(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-27
(54)【発明の名称】シリコーンエラストマー物品の積層造形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/106 20170101AFI20230217BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20230217BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230217BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20230217BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20230217BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20230217BHJP
C08L 83/08 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
B29C64/106
B29C64/295
B33Y10/00
B33Y70/00
C08L83/05
C08L83/07
C08L83/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538463
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-19
(86)【国際出願番号】 EP2020087233
(87)【国際公開番号】W WO2021123315
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507421304
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・フランス・エスアエス
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES France SAS
(71)【出願人】
【識別番号】519289224
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・ユーエスエイ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES USA CORP.
【住所又は居所原語表記】Two Tower Center Boulevard,Suite 1601,East Brunswick,NJ 08816 U.S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】522247585
【氏名又は名称】エルケム・シリコニ・イタリア・ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONI ITALIA S.R.L.
【住所又は居所原語表記】Via Archimede n602,21042 CARONNO PERTUSELLA(VARESE)Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-マルク・フランシス
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・デル・トルト
(72)【発明者】
【氏名】ダミアン・ジアン
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル・プジェ
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル・ミルガレ
(72)【発明者】
【氏名】レミ・ティリア
【テーマコード(参考)】
4F213
4J002
【Fターム(参考)】
4F213AA33
4F213AB03
4F213AB07
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL23
4F213WL24
4F213WL25
4J002CP04X
4J002CP09Y
4J002CP14W
4J002DJ016
4J002EC037
4J002FA086
4J002FB146
4J002FD016
4J002FD157
4J002GF00
4J002HA08
4J002HA09
(57)【要約】
本発明は、3Dプリンターを使用してシリコーンエラストマー物品を積層造形するための方法に関する。本発明はまた、シリコーンエラストマー物品の積層造形のための架橋性シリコーン組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出し3Dプリンターおよび3D噴射プリンターから選択される、3Dプリンターを使用するシリコーンエラストマー物品の積層造形のための方法であって、前記方法は、
1)架橋性シリコーン組成物Xを基板上にプリントして、第1層を形成する工程;
2)前記架橋性シリコーン組成物Xを前記第1層または先の層上にプリントして、続く層を形成する工程;
3)任意に工程2)を繰り返す工程;および
4)前記第1層および続く層を、任意に加熱することによって架橋させて、シリコーンエラストマー物品を得る工程;
を含み、
前記架橋性シリコーン組成物Xが:
- (A)1分子あたり、ケイ素原子に結合した少なくとも2つのC2~C6アルケニルラジカルを含む少なくとも1つの有機ポリシロキサン化合物A;
- (B)1分子あたり、同一または異なるケイ素原子に結合した少なくとも2つの水素原子を含む少なくとも1つの有機ハイドロジェノポリシロキサン化合物B;
- (C)白金族からの少なくとも1つの金属または化合物を含む少なくとも1つの触媒C;
- (D)1分子あたり、少なくとも1つの環状アミン官能基を含む有機ケイ素化合物から選択される少なくとも1つのチキソトロピー剤D;
- (E)少なくとも1つの充填剤E;および
- (F)任意に少なくとも1つの架橋抑制剤F;
を含み、
前記架橋性シリコーン組成物Xは、0.003~0.02重量%、好ましくは0.004~0.017重量%、より好ましくは0.0045~0.016重量%の窒素含有量を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記チキソトロピー剤Dの前記環状アミン官能基がピペリジニル官能基であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記チキソトロピー剤Dが、1モルあたり、少なくとも1単位の一般式(D1)
(R)
a(X)
bZSiO
(3-(a+b))/2 (D1)
を有する有機ポリシロキサンであり:
ここで:
- 各R記号は同一または異なり、1~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルラジカル、フェニルラジカルおよび3,3,3-トリフルオロプロピルラジカルからなる群から選択される一価の炭化水素ラジカルを表し;
- 各X記号は同一または異なり、ヒドロキシル基、2~6個の炭素原子を有するアルケニルラジカル、および1~6個の炭素原子を有するアルコキシラジカルからなる群から選択される一価ラジカルを表し;
- Zは、式(I)
【化1】
の立体障害ピペリジニル基を有する基を表し:
ここで:
- R
1は、2~18個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンラジカル;直鎖または分岐アルキレン部分が2~20個の炭素原子を有するアルキレンカルボニルラジカル;直鎖または分岐アルキレン部分が2~12個の炭素原子を有し、シクロヘキシレン部分が-OH基、および任意に、1~4個の炭素原子を有する1または2個のアルキルラジカルを有するアルキレンシクロヘキシレンラジカル;式-R
4-O-R
5-のラジカルであって、R
4およびR
5ラジカルは、同一または異なり、1~12個の炭素原子を有するアルキレンラジカルを表し;式-R
4-O-R
5-のラジカルであって、R
4およびR
5ラジカルは上記の意味を有し、それらの一方または両方が1または2個のOH基で置換され;式-R
4-COO-R
5-および-R
4-OCO-R
5-のラジカルであって、R
4およびR
5は上記の意味を有し;或いは、式-R
6-O-R
7-O-CO-R
8-のラジカルであって、R
6、R
7およびR
8は、同一または異なり、2~12個の炭素原子を有するアルキレンラジカルを表し、R
7ラジカルは、任意にヒドロキシル基で置換され;
- Uは存在しまたは欠落であり得、存在する場合、Uは-O-または-NR
9-を表し、R
9は水素原子であり;1~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルラジカル;上記の意味を有する二価ラジカル-R
1-であって、一方の原子価結合は-NR
9-の窒素原子に接続され、もう一方はケイ素原子に接続され;或いは、式(II)
【化2】
の二価ラジカル:
ここで、R
1は上記の意味を有し、R
2とR
3は下記の意味を有し、R
10は、1~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンラジカルを表し、原子価結合の1つ(R
10の結合)が-NR
9-の窒素原子に結合し、もう一方(R
1の結合)はケイ素原子に結合し;
各R
2は、同一または異なり、1~3個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルラジカルまたはフェニルラジカルに由来し;
R
3は水素原子またはR
2ラジカルを表し;
- aは、0、1、および2から選択された数値であり;
- bは、0、1、および2から選択された数値であり;および
- a+bは最大で2であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記チキソトロピー剤Dが式(D3)
(R)
e(X)
fSiO
(4-(e+f))/2 (D3)
の他のシロキシル単位をさらに含み:
ここで:
- RとXは、式(D1)に関して与えられた意味と同じであり;
- eは、0、1、2、および3から選択された数値であり;
- fは、0、1、2、および3から選択された数値であり;および
- e+fは最大で3であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記架橋性シリコーン組成物Xが400~3,000Pa、好ましくは450~2,500Pa、より好ましくは500~2,250Paの降伏応力を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記3Dプリンターが押出しプリンターである、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の方法により得られたシリコーンエラストマー物品。
【請求項8】
架橋性シリコーン組成物Xであって、
- (A)1分子あたり、ケイ素原子に結合した少なくとも2つのC2~C6アルケニルラジカルを含む少なくとも1つの有機ポリシロキサン化合物A;
- (B)1分子あたり、同一または異なるケイ素原子に結合した少なくとも2つの水素原子を含む少なくとも1つの有機ハイドロジェノポリシロキサン化合物B;
- (C)白金族からの少なくとも1つの金属または化合物を含む少なくとも1つの触媒C;
- (D)1分子あたり、少なくとも1つの環状アミン官能基を含む有機ケイ素化合物から選択される少なくとも1つのチキソトロピー剤D;
- (E)少なくとも1つの充填剤E;および
- (F)任意に少なくとも1つの架橋抑制剤F;
を含み、
前記架橋性シリコーン組成物Xは、0.003~0.02重量%、好ましくは0.004~0.017重量%、より好ましくは0.0045~0.016重量%の窒素含有量を有することを特徴とする組成物。
【請求項9】
前記チキソトロピー剤Dの前記環状アミン官能基がピペリジニル官能基であることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記チキソトロピー剤Dが、1モルあたり、少なくとも1単位の一般式(D1)
(R)
a(X)
bZSiO
(3-(a+b))/2 (D1)
を有する有機ポリシロキサンであり:
ここで:
- 各R記号は同一または異なり、1~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルラジカル、フェニルラジカルおよび3,3,3-トリフルオロプロピルラジカルからなる群より選択される一価の炭化水素ラジカルを表し;
