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特表2023-508121パルボウイルスベクターならびにその作製および使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-01
(54)【発明の名称】パルボウイルスベクターならびにその作製および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20230221BHJP
   C12N 7/00 20060101ALI20230221BHJP
   C12N 15/35 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
C12N15/63 Z
C12N7/00 ZNA
C12N15/35
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576294
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 US2020065329
(87)【国際公開番号】W WO2021126991
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】62/949,052
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521193315
【氏名又は名称】ナイキジェン,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,ウェイドン
(72)【発明者】
【氏名】ユー,シャンピン
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AB01
4B065BA01
(57)【要約】
パルボウイルスカプシドと、センス鎖およびアンチセンス鎖を有する二本鎖ベクターゲノムとを含む組換えパルボウイルスベクター。センス鎖は、5’から3’の方向に:5’末端におけるパルボウイルス末端反復配列;目的の遺伝子(GOI)のコード配列;および3’末端におけるパルボウイルス末端反復配列を含む。ベクターゲノムはさらに、RNA不安定化/破壊ドメイン(RDDD)を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルボウイルスカプシドと;
センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖ベクターゲノムと
を含むパルボウイルスベクターであって、
センス鎖が、5’から3’方向に:
5’末端におけるパルボウイルス末端反復配列;
目的の遺伝子(GOI)のコード配列;および
3’末端におけるパルボウイルス末端反復配列
を含み、
ベクターゲノムがさらに、RNA不安定化/破壊ドメイン(RDDD)を含む、パルボウイルスベクター。
【請求項2】
RDDDが、アンチセンス鎖に位置する、請求項1に記載のパルボウイルスベクター。
【請求項3】
RDDDが、逆の方向でGOIのイントロンに位置する、請求項1に記載のパルボウイルスベクター。
【請求項4】
AAVベクターである、請求項1に記載のパルボウイルスベクター。
【請求項5】
RDDDが、マイクロRMAを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のパルボウイルスベクター。
【請求項6】
RDDDが、配列番号1および/または配列番号3を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のパルボウイルスベクター。
【請求項7】
RDDDが、配列番号1の2つ以上のコピーおよび/または配列番号3の2つ以上のコピーを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のパルボウイルスベクター。
【請求項8】
RDDDが、配列番号2、4、5、6、および7からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のパルボウイルスベクター。
【請求項9】
さらに、第2のRDDDを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のパルボウイルスベクター。
【請求項10】
第2のRDDDが、配列番号8を含む、請求項9に記載のパルボウイルスベクター。
【請求項11】
RDDDが、リボザイムを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のパルボウイルスベクター。
【請求項12】
リボザイムが、配列番号9を含む、請求項11に記載のパルボウイルスベクター。
【請求項13】
RNA不安定化/破壊ドメイン(RDDD)を組換えパルボウイルスに挿入するステップを含む、組換えパルボウイルスの産生収量を改善するための方法であって、
組換えパルボウイルスが、
パルボウイルスカプシドと;
センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖ウイルスゲノムと、
を含み、センス鎖が、5’から3’方向に:
5’末端におけるパルボウイルス末端反復配列;
目的の遺伝子(GOI)のコード配列;および
3’末端におけるパルボウイルス末端反復配列
を含み、
RDDDが、ウイルスゲノムに挿入される、方法。
【請求項14】
RDDDが、ウイルスゲノムのアンチセンス鎖に位置する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
RDDDが、逆の方向でGOIのイントロンに位置する、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本願は、2019年12月17日に出願された米国特許仮出願第62/949,052号の優先権を主張するものである。
[0002]本発明は、概して、遺伝子導入および遺伝子治療用途での使用のためのベクターに関する。特に、本願は、パルボウイルスベクターなどの組換えウイルスベクターの産生の間に産生される望ましくないアンチセンスRNAおよび二本鎖RNA(dsRNA)の管理に関する。
【背景技術】
【0002】
[0003]アデノ随伴ウイルス(AAV)などの組換えパルボウイルスは、遺伝子治療の分野において遺伝子導入ベクターとして広く使用されてきた。しかしながら、組換えパルボウイルスは、多くの場合、複製の際にアンチセンスRNAまたはdsRNAを生じ、それらは、結果として、ウイルス産生の収量の減少の原因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0004]したがって、高収量で産生することができる新規のパルボウイルスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
[0005]本願は、アンチセンスRNAまたはdsRNA不安定化/破壊ドメイン(RDDD)を有するウイルスゲノムを伴うパルボウイルスベクターについて記載し、そのようなベクターを産生するための方法およびDNAコンストラクトを含む。コンストラクト、ベクター、および方法は、組換え遺伝子発現カセットの送達を必要とするものを含めた遺伝子導入/遺伝子治療用途に適用可能である。
【0005】
[0006]本願の一態様は、パルボウイルスカプシドと;センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖ベクターゲノムとを含むパルボウイルスベクターであって、センス鎖が、5’から3’方向に:5’末端におけるパルボウイルス末端反復配列;目的の遺伝子(GOI)のコード配列;および3’末端におけるパルボウイルス末端反復配列を含み、ベクターゲノムがさらに、RDDDを含む、パルボウイルスベクターに関する。
【0006】
[0007]いくつかの実施形態において、RDDDは、アンチセンス鎖に位置する。いくつかの実施形態において、RDDDは、逆の方向でGOIのイントロンに位置する。
[0008]いくつかの実施形態において、パルボウイルスベクターは、AAVベクターである。
【0007】
[0009]いくつかの実施形態において、RDDDは、マイクロRMAを含む。いくつかの実施形態において、RDDDは、配列番号1および/または配列番号3を含む。いくつかの実施形態において、RDDDは、配列番号1の2つ以上のコピーおよび/または配列番号3の2つ以上のコピーを含む。いくつかの実施形態において、RDDDは、配列番号2、4、5、6、および7からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0008】
[0010]いくつかの実施形態において、RDDDは、リボザイムを含む。いくつかの実施形態において、リボザイムは、配列番号9を含む。
[0011]いくつかの実施形態において、パルボウイルスベクターはさらに、第2のRDDDを含む。いくつかの実施形態において、第2のRDDDは、配列番号8を含む。
【0009】
[0012]本願の別の態様は、組換えパルボウイルスの産生収量を改善するための方法であって、RNA不安定化/破壊ドメイン(RDDD)を組換えパルボウイルスに挿入するステップを含む方法に関する。組換えパルボウイルスは、パルボウイルスカプシドと;センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖ウイルスゲノムとを含み、センス鎖は、5’から3’方向に:5’末端におけるパルボウイルス末端反復配列;目的の遺伝子(GOI)のコード配列;および3’末端におけるパルボウイルス末端反復配列を含み、RDDDは、ウイルスゲノムに挿入される。
【0010】
[0013]いくつかの実施形態において、RDDDは、ウイルスゲノムのアンチセンス鎖に位置する。いくつかの実施形態において、RDDDは、逆の方向でGOIのイントロンに位置する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】[0014]GOImRNAの発現および活性に悪影響を及ぼしうる、目的の遺伝子(GOI)発現カセットのアンチセンス鎖からのアンチセンスRNAの発現を駆動する、GOIのアンチセンス方向のクリプティックプロモーター(cryptic promoter)を示す。
図2】[0015]パルボウイルスベクターにおけるdsRNA形成メカニズムを示す。経路Aは、ネガティブ鎖にアンチセンス転写を有し得ない、GOIに対して完全転写ユニットをコードする完全ゲノムを含む組換えパルボウイルスベクターからのGOImRNAの形成を示す。経路Bは、組換えパルボウイルスベクターゲノムの一部を含む欠陥干渉(defective interfering:DI)粒子からのdsRNAの形成を示す。結果として生じるdsRNAは、次いで、GOImRNAの発現および活性を妨げることができる。
