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特表2023-507807正浸透を用いる高固形分且つ高タンパク質のラクトースフリー無菌乳濃縮物及び粉乳の調製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-27
(54)【発明の名称】正浸透を用いる高固形分且つ高タンパク質のラクトースフリー無菌乳濃縮物及び粉乳の調製
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/14 20060101AFI20230217BHJP
   A23C 9/18 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
A23C9/14
A23C9/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538256
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(85)【翻訳文提出日】2022-08-22
(86)【国際出願番号】 US2020065131
(87)【国際公開番号】W WO2021126859
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】62/950,161
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515301926
【氏名又は名称】フェアライフ、 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シャキル・ウア・レーマン
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ピーター・ドールマン
【テーマコード(参考)】
4B001
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC05
4B001AC15
4B001AC25
4B001AC46
4B001BC04
4B001BC08
4B001BC99
4B001EC99
(57)【要約】
加熱処理工程の後に乳製品を正浸透に供することにより、少なくとも35wt.%の固形分、多くの場合40~50wt.%の固形分を有する無菌乳製品組成物を調製するための方法が開示されている。加熱処理工程は、直接的スチームインジェクション又は直接的スチームインフュージョンを介したUHT殺菌を含むことができる。続いて、無菌乳製品組成物を乾燥させて、乳製品粉末組成物を形成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無菌乳製品組成物を作製するための方法であって、前記方法が、
(a)乳製品を正浸透に供して、少なくとも約35wt.%の固形分を有する乳製品濃縮物を形成する工程、及び
(b)前記乳製品濃縮物を加熱処理して、前記無菌乳製品組成物を形成する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記乳製品濃縮物及び前記無菌乳製品組成物が、
少なくとも約37wt.%の固形分、少なくとも約38wt.%の固形分、少なくとも約40wt.%の固形分、又は少なくとも約42wt.%の固形分、及び
約60wt.%以下の固形分、約55wt.%以下の固形分、約50wt.%以下の固形分、又は約48wt.%以下の固形分
を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)が、
約15psig以下の圧力、
約30psig以下の圧力、
約45psig以下の圧力、
約60psig以下の圧力、又は
約75psig以下の圧力
で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)が、
約5~約50℃の範囲の温度、
約10~約40℃の範囲の温度、
約8~約25℃の範囲の温度、
約8~約20℃の範囲の温度、又は
約5~約15℃の範囲の温度
で行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)が、
固形分のwt.%ベースで、少なくとも約2の濃縮係数、少なくとも約3の濃縮係数、少なくとも約3.5の濃縮係数、少なくとも約4の濃縮係数、少なくとも約4.5の濃縮係数、又は少なくとも約5の濃縮係数、及び
固形分のwt.%ベースで、約10以下の濃縮係数、約8以下の濃縮係数、約7以下の濃縮係数、又は約6以下の濃縮係数
で行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)が、
ミネラルのwt.%ベースで、少なくとも約2の濃縮係数、少なくとも約3の濃縮係数、少なくとも約3.5の濃縮係数、少なくとも約4の濃縮係数、少なくとも約4.5の濃縮係数、又は少なくとも約5の濃縮係数、及び
ミネラルのwt.%ベースで、約10以下の濃縮係数、約8以下の濃縮係数、約7以下の濃縮係数、又は約6以下の濃縮係数
で行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(a)が、
タンパク質のwt.%ベースで、少なくとも約2の濃縮係数、少なくとも約3の濃縮係数、少なくとも約3.5の濃縮係数、少なくとも約4の濃縮係数、少なくとも約4.5の濃縮係数、又は少なくとも約5の濃縮係数、及び
タンパク質のwt.%ベースで、約10以下の濃縮係数、約8以下の濃縮係数、約7以下の濃縮係数、又は約6以下の濃縮係数
で行われる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記乳製品濃縮物の体積が、
前記乳製品の体積の約60%以下、
前記乳製品の体積の約50%以下、
前記乳製品の体積の約40%以下、
前記乳製品の体積の約30%以下、又は
前記乳製品の体積の約25%以下
である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記加熱処理の工程が、約135℃~約145℃の範囲の温度で、約1~約10秒の範囲の期間のUHT殺菌を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記加熱処理の工程が、約148℃~約165℃の範囲の温度で、約0.05~約1秒の範囲の期間のUHT殺菌を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記加熱処理の工程が、約150℃~約155℃の範囲の温度で、約0.08~約0.2秒の範囲の期間のUHT殺菌を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記加熱処理の工程が、間接的加熱を使用して行われるUHT殺菌を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記加熱処理の工程が、直接的スチームインジェクションを使用して行われるUHT殺菌を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記加熱処理の工程が、直接的スチームインフュージョンを使用して行われるUHT殺菌を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記加熱処理の工程が、約80℃~約95℃の範囲の温度で、約2~約15分間の範囲の期間の低温殺菌を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記乳製品が、全乳、低脂肪乳、脱脂乳、バター乳、香味付けした乳、低ラクトース乳、高タンパク質乳、ラクトースフリー乳、限外濾過乳、ミクロ濾過乳、又は高タンパク質ラクトースフリー脱脂乳である、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記乳製品が、
