(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-28
(54)【発明の名称】プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いた生理活性ペプチドの精製方法
(51)【国際特許分類】
C07K 1/16 20060101AFI20230220BHJP
C07K 16/06 20060101ALI20230220BHJP
C07K 1/22 20060101ALI20230220BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230220BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20230220BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230220BHJP
【FI】
C07K1/16 ZNA
C07K16/06
C07K1/22
C12P21/08
C12P21/00 C
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534158
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(85)【翻訳文提出日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 IB2020062434
(87)【国際公開番号】W WO2021130717
(87)【国際公開日】2021-07-01
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】10-2020-0173808
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522181544
【氏名又は名称】エービーエルバイオインク
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】ソン テヘ
(72)【発明者】
【氏名】パク ヨンドン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ジンウォン
(72)【発明者】
【氏名】ホン ジュンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イム ヒジン
(72)【発明者】
【氏名】キム ドンジン
【テーマコード(参考)】
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE10
4B064CE12
4H045AA20
4H045BA09
4H045DA76
4H045FA74
4H045GA21
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、第1のFc含有生理活性ペプチド及び第2のFc含有生理活性ペプチドを含み、前記第2のFc含有生理活性ペプチドは、前記第1のFc含有生理活性ペプチドと比較してヒトVH3ドメインを少なくとも1つ以上を含むものであるFc含有生理活性ペプチドの混合物を、プロテインAリガンドを含有する親和性マトリックスを含む親和性カラムを用いて精製する方法を提供する。前記精製方法によれば、工程の簡略化が達成されながらも同一又は類似の構造を有する生理活性ペプチドを高純度で精密に単離することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)Fc含有生理活性ペプチドの混合物を、プロテインAリガンドを含む親和性マトリックスを含むカラムにロードするステップであって、前記生理活性ペプチドの混合物は、第1のFc含有生理活性ペプチド及び第2のFc含有生理活性ペプチドを含み、前記第2のFc含有生理活性ペプチドは前記第1のFc含有生理活性ペプチドと比較して、ヒトVH3ドメインを少なくとも1つさらに含むステップと、及び
(b)前記カラムに溶出液をロードし、前記生理活性ペプチドの混合物に含まれる前記Fc含有生理活性ペプチドそれぞれが含むヒトVH3ドメインの数に応じて、互いに異なるpHで前記Fc含有生理活性ペプチドを単離溶出するステップを含む、Fc含有生理活性ペプチドの精製方法。
【請求項2】
前記生理活性ペプチドの混合物は、前記第2のFc含有生理活性ペプチドと比較して、ヒトVH3ドメインを少なくとも1つさらに含む第3のFc含有生理活性ペプチドをさらに含む、請求項1に記載の精製方法。
【請求項3】
前記生理活性ペプチドの混合物は、前記第1のFc含有生理活性ペプチドがn個(nは0以上の整数)のヒトVH3ドメインを含み、前記第2のFc含有生理活性ペプチドはn+1個のヒトVH3ドメインを含み、前記第3のFc含有生理活性ペプチドがn+2個のヒトVH3ドメインを含む、請求項2に記載の精製方法。
【請求項4】
前記ステップ(b)は、
(b1)第1のpH範囲を有する溶出液を前記カラムにロードして前記第1のFc含有生理活性ペプチドを溶出するステップと、
(b2)前記第1のpH範囲より低い第2のpH範囲を有する溶出液を前記カラムにロードして前記第2のFc含有生理活性ペプチドを溶出するステップを含む、請求項1に記載の精製方法。
【請求項5】
上記ステップ(b)は、
(b1)第1のpH範囲を有する溶出液を前記カラムにロードして前記第1のFc含有生理活性ペプチドを溶出するステップと、
(b2)前期第1のpH範囲より低い第2のpH範囲を有する溶出液を前期カラムにロードして前期第2のFc含有生理活性ペプチドを溶出するステップと、
(b3)前期第2のpH範囲より低い第3のpH範囲を有する溶出液を用いて前期第3のFc含有生理活性ペプチドを溶出するステップをさらに含む、請求項2に記載の精製方法。
【請求項6】
前記Fcは、野生型プロテインAとの結合力に影響を及ぼす突然変異が導入されていない、請求項1に記載の精製方法。
【請求項7】
前期第1又は第2のFc含有生理活性ペプチドがVH3ドメインを含む場合、前記第1又は第2のFc含有生理活性ペプチドが、以下の配列から選択されるVHドメイン含有可変領域配列を含む、請求項1に記載の精製方法。
SEQ ID No.1の重鎖可変配列及びSEQ ID No.2の軽鎖可変配列と、
SEQ ID No.3の重鎖可変配列及びSEQ ID No.4の軽鎖可変配列と、
SEQ ID No.5の重鎖可変配列及びSEQ ID No.6の軽鎖可変配列と、
SEQ ID No.7の重鎖可変配列及びSEQ ID No.8の軽鎖可変配列と、又は
SEQ ID No.9の重鎖可変配列及びSEQ ID No.10の軽鎖可変配列。
【請求項8】
前記第3のFc含有生理活性ペプチドが、以下の配列から選択されるVHドメイン含有可変領域配列を含む、請求項2に記載の精製方法。
SEQ ID No.1の重鎖可変配列及びSEQ ID No.2の軽鎖可変配列と、
SEQ ID No.3の重鎖可変配列及びSEQ ID No.4の軽鎖可変配列と、
SEQ ID No.5の重鎖可変配列及びSEQ ID No.6の軽鎖可変配列と、
SEQ ID No.7の重鎖可変配列及びSEQ ID No.8の軽鎖可変配列と、又は
SEQ ID No.1の重鎖可変配列及びSEQ ID No.2の軽鎖可変配列。
【請求項9】
前記Fc含有生理活性ペプチドがIgGを含む抗体である、請求項1に記載の精製方法。
【請求項10】
前記Fc含有生理活性ペプチドは、IgG-scFv二重抗体である、請求項1に記載の精製方法。
【請求項11】
前記Fc含有生理活性ペプチドは、Fcに結合したペプチド薬物を含む、請求項1に記載の精製方法。
【請求項12】
前記ペプチド薬物は、ホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質及び受容体からなる群から選択される、請求項11に記載の精製方法。
【請求項13】
前記第1のFc含有生理活性ペプチドはscFvを含まずに、
前記第2のFc含有生理活性ペプチドは、Fcの2つの重鎖のうちの1つのC末端に連結された配列番号SEQ ID No.11からなる1つのscFvを含み、及び
前記第3のFc含有生理活性ペプチドが、Fcの2つの重鎖の全てのC末端にそれぞれ連結された配列番号SEQ ID No.11からなる2つのscFvを含む、
請求項2に記載の精製方法。
【請求項14】
前記Fc含有生理活性ペプチドはIgGであり、
前記IgG抗体の可変領域がヒトVH3ドメインを含む、
請求項1に記載の精製方法。
【請求項15】
(a-1)抗体混合物を、プロテインAリガンドを含む親和性マトリックスを含むカラムにロードするステップであって、前記抗体混合物は単一特異性抗体と、前記単一特異性抗体の2つの重鎖定常領域のいずれかのC末端にヒトVH3ドメインを含む1つの抗原結合断片が結合した一価二重特異性抗体と、前記単一の特異性抗体の2つの重鎖定常領域のC末端に前記抗原結合断片がそれぞれ1つずつ結合した二価二重特異性抗体を含むステップと、
(b-1)第1のpH範囲を有する溶出液をカラムにロードして前記単一特異性抗体を溶出するステップと、
(c-1)前記第1のpH範囲より低い第2のpH範囲を有する溶出液を前記カラムにロードして前記一価二重特異性抗体を溶出するステップと、
(d-1)前記第2のpH範囲より低い第3のpH範囲を有する溶出液を前記カラムにロードして二価二重特異性抗体を溶出するステップを含む、
精製方法。
【請求項16】
前記単一特異性抗体の可変領域がヒトVH3ドメインを含む、請求項15に記載の精製方法。
【請求項17】
前記単一特異性抗体の可変領域がヒトVH3ドメインを含まない、請求項15に記載の精製方法。
【請求項18】
前記抗原結合断片は、配列番号SEQ ID No.11のアミノ酸配列を含むscFvである、請求項15に記載の精製方法。
【請求項19】
前記第1のpH範囲は3.4以上5.0以下であり、
前記第2のpH範囲は3.3以上4.1以下であり、
前記第3のpH範囲は3.0以上4.0以下である、請求項15に記載の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いたFc含有生理活性ペプチドの精製方法に関するものであり、より具体的にはFc含有生理活性ペプチドに含まれるヒトVH3ドメインの数の差によるプロテインAとの結合力の差を用いてペプチド混合物の中で特定のペプチドを高純度で精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定のペプチドを単離するために様々な精製方法が使用される。例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、及びアフィニティークロマトグラフィーなどが使用される。
しかしながら、同様の構造のペプチドの場合、等電点、疎水性(hydrophobicity)、サイズの差及び親和性の差が大きくないため、普遍的な精製方法では高純度の特定ペプチドを得ることが難しい。このような場合、人為的に配列に変化を与え、目的とする特定ペプチドと以外に生成することができるペプチドとの間に等電点及び親和性の差を生じさせ、これを精製方法に用いる方法が多く知られている。いずれの場合も、等電点や親和性の差を大きくするための人為的な配列変化に応じて、特定ペプチドの物理化学的性質が変化し、これから予想できない免疫原性などが誘発されることがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、生理活性ペプチド混合物に含まれるFc含有生理活性ペプチドのヒトVH3ドメインの数の差によるプロテインAの結合力の差を用いて、アフィニティークロマトグラフィーを介してペプチド混合物又は抗体混合物からFc含有生理活性ペプチド又は抗体を高純度で精製する方法を提供することを一目的とする。さらに具体的には、親和性又は等電点特性の差は大きくないが、VH3ドメインの数の点で異なるペプチドが一緒に製造される場合、ペプチドに含まれるVH3ドメインの数に応じて全長ドメイン(full domain)プロテインAとの親和成が異なるため、VH3ドメインの数が異なるペプチドの全長ドメインプロテインAとの親和度の差を利用したアフィニティークロマトグラフィーにより、ペプチドをVH3ドメインの数に応じて単離することにより所望のペプチドを高純度で得る方法を提供することを一目的とする。
特に、非対称ヘテロ二量体(asymmetric heterodimer)タンパク質の製造過程で不要なホモ二量体(symmetric homodimer)タンパク質が一緒に生成される場合、各タンパク質に含まれるVH3ドメインの数の差に基づいて、非対称ヘテロ二量体タンパク質とホモ二量体タンパク質を単離精製する方法を提供することを一目的とする。
