(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-28
(54)【発明の名称】差動時間遅延シフタ装置および方法
(51)【国際特許分類】
H01P 1/18 20060101AFI20230220BHJP
H01Q 23/00 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
H01P1/18
H01Q23/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537185
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2022-08-15
(86)【国際出願番号】 US2020065420
(87)【国際公開番号】W WO2021127049
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521371072
【氏名又は名称】メンロ・マイクロシステムズ・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MENLO MICROSYSTEMS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187469
【氏名又は名称】藤原 由子
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【氏名又は名称】古後 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】モブス・クリストファー・イアン
(72)【発明者】
【氏名】セス・マーティン・エー・イー
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021DB03
5J021DB06
5J021FA06
(57)【要約】
【課題】信頼性の高い差動時間遅延シフタを提供する。
【解決手段】差動時間遅延シフタは、1対Nスイッチ(Nは1より大きい整数)を含んでいてもよく、スイッチは、極コンタクト、N個の投コンタクト、および極コンタクトを投コンタクトの1つに選択的に結合するための極アームを有し得る。1つの投コンタクトは、第1のスイッチ位置における第1の投コンタクトであってもよく、最後のスイッチ位置における最後の投コンタクトであってもよい。シフタは、それぞれがN個の投コンタクトのうちの2つの間に電気的に接続される1つ以上の伝送線路をさらに含んでもよく、電磁信号を生成するように構成されたソースをさらに含んでもよい。ソースは、信号を極コンタクトに伝達するために、極コンタクトに電気的に結合されてもよい。シフタは、1つ以上の負荷をさらに備えてもよく、そのうちの1つは、第1の投コンタクトに電気的に結合される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動時間遅延シフタであって、この差動時間遅延シフタは、
1対Nスイッチ(Nは1より大きい整数)であって、
1個の極コンタクトと、
N個の投コンタクトと、
極コンタクトを前記N個の投コンタクトのうちの0個またはそれ以上に選択的に電気的に結合するように構成された極アームと、を備え、
前記N個の投コンタクトのうち、1つの投コンタクトは、この1対Nスイッチの最初の位置における最初の投コンタクトであり、
前記N個の投コンタクトのうち、1つの投コンタクトは、この1対Nスイッチの最後の位置における最後の投コンタクトである、1対Nスイッチと、
1個以上の伝送線路であって、伝送線路のそれぞれが前記N個の投コンタクトの2つの間を電気的に接続する、1個以上の伝送線路と、
電磁(EM)信号を生成するように構成されたソースであって、前記極コンタクトに電気的に結合されて前記極コンタクトに前記電磁信号を伝達するソースと、
1つ以上の負荷であって、第1の負荷は前記最初の投コンタクトに電気的に結合されている1つ以上の負荷と、
を備える、差動時間遅延シフタ。
【請求項2】
請求項1に記載の差動時間遅延シフタにおいて、前記1つ以上の負荷のうちの第2の負荷は、前記最後の投コンタクトに電気的に結合される、差動時間遅延シフタ。
【請求項3】
請求項1に記載の差動時間遅延シフタにおいて、前記1対Nスイッチのスイッチ位置は、
(i)前記EM信号を前記1個以上の伝送線路のうちのM個(Mは0以上の整数)を通じて前記第1の負荷に伝搬させ、
(ii)前記EM信号を前記1個以上の伝送線路のN-M個を通じて前記第2の負荷に伝搬させる、差動時間遅延シフタ。
【請求項4】
請求項1に記載の差動時間遅延シフタにおいて、前記M個の伝送線路は、前記N-M個の伝送線路と異なる、差動型時間遅延シフタ。
【請求項5】