約0.05~約10wt.%の脂肪含有量、又は
約0.1~約5wt.%の脂肪含有量
を有する、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記乳製品が、
約1~約15wt.%のタンパク質含有量、
約3~約10wt.%のタンパク質含有量、
約2~約8wt.%のタンパク質含有量、又は
約3~約6wt.%のタンパク質含有量
を有する、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記乳製品が、
約0.5~約2wt.%のミネラル含有量、
約0.5~約1.5wt.%のミネラル含有量、又は
約0.5~約1wt.%のミネラル含有量
を有する、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記乳製品が、
約6wt.%以下のラクトース含有量、
約4wt.%以下のラクトース含有量、
約1wt.%以下のラクトース含有量、又は
約0.1wt.%以下のラクトース含有量
を有する、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記乳製品が、
約5~約15wt.%の固形分含有量、
約6~約12wt.%の固形分含有量、
約7~約10wt.%の固形分含有量、又は
約8~約10wt.%の固形分含有量
を有する、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記乳製品が、約0.5wt.%以下の脂肪、約2~約8wt.%のタンパク質、約0.5~約2wt.%のミネラル、及び約6wt.%以下のラクトースを含有する、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記乳製品が、約0.5~約1.5wt.%の脂肪、約2~約8wt.%のタンパク質、約0.5~約2wt.%のミネラル、及び約6wt.%以下のラクトースを含有する、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記乳製品が、約1.5~約2.5wt.%の脂肪、約2~約8wt.%のタンパク質、約0.5~約2wt.%のミネラル、及び約6wt.%以下のラクトースを含有する、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記乳製品が、約2.5~約5wt.%の脂肪、約2~約8wt.%のタンパク質、約0.5~約2wt.%のミネラル、及び約6wt.%以下のラクトースを含有する、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記正浸透工程が、約0.001μm以下の孔径を有する膜システムを使用して行われる、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記正浸透工程が、ナトリウム、カリウム、塩化物、又はこれらの組合せを含む正浸透ドロー溶液を利用する、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記正浸透工程が、スクロース、グルコース、ガラクトース、ラクトース、フルクトース、マルトース、又はこれらの組合せを含む正浸透ドロー溶液を利用する、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記正浸透工程が、乳酸カリウムを含む正浸透ドロー溶液を利用する、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記正浸透工程が、乳ミネラルを含む正浸透ドロー溶液を利用する、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記正浸透工程が、
約0.4~約1.5wt.%の乳ミネラル、
約0.3~約3wt.%の乳ミネラル、
約0.3~約5wt.%の乳ミネラル、
約18~約32wt.%の乳ミネラル、
約10~約50wt.%の乳ミネラル、又は
約5~60wt.%の乳ミネラル
を含む正浸透ドロー溶液を利用する、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記正浸透工程が、RO残余分画分、UF透過物画分のNF透過物画分、又はこれらの組合せを含む正浸透ドロー溶液を利用する、請求項1から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
工程(a)が、前記乳製品を正浸透に供して、前記乳製品濃縮物及び希釈されたドロー溶液を形成する工程を含み、
前記方法が、(c)前記希釈されたドロー溶液から少なくとも一部分の水を除去してドロー溶液を形成する工程を更に含む、
請求項1から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記希釈されたドロー溶液から少なくとも一部分の水を除去する工程が、前記希釈されたドロー溶液を逆浸透に供する工程を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
逆浸透が、約0.001μm以下の孔径を有する膜システムを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記希釈されたドロー溶液から少なくとも一部分の水を除去する工程が、前記希釈されたドロー溶液を蒸発に供する工程を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
蒸発が、50℃より高い温度及び大気圧より低い圧力を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記乳製品濃縮物及び前記無菌乳製品組成物が、
約0.05~約10wt.%の脂肪含有量、又は
約0.1~約5wt.%の脂肪含有量
を有する、請求項1から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記乳製品濃縮物及び前記無菌乳製品組成物が、
約12~約32wt.%のタンパク質含有量、
約14~約28wt.%のタンパク質含有量、
約12~約20wt.%のタンパク質含有量、又は
約20~約30wt.%のタンパク質含有量
を有する、請求項1から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記乳製品濃縮物及び前記無菌乳製品組成物が、
約2~約5wt.%のミネラル含有量、
約2.2~約4.8wt.%のミネラル含有量、又は
約2.5~約4.5wt.%のミネラル含有量
を有する、請求項1から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記乳製品濃縮物及び前記無菌乳製品組成物が、
約2~約30wt.%の炭水化物含有量、
約5~約15wt.%の炭水化物含有量、又は
約20~約30wt.%の炭水化物含有量
を有する、請求項1から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記乳製品濃縮物及び前記無菌乳製品組成物が、
約35~約60wt.%の固形分含有量、
約38~約50wt.%の固形分含有量、又は
約40~約55wt.%の固形分含有量
