(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-28
(54)【発明の名称】神経精神状態または神経学的状態を治療するためのエスケタミンを用いた投与計画
(51)【国際特許分類】
A61K 31/137 20060101AFI20230220BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230220BHJP
A61P 25/32 20060101ALI20230220BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20230220BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20230220BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230220BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230220BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20230220BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230220BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230220BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20230220BHJP
A61K 31/138 20060101ALI20230220BHJP
A61K 31/135 20060101ALI20230220BHJP
A61K 31/4525 20060101ALI20230220BHJP
A61K 31/343 20060101ALI20230220BHJP
A61K 31/381 20060101ALI20230220BHJP
A61K 31/15 20060101ALI20230220BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20230220BHJP
A61K 31/195 20060101ALI20230220BHJP
A61K 31/197 20060101ALI20230220BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20230220BHJP
A61K 31/53 20060101ALI20230220BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20230220BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20230220BHJP
A61K 31/495 20060101ALI20230220BHJP
A61K 31/5513 20060101ALI20230220BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20230220BHJP
A61K 31/554 20060101ALI20230220BHJP
A61K 31/4985 20060101ALI20230220BHJP
A61K 33/14 20060101ALI20230220BHJP
A61K 31/5517 20060101ALI20230220BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20230220BHJP
A61K 31/515 20060101ALI20230220BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
A61K31/137
A61P25/00
A61P25/32
A61P25/22
A61P25/18
A61P21/00
A61P25/28
A61P25/14
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K45/06
A61K31/138
A61K31/135
A61K31/4525
A61K31/343
A61K31/381
A61K31/15
A61K31/55
A61K31/195
A61K31/197
A61K31/19
A61K31/53
A61K31/7048
A61K31/496
A61K31/495
A61K31/5513
A61K31/519
A61K31/554
A61K31/4985
A61K33/14
A61K31/5517
A61K31/506
A61K31/515
A61K31/505
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534833
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(85)【翻訳文提出日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 IB2020062508
(87)【国際公開番号】W WO2021137148
(87)【国際公開日】2021-07-08
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518189792
【氏名又は名称】クレキシオ バイオサイエンシーズ エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ゲルション、アリ
(72)【発明者】
【氏名】ダンゴール、デビッド
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA02
4C084ZA05
4C084ZA08
4C084ZA18
4C084ZA20
4C084ZA22
4C084ZA94
4C084ZC39
4C084ZC41
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA10
4C086BA06
4C086BB02
4C086BC21
4C086BC32
4C086BC42
4C086BC44
4C086BC50
4C086BC56
4C086BC64
4C086BC92
4C086CB09
4C086CB11
4C086CB30
4C086EA03
4C086GA02
4C086GA03
4C086GA07
4C086GA10
4C086GA12
4C086GA16
4C086HA02
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA05
4C086ZA08
4C086ZA18
4C086ZA20
4C086ZA22
4C086ZA94
4C086ZC39
4C086ZC41
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA10
4C206DA03
4C206FA14
4C206FA19
4C206FA21
4C206FA29
4C206FA44
4C206HA08
4C206KA17
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA01
4C206ZA02
4C206ZA05
4C206ZA08
4C206ZA18
4C206ZA20
4C206ZA22
4C206ZA94
4C206ZC39
4C206ZC41
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、エスケタミンの安全かつ効果的な投与のための方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大うつ病性障害(MDD)以外の状態の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、少なくとも28日間の治療計画にわたって約5mg~約40mgのエスケタミンを含む経口剤形を前記患者に経口投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記状態が、神経精神状態である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記状態が、神経学的状態である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記状態が、急性ストレス障害、アルコール依存障害、アルコール使用障害、神経性無食欲症、不安障害、双極性障害、境界性パーソナリティ障害、神経性過食症、PMDD、統合失調感情障害および統合失調症からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記不安障害が、全般性不安障害、社交不安障害、広場恐怖症、パニック障害および恐怖症からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記双極性障害が、双極性I障害、双極性II障害、および気分循環性障害からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記状態が、ALS、アルツハイマー病、慢性疲労、糖尿病性神経障害、ジスキネジア、線維筋痛症、オピオイド耐性、疼痛および外傷性脳損傷からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記経口剤形が、約5mgのエスケタミンを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記経口剤形が、約10mgのエスケタミンを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記経口剤形が、約20mgのエスケタミンを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記経口剤形が、約30mgのエスケタミンを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記経口剤形が、約40mgのエスケタミンを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記治療計画が、28日~約730日である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記治療計画が、28日~約365日である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記治療計画が、少なくとも28日の治療後に前記大うつ病性障害以外の状態の症状の低減をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記投与が、前記治療計画にわたって少なくとも毎日1回である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記投与が、前記治療計画にわたって毎日1回である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記投与が、前記治療計画にわたって間欠である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記投与が、前記治療計画の2日ごとに1回~月に1回である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記投与が、週に2回である、請求項17に記載の投与。
【請求項21】
前記投与が、週に1回である、請求項17に記載の投与。
【請求項22】
前記投与が、月に1回である、請求項17に記載の投与。
【請求項23】
前記投与の頻度が、前記治療計画にわたって異なる、請求項17に記載の投与。
【請求項24】
(R)-ケタミン以外の第2の薬物の前記投与をさらに含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
第2の薬物が、抗うつ薬または抗躁薬である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
抗うつ薬が、フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、シタロプラム、エスシタロプラム、ベンラファキシン、デスベンラファキシン、デュロキセチン、およびフルボキサミンからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
抗躁薬が、抗けいれん薬、抗精神病薬、気分安定薬および抗不安薬からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記抗けいれん薬が、カルバマゼピン、ガバペンチン、プレガバリン、バルプロ酸、ラモトリギンおよびトピラマートからなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記抗精神病薬が、ルラシドン、カリプラジン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、パリペリドン、ルマテペロン、アリピプラゾールまたはブレクスピプラゾールからなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記気分安定薬が、リチウムもしくはその薬学的に許容される塩またはカルシウムチャネル遮断薬からなる、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記抗不安薬が、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼパート、ジアゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、ブスピロン、ゲピロン、イスパピロン(ispapirone)、ヒドロキシジン、アモバルビタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、チオペンタールおよびプロプラノロールからなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記投与のエスケタミンC
maxが、30ng/ml以下である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記投与のエスケタミンAUC
0-tが、60ng*h/ml以下である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記投与のエスケタミンC
maxが30ng/ml以下であり、前記投与のエスケタミンAUC
0-tが60ng*h/ml以下である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記投与の前記エスケタミンC
maxが、15ng/ml以下である、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記投与の前記エスケタミンAUC
0-tが、30ng*h/ml以下である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記投与の前記エスケタミンC
maxが15ng/ml以下であり、前記投与の前記エスケタミンAUC
0-tが30ng*h/ml以下である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記エスケタミンが、塩酸エスケタミンである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
大うつ病性障害以外の状態の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、剤形を前記患者に経口投与することを含み、前記剤形が30ng*h/ml以下のエスケタミンC
maxをもたらす、方法。
【請求項40】
大うつ病性障害以外の状態の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、剤形を前記患者に経口投与することを含み、前記剤形が850ng*h/ml以下のエスケタミンAUC
0-tをもたらす、方法。
【請求項41】
大うつ病性障害以外の状態の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、剤形を前記患者に経口投与することを含み、前記剤形が150ng*h/ml以下の(S)-ノルケタミンC
maxをもたらす、方法。
【請求項42】
大うつ病性障害以外の状態の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、剤形を前記患者に経口投与することを含み、前記剤形が850ng*h/ml以下の(S)-ノルケタミンAUC
0-tをもたらす、方法。
【請求項43】
大うつ病性障害以外の状態の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、剤形を前記患者に経口投与することを含み、前記剤形が150ng*h/ml以下の(S)-ノルケタミンC
maxおよび850ng*h/ml以下の(S)-ノルケタミンAUC
0-tをもたらす、方法。
【請求項44】
大うつ病性障害以外の状態の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、剤形を前記患者に経口投与することを含み、前記剤形が75ng*h/ml以下の(2S,6S)-OH-ノルケタミンC
maxをもたらす、方法。
【請求項45】
大うつ病性障害以外の状態の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、剤形を前記患者に経口投与することを含み、前記剤形が850ng*h/ml以下の(2S,6S)-OH-ノルケタミンAUC
0-tをもたらす、方法。
【請求項46】
大うつ病性障害以外の状態の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、剤形を前記患者に経口投与することを含み、前記剤形が75ng*h/ml以下の(2S,6S)-OH-ノルケタミンC
maxおよび850ng*h/ml以下の(2S,6S)-OH-ノルケタミンAUC
0-tをもたらす、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年12月30日に出願された米国仮出願第62/954,790号に対する優先権の利益を主張し、その内容の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、エスケタミンの安全かつ効果的な投与のための方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
ケタミンは、主にCNSにおけるNMDA受容体拮抗作用を介して作用する、非バルビツール酸の、即効性の、導入および全身麻酔薬である。この薬は、1970年からKetalar(登録商標)の商品名で米国において入手可能である。1971年、DE2062620は、ケタミンの(-)エナンチオマー、エスケタミンを記載した。エスケタミンは、欧州においてKetanest(登録商標)Sの商品名で導入および全身麻酔薬として、かつ米国においてSpravato(登録商標)の商品名で治療抵抗性うつ病を治療するための経口抗うつ薬と併用される点鼻薬として、入手可能である。
【0004】
Sofia et al(1975)は、うつ病を治療するために経口ケタミンの使用を提案した。Berman et al(1980)は、大うつ病を有する7名の患者においてケタミンの単回静脈内用量のプラセボ対照臨床試験の結果を記載した。DE102007009888は、うつ病の治療における(S)(+)-ケタミンの使用を提案している。より最近では、うつ病が他の療法に不応性であると証明された場合を含め、大うつ病性障害(MDD)の治療にケタミンまたはエスケタミンを使用する可能性への関心が高まっており、2019年には、うつ病を治療するためのこのエナンチオマーの最初の市販承認につながっている。
【0005】
ケタミンおよびエスケタミンは、様々な他の神経学的状態および精神状態においても調査されている。これらの調査の中で、Diazgranados et al(2010)は、双極性障害における静脈内ケタミンの頑健かつ迅速な影響を実証し、Glue et al(2019)は、治療不応性の全般性不安および社交不安障害患者において最大1週間持続した、ケタミン投与の1時間以内の不安評価の改善を見出し、Sherman et al(2016)は、ケタミンがパーキンソン病患者におけるレボドパ誘発性ジスキネジアを軽減できることを発見し、Marchetti et al(2015)は、経口ケタミンが慢性疼痛を低減できることを示した。