請求項1に記載の差動時間遅延シフタにおいて、前記極アームは、前記極コンタクトを一度に前記N個の投コンタクトのうちの1つだけに選択的に電気的に結合するように構成される、差動時間遅延シフタ。
【請求項6】
請求項1に記載の差動時間遅延シフタにおいて、前記極アームは、前記極コンタクトを前記N個の投コンタクトの2つ以上に同時に選択的に電気的に結合するように構成される、差動時間遅延シフタ。
【請求項7】
請求項1に記載の差動時間遅延シフタにおいて、前記極アームが、前記極コンタクトを、
(i)前記N個の投コンタクトのいずれにも選択的に電気的に結合しないか、
(ii)一度に前記N個の投コンタクトの1つだけに選択的に電気的に結合するか、または
(iii)前記N個の投コンタクトの2つ以上に同時に選択的に電気的に結合するように構成される、差動時間遅延シフタ。
【請求項8】
請求項1に記載の差動時間遅延シフタにおいて、さらに、前記スイッチ、前記負荷、前記ソース、および前記1個以上の伝送線路のうちの1つのインピーダンスを、前記スイッチ、前記負荷、前記ソース、および前記1個以上の伝送線路のうちの別のもののインピーダンスに整合するように構成される1つ以上の整合部品をさらに備える、差動時間遅延シフタ。
【請求項9】
電磁(EM)信号に時間遅延を適用する方法であって、
1対Nスイッチ(Nは1より大きい整数)が、
(i)1個の極コンタクトと、
(ii)N個の投コンタクトと、
(iii)前記極コンタクトを前記N個の投コンタクトの1つに選択的に電気的に結合するように構成された極アームであって、前記N個の投コンタクトのうちの1つの投コンタクトは前記1対Nスイッチの最初の位置における最初の投コンタクトであり、前記N個の投コンタクトのうちの1つの投コンタクトは1対Nスイッチの最後の位置における最後の投コンタクトである、極アームと、
(iv)1個以上の伝送線路であって、それぞれの伝送線路が、前記N個の投コンタクトの2つの間に電気的に接続される1つ以上の伝送線路と、を有するように1対Nスイッチを構成することと、
電磁(EM)信号を発生させるように構成されるソースを前記極コンタクトに電気的に結合することと、
第1の負荷を前記最初の投コンタクトに電気的に結合することと、
前記極コンタクトが前記N個の投コンタクトの1つに電気的に結合するように前記極アームを操作することと、を含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、第2の負荷を前記最後の投コンタクトに電気的に結合することをさらに含む、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法において、前記EM信号を前記1個以上の伝送線路のM個(Mは0以上の整数)を通して前記第1の負荷に伝搬させ、前記EM信号を前記1個以上の伝送線路のN-M個を通して前記第2の負荷に伝搬させることをさらに含む、方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法において、前記極コンタクトを、一度に前記N個の投コンタクトのうちの1つだけに選択的に電気的に結合することをさらに含む、方法。
【請求項13】
請求項9に記載の方法において、前記極コンタクトを前記N個の投コンタクトのうちの2つ以上に同時に選択的に電気的に結合することをさらに含む、方法。
【請求項14】
請求項9に記載の方法において、前記極コンタクトを、(i)前記N個の投コンタクトのいずれにも選択的に電気的に結合しないか、(ii)一度に前記N個の投コンタクトのうちの1つのみに選択的に電気的に結合するか、または(iii)前記N個の投コンタクトのうちの2つ以上に同時に選択的に電気的に結合することをさらに含む、方法。
【請求項15】
アンテナアレイフィードシステムであって、
少なくとも1列の放射素子を有するアンテナアレイと、
電磁気(EM)信号をアンテナアレイに分配するように構成された少なくとも1つの遅延シフトネットワークであって、
(i)少なくとも1つの1対Nスイッチと、
(ii)1個以上の伝送線路であって、それぞれの伝送線路が前記1対NスイッチのN個の投コンタクトの2つの間に電気的に接続された、1個以上の伝送線と、
を含む、少なくとも1つの遅延シフトネットワークと、
前記アンテナアレイの前記放射素子のそれぞれであって、前記少なくとも1つの1対Nスイッチの投コンタクトに電気的に結合されて前記1個以上の伝送線路の端点に配置される、それぞれの放射素子と、
を含む、アンテナアレイフィードシステム。
【請求項16】
請求項15に記載のアンテナアレイフィードシステムにおいて、前記1対Nスイッチは、前記EM信号を一度に前記N個の投コンタクトのうちの1つのみに選択的に電気的に結合するように構成される、アンテナアレイフィードシステム。
【請求項17】
請求項15に記載のアンテナアレイフィードシステムにおいて、前記1対Nスイッチは、前記EM信号を前記N個の投コンタクトのうちの2つ以上に同時に選択的に電気的に結合するように構成される、アンテナアレイフィードシステム。