を有する、請求項1から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記乳製品濃縮物及び前記無菌乳製品組成物が、
約800~約2000ppmのナトリウム含有量、
約5000~約9500ppmのカリウム含有量、
約3000~約8000ppmのカルシウム含有量、
又はこれらの任意の組合せ
を有する、請求項1から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
成分を前記無菌乳製品組成物と合わせる工程を更に含み、前記成分が、糖/甘味剤、着香剤、保存剤、安定剤、乳化剤、プレバイオティクス物質、プロバイオティクス細菌、ビタミン、ミネラル、オメガ3脂肪酸、フィトステロール、抗酸化剤、着色剤、又はこれらの任意の組合せを含む、請求項1から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
工程(a)の前に、前記乳製品をラクターゼ酵素と合わせて、正浸透前に0.1wt.%未満のラクトースを有する前記乳製品を形成する工程を更に含む、請求項1から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記無菌乳製品組成物を容器内に包装する工程を更に含む、請求項1から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
請求項1から46のいずれか一項に記載の方法で調製した無菌乳製品組成物。
【請求項48】
乳製品粉末組成物を作製するための方法であって、前記方法が、
請求項1から46のいずれか一項に記載の方法、及び
(c)前記無菌乳製品組成物を乾燥させて、前記乳製品粉末組成物を形成する工程
を含む、方法。
【請求項49】
乾燥が、噴霧乾燥を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
請求項48又は49に記載の方法により調製した乾燥乳製品粉末組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2020年12月15日にPCT国際特許出願として出願し、2019年12月19日に出願した米国仮特許出願第62/950,161号の優先権を主張し、これらの開示はその全体において参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は一般的に乳製品組成物を濃縮することに関し、特に高固形分乳製品組成物及び乾燥又は粉末乳製品組成物を調製する正浸透(forward osmosis)技術の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
膜濾過プロセスは流体に対する非熱的分留及び濃縮技術である。流体が加圧下で半浸透性膜を通過する場合、膜の表面で保持された成分は、残余分又は濃縮物と呼ばれ、膜を通り抜けた材料は、総合的に透過物と呼ばれる。膜技術は一般的に分留又は濃縮のために加熱又は化学物質を含まず、したがって流体の特性に悪影響を及ぼすことがなく、これは乳及びその成分に対して有益である。流体、例えば乳がこれら膜技術により分画される場合、通常タンパク質は変性せず、酵素は不活化せず、ビタミンは破壊されず、タンパク質と糖との反応は生じない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】IUPAC Compendium of Chemical Terminology、第2版(1997年)
【非特許文献2】Standard Methods for the examination of dairy products、第17版(2004年)、American Public Health Association、Washington DC
【非特許文献3】official method of Analysis of AOAC、International 第8版、methods 965.17及び985.01
【発明の概要】
【0005】
本概要は、本明細書に更に記載の概念のうちから選択されたものを簡略化した形態で紹介するために提供される。本概要は、特許請求された主題の必要とされる又は本質的な特徴を特定することを意図するわけではない。また本概要は、特許請求された主題の範囲を限定するために使用されることを意図するわけでもない。
【0006】
本発明の実施形態に従い、無菌乳製品組成物を作製するための方法が開示される。本方法は、(a)乳製品を正浸透に供して、少なくとも約35wt.%の固形分を有する乳製品濃縮物を形成する工程、及び(b)乳製品濃縮物を加熱処理して、無菌乳製品組成物を形成する工程を含むことができる。一般的に、乳製品濃縮物は、約35~約60wt.%の固形分を有することができ、より多くの場合、工程(a)の後で約40~約50wt.%の固形分を有することができ、工程(b)は間接的加熱、直接的スチームインジェクション、又は直接的スチームインフュージョンを使用して行われるUHT殺菌を含むことができる。
【0007】
有利なことに及び予想外に、正浸透工程は、水の50%超、場合によっては、最大で水の70~80%を乳製品から除去することができ、逆浸透により達成することができる含有量よりもずっと高い固形分含有量を有する乳製品濃縮物をもたらす。続いて、濃縮物は、乾燥させて、乾燥乳製品粉末組成物を形成することができる。
【0008】
前述の概要も以下の詳細な説明も例を提供するもので、単なる説明である。したがって、前述の概要及び以下の詳細な説明は、制限的と考えられるべきではない。更に、本明細書に記載のものに加えて、特徴又は変化形が提供され得る。例えば、ある特定の実施形態は、詳細な説明に記載されている様々な特徴の組合せ及び下位の組合せを対象とすることができる。
【0009】
定義
本明細書で使用されている用語をより明確に定義するために、以下の定義が提供される。他に指摘されていない限り、以下の定義は本開示に適用可能である。用語が本開示で使用されているが、本明細書で具体的に定義されていない場合には、IUPAC Compendium of Chemical Terminology、第2版(1997年)からの定義を適用することができる。ただしこれは、その定義が本明細書で適用された任意の他の開示又は定義と矛盾すること、又はその定義が適用され得る任意の請求項を不正確又は不可能にすることがない場合に限る。参照により本明細書に組み込まれる任意の文献により提供される任意の定義又は用法が本明細書に提供されている定義又は用法と矛盾する範囲内に限り、本明細書に提供されている定義又は用法が優先される。
【0010】
本明細書では、主題の特徴は、特定の及び/又は実施形態内で、異なる特徴の組合せが想定され得るように記載されている。本明細書で開示されているありとあらゆる態様、及び/又は実施形態、及び/又は特徴に対して、特定の組合せの明白な説明があってもなくても、本明細書に記載されている設計、組成物、プロセス、及び/又は方法に悪影響を及ぼさないすべての組合せが想定される。更に他に明示的に列挙されていない限り、本明細書で開示されている任意の態様、及び/又は実施形態、及び/又は特徴を組み合わせて、本発明に従った本発明の設計、組成物、プロセス、及び/又は方法を表現することができる。
【0011】
本開示では、組成物及び方法は、多くの場合、様々な成分又は工程を「含む」という言葉で記載されているが、組成物及び方法はまた、別途述べられていない限り、様々な成分又は工程「から本質的になる」又は「からなる」ことができる。
【0012】
