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特表2023-507779表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼及びその製造方法
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  • 特表-表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼及びその製造方法 図1a
  • 特表-表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼及びその製造方法 図1b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-27
(54)【発明の名称】表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0228 20160101AFI20230217BHJP
   H01M 8/021 20160101ALI20230217BHJP
   H01M 8/0215 20160101ALI20230217BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20230217BHJP
   C22C 38/58 20060101ALN20230217BHJP
【FI】
H01M8/0228
H01M8/021
H01M8/0215
C22C38/00 302Z
C22C38/58
C22C38/00 302H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538105
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-06-20
(86)【国際出願番号】 KR2020014197
(87)【国際公開番号】W WO2021125531
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】10-2019-0170587
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョン-ヒ
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ボ-ソン
(72)【発明者】
【氏名】キム,クァンミン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨンジュン
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA12
5H126DD05
5H126DD14
5H126GG08
5H126GG11
5H126GG12
5H126HH03
5H126HH10
5H126JJ00
5H126JJ03
5H126JJ05
5H126JJ06
5H126JJ08
5H126JJ10
(57)【要約】
【課題】表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼及びその製造方法を提供する。
【解決手段】表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼の一実施例によれば、Crを15重量%以上含有するステンレス鋼の表面をX線角度分解光電子分光法によりAl-KαX-線源を用いて光電子の離陸角が12°~85°の条件で測定するとき、測定される下記表面酸化物元素比(1)値が0.5以下であってもよい。
前記金属酸化物(MO)は、混合酸化物を含み、Mは、Cr、Feを除いた母材内の合金元素またはその組み合わせであり、Oは、酸素を意味する。前記全体の酸化物、水酸化物は、Cr酸化物、Cr水酸化物、Fe酸化物、Fe水酸化物、前記金属酸化物(MO)を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Crを15重量%以上含有するステンレス鋼の表面をX線角度分解光電子分光法によりAl-KαX-線源を用いて光電子の離陸角が12°~85°の条件で測定するとき、測定される下記表面酸化物元素比(1)値が0.5以下である、ことを特徴とする表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼。
前記金属酸化物(MO)は、混合酸化物を含み、Mは、Cr、Feを除いた母材内の合金元素またはその組み合わせであり、Oは、酸素を意味する。
前記全体の酸化物、水酸化物は、Cr酸化物、Cr水酸化物、Fe酸化物、Fe水酸化物、前記金属酸化物(MO)を含む。
【請求項2】
前記表面酸化物元素比(1)値が0.44以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼。
【請求項3】
前記ステンレス鋼の表面酸化物層のバンドギャップエネルギーが2eV以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼。
【請求項4】
