(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-01
(54)【発明の名称】突出部に面する嵌入部を備える偏向可能遠位管を有する医療用プローブ及び医療用プローブの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/24 20060101AFI20230221BHJP
A61B 18/20 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
A61B17/24
A61B18/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538782
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(85)【翻訳文提出日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 IB2020060836
(87)【国際公開番号】W WO2021130566
(87)【国際公開日】2021-07-01
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アルガウィ・イェフダ
(72)【発明者】
【氏名】ゴバリ・アサフ
(72)【発明者】
【氏名】シットニツキー・イリヤ
(72)【発明者】
【氏名】アティアス・ギリ
【テーマコード(参考)】
4C026
4C160
【Fターム(参考)】
4C026AA01
4C160MM03
4C160MM06
4C160NN02
4C160NN09
(57)【要約】
医療用プローブ(28)は、患者の身体の腔に挿入するためのシャフト(38)と、シャフトの遠位端部に結合され、中空管(66)を含む遠位端部アセンブリ(134)とを含み、中空管は、中空管の長手方向軸線に対して偏向し、長手方向軸線を中心に回転するように構成されている。中空管は、少なくとも第1の表面を有する嵌入部(99A)と、嵌入部に面し、かつ第2の表面を有する突出部(88A)とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用プローブであって、
患者の身体の腔に挿入するためのシャフトと、
前記シャフトの遠位端部に結合され、中空管を備える遠位端部アセンブリであって、前記中空管は、前記中空管の長手方向軸線に対して偏向し、前記長手方向軸を中心に回転するように構成され、前記中空管は、(i)少なくとも第1の表面を有する嵌入部と、(ii)前記嵌入部に面し、第2の表面を有する突出部とを有する、遠位端部アセンブリと、を備え、
前記中空管が偏向されると、前記突出部の少なくとも一部は、前記第1の表面の第1の区分及び前記第2の表面の第2の区分が互いに対向するように、前記嵌入部の中に突出し、前記中空管が偏向及び回転されると、前記第1の表面の前記第1の区分及び前記第2の表面の前記第2の区分が互いに力を加え、したがって、前記中空管の回転に抵抗する、医療用プローブ。
【請求項2】
前記遠位端部アセンブリは、(i)前記中空管の前記長手方向軸線に沿った第1の区分に配置され、第1の局所曲率半径(LROC)によって前記第1の区分の屈曲を制限する第1のサイズを有する、第1のスロットと、(ii)前記中空管の前記長手方向軸線に沿った第2の異なる区分に位置し、第2の異なるLROCによって前記第2の区分の屈曲を制限する第2の異なるサイズを有する、第2のスロットと、を備える、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項3】
少なくとも前記第1のスロットは、(i)それぞれの1つ以上の第1の表面を有する複数の前記嵌入部、及び(ii)それぞれの1つ以上の第2の表面を有する複数の前記突出部を備え、前記嵌入部及び前記突出部は、少なくとも前記第1のスロットに沿って配置されている、請求項2に記載の医療用プローブ。
【請求項4】
少なくとも前記第1のスロットは、第1の所与の表面を有する少なくとも所与の嵌入部と、前記所与の嵌入部に面し、かつ第2の所与の表面を有する所与の突出部とを備え、前記中空管が偏向されていないとき、前記第1の所与の表面及び前記第2の所与の表面は、互いに力を加えない、請求項3に記載の医療用プローブ。
【請求項5】
前記シャフトの近位端部に取り付けられ、前記第1の区分を前記第1のLROCまで、また前記第2の区分を前記第2のLROCまで屈曲させるように構成された制御ハンドルを備える、請求項2に記載の医療用プローブ。
【請求項6】
前記遠位端部アセンブリは、ニッケルとチタンとの合金を含む、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項7】
前記嵌入部は、前記突出部の上に嵌合するように成形され、その結果、前記中空管が偏向及び回転されるとき、前記第1の区分及び前記第2の区分は、互いに対して摺動しない、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項8】
前記第1の表面の前記第1の区分及び前記第2の表面の前記第2の区分は、互いに押圧する、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項9】
前記突出部は、長方形、平行四辺形、台形、ドーム、及びピラミッドからなる形状のリストから選択される形状を有する、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項10】
前記腔が、耳鼻咽喉(ENT)副鼻腔を含む、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項11】
医療用プローブを製造するための方法であって、
患者の身体の腔に挿入するためのシャフトを提供することと、
前記シャフトの遠位端部に、中空管の長手方向軸線に対して偏向し、前記長手方向軸線を中心に回転する前記中空管を備える遠位端部アセンブリを結合することであって、前記中空管は、(i)少なくとも第1の表面を有する嵌入部と、(ii)前記嵌入部に面し、第2の表面を有する突出部とを有する、ことと、を含み、
