(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-28
(54)【発明の名称】ラクトバチルス・プランタラム株、及びそれを含有する、代謝疾患を防止又は処置するための組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20230220BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20230220BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230220BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230220BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20230220BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230220BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230220BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20230220BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20230220BHJP
A23K 10/18 20160101ALI20230220BHJP
【FI】
C12N1/20 A
A61K35/747
A61P1/16
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P9/10 101
A61P9/12
A23L33/135
A23K10/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531076
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(85)【翻訳文提出日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 KR2020019347
(87)【国際公開番号】W WO2021137603
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】10-2019-0178951
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522207143
【氏名又は名称】ジーアイ バイオーム
【氏名又は名称原語表記】GI BIOME
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ボ ギー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ミュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】カン, チャン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ペク, ナム スー
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
2B150AA20
2B150AB03
2B150AC06
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD86
4B018ME01
4B018ME03
4B018ME04
4B018ME14
4B065AA30X
4B065BA21
4B065BA30
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA36
4C087ZA42
4C087ZA45
4C087ZA70
4C087ZA75
4C087ZC33
4C087ZC35
(57)【要約】
提供されるのは、新規のラクトバチルス・プランタラム株、及びそれを含む、代謝疾患を防止又は処置するための組成物である。本発明によるラクトバチルス・プランタラム(アクセッション番号KCTC 14107BP)は、白色脂肪組織、褐色脂肪組織、及び肝組織における脂肪蓄積を阻害することができる。ラクトバチルス・プランタラム株は、優れた血糖改善効果を示すことができ、特に、空腹時血糖値を低下させることができる。ラクトバチルス・プランタラム株は、耐糖能を改善し、インスリン感受性を増加させることにより、インスリン抵抗性を有効に向上させることができる。加えて、ラクトバチルス・プランタラム株は、血液中の代謝ホルモンの濃度を制御することができる。したがって、ラクトバチルス・プランタラム株は、代謝疾患を防止又は処置するために有用に使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)。
【請求項2】
活性成分として、ラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)又はその培養物を含む、代謝疾患を防止又は処置するための医薬組成物。
【請求項3】
前記代謝疾患が、高血圧症、動脈硬化症、高脂血症、非アルコール性脂肪肝疾患、高インスリン血症、2型糖尿病、及びインスリン抵抗性症候群からなる群から選択される、請求項2に記載の代謝疾患を防止又は処置するための医薬組成物。
【請求項4】
前記株が、白色脂肪組織における脂肪蓄積を阻害する、請求項2に記載の代謝疾患を防止又は処置するための医薬組成物。
【請求項5】
前記株が、褐色脂肪組織における脂肪蓄積を低減する、請求項2に記載の代謝疾患を防止又は処置するための医薬組成物。
【請求項6】
前記株が、肝組織における脂肪蓄積を阻害する、請求項2に記載の代謝疾患を防止又は処置するための医薬組成物。
【請求項7】
前記株が、血糖値を低下させる、請求項2に記載の代謝疾患を防止又は処置するための医薬組成物。
