(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-28
(54)【発明の名称】改善されたソホロ脂質精製方法
(51)【国際特許分類】
C12P 19/44 20060101AFI20230220BHJP
C12P 7/64 20220101ALI20230220BHJP
C11D 1/68 20060101ALI20230220BHJP
C12N 1/16 20060101ALN20230220BHJP
【FI】
C12P19/44
C12P7/64
C11D1/68
C12N1/16 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537329
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-01
(86)【国際出願番号】 US2020065855
(87)【国際公開番号】W WO2021127339
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519080908
【氏名又は名称】ローカス アイピー カンパニー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】アリベック ケン
(72)【発明者】
【氏名】ファーマー ショーン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H003
【Fターム(参考)】
4B064AD85
4B064AF41
4B064AF45
4B064BJ05
4B064BJ10
4B064CA06
4B064CD22
4B064CE08
4B064DA19
4B065AA72X
4B065AC14
4B065BB26
4B065BD31
4B065CA13
4B065CA19
4B065CA57
4H003AC05
4H003DA01
4H003DA11
4H003DA17
4H003FA17
4H003FA19
(57)【要約】
本発明は、ソホロ脂質(SLP)を生成および精製するための材料および方法を提供する。より具体的には、本発明は、溶媒も遠心分離も使用せずに、例えば少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも95重量%の純度まで、疎水性SLP分子と親水性SLP分子の両方を精製するための、材料および方法を提供する。有利なことに、本発明は、例えば洗浄製品および洗剤で使用するための精製されたSLPの工業的スケールでの生成に適し、安全で環境に優しい材料およびプロセスを使用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、精製されたソホロ脂質(SLP)組成物を生成するための方法:
酵母培養物を生成するために液中発酵リアクター内でソホロ脂質産生酵母を培養することであって、該酵母培養物が、液体発酵培地、酵母細胞、および疎水性SLPと親水性SLPの混合物を含む、培養すること;
培養サイクルの終わりに該発酵リアクター内でまたは第1の収集容器内で該酵母培養物を12~50時間乱さずに静置することによって疎水性SLPと親水性SLPを分離することであって、疎水性SLPを含む層が該酵母培養物の底部に沈殿する、分離すること、および溶解した親水性SLPを含む上清を残して、該沈殿した疎水性SLP層を第2の収集容器内に収集すること;
該疎水性SLPおよび/または該親水性SLPを精製すること。
【請求項2】
前記酵母がスターメレラ・ボンビコラ(Starmerella bombicola)である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記疎水性SLP層が、酵母細胞、グルコース、脂肪酸、および発酵由来の他の残留物より選択される不純物をさらに含み、前記疎水性SLPの精製が、以下の工程:
a) 約50~80℃の温度で約30~300分間連続的に、該疎水性SLP層を脱イオン水と混合する工程;
b) 該疎水性-水混合物を約8~24時間静止させる工程であって、該混合物が、疎水性SLPおよび水を含む底層、水および不純物を含む中層、ならびにさらなる不純物を含む泡沫状上層を形成する、工程;ならびに
c) 該底層を第3の収集容器に収集し、該底層における水の割合を調整して、水洗されたSLP組成物を生成する工程
に従って該疎水性SLP層を水洗することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記層形成した前記疎水性SLP含有層と水の混合物の前記中層が水および不純物を含み、該不純物が、残留酵母細胞、グルコース、および/または脂肪酸を含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記層形成した前記疎水性SLP含有層と水の混合物の前記上層が泡および不純物を含み、該不純物が、残留酵母細胞、グルコース、および/または発酵由来のトリグリセリドを含む、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記収集された底層における水の割合が50%未満となるように調整される、請求項3記載の方法。
【請求項7】
前記収集された底層における水の割合が20~30体積%となるように調整される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記水洗されたSLP組成物が、1種または複数種の脂肪酸および/または油不純物を含み、前記方法が、該脂肪酸および/または油不純物を除去することをさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項9】
前記脂肪酸および/または油不純物がオレイン酸である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記脂肪酸および/または油不純物の除去が、
前記水洗されたSLP組成物を添加油と60℃~70℃の温度で1~3時間混合する工程;
該混合物が該添加油ならびに脂肪酸および/または油不純物を含む上層と、疎水性SLPおよび水を含む底層とを形成するまで、該混合物を8~24時間沈殿させる工程;ならびに
該底層を収集して、前記精製された親水性SLP組成物を生成する工程
を含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記添加油が植物油である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記植物油がキャノーラ油である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記添加油が、10:1(キャノーラ油:SLP)の比で前記水洗されたSLP組成物に添加される、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記混合する工程および/または前記沈殿させる工程の間、前記混合物に電流を印加することをさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項15】
前記電流が、パルスされる交流電流および直流電流を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記精製された疎水性SLP組成物が、ラクトン型SLP、ジアセチル化直鎖SLP、および/またはモノアセチル化直鎖SLPを含む、請求項3記載の方法。
【請求項17】
前記精製された疎水性SLP組成物が約2.5~3.0のpHを有する、請求項3記載の方法。
【請求項18】
前記精製されたSLP組成物が、約1~8の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する、請求項3記載の方法。
【請求項19】
前記上清が、その中に溶解している親水性SLPおよびグルコース不純物を含み、前記方法が、該上清を遠心分離して細胞性物質を除去すること、ならびに酵母消化法および/または酵素消化法を用いて該上清中のグルコース不純物を除去することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記酵母消化法が、前記遠心分離された上清を通気機能を有するタンクに移すこと;生きている酵母を前記上清に導入して、上清培養物を生成すること;該上清培養物に12~48時間通気することであって、該酵母が前記グルコース不純物を消費する、通気すること;該上清培養物を遠心分離して、酵母細胞を含むペレットと、グルコースを含まない液状のSLPを含む第2の上清とを生成すること;ならびに該第2の上清を蒸発させて、20~30体積%の水分含量を有する精製された親水性SLPを生成することを含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記酵素消化法が、前記遠心分離された上清中にグルコースオキシダーゼを混合して、グルコン酸および過酸化水素へのグルコースの変換を触媒すること;ならびに任意で、該過酸化水素を蒸発させることを含む、請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記精製された親水性SLPが、10以上のHLBを有する、請求項14記載の方法。
【請求項23】
精製されたSLPおよびある割合の水を含む組成物であって、該水の割合が50%未満であり、該SLPが少なくとも95%の純度を有する、組成物。
【請求項24】
前記水の割合が20%~30%である、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
精製された疎水性SLPを含む、請求項23記載の組成物。
【請求項26】
家庭用または工業用の洗浄製品において消泡および/または抗微生物成分として使用される、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
精製された親水性SLPを含む、請求項23記載の組成物。
【請求項28】
