(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-28
(54)【発明の名称】改良された封止および電気伝導手段を含む、寿命が改善された電気化学電池装置、ならびにその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/103 20210101AFI20230220BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20230220BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20230220BHJP
H01M 50/54 20210101ALI20230220BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20230220BHJP
H01M 50/176 20210101ALI20230220BHJP
H01M 50/545 20210101ALI20230220BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20230220BHJP
H01M 50/122 20210101ALI20230220BHJP
H01M 50/534 20210101ALI20230220BHJP
H01M 50/157 20210101ALI20230220BHJP
【FI】
H01M50/103
H01M10/04 Z
H01M10/0585
H01M50/54
H01M50/15
H01M50/176
H01M50/545
H01M50/121
H01M50/122
H01M50/534
H01M50/157
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538935
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(85)【翻訳文提出日】2022-08-22
(86)【国際出願番号】 IB2020062374
(87)【国際公開番号】W WO2021130687
(87)【国際公開日】2021-07-01
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514110783
【氏名又は名称】アイ テン
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ギャバン,ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ケイルフルク,イアン
【テーマコード(参考)】
5H011
5H028
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5H011BB03
5H011CC02
5H011CC05
5H011CC09
5H011EE04
5H011FF04
5H011JJ11
5H011KK00
5H028AA07
5H028BB01
5H028CC24
5H028EE04
5H028EE06
5H029AJ05
5H029AJ14
5H029AK11
5H029AL01
5H029BJ12
5H029CJ05
5H029CJ06
5H029DJ02
5H029DJ05
5H029EJ06
5H029EJ08
5H029EJ12
5H043AA02
5H043AA03
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA13
5H043DA03
5H043EA36
5H043EA38
5H043HA04E
5H043HA06E
5H043HA32
5H043JA15E
5H043JA19E
(57)【要約】
本電池は、少なくとも1つの陽極と少なくとも1つの陰極とを交互に繰り返すスタックと、該スタックの6面のうち4面を覆ういわゆる一次封止システムと、当該スタックと外部導電体との電気的接触を行うことができる少なくとも1つの陽極コンタクト部材と、当該スタックと外部導電体との電気的接触を行うことができる少なくとも1つの陰極コンタクト部材とから構成される。該電池は、追加封止システムをさらに備え、該追加封止システムは、各々が一次封止システムの各々の正面領域を覆う2つの正面領域と、各々がコンタクト部材のない一次封止システムの各々の側面領域を覆う2つの側面領域とを備える。追加封止システムの2つの正面領域の各々は、陽極コンタクト部材および陰極コンタクト部材の各々の正面端部をさらに覆い、追加封止システムの正面領域の各々は追加封止システムの側面領域と表面連続性を形成する、ことを特徴とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池(1000)であって、前記電池は、
少なくとも1つの陽極(20)と少なくとも1つの陰極(50)とを交互に繰り返すスタック(I)であって、それぞれは薄層のスタックによって形成されており、前記陽極(20)は、
少なくとも1つの陽極集電基板(21)と、
少なくとも1つの陽極活物質(22)の薄層と、
任意の、電解質材料(23)または電解質を含浸させたセパレータ(23’)の薄層と、を含み、前記陰極(50)は、
少なくとも1つの陰極集電基板(51)と、
少なくとも1つの陰極活物質(52)の薄層と、
任意の、電解質材料(53)または電解質を含浸させたセパレータ(53’)の薄層と、を含み、前記スタックは、
少なくとも1つの陽極集電基板(21)と、少なくとも1つの陽極活物質(22)の薄層と、少なくとも1つの電解質材料(23、53)または電解質を含浸させたセパレータ(23’、53’)の薄層と、少なくとも1つの陰極活物質(52)の薄層と、少なくとも1つの陰極集電基板(51)と、を連続的に含み、前記スタック(I)は、6つの面、すなわち、
陽極活物質(22)の前記薄層、電解質材料(23、53)または電解質を含浸させたセパレータ(23’、53’)の前記薄層、および陰極活物質(52)の前記薄層に対して概平行な、互いに対向し特に互いに対して平行な2つのいわゆる正面(F1、F2)と、
対になって互いに対向し特に対になって互いに平行な4つのいわゆる側面(F3、F4、F5、F6)と、を画定する、少なくとも1つの陽極(20)と少なくとも1つの陰極(50)とを交互に繰り返すスタック(I)と、
前記スタック(I)の前記6つの面のうちの少なくとも2つを覆ういわゆる一次封止システム(1020)であって、該封止システムは、前記正面(F1、F2)の全部または一部を覆う2つの正面封止領域(1021、1022)、および/または前記側面(F3、F5)の2つの全部または一部を覆う2つの側面封止領域(1023、1025)を含み、前記側面封止領域は、互いに対向し、特に互いに平行であることが好ましい、一次封止システム(1020)と、
少なくとも1つの陽極コンタクト部材(1040)であって、前記スタックと外部導電性要素との間の電気的接触を行うことができ、前記陽極コンタクト部材は、前記一次封止システム(1020)により覆われていない前記2つの側面(F4、F6)のうちの第1の面(F4)を少なくとも部分的に覆い、前記第1の面(F4)は少なくとも1つの陽極接続ゾーンを画定する、少なくとも1つの陽極コンタクト部材と、
少なくとも1つの陰極コンタクト部材(1050)であって、前記スタックと外部導電性要素との間の電気的接触を行うことができ、前記陰極コンタクト部材は、前記一次封止システム(1020)により覆われていない前記2つの側面のうちの第2の面(F6)を少なくとも部分的に覆い、前記第2の面(F6)は少なくとも1つの陰極接続ゾーンを画定する、少なくとも1つの陰極コンタクト部材と、を含み、
前記陽極(1040)および陰極(1050)コンタクト部材は、互いに対向し、特に互いに平行であることが好ましく、
前記電池は、いわゆる追加封止システム(1030)をさらに備え、該追加封止システムは、2つの正面領域(1031、1032)を含み、各々が前記一次封止システムの各々の正面領域(1021、1022)の任意の介在で前記スタックの正面を覆い、該追加封止システムは、2つの側面領域(1033、1035)をさらに備え、各々が前記一次封止システムの各々の側面領域(1023、1025)の任意の介在でコンタクト部材のない前記スタックの側面を覆い、
前記追加封止システム(1030)の前記2つの正面領域(1031、1032)の各々は、前記陽極コンタクト部材および前記陰極コンタクト部材の各々の正面端部(1041、1042、1051、1052)をさらに覆い、
前記追加封止システムの前記正面領域(1031、1032)の各々は、前記追加封止システムの前記側面領域(1033、1035)と表面連続性を形成する、電池。
【請求項2】
前記一次封止システムは、前記正面(F1、F2)の全部または一部を覆う2つの正面封止領域(1021、1022)と、前記側面(F3、F5)の2つの全部または一部を覆う2つの側面封止領域(1023、1025)とを含む、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記一次封止システムは、前記正面(F1、F2)の全部または一部を覆う2つの正面封止領域(1021、1022)のみを含む、請求項1に記載の電池。