前記ステンレス鋼の表面酸化物層は、母材とオーム接触を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼。
【請求項5】
ステンレス冷延鋼板を非酸化性酸溶液に浸漬するか、または浸漬した後に電解処理して1次表面処理し、酸化性酸溶液に浸漬して2次表面処理することを含んで請求項1に記載の前記ステンレス鋼を製造する、ことを特徴とする表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼の製造方法。
【請求項6】
前記1次表面処理は、前記ステンレス冷延鋼板を前記非酸化性酸溶液に5秒以上浸漬するか、または浸漬した後に0.1A/cm以上の電流密度で5秒以上電解処理することを含み、前記非酸化性酸溶液は、50℃以上、5重量%以上の塩酸又は硫酸溶液である、ことを特徴とする請求項5に記載の表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼の製造方法。
【請求項7】
前記2次表面処理は、前記ステンレス冷延鋼板を前記酸化性酸溶液に5秒以上浸漬することを含み、前記酸化性酸溶液は50℃以上、5重量%以上の硝酸溶液である、ことを特徴とする請求項5に記載の表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面電気伝導性に優れたステンレス鋼及びその製造方法に係り、より詳細には、表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス鋼は、耐食性に優れており、加工が容易であるので、電子部品用素材及び燃料電池分離板用素材として検討されている。しかし、通常のステンレス鋼は、表面の不動態皮膜が貫通抵抗(through-plane resistance)要素として作用し、十分な電気伝導性を確保できないという問題がある。
【0003】
現在までもステンレス鋼の表面電気伝導性に及ぼす不動態皮膜の影響については、はっきりとそのメカニズムが究明されていない。このような不動態皮膜の表面電気伝導性を向上させるためには、電子部品用素材の場合にはNiメッキを行うか、または燃料電池分離板用としてはステンレス鋼の高い接触抵抗値を下げるために金や炭素、窒化物などの導電性物質をステンレス鋼の表面にコーティングする工程が提案された。しかし、Niメッキやその他のコーティング物質をコーティングするための追加工程により製造コスト及び製造時間が増加して生産性が低下するという問題点があり、不動態皮膜が有する根本的な貫通抵抗を下げることができないという問題点がある。
【0004】
また、ステンレス鋼の表面電気伝導性を向上させるための他の方案としてステンレス鋼の表面を改質する方法が試みられてきた。
【0005】
特許文献1には、表面改質工程を制御して低い界面接触抵抗と高い腐食電位を有する分離板用ステンレス鋼が開示されている。
【0006】
特許文献2には、Cr17~23重量%を含有するステンレス鋼を[HF]≧[HNO]溶液に浸漬して、耐食性に優れており、接触抵抗の低いステンレス鋼を製造する方法が開示されている。
【0007】
特許文献3には、Cr15~45重量%、Mo0.1~5重量%を含有するステンレス鋼の不動態皮膜に含まれるCr、Fe原子数比が1以上であるステンレス鋼が開示されている。
【0008】
しかし、特許文献1~3は、数nm領域内の不動態皮膜のCr/Fe原子数の比のみを調整し、ステンレス鋼の不動態皮膜が有する根本的な貫通抵抗を下げることができないという限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許公報第10-2014-0081161号
【特許文献2】韓国公開特許公報第10-2013-0099148号
【特許文献3】日本公開特許公報第2004-149920号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した問題点を解決するため、本発明は、電気接点用素材及び燃料電池分離板用素材として適用可能な表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するための手段として、本発明の一例による表面電気伝導性に優れた分離板用ステンレス鋼は、Crを15重量%以上含有するステンレス鋼の表面をX線角度分解光電子分光法によりAl-KαX-線源を用いて光電子の離陸角が12°~85°の条件で測定するとき、測定される下記表面酸化物元素比(1)値が0.5以下であってもよい。
【0012】
【0013】
前記金属酸化物(MO)は、混合酸化物を含み、Mは、Cr、Feを除いた母材内の合金元素またはその組み合わせであり、Oは、酸素を意味する。前記全体の酸化物、水酸化物は、Cr酸化物、Cr水酸化物、Fe酸化物、Fe水酸化物、前記金属酸化物(MO)を含む。
【0014】
本発明の各表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼において、前記表面酸化物元素比(1)値が0.44以下であってもよい。
【0015】
