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特表2023-507831ラクトン誘導体の合成及びタンパク質の修飾におけるその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-27
(54)【発明の名称】ラクトン誘導体の合成及びタンパク質の修飾におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 2/00 20060101AFI20230217BHJP
   C07K 1/14 20060101ALI20230217BHJP
   C07K 1/13 20060101ALI20230217BHJP
   C07K 17/00 20060101ALI20230217BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20230217BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230217BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230217BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230217BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
C07K2/00
C07K1/14 ZNA
C07K1/13
C07K17/00
A61K38/02
A61P43/00 105
A61K39/00 A
A61P31/14
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538414
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-19
(86)【国際出願番号】 EP2020087108
(87)【国際公開番号】W WO2021123229
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】19218587.4
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】522246876
【氏名又は名称】ジーニー・バイオテック・ユーケー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・レッドファーン・モーリス
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・ストフ
(72)【発明者】
【氏名】カール・ディートリヒ・ブリュヌ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA01
4C084AA07
4C084BA31
4C084BA32
4C084BA34
4C084NA14
4C084ZB211
4C085AA03
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA50
4H045BA60
4H045FA51
4H045FA53
4H045FA81
4H045GA20
(57)【要約】
タンパク質の部位特異的な修飾は、生物薬剤、免疫療法、ワクチン等の生物工学的用途において望ましく、化学的生物学において有用である。グルコノイル化は、N末端Hisタグが結合したタンパク質で一般的に観察される酵素によらない共有結合の翻訳後修飾である。本発明者等は、選択的なアシル化のための、アジドバリアントを含むグルコノ-1,5-ラクトン誘導体を合成した。高い収量のアシル化は、温度、水性緩衝液、賦形剤、又は複雑な細胞溶解産物の多様な条件下で誘導体を標的タンパク質と単に混合することによって達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端アシル化タンパク質を含む組成物であって、N末端アシル化タンパク質は、式(VIII)、式(VII)又は式(IX):
【化1】
(式中、
(i)R1、R2、R3及びR5は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はハンドルであり、
(ii)R4は、水素、ヒドロキシル、メチル、ハンドル、カルボキシル、エステル、又はアミドであり、
(iii)R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、ハンドルであり、
(iv)R1、R2、R3及びR4のうちの1つ以下がメチルであり;
(v)Xは、タンパク質のN末端のアミノ酸残基を含み、任意選択で、N末端のアミノ酸残基は、Gly、Ala、Ser又はHis残基である);
【化2】
(式中、
(i)R1、R2、R3、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はハンドルであり、
(ii)R4は、水素、ヒドロキシル、メチル、ハンドル、又はカルボキシルであり、
(iii)R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、ハンドルであり、
(iv)R1、R2、R3及びR4のうちの1つ以下がメチルであり;
(v)Xは、タンパク質のN末端のアミノ酸残基を含み、任意選択で、N末端のアミノ酸残基は、Gly、Ala、Ser又はHis残基である);
【化3】
(式中、
(i)R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はハンドルであり、
(ii)R4は、ヒドロキシルであり、
(iii)R1、R2、及びR3のうちの少なくとも1つは、ハンドルであり、
(iv)R1、R2、及びR3のうちの1つ以下がメチルであり;
(v)Xは、タンパク質のN末端のアミノ酸残基を含み、任意選択で、N末端のアミノ酸残基は、Gly、Ala、Ser又はHis残基である)
を含む、組成物。
【請求項2】
N末端アシル化タンパク質が、式(IV):
【化4】
(式中、
(i)R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はアジドであり、
(ii)R4は、水素、ヒドロキシル、メチル、アジド、又はカルボキシルであり、
(iii)R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、アジドであり、
(iv)R1、R2、R3及びR4のうちの1つ以下がメチルであり;
(v)Xは、タンパク質のN末端のアミノ酸残基を含み、任意選択で、N末端のアミノ酸残基は、Gly、Ala、Ser又はHis残基である)
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
N末端アシル化タンパク質が、式(X):
【化5】
(式中、
(i)R4は、アジドであり、R3は、ヒドロキシルであり、R2は、ヒドロキシルであり、R1は、ヒドロキシルであるか;
(ii)R4は、ヒドロキシルであり、R3は、アジドであり、R2は、ヒドロキシルであり、R1は、ヒドロキシルであるか;
(iii)R4は、ヒドロキシルであり、R3は、ヒドロキシルであり、R2は、アジドであり、R1は、ヒドロキシルであるか;又は
(iv)R4は、ヒドロキシルであり、R3は、ヒドロキシルであり、R2は、ヒドロキシルであり、R1は、アジドである)
を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
R4が、アジドであり、R3が、ヒドロキシルであり、R2が、ヒドロキシルであり、R1が、ヒドロキシルである、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
Xが、アミノ酸配列Xaa1-Xaa2-Xaa3-Xaa4を含み、
(i)Xaa1は、Ala、Gly、Ser、His、又はLeuから選択されるアミノ酸残基であり;
(ii)Xaa2は、いずれかのアミノ酸残基であるか、又は存在せず;
(iii)Xaa3は、いずれかのアミノ酸残基であるか、又は存在せず;
(iv)Xaa4は、3個又はそれより多くのHis残基からなる、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(A)Xが、アミノ酸配列Gly-Xaa1-Xaa2-Xaa3を含み、
(i)Xaa1は、いずれかのアミノ酸残基であるか、又は存在せず;
(ii)Xaa2は、アミノ酸残基であるか、又は存在せず;
(iii)Xaa3は、3個又はそれより多くのHis残基からなる;
又は
(B)Xが、アミノ酸配列Gly-Xaa1を含み、
(i)Xaa1は、Gly、Ala、又はSerから選択されるアミノ酸残基である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(A)Xが、アミノ酸配列Xaa1-Xaa2を含み、
(i)Xaa1は、アミノ酸残基Glyであるか、又は存在せず;
(ii)Xaa2は、1個又はそれより多くのHis残基からなり;
(B)Xが、アミノ酸配列Gly-Xaa1-Xaa2を含み、
(i)Xaa1は、Ser、Gly、Ala、Tyr、Leu、Argから選択されるアミノ酸残基であるか、又は存在せず;
(ii)Xaa2は、2個又はそれより多くのHis残基からなるか;又は
(C)Xが、アミノ酸配列Gly-Xaa1-Xaa2を含み、
(i)Xaa1は、Gly、Ser又はAlaであり;
(ii)Xaa2は、
Thr-Tyr-Ser-Asp-His、
Thr-Tyr-Ser-Cys-His、
Thr-Tyr-Ser-Ala-His、
Lys-Trp-Ser-Lys-Arg、又は
Ser-Gly-Ser-Lys
である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
金属カチオンを更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
(i)組成物は、dブロック元素からの金属カチオンを更に含み;及び/又は
(ii)組成物は、N末端アシル化タンパク質のN末端に、ラクトン由来のジオールと酸との間で形成されたジオールエステルを更に含み;
任意選択で、金属カチオンは、2価のZn、Ni、又はCuカチオンであり;及び/又は
ジオールエステルは、ホウ酸エステル又はボロン酸エステルである、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
タンパク質を部位特異的に修飾するための方法であって、タンパク質を、ハンドル置換された炭水化物ラクトンと接触させる工程を含む方法。
【請求項11】
タンパク質が、N末端で部位特異的に修飾され、ハンドル置換された炭水化物ラクトンが、式(V):
【化6】
(式中、
(i)R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はアジドであり、
(ii)R4は、水素、ヒドロキシル、メチル、アジド、又はカルボキシルであり、
(iii)R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、アジドであり、
(iv)R1、R2、R3及びR4のうちの1つ以下がメチルである)
による化合物であり、
任意選択で、R4は、アジドであり、R3は、ヒドロキシルであり、R2は、ヒドロキシルであり、R1は、ヒドロキシルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
得られたアシル化タンパク質を、ホスフィン基、ホスフィン誘導体、アルケン基、アルキン基、歪んだアルキン基、OCT、MOFO、DIFO、DIFO2、DIFO3、DIMAC、DIBO、DIBAC、BARAC、BCN、ゾンドハイマーのジイン、TMDIBO、S-DIBO、COMBO、PYRROC、TMTH、DIFBO、ALO、チオアルキン基、ケト-DIBO、歪んだオレフィン、又はオキサノルボルナジエン基を含む化合物と接触させる工程を更に含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか一項に記載の方法を介して得られた、又は得ることができるタンパク質。
【請求項14】
ハンドル置換された炭水化物ラクトンを合成するための方法であって、非プロトン性条件下で、水素アクセプターの存在下で、ハンドル置換されたアルドースを触媒と接触させる工程を含み、
任意選択で、ハンドル置換された炭水化物ラクトンは、式(V):
【化7】
に従い、
ハンドル置換されたアルドースは、式(VI):
【化8】
に従い、
式中、
(i)R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はアジドであり、
(ii)R4は、水素、ヒドロキシル、メチル、アジド、又はカルボキシルであり、
(iii)R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、アジドであり、
(iv)R1、R2、R3及びR4のうちの1つ以下がメチルである、方法。
【請求項15】
アシル化タンパク質を同定するための方法であって、アシル化タンパク質を含有する疑いのある試料を、ジオールと相互作用しホウ素を含有するアクリルアミドゲルに泳動する工程を含み、アシル化タンパク質は、請求項1~9及び13のいずれか一項に記載のタンパク質であり、任意選択で、ジオールと相互作用しホウ素を含有するアクリルアミドゲルは、メタクリルアミドフェニルボロン酸アクリルアミドゲルである、方法。
【請求項16】
アシル化タンパク質を精製するための方法であって、
(1)アシル化タンパク質を含む疑いのある試料を、固定されたジオールエステル形成剤を含む固体支持体上に結合させる工程;及び
(2)タンパク質を溶出させる工程
を含み、
任意選択で、アシル化タンパク質は、請求項1~9及び13のいずれか一項に記載のタンパク質である、方法。
【請求項17】
(i)タンパク質;及び
(ii)ハンドル置換された炭水化物ラクトン
を含むキットであって、任意選択で、ハンドル置換された炭水化物ラクトンは、式(V):
【化9】
(式中、
(i)R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はアジドであり、
(ii)R4は、水素、ヒドロキシル、メチル、アジド、又はカルボキシルであり、
(iii)R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、アジドであり、
(iv)R1、R2、R3及びR4のうちの1つ以下がメチルである)
による化合物である、キット。
【請求項18】
ホスフィン基、ホスフィン誘導体、アルケン基、アルキン基、歪んだアルキン基、OCT、MOFO、DIFO、DIFO2、DIFO3、DIMAC、DIBO、DIBAC、BARAC、BCN、ゾンドハイマーのジイン、TMDIBO、S-DIBO、COMBO、PYRROC、TMTH、DIFBO、ALO、チオアルキン基、ケト-DIBO、歪んだオレフィン、又はオキサノルボルナジエン基を含む化合物を更に含む、請求項17に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトン誘導体を合成する方法、加えて、化学修飾し、修飾されたタンパク質を精製するための方法に関する。ラクトン誘導体を合成する方法は、炭水化物化学の分野に包含され、修飾し、修飾されたタンパク質を精製するための方法は、タンパク質化学の分野に包含される。
【背景技術】
【0002】
よく特徴付けられたタンパク質バイオコンジュゲートは、化学的な生物学研究や生物薬剤学的な用途に必要不可欠である。バイオコンジュゲートを得るための従来の方法は、典型的には、天然に存在する化学基、例えば、豊富なアミノ(Lys、N末端)若しくはカルボキシル基(Asp、Glu、C末端)、又はそれほど一般的ではないスルフヒドリル基(Cys)(Hermanson 2013)を標的化する。部位選択的なタンパク質コンジュゲーションが望ましいが、技術的に問題がある(Rosen及びFrancis 2017)。標的化された化学基が生体分子中に固有に存在しない限り、バイオコンジュゲートの不均質な部分集団が得られる可能性がある。不均質な部分集団は、大いに異なる生物学的及び製薬的な特性を表示する可能性があるため、望ましくない。義務付けられた、下流におけるバイオコンジュゲートの質量分析による特徴付けもまた、得られた不均質性が生物学的に無害だとしても、基礎となるタンパク質の質量が2つ又はそれより多くの値に分かれるため不均質性によって複雑化する(Kieran F. Geoghegan 2016)。
【0003】
したがって、生物製剤(ペグ化等)、抗体-薬物コンジュゲート(Jain等、2015)、免疫調節性コンジュゲート及び結合ワクチン(Kanekiyo、Ellis、及びKing 2019)、加えて、バイオマテリアル(Proschel等、2015)における不均質性を低減する方法が必要とされている。
【0004】
天然アミノ酸残基の修飾のための方法は豊富であり、詳細に総論されている(deGruyter、Malins、及びBaran 2017)。
【0005】
生体直交型反応性を有する天然にはないアミノ酸が、発現宿主によって修飾されたアミノ酸の供給(Datta等、2002)、アンバー宿主抑制(Amber host suppression)の活用(L. Wang等、2001)、遺伝子コード拡張(Xie及びSchultz 2006;Davis及びChin 2012;Lang及びChin 2014)又は遺伝学的に再符号化された生物の使用(Lajoie等、2013)によって、組換えタンパク質に取り込まれていてもよい。共通の欠点は、これらのアプローチが、高価な化学的に合成が難しいアミノ酸誘導体を必要とすることである。特殊な株を必要とすることだけでなく、tRNAシンターゼの無差別性にも起因して、質量分析アプローチによって検出可能な、天然にはないアミノ酸の非標的位置への望ましくない誤った取り込みの報告が、近年、文献に加えられている(Aerni等、2015;Gan及びFan 2017;Kunjapur等、2018)。
【0006】
代替アプローチは、タンパク質ドメイン又は酵素を操作することに頼っている。例えば、スプリットインテイン(Hirata等、1990)、又はキャッチャー/タグ技術(Bijan Zakeri及びHowarth 2010)が記載されている。近年、部位特異的なトランスグルタミナーゼ(Steffen等、2017)、及びペプチド-ペプチドリガーゼ、例えばキャッチャー/タグから誘導されたスパイ(Spy-)及びスヌープリガーゼ(SnoopLigase)(Fierer、Veggiani、及びHowarth 2014;Buldun等、2018)、ブテラーゼ(Nguyen等、2014;Cao等、2016)、並びに操作されたアスパラギニルエンドペプチダーゼ1(Harris等、2015;R. Yang等、2017;Jackson等、2018)が、従来のソルターゼアプローチ(Mazmanian 1999)に加えて提供されてきた。酵素及びタンパク質ドメインベースのアプローチの共通の欠点は、高濃度のリンケージパートナー及び/又はかなり過量のライゲーションパートナーが必要であること(例えば、ソルターゼ)、コンジュゲーション後にライゲート酵素を除去する必要があること、又はタンパク質瘢痕が生じること(例えばスパイキャッチャー(SpyCatcher):スパイタグ(SpyTag)は、約11.5kDaのMwの約100aaの瘢痕を残す)である。
【0007】
1つの特定の戦略は、そのN末端におけるタンパク質の修飾である。直鎖状ポリペプチド配列1つ当たりN末端は1つのみ存在することが可能であり、PDBにおける全てのモノマー構造の80%より多くがそのN末端を露出させているため、N末端を修飾することは魅力的であると考えられる(Jacob及びUnger 2007)。重要なことに、N末端α-アミノ基のpKa値は、典型的なLys側鎖ε-アミン(pKa10.5±1.1)のものより低く(pKa7.6~8.0)、それゆえにN末端は、選択的なpH制御されたアシル又はアルキル化のために標的化することができる(Grimsley、Scholtz、及びPace 2008)。
【0008】
しかしながら、ほとんどの化学的なN末端修飾技術は、オフサイト修飾、例えばタンパク質内のリジンアシル化を引き起こす可能性があり(例えば、Martos-Maldonado等、2018を参照)、したがってこの分野の課題は、オフサイト修飾を最小化しながらN末端修飾を達成することである(Rosen及びFrancis 2017)。
【0009】
固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)精製のためのN末端His6タグに融合したほとんどのタンパク質は、実際には、大腸菌(Escherichia coli)での組換え細菌生産のために一般的なpETベクターシリーズにクローニングされることによって、配列MGSSHHHHHHを含有する。この特定の配列に関して、NCBIタンパク質blastは、20,000を超える検索結果をもたらし(サーバー限界を超えており、それより多い可能性がある)、同様に、米国特許庁データベースに対するlens.orgタンパク質blastは、この配列を利用する約20,000の個別の特許ファミリー(付与が約3,600件、出願が約16,500件)という結果をもたらし、この精製タグの広範な使用が確認される。特定のタグ配列は、結晶学研究の約60%で利用されている(Derewenda 2004)。
【0010】
大腸菌(E. coli)B株、例えば広く使用されるBL21(DE3)又は他のB株派生株におけるMGSSHHHHHHタグを有するタンパク質の発現は、組換えタンパク質のN末端におけるMet切断(メチオニルアミノペプチダーゼ)アルファ-アミノ基で部分的なグルコノイル化をもたらすことができる(K. F. Geoghegan等、1999)。生物学的に誘導されたグルコノイル化は、B株における行き止まりの代謝産物、すなわちグルコノラクトン又はそのリン酸化された誘導体である6-ホスホグルコノラクトンのいずれかによって引き起こされる(Aon等、2008)。得られた6-ホスホグルコノラクトンは、通常、野生型大腸菌における6-ホスホグルコノラクトナーゼ(PGL)の作用によって代謝されると予想されるが、この酵素は、B単離株を非病原性にするために実行されたランダム突然変異誘発性の株の操作に起因して、大腸菌B株において欠失している(PGLはオフターゲット欠失であった。またPGLは病原性に関与していない)(Aon等、2008;Noll等、2013)。したがって6-ホスホグルコノラクトンが蓄積し、露出したN末端のアルファ-アミノ基による攻撃を受け、結果としてグルコノイル化されたN末端残基が生じる。大腸菌の天然ホスファターゼは、ラクトンのN末端への攻撃の前又はその後にリン酸基を加水分解することができ、典型的には、MSによって分析可能な3つの別個の種:修飾されていない組換えタンパク質、+178Daのグルコノイル化された種及び+258Daのホスホグルコノイル化された種を生じる(K. F. Geoghegan等、1999)。
【0011】
本発明は、より原子経済的であり、化学的により安全であり、より環境に優しい経路を介してアジドで置換されたラクトン誘導体を合成することを目的とする。更に、本発明は、ペプチド及びタンパク質のN末端を部位選択的に修飾するためにこれらの誘導体を使用することを目的とする。本発明は、これらの部位選択的に修飾されたタンパク質誘導体を分析及び精製することを目的とする。別の態様において、本発明は、タンパク質誘導体の貯蔵を可能にすることを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2014/10628
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第22版、Pharmaceutical press(2012)、ISBN-13:9780857110626
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】天然の、及び6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトン(6-AGDL)アシル化(下)GSS-H6-AffiEGFRタンパク質のデコンボリューションされたスペクトルを示す図である。14,300~15,100のm/z範囲における天然(上)及び6-AGDLアシル化(下)GSS-H6-AffiEGFRのQTOF質量スペクトル。SM(H+)は、単独でプロトン化された出発材料、SM-Ac(H+)-単独でプロトン化されたアセチル化出発材料、P1(H+)-1個のアジド基を含有する単独でプロトン化された反応生成物、P2(H+)-2個のアジド基を含有する単独でプロトン化された反応生成物を示す。理論上の平均m値は、全て[M]で、SMでは14429、SM-Acでは14471、P1では14632、P2では14635である。
図2】6-AGDL及び金属なしのクリックケミストリーを用いたモデルタンパク質の2工程のモノ官能化を示す図である。(A)GSS-H6-AffiEGFRの2工程のモノ官能化の概略図。(B)6-AGDL及びBCN-アミンでのGSS-H6-AffiEGFRの後続のアシル化を示すMALDI-TOF MSスペクトル。上のパネルは、6-AGDLアシル化前のGSS-H6-AffiEGFRを示し、中央のパネルは、6-AGDLとのインキュベーション後にモノ官能化されたGSS-H6-AffiEGFRを示し、下のパネルは、6-AGDL:GSS-H6-AffiEGFRのBCN-アミンとの後続の金属なしのクリックケミストリーによって媒介されるコンジュゲーション後の化学種を示す。スペクトルをポジティブリニアーモードで獲得した。二重に電荷を有し、プロトン化されたSM(+2):GSS-H6-AffiEGFR出発材料;二重に電荷を有し、プロトン化されたSM-Ac(+2)-GSS-H6-AffiEGFRアセチル化出発材料;1個の6-AGDLタグでアシル化され、二重に電荷を有し、プロトン化されたP1(+2):GSS-H6-AffiEGFR生成物;1個の6-AGDLタグでアシル化され、二重に電荷を有し、ナトリウムイオン付加されたP1(+2、2xNa+):GSS-H6-AffiEGFR生成物;BCN-アミンとコンジュゲートされ、二重に電荷を有し、プロトン化されたP1-BCN(+2):P1;BCN-アミンとコンジュゲートされ、二重に電荷を有し、ナトリウムイオン付加されたP1-BCN(+2、2xNa+):P1。
図3】pH7.5での様々なCuSO4及びEDTA濃度の存在下におけるGDL:G-H6-Beltide-1の可逆性を示す図である。GDLアシル化G-H6-Beltide-1を前の通りに生産し、余分なGDLをC18逆相精製によって除去し、アシル化ペプチド(20μM)を、様々な濃度のCuSO4及びEDTAが補充された50mMのHEPES(NaOH)緩衝液中で、37℃で貯蔵した。アシル化状態の変化をMALDI-TOF MS TICによってモニターした。これは、アシル化(m1)及び非アシル化種(m2)の相対的なm/z比([m1/z/(m1/z+m2/z)]×100%)として報告される。
図4】mP-AGEは、小さい分子量の増加に関して高分解能の、高度な技術を要しない解決を可能にする。GSS-H6-AffiEGFR(50μM)を、100mMのGDL又は100mMの6-AGDLと共に、200mMのHEPES、pH7.5中で、室温で1時間インキュベートし、続いて超純水への回転濾過を繰り返した。コンジュゲーションに続いて、1×SDS-PAGEローディング緩衝液(pH6.8)に混合し、75℃に3分加熱し、クーマシー染色を用いたmP-AGE(0.1%w/vのMBPA)で分析した。Mwバンドシフトは、(1)GDL-(理論上のMwは14607Da)種、及び(2)6-AGDLアシル化(理論上のMwは14632Da)種に対して矢印によって示される。アシル化GSS-H6-AffiEGFRタンパク質は、14429Daの理論上のMwを有する。アシル化タンパク質の保持時間の非アシル化タンパク質と比べた大幅な増加は、アジドグルコノイル化及びアクリルアミド架橋されたボロン酸誘導体MBPA相互作用によって引き起こされる。
図5】mP-AGEでの6-AGDL修飾の可視化を示す図である。GSS-H6-MBP、及びG-H6-フラジェリン(両方とも50μM)を、100mMの6-AGDLと共に、200mMのHEPES(NaOH)pH7.5中で室温で1時間インキュベートした。反応物を、超純水への回転濾過を繰り返すことによって脱塩した。試料を1×SDS-PAGEローディング緩衝液(pH6.8)に調製し、75℃に3分加熱し、(A)標準的な14%SDS-ポリアクリルアミドゲル、又は(B)14%ポリアクリルアミドmP-AGE(0.09%w/vのMBPAが補充された同じゲル調製物)で分析した。ゲルをクーマシーで染色した。見かけのMwバンドシフトは、矢印によって示される。アシル化タンパク質の保持時間の非アシル化タンパク質と比べた大幅な増加は、アジドグルコノイル化及びアクリルアミド架橋されたボロン酸誘導体MBPA相互作用によって引き起こされる。
図6】6-AGDLで修飾された材料を、オンラインカラムクロマトグラフィーによって非修飾及びアセチル化材料から分解した。分析物を280nmで連続的に検出した。単一のピークで溶出した天然タンパク質試料(上の列、G-H6-ΔN1スパイキャッチャー)に対して、6-AGDLで処理した試料混合物を、2つのピークとして(下の列)、すなわち修飾されていない材料の保持時間を有する1つのピーク、及び新しい後続の溶出ピーク(6-AGDL:G-H6-ΔN1スパイキャッチャーとしてアシル化した)として分解した。ピーク画分を各ピークにつき手作業で収集し、酸性化し、脱塩し(ZipTip C18)、前の通りにリニアーポジティブモードでMALDI-TOFMSインタクト質量分析に供した。先に溶出するピークから収集された材料は、修飾されていない試料とアセチル化のいくつかの証拠(場合によってはN末端でブロックされたG-H6-ΔN1スパイキャッチャータンパク質)を示す質量によって未処理の出発材料と区別できず、それに対して後に溶出するピークは、G-H6-ΔN1スパイキャッチャーの単独に6-AGDLで修飾された種に関して予測される質量のみを示した。後に溶出するピークの質量スペクトルにおいて修飾されていない出発材料は同定されなかった。
図7】C2~C6領域に関する6-アジド-6-デオキシ-グルコノ-1,5-ラクトンの2D 1H-13C異核単一量子コヒーレンス(HSQC)NMRスペクトルを示す図である。DMSO-d6における相関シグナルは、ボックスで囲まれ、それに対してMeOD-d4におけるシグナルは、丸で囲まれる。DMSO-d6における可能性がある6-アジド-6-デオキシ-グルコノ-1,4-ラクトンシグナルは、三角で囲まれる。1Hシグナルは横軸にプロットされ、それに対して13Cシグナルは縦軸にプロットされる。点線は、Chaveriat等、2006によって報告されたMeODにおける1Dの1H及び1Dの13C NMRシグナルを表す。
図8】D2OにおけるC2~C6領域に関する6-アジド-6-デオキシ-グルコノ-1,5-ラクトンの2D 1H-13C異核単一量子コヒーレンス(HSQC)NMRスペクトルを示す図である。1Hシグナルは横軸にプロットされ、それに対して13Cシグナルは縦軸にプロットされる。
図9】SDS-PAGEは、VLPがSARS-CoV-2の受容体結合ドメイン(RBD)にうまくコンジュゲートできることを示すことを示す図である。VLP=NHS-PEG8-BCNで活性化されたQbeta VLP。RBD C-=RBD。RBD N3=6-AGDLで活性化されたRBD。
図10】抗RBD ELISAの結果を示す図である。A)血清試料を、第1の投与の後にRBDに反応する抗体の存在に関して試験した。B)血清試料を、マウスがブースターショットを受けた後にRBDに反応する抗体の存在に関して試験した。RBD=RBD。RBD:GBT=6-AGDLで活性化されたRBD。RBD:GBT:Qbeta=6-AGDL及びNHS-PEG8-BCNを使用してQbeta VLPにコンジュゲートしたRBD。
図11】負荷としてSARS-CoV-2を使用する生ウイルス中和アッセイを示す図である。血清試料を、ウイルス感染及び/又は複製を中和するその能力に関して試験した。グループ3=Qbeta VLP。グループ5=HEK293細胞で生産されたRBD。グループ6=6-AGDLにコンジュゲートしたHEK293細胞で生産されたRBD。グループ9=6-AGDL及びNHS-PEG8-BCNを使用してQbeta VLPにコンジュゲートしたピチア・パストリス(Pichia pastoris)で生産されたRBD。グループ10=6-AGDL及びNHS-PEG8-BCNを使用してQbeta VLPにコンジュゲートしたHEK293細胞で生産されたRBD。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、6員のラクトンの誘導体が、化学的ハンドルでタンパク質を部位特異的に修飾するのに使用できるという概念によって考え出された。本出願の発明者等が知る限り、このようなアプローチは、先行技術ではこれまで試みられてこなかった。
【0016】
本出願の発明者等は、グルコノラクトンのアジド誘導体でタンパク質を確実に修飾するためにいくつかの困難を克服した。これらの課題の1つは、6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンの純粋な組成物を合成するための好適な経路を見出すことであった。
【0017】
以前の報告された6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンを合成するための試みは、臭素酸化に頼っていた(Hanessian 1966;1969;Kefurt等、1979;Chaveriat等、2006)。
【0018】
試験的な実験において、Hanessian 1969に従って6-アジド-6-デオキシ-グルコースの水性臭素酸化により得られたアジド化合物は、本発明者等の手によれば極めてわずかなタンパク質基質しかアシル化されないという結果になり、それに対して市販の非アジドグルコノ-1,5-ラクトンとの反応は、同じ条件下でほぼ完全な変換をもたらしたことが観察された。
【0019】
グルコース、グルコノ-1,5-ラクトンの水性臭素酸化生成物は、他の化学種との複雑な平衡状態にある可能性があることが公知である。1,5-ラクトンの加水分解及び異性化によって、反応混合物は、開鎖グルコン酸であるグルコノ-1,5-ラクトンとグルコノ-1,4-ラクトンとの間の複雑な平衡状態を呈する(Pocker及びGreen 1973)。この平衡は、様々な対応する酸性塩を生じる可能性があるカチオンの存在によって更に複雑化し得る。6-アジド-6-デオキシ-グルコースの酸化生成物の平衡は同程度に複雑であり得ると仮定することができる。
【0020】
試験的な実験において、モデルタンパク質を6-アジド-6-デオキシ-グルコースの臭素酸化生成物と接触させたときに観察された、少量の、ただし検出可能な量のペプチドアシル化は、(i)わずかな量の反応性1,5-ラクトンの合成によって説明でき、それに対して、主要な生成物、例えば1,4-ラクトン及び/又は遊離酸は、ペプチド基質との反応性を有する可能性がある。代替として、(ii)アジド糖の臭素酸化は、1,5-ラクトン及び生成物を生成せず、例えば1,4-ラクトン又は遊離酸は、不十分ではあるが、直接的にか、及び/又はインサイチュの異性化を介するかのいずれかでペプチド基質と反応して極めて少量の1,5-ラクトンをもたらす。どのような場合においても、本発明者等の手による水性臭素酸化は、好適なアシル化試薬の実質的に意義のある生産を起こさなかった。
【0021】
遊離酸又はそのアニオンが第一級アミンへの反応性を有するとは予測しなかったであろう。1,4-ラクトンは、その1,5-異性体と比較して著しく異なる反応性を呈する可能性があることが公知である。例えば、修飾されていない非アジドグルコノ-1,4-ラクトンは、1,5-ラクトンと比較して、ヒドロキシルアミンに対してより一層弱い求電子性を有することが公知である(Miclet 2001)。1,4-ラクトンはまた、より低温(5℃)で水溶液中で自発的に加水分解せず、それに対して1,5-形態は加水分解することから、ここでも異なる化学特性が実証される(Miclet 2001)。6員の1,5-ラクトンは、5及び6員のラクトン環系の両方を含有する分子において、SmI2-H2O還元系を用いて選択的かつ完全に還元され得るが、それに対して5員の1,4-ラクトン系は無傷なままであることが公知である(Duffy、Matsubara、及びProcter 2008)。ここでも、これは、1,4-及び1,5-ラクトンが異なる化学反応性を呈する可能性があることを実証する。
【0022】
臭素酸化を用いた好適なアシル化試薬が得られなかった後、本発明者等は、6-アジド-6-デオキシ-グルコノ-1,5-ラクトンとして特許請求された6-アジド-6-デオキシ-グルコースの主要な酸化生成物の構造に関する文献の証拠を再評価した。
【0023】
Hanessian 1969は、伝えられるところによると、アジド化されたメチルピラノシドからの酸性切断によって生産されたようなアジドグルコピラノースの臭素酸化の生成物の6員環を割り当てるのにカルボニルの赤外線(IR)スペクトルに頼っていた。しかしながら、環サイズを割り当てるのに単にIRに頼ることは誤りを生じさせる可能性がある。特に、1,4-ラクトンは、必ずしもBarker及び同僚により開発されたIR分光法ガイドラインに厳密に従うとは限らず、すなわち24種のアルドノ-1,4-ラクトンのうち22種が5.59~5.67μm(1790~1765cm-1)にバンドを示し、それに対して全ての11種の試験されたアルドノ-1,5-ラクトンが、5.68~5.79μm(1760バンド1726cm-1)にバンドを示したことが公知である(Tipson 1968)。Hanessian 1969が、6員のモデル化合物であるD-グルコノ-1,5-ラクトンについて1732cm-1、5員のモデル化合物であるD-ガラクトノ-1,4-ラクトンについて1749cm-1、及び6-アジド-6-デオキシ-D-グルコース酸化の反応生成物について1725cm-1の値を得たことを考慮すれば、おそらく、Hanessian 1969が、酸化生成物を6-アジド-6-デオキシ-グルコノ-1,5-ラクトンとして割り当てたことはそれほど驚くことではない。しかしながら、紛らわしいことに、Barkerの傾向は、D-ガラクトノ-1,4-ラクトン化合物が、1,5-ラクトンとして分類されるべきと示唆したであろう(Barker等、1958)。したがって、D-ガラクトノ-1,4-ラクトンは、IRスペクトルがBarkerのルールに従わないラクトンの例である。
【0024】