本発明で開示された各説明及び実施形態は、それぞれの他の説明及び実施形態にも適用することができる。すなわち、本発明で開示される様々な要素の全ての組み合わせが本発明の範囲に属する。
さらに、以下に記載される具体的な説明によって本発明の範囲が制限されるとは言えない。
本明細書で第1、第2などの用語は様々な構成要素を説明するのに使用することができるが、前記構成要素は前記用語によって限定されるべきではない。前記用語は、ある構成要素を他の構成要素と区別する目的でのみ使用される。例えば、本発明の権利の範囲から逸脱することなく、第1の構成要素を第2の構成要素と命名することができ、同様に第2の構成要素も第1の構成要素と命名することができる。単数の表現は、文脈上明らかに別段の意味を持たない限り、複数の表現を含む。
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書で定義されている用語などの用語は、関連技術の文脈で意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されない限り、明示的にここで定義される。
「含む」又は「含有」などの用語は、明細書に記載されている特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、又はそれらを組み合わせたものが存在することを指定するものであり、1つ又は複数の他の特徴又は数字、ステップ、動作、構成要素又はそれらを組み合わせたものの存在又は追加の可能性を予め排除しないことを理解すべきである。
「及び/又は」は、関連する構成が定義することができる1つ又は複数の組み合わせの両方を含む。
本発明で使用される用語「生理活性ペプチド」は、1つ以上の生理活性を示すペプチド、ポリペプチド、タンパク質、タンパク質の一部及び融合タンパク質等を全て含む概念であり、特定分子量ないしアミノ酸の長さ、種類等によって限定されるものではない。
本発明で使用される「Fc含有生理活性ペプチド」という用語は、抗体に見られるFc領域(fragment crystallizable region)を含む生理活性ペプチドを意味する。例えば、Fc含有生理活性ペプチドは、Fc領域を含有する抗体を含む物質である。
本発明は、Fc含有生理活性ペプチドの混合物の中でFc含有生理活性ペプチドを単離及び/又は精製する方法を提供することができる。
本明細書において、生理活性ペプチドとは、生物に伝達されて生体の機能を調節するペプチドを意味するものであり、ホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質又は受容体などの生体機能を調節するペプチドを生理活性物質と定義することができ、例えば上述したペプチドは、FcのN末端又はC末端に連結された形態であり得る。
本発明の一実施形態によれば、(a)Fc含有生理活性ペプチドの混合物を、プロテインAリガンドを含む親和性マトリックスを含むカラムにロードするステップであって、前記生理活性ペプチドの混合物は第1のFc含有生理活性ペプチド及び第2のFc含有生理活性ペプチドを含み、ここで前記第2のFc含有生理活性ペプチドは、前記第1のFc含有生理活性ペプチドと比較してヒトVH3ドメインを少なくとも1つさらに含む、ステップと、(b)前記カラムに溶出液をロードし、前記生理活性ペプチドの混合物に含まれる前記Fc含有生理活性ペプチドのそれぞれが含むヒトVH3ドメインの数に応じて、互いに異なるpHで前記Fc含有生理活性ペプチドを単離溶出するステップを含むFc含有生理活性ペプチドの精製方法を提供することができる。
一実施形態では、前記第2のFc含有生理活性ペプチドは、前記第1のFc含有生理活性ペプチドと比較してヒトVH3ドメインを少なくとも1つさらに含むか、又はヒトVH3ドメインと95%以上、90%以上、80%以上又は70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を少なくとも1つさらに含むものであり得る。ヒトVH3ドメインとは、VH3ファミリーのヒト抗体の重鎖可変領域のCDR2とCDR3との間に位置するアミノ酸配列であって、SEQ ID No.23~SEQ ID No.37のいずれかの配列を含むことができるが、これらに限定されず、通常の技術者であれば、タンパク質に含まれるヒトVH3ドメイン配列を容易に把握することができる。前記ヒトVH3ドメインは主にVH3ファミリーのヒト抗体に存在するが、まれにマウスなどの哺乳動物(又はキメラ)抗体のフレームワークにも見られる。例えば、本発明の実施形態で使用されるhu11F11はヒトVH3ドメインを含む抗体であり、ch1E4及び抗BACE抗体はヒトVH3ドメインを含まない抗体である。ただし、例外的にch11F11は、キメラ抗体であってもヒトVH3ドメインを含む抗体である。
前記プロテインAリガンドは全長ドメインプロテインAリガンドであり得る。すなわち、プロテインAリガンドは、全長ドメイン(E、D、A、B及びCドメイン)の全てを含むものであり得る。しかしながら、実施形態はこれに限定されるわけではなく、前記プロテインAリガンドは、Eドメイン及びDドメインのうち選択される1つ又は複数のドメインを含むことができる。例えば、前記プロテインAリガンドは、Eドメイン及びDドメインを含むことができる。
前記親和性マトリックスにおいて、プロテインAリガンドを支持する支持体は、球(spherical)形のようなビード(bead)形態を有する粒子であり得る。前記親和性マトリックスにおいて、支持体の平均粒子サイズは、例えば約90μm未満であってもよく、例えば約80μm以下又は75μm以下であってもよい。さらに、前記親和性マトリックスにおいて、前記支持体の平均粒子サイズは、例えば、約1μm以上又は5μm以上であってもよい。前記親和性マトリックスにおいて、前記支持体のサイズが上記の範囲を満たす場合、生理活性ペプチドの単離能はさらに優れている可能性がある。
前記ステップ(b)は、(b1)第1のpH範囲を有する溶出液を前記カラムにロードして前記第1のFc含有生理活性ペプチドを溶出するステップと、(b2)前記第1のpH範囲より低い第2のpH範囲を有する溶出液を前記カラムにロードして前記第2のFc含有生理活性ペプチドを溶出するステップを含むことができる。前記第1のpH範囲を有する溶出液及び前記第2のpH範囲を有する溶出液は、それぞれ別々に又は順次カラムにロードされるか、又は前記溶出液がカラムに連続的にロードされながら、ロード時間に応じて第1のpH範囲から第2のpH範囲に濃度勾配を変えることができる。
前記生理活性ペプチドの混合物は、前記第2のFc含有生理活性ペプチドと比較してヒトVH3ドメインを少なくとも1つさらに含む第3のFc含有生理活性ペプチドをさらに含むことができる。
本発明の精製方法によれば、それぞれVH3ドメインの数が異なる第1のFc含有生理活性ペプチド、第2のFc含有生理活性ペプチド及び第3のFc含有生理活性ペプチドを互いに単離して精製することができ、これらいずれを精製目的にしても高純度で精製が可能な利点がある。
さらに、本発明は精製対象物質の構成においてFcを排除するものではなく、FcとプロテインAとの間の結合も精製工程において考慮されている。Fcはそれ自体としてプロテインAに対する親和性を有するため、FcとプロテインAとの親和性を利用した精製方法では、Fc以外の構成要素の親和性を排除しようとし、逆の場合にはFcの親和性を排除しようとするのが一般的です。一方、本発明では、重鎖FcとVH3ドメインの両方を構成要素とするFc含有生理活性ペプチドをVH3ドメインの数に応じて精製することができる方法を提供しようとした。
前記生理活性ペプチドの混合物は、前記第1のFc含有生理活性ペプチドがn個(nは0以上の整数)のヒトVH3ドメインを含み、前記第2のFc含有生理活性ペプチドがn+1個~n+9個のヒトVH3ドメインを含み、前記第3のFc含有生理活性ペプチドがn+2個か~n+10個のヒトVH3ドメインを含んでもよく、例えば、前記第1のFc含有生理活性ペプチドがn個(nは0以上の整数)のヒトVH3ドメインを含み、前記第2のFc含有生理活性ペプチドはn+1個のヒトVH3ドメインを含み、前記第3のFc含有生理活性ペプチドがn+2個のヒトVH3ドメインを含んでもよい。
nは、例えば、0以上10以下、0以上8以下、0以上6以下、0以上5以下、0以上3以下、1以上10以下、1以上8以下、1以上6以下、1以上5以下、1以上3以下、2以上10以下、2以上8以下、2以上6以下、2以上5以下であってもよい。nは、例えば0、1、2、又は3であり得る。
前記ステップ(b)は、(b1)第1のpH範囲を有する溶出液を前記カラムにロードして前記第1のFc含有生理活性ペプチドを溶出するステップと、(b2)前記第1のpH範囲より低い第2のpH範囲を有する溶出液を前記カラムにロードして前記第2のFc含有生理活性ペプチドを溶出するステップと、(b3)前記第2のpH範囲より低い第3のpH範囲を有する溶出液を用いて前記第3のFc含有生理活性ペプチドを溶出するステップをさらに含むことができる。ここで、前記ステップ(b1)~(b3)は連続的に行われることができる(linear gradient)。すなわち、前記第1~第3のpH範囲は、それぞれのpH範囲が断続的なものではなく、第1のpH範囲の開始値と第3のpH範囲の末端値との間の連続的なpH範囲に含まれ、最初に第1のpH範囲を有する溶出液をカラムにロードし、連続的にロードされる溶出液のpHを徐々に下げることにより、溶出液のpHが次第に第2のpH範囲及び第3のpH範囲に移行することにより、前記ステップ(b1)~(b3)が行われることができる。また、精製対象の生理活性ペプチドの種類によって溶出されるpH範囲が異なってもよい。
又は、前記ステップ(b1)~(b3)は段階的に行われることができる(step gradient)。
前記Fcは、野生型(wild type)タンパク質Aとの結合力に影響を与える突然変異が導入されていないものであり得る。前記突然変異は、Fcのポリペプチド配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸残基に挿入、欠失、付加及び/又は置換が生じたポリペプチドを意味する。すなわち、一実施形態のFcは、プロテインAとの結合力を阻害する突然変異又はプロテインAとの結合力を上昇させる突然変異が導入されていないものであり得る。
前記第1、第2及び/又は第3のFc含有生理活性ペプチドは、前記Fcに結合したペプチド薬物を含むことができる。ここで、前記「ペプチド薬物(peptide drug)」とは、前記生理活性ペプチドと同一又は異なる生理活性を有しながら、前記生理活性ペプチドに結合した独立のペプチドを意味する。
前記Fc含有生理活性ペプチドは、前記FcのN末端又はC末端に前記ペプチド薬物が結合したものであり得る。例えば、前記Fc含有生理活性ペプチドは、前記Fcの2つの重鎖が有する2つのN末端及び2つのC末端から選択される1つ又は複数に前記ペプチド薬物が結合したものであり得る。
本明細書で使用される「結合」という用語は、2つの対象が物理的又は化学的に直接結合したもの、及びリンカーを介して結合又は連結されたものの両方を含む意味で定義される。一実施形態では、Fcとペプチド薬物がリンカーを介して連結される場合、前記リンカーは例えばペプチドであり得るが、当技術分野でペプチドを連結するために使用される通常の材料であれば特に限定されないことは言うまでもない。
前記ペプチド薬物は、ホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質及び受容体からなる群から選択される少なくとも1つであり得る。例えば、前記ペプチド薬物は、ヒト成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン類、インターフェロン受容体類、コロニー刺激因子類、GLP-1のようなグルカコン様ペプチド類、Gプロテイン関連受容体(G-protein-coupled receptor)、インターロイキン類、インターロイキン受容体類、酵素類、インターロイキン結合タンパク質類、サイトカイン結合タンパク質類、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、アレルギー抑制因子、細胞の壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホ毒素、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α-1アンチトリプシン、アルブミン、α-ラクトアルブミン、アポリポタンパク質-E、エリスロポエチン、高グリコシル化エリスロポエチン、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、クラムビン、トロンビン受容体活性化ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX、及びXIII、プラズミノゲン活性化因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレトキナーゼ、ヒルジン、プロテインC、C反応性タンパク、レニン阻害剤、コラゲナーゼ阻害剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、インスリン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路阻害剤、濾胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラキシン、せクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、グルカゴン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、受容体類、受容体拮抗薬、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び抗体断片類からなる群から選択される少なくとも1つであることができる。