本発明の各表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼において、前記ステンレス鋼の表面酸化物層のバンドギャップエネルギーが2eV以下であってもよい。
【0016】
本発明の各表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼において、前記ステンレス鋼の表面酸化物層は、母材とオーム接触を形成してもよい。
【0017】
また、上述した目的を達成するための他の手段として本発明の一例による表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼の製造方法は、ステンレス冷延鋼板を非酸化性酸溶液に浸漬するか、または浸漬した後に電解処理して1次表面処理し、酸化性酸溶液に浸漬して2次表面処理することを含んでCrを15重量%以上含有するステンレス鋼の表面をX線角度分解光電子分光法によりAl-KαX-線源を用いて光電子の離陸角が12°~85°の条件で測定されるとき、測定される下記表面酸化物元素比(1)値が0.5以下であるステンレス鋼を製造してもよい。
【0018】
【0019】
前記金属酸化物(MO)は、混合酸化物を含み、Mは、Cr、Feを除いた母材内の合金元素またはその組み合わせであり、Oは、酸素を意味する。前記全体の酸化物、水酸化物は、Cr酸化物、Cr水酸化物、Fe酸化物、Fe水酸化物、前記金属酸化物(MO)を含む。
【0020】
本発明の各表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼の製造方法において、前記1次表面処理は、前記ステンレス冷延鋼板を前記非酸化性酸溶液に5秒以上浸漬するか、または浸漬した後に0.1A/cm以上の電流密度で5秒以上電解処理することを含み、前記非酸化性酸溶液は、50℃以上、5重量%以上の塩酸または硫酸溶液であってもよい。
【0021】
本発明の各表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼の製造方法において、前記2次表面処理は、前記ステンレス冷延鋼板を前記酸化性酸溶液に5秒以上浸漬することを含み、前記酸化性酸溶液は、50℃以上、5重量%以上の硝酸溶液であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、ステンレス鋼の表面に形成される半導体的特性を有する表面酸化物層を導体化して電気接点用素材及び燃料電池分離板用素材に適用可能な表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼及びその製造方法を提供しうる。
【0023】
本発明によれば、ステンレス鋼の表面をX線角度分解光電子分光法によりAl-KαX-線源を用いて光電子の離陸角が12°~85°の条件で測定するとき、測定される下記表面酸化物元素比(1)値が0.5以下になるように制御して表面酸化物層のバンドギャップエネルギーが2eV以下である表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼を提供しうる。
【0024】
【0025】
前記金属酸化物(MO)は、混合酸化物を含み、Mは、Cr、Feを除いた母材内の合金元素またはその組み合わせであり、Oは、酸素を意味する。前記全体の酸化物、水酸化物は、Cr酸化物、Cr水酸化物、Fe酸化物、Fe水酸化物、前記金属酸化物(MO)を含む。
【0026】
本発明によれば、ステンレス鋼の表面酸化物層は、母材とオーム接触を形成して表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼を提供しうる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1a】表2の結果を参照して表面酸化物元素比(1)値対比バンドギャップエネルギーの相関関係を示すグラフである。
図1b】表2の結果を参照して表面酸化物元素比(1)値対比バンドギャップエネルギーの相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の一例による表面電気伝導性に優れた分離板用ステンレス鋼は、Crを15重量%以上含有するステンレス鋼の表面をX線角度分解光電子分光法によりAl-KαX-線源を用いて光電子の離陸角が12°~85°の条件で測定するとき、測定される下記表面酸化物元素比(1)値が0.5以下であってもよい。
【0029】
【0030】
前記金属酸化物(MO)は、混合酸化物を含み、Mは、Cr、Feを除いた母材内の合金元素またはその組み合わせであり、Oは、酸素を意味する。前記全体の酸化物、水酸化物は、Cr酸化物、Cr水酸化物、Fe酸化物、Fe水酸化物、前記金属酸化物(MO)を含む。
【0031】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、様々な異なる形態に変形されてもよく、本発明の技術思想が以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野において平均的な知識を有する者に本発明をさらに完全に説明するために提供されるものである。
【0032】
