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特表2023-508069コンタクト部材において強化した封入システムを有する電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-28
(54)【発明の名称】コンタクト部材において強化した封入システムを有する電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/11 20210101AFI20230220BHJP
   H01M 50/141 20210101ALI20230220BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20230220BHJP
   H01M 50/117 20210101ALI20230220BHJP
   H01M 50/124 20210101ALI20230220BHJP
   H01M 50/548 20210101ALI20230220BHJP
   H01M 50/562 20210101ALI20230220BHJP
   H01M 50/557 20210101ALI20230220BHJP
   H01M 50/133 20210101ALI20230220BHJP
   H01M 50/202 20210101ALI20230220BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230220BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20230220BHJP
   H01M 50/547 20210101ALI20230220BHJP
【FI】
H01M50/11
H01M50/141
H01M50/121
H01M50/117
H01M50/124
H01M50/548 101
H01M50/562
H01M50/557
H01M50/133
H01M50/202 301
H01M10/052
H01M10/0585
H01M50/202 501S
H01M50/547 201
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538936
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(85)【翻訳文提出日】2022-08-19
(86)【国際出願番号】 IB2020062397
(87)【国際公開番号】W WO2021130696
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】1915540
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1915566
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514110783
【氏名又は名称】アイ テン
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ギャバン,ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ケイルフルク,イアン
(72)【発明者】
【氏名】グリュエ,ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ソリアーノ,クレール
【テーマコード(参考)】
5H011
5H029
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA02
5H011CC02
5H011CC05
5H011CC06
5H011CC09
5H011CC10
5H011DD21
5H029AJ04
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AL03
5H029AM07
5H029BJ04
5H029CJ02
5H029CJ03
5H029CJ04
5H029CJ22
5H029DJ02
5H029DJ04
5H029DJ05
5H029DJ07
5H029EJ01
5H029EJ04
5H029EJ05
5H029EJ12
5H029HJ04
5H040AA31
5H040AS11
5H040AT00
5H040AY10
5H040DD08
5H040LL01
5H040LL06
5H040LL07
5H043AA00
5H043AA11
5H043BA19
5H043CA08
5H043DA03
5H043DA08
5H043DA11
5H043DA13
5H043HA05D
5H043HA23D
5H043JA21D
5H043KA01D
5H043KA06D
5H043KA07D
5H043KA08D
5H043KA09D
5H043KA10D
5H043KA12D
5H043KA22D
5H043KA36D
5H043LA02D
(57)【要約】
本発明は、新しい封入システムを含む電池、特に薄膜電池に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池であって、
- アノード集電基板、アノード層、電解質材料の層又は電解質を含浸させたセパレーターの層、カソード層、及びカソード集電基板を続けて含む、少なくとも1つの単位セルと、
- 前記単位セルの外周部の少なくとも一部を覆い、
・ 前記電池に堆積させた、好ましくはパリレン、パリレンF、ポリイミド、エポキシ樹脂、アクリレート、フルオロポリマー、シリコーン、ポリアミド、ゾルゲルシリカ、有機シリカ、及び/又はそれらの混合物から選択される、少なくとも1つの第1被覆層(2)、
・ 前記第1被覆層の外周部に原子層堆積によって堆積させた、電気絶縁材料から作製される少なくとも1つの第2被覆層(3)を含み、
少なくとも1つの第1被覆層と少なくとも1つの第2被覆層とのこのシーケンスはz回繰り返すことができ、z≧1であり、堆積させた封入システムの最終層は、原子層堆積によって堆積させた電気絶縁材料から作製される第2被覆層(3)と呼ばれるものである、封入システムと、
- 前記単位セルと外部導電素子との電気的接触を行うことができる少なくとも1つのアノードコンタクト部材と、
- 外部導電素子との電気的接触を行うことができる少なくとも1つのカソードコンタクト部材とを含み、
前記電池は少なくとも1つのアノード接続ゾーンを画定するコンタクト面を含み、
前記電池は少なくとも1つのカソード接続ゾーンを画定するコンタクト面を含み、
前記アノードコンタクト部材及び前記カソードコンタクト部材のそれぞれが、
- 少なくとも前記アノード接続ゾーン及び少なくとも前記カソード接続ゾーンに配置され、電気伝導性粒子を充填した材料、好ましくは、電気伝導性粒子を充填した、高分子樹脂及び/又はゾルゲル法により得られる材料、より好ましくは、グラファイトを充填した高分子樹脂を含む、第1電気接続層と、
- 電気伝導性粒子を充填した材料の前記第1層に配置した金属箔を含む第2電気接続層とを含む、電池。
【請求項2】
前記金属箔は、自立タイプのものであり、有利には前記第1電気接続層に付加される、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記金属箔は、圧延又は電気めっきによって作製される、請求項1又は2に記載の電池。
【請求項4】
前記金属箔の厚みが、5~200マイクロメートルの間に含まれ、前記金属箔は、特に、ニッケル、ステンレス鋼、銅、モリブデン、タングステン、バナジウム、タンタル、チタン、アルミニウム、クロム、及びそれらを含む合金である材料の1つから作製される、請求項1~3のうちの1項に記載の電池。
【請求項5】
前記アノードコンタクト部材及び前記カソードコンタクト部材のそれぞれが、前記第2電気接続層に配置した導電性インクを含む第3電気接続層を含む、請求項1~4のうちの1項に記載の電池。
【請求項6】
- 単位セルの端面近傍に設けられ、少なくとも部分的に導電性材料から作製される電気接続支持部、
- それぞれ電気接続経路を形成する、前記接続支持部の2つの離れた領域を、互いに絶縁することができる電気絶縁手段、
- それぞれの前記単位セルの第1側面が第1電気接続経路に電気接続されることを可能にする前記アノードコンタクト部材、及びそれぞれの前記単位セルの第2側面が第2電気接続経路に電気接続されることを可能にする前記カソードコンタクト部材、をさらに含む、請求項1~5のうちの1項に記載の電池。
【請求項7】
前記電気接続支持部が、単一層タイプのもの、特に金属格子又はケイ素中間層である、請求項6に記載の電池。
【請求項8】
前記電気接続支持部が、多層タイプのものであり、上下に重ねて配置される複数の層を含み、特にプリント回路基板タイプのものである、請求項6に記載の電池。
【請求項9】
電池を製造する方法であって、前記電池は、
- アノード集電基板、アノード層、電解質材料の層又は電解質を含浸させたセパレーターの層、カソード層、及びカソード集電基板を続けて含む、少なくとも1つの単位セルと、
- 少なくとも前記単位セルの外周部の少なくとも一部を覆う封入システムと、
- 少なくとも前記単位セルと外部導電素子との電気的接触を行うことができる少なくとも1つのアノードコンタクト部材と、
- 外部導電素子との電気的接触を行うことができる少なくとも1つのカソードコンタクト部材とを含み、
前記電池は少なくとも1つのアノード接続ゾーンを画定するコンタクト面を含み、
前記電池は少なくとも1つのカソード接続ゾーンを画定するコンタクト面を含み、
前記製造の方法は、
(a) アノード層でコーティングされ、及び任意で電解質材料の層又は電解質を含浸させたセパレーターの層でコーティングされ、以下アノード箔と呼ぶ、少なくとも1つのアノード集電基板箔を提供するステップと、
(b) カソード層でコーティングされ、及び任意で電解質材料の層又は電解質を含浸させたセパレーターの層でコーティングされ、以下カソード箔と呼ぶ、少なくとも1つのカソード集電基板箔を提供し、前記アノード箔及び前記カソード箔の少なくとも1つが、電解質材料の層又は電解質を含浸させたセパレーターの層でコーティングされる、ステップと、
(c) 少なくとも1つのアノード集電基板、少なくとも1つのアノード層、電解質材料又は電解質を含浸させたセパレーターの少なくとも1つの層、少なくとも1つのカソード層、及び少なくとも1つのカソード集電基板を続けて得るように、少なくとも1つのアノード箔と少なくとも1つのカソード箔を交互にしたスタック(I)を作製するステップと、
(d) 統合したスタックを形成するように、ステップ(c)において得られた交互の箔の前記スタックを熱処理及び/又は機械圧縮するステップと、