【請求項4】
前記一次封止システムは、前記側面(F3、F5)の2つの面の全部または一部を覆う2つの側面封止領域(1023、1025)のみを含む、請求項1に記載の電池。
【請求項5】
前記追加封止システムの前記2つの正面領域の各々は、前記一次封止システムの前記各正面領域から前記スタックの側面軸(X)に沿って突出する2つの突出縁部(1031A、1031B、1032A、1032B)を区切り、各突出縁部が前記陽極コンタクト部材または前記陰極コンタクト部材の各々の端部を覆う、請求項2または3に記載の電池。
【請求項6】
前記スタックの前記側面軸(X)に沿って、前記一次封止システムは前記コンタクト部材の内側面まで延び、一方、前記追加封止システムは前記内側面を超えて、特にこれらコンタクト部材の外側面まで延びる、請求項5に記載の電池。
【請求項7】
前記追加封止システムの前記2つの正面領域の各々は、2つの突出リム(1031C、1031D、1032C、1032D)を区切り、その各々は、前記スタックの別の側面軸(Y)に沿って、前記一次封止システムのそれぞれの正面領域から、ならびに前記陽極および陰極コンタクト部材からの両方から突出し、前記突出リムは前記追加封止システムの前記正面領域と前記側面領域との間の前記表面連続性を確保する、請求項5または6に記載の電池。
【請求項8】
陽極(1040)および陰極(1050)コンタクト部材のそれぞれの各反対側の端部(1041、1042、1051、1052)は、一次封止システム(1020)の正面領域(1021、1022)と面一である、請求項1~7のいずれか一項に記載の電池。
【請求項9】
前記一次封止システム(1020)は、好ましくはパリレン、パリレンF、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコン、ポリアミド、ゾルゲルシリカ、有機シリカおよび/またはそれらの混合物の中から選択される、前記スタック(I)上に配置されている少なくとも1つの第1のカバー層を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の電池。
【請求項10】
前記陽極コンタクト部材(1040)および前記陰極コンタクト部材(1050)の各々は、導電性粒子を充填した材料からなる第1の電気接続層と、前記第1の電気接続層上に配置されている、金属箔または金属層を含む第2の電気接続層とを備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の電池。
【請求項11】
前記追加封止システム(1030)は、ガラス、セラミックおよびガラスセラミックの中から選択される封止層を備え、前記封止層は、好ましくは10
-5g/m
2・d未満の水蒸気透過率(WVTR)を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の電池。
【請求項12】
前記封止層の前記ガラス、セラミックス、およびガラスセラミックスは、
好ましくはSiO
2-B
2O
3と、Bi
2O
3-B
2O
3、ZnO-Bi
2O
3-B
2O
3、TeO
2-V
2O
5、およびPbO-SiO
2の中から選択される低融点ガラスと、
酸化物および/もしくは窒化物および/もしくはTa
2O
5および/もしくはアルミナ(Al
2O
3)および/もしくは酸窒化物および/もしくはSixNyおよび/もしくはSiO
2および/もしくはSiONならびに/または非晶質シリコンおよび/またはSiCと、の中から選択される、請求項11に記載の電池。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の電池の製造方法であって、
(a)陽極層、および任意に電解質材料または電解質を含浸させたセパレータの層で被覆された少なくとも1つの陽極集電基板の箔(以下、陽極箔と称する)を供給するステップと、
(b)陰極層、および任意に電解質材料または電解質を含浸させたセパレータの層で被覆された少なくとも1つの陰極集電基板の箔(以下、陰極箔と呼ぶ)を供給するステップと、
(c)少なくとも1つの陽極箔と少なくとも1つの陰極箔とを交互に繰り返して、少なくとも1つの陽極集電基板、少なくとも1つの陽極層、少なくとも1つの電解質材料または電解質を含浸させたセパレータの層、少なくとも1つの陰極層、および少なくとも1つの陰極集電基板を連続的に得る、前記スタック(I)を製造するステップと、
(d)ステップc)で得られた交互の箔のスタックを熱処理しかつ/または機械的に圧縮して、連結スタックを形成するステップと、
(e)少なくとも前記陽極および陰極接続ゾーン、好ましくは少なくとも陽極および陰極接続ゾーンを画定する面を露出させている、封止されかつ切断されたスタックを形成するように、前記いわゆる一次封止システム(1020)を製造するステップと、
(f)任意に、前記セパレータが電解質で含浸されるように、リチウム塩を含む液体電解質またはイオン液体などのリチウムイオンを運ぶ相で、前記切断されかつ封止されたスタックを含浸させるステップと、
(g)前記陽極および陰極コンタクト部材の各々を、前記一次封止システムで覆われていない前記スタックのそれぞれの側面に配置するステップと、
(h)ステップg)の後に得られた構造体に、前記コンタクト部材を含む前記連結スタックを封止することを意図された追加封止アセンブリ(1030’)を製造するステップと、
(i)前記追加封止システム(1030)を形成するように、前記陽極および陰極コンタクト部材を少なくとも部分的に露出させるステップと、を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の電池の製造方法。
【請求項14】
前記連結スタック(I)上にいわゆる一次封止アセンブリ(1020’)を製造するステップをさらに含み、前記一次封止システムは、前記一次封止アセンブリから製造される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記一次封止システムは、第1の切断面(II-II)に沿って2箇所のいわゆる一次切断を行うことによって、前記一次封止アセンブリから製造される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記追加封止システムは、前記第1の切断面の外側に延在する第2の切断面(V-V)に沿って2箇所のいわゆる追加切断を行うことによって、前記追加封止アセンブリから製造される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記方法のステップi)による前記陽極および陰極コンタクト部材を少なくとも部分的に露出させるステップは、研磨によって、または切断によって行われる、請求項12から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記いわゆる一次封止システム(1020)を前記製造するステップは、好ましくはパリレン、パリレンF、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコン、ポリアミド、ゾルゲルシリカ、有機シリカおよび/またはそれらの混合物の中から選択される、少なくとも1つの第1のカバー層の前記スタック(I)上への堆積を含むことを特徴とする、請求項12から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
コンタクト部材を含む前記連結スタックを封止することを意図された前記追加封止システムを製造するステップは、ガラス、セラミックおよびガラスセラミックの中から選択された封止層の堆積を含むことを特徴とする、請求項12から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ガラス、セラミックス、およびガラスセラミックスは、
好ましくはSiO
2-B
2O
3と、Bi
2O
3-B
2O
3、ZnO-Bi
2O
3-B
2O
3、TeO
2-V
2O
5、およびPbO-SiO
2の中から選択される低融点ガラスと、
酸化物および/もしくは窒化物および/もしくはTa
2O
5および/もしくはアルミナ(Al
2O
3)および/もしくは酸窒化物および/もしくはSixNyおよび/もしくはSiO
2および/もしくはSiONならびに/または非晶質シリコンおよび/またはSiCと、の中から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
陽極および陰極コンタクト部材の前記製造は、
少なくとも前記陽極接続ゾーンおよび少なくとも前記陰極接続ゾーン上に、導電性粒子を充填した材料からなる第1の電気接続層、好ましくは導電性粒子を充填した高分子樹脂および/またはゾルゲル法によって得られた材料からなる第1の電気接続層を堆積させるステップと、