【0006】
ケタミンおよびエスケタミンの医薬組成物は、静脈内、鼻腔内および経口を含む様々な投与経路を介して健康な対象および患者に投与されている。Clements et al(1982)は、経口ケタミンの相対的バイオアベイラビリティを17%、かつ筋肉内ケタミンの相対的バイオアベイラビリティを93%と記録する。その論文以降、他のいくつかの研究は、ケタミンの相対的経口バイオアベイラビリティを17~24%と記録している。Malinovsky et al(1996)は、鼻腔内ケタミンの相対的バイオアベイラビリティを50%、かつ直腸ケタミンの相対的バイオアベイラビリティを30%と記録する。Yanagihara et al(2003)は、直腸および舌下の両方のケタミンの相対的バイオアベイラビリティを30%と記録するが、鼻のバイオアベイラビリティは45%であることを見出した。
【0007】
エスケタミンは40年超利用可能であるが、非静脈内経路によるその相対的バイオアベイラビリティに関する文献はほとんど公開されていない。Peltoniemi et al(2012)は、エスケタミンの経口バイオアベイラビリティを11%と記録するが、Fanta et al(2015)は、それがわずか8%であることを見出し、エスケタミンの初回通過代謝がケタミンで見られるものよりも広汎であることを示唆している。残念ながら、鼻腔内および経口エスケタミンの相対的バイオアベイラビリティに関する研究のプロトコルであるNCT02343289は、2015年にすでに記載されたが、結果は発表されていない。WO2019126108は、鼻腔内投与された56mgおよび84mgが、0.2mg/kgのエスケタミンの静脈内投与によって達成された範囲以上の血漿エスケタミンレベルを生成することを開示し、鼻腔内エスケタミンの相対的バイオアベイラビリティがケタミンのそれよりも低い可能性があることを示唆している。
【0008】
ケタミンの2つのエナンチオマーの相対的な有効性および安全性も、文献ではかなりの議論の源になってきた。Ebert et al(1997)は、エスケタミンが(R)-ケタミンよりもNMDA受容体に対して5倍高い親和性を有することを記録する。Oye et al(1992)は、エスケタミンが(R)-ケタミンの4倍強く、疼痛の知覚を低減し、聴覚および視覚障害を引き起こすことを記録する。Domino(2010)は、エスケタミンは(R)-ケタミンよりも強力であるように見えるが、望ましくない精神異常発現性の副作用もより大きいことを記録する。対照的に、Zhang et al(2014)およびYang et al(2015)は、(R)-ケタミンが、精神異常発現性の副作用および乱用傾向のないうつ病の動物モデルにおいて、エスケタミンよりも高い効力およびより長く持続する抗うつ効果を示したことを記録する。これにより、一部は、例えば、Hashimoto(2016)は、これらの分子の抗うつ効果がNMDA受容体拮抗作用によるものではない可能性があることを示唆している。
【0009】
うつ病の治療におけるケタミンおよびそのエナンチオマーの使用への関心が最近高まっているにもかかわらず、ほとんどの臨床報告は、単回投与後の影響を記載している。Blonk et al(2010)は、疼痛療法における経口ケタミンの慢性投与について記録された用量の広汎なレビューを提供し、通常、200mg/日以上の高用量が1年まで、かつ1年超の期間に処方されたことを示している。Paslakis et al(2010)は、うつ病に苦しむ患者に併用療法として、最大1.25mg/kg/日の経口エスケタミンを14日間にわたって投与し、2名の患者が自身の7日間の治療で最大150mg/日を受けたという、4症例報告を記録する。
【0010】
驚くべきことに、今では、高レベルのエスケタミンの慢性投与は変異原性のリスクの増加と関連していることが見出されており、したがって、薬の循環血中レベルは、経口剤形で投与される際のエスケタミンの投与について限定されるべきである。
【発明の概要】
【0011】
一実施形態では、本発明は、大うつ病性障害(MDD)以外の状態の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、少なくとも28日間の治療計画にわたって約5mg~約40mgのエスケタミンを含む経口剤形を該患者に経口投与することを含む、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、大うつ病性障害以外の状態の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、少なくとも28日間の治療計画にわたって約5mg~約40mg(例えば、5mg~40mg)のエスケタミンを含む経口剤形を該患者に経口投与することを含む、方法に関する。
【0013】
本明細書で使用される場合、「大うつ病性障害」またはMDDという用語は、以下の5つの基準を満たす精神障害として特徴付けられる:1)ほぼ毎日生じる以下の追加の基準のうちの5つ(またはそれ以上)とともに、同じ2週間の間に、以前の機能からの変化をともに表す、憂鬱な気分/悲しい気分、または興味および喜びの喪失の存在、i)憂鬱な気分/悲しい気分、ii)興味および喜びの喪失、iii)食事療法をしていないのに、大幅な体重減少もしくは体重増加、または食欲の減少もしくは増加、iv)不眠症または過眠症、v)精神運動の激越または遅滞、vi)疲労または消耗感、vii)無価値感または過度のもしくは不適切な罪悪感、viii)思考力もしくは集中力の減少、または優柔不断、ix)死について繰り返し考えること、または自殺念慮、計画もしくは試み:2)症状は、社会的、職業的または他の機能において臨床的に重大な苦痛または障害を引き起こす:3)エピソードは精神病障害によってより適切に説明されていない:4)エピソードは物質の生理学的影響または別の医学的状態に起因しない:5)躁病または軽躁病のエピソードは一度もなかった(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,5th Edition,American Psychiatric Association,2013)。
【0014】
一実施形態では、大うつ病性障害以外の状態は、神経精神状態および/または神経学的状態である。
【0015】
一実施形態では、神経精神状態は、急性ストレス障害、アルコール依存障害、アルコール使用障害、神経性無食欲症、不安障害、双極性障害、境界性パーソナリティ障害、神経性過食症、PMDD、統合失調感情障害および統合失調症からなる群から選択される。
【0016】
一実施形態では、神経学的状態は、ALS、アルツハイマー病、慢性疲労、糖尿病性神経障害、ジスキネジア、線維筋痛症、オピオイド耐性、疼痛および外傷性脳損傷からなる群から選択される。
【0017】
別段記載されない限り、本明細書で使用される場合、「神経精神状態」という用語は、American Psychiatric AssociationのDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders第5版2013(DSM-5)によって分類および特徴付けられる精神状態を指すものとする。
【0018】
本明細書で使用される場合、「急性ストレス障害」という用語は、個人が実際のまたは脅迫された死、重傷および/または性的暴行にさらされ、外傷性事象への曝露後3日~1か月続く侵入、否定的な気分、解離、回避、および覚醒の症状を呈する、神経精神状態を指すものとする。
【0019】
本明細書で使用される場合、「急性ストレス障害を治療すること」という用語は、急性ストレスの症状の低減を指すことができる。いくつかの態様では、急性ストレス障害を治療することは、Clinician-Administered PTSD Scale for DSM-5(CAPS-5)スコアの減少、Clinician-Administered PTSD Scale for DSM-5(CAPS-5)スコアの悪化までの時間の増加、Posttraumatic Stress Disorder Checklist for DSM-5(PCL-5)スコアの減少、Posttraumatic Stress Disorder Checklist for DSM-5(PCL-5)スコアの悪化までの時間の増加、Posttraumatic Diagnostic Scale -5(PDS-5)スコアの減少、Posttraumatic Diagnostic Scale -5(PDS-5)スコアの悪化までの時間の増加、PTSD Symptom Scale - Interview for DSM-5(PSS-I-5)スコアの減少、PTSD Symptom Scale - Interview for DSM-5(PSS-I-5)スコアの悪化までの時間の増加、National Stressful Events Survey Acute Stress Disorder Short(NSESSS)スコアの減少、National Stressful Events Survey Acute Stress Disorder Short(NSESSS)スコアの悪化までの時間の増加、Beck Anxiety Inventory(BAI)スコアの減少、Beck Anxiety Inventory(BAI)スコアの悪化までの時間の増加、寛解に達する患者の数の増加、DSM-5診断基準の数の減少、および/またはDSM-5診断基準の提示の頻度の減少を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「アルコール依存障害」という用語は、個人が、American Psychiatric AssociationのDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 第4版1995(DSM-4)によって分類および特徴付けられるアルコールに対して身体的または心理的に依存している、神経精神状態を指すものとする。
【0021】
本明細書で使用される場合、「アルコール依存障害を治療すること」という用語は、アルコール依存の症状の低減を指すことができる。いくつかの態様では、アルコール依存を治療することは、ベースラインからの多量飲酒日(HDD)の数の減少、断酒率の増加、飲酒リスクレベル(RSDRL)応答の低減、少なくとも1つのレベルの世界保健機関(WHO)Drinking Risk Categoryの減少、1週間当たりの断酒日の百分率の減少、1週間当たりの多量飲酒の日の百分率の減少、1週間当たりの飲酒の平均数の減少、Alcohol Craving Scale - Short Form(ACQ-SR-R)スコアの減少、Alcohol Craving Scale - Short Form(ACQ-SR-R)スコアの悪化までの時間の増加、Alcohol Related Consequences(ImBIBe)スコアの減少、Alcohol Related Consequences(ImBIBe)スコアの悪化までの時間の増加、寛解に達する患者の数の増加、DSM-4診断基準の数の減少、DSM-4診断基準の提示の頻度の減少および/または毎月の総アルコール消費量(TAC)のベースラインからの変化の減少を指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、「アルコール使用障害」という用語は、個人が、多量のアルコール使用に加わり、アルコール摂取の制御の喪失に苦しむ、神経精神状態を指すことができる。
【0023】
本明細書で使用される場合、「アルコール使用障害を治療すること」という用語は、アルコール依存の症状の低減を指すことができる。いくつかの態様では、アルコール依存を治療することは、ベースラインからの多量飲酒日(HDD)の数の低減、断酒率の増加、飲酒リスクレベル(RSDRL)応答の減少、少なくとも1つのレベルの世界保健機関(WHO)Drinking Risk Categoryの減少、1週間当たりの断酒日の百分率の減少、1週間当たりの多量飲酒の日の百分率の減少、1週間当たりの飲酒の平均数の減少、Alcohol Craving Scale - Short Form(ACQ-SR-R)スコアの減少、Alcohol Craving Scale - Short Form(ACQ-SR-R)スコアの悪化までの時間の増加、Alcohol Related Consequences(ImBIBe)スコアの減少、Alcohol Related Consequences(ImBIBe)スコアの悪化までの時間の増加、寛解に達する患者の数の増加、DSM-5診断基準の数の減少、DSM-5診断基準の提示の頻度の減少および/または毎月の総アルコール消費量(TAC)のベースラインからの変化の減少を指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、「神経性無食欲症」という用語は、個人が、持続的なエネルギー摂取制限、体重増加または肥満になることの激しい恐怖、または体重増加を妨げる持続的行動、および自己認識した体重または体形における障害に苦しむ、神経精神状態を指すことができる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「神経性無食欲症を治療すること」という用語は、神経性無食欲症の症状の低減を指すことができる。いくつかの態様では、神経性無食欲症を治療することは、体重のベースラインからの増加、食欲のベースラインからの増加、ボディマス指数(BMI)の増加、Yale-Brown Obsessive Compulsive Scaleスコアの強迫観念サブスケールの減少、Yale-Brown Obsessive Compulsive Scaleの強迫観念サブスケールの悪化までの時間の増加、Eating Disorder Inventory Drive for Thinnessサブスケールスコアの減少、Eating Disorder Inventory Drive for Thinnessサブスケールスコアの悪化までの時間の増加、体の不満についてのEating Disorder Inventory(EDI)スコアの減少、体の不満についてのEating Disorder Inventory(EDI)スコアの悪化までの時間の増加、Ease of Eating Scale(EOES)スコアの減少、Ease of Eating Scale(EOES)スコアの悪化までの時間の増加、90%理想体重(IBW)に達し、該体重を1か月間維持するまでの時間の減少、寛解に達する患者の数の増加、Eating Disorders Examination Questionnaire(EDE-Q)スコアの低減、DSM-5診断基準の数の減少、DSM-5診断基準の提示の頻度の減少、および/またはEating Disorders Examination Questionnaire(EDE-Q)スコアの悪化までの時間の増加を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「不安障害」という用語は、過度の恐怖および/または不安および関連する行動障害の特徴を共有する、神経精神状態を指す。一実施形態では、不安障害は、全般性不安障害、社交不安障害、広場恐怖症、パニック障害および恐怖症を含む。
【0027】
本明細書で使用される場合、「不安障害を治療すること」という用語は、不安障害の症状の低減を指す。いくつかの態様では、不安障害を治療することは、全般性不安障害の治療を指す。他の態様では、不安障害を治療することは、社交不安障害の治療を指す。他の態様では、不安障害を治療することは、広場恐怖症の治療を指す。他の態様では、不安障害を治療することは、パニック障害の治療を指す。他の態様では、不安障害を治療することは、特定の恐怖症の治療を指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「全般性不安障害を治療すること」という用語は、全般性不安障害の症状の低減を指すことができる。いくつかの態様では、全般性不安障害の治療は、Hamilton Anxiety Scale(HAM-A)スコアの減少、Hamilton Anxiety Scale(HAM-A)スコアの悪化までの時間の増加、Hospital Anxiety and Depression(HAD)不安サブスケールスコアの減少、Hospital Anxiety and Depression(HAD)不安サブスケールスコアの悪化までの時間の増加、HAM-Aの応答者の百分率の増加、寛解に達する患者の数の増加、Generalized Anxiety Disorder 7項目スケール(GAD-7)スコアの減少、Generalized Anxiety Disorder 7項目スケール(GAD-7)スコアの悪化までの時間の増加、36-Item Short-Form Health Survey(SF-36)Social Functioningサブスコアの減少、DSM-5診断基準の数の減少、DSM-5診断基準の提示の頻度の減少、および/または36-Item Short-Form Health Survey(SF-36)Social Functioningサブスコアの悪化までの時間の増加を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「社交不安障害を治療すること」という用語は、社交不安障害の症状の低減を指すことができる。いくつかの態様では、社交不安障害の治療は、Liebowitz Social Anxiety Scale(LSAS)スコアの減少、Liebowitz Social Anxiety Scale(LSAS)スコアの悪化までの時間の増加、Brief Social Phobia Scale(BSPS)スコアの減少、Brief Social Phobia Scale(BSPS)スコアの悪化までの時間の増加、Marks Fear質問票の社交不安サブスコアの減少、Marks Fear質問票の社交不安サブスコアの悪化までの時間の増加、Fear of Negative Evaluation(FNE)スコアの減少、Fear of Negative Evaluation(FNE)スコアの悪化までの時間の増加、Albany Panic and Phobia Questionnaire(APPQ)Social Anxietyサブスコアの減少、Albany Panic and Phobia Questionnaire(APPQ)Social Anxietyサブスコアの悪化までの時間の増加、寛解に達する患者の数の増加、Social Avoidance and Distress Scale(SADS)スコアの減少、DSM-5診断基準の数の減少、DSM-5診断基準の提示の頻度の減少、および/またはSocial Avoidance and Distress Scale(SADS)スコアの悪化までの時間の増加を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「広場恐怖症を治療すること」という用語は、広場恐怖症の症状の低減を指すことができる。いくつかの態様では、広場恐怖症を治療することは、Panic and Agoraphobia Scale(PAS)スコアの減少、Panic and Agoraphobia Scale(PAS)スコアの悪化までの時間の増加、Albany Panic and Phobia Questionnaire(APPQ)広場恐怖症サブスコアの減少、Albany Panic and Phobia Questionnaire(APPQ)広場恐怖症サブスコアの悪化までの時間の増加、寛解に達する患者の数の増加、Ost Agoraphobia Scale(AS)スコアの減少、DSM-5診断基準の数の減少、DSM-5診断基準の提示の頻度の減少、および/またはOst Agoraphobia Scale(AS)スコアの悪化までの時間の増加を指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「パニック障害を治療すること」という用語は、パニック障害の症状の低減を指すことができる。いくつかの態様では、パニック障害を治療することは、パニック発作の頻度の低減、パニック発作の期間の低減、Panic Disorder Severity Scale(PDSS)スコアの減少、Panic Disorder Severity Scale(PDSS)スコアの悪化までの時間の増加、寛解に達する患者の数の増加、Albany Panic and Phobia Questionnaire(APPQ)Panic Disorderサブスコアの減少、DSM-5診断基準の数の減少、DSM-5診断基準の提示の頻度の減少、および/またはAlbany Panic and Phobia Questionnaire(APPQ)Panic Disorderサブスコアの悪化までの時間の増加を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「恐怖症を治療すること」という用語は、恐怖症の症状の低減を指すことができる。いくつかの態様では、恐怖症を治療することは、VAS-Anxietyスコアの減少、VAS-Anxietyスコアの悪化までの時間の増加、State-Trait Anxiety Inventory(STAI)スコアの減少、State-Trait Anxiety Inventory(STAI)スコアの悪化までの時間の増加、Beck Anxiety Inventory(BAI)スコアの減少、Beck Anxiety Inventory(BAI)スコアの悪化までの時間の増加、Fairbrother and Antony Specific Phobia Questionnaire(SPQ)スコアの減少、Fairbrother and Antony Specific Phobia Questionnaire(SPQ)スコアの悪化までの時間の増加、Acute Panic Inventory(API)スコアの減少、Acute Panic Inventory(API)スコアの悪化までの時間の増加、Profile of Mood States(POMS)スコアの減少、Profile of Mood States(POMS)スコアの悪化までの時間の増加、寛解に達する患者の数の増加、Marks Main Phobia Questionnaireスコアの減少、DSM-5診断基準の数の減少、DSM-5診断基準の提示の頻度の減少、および/またはMarks Main Phobia Questionnaireスコアの悪化までの時間の増加を指す。