- 各X記号は同一または異なり、ヒドロキシル基、2~6個の炭素原子を有するアルケニルラジカル、および1~6個の炭素原子を有するアルコキシラジカルからなる群より選択される一価ラジカルを表し;
- Zは、式(I)
【化3】
の立体障害ピペリジニル基を有する基を表し;
ここで:
- R
1は、2~18個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンラジカル;直鎖または分岐アルキレン部分が2~20個の炭素原子を有するアルキレンカルボニルラジカル;直鎖または分岐アルキレン部分は2~12個の炭素原子を有し、シクロヘキシレン部分は-OH基、および任意に、1~4個の炭素原子を有する1または2個のアルキルラジカルを有するアルキレンシクロヘキシレンラジカル;式-R
4-O-R
5-のラジカルであって、R
4およびR
5ラジカルは、同一または異なり、1~12個の炭素原子を有するアルキレンラジカルを表すラジカル;式-R
4-O-R
5-のラジカルであって、R
4およびR
5ラジカルは上記の意味を有し、それらの一方または両方が1または2個のOH基で置換されるラジカル;式-R
4-COO-R
5-および-R
4-OCO-R
5-のラジカルであって、R
4およびR
5は上記の意味を有するラジカル;或いは、式-R
6-O-R
7-O-CO-R
8-のラジカルであって、R
6、R
7およびR
8は、同一または異なり、2~12個の炭素原子を有するアルキレンラジカルを表し、R
7ラジカルは、任意にヒドロキシル基で置換されるラジカル;であり、
- Uは存在しまたは欠落であり得、存在する場合、Uは-O-または-NR
9-を表し、R
9は水素原子;1~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルラジカル;上記の意味を有する二価ラジカル-R
1-であって、一方の原子価結合は-NR
9-の窒素原子に接続され、もう一方はケイ素原子に接続さるラジカル;或いは、式(II)
【化4】
の二価ラジカル、であり:
ここで、R
1は上記の意味を有し、R
2とR
3は下記の意味を有し、R
10は、1~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンラジカルを表し、原子価結合の1つ(R
10の結合)が-NR
9-の窒素原子に結合し、もう一方(R
1の結合)はケイ素原子に結合し;
各R
2は、同一または異なり、1~3個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルラジカルまたはフェニルラジカルに由来し;
R
3は水素原子またはR
2ラジカルを表し;
- aは、0、1、および2から選択された数値であり;
- bは、0、1、および2から選択された数値であり;および
- a+bは最大で2であることを特徴とする請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
前記架橋性シリコーン組成物Xが400~3,000Pa、好ましくは450~2,500Pa、より好ましくは500~2,250Paの降伏応力を有することを特徴とする、請求項8~10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
請求項8~11のいずれかに記載の架橋性シリコーン組成物Xの架橋により得られるシリコーンエラストマー物品。
【請求項13】
押出し3Dプリンターおよび3D噴射プリンターから選択される3Dプリンターを使用する、シリコーンエラストマー物品の積層造形のための、請求項8~12のいずれかに記載の架橋性シリコーン組成物Xの使用。
【請求項14】
式(D7)
【化5】
の有機ポリシロキサンであって:
ここで:
- 各R記号は同一または異なるものであり、1~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルラジカル、フェニルラジカルおよび3,3,3-トリフルオロプロピルラジカルからなる群より選択される一価の炭化水素ラジカルを表し;
- 各X
1記号は同一または異なるものであり、2~6個の炭素原子を有するアルケニルラジカルを表し;
- Zは、式(I)
【化6】
の立体障害ピペリジニル基を有する基を表し;
ここで:
- R
1は、2~18個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンラジカル;直鎖または分岐アルキレン部分が2~20個の炭素原子を有するアルキレンカルボニルラジカル;直鎖または分岐アルキレン部分が2~12個の炭素原子を有し、シクロヘキシレン部分が-OH基、および任意に、1~4個の炭素原子を有する1個または2個のアルキルラジカルを有するアルキレンシクロヘキシレンラジカル;式-R
4-O-R
5-のラジカルであって、R
4およびR
5ラジカルは、同一または異なり、1~12個の炭素原子を有するアルキレンラジカルを表すラジカル;式-R
4-O-R
5-のラジカルであって、R
4およびR
5ラジカルは上記の意味を有し、それらの一方または両方が1または2個のOH基で置換されるラジカル;式-R
4-COO-R
5-および-R
4-OCO-R
5-のラジカルであって、R
4およびR
5は上記の意味を有するラジカル;或いは、式-R
6-O-R
7-O-CO-R
8-のラジカルであって、R
6、R
7およびR
8は、同一または異なり、2~12個の炭素原子を有するアルキレンラジカルを表し、R
7ラジカルは、任意にヒドロキシル基で置換されるラジカル;
- Uは存在しまたは欠落であり得、存在する場合、Uは-O-または-NR
9-を表し、R
9は水素原子;1~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルラジカル;上記の意味を有する二価ラジカル-R
1-であって、一方の原子価結合は-NR
9-の窒素原子に接続され、もう一方はケイ素原子に接続されるラジカル;或いは、式(II)
【化7】
の二価ラジカル、であり:
ここで、R
1は上記の意味を有し、R
2とR
3は下記の意味を有し、R
10は、1~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンラジカルを表し、原子価結合の1つ(R
10の結合)が-NR
9-の窒素原子に結合し、もう一方(R
1の結合)はケイ素原子に結合し;
各R
2は、同一または異なり、1~3個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルラジカルまたはフェニルラジカルに由来し;
R
3は水素原子またはR
2ラジカルを表し;
- mは、0から2,000の間、好ましくは1から1,700の間、より好ましくは75から1,600の間であり、および
- nは1から50の間、好ましくは1から25の間、より好ましくは2から20の間であることを特徴とする有機ポリシロキサン。
【請求項15】
前記有機ポリシロキサンが式(D7’)
【化8】
であり、
ここで
- mは0~2,000、好ましくは1~1,700、より好ましくは75~1,600、さらにより好ましくはmは100であり、
- nは1~50、好ましくは1~25、より好ましくは2~20、さらにより好ましくはnは2である、請求項14に記載の有機ポリシロキサン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dプリンターを使用してシリコーンエラストマー物品を積層造形するための方法に関する。本発明はまた、シリコーンエラストマー製品の積層造形のための架橋性シリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
積層造形手法は、成形部品の層の自動アディティブビルドアップを共通の特徴とする様々な技術に及んでいる。架橋型シリコーン組成物は、三次元エラストマーシリコーン物品または部品を製造するための積層造形法ですでに使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、少なくとも5cmの高さや、突き出る構造または空洞のような複雑な形状を有するシリコーンエラストマー物品をプリントすることは時々複雑である。これらの種類の物品をプリントするために様々なアプローチが使用されてきた。米国特許出願公開第2015/0028523号明細書は、ポリグリコール酸ポリマーを含むサポート材料を使用して、積層造形システムで3D部品をプリントする方法を開示している。ただし、プリントするにはサポート材料を非常に高温(150℃以上)に加熱する必要がある。
【0004】
国際公開第2018/206689号は、3Dプリントで使用することができるチキソトロピー剤を含むシリコーン組成物を開示している。しかし、チキソトロピー剤を使用すると、触媒と相互作用する可能性があるため、反応性が失われることがある。したがって、架橋速度が低下し得る。
【0005】
これらの手法にはまだいくつかの欠点があるため、シリコーンエラストマー物品を3Dプリントするための改善された方法を提供する必要がある。
【0006】
したがって、本発明の本質的な目的は、シリコーンエラストマー物品の積層造形方法を提供することである。本発明の別の本質的な目的は、シリコーンエラストマー物品の積層造形方法を提供することであり、その方法は実施が容易である。
【0007】
本発明の別の本質的な目的は、シリコーンエラストマー物品の積層造形方法で使用することができるシリコーン組成物を提供することである。
【0008】
本発明の別の本質的な目的は、良好な反応性を有するシリコーン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的は、特に、第1に、押出し3Dプリンターおよび3D噴射プリンターから選択される、3Dプリンターを使用するシリコーンエラストマー物品の積層造形のための方法に関する本発明によって達成され、前記方法は、
1)架橋性シリコーン組成物Xを基板上にプリントして、第1層を形成する工程;
2)前記架橋性シリコーン組成物Xを前記第1層または先の層上にプリントして、続く層を形成する工程;
3)任意に工程2)を繰り返す工程;および
4)前記第1層および続く層を、任意に加熱することによって架橋させて、シリコーンエラストマー物品を得る工程;
を含み、
前記架橋性シリコーン組成物Xが:
- (A)1分子あたり、ケイ素原子に結合した少なくとも2つのC2~C6アルケニルラジカルを含む少なくとも1つの有機ポリシロキサン化合物A;
- (B)1分子あたり、同一または異なるケイ素原子に結合した少なくとも2つの水素原子を含む少なくとも1つの有機ハイドロジェノポリシロキサン化合物B;
- (C)白金族からの少なくとも1つの金属または化合物を含む少なくとも1つの触媒C;
- (D)1分子あたり、少なくとも1つの環状アミン官能基を含む有機ケイ素化合物から選択される少なくとも1つのチキソトロピー剤D;
- (E)少なくとも1つの充填剤E;および
- (F)任意に少なくとも1つの架橋抑制剤F;
を含み、
前記架橋性シリコーン組成物Xは、0.003~0.02重量%、好ましくは0.004~0.017重量%、より好ましくは0.0045~0.016重量%の窒素含有量を有することを特徴とする。
【0010】
本発明は、また、本明細書に記載の方法により得られたシリコーンエラストマー物品に関する。
【0011】
本発明は、また、架橋性シリコーン組成物Xに関し、架橋性シリコーン組成物Xは、
- (A)1分子あたり、ケイ素原子に結合した少なくとも2つのC2~C6アルケニルラジカルを含む少なくとも1つの有機ポリシロキサン化合物A;
- (B)1分子あたり、同一または異なるケイ素原子に結合した少なくとも2つの水素原子を含む少なくとも1つの有機ハイドロジェノポリシロキサン化合物B;
- (C)白金族からの少なくとも1つの金属または化合物を含む少なくとも1つの触媒C;
- (D)1分子あたり、少なくとも1つの環状アミン官能基を含む有機ケイ素化合物から選択される少なくとも1つのチキソトロピー剤D;
- (E)少なくとも1つの充填剤E;および
- (F)任意に少なくとも1つの架橋抑制剤F;
を含み、
前記架橋性シリコーン組成物Xは、0.003~0.02重量%、好ましくは0.004~0.017重量%、より好ましくは0.0045~0.016重量%の窒素含有量を有する。
【0012】
本発明は、また、架橋性シリコーン組成物Xの架橋により得られるシリコーンエラストマー物品に関する。
【0013】
