であって、以下:
複数のケイ酸塩ナノ粒子と、
グリセロールと、
水と、
任意選択的に、複数の酸化亜鉛粒子と、
親水性ポリマーと、
増粘ポリマーと、
複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマーと、
接着性ポリマーと、
からなり、
前記組成物が、剪断減粘性、粘弾性、及び回収可能である、組成物。
【請求項3】
物理的に可逆性なゲルである組成物であって、以下:
複数のケイ酸塩ナノ粒子と、
親水性ポリマーと、
グリセロールと、
水と、
を含み、
任意選択的に、増粘ポリマーと、複数の酸化亜鉛粒子と、複数の第4級アンモニウム官能基を含むポリマーと、接着性ポリマーと、を更に含み、前記組成物が、剪断減粘性、粘弾性、及び回収可能である、組成物。
【請求項4】
前記組成物中の前記複数のケイ酸塩ナノ粒子の量が、0.1重量%~20重量%、又は5重量%~20重量%、又は5重量%~15重量%、又は7重量%~15重量%であり、ここで、重量%は前記組成物の総重量のパーセンテージである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
1~15重量%の複数のケイ酸塩ナノ粒子と、
0.5~10重量%の親水性ポリマーと、
1~80重量%のグリセロールと、
最大100重量%の水と、を含み、任意選択的に、
3~9重量%の増粘剤と、
0.2~5重量%の複数の酸化亜鉛粒子と、
複数の第4級アンモニウム官能基を含む0.2~2重量%のポリマーと、
0.1~50重量%の接着性ポリマーと、
を更に含み、
ここで、重量%は前記組成物の総重量のパーセンテージである、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記ゲルのゲル化が、塩の添加の際に逆転される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ケイ酸塩ナノ粒子が、リチウム=マグネシウム=ナトリウム=シリカートナノ粒子である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記親水性ポリマーが、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピルセルロース、及びポロキサマーを含む群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記親水性ポリマーが、約1kDa~約10,000kDの分子量を有するポリ(エチレンオキシド)であり、25℃の水中における前記増粘ポリマーの2重量%溶液が、約200mPa・s~約10,000mPa・sの粘度を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記増粘ポリマーが、ケイ酸塩ナノ粒子、リチウム=マグネシウム=ナトリウム=シリカートナノ粒子、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及び寒天、又はそれらの誘導体を含む群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
複数の第4級アンモニウム官能基を含む前記ポリマーが、以下の構造Iを有する複数の繰り返し単位を含み、
【化1】
式中、X
-が、Cl
-、Br
-、BF
4
-、及びPF
6
-を含む群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
複数の第4級アンモニウム官能基を含む前記ポリマーが、複数の第4級アンモニウム官能基を含むキトサンである、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
1種以上の薬物又は薬剤を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記1種以上の薬物が、抗生物質薬、抗寄生虫薬、抗真菌薬、鎮痛薬又は抗炎症薬、ビタミン、コルチコステロイド薬、及びタンパク質を含む群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記1種以上の薬剤が、着色剤又は染料、及び比色分析pH指示薬を含む群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、約38℃で1.1g/mL~5.0g/mLの密度を有するゲルの形態である、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
哺乳動物における疾患の予防及び/又は治療で使用するための、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
哺乳動物における乳腺炎の予防及び/又は治療で使用するための、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
哺乳動物における皮膚疾患の予防及び/又は治療で使用するための、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物を含む、哺乳動物の体内の管におけるシーラント。
【請求項21】
前記哺乳動物が、乳牛である、請求項17~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物が、乳腺管の内部及び/又は乳房の皮膚上に投与される、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物。
【国際調査報告】