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特表2023-508139ポリエステルメタノリシス解重合生成物ストリームを処理するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-01
(54)【発明の名称】ポリエステルメタノリシス解重合生成物ストリームを処理するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/149 20060101AFI20230221BHJP
   C07C 31/27 20060101ALI20230221BHJP
   C07C 29/20 20060101ALI20230221BHJP
   C07C 35/21 20060101ALI20230221BHJP
   C08J 11/24 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
C07C29/149
C07C31/27
C07C29/20
C07C35/21
C08J11/24 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538333
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 US2020065254
(87)【国際公開番号】W WO2021126936
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】62/950,605
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594055158
【氏名又は名称】イーストマン ケミカル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム クリストファー ケッチー
(72)【発明者】
【氏名】ノア グレン マクミラン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ポール エカート
(72)【発明者】
【氏名】トラビス ウィン キーバー
【テーマコード(参考)】
4F401
4H006
【Fターム(参考)】
4F401AA22
4F401BA06
4F401CA67
4F401CA75
4F401DC00
4F401EA59
4F401EA77
4F401FA01Z
4F401FA02Z
4H006AA02
4H006AC11
4H006AC41
4H006BC10
4H006BC11
4H006BE20
(57)【要約】
開示されているのは、ポリエステルメタノリシス解重合法からの生成物ストリームを処理するための方法であり、前記生成物ストリームは、テレフタル酸ジメチルと、フタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、ビスフェノールA、アジピン酸ジエステル及び着色剤からなる群より選ばれる1つ以上の副種と、を含む。この方法は、a)前記テレフタル酸ジメチルを水素化して、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル及び1,4-シクロヘキサンジメタノールのうちの1つ以上を生成すること、及び、(b)前記生成物ストリームの前記1つ以上の副種のうちの1つ以上を水素化することを含む。ポリエステルの解重合方法も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルメタノリシス解重合法からの生成物ストリームを処理する方法であって、前記生成物ストリームは、テレフタル酸ジメチルと、フタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、ビスフェノールA、アジピン酸ジエステル及び1つ以上の着色剤からなる群より選ばれる1つ以上の副種と、を含み、前記方法は、
a)前記テレフタル酸ジメチルを水素化して、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル及び1,4-シクロヘキサンジメタノールのうちの1つ以上を生成すること、及び、
(b)前記生成物ストリームの前記1つ以上の副種のうちの1つ以上を水素化することを含む、方法。
【請求項2】