本出願で使用する用語は、単に特定の例示を説明するために使用されるものである。そのために、例えば、単数の表現は、文脈上明らかに単数でなければならないものでない限り、複数の表現を含む。さらに、本出願で使用する「含む」または「備える」などの用語は、明細書上に記載された特徴、段階、機能、構成要素またはそれらを組み合わせたものが存在することを明確に指すために使用するものであり、他の特徴や段階、機能、構成要素またはそれらを組み合わせたものの存在を予備的に排除するために使用されるものではないことに留意しなければならない。
【0033】
一方、特に定義のない限り、本明細書で使用するすべての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有するものとみなされるべきである。したがって、本明細書で明確に定義しない限り、特定の用語が過度に理想的または形式的な意味で解釈されるべきではない。例えば、本明細書における単数の表現は、文脈上明らかに例外がない限り、複数の表現を含む。
【0034】
また、本明細書上において「約」、「実質的に」などは、言及した意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値またはその数値に近い意味で使用され、本発明の理解を助けるために正確かつ絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に用いることを防止するために使用される。
【0035】
また、本明細書上において「ステンレス冷延鋼板」とは、通常のステンレス鋼の製造工程である熱間圧延-加熱-冷間圧延-焼鈍により製造されたステンレス冷延鋼板を意味し、当該技術分野の通常の技術者が自明に認識できる範囲内で通常のステンレス冷延鋼板の製造工程により製造されたステンレス冷延鋼板と解釈されてもよい。
【0036】
また、本明細書上において「表面酸化物」とは、ステンレス鋼が約200℃以下の温度に曝されるとき、母材金属元素が外部酸素によって自発的に酸化してステンレス鋼の表面に形成される酸化物を意味する。表面酸化物は、Crを主成分とし、SiO、SiO、Si、MnO、MnO、Mn、VO、V、V、NbO、NbO、Nb、TiO、FeO、Fe、Feなどを一例として含んでもよい。以上で表面酸化物の例示を挙げたが、これは本発明の理解を助けるための例示であり、本発明の技術思想を特に制限しないことに留意する必要がある。
【0037】
また、本明細書上において「表面酸化物層」とは、本発明の表面酸化物を含む層を意味し、ステンレス鋼の不動態皮膜とも解釈されてもよい。
【0038】
また、本明細書上において「Fe酸化物」とは、FeO、Fe、Feなど当該技術分野の通常の技術者が自明に認識できる範囲内で酸化物形態のすべてのFe酸化物を意味する。「Fe水酸化物」とは、FeOOH、Fe(OH)2-、Fe(OH)など当該技術分野の通常の技術者が自明に認識できる範囲内で水酸化物形態のすべてのFe水酸化物を意味する。
【0039】
また、本明細書上において「Cr酸化物」とは、Cr、Cr、CrO、CrOなど当該技術分野の通常の技術者が自明に認識できる範囲内で酸化物形態のすべてのCr酸化物を意味する。「Cr水酸化物」とは、CrOOH、Cr(OH)、Cr(OH)など当該技術分野の通常の技術者が自明に認識できる範囲内で水酸化物形態のすべてのCr水酸化物を意味する。
【0040】
通常のステンレス鋼の不動態皮膜は、酸化物の半導体的特性による高い抵抗を有することが知られている。本発明の発明者らは、ステンレス鋼の表面酸化物層のバンドギャップエネルギーが2eV以下に制御されると、半導体的特性を有する表面酸化物層を導体化して電気接点用素材及び燃料電池分離板用素材に適用可能な表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼を見出した。
【0041】
本発明の一例によれば、X線角度分解光電子分光法(angle-resolved photoemission spectroscopy、ARPES)によりAl-KαX-線源を用いて光電子の離陸角(take-off angle)が12°~85°の条件でステンレス鋼の表面を測定するとき、測定される下記表面酸化物元素比(surface oxide element ratio、SER)(1)値が0.5以下であってもよい。
【0042】
【0043】
前記金属酸化物(MO)は、混合酸化物を含み、Mは、Cr、Feを除いた母材内の合金元素またはその組み合わせであり、Oは、酸素を意味する。金属酸化物(MO)は、例えば、SiO、SiO、Si、MnO、MnO、Mn、VO、V、V、NbO、NbO、Nb、TiOであってもよい。以上では、金属酸化物(MO)の例を挙げたが、これは本発明の理解を助けるための例示であり、本発明の技術思想を特に制限するものではないことに留意する必要がある。
【0044】
全体の酸化物、水酸化物は、Cr酸化物、Cr水酸化物、Fe酸化物、Fe水酸化物、前記金属酸化物(MO)を含む。
【0045】
以下、X線角度分解光電子分光法において光電子の離陸角の範囲を限定した理由を説明し、次に表面酸化物元素比(1)値の範囲を限定した理由について説明する。
【0046】