家庭用または工業用の清掃洗剤において活性成分として使用される、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
請求項1~22のいずれか一項記載の方法に従って生成される、請求項16記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年12月20日に出願された米国特許仮出願第62/951,058号;および2020年3月23日に出願された米国特許仮出願第62/993,158号に対する優先権を主張し、これらのそれぞれは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
バイオサーファクタントは、微生物によって産生される表面活性物質の構造的に多様な群である。すべてのバイオサーファクタントは両親媒性物質である。これらは、2つの部分:極性(親水性)成分および非極性(疎水性)基からなる。その両親媒性構造により、バイオサーファクタントは、例えば、疎水性水不溶性物質の表面積を増大させること、そのような物質の水のバイオアベイラビリティを増大させること、および細菌細胞表面の特性を変化させることができる。
【0003】
バイオサーファクタントは、水と油の間の界面張力を低減させることもでき、したがって、捕らえられた液体を移動させて毛細管効果に打ち勝つようにするのに必要な静水圧を低下させることもできる。バイオサーファクタントは境界面に蓄積し、したがって界面張力を低減させ、溶液中に凝集したミセル構造の形成をもたらす。ミセルの形成は、例えば、移動水性相に油を動員するための物理的メカニズムを提供する。バイオサーファクタントが細孔を形成し、生体膜を不安定化する能力によって、例えば、害虫および/または微生物の増殖を制御するための抗菌剤、抗真菌剤、および溶血剤としてのその使用も可能になる。
【0004】
化学系界面活性剤のように、バイオサーファクタントの特性は、親水性-親油性バランス(HLB)によって測定することができる。HLBは、表面活性分子の親水性成分と親油性成分のサイズおよび強度のバランスである。特定のHLB値が、安定なエマルジョンが形成されるのに必要とされる。水/油および油/水層エマルジョンでは、表面活性分子の極性成分が水の方に向き、非極性基が油の方に向くので、油相と水相の間の界面張力が低下する。
【0005】
HLB値は0~約20の範囲にわたり、HLBが低いほど(例えば、10以下)油溶性になり、かつ油中水型エマルジョンに適し、HLBが高いほど(例えば、10以上)水溶性になり、かつ水中油形乳剤に適する。
【0006】
低分子量糖脂質、リポペプチド、フラボ脂質、およびリン脂質、ならびに高分子量ポリマー、例えば、リポタンパク質、リポ多糖-タンパク質複合体、および多糖-タンパク質-脂肪酸複合体を含めて、複数のタイプのバイオサーファクタントが存在する。
【0007】
特に、糖脂質は、炭水化物および少なくとも1つの脂肪酸を含むバイオサーファクタントである。糖脂質としては、例えば、ラムノリピド(RLP)、ラムノース-d-リン脂質、トレハロース脂質、トレハロースジミコール酸、トレハロースモノミコール酸、マンノシルエリスリトール脂質(MEL)、セロビオース脂質、ウスチラギン酸、および/またはソホロ脂質(SLP)が挙げられる。
【0008】
ソホロ脂質は、グリコシドエーテル結合によって脂肪酸に連結した、2つのグルコース分子からなるソホロースを含む糖脂質である。これらは、2つの一般的形態:脂肪酸側鎖のカルボキシル基とソホロース成分が環状エステル結合を形成する、ラクトン形態;およびエステル結合が加水分解されている、酸性形態または直鎖形態に分類される。これらの形態に加えて、脂肪酸側鎖における二重結合の有無、炭素鎖の長さ、グリコシドエーテル結合の位置、糖成分のヒドロキシル基に導入されたアセチル基の有無、および他の構造的パラメーターを特徴とするいくつかの誘導体が存在する。
【0009】
ラクトン型ソホロ脂質と酸性ソホロ脂質は異なる機能特性を有する。例えば、酸性SLPはラクトン型SLPよりも高いHLBを有するが、ラクトン型SLPは、酸性SLPよりも低いHLBおよび大きな表面張力低減特性を有する。さらに、酸性SLPは、その遊離カルボン酸基のために非常に水溶性である。ラクトン型SLPと酸性SLPを様々な比で組み合わせることにより、例えば、エマルジョンの小滴サイズ、粘性低減特性、および表面/界面張力低減特性が影響を受ける。
【0010】
糖ならびに/または炭素鎖の長さが異なる脂質および脂肪酸を含む培養基質における酵母細胞の発酵は、様々なソホロ脂質を産生するために使用することができる。酵母スターメレラ・ボンビコラ(Starmerella bombicola)は、SLPの最も広く認識されている産生株の1つである。典型的には、酵母は、発酵の間にラクトン型SLPと酸性SLPの両方を産生し、SLPの約60~70%がラクトン形態を含み、残りが酸性形態を含む。したがって、現在の生成方法を用いて生成される標準的なSLP生成物は、例えばHLB値の範囲も狭く、例えば4~9の間であるので、狭い用途でしか使用することができない。
【0011】
さらに、生物学的プロセスの性質が理由で、酵母培養培地から抽出することができる純粋なSLPの正確な濃度を規格化することは困難である。さらに、粗製形態のSLPは、曇った外観および特定の望ましくないにおいを有する可能性がある。したがって、市場性のあるSLP生成物に望ましい濃度ならびに望ましい外観および/またはにおいを保証するために、SLPを精製することが必要であることが多い。
【0012】
しかし、現在、(例えば、95%を超える)非常に精製された形態のSLP、特に酸性形態を培養バッチから得ることは困難であり、コストがかかる。多くの方法は、培養培地から回収された液体SLP生成物に有機溶媒(例えば、ヘキサンおよび/または酢酸エチル)を添加することによるSLPの抽出をともなう。他の方法は、液体培養培地を凍結乾燥し、酢酸エチルと得られた乾燥産物を30℃で約2日間混合する工程を含む。次いで、酢酸エチルを留去し、ヘキサンを添加して、結晶化SLP生成物を形成する。
【0013】
SLPは、例えば、食品保存、バイオ医薬品、化粧品、バイオレメディエーション、重金属のレメディエーション、および様々な家庭用洗浄製品の作製で使用することができる。SLPは、例えば、掘削、セメントスラリー、破砕作業、石油増進回収法、スケール形成の防止、酸性化、粗製流体の解乳化、腐食抑制、油の粘性の低減、設備のクリーニング、水攻法、ならびに/またはフォームおよびスチーム攻法において、石油産業に適用可能であり得る。さらに、農業および家畜生産において、SLPは、例えば、土壌改良材、広域スペクトルバイオ農薬、抗ウイルス剤、抗真菌剤、および抗菌剤、ならびに/または栄養吸収を増強するための、動物飼料への添加物として使用することができる。
【0014】
SLP生成物を生成および精製する現行方法は、例えば研究設定におけるSLPの小規模の生成には十分であり得るが、これらの方法は工業用途には理想的ではない。引火性有機溶媒の使用により、廃液を処理し、環境廃棄物処分規制に準拠するためにエネルギーおよび特別な設備が必要となる。さらに、一部の有機溶媒が最終生成物に残ったままである可能性があり、これにより、さらなる処理なしでは、例えば食品または化粧品において使用不能になる。
【0015】
したがって、安全で、費用対効果が大きく、環境に優しい方法が、工業的スケール用途に適したソホロ脂質の精製に必要とされる。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、ソホロ脂質(SLP)を生成および精製するための材料および方法を提供する。より具体的には、本発明は、親水性(水溶性)および疎水性(水不溶性)SLP分子を分離するため、ならびに溶媒を使用せずに、例えば少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも95重量%の純度まで、SLPを精製するための材料および方法を提供する。有利なことに、本発明は、精製されたSLPの工業的スケールでの生成に適し、安全で環境に優しい材料およびプロセスを使用する。
【0017】
好ましい態様では、本発明の方法は、酵母培養物を生成するために液中発酵リアクター内でソホロ脂質産生酵母を培養する工程であって、該酵母培養物が、液体発酵ブロス、酵母細胞、および疎水性SLPと親水性SLPの混合物を含む、工程;疎水性SLPと親水性SLPを互いから分離する工程;ならびに疎水性SLPと親水性SLPを精製する工程を含む。
【0018】
好ましい態様では、ソホロ脂質産生酵母は、スターメレラ・ボンビコラ、またはスターメレラ(Starmerella)クレードおよび/もしくはカンジダ(Candida)クレードの別のメンバーである。例えばS.ボンビコラATCC 22214株を、本方法に従って使用することができる。
【0019】
本方法に従って、SLP混合物の親水性SLPと疎水性SLPは、液中発酵サイクルが完了した後に分離される。この工程では、全酵母培養物は、発酵リアクター内かまたは別の第1の収集容器内に収集された後かのいずれかで10~50時間、乱されることなく静置される。疎水性SLPの層は、その大部分がラクトン型SLP(LSL)および微量の疎水性酸性SLP(ASL)(例えば、ジアセチル化および/またはモノアセチル化ASL)を含み、静置培養物の底部に沈殿する。
【0020】
沈殿した疎水性SLP層は第2の収集容器に収集され、溶解した親水性SLP(例えば、非アセチル化ASL)ならびに細胞、ブロス成分、および溶解したグルコースを含む上清が残る。
【0021】
特定の態様では、疎水性SLP層は、不純物、例えば、酵母細胞、グルコース、脂肪酸、および/または発酵由来の他の残留物をさらに含む。したがって、好ましい態様では、本方法は、「水洗」方法を用いて疎水性SLPを精製する工程をさらに含む。
【0022】
この工程では、水洗方法は、通常、以下を含む:
a) 約50~80℃の温度で約30~300分間連続的に疎水性SLPを脱イオン水と混合する工程;
b) 疎水性-水混合物を約8~24時間静止させる工程であって、混合物が、疎水性SLPおよび水を含む底層、水および不純物を含む中層、ならびにさらなる不純物を含む泡沫状上層を形成する、工程;ならびに