任意に、前記第1の層は導電性粒子を充填した高分子樹脂および/またはゾルゲル法によって得られた材料からなる場合、乾燥ステップの後に、前記高分子樹脂および/またはゾルゲル法によって得られた前記材料を重合させるステップと、
前記第1の層上に、前記第1の電気接続層上に配置される第2の電気接続層、好ましくは金属箔または金属インクを含む第2の電気接続層を堆積させるステップであって、後者の場合、前記乾燥ステップはあるいは前記第2の電気接続層の前記堆積の後に実施され得ることに留意が必要である、前記第1の層上に、前記第1の電気接続層上に配置される第2の電気接続層を堆積させるステップと、を含むことを特徴とする、請求項12から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
各層が複数のいわゆる空白ゾーンを含む、陰極および陽極の層をそれぞれ連続して交互に繰り返す前記製造と、電池の所与のスタックを別の電池の少なくとも1つの他のスタックから分離することを可能にする前記切断とを、さらに含む、請求項12から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記空白ゾーンはチャネルによって対に接続されているバーを有し、この方法において前記バーの少なくとも一部は封止材で充填され、前記切断は、前記封止材で被覆された2つの対向する側面があるスタックを得るように行われる、請求項2に記載の電池を製造するための請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記空白ゾーンは全体的にI字形を有し、この方法において複数のスタックによって形成される少なくとも1つの列が生成され、この列の前記正面は少なくとも部分的に封止材で覆われ、前記切断は、前記封止材で覆われた正面があるスタックを得るように行われる、請求項3に記載の電池を製造するための請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池タイプの電気化学装置に関するものである。特に、リチウムイオン電池に適用することができる。本発明は、新規な電池構造に関するものであり、これにより、電池に改良された不浸透性封止特性および電気伝導特性、ならびにより長い寿命がもたらされる。本発明はさらに、これらの電池を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の電池、特にある種の薄膜電池は、酸素や水分によって劣化するため、長寿命化のために封止が必要である。特に、リチウムイオン電池は、水分に非常に敏感である。市場からは10年以上の寿命が求められており、その寿命を保証するための封止が必要である。
【0003】
薄膜リチウムイオン電池は、厚さは通常約1μmから約10μmの電極層と電解質層とからなる多層スタックである。また、複数の単位セルのスタックから構成されることもある。これらの電池は、自己放電に敏感であることが知られている。電極の位置、特に多層電池の電極の縁部の近接性と切断のクリーン性とによって、端部に漏れ電流が現れる、すなわち電池性能を低下させる潜行性短絡が発生する可能性がある。この現象は、電解質膜が非常に薄い場合、悪化する。
【0004】
このような固体薄膜リチウムイオン電池には、通常、リチウム金属層を有する陽極が用いられる。陽極材の体積は、電池の充放電サイクル中に大きく変化することが確認されている。より具体的には、充放電サイクル中に、リチウム金属の一部がリチウムイオンに変化し、そのリチウムイオンが陰極材料の構造中に挿入され、それに伴って陽極の体積が減少する。この体積の周期的な変動は、電極層と電解質層との機械的および電気的接触を劣化させ得る。そのため、電池の寿命が短くなる。
【0005】
また、陽極材の体積の周期的な変動は、電池セルの体積の周期的な変動を誘発する。そのため、封止材に周期的な応力が発生し、封止材に亀裂が入りやすくなり、封止材の不浸透性が損なわれる(あるいは完全性が損なわれる)。この現象は、電池の寿命を縮めるもう1つの原因である。
【0006】
より具体的には、リチウムイオン電池の活物質は空気、特に湿気に非常に敏感である。可動リチウムイオンは、微量の水分と自発的に反応してLiOHを形成し、電池の暦年劣化を引き起こす。水と反応したリチウムはエネルギーを蓄えることができなくなり、電池の寿命が短くなる。このため、電池の製造時には、完全な無水状態を維持するために細心の注意を払う必要がある。また、電池の寿命を保証するために、電池容量のさらなる減少につながる水の透過を防ぐ密閉封止によって、電池を外部環境から保護している。
【0007】
この封止構造による水の透過はよく知られた現象である。封止構造の不浸透性は、通常、水蒸気透過率(WVTR)として表される。この透過率は、使用する材料、製造方法、厚さによって異なる。
【0008】
リチウムイオン電池では、封止材の品質が最も重要である。
【0009】
また、リチウムイオン伝導性電解質や挿入剤は、いずれも水分に対して非反応的である。例えば、Li4Ti5O12は、大気や微量の水と接触しても劣化しない。これに対し、Li4+xTi5O12(x>0)の形でリチウムを充填した途端、挿入されたリチウムの余剰分(x)は大気に敏感で、微量の水と自発的に反応してLiOHを形成してしまう。そのため、反応したリチウムは電気を蓄えることができなくなり、電池の容量が低下してしまう。
【0010】
リチウムイオン電池の活物質が空気や水に曝露されるのを防ぎ、このような経年劣化を防ぐには、封止システムで保護する必要がある。薄膜電池のための多数の封止システムが文献に記載されている。
【0011】
米国特許出願公開第2002/0071989号明細書には、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、窒化ケイ素(Si3N4)、炭化ケイ素(SiC)、酸化タンタル(Ta2O5)および非晶質炭素から選択される誘電材料の第1層、誘電材料の第2層および第2層上に配置されて電池全体を覆う不浸透性封止層のスタックを含む固体薄膜電池用の封止システムが記載されている。
【0012】
米国特許第5561004号明細書は、薄膜リチウムイオン電池を保護するための複数のシステムを記載している。最初に提案されたシステムは、電池の能動部品上に堆積されたアルミニウム膜で覆われたパリレン層を含む。しかし、この方式では、空気や水蒸気の拡散を防ぐために、1ヶ月程度しか有効でない。もう1つは、パリレン(厚さ500nm)と金属(厚さ約50nm)とを交互に繰り返したものを含む。同文献では、これらの電池を紫外線硬化型(UV-cured)エポキシ被膜で再度被膜し、大気成分による電池の劣化速度を抑えることが望ましいとしている。
【0013】
また、本出願人が出願した国際公開第2019/002768には、電気化学装置の典型的な配置が記載されているので、参照されたい。この文献に開示されているように、このような装置は、単位スタックを備え、その各セルは、陽極およびそれぞれの陰極集電基板、陽極およびそれぞれの陰極層、ならびに電解質材料または電解質を含浸させたセパレータの少なくとも1層を含む。陽極およびそれぞれの陰極接点は、このスタックの対向する側面に設けられている。
【0014】
最後に、道路に組み込まれることを意図された電池を開示している米国特許出願公開第2019/368141号明細書について言及する。この電池は、封止体150と、電池の要素を道路構造内に収容しておくためのカーブ160とを含む。
【0015】
先行技術によれば、ほとんどのリチウムイオン電池は、電池セルの周りで包囲され、接続タブで熱封止された金属化ポリマー箔(「パウチ」と呼ばれる)中に封入されている。これらの包装は比較的可撓性を有し、電池の正負接続部は、このように電池の周りの包装を封止するために使用された熱封止ポリマーに埋め込まれている。しかし、電池を熱封止するために使用されたポリマーは大気中の気体に対して比較的透過性があるため、このポリマー箔間の溶接は大気中の気体に対して完全に不浸透性ではない。この透過性は、温度が高くなるにつれて高くなり、経年劣化を加速させることが確認されている。
【0016】
しかし、この溶接部が大気に曝露される面積は非常に小さくされており、残りの部分はこのポリマー箔の間に挟まれたアルミニウム箔で形成されている。一般に、2枚のアルミ箔は、それぞれのアルミ箔の欠陥となる穴の存在による影響を最小限に抑えるために組み合わされる。これにより、各アルミ箔の欠陥が2つ揃う確率は大幅に減少する。
【0017】
これらの包装技術により、10Ahの電池(表面積10×20cm2)の場合、通常の使用条件下で約10~15年の暦年寿命が保証される。しかし、電池が高温に曝露された場合、この寿命は5年未満となり、多くの用途において不十分となり得る。同様の技術は、コンデンサーや能動部品など、他の電子部品にも応用することができる。
【0018】