【請求項8】
前記株が、インスリン抵抗性を低下させる、請求項2に記載の代謝疾患を防止又は処置するための医薬組成物。
【請求項9】
前記株が、血液中の代謝ホルモンの濃度を制御する、請求項2に記載の代謝疾患を防止又は処置するための医薬組成物。
【請求項10】
前記代謝ホルモンがGLP-1である、請求項9に記載の代謝疾患を防止又は処置するための医薬組成物。
【請求項11】
ラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)又はその培養物を含む、代謝疾患を防止又は阻害するための食品組成物。
【請求項12】
ラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)又はその培養物を含む、代謝疾患を防止又は阻害するための飼料組成物。
【請求項13】
対象にラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)又はその培養物を投与するステップを含む、代謝疾患を防止及び処置する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、新規のラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)株、及びそれを含む、代謝疾患を防止又は処置するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
社会が発展するにつれて、肥満は、重篤な疾患のうちの1つとして現れ、世界保健機関(WHO)は、肥満を処置されるべき疾患と認めている。最近では、肥満の有病率の増加に向かう傾向が、西洋化した食事のために大韓民国においても観察され、肥満のための処置及び防止がますます関心事となっている。肥満は、食品消費とエネルギー消費の間の不均衡の結果生じる体脂肪の過剰な蓄積の状態を指す。加えて、肥満は、インスリン抵抗性、耐糖能、高脂血症などに密接に関係しており、合併症として心血管疾患、脂肪肝疾患、がん、及び糖尿病を含む代謝疾患を伴うことがある。
【0003】
最近では、肥満患者の脂肪組織における炎症応答が増加することが知られるようになったので、肥満は、低度の全身性炎症と考えられることがある。特に、炎症応答が、脂肪組織のサイズ、こうした状態において脂肪組織により産生及び分泌される炎症性アディポカインに比例して増加する炎症性マクロファージにより増加し、心血管疾患及び糖尿病などの代謝疾患の病原因子であることが報告されている。したがって、これらの分子を増加させる肥満は、ほぼすべての成人病の原因と見ることができる。
【0004】
現在処方される肥満薬は、Xenical(Roche Pharmaceuticals.、スイス)、Reductil(Abbott Co.、米国)及びExolise(Arkopharma LLC、フランス)などである。肥満薬は、食欲抑制物質、エネルギー消費促進物質、又は脂肪吸収阻害物質に大きく分類され、肥満薬のほとんどが、視床下部に関係する神経伝達物質を調節することにより食欲を抑制する食欲抑制物質である。しかし、従来の肥満薬は、心疾患、呼吸器疾患、及び神経系疾患などの副作用を有し、そのin vivo持続性が低いという点で問題も有する。したがって、安全且つ有効な肥満薬を開発することが必要とされている。
【0005】
一方では、安全な微生物(例えば、乳酸菌)を使用して肥満を防止又は処置するプロバイオティクスが活発に研究されてきた。特に、研究は、乳酸菌が、正常な腸内フローラの維持、腸内フローラの改善、抗糖尿病及び抗高脂血症効果、発癌の阻害、結腸がんの阻害、並びに宿主の免疫系の非特異的活性などの効果を示すことを示した。
【0006】
肥満防止及び処置効果に関係する乳酸菌に関して、韓国特許第10-1494279号は、脂肪細胞分化に対する阻害効果を有するラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)KY1032株(アクセッション番号KCCM-10430)を開示し、韓国特許第10-0996577号は、肥満阻害効果を有するラクトバチルス・カルバタス(Lactobacillus curvatus)HY7601(アクセッション番号KCTC 11456BP)を開示し、韓国特許第10-1394348号は、脂肪細胞分化に対する阻害効果を有するラクトバチルス・プランタラムDSR920株(アクセッション番号KCCM 11210P)を開示するが、これらのいずれも商業的な成功を得るほど十分に成熟していない。
【0007】
したがって、優れた抗肥満効果を有する新しい株についての研究を継続することが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明者らは、優れた抗肥満効果を有する新しい株を開発する研究の結果、ラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)が優れた抗肥満効果を示すことを見出し、それによって本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は、ラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)を提供する。
【0010】
本発明の別の態様は、活性成分として、ラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)又はその培養物を含む、代謝疾患を防止又は処置するための医薬組成物を提供する。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、ラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)又はその培養物を含む、代謝疾患を防止又は阻害するための食品組成物を提供する。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、ラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)又はその培養物を含む、代謝疾患を防止又は阻害するための飼料組成物を提供する。
