(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-28
(54)【発明の名称】IL-2受容体作動薬及び免疫チェックポイント阻害薬を使用する併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20230220BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230220BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20230220BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230220BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230220BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230220BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230220BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20230220BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20230220BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20230220BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
A61K45/06
A61K38/16
A61K47/60
A61K39/395 U
A61P37/02
A61P35/00
A61P43/00 121
C07K16/30 ZNA
C07K14/00
C07K14/54
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538786
(86)(22)【出願日】2020-11-09
(85)【翻訳文提出日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 US2020059674
(87)【国際公開番号】W WO2021133476
(87)【国際公開日】2021-07-01
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522161867
【氏名又は名称】ネオルーキン セラピューティクス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】カール ウォーキー
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ドラチマン
(72)【発明者】
【氏名】ウムット ウルゲ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル アドリアーノ シルバ マンザーノ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA94
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
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4C084BA20
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4H045BA10
4H045BA21
4H045DA02
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、とりわけ、免疫チェックポイント阻害薬と組合せたIL-2受容体作動薬を使用し、それを必要とする対象において免疫反応を調節する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において、(i)免疫反応を調節するか、又は(ii)癌を治療する方法であって、該方法が、IL-2受容体作動薬及び一つ又は複数の免疫チェックポイント阻害薬の有効量を対象へ投与することを含む、方法。
【請求項2】
対象において癌を治療する方法であって、該方法が、IL-2受容体作動薬及び一つ又は複数の免疫チェックポイント阻害薬の有効量を対象へ投与することを含む、方法。
【請求項3】
前記癌が、メラノーマ及び腎細胞癌からなる群から選択される、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記癌が、結腸癌である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記癌が、大腸癌、乳癌、肺癌、肉腫、頭頸部癌、肝臓癌又は膀胱癌である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記癌が、固形腫瘍である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
対象における腫瘍の増殖を阻害する方法であって、該方法が、IL-2受容体作動薬及び一つ又は複数の免疫チェックポイント阻害薬の有効量を対象へ投与することを含む、方法。
【請求項8】
前記腫瘍が、大腸癌、乳癌、肺癌、肉腫、頭頸部癌、肝臓癌、膀胱癌、メラノーマ、又は腎細胞癌由来である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記IL-2受容体作動薬が、配列番号:3から配列番号:26からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記IL-2受容体作動薬が、配列番号:3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、及び25からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記IL-2受容体作動薬が、62位にシステインが存在することを条件として、配列番号:13と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記IL-2受容体作動薬が、82位にシステインが存在することを条件として、配列番号:23と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記IL-2受容体作動薬が、69位にシステインが存在することを条件として、配列番号:17と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記IL-2受容体作動薬が、73位にシステインが存在することを条件として、配列番号:19と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記IL-2受容体作動薬が、ポリエチレングリコール(「PEG」)含有部分を更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記PEG含有部分が、該ポリペプチド内のシステイン残基に連結されている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前述の(i)IL-2受容体作動薬が、配列番号:13に示されたアミノ酸配列を含み、及び62位のシステインが、PEG含有部分に連結されているか、(ii)IL-2受容体作動薬が、配列番号:23に示されたアミノ酸配列を含み、及び82位のシステインが、PEG含有部分に連結されているか、(iii)IL-2受容体作動薬が、配列番号:17に示されたアミノ酸配列を含み、及び69位のシステインが、PEG含有部分に連結されているか、又は(iv)IL-2受容体作動薬が、配列番号:19に示されたアミノ酸配列を含み、及び73位のシステインが、PEG含有部分に連結されている、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリエチレングリコールが、マレイミド基を介してシステイン残基に連結されている、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記PEG含有部分中の反復PEG単位の数が、約800~1000である、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記PEG含有部分中の反復PEG単位の数が、約850~950である、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記免疫チェックポイント阻害薬が、CTLA-4、PD-1、又はPD-L1の拮抗薬である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記免疫チェックポイント阻害薬が、抗体である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記CLTA-4の拮抗薬が、イピリムマブ、トレメリムマブ、AGEN1884、及びAGEN2041からなる群から選択される抗体である