図3】[0016]mRNAの発現またはそこからの翻訳を制御または調節するRNAi、リボザイム、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドを示す。これらのツールは、パルボウイルスベクターから形成されたアンチセンスRNAおよびdsRNAを調節するために、本願のパルボウイルスベクターにおいて使用される。
図4】[0017]アンチセンスRNAの負の効果を減少または消失させるRNA不安定化/破壊ドメイン(RDDD)の実施形態を示す。RDDDは、クリプティックプロモーターを伴うGOIのアンチセンス鎖の転写終結部位または3’ITRの前の領域に置かれる。アンチセンスRNAは、RNA不安定化/破壊実行分子(RDDDEM)によって不安定化または破壊され(右側のパネル)、その一方で、GOImRNAは、影響を受けない(左側のパネル)。
図5】[0018]パルボウイルスベクターから形成され得るdsRNAの効果を減少または消失させるためにRDDDを含む例示的パルボウイルスベクターを表す。RDDDは、GOIのアンチセンス鎖の転写終結部位または3’ITRの前に置かれる。この場合、欠陥干渉粒子から発現されるdsRNAは、RDDDEMによって不安定化または破壊され(右側のパネル)、その一方で、GOImRNAは影響を受けない(左側のパネル)。RDDDの位置は、それが全長ベクターではなく、DI粒子から転写されるのみである限り、変更することができる。
図6】[0019]アンチセンスRNAの効果を減少または消失させるために自己切断性リボザイムを使用するための例示的戦略を例示する。リボザイムは、クリプティックプロモーターを伴うGOIのアンチセンス鎖の転写終結部位または3’ITRの前の領域に置かれる。アンチセンスRNAは、リボザイムによって不安定化または破壊され(右側のパネル)、その一方で、GOImRNAは影響を受けない(左側のパネル)。
図7】[0020]dsRNAの効果を減少または消失させるために自己切断性リボザイムを使用するための例示的戦略を例示する。リボザイムは、GOIのアンチセンス鎖における転写終結部位または3’ITRの前の領域に置かれる。DI粒子から発現されるdsRNAは、リボザイムによって不安定化または破壊され(右側のパネル)、その一方で、GOImRNAは影響を受けない(左側のパネル)。
図8】[0021]アンチセンスRNAによる干渉を制御するための、RDDDが埋め込まれたイントロンの使用を例示する。イントロンは、GOI鎖に置かれる。RDDDは、イントロンのアンチセンス鎖内に置かれる。RDDDを伴うイントロンの使用は、RDDDの配置に対してさらなる柔軟性を可能にする。イントロンは、好適なスプライスドナー/アクセプター部位が存在するかそこに導入される限り、任意の遺伝子内に置くことができる。パネルAにおいて、イントロンは、転写開始部位直後のGOI開始コドンの5’末端に埋め込まれる。パネルBにおいて、イントロンは、GOIのコード領域に埋め込まれる。
図9】[0022]dsRNAによる干渉を制御するための、RDDDが埋め込まれたイントロンの使用を例示する。イントロンは、GOI鎖に存する。RDDDは、イントロンのアンチセンス鎖に存する。RDDDを伴うイントロンの使用は、RDDDの配置においてさらなる柔軟性を可能にする。イントロンは、任意の部位一致エクソン境界コンセンサス配列における遺伝子に置くことができる。パネルAにおいて、イントロンは、転写開始部位直後のGOI開始コドンの5’末端に埋め込まれる。パネルBにおいて、イントロンは、GOIのコード領域に埋め込まれる。
図10】[0023]宿主細胞におけるRDDDEMの発現によってアンチセンスRNAおよびdsRNAを管理/制御するための3つの異なる経路を例示する。miRNAおよびsiRNAなどの内因的に発現したRDDDの使用は、ベクターからのdsRNAおよびアンチセンスRNAの消失を可能にする。
図11】[0024]ポリA配列が埋め込まれたイントロンの使用を例示する。複数のポリA配列を使用することができる。イントロンは、GOIに対するアンチセンスRNAの転写を止めるために、クリプティックプロモーターに極めて近接して置かれ(右側のパネル)、その一方で、GOIにおけるイントロンはRNAスプライシングの際に除去されるため、GOI発現は影響を受けない。
図12】[0025]dsRNAの効果を減少または消失させるためにRDDDを組み込むことによって改良された例示的パルボウイルスベクターを表す。RDDDは、GOIアンチセンス鎖の転写終結部位または3’ITRの前の場所に置かれる。欠陥干渉(DI)粒子から発現されるdsRNAは、RDDDEMによって不安定化または破壊され(右側のパネル)、その一方で、GOImRNAは影響を受けない(左側のパネル)。RDDDの位置は、全長ベクターからではなく、DI粒子から転写されるのみである限り、変更することができる。第2の特徴は、プロモーターの反対の鎖に付加された転写停止配列(ポリA部位)である。センス鎖において、ポリA部位は、プロモーターの反対の方向であり、したがって、活性ではない。AAV調製物から形成されるDI粒子において、プロモーターからのリードスルーは止められる。それは、AAVが統合する場合に、連結した転写配列を有さないプロモーターが細胞遺伝子を活性化し得るような状況を防ぐ。転写停止部位(すなわち、ポリA)は、正常なAAV転写に影響を及ぼさない。それは、AAVベクターの安全性を改善するのに役立つ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
[0026]本明細書において使用される場合、用語「パルボウイルス」は、自己複製性パルボウイルスおよびディペンドウイルス属のメンバーを含む、サブファミリーパルボウイルス亜科の任意のメンバーを意味する。自己複製性パルボウイルスは、アムドパルボウイルス属(Amdoparvovirus)、アベパルボウイルス属(Aveparvovirus)、ボカパルボウイルス属(Bocaparvovirus)、チャップパルボウイルス(Chapparvovirus)、コピパルボウイルス属(Copiparvovirus)、エリスロパルボウイルス属(Erythroparvovirus)、プロトパルボウイルス属(Protoparvovirus)、テトラパルボウイルス属(Tetraparvovirus)のメンバーを含む。例示的な自律性パルボウイルスとしては、これらに限定されるわけではないが、マウスの微小ウイルス(MVM)、ウシパルボウイルス(BPV)、イヌパルボウイルス(CPV)、チキンパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコパルボウイルス(FPV)、ガチョウパルボウイルス(GPV)、ブタパルボウイルス(PPV)、ボカウイルス、B19ウイルス、ラットウイルス(RV)、H-1ウイルス(H-l)が挙げられる。他の自律性パルボウイルスは、当業者に既知である。例えば、King A.M.Q., Adams M.J., Carstens E.B. およびLefkowitz E.J. (2012) Virus taxonomy: classification and nomenclature of viruses: Ninth Report of the International Committee on Taxonomy of Viruses. San Diego: Elsevier。
【0013】
[0027]ディペンドパルボウイルス属は、アデノ随伴ウイルス(AAV)を含み、その例としては、これらに限定されるわけではないが、AAVタイプ1(AAV-1)、AAVタイプ2(AAV-2)、AAVタイプ3(AAV-3)、AAVタイプ4(AAV-4)、AAVタイプ5(AAV-5)、AAVタイプ6(AAV-6)、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAVなどが挙げられる。本願のパルボウイルス粒子、カプシド、およびゲノムは、好ましくは、AAV由来である。
【0014】
[0028]本願での使用のためのパルボウイルスは、さらに、PVカプシド遺伝子、非構造遺伝子、逆方向末端反復配列(ITR)、左末端ヘアピン(LEH)、右末端ヘアピン(REH)においてさらなる修飾を有する遺伝子操作由来の新規のバリアントを含む。本発明のパルボウイルスベクターは、インビトロおよびインビボの両方における細胞への核酸の送達にとって有用である。特に、本願の発明のベクターは、核酸を動物細胞に送達するためまたは移動させるために有利に用いられ得る。目的の核酸(NAOI)は、RNA、ペプチド、およびタンパク質をコードする核酸、好ましくは、治療用(例えば、医薬用途または獣医学用途)または免疫原性(例えば、ワクチン用)ペプチドまたはタンパク質を含む。それは、標的送達のための遺伝子編集および/またはアダプタマーのためのDNA鋳型配列も提供し得る。
【0015】
[0029]用語「ハイブリッドパルボウイルス」は、本明細書において使用される場合、異なる(すなわち、別の、外来の、外因性の)パルボウイルスカプシドに包まれたパルボウイルスゲノムを意味する。言い換えると、ハイブリッドパルボウイルスは、異なるパルボウイルスカプシドに包まれたパルボウイルスゲノムを有する。本明細書において使用される場合、「異なる」によって、パルボウイルスが、別のパルボウイルスカプシド内にパッケージされること、例えば、パルボウイルスカプシドが、別のパルボウイルスセロタイプまたは自律性パルボウイルス由来であることが意図される。
【0016】
[0030]用語「パルボウイルスITR」は、本明細書において使用される場合、任意のパルボウイルスに由来する逆方向末端反復配列を意味し、それは、パルボウイルス複製、カプシド化、レスキュー、統合などの支援において機能する。パルボウイルス逆方向末端反復配列(ITR)は、それらの5’ITRおよび3’ITRが異なる場合、左端ヘアピン(LEH)、右端ヘアピン(REH)とも呼ばれる。「AAVITR」は、AAVゲノムが隣接する逆方向末端反復配列を意味する。パルボウイルスITRおよびAAVITRは、任意のパルボウイルスまたは任意のパルボウイルスセロタイプ由来のITRを含むことができ、さらに、野生型ITRと同様に、AAV複製、カプシド化、レスキュー、および/または統合を支援する変異を伴うITRを含むことができる。
【0017】
[0031]用語「AAVセロタイプ」は、本明細書において使用される場合、少なくとも1つのAAVITRを伴うゲノムでパッケージされた任意のカプシドを意味する。それは、天然において見出される任意のAAVセロタイプ、またはAAVゲノムをパッケージすることができる任意の遺伝子操作されたまたは化学修飾されたカプシドを含む。それは、生物学的または化学的に修飾されたカプシドを含む。
【0018】
[0032]用語「低分子ヘアピンDNA」および「shDNA」は、米国特許出願公開第2018/0298380号に記載されるようなshDNAに関連して、本明細書において相互互換的に使用される。
【0019】