c) 底層を第3の収集容器に収集し、底層における水の割合を調整して、水洗されたSLP組成物を生成する工程。
【0023】
好ましい態様では、水洗されたSLP組成物の最終的な水の割合は約20~30体積%である。したがって、いくつかの態様では、水洗されたSLP組成物または水に精製水を添加し、これを60~80℃で約1~150分間連続的に混合することができる。他の態様では、例えば、噴霧乾燥またはサイクロン蒸発によって、水を除去することができる。特定の態様では、10~15%以下の水の割合はSLPの結晶化をもたらし、したがって望ましくない。
【0024】
有利なことに、DI水と疎水性SLPの混合は、有害な溶媒を必要とせずに、不純物を隔離し蓄積する。特定の態様では、SLP対DI水の比は、体積基準で約10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、または3:1である。
【0025】
いくつかの態様では、水洗されたSLP組成物は、不純物を含んでいないかまたは概ね含んでいないが、その疎水性性質が理由で、ある割合の脂肪酸および/または油不純物を依然として含む。例えば、特定の態様では、水洗されたSLP組成物は、約10~30体積%の脂肪酸、例えばオレイン酸を含む可能性がある。
【0026】
したがって、特定の態様では、本方法は、より純度の高い疎水性SLPを生成するために、水洗されたSLP組成物から脂肪酸および/または油不純物を除去する工程をさらに含むことができる。
【0027】
好ましい態様では、脂肪酸および/または油不純物の除去は、油、好ましくは植物油を、水洗した疎水性SLP組成物に加える工程を含む。油と水洗したSLP生成物の混合物を少なくとも60分間昇温状態で混合し、その後、これを乱さずに8~24時間静置する。乱されていない混合物は、油層と疎水性SLP-水層を形成する。油層を除去し、少なくとも50%、80%、98%、またはそれより多くの脂肪酸および油不純物が除去された疎水性SLP層-水層を残すことができる。
【0028】
最終生成物は主にLSLを含み、いくらかのジアセチル化および/またはモノアセチル化ASLを含む。特定の態様では、最終生成物のHLBは約1~8の範囲である。特定の態様では、最終生成物のpHは約2.5~3.0である。
【0029】
疎水性SLPの精製に加えて、いくつかの態様では、本方法は、酵母培養物のSLP混合物中に存在する親水性(水溶性)SLPを精製する工程を含む。好ましくは、これは、SLP混合物中の疎水性SLPが発酵リアクター内または第1の収集容器内で沈殿した後に達成される。沈殿した疎水性SLPが培養物から分離された後に残る上清は、その中に溶解している親水性SLP、ならびに残留する細胞、ブロス成分、および不純物、例えばグルコースを含む。
【0030】
特定の態様では、親水性SLPの精製は、細胞、ブロス成分、およびグルコースを上清から除去する工程を含む。この工程では、上清は収集され、遠心分離されて、その中に溶解している親水性SLPおよび不純物を含む上清の液体成分から細胞性物質が分離される。細胞性物質は廃棄することができ、かつ/またはこれは、例えば、肥料または動物飼料として再使用もしくは再利用することができる。
【0031】
次いで、遠心分離から得られたこの第2の上清を第4の収集容器に移すことができ、または発酵リアクターに戻すことができる。好ましくは、第2の上清は通気機能を有する容器に移され、この容器は元の発酵リアクターを含むことができる。
【0032】
特定の態様では、水溶性であるグルコースは、第2の上清中の唯一の残存不純物の1つである。したがって、好ましい態様では、本方法は、第2の上清からグルコース不純物を除去する工程を含む。いくつかの態様では、これは「酵母消化」方法を用いて達成される。いくつかの態様では、これは「酵素消化」方法を用いて達成される。特定の態様では、両方の方法を同時にまたは連続して使用することができる。
【0033】
一態様では、「酵母消化」方法は、生きている酵母細胞、例えば、S.ボンビコラまたはウィッカーハモマイセス・アノマルス(Wickerhamomyces anomalus)を第2の上清に導入して上清培養物を生成する工程、および上清培養物に通気を与える工程を含む。特定の通気時間、例えば12~48時間後に、酵母が、その唯一の炭素源として残存グルコースを消費する。特定の態様では、酵母はまた、上清培養物中に少量のさらなるSLPを産生する。
【0034】
親水性SLPを抽出するために、上清培養物を遠心分離して残留細胞を除去し、次いで、蒸発に供して望ましい割合の水を含む親水性SLP組成物を得ることができる。親水性SLP組成物は、初めの上清と比較すると、好ましくは、5%未満、好ましくは0.5%未満のグルコース含量など、グルコースをほとんどまたはまったく有さないと考えられる。
【0035】
一態様では、「酵素消化」方法は、グルコースの消化を容易にするかまたは触媒するために、1種または複数種の酵素を初めの上清に導入することを含む。特定の態様では、酵素はグルコースオキシダーゼ(GOx)である。
【0036】
特定の態様では、本発明の方法は、最小限からゼロの廃棄物しか生成されず、それによって、汚水および廃水システムに流される、ならびに/または廃棄物埋立地に処分される発酵廃棄物の量を低減させるような方法で行うことができる。さらに、これは、単一発酵サイクルから精製されたSLPの全体的な生成を増大させながら、達成することができる。
【0037】
有利なことに、本方法は、極めて高い純度、例えば、95%、98%、またはそれ以上まで親水性SLP分子と疎水性SLP分子の両方を精製することを容易にすることができる。さらに、本発明の方法および設備は、大規模な微生物の生成およびその代謝物精製に関する資本コストおよび労働コストならびに環境への影響および健康被害を低減する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
発明の詳細な説明
本発明は、ソホロ脂質(SLP)を生成および精製するための材料および方法を提供する。より具体的には、本発明は、溶媒を使用せずに、例えば、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも95重量%の純度まで、親水性SLPおよび疎水性SLPを分離および精製するための材料および方法を提供する。有利なことに、本発明は、精製されたSLPの工業的スケールでの生成に適し、安全で環境に優しい材料およびプロセスを使用する。
【0039】
選択された定義
本明細書において使用する場合、用語「ソホロ脂質」、「ソホロ脂質分子」、「SLP」、または「SLP分子」は、SLP分子のすべての形態およびそれらの異性体を含み、例えば、酸性(直鎖)SLP(ASL)およびラクトン型SLP(LSL)が含まれる。本開示において記載されているものおよび/または記載されていないものを含めて、モノアセチル化SLP、ジアセチル化SLP、エステル化SLP、様々な疎水性鎖長を有するSLP、脂肪酸-アミノ酸複合体が結合したSLP、および他のものがさらに含まれる。
【0040】
好ましい態様では、本発明によるSLP分子は、一般式(1)および/または一般式(2)によって表され、種々の脂肪酸鎖長(R
3)を有し、ある場合には、R
1および/またはR
2にアセチル化またはプロトン化を有する、30以上のタイプの構造類似体のコレクションとして得られる。
【0041】
一般式(1)または(2)では、R0は水素原子またはメチル基のいずれかであり得る。R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子またはアセチル基である。R3は、飽和脂肪族炭化水素鎖であるか、または少なくとも1つの二重結合を有し、1つもしくは複数の置換基を有し得る不飽和脂肪族炭化水素鎖である。
【0042】
置換基の例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル、低級(C1~6)アルキル基、ハロ低級(C1~6)アルキル基、ヒドロキシ低級(C1~6)アルキル基、ハロ低級(C1~6)アルコキシ基などが挙げられる。R3は典型的には、11~20個の炭素原子、好ましくは13~17個の炭素原子、より好ましくは14~16個の炭素原子を有する。ハロゲン原子またはアルキル基もしくはアルコキシ基に結合したハロゲン原子の例としては、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が挙げられる。
【0043】
本明細書において使用する場合、「微生物ベースの組成物」に対する言及は、微生物または他の細胞培養物の増殖の結果として産生された成分を含む組成物を意味する。したがって、微生物ベースの組成物は、微生物それ自体および/または微生物の増殖の副産物を含むことができる。微生物は、栄養型状態、胞子形態、菌糸体形、繁殖体の任意の他の形態、またはこれらの混合物であり得る。微生物は、プランクトン様形態もしくはバイオフィルム形態または両方の混合物であり得る。増殖の副産物は、例えば、代謝物、細胞膜成分、発現タンパク質、および/または他の細胞成分であり得る。微生物は、インタクトでもよいし、溶解されていてもよい。微生物は、組成物中に存在していてもよいし、組成物から除去されていてもよい。微生物は、微生物ベースの組成物中に、それが増殖したブロスとともに存在することができる。細胞は、例えば、組成物1ミリリットルあたり少なくとも1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、またはそれより高いCFUの濃度で存在することができる。
【0044】
本発明は、望ましい結果を達成するために実際に適用される生成物である「微生物ベースの生成物」をさらに提供する。微生物ベースの生成物は、単に、微生物培養プロセスから回収された微生物ベースの組成物であり得る。あるいは、微生物ベースの生成物は、添加されたさらなる成分を含むことができる。これらのさらなる成分としては、例えば、安定化剤、緩衝液、適切な担体、例えば、水、塩類溶液、もしくは任意の他の適切な担体、さらなる微生物の増殖を支持するために添加された栄養素、非栄養素増殖賦活薬、ならびに/またはそれが加えられた環境中の微生物および/もしくは組成物の追跡を容易にする剤を挙げることができる。微生物ベースの生成物は、微生物ベースの組成物の混合物を含むこともできる。微生物ベースの生成物は、限定されないが、濾過、遠心分離、溶解、乾燥、精製などのようなある種の方法で処理された微生物ベースの組成物の1種または複数種の成分を含むこともできる。