前記グルカゴン様ペプチドは、エクセナチド、リラグルチド(Liraglutide)、タスポグルチド(Taspoglutide)、アルビグルチド(Albiglutide)、リキシセナチド(Lixisenatide)、及びGLP-1から選択される少なくとも1つ、例えばGLP-1であることができる。
前記第1又は第2のFc含有生理活性ペプチドがVH3ドメインを含む場合、前記第1及び第2のFc含有生理活性ペプチドはそれぞれ独立してSEQ ID No.1の重鎖可変配列及びSEQ ID No.2の軽鎖可変配列と、SEQ ID No.3の重鎖可変配列及びSEQ ID No.4の軽鎖可変配列と、SEQ ID No.5の重鎖可変配列及びSEQ ID No.6の軽鎖可変配列と、SEQ ID No.7の重鎖可変配列及びSEQ ID No.8の軽鎖可変配列と、又は、SEQ ID No.9の重鎖可変配列及びSEQ ID No.10の軽鎖可変配列のいずれかのVHドメイン含有可変領域配列を含むことができ、例えば、前記重鎖可変配列及び軽鎖可変配列はscFvの重鎖可変配列及び軽鎖可変配列であり得る。
前記第3のFc含有生理活性ペプチドは、SEQ ID No.1の重鎖可変配列及びSEQ ID No.2の軽鎖可変配列と、SEQ ID No.3の重鎖可変配列及びSEQ ID No.4の軽鎖可変配列と、SEQ ID No.5の重鎖可変配列及びSEQ ID No.6の軽鎖可変配列と、SEQ ID No.7の重鎖可変配列及び SEQ ID No.8の軽鎖可変配列と、又は、SEQ ID No.9の重鎖可変配列及びSEQ ID No.10の軽鎖可変配列のいずれかのVHドメイン含有可変領域配列を含むことができ、例えば、前記重鎖可変配列及び軽鎖可変配列はscFvの重鎖可変配列及び軽鎖可変配列であり得る。
ただし、VH3ドメインは重鎖可変配列内に含まれるものであるため、上述の配列から選択される重鎖可変配列及び他の軽鎖可変配列からなるscFv、又は上述の配列から選択される重鎖可変配列のみからなる短鎖抗体も上記Fc含有生理活性ペプチドに含めることができる。
前記Fc含有生理活性ペプチドは、免疫グロブリンG(以下、IgG)を含む抗体であり得る。
本明細書において「抗体」は、任意のアイソタイプの完全な免疫グロブリン、標的抗原への結合のための完全な抗体と競合することができる抗原結合断片、又はそれらの組み合わせを意味することができる。例えば、マウス、キメラ、ヒト化、完全ヒト抗体、それらの抗原結合断片、又はそれらの組み合わせを含むことができる。抗体はそれ自体で抗原結合タンパク質の一種であり得る。抗体は一般に少なくとも2つの全長重鎖と2つの全長軽鎖を含むが、場合によって抗体は重鎖のみを含むこともある。前記抗体は、1つの標的に特異的に結合する単一特異性抗体、及び複数の標的に特異的に結合する多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体及び三重特異性抗体)を含み得る。
前記抗体はモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体も含み、前記モノクローナル抗体はヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体であるIGF1Rに特異的に結合する単離された抗体であり得る。前記モノクローナル抗体は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4型であるIGF1Rに特異的に結合する単離された抗体であり得る。
本明細書における「軽鎖」は、抗原又はエピトープに対する結合特異性を提供するのに十分な可変領域配列を有する全長の軽鎖及びその断片を含み得る。全長軽鎖は、可変領域ドメインVL、及び不変領域ドメインCLを含み得る。軽鎖の可変領域ドメインは、軽鎖ポリペプチドのアミノ末端に存在してもよい。軽鎖の種類には、カッパ及びラムダ鎖が含まれ得る。
本明細書において、「相補性決定領域(Complementarity-determining regions,CMP)」とは、抗体の可変領域のうち、抗原との結合特異性を付与する部位を意味することができる。
本明細書における「重鎖」は、抗原又はエピトープに対する結合特異性を提供するのに十分な可変領域配列を有する全長重鎖及びその断片を含み得る。全長重鎖は、可変領域ドメイン及び3つの不変領域ドメインCH1、CH2及びCH3を含み得る。可変領域(VH)ドメインは重鎖ポリペプチドのアミノ末端に存在し、不変領域(CH)ドメインはカルボキシ末端に存在し、CH3はカルボキシ末端に最も近く位置することができる。重鎖は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4サブタイプを含む)、IgA(IgA1及びIgA2サブタイプを含む)、IgM及びIgEのアイソタイプを含み得る。
前記抗体は、すべてのサブタイプの免疫グロブリン(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgMなど)から選択され得る。前記IgG形態の抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4サブタイプ、例えばIgG1又はIgG2サブタイプの形態であり得る。前記IgG形態の抗体は2つの重鎖及び2つの軽鎖を含み、各重鎖及び軽鎖はジスルフィド結合を介して結合して2つの重鎖・軽鎖構造体(dimer)を形成し、前記形成された2つの重鎖・軽鎖は、重鎖のFc部位でジスルフィド結合を介して連結された形態を有し得る。前記IgG形態の抗体は、両方の重鎖・軽鎖構造体に同じ抗原に対する抗原結合部位を含み、1つの抗原を標的とする単一特異性抗体、又は両方の重鎖・軽鎖構造体に異なる抗原に対する抗原結合部位を含み2つの抗原を標的とする二重特異性抗体であり得る。
本発明による抗体には、二重特異性抗体、全抗体(whole antibody)、ミニボディ、ドメイン抗体、抗体模倣体(又は合成抗体)、抗体融合体(又は抗体複合体)、その断片及びそれらの組み合わせが含まれるが、これに限定されない。様々な抗体の構造が、以下の本発明で追加で開示される。
本発明において、例えば抗原結合断片、タンパク質、又は抗体などのペプチドの「変異体」とは、他のペプチド配列と比較して1つ以上のアミノ酸残基に挿入、欠失、付加及び/又は置換が生じたペプチドであり、融合ペプチドを含めることができる。例えば、抗体の一部は、前記重鎖又は軽鎖、可変領域、又はCDR配列の1つ又は複数の残基で保存(conservative)アミノ酸置換を含み得る。
本発明による抗体は、ハイブリドーマ技術を使用して、所望の抗体を形質転換動物(例えば、遺伝子導入マウス)から産生され選択されることができる。そのような抗体は、適切なベクター及び宿主細胞を使用してクローニングされ発現したり、又は前記抗体は培養されたハイブリドーマ細胞から採取されることができる。また、前記抗体はファージディスプレイライブラリー(phage-display library)に由来し得る。ファージディスプレイ技術は、繊維状(filamentous)バクテリオファージの表面上に抗体レパートリーを提示し、これから所望の抗原に結合するファージを選別する一種の免疫選択(immune selection)を模倣した方法である。このような技術の1つは、本発明の実施形態又はPCT公開公報WO99/10494を参照することができる。
抗体又はその抗原結合断片は、単一の源(source)ののみに由来してもよいし、又はキメラであってもよい。キメラ抗体は、2つの異なる抗体から由来される部分を含み、以下により詳細に記載される。抗体又はその抗原結合断片は、ハイブリドーマ、組換えDNA技術、又は完全な抗体の酵素的又は化学的切断によって産生することができる。本明細書における用語「抗体」は、他に言及しない限り、2つの全長重鎖及び2つの全長軽鎖を含む抗体はもちろん、それらの誘導体、変異体、免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片、突然変異体及びそれらの組み合わせを含み、例えば、2つの全長重鎖及び2つの全長軽鎖の他に1つ又は2つのscFvを含むことができ、それらの例は以下に記載される通りである。
本明細書に記載の「抗原結合断片」は、抗原に対する特異的結合能を有する抗体の一部又はそれを含むポリペプチドを意味することができる。例えば、抗原結合断片は、抗原(例えば、エピトープ)と相互作用して、抗体に抗原に対する特異性及び/又は親和性を付与するアミノ酸残基を含む抗体の一部又はそれを含むポリペプチドであり得る。そのような断片は、全長軽鎖又は重鎖内に存在する少なくとも1つのCDRを含み、いくつかの実施形態では、一本鎖、重鎖及び/又は軽鎖、又はその一部を含み得る。そのような生物学的に活性な断片は、組換えDNA技術によって産生するか、又は例えば完全な抗体を酵素的又は化学的切断することによって産生することができる。
免疫学的に機能的な免疫グロブリンの断片には、これらに限定されないが、Fab、Fab′、F(ab′)2、Fv、ドメイン抗体及び一本鎖抗体(例えば、scFv、Fc-scFvなど)が含まれる。また、これに限定されないが、ヒト、マウス、ラット、カメリド又はウサギを含む任意の哺乳動物に由来し得る。本明細書に開示されている1つ以上のCDRなどの抗体の機能部分は、第2のタンパク質又は低分子化合物と共有結合して連結され、特定の標的に対する標的治療薬として使用することができる。
本明細書において「一本鎖抗体」は、重鎖及び軽鎖可変領域が柔軟なリンカーによって連結された抗原結合領域の単一のポリペプチド鎖である。例えば、前記一本鎖抗体は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域が単一鎖形態で連結されたscFv、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、及びFcが単鎖形態で連結されたFc-scFv等からなる群から選択された1種以上であり得る。一本鎖抗体は、例えば、米国特許第5,260,203号を参照することができる。
本明細書において「親和性又は親和度(affinity)」とは、抗体又はその抗原結合断片と抗原との間の相互作用の強度であり、抗体又は抗原結合断片のCDR配列、及び/又は抗体又は抗原結合断片の物理化学的特性(親水性/疎水性、静電気の特性など)、抗原の大きさ、形状、及び/又は電荷などの抗原の特徴などによって決定することができる。このような親和度を決定する方法は当業界に公示されており、通常は解離定数(dissociation constant,KD)として表すことができるが、これらに限定されない。
本明細書で「多重特異的抗原結合タンパク質」又は「多重特異性抗体」は、2つ以上の抗原又はエピトープを標的とするものである。
本明細書において、「二特異性」、二重特異性」抗原結合タンパク質又は抗体は、2つの異なる抗原結合部位を有するハイブリッド抗原結合タンパク質又は抗体である。そのような二特異性抗体は、多重特異性抗原結合タンパク質又は多重特異性抗体の一種であり、公知の様々な方法、例えばハイブリドーマの融合又はFab′断片又はscFv断片の連結によって産生することができる。例えば、Songsivilai and Lachmann,Clin. Exp. Immunol. 1990,79:315-321;Kostelny et al.J. Immunol. 1992,148:1547-1553などを参照することができる。二特異性抗原結合タンパク質又は抗体の2つの抗原結合部位が結合する2つの異なるエピトープは、同じ又は異なるタンパク質標的に位置し得る。