[0033]用語「scAAV」は、本明細書において使用される場合、AAVのITRのうちの1つから末端分離(TR)部位の不在によって生成される二本鎖領域を含む一本鎖AAVベクターを意味し、この場合、TRの不在は、TRが存在しないベクター終点での複製開始を防ぐ。scAAVベクターは、典型的には、各末端における野生型(wt)AAV TRと、二本鎖領域によってAAV TRに接続的に連結された、中央の変異TR(mTR)とを含む。用語「mTR」および「mITR」は、米国特許第7,465,583号に記載されるような変異逆方向末端反復配列を意味するために、本明細書において相互互換的に使用される。
【0020】
[0034]語句「共有結合性閉端ドメイン」、「cceドメイン」、「一本鎖共有結合性閉端ドメイン」、および「SS-CCEドメイン」は、二本鎖(DS)ドメインの末端において形成され、DSドメインのセンス鎖をDSドメインのアンチセンス鎖に接続する、閉じた一本鎖領域に関連して相互互換的に使用される。
【0021】
[0035]語句「共有結合性閉端(cce)パルボウイルス」は、本明細書において使用される場合、パルボウイルスカプシド内にパッケージされた線状パルボウイルスゲノム、5’および3’末端においてヘアピン構造の対を形成する自己相補性DNA配列を含むパルボウイルスゲノム、5’末端と3’末端との間の二本鎖ドメイン(本明細書において、「DSドメイン」と呼ばれる)、およびSS-CCE末端を意味する。DSドメインは、ゲノムDNAにおいてお互いにアニールする自己相補性配列で構成される。SS-CCE末端は、DS DSドメインにおけるアニールされた部分を接続する閉じた一本鎖領域を含む非相補的配列を含む。カプシドは、任意のパルボウイルスセロタイプを含めた任意のパルボウイルスから得ることができる。好ましい実施形態において、cceパルボウイルス(ccePV)は、cceアデノ随伴ウイルス(cceAAV)である。自己相補的(sc)パルボウイルスベクターおよびscAAVは、ベクターゲノム構成においてccePVおよびcceAAVと同様であるが、それらは異なる方法によって作製される。
【0022】
[0036]DSドメインにおけるDNA鎖は、DSドメインの長さにわたって完全に相補であり得るかまたは部分的に相補であり得、それにより、相補的配列は、お互いにアニールすることにより安定な二重鎖領域を形成することができ、非相補性の領域において膨らんだ構造またはループした構造を形成し得る。非相補性の領域は、一意の一本鎖DNA領域が、それ自体へのDNA鎖のアニーリングの後に形成され得るように、一方または両方のDNA鎖における欠失または挿入を含み得る。結果として得られるステム構造は、DSドメインの長さの少なくとも5%を含み得る。cceAAVとscAAVとの間の違いは、cceAAVは、変異体TR(mTR)を必要としない方式においてより広く定義することができる点である。scAAVは、本明細書において記載される、より大きなcceAAV属内の種を代表しており、それは、変異体ITR(mITR)またはshDNA配列の形態において一意のcce末端を有する。scAAVを調製する方法は、本明細書において定義されるcceAAVベクターを産生することができない。しかしながら、本願の方法は、scAAVを産生するためのより効率的な手段を提供するというさらなる利点を有しており、というのも、新規の中間鋳型分子は、2つの完全に機能的なITRを用いており、それらは、上記において記載されるようなプロデューサー細胞においてより効率的に複製することができるためである。
【0023】
[0037]用語「アプタマー」は、特定の標的分子に結合するオリゴヌクレオチドまたはペプチド分子を意味する。アプタマーは、典型的には、大きなランダム配列プールを用いる選択プロセスによって作出され、様々な研究、産業、および臨床の用途を有する。例えば、アプタマーは、リボザイムと組み合わせることで、それらの標的分子の存在下において自己切断することができる。その上、天然アプタマーは、リボスイッチに存在することが知られている。標的リガンドに選択的に結合する従来的機能以外に、本明細書において使用される「アプタマー」は、DNA酵素、DNAザイム、および、特定の酵素反応を実施することができるDNAオリゴヌクレオチドを含む触媒DNAを含めた、デオキシリボザイムをより広く含み得る。
【0024】
[0038]用語「miRNA」は、本明細書において使用される場合、マイクロRNA(miRNAと略される)を意味し、それは、植物、動物、およびいくつかのウイルスにおいて見出される小さい非コードRNA分子(約22のヌクレオチドを含む)であり、それらは、RNAサイレンシングおよび転写後遺伝子発現調節、mRNA分子内での相補配列との塩基対合によるmiRNA機能において機能する。結果として、これらのmRNA分子は、以下のプロセス:(1)2つ片へのmRNA鎖の切断、(2)そのポリ(A)テールの短縮によるmRNAの不安定化、および(3)リボザイムによるタンパク質へのmRNAの効率的でない翻訳、のうちの1つまたは複数によって発現停止される。
【0025】
[0039]miRNAは、それ自身を折り曲げて低分子ヘアピンを形成するRNA転写物の領域に由来するが、その一方で、siRNAは、二本鎖RNAのより長い領域に由来することを除いて、miRNAは、RNA干渉(RNAi)経路の低分子干渉RNA(siRNA)に酷似する。ヒトゲノムは、1900超のmiRNAをコードし得る。miRNAは、典型的なmiRNAと同様の機能を有する限り、長いまたは短い塩基を有する多くのバリアントを含む。miRNAの標的配列は、miRNA標的配列、miR-TSとも称される。
【0026】
[0040]用語「siRNA」は、本明細書において使用される場合、多くの場合に低分子干渉RNAまたはサイレンシングRNAとして知られる、低分子干渉RNA(siRNA)を意味し、それは、miRNAと同様に、20~25の塩基対の長さの二本鎖RNA非コードRNA分子であり、RNA干渉(RNAi)経路内において作動する。それは、転写後にmRNAを分解し、翻訳を防ぐことによって、相補ヌクレオチド配列を伴う特定の遺伝子の発現を妨害する。
【0027】
[0041]用語「リボザイム」は、本明細書において使用される場合、遺伝子発現におけるRNAスプライシングを含む、特定の生化学反応を触媒することができるRNA分子を意味する。天然のまたはインビトロにおいて発生したリボザイムの最も一般的な活動は、RNAおよびDNAの切断またはライゲーションならびにペプチド結合の形成である。リボザイムの例としては、ハンマーヘッドリボザイム、VSリボザイム、リードザイム(Leadzyme)、およびヘアピンリボザイムが挙げられる。リボザイムは、RNA分子を切断することができる任意のRNA分子を含む。それは、人工的に構築されたものを含む。
【0028】
[0042]用語「RNA破壊/不安定化ドメイン」および「RDDD」は、(1)RNA分子に位置し、(2)RNAにその生物学的機能を失わせるかあるいは部分的または完全に分解する破壊/不安定化シグナルとして機能する、ヌクレオチド配列に関して本明細書において使用される。RDDDは、miRNA標的配列、shRNA標的配列、siRNA標的配列、またはリボザイム標的配列、あるいはそれらの組み合わせであり得る。miRNA標的配列、shRNA標的配列、siRNA標的配列、またはリボザイム標的配列は、対応するmiRNA、shRNA、またはsiRNA、またはリボザイムの標的配列であり、それらは、それらの標的配列を含有するRNA分子に影響を及ぼすことができ、RNA分子を部分的にまたは完全に分解することができる。DNA形態のRDDDは、そのRNA形態をコードする。
【0029】
[0043]用語「RNA破壊/不安定化ドメイン実行分子」「RDDDEM」は、本明細書において使用される場合、それらの対応するRDDDを含有するRNA分子に影響を及ぼすことができ、RNA分子を部分的にまたは完全に分解することができる分子を意味する。RDDDEMは、RDDDに対して特異的または非特異的であり得る。RDDDENは、miRNA、shRNA、またはsiRNA、またはリボザイム、あるいはそれらの組み合わせであり得る。対応するmiRNA、shRNA、またはsiRNA、あるいはリボザイムは、内因的に発現することができ、RDDDを含有する同じベクターに送達することができ、別々のウイルスベクターまたは非ウイルスベクターによって標的細胞に送達することができる。
【0030】
[0044]本願は、概して、GOImRNAの発現および/または翻訳に干渉することができる欠陥干渉粒子から生じたアンチセンスRNAまたはdsRNAをコードしたネガティブ鎖DNAの望ましくない効果を軽減するための組成物および方法に関する。
【0031】
[0045]図1は、従来のパルボウイルスベクター、詳細には、目的の遺伝子(GOI)および3’ポリAシグナルに作動可能に連結したプロモーターを含む発現カセットに隣接するITRを含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを示している。プロモーター由来の転写は、GOImRNAの産生につながる。しかしながら、クリプティックプロモーターが、GOI転写ユニットのアンチセンス鎖に存在することができることは可能であり、それは、GOImRNAに対するアンチセンスmRNAの転写を促進し得る。これらのアンチセンスRNAは、必ずしもコード領域のみではなく、GOImRNAに対して相補的であり、パルボウイルスベクターを使用して発現された場合、GOI発現およびその意図される治療効果に負の影響を及ぼすことができる。
【0032】
[0046]パルボウイルスベクターは、多くの場合、部分的AAVベクター配列を欠く自己相補的ゲノムを有し得る、欠陥干渉(DI)粒子によって汚染されることが知られている。図2に示されるように、プロモーター領域および不完全なGOI領域を有するDI粒子は、DI粒子が第2鎖DNA合成を完了した後にdsRNAを形成するGOIRNAの転写を可能にするであろう。dsRNAは、野生型GOI発現に負の影響を及ぼすことができ、パルボウイルスベクターの治療効果を低下させることができる。
【0033】
[0047]アンチセンスRNAまたはdsRNAの望ましくない効果を減少または消失させるために、本願は、RDDDをベクター設計に導入する。したがって、そうでなければこれらの望ましくないアンチセンスRNAまたはdsRNAが産生される状況において、RDDDは、アンチセンスRNAおよびdsRNAを不安定化/分解することができ、それにより、それらは、GOI発現に悪影響を及ぼさないであろう。
【0034】