【0033】
本発明はさらに、双極性障害の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、少なくとも28日間の治療計画にわたって約5mg~約40mg(例えば、5mg~40mg)のエスケタミンを含む経口剤形を該患者に経口投与することを含む、方法に関する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「双極性障害」という用語は、個人が、躁病および/または軽躁および/またはうつ病を含み、かつ混合性の特徴を伴うかまたは伴わない、重大な気分エピソードに苦しむ、神経精神障害を指すことができる(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th Edition,(DSM-V)American Psychiatric Association,2013)。一実施形態では、双極性障害は、双極性I障害、双極性II障害、および気分循環性障害を含む。
【0035】
本明細書で使用される場合、「双極性I障害」という用語は、躁病エピソードが、軽躁エピソードおよび/または大うつ病エピソードの前および/または後にある可能性がある、躁病エピソードを含む精神障害として特徴付けられる。
【0036】
本明細書で使用される場合、「双極性II障害」という用語は、現在または過去の軽躁エピソードおよび現在または過去の大うつ病エピソードを含む、精神障害として特徴付けられる。
【0037】
本明細書で使用される場合、「気分エピソード」という用語は、目立たない期間に起こる一連の症状であり、通常、双極性障害に関連し、躁病エピソード、軽躁エピソード、および大うつ病エピソードを含む。
【0038】
本明細書で使用される場合、「躁病エピソード」という用語は、4つの基準を含む:1)少なくとも1週間続き、ほぼ毎日の日中のほとんど、または入院が必要な場合は任意の期間、ほぼ毎日存在する、異常かつ持続的に上昇するか、開放的であるか、または過敏な気分、および異常かつ持続的に増加した目標指向の活動またはエネルギー;2)気分障害および増加したエネルギーまたは活動の期間中、以下の症状のうち3つ以上(気分が高ぶるだけの場合は4つ)が、重大な程度で存在し、通常の行動からの顕著な変化を表す:i)誇張された自尊心または誇大感、ii)睡眠の減少した必要性、iii)通常よりも口数が多い、または話し続けるための圧力、iv)思想の飛躍または考えが競合しているという主観的な経験、v)報告または観察された注意散漫(distractibility)、vi)職場もしくは学校での、社交的もしくは性的のいずれかの目標指向活動または精神運動激越の増加、およびvii)疼痛を伴う結果の可能性が高い活動への過度の関与;3)気分障害が、社会的もしくは職業的機能に著しい障害を引き起こすか、または自己もしくは他者への危害を防ぐために入院を必要とするほど十分に深刻であるか、あるいは精神病的特徴がある;4)エピソードは、物質の生理学的効果または別の医学的状態に起因するものではない。
【0039】
本明細書で使用される場合、「軽躁エピソード」という用語は、6つの基準を含む:1)少なくとも連続して4日続き、ほぼ毎日の日中のほとんど存在する、異常かつ持続的に上昇するか、開放的であるか、または過敏な気分、および異常かつ持続的に増加した活動またはエネルギー;2)気分障害ならびに増加したエネルギーおよび活動の期間中、以下の症状のうち3つ以上(気分が高ぶるだけの場合は4つ)が、持続しており、通常の行動からの顕著な変化を表し、重大な程度で存在している:i)誇張された自尊心または誇大感、ii)睡眠の減少した必要性、iii)通常よりも口数が多い、または話し続けるための圧力、iv)思想の飛躍または考えが競合しているという主観的な経験、v)報告または観察された注意散漫、vi)職場もしくは学校での、社交的もしくは性的のいずれかの目標指向活動または精神運動激越の増加、およびvii)疼痛を伴う結果の可能性が高い活動への過度の関与;3)エピソードが、症候性でない場合、個人の特徴ではない機能の明白な変化に関連している;4)気分の障害および機能の変化が他者によって観察可能である;5)エピソードが、社会的もしくは職業的機能に著しい障害を引き起こすか、または入院を必要とするほど深刻ではない;6)エピソードが物質の生理学的効果に起因するものではない。
【0040】
本明細書で使用される場合、「大うつ病エピソード」という用語は、3つの基準を含む:1)以下の症状のうちの5つ以上が、同じ2週間の期間中に存在しており、以前の機能からの変化を表し、症状のうちの少なくとも1つが(1)落ち込んだ気分または(2)興味もしくは喜びの喪失であり、明らかに別の医学的状態に起因する症状を含まない:i)主観的な報告または他者によって行われた観察のいずれかによって示される、ほぼ毎日の日中のほとんどの落ち込んだ気分、ii)主観的な説明または観察のいずれかによって示される、ほぼ毎日の日中のほとんどの、すべてまたはほとんどすべての活動への著しく減少した関心または喜び、iii)ダイエットをしていないときの大幅な体重減少または体重の増加またはほぼ毎日食欲の増加もしくは減少、iv)ほぼ毎日の不眠症または過眠症、v)他者によって観察可能であり、単に主観的な焦燥感または減速感ではない、ほぼ毎日の精神運動の激越または遅滞、vi)ほぼ毎日の疲労またはエネルギーの喪失、vii)ほぼ毎日、単に自責または病気であることの罪悪感だけでなく、妄想的である可能性がある、無価値感または過度もしくは不適切な罪悪感、viii)主観的な説明による、または他者によって観察されるいずれかの、ほぼ毎日の思考力もしくは集中力の減少、または優柔不断、ならびにix)死についての繰り返しの考え、および死ぬことへの恐れだけでない、具体的計画のない繰り返しの自殺観念化、自殺の試みまたは自殺の実行についての具体的計画;2)症状は、社会的、職業的、または他の重要な機能領域に臨床的における重大な苦痛または障害を引き起こす;3)エピソードは、物質または別の医学的状態の生理学的効果に起因しない。
【0041】
本明細書で使用される場合、「気分循環性障害」という用語は、5つの基準を含む精神障害として特徴付けられる:1)少なくとも2年間、軽躁エピソードの基準を満たさない軽躁症状を伴う多数の期間、ならびに大うつ病エピソードの基準を満たさないうつ症状を伴う軽躁エピソードおよび多数の期間があり、該症状は、統合失調感情障害、統合失調症、統合失調症様障害、妄想性障害、または他の特定もしくは不特定の統合失調症スペクトラムもしくは他の精神病障害によって最も良く説明される;2)該2年間に、軽躁およびうつ病の期間が少なくとも半分の時間存在しており、個人は一度に2か月以上症状がないことがない;3)大うつ病、躁病、または軽躁のエピソードの基準が満たされたことがない;4)症状は、物質または別の医学的状態の生理学的効果に起因しない;5)症状は、社会的、職業的、または他の重要な機能領域において臨床的に重大な苦痛または障害を引き起こす。
【0042】
一実施形態では、双極性障害は、不安による苦痛を伴う。別の実施形態では、障害は、混合性特徴を伴う。別の実施形態では、障害は、メランコリアの特徴を伴う。別の実施形態では、障害は、非定型の特徴を伴う。別の実施形態では、障害は、気分に一致する精神病的特徴を伴う。別の実施形態では、障害は、気分に一致しない精神病的特徴を伴う。別の実施形態では、障害は、緊張病を伴う。別の実施形態では、障害は、周産期発症を伴う。別の実施形態では、障害は、季節型を伴う。
【0043】
本明細書で使用される場合、「双極性障害を治療すること」という用語は、双極性障害の症状の低減および/または予防を指すことができる。いくつかの態様では、双極性障害を治療することは、双極性I障害の治療を指す。他の態様では、双極性障害を治療することは、双極性II障害の治療を指す。他の態様では、双極性障害を治療することは、気分循環性障害の治療を指す。いくつかの態様では、双極性障害を治療することは、双極性障害の維持療法を指すことができる。他の態様では、双極性障害を治療することは、双極性障害に関連する大うつ病エピソードおよびそれらの症状の治療を指すことができる。いくつかの態様では、双極性障害の治療は、双極性障害に苦しむ患者におけるMontgomery-Åsberg Depression Rating Scale(MADRS)スコアの減少、双極性障害に苦しむ患者におけるMontgomery-Åsberg Depression Rating Scale(MADRS)スコアの悪化までの時間の増加、双極性障害に苦しむ患者におけるHamilton Depression Rating Scaleスコアの減少、双極性障害に苦しむ患者におけるHamilton Depression Rating Scaleスコアの悪化までの時間の増加、うつ病の臨床的に関連する再発の減少、躁病の臨床的に関連する再発の低減、Young Mania Rating Scale(YMRS)スコアの減少、Young Mania Rating Scale(YMRS)スコアの悪化までの時間の増加、双極性疾病(CGI-BP)スコアで使用するためのClinical Global Impressions(CGI)Scaleの減少、双極性疾病(CGI-BP)スコアで使用するためのClinical Global Impressions(CGI)Scaleの悪化までの時間の増加、Beckうつ病インベントリスコアの減少、実際の応答を実証する患者の数の増加、寛解に達する患者の数の増加、気分エピソードの数の減少、気分エピソードの提示の頻度の減少、気分エピソードの強度の減少、DSM-5診断基準の数の減少、DSM-5診断基準の提示の頻度の減少、DSM-5診断基準の強度の減少、および/または再発までの時間の増加を指す。一実施形態では、スコアおよび/または症状の提示の該増加、減少、および低減は、治療が開始される前に特定される症状のスコアおよび/または提示、すなわちベースラインと比較して評価され得る。別の実施形態では、スコアおよび/または症状の提示の該増加、減少、および低減は、異なる治療群において特定される症状のスコアおよび/または提示と比較して評価され得る。一実施形態では、異なる治療群は、ケタミンまたはエスケタミン以外の第2の薬物である。別の実施形態では、異なる治療群は、プラセボである。
【0044】
一実施形態では、双極性障害は、ケタミンまたはエスケタミン以外の抗うつ薬の適切な用量および治療期間に応答していない。いくつかの態様では、ケタミンまたはエスケタミン以外の抗うつ薬の適切な用量および治療期間の後、非応答者は、MADRSスコア、同様の心理測定スコア、または改善のそれらの全体的印象の患者自己報告において、最大25%の改善を実証することができていない。他の態様では、ケタミンまたはエスケタミン以外の抗うつ薬の適切な用量および治療期間の後、非応答者は、MADRSスコア、同様の心理測定スコア、または改善のそれらの全体的印象の患者自己報告において、25~50%の不完全な改善を実証した。他の態様では、ケタミンまたはエスケタミン以外の抗うつ薬の適切な用量および治療期間の後、非応答者は、MADRSスコア、同様の心理測定スコア、または改善のそれらの全体的印象の患者自己報告において、最大50%の不適切な改善を実証した。いくつかの態様では、ケタミンまたはエスケタミン以外の抗うつ薬の適切な用量および治療期間は、現在の大うつ病エピソード中のケタミンまたはエスケタミン以外の1つ以上の抗うつ薬の用量および治療期間を指す。他の態様では、適切な経過は、以前の大うつ病エピソード中のケタミンまたはエスケタミン以外の1つ以上の抗うつ薬の用量および治療期間に対する非応答を指す。他の態様では、適切な経過は、以前の大うつ病エピソード中および現在の大うつ病エピソード中の両方において、ケタミンまたはエスケタミン以外の1つ以上の抗うつ薬の用量および治療期間に対する非応答を指す。いくつかの態様では、障害は、治療不応性または治療抵抗性の双極性うつ病、すなわち、ケタミンまたはエスケタミン以外の少なくとも2つの抗うつ薬の適切な用量および治療期間に応答できていない双極性うつ病である。
【0045】
一実施形態では、双極性障害は、抗躁薬の適切な用量および治療期間に応答していない。いくつかの態様では、抗躁薬の適切な用量および治療期間の後、非応答者は、MADRSスコア、同様の心理測定スコア、または改善のそれらの全体的印象の患者自己報告において、最大25%の改善を実証することができていない。他の態様では、抗躁薬の適切な用量および治療期間の後、非応答者は、MADRSスコア、同様の心理測定スコア、または改善のそれらの全体的印象の患者自己報告において、25~50%の不完全な改善を実証した。他の態様では、抗躁薬の適切な用量および治療期間の後、非応答者は、MADRSスコア、同様の心理測定スコア、または改善のそれらの全体的印象の患者自己報告において、最大50%の不適切な改善を実証した。いくつかの態様では、抗躁薬の適切な用量および治療期間は、現在の大うつ病エピソード中の1つ以上の抗躁薬の用量および治療期間を指す。他の態様では、適切な経過は、以前の大うつ病エピソード中の1つ以上の抗躁薬の用量および治療期間に対する非応答を指す。他の態様では、適切な経過は、以前の大うつ病エピソード中および現在の大うつ病エピソード中の両方において、1つ以上の抗躁薬の用量および治療期間に対する非応答を指す。
【0046】
本明細書で使用される場合、「境界性パーソナリティ障害」という用語は、個人が、対人関係の不安定性、自己イメージ、影響、および顕著な衝動性の広汎パターンに苦しみ、成人期初期までに始まる、神経精神障害を指すことができる。
【0047】
本明細書で使用される場合、「境界性パーソナリティ障害を治療すること」という用語は、境界性パーソナリティ障害の症状の低減を指すことができる。いくつかの態様では、境界性パーソナリティ障害を治療することは、Clinical Interview Schedule-Revised(CIS-R)スコアの減少、Clinical Interview Schedule-Revised(CIS-R)スコアの悪化までの時間の増加、Clinical Interview for Depressionスコアの減少、Clinical Interview for Depressionスコアの悪化までの時間の増加、寛解に達する患者の数の増加、Clinical Interview for Maniaスコアの減少、DSM-5診断基準の数の減少、DSM-5診断基準の提示の頻度の減少および/またはClinical Interview for Maniaスコアの悪化までの時間の増加を指す。
【0048】
本明細書で使用される場合、「神経性過食症」という用語は、個人が、過度の食事の再発エピソード、体重増加を防ぐための再発する不適切な代償行動、ならびに体形および体重によって過度に影響される自己評価に苦しむ、神経精神状態を指すことができる。
【0049】
本明細書で使用される場合、「神経性過食症を治療すること」という用語は、神経性過食症の症状の低減を指すことができる。いくつかの態様では、神経性過食症を治療することは、体重のベースラインからの増加、食欲のベースラインからの増加、ボディマス指数(BMI)の増加、Yale-Brown Obsessive Compulsiveスケールの強迫観念サブスケールの減少、Yale-Brown Obsessive Compulsiveスケールの悪化までの時間の増加、Eating Disorder Inventory Drive for Thinnessサブスケールの減少、Eating Disorder Inventory Drive for Thinnessサブスケールの悪化までの時間の増加、体の不満についてのEating Disorder Inventory(EDI)スコアの減少、体の不満についてのEating Disorder Inventory(EDI)スコアの悪化までの時間の増加、Ease of Eating Scale(EOES)スコアの減少、Ease of Eating Scale(EOES)スコアの悪化までの時間の増加、90%理想体重(IBW)に達し、該体重を1か月間維持するまでの時間の減少、寛解に達する患者の数の増加、Eating Disorders Examination Questionnaire(EDE-Q)スコアの低減、DSM-5診断基準の数の減少、DSM-5診断基準の提示の頻度の減少、および/またはEating Disorders Examination Questionnaire(EDE-Q)スコアの悪化までの時間の増加を指す。
【0050】
本明細書で使用される場合、「月経前不快気分障害」という用語、PMDDは、個人が、周期の月経前段階中に繰り返し発生し、月経の発生前後またはその直後に寛解する、気分不安定、易怒性、不快気分、および不安症状の発現に苦しむ、神経精神状態を指すことができる。
【0051】
本明細書で使用される場合、「PMDDを治療すること」という用語は、PMDDの症状の低減を指すことができる。いくつかの態様では、PMDDを治療することは、Daily Record of Severity of Problems(DRSP)スコアの減少、Daily Record of Severity of Problems(DRSP)スコアの悪化までの時間の増加、治療中に発生した有害事象の発生率の減少、寛解に達する患者の数の増加、DSM-5診断基準の数の減少、DSM-5診断基準の提示の頻度の減少、および/または単一の月経の片頭痛発作についての片疼痛スケールスコアの減少を指す。
【0052】
本明細書で使用される場合、「統合失調感情障害」という用語は、個人が精神病の活動的または残存症状を示し続ける間、個人が中断のない期間の疾病に苦しむ、神経精神状態を指すことができる。一実施形態では、統合失調感情障害は、双極性およびうつ病性統合失調感情障害のタイプの両方を含む。
【0053】
