(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-28
(54)【発明の名称】ステント性能を改善するための装置およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/852 20130101AFI20230220BHJP
A61F 2/844 20130101ALI20230220BHJP
【FI】
A61F2/852
A61F2/844
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533333
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(85)【翻訳文提出日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 US2020063450
(87)【国際公開番号】W WO2021113738
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520127993
【氏名又は名称】ディーピー ホールディング(ユー.ケー)リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DP HOLDING (U.K) LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バームフォース, ピーター ケネス
(72)【発明者】
【氏名】スペンサー, ダレン
(72)【発明者】
【氏名】ソボトカ, ポール
(72)【発明者】
【氏名】ブレネマン, ロドニー
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA43
4C267AA44
4C267AA45
4C267AA53
4C267AA56
4C267AA58
4C267BB03
4C267BB05
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4C267EE03
4C267GG03
4C267GG05
4C267GG21
4C267HH04
(57)【要約】
ステントシステムは、完全にまたは部分的に閉塞され得る静脈または動脈などの対象血管の内腔に配置するための主ステントを備える。主ステントは、血管壁に接触し、少なくとも1つの副ステント要素は、主ステント内で完全に展開され、主ステントの内面に係合するように構成される。副ステント要素は、副ステント要素が展開される位置で、対象血管の内腔のアスペクト比を変化させ、またはアスペクト比の変化に抗するための持続的な径方向外向きの力を、主ステントの内面に印加するように構成される。これにより、副ステント要素は、主ステントと協働して対象血管の開通性を回復させる。様々な態様のステントシステム、展開装置、ならびに完全にまたは部分的に閉塞した血管を治療するための方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管壁に接触する外面および内側を向く内面を有し、対象血管の内腔に配置するための主ステントと、
前記主ステントの内部で完全に展開可能であり、前記主ステントの前記内面に係合するように構成される少なくとも1つの副ステント要素と、
を備え、
前記少なくとも1つの副ステント要素は、前記副ステント要素が展開された位置において、前記対象血管の前記内腔のアスペクト比を変化させ、または前記アスペクト比の変化に抗するための持続的な径方向外向きの力を、前記主ステントの前記内面に印加するように構成される、ステントシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの副ステント要素は、前記主ステントの前記内面と係合するための1つ以上の取付部を有する、請求項1に記載のステントシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの副ステント要素は、展開されたときに、前記内腔のアスペクト比および断面を変化させて実質的に円形にするよう、前記主ステントの前記内面に係合するように構成される、請求項1に記載のステントシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの副ステント要素は、展開されたときに、前記主ステントの全周にわたって実質的に均一に持続的な径方向外向きの力を印加するように構成される、請求項1に記載のステントシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの副ステント要素は、展開されたときに、実質的に円形の断面を有する、請求項1に記載のステントシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの副ステント要素は、展開されたときに、実質的に楕円形の断面を有する、請求項1に記載のステントシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの副ステント要素は、Sリングを有する、請求項1に記載のステントシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの副ステント要素は、コイルを有する、請求項1に記載のステントシステム。
【請求項9】
前記副ステント要素を複数備える、請求項1に記載のステントシステム。
【請求項10】
対象の体の内部において完全にまたは部分的に閉塞した対象血管の開通性を回復するためのステントシステムであって、
血管壁に接触する外面および内側を向く内面を有し、前記対象血管の内腔に配置するための主ステントと、
前記主ステントの内部で完全に展開可能であり、前記主ステントの前記内面に係合するように構成される複数の副ステント要素と、
を備え、
前記複数の副ステント要素は、前記副ステント要素が展開された位置において、前記対象血管の前記内腔のアスペクト比を変化させるための持続的な径方向外向きの力を、前記主ステントの前記内面に印加するように構成される、ステントシステム。
【請求項11】
前記対象血管の前記内腔のアスペクト比は、前記完全にまたは部分的に閉塞した対象血管の開通性を回復するように、約1になるよう変化される、請求項10に記載のステントシステム。
【請求項12】
前記血管は、静脈である、請求項10に記載のステントシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの副ステント要素は、Sリングを有する、請求項10に記載のステントシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの副ステント要素は、コイルを有する、請求項10に記載のステントシステム。
【請求項15】
近位端および遠位端を含む細長い構造を有し、個別対象の内部の血管内でステント要素を展開するための経皮的な装置であって、
前記装置の前記近位端に配置され、ユーザによる前記装置の制御および前記ステント要素の展開を媒介するためのハンドルと、
中央内腔を規定しかつ取り囲むと共に、前記遠位端まで延びるカテーテル本体と、
前記装置の前記遠位端に配置されるステント要素支持体と、
を備え、
前記ステント要素支持体は、前記ステント要素を形成するための少なくとも1つのワイヤが周囲に配置される細長い筒状のコアと、近位方向に後退可能かつスライド可能な外側シースと、を有し、
前記コアは、近位側の解除可能な取付点と、遠位側の解除可能な取付点と、を含み、かつ前記少なくとも1つのワイヤが、前記近位側の取付点と前記遠位側の取付点との間を延びかつ両取付点に取り付けられており、
前記近位側の解除可能な取付点と、前記遠位側の解除可能な取付点との少なくとも一方は、前記装置の長手軸に沿って、他方の取付点に対して相対的に移動可能に構成される、装置。
【請求項16】
前記遠位側の解除可能な取付点は、前記近位側の解除可能な取付点に対して移動可能であり、
前記近位側の解除可能な取付点の位置は、固定されている、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記近位側の解除可能な取付点は、前記遠位側の解除可能な取付点に対して移動可能であり、
前記遠位側の解除可能な取付点の位置は、固定されている、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記ステント要素支持体は、前記中央内腔の内部に設けられる、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記中央内腔は、前記ステント要素支持体を経由して前記遠位端まで延びている、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記スライド可能な外側シースの後退は、前記ハンドル内に設けられた後退機構を介して制御される、請求項15に記載の装置。
【請求項21】
前記近位側および遠位側の解除可能な取付点からの前記少なくとも1つのワイヤの解放は、前記ハンドル内に設けられた解放機構により制御される、請求項15に記載の装置。
【請求項22】
前記近位側および遠位側の解除可能な取付点は、前記ワイヤにトルクを印加または解除するために互いに対して回転可能である、請求項15に記載の装置。
【請求項23】
前記ステント要素支持体は、位置決め機構を有する、請求項15に記載の装置。
【請求項24】
前記位置決め機構は、前記ステント要素支持体に沿って配置された1つ以上の放射線不透過性のマーカを有する、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記位置決め機構は、前記ステント要素支持体に沿って配置された1つ以上の超音波窓を有する、請求項23に記載の装置。
【請求項26】
スパイラル状に構成され、前記スパイラルの中心軸から外向きに付勢された両端部を有する少なくとも1つのワイヤを備え、
前記外向きに付勢された端部は、(i)前記ステント要素の長手方向の移動を阻止するべく固定するため、(ii)前記ステント要素の追加的な周囲への拡張を阻止するため、および(iii)前記ステント要素の周囲のつぶれに抗するために、前記ワイヤと予め配置された編みステントとの間の空間に係合するように構成される、ステント要素。
【請求項27】
対象の体の内部の血管または管の閉塞を治療する方法であって、
(a)前記閉塞した血管の内部において、前記閉塞の存在する箇所で主ステントを展開する工程と、
(b)少なくとも1つの副ステント要素から前記主ステントに持続的な径方向外向きの力が印加され、それにより前記閉塞を緩和しかつ前記血管または管の開通性を回復するように、前記副ステント要素を展開する工程と、
を備える、方法。
【請求項28】
前記血管は、静脈である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記静脈は、腸骨大静脈の領域にある、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