X線角度分解光電子分光法において光電子の離陸角が低いほどステンレス鋼の最表面から深さ方向への分析深さが小さくなり、離陸角が大きいほど分析深さが大きくなる。これを考慮して、本発明によれば、ステンレス鋼の厚さに関係なくステンレス鋼の表面に形成された全体の酸化物の組成を分析できるため、X線角度分解光電子分光法によりAl-KαX-線源を用いて光電子の離陸角が12°~85°の条件でステンレス鋼の表面を測定しうる。
【0047】
前記条件により測定される表面酸化物元素比(1)値を0.5以下に限定した理由は、不動態皮膜が半導体的特性から導体特性に転換される限界点であるためである。表面酸化物元素比(1)値が0.5を超える場合には、不動態皮膜が半導体的特性により十分な表面電気伝導性を確保できず、燃料電池分離板用ステンレス鋼として不適合である。
【0048】
以上のように表面酸化物元素比(1)値が0.5以下になるように制御することにより、本発明は表面酸化物層のバンドギャップエネルギーが2eV以下になるように制御してもよい。バンドギャップエネルギーが0eVであれば表面酸化物層が導体特性を有するようになり、バンドギャップエネルギーが0eV超過2ev以下であれば表面酸化物層が導体と半導体的特性の中間領域特性を有するようになるので、燃料電池分離板用ステンレス鋼として使用するのに適している。
【0049】
また、本発明によれば、表面酸化物層のバンドギャップエネルギーが0eVを有するように、より好ましくは、表面酸化物元素比(1)値を0.44以下に制御することが好ましい。表面酸化物層のバンドギャップエネルギーが0eVであるという意味は、酸化物から構成された不動態皮膜層であるにもかかわらず、ステンレス鋼の母材と表面酸化物層が従来知られていない新しいオーム接触(Ohmic contatct)を形成したことを意味する。言い換えれば、表面酸化物層がステンレス鋼の母材とオーム接触を形成できる新しい伝導性被膜層になることを意味する。
【0050】
本発明による表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼は、表面酸化物層のバンドギャップエネルギーが2eV以下であれば十分であり、鋼種に特に制限はない。一例によれば、オーステナイト系、フェライト系、フェライト-オーステナイト2相系ステンレス鋼を本発明のステンレス鋼として使用してもよい。
【0051】
また、本発明による電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼の成分組成は、特に制限されるものではないない。ただし、好ましい成分組成を示すと、次の通りである。しかし、以下の成分組成は、本発明に対する理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の技術思想を制限するものではないことに留意する必要がある。
【0052】
一例によれば、本発明によるステンレス鋼は、重量%で、C:0%超過0.3%以下、N:0%超過0.3%以下、Si:0%超過0.7%以下、Mn:0%超過10%以下、P:0%超過0.04%以下、S:0%超過0.02%以下、Cr:15~34%、Ni:25%以下、残りはFe及びその他の不可避な不純物を含んでもよい。
【0053】
以下、前記合金組成に対して限定した理由について具体的に説明する。以下、特に言及のない限り、単位は、重量%(wt%)である。
【0054】
C:0%超過0.3%以下、N:0%超過0.3%以下
【0055】
CとNは、鋼中のCrと結合して安定したCr炭窒化物を形成し、その結果、Crが局部的に欠乏した領域が形成されて耐食性が低下するおそれがあるため、両元素の含量は低いほど好ましい。これにより、本発明においてC、Nの含量は、C:0%超過0.3%以下、N:0%超過0.3%以下に制限される。
【0056】
Si:0%超過0.7%以下
【0057】
Siは、脱酸に有効な元素である。しかし、過剰添加時に靭性、成形性を低下させ、焼鈍工程中に生成されるSiO酸化物は、電気伝導性、親水性を低下させる。これを考慮して、本発明においてSiの含量は、Si:0%超過0.7%以下に制限される。
【0058】
Mn:0%超過10%以下
【0059】
Mnは、脱酸に有効な元素である。しかし、Mnの介在物であるMnSは、耐食性を低下させるので、本発明においてMnの含量は、0%超過10%以下に制限される。
【0060】
P:0%超過0.04%以下
【0061】
Pは、耐食性だけでなく靭性も低下させるので、本発明においてPの含量は、0%超過0.04%以下に制限される。
【0062】
S:0%超過0.02%以下
【0063】
Sは、鋼中のMnと結合して安定したMnSを形成し、形成されたMnSは、腐食の起点となって耐食性を低下させるので、Sの含量が低いほど好ましい。これを考慮して、本発明においてSの含量は、0%超過0.02%以下に制限される。
【0064】
Cr:15~34%
【0065】
Crは、耐食性を向上させる元素である。強い酸性環境である燃料電池作動環境での耐食性を確保するため、Crは、積極的に添加される。しかし、過剰添加時に靭性を低下させるので、これを考慮して本発明においてCrの含量は、15~34%に制限される。
【0066】
Ni:25%以下