[0048]いくつかの実施形態において、RDDDは、miRNA、shRNA、siRNA、およびリボザイムに対する1つまたは複数の標的配列を含む。これらの標的配列は、基本的なmiRNA、shRNA、siRNA、またはリボザイムのための標的として機能する限り、定義されるmiRNA、shRNA、siRNA、またはリボザイムのための標準的な標的配列とは同一でなくてもよい。いくつかの実施形態において、miRNA、shRNA、siRNA、またはリボザイムのための標的配列は、それらの標準的な標的配列に対して50%、60%、70%、80%、90%、または95%同一である。RDDDのためのヌクレオチド配列は、プロモーターおよびGOIのアンチセンス鎖におけるアンチセンスRNAの任意の領域に置くことができる。好ましくは、GOIのためのプロモーターが、ITRに極めて近接している場合、dsRNAの発現は、GOIのプロモーターによって駆動され、dsRNAを発現するDI粒子は、通常、ベクターゲノムの半分未満を含むため、RDDDは、GOIのためのプロモーターが位置するゲノムの同じ半分に置かれる。潜在的アンチセンスRNAをRNAseqによって分析または特定することにより、潜在的転写開始部位および転写終結部位を定義することができる。RDDDは、そのような部位の間に置かれるべきである。1つまたは複数のRDDDを使用することができる。GOIのアンチセンス鎖における転写末端シグナルの不在下において、パルボウイルスITRは、転写終結部位として機能することがわかっている。
【0035】
[0049]一実施形態において、1つまたは複数のRDDDが、アンチセンス転写物の3’末端に置かれる。別の実施形態において、1つまたは複数のRDDDが、3’末端に近接して、アンチセンス転写物の中間領域に置かれる。別の実施形態において、1つまたは複数のRDDDが、アンチセンス転写物の5’末端に置かれる。さらなる別の実施形態において、1つまたは複数のRDDDが、逆の方向でGOIのセンス鎖のイントロンに置かれる。この場合、1つまたは複数のRDDDは、最終的なGOI発現に影響を及ぼすことなく、GOIのコード領域に置くことができる。イントロンは、GOIの5’非翻訳領域、GOIの3’非翻訳領域、またはGOIのコード領域に存在することができる。別の実施形態において、ポリA部位の1つまたは複数のコピーが、1つまたは複数のRDDDの後に置かれる。この場合、ポリA部位のRNA配列上流は、1つまたは複数のRDDDによって分解される。dsRNAの効果を減少させるために、1つまたは複数のRDDDが、概して、潜在的dsRNAの3’末端に置かれる。dsRNAは、GOIを発現するために使用される同じプロモーターを共有するため、一実施形態において、1つまたは複数のRDDDは、逆の方向で、RDDDを伴うイントロンを使用してGOIのセンス鎖に置かれる。別の実施形態において、1つまたは複数のRDDDは、GOIのアンチセンス鎖上の転写終結部位の直前において、プロモーターのアンチセンス鎖に置かれる。
【0036】
[0050]イントロンのほとんど全てのスプライス部位が、コンセンサス配列(マトリックス)に一致することは、既に知られていることである。これらのコンセンサス配列は、イントロンの各末端におけるほぼ不変のジヌクレオチド、イントロンの5’末端におけるGT、およびイントロンの3’末端におけるAGを含む。
【0037】
[0051]プレmRNAにおけるU2(主要クラス)イントロンに対するスプライス部位コンセンサス配列は、概して、以下のコンセンサス配列:3’スプライス部位:CAG|G、5’スプライス部位:MAG|GTRAGT(この場合、Mは、AまたはCであり、Rは、AまたはGである)に一致する。概して、MAGGヌクレオチドは、MAGとGとの間のイントロン挿入に対して調査することができる。RNAスプライシングにとって機能的である限り、追加の部位を使用することにより、RDDDまたはポリA配列を含むイントロンを挿入することができる。
【0038】
[0052]一実施形態において、本願のベクターのイントロンは、アンチセンス鎖における1つまたは複数のポリA部位を含む。この立体配置では、ポリAシグナルの後にアンチセンスRNAの転写はない。したがって、これは、(参照鎖(reference strand)として「GOI」を使用する)イントロン前のGOIに対するアンチセンス転写物の産生を消失させる。さらなる別の実施形態において、1つまたは複数のRDDDが、イントロンのアンチセンス方向でイントロンのポリA部位の前に置かれる。これは、(参照鎖として「GOI」を使用する)イントロンの後のGOIに対するアンチセンスRNAが、GOIに対するRDDDEMによって分解されることを可能にする。
【0039】
[0053]あるいは、ポリA部位または転写終結部位は、プロモーターのアンチセンス鎖に置くことができる。一実施形態において、1つまたは複数のポリA部位が、プロモーターと転写開始部位との間に位置する。センス鎖において、ポリAは、機能的ではなく、それは、アンチセンス鎖において機能的である。したがって、これは、プロモーターを伴うDI粒子を与え、二量体へのDI粒子の変換後に機能性ポリA部位を有するであろう。さらなる別の実施形態において、1つまたは複数のポリA部位が、プロモーターとエンハンサーとの間に位置し、それは、上記において記載されるようなアンチセンス方向である。さらなる別の実施形態において、1つまたは複数のポリA部位が、プロモーターの前に位置し、それは、上記において記載されるようなプロモーターに関してアンチセンス方向である。ポリA配列または部位のそのような配置の主な有用性は、DI粒子におけるプロモーターのリードスルーを防ぐことである。
【0040】
[0054]RDDDは、対応するRDDDEMのための生物学的標的である。組換えパルボウイルスベクターから作製されたアンチセンスRNAまたはdsRNAが確実に不安定化または分解されるために、RDDDEMは、本願のRDDD含有パルボウイルスベクターを用いて形質導入された細胞において活性でなければならない。RDDDEMをそのような標的化のために利用可能することができるいくつかの方法が存在する。第一に、miRNA、shRNA、siRNA、またはリボザイムなどの調節RNAは、RDDDを標的化するために内因的に利用可能であり得る。第二に、miRNA、shRNA、siRNA、またはリボザイムは、上流のプロモーターを使用してセンス鎖またはアンチセンス鎖における対応するパルボウイルスベクターから発現され得る。あるいは、miRNA、shRNA、siRNA、またはリボザイムは、別々のウイルスベクター、例えば、二次パルボウイルスベクター、アデノウィルスベクター、ヘルペスクターなどによって送達され得、あるいは、それらは、非ウイルス性ベクターまたはトランスフェクション剤、例えばリポソームによって標的細胞へと送達され得る。
【0041】
[0055]いくつかの実施形態において、RDDDおよびRDDDEMは、組織特異的発現のため、または誘導性発現系として、使用され得、パルボウイルス/AAVベクターは、GOIの発現を抑制するために、アンチセンスまたはdsRNAを発現するように意図的に設計される。そのようなアンチセンスおよびdsRNAは、RDDDの制御下にある。それに続いて、RDDDEMが誘導され、それにより、アンチセンスRNAおよびdsRNAの効果が無効化され、その一方で、GOIの発現が回復される。一実施形態において、RDDDEMの発現は、誘導可能であり、結果として、誘導性発現ベクターを生じる。さらなる別の実施形態において、RDDDEMの発現は、組織特異的であり、結果として、組織特異的発現ベクターを生じる。
【0042】
[0056]いくつかの実施形態において、RDDDEMが構成的に発現される条件下において標的細胞を一緒に形質導入するために、RDDDEMベクターおよびGOIベクターとRDDDエレメントとの組み合わせが使用される。この場合、RDDDEM発現は抑制されず、RDDDEMは、アンチセンスRNAおよびdsRNAを分解するであろうため、GOIは、正常に発現される。逆に、RDDDEM発現が誘導剤(inducible agent)(誘導系(inducible system)において)によって抑制される場合、またはRDDDEM発現が、組織特異的方式において(組織特異的プロモーターを使用して)制限される場合、GOI発現は、誘導的に発現停止されるかまたは組織特異的方式において発現停止されるであろう。したがって、GOIの発現を制御または調節することができる。
【0043】
[0057]RDDD源としてのmiRNA
[0058]マイクロRNA(miRNA)は、転写後に、約60%超のヒトタンパク質-コード遺伝子の遺伝子発現を調節する約21bpの低分子内因性非コードRNA配列である。それらは、発生、分化、増殖、およびアポトーシスを含むほとんどの細胞プロセスに関与する。miRNAは、種の間において高度に保存され、例えば、組織、系統、または分化の状態などの関数として、特定のレベルにおいて特異的に発現される。今までに、2500超の独特な成熟ヒトmiRNAが識別されている。全てのそのようなmiRNAは、本発明において利用することができる。個々のmiRNA種は、1細胞あたり10未満から30000超のコピーの範囲のコピー数において大きく変えることができる。それらの組織特異的発現プロファイル以外に、いくつかのmiRNAは、癌、感染病、心臓および肝臓の疾患において調節不全となり、それらは、本願における使用のためのRDDDEMとして利用することができる。
【0044】
[0059]マイクロRNAは、通常、折り重なって不完全塩基対ステムを伴うヘアピン構造を形成する前駆体分子(pri-マイクロRNA)から処理される。pri-マイクロRNAはさらに、核および細胞質切断タンパク質によって処理され、結果として、低分子RNA二重鎖を生じる。二重鎖の一方の鎖であるガイド鎖(マイクロRNA)は、マイクロRNA二重鎖末端の相対自由エネルギーに基づいて選択され、マルチ酵素複合遺体であるRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に負荷される。あまり一般的でない産物は、パッセンジャー鎖(マイクロRNA)として定義され、それは、分解されると考えられる。あるいは、RNA二重鎖の両方の鎖、すなわち、5’鎖(miR-5p)および3’鎖(mir-3p)は、成熟した機能性マイクロRNAとなる。成熟miRNAは、アルゴノート(AGO)ファミリータンパク質に関連付けられ、RISCのコアを構成し、mRNA中に位置する対応する標的部位への塩基対合結合によって機能し、結果としてタンパク質合成を抑制する。マイクロRNAおよびその標的部位の完全な相補性は、siRNAによって媒介されるRNA干渉と同様のメカニズムを使用して、AGO2によるマイクロRNA/mRNA-二重鎖のエンドヌクレアーゼ的中央切断を生じる。植物において、このメカニズムは、支配的なものであり、その一方で、動物における支配的なメカニズムは、不完全な相補性による結合を伴い、結果として、翻訳の阻害および/またはmRNAの分解の開始を生じる。miRNA標的部位がほとんどタンパク質-コード領域に位置している植物とは対照的に、動物の標的部位は、多くの場合、mRNAの3’UTRにおける反復配列として見出される。
【0045】