【請求項18】
請求項15に記載のアンテナアレイフィードシステムにおいて、前記1対Nスイッチは、前記EM信号を(i)前記N個の投コンタクトのいずれにも選択的に電気的に結合しないか、(ii)前記N個の投コンタクトのうち一度に1つのみに選択的に電気的に結合するか、または(iii)前記N個の投コンタクトのうち2つ以上に同時に選択的に電気的に結合するように構成される、アンテナアレイフィードシステム。
【請求項19】
請求項15に記載のアンテナアレイフィードシステムにおいて、前記アンテナアレイが放射素子の少なくとも2つの列を含み、前記少なくとも1つの遅延シフトネットワークが、前記EM信号を前記少なくとも2つの列の放射素子に分配して、各列の素子が同じ差動遅延パターンを経験するように構成される、アンテナアレイフィードシステム。
【請求項20】
請求項15に記載のアンテナアレイフィードシステムにおいて、前記アンテナアレイが放射素子の少なくとも2つの列を含み、前記少なくとも1つの遅延シフトネットワークが、前記EM信号を前記少なくとも2つの列の放射素子に分配して、各列の素子が異なる差動遅延パターンを経験するように構成される、アンテナアレイフィードシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2019年12月17日に出願された米国仮出願第62/949,152号の利益を主張するものである。上記出願の教示全体は、参照により本明細書に取り入れたものとする。
【背景技術】
【0002】
セルラー通信システムにおいて、セル間の周波数再利用を促進するために、隣接するセルの基地局間の干渉を最小化する必要がある。基地局送信機の放射パターン制御は、そのようなセル間干渉を低減するための1つの方法である。例えば、セルサイト間の干渉を低減する方法の1つとして、アンテナの垂直(仰角)パターンを地面に向かって下方に傾けることにより、セルサイトのカバーエリアを減少させることが挙げられる。これは、調整可能なブラケットを用いてアンテナを機械的に下方に傾斜させることによって達成され得るが、この傾斜は、代替的に、フェーズドアレイアンテナ構成を使用して送信ビームを下方に操縦することによっても達成され得る。
【0003】
フェーズドアレイアンテナは、電磁(EM)放射のビームを指向的に操縦するために使用され得る。フェーズドアレイアンテナシステムの先行技術例が、
図1に示されている。アンテナ素子12のアレイは、送信機14によって駆動される。各アンテナ素子のためのフィード電流は、位相シフタ16を通過する。位相シフタ16によって実施される位相シフトがすべて同じである場合、アンテナ素子16のアレイからの送信波は結合して、アンテナ軸20に垂直な波面18を形成する。位相シフタ16の位相シフトがアレイ全体にわたって(例えば、
図1のアレイの上から下へ)漸増する場合、アンテナ素子16のアレイからの送信波は、アンテナ軸20に対して角度θで向けられる波面22を形成するように組み合わされる。アンテナ素子16の例示的な一次元アレイでは、送信EMビームは、位相シフタ16の各々によって提供される位相シフトを変えることによって、単一の平面(例えば、垂直平面)内で操縦され得る。
【0004】
アンテナビームの角度θは、個々の位相シフタ16の位相シフトを変更することによって変更することができる。
図2は、この目的のために使用され得る可変位相シフタ28の先行技術例を示す。可変位相シフタ28は、ピボット結合器38を中心に回転可能なワイパーアーム36から構成されており、ワイパーアーム36の遠位端は弧状の導電性ストリップ40を走査する。ワイパーアーム36の遠位端と導電性ストリップ40の間の結合は容量性である。ワイパーアーム36がピボットカプラ38を中心に回転すると、第1のポート30と第2のポート32との間の経路長、及び第1のポート30と第3のポート34との間の経路長が変化し、第2のポート32及び第3のポート34で出力される信号の位相が変化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図2に示される位相シフタ28はスライダ機構であるため、出力ポートでの位相を変更するためにワイパーアーム36を物理的に動かす(例えば、回転させる)必要がある。