May-Thurner症候群の治療に用いられる、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
深部静脈血栓症の治療に用いられる、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
複数の前記副ステント要素を展開する、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも1つの副ステント要素の展開により、前記閉塞の箇所において、前記血管の内腔のアスペクト比を約1に変化させる、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管または管の開通性やステント性能を改善するための体内移植される装置、ならびに静脈系および/または動脈系においてそのような装置を輸送および/または展開するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冠動脈ステント留置およびその他多くの人体におけるステント留置の状況は、比較的安定した環境で限られた湾曲を伴って生じるものであり、ステントは、その柔軟性や耐捻れ性を特段考慮することなく、環境がもたらす特定の課題に対処するように設計可能である。
【0003】
静脈ステント留置の発展では、動脈系と比べて大きな静脈系の容量および多様性に関連して、多くの課題に直面している。静脈系では、その全体および内部にわたって血管の直径や形状が大きく異なる。静脈系の多様性に関連する課題は、骨盤の解剖学的構造によって増大される。この増大は、当該領域で生じる高度な動作や血管の移動に起因する動脈と静脈の干渉による。これは、骨盤動脈と骨盤静脈の位置関係や、これらと固定靱帯との相互作用、ならびに骨盤や背骨の突出部位の多様性によって複雑化され、汎用的な「フリーサイズ」アプローチの設計が極めて複雑になる。男女間ならびに個人間の違いも十分に考慮すべきである。実際、骨盤血管のステント留置に対する現在のアプローチは、「滑り」や屈曲を吸収するように各ステントを互いに重ならせつつ血管壁に対する途切れのない付着を維持して通常の解剖学的構造を「再現」しようとすると、様々な設計、材質、メーカー、送達システムの複数のステントの使用を必要とする。この結果、臨床医は、往々にして、現時点で利用可能なリソースを適宜組み合わせた解決策による、個々の状況に応じたアプローチを採用しなければならない。別の問題として、外因的な静脈圧迫に起因するステント配置の予測可能性の欠如がある。すなわち、静脈に対する動脈干渉のために、静脈ステントは、動脈を動かすための一定量の力を及ぼして、略正常な静脈の断面流れアスペクト比(すなわち、1に近いほどよい。)を取り戻す必要がある。現在の実務は、いくらかの臨床的改善を望んで選択されたステントを配置することであるが、当該静脈ステントが配置された後の成り行きを調節または改善するための予測可能性あるいは優れたオプションはほとんどない。最終的な結果として、処置が不必要に長くなるかあるいは複雑化し、予測可能性や調節可能性を欠き、術後の合併症が生じるおそれもある。
【0004】
例えば、米国特許第9192491号および米国特許第8636791号では、静脈系で展開するためのモジュール式ステントシステムが扱われている。このシステムは、重なり合って接続される複数のステントを使用し、様々な特性を提供する。2つのステントの結合を促すために、ある場合にはらせん状要素の形態をとる封止カラーが、2つのステントの間の重なり領域で展開され、純粋に封止および2つのステントの一体化が促進される。このようなモジュール式ステントシステムは、たしかに様々な特性を提供するが、なお滑りがちであり、複数のステントやらせん状要素が層状になることで管腔径が減少し得る。ステントを通る血流に対する不自然な閉塞が形成されることで、流れの乱れや一定範囲のさらなる合併症が生じるおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来技術に関連する欠点の少なくとも一部に対処することにあり、特に、複雑さを最小限に抑えつつ、改善された構築性、血管の開通性の回復および維持を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、ステントシステムに関する。当該ステントシステムは、血管壁に接触する外面および内側を向く内面を有し、対象血管の内腔に配置するための主ステントと、前記主ステントの内部で完全に展開可能であり、前記主ステントの前記内面に係合するように構成される少なくとも1つの副ステント要素と、を備え、前記少なくとも1つの副ステント要素は、前記副ステント要素が展開された位置において、前記対象血管の前記内腔のアスペクト比を変化させ、または前記アスペクト比の変化に抗するための持続的な径方向外向きの力を、前記主ステントの前記内面に印加するように構成される。
【0007】
本発明の第2の態様は、対象の体の内部において完全にまたは部分的に閉塞した対象血管の開通性を回復するためのステントシステムに関する。当該ステントシステムは、血管壁に接触する外面および内側を向く内面を有し、前記対象血管の内腔に配置するための主ステントと、前記主ステントの内部で完全に展開可能であり、前記主ステントの前記内面に係合するように構成される複数の副ステント要素と、を備え、前記複数の副ステント要素は、前記副ステント要素が展開された位置において、前記対象血管の前記内腔のアスペクト比を変化させるための持続的な径方向外向きの力を、前記主ステントの前記内面に印加するように構成される。
【0008】
本発明の第3の態様は、近位端および遠位端を含む細長い構造を有し、個別対象の内部の血管内でステント要素を展開するための経皮的な装置に関する。当該装置は、前記装置の前記近位端に配置され、ユーザによる前記装置の制御および前記ステント要素の展開を媒介するためのハンドルと、中央内腔を規定しかつ取り囲むと共に、前記遠位端まで延びるカテーテル本体と、前記装置の前記遠位端に配置されるステント要素支持体と、を備え、前記ステント要素支持体は、前記ステント要素を形成するための少なくとも1つのワイヤが周囲に配置される細長い筒状のコアと、近位方向に後退可能かつスライド可能な外側シースと、を有し、前記コアは、近位側の解除可能な取付点と、遠位側の解除可能な取付点と、を含み、かつ前記少なくとも1つのワイヤが、前記近位側の取付点と前記遠位側の取付点との間を延びかつ両取付点に取り付けられており、前記近位側の解除可能な取付点と、前記遠位側の解除可能な取付点との少なくとも一方は、前記装置の長手軸に沿って、他方の取付点に対して相対的に移動可能に構成される。
【0009】
本発明の第4の態様は、ステント要素に関する。当該ステント要素は、スパイラル状に構成され、前記スパイラルの中心軸から外向きに付勢された両端部を有する少なくとも1つのワイヤを備え、前記外向きに付勢された端部は、(i)前記ステント要素の長手方向の移動を阻止するべく固定するため、(ii)前記ステント要素の追加的な周囲への拡張を阻止するため、および(iii)前記ステント要素の周囲のつぶれに抗するために、前記ワイヤと予め配置された編みステントとの間の空間に係合するように構成される。
【0010】
本発明の第5の態様は、対象の体の内部の血管または管の閉塞を治療する方法に関する。当該方法は、(a)前記閉塞した血管の内部において、前記閉塞の存在する箇所で主ステントを展開する工程と、(b)少なくとも1つの副ステント要素から前記主ステントに持続的な径方向外向きの力が印加され、それにより前記閉塞を緩和しかつ前記血管または管の開通性を回復するように、前記副ステント要素を展開する工程と、を備える。
【0011】
本出願においては、上述の各段落、特許請求の範囲、および/または後述の説明、および図面で述べる種々の態様、実施形態、実施例、および代替例、ならびに特にそれらの個別的特徴は、単独であるいは任意に組み合わせて適用可能であることを明確に意図している。すなわち、全ての実施形態、および/または任意の実施形態の全ての特徴は、それらが相容れない場合を除き、任意の方法および/または組合せで組み合わせることができる。出願人は、当初に提出した任意のクレームを変更し、または任意の新しいクレームを提出する権利を保持し、これには当初に提出した任意のクレームに、当初はそのようにクレームされていなかったとしても、任意の他のクレームの任意の特徴を組み入れるように補正する権利が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るステントおよび要素を伴う血管の概略側面図である。
【
図2】ステント設計で考慮すべきステントの重要な特性であり、持続的な外向きの力、耐つぶれ性、および径方向耐力が含まれる。
【
図3A】本発明の実施形態に係るステントおよび要素の概略側面図である。
【
図3B】本発明の実施形態に係るステントおよび要素の概略側面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る要素の概略正面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る要素の概略斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る要素の概略斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る要素の概略斜視図である。
【
図8A】本発明の実施形態に係るばね部を有する要素の概略正面図である。
【
図8B】本発明の実施形態に係るばね部を有する要素の概略正面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るばね部を有する要素の概略正面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係るばね部を有する要素の概略正面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係るステントシステムを血管に挿入する手順を示す。
【
図12】本発明の一実施形態に係る装置の概略図であって、図示の便宜上、奥行を縮めて描いてあり、ステント要素を作るための手順を示す。
【
図13】本発明の実施形態に係るロック機構を伴うステント要素を作るための手順を示す。
【
図14】本発明の実施形態に係るステントシステムの使用状態を示す図であって、圧迫閉塞の近くに配置された主ステントと、主ステント内で展開され、閉塞部位に持続的な径方向外向きの力を及ぼして開通性を回復させるためのステント要素とを伴う。
【
図15】主ステントに対してステント要素を配置するための別のメカニズムを示しており、(A)は、長手方向に離間して配置され、正確な位置決めを実現するための放射線不透過性の複数のマーカを示し、(B)は、ステント要素の展開時のIVUSによる視覚化を可能とする超音波窓を示し、(C)は、遠位端にある放射線を透過しない可撓性のノーズコーンを示し、(D)は、装置の中央内腔を通るように表示されたガイドワイヤを伴うオーバーザワイヤ構成を示す。