「a」、「an」、及び「the」という用語は、他に特定されていない限り、複数の代替形態、例えば、少なくとも1つの代替形態を含むことを意図する。例えば、「一成分」の開示は、他に特定されていない限り、1つの成分、又は1つより多くの成分の混合物又は組合せを包含することが意図されている。
【0013】
開示された方法では、「合わせる」という用語は、他に特定されていない限り、成分を、任意の順序、任意の方法で、及び任意の時間の長さの間、接触させること又は添加することを包含する。例えば、成分は、ブレンド又は混合することにより合わせることができる。
【0014】
「ラクトース画分」は、ラクトース又は任意のその誘導体、例えば、当業者であれば認識しているような、加水分解した、非加水分解した、エピマー化した、異性化した、又はオリゴ糖に変換したもの等を豊富に含む乳成分画分を包含することを意図する。更に、別途述べられていない限り、この用語はまた、グルコース/ガラクトース、例えば、ラクターゼ酵素によるラクトースの処理によって生成され得るグルコース/ガラクトースを包含することが意図されている。
【0015】
本発明の実施又は試験において、本明細書に記載されているものと類似の又は同等の任意の方法及び材料を使用することができるが、典型的な方法及び材料が本明細書に記載されている。
【0016】
様々な数値的な範囲が本明細書で開示されている。本明細書で任意の種類の範囲が開示又は特許請求されている場合、その意図は、他に特定されていない限り、このような範囲が合理的に包含することができる個々にそれぞれ可能な数、例えば、範囲の終点並びにその中に包含される任意の下位範囲及び下位範囲の組合せを含めた数を開示する又は主張することにある。代表的な例として、本出願は、ある特定の実施形態では、約3~約10wt.%のタンパク質を有することができる乳製品を開示している。乳製品のタンパク質含有量が約3~約10wt.%の範囲であることができるという開示では、その意図は、タンパク質含有量は範囲内の任意の量であることができ、例えば、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、又は約10wt.%と等しい量であることができると述べることにある。更に、乳製品は、約3~約10wt.%の任意の範囲内のタンパク質の量(例えば、約3~約6wt.%)を含有することができ、これはまた約3~約10wt.%の間の範囲の任意の組合せを含む。更に、「約」の付いた特定値が開示されているすべての事例では、その値自体が開示されている。よって、約3~約10wt.%のタンパク質含有量の開示はまた、3~10wt.%(例えば、3~6wt.%)のタンパク質含有量も開示しており、これはまた、3~10wt.%の範囲の任意の組合せを含む。同様に、本明細書で開示されているすべての他の範囲は、この例と類似の方式で解釈される。
【0017】
「約」という用語は、量(amounts)、サイズ、製剤、パラメーター、並びに他の量(quantities)及び特徴は、正確ではなく、正確である必要はなく、それより大きい又は小さいことも含めて近似していてもよく、所望する場合、許容差、換算率、四捨五入、測定誤差等、及び当業者に公知の他の要因を反映していることを意味する。一般的に、量(amounts)、サイズ、製剤、パラメーター又は他の量(quantities)又は特徴は、そのように明示的に述べられているかいないかに関わらず、「約」であり、又は「近似」している。「約」という用語はまた、特定の最初の混合物から生成した組成物に対して異なる平衡条件により異なる量を包含する。「約」という用語で修飾されているか、いないかに関わらず、特許請求の範囲はその量の当量を含む。「約」という用語は、報告された数値の10%以内、好ましくは報告された数値の5%以内を意味することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
高固形分無菌乳製品組成物を調製するための方法は、本明細書に開示され、記載されている。このような方法は、高固形分乳製品濃縮物を生成するための正浸透工程、これに続いて高固形分無菌乳製品組成物を形成するための加熱処理工程を利用することができる。任意選択で、乳製品組成物は、乾燥させて、乾燥乳製品組成物を形成することができる(本明細書で乳製品粉末組成物とも呼ばれる)。
【0019】
正浸透(FO)は、水移動に対する推進力が、半透過性膜を横断する水の活動である低圧膜処理である。水移動は、フィード側(低濃度のイオン又は低い浸透圧)から、半透過性膜を横断して、ドロー溶液側(高濃度のイオン又は高い浸透圧)まで、両側の浸透圧差がゼロ近くになるまで生じる。逆浸透を上回る正浸透の利点は多い。正浸透は低い作動圧を使用し、エネルギー消費を減少させる。正浸透は、加熱蒸発プロセスと比較して、より低い温度、例えば、室温以下で実施され、したがって変色、臭気、及び異味をもたらし得る乳成分の品質悪化を防止する。更に、正浸透は、他の濾過技術と比較して、より良い製品回収をもたらし、環境への影響が少なくてすむ。正浸透における汚染の量はずっとより低く、他の濾過技術(特に、逆浸透)と比較して可逆的であり、膜クリーニング及び補充にかかるコスト及び時間を節約できる。
【0020】
有利なことに及び予想外に、乳製品出発材料は、逆浸透を使用して達成することができる量よりはるかに高い固形分含有量にまで効率的に濃縮させることができる。生成した生成物の高い固形分含有量により、輸送コストは減少する。最後に、正浸透のモジュールは逆浸透及び蒸発ユニットよりもサイズがより小さい。
【0021】
本明細書では、正浸透プロセスのいくつかの例が開示されており、これらの例では、乳成分の分留により得ることができる流れを濃縮するための逆浸透工程が、正浸透の工程に置き換えられている。生乳は、最初に脂肪分離に供して、クリーム及び脱脂乳を得ることができる。次いで、脱脂乳を限外濾過に供して、限外濾過残余分及び限外濾過透過物を生成することができる。次いで、限外濾過透過物をナノ濾過に供し、次いでナノ濾過透過物を正浸透に供して、ミネラルを濃縮することができる。ポリマー膜を介して水をドロー溶液(例えば、65%乳酸カリウム、ブライン等)中に分散させ、その一方でミネラルを膜の他の側に集める。水は、希釈したドロー溶液から逆浸透又は加熱蒸発のいずれかで除去することができる。回収したドロー溶液は将来の使用のために再利用することができる。乳製品中のミネラル含有量は、多くの場合2倍、3倍、4倍等にすることができる。
【0022】
他の例では、限外濾過残余分及び透過物を正浸透により30~50wt.%の固形分に濃縮して、作業効率及び輸送効率を改善することができる。濃縮された限外濾過残余分は、極めて濃縮された乳タンパク質濃縮物を特徴とすることができる。ナノ濾過残余分は、15wt.%未満の固形分~50wt.%以上の固形分へと濃縮して、極めて濃縮されたラクトース生成物を生成することができる。更に、本明細書で開示されている方法に従い、脱脂乳は、正浸透により最大で48~50wt.%の固形分に濃縮し、次いで噴霧乾燥して95~97wt.%の固形分とすることができる。
【0023】
本発明の実施形態によると、無菌乳製品組成物を作製するための方法は、(a)乳製品を正浸透に供して、少なくとも約35wt.%の固形分を有する乳製品濃縮物を形成する工程、及び(b)乳製品濃縮物を加熱処理して、無菌乳製品組成物を形成する工程を含む(又はこれらから本質的になる、又はこれらからなる)ことができる。一般的に、これらの方法の特徴(中でも、例えば、乳製品の特徴、乳製品濃縮物の特徴、無菌乳製品組成物の特徴、加熱処理条件、及び固形分含有量)は、独立して本明細書に記載されており、これらの特徴は、任意の組合せで組み合わせて、開示された方法を更に説明することができる。更に、他のプロセス工程は、別途述べられていない限り、開示された方法において列挙された工程のいずれかの前、その間、及び/又はその後に行うことができる。更に、開示された方法のいずれかにより生成された任意の無菌乳製品組成物(例えば、完成した乳製品、インスタント製品)は本開示の範囲内であり、本明細書に包含される。