本発明は、また、押出し3Dプリンターおよび3D噴射プリンターから選択される3Dプリンターを使用する、シリコーンエラストマー物品の積層造形のための架橋性シリコーン組成物Xの使用に関する。
【0014】
本発明は、また、式(D7)
【化1】
の有機ポリシロキサンに関し:
ここで:
- 各R記号は同一または異なるものであり、1~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルラジカル、フェニルラジカルおよび3,3,3-トリフルオロプロピルラジカルからなる群より選択される一価の炭化水素ラジカルを表し;
- 各X
1記号は同一または異なるものであり、2~6個の炭素原子を有するアルケニルラジカルを表し;
- Zは、式(I)
【化2】
の立体障害ピペリジニル基を有する基を表し;
ここで:
- R
1は、2~18個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンラジカル;直鎖または分岐アルキレン部分が2~20個の炭素原子を有するアルキレンカルボニルラジカル;直鎖または分岐アルキレン部分が2~12個の炭素原子を有し、シクロヘキシレン部分が-OH基、および任意に、1~4個の炭素原子を有する1個または2個のアルキルラジカルを有するアルキレンシクロヘキシレンラジカル;式-R
4-O-R
5-のラジカルであって、R
4およびR
5ラジカルは、同一または異なり、1~12個の炭素原子を有するアルキレンラジカルを表すラジカル;式-R
4-O-R
5-のラジカルであって、R
4およびR
5ラジカルは上記の意味を有し、それらの一方または両方が1または2個のOH基で置換されるラジカル;式-R
4-COO-R
5-および-R
4-OCO-R
5-のラジカルであって、R
4およびR
5は上記の意味を有するラジカル;或いは、式-R
6-O-R
7-O-CO-R
8-のラジカルであって、R
6、R
7およびR
8は、同一または異なり、2~12個の炭素原子を有するアルキレンラジカルを表し、R
7ラジカルは、任意にヒドロキシル基で置換されるラジカル;
- Uは存在しまたは欠落であり得、存在する場合、Uは-O-または-NR
9-を表し、R
9は水素原子;1~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルラジカル;上記の意味を有する二価ラジカル-R
1-であって、一方の原子価結合は-NR
9-の窒素原子に接続され、もう一方はケイ素原子に接続されるラジカル;或いは、式(II)
【化3】
の二価ラジカル、であり:
ここで、R
1は上記の意味を有し、R
2とR
3は下記の意味を有し、R
10は、1~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンラジカルを表し、原子価結合の1つ(R
10の結合)が-NR
9-の窒素原子に結合し、もう一方(R
1の結合)はケイ素原子に結合し;
各R
2は、同一または異なり、1~3個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルラジカルまたはフェニルラジカルに由来し;
R
3は水素原子またはR
2ラジカルを表し;
- mは、0から2,000の間、好ましくは0から1,500の間であり、および
- nは1から50の間、好ましくは1から20の間である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示において、記号「wt.%」は重量パーセントを表し、ppmは百万分の1を表す。
【0016】
積層造形の方法
本発明は、第1に、押出し3Dプリンターおよび3D噴射プリンターから選択される3Dプリンターを使用してシリコーンエラストマー物品を積層造形する方法に関し、前記方法は、
1)架橋性シリコーン組成物Xを基板上にプリントして第1層を形成する工程;
2)架橋性シリコーン組成物Xを第1層または先の層にプリントして、次の層を形成する工程;
3)任意に工程2)を繰り返す工程;および
4)任意に加熱することにより、第1層および続く層を架橋させて、シリコーンエラストマー物品を得る工程
を含む。
【0017】
3Dプリントは、一般に、コンピューターで生成された、例えばコンピューター支援設計(CAD)のデータソースから物理物体を製造するために使用される多くの関連技術に関連付けられている。
【0018】
この開示には、一般に、ASTM名称F2792-12a、「積層造形技術の標準用語(Standard Terminology for Additive Manufacturing Technologies)」が取り込まれる。
【0019】
「3Dプリンター」は「3Dプリントに使用される機械」と定義され、「3Dプリント」は「プリントヘッド、ノズル、または別のプリンター技術を使用した材料の堆積による物体の製造」と定義される。
【0020】
「積層造形(アディティブ・マニュファクチャリング(AM))」は、「サブトラクティブマニュファクチャリング方法論とは対照的に、材料を結合して3Dモデルデータから物体を作製するプロセスであり、通常は層を重ねて製造するプロセス。3Dプリントに関連し、含まれる同義語には、アディティブファブリケーション(additive fabrication)、アディティブプロセス(additive process)、アディティブテクニック(additive technique)、アディティブレイヤーマニュファクチャリング(additive layer manufacturing)、レイヤーマニュファクチャリング(layer manufacturing)、フリーフォームファブリケーション(freeform fabrication)を含む。」と定義される。積層造形(AM)は、ラピッドプロトタイピング(rapid prototyping(RP))とも呼ばれる。本明細書で使用される「3Dプリント(プリンティング)」は、一般に「積層造形」と交換可能であり、その逆も同様である。
【0021】
「プリント(プリンティング)」は、プリントヘッド、ノズル、または別のプリンター技術を使用して、材料、ここでは架橋性シリコーン組成物を堆積することとして定義される。
【0022】
本開示において、「3Dまたは3次元の物品、物体または部品」は、上で開示した積層造形または3Dプリントによって得られる物品、物体または部品を意味する。
【0023】
第1工程では、架橋性シリコーン組成物Xの層が基板上に形成されるように、当該層が基板上にプリントされる。基板は限定されず、任意の基板であってもよい。基板は、例えば3Dプリンターの基板プレートとして、その製造方法中に3D物品をサポートすることができる。基板は剛性または柔軟性があり、連続的または不連続的であり得る。基板自体は、基板が剛性を有する必要がないように、例えば基板テーブルまたはプレートによってサポートされてもよい。また、それは3D物品から除去することもできる。あるいは、基板は、物理的または化学的に3D物品に結合することができる。一実施形態では、基板はシリコーンであってもよい。
【0024】
架橋性シリコーン組成物Xをプリントして形成される層は、任意の形状および任意の寸法を有することができる。層は連続または不連続にすることができる。
【0025】
第2工程では、第1工程で形成した先の層の上に、架橋性シリコーン組成物Xを押出し3Dプリンターまたは材料3D噴射プリンターでプリントして続く層を形成する。押出し3Dプリンターおよび材料3D噴射プリンターは、工程1)で利用される押出し3Dプリンターまたは材料3D噴射プリンターと同じであっても異なっていてもよい。
【0026】
架橋性シリコーン組成物Xをプリントすることによって形成される後続の層は、任意の形状および任意の寸法を有し得る。後続の層は、連続または不連続にすることができる。
【0027】
第3工程では、第2工程を繰り返して、必要な数の層を得る。有利には、層の数は、10~1,000の間、好ましくは20~500の間である。
【0028】
第4工程では、任意に加熱することによって、層を完全に架橋させることにより、シリコーンエラストマー物品が得られる。架橋は周囲温度で完了できる。通常、周囲温度は20~25℃の温度を指す。
【0029】
層の架橋または硬化を促進するために、加熱を使用してもよい。プリント後の熱硬化は、構造が崩壊することなく完全な硬化または架橋をより速く達成するために、50~200℃、好ましくは60~100℃の温度で行うことができる。
【0030】
本明細書において、「層」という用語は、方法の任意の段階における層、すなわち、第1層または先の層または後続の層に関係し得る。層は、厚さや幅などを含め、さまざまな寸法にすることができる。層の厚さは、均一であっても異なっていてもよい。平均厚さは、プリント直後の層の厚さに関連している。
【0031】
一実施形態では、各層は独立して、50から2000μm、好ましくは100から800マイクロメートル、より好ましくは100から600マイクロメートルの厚さを有する。
【0032】
特定の実施形態では、少なくとも10層、好ましくは20層のプリント前の工程1)から3)の間ずっと、または工程1)から3)の間に、熱または放射などのエネルギー源は適用されない。
【0033】
一般に、すべての3Dプリンティングプロセスには共通の開始点がある。開始点とは、物体を記述するコンピューター生成データソースまたはプログラムである。コンピューター生成データソースまたはプログラムは、実際の物体または仮想の物体に基づくことができる。たとえば、3Dスキャナを使用して実際の物体をスキャンし、スキャンデータを使用して、コンピューター生成データソースまたはプログラムを作製することができる。あるいは、コンピューター生成データソースまたはプログラムをゼロから設計することもできる。
【0034】
コンピューター生成データソースまたはプログラムは、通常、標準テッセレーション言語(standard tessellation language(STL))ファイル形式に変換される。ただし、他のファイル形式も、または追加で使用できる。通常、ファイルは3Dプリンティングソフトウェアに読み込まれ、3Dプリンティングソフトウェアは、ファイルと任意のユーザー入力を取得して、それを数百、数千、さらには数百万の「スライス」に分割する。3Dプリンティングソフトウェアは通常、機械命令を出力する。これは、Gコードの形式である場合があり、3Dプリンターによって読み取られて、シリコーンエラストマー物品の前駆体の各スライスが作製される。機械命令は3Dプリンターに転送され、3Dプリンターは、機械命令の形式のこのスライス情報に基づいて、1層ずつ物体(シリコーンエラストマー物品の前駆体)を構築する。これらのスライスの厚さは異なり得る。
【0035】
通常、3Dプリンターは、架橋性シリコーン組成物Xをプリントするためのディスペンサー、例えばノズルまたはプリントヘッドを利用する。任意に、ディスペンサーは、架橋性シリコーン組成物Xを分配する前、分配する間、および分配した後に加熱することができる。2つ以上のディスペンサーを、各ディスペンサーが独立して選択された特性を有するように利用することができる。
【0036】
押出し3Dプリンターは、積層造形プロセス中にノズル、シリンジ、またはオリフィスから材料が押し出される3Dプリンターである。3Dプリンターは、1つ以上のノズル、シリンジ、またはオリフィスを有することができる。
【0037】
材料の押出しは、一般に、ノズル、シリンジ、またはオリフィスを通して材料を押出し、物体の1つの断面をプリントすることによって機能する。これは、後続の各層に対して繰り返してもよい。押し出された材料は、材料の硬化中にその下の層に結合する。
【0038】
有利には、架橋性シリコーン組成物Xはノズルを通して押し出される。ノズルは、架橋性シリコーン組成物Xの分配を促進するために加熱されてもよい。
【0039】
ノズルの平均直径が層の厚さを定義する。一実施形態では、ノズルの直径は、50から2,000μm、好ましくは100から1,000μm、最も好ましくは100から500μmである。
【0040】
ノズルと基板の間の距離は、良好な形状を確保するための重要なパラメーターである。好ましくは、それはノズル平均直径の50から200%、より好ましくは80から120%である。
【0041】
ノズルを通して分配される架橋性シリコーン組成物Xは、カートリッジ状のシステムから供給されてもよい。カートリッジは、関連付けられた流体リザーバまたは複数の流体リザーバを有するノズルまたは複数のノズルを含むことができる。スタティックミキサーと1つだけのノズルを有する同軸2カートリッジシステムを使用することもできる。これは、架橋性シリコーン組成物Xがマルチパート組成物である場合に特に有用である。