(e) - 好ましくはパリレン、パリレンF、ポリイミド、エポキシ樹脂、アクリレート、フルオロポリマー、シリコーン、ポリアミド、ゾルゲルシリカ、有機シリカ、及び/又はそれらの混合物から選択される、少なくとも1つの第1被覆層を前記電池に堆積させ、その後、
- 少なくとも前記第1被覆層の外周部に原子層堆積によって堆積させた、電気絶縁材料から作製される少なくとも1つの第2被覆層を堆積させることによって、前記統合したスタックを封入するステップを行い、
少なくとも1つの第1被覆層と少なくとも1つの第2被覆層とのシーケンスはz回繰り返すことができ、z≧1であり、堆積させた前記封入システムの最終層は、原子層堆積によって堆積させた電気絶縁材料から作製される第2被覆層と呼ばれるものである、ステップと、
(f) 少なくとも前記アノード接続ゾーン及び前記カソード接続ゾーンを露出させる切断スタックを形成するように、2つの切り抜き(Dn、D’n)を作製するステップと、
(g) ・ 電気伝導性粒子を充填した材料から作製される、好ましくは電気伝導性粒子を充填した、高分子樹脂及び/又はゾルゲル法により得られる材料から作製される、第1電気接続層を、少なくとも前記アノード接続ゾーン及び少なくとも前記カソード接続ゾーンに、好ましくは少なくとも前記コンタクト面に堆積させること、
・ 任意で、前記第1層が、電気伝導性粒子を充填した、高分子樹脂及び/又はゾルゲル法により得られる材料から作製されるとき、乾燥ステップ、その後に、前記高分子樹脂及び/又はゾルゲル法により得られる材料を重合するステップ、
・ 前記第1電気接続層に配置した金属箔を含む第2電気接続層を、有利には前記第1層に前記金属箔を付加することによって、前記第1層に堆積させること、を含むように、アノードコンタクト部材及びカソードコンタクト部材を作製するステップとを含む、方法。
【請求項10】
前記金属箔が圧延によって形成され、その後、そうして形成されたこの金属箔を、前記第1電気接続層に付加する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記金属箔が、前記第1金属接続層に対してex situ又はin situのいずれかで電気めっきによって直接形成される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、ステップ(g)の後、前記第1電気接続層及び前記第2電気接続層でコーティングした、前記電池の少なくとも前記アノード接続ゾーン及び前記カソード接続ゾーンにおいて、導電性インクを堆積させるステップ(h)を含む、請求項9~11のうちの1項に記載の方法。
【請求項13】
前記電気絶縁材料が、Al、SiO、SiO、及びエポキシ樹脂から選択される、請求項9~12のいずれかに記載の電池を製造する方法。
【請求項14】
前記第2被覆層がパリレンNを含む、請求項9~13のいずれかに記載の電池を製造する方法。
【請求項15】
前記第1被覆層の厚みが、1μm~50μmの間に含まれ、好ましくは約10μmと等しく、前記第2被覆層の厚みが、200nm未満であり、好ましくは5nm~200nmの間に含まれ、より好ましくは約50nmと等しい、請求項9~14のいずれかに記載の電池を製造する方法。
【請求項16】
前記不浸透密封手段が、前記電気接続支持部を前記単位スタックの第1端面近傍に配置した後にコーティングされる、請求項6~8のうちの1項に記載の電池を作製するための請求項9~15のうちの1項に記載の方法。
【請求項17】
前記不浸透密封手段の少なくとも一部が、前記電気接続支持部を前記単位スタックの前記第1端面近傍に配置する前にコーティングされる、請求項6~8のうちの1項に記載の電池を作製するための請求項9~15のうちの1項に記載の方法。
【請求項18】
前記不浸透密封手段の少なくとも1つの第1層が、前記電気接続支持部を前記単位スタックの前記第1端面近傍に配置する前にコーティングされ、その後、前記不浸透密封手段の少なくとも1つの第2層が、前記電気接続支持部を前記第1端面近傍に配置した後にコーティングされる、請求項9~17のうちの1項に記載の方法。
【請求項19】
- 複数の支持部(5)を形成するために用いられるフレーム(105)を提供すること、
- 複数のライン及び/又は行に配置した複数の単位スタックにおける第1端面近傍に前記フレームを配置すること、
- 複数の電気化学デバイスを形成するように、前記スタックの長手方向及び/又は横方向に少なくとも1つの切り抜き、特に複数の切り抜きを作製すること、をさらに含む、請求項9~18のうちの1項に記載の方法。
【請求項20】
前記電池はリチウムイオン電池である、請求項1~8のうちの1項に記載の電池又は請求項9~18のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
電気エネルギー消費デバイス(1000)であって、本体(1002)と、前記電気エネルギー消費デバイスに電気エネルギーを供給可能な、請求項1~8のうちの1項に記載の電池とを含み、前記電池の前記電気接続支持部(5)が前記本体に固定される、電気エネルギー消費デバイス(1000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池、特に薄膜電池、さらに具体的にはこれを保護する封入システムに関する。本発明は、コンタクト部材に近接する電池の領域をより有効に保護する新しい封入システムを提示する。本発明は、より具体的に、この方法で封入可能なリチウムイオン電池の分野に関する。本発明は、自然放電率を特に低くするとともに寿命を長くする新しいアーキテクチャ及び封入部を有する薄膜電池を製造するための新しい方法にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの種類の電池、特にいくつかの種類の薄膜電池は、酸素や湿気がその劣化を引き起こすことから、長寿命となるように封入する必要がある。特に、リチウムイオン電池は極めて湿気に影響を受けやすい。市場では10年を超える製品寿命が要求されていることから、この寿命を確保にするように、封入を行う必要がある。
【0003】
薄膜リチウムイオン電池は、典型的に約1μm~約10μm厚の電極及び電解質層を含む多層スタックである。これは、複数の単位セルのスタックを含み得る。この電池は、自然放電の影響を受けやすいと見られる。電極の位置、特に多層電池における電極の縁部の近接性、及び切断部の良好性に対応して、漏れ電流、すなわち電池性能を下げるクリープによるショートが端部に認められ得る。この現象は、電解質膜が極めて薄い場合に悪化する。
【0004】
この固体薄膜リチウムイオン電池は、通常、リチウム金属層を有するアノードを使用する。アノード材料の体積は、電池の充電及び放電サイクルにおいて大きく変化すると見られる。より具体的には、充電及び放電サイクルにおいて、リチウム金属の一部がリチウムイオンに変換され、これがカソード材料の構造に挿入され、アノードの体積の低下を伴う。この体積の周期的変化は、電極と電解質の層間の機械的及び電気的接触を劣化させ得る。これは、その寿命における電池性能を下げることとなる。
【0005】
また、アノード材料の体積の周期的変化は、電池セルの体積の周期的変化も誘導する。したがって、封入システムに周期的ストレスを生じさせ、これが、封入システムの不浸透性喪失(又はさらに完全性喪失)を引き起こす亀裂を起こしやくすさせる。この現象が、その寿命における電池性能低下のさらに他の原因となる。
【0006】
より具体的に、リチウムイオン電池の活性材料は、空気、及び特に湿気の影響を極めて受けやすい。移動するリチウムイオンは、微量の水と自然に反応してLiOHを形成し、電池のカレンダー劣化をもたらす。すべてのリチウムイオン伝導電解質及び挿入材料が、湿気に反応しないものである。一例として、LiTi12は、大気又は微量の水と接触したとき、劣化しない。一方、Li4+xTi12(x>0)の形態のリチウムを充填するとすぐに、挿入したリチウム余剰分(X)が大気に影響を受けやすくなり、微量の水と自然に反応してLiOHを形成する。したがって、反応したリチウムは、電気を蓄積するために利用できず、電池容量の損失につながる。
【0007】
リチウムイオン電池の活性材料を空気及び水に曝すことを防ぐため、及びこの種類のエージングを防ぐため、封入システムで保護する必要がある。薄膜電池のための数多くの封入システムが文献に記載されている。
【0008】
特許文献1は、なかでもアルミナ(Al)、シリカ(SiO)、窒化ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)、酸化タンタル(Ta)、及び非晶質カーボンから選択される誘電性材料の第1層のスタック、並びに誘電性材料の第2層、並びに第2層上に配置されて電池全体を覆う不浸透密封層を含む、固体薄膜電池のための封入システムを記載している。
【0009】
特許文献2は、薄膜リチウムイオン電池を保護するための複数のシステムを記載している。提示される第1のシステムは、電池の活性成分に堆積させたアルミニウム膜で覆ったパリレン層を含む。しかしながら、空気及び水蒸気の拡散から保護するためのこのシステムは、約1か月のみ有効である。提示される第2のシステムは、パリレン(500nm厚)と金属(約50nm厚)との交互の層を含む。この文献は、電池が大気成分によって劣化する速さを遅くするため、この電池を紫外線硬化(UV硬化)エポキシコーティングで再度コーティングすることが好ましいと記載している。
【0010】
また、出願人は、特許文献3において、それぞれアノード及びカソードコンタクト部材を形成するために用いられる層の種々の例を提示している。第1の例では、第1薄層をALDによって堆積させ、該第1薄層は特に金属である。さらに、銀充填エポキシ樹脂の第2層を設ける。第2の例では、第1層はグラファイト充填材料である一方、第2層はナノ粒子充填インクから得た銅金属を含む。
【0011】
先行技術において、大部分のリチウムイオン電池は、電池セル周りを密閉してコネクタタブにおいてヒートシールした金属化ポリマー箔(「パウチ」と呼ばれる)に封入される。このパッケージが比較的可撓性であるので、電池の負及び正の接続部が、電池周りのパッケージを密封するために使用されるヒートシールされたポリマーに埋め込まれている。しかしながら、電池のヒートシールに使用するポリマーが大気ガスに対して比較的透過性であることから、ポリマー箔同士の間のこの溶着部は、大気ガスに対して完全に不浸透性ではない。透過性は温度とともに増加し、これがエージングを早めると見られる。
【0012】
しかしながら、この溶着部において大気に曝される表面積は極めて小さいものにとどまり、パッケージの残りの部分は、これらのポリマー箔同士の間に挟んだアルミニウム箔によって形成されている。一般に、2枚のアルミニウム箔を組み合わせて、各アルミニウム箔の欠陥となる孔がある影響を極力少なくしている。各ストリップにおける2つの欠陥がアライメントされる可能性を大幅に低減している。