前記中空管が偏向されると、前記突出部の少なくとも一部は、前記第1の表面の第1の区分及び前記第2の表面の第2の区分が互いに対向するように、前記嵌入部の中に突出し、前記中空管が偏向及び回転されると、前記第1の表面の前記第1の区分及び前記第2の表面の前記第2の区分が互いに力を加え、したがって、前記中空管の回転に抵抗する、医療用プローブを製造するための方法。
【請求項12】
前記遠位端部アセンブリは、(i)前記中空管の前記長手方向軸線に沿った第1の区分に配置され、第1の局所曲率半径(LROC)によって前記第1の区分の屈曲を制限する第1のサイズを有する、第1のスロットと、(ii)前記中空管の前記長手方向軸線に沿った第2の異なる区分に位置し、第2の異なるLROCによって前記第2の区分の屈曲を制限する第2の異なるサイズを有する、第2のスロットと、を備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも前記第1のスロットは、(i)それぞれの1つ以上の第1の表面を有する複数の前記嵌入部、及び(ii)それぞれの1つ以上の第2の表面を有する複数の前記突出部を備え、前記嵌入部及び前記突出部は、少なくとも前記第1のスロットに沿って配置される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも前記第1のスロットは、第1の所与の表面を有する少なくとも所与の嵌入部と、前記所与の嵌入部に面し、かつ第2の所与の表面を有する所与の突出部とを備え、前記中空管が偏向されていないとき、前記第1の所与の表面及び前記第2の所与の表面は、互いに力を加えない、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の区分を前記第1のLROCまで、また前記第2の区分を前記第2のLROCまで屈曲させるための制御ハンドルを、前記シャフトの近位端部において取り付けることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
レーザ切断技術を使用して、前記第1のスロット及び前記第2のスロットのうちの少なくとも一方を形成することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記嵌入部は、前記突出部の上に嵌合するように成形され、その結果、前記中空管が偏向及び回転されるとき、前記第1の区分及び前記第2の区分は、互いに対して摺動しない、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の表面の前記第1の区分及び前記第2の表面の前記第2の区分は、互いに押圧する、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記突出部は、長方形、平行四辺形、台形、ドーム、及びピラミッドからなる形状のリストから選択される形状を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記遠位端部アセンブリは、ニッケルとチタンとの合金を含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、低侵襲医療用装置に関し、特に、改善された操作性及び耐久性を有する医療用プローブのための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の種類の医療用プローブは、患者の体内で操作されるときのプローブ耐久性を改善することを意図する機械的設計を有する。
【0003】
例えば、米国特許出願公開第2011/0152880号は、低侵襲外科的処置を行うための器具を記載している。器具は、細長い本体と、細長い本体内に又は細長い本体に沿って配置された支持部材と、を含む。支持部材は、細長い本体の操縦、関節運動、及び角度回転運動を支持するように構成され、捻転制御を提供し、細長い本体の遠位部分の精密かつ正確な配置を支持し、これにより、複合的な外科的処置を、器具を使用して実施することができる。
【0004】
米国特許出願公開第2017/0325841号は、管内腔を画定するように成形された管と、複数の関節区分を有する遠位部分とを含む装置を記載している。本装置は、管内腔を長手方向に通過し、関節区分のうちの最遠位区分に接続されているリボンと、管の近位端に配設された、リボンを引くことにより管の遠位部分を屈曲させるように構成されている制御ハンドルとを更に含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載された本発明の一実施形態は、患者の身体の腔に挿入するためのシャフトと、遠位端部アセンブリと、を含む医療用プローブを提供する。遠位端部アセンブリは、シャフトの遠位端部に連結され、中空管を含み、中空管は、中空管の長手方向軸線に対して偏向し、長手方向軸線を中心に回転するように構成されている。中空管は、少なくとも第1の表面を有する嵌入部(i)と、嵌入部に面し、かつ第2の表面を有する突出部(ii)とを有する。中空管が偏向されると、突出部の少なくとも一部は、第1の表面の第1の区分及び第2の表面の第2の区分が互いに対向するように、嵌入部の中に突出し、中空管が偏向及び回転されると、第1の表面の第1の区分及び第2の表面の第2の区分が互いに力を加え、したがって、中空管の回転に抵抗する。
【0006】
いくつかの実施形態では、遠位端部アセンブリは、(i)中空管の長手方向軸線に沿った第1の区分に配置され、第1の局所曲率半径(LROC)によって第1の区分の屈曲を制限する第1のサイズを有する、第1のスロットと、(ii)中空管の長手方向軸線に沿った第2の異なる区分に位置し、第2の異なるLROCによって第2の区分の屈曲を制限する第2の異なるサイズを有する、第2のスロットと、を含む。他の実施形態では、少なくとも第1のスロットは、(i)それぞれの1つ以上の第1の表面を有する複数の嵌入部、及び(ii)それぞれの1つ以上の第2の表面を有する複数の突出部を含み、嵌入部及び突出部は、少なくとも第1のスロットに沿って配置されている。更に他の実施形態では、少なくとも第1のスロットは、第1の所与の表面を有する少なくとも所与の嵌入部と、所与の嵌入部に面し、かつ第2の所与の表面を有する所与の突出部とを含み、中空管が偏向されていないとき、第1の所与の表面及び第2の所与の表面は、互いに力を加えない。