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記PD-1の拮抗薬が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、及びMEDI-0680からなる群から選択される抗体である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記PD-L1の拮抗薬が、デュルバルマブ、BMS-936559、MPDL3280A、及びMSB0010718Cからなる群から選択される抗体である、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記PD-L1の拮抗薬が、アテゾリズマブ及びアベルマブからなる群から選択される抗体である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記CTLA-4の拮抗薬及びPD-1又はPD-L1の拮抗薬が、対象へ投与される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前述のIL-2受容体作動薬及び一つ又は複数の免疫チェックポイント阻害薬の組合せが、癌の治療又は免疫反応の調節又は腫瘍細胞の増殖の阻害において相乗的効果を提供する、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年12月24日に出願された米国特許仮出願第62/953,362号、及び2020年6月22日に出願された第63/042,361号に対する優先権を主張するものであり、各々その全体が引用により本明細書中に組み込まれている。
【0002】
コンパクトディスク上で提出された「配列表」、表、又はコンピュータプログラムを列挙する付属物に関する言及
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、その全体が引用により本明細書中に組み込まれている、配列表を含む。該ASCIIコピーは、2020年11月6日に作製され、ファイル名は057318_504001WO_Sequence_Listing_ST25.txtであり、並びにサイズは28キロバイトである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
チェックポイント阻害薬による単剤療法は、一部の患者において驚くほどの臨床的有効性を示したが、他の患者においては臨床的有効性は低かった。このチェックポイント阻害薬の有効性を増強するために、追加の治療を開発する必要性が存在する。本発明はこの必要性及び他の必要性を満たしている。
【発明の概要】
【0004】
発明の概要
本開示は、とりわけ、免疫チェックポイント阻害薬と組合せてIL-2受容体作動薬を使用し、それを必要とする対象において、免疫反応を調節する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図面の簡単な説明
【
図1】
図1は、CT26結腸癌モデルにおける、PD-1阻害薬と組合せたIL-2受容体作動薬(PEG化IL-2模倣薬)の抗腫瘍活性を示す。
【0006】
【
図2】
図2は、CT26結腸癌モデルにおける、PD-L1阻害薬と組合せたIL-2受容体作動薬(PEG化IL-2模倣薬)の抗腫瘍活性を示す。
【0007】
【
図3】
図3は、MC38結腸癌モデルにおける、PD-1阻害薬と組合せたIL-2受容体作動薬(PEG化IL-2模倣薬)の抗腫瘍活性を示す。
【0008】
【
図4】
図4は、MC38結腸癌モデルにおける、PD-L1阻害薬と組合せたIL-2受容体作動薬(PEG化IL-2模倣薬)の抗腫瘍活性を示す。
【0009】
【
図5】
図5は、B16F10マウスメラノーマモデルにおける、PD-1阻害薬及びCTLA-4阻害薬(CPI)と組合せたIL-2受容体作動薬(PEG化IL-2模倣薬)の抗腫瘍活性を示す。
【0010】
【
図6】
図6は、CD8+ T細胞によるPD-1発現に対するIL-2受容体作動薬(PEG化IL-2模倣薬)の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
I. 実施形態の詳細な説明
本開示は、とりわけ、免疫チェックポイント阻害薬と組合せてIL-2受容体作動薬を使用する、それを必要とする対象における、(i)免疫反応の調節、(ii)癌の治療、又は(iii)腫瘍の増殖の阻害のための方法に関する。
【0012】
A. IL-2受容体作動薬
本明細書において使用される用語IL-2受容体作動薬は、IL-2受容体を媒介したシグナル伝達を活性化することが可能であるポリペプチドを指す。例証的実施形態において、IL-2受容体作動薬は、長期間作用するIL-2受容体作動薬である。長期間作用するとは、IL-2受容体作動薬は、3時間以上、好ましくは4時間以上の血漿半減期又は血清半減期を有することを意味する。一部の態様において、IL-2受容体作動薬は、10時間以上又は12時間以上の血清半減期又は血漿半減期を有することになる。ポリペプチドの半減期は、適切なアッセイにより測定した際にポリペプチドの濃度が50%だけ減少するのに必要な時間を指す。この減少は、ポリペプチドのインビボにおける分解、クリアランス、又はゼクエストレーションにより引き起こされ得る。ポリペプチドの半減期は、血液中のポリペプチドの濃度の測定によるなど、本開示を考慮し当該技術分野において公知の任意の様式により決定することができる。例えばインビボにおけるポリペプチドの半減期を測定するために、適量のポリペプチドが、温血動物へ(すなわち、ヒトへ又は例えばマウス、ウサギ、ラット、ブタ、イヌなどの別の好適な哺乳動物、又は霊長類などへ)投与され;動物から血液試料又は他の試料が収集され;試料中のポリペプチドのレベル又は濃度が決定され;並びに、ポリペプチドのレベル又は濃度が50%だけ減少するまでの時間が、測定されたデータを基に計算される。例えば、Kenneth, Aら, Chemical Half-life of Pharmaceuticals: A Handbook for Pharmacists、及びPetersら, Pharmacokinetic analysis: A Practical Approach (1996)を参照されたい。本明細書において使用される「半減期の増加」又は「より長い半減期」とは、対照と比較して、t1/2-α相、t1/2-β相及び曲線下面積(AUC)などの、半減期を説明するために使用される1又は複数のパラメータのいずれかの増加を指す。IL-2受容体作動薬の長期間作用する性質は、IL-2ポリペプチドへ複合又は融合される部分に起因し得る。本明細書において使用される用語「ポリペプチド」、「タンパク質」又は「ペプチド」は、その長さ又は翻訳後修飾(例えば、グリコシル化もしくはリン酸化)にかかわらず、アミノ酸残基の任意の鎖を指す。
【0013】
本発明の例証的IL-2受容体作動薬は、IL-2模倣薬である。IL-2模倣薬は、Silvaら, Nature 2019 Jan;565(7738):186-191及び米国特許第10,703,791号に説明されている。本方法において使用される例証的IL-2模倣薬は、IL-2Rβγcのヘテロ二量体化を誘導し、これはSTAT5のリン酸化へ繋がる。本発明のIL-2模倣薬は、IL-2受容体βγcヘテロ二量体(IL-2Rβγc)に結合し、並びに典型的には任意にアミノ酸リンカーにより分離された、4つのらせん状ペプチドを含む。
【0014】
Neo-2/15(Silvaら, Nature 2019 Jan;565(7738):186-191及び米国特許第10,703,79号)は、4つのらせん状ドメインであるX1、X2、X3、及びX4を含む。らせん状ドメインX1は、配列番号:27に示したアミノ酸配列(PKKKIQLHAEHALYDALMILNI)を含み;らせん状ドメインX2は、配列番号:28に示したアミノ酸配列(KDEAEKAKRMKEWMKRIKT)を含み;らせん状ドメインX3は、配列番号:29に示したアミノ酸配列(LEDYAFNFELILEEIARLFESG)を含み;並びに、らせん状ドメインX4は、配列番号:30に示したアミノ酸配列(EDEQEEMANAIITILQSWIFS)を含む。Neo-2/15において、これらのらせん状ドメインは、X1-X3-X2-X4の順番であり、及びアミノ酸リンカーにより一緒に接続されている。新規に合成されるタンパク質であるNeo-2/15の結果として、本発明においてIL-2受容体作動薬として使用するためのNeo-2/15の変種は、らせん状ドメイン及びアミノ酸リンカーに非常に大きい変動を有し得る一方で、IL-2受容体βγcヘテロ二量体への結合能は依然保持している。IL-2受容体βγcヘテロ二量体(IL-2Rβγc)への結合を決定する方法は、例えばSTAT5リン酸化アッセイにより、IL-2受容体作動薬活性を決定する方法のように、当該技術分野において公知である。例えば、Silvaら, Nature 2019 Jan;565(7738):186-191を参照されたい。
【0015】