そのため、薄膜電池やその他の電子部品を空気、湿気、温度の影響から保護する封止システムおよび方法が必要とされている。特に、薄膜リチウムイオン電池を空気や湿気から保護し、電池が充放電サイクルにさらされたときの劣化から保護するためのシステムおよび方法が必要とされている。封止システムは、不浸透かつ密閉封止であらねばならず、部品または電池を完全に包囲して覆わなければならず、電池セルの寸法のわずかな変化(「呼吸」)に対応できるように可撓性を有しなければならず、また、あらゆる潜行性短絡を防ぐために反対極性の電極の縁部を電気的に分離することを可能にしなければならない。
【0019】
本発明の1つの目的は、先行技術の前述の欠点を少なくとも部分的に克服することである。
【0020】
本発明の他の目的は、非常に長い寿命と低い自己放電率とを有するリチウムイオン電池を提案することである。
【0021】
特に、電池のような非常に長い寿命を有する電子または電気化学装置を、簡単で、実施しやすく、信頼性が高く、迅速な方法で製造することができる方法を提案することを目的とする。特に、短絡のリスクを低減し、特に、自己放電率が低く、非常に長い寿命を有する電池などの電気化学装置を製造することが可能になる方法を提案することを目的とする。
【発明の概要】
【0022】
上記目的の少なくとも1つは、以下に記載する本発明による対象の少なくとも1つを通じて達成される。本発明は、第1の対象として、電池(1000)を提供し、前記電池は、以下を含む。
少なくとも1つの陽極(20)と少なくとも1つの陰極(50)とを交互に繰り返すスタック(I)であって、それぞれは薄層のスタックによって形成されており、前記陽極(20)は、
少なくとも1つの陽極集電基板(21)と、
少なくとも1つの陽極活物質(22)の薄層と、
任意の、電解質材料(23)または電解質を含浸させたセパレータ(23’)の薄層と、を含み、前記陰極(50)は、
少なくとも1つの陰極集電基板(51)と、
少なくとも1つの陰極活物質(52)の薄層と、
任意の、電解質材料(53)または電解質を含浸させたセパレータ(53’)の薄層と、を含み、前記スタックは、
少なくとも1つの陽極集電基板(21)と、少なくとも1つの陽極活物質(22)の薄層と、少なくとも1つの電解質材料(23、53)または電解質を含浸させたセパレータ(23’、53’)の薄層と、少なくとも1つの陰極活物質(52)の薄層と、少なくとも1つの陰極集電基板(51)と、を連続的に含み、前記スタック(I)は、6つの面、すなわち、
陽極活物質(22)の前記薄層、電解質材料(23、53)または電解質を含浸させたセパレータ(23’、53’)の前記薄層、および陰極活物質(52)の前記薄層に対して概平行な、互いに対向し特に互いに対して平行な2つのいわゆる正面(F1、F2)と、
対になって互いに対向し特に対になって互いに平行な4つのいわゆる側面(F3、F4、F5、F6)と、を画定する、少なくとも1つの陽極(20)と少なくとも1つの陰極(50)とを交互に繰り返すスタック(I)と、
前記スタック(I)の前記6つの面のうちの少なくとも2つを覆ういわゆる一次封止システム(1020)であって、該封止システムは、前記正面(F1、F2)の全部または一部を覆う2つの正面封止領域(1021、1022)、および/または前記側面(F3、F5)の2つの全部または一部を覆う2つの側面封止領域(1023、1025)を含み、前記側面封止領域は、互いに対向し、特に互いに平行であることが好ましい、一次封止システム(1020)と、
少なくとも1つの陽極コンタクト部材(1040)であって、前記スタックと外部導電性要素との間の電気的接触を行うことができ、前記陽極コンタクト部材は、前記一次封止システム(1020)により覆われていない前記2つの側面(F4、F6)のうちの第1の面(F4)を少なくとも部分的に覆い、前記第1の面(F4)は少なくとも1つの陽極接続ゾーンを画定する、少なくとも1つの陽極コンタクト部材と、
少なくとも1つの陰極コンタクト部材(1050)であって、前記スタックと外部導電性要素との間の電気的接触を行うことができ、前記陰極コンタクト部材は、前記一次封止システム(1020)により覆われていない前記2つの側面のうちの第2の面(F6)を少なくとも部分的に覆い、前記第2の面(F6)は少なくとも1つの陰極接続ゾーンを画定する、少なくとも1つの陰極コンタクト部材と、を含み、
前記陽極(1040)および陰極(1050)コンタクト部材は、互いに対向し、特に互いに平行であることが好ましく、
前記電池は、いわゆる追加封止システム(1030)をさらに備え、該追加封止システムは、2つの正面領域(1031、1032)を含み、各々が前記一次封止システムの各々の正面領域(1021、1022)の任意の介在で前記スタックの正面を覆い、該追加封止システムは、2つの側面領域(1033、1035)をさらに備え、各々が前記一次封止システムの各々の側面領域(1023、1025)の任意の介在でコンタクト部材のない前記スタックの側面を覆い、
前記追加封止システム(1030)の前記2つの正面領域(1031、1032)の各々は、前記陽極コンタクト部材および前記陰極コンタクト部材の各々の正面端部(1041、1042、1051、1052)をさらに覆い、
前記追加封止システムの前記正面領域(1031、1032)の各々は、前記追加封止システムの前記側面領域(1033、1035)と表面連続性を形成する。
【0023】
分離してとらえることができる、または技術的な互換性を有する任意の特徴である、本発明による電池の他の特徴によれば、以下の通りである。
【0024】
前記一次封止システムは、前記正面(F1、F2)の全部または一部を覆う2つの正面封止領域(1021、1022)と、前記側面(F3、F5)の2つの全部または一部を覆う2つの側面封止領域(1023、1025)とを備える。
【0025】
前記一次封止システムは、前記正面(F1、F2)の全部または一部を覆う2つの正面封止領域(1021、1022)のみからなる。
【0026】
前記一次封止システムは、前記側面(F3、F5)のうちの2つの面の全部または一部を覆う2つの側面封止領域(1023、1025)のみからなる。
【0027】
前記追加封止システムの前記2つの正面領域の各々は、前記一次封止システムの前記各正面領域から前記スタックの側面軸(X)に沿って突出する2つの突出縁部(1031A、1031B、1032A、1032B)を区切り、各突出縁部が前記陽極コンタクト部材または前記陰極コンタクト部材の各々の端部を覆う。
【0028】
前記スタックの前記側面軸(X)に沿って、前記一次封止システムは前記コンタクト部材の内側の面まで延び、一方、前記追加封止システムは前記内側面を超えて、特にこれらコンタクト部材の外側面まで延びる。
【0029】
前記追加封止システムの前記2つの正面領域の各々は、2つの突出リム(1031C、1031D、1032C、1032D)を区切り、その各々は、前記スタックの別の側面軸(Y)に沿って、前記一次封止システムのそれぞれの正面領域から、ならびに前記陽極および陰極コンタクト部材からの両方から突出し、前記突出リムは前記追加封止システムの前記正面領域と前記側面領域との間の前記表面連続性を確保する。
【0030】
陽極(1040)および陰極(1050)コンタクト部材のそれぞれの各反対側の端部(1041、1042、1051、1052)は、一次封止システム(1020)の正面領域(1021、1022)と面一である。
【0031】
前記一次封止システム(1020)は、好ましくはパリレン、パリレンF、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコン、ポリアミド、ゾルゲルシリカ、有機シリカおよび/またはそれらの混合物の中から選択される、前記スタック(I)上に配置されている少なくとも1つの第1のカバー層を含む。
【0032】
前記陽極コンタクト部材(1040)および前記陰極コンタクト部材(1050)の各々は、導電性粒子を充填した材料からなる第1の電気接続層と、前記第1の電気接続層上に配置されている、金属箔または金属層を含む第2の電気接続層とを備える。
【0033】
前記追加封止システム(1030)は、ガラス、セラミックおよびガラスセラミックの中から選択される封止層を備え、前記封止層は、好ましくは10-5g/m2・d未満の水蒸気透過率(WVTR)を有する。
【0034】
前記封止層の前記ガラス、セラミックス、およびガラスセラミックスは、
好ましくはSiO2-B2O3と、Bi2O3-B2O3、ZnO-Bi2O3-B2O3、TeO2-V2O5、およびPbO-SiO2の中から選択される低融点ガラスと、
酸化物および/もしくは窒化物および/もしくはTa2O5および/もしくはアルミナ(Al2O3)および/もしくは酸窒化物および/もしくはSixNyおよび/もしくはSiO2および/もしくはSiONならびに/または非晶質シリコンおよび/またはSiCと、の中から選択される。
【0035】
また、本発明は、上記電池の製造方法に関するものであり、当該製造方法は、
(a)陽極層、および任意に電解質材料または電解質を含浸させたセパレータの層で被覆された少なくとも1つの陽極集電基板の箔(以下、陽極箔と称する)を供給するステップと、
(b)陰極層、および任意に電解質材料または電解質を含浸させたセパレータの層で被覆された少なくとも1つの陰極集電基板の箔(以下、陰極箔と呼ぶ)を供給するステップと、