【0007】
一実施形態では、医療用プローブは、シャフトの近位端部に取り付けられ、第1の区分を第1のLROCまで、また第2の区分を第2のLROCまで屈曲させるように構成された制御ハンドルを含む。別の実施形態では、遠位端部アセンブリは、ニッケルとチタンとの合金を含む。更に別の実施形態では、嵌入部は、突出部の上に嵌合するように成形され、その結果、中空管が偏向及び回転されるとき、第1の区分及び第2の区分は、互いに対して摺動しない。
【0008】
いくつかの実施形態では、第1の表面の第1の区分及び第2の表面の第2の区分は、互いに押圧する。他の実施形態では、突出部は、長方形、平行四辺形、台形、ドーム、及びピラミッドからなる形状のリストから選択される形状を有する。更に他の実施形態では、腔は、耳鼻咽喉(ENT)副鼻腔を含む。
【0009】
本発明の実施形態による医療用プローブを製造するための方法であって、患者の身体の腔に挿入するためのシャフトを提供することを含む方法が、更に提示される。中空管の長手方向軸線に対して偏向し、長手方向軸線を中心に回転する中空管を含む遠位端部アセンブリが、シャフトの遠位端部に結合されている。中空管は、少なくとも第1の表面を有する嵌入部(i)と、嵌入部に面し、かつ第2の表面を有する突出部(ii)とを有する。中空管が偏向されると、突出部の少なくとも一部は、第1の表面の第1の区分及び第2の表面の第2の区分が互いに対向するように、嵌入部の中に突出し、中空管が偏向及び回転されると、第1の表面の第1の区分及び第2の表面の第2の区分が互いに力を加え、したがって、中空管の回転に抵抗する。
【0010】
いくつかの実施形態では、本方法は、レーザ切断技術を使用して第1のスロット及び第2のスロットのうちの少なくとも一方を形成することを含む。
【0011】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態による、ENTシステムを用いた耳鼻咽喉(ENT)処置の概略描写図である。
【
図2A】本発明の実施形態による、偏向可能かつ回転可能な遠位端部アセンブリを有する医療用プローブの概略描写図である。
【
図2B】本発明の実施形態による、偏向可能かつ回転可能な遠位端部アセンブリを有する医療用プローブの概略描写図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概論
いくつかの医療処置は、患者の耳鼻咽喉(ENT)システムの副鼻腔などの患者の分岐器官への医療用プローブの挿入を必要とする。副鼻腔内のプローブの所望の位置への操縦は、例えば、ENTシステムの骨によってプローブに加えられる外力によるプローブの破損をもたらし得る。
【0014】
以下に記載される本発明の実施形態は、患者の体内の分岐器官内の医療用プローブを操縦する際に、プローブ破損に対する改善された耐性を有する医療用プローブを提供する。
【0015】
いくつかの実施形態では、医療用プローブは、患者のENT系の副鼻腔などの、患者の身体の腔に挿入するためのシャフトを備え、遠位端部アセンブリは、シャフトの遠位端部に連結されている。遠位端部アセンブリは中空管を備え、中空管は、中空管の長手方向軸線に対して偏向し、長手方向軸線を中心に回転するように構成されている。
【0016】
いくつかの実施形態では、中空管は、本明細書では第1の表面と称される少なくとも1つの表面を有する少なくとも1つの嵌入部を有する。中空管はまた、嵌入部に面し、かつ本明細書では第2の表面と呼ばれる少なくとも別の表面を有する少なくとも突出部を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、管が偏向されるとき、突出部の少なくとも一部は、第1の表面の第1の区分及び第2の表面の第2の区分が互いに対向するように嵌入部の中に突出する。中空管が偏向及び回転されると、互いに対向する第1及び第2の表面は、互いに力を加え、したがって、中空管の回転及び破損に抵抗する。いくつかの実施形態では、中空管は、中空管の回転及び破損に対する抵抗を改善するために、中空管の円周に沿ってパターン化された複数の突起及びそれぞれの嵌入部を含み得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、複数の突出部及び嵌入部は、中空管の偏向能力、したがって可撓性を改善することができる。中空管に沿った所与の場所における最大偏向能力は、その位置における局所曲率半径(LROC)によって特定される。
【0019】
いくつかの実施形態では、中空管の第1の最遠位部分に位置する1つ以上の突出部及びそれぞれの嵌入部の第1のセットは、規定のLROCにより最遠位区分の屈曲能力を制限する所与のサイズを有する。いくつかの実施形態では、第1の区分の近位で、第2の区分において中空管に沿って配置される1つ以上の突出部及びそれぞれの嵌入部の第2のセットは、所与のサイズよりも小さいサイズを有し、最遠位の区分の既定のLROCよりも大きいLROCをもたらす。
【0020】
いくつかの実施形態では、中空管は、管の長手方向軸線に沿って形成された1つ以上の突出部及びそれぞれの嵌入部の複数のセットを含むことができ、突出部及びそれぞれの嵌入部のサイズは、管の遠位端部に近接して増加する。したがって、突出部及びそれぞれの嵌入部に対応するLROCは、チューブの遠位端部に近接して減少する。
【0021】
いくつかの実施形態では、遠位端部アセンブリは、シャフトの近位端部に取り付けられた制御ハンドルを備える。遠位端部アセンブリは、管の長手方向内腔を通って延び、中空管の最遠位部分及び制御ハンドルに連結された1つ以上のプルワイヤを更に備える。いくつかの実施形態では、医療用プローブのユーザは、遠位端部アセンブリの1つ以上の区分を所望のそれぞれのLROCまで偏向させるためにプルワイヤを適用することができる。更に、中空管が偏向されると、ユーザは、患者のENTシステム内で破損する心配なしに、長手方向軸線を中心に医療用プローブを回転させることができる。