【0024】
濾過技術(例えば、限外濾過、ナノ濾過、正浸透等)は、適切な条件(例えば、圧力)下で、膜システムに(又は選択的バリア)混合物を通すことによって、混合物、例えば、乳中の成分を分離又は濃縮することができる。濃縮/分離は多くの場合、分子のサイズに基づくことができる。膜により保持される流れは残余分(又は濃縮物)と呼ばれる。
【0025】
工程(a)における乳製品は、脱脂乳、又は代替的に、全乳を含む(又はこれらから本質的になる、又はこれらからなる)ことができる。一部の実施形態では、本方法は、生乳又は新鮮な乳(全乳)を分離して(例えば、遠心分離する)、乳製品(脱脂乳とも呼ばれる)及び脂肪豊富な画分(またクリーム又はバター脂肪とも呼ばれる)にする工程を更に含むことができる。生乳又は新鮮な乳(全乳)は、乳牛の乳であることができ、これはおよそ87wt.%の水、3~4wt.%のタンパク質、4~5wt.%の炭水化物/ラクトース、3~4wt.%の脂肪、及び0.3~0.8wt.%のミネラルを含有する。新鮮又は生乳生成物が脱脂乳生成物及び脂肪豊富な画分に分離される場合、脂肪豊富な画分は通常、高レベルの脂肪(例えば、20~50wt.%の脂肪、又は30~50wt.%の脂肪)及び固形分(例えば、30~60wt.%、又は40~55wt.%)を含有し、多くの場合、これに限定されないが、およそ1.5~4wt.%のタンパク質、2~5wt.%のラクトース、及び0.2~0.9wt.%のミネラルを含有する。
【0026】
生乳は、そのまま又は低温殺菌後、正浸透により濃縮して、無菌全乳濃縮物又は粉乳を生成する。正浸透プロセスは、粉末製造中真空下での加熱蒸発により乳を濃縮する工程を排除する。これは、正浸透は加熱蒸発で得た乳固形分の濃縮に匹敵し得るからである。乳を噴霧乾燥して粉乳にする前に、乳の逆浸透と加熱蒸発を組み合わせて使用して乳を濃縮すると、エネルギー費を減少させ、粉乳の品質を改善することができる。しかし、正浸透は、粉乳製造中の逆浸透及び加熱蒸発の工程を排除することができ、これによってエネルギー費を更に減少させ、粉乳の品質を改善することができる。加熱蒸発の間、真空下での熱凝縮により新鮮な乳の揮発物の一部が失われる。正浸透プロセシングの間、加熱又は真空は必要とされないので、新鮮な乳揮発物は、正浸透を使用することにより最終的に得られる粉末内に保持される。
【0027】
本明細書で開示されている方法において利用することができる代表的及び非限定的例(乳ベースの)乳製品として、全乳、低脂肪乳、脱脂乳、バター乳、香味付けした乳、低ラクトース乳、高タンパク質乳、ラクトースフリー乳、限外濾過乳、ミクロ濾過乳、又は高タンパク質、ラクトースフリー脱脂乳等を挙げることができる。
【0028】
これに限定されないが、乳製品は、約1~約15wt.%、又は約3~約10wt.%のタンパク質含有量を有することができる。一部の実施形態では、乳製品は、約2~約8wt.%、例えば、約3~約6wt.%のタンパク質のタンパク質含有量を有することができる。更に又は代替的に、乳製品は、約0.05~約10wt.%、又は約0.1~約5wt.%の脂肪の脂肪含有量を有することができる。更に又は代替的に、乳製品は、約0.5~約2wt.%、約0.5~約1.5wt.%、又は約0.5~約1wt.%のミネラルのミネラル含有量を有することができる。更に又は代替的に、乳製品は、約6wt.%以下、又は約4wt.%以下のラクトース含有量、及び一部の実施形態では、約1wt.%以下、又は約0.1wt.%以下のラクトースのラクトース含有量を有することができる。
【0029】
乳製品の典型的な固形分含有量は、正浸透の前には、約5~約15wt.%の固形分、又は約6~約12wt.%の固形分であることができる。一部の実施形態では、乳製品の固形分含有量は、約7~約10wt.%、又は約8~約10wt.%の固形分の範囲であることができる。
【0030】
本発明に従い乳製品の代表的及び非限定的例は、約0.5wt.%以下の脂肪、約2~約8wt.%のタンパク質、約0.5~約2wt.%のミネラル、及び約6wt.%以下のラクトースを含有することができる。本発明に従い乳製品の別の代表的及び非限定的例は、約0.5~約1.5wt.%の脂肪、約2~約8wt.%のタンパク質、約0.5~約2wt.%のミネラル、及び約6wt.%以下のラクトースを含有することができる。しかし、本発明に従い乳製品の別の代表的及び非限定的例は、約1.5~約2.5wt.%の脂肪、約2~約8wt.%のタンパク質、約0.5~約2wt.%のミネラル、及び約6wt.%以下のラクトースを含有することができる。更に、本発明に従い乳製品の別の代表的及び非限定的例は、約2.5~約5wt.%の脂肪、約2~約8wt.%のタンパク質、約0.5~約2wt.%のミネラル、及び約6wt.%以下のラクトースを含有することができる。
【0031】
任意選択で、開示された方法は、ラクターゼ酵素を用いた工程(a)前に、乳製品を処理する(合わせる)ことによって、0.1wt.%未満のラクトース、ある場合には、0.05wt.%未満のラクトース、又は0.01wt.%未満のラクトースを有する乳製品を形成する工程を更に含むことができる。よって、正浸透前に、乳製品は、ラクターゼ酵素と組み合わせて、ラクトースフリーの乳製品を形成することができる。代替的に、乳製品濃縮物は、正浸透工程(a)の後、ただし工程(b)の加熱処理前に、ラクターゼ酵素で処理することもできるし、又は無菌乳製品組成物は工程(b)の後、ラクターゼ酵素で処理することもできる。ラクターゼ酵素は、無菌投与システムの使用による超高温加熱処理後、無菌の乳製品組成物に投与することができる。通常、ラクターゼ酵素での処理は、正浸透工程の前に生じる。
【0032】
工程(a)において、乳製品は、正浸透工程に供して、乳製品濃縮物を生成することができ、乳製品濃縮物は通常少なくとも35wt.%の固形分を有する。更に、水は、正浸透工程において乳製品から除去して、希釈されたドロー溶液を形成することができる。正浸透は通常、標準的な逆浸透よりずっと低い圧力(及びより少ないエネルギーを使用)で実施され、他の材料は(例えば、タンパク質、脂肪、ラクトース又は他の糖、及びミネラル)通過しないが、水が通過するような孔径を有する半浸透性膜システムを利用している。作動圧は通常、約75psig以下、約60psig以下、約45psig以下、約30psig以下、又は約15psig以下である。正浸透工程の作動圧に対する例示的及び非限定的な範囲は、約0psig(大気圧)~約75psig、約0psig~約45psig、約1psig~約60psig、約1psig~約30psig、約1psig~約15psig、約10psig~約75psig、約15~約60psig等を含む。
【0033】
これに限定されないが、正浸透工程は、約5~約50℃、代替的に、約10~約40℃、代替的に、約8~約25℃、代替的に、約8~約20℃、又は代替的に、約5~約15℃の範囲の温度で行うことができる。正浸透膜システムは、またこれに限定されないが、100Daよりずっと低い分子量カットオフを有し、したがって、水以外の成分は正浸透プロセスにおいて濃縮することができる(例えば、ミネラル)。一般的に、正浸透は、約0.001μm以下の孔径を有する膜システムを含む。
【0034】