(c)少なくとも1つの陽極箔と少なくとも1つの陰極箔とを交互に繰り返して、少なくとも1つの陽極集電基板、少なくとも1つの陽極層、少なくとも1つの電解質材料または電解質を含浸させたセパレータの層、少なくとも1つの陰極層、および少なくとも1つの陰極集電基板を連続的に得る、前記スタック(I)を製造するステップと、
(d)ステップc)で得られた交互の箔のスタックを熱処理しかつ/または機械的に圧縮して、連結スタックを形成するステップと、
(e)少なくとも前記陽極および陰極接続ゾーン、好ましくは少なくとも陽極および陰極接続ゾーンを画定する面を露出させている、封止されかつ切断されたスタックを形成するように、前記いわゆる一次封止システム(1020)を製造するステップと、
(f)任意に、前記セパレータが電解質で含浸されるように、リチウム塩を含む液体電解質またはイオン液体などのリチウムイオンを運ぶ相で、前記切断されかつ封止されたスタックを含浸させるステップと、
(g)前記陽極および陰極コンタクト部材の各々を、前記一次封止システムで覆われていない前記スタックのそれぞれの側面に配置するステップと、
(h)ステップg)の後に得られた構造体に、前記コンタクト部材を含む前記連結スタックを封止することを意図された追加封止アセンブリ(1030’)を製造するステップと、
(i)前記追加封止システム(1030)を形成するように、前記陽極および陰極コンタクト部材を少なくとも部分的に露出させるステップと、を含む。
【0036】
分離してとらえることができる、または技術的な互換性を有する任意の特徴である、本発明による電池の他の特徴によれば、以下の通りである。
【0037】
前記連結スタック(I)上にいわゆる一次封止アセンブリ(1020’)を製造するステップをさらに含み、前記一次封止システムは、前記一次封止アセンブリから製造される。
【0038】
前記一次封止システムは、第1の切断面(II-II)に沿って2箇所のいわゆる一次切断を行うことによって、前記一次封止アセンブリから製造される。
【0039】
前記追加封止システムは、前記第1の切断面の外側に延在する第2の切断面(V-V)に沿って2箇所のいわゆる追加切断を行うことによって、前記追加封止アセンブリから製造される。
【0040】
前記方法のステップi)による前記陽極および陰極コンタクト部材の少なくとも部分的に露出させるステップは、研磨によって、または切断によって行われる。
【0041】
前記いわゆる一次封止システム(1020)を前記製造するステップは、好ましくはパリレン、パリレンF、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコン、ポリアミド、ゾルゲルシリカ、有機シリカおよび/またはそれらの混合物の中から選択される、少なくとも1つの第1のカバー層の前記スタック(I)上への堆積を含むことを特徴とする。
【0042】
コンタクト部材を含む前記連結スタックを封止することを意図された前記追加封止システムを製造するステップは、ガラス、セラミックおよびガラスセラミックの中から選択された封止層の堆積を含むことを特徴とする。
【0043】
前記ガラス、セラミックス、およびガラスセラミックスは、
好ましくはSiO2-B2O3と、Bi2O3-B2O3、ZnO-Bi2O3-B2O3、TeO2-V2O5、およびPbO-SiO2の中から選択される低融点ガラスと、
酸化物および/もしくは窒化物および/もしくはTa2O5および/もしくはアルミナ(Al2O3)および/もしくは酸窒化物および/もしくはSixNyおよび/もしくはSiO2および/もしくはSiONならびに/または非晶質シリコンおよび/またはSiCと、の中から選択される。
【0044】
陽極および陰極コンタクト部材の前記製造は、
少なくとも前記陽極接続ゾーンおよび少なくとも前記陰極接続ゾーン上に、導電性粒子を充填した材料からなる第1の電気接続層、好ましくは導電性粒子を充填した高分子樹脂および/またはゾルゲル法によって得られた材料からなる第1の電気接続層を堆積させるステップと、
任意に、前記第1の層は導電性粒子を充填した高分子樹脂および/またはゾルゲル法によって得られた材料からなる場合、乾燥ステップの後に、前記高分子樹脂および/またはゾルゲル法によって得られた前記材料を重合させるステップと、
前記第1の層上に、前記第1の電気接続層上に配置される第2の電気接続層、好ましくは金属箔または金属インクを含む第2の電気接続層を堆積させるステップであって、後者の場合、前記乾燥ステップはあるいは前記第2の電気接続層の前記堆積の後に実施され得ることに留意が必要である、前記第1の層上に、前記第1の電気接続層上に配置される第2の電気接続層を堆積させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0045】
各層が複数のいわゆる空白ゾーンを含む、陰極および陽極の層をそれぞれ連続させて交互に繰り返す前記製造と、電池の所与のスタックを別の電池の少なくとも1つの他のスタックから分離することを可能にする前記切断とを、さらに含む。
【0046】
前記空白ゾーンはチャネルによって対に接続されているバーを有し、前記バーの少なくとも一部は封止材で満たされている場合、前記切断は、前記封止材で被覆された2つの対向する側面があるスタックを得るように行われる。
【0047】
前記空白ゾーンは全体的にI字形を有する場合、複数のスタックによって形成される少なくとも1つの列が生成され、この列の前記正面は少なくとも部分的に封止材で覆われ、前記切断は、前記封止材で覆われた正面があるスタックを得るように行われる。
【0048】
本発明によれば、封止は、2つの別個の封止システムによって提供される。これらのシステムは、特にその寸法の点で異なっている。より具体的には、追加封止システムは、一次封止システムよりも大きな寸法を有し、空間内の少なくとも1つの方向においてこの一次システムから突出することが可能である。さらに、これら2つのシステムは、それらが作られる材料およびその寸法の点で有利に異なっている。これらの別個の封止システムの組み合わせは、なかんずく、特に満足のいく不浸透性を調達する。さらに、本発明によれば、コンタクト部材が位置決めされた後に、追加システムを製造することができる。
【0049】
先行技術には、別個の封止システム間のこのような組み合わせは開示されていないことに留意すべきである。特に、この組み合わせは、前述の国際公開第2019/002768号の教示には現れない。本質的に、この先行技術文献は、その主請求項において言及されているように、単一の封止システムを使用している。
【図面の簡単な説明】
【0050】
本発明の特定の態様および実施形態について、非限定的な例としてのみ与えられている添付の図を参照して示す。
【
図1】
図1は、本発明による電池の前の形である、6つの面を画定するスタック(I)の切断面を有する正面図を図解的に示し、少なくとも1つの陽極集電基板(21)、陽極活物質の少なくとも1つの薄層(22)、電解質材料(23、53)または電解質を含浸させたセパレータ(23’、53’)の少なくとも1つの薄層、陰極活物質の少なくとも1つの薄層(52)、および陰極集電基板(51)の少なくとも1つの薄層が連続的に含まれている。
【
図2】
図2は、一次封止システムに封止されたスタックの切断面を有する正面図を図解的に示す。
【
図3】
図3は、一次封止システムで封止されたスタックの切断面を有する正面図を図解的に示し、陽極および陰極接続ゾーンは、
図2に見える切断面II-IIに沿って露出されている。
【
図4】
図4は、電池の前の形であるスタックの切断面を有する正面図を図解的に示し、一次封止システムによって覆われたスタックの内部構造および本発明によるコンタクト部材の内部構造を示す。
【
図5】
図5は、一次封止システムといわゆる追加封止システムとで封止されたスタックの切断面を有する正面図を図解的に示し、電池の内部構造を示す。
【
図6】
図6は、一次封止システムおよびいわゆる追加封止システムにおいて封止されたスタックの、電池の内部構造を示す切断面を有する正面図を図解的に示し、陽極および陰極接続ゾーンは、
図5に見える切断面V-Vに沿って露出されている。
【
図7】
図7は、本発明による電池の側面図を図解的に示し、追加封止システムによってその周辺で囲まれた陽極コンタクト部材の外面を示す。
【
図8】
図8は、一次封止システムが単位スタックの2つの面のみを覆っている、本発明の代替的な実施形態を示す断面図である。
【
図9】
図9は、一次封止システムが単位スタックの2つの面のみを覆っている、本発明の代替的な実施形態を示す断面図である。
【
図10】
図10は、本発明による電池の製造方法の2つの代替的な実施形態に存在する、重ね合わせて配置されている陽極箔と陰極箔とを示す斜視図である。
【
図11】
図11は、本発明による電池の製造方法の2つの代替的な実施形態に存在する、重ね合わせて配置されている陽極箔と陰極箔とを示す斜視図である。
【
図12】
図12は、
図8の代替的な実施形態による電池の製造の一ステップを示す正面図である。
【
図13】
図13は、
図9の代替的な実施形態による電池の製造の一ステップを示す正面図である。
【