Hanessian 1969はまた、赤外分光法に従って同じように1735cm-1を有する6-アジド-6-デオキシ-D-ガラクトノ-1,5-ラクトンとして割り当てられた6-アジド-6-デオキシ-D-ガラクトースの臭素酸化も報告している。しかしながら、D-ガラクトースの水性臭素酸化によるD-ガラクトノ-1,5-ラクトンの単離は達成されなかったことから、不可能とみなされている(Bierenstiel 2004)。推定で、1,5-ラクトンは、迅速にガラクトノ-1,4-ラクトンへ平衡化するか、及び/又は対応する酸に加水分解する(Hudson及びIsbell 1929;Bierenstiel及びSchlaf 2004)。したがって、Hanessian 1969が実際に6-アジド-6-デオキシ-D-ガラクトノ-1,5-ラクトン、同様に6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンを得たかどうかが疑わしい可能性がある。より紛らわしいことに、Hanessianは、6-アジド-6-デオキシ-D-ガラクトノ-1,4-ラクトンの合成を初期の文書で報告しているが、合成経路も138~140℃のm.p.以外の化合物の特徴も開示していなかった(Hanessian 1966)。Hanessianの1969年の文書は、1969年の生成物が以前の1966年に記載された生成物と同一であるという記載を持って述べており、これは、1966年に臭素酸化が使用されたことを示唆している。しかしながら、報告された環サイズも以前の文書の融点も一致していない(1966年では138~140℃を有する1,4-ラクトンであったのに対し、1969年では129~130℃を有する1,5-ラクトンである)。
【0025】
複雑さは、6-アジド-6-デオキシ-D-グルコースの臭素酸化は、Hanessianの1969年の経路と同様に、Hanessianの1969年の化合物と類似したm.p.を有するが、1716cm-1のより一層低いカルボニル波数値を有する化合物をもたらしたという別のグループからの報告によって更に悪化し、Kefurtが6-アジド-6-デオキシ-グルコノ-1,5-ラクトンを割り当てるきっかけとなっている(Kefurt等、1979)。Kefurt及び共同研究者はまた、同一なIRスペクトルを有する、追加のより低温で融解する化合物(114~118℃)も単離したが、これもまた彼等は6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンとして割り当てている。Kefurt等は、2つの異なって融解する化合物が、同じ1,5-ラクトンの結晶性の改変体であるという仮説を立てている。
【0026】
2006年に、Chaveriat等はアジドグルコースの臭素酸化を実行し、1D NMRデータを報告しており、初めて黄色の油状物を以前の結晶性物質の代わりに得ている(Chaveriat等、2006)。
【0027】
1D 1H及び13C NMRスペクトルをMeODで得た。2D NMRの非存在下におけるC1及びC6のカルボニルシフトは、多くの化学者によって、基礎となるヘキソノラクトン、及び更に置換されたヘキソノラクトンに関して環サイズを割り当てるために使用されてきた。C1シフトは、典型的には、数の傾向、すなわちヘキソン酸>1,4-ラクトン>1,5-ラクトンに従っており、DMSO-d6(典型的には下限の値)及びD2O(典型的には上限の値)において、1,5-ラクトンは、典型的には約172~174.6ppmのシフトを呈し、1,4-ラクトンは、約175.5~177.9のシフトを示し、遊離酸は>178ppmのシフト値を示す(Walaszek及びHorton 1982;Walaszek、Horton、及びEkiel 1982;Bierenstiel及びSchlaf 2004)。これらの相対的なC1シフトはまた、C6置換ラクトン及び酸、例えば6-ホスホ置換グルコノ-1,5-及び1,4-ラクトン並びにグルコン酸/グルコン酸塩でも観察することができる(Miclet等、2001;Moreno等、2017;Sadet等、2018)。したがってChaveriatのC1値(173.2、MeOD)は1,5-構造に近い。1,5-ラクトンのC6値はまた、対応する1,4-ラクトン又はヘキソン酸のシフトと比較して高磁場側であることが見出されている(Walaszek及びHorton 1982;Walaszek、Horton、及びEkiel 1982)。したがってChaveriatのC6値(53.4、MeOD)も1,5-構造に近いが、印象的なことに、これまでに記録された非置換ヘキソノラクトンより低い。本発明者等がこの文書の後で示すように、C6のアジ化は、C6値の高磁場側のシフトを誘発し、これは、2D NMR参照なしで不可能ではないにしても、1D 13C NMR単独に基づくアジド化ヘキソノラクトンの環サイズの割り当てをより困難にする可能性がある。
【0028】
まとめると、先行技術は、1)D-グルコースの臭素酸化は、容易に入手できる結晶性の1,5-ラクトンをもたらし(Isbell及びFrusch 1933)、2)アジドラクトンのIR分光法は、1,5-ラクトンに関してBarker 1958とよく一致しており、3)1D 13C NMR分光法が、1,5-ラクトンに関して文献と一致しており、4)全ての化合物が、ラクトンに関して予測される反応性(reactivate)を呈し、それぞれの文書で調査された用途のためにうまく使用されているように、水性臭素酸化が、必然的に本発明にとって不適切な化合物をもたらすと予想されることを説明的に示さなかっただけでなく、示唆もしていなかった。注目すべきことに、全ての以前の報告はアカデミックな同僚評価の精査も通っていた。
【0029】
したがって、本発明者等は、タンパク質アシル化反応での使用のための6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンの合成を可能にするために、最初に先行技術において非自明な困難を同定し、次いでそれを克服しなければならなかった。
【0030】
予測される複雑な水性平衡、IR及び1D 13C NMR分析の非決定的な性質と合わせて、臭素酸化後の失敗した試験的なアシル化実験の結果に直面して初めて、本発明者等は、提唱されている6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンが、必ずしも臭素酸化生成物にとって正しい又は唯一の構造ではない可能性を考え、代替の合成経路を調査した。
【課題を解決するための手段】
【0031】
したがって、本発明は、ハンドル置換された炭水化物ラクトンを合成するための方法であって、非プロトン性条件下で、水素アクセプターの存在下で、ハンドル置換されたアルドースを触媒と接触させる工程を含む方法を提供する。
【0032】
純粋な6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンを得たところ、この化合物は、タンパク質を効率的及び部位特異的にアシル化することが見出された。
【0033】
したがって、本発明はまた、N末端アシル化タンパク質を含む組成物であって、N末端アシル化タンパク質は、式(VII)、式(VIII)又は式(IX)を含む、組成物も提供する:
【0034】
【化1】
【0035】
(式中、
(i)R1、R2、R3、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はハンドルであり、
(ii)R4は、水素、ヒドロキシル、メチル、ハンドル、又はカルボキシルであり、
(iii)R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、ハンドルであり、
(iv)R1、R2、R3及びR4のうちの1つ以下がメチルであり;
(v)Xは、タンパク質のN末端のアミノ酸残基を含み、任意選択で、N末端のアミノ酸残基は、Gly、Ala、Ser又はHis残基である);
【0036】
【化2】
【0037】
(式中、
(i)R1、R2、R3及びR5は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はハンドルであり、
(ii)R4は、水素、ヒドロキシル、メチル、ハンドル、カルボキシル、エステル又はアミドであり、
(iii)R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、ハンドルであり、
(iv)R1、R2、R3及びR4のうちの1つ以下がメチルであり;
(v)Xは、タンパク質のN末端のアミノ酸残基を含み、任意選択で、N末端のアミノ酸残基は、Gly、Ala、Ser又はHis残基である);
【0038】
【化3】
【0039】
(式中、
(i)R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はハンドルであり、
(ii)R4は、ヒドロキシルであり、
(iii)R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは、ハンドルであり、
(iv)R1、R2及びR3のうちの1つ以下がメチルであり;
(v)Xは、タンパク質のN末端のアミノ酸残基を含み、任意選択で、N末端のアミノ酸残基は、Gly、Ala、Ser又はHis残基である)。
【0040】
本発明はまた、N末端でコンジュゲートしたタンパク質を含む組成物であって、N末端でコンジュゲートしたタンパク質は、本発明のN末端アシル化タンパク質を、ホスフィン基(例えば、シュタウディンガーのライゲーションに好適な求電子性トラップを有するトリフェニルホスフィン)、ホスフィン誘導体(例えば、トレースレスなシュタウディンガーのライゲーションに好適な、ビ又はトリフェニルアリールエステル、チオエステル、又はアシルイミダゾール)、アルケン基、アルキン基(CuAACに好適な)、歪んだアルキン基(SPAACに好適な)、OCT、MOFO、DIFO、DIFO2、DIFO3、DIMAC、DIBO、DIBAC(ADIBOとしても公知)、BARAC、BCN、ゾンドハイマー(Sondheimer)のジイン、TMDIBO、S-DIBO、COMBO、PYRROC、TMTH、DIFBO、ALO、チオアルキン基、ケト-DIBO、歪んだオレフィン、又はオキサノルボルナジエン基(例えば、トリフルオロメチルで置換されたオキサノルボルナジエン)を含む化合物と反応させることによって得られるか、又は得ることができる組成物も提供する。
【0041】
更に、本発明は、タンパク質を部位特異的に修飾するための方法であって、タンパク質を、ハンドル置換された炭水化物ラクトンと接触させる工程を含む方法を提供する。
【0042】
本発明はまた、アシル化タンパク質の加水分解速度をモジュレートするための、ジオールエステル形成剤、及び/又は金属カチオンの使用も提供する。
【0043】
本発明はまた、アシル化タンパク質を同定するための方法であって、アシル化タンパク質を含有する疑いのある試料を、ジオールと相互作用しホウ素を含有するアクリルアミドゲルに泳動する工程を含み、アシル化タンパク質は、本発明のアシル化タンパク質であり、任意選択で、ジオールと相互作用しホウ素を含有するアクリルアミドゲルは、メタクリルアミドフェニルボロン酸アクリルアミドゲルである、方法も提供する。
【0044】
更に、本発明は、アシル化タンパク質を精製するための方法であって、(1)アシル化タンパク質を含む疑いのある試料を、固定されたジオールエステル形成剤を含む固体支持体上に結合させる工程;及び(2)タンパク質を溶出させる工程を含む方法を提供する。
【0045】
本発明はまた、タンパク質及びハンドル置換された炭水化物ラクトンを含むキットも提供する。
【発明を実施するための形態】
【0046】
定義
用語「アシル化タンパク質」は、タンパク質のアミノ基が炭水化物ラクトンによって化学修飾されたあらゆるタンパク質を指す。本出願において用語「二重にアシル化された」が使用される場合、これは、2つの部位において炭水化物ラクトンで化学修飾されたタンパク質を指す。例えば、N末端における遊離のアミン基、加えてリジン側鎖の遊離のアミン基がアシル化されていてもよい。
【0047】
用語「付加物」は、本出願で使用される場合、2個又はそれより多くの別個の分子が直接付加した生成物を指し、結果として全ての構成要素のほとんど全ての原子を含有する単一の反応生成物が生じる。
【0048】
用語「非プロトン性条件」は、本出願で使用される場合、1種又は複数の非プロトン性溶媒中で反応が実行されるあらゆる反応条件を指す。非プロトン性溶媒は、電気陰性原子に直接結合した水素原子を含有せず、水素結合が不可能である。例示的な非プロトン性溶媒としては、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルホルムアミド及びアセトニトリルが挙げられる。
【0049】
用語「アジドで置換されたピラノース」は、本出願で使用される場合、5~10個の炭素原子、水素及び酸素を含む化合物であって、炭素原子のうち5個がテトラヒドロピラン環を形成し、炭素原子の少なくとも1個がアジド基に結合しているものを指す。
【0050】
用語「アジドで置換された6員の1,5-炭水化物-ラクトン」は、本出願で使用される場合、5~10個の炭素原子、水素及び酸素を含む飽和6員ラクトン環であって、2、3、4、5、6、又は7位における炭素の1個又は複数がアジド基に結合しているものを指す。
【0051】
用語「ボロン酸」は、本出願で使用される場合、ホウ酸に関する化合物であって、3個のヒドロキシル基のうち1つがアルキル又はアリール基で置き換えられているものを指す。他のジオールエステル形成試薬、例えば2-、及び4-ホルミルフェニルボロン酸、ベンゾボロキソール又はベンゾオキサボロール、Wulff型のボロン酸エステル、4-(メチルカルバモイル)-フェニルボロン酸、又は(2、又は4-[(ジメチルアミノ)メチル]フェニル)ボロン酸が、同様に用いられる可能性があることが理解される。また、合成的により入手しやすいボロン酸エステル及び誘導体も同様に使用できることも理解される。これはなぜなら、水性条件下で、これらのエステルはボロン酸に加水分解し、遊離になり、目的のジオールと複合体化するためである(Eising等、2016)。
【0052】
用語「接触させる」は、本出願で使用される場合、2個又はそれより多くの化合物が、互いに反応が起こるように十分に近接した状態になるあらゆる動作を指す。これは、例えば、溶液中で2種又はそれより多くの構成要素を混合すること、及び反応が進行するような条件下で混合物をインキュベートすることを含む。
【0053】
本明細書で使用される場合、薬剤、例えば抗体等の治療剤の「有効量」という用語は、有益な、又は所望の結果、例えば、臨床結果をもたらすのに十分な量であり、したがって、「有効量」は、それが適用される状況に依存する。用語「有効量」は、「有効用量」、「治療有効量」、又は「治療有効用量」と同義的に使用することができる。
【0054】
用語「ハンドル」は、非天然の化学的官能性を有するタンパク質を提供する化学的な部分を指す。例示的なハンドルとしては、イソチオシアネート、イソシアネート、アジ化アシル、NHSエステル(NHS、及びスルホ)、インサイチュのNHSエステル(例えば-COOH官能基)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)エステル、塩化スルホニル、-フルオリド(flouride)、スルホニルエステル(例えばトシル、メシル、トリチル(trifyl)、トレシルエステル等)、アルデヒド、ケトン、ジカルボニル(すなわちフェニルグリオキサール誘導体)、アルデヒド、アルデヒド、アルデヒド、アミン、エポキシド、カーボネート(例えば炭酸スクシンイミジル)、環状イミドカーボネート、NHSカーボネート、炭酸N,N'-ジスクシンイミジル(DSC)、シアン酸エステル、カルバメート(例えばイミダゾールカルバメート)、アシルイミダゾール、NHSカルバメート、アリールハロゲン化物(例えばフルオロベンゼン誘導体)、ハロアセチル又はハロゲン化アルキル、イミドエステル(イミデート)、カルボキシレート、酸無水物、フルオロフェニルエステル(ペンタフルオロフェニル/PFP、テトラフルオロフェニル/TFP、スルホテトラフルオロフェニル/STPエステル)、ヒドロキシメチルホスフィン[トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン/THP又はベータ-[トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィノ(phospino)]プロピオン酸/THPP]、環状ヘミアセタール、アズラクトン、活性化された二重結合、メチルピリジニウムエーテル、6-スルホ-シトシン誘導体、活性化されたハロゲン、例えばハロアセチル誘導体(例えばヨードアセチル)、ハロゲン化ベンジル、及びハロゲン化アルキル(N-及びS-マスタード)誘導体、活性化された二重結合、ビニルスルホン、マレイミド、アジリジン、ハロゲン化アリール、アクリロイル誘導体(アクリル酸及びメタクリル酸誘導体)、ジスルフィド(例えば保護されたチオール、例えば、ピリジルジスルフィド誘導体、5-チオール-2-ニトロ安息香酸、TNB-チオール(スルフヒドリル(sulfhyrdyl)をエルマン試薬で処理することによって入手可能)、チオール(遊離)、チオエステル、例えばフェニルチオエステル(ネイティブケミカルライゲーションのために、C末端ペプチド上)、C末端を介して付着したシステイン(NCLを可能にするため)、シスプラチン誘導体、2-シアノベンゾチアゾール、エポキシド、ジアゾアルカン及びジアゾアセチル化合物、エポキシド、イソシアネート、アリールアジド(すなわちフェニルアジド、過フッ化フェニルアジド)、ベンゾフェノン、アントラキノン、ジアゾ化合物(すなわちジアゾトリフルオロプロピオネート、ジアゾピルベート)、ジアジレン(Diazirene)誘導体、ソラレン化合物、ハロゲン化フェニルアジド、アルケン、ジエン、フラン、ニトロン(Ning等、2010)、テトラジン(Li等、2010;Stockmann等、2011)、ニトリルオキシド、ジアゾアルカン、シドノン(syndone)、クアドリシクラン、ボロン酸(例えばフェニルボロン酸、及びフェニルジボロン酸)、BCN、BCN、1,3-ジチオリウム-4-オレート(Kumar等、2019)、ホスフィン、例えば求電子性トラップを有するトリフェニルホスフィン(シュタウディンガーのライゲーション)、ホスフィン誘導体(トレースレスなシュタウディンガーのライゲーションのための、ビ又はトリフェニルアリールエステル、又はアシルイミダゾール)、アルケン、アルキン(CuAAC)、歪んだアルキン(SPAAC)、OCT、MOFO、DIFO、DIFO2、DIFO3、DIMAC、DIBO、DIBAC(ADIBO)、BARAC、BCN、ゾンドハイマーのジイン、TMDIBO、S-DIBO、COMBO、PYRROC、TMTH、DIFBO、ALO、イソニトリル、チオアルキン(Destito等、2017)、ケト-DIBO、オレフィン、歪んだオレフィン、トリフルオロメチルで置換されたオキサノルボルナジエン(van Berkel等、2007)、ビオチン及びその誘導体、ボロン酸、p-ボロノフェニルアラニン、歪んだジアルキン、ゾンドハイマーのジアルキンが挙げられる。
【0055】
用語「水素アクセプター」は、本出願で使用される場合、酸化還元反応で水素を受容できるあらゆる分子を指す。ケトン、カルボニル、アルケン、アルキン及び/又はイミン基を含む化合物は、一般的に、好適な水素アクセプターであるとみなされる。水素アクセプターの例としては、アセトン、ブタノン(メチルエチルケトン)、ブタ-3-エン-2-オン、3-メチルブタン-2-オン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、1-ペンテン-3-オン、3,3-ジメチル-2-ブタノン、2-メチルペンタン-3-オン、3-メチル-2-ペンタノン、4-メチルペンタン-2-オン(メチルイソブチルケトン)、3-ペンテン-2-オン、3-ヘキサノン(アセチルアセトン)、2-ヘキサノン、5-ヘキセン-2-オン、4-メチル-3-ペンテン-2-オン、ジベンジリデンアセトン、シクロペンタノン、3-メチル-3-ペンテン-2-オン、5-メチルヘキサン-3-オン、4-メチル-2-ヘキサノン、2-ヘプタノン(メチルn-アミルケトン)、4-ヘプタノン、シクロヘキサノン、4-オクタノン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール(4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オン)、3-オクタノン、5-メチルヘキサン-3-オン、2-オクタノン、オクタ-1-エン-3-オン、5-メチル-2-オクタノン、シクロヘプタノン、アセト酢酸エチル(エチル3-オキソブタノエート)、2-ノナノン、3-ノナノン、4-ノナノン、5-ノナノン、1-メチルピロリジン-2-オン、アセトフェノン、イソホロン(3,5,5-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-オン)、ベンジリデンアセトン、2-デカノン、5-デカノン、3-フェニル-5-ヘキセン-2-オン、ペンタン-2,4-ジオン(アセチルアセトン)、ブタンジオン(ブタン-2,3-ジオン)、ベンジル(1,2-ジフェニルエタン-1,2-ジオン)、ジフェニルアセチレン、1-ヘキシン、シクロヘキセン、ペンタナール、1-メチルシクロヘキセン、1-オクテン、2,4-ジメチル-3-ペンタノン、4-オクチン、スチレン、ジフェニルアセチレン、ベンズアルデヒド、trans-スチルベン、ベンゾフェノン、1,3-ジフェニル-2-プロパノン、アントラセン、及び2-ペンテンが挙げられる。他の好適な水素アクセプターは当業界において公知である(Conley等、2010)。Conley等、2010に開示された水素アクセプターは、参照により本明細書に組み入れられ、用語「水素アクセプター」に包含される。
【0056】
用語「個体」、「患者」又は「対象」は、本出願において人間を指すのに同義的に使用され、限定をまったく意味しない。「個体」、「患者」又は「対象」は、どのような年齢、性別及び身体的な状態を有していてもよい。用語「動物」は、本出願で使用される場合、ヒト以外のあらゆる多細胞性の真核有機栄養生物を指す。好ましい実施形態において、動物は、ネコ、イヌ、ブタ、フェレット、ウサギ、アレチネズミ、ハムスター、モルモット、ウマ、ラット、マウス、ウシ、ヒツジ、ヤギ、アルパカ、ラクダ、ロバ、ラマ、ヤク、キリン、ゾウ、ミーアキャット、キツネザル、ライオン、トラ、カンガルー、コアラ、コウモリ、サル、チンパンジー、ゴリラ、クマ、ジュゴン、マナティー、アザラシ及びサイからなる群から選択される。
【0057】
用語「リンカー」は、本明細書で使用される場合、炭素鎖であって、ヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、硫黄等)を含有していてもよく、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15,16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50原子の長さであってもよい炭素鎖を指す。リンカーは、これらに限定されないが、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル(alkynl)、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アリール、複素環式、芳香族複素環式、シアノ、アミド、カルバモイル、カルボン酸、エステル、チオエーテル、アルキルチオエーテル、チオール、及びウレイド基等の様々な置換基で置換されていてもよい。当業者であれば認識しているものと予想されるが、これらの基のそれぞれは順に置換されていてもよい。リンカーの例としては、これらに限定されないが、pH感受性リンカー、プロテアーゼ切断可能なペプチドリンカー、ヌクレアーゼ感受性核酸リンカー、リパーゼ感受性脂質リンカー、グリコシダーゼ感受性炭水化物リンカー、低酸素感受性リンカー、光切断可能なリンカー、熱不安定性のリンカー、酵素切断可能なリンカー(例えば、エステラーゼ切断可能なリンカー)、超音波感受性リンカー、及びX線切断可能なリンカーが挙げられる。リンカーとしては、例えば、WO2014/10628で教示されたもののいずれかを挙げることができる。
【0058】
用語「N末端のアミノ酸残基」は、そのアルファ炭素に結合した遊離のアミン基を含み、タンパク質の末端に見出されるアミノ酸残基を指す。
【0059】
「医薬的に許容される担体」又は「医薬的に許容される希釈剤」は、本明細書で使用される場合、医薬品投与に適合した、様々な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延剤を意味する。このような医薬活性物質のための媒体及び薬剤の使用は当業界において周知である。許容される担体、賦形剤、又は安定剤は、採用される投薬量及び濃度で受容者にとって非毒性であり、その例としては、本発明の範囲を限定することなく、追加の緩衝剤;保存剤;共溶媒;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸及びメチオニン等;キレート剤、例えばEDTA;金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体);生分解性ポリマー、例えばポリエステル;塩を形成する対イオン、例えばナトリウム、多価糖アルコール;アミノ酸、例えばアラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、オルニチン、ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、及びスレオニン;有機糖又は糖アルコール、例えばラクチトール、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイノシトール(myoinisitose)、ミオイニシトール(myoinisitol)、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えば、イノシトール)、ポリエチレングリコール;硫黄を含有する還元剤、例えば尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、[アルファ]-モノチオグリセロール、及びチオ硫酸ナトリウム;低分子量タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、又は他の免疫グロブリン;並びに親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドンが挙げられる。他の医薬的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤、例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy、第22版、Pharmaceutical press(2012)、ISBN-13:9780857110626に記載されるもの等も含まれ得る。
【0060】
用語「タンパク質」は、本出願において用語「ペプチド」と同義的に使用される。両方の用語は、本出願で使用される場合、アミノ酸残基の1つ又は複数の鎖を含む分子を指す。例としては、触媒性タンパク質、例えば酵素、酵素レギュレーター、プロテインキナーゼ/-ホスファターゼ、プロテアーゼ;バイオマーカー、例えば血液型マーカー、リソソームマーカー、核マーカー、表面抗原分類分子;疾患の原因である疑いのあるタンパク質、例えばAPP/Β-アミロイド、タウ、アポリポタンパク質;輸送タンパク質、例えばアポリポタンパク質、リボソームタンパク質;親和性分子、例えば抗体(Ab)、Fc修飾Ab、付加されたAb(appended Abs)、CH3融合タンパク質、ナノボディ、アフィボディ、単鎖可変断片(scFv)、タンデム親和性断片可変(taFv)、ミニ抗体、Abの断片(FAB)、Fab2、ImmTac、Fab融合体、設計されたアンキリン反復タンパク質(DARPin)、ナノフィチン(Nanofitin)、アフィチン、アフィリン、alpahRep、i-ボディ、レペボディ(Repebodies)、アンチカリン、アトリマー(Atrimer)、アビマー(Avimer)、二環ペプチド、センチリン、Cys-ノット、ノッチン、モノボディ、アドネクチン、フィノマー、クニッツドメイン、Oボディ(OBodies)、二重特異性Ab及びAb断片、三重特異性Ab、Ab融合体、ベータ-ヘアピン模倣体、ダイアボディ、小免疫タンパク質(small immunoprotein:SIPS)、アルマジロリピートタンパク質ベースの足場、接着分子、シグレック分子;シグナル伝達分子、例えばFc受容体、可溶性受容体;抗原、例えば細胞外抗原、細胞内抗原、細胞外膜タンパク質、寄生虫抗原、細菌抗原、ウイルス抗原、MHC抗原、MHC四量体、MHC単量体、自己抗原、自己ネオ抗原、アレルゲン、結合ワクチンのための担体タンパク質、複数の挿入されたエピトープを有する融合タンパク質、免疫調節配列を含む融合タンパク質、細胞透過性ペプチド配列を含む融合タンパク質、抗原と多量体化ドメインとの融合タンパク質;免疫調節タンパク質、例えばサイトカイン、GM-CSF、ケモカイン受容体、免疫チェックポイント受容体、自然免疫シグナル伝達、T細胞受容体、Toll様受容体、Toll様リガンド;増殖調節タンパク質、例えば増殖因子、神経栄養因子、シナプス後タンパク質、ステロイド受容体/核、ペプチドホルモン、タンパク質ホルモン;運動関連分子、例えばケモカイン、鞭毛;ウイルス、例えばバクテリオファージ、ウイルス、ウイルス様粒子;ナノ粒子、例えばペプチドベースのナノ粒子、タンパク質ベースのナノ粒子、外膜小胞、小胞;親和性タグペプチド又はタンパク質、例えばGly-His-タグ;共有結合形成タンパク質、例えばキャッチャー/タグスプリットタンパク質、スパイキャッチャー及びそのバリアント、Gly終結スパイタグ、Gly終結スパイキャッチャー、スプリット-インテイン及び他の(スプリット)タンパク質、例えばGタンパク質共役受容体、電位依存性イオンチャネル、血漿タンパク質、転写因子、凝血因子、融合タンパク質、リンタンパク質、リポタンパク質、ポリメラーゼ、リガーゼ、ヒドロラーゼ、ヌクレアーゼ、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、トランスロカーゼ、レダクターゼ、クラスター化された等間隔にスペーサーが入った短鎖反復回文配列(CRISPR)関連タンパク質、及び糖タンパク質が挙げられる。他の例としては、レピルジン、セツキシマブ、ドルナーゼアルファ、デニロイキンジフチトクス、エタネルセプト、ビバリルジン、ロイプロリド、ペグインターフェロンアルファ-2a、アルテプラーゼ、インターフェロンアルファ-n1、ダルベポエチンアルファ、レテプラーゼ、エポエチンアルファ、サケカルシトニン、インターフェロンアルファ-n3、ペグフィルグラスチム、サルグラモスチム、セクレチン、ペグインターフェロンアルファ-2b、アスパラギナーゼ、チロトロピンアルファ、抗血友病因子、アナキンラ、グラミシジンD、静注用免疫グロブリン、アニストレプラーゼ、レギュラーインスリン、テネクテプラーゼ、メノトロピン、インターフェロンガンマ-1b、インターフェロンアルファ-2a、組換え体、凝血因子VIIa、オプレルベキン、パリフェルミン、グルカゴン組換え体、アルデスロイキン、ボツリヌス毒素B型、オマリズマブ、ルトロピンアルファ、インスリンリスプロ、インスリングラルギン、コラゲナーゼ、ラスブリカーゼ、アダリムマブ、イミグルセラーゼ、アブシキシマブ、アルファ-1-プロテイナーゼ阻害剤、ペグアスパルガーゼ、インタ
ーフェロンベータ-1a、ウシペガデマーゼ、ヒト血清アルブミン、エプチフィバチド、ヨウ素標識血清アルブミン、インフリキシマブ、フォリトロピンベータ、バソプレシン、インターフェロンベータ-1b、インターフェロンアルファコン-1、ヒアルロニダーゼ、ブタインスリン、トラスツズマブ、リツキシマブ、バシリキシマブ、ムロモナブ、ジゴキシン免疫Fab(ヒツジ)、イブリツモマブ、ダプトマイシン、トシツモマブ、ペグビソマント、ボツリヌス毒素A型、パンクレリパーゼ、ストレプトキナーゼ、アレムツズマブ、アルグルセラーゼ、カプロマブ、ラロニダーゼ、ウロフォリトロピン、エファリズマブ、血清アルブミン、絨毛性ゴナドトロピンアルファ、抗胸腺細胞グロブリン、フィルグラスチム、凝血因子ix、ベカプレルミン、アガルシダーゼベータ、インターフェロンアルファ-2b、オキシトシン、エンフビルタイド、パリビズマブ、ダクリズマブ、ベバシズマブ、アルシツモマブ、エクリズマブ、パニツムマブ、ラニビズマブ、イデュルスルファーゼ、アルグルコシダーゼアルファ、エキセナチド、メカセルミン、プラムリンチド、ガルスルファーゼ、アバタセプト、コシントロピン、コルチコトロピン、インスリンアスパルト、インスリンデテミル、インスリングルリジン、ペガプタニブ、ネシリチド、チマルファシン、デフィブロタイド、天然アルファインターフェロンORマルチフェロン、グラチラマー酢酸塩、プレオタクト(Preotact)、テイコプラニン、カナキヌマブ、イピリムマブ、スロデキシド、トシリズマブ、テリパラチド、パーツズマブ、リロナセプト、デノスマブ、リラグルチド、ゴリムマブ、ベラタセプト、ブセレリン、ベラグルセラーゼアルファ、テサモレリン、ブレンツキシマブベドチン、タリグルセラーゼアルファ、ベリムマブ、アフリベルセプト、黒脚病菌(erwinia chrysanthemi)のアスパラギナーゼ、オクリプラスミン、グルカルピダーゼ、テデュグルチド、ラキシバクマブ、セルトリズマブペゴル、インスリン、イソファン、エポエチンゼータ、オビヌツズマブ、フィブリノリジン、通称プラスミン、フォリトロピンアルファ、ロミプロスチム、ルシナクタント、ナタリズマブ、アリスキレン、セクキヌマブ、ソマトトロピン組換え体、ドロトレコギンアルファ、アレファセプト、OspAリポタンパク質、ウロキナ
ーゼ、アバレリクス、セルモレリン、アプロチニン、ゲムツズマブオゾガマイシン、サツモマブペンデチド(Satumomab Pendetide)、アルビグルチド、アリロクマブ、アンセスチム、アンチトロンビンアルファ、アンチトロンビンIIIヒト、アスホターゼアルファ、アテゾリズマブ、自己培養した軟骨細胞、ベラクタント、ブリナツモマブ、C1エステラーゼ阻害剤(ヒト)、血液凝固第XIII因子 Aサブユニット(組換え体)、コネスタットアルファ、ダラツムマブ、デシルジン、デュラグルチド、エロスルファーゼアルファ、エロツズマブ、エボロクマブ、フィブリノーゲン濃縮物(ヒト)、フィルグラスチム-sndz、胃内因子、B型肝炎免疫グロブリン、ヒトカルシトニン、ヒト破傷風菌トキソイド免疫グロブリン、ヒト狂犬病ウイルス免疫グロブリン、ヒトRho(D)免疫グロブリン、ヒアルロニダーゼ(ヒト組換え体)、イダルシズマブ、ヒト免疫グロブリン、ベドリズマブ、ウステキヌマブ、ツロクトコグアルファ、ツベルクリン精製タンパク質誘導体、シモクトコグアルファ、シルツキシマブ、セベリパーゼアルファ、サクロシダーゼ、ラムシルマブ、プロトロンビン複合体濃縮物、ポラクタントアルファ、ペンブロリズマブ、ペグインターフェロンベータ-1a、オファツムマブ、オビルトキサキシマブ、ニボルマブ、ネシツムマブ、メトレレプチン、メトキシポリエチレングリコール-エポエチンベータ、メポリズマブ、イキセキズマブ、ブタインスリン、インスリンデグルデク、ウシインスリン、チログロブリン、ヒト炭疽免疫グロブリン、アンチインヒビター血液凝固複合体、抗胸腺細胞グロブリン(ウマ)、抗胸腺細胞グロブリン(ウサギ)、ブロダルマブ、C1エステラーゼ阻害剤(組換え体)、カナキヌマブ、絨毛性ゴナドトロピン(ヒト)、絨毛性ゴナドトロピン(組換え体)、ヒト血液凝固第X因子、ジヌツキシマブ、エフモロクトコグアルファ、第IX因子複合体(ヒト)、A型肝炎ワクチン、ヒト水痘帯状疱疹免疫グロブリン、イブリツモマブチウキセタン、レノグラスチム、ペグロチカーゼ、硫酸プロタミン、ヒトプロテインS、シプリューセル-T、すなわち前立腺性酸性ホスファターゼと顆粒球マクロファージコロニー刺激因子との融合抗原、ソマトロピン組換え体、スソクトコグアルファ、トロンボモジュリンアルファ、Cas9、及びC
pf1(Cas12a)が挙げられる。
【0061】