[0060]miRNAとその標的部位との間の相互作用に関連するいくつかの重要な規則が、実験および生物情報学的分析によって決定された。miRNAの特異性を標的とするmRNAは、シード配列、すなわち、miRNAの5’末端の位置2~7または2~8に通常は位置する保存配列と、mRNAにおける対応する配列との間の完全な一致によって決定される。マイクロRNAの位置1の反対側のアデニンならびにmiRNAの位置9の反対側のアデニンまたはウラシルは、必須ではないが、結合の有効性を増加させる。同じシード配列を示すマイクロRNAは、同じmiRNAのファミリーに属し、同じmRNA標的を調節することができる。単一のmiRNA種は、おそらくmRNAにおける同じシード一致配列を認識することによって、数百のタンパク質の産生を調節することができる。内因性マイクロRNA-mRNA相互作用の第2の共通の特徴は、マイクロRNAにおける位置9~12でのヌクレオチド不一致を含み、それは、おそらく、標的mRNAのAGO2媒介切断を防ぐ。第3の特徴は、シード領域内での一致のみが、遺伝子抑制を誘導するのに常に十分なわけではなく、マイクロRNA結合の安定化は、マイクロRNAの3’部分において追加の相補性を必要とし得る。特に、シードマッチングが最適でない場合、miRNAの位置13~16におけるヌクレオチドは、重要になる。したがって、3’の位置は、セノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)lin-4におけるlet7部位に対して、および哺乳動物Hoxb8 mRNAにおけるmiR-196に対して、実験的に確認されるように、シード領域における単一のヌクレオチドミスマッチを補うのに役立つことができる。追加の因子は、結合安定性に影響を及ぼすことができ、その結果、マイクロRNA媒介遺伝子調節の有効性に影響を及ぼすことができる。例えば、より効果的な抑制は、標的部位に近いAUリッチなヌクレオチド組成から得ることができる。さらに、miRNA標的配列(miR-TS)と停止コドンとの間の15超のヌクレオチドは、それぞれ、翻訳に関与するタンパク質とmiRNA媒介サイレンシングとの間の競合を減じ得る。
【0046】
[0061]内因的に発現されるmiRNAは、治療的cDNAの形態の外因性GOIの発現を特異的に調整するために使用することもできる。特に、miRNA標的部位またはmiR-TSは、アンチセンスRNAおよびdsRNAの特異的miRNA媒介転写後サイレンシングのための標的としてとして機能することができる。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のmiR-TSは、パルボウイルスベクターから発現させることができ、または本願のパルボウイルスベクターを使用して発現停止させることができるアンチセンスRNAおよびdsRNAに挿入することができる。この場合、アンチセンスRNAおよびdsRNAは、siRNAによる分解と同様に、エンドヌクレアーゼ的に切断され、マイクロRNA-RISCは、急速に再利用される。通常、miRNAガイド鎖は、標的化RNA抑制を調整し、結果として、miR-TSを代表する対応する配列が、導入遺伝子発現カセットのアンチセンス鎖に挿入される。
【0047】
[0062]miRNAが、全ての組織において普遍的に発現される場合、RDDDとして対応するmiR-TSを伴うパルボウイルスベクターから発現されるアンチセンスRNAおよびdsRNAは、全ての組織において分解され、それにより、全ての細胞においてGOI発現が増強される。多くのそのようなmiRNAは、既に定義されている。miRNAが、細胞タイプ特異的方式および組織特異的方式において発現される場合、対応するmiT-TSエレメントは、miRNAが発現される細胞または組織のみにおいて機能的であろう。例えば、miR-122は、肝臓組織においてほぼ排他的に発現される。したがって、一実施形態において、GOI転写物にmiR-122-TSは存在しないため、肝臓でのGOIの標的発現が影響を受けないように、miR-122-TSがRDDDとして使用される。しかしながら、miR-122-TSを含有するアンチセンスRNAおよびdsRNAは、抑制および分解される。したがって、RDDDとしてmiR-122-TSを伴うベクターを使用した肝臓組織でのGOI発現は、未改変パルボウイルスベクター比べて改善および増強された発現を提供する。miR-142-3pに対してmiR-TSがRDDDとして使用される別の実施形態において、GOI転写物にmiR-142-TSは存在しないため、脾臓組織(miR-142が高度に発現される)でのGOIの発現は影響を受けない。アンチセンスRNAおよびds-RNAは、脾臓組織において発現されるmiR-142転写物によって分解されるため、それらの干渉は、減少または消失する。
【0048】
[0063]以下のリストは、本願での適用可能性における組織選択性を有するmiRNA標的配列をまとめたものである。
[0064]いくつかの実施形態において、ES細胞特異的miR-296が、RDDDとして使用される。
【0049】
[0065]いくつかの実施形態において、miR-21およびmiR-22が、分化したES細胞においてRDDDとして使用される。
[0066]いくつかの実施形態において、miR-15a、miR-16、miR-19b、miR-92、miR-93、miR-96、miR-130、またはmiR-130bが、ES細胞および様々な成体組織の両方においてRDDDとして使用される。
【0050】
[0067]いくつかの実施形態において、miR-128、miR-19b、miR-9、miR-125b、miR-131、miR-178、miR-124a、miR-266、またはmiR-103が、マウス脳発達においてRDDDとして使用される。
【0051】
[0068]いくつかの実施形態において、miR-9*、miR-125a、miR-125b、miR-128、miR-132bmiR-137、miR-139、miR-7、miR-9、miR124a、miR-124b、miR-135、miR-153、miR-149、miR-183、miR-190、またはmiR-219が、成体脳においてRDDDとして使用される。
【0052】
[0069]いくつかの実施形態において、miR-18、miR-19a、miR-24、miR-32、miR-130、miR-213、miR-20、miR-141、miR-193、またはmiR-200bが、肺においてRDDDとして使用される。
【0053】
[0070]いくつかの実施形態において、miR99a、miR-127、miR-142-a、miR-142-s、miR-151、miR-189b、またはmiR-212が、脾臓においてRDDDとして使用される。
【0054】
[0071]いくつかの実施形態において、miR-133b、miR-133a-3p、miR-l-3p、またはmiR-206が、筋肉においてRDDDとして使用される。
[0072]いくつかの実施形態において、miR-181、miR-223、またはmiR-142が、造血組織においてRDDDとして使用される。
【0055】
[0073]いくつかの実施形態において、miR-122a、miR-152、miR-194、miR-199、またはmiR-215が、肝臓においてRDDDとして使用される。
【0056】
[0074]いくつかの実施形態において、miR-lb、miR-ld、miR-133、miR-206、miR-208b、またはmiR-143が、心臓においてRDDDとして使用される。
【0057】
[0075]いくつかの実施形態において、miR-30b、miR-30c、miR-18、miR-20、miR-24、miR-32、miR-141、miR-193、またはmiR-200bが、腎臓においてRDDDとして使用される。
【0058】
[0076]いくつかの実施形態において、miR-7-5p、miR-375、miR-141、またはmiR-200aが、下垂体においてRDDDとして使用される。
[0077]いくつかの実施形態において、miR-205-5pが、皮膚においてRDDDとして使用される。
【0059】
[0078]いくつかの実施形態において、miR-16、miR-26a、miR-27a、miR-143a、miR-21、let-7a、miR-7b、miR-30b、またはmiR-30cは、随所において発現されるため、それらが、RDDDとして使用される。
【0060】
[0079]miR-TSの立体配置は、抑制の有効性に影響を及ぼす重要な因子である。完全な相補miR-TS配列は、miRNA誘導遺伝子サイレンシングの記載されているメカニズムに基づいて、不完全な相補配列よりもより高度な抑制を容易にするであろう。完全な相補標的配列は、マイクロRNAの位置10/11の間においてエンドヌクレアーゼ的に切断されるため、miRNAは、迅速に再利用される。その結果、完全な相補性は、miRNA飽和および望ましくない副作用の誘発のリスクを減じるが、それは、その天然標的を調節するための同系のmiRNAのバイオアベイラビリティが維持されるためである。miR-TS配列の慎重な設計は、図1および図2に概説されるように、アンチセンスRNAおよびdsRNAの発現の制御において最良の結果を達成するために重要である。
【0061】
[0080]加えて、miR-TS反復配列の数は、アンチセンスRNAおよびdsRNAの発現のmiRNA媒介抑制に影響を及ぼす。概して、miR-TSの数の増加は、アンチセンスRNAまたはdsRNAの発現のマイクロRNA依存性抑制を増強する。いくつかの実施形態において、miR-TSの2、3、4、または5つの同じ反復配列が、本願のパルボウイルスにおいてRDDDとして使用される。他の実施形態において、miR-TSの6、7、8、9、10、11、または12つの同じ反復配列が、本願のパルボウイルスにおいてRDDDとして使用される。いくつかの実施形態において、異なるmiRNA発現プロファイルを有する様々な細胞タイプにおいてアンチセンスRNAおよびdsRNAの活性を制御するために、異なるmiR-TSが、順番に挿入される。所定の細胞タイプまたは組織に対して異なるmiRNAに対応するmiR-TSの組み合わせは、特に、マイクロRNAが中程度のレベルにおいてのみ発現する場合、miRNA媒介アンチセンスRNAまたはdsRNAの抑制を増強することができる。その上、協力的miRNAの採用は、特定のマイクロRNAの機能を飽和状態にするリスクを減じ得る。
【0062】
[0081]アンチセンスRNAまたはdsRNAの発現のマイクロRNA媒介抑制の増強は、マイクロRNA調節を他の調節システムと組み合わせることによっても達成することもできる。いくつかの実施形態において、miR-TSの反復配列を分離するために、小さい4から6のヌクレオチド長のスペーサー配列が使用される。スペーサーの導入は、概して、マイクロRNA/miR-TS二重鎖に結合する酵素複合体の立体障害を減少させ得、より良い抑制を容易にし得る。いくつかの実施形態において、スペーサー不含多量体miR-TSが、本願のパルボウイルスベクターにおいてRDDDとして使用される。より短いスペーサーの挿入は、マイクロRNAとmiR-TSとの間での塩基対合を妨害し得るmiR-TSの周りに二次構造を形成するリスクを減じ得る。miR-TSのコピー数およびmiR-TSの間の間隔も、それらがベクターゲノムに挿入された導入遺伝子発現カセットのサイズを増加することができる限り、ウイルスベクター構築に関連する。miR-TSはサイズが小さいため(約22bp)、スペーサー配列を含め、miR-TSのタンデム式の反復配列の挿入は、概して、ほとんどのウイルスベクターに対して容量問題を構成しない。しかしながら、低パッケージング能力のいくつかのウイルスベクター、例えば、自己相補性アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの場合、miR-TSの全長および数を抑えることは、重要な考慮すべき事項であり得る。これに関して、miR-TSの短縮が必要な場合もある。一実施形態において、miR-122TSの5’末端からの最大で5つまでのヌクレオチドの欠失は、十分に許容され、アンチセンスRNAまたはdsRNAの抑制を媒介することにおけるその役割には影響を及ぼさなかった。