【0013】
このパッケージ技術によって、通常の使用条件における、10×20cmの表面積を有する10Ah電池における約10年~15年のカレンダー寿命を確保する。電池が高温に曝される場合、この寿命が5年未満に短縮され得、これは多くの用途において十分なものではない。同様の技術は、コンデンサ及び能動部品などの他の電子部品にも使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0071989号明細書
【特許文献2】米国特許第5561004号明細書
【特許文献3】国際出願公開第2019/215410号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、空気、湿気、及び温度の影響から部品を保護する、薄膜電池及び他の電子部品を封入するためのシステム及び方法が求められている。封入システムは、不浸透性及び気密性である必要があり、部品又は電池を完全に密閉して覆う必要があり、また、任意のクリープによるショートを防ぐため、反対の極性の電極縁部を電気的に分離することを可能にする必要がある。
【0016】
本発明の1つの目的は、上述の先行技術における難点を少なくとも部分的に克服することである。
【0017】
本発明の他の目的は、極めて寿命が長く、自然放電率が低いリチウムイオン電池を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明における封入システムは、有利には硬質タイプのものである。電池セルは、材料の初期選択により、硬質かつ寸法安定性である。したがって、本発明において得られる封入システムは効果的である。
【0019】
本発明は、真空内で有利に堆積することができる及び堆積される封入システムを製造することを提供する。
【0020】
本発明における電池はポリマーを含まないが、イオン性液体を含むことができる。より具体的には、これは、固体である又は「疑似固体」タイプのものであり、この場合ナノ制限(nano-confined)イオン性液体系電解質を含む。電気化学的観点からは、このナノ制限液体電解質は、これによって伝導するカチオンに良好な移動性を提供する範囲で、液体のように作用する。構造的観点からは、このナノ制限液体電解質は、真空及び/又は高温において処理されるときでもナノ制限され、その拘束から逃れられないので、液体のように作用しない。したがって、ナノ制限イオン性液体系電解質を含む本発明における電池は、その封入のために真空並びに/又は真空及び高温処理を行うことができる。封入前に含浸を行うため、層の縁部を切断によって露出させ、含浸の後、これらの縁部は電気コンタクトを作製することによって封止する。また、本発明における方法は、メソ孔表面を覆うことに良好に適する。
【0021】
以下に記載するような本発明にかかる対象物の少なくとも1つによって、上述の目的の少なくとも1つが達成される。本発明によって提示する態様は、電池、その製造方法、及び付随する請求項にかかるエネルギー消費デバイスに関する。
【0022】
本発明は、第1の対象物として電池を提供し、該電池は、
- アノード集電基板、アノード層、電解質材料の層又は電解質を含浸させたセパレーターの層、カソード層、及びカソード集電基板を続けて含む、少なくとも1つの単位セルと、
- 上述の単位セルの外周部の少なくとも一部を覆い、
・ 電池に堆積させた、好ましくはパリレン、パリレンF、ポリイミド、エポキシ樹脂、アクリレート、フルオロポリマー、シリコーン、ポリアミド、ゾルゲルシリカ、有機シリカ、及び/又はそれらの混合物から選択される、少なくとも1つの第1被覆層(2)、
・ 上述の第1被覆層の外周部に原子層堆積によって堆積させた、電気絶縁材料から作製される少なくとも1つの第2被覆層(3)を含み、
少なくとも1つの第1被覆層と少なくとも1つの第2被覆層とのこのシーケンスはz回繰り返すことができ、z≧1であり、堆積させた封入システムの最終層は、原子層堆積によって堆積させた電気絶縁材料から作製される第2被覆層(3)と呼ばれるものである、封入システムと、
- 上述の単位セルと外部導電素子との電気的接触を行うことができる少なくとも1つのアノードコンタクト部材と、
- 外部導電素子との電気的接触を行うことができる少なくとも1つのカソードコンタクト部材とを含み、
該電池は少なくとも1つのアノード接続ゾーンを画定するコンタクト面を含み、
該電池は少なくとも1つのカソード接続ゾーンを画定するコンタクト面を含み、
該アノードコンタクト部材及び該カソードコンタクト部材のそれぞれが、
- 少なくともアノード接続ゾーン及び少なくともカソード接続ゾーンに配置され、電気伝導性粒子を充填した材料、好ましくは、電気伝導性粒子を充填した、高分子樹脂及び/又はゾルゲル法により得られる材料、より好ましくは、グラファイトを充填した高分子樹脂を含む、第1電気接続層と、
- 電気伝導性粒子を充填した材料の第1層に配置した金属箔を含む第2電気接続層とを含む。
【0023】
本発明は、その第2電気接続層に金属箔を含む。本発明の範囲内で理解されるように、そうした金属箔は有利には「自立」構造を有する。換言すると、これはex situで作製され、その後、上術の第1層に近接させる。この金属箔は、例えば圧延によって得られ、この場合、圧延箔には、部分的又は全体的のいずれかで最終軟化焼きなましを行うことができる。
【0024】
また、本発明に使用する金属箔は、他の方法によって、特に電気化学堆積又は電気めっきによって得られる。そうした場合、これは、本明細書において上述するように、典型的にex situで行うことができる。あるいはまた、これは、in situ、すなわち上述の第1層に直接行うことができる。
【0025】
いずれにしても、この金属箔は、作製すると、厚みが制御されたものとなる。
【0026】
本明細書に上述した特許文献3に記載される、ナノ粒子充填インクから得られる銅金属を含む層は、本発明の範囲内で理解されるような金属箔ではまったくないということに留意する必要がある。より具体的には、この先行技術文献に公開されている層は、上述の条件のいずれも満たさない。
【0027】
典型的には、この金属箔の厚みは、5~200マイクロメートルの間に含まれる。さらに、この金属箔は有利には完全に緻密かつ電気伝導性である。非限定的な例として、この金属箔は、ニッケル、ステンレス鋼、銅、モリブデン、タングステン、バナジウム、タンタル、チタン、アルミニウム、クロム、及びそれらを含む合金である材料から作製することができる。
【0028】
そうした金属箔の使用は、本明細書に上述する先行技術の解決手段と比較して大きな利点を与える。
【0029】
実質的に、金属箔はまず、金属ナノ粒子の堆積と比較して不浸透性が著しく向上する。より具体的には、焼結によって得られる膜は点欠陥をより含み、気密性をより低くする。
【0030】
さらに、金属ナノ粒子の表面は、多くの場合、酸化物薄膜で覆われ、その特性はその電気伝導性を制限する。反対に、金属箔の使用は、気密性及び電気伝導性を向上させる。
【0031】
さらに、金属箔の使用によって、広範囲の材料を使用することができる。これは、それぞれアノード及びカソードと接触する化学組成が電気化学安定であることを確実にする。反対に、先行技術では、ナノ粒子の形成に利用可能な材料の選択が比較的限られている。
【0032】
最後に、本発明は、特にコンタクト部材において空気透過係数(水蒸気透過率、WVTR)を下げることによって、電池の寿命を延長することを可能にする。そうした係数は、本明細書の以下の記載においてより詳細に規定される。
【0033】
個別に又は任意の技術的に適合する特徴に従って採用され得る、本発明における電池の他の特徴において、
- 金属箔が自立タイプのものであり、有利には上述の第1電気接続層に付加され、
- 金属箔が圧延又は電気めっきによって作製され、
- 金属箔の厚みが、5~200マイクロメートルの間に含まれ、この金属箔は、特に、ニッケル、ステンレス鋼、銅、モリブデン、タングステン、バナジウム、タンタル、チタン、アルミニウム、クロム、及びそれらを含む合金である材料の1つから作製され、
- アノードコンタクト部材及びカソードコンタクト部材のそれぞれが、第2電気接続層に配置した導電性インクを含む第3電気接続層を含み、
- これが、さらに、
・ 単位セルの端面近傍に設けられ、少なくとも部分的に導電性材料から作製される電気接続支持部、
・ それぞれ電気接続経路を形成する、この接続支持部の2つの離れた領域を、互いに絶縁することができる電気絶縁手段、
・ 各単位セルの第1側面が第1電気接続経路に電気接続されることを可能にする上述のアノードコンタクト部材、及び各単位セルの第2側面が第2電気接続経路に電気接続されることを可能にする上述のカソードコンタクト部材、を含み、
- 電気接続支持部が、単一層タイプのもの、特に金属格子又はケイ素中間層であり、
- 電気接続支持部が、多層タイプのものであり、上下に重ねて配置される複数の層を含み、特にプリント回路基板タイプのものであり、
- 上述の電池がリチウムイオン電池である。
【0034】
また、本発明は電池を製造する方法に関し、該電池は、
- アノード集電基板、アノード層、電解質材料の層又は電解質を含浸させたセパレーターの層、カソード層、及びカソード集電基板を続けて含む、少なくとも1つの単位セルと、
- 少なくとも該単位セルの外周部の少なくとも一部を覆う封入システムと、
- 少なくとも該単位セルと外部導電素子との電気的接触を行うことができる少なくとも1つのアノードコンタクト部材と、
- 外部導電素子との電気的接触を行うことができる少なくとも1つのカソードコンタクト部材とを含み、
該電池は少なくとも1つのアノード接続ゾーンを画定するコンタクト面を含み、
該電池は少なくとも1つのカソード接続ゾーンを画定するコンタクト面を含み、
上述の製造の方法は、
(a) アノード層でコーティングされ、及び任意で電解質材料の層又は電解質を含浸させたセパレーターの層でコーティングされ、以下アノード箔と呼ぶ、少なくとも1つのアノード集電基板箔を提供するステップと、
(b) カソード層でコーティングされ、及び任意で電解質材料の層又は電解質を含浸させたセパレーターの層でコーティングされ、以下カソード箔と呼ぶ、少なくとも1つのカソード集電基板箔を提供し、アノード箔及びカソード箔の少なくとも1つが、電解質材料の層又は電解質を含浸させたセパレーターの層でコーティングされる、ステップと、
(c) 少なくとも1つのアノード集電基板、少なくとも1つのアノード層、電解質材料又は電解質を含浸させたセパレーターの少なくとも1つの層、少なくとも1つのカソード層、及び少なくとも1つのカソード集電基板を続けて得るように、少なくとも1つのアノード箔と少なくとも1つのカソード箔を交互にしたスタック(I)を作製するステップと、