【0013】
本発明のその上さらなる別の態様は、ラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)又はその培養物を含む、代謝疾患を防止又は処置する方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本開示は、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus Plantarum)株、及びそれを含む、代謝疾患を防止又は処置するための組成物に関する。本発明によるラクトバチルス・プランタラム(アクセッション番号KCTC 14105BP)は、白色脂肪組織、褐色脂肪組織、及び肝組織における脂肪蓄積を有効に阻害することができる。ラクトバチルス・プランタラム株は、優れた血糖改善効果を示すことができ、特に、空腹時血糖値を低下させることができる。ラクトバチルス・プランタラム株は、耐糖能を改善し、インスリン感受性を増加させることにより、インスリン抵抗性を有効に向上させることができる。加えて、ラクトバチルス・プランタラム株は、血液中の代謝ホルモンの濃度を制御することができる。したがって、ラクトバチルス・プランタラム株は、代謝疾患を防止又は処置するために有用に使用することができる。
【0015】
例示的な実施形態は、添付図面と併せて以下の説明からより詳細に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】高脂肪食のみが与えられたマウスと比較した、16種の株の乳酸菌それぞれの経口投与後の、高脂肪食が与えられたマウスの体重を示すグラフである。
【
図2】高脂肪食のみが与えられたマウスと比較した、16種の株の乳酸菌それぞれの経口投与後の、高脂肪食が与えられたマウスの体重を示すグラフである。
【
図3】高脂肪食のみが与えられたマウスと比較した、16種の株の乳酸菌それぞれの経口投与後の、高脂肪食が与えられたマウスの体重を示すグラフである。
【
図4】比較するために正常固形飼料食が与えられたマウス、高脂肪食が与えられたマウス、高脂肪食及び一般乳酸菌の経口投与が与えられたマウス、並びに高脂肪食及びL.プランタラムGB104株の経口投与が与えられたマウスからの白色脂肪組織における脂肪細胞のサイズを比較する画像である。
【
図5】正常固形飼料食が与えられたマウス、高脂肪食が与えられたマウス、高脂肪食及び一般乳酸菌の経口投与が与えられたマウス、並びに高脂肪食及びL.プランタラムGB104株の経口投与が与えられたマウスの褐色脂肪組織における脂肪細胞のサイズを比較する画像である。
【
図6】正常固形飼料食が与えられたマウス、高脂肪食が与えられたマウス、高脂肪食及び一般乳酸菌の経口投与が与えられたマウス、並びに高脂肪食及びL.プランタラムGB104株の経口投与が与えられたマウスの肝重量を比較するグラフである。
【
図7】正常固形飼料食が与えられたマウス、高脂肪食が与えられたマウス、高脂肪食及び一般乳酸菌の経口投与が与えられたマウス、並びに高脂肪食及びL.プランタラムGB104の経口投与が与えられたマウスの肝組織における脂肪蓄積の程度を比較する画像である。
【
図8】血糖降下効果を確認するために正常固形飼料食が与えられたマウス、高脂肪食が与えられたマウス、高脂肪食及び一般乳酸菌の経口投与が与えられたマウス、並びに高脂肪食及びL.プランタラムGB104株の経口投与が与えられたマウスの空腹時血糖値を比較するグラフである。
【
図9】耐糖能改善効果を確認するために正常固形飼料食が与えられたマウス、高脂肪食が与えられたマウス、高脂肪食及び一般乳酸菌の経口投与が与えられたマウス、並びに高脂肪食及びL.プランタラムGB104株の経口投与が与えられたマウスにおける経時的な、グルコースの投与後の血糖値を比較するグラフである。
【
図10】インスリン抵抗性向上効果を確認するために正常固形飼料食が与えられたマウス、高脂肪食が与えられたマウス、高脂肪食及び一般乳酸菌の経口投与が与えられたマウス、並びに高脂肪食及びL.プランタラムGB104株の経口投与が与えられたマウスにおける経時的な、インスリンの投与後の血糖値を比較するグラフである。
【
図11】代謝ホルモンを制御する能力を確認するために正常固形飼料食が与えられたマウス、高脂肪食が与えられたマウス、高脂肪食及び一般乳酸菌の経口投与が与えられたマウス、並びに高脂肪食及びL.プランタラムGB104株の経口投与が与えられたマウスの血液中のグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の濃度を比較するグラフである。
【0017】
[発明を実施するための最良の形態]
本発明のある態様は、ラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)を提供する。
【0018】
ラクトバチルスは、自然界に広く分布する好気性又は通性嫌気性のグラム陽性桿菌である。ラクトバチルス属は、L.プランタラム、L.サケイなどを含む。本発明者らは、優れた抗肥満効果を有する新規のラクトバチルス・プランタラム株を選択し、これを「ラクトバチルス・プランタラムGB104」と名付けた。株は、2019年9月6日にアクセッション番号SD1337でKorea Collection for Type Cultures、Korea Research Institute of Bioscience and Biotechnologyに寄託された。同株は、2020年1月14日にアクセッション番号KCTC 14107BPでKorea Collection for Type Cultures、Korea Research Institute of Bioscience and Biotechnologyに寄託された。加えて、株は、プロバイオティック株に属し、人体に無害であり、副作用なく使用することができる。