【0042】
圧力は、分配される流体、関連するノズルの平均直径、およびプリント速度に適応する。
【0043】
ノズル押出し中に発生する高せん断速度のために、架橋性シリコーン組成物Xの粘度は大幅に低下され、それにより細かい層のプリントが可能になる。
【0044】
カートリッジ圧力は、1から28バール、好ましくは2から25バール、最も好ましくは4から8バールまで変化し得る。100μm未満のノズル径を使用する場合、良好な材料押出しを得るには、カートリッジ圧力を20バールより高くするだろう。そのような圧力に耐えるために、アルミニウムカートリッジを使用する適合した機器が使用されるだろう。
【0045】
ノズルおよび/またはビルドプラットフォームは、X-Y(水平面)内を移動して物体の断面を完成させ、1つの層が完成するとZ軸(垂直)平面内を移動する。ノズルのXYZ移動精度は10μm前後と高い。各層がX、Y作業面でプリントされた後、ノズルは、次の層がX、Y作業面で塗布できるように十分な距離だけZ方向に移される。このようにして、シリコーンエラストマー物品の前駆体となる物体を、底から上方に向かって一度に1層ずつ構築することができる。
【0046】
前に開示したように、ノズルと先の層との間の距離は、良好な形状を確保するための重要なパラメーターである。好ましくは、ノズル平均直径の70から200%、好ましくは80から120%である。
【0047】
有利には、プリント速度は、良好な精度と製造速度との間の最良の妥協点を得るために、1~100mm/秒、好ましくは3~50mm/秒である。
【0048】
「材料噴射(Material jetting)」は、「ビルド材料の液滴が選択的に堆積される積層造形プロセス」と定義される。その材料は、プリンティングヘッドを使用して、個々の液滴の形で不連続に、作業面の目的の位置に塗布される(噴射)。プリンティングヘッド配列を有する3D構造の段階的製造のための3D装置および方法は、少なくとも1つ、好ましくは2~200個のプリンティングヘッドノズルを備え、複数の材料の適切な部位選択的塗布を可能にする。インクジェットプリントによる材料の塗布は、材料の粘度に特定の要件を課す。
【0049】
3D噴射プリンターでは、1つ以上のリザーバが圧力を受け、計量ラインを介して計量ノズルに接続される。リザーバーの上流または下流に、多成分シリコーン組成物を均一に混合し、および/または多成分シリコーン組成物が溶解ガスを排出することを可能にする装置があってもよい。異なるシリコーン組成物からシリコーンエラストマー物品の前駆体を構築するために、またはより複雑な構造の場合には、複合部品をシリコーンエラストマーおよび他のプラスチックから製造することを可能にするために、互いに独立して動作する1つ以上の噴射装置が存在してもよい。
【0050】
噴射計量手順中に計量バルブで発生する高せん断速度のために、そのようなシリコーン組成物の粘度は大幅に低くされ、したがって、非常に細かい微小滴の噴射計量が可能になる。微小滴が基板に堆積した後、せん断速度が急激に低下するため、粘度が再び上昇する。このため、堆積した液滴は再び急速に高粘度になり、3次元構造の正確な形状の構築を可能にする。
【0051】
個々の計量ノズルをx、y、およびz方向に正確に配置して、基板上に、またはその後の成形物品の形成の過程で、既に配置されているシリコーンエラストマー物品の前駆体上に、架橋性シリコーン組成物の滴を正確に標的化して堆積させることが可能である。
【0052】
本方法の好ましい実施形態では、三次元シリコーンエラストマー物品を積層造形する方法は、押出し3Dプリンターを使用する。
【0053】
この方法の一実施形態では、三次元シリコーンエラストマー物品を積層造形するための方法は、架橋性シリコーン組成物Xをプリントするためのノズルを少なくとも含み、各ノズルの直径が50~2,000μm、好ましくは100~800μm、最も好ましくは100~500μmである押出し3Dプリンターを使用する。
【0054】
架橋工程4)は、室温で、または加熱することによって行うことができる。有利には、架橋工程4)は、室温で、または50~200℃、好ましくは60~100℃の温度で、好ましくは10分~24時間加熱することによって実施される。
【0055】
この架橋工程は数回行うことができる。一実施形態では、工程4)は、架橋性シリコーン組成物Xを加熱する工程である。加熱は、硬化を促進するために使用することができる。別の実施形態において、工程4)は架橋性シリコーン組成物Xを照射する工程であり、照射はUV光または赤外線(IR)で行うことができる。硬化を促進するために、さらなる照射を使用することができる。別の実施形態では、工程4)は、架橋性シリコーン組成物Xの加熱および照射の両方を含む。
【0056】
シリコーンエラストマーの積層造形にサポート材料を使用できることはよく知られており、これは、例えば米国特許出願公開第2015/0028523号明細書に開示されている。
【0057】
後処理オプション
任意に後処理工程により、プリント物品の表面品質を大幅に向上させることができる。やすりがけ工程は、モデルの目に見えて異なる層を削減または除去する一般的な方法である。シリコーンエラストマー物品の表面に熱またはUV硬化性RTVまたはLSR架橋性シリコーン組成物をスプレーまたはコーティングして、適切な滑らかな表面外観を得ることができる。
【0058】
レーザーによる表面処理も可能である。
【0059】
医療用途の場合、最終エラストマー物品の滅菌は、例えば、乾燥雰囲気中でまたは蒸気を含むオートクレーブ内で加熱すること、例えばガンマ線下で100℃を超える温度で対象物を加熱すること、エチレンオキサイド滅菌、電子線滅菌によって得ることができる。
【0060】
得られたシリコーンエラストマー物品は、単純または複雑な形状を有する任意の物品であり得る。それは、たとえば、心臓、肢、腎臓、前立腺などの解剖学的モデル(機能的または非機能的)、外科医および教育界のモデル、装具(orthotics)、装具(prostheses)、さらには補聴器、ステント、喉頭インプラントなどの長期インプラントなどのさまざまなクラスのインプラントである。
【0061】
得られたシリコーンエラストマー物品は、ロボット工学用のアクチュエーター、ガスケット、自動車/航空用の機械部品、電子デバイス用の部品、コンポーネントのカプセル化用のパッケージ、振動アイソレーター、衝撃アイソレーターまたはノイズアイソレーターでもあり得る。
【0062】
架橋性シリコーン組成物X
シリコーンエラストマーの架橋性シリコーン組成物X前駆体は、重付加反応による架橋性シリコーン組成物である。
【0063】
架橋性シリコーン組成物Xは、
- (A)1分子あたり、ケイ素原子に結合した少なくとも2つのC2~C6アルケニルラジカルを含む少なくとも1つの有機ポリシロキサン化合物A;
- (B)1分子あたり、同一または異なるケイ素原子に結合した少なくとも2つの水素原子を含む少なくとも1つの有機ハイドロジェノポリシロキサン化合物B;
- (C)白金族からの少なくとも1つの金属または化合物を含む少なくとも1つの触媒C;
- (D)1分子あたり、少なくとも1つの環状アミン官能基を含む有機ケイ素化合物から選択される少なくとも1つのチキソトロピー剤D;
- (E)少なくとも1つの充填剤E;および
- (F)必要に応じて、少なくとも1つの架橋抑制剤F
を含む。
【0064】
架橋性シリコーン組成物Xは、好ましくは1,300~10,000Pa・s、好ましくは2,000~6,000Pa・sの粘度を有する架橋性シリコーン組成物である。シリコーン組成物Xの粘度は、25℃で2°のコーンプレートおよび0.5s-1の回転せん断速度でレオメーターを用いて測定された粘度に対応する。
【0065】
架橋性シリコーン組成物Xは、0.003~0.02重量%、好ましくは0.004~0.017重量%、より好ましくは0.0045~0.016重量%の窒素含有量を有する。窒素含有量は、架橋性シリコーン組成物X中の窒素元素の重量%で表される。架橋性シリコーン組成物Xの窒素含有量は、ppmで表すこともできる。この場合、シリコーン組成物Xは、30ppmから200ppmの間、好ましくは40ppmから170ppmの間、より好ましくは45ppmから160ppmの間の窒素含有量を有する。特定の実施形態では、窒素含有量は、環状アミン官能基を含むチキソトロピー剤Dの窒素元素のみに基づく。
【0066】
特定の実施形態では、架橋性シリコーン組成物Xは、400~3,000Pa、好ましくは450~2,500Pa、より好ましくは500~2,250Paの降伏応力を有する。降伏応力は、架橋性シリコーン組成物Xが流動を開始する応力である。降伏応力は、Herschel-Bulkleyモデルを使用して決定できる。架橋性シリコーン組成物Xの降伏応力は、20mmのコーンプレート形状および2°のコーン角を有するレオメーターを使用して、25℃で回転せん断測定によって決定される。回転せん断測定は次のように実行される。0から20s-1まで120s,20から0s-1まで120sとする。次に、測定された応力が、加えられたせん断応力の関数としてプロットされる。得られた20から0s-1までの曲線の線形部分を使用して、降伏応力(約20から2.5s-1まで)を決定する。曲線のこの線形部分に対して線形回帰を行い、切片に対応する降伏応力が決定される。
【0067】
架橋性シリコーン組成物Xは、シリコーンエラストマー物品のプリントに使用することができる。特定の窒素含有量により、組成物は適切なレオロジー特性と良好な反応性を有することができる。特に、架橋性シリコーン組成物Xは、プリント適性が良好であり、カートリッジに入れることができる。さらに、この組成物では反応性の損失がほとんど観察されない。この方法によって得られるシリコーンエラストマー物品は、良好な機械的特性も有する。
【0068】
有機ポリシロキサンA
特に有利な形態によれば、1分子当たり、少なくとも2つの、ケイ素原子に結合したC
2~C
6アルケニルラジカルを含む有機ポリシロキサンAであって、
(i)少なくとも2つの下記式
【化4】
を有するシロキシル単位(A.1)であって、当該各単位は同一でも異なっていてもよく:
ここで:
- a=1または2、b=0、1または2、およびa+b=1、2または3;
- 各記号Wは、同一でも異なっていてもよく、直鎖または分岐C
2~C
6アルケニル基を表し、
- 各記号Zは、同一でも異なっていてもよく、1~30個の炭素原子を含む一価の炭化水素系基を表し、当該一価の炭化水素系基は、好ましくは1~8個の炭素原子を含むアルキル基および6~12個の炭素原子を含むアリール基によって形成される群から選択され、および、さらに好ましくは、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリルおよびフェニルラジカルによって形成される群から選択され、
(ii)および任意に、以下の式
【化5】
を有する少なくとも1つのシロキシル単位:
ここで:
- a=0、1、2、または3、
- 各記号Z
1は、同一であっても異なっていてもよく、1~30個の炭素原子を含む一価の炭化水素系基を表し、当該一価の炭化水素系基は、好ましくは1~8個の炭素原子を含むアルキル基および6~12個の炭素原子を含むアリール基によって形成される群から選択され、およびさらにより好ましくは、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリル、およびフェニルラジカルによって形成される群から選択される。
【0069】
有利には、ZおよびZ1はメチルラジカルおよびフェニルラジカルによって形成される群から選択され、Wは以下のリストから選択される:ビニル、プロペニル、3-ブテニル、5-ヘキセニル、9-デセニル、10-ウンデセニル、5,9-デカジエニルおよび6-11-ドデカジエニルであり、好ましくは、Wはビニルである。
【0070】
好ましい実施形態では、式(A.1)において、a=1およびa+b=2または3であり、式(A.2)において、a=2または3である。
【0071】
これらの有機ポリシロキサンAは、直鎖、分岐または環状の構造を有していてもよい。それらの重合度は、好ましくは2~5,000である。
【0072】
それらが直鎖ポリマーである場合、それらは本質的に、シロキシル単位Dおよびシロキシル単位Mから形成され、シロキシル単位Dは、シロキシル単位W2SiO2/2、WZSiO2/2およびZ1
2SiO2/2によって形成される群から選択され、およびシロキシル単位Mは、シロキシル単位W3SiO1/2、WZ2SiO1/2、W2ZSiO1/2およびZ1
3SiO1/2によって形成される群から選択される。記号W、ZおよびZ1は、上記の通りである。