用語「触媒」は、本出願で使用される場合、それ自身永続的な変化を受けずに化学反応を開始させるか又はその速度を上げる物質を指す。例としては、Shvo触媒、RuHCl(CO)(PPh3)3、RuCl2(PPh3)3、RhH(PPh3)4、[(ネオクプロイン)PdOAc]2OTf2、[(C4Ph4CO)(CO)2Ru]2、RuH2(PPh3)4、Ru3(CO)12、RuH2(PPh3)4、RuH2(PMe3)4、RuH2(PBu3)4、RuH2(DMPE)2、(PMe3)2Ru(2-メチルアリル)2、(DMPE)Ru(2-メチルアリル)2、(DIOP)Ru(2-メチルアリル)2、Shvoアミドアナログ、例えば(Zhao及びHartwig 2005)に記載されるもの、trans-RuHCl(tmen)(BINAP)、(DPPF)RuCl2(eda)、(PPh3)2RuCl2(eda)、(DIOP)RuCl2(eda)、(PMe3)2RuCl2(eda)、RuH2(CO)(PMe3)3、cis-(PMe3)2RuCl2(eda)、[RuCl26-ベンゼン)]2、RuH4(Ph3P)3、Cp*RuCl[Ph2P(CH2)2NH2-κ2-P,N]、(1,3-ビス(6'-メチル-2'-ピリジルイミノ)イソインドリン)ピンサーRu(II)ヒドリド複合体、例えば(Tseng、Kampf、及びSzymczak 2013)に記載されるもの、Ir含有ジベンゾバレレンベースのPC(sp3)Pピンサー複合体、例えば(Musa等、2011)に記載されるもの、ゾル-ゲルに封じ込められたイリジウム-ピンサー触媒、例えば(Oded等、2012)に記載されるもの、FeOx、例えば(Huang等、2008)に記載されるもの、IrH5(iPr3P)2、ReH7(iPr3P)2、RhH(PPh3)4-ベンザルアセトン、担持された金ナノ粒子、例えば(Mitsudome等、2009)に記載されるもの、Cp*IrCl[OCH2C(C6H5)2NH2]、RuCl2(2-アミノメチルピリジン)(dppb)、加えて、そのメチル化アナログであるtrans-RuCl2(dppb)(2-(N,N-ジメチルアミノ)メチルピリジン)、RuCl2(2-アミノメチルピリジン)(dppf)、加えて、そのメチル化アナログであるtrans-RuCl2(dppf)(2-(N,N-ジメチルアミノ)メチルピリジン)、RuCl2(PPh3)2(2-アミノメチルピリジン)、RuCl2(N,N'-ジメチルエチレンジアミン)(dppf)、RuCl2(PPh3)(dppb)、シクロペンタジエノントリアゾリリデンルテニウム(0)複合体、例えば(Cesari 2016)の49頁に記載されるもの、ヒドロキシシクロペンタジエニル及びメトキシシクロペンタジエニルN-複素環式カルベンルテニウム(II)複合体、例えば(Cesari 2016)の66頁に記載されるもの、ルテニウムテトラアリールシクロペンタジエノンNHC修飾デンドリマー、例えば(Cesari 2016)の101頁に記載されるもの、ルテニウム2,5-ビス-テトラメチルシラン(tetrimethylsilane)-3,4NHC修飾デンドリマー、例えば(Cesari 2016)の105頁に記載されるもの、ルテニウムアニオン性シクロペンタジエノン複合体のイミダゾリウム塩、例えば(Cesari 2016)の117頁に記載されるもの、[Ru(OCORF)2(CO)(PPh3)2](式中、RF=CF3、C2F5、又はC6F5)、[RuH2(N2)(PPh3)3]、[RuHCl(CO)(HN(C2H4PiPr2)2)]、ナフチリジン-ジイミンリガンドによって繋げられ、3個のアセテートによって架橋されたジルテニウム(II、II)複合体[Ru,(L1)(OAc)3]Cl、例えば(Dutta等、2016)に記載されるもの、ルテニウムボリル複合体、例えば[2,5-Ph2-3,4-Tol25-C4COBcat)Ru(CO)2Bcat]及び[2,5-Ph2-3,4-Tol25-C4COH)Ru(CO)2Bcat、ヒドロキシシクロペンタジエニルルテニウムヒドリド二量体(Shvo型)複合体、例えば(Cesari 2016)の158頁に記載されるもの、Shvo型オルガノルテニウム複合体、例えば(Apps等、2014)に記載されるもの、N-複素環式カルベンベースのルテニウム複合体、例えば(Zhang等、2010)に記載されるもの、鉄シクロペンタジエノンN-複素環式カルベン複合体、例えば(Cesari 2016)の133頁に記載されるもの、[Os(OCORF)2(CO)(PPh3)2](式中、RF=CF3、C2F5、又はC6F5)、IrH5(i-Pr3P)2、[Rh(2,2'-ビピリジル)2]Cl、IrH(Cl)[2,6-(tBu2PO)2C6H3]、{IrH(アセトン)[2,6-(tBu2PO)2C6H3]}{BF4}、IrH(Cl)[{2,5-(tBu2PCH2)2C5H2}Ru(C5H5)]、イリジウムトリアジン-ピンサー複合体、例えば(Michlik及びKempe2013)に記載されるもの、及びノンイノセントピリジンリガンドを有するシクロペンタジエニルIr(III)複合体、例えば(Fujita、Tanino、及びYamaguchi2007)に記載されるもの、及び[Ph44-C4CO)]Fe(CO)3が挙げられる。
【0062】
用語「Shvo触媒」は、本出願で使用される場合、以下の構造:
【0063】
【化4】
【0064】
を有する1-ヒドロキシテトラフェニルシクロペンタジエニル-(テトラフェニル-2,4-シクロペンタジエン-1-オン)-μ-ヒドロテトラカルボニルジルテニウム(II)を指す。
【0065】
本出願において、表現「部位特異的に修飾された」は、1つの特定のポイントでタンパク質を優先的に修飾するあらゆる方法を指す。
【0066】
用語「遷移金属」は、本出願で使用される場合、その原子が、部分的に充填されたdサブシェルを有するか、又は不完全なdサブシェルと共にカチオンを生じさせることができる元素を指す。
【0067】
用語「dブロック元素」は、本出願で使用される場合、両端を含め現代の周期表の3~12族に見出すことができる元素を指す。
【0068】
用語「処置」及び「療法」は、本出願で使用される場合、健康問題を改善する目標で疾患及び/又は症状を治癒させる、及び/又は軽減することを意図して使用される、一連の衛生上の、薬理学的な、外科的及び/又は身体的な手段を指す。用語「処置」及び「療法」は、両方とも個体又は動物の健康の維持及び/又は回復を目的とするため、防止的及び治癒的な方法を含む。症状、疾患及び能力障害の原因に関係なく、健康問題を軽減する、及び/又は治癒させるのに好適な医薬の投与は、本出願の文脈内では処置又は療法の形態として解釈されるべきである。
【0069】
化学合成
第1の態様において、本発明は、ハンドル置換された炭水化物ラクトンを合成するための方法であって、非プロトン性条件下で、水素アクセプターの存在下で、ハンドル置換されたアルドースを触媒と接触させる工程を含む方法を提供する。
【0070】
一部の実施形態において、ハンドル置換された炭水化物ラクトンは、5、6又は7員環を有する。一部の実施形態において、炭水化物ラクトンは、1,5-ラクトンである。一部の実施形態において、アルドースは、フラノース、ピラノース又はセプタノースである。一部の実施形態において、炭水化物ラクトンは、5、6又は7員環を有し、C6、C4及び/又はC3は、ハンドルで置換されている。
【0071】
ハンドル置換されたアルドースは、D-リボース、D-アラビノース、D-キシロース、D-リキソース、L-リボース、L-アラビノース、L-キシロース、又はL-リキソース、D-アロース、D-アルトロース、D-グルコース、D-マンノース、D-グロース、D-イドース、D-ガラクトース、D-タロース、L-アロース、L-アルトロース、L-グルコース、L-マンノース、L-グロース、L-イドース、L-ガラクトース、又はL-タロースのハンドル置換された誘導体であってもよい。ヘプトース及びヘキソース誘導体もまた、本発明に従ってC6置換されていてもよい。ヘプトース誘導体もまた、本発明に従ってC7ハンドル置換されていてもよい。
【0072】
一部の実施形態において、ハンドル置換されたアルドースは、C2、C3、C4又はC5位においてアジドで置換されたリボース(Hobbs及びEckstein 1977;Hanessian等、2005;Hassan及びSlama 1992;Singh等、2008)、C2、C4又はC5位においてアジドで置換されたアラビノース(Bols等、1988;Muller等、2010;Singh等、2008)、C2、C3、C4又はC5位において置換されたキシロース(Bols等、1988;McDevitt及びLansbury 1996;Sinha及びBrew 1980)、C3、C5、又はC6位においてアジドで置換されたアロース(Worch及びWittmann 2008;Hudlicky、Nugent、及びGriffith 1994;Roy及びSanjayan 2012)、C2、C3、C5又はC6位においてアジドで置換されたアルトース(Guthrie及びMurphy 1963;Uriel及びSantoyo-Gonzalez 1999;Kefurt等、1986)、C2、C3、C4、C5又はC6位においてアジドで置換されたグルコース(Zaro等、2017;Nagy等、2017;Sinha及びBrew 1980;Hudlicky、Nugent、及びGriffith 1994;Gyorgydeak及びSzilagyi 1987)、C2、C3、C4又はC5位においてアジドで置換されたマンノース(Auge、David、及びMalleron 1989;Fitz、Schwark、及びWong 1995;Khedri等、2014;Dharuman、Wang、及びCrich 2016;Ligeour等、2015)、C3又はC5位においてアジドで置換されたグロース(Campo等、2012;Hudlicky、Nugent、及びGriffith 1994)、C5又はC6位においてアジドで置換されたイドース(Berger等、1992;Hamagami等、2016)、C2、C3、C4、C5又はC6位においてアジドで置換されたガラクトース(Ahad、Jensen、及びJewett 2013;Lowary及びHindsgaul 1994;Zou等、2012;Uriel及びSantoyo-Gonzalez 1999;Zou等、2012)又はC5又はC6位においてアジドで置換されたタロース(Ayers等、2012;Kefurt、Kefurtova、及びJary 1988)である。
【0073】
一部の実施形態において、ハンドル置換されたアルドースは、2-アジド-2-デオキシ-D-グルコース(CAS56883-39-7、Cat.AG753、Synthose社)、2-アジド-2-デオキシ-D-グルコース(CAS56883-39-7、Cat.MA02624、Carbosynth社)、2-アジド-2-デオキシ-D-ガラクトース(CAS68733-26-6、Cat.MA03562、Carbosynth社)、2-アジド-2-デオキシ-D-ガラクトース(CAS68733-26-6、Cat.AL229、Synthose社)、3-アジド-3-デオキシ-D-グルコピラノース(CAS104875-44-7、Cat.AG915、Synthose社)、3-アジド-3-デオキシ-D-ガラクトース(CAS2250404-17-0、Cat.AL491、Synthose社)、4-アジド-4-デオキシ-D-グルコピラノース(CAS74593-35-4、Cat.AG397、Synthose社)、4-アジド-4-デオキシ-D-グルコース(CAS74593-35-4、Cat.MA106335、Carbosynth社)、4-アジド-4-デオキシ-D-ガラクトース(CAS94885-19-5、Cat.AL788、Synthose社)、6-アジド-6-デオキシ-D-グルコピラノース(CAS2089473-19-6、Cat.AG413、Synthose社)、6-アジド-6-デオキシ-D-グルコース(CAS20847-05-6、Cat.MA02620、Carbosynth社)、6-アジド-6-デオキシ-D-マンノース(CAS316379-15-4、Cat.MA167258、Carbosynth社)、6-アジド-6-デオキシ-D-ガラクトース(CAS、66927-03-5、Cat.MA02618、Carbosynth社)、6-アジド-6-デオキシ-D-ガラクトース(CAS66927-03-5、Cat.AF432、Synthose社)、6-アジド-6-デオキシ-L-ガラクトース(代りの名称:6-アジド-L-フコース、CAS70932-63-7、Cat.AF415、Synthose社)又は6-アジド-6-デオキシ-L-ガラクトース(CAS70932-63-7、Cat.MA08355、Carbosynth社)であ
る。
【0074】
一部の実施形態において、ハンドル置換されたアルドースは、ハンドル置換されたリボース、アラビノース、キシロース、アロース、グルコース、マンノース又はガラクトースである。
【0075】
一部の実施形態において、アルドース及び炭水化物ラクトンは、以下のハンドル:アジド、イソチオシアネート、イソシアネート、アジ化アシル、NHSエステル、インサイチュのNHSエステル、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)エステル、塩化スルホニル、-フルオリド、スルホニルエステル(例えばトシル、メシル、トリチル、トレシルエステル等)、アルデヒド、ケトン、ジカルボニル、アルデヒド、アミン、エポキシド、カーボネート(例えば炭酸スクシンイミジル)、環状イミドカーボネート、NHSカーボネート、炭酸N,N'-ジスクシンイミジル(DSC)、シアン酸エステル、カルバメート(例えばイミダゾールカルバメート)、アシルイミダゾール、NHSカルバメート、ハロゲン化アリール(例えばフルオロベンゼン誘導体)、ハロアセチル又はハロゲン化アルキル、イミドエステル(イミデート)、カルボキシレート、酸無水物、フルオロフェニルエステル(ペンタフルオロフェニル/PFP、テトラフルオロフェニル/TFP、スルホテトラフルオロフェニル/STPエステル)、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン/THP、ベータ-[トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィノ]プロピオン酸/THPP、環状ヘミアセタール、アズラクトン、活性化された二重結合、メチルピリジニウムエーテル、6-スルホ-シトシン誘導体、活性化されたハロゲン、ハロアセチル誘導体(例えばヨードアセチル)、ハロゲン化ベンジル、及びハロゲン化アルキル(N-及びS-マスタード)誘導体、活性化された二重結合、ビニルスルホン、マレイミド、アジリジン、ハロゲン化アリール、アクリロイル誘導体(例えば、アクリル酸及びメタクリル酸誘導体)、ジスルフィド(例えば保護されたチオール、例えば、ピリジルジスルフィド誘導体、5-チオール-2-ニトロ安息香酸、TNB-チオール(スルフヒドリルをエルマン試薬で処理することによって入手可能)、チオール(遊離)、チオエステル(例えば、フェニルチオエステル)、C末端を介して付着したシステイン、シスプラチン誘導体、2-シアノベンゾチアゾール、ジアゾアルカン化合物、ジアゾアセチル化合物、エポキシド、アリールアジド(例えばフェニルアジド、過フッ化フェニルアジド)、ベンゾフェノン、アントラキノン、ジアゾ化合物(例えばジアゾトリフルオロプロピオネート、ジアゾピルベート)
、ジアジレン誘導体、ソラレン化合物、ハロゲン化フェニルアジド、アルケン、ジエン、フラン、ニトロン、テトラジン、ニトリルオキシド、ジアゾアルカン、シドノン、クアドリシクラン、ボロン酸(例えばフェニルボロン酸、及びフェニルジボロン酸)、BCN、BCN、1,3-ジチオリウム-4-オレート、ホスフィン(例えば求電子性トラップを有するトリフェニルホスフィン(シュタウディンガーのライゲーション))、ホスフィン誘導体(例えば、トレースレスなシュタウディンガーのライゲーションのための、ビ又はトリフェニルアリールエステル、又はアシルイミダゾール))、アルケン、アルキン、歪んだアルキン、OCT、MOFO、DIFO、DIFO2、DIFO3、DIMAC、DIBO、DIBAC(ADIBO)、BARAC、BCN、ゾンドハイマーのジイン、TMDIBO、S-DIBO、COMBO、PYRROC、TMTH、DIFBO、ALO、イソニトリル、チオアルキン、ケト-DIBO、歪んだオレフィン、トリフルオロメチルで置換されたオキサノルボルナジエン、ビオチン、ビオチン誘導体、ボロン酸、p-ボロノフェニルアラニン、歪んだジアルキン又はゾンドハイマーのジアルキンのいずれか1つで置換されている。好ましい実施形態において、アルドース及び炭水化物ラクトンは、以下のハンドル:アジド、環状ヘミアセタール、アジリジン、C末端を介して付着したシステイン、アミノオキシ基(アルコキシアミンとしても公知)、ヒドラジン(ヒドラジド)、ジアゾ化合物(すなわちジアゾトリフルオロプロピオネート、ジアゾピルベート)、ジアゾアルカン、イソニトリル(通称イソシアニド、カルビラミン)、ボロン酸、p-ボロノフェニルアラニン、アミン、アルデヒド、ケトン、ジカルボニル(すなわちフェニルグリオキサール誘導体)、アルデヒド、ビニルスルホン、マレイミド、アクリロイル誘導体(例えばアクリル酸及びメタクリル酸誘導体)、ジスルフィド(例えば保護されたチオール、例えば、ピリジルジスルフィド誘導体、5-チオール-2-ニトロ安息香酸、TNB-チオール)、チオエステル(例えばフェニルチオエステル(ネイティブケミカルライゲーションのために、C末端ペプチド上))、2-シアノベンゾチアゾール、アルケン、ジエン、フラン、ニトロン、テトラジン、テトラジン、ニトリルオキシド、シドノン、クアドリシクラン、BCN、BCN、1,3-ジチオリウム-4-オレート、ホスフィン(例えば求電子性トラップを有するトリフェニルホスフィン)、ホスフィン誘導体(トレースレスなシュタウディンガーのライゲーションのための、ビ又はトリフェニルアリールエステル、アシルイミダゾール)、アルケン、アルキン、歪んだアルキン、OCT、MOFO、DIFO、DIFO2、DIFO3、DIMAC、DIBO、DIBAC(ADIBO)、BARAC、BCN、ゾンドハイマーのジイン、TMDIBO、S-DIBO、COMBO、PYRROC、TMTH、DIFBO、ALO、チオアルキン、ケト-DIBO、歪んだオレフィン、トリフルオロメチルで置換されたオキサノルボルナジエン、ビオチン又はビオチン誘導体のいずれか1つで置換されている。より好ましい実施形態において、アルドース及び炭水化物ラクトンは、以下のハンドル:アジド、アルデヒド、ケトン、ジカルボニル(例えばフェニルグリオキサール誘導体)、ビニルスルホン、マレイミド、アクリロイル誘導体(例えばアクリル酸及びメタクリル酸誘導体)、ジスルフィド(例えば保護されたチオール、例えば、ピリジルジスルフィド誘導体、5-チオール-2-ニトロ安息香酸、TNB-チオール)、チオエステル(例えばフェニルチオエステル)、2-シアノベンゾチアゾール、アルケン、ジエン、フラン、ニトロン、テトラジン、ニトリルオキシド、シドノン、クアドリシクラン、BCN、BCN、1,3-ジチオリウム-4-オレート、ホスフィン(例えば求電子性トラップを有するトリフェニルホスフィン)、ホスフィン誘導体(ビ又はトリフェニルアリールエステル、アシルイミダゾール)、アルケン、アルキン、歪んだアルキン、OCT、MOFO、DIFO、DIFO2、DIFO3、DIMAC、DIBO、DIBAC、BARAC、BCN、ゾンドハイマーのジイン、TMDIBO、S-DIBO、COMBO、PYRROC、TMTH、DIFBO、ALO、チオアルキン、ケト-DIBO、歪んだオレフィン、トリフルオロメチルで置換されたオキサノルボルナジエン、ビオチン又はビオチン誘導体のいずれか1つで置換されている。好ましくは、ハンドルは、アジドである。
【0076】
一部の実施形態において、ハンドルはリンカーを含み、ハンドルはリンカーを介して炭水化物ラクトンに付着されている。
【0077】
一部の実施形態において、ハンドル置換されたアルドースは、6-アジド-6-デオキシ-D-グルコース、4-アジド-4-デオキシ-D-グルコース又は3-アジド-3-デオキシ-D-グルコースである。
【0078】
触媒は、遷移金属ベースの触媒であってもよい。好ましくはルテニウム又はパラジウムベースの触媒である。
【0079】
一部の実施形態において、触媒は、Shvo触媒、RuHCl(CO)(PPh3)3、RuCl2(PPh3)3、RhH(PPh3)4、[(ネオクプロイン)PdOAc]2OTf2、[(C4Ph4CO)(CO)2Ru]2、RuH2(PPh3)4、Ru3(CO)12、RuH2(PPh3)4、RuH2(PMe3)4、RuH2(PBu3)4、RuH2(DMPE)2、(PMe3)2Ru(2-メチルアリル)2、(DMPE)Ru(2-メチルアリル)2、(DIOP)Ru(2-メチルアリル)2、Shvoアミドアナログ、例えば(Zhao及びHartwig 2005)に記載されるもの、trans-RuHCl(tmen)(BINAP)、(DPPF)RuCl2(eda)、(PPh3)2RuCl2(eda)、(DIOP)RuCl2(eda)、(PMe3)2RuCl2(eda)、RuH2(CO)(PMe3)3、cis-(PMe3)2RuCl2(eda)、[RuCl26-ベンゼン)]2、RuH4(Ph3P)3、Cp*RuCl[Ph2P(CH2)2NH2-κ2-P,N]、(1,3-ビス(6'-メチル-2'-ピリジルイミノ)イソインドリン)ピンサーRu(II)ヒドリド複合体、例えば(Tseng、Kampf、及びSzymczak 2013)に記載されるもの、Ir含有ジベンゾバレレンベースのPC(sp3)Pピンサー複合体、例えば(Musa等、2011)に記載されるもの、ゾル-ゲルに封じ込められたイリジウム-ピンサー触媒、例えば(Oded等、2012)に記載されるもの、FeOx、例えば(Huang等、2008)に記載されるもの、IrH5(iPr3P)2、ReH7(iPr3P)2、RhH(PPh3)4-ベンザルアセトン、担持された金ナノ粒子、例えば(Mitsudome等、2009)に記載されるもの、Cp*IrCl[OCH2C(C6H5)2NH2]、RuCl2(2-アミノメチルピリジン)(dppb)、加えて、そのメチル化アナログであるtrans-RuCl2(dppb)(2-(N,N-ジメチルアミノ)メチルピリジン)、RuCl2(2-アミノメチルピリジン)(dppf)、加えて、そのメチル化アナログであるtrans-RuCl2(dppf)(2-(N,N-ジメチルアミノ)メチルピリジン)、RuCl2(PPh3)2(2-
アミノメチルピリジン)、RuCl2(N,N'-ジメチルエチレンジアミン)(dppf)、RuCl2(PPh3)(dppb)、シクロペンタジエノントリアゾリリデンルテニウム(0)複合体、例えば(Cesari 2016)の49頁に記載されるもの、ヒドロキシシクロペンタジエニル及びメトキシシクロペンタジエニルN-複素環式カルベンルテニウム(II)複合体、例えば(Cesari 2016)の66頁に記載されるもの、ルテニウムテトラアリールシクロペンタジエノンNHC修飾デンドリマー、例えば(Cesari 2016)の101頁に記載されるもの、ルテニウム2,5-ビス-テトラメチルシラン-3,4NHC修飾デンドリマー、例えば(Cesari 2016)の105頁に記載されるもの、ルテニウムアニオン性シクロペンタジエノン複合体のイミダゾリウム塩、例えば(Cesari 2016)の117頁に記載されるもの、[Ru(OCORF)2(CO)(PPh3)2](式中、RF=CF3、C2F5、又はC6F5)、[RuH2(N2)(PPh3)3]、[RuHCl(CO)(HN(C2H4PiPr2)2)]、ナフチリジン-ジイミンリガンドによって繋げられ、3個のアセテートによって架橋されたジルテニウム(II、II)複合体[Ru,(L1)(OAc)3]Cl、例えば(Dutta等、2016)に記載されるもの、ルテニウムボリル複合体、例えば[2,5-Ph2-3,4-Tol25-C4COBcat)Ru(CO)2Bcat]及び[2,5-Ph2-3,4-Tol25-C4COH)Ru(CO)2Bcat、ヒドロキシシクロペンタジエニルルテニウムヒドリド二量体(Shvo型)複合体、例えば(Cesari 2016)の158頁に記載されるもの、Shvo型オルガノルテニウム複合体、例えば(Apps等、2014)に記載されるもの、N-複素環式カルベンベースのルテニウム複合体、例えば(Zhang等、2010)に記載されるもの、鉄シクロペンタジエノンN-複素環式カルベン複合体、例えば(Cesari 2016)の133頁に記載されるもの、[Os(OCORF)2(CO)(PPh3)2](式中、RF=CF3、C2F5、又はC6F5)、IrH5(i-Pr3P)2、[Rh(2,2'-ビピリジル)2]Cl、IrH(Cl)[2,6-(tBu2PO)2C6H3]、{IrH(アセトン)[2,6-(tBu2PO)2C6H3]}{BF4}、IrH(Cl)[{2,5-(tBu2PCH2)2C5H2}Ru(C5H5)]、イリジウムトリアジン-ピンサー複合体、例えば(Michlik及びKempe 2013)に記載されるもの、及びノンイノセントピリジンリガンドを有するシクロペンタジエニルIr(III)複合体、例えば(Fujita、Tanino、及びYamaguchi 2007)に記載されるもの、又は[Ph44-C4CO)]Fe(CO)3である。好ましくは、触媒は、Shvo触媒、RuHCl(CO)(PPh3)3、RuCl2(PPh3)3、RhH(PPh3)4、[(ネオクプロイン)PdOAc]2OTf2、[(C4Ph4CO)(CO)2Ru]2、RuH2(PPh3)4、Ru3(CO)12、RuH2(PPh3)4、RuH2(PMe3)4、RuH2(PBu3)4、RuH2(DMPE)2、(PMe3)2Ru(2-メチルアリル)2、(DMPE)Ru(2-メチルアリル)2、(DIOP)Ru(2-メチルアリル)2、Shvoアミドアナログ、例えば(Zhao及びHartwig 2005)に記載されるもの、trans-RuHCl(tmen)(BINAP)、(DPPF)RuCl2(eda)、(PPh3)2RuCl2(eda)、(DIOP)RuCl2(eda)、(PMe3)2RuCl2(eda)、RuH2(CO)(PMe3)3、cis-(PMe3)2RuCl2(eda)、[RuCl26-ベンゼン)]2、RuH4(Ph3P)3、Cp*RuCl[Ph2P(CH2)2NH2-κ2-P,N]、(1,3-ビス(6'-メチル-2'-ピリジルイミノ)イソインドリン)ピンサーRu(II)ヒドリド複合体、例えば(Tseng、Kampf、及びSzymczak 2013)に記載されるもの、Ir含有ジベンゾバレレンベースのPC(sp3)Pピンサー複合体、例えば(Musa等、2011)に記載されるもの、及びゾル-ゲルに封じ込められたイリジウム-ピンサー触媒、例えば(Oded等、2012)に記載されるもの、FeOx、例えば(Huang等、2008)に記載されるもの、IrH5(iPr3P)2、ReH7(iPr3P)2、RhH(PPh3)4-ベンザルアセトン及び担持された
金ナノ粒子、例えば(Mitsudome等、2009)に記載されるもの、又はCp*IrCl[OCH2C(C6H5)2NH2]である。より好ましくは、触媒は、Shvo触媒、RuHCl(CO)(PPh3)3、RuCl2(PPh3)3、RhH(PPh3)4、又は[(ネオクプロイン)PdOAc]2OTf2である。
【0080】
一部の実施形態において、本発明は、ハンドル置換された6員1,5-炭水化物-ラクトンを合成するための方法であって、非プロトン性条件下で、水素アクセプターの存在下で、ハンドル置換されたピラノースを触媒と接触させる工程を含む方法を提供する。
【0081】
一部の実施形態において、本発明は、アジドで置換された6員1,5-炭水化物-ラクトンを合成するための方法であって、非プロトン性条件下で、水素アクセプターの存在下で、アジドで置換されたピラノースを触媒と接触させる工程を含む方法を提供する。
【0082】
一部の実施形態において、本発明は、アジドで置換された6員1,5-炭水化物-ラクトンを合成するための方法であって、非プロトン性条件下で、水素アクセプターの存在下で、アジドで置換されたピラノースをルテニウム又はパラジウムベースの触媒と接触させる工程を含む方法を提供する。
【0083】
ルテニウム又はパラジウムベースの触媒は、当業界において公知のあらゆるルテニウム又はパラジウムベースの触媒、例えばヒドリドクロロカルボニルトリス(トリフェニル-ホスフィン)ルテニウム(II)、ジヒドリドテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、[(ネオクプロイン)PdOAc]2OTf2及びShvo触媒であってもよい。一部の実施形態において、触媒は、固相表面上に固定されている(He及びHorvath、2017を参照)。一部の実施形態において、触媒は、Shvo触媒である。
【0084】
一部の実施形態において、水素アクセプターは、ケトン、カルボニル、アルケン、アルキン及び/又はイミン基を含む化合物である。一部の実施形態において、水素アクセプターは、非プロトン性溶媒でもある。一部の実施形態において、水素アクセプターは、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、ベンザルアセトン、アセトン、3-ペンタノン、アセトフェノン、4-ニトロ-アセトフェノン、4-フルオロ-アセトフェノン、4-メトキシ-アセトフェノン、ブタノン(メチルエチルケトン)、ブタ-3-エン-2-オン、3-メチルブタン-2-オン、2-ペンタノン、1-ペンテン-3-オン、3,3-ジメチル-2-ブタノン、2-メチルペンタン-3-オン、3-メチル-2-ペンタノン、4-メチルペンタン-2-オン(メチルイソブチルケトン)、3-ペンテン-2-オン、3-ヘキサノン(アセチルアセトン)、2-ヘキサノン、5-ヘキセン-2-オン、4-メチル-3-ペンテン-2-オン、ジベンジリデンアセトン、シクロペンタノン、3-メチル-3-ペンテン-2-オン、5-メチルヘキサン-3-オン、4-メチル-2-ヘキサノン、2-ヘプタノン(メチルn-アミルケトン)、4-ヘプタノン、4-オクタノン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール(4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オン)、3-オクタノン、5-メチルヘキサン-3-オン、2-オクタノン、オクタ-1-エン-3-オン、5-メチル-2-オクタノン、アセト酢酸エチル(エチル3-オキソブタノエート)、2-ノナノン、3-ノナノン、4-ノナノン、5-ノナノン、1-メチルピロリジン-2-オン、イソホロン(3,5,5-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-オン)、ベンジリデンアセトン、2-デカノン、5-デカノン、3-フェニル-5-ヘキセン-2-オン、ペンタン-2,4-ジオン(アセチルアセトン)、ブタンジオン(ブタン-2,3-ジオン)、ベンジル(1,2-ジフェニルエタン-1,2-ジオン)、ジフェニルアセチレン、1-ヘキシン、シクロヘキセン、ペンタナール、1-メチルシクロヘキセン、1-オクテン、2,4-ジメチル-3-ペンタノン、4-オクチン、スチレン、ジフェニルアセチレン、ベンズアルデヒド、trans-スチルベン、ベンゾフェノン、1,3-ジフェニル-2-プロパノン、アントラセン、又は2-ペンテンである。一部の実施形態において、水素アクセプターは、シクロヘキサノンである。
【0085】
いかなる特定の理論に縛られることはないが、本発明者等は、タンパク質が臭素酸化により得られた物質との反応性を有さない最もあり得る理由は、6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトン(そもそも形成されたとして)の、水性条件における主要な化学種としての1,4-ラクトン及び/又は遊離酸への迅速な相互変換である可能性があるという仮説を立てた(Isbell及びFrush 1933;Bierenstiel及びSchlaf 2004)。したがって、酸化反応は、非プロトン性条件下で、例えば非プロトン性溶媒及び水素アクセプターを使用して実行されるべきである。一部の実施形態において、非プロトン性条件は、非プロトン性溶媒を使用することによって達成される。一部の実施形態において、非プロトン性溶媒は、水素アクセプターとしても機能し得るシクロヘキサノンである。一部の実施形態において、水素アクセプターとして機能できない非プロトン性溶媒(すなわち共溶媒)、加えて、水素アクセプターを含む混成溶媒系を使用して、非プロトン性条件を達成してもよい。共溶媒は、1,1,2-トリクロロトリフルオロエタン、シクロペンタン、ヘプタン、ヘキサン、イソオクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、塩化n-ブチル、トルエン、メチルt-ブチルエーテル、o-キシレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、エチルエーテル(ジエチルエーテル)、ジクロロメタン、二塩化エチレン、酢酸n-ブチル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸メチル、1,4-ジオキサン、ピリジン、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド、及び1-メチルピロリジン-2-オンであり得る。例えば、混成溶媒系は、ヘキサン及びシクロヘキサノンを含んでいてもよく、シクロヘキサノンは、水素アクセプターである。
【0086】
本発明の例において、シクロヘキサノンは、合成中に少量のシクロヘキサノール(プロトン性の物質)に還元される。したがって、多少のプロトン性不純物又はプロトン性反応生成物は許容され、したがってそれらが包含される。
【0087】
一部の実施形態において、ハンドル置換されたピラノースは、式(I)、(II)又は(III)に従う:
【0088】
【化5】
【0089】
(式中、
(i)R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はハンドルであり、
(ii)R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは、ハンドルであり、
(iii)R1、R2及びR3のうちの1つ以下がメチルである);
【0090】
【化6】
【0091】
(式中、
(i)R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はハンドルであり、
(ii)R4は、水素、ヒドロキシル、メチル、ハンドル、カルボキシル、エステル又はアミドであり、
(iii)R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、ハンドルであり、
(iv)R1、R2、R3及びR4のうちの1つ以下がメチルである);
【0092】
【化7】
【0093】
(式中、
(i)R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はハンドルであり、
(ii)R4及びR5は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、ハンドル、又はカルボキシルであり、
(iii)R1、R2、R3、R4及びR5のうちの少なくとも1つは、ハンドルであり、
(iv)R1、R2、R3、R4及びR5のうちの1つ以下がメチルである)。
【0094】
一部の実施形態において、アジドで置換されたピラノースは、式(I)、(II)又は(III)に従う:
【0095】
【化8】
【0096】
(式中、
(i)R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はアジドであり、
(ii)R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは、アジドであり、
(iii)R1、R2及びR3のうちの1つ以下がメチルである);
【0097】
【化9】
【0098】
(式中、
(i)R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はアジドであり、
(ii)R4は、水素、ヒドロキシル、メチル、アジド、カルボキシル、エステル又はアミドであり、
(iii)R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、アジドであり、
(iv)R1、R2、R3及びR4のうちの1つ以下がメチルである);
【0099】
【化10】
【0100】
(式中、
(i)R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はアジドであり、
(ii)R4及びR5は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、アジド、又はカルボキシルであり、
(iii)R1、R2、R3、R4及びR5のうちの少なくとも1つは、アジドであり、
(iv)R1、R2、R3、R4及びR5のうちの1つ以下がメチルである)。
【0101】
更に、上記の単糖の、-デオキシ、-アミン、-アミド、-スルホ、-ホスホ、-エステル及びカルボキシアジド誘導体が本発明で使用され得ることが理解される。二糖も使用され得る。このような実施形態において、二糖は、本明細書に記載されるアジドで置換されたピラノースのいずれか1つを含む。
【0102】
一部の実施形態において、本発明は、式(V):
【0103】
【化11】
【0104】
によるアジドで置換された6員1,5-炭水化物-ラクトンを合成するための方法であって、非プロトン性条件下で、水素アクセプターの存在下で、アジドで置換されたピラノースを触媒と接触させる工程を含み、アジドで置換されたピラノースは、式(VI)に従っており:
【0105】
【化12】
【0106】
(i)R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はアジドであり、
(ii)R4は、水素、ヒドロキシル、メチル、アジド、又はカルボキシルであり、
(iii)R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、アジドであり、
(iv)R1、R2、R3及びR4のうちの1つ以下がメチルである、方法を提供する。
【0107】
一部の実施形態において、ハンドル置換されたアルドースは、6-アジド-6-デオキシ-D-グルコース、4-アジド-4-デオキシ-D-グルコース又は3-アジド-3-デオキシ-D-グルコースである。ハンドル置換されたアルドースが6-アジド-6-デオキシ-D-グルコースである場合、本発明の方法により得られた結果生じるハンドル置換された炭水化物ラクトンは、6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンであることは、当業者には明らかである。同様に、ハンドル置換されたアルドースが4-アジド-4-デオキシ-D-グルコースである場合に得られた結果生じる生成物は、4-アジド-4-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンであり、ハンドル置換されたアルドースが3-アジド-3-デオキシ-D-グルコースである場合、結果生じる生成物は、3-アジド-3-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンである。この推理は、本発明の方法により得られたいずれのハンドル置換されたアルドース及び結果生じるハンドル置換された炭水化物ラクトンにも適用することができる。
【0108】
一例において、目的の化合物である6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンは、ヘキサンを用いた沈殿、それに続く5:1の酢酸エチル/アセトン(v/v)の混合物への再可溶化によって反応混合物から精製される。
【0109】
標的化合物の沈殿は、反応溶媒より疎水性である他の溶媒を添加し、反応混合物からの標的化合物の沈殿を引き起こしながら、溶液中の触媒化学種及び存在し得る他の不純物を理想的に残すことによって達成できるとが考えられる。
【0110】
したがって、一部の実施形態において、本方法は、非プロトン性溶媒を用いてハンドル置換された炭水化物ラクトンを沈殿させる工程を更に含む。非プロトン性溶媒は、ジ-n-ブチルフタレート、1,1-ジクロロエタン、3-ペンタノン、クロロホルム、酢酸メチル、ジグライム、ジメトキシエタン(グライム)、安息香酸エチル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(THF)、アニソール、クロロベンゼン、ジオキサン、ジエチルアミン、メチルt-ブチルエーテル(MTBE)、エーテル、ベンゼン、トルエン、p-キシレン、炭素ジスルフィド、四塩化炭素、ヘプタン、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、1,1,2-トリクロロトリフルオロエタン、シクロペンタン、石油エーテル、2,2,4-トリメチルペンタン(イソオクタン)、1-クロロブタン、o-ジクロロベンゼン、エチルエーテル(ジエチルエーテル)、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、酢酸n-ブチル、メチルイソアミルケトン、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、メチルn-プロピルケトン、シクロヘキサノン、テトラクロロエチレン、1,2,4-トリクロロベンゼン、2-ヘキサノン、4-オクタノン、ジイソブチルケトン、3-オクタノン、5-メチルヘキサン-3-オン、2-オクタノン、オクタ-1-エン-3-オン、5-メチル-2-オクタノン、シクロヘプタノン、アセト酢酸エチル(エチル3-オキソブタノエート)、2-ノナノン、3-ノナノン、4-ノナノン、5-ノナノン、1-メチルピロリジン-2-オン、アセトフェノン、イソホロン(3,5,5-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-オン)、ベンジリデンアセトン、2-デカノン、若しくは5-デカノン、又は3-フェニル-5-ヘキセン-2-オンであり得る。