図14】
図14は、
図9の代替的な実施形態による電池の製造の一ステップを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、第1の代替的な実施形態による電気化学装置を示し、これは、全体として参照符号1によって示されている電池である。この電池は、それ自体既知の方法で、少なくとも1つの陽極(20)と少なくとも1つの陰極(50)とを交互に繰り返すスタック(I)からなる。
【0052】
この陽極(20)は、少なくとも1つの陽極集電基板(21)と、陽極活物質の少なくとも1つの薄層(22)とからなる。図示の例では、この陽極は、電解質材料(23)または電解質を含浸させたセパレータ(23’)の薄層をさらに含んでいるが、これは任意である。
【0053】
さらに、陰極(50)は、少なくとも1つの陰極集電基板(51)と、陰極活物質の少なくとも1つの薄層(52)とからなる。この陰極は、図示の例では、電解質材料(53)または電解質を含浸させたセパレータ(53’)の薄層をさらに含んでいるが、これは任意である。
【0054】
その結果、前述のスタックは、少なくとも1つの陽極集電基板(21)、少なくとも陽極活物質の少なくとも1つの薄層(22)、少なくとも1つの電解質材料(23、53)または電解質を含浸したセパレータ(23’、53’)の薄層、陰極活物質の少なくとも1つの薄層(52)および少なくとも1つの陰極集電基板(51)を連続的に含んでいる。
【0055】
有利には、スタックが製造された後、電池は、熱処理および/または機械的圧縮によって組み立てることができる。電池を組み立てることを可能にするスタックの熱処理は、有利には、50℃と500℃との間を含む温度で、好ましくは350℃より低い温度で行われる。スタックの機械的圧縮は、有利には、10MPaと100MPaとの間、好ましくは20MPaと50MPaとの間を含む圧力で実行される。
【0056】
このスタックIは、全体として平行六面体であり、6つの面を有する。慣例により、上記の異なる層に対して実質的に平行な、対向するいわゆる端面または正面は、まず参照符号F1およびF2によって示されている。スタック2はまた、4つの側面F3~F6を画定し、これらは一対で互いに平行でありかつ対向している。このスタックに関連する直交座標系XYZが定義され、ここで、Z方向は、上記正面に対して垂直であるという意味で、正面の方向であると言われ、一方、他のXおよびY方向は、側面の方向であると言われる。
【0057】
このスタックは、任意の適切な方法によって製造することができる。本発明による一次封止システム、追加封止システムおよびコンタクト部材からなる電池のアーキテクチャは、側面方向に対向する陽極および陰極接続ゾーンを有するスタックに特に適応している。スタックの第1の実施形態を表す
図1に示す例では、スタックを形成する層は、各単位セルが、陰極接続ゾーンで電気的接触を可能にする陰極集電体の連続的なゾーンと、陽極接続ゾーンで電気的接触を可能にする陽極集電体の連続的なゾーンとを画定するように、凹部(1070)を有している。この配置により、陽極接続ゾーンと陰極接続ゾーンとを互いに側面方向に対向させることができる。
【0058】
図1は、電池の他の最終構成要素を除き、このスタックIを別々に取り出して示したものである。この電池を製造するためには、
図2に示すように、まず、スタックIの6つの面を、参照符号1020’で示される一次封止アセンブリで覆わなければならない。このアセンブリ1020’を形成する6つの領域は、参照符号1021’~1026’で示され、それぞれスタックの6つの面を覆っている。このアセンブリ1020’は、以下に見られるように、電池を大気から保護するための一次封止システム1020を形成することが意図されている。この一次封止システムは、有利には、化学的に安定であり、高温に耐えることができる。それは、追加のバリア層機能を提供するために、大気に対して不透過性とすることができるが、本明細書で以下に見られるように、主要なバリア層機能は、追加の封止によって提供される。この一次封止を形成するように意図された材料は、任意の適切な種類のものであり、特にこの一次封止システム1020は、好ましくはパリレン、パリレンF、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコン、ポリアミド、ゾルゲルシリカ、有機シリカおよび/またはそれらの混合物の中から選択される少なくとも1つの第1のカバー層が、スタック(I)上に配置されてなるものである。
【0059】
典型的には、この第1のカバー層は、以下からなる群から選択される。すなわち、シリコン(例えば含浸によって、またはヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)からのプラズマ強化化学気相成長法によって堆積されたもの)、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリパラキシリレン(パリレンとしてよりよく知られているポリ(p-キシリレン))、および/またはこれらの混合物である。この第1のカバー層は、電池の敏感な素子をその環境から保護する。上記第1のカバー層の厚さは、好ましくは、0.5μmと3μmとの間を含んでいる。
【0060】
パリレンの異なる変種を使用することができる。有利には、この第1のカバー層は、パリレンC、パリレンD、パリレンN(CAS1633-22-3)、パリレンF、またはパリレンC、D、Nおよび/もしくはFの混合物から作ることができる。パリレンは、高い熱力学安定性と優れた耐溶剤性と非常に低い透過性とを有する誘電性の透明半結晶性材料である。また、パリレンは、電池をその外部環境から保護するためのバリア性を有している。この第1のカバー層は、有利には、化学気相成長法(CVD)により表面に堆積された気体状モノマーの凝縮から得られ、その結果、スタックのアクセス可能な全表面がコンフォーマルに、薄く、均一に覆われることになる。この第1のカバー層は、有利には硬く、可撓性を有する表面とは見なすことができない。
【0061】
スタックの6つの面が上記封止アセンブリ1020’の6つの領域によって覆われると、陽極および陰極接続ゾーンが、任意の適切な手段によって、
図2の平面II-IIによって露出され、これは典型的には正面F4およびF6に平行である。このアセンブリ1020’は、有利には、パリレン-ALD-パリレン層の連続的な堆積によって製造することができる。陽極および陰極接続ゾーンは、好ましくは、いわゆる一次切断によって露出される。これらの切断は、好ましくは、
図3に示すように、封止アセンブリの側面領域1024’、1026’を除去することを可能にし、その結果、陽極および陰極接続ゾーンが露出される。あるいは、このような露出は、切断とは異なるステップによって得ることができる。特に、化学エッチング、レーザー切断(またはレーザーアブレーション)、フェムト秒レーザー切断、マイクロ穿孔またはスタンピングなど、任意の適切な手段によって実施することが可能である。このような露出は、好ましくは、鋸切断、研磨、特にフェルトおよび研磨ペーストを使用した研磨、擦過および/またはプラズマエッチングによって実施される。
【0062】
これらの一次切断が完了すると、参照符号1020で示される、一次封止システムで覆われたスタックが得られる。スタックの面F1、F2、F3およびF5を覆う、この封止システムを形成する領域は、参照符号1021、1022、1023および1025で示されている。液体電解質で含浸された電池の場合、液体電解質による電池の含浸は、有利には、一次封止システムによって覆われたスタックを得た後、それぞれ対向する側面F4およびF6に存在する陽極および陰極接続が露出している状態で、リチウム塩を含む液体電解質またはイオン液体のようなリチウムイオンを運ぶ相によって、行われる。このリチウムイオンを運ぶ相は、毛細管現象によって電池の空隙、特に電池のセパレータに浸透する。
【0063】
陽極および陰極接続ゾーンが露出している対向する側面F4およびF6では、任意に、液体電解質で電池を含浸させた後、
図4に示すように、陽極1040およびそれぞれ陰極1050コンタクト部材が配置される。スタックの正面部に隣接するこれらのコンタクト部材1040および1050のいわゆる正面端部は、参照符号1041および1042、ならびに1051および1052で示されている。
図2~
図4に示すステップについては、従来のタイプのものなので、以下ではより詳細に説明することはしない。
【0064】
好ましくは、コンタクト部材は、陰極および陽極接続ゾーンの上とその周囲とに、好ましくはこれらの陽極および陰極接続ゾーンを画定する側面上に堆積される。これらのコンタクト部材は、好ましくは、以下を連続的に含む層のスタックからなる。
-導電性粒子を充填した材料、好ましくは導電性粒子を充填した、高分子樹脂および/またはゾルゲル法によって得られた材料、より好ましくはグラファイトを充填した高分子樹脂を含む第1の電気接続層と、
-上記第1の層上に配置された、金属箔または金属層からなる第2の電気接続層と、
である。
【0065】