前記水素化工程(a)は、テレフタル酸ジメチルを1,4-シクロヘキサンカルボン酸ジメチル(DMCD)に水素化する第一の水素化工程(a1)及びDMCDを1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)に水素化する第二の水素化工程(a2)を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記水素化工程(b)は、前記工程(a1)及び前記工程(a2)のうちの少なくとも1つと同時に実施される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記水素化工程(b)は工程(a2)と同時に実施されて、水素化生成物ストリームを生成する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の副種はイソフタル酸ジメチルを含み、前記水素化工程(b)は、前記イソフタル酸ジメチルを水素化して、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル及び1,3-シクロヘキサンジメタノールのうちの1つ以上を生成することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の副種はフタル酸ジメチルを含み、前記水素化工程(b)は、前記フタル酸ジメチルを水素化して、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル及び1,2-シクロヘキサンジメタノールのうちの1つ以上を生成することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の副種はビスフェノールAを含み、前記水素化工程(b)は前記ビスフェノールAを水素化して、下記式:
【化1】
の水素化ビスフェノールAを生成することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上の副種はアジピン酸ジエステルを含み、前記水素化工程(b)は前記アジピン酸エステルを水素化して、ジオールを生成することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記アジピン酸ジエステルはアジピン酸ジメチルであり、前記ジオールは1,6ヘキサンジオールである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記水素化工程(b)は工程(a2)と同時に実施される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上の副種は少なくとも2つの副種を含み、そのうちの1つはイソフタル酸ジメチルである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記水素化工程(a)及び前記水素化工程(b)のうちの少なくとも1つは、触媒の存在下で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記水素化工程(a)及び前記水素化工程(b)の両方は、触媒の存在下で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記水素化工程(a1)及び前記水素化工程(b)はそれぞれ同じ触媒装填物の存在下で実施される、請求項2記載の方法。
【請求項15】
前記水素化工程(a2)及び前記水素化工程(b)はそれぞれ同じ触媒装填物の存在下で実施される、請求項2記載の方法。
【請求項16】
水素化工程(a1)はパラジウム系触媒の存在下で実施され、水素化工程(a2)は銅系触媒の存在下で実施される、請求項2記載の方法。
【請求項17】
前記水素化工程(a1)は160℃~240℃の温度及び700~6000psigの圧力で実施され、前記水素化工程(a2)は210℃~280℃の温度及び150~6000psigの圧力で実施され、又は、前記水素化工程(a1)は160℃~240℃の温度及び1800psigの圧力で実施され、前記水素化工程(a2)は210℃~280℃の温度及び6000psigの圧力で実施される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記水素化工程(b)は前記生成物ストリームの副種を水素化することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル及び1,4-シクロヘキサンジメタノールのうちの前記1つ以上を分離する工程(c)をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記水素化工程(b)は工程(a1)と同時に実施される第一の水素化工程(b1)及び工程(a2)と同時に実施される第二の水素化工程(b2)を含む、請求項2記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に、ポリエステルリサイクル法の分野、より具体的には、メタノリシスによるポリエステルの解重合、メタノリシス反応生成物の回収/使用及びそれらの生成物の有用な化学化合物への転化を含むポリエステルリサイクル法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ポリエステルは、しばしば、世界で最も購入され、多様に利用されているポリマーのクラスと見なされ、公表されている世界の生産量(リサイクルを含む)は、最近7500万トンをはるかに超えると報告されている。