図2の位相シフタを遠隔制御可能にするためには、ステッピングモータまたは他のそのような駆動機構を位相シフタのワイパーアームに関連付ける必要がある。位相シフタ28および関連するステッピングモータの機械的性質によって、送信機/アンテナシステムに信頼性の低下および性能問題が生じる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本発明は、1対Nスイッチを含む差動時間遅延シフタであってよい。ここで、Nは1より大きい整数である。この1対Nスイッチは、1個の極コンタクトと、N個の投コンタクトと、極コンタクトをN個の投コンタクトのうちの0個以上と選択的に電気的に結合するように構成された極アームを有してもよい。N個の投コンタクトのうちの1つは、1対Nスイッチの最初の(第1の)位置における最初の投コンタクトであってもよく、N個の投コンタクトのうちの1つは、1対Nスイッチの最後の位置における最後の投コンタクトであってもよい。差動時間遅延シフタは、それぞれがN個の投コンタクトの2つの間に電気的に接続される1個以上の伝送線路をさらに含んでもよい。差動時間遅延シフタは、電磁(EM)信号を生成するように構成されたソースをさらに含んでもよい。ソースは、EM信号を極コンタクトに伝えるために極コンタクトに電気的に結合されてもよい。差動時間遅延シフタは、1つ以上の負荷をさらに備えてもよく、そのうちの最初の負荷は、最初の投コンタクトに電気的に結合される。
【0007】
一実施形態では、1つ以上の負荷のうちの第2の負荷は、最後の投コンタクトに電気的に結合されてもよい。1対Nスイッチのスイッチ位置は、(i)EM信号が1個以上の伝送線路のうちのM個を通って第1の負荷に伝搬し、(ii)EM信号が1個以上の伝送線路のうちのN-M個を通って第2の負荷に伝搬する。ここで、Mは0以上の整数であってよい。M個の伝送線路は、N-M個の伝送線路と異なっていてもよい。極アームは、極コンタクトを一度にN個の投コンタクトのうちの1つだけに選択的に電気的に結合するように構成されてもよい。極アームは、極コンタクトをN個の投コンタクトのうちの2個以上に同時に選択的に電気的に結合させるように構成されてもよい。極アームは、極コンタクトに対し、(i)N個の投コンタクトのいずれにも選択的に電気的に結合しないか、(ii)一度にN個の投コンタクトのうちの1つのみに選択的に電気的に結合するか、または(iii)N個の投コンタクトのうちの2つ以上に同時に選択的に電気的に結合するように、構成されてもよい。
【0008】
差動時間遅延シフタは、スイッチ、負荷、ソース、および1個以上の伝送線路のうちの1つのインピーダンスを、スイッチ、負荷、ソース、および1個以上の伝送線路のうちの別のもののインピーダンスに整合するように構成された1つ以上の整合部品をさらに備えてもよい。
【0009】
別の態様では、電磁(EM)信号に時間遅延を適用する方法は、Nを1より大きい整数として、(i)1個の極コンタクトと、(ii)N個の投コンタクトと、(iii)極コンタクトをN個の投コンタクトの1つに選択的に電気的に結合するように構成された極アームであって、N個の投コンタクトのうちの1つは、1対Nスイッチの最初の位置における最初の投コンタクトであり、N個の投コンタクトのうちの1つは、1対Nスイッチの最後の位置における最後の投コンタクトである、極アームと、(iv)1つまたは複数の伝送線路であって、その各々がN個の投コンタクトのうちの2つの間に電気的に接続されている、1つまたは複数の伝送線と、を備えるように1対Nスイッチを構成することを含んでもよい。この方法はさらに、電磁(EM)信号を生成するように構成されたソースを極コンタクトに電気的に結合することと、第1の負荷を第1の投コンタクトに電気的に結合することと、極アームを操作して極コンタクトをN個の投コンタクトの1つに電気的に結合することとをさらに含んでもよい。
【0010】
本方法は、第2の負荷を最後の投コンタクトに電気的に結合させることをさらに含んでもよい。本方法は、Mを0以上の整数として、EM信号が1個以上の伝送線路のうちのM個を通って第1の負荷に伝搬するようにし、EM信号が1個以上の伝送線路のうちのN-M個を通って第2の負荷に伝搬するようにすることをさらに含んでもよい。本方法は、極コンタクトを一度にN個の投コンタクトのうちの1つだけに選択的に電気的に結合させることをさらに含んでもよい。本方法はまた、極コンタクトをN個の投コンタクトのうちの2個以上に同時に選択的に電気的に結合させることを含んでもよい。本方法は、代替的に、極コンタクトを、(i)N個の投コンタクトのいずれにも選択的に電気的に結合させないこと、(ii)一度にN個の投コンタクトのうちの1つのみに選択的に電気的に結合させること、または(iii)N投コンタクトのうちの2つ以上に同時に選択的に電気的に結合させることを含んでいてもよい。
【0011】
さらに別の態様では、アンテナアレイフィードシステムは、放射素子の少なくとも1つの列を有するアンテナアレイと、アンテナアレイに電磁(EM)信号を分配するように構成された少なくとも1つの遅延シフトネットワークとを備えてもよい。少なくとも1つの遅延シフトネットワークは、少なくとも1つの1対Nスイッチと、1個以上の伝送線路であって伝送線路のそれぞれが1対NスイッチのN個の投コンタクトのうちの2つの間に電気的に接続される、1個以上の伝送線路とを備えてもよい。アンテナアレイの放射素子のそれぞれは、少なくとも1つの1対Nスイッチの投コンタクトに電気的に結合され、各放射素子は1個以上の伝送線路の端点に配置されてもよい。