【0022】
開示された技術は、剛性分岐器官における医療用プローブの操縦性を改善するために、狭い医療用プローブの柔軟性及び耐久性を改善する。
【0023】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、ENTシステム20を使用した耳鼻咽喉(ENT)処置の概略描写図である。いくつかの実施形態では、ENTシステム20は、本明細書においてはENTツール28と称する医療用プローブを含むが、これは、(例えば、患者22の1つ以上の副鼻腔48の感染症を治療するなどだが、これらに限定されない)ENT処置を実行するように構成されている。
【0024】
いくつかの実施形態では、ENTツール28は、医師24が患者22の鼻26に挿入する、遠位端部に連結されたシャフト38を備える。ENTツール28は、シャフト38の近位端部に連結され、患者22の頭部41でシャフト38の遠位端部を操縦する上で医師24を支援するように構成されている、手持型機器30を更に備える。シャフト38の詳細を以下の
図2A及び2Bに示す。
【0025】
一実施形態において、システム20は、頭部41の1つ以上の位置センサの位置を追跡するように構成された磁気位置追跡システムを更に備える。本磁気位置追跡システムは、磁場発生器44及び複数の位置センサ(図示せず)を備える。位置センサは、磁場発生器44によって生成された外部磁場の検出に応答して位置信号を生成し、それによって、プロセッサ34(以下に詳細に記載される)は患者22の頭部41内の各センサの位置の推定が可能となる。
【0026】
この位置検知方法は、様々な医療用途において、例えば、Biosense Webster Inc.(Irvine,Calif.)により製造されているCARTO(商標)システムにおいて実施されており、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号及び同第2004/0068178(A1)号に詳述されており、これらの開示は全て、参照により本明細書に組み込まれている。
【0027】
システム20は位置特定パッド40を更に備え、位置特定パッド40は、フレーム46上に固定された磁場発生器44を備える。
図1に示される例示的な構成では、パッド40は、5つの磁場発生器44を備えるが、代替的に、任意の他の好適な数の磁場発生器44を備えてもよい。パッド40は、磁場発生器44が頭部41の外部の固定された既知の位置に位置するように、患者22の頭部41の下に配置された枕(図示せず)を更に備える。
【0028】
いくつかの実施形態では、システム20はコンソール33を備え、コンソール33は、メモリ49と、頭部41周囲の空間内の既定の作業体積内に磁場を発生させるために、ケーブル37を介し、好適な信号を用いて磁場発生器44を駆動するよう構成された駆動回路42と、を備える。
【0029】
いくつかの実施形態では、コンソール33はプロセッサ34を備え、プロセッサ34は、典型的には、ケーブル32を介して複数の磁気センサ(図示せず)が連結されているENTツール28からの信号を受信し、かつ本明細書に記載されたシステム20のその他の構成要素を制御するための、好適なフロントエンド及びインタフェース回路を有する汎用コンピュータである。
【0030】
いくつかの実施形態において、プロセッサ34は、各位置センサの位置を推定するように構成されている。磁気位置追跡システムの座標系において、それぞれのセンサの推定位置に基づいて、プロセッサ34は、以下の
図2A及び2Bに示されるENTツール28の偏向遠位端部の位置、向き、及び曲率半径を導出するように構成される。
【0031】
本発明及び特許請求の範囲の文脈において、用語「屈曲」「偏向」は互換的に使用され、
図2A及び
図2Bに詳細に記載されるように、ENTツール28の1つ以上の区分の偏向又は屈曲を意味する。
【0032】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、外部のCTシステム(図示せず)を用いて取得した、頭部41の各セグメント化二次元(2D)スライスを描写するコンピュータ断層撮影(CT)画像などの、1つ以上の解剖学的画像を、インタフェース(図示せず)を介して受信するように構成されている。用語「セグメント化」とは、CTシステムでの組織のそれぞれの減衰を測定することによって、各スライス内で識別される種々の種類の組織を表示することを指す。
【0033】
コンソール33は、システム20の操作を制御するための入力デバイス39と、ユーザディスプレイ36とを更に備え、ユーザディスプレイ36は、プロセッサ34から受信したデータ(例えば、画像)を表示するように、及び/又は、医師24又は入力デバイス39のユーザによって挿入された入力を表示するように、構成されている。
【0034】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、解剖学的画像35などのCT画像の中から1つ又はモードスライスを選択し、選択されたスライスをユーザディスプレイ36に表示するように構成されている。
図1の実施例において、解剖学的画像35は患者22の1つ又は2つ以上の副鼻腔48の前断面図を示す。
【0035】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、CTシステムの座標系と磁気位置追跡システムとの間に位置合わせし、解剖学的画像35上でENTツール28の遠位端部の位置を重ね合わせるように構成される。
【0036】
図1は、簡潔性及び明瞭性のために、本開示の技術に関する要素のみを示す。システム20は、典型的には、開示される技術には直接関連せず、したがって、
図1及びシステム20の説明から意図的に省略されている、追加のモジュール及び要素を備える。
【0037】