【0063】
[0082]mRNAにおけるmiR-TSの位置も、アンチセンスRNAおよびdsRNAの活性の制御におけるその有効性にとって重要である。miR-TSの挿入により結果として生じるmRNAにおける二次構造も、標的mRNAに対するアクセシビリティが妨げられるような抑制に影響を及ぼすことができる。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のmiR-TSが、mRNAの3’UTR、好ましくは停止コドン付近に挿入される。他の実施形態において、1つまたは複数のmiR-TSが、5’UTRに挿入される。他の実施形態において、1つまたは複数のmiR-TSが、GOIのオープンリーディングフレームに挿入される。この場合、それは、GOIのアンチセンス鎖から発現されるため、アンチセンスRNAの抑制にとって比較的単純である。dsRNAの場合、1つまたは複数のmiR-TSは、GOIのアンチセンス鎖、より詳細には、GOIのセンス鎖におけるイントロンの逆相補的な方向で置くことができる。
【0064】
[0083]概して、ベクター由来のアンチセンスRNAおよびdsRNAの最適なmiRNA媒介抑制は、達成することができ、その場合、miRNAの高い発現が生じ、完全な相補性を有するmiR-TSの複数のコピー(例えば、3~4のコピー)の挿入が採用され、miR-TSの挿入は、低二次構造の部位に存在し、miRNAおよびその標的部位は、高い特異度を示す。
【0065】
[0084]いくつかの実施形態において、RDDDは、miR-206TSを含む。miR206は、骨格筋において非常に発現され、心臓には存在しない。対照的に、miR-1は、miR-206に対して高い配列相同性を示すが、心臓において非常に発現される。したがって、miR-206TSは、マイクロRNA/miR-206TSデュプレックスのシード領域に単一のヌクレオチド置換を導入することによって変異され得る。変異miR-206TSは、miR-1調節に対して耐性を有するが、miR-206に対して非常に影響を受けやすいままである。これは、変異したmiR206TSに対するmiR206の3’位の完全な相補性によって誘導される補償効果の結果である。変異したmiR206TSおよびmiR122TSを有するAAV9ベクターのインビボアンチセンスRNAおよびdsRNA発現は、骨格筋および肝臓の両方において強く抑制され得るが、その一方で、心臓におけるアンチセンスRNAおよびdsRNAは、影響を受けないままである。
【0066】
[0085]いくつかの実施形態において、アンチセンスRNAまたはdsRNAを発現するためのmiR-122TS含有ベクターは、GOI発現が肝臓に制限されるように、miR-122TSを有さないGOIベクターと組み合わせることができ、その場合、miR-122による干渉を消失させることができる。このアプローチは、miR-TS媒介組織特異的発現を達成するための上記において記載される単一ベクターとは異なっているが、それは、アンチセンスRNAおよびdsRNAの活性を調節するmiR-TSが、miT-TSを有さないGOIベクターとは別々のコンストラクトに位置するためである。
【0067】
[0086]いくつかの実施形態において、RDDDは、miR31、miR127、またはmiR143に対して、miR-TSを含む。miR31、miR127、およびmiR143は、グリオーマ細胞よりも正常な神経細胞においてより多く発現される。いくつかの実施形態において、RDDDは、miR-124TSを含む。miR-124TSは、インビトロおよびインビボでのニューロン細胞における導入遺伝子発現を抑制するのに十分であり、その一方で、星状細胞での発現は、影響を受けない。
【0068】
[0087]いくつかの実施形態において、RDDDは、miR-204TSを含む。1つまたは複数のmiR-204TSを含むパルボウイルスベクターは、miR204発現が生じることが知られている網膜色素上皮(RPE)RPEにおいて選択的に抑制することができる。いくつかの実施形態において、RDDDは、光受容体PRにおいて発現されるがRPEには存在しないマイクロRNAであるmiR-124に対して、miR-TSを含む。いくつかの実施形態において、RDDDは、miR-181cTSを含む。miR-181cは、網膜神経節細胞および内網膜において発現されるマイクロRNAである。
【0069】
[0088]miR-TSのおよそ100bpの配列の挿入は、従来のクローン技術によって達成することができる。概して、miR-TSの小さいサイズは、大きいサイズだとパルボウイルスベクターでの使用のための導入遺伝子コンストラクトの範囲を制限することができるパッケージングの制限を回避し、それにより、ウイルスベクターおよびウイルスの両方に広い適用性を提供する。
【0070】
[0089]図12に示されるような別の実施形態において、RDDDは、dsRNAの効果を減少または消失させるために含まれる。RDDD部位は、GOIのアンチセンス鎖の転写終結部位または3’ITRの前の領域に置かれる。欠陥干渉粒子から発現されるdsRNAは、RDDDEMによって不安定化または破壊され(右側のパネル)、その一方で、GOImRNAは影響を受けない(左側のパネル)。RDDDの位置は、全長ベクターからではなく、DI粒子から転写されるのみである限り、変更することができる。第2の特徴は、プロモーターの反対の鎖に付加された転写停止配列(ポリA部位)である。センス鎖において、ポリA部位は、プロモーターの反対の方向であり、したがって、活性ではない。AAV調製物から形成されるDI粒子において、プロモーターからのリードスルーは止められる。それは、プロモーターが、AAVが統合するときに細胞遺伝子を活性化し得るような状況を防ぐ。転写停止部位(すなわち、ポリA)は、正常なAAV転写に影響を及ぼさない。それは、AAVベクターの安全性を改善するのに役立つ。
【0071】
[0090]RDDD源としてのリボザイム
[0091]自己切断性リボザイムは、ツイスターリボザイム、ツイスターシスターリボザイム、ハチェットリボザイム、ピストルリボザイム、ハンマーヘッドリボザイム(HHR)などを含む、RNA分子の広いカテゴリである。HHR構造は、3つのステムによって形成される「Y」形状を含み、この場合、ステム1および2は、活性部位の立体配置の安定化により迅速な切断メカニズムを促進する遠位三次接触と相互作用する。必要な残基の最適な位置決めにより、エステル交換反応が触媒され、結果として、末端2’-3’-環状ホスフェートを有する5’産物および遊離末端5’-ヒドロキシル基を有する3’産物を生じる。HHRにおける3つの異なるトポロジーは、モチーフの3つのステムのうちの1つがHHRをRNAバックボーンに接続する方式に応じて、区別することができる。10,000を超えるHHRモチーフが、生命の全ての界にわたって分配された遺伝子配列における生命情報工学分析によって発見されている。
【0072】
[0092]I群のイントロンベースのリボザイムは、その基質RNAを標的として切断し、切断された標的RNA上へとその3’末端に結合したエクソン(例えば、治療用RNA)をトランススプライシングし、その結果、治療用RNAの発現および基質RNAの抑制が生じる。そのようなリボザイムは、hTERT RNA陽性癌細胞と、さらに造血幹細胞由来の血液細胞も、特異的に標的とすることができるため、リボザイムは、その3’エクソンの下流の血液細胞特異的miR181aのための標的部位を挿入することによって改変することができる。リボザイムがRDDDとして使用される場合、それは、RDDDEMを通常は必要としない自己触媒反応を促進するRDDEMの機能を果たすこともできる。
【0073】
[0093]概して、真核生物系における遺伝的制御は、自己切断性リボザイムを、所定のmRNAの5’UTRおよび3’UTRの両方に挿入することによって達成することができる。
【0074】
[0094]リボザイムの切断は、安定化5’キャップまたはポリ(A)構造の除去およびその結果による遺伝子発現の減少に起因して、mRNAの分解を生じる。脱アデニル化mRNAは、細胞質エキソソームにより迅速に分解される。このメカニズムにより、リガンド依存性リボザイムが、哺乳動物細胞での使用のために首尾よく開発された。
【0075】
[0095]アプタザイムは、より小さい、リガンド誘導性の自己切断性RNAベースのリボザイムであり、転写因子を必要とせず、様々な小分子リガンドに対する応答性のためにカスタマイズすることができる。mRNA自己切断のトリガリングのためのリガンド依存性リボザイムは、哺乳動物細胞を含む様々な有機体において実証されているが、ほとんどが、人工レポーター遺伝子発現調節に限定されている。一実施形態において、テオフィリン依存性ハンマーヘッドリボザイム(Theo-HHR)が、本願のパルボウイルスベクターにおいてRDDDとして使用される。いくつかの実施形態において、RDDDとしてリボザイムベースの人工スイッチを構築するために、Theo-HHRがアンチセンスRNAまたはdsRNAの3’末端に挿入される。アプタマーとHHRリボザイムとの間の接合配列は、このリボスイッチシステムの機能および性能に影響を及ぼすように調整することができる。
【0076】
[0096]哺乳動物細胞における遺伝子発現の化学的調節は、ハンマーヘッドリボザイムをmRNAの非翻訳領域(UTR)に埋め込むことによって達成することができる。そのため、アンチセンスRNAおよびdsRNAの活性を誘導的に制御するために、HHRが使用され得る。いくつかの実施形態において、アンチセンスRNAおよびdsRNAの3’UTRに埋め込まれた、アロステリックに調節されたリボザイム(アプタザイム)は、哺乳動物細胞における遺伝子発現を化学的に調節するためのリボスイッチとして使用することができる。
【0077】