【0019】
本明細書において使用されるとき、「ラクトバチルス・プランタラムGB104」という用語は、L.プランタラムGB104又はラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)として交換可能に記載される。
【0020】
本発明の別の態様は、活性成分として、ラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)又はその培養物を含む、代謝疾患を防止又は処置するための医薬組成物を提供する。
【0021】
ラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)は、上述と同じである。この場合、株は、生きていても、又は死んでいてもよく、生きている株が好ましい。加えて、株の培養物は、株を含有していても、又は含有していなくてもよく、株を含有することが好ましい。
【0022】
組成物は、組成物の総重量に基づいて、治療的有効量、又は栄養的有効濃度の活性成分ラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)又はその培養物を含み、ここで104~1016CFU/g、好ましくは106~1012CFU/gの含有量が含まれ、又は等しい数の生きている株を有する培養物が含まれる。一般に、成人患者については、1×106CFU/g以上の生きている株、好ましくは1×108~1×1012CFU/gの生きている株が1回投与されても、又は数回に分けられてもよい。
【0023】
本明細書において使用されるとき、「代謝疾患」という用語は、メタボリックシンドロームとも呼ばれ、インスリン抵抗性によって引き起こされると想定される疾患であり、コレステロール、血圧、及び血糖値のうちの2つ以上に異常を有する症状である。メタボリックシンドロームは、様々な心血管疾患及び2型糖尿病の危険因子が1つの疾患群として一緒にクラスター化された現象の概念化であり、インスリン抵抗性並びにインスリン抵抗性に関係する複雑且つ様々な代謝異常並びに臨床的特徴のすべてを包含する。詳細には、代謝疾患は、肥満、高血圧症、動脈硬化症、高脂血症、脂肪肝、非アルコール性脂肪肝疾患、高インスリン血症、糖尿病、及びインスリン抵抗性症候群からなる群から選択されるいずれか1つであり得る。
【0024】
本明細書において使用されるとき、「肥満」という用語は、脂肪過多症とも呼ばれ、過剰な体脂肪が異常に蓄積した疾患である。不規則な食習慣、過剰な食物摂取、身体活動の不足、内分泌系疾患、遺伝的要因、心理的要因、薬剤などが肥満を引き起こし得る。加えて、肥満は、動脈硬化症、心血管疾患(脳卒中及び虚血性心血管疾患)、高血圧症、糖尿病、高脂血症、脂肪肝、胆石症、閉塞性睡眠時無呼吸、月経不順、多嚢胞性卵巣疾患、不妊症、リビドー減退、うつ病、変形性関節症、痛風などの発生率を増加させる。肥満は、単純性肥満、症候性肥満、小児肥満、成人肥満、細胞増殖性肥満、細胞肥大性肥満、上半身肥満、下半身肥満、内臓脂肪型肥満、又は皮下脂肪型肥満であり得る。
【0025】
本明細書において使用されるとき、「高血圧症」という用語は、動脈を通る血流の灌流血圧が増加する現象を指す。収縮期血圧が140mmHgに達し、拡張期血圧が90mmHg以上に達すると、高血圧症と一般に診断され得る。高血圧症は、顕著な症状を有さず、公知の原因を有さない原発性(又は本態性)高血圧症、及び腎疾患、内分泌疾患、妊娠中毒などによって引き起こされる二次性高血圧症が存在する。高血圧症のほとんどの場合(90~95%)が、肥満、ストレス、アルコール、及び喫煙などの環境要因と組み合わさった遺伝的原因によって引き起こされると想定される原発性高血圧症である。
【0026】
本明細書において使用されるとき、「動脈硬化症」という用語は、動脈の壁の弾性の損失、異常組織の増殖、及び動脈壁の内膜内側の脂肪の蓄積により動脈壁の幅を狭くする現象と定義される。動脈硬化症は、動脈の病理学的変化を指し、動脈硬化症により影響される器官に応じて名付けられる用語である。例えば、動脈硬化症は、動脈硬化症に起因する脳梗塞、及び冠動脈アテローム性動脈硬化に起因する心筋梗塞を含むがこれらに限定されない。
【0027】
本明細書において使用されるとき、「高脂血症」という用語は、脂質代謝が適切に行われないために血液中のトリグリセリド及びコレステロールなどの大量の脂質によって引き起こされる疾患である。詳細には、高脂血症は、血液中のトリグリセリド、LDLコレステロール、及び遊離脂肪酸などの脂質成分が増加する状態を指す。高脂血症は、高コレステロール血症又は高トリグリセリド血症を含むがこれらに限定されない。
【0028】
本明細書において使用されるとき、「脂肪肝」という用語は、脂質代謝障害に起因する肝細胞における脂肪の過剰な蓄積の状態であり、脂肪が肝重量の5%以上に達する場合と定義される。これは、例えば、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、動脈硬化症、脂肪肝、膵炎などの様々な疾患を引き起こす。脂肪肝は、アルコール消費によって引き起こされるアルコール性脂肪肝及びアルコールによって引き起こされない非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)に分けられる。
【0029】
本明細書において使用されるとき、「非アルコール性脂肪肝疾患」という用語は、脂肪肝がアルコールによって引き起こされない場合を指し、肝臓における単純脂肪症から、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変症までの範囲の肝損傷の一連の過程を含む。非アルコール性脂肪肝疾患の原因は、抗不整脈剤、抗ウイルス剤、ステロイド、又は細胞毒性剤などの薬物の副作用、炭水化物などの過剰なカロリー消費、肥満、糖尿病、及び何らかの遺伝的原因である。
【0030】