第1の電気接続層は、電気回路が熱的および/または振動的な応力を受けたときに、電気的接触が破壊されることなく、接続部に「可撓性」を持たせながら、後続の第2の電気接続層を固定することを可能にするものである。
【0066】
第2の電気的接続層は、金属箔または金属層である。この金属箔または金属層は、平坦であってもよいし、テクスチャがあってもよい。この第2の電気接続層は、一方では電池の側面F4における陽極接続ゾーン、他方では電池の反対側面F6における陰極接続ゾーンを接続しながら、湿気に対する持続的な保護を電池に与えるために使用されている。一般に、所与の厚さの材料に対して、金属は、セラミック系フィルムよりも不浸透性が高く、一般に水分子の通過に対してあまり不浸透性でないポリマー系フィルムよりもさらに不浸透性の高いフィルムを製造することを可能にする。コンタクト部材でのWVTRを減少させることにより、電池の暦年寿命を増加させることができる。
【0067】
有利には、導電性インクを含む第3の電気接続層を第2の電気接続層上に堆積させることができる。その目的は、WVTRを減少させ、電池の寿命を増加させることである。水蒸気透過率(WVTR)は、米国特許第7624621号明細書の目的であり、Thin Solid Films 6+550(2014)85-89頁に掲載されたA.Mortier等による刊行物「Structural properties of ultraviolet cured polysilazane gas barrier layers on polymer substrates」にも説明されている方法を用いて測定することが可能である。
【0068】
このコンタクト部材により、両端部のそれぞれで正負交互に電気的接続を行うことができる。これらのコンタクト部材は、異なる電池要素間で並列の電気接続を行うことを可能にする。このため、一端部では陰極接続部のみが突出し、他端部では陽極接続部が利用できるようになっている。
【0069】
次に、
図5に示すように、
図4の中間構造体の6つの面は、本明細書に示すように、追加封止システム1030を形成することを意図された追加封止アセンブリ1030’によって覆われる。この追加封止システムは、大気からの分子の拡散からセル全体を保護し、最終的に不浸透性にする。この追加封止(または追加封止層)は、中間構造体のアクセス可能な表面のすべてのコンフォーマルな被覆を得るために、原子層堆積法(ALD)により、PECVDにより、HDPCVD(高密度プラズマ化学気相成長法)により、またはICP CVD(誘導結合プラズマ化学気相成長法)により堆積させることが好ましい。本明細書に記載された一次封止と同様に、上記の追加封止は、有利には、パリレン-ALD-パリレンの層を連続的に堆積させることによって製造することができる。
【0070】
この追加封止層の厚さは、有利には、所望の気体不浸透性レベル、すなわち所望のWVTRの関数として選択され、特にALD、PECVD、HDPCVDおよびICP CVDの中から選択される、使用する堆積技術に依存する。この追加封止層の厚さは、好ましくは10nmと15μmとの間を含む。このシステムまたはこの追加封止層は不浸透性を有し、好ましくは10-5g/m2・d未満の水蒸気透過率(WVTR)を有する。水蒸気透過率は、米国特許第7624621号明細書の目的であり、Thin Solid Films 6+550 (2014)85-89頁に掲載されたA. Mortier等による出版物「Structural properties of ultraviolet cured polysilazane gas barrier layers on polymer substrates」でも説明されている方法で測定することが可能である。
【0071】
この追加アセンブリ1030’を形成する6つの領域は、参照符号1031’~1036’で示され、それぞれスタックの6つの面を覆っている。この追加封止体を形成することを意図された材料は、ガラス、セラミックおよびガラスセラミック、好ましくは、以下から選択することができる。
-低融点ガラス、好ましくはSiO2-B2O3と、Bi2O3-B2O3、ZnO-Bi2O3-B2O3、TeO2-V2O5、およびPbO-SiO2の中から選択される低融点ガラスと、
-酸化物および/もしくは窒化物および/もしくはTa2O5および/もしくはアルミナ(Al2O3)および/もしくは酸窒化物および/もしくはSixNyおよび/もしくはSiO2および/もしくはSiONならびに/または非晶質シリコンおよび/またはSiCと、である。
【0072】
次に、
図5に示す中間構造体は、
図5の平面V-Vに沿って、任意の適切な手段によって実施される、いわゆる追加的な切断作業に供される。これらの切断面は、典型的には、本明細書で説明した面II-IIに平行であるが、X方向において後者の外側に延在している。好ましくは追加封止アセンブリの側面領域1034’1036’を完全にまたは部分的に除去することができるこれらの切断は、
図6に示すように、コンタクト部材1040および1050の完全または部分的な露出を生じさせる。これらの切断を行うとき、コンタクト部材を形成する材料の境界部分も、その機能を維持しつつ、除去することができる。有利には、金属箔からなる第2の電気接続層の十分な部分はそのまま残される。有利には、第1の電気接続層が露出することも防止される。
【0073】
この状況で、金属箔または金属層は、上記の追加切断が行われた後に電気的接続の再確立を容易にするためにテクスチャを付けることができる。あるいは、このような露出は、切断とは異なるステップによって得ることができる。特に、研磨、プラズマエッチング、化学エッチング、レーザー切断(またはレーザーアブレーション)、フェムト秒レーザー切断、マイクロ穿孔またはスタンピングによって実施することが可能である。特に、鋸切断、フェルトと研磨ペーストとを使用した研磨によってコンタクト部材を露出させた場合、テクスチャ金属箔の使用が有利であり、これにより、特に局所的な突起部での電気的接続を再確立することが容易になる。あるいは、集電体の金属部分にレジストを形成してから封止を行うことも可能である。このレジストを除去すると、電気的接点が再び露出する。
【0074】
これらの追加切断がなされると、最初に一次封止システム1020で覆われ、次に追加封止システム1030で覆われたスタックが得られる。一次システム1020のそれぞれの領域1021、1022、1023および1025を覆う、この追加システム1030を形成する領域は、参照符号1031、1032、1033および1035で示されている。
【0075】
断面視すると、
図6に示すように、追加システム1030の正面領域1031と1032との寸法は、X方向において、一次システム1020の正面領域1021と1022との寸法より大きい。より具体的には、このX方向において、いわゆる一次系の各正面領域1021と1022とは、対向するコンタクト部材1040、1050の内側面まで延在している。さらに、この方向において、いわゆる追加正面領域1031および1032の各々は、これらのコンタクト部材の外側面と面一である。
【0076】
その結果、これらの領域1031、1032の各々は、このX方向において、いわゆる突出した縁部1031A、1031Bと、1032A、1032Bとを区切っている。これらの縁部1031A、1031B、1032A、1032Bの各々は、コンタクト部材1040、1050の各々の端部1041、1051、1042、1052を覆っている。言い換えれば、一次システムと追加システムとの両方によって形成されている封止材1020、1030は、参照符号1060と1061とで示される肩を区切り、それに対してコンタクト部材の上端部と下端部とがそれぞれ延びる。
【0077】
さらに、この
図6に示すように、陽極1040および陰極1050コンタクト部材のそれぞれの各反対側の端部1041、1042および1051、1052は、それぞれ、封止システム1020の正面領域1021および1022と面一である。言い換えれば、上記反対側の端部は、実質的に、X方向において、領域1021の自由な上面および領域1022の自由な下面にそれぞれ延在している。
【0078】
一次封止システム上とコンタクト部材の周辺とに追加封止システムを配置することにより、優れた不浸透性、特に非常に低い水蒸気透過率を最終的な電池に与えることができる。これにより、電池の寿命が延びる。より詳細には、このアーキテクチャは、コンタクト部材の端部1042、1041における水または酸素分子の拡散を遮断することを可能にする。より具体的には、接触させるために使用される導電性接着剤は、金属箔の場合に可能なほど水分子の拡散に対して不浸透性を有しない。
【0079】
さらに、
図7に示すように、正面領域1031、1032のY方向の寸法は、正面領域1021、1022およびコンタクト部材1040、1050の両方の寸法よりも大きくなっている。その結果、これらの領域1031、1032の各々は、このY方向において、いわゆる突出リム1031C、1031Dと、1032C、1032Dとを区切っている。これらの異なるリムは、2つの側面領域1033および1035とともに、各正面領域1031または1032の間に、追加封止の表面連続性を確保する。