(d) 統合したスタックを形成するように、ステップ(c)において得られた交互の箔のスタックを熱処理及び/又は機械圧縮するステップと、
(e) - 好ましくはパリレン、パリレンF、ポリイミド、エポキシ樹脂、アクリレート、フルオロポリマー、シリコーン、ポリアミド、ゾルゲルシリカ、有機シリカ、及び/又はそれらの混合物から選択される、少なくとも1つの第1被覆層を電池に堆積させ、その後、
- 少なくとも第1被覆層の外周部に原子層堆積によって堆積させた、電気絶縁材料から作製される少なくとも1つの第2被覆層を堆積させることによって、上述の統合したスタックを封入するステップを行い、
少なくとも1つの第1被覆層と少なくとも1つの第2被覆層とのシーケンスはz回繰り返すことができ、z≧1であり、堆積させた封入システムの最終層は、原子層堆積によって堆積させた電気絶縁材料から作製される第2被覆層と呼ばれるものである、ステップと、
(f) 少なくともアノード接続ゾーン及びカソード接続ゾーンを露出させる切断スタックを形成するように、2つの切り抜き(Dn、D’n)を作製するステップと、
(g) ・ 電気伝導性粒子を充填した材料から作製される、好ましくは電気伝導性粒子を充填した、高分子樹脂及び/又はゾルゲル法により得られる材料から作製される、第1電気接続層を、少なくともアノード接続ゾーン及び少なくともカソード接続ゾーンに、好ましくは少なくともコンタクト面に堆積させること、
・ 任意で、上述の第1層が、電気伝導性粒子を充填した、高分子樹脂及び/又はゾルゲル法により得られる材料から作製されるとき、乾燥ステップ、その後に、上述の高分子樹脂及び/又はゾルゲル法により得られる材料を重合するステップ、
・ 第1電気接続層に配置した金属箔を含む第2電気接続層を、有利には上述の第1層に上述の金属箔を付加することによって、第1層に堆積させること、を含むように、アノードコンタクト部材及びカソードコンタクト部材を作製するステップと、を含む。
【0035】
個別に又は任意の技術的に適合する特徴に従って採用され得る、本発明におけるプロセスの他の特徴において、
- 金属箔が圧延によって形成され、その後、そうして形成されたこの金属箔を、第1電気接続層に付加し、
- 金属箔が、第1金属接続層に対してex situ又はin situのいずれかで電気めっきによって直接形成され、
- 上述の方法が、ステップ(g)の後、第1電気接続層及び第2電気接続層でコーティングした、電池の少なくともアノード接続ゾーン及びカソード接続ゾーンにおいて、導電性インクを堆積させるステップ(h)を含み、
- 上述の電気絶縁材料が、Al、SiO、SiO、及びエポキシ樹脂から選択され、
- 第2被覆層がパリレンNを含み、
- 第1被覆層の厚みが、1μm~50μmの間に含まれ、好ましくは約10μmと等しく、第2被覆層の厚みが、200nm未満であり、好ましくは5nm~200nmの間に含まれ、より好ましくは約50nmと等しく、
- 不浸透密封手段が、電気接続支持部を単位スタックの第1端面近傍に配置した後にコーティングされ、
- 不浸透密封手段の少なくとも一部が、電気接続支持部を単位スタックの第1端面近傍に配置する前にコーティングされ、
- 不浸透密封手段の少なくとも1つの第1層が、電気接続支持部を単位スタックの第1端面近傍に配置する前にコーティングされ、その後、不浸透密封手段の少なくとも1つの第2層が、上述の電気接続支持部を上述の第1端面近傍に配置した後にコーティングされ、
- これが、さらに、
・ 複数の支持部(5)を形成するために用いられるフレーム(105)を提供すること、
・ 複数のライン及び/又は行に配置した複数の単位スタックにおける第1端面近傍に上述のフレームを配置すること、
・ 複数の電気化学デバイスを形成するように、このスタックの長手方向及び/又は横方向に少なくとも1つの切り抜き、特に複数の切り抜きを作製すること、を含む。
【0036】
最後に、本発明は、本体と、電気エネルギー消費デバイスに電気エネルギーを供給可能な上述の電池とを含み、上述の電池の電気接続支持部(5)が上述の本体に固定される、電気エネルギー消費デバイスを対象物とする。
【0037】
添付の図面は、本発明の様々な実施形態において封入した多層電池を図式で示す。これらは、層の厚みに対して垂直の断面に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、2つの積層された層によって形成された本発明における封入システムを含む電池を示す。
図2図2は、2つの連続する2層を有する同様の封入システムを含む電池を示す。
図3図3は、本発明における電池を製造する方法の2つの別の実施形態に含まれる、アノード箔とカソード箔とを交互にしたスタックを示す斜視図である。
図4図4は、本発明における電池を製造する方法の2つの別の実施形態に含まれる、アノード箔とカソード箔とを交互にしたスタックを示す斜視図である。
図5図5は、さらに導電性支持部を含む図1の電池を示す長手方向断面図である。
図6図6は、図5に示すものの別の実施形態を示す長手方向断面図である。
図7図7は、図5又は図6における複数の電池を共に作製することを可能にするフレームを示す俯瞰図である。
図8図8は、図5に示す電池を作製するステップを示す、図5のものと同様の正面図である。
図9図9は、複数の電池を得るため、図7のフレームになされた切り抜きを示す俯瞰図である。
図10図10は、エネルギー消費デバイスへの図5の電池の組込みを示す正面図である。
図11図11は、特に導電性支持部の構造に関して、図10に示すものの別の実施形態を示す、図10のものと同様の正面図である。
図12図12は、図11の導電性支持部における様々な部品の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下の参照符号を、本記載に使用する。
I 電池、1 単位スタック、10、11 スタックの端面、
12、13 スタックの矢状面、14、15 スタックの側面、
4 封入システム、40、41 正面封入領域、
42 矢状封入領域、45 さらなる封入部、
2 第1封入層、3 第2封入層、
8、8’ コンタクト部材、5、5’ 第1電気接続層、
6、6’ 第2電気接続層、7、7’ 第3電気接続層、
1100、1200 大スタック、1101、1201 アノード階層、
1102、1202 カソード階層、1103、1104、1203、1204 H字状及びI字状空きゾーン、
50 電気伝導支持部、51、52 支持部の前面及び背面、
53、54 空隙、55 ベースプレート、56、57 側方ストリップ、
60 非導電性接着層、30、31 導電性接着パッド、
80 硬化システム、105 支持フレーム、150 境界部、151 予備成形部、
155 中心領域、156、157 側方ブロック、153、154 溝部、158、159 棒部、
106 導電性接着剤の適用量、130、131 導電性接着剤の適用量、
1000 エネルギー消費デバイス、1002 本体、1004 消費素子、
1006、1007 接続ライン
【0040】
本発明は、いわゆる電気化学単位セル、すなわちアノード集電体、アノード層、電解質材料の層又は電解質を含浸させたセパレーターの層、カソード層、及びカソード集電体を続けて含むスタック1に適用する。上述の集電体はまた、「集電基板」、すなわちアノード集電基板及びカソード集電基板とも呼ばれる。本発明は、複数の単位セルのスタックを含む電池にさらに適用する。
【0041】
図1及び図2において、直交座標系XYZを使用し、
- 軸XXは第1水平軸である、すなわち、スタックを構成する様々な層の平面に含まれる。さらに、この軸XXは横軸と呼ばれる、すなわち、箔に対して横方向に延びる。
【0042】
特に、これは、以下で本明細書に記載されるコンタクト部材の平面に対して垂直である。
- 軸YYは第2水平軸であり、スタックの層の平面にも含まれる。この軸YYは矢状軸と呼ばれる、すなわち、箔の後ろから前に延びる。特に、これは、コンタクト部材の平面に対して平行である。
- 最後に、軸ZZは、上述の軸のそれぞれに対して垂直でありながら、上下に延びる。これはまた、正面軸とも呼ばれる。
【0043】
本発明の1つの主要な特徴に相当する封入は、図1及び図2に関して本明細書に記載する。電池は、全体として参照符号Iによって示す。参照符号10は、電池のスタック1を形成する交互の「開放」層を示す電池Iの断面図を全体として示す。従来より、このスタックは、例えば、連続するアノード集電体/アノード/電解質又は含浸セパレーター/カソード/カソード集電体の層から構成される「ミルフィーユ」状である。
【0044】
電池を構成するアノード層及びカソード層のスタックの作製の後、かつ、スタックの統合のための機械処理及び/又は熱処理の後(この処理は、高圧及び高温を共に適用することを含む熱圧縮処理であり得る)、このスタックは、電池セルを大気から保護するため、封入システム4を堆積させることで封入する。封入システムは、そのバリア層としての機能を満たすため、化学的に安定し、高温に耐えることができ、大気を通さない必要がある。
【0045】
スタック1は、
- 切欠きを有するアノード箔及び切欠きを有するカソード箔のスタックに堆積させた、好ましくはパリレン、パリレンF、ポリイミド、エポキシ樹脂、アクリレート、フルオロポリマー、シリコーン、ポリアミド、ゾルゲルシリカ、有機シリカ、及び/又はそれらの混合物から選択される緻密で絶縁性の第1被覆層2、並びに
- アノード箔及びカソード箔のスタック又は上述の第1被覆層に原子層堆積によって堆積させた、電気絶縁材料からなる第2被覆層3、を含む封入システム4で被覆することができる。
【0046】
このシーケンスをz回繰り返すことができ、z≧1である。これは、zの値が増加するにつれて増加するバリア効果を有する。封入システムが完全に不浸透となるように、封入システムの最終層が電気絶縁材料から作製される被覆層であるということが重要である。
【0047】
このように図1に見受けられるように、封入システム4は、第1被覆層2と第2被覆層3との単純なシーケンスによって形成される一方、図1において、第1被覆層2aと第2被覆層3aとによって形成される第1シーケンス2a、3aが重ねられ、その後同じタイプの第2シーケンス2b、3bが続く。
【0048】
典型的に、第1被覆層2は、シリコーン(例えば含浸によって若しくはヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)からプラズマ支援化学気相堆積によって堆積)、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリパラキシリレン(ポリ(p-キシリレン)とも呼ばれるが、パリレンとしてよく知られている)、及び/又はそれらの混合物からなる群より選択される。この第1被覆層は、電池の感応成分をその環境から保護する。上述の第1被覆層の厚みは、好ましくは0.5μm~3μmの間に含まれる。