【0073】
末端単位Mの例として、トリメチルシロキシ基、ジメチルフェニルシロキシ基、ジメチルビニルシロキシ基またはジメチルヘキセニルシロキシ基を挙げることができる。
【0074】
単位Dの例として、ジメチルシロキシ基、メチルフェニルシロキシ基、メチルビニルシロキシ基、メチルブテニルシロキシ基、メチルヘキセニルシロキシ基、メチルデセニルシロキシ基またはメチルデカジエニルシロキシ基を挙げることができる。
【0075】
前記有機ポリシロキサンAは、25℃で約10から10,000,000mPa・s、一般に25℃で約1,000から120,000mPa・sの動的粘度を有するオイルまたはガムであり得る。
【0076】
それらが環状有機ポリシロキサンである場合、それらは、ジアルキルシロキシ、アルキルアリールシロキシ、アルキルビニルシロキシまたはアルキルシロキシタイプであり得る、以下の式:W2SiO2/2、Z2SiO2/2またはWZSiO2/2を有するシロキシル単位Dから形成される。そのようなシロキシル単位の例は、既に上で言及されている。前記環状有機ポリシロキサンAは、25℃で約10~5,000mPa・sの粘度を有する。
【0077】
好ましくは、有機ポリシロキサン化合物Aは、0.001~30%、好ましくは0.01~10%のSi-ビニル単位の質量含有率を有する。
【0078】
有機ハイドロジェノポリシロキサンB
有機ハイドロジェノポリシロキサン化合物Bは、1分子当たり、同一または異なるケイ素原子に結合した少なくとも2個の水素原子を含有し、好ましくは、1分子当たり、同一または異なるケイ素原子に直接結合した少なくとも3個の水素原子を含有する有機ポリシロキサンである。
【0079】
有利には、有機ハイドロジェノポリシロキサン化合物Bは、下記を含む有機ポリシロキサンである:
(i)以下の式
【化6】
を有する少なくとも2つのシロキシル単位、好ましくは少なくとも3つのシロキシル単位:
ここで:
- d=1または2、e=0、1または2、およびd+e=1、2または3、
- 各記号Z
3は、同一でも異なっていてもよく、1~30個の炭素原子を含む一価の炭化水素系基を表し、一価の炭化水素系基は、好ましくは、1~8個の炭素原子を含むアルキル基および6~12個の炭素原子を含むアリール基によって形成される群から選択され、さらに好ましくは、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリル、およびフェニルラジカルによって形成される群から選択され、
(ii)任意に、以下の式
【化7】
を有する少なくとも1つのシロキシル単位:
ここで:
- c=0、1、2、または3、
- 各記号Z
2は、同一でも異なっていてもよく、1~30個の炭素原子を含む一価の炭化水素系基を表し、当該一価の炭化水素系基は、好ましくは、1~8個の炭素原子を含むアルキル基および6~12個の炭素原子を含むアリール基によって形成される群から選択され、さらに好ましくは、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリルおよびフェニルラジカルによって形成される群から選択される。
【0080】
有機ハイドロジェノポリシロキサン化合物Bは、式(B.1)のシロキシル単位のみから形成されてもよいし、式(B.2)の単位を含んでもよい。それは直鎖、分岐または環状の構造を有していてもよい。重合度は、好ましくは2以上である。より一般的には、それは5,000未満である。
【0081】
式(B.1)のシロキシル単位の例は、特に次の単位である:H(CH3)2SiO1/2、H(CH3)SiO2/2およびH(C6H5)SiO2/2。
【0082】
それらが直鎖ポリマーである場合、それらは本質的に次のものから形成され、
- 次の式Z2
2SiO2/2またはZ3HSiO2/2を有する単位から選択されるシロキシル単位D、および
- 次の式Z2
3SiO1/2またはZ3
2HSiO1/2を有する単位から選択されシロキシル単位M、
記号Z2およびZ3は上述の通りである。
【0083】
これらの直鎖有機ポリシロキサンは、25℃で約1~100,000mPa・s、一般に25℃で約10~5,000mPa・sの動的粘度を有する油、または、25℃で約1,000,000mPa・s以上の動的粘度を有するガムであり得る。
【0084】
それらが環状有機ポリシロキサンである場合、それらは、次の式Z2
2SiO2/2およびZ3HSiO2/2を有するシロキシル単位Dから形成され、これらは、ジアルキルシロキシまたはアルキルアリールシロキシ型または単位Z3HSiO2/2のみから形成され、記号Z2およびZ3は、上記の通りである。それらの粘度は約1~5,000mPa・sである。
【0085】
直鎖有機ハイドロジェノポリシロキサン化合物Bの例は、ハイドロジェノジメチルシリル末端基を有するジメチルポリシロキサン、トリメチルシリル末端基を有するジメチル、ハイドロジェノメチルポリシロキサン、ハイドロジェノジメチルシリル末端基を有するジメチル、ハイドロジェノメチルポリシロキサン、トリメチルシリル末端基を有するハイドロジェノメチルポリシロキサン、および環状ハイドロジェノメチルポリシロキサンである。
【0086】
一般式(B.3)
【化8】
に対応するオリゴマーおよびポリマーは、有機ハイドロジェノポリシロキサン化合物Bとして特に好ましく:
ここで:
- xとyは、0から200までの範囲の整数であり、
- 各記号R
1は、同一でも異なっていてもよく、互いに独立して以下を表し、
・1から8個の炭素原子を含み、任意に少なくとも1個のハロゲン、好ましくはフッ素で置換された直鎖または分岐アルキルラジカルであって、好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチルおよび3,3,3-トリフルオロプロピルであるアルキルラジカル、
・5~8個の環状炭素原子を含むシクロアルキルラジカル、
・6~12個の炭素原子を含むアリールラジカル、または
・5~14個の炭素原子を含むアルキル部分および6~12個の炭素原子を含むアリール部分を有するアラルキルラジカル。
【0087】
以下の化合物
【化9】
は、有機ハイドロジェノポリシロキサン化合物Bとして本発明に特に適している:
a、b、c、d、およびeは以下で定義される。
- 式S1のポリマー:
- 0≦a≦150、好ましくは0≦a≦100、より具体的には0≦a≦20、および
- 1≦b≦90、好ましくは10≦b≦80、より具体的には30≦b≦70、
- 式S2のポリマーにおいて:0≦c≦100、好ましくは0≦c≦15
- 式S3のポリマーにおいて:5≦d≦200、好ましくは20≦d≦100、および
2≦e≦90、好ましくは10≦e≦70。
【0088】
特に、本発明での使用に適した有機ハイドロジェノポリシロキサン化合物Bは、a=0である式S1の化合物である。
【0089】
好ましくは、有機ハイドロジェノポリシロキサン化合物Bは、0.2~91%、好ましくは0.2~50%のSiH単位の質量含有率を有する。
【0090】
一実施形態では、有機ハイドロジェノポリシロキサン化合物Bは分岐ポリマーである。前記分岐有機ハイドロジェノポリシロキサン化合物Bは、
a)式R3SiO1/2のシロキシル単位M、式R2SiO2/2のシロキシル単位D、式RSiO3/2のシロキシル単位Tおよび式SiO4/2のシロキシル単位Qから選択される少なくとも2つの異なるシロキシル単位であって、式中、Rは、炭素数1~20の一価炭化水素基または水素原子であるシロキシル単位、および
b)ただし、これらのシロキシル単位の少なくとも1つがシロキシル単位TまたはQであり、シロキシル単位M、DまたはTの少なくとも1つがSi-H基を含む、
を含む。
【0091】
したがって、好ましい一実施形態によれば、分岐有機ハイドロジェノポリシロキサン化合物Bは、以下の群から選択することができ:
- 以下から本質的に形成される式M’Qの有機ポリシロキサン樹脂、
(a)式R2HSiO1/2の一価シロキシ単位M’;と
(b)式SiO4/2の四価のシロキシ単位Q;と
- 基本的に次の単位で構成される式MD’Qの有機ポリシロキサン樹脂、
(a)式RHSiO2/2の二価シロキシ単位D’;
(b)式R3SiO1/2の一価シロキシ単位M;および
(c)式SiO4/2の四価のシロキシ単位Q;
ここで、Rは、1~20個の炭素原子を有する一価のヒドロカルビルを表し、好ましくは、1~12個、より好ましくは1~8個の炭素原子を有する一価の脂肪族または芳香族ヒドロカルビルを表す。
【0092】
さらなる実施形態として、少なくとも直鎖有機ハイドロジェノポリシロキサン化合物Bと少なくとも分岐有機ハイドロジェノポリシロキサン化合物Bとの混合物を使用することができる。この場合、直鎖および分岐有機ハイドロジェノポリシロキサン化合物Bは、広い範囲で任意の割合で混合することができ、その混合割合は、硬度およびアルケニル基に対するSi-Hの比率などの所望の製品特性に応じて調整され得る。
【0093】
本発明において、有機ポリシロキサンAと有機ハイドロジェノポリシロキサンBとの比率は、有機ポリシロキサンA中のケイ素に結合したアルケニルラジカル(Si-CH=CH2)に対する有機ハイドロジェノポリシロキサンB中のケイ素に結合した水素原子(Si-H)のモル比が、0.2から20の間、好ましくは0.5から15の間、より優先的には0.5から10の間、さらにより優先的には0.5から5の間であり得るような、比率である。
【0094】
触媒C
白金族からの少なくとも1つの金属または化合物を含む触媒Cはよく知られている。白金族の金属は、白金以外に、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、およびイリジウムを組み合わせた、プラチノイドという名前で知られている金属である。白金およびロジウム化合物が好ましく使用される。米国特許第3159601号明細書、米国特許第3159602号明細書、米国特許第3220972号明細書および欧州特許出願公開第0057459号明細書、欧州特許出願公開第0188978号明細書および欧州特許出願公開第0190530号明細書に記載されている白金と有機生成物の錯体、および米国特許第3419593号明細書、米国特許第3715334号明細書、米国特許第3377432号明細書および米国特許第3814730号明細書に記載されている白金およびビニル有機シロキサンの錯体を特に使用することができる。具体例としては、白金金属粉末、塩化白金酸、塩化白金酸とβ-ジケトンの錯体、塩化白金酸とオレフィンの錯体、塩化白金酸と1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体、上記の触媒を含むシリコーン樹脂粉末の錯体、式:RhCl(Ph3P)3、RhCl3[S(C4H9)2]3などで表されるようなロジウム化合物;テトラキス(トリフェニル)パラジウム、パラジウムブラックとトリフェニルホスフィンの混合物が挙げられる。
【0095】
白金触媒は、好ましくは、室温で十分に迅速な架橋を可能にするために、触媒的に十分な量で使用されるべきである。典型的には、全シリコーン組成物に対して、Pt金属の量に基づいて、1~200重量ppm、好ましくは1~100重量ppm、より好ましくは1~50重量ppmの触媒が使用される。
【0096】
チキソトロピー剤D
架橋性シリコーン組成物Xはまた、ずり減粘およびチキソトロピー特性を調整する役割を果たすレオロジー剤であるチキソトロピー剤Dを含む。特に、チキソトロピー剤Dにより、架橋性シリコーン組成物Xは加えられた応力に応じて調整可能な粘度を有することができる。組成物に応力が加えられると粘度が低下してプリントが可能になり、応力を止めると粘度が元の値に戻る。
【0097】
チキソトロピー剤Dは、1分子あたり少なくとも1つの環状アミン官能基を含む有機ケイ素化合物から選択される。チキソトロピー剤Dの環状アミン官能基は、ピペリジニル官能基であり得る。
【0098】
特定の実施形態では、チキソトロピー剤Dは、1モルあたり、少なくとも一般式:
(R)
a(X)
bZSiO
(3-(a+b))/2 (D1)
を有する有機ポリシロキサンであり、
ここで:
- 各R記号は、同一または異なっており、1~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルラジカル、フェニルラジカルおよび3,3,3-トリフルオロプロピルラジカルからなる群から選択される一価の炭化水素ラジカルを表し、
- 各X記号は、同一または異なり、ヒドロキシル基、2~6個の炭素原子を有するアルケニルラジカル、および1~6個の炭素原子を有するアルコキシラジカルからなる群から選択される一価のラジカルを表し;
- Zは、式(I)