本方法において使用されるIL-2受容体作動薬は、配列番号:1に示したアミノ酸配列(すなわち、Neo-2/15ポリペプチド)と、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含んでなるIL-2模倣薬を含む。別の態様において、本方法において使用されるIL-2受容体作動薬は、配列番号:2に示したアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含むIL-2模倣薬を含む。配列番号:2は、リンカーアミノ酸が、任意であり、及びリンカーの各アミノ酸残基が存在する場合、これらは任意の天然又は非天然のアミノ酸を含んでよいことを除いて、配列番号:1と同じ配列である。配列番号:2において、下線の残基(Xと表示される)は、リンカーであり、並びに各リンカー残基が存在する場合、これらは、任意のアミノ酸(好ましくは天然のアミノ酸)であってよい。例証的実施形態において、これらのアミノ酸は、天然のアミノ酸である。アミノ酸リンカーが存在する場合、これはドメインに連結される。これらのアミノ酸リンカーは、意図された用途に適しているとみなされる任意の長さであってよい。配列番号:1又は配列番号:2のアミノ酸配列と同一性を有する(例えば配列番号:1又は配列番号:2と80~99%の同一性)アミノ酸配列を含んでなるIL-2模倣薬はまた本明細書において、Neo-2/15変種とも称される。用語天然のアミノ酸は、タンパク質において天然に生じる20種のアミノ酸を指す。本明細書において使用される用語「非天然のアミノ酸」は、タンパク質において天然に生じる20種のアミノ酸以外のアミノ酸を指す。非天然のアミノ酸は、当該技術分野において公知である。
【表1】
【0016】
ポリペプチド配列に言及して本明細書において使用される用語「同一性」は、2つの分子間のアミノ酸配列の同一性を指す。両方の分子内のアミノ酸位置が、同じアミノ酸により占拠されている場合、これらの分子はその位置において同一である。2つのポリペプチド間の同一性は、同じ位置の数の直接の関数である。概して、これらの配列は、最高の順番のマッチが得られるように整列される(必要ならばギャップを含む)。同一性は、公表された技術、及び広範に利用可能なコンピュータプログラム、例えばGCGプログラムパッケージ(Devereuxら, Nucleic Acids Res. 12:387, 1984)、BLASTP、FASTA(Atschulら, J. Molecular Biol. 215:403, 1990)などを用いて計算され得る。配列同一性は、例えば、ウイスコンシンバイオテクノロジーセンター(WBC)(1710 University Avenue, Madison, WI 53705)の遺伝子コンピュータグループの配列解析ソフトウェアパッケージなどの、配列解析ソフトウェアを、それらのデフォルトのパラメータで用いて測定され得る。アミノ酸が付加又は欠失される場合、これは、タンパク質のその結合パートナーへの提示及び二次構造を実質的に妨害しない様式で実施されなければならない。一般に、保存的アミノ酸置換であるような参照ペプチドドメインに対するアミノ酸置換が好ましいが、必ずしもではない。
【0017】
本明細書において使用される「保存的アミノ酸置換」は、所定のアミノ酸が、類似の物理化学的特徴を有する残基により置き換えられ得ること、例えば、1個の脂肪族残基を別のものと置換する(互いにIle、Val、Leu、又はAlaなど)、又は1個の極性残基を別のものと置換する(LysとArg;GluとAsp;又は、GlnとAsnの間など)を意味する。他のそのような保存的置換、例えば類似の疎水性特徴を有する全領域の置換は、公知である。アミノ酸置換を含むポリペプチドは、所望の活性、例えば受容体-結合活性が保持されていることを確認するために、当該技術分野において公知の方法を使用し試験することができる。アミノ酸は、それらの側鎖の特性における類似性に従い群別することができる(A. L. Lehninger、Biochemistry、第二版、pp. 73-75, Worth Publishers, New York (1975)において):(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M);(2)非帯電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q);(3)酸性:Asp(D)、Glu(E);(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)。或いは、天然に生じる残基は、共通の側鎖の特性を基にグループに分けることができる:(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖の配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。非保存的置換は、これらのクラスの一つのメンバーを別のクラスと交換することを含意するであろう。特定の保存的置換は、例えば以下を含む:AlaをGlyへ又はSerへ;ArgをLysへ;AsnをGlnへ又はHへ;AspをGluへ;CysをSerへ;GlnをAsnへ;GluをAspへ;GlyをAlaへ又はProへ;HisをAsnへ又はGlnへ;IleをLeuへ又はValへ;LeuをIleへ又はValへ;LysをArgへ、Glnへ又はGluへ;MetをLeuへ、Tyrへ又はIleへ;PheをMetへ、Leuへ又はTyrへ;SerをThrへ;ThrをSerへ;TrpをTyrへ;TyrをTrpへ;及び/又は、PheをValへ、Ileへ又はLeuへ。一部の態様において、結合又は活性に必須ではないアミノ酸は、安定した部分の結合を可能にするために、システインにより置き換えられる。
【0018】
本明細書において使用される天然のアミノ酸残基は、以下のように略記される:アラニン(Ala;A)、アスパラギン(Asn;N)、アスパラギン酸(Asp;D)、アルギニン(Arg;R)、システイン(Cys;C)、グルタミン酸(Glu;E)、グルタミン(Gln;Q)、グリシン(Gly;G)、ヒスチジン(His;H)、イソロイシン(Ile;I)、ロイシン(Leu;L)、リジン(Lys;K)、メチオニン(Met;M)、フェニルアラニン(Phe;F)、プロリン(Pro;P)、セリン(Ser;S)、トレオニン(Thr;T)、トリプトファン(Trp;W)、チロシン(Tyr;Y)、及びバリン(Val;V)。
【0019】
本発明のIL-2受容体作動薬は、それらの変種がNeo-2/15活性(例えば、STAT5のリン酸化へ繋がる、IL-2受容体βγcヘテロ二量体(IL-2Rβγc)へ結合する能力)を保持することを条件として、X1、X2、X3、X4に1又は複数のアミノ酸置換、及び/又はアミノ酸リンカードメインを有するNeo-2/15の変種を含む。
【0020】
本発明において、以下に提供されるNeo-2/15のX1ドメインを含んでなるNeo-2/15変種が、含まれる:
1位のアミノ酸は、Pであるか、又は置換されているならば、A、F、I、L、M、Q、R、S、もしくはWであり;
2位のアミノ酸は、Kであるか、又は置換されているならば、A、D、E、G、もしくはVであり;
3位のアミノ酸は、Kであるか、又は置換されているならば、D、E、F、もしくはWであり;
4位のアミノ酸は、Kであるか、又は置換されているならば、D、E、N、P、R、もしくはWであり;
5位のアミノ酸は、Iであるか、又は置換されているならば、D、E、H、K、L、M、もしくはSであり;
6位のアミノ酸は、Qであるか、又は置換されているならば、A、D、E、G、L,P、S、もしくはWであり;
7位のアミノ酸は、Lであるか、又は置換されているならば、D、E、Q、Y、もしくはIであり;
8位のアミノ酸は、Hであるか、又は置換されているならば、A、F、W、Y、M、もしくはTであり;
9位のアミノ酸は、Aであるか、又は置換されているならば、C、F、もしくはPであり;
10位のアミノ酸は、Eであるか、又は置換されているならば、C、D、F、K、もしくはPであり;
11位のアミノ酸は、Hであるか、又は置換されているならば、D、F、もしくはEであり;
12位のアミノ酸は、Aであるか、又は置換されているならば、D、E、P、S、T、もしくはVであり;
13位のアミノ酸は、Lであるか、又は置換されているならば、H、I、M、P、R、V、もしくはWであり;
14位のアミノ酸は、Yであるか、又は置換されているならば、F、R、W、もしくはKであり;
15位のアミノ酸は、Dであるか、又は置換されているならば、E、N、もしくはYであり;
16位のアミノ酸は、Aであるか、又は置換されているならば、C、L、M、もしくはSであり;
17位のアミノ酸は、Lであるか、又は置換されているならば、F、I、M、P、もしくはRであり;
18位のアミノ酸は、Mであるか、又は置換されているならば、G、Q、Y、もしくはSであり;
19位のアミノ酸は、Iであるか、又は置換されているならば、L、M、P、Q、もしくはVであり;
20位のアミノ酸は、Lであるか、又は置換されているならば、A、K、M、Q、R、もしくはSであり;
21位のアミノ酸は、Nであるか、又は置換されているならば、G、K、P、R、S、もしくはWであり;
22位のアミノ酸は、Iであるか、又は置換されているならば、D、E、K、M、N、W、もしくはYであり;並びに、このアミノ酸位置は、配列番号:27に関連している。
【0021】
一部のそのような実施形態において、以下の1、2、3、4、又は5は、当てはまらない;7位はIであり、8位はM又はTであり、11位はEであり、14位はKであり、及び18位はSである。これらのアミノ酸位置は、配列番号:27に関連している。