【0012】
実施形態において、1対Nスイッチは、一度にN個の投コンタクトのうちの1つだけに選択的に電気的にEM信号が結合するように構成されてもよい。1対Nスイッチは、N個の投コンタクトのうちの2つ以上に同時に選択的に電気的にEM信号が結合するように構成されてもよい。1対Nスイッチは、EM信号が(i)N個の投コンタクトのいずれにも選択的に電気的に結合しないか、(ii)N投コンタクトのうち一度に1つのみに選択的に電気的に結合するか、または(iii)N個の投コンタクトのうち2つ以上に同時に選択的に電気的に結合するように構成されてもよい。
【0013】
アンテナアレイは、放射素子の少なくとも2つの列から構成されてもよい。少なくとも1つの遅延シフトネットワークは、各列の素子が同じ差動遅延パターンを経験するように、EM信号を少なくとも2つの列の放射素子に分配する構成としてもよい。アンテナアレイは、放射素子の少なくとも2つの列から構成されてもよい。少なくとも1つの遅延シフトネットワークは、各列の素子が異なる差動遅延パターンを経験するように、EM信号を少なくとも2つの列の放射素子に分配する構成としてもよい。
【0014】
本特許または出願のファイルには,色つきで作成した少なくとも1つの図面が含まれる。色つきの図面を含むこの本特許または特許出願公開の写しは,請求と必要な手数料の支払によって,官庁から提供される。
【0015】
前述した事項は、例示的な実施形態をさらに詳細に示す以下の記載から明らかになるであろう。添付図面においては、異なる図を通して同じ参照文字が同じ部品を指す。図面は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに実施形態を示すことに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、フェーズドアレイアンテナシステムの先行技術例を示す図である。
【
図2】
図2は、可変位相シフタの先行技術例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明による差動遅延シフタの例示的な実施形態である。
【
図4】
図4は、本発明による差動遅延シフタのシミュレーションモデルの一例を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、
図4に示すシミュレーションモデルに関連するシミュレーション結果を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、
図4に示すシミュレーションモデルに関連するシミュレーション結果を示す図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明による差動遅延シフタの代替的な実施形態を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、本発明による差動遅延シフタの代替的な実施形態を示す図である。
【
図6C】
図6Cは、本発明による差動遅延シフタの代替的な実施形態を示す図である。
【
図6D】
図6Dは、本発明による差動遅延シフタの代替的な実施形態を示す図である。
【
図7】
図7は、マルチエレメントアレイの2軸を操縦するために使用され得る遅延シフトのカスケードネットワークの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、例示的な実施形態について説明する。
【0018】
説明された実施形態は、電磁(EM)信号ソースから負荷への離散的な時間遅延経路を提供し得る差動実時間遅延シフタに関するものである。
【0019】
図3は、本発明による差動遅延シフタの例示的な実施形態を示し、これは、単極4投スイッチ102と、第1の伝送線路104と、第2の伝送線路106と、第3の伝送線路108とを備える。スイッチ102は、極アーム112に電気的に結合された極110を含んでよく、この極112は、第1のコンタクト114、第2のコンタクト116、第3のコンタクト118、および第4のコンタクト120のうちの1つに選択的な結合が(電気的に)されるように構成されている。第1の伝送線路104(TL1)は、第1のコンタクト114と第2のコンタクト116との間に電気的に結合される。第2の伝送線路106は、第2のコンタクト116と第3のコンタクト118との間に電気的に結合されている。第3の伝送線路108は、第3のコンタクト118と第4のコンタクト120との間に電気的に結合される。ソース122(S1)は極110に電気的に結合され、第1の負荷(L1)124は第1のコンタクト114に電気的に結合され、第2の負荷(L2)126は第4のコンタクト120に電気的に結合されている。