[0097]自己切断性リボザイムは、生命の全ての界において見出される小さいRNAモチーフである。ハンマーヘッドリボザイム(HHR)、デルタ肝炎ウイルス(HDV)リボザイム、ヘアピンリボザイム、およびツイスターリボザイムを含む、小さい自己切断性リボザイムの異なるクラスが存在する。アンチセンス鎖[正しい?]の異なる位置における、遺伝子操作されたHHR、デルタ肝炎ウイルス(HDV)リボザイム、ヘアピンリボザイム、およびツイスターリボザイムの実践形態は、アンチセンスRNAおよびdsRNAの切断および崩壊を促進させ、それにより、GOI発現のそれらの抑制を減少させることができる。リボザイムの主要構造エレメントへのアプタマーの統合は、それらの自己切断活性のリガンド応答性制御を可能にする。
【0078】
[0098]一実施形態において、1つまたは複数のアプタマー(例えば、テオフィリンアプタマー、テトラサイクリンアプタマー、グアニンアプタマー、およびMS2ステムループ/MS2外皮タンパク質アプタマー)は、HHR(例えば、短いコミュニケーション配列を介するタバコ輪点ウイルスのサテライトRNA(sTRSV)に由来する)の相互作用性ステムルームのうちの1つに接続的に連結される。この設計コンセプトは、リボザイムを活性立体配座状態と不活性立体配座状態との間でスイッチさせるリボザイムの二次構造のリガンド誘導変化に基づいている。リボザイムへのコミュニケーション配列の接続に応じて、ONタイプまたはOFFタイプの遺伝子スイッチを遺伝子操作することができる。コミュニケーション配列の配列同一性は、遺伝子スイッチの基本的発現および動的範囲を含む、アプタザイムの性能を強く決定する。したがって、アプタザイムの制御下のアンチセンスRNAおよびdsRNAの活性は、それぞれ、正および負に調節することができる。
【0079】
[0099]いくつかの実施形態において、アプタザイムが、RDDDとして使用されるHHRである。他の実施形態において、アプタザイムは、グアニンアプタマーに接続したHDVリボザイムを含み、結果として、哺乳動物細胞におけるアンチセンスRNAおよびdsRNAのためのグアニン応答性遺伝子スイッチをもたらす。他の実施形態において、HDVアプタザイムのライブラリーは、リボザイムの異なる位置にアプタマーを融合させることによって生成される。一実施形態において、グアニンアプタマーが、HDV様リボザイムdrz-Agam-2-1の2つの異なる部位に融合される。別の実施形態において、優れた自己切断活性を有するリガンド応答性リボザイムであるツイスターリボザイムが、アンチセンスRNAおよびdsRNAを抑制するためのRDDDとして使用される。さらなる別の実施形態において、HHRおよびツイスターリボザイムが、RDDDとしてmiR-TSと共に使用される。いくつかの実施形態において、アプタザイムの複数のコピーが、アンチセンスRNAおよびdsRNAの3’UTR、またはパルボウイルスベクターのアンチセンス鎖における3’UTRに統合される。いくつかの実施形態において、アプタザイムが、同時に、イントロンおよび3’-UTRに統合される。アプタザイムを統合する場合、特に、複数のコピーを単一のmRNAに統合する場合、隣接するRNA配列および構造を慎重に分析するべきである。いくつかの実施形態において、望ましくない二次構造を防ぐため、ならびに個々のアプタザイムの正しい折り畳みを確保するために、アプタザイムがスペーサー配列によって隣接される。いくつかの実施形態において、RNA二次構造のインシリコ予測のため、およびアプタザイムの遺伝子操作および設計されたRNA配列のための統合手順を容易にするために、生命情報工学ツールが使用される。表1は、異なる標的細胞および組織におけるアンチセンスRNAおよびdsRNAの活性を制御するためにRDDDとして使用することができるmiR-TSエレメントの例示的一覧を示している。
【0080】
[0100]表1:異なる標的細胞および組織におけるアンチセンスRNAおよびdsRNAを制御するためのRDDDとしての例示的miR-TSエレメント。例えば、let-7aの場合のmiR-TSは、非多能性細胞におけるアンチセンスRNAおよびdsRNAを制御するためのRDDDとして使用することができ;miR-1の場合のmiR-TSは、心臓組織におけるアンチセンスRNAおよびdsRNAを制御するためのRDDDとして使用することができる、など。
【0081】
【表1】
【0082】
本願のRDDDの機能的な利点
[0101] miRNA、shRNA、siRNA、およびリボザイムのターゲティング配列を有する従来のAAVと比較して、本願のRDDDは、本質的に異なる役割を果たす。miRNA、shRNA、siRNA、およびリボザイムのターゲティング配列がGOI転写物の3’末端に置かれる従来のベクターとは異なり、本願のGOI転写物は、対応するmiRNA、shRNA、siRNA、およびリボザイムによって直接的に調節される。本願において、RDDDは、アンチセンスまたはdsRNAに統合される。その方向は、常に、GOI転写物の相補鎖の方向である。したがって、パルボウイルスベクターに対するdsRNAは、GOI転写物に影響を及ぼす、対応するそのDI粒子から産生される。換言すれば、RDDDは、その方向が常にGOI転写物に対して逆相補的であるように、アンチセンス鎖に統合される。したがって、パルボウイルスDI粒子から産生されるアンチセンスRNAおよびdsRNAの機能的活性、詳細には、GOI発現に対するそれらの負の効果を、減少または消失させることができる。
【0083】
[0102]RDDDを運ぶベクターの主な利点は、アンチセンスRNAおよびdsRNAの負の効果を消失させることによって長期の安定した遺伝子発現を提供するそれらの能力である。GOIを標的とするアンチセンスおよびdsRNA分子は、GOI転写物を直接調節し、GOI RNA分解によりそれらの発現を減少させることができる。加えて、アンチセンスRNAおよびdsRNAは、免疫応答を誘導し、GOI発現を減少/不安定化することで知られている。
【0084】
[0103]本願のベクターの重要な特徴は、ベクターは、アンチセンスRNAおよびdsRNAの発現を制御するために、内因性/外因性のmiRNA、siRNA、shRNA、およびリボザイムによって調節されるように設計することができ、それにより、所定のベクターのための特定の発現プロファイルを達成することができることである。したがって、これらのベクターは、免疫応答を防ぐためおよび/または長期導入遺伝子発現を維持するための遺伝子治療アプローチのために使用することができる。
【0085】
[0104]本願の別の態様は、組換えパルボウイルス産生収量を改善するための方法であって、RNA不安定化/破壊ドメイン(RDDD)を組換えパルボウイルスに挿入するステップを含む方法に関する。組換えパルボウイルスは、パルボウイルスカプシドと;センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖ウイルスゲノムとを含み、センス鎖は、5’から3’方向に:5’末端におけるパルボウイルス末端反復配列;目的の遺伝子(GOI)のコード配列;および3’末端におけるパルボウイルス末端反復配列を含み、RDDDは、ウイルスゲノムに挿入される。
【0086】
[0105]いくつかの実施形態において、RDDDは、ウイルスゲノムのアンチセンス鎖に位置する。いくつかの実施形態において、RDDDは、逆の方向でGOIのイントロンに位置する。
【実施例
【0087】
[0106]実施例1:アンチセンスRNAおよびdsRNA消失のための偏在的に発現されるmiR-16-TS
[0107]hsa-miR-16配列を、miRNAレジストリー(Griffiths-Jones, 2004)から得た。miR-16標的配列を有するRDDDを合成し、肝臓特異的プロモーターTTRの制御下においてBドメイン欠失VIII因子を有するVIII因子(FVIII)発現コンストラクトpAAV-F8へクローン化した。プロモーターとFVIII開始コドンとの間に挿入されたmiR-16配列を有するRDDD配列は、配列TAGCAGCACGTAAATATTGGCG(配列番号1)を含む。GOI鎖における下線を引いた配列は、特定のmiRNAに完全に一致するように設計される。ボトム鎖において、配列は、特定のmiRNA(この場合は、miR-16)に対して完全に相補的である。結果として得られるコンストラクトは、pAAV-F8-miR-16-PGである。プロモーターとGOIとの間の長い間隔を避けるために、1つのコピーmiRNAだけが使用される。pAAV-F8-miR-16-PGをベースとするベクターを、一般的に報告される三重プラスミドトランスフェクション法によって産生した。DI組成をpacBioによって配列決定し、分子がインビボにおいてdsRNAを発現するであろうことを確認した。C57B6マウスへのpAAV-F8およびpAAV-F8-miR-16-PGによって産生されたベクターの注入後に、肝臓組織を採取し、試料からRNAを抽出した。定量rtPCR分析により、pAAV-F8-miR-16-PG由来のdsRNAの存在が、80%から検出不能なレベルまで減少したことを確認した。
【0088】
[0108]実施例2:アンチセンスRNAおよびdsRNA消失のためのmiR-16-TSの複数コピー
[0109]4つのコピーmiR-16標的配列を有するRDDDを合成し、肝臓特異的プロモーターTTRの制御下においてBドメイン欠失VIII因子を有するVIII因子(FVIII)発現コンストラクトpAAV-F8へクローン化した。GOIのプロモーターのアンチセンス鎖にはポリAシグナルが存在しないため、アンチセンスRNAおよびdsRNAに対する転写物は、プロモーターを超えて延び、ITRにおいて止まるであろうし、それは、ポリA部位の機能を有することが示される。miR-16の4つのコピーを有するRDDDを、プロモーターと、以下の配列:
gtacTAGCAGCACGTAAATATTGGCGgctagcTAGCAGCACGTAAATATTGGCGgtcagcTAGCAGCACGTAAATATTGGCGagctgcTAGCAGCACGTAAATATTGGCGcgta(配列番号2)
を含む5’ITRとの間に挿入した。GOI鎖における下線を引いた配列は、特定のmiRNAに完全に一致するように設計した。ボトム鎖において、これらの配列は、特定のmiRNA(この場合は、miR-16)に対して完全に相補的であった。結果として得られるコンストラクトは、pAAV-F8-miR-16-TPであった。RDDDを挿入するための別の理想的な位置は、プロモーターとエンハンサーとの間のヌクレオチドであり、その距離は、通常、プロモーターの活性に影響を及ぼさない。pAAV-F8-miR-16-TPをベースとするベクターを、三重プラスミドトランスフェクションによって産生した。DI組成をpacBioによって配列決定し、分子がインビボにおいてdsRNAを発現するであろうことを確認した。C57B6マウスへのpAAV-F8-miR-16-TPによって産生されたベクターの注入後に、肝臓組織を採取し、試料組織からRNAを抽出した。定量rtPCR分析により、pAAV-F8-miR-16-TPから産生されたベクター由来のdsRNAの存在が、3回の繰り返し実験に基づいて、検出不能なレベルまで減少したことを確認した。
【0089】
[0110]実施例3:肝臓におけるアンチセンスRNAおよびdsRNA消失のためのmiR-16-TSおよびmiR-122