プロセッサ34は、システムによって使用される機能を実行するように、かつソフトウェアによって処理されるか、又は別様に使用されるデータをメモリ49に格納するようにプログラムされ得る。このソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子的形態でプロセッサにダウンロードされてもよく、又は光学的、磁気的、若しくは電子的メモリ媒体など、非一時的な有形媒体上に提供されてもよい。代替的に、プロセッサ34の機能の一部又は全てが、専用の又はプログラマブルデジタルハードウェア構成要素によって実行され得る。
【0038】
偏向可能及び回転可能な遠位端部アセンブリは、単一管内にパターン化された嵌入部及び突出部を有する
図2Aは、本発明の一実施形態による、直線姿勢にある変更可能及び回転可能な遠位端部アセンブリ134を有するENTツール28の概略描写図である。いくつかの実施形態では、シャフト38及び遠位端部アセンブリ134は、ENTツール28の長手方向軸線50を中心に回転するように構成されている。回転能力は、矢印43で表される。回転は、遠位端部アセンブリ134の操作性を改善するために時計回り及び/又は反時計回りに行われてもよいことに留意されたい。そのような実施形態では、医師24は、以下に詳細に記載される制御ハンドル128を回転させることによって、シャフト38及び遠位端部アセンブリ134の両方を一緒に回転させることができる。代替的な実施形態では、医師24は、シャフト38及び遠位端部アセンブリ134を別々に回転させることができる。
【0039】
ここで、挿入
図80を参照する。いくつかの実施形態では、遠位端部アセンブリ134は、シャフト38の遠位端部に連結された中空管66を備え、典型的には、ニッケルとチタンとの好適な合金、例えば、nitinol(商標)又は高い再現性を有する超弾性体nitinol(商標)などではあるがこれらに限定されない、任意の好適な材料の単一片から作製される。
【0040】
いくつかの実施形態では、管66は、鼻26を通って副鼻腔48又は患者22の頭部41の任意のその他の器官に快適に挿入されるようなサイズ及び形状である。管66はまた、sinuplastyバルーン(sinuplasty balloon)、外科用ツール、吸引若しくは潅注ツール、又は任意のその他の好適なツールなどの医療用器具を、以下に詳細に記載される管66のルーメン140を通してその後に挿入することを可能にするようなサイズ及び形状である。
【0041】
いくつかの実施形態では、遠位端部アセンブリ134の管66は、スロット77A、77B、77C及び77Dなどの複数のスロットを有するが、これらのスロットはそれぞれの区分において形成され、本明細書においては遠位端部アセンブリ134のリブとも称される。
【0042】
図2Aの例では、スロット77Aは、遠位端部アセンブリ134の最遠位のパターン化された区分であり、管66内でパターン化されたスロット77A~77Dの中で最大のサイズを有する。同様に、スロット77Dは、遠位端部アセンブリ134の最近位のパターン化された区分であり、管66のスロット77A~77Dの中で最小のサイズを有する。以下の
図2Bに示すように、スロットのサイズは、遠位端部アセンブリ134のそれぞれの区分の曲率限界を決定する。
【0043】
いくつかの実施形態では、スロット77A~77Dのそれぞれは1つ又は複数の突出部及び嵌入部を有するが、これらは、レーザ切断、又は任意のその他の好適な技術を使用することによって、管66の円周の区分上に形成されてもよい。
【0044】
ここで、管66のスロット77Aを示す挿入
図92を参照する。いくつかの実施形態では、スロット77Aは、複数の嵌入部99A、99B、99C、99D、及び99Eを備え、これらは、管66のそれぞれの突出部88A、88B、88C、88D、及び88E上にぴったりと嵌合するようなサイズ及び形状である。例えば、嵌入部99Aは突出部88A上に嵌合するように適合され、嵌入部99Dは突出部88D上に嵌合するように適合されている。
【0045】
ここで再び挿入
図80を参照する。いくつかの実施形態では、遠位端部アセンブリ134が、本明細書で非屈曲状態(挿入
図80に示す)とも呼ばれる直線姿勢にあるとき、突出部88A及び嵌入部99Aは、互いに係合解除され得るが、突出部88D及び嵌入部99Dは、互いに部分的に係合される。直線姿勢では、スロット77Aは、例えば、長手方向軸線50に沿った最大サイズを有する。他の実施形態では、遠位端部アセンブリ134は、任意の他の好適な構成を有してもよい。例えば、直線姿勢突出部88A及び嵌入部99Aは、互いに少なくとも部分的に係合されてもよい。更に、直線姿勢において、少なくとも1つの突出物は、それぞれの嵌入部に部分的又は完全に挿入されてもよい。
【0046】
ここで再び挿入
図92を参照する。いくつかの実施形態では、突出部88Aは表面55A及び55Bを有し、嵌入部99Aは、表面56A及び56Bを有する。管66が(例えば、非屈曲状態で)偏向されない場合、表面55A及び56Aは、互いに対向していないことに留意されたい。同様に、管66が偏向されない場合、表面55B及び56Bは互いに対向していない。
【0047】
いくつかの実施形態では、管66は、本明細書ではとげ78と呼ばれるパターン化されていない表面を有する。いくつかの実施形態では、スロット77A~77Dは、管66の円周に沿ってパターン化され、したがって円形である。円形スロットは、管66の円周の任意の好適な部分上に形成され得る。例えば、円形スロットのうちの少なくとも1つは、管66の円周の約20%~約95%を覆うことができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、スロット77A~77Dは、管66の円周に沿って対称的にパターン化され得る。例えば、スロット77A~77Dなどの円形スロットの2つのセットは、とげ78の両側の前述の突出部及び嵌入部と対称的にパターン化され得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、管66は、円形スロット間に接続する追加のパターンを有し得る。