【0111】
アミンを含有する溶媒は、アミン基は炭水化物由来のラクトンと反応する可能性があるため、一般的にそれほど好ましくない。しかしながら慎重に溶媒を選び、反応混合物をこのような溶媒と低い温度で限定的な時間だけ接触させることで、過剰な損失を出さずに標的化合物を選択的に沈殿させることが可能になる場合がある。このような溶媒の例は、N,N-ジメチルアニリン、及びジエチルアミンである。
【0112】
沈殿の後、ハンドル置換された炭水化物ラクトンは、再可溶化してもよい。最初の沈殿工程の後により高い純度を達成するために、再可溶化は、好ましくは標的化合物(すなわち、ハンドル置換された炭水化物ラクトン)を選択的に溶解させるが触媒や他の不純物を溶解させない溶媒を用いて達成することができる。標的化合物を可溶化するために。溶媒の組合せも使用され得る。
【0113】
固体残留物、例えば触媒及び/又は他の不純物は、遠心分離、デカント、濾過、及び/若しくは他の固体液体分離方法又はそれらの組合せによって除去することができる。
【0114】
非プロトン性溶媒は、標的化合物の可溶化のための好ましい溶媒である。プロトン性溶媒は、標的化合物の可溶化にはそれほど好ましくなく、なぜならこれらは、ラクトン環を開き直鎖(酸)にする可能性があるか、又は標的を例えば1,5-ラクトンから1,4-ラクトンに再配列させる可能性があるためである。
【0115】
一部の実施形態において、本方法は、再可溶化工程を更に含み、この工程において、沈殿したハンドル置換された炭水化物ラクトンは、シクロヘキサノン、2-ペンタノン、2-ブタノン、ベンゾニトリル、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、ジエチレングリコール、エチレングリコール、メチルエチルケトン、1,4-ジオキサン、ピリジン、プロピレンカーボネート、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラクロロエチレン、1,2,4-トリクロロベンゼン、ブタノン(メチルエチルケトン)、ブタ-3-エン-2-オン、3-メチルブタン-2-オン、3-ペンタノン、1-ペンテン-3-オン、3,3-ジメチル-2-ブタノン、2-メチルペンタン-3-オン、3-メチル-2-ペンタノン、4-メチルペンタン-2-オン(メチルイソブチルケトン)、3-ペンテン-2-オン、3-ヘキサノン(アセチルアセトン)、2-ヘキサノン、5-ヘキセン-2-オン、4-メチル-3-ペンテン-2-オン、ジベンジリデンアセトン、シクロペンタノン、t-ブチルアルコール、3-ペンタノール、2-ペンタノール、2-ブタノール、シクロヘキサノール、1-オクタノール、2-プロパノール、1-ヘプタノール、i-ブタノール、1-ヘキサノール、1-ペンタノール、1-ブタノール、ベンジルアルコール、1-プロパノール、酢酸、エタノール、メタノール、グリセリン、重水、水、ピリジン、2-アミノエタノール、アニリン、N,N-ジメチルアニリン、又はジエチルアミンを含む組成物中に再溶解させる。好ましくは、シクロヘキサノン、2-ペンタノン、2-ブタノン、ベンゾニトリル、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、ジエチレングリコール、エチレングリコール、メチルエチルケトン、1,4-ジオキサン、ピリジン、プロピレンカーボネート、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラクロロエチレン、1,2,4-トリクロロベンゼン、ブタノン(メチルエチルケトン)、ブタ-3-エン-2-オン、3-メチルブタン-2-オン、3-ペンタノン、1-ペンテン-3-オン、3,3-ジメチル-2-ブタノン、2-メチルペンタン-3-オン、3-メチル-2-ペンタノン、4-メチルペンタン-2-オン(メチルイソブチルケトン)、3-ペンテン-2-オン、3-ヘキサノン(アセチルアセトン)、2-ヘキサノン、5-ヘキセン-2-オン、4-メチル-3-ペンテン-2-オン、ジベンジリデンアセトン、又はシクロペンタノンを含む組成物中に再溶解させる。より好ましくは、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル又はそれらの混合物を含む組成物中に再溶解させる。最も好ましくは、酢酸エチル及びアセトンを含む組成物中に再溶解させる。
【0116】
一部の実施形態において、本方法は、アジドで置換された6員1,5-炭水化物-ラクトンを、ヘキサンを使用して沈殿させる工程、続いて酢酸エチル/アセトンの混合物中に沈殿を再可溶化する工程を更に含む。一部の実施形態において、酢酸エチル/アセトンの混合物は、5:1の比率の酢酸エチル:アセトンを有する。
【0117】
一部の実施形態において、本発明は、6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンを合成するための方法であって、6-アジド-6-デオキシ-D-グルコースを、非プロトン性条件下で、水素アクセプターの存在下で、触媒と接触させる工程を含む方法を提供する。一部の実施形態において、この方法は、アジドで置換された6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンを、ヘキサンを使用して沈殿させる工程、続いて酢酸エチル/アセトンの混合物中に沈殿を再可溶化する工程を更に含む。一部の実施形態において、酢酸エチル/アセトンの混合物は、5:1の比率の酢酸エチル:アセトンを有する。
【0118】
一部の実施形態において、本発明は、6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンを合成するための方法であって、6-アジド-6-デオキシ-D-グルコースを、非プロトン性条件下で、水素アクセプターの存在下で、触媒と接触させる工程を含む方法を提供する。一部の実施形態において、この方法は、アジドで置換された6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンを、ヘキサンを使用して沈殿させる工程、続いてアセトニトリル中に沈殿を再可溶化する工程を更に含む。
【0119】
一部の実施形態において、本発明は、6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンを合成するための方法であって、6-アジド-6-デオキシ-D-グルコースを、非プロトン性条件下で、水素アクセプターの存在下で、Shvo触媒と接触させる工程を含む方法を提供する。一部の実施形態において、この方法は、6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンを、ヘキサンを使用して沈殿させる工程、続いて酢酸エチル/アセトンの混合物中に沈殿を再可溶化する工程を更に含む。一部の実施形態において、酢酸エチル/アセトンの混合物は、5:1の比率の酢酸エチル:アセトンを有する。
【0120】
本出願はまた、代替の精製戦略も想定している。ラクトン化反応は、非プロトン性溶媒中に触媒が完全に溶解しており、生成物が固体と溶解した状態との平衡状態にある条件で行われてもよいことが考えられる(Bierenstiel 2005、52)。このケースにおいて、簡単な固体-液体分離方法、例えばデカンテーション、濾過、遠心分離を実行して、所望の固体生成物を分離してもよい。より高い純度を達成するために、好適な溶媒を用いた目的の固体化合物の任意選択の洗浄を実行してもよく、これは、理想的に、不純物を除去しながら、目的の固体生成物を残す。代替として、存在し得る微量の触媒を除去するために、化合物の再可溶化が前の通りに行われ、続いて、固体不純物を残すために、デカンテーション、濾過、遠心分離、又は他のあらゆる固体-液体分離方法が行われる。
【0121】
反応混合物をまず蒸発させ、次いで、不純物を溶解させるが固体標的化合物は不溶性なままにする溶媒又は溶媒混合物で残留物を洗浄することによって触媒及び他の不純物を除去することが考えられる。デカンテーション、濾過、遠心分離、又は他のあらゆる固体-液体分離方法を採用して、固体を収集することができる。
【0122】
更に、反応混合物をまず蒸発させ、前の通りに溶媒又は溶媒混合物を用いて標的化合物を選択的に可溶化しながら、不純物を固体として残すことも考えられる。
【0123】
反応後に、触媒を金属結合固体支持体等の固体支持体に結合させること、続いて磁場分離(磁場応答性固体支持体の場合)、濾過、デカンテーション、遠心分離、又は他のあらゆる固体-液体分離技術によって触媒を除去することが考えられる。
【0124】
触媒が基質との反応中にすでに固定された場合、触媒は、例えば磁場分離(磁場応答性固体支持体の場合)、濾過、デカンテーション、遠心分離、又は他のあらゆる固体-液体分離技術によって除去されることが考えられる。
【0125】
所望の化合物及び触媒の分離は、反応後に触媒を化学修飾することによって達成されることが考えられる。これは、リガンド置き換え反応等の技術によって達成してもよいし、及び/又は「非活性化」によって達成してもよく、これは、原則的には、触媒の親水性/疎水性を変化させることであり、したがって目的の化合物の精製をより簡単にする。
【0126】
本発明はまた、本発明の方法のいずれか1つによって得られた、又は得ることができるハンドル置換された炭水化物ラクトンを含む組成物も提供する。一部の実施形態において、ハンドル置換された炭水化物ラクトンの純度は、任意選択で1D 1H-、1D 13C-、及び/又は2D 1H-13C HSQC NMRによって決定される場合、少なくとも85%である。一部の実施形態において、ハンドル置換された炭水化物ラクトンの純度は、任意選択で、1D 1H-、1D 13C-、及び/又は2D 1H-13C HSQC NMRによって決定される場合、少なくとも95%である。全ての実施形態で純度を決定するのに使用される溶媒は、DMSO-d6であり得る。
【0127】
結晶化、更に任意選択の再結晶を実行して、より一層純粋な目的の化合物を得てもよいことが考えられる。このケースにおいて、化合物を好適な溶媒に溶解し、正常圧又は減圧下での蒸発によって濃縮する。種結晶を用いたシーディングは、より純粋な結晶の成長を助けることができ、不純物を含有する母液は除去される。結晶化及び/又は再結晶化のための他の好適な一般的な方法を使用することが考えられ、このような方法は当業界において公知であり、例えば、これらに限定されないが、単一溶媒(再)結晶化、複数溶媒(再)結晶化、冷却(再)結晶化、蒸発による(再)結晶化、ドラフトチューブ及びバッフルによる(再)結晶化、熱濾過による(再)結晶化、シーディング、遅い拡散による(再)結晶化、又は界面/遅い混合による(再)結晶化が挙げられる。
【0128】
さらなる態様において、本発明は、本発明の方法のいずれか1つによって得られた、又は得ることができるハンドル置換された炭水化物ラクトンの結晶形態を提供する。一部の実施形態において、ハンドル置換された炭水化物ラクトンは、6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンである。一部の実施形態において、ハンドル置換された炭水化物ラクトンは、任意選択で1D 1H-、1D 13C-、及び/又は2D 1H-13C HSQC NMRによって決定される場合、少なくとも85%の純度を有する。一部の実施形態において、純度は、少なくとも95%である。
【0129】
さらなる態様において、本発明は、任意選択で1D 1H-、1D 13C-、及び/又は2D 1H-13C HSQC NMRによって決定される場合、少なくとも85%の純度を有する、アジドで置換された6員1,5-炭水化物-ラクトンを提供する。一部の実施形態において、純度は、少なくとも95%である。
【0130】
本発明は、以下の項目を提供する:
[1]ハンドル置換された炭水化物ラクトンを合成するための方法であって、非プロトン性条件下で、水素アクセプターの存在下で、ハンドル置換されたアルドースを触媒と接触させる工程を含む方法。
【0131】
[2]ハンドル置換された炭水化物ラクトンが、アジドで置換された6員1,5-炭水化物-ラクトンであり、ハンドル置換されたアルドースが、アジドで置換されたピラノースである、項目[1]に記載の方法。
【0132】
[3]触媒が、Shvo触媒である、項目[2]に記載の方法。
【0133】
[4]水素アクセプターが、ケトン、カルボニル、アルケン、アルキン及び/又はイミン基を含む化合物である、項目[2]~[3]のいずれか一項に記載の方法。
【0134】
[5]水素アクセプターが、シクロヘキサノンである、項目[2]~[4]のいずれか一項に記載の方法。
【0135】
[6]アジドで置換されたピラノースが、式(I):
【0136】
【化13】
【0137】
(式中、
(i)R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はアジドであり、
(ii)R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは、アジドであり、
(iii)R1、R2及びR3のうちの1つ以下がメチルである)
に従う、項目[2]~[5]のいずれか一項に記載の方法。
【0138】
[7]アジドで置換されたピラノースが、式(II):
【0139】
【化14】
【0140】
(式中、
(i)R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はアジドであり、
(ii)R4は、水素、ヒドロキシル、メチル、アジド、又はカルボキシルであり、
(iii)R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、アジドであり、
(iv)R1、R2、R3及びR4のうちの1つ以下がメチルである)
に従う、項目[2]~[5]のいずれか一項に記載の方法。
【0141】
[8]アジドで置換されたピラノースが、式(III):
【0142】
【化15】
【0143】
(式中、
(i)R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はアジドであり、
(ii)R4及びR5は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、アジド、又はカルボキシルであり、
(iii)R1、R2、R3、R4及びR5のうちの少なくとも1つは、アジドであり、
(iv)R1、R2、R3、R4及びR5のうちの1つ以下がメチルである)
に従う、項目[2]~[5]のいずれか一項に記載の方法。
【0144】
[9]アジドで置換されたピラノースが、6-アジド-6-デオキシ-D-グルコース、4-アジド-4-デオキシ-D-グルコース又は3-アジド-3-デオキシ-D-グルコースである、項目[7]に記載の方法。
【0145】
[10]項目[1]~[9]のいずれか一項に記載の方法によって得られた、又は得ることができる、ハンドル置換された炭水化物ラクトンを含む組成物。
【0146】
N末端でアシル化及び/又はコンジュゲートしたタンパク質を含む組成物
さらなる態様において、本発明は、N末端アシル化タンパク質を含む組成物であって、N末端アシル化タンパク質は、式(VII)、式(VIII)又は式(IX):
【0147】
【化16】
【0148】
(式中、
(i)R1、R2、R3、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はハンドルであり、
(ii)R4は、水素、ヒドロキシル、メチル、ハンドル、又はカルボキシルであり、
(iii)R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、ハンドルであり、
(iv)R1、R2、R3及びR4のうちの1つ以下がメチルであり;
(v)Xは、タンパク質のN末端のアミノ酸残基を含み、任意選択で、N末端のアミノ酸残基は、Gly、Ala、Ser又はHis残基である);
【0149】
【化17】
【0150】
(式中、
(i)R1、R2、R3及びR5は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はハンドルであり、
(ii)R4は、水素、ヒドロキシル、メチル、ハンドル、カルボキシル、エステル又はアミドであり、
(iii)R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、ハンドルであり、
(iv)R1、R2、R3及びR4のうちの1つ以下がメチルであり;
(v)Xは、タンパク質のN末端のアミノ酸残基を含み、任意選択で、N末端のアミノ酸残基は、Gly、Ala、Ser又はHis残基である);
【0151】
【化18】
【0152】
(式中、
(i)R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はハンドルであり、
(ii)R4は、ヒドロキシルであり、
(iii)R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは、ハンドルであり、
(iv)R1、R2及びR3のうちの1つ以下がメチルであり;
(v)Xは、タンパク質のN末端のアミノ酸残基を含み、任意選択で、N末端のアミノ酸残基は、Gly、Ala、Ser又はHis残基である)
を含む、組成物を提供する。好ましくは、タンパク質のN末端のアミノ酸残基は、Glyである。
【0153】
一部の実施形態において、組成物中のタンパク質の少なくとも10%は、上述した式(VII)、式(VIII)又は式(IX)を含む。好ましくは、組成物中のタンパク質の少なくとも20%は、上述した式(VII)、式(VIII)又は式(IX)を含む。これは、MALDI-TOF MS又はQTOF MSを使用して決定することができる。
【0154】
一部の実施形態において、ハンドルは、アジド、イソチオシアネート、イソシアネート、アジ化アシル、NHSエステル、インサイチュのNHSエステル、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)エステル、塩化スルホニル、-フルオリド、スルホニルエステル(例えばトシル、メシル、トリチル、トレシルエステル等)、アルデヒド、ケトン、ジカルボニル、アルデヒド、アミン、エポキシド、カーボネート(例えば炭酸スクシンイミジル)、環状イミドカーボネート、NHSカーボネート、炭酸N,N'-ジスクシンイミジル(DSC)、シアン酸エステル、カルバメート(例えばイミダゾールカルバメート)、アシルイミダゾール、NHSカルバメート、ハロゲン化アリール(例えばフルオロベンゼン誘導体)、ハロアセチル又はハロゲン化アルキル、イミドエステル(イミデート)、カルボキシレート、酸無水物、フルオロフェニルエステル(ペンタフルオロフェニル/PFP、テトラフルオロフェニル/TFP、スルホテトラフルオロフェニル/STPエステル)、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン/THP、ベータ-[トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィノ]プロピオン酸/THPP、環状ヘミアセタール、アズラクトン、活性化された二重結合、メチルピリジニウムエーテル、6-スルホ-シトシン誘導体、活性化されたハロゲン、ハロアセチル誘導体(例えばヨードアセチル)、ハロゲン化ベンジル、及びハロゲン化アルキル(N-及びS-マスタード)誘導体、活性化された二重結合、ビニルスルホン、マレイミド、アジリジン、ハロゲン化アリール、アクリロイル誘導体(例えば、アクリル酸及びメタクリル酸誘導体)、ジスルフィド(例えば保護されたチオール、例えば、ピリジルジスルフィド誘導体、5-チオール-2-ニトロ安息香酸、TNB-チオール(スルフヒドリルをエルマン試薬で処理することによって入手可能)、チオール(遊離)、チオエステル(例えば、フェニルチオエステル)、C末端を介して付着したシステイン、シスプラチン誘導体、2-シアノベンゾチアゾール、ジアゾアルカン化合物、ジアゾアセチル化合物、エポキシド、アリールアジド(例えばフェニルアジド、過フッ化フェニルアジド)、ベンゾフェノン、アントラキノン、ジアゾ化合物(例えばジアゾトリフルオロプロピオネート、ジアゾピルベート)、ジアジレン誘導体、ソラレン化合物、ハ
ロゲン化フェニルアジド、アルケン、ジエン、フラン、ニトロン、テトラジン、ニトリルオキシド、ジアゾアルカン、シドノン、クアドリシクラン、ボロン酸(例えばフェニルボロン酸、及びフェニルジボロン酸)、BCN、BCN、1,3-ジチオリウム-4-オレート、ホスフィン(例えば求電子性トラップを有するトリフェニルホスフィン(シュタウディンガーのライゲーション))、ホスフィン誘導体(例えば、トレースレスなシュタウディンガーのライゲーションのための、ビ又はトリフェニルアリールエステル、又はアシルイミダゾール))、アルケン、アルキン、歪んだアルキン、OCT、MOFO、DIFO、DIFO2、DIFO3、DIMAC、DIBO、DIBAC(ADIBO)、BARAC、BCN、ゾンドハイマーのジイン、TMDIBO、S-DIBO、COMBO、PYRROC、TMTH、DIFBO、ALO、イソニトリル、チオアルキン、ケト-DIBO、歪んだオレフィン、トリフルオロメチルで置換されたオキサノルボルナジエン、ビオチン、ビオチン誘導体、ボロン酸、p-ボロノフェニルアラニン、歪んだジアルキン又はゾンドハイマーのジアルキンである。好ましい実施形態において、ハンドルは、アジド、ジアゾトリフルオロプロピオネート、ジアゾピルベート)、ジアゾアルカン、イソニトリル(通称イソシアニド、カルビラミン)、ボロン酸、p-ボロノフェニルアラニン、アミン、アルデヒド、ケトン、ジカルボニル(すなわちフェニルグリオキサール誘導体)、アルデヒド、ビニルスルホン、マレイミド、アクリロイル誘導体(例えばアクリル酸及びメタクリル酸誘導体)、ジスルフィド(例えば保護されたチオール、例えば、ピリジルジスルフィド誘導体、5-チオール-2-ニトロ安息香酸、TNB-チオール)、チオエステル(例えばフェニルチオエステル(ネイティブケミカルライゲーションのために、C末端ペプチド上))、2-シアノベンゾチアゾール、アルケン、ジエン、フラン、ニトロン、テトラジン、テトラジン、ニトリルオキシド、シドノン、クアドリシクラン、BCN、BCN、1,3-ジチオリウム-4-オレート、ホスフィン(例えば求電子性トラップを有するトリフェニルホスフィン)、ホスフィン誘導体(トレースレスなシュタウディンガーのライゲーションのための、ビ又はトリフェニルアリールエステル、アシルイミダゾール)、アルケン、アルキン、歪んだアルキン、OCT、MOFO、DIFO、DIFO2、DIFO3、DIMAC、DIBO、DIBAC(ADIBO)、BARAC、BCN、ゾンドハイマーのジイン、TMDIBO、S-DIBO、COMBO、PYRROC、TMTH、DIFBO、ALO、チオアルキン、ケト-DIBO、歪んだオレフィン、トリフルオロメチルで置換されたオキサノルボルナジエン、ビオチン又はビオチン誘導体である。より好ましい実施形態において、ハンドルは、アジド、アルデヒド、ケトン、ジカルボニル(例えばフェニルグリオキサール誘導体)、ビニルスルホン、マレイミド、アクリロイル誘導体(例えばアクリル酸及びメタクリル酸誘導体)、ジスルフィド(例えば保護されたチオール、例えば、ピリジルジスルフィド誘導体、5-チオール-2-ニトロ安息香酸、TNB-チオール)、チオエステル(例えばフェニルチオエステル)、2-シアノベンゾチアゾール、アルケン、ジエン、フラン、ニトロン、テトラジン、ニトリルオキシド、シドノン、クアドリシクラン、BCN、BCN、1,3-ジチオリウム-4-オレート、ホスフィン(例えば求電子性トラップを有するトリフェニルホスフィン)、ホスフィン誘導体(ビ又はトリフェニルアリールエステル、アシルイミダゾール)、アルケン、アルキン、歪んだアルキン、OCT、MOFO、DIFO、DIFO2、DIFO3、DIMAC、DIBO、DIBAC、BARAC、BCN、ゾンドハイマーのジイン、TMDIBO、S-DIBO、COMBO、PYRROC、TMTH、DIFBO、ALO、チオアルキン、ケト-DIBO、歪んだオレフィン、トリフルオロメチルで置換されたオキサノルボルナジエン、ビオチン又はビオチン誘導体である。最も好ましくは、ハンドルは、アジドである。
【0155】
一部の実施形態において、本発明は、N末端アシル化タンパク質を含む組成物であって、N末端アシル化タンパク質は、式(IV):
【0156】
【化19】
【0157】
(式中、
(i)R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はアジドであり、
(ii)R4は、水素、ヒドロキシル、メチル、アジド、又はカルボキシルであり、
(iii)R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、アジドであり、
(iv)R1、R2、R3及びR4のうちの1つ以下がメチルであり;
(v)Xは、タンパク質のN末端のアミノ酸残基を含み、任意選択で、N末端のアミノ酸残基は、Gly、Ala、Ser又はHis残基である)
を含む、組成物を提供する。好ましくは、タンパク質のN末端のアミノ酸残基は、Glyである。
【0158】
一部の実施形態において、本発明は、N末端アシル化タンパク質を含む組成物であって、N末端アシル化タンパク質は、式(X):
【0159】
【化20】
【0160】
(式中、
(i)R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はアジドであり、
(ii)R4は、水素、ヒドロキシル、メチル、アジド、又はカルボキシルであり、
(iii)R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、アジドであり、
(iv)R1、R2、R3及びR4のうちの1つ以下がメチルであり;
(v)Xは、タンパク質のN末端のアミノ酸残基を含み、任意選択で、N末端のアミノ酸残基は、Gly、Ala、Ser又はHis残基である)
を含む、組成物を提供する。好ましくは、タンパク質のN末端のアミノ酸残基は、Glyである。
【0161】
一部の実施形態において、Xは、アミノ酸配列Gly-Gly又はGly-Alaを含む。
【0162】
一部の実施形態において、タンパク質は、N末端にHisタグを含む。この実施形態は、N末端における最初の3~6個のアミノ酸残基がHisであるタンパク質、加えて、例えば、GHHHHHH及びGSSHHHHHHのようにHisタグの前に1~4個の残基が存在するタンパク質を包含する。一部の実施形態において、Xは、3~10個のHis残基を含む。
【0163】
一部の実施形態において、総アシル化タンパク質の5%未満が二重にアシル化されている。一部の実施形態において、総アシル化タンパク質の3%未満が二重にアシル化されている。これは、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)又は四重極飛行時間型質量分析(QTOF MS)を使用して決定することができる。二重のアシル化の程度は、イオン数(IC)の比率として、また、イオン電流、MSデータから反応に参加し得るアシル化(単一及び二重)及び非アシル化タンパク質の両方に関する全てのIC値の合計で割った二重アシル化タンパク質のピーク値としても推測することができる。MSデータは、デコンボリューションしてもよいし、又は直接使用してもよい。比率はまた、それぞれモノ、ジアシル化した、又はそれ以外の方法でアシル化した化合物、加えて非アシル化種につき曲線下面積を積分することによって目的の分子の個々のチャージバリアントを解析できる慎重に最適化したイオン交換プロトコールを使用することによるクロマトグラフ分離によって計算し、上述の通り計算してもよい。
【0164】
一部の実施形態において、R4は、アジドであり、R3は、ヒドロキシルであり、R2は、ヒドロキシルであり、R1は、ヒドロキシルである。一部の実施形態において、R4は、ヒドロキシルであり、R3は、アジドであり、R2は、ヒドロキシルであり、R1は、ヒドロキシルである。一部の実施形態において、R4は、ヒドロキシルであり、R3は、ヒドロキシルであり、R2は、アジドであり、R1は、ヒドロキシルである。一部の実施形態において、R4は、ヒドロキシルであり、R3は、ヒドロキシルであり、R2は、ヒドロキシルであり、R1は、アジドである。
【0165】
一部の実施形態において、Xは、アミノ酸配列Gly-Xaa1-Xaa2-Xaa3を含み、
(i)Xaa1は、アミノ酸残基であるか、又は存在せず;
(ii)Xaa2は、アミノ酸残基であるか、又は存在せず;
(iii)Xaa3は、3個又はそれより多くのHis残基からなる。一部の実施形態において、Xaa1及びXaa2は、それぞれ独立して、Ser、Gly又はAlaである。一部の実施形態において、Xaa1は、Serであり、Xaa2は、Serである。
【0166】
一部の実施形態において、Xは、アミノ酸配列GSSHHHHHH又はGHHHHHHを含む。
【0167】
一部の実施形態において、Xは、アミノ酸配列Gly-Xaa1-Xaa2を含み、
(i)Xaa1は、Gly、Ser又はAlaであり;
(ii)Xaa2は、
TYSDH、
TYSAH、
TYSCH、
KWSKR、又は
SGSK
である。
【0168】
一部の実施形態において、Xは、アミノ酸配列GGTYSDH、GGTYSCH、GGKWSKR、又はGASGSKを含む。
【0169】
一部の実施形態において、Xは、アミノ酸配列Xaa1-Xaa2-Xaa3-Xaa4を含み、
(i)Xaa1は、Ala、Gly、Ser、His、又はLeuから選択されるアミノ酸残基であり;
(ii)Xaa2は、いずれかのアミノ酸残基であるか、又は存在せず;
(iii)Xaa3は、いずれかのアミノ酸残基であるか、又は存在せず;
(iv)Xaa4は、3個又はそれより多くのHis残基からなる。
【0170】
一部の実施形態において、Xは、
(A)アミノ酸配列Gly-Xaa1-Xaa2-Xaa3を含み、
(i)Xaa1は、いずれかのアミノ酸残基であるか、又は存在せず;
(ii)Xaa2は、アミノ酸残基であるか、又は存在せず;
(iii)Xaa3は、3個又はそれより多くのHis残基からなるか;
又は
(B)アミノ酸配列Gly-Xaa1を含み、
(i)Xaa1は、Gly、Ala、又はSerから選択されるアミノ酸残基である。
【0171】
一部の実施形態において、Xは、
(A)アミノ酸配列Xaa1-Xaa2を含み、
(i)Xaa1は、アミノ酸残基Glyであるか、又は存在せず;
(ii)Xaa2は、1個又はそれより多くのHis残基からなるか;
(B)アミノ酸配列Gly-Xaa1-Xaa2を含み、
(i)Xaa1は、Ser、Gly、Ala、Tyr、Leu、Argから選択されるアミノ酸残基であるか、又は存在せず;
(ii)Xaa2は、2個又はそれより多くのHis残基からなるか;又は
(C)アミノ酸配列Gly-Xaa1-Xaa2を含み、
(i)Xaa1は、Gly、Ser又はAlaであり;
(ii)Xaa2は、
Thr-Tyr-Ser-Asp-His、
Thr-Tyr-Ser-Cys-His、
Thr-Tyr-Ser-Ala-His、
Lys-Trp-Ser-Lys-Arg、又は
Ser-Gly-Ser-Lysである。
【0172】
一部の実施形態において、Xは、アミノ酸配列G、H、GA、GG、GH、GI、GP、GV、SH、GAH、GAP、GGH、GHH、GGK、GGS、GGV、RGS、SYH、AHHH、GAAH、GASH、GHHH、GSAH、GSSH、SSYH、SYYH、VHHH、GAPTL、GHHHH、GHHHHH、LRFKFY、HHHHHH、GASGSKG、GGKWSKR、GGTYSDH、GHHHHHH、GLRFKFY、HLRFKFY、KHHHHHH、GHLRFKFY、GSLRFKFY、GSHHHHHH、GSHLRFKFY、GSSHHHHHH、RGSHHHHHH、SYYHHHHHH、A、AH、AHH、GL、GS、GGT、GAA、GAS、GHL、GLR、GSA、GSH、GSL、GSS、GHLR、GLRF、GAPT、GASG、GGKW、GGTY、GSHL、GSLR、GASGS、GGKWS、GGTYS、GHLRF、GLRFK、GSHLR、GSLRF、GSSHH、GASGSK、GGKWSK、GGTYSD、GHLRFK、GLRFKF、GSHLRF、GSLRFK、GSSHHH、GHLRFKF、GSHLRFK、GSLRFKF、GSSHHHH、GSHLRFKF、GSSHHHHH、HL、HLR、HLRF、HLRFK、HLRFKF、L、LR、LRF、LRFK、LRFKF、R、RG、S、SY、SS、SSY、SYY、V、VH又はVHHを含む。好ましくは、Xは、アミノ酸配列GG、GHH、GHHH、GHHHH、GHHHHH、GHHHHHH、GSSHHHHHH、GSHHHHHH、GASGSKG、GGKWSKR又はGGTYSDHを含む。
【0173】
他のN末端配列を試験することによって、本明細書で開示される選択的なN末端修飾を等しく、又はより一層受けやすい配列を同定できることが考えられる。解空間が著しく大きいため、わずか6個のランダムなアミノ酸の小さいライブラリーでさえも、6400万(20^6)個を超える可能性のある配列バリアントがもたらされるであろう。ライブラリーサイズは、試験しようとする配列の長さ(20^n、式中、nは、試験しようとするペプチド配列の長さである)と共に指数関数的に増加する。それにもかかわらず、N末端配列バリアント又はランダムライブラリーを表示する連続したラウンドのファージディスプレイをスクリーニングできると考えられる(Keeble等、2017)。例えばmRNA、リボソーム、酵母、細菌、又はDNAディスプレイ等の他のライブラリー作成及びスクリーニング方法は公知である。同様に、又はより優れて反応する配列を同定するために、大きいペプチドアレイのスクリーニングを実行してもよい(Steffen等、2017)。
【0174】
一部の実施形態において、組成物は、金属カチオンを更に含む。一部の実施形態において、金属カチオンは、dブロック元素である。一部の実施形態において、金属カチオンは、遷移金属カチオン、好ましくは2価遷移金属カチオンである。一部の実施形態において、遷移金属カチオンは、2価のZn、Ni又はCuカチオンである。2価のNi又はCuカチオンは、逆反応を阻害する目的にとって好ましい。
【0175】
本発明者等は、アシル化反応が可逆的であることを観察した。特に、室温で14日後、N末端にGHHHHHHを含むペプチドの27%のみがアシル化されたままであったが、それに対し、GGTYSDHを含むペプチドの75%が、同じ条件下でアシル化されたままであった。したがって、Hisタグは、反応の可逆性に影響を与える。
【0176】
理論に縛られることはないが、2価の金属カチオンはHis残基と相互作用でき、逆反応を阻害できると考えられる。
【0177】
したがって、組成物への金属カチオンの添加は、タンパク質がHisリッチな配列、例えばHisタグ(例えば、N末端に少なくとも2個又はそれより多くのHis残基)を含む場合、特に好ましい。
【0178】
したがって、オリゴヒスチジンにより高い親和性を有する金属リガンド、特に多価金属リガンドを採用することも考えられ、そのうちいくつかは公知である(Hauser及びTsien 2007)。このようなより高い親和性のリガンドはより一層優れた逆反応の阻害を提供するであろうということが合理的に予測することができる。
【0179】
多くの2価金属はポリヒスチジン配列に可逆的に結合するが、イミダゾールが結合したCo(II)又はRu(II)の酸化は、結合強度の劇的な増加をもたらすことがわかっている(Ren、Bobst、及びKaltashov 2019)。したがって、これらの金属は、特定の順番でなくてよいが、最初に好適なpHで修飾されたヒスチジンリッチ配列に結合させ、任意選択で、過量の金属を除去し、最後にヒスチジン基を固定する場所で酸化させて(これらの順番は特定されない)、可逆性反応のヒスチジン媒介作用を不可逆的にブロックするのに使用できると考えられる。このような酸化された金属は、より広い範囲のpH値にわたり逆反応を阻害することが合理的に予測でき、また過量のキレート化試薬の存在下におけるその可逆性の保護的作用を働かせることも可能であると予想される。
【0180】
特定の金属イオンは、アシル基のヒドロキシル残基と直接結合することが考えられ、これは、低分子量グルコンアミドモデル化合物のグルコノイルのヒドロキシルと組み合わせてGd3+でも同じように実証された通りである(Dill等、1985)。それゆえに、金属イオンの添加はまた、本発明によるHisタグを有さないアシル化物質の可逆性をモジュレートすることも可能である。
【0181】
更に、理論に縛られることはないが、グルコノイル修飾のポリオールとヒスチジン残基の両方が同時に所与の金属イオンと相互作用すると予測することができる。
【0182】
本発明者等は、組成物が凍結乾燥又は凍結される場合、逆反応を完全に阻害又は停止することができることも観察した。したがって、一部の実施形態において、組成物は、凍結乾燥又は凍結される。
【0183】
一部の実施形態において、組成物は、ジオールエステル形成剤を更に含む。ジオールエステル形成剤は、以下の例示的な反応スキームで示されるようにN末端アシル化タンパク質との付加物を形成することができる:
【0184】
【化21】
【0185】
ホウ酸及び/又はボロン酸等のジオールエステル形成剤を含めることによって、逆反応を阻害することもできる。したがって、ホウ酸及びボロン酸は、アシル化したN末端のための保護基として機能することができる。保護的作用は、組成物のpHが6又はそれより高い場合、強化される。したがって、組成物にホウ酸及び/又はボロン酸が含まれる場合、溶液のpHは、タンパク質の脱アシル化速度を低減するために、好ましくは5又はそれより高い、より好ましくは6又はそれより高いと予想される。
【0186】