逆浸透と比較して、本発明の実施形態に従う正浸透工程は、より高い固形分含有量及びより高いミネラル含有量を効率的に達成することができる。更に逆浸透と比較して、正浸透の間の汚染が少なく、汚染は簡単に除去することができ、コストがより低く、膜クリーニング及び補充に対するダウンタイムが少なくてすむ。更に、正浸透システムは一般的に、サイズ及び設置面積が逆浸透システムよりも小さく、小さな又は密集した空間での改造を達成することができる。
【0035】
半透過性膜を介して水が引き出されることになる溶液より高い濃度の溶質又はイオンを有する任意の適切なドロー溶液を正浸透工程に対して使用することができる。一般的に、高濃度の一価イオン、例えば、ナトリウム、カリウム、塩化物等、並びにこれらの組合せを含有する溶液を使用することができる。更に又は代替的に、ドロー溶液は高濃度の任意の適切な糖を含有することができ、この代表的な例として、スクロース、グルコース、ガラクトース、ラクトース、フルクトース、マルトース等、並びにこれらの組合せを含むことができる。一部の実施形態では、ドロー溶液は乳酸カリウム等を含むことができる一方で、他の実施形態では、正浸透ドロー溶液は濃縮された乳ミネラルを含むことができる。例えば、正浸透ドロー溶液は、約5~約60wt.%の乳ミネラル、代替的に、約10~約50wt.%の乳ミネラル、代替的に、約18~約32wt.%の乳ミネラル、代替的に、約0.3~約5wt.%の乳ミネラル、代替的に、約0.3~約3wt.%の乳ミネラル、又は代替的に、約0.4~約1.5wt.%の乳ミネラルを含むことができる。一実施形態では、正浸透ドロー溶液は、RO残余分画分を含むことができ、別の実施形態では、UF透過物画分のNF透過物画分、又はRO残余分画分とNF透過物画分の混合物若しくは組合せを含むことができる。別の実施形態では、例えば、ドロー溶液は、逆浸透を使用して調製した又は正浸透を使用して調製したミネラル濃縮物であることができる。別の実施形態では、ドロー溶液は、ROミネラル濃縮物と、UF透過物画分のNF透過物画分又は濃縮されたNF透過物画分の混合物であることができる。更に別の実施形態では、ドロー溶液は、UF透過物画分の加水分解したNF残余分画分、任意選択でより高い固形分含有量へと濃縮された、UF透過物画分の加水分解したNF残余分画分であることができる。
【0036】
フィード流(例えば、乳製品)とドロー溶液との間の濃度差を使用して、フィード流から水を除去する。一般的に、正浸透は、2種の溶液の間に半透過性膜又はバリア(例えば、ポリマー膜)が存在する場合、浸透圧により水をより低い濃度溶液(フィード側)から除去し、より高い濃度溶液(ドロー溶液)に入れる。よって、フィード流(例えば、乳製品)の固形分、ミネラル、及び他の非水成分は正浸透で濃縮され、本明細書に記載されている乳製品濃縮物をもたらす。
【0037】
工程(a)において、乳製品を正浸透に供することによって、乳製品濃縮物及び希釈されたドロー溶液を形成することができる。任意選択で、正浸透から生成した希釈されたドロー溶液は、少なくとも一部分の水を希釈されたドロー溶液から除去して、ドロー溶液を形成する工程に供することができる。ドロー溶液は、正浸透工程で再使用することができる。一実施形態では、少なくとも一部分の水を希釈されたドロー溶液から除去する工程は、希釈されたドロー溶液を逆浸透に供する工程を含むことができる。逆浸透は逆浸透膜を通過する、水以外の実質的にすべての成分が保持される(残余分)、微細な濾過プロセス又は濃縮プロセスである。多くの場合、逆浸透膜システムは100Daよりずっと低い分子量カットオフを有し、したがって、水以外の成分は逆浸透プロセス(例えば、ミネラル)において濃縮される。一般的に、逆浸透は、約0.001μm以下の孔径を有する膜システムを含む。作動圧は通常、450~1500psig、又は450~600psigの範囲である。約5~約45℃、又は約15~約45℃の範囲の温度を多くの場合使用することができる。
【0038】
代替的に、希釈されたドロー溶液から少なくとも一部分の水を除去する工程は、希釈されたドロー溶液を蒸発に供する工程を含むことができる。これに限定されないが、50℃より高い温度並びに大気圧より低い圧力が、多くの場合利用される。蒸発であっても、逆浸透であっても、生成した水画分はいかなる乳成分もドロー溶液成分(正浸透から得たもの)も実質的に含まない。よって、水画分は、実質的にすべて水、例えば、少なくとも約99wt.%の水、少なくとも約99.5wt.%の水、又は少なくとも約99.8wt.%の水であることができる。
【0039】
有利なことに、正浸透後の乳製品濃縮物(又は無菌乳製品組成物)は、予想外なことに、逆浸透を使用して達成することができるwt.%固形分含有量より有意に大きい固形分含有量のwt.%を有することができる。乳製品濃縮物(又は無菌乳製品組成物)は、少なくとも約35wt.%の固形分、少なくとも約37wt.%の固形分、少なくとも約38wt.%の固形分、少なくとも約40wt.%の固形分、又は少なくとも約42wt.%の固形分を有し、且つ一般的に、約60wt.%以下の固形分、約55wt.%以下の固形分、約50wt.%以下の固形分、又は約48wt.%以下の固形分を有することができる。乳製品濃縮物(又は無菌組成物)の固形分含有量に対する代表的及び非限定的な範囲は、約35~約60wt.%の固形分、約35~約50wt.%の固形分、約35~約48wt.%の固形分、約38~約48wt.%の固形分、約40~約55wt.%の固形分、約40~約50wt.%の固形分、約42~約55wt.%の固形分等を含むことができる。
【0040】
予想外に、本明細書で開示されている正浸透工程は、進入する乳製品フィード流の固形分含有量(又はタンパク質含有量、又はミネラル含有量)を増加させるための非常に有効な技術である。少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約3.5、少なくとも約4、少なくとも約4.5、及び少なくとも約5の濃縮係数を、本明細書で開示されている正浸透工程を介して達成することができ、多くの場合、特定の実施形態では、濃縮係数は約6、7、8、9、又は10までにもできる。これら濃縮係数は、固形分のwt.%ベースで、並びにタンパク質のwt.%ベース及びミネラルのwt.%ベースで適用可能である。例えば、0.8wt.%のミネラル、3.4wt.%のタンパク質、及び9.2wt.%の固形分を有する乳製品を正浸透に供して、3.6wt.%のミネラル、17wt.%のタンパク質、及び44wt.%の固形分を有する乳製品濃縮物(又は無菌の乳製品組成物)をもたらすことは、ミネラルベースで4.5の濃縮係数、タンパク質ベースで5の濃縮係数、及び固形分ベースで4.8の濃縮係数へと書き換えられる。
【0041】
正浸透工程は、乳製品の著しい体積の減少(例えば、水の除去)をもたらすことができる。例えば、乳製品濃縮物(又は無菌乳製品組成物)の体積は、乳製品の体積の約60%以下、代替的に、乳製品の体積の約50%以下、代替的に、乳製品の体積の約40%以下、代替的に、乳製品の体積の約30%以下、又は代替的に、乳製品の体積の約20~25%以下であることができる。従来の逆浸透と正浸透を比較した構成例に示されている通り(Table VI(表4)を参照されたい)、正浸透は、水の87%を脱脂乳から除去することができ、これに対して、従来の逆浸透による水の除去は67%のみである。
【0042】