図2Aの例では、追加のパターンは、とげ78の両側から延在するスロット77Aの突出部88A(及び嵌入部99A)の間を機械的に接続する。
【0050】
図2Aの例示的な構成では、管66は、10個のスロットを有するが、他の構成では、管66は、任意の適切なサイズ及び形状を有する任意の好適な数のスロット、例えば、3~20、4~20、5~20、6~20、7~20、8~20、9~20、10~20、11~20、12~20、13~20、14~20、及び15~20個のスロットを有し得る。スロットは、類似の形状及び異なるサイズ、若しくは異なる形状、又は上記の任意の好適な組み合わせを有してもよいことに留意されたい。
【0051】
代替的な実施形態では、スロットのサイズは、近位端部から遠位端部まで徐々に増加してもよい。その他の実施形態では、スロットのサイズは、長手方向軸線50に沿って変化してもよい。例えば、スロット77Aは、スロット77Bよりも大きくてもよいが、スロット77Cのサイズよりも小さい。
【0052】
更にその他の実施形態では、管66のスロット、突出部、及び嵌入部のサイズは、長手方向軸線50に沿う任意のその他の好適な配分を有してもよい。追加的又は代替的に、管66の突出部及び嵌入部のサイズは、長手方向軸線50を横切る任意のその他の好適な配分を有してもよい。
【0053】
再度、
図2Aの概略図を参照する。いくつかの実施形態では、ENTツール28は、上記の
図1に示す手持型機器30に連結され、シャフト38の近位端部に取り付けられる制御ハンドル128を備える。制御ハンドル128は、ENTツール28の長手方向軸線50に対して遠位端部アセンブリ134を屈曲及び真っ直ぐにするように構成されている。
【0054】
ここで、シャフト38の断面
図BBを横切る挿入
図70を参照する。いくつかの実施形態では、シャフト38は中空であり、管ルーメン140を画定するように成形される。ENTツール28は、nitinol(商標)又はその他の好適な材料などの、ニッケルとチタンとの好適な合金から作製される、又はそれを含むプルワイヤ130を備えるが、これは、管ルーメン140を通って近位方向-遠位方向に通過する。
【0055】
いくつかの実施形態では、プルワイヤ130は、例えば、スロット77Aに対して遠位の中空管66の最遠位部分などの選択された区分に連結された、リング又は任意のその他の要素に接続されてもよい。下記の
図2Bに記載されるように、プルワイヤ130は、管66の遠位部分の構成を調整することを容易にする。その他の実施形態では、ENTツール28は、プルワイヤ130の代わりに、又はそれに加えて、リボン(図示せず)を含んでもよい。リボンは、nitinol(商標)、又は任意のその他の好適な材料を含んでもよい。ENTツールにおける前述のリボンの構成は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2017/0325841号に詳細に記載されている。
【0056】
図2Aに示すように、管66の非屈曲状態では、スロットのそれぞれ及びスロットの間の部分は、管66の周囲において長手方向軸線50に沿ってその隣接部と一般に同じ高さになる。
【0057】
ここで、長手方向軸線50に沿った制御ハンドル128の断面
図AAである挿入
図60を参照する。上記のように、制御ハンドル128は、シャフト38の近位端部に取り付けられている。いくつかの実施形態では、制御ハンドル128は、回転可能であり、プルワイヤ130を制御するように構成されている。
【0058】
下記の
図2Bに記載されるように、制御ハンドル128を一方向に曲げることにより、プルワイヤ130が引かれ、これにより、遠位端部アセンブリ134の屈曲を引き起こす。反対に、制御ハンドル128を反対方向に曲げることによって、プルワイヤ130が押され、これにより、
図2Aに示すように、遠位端部アセンブリ134の管66が非屈曲になり、真っ直ぐになる。
【0059】
例えば、プルワイヤ130の近位端部は、摺動要素142に結合されてもよいが、これは、最近位端位置と最遠位端位置との間で摺動するように構成されている。制御ハンドル128を曲げることにより、摺動要素142を近位方向又は遠位方向に摺動させて、これにより管66を屈曲又は非屈曲させる。いくつかの実施形態では、制御ハンドル128の内側表面は雌ネジ144を形成するように成形されてもよく、制御ハンドル128はまた、雌ネジ144と係合する相補的な雄ネジ146を備えてもよい。一実施形態では、医師24(又はENTツール28の任意のその他の操作者)が、制御ハンドル130を曲げる場合に、摺動要素142に連結された雄ネジ146が、摺動要素を長手方向軸線50に沿って近位方向又は遠位方向に移動させて、上記のように管66の状態を制御する。
【0060】
いくつかの実施形態では、遠位端部アセンブリ134の突出部及び嵌入部(例えば、突出部88及び嵌入部99)は、長方形、平行四辺形、台形、ドーム形状、ピラミッド形状、又は任意のタイプの多角形などの任意の好適な形状を有し得るが、これらに限定されない。
【0061】
遠位端部アセンブリ134のこの特定の構成は、本発明の実施形態によって対処される特定の問題を例示するため、及びこのような医療用プローブ(例えば、ENTツール28)の性能を向上させる際のこれらの実施形態の適用を実証するため、例として示される。しかしながら、本発明の実施形態は、この特定の種類の例示的なENTモジュールの構成に限定されるものではなく、本明細書に記載された原理は、その他の種類の医療用プローブにも同様に適用されてもよい。
【0062】
図2Bは、本発明の一実施形態による、偏向位置にある遠位端部アセンブリ134を有するENTツール28の概略描写図である。
【0063】
ここで、制御ハンドル128の長手方向断面を示す挿入
図90を参照する。上記の
図2Aに記載されるように、医師24が制御ハンドル128を回すと、プルワイヤ130は、長手方向軸線50に沿ってENTツール28の近位端部に向かって引っ張られ、管66は偏向される。いくつかの実施形態では、制御ハンドル128は、前述の回転に続いて、リボンを定位置に保持し、これにより、管66の位置を維持するように更に構成されている。例えば、ネジ146とのネジ144の係合は、