【0067】
Niは、オーステナイト相安定化元素であり、耐食性を向上させる元素である。また、Niは、一般にオーステナイト系、フェライト-オーステナイト2相ステンレス鋼に一定レベル以上の量が含まれている。しかし、過剰添加時に加工性が低下するので、これを考慮して本発明においてNiの含量は、25%以下に制限される。
【0068】
Ni含量の下限は、特に制限されず、鋼種に応じて適宜含有されてもよい。例えば、オーステナイト系ステンレス鋼やフェライト-オーステナイト2相系ステンレス鋼においてNi含量の下限は、2.0%以上であってもよい。例えば、フェライト系ステンレス鋼におけるNi含量の下限は、2.0%未満であってもよく、好ましくは、1.0%以下、より好ましくは、0.01%以下であってもよい。
【0069】
また、一例によるステンレス鋼は、上述した合金組成の他に必要に応じて選択的合金成分で、重量%で、Cu:0.01%超過1.5%以下、V:0.01%超過0.6%以下、Mo:0.01~5.0%、Ti:0.01~0.5%、Nb:0.01~0.4%のうち1種以上を含んでもよい。しかし、選択的合金成分の組成は、本発明に対する理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の技術思想を制限するものではないことに留意する必要がある。
【0070】
Cu:0.01%超過1.5%以下
【0071】
Cuは、耐食性を向上させる元素である。しかし、過剰添加時に溶出して燃料電池の性能を低下させるので、これを考慮して本発明においてCuの含量は、0.01%超過1.5%以下に制限される。
【0072】
V:0.01%超過0.6%以下
【0073】
Vは、燃料電池作動環境でFe溶出を抑制して燃料電池の寿命特性を向上させる元素である。しかし、過剰添加時に靭性が低下するので、これを考慮して本発明においてVの含量は、0.01%超過0.6%以下に制限される。
【0074】
Mo:0.01~5.0%
【0075】
Moは、耐食性を向上させる元素である。しかし、過剰添加時に加工性が低下するので、これを考慮して本発明においてMoの含量は、0.01~5.0%に制限される。
【0076】
Ti:0.01~0.5%、Nb:0.01~0.4%
【0077】
TiとNbは、鋼中のC、Nと結合して安定した炭窒化物を形成することにより、Crが局部的に欠乏した領域の形成を抑制して耐食性を向上させる元素である。しかし、過剰添加時に靭性を低下させるので、これを考慮して本発明においてTi、Nbの含量は、Ti:0.01~0.5%、Nb:0.01~0.4%に制限される。
【0078】
残りの成分は、鉄(Fe)である。ただし、通常の製造過程では、原料または周囲環境から意図しない不純物が不可避に混入することがあるので、これを排除することはできない。前記不純物は、通常の製造過程の技術者であれば誰でも分かるものであるため、そのすべての内容を特に本明細書で言及しない。
【0079】
本発明による表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼の製造方法は、表面酸化物元素比(1)値を0.5以下に制御できれば十分であり、特に制限されるものではない。
【0080】
本発明の一例によれば、通常のステンレス鋼の製造工程によって製造された冷延鋼板を表面処理して本発明による表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼を製造してもよい。一例による表面処理は、2段階にわたって行われてもよく、1次表面処理は、非酸化性(nonoxidizing)酸溶液に浸漬するか、または浸漬した後に電解処理することを含んでもよい。2次表面処理は、酸化性(oxidizing)酸溶液に浸漬することを含んでもよい。
【0081】
本発明の一例による1次表面処理は、ステンレス冷延鋼板を非酸化性酸溶液に5秒以上浸漬するか、または浸漬した後に0.1A/cm以上の電流密度で5秒以上電解処理することを含んでもよい。このとき、非酸化性酸溶液は、50℃以上、5重量%以上の塩酸(HCl)または硫酸(HSO)溶液であってもよい。
【0082】
本発明の一例による2次表面処理は、ステンレス冷延鋼板を酸化性酸溶液に5秒以上浸漬することを含んでもよい。このとき、酸化性酸溶液は、50℃以上、5重量%以上の硝酸(HNO)溶液であってもよい。
【0083】
以下、実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。ただし、下記実施例は、本発明を例示してより詳細に説明するためのものであり、本発明の権利範囲を限定するためのものではないことに留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項とこれから合理的に類推される事項によって決定されるものであるためである。
【0084】
[実施例]
下記表1の組成を有する鋼種を製鋼-連鋳工程を通じてスラブで製造した。その後、製造されたスラブを1200℃で熱間圧延を通じて厚さ4.5mmの熱延鋼板を製造した。熱延鋼板は、1050℃に加熱した後、冷間圧延と1000℃での焼鈍を繰り返して厚さ0.15mmの冷延鋼板を製造した。
【0085】