これに限定されないが、乳製品濃縮物(又は無菌乳製品組成物)は、約12~約32wt.%、又は約14~約28wt.%のタンパク質含有量を有することができる。一部の実施形態では、乳製品濃縮物(又は無菌乳製品組成物)は、約12~約20wt.%、又は約20~約30wt.%のタンパク質のタンパク質含有量を有することができる。更に又は代替的に、乳製品濃縮物(又は無菌乳製品組成物)は、約0.05~約10wt.%、又は約0.1~約5wt.%の脂肪の脂肪含有量を有することができる。更に又は代替的に、乳製品濃縮物(又は無菌乳製品組成物)は、約2~約5wt.%、約2.2~約4.8wt.%、又は約2.5~約4.5wt.%のミネラルのミネラル含有量を有することができる。更に又は代替的に、乳製品濃縮物(又は無菌乳製品組成物)は、約2~約30wt.%、例えば、約5~約15wt.%、又は約20~約30wt.%の炭水化物の炭水化物含有量を有することができる。
【0043】
本明細書中で論じたように、正浸透の後、乳製品濃縮物(及びしたがって、無菌乳製品組成物)は非常に高い固形分含有量を有することができ、固形分含有量は通常約35~60wt.%の範囲内にある。例えば、一実施形態では、乳製品濃縮物(又は無菌乳製品組成物)は、約38~約50wt.%の固形分含有量を有することができ、別の実施形態では、乳製品濃縮物(又は無菌乳製品組成物)は約40~約55wt.%の固形分含有量を有することができる。
【0044】
乳製品濃縮物(及び無菌乳製品組成物)のミネラル含有量は、正浸透を介して有意に増加する。乳製品濃縮物(又は無菌乳製品組成物)中の特定のミネラルに対して、ナトリウム含有量は約800~約2000質量ppm(又は約1000~約1800ppm)の範囲であることができ、カリウム含有量は約5000~約9500ppm(又は約6000~約9000ppm)の範囲であることができ、カルシウム含有量は約3000~約8000ppm(又は約4000~約7000ppm)の範囲であることができる。
【0045】
本明細書で開示されている方法の工程(b)において、乳製品濃縮物は、加熱処理して、無菌乳製品組成物を形成することができる。一実施形態では、加熱処理の工程は、約80℃~約95℃の範囲の温度で、1分間未満から約15分間まで、例えば、約2~約15分間の範囲の期間の低温殺菌を含むことができる。別の実施形態では、加熱処理する工程は、約135℃~約145℃の範囲の温度で、約1~約10秒の範囲の期間のUHT殺菌を含むことができる。更に別の実施形態では、加熱処理の工程は、約148℃~約165℃の範囲の温度で、約0.05~約1秒の範囲の期間、例えば、約150℃~約155℃で約0.08~約0.2秒の範囲の期間のUHT殺菌を含むことができる。他の適当な低温殺菌又は殺菌温度及び時間条件は本開示から容易に明らかである。更に、本発明は、低温殺菌/殺菌プロセスを実施するために使用される方法又は装置により限定されない。バッチ方式で作動しようと、又は連続的に作動しようと、任意の適切な技術及び装置を利用することができる。
【0046】
典型的なUHT殺菌技術として間接的加熱、直接的スチームインジェクション、直接的スチームインフュージョン等が挙げられる。間接的加熱に対して、乳製品濃縮物は、熱源又は熱媒体、例えば、熱交換器等に直接接触しない。熱伝達の制限により、間接的加熱は殺菌に対してより長い時間を必要とする。有利なことに、本発明の態様では、乳製品濃縮物は直接的UHT殺菌を使用して加熱処理される。直接的スチームインジェクションでは、高温水蒸気を、乳製品濃縮物を含有するパイプ又は他の容器に注入し、よって乳製品濃縮物を急速に殺菌消毒する。直接的スチームインジェクション一般的には連続的に実施される。乳製品濃縮物の連続流を水蒸気の連続的な注入と合わせる。直接的スチームインフュージョンでは、乳製品濃縮物を、水蒸気を含有するチャンバーに噴霧し、よって乳製品濃縮物を急速に及び均一に殺菌消毒する。直接的スチームインジェクションのように、直接的スチームインフュージョンは一般的に連続的に実施される。加熱処理工程後、無菌乳製品組成物は、任意の適切な温度、例えば、約5℃~約40℃、又は約10℃~約30℃の範囲まで冷却することができる。
【0047】
任意選択で、開示された方法は、成分を無菌乳製品組成物と合わせる工程を更に含むことができる。適切な成分の非限定的例として、糖/甘味剤、着香剤、保存剤(例えば、酵母又はカビの成長を防止する)、安定剤、乳化剤、プレバイオティクス物質、プロバイオティクス細菌、ビタミン、ミネラル、オメガ3脂肪酸、フィトステロール、抗酸化剤、又は着色剤等、並びにこれらの任意の混合物又は組合せを挙げることができる。
【0048】
本明細書で開示されている任意の組合せ工程に対して任意の適切な容器及び条件を使用することができ、よって、バッチ方式で又は連続的に達成することができる。例として、無菌乳製品組成物は適切な容器(例えば、タンク、サイロ等)内で、大気圧下で、成分と合わせて、完成した乳製品組成物のバッチを形成することができる。別の例として、無菌組成物及び成分は、パイプ又は他の適切な容器内で、わずかな圧力(例えば、5~50psig)で連続的に組み合わせることができ、完成した乳製品組成物は、貯蔵タンクに移すか、又は小売り流通及び販売のために容器に充填することもできる。この連続的な組合せ、混合、及び/又は包装に対して使用することができる代表的なシステムとして、tetra aldoseシステム及びtetra flexidoseシステムを挙げることができる。無菌の組成物及び他の成分と合わせるための他の適当な方法、システム、及び装置は本開示から容易に明らかである。
【0049】
本発明の一部の実施形態では、加熱処理工程の後、本方法は、任意の適切な容器の中に、任意の適切な条件下で無菌乳製品組成物(追加成分有り、又は無しで)を包装する(無菌的に)工程を更に含むことができる。任意の適切な容器を使用することができる、例えば、小売店における乳製品の流通及び/又は販売に使用してもよい。典型的な容器の例示的及び非限定的例として、カップ、ビン、バッグ、又はパウチ等が挙げられる。容器は、任意の適切な材料、例えば、ガラス、金属、プラスチック等、並びにこれらの組合せから作製することができる。
【0050】
本発明の実施形態に従い、乳製品粉末組成物を作製するための方法が開示され、このような方法は、(a)乳製品を正浸透に供して、少なくとも約35wt.%の固形分を有する乳製品濃縮物を形成する工程、(b)乳製品濃縮物を加熱処理して、無菌乳製品組成物を形成する工程、及び(c)無菌乳製品組成物を乾燥させて、乳製品粉末組成物(又は乾燥乳製品組成物)を形成する工程を含むことができる(又はこれらから本質的になる、又はこれらからなる)。開示された方法のいずれかに従い生成された任意の乳製品粉末組成物(例えば、粉乳生成物)は本開示の範囲内であり、本明細書に包含される。
【0051】
これらの方法において、工程(c)における乾燥は、任意の適切な乾燥技術、例えば、噴霧乾燥を含むことができる。所望する場合、これらの方法は、乾燥工程後、インスタント化及び/又は凝集する工程を更に含むことができる。
【実施例
【0052】
本発明は以下の実施例により更に例示されるが、これら実施例は、本発明の範囲に制限を課すと決して解釈されるものではない。本明細書の記載を読んだ後、本発明の趣旨又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な他の態様、実施形態、変化形、及びその同等物、それら自体を当業者に示唆することができる。
【0053】
全固形分(wt.%)は、CEM Turbo Solids及びMoisture Analyzer(CEM社、Matthews、North Carolina)の手順SMEDP 15.10 Cに従い決定される。灰分とは、適切な装置内で、550℃で一定の質量への燃焼した後に残留する残渣である。550℃でのこのような処理は通常すべての有機物質を排除し、残留する材料は主にミネラルである(Standard Methods for the examination of dairy products、第17版(2004年)、American Public Health Association、Washington DC)。灰分試験は、Phoenix(CEM社 Microwave Furnace)を使用することにより実施し、これで試料を550℃で30分間加熱した。灰分含有量(本明細書でミネラル含有量とも呼ばれる)はwt.%で決定される。