本明細書において使用されるとき、「糖尿病」という用語は、グルコース不耐性を結果として生じるインスリンの相対的又は絶対的不足によって特徴付けられる慢性疾患である。糖尿病は、すべての型の糖尿病を含み、例えば、1型糖尿病、2型糖尿病、及び遺伝性糖尿病であり得るが、これらに限定されない。1型糖尿病は、主にβ細胞の破壊の結果生じるインスリン依存性糖尿病である。本明細書において使用されるとき、「2型糖尿病」という用語は、インスリン非依存性糖尿病であり、これは、インスリン抵抗性によって引き起こされる。2型糖尿病は、インスリンの増加が筋肉及び脂肪組織中で検出されないか、又はたとえインスリンの増加が検出されたとしてもインスリンの作用が有効に起こらないため引き起こされる。
【0031】
本明細書において使用されるとき、「インスリン抵抗性」という用語は、血糖値を低下させるインスリンに細胞が応答せず、したがってグルコースを有効に燃焼させることができない状態を指す。インスリン抵抗性が高いとき、身体は、より多くのインスリンが必要であると考え、より多くのインスリンを産生する。これは、結果として高インスリン血症、高血圧症、又は脂質異常症、並びに心疾患及び糖尿病を生じる。
【0032】
本明細書において使用されるとき、「インスリン抵抗性症候群」という用語は、インスリン抵抗性によって引き起こされる疾患の総称である。これは、インスリン作用に対する細胞抵抗性、高インスリン血症並びに超低密度リポタンパク質(VLDL)及びトリグリセリドの増加、並びに高密度リポタンパク質(HDL)の減少、高血圧症などによって特徴付けられ、心血管疾患及び2型糖尿病の危険因子として認識されている。
【0033】
本発明のある実施形態によれば、株は、白色脂肪組織における脂肪蓄積を阻害することができる。詳細には、本発明のある実施形態において、高脂肪食が与えられたマウスモデルへの株の経口投与は、マウスモデルの白色脂肪組織における脂肪細胞のサイズが著しく減少する結果につながった。一方では、高脂肪食が与えられたマウスモデルに一般乳酸菌が経口的に投与されたとき、マウスモデルの白色脂肪組織における脂肪細胞のサイズは減少しなかった。これに基づいて、株が白色脂肪組織における脂肪蓄積を阻害することが確認された(
図4)。
【0034】
本発明のある実施形態によれば、株は、褐色脂肪組織における脂肪蓄積を阻害することができる。詳細には、本発明のある実施形態において、高脂肪食が与えられたマウスモデルへの株の経口投与は、マウスモデルの褐色脂肪組織における脂肪細胞のサイズが著しく減少する結果につながった。一方では、高脂肪食が与えられたマウスモデルに一般乳酸菌が経口的に投与されたとき、マウスモデルの褐色脂肪組織における脂肪細胞のサイズは減少しなかった。これに基づいて、株が褐色脂肪組織における脂肪蓄積を阻害することが確認された(
図5)。
【0035】
本発明のある実施形態によれば、株は、肝重量を低下させ、肝組織における脂肪蓄積を阻害することができる。詳細には、本発明のある実施形態において、高脂肪食が与えられたマウスモデルへの株の経口投与は、マウスモデルの組織における肝重量及び脂肪蓄積が減少する結果につながった。一方では、高脂肪食が与えられたマウスモデルに一般乳酸菌が経口的に投与されたとき、多くの脂肪がマウスモデルの肝組織に蓄積し、その上、重量にも変化はなかった。これに基づいて、株が肝重量を低下させ、組織における脂肪蓄積を阻害することが確認された(
図6及び
図7)。
【0036】
本発明のある実施形態によれば、株は、血糖値を低下させることができる。好ましくは、株は、空腹時血糖値を低下させ、耐糖能を改善することができる。詳細には、本発明のある実施形態において、高脂肪食が与えられたマウスモデルへの株の経口投与は、空腹時血糖値及びグルコースの投与後の血糖値がマウスモデルにおいて低下する結果につながった。一方では、高脂肪食が与えられたマウスモデルに一般乳酸菌が経口的に投与されたとき、空腹時血糖値及びグルコースの投与後の血糖値は低下しなかった。これに基づいて、株が空腹時血糖値を低下させ、耐糖能を改善することが確認された(
図8及び
図9)。
【0037】
本発明のある実施形態によれば、株は、インスリン抵抗性を向上させることができる。詳細には、本発明のある実施形態において、高脂肪食が与えられたマウスモデルに株が経口的に投与されたとき、血糖値がインスリンの投与後のマウスモデルにおいて著しく低下した。一方では、高脂肪食が与えられたマウスモデルに一般乳酸菌が経口的に投与されたとき、インスリンの投与後の血糖値は低下しなかった。これに基づいて、株がインスリン感受性を増加させることによりインスリン抵抗性を向上させることが確認された(
図10)。
【0038】
本発明のある実施形態によれば、株は、代謝ホルモンGLP-1の分泌を制御することができる。
【0039】
本明細書において使用されるとき、「代謝ホルモン」という用語は、代謝制御に関与するホルモンを指し、好ましくはインクレチンであり得る。本明細書において使用されるとき、「インクレチン」という用語は、食品を食べた後に食品の栄養素のために胃腸管内で分泌され、膵臓において血糖依存性経路においてインスリンの分泌を促進するのに役立つホルモンである。インクレチンは、GLP-1及びグルコース依存性インスリン分泌刺激ペプチド(GIP)を含む。「GLP-1」は、膵臓に作用して、インスリン分泌を増加させ、グルカゴン分泌を減少させ、それによって血糖降下効果を示す。加えて、GLP-1は、胃内容排出を遅延させ、食欲を抑制し、β細胞の機能を改善して、抗糖尿病及び抗肥満効果を示す。
【0040】
本発明のある実施形態において、高脂肪食が与えられたマウスモデルへの株の経口投与は、結果としてマウスモデルにおいて減少した血液中のGLP-1の濃度の増加を生じたが、一般乳酸菌が経口的に投与されたとき、血液中のGLP-1の濃度の変化は観察されなかった。これに基づいて、株が血液中のGLP-1の濃度を制御することが確認された(
図11)。
【0041】