下記表1において、鋼1~9は発明鋼に該当し、鋼1~3はフェライト系ステンレス鋼、鋼4~6はオーステナイト系ステンレス鋼、鋼7~9はフェライト-オーステナイト2相系ステンレス鋼である。鋼10、11は、比較鋼であり、Cr含量が15重量%未満である鋼種である。
【0086】
【表1】
【0087】
表1の製造された冷延鋼板を下記表2の表面処理条件に従って表面処理した。表面処理は、1次、2次と行われており、表2に記載されたA~H条件に従って処理した。1次表面処理は、冷延鋼板を非酸化性酸溶液である硫酸溶液に浸漬するか、または浸漬した後に電解処理して行った。2次表面処理は、酸化性酸溶液である硝酸溶液にステンレス鋼を浸漬して表面処理されて行われた。表2の表面処理に対する理解を助けるための例を挙げると、表2の発明例1によるステンレス冷延鋼板は、1次表面処理で50℃、8重量%の硫酸溶液に5秒間浸漬(A)した後、2次表面処理で50℃、10重量%の硝酸溶液に9秒間浸漬(D)されて表面処理された。
【0088】
表2の表面酸化物元素比(1)値は、下記(1)により導き出された値であり、発明例及び比較例の表面をX線角度分解光電子分光法によりAl-KαX-線源を用いて表2に記載された光電子の離陸角の条件で測定するときに導き出される値である。
【0089】
【0090】
表面酸化物元素比(1)値は、次のような方法により測定された。まず、PHI Quantera II装置により表2による離陸角条件で分析し、分析結果は、CasaXPSソフトウェアを用いて金属酸化物(MO)、Cr酸化物、Cr水酸化物、Fe酸化物、Fe水酸化物の結合エネルギーにおけるピークを分離し、これを用いて原子濃度を計算した。
【0091】
表面酸化物元素比(1)値を求めるための「金属酸化物(MO)中の金属元素の原子濃度(at%)の和」は、金属酸化物(MO)の結合エネルギーにおけるピークを分離した後、これを各金属(M)のスペクトル上にフィッティングして金属元素の原子濃度(at%)の和を導き出した。ここで、金属酸化物(MO)は、混合酸化物を含み、Mは、Cr、Feを除いた母材内の合金元素またはその組み合わせであり、Oは、酸素を意味する。
【0092】
表面酸化物元素比(1)値における「全体の酸化物、水酸化物中の金属元素の原子濃度(at%)の和」は、上述した「金属酸化物(MO)中の金属元素の原子濃度(at%)の和」とCr酸化物、Cr水酸化物中のCrの原子濃度(at%)の和及びFe酸化物、Fe水酸化物中のFeの原子濃度(at%)の和を足して算出した。
【0093】
Cr酸化物、Cr水酸化物中のCrの原子濃度(at%)の和は、Cr酸化物、Cr水酸化物の結合エネルギーにおけるピークを分離した後、これをCr2pスペクトル上にフィッティングしてCrの原子濃度(at%)の和を導き出した。Fe酸化物、Fe水酸化物中のFeの原子濃度(at%)の和は、Fe酸化物、Fe水酸化物の結合エネルギーにおけるピークを分離した後、これをFe 2pスペクトル上にフィッティングしてFeの原子濃度(at%)の和を導き出した。
【0094】
表2のバンドギャップエネルギーは、表面酸化物層のバンドギャップエネルギーを意味する。表面酸化物層のバンドギャップエネルギーの測定は、電流プローブ原子力顕微鏡(Current Sensing Atomic Force Microscope、Keysight 9500モデル)を用いた。発明例、比較例のステンレス鋼1cm×1cmで切断して試片を準備し、表面酸化物層が非活性状態で測定できるように相対湿度18%の窒素雰囲気で20nN荷重を与えて印加されたバイアス(bias)が-10Vから10Vまで電流プローブモードでバンドギャップエネルギーを測定した。バンドギャップエネルギーは、試片を50μm×50μmの面積で5回測定して印加されたバイアスが-10Vから10Vまで変化したときに感知される電流が「0」である領域の幅をバンドギャップエネルギーで測定した。このとき、プローブは、シリコンプローブ(Si tip)上に30nm厚さの白金がコーティングされたプローブを使用した。
【0095】
【表2】
【0096】
以下、表2の結果を参照して各発明例及び比較例を比較評価する。表2の結果を参照すると、発明例1~18は、本発明による表面処理工程、光電子の離陸角が12°~85°の条件であるときの表面酸化物元素比(1)値が0.5以下であることを満たした結果、表面酸化物層のバンドギャップエネルギーが2eV以下であることが分かる。また、発明例1、2、6、11、12、14、15、16を参照すると、表面酸化物層のバンドギャップエネルギーが0eVとなり、表面酸化物層が母材とオーム接触を形成するためには、表面酸化物元素比(1)値が0.44以下であることが好ましい。
【0097】
比較例1、2は、1次表面処理に所要される時間が3秒と短すぎ、光電子の離陸角が12°、44°、85°での表面酸化物元素比(1)値が0.5を超えた。その結果、表面酸化物層のバンドギャップエネルギーが2eVを超えた。
【0098】
比較例3は、1次表面処理に所要される時間が3秒と短すぎ、2次表面処理を行わなかった。また、光電子の離陸角が12°、44°、85°での表面酸化物元素比(1)値が0.5を超えた。その結果、表面酸化物層のバンドギャップエネルギーが2eVを超えた。