【
図16】(A)は、下肢の腫れの兆候や症状がない治療耐性のある高血圧患者において動脈および静脈に同時に造影剤を注入したもの(LAO方向)を示し、(B)は、AP角度から撮影した、直接に支配的な動脈圧迫により血管内の造影剤流れが妨げられる様子を示し、(C)は、LAO角度から撮影した、直接に支配的な動脈圧迫により血管内の造影剤流れが妨げられる様子を示し、白矢印は、静脈閉塞の位置を示す。
【
図17】本発明の一実施形態に係るリボンコイル型のステント要素の写真であって、展開装置におけるピン留め解除機構との係合に適した開口が見えている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の1つ以上の実施形態につき、添付の図面を参照して、あくまで例示的に説明する。
【0014】
本明細書で引用される全ての参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0015】
本発明の説明に先立って、本発明の理解を助けるであろう、いくつかの定義を示す。
【0016】
本明細書において、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに矛盾しない限り、複数の指示対象を含む。よって、例えば、「a sensor(センサ)」は、1つ以上のセンサまたはセンサアレイを意味する。本明細書において、「前方」、「後方」、「前」、「後」、「右」、「左」、「上方」、「下方」などの語は、便宜上のものであり、限定的な意味に解釈されるべきではない。また、「本明細書に組み込まれる」と言及される全ての参照は、その全体が組み込まれるものと理解されるべきである。
【0017】
本明細書において、「備える」の語は、特定された要素が必ず含まれることに加え、その他の要素も任意に含まれ得ることを意味する。「から本質的に構成される」は、特定された要素が必ず含まれ、特定された要素の基本的かつ新規な特性に実質的に影響を与える要素は排除され、かつその他の要素は任意に含まれ得ることを意味する。「から構成される」は、特定された要素以外の全ての要素が排除されることを意味する。これらの各語を用いて定義される実施形態が本発明の範囲に含まれる。
【0018】
「編みステント」の語は、平織り技術を用いて生産された金属製または合金製のステントを意味する。ステントは、長手方向および周方向に伸長可能な内腔を備え、拡張位置にある場合に、多数のフィラメント状要素が長手方向に垂直な平面と交差する。
【0019】
「耐捻れ性」の語は、体内での位置に応じた周囲からの機械的負荷に耐えるステントの能力に関する。通常、これは、ステントが捻れることなく耐え得る最小の曲率半径に基づく。体内の屈曲が多い領域では、内腔の開通性の低下や完全な閉塞を回避するために、ステントが高い耐捻れ性を有する必要がある。
【0020】
「耐つぶれ性」の語は、外的、局所的、または分散的な負荷を受けた際につぶれないステントの能力に関する。これらの負荷は、最終的に、ステントの変形、ひいては完全または部分的な閉塞を引き起こし、好ましくない臨床的結果が生じ得る。
【0021】
「静脈性潰瘍」の語は、静脈圧の長期的な上昇によって生じる皮膚の炎症に関する。往々にして、それは、静脈弁の逆流に関連する。それらは、最も一般的には、下肢に見られる。静脈弁が物理的にブロックされるか、あるいは静脈が充血して弁膜が血液の逆流を阻止できなくなった場合に、静脈の充血が悪化し、静水学的な力によって静脈から間質への液体侵出や炎症性サイトカインの活性化が引き起こされると考えられている。この流体圧の蓄積や炎症性サイトカインにより、皮膚の破壊や慢性的な潰瘍化が生じ、また局部感染に罹りやすくなる。
【0022】
「静脈閉塞」の語は、それにより静脈の直径(あるいは、「内径」)が通常時、すなわち全く塞がれていない状態に比べて小さくなる任意の事象に関する。静脈閉塞は、静脈の狭小化(狭窄)により、障害物により、または静脈の局所圧迫を生じさせる外部圧力により、生じ得る。この語は、それにより静脈の内腔が血流に対して部分的または全体的に遮断される静脈閉鎖も含む。閉鎖は、血栓症(例えば、深部静脈血栓症(DVT))から生じることもあれば、腫瘍の侵入に起因することもある。
【0023】
「静脈還流」の語は、静脈系を介して心臓に戻る血液の量で規定され、末梢静脈系の体循環系充満圧と心臓の平均右動脈圧との間の圧力勾配により駆動される。この静脈還流は、充填、前負荷における心筋の拡張度合いを決定するものであって、心臓の拍出量の主要な決定要因である。
【0024】
「静脈圧迫」の語は、静脈の外的な圧迫に関する。外的圧迫の源は、別の固定的な解剖学的構造に対して静脈を圧迫する近くの動脈によって生じ得る。当該解剖学的構造は、骨盤、脊骨それ自体、または重なった動脈枝で見られる骨または靱帯の構造を含み得る。
【0025】
腸骨静脈圧迫症候群(Cockett症候群を含む。)としても知られる「May-Thurner症候群」(MTS)の語は、上前方の右総腸骨動脈と後方の腰仙椎(第5腰椎)との間で左総腸骨静脈が圧迫される、ある種の腸骨大静脈圧迫である。腸骨静脈が圧迫されると、不快感、腫れ、痛みなど(ただし、これらに限らない。)の多様な悪影響が生じ得る。右総腸骨動脈による右総腸骨静脈の圧迫など、May-Thurner症候群のあまり一般的でない別態様が述べられ、これはCockett症候群として知られる。近年、May-Thurner症候群の定義は、血栓の症状発現を伴わないが、不快感、下肢の腫れ、および痛みを伴う一連の圧迫障害を含むよう拡張された。総称して、これは非血栓性腸骨静脈病変(NIVL)と呼ばれている。
【0026】
「腔内肥厚」(静脈骨棘または腔内骨棘としても言及される。)の語は、この第5腰椎に対しての右総腸骨動脈による左総腸骨静脈の外的圧迫に関する。静脈骨棘は、右総腸骨動脈の長期的な脈動によって生じ、最終的には静脈流出に対する障害になる。静脈骨棘は、近くの組織による静脈の長期的な外的圧迫に起因する静脈の内的障害である。
【0027】
「深部静脈血栓症」(DVT)の語は、静脈区域における血栓の形成に関し、それ自体は命に関わるものでない。しかしながら、血栓が移動して肺に塞栓が形成されると、命に関わる状況(例えば、肺塞栓症)が生じ得る。また、DVTは、静脈弁の完全性の喪失、生涯にわたる静脈不全、ならびに、静的および動的な痛み、下肢の腫れ、DVTや塞栓の再発リスクを伴う深部静脈症候群につながるおそれがある。DVTの発症リスクを高める要因の非限定的なリストとして、慢性的な運動不足、喫煙、脱水症、60歳以上の年齢、癌治療、および炎症状態が挙げられる。さらなる凝固を阻止する一方で既存の血餅に直接は作用しない抗凝固療法は、深部静脈血栓症に対する標準的な治療法である。他の潜在的に付随する治療法として、圧迫弾性ストッキング、選択的運動および/またはストレッチング、下大静脈フィルタ、血栓溶解、および血栓摘出が挙げられる。
【0028】
ステントは、まず、1980年代中頃に心臓血管の領域での使用に向けて設計され、その後、設計および構成において大きく改良されている。ステント留置の適応や人体におけるステントの使用箇所も発展しており、動静脈のステント留置は、病院でふつうに行われている。
【0029】
当初のステントの一つであるWallステント(Schneider AG)は、自己拡張型で、ステンレス鋼のワイヤメッシュ構造だった。これは、初めてFDA承認されたバルーン拡張型、ステンレス鋼のslotted-tubeステントであるPalmaz-Schatzステント(Johnson & Johnson)に取って代わられた。多くのステントやステントメーカーが、弾性反跳や再狭窄を阻止するように設計された各々の製品を携え、すぐに追随した。これらは、最適なステント設計には遠かった。なぜなら、それらは金属密度が高く、ステント血栓症、展開の失敗、塞栓形成、およびインステント再狭窄(ISR)の頻度が高いためである。例えば、全ての血管形成術の20~30%において再狭窄が生じた。
【0030】
薬剤溶出性ステント(DES)は、ISRの問題に具体的に対処するために開発された。介入心臓病学の次なる革命と見なされたDESは、血管平滑筋細胞の増殖、血小板の活性化、および血栓症を標的として様々な化合物のコーティングを利用した。多くの化合物が最小限の手応えをもって試された。その中には、金、炭素、ヘパリンの他、エストロゲン、糖質コルチコイド、および無機質コルチコイドなどが、限られた効果を伴って含まれる。一方、最大の効果が、増殖抑制薬の使用において見られた。シロリムスやパクリタクセルといった医薬物質が、ISRを低減するのに最も効果的であった。これが、新世代のステント、ステント設計、およびステントコーティングの組合せにつながる。初期の兆候は非常に前向きなものであり、ベアメタルステントと比べて優れた有効性を示した。しかし、2006年、第一世代のDESにおけるステント血栓症(ST)の高いリスクを示す安全信号が出始めた。第一世代のDESの再設計が、新規な抗血小板剤およびポリマーを備えた第二世代のDESにつながる。
【0031】
STに対処する意図をもってステントが設計された一方、ステント自体の物理的な移植は血栓形成の完璧なレシピとして作用し、複雑な抗凝固療法を使用してSTと戦う必要が生じた。これがさらなる問題を引き起こし、多くの場合において、多量の出血や血管合併症につながった。抗血小板薬二剤併用療法(DAPT)が開発されたことで、ステントが一般的な実務で安全に使用できるようになり始めた。
【0032】
ステントの材料や設計は、長年にわたり改良され続けている。ステンレス鋼などの第一世代のステント材料は、近年、コバルトクロム合金に取って代わられた。コバルトクロム合金によると、ステントの径方向強度や耐腐食性を損なうことなく、ステント支柱をより薄く設計することが可能となる。その他の新しい合金には、プラチナクロム合金が含まれ、これは高い順応性や径方向強度、ならびにより薄いステント支柱設計のために使用される。
【0033】
薬剤コーティングや薬剤の進歩に加えて、ステントは、穿孔、動脈瘤、または重い血栓を覆うために、様々な合成または生体材料で覆われる。また、生体吸収性ステントスキャフォールドは、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)に続けて血管スキャフォールドを提供するように設計される。生体吸収性スキャフォールドは配置後に徐々に再吸収され、当該スキャフォールドが配置された血管に金属異物が残らず、その通常機能を回復することが可能となる。この目的のために、様々なメーカーにより、多くの生分解性化合物が開発および使用されている。
【0034】
今日のステント市場では、5つの異なるタイプのステントが市販されている。
・デュアルセラピーステント(DTS)
・生体吸収性血管スキャフォールド(BVS)
・バイオエンジニアリングステント