前記Fc含有生理活性ペプチドは、重鎖Fcと抗原結合断片が結合した抗体タンパク質を含むことができ、例えば、前記重鎖FcはIgGに含まれるものであってもよく、前記抗原結合断片は重鎖可変領域を含むscFv又は一本鎖抗体として、前記重鎖FcのC末端に連結されたものであってもよい。
例えば、Fc含有生理活性ペプチドは、IgGとscFvが結合したIgG-scFv二重抗体であり得る。前記IgG-scFv二重抗体は、IgGにscFvが1つ結合した一価二重特異性抗体であるか、又はscFvが2つ結合した二価二重特異性抗体であってもよい。
前記Fc含有生理活性ペプチドは、Fcに結合したペプチド薬物を含み得る。ここで、前記ペプチド薬物は、前述のペプチド薬物と同様に定義することができる。前記ペプチド薬物は、前記Fc含有生理活性ペプチドのFcのN末端又はC末端に結合したものであり得る。前記ペプチド薬物は、前記Fc含有生理活性ペプチドのFcの2つの重鎖のうちの1つ以上の重鎖のN末端に結合したものであり得る。
前記第1のFc含有生理活性ペプチドは免疫グロブリンG(以下、IgG)を含む抗体であり、前記第2のFc含有生理活性ペプチドはIgG-scFv二重抗体であり得る。前記第1のFc含有生理活性ペプチドはscFvを含まず、前記第2のFc含有生理活性ペプチドは、Fcの2つの重鎖のいずれかのC末端に連結された配列番号SEQ ID No.11からなる1つのscFvを含むことができる。
前記第1のFc含有生理活性ペプチドは免疫グロブリンG(以下、IgG)を含む抗体であり、前記第2のFc含有生理活性ペプチドはIgG-scFv一価二重特異性抗体であり、前記第3のFc含有生理活性ペプチドは、IgG-scFv二価二重特異性抗体であり得る。前記第1のFc含有生理活性ペプチドはscFvを含まず、前記第2のFc含有生理活性ペプチドは、Fcの2つの重鎖のいずれかのC末端に連結された配列番号SEQ ID No.11からなる1つのscFvを含み、前記第3のFc含有生理活性ペプチドは、Fcの2つの重鎖の両方のC末端にそれぞれ連結された配列番号SEQ ID No.11からなる2つのscFvを含み得る。
前記第1~第3のFc含有生理活性ペプチドはIgGであり、前記IgG抗体の可変領域はヒトVH3ドメインを含むものであり得る。例えば、この場合、前記第1~第3のFc含有生理活性ペプチドは、いずれもIgG内にはそれぞれ同一に2つずつのVH3ドメイン(可変領域の重鎖内)を有するがIgG部分以外の領域では含むVH3ドメインの数が異なることがあり得る。
前記第1~第3のFc含有生理活性ペプチドはIgGであり、前記IgG抗体の可変領域はヒトVH3ドメインを含まないことができる。例えば、この場合、前記第1~第3のFc含有生理活性ペプチドともに同じIgG内にはVH3ドメインがなく、IgG部分以外の領域に含まれるVH3ドメインの数が異なるものであってもよい。
前記Fc含有生理活性ペプチドがヒトVH3ドメインを含む場合、前記ヒトVH3ドメインは、前記Fc含有生理活性ペプチドの重鎖可変領域に含まれ得る。
前記Fc含有生理活性ペプチドがヒトVH3ドメインを含む場合、ヒトVH3ドメインを含む抗体又はその断片は、前記Fc含有生理活性ペプチドに少なくとも1つ以上結合することができる。例えば、ヒトVH3ドメインを含むscFvが前記Fc含有生理活性ペプチドに結合することができる。
前記第1又は第2のFc含有生理活性ペプチドがヒトVH3ドメインを含む場合、前記ヒトVH3ドメインは前記第2のFc含有生理活性ペプチドの重鎖可変領域に含まれ、ヒトVH3ドメインを含む抗体又はその断片を前記生理活性ペプチドに少なくとも1つ以上結合させることができる。
上述したIgG-scFv二重抗体において、IgG及びscFvのうち少なくとも1つはヒトVH3ドメインを含むものであり得る。IgG及びscFvの両方がヒトVH3ドメインを含む場合、IgGのヒトVH3ドメインとscFvのヒトVH3ドメインの配列は互いに同一でも異なっていてもよい。上述したIgG-scFv二重抗体は、1つ以上の生理活性を有し得る。
前記Fc含有生理活性ペプチドがIgG抗体を含む場合、前記IgG抗体は、第1の重鎖及び第2の重鎖のうち選択される1つ以上を含み得る。ここで、前記第1の重鎖はVH-CH1-CH2-CH3-scFvから構成されてもよく、前記第2の重鎖はVH-CH1-CH2-CH3から構成されてもよい。
前記第1の重鎖と第2の重鎖との二量体化確率を高めて一価二重特異性抗体の製造を容易にするために、一つの重鎖の重鎖定常領域の特定位置はホール変異(hole mutation)(例えば、T366S、L368A、又はY406V)され、他の重鎖の重鎖定常領域の特定の位置は、ノブ変異(knob mutation)(例えば、T366W)されたものであり得る。前記Fc含有生理活性ペプチドは、抗αシヌクレインIgG抗体又は抗BACE抗体を含むことができる。
前記抗αシヌクレイン抗体は、第1の重鎖又は第2の重鎖のうち少なくとも1つを含み得る。例えば、前記第1の重鎖は抗αシヌクレイン抗体の重鎖可変領域と、ヒト重鎖定常領域と、及び前記重鎖定常領域のC末端に結合した抗IGF1R抗体又はその断片(例えば、抗IGF1R scFv)を含んでもよく、前記第2の重鎖は抗αシヌクレイン抗体の重鎖可変領域及びヒト重鎖定常領域を含み、上述した抗IGF1R抗体を含まなくてもよい。
前記抗αシヌクレイン抗体は、前記第1の重鎖を2つ含むか、又は前記第2の重鎖を2つ含んでもよい。また、前記αシヌクレイン抗体は、前記第1重鎖及び前記第2重鎖をそれぞれ1つずつ含んでもよい。
前記第2のFc含有生理活性ペプチドは、前記第1の重鎖及び前記第2の重鎖をそれぞれ1つ含み、前記第3のFc含有生理活性ペプチドは、前記第1の重鎖を2つ含み、前記第1のFc含有生理活性ペプチドは、前記第2の重鎖を2つ含む生理活性ペプチドを含み得る。
前記Fc含有生理活性ペプチドの混合物は、前記抗αシヌクレイン抗体の2つの重鎖のそれぞれのC末端に前記抗IGF1R抗体又はその断片が結合していない第1のFc含有生理活性ペプチド、前記抗αシヌクレイン抗体の2つの重鎖のいずれかの重鎖のC末端に、前記抗IGF1R抗体又はその断片が結合した第2のFc含有生理活性ペプチド及び前記抗αシヌクレイン抗体の2つの重鎖のそれぞれC末端に前記抗IGF1R抗体又はその断片が結合した第3のFc含有生理活性ペプチドを含むものであってもよい。
本明細書において、ch11F11については矛盾しない限り、PCT公開公報WO2019/117684に記載されたch11F11の説明は同様に適用され、hu11F11については矛盾しない限り、PCT公開公報WO2019/117684に記載されたhu11F11の説明は同様に適用されることができる。ch11F11及びhu11F11の配列は、前述したPCT公開公報を参照することができる。
前記生理活性ペプチドは、ch11F11、ch1E4、抗BACE、及びhu11F11からなる群から選択されるいずれかの抗αシヌクレイン抗体の重鎖可変領域を含む抗αシヌクレイン抗体であり、前記抗IGF1R抗体又はその断片は、SEQ ID No.1の重鎖可変配列及びSEQ ID No.2の軽鎖可変配列と、SEQ ID No.3の重鎖可変配列及びSEQ ID No.4の軽鎖可変配列と、SEQ ID No.5の重鎖可変配列及びSEQ ID No.6の軽鎖可変配列と、SEQ ID No.7の重鎖可変配列及びSEQ ID No.8の軽鎖可変配列と、又はSEQ ID No.9の重鎖可変配列及びSEQ ID No.10の軽鎖可変配列で表されるアミノ酸配列を含むものであってもよい。
一実施形態のFc含有生理活性ペプチドの単離方法によれば、アフィニティークロマトグラフィーを用いてFc含有生理活性ペプチドの混合物から目的とするFc含有生理活性ペプチドを容易に単離することができる。特に、一実施形態によるFc含有生理活性ペプチドの精製方法によれば、工程簡略化を達成することができ、同一又は類似の構造を有する生理活性ペプチドを高純度で精密に単離することができる。
また、一実施形態のFc含有生理活性ペプチドの単離方法によれば、Fcに特定の突然変異を導入してプロテインAリガンドとの親和性を人工的に調節せずに同一又は類似の構造を有する生理活性ペプチドを高純度で精密に単離することができる。また、一実施形態のFc含有生理活性ペプチドの単離方法によれば、突然変異が導入されていない野生型プロテインAリガンド又は既存のプロテインAリガンドを使用しながらも生理活性ペプチドを単離することができる。したがって、一実施形態の製造方法によれば、Fc領域との親和度が上昇するように突然変異が導入された高価なプロテインAリガンドを使用せずに、Fc含有生理活性ペプチドを高純度で精密に単離することができる。
本発明の他の実施形態によれば、抗体混合物で抗体を精製する方法を提供することができる。生理活性ペプチドの精製方法に対する実施形態について説明した内容は、矛盾しない限り、後述する抗体の精製方法に対する実施形態にも適用できることはもちろんである。
本発明の一実施形態によれば、(a-1)抗体混合物を、プロテインAリガンドを含む親和性マトリックスを含むカラムにロードするステップであって、前記抗体混合物は単一特異性抗体、前記単一特異性抗体の2つの重鎖定常領域のいずれかのC末端にヒトVH3ドメインを含む1つの抗原結合断片が結合した一価二重特異性抗体及び前記単一特異性抗体の2つの重鎖定常領域のC末端に、前記抗原結合断片がそれぞれ1つずつ結合した二価二重特異性抗体を含むステップと、(b-1)第1のpH範囲を有する溶出液を前記カラムにロードして前記単一特異性抗体を溶出するステップと、(c-1)前記第1のpH範囲より低い第2のpH範囲を有する溶出液を前記カラムにロードして前記一価二重特異性抗体を溶出するステップと、及び(d-1)前記第2のpH範囲より低い第3のpH範囲を有する溶出液を前記カラムにロードして二価二重特異性抗体を溶出するステップを含む抗体の精製方法が提供することができる。
前記単一特異性抗体の可変領域は、ヒトVH3ドメインを含むものでも含まれないものでもよい。
前記抗原結合断片はscFvであり得る。前記抗原結合断片は、配列番号SEQ ID No.11のアミノ酸配列を含むscFvであり得る。
すなわち、本発明による例示的な二重特異性抗体は、重鎖組合せ(Heavy Component)及び抗αシヌクレイン抗体の軽鎖を含むことができ、前記重鎖組合せは(1)抗αシヌクレイン抗体の重鎖及び(2)抗IGF1R抗体の重鎖及び軽鎖を含むものであってもよい。言い換えれば、本発明による二重特異性抗体は、scFv型の抗IGF1R抗体が、IgG型の抗αシヌクレイン抗体のC末端のいずれか又は両側(monovalent(一価)又はbivalent(二価)でそれぞれ言う)に結合する形態であり得る。
前記第1のpH範囲は3.4以上5.0以下であり、前記第2のpH範囲は3.3以上4.1以下であり、前記第3のpH範囲は3.0以上4.0以下であることができる。例えば、前記第1のpH範囲は3.4以上4.5以下であり、前記第2のpH範囲は3.3以上4.1以下であり、前記第3のpH範囲は3.0以上4.0以下であることができる。
ただし、前記第1~第3のpH範囲は例示的な範囲に過ぎず、当分野の通常の技術者であれば、生理活性ペプチドの種類によって異なる前記第1~第3のpH範囲を、本明細書記載を参照して容易に導出することができるだろう。
特に、非対称異種二量体(Asymmetric Hetero dimer)形態のタンパク質の場合、産生過程で発生し得る同種二量体(homo dimer)を精製工程から除去することは非常に困難である。異種二量体と同種二量体との間には、タンパク質精製工程で一般的に使用される親和性カラム又はイオン交換カラムを用いて精製できるほどの親和度(affinity)及び等電点(pI)の差が現れないためである。
異種二量体形態の抗体の単離に関して、米国特許登録公報US8586713 B2等では、Fc配列を人為的に置換して親和度及び等電点の差を大きくする方法が試みられたが、このように人為的にアミノ酸を置換する場合、免疫原性(immunogenicity)が発生することになる問題がある。また、VH3配列が同時に存在する場合、親和性レジンを必ず2回使用しなければならず、二価二重特異性抗体を最初に除去してこそ、一価二重特異性抗体と単一特異性抗体を単離することができる。したがって、工程が複雑になり、単離に多くの時間とコストがかかる。
しかしながら、一実施形態による抗体の精製方法によれば、異種二量体と同種二量体のような等電点の差が非常に小さく(例えば、0.1以下)、一般的なアフィニティークロマトグラフィー又はイオン交換クロマトグラフィーによる精製しにくいペプチドに人為的なアミノ酸置換を行わずに、85%~90%以上の高純度で異種二量体を精製することができる。また、一実施形態の単離方法によれば、抗体の断片だけでなく、Fc領域を含む全抗体も効果的に単離することができ、VH3ドメインの数に応じて細かく単離可能である。