このレベルの商業的成功は、相対的なコスト、製造可能性及び競争力のある性能属性のポリエステルの魅力的な組み合わせに部分的に起因している可能性がある。ポリエステルの物理的、化学的及び熱的特性により、ポリエステルは様々な最終用途に有用で望ましいものになっている。ポリエチレンテレフタレート(PET)は、おそらく多くの最終用途で最も人気のあるタイプのポリエステルの1つである。一般的にポリエステルの商業的成功が続き、PETでは特に、ポストコンシューマー、ポストインダストリアル、スクラップ、その他の源から材料を回収し、埋め立てなどの基本的な廃棄方法の代替としてそれらの材料を再利用する努力がなされてきた。
【0003】
幾つかの既知のリサイクル方法において、リサイクルPETはバージン材料とブレンドされる。このアプローチは、例えば、バージンポリ(ブチレンテレフタレート)(「PBT」)とリサイクルPETのブレンドを調製して、リサイクル含有分を含むPBTベースの製品を生成するために使用される(例えば、米国特許出願公開第2009/0275698号明細書を参照されたい)。しかしながら、そのようなブレンドは、一般に、非混和性であり、比較的に不透明な材料を生成する可能性がある。したがって、ブレンディングは、商業的に受け入れられる、リサイクル含有分を含む最終製品を提供するための均一に満足のいく方法ではない。
【0004】
他のリサイクル方法において、ポリエステルを解重合して、その製造に元々使用されていたモノマー単位を生成する。ポリエステル解重合に商業的に利用されている方法の1つはメタノリシスである。メタノリシスにおいて、ポリエステルをメタノールと反応させて、ポリエステルオリゴマー、テレフタル酸ジメチル(「DMT」)及びエチレングリコール(「EG」)を含む解重合ポリエステル混合物を生成する。例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノール(「CHDM」)及びジエチレングリコールなどの他のモノマーもまた、メタノリシス供給ストリーム中のポリエステルの組成に応じて存在することができる。PETのメタノリシスのための幾つかの代表的な方法は、米国特許第3,037,050号、同第3,321,510号、同第3,776,945号、同第5,051,528号、同第5,298,530号、同第5,414,022号、同第5,432,203号、同第5,576,456号及び同第6,262,294号明細書に記載されており、これらの内容及び開示を参照により本明細書に組み込む。代表的なメタノリシス方法は、米国特許第5,298,530号明細書にも示されており、その内容及び開示を参照により本明細書に組み込む。'530号特許は、スクラップポリエステルからエチレングリコール及びテレフタル酸ジメチルを回収する方法について記載している。この方法は、スクラップポリエステルをエチレングリコール及びテレフタル酸又はテレフタル酸ジメチルのオリゴマー中に溶解すること、及び、過熱したメタノールをこの混合物に通すことの工程を含む。オリゴマーは、スクラップポリマーが低分子量オリゴマー中に溶解するように、出発成分として使用されるスクラップ材料と同じ組成の任意の低分子量ポリエステルポリマーを含むことができる。テレフタル酸ジメチル及びエチレングリコールは、解重合反応器から出るメタノール蒸気ストリームから回収される。
【0005】
上記の反応生成物に加えて、ポリエステルメタノリシス解重合法からの反応生成物ストリームはまた、幾つかの副種を含むことができる。例えば、反応生成物ストリームは、リサイクル供給ストリーム中に存在する染料及び顔料などの着色剤、又は、製品に望ましくない色合い又は色を与える、解重合中に生成されるいわゆるカラーボディを含むことができる。プロセス供給ストリームにポリマー製品で使用される特定の可塑剤が含まれているときに、フタル酸ジメチルはメタノリシスで生成されうる。イソフタル酸ジメチルは、リサイクル供給ストリーム中のポリエステルの正確な組成に応じて、供給時にポリエステル解重合からの反応生成物として生成されうる。ポリカーボネート材料が供給ストリーム中に存在するときに、ビスフェノールAはメタノリシス解重合反応生成物ストリーム中に存在する可能性がある。供給ストリームがポリアミド材料を含むときに、アジピン酸ジメチルなどのアジピン酸のジエステルは反応生成物ストリーム中に存在する可能性がある。
【0006】
メタノリシス解重合生成物ストリームの成分の幾つかは、ポリエステル製造及び他の最終用途の両方において非常に価値があり、商業的に有用である。1つの例において、本発明の譲受人に譲渡された米国公開特許出願第2013/0041053号明細書(その内容及び開示を参照により本明細書に組み込む)は、ポリエステル解重合法から生成されたDMTが既知の手順を使用して1,4CHDMに水素化されうる方法を開示している。