【0045】
本明細書において使用する場合、「バイオフィルム」は、細胞が細胞外多糖マトリックスを使用して互いにかつ/または表面に接着する、菌などの微生物の複合凝集体である。バイオフィルム中の細胞は、液体培地中で浮遊するかまたは浮かぶことができる単一細胞である同じ生物のプランクトン様細胞とは生理的に異なる。
【0046】
本明細書において使用する場合、「回収」は、増殖容器から微生物ベースの組成物のいくつかまたはすべてを取り出すことを指す。
【0047】
本明細書において使用する場合、「単離された」または「精製された」核酸分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、または有機化合物、例えば小分子(例えば、以下に記載のもの)は、それが自然界において関連している他の化合物、例えば、細胞性物質を実質的に含んでいない。精製されたまたは単離されたポリヌクレオチド(リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA))は、その天然の状態においてそれに隣接する遺伝子または配列を含んでいない。精製されたまたは単離されたポリペプチドは、その天然の状態においてそれに隣接するアミノ酸または配列を含んでいない。単離された微生物株は、当該株が自然界に存在する環境から取り出されることを意味する。したがって、単離された株は、例えば、生物学的に純粋な培養物として、または担体に結合した胞子(もしくは当該株の他の形態)として存在し得る。
【0048】
特定の態様では、精製された化合物は、少なくとも60重量%の関心対象の化合物である。好ましくは、調製物は、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも98重量%の関心対象の化合物である。例えば、精製された化合物は、所望の化合物に関して、好ましくは少なくとも重量基準で80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、98%、99%、または100%(w/w)であるものである。純度は、任意の適切な標準的な方法によって、例えば、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によって、測定される。
【0049】
「代謝物」は、代謝によって産生された任意の物質、または特定の代謝プロセスに加わるのに必要な物質を指す。代謝物は、出発材料、代謝の中間体、または代謝の最終生成物である有機化合物であり得る。代謝物の例としては、限定されないが、酵素、酸、溶媒、アルコール、タンパク質、ビタミン、ミネラル、微量元素、アミノ酸、バイオポリマー、およびバイオサーファクタントが挙げられる。
【0050】
本明細書において提供される範囲は、範囲内の値のすべての簡略表記であると理解される。例えば、1~20の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20、ならびに前述の整数の間のすべての介在する10進値、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、および1.9からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、または部分範囲を含むと理解される。部分範囲に関して、範囲のいずれかの端点から延びる「入れ子状(nested)部分範囲」が特に企図される。例えば、1~50の例示的な範囲の入れ子状部分範囲は、一つの方向に1~10、1~20、1~30、および1~40を含むか、またはもう一の方向に50~40、50~30、50~20、および50~10を含むことができる。
【0051】
本明細書において使用する場合、「低減」は負の変化を意味し、「増強」は正の変化を意味し、変化は、プラスまたはマイナス0.001%、0.01%、0.1%、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%である。
【0052】
本明細書において使用する場合、「界面活性剤(surfactant)」は、2つの液体の間(液体とガスの間、または液体と固体の間)の表面張力(または界面張力)を低下させる化合物を意味する。界面活性剤は、例えば、洗剤(detergent)、湿潤剤、乳化剤、発泡剤、および/または分散剤として作用する。「バイオサーファクタント」は、生細胞によって産生される表面活性物質である。
【0053】
「含む(including)」または「含有する(containing)」と同義である移行用語「含む(comprising)」は、包括的であるかまたはオープンエンドであり、列挙されていないさらなる要素または方法工程を排除しない。対照的に、移行句「からなる」は、特許請求の範囲に明記されていない任意の要素、工程、または成分を排除する。移行句「から本質的になる」は、特許請求の範囲を、明記された材料または工程、ならびに特許請求される発明の「基本的および新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないもの」に限定する。用語「含む(comprising)」の使用は、列挙される成分「からなる」または「から本質的になる」他の態様を企図する。
【0054】
特に記載のない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書において使用する場合、用語「または」は、包括的であると理解される。特に記載のない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書において使用する場合、用語「a」、「an」、および「the」は、単数または複数と理解される。
【0055】
特に記載のない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書において使用する場合、用語「約」は、当技術分野における通常の許容誤差の範囲内、例えば、平均の標準偏差の2倍の範囲内と理解される。約は、記載される値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内と理解され得る。文脈から特に明らかでない限り、本明細書において提供されるすべての数値は、約という用語によって修飾される。
【0056】
本明細書における可変物の任意の定義における化学基のリストの記述は、列挙される基の任意の単一基または組み合わせとしてその可変物の定義を含む。本明細書において可変物または局面についての態様の記述は、任意の単一の態様としての、または任意の他の態様またはそれらの一部と組み合わせた、その態様を含む。
【0057】
本明細書において引用されるすべての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0058】
方法
本発明は、ソホロ脂質(SLP)を生成および精製するための材料および方法を提供する。より具体的には、本発明は、溶媒を使用せずに、例えば、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも95重量%の純度まで、疎水性SLPおよび親水性SLPを分離および精製するための材料および方法を提供する。有利なことに、本発明は、精製されたSLPの工業的スケールでの生成に適し、安全で環境に優しい材料およびプロセスを使用する。
【0059】
好ましい態様では、本発明の方法は、酵母培養物を生成するために液中発酵リアクター内でソホロ脂質産生酵母を培養する工程であって、該酵母培養物が、液体発酵ブロス、酵母細胞、および疎水性SLPと親水性SLPの混合物を含む、工程;疎水性SLPと親水性SLPを互いから分離する工程;ならびに疎水性SLPと親水性SLPを精製する工程を含む。
【0060】
ソホロ脂質は、例えば、スターメレラクレードの様々な酵母によって産生される糖脂質バイオサーファクタントである。SLPは、長鎖ヒドロキシ脂肪酸に連結した二糖ソホロースからなる。これは、17-L-ヒドロキシオクタデカン酸または17-L-ヒドロキシ-Δ9-オクタデセン酸にβ-グリコシド結合した、部分的にアセチル化された2-O-β-D-グルコピラノシル-D-グルコピラノースユニットを含むことができる。ヒドロキシ脂肪酸は、一般に16または18個の炭素原子であり、1つまたは複数の不飽和結合を含むことができる。さらに、ソホロース残基は、6および/または6’位でアセチル化され得る。脂肪酸カルボキシル基は、遊離形態(酸性もしくは直鎖形態)でもよいし、4”位において内部でエステル化されていてもよい(ラクトン形態)。S.ボンビコラは、S.ボンビコラ ラクトンエステラーゼと呼ばれる特異的な酵素を産生し、これは直鎖SLPのエステル化を触媒してラクトン型SLPを産生する。
【0061】
大抵の場合、SLPの発酵は、例えば、LSL、モノアセチル化ASL、およびジアセチル化ASLを含めた疎水性(水不溶性)SLPと、例えば非アセチル化ASLを含めた親水性(水溶性)SLPとの混合物をもたらす。
【0062】
SLPの構造および組成が理由で、これらのバイオサーファクタントは、優れた表面および界面張力低減特性、ならびに他の有益な生化学的特性を有し、これらは、大規模な工業用途および農業用途、化粧品、家庭用品、健康、医学および薬学分野、ならびに油およびガスの回収などの用途において、化学系界面活性剤の代替品として有用であり得る。
【0063】
好ましい態様では、本発明は、液中発酵を使用してソホロ脂質産生酵母を培養することによって、ソホロ脂質組成物を産生する方法を提供する。本方法は、サイズをスケールアップまたはスケールダウンすることができる。最も注目すべきことは、本方法は、工業的スケール、すなわち、商業的用途、例えば、農業および石油増進回収法のための組成物の生成に対する需要を満たす量のバイオサーファクタントの供給で使用するのに適するスケールにスケール変更することができる。