図2Bに示すように、摺動要素が摺動するのを防止し得る。
【0064】
その他の実施形態では、制御ハンドル128は、前述のプルワイヤ若しくはリボンの望ましくない摺動を防止するための任意のその他の好適な機構、又はENTツール28の遠位端部アセンブリ134を偏向させるのに好適な任意のその他の機構を備えてもよい。
【0065】
ここで、完全な偏向位置にある遠位端部アセンブリ134を示す挿入
図100を参照する。いくつかの実施形態では、プルワイヤ130が長手方向軸線50に沿って近位方向に引かれる場合、管66は偏向しており、管66の突出部は、そのそれぞれの嵌入部内に挿入される。
【0066】
ここで、スロット77Aの突出部及び嵌入部を示す挿入
図150を参照する。いくつかの実施形態では、
図2Bに示される完全に偏向された位置では、スロット77Aの突出部88A、88B、88C、88D、及び88Eは、それぞれ嵌入部99A、99B、99C、99D、及び99Eに挿入される。そのような実施形態では、突出部88Aの表面55A及び嵌入部99Aの表面56Aは、互いに対向し、典型的には互いに物理的に接触している。同様に、突出部88Aの表面55B及び嵌入部99Aの表面56Bは、互いに対向し、典型的には互いに物理的に接触している。
【0067】
いくつかの実施形態では、管66が同時に(
図2Bの一般図に示すように)偏向及び回転されると、表面55A及び56Aは、互いに力を加え、したがって管66の回転に抵抗する。同様に、管66が偏向及び回転されると、表面55B及び56Bは互いに力を加える。管66の突出部及び嵌入部のサイズ及び形状は、前述の表面間で摺動することなく、それぞれの嵌入部への突出部の完全な挿入、及び物理的接触を可能にすることに留意されたい。
【0068】
いくつかの実施形態では、管66の外径及び内径のサイズは、それぞれ約4.2mm及び3.6mmであり得る。したがって、管66の壁厚(すなわち、外面と内面との間)は約0.2mmであり得、前述の突出部及び嵌入部のサイズ許容誤差は約0.01mmであり得る。
【0069】
他の実施形態では、内径及び外径、並びに壁厚は、患者22のそれぞれの器官において実行されるそれぞれの医療処置に適した任意の他のサイズを有し得る。
【0070】
本開示及び特許請求の範囲の文脈において、任意の数値又は数値の範囲に関する用語「約」又は「およそ」とは、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書に記載されたその意図された目的に沿って機能することを可能とする、好適な寸法の許容誤差を示すものである。例えば、「約」又は「およそ」は、列挙された値の±20%の値の範囲を指してもよく、例えば「約90%」は、72%~100%の値の範囲を指してもよい。
【0071】
そのような実施形態では、管66が同時に偏向及び回転されるとき、表面55A及び56A、並びに表面55B及び56Bは、互いに対して摺動しない場合がある。むしろ、表面55A及び56Aは、互いに押圧することができ、又は任意の他の力(例えば、押圧及び剪断及び/又は摩擦の組み合わせ)を互いに加え得る。管66が偏向され、同時に骨又は別の剛性組織に対して回転もされるとき、上記の表面間力は、管66の回転に対する抵抗を改善し、したがって、管66の破損に対する耐久性を改善する。本発明者らは、約40mmの長さ及び0.2mmの壁厚を有するより少ない対の突出部及び嵌入部を有する偏向可能なニチノール(商標)チューブと比較して、同じ材料、長さ及び壁厚を有する管66の破損抵抗は、上述の許容誤差を有するスロット77、突出部88及び嵌入部99を有することによって約4倍増加し得ることを見出した。より少ない対の突出部及び嵌入部の例示的な構成は、例えば、本特許出願の出願人に譲渡され、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2019年5月23日に出願された米国特許出願第16/421,430号に示されている。
【0072】
上記の
図2Aに記載されるように、スロット77A~77Dのそれぞれはスリットを有し、管66の円周の区分上に形成されている。スリットのサイズ(例えば、幅)は、医師24が管66を屈曲させている場合にスロット角度を決定する。
図2Bの例では、スロット77Aのスリットはスロット77Cのスリットよりも大きく、したがってスロット77Aの開口角度はスロット77Cの開口角度よりも大きい。上記の
図2Aに示される非屈曲状態では、医師24は管66を屈曲しておらず、したがって管66の区分は互いに同じ高さを維持することに留意されたい。
【0073】
いくつかの実施形態では、突出部及び嵌入部のスリットサイズ及び/又はサイズは、典型的には、それぞれの区分の偏向の最大量を決定する。管66に沿った所与の場所における最大偏向能力は、その位置における局所曲率半径(LROC)によって規定されてもよい。
【0074】
このような実施形態では、より大きいスロット、突出部、及び嵌入部は、より小さいLROCによって測定される偏向の量を増加させることができる。挿入
図100に示すように、スロット77AのLROCであるR
Aは、スロット77CのLROCであるR
Cよりも小さい。用語「局所」は、管66の外側表面をそれぞれのスロットの位置で屈曲させることによって形成される円弧を意味する。
【0075】
この構成は、残りのスロットのサイズを指し、管66のそれぞれのLROCは、スロット77Aと77Dとの間の上記範囲内である。例えば、最大の偏向では、スロット77CのLROCは、典型的にはスロット77DのLROCよりも小さく、スロット77AのLROCよりも大きい。上記の寸法は、例として提供され、その他の実施形態では、スロット、嵌入部、突出部、及びLROCは、任意のその他の好適な寸法を有してもよいことに留意されたい。
【0076】