本明細書で使用される場合、「統合失調感情障害を治療すること」という用語は、統合失調感情障害の症状の低減を指すことができる。いくつかの態様では、統合失調症を治療することは、Positive and Negative Symptoms of Schizophrenia(PANSS)スコアの減少、Positive and Negative Symptoms of Schizophrenia(PANSS)スコアの悪化までの時間の増加、Scale for the Assessment of Negative Symptoms(SANS)スコアの減少、Scale for the Assessment of Negative Symptoms(SANS)スコアの悪化までの時間の増加、Scale for the Assessment of Positive Symptoms(SAPS)スコアの減少、Scale for the Assessment of Positive Symptoms(SAPS)スコアの悪化までの時間の増加、Clinical Global Impression(CGI-S-SCA)Severity for Schizoaffective Disorderスコアの減少、Clinical Global Impression(CGI-S-SCA)Severity for Schizoaffective Disorderスコアの悪化までの時間の増加、Personal and Social Performance(PSP)スコアの増加、Personal and Social Performance(PSP)スコアの悪化までの時間の増加、統合失調感情障害に苦しむ患者におけるHamilton Rating Scale for Depressionスコアの減少、統合失調感情障害に苦しむ患者におけるHamilton Rating Scale for Depressionスコアの悪化までの時間の増加、Young Mania Rating Scale(YMRS)スコアの減少、Young Mania Rating Scale(YMRS)スコアの悪化までの時間の増加、統合失調感情障害に苦しむ患者におけるMontgomery-Åsberg Depression Rating Scale(MADRS)スコアの減少、統合失調感情障害に苦しむ患者におけるMontgomery-Åsberg Depression Rating Scale(MADRS)スコアの悪化までの時間の増加、統合失調感情障害に苦しむ患者におけるHamilton Depression Rating Scaleスコアの減少、統合失調感情障害に苦しむ患者におけるHamilton Depression Rating Scaleスコアの悪化までの時間の増加、うつ病の臨床的に関連する再発の減少、躁病の臨床的に関連する再発の低減、Beckうつ病インベントリスコアの減少、実際の応答を実証する患者の数の増加、寛解に達する患者の数の増加、寛解に達する患者の数の増加、DSM-5診断基準の数の減少、DSM-5診断基準の提示の頻度の減少、および/または再発までの時間の増加を指す。
【0054】
本明細書で使用される場合、「統合失調症」という用語は、個人が、妄想、幻覚、および/または無秩序な発話の明らかな存在を含む、一連の認知、行動、および感情の機能障害に苦しむ、神経精神状態を指すことができる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「統合失調症を治療すること」という用語は、統合失調症の症状の低減を指すことができる。いくつかの態様では、統合失調症を治療することは、Positive and Negative Symptoms of Schizophrenia(PANSS)スコアの減少、Positive and Negative Symptoms of Schizophrenia(PANSS)スコアの悪化までの時間の増加、Scale for the Assessment of Negative Symptoms(SANS)スコアの減少、Scale for the Assessment of Negative Symptoms(SANS)スコアの悪化までの時間の増加、Scale for the Assessment of Positive Symptoms(SAPS)スコアの減少、Scale for the Assessment of Positive Symptoms(SAPS)スコアの悪化までの時間の増加、Clinical Global Impression(CGI-S)Severityスコアの減少、Clinical Global Impression(CGI-S)Severityスコアの悪化までの時間の増加、Personal and Social Performance(PSP)スコアの増加、Personal and Social Performance(PSP)スコアの悪化までの時間の増加、寛解に達する患者の数の増加、DSM-5診断基準の数の減少、DSM-5診断基準の提示の頻度の減少、および/または再発までの時間の増加を指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、「神経学的状態」という用語は、中枢および/または末梢神経系の疾患を指すことができる。
【0057】
本明細書で使用される場合、「筋萎縮性側索硬化症」という用語、またはALSは、脳の上位運動ニューロンならびに脳幹および脊髄の下位運動ニューロンに影響を与える神経学的状態を指すことができる。この状態は、進行性の脱力感、萎縮、線維束性収縮、反射亢進、構音障害、嚥下障害、および最終的な呼吸機能の麻痺として臨床的に現れる可能性がある。
【0058】
本明細書で使用される場合、「ALSを治療すること」という用語は、ALSの症状の低減を指すことができる。いくつかの態様では、ALSを治療することは、Amyotrophic Lateral Sclerosis Functional Rating Scale-Revised(ALSFRS-R)スコアの減少、Amyotrophic Lateral Sclerosis Functional Rating Scale-Revised(ALSFRS-R)スコアの悪化までの時間の増加、Ventilation Assistance-free Survival(VAFS)時間の増加、全体生存時間の増加、Handheld Dynamometry(HHD)によって測定される筋力の増加、Amyotrophic Lateral Sclerosis Assessment Questionnaire-40(ALSAQ-40)スコアの減少、Amyotrophic Lateral Sclerosis Assessment Questionnaire-40(ALSAQ-40)スコアの悪化までの時間の増加、Amyotrophic Lateral Sclerosis Assessment Questionnaire-5(ALSAQ-5)スコアの減少、Amyotrophic Lateral Sclerosis Assessment Questionnaire-5(ALSAQ-5)スコアの悪化までの時間の増加、Progression Free Survival(PFS)時間の増加、Norris ALSスケールスコアの減少、Norris ALSスケールスコアの悪化までの時間の増加、Appel ALSスケールスコアの減少、Appel ALSスケールスコアの悪化までの時間の増加、Edinburgh Cognitive and Behavioral Amyotrophic Lateral Sclerosis Screen(ECAS)スコアの増加、および/またはEdinburgh Cognitive and Behavioral Amyotrophic Lateral Sclerosis Screen(ECAS)スコアの悪化までの時間の増加を指す。
【0059】
本明細書で使用される場合、「アルツハイマー病」という用語は、認知症の潜行性発症によって特徴付けられる脳に影響を与える神経学的状態を指すことができる。この状態は、記憶、判断、注意持続期間、および問題解決能力の障害、重度の失行、ならびに認知能力の全体的な喪失として臨床的に現れる可能性がある。
【0060】
本明細書で使用される場合、「アルツハイマー病を治療すること」という用語は、アルツハイマー病の症状の低減を指すことができる。いくつかの態様では、アルツハイマー病を治療することは、Clinical Dementia Rating - Sum of Boxes(CDR-SB)スコアの減少、Clinical Dementia Rating - Sum of Boxes(CDR-SB)スコアの悪化までの時間の増加、Alzheimer’s Disease Composite Score(ADCOMS)の減少、Alzheimer’s Disease Composite Score(ADCOMS)の悪化までの時間の増加、Clinical Dementia Rating(CDR)スコアの悪化までの時間の増加、Clinical Dementia Rating(CDR)スコアの悪化までの時間の増加、Mini-Mental State Exam(MMSE)スコアの増加、Mini-Mental State Exam(MMSE)スコアの悪化までの時間の増加、Alzheimer’s Disease Assessment Scale Cognitiveサブスケール(ADAS-Cog)スコアの減少、Alzheimer’s Disease Assessment Scale Cognitiveサブスケール(ADAS-Cog)スコアの悪化までの時間の増加、Alzheimer’s Disease Cooperative Study - Activities of Daily Living(ADCS-ADL)スコアの増加、および/またはAlzheimer’s Disease Cooperative Study - Activities of Daily Living(ADCS-ADL)スコアの悪化までの時間の増加を指す。
【0061】
本明細書で使用される場合、「慢性疲労」という用語は、持続性または再発性の疲労、散在性筋骨格痛、睡眠障害、および主観的認知障害によって特徴付けられる神経学的状態を指すことができ、該症状は、進行中の運動によって引き起こされず、休息によって軽減されない。いくつかの実施形態では、慢性疲労は、別の病状に続発する臨床提示であり、該病状は、がん、うつ病、双極性障害、パーキンソン病、および線維筋痛症を含み得る。
【0062】
本明細書で使用される場合、「慢性疲労を治療すること」という用語は、慢性疲労の症状の低減を指すことができる。いくつかの態様では、慢性疲労を治療することは、Multidimensional Fatigue Inventory(MFI)-全般疲労サブスケールスコアの減少、Multidimensional Fatigue Inventory(MFI)-全般疲労サブスケールスコアの悪化までの時間の増加、Brief Pain Inventory(BPI)-平均疼痛重症度スコアの減少、Brief Pain Inventory(BPI)-平均疼痛重症度スコアの悪化までの時間の増加、Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)-うつ病サブスケールスコアの減少、Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)-うつ病サブスケールスコアの悪化までの時間の増加、Checklist Individual Strength(CIS)スコアの減少、Checklist Individual Strength(CIS)スコアの悪化までの時間の増加、および/CIS合計スコアの20%以上の改善を有する患者の百分率の増加を指す。
【0063】
本明細書で使用される場合、「糖尿病性神経障害」という用語は、真性糖尿病に関連する末梢神経、自律神経、および脳神経に影響を与える神経学的状態を指すことができる。
【0064】
本明細書で使用される場合、「糖尿病性神経障害を治療すること」という用語は、糖尿病性神経障害の症状の低減を指すことができる。いくつかの態様では、糖尿病性神経障害を治療することは、Utah Early Neuropathy Scale(UENS)スコアの減少、Utah Early Neuropathy Scale(UENS)スコアの悪化までの時間の増加、Norfolk Quality of Life-Diabetes Neuropathy(NQoL-DN)スコアの減少、Norfolk Quality of Life-Diabetes Neuropathy(NQoL-DN)スコアの悪化までの時間の増加、Neuropathy Impairment Score of the Lower Limb(NIS-LL)スコアの減少、Neuropathy Impairment Score of the Lower Limb(NIS-LL)スコアの悪化までの時間の増加、Michigan Diabetic Neuropathy(MNDS)スコアの減少、Michigan Diabetic Neuropathy(MNDS)スコアの悪化までの時間の増加、修正Toronto Clinical Neuropathy Scale(mTCNS)スコアの減少、および/またはToronto Clinical Neuropathy Scale(mTCNS)スコアの悪化までの時間の増加を指す。
【0065】
本明細書で使用される場合、「ジスキネジア」という用語は、基礎疾患プロセスの徴候として通常発生する、主に四肢、体幹、または顎に影響を与える、異常な不随意運動によって特徴付けられる神経学的状態を指すことができる。一実施形態では、ジスキネジアは、レボドパ誘発性ジスキネジアである。
【0066】
本明細書で使用される場合、「ジスキネジアを治療すること」という用語は、ジスキネジアの症状の低減を指すことができる。いくつかの態様では、ジスキネジアを治療することは、Abnormal Involuntary Movement Scale(AIMS)スコアの減少、Abnormal Involuntary Movement Scale(AIMS)スコアの悪化までの時間の増加、Unified Dyskinesia Rating Scale(UDysRS)スコアの減少、Unified Dyskinesia Rating Scale(UDysRS)スコアの悪化までの時間の増加、Rush Dyskinesia Rating Scale(RDRS)スコアの減少、Rush Dyskinesia Rating Scale(RDRS)スコアの悪化までの時間の増加、Lang-Fahn Activities of Daily Living Dyskinesia Rating Scale(LF)スコアの減少、Lang-Fahn Activities of Daily Living Dyskinesia Rating Scale(LF)の悪化までの時間の増加を指す。
【0067】
本明細書で使用される場合、「線維筋痛症」という用語は、筋痛症および触診に対する限局性筋圧痛の複数の点(トリガー点)によって特徴付けられる神経学的状態を指し、筋肉痛は、不活動または寒冷への曝露によって悪化する可能性がある。いくつかの実施形態では、線維筋痛症は、睡眠障害、疲労、こわばり、頭痛、および時折うつ病などの一般的な症状を伴って臨床的に現れる可能性がある。
【0068】
本明細書で使用される場合、「線維筋痛症を治療すること」という用語は、線維筋痛症の症状の低減を指すことができる。いくつかの態様では、線維筋痛症を治療することは、Fibromyalgia Impact Questionnaire - Revised(FIQ-R)スコアの減少、Fibromyalgia Impact Questionnaire - Revised(FIQ-R)スコアの悪化までの時間の増加、Daily Sleep Interference(DSIS)スコアの増加、Daily Sleep Interference(DSIS)スコアの悪化までの時間の増加、Pain Intensity-Numerical Rating Scale(PI-NRS)スコアの減少、および/またはPain Intensity-Numerical Rating Scale(PI-NRS)スコアの悪化までの時間の増加を指す。
【0069】
本明細書で使用される場合、「オピオイド耐性」という用語は、オピオイドの鎮痛効果、ならびに通常、鎮痛効果の低減および用量増加につながる他の効果に対する患者の耐性によって特徴付けられる神経学的状態を指すことができる。
【0070】
本明細書で使用される場合、「オピオイド耐性を治療すること」という用語は、オピオイド耐性の症状の低減を指すことができる。いくつかの態様では、オピオイド耐性を治療することは、オピオイド消費量の減少、平均疼痛強度の減少の増加、最悪の疼痛強度の減少、救助薬消費量の減少、救助薬の投与の頻度の減少、Brief Pain Inventory(BPI)平均疼痛スコアの減少、Brief Pain Inventory(BPI)最悪の疼痛スコアの減少、Summed Pain Intensity Difference(SPID)スコアの減少、Total Pain Relief(TOTPAR)スコアの増加、疼痛軽減がピークに達するまでの時間の減少、最初の知覚可能な疼痛軽減までの時間の減少、意味のある疼痛軽減までの時間の減少、および/またはAverage Daily Pain(ADPS)スコアの減少を指す。
【0071】
本明細書で使用される場合、「疼痛」という用語は、侵害刺激によって誘発された不快な感覚によって特徴付けられる神経学的状態を指すことができる。一実施形態では、疼痛は、神経障害性疼痛である。別の実施形態では、疼痛は、侵害受容性疼痛である。本明細書で使用される場合、「神経障害性疼痛」という用語は、神経系への損傷または神経系に影響を与える疾患に関連する疼痛を指すことができ、中枢、末梢または中枢および末梢の混合物のいずれかであり得る。本明細書で使用される場合、「侵害受容性疼痛」という用語は、感覚神経線維の刺激に関連する疼痛を指すことができ、表面的、深部、または2つの混合物のいずれかであり得る。一実施形態では、疼痛は、急性の疼痛である。別の実施形態では、疼痛は、慢性的な疼痛である。
【0072】
本明細書で使用される場合、「疼痛を治療すること」という用語は、疼痛の症状の低減を指すことができる。いくつかの態様では、疼痛を治療することは、平均疼痛強度の減少、最悪の疼痛強度の減少、オピオイド消費量の減少、救助薬消費量の減少、救助薬の投与の頻度の減少、Brief Pain Inventory(BPI)平均疼痛スコアの減少、Brief Pain Inventory(BPI)平均疼痛スコアの悪化までの時間の増加、Brief Pain Inventory(BPI)最悪の疼痛スコアの減少、Brief Pain Inventory(BPI)最悪の疼痛スコアの悪化までの時間の増加、Summed Pain Intensity Difference(SPID)スコアの減少、Summed Pain Intensity Difference(SPID)スコアの悪化までの時間の増加、Total Pain Relief(TOTPAR)スコアの増加、Total Pain Relief(TOTPAR)スコアの悪化までの時間の増加、疼痛軽減がピークに達するまでの時間の減少、最初の知覚可能な疼痛軽減までの時間の減少、意味のある疼痛軽減までの時間の減少、Average Daily Pain(ADPS)スコアの減少、および/またはAverage Daily Pain(ADPS)スコアの悪化までの時間の増加を指す。
【0073】
本明細書で使用される場合、「外傷性脳損傷」という用語は、突然の外傷が脳に損傷を引き起こすときに発生する後天性脳損傷として特徴付けられる神経学的状態を指すことができる。
【0074】
本明細書で使用される場合、「外傷性脳損傷を治療すること」という用語は、外傷性脳損傷の症状の低減を指すことができる。いくつかの態様では、外傷性脳損傷を治療することは、Glasgow Outcome Scale(GOS)スコアの増加、Glasgow Outcome Scale(GOS)スコアの悪化までの時間の増加、Glasgow Coma Scale(GCS)スコアの増加、Glasgow Coma Scale(GCS)スコアの悪化までの時間の増加、Quality of Life after Brain Injury(QOLIBRI)スコアの増加、Quality of Life after Brain Injury(QOLIBRI)スコアの悪化までの時間の増加、臨床的印象重症度、攻撃性、興奮、易怒性/不安定および/もしくは脱抑制についてのNeuropsychiatric Inventory Clinician Rating Scale(NPI-C)サブスケールスコアの減少、臨床的印象重症度、攻撃性、興奮、易怒性/不安定および/もしくは脱抑制についてのNeuropsychiatric Inventory Clinician Rating Scale(NPI-C)サブスケールスコアの悪化までの時間の増加、Patient Global Impression of Severity(PGI-S)スコアの減少、Patient Global Impression of Severity(PGI-S)スコアの悪化までの時間の増加、Fugl-Meyer Motor Scale(FMMS)スコアの増加、Fugl-Meyer Motor Scale(FMMS)スコアの悪化までの時間の増加、Disability Rating Scale(DRS)スコアの減少、ならびに/またはDisability Rating Scale(DRS)スコアの悪化までの時間の増加を指す。
【0075】
一実施形態では、大うつ病性障害以外の状態のスコアおよび/または症状の提示の該増加、減少、および低減は、治療が開始される前に特定される症状のスコアおよび/または提示、すなわちベースラインと比較して評価され得る。別の実施形態では、大うつ病性障害以外のスコアおよび/または症状状態の提示の該増加、減少、および低減は、異なる治療群において特定される症状のスコアおよび/または提示と比較して評価され得る。一実施形態では、異なる治療群は、ケタミンまたはエスケタミン以外の第2の薬物である。別の実施形態では、異なる治療群は、プラセボである。
【0076】