・薬剤溶出性ステント(DES)
・ベアメタルステント(BMS)
【0035】
それらの全体的な主目的は、狭まった血管を広げ、血液その他の体液の十分な流れを維持することにある。ステント移植皮弁と呼ばれる特殊なグループのステントは、元々の血管が広がって破裂の危険がある場合に、血液が流れ得るより小さな管を形成するために大動脈で使用される。体内におけるステントの様々な用途には、次のものが含まれる。
・冠状動脈ステント
・尿路ステント
・尿道および前立腺ステント
・末梢血管ステント
・ステント移植皮弁
・食道ステント
・胆管ステント
【0036】
したがって、本発明に係る実施形態の装置は、血管に、胆管、腸管、卵管、尿管、尿道、食道、細気管支、もしくはその他の任意の中空管、または動物の体内の管が含まれる内視鏡や腹腔鏡の処置にも使用可能である。
【0037】
静脈ステントは、動脈ステントとは異なるユニークな特性を必要とする。静脈は、柔軟性に富んでいて、流れや静脈に干渉する周囲の組織に応じて直径や管腔形状が変動する。静脈は動脈に比べて非常に低い圧力で動作するため、動作中の追加的な流れを吸収するように静脈が拡張し得ることは重要である。静脈ステントは、同様に、自己拡張可能で柔軟性を有し、かつ配置された静脈の性質変化に適応しなければならない。静脈壁は、上にある筋肉組織、臓器機能(例えば、蠕動)、ならびに呼吸および心周期などの通常の動作により変形しがちである。同時に、静脈ステントは、抗するべき何らかの閉塞や外部圧迫が存在するために配置されるので、治療部位で内腔の流れ径を元に戻すための適当な強度を有する必要がある。もちろん、ステントが移植されると、静脈壁は当該装置によって必然的に生じる変形に抗するだろう。ステントと外部から加わる力との間の相互作用は、ステントの長さ方向に沿って異なることもあり、長手方向軸に沿った不均一な機械的相互作用が生じ得る。これらの不均一性により、ステントの移動、ひいては関連する合併症が生じ得る。
【0038】
ステント留置の始まり以来のステント設計における大幅な改良にも関わらず、現在市場で入手可能なステントの選択肢は、短縮、装置の崩壊、装置の故障、装置の摩耗、および最終的な穿孔などの多くの問題に悩まされている。これらのステントに伴う問題に寄与するいくつかの主な基本的要因には、柔軟性の不足または過度な柔軟性が含まれる。ステントの変形に対する負荷が増大すると、早期の疲労故障や、上にある腸骨動脈の流れの妨げが生じるおそれがあり、場合によっては末梢動脈疾患につながる。
【0039】
過小評価されているが重要なステントが遭遇する問題に、ステント断裂がある。冠状動脈ステントにおけるステント断裂の発生率は、平均で約4%である。多くのステント断裂が、一定数の断裂に自覚症状も後遺症も伴わないため、記録されていないかも知れない。あるいは、断裂が従来的な血管造影法で検出されず、別の態様で(おそらく、ステント断裂ではなくステント血栓症または狭窄症として)診断および治療されるかも知れない。最終的に、断裂はステント血栓症につながり得る。そのような場合、断裂の発生は、心臓突然死の始まりかも知れない。改めて、そのような断裂は記録されない。ステント断裂は、次のうち少なくとも1つの結果として生じる傾向にあると認識されている。
・バルーンまたはステントの過膨張
・局所的な硬直を生じるステントの重なり
・ステントの長さ、大きな径方向力を伴う長いステント
・不適切なステントの取扱い
・未熟なステント留置技術
・ステント順応性の不足(順応性:ステントがその軸回りに曲がり得る度合い)
・曲がりくねって大きく角度のついた血管
・大きな病変
・移植後の血管屈曲の変化
・複雑な病変
・不適切なステント配置
【0040】
図1は、本発明の実施形態に係るステントシステム20を組み込んだ血管10の概略図である。血管10は、動脈管もしくは静脈管であってもよく、さらには血管以外の管であってもよい。ステントシステム20は、血管10の内腔に配置され、展開時に血管10を形成する組織に直接接触するステント22を備える。ステント22は、「基準ステント」、「主要ステント」、あるいは「主ステント」と呼ばれてもよく、血管10の内腔に配置するのに適すると考えられる任意のステントである。例えば、ステント22は、上で挙げた現在入手可能な5つのタイプのステントの一つであってもよい。しかしながら、従来の業務はステント22が目的に高度に適合していることを要求し得る一方、ステントの特性をその設計を通じて変更することで、本実施形態では、ステント22は任意の適当なステントであってもよく、よって、いくつかの実施形態では、比較的一般的な設計のステントであってもよい。本発明の特定の実施形態では、ステント22は、既に原位置にあってもよく、すなわち移植済みのステントであってもよい。
【0041】
概して、主ステント22は、それが使用される用途に適した任意のステントである。主ステント22は、編みステント、レーザカット管状ステント、またはその他の適当なステントであってもよい。主ステント22は、最低限の径方向耐力、耐捻れ性、および/または耐つぶれ性を必要に応じて有してもよく、それらは後にステント要素で増強され得る。主ステント22は、任意の適当な材料から作られてもよい。主ステント22は、配置される血管に対して任意の適当な寸法を有してもよい。主ステント22は、任意の適当な被覆、および/または任意の適当な薬剤コーティングを必要に応じて有してもよい。主ステント22は、それが使用される用途に対応して、特異的または非特異的な特性を有してもよい。主ステント22は、展開位置に応じて、様々な異なる強度のワイヤや異なる織り構造で構成されてもよい。
【0042】
いくつかの例において、主ステント22は、その全体にわたって一定の機械的特性を有してもよいし、例えば低い耐つぶれ性または柔軟性の所定領域と高い耐つぶれ性の別領域を有するなど、不定の機械的特性を有してもよい。いくつかの実施形態の例では、主ステントは、全体的もしくは部分的にテーパ状であってもよいし、または一端側から他端側に向けて漸増する内腔径を呈してもよい。いくつかの例の主ステントは、血栓形成を阻止するための、または近くの血管への吻合形成を可能とするためのサイドホールに対応する特定位置を有してもよい。本発明の実施形態では、ステント22は、局所的な血管の解剖学的構造への順応を可能とする1つ以上の合流部、分岐部、または固着部を備えてもよい。
【0043】
個々人に対してより特化またはカスタマイズされたステント設計を追求する中で、発明者は、ステント自体の設計が、個々の患者の解剖学的構造に対してある程度までしか最適化することができないこと、ならびに、患者の脈管構造の変化により、当該脈管構造に対して既製のステント設計が不適切になり得ることを見出した。また、現在、医師にとって、所与のステントが管腔径を十分に回復させ得るかについて判断することは非常に難しい。選択したステントを配置した後で初めて、医師は、管腔径が十分に回復しておらず、よって非円形または高アスペクト比の内腔が生じるか、あるいは外的圧迫への抵抗力が不十分であり、修正または調整のための適当な選択肢もないことに気付くことがある。したがって、発明者は、設定可能なステントシステム20を提供する。ステントシステム20は、主ステント22と、主ステント22の内部に、少なくとも1つの副ステント24とを備え、後者は、以下、「ステント要素」とも称され、主ステント22の物理的および/または機械的特性の局所的変化を提供する。本発明の実施形態では、ステント要素24は、主ステント22が管腔内に配置されたときに、血管10の内皮組織と直接的な物理的接触をしない。一方、ステント要素24は、展開時、ステント22の管腔内面に当接する。
【0044】
主ステント22は、ステント要素24と主ステント22との間の接続を可能とするように、ステント要素24と組み合わせて設計されてもよい。例えば、後述するように、システム20は、ステント22と1つ以上のステント要素24との間の相互接続を媒介するための固定機構を備えてもよい。
【0045】
図1に示すように、本実施形態では、主ステント22の内腔内に2つのステント要素24が設けられる。ステント要素24は、主ステント22の内腔内で展開するように設けられ、血管10に沿って血液が遮られずに流通する開口または中央孔を有し、当該開口は、当該要素の内向き面によって規定される。ステント要素24の外向き面は、主ステント22の内向き内腔壁に係合する。ステント要素24は、当該要素の外面と主ステント22の内面との間の係合により、配置された位置で主ステント22内に留まるように構成される。当該係合は、固定機構により、もしくは単純に径方向外向きの力の適用で生じる摩擦により、またはその他の手段(例えば、スポット溶接、粘着剤の使用など)により媒介されてもよい。
【0046】
ステント要素24は、主ステント22を補強するように構成される。
図2に示すように、当該補強は、主ステント22内のステント要素24の配置箇所における、持続的な外向きの力、耐つぶれ性、耐捻れ性(
図2で示していない。)、および/または径方向耐力から選択される1つ以上のステント特性の改善によって実現され得る。ステント要素24は、その血管10内での配置に関連して、これらの重要な特性を調和させることが望ましい。
【0047】
図2に示すように、持続的な外向きの力は、ステント要素がその配置位置で及ぼす径方向の力である。耐つぶれ性は、上述の定義のように、局所的な圧迫による崩壊に耐えるステントの能力である。径方向耐力は、同心の圧迫に対して生じ、この種の圧迫による崩壊に絶えるステントの能力に関する。ステントの耐捻れ性は、体の動きに起因する力に耐える能力、ならびにステントが変形せずに捻れることができる能力である。
【0048】
補強にあたって、ステント要素24は、主ステント22のアスペクト比を変化させるように作用し得、その中で血管自体が1の値に近づき、よって血管および主ステント22の内腔がステント要素24の位置で、好ましくは主ステント22の残りの長さに沿っても、実質的に断面円形状になる。上述したように、ステントが故障する主な要因は、それらが展開されるときに抗するべき静脈または動脈の閉塞に打ち勝つために必要な径方向力の不足にある。ステント要素24は、主ステントが閉塞によりよく抗するための局所的な径方向力および/または圧縮力を導入するように設けられる。重要なことに、発明者は、塞がれた血管の内腔が非円形になることが多く、その場合、どの向きで考慮するかに応じて、1よりも小さなまたは大きなアスペクト比を呈することを見出した。したがって、主ステントも、同じアスペクト比を有し得る。1に近いアスペクト比を回復または強制するためにステント要素24を展開することで、閉塞に対して十分な力が作用し、それにより血管の最適な開通性が回復される。
【0049】