【0020】
スイッチ102が極110を第1のコンタクト114に電気的に結合すると、(i)ソース122から第1の負荷124への直接的な伝送経路、ならびに(ii)ソース122から伝送線路TL1 104、TL2 106、およびTL3 108を介しての第2の負荷126への伝送経路が存在する。
【0021】
スイッチ102が極110を第2のコンタクト116に電気的に結合すると、(i)ソース122から伝送線路TL1 104を介しての第1の負荷124への伝送経路、ならびに(ii)ソース122から伝送線路TL2 106およびTL3 108を介しての第2の負荷126への、伝送経路が存在する。
【0022】
スイッチ102が極110を第3のコンタクト118に電気的に結合すると、(i)ソース122から伝送線路TL1 104およびTL2 106を介しての第1の負荷124への伝送経路、ならびに(ii)ソース122から伝送線路TL3 108を介しての第2の負荷126まで伝送経路が存在する。
【0023】
スイッチ102が極110を第4のコンタクト120に電気的に結合すると、(i)ソース122から伝送線路TL1 104、TL2 106、およびTL3 108を介しての第1の負荷124への伝送経路、ならびに(ii)ソース122から第2の負荷126への直接的な伝送経路が存在する。
【0024】
スイッチ102を上述の4つの状態のうちの1つに設定することによって、ソース122から第1の負荷124への伝送経路は、TL1、TL1+TL2、またはTL1+TL2+TL3になるように構成されてもよく、ソース122から第2の負荷126への伝送経路は、TL3、TL2+TL3、またはTL1+TL2+TL3になるように構成されてもよい。各伝送線路TL1 104、TL2 106、TL3 108は、伝送線路を伝搬する信号の時間遅延を実施する。この遅延は、伝送線路の長さを、伝送線路を通る信号の伝搬速度で割ったものに等しい。その結果、伝搬する信号の位相遅延は、信号の周波数(波長)に依存する。例えば、24mm(0.024m)の伝送線路では,伝搬速度がc=3x108であるとすると,0.024m/(3x108m/s)=80pSの時間遅延が生じる。波長0.5nsの2GHz伝搬信号では80pSの時間遅延は約58°の位相遅延に対応することになる。このように、スイッチで選択された伝送経路の特定のセットから生じる時間遅延は、対応する位相遅延を生じさせる。スイッチ102は、極が投コンタクトのいずれにも電気的に結合されておらず、極が投コンタクトから電気的に絶縁されている第5の状態を特徴としてもよい。
【0025】
上記の例は、本発明の概念を説明するために提示されたものであり、限定することを意図していない。本発明の実施形態は、任意の数の投を利用してもよい(例えば、単極N投スイッチ(Nは整数))。スイッチの投コンタクト間の伝送線路(例えば、TL1、TL2、TL3)は、任意の長さであってよく、必ずしも等しくなくてもよい。伝送線路の長さは、特定のスイッチ設定に対して所望の伝搬遅延を実現するために、適宜選択されてもよい。追加の伝送線セグメント(整合セグメント)は、(i)伝送線路間、(ii)スイッチ102から伝送線路まで、(iii)ソースからスイッチまで、および(iv)伝送線路から負荷までのインピーダンス整合を提供するために差動遅延シフタに含まれてもよい。整合セグメントは、ソース122から負荷124、126への伝送経路に長さを追加してもよく、これは、上述したように、負荷における位相遅延の増加に対応する。
【0026】
図3に関して上述した例示的な実施形態を参照すると、TL1の長さ=TL2の長さ=TL3の長さ=24mmであり、S1によって駆動される信号が0~4GHzの範囲の周波数を有すると仮定する。スイッチ112が極110と第1のコンタクト114を接続すると、S1 122とL1 124の信号の時間遅延差は0pSとなり、S1 122とL2 126の信号の時間差は約240pSとなる。スイッチ102が極110を第2のコンタクト114に接続する場合、S1 122とL1 124における信号の時間差は約80pSとなり、S1 122とL2 126における信号の時間差は約160pSとなるであろう。スイッチ102が極110を第3のコンタクト116に接続すると、S1 122とL1 124における信号間の時間差は約160pSとなり、S1 122とL2 126における信号間の時間差は約80pSとなるだろう。スイッチ102が極110を第4のコンタクト118に接続する場合、S1 122とL1 124における信号の時間差は約240pSとなり、S1 122とL2 126における信号の時間差は約0pSとなるであろう。以上説明した実装形態例を表1にまとめる。
【0027】
【0028】