【発明の効果】
【0004】
一実施形態によるFc含有生理活性ペプチド又は抗体の精製方法は、Fc含有生理活性ペプチド又は抗体混合物に含まれるペプチドのVH3ドメインの数の差による全長ドメインプロテインAリガンドの結合力の差を利用してペプチド又は抗体を高純度で精製することができる。さらに、一実施形態によるFc含有生理活性ペプチド又は抗体の精製方法は、FcとプロテインAリガンドとの結合力を調節するためにFc又はプロテインAリガンドに別途の突然変異を導入する必要がないため、工程コストの削減及び工程簡略化を達成しながらも、高純度でタンパク質を精製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1は、単一特異性抗体、一価二重特異性抗体、及び二価二重特異性抗体を含む生理活性ペプチド混合物に対して、MabSelet Sureレジンを適用したアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示す。
図2は、単一特異性抗体、一価二重特異性抗体、及び二価二重特異性抗体を含む生理活性ペプチド混合物に対して、MabSelect PrismAレジンを適用したアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示す。
図3は、単一特異性抗体、一価二重特異性抗体、及び二価二重特異性抗体を含む生理活性ペプチド混合物に対して、プロテインA FFレジンを適用したアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示す。
図4は、単一特異性抗体、一価二重特異性抗体、及び二価二重特異性抗体を含む生理活性ペプチド混合物に対して、MabSelect Xtraレジンを適用したアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示す。
図5は、単一特異性抗体、一価二重特異性抗体、及び二価二重特異性抗体を含む生理活性ペプチド混合物に対して、MabSelect Xtraレジンを適用した精製結果をサイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって確認したものである。
図6は、単一特異性抗体、一価二重特異性抗体、及び二価二重特異性抗体を含む生理活性ペプチド混合物に対して、MabSelect Xtraレジンを適用した精製結果をポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で確認したものである。
図7は、単一特異性抗体、一価二重特異性抗体、及び二価二重特異性抗体を含む生理活性ペプチド混合物に対して、プロテインA HPレジンを適用したアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示す。
図8は、単一特異性抗体、一価二重特異性抗体、及び二価二重特異性抗体を含む生理活性ペプチド混合物に対して、プロテインA HPレジンを適用した精製結果をSE-HPLCによって確認したものである。
図9は、単一特異性抗体、一価二重特異性抗体、及び二価二重特異性抗体を含む生理活性ペプチド混合物に対して、プロテインA HPレジンを適用した精製結果をSDS-PAGEで確認したものである。
図10は、単一特異性抗体、一価二重特異性抗体、及び二価二重特異性抗体を含む生理活性ペプチド混合物に対して、POROS MabCapture A Selectレジンを適用したアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示す。
図11は、単一特異性抗体、一価二重特異性抗体、及び二価二重特異性抗体を含む生理活性ペプチド混合物に対して、POROS MabCapture A Selectレジンを適用した精製結果をSE-HPLCで確認したものである。
図12は、単一特異性抗体、一価二重特異性抗体、及び二価二重特異性抗体を含む生理活性ペプチド混合物に対して、POROS MabCapture A Selectレジンを適用した精製結果をSDS-PAGEで確認したものである。
図13は、単一特異性抗体、一価二重特異性抗体、及び二価二重特異性抗体を含む生理活性ペプチド混合物に対して、AbSolute High Capレジンを適用したアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示す。
図14は、単一特異性抗体、一価二重特異性抗体、及び二価二重特異性抗体を含む生理活性ペプチド混合物に対して、AbSolute High Capレジンを適用した精製結果をSE-HPLCで確認したものである。
図15は、単一特異性抗体、一価二重特異性抗体、及び二価二重特異性抗体を含む生理活性ペプチド混合物に対して、AbSolute High Capレジンを適用した精製結果をSDS-PAGEで確認したものである。
図16は、トランジェント(Transient)法で生産された培養液(Harvested Cell Culture Fluid)と当該培養液をプロテインAで精製した試料をそれぞれPOROS A 20μm分析カラムを用いて分析したプロファイルを示す。ピーク1、ピーク2、ピーク3は、それぞれ精製された単一特異性抗体、一価二重特異性抗体、及び二価二重特異性抗体をPOROS A 20μm分析カラムにロードして各物質の保持時間(retention time)を確認した。
図17は、hu11F11及びhu11F11-F06を含む生理活性ペプチド混合物に対して、POROS MabCapture A Selectレジンを適用したアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示す。
図18は、hullFll及びhullFll-F06を含む生理活性ペプチド混合物に対して、POROS MabCapture A Selectレジンを適用した精製結果をSE-HPLCで確認したものである。
図19は、hu11F11及びhu11F11-F06を含む生理活性ペプチド混合物に対して、POROS MabCapture A Selectレジンを適用した精製結果をSDS-PAGEで確認したものである。
図20は、ch1E4及びch1E4-F06を含む生理活性ペプチド混合物に対してPOROS MabCapture A Selectレジンを適用したアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示す。
図21は、抗BACE及び抗BACE-F06を含む生理活性ペプチド混合物に対して、POROS MabCapture A Selectレジンを適用したアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示す。
図22は、ch1E4及びch1E4-F06を含む生理活性ペプチド混合物に対して、POROS MabCapture A Selectレジンを適用した精製結果をSE-HPLCで確認したものである。
図23は、抗BACE及び抗BACE-F06を含む生理活性ペプチド混合物に対して、POROS MabCapture A Selectレジンを適用した精製結果をSE-HPLCで確認したものである。
図24は、ch1E4及びch1E4-F06を含む生理活性ペプチド混合物に対して、POROS MabCapture A Selectレジンを適用した精製結果をSDS-PAGEで確認したものである。
図25は、抗BACE及び抗BACE-F06を含む生理活性ペプチド混合物に対して、POROS MabCapture A Selectレジンを適用した精製結果をSDS-PAGEで確認したものである。
図26は、Fc及びFc-F06を含む生理活性ペプチド混合物に対して、POROS MabCapture A Selectレジンを適用したアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示す。
図27は、Fc及びFc-F06を含む生理活性ペプチド混合物に対して、POROS MabCapture A Selectレジンを適用した精製結果をSE-HPLCで確認したものである。
図27は、Fc及びFc-F06を含む生理活性ペプチド混合物に対して、POROS MabCapture A Selectレジンを適用した精製結果をSDS-PAGEで確認したものである。
図29は、GLP-1-Fc及びGLP-1-Fc-F06を含む生理活性ペプチド混合物に対して、POROS MabCapture A Selectレジンを適用したアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示す。
図30は、GLP-1-Fc及びGLP-1-Fc-F06を含む生理活性ペプチド混合物に対して、POROS MabCapture A Selectレジンを適用した精製結果をSE-HPLCで確認したものである。
図31は、抗BACE、抗BACE-F06、hullFll、及びhullFll-F06を含む試料に対して、POROS MabCapture A Selectレジンを適用したアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示す。
図32は、抗BACE、抗BACE-F06、hullFll、及びhullFll-F06を含む試料に対して、POROS MabCapture A Selectレジンを適用した精製結果をSE-HPLCで確認したものである。
図33は、抗BACE、抗BACE-F06、hullFll、及びhullFll-F06を含む試料に対して、POROS MabCapture A Selectレジンを適用した精製結果をSDS-PAGEで確認したものである。
図34は、抗BACE、抗BACE-F06、hullFll、及びhullFll-F06を含む試料に対して、POROS MabCapture A Selectレジンを適用した精製結果を液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)で確認したものである。
図35は、ch1E4、ch1E4-F06、hullFll及びhullFll-F06を含む試料に対して、POROS MabCapture A Selectレジンを適用したアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示す。
【発明の実施のための形態】
【0006】
以下から、下記の実施形態を参照して本発明の利点及び特徴、ならびにそれらを達成する方法を詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態で実施することができる。ただ、本実施形態は、本発明の開示が完全になるようにし、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項によって定義されるだけである。
実施形態1:一価二重特異性抗体の調製
(1)一価二重特異性抗体発現ベクターの作製
一価二重特異性抗体(monovalent bispecific antibody)発現ベクターを作製するために、pcDNA3.4(unvitrogen)ベクターのマルチクローニングサイト(Multi cloning site、MCS)にシグナル配列を含む抗体のヌクレオチド配列を挿入した。使用した発現ベクターはモノシストロニックベクターであり、重鎖発現ベクター及び軽鎖発現ベクターをそれぞれ作製した。
重鎖発現ベクターは、第1の重鎖配列を有する重鎖発現ベクター1と第2の重鎖配列を有する重鎖発現ベクター2を作製した。
重鎖発現ベクター1は、抗αシヌクレイン(抗α-synuclein)抗体であるch11F11(国際公開番号WO2019/117684の配列リスト参照)、ch1E4(重鎖配列番号SEQ ID No.18及び軽鎖配列番号SEQ ID No.19参照)、又はhullFll(国際公開番号WO2019/117684の配列リスト参照)、又は抗BACE(国際公開番号WO2019/094608のhu2H8v29の配列参照)、抗体の重鎖可変領域及びヒト重鎖定常領域が連結された免疫グロブリンのC末端に抗IGF1R scFv(1564,FO6,VH5,VH5,VH9,VH16,表2参照)がリンカーで連結された形態であり、重鎖定常領域の特定位置に配列置換(hole mutation:T366S,L368A,Y406V)がされている。
重鎖発現ベクター2は、抗αシヌクレイン抗体又は抗BACE抗体をコードする重鎖可変領域及びヒト重鎖定常領域のみ連結された形態であり、重鎖定常領域の特定位置に配列置換(knob mutation:T366W)となっている。
軽鎖発現ベクターに挿入された軽鎖配列の場合、抗αシヌクレイン抗体又は抗BACE抗体をコードする軽鎖可変領域及びヒト軽鎖定常領域が連結された形態である。