【0064】
本発明に従って利用される微生物は、天然の微生物でもよいし、遺伝子改変微生物でもよい。例えば、特定の特徴を示すように、特定の遺伝子で微生物を形質転換することができる。微生物はまた、望ましい株の突然変異体でもよい。本明細書において使用する場合、「突然変異体」は、参照微生物の株、遺伝子変異体、またはサブタイプを意味し、突然変異体は、参照微生物と比較して、1つまたは複数の遺伝的変異(例えば、点変異、ミスセンス変異、ナンセンス変異、欠失、重複、フレームシフト変異、または反復増殖)を有する。突然変異体を作製するための手順は、微生物学分野で周知である。例えば、UV突然変異誘発およびニトロソグアニジンはこの目的で広く使用されている。
【0065】
好ましい態様では、微生物は任意の酵母または真菌である。本発明による使用に適した酵母および真菌種の例としては、限定されないが、アカウロスポラ属(Acaulospora)、アスペルギルス属(Aspergillus)、オーレオバシジウム属(Aureobasidium)(例えば、A.プルランス(A. pullulans))、ブラケスレア属(Blakeslea)、カンジダ属(Candida)(例えば、C.アルビカンス(C. albicans)、C.アピコラ(C. apicola))、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、デバリオミセス属(例えば、D.ハンセニイ(D. hansenii))、エントモルフトラ属(Entomophthora)、フサリウム属(Fusarium)、ハンセニアスポラ属(Hanseniaspora)(例えば、H.ウバルム(H. uvarum))、ハンゼヌラ属(Hansenula)、イッサチェンキア属(Issatchenkia)、クリベロミセス属(Kluyveromyces)、モルチエレラ属(Mortierella)、ムコール属(Mucor)(例えば、M.ピリフォルミス(M. piriformis))、メイエロザイマ属(Meyerozyma)(例えば、M.ギリエルモンディ(M. guilliermondii))、アオカビ属(Penicillium)、フハイカビ属(Phythium)、ヒゲカビ属(Phycomyces)、ピキア属(Pichia)(例えば、P.アノマラ(P. anomala)、P.ギリエルモンディ(P. guilliermondii)、P.オクシデンタリス(P. occidentalis)、P.クドリアブゼビイ(P. kudriavzevii))、シュードザイマ属(Pseudozyma)(例えば、P.アフィディス(P. aphidis))、クモノスカビ属(Rhizopus)、サッカロミセス属(S.セレビシエ(S. cerevisiae)、S.ブラウディ・セクエラ(S. boulardii sequela)、S.トルラ(S. torula))、スターメレラ属(例えば、S.ボンビコラ)、トルロプシス属(Torulopsis)、スラウストキトリウム属(Thraustochytrium)、トリコデルマ属(Trichoderma)(例えば、T.リーゼイ(T. reesei)、T.ハルジアナム(T. harzianum)、T.ビレンス(T. virens))、ウスチラゴ属(Ustilago)(例えば、トウモロコシ黒穂病菌(U. maydis))、ウィッカーハモマイセス属(Wickerhamomyces)(例えば、W.アノマルス)、ウィリオプシス属(Williopsis)、およびザイゴサッカロミセス属(Zygosaccharomyces)(例えば、Z.バイリー(Z. bailii))が挙げられる。
【0066】
好ましい態様では、微生物は、スターメレラ属の酵母種および/またはカンジダ属の酵母種、例えば、スターメレラ(カンジダ)・ボンビコラ、カンジダ・アピコラ(Candida apicola)、カンジダ・バティスタエ(Candida batistae)、カンジダ フロリコラ(Candida floricola)、カンジダ・リドセンシス(Candida riodocensis)、カンジダ・ステラテ(Candida stellate)および/またはカンジダ・クオイ(Candida kuoi)である。特定の態様では、微生物はスターメレラ・ボンビコラ、例えば、ATCC 22214株である。
【0067】
一態様では、本方法は、発酵リアクターを液体栄養培地で満たす工程;酵母培養物を生成するために、リアクターにソホロ脂質産生酵母を接種する工程;およびSLPの産生に好都合な条件下で酵母培養物を培養する工程を含む。
【0068】
本発明に従って使用される微生物増殖容器は、工業用途のための任意の発酵槽または培養リアクターであってよい。一態様では、容器は、培養プロセスの重要な因子、例えば、pH、酸素、圧力、温度、撹拌器の軸動力、湿度、粘性、および/または微生物の密度および/または代謝物の濃度を測定するために、機能的制御装置/センサーを有することができ、または機能的制御装置/センサーに接続することができる。
【0069】
さらなる態様では、容器は、容器内部の微生物の増殖をモニターすること(例えば、細胞数および増殖相の測定)もでき得る。あるいは、計数、純度測定、SLP濃度、および/または可視の油レベルのモニタリングのために、容器から試料を採取することができる。例えば、一態様では、24時間ごとに試料採取を行うことができる。
【0070】
本方法による微生物接種材料は、好ましくは、望ましい微生物の細胞および/または繁殖体を含み、これは、任意の公知の発酵方法を用いて調製することができる。所望ならば、接種材料を水および/または液体増殖培地と予め混合することができる。
【0071】
特定の態様では、培養方法は、液体増殖培地における液中発酵を利用する。一態様では、液体増殖培地は炭素源を含む。炭素源は、炭水化物、例えば、グルコース、デキストロース、ショ糖、ラクトース、フルクトース、トレハロース、マンノース、マンニトール、および/またはマルトース;有機酸、例えば、酢酸、フマル酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、マロン酸、および/またはピルビン酸;アルコール、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソブタノール、および/またはグリセロール;脂肪および油、例えば、キャノーラ油、ダイズ油、米糠油、オリーブ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、ゴマ油、および/または亜麻仁油;粉末糖蜜などであり得る。これらの炭素源は、独立に、または2つ以上の組み合わせで使用することができる。好ましい態様では、親水性炭素源、例えばグルコースおよび疎水性炭素源、例えば油または脂肪酸が使用される。
【0072】
いくつかの態様では、培養方法は、当技術分野において標準的な方法と比較して少ない量の炭素源を利用する。例えば、いくつかの態様では、液体増殖培地は、糖(例えば、グルコース)および油(例えば、キャノーラ油)をそれぞれ25~70g/Lおよび25~70ml/Lの量で含むことができる。有利なことに、いくつかの態様では、液体増殖培地中の糖および油の量を減らすことによって、培養物中に残るグルコースおよび/または油不純物の量が減り、したがって、より高い純度にSLP分子を精製する能力が増強される。
【0073】
一態様では、液体増殖培地は窒素源を含む。窒素源は、例えば、酵母抽出物、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、アンモニア、尿素、および/または塩化アンモニウムであり得る。これらの窒素源は、独立に、または2つ以上の組み合わせで使用することができる。
【0074】
一態様では、1種または複数種の無機塩も液体増殖培地中に含むことができる。無機塩としては、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸一カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸鉄、塩化鉄、硫酸マンガン、塩化マンガン、硫酸亜鉛、塩化鉛、硫酸銅、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、および/または炭酸ナトリウムを挙げることができる。これらの無機塩は、独立に、または2つ以上の組み合わせで使用することができる。
【0075】
一態様では、微生物のための増殖因子および微量栄養素が培地中に含まれる。これは、必要とするビタミンのすべてを産生することができるとは限らない微生物を増殖させる場合に、特に好ましい。鉄、亜鉛、銅、マンガン、モリブデン、および/またはコバルトなどの微量元素を含めて、無機栄養素も培地中に含むことができる。さらに、ビタミン、必須アミノ酸、タンパク質、および微量元素の供給源、例えば、トウモロコシ粉、ペプトン、酵母抽出物、ジャガイモ抽出物、牛肉抽出物、ダイズ抽出物、バナナの皮の抽出物など、または精製された形態を含むことができる。例えば、タンパク質の生合成に有用なものなどのアミノ酸も含むことができる。
【0076】
培養方法は、さらに、増殖中の培養物に酸素添加することができる。一態様は、空気のゆっくりした動きを利用して、低酸素含有空気を除去し、酸素添加された空気を導入する。酸素添加された空気は、液体の機械的撹拌のための羽根車、および液体への酸素の溶解のためにガスの泡を液体に供給するエアスパージャーを含むメカニズムを通じて毎日補充される周囲空気でもよい。特定の態様では、溶存酸素(DO)レベルは、約25%~約75%、約30%~約70%、約35%~約65%、約40%~約60%、または約50%の空気飽和度で維持される。
【0077】
いくつかの態様では、培養のための方法は、培養プロセスの前および/または間にさらなる酸および/または抗微生物物質を液体培地中に添加する工程をさらに含むことができる。抗微生物剤または抗生物質(例えば、ストレプトマイシン、オキシテトラサイクリン)は、培養物をコンタミネーションから保護するために使用される。しかし、いくつかの態様では、酵母培養物によって産生される代謝物が、培養物のコンタミネーションを防止するのに十分な抗微生物効果をもたらす。