理論に縛られることはないが、逆のグルコノイル化反応を阻害する、低減する、又は止めるために、原則的にあらゆるジオールエステル形成剤を使用することができる。好ましくはわずかにアルカリ性のpHでジオールを形態するホウ酸の他にも、ホウ酸誘導体の結合は、7.5未満ものpH値であっても、(i)フェニル環上の、電子求引性基、例えばスルホニル、フルオロ、及びカルボニルで置換されたフェニルボロン酸;(ii)分子内の4配位されたB-N又はB-O結合を含有するボロン酸(いわゆるWulff型);(iii)分子内の3配位されたB-O結合を含有するボロン酸(「改善された」Wulff型として公知);又は(iv)複素環式ボロン酸(Liu及びHe 2017)によって達成できることが公知である。それゆえに、前述のクラスからのあらゆる試薬が、所与のpH値で所望の作用を提供することができる。
【0187】
一部の実施形態において、ジオールエステル形成剤は、組成物のpHより最大2.2pH単位高いpKaを有する。例えば、アシル化タンパク質が、7のpHを有する組成物中にある場合、ジオールエステル形成剤のpKaは、9.2又はそれより低い可能性がある。
【0188】
一部の実施形態において、ジオールエステル形成剤は、ホウ酸、フェニルボロン酸、ニトロフェニルボロン酸、シクロプロピルボロン酸、シクロブチルボロン酸、2-フルオロ-5-ニトロフェニルボロン酸、ジフェニルボリン酸、2,6-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、4-(3-ブテニルスルホニル)フェニルボロン酸、アミノフェニルボロン酸、ビニルフェニルボロン酸、3-アクリルアミドフェニルボロン酸、2,4-ジフルオロ-3-ホルミル-フェニルボロン酸、3-(ジメチルアミノメチル)アニリン-4-ピナコールボロネート、ベンゾオキサボロール、ベンゾオキサボリン、3,3-ジメチルベンゾオキサボロール、AN2898、SCYX-7158/AN5568、AN2718、AN3661、3-カルボキシベンゾボロキソール、ピリジニルボロン酸、ピリミジンボロン酸、イミダゾールボロン酸(imdazoleboronic acid)、イソオキサゾールボロン酸、ジフェニルボリン酸、チエニルボロン酸、ベンゼン-1,4-ジボロン酸、フェニルジボロン酸(1,3-)、フェニルエタンボロン酸、3-ニトロフェニルボロン酸、AN0128、フロバガトラン(Flovagatran)、タラボスタット、デランゾミブ、過ホウ酸、デュトグリプチン、4-ボロノ-L-フェニルアラニン、タバボロール、クリサボロール、ボルテゾミブ、イキサゾミブ又はバボルバクタムであるか、又はそれを含む。
【0189】
ボリン酸エステル形成試薬は、逆反応を阻害する可能性があるとが考えられる。
【0190】
次いで、上記の組成物のいずれか1つのアシル化タンパク質は、クリックケミストリーを使用して別の部分にコンジュゲートさせてもよい(Baskin及びBertozzi、2010、Li及びZhang、2016を参照)。したがって、本発明はまた、N末端でコンジュゲートしたタンパク質を含む組成物であって、N末端でコンジュゲートしたタンパク質は、本発明のN末端アシル化タンパク質を、ホスフィン基(例えば、シュタウディンガーのライゲーションに好適な求電子性トラップを有するトリフェニルホスフィン)、ホスフィン誘導体(例えば、トレースレスなシュタウディンガーのライゲーションに好適な、ビ又はトリフェニルアリールエステル、チオエステル、又はアシルイミダゾール)、アルケン基、アルキン基(CuAACに好適な)、歪んだアルキン基(SPAACに好適な)、OCT、MOFO、DIFO、DIFO2、DIFO3、DIMAC、DIBO、DIBAC(ADIBOとしても公知)、BARAC、BCN、ゾンドハイマーのジイン、TMDIBO、S-DIBO、COMBO、PYRROC、TMTH、DIFBO、ALO、チオアルキン基、ケト-DIBO、歪んだオレフィン、又はオキサノルボルナジエン基(例えば、トリフルオロメチルで置換されたオキサノルボルナジエン)を含む化合物と反応させることによって得られるか、又は得ることができる組成物も提供する。
【0191】
N末端でコンジュゲートしたタンパク質は、以下の反応:
(i)
【0192】
【化22】
【0193】
(式中、Zは、アリール、アルキル又は水素であり、Mは、所望のコンジュゲートである);
(ii)
【0194】
【化23】
【0195】
(式中、Zは、アリール、アルキル又は水素であり、Mは、所望のコンジュゲートである);
(iii)
【0196】
【化24】
【0197】
(iv)
【0198】
【化25】
【0199】
(式中、Mは、所望のコンジュゲートであり、Zは、電子求引基(例えば、トリフルオロメチルスルホニル基、アンモニウム基、ニトロ基、スルホン酸基、スルホニル基、シアノ基、トリハロメチル基、ハロホルミル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基又はアミノカルボニル基)である);及び
(v)
【0200】
【化26】
【0201】
のいずれか1つの結果であってもよく、トリアリールホスフィンのアリール基を有する化合物はいずれも所望のコンジュゲートに共有結合することができる。
【0202】
所望のコンジュゲートは、1-ジヒドロテストステロン、発色団、アクチノマイシンD、エーロゲル、寒天、アガロース、アルカリホスファターゼ、アルキル化剤、アルミナゲル、アミノ酸、アミロペクチン、アントラサイクリン、抗生物質、抗体、抗体断片、抗原、代謝拮抗物質、アビジン、バクテリオファージ、ビーズ、ベータ-ガラクトシダーゼ、バイオチップ、バイオフィルム、生物学的な細胞、ビオチン、臭化物、カーボンナノチューブ、細胞膜、細胞成分、セルロース、化学発光化合物、コルヒチン、造影剤、コットン、サイトカラシンB、細胞溶解性の免疫調節タンパク質、ダウノルビシン、デンドリマー、誘導体化されたプラスチックフィルム、デキストラン、ジアゾセルロース、ジヒドロキシアントラシンジオン、DNAアプタマー、DNA損傷性の阻害剤、ドキソルビシン、薬物、エラスチン様のタンパク質及びペプチド、エメチン、酵素の基質、酵素、エチジウム、エトポシド、エキソソーム、細胞外マトリックス足場、FICOLL、ホタルルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、フルオロフォア、フリーラジカル前駆体、フラーレン、蛍光ランタニドキレート、ガンマ放出プローブ、ガラスビーズ、ガラス又は磁気支持体、グルココルチコイド、グリカン、グリコーゲン、グラミシジンD、ハプテン、ヘパリン、ホルモン、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ヒドロゲル、IgG結合、赤外線放出プローブ、イヌリン、イオンキレート化部分、質量分析のための等圧質量タグ、質量分析のための同位体質量タグ、ラテックス、層状の材料、リドカイン、脂質、脂質集合体、リポソームの球状核酸、リポソーム、磁気ビーズ、マレイミド、マンナン、質量分析のための質量タグ、膜、導電性金属、非導電性金属、マイクロフルイディクスチップ、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、分子足場、マルチウェルプレート、N-ヒドロキシスクシンイミド、ナノ結晶、ナノゲル、ナノ粒子、近赤外放出プローブ、ニトロセルロース、非生物学的なマイクロパーティクル、核酸、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ナイロン、オリゴヌクレオチド、外膜小胞、PAMAM、常磁性ビーズ、粒子、PEG、PEP[合成ポリペプチドでのタンパク質の修飾を記載する用語(ポリ(α-アミノ酸)としても公知)]、ペプチド、リン光性色素、光線感作物質、フィコビリンタンパク質、プラスチックビーズ、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリレート)、ポリエチレン、ポリマー、高分子膜、高分子マイクロパーティクル、ポリオール、ポリプロピレン、多糖、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、多孔質モノリス、プロカイン、プロプラノロール、タンパク質、ソラレン、ピューロマイシン、量子ドット、放射線同位体、放射性核種、樹脂、共鳴プローブ、RNAアプタマー、シリカゲル、シリコンチップ、スフェロイド、デンプン、ストレプトアビジン、超常磁性ビーズ、表面、合成ポリマー、タンデム色素、タキソール、テノポシド、テトラカイン、毒素、転写阻害剤、チラミン、小胞、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ウイルス、ウイルス様粒子、又は異種移植片であり得る。
【0203】
一部の実施形態において、本発明のN末端アシル化タンパク質は、式E-L-Mによる化合物と反応し、式中、
Eは、ホスフィン基(例えば、シュタウディンガーのライゲーションに好適な求電子性トラップを有するトリフェニルホスフィン)、ホスフィン誘導体(例えば、トレースレスなシュタウディンガーのライゲーションに好適な、ビ又はトリフェニルアリールエステル、チオエステル、又はアシルイミダゾール)、アルケン基、アルキン基(CuAACに好適な)、歪んだアルキン基(SPAACに好適な)、OCT、MOFO、DIFO、DIFO2、DIFO3、DIMAC、DIBO、DIBAC(ADIBOとしても公知)、BARAC、BCN、ゾンドハイマーのジイン、TMDIBO、S-DIBO、COMBO、PYRROC、TMTH、DIFBO、ALO、チオアルキン基、ケト-DIBO、歪んだオレフィン、又はオキサノルボルナジエン基(例えば、トリフルオロメチルで置換されたオキサノルボルナジエン)を含み;
Lは、リンカーであるか、又は存在せず;
Mは、所望のコンジュゲートである。
【0204】
一部の実施形態において、Mは、1-ジヒドロテストステロン、発色団、アクチノマイシンD、エーロゲル、寒天、アガロース、アルカリホスファターゼ、アルキル化剤、アルミナゲル、アミノ酸、アミロペクチン、アントラサイクリン、抗生物質、抗体、抗体断片、抗原、代謝拮抗物質、アビジン、バクテリオファージ、ビーズ、ベータ-ガラクトシダーゼ、バイオチップ、バイオフィルム、生物学的な細胞、ビオチン、臭化物、カーボンナノチューブ、細胞膜、細胞成分、セルロース、化学発光化合物、コルヒチン、造影剤、コットン、サイトカラシンB、細胞溶解性の免疫調節タンパク質、ダウノルビシン、デンドリマー、誘導体化されたプラスチックフィルム、デキストラン、ジアゾセルロース、ジヒドロキシアントラシンジオン、DNAアプタマー、DNA損傷性の阻害剤、ドキソルビシン、薬物、エラスチン様のタンパク質及びペプチド、エメチン、酵素の基質、酵素、エチジウム、エトポシド、エキソソーム、細胞外マトリックス足場、FICOLL、ホタルルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、フルオロフォア、フリーラジカル前駆体、フラーレン、蛍光ランタニドキレート、ガンマ放出プローブ、ガラスビーズ、ガラス又は磁気支持体、グルココルチコイド、グリカン、グリコーゲン、グラミシジンD、ハプテン、ヘパリン、ホルモン、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ヒドロゲル、IgG結合、赤外線放出プローブ、イヌリン、イオンキレート化部分、質量分析のための等圧質量タグ、質量分析のための同位体質量タグ、ラテックス、層状の材料、リドカイン、脂質、脂質集合体、リポソームの球状核酸、リポソーム、磁気ビーズ、マレイミド、マンナン、質量分析のための質量タグ、膜、導電性金属、非導電性金属、マイクロフルイディクスチップ、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、分子足場、マルチウェルプレート、N-ヒドロキシスクシンイミド、ナノ結晶、ナノゲル、ナノ粒子、近赤外放出プローブ、ニトロセルロース、非生物学的なマイクロパーティクル、核酸、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ナイロン、オリゴヌクレオチド、外膜小胞、PAMAM、常磁性ビーズ、粒子、PEG、PEP[合成ポリペプチドでのタンパク質の修飾を記載する用語(ポリ(α-アミノ酸)としても公知)]、ペプチド、リン光性色素、光線感作物質、フィコビリンタンパク質、プラスチックビーズ、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリレート)、ポリエチレン、ポリマー、高分子膜、高分子マイクロパーティクル、ポリオール、ポリプロピレン、多糖、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、多孔質モノリス、プロカイン、プロプラノロール、タンパク質、ソラレン、ピューロマイシン、量子ドット、放射線同位体、放射性核種、樹脂、共鳴プローブ、RNAアプタマー、シリカゲル、シリコンチップ、スフェロイド、デンプン、ストレプトアビジン、超常磁性ビーズ、表面、合成ポリマー、タンデム色素、タキソール、テノポシド、テトラカイン、毒素、転写阻害剤、チラミン、小胞、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ウイルス、ウイルス様粒子、又は異種移植片である。
【0205】
一部の実施形態において、Eは、以下の化合物のいずれか1つである:
【0206】
【化27】
【0207】
(式中、Rは、上述した通りのL-Mである)。
【0208】
一部の実施形態において、組成物中のタンパク質の少なくとも10%が、コンジュゲートしている。好ましくは、組成物中のタンパク質の少なくとも20%が、コンジュゲートしている。
【0209】
N末端でタンパク質を部位特異的に修飾するための方法
さらなる態様において、本発明は、タンパク質を部位特異的に修飾するための方法(好ましくはN末端で)であって、タンパク質を、ハンドル置換された炭水化物ラクトンと接触させる工程を含む方法を提供する。一部の実施形態において、ハンドル置換された炭水化物ラクトンは、5、6又は7員環を有する。一部の実施形態において、炭水化物ラクトンは、1,5-ラクトンである。一部の実施形態において、炭水化物ラクトンは、5、6又は7員環を有し、C6、C4及び/又はC3は、ハンドルで置換されている。ハンドルは、前の実施形態のいずれか1つに従うものでもよい。
【0210】
一部の実施形態において、ハンドル置換された炭水化物ラクトンは、D-リボース、D-アラビノース、D-キシロース、D-リキソース、L-リボース、L-アラビノース、L-キシロース、又はL-リキソース、D-アロース、D-アルトロース、D-グルコース、D-マンノース、D-グロース、D-イドース、D-ガラクトース、D-タロース、L-アロース、L-アルトロース、L-グルコース、L-マンノース、L-グロース、L-イドース、L-ガラクトース、又はL-タロースのラクトン誘導体である。
【0211】
一部の実施形態において、ハンドル置換された炭水化物ラクトンは、本発明の合成方法によって得られた、又は得ることができるラクトンである。
【0212】
一部の実施形態において、本発明は、N末端でタンパク質を部位特異的に修飾するための方法であって、タンパク質を、式(V):
【0213】
【化28】
【0214】
(式中、
(i)R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はアジドであり、
(ii)R4は、水素、ヒドロキシル、メチル、アジド、又はカルボキシルであり、
(iii)R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、アジドであり、
(iv)R1、R2、R3及びR4のうちの1つ以下がメチルである)
による化合物と接触させる工程
を含む方法を提供する。
【0215】
一部の実施形態において、R4は、アジドであり、R3は、ヒドロキシルであり、R2は、ヒドロキシルであり、R1は、ヒドロキシルである。一部の実施形態において、R4は、ヒドロキシルであり、R3は、アジドであり、R2は、ヒドロキシルであり、R1は、ヒドロキシルである。一部の実施形態において、R4は、ヒドロキシルであり、R3は、ヒドロキシルであり、R2は、アジドであり、R1は、ヒドロキシルである。一部の実施形態において、R4は、ヒドロキシルであり、R3は、ヒドロキシルであり、R2は、ヒドロキシルであり、R1は、アジドである。
【0216】
一部の実施形態において、N末端のアミノ酸残基は、Gly、Ala、Ser又はHis残基である。一部の実施形態において、N末端は、アミノ酸配列Gly-Gly又はGly-Alaを含む。一部の実施形態において、タンパク質は、N末端にHisタグを含む。
【0217】
一部の実施形態において、タンパク質のN末端は、アミノ酸配列Gly-Xaa1-Xaa2-Xaa3を含み、
(i)Xaa1は、アミノ酸残基であるか、又は存在せず;
(ii)Xaa2は、アミノ酸残基であるか、又は存在せず;
(iii)Xaa3は、3個又はそれより多くのHis残基からなる。一部の実施形態において、Xaa1及びXaa2は、それぞれ独立して、Ser、Gly又はAlaである。一部の実施形態において、Xaa1は、Serであり、Xaa2は、Serである。
【0218】
一部の実施形態において、タンパク質のN末端は、アミノ酸配列GSSHHHHHH又はGHHHHHHを含む。
【0219】
一部の実施形態において、タンパク質のN末端は、アミノ酸配列Gly-Xaa1-Xaa2を含み、
(i)Xaa1は、Gly、Ser又はAlaであり;
(ii)Xaa2は、
TYSDH、
TYSAH
TYSCH、
KWSKR、又は
SGSK
である。
【0220】
一部の実施形態において、タンパク質のN末端は、アミノ酸配列GGTYSDH、GGTYSCH、GGKWSKR、又はGASGSKを含む。
【0221】
一部の実施形態において、タンパク質のN末端は、アミノ酸配列G、H、GA、GG、GH、GI、GP、GV、SH、GAH、GAP、GGH、GHH、GGK、GGS、GGV、RGS、SYH、AHHH、GAAH、GASH、GHHH、GSAH、GSSH、SSYH、SYYH、VHHH、GAPTL、GHHHH、GHHHHH、LRFKFY、HHHHHH、GASGSKG、GGKWSKR、GGTYSDH、GHHHHHH、GLRFKFY、HLRFKFY、KHHHHHH、GHLRFKFY、GSLRFKFY、GSHHHHHH、GSHLRFKFY、GSSHHHHHH、RGSHHHHHH、SYYHHHHHH、A、AH、AHH、GL、GS、GGT、GAA、GAS、GHL、GLR、GSA、GSH、GSL、GSS、GHLR、GLRF、GAPT、GASG、GGKW、GGTY、GSHL、GSLR、GASGS、GGKWS、GGTYS、GHLRF、GLRFK、GSHLR、GSLRF、GSSHH、GASGSK、GGKWSK、GGTYSD、GHLRFK、GLRFKF、GSHLRF、GSLRFK、GSSHHH、GHLRFKF、GSHLRFK、GSLRFKF、GSSHHHH、GSHLRFKF、GSSHHHHH、HL、HLR、HLRF、HLRFK、HLRFKF、L、LR、LRF、LRFK、LRFKF、R、RG、S、SY、SS、SSY、SYY、V、VH又はVHHを含む。好ましくは、タンパク質のN末端は、アミノ酸配列GG、GHH、GHHH、GHHHH、GHHHHH、GHHHHHH、GSSHHHHHH、GSHHHHHH、GASGSKG、GGKWSKR又はGGTYSDHを含む。
【0222】
一部の実施形態において、本方法は、ジオールエステル形成剤を添加する工程を更に含む。一部の実施形態において、ジオールエステル形成剤は、ホウ酸、フェニルボロン酸、ニトロフェニルボロン酸、シクロプロピルボロン酸、シクロブチルボロン酸、2-フルオロ-5-ニトロフェニルボロン酸、ジフェニルボリン酸、2,6-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、4-(3-ブテニルスルホニル)フェニルボロン酸、アミノフェニルボロン酸、ビニルフェニルボロン酸、3-アクリルアミドフェニルボロン酸、2,4-ジフルオロ-3-ホルミル-フェニルボロン酸、3-(ジメチルアミノメチル)アニリン-4-ピナコールボロネート、ベンゾオキサボロール、ベンゾオキサボリン、3,3-ジメチルベンゾオキサボロール、AN2898、SCYX-7158/AN5568、AN2718、AN3661、3-カルボキシベンゾボロキソール、ピリジニルボロン酸、ピリミジンボロン酸、イミダゾールボロン酸、イソオキサゾールボロン酸、ジフェニルボリン酸、チエニルボロン酸、ベンゼン-1,4-ジボロン酸、フェニルジボロン酸(1,3-)、フェニルエタンボロン酸、3-ニトロフェニルボロン酸、AN0128、フロバガトラン、タラボスタット、デランゾミブ、過ホウ酸、デュトグリプチン、4-ボロノ-L-フェニルアラニン、タバボロール、クリサボロール、ボルテゾミブ、イキサゾミブ又はバボルバクタムであるか、又はそれを含む。一部の実施形態において、本方法は、ジオールエステル形成剤を添加する工程を更に含む。一部の実施形態において、ジオールエステル形成剤は、ホウ酸、メチルボロン酸、フェニルボロン酸、2-ホルミルフェニルボロン酸、4-ホルミルフェニルボロン酸、ニトロフェニルボロン酸、シクロプロピルボロン酸、シクロブチルボロン酸、2-フルオロ-5-ニトロフェニルボロン酸、ジフェニルボリン酸、2,6-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、4-(3-ブテニルスルホニル)フェニルボロン酸、3-アミノフェニルボロン酸、アミノフェニルボロン酸、ビニルフェニルボロン酸、3-アクリルアミドフェニルボロン酸、2,4-ジフルオロ-3-ホルミル-フェニルボロン酸、3-(ジメチルアミノメチル)アニリン-4-ピナコールボロネート、ベンゾオキサボロール、ベンゾオキサボリン、3,3-ジメチルベンゾオキサボロール、AN2898、SCYX-7158/AN5568、AN2718、AN3661、3-カルボキシベンゾボロキソール、ピリジニルボロン酸、ピリミジンボロン酸、イミダゾールボロン酸、イソオキサゾールボロン酸、ジフェニルボリン酸、チエニルボロン酸、ベンゼン-1,4-ジボロン酸、フェニルジボロン酸(1,3-)、フェニルエタンボロン酸、3-ニトロフェニルボロン酸、AN0128、フロバガトラン、タラボスタット、デランゾミブ、過ホウ酸、デュトグリプチン、4-ボロノ-L-フェニルアラニン、タバボロール、クリサボロール、ボルテゾミブ、イキサゾミブ又はバボルバクタムであるか、又はそれを含む。
【0223】
所望のコンジュゲートは、1-ジヒドロテストステロン、発色団、アクチノマイシンD、エーロゲル、寒天、アガロース、アルカリホスファターゼ、アルキル化剤、アルミナゲル、アミノ酸、アミロペクチン、アントラサイクリン、抗生物質、抗体、抗体断片、抗原、代謝拮抗物質、アビジン、バクテリオファージ、ビーズ、ベータ-ガラクトシダーゼ、バイオチップ、バイオフィルム、生物学的な細胞、ビオチン、臭化物、カーボンナノチューブ、細胞膜、細胞成分、セルロース、化学発光化合物、コルヒチン、造影剤、コットン、サイトカラシンB、細胞溶解性の免疫調節タンパク質、ダウノルビシン、デンドリマー、誘導体化されたプラスチックフィルム、デキストラン、ジアゾセルロース、ジヒドロキシアントラシンジオン、DNAアプタマー、DNA損傷性の阻害剤、ドキソルビシン、薬物、エラスチン様のタンパク質及びペプチド、エメチン、酵素の基質、酵素、エチジウム、エトポシド、エキソソーム、細胞外マトリックス足場、FICOLL、ホタルルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、フルオロフォア、フリーラジカル前駆体、フラーレン、蛍光ランタニドキレート、ガンマ放出プローブ、ガラスビーズ、ガラス又は磁気支持体、グルココルチコイド、グリカン、グリコーゲン、グラミシジンD、ハプテン、ヘパリン、ホルモン、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ヒドロゲル、IgG結合、免疫調節分子、免疫刺激分子、免疫抑制分子、赤外線放出プローブ、イヌリン、イオンキレート化部分、質量分析のための等圧質量タグ、質量分析のための同位体質量タグ、ラテックス、層状の材料、リドカイン、脂質、脂質集合体、リポソームの球状核酸、リポソーム、磁気ビーズ、マレイミド、マンナン、質量分析のための質量タグ、膜、導電性金属、非導電性金属、マイクロフルイディクスチップ、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、分子足場、マルチウェルプレート、N-ヒドロキシスクシンイミド、ナノ結晶、ナノゲル、ナノ粒子、近赤外放出プローブ、ニトロセルロース、非生物学的なマイクロパーティクル、核酸、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ナイロン、オリゴヌクレオチド、外膜小胞、PAMAM、常磁性ビーズ、粒子、PEG、PEP[合成ポリペプチドでのタンパク質の修飾を記載する用語(ポリ(α-アミノ酸)としても公知)]、ペプチド、リン光性色素、光線感作物質、フィコビリンタンパク質、プラスチックビーズ、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリレート)、ポリエチレン、ポリマー、高分子膜、高分子マイクロパーティクル、ポリオール、ポリプロピレン、多糖、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、多孔質モノリス、プロカイン、プロプラノロール、タンパク質、ソラレン、ピューロマイシン、量子ドット、放射線同位体、放射性核種、樹脂、共鳴プローブ、RNAアプタマー、シリカゲル、シリコンチップ、スフェロイド、デンプン、ストレプトアビジン、超常磁性ビーズ、表面、合成ポリマー、タンデム色素、タキソール、テノポシド、テトラカイン、毒素、転写阻害剤、チラミン、小胞、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ウイルス、ウイルス様粒子、又は異種移植片であり得る。
【0224】
一部の実施形態において、本方法は、金属カチオンを添加する工程を更に含む。一部の実施形態において、金属カチオンは、dブロック元素である。一部の実施形態において、金属カチオンは、遷移金属カチオン、好ましくは2価遷移金属カチオンである。一部の実施形態において、遷移金属カチオンは、2価のZn、Ni、又はCuカチオンである。2価のNi又はCuカチオンは、可逆反応を阻害する目的にとって好ましい。
【0225】
一部の実施形態において、タンパク質及び式(V)による化合物は、水性緩衝液中で接触させる。一部の実施形態において、水性緩衝液のpHは、4に等しいか又はそれより高く、9に等しいか又はそれ未満である。一部の実施形態において、水性緩衝液のpHは、7に等しいか又はそれより高く、8に等しいか又はそれ未満である。一部の実施形態において、水性緩衝液のpHは、7.5である。
【0226】
一部の実施形態において、タンパク質及び式(V)による化合物は、4~37℃の温度で接触させる。一部の実施形態において、反応は、4~37℃の温度で進行させる。4℃未満、ただしそれぞれの反応溶液の凝固点より高い温度で、反応を実行することが考えられる。
【0227】
一部の実施形態において、反応は、約30分に等しいか又はそれより長く、約24時間未満か又はそれに等しい時間進行させてもよい。より少ないアシル化が望ましいと予想される場合、30分より短い時間、反応を実行することが考えられる。
【0228】
一部の実施形態において、本方法は、得られたアシル化タンパク質を、ホスフィン基(例えば、シュタウディンガーのライゲーションに好適な求電子性トラップを有するトリフェニルホスフィン)、ホスフィン誘導体(例えば、トレースレスなシュタウディンガーのライゲーションに好適な、ビ又はトリフェニルアリールエステル、チオエステル、又はアシルイミダゾール)、アルケン基、アルキン基(CuAACに好適な)、歪んだアルキン基(SPAACに好適な)、OCT、MOFO、DIFO、DIFO2、DIFO3、DIMAC、DIBO、DIBAC(ADIBOとしても公知)、BARAC、BCN、ゾンドハイマーのジイン、TMDIBO、S-DIBO、COMBO、PYRROC、TMTH、DIFBO、ALO、チオアルキン基、ケト-DIBO、歪んだオレフィン、又はオキサノルボルナジエン基(例えば、トリフルオロメチルで置換されたオキサノルボルナジエン)を含む化合物と接触させる工程を更に含む。
【0229】
したがって、アジドは、異なる機能的な構成要素のホストをタンパク質にコンジュゲートするのに使用できることが当業者には明らかである(例えば、Spicer及びDavis 2014、Baskin及びBertozzi、2010、Li及びZhang、2016を参照)。
【0230】
一部の実施形態において、得られたアシル化タンパク質は、式E-L-Mによる化合物と接触させ、式中、Eは、ホスフィン基(例えば、シュタウディンガーのライゲーションに好適な求電子性トラップを有するトリフェニルホスフィン)、ホスフィン誘導体(例えば、トレースレスなシュタウディンガーのライゲーションに好適な、ビ又はトリフェニルアリールエステル、チオエステル、又はアシルイミダゾール)、アルケン基、アルキン基(CuAACに好適な)、歪んだアルキン基(SPAACに好適な)、OCT、MOFO、DIFO、DIFO2、DIFO3、DIMAC、DIBO、DIBAC(ADIBOとしても公知)、BARAC、BCN、ゾンドハイマーのジイン、TMDIBO、S-DIBO、COMBO、PYRROC、TMTH、DIFBO、ALO、チオアルキン基、ケト-DIBO、歪んだオレフィン、又はオキサノルボルナジエン基(例えば、トリフルオロメチルで置換されたオキサノルボルナジエン)を含み;
Lは、リンカーであるか、又は存在せず;
Mは、所望のコンジュゲートである。
【0231】
一部の実施形態において、ハンドル置換された炭水化物ラクトンは、結果生じる生成物をタンパク質と反応させる前に、式E-L-Mによる化合物と反応させ、式中、
Eは、ホスフィン基(例えば、シュタウディンガーのライゲーションに好適な求電子性トラップを有するトリフェニルホスフィン)、ホスフィン誘導体(例えば、トレースレスなシュタウディンガーのライゲーションに好適な、ビ又はトリフェニルアリールエステル、チオエステル、又はアシルイミダゾール)、アルケン基、アルキン基(CuAACに好適な)、歪んだアルキン基(SPAACに好適な)、OCT、MOFO、DIFO、DIFO2、DIFO3、DIMAC、DIBO、DIBAC(ADIBOとしても公知)、BARAC、BCN、ゾンドハイマーのジイン、TMDIBO、S-DIBO、COMBO、PYRROC、TMTH、DIFBO、ALO、チオアルキン基、ケト-DIBO、歪んだオレフィン、又はオキサノルボルナジエン基(例えば、トリフルオロメチルで置換されたオキサノルボルナジエン)を含み;
Lは、リンカーであるか、又は存在せず;
Mは、所望のコンジュゲートである。
【0232】
一部の実施形態において、Mは、1-ジヒドロテストステロン、発色団、アクチノマイシンD、エーロゲル、寒天、アガロース、アルカリホスファターゼ、アルキル化剤、アルミナゲル、アミノ酸、アミロペクチン、アントラサイクリン、抗生物質、抗体、抗体断片、抗原、代謝拮抗物質、アビジン、バクテリオファージ、ビーズ、ベータ-ガラクトシダーゼ、バイオチップ、バイオフィルム、生物学的な細胞、ビオチン、臭化物、カーボンナノチューブ、細胞膜、細胞成分、セルロース、化学発光化合物、コルヒチン、造影剤、コットン、サイトカラシンB、細胞溶解性の免疫調節タンパク質、ダウノルビシン、デンドリマー、誘導体化されたプラスチックフィルム、デキストラン、ジアゾセルロース、ジヒドロキシアントラシンジオン、DNAアプタマー、DNA損傷性の阻害剤、ドキソルビシン、薬物、エラスチン様のタンパク質及びペプチド、エメチン、酵素の基質、酵素、エチジウム、エトポシド、エキソソーム、細胞外マトリックス足場、FICOLL、ホタルルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、フルオロフォア、フリーラジカル前駆体、フラーレン、蛍光ランタニドキレート、ガンマ放出プローブ、ガラスビーズ、ガラス又は磁気支持体、グルココルチコイド、グリカン、グリコーゲン、グラミシジンD、ハプテン、ヘパリン、ホルモン、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ヒドロゲル、IgG結合、免疫調節分子、免疫刺激分子、免疫抑制分子、赤外線放出プローブ、イヌリン、イオンキレート化部分、質量分析のための等圧質量タグ、質量分析のための同位体質量タグ、ラテックス、層状の材料、リドカイン、脂質、脂質集合体、リポソームの球状核酸、リポソーム、磁気ビーズ、マレイミド、マンナン、質量分析のための質量タグ、膜、導電性金属、非導電性金属、マイクロフルイディクスチップ、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、分子足場、マルチウェルプレート、N-ヒドロキシスクシンイミド、ナノ結晶、ナノゲル、ナノ粒子、近赤外放出プローブ、ニトロセルロース、非生物学的なマイクロパーティクル、核酸、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ナイロン、オリゴヌクレオチド、外膜小胞、PAMAM、常磁性ビーズ、粒子、PEG、PEP[合成ポリペプチドでのタンパク質の修飾を記載する用語(ポリ(α-アミノ酸)としても公知)]、ペプチド、リン光性色素、光線感作物質、フィコビリンタンパク質、プラスチックビーズ、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリレート)、ポリエチレン、ポリマー、高分子膜、高分子マイクロパーティクル、ポリオール、ポリプロピレン、多糖、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、多孔質モノリス、プロカイン、プロプラノロール、タンパク質、ソラレン、ピューロマイシン、量子ドット、放射線同位体、放射性核種、樹脂、共鳴プローブ、RNAアプタマー、シリカゲル、シリコンチップ、スフェロイド、デンプン、ストレプトアビジン、超常磁性ビーズ、表面、合成ポリマー、タンデム色素、タキソール、テノポシド、テトラカイン、毒素、転写阻害剤、チラミン、小胞、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ウイルス、ウイルス様粒子、又は異種移植片である。
【0233】
一部の実施形態において、Eは、以下の化合物のいずれか1つである:
【0234】
【化29】
【0235】
(式中、Rは、上述した通りのL-Mである)。
【0236】
一部の実施形態において、式(V)による化合物は、少なくとも85%、好ましくは少なくとも95%の純度を有する。純度は、1D 1H-、1D 13C-、及び/又は2D 1H-13C HSQC NMRを使用して決定することができる。
【0237】
一部の実施形態において、式(V)による化合物は、本発明による方法を介して得られるか、又は得ることができる。
【0238】
さらなる態様において、本発明はまた、本発明の方法のいずれか1つを介して得られた、又は得ることができるタンパク質も提供する。
【0239】
加水分解の速度のモジュレーション
さらなる態様において、本発明は、アシル化タンパク質、好ましくは本発明に係るN末端アシル化タンパク質の加水分解速度をモジュレートするための、ジオールエステル形成剤及び/又は金属カチオンの使用を提供する。特定の理論に縛られることはないが、逆反応は加水分解反応であると考えられる。
【0240】
用語「モジュレートする」は、加水分解速度を促進することと阻害することの両方を包含し、これはなぜなら加水分解の速度を増加させるために、ホウ酸、ボロン酸及び/又は金属カチオンの濃度を、透析又はスピンフィルターを介して減少させる場合があること、又はタンパク質とアシル基又はコンジュゲートとの間の結合の加水分解を阻害するために、濃度を増加させる場合があることも想定されるためである。更に、キレート剤は、金属カチオンを封鎖し、加水分解速度を増加させるのに使用する場合があることも想定される。エチレンジアミン四酢酸及びクエン酸は、このようなアプローチのための適切なキレート剤である。
【0241】
一部の実施形態において、ジオールエステル形成剤は、ホウ酸、フェニルボロン酸、ニトロフェニルボロン酸、シクロプロピルボロン酸、シクロブチルボロン酸、2-フルオロ-5-ニトロフェニルボロン酸、ジフェニルボリン酸、2,6-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、4-(3-ブテニルスルホニル)フェニルボロン酸、アミノフェニルボロン酸、ビニルフェニルボロン酸、3-アクリルアミドフェニルボロン酸、2,4-ジフルオロ-3-ホルミル-フェニルボロン酸、3-(ジメチルアミノメチル)アニリン-4-ピナコールボロネート、ベンゾオキサボロール、ベンゾオキサボリン、3,3-ジメチルベンゾオキサボロール、AN2898、SCYX-7158/AN5568、AN2718、AN3661、3-カルボキシベンゾボロキソール、ピリジニルボロン酸、ピリミジンボロン酸、イミダゾールボロン酸、イソオキサゾールボロン酸、ジフェニルボリン酸、チエニルボロン酸、ベンゼン-1,4-ジボロン酸、フェニルジボロン酸(1,3-)、フェニルエタンボロン酸、3-ニトロフェニルボロン酸、AN0128、フロバガトラン、タラボスタット、デランゾミブ、過ホウ酸、デュトグリプチン、4-ボロノ-L-フェニルアラニン、タバボロール、クリサボロール、ボルテゾミブ、イキサゾミブ又はバボルバクタムであるか、又はそれを含む。一部の実施形態において、ジオールエステル形成剤は、ホウ酸、フェニルボロン酸、2-ホルミルフェニルボロン酸、4-ホルミルフェニルボロン酸、ニトロフェニルボロン酸、シクロプロピルボロン酸、シクロブチルボロン酸、2-フルオロ-5-ニトロフェニルボロン酸、ジフェニルボリン酸、2,6-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、4-(3-ブテニルスルホニル)フェニルボロン酸、アミノフェニルボロン酸、ビニルフェニルボロン酸、3-アクリルアミドフェニルボロン酸、2,4-ジフルオロ-3-ホルミル-フェニルボロン酸、3-(ジメチルアミノメチル)アニリン-4-ピナコールボロネート、ベンゾオキサボロール、ベンゾオキサボリン、3,3-ジメチルベンゾオキサボロール、AN2898、SCYX-7158/AN5568、AN2718、AN3661、3-カルボキシベンゾボロキソール、ピリジニルボロン酸、ピリミジンボロン酸、イミダゾールボロン酸、イソオキサゾールボロン酸、ジフェニルボリン酸、チエニルボロン酸、ベンゼン-1,4-ジボロン酸、フェニルジボロン酸(1,3-)、フェニルエタンボロン酸、3-ニトロフェニルボロン酸、AN0128、フロバガトラン、タラボスタット、デランゾミブ、過ホウ酸、デュトグリプチン、4-ボロノ-L-フェニルアラニン、タバボロール、クリサボロール、ボルテゾミブ、イキサゾミブ又はバボルバクタムであるか、又はそれを含む。