ステント要素24は、血管10や主ステント22に対して最適なアスペクト比を回復または強制するように構成されるよう、実質的に円形の断面あるいは外郭を有するように形成されてもよく、または別の多角形の断面あるいは外郭を有するように形成されてもよい。例えば、楕円形状のステント要素は、楕円形状の血管に対して有用な中和作用を提供し得る。用途に応じて、特定の実施形態で、ステント要素は、六角形など多角形の断面形状を有してもよい。そのような実施形態では、円形構造を有するステント要素24に関連するより均一な力の分布に対して、当該多角形の角部において局所的な外向きの径方向力または圧縮力が作用する。これに代えてまたは加えて、ステント要素は、非直線的な断面を有してもよく、テーパ状になっていたり、捻れや回転を伴ったり、および/または、閉塞に抗するために血管に要求される径方向力に適切に適応し得る形状の組合せを有したりしてもよい。
【0050】
主ステント22内で展開する1つ以上のステント要素24を設けることにより、従来的なステント留置とは異なるアプローチが可能となる。歴史的には、上述のように、ステントは、高度に個別的な用途に応じてその設計が徐々に洗練されてきており、結果として、増大する複雑性により生じる問題を緩和するための妥協ないし改変がなされてきた。
【0051】
主ステント22と、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の個別に配置可能なステント要素24とのキットの形態でステントシステム10を提供することで、高度に特殊化されたステント設計の複雑性や関連する問題が回避される。一つには、主ステント22は、特殊な設計のステントでなくてもよく、よって配置および維持に対してフレキシブルかつ簡素的である。主ステント22は、より邪魔にならないものと思われる。主ステント22の複雑性が低減することにより、その製造が容易になると共に生産コストが低下し、さらには規制当局の承認に関連する負担が低減され得る。
【0052】
また、複雑性の低減は、ステント使用の増大にとって好ましい。人間の解剖学的構造は個々人で異なり得るため、柔軟性の異なる領域に対する正確な要求が任意の2人の患者の間で同じにはなりにくく、多くの患者に使用するステントの設計は困難である。例えば、骨盤静脈の解剖学的構造は、若年者と老年患者との間で、あるいは男女の間で、大きく異なり得る。獣医学の文脈では、犬の品種など、動物の様々な亜種の間における相違は、極めて多様である。したがって、フレキシブルな主ステント22および1つ以上の挿入可能なステント要素24の使用により、よりスピーディかつより個人に特化したステントシステム20が実現され得る。
【0053】
本発明の実施形態では、1つ以上のステント要素24は、特性の異なる領域を伴う個人に特化したステント構成を素早く提供するために、挿入前または挿入後に、主ステント22内に配置されてもよい。当該要素がそれ相応に設計可能であるため、特性はさらに可変的である。これらの補強的なステント要素24は、径方向力、耐つぶれ性、および/または耐捻れ性の変化が望まれる箇所に正確に配置可能であり、骨盤形状など、体の可動領域における主ステント22の柔軟特性の妥協を最小化する。
【0054】
当該要素は、主ステントの挿入後に挿入可能であり、その位置が可変であり、かつその位置を血管の特性が変化した場合に変えられるため、さらなる利益を提供し得る。挿入可能なステント要素の提供において、存在する予め挿入されたステントに伴う合併症に対処するための医療上の措置は、これらの挿入可能な要素の使用による機械的特性の変化から利益を得るかも知れない。これにより、予め挿入されたステントが血管内に維持され得、ステントを取り除くための侵襲的な処置が回避される。つまり、本明細書で開示するステントシステム20は、既存のより奇抜で特化されたステントと同様の利益を提供し得る一方、既存のステントに関連する欠点、例えば、コスト高、設計の複雑性、失敗率、または挿入や展開の困難性などを伴わない。
【0055】
典型的には、ステント要素24は、上述のように、全体が主ステント内に配置されかつ主ステントに取り囲まれる副ステントである。したがって、ステント要素24は、任意の適当な手段により、および任意の適当な方法により、ステントとして形成されてもよい。特定の実施形態では、ステント要素24および主ステント22の両方が、編組ワイヤで構成されてもよい。ステント要素24は、1つ以上のワイヤで形成されてもよく、ステントおよび周囲の血管に要求されるアスペクト比を回復するために、最適な径方向力や所望の形状を提供するように構成されてもよい。したがって、ワイヤは、所望の効果をもたらすために、任意の適当な材料で、任意の断面形状をもって形成されてもよい。ワイヤの様々な断面形状(例えば、円形、楕円形、六角形、正方形、および/または長方形)により、ステント要素に様々な設計特性が付与され得る。例えば、平らな長方形のワイヤまたはリボンは、滑るおそれのある円形よりも主ステントに対して良好に係合し得る。楕円ワイヤは、装置の総厚みを増すことなく強度を高め得る。
図3Aおよび
図3Bには、ワイヤで形成された特定タイプのステント要素24を備えるステントシステム20の2つの実施形態が示されている。各図において、主ステント22は、編みステントの形態で示される。
図17には、一実施形態に係るリボンコイルステント要素が示されている。
【0056】
本発明の特定の実施形態によると、ステント要素24は、
図3Aに示すように、「S」リング124の形態を有する。Sリング124は、ワイヤの輪であって、その内部では、補強ステント要素の外周にわたって繰り返されるS形状を作るようにジグザグ様式でワイヤが湾曲しており、それにより筒状カラーが構成される。
図3において、当該S形状は、互いにおよびステント要素の長手方向軸に対して平行であり、かつ湾曲領域によって結合された複数領域の形態をとる。Sリング124の特性、例えば、ワイヤの厚みや材料、補強要素の長さ、各S形状を作る湾曲部の鋭さ、ならびに複数の湾曲部をどの程度まで密にするか等は、ステント要素の特性を変えるために可変的である。したがって、径方向耐力、耐つぶれ性、および耐捻れ性は、用途に応じて最適化され得る。Sリング124は、主ステント内で展開され、主ステントに径方向外向きの圧力を及ぼす反発力によって主ステント内での配置を維持する。これにより、ステント要素124は、当該ステントの、ひいては血管の開通性を回復させる外向きの力を維持する。Sリング124の平行部分の間の距離を変えることで、Sリング124の形状が、アスペクト比を変えるべく変更されてもよい。ステント要素124は、形状記憶合金などの材料で構成されてもよく、それにより、例えば管腔内カテーテル輸送システムを介して、輸送中の圧縮とそれに続く展開時の自己拡張が可能になる。
【0057】
図3Bに示す実施形態では、ステント要素24は、コイル要素224である。コイル224は、好適には、展開において完全に拡張したときに主ステント22の内側と同様の外周寸法を有するように形成されたワイヤコイルである。コイルの巻数、ステント要素の長さ、コイルの巻きピッチ、コイルの構成材料、およびその他複数の特性は、主ステント内での使用に関係する特性を最適化するように変更可能である。本発明の一実施形態に係るコイル要素224の形態のステント要素の展開に使用する方法および装置については、
図12および
図13を参照して後述する。
【0058】
概して、ステント要素24の径方向力および耐つぶれ性は、ワイヤの厚みや断面形状、ワイヤの種類、捻りあるいは織りなどの要素24の構造、およびステント要素24を構成するワイヤのその他の特性に基づいていて、これら特性の変更により制御可能である。ステント要素24の特性は、所望の径方向外向きの力を実現するために、特定の織り様式、または特定のコイル巻数もしくは捻り数を選択することで制御されてもよい。本発明の実施形態では、本発明の実施形態のステント要素24は、0.25N/cmよりも大きい、好適には0.5N/cm以上の、典型的には1.0N/cm以上の、必要に応じて2N/cm以上の径方向外向きの力を作用させる。本発明の別の実施形態では、ステント要素24は、25N/cm以下の、好適には20N/cm以下の、必要に応じて15N/cm以下の径方向外向きの力を作用させる。本発明の実施形態では、径方向外向きの力は、ステント要素の50%以上の拡張時に、あるいは10~50%の拡張時に求められる。
【0059】
図示を省略する別の例では、ステント要素は、コイル224やSリング124とは異なって構成された物を含んでもよい。例えば、ステント要素24は、各S字が当該要素の1つの外周を形成するような周方向のS形状になっていてもよい。別の例は、端部が結合された2つのコイルで構成される二重らせんである。
【0060】
ステント要素24によっては、コイルとSリングが組み合わせられてもよい。例えば、ステント要素は、2つのSリングと、これらの間を延びるコイルとを備えてもよく、その全体が1つのワイヤで構成され得る。
【0061】
特定の実施形態では、各ステント要素24の長さは、1mm以上、好適には5mm以上、必要に応じて10mm以上であり、また30mm以下、典型的には20mm以下であることが考えられる。
【0062】
ステント要素24に関する一般化した議論、およびその使用の可能性を提供するために、
図4~
図10には、それぞれ主要構成部30(
図4を参照)を有するステント要素24の概略図が示される。この構成部30は、それぞれ1つのSリング、コイルなどであってもよいし、1つのSリング、コイルなどの一部であってもよい。換言すると、
図4~
図10で使用する円は、複数のステント要素ないしコイルやリングが一緒に配置されることを示すものではなく、ステント要素の一般的性質を図示および説明するためのものであり、明確にするためだけのものである。また、円の使用は、単に例示が容易なためであり、ここで説明する実施形態により、円形のステント要素に限定されるものではない。上述したように、ステント要素は、多角形など他の断面形状を有するステント要素を含んでもよい。
【0063】
図5は、その長さに沿って一定の径を有する、本発明の一実施形態に係る長いステント要素24を例示する。ステント要素24は、改善された特性を有する主ステントの領域を提供するために使用されてもよい。例えば、ステント要素24は、ステント要素の長さに沿って一定である増大した径方向力を提供し得る。
【0064】
図5の要素30は、1つのコイル、すなわち1つのステント要素24で構成されてもよいし、あるいは複数の連結されたステント要素24で構成されてもよい。1つのコイルを設けることで、要素30の長さに沿って同じ特性が得られる。複数のステント要素24の連結は、短い距離にわたって可変的な特性の領域を可能とするために特に有用な手段である。このことは、従来的なステントで実現するのがより難しいことである。なぜなら、ステントの機械的特性が、比較的連続的なセル構造または編物によってのみ提供されるためである。一方、一体的に連結された複数のステント要素24の使用により、これらの特性が比較的短い距離にわたって可変となり、それにより患者に固有の臨床的背景に対する主ステントの適合可能性が改善される。
【0065】
図5の要素30の変形例が、
図6に示す要素32である。