【0078】
一態様では、接種より前に、液体培養培地の成分を任意で無菌化することができる。一態様では、液体増殖培地の無菌化は、約85~100℃の温度の水に液体培養培地の成分を入れることによって達成することができる。一態様では、無菌化は、1~3%過酸化水素中に成分を1:3(w/v)の比で溶解することによって達成することができる。
【0079】
一態様では、培養に使用される設備は無菌である。リアクター/容器などの培養設備は、無菌化ユニット、例えばオートクレーブと分離され得るが、これに接続され得る。培養設備は、接種を開始する前にインサイチューで無菌化する無菌化ユニットを有することができる。ガスケット、開口部、管、および他の設備部品を例えばイソプロピルアルコールで噴霧することができる。空気は、当技術分野において公知の方法によって無菌化することができる。例えば、周囲空気は、容器に導入される前に少なくとも1つのフィルターを通過することができる。他の態様では、培地を低温殺菌することができ、または任意で熱が全く加えられず、この場合、pHおよび/または低水分活性の使用が、望まれない微生物の増殖を制御するために活用され得る。
【0080】
培養物のpHは、関心対象の微生物に適するべきである。いくつかの態様では、pHは、約2.0~約7.0、約3.0~約5.5、約3.25~約4.0、または約3.5である。好ましい値の近くにpHを安定化させるために、緩衝液およびpH調整剤、例えば、炭酸塩およびリン酸塩を使用することができる。特定の態様では、好都合なレベルに培養物のpHを調整するために、塩基溶液、例えば15%~30%、または20%~25%のNaOH溶液が使用される。塩基溶液は、増殖培地に含めることができ、かつ/または必要に応じて、pHを調整するために、培養中に発酵リアクターに供給することができる。
【0081】
一態様では、培養方法は、約5℃~約100℃、約15℃~約60℃、約20℃~約45℃、約22℃~約35℃、または約24℃~約28℃で行われる。一態様では、培養は、一定温度で連続的に行うことができる。別の態様では、培養は、温度変化に供することができる。
【0082】
本方法に従って、望ましい効果、例えば、望ましい量の細胞バイオマスまたは望ましい量の1種もしくは複数種の微生物増殖副産物の産生を達成するのに十分である期間にわたって、発酵システムで微生物をインキュベートすることができる。微生物によって産生される微生物増殖副産物は、微生物中に保持され得、かつ/または増殖培地中に分泌され得る。バイオマス量は、例えば、5g/l~180g/lもしくはそれ以上、10g/l~150g/l、または20g/l~100g/lであり得る。
【0083】
特定の態様では、酵母培養物の発酵は、約100~150時間、または約115~約125時間、または約120時間にわたって行われる。いくつかの態様では、培地中のグルコースおよび/または油の濃度が枯渇すれば(例えば、0%~0.5%のレベル)、発酵サイクルは終了する。いくつかの態様では、発酵サイクルの終了は、微生物が微量のSLPを消費し始めた時点であると決定される。
【0084】
本方法に従って、SLP混合物の親水性SLPと疎水性SLPは、液中発酵サイクルが完了した後に分離される。この工程では、全酵母培養物は、発酵リアクター内かまたは別の第1の収集容器内に収集された後かのいずれかで10~50時間、乱されずに静置される。好ましい態様では、「乱されていない」培養物は、物理的または化学的に変化していないかまたは干渉されていないものである。例えば、乱されていない培養物は、移動、混合、または成分の添加もしくは除去に供されるのではなく、静止しているものである。
【0085】
その大部分が微量の疎水性ジアセチル化および/またはモノアセチル化ASLをともなうLSL(例えば、およそ10:1~4:1のLSL対ASL)を含む疎水性SLPの層は、静置培養物の底部に沈殿する。沈殿した疎水性SLP層は第2の収集容器に収集され、溶解した親水性SLP(例えば、非アセチル化ASL)ならびに細胞、ブロス成分、および溶解したグルコースを含む上清が残る。特定の態様では、疎水性SLP層は、酵母培養物によって産生される全SLPの約75%~85%、または約80%を含む。
【0086】
疎水性SLPの精製
特定の態様では、疎水性SLP層は、不純物、例えば、酵母細胞、グルコース、脂肪酸、および/または発酵由来の他の残留物をさらに含む。したがって、好ましい態様では、本方法は、「水洗」方法を用いて疎水性SLPを精製する工程をさらに含む。好ましい態様では、水洗方法は、一般に以下の工程を含む:
a) 約50~80℃の温度で約30~300分間連続的に疎水性SLPを脱イオン(DI)水と混合する工程;
b) 疎水性-水混合物を約8~24時間静止させる工程であって、混合物が、疎水性SLPおよび水を含む底層、水および不純物を含む中層、ならびにさらなる不純物を含む泡沫状上層を形成する、工程;ならびに
c) 底層を第3の収集容器に収集し、底層における水の割合を調整して、水洗されたSLP組成物を生成する工程。
【0087】
特定の態様では、a)の疎水性SLP-水混合物は、約50℃~80℃、約55℃~75℃、または約60℃~70℃の温度で、約30~300分間または約60~180分間、第2の収集容器内で連続的に混合/撹拌される。
【0088】
有利なことに、DI水と疎水性SLPの混合は、有害な溶媒を必要とせずに、不純物を隔離し蓄積する。特定の態様では、SLP対DI水の比は、体積基準で約10:1~1:10(SLPの体積対水の体積)、または約5:1、または4:1~3:1である。
【0089】
特定の態様では、a)の疎水性SLP-水混合物は、温度が約25℃~45℃、または約30℃~35℃に低下するまで、b)において一定時間の間静止される。
【0090】
いくつかの態様では、c)の底層は、不純物を含んでいないかまたは概ね含んでいないが、ある割合の水を依然として含む。特定の態様では、水の割合は約15~75体積%、または約25~50体積%である。
【0091】
好ましい態様では、水洗されたSLP組成物の最終的な水の割合は約20~30体積%である。したがって、いくつかの態様では、水洗されたSLP組成物または水に精製水を添加し、これを60~80℃で約100~150分間連続的に混合することができる。他の態様では、例えば、噴霧乾燥またはサイクロン蒸発によって、水を除去することができる。特定の態様では、10~15%以下の水の割合はSLPの結晶化をもたらす可能性があるので、典型的には望ましくない。
【0092】
いくつかの態様では、水洗されたSLP組成物は、不純物を含んでいないかまたは概ね含んでいないが、その疎水性性質が理由で、ある割合の脂肪酸および/または油不純物を依然として含む。例えば、特定の態様では、水洗されたSLP組成物は、約10~30体積%の脂肪酸および/または油不純物、例えばオレイン酸を含む可能性がある。
【0093】
本明細書において使用する場合、「脂肪酸および/または油不純物」は、SLPの発酵の結果としてSLP組成物中に存在する脂肪酸および/またはそれらの供給源を含む。脂肪酸は、飽和または不飽和であり得る長い脂肪族鎖を有するカルボン酸である。脂肪酸は、遊離型であるかまたは油の成分としてであるかを問わず、微生物発酵において炭素または他の栄養素の供給源として使用されることが多い。
【0094】
特定の態様では、SLP組成物中の脂肪酸および/または油不純物は、1種または複数種の飽和脂肪酸、不胞和脂肪酸、短鎖脂肪酸(short-fatty acids)、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸、超長鎖脂肪酸、8~22個もしくはそれ以上の炭素を有する脂肪酸、および/または1~6個の二重結合を有する脂肪酸を含むことができる。
【0095】
特定の態様では、脂肪酸および/または油不純物は、以下の脂肪酸のいずれかを含むことができる:カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸、およびアラキドン酸。
【0096】
特定の態様では、脂肪酸および/または油不純物は、以下の油および/または脂肪酸の供給源のいずれかを含むことができる:ピーナッツ油、オリーブ油、パーム油、ダイズ油、ナタネ油、ココアバター、米糠油、ヒマワリ油、ココナッツ油、トウモロコシ油、綿実油、パーム油、ベニバナ油、および/またはゴマ油。
【0097】
したがって、特定の態様では、本方法は、より純度の高い疎水性SLPを生成するために、水洗されたSLP組成物から脂肪酸および/または油不純物を除去する工程をさらに含むことができる。
【0098】
特定の態様では、水洗した疎水性SLP組成物に油が添加される。添加油は、例えば、植物(野菜)油、例えば、キャノーラ油、ピーナッツ油、オリーブ油、パーム油、ダイズ油、ナタネ油、ココアバター、米糠油、ヒマワリ油、ココナッツ油、トウモロコシ油、綿実油、パーム油、ベニバナ油、もしくはゴマ油など;または鉱物油、例えば、食品グレードの鉱物油などであり得る。添加油は、SLPに対して少なくとも1:2(添加油:SLP)、2:1、5:1、10:1またはそれ以上の濃度の添加油の比で、水洗されたSLP組成物に添加することができる。好ましい態様では、キャノーラ油は、水洗されたSLP組成物に対して10:1(キャノーラ油:SLP)の濃度で添加される。
【0099】
特定の態様では、水洗したSLPと油の混合物は、約50℃~80℃、約55℃~75℃、または約60℃~70℃の温度で、約30~300分間または約60~180分間混合される。
【0100】
混合が完了した後に、混合物が疎水性SLP/水層および油層の2つの層を形成するまで、約6時間~約48時間、約8~約42時間、約12時間~約36時間、または約16時間~約24時間、混合物を乱すことなく静置する。一態様では、油層は、添加油ならびに脂肪酸および/または油不純物を含む。
【0101】