図4は、ソースP3 222からの信号を第1の負荷P1 224および第2の負荷P2 226に分配する1極4投スイッチ202を含む差動遅延シフタのシミュレーションモデルの例を示している。この例示的な実施形態における第1および第2の負荷224、226は、100オームのインピーダンス負荷であるように描かれ、ソース222は、50オームのインピーダンス負荷であるように描かれているが、これらの特定の値は、例示であって、制限されることを意図していない。この例のシミュレーションモデルにおけるスイッチ202は、Menlo Microsystems, Inc.のMM5130スイッチであり、1極4投のスイッチング機構を特徴としている。第1の伝送線路204は、12mm、100Ωの伝送線路(Line8)と、2つの整合セグメント(Line9およびLine3)を備え、それぞれZ=zm(整合インピーダンス)のインピーダンスとlm(整合長さ)の長さとを有する。第2の伝送線路206は、12mm、100Ωの伝送線路(Line5)と、2つの整合セグメント(Line1、Line2)とから構成されている。第3の伝送線路208は、12mm、100Ωの伝送線路(line7)と、2つの整合セグメント(Line4およびLine11)とを備える。整合セグメント230は、第1の負荷224を第1のセグメント204と、およびスイッチ202とに整合させる。整合セグメント232は、第2の負荷226を第3のセグメント208と、およびスイッチ202とに整合させる。整合セグメント234は、ソース222をスイッチ202に整合させる。
【0029】
図5Aおよび
図5Bは、
図4に示されたシミュレーションモデルに関連するシミュレーション結果を示す図である。
図5Aは、ソース222と第1の負荷224との間の伝送損失502(dB(S[2,3]))およびソース222と第2の負荷226との間の伝送損失504(dB(S[3,1]))を示し、電力の均等分割(3dB)に近いことを表している。
図5Bは、4つのスイッチ位置506、508、510、および512のそれぞれについて、周波数の関数として、第1の負荷224と第2の負荷226との間の時間遅延差を示している。
【0030】
説明された実施形態は、
図2に関して説明されたワイパーアーム位相シフタの離散化版または量子化版についてのものである。しかしながら、記載された実施形態は、高周波数(例えば、1GHzより大きい)において実質的に改善された性能を提供する。
【0031】
より小さなスイッチ(例えば、
図3および
図4に示す例示的な実施形態で使用される1極4投スイッチ)は、より高い数の投コンタクト(例えば、8、16、または32投コンタクト)を有する単一のスイッチデバイスが使用されてもよいが、その代わりに、
図6Aおよび
図6Bの例示的な実施形態に示されるように、より大きなスイッチを形成するために組み合わされてもよい。
図6Aは、2つの1極4投スイッチを組み合わせて実際上の1極8投スイッチを形成し、それに対応してより多くの伝送線路を有することを示しており、選択できる位相遅延の数を増加させることができる。同様に、
図6Bは、4つの1極4投スイッチを組み合わせて、実際上の1極16投スイッチを形成している。
図6Aおよび
図6Bの例示的な実施形態に示されるような構成は、それぞれの個別のスイッチが、極コンタクトをどの投コンタクトからも絶縁した第5の「無コンタクト」状態を可能にすることを必要とし、これにより、任意の時点で1つのスイッチのみがアクティブであり、その極コンタクトを投コンタクトに電気的に接続することになる。
【0032】
上述のように、いくつかの実施形態は、所与の時間に1つのスイッチのみがアクティブであることを提供し得るが、代替の実施形態は、所与の時間に複数のスイッチを閉じるためのシステムの利点を利用し得て、これにより、1つのスイッチのみがアクティブである場合には利用できない追加の位相状態を生成し得る。同様に、スイッチがアクティブでない構成は、アンテナ素子を切断し、それによって、少なくとも1つの素子が送信源に接続されるときには利用できない新しいアンテナパターンを生成することができる。
【0033】
本明細書に記載された位相シフタの離散(すなわち、量子化)バージョンは、上記のように複数のスイッチを有効化するために使用され得るが、実際のワイパーアーム位相シフタは、類似の状態を容易にすることはできない。言い換えれば、先行技術のワイパーアーム位相シフタは、一度に1つのワイパー位置しか実装できず、これは、離散型位相シフタについて記載した実施形態における、1つのスイッチの有効化に対応する。ワイパーアーム型位相シフタは、機械的なものであって、遅延線上のトウポイントに同時に接触することができない。したがって、離散型位相シフタの2つ以上のスイッチの実装は、従来技術では想定されておらず、また、想定することもできなかったものである。
【0034】