【化10】
の立体障害ピペリジニル基を有する基を表し:
ここで:
- R
1は、2~18個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンラジカル;直鎖または分岐アルキレン部分の炭素原子数が2~20個のアルキレンカルボニルラジカル;直鎖または分岐アルキレン部分は2~12個の炭素原子を有し、シクロヘキシレン部分は-OH基、および任意に、1~4個の炭素原子を有する1または2個のアルキルラジカルを有するアルキレンシクロヘキシレンラジカル;式-R
4-O-R
5-のラジカルであって、R
4およびR
5ラジカルは、同一または異なり、1~12個の炭素原子を有するアルキレンラジカルを表すラジカル;式-R
4-O-R
5-のラジカルであって、R
4およびR
5ラジカルは上記の意味を有し、それらの一方または両方が1または2個のOH基で置換されているラジカル;式-R
4-COO-R
5-および-R
4-OCO-R
5-のラジカルであって、R
4およびR
5は上記の意味を有するラジカル;或いは、式-R
6-O-R
7-O-CO-R
8-のラジカルであって、R
6、R
7およびR
8は、同一または異なり、2~12個の炭素原子を有するアルキレンラジカルを表し、R
7ラジカルは、任意にヒドロキシル基で置換されたラジカル、であり;
- Uは存在しまたは欠落であり得、存在する場合、Uは-O-または-NR
9-を表し、R
9は水素原子;1~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルラジカル;上記の意味を有する二価ラジカル-R
1-であって、一方の原子価結合は-NR
9-の窒素原子に接続され、もう一方はケイ素原子に接続されるラジカル;或いは、式(II)の二価ラジカル、であり:
【化11】
ここで、R
1は上記の意味を有し、R
2とR
3は下記の意味を有し、R
10は、1~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンラジカルを表し、原子価結合の1つ(R
10の結合)が-NR
9-の窒素原子に結合し、もう一方(R
1の結合)はケイ素原子に結合し;
各R
2は、同一または異なり、1~3個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルラジカルまたはフェニルラジカルに由来し;
R
3は水素原子またはR
2ラジカルを表し;
- aは、0、1、および2から選択された数値であり;
- bは、0、1、および2から選択された数値であり;および
- a+bは最大で2である。
【0099】
好ましくは、式(I)の基において:
- R1は、2~18個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレン基であり;
- Uは-O-を表し;
- 各R2は、同一または異なり、1~3個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基からのものであり;
- R3は水素原子を表す。
【0100】
チキソトロピー剤Dは、式:
(R)e(X)fSiO(4-(e+f))/2 (D2)
の他のシロキシル単位をさらに含み、
ここで:
- R、Xは式(D1)に関して与えられた意味と同じであり;
- eは、0、1、2、および3から選択された数値であり;
- fは、0、1、2、および3から選択された数値であり;および
- e+fは最大で3である。
【0101】
特定の実施形態では、チキソトロピー剤Dは、式:
(R)e(X1)fSiO(4-(e+f))/2 (D3)
の他のシロキシル単位をさらに含み、
ここで:
- Rは式(D1)に関して与えられた意味と同じであり;
- 各X1記号は同一または異なり、2~6個の炭素原子を有するアルケニルラジカルを表し;
- eは、0、1、および2から選択された数値であり;
- fは、1、2、および3から選択された数値であり;および
- e+fは最大で3である。
【0102】
特定の実施形態では、チキソトロピー剤Dは、一般式:
【化12】
の直鎖有機ポリシロキサンであり、
ここで:
- RおよびZ記号は、式(D1)に関して上で与えられた意味を有し;
- Y記号は、式(D1)に関して上で定義したR、ZおよびXラジカルから選択される一価のラジカルを表し;
- 各R
14の記号は、同一または異なり、式(D1)に関して上で定義したRラジカルおよびXラジカルから選択される一価のラジカルを表し;および
- xおよびyは、ゼロに等しいか、ゼロより大きい整数または分数を表し、ただし、x=0の場合、2つのYラジカルの少なくとも1つがZラジカルを表す。
【0103】
特定の実施形態では、チキソトロピー剤Dは、一般式:
【化13】
の環状有機ポリシロキサンであり、
ここで:
- RおよびZ記号は、式(D1)に関して上で与えられた意味を有し;
- x’は1以上の整数であり、y’は整数≧0であり、ただしx’+y’≧3である。
【0104】
チキソトロピー剤Dは、次の式に対応することができ:
【化14】
ここで:
- x’’は0から2,000の間、好ましくは0から1,500の間であり、
y’’は1から50の間、好ましくは1から20の間である。
【0105】
特定の実施形態では、チキソトロピー剤Dは、一般式:
【化15】
の直鎖有機ポリシロキサンであり、
ここで:
- RおよびZ記号は、式(D1)に関して上記で与えられた意味を有し、
- 各X
1記号は、式(D3)に関して上記で与えられた意味を有し、
- mは、0から2,000の間、好ましくは1から1,700の間、より好ましくは75から1,600の間であり、
- nは1から50の間、好ましくは1から25の間、より好ましくは2から20の間である。
【0106】
有利には、チキソトロピー剤Dは、式(D7’):
【化16】
であり、
ここで
- mは0から2,000の間、好ましくは1から1,700の間、より好ましくは75から1,600の間であり、さらにより好ましくはmは100であり、
- nは1から50の間、好ましくは1から25の間、より好ましくは2から20の間であり、さらにより好ましくはnは2である。
【0107】
一実施形態では、有機ポリシロキサンは、式(D7’)であって、mが100、nが2である。
【0108】
別の特定の実施形態では、チキソトロピー剤Dは、以下の式に対応し:
【化17】
ここで、nは1から10の間である。
【0109】
別の実施形態によれば、チキソトロピー剤Dは、以下の式に対応し:
【化18】
ここで、n’は3から10の間である。
【0110】
チキソトロピー剤Dの量は、組成物中の窒素含有量が尊重されるという条件で、架橋性シリコーン組成物Xの全重量の0.05~3重量%、好ましくは0.1~2.5重量%である。
【0111】
架橋性シリコーン組成物Xは、0.003~0.02重量%、好ましくは0.004~0.017重量%、より好ましくは0.0045~0.016重量%の窒素含有量を有する。特定の実施形態では、窒素含有量は、環状アミン官能基を含むチキソトロピー剤Dの窒素元素のみに基づく。特定の窒素含有量により、組成物は適切なレオロジー特性と良好な反応性を有することができる。特に、架橋性シリコーン組成物Xは、プリント適性が良好であり、カートリッジに入れることができる。さらに、この組成物では反応性の損失がほとんど観察されない。たとえば、1か月の保管後、架橋率は、同じ温度で初期に測定された公称値の80%に少なくとも相当する可能性がある。さらに、この方法によって得られるシリコーンエラストマー物品は、良好な機械的特性も有する。
【0112】
架橋性シリコーン組成物Xが高すぎる窒素含有量を有する場合、つまり0.02重量%を超える場合、組成物の反応性が低下し、架橋率が低すぎるため、組成物を3Dプリントに使用することはできない。
【0113】
逆に、架橋性シリコーン組成物Xの窒素含有量が低すぎる場合、つまり0.003重量%未満である場合、組成物は適切なレオロジー特性を持たず、3Dプリントには使用できない。
【0114】
充填剤E
十分に高い機械的強度を可能にするために、架橋性シリコーン組成物Xは、強化充填剤Eとして例えばシリカ微粒子などの充填剤を含む。沈降シリカ、ヒュームドシリカおよびそれらの混合物を使用することが可能である。これらの活性強化充填剤の比表面積は、BET法によって測定して、少なくとも50m2/g、好ましくは100~400m2/gの範囲にあるべきである。この種の活性強化充填剤は、シリコーンゴムの分野で非常によく知られている材料である。上記のシリカ充填剤は、親水性を有していてもよいし、または既知のプロセスによって疎水化されていてもよい。
【0115】
好ましい実施形態では、シリカ強化充填剤は、BET法で測定して、少なくとも50m2/g、好ましくは100~400m2/gの範囲の比表面積を有するヒュームドシリカである。ヒュームドシリカは未処理のまま使用してもよいが、疎水性表面処理を施すことが好ましい。その際、疎水性表面処理を施したヒュームドシリカを使用する場合には、疎水性表面処理を予備的に行ったヒュームドシリカを使用してもよいし、ヒュームドシリカを有機ポリシロキサンAと混合する際に表面処理剤を添加してヒュームドシリカがその場で処理されるようにしてもよい。
【0116】
表面処理剤としては、アルキルアルコキシシラン類、アルキルクロロシラン類、アルキルシラザン類、シランカップリング剤、チタネート系処理剤、脂肪酸エステル等の従来から使用されている処理剤から選択され得、また処理剤は単独で使用してもよいし、同時にまたは異なるタイミングで2つ以上の処理剤を組み合わせて使用してもよい。
【0117】
付加架橋型シリコーン組成物中のシリカ強化充填剤Eの量は、架橋性シリコーン組成物Xの総重量の5重量%から40重量%、好ましくは10重量%から35重量%の範囲である。この配合量が5重量%未満では十分なエラストマー強度が得られない場合があり、一方、40重量%を超えると実際の配合が困難になる場合がある。
【0118】
本発明によるシリコーン組成物はまた、標準的な半強化充填剤またはパッキング充填剤(packing filler)、ヒドロキシル官能性シリコーン樹脂、顔料、または接着促進剤のような他の充填剤を含んでもよい。
【0119】
半強化充填剤またはパッキング鉱物充填剤として含まれる非珪質鉱物は、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、粉砕石英、珪藻土、酸化亜鉛、雲母、タルク、酸化鉄、硫酸バリウム、消石灰からなる群より選択されることができる。
【0120】
シリコーン樹脂は、Q:SiO2/2およびT:R1SiO3/2を有する少なくとも1つのTおよび/または1つのQシロキシ単位を含む有機ポリシロキサンを意味する。ヒドロキシル官能性シリコーン樹脂はよく知られており、MQ(OH)、MDT(OH)、またはDT(OH)樹脂から選択でき、ここで、M:R1R2R3SiO1/2、D:R1R2SiO2/2、Q(OH):(OH)SiO3/2、およびT(OH):(OH)R1SiO2/2であり、R1、R2、およびR3基は、以下から互いに独立して選択される。
- 1~8個の炭素原子を含む直鎖または分岐アルキル基であって、任意に、1個以上のハロゲン原子で置換された基;および
- 6~14個の炭素原子を含むアリールまたはアルキルアリール基。
好ましくは、ヒドロキシル官能性シリコーン樹脂はMQ(OH)樹脂である。
【0121】
架橋抑制剤F
架橋性シリコーン組成物Xは架橋抑制剤Fを含むことができる。特定の実施形態では、架橋性シリコーン組成物Xは架橋抑制剤Fを含まない。別の特定の実施形態では、架橋性シリコーン組成物Xは架橋抑制剤Fを含む。架橋抑制剤は、周囲温度での組成物の硬化を遅らせるために、シリコーン組成物を架橋するのに加えて一般に使用される。架橋抑制剤Fは、以下の化合物から選択することができる:
- アセチレンアルコール
- 任意に環状形態であってもよい少なくとも1つのアルケニルで置換された有機ポリシロキサンであり、テトラメチルビニルテトラシロキサンが特に好ましい、
- ピリジン、
- 有機ホスフィンおよびホスファイト、
- 不飽和アミド、および
- マレイン酸アルキルおよびアリル
【0122】
これらのアセチレンアルコール(Cf.FR-B-1528464およびFR-A-2372874参照)は、好ましいヒドロシリル化反応熱ブロッカーの1つであり、次の式を有する。
(R’)(R”)(OH)C-C≡CH
ここで:
- R’は、直鎖または分岐アルキルラジカル、またはフェニルラジカルであり;および
- R”は、Hまたは直鎖または分岐アルキルラジカル、またはフェニルラジカルであり;ラジカルR’およびR”と炭素原子αが三重結合に対して環を形成し得る。