【0049】
電池の電解質及び電極層が多孔性を有するとき、この第1被覆層は特に有用であり、バリア効果も有する平坦化層として作用する。一例として、この第1層は、アクセスを閉ざすように、層の表面において開放する微多孔性の表面をライニング可能である。
【0050】
この第1被覆層2において、様々なパリレン変異体を使用することができる。パリレンC、パリレンD、パリレンN(CAS1633-22-3)、パリレンF、又はパリレンC、D、N、及び/若しくはFの混合物を使用することができる。パリレンは、高い熱力学的安定性、溶媒に対する優れた耐性、及び極めて低い透過性を有する、誘電性で、透明、半結晶性の材料である。また、パリレンはバリア特性も有する。パリレンFが、本発明の範囲内において好ましい。
【0051】
この第1被覆層2は、有利には、電池のスタック表面に化学気相堆積(CVD)によって堆積させたガス状モノマーを凝縮させることによって得られ、これは、スタックの利用可能な表面すべてにおいて、コンフォーマルで、薄く、均一の被覆部をもたらす。この第1被覆層は有利には硬質であり、可撓性面であるとは考えられない。
【0052】
第2被覆層3は、電気絶縁材料、好ましくは無機材料によって形成される。これは、これまでに第1被覆層で覆ったスタックの利用可能な表面すべてにおいてコンフォーマルな被覆部を得るように、原子層堆積(ALD)、PECVD、HDPCVD(高密度プラズマ化学気相堆積)、又はICP CVD(誘導結合プラズマ化学気相堆積)によって、有利に堆積される。ALDによって堆積させた層は極めて機械的に脆弱であり、その保護的役割を果たすため硬質な支持面を必要とする。可撓性面に脆弱層を堆積させることで亀裂を形成し得、この保護層の完全性を喪失させ得る。さらに、ALDによって堆積させた層の成長は基板の特性によって影響を受ける。様々な化学特性のゾーンを有する基板にALDによって堆積させた層は、不均質に成長することになり、この保護層の完全性を喪失させ得る。このため、この第2層は理想的には上述の第1層に当接し、これにより化学的に均質に成長させた基板を確保する。
【0053】
ALD堆積技術は、完全に不浸透でコンフォーマルになるように、極めて粗い表面を覆うことに特に良好に適している。これは、穴などの欠陥のない(「ピンホールなし」層と呼ばれる)、コンフォーマルな層を作製可能にし、極めて良好なバリアに相当する。そのWVTRは極めて低い。WVTR(水蒸気透過率)は、封入システムの水蒸気透過性を評価するために使用される。WVTRがより低いと、封入システムはより不浸透性である。この第2層の厚みは、有利には、ガスに対する不透過性の所望のレベル、すなわち所望のWVTRの関数として選択され、特にALD、PECVD、HDPCVD、及びICPCVDから選択される、使用する堆積技術によって決まる。有利には、この第2層は、好ましくは10-5g/m.d未満の水蒸気透過性(WVTR)を有する。水蒸気透過性(WVTR)は、米国特許第7,624,621号明細書の対象物であるとともに、また、Thin Solid Films 6+550 (2014) 85-89に掲載されている、A.Mortier他による記事「Structural properties of ultraviolet cured polysilazane gas barrier layers on polymer substrates」に記載されている方法を使用して測定することができる。
【0054】
上述の第2被覆層3は、例えば、酸化物、Al若しくはTa型、窒化物、ホスフェート、酸窒化物、又はシロキサンの形態の、セラミック材料、ガラス状材料、又はガラスセラミック材料から作製することができる。この第2被覆層は、好ましくは、10nm~50nmの間に含まれる厚みを有する。
【0055】
第1被覆層にALD、PECVD、HDPCVD(高密度プラズマ化学気相堆積)、又はICP CVD(誘導結合プラズマ化学気相堆積)によって堆積されるこの第2被覆層3は、第1に、構造を不浸透にすること、すなわち、水の物体内への移動を防ぐことを可能にし、第2に、その劣化を防ぐため、大気から、特に空気や湿気から、及び熱暴露から、好ましくはパリレンFから作製した第1被覆層を保護することを可能にする。したがって、この第2被覆層は封入した電池の寿命を向上させる。
【0056】
好ましくはパリレン、パリレンF、ポリイミド、エポキシ樹脂、アクリレート、フルオロポリマー、シリコーン、ポリアミド、及び/又はそれらの混合物から選択される、緻密で絶縁性の第1被覆層の多層シーケンスの外層は、切欠きを有するアノード箔及び切欠きを有するカソード箔、並びに上述の第1被覆層に原子層堆積によって堆積され、電気絶縁材料から作製される第2被覆層のスタックに堆積することができ、コンタクト部材と封入システムとの境界部においてショートを防ぐために原子層堆積によって堆積される電気絶縁材料から作製される被覆層である必要がある。
【0057】
こうしてコーティングしたスタックは、封入材料によってその6面において覆われる。そして、これは、アノード接続ゾーン及びカソード接続ゾーンを露出させるとともに、単位電池を得るように、切断線D’n及びDnに沿って任意の適切な手段によって切断される。これらの線を図1及び図2に示す。この露出により、スタックの4面のみが封入システムの各領域によって覆われることになる。より具体的には、正面封入領域40、41が、まず、スタックの対向する端面10、11を覆う一方、矢状封入領域がこのスタックの対向する矢状面12、13を覆う。図面において、封入前の矢状領域は、点線の参照符号42によって示されている。
【0058】
コンタクト部材(電気コンタクト)8、8’を、カソード接続ゾーン及び対応するアノード接続ゾーンが現れているところ、すなわちスタックの側面14、15において、付加する。このコンタクトゾーンは、好ましくは、集電するため電池のスタックの対向する側部に配置される(側方集電体)。コンタクト部材は、少なくともカソード接続ゾーン及び少なくともアノード接続ゾーンに、好ましくは、少なくともカソード接続ゾーンを含むコーティングして切断したスタックの面、及び少なくともアノード接続ゾーンを含むコーティングして切断したスタックの面に、配置される。
【0059】
好ましくは、コンタクト部材は、電気伝導性粒子を充填した材料、好ましくは、電気伝導性粒子を充填した、高分子樹脂及び/又はゾルゲル法により得られる材料、より好ましくは、グラファイトを充填した高分子樹脂を含む、第1電気接続層5、5’と、第1層に配置された金属箔からなる第2層とを続けて含む層のスタックによって、カソード接続ゾーン及びアノード接続ゾーンに近接して、構成される。
【0060】
第1電気接続層5、5’は、電気回路が熱ストレス及び/又は振動ストレスを受けるときに電気接続を破損することなく接続部に「可撓性」を与えながら、その後の第2電気接続層6、6’を固定することができる。
【0061】
第2電気接続層6、6’は金属箔である。この第2電気接続層は、湿気に対する永続的な保護を電池に与えるように使用される。一般に、所定の厚みの材料において、金属は、一般に水分子の通過に対してあまり不浸透性ではない、セラミック系膜より不浸透の、ポリマー系膜よりさらに不浸透の、極めて不浸透性の膜を作製することを可能にする。これは、コンタクト部材においてWVTRを下げることによって電池のカレンダー寿命を長くしている。
【0062】
典型的に、各第1層5、5’は、接着接合によって、それぞれアノード終端部又はカソード終端部に固定される。これを考慮すると、導電性接着層を使用することができる。特に、特性が互いに異なるものである、2つの導電性接着層を使用することができる。これらの層は「連続して」いる、すなわち第1層が終端部を覆う一方、第2層がこの第1層を覆っている。有利には、これらの2つの導電性接着剤は、異なる物理化学特性、特に異なるぬれ性を有することができる。
【0063】
さらに、金属箔6、6’も、接着接合によって、より正確には、電極と接触するときに有利には電気化学安定である必要がある導電性接着剤によって、第1層5、5’に固定される。導電性接着剤を使用して接合されるこの金属箔は、終端部の不浸透性を向上して、その電気抵抗を下げる。この技術的効果は、この箔の製造方法に関わらず注目すべきものである。
【0064】
有利には、導電性インクを含む第3電気接続層7、7’を、第2電気接続層6、6’に堆積することができ、その目的はWVTRを下げて、電池の寿命を長くすることである。
【0065】
コンタクト部材は、電気接続を端部のそれぞれにおいて正と負との交互にすることができる。これらのコンタクト部材は、異なる電池素子同士の間で並列の電気接続をなすことができる。この目的で、カソード接続部のみが一端において突出し、アノード接続部が他端において利用可能である。
【0066】
図1及び図2における電池が、本発明の主要な基準である不浸透性に関する条件を満たす必要があることに留意する必要がある。この目的で、コンタクト部材8、8’は、この不浸透性基準を満たす導電性材料から作製される。そうした材料は、例えば、特に金属粉末で充填した(例えばクロム、アルミニウム、銅、及び、電極の動作電位で電気化学安定である他の金属の粒子(及び好ましくはナノ粒子)で充填した)タイプの導電性ガラスである。
【0067】
有利には、それ自体は既知であるように、本明細書に上述するもののような複数の単位スタックを、共に作製することができる。これは、本発明における電池を製造する方法全体の効率を高める。特に、交互の連続するカソード階層及び対応するアノード階層、又は箔によって形成される、大きな寸法を有するスタックを作製することができる。
【0068】
例えば本出願人が出願した仏国特許出願公開第3091036号において既知のタイプのものである、各アノード箔又はカソード箔の物理化学構造は、本発明の範囲に該当せず、簡単に記載されるのみである。各アノード箔又は対応するカソード箔は、アノード活性層又は対応するカソード活性層を含む。これらの活性層のそれぞれは固体とすることができる、すなわち緻密性又は多孔性とすることができる。さらに、2つの隣接する箔同士の間の電気的接触を防ぐため、電解質の層又は液体電解質を含浸させたセパレーターを、これらの2つの箔の少なくとも1つに、反対側の箔に接触させて、配置する。本発明を記載する図に示していない電解質層又は液体電解質を含浸させたセパレーターは、反対の極性の2つの箔の間、すなわちアノード箔とカソード箔との間に挟まれる。
【0069】
これらの階層は、別の最終電池同士の間の分離を可能とするいわゆる空きゾーンを画定するように窪んでいる。本発明の範囲内において、様々な形状をこの空きゾーンに適用することができる。仏国特許出願公開第3091036号において本出願人によって既に提示されているように、この空きゾーンはH字状とすることができる。添付の図3は、アノード箔又は階層1101とカソード箔又は階層1102との間のスタック1100を示す。この図面に示すように、上述のH字状のアノード空きゾーン1103及び対応するカソード空きゾーン1104を形成するため、切り抜きをこれらの様々な箔に行う。