図6の要素32は、空間34によって分離された2つの結合部を有するステント要素24である。ステント要素内に、あるいは結合されるステント要素の間に空間34を設けることで、主ステントの特性のさらなる変更が可能となる。空間34の存在により、主ステントの特性が、維持されつつ空間34の両側で変化し得る。結合要素の間に1つ以上の空間を含むこの形態のステント要素32を使用することの利益は、結合ステント要素の挿入に1つの工程が要求され、それによりステント要素の挿入の侵襲性が低減することである。
【0066】
いくつかの例では、ステント要素32は、部分間の空間34が可変となるように可動式であってもよく、それにより挿入時のステント要素の適切な配置が実現され得る。
図6の要素は1つのワイヤを用いて構成可能であるため、コイル構成が
図6に示すステント要素に適すると考えられるが、本明細書で挙げる任意の要素タイプも、空間を伴うそのようなステント要素を構成するのに使用可能である。
【0067】
図7は、テーパ状のステント要素36を示す。テーパ状のステント要素36は、一端に向かってまたは両端に向かって(すなわち、一端から他端にわたって)変化する直径を有し、テーパ状の主ステント内での展開に有用である。また、テーパ状のステント要素36は、ステント要素の特性をその長さに沿って変えるために使用されてもよい。
【0068】
図8Aおよび
図8Bは、外周部にばね42を有するステント要素38,40の実施形態を示す。
図8Aでは、ステント要素38の対向する箇所に2つのばね42が設けられる一方、
図8Bでは、ステント要素40の外周に等間隔に4つのばね42が設けられる。ばね42は、ステント要素の任意の箇所に設けられてもよく、また任意の数のばね42がステント要素の特性を変えるために当該ステント要素に組み込まれてもよい。ステント要素の耐つぶれ性は、これらのばね、またはばね状部分のステント要素への組込みや、これらばね自体の付勢特性に基づいており、かつこれらによって制御可能である。
【0069】
「ばね」の語を使用する場合、所定方向に伸縮可能でありかつ元の長さに復元可能な弾性部材を意味することが想定される。ここで示す各例において、ばねは、各ステント要素の外周に対する接線方向に伸縮可能である。
【0070】
ばね42は、必要に応じて、コイルステント要素とSリングステント要素の両方に組み込まれてもよく、ステント要素は、ばね状要素を備えるものと備えないものを、所望の特性を実現するために組み合わせてもよい。特に、
図3A~
図7の任意の構成が、要素の耐つぶれ性を変えるために、ばねを備えてもよい。例えば、コイルステント要素のらせん状部分の各々が1つ以上のばねを含んでもよい。また、ばね部は、例えばワイヤのうち縮小した径を有する部分の存在を介して、ステント要素24のワイヤ自体に組み込まれてもよく、それにより局所的な機械的特性が変化し得る。
【0071】
図9および
図10には、2つの実施形態が示されている。
図9に示すように、ばね42は、ステント要素44の外周に沿って等間隔に配置されており、それによりステント要素44の長さに沿ったばね42の配置が繰り返されている。
図10に示すように、ステント要素46は、様々な箇所に配置されてその位置が規則的に繰り返さない複数のばね42を備えてもよい。ばね42により、ステント要素は、移動中または負荷の増大時に、当該負荷によって壊れることなく元に戻ることができる。また、外周部にばね部を配置することにより、特定の面内または軸内におけるステント要素の伸縮特性が変わり得る。
【0072】
上述の各実施形態において、ステント要素を構成するワイヤまたは物体の終端は、自由端であってもよい。他の例では、自由端は、主ステント内への配置に先立って、または主ステント内でのステント要素の展開が完了してから、一体的に結合または固定されてもよい。端部の結合または固定により、自由端が血管壁を突き破ったり装置またはガイドワイヤの展開を妨げたりすることが阻止され、ステント要素の端部の強度が増し、ステント要素の全長にわたって強度が増し、そして補強ステント要素の安定性が向上する。
【0073】
図示を省略するが、ステント要素および/または主ステントは、ステント要素と主ステントとの相対位置を保持するための1つ以上の物理的機構を備えてもよい。特定の実施形態では、保持機構は、主ステントに係合または当接し、ステント要素の位置異常または事後的な移動を阻止する1つ以上のフック、歯、かぎ、またはスプラインを有してもよい。概して、ステント要素と主ステントとの間の摩擦や、ステント要素により主ステントの内面に作用する径方向外向きの付勢力が、ステント要素を所定位置に保持するのに十分になるだろうことが期待される。しかしながら、日々の活動に伴って生じる脈管構造の頻繁な動きや変化を通して、当該相対位置の保持を実現するための他の機構が特に有用であり得る。機構は、ステント要素を主ステントに固定してもよい。いくつかの実施形態では、ステント要素は、ステント要素が主ステントに取り付けられかつ主ステントを把持するように機構を備えてもよい。いくつかの実施形態では、主ステントは、ステント要素が主ステントにより把持または固定されるように機構を備えてもよい。いくつかの実施形態では、ステント要素と主ステントの両方が、機構の2つの部分の間の相互作用によりステント要素が主ステントに固定されるように機構の一部を備えてもよい。
【0074】
ステント要素は、主ステントに対する自身の相対的な移動を阻止するための固定機構を備えてもよい。当該機構は、様々な形状および設計の輪、タップ、湾曲部、把持要素、または表面改質を含むが、これらに限られるものではない。固定機構は、ステント要素の一端もしくは両端に設けられてもよいし、ステント要素の長さに沿って任意の箇所に設けられてもよい。
【0075】
特定の実施形態では、ステント要素は、コイルの外周部に設けられた複数の柔軟性のフックを備えてもよい。各フックは、同じ方向を向いている。したがって、ステント要素は、これを配置して、フックが主ステントに引っかかるように当該フックの向きに回転させることで、主ステントに取り付けられて固定され得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、主ステントは、ステント要素に係合しかつステント要素に対する自身の位置を保持するための係合機構を備えてもよい。ステント要素の固定機構と同様、係合機構は、様々な形状および設計の輪、タップ、湾曲部、把持要素を含んでもよい。係合要素は、ステント要素の固定機構と協働してもよいし、あるいは特定の固定機構を備えないステント要素に係合してもよい。
【0077】
一例として、係合機構は、ステントの長手方向に沿って全てが一方向を向いた、内方に延びる複数のフックを備え、当該フックは、ステント要素のワイヤに引っかかるように構成される。ステント要素の係合のために、ステント要素は、主ステントに沿って動かされ、その適切な位置に到達すると、フックと係合するために少し後方に引かれ、それによりステント要素が主ステントに接続される。
【0078】
本発明の一実施形態では、主ステントは、血管内における主ステントの移動を阻止する1つ以上の結合要素を備えてもよい。結合要素は、主ステントの一端または両端に設けられてもよい。
【0079】
ステント要素の位置決めを助けるために、相対位置を示すための放射線不透過性のマーカが主ステントの長さに沿って設けられてもよい。
【0080】
ステント要素および/または主ステントは、ステンレス鋼、ニチノール、コバルトクロム、タンタル、白金、タングステン、鉄、マンガン、モリブデン、またはその他の外科的および生物学的に親和性のある金属または合金を、単独でまたは組み合わせて、これを構成してもよい。ステント要素および/または主ステントは、例えば、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリグリコール乳酸(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリオルトエステル、ポリ無水物、またはその他の脂肪族ポリエステル繊維材料、ポリプロピレン、ポリアミド、炭素繊維、およびガラス繊維などの生体吸収性材料などのポリマーを含む、非金属材料を備えてもよい。いくつかの実施形態では、ステント要素および/または主ステントは、金属部および非金属部の両方を含む。ステント要素および/または主ステントは、長手方向および/または径方向の最適な配置や向きを補助するための放射線不透過性のマーカを備えてもよい。そのような放射線不透過性の材料は、チタン、タンタル、レニウム、ビスマス、銀、金、白金、イリジウム、および/またはタングステンを含み得る。
【0081】
主ステントまたは主ステントの一部は、被覆されていてもよい。そのような被覆材料は、PTFE、ePTFE、ポリウレタン、シリコン、パピルス、ダクロン(登録商標)、ゴアテックス(登録商標)、その他の高分子膜、多面体オリゴマーシルセスキオキサン、およびポリ(カーボネート-尿素)ウレタン(POSS-PCU)、その他の生分解性ナノファイバを含み得る。ステント要素またはステント要素の一部は、被覆されていてもよい。被覆材料は、上述の被覆材料を任意に含み得る。
【0082】
本発明の特定の実施形態では、主ステントは、主ステント構造に穴を開ける必要なく、近くの血管または管を伴う吻合シャント装置の生成を可能とするために、サイズが大きくて放射線不透過性のマーカにより識別される窓またはセルを備えてもよい。
【0083】
主ステントおよび/またはステント要素は、再内皮化を促進し、内皮機能を改善し、炎症性反応を低減し、新生内膜過形成(MM2A)を抑止し、ヘパリンの抗血栓作用によりインステント再狭窄やステント血栓症などの有害事象を阻止するために、薬剤コーティングまたは薬剤コーティングと移植片被覆の組合せを備えてもよい。
【0084】
主ステント22および1つ以上のステント要素24を備えるステントシステム20の展開が、
図11~
図14の実施形態に示されている。システム20の挿入工程が
図11に示され、ステント要素24の展開が
図12および
図13に示され、ステント要素24の位置決めに使用される機構が
図14に示される。
【0085】
図11Aでは、血管10が図示されており、これは静脈または動脈のいずれであってもよい。血管10は、健全な血流に対する障害ならびに血管内腔の最適でないアスペクト比を作り出す静脈圧迫または動脈プラークの領域11を有する。例えば、患者は、May-Thurner症候群またはDVTを患っているかも知れない。圧迫/プラーク11を改善するために、ここで説明する実施形態に係るステントシステム20が提供される。ステントシステム20は、主ステント22と、その中に配置された少なくとも2つのステント要素24とを備える。概して、システム20は、ステント要素24の展開時にIVUAを使用できるようにIVUSカテーテルを収容可能な中央シャフトを伴うオーバーザワイヤ設計の展開カテーテルを備えてもよい。システムは、誘導針の止血弁、親指スライド、およびロック機構を介した安全な導入を可能とするための被覆要素を有する。ステント要素24は、アクセス容易性のために伸びた形態で収容されており、親指スライドを介して、所望の位置でその展開拡張された形態に制御され得る。輸送カテーテルのシャフトに沿って、ステント要素24の正確な位置決めに利用可能である場合にIVUSでの視覚化を可能とする1つ以上の溝付き窓が存在してもよい。適切な位置でステント要素が展開されて当該位置に作業者が満足したら、装置は、輸送システムから近位および遠位端を固定解除することで解放されてもよい。再度の位置決めが必要な場合、作業者は、親指スライドを広げ、輸送システムを再配置し、そしてステント要素24を再展開してもよい。