実施形態1において、重鎖発現ベクター1、重鎖発現ベクター2、及び軽鎖発現ベクター内で抗体をコードする核酸配列はそれぞれSEQ ID NO. 20~SEQ ID No. 22に示されている。
本明細書の一実施形態による一価二重特異性抗体の例示であるhullFll×F06を構成するアミノ酸配列を以下の表1に示す。
【表1】
一価二重特異性抗体(monovalent bispecific antibody)は、抗αシヌクレイン抗体又は抗BACE抗体の重鎖Fcのうち1つのC末端にscFvが連結され、他の重鎖FcにはscFvが連結されていない異種二量体形態である。
一般に、一価二重特異性抗体の産生において、ノブ‐ノブ(Knob‐Knob)二量体、ノブ‐ホール(Knob‐hole)二量体、ホール‐ホール(hole‐hole)二量体抗体の組み合わせがすべて産生される。純粋な異種二量体(knob-hole dimer)単離のための精製過程における精製単離能の比較及び対照物質の使用のために、単一特異性抗体(monospecific antibody,knob‐knob dimerと同じサイズの150kd)及び二価二重特異性抗体(bivalent bispecific antibody,hole‐hole dimerと同じサイズの200kd)をさらにクローニングした。
精製単離能の比較及び分析に必要な対照物質の生産のための単一特異性抗体の重鎖配列の場合には、抗αシヌクレイン抗体又は抗BACE抗体をコードする重鎖可変領域及びヒト免疫グロブリンの重鎖定常領域のみがある形態であり、これが二重特異性抗体の重鎖配列の場合には、単独抗体と同じ重鎖配列C末端にscFvがリンカーで連結されているが、重鎖定常領域にいかなる配列置換もされていない形態である。単独抗体、二価二重特異性抗体、及び一価二重特異性抗体において、軽鎖配列部分はすべて同一である。
本実施形態で使用した抗IGF1R scFv(1564、F06、VH5、VH9、VH16)の重鎖可変配列及び軽鎖可変配列を下記表2に示す。
【表2】
(2)一過性発現(Transient expression)
前記調製したベクターをマキシプレップ(maxi-prep)(キアゲン(Qiagen))し、大量のプラスミド(plasmid)DNAを確保後、次のように細胞に導入した。一価二重特異性抗体を産生する場合、ホール型重鎖発現ベクターDNA、ノブ型重鎖発現ベクターDNA、及び軽鎖発現ベクターDNAを0.5:0.5:1の比で形質導入し、単一特異性抗体又は二価二重特異性抗体を産生する場合には、重鎖発現ベクターDNA及び軽鎖発現ベクターDNAを1:1の比で形質導入した。
形質注入の前日、ExpiCho(商標)(Gibco,Cat:A29127)細胞をExpiCho(商標)expression medium(Gibco,Cat:A29100-01)培地に3×10E6~4×10E6 viable cells/mLで濃度を合わせた後、8% CO2、37℃、120rpmで1日間培養した。DNA形質注入の当日7×10E6~10×10E6 viable cells/mL、生存率は95%以上に育った細胞を、新鮮培地を用いて6×106 viable cells/mLに希釈して調製した。
調製した母細胞に形質導入のためにExpiFectamine(商標)CHO transfection kit (Gibco、Cat:A29129)を使用して、ExpiFectamine(商標)CHO及びプラスミドDNA複合体を調製した。冷たいOptiPRO(商標)SFM(登録商標)(Gibco,Cat:12309019)培地をそれぞれ分注し、適正濃度で調製したDNA及びExpiFectamine(商標)CHO試薬をそれぞれ接種後、ミックスして常温で5分間静置し、母細胞に接種して形質注入後培養を始めた。形質注入の翌日にはExpiFectamine(商標)CHO transfection kitに含まれるenhancer及びfeedを形質注入細胞に接種し、5日後にはfeedを追加接種後、8% CO2、37℃、120rpm条件で10日間培養して産生を完了した。
(3)培養液収得(Culture Medium Harvest)
産生が完了した培養液を得るために遠心単離用ボトルに培養液を移し、4℃、6500rpmで30分間遠心単離後、0.2μmの大きさのフィルターで濾過を行い、浮遊物を除いた培養液を試料として確保した。その後、精製過程を行った。
実施形態2:アフィニティークロマトグラフィーによる一価二重特異性抗体の精製工程条件を確認するための実験の準備
実施形態1の方法に従って一価二重特異性抗体を作製した。この時、二重特異性抗体のうち、抗αシヌクレイン抗体としてはch11F11又はhullFllクローンを、抗IGF-1R抗体としては1564、VH5、VH9、VH16又はF06クローンを使用し、いずれもVH3ファミリー抗体に該当して、それぞれ重鎖可変領域はVH3ドメインを含んでいた。
実際の産生では、ノブ・イン・ホールによって目的抗体である一価二重特異性抗体が主に産生され、付随的生産物である二価二重特異性抗体及び単一特異性抗体は比較的少量で産生される。しかしながら、本実施形態では、本発明による精製工程がVH3ドメインの数による親和度の差によって抗体を単離できることをより明確に証明するために、当該精製における付随的生成物、すなわち不純物とされる二価二重特異性抗体及び単一特異性抗体の濃度を高めた組成物を調製し(すなわち、精製にさらに不利な条件を提供して)、この組成物を対象に精製工程を実施した。
そのような組成物は、ノブ又はホールを含まないことを除いて、実施形態1と同じ方法で調製された単一特異性抗体、一価二重特異性抗体、及び二価二重特異性抗体が1:3:1の比で含まれている。そのような組成物は、以下の精製工程によって単離された抗体を含む。
B(Z)ドメインのみを有するMabSeletSure(GE Healthcare,Cat. No. 17543803)をレジンとして使用するアフィニティークロマトグラフィーで精製し、Fcを有する精製対象物質を単離した。
平衡化バッファー(トリス塩酸塩(Tris-HCl)50mM pH7.2、塩化ナトリウム(NaCl)100mM)を用いて平衡化した後、回収した培養液をカラムにロードした。
ロードが完了したら、平衡化バッファーで3カラム体積洗浄後、クエン酸ナトリウム50mM、pH3.4を用いて溶出した。溶出液に1Mトリス塩酸塩pH9.0を加えてpH7.0となるように中和後、0.2μm除菌フィルターした。
実施形態3:各種プロテインA(プロテインA)レジンを用いた抗体精製効果の比較
一価二重特異性抗体の精製に適したプロテインAレジンを選択するために、以下の表3に示すように、様々な仕様及びドメインを有する市販のプロテインAカラムを用いたch11F11単一特異性抗体、ch11F11-F06一価二重特異性抗体ch11F11-F06二価二重特異性抗体を含む試料から精製を行い、その効果を比較した。
【表3】
各レジン別精製方法及び精製方法については、以下の実施形態3-1~3-7に詳細に記載した。
精製した試料をSE-HPLC(Size exclusion-high performance liquid chromatography)、SDS-PAGE(Sodium dodecyl sulfate polyacrylamide gel electrophoresis)又はLC/MS(Liquid chromatography Mass spectrometer)で分析して精製結果を確認した。
SE-HPLC分析では、移動相としてリン酸ナトリウム40mM、過塩素酸ナトリウム400mM、pH6.8を使用し、分析試料濃度1mg/mLで分析試料体積20uLを注入し、流速0.8mL/minで分析を行った。分析ピークは、280nmの波長での吸光度で測定した。SDS-PAGEでは、NuPAGE4-12% Bis-TrisゲルとMOPSランニングバッファを使用して、非還元及び還元条件で分析を行った。還元条件の場合、5%2メルカプトエタノールを分析試料に入れ、70℃で10分間加熱後分析を行った。LC/MS分析では、Waters Acquity超高速高分離液体クロマトグラフ(UPLC)システムとWaters Synapt G2-S四重極・飛行時間型質量分析計(Q-TOF)で構成し、PLRP-S 1000 オングストローム BEH S-200カラムを使用して分析した。データはWaters BiopharmaLynx V.1.3. ソフトウェアを使用して分析した。
実施形態3-1:MabSelet Sure
HiTrap Mabselect Sure(GE Healthcare,Cat. No. 29-0486-84)レジンを用いて試料の単離能を確認した。平衡化バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM、pH7.0)を用いて平衡化した後、実施形態1で調製した試料をカラムにロードした。溶出バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM、pH2.5)を用いて滞留時間(residence time)5分、洗浄条件は溶出バッファー0%>50%/1カラム体積でpH7.0~5.0の範囲で行った。勾配条件は、溶出バッファー50%>100%/30カラム体積で行った。
図1に、実施形態3-1によるアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示す。
図1において、x軸は試料体積として単位はmLであり、y軸は280nmでのUV波長を意味し、単位はmAuである。
図1に示すように、実施形態3-1では、1つの溶出ピークのみが示された。これから、HiTrap MabSelect Sureレジンは、試料内に存在するペプチドのVH3ドメインの数の差による親和性の差が見られないことを確認した。
実施形態3-2:MabSelect PrismA
MabSelect PrismA(GE Healthcare,Cat. No. 17-5199-01)を用いて試料の単離能を確認した。平衡化バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM、pH7.0)を用いて平衡化させた後、実施形態1で調製した試料をカラムにロードした。溶出バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM、pH2.5)を用いてレジデンス時間5分、ウォッシュ条件は溶出バッファー0%>50%/1カラム体積でpH7.0~5.0の範囲で行った。勾配条件は、溶出バッファー50%>100%/30カラム体積で行った。
図2に、実施形態3-2によるアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示す。
図2に示すように、実施形態3-2では、1つの溶出ピークのみが示された。これから、MabSelect PrismAレジンは、試料内に存在するペプチドのVH3ドメインの数の差による親和性の差を示さないことを確認した。
実施形態3-3:プロテインA FF
HiTrap プロテインA FF(GE Healthcare,Cat. No. 17-5079-01)を用いて試料の単離能を確認した。平衡化バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM、pH7.0)を用いて平衡化させた後、実施形態1で調製した試料をカラムにロードした。溶出バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM、pH2.5)を用いて滞留時間5分、洗浄条件は溶出バッファー0%>50%/1カラム体積でpH7.0~5.0の範囲で行った。勾配条件は、溶出バッファー50%>100%/30カラム体積で行った。
図3に、実施形態3-3によるアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示す。
図3に示すように、実施形態3-3では、溶出ピークが明確に単離されて現れなかった。これから、HiTrap プロテインA FFレジンは、試料内に存在するペプチドのVH3ドメインの数の差による有意な親和性の差を示さないことを確認した。
実施形態3-4:MabSelect Xtra
MabSelect Xtra(GE Healthcare, Cat. No. 17-5269-07)を用いて試料の単離能を確認した。平衡化バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM、pH7.0)を用いて平衡化させた後、実施形態1で調製した試料をカラムにロードした。溶出バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM、pH2.5)を用いて滞留時間5分、洗浄条件は溶出バッファー0%>50%/1カラム体積でpH7.0~5.0の範囲で行った。勾配条件は、溶出バッファー50%>100%/30カラム体積で行った。