本開示の方法は、許容可能な安全性および/または忍容性プロファイルを示すことになる。すなわち、本開示の方法を使用して達成される利点は、プラセボと比較して、開示された方法を使用することによって示されるあらゆる安全性および/または忍容性の考慮事項を上回るであろう。他の態様では、本開示の方法を使用して達成される利点は、大うつ病性障害以外の状態を治療する他の方法と比較して、開示された方法を使用することによって示されるあらゆる安全性および/または忍容性の考慮事項を上回るであろう。大うつ病性障害以外の状態を治療する他の方法は、ケタミンおよびエスケタミンを使用する他の方法を含む。例えば、本開示の方法を使用して達成される利点は、プラセボと比較して、例えば、血液学、生化学、尿検査、免疫学的パラメータ、身体検査所見、血圧、および/または心拍数における有害な変化を含むあらゆる有害事象を上回るであろう。他の態様では、本開示の方法を使用して達成される利点は、大うつ病性障害以外の状態を治療する他の方法と比較して、例えば、血液学、生化学、尿検査、免疫学的パラメータ、身体検査所見、血圧、および/または心拍数の変化を含むあらゆる有害事象を上回るであろう。
【0077】
他の態様では、本開示の方法を使用して達成された利点は、プラセボと比較して、12誘導心電図所見、方法の中止、Digit Symbol Substitution Test(DSST)、反応時間検査(Cambridge COGNITIONおよび/またはCogstateバッテリー)、自己管理型Stanford眠気スケール、Bladder Pain/Interstitial Cystitis Symptom Score(BPIC-SS)、Modified Observer’s Alertness/Sedation Scale(MOAA/S)、Clinician-Administered Dissociative States Scale(CADSS)、Suicidality Scale- Clinician-Rated Columbia Suicide Severity Rating Scale(C-SSRS)、Brief Psychiatric Rating Scale(BPRS)からの4項目の陽性症状サブスケール、および/または20項目のPhysician Withdrawal Checklist(PWC-20)におけるあらゆる有害事象を上回るであろう。他の態様では、本開示の方法を使用して達成された利点は、MDD以外の状態を治療する他の方法と比較して、12誘導心電図所見、方法の中止、Digit Symbol Substitution Test(DSST)、反応時間検査(Cambridge COGNITIONおよび/またはCogstateバッテリー)、自己管理型Stanford眠気スケール、Bladder Pain/Interstitial Cystitis Symptom Score(BPIC-SS)、Modified Observer’s Alertness/Sedation Scale(MOAA/S)、Clinician-Administered Dissociative States Scale(CADSS)、Suicidality Scale- Clinician-Rated Columbia Suicide Severity Rating Scale(C-SSRS)、Brief Psychiatric Rating Scale(BPRS)からの4項目の陽性症状サブスケール、および/または20項目のPhysician Withdrawal Checklist(PWC-20)におけるあらゆる有害事象を上回るであろう。
【0078】
本明細書で使用される場合、「ケタミン」という用語は、化学化合物dl 2-(2-クロロフェニル)-2(メチルアミノ)シクロヘキサノン、またはその薬学的に許容される塩を指すものとする。
【0079】
本明細書で使用される場合、「エスケタミン」という用語は、化学化合物(2S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサノンとしても知られるケタミンの(S)-エナンチオマー、またはその薬学的に許容される塩を指すものとする。本明細書で使用される場合、「エスケタミン」という用語は、ケタミン、またはその薬学的に許容される塩において、エナンチオマー過剰率なしで見出される化合物を除外するものであると理解されるべきである。一実施形態では、エスケタミン、またはその薬学的に許容される塩は、エスケタミンの塩酸塩、すなわち、エスケタミン塩酸塩である。
【0080】
本明細書で使用される場合、「(R)-ケタミン」という用語は、化学化合物(2R)-2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサノンとしても知られるケタミンの(R)-エナンチオマー、またはその薬学的に許容される塩を指すものとする。本明細書で使用される場合、「(R)-ケタミン」という用語は、ケタミン、またはその薬学的に許容される塩において、エナンチオマー過剰率なしで見出される化合物を除外するものであると理解されるべきである。
【0081】
本明細書で使用される場合、「(S)-ノルケタミン」という用語は、化学化合物(2S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(アミノ)シクロヘキサノンとしても知られるノルケタミンの(S)-エナンチオマー、またはその薬学的に許容される塩を指すものとする。本明細書で使用される場合、「(S)-ノルケタミン」という用語は、ノルケタミン、またはその薬学的に許容される塩において、エナンチオマー過剰率なしで見出される化合物を除外するものであると理解されるべきである。
【0082】
本明細書で使用される場合、「(2S,6S)-OH-ノルケタミン」という用語は、化学化合物(2S,6S)-2-アミノ-2-(2-クロロフェニル)-6-ヒドロキシシクロヘキサノンとしても知られるヒドロキシノルケタミンの(2S,6S)-エナンチオマー、またはその薬学的に許容される塩を指すものとする。本明細書で使用される場合、「(2S,6S)-OH-ノルケタミン」という用語は、ヒドロキシノルケタミン、またはその薬学的に許容される塩において、エナンチオマー過剰率なしで見出される化合物を除外するものと理解されるべきである。
【0083】
本発明による本明細書に記載の化学化合物はまた、分子構造がそれらの構造上に存在する炭素原子、水素原子および窒素原子の同位体を含むそのような化合物を含むように意図される。同位体には、同じ原子番号を有するが異なる質量数を有する原子が含まれる。例えば、水素の同位体には重水素が含まれる。炭素の同位体にはC-13が含まれる。窒素の同位体にはN-15が含まれる。
【0084】
したがって、本明細書に開示される製剤に適しているとして本出願で教示される任意の化学化合物の化学構造内で、
・任意の水素原子または水素原子団は、水素の同位体、すなわち重水素と適切に置き換えられることができ、
・任意の炭素原子または炭素原子団は、炭素の同位体、すなわち13Cと適切に置き換えられることができ、
・任意の窒素原子または窒素原子団は、窒素の同位体、すなわち15Nと適切に置き換えられることができる。
【0085】
本明細書で使用される場合、「治療計画」という用語は、治療を必要とするヒト患者が、毎日または間欠的のいずれかで、2回以上のエスケタミンの投与によって治療される期間を指すものとする。本発明の好ましい実施形態では、治療計画は、少なくとも28日間に及ぶことになる。別の好ましい実施形態では、治療計画は、少なくとも30日間に及ぶことになる。別の好ましい実施形態では、治療計画は、28日~約365日となる。別の好ましい実施形態では、治療計画は、28日~約730日となる。別の好ましい実施形態、治療計画は、少なくとも1か月間に及ぶことになる。別の好ましい実施形態では、治療計画は、少なくとも1年(365日)に及ぶことになる。本発明の別の好ましい実施形態では、治療計画は、少なくとも約730日間、すなわち、少なくとも約2年間に及ぶことになる。別の実施形態では、治療計画は、28~約730日(すなわち、約2年)の過程にわたって変化する。精神医学の当業者は、28~約730日(例えば、約2年)にわたって投与計画を決定することができるであろう。
【0086】
一実施形態では、大うつ病性障害以外の状態の症状の低減は、治療計画の28日目以降である。別の実施形態では、大うつ病性障害以外の状態の症状の低減は、治療計画の30日目以降である。別の実施形態では、大うつ病性障害以外の状態の症状の低減は、治療計画の365日目以降である。別の実施形態では、大うつ病性障害以外の状態の症状の低減は、治療計画の730日目以降である。一実施形態では、治療計画は、少なくとも7日間の治療後の大うつ病性障害以外の状態の症状の低減をもたらす。別の実施形態では、治療計画は、少なくとも14日間の治療後の大うつ病性障害以外の状態の症状の低減をもたらす。別の実施形態では、治療計画は、少なくとも21日間の治療後の大うつ病性障害以外の状態の症状の低減をもたらす。別の実施形態では、治療計画は、少なくとも28日の治療後の大うつ病性障害以外の状態の症状の低減をもたらす。別の実施形態では、治療計画は、少なくとも365日の治療後の大うつ病性障害以外の状態の症状の低減をもたらす。別の実施形態では、治療計画は、少なくとも730日の治療後の大うつ病性障害以外の状態の症状の低減をもたらす。
【0087】
一実施形態では、大うつ病性障害以外の状態の症状の低減は、治療計画の28日目以降であり、治療が開始される前に特定される症状のスコアおよび/または提示、すなわちベースラインと比較される。別の実施形態では、大うつ病性障害以外の状態の症状の低減は、治療計画の28日目以降であり、異なる治療群において特定される症状のスコアおよび/または提示と比較される。一実施形態では、異なる治療群は、ケタミンまたはエスケタミン以外の第2の薬物である。別の実施形態では、異なる治療群は、プラセボである。
【0088】
別の実施形態では、大うつ病性障害以外の状態の症状の低減は、治療計画の30日目以降である。別の実施形態では、大うつ病性障害以外の状態の症状の低減は、治療計画の365日目以降である。別の実施形態では、大うつ病性障害以外の状態の症状の低減は、治療計画の730日目以降である。一実施形態では、治療計画は、少なくとも7日間の治療後の大うつ病性障害以外の状態の症状の低減をもたらす。別の実施形態では、治療計画は、少なくとも14日間の治療後の大うつ病性障害以外の状態の症状の低減をもたらす。別の実施形態では、治療計画は、少なくとも21日間の治療後の大うつ病性障害以外の状態の症状の低減をもたらす。別の実施形態では、治療計画は、少なくとも28日の治療後の大うつ病性障害以外の状態の症状の低減をもたらす。別の実施形態では、治療計画は、少なくとも365日の治療後の大うつ病性障害以外の状態の症状の低減をもたらす。別の実施形態では、治療計画は、少なくとも730日の治療後の大うつ病性障害以外の状態の症状の低減をもたらす。
【0089】
一実施形態では、双極性障害の症状の低減または予防は、治療計画の28日目以降である。別の実施形態では、双極性障害の症状の低減または予防は、治療計画の30日目以降である。別の実施形態では、双極性障害の症状の低減または予防は、治療計画の365日目以降である。別の実施形態では、双極性障害の症状の低減または予防は、治療計画の730日目以降である。一実施形態では、治療計画は、少なくとも7日間の治療後の双極性障害の症状の低減または予防をもたらす。別の実施形態では、治療計画は、少なくとも14日間の治療後の双極性障害の症状の低減または予防をもたらす。別の実施形態では、治療計画は、少なくとも21日間の治療後の双極性障害の症状の低減または予防をもたらす。別の実施形態では、治療計画は、少なくとも28日間の治療後の双極性障害の症状の低減または予防をもたらす。別の実施形態では、治療計画は、少なくとも365日間の治療後の双極性障害の症状の低減または予防をもたらす。別の実施形態では、治療計画は、少なくとも730日間の治療後の双極性障害の症状の低減または予防をもたらす。
【0090】
一実施形態では、双極性障害の症状の低減または予防は、治療計画の28日目以降であり、治療が開始される前に特定される症状のスコアおよび/または提示、すなわちベースラインと比較される。別の実施形態では、双極性障害の症状の低減または予防は、治療計画の28日目以降であり、異なる治療群で特定された症状のスコアおよび/または提示と比較される。一実施形態では、異なる治療群は、ケタミンまたはエスケタミン以外の第2の薬物である。別の実施形態では、異なる治療群は、プラセボである。
【0091】
一実施形態では、双極性障害に苦しむ対象は、治療計画を開始する直前に、24を超えるMADRSスコアを有すると診断される。一実施形態では、双極性障害に苦しむ対象は、治療計画を開始する直前に4週間より長く続く大うつ病エピソードを有すると診断される。別の実施形態では、双極性障害に苦しむ対象は、治療計画を開始する直前に12か月未満続く大うつ病エピソードを有すると診断される。別の実施形態では、双極性障害に苦しむ対象は、治療計画を開始する直前に4週間より長く12か月未満続く大うつ病エピソードを有すると診断される。一実施形態では、患者は、治療計画を開始する直前に評価される患者のMADRSスコア、同様の心理測定スコアに基づいて、または改善のそれらの全体的印象の患者自己報告において、4週間より長く、かつ/または12か月未満続く大うつ病エピソードを有すると診断される。
【0092】
一実施形態では、双極性障害に苦しむ対象は、過去12か月間に急速にサイクリングしていたと診断される。別の実施形態では、双極性障害に苦しむ対象は、過去12か月間に急速にサイクリングしていないと診断される。本明細書で使用される場合、「急速サイクリング」または「急速にサイクリングすること」という用語は、双極性障害に苦しむ対象が、過去12か月間に躁病、軽躁、または大うつ病であるかどうかにかかわらず、少なくとも4つのエピソードを有すると特定される、状況を指す。
【0093】
パラメータ範囲が提供される場合、その範囲内のすべての整数、およびその10分の1もまた、本発明によって提供されることが理解される。例えば、「1~30ng/ml」には、1.1ng/ml、1.2ng/ml、1.3ng/mlなど、最大30ng/mlが含まれる。別の例では、「0.1~2.5mg/日」には、0.1mg/日、0.2mg/日、0.3mg/日など、最大2.5mg/日が含まれる。
【0094】
本発明はさらに、大うつ病性障害以外の状態の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、少なくとも28日間の治療計画にわたって、約5mg~約40mg、好ましくは5mg~40mgのエスケタミンを含む経口剤形を該患者に経口投与することによる、方法に関する。
【0095】
本発明はさらに、双極性障害の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、少なくとも28日間の治療計画にわたって、約5mg~約40mg、好ましくは5mg~40mgのエスケタミンを含む経口剤形を該患者に経口投与することによる、方法に関する。
【0096】
いくつかの態様では、本開示の経口剤形は、エスケタミン、すなわち、遊離塩基としてのエスケタミンを含む。他の態様では、本開示の経口剤形は、エスケタミンの薬学的に許容される塩を含む。本明細書で使用される場合、本開示の経口剤形中に存在するエスケタミンの量は、エスケタミン遊離塩基の量を指す。例えば、経口剤形がエスケタミン遊離塩基を含むこれらの態様では、「10mgのエスケタミン」は、経口剤形中の10mgのエスケタミン遊離塩基を指す。経口剤形がエスケタミン塩酸塩などのエスケタミンの薬学的に許容される塩を含む態様では、「10mgのエスケタミン」は、経口剤形中の11.53mgのエスケタミン塩酸塩に基づく10mgのエスケタミン遊離塩基を指す。
【0097】
本発明の1つの好ましい実施形態では、該患者への経口投与は、約5mgのエスケタミン、好ましくは5mgのエスケタミンを含む経口剤形のものである。本発明の別の好ましい実施形態では、該患者への経口投与は、約10mgのエスケタミン、好ましくは10mgのエスケタミンを含む経口剤形のものである。別の好ましい実施形態では、該患者への経口投与は、約20mgのエスケタミン、好ましくは20mgのエスケタミンを含む経口剤形のものである。別の好ましい実施形態では、該患者への経口投与は、約30mgのエスケタミン、好ましくは30mgのエスケタミンを含む経口剤形のものである。さらに別の好ましい実施形態では、該患者への経口投与は、約40mgのエスケタミン、好ましくは40mgのエスケタミンを含む経口剤形のものである。
【0098】
特定の理論に拘束されることを望まずに、大うつ病性障害以外の状態の治療におけるエスケタミンの反復経口投与の治療効果は、より長い間隔でより高い用量の薬を投与するか、またはより短い間隔でより低い用量の薬を投与することのいずれかによって達成され得ることが考えられている。本明細書に記載のように、本発明は、薬およびその代謝産物の経時的な同等の曝露およびより低いピーク濃度を可能にし、遺伝毒性事象の全体的なリスクを低減し、臨床安全性プロファイルを改善する。
【0099】
本発明はさらに、大うつ病性障害以外の状態の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、約5mg~約40mgのエスケタミン、好ましくは5mg~40mgのエスケタミンを含む経口剤形を該患者に経口投与することによるものであり、該投与のエスケタミンCmaxが30ng/ml以下である、方法に関する。
【0100】
本発明はさらに、双極性障害の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、約5mg~約40mgのエスケタミン、好ましくは5mg~40mgのエスケタミンを含む経口剤形を該患者に経口投与することによるものであり、該投与のエスケタミンCmaxが30ng/ml以下である、方法に関する。
【0101】
本明細書で使用される場合、「Cmax」という用語は、任意の単回投与後にアッセイされた平均値(平均)の観察された最高血漿濃度を指すものとする。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、患者の血漿レベルを測定することをさらに含む。
【0102】
本発明の一実施形態では、該投与のエスケタミンCmaxは、30ng/ml以下、29ng/ml以下、28ng/ml以下、27ng/ml以下、26ng/ml以下、25ng/ml以下、24ng/ml以下、23ng/ml以下、22ng/ml以下、21ng/ml以下、20ng/ml以下、19ng/ml以下、18ng/ml以下、17ng/ml以下、16ng/ml以下、15ng/ml以下、14ng/ml以下、13ng/ml以下、12ng/ml以下、11ng/ml以下、10ng/ml以下、9ng/ml以下、8ng/ml以下、7ng/ml以下、6ng/ml以下、5ng/ml以下、4ng/ml以下、3ng/ml以下、2ng/ml以下、または1ng/ml以下である。本発明の1つの好ましい実施形態では、該投与のエスケタミンCmaxは、30ng/ml以下である。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与のエスケタミンCmaxは、15ng/ml以下である。本発明の1つの好ましい実施形態では、該投与のエスケタミンCmaxは、15ng/mL~30ng/mLである。本発明の1つの好ましい実施形態では、該投与のエスケタミンCmaxは、10ng/mL~15ng/mLである。本発明の1つの好ましい実施形態では、該投与のエスケタミンCmaxは、5ng/mL~15ng/mLである。本発明の1つの好ましい実施形態では、該投与のエスケタミンCmaxは、11ng/mL~13ng/mLである。
【0103】
本発明はさらに、大うつ病性障害以外の状態の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、約5mg~約40mgのエスケタミン、例えば5mg~40mgのエスケタミンを含む経口剤形を該患者に経口投与することによるものであり、該投与のエスケタミンAUC0-tが60ng*h/ml以下である、方法に関する。
【0104】
本発明はさらに、双極性障害の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、約5mg~約40mgのエスケタミン、例えば5mg~40mgのエスケタミンを含む経口剤形を該患者に経口投与することによるものであり、該投与のエスケタミンAUC0-tが60ng*h/ml以下である、方法に関する。
【0105】