【0086】
図11Bに示すように、主ステント22は、血管10内に挿入され、圧迫/プラーク11の領域に配置される。上述のように、主ステント11は、任意の適当なステントであってもよい。圧迫/プラーク11を改善するために、ステントは、その長さに沿って、均等な柔軟性および一定の直径を有することが考えられる。主ステント22は、カテーテル(図示せず)を使用して、従来的な方法で挿入される。カテーテルは、典型的には0.6~3.33mmの範囲の直径(フレンチサイズ2~10に相当)を有する、様々なサイズに適当に構成される。本発明のカテーテルと共に用いるガイドワイヤは、典型的には、約0.05~1mm(約0.002~0.05インチ)のサイズ範囲にある。カテーテル本体は、当該技術分野で公知のプラスチックまたは生体適合性材料(例えば、PTFE)から適当に製造される。本発明の一実施形態(図示せず)では、装置カテーテル本体は、装置が輸送される血管の内腔の自然な湾曲に当該装置が沿い得るように、可撓性材料から製造されてもよい。
【0087】
図11Cに示すように、ステント要素展開装置25が、血管に沿って、血管10および予め展開された主ステント22の内腔を通って送られる。展開装置25は、シースを介して挿入され、X線および超音波装置を用いて案内されるカテーテルを備えることが考えられる。例えば、カテーテルは、血管内超音波(IVUS)カテーテルであってもよい。装置25については、
図12を参照して詳しく説明する。
【0088】
装置25が適切に配置されると、ステント要素24が主ステント22内に構成される。ステント要素24が適切に配置されると、要素24が装置25から分離され、装置25が取り除かれる。
図11Dに示すように、本実施形態では、圧迫/プラーク11の両側に2つのステント要素24が配置される。ステント要素24は、
図3A~
図10を参照して説明した要素24のうちいずれであってもよく、固定または係合機構(図示せず)を用いて主ステント22に取り付けられてもよい。
図14に示す別の実施形態では、1つのみのステント要素24が、閉塞圧迫11に対応して、当該閉塞に当接しかつ主ステント22の開通性を回復するように、閉塞圧迫11の近くに配置されてもよい。
【0089】
本発明の一実施形態に係るコイルステント要素224の形成工程が、
図12A~
図12Hに示される。
図11C、
図12A~
図12H、および
図13A~
図13Dでは、装置が短縮して描かれ、説明の便宜上正確な縮尺ではなく、また使用時、装置は細長い経皮カテーテルの構成に順応することが認められる。ステント要素224が、展開装置25を用いて提供される。展開装置25は、装置25の近位端に、装置25の遠位端まで延びるカテーテル本体52に取り付けられるハンドル50を備える。カテーテル本体52は、装置に沿って、または装置の少なくとも大部分に沿って延びる中央内腔を規定しかつ取り囲んでもよい。ハンドル50は、装置25の使用者、典型的には医師により、カテーテル本体52を制御および操作するために使用される。カテーテル本体52は、遠位端の領域にステント要素展開部54を備える。ステント要素展開部54は、遠位端を規定する先端部56を有する。外側シース58は、筒状コアを覆っている。筒状コアは、マンドレルの形態であってもよく、ステント要素支持体60を提供する。ステント要素24を輸送および展開するために、ステント要素24のためのワイヤ62がステント要素支持体60の周囲に巻かれている。ワイヤ62は、実質的に円形のワイヤ、編組ワイヤで構成されてもよく、あるいはリボン状であってもよい。好適には、ワイヤ62は、金属または合金など、例えばスチールやニチノールなどの変形可能な材料で構成される。外側シース58は、ステント要素支持体60およびワイヤ62と同心状であり、かつこれらを覆うように構成され、さらに、ワイヤ62を露出させることでステント要素24が所定位置に形成および展開され得るように、ハンドル50の近位方向に向かってカテーテル本体52に沿って後退するように、あるいは引っ込められるように構成される。ハンドル内の後退機構、例えばレバーまたは引張りワイヤが、当該後退を媒介するために使用されてもよい。ステント要素支持体60は、ワイヤ62をステント要素支持体60に接続するための2つの取付点64,66を備える。取付点64,66は、支持体60に沿って長手方向に離間しており、それにより一方の取付点64は、近位側に配置された他方の取付点66よりも遠位端に近くなっている。
【0090】
ステント要素支持体60の一方の取付点64の長手方向位置は、他方の取付点66に対して可変であり、後述するように、取付点64,66は、ステント要素24を作るように互いに近づけられ得る。一方の取付点64の回転方向の向きは、他方の取付点66に対して可変であり、取付点64は取付点66に対してステント要素支持体60周りに回転可能であり、それによりワイヤを捻り、またはワイヤの捻りを解くことで、ユーザは、トルクを印加または解除し、ステント要素24の形成を促すことができる。取付点64,66には、ステント要素24が装置25から取り外されて展開され得るように、ワイヤ62をステント要素支持体60に解除可能に接続するように構成されたステント要素解放機構が設けられる。取付点64,66および解放機構の動作は、ハンドル50を介してユーザにより制御される。当該解放は、ワイヤ62のピン留め解除、クランプ解除、または挟み止め解除を伴う機構を介して行われてもよい。ピン留め解除が用いられる実施形態では、ステント要素24は、(
図17に示すように)ワイヤ62の端部または端部近傍に、支持体60の内部に備えられる格納式のピン留め解除機構に係合するための開口を有してもよい。
【0091】
装置25の遠位端に備えられるものとして説明した様々な機能のユーザ制御は、ハンドル50の内部に配置される制御インタフェースおよび機構を介してなされることが考えられる。そのようなインタフェースおよび制御は、スライダ、レバー、ねじ、および機械的または電気的なアクチュエータを含み得るが、これらに限られるものではない。
【0092】
また、装置25は、カテーテル52を位置決めするための1つ以上の手段を備えてもよい。
図15A~
図15Dは、展開中にステント要素を位置合わせするための、これらの位置決め機構の様々な例を示す。
図15Aに示すように、カテーテルは、その長さに沿って、正確な位置合わせのための放射線不透過性の複数の位置マーカを有してもよい。
図15Bは、カテーテルが、ステント要素の展開時におけるIVUSによる視覚化を可能とする超音波窓を備え得る態様を示す。
図15Cおよび
図15Dに示す代替例は、それぞれ、カテーテルのノーズ(遠位端)が放射線不透過性かつ可撓性であるものと、カテーテルが正確な位置決めのためのガイドワイヤに沿って送られ得るものである。別の実施形態では、装置の取付点の各々が、各取付点の間の相対位置を示すための放射線不透過性のマーカを有してもよい。
【0093】
装置25を用いた展開方法では、まず、
図12Aに示すように、未形成のステント要素24のワイヤ62が、装置25のステント要素支持体60の周囲に巻き付けられ、かつ外側シース58で覆われ、展開のための位置に輸送される。外側シース58によると、ステント要素24は、傷付くことなく、あるいはその輸送時に通る血管のいずれかに穴を開けることなく、輸送され得る。ステント要素ワイヤ62は、ステント要素24にいくつのコイルが望まれるかに対応した所定の巻数だけ支持体60の周囲に巻き付けられる。
【0094】
図12Bに示すように、適切な位置で外側シース58が後退され、あるいは引っ込められる。ワイヤ62の両端部が、ワイヤ62の捻れが解かれて支持体62の表面から径方向外側に広がるように、取付点64,66によって互いに対して径方向に動かされる。
【0095】
図12C、
図12D、および
図12Eに示すように、その後、ワイヤ62の両端部は、例えば、スライド動作あるいはねじ操作で、一方の取付点64を支持体60の長手方向に沿って他方の取付点66に対して移動させることにより、互いに近づけられる(すなわち、互いに対して接近させられる)。ワイヤ62によって規定される外径は大きくなる一方、その両端部の間の距離は小さくなる。
図12Eでは、ステント要素24が、ワイヤ62によって完全に形成され、かつ展開に適した径になっている。
【0096】
したがって、ステント要素24を配置する際、装置25は、近位取付点66、したがってワイヤ62の、ひいてはステント要素の近位端、装置25の近位端と遠位端に対する近位および遠位が展開時に適切な位置になるように、まず配置される。そして、ステント要素24の形成では、ワイヤ62の遠位端が遠位取付点64において近位端に向かって戻され、それによりステント要素24が適切な位置で形成される。
【0097】
このステント要素の形成方法によると、様々な径のステント要素の形成が可能になることが考えられる。ステント要素の直径は、予め決定されてもよく、装置は、当該直径のステント要素を作るように構成される。あるいは、装置のユーザは、ステント要素が内部に配置される血管や主ステントに対して適したサイズに当該要素がなるように、装置の位置決め時に適切な直径を判断してもよい。したがって、直径は、血管およびステントに対して最適化され得る。従来、主ステントおよびステント要素の代わりに、ステントが適切な特性を備える必要がある場合、当該ステントは血管に対して厳密に適切なサイズでなければならず、このサイズの選択に時間を要し、また使用に備えて様々なサイズの多くのステントを維持する必要があった。今や、主ステントは既定サイズのものかも知れないが、ステント要素の作用によって拡張可能であり、それにより主ステントおよびステント要素が適切なサイズおよび/またはアスペクト比に適時になり得る。
【0098】
図12Eでステント要素24が形成されると、要素24は、主ステント22の内腔の内面と既に接触しており、よって所定位置に保持される。
【0099】
図12Fにおいて、ハンドル50の解除ボタン68が、ステント要素24を解放するために操作されると、
図12Gに示すように、取付点64,66で装置25に対してステント要素24の両端を保持していたピンが解除される。
図12Hに単独で示すステント要素24は、それにより装置25から独立する。その後、装置25は、主ステント22内の所定位置にステント要素24を残して取り除かれてもよい。これにより工程を繰り返すことが可能となる。
【0100】
図13A~
図13Dは、ロック機構を有するステント要素に対応する、
図12A~
図12Hの短縮バージョンである。得られたステント要素は、主ステントや血管に対する損傷の可能性を回避するため、および強度を高めるために、両端部が一体的に結合されている。