【0007】
これらの副種の1つ以上の存在は、反応生成物ストリームのより有用な又は商業的に価値のある成分の使用及び回収に悪影響を与える可能性がある。これらの製品の幾つかは、そのまま生成物ストリームから分離できる可能性があるが、それらの分離とその後の廃棄は、費用と時間がかかり、環境的に問題がある可能性がある。さらに、少なくとも幾つかの副種の商業的価値又は有用性は、他のより有用又は価値のある化合物への転化によって変更又は改善されうる。しかしながら、この転化はほぼ確実にプロセスに追加の処理工程(したがってコスト)を追加し、上記のDMTの水素化などの所望の転化への悪影響を回避するように管理されなければならない。
【0008】
したがって、ポリエステルメタノリシス解重合法の生成物ストリームを処理してDMTを1,4CHDMに水素化する方法であって、一方、生成物ストリームの1つ以上の副種を環境に優しい廃棄又はその後の再利用のいずれかのためにストリームから容易に分離できる材料に転化する方法に対する継続的で満たされていない要求が存在する。
【発明の概要】
【0009】
発明の要旨
第一の態様において、本発明は、ポリエステルメタノリシス解重合法からの生成物ストリームを処理する方法であって、前記生成物ストリームは、テレフタル酸ジメチルと、フタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、ビスフェノールA、アジピン酸ジエステル及び着色剤からなる群より選ばれる1つ以上の副種と、を含む、方法は開示される。本発明の本態様の方法は、a)前記テレフタル酸ジメチルを水素化して、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル及び1,4-シクロヘキサンジメタノールのうちの1つ以上を生成すること、及び、(b)前記生成物ストリームの前記1つ以上の副種のうちの1つ以上を水素化することを含む。
【0010】
別の態様において、本発明は、ポリエステルの解重合のための方法に関する。本発明の本態様の方法は、(a)メタノリシスによりポリエステルを解重合して、テレフタル酸ジメチルと、フタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、ビスフェノールA、アジピン酸ジエステル及び1つ以上の着色剤からなる群より選ばれる1つ以上の副種と、を含むポリエステルメタノリシス解重合生成物ストリームを生成すること、a)テレフタル酸ジメチルを水素化して、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル及び1,4-シクロヘキサンジメタノールのうちの1つ以上を生成すること、及び、(b)前記生成物ストリームの前記1つ以上の副種のうちの1つ以上を水素化することを含む。1つ以上の実施形態において、水素化工程(b)は、前記生成物ストリームの副種を水素化することを含む。
【0011】
本発明のさらなる態様は、本明細書に開示及び請求されるとおりである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
本明細書で使用されるときに、「ポリエステル」という用語は、一般に、限定するわけではないが、ホモポリエステルならびにコポリエステル、ターポリエステルなどを含むことを意味し、典型的には、二官能性カルボン酸又はそのエステル、しばしばジカルボン酸、又はそのような酸又はエステルの混合物を、二官能性ヒドロキシル化合物、しばしばジオール又はグリコール、又はそのようなジオール又はグリコールの混合物と反応させることにより調製される。あるいは、二官能性カルボン酸はヒドロキシカルボン酸であることができ、二官能性ヒドロキシル化合物は、例えば、ヒドロキノンなどの2つのヒドロキシル置換基を有する芳香族核であることができる。本明細書に記載の本発明に関して特に興味深いのは、メタノリシス又はグリコリシスと、それに続く反応生成物メタノリシスによる解重合により、DMTを生成するポリエステルである。
【0013】
本発明は、第一の態様において、ポリエステルメタノリシス解重合法からの生成物ストリームを処理する方法を対象とし、ここで、前記生成物ストリームは、テレフタル酸ジメチルと、フタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、ビスフェノールA、アジピン酸ジエステル及び着色剤からなる群より選ばれる1つ以上の副種と、を含む。本発明の方法は、a)前記テレフタル酸ジメチルを水素化して、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル及び1,4-シクロヘキサンジメタノールのうちの1つ以上を生成すること、及び、(b)前記生成物ストリームの前記1つ以上の副種のうちの1つ以上を水素化することを含む。1つ以上の実施形態において、上記方法の水素化工程(b)は、前記生成物ストリームの副種を水素化することを含む。1つ以上の実施形態において、本発明の方法は、前記1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル及び1,4-シクロヘキサンジメタノールのうちの前記1つ以上を分離する工程(c)を含む。分離工程(c)は蒸留を含むことができる。