【0070】
あるいは、これらの開放ゾーンはI字状とすることもできる。添付の図4は、アノード箔又は階層1201とカソード箔又は階層1202との間のスタック1200を示す。図4に示すように、上述のI字状のアノード空きゾーン1203及び対応するカソード空きゾーン1204を形成するため、切り抜きをこれらの様々な箔に行う。
【0071】
好ましくは、別々の単位スタックの製造が完了すると、所定の電池の各アノード及び各カソードは、いずれの電極材料、電解質、及び/又は導電基板もない空間によって各2次本体から隔てられた各一次本体を含む。図示しない、さらなる別の実施形態において、空きゾーンは、その形状をU字形状などH字形状又はI字形状とは異なるように設けることができる。いずれにせよ、H字形状又はI字形状が好ましい。上述の空きゾーンは、製造方法を行う際、樹脂で充填することができる。
【0072】
図5及びそれ以下の図面は、上述の電池がさらに支持部を含む、さらなる有利な別の実施形態を示す。これらの図面は、スタック1、正面封入領域40、41、及びコンタクト部材8、8’を図式で示す。上述の支持部50は、実質的に平面であり、典型的に300μm未満、好ましくは100μm未満の厚みを有する。この支持部は、有利には、金、ニッケル、及びスズの薄層によってその溶接特性を向上させるためにコーティングすることができる、電気伝導性材料、典型的には金属材料、特にアルミニウム、銅、又はステンレス鋼から作製される。支持部のいわゆる前面はそれぞれ参照符号51を付与し、単位スタックに面しており、対向する背面は参照符号52を付与している。
【0073】
この支持部には孔が開いている、すなわち、中心ベースプレート55と2つの反対の側方ストリップ56、57とを画定する空隙53、54を有する。したがって、この支持部の別々の領域55、56、及び57は、互いに電気絶縁されている。特に、以下に見受けられるように、側方ストリップ56、57は、互いに電気絶縁されるとともに、電池に属するコンタクト部材と接続可能である領域を形成する。図示する例において、電気絶縁は、以下に見受けられるように硬化材料を充填した空き空隙53、54を設けることでなされる。あるいは、これらの空隙は、非導電性材料、例えばポリマー、セラミック、又はガラスを充填することができる。
【0074】
図示する例において、支持部とスタックとは、層60によって互いに接続される。後者は、典型的に、特にエポキシ又はアクリレートタイプの非導電性接着剤によって形成される。あるいは、支持部とスタックとは、図示しない溶着によって互いに堅く固定することができる。この層60の厚みは、典型的に5μm~100μmの間に含まれ、特に約50μmに等しい。支持部50の主平面において、この層は、本明細書の以下に詳細に記載するようにアノードコンタクト部材及びカソードコンタクト部材を互いに絶縁するように、上述の空隙53、54を少なくとも部分的に覆う。さらに、導電性接着剤のパッド30、31は、電気的導通を確保しながら、コンタクト部材を支持部5に固定することができる。
【0075】
図5に示す実施形態に対応する第1の態様において、コンタクト部材8、8’を形成する材料は、上述の基準に従った不浸透密封機能を満たすことができる。この目的のため、この材料は、典型的に、最初の3つの図面の説明に関して本明細書に上述されるリストに属している。そうした場合、さらなる封入部を設ける必要はない。より具体的には、不浸透性のコンタクト部材及び封入部が存在することで、アノード及びカソードの単位スタックを、有害な可能性があるガスの侵入に対して保護する。
【0076】
図6に示す実施形態に対応する第2の態様において、コンタクト部材8、8’を形成する材料は、本発明の範囲内で理解されるように不浸透性ではない。そうした場合、電池は、有利には、図6に実線で示すさらなるいわゆる封入層45を含む。このさらなる層は、スタックを「再封入」するようにして、スタックに所望の不浸透性を与える。有利には、この層45は、上述で規定するような、10-5g/m.d未満の水蒸気透過性(WVTR係数又はWVTR)を有する。
【0077】
不浸透性に関する主要な基準を確実するため、この封入層45は、まずコンタクト部材8、8’を覆っている。さらに、これは、最初の封入層41と支持部50の対向する面との間にある中間の空間に延出する。最後に、これはまた、支持部の開放空間53、54に延出する。図6の底部において、参照符号45をこれらの特定のゾーンに3つ付与している。したがって、電池の適切な機能に対して有害な成分が、アノード及びカソードの単位スタックにアクセスできなくなっている。換言すると、本発明は、この有害な成分に対して、いずれの可能性のある「ゲートウェイ」も阻止している。
【0078】
図示しない第3の態様において、導電性接着層を間に挟んで、単位スタックのみがまず支持部に配置される。その後、スタックの側面をコンタクト部材で覆う。これを考慮すると、封入システムなしでこれらのコンタクト部材を既に設けた単位スタックも、その支持部に配置することができる。最後に、封入システムを、本明細書に上述するように、全体の不浸透の確保に配慮しながら、堆積させる。
【0079】
最後に、本発明の有利な一実施形態において、電池はさらに硬化システムを備えることができる。これは、まず、不浸透性のコンタクト部材を有する図5に示すような電池に付加することができる。したがって、この硬化システムは、全体として参照符号80によって示す。そうした場合、硬化材料は、電池の上面及び側方のコンタクト部材を覆う。また、この硬化材料は、有利には、層41と支持部50との間の中間の空間、及び支持部の開放空間53、54を充填する。この充填を示すため、硬化材料が占める様々なゾーンにおいて、参照符号80を複数使用している。
【0080】
また、硬化材料は、図示せずに、不浸透性でないコンタクト部材を有する図6の電池に付加することができる。そうした場合、硬化材料は、上縁及び側縁においてさらなる封入システム45を覆う。この硬化材料は、開放空間53、54、及び層41と支持部50との間の中間の空間における封入材料45に密接に接合できるということを留意する必要がある。
【0081】
この硬化システム80は、この機械的硬化機能を与える任意の材料から作製することができる。これを考慮すると、例えば、単純なポリマー又は無機充填剤を充填したポリマーからなり得る樹脂を選択することができる。ポリマーマトリックスは、例えばエポキシ、アクリレート、又はフッ素化ポリマーのファミリーからのものであり得、充填材は粒子、薄片、又はガラスファイバーによって形成することができる。
【0082】
有利には、この硬化システム80は、さらなる湿気バリア機能を与えることができる。これを考慮すると、例えば、低融点のガラスを選択することで、機械的強度を確保して、さらなる湿気バリアを与えることができる。このガラスは、例えば、SiO-B、Bi-B、ZnO-Bi-B、TeO-V、又はPbO-SiOのファミリーからのものとすることができる。
【0083】
典型的に、硬化システム80は、封入システムよりはるかに厚みがある。図5に関して、スタックの前面の被覆部におけるこの硬化システムの最小の厚みは、参照符号E80によって示している。有利には、この厚みE80は、20~250μmの間に含まれ、典型的に約100μmに等しい。さらなる硬化システムが存在することで、さらなる利点をもたらす。したがって、この硬化システムは、任意でさらなるガスバリア機能と組み合わせた、機械的及び化学的保護機能を与える。
【0084】
本明細書に上述するような、本発明における電池の支持部50への統合は、各単位スタックをその支持部に個別に配置することによってなすことができる。いずれにせよ、有利には、そのそれぞれをそうした支持部に統合する複数の電池を共に製造する。
【0085】
これを考慮して、そうした共に製造する方法を図7図9に示す。この方法を行うため、複数の支持部50を形成するために用いられる支持フレーム105を有利には使用する。図7において大縮尺で示すこのフレーム104は、周囲境界部150、及び、そのそれぞれにより、1つの電池をそれぞれ製造することができる複数の予備成形部151を有する。図示する例において、3つのライン及び4つの列に分けた、12個の互いに同一の予備成形部が見てとれる。あるいは、様々な数のそうした予備成形部を有するフレームを使用することができる。
【0086】
各予備成形部は、ベースプレート55を形成するために用いられる中心領域155、及びそれぞれストリップ56、57を形成するために用いられる2つの側方ブロック156、157を含む。領域及びブロックは、空隙53、54を形成するために用いられる溝部153、154によって互いに分離される。別々の予備成形部は、それぞれ別々の水平棒部158及び垂直棒部159によって、互いに対して及び周囲縁部に対しての両方において、固定される。
【0087】
この実施形態において、各予備成形部151は、図1に示すもののような既に封入した電池を受け入れる。製造方法において、非導電性接着剤の適用量106は、層6を形成するように各領域155に堆積され、導電性接着剤の適用量130、131は、パッド30、31を形成するように堆積される。その後、封入したスタックは、接着層60及びパッド30、31を形成するように支持部と接触させて配置して、このスタックを支持部に互いに固定させる。
【0088】
最後に、図9に示すように、複数の電池の様々な部品を堆積したフレーム150に切り抜きを行う。様々な切断線を点線で示し、電池の長手方向寸法の切り抜きには参照符号D、及びその横方向寸法の切り抜きには参照符号D’を付与している。フレームの2つの寸法において、所定のゾーンR、R’は廃棄することを意図しているということに留意する必要がある。
【0089】
図示しない別の実施形態において、本発明における電気化学デバイスは、1つ以上のさらなる電子部品を含むことができる。そうした部品は、例えばLDO(「低ドロップアウトレギュレーター」)タイプのものであり得る。典型的に、複雑な電子機能を有するミニ回路の作製が想定され得る。これを考慮すると、RTC(「リアルタイムクロック」)モジュール又はエネルギーハーベスティングモジュールを使用することができる。この実施形態において、有利には、単位スタックを保護するものと同じ封入システムによって、1つ以上の電子部品を覆う。
【0090】
動作の際、従来のように、電気エネルギーを単位スタックに蓄える。このエネルギーは、コンタクト部材及び導電性接着パッド30、31を介して支持部50の導電領域55、56に伝達される。この導電領域は互いに絶縁されているので、ショートのリスクはない。その後、この電気エネルギーは、領域56、57から任意の適切なタイプのエネルギー消費デバイスに誘導される。