【0022】
本発明において、以下に提供されるNeo-2/15のX2ドメインを含んでなるNeo-2/15変種が、含まれる:
1位のアミノ酸は、Kであるか、又は置換されているならば、A、H、L、M、R、S、もしくはVであり;
2位のアミノ酸は、Dであるか、又は置換されているならば、A、E、Q、R、S、T、V、W、もしくはYであり;
3位のアミノ酸は、Eであるか、又は置換されているならば、C、G、K、L、N、Q、R、もしくはWであり;
4位のアミノ酸は、Aであるか、又は置換されているならば、F、G、N、S、T、V、もしくはYであり;
5位のアミノ酸は、Eであるか、又は置換されているならば、A、G、I、M、R、V、もしくはCであり;
6位のアミノ酸は、Kであるか、又は置換されているならば、C、E、L、N、R、もしくはVであり;
7位のアミノ酸は、Aであるか、又は置換されているならば、C、E、I、L、S、T、V、もしくはWであり;
8位のアミノ酸は、Kであるか、又は置換されているならば、H、L、M、S、T、W、もしくはYであり;
9位のアミノ酸は、Rであるか、又は置換されているならば、A、I、L、M、Q、もしくはSであり;
10位のアミノ酸は、Mであるか、又は置換されているならば、A、I、S、W、もしくはYであり;
11位のアミノ酸は、Kであるか、又は置換されているならば、C、I、L、S、もしくはVであり;
12位のアミノ酸は、Eであるか、又は置換されているならば、C、K、L、P、Q、R、もしくはTであり;
13位のアミノ酸は、Wであるか、又は置換されているならば、A、D、H、もしくはNであり;
14位のアミノ酸は、Mであるか、又は置換されているならば、A、C、G、I、L、S、T、もしくはVであり;
15位のアミノ酸は、Kであるか、又は置換されているならば、A、E、G、I、L、M、R、もしくはVであり;
16位のアミノ酸は、Rであるか、又は置換されているならば、G、H、L、S、T、V、もしくはCであり;
17位のアミノ酸は、Iであるか、又は置換されているならば、A、L、もしくはVであり;
18位のアミノ酸は、Kであるか、又は置換されているならば、A、C、D、E、G、H、I、M、もしくはSであり;並びに
19位のアミノ酸は、Tであるか、又は置換されているならば、D、E、G、L、N、もしくはVであり;並びに、このアミノ酸位置は、配列番号:28に関連している。
【0023】
本発明において、以下に提供されるNeo-2/15のX3ドメインを含んでなるNeo-2/15変種が、含まれる:
1位のアミノ酸は、Lであるか、又は置換されているならば、Aであり;
2位のアミノ酸は、Eであるか、又は置換されているならば、D、G、K、M、もしくはTであり;
3位のアミノ酸は、Dであるか、又は置換されているならば、E、N、Y、もしくはRであり;
4位のアミノ酸は、Yであるか、又は置換されているならば、C、D、G、T、もしくはFであり;
5位のアミノ酸は、Aであるか、又は置換されているならば、F、H、S、V、W、もしくはYであり;
6位のアミノ酸は、Fであるか、又は置換されているならば、A、I、M、T、V、Y、もしくはKであり;
7位のアミノ酸は、Nであるか、又は置換されているならば、D、K、S、T、もしくはRであり;
8位のアミノ酸は、Fであるか、又は置換されているならば、A、C、G、L、M、S、もしくはVであり;
9位のアミノ酸は、Eであるか、又は置換されているならば、C、H、K、L、R、S、T、もしくはVであり;
10位のアミノ酸は、Lであるか、又は置換されているならば、F、I、M、Y、もしくはRであり;
11位のアミノ酸は、Iであるか、又は置換されているならば、L、N、T、もしくはYであり;
12位のアミノ酸は、Lであるか、又は置換されているならば、F、K、M、S、もしくはVであり;
13位のアミノ酸は、Eであるか、又は置換されているならば、A、D、F、G、I、N、P、Q、S、T、もしくはWであり;
14位のアミノ酸は、Eであるか、又は置換されているならば、A、F、G、H、S、もしくはVであり;
15位のアミノ酸は、Iであるか、又は置換されているならば、C、L、M、V、もしくはWであり;
16位のアミノ酸は、Aであるか、又は置換されているならば、D、G、S、T、もしくはVであり;
17位のアミノ酸は、Rであるか、又は置換されているならば、H、K、L、もしくはNであり;
18位のアミノ酸は、Lであるか、又は置換されているならば、C、D、G、I、Q、R、T、もしくはWであり;
19位のアミノ酸は、Fであるか、又は置換されているならば、D、M、N、もしくはWであり;
20位のアミノ酸は、Eであるか、又は置換されているならば、A、C、F、G、M、S、もしくはYであり;
21位のアミノ酸は、Sであるか、又は置換されているならば、D、E、G、H、L、M、R、T、V、もしくはWであり;
22位のアミノ酸は、Gであるか、又は置換されているならば、A、D、K、N、S、もしくはYであり;並びに、このアミノ酸位置は、配列番号:29に関連している。
【0024】
一部のそのような実施形態において、以下の1、2、3、4、5、6、7、又は8全ては、当てはまらない;3位はRであり、4位はFであり、6位はKであり、7位はRであり、10位はRであり、11位はNであり、13位はWであり、及び14位はGである。これらのアミノ酸位置は、配列番号:29に関連している。
【0025】
本発明において、以下に提供されるNeo-2/15のX4ドメインを含んでなるNeo-2/15変種が、含まれる:
1位のアミノ酸は、Eであるか、又は置換されているならば、D、G、K、もしくはVであり;
2位のアミノ酸は、Dであるか、又は置換されているならば、I、M、もしくはSであり;
3位のアミノ酸は、Eであるか、又は置換されているならば、G、H、もしくはKであり;
4位のアミノ酸は、Qであるか、又は置換されているならば、E、G、I、K、R、もしくはSであり;
5位のアミノ酸は、Eであるか、又は置換されているならば、A、D、G、H、S、もしくはVであり;
6位のアミノ酸は、Eであるか、又は置換されているならば、C、D、G、I、M、Q、R、T、もしくはVであり;
7位のアミノ酸は、Mであるか、又は置換されているならば、C、E、L、P、R、もしくはTであり;
8位のアミノ酸は、Aであるか、又は置換されているならば、F、L、M、もしくはWであり;
9位のアミノ酸は、Nであるか、又は置換されているならば、A、G、L、Q、R、もしくはTであり;
10位のアミノ酸は、Aであるか、又は置換されているならば、C、D、E、F、H、I、もしくはWであり;
11位のアミノ酸は、Iであるか、又は置換されているならば、M、N、S、V、もしくはWであり;
12位のアミノ酸は、Iであるか、又は置換されているならば、K、L、S、もしくはVであり;
13位のアミノ酸は、Tであるか、又は置換されているならば、C、L、M、R、もしくはSであり;
14位のアミノ酸は、Iであるか、又は置換されているならば、L、P、T、もしくはYであり;
15位のアミノ酸は、Lであるか、又は置換されているならば、F、G、I、M、N、もしくはVであり;
16位のアミノ酸は、Qであるか、又は置換されているならば、H、K、もしくはRであり;
17位のアミノ酸は、Sであるか、又は置換されているならば、C、F、K、W、もしくはYであり;
18位のアミノ酸は、Wであるか、又は置換されているならば、K、Q、もしくはTであり;
19位のアミノ酸は、Iであるか、又は置換されているならば、C、G、もしくはNであり;
20位のアミノ酸は、Fであるか、又は置換されているならば、C、G、L、もしくはYであり;並びに、
21位のアミノ酸は、Sであるか、又は置換されているならば、A、F、G、H、もしくはYであり;並びに、このアミノ酸位置は、配列番号:30に関連している。
【0026】
一部のそのような実施形態において、19位はIではない。一部のそのような態様において、19位は、C、G、もしくはNである。これらのアミノ酸位置は、配列番号:30に関連している。
【0027】
これらの実施形態のいずれかには、Neo-2/15変種が含まれ、ここで以下の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14全ては、当てはまらず:7位はIであり、8位はT又はMであり、11位はEであり、14位はKであり、18位はSであり、33位はQであり、36位はRであり、37位はFであり、39位はKであり、40位はRであり、43位はRであり、44位はNであり、46位はWであり、及び47位はGであり、ここでこれらの位置は、配列番号:1に関連している。更なる実施形態において、以下の一方又は両方は、当てはまらず:68位はIであり、及び98位はFであり、ここでこれらの位置は、配列番号:1に関連している。これらのリンカーの長さが、異なる長さである場合、残基の番号付けは、それに応じて変化するであろう。
【0028】