【0014】
本発明の方法は、テレフタル酸ジメチルと、フタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、ビスフェノールA、アジピン酸ジエステル及び1つ以上の着色剤からなる群より選ばれる1つ以上の副種と、を含む生成物ストリームを生成するポリエステル解重合法に関する。本発明の方法は、ポリエチレンテレフタレートの解重合によって生成される生成物ストリームに関する。1つ以上の実施形態において、ポリエステル解重合法は、メタノリシス解重合法である。メタノリシスによるポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルの解重合は当該技術分野で周知であり、例えば、本発明の譲受人に譲渡された米国公開特許出願第2013/0041053号明細書及び本発明の譲受人の前任者に譲渡された米国特許第5,051,528号明細書に記載されており、それぞれの内容及び開示を参照により本明細書に組み込む。ポリエステルの解重合は、上記の特許及び出願に記載されているような解糖を介して達成することもでき、テレフタル酸ジメチルは、解糖解重合生成物ストリーム中に生成される種のメタノリシスによって生成することができることを当業者は理解する。したがって、本発明の方法は、解糖反応によって生成された1つ以上の種のメタノリシスでポリエステルの解糖によって生成されたポリエステル解糖生成物ストリームを処理するのにも有用である。したがって、本明細書で使用されるときに、「ポリエステルメタノリシス解重合法」という語句は、限定することなく、メタノリシス解重合法及びメタノリシス工程を含む解糖解重合法を含む、テレフタル酸ジメチルを生成する、あらゆるポリエステル解重合法を含むことが意図されている。
【0015】
本発明の方法の水素化工程(a)において、テレフタル酸ジメチルは水素化されて、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル及び1,4-シクロヘキサンジメタノールのうちの1つ以上を生成する。1つ以上の実施形態において、本発明の水素化工程(a)は、テレフタル酸ジメチルを1,4-シクロヘキサンカルボン酸ジメチル(DMCD)に水素化する第一の水素化工程(a1)及びDMCDを1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)に水素化する第二の水素化工程(a2)を含む。1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル及び1,4-シクロヘキサンジメタノールの有無、及び、両方が存在する場合にはそれらの相対量は、例えば、触媒の存在、選択及び量、温度、圧力及び滞留時間などの水素化工程(a)の変数を含む多くの要因に依存する。
【0016】
1つ以上の実施形態において、水素化工程(a1)は、150℃~300℃の温度及び700psig~6,000psigの圧力で実施される。1つ以上の実施形態において、水素化工程(a2)は、150℃~300℃の温度及び150psig~6000psigの圧力で実施される。
【0017】
水素化工程(b)において、前記生成物ストリームの前記1つ以上の副種のうちの1つ以上は水素化される。1つ以上の実施形態において、水素化工程(b)は、150℃~300℃の温度及び150psig~6000psigの圧力で実施される。1つ以上の実施形態において、水素化工程(b)は、150℃~300℃の温度及び700psig~6000psigの圧力で実施される。1つ以上の実施形態において、水素化工程(b)は、150℃~300℃の温度及び150psig~6000psigの圧力で実施される。当業者は、水素化工程(b)の条件及び水素化工程(b)によって生成される1つ以上の化合物が、個々の副種の有無に大きく依存することを理解するであろう。
【0018】
1つ以上の実施形態において、1つ以上の副種はフタル酸ジメチルを含み、前記水素化工程(b)は、フタル酸ジメチルを水素化して、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル及び1,2-シクロヘキサンジメタノールのうちの1つ以上を生成することを含む。
【0019】
メタノリシス解重合生成物ストリーム中の副種としてのフタル酸ジメチルの存在は、例えば、解重合供給ストリーム中のフタレート可塑化PVCの存在の結果である可能性がある。
【0020】