【0123】
R’およびR’’に含まれる炭素原子の総数は、少なくとも5個、好ましくは9~20個である。前記アセチレンアルコールについて、挙げることができる例には以下が含まれる:
- 1-エチニル-1-シクロヘキサノール;
- 3-メチル-1-ドデシン-3-オール;
- 3,7,11-トリメチル-1-ドデシン-3-オール;
- 1,1-ジフェニル-2-プロピン-1-オール;
- 3-エチル-6-エチル-1-ノニン-3-オール;
- 2-メチル-3-ブチン-2-オール;
- 3-メチル-1-ペンタデシン-3-オール;および
- マレイン酸ジアリルまたはマレイン酸ジアリル誘導体。
【0124】
好ましい実施形態では、架橋抑制剤は1-エチニル-1-シクロヘキサノールである。
【0125】
より長い作用時間または「ポットライフ」を得るには、抑制剤の量を調整して、所望の「ポットライフ」に到達させる。本シリコーン組成物中の触媒抑制剤の濃度は、周囲温度で組成物の硬化を遅らせるのに十分である。この濃度は、使用する特定の抑制剤、ヒドロシリル化触媒の性質と濃度、および有機ハイドロジェノポリシロキサンの性質に応じて大きく変わる。場合によっては、白金族金属1モルあたり1モルの抑制剤濃度でも十分な貯蔵安定性と硬化速度が得られる。他の例では、白金族金属1モル当たり最大500モル以上の抑制剤濃度が必要とされる場合がある。所与のシリコーン組成物中の抑制剤の最適濃度は、日常的な実験によって容易に決定することができる。
【0126】
有利には、付加架橋型シリコーン組成物中の架橋抑制剤Fの量は、架橋性シリコーン組成物Xの総重量に対して0.01重量%から0.2重量%、好ましくは0.03重量%から0.15重量%の範囲である。
【0127】
抑制剤の使用は、ノズルの先端でのシリコーン組成物の早期硬化およびその後のプリント層の変質を回避するのに効果的である。
【0128】
好ましい実施形態では、本発明の架橋性シリコーン組成物Xは、シリコーン組成物の100重量%あたり、
- 45~80重量%の少なくとも1つの有機ポリシロキサン化合物A、
- 0.1~10重量%の少なくとも1つの有機ハイドロジェノポリシロキサン化合物B、
- 0.05~3重量%の少なくとも1つのチキソトロピー剤D、
- 5~40重量%の少なくとも1つの充填剤E、
- 0.001~0.01重量%のプラチナ、および
- 任意に、0.01~0.2重量%の少なくとも1つの架橋抑制剤F
を含む。
【0129】
一実施形態によれば、架橋性シリコーン組成物Xは、
- (A)1分子あたり、ケイ素原子に結合した少なくとも2つのC2~C6アルケニルラジカルを含む、少なくとも1つの有機ポリシロキサン化合物A;
- (B)1分子当たり、同一または異なるケイ素原子に結合した少なくとも2個の水素原子を含む、少なくとも1つの有機ハイドロジェノポリシロキサン化合物B;
- (C)白金族からの少なくとも1つの金属または化合物を含む少なくとも1つの触媒C;
- (D)1モル当たり、一般式:
(R)
a(X)
bZSiO
(3-(a+b))/2 (D1)
で表される少なくとも1つの単位を有する有機ポリシロキサンから選択される少なくとも1つのチキソトロピー剤Dであって、
ここで:
- 各R記号は、同一または異なっており、1~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルラジカル、フェニルラジカル、および3,3,3-トリフルオロプロピルラジカルからなる群から選択される一価の炭化水素ラジカルを表し;
- 各X記号は、同一または異なり、ヒドロキシル基、1~3個の炭素原子を有するアルケニルラジカルおよびアルコキシラジカルからなる群から選択される一価のラジカルを表し;
- Zは、式(I)の基からなる群から選択される立体障害ピペリジニル基を有する基を表し:
【化19】
ここで:
- R
1は、2~18個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンラジカル;直鎖または分岐のアルキレン部分の炭素原子数が2~20個のアルキレンカルボニルラジカル;アルキレンシクロヘキシレンラジカルであって、その直鎖または分岐アルキレン部分が2~12個の炭素原子を有し、シクロヘキシレン部分が-OH基、および任意に1~4個の炭素原子を有する1個または2個のアルキルラジカルを有するアルキレンシクロヘキシレンラジカル;式-R
4-O-R
5-のラジカルであって、ここで、R
4およびR
5ラジカルは、同一または異なり、1~12個の炭素原子を有するアルキレンラジカルを表すラジカル;式-R
4-O-R
5-のラジカルであって、ここで、R
4およびR
5ラジカルは上記の意味を有し、それらの一方または両方が1つまたは2つのOH基によって置換されているラジカル;式-R
4-COO-R
5-および-R
4-OCO-R
5-のラジカルであって、ここで、R
4およびR
5は上記の意味を有するラジカル;或いは、式-R
6-O-R
7-O-CO-R
8-のラジカルであって、ここで、R
6、R
7およびR
8は、同一または異なり、2~12個の炭素原子を有するアルキレンラジカルを表し、R
7ラジカルは任意にヒドロキシル基によって置換されているラジカル、であり;
- Uは、存在しまたは欠落であり得、存在する場合、Uは-O-または-NR
9-を表し、R
9は水素原子;1~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルラジカル、であり;
- 各R
2は、同一または異なり、1~3個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルラジカルまたはフェニルラジカルからのものであり;および
- R
3は、水素原子またはR
2ラジカルを表し;
- aは、0、1、および2から選択された数値であり;
- bは、0、1、および2から選択された数値であり;および
- a+bは最大で2であり;
- (E)少なくとも1つの充填剤E;および
- (F)任意の、少なくとも1つの架橋抑制剤F
を含む。
【0130】
その他の添加剤
架橋性シリコーン組成物Xは、シリコーン組成物において通常の機能性添加剤をさらに含むことができる。添加剤の次の機能性一群が引用され得る。
- 接着促進剤;
- シリコーン樹脂;
- チキソトロピー剤、粘度調整剤、降伏応力剤などのレオロジー調整剤;
- リン光剤、ならびにフォトクロミック顔料、サーモクロミック顔料、エレクトロクロミック顔料、ピエゾクロミック顔料、ソルバトクロミック顔料およびカーソルクロミック顔料などのクロミック顔料を含む着色剤;および
- 例えば金属酸化物である、耐熱性、耐油性、耐火性のための添加剤。
【0131】
接着促進剤は、シリコーン組成物に広く使用されている。有利なことに、本発明による方法では、以下からなる群から選択される1つ以上の接着促進剤を使用することが可能である:
- 1分子あたり少なくとも1個のC2~C6アルケニル基を含むアルコキシル化有機シラン、
- 少なくともエポキシラジカルを含む有機シリケート化合物
- 金属Mのキレートおよび/または下記の式の金属アルコキシド:
M(OJ)n、
ここでMは、Ti、Zr、Ge、Li、Mn、Fe、AlおよびMgまたはそれらの混合物からなる群から選択され、
n=Mの原子価およびJ=C1~C8の直鎖または分岐アルキル、
好ましくは、Mは、Ti、Zr、Ge、LiまたはMnからなる群から選択され、より好ましくは、Mはチタンである。例えば、ブトキシ型のアルコキシラジカルを関連させることが可能である。
【0132】
シリコーン樹脂は、よく知られており、市販されている分岐有機ポリシロキサンである。それらは、式R3SiO1/2(M単位)、R2SiO2/2(D単位)、RSiO3/2(T単位)およびSiO4/2(Q単位)の中から選択された少なくとも2つの異なる単位がその構造に含まれており、これらの単位の少なくとも1つはTまたはQ単位である。
【0133】
各ラジカルRは、同一または異なっており、C1~C6の直鎖または分岐アルキル、ヒドロキシル、フェニル、トリフルオロ-3,3,3プロピルからなる群から選択される。アルキルラジカルは、例えばメチル、エチル、イソプロピル、tertioブチルおよびn-ヘキシルである。
【0134】
分岐オリゴマーまたは有機ポリシロキサンポリマーの例として、MQ樹脂、MDQ樹脂、TD樹脂およびMDT樹脂を挙げることができ、ヒドロキシル官能基はM、Dおよび/またはT単位によって担持され得る。特に好適な樹脂の例として、0.2~10重量%のヒドロキシル基を有するヒドロキシル化MDQ樹脂を挙げることができる。
【0135】
マルチパート組成物
架橋性シリコーン組成物Xは、成分AからEを単一の部分に含むワンパート(one-part)組成物であってもよく、あるいは、成分B、およびCが同じ部分に存在しないことを条件として、これらの成分を2つ以上の部分に含むマルチパート(multi-part)組成物であってもよい。例えば、マルチパート組成物は、成分Aの一部および成分Cのすべてを含む第1部分と、成分Aの残りの部分および成分Bのすべてを含む第2部分とを含むことができる。特定の実施形態では、成分Aは第1部分にあり、成分Bは第1部分から分離した第2部分にあり、成分Cは第1部分、第2部分、および/または第1および第2部分から分離した第3部分にある。成分D、EおよびFは、成分BまたはCの少なくとも1つと共にそれぞれの部分(または複数の部分)に存在し得、および/または別々の部分(または複数の部分)に存在し得る。
【0136】
ワンパート組成物は、典型的には、主成分および任意の成分を記載された比率で周囲温度で組み合わせることによって調製される。組成物をすぐに使用する場合、種々の成分の添加順序は重要ではないが、ヒドロシリル化触媒は典型的には組成物の早期硬化を防ぐために約30℃未満の温度で最後に添加する。
【0137】
また、マルチパート組成物は、各部分の成分を組み合わせることによって調製することができる。混合は、当技術分野で理解されている任意の技術、例えば特定の装置でのバッチプロセスまたは連続プロセスのいずれかで、ブレンドまたは攪拌によって達成することができる。特定の装置は、成分の粘度および最終組成物の粘度によって決定される。
【0138】
特定の実施形態では、架橋性シリコーン組成物Xがマルチパートシリコーン組成物である場合、マルチパート架橋性シリコーン組成物の別々の部分は、プリント前及び/又はプリント中に、ディスペンスプリンティングノズル、例えばデュアルディスペンスプリンティングノズルで混合されてもよい。あるいは、プリントの直前に別々の部分を組み合わせることもできる。
【0139】
式(D7)の有機ポリシロキサン
本発明は、式(D7)の有機ポリシロキサンにも関する:
【化20】
ここで:
- 各R記号は同一または異なっており、1~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルラジカル、フェニルラジカル、および3,3,3-トリフルオロプロピルラジカルからなる群から選択される一価の炭化水素ラジカルを表し;
- 各X
1記号は同一または異なり、2~6個の炭素原子を有するアルケニルラジカルを表し;
- Zは、式(I)の立体障害ピペリジニル基を有する基を表し:
【化21】
ここで:
- R
1は、2~18個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンラジカル;直鎖または分岐アルキレン部分の炭素原子数が2~20個のアルキレンカルボニルラジカル;アルキレンシクロヘキシレンラジカルであって、その直鎖または分岐アルキレン部分が2~12個の炭素原子を有し、シクロヘキシレン部分が-OH基、および任意に1~4個の炭素原子を有する1個または2個のアルキルラジカルを有するアルキレンシクロヘキシレンラジカル;式-R
4-O-R
5-のラジカルであって、ここで、R
4およびR
5ラジカルは、同一または異なり、1~12個の炭素原子を有するアルキレンラジカルを表すラジカル;式-R
4-O-R
5-のラジカルであって、ここで、R
4およびR
5ラジカルは上記の意味を有し、それらの一方または両方が1つまたは2つのOH基によって置換されるラジカル;式-R
4-COO-R
5-および-R
4-OCO-R
5-のラジカルであって、ここで、R
4およびR
5は上記の意味を有するラジカル;或いは、式-R
6-O-R
7-O-CO-R
8-のラジカルであって、ここで、R
6、R
7およびR
8は、同一または異なり、2~12個の炭素原子を有するアルキレンラジカルを表し、R
7ラジカルは任意にヒドロキシル基で置換されるラジカル、であり;