【0242】
一部の実施形態において、金属カチオンは、dブロック元素である。一部の実施形態において、金属カチオンは、遷移金属カチオン、好ましくは2価遷移金属カチオンである。一部の実施形態において、遷移金属カチオンは、2価のZn、Ni、又はCuカチオンである。2価のNi又はCuカチオンは、可逆反応を阻害する目的にとって好ましい。
【0243】
ホウ素-ジオールエステルをトラップするための方法
修飾されていないグルコニル化ペプチド基質上(実施例19を参照)、更にはハンドル置換されたアシル化ペプチド基質上にも(実施例20を参照)、2-ホルミルフェニルボロン酸化合物と、N-ヒドロキシルアミン誘導体の両方をトラップする普遍的な可能性が実証されたことから、(さらなる追加の、及び/又は直交の)反応性ハンドルを、2-ホルミルフェニルボロン酸誘導体、及び/又はN-ヒドロキシルアミン誘導体を介してそれを導入することによって(反応スキームA)、タンパク質のN末端に導入することが考えられると予想される。この目的を達成するために、N-ヒドロキシルアミン-PEG誘導体が当業界において公知である(Meadows等、2017)。N末端ペグ化タンパク質基質はこのようにして生産できるが、主に他のハンドルは、N-ヒドロキシルアミン誘導体、及び/又は2-ホルミルフェニルボロン酸若しくはそのベンゾボロキソール(benzoboroxloe)互変異性体の誘導体のいずれかに取り込まれていてもよい。2-ホルミルフェニルボロン酸又はその互変異性体であるベンゾボロキソールの誘導体を合成するための方法は、当業界において公知である(Lulinski等、2007;Psurski等、2019;Kowalska等、2016)。N-ヒドロキシルアミン誘導体合成も当業界において公知である(Melman、2010)。
【0244】
反応スキームA。例示的なアジドハンドルで置換されたラクトンで処理された基質への追加のハンドルの導入の例。
【0245】
【化30】
【0246】
(式中、R1は、タンパク質であり、R2~6は、独立して追加のハンドル及び/若しくは水素、並びに/又はそれらの組合せである)。このケースにおいて、3,4-ジオールエステルのみが示されるが、2,3-及び4,5-ジオールエステルの形成も考えられる。その後の存在又は非存在、加えて、アシル化基質における(a)好適なヒドロキシルの配置を可能にする、正確なアシル化試薬(炭水化物ラクトン、又はハンドル置換された炭水化物ラクトン)を慎重に選ぶことによって、他のハンドル付加物を入手することができる。
【0247】
さらなる態様において、本発明は、アシル化タンパク質、好ましくは本発明に係るN末端アシル化タンパク質の加水分解速度を更にモジュレートするために、ジオールエステル形成試薬をトラップすることを可能にする、2-ホルミルフェニルボロン酸及びN-ヒドロキシルアミン誘導体と組み合わせたジオールエステル形成剤の使用を提供する。
【0248】
アシル化タンパク質、又は好ましくは本発明によるN末端アシル化タンパク質に、ハンドルを備えた2-ホルミルフェニルボロン酸、及び/又はハンドルを備えたN-ヒドロキシルアミン誘導体を組み合わせることによって、1つ又は複数の追加のハンドルが、アシル化ペプチドに導入されてもよい。
【0249】
本発明はまた、N末端アシル化タンパク質を標識化するための方法であって、タンパク質を、(i)2-ホルミルフェニルボロン酸誘導体及びN-ヒドロキシルアミン、(ii)2-ホルミルフェニルボロン酸及びN-ヒドロキシルアミン誘導体、(iii)2-ホルミルフェニルボロン酸誘導体及びN-ヒドロキシルアミン誘導体、又は(iv)2-ホルミルフェニルボロン酸及びN-ヒドロキシルアミンと接触させる工程を含む方法も提供する。N末端アシル化タンパク質は、本発明のN末端アシル化タンパク質又は天然に存在するN末端アシル化タンパク質、例えば、N末端がグルコノイル化されたタンパク質であり得る。
【0250】
2-ホルミルフェニルボロン酸誘導体及び/又はN-ヒドロキシルアミン誘導体は、ペグ化されていてもよい。
【0251】
2-ホルミルフェニルボロン酸誘導体は、式(XI)に従っていてもよい:
【0252】
【化31】
【0253】
(式中、R2、R3、R4及びR5のそれぞれは、独立して水素又はハンドルから選択され、誘導体は、少なくとも1つのハンドルを含む)。一部の実施形態において、R2、R3、R4及びR5のうち1つのみがハンドルである。
【0254】
上記実施形態のいずれかにおいて、2-ホルミルフェニルボロン酸又はその誘導体に加えて、又はその代わりに、2-ホルミルフェニルボロン酸又はその誘導体のベンゾボロキソール互変異性体が使用される。
【0255】
N-ヒドロキシルアミン誘導体は、式(XII)に従っていてもよい:
【0256】
【化32】
【0257】
(式中、R6は、ハンドルである)。
【0258】
本発明はまた、上記の方法のいずれか1つを使用することによって得られた、又は得ることができる標識されたタンパク質も提供する。
【0259】
アシル化タンパク質を同定するための方法
成功したGDL(178Da)アシル化の低分子量の質量シフトは、低分子量タンパク質のための従来のトリシン-SDS-PAGEを使用して観察することができる(K. F. Geoghegan等、1999)。しかしながら、低分子量のアシル基の取り付けをモニターすることは、「高度な技術を要しない」ゲルベースの溶液を使用する場合、より大きいタンパク質でますます難しくなる。コスト面で実現不可能な質量分析機構、例えばMALDI-TOF又はLC/MSは、全ての標準的な分子生物学実験室では利用できない可能性がある。
【0260】
したがって、さらなる態様において、本発明は、本発明によるアシル化タンパク質を同定するための方法であって、アシル化タンパク質を含有する疑いのある試料を、ジオールと相互作用しホウ素を含有するアクリルアミドゲル、任意選択でメタクリルアミドフェニルボロン酸アクリルアミドゲルに泳動する工程を含む方法を提供する。メタクリルアミドフェニルボロン酸アクリルアミドゲルをキャスティングすることは、重合の前に分解SDS-PAGEゲル混合物に3-[(メチル-)アクリルアミド]フェニルボロン酸誘導体((M)PBA)の水溶液を添加することと同様に簡単である(Pereira Morais等、2010)。
【0261】
例えば、6員1,5-炭水化物-ラクトン、例えばグルコノラクトン、又は6-アジド-6-デオキシ-グルコノ-1,5-ラクトンでアシル化されたタンパク質は、アシル化タンパク質を含有する疑いのある試料と並んで非アシル化タンパク質の対照試料を泳動することによって、非アシル化タンパク質と区別することができる。アシル化タンパク質はゲルシフトを経て、非アシル化タンパク質より高い見かけの分子量で泳動する傾向がある。
【0262】
一部の実施形態において、他のジオールエステル形成剤が、SDS-PAGEゲル混合物中で固定されていてもよい。
【0263】
アシル化タンパク質を精製するための方法
さらなる態様において、本発明は、アシル化タンパク質を精製するための方法であって、(1)アシル化タンパク質を含む疑いのある試料を、固定されたジオールエステル形成剤を含む固体支持体上に結合させる工程;及び(2)タンパク質を溶出させる工程を含む方法を提供する。一部の実施形態において、タンパク質は、6又はそれより低いpHの緩衝液及び/又は競合するジオールを含む緩衝液を使用して溶出される。一部の実施形態において、タンパク質は、緩衝液の組成を変化させずに均一濃度で溶出され、溶出体積/時間によって分離される。
【0264】
一部の実施形態において、ジオールエステル形成剤は、フェニルボロン酸、ニトロフェニルボロン酸、シクロプロピルボロン酸、シクロブチルボロン酸、2-フルオロ-5-ニトロフェニルボロン酸、ジフェニルボリン酸、2,6-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、4-(3-ブテニルスルホニル)フェニルボロン酸、アミノフェニルボロン酸、ビニルフェニルボロン酸、3-アクリルアミドフェニルボロン酸、2,4-ジフルオロ-3-ホルミル-フェニルボロン酸、3-(ジメチルアミノメチル)アニリン-4-ピナコールボロネート、オキサボロール、ベンゾオキサボロール、ベンゾオキサボリン、3,3-ジメチルベンゾオキサボロール、AN2898、SCYX-7158/AN5568、AN2718、AN3661、3-カルボキシベンゾボロキソール、ピリジニルボロン酸、ピリミジンボロン酸、イミダゾールボロン酸、イソオキサゾールボロン酸、ジフェニルボリン酸、チエニルボロン酸、ベンゼン-1,4-ジボロン酸、フェニルジボロン酸(1,3-)、フェニルエタンボロン酸、3-ニトロフェニルボロン酸、AN0128、フロバガトラン、タラボスタット、デランゾミブ、過ホウ酸、デュトグリプチン、4-ボロノ-L-フェニルアラニン、タバボロール、クリサボロール、ボルテゾミブ、イキサゾミブ、又はバボルバクタムである。一部の実施形態において、ジオールエステル形成剤は、フェニルボロン酸、2-ホルミルフェニルボロン酸、4-ホルミルフェニルボロン酸、ニトロフェニルボロン酸、シクロプロピルボロン酸、シクロブチルボロン酸、2-フルオロ-5-ニトロフェニルボロン酸、ジフェニルボリン酸、2,6-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、4-(3-ブテニルスルホニル)フェニルボロン酸、アミノフェニルボロン酸、ビニルフェニルボロン酸、3-アクリルアミドフェニルボロン酸、2,4-ジフルオロ-3-ホルミル-フェニルボロン酸、3-(ジメチルアミノメチル)アニリン-4-ピナコールボロネート、オキサボロール、ベンゾオキサボロール、ベンゾオキサボリン、3,3-ジメチルベンゾオキサボロール、AN2898、SCYX-7158/AN5568、AN2718、AN3661、3-カルボキシベンゾボロキソール、ピリジニルボロン酸、ピリミジンボロン酸、イミダゾールボロン酸、イソオキサゾールボロン酸、ジフェニルボリン酸、チエニルボロン酸、ベンゼン-1,4-ジボロン酸、フェニルジボロン酸(1,3-)、フェニルエタンボロン酸、3-ニトロフェニルボロン酸、AN0128、フロバガトラン、タラボスタット、デランゾミブ、過ホウ酸、デュトグリプチン、4-ボロノ-L-フェニルアラニン、タバボロール、クリサボロール、ボルテゾミブ、イキサゾミブ、又はバボルバクタムである。
【0265】
用語「競合するジオール」は、本出願で使用される場合、ボロン酸に結合する少なくとも2個のヒドロキシル基を含み、固体支持体からアシル化タンパク質を押しのけることができる化合物を指す。競合するジオールは、例えば、グリセロール、トリス、炭水化物又は炭水化物誘導体であり得る。
【0266】
一部の実施形態において、本方法は、カラム、遠心管又はマイクロプレートに充填することができるボロネートアフィニティークロマトグラフィー樹脂を使用して実行される。代替のジオールに結合する樹脂を採用してもよいことが理解される。例えば、ベンゾボロキソール樹脂は、pH7.4でPGL陽性の(すなわちグルコノイル化されていない)大腸菌溶解産物中のスパイクしたグリコシル化タンパク質と結合することができ、すなわち大腸菌B株では結合することができない(Rowe、El Khoury、及びLowe 2016)。したがって、ベンゾボロキソールジオール相互作用の様式によって(C. Chen等、2016)、グルコノイル化された材料は、特に最初のIMAC工程の後、まさに同じように結合するはずであると考えられる。ベンゾボロキソール樹脂を採用することもまた、フェニルボロン酸樹脂と比較してより低いpH値が必要であることから、有益な可能性があり、より強い相互作用のためにより一層純度を増加させることができる。IMACに加えて、ベンゾボロキソール化学はまた、モノリスカラム様式でも実証されており、場合によっては従来のアガロース又はPMMA支持体と比較してより速い流速を可能にするため、IMACとの混合モードの親和性精製及びベンゾボロキソール精製が考えられる(H. Li等、2012)。
【0267】
一部の実施形態において、本方法は、工程(1)と工程(2)の間に1つ又は複数の洗浄工程を含む。洗浄工程は、固体支持体からアシル化タンパク質を著しく溶出させないが、試料から不純物の少なくとも一部を除去することができる洗浄緩衝液を使用して実行される。したがって、洗浄工程は、試料からさらなる不純物を除去する。
【0268】
したがって、この方法は、試料中のアシル化タンパク質の比率を高めることにも好適であり、このような実施形態も本発明に包含されることになる。
【0269】
一部の実施形態において、アシル化タンパク質は、本発明に係るN末端アシル化タンパク質である。
【0270】
一部の実施形態において、タンパク質は、好適なタンパク質をグルコノ-1,5-ラクトンと接触させることによって得られたグルコノイル残基で、N末端でアシル化される。非標的の宿主細胞由来のタンパク質はグルコノイル修飾を受けやすくないため、標的タンパク質は優先的に修飾され、したがって記載されるように精製を受けやすい。これは、宿主細胞タンパク質を除去して、より純粋なタンパク質調製物を得ることができるという利益を有する。
【0271】
一部の実施形態において、精製したタンパク質は、反応の可逆性を可能にする条件下でインキュベートすることによって、そのアセチル化されていない形態に戻すことができる。
【0272】
医薬組成物
さらなる態様において、本発明は、本発明のアシル化タンパク質並びに医薬的に許容される担体及び/又は希釈剤を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、これまでに記載された組成物のいずれか1つの中に存在する構成要素の全部又は一部を含んでいてもよい。
【0273】
本明細書に記載される医薬組成物はまた、他の物質を含有していてもよい。これらの物質としては、これらに限定されないが、凍結防止剤、リオプロテクタント、界面活性剤、増量剤、抗酸化剤、及び安定化剤が挙げられる。一部の実施形態において、医薬組成物は、凍結乾燥されていてもよい。
【0274】
用語「凍結防止剤」は、本明細書で使用される場合、凍結により誘導されるストレスに対して安定性を提供する薬剤を含む。凍結防止剤はまた、一次及び二次乾燥並びに長期の生成物貯蔵の間も保護を提供することができる。凍結防止剤の非限定的な例としては、糖、例えばスクロース、グルコース、トレハロース、マンニトール、マンノース、及びラクトース;ポリマー、例えばデキストラン、ヒドロキシエチルデンプン及びポリエチレングリコール;界面活性剤、例えばポリソルベート(例えば、PS-20又はPS-80);並びにアミノ酸、例えばグリシン、アルギニン、ロイシン、及びセリンが挙げられる。一般的に、生物系において低い毒性を呈する凍結防止剤が使用される。
【0275】
一実施形態において、リオプロテクタントは、本明細書に記載される医薬組成物に添加される。用語「リオプロテクタント」は、本明細書で使用される場合、フリーズドライ又は脱水プロセス(一次及び二次フリーズドライサイクル)の間に安定性を提供する薬剤を含む。これは、凍結乾燥サイクルの間に生成物の劣化を最小化することを助け、長期の生成物安定性を改善する。リオプロテクタントの非限定的な例としては、糖、例えばスクロース又はトレハロース;アミノ酸、例えばグルタミン酸一ナトリウム、非晶質グリシン又はヒスチジン;メチルアミン、例えばベタイン;リオトロピック塩、例えば硫酸マグネシウム;ポリオール、例えば3個又はそれより多くの水酸基を有する糖アルコール、例えば、グリセリン、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、及びマンニトール;プロピレングリコール;ポリエチレングリコール;プルロニック(pluronics);並びにそれらの組合せが挙げられる。医薬組成物に添加されるリオプロテクタントの量は、一般的に、医薬組成物が凍結乾燥される場合、許容できない量の分解を起こさない量である。
【0276】
一部の実施形態において、増量剤が医薬組成物中に含まれる。用語「増量剤」は、本明細書で使用される場合、医薬製品と直接相互作用することなくフリーズドライした生成物の構造を提供する薬剤を含む。増量剤はまた、医薬的に洗練されたケークを提供することに加えて、崩壊温度を改変すること、凍結融解に対して保護を提供すること、及び長期貯蔵にわたり安定性を強化することに関して、有用な品質を付与することができる。増量剤の非限定的な例としては、マンニトール、グリシン、ラクトース、及びスクロースが挙げられる。増量剤は、結晶性であってもよいし(例えばグリシン、マンニトール、又は塩化ナトリウム)、又は無定形であってもよく(例えばデキストラン、ヒドロキシエチルデンプン)、一般的に、配合物中で0.5%~10%の量で使用される。
【0277】
医薬組成物の所望の特徴に有害作用を与えないという条件で、他の医薬的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences、第16版、Osol, A.編(1980)又はRemington: The Science and Practice of Pharmacy、第22版、Pharmaceutical press (2012)、ISBN-13: 9780857110626に記載されるものも、本明細書に記載される医薬組成物に含まれていてもよい。
【0278】
固体医薬組成物の場合、従来の非毒性固形担体を使用することができ、その例としては、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウム等が挙げられる。注射のための溶液の場合、医薬組成物は、凍結防止剤、リオプロテクタント、界面活性剤、増量剤、抗酸化剤、安定化剤及び医薬的に許容される担体を更に含んでいてもよい。エアロゾル投与の場合、医薬組成物は、一般的に、界面活性剤及び噴射剤と共に微粉化した形態で供給される。界面活性剤は、当然ながら非毒性でなければならず、一般的に、噴射剤に可溶性である。このような薬剤の代表例は、カプロン酸、オクタン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、オレステリック(olesteric)及びオレイン酸等の6~22個の炭素原子を含有する脂肪酸の、脂肪族多価アルコール又はその環状無水物とのエステル又は部分エステルである。混合エステル、例えば混合又は天然グリセリドを採用してもよい。要求に応じて担体も含まれていてもよく、例えば経鼻送達のためのレシチンである。坐剤の場合、従来の結合剤及び担体としては、例えば、ポリアルキレン(polyalkalene)グリコール又はトリグリセリドが挙げられる。
【0279】
さらなる態様において、本発明は、医薬として使用するための本発明による組成物又は医薬組成物を提供する。
【0280】
さらなる態様において、本発明は、治療有効量の本発明による組成物又は医薬組成物を対象又は動物に投与するための方法を提供する。一部の実施形態において、本方法は、アシル化及び/又はコンジュゲートしたタンパク質の加水分解速度をモジュレートする工程を含む。
【0281】
キット
さらなる態様において、本発明は、タンパク質及びハンドル置換された炭水化物ラクトンを含むキットを提供する。一部の実施形態において、ハンドル置換された炭水化物ラクトンは、5、6又は7員環を有する。一部の実施形態において、炭水化物ラクトンは、1,5-ラクトンである。一部の実施形態において、炭水化物ラクトンは、5、6又は7員環を有し、C6、C4及び/又はC3は、ハンドルで置換されている。ハンドルは、前の実施形態のいずれか1つに従うものでもよい。
【0282】
一部の実施形態において、ハンドル置換された炭水化物ラクトンは、D-リボース、D-アラビノース、D-キシロース、D-リキソース、L-リボース、L-アラビノース、L-キシロース、又はL-リキソース、D-アロース、D-アルトロース、D-グルコース、D-マンノース、D-グロース、D-イドース、D-ガラクトース、D-タロース、L-アロース、L-アルトロース、L-グルコース、L-マンノース、L-グロース、L-イドース、L-ガラクトース、又はL-タロースのラクトン誘導体である。
【0283】
一部の実施形態において、ハンドル置換された炭水化物ラクトンは、本発明の合成方法によって得られた、又は得ることができるラクトンである。
【0284】
一部の実施形態において、本発明は、
(i)タンパク質;及び
(ii)式(V):
【0285】
【化33】
【0286】
(式中、
(i)R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、メチル、又はアジドであり、
(ii)R4は、水素、ヒドロキシル、メチル、アジド、又はカルボキシルであり、
(iii)R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、アジドであり、
(iv)R1、R2、R3及びR4のうちの1つ以下がメチルである)
による化合物
を含むキットを提供する。
【0287】
一部の実施形態において、R4は、アジドであり、R3は、ヒドロキシルであり、R2は、ヒドロキシルであり、R1は、ヒドロキシルである。一部の実施形態において、R4は、ヒドロキシルであり、R3は、アジドであり、R2は、ヒドロキシルであり、R1は、ヒドロキシルである。一部の実施形態において、R4は、ヒドロキシルであり、R3は、ヒドロキシルであり、R2は、アジドであり、R1は、ヒドロキシルである。一部の実施形態において、R4は、ヒドロキシルであり、R3は、ヒドロキシルであり、R2は、ヒドロキシルであり、R1は、アジドである。
【0288】
一部の実施形態において、タンパク質のN末端のアミノ酸残基は、Gly、Ala、Ser又はHis残基である。一部の実施形態において、タンパク質のN末端は、アミノ酸配列Gly-Gly又はGly-Alaを含む。一部の実施形態において、タンパク質は、N末端にHisタグを含む。
【0289】
一部の実施形態において、タンパク質のN末端は、アミノ酸配列Gly-Xaa1-Xaa2-Xaa3を含み、
(i)Xaa1は、アミノ酸残基であるか、又は存在せず;
(ii)Xaa2は、アミノ酸残基であるか、又は存在せず;
(iii)Xaa3は、3個又はそれより多くのHis残基からなる。一部の実施形態において、Xaa1及びXaa2は、それぞれ独立して、Ser、Gly又はAlaである。一部の実施形態において、Xaa1は、Serであり、Xaa2は、Serである。
【0290】
一部の実施形態において、タンパク質のN末端は、アミノ酸配列GSSHHHHHH又はGHHHHHHを含む。
【0291】
一部の実施形態において、タンパク質のN末端は、アミノ酸配列Gly-Xaa1-Xaa2を含み、
(i)Xaa1は、Gly、Ser又はAlaであり;
(ii)Xaa2は、
TYSDH、
TYSAH、
TYSCH、
KWSKR、又は
SGSK
である。
【0292】
一部の実施形態において、タンパク質のN末端は、アミノ酸配列GGTYSDH、GGTYSCH、GGKWSKR、又はGASGSKを含む。
【0293】
一部の実施形態において、タンパク質のN末端は、アミノ酸配列G、H、GA、GG、GH、GI、GP、GV、SH、GAH、GAP、GGH、GHH、GGK、GGS、GGV、RGS、SYH、AHHH、GAAH、GASH、GHHH、GSAH、GSSH、SSYH、SYYH、VHHH、GAPTL、GHHHH、GHHHHH、LRFKFY、HHHHHH、GASGSKG、GGKWSKR、GGTYSDH、GHHHHHH、GLRFKFY、HLRFKFY、KHHHHHH、GHLRFKFY、GSLRFKFY、GSHHHHHH、GSHLRFKFY、GSSHHHHHH、RGSHHHHHH、SYYHHHHHH、A、AH、AHH、GL、GS、GGT、GAA、GAS、GHL、GLR、GSA、GSH、GSL、GSS、GHLR、GLRF、GAPT、GASG、GGKW、GGTY、GSHL、GSLR、GASGS、GGKWS、GGTYS、GHLRF、GLRFK、GSHLR、GSLRF、GSSHH、GASGSK、GGKWSK、GGTYSD、GHLRFK、GLRFKF、GSHLRF、GSLRFK、GSSHHH、GHLRFKF、GSHLRFK、GSLRFKF、GSSHHHH、GSHLRFKF、GSSHHHHH、HL、HLR、HLRF、HLRFK、HLRFKF、L、LR、LRF、LRFK、LRFKF、R、RG、S、SY、SS、SSY、SYY、V、VH又はVHHを含む。好ましくは、Xは、アミノ酸配列GG、GHH、GHHH、GHHHH、GHHHHH、GHHHHHH、GSSHHHHHH、GSHHHHHH、GASGSKG、GGKWSKR又はGGTYSDHを含む。
【0294】
一部の実施形態において、キットは、ジオールエステル形成剤を更に含む。一部の実施形態において、ジオールエステル形成剤は、ホウ酸、フェニルボロン酸、ニトロフェニルボロン酸、シクロプロピルボロン酸、シクロブチルボロン酸、2-フルオロ-5-ニトロフェニルボロン酸、ジフェニルボリン酸、2,6-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、4-(3-ブテニルスルホニル)フェニルボロン酸、アミノフェニルボロン酸、ビニルフェニルボロン酸、3-アクリルアミドフェニルボロン酸、2,4-ジフルオロ-3-ホルミル-フェニルボロン酸、3-(ジメチルアミノメチル)アニリン-4-ピナコールボロネート、ベンゾオキサボロール、ベンゾオキサボリン、3,3-ジメチルベンゾオキサボロール、AN2898、SCYX-7158/AN5568、AN2718、AN3661、3-カルボキシベンゾボロキソール、ピリジニルボロン酸、ピリミジンボロン酸、イミダゾールボロン酸、イソオキサゾールボロン酸、ジフェニルボリン酸、チエニルボロン酸、ベンゼン-1,4-ジボロン酸、フェニルジボロン酸(1,3-)、フェニルエタンボロン酸、3-ニトロフェニルボロン酸、AN0128、フロバガトラン、タラボスタット、デランゾミブ、過ホウ酸、デュトグリプチン、4-ボロノ-L-フェニルアラニン、タバボロール、クリサボロール、ボルテゾミブ、イキサゾミブ又はバボルバクタムであるか、又はそれを含む。
【0295】
一部の実施形態において、キットは、金属カチオンを更に含む。一部の実施形態において、金属カチオンは、dブロック元素である。一部の実施形態において、金属カチオンは、遷移金属カチオン、好ましくは2価遷移金属カチオンである。一部の実施形態において、遷移金属カチオンは、2価のZn、Ni、又はCuカチオンである。2価のNi又はCuカチオンは、可逆反応を阻害する目的にとって好ましい。
【0296】
一部の実施形態において、式(V)による化合物は、少なくとも85%、好ましくは少なくとも95%の純度を有する。純度は、1D 1H-、1D 13C-、及び/又は2D 1H-13C HSQC NMRを使用して決定することができる。
【0297】
一部の実施形態において、式(V)による化合物は、本発明による方法を介して得られるか、又は得ることができる。
【0298】
一部の実施形態において、キットは、ホスフィン基(例えば、シュタウディンガーのライゲーションに好適な求電子性トラップを有するトリフェニルホスフィン)、ホスフィン誘導体(例えば、トレースレスなシュタウディンガーのライゲーションに好適な、ビ又はトリフェニルアリールエステル、チオエステル、又はアシルイミダゾール)、アルケン基、アルキン基(CuAACに好適な)、歪んだアルキン基(SPAACに好適な)、OCT、MOFO、DIFO、DIFO2、DIFO3、DIMAC、DIBO、DIBAC(ADIBOとしても公知)、BARAC、BCN、ゾンドハイマーのジイン、TMDIBO、S-DIBO、COMBO、PYRROC、TMTH、DIFBO、ALO、チオアルキン基、ケト-DIBO、歪んだオレフィン、又はオキサノルボルナジエン基(例えば、トリフルオロメチルで置換されたオキサノルボルナジエン)を含む化合物を更に含む。
【0299】
一部の実施形態において、キットは、式E-L-Mによる化合物を更に含み、式中、
Eは、ホスフィン基(例えば、シュタウディンガーのライゲーションに好適な求電子性トラップを有するトリフェニルホスフィン)、ホスフィン誘導体(例えば、トレースレスなシュタウディンガーのライゲーションに好適な、ビ又はトリフェニルアリールエステル、チオエステル、又はアシルイミダゾール)、アルケン基、アルキン基(CuAACに好適な)、歪んだアルキン基(SPAACに好適な)、OCT、MOFO、DIFO、DIFO2、DIFO3、DIMAC、DIBO、DIBAC(ADIBOとしても公知)、BARAC、BCN、ゾンドハイマーのジイン、TMDIBO、S-DIBO、COMBO、PYRROC、TMTH、DIFBO、ALO、チオアルキン基、ケト-DIBO、歪んだオレフィン、又はオキサノルボルナジエン基(例えば、トリフルオロメチルで置換されたオキサノルボルナジエン)を含み;
Lは、リンカーであるか、又は存在せず;
Mは、所望のコンジュゲートである。
【0300】
一部の実施形態において、Mは、1-ジヒドロテストステロン、発色団、アクチノマイシンD、エーロゲル、寒天、アガロース、アルカリホスファターゼ、アルキル化剤、アルミナゲル、アミノ酸、アミロペクチン、アントラサイクリン、抗生物質、抗体、抗体断片、抗原、代謝拮抗物質、アビジン、バクテリオファージ、ビーズ、ベータ-ガラクトシダーゼ、バイオチップ、バイオフィルム、生物学的な細胞、ビオチン、臭化物、カーボンナノチューブ、細胞膜、細胞成分、セルロース、化学発光化合物、コルヒチン、造影剤、コットン、サイトカラシンB、細胞溶解性の免疫調節タンパク質、ダウノルビシン、デンドリマー、誘導体化されたプラスチックフィルム、デキストラン、ジアゾセルロース、ジヒドロキシアントラシンジオン、DNAアプタマー、DNA損傷性の阻害剤、ドキソルビシン、薬物、エラスチン様のタンパク質及びペプチド、エメチン、酵素の基質、酵素、エチジウム、エトポシド、エキソソーム、細胞外マトリックス足場、FICOLL、ホタルルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、フルオロフォア、フリーラジカル前駆体、フラーレン、蛍光ランタニドキレート、ガンマ放出プローブ、ガラスビーズ、ガラス又は磁気支持体、グルココルチコイド、グリカン、グリコーゲン、グラミシジンD、ハプテン、ヘパリン、ホルモン、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ヒドロゲル、IgG結合、赤外線放出プローブ、イヌリン、イオンキレート化部分、質量分析のための等圧質量タグ、質量分析のための同位体質量タグ、ラテックス、層状の材料、リドカイン、脂質、脂質集合体、リポソームの球状核酸、リポソーム、磁気ビーズ、マレイミド、マンナン、質量分析のための質量タグ、膜、導電性金属、非導電性金属、マイクロフルイディクスチップ、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、分子足場、マルチウェルプレート、N-ヒドロキシスクシンイミド、ナノ結晶、ナノゲル、ナノ粒子、近赤外放出プローブ、ニトロセルロース、非生物学的なマイクロパーティクル、核酸、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ナイロン、オリゴヌクレオチド、外膜小胞、PAMAM、常磁性ビーズ、粒子、PEG、PEP[合成ポリペプチドでのタンパク質の修飾を記載する用語(ポリ(α-アミノ酸)としても公知)]、ペプチド、リン光性色素、光線感作物質、フィコビリンタンパク質、プラスチックビーズ、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリレート)、ポリエチレン、ポリマー、高分子膜、高分子マイクロパーティクル、ポリオール、ポリプロピレン、多糖、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、多孔質モノリス、プロカイン、プロプラノロール、タンパク質、ソラレン、ピューロマイシン、量子ドット、放射線同位体、放射性核種、樹脂、共鳴プローブ、RNAアプタマー、シリカゲル、シリコンチップ、スフェロイド、デンプン、ストレプトアビジン、超常磁性ビーズ、表面、合成ポリマー、タンデム色素、タキソール、テノポシド、テトラカイン、毒素、転写阻害剤、チラミン、小胞、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ウイルス、ウイルス様粒子、又は異種移植片である。
【0301】
一部の実施形態において、Eは、以下の化合物のいずれか1つである:
【0302】
【化34】
【0303】
(式中、Rは、上述した通りのL-Mである)。
【0304】
アシル化の程度を測定するための方法
一態様において、本発明は、試料にジオールエステル形成剤を添加する工程を含む、試料中のタンパク質のアシル化の程度を測定するための方法を提供する。ジオールエステル形成剤は、これまでに述べられてきたあらゆるジオールエステル形成剤であり得る。
【0305】
本方法は、酵素を使用して試料中のタンパク質を消化する工程、次いで試料に質量分析を実行する工程を更に含んでいてもよい。酵素は、トリプシンであり得る。
【0306】
一部の実施形態において、本方法は、グルコノイル化及び/又はホスホグルコノイル化の程度を決定するために使用される。
【0307】
ワクチン
別の態様において、本発明は、本発明のN末端アシル化タンパク質を含むワクチンを提供する。一部の実施形態において、N末端アシル化タンパク質は、抗原である。一部の実施形態において、抗原は、VLPにコンジュゲートしている(ウイルス様粒子、Yan等、2015を参照)。別の実施形態において、N末端アシル化タンパク質は、担体タンパク質、例えばVLPの単量体であり、N末端アシル化タンパク質は、抗原にコンジュゲートしている。
【0308】
2つのタンパク質間、例えばVLPと抗原との間のコンジュゲーションは、クリックケミストリーを介して行うことができる。例えば、VLPは、アミノ基と反応する反応性基及びアジド基と反応する反応性基を含むヘテロ二官能性架橋剤と反応することができる。抗原は、アジドで置換された炭水化物ラクトンと反応することができる。次いで活性化されたVLP及び抗原を接触させて、コンジュゲートを生産することができる。例示的な反応は、実施例17に示される。代替の実施形態において、VLPは、アジドで置換された炭水化物ラクトンと反応し、抗原は、ヘテロ二官能性架橋剤と反応する。
【0309】
一部の実施形態において、ヘテロ二官能性架橋剤は、ビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN)基及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基を含む。ヘテロ二官能性架橋剤は、2つの化学基を共有結合で連結するリンカーを更に含んでいてもよい。リンカーは、例えば、PEG部分、例えばPEG8であり得る。一部の実施形態において、ヘテロ二官能性架橋剤は、実施例17で使用されるようなNHS-PEG8-BCNである。
【0310】
一部の実施形態において、アジドで置換された炭水化物ラクトンは、6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンである。
【0311】
一部の実施形態において、抗原は、コロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)から誘導される。一部の実施形態において、抗原は、SARS-CoV-2の受容体結合ドメイン(例えば、配列番号91)又はその抗原性断片であるか、又はそれを含む。一部の実施形態において、抗原は、配列番号91、又は配列番号91と少なくとも75、80、85、90、95、98又は99%の配列同一性を有する配列であるか、又はそれを含む。一部の実施形態において、抗原は、配列番号91、又は配列番号91と少なくとも99%の配列同一性を有する配列であるか、又はそれを含む。一部の実施形態において、抗原は、精製タグ、例えばHisタグ(例えば、配列番号87を参照)を含んでいてもよい。
【0312】
配列番号87(Hisタグ-RBD)
【0313】
【化35】
【0314】
配列番号91(RBD)
【0315】
【化36】
【0316】
一部の実施形態において、VLPは、Qbeta外殻タンパク質(例えば、配列番号86)を含む。一部の実施形態において、VLPは、配列番号86、又は配列番号86と少なくとも75、80、85、90、95、98又は99%の配列同一性を有する配列を含む。一部の実施形態において、VLPは、配列番号86、又は配列番号86と少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0317】
配列番号86(Qbeta)
【0318】
【化37】
【0319】
本発明は、医薬として使用するための、本発明のワクチン、組成物、N末端アシル化タンパク質、又はハンドル置換された炭水化物ラクトンを提供する。
【0320】
本発明のハンドル置換された炭水化物ラクトンは、個体又は動物において免疫応答を惹起する方法における使用のためであってもよく、この場合、ハンドル置換された炭水化物ラクトンは、アジュバントである。本発明のワクチン、組成物又はN末端アシル化タンパク質は、個体又は動物において免疫応答を惹起する方法における使用のためであってもよい。
【0321】
本発明は、コロナウイルス関連障害を処置又は防止する方法における使用のための、本発明のワクチン、組成物、又はN末端アシル化タンパク質を提供する。コロナウイルス関連障害は、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)及び/又はCOVID-19(コロナウイルス疾患)であり得る。
【実施例
【0322】
(実施例1)
6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンの合成
化学合成
15mgの6-アジド-6-デオキシ-D-グルコース(C6H11N3O5、CAS20847-05-6;Carbosynth Ltd.社、Compton、UK、カタログ番号MA02620)を、0.5mgのShvo触媒(Alfa Aesar社、UK、カタログ番号46884)及び1mLのシクロヘキサノン(Alfa Aesar社、カタログ番号A15607.AP)と共にコニカルガラスフラスコに移した。反応混合物を、窒素ガスを15分通すことによって脱気し、次いできつく密封した。脱気した反応混合物を、絶えず50℃で撹拌しながら一晩(18時間)維持した。淡黄色からオレンジ/茶色への色の変化を観察した。
【0323】