組成物は、凍結保護物質又は賦形剤をさらに含んでもよい。詳細には、凍結保護物質は、グリセロール、トレハロース、マルトデキストリン、脱脂粉乳、及びデンプンからなる群から選択される1種又は複数種であり得る。加えて、賦形剤は、グルコース、デキストリン、及び脱脂粉乳からなる群から選択される1種又は複数種であり得る。
【0042】
組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.01wt%~20wt%又は0.01wt%~10wt%の凍結保護物質を含んでもよく、詳細には、組成物は、5wt%~20wt%のグリセロール、2wt%~10wt%のトレハロース、2wt%~10wt%のマルトデキストリン、0.5wt%~2wt%の脱脂粉乳、及び0.1wt%~1wt%のデンプンを含んでもよい。加えて、組成物は、組成物の総重量に基づいて、75wt%~95wt%又は85wt%~95wt%の賦形剤を含んでもよい。
【0043】
本発明のさらに別の態様は、ラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)又はその培養物を含む、代謝疾患を防止又は阻害するための食品組成物を提供する。
【0044】
ラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)は、上述と同じである。
【0045】
食品組成物は、機能性食品、栄養補助食品、健康食品、及び食品添加物などのすべての形態を含み、食品組成物のタイプは、当技術分野において公知の従来の方法に従って様々な形態で調製することができる。
【0046】
株が食品添加物として使用されるとき、株は、そのまま加えることができ、又は他の食品若しくは食品成分と共に使用することができ、従来の方法に従って適切に使用することができる。活性成分の混合量は、使用の目的(防止、健康、又は治療処置)に応じて適切に決定することができる。一般に、食品又は飲料を調製するとき、活性成分は、株を含有する原材料組成物中0.0001wt%~1wt%、詳細には0.001wt%~0.1wt%の量で加えることができる。しかし、健康及び衛生又は健康管理目的の長期摂取の場合、量は、上記の範囲を下回ることがある。
【0047】
本発明のさらに別の態様は、ラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)又はその培養物を含む、代謝疾患を防止又は阻害するための飼料組成物を提供する。
【0048】
ラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)は、上述と同じである。
【0049】
代謝疾患を防止又は改善するための飼料組成物は、当技術分野において公知の飼料組成物を調製するための様々な方法に従って適切な有効濃度範囲のラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)を加えることにより調製することができる。
【0050】
本発明のその上さらなる別の態様は、対象にラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)又はその培養物を投与するステップを含む、代謝疾患を防止及び処置する方法を提供する。
【0051】
対象は、代謝疾患を有してもよい。加えて、対象は、哺乳動物、好ましくはヒトであり得る。この場合、ラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)は、上述と同じである。加えて、株又はその培養物の投与経路、投与量、及び投与頻度は、患者の状態、及び副作用の存在又は非存在に応じて様々な方法及び量で対象に投与されてよく、最適な投与方法、投与量及び投与頻度は、当業者により適切な範囲内で適切に選択することができる。加えて、代謝疾患のタイプは、上述の通りである。
【0052】
本発明のさらに別の態様は、代謝疾患を処置するためのラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)又はその培養物の使用を提供する。
【0053】
この場合、ラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)は、上述と同じである。加えて、代謝疾患のタイプは、上述の通りである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明が以下の例によってより詳細に説明される。しかし、以下の例は、本発明を例示するためだけのものであり、本発明の範囲は、以下の例に限定されない。
【実施例】
【0055】
実施例1.抗肥満効果を有する株のスクリーニング
Mediogen Co.から購入された16種の乳酸菌の中で抗肥満効力を有する乳酸菌を、マウスモデルを使用して選択した。詳細には、60%高脂肪食(HFD)を与え、次いで、それぞれの乳酸菌を経口的に投与したC57BL/6を実験群として使用した。60%高脂肪食のみが与えられたマウスを対照群として使用した。この場合、乳酸菌のそれぞれを毎日5×109CFU/マウスで経口的に投与した。抗肥満効果を実験群と対照群の間の体重差に基づいて決定した。
【0056】
その結果、ラクトバチルス・プランタラムGB104株が体重増加を有効に阻害した。この場合、抗肥満効果を示さなかった一部のL.プランタラム乳酸菌が存在した(
図1~
図3)。これに基づいて、ラクトバチルス・プランタラムGB104株がL.プランタラム乳酸菌の中で抗肥満効果を示すことが確認された。
【0057】
実施例2.白色脂肪組織におけるL.プランタラムGB104株の脂肪蓄積阻害効果の確認
マウスモデルを使用して、白色脂肪組織におけるL.プランタラムGB104(アクセッション番号KCTC 14107BP)株の脂肪蓄積阻害効果を確認した。詳細には、60%高脂肪食(HFD)を与え、次いで、L.プランタラムGB104株を経口的に投与したC57BL/6マウスを実験群として使用した。加えて、60%高脂肪食のみが与えられたマウスを陰性対照群として使用し、60%高脂肪食及び一般乳酸菌(L.プランタラムMG5120)の経口投与が与えられたマウスを陽性対照群として使用した。さらに、正常固形飼料食(NCD)が与えられたマウスを正常群として使用した。この場合、Mediogen Co.から購入された一般乳酸菌、又はL.プランタラムGB104株を5×109CFU/マウスで毎日経口的に投与した。