【0054】
PerkinElmer社のAtomic Absorption Spectrophotometerを使用して、特定のCa、Mg、Na、及びK含有量を決定した。試料をトリクロロ酢酸で処理して、タンパク質を沈殿させ、濾液をAtomic Absorption Spectrophotometerで分析した。Inductively Coupled Plasma Spectrometry(official method of Analysis of AOAC、International 第8版、methods 965.17及び985.01)を介してリン含有量を決定した。
【0055】
(実施例1)
実施例1は、高タンパク質乳濃縮物を生成するための実験を要約している。生の高タンパク質ラクトースフリーの脱脂乳を膜濾過プロセス(限外濾過、ナノ濾過、逆浸透)で調製し、77℃で15間秒低温殺菌し、次いで10Lの予め滅菌したプラスチックバッグ中に収集し、使用前に7℃未満で貯蔵した。
【0056】
Table I(表1)は高タンパク質脱脂乳の組成を要約し、Table II(表2)は高タンパク質脱脂乳中のそれぞれのCa、Mg、Na、K、及びP含有量(単位は質量ppm)を要約している。Table I(表1)において、ミネラル含有量(単位:wt.%)は、灰分含有量(wt.%)と実質的に同じであり、よって灰分試験の結果は、本開示において全ミネラル含有量の定量化に使用されている。
【0057】
高濃度の乳酸カリウムを含有するEdernaドロー溶液と共に、Ederna Micro-Pilotユニット(Toulouse Cedex 1、フランス)を使用して、高タンパク質脱脂乳を正浸透に供した。使用した膜はスパイラル型セルローストリアセテート膜(Ederna社、フランス)である。作動圧は4バール未満であり、正浸透の間の温度は14℃未満で維持した。Table I(表1)は、高タンパク質脱脂乳の正浸透(FO)濃縮物の生成した組成物を要約し、Table II(表2)はFO濃縮物中のそれぞれのCa、Mg、Na、K、及びP含有量(単位は質量ppm)を要約している。この高タンパク質FO濃縮物を142℃で4秒間滅菌して、無菌の高タンパク質組成物を生成した。
【0058】
有利なことに、タンパク質、ミネラル、及び固形分含有量は正浸透工程により有意に増加した。Table I(表1)に示されている通り、高タンパク質脱脂乳は5.7wt.%のタンパク質、0.78wt.%のミネラル、及び9.2wt.%の固形分を含有し、FO濃縮物は、25.35wt.%のタンパク質、3.9wt.%のミネラル、及び39.7wt.%の固形分を含有した。これは予想外にタンパク質ベースで4.4、ミネラルベースで5、及び固形分ベースで4.3の高濃度係数へと書き換えられる。更に、Table II(表2)のFO濃縮物のそれぞれのミネラル含有量はまた予想外にカルシウムベースで5.2、ナトリウムベースで5.9、及びカリウムベースで5.3の高濃度係数へと有意に増加した。
【0059】
実施例1におけるFO濃縮物の固形分含有量はおよそ40wt.%であった。正浸透の代わりに逆浸透を使用する類似の実験は、同じ高タンパク質脱脂乳出発材料を使用して、およそ20~22wt.%の固形分しか達成できなかった。よって、予想外に、正浸透は逆浸透よりも80~100%高い濃度(ずっと高い固形分含有量、ミネラル含有量、タンパク質含有量等)を提供することができた。
【0060】
(実施例2)
実施例2は、正浸透濃縮物から粉乳を生成する実験を要約している。正浸透は実施例1に記載されている通り実施した。高タンパク質ラクトースフリーの脱脂乳は、Table III(表3)に示されている通り、正浸透プロセスにより、9.2wt.%の固形分から26.8wt.%の固形分(タンパク質ベースで濃縮係数2.9、ミネラルベースで濃縮係数3、及び固形分ベースで濃縮係数2.9)へと濃縮され、このFO濃縮物を40℃に温め、撹拌して、均質の混合物を得、次いで噴霧乾燥した(乾燥器での入り口温度185℃、出口温度85~90℃、ホイールスピード25,000rpm、フィード量260mL/分)。Table IV(表4)はそれぞれのCa、Mg、Na、K、及びP含有量(単位は質量ppm)を要約している。乾燥した生成物は自由流動性粉末であり、クランピング、異臭又は変色はなかった。生成物の色はわずかにオフホワイト色であった。粉末バッグの下側に少量の褐色の焦げた粒子が存在し、これらは乾燥プロセスの間の乳/粉乳粒子の過熱に起因する可能性が最も高くなり得るが、多くの場合、焦げ、アトマイザーゾーン及び回転式弁の摩擦作用、乾燥器チャンバー壁への付着、及び/又は空気分配器周辺での堆積によるものである。高タンパク質ラクトースフリー脱脂乳粉末は冷えた及び暗所の条件で再構成まで貯蔵する。重要なことに、噴霧乾燥前には、乳生成物を濃縮するために、いかなる加熱蒸発又は関連技術も使用されておらず、使用したのは正浸透のみであった。
【0061】
この高タンパク質ラクトースフリー脱脂乳粉末は、水及びクリームを再配合して、高タンパク質ラクトースフリー乳を生成することにより、再構成され、これを市販の流体の高タンパク質乳(対照)と比較した。組成物は非常に類似していた。
【0062】
(実施例3)
実施例3は、従来の脱脂乳から濃縮された脱脂乳生成物を生成するための実験を要約している。温度45℃以外は実施例1に記載されている通り、正浸透を実施した。Table V(表5)は、正浸透で調製した標準の脱脂乳及び高固形分脱脂乳濃縮物の組成を要約している。有利なことに、タンパク質、ミネラル、及び固形分含有量は正浸透工程により有意に増加した。Table V(表5)に示されている通り、脱脂乳は3.36wt.%のタンパク質、0.78wt.%のミネラル、及び9.34wt.%の固形分を含有し、FO濃縮物は16.1wt.%のタンパク質、3.59wt.%のミネラル、及び44.57wt.%の固形分を含有した。これは、タンパク質ベースで4.8、ミネラルベースで4.6、及び固形分ベースで4.8の予想外に高濃度の係数に書き換えられる。直接的UHTを使用して、この脱脂乳FO濃縮物を142℃で4秒間滅菌して、無菌高固形分組成物を生成した。続いて、高固形分且つ高タンパク質の乳濃縮物を乾燥させて、高タンパク質粉乳を得た。
【0063】
実施例3のFO濃縮物の固形分含有量は44~45wt.%であった。正浸透の代わりに逆浸透を使用した、類似の実験は、同じ脱脂乳出発材料を使用して、およそ20~22wt.%の固形分しか達成することができなかった。よって、予想外にも、正浸透は、逆浸透よりも100%高い濃度(ずっと高い固形分含有量、ミネラル含有量、タンパク質含有量等)を提供することができた。
【0064】
(構成例4)
構成例4は、乳製品業界の従来の逆浸透との比較により、本明細書に記載されている正浸透を使用して脱脂乳から除去することができる水の量を比較している。Table VI(表6)は、逆浸透(濃縮係数2.55)及び正浸透(濃縮係数4.94)に基づく計算結果を要約している。正浸透に対する固形分のwt.%が、逆浸透に対する固形分のwt.%のほとんど2倍であるばかりでなく、従来の逆浸透による67wt.%の水のみと比較して、正浸透は87wt.%の水を脱脂乳から除去することができる。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【国際調査報告】