反応混合物をマイクロ遠心管に移し、20,000gで15分回転させ、底部に小さいサイズの暗褐色の沈殿を観察した。上清を新しいチューブに移し、3.5体積のヘキサンを添加した。白色の沈殿を即座に観察した。室温(RT)で15分沈殿を行った後、反応混合物を20,000gで5分回転させ、目の詰まった白色のペレットを底部に観察した。上清を捨てた後、30℃、減圧条件下でペレットを乾燥させた。乾燥させたペレットを5:1の酢酸エチル/アセトンの混合物中に再溶解させ、微量の残存する固体を20,000gで20分回転させることによって沈殿させた。上清を新しいチューブに移し、2回目に20,000gで20分回転させた。無色の液体を30℃の減圧条件下で蒸発させて、無定形の黄色がかった白色の粉末化した固体を得た。
【0324】
特徴付け
融点をGallenkamp装置で決定し、温度を較正された温度計で測定したところ、m.p.は114~118℃(未訂正)であった。
【0325】
1D 1H及び13C NMR、加えて、DMSO-d6中の2D 1H-13C HSQC NMRを実行して、Bierenstiehl 2004によって記載される通りに同じ溶媒中のグルコノ-1,5及び1,4-ラクトンの参照スペクトルに対して本発明の化合物の構造を比較した。スペクトル獲得の直前に溶液試料を調製して、起こり得るラクトン異性化作用を低減した。試料を約1.3~1.6mg/mLの濃度に溶解させ、高度に磁気遮蔽した800MHz機器(Bruker、800US2)でスペクトルを得た。DMSO-d6データを30℃(制御された)で得て、溶媒の凍結を回避した。溶液中で起こり得る異性化作用を回避するために捕捉時間を意図的に短く維持し、そのまま優勢な炭素シグナルを記録した(C2~C6、図7)。可能であれば、J値が報告されるが、そうでなければJ値が正確に入手可能ではなかった。
【0326】
DMSO-d6: 1H NMR (800 MHz, DMSO-d6): δ 4.26 (1H, m, J=2.6, 5.5, 9.4、H5として割り当てられた); 3.90 (1H, dd, J= 5.5, 8.1, 5.0、H2として割り当てられた); 3.67 (1H, m、H6aとして割り当てられた), 3.57 (1H, m, J=13.5, 2.5、H6bとして割り当てられた); 3.60 (1H, m、H4として割り当てられた); 3.50 (1H, m、H3として割り当てられた)。13C NMR (DMSO-d6): δ 78.1 (C5として割り当てられた), 73.8 (C4として割り当てられた), 71.5 (C2として割り当てられた), 68.6 (C3として割り当てられた), 50.8 (C6として割り当てられた)。この特定の実験で、C1シグナルは、短いスペクトル捕捉時間のために観察されなかった。DMSO-d6中の3.3における1H NMRシグナルが観察されたが、これは残留したH2O由来である。
【0327】
データ分析及び参照との比較
DMSO-d6において得られた主要な2D 1H-13C NMRシグナルの、同じ溶媒における非アジド化グルコノ-1,4-及び1,5-ラクトンの両方のスペクトル(Bierenstiel 2004)との比較は、後者とより一層優れた一致を示した。非アジド化グルコノ-1,4-及び1,5-ラクトンの13Cシグナルは、特にそれらのC3、C4及びC5値において異なる。実験的に得られたアジド化化合物のC3、C4及びC5の13C値は、非アジド化グルコノ-1,5-ラクトンとより一層優れて一致していた。このデータは、6-アジド-6-デオキシ-グルコノ-1,5-ラクトンに関する強い証拠を提供する。
【0328】
それに対してC2、C3、C4シグナルは、非アジドグルコノ-1,5-ラクトンと比較して、C6位におけるアジドの導入によって相対的に影響を受けず(Bierenstiehl 2004)、1H及び13C NMRスペクトルの両方において、C5についてはわずかなシフトが観察され、C6シグナルについては主要なシフトが観察され、これはC6置換に関して予測した通りであり得る。
【0329】
興味深いことに、いくつかのわずかな2D NMRシグナルが観察され、これは、非アジド化グルコノ-1,4-ラクトン(Bierenstiel 2004)と比較して、純理論的な6-アジド-6-デオキシ-グルコノ-1,4-ラクトンとの優れた適合をもたらした。特に、C2、C3、及びC4は一致させることができたが、1,4-ラクトンのC5又はC6に関する明白なシグナルは観察できなかったことから、推測される1,4-ラクトンにおいて、アジ化はそのシフトにも影響を及ぼすことが示唆される。この観察は、合成後に少量の6-アジド-6-デオキシ-グルコノ-1,4-ラクトンが存在し得ること、又は溶液中の実験の時間スケールで、1,5-ラクトンが部分的に1,4-ラクトンに異性化し得ることを示唆する。
【0330】
この特定のバッチの6-アジド-6-デオキシ-グルコノ-1,5-ラクトンの純度は、積分によって約88%純粋と推測された(DMSO-d6)。
【0331】
開示された化合物の構造が現在解明されたため、同じ溶媒中のアジドグルコースの臭素酸化生成物との比較(Chaveriat 2006)、加えて、非アジドグルコノ-1,4-ラクトンの文献の1Hスペクトルとの比較(Walaszek及びHorton 1982)をより可能にするために、同じ材料の2D 1H-13C HSQC NMR分析をMeOD-d4中で実行した。
【0332】
起こり得るラクトン異性化作用を低減するために、もう一度、スペクトル獲得の直前に溶液試料を調製した。試料を、約1.3~1.6mg/mLの濃度でMeOH-d4中に溶解させた。MeOH-d4スペクトルを25℃(制御された)で得た。2D実験の場合、溶液中で起こり得る異性化作用を回避するために捕捉時間を意図的に短く維持し、そのまま優勢な炭素シグナルを記録した(C2~C6、図7)。他の別個の1D 13C NMR実験の場合、捕捉時間を延長してC1を記録した。
【0333】
溶液中の6-アジド-6-デオキシ-グルコノ-1,5-ラクトン:
MeOD (C2-C5): 1H NMR (800 MHz, MeOD): δ 4.22 (1H, m、H5として割り当てられた); 4.02 (1H, d, J=8.4、H2として割り当てられた); 3.72 (1H, m、6Haとして割り当てられた); 3.62 (1H, m, 6Hbとして割り当てられた); 3.71 (1H, m、H4として割り当てられた); 3.70 (1H, m、H3として割り当てられた)。13C NMR (MeOD): δ 79.5 (C5として割り当てられた), 73.8 (C4として割り当てられた), 71.5 (C2として割り当てられた), 68.4 (C3として割り当てられた), 51.1 (C6として割り当てられた)。MeOH-d4中の1H NMRピーク4.8及び3.3は、OH及びCHD2からの残留したHである。
【0334】
13C NMR (MeOD, full 1D): δ 173.0 (C1として割り当てられた), 80.8 (C5として割り当てられた), 75.2 (C4として割り当てられた), 73.1 (C2として割り当てられた), 69.9 (C3として割り当てられた), 52.6 (C6として割り当てられた)。
【0335】
Chaveriat 2006では2D NMRデータがないために、割り当てられた1Hを比較することは不可能であるが、慎重なランク付けされた数の比較は、それでもなお実行可能である。6-アジド-6-デオキシ-グルコノ-1,5-ラクトンの2D NMR実験からの1Hシグナルの、Chaveriatの1D 1Hシグナルとの詳細な比較から、スペクトル間の差が解明された。特に、本明細書で開示された化合物の最も小さい化学1Hシフト値が、Chaveriatによって報告された最も小さい化学シフト値より大きいことが観察された(3.62対2.97ppm)。この発明における化合物で得られた2番目に低い化学シフトは、Chaveriatの2番目に低いものより大きかった(3.70ppm対3.15ppm)。
【0336】
注目すべきことに、DMSO-d6中のグルコノ-1,5-ラクトンのNMRスペクトルは、同じ溶媒中で、異なる実験室及び機器間で高度に再現可能であった(13C、1H及びJカップリングに関して、Bierenstiel 2004及びWalaszek1982を参照)。しかしながら、プロトンNMRは、MeOH-d4中で、本発明の化合物及びChaveriatの化合物で再現可能ではなかった。
【0337】
ここでもChaveriat 2006では2D NMRデータがないために、割り当てられた13Cシフトを比較することは不可能であるが、多少の割り当て及び比較はそれでもなお実行可能である。特に、C1及びC6値は、明確に割り当てられることができる。C1カルボニルシフトは、完全な1D 13Cスペクトルと比較したところ、互いに極めて良好に一致する。2D NMRスペクトルに関する13C C6値は2.3ppmであり、完全な1D 13C C6シグナルは、ChaveriatのC6シグナルと比較して0.85ppm低い。完全な、及び13C 2D NMRの両方の4つの残存する13Cシグナルは、明確に一致させることができなかった。
【0338】
結論として、本明細書で開示された化合物の1H及び13C NMRスペクトルのChaveriatのスペクトルとの比較は、同一な化合物が水性臭素及びShvo酸化方法により得られたという明らかな証拠を提供しない。
【0339】
ここで化合物を更に特徴付け、追加のグルコノ-1,5-ラクトンスペクトルとの追加の比較を可能にするために、本明細書で開示された化合物を、1D 1H-、1D 13C-、2D 1H-13C HSQC、加えて2D 1H-13C ヘテロ核多量子コヒーレンス(HMQC)NMRによって、D2O中でも分析した。
【0340】
D2Oにおいて、1D プロトン及び1D J変調13Cデータは、4つのメチン、1つのメチレン及び1つのカルボニル基と一致する分子における6つの別個のプロトン環境及び6つの別個の炭素環境を示した。2D 1H-13C HSQCデータのスーパーインポーズ(ヘテロ核単一量子相関)は、短い範囲のカップリングを示し、観察された化学シフトと共に、主要なシグナルの6-アジド-6-デオキシ-グルコノ-1,5-ラクトンへのもう一度の割り当てを可能にした(図8)。
【0341】
これの別個のバッチの純度は、1D 1H NMRの積分によって≧95%と決定された。
【0342】
(実施例2)
6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトン(結晶形態)の合成
15mgの6-アジド-6-デオキシ-D-グルコースを、2mgのShvo触媒及び1mLのシクロヘキサノンと共にコニカルフラスコに入れた。窒素ガスを15分泡立たせることによって反応混合物を脱気し、次いできつく密封した。脱気した反応混合物を、絶えず45℃で撹拌しながら4時間維持した。淡黄色から暗いオレンジ色への色の変化を観察した。
【0343】
反応混合物を20,000gで15分回転させ、底部に小さいサイズの暗褐色の沈殿を観察した。上清を新しいチューブに移し、3.5体積のヘキサンを上清の体積に添加した。接触及び混合したとき、白っぽい沈殿を即座に観察した。室温で15分沈殿を行った後、反応混合物を20,000gで5分回転させ、目の詰まった白色のペレットをマイクロ遠心管の底部に観察した。上清を捨て、湿潤したペレットを、ボルテックスで混合することによって5:1の酢酸エチル/アセトンの混合物に再懸濁した。微量の残存する固体(赤茶色がかった色)を20,000gで20分回転させることによって沈殿させた。上清を新しいチューブに移し、2回目に20,000gで20分回転させた。上清である無色の液体をもう一度新しい受け取りチューブに移し、層流ケミカルフード内で、マイクロ遠心管中で、大気圧及び22℃でそのまま蒸発させた。結晶性材料が得られ、1D 1H NMRデータ分析(D2O)によって6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンであることが示された。
【0344】
(実施例3)
4-アジド-4-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンの合成
Shvo触媒をシクロヘキサノンに溶解させ、ボルテックスで穏やかに1分混合し、Shvo触媒を室温で10分溶解したままにし、再びボルテックスで1分混合し、次いで溶液に溶解しなかった全てのShvo触媒を、マイクロ遠心分離機中で、20.000gで3分の遠心分離によってペレット化することによって、1mg/mLのShvo触媒溶液を調製した。上清を慎重に吸引し、以下の実験に使用した。
【0345】
25mgの4-アジド-4-デオキシ-D-グルコース(C6H11N3O5、CAS74593-35-4)を、PTFEで内張りされた蓋を有するオーブン乾燥した培養ガラスチューブ(体積約10mL)に金属へらを使用して移した。反応バイアルに、およそ1.5mLの約1mg/mLのShvo触媒溶液を添加し、反応物にN2を散布して、酸素を除去した。最初は糖が溶液に溶解しなかったが、ガラスチューブの蓋を閉め、間欠的にボルテックス混合して45℃で約1時間インキュベートした後、全ての微粒子が溶液に溶解した。混合物を45℃で一晩(合計16時間)インキュベートした。
【0346】
次の日、加熱ブロックから反応物を回収した後、4-アジド-4-デオキシ-グルコース反応は、黄色がかったオレンジ色を示したが、それに対して溶液中にShvo触媒を含有するが糖を含有しない対照反応は、暗い赤茶色を示した。4-アジド-グルコースバイアル中に目に見える残留物/沈殿は観察されなかった。
【0347】
糖を含有する反応物を1.5mLの標準的なマイクロ遠心管に移し、20000gで、室温で10分回転させて、全ての不溶性材料をペレット化した。
【0348】
透明な上清を、4つの1.5mLのマイクロ遠心分離機にわたりそれぞれおよそ330μLで分割し、各アリコートの上部に3.5体積のヘキサンを添加したところ、最初に白色の沈殿の発生が起こった。混合物を20秒ボルテックスで混合し、室温で10~15分静置し、続いて20000gで、室温で遠心分離した。これにより、チューブの底部にペレット化したシロップのような橙褐色の油状物/シロップ状物を得た。
【0349】
上清を8mL培養ガラスチューブに移し、追加の0.6体積のヘキサンを添加し、中身を倒置によって混合した。混合物を3000gで20分回転させ、上清を除去し、培養チューブの壁に透明なシロップのような材料を観察した。この材料を1mLのアセトンで洗い落とし、穏やかなN2ガス流を標準圧力で用いて蒸発させて、透明な無色のシロップ状物を得た。
【0350】
影響を受けやすいN末端タンパク質のアシル化試験によれば、MALDI-TOF MSによって1,5-ラクトンが添加されたときに理論上の質量の増加を示したことから、このシロップ状物は、4-アジド-4-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンであることが示された。出発材料の糖だけを用いたmock反応は、いかなる質量シフトも生じなかった(表1を参照)。
【0351】
【表1】
【0352】
(実施例4)
3-アジド-3-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンの合成
3-アジド-3-デオキシ-1,2:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-a-D-グルコフラノース(CAS13964-23-3、カタログ番号MA06630、Carbosynth社、UK)を、酸性加水分解によって脱保護した。100mgの材料を、70%アセトニトリル、20%H2O及び10%トリフルオロ酢酸(trifluoracetic acid)(v/v)中に溶解させた。混合物を数時間にわたり60℃に加熱して、3-アジド-3-デオキシ-D-グルコースをシロップ状物として得た。TLC分析によって、一部の少量の残存する出発材料、及び部分的にのみ切断された物質を観察した。これは反応にとって問題とは考えられなかったが、3-アジド-3-デオキシ-D-グルコースのより純粋な調製物を同様に使用してもよい。
【0353】
混合物を-80℃で凍結し、低い真空で一晩凍結乾燥した。翌朝、シロップのような材料を観察した。混合物をもう一度、前の通りに、ただし酸を添加せずに少量のアセトニトリル及び水に溶解させ、凍結し、もう一度凍結乾燥して、全ての残存する微量のトリフルオロ酢酸を除去した。シロップのような材料をもう一度得た。25mgのこの材料を、PTFEで内張りされた蓋を有するオーブン乾燥した培養ガラスチューブ(体積約10mL)にガラスパスツールピペットを使用して移した。
【0354】
Shvo触媒をマイクロ遠心管中でシクロヘキサノンに溶解させ、ボルテックスで穏やかに1分混合し、Shvo触媒を室温で10分溶解したままにし、再びボルテックスで1分混合し、次いで溶液に溶解しなかった全てのShvo触媒を、マイクロ遠心分離機中で、20.000gで3分の遠心分離によってペレット化することによって、1mg/mLのShvo触媒溶液を調製した。上清を慎重に吸引し、アジド-糖を含有する培養ガラスチューブに移した。反応バイアルに、およそ1.5mLの約1mg/mLのShvo触媒溶液を添加し、反応物にN2を散布して、酸素を除去した。混合物を45℃で一晩(合計16時間)インキュベートした。
【0355】
次の日、加熱ブロックから反応物を回収した後、3-アジド-3-デオキシ-グルコース反応は、黄色がかったオレンジ色を示したが、それに対して溶液中にShvo触媒を含有するが糖を含有しない対照反応は、暗い赤褐色を示した。3-アジド-3-デオキシ-グルコースバイアル中に目に見える残留物/沈殿は観察されなかった。
【0356】
反応物を1.5mLの標準的なマイクロ遠心管に移し、20000gで、室温で10分回転させて、全ての不溶性材料をペレット化した。
【0357】
透明な上清を、4つの1.5mLのマイクロ遠心分離機にわたりそれぞれおよそ330μLで分割し、各アリコートの上部に3.5体積のヘキサンを添加したところ、最初に白色の沈殿の発生が起こった。混合物をボルテックスで20~30秒混合し、室温で10~15分静置し、続いて20000gで、室温で遠心分離した。これにより、チューブの底部にペレット化したシロップのような橙褐色の油状物/シロップ状物を得た。上清を6~8mLの培養ガラスチューブに移し、追加の0.6体積のヘキサンを添加し、中身を倒置によって混合した。混合物を3000gで20分回転させ、上清を除去し、培養チューブの壁に透明なシロップのような材料を観察した。この材料を1mLのアセトンで洗い落とし、穏やかなN2ガス流を標準圧力で用いて蒸発させて、透明な無色のシロップ状物を得た。
【0358】
最初に得られたシロップのような油状物と2番目に得られたガラス壁の残留物の両方は、実施例3の場合と同様に影響を受けやすいN末端タンパク質のアシル化試験によって、3-アジド-3-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンを含有することを示した。試験は、MALDI-TOF MSによって、1,5-ラクトンが添加されたときに理論上の質量の増加(203.5)を示した。
【0359】
(実施例5)
6-アジド-6-デオキシ-D-グルコース(6-AGDL)でのタンパク質のアシル化
タンパク質のアシル化
6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノラクトンでタンパク質を修飾する実行可能性を試験するために、20μMのGSS-H6-AffiEGFRを、0.5MのHEPES緩衝液中で100mMの6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノラクトンと室温で1時間反応させた。
【0360】
MALDI-TOF MS
20μMのGSS-H6-AffiEGFRを、pH7.5の0.5MのHEPES緩衝液(NaOH)(総体積50μL)中で、100mMの6-AGDLと室温で反応させた。1時間後、4μLの濃縮酢酸を添加し、10μlの反応混合物のアリコートを脱塩し、0.1%TFAを使用するMALDI分析のために調製し、最終的に10μLの70%ACN/0.1%TFA C18 ZipTip方法に溶出させた。0.5μLの溶出液を、4-クロロ-α-シアノケイ皮酸(ClCCA、CAS69727-07-7)マトリックス[90%アセトニトリル(ACN)、0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸(TFA)中の4mg/mL]と1:1で混合し、リニアーポジティブモードのMALDI-TOF MSでの検出の前にMALDIスチール標的上にスポットした。アシル化の程度を、宿主発現細胞内でアセチル化されなかった化学種ごとに計算した。
【0361】
MALDI TOF-TOF MS/MS
MALDI-TOF MS/MS研究を、2kVの衝突エネルギーでの衝突ガスとしてアルゴンを使用して実行した。
【0362】
LC-MS QTOF
20μMのGSS-H6-AffiEGFRを、100mMの6-AGDLと、0.5MのHEPES(NaOH)、pH7.5の存在下で、室温で反応させた(総反応体積102.5μL)。1時間後、反応物を3μLの濃縮酢酸と混合した。TFA処理した反応混合物の10μLのアリコートを、0.1%(v/v)TFAで繰り返し洗浄し、続いて10μLの70%(v/v)ACN、0.1%(v/v)TFAで溶出させることによって、C18 ZipTip上で脱塩した。次いで8μLの溶離剤を、16μLの最終体積になるまで0.1%TFA(v/v)で希釈した。10μLのこの混合物を、C18逆相CSHカラム(1.0×50mm)(Waters)におけるXevo G2 QTOF MS(Waters)に接続されたAcquity UPLC(Waters)でUHPLC-MSに供した。以下の溶媒系を0.35mL/分の流速で使用した:溶媒A、0.1%(v/v)ギ酸を含有する水;溶媒B、0.1%(v/v)ギ酸を含有するアセトニトリル。40分の期間にわたり0から100%の溶媒Bの直線勾配を使用してカラムを溶出させた。デコンボリューションされたMSデータから、反応に参加できるアシル化及び非アシル化タンパク質の両方の全てのIC値の合計で割ったアシル化タンパク質のICピーク値の比率として、アシル化の程度を推測した。
【0363】
結果
無傷なアシル化及び非アシル化タンパク質は、C18逆相カラムでのLC-MSによるクロマトグラフィーによって区別できなかった。ピーク領域の積分により複数の電荷を有する化学種を示す実験スペクトルが得られ、これは、手作業でデコンボリューションしたところ、理論上のインタクトな質量付加物と優れた一致を示した質量値を呈した。m14429(理論上のm14429)における非アシル化種からm14633値(理論上のm14632)におけるモノアシル化種へのシフトによって示された通り、ほぼ完全なモノ官能化を観察した(図1)。m14836(理論上のm14835)におけるピークの小さいが検出可能な外観によって示された通り、二重にアシル化された生成物を観察した(図1)。
【0364】
総GSS-H6-AffiEGFRタンパク質の約20%パーセントを占めるm14472における反応しない化学種(図1)を観察した。このピークは、対応するトリプシンのペプチドの質量分析のシーケンシングによって、発現宿主由来のN末端モノアセチル化種(理論上のm14471)に対応することが確認された。結果として、この化学種のブロックしたN末端により、6-AGDLとの反応はほとんど起こらなかった。
【0365】
MALDI-TOF MSスペクトルにおいて、m/z14506(z+1)、7242(z+2)、及び4824(z+3)を示す多価状態でのインタクトなGSS-H6-AffiEGFRを観察した。二重に電荷を有する化学種が最も豊富な化学種であった。6-AGDLと反応させた後、非アシル化タンパク質に関するほとんど全てのイオン電流(m/z7242、z+2)が消失し、m/z7345(z+2)における新しいピークがスペクトルにおいて観察された。2つのピーク間の質量差は206uであり、これは、6-AGDLでのアシル化に関して理論上予測される+203の付加と優れた一致を示した。わずかな偏差は、照合されたm/z範囲における、リニアーモードでのMALDI-TOF MSの限界に起因する可能性がある。更に、m/z7445における小さいピークが観察されており、これはおそらく、二重にアシル化されたタンパク質種に対応する。m/z7264の化学種における残存するピークは、N末端アセチル化バリアントを表し、したがってこれは6-AGDLアシル化の影響を受けていなかった。
【0366】
QTOF MS及びMALDI-TOF MS実験の両方のアシル化の程度を、自由に反応する化学種の総イオン電流(TIC)比率から計算した。
【0367】
トリプシン消化の質量分析によるオフサイトアシル化の配置及び程度を試験したところ、オフサイトアシル化はpHに応じて起こることが見出された。オフサイトアシル化は、pHを5.5に低くすると減少したが、N末端特異的なアシル化はそれより低いpHでも減少した(約25%)。pH7.3~7.5では、87%のN末端特異的なアシル化及び約0.8%のオフサイトアシル化が観察された。pH8.2で類似のN末端選択的なアシル化が観察されたが、オフサイトアシル化は約2.5%に増加した。
【0368】
(実施例6)
クリックケミストリーを介した6-AGDL:基質上へのクリックケミストリー試薬のコンジュゲーション
6-AGDLアシル化GSS-H6-AffiEGFRの調製
5.18mgの6-AGDLを70.8μLのH2Oに溶解させることによって、新しい6-AGDLの360mMストックを調製した。GSS-H6-AffiEGFRを、20μMで、0.5MのHEPES(NaOH)、pH7.5の存在下で、100mMの6-AGDLと室温(約22℃)で1時間反応させた。反応を、酢酸を0.8Mの最終濃度まで添加することによって止めた。酸性化の後、反応物を10kDaのMWCO再生セルローススピンフィルターデバイス(アミコン)に移し、次いで9倍過量の0.25MのHEPES(NaOH)pH7.5で5回洗浄し、全ての残存する遊離の6-AGDLを除去した。
【0369】
6-AGDL:GSS-H6-AffiEGFRへのBCNコンジュゲーション
3mgのN-[(1R,8S,9s)-ビシクロ[6.1.0]ノナ-4-イン-9-イルメチルオキシカルボニル]-1,8-ジアミノ-3,6-ジオキサオクタン(BCN-アミン)(Sigma、現在はMerck KGaA社、カタログ番号745073、CAS番号1263166-93-3)を、0.5mLのH2O中に溶解させ、結果として約4.6mM(約1.5mg/mL)の飽和ストック溶液を得た。
【0370】
進行させる前に全ての反応要素を室温で平衡化させて、6-AGDLアシル化GSS-H6-AffiEGFRを、20μMで、0.25MのHEPES(NaOH)、pH7.5の存在下で、2倍モル過量の(40μM)のBCNと室温(22℃)で反応させた(総反応体積50μL)。3時間後、10kDaのMWCO再生セルローススピンフィルターデバイスbを使用して、9倍過量の100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)で5回洗浄して、残存する遊離の6-AGDL及び他の緩衝化成分を除去した。C18 ZipTipを使用して、10μLの70%(v/v)ACN、0.1%(v/v)TFA中で溶出させることにより、10μLのアリコートを脱塩した。溶出液をClCCAマトリックス混合物と1:1で混合し、MALDI-TOF MSにおけるリニアーポジティブモードでの検出の前にMALDIスチール標的上にスポットした。(z+2)におけるコンジュゲートした、及びコンジュゲートしていない(m2/z)化学種の両方のTIC値の合計で割ったコンジュゲートした(m1/z)化学種のピークTIC間の比率を計算することによって、コンジュゲーションの程度を推測した。
[(TIC(m1/z))/(TIC(m1/z)+TIC(m2/z))]×100%。
【0371】
結果
6-AGDLアシル化GSS-H6-AffiEGFRを前の通りに生産し、天然条件下での回転濾過を介して過量の6-AGDLを除去した。m/z7206(z+2)(理論上のm/z7216、天然)及びm/z7309(理論上のm/z7317、+6-AGDL)のTICに基づいて、6-AGDLでのアシル化に関してほぼ完全な(約99%)変換を観察した(図2)。BCN-アミンでのモノ官能化された、緩衝液交換した6-AGDL:GSS-H6-AffiEGFRの後続のクリックケミストリー媒介コンジュゲーションもまた、m/z7309(z+2)(理論上のm/z7317、天然+6-AGDL)及びm/z7471(理論上のm/z7479、+6-AGDL+BCN-アミン)のTICに基づいてほぼ完全な変換(約97%)がもたらされた。
【0372】
(実施例7)
Hisタグを含まないペプチドのアシル化
方法
100μMのペプチド[GGKWSKR-Beltide1(PP7)、GASGSKG-Beltide-1(PP8)、GG-Beltide-1(PP9)又はGGTYSDH-Beltide1(PP10)を、氷上で、25μLの反応体積で、1MのHEPES(NaOH)、pH7.5中の200mMの6-AGDLでアシル化した(単一の4mg含有6-AGDLバイアルに、予め冷却した95μLの1MのHEPES緩衝液を添加し、数秒以内に溶解させ、それぞれ1.25μLの2mMのPP7、PP8、PP9又はPP10溶液を含有する4つのバイアルに23.75μLを迅速に移す)。3時間後、各バイアルからの5μLの反応混合物を分析のために採り、残存する体積には追加の200mMの6-AGDLを添加した(各反応混合物を乾燥した0.8mgの6-AGDLと共に新しいエッペンドルフチューブに移した)。反応混合物を更に3時間、その後一晩同じ温度で維持した。各タイムポイントで、分析のために各反応混合物から5μLを採る。
【0373】
結果
驚くべきことに、オリゴHis残基を有さないGlyで終結したペプチドが、50mMのラクトンでの顕著なアシル化を示した。例えば、GGKWSKR-Beltide-1では約53%アシル化、GASGSKG-Beltide-1では約46%、GGTYSCH-Beltide-1及びその誘導体GGTYSDH-Beltide-1では約34~36%のアシル化であった。より影響を受けやすいペプチドは全て、N末端Glyとそれに続いてGly又はAlaのような小さい残基を有していた。比較して、単一のGly残基とそれに続くArgは、約14%のみのアシル化を示した(GRGDSPC)。驚くべきことに、Beltide-1単独のN末端にジGlyモチーフを導入することによって、Beltide-1の約15%からGG-Beltide-1の約40%に変換が押し上げられた。
【0374】
以前の報告に反して、実質的な(≧40%の)N末端グルコノイル化、本発明によれば、より具体的にはアジドグルコノイル化は、2番目のN末端のGly残基を導入し(NH2-Gly-Gly)、より低温でアシル化反応を実行し、アシル化試薬濃度を増加させることによって、His残基の存在がなくても達成することができる。
【0375】
同様に、GASGSKG-Beltide-1では46%のアシル化が観察された。したがって、N末端のグリシンとそれに続くグリシン、セリン又はアラニンのような小さいアミノ酸残基が、グルコノイル化を受けやすい可能性があると考えられる。
【0376】
これはまた6-AGDLを使用しても確認された。200mMの6-AGDLでのGGKWSKR-Beltide-1ペプチドの単一アシル化は、約83%のアシル化をもたらした。ペプチドをもう一度アシル化した後、約94%の単独アシル化生成物を得た。反応混合物を一晩そのままにしたところ、MALDI-TOF MSデータのイオン数(IC)の比率に基づいて、約95%の単独アシル化生成物、及び約2%の二重アシル化生成物を得ることができた。
【0377】
200mMの6-AGDLでのGASGSKG-Beltide-1の単独アシル化は、約72%の単独アシル化生成物をもたらした。第2のアシル化の後、約88%の単独アシル化生成物を得た。一晩そのままにしたところ、約90%の単独アシル化生成物及び約1%の二重アシル化生成物を観察した。
【0378】
GG-Beltide-1は、それぞれ200mMの6-AGDLでの第1及び第2のアセチル化の後、約72%及び約84%の単独アセチル化生成物をもたらした。反応混合物の一晩のインキュベーションにより、約90%の単独アセチル化生成物及び約0.5%の二重アセチル化生成物が得られた。
【0379】
200mMの6-AGDLでのGGTYSDH-Beltide1の単独アシル化は、約85%の単独アシル化をもたらした。単独で処理したペプチドを、もう一度200mMの6-AGDLで3時間反応させることにより、約92%の単独アシル化生成物が得られた。反応混合物を一晩そのままにしたところ、約96%の単独アセチル化生成物及び約0.5%の二重アセチル化生成物が得られた。
【0380】
(実施例8)
グルコノイル化されたHisタグを有するタンパク質の文献の総論
文献の総論は、以下のタグ:H6、A-H6、G-H10、RGS-H6、G-H6、G-H8、SYY-H6、及びGGS-H6がグルコノイル化を受けやすい可能性があることを明らかにした。したがって、これらのタグも6-AGDLでのアシル化に好適であり得る。
【0381】
(実施例9)
pHに応じた6-AGDL:GSS-H6-AffiEGFRの可逆性
方法
75μMのGSS-H6-AffiEGFRを、500mMのHEPES(NaOH)、pH7.5(NaOH)中で、緩衝化タンパク質溶液(72μL)を乾燥6-AGDL粉末(1.57mg)に添加することによって、100mMの6-AGDLと、室温(23.8℃)で1時間反応させた。反応を、酢酸を0.8Mまで添加することによって止めた。反応物を3つの3kDaのMWCOスピンフィルターデバイスに分け、これを9倍過量のそれぞれの貯蔵緩衝液で5回洗浄し、全ての残存する遊離の6-AGDL及び他の緩衝化成分を除去した。各保持液の最終体積を約90μLに調整して、異なるpH値を有する約20μMの溶液を得た。採用された緩衝溶液は、pH4.5[100mMの酢酸(NH3)]、pH7.5[50mMのHEPES(NaOH)]、及びpH8.8[100mMのNH3(酢酸)]であった。反応物を室温で貯蔵し、10μLのアリコートを各時点で採り、10μLの70%(v/v)ACN、0.1%(v/v)TFAでの溶出を用いて、ZipTip C18樹脂を使用して脱塩した。溶出液をClCCAマトリックス混合物と1:1で混合し、リニアーポジティブモードでのMALDI-TOF MSでの検出の前にMALDIスチール標的上にスポットし、アシル化程度を、以下の式を用いて、二次電荷状態でのアシル化(m1/z)及びアシル化されていない(m2/z)タンパク質の比率を計算することによって決定した。
([m1/z/(m1/z+m2/z)]×100%、z+2)。
【0382】
結果
アシル化の程度は、試験した全ての条件で経時的に逆転した。より塩基性の溶液が、より速い速度の加水分解を呈した。約1週間の貯蔵後、およそ30%のアシル化がpH8.8でそのままであり、それに対してpH7.5及びpH4.5でアシル化の程度はそれよりわずかに高いままであり、それぞれ約60%及び約70%であった。
【0383】
(実施例10)
G-H6及びHisタグを有さないペプチドの可逆性
方法
3時間の間隔で100mMの6-AGDLを2回逐次的に添加することによって、100μMのG-H6-Beltide-1、GGKWSKR-Beltide-1及びGGTYSDH-Beltide-1ペプチドを、4℃で、1MのHEPES、pH7.5中の6-AGDLと反応させた。余分な6-AGDLを除去せず、実験中、試料を室温で貯蔵した。
【0384】
14日目を除き各タイムポイントで各試料から2μLを採った。各タイムポイントの試料に10μLの2%酢酸を添加し、混合物をC18 ZipTipクロマトグラフィーによって脱塩した。溶出液を前の通りにMALDI-TOF MSによって分析した。
【0385】
14日目に、残存する試料を回収手順に供し、そこで20%の反応体積の50%(v/v)酢酸[最終濃度7.57%(v/v)の酢酸]を添加すること、次いで10%の反応体積の100%アセトニトリル[最終濃度16.6%(v/v)のACN]を添加することによって、反応混合物の全てを酸性化した。この混合物から、15μLのアリコートを採り、ZipTip C18クロマトグラフィーによってクリーニングし、MALDI-TOF-MS装置によって分析した。
【0386】
結果
6-AGDLアシル化G-H6-Beltide-1ペプチドは、室温で14日間の貯蔵後に残存するアシル化が(94%から開始して)約27%に至るほどの可逆性を示した。対照的に、ペプチドGGKWSKR及びGGTYSDHを含有するHisタグを有さないBeltide-1は、それぞれ約64%及び約75%の残存するアシル化を示した。GGKWSKR-Beltide-1は、0日目に85%アシル化され、GGTYSDH-Beltide-1は、0日目に96%アシル化された。
【0387】
(実施例11)
反応の可逆性への金属イオンの作用
ニッケル
GSS-H6-Beltide-1ペプチドをGDL-アシル化し、余分なGDLを、C18 SepPackクロマトグラフィーを介して除去した。GDLアシル化ペプチドを、100mMのHEPES(NaOH)、pH7.5、10%(v/v)ACN中に約100μMの最終濃度に溶解させ、0.5mLのLoBind(エッペンドルフ)マイクロ遠心管にアリコートにした。H2O中の100mMのNiSO4ストックから、NiSO4を0、0.01、0.1、及び1mMの最終濃度に補充した。対照試料にNiSO4及びEDTAの予備混合された溶液を補充して、最終濃度1mMのNiSO4及び5mMのEDTA[10mMのNiSO4及び50mMのEDTAのストック溶液(NaOHで中和した)]を得た。試料(それぞれ50μL体積)を水浴中で37℃に維持した。1、3、5、及び7日目に2μLのアリコートを採り、10μLの5%酢酸と混合し、C18 ZipTipクロマトグラフィーによって精製し、MALDI-TOF-MS装置によって分析した。
【0388】
低濃度のNiSO4での補充は、外見上、試験された期間にわたりまとめて可逆性を壊滅した。
【0389】
亜鉛
GSS-H6-Beltide-1ペプチドをGDL-アシル化し、C18 SepPackクロマトグラフィーを介して余分なGDLを除去した。GDL:ペプチドを、ZnSO4(0.2mM及び2mM)を含む、又は含まない100mMのHEPES(NaOH)、pH7.5に、約100μMの最終濃度まで溶解させた。ACNを10%v/vまで添加して、生じ得るナノディスクの形成及びプラスチックマイクロ遠心分離機の壁へのペプチドの沈殿を低減した。反応混合物(それぞれ100μL体積)を水浴中で37℃に維持した。3日目に2μLのアリコートを採り、10μLの5%酢酸と混合し、C18 ZipTipクロマトグラフィーによって精製し、MALDI-TOF-MS装置によって分析した。溶液中にわずかなペプチドしか観察されなくなった場合、7日目に試料を「ペプチド回収」手順に供した。残存する反応混合物(80μL)を、50%(v/v)酢酸を添加することによって酸性化した。添加される酢酸の量を、残存する反応体積の20%として計算した[最終濃度7.57%v/vの酢酸]。同様に、10%の反応体積の100%アセトニトリルを添加し(最終濃度約16.6%v/vのアセトニトリル)、反応物を迅速なボルテックス混合によって混合した。この混合物から、15μLのアリコートをC18 ZipTipクロマトグラフィーを介して処理し、MALDI-TOF-MS装置によって分析した。本発明者等は、ペプチドがマイクロ遠心分離機の壁に結合したとの仮説を立て、沈殿がアシル化及び非アシル化種の両方に等しく影響を与えたと仮定した。