【0099】
比較例4は、1次表面処理を行っておらず、光電子の離陸角が12°、44°、85°での表面酸化物元素比(1)値が0.5を超えた。その結果、表面酸化物層のバンドギャップエネルギーが2eVを超えた。
【0100】
比較例5は、1、2次表面処理に所要される時間が3秒と短すぎ、光電子の離陸角が12°、44°、85°での表面酸化物元素比(1)値が0.5を超えた。その結果、表面酸化物層のバンドギャップエネルギーが2eVを超えた。
【0101】
比較例6、7は、1次表面処理に所要される時間が3秒と短すぎ、2次表面処理を行わなかった。また、光電子の離陸角が12°、44°、85°での表面酸化物元素比(1)値が0.5を超えた。その結果、表面酸化物層のバンドギャップエネルギーが2eVを超えた。
【0102】
比較例8は、1、2次表面処理に所要される時間が3秒と短すぎ、光電子の離陸角が12°、44°、85°での表面酸化物元素比(1)値が0.5を超えた。その結果、表面酸化物層のバンドギャップエネルギーが2eVを超えた。
【0103】
比較例9は、1次表面処理を行っておらず、2次表面処理に所要される時間が3秒と短すぎた。また、光電子の離陸角が12°、44°、85°での表面酸化物元素比(1)値が0.5を超えた。その結果、表面酸化物層のバンドギャップエネルギーが2eVを超えた。
【0104】
比較例10、11は、1、2次表面処理に所要される時間が3秒と短すぎた。また、Cr含量が15重量%未満であり、光電子の離陸角が12°、44°、85°での表面酸化物元素比(1)値が0.5を超えた。その結果、表面酸化物層のバンドギャップエネルギーが2eVを超えた。
【0105】
比較例12は、1次表面処理を行っておらず、2次表面処理に所要される時間が3秒と短すぎた。また、Cr含量が15重量%未満であり、光電子の離陸角が12°、44°、85°での表面酸化物元素比(1)値が0.5を超えた。その結果、表面酸化物層のバンドギャップエネルギーが2eVを超えた。
【0106】
比較例13は、1、2次表面処理時間が5秒以上であるが、Cr含量が15重量%未満であり、光電子の離陸角が12°、44°、85°での表面酸化物元素比(1)値が0.5を超えた。その結果、表面酸化物層のバンドギャップエネルギーが2eVを超えた。
【0107】
添付の図1a、図1bは、表2の結果を参照して表面酸化物元素比(1)値対比バンドギャップエネルギーの相関関係を示すグラフである。図1a、図1bにおいて光電子の離陸角は、それぞれ12°、85°である。図1a、図1bの横軸は、表面酸化物元素比(1)値であり、縦軸は、バンドギャップエネルギー(eV)である。
【0108】
図1a、図1bを参照すると、表面酸化物元素比(1)値が0.5を基準点として0.5以下である場合、バンドギャップエネルギーが2eV以下であることが分かり、0.5を超えるとバンドギャップエネルギーが急激に増加してバンドギャップエネルギーが2eVを超えたことが分かる。これを参照すると、表面酸化物元素比(1)値を0.5以下に制御すると、バンドギャップエネルギーが2eV以下になるように制御できることが分かる。また、図1a、図1bを参照すると、バンドギャップエネルギーが0eVになるためには、表面酸化物元素比(1)値を0.44以下に制御することが好ましいことが分かる。
【0109】
また、図1a、図1bに示す点線領域は、表面酸化物元素比(1)値が0.5以下であり、バンドギャップエネルギーが2eV以下である領域である。図1a、図1bを参照すると、図1a、図1bの点線領域に発明例がすべて含まれ、表面酸化物元素比(1)値を0.5以下に制御すると、バンドギャップエネルギーが2eV以下である表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼を提供できることが分かる。
【0110】
以上の実施例の結果から、本発明は、ステンレス鋼の表面に形成される半導体的特性を有する表面酸化物層を導体化し、電気接点用素材及び燃料電池分離板用素材に適用可能な表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼及びその製造方法を提供できることが分かる。
【0111】
また、ステンレス鋼の表面をX線角度分解光電子分光法によりAl-KαX-線源を用いて光電子の離陸角が12°~85°の条件で測定するとき、測定される表面酸化物元素比(1)値が0.5以下になるように制御し、表面酸化物層のバンドギャップエネルギーが2eV以下である表面電気伝導性に優れた燃料電池分離板用ステンレス鋼を提供できることが分かる。
【0112】
以上、本発明の例示的な実施例を説明したが、本発明は、これに限定されず、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、以下に記載する請求範囲の概念と範囲から逸脱しない範囲内で様々な変更及び変形が可能であることを理解できるだろう。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明による表面電気伝導性に優れたステンレス鋼は、燃料電池分離板などに適用されてもよい。
図1a
図1b
【国際調査報告】