【0080】
図1~
図7に示す実施形態による前述の電池は、4つの領域を有する一次封止システムを含み、その各々が一次スタックのそれぞれの面を覆っている。しかし、あるいは、この一次封止システムは、より少ない数の領域を有することができる。特に、このようなシステムは、スタックの対向する面上に存在する2つの領域のみを含むことができる。
【0081】
まず、
図8に示すように、一次封止システムの領域は、コンタクト部材によって占有されていないスタックの側面のみを覆うことができる。あるいは、
図9に示すように、一次封止システムのこれらの領域は、スタックの端面のみを覆うことができ、この場合は、スタックを形成する層と平行となる。
図8と
図9とに示すこれらの電池の製造方法について、
図12以降を参照しながら説明する。
【0082】
予備的な所見として、それ自体知られているように、本明細書で説明したような複数の単位スタックは、同時に製造することができる。これは、本発明による電池を製造するための方法全体の効率を向上させる。特に、陰極およびそれぞれの陽極の層または箔の交互の繰り返しの連続によって形成される、大きな寸法を有するスタックを製造することができる。
【0083】
各陽極または陰極箔の物理化学的構造は、例えば本出願人が出願した仏国特許発明第3091036号明細書で知られている種類のものであるが、本発明の範囲には含まれないので、簡単にのみ説明する。各陽極箔またはそれぞれの陰極箔は、陽極活性層またはそれぞれの陰極活性層を含む。これらの活性層の各々は、固体とすることができ、すなわち、それらは密な性質または多孔性の性質を有することができる。さらに、隣接する2つの箔間の電気的接触を防止するために、これら2つの箔の少なくとも一方に、電解質の層または液体電解質を含浸させたセパレータが、反対側の箔に接触して配置される。本発明を説明する図には示していないが、電解質の層または液体電解質を含浸させたセパレータは、逆極性の2枚の箔、すなわち、陽極箔と陰極箔との間に挟まれる。
【0084】
これらの箔または層は、異なる最終電池間の分離を可能にする、いわゆる空白ゾーンを画定するように窪んでいる。本発明の範囲内では、これらの空白ゾーンに異なる形状を割り当てることができる。本出願人が仏国特許発明第3091036号明細書で既に提案しているように、これらの空白ゾーンをH字形とすることができる。添付の
図10は、陽極箔または層1101と陰極箔または層1102との間のスタック1100を示す。この図に示すように、これらの異なる箔に切断を入れて、上記H字形の陽極1103およびそれぞれの陰極1104空白ゾーンを形成している。
【0085】
あるいは、これらの空白ゾーンはI字形とすることもできる。添付の
図11は、陽極箔または層1201と陰極箔または層1202との間のスタック1200を示す。
図11に示すように、これらの異なる箔に切断を入れて、上記I字形の陽極1203およびそれぞれの陰極1204空白ゾーンを形成している。
【0086】
好ましくは、異なる単位スタックの製造が完了すると、所与の電池の各陽極と各陰極とは、任意の電極材料、電解質、および/または電流伝導性基板のない空間によってそれぞれの二次本体から分離された、それぞれの一次本体を含む。図示しない追加の代替的な実施形態によれば、空白ゾーンは、その形状がHまたはI字形とは異なり、例えばU形状となるように提供することができる。それにもかかわらず、H字形またはI字形が好ましい。
【0087】
図12に示すように、
図8の電池は、
図10に示す箔の連続を使用して製造することができる。
図12は、全体としてH字形の空白ゾーンを拡大して示す。より具体的には、前述の仏国特許発明第3091036号明細書から知られるように、これらの空白ゾーンは、水平チャネル1110によって、対に接続されている垂直バー1103を有している。この代替的な実施形態によれば、バー1103は、一次封止システムの全てまたは一部を形成することを意図された材料221を受け取る。
【0088】
さらに、前述の仏国特許文献からも知られるように、異なる単位スタックは、隣接するバーによって区切られている。互いに同一であるこれらの単位スタックは、
図12において左から右へ連続する参照符号II、IおよびIIIによって示されている。この代替的な実施形態によれば、次に、垂直方向の切断が行われ、これは参照符号DYで示される。これは、スタックを既知の方法で互いに分離することを可能にするだけでなく、一次封止の側面領域によって覆われた別々の単位スタックを同時に得ることを可能にする。
図12に示す実施形態では、バー1103が比較的広いので、2つの垂直切断DYが行われる。図示していない有利な代替的な実施形態によれば、これらのバーは、それらがはるかに狭いように製造することができる。そのような場合、1つの垂直切断を行うことができる。
【0089】
図13および
図14に示すように、
図9の電池は、
図11に示す箔の重ね合わせを使用して製造することができる。図示しないステップによれば、この箔の重ね合わせは、一次封止システムを形成することを意図された封止材で完全に覆われる。この被覆が完了すると、箔の周縁部に位置する単位スタックのみが、その端面だけでなく、その側面の一部も被覆される。一方、「中央」の単位スタックの全ては、その反対側の端面のみが覆われる。
【0090】
次に、複数の水平方向の切断が入れられるが、
図11にはそのうちの1つだけが参照符号DXで示されている。これらの水平方向の切断が行われると、複数のストリップが配置され、そのうちの1つが
図13に示されている。各ストリップは、互いに隣接して配置された一列の単位スタックによって形成されている。
【0091】
図13には、3つの隣接するスタックI、IIおよびIIIが示されているが、各ストリップは、著しく多数のこのようなスタックを含むことを理解されたい。各列の反対側の端部に位置する2つの単位スタックのみが、その端面およびその側面の一部上を封止材によって覆われている。これに対し、他のいわゆる中央の単位スタックは、その端面のみが覆われている。
【0092】
最後に、
図14に示すように、各列に沿って垂直切断を入れる。これにより、所与のスタックを、隣接する各スタックから分離することができる。これらの垂直切断は、
図14のスタックIのように、端面のみが封止材で被覆されたスタックを生成する。
【0093】
このような構造を含む本発明による電池は、そのまま使用することも、電子回路に組み込むことも可能である。露出したコンタクト部材を含む電池の面には、はんだリフロー組立ステップと互換性を有する電気的接点を製造することができる。このような場合、および電池からなる最終用途の機能として、コンタクト部材、好ましくはコンタクト部材を含む本発明による電池の面は、導電性インク、好ましくは銀充填エポキシ樹脂などの導電性ポリマーの第1の層、この第1の層上に特に電着によって堆積されたニッケルの第2の層、およびこの第2の層上に電着によって堆積されたスズの第3の層からなる多層システムで覆うことが可能である。
【0094】
好ましくは銀充填エポキシ樹脂からなる第1の導電性ポリマー層は、電気回路が熱および/または振動応力にさらされたときに、電気的接点が破壊されることなく接続部での「可撓性」を確保する。ニッケル層は、溶接組立ステップの間、ポリマー層を保護し、スズ層は、電池界面の溶接性を確保する。
【0095】
本発明による電池は、有利には、QFN(Quad Flat No-leads package)などの、集積回路をプリント回路基板に物理的および電気的に接続するフラット集積回路パッケージ内に集積化しかつ/またはオーバーモールドすることができる。
【0096】
本発明による電池は、リチウムイオンマイクロ電池、リチウムイオンミニ電池、または高出力リチウムイオン電池とすることができる。特に、約1mAh以下の容量を有するように(一般に「マイクロ電池」として知られている)、約1mAhより大きく約1Ahまでの電力を有するように(一般に「ミニ電池」として知られている)、または約1Ahより大きい容量を有するように(一般に「高出力電池」として知られている)、設計および寸法を決定することができる。一般的に、マイクロ電池は、マイクロエレクトロニクスの製造方法と互換性を有するように設計される。
【0097】
これら3つの電力範囲の各電池について、以下のものを製造することができる。
-「固体」の層を有するタイプであって、すなわち、含浸された液体またはペースト相(上記液体またはペースト相は、電解質として作用することができるリチウムイオン伝導性媒体であり得る)を有しないもの、
-または、メソポーラス「固体」の層を有するタイプであって、液体またはペースト相(典型的にはリチウムイオン伝導性媒体)が含浸されており、この液体またはペースト相は層内に自然に浸透してそこからもはや出てこないため、層は準固体と見なすことができるもの、
-または、含浸多孔質層(すなわち、液体またはペースト相を含浸させることができる開放孔のネットワークを有する層であり、これらの層は湿潤特性を有する)を有するもの、である。
【国際調査報告】