【0390】
実験の開始時に、ほぼ定量可能な量のアシル化が観察された。ZnSO4を含有する緩衝液中に貯蔵された試料ごとのアシル化の程度における著しい差は、対照と比較して、すでに3日後に見極めることができた。インキュベーションの7日目に、ZnSO4を含まない対照試料は、大規模な可逆性を示し、わずか約7%のアシル化ペプチドしか残存しなかった。対照的に、同一な条件下で、ただし0.2mM又は2mMのZnSO4の存在下で貯蔵された試料は、約80%及び約75%の残存するグルコノイル化を示した。
【0391】

1mMのG-H6-Beltide-1(約1mgのペプチド)を、約300μLの総体積で、200mMのHEPES(NaOH)pH7.5中の100mMのGDLで室温で1時間アシル化した。ペプチドに緩衝液を添加すると、ただしGDLの添加前に、沈殿が明らかに観察された。この沈殿は、G-H6-Beltide-1の理論上のpIがpH7.5に近いことによる可能性があり、又はG-H6-Beltide-1がBeltide-1バリアントであるためである。Beltide-1は、膜タンパク質又は脂質成分と接触すると溶液中でナノディスクを形成することが公知である(Midtgaard等、2014;Martos-Maldonado等、2018)。新たに調製された1Mのストック溶液からGDLを100mMまで添加した。溶液は曇ったままであった。ACNを10%v/vまで添加すると溶液は即座に透明なり、これは、全ての沈殿又は生じ得るナノディスクの分散を示す。GDLの添加の1時間後、反応物を100μLの50%酢酸(約8.7M)で酸性化して、最終濃度>2Mの酢酸溶液を得て、HEPES緩衝液、グルコン酸又は残存するGDLによって生じた全ての緩衝能力が帳消しになった。未反応の、及び加水分解されたGDLを、酸性化したペプチドを平衡化したSep-Pak C18カートリッジに結合させ、6mLの0.1%(v/v)TFA水溶液で洗浄することによって除去した。ペプチドを0.1TFA(v/v)で酸性化した5mLの70%(v/v)ACNで溶出させ、14個の1.5mLのLoBindエッペンドルフチューブにアリコートにし、続いてフリーズドライした。350μLで復元すると、各バイアルは、約100μMの濃度の溶液を含有すると仮定された。アシル化ペプチドをMALDI-MSによって分析したところ、最初のアシル化の程度は約96%と推測され、さらなる使用まで-20℃で貯蔵した。
【0392】
ペプチドを復元するために、20%(v/v)ACN水溶液を2×緩衝液濃度(100mM)で添加して、ペプチド反応マスターストックを2×濃度(40μMのペプチド)で得た。再懸濁液を力強いボルテックス混合によって混合し、事前に準備した緩衝液条件を含有する標準的な0.5mLの反応バイアル(CuSO4試験を、Heathrow Scientific HD4422マイクロ遠心管中で実行した)にアリコートにした。典型的な反応セットアップの場合、最終濃度約10%(v/v)のACN、50mMの緩衝液、様々な濃度の添加剤及び20μMのペプチドを含む1×を得るために、添加の順番は、水、添加剤、例えばCuSO4及び最終的に2×濃度での2×ペプチド反応マスターストックの添加であった。穏やかに叩くことによって(2~3回)試料を混合し、手動で振り落とした。試料を、水浴中で、37℃でインキュベートした。各タイムポイントで10μL試料を引き出し、5μLの20%酢酸で酸性化し、続いてZip Tipできれいにし、MADLI-TOF MSスチール標的上のCl-CCAマトリックスにスポットした。
【0393】
図3に結果を示す。CuSO4と混合された試料は、CuSO4濃度の増加に応じて可逆性の速度を減少させることを示した。
【0394】
(実施例12)
6-AGDLアシル化GSS-H6-Beltide-1の可逆性へのホウ酸の作用
方法
945μLの酢酸(100%)を約10mLのH2Oと合わせること、続いて約900μLの4MのNaOHを使用してpH4.01に滴定することによってpH4緩衝液を調製した。次いで体積を15mLにして1Mのストック溶液を得た。
【0395】
クエン酸一水和物の1Mのストック溶液を調製することによって、及び1Mのクエン酸ナトリウム二水和物の溶液を作製することによってpH6緩衝液を作製した。2つの溶液を混合して、pH6の1Mのストック溶液を得た。
【0396】
リン酸二水素カリウムの1Mのストック溶液を二塩基性リン酸カリウムの1Mの溶液と混合して7.5のpHを得ることによってpH7.5緩衝液を作製した。
【0397】
アンモニウム溶液で1Mの酢酸溶液を滴定してpH8.8を得ることによってpH8.8緩衝液を調製した。
【0398】
20μMの6-AGDLで修飾されたペプチドを、示した通り200mMの緩衝液中で、100μLのアリコートで貯蔵した。バイアル(3連)を実験にわたり37℃の水浴中でインキュベートし、試料獲得のために、それらを水浴に戻す前に室温で<30分休ませた。
【0399】
10μLのpH4、6及び8.8の部分試料を、5μLの20%(v/v)酢酸で酸性化し、C18 ZipTip精製に供した。試料を、MALDI-TOF MSを用いてポジティブリフレクトロンモードで分析した。
【0400】
沈殿を中和させるために、10%(v/v)ACNの存在下でpH7.5の試料を貯蔵した。pH7.5の試料の場合、各タイムポイントで15μLのアリコートを採り、0.1%TFA~70%ACN/0.1%TFA C18 Zip-Tipの手順を使用して脱塩した。0.5μLの溶出液をClCCAマトリックス混合物と1:1で混合し、リフレクターポジティブモードのMALDI-TOF MSでの検出の前にMALDIスチール標的上にスポットした。
【0401】
結果
可逆性は、pH8.8で>50mMのホウ酸で、37℃で7日の期間にわたり効果的に阻害されたが、それに対してホウ酸で処理されていない試料はそのアシル化されていない状態に迅速に逆転した。ホウ酸での補充は、pH6で可逆性をモジュレートしたが、それに対して酸性条件(pH4)で作用は観察されなかった。中性からわずかに塩基性のpH(≧7.5)条件で類似の保護に到達するには、より高い酸性条件(pH6)と比較してより少ないホウ酸補充が必要であった。5mMのホウ酸補充で、アルカリ性条件(pH8.8)では最も少ないホウ酸補充が必要であり、pH6での100mMのホウ酸と比較してより優れた保護的作用が提供された。
【0402】
驚くべきことに、ここで試験した濃度(50mM)でのホウ酸の添加は、セリンプロテアーゼトリプシンを測定できるほど阻害しなかったことから、N末端ペプチドへのアシル化標識のマッピングが可能になった。試料中に例えばホウ酸を含まないと、アシル化の程度は過小に推測される可能性がある。これはなぜなら、トリプシン消化が、最も好ましくは、アルカリ性pH(約pH8.4)、上昇した温度(37℃)で、トリプシンが最大の活性を示すが、アシル化修飾も最も急速に逆転する条件で実行されるためである。したがって、ホウ酸は、アシル化修飾の逆転を保護し、標識化の真の程度の評価を可能にするが、それに対してホウ酸又は別の好適なジオールエステル形成剤を排除することは、酵素消化の時間経過にわたり修飾を逆転させると予想される。
【0403】
注目すべきことに、ホウ酸はまた内因的に誘導された非アジドグルコノイル修飾も保護し(大腸菌BL21発現から)、ホウ酸の添加を使用して、程度のより正確な定量化及びあらゆるインビボで誘導されたグルコノイル化の位置のマッピングを可能にする。インビボにおけるグルコノイル化及びホスホグルコノイル化の程度を特徴付けることは、治療的な組換えタンパク質のために実行される分析であることが多く、一部のケースにおいて、新規の薬物の用途及び/又はバイオシミラーの承認のためにFDAによって求められる。しかしながら、これまでのところ、これらの分析は修飾を保護するジオールエステル形成剤なしで実行されてきたことから、現在採用されるアッセイでは、修飾の程度は過小に推測される可能性がある。
【0404】
(実施例13)
4-メトキシフェニル2-アジドアセテートに対する6-AGDLに関するベンチマーキングの達成可能な程度のアシル化及び選択性
方法
ACNで淡黄色の油性物質(10.14mg)を49μLの最終体積に希釈して1Mのストック溶液を得ることによって、4-メトキシフェニル2-アジドアセテート(4MPAA)ストックを調製した。このストック溶液をACNで1:40に希釈し[5μLの1Mストック4MPAAに対して195μLのACN]、25mMの反応ストックを得て、これを使用して、反応物に4MPAAを供給した。
【0405】
16μLのH2Oに3.21mgの白色の粉末を溶解させて、1Mのストック6-AGDL溶液を得ることによって、6-AGDLを調製した。この溶液を使用して、反応物に供給した。
【0406】
ペプチドを、200mMのHEPES緩衝液中の25μLの体積で、1mMで、pH7.5、10%(v/v)ACN(最終濃度)、4℃又は22℃(RT)で、示された時間にわたり反応させた。ACNを、試薬のための溶媒として4MPAA試料に供給し、最終的な試料におけるACN濃度も10%(v/v)であった。2.5μLのACNを6-AGDL試料に供給して、目に見えて沈殿していたG-H6-Beltide-1の溶解を促進した[10%(v/v)のACN最終濃度]。
【0407】
1、18及び24時間後に5μLの反応混合物を引き出し、45μLのH2Oと混合して、100μMのペプチド溶液を得て、これを25μLの20%(v/v)酢酸[最終濃度約1.18Mの酢酸]で酸性化した。10μLのこの調製物を、標準的なC18 Zip Tip精製のための基質として使用した。
【0408】
結果
試験した全ての温度で、ベースのペプチドであるG-H6-Beltide-1(PP1)と、GSS-H6-Beltide-1(PP6)の両方が、4MPAA又は6-AGDLを使用して修飾された。
【0409】
100mMの6-AGDLで処理したペプチドPP1は、5.4℃と室温(23℃)の両方で、6-AGDLの添加から1時間以内に迅速にモノ官能化され(>98%)、オフサイトアシル化は極めてわずかであった(約0.3%)。対照的に、2.5mMの4MPAAでのアシル化は、約10%(5.4℃)又は約19%(室温)のモノ官能化ペプチドのみを示した(表2)。
【0410】
4℃での、24時間の期間にわたる2.5mMの4MPAAでの1mMのPP1(G-H6-Beltide-1)のアシル化に関してこれまでに報告されたのと同じ程度のアシル化[これまでに92%のモノ、8%の二官能化されたタンパク質が報告されている(Martos-Maldonado等、2018)]は観察されなかった。PP1を2.5mMの4MPAAと5.4℃で24時間反応させたところ、60%のモノ官能化と約5%の二重官能化が達成された。使用される4MPAAの調製物は、報告されたものほど純粋ではなかった可能性があるという仮説を立てた。4MPAAの濃度を4mMに増加させると、PP1の場合に約67%のモノ官能化したペプチドを得ることができるが、オフサイトの二重官能化を増加させる犠牲を払う(約7~8%)(24時間、5.4℃)。
【0411】
PP6は、1時間反応させた後、試験されたいずれのアシル化試薬とも、PP1と比較してより低い反応性を有する。それにもかかわらず、100mMの6-AGDLとの1時間のインキュベーション後、いずれかの温度で、>80%を超えてモノ官能化されたペプチドが観察された。重要なことに、二重官能化がほとんどない(約0.8%)≧98%に至るモノ官能性アシル化は、100mMの6-AGDLと5.4℃で長期間(18又は24時間)インキュベートすることでそれでもなお得ることができる。対照的に、同じ時間にわたる2.5mM又は4mMの4MPAAのいずれかでのPP6のアシル化は、5.4℃でインキュベートした場合、約40%及び約53%しかもたらさなかった。印象的なことに、4MPAA濃度の増加に応じて(約5%及び約10%)有意な二重官能化が観察された。
【0412】
【表2】
【0413】
(実施例14)
(アジド)グルコノイル化タンパク質の低コストの分析のためのmP-AGE
これまでに、最大16.7kDaのMwの単独でグルコノイル化されたタンパク質は、メタクリルアミドフェニルボロン酸アクリルアミドゲル電気泳動(mP-AGE)、すなわちボロン酸誘導体と1,2-、加えて1,3-ジオールとの間の動的平衡に頼る修飾SDS-PAGEマトリックスで分解できることが示されている(Pereira Morais等、2010)。mP-AGEゲルはまだ商業的に入手可能ではないが、重合性3-[(メチル-)アクリルアミド]フェニルボロン酸誘導体[(M)PBA]のためのいくつかの容易な合成経路が存在し、近年そのPBAもSigma社(現在はMerck社)から商業的に入手可能になる(カタログ番号771465-1G)(Morais等、2012、105;D. Li等、2015)。mP-AGEゲルのキャスティングは、重合の前に分解SDS-PAGEゲル混合物に(M)PBAの水溶液を添加することと同様に簡単である(Pereira Morais等、2010)。
【0414】
このアプローチを、少数のモデルタンパク質をアシル化し、mP-AGE及び従来のSDS-PAGEで分解することによって試験した(図4及び5を参照)。
【0415】
(実施例15)
アシル化及び非アシル化タンパク質の混合物からのアジドグルコノイルバリアント種の選択的な濃縮
試料の調製
GSS-H6-AffiEGFRを、グルコノイル化が欠乏した大腸菌BL21(DE3)誘導体株で本質的に前の通りに生産した。本発明者等は、6-アジド-6-デオキシ-グルコノ-1,5-ラクトン(6-AGDL)で前の通りにタンパク質をアシル化し、過量の6-AGDLを回転濾過によって除去し、MALDI TOF-MSによってアシル化の程度を約80%と決定した。本発明者等は、約125μMの1.6μLのアシル化調製物を、約157μMの500μLの非アシル化GSS-H6-AffiEGFRと共にスパイクした。62.5μLの4MのNaClを添加し(約330mMの最終濃度)、200μLの25mMのAmBic、pH8.5を添加した。これは、アシル化タンパク質と比較して、約490の過量の非アシル化タンパク質に変換される。BAC精製の前に、ZipTip C18のために部分試料(20μL)を採った。
【0416】
樹脂の調製
50μLのスラリー[m-アミノフェニルボロン酸-アガロースビーズ支持体(Sigma)]をスピンカラム(0.22μm孔径、親水性PVDF膜、0.5mL体積、非滅菌、Sigma社、カタログ番号UFC30GV00)に移した。500μLの水を添加し、カラムを、エッペンドルフMiniSpin遠心分離機で、室温で、5000RPM(約1677g)で30秒回転させた。流出液を捨て、500μLの25mMのAmBic pH8.5を添加した。混合物を前の通りに回転させ、流出液を捨てた。
【0417】
試料の結合
600μLの混合された試料を、平衡化させた樹脂と4℃で30分接触させた。樹脂タンパク質混合物を、穏やかなピペッティングによって10分毎に混合した。カラムを前の通りに遠心分離し、流出液を画分として収集した。
【0418】
洗浄
カラムを、500μLの500mMのNaCl、25mMのAmBic pH8.5と共にインキュベートした。混合物をカラム上での穏やかなピペッティングによって混合し、続いて前の通りに遠心分離した。流出液を画分「洗浄1」として収集した。この手順を合計5回繰り返して、画分「洗浄2」、「洗浄3」、「洗浄4」及び「洗浄5」を得た。
【0419】
溶出
pH4.0で60μLの200mMの酢酸アンモニウムを樹脂に添加し、室温で5分にわたり溶出させた。溶出物を遠心分離によって新しいきれいなチューブに収集した(分画「溶出液標的#EL」)。
【0420】
MALDI TOF-MSのための試料の処理
試料を前の通りにZip Tip(C18)で処理し、MALDIマトリックスにおけるMALDIスチール標的プレート上にスポットした。試料をポジティブリニアーモードで注入して、化学種の相対的な存在度を決定した。
【0421】
結果
未精製のスパイクした混合物のスペクトルは、アジドグルコノイル化種に関するいかなるイオン電流も示さなかった。しかしながらBAC濃縮後、この化学種ははっきりと目視可能になり、それぞれの電荷状態の化学種の、約68.2%[z1;(2103.9)/(2103.9+979.2))=0.682%]、約71.4%[z2;(3897.3/(3897.3+1559.2))=0.714]、約75.6%[z3;(672.5/(672.5+216.5))=0.756]を構成する。濃縮前の最初の濃度が約0.2%(非アシル化種の490分の1)であると仮定すると、これは、非アシル化種に対してアシル化種の約350倍の濃縮を表す。
【0422】
DNAシーケンシングから得られた一次アミノ酸配列に基づきMet切断タンパク質に関するz1で予測されるm/zは、14421.0055Daであるが、それに対して平均Mwは、14430.0533と予測されるであろう。z1、2及び3で観察されたm/z値は、上の列における非アシル化タンパク質に関する理論上のm/z値と優れた一致を示す。モノアジドグルコノイル化種は、それぞれz1で203.5及びz2で101.75のm/z増加を表示すると予測されるであろう。観察された7317.3のz2におけるm/zは、7214.5のz2におけるm/zと組み合わせて102.8m/zのデルタを生じ、これは、モノアジドグルコノイル化タンパク質と優れた一致を示す。
【0423】
実施例は、バリアントグルコノイル残基、例えば6-アジド-6-デオキシ-グルコノイルも、それらのジオール官能基を介して選択的に濃縮され得ることを実証する。
【0424】
溶出方法は、pHの数分の1の低減、又はジオール、例えばグリセロール、トリス、若しくは糖との競合のいずれかであり、糖誘導体は、アシル化分子と競合して固体支持体から離すのに使用することができる。相互作用は動的な共有結合によるものであるため、過量の結合緩衝液との長期にわたるインキュベーションも定組成溶出を可能にする。
【0425】
概説した方法は、他のより時間のかかる技術、例えば微調整を必要とするイオン交換によって非アシル化種を除去する必要がないという利点を有し、それに対してBACは、一般的な親和性方法であり、大規模な最適化を必要としないと予測される。
【0426】
(実施例16)
オンラインシステムを使用したアシル化及び非アシル化タンパク質の混合物からのアジドグルコノイルバリアント化学種の選択的な濃縮
カラム平衡
商業的に入手可能なTOSOH社のTSKgelボロネート-5PWカラムはまた、標準的なHPLCシステム(カタログ番号0013066、Tosoh Biosciences GmbH社、ドイツ;内径7.5mm×7.5cm長さ、孔径100nm(1000Å)であり、m-アミノフェニルボロネートが結合したポリメタクリレートベース材料で作製される)で、本発明による非アシル化基質からアシル化基質を分解することに関しても試験された。可動式の緩衝液は100mMの酢酸アンモニウム(pH8.5)であり、これを全体にわたり0.5mL/分の流速で使用した。
【0427】
試料の調製及び適用
天然の試料、加えて、天然の試料と、6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトン処理した試料(G-H6-ΔN1スパイキャッチャー、単一工程の固定化金属アフィニティークロマトグラフィーによって、クーマシーブルーで染色されたSDS-PAGEにより>90%に精製された)との混合物を、カラムに逐次的に適用した(pH4.5の10mM酢酸アンモニウム緩衝液中の、20μLの200μM試料)。6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンと接触させた試料のケースにおいて、過量のアシル化試薬をまず、3kDaのMWCOを通す繰り返しの回転濾過によって除去したその後、ジオール結合カラム上にローディングした。分析物を280nmで連続的に検出した。
【0428】
結果
天然タンパク質は単一のピークでのみ溶出したのに対し、試料混合物は、2つの化学種として、すなわち修飾されていない材料の保持時間を有する1つのピークと、新しい後に溶出するピークとして分解された。ピーク画分を各ピークにつき手作業で収集し、酸性化し、脱塩し(ZipTip C18)、前の通りにMALDI-TOF MSインタクト質量分析にリニアーポジティブモードで供した。初期に溶出するピークから収集された材料は、質量によって未処理の出発材料と区別できなかったが、それに対して後に溶出するピークは、単独で修飾された化学種について予測される質量のみを示した。修飾されていない出発材料も、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーに関連するペプチド又はタンパク質汚染物質も、後に溶出するピークの質量スペクトルにおいて同定されなかった。
【0429】
(実施例17)
SARS-CoV-2の防止のためのワクチンの製造
方法
Qbeta VLP(配列番号86)を大腸菌で生産した。5mg/mLのQbeta VLPを、2mMのNHS-PEG8-BCN(CAS.1608140-48-2;SiChem社、カタログ番号SC-8108)で、PBS pH7.4中で室温で2時間活性化した。過量の標識試薬を、100kDaのMWCOスピンフィルター(PES膜)を使用して50mMホウ酸塩pH8.2に回転濾過することによって除去した。
【0430】
SARS-CoV-2(配列番号87)の受容体結合ドメイン(RBD)を、HEK293又はピチア・パストリス細胞で組換え生産し、Ni-NTAアフィニティー、及びサイズ排除クロマトグラフィーによって精製し、次いでPBS中、1mg/mLで貯蔵した。RBDを、200mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)中100mMの6-AGDLで室温で80分活性化し、その後、50mMのホウ酸塩pH8.2に回転濾過した。活性化されたRBDの最終濃度は2mg/mLであり、溶液をさらなる使用まで4℃で貯蔵した。
【0431】
活性化されたRBD及び活性化されたQbetaを、4℃、14時間で一晩、4:1のモル比で接触させた。コンジュゲーション反応をSDS-PAGEによって分析した。過量のRBDを、50mMホウ酸塩pH8.2でのゲル濾過によって除去した。
【0432】
次いでコンジュゲート材料を使用して、0日目にAddaVax(Invivogen)で製造元に従って製剤化した10μg/用量でマウスを免疫化した。14日目及び28日目に同じ用量及び配合でのブーストを実行した。免疫学的研究のための各免疫化の前に血清試料を採った。42日目に動物を致死させた。
【0433】
非活性化されたHEKによって生産されたRBDに対して、当業界において公知の標準的手順に従ってエンドポイントELISAを実行した。
【0434】
当業界において公知の標準的手順に従って42日目に得られた試料を用いてシュードビリオン中和アッセイを実行した。
【0435】
42日目からの血清試料を用いて生ウイルス中和アッセイを実行した。SARS-CoV-2ウイルス(hCoV19、D614G(S))の感染及び/又は複製の阻害を、インビトロで、Vero E6細胞で、読み出しとして定量PCR(qPCR)を用いて試験した。
【0436】
Quick-RNAウイルスキット(Zymo Research)を使用して、RNAを抽出し、製造元の条件に従って、感染(0.1MOI)後48時間に感染/負荷された細胞からの150μLの上清から開始して、BSL-3実験室で実行した。Sensifast cDNA合成キット(Meridian)を製造元の説明に従って使用した。具体的には、4μlの5×緩衝液+1μLの転写酵素+12μLのRNアーゼ非含有の水+3μLの以前の手順で抽出されたRNA。最終体積=20μL。インキュベーション時間:25℃で10分/42℃で15分/85℃で5分/4℃で保持。
【0437】
CFX384 TouchリアルタイムPCR検出システム、Bioradを、2020種の疾病対策予防センター(Center of diseace control:CDC)のN1プライマー及びSARS-CoV-2のヌクレオカプシド「N」遺伝子を標的化するプローブセットを使用して、定量のために使用した:保持段階:50℃で15分+95℃で1分(ランプ=1.6℃/秒)、PCR:95℃で10秒+60℃で1分×40サイクル(ランプ=1.6℃/秒)。FW:5'-gaccccaaaatcagcgaaat-3'(配列番号88)RV:5'-tctggttactgccagttgaatctg-3'(配列番号89)プローブ:5'-FAM-accccgcattacgtttggtggacc-BHQ1-3'(配列番号90)。Sensifast SYBR No-ROXキット(Meridian)を製造元の説明に従って使用した。具体的には、5μlのSensifat PCRミックス(Taqを含む)+0,5μLの各プライマー(18uMストック)+0,5μLのFAIMプライマー(5uMストック)+3,5μlのウイルス/試料RNA。最終体積=10μL。
【0438】
試料を3連で処理した。Cq値は記号としてプロットされ、相加平均は線としてプロットされ、エラーバー(標準偏差)は灰色で示される。典型的には、ヒトの回復期の血清は、このアッセイでCq値22~23を示し、保護的であることが公知である。したがって、マウス血清に関して保護的相関をコールするためにカットオフをCq22(平均)に設定した。
【0439】
結果
活性化されたRBDを活性化されたVLPと接触させることは、還元SDS-PAGEによって観察できるようにコンジュゲートバンドを生産するが、それに対して活性化されたVLPの非活性化されたRBDとの反応は、予測される付加物バンドを示さない(図9を参照)。非還元条件において、RBDでのジスルフィド連結された六量体及び五量体の共有結合による修飾を観察でき、これは、複数の高分子量の付加物バンドを示す。
【0440】
還元された付加物バンドを切り出し、脱色し、アルキル化し、タンパク質分解によって消化した。MALDI-TOF MS/MS分析からQbeta及びRBD由来のペプチドの両方の存在が解明され、2つのタンパク質の共有結合のコンジュゲーションが確認される(データ示さず)。
【0441】
免疫化研究は、VLPにコンジュゲートしたRBDは、単回注射の後に応答を生じたことを示した(プライマー後、図10Aを参照)。ELISAタイターは、Qbeta:RBDコンジュゲートグループのみで検出可能な抗RBD応答を示したが、それに対してアジュバント処理されたRBD単独、又はQbeta VLP単独は、測定可能な応答を示さなかった。したがって血清転換は、結合ワクチンの単回投与で達成できるが、モノマーAddaVaxアジュバント処理されたRBD配合物では達成できない。
【0442】
抗RBDタイターは、後続の免疫化でブーストすることができる。驚くべきことに、単にVLP上に多量体化されていない6-AGDL活性化RBDも、活性化されていないRBDと比較して、より高い抗RBDタイターで改善した免疫原性を示し(8匹の血清転換されたマウスのうち8匹)、これは、この特定の配合で、6-AGDLリンカーそれ自体での処置はアジュバントとして作用し得ることを示唆している(図10Bを参照)。
【0443】
免疫応答とウイルス不活性化との相関をシュードタイプ化ウイルスアッセイで調べた。42日目に(合計3回の免疫化後)Qbeta:RBDコンジュゲートグループで最良の結果を得た(表3及び4を参照)。驚くべきことに、活性化されたRBDは、VLP足場へのコンジュゲーションなしの場合でも、活性化されていないRBDより優れた性能を発揮した。
【0444】
【表3】
【0445】
【表4】
【0446】
負荷としてSARS-CoV-2を使用する生ウイルス中和アッセイにおいて、多量体化されたRBDの優れた性能も観察可能であった。ここでもアジドリンカーを介してQbetaに連結されたRBDは、試験した全ての動物血清(n=8)についてインビトロで中和活性(Cq>22)を示し、それに対してモノマーAddaVaxアジュバント処理されたRBDのみは、3回の免疫化の後でさえも試験した8つの血清のうち3つで保護をもたらした(図11を参照)。興味深いことに、活性化されたRBDも、RBDのみより優れた性能を発揮するようであり、8つのマウス血清のうち5つで中和応答をもたらす。保護的応答はまた、同じコンジュゲーションアプローチを使用して、HEK293によって生産されたRBDの代わりにピチア・パストリスによって生産されたタンパク質を使用しても得られた。
【0447】
(実施例18)
可逆性をモジュレートするための追加のホウ素含有試薬
方法
様々なホウ素含有分子の可逆性をモジュレートする作用を調査するために、試薬の小さいライブラリーをpH7.5(50mMのHEPES/NaOH緩衝液)及びpH6.8(50mMのリン酸/KOH緩衝液)で試験した。反応を阻害する試薬の能力を、5mMの濃度で、熱で促進される脱アシル化条件下で(50℃)、50μMのN末端グルコノイル標識化Beltide-1誘導体ペプチドPP6(GSSHHHHHHDWLKAFYDKVAEKLKEAF)に対して試験した。
【0448】
ホウ酸(CAS10043-35-3、Sigma社、カタログ番号B0394)、メチルボロン酸(CAS13061-96-6、Sigma社、カタログ番号165336)、フェニルボロン酸(CAS98-80-6、Sigma社、カタログ番号P20009)、3-アミノフェニルボロン酸一水和物(CAS206658-89-1、Sigma社、カタログ番号287512)、2-ホルミルフェニルボロン酸(CAS40138-16-7、Sigma社、カタログ番号431958)、4-ホルミルフェニルボロン酸(CAS87199-17-5、Sigma社、カタログ番号431966)、及び FDA承認されたタバボロール(AN2690、5-フルオロ-1,3-ジヒドロ-1-ヒドロキシ-2,1-ベンゾオキサボロール;CAS174671-46-6、Cayman Chemicals社、カタログ番号23101)を試験した。
【0449】
結果
いくつかのホウ素含有分子が、試験した緩衝液条件において、所定期間にわたり、グルコノイルペプチドの修飾されていないペプチド(すなわちグルコノイル修飾なし)への可逆性を低減するか又は全体的に阻害するのに使用することができる。追加で試験された化合物のpKaを減少させると、より低い溶液のpH値でもコンジュゲートバンドを保護することができるという一般的な傾向が観察された(表5を参照)。
【0450】
【表5】
【0451】
結果は、好適なpKaを有するホウ素を含有する酸又はヘミエステルを選ぶことによって、様々な溶液pH値でアシル化したコンジュゲートの結合を保護することが可能であることを示す。しかしながら、4-ホルミルフェニルボロン酸と比較した場合、2-ホルミルフェニルボロン酸及びタバボロールに関して観察されたように、立体的な接近しやすさ、及び分子内の配位等の他の要因も明らかに役割を果たす。
【0452】
(実施例19)
アシル化種のホウ素-ジオールエステルを共有結合でトラップすること。
これらの結果に励まされ、近年の報告に触発されて、本発明者等は、それ以外のMALDI-TOF-MSによって観察不可能な2-ホルミルフェニルボロン酸由来のエステルは、N-ヒドロキシルアミン種の添加によって共有結合でトラップできるのかどうかを考えた。(Brittain等、2016)及び(Meadows等、2017)。
【0453】
本明細書で記載される方法及び組成物は、いくつかの点で先行技術とは異なる。Meadowsは、3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)を含有するペプチドを合成的に合成して、標的化可能なジオールを提供したのに対し、この開示において、好適なジオールは、本発明による組換えタンパク質のN末端に部位特異的に導入される(例えばGlyHisで終結)。ジオール導入は、本発明による好適なタンパク質を、グルコノ-1,5-ラクトン又は他のあらゆる好適な炭水化物ラクトン、例えばハンドル置換された炭水化物ラクトン等で処理することによって達成される。一旦アシル化されたら、ジオールを含有するペプチド又はタンパク質基質が得られ、これを、2-ホルミルフェニルボロン酸誘導体及びN-ヒドロキシルアミン誘導体化合物で処理する。
【0454】
事前にアセチル化され、2-ホルミルフェニルボロン酸で処理された基質のホウ素-ジオールエステルを共有結合でトラップするための方法
200μMのN末端がグルコノイル化されたペプチド(GSSHHHHHHGGTYSAHFGPLTWVAKPQGG)の20μL水溶液を、2.5μLの20mMの2-ホルミルフェニルボロン酸と混合した。その後、反応混合物に、2.5μLの20mMのN-tert-ブチルヒドロキシルアミン塩酸塩を添加した。室温での反応の2時間後、10μLの反応混合物を引き出し、2μLの50%(v/v)酢酸と混合し、C18 ZipTipを使用してクリーニングし、MALDI-MSによって分析した。
【0455】
グルコノイル化基質のジオール-ホウ素エステルをトラップすることに関する結果
共有結合による基質付加物は、以下の表で要約した通り、2-ホルミルフェニルボロン酸及びN-tert-ブチルヒドロキシルアミンで処理した試料に関して観察でき、ボロン酸エステル保護に関して提唱されているメカニズムを現実化している(表6を参照)。
【0456】
【表6】
【0457】
提唱されているメカニズム
反応スキーム。
ジオールエステルをトラップすることに関する提唱されているメカニズム。
【0458】
【化38】
【0459】
(実施例20)
ハンドル置換されたラクトンで事前にアセチル化され、2-ホルミルフェニルボロン酸で処理された基質のホウ素-ジオールエステルを共有結合でトラップするための方法
グルコノイル化基質をトラップすることが実証されたことから、本発明者等は次に、ハンドル置換された6-アジド-6-デオキシ-グルコノ-1,5-ラクトンで事前に処理された同じペプチドのボロネート-ジオールエステルをトラップすることを試験した。凍結乾燥したN末端アジドグルコニル化ペプチドPP13を、いくつかの緩衝液:50mMのリン酸カリウム(pH6.8)、50mMのHEPES/NaOH(pH7.5)、及び50mMの炭酸水素アンモニウム(pH8.44)中に200μMまで再懸濁した。順番及びタイミングの重要性を解明するために、35μLのペプチド溶液のアリコートを、20mMのストック濃度(2~2.5mMの最終濃度)での4.3μLの各試薬と逐次的に反応させた。示された時間の後、20mMでの4.3μLの第2の試薬を添加した(2~2.5mMの最終濃度)。N-tert-ブチルヒドロキシルアミン塩酸塩をSigma社(CAS57497-39-9、カタログ番号194751)から得た。反応を室温で実行し、試料(5μL)を示された時間で引き出し、酢酸(5μLの20%v/v溶液)で酸性化し、C18 ZipTip精製し、MALDI-TOF-MSによって分析した。
【0460】
結果
本方法はまた、本発明によるハンドル置換された炭水化物ラクトンで修飾された、例えば6-アジド-6-デオキシ-D-グルコノ-1,5-ラクトンで処理されたアシル化した基質を共有結合でトラップすることにも使用することができる。N-tert-ブチルヒドロキシルアミンの最初の添加でのpH6.8を除いて、予測されるm/z値(+185対アシル化)での共有結合付加物が試験した全ての条件で観察された(表8)。
【0461】
【表7】
【0462】
最も良いトラップの収量結果は、最初に2-ホルミルフェニルボロン酸を添加し、続いてN-tert-ブチルヒドロキシルアミンを添加した、わずかにアルカリ性の条件(pH8.4)で実行した反応で得られた。
【0463】
N-tert-ブチルヒドロキシルアミンを最初に添加することは、見たところ天然の脱アシル化されたペプチドへのより速い逆転を引き起こし、pH7.5で最も顕著な作用が見られ、したがって、最大のトラップ収量を達成するためには、最初に2-ホルミルフェニルボロン酸を添加して、ボロネート-ジオールエステル形成を可能にし、その後にN-tert-ブチルヒドロキシルアミンを添加すること好ましい。
【0464】
1番目及び2番目の添加間の時間間隔は、中性及びアルカリ性条件で反応収量にそれほど影響を与えなかったことから、N-tert-ブチルヒドロキシルアミンは、これらの条件で、ホウ素化合物の添加後に比較的迅速に添加してもよい。わずかに酸性条件(pH6.8)では、より長い時間(90分)の2-ホルミルフェニルボロン酸とのプレインキュベーションは、短いインキュベーション時間(2分)と比較してより高い収量をもたらしたことから、これは、このpH範囲で好ましい方法であり得る。
【0465】
印象的なことに、6-アジド-6-デオキシ-グルコノイル基質については1つのみの付加物を観察し、それに対してグルコノイル基質については2つまでの付加物を観察した。これは、理論に縛られることはないが、これまでに試験したグルコノイル基質について、最も遠位のヒドロキシル(C6)がC5のホウ素-ジオールエステルを形成することを示唆する。6-アジドグルコノイル基質において、このC6ヒドロキシルは、アジド基によって置き換えられ、したがって、C6~C5ジオールエステルに参加できない。これらの結果は更に、位置(炭水化物ラクトンにおけるハンドル置換の単一又は複数の位置)を選ぶことによって、形成することができる付加物の数及び位置に影響を与える可能性があることを示唆する。すなわち、例えば、3-アジド-3-デオキシ-グルコノイル基質は、C6-C5(又はC5-C4)に1つのみの付加物を形成すると予測され;それに対して4-アジド-4-デオキシ-グルコノイル基質は、2つの付加物を形成することが可能であり、一方はC6-C5に、他方はC3-C2である。他の炭水化物ラクトンは、異なるヒドロキシル立体化学を有していてもよく、したがって、異なる影響を受けやすいジオールの対を提示する可能性があることが理解される。
【0466】
反応スキーム。2-ホルミルフェニルボロン酸及びN-ヒドロキシルアミンで処理したアジドハンドル含有アシル化基質のジオールエステルをトラップするための提唱されているメカニズム。
【0467】
【化39】
[参考文献]
図1
図2
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図4
図5
図6
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図9
図10
図11
【配列表】
2023507831000001.app
【国際調査報告】