特定の態様では、混合物に電流を印加することができる。電流は、水洗されたSLP組成物と添加油を混合する間に印加することができ、かつ/または油層およびSLP/水層の層形成の間に印加することができる。好ましい態様では、電流は、水中油形乳剤を不安定化して、油の合体を容易にすることができる。電流は、交流(AC)、直流(DC)、またはそれぞれの組み合わせであり得る。電流は、層形成および混合プロセス全体の間、存在し得る。あるいは、電流は、層形成および/または混合プロセスの全体を通して単一時点または複数の時点でパルスされ得る。好ましい態様では、パルスされる交流および直流は、油層およびSLP/水層の層形成が達成されるまで組成物に印加される。
【0102】
特定の態様では、疎水性SLP/水層および油層の層形成後、今や脂肪酸および/または油不純物を含む油層を、組成物の上部から除去することができる。精製された疎水性SLPおよび水層は、層が存在する容器の底部から回収することができる。特定の態様では、油層は、収集し、他のSLP組成物から脂肪酸および油不純物を除去するために、および/または他の微生物発酵プロセスの栄養素源として、再使用することができる。
【0103】
いくつかの態様では、本発明による脂肪酸および/または油不純物の除去は、水洗に供されていない疎水性SLP組成物に対して行うことができる。例えば、SLP発酵サイクルが実施され、疎水性SLP層が培養物の底部に沈殿するまで酵母培養物を乱すことなく静置した後、沈殿したSLP層を収集し、任意で遠心分離して細胞物質を除去し、本方法に従って添加油(例えば、キャノーラ油)で直接処理するか、または添加油処理にかけるより前に他の公知の精製方法、例えば、酢酸エチル洗浄に供するかのいずれかができる。
【0104】
特定の態様では、本発明は、本方法に従って生成される組成物であって、精製された疎水性SLPおよび水を含む組成物を提供する。好ましい態様では、精製されたSLP組成物中の脂肪酸の割合は、10%、5%、2.5%、1%、0.5%未満またはさらにそれ以下であり、少なくとも50%、80%、95%、98%またはそれ以上の量の脂肪酸が親油性SLP組成物から除去される。特定の態様では、本方法に従って生成される組成物は、脂肪酸および油不純物を除去するために添加油で精製されていないSLP組成物と比較して、CMCが低い。
【0105】
最終生成物は主にLSLを含み、いくらかのジアセチル化および/またはモノアセチル化ASLを含む。特定の態様では、最終生成物のHLBは約1~8の範囲である。特定の態様では、最終生成物のpHは約2.5~3.0である。
【0106】
有利なことに、本方法は、極端に高い純度、例えば、95%、98%またはそれ以上までSLPを精製することを可能にし得る。
【0107】
いくつかの態様では、組成物は、使用するまで容器内で保存することができる。保存時間は好ましくは短い。したがって、保存時間は、60日間、45日間、30日間、20日間、15日間、10日間、7日間、5日間、3日間、2日間、1日、または12時間未満であり得る。
【0108】
親水性SLPの精製
疎水性SLPの精製に加えて、好ましい態様では、本方法は、ソホロ脂質産生酵母の発酵の間に産生された、酵母培養物のSLP混合物中に存在する親水性(水溶性)SLPを精製する工程を含む。好ましくは、これは、SLP混合物中の疎水性SLPが発酵リアクターまたは第1の収集容器内で沈殿した後に達成される。酵母培養物から沈殿した疎水性SLPが分離された後に残る上清は、その中に溶解している親水性SLP、ならびに残留する細胞、ブロス成分、および不純物、例えばグルコースを含む。
【0109】
特定の態様では、親水性SLPの精製は、細胞、ブロス成分、およびグルコースを上清から除去する工程を含む。この工程では、上清は収集され、遠心分離されて、その中に溶解している親水性SLPおよび不純物を含む上清の液体成分から細胞性物質が分離される。細胞性物質は廃棄することができ、および/またはこれは、例えば、肥料または動物飼料として再使用もしくは再利用することができる。
【0110】
次いで、遠心分離から得られたこの第2の上清を第4の収集容器に移すことができ、または発酵リアクターに戻すことができる。好ましくは、第2の上清は通気機能を有する容器に移され、この容器は、元の発酵リアクターを含むことができる。
【0111】
特定の態様では、水溶性であるグルコースは、第2の上清中の唯一の残存不純物であるか、またはそのうちの1つである。したがって、好ましい態様では、本方法は、第2の上清からグルコース不純物を除去する工程を含む。いくつかの態様では、これは「酵母消化」方法を用いて達成される。いくつかの態様では、これは「酵素消化」方法を用いて達成される。特定の態様では、両方の方法を同時にまたは連続して使用することができる。
【0112】
一態様では、「酵母消化」方法は、生きている酵母細胞、例えば、S.ボンビコラまたはウィッカーハモマイセス・アノマルスを第2の上清に導入して上清培養物を生成する工程、および上清培養物に通気を与える工程を含む。特定の通気時間、例えば、12~48時間後に、酵母が、その唯一の炭素源として残存グルコースを消費する。特定の態様では、酵母はまた、上清培養物中に少量のさらなるSLPを産生する。
【0113】
親水性SLPを抽出するために、上清培養物を遠心分離して残留する細胞を除去し、次いで、蒸発に供して望ましい割合の水を含む親水性SLP組成物を得ることができる。親水性SLP組成物は、初めの上清と比較すると、好ましくは、5%未満、好ましくは0.5%未満のグルコース含量など、グルコースをほとんどまたはまったく有さないと考えられる。
【0114】
一態様では、「酵素消化」方法は、グルコースの消化を容易にするかまたは触媒するために、1種または複数種の酵素を初めの上清に導入する工程を含む。特定の態様では、酵素はグルコースオキシダーゼ(GOx)である。
【0115】
GOxは、グルコースからのグルコン酸および過酸化水素の生成を触媒する。過酸化水素は、最終的なSLP生成物の用途に応じて、蒸発させることができるか、または例えばその抗菌活性を増大させるために、生成物中に残すことができるかのいずれかである。グルコン酸は無毒の生分解性の抗菌薬であり、明確な界面活性を有し得る。
【0116】
SLP生成物のさらなる処理
一態様では、液中培養1サイクルからさらにいっそう親水性のSLPを生成することが望ましい場合、疎水性SLPを水溶性の親水性SLPに変換させることができる。
【0117】
水洗精製方法の間、層形成したSLP-水混合物の底部疎水性SLP層を塩基と混合して、pHを例えば、約4~7または約4.2~6.8に調整することができる。特定の態様では、これは、小量(例えば、滴定あたり0.1μl~10ml)のNaOHまたは別の塩基を混合物中に滴定することによって達成され、pHが高くなるとLSLエステル結合の加水分解が引き起こされ、ラクトン分子が直鎖分子に変換される。
【0118】
特定の態様では、SLP生成物が親水性生成物に変換されたかどうかを決定するために、例えば、乳化剤としてのその能力または他のHLB特異的な特徴を試験することによって、SLP生成物の機能特性を解析することができる。
【0119】
特定の態様では、本発明の方法は、最小限からゼロの廃棄物しか生成されず、それによって、汚水および廃水システムに流される、ならびに/または廃棄物埋立地に処分される発酵廃棄物の量が低減するような方法で行うことができる。さらに、これは、単一発酵サイクルから全体的SLP生成を増大させながら、達成することができる。
【0120】
SLPの除去および精製後に酵母培養物から収集される酵母細胞バイオマスは、典型的には失活させられ、処分されるであろう。しかし、本方法は、細胞バイオマスを収集し、様々な目的のために、例えば、限定されないが、土壌改良材、家畜飼料の栄養補助剤、油井処理、および/またはスキンケア製品として、これを生きた形態または不活性形態で使用する工程をさらに含むことができる。細胞バイオマスは、直接的に使用することができるか、またはこれを所期の使用に対して特異的な添加物と混合することができる。
【0121】
特定の態様では、本発明は、本方法に従って生成される組成物であって、精製されたSLPおよび水を含む組成物を提供する。好ましい態様では、組成物中の水の割合は、体積基準で、約20%~50%、好ましくは約20%~30%である。
【0122】
組成物の精製されたSLPは、例えば、ラクトン、直鎖、モノアセチル化ラクトンもしくは直鎖、および/またはジアセチル化ラクトンまたは直鎖のソホロ脂質であり得る。特定の態様では、組成物は、1種を超える精製されたSLP分子を含む。
【0123】
いくつかの態様では、組成物は、使用するまで容器内で保存することができる。保存時間は好ましくは短い。したがって、保存時間は、60日間、45日間、30日間、20日間、15日間、10日間、7日間、5日間、3日間、2日間、1日、または12時間未満であり得る。
【0124】
低毒性と生分解性の特徴を組み合わせると、SLPは、例えば、バイオレメディエーション、採鉱、および油およびガスの生産の改善;廃棄物の処分および処置;家畜および他の動物の健康の増強;食品添加物、例えば、防腐剤および/または乳化剤;化粧品添加物;ならびに植物の健康および生産性の増強を含めて、多くの設定における使用にとって有利である。
【0125】
特定の用途に必要とされる場合、ソホロ脂質組成物にさらなる成分を添加することができる。添加物は、例えば、緩衝液、担体、同じまたは異なる施設で生成された他の微生物ベースの組成物、粘性調節剤、防腐剤、微生物の増殖のための栄養素、植物の成長のための栄養素、溶媒、追跡剤、殺虫剤、除草剤、動物飼料、食品製品、および所期の使用に対して特異的な他の成分であり得る。
【0126】
先行技術による微生物性バイオサーファクタントの培養は、複数の段階を必要とする複雑で時間および資源を消費するプロセスである。有利なことに、本発明の方法は、複雑な設備または高いエネルギー消費を必要とせず、それにより、微生物およびその代謝物の大規模な生成に関する資本コストおよび労働コストを低減する。さらに、本発明の方法および設備は、微生物代謝物の大規模な精製に関する資本コストおよび労働コストを低減する。
【実施例】
【0127】