Neo-2/15変種を含む、本方法において使用するための例証的IL-2模倣薬は、例えば、PEG-含有部分などの水安定化部分などの、安定性部分に複合又は融合される。一部の態様において、IL-2模倣薬中のシステイン残基は、PEG部分の結合に使用される。従って本発明において、結合に必要ではないアミノ酸がそれらへの安定性部分の結合のためにシステイン残基に変異されていることを除いて、配列番号:1又は配列番号:2に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含んでなるIL-2模倣薬であるIL-2受容体作動薬が含まれる。一部の態様において、IL-2模倣薬は、配列番号:1に関して50、53、62、69、73、82、56、58、59、66、77、又は85位の1又は複数のアミノ酸が部分(例えば、PEG-含有部分)の結合のためにシステイン残基に変異されていることを除いて、配列番号:1又は2に示したアミノ酸配列を含む。先に言及したように、熟練した実践者は、アミノ酸リンカーが異なる長さであるような実施形態において、残基の番号付けは、それに応じて変化することを理解するであろう。先に言及したように、熟練した実践者は、アミノ酸リンカーが異なる長さであるような実施形態において、残基の番号付けは、それに応じて変化することを理解するであろう。例えば、配列番号:1に関する「50位」の言及は、配列番号:1の50位に対応する配列番号:2の位置を意味する。
【0029】
本発明において含まれるのは、配列番号:1又は2に示したアミノ酸配列と少なくとも25%、27%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は100%同一であるが、以下の変異の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12全てが存在する、アミノ酸配列を含んでなるIL-2模倣薬である:
D56C;
K58C;
D59C;
R66C;
T77C;
E85C;
R50C;
E53C;
E62C;
E69C;
R73C;及び/又は
E82C。
【0030】
本発明において含まれるのは、配列番号:1又は2に示したアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるが、以下の変異の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12全てが存在する、アミノ酸配列を含んでなるIL-2模倣薬である:
D56C;
K58C;
D59C;
R66C;
T77C;
E85C;
R50C;
E53C;
E62C;
E69C;
R73C;及び/又は
E82C。
【0031】
当業者は、配列番号:2に関して、先に言及した56、58、59、66、77、85、50、53、62、69、73及び82位は、各々、配列番号:1の56、58、59、66、77、85、50、53、62、69、73、82位に対応する配列番号:2の位置を意味し、並びに必ずしも配列番号:2における実際の位置ではなく、これはリンカーの長さのために変動することがあることを理解するであろう。
【0032】
本発明において使用するための例証的IL-2模倣薬は、配列番号:3-26に示されたアミノ酸配列を含んでなるもの含む。一部のそのような実施形態において、IL-2模倣薬は、配列番号:3-26のいずれ一つから選択されたアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。下線を引いた残基は、リンカーであり、並びにこれらのリンカーの各残基(「X」)が存在する場合、これらは、任意の天然又は非天然のアミノ酸(好ましくは天然のアミノ酸)であってよい。以下の各IL-2模倣薬に関して、2つの配列番号が提供され:第一の配列番号:これは以下に示された配列を列挙し;並びに、第二の配列番号:これは変動としてリンカー位置を含む。R50C(又は列挙された変異)と同等の位置は、リンカーの長さに応じて特定された位置に組込まれることが理解される。例証的実施形態において、指定されたシステインが存在する。配列番号:3-26のアミノ酸配列との同一性(例えば、配列番号:3-26に80~99%同一性)を有するアミノ酸配列を含んでなるIL-2模倣薬はまた、本明細書においてNeo-2/15変種と称される。
【表2】
【0033】
従って、配列番号:3-26からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでなるIL-2模倣薬である、本発明において使用するためのIL-2受容体作動薬が、本明細書に提供される。配列番号:3-26からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含んでなるIL-2模倣薬である、本発明において使用するためのIL-2受容体作動薬が、本明細書に提供される。配列番号:3-26からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでなるIL-2模倣薬である、本発明において使用するためのIL-2受容体作動薬が、本明細書に提供される。配列番号:3-26からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含んでなるIL-2模倣薬である、本発明において使用するためのIL-2受容体作動薬が、本明細書に提供される。配列番号:3-26からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるIL-2模倣薬である、本発明において使用するためのIL-2受容体作動薬が、本明細書に提供される。これらの実施形態のいずれかにおいて、ポリペプチドは、本明細書に記載されたようなIL-2模倣薬であってよく、ここで以下の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14の全ては、当てはまらない:7位はIであり、8位はT又はMであり、11位はEであり、14位はKであり、18位はSであり、33位はQであり、36位はRであり、37位はFであり、39位はKであり、40位はRであり、43位はRであり、44位はNであり、46位はWであり、及び47位はGである。更なる実施形態において、以下の一方又は両方は、当てはまらない:68位はIであり、及び98位はFである。これらの位置は、配列番号:1に関連している。具体的実施形態において、指定されたシステインが存在する。
【0034】
本発明の例証的IL-2模倣薬は、インビボにおいて延長された半減期を促進するために、他の化合物、例えばPEG化合物に連結されている。”PEG”は、エチレングリコールの水溶性ポリマーである、ポリ(エチレングリコール)分子である。PEGは、様々なサイズで得ることができ、且つタンパク質への共有的複合が可能である化学反応基により誘導体化される化学的に活性化された形で商業的に入手することもできる。直鎖型PEGは、様々な分子量で、例えば重量平均分子量が5,000ダルトン、10,000ダルトン、20,000ダルトン、30,000ダルトン、及び40,000ダルトンのPEGポリマーなどで生成される。分岐型PEGポリマーも、開発されている。ポリペプチドをPEGへ複合する方法は、当該技術分野において公知であり、且つ本明細書において使用することができる。通常使用される活性化されたPEGポリマーは、マレイミド基又はヨードアセトアミド基により誘導体化されたもの(システイン残基などチオールへのカップリングのために)である。例えば一部の実施形態において、ポリエチレングリコール(“PEG”)を含有する部分の追加は、マレイミド基に連結されたPEG基(例えば”PEG-MAL”)の、そのポリペプチドのシステイン残基への結合を含んでよい。マレイミド基へ連結されたPEG基(”PEG-MAL”)の好適な例は、メトキシPEG-MAL 5kD;メトキシPEG-MAL 20kD;メトキシ(PEG)2-MAL 40kD;メトキシPEG(MAL)2 5kD;メトキシPEG(MAL)2 20kD;メトキシPEG(MAL)2 40kD;又はそれらの任意の組合せを含むが、これらに限定されるものではない。また米国特許第8,148,109号も参照されたい。当業者は、マレイミドを介して又は別の結合戦略のいずれかにより、PEG基を本発明のIL-2模倣薬へ結合することを含む、本発明において使用するための長期間作用するIL-2受容体作動薬を設計するために、本明細書記載の方法又は代替の方法を使用することができるであろう。
【0035】
一部の実施形態において、本方法において使用されるIL-2受容体作動薬は、配列番号:13に示したアミノ酸配列(NEO2-15 E62C)を含み、ここで62位のシステインは、PEG化されている。このポリエチレン基は、例えば、マレイミドとのもの(例えば、マレイミド-修飾されたPEG、PEG-MAL 5kD;PEG-MAL 20kD;又はPEG-MAL 40kDなど)を含む、いずれか好適な結合化学を介して結合されることができる。一部の実施形態において、PEG化は、PEG-MAL 30kDによる。一部の実施形態において、PEG化は、PEG-MAL 40kDによる。一部の実施形態において、PEG化されたペプチド内の反復PEG単位の範囲は、約800~1000である。一部の実施形態において、PEG化されたペプチド内の反復PEG単位の平均数は、約850~950である。当業者は、PEG部分は、直鎖であるか又は分岐することができることを理解するであろう。
【0036】