【0091】
図10において、このエネルギー消費デバイスを図式で示し、参照符号1000によって示す。これは、支持部の下面を載置する本体1002を含む。この本体1002と支持部50とを、任意の適切な手段によって互いに固定する。図10において、デバイス1000は、そのコンタクト部材が不浸透性である、図5に示す電池を統合していることに留意する必要がある。図示しない別の実施形態において、図6の電池もまた、エネルギー消費デバイス1000と組み合わせることができる。そうした場合、本明細書に上述するように、さらなる封入材料45がアノード及びカソードの単位スタックを完全に不浸透性とすることを確実にする必要がある。これに関し、本明細書における上述、特に図6の参照符号45の様々な位置が参照される。
【0092】
デバイス1000は、エネルギー消費素子1004、及びこの素子1004に支持部50の領域56、57を電気的に接続する接続ライン1006、1007をさらに含む。その制御は、電池自体の部品によって、及び/又は、デバイス1000に属する、図示しない部品によって行うことができる。非限定的例として、そうしたエネルギー消費デバイスは、増幅型の電子回路、クロック型の電子回路(リアルタイムクロック(RTC)部品など)、揮発性メモリ型の電子回路、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)型の電子回路、マイクロプロセッサー型の電子回路、ウォッチドッグタイマー型の電子回路、液晶ディスプレイ型の部品、LED(発光ダイオード)型の部品、電圧レギュレーター型(低ドロップアウトレギュレーター回路(LDO)など)の電子回路、又はCPU(中央処理装置)型の電子部品とすることができる。
【0093】
ここで、導電性支持部750が単一層タイプのものである上述の支持部50とは反対に多層タイプのものである、別の実施形態を、図11及び図12に関して記載する。さらに、この支持部750は、特に孔が開いているタイプのものである、本明細書に上述する金属格子とは反対の固体タイプのものである。図11に示すように、支持部750は、例えばポリマー材料から作製された層によって形成される。これらの層は上下に重なるように延出し、その主平面は、本明細書に上述するスタック1を形成する層の平面と実質的に平行となる。したがって、この支持部の構造は、プリント回路基板(PCB)のものと同様である。
【0094】
図11及び図12は、上から下に、電池のスタックを堆積させる層756を示す。エポキシ樹脂などのポリマー材料から主に作製されるこの層756には、2つのインサート757が設けられる。これらは、導電性材料、特に金属材料から作製され、電池のアノードコンタクト及び対応するカソードコンタクトと共に動作するように設計されている。これらのインサート757は、層756のエポキシ樹脂によって互いに絶縁されているということに留意する必要がある。
【0095】
層756の直下は、これもエポキシ樹脂などのポリマー材料から作製された層758である。この層758には、第1のインサート757と電気的に接触する、導電性材料から作製された2つのインサート759が設けられる。これらのインサート759は、層756のように、互いに絶縁されている。
【0096】
そして、本明細書に上述する層756及び758とは著しく異なる中間層760が存在する。より具体的には、この層760は、典型的には、本明細書に上述するインサート757及び759を形成するものと同様の導電性材料から作製される。この層は、絶縁材料、特に本明細書に上述するようなエポキシ樹脂から作製された2つのリング状インサート761を備えている。これらのインサート761は、隣接する導電性のインサート759と接触して配置される、導電性材料から作製されたディスク762をその中空の中心部において受け入れる。これらの導電性のディスク762は、リング761を介して互いに絶縁されているということに留意する必要がある。
【0097】
最後に、それぞれが本明細書に上述する層758及び756と同一である図11及び図12の底層764及び766が存在する。層764は、ディスク762と接触する2つのインサート765を備える一方、底層766には、上述のインサート765と接触する2つのインサート767が設けられる。様々な、導電性のインサート757、759、762、765、及び767が、支持部705の対向する端面を電気的に接続する、参照符号753、754によって示す導電路を画定する。これらの通路は、層756、758、764、及び766によって、又はディスク761によって、互いに絶縁されている。
【0098】
この実施形態において、硬化システムは、第1の実施形態における硬化システム80とは異なり得る。保護膜780を、特に、積層ステップによって堆積させることができる。バリア特性を有するそうした膜は、例えば、無機多層を組み込むポリエチレンテレフタレート(PET)から作製され、この用途に適し得るそうした製品は、Ultra Barrier Film 510又はUltra Barrier Solar Films 510-Fの参照名で3M社から市販されている。しかしながら、圧延によって得られる膜を使用するそうした硬化システムは、図11に示すものに加えて他の用途に使用することができる。
【0099】
図11は、支持部705、スタック702、導電性パッド730、740、封入部707、及び膜708の、エネルギー消費デバイス1000への統合をさらに示す。第1の実施形態のように、スタック702において生成されたエネルギーは、コンタクト部材730、740を介して上側のインサート757に伝達される。その後、このエネルギーは、本明細書に上述する接続経路753、754に沿ってエネルギー消費デバイス1000に伝達される。
【0100】
多層支持部は、その最も一般的な構造において、上下に重ねた、2つの別個の層のみから形成することができる。これらの層は、本明細書に上述する導電路753、754と同様の導電路を画定する。図11に関して示すこの特定の実施形態には特定の利点がある。より具体的には、参照符号750によって示すものなどの多層支持部は、有利には100μm未満の極めて小さい厚みを有する。さらに、そうした支持部は、電池の寸法におけるわずかな変化に対応するように、本説明の導入において「ブレス」と呼ばれる所定の可撓性を有する。この支持部は、さらに、可撓性電子回路にその統合を行うため、特に良好な曲げ強度の恩恵を受ける。
【0101】
本発明は、記載及び説明する例に限定されない。
【0102】
図示しない第1の別の実施形態において、各集電基板は孔が開いたものであり得る、すなわち少なくとも1つの貫通開口を有することができる。有利には、各穿孔(又は開口)の横方向寸法は、0.02mm~1mmの間に含まれる。さらに、孔が開いた各基板の空隙率は、10%~30%の間に含まれる。これは、この基板の所与の表面積において、該表面積の10%~30%を穿孔が占めているということを意味する。
【0103】
これらの穿孔又は開口の技術目的は、基板の2面のうちの一方に堆積させた第1層を、基板の2面のうちの他方に堆積させた第1層に対して、開口内で接合することである。これは、堆積の品質、特に基板に接触する層の接着を向上する。より具体的には、乾燥及び焼結動作時に、上述の層が、わずかに収縮する、すなわちその長手方向及び横方向の寸法がわずかに減少する一方、基板の寸法は実質的に変わらない。これにより、基板と各層との境界部においてせん断応力がかかりやすく、ゆえに接着の品質を低下させる。層の厚みが大きくなるにつれて、この応力は大きくなる。
【0104】
この条件下で、穴が開いた基板を設けることで、この接着の品質を著しく向上させる。実質的に、この基板の対向する面に位置する層は、様々な穿孔内において互いに溶着しやすい。これにより、焼きなまし後に有機結合剤を含まなくなっても、層の堆積厚さを大きくすることができる。また、この別の実施形態により、電池出力を増加させることができる。これは、厚いメソ孔タイプの超高出力電極と共に使用することに特に良好に適している。
【0105】
本発明における方法は、特に、固体電池、すなわち電極及び電解質が固体であり、固相に含浸させた液相すら含まない電池の製造に適する。
【0106】
また、本発明における方法は、特に、電解質を含浸させた少なくとも1つのセパレーターを含む疑似固体とみなされる電池の製造に適する。
【0107】
上述のセパレーターは、好ましくは、
- 30%を超える、好ましくは35%~50%の間に含まれる、より好ましくは40%~50%の間に含まれる気孔率、好ましくはメソ孔、
- 50nm未満の平均径D50の孔を有する、多孔性無機層である。
【0108】
セパレーターは、多くの場合、電極同士の間に挟まれていると理解される。この例の実施形態において、これは、電池の固体組立体を作製するように電極の少なくとも一方に堆積させて焼結したセラミック又はガラスセラミックフィルターである。液体がこのセパレーター内でナノ制限されていることにより、最終電池の疑似固体特性を与える。
【0109】
セパレーターの厚みは、その特性を狭めることなく電池の最終厚を小さくするように、有利には、10μm未満であり、好ましくは3μm~16μmの間、より好ましくは3μm~6μmの間、さらにより好ましくは2.5μm~4.5μmの間に含まれる。セパレーターの孔は、電解質、好ましくは、リチウム塩を含有する液体電解質又はイオン性液体などのリチウムイオン担持相を、含浸させる。孔、特にメソ孔において「ナノ制限した」又は「ナノ捕捉した」液体は脱出することができない。これは、本明細書において「メソ孔構造の吸収」と呼ぶ現象に従うものであり(リチウムイオン電池の文脈内では文献に記載されていると認められない)、セルを真空内に配置したときでも脱出することができない。したがって、そうした電池は疑似固体電池とみなされる。
【0110】
本発明における方法及び封入システムは、特に、任意のタイプの薄膜電池に、特に任意のタイプのリチウムイオン電池に適用することができる。
【0111】
このリチウムイオン電池は、固体多層リチウムイオン電池、疑似固体多層リチウムイオン電池とすることができ、特に固体多層リチウムイオンマイクロ電池とすることができる。より一般に、このリチウムイオン電池は、特に、マイクロ電池の範囲内において、国際公開第2013/064777号に記載するものなどの、アノード層、電解質層、及びカソード層、すなわち、この文献の請求項13に記載の材料の1つ以上から作製されるアノード層、この文献の請求項14に記載の材料の1つ以上から作製されるカソード層、及びこの文献の請求項15に記載の材料の1つ以上から作製される電解質層、を使用することができる。
【0112】