本明細書で使用される場合、「AUC」という用語は、任意の単回投与後の血漿濃度/時間曲線下の面積を指すものとする。「AUC0-t」という用語は、任意の単回投与後の時間0から最後の定量化可能な濃度までの血漿濃度/時間曲線下面積を指すものとし、「AUC0-inf」という用語は、任意の単回投与後の血漿濃度/時間0から任意の無限大での推定濃度までの時間曲線血漿濃度/時間曲線下面積を指すものとする。「AUCtau」という用語は、定常状態の投与間隔にわたる血漿濃度/時間曲線の下の面積を指すものとする。
【0106】
本発明の一実施形態では、該投与のエスケタミンAUC0-tは、60ng*h/ml、59ng*h/ml、58ng*h/ml、57ng*h/ml、56ng*h/ml、55ng*h/ml、54ng*h/ml、53ng*h/ml、52ng*h/ml、51ng*h/ml、50ng*h/ml、49ng*h/ml、48ng*h/ml、47ng*h/ml、46ng*h/ml、45ng*h/ml、44ng*h/ml、43ng*h/ml、42ng*h/ml、41ng*h/ml、40ng*h/ml、39ng*h/ml、38ng*h/ml、37ng*h/ml、36ng*h/ml、35ng*h/ml、34ng*h/ml、33ng*h/ml、32ng*h/ml、31ng*h/ml、30ng*h/ml、29ng*h/ml、28ng*h/ml、27ng*h/ml、26ng*h/ml、25ng*h/ml、24ng*h/ml、23ng*h/ml、22ng*h/ml、21ng*h/ml、20ng*h/ml、19ng*h/ml、18ng*h/ml、17ng*h/ml、16ng*h/ml、15ng*h/ml、14ng*h/ml、13ng*h/ml、12ng*h/ml、11ng*h/ml、10ng*h/ml、9ng*h/ml、8ng*h/ml、7ng*h/ml、6ng*h/ml、5ng*h/ml、4ng*h/ml、3ng*h/ml、2ng*h/ml、または1ng*h/mlである。本発明の1つの好ましい実施形態では、該投与のエスケタミンAUC0-tは、60ng*h/ml以下である。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与のエスケタミンAUC0-tは、30ng*h/ml以下である。本発明の1つの好ましい実施形態では、該投与のエスケタミンAUC0-tは、30ng*h/ml~60ng*h/mlである。本発明の1つの好ましい実施形態では、該投与のエスケタミンAUC0-tは、15ng*h/ml~30ng*h/mlである。
【0107】
本発明はさらに、大うつ病性障害以外の状態の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、剤形を該患者に経口投与することによるものであり、該剤形が150ng/ml以下の(S)-ノルケタミンCmaxをもたらす、方法に関する。
【0108】
本発明はさらに、双極性障害の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、剤形を該患者に経口投与することによるものであり、該剤形が150ng/ml以下の(S)-ノルケタミンCmaxをもたらす、方法に関する。
【0109】
本発明の一実施形態では、該投与の(S)-ノルケタミンCmaxは、150ng/ml以下、145ng/ml以下、140ng/ml以下、139ng/ml以下、138ng/ml以下、137ng/ml以下、136ng/ml以下、135ng/ml以下、134ng/ml以下、133ng/ml以下、132ng/ml以下、131ng/ml以下、130ng/ml以下、129ng/ml以下、128ng/ml以下、127ng/ml以下、126ng/ml以下、125ng/ml以下、120ng/ml以下、115ng/ml以下、110ng/ml以下、105ng/mlまたは100ng/ml以下、95ng/ml以下、90ng/ml以下、85ng/ml以下、80ng/ml以下、75ng/ml以下、74ng/ml以下、73ng/ml以下、72ng/ml以下、71ng/ml以下、70ng/ml以下、69ng/ml以下、68ng/ml以下、67ng/ml以下、66ng/ml以下、65ng/ml以下、64ng/ml以下、63ng/ml以下、62ng/ml以下、61ng/ml以下、60ng/ml以下、55ng/ml以下、50ng/ml以下、45ng/ml以下、40ng/mlまたは35ng/ml以下、34ng/ml以下、33ng/ml以下、32ng/ml以下、31ng/ml以下、30ng/ml以下、25ng/ml以下、20ng/ml以下、19ng/ml以下、18ng/ml以下、17ng/ml以下、16ng/ml以下、または15ng/ml以下である。本発明の1つの好ましい実施形態では、該投与の(S)-ノルケタミンCmaxは、150ng/ml以下である。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(S)-ノルケタミンCmaxは、75ng/ml以下である。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(S)-ノルケタミンCmaxは、35ng/ml以下である。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(S)-ノルケタミンCmaxは、20ng/ml以下である。本発明の1つの好ましい実施形態では、該投与の(S)-ノルケタミンCmaxは、15ng/mL~150ng/mLである。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(S)-ノルケタミンCmaxは、15ng/mL~20ng/mLである。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(S)-ノルケタミンCmaxは、30ng/mL~35ng/mLである。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(S)-ノルケタミンCmaxは、60ng/mL~75ng/mLである。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(S)-ノルケタミンCmaxは、125ng/mL~140ng/mLである。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(S)-ノルケタミンCmaxは、60ng/mL~140ng/mLである。
【0110】
本発明はさらに、大うつ病性障害以外の状態の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、剤形を該患者に経口投与することによるものであり、該剤形が850ng*h/ml以下の(S)-ノルケタミンAUC0-tをもたらす、方法に関する。
【0111】
本発明はさらに、双極性障害の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、剤形を該患者に経口投与することによるものであり、該剤形が850ng*h/ml以下の(S)-ノルケタミンAUC0-tをもたらす、方法に関する。
【0112】
本発明の一実施形態では、該投与の(S)-ノルケタミンAUC0-tは、850ng*h/ml以下、845ng*h/ml以下、840ng*h/ml以下、839ng*h/ml以下、838ng*h/ml以下、837ng*h/ml以下、836ng*h/ml以下、835ng*h/ml以下、834ng*h/ml以下、832ng*h/ml以下、831ng*h/ml以下、830ng*h/ml以下、829ng*h/ml以下、828ng*h/ml以下、827ng*h/ml以下、826ng*h/ml以下、825ng*h/ml以下、824ng*h/ml以下、823ng*h/ml以下、822ng*h/ml以下、821ng*h/ml以下、820ng*h/ml以下、815ng*h/ml以下、810ng*h/ml以下、805ng*h/ml以下、800ng*h/ml以下、795ng*h/ml以下、790ng*h/ml以下、785ng*h/ml以下、780ng*h/ml以下、775ng*h/ml以下、770ng*h/ml以下、765ng*h/ml以下、760ng*h/ml以下、755ng*h/ml以下、750ng*h/ml以下、745ng*h/ml、740ng*h/ml以下、735ng*h/ml以下、730ng*h/ml以下、725ng*h/ml以下、720ng*h/ml以下、710ng*h/ml以下、700ng*h/ml以下、690ng*h/ml以下、680ng*h/ml以下、670ng*h/ml以下、660ng*h/ml以下、650ng*h/ml以下、640ng*h/ml以下、630ng*h/ml以下、620ng*h/ml以下、610ng*h/ml以下、600ng*h/ml以下、590ng*h/ml以下、580ng*/ml以下、570ng*h/ml以下、560ng*h/ml以下、550ng*h/ml以下、540ng*h/ml以下、530ng*h/ml以下、520ng*h/ml以下、510ng*h/ml以下、500ng*h/ml以下、490ng*h/ml以下、480ng*h/ml以下、470ng*h/ml以下、460ng*h/ml以下、450ng*h/ml以下、440ng*h/ml以下、430ng*h/ml以下、425ng*h/ml以下、420ng*h/ml以下、419ng*h/ml以下、418ng*h/ml以下、417ng*h/ml以下、416ng*h/mlまたは415ng*h/ml以下、414ng*h/ml以下、413ng*h/ml以下、412ng*h/ml以下、411ng*h/ml以下、410ng*h/ml以下、405ng*h/ml以下、400ng*h/ml以下、390ng*h/ml以下、380ng*h/ml以下、380ng*h/ml以下、370ng*h/ml以下、360ng*h/ml以下、350ng*h/ml以下、340ng*h/ml以下、330ng*h/ml以下、320ng*h/ml以下、310ng*h/ml以下、300ng*h/ml以下、290ng*h/ml以下、280ng*h/ml以下、270ng*h/ml以下、260ng*h/ml以下、250ng*h/ml以下、240ng*h/ml以下、230ng*h/ml以下、220ng*h/ml以下、215ng*h/ml以下、210ng*h/ml以下、209ng*h/ml以下、208ng*h/ml以下、207ng*h/ml以下、206ng*h/ml以下、205ng*h/ml以下、200ng*h/ml以下、190ng*h/ml以下、180ng*h/ml以下、170ng*h/ml以下、160ng*h/ml以下、150ng*h/ml以下、140ng*h/ml以下、130ng*h/mlまたは120ng*h/ml以下、110ng*h/ml以下、105ng*h/ml以下、104ng*h/ml以下、103ng*h/ml以下、または102ng*h/ml以下である。本発明の1つの好ましい実施形態では、該投与の(S)-ノルケタミンAUC0-tは、850ng*h/ml以下である。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(S)-ノルケタミンAUC0-tは、420ng*h/ml以下である。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(S)-ノルケタミンAUC0-tは、210ng*h/ml以下である。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(S)-ノルケタミンAUC0-tは、105ng*h/ml以下である。本発明の1つの好ましい実施形態では、該投与の(S)-ノルケタミンAUC0-tは、105ng*h/ml~850ng*h/mlである。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(S)-ノルケタミンAUC0-tは、105ng*h/ml~850ng*h/mlである。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(S)-ノルケタミンAUC0-tは、102ng*h/ml~105ng*h/mlである。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(S)-ノルケタミンAUC0-tは、205ng*h/ml~210ng*h/mlである。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(S)-ノルケタミンAUC0-tは、410ng*h/ml~420ng*h/mlである。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(S)-ノルケタミンAUC0-tは、820ng*h/ml~840ng*h/mlである。
【0113】
本発明はさらに、大うつ病性障害以外の状態の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、剤形を該患者に経口投与することによるものであり、該剤形が75ng/ml以下の(2S,6S)-OH-ノルケタミンCmaxをもたらす、方法に関する。
【0114】
本発明はさらに、双極性障害の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、剤形を該患者に経口投与することによるものであり、該剤形が75ng/ml以下の(2S,6S)-OH-ノルケタミンCmaxをもたらす、方法に関する。
【0115】
本発明の一実施形態では、該投与の(2S,6S)-OH-ノルケタミンCmaxは、75ng/ml以下、74ng/ml以下、73ng/ml以下、72ng/ml以下、71ng/ml以下、70ng/ml以下、69ng/ml以下、68ng/ml以下、67ng/ml以下、66ng/ml以下、65ng/ml以下、64ng/ml以下、63ng/ml以下、62ng/ml以下、61ng/ml以下、60ng/ml以下、55ng/ml以下、50ng/ml以下、45ng/ml以下、40ng/ml以下、35ng/ml以下、34ng/ml以下、33ng/ml以下、32ng/ml以下、31ng/ml以下、30ng/ml以下、25ng/ml以下、20ng/ml以下、19ng/ml以下、18ng/ml以下、17ng/ml以下、16ng/ml以下または15ng/ml以下である。本発明の1つの好ましい実施形態では、該投与の(2S,6S)-OH-ノルケタミンCmaxは、75ng/ml以下である。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(2S,6S)-OH-ノルケタミンCmaxは、35ng/ml以下である。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(2S,6S)-OH-ノルケタミンCmaxは、20ng/ml以下である。本発明の1つの好ましい実施形態では、該投与の(2S,6S)-OH-ノルケタミンCmaxは、15ng/mL~75ng/mLである。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(2S,6S)-OH-ノルケタミンCmaxは、15ng/mL~20ng/mLである。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(2S,6S)-OH-ノルケタミンCmaxは、30ng/mL~35ng/mLである。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(2S,6S)-OH-ノルケタミンCmaxは、60ng/mL~75ng/mLである。
【0116】
発明はさらに、大うつ病性障害以外の状態の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、剤形を該患者に経口投与することによるものであり、該剤形が850ng*h/ml以下の(2S,6S)-OH-ノルケタミンAUC0-tをもたらす、方法に関する。
【0117】
本発明はさらに、双極性障害の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、剤形を該患者に経口投与することによるものであり、該剤形が850ng*h/ml以下の(2S,6S)-OH-ノルケタミンAUC0-tをもたらす、方法に関する。
【0118】
本発明の一実施形態では、該投与の(2S,6S)-OH-ノルケタミンAUC0-tは、850ng*h/ml以下、845ng*h/ml以下、840ng*h/ml以下、839ng*h/ml以下、838ng*h/ml以下、837ng*h/ml以下、836ng*h/ml以下、835ng*h/ml以下、834ng*h/ml以下、832ng*h/ml以下、831ng*h/ml以下、830ng*h/ml以下、829ng*h/ml以下、828ng*h/ml以下、827ng*h/ml以下、826ng*h/ml以下、825ng*h/ml以下、824ng*h/ml以下、823ng*h/ml以下、822ng*h/ml以下、821ng*h/ml以下、820ng*h/ml以下、815ng*h/ml以下、810ng*h/ml以下、805ng*h/ml以下、800ng*h/ml以下、795ng*h/ml以下、790ng*h/ml以下、785ng*h/ml以下、780ng*h/ml以下、775ng*h/ml、770ng*h/ml以下、765ng*h/ml以下、760ng*h/ml以下、755ng*h/ml以下、750ng*h/ml以下、745ng*h/ml以下、740ng*h/ml以下、735ng*h/ml以下、730ng*h/ml以下、725ng*h/ml以下、720ng*h/mlまたは未満、710ng*h/ml以下、700ng*h/ml以下、690ng*h/ml以下、680ng*h/ml以下、670ng*h/ml以下、660ng*h/ml以下、650ng*h/ml以下、640ng*h/ml以下、630ng*h/ml以下、620ng*h/ml以下、610ng*h/ml以下、600ng*h/ml以下、590ng*h/ml以下、580ng*h/ml以下、570ng*h/ml以下、560ng*h/ml以下、550ng*h/ml以下、540ng*h/ml以下、530ng*h/ml以下、520ng*h/ml以下、510ng*h/ml以下、500ng*h/ml以下、490ng*h/ml以下、480ng*h/ml以下、470ng*h/ml以下、460ng*h/ml以下、450ng*h/ml以下、440ng*h/ml以下、430ng*h/mlまたは425ng*h/ml以下、420ng*h/ml以下、419ng*h/ml以下、418ng*h/ml以下、417ng*h/ml以下、416ng*h/ml以下、415ng*h/ml以下、414ng*h/ml以下、413ng*h/ml以下、412ng*h/ml以下、411ng*h/ml以下、410ng*h/ml以下、405ng*h/ml以下、400ng*h/ml以下、390ng*h/ml以下、380ng*h/ml以下、380ng*h/ml以下、370ng*h/ml以下、360ng*h/ml以下、350ng*h/mlまたは340ng*h/ml以下、330ng*h/ml以下、320ng*h/ml以下、310ng*h/ml以下、300ng*h/ml以下、290ng*h/ml以下、280ng*h/ml以下、270ng*h/ml以下、260ng*h/ml以下、250ng*h/ml以下、240ng*h/ml以下、230ng*h/ml以下、220ng*h/ml以下、215ng*h/ml以下、210ng*h/ml以下、209ng*h/ml以下、208ng*h/ml以下、207ng*h/ml以下、206ng*h/ml以下、205ng*h/ml以下、200ng*h/ml以下、190ng*h/ml以下、180ng*h/ml以下、170ng*h/ml以下、160ng*h/ml以下、150ng*h/ml以下、140ng*h/ml以下、130ng*h/ml以下、120ng*h/ml以下、110ng*h/ml以下、105ng*h/ml以下、104ng*h/ml以下、103ng*h/ml以下または102ng*h/ml以下である。本発明の1つの好ましい実施形態では、該投与の(2S,6S)-OH-ノルケタミンAUC0-tは、850ng*h/ml以下である。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(2S,6S)-OH-ノルケタミンAUC0-tは、420ng*h/ml以下である。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(2S,6S)-OH-ノルケタミンAUC0-tは、210ng*h/ml以下である。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(2S,6S)-OH-ノルケタミンAUC0-tは、105ng*h/ml以下である。本発明の1つの好ましい実施形態では、該投与の(2S,6S)-OH-ノルケタミンAUC0-tは、105ng*h/ml~850ng*h/mlである。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(2S,6S)-OH-ノルケタミンAUC0-tは、105ng*h/ml~850ng*h/mlである。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(2S,6S)-OH-ノルケタミンAUC0-tは、102ng*h/ml~105ng*h/mlである。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(2S,6S)-OH-ノルケタミンAUC0-tは、205ng*h/ml~210ng*h/mlである。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(2S,6S)-OH-ノルケタミンAUC0-tは、410ng*h/ml~420ng*h/mlである。本発明の別の好ましい実施形態では、該投与の(2S,6S)-OH-ノルケタミンAUC0-tは、820ng*h/ml~840ng*h/mlである。