[0111]GOIのプロモーターのアンチセンス鎖にはポリAシグナルが存在しないため、アンチセンスRNAおよびdsRNAに対する転写物は、プロモーターを超えて延び、ITRにおいて止まるであろうし、それは、ポリA配列の機能を有することが示される。この研究において、miR-16の2つのコピーとmiR-122(CAAACACCATTGTCACACTCCA(配列番号3))の2つのコピーとを有するRDDDをプロモーターとエンハンサーとの間に挿入し、それは、以下の配列:
gtacCAAACACCATTGTCACACTCCAgctagcTAGCAGCACGTAAATATTGGCGgtcagcCAAACACCATTGTCACACTCCAagctgcTAGCAGCACGTAAATATTGGCGcgta(配列番号4)
を含む。
【0090】
[0112]GOI鎖における下線を引いた配列は、特定のmiRNAに完全に一致するように設計される。ボトム鎖において、これらの配列は、特定のmiRNA(この場合は、miR-16およびmiR-122)に対して完全に相補的である。結果として得られるコンストラクトは、pAAV-F8-miR-16-122-EPであった。pAAV-F8-miR-16-122-EPをベースとするベクターを、三重プラスミドトランスフェクションによって産生した。DI組成をpacBioによって配列決定し、分子がインビボにおいてdsRNAを発現するであろうことを確認した。C57B6マウスへのpAAV-F8およびpAAV-F8-miR-16-122-EPによって産生されたベクターの注入後に、肝臓組織を採取し、試料からRNAを抽出した。定量rtPCR分析により、AAV-F8におけるdsRNAおよびpAAV-F8-miR-16-122-EP由来のdsRNAの存在が、75%から検出不能なまで減少したことを確認した。
【0091】
[0113]実施例4:GOIのコード配列に埋め込まれた、肝臓におけるアンチセンスRNAおよびdsRNA消失のためのmiR-16-TSおよびmiR122
[0114]この研究において、RDDDは、以下の配列:
gtaagtgccgtgtgtggttcccgcgggcctggcctctttacgggttatggcCAAACACCATTGTCACACTCCAgctagcTAGCAGCACGTAAATATTGGCGgtcagcCAAACACCATTGTCACACTCCAagctgcTAGCAGCACGTAAATATTGGCGccttgcgtgccttgaattactgacactgacatccactttttctttttctccacag(配列番号5)
に反映されるような、イントロンに埋め込まれたmiR-16の2つのコピーおよびmiR-122の2つのコピーを含む。合成イントロンは小文字で表されている。GOI鎖における下線を引いた配列は、特定のmiRNAに完全に一致するように設計される。ボトム鎖において、これらの配列は、特定のmiRNA(この場合は、miR-16およびmiR-122)に対して完全に相補的である。結果として得られるコンストラクトは、pAAV-F8-miR-16-122-INである。イントロンは、VIII因子遺伝子におけるCAG/G配列に挿入される。pAAV-F8-miR-16-122-INをベースとするベクターを、三重プラスミドトランスフェクションによって産生した。DI組成をpacBioによって配列決定し、分子がdsRNAを発現することを確認した。C57B6マウスへのpAAV-F8およびpAAV-F8-miR-16-122-INによって産生されたベクターの注入後に、3週間後に、肝臓組織を採取し、試料からRNAを抽出した。定量rtPCR分析により、pAAV-F8-miR-16-122-INから産生されたベクター由来のdsRNAの存在が検出不能であることを確認した。このコンストラクトにおいて発現されたVIII因子は、aPTTアッセイにおいて正常に機能した。
【0092】
[0115]実施例5:追加のポリA配列を伴うコード配列に埋め込まれた、肝臓におけるアンチセンスRNAおよびdsRNA消失のためのmiR-16-TSおよびmiR122
[0116]埋め込まれたポリA配列の機能を実証するため、RDDDは、以下の配列:
gtaagtgccgtgtgtggttcccgcgggcctggcctctttacgggttatggcCAAACACCATTGTCACACTCCAgctagcTAGCAGCACGTAAATATTGGCGgtcagcCAAACACCATTGTCACACTCCAagctgcTAGCAGCACGTAAATATTGGCGccttgcgtgccttgaattactgaTTTATTcactgacatccactttttctttttctccacag(配列番号6)
に反映されるような、イントロンに埋め込まれたmiR-16の2つのコピーおよびmiR-122の2つのコピーを含む。合成イントロンは小文字で表されている。ポリA配列は、コード鎖において逆相補的な方向で提示される。GOI鎖における下線を引いた配列は、特定のmiRNAに完全に一致するように設計される。ボトム鎖において、これらの配列は、特定のmiRNA(この場合は、miR-16およびmiR-122)に対して完全に相補的である。結果として得られるコンストラクトは、pAAV-F8-miR-16-122-IPである。イントロンは、VIII因子遺伝子におけるCAG/G配列に挿入される。pAAV-F8-miR-16-122-IPをベースとするベクターを、三重プラスミドトランスフェクションによって産生した。DI組成をpacBioによって配列決定し、分子がdsRNAを発現するであろうことを確認した。C57B6マウスへのpAAV-F8およびpAAV-F8-miR-16-122-IPによって産生されたベクターの注入後に、肝臓組織を採取し、試料からRNAを抽出した。定量rtPCR分析により、pAAV-F8-miR-16-122-IPから産生されたベクターにおけるdsRNAの存在が70%から検出不能なレベルに減少したことを確認した。このコンストラクトにおいて発現されたVIII因子は、aPTTアッセイにおいて正常に機能した。
【0093】
[0117]実施例6:アンチセンスRNAおよびdsRNA消失のためのmiR16-TSおよびmiR122に対する二重RDDD。GOI(VIII因子)遺伝子のアンチセンス鎖におけるポリA部位
[0118]この研究において、イントロンに埋め込まれたmiR-16の2つのコピーおよびmiR-122の2つのコピーを伴う二重RDDDは、以下の配列:
gtaagtgccgtgtgtggttcccgcgggcctggcctctttacgggttatggcCAAACACCATTGTCACACTCCAgctagcTAGCAGCACGTAAATATTGGCGgtcagcCAAACACCATTGTCACACTCCAagctgcTAGCAGCACGTAAATATTGGCGccttgcgtgccttgaattactgacactgacatccactttttctttttctccacag(配列番号7)
を含む。合成イントロンは小文字で表されている。GOI鎖における下線を引いた配列は、特定のmiRNAに完全に一致するように設計される。ボトム鎖において、これらの配列は、特定のmiRNA(この場合は、miR-16およびmiR-122)に対して完全に相補的である。イントロンは、VIII因子遺伝子におけるCAG/G配列に挿入される。第2のRDDDは、gtacTAGCAGCACGTAAATATTGGCGgctagcTAGCAGCACGTAAATATTGGCG(配列番号8)の配列を有し、これは、エンハンサーとプロモーターとの間に挿入される。結果として得られるコンストラクトは、pAAV-F8-miR-16-122-DRである。pAAV-F8-miR-16-122-DRをベースとするベクターを、三重プラスミドトランスフェクションによって産生した。DI組成を、pacBioによって配列決定し、分子がインビボにおいてdsRNAを発現するであろうことを確認した。C57B6マウスへのpAAV-F8およびpAAV-F8-miR-16-122-DRによって産生されたベクターの注入後に、肝臓組織を採取し、試料からRNAを抽出した。定量rtPCR分析により、pAAV-F8-miR-16-122-DR由来のdsRNAの存在が検出不能であることを確認した。このコンストラクトにおいて発現されたVIII因子は、aPTTアッセイにおいて正常に機能した。
【0094】
[0119]実施例7:プロモーターのアンチセンス鎖にポリA部位が存在しないアンチセンスRNAおよびdsRNA消失のためのリボザイム
[0120]sLTSV(-)タイプ3HHRを有するRDDDを合成し、5’ITRとプロモーターとの間のpAAV-F8にクローン化した。リボザイムsLTSV(-)タイプ3HHRは、哺乳動物発現系の不活性形態と比較して最大で60倍まで遺伝子発現を減じることが示された。sLTSV(-)タイプ3HHR由来のカセットの配列は、GOIに対する相補鎖から読んだ場合、
5’-TAATTCTAGGCGACTAGTAAACAAACAAAGACGTATGAGACTGACTGAAACGCCGTCTCACTGATGAGGCCATGGCAGGCCGAAACGTCAAAAAGAAAAATAAAAA-3’(配列番号9)
である。GOI鎖の相補鎖における下線を引いた配列は、下線を引かれていない配列で隣接されるリボザイムである。結果として得られるコンストラクトは、pAAV-F8-RZである。pAAV-F8-RZをベースとするベクターを、三重プラスミドトランスフェクションによって産生した。DI組成をpacBioによって配列決定し、分子がインビボにおいてdsRNAを発現するであろうことを確認した。C57B6マウスへのpAAV-F8およびpAAV-F8-RZによって産生されたベクターの注入後に、肝臓組織を採取し、試料からRNAを抽出した。定量rtPCR分析により、pAAV-F8-RZ由来のdsRNAの存在が、90%から検出不能にまで減少したことを確認した。
【0095】
[0121]実施例8:dsRNAを除去したベクターの性能
[0122]dsRNAが上記の実施例1~7におけるベクターにおいて制御されることを確認するため、MDA5などのdsRNAセンサーの発現動態を、コントロールベクターpAAV-F8において分析した。HeLa細胞へのコントロールベクターの投与後6日目および8日目に、MDA5の上方調節が観察された(およそ2倍から3倍の増加)。しかしながら、上記の設計されたベクターの全てがMDA5の上方調節の兆候を示したわけではなかった。上記のベクターを、マウス1匹あたり1e11/ウイルス粒子の用量において、血友病Aマウスに注入した。コントロールベクターAAV-f8の発現は最も低かった。全ての他のベクターは、ELISAおよびaPTTアッセイによってVIII因子発現レベルを示し、それは、50%から10倍の範囲においてVIII因子の発現の向上を示した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
2023508121000001.app
【国際調査報告】