- Uは存在しまたは欠落であり得、存在する場合、Uは-O-または-NR
9-を表し、R
9は水素原子;1~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルラジカル;二価ラジカル-R
1-であって、R
1は上に示した意味を有し、原子価結合の一方は-NR
9-の窒素原子に結合し、もう一方はケイ素原子に結合する、ラジカル;或いは、式
【化22】
の二価ラジカル、であり:
ここで、R
1は上記の意味を有し、R
2およびR
3は以下の意味を有し、R
10は1~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンラジカルを表し、原子価結合の1つ(R
10の結合)は-NR
9-の窒素原子に結合し、およびもう一方(R
1の結合)はケイ素原子に結合し;
各R
2は同一または異なり、1~3個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルラジカルまたはフェニルラジカルからのものであり;
R
3は水素原子またはR
2ラジカルを表し;
- mは0~2,000、好ましくは1~1,700、より好ましくは75~1,600であり、
- nは1~50、好ましくは1~25、より好ましくは2~20である。
【0140】
好ましくは、式(I)の基において:
- R1は、2~18個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンラジカルであり;
- Uは-O-を表し;
- 各R2は同一または異なり、1~3個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルラジカルからのものであり、
- R3は水素原子を表す。
【0141】
有利には、有機ポリシロキサンは式(D7’):
【化23】
ここで
- mは0から2,000の間、好ましくは1から1,700の間、より好ましくは75から1,600の間であり、さらにより好ましくはmは100であり、
- nは1から50の間、好ましくは1から25の間、より好ましくは2から20の間であり、さらにより好ましくはnは2である。
【0142】
一実施形態では、有機ポリシロキサンは、式(D7’)のものであり、mが100であり、nが2である。
【0143】
本発明は、式(D7)の化合物を合成する方法にも関し、前記方法は、以下の工程を含む:
1.ジビニルテトラメチルジシロキサン、環状ポリジメチルシロキサン、およびケイ素原子に結合した官能基Zを含む環状ポリメチルシロキサンを接触させる工程;
2.加熱し、塩基性触媒、例えば強塩基を導入して反応させる工程;および
3.例えば酸を用いて中和し、次いで官能基Zを含む有機ポリシロキサンを例えば標準的な揮発分除去によって単離する工程;冷却する工程と抜き出し工程。
【0144】
本発明は、式(D7)の有機ポリシロキサンを含む組成物にも関する。
【0145】
式(D7)の有機ポリシロキサンはビニル基を有するので、この化合物は重付加反応の基質として使用することができる。したがって、反応後、式(D7)の有機ポリシロキサンは架橋ネットワークの一部であり、この有機ポリシロキサンが移行するリスクはない。結果として、架橋後に得られるシリコーンエラストマー物品は、抽出可能な化合物の濃度が低く、および/または毒性が低い。
【0146】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図しており、限定することを意図していない。
【実施例】
【0147】
原材料
特に明記しない限り、量は重量%で表される。窒素含有量はppmで表され得る。
【0148】
チキソトロピー剤D
表1に、試験したチキソトロピー剤Dの特性をまとめる。
【表1】
【0149】
【0150】
チキソトロピー剤DCは次のように調製した。撹拌磁石を含む500mLの丸底フラスコに、9.4gのジビニルテトラメチルジシロキサン、448.0gのオクタメチルシクロテトラシロキサン、および29.8gのテトラメチルテトラ(2,2,6,6-テトラメチル-4-(プロポキシ)ピペリジン)シクロテトラシロキサンを充填した。次に混合物を160℃に加熱し、3.8gのカリウムシラノレートを一度に加えた。反応を160℃で3時間行い、次いで7.8gのシロキサンホスホン酸を添加した。比色試験で触媒の中和を確認した後、180℃で2時間、真空下で揮発分を除去した。
【0151】
・分析:
o 粘度=249mPa・s、粘度は、コーンプレート形状のレオメーターを使用して、100rpm、25℃で測定した。
o 窒素含有量=0.36%、窒素含有量は、過塩素酸を使用した電位差測定法によって決定した。
o ビニル含有量=0.53%、ビニル官能基のエトキシル化およびGCヘッドスペースを使用した定量により、ビニル含有量を決定した。
【0152】
LSR組成物
ミキサーには以下が充填される:
- 60,000mPa・sの粘度を有する、Me2ViSiO1/2単位で両端がブロックされた29部のジメチルポリシロキサンオイル
- 粘度100,000mPa・sのMe2ViSiO1/2単位で両端がブロックされたジメチルポリシロキサン29部
-BET法により測定された比表面積が300m2/gであるヒューム処理されたシリカ26部およびヘキサメチルジシラザン7部
【0153】
全体を攪拌しながら70℃で1時間加熱した後、脱揮し、冷却して組成物1のベース1として保存する。
【0154】
次に、このベース1の45部に、スピードミキサーで追加する。
- カルシュテット触媒として知られるビニルオイルで希釈された白金金属10重量%の有機金属錯体の形で導入される白金金属
- 3部:鎖中及び鎖末端にビニル基を有し、粘度1,000mPa・sのジメチルポリシロキサンオイル
- 鎖中および鎖末端にビニル基を有し、粘度が400mPa・sのジメチルポリシロキサンオイル2部
【0155】
LSR組成物1部分Aと呼ばれる組成物を、スピードミキサーで1分あたり1,000回転で1分間混合する。Pt含有量は10ppmである。
【0156】
次に、このベース1の45部に、スピードミキサーで追加する:
- Si-H基を含む有機ハイドロジェノポリシロキサンM’Q樹脂を1.3部
- 鎖中および鎖末端にSi-H基を含み、約20重量%のSi-H基を含む直鎖有機ハイドロジェノポリシロキサンを0.5部
- 鎖中および鎖末端にビニル基を有し、粘度が400mPa・sのジメチルポリシロキサンオイルを1.5部
- 鎖中及び鎖末端にビニル基を有し、粘度1000mPa・sのジメチルポリシロキサンオイルを1.6部
- 架橋抑制剤としてエチニル-1-シクロヘキサノール-1を0.08部
【0157】
LSR組成物1部分Bと呼ばれる組成物を、スピードミキサーで1分あたり1,000回転で1分間混合する。
【0158】
次いで、スピードミキサーを使用して、同量のチキソトロピー添加剤Dを部分AおよびBに添加する。その後、部分Aと部分Bを1:1の割合で混ぜる。
【0159】
【0160】
LSR組成物の特性
3Dプリント適性
降伏応力は、直径20mmのコーンプレート形状およびコーン角度2°のレオメーターHaake Marsを使用して、25℃で回転せん断測定によって決定した。回転せん断測定は、次のように実行した。0から20s-1まで120秒、20から0s-1まで120秒。次に、測定された応力を、加えられたせん断応力の関数としてプロットする。得られた曲線の20~0s-1の線形部分を使用して、降伏応力(約20~2.5s-1)を決定する。曲線のこの線形部分に対して線形回帰が実行され、切片に対応する降伏応力が決定される。
【0161】
組成物の架橋と3Dプリント適性を評価するために、部分Aと部分Bを、可能な場合はそれぞれカートリッジに入れ、25℃で直径410μmの円錐ノズルを備えた押出しプリンターLDM(液体堆積モデリングプロセス)Deltatowerを使用してプリントした。
【0162】
保管後の架橋は、次のように評価される。1か月の保管後の架橋率が、同じ温度で初期に測定された公称値の80%以上である場合、組成物は安定していると考えられ得る(「OK」を表3に対応)。
【0163】
3Dプリント適性は次のように評価される。シリコーン組成物がプリントされている間、各層は、上に構築される層をサポートするために、著しく崩れることなく、押し出された形状を保持する必要がある。スランピングの問題が確認された場合、シリコーン組成物のプリント適性は弱いと考えられ得る(表3の「No」に対応する)。スランピングが観察されない場合、シリコーン組成物のプリント適性は強いとみなされる(表3の「OK」に対応)。
【0164】
表3は、種々の組成物について得られた結果をまとめたものである。
【表3】
【0165】
これらの結果は、本発明による組成物をカートリッジに入れ、3Dプリンターでプリントできることを示している(例1-3および5-7)。逆に、組成物中の窒素含有量が高すぎる場合、架橋の問題が発生するため、組成物は3Dプリントに適しておらず(例4)、および/または、降伏応力が高すぎ、組成物をカートリッジに投入することができないため、組成物は3Dプリントに適していない(例8)。
【0166】
機械的性質
得られた組成物の機械的特性も試験した。試験は成形プレートで実行した。
【0167】
硬度(ショアA)は、DIN 53505-A法に従って決定される。
【0168】
破断応力および破断伸びは、NF ISO 37法(2011年版)に従って測定された。試験は、タイプ2(H2)のダンベル形状の試験片で実行した。引張り速度は500mm/分で、測定は室温で行った。伸び計を使用して破断点伸びを測定した。
【0169】
引き裂き強度は、ASTM D624法、2012年版に従って決定した。試料形状はA型である。引張り速度は500±50mm/min、測定は室温で行った。
【0170】
【0171】
これらの結果は、チキソトロピー剤を含まない組成物と比較して、チキソトロピー剤Dを含む組成物の機械的特性の変化がないことを示している。
【0172】
架橋率
例2~4による組成物の架橋速度は、ISO6502に従って、1.67Hzおよび0.5の範囲でねじり振動せん断測定を用いて、115℃でレオメトリーによって決定された。結果を表5に示す。
【0173】
【0174】
これらの結果は、本発明による組成物(例2~3)が、3Dプリントに使用するのに十分高い架橋速度を有することを示している。逆に、組成物中の窒素含有量が高すぎる場合(例4)、架橋速度が低すぎて、組成物を3Dプリントに使用することができない。
【0175】
RTV組成物の特性
0.1重量%のDD(窒素含有量:51ppm)を含むおよび含まないRTV n°1組成物の動的粘度を、ブルックフィールド粘度計を用いて25℃で測定した。結果を表6に示す。
【0176】
【0177】
結果は、本発明による組成物が良好なレオロジー特性を有することを示している。特に、低せん断速度が適用されると、組成物は高粘度を有し、高せん断速度が適用されると、組成物の粘度は大幅に低下する。したがって、この組成物は3Dプリントに使用できる。実際、プリントを成功させるためには、シリコーン組成物は適度な圧力で堆積ヘッドを制御されたせん断速度で流れ、大きなスランプなしに押し出された形状を保持する必要がある。
【0178】
RTV組成物n°1および2の架橋および3Dプリント適性を評価するために、可能であれば、部分Aおよび部分Bをそれぞれカートリッジに投入し、25℃で410μmのノズルを備える押出しプリンターLDM(液体堆積モデリングプロセス)Deltatowerを用いてプリントした。
【0179】
種々の組成物について得られた結果を表7にまとめている。
【表7】
【0180】
これらの結果は、本発明による組成物が3Dプリンターでプリントできることを示している(例9)。ただし、組成物中の窒素含有量が高すぎると、保存後に架橋の問題が発生するため、組成物は3Dプリントに適していない(例12)。さらに、組成物中の窒素含有量が低すぎると、組成物は3Dプリンターを使用してプリントできない(例10および11)。
【0181】
RTV n°1組成物を使用した3Dプリント
3Dプリントは、2Kシリコーン組成物用のスタティックミキサーを備えた2成分Viscotec投与システムを含むDelta Tower 3Dプリンターを使用して行われた。
【0182】
RTV n°1組成物の部分Aおよび部分Bをそれぞれカートリッジに投入した。
高さ1cmのスターホイールを表すエラストマー物品は、部分AとBを使用し、200μmのノズルを使用して、速度10mm/sでプリントされた。
【0183】
プリントされたシリコンスターホイールは、注入されたスターホイールと同じ機械的特性を備えている。
【国際調査報告】