【0119】
本発明はさらに、大うつ病性障害以外の状態の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、約5mg~約40mgの、例えば、エスケタミン、5mg~40mgのエスケタミンを含む経口剤形を該患者に経口投与することによるものであり、投与が毎日である、方法に関する。
【0120】
本発明はさらに、双極性障害の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、約5mg~約40mgの、例えば、エスケタミン、5mg~40mgのエスケタミンを含む経口剤形を該患者に経口投与することによるものであり、投与が毎日である、方法に関する。
【0121】
本発明の一実施形態では、エスケタミンの毎日の投与は、単回毎日用量で提供される。本発明の別の実施形態では、エスケタミンの毎日の投与は、2回の用量、3回の用量、または4回の用量で提供され、各用量は、24時間の期間にわたってほぼ均等に分散される。
【0122】
本発明はさらに、大うつ病性障害以外の状態の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、5mg~40mgのエスケタミン、好ましくは5mg~40mgのエスケタミンを含む経口剤形を該患者に経口投与することによるものであり、投与が治療計画にわたって間欠的である、方法に関する。
【0123】
本発明はさらに、双極性障害の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、5mg~40mgのエスケタミン、好ましくは5mg~40mgのエスケタミンを含む経口剤形を該患者に経口投与することによるものであり、投与が治療計画にわたって間欠的である、方法に関する。
【0124】
本発明の好ましい実施形態では、間欠投与は、2日ごとに1回~約月1回または4週間ごとに1回である。本発明の一実施形態では、間欠投与は、2日ごとに1回、3日ごとに1回、週に2回、4日ごとに1回、5日ごとに1回、6日ごとに1回、週に1回、8日ごとに1回、9日ごとに1回、10日ごとに1回、11日ごとに1回、12日ごとに1回、13日ごとに1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、または月に1回である。本発明の1つの好ましい実施形態では、間欠投与は、週に2回である。本発明の別の好ましい実施形態では、間欠投与は、週に1回である。本発明のさらに別の好ましい実施形態では、間欠投与は、月に1回である。本発明のさらに別の好ましい実施形態では、間欠投与は、4週間ごとに1回である。
【0125】
本発明の一実施形態では、間欠投与の頻度は、治療計画の期間にわたって変化し得る。本発明の好ましい実施形態では、間欠投与の頻度は、治療計画の期間にわたって徐々に低減する。本発明のより好ましい実施形態では、間欠投与の頻度は、週に2回から週に1回に低減する。本発明の好ましい別の実施形態では、間欠投与の頻度は、週に1回から2週間ごとに1回に低減する。本発明のさらにより好ましい実施形態では、間欠投与の頻度は、週に2回から週に1回、2週間ごとに1回に低減する。本発明の好ましい別の実施形態では、間欠投与の頻度は、治療計画の期間にわたって一貫して維持される。
【0126】
本発明はさらに、大うつ病性障害以外の状態の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、少なくとも28日間の治療計画にわたって、約5mg~約40mgのエスケタミン、好ましくは5mg~40mgのエスケタミンを含む経口剤形を該患者に経口投与することによるものであり、投与が自己投与である、方法に関する。
【0127】
本発明はさらに、双極性障害の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、少なくとも28日間の治療計画にわたって、約5mg~約40mgのエスケタミン、好ましくは5mg~40mgのエスケタミンを含む経口剤形を該患者に経口投与することによるものであり、投与が自己投与である、方法に関する。
【0128】
本明細書で使用される場合、「自己投与」は、患者が、薬物を服用する責任があり、経口剤形の経口投与中に医療専門家によって支援されない、投与を指す。いくつかの態様では、投与のうちの1つ以上は医療専門家によって支援され得、投与のうちの1つ以上は治療計画にわたって自己投与であり得る。一実施形態では、該自己投与は、患者自身の家におけるものである。好ましい実施形態では、該自己投与は、夜間にあるものである。より好ましい実施形態では、該自己投与は、患者が眠る前である。
【0129】
別の実施形態では、患者は、約5mg~約40mgのエスケタミン、好ましくは5mg~40mgのエスケタミンを含む経口剤形の経口投与直後の24時間内の運転に関する制限を有しない。すなわち、経口剤形の経口投与は、自動車を操作する患者の能力に悪影響を与える精神的機能障害または運動機能障害をもたらさない。投与直後の24時間。
【0130】
さらに別の実施形態では、患者は、約5mg~約40mgのエスケタミン、好ましくは5mg~40mgのエスケタミンを含む経口剤形の経口投与後10時間以内の運転を制限される。好ましい実施形態では、患者は、投与後8時間以内の運転を制限される。別の好ましい実施形態では、患者は、投与後6時間以内の運転を制限される。より好ましい実施形態では、患者は、投与後2時間以内の運転を制限される。最も好ましい実施形態では、患者は、約5mg~約40mgのエスケタミン、好ましくは5mg~40mgのエスケタミンを含む経口剤形の経口投与後1時間以内の運転を制限される。
【0131】
本発明の一実施形態では、経口剤形は、懸濁剤、エリキシル剤、または液剤などの液体調製物である。本発明の別の実施形態では、経口剤形は、固体調製物、例えば、散剤、カプセル剤、カプレット剤、ゲルキャップ剤、および錠剤である。好ましい実施形態では、経口剤形は、錠剤、ゲルキャップ剤、またはカプセル剤である。より好ましい実施形態では、経口剤形は、錠剤である。
【0132】
本発明の調製物、すなわち経口剤形を調製するために、エスケタミン、および任意選択で(R)-ケタミン以外の少なくとも1種の第2の薬物は、従来の薬学的配合技術に従って薬学的担体と混合され、その担体は、投与に望まれる調製物の形態に応じて多種多様な形態をとることができる。経口調製物を調製する際に、通常の薬学的媒体のうちのいずれかが使用され得る。したがって、例えば、懸濁剤、エリキシル剤、および液剤などの液体経口調製物の場合、適切な担体および添加剤は、水、グリコール、油、アルコール、香味料、保存剤、着色剤などを含む。例えば、散剤、カプセル剤、カプレット剤、ゲルキャップ剤、および錠剤などの固体経口調製物の場合、適切な担体および添加剤は、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などを含む。投与が容易であるため、錠剤およびカプセル剤は、最も有利な経口投与単位形態を表し、その場合、固体薬学的担体が用いられる。
【0133】
本発明はさらに、大うつ病性障害以外の状態の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、約5mg~約40mgのエスケタミン、好ましくは5mg~40mgのエスケタミンを含む経口剤形を該患者に投与することによるものであり、経口剤形が乱用抑止製剤である、方法に関する。
【0134】
本発明はさらに、双極性障害の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、約5mg~約40mgのエスケタミン、好ましくは5mg~40mgのエスケタミンを含む経口剤形を該患者に投与することによるものであり、経口剤形が乱用抑止製剤である、方法に関する。
【0135】
より好ましい実施形態では、乱用抑止製剤は、錠剤である。乱用抑止錠剤製剤は、US7955619、WO2014006004、WO2008033523、WO2008023261、WO2016094358、WO2020225773およびUS2004052731に見出されるものを含む当技術分野で知られている方法によって調製され得、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0136】
本発明はさらに、大うつ病性障害以外の状態の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、約5mg~約40mgのエスケタミン、好ましくは5mg~40mgのエスケタミンを含む経口剤形を該患者に経口投与することによるものであり、(R)-ケタミン以外の第2の薬物の投与をさらに含む、方法に関する。
【0137】
本発明はさらに、双極性障害の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、約5mg~約40mgのエスケタミン、好ましくは5mg~40mgのエスケタミンを含む経口剤形を該患者に経口投与することによるものであり、(R)-ケタミン以外の第2の薬物の投与をさらに含む、方法に関する。
【0138】
好ましい実施形態では、第2の薬物は、抗うつ薬または抗躁薬または抗不安薬である。本発明の一実施形態では、抗うつ薬は、モノ-アミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)、三環系抗うつ薬(TCA)、セロトニン特異的再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)、ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(NRI)、「天然物」(カバカバ、セントジョンズワートなど)、栄養補助食品(s-アデノシルメチオニンなど)などからなる群から選択される。より具体的には、抗うつ薬には、イミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン、ノルトリプチリン、ドキセピン、プロトリプチリン、トリミプラミン、マプロチリン、アモキサピン、トラゾドン、ブプロピオン、クロミプラミン、フルオキセチン、シタロプラム、エスシタロプラム、セルトラリン、パロキセチン、チアネプチン、アゴメラチン、ネファザドン(nefazadone)、ベンラファキシン、デスベンラファキシン、ビラゾドン、ボルチオキセチン、デュロキセチン、レボキセチン、ミルタザピン、ミアンセリン、フェネルジン、トラニルシプロミン、および/またはモクロベミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0139】
別の好ましい実施形態では、第2の薬物は、抗躁薬である。本発明の一実施形態では、抗躁薬は、カルバマゼピン、ガバペンチン、バルプロ酸、ラモトリギンまたはトピラマートなどの抗けいれん薬である。本発明の別の実施形態では、抗躁薬は、ルラシドン、カリプラジン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、パリペリドン、ルマテペロン、アリピプラゾールまたはブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬物である。本発明の別の実施形態では、抗躁薬は、リチウムもしくはその薬学的に許容される塩またはカルシウムチャネル遮断薬などの気分安定薬である。本発明の別の実施形態では、抗躁薬は、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼパート、ジアゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、ブスピロン、ゲピロン、イスパピロン(ispapirone)、ヒドロキシジン、アモバルビタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、チオペンタールおよびプロパノロールなどの抗不安薬である。
【0140】
本発明はさらに、大うつ病性障害以外の状態の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、約5mg~約40mgのエスケタミン、好ましくは5mg~40mgのエスケタミンと、フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、シタロプラム、エスシタロプラム、ベンラファキシン、デスベンラファキシン、デュロキセチン、およびフルボキサミンからなる群から選択される抗うつ薬と、を含む経口剤形を該患者に経口投与することによるものであり、投与が少なくとも28日間の治療計画にわたって毎日である、方法に関する。
【0141】
本発明はさらに、双極性障害の治療を必要とするヒト患者においてそれを行う方法であって、約5mg~約40mgのエスケタミン、好ましくは5mg~40mgのエスケタミンと、フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、シタロプラム、エスシタロプラム、ベンラファキシン、デスベンラファキシン、デュロキセチン、およびフルボキサミンからなる群から選択される抗うつ薬と、を含む経口剤形を該患者に経口投与することによるものであり、投与が少なくとも28日間の治療計画にわたって毎日である、方法に関する。
【0142】
本発明は、以下の実施例を参照することによってより良く理解されるが、当業者は、詳細な特定の実験が、その後に続く特許請求の範囲でより十分に記載される本発明の例示にすぎないことを容易に理解するであろう。
【実施例】
【0143】
実施例1:インビトロ染色体異常アッセイ
実施例1a:エスケタミン
エスケタミンの染色体異常誘発能を、誘発された代謝活性化系(Aroclor-1254に曝露されたラット由来の肝臓ホモジネートの9000g上清[S9]ミクロソーム分画)の非存在下および存在下の両方で、ヒト末梢血リンパ球(HPBL)を使用するインビトロ哺乳動物染色体異常試験において評価した。染色体異常誘発性を中期のHPBLの顕微鏡検査によって評価して、数的染色体異常および/または構造的染色体異常を有する中期細胞の有糸分裂指数(MI)および百分率を決定した。
【0144】
この研究を2段階で行い、予備毒性試験を使用して、最終的な染色体異常アッセイについての適切な濃度を決定した。陰性(ビヒクル)対照として水を使用した。毒性(ビヒクル対照と比較してMIにおいて45%以上の低減として定義される)を、S9活性化の非存在下でHPBLをエスケタミンに20時間、またはS9活性化の存在下もしくは非存在下で4時間曝露し、続いて16時間の回復期間の後、0.0238~238μg/mlの範囲の9つの濃度で評価した。毒性は、3つの治療条件のうちのいずれにおけるいずれの用量でも観察されなかった。これらの結果に基づいて、染色体異常アッセイのために選択した用量は、3つの治療条件すべてで30~238μg/mlの範囲であった。すべての濃度は、公称濃度の98%~101%であった。
【0145】
決定的な染色体異常アッセイは、S9活性化の非存在下で20時間エスケタミンに曝露した後、またはS9活性化の存在下もしくは非存在下で4時間曝露し、続いて16時間の回復の後、HPBL細胞を評価した。非活性化およびS9活性化評価における染色体異常の陽性対照は、それぞれ、マイトマイシンC(MMC、0.6および0.3μg/mL、それぞれ4時間および20時間の曝露)と、シクロホスファミド(CP、2.5、5、および7.5μg/mL)とからなっていた。水は、13.4%~16.5%の平均MI値と、細胞の0%~0.7%の数的または構造的染色体異常と関連していた。非活性化系では、MMCは9%の平均MI値と関連しており、構造的染色体異常が細胞の13.3%におけるものであった。S9活性化系では、CPは6.2%の平均MI値と関連しており、構造的異常が細胞の10.7%におけるものであった。陰性対照の結果は既存対照の範囲内であり、陽性対照の結果は統計的に有意であった(p≦0.01、フィッシャーの直接確率検定)。したがって、有効な試験の要件は、満たされた。染色体異常アッセイでは、細胞毒性(ビヒクル対照と比較して有糸分裂指数の45%以上の低減)は、非活性化4時間および20時間の処理条件におけるいずれのエスケタミン用量でも観察されなかった。細胞毒性は、S9活性化4時間曝露群において200μg/mL以上の用量で観察された。最初に、染色体異常の評価のために選択された用量は、非活性化4時間および20時間の処理条件下について60、120、および238μg/mLであり、S9活性化4時間の処理条件について30、60、および200μg/mLであった。
【0146】
非活性化4時間および20時間曝露群では、構造的異常または数的(倍数体細胞または核内倍加細胞)異常の著しい増加または用量依存的な増加は、いずれの用量でも観察されなかった(p>0.05、フィッシャーの直接確率検定およびコクラン・アーミテージ検定)。
【0147】
S9活性化4時間曝露群では、構造的異常における統計的に有意な増加(5.0%)が、200μg/mLで観察された(p≦0.01、フィッシャーの直接確率検定)。高用量で観察された統計的有意性が細胞毒性によるものではないことを確認するために、低用量(120μg/mL)を評価に含めた。構造的異常における統計的に有意な増加(4.3%)が、120μg/mLで観察された(p≦0.01、フィッシャーの直接確率検定)。コクラン・アーミテージ検定は、用量応答に対して陽性であった(p≦0.01)。数値(倍数体細胞または核内倍加細胞)異常の著しい増加または用量依存的な増加は、いずれの用量でも観察されなかった(p>0.05、フィッシャーの直接確率検定およびコクラン・アーミテージ検定)。
【0148】
研究の結果は、外因性代謝活性化系の存在下で、エスケタミンが、構造的染色体異常の誘発に対して陽性であり、数的染色体異常の誘発に対して陰性であることを示す。エスケタミンは、外因性代謝活性化系の非存在下での構造的染色体異常および数的染色体異常の誘発に対して陰性であった。
【0149】
実施例1b:(S)-ノルケタミン
(S)-ノルケタミンの染色体異常誘発能を、誘発された代謝活性化系(フェノバルビタール/5,6-ベンゾフラボンに曝露されたラット由来の肝臓ホモジネートの9000g上清[S9]ミクロソーム分画)の非存在下および存在下の両方で、ヒト末梢血リンパ球(HPBL)を使用するインビトロ哺乳動物染色体異常試験において評価した。染色体異常誘発性を中期のHPBLの顕微鏡検査によって評価し、数的染色体異常および/または構造的染色体異常を有する中期細胞の百分率を決定した。
【0150】
この研究を2段階で行い、予備毒性試験を使用して、最終的な染色体異常アッセイについての適切な濃度を決定した。陰性(ビヒクル)対照として水を使用した。両方の段階では、細胞を、S9ミックスの非存在下で3時間および21時間、ならびにS9ミックスの存在下で3時間処理した。細胞毒性を決定するために、すべての培養物について有糸分裂指数を評価した。予備毒性試験では、2.62~260.16μg/mLの範囲の10の濃度を評価した。毒性は、3つの治療条件のうちのいずれにおけるいずれの用量でも観察されなかった。これらの結果に基づいて、決定的な染色体異常アッセイの最高濃度は、この試験系の限界濃度(260.16μg/mL、1mM)に基づいており、細胞毒性は比較的観察されなかった。93.66、156.10、または260.16μg/mLの(S)-ノルケタミン濃度を、中期分析のために選択した。
【0151】
(S)-ノルケタミンは、ビヒクル対照と比較すると、いずれの分析された濃度でも染色体異常を含む中期の像の割合において統計的に有意な増加を引き起こさなかった。ビヒクル対照(水)およびすべての(S)-ノルケタミン処理濃度についてのすべての平均値は、上方95%対照限界値を考慮した場合、実験室の既存対照範囲を下回っていた。