一部の実施形態において、本方法において使用されるIL-2受容体作動薬は、配列番号:23に示したアミノ酸配列(NEO 2-15 E82C)を含み、ここで82位のシステインは、PEG化されている。このポリエチレン基は、例えば、マレイミドとのもの(例えば、マレイミド-修飾されたPEG、PEG-MAL 5kD;PEG-MAL 20kD;又はPEG-MAL 40kDなど)を含む、いずれか好適な結合化学を介して結合されることができる。一部の実施形態において、PEG化は、PEG-MAL 30kDによる。一部の実施形態において、PEG化は、PEG-MAL 40kDによる。一部の実施形態において、PEG化されたペプチド内の反復PEG単位の範囲は、約800~1000である。一部の実施形態において、PEG化されたペプチド内の反復PEG単位の平均数は、約850~950である。当業者は、PEG部分は、直鎖であるか又は分岐することができることを理解するであろう。
【0037】
一部の実施形態において、本方法において使用されるIL-2受容体作動薬は、配列番号:17に示したアミノ酸配列(NEO2-15 E69C)を含み、ここで69位のシステインは、PEG化されている。このポリエチレン基は、例えば、マレイミドとのもの(例えば、マレイミド-修飾されたPEG、PEG-MAL 5kD;PEG-MAL 20kD;又はPEG-MAL 40kDなど)を含む、いずれか好適な結合化学を介して結合されることができる。一部の実施形態において、PEG化は、PEG-MAL 30kDによる。一部の実施形態において、PEG化は、PEG-MAL 40kDによる。一部の実施形態において、PEG化されたペプチド内の反復PEG単位の範囲は、約800~1000である。一部の実施形態において、PEG化されたペプチド内の反復PEG単位の平均数は、約850~950である。当業者は、PEG部分は、直鎖であるか又は分岐することができることを理解するであろう。
【0038】
一部の実施形態において、本方法において使用されるIL-2受容体作動薬は、配列番号:19に示したアミノ酸配列(NEO 2-15 R73C)を含み、ここで73位のシステインは、PEG化されている。このポリエチレン基は、例えば、マレイミドとのもの(例えば、マレイミド-修飾されたPEG、PEG-MAL 5kD;PEG-MAL 20kD;又はPEG-MAL 40kDなど)を含む、いずれか好適な結合化学を介して結合されることができる。一部の実施形態において、PEG化は、PEG-MAL 30kDによる。一部の実施形態において、PEG化は、PEG-MAL 40kDによる。一部の実施形態において、PEG化されたペプチド内の反復PEG単位の範囲は、約800~1000である。一部の実施形態において、PEG化されたペプチド内の反復PEG単位の平均数は、約850~950である。当業者は、PEG部分は、直鎖であるか又は分岐することができることを理解するであろう。
【0039】
本明細書に開示されたポリペプチド及びペプチドドメインは、N-末端、C-末端、又は両端に追加の残基を含んでよく;これらの追加の残基は、参照ポリペプチドに関して本開示のポリペプチド又はペプチドドメインの%同一性を決定する際には、含まれない。そのような残基は、検出タグ(すなわち:蛍光タンパク質、抗体エピトープタグなど)、アダプター、精製目的に適したリガンド(Hisタグなど)、そのポリペプチドへ機能性を追加する他のペプチドドメインなどを含むが、これらに限定されるものではない、意図された用途に適した任意の残基であってよい。そのような基の結合に適している残基は、例えば、システイン残基、リジン残基又はp-アセチルフェニルアラニン残基を含んでよいか、又は米国特許第9,676,871号及び第9,777,070号に開示されたようなトランスグルタミナーゼとの反応に適したアミノ酸タグなどの、タグであることができる。
【0040】
B. 免疫チェックポイント阻害薬
免疫チェックポイントは、免疫反応を刺激又は阻害するシグナル伝達タンパク質である。免疫チェックポイントを標的化する組成物は、これらのタンパク質を個体の自然免疫反応を変更するように調節する。本明細書記載の免疫チェックポイント阻害薬は、チェックにおける免疫反応を維持することを補助する免疫チェックポイント分子を阻害又はブロックするものである(例えばこれらは、T細胞などの細胞が、癌細胞を死滅することを維持する)。これらの免疫チェックポイント分子がブロック又は阻害される場合、免疫系の「ブレーキ」は解除され、並びにT細胞などの細胞は、より良く癌細胞を突き止め且つ死滅させることができる。従って本明細書において使用される免疫チェックポイント阻害薬は、免疫系を抑制する免疫チェックポイント分子の能力を阻害する分子である。一部の態様において、この阻害薬は、免疫チェックポイント分子、免疫チェックポイント分子の発現を制御する分子、又は免疫チェックポイント分子の活性を媒介する免疫チェックポイント分子のリガンドに、直接結合することができる。この阻害薬又は拮抗薬は、抗体(ヒト化抗体又はヒト抗体を含む)、小型分子、ペプチド、又は核酸(例えば、アンチセンス分子、又は一本鎖もしくは二本鎖のRNAi分子など)であってよい。
【0041】
一部の態様において、このチェックポイント阻害薬、生物学的治療薬又は小型分子である。一部の実施形態において、チェックポイント阻害薬は、モノクローナル抗体(例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体もしくは完全ヒト抗体)又は融合タンパク質である。一部の実施形態において、チェックポイント阻害薬は、CLTA-4、PD-1、又はPD-L1からなる群から選択されるチェックポイント阻害薬のリガンドを阻害する。一部の実施形態において、チェックポイント阻害薬は、PD-L1、PD-1、又はCTLA-4阻害薬である。
【0042】
一部の実施形態において、免疫チェックポイント阻害薬は、拮抗性のCTLA-4抗体などの、CTLA-4拮抗薬である。一部の実施形態において、CLTA-4拮抗薬は、ヤーボイ(イピリムマブ)、トレメリムマブ、AGEN1884、及びAGEN2041から選択される。
【0043】
一部の実施形態において、免疫チェックポイント阻害薬は、拮抗性のPD-1抗体などの、PD-1拮抗薬である。好適なPD-1抗体は、例えば、オプジーボ(ニボルマブ)、キイトルーダ(ペムブロリズマブ)、又はMEDI-0680(AMP-514)を含む。免疫腫瘍学的薬剤はまた、ピジリズマブ(CT-011)も含むが、PD-1結合に関するその特異性は、疑問視されている。PD-1受容体を標的化する別のアプローチは、AMP-224と称される、IgGlのFc部分に融合されたPD-L2(B7-DC)の細胞外ドメインで構成された組換えタンパク質である。
【0044】
一部の実施形態において、免疫チェックポイント阻害薬は、拮抗性のPD-Ll抗体などの、PD-Ll拮抗薬である。好適なPD-Ll抗体は、例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、BMS-936559、MPDL3280A(RG7446;W02010/077634)、及びMSB0010718Cを含む。
【0045】
一部の実施形態において、2種の免疫チェックポイント阻害薬が、IL-2受容体作動薬と組合せて使用され、例えばPD-L1拮抗薬又はPD-1拮抗薬がCTLA-4拮抗薬と組合せて使用される。
【0046】
本開示の抗体免疫チェックポイント阻害薬は、当該技術分野において公知の方法を使用し、調製され得る。例えば、本開示のヒトモノクローナル抗体は、それにヒト免疫細胞が再構成され、その結果免疫処置時にヒト抗体反応が生じ得るような、SCIDマウスを使用し、調製され得る。そのようなマウスは、例えば、Wilsonらの米国特許第5,476,996号及び第5,698,767号に記載されている。本開示の免疫チェックポイント阻害薬はまた、薬剤の分解を遅延するため又は抗体の免疫原性を最小化するために、製剤化され得る。この目的を達成するために、様々な技術が当該技術分野において公知である。
【0047】
C. 治療方法
本開示は、とりわけ、本開示のIL-2受容体作動薬を免疫チェックポイント阻害薬と組合せて対象へ投与することにより、対象において免疫反応を調節する方法を提供する。本明細書において使用される用語「対象」は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを指す。
【0048】
本明細書において使用される調節される「免疫反応」は、刺激に対する、B細胞、T細胞(CD4又はCD8)、制御性T細胞、抗原提示細胞、樹状細胞、単球、マクロファージ、NKT細胞、NK細胞、好塩基球、好酸球、又は好中球などの免疫系の細胞による反応を指す。一部の実施形態において、この反応は、特定の抗原について特異的であり(「抗原特異性反応」)、並びにそれらの抗原-特異性受容体を介した、CD4 T細胞、CD8 T細胞、又はB細胞による反応を指す。一部の実施形態において、免疫反応は、CD4+反応又はCD8+反応などのT細胞反応である。これらの細胞によるそのような反応は、例えば、細胞傷害性、増殖、サイトカインもしくはケモカイン産生、輸送、又は貪食などを含み、並びにその反応の基礎となる免疫細胞の性質に左右され得る。本明細書において説明された組成物及び方法の一部の実施形態において、調節された免疫反応は、T細胞に媒介される。免疫反応を測定する方法は、当該技術分野において公知であり、並びに、例えば、IL-6、IL-12及びTNF-αなどの炎症性サイトカイン、並びにCD80、CD86などの共刺激分子、及びケモカイン受容体を測定することを含む。