1つ以上の実施形態において、少なくとも1つの副種はイソフタル酸ジメチルを含み、水素化工程(b)は、イソフタル酸ジメチルを水素化して、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル及び1,3-シクロヘキサンジメタノールのうちの1つ以上を生成することを含む。メタノリシス解重合生成物ストリーム中の副種としてのイソフタル酸ジメチルの存在は、例えば、PET配合物に意図的に含ませることができるイソフタル酸の存在の結果である可能性がある。1,3-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル及び1,3-シクロヘキサンジメタノールの有無、及び両方が存在する場合にはそれらの相対量は、例えば、触媒の存在、選択及び量、温度、圧力及び滞留時間などの水素化工程(b)の変数を含む多くの要因に依存する。
【0021】
1つ以上の実施形態において、少なくとも1つの副種はビスフェノールAを含み、水素化工程(b)は、ビスフェノールAを水素化して、式C1528の水素化ビスフェノールAを生成することを含む。
【化1】
【0022】
メタノリシス解重合生成物ストリーム中の副種としてのビスフェノールAの存在は、例えば、メタノリシス解重合供給ストリーム中のポリカーボネート材料、コーティング、インク又は染料の存在の結果である可能性がある。
【0023】
1つ以上の実施形態において、1つ以上の副種はアジピン酸ジエステルを含み、前記水素化工程(b)は、アジピン酸エステルを水素化してジオールを生成することを含む。非限定的な例として、アジピン酸ジエステルはアジピン酸ジメチルであることができ、生成されるジオールは1,6ヘキサンジオールであることができる。メタノリシス解重合生成物ストリーム中の副種としてのアジピン酸ジメチルの存在は、例えば、メタノリシス解重合供給ストリーム中のポリアミド材料の存在の結果である可能性がある。
【0024】
1つ以上の実施形態において、1つ以上の副種は、少なくとも1つの着色剤を含み、前記水素化工程(b)は、少なくとも1つの着色剤を水素化着色剤に水素化することを含む。本明細書で使用されるときに、「着色剤」という用語は、組成物、製品、物品又はプロセスストリームに存在する成分であって、その成分がない場合のその組成物、製品、物品又はプロセスストリームと比較したときに、その組成物、製品、物品又はプロセスストリームに測定可能な色の違いを与える成分を意味することが意図される。着色剤の非限定的な例としては、色を作り出すために意図的に添加される顔料、染料、添加剤など、ならびに、メタノリシスなどの化学処理の過程で生成されうる不純物、種及び他のいわゆるカラーボディが挙げられる。したがって、メタノリシス解重合生成物ストリーム中の副種としての着色剤の存在は、例えば、メタノリシス解重合生成物ストリーム中の染料、顔料又は同様の材料の存在、あるいはメタノリシス解重合法の間の不純物又はカラーボディの生成の結果である可能性がある。
【0025】
1つ以上の実施形態において、フタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、ビスフェノールA、アジピン酸ジエステル及び1つ以上の着色剤からなる群より選ばれる2つ以上の副種が生成物ストリーム中に存在しうることが考えられる。例えば、1つ以上の実施形態において、生成物ストリームの1つ以上の副種は、少なくとも2つの副種を含み、そのうちの1つはイソフタル酸ジメチルである。
【0026】
1つ以上の実施形態において、水素化工程(a)及び水素化工程(b)のうちの少なくとも1つは、触媒の存在下で、そして幾つかの実施形態において、水素化工程(a)及び水素化工程(b)の両方は、触媒の存在下で行われる。さらに、水素化工程(a)が、テレフタル酸ジメチルを1,4-シクロヘキサンカルボン酸ジメチル(DMCD)に水素化する第一の水素化工程(a1)と、DMCDを1,4-シクロヘキサンジメタノールに水素化する第二の水素化工程(a2)を含む実施形態について、水素化工程(a1)及び(a2)の一方又は両方は、触媒の存在下で実施されうる。各工程について、適切な触媒及び触媒系は様々であることができ、例えば、反応器の設計、反応条件、個々の副種の有無及び活性金属/担体の組み合わせを含む多くの要因に基づいて選択されうる。適切な水素化触媒は当該技術分野でよく知られており、例えば、銅系触媒、スズ系触媒、パラジウム系触媒及びルテニウム系触媒が挙げられる。適切な水素化触媒はまた、例えば、米国特許第8,877,984B2号明細書に記載されており、その内容及び開示を参照により本明細書に組み込み、例えば、BASF、ジョンソンマッセイ及びクラリアントから市販されている。
【0027】
1つ以上の実施形態において、水素化工程(a1)及び水素化工程(b)は、それぞれ、同じ触媒装填物の存在下で実施される。1つ以上の実施形態において、水素化工程(a2)及び水素化工程(b)は、それぞれ、同じ触媒装填物の存在下で実施される。