【0101】
コイル要素ではなくSリングとしてステント要素が構成される実施形態では、装置は、支持要素の周囲に圧縮したSリングを取り付け、外側シースをSリングに被せるように構成されてもよい。その後、Sリングは、装置が適切に配置されて外側シースが引っ込められた後に、ピンまたはクランプ解除などにより解放されてもよい。
【0102】
例えば、径方向に拡張可能なブラダーまたはバルーンカテーテル装置にステント要素を導入すること等により、代替的な径方向拡張機構を実装することが考えられる。そのような実施形態では、ブラダーまたはバルーンは、血管内の主ステントの内部における展開に適した位置に配置され、ステント要素を適切に配置するために拡張されてもよい。ブラダーまたはバルーンの収縮後、装置は、ステント要素を所定位置に残して血管から引き抜かれてもよい。
【0103】
少なくとも1つの主ステントおよび1つ以上のステント要素を備えた上記ステントシステムは、静脈系において特に有用であり得る。例えば、システムは、静脈閉塞(少なくとも、静脈狭窄、静脈鬱血、および静脈収縮を含む。)の位置で特に有用であり得る。本明細書で開示するステントシステムは、MTS、DVT、腔内肥厚、静脈性潰瘍、静脈圧迫、および/または任意のその他の静脈もしくは動脈の閉塞の治療に使用されてもよい。
【0104】
1つの非限定的な例によると、個人に下肢の腫れの明確な兆候あるいは症状が見られない場合があるが、それにも関わらず、腸骨大静脈領域の静脈の閉塞が疑われる場合がある。この領域の通常の解剖学的構造では、静脈は、大腿静脈から下大静脈に向かって上向きのシグモイド曲線状になっている。
図16A~
図16Cでは、近くの下にある静脈の動脈圧迫の例が、造影透視を用いて観察される。当業者にとって、低い柔軟性および高い耐つぶれ性を有するステントの移植によって当該領域の閉塞を緩和することが、局所的な解剖学的構造を大きく変え、体にとって最良の利益にならないことは明らかであろう。例えば、径方向力や圧縮力が固定されたステントの適用が、この領域の静脈をまっすぐにして、上にある動脈からの圧迫を緩和する可能性が高い。これによると、長期的には再狭窄や内膜肥厚を誘発する可能性があり、ステントの故障やより深刻な静脈閉塞を生じるおそれがある。一方、上で詳述した本発明の実施形態によると、より見込みのある解決策は、この領域の静脈を覆うための高度にフレキシブルな主ステントの移植と、それに伴う、可能な限り正常な静脈の位置と向きの維持(すなわち、静脈を移動または変位させないこと)とを含む。それに続けて、圧迫が確認される特定位置(
図16Cの白矢印を参照)にのみ1つ以上の補強ステント要素を配置することにより、管腔の開通性および通常の血流が回復され得る。
【0105】
本明細書では、本発明の特定の実施形態について詳しく開示したが、これは、単なる例示によって、および説明の目的のみをもってなされるものである。上述の各実施形態は、添付の特許請求の範囲について限定することを意図しない。発明者は、特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲を逸脱することなく、本発明に関する様々な置換、変更、および改変が可能であると考える。また、上述の各実施形態は、特に断らない限り、組み合わせることが可能である。
【0106】
本発明は、以下の条項によってさらに例示される。
[条項1]
血管壁に接触する外面および内側を向く内面を有し、対象血管の内腔に配置するための主ステントと、
前記主ステントの内部で完全に展開可能であり、前記主ステントの前記内面に係合するように構成される少なくとも1つの副ステント要素と、
を備え、
前記少なくとも1つの副ステント要素は、前記副ステント要素が展開された位置において、前記対象血管の前記内腔のアスペクト比を変化させ、または前記アスペクト比の変化に抗するための持続的な径方向外向きの力を、前記主ステントの前記内面に印加するように構成される、ステントシステム。
[条項2]
前記少なくとも1つの副ステント要素は、前記主ステントの前記内面と係合するための1つ以上の取付部を有する、条項1に記載のステントシステム。
[条項3]
前記少なくとも1つの副ステント要素は、展開されたときに、前記内腔のアスペクト比および断面を変化させて実質的に円形にするよう、前記主ステントの前記内面に係合するように構成される、条項1または2に記載のステントシステム。
[条項4]
前記少なくとも1つの副ステント要素は、展開されたときに、前記主ステントの全周にわたって実質的に均一に持続的な径方向外向きの力を印加するように構成される、条項1~3のいずれか1項に記載のステントシステム。
[条項5]
前記少なくとも1つの副ステント要素は、展開されたときに、実質的に円形の断面を有する、条項1~4のいずれか1項に記載のステントシステム。
[条項6]
前記少なくとも1つの副ステント要素は、展開されたときに、実質的に楕円形の断面を有する、条項1~5のいずれか1項に記載のステントシステム。
[条項7]
前記少なくとも1つの副ステント要素は、Sリングを有する、条項1~6のいずれか1項に記載のステントシステム。
[条項8]
前記少なくとも1つの副ステント要素は、コイルを有する、条項1~7のいずれか1項に記載のステントシステム。
[条項9]
前記副ステント要素を複数備える、条項1~8のいずれか1項に記載のステントシステム。
[条項10]
対象の体の内部において完全にまたは部分的に閉塞した対象血管の開通性を回復するためのステントシステムであって、
血管壁に接触する外面および内側を向く内面を有し、前記対象血管の内腔に配置するための主ステントと、
前記主ステントの内部で完全に展開可能であり、前記主ステントの前記内面に係合するように構成される複数の副ステント要素と、
を備え、
前記複数の副ステント要素は、前記副ステント要素が展開された位置において、前記対象血管の前記内腔のアスペクト比を変化させるための持続的な径方向外向きの力を、前記主ステントの前記内面に印加するように構成される、ステントシステム。
[条項11]
前記対象血管の前記内腔のアスペクト比は、前記完全にまたは部分的に閉塞した対象血管の開通性を回復するように、約1になるよう変化される、条項10に記載のステントシステム。
[条項12]
前記血管は、静脈である、条項10または11に記載のステントシステム。
[条項13]
前記少なくとも1つの副ステント要素は、Sリングを有する、条項10~12のいずれか1項に記載のステントシステム。
[条項14]
前記少なくとも1つの副ステント要素は、コイルを有する、条項10~13のいずれか1項に記載のステントシステム。
[条項15]
近位端および遠位端を含む細長い構造を有し、個別対象の内部の血管内でステント要素を展開するための経皮的な装置であって、
前記装置の前記近位端に配置され、ユーザによる前記装置の制御および前記ステント要素の展開を媒介するためのハンドルと、
中央内腔を規定しかつ取り囲むと共に、前記遠位端まで延びるカテーテル本体と、
前記装置の前記遠位端に配置されるステント要素支持体と、
を備え、
前記ステント要素支持体は、前記ステント要素を形成するための少なくとも1つのワイヤが周囲に配置される細長い筒状のコアと、近位方向に後退可能かつスライド可能な外側シースと、を有し、
前記コアは、近位側の解除可能な取付点と、遠位側の解除可能な取付点と、を含み、かつ前記少なくとも1つのワイヤが、前記近位側の取付点と前記遠位側の取付点との間を延びかつ両取付点に取り付けられており、
前記近位側の解除可能な取付点と、前記遠位側の解除可能な取付点との少なくとも一方は、前記装置の長手軸に沿って、他方の取付点に対して相対的に移動可能に構成される、装置。
[条項16]
前記遠位側の解除可能な取付点は、前記近位側の解除可能な取付点に対して移動可能であり、
前記近位側の解除可能な取付点の位置は、固定されている、条項15に記載の装置。
[条項17]
前記近位側の解除可能な取付点は、前記遠位側の解除可能な取付点に対して移動可能であり、
前記遠位側の解除可能な取付点の位置は、固定されている、条項15に記載の装置。
[条項18]
前記ステント要素支持体は、前記中央内腔の内部に設けられる、条項15~17のいずれか1項に記載の装置。
[条項19]
前記中央内腔は、前記ステント要素支持体を経由して前記遠位端まで延びている、条項18に記載の装置。
[条項20]
前記スライド可能な外側シースの後退は、前記ハンドル内に設けられた後退機構を介して制御される、条項15~19のいずれか1項に記載の装置。
[条項21]
前記近位側および遠位側の解除可能な取付点からの前記少なくとも1つのワイヤの解放は、前記ハンドル内に設けられた解放機構により制御される、条項15~20のいずれか1項に記載の装置。
[条項22]
前記近位側および遠位側の解除可能な取付点は、前記ワイヤにトルクを印加または解除するために互いに対して回転可能である、条項15~21のいずれか1項に記載の装置。
[条項23]
前記ステント要素支持体は、位置決め機構を有する、条項15~22のいずれか1項に記載の装置。
[条項24]
前記位置決め機構は、前記ステント要素支持体に沿って配置された1つ以上の放射線不透過性のマーカを有する、条項23に記載の装置。
[条項25]
前記位置決め機構は、前記ステント要素支持体に沿って配置された1つ以上の超音波窓を有する、条項23または24に記載の装置。
[条項26]
スパイラル状に構成され、前記スパイラルの中心軸から外向きに付勢された両端部を有する少なくとも1つのワイヤを備え、
前記外向きに付勢された端部は、(i)前記ステント要素の長手方向の移動を阻止するべく固定するため、(ii)前記ステント要素の追加的な周囲への拡張を阻止するため、および(iii)前記ステント要素の周囲のつぶれに抗するために、前記ワイヤと予め配置された編みステントとの間の空間に係合するように構成される、ステント要素。
[条項27]
対象の体の内部の血管または管の閉塞を治療する方法であって、
(a)前記閉塞した血管の内部において、前記閉塞の存在する箇所で主ステントを展開する工程と、
(b)少なくとも1つの副ステント要素から前記主ステントに持続的な径方向外向きの力が印加され、それにより前記閉塞を緩和しかつ前記血管または管の開通性を回復するように、前記副ステント要素を展開する工程と、
を備える、方法。
[条項28]
前記血管は、静脈である、条項27に記載の方法。
[条項29]
前記静脈は、腸骨大静脈の領域にある、条項28に記載の方法。
[条項30]
May-Thurner症候群の治療に用いられる、条項28または29に記載の方法。
[条項31]
深部静脈血栓症の治療に用いられる、条項28または29に記載の方法。
[条項32]
複数の前記副ステント要素を展開する、条項28~31のいずれか1項に記載の方法。
[条項33]
前記少なくとも1つの副ステント要素の展開により、前記閉塞の箇所において、前記血管の内腔のアスペクト比を約1に変化させる、条項28~32のいずれか1項に記載の方法。
【国際調査報告】