【0058】
各試験物質の投与が完了した後、白色脂肪組織を剖検により分離した。分離された白色脂肪組織を10%中性緩衝ホルマリンで固定した。次いで、パラフィン切片を調製し、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色し、次いで、細胞のサイズを観察した。
【0059】
結果は、高脂肪食が与えられた陰性及び陽性対照群における脂肪細胞のサイズが正常群と比較して増加し、一方、L.プランタラムGB104株を経口的に投与した実験群における脂肪細胞のサイズが著しく減少することを示した(
図4)。これに基づいて、L.プランタラムGB104株が白色脂肪組織における脂肪蓄積を有効に阻害することが確認された。
【0060】
実施例3.褐色脂肪組織におけるL.プランタラムGB104株の脂肪蓄積阻害効果の確認
マウスモデルを使用して、褐色脂肪組織におけるL.プランタラムGB104株の脂肪蓄積阻害効果を確認した。詳細には、60%(HFD)を与え、次いで、L.プランタラムGB104株を経口的に投与したC57BL/6マウスを実験群として使用した。加えて、60%高脂肪食のみが与えられたマウスを陰性対照群として使用し、60%高脂肪食及び一般乳酸菌(L.プランタラムMG5120)の経口投与が与えられたマウスを陽性対照群として使用した。さらに、正常固形飼料食(NCD)が与えられたマウスを正常群として使用した。この場合、Mediogen Co.から購入された一般乳酸菌、又はL.プランタラムGB104株を5×109CFU/マウスで毎日経口的に投与した。
【0061】
各試験物質の投与が完了した後、剖検により各群におけるマウスから褐色脂肪組織を分離した。分離された褐色脂肪組織を10%中性緩衝ホルマリンで固定した。次いで、パラフィン切片を調製し、H&Eで染色し、次いで、細胞のサイズを観察した。
【0062】
結果は、高脂肪食が与えられた陰性及び陽性対照群マウスにおける脂肪細胞のサイズが正常群と比較して増加し、一方、L.プランタラムGB104株を経口的に投与した実験群における脂肪細胞のサイズが著しく減少することを示した(
図5)。これに基づいて、L.プランタラムGB104株が褐色脂肪組織における脂肪蓄積を有効に阻害することが確認された。
【0063】
実施例4.肝組織におけるL.プランタラムGB104株の脂肪蓄積阻害効果の確認
マウスモデルを使用して、肝組織におけるL.プランタラムGB104株の脂肪蓄積阻害効果を確認した。詳細には、60%(HFD)を与え、次いで、L.プランタラムGB104株を経口的に投与したC57BL/6マウスを実験群として使用した。加えて、60%高脂肪食のみが与えられたマウスを陰性対照群として使用し、60%高脂肪食及び一般乳酸菌(L.プランタラムMG5120)の経口投与が与えられたマウスを陽性対照群として使用した。さらに、正常固形飼料食(NCD)が与えられたマウスを正常群として使用した。この場合、Mediogen Co.から購入された一般乳酸菌、又はL.プランタラムGB104株を5×109CFU/マウスで毎日経口的に投与した。
【0064】
各試験物質の投与が完了した後、肝臓を剖検により摘出し、重量を測定して、群間で重量を比較及び評価した。摘出された肝臓を10%緩衝ホルマリンで固定した後、パラフィン切片を調製し、H&Eで染色し、次いで、細胞のサイズを観察した。
【0065】
結果は、高脂肪食が与えられた陰性及び陽性対照群マウスの肝重量が正常群と比較して増加し、一方、L.プランタラムGB104株を経口的に投与した実験群マウスにおける肝重量が陰性対照群と比較して著しく減少することを示した(
図6)。さらに、正常群と比較して、高脂肪食が与えられた陰性及び陽性対照群マウスにおいて肝組織における脂肪蓄積が増加する。しかし、L.プランタラムGB104株を経口的に投与した実験群マウスの肝組織に脂肪がほとんど蓄積せず、脂肪蓄積レベルが、陰性対照群のものと同様であった(
図7)。これに基づいて、L.プランタラムGB104株が肝重量及び肝組織における脂肪蓄積を有効に阻害することが確認された。
【0066】
実施例5.L.プランタラムGB104株の空腹時血糖降下及び耐糖能改善効果の確認
糖負荷試験(GTT)を実施して、L.プランタラムGB104株の耐糖能改善効果を確認した。まず、60%(HFD)を与え、次いで、L.プランタラムGB104株を経口的に投与したC57BL/6マウスを実験群として使用した。加えて、60%高脂肪食のみが与えられたマウスを陰性対照群として使用し、60%高脂肪食及び一般乳酸菌(L.プランタラムMG5120)の経口投与が与えられたマウスを陽性対照群として使用した。さらに、正常固形飼料食(NCD)が与えられたマウスを正常群として使用した。この場合、Mediogen Co.から購入された一般乳酸菌、又はL.プランタラムGB104株を5×109CFU/マウスで毎日経口的に投与した。
【0067】
糖負荷試験を実施するために、マウスを16時間以上絶食させ、次いで、グルコース溶液を1g/kgの用量で腹腔内に注射した。次いで、血液を0、30、60、90、及び120分後にマウスの尾静脈から採取し、血糖計を使用して血糖を測定した。この場合、0分における血糖は空腹時血糖を表す。
【0068】
結果は、正常群と比較して、高脂肪食が与えられた陰性及び陽性対照群マウスにおいて空腹時血糖値が著しく上昇することを示した。一方では、L.プランタラムGB104株を経口的に投与した実験群マウスの空腹時血糖値は、陰性対照群と比較して著しく低下した(
図8)。
【0069】
加えて、高脂肪食が与えられた陰性及び陽性対照群マウスにおけるグルコースの投与後の血糖値が正常群のものよりも高く、一方、L.プランタラムGB104株を経口的に投与した実験群マウスの血糖値が陰性対照群と比較して著しく低下することが確認された(