本発明における電池は、リチウムイオンマイクロ電池、リチウムイオンミニ電池、又は高出力リチウムイオン電池とすることができる。特に、これは、約1mAh以下の容量を有するように(「マイクロ電池」として一般に知られる)、約1mAhを超えて約1Ah以下の出力を有するように(「ミニ電池」として一般に知られる)、又は約1Ahを超える容量を有するように(「高出力電池」として一般に知られる)、設計及び形成することができる。典型的に、マイクロ電池は、マイクロエレクトロニクス製造方法に適合するように設計される。
【0113】
これら3つの出力範囲のそれぞれにおける電池は、
- 「固体」タイプの層、すなわち、含浸液相又はペースト相(該液相又はペースト相は、電解質として作用することができるリチウムイオン伝導媒体とすることができる)のない層、
- 又は、この層を疑似固体とみなすことができるように、層に自発的に浸透するとともにそこから出られない、液相又はペースト相、典型的にリチウムイオン伝導媒体を含浸させた、メソ孔の「固体」タイプの層、
- 又は、含浸多孔層(すなわち、この層に湿潤特性を与える液相又はペースト相を含浸可能である開放孔のネットワークを有する層)で作製することができる。
【実施例
【0114】
本発明における電池の例の実施形態を以下に記載する。
- 本発明における封入及び電気コンタクト部材を使用する電池の製造。
【0115】
・ LiTi12系アノードの作製
LiTi12のナノ粒子を、アノード材料として使用するため、100nm未満の粒子サイズに粉砕することによって、調製した。その後、LiTi12のナノ粒子の懸濁液を得るため、LiTi12のナノ粒子を、数ppmのクエン酸を含む10g/lの無水エタノールに分散させた。
【0116】
ステンレス鋼ストリップに、これまでに調製した懸濁液に含まれるLiTi12のナノ粒子を電気泳動堆積することによって、負極を調製した。LiTi12の膜(約1μm)を基板の両面に堆積させた。その後、ナノ粒子をともに溶着させ、基板への付着性を向上させ、LiTi12の再結晶化を完了させるため、これらの膜を600℃で1時間熱処理した。
【0117】
・ Li1+xMn2-y系カソードの作製
Li1+xMn2-yの結晶性ナノ粒子を、カソード材料として、100nm未満の粒子サイズに粉砕することによって、x=y=0.05として調製した。その後、Li1+xMn2-yのナノ粒子の懸濁液を得るため、Li1+xMn2-yのナノ粒子を、25g/lの無水エタノールに分散させた。その後、この懸濁液をアセトン中で5g/lの濃度に希釈した。
【0118】
ステンレス鋼ストリップに、これまでに調製した懸濁液に含まれるx=y=0.05とするLi1+xMn2-yのナノ粒子を電気泳動堆積することによって、正極を調製した。Li1+xMn2-yの薄膜(約1μm)を基板の両面に堆積させた。その後、ナノ粒子をともに溶着させ、基板への付着性を向上させ、Li1+xMn2-yの再結晶化を完了させるため、これらの膜を600℃で1時間熱処理した。
【0119】
・ これまでに作製したアノード層及びカソード層における、LiPOの懸濁液によるメソ孔層の作製
本明細書の以下に示す2つの溶液から、LiPOのナノ粒子の懸濁液を調製した。
【0120】
45.76gのCHCOOLi,2HOを448mlの水に溶解し、その後、224mlのエタノールを溶媒に激しくかく拌しながら加え、溶液Aを得た。
【0121】
16.24gのHPO(水中で85重量%)を422.4mlの水に希釈し、その後、182.4mlのエタノールをこの溶液に加え、以下で溶液Bと呼ぶ第2溶液を得た。
【0122】
その後、溶液Bを溶液Aに真空でかく拌しながら加えた。
【0123】
混合時に形成された泡が消えた後は完全に透明である、得られた溶液を、Ultraturraxタイプのホモジナイザーを動作させながら、4.8リットルのアセトンに加え、溶媒をホモジナイズした。液相に懸濁した白色沈殿物を直ちに観察した。
【0124】
反応媒体を5分間ホモジナイズしてから、10分間、磁気かく拌を続けた。これを、デカントするため1~2時間放置した。上清を捨て、残りの懸濁液を6000gで10分間遠心分離した。その後、1.2lの水を加えて、沈殿物を懸濁液に戻した(ソノトロード及び磁気かく拌を使用)。この後、このタイプの洗浄をエタノールでさらに2回行った。15mlの1g/mlリン酸ビス(2-(メタクリロイルオキシ)エチル)の溶液を、激しくかく拌しながら、エタノール中の得られたコロイド懸濁液に加えた。このようにして、懸濁液がより安定になった。その後、ソノトロードを用いて、懸濁液を超音波振動させた。その後、懸濁液を6000gで10分間遠心分離した。その後、ペレットを1.2lのエタノールに再分散させ、6000gで10分間遠心分離した。このようにして得られたペレットを900mlのエタノールに再分散させ、電気泳動堆積に適切な15g/lの懸濁液を得た。
【0125】
このように、10nmであるLiPOの1次粒子からなる約200nmの集塊をエタノール中の懸濁液において得た。
【0126】
その後、これまでに得られたLiPOナノ粒子の懸濁液に20V/cmの電場を90秒間印加することによって、これまでに調製したアノード及びカソードの表面に、電気泳動によって、LiPOの多孔薄層を堆積させ、約2μmの層を得た。その後、層を120℃で空気乾燥させてから、これまでに乾燥させたこの層において、350℃における120分間のか焼処理を行って、有機残渣の跡をすべて取り除いた。
【0127】
本明細書に上述する方法にしたがって、複数の薄膜アノード及び対応するカソードを作製した。
【0128】
・ 複数の電気化学セルを含む電池の構成
本明細書に上述する例にしたがって、複数の薄膜アノード及び対応するカソードを作製した。これらの電極を、本明細書に上述するようにLiPOナノ粒子の懸濁液による電子セパレーター層で覆った。
【0129】
これまでに作製したそれぞれの電極(Li1+xMn2-y及びLiTi12)に2μmの多孔性LiPOを堆積させた後、LiPOの膜を互いに接触させるように、2つのサブシステムを積み重ねた。その後、多孔層で覆われ、LiPOの膜を接触させた、薄層である交互の連続するカソード及びアノードを含むこのスタックを、真空において熱加圧した。
【0130】
このため、スタックを5MPaの圧力下に配置してから、真空において10-3バールで30分間乾燥させた。その後、加圧プラテンを0.4℃/秒の速度で550℃に加熱した。その後、スタックを、550℃において、45MPaの圧力で20分間熱圧縮してから、システムを周囲温度に冷却した。
【0131】
組立体を完成させ、120℃で48時間真空(10ミリバール)において乾燥させると、複数の組み立てセルからなる硬質多層システムを得た。
【0132】
・ 電気化学セル又は封入電池の作製
電気化学セル、又は複数の電気化学セルを含む対応する電池を、前述の例にしたがって作製した。これらのデバイスを連続する層によって封入する。
【0133】
約2μm厚のパリレンF(CAS1785-64-4)の第1層を、電気化学セルに、複数の電気化学セルを含む対応する電池に、CVDによって堆積させた。
【0134】
その後、アルミナAlの層を、パリレンFのこの第1層にALDによって堆積させた。パリレンの層で覆った、電気化学セル、複数の電気化学セルを含む対応する電池を、Picosun(登録商標)P300 ALDリアクターのチャンバーに挿入した。ALDリアクターのチャンバーをそれまでに5hPa及び120℃の真空に配置し、150sccmの流量(standard cm/min)における、キャリアガスとしての、3ppm未満の1型超純水(σ≒0.05μS/cm)を含有する窒素雰囲気下において、アルミナの化学前駆物質である、トリメチルアルミニウム(以下、TMAと呼ぶ、CAS番号、CAS:75-24-1)流をそれまでに30分間流して、任意の堆積前にリアクターのチャンバーの雰囲気を安定化させた。チャンバーの安定化後、30nmのAl層をALDによって堆積させた。
【0135】
その後、約2μm厚のパリレンFの層を、アルミナAlの第2層に、CVDによって堆積させた。
【0136】
その後、約30nm厚のアルミナAlの層を、パリレンFのこの第3層に、本明細書に上述するようにALDによって堆積させた。
【0137】
この例において、水分子をインタフェースAより下に通過させてショートさせないように、ALD層より上にさらなる樹脂は存在しないということに留意する必要がある。
【0138】
この後、電気化学セル、対応する単位電池を得るため、このように封入したスタックを切断平面に沿って切断し、電気化学セル及び対応する電池のカソード及び対応するアノードの集電体をそれぞれの切断平面において露出させた。このように、封入したスタックを、スタックの6面のうちの2面において切断して、カソード及び対応するアノードの集電体を出現させた。
【0139】
その後、この組立体を、無水雰囲気下で、PYR14TFSI及び0.7MのLiTFSIを含有する電解質溶液に浸漬させることによって含浸させた。PYR14TFSIは、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの一般的な略語である。LITFSIは、リチウム ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(CAS番号:90076-65-6)の一般的な略語である。イオン性液体は、毛管上昇により直ちに孔に入る。システムの2つの端部のそれぞれを、少量の電解質混合物に5分間浸漬し続けた。
【0140】
・ 封入した電気化学セル又は封入した電池のコンタクト部材の作製
その後、コンタクト部材を、カソード又は対応するアノードの集電体が現れているところ(絶縁電解質でコーティングされていない)に付加した。
【0141】
Dycotec DM-Cap-4701Sタイプのカーボン充填導電性樹脂を、封入して切断した電気化学セル、対応する電池の端部に付加する。5μm厚の316Lタイプのステンレス鋼箔を、この導電性樹脂の薄層に付加する。小さいステンレス鋼箔を電池の端部と圧接させるように保持することで、樹脂を100℃で5分間乾燥させた。
【0142】
その後、第2終端層を電池の2つの端部に作製する。この第2層は、端部のそれぞれに接合したステンレス鋼箔を覆う。
【0143】
この第2層は、銀充填導電性接着剤に端部を浸漬させることで得られる。
【0144】
その後、部品を、ホウ酸で酸性化したスルファミン酸ニッケルの第1浴中において、6A電流下、60℃で25分バレルめっきする。洗浄後、部品の溶着性を確保するため、スズ堆積をニッケル堆積物に行う。また、この堆積は、メタンスルホン酸スズ及びホウ酸の浴中において電解堆積によってバレルを使用して、pH4において25℃で35分間行う。
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【国際調査報告】