【0028】
1つ以上の実施形態において、水素化工程(a1)は、パラジウム系触媒の存在下で実施される。1つ以上の実施形態において、水素化工程(a2)は、銅系触媒の存在下で実施される。
【0029】
水素化工程(b)に関して、適切な触媒は、主に個々の副種の有無に基づいて選ばれ、少なくとも1つの副種がフタル酸ジメチルを含むときにパラジウム系触媒及びルテニウム系触媒を含み、少なくとも1つの副種がイソフタル酸ジメチルを含むときにパラジウム系触媒及びルテニウム系触媒を含み、少なくとも1つの副種がビスフェノールAを含むときにパラジウム系触媒及びルテニウム系触媒を含み、少なくとも1つの副種がジメチルエステルなどのアジピン酸ジエステルを含むときに銅系触媒及びルテニウム系触媒を含み、そして少なくとも1つの副種が1つ以上の着色剤を含むときに銅系触媒、パラジウム系触媒及びルテニウム系触媒を含む。
【0030】
1つ以上の実施形態において、水素化工程(a)及び水素化工程(b)は、同時に実施されて、水素化生成物ストリームを生成する。より具体的には、1つ以上の実施形態において、水素化工程(b)は、水素化工程(a1)及び水素化工程(a2)のうちの少なくとも1つと同時に実施される。さらに、1つ以上の実施形態において、水素化工程(b)は、工程(a2)と同時に実施されて、水素化生成物ストリームを生成する。1つ以上の実施形態において、水素化工程(b)は、工程(a1)と同時に実施される第一の水素化工程(b1)及び工程(a2)と同時に実施される第二の水素化工程(b2)を含む。本明細書で使用されるときに、「同時に」という用語は、工程が実質的に同時に実施されることを意味することが意図されている。工程が同時に実施される実施形態の非限定的な例としては、(i)単一の反応器、タンク又は同様のデバイスで工程を実施すること、(ii)同じ触媒装填物の存在下で工程を実施すること、及び、(iii)実質的に同じ温度及び圧力下で工程を実施することを挙げることができる。1つ以上の実施形態において、水素化工程(a)及び水素化工程(b)は、150℃~300℃の温度及び150psig~6000psigの圧力で実施される。
【0031】
本発明の方法は、水素化工程(a)及び水素化工程(b)の同時実施に関して上で論じられているが、1つ以上の実施形態において、水素化工程(a)及び水素化工程(b)は順次に実施することができる。
【0032】
1つ以上の実施形態において、本発明の方法は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル及び1,4-シクロヘキサンジメタノールのうちの1つ以上を分離する工程(c)をさらに含む。適切な分離工程としては、例えば蒸留を含む既知の分離方法が挙げられる。
【0033】
本発明は、第二の態様において、ポリエステルの解重合のための方法を対象とする。本発明の本態様の方法は、(a)メタノリシスによりポリエステルを解重合して、テレフタル酸ジメチルと、フタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、ビスフェノールA、アジピン酸ジエステル及び1つ以上の着色剤からなる群より選ばれる1つ以上の副種と、を含む、ポリエステルメタノリシス解重合生成物ストリームを生成すること、a)テレフタル酸ジメチルを水素化して、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル及び1,4-シクロヘキサンジメタノールのうちの1つ以上を生成すること、及び、(b)前記生成物ストリーム中の前記1つ以上の副種のうちの1つ以上を水素化することを含む。1つ以上の実施形態において、水素化工程(b)は、前記生成物ストリームの副種を水素化することを含む。1つ以上の実施形態において、本発明の方法は、前記1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル及び1,4-シクロヘキサンジメタノールのうちの前記1つ以上を分離する工程(c)をさらに含む。分離工程(c)としては、蒸留などの既知の分離技術を挙げることができる。
【0034】
本発明の様々な実施形態の上述の記載は、例示及び説明の目的で提示されてきた。網羅的であること又は本発明を開示された正確な実施形態に限定することを意図するものではない。上記の教示に照らして、多数の変更又は変形が可能である。議論された実施形態は、本発明の原理及びその実際の適用の最良の例示を提供するために選択されそして記載され、それにより、当業者が様々な実施形態において、特定の用途に適した様々な変更を加えて本発明を利用することを可能にする。そのようなすべての変更及び変形は、それらが公正に、法的にそして公平に権利を与えられている幅に従って解釈されるときに、添付の特許請求の範囲によって決定される本発明の範囲内にある。
【国際調査報告】