図9)。これに基づいて、L.プランタラムGB104株が空腹時血糖降下及び耐糖能改善効果を示すことが確認された。
【0070】
実施例6.L.プランタラムGB104株のインスリン抵抗性向上効果の確認
インスリン耐性試験(ITT)を実施して、L.プランタラムGB104株のインスリン抵抗性向上効果を確認した。まず、60%(HFD)を与え、次いで、L.プランタラムGB104株を経口的に投与したC57BL/6マウスを実験群として使用した。加えて、60%高脂肪食のみが与えられたマウスを陰性対照群として使用し、60%高脂肪食及び一般乳酸菌(L.プランタラムMG5120)の経口投与が与えられたマウスを陽性対照群として使用した。さらに、正常固形飼料食(NCD)が与えられたマウスを正常群として使用した。この場合、Mediogen Co.から購入された一般乳酸菌、又はL.プランタラムGB104株を5×109CFU/マウスで毎日経口的に投与した。
【0071】
インスリン耐性試験を実施するために、マウスを4.5時間絶食させ、次いで、インスリン溶液を1U/kgの用量で腹腔内に投与した。血液を0、30、60、90及び120分後にマウスの尾静脈から採取し、次いで、血糖を血糖計で測定した。
【0072】
結果は、高脂肪食が与えられた陰性及び陽性対照群マウスにおけるインスリンの投与後の血糖値が正常群のものよりも高く、一方、L.プランタラムGB104株を経口的に投与した実験群マウスの血糖値が陰性対照群と比較して著しく低下することを確認した(
図10)。これに基づいて、L.プランタラムGB104株が、インスリン感受性を増加させることによりインスリン抵抗性を有効に向上させることが確認された。
【0073】
実施例7.L.プランタラムGB104株のGLP-1分泌促進効果の確認
L.プランタラムGB104株の投与によって引き起こされるGLP-1制御効果をマウスモデルを使用して確認した。詳細には、60%(HFD)を与え、次いで、L.プランタラムGB104株を経口的に投与したC57BL/6マウスを実験群として使用した。加えて、60%高脂肪食のみが与えられたマウスを陰性対照群として使用し、60%高脂肪食及び一般乳酸菌(L.プランタラムMG5120)の経口投与が与えられたマウスを陽性対照群として使用した。さらに、正常固形飼料食(NCD)が与えられたマウスを正常群として使用した。この場合、Mediogen Co.から購入された一般乳酸菌、又はL.プランタラムGB104株を5×109CFU/マウスで毎日経口的に投与した。
【0074】
各群におけるマウスの血液から血清を単離し、血清中のGLP-1の濃度を、Bio-plex Pro Mouse Diabetes 8-plexアッセイキット(Bio-rad、Hercules、CA、米国)を使用することにより分析した。キットのプロトコールを参照することによりサンプル分析手順を実施した。
【0075】
結果は、高脂肪食が与えられた陰性及び陽性対照群マウスの血清中のGLP-1の濃度が正常群と比較してより低いか、又は同様であり、一方、L.プランタラムGB104株を経口的に投与した実験群マウスのGLP-1の濃度が陰性対照群よりも著しく高いことを示した(
図11)。これに基づいて、血清中のGLP-1の濃度を増加させるL.プランタラムGB104株の効果を確認した。
【受託番号】
【0076】
<アクセッション番号>
寄託機関名:Korean Collection for Type Cultures(KCTC)、Korea Research Institute of Bioscience and Biotechnology
アクセッション番号:KCTC14107BP
寄託日:20200114。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)。
【請求項2】
活性成分として、ラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)又はその培養物を含む、代謝疾患を防止又は処置するための医薬組成物。
【請求項3】
前記代謝疾患が、高血圧症、動脈硬化症、高脂血症、非アルコール性脂肪肝疾患、高インスリン血症、2型糖尿病、及びインスリン抵抗性症候群からなる群から選択される、請求項2に記載の代謝疾患を防止又は処置するための医薬組成物。
【請求項4】
前記株が、白色脂肪組織における脂肪蓄積を阻害する、請求項2に記載の代謝疾患を防止又は処置するための医薬組成物。
【請求項5】
前記株が、褐色脂肪組織における脂肪蓄積を低減する、請求項2に記載の代謝疾患を防止又は処置するための医薬組成物。
【請求項6】
前記株が、肝組織における脂肪蓄積を阻害する、請求項2に記載の代謝疾患を防止又は処置するための医薬組成物。
【請求項7】
前記株が、血糖値を低下させる、請求項2に記載の代謝疾患を防止又は処置するための医薬組成物。
【請求項8】
前記株が、インスリン抵抗性を低下させる、請求項2に記載の代謝疾患を防止又は処置するための医薬組成物。
【請求項9】
前記株が、血液中の代謝ホルモンの濃度を制御する、請求項2に記載の代謝疾患を防止又は処置するための医薬組成物。
【請求項10】
前記代謝ホルモンがGLP-1である、請求項9に記載の代謝疾患を防止又は処置するための医薬組成物。
【請求項11】
ラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)又はその培養物を含む、代謝疾患を防止又は阻害するための食品組成物。
【請求項12】
ラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)又はその培養物を含む、代謝疾患を防止又は阻害するための飼料組成物。
【請求項13】
代謝疾患を防止及び処置するための医薬組成物を製造するためのラクトバチルス・プランタラム株(アクセッション番号KCTC 14107BP)又はその培養物の使用。
【国際調査報告】