【0049】
更なる態様において、本開示は、本明細書記載の併用療法レジメンを、それを必要とする対象へ投与することを含む、癌を治療する方法を提供する。本明細書において使用される「治療する」又は「治療している」は、以下の1又は複数を達成することを意味する:(a)対象における腫瘍のサイズもしくは容積及び/又は転移を減少すること;(b)対象における腫瘍のサイズもしくは容積及び/又は転移のなんらかの増大を制限すること;(c)生存を延長すること;(d)癌に関連した症状の重症度を軽減すること;(e)癌に関連した症状の発現を制限又は防止すること;並びに、(f)癌に関連した症状の増悪を阻害すること。
【0050】
本方法は、結腸癌、メラノーマ、腎細胞癌、頭頸部の扁平上皮癌、胃癌、尿路上皮癌、ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝細胞癌、膵臓癌、メルケル細胞癌、大腸癌、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、子宮頸癌、乳癌、肝臓癌、腎細胞癌、メラノーマ、並びにマイクロサテライト不安定性、腫瘍細胞における遺伝子変異数、PD-L1発現レベル、又は免疫スコアアッセイ(癌免疫療法学会(SIC)により開発された)などの診断試験により選択された任意の腫瘍タイプを含む癌を治療するために使用することができるが、これらに限定されるものではない。一部の態様において、この癌は、固形腫瘍又は液性腫瘍である。一部の態様において、この癌は、チェックポイント阻害薬による単剤療法に抵抗するものである。一部の態様において、この癌は、チェックポイント阻害薬による単剤療法に感受性があるものである。
【0051】
更なる態様において、本開示は、本明細書記載の併用療法レジメンを、それを必要とする対象へ投与することを含む、対象における腫瘍の増殖を阻害する方法を提供する。これらの腫瘍は、固形癌又は液性癌に関連し得る。一部の態様において、この腫瘍は、結腸癌、メラノーマ、腎細胞癌、頭頸部の扁平上皮癌、胃癌、尿路上皮癌、ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝細胞癌、膵臓癌、メルケル細胞癌、大腸癌、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、子宮頸癌、乳癌、肝臓癌、腎細胞癌、又はメラノーマに関連している。
【0052】
一部の実施形態において、本明細書記載の方法は、先に説明されたIL-2受容体作動薬及び免疫チェックポイント阻害薬に加え、一つ又は複数の追加の薬剤を含む。例えばメラノーマなどの特定の癌において、抗TYRP1抗体などの更なる薬剤が、使用され得る。一部の実施形態において、抗TYPR1抗体は、TA99である。
【0053】
用語「治療的有効量」は、研究者、獣医師、医師又は他の治療提供者により求められる、細胞、組織、体系、又はヒトなどの動物の生物学的又は医学的反応を誘発するであろう、対象ペプチド、抗体、又は他の活性薬剤の量を意味する。
【0054】
用語「阻害する」又は「の阻害」は、測定可能な量だけ減少すること、又は全面的に防止することを意味する。本明細書において使用される用語阻害は、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%の阻害又は減少を指すことができる。
【0055】
本明細書において使用される用語相乗作用又は相乗効果は、組合せた薬剤の有効性の説明と結びつけて使用される場合、個別の薬剤の効果の合計から予測される効果よりも大きい(すなわち、相加効果よりも大きい)その組合せの何らかの測定された効果を意味する。一部の実施形態において、腫瘍増殖又は腫瘍サイズの速度(例えば、腫瘍のサイズ(例えば、容積、塊)の変化の速度)は、薬物の組合せが相乗的であるかどうかを決定するために使用される(例えば、腫瘍増殖の速度が、薬物の組合せが相加効果を生じる場合に予想されるものよりもより遅い場合に、この薬物の組合せは、相乗的である)。一部の実施形態において、生存期間は、薬物の組合せが相乗的であるかどうかを決定するために使用される(例えば、対象又は対象の集団の生存期間が、薬物の組合せが相加効果を生じる場合に予想されるものよりもより長い場合に、この薬物の組合せは、相乗的である)。
【0056】
D. 併用療法の投与方法
本明細書記載の方法は、IL-2受容体作動薬の治療的有効量及び一つ又は複数の免疫チェックポイント阻害薬の治療的有効量を、対象(例えば、ヒト対象)へ投与することを含む。一部の実施形態において、一つ又は複数の免疫チェックポイント阻害薬は、PD-1阻害薬である。一部の実施形態において、1又は複数の免疫チェックポイント阻害薬は、PD-L1阻害薬である。一部の実施形態において、一つ又は複数の免疫チェックポイント阻害薬は、CTLA-4阻害薬である。一部の実施形態において、一つ又は複数の免疫チェックポイント阻害薬は、PD-1阻害薬及びCTLA-4阻害薬である。一部の態様において、この治療薬の組合せは、相乗的に作用し、癌の治療もしくは予防、又は免疫反応の調節、又は腫瘍細胞の増殖の阻害に影響を及ぼす。
【0057】
疾患状態及び対象の病態に応じて、本開示のペプチド、抗体、及び製剤は、任意の好適な手段により投与されてよい。典型的にはペプチド療法及び抗体療法は、非経口的に投与される(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、ICV、嚢内への注射もしくは注入、皮下注射、又はインプラント)。他の投与様式、例えば経口投与が、更に本方法について適していることがある。加えてペプチド及び抗体は、各投与経路に適している常用の無毒の医薬として許容し得る担体、アジュバント及びビヒクルを含有する、好適な単位用量製剤において、単独で又は一緒に、製剤化されてよい。
【0058】
いずれか特定の患者に関する具体的投与量レベル及び投薬頻度は、変動してよく、並びに利用される活性薬剤の活性、これらの薬剤の代謝安定性及び作用時間、年齢、体重、遺伝性の特徴、全身の健康状態、性別、食事、投与様式及び時間、排泄率、併用薬、特定の病態の重症度、並びに宿主が受けている療法を含む、様々な要因によって左右されることは、理解されるであろう。IL-2受容体作動薬に関する好適な用量範囲は、例えば0.1ug/kg-100mg/kg体重であってよく;或いは、これは、0.5ug/kg~50mg/kg;1ug/kg~25mg/kg、又は5ug/kg~10mg/kg体重であってよい。他の実施形態において、推奨量は、体重/m2(すなわち、体表面積)を基にすることができ、及び/又はこれは、固定量(例えば、0.05~100mg)で投与されることができる。一部の態様において、IL-2模倣薬の好適な投与量範囲は、0.5ug/kg~30ug/kg又は1ug/kg~10ug/kg又は8ug/mgである。
【0059】
一般に、本明細書に提供される方法(例えば癌の治療)において効果があるIL-2受容体作動薬及びチェックポイント阻害薬の最適量は、標準の臨床技術により決定され得る。加えてインビトロアッセイが、至適用量範囲の確定を補助するために、任意に利用されてよい。製剤において利用される正確な投与量はまた、投与経路に及び悪性度の段階よっても左右され、並びに医療実践者の判断及び各患者の状況に従い決定されるべきである。有効量は、インビトロ又は動物モデルの試験系から誘導される用量-反応曲線から外挿されてよい。
【0060】
一部の実施形態において、IL-2受容体作動薬及びチェックポイント阻害薬は、最大耐用量(MTD)又は生物学的至適用量(OBD)で、対象へ投与されるであろう。MTD又はOBDの決定は、当該技術分野の範囲内である。一部の態様において、IL-2受容体作動薬は、そのMTD又はOBDで提供され、及びチェックポイント阻害薬は、MTD又はOBDの50%~100%、好ましくは50%~90%で投薬されるであろう。或いは、チェックポイント阻害薬は、そのMTD又はOBDで投薬され、及びIL-2受容体作動薬は、MTD又はOBDの50%~100%、好ましくは50%~90%で投薬されるであろう。一部の態様において、IL-2受容体作動薬及びチェックポイント阻害薬の両方は、MTD又はOBDの60%~90%で投薬されるであろう。
【0061】
本発明において使用されるように、併用レジメンは、同時に与えられることができるか、又は時間をずらしたレジメンで与えられることができ、チェックポイント阻害薬は、療法過程において、IL-2受容体作動薬とは異なる時点で与えられることができる。この時間差は、2種の薬剤の投与の間が、数分、数時間、数日、数週間、又はそれよりも長い範囲であってよい。従って用語併用投与量は、同時に、又は単一投与量として投与されることを必ずしも意味しないが、各成分は、所望の効果を提供するために所望の治療期間中に投与されることを意味する。これらの薬剤は、異なる経路で投与されてもよい。
【0062】
E. キット