図4に実施形態3-4によるアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示し、
図5及び
図6にそれぞれSE-HPLC及びSDS-PAGE結果を示す。
図4に示すように、溶出緩衝液のpH範囲で3つのピークが確認された。具体的には、比較的高いpHでVH3ドメインの数が少ない(2個)単一特異性抗体が最初に溶出され(ピーク1)、pHが低くなるにつれてVH3ドメインを3個有する一価二重特異性抗体が次に溶出され、より低いpHでVH3ドメインを最も多く有する(4個)二価二重特異性抗体が最後に溶出された。このことから、MzbSelect Xtraレジンは、試料内に存在するペプチドのVH3ドメインの数の差による親和性の差を示し、このような親和性の差によってch11F11-F06を選択的に精製できることを確認した。このような結果は、他のクローンの組合せにおいても同様に示された。
また、
図5及び
図6によるSE-HPLC及びSDS-PAGE結果により、アフィニティークロマトグラフィーによって単離されたペプチドがそれぞれ単一特異性抗体、一価二重特異性抗体及び二価二重特異性抗体に該当するという事実を再確認した。
実施形態3-5:プロテインA HP
HiTrap プロテインA HP(GE Healthcare,Cat. No. 17-0402-01)を用いて試料の単離能を確認した。平衡化バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM、pH7.0)を用いて平衡化させた後、実施形態1で調製した試料をカラムにロードした。溶出バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM、pH2.5)を用いて滞留時間5分、洗浄条件は溶出バッファー0%>50%/1カラム体積でpH7.0~5.0の範囲で行った。勾配条件は、溶出バッファー50%>100%/30カラム体積で行った。
図7に実施形態3-5によるアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示し、
図8及び
図9にそれぞれSE-HPLC及びSDS-PAGE結果を示す。
図7に示すように、溶出緩衝液のpH範囲で3つのピークが確認された。具体的には、比較的高いpHでVH3ドメインの数が少ない(2個)単一特異性抗体が最初に溶出され(ピーク1)、pHが低くなるにつれてVH3ドメインを3個有する一価二重特異性抗体が次に溶出され、より低いpHで最も高いVH3ドメインを最も多く有する(4個)二価特異性抗体が最後に溶出された。このことから、HiTrap プロテインA HPレジンは、試料内に存在するペプチドのVH3ドメインの数の差による親和性の差を示し、このような親和性の差によってch11F11-F06を選択的に精製できることを確認した。このような結果は、他のクローンの組合せにおいても同様に示された。
また、
図8及び
図9によるSE-HPLC及びSDS-PAGE結果により、アフィニティークロマトグラフィーによって単離されたペプチドがそれぞれ単一特異性抗体、一価二重特異性抗体及び二価二重特異性抗体に該当するという事実を再確認した。
実施形態3-6:POROS MabCapture A Select
POROS MabCapture A Select(Thermo Fisher SCIENTIFIC,Cat. No. A26458)を用いて試料の単離能を確認した。平衡化バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM、pH7.0)を用いて平衡化させた後、実施形態1で調製した試料をカラムにロードした。溶出バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM、pH2.5)を用いて滞留時間5分、洗浄条件は溶出バッファー0%>50%/1カラム体積でpH7.0~5.0の範囲で行った。勾配条件は、溶出バッファー50%>100%/30カラム体積で行った。
図10に実施形態3-6によるアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示し、
図11及び
図12にそれぞれSE-HPLC及びSDS-PAGE結果を示す。
図10に示すように、溶出緩衝液のpH範囲で3つのピークが確認された。具体的には、比較的高いpHでVH3ドメインの数が少ない(2個)単一特異性抗体が最初に溶出され(ピーク1)、pHが低くなるにつれてVH3ドメインを3個有する一価二重特異性抗体が次に溶出され、より低いpHでVH3ドメインを最も多く有する(4個)二価二重特異性抗体が最後に溶出された。このことから、POROS MabCapture A Selectレジンは、試料内に存在するペプチドのVH3ドメインの数の差による親和性の差を示し、このような親和性の差によってch11F11-F06を選択的に精製できることを確認した。このような結果は、他のクローンの組合せにおいても同様に示された。
また、
図11及び
図12によるSE-HPLC及びSDS-PAGE結果により、アフィニティークロマトグラフィーによって単離されたペプチドがそれぞれ単一特異性抗体、一価二重特異性抗体及び二価二重特異性抗体に該当するという事実を再確認した。
実施形態3-7:AbSolute High Cap
AbSolute High Cap(AGC)を用いて試料の単離能を確認した。平衡化バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM、pH7.0)を用いて平衡化させた後、実施形態1で調製した試料をカラムにロードした。溶出バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM、pH2.5)を用いて滞留時間5分、洗浄条件は溶出バッファー0%>50%/1カラム体積でpH7.0~5.0の範囲で行った。勾配条件は、溶出バッファー50%>100%/30カラム体積で行った。
図13に実施形態3-6によるアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示し、
図14及び
図15にそれぞれSE-HPLC及びSDS-PAGE結果を示す。
図13に示すように、溶出緩衝液のpH範囲で3つのピークが確認された。具体的には、比較的高いpHでVH3ドメインの数が少ない(2個)単一特異性抗体が最初に溶出され(ピーク1)、pHが低くなるにつれてVH3ドメインを3個有する一価二重特異性抗体が次に溶出され、より低いpHでVH3ドメインを最も多く有する(4個)二価二重特異性抗体が最後に溶出された。このことから、AbSolute High Capレジンは、試料内に存在するペプチドのVH3ドメインの数の差による親和性の差を示し、この親和性の差によってch11F11-F06を選択的に精製できることを確認した。このような結果は、他のクローンの組合せにおいても同様に示された。
また、
図14及び
図15によるSE-HPLC及びSDS-PAGE結果により、アフィニティークロマトグラフィーによって単離されたペプチドがそれぞれ単一特異性抗体、一価二重特異性抗体及び二価二重特異性抗体に該当するという事実を再確認した。
実施形態3-1~実施形態3-7の精製結果のまとめ
実施形態3-4~実施形態3-7でピークが検出された溶出緩衝液のpH濃度勾配は、下記表4に記載の通りである。
【表4】
実施形態3-1~実施形態3-7の精製結果をまとめて下記表5に詳細に記載した。
【表5】
各実施形態における単離度(Resolution,Rs)、回収率(Recovery yield)及び一価抗体収率(Monovalent Yield)は、下記式のように計算した。
*
tR1:ピーク1の保持時間(retention time)。
tR2:ピーク2の保持時間
W1/2
1:ピーク1からハーフハイト(half height)間の幅
W1/2
2:ピーク2からハーフハイト間の幅
**回収率(%)=アウトプット(mg)/インプット(mg)x100
***一価抗体収率(%)=一価抗体アウトプット(mg)×純度(%)/一価抗体インプット(mg)×純度(%)×100
実験の結果、実施形態3-4~3-7で使用したカラムのみがペプチド内に含まれるVH3ドメインの数による親和性の差を示し、その結果、単一特異性抗体、一価二重特異性抗体及び二価二重特異性敵抗体がpH濃度勾配に応じて効果的に単離されることが確認された。より具体的には、実施形態3-4~3-7で単離される抗体は、可変領域にVH3ドメインを含む単一特異性抗体のFcのC末端に連結された抗IGF1R scFvの存在及び数に応じてVH3ドメインの数がそれぞれ2個、3個、及び4個に異なり、実施形態3-4~3-7で使用されたカラムはプロテインAレジンが全長ドメインを有することで前記抗体のVH3ドメインノ数の差を細かく認識して抗体が効果的に単離された。このような効果は、Fc結合力及び塩基安定性(alkaline stability)の向上のために特定ドメインB(Z)のみを使用して一般にさらに好ましいMabselect Sure及びMabSelect PrismAなどの改善されたカラムと比較して、従来の(特別な変異を導入されていない)プロテインAを含むレジンが、VH3ドメインを含むペプチド混合物からVH3の数に応じてペプチドを単離するのにより効果的に使用できるという点でさらに驚くべきことである。
実施形態4:培養液からの抗体純度分析
POROS A 20um(Thermo fisher,Cat. No. 1-5022-26)を用いて、プロテインA精製なしで培養液を直接利用する場合でも、所望のFc含有生理活性ペプチドを分析できるか確認した。平衡化バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM、pH7.0)を用いて平衡化した後、培養液(Harvested Cell Culture Fluid)を直接ロードした。平衡化バッファーを用いて2カラム体積で非結合洗浄(unbound wash)し、溶出バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM、pH2.5)を使用して滞留時間1分、勾配条件の溶出バッファー50%>100%/30カラム体積で行った。これと同様の方法で、プロテインAで前処理(pre-purified)した試料も分析し、結果を比較した。
図16に、実施形態4によるアフィニティークロマトグラフィーの分析プロファイルを示す。
図16に示すように、プロテインAカラムを経ずに培養液を直接分析した結果とプロテインAで前処理(pre-purified)した試料を分析した結果、値がそれぞれ90.3%と90.5%と非常に類似しており、溶出プロファイルと単離度(resolution)も類似していることを確認した。
以上の結果から、一実施形態の単離方法に従った場合、トランジェント(transient)培養液をプロテインAで一次精製しなくても優れた単離度でペプチドを単離及び分析できることが確認される。したがって、一実施形態に係る単離方法は、細胞株開発の初期段階で候補細胞株の数が多い場合でも、一次精製過程なしに培養液を用いてすぐに抗体の割合及び純度を確認できる非常に効果的な分析法としても活用できる。
実施形態5:様々な非対称型ポリペプチドの精製
実施形態5-1:IgG(VH3(+))-scFv(VH3+)
実施形態3で使用したプロテインAレジンを用いて試料の単離能を確認した。プロテインAレジンとしては、表5に記載の単離能が確認される全てのプロテインAレジンを使用できることは言うまでもないが、代表的にはPOROS MabCapture A Select(Thremo Fisher SCIENTIFIC,Cat. No. A26458)を用いて精製した。精製のための試料としては、実施形態1の方法に従って生成された2つのVH3ドメインを有する単一特異性抗体(hu11F11)及び3つのVH3ドメインを有する一価二重特異性抗体(hu11F11-F06)の混合物を使用した。
平衡化緩衝液(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM pH7.0)を用いて平衡化した後、調製した試料をカラムにロードした。溶出バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM pH2.5)を用いたレジデンス時間6分、ウォッシュ条件は、溶出バッファー0%>50%/1カラムボリュームでpH7.0~5.0の範囲で行った。勾配条件は、溶出バッファー50%>100%/30カラム体積で行った。