例示として与えられる以下の実施例から、本発明およびその多くの利点をより深く理解することができる。以下の実施例は、本発明の方法、適用、態様、および変形のいくつかの例示である。これらは、本発明を制限するものと見なされるべきではない。本発明に関して多数の変更および改変を行うことができる。
【0128】
実施例1-SLP産生およびSLP精製のためのスターメレラ・ボンビコラの培養
調製
ステンレス鋼製の発酵リアクターをSLPの産生に使用する。当該リアクターは、デキストロース(25~150g/L)、酵母抽出物(1~10g/L)、キャノーラ油(25ml/L~110ml/L)、および尿素(0.5~5g/L)を含む培地が添加されている約150ガロンの水を含む。
【0129】
リアクターは、培養物の連続的な撹拌および混合のための混合装置を含む。リアクターおよび増殖培地を無菌化するために、培地を含むリアクターを100℃で約60分間蒸気処理する。
【0130】
次いで、リアクターを冷却する。リアクターが約35℃に達したら、細菌コンタミネーションを防止するために抗生物質を培地に添加する。抗生物質組成物は、4LのDI水に溶解した300gのストレプトマイシンおよび20gのオキシテトラサイクリンを含む。リアクターの他の管および開口部にイソプロピルアルコール(IPA)を噴霧して、それらを無菌化する。
【0131】
小規模リアクターは、スターメレラ・ボンビコラ種菌培養物の増殖に使用する。小規模リアクターにおいて26~28℃で少なくとも42~48時間、培養物を増殖させる。
【0132】
ステンレス鋼製の発酵リアクターが30℃に達したら、次いで、約25Lの種菌培養物をこれに接種する。
【0133】
発酵
発酵の温度を23~28℃に保つ。約22~26時間後に、20%NaOHを使用して培養物のpHを約3.0~4.0、または約3.5にする。発酵リアクターは、pHが3.5のままとなるようにpHをモニターし、塩基を加えるために使用されるポンプを制御するコンピューターを含む。
【0134】
約6~7日(120時間+/-1時間)の培養後、7.5mlのSLP層が目に見える場合、バッチは、直ぐに回収できる状態になっている。ある場合には、目に見える最小限の油および検出される最小限のグルコース(例えば、約0%~0.5%)も存在する。
【0135】
回収
培養物を第1の収集容器に回収し、24~48時間、乱さないままにする。疎水性SLPの層は第1の収集容器の底部に沈殿する。
【0136】
実施例2-親油性SLP分子の精製のための水洗
およそ60~70%のLSLおよび30~40%の疎水性ASLを含む沈殿した疎水性SLP層を第2の収集容器に回収し、上清を残す。4:1~3:1のSLP対水(体積)の比で、DI水をSLP層と混合する。混合物を約60℃~70℃の温度に温め、1~2時間混合する。
【0137】
混合を停止し、8~24時間、または混合物の温度が約25℃~35℃に自然に低下するまで、混合物を静止させる。混合物は、疎水性SLPおよび水を含む、底層;水ならびに不純物(例えば、酵母細胞、グルコース、および脂肪酸)を含む、中層;ならびに泡状の不純物を含む上層の3層を形成する。
【0138】
底部疎水性SLP-水層を第2の容器から第3の容器に流し、50体積%未満であるが約10~15体積%を超えるように水分含量を調整する。理想的には、水分含量は約20体積%である。
【0139】
水分含量は、サイクロンエバポレーターかまたは60℃の噴霧乾燥機のいずれかを使用して、蒸発によって低減させることができる。水分含量は、精製水を添加し、これをSLPと70℃で約1~2時間混合することによって、増大させることができる。
【0140】
精製された生成物、すなわち、水洗されたSLP組成物は約1~8のHLBを有し、SLP部分は、約80~90%の疎水性SLP分子、例えば、LSL、ならびにジアセチル化および/またはモノアセチル化ASLを含む。
【0141】
中層および上層を再度水洗に供して、さらなる疎水性SLPを回収することができる。
【0142】
実施例3-水洗のスケール変更研究
水洗手順を研究室スケール、パイロットスケール、および工業的スケールで行って、SLPの生成および精製の全レベルについて本プロセスの実行可能性を決定した。以下の結果を得た。
疎水性生成物の典型的な特徴:
-50~100のCMC;
-35~39のCMCにおける表面張力の低減;
-2~7のHLB;
-相分離なし;
-生細胞なし;
-0.1%以下のグルコース含量;
-非水溶性;
-水中で分散性であり、白濁した溶液を作り出す;
-水と混合したときに泡が生成されない;
研究室スケールでの精製物の分析
水分含量:23%
グルコース含量:0.04%
オレイン酸含量:20%
SLP含量:57.5%
SLP種:
-非アセチル化直鎖オレイン酸:0.9%
-モノアセチル化直鎖オレイン酸:3.22%
-モノアセチル化ラクトンオレイン酸:9.6%
-モノアセチル化ラクトンリノール酸:1.96%
-ジアセチル化ラクトンオレイン酸:29.06%
-ジアセチル化ラクトンステアリン酸:2.97%
-ジアセチル化直鎖オレイン酸:8%
-ジアセチル化直鎖リノール酸:0%
パイロットスケールでの精製物の分析
水分含量:14%
グルコース含量:0%
オレイン酸含量:15%
SLP含量:72%
SLP種:
-非アセチル化直鎖オレイン酸:1.41%
-モノアセチル化直鎖オレイン酸:5.12%
-モノアセチル化ラクトンオレイン酸:8.6%
-モノアセチル化ラクトンリノール酸:3.11%
-ジアセチル化ラクトンオレイン酸:25.22%
-ジアセチル化ラクトンステアリン酸:6.21%
-ジアセチル化直鎖オレイン酸:18.71%
-ジアセチル化直鎖リノール酸:3.8%
工業的スケールでの精製物の分析
水分含量:19%
グルコース含量:0.05%
オレイン酸含量:23%
SLP含量:58%
SLP種:
-非アセチル化直鎖オレイン酸:0.96%
-モノアセチル化直鎖オレイン酸:5.04%
-モノアセチル化ラクトンオレイン酸:13.52%
-モノアセチル化ラクトンリノール酸:1.13%
-ジアセチル化ラクトンオレイン酸:23.28%
-ジアセチル化ラクトンステアリン酸:2.99%
-ジアセチル化直鎖オレイン酸:10.06%
-ジアセチル化直鎖リノール酸:0%
【0143】
実施例4-疎水性SLPからの残留オレイン酸の除去
油不純物の含量が低い低HLB疎水性SLP組成物を得るために、キャノーラ油の添加によって、水洗されたSLP組成物をさらに精製する。1:2(添加油:SLP)、2:1、5:1、または10:1の比で、水洗されたSLP組成物に油を添加する。
【0144】
次いで、水洗されたSLP組成物および油を60℃の温度で2時間、または約1~2.5時間混合する。混合後、一晩(または約16時間)全組成物を乱さずに静置して、今や油ならびに脂肪酸および/または油不純物を含む添加油層から、疎水性SLP層および水層を形成させる。
【0145】
層形成の後、油層を除去して、より純度の高い疎水性SLP生成物を得ることができる。
【0146】
表1および2に例示するように、水洗されたSLP組成物中の脂肪酸の大部分を除去することができる。さらに、表1に例示するように、10:1(キャノーラ油:SLP)の比でのキャノーラ油の添加は、SLP組成物から脂肪酸の98%を除去する。これは脂肪酸濃度の著しい減少であり、水洗されたSLP組成物の23.54%の脂肪酸濃度と比較して、脂肪酸濃度が0.48%である精製されたSLP組成物を残す。
【0147】
(表1)SLPの油精製後のSLP組成物中の脂肪酸含量(最初は23.53%の脂肪酸)
【0148】
(表2)SLPの油精製後のSLP組成物中の脂肪酸含量(最初は19.62%の脂肪酸)
【0149】
【0150】
表3は、キャノーラ油で精製された組成物が、水洗されたSLP組成物と比較して低いCMCを有することを示す。
【0151】
実施例5-親水性SLPの精製
前記の実施例1に従って生成された酵母培養物から親水性SLPを得るために、溶解した親水性SLP、細胞、およびブロス成分、例えばグルコースを含む上清を遠心分離して細胞性物質を除去することができ、次いで、上清を酵母消化および/または酵素消化に供して、グルコース不純物を除去する。
【0152】
酵母消化
上清を通気機能を有する容器に入れる。さらなる生きている酵母細胞(例えばS.ボンビコラ)を上清に導入し、次いで、これに12~48時間通気する。S.ボンビコラは上清内の残留するグルコースを消費し、少量のSLPを産生する。次いで、上清培養物を遠心分離して、残留する細胞を含むペレットおよびグルコースを含まない液状の親水性SLPを含む第2の上清を生成する。
【0153】
第2の上清を蒸発させて、水分含量を好ましくは20%~30%に調整する。得られる生成物は10以上のHLBを有し、初めの上清と比較すると、グルコースはゼロまたはわずかな量であろう。
【0154】
グルコース不純物の酵素消化
遠心分離後、グルコースオキシダーゼ(GOx)酵素を上清に添加する。GOxは、グルコン酸および過酸化水素へのグルコースの変換を触媒する。過酸化水素は、蒸発させることができるか、または例えばその抗菌活性を増大させるために、生成物中に残すことができるかのいずれかである。この方法でのグルコースの消化は、より高い純度の親水性SLPをもたらす。
【0155】
実施例6-使用目的に基づく界面活性剤のHLB値-洗浄製品
本発明の態様による方法を用いて得られた精製されたSLP組成物は、家庭用および工業用の洗浄製品に使用することができる。以下の表4に示すように、用途は、例えば、組成物のHLB値を決定する因子である、精製された組成物の疎水性または親水性の性質に基づいて決定される。
【0156】
(表4)HI&I洗浄製品のための所望の用途に基づくSLP HLB値
【0157】
本明細書において記載される例および態様は例示目的のみであること、ならびにそれらを鑑みて様々な改変または変更が当業者に示唆され、本出願の趣旨および範囲内に含まれることを理解されたい。
【0158】
本明細書において言及されるかまたは引用されるすべての特許、特許出願、仮出願、および刊行物は、すべての図および表を含めて、本明細書の明示的な教示と矛盾がない範囲内において、参照によりその全体が組み入れられる。
【国際調査報告】