一部の態様において、IL-2受容体作動薬及び一つ又は複数の免疫チェックポイント阻害薬を備えるキットが、本明細書において提供される。キットは、IL-2受容体作動薬を含有する医薬組成物、並びに例えば抗PD-1阻害薬、抗PD-L1及び/又は抗CTLA-4阻害薬など、免疫チェックポイント阻害薬を含む1又は複数の医薬組成物を備えることができる。一部の場合において、キットは、例えばペプチド、抗体又はそれらの医薬組成物の使用に関する説明書などの、紙資料を含む。限定するものではないが、キットは、緩衝液、希釈液、フィルター、針、注射器、及び本明細書に開示された任意の方法を実行するための指示を記した添付文書を含んでよい。
【0063】
前述の発明は、理解を明確にする目的で図表及び実施例により一部詳細に説明されているが、当業者は、ある種の変更及び改変が、添付されたクレームの範囲内で実践されて良いことを理解するであろう。加えて、本明細書に提供される各参考文献は、各参考文献が個別に引用により組み込まれているのと同じ程度に、その全体が引用により組み込まれている。本出願と本明細書に提供される参考文献の間に矛盾が存在する場合は、本出願が支配するものとする。
【実施例】
【0064】
II. 実施例
実施例1:例証的PEG化IL-2模倣薬の調製:
単独のE62C変異を伴うNeo-2/15ストック(配列番号:19)を、リン酸緩衝液、pH7.0に対して透析し、1.0~2.0mg/mlに調節した。TCEPを、タンパク質に対し、モル比10:1で添加し、RTで10分間インキュベーションし、ジスルフィドを還元した。マレイミド-修飾したPEG40k(PEG40k-MA)又はPEG30k(PEG30k-MA)の粉末を、還元したタンパク質溶液へ、PEG:システインのモル比10:1で直接添加し、撹拌しながら2時間インキュベーションした。SDS-PAGEのためのアリコートを、この反応混合物から直接採取した。これらのデータは、予想される化学量論での、PEG40k-MA又はPEG30k-MAとNeo-2/15システイン変異体の間の共有的連結の迅速で、自発的で、且つほぼ定量的な形成を明らかにしている。このPEG化IL-2模倣薬を、以下の実施例において使用する。
【0065】
実施例2:CT26マウス結腸癌モデルにおけるチェックポイント阻害とPEG化IL-2模倣薬の併用試験
この試験は、CT26マウス結腸癌モデルにおける、PD-1(aPD-1;クローンRMP1-14)及びPD-L1(aPD-L1;クローン10F.9G2)免疫チェックポイントの抗体阻害薬とIL-2R作動薬の組合せた抗腫瘍活性を評価するために実行した。CT26腫瘍細胞は、培養培地において維持した。これらの細胞を、指数増殖期に収集した。各BALB/cマウスに、0.1mL PBS中のCT26腫瘍細胞(5e5個)を、右背側脇腹に、皮下接種した。平均腫瘍サイズが80~120mm
3に到達した時点で、処置群への無作為化を行った。処置は、群別した直後に開始した。ビヒクルは、6用量について、隔週10mg/kgでip投与された非特異的抗体である。IL-2R作動薬(PEG化IL-2模倣薬)は、2用量について、60ug/kg QWでiv投与された。抗PD-1又は抗PD-L1は、6用量について、隔週10mg/kgで、ip投与された。腫瘍容積を、キャリパーを用い二次元で週に2回測定した。腫瘍容積は、式V=((LxW)xW)/2を用い、mm
3で表した。1000mm
3未満である腫瘍の割合を、(i)対照アーム、抗PD-1単剤療法アーム、PEG化IL-2模倣薬単剤療法アーム、及び抗PD-1/PEG化IL-2模倣薬併用療法アームについて(
図1及び表1参照)、並びに(i)対照アーム、抗PD-L1単剤療法アーム、PEG化IL-2模倣薬単剤療法アーム、及び抗PD-L1/PEG化IL-2模倣薬併用療法アーム(
図2及び表2参照)について、16、23、30、37、44、51、及び58日目に示している。
【表3】
【表4】
【0066】
ビヒクル処置したマウスに関するこの生存期間の中央値(MS)は、23日であった。MSは、aPD-L1処置により4日間増加した。MSは、低投与量PEG化IL-2模倣薬処置により7日間、並びにPEG化IL-2模倣薬処置及びaPD-L1の併用により18日間増加した。PEG化IL-2模倣薬処置及びaPD-L1の併用に関するMSの増加は、各単独の処置に比べ、相乗的である。
【0067】
PEG化IL-2模倣薬のaPD-1処置との併用試験に関して、MSは、相加効果を示したのに対し、腫瘍増殖の阻害は、様々な時点で相乗作用を示した。30日目に、aPD-1アームは、腫瘍の6.7%が1000mm3未満であることを示し、PEG化IL-2模倣薬アームは、腫瘍の33.3%が1000mm3未満であることを示したのに対し、この併用アームは、腫瘍の61.5%が1000mm3未満であることを示した。
【0068】
実施例3:MC38マウス結腸癌モデルにおけるチェックポイント阻害とPEG化IL-2模倣薬の併用試験
この試験は、MC38マウス結腸癌モデルにおける、PD-1(aPD-1;クローンRMP1-14)及びPD-L1(aPD-L1;クローン10F.9G2)免疫チェックポイントの抗体阻害薬とIL-2R作動薬の組合せた抗腫瘍活性を評価するために実行した。MC38腫瘍細胞は、培養培地において維持した。これらの細胞を、指数増殖期に収集した。各C57BL6マウスに、0.1mL PBS中のMC38腫瘍細胞(1e6個)を、右背側脇腹に、皮下接種した。平均腫瘍サイズが80~120mm
3に到達した時点で、処置群への無作為化を行った。処置は、群別した直後に開始した。ビヒクルは、6投与量について、隔週10mg/kgでip投与された非-特異的抗体である。IL-2R作動薬は、2投与量について、60ug/kgのQWでiv投与された。抗PD-1又は抗PD-L1は、6投与量について、隔週10mg/kgで、ip投与された。腫瘍容積を、キャリパーを用い二次元で週に2回測定した。腫瘍容積は、式V=((LxW)xW)/2を用い、mm
3で表した。1000mm
3未満である腫瘍の割合を、(i)対照アーム、抗PD-1単剤療法アーム、PEG化IL-2模倣薬単剤療法アーム、及び抗PD-1/PEG化IL-2模倣薬併用療法アームについて(
図3及び表3参照)、並びに(i)対照アーム、抗PD-L1単剤療法アーム、PEG化IL-2模倣薬単剤療法アーム、及び抗PD-L1/PEG化IL-2模倣薬併用療法アーム(
図4及び表4参照)について、15、22、29、36、43、及び50日目に示している。
【表5】
【表6】
【0069】
ビヒクルで処置したマウスに関するこの生存期間の中央値(MS)は、22日であった。MSは、aPD-L1処置により増加しなかったが、aPD-1処置により3日間増加した。MSは、低投与量PEG化IL-2模倣薬処置により7日間増加した一方で、PEG化IL-2模倣薬処置+aPD-1、及びPEG化IL-2模倣薬処置+aPD-L1により、17日間及び21日間増加し、PEG化IL-2模倣薬処置単独よりも、10日間及び14日間改善した。PEG化IL-2模倣薬処置及びaPD-1又はaPD-L1の併用に関するMSの増加は、各単独の処置に比べた場合、相乗的である。
【0070】
実施例4: B16F10マウスメラノーマモデルにおけるチェックポイント阻害とPEG化IL-2模倣薬の併用試験
この試験は、B16F10マウスメラノーマモデルにおける、CTLA-4阻害薬(aCTLA-4;クローン9D9)と組合せたPD-1(aPD-1;クローンRMP1-14)免疫チェックポイントの抗体阻害薬とPEG化IL-2模倣薬の組合せた抗腫瘍活性を評価するために実行した。B16F10腫瘍細胞は、培養培地において維持した。これらの細胞を、指数増殖期に収集した。各C57BL6マウスに、0.1mL PBS中のB16F10腫瘍細胞(2e5個)を、右背側脇腹に、皮下接種した。1群につき12匹の動物で、平均腫瘍サイズが~80mm
3に到達した時点で、処置群への無作為化を行った。処置は、群別した直後に開始した。ビヒクルは、6用量について、隔週10mg/kgでip投与された非特異的抗体である。PEG化IL-2模倣薬は、2投与量について、275ug/kgのQWでiv投与された。抗CTLA-4と併用する抗PD-1(下記表5及び
図5においてCPIと記す)は、6用量について、隔週10mg/kgで、ip投与された。腫瘍容積を、週に3回測定した。腫瘍容積は、式V=((L×W)×W)/2を用い、mm
3で表した。
図5参照。
【表7】
【0071】
ビヒクルで処置したマウスに関するこの生存期間の中央値(MS)は、10.5日であった。MSは、抗CTLA-4と併用した抗PD-1処置により1.5日増加し、並びにPEG化1L-2模倣薬により1.5日、並びに併用療法(抗PD1、抗CTLA-4及びPEG化IL-2模倣薬)により5.5日増加した。この併用に関するMSの増加は、各単独の処置に比べた場合、相乗的である。
【0072】
実施例5: CD8+細胞によるPD-1発現に対するPEG化IL-2模倣薬の効果
リンパ球による免疫チェックポイント受容体PD-1の発現に対するPEG化IL-2模倣薬刺激の効果を評価するために、10名のヒトドナー由来のPBMCを、単離し、且つPEG化IL-2模倣薬(0-30ng/ml)により処理し、その後洗浄し、染色し、且つフローサイトメトリーにより分析した。PEG化IL-2模倣薬刺激は、CD8+ T細胞によるPD-1発現の濃度-依存型の増加に繋がり、誘導された増殖と一致し、このことは、PEG化IL-2模倣薬のPD-1阻害薬との併用は、免疫チェックポイント-媒介したCD8+ T細胞阻害に勝ることを示唆している。
図6参照。
【配列表】
【国際調査報告】