図17にアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示し、
図18及び
図19にそれぞれSE-HPLC及びSDS-PAGE結果を示す。
溶出緩衝液のpH濃度勾配を適用した結果、
図17に示すようにピークが2つに単離された。具体的には、比較的高いpHでVH3ドメインの数が少ない(2個)単一特異性抗体が最初に溶出され(Peak1)、pHが低くなるにつれてVH3ドメインを3個有する一価二重特異性抗体が次に溶出した(ピーク2)。これらの結果は、
図18及び
図19によるSE-HPLC及びSDS-PAGE結果から再確認された。
実施形態5-2。IgG(VH3(-))-scFv(VH3+)
実施形態3で使用したプロテインAレジンを用いて試料の単離能を確認した。プロテインAレジンとしては、表5に記載の単離能が確認された全てのプロテインAレジンを使用できることは言うまでもないが、代表的にはPOROS MabCapture A Select(Thremo Fisher SCIENTIFIC,Cat. No. A26458)を用いて精製した。精製のための試料としては、IgGの可変領域にVH3ドメインを含まない抗体であるch1E4クローン又は抗BACE抗体を用いたことを除いて実施形態1と同様の方法によって生成された、VH3ドメインを有さない単一特異性抗体(ch1E4又は抗BACE)及び1つのVH3ドメインを有する一価二重特異性抗体(ch1E4-F06又は抗BACE-F06)の混合物を使用した。
平衡化バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM pH7.0)を用いて平衡化させた後、調製した試料をカラムにロードした。溶出バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM pH2.5)を用いた滞留時間6分、洗浄条件は溶出バッファー0%>50%/1カラム体積でpH7.0~5.0の範囲で行った。勾配条件は、溶出バッファー50%>100%/30カラム体積で行った。
図20及び
図21にアフィニティークロマトグラフィーの溶出ピークをそれぞれ示し、
図22及び
図23にそれぞれSE-HPLC結果を示し、
図24及び
図25にそれぞれSDS-PAGE結果を示す。
溶出緩衝液のpH濃度勾配を適用した結果、
図20及び
図21に示すようにピークが2つに単離された。具体的には、比較的高いpHでVH3ドメインを有さない(0個)、単一特異性抗体が最初に溶出され(ピーク1)、pHが低くなるにつれてVH3ドメインを1つ有する一価二重特異性抗体が次に溶出された(ピーク2)。このような結果は、
図22~
図25によるSE-HPLC及びSDS-PAGE結果により再確認された。
実施形態5-3。Fc-scFv(VH3+)
実施形態3で使用したプロテインAレジンを用いて試料の単離能を確認した。プロテインAレジンとしては、表5に記載の単離能が確認された全てのプロテインAレジンを使用できることは言うまでもないが、代表的にはPOROS MabCapture A Select(Thremo Fisher SCIENTIFIC,Cat. No. A26458)を用いて精製した。精製のための試料としては、単一特異性抗体(hullFll)及び一価二重特異性抗体(hullFll-F06)をパパイン(papain)で処理してFabを除去したFc及びFc-scFv(F06)を調製した。具体的には、パパインを消化緩衝液(digestion buffer、リン酸緩衝食塩水(PBS)10mM、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)20mM、システイン塩酸塩(cysteine-HCl)10mM、pH7.4)で希釈し、調製した試料に1:100(パパイン:抗体)比で混合し、37℃で4時間反応させた。
平衡化バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM pH7.0)を用いて平衡化させた後、調製した試料をカラムにロードした。溶出バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM pH2.5)を用いて滞留時間6分、洗浄条件は、溶出バッファー0%>50%/1カラム体積でpH7.0~5.0の範囲で行った。勾配条件は、溶出バッファー50%>100%/30カラム体積で行った。
図26にアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示し、
図27及び
図28にそれぞれSE-HPLC及びSDS-PAGE結果を示す。
溶出緩衝液のpH濃度勾配を適用した結果、
図26に示すようにピークが2つに単離された。一般的な抗体は、FcのN末端にFabが連結されているが、本実施形態で単離された試料はFcのN末端にFabを含まない。それにもかかわらず、
図26によれば、比較的高いpHでVH3ドメインがない(0個)Fcが最初に溶出され(ピーク1)、pHが低くなるにつれてVH3ドメインを1つ有するFc-scFv(F06)が次に。溶出し(ピーク2)、これらの結果は、
図27及び
図28によるSE-HPLC及びSDS-PAGE結果から再確認した。これは、本発明による精製方法が単純な抗体精製だけでなく、VH3ドメインの数に差を有する様々なFc含有ペプチド、例えばFc-scFvを含む様々なペプチド(例えば、薬物又は機能性ペプチドと連結されたFc-scFv)にも幅広く適用できることを示唆するものである。
実施形態5-4。GLP-1-Fc-scFv(VH3+)
実施形態3で使用したプロテインAレジンを用いて試料の単離能を確認した。プロテインAレジンとしては、表5に記載の単離能が確認された全てのプロテインAレジンを使用できることは言うまでもないが、代表的にはPOROS MabCapture A Select(Thremo Fisher SCIENTIFIC,Cat. No. A26458)を用いて精製した。精製のための試料としては、FcにFabの代わりにGLP-1(Glucagon-like Peptide-1)の公知の配列が連結されたことを除いて実施形態1の方法と同様の方法により生成されたGLP-1-Fc(F06)及び1つのVH3ドメインを有するGLP-1-Fc-scFv(F06)の混合物を使用した。本実施形態で使用されたGLP-1は、ペプチド薬物の一種として糖尿やアルツハイマーなどの疾患に関連して研究及び臨床が活発に進行している物質である。このようなペプチド薬物を含む場合でも、VH3ドメインの数に応じた単離が可能であるかを本実施形態で試験した。
平衡化バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM pH7.0)を用いて平衡化させた後、調製した試料をカラムにロードした。溶出バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM pH2.5)を用いた滞留時間6分、洗浄条件は、溶出バッファー0%>50%/1カラム体積でpH7.0~5.0の範囲で行った。勾配条件は、溶出バッファー50%>100%/30カラム体積で行った。
図29にアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示し、
図30にSE-HPLC結果を示す。
溶出緩衝液のpH濃度勾配を適用した結果、
図29に示すようにピークが2つに単離された。一般的な抗体は、FcのN末端にFabが連結されているが、本実施形態で単離された試料は、FcのN末端にFabの代わりにGLP-1を含む融合ペプチドである。それにもかかわらず、
図29によれば、比較的高いpHでVH3ドメインを有さない(0個)GLP-1-Fcが最初に溶出され(ピーク1)、pHが低くなるにつれてVH3ドメインを1つ有するGLP-1-Fc-scFv(F06)が次に溶出され(ピーク2)、これらの結果を
図30によるSE-HPLC結果から再確認した。これは、本発明による精製方法が単純な抗体精製だけでなく、VH3ドメインの数に差を有する様々なFc含有ペプチド、特に抗体の構成要素以外の他の有効成分もさらに含む生理活性ペプチドの単離にも幅広く適用できることを示唆するものである。
実施形態5-1~実施形態5-4における溶出緩衝液のpH濃度勾配は、以下の表6に記載の通りである。
【表6】
実施形態5-5。IgG(VH3(±))-scFv(VH3+)
実施形態3で使用したプロテインAレジンを用いて試料の単離能を確認した。プロテインAレジンとしては、表5に記載の単離能が確認された全てのプロテインAレジンを使用できることは言うまでもないが、代表的にはPOROS MabCapture A Select(Thremo Fisher SCIENTIFIC,Cat. No. A26458)を用いて精製した。精製のための試料としては、実施形態1の方法に従って産生された2つのVH3ドメインを有する単一特異性抗体(hu11F11)及び3つのVH3ドメインを有する一価二重特異性抗体(hu11F11-F06)、そしてIgGの可変領域にVH3ドメインを含まない抗体である抗BACE抗体を使用したことを除いて、実施形態1と同じ方法に従って産生された、VH3ドメインを有さない単一特異性抗体(抗BACE)及び1つのVH3ドメインを有する一価二重特異性抗体(抗BACE-F06)の合計4種類の混合物を使用した。
平衡化バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM pH7.0)を用いて平衡化させた後、調製した試料をカラムにロードした。溶出バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM pH2.5)を用いた滞留時間6分、洗浄条件は、溶出バッファー0%>50%/1カラム体積でpH7.0~5.0の範囲で行った。勾配条件は、溶出バッファー50%>100%/30カラム体積で行った。
図31にアフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示し、
図32~
図34にそれぞれSE-HPLC、SDS-PAGE及びLC/MS結果を示す。
溶出緩衝液のpH濃度勾配を適用した結果、
図31に示すようにピークが4つに単離され、VH3ドメインの数に応じたペプチド(抗BACE抗体:0個、抗BACE-F06:1個、hullFll抗体:2個、hullFll-F06:3個)のピークが明確に単離され、所望のペプチドを選択的に精製できることを確認した。さらに、これらの結果は、
図32~
図34のSE-HPLC、SDS-PAGE及びLC/MS結果から再確認された。これから、本明細書の単離方法は、各ペプチドに含まれるVH3ドメインの数に応じてペプチドを非常に細かく精製できることを確認した。
実施形態5-6。IgG(VH3(±))‐scFv(VH3+)
実施形態3で使用したプロテインAレジンを用いて試料の単離能を確認した。プロテインAレジンとしては、表5に記載の単離能が確認された全てのプロテインAレジンを使用できることは言うまでもないが、代表的にはPOROS MabCapture A Select(Thremo Fisher SCIENTIFIC,Cat. No. A26458)を用いて精製した。精製のための試料としては、実施形態1の方法に従って産生された2つのVH3ドメインを有する単一特異性抗体(hu11F11)及び3つのVH3ドメインを有する一価二重特異性抗体(hu11F11-F06)、そしてIgGの可変領域にVH3ドメインを含まない抗体クローンであるch1E4抗体を使用したことを除いて、実施形態1と同じ方法に従って産生された、VH3ドメインを有さない単一特異性抗体(ch1E4)及び1つのVH3ドメインを有する一価二重特異性抗体(ch1E4-F06)の合計4種の混合物を使用した。
平衡化バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM pH7.0)を用いて平衡化させた後、調製した試料をカラムにロードした。溶出バッファー(クエン酸塩25mM/リン酸ナトリウム25mM pH2.5)を用いて滞留時間6分、洗浄条件を溶出バッファー0%>50%/1カラム体積でpH7.0~5.0の範囲で行った。勾配条件は、溶出バッファー50%>100%/30カラム体積で行った。
図35に、アフィニティークロマトグラフィーの精製プロファイルを示す。
溶出緩衝液のpH濃度勾配を適用した結果、
図35に示すようにピークが4つに単離され、VHドメインの数に応じてペプチド(ch1E4:0個、ch1E4-F06:1個、hullFll:2個、hullFll-F06:3個)のピークを明確に単離され、所望のペプチドをVH3ドメインの数に応じて選択的に精製できることを確認した。
【配列表】
【国際調査報告】