2つのスイッチ経路を同時に閉じると、伝送線路の隣接ノードに一緒に接続されるので、これらのノード間の伝送線路の部分は、回路内の寄生素子になる。これは、隣接ノード間のループの半分の長さとインピーダンスZo/2(Zoは伝送線路を通してのインピーダンス)を有する開回路スタブ線路として考えることができる。遅延ループの長さが約4分の1波長以下であれば(これは90度の位相ステップに対応する)、開回路スタブによる寄生効果を容易に調整することができる。90度以上の位相差では、この手法の有効性が損なわれる。実際には、一般的に位相ステップは90度よりも小さいので、大きな制限にはならない。
【0035】
本明細書で説明する差動遅延シフトネットワークは、アンテナ素子のアレイの単一軸における調整またはビーム操縦を提供することに限定されない。
図7の例示的な実施形態に示すように、遅延シフトのカスケード型ネットワークは、それぞれ4つの素子の2列を有するマルチ素子アレイ702の2軸を操縦するために使用されてもよい。この実施形態では、方位角と仰角の両方が調整される。第1の遅延シフトネットワーク704は、素子の個々の列にフィードする相対的な信号遅延を制御することを可能にし、それによって方位角のビーム操縦が提供される。各列内では、RF信号705によって駆動される追加の遅延シフトネットワークによって、仰角のビーム操縦が提供される。第1の遅延シフトネットワーク704からの第1の出力RF信号707aは、第1の結合器(カプラ)742に提供され、この結合器は、第1の出力RF信号707aを分割し、その信号のバージョンを第1の外方仰角遅延シフトネットワーク706および第1の内方仰角遅延シフトネットワーク708に分配する。第1の遅延シフトネットワーク704からの第2の出力RF信号707bは、第2の結合器744に提供され、この結合器は、第2の出力RF信号707bを分割し、その信号のバージョンを第2の外方仰角遅延シフトネットワーク712および第2の内方仰角遅延シフトネットワーク710に分配する。
【0036】
各列に4つの放射素子を有する例示的な実施形態では、各列は、2つの外側素子(例えば、第1の列の素子720および素子728、ならびに第2の列の素子730および素子738)、および2つの内側素子(例えば、第1の列の素子722および素子724、ならびに第2の列の素子732および素子734)から構成される。第1の外方仰角遅延シフトネットワーク706は、第1の列の2つの外方仰角要素720および728を駆動し、第2の外方仰角遅延シフトネットワーク712は、第2の列の2つの外方仰角素子730および738を駆動する。同様に、第1の内方仰角遅延シフトネットワーク708は、第1の列の2つの内方仰角素子722および724を駆動し、第2の内方仰角遅延シフトネットワーク710は、第2の列の2つの外方仰角素子732および734を駆動する。
【0037】
典型的には、個々の列は同じ差動遅延を経験するように制御されるであろうが、列は、遅延シフタを個別に調整することによって、要求される放射パターンに応じて異なる仰角に設定され得る。
【0038】
本発明の例示的な実施形態は、低寄生、全直列スイッチ素子(例えば、本明細書に記載されるMM5130スイッチ)を有するマイクロ電気機械システム(MEMS)スイッチを用いてスイッチ102を実装してもよい。このようなMEMSスイッチは、シャント回路素子を組み込んだ、より従来型のソリッドステートスイッチを使用するのに比べて、回路の実装を著しく単純にする。MEMSスイッチの使用は特定の利点を提供し得るが、このようなMEMSスイッチベースのアーキテクチャの例示的な使用は、そのように限定することを意図するものではない。
【0039】
本明細書に記載される差動遅延シフタのスイッチベースの実施形態は、配備されたアンテナ設備が一般に周波数分割複信(FDD)として動作するものであるので、従来技術には記載されていない。FDDシステムは、信号を同時に送信および受信することができるので、パッシブ相互変調(PIM)を制御するために非線形性を緩和する必要がある。スイッチの接点がオーミックであると,かなりの非線形性が生じ、その結果,許容できないほど高いPIM値が生じることがあるので、従来、スイッチベースの位相シフタは、本書に示すような容量結合型スライダで実装されてきた。このように、スイッチベースの位相シフタ機構は、非線形性とFDDシステムとが両立しないので、アンテナの設置の際に考慮されるものでない。
【0040】
新興のセルラーアーキテクチャ(例えば、5Gシステム)は、EM信号を同時に送信および受信しない時分割複信(TDD)通信を利用することがあるので、本明細書に記載されるスイッチベースの差動遅延シフタの実施形態は、アンテナのダウンチルトへの応用においてに実効的な有用性を持ちうる。
【0041】
例示的な実施形態が特に示され、説明されてきたが、添付の請求項によって包含される実施形態の範囲から逸脱することなく、形態および詳細における様々な変更がそこでなされ得ることは、当業者によって理解されるであろう。
【国際調査報告】