【0152】
ビヒクル対照と比較すると、いずれの処理条件下でも、倍数体中期細胞または核内倍加中期細胞の割合の統計的に有意な増加は、中期分析中に観察されなかったが、両方の陽性対照化合物、ミトマイシンCおよびシクロホスファミドは、異常細胞の割合の統計的に有意な増加を引き起こし、試験系の感受性およびS9ミックスの有効性を実証した。
【0153】
結論として、ヒト末梢血リンパ球を使用するインビトロ哺乳動物染色体異常試験の結果は、(S)-ノルケタミンがS9の有無にかかわらず構造的染色体異常の頻度の増加を引き起こす証拠を示していないことを示す。したがって、この実験の条件下では、(S)-ノルケタミンは、非染色体異常誘発性であったか、または構造的染色体異常および数的染色体異常の誘発に対して陰性であった。
【0154】
実施例2:Sprague Dawleyラットにおけるエスケタミンのインビボ単細胞ゲル電気泳動アッセイおよび哺乳動物赤血球小核試験
肝臓でDNA鎖切断を誘発するエスケタミンの可能性、およびCrl:CD(SD)ラットの骨髄細胞において小核を誘発する可能性を評価する。動物を経口エスケタミンで3回処置し、第2の用量は第1の用量の約24時間後に投与され、第3の用量は第2の用量の約21時間後、試料採取の3時間前に投与された。すべての動物に、10mL/kgの用量体積を使用する強制経口投与によって経口投与した。
【0155】
毒性の相当な差異が予備毒性試験において雌雄間で観察されたため、現在のガイドラインに沿って、試験を雄および雌の両方の動物を使用して行った。18.75、37.5、および75mg/kg/日(雄動物)ならびに12.5、25、および50mg/kg/日(雌動物)の用量レベルを、選択した。ビヒクル対照群は精製水を受け、コメット段階の陽性対照群は200mg/kgのメタンスルホン酸エチルを受けた。血液試料を、投与の3日前に、用量後30分および3時間で、サテライト動物および終了前のすべての主要な研究動物から尾静脈を介して採取した。
【0156】
各組織からの細胞懸濁液を、ビヒクル対照群および試験項目群の各々における動物から、第3の用量の約3時間後に得た。陽性対照群における動物からの細胞懸濁液を、単回用量の約3時間後に得た。
【0157】
電気泳動に続いて、組織ごとに動物ごとに3枚のスライドをコメットについて分析した。スライドを、蛍光顕微鏡を介してSYBR GOLD(登録商標)で染色することによって視覚化した。150の形態学的に正常な細胞を、組織当たりの動物当たりのコメットの存在について分析した。DNA鎖切断を、ビヒクル対照値と比較した、エスケタミン処置動物からの平均および中央値のテール輝度%(TI%)を比較することによって評価した。スライドを、任意の明白な毒性、例えば、バックグラウンド破片の増加および/または過度に損傷した細胞(すなわち、ヘッジホッグ細胞)の発生率の増加についても検査した。これらの細胞を、異常な染色アーチファクトを有する任意の細胞とともに分析から除外した。
【0158】
骨髄塗抹標本を、第3の用量の約3時間後に、ビヒクル対照群および試験項目群の各々における動物から得た。さらに、特徴のはっきりした染色体異常誘発物質(clastogen)であるシクロホスファミドで処置された動物由来の別の研究[CT12GD]から調製されたスライドを、この研究における動物から調製された骨髄塗抹標本とともに染色し、コード化した。
【0159】
各動物からの1つの塗抹標本を、4000個の多染性赤血球中の小核の存在について検査した。多染性赤血球の割合を、各動物からの少なくとも1000個の赤血球を検査することで評価した。小核の正染性赤血球の発生率の記録も保持した。
【0160】
ビヒクル対照値と比較して、75mg/kg/日(p<0.001)でエスケタミンを投与された雄のCrl:CD(SD)ラットの肝臓において、中央値%(TI)の統計的に有意な増加が観察された。75mg/kg/日でエスケタミンを投与された雄動物についての群平均および中央値TI%値は、現在のビヒクル既存対照範囲外であった。ビヒクル対照値と比較して、25および50mg/kg/日(p<0.001)でエスケタミンを投与された雌のCrl:CD(SD)ラットの肝臓において、中央値TI%の統計的に有意な増加が観察された。25および50mg/kg/日でエスケタミンを投与された雌動物についての群平均および中央値TI%値は、現在のビヒクル既存対照範囲外であった。
【0161】
陽性対照化合物、メタンスルホン酸エチルは、雄および雌の動物におけるビヒクル対照値と比較すると、中央値TI%の有意な増加をもたらした(p<0.001、t検定)。ビヒクル対照値と比較して、任意の用量レベルでエスケタミンを投与された雄または雌のCrl:CD(SD)ラットの肝臓においてヘッジホッグ細胞は観察されなかった。
【0162】
ビヒクル対照動物と、75mg/kg/日(雄動物)、ならびに25および50mg/kg/日(雌動物)でエスケタミンを投与された動物とからの肝臓の切片を、組織病理学的検査のために処理し、細胞毒性、壊死、およびアポトーシスの徴候について評価した。増加した肝細胞の有糸分裂の像が、75mg/kg/日を投与された一部の雄動物に観察された。処置の3回の用量後に行われた肉眼検査では、試験項目に関連する病変が認められなかった。
【0163】
ビヒクル対照値と比較して、いずれの用量レベルでエスケタミンを投与された雄のCrl:CD(SD)ラットにおいても、小核多染性赤血球の頻度の統計的に有意な増加は観察されなかった。すべての個体および群の平均値は、現在のビヒクルの既存対照範囲(対照限界値)内であった。
【0164】
ビヒクル対照値と比較して、37.5mg/kg/日(ペアワイズ検定および傾向検定、p<0.05)および75mg/kg/日(傾向検定、p<0.05)でエスケタミンを投与された雄のCrl:CD(SD)ラットにおいて、多染性赤血球の割合の統計的に有意な減少が観察された。すべての個体および群の平均値は、現在のビヒクル既存対照範囲(対照限界値)内であり、したがって、この結果は生物学的に関連性があるとはみなされない。
【0165】
ビヒクル対照値と比較して、いずれの用量レベルでエスケタミンを投与された雌のCrl:CD(SD)ラットにおいても、小核多染性赤血球の頻度の統計的に有意な増加および多染性赤血球の割合の統計的に有意な減少が観察されなかった。すべての個体および群の平均値は、現在のビヒクル既存対照範囲(対照限界値)内であった。ICH S2(R1)に従って、研究CT12GDから調製されたコード化した陽性対照スライドは、小核多染性赤血球の増加を検出するスコアラーの能力を実証した。
【0166】
研究の結果は、エスケタミンは、強制経口投与によって経口投与された場合、雄および雌のCrl:CD(SD)ラットの肝臓においてDNA鎖切断の増加を引き起こす証拠を示したが、強制経口投与によって経口投与された場合、雄または雌のCrl:CD(SD)ラットにおいて小核多染性赤血球または骨髄細胞毒性の誘発の増加を引き起こすいずれの証拠も示さなかった。
【0167】
PROAST v63.3(開発中)を使用して、ベンチマーク用量(BMD50)を、エスケタミンへの曝露後の雄および雌のラットについて、それぞれ平均および中央値のテール輝度値に基づいてモデル化した。Hillモデルおよび指数モデルは、インビボコメットテール輝度データに適切に適合し、これは非線形の用量応答と一致している。低いベンチマーク用量(BMDL50)の測定基準を、雌ラットにおいて9.83mg/kg/日および雄ラットにおいて27.31mg/kg/日と算出し、両方は、「単一スライドの中央値テール輝度」を使用しており、これは「単一スライドの平均テール輝度」を使用して導き出したものよりも、低く、より保存的であった。これらの出発点(POD)の測定基準は、雌ラットについて12.5mg/kg/日および雄ラットについて37.50mg/kg/日での肝臓におけるコメットテール輝度についての無遺伝毒性影響量(no observed genotoxic effect level)に匹敵する。
【0168】
実施例3:Sprague Dawleyラットにおけるエスケタミンの反復用量28日間毒性動態研究
この研究の目的は、28日間Sprague Dawleyラットへの強制経口投与を介して経口投与された場合のエスケタミンの潜在的な毒性、神経行動学的影響、および毒性動態(TK)を評価し、かつ14日間の無薬物期間中の回復を評価することであった。50匹の雄および50匹の雌のラットを、4つの群(15匹/雌雄の別/群1および4;10匹/雌雄の別/群2および3)に無作為化した。エスケタミンを、10mL/kgの用量体積で、0(ビヒクル対照)、6、10または30mg/kg/日で雄に、かつ0(ビヒクル対照)、2、10または20mg/kg/日で雌に28日間連続して毎日1回経口の強制経口投与を介して投与した。動物を、29日目(10匹/雌雄の別/群)または43日目(群1および4から5匹/雌雄の別)に安楽死させて剖検するまで観察した。毒性を、死亡率、臨床観察、体重、摂餌量、眼科、運動活性、機能観察バッテリー、臨床病理学(臨床化学、血液学、凝血および検尿)、臓器重量、解剖学的(肉眼的または顕微鏡的)病理学に基づいて評価した。毒性動態分析のために、毒性動態動物(3匹/雌雄の別/群1;6匹/雌雄の別/群2、3、および4)に、1日目および4週目の間に同様に投与および採血を行った。
【0169】
この研究では死亡数は見られず、臨床徴候、体重、摂餌量、眼科、運動活性、機能観察バッテリー、臨床病理学または解剖病理学の変化に対してエスケタミン関連の影響はなかった。
【0170】
エスケタミン曝露は、雄について6~30mg/kg/日かつ雌について2~20mg/kg/日の用量範囲にわたって、雄において概して用量比例的様式で、かつ雌において用量比例的様式よりもわずかに大きい様式で増加した。用量レベル差異についての正規化後、雄は雌よりも低い曝露を有した。曝露は、28日目に高かった雌におけるCmax以外は、1日目と比較して28日目も同様であった。1日目でのエスケタミン曝露の結果を表1に、そして28日目での結果を表2に示す。
【表1】
【表2】
【0171】
実施例4:長期発がん性研究
Sprague Dawleyラットへの経口強制経口投与を介して投与されたエスケタミンの104週間の発がん性研究を行って、発がん可能性を評価し、エスケタミンの毒物動態を決定する。
【0172】
International Conference on Harmonization(ICH)S1 Guidelines S1A,Guideline on the Need for Carcinogenicity Studies of Pharmaceuticals、S1B,Testing for Carcinogenicity of Pharmaceuticals、およびS1C(R2),Dose Selection for Carcinogenicity Studies of Pharmaceuticalsに基づき、236匹の雄および236匹の雌のSprague Dawleyラットに、雄ラットについて0(ビヒクル対照)、6、10、または30mg/kg/日、かつ雌ラットについて0(ビヒクル対照)、2、10、または20mg/kg/日の用量で104週間にわたってエスケタミンを投与する。
【0173】
研究エンドポイントには、臨床観察、体重変化、摂餌量、生物分析的毒物動態分析、ならびに解剖学的な肉眼的および顕微鏡的病理所見が含まれる。
【0174】
したがって、実施例1および2に示される遺伝毒性の変化は、730日後に少なくとも10倍の安全マージンを考慮に入れている、出発点での用量および低減した用量で28日間の投与後に特定されなかったことが実証され、それによって、慢性的なエスケタミン投与のための最小限の安全なウィンドウを提供することができる。
【0175】
実施例5:雄ラットにおける7日間の強制水泳試験
6~7週齢の雄のSprague Dawleyラットの群に、腹腔内注射によってエスケタミンを投与し、強制水泳試験によってそれらの行動上の絶望を評価した。10匹のコホートの動物に、15mg/kgのエスケタミンの単回投与、7.5もしくは15mg/kgのエスケタミンの毎日7回の投与、またはビヒクル対照のいずれかを投与し、投与の30分後に試験を行った。統計的評価を、通常の一元配置分散分析、t検定、および未修正のフィッシャーのLSD比較検定を使用して行った。
【0176】
エスケタミンの継続的な7日間の処置は、同じ用量レベルでの単回急性用量よりも強い抗うつ様効果をもたらした。7.5および15mg/kgでのエスケタミンは、慢性処置後の無動時間でそれぞれ40%および60%の統計的に有意な減少を示したが、効果の程度は急性処置ラットにおいてそれほど顕著ではなかった(15mg/kgの対照の42%)。これは、複数回投与が同じ用量レベルの単回急性用量よりも効果的であることを示しており、急性というよりむしろ慢性のエスケタミン計画を介してうつ病患者を治療する理論的根拠を示唆している。
【0177】
実施例6:健康なボランティアにおける単回用量、ランダム化、非盲検、クロスオーバー研究
16名の健康な男性および女性の対象におけるランダム化、非盲検四元クロスオーバー研究を実施し、該対象を、ランダムに割り当てた順序で配置し、エスケタミンを投与した。4名の対象が各治療シーケンスに割り当てられるように、各対象を、無作為化コードに従って4つの治療シーケンスのうちの1つに割り当てた。経口または静脈内のエスケタミン塩酸塩のいずれからなる用量での投与期間の間に、少なくとも7日間のウォッシュアウト期間があった。この研究は、28日間の適格性スクリーニング期間、エスケタミン塩酸塩の単回用量の投与、続いて研究薬投与後72時間までのPK目的のための採血を伴う安全性評価、研究薬投与後72時間での退院、および4日目に最後のPK血液試料を採取してから7~14日後のフォローアップ訪問を含む、4つの研究期間からなった。
【0178】
16名の対象のうち15名が、研究を完了した。1名の対象(対象11)は、第1の治療期間のみに参加した。この対象は、軽度の高ビリルビン血症のAEにより研究から参加撤回し、したがって3つの残りの治療期間中に計画された治療を受けなかった。表3に示すように、対象11はPKセットに含まれておらず、したがって、そこには15名の対象が含まれた。
【表3】
【0179】
研究を完了した15名の対象の中で、治療は概して良好な忍容性であった。合計128のTEAE(治療に起因する有害事象)が16名のうち15名(94%)の対象によって報告され、その中で16名のうち14名(88%)の対象によって報告された79のTEAEが研究薬に関連していた。全体として、4名(25%)の対象によって報告された128のTEAEのうち合計14が中程度の重症度であり、15名(94%)の対象によって報告された128のTEAEのうち114が軽度の重症度であった。重度のTEAEまたはSAEは、報告されなかった。最も頻繁に起こった有害事象(2回超報告された)は、頭痛、めまい、運動低下、異常感、疲労、多幸感 不相応な情動、吐き気、発汗過多であった。表4は、最も頻繁に報告された関連するTEAEの頻度を、治療当たりの有害作用を経験した対象の百分率として示す。
【表4】
【0180】
実施例7:経口エスケタミン剤形
エスケタミン塩酸塩の経口剤形を、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2016/094358に記載された手順に従って製造した。
【0181】
集団PKモデリング分析を実施例5の結果に対して行って、本明細書に記載の用量の複数回用量計画に従ってシミュレートしたPKデータを提供した。
【0182】
製剤およびそれらの予測された定常状態でのPKパラメータを表5に示す。
【表5】
【0183】
実施例7:双極性1障害患者のうつ病エピソードにおける10mg、20mg、および40mgの経口エスケタミンの安全性および有効性を決定するための、用量設定(dose range finding)、多施設、二重無作為化、二重盲検、プラセボ対照研究
用量設定、二重無作為化、二重盲検、プラセボ対照研究は、大うつ病エピソードを有する204名の双極性I対象において、毎日1回の10、20、または40mg経口エスケタミンの有効性、安全性、忍容性をプラセボ治療と比較する。すべての対象は、研究中に用量を変更することなく、自身の現在の抗うつ薬を維持する。
【0184】
研究は、スクリーニング(0~28日目)、2つの2週間の期間(期間1、期間2)で構成される二重盲検治療(29~56日目)、および最後の研究治療投与後の治療後安全性フォローアップ(57~70日目)の3つの段階を含む。
【0185】
スクリーニング中に、対象を、研究適格性について評価し、許可されていない薬からウォッシュアウトする。適格であることが判明した後、対象を、期間1の開始時に、それぞれ、プラセボまたは10mg、20mg、もしくは40mgの経口エスケタミンのいずれかを毎日1回受ける3:1:1:1割り当てスキームを使用して無作為化する。期間1の終了時に、すべての対象を、ベースラインから2週目までの自身のMADRS-10スコアの変化に基づき、応答について盲検評価する。期間1の間にプラセボを受けた対象を、2週間(期間2)内にそれぞれ、プラセボまたは10mg、20mg、もしくは40mgの経口エスケタミンのいずれかを毎日1回受ける1:1:1:1割り当てスキームを使用して再ランダム化する。再ランダム化を、期間1のプラセボ応答によって層別化する(50%未満または50%以上のMADRSの変化および18未満または18以上のMADRSスコア)。期間1で経口エスケタミンを服用していた対象は、期間2の2週間、同じ投与量で薬を維持する。
【0186】
対象は、研究施設で自身の研究薬の第1の用量を受け、次いで3時間綿密にモニターされて、眠気、鎮静、および解離効果を特定するための包括的な一連のスケールを使用して、潜在的な神経精神系有害事象について評価される。その後、対象に、自身の居住地での投与のための研究薬の1週間の供給を提供し、夕方に研究薬を服用し(研究施設で服用する場合の毎週の訪問の日を除く)、翌朝まで運転しないよう指示する。各対象訪問時に、精神科医は、対象のMADRS-10スコアを評価する。
【0187】
研究の主要有効性エンドポイントは、10項目のMontgomery-Åsberg Depression Rating Scale(MADRS-10)におけるベースラインから2週目(2つの期間内)への変化である。
【0188】
副次的有効性エンドポイントには、2週間でのベースラインSheehan Disability Scale(SDS)からの変化、2週間での寛解率(MADRS-10≦10)、2週間での応答者(MADRS-10における50%以上の改善)、2週間での自己評価Symptoms of Depression Questionnaire(SDQ)のベースラインからの変化、2週間での内科医管理Clinical Global Impression Improvement(CGI-I)および2週間での内科医管理Clinical Global Impression Severity(CGI-S)のベースラインからの変化が含まれる。
【0189】
探索的エンドポイントには4週間同じ研究薬を受けた対象のサブセットについてのMontgomery-Åsberg Depression Rating Scale(MADRS-10)におけるベースラインから第4週目までの変化が含まれる。
【0190】
安全性および忍容性のエンドポイントには、有害事象、血液学、生化学および検尿、免疫学的パラメータ、身体検査所見、研究薬投与後30分ごとに3時間の血圧および心拍数、12誘導心電図所見、参加撤回率、Digit Symbol Substitution Test(DSST)、反応時間検査(Cambridge COGNITION)、自己管理型Stanford眠気スケール、Bladder Pain/Interstitial Cystitis Symptom Score(BPIC-SS)、Modified Observer’s Alertness/Sedation Scale(MOAA/S)、Clinician-Administered Dissociative States Scale(CADSS)、自殺傾向スケール-Clinician-Rated Columbia Suicide Severity Rating Scale(C-SSRS)、Brief Psychiatric Rating Scale(BPRS)からの4項目の陽性症状サブスケール、ならびにフォローアップ期間中の20項目のPhysician Withdrawal Checklist(PWC-20)が含まれる。
【0191】
当業者は、本開示の好ましい実施形態に対して多数の変更および修正を行うことができること、ならびにそのような変更および修正を本開示の趣旨から逸脱することなく行うことができることを理解するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨および範囲に含まれるすべてのそのような等価的変化を網羅することが意図される。
【国際調査報告】