上記のLROCは、各区分における管66の最大偏向又は屈曲時におけるLROCを示すことに留意されたい。いくつかの実施形態では、医師24は、より小さい曲げ角度及び回転角を制御ハンドル128に適用することによって、管66に最大より小さい屈曲を適用してもよい。このような実施形態では、所与の突出部(例えば、突出部88A)の一部のみがそれぞれの嵌入部(例えば、嵌入部99A)に挿入されてもよく、LROCは、挿入
図100に示される完全に偏向されたLROCと比較して、より大きくてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、医師24が患者22の頭部41のENTツール28を移動させた場合、管66の少なくとも1つの区分は完全に偏向されてもよく、別の区分は、部分的に偏向される又は偏向されなくてもよい。例えば、医師24は、(上記の
図1に示すように)副鼻腔48の小孔に遠位端部アセンブリ134を位置づけ、続いて、管66の第3の最遠位部分のみを偏向してもよい。
【0078】
この例示的な実施形態では、副鼻腔48の小孔は、スロット77C及び77Dの区分を、(上記の
図2Aに示すように)シャフト38と実質的に同一平面に固定することができ、医師24は、スロット77Bを含む区分を部分的に偏向させることができるが、スロット77Aを含む区分は、挿入
図100に示すR
A LROCを得るために完全に偏向させることができる。その他の例示的実施形態では、医師24は、例えば、上記の
図1に示す解剖学的画像35内の遠位端部アセンブリ134の追跡位置に基づいて、遠位端部アセンブリ134を頭部41内の所望の位置へと操作するように、管66の任意のその他の1つ以上の区分を部分的又は完全に偏向してもよい。
【0079】
本明細書に記載された実施形態は主に、患者の耳鼻咽喉(ENT)内で行われる低侵襲処置を使用した医療用プローブに対処するが、本明細書に記載された方法及びシステムは、その他の用途でも使用し得る。
【0080】
したがって、上述の実施形態は、例として引用したものであり、本発明は、上記に具体的に示し、かつ説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれた文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義される程度まで、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の不可欠な部分と見なすものとする。
【0081】
〔実施の態様〕
(1) 医療用プローブであって、
患者の身体の腔に挿入するためのシャフトと、
前記シャフトの遠位端部に結合され、中空管を備える遠位端部アセンブリであって、前記中空管は、前記中空管の長手方向軸線に対して偏向し、前記長手方向軸を中心に回転するように構成され、前記中空管は、(i)少なくとも第1の表面を有する嵌入部と、(ii)前記嵌入部に面し、第2の表面を有する突出部とを有する、遠位端部アセンブリと、を備え、
前記中空管が偏向されると、前記突出部の少なくとも一部は、前記第1の表面の第1の区分及び前記第2の表面の第2の区分が互いに対向するように、前記嵌入部の中に突出し、前記中空管が偏向及び回転されると、前記第1の表面の前記第1の区分及び前記第2の表面の前記第2の区分が互いに力を加え、したがって、前記中空管の回転に抵抗する、医療用プローブ。
(2) 前記遠位端部アセンブリは、(i)前記中空管の前記長手方向軸線に沿った第1の区分に配置され、第1の局所曲率半径(LROC)によって前記第1の区分の屈曲を制限する第1のサイズを有する、第1のスロットと、(ii)前記中空管の前記長手方向軸線に沿った第2の異なる区分に位置し、第2の異なるLROCによって前記第2の区分の屈曲を制限する第2の異なるサイズを有する、第2のスロットと、を備える、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(3) 少なくとも前記第1のスロットは、(i)それぞれの1つ以上の第1の表面を有する複数の前記嵌入部、及び(ii)それぞれの1つ以上の第2の表面を有する複数の前記突出部を備え、前記嵌入部及び前記突出部は、少なくとも前記第1のスロットに沿って配置されている、実施態様2に記載の医療用プローブ。
(4) 少なくとも前記第1のスロットは、第1の所与の表面を有する少なくとも所与の嵌入部と、前記所与の嵌入部に面し、かつ第2の所与の表面を有する所与の突出部とを備え、前記中空管が偏向されていないとき、前記第1の所与の表面及び前記第2の所与の表面は、互いに力を加えない、実施態様3に記載の医療用プローブ。
(5) 前記シャフトの近位端部に取り付けられ、前記第1の区分を前記第1のLROCまで、また前記第2の区分を前記第2のLROCまで屈曲させるように構成された制御ハンドルを備える、実施態様2に記載の医療用プローブ。
【0082】
(6) 前記遠位端部アセンブリは、ニッケルとチタンとの合金を含む、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(7) 前記嵌入部は、前記突出部の上に嵌合するように成形され、その結果、前記中空管が偏向及び回転されるとき、前記第1の区分及び前記第2の区分は、互いに対して摺動しない、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(8) 前記第1の表面の前記第1の区分及び前記第2の表面の前記第2の区分は、互いに押圧する、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(9) 前記突出部は、長方形、平行四辺形、台形、ドーム、及びピラミッドからなる形状のリストから選択される形状を有する、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(10) 前記腔が、耳鼻咽喉(ENT)副鼻腔を含む、実施態様1に記載の医療用プローブ。
【0083】
(11) 医療用プローブを製造するための方法であって、
患者の身体の腔に挿入するためのシャフトを提供することと、
前記シャフトの遠位端部に、中空管の長手方向軸線に対して偏向し、前記長手方向軸線を中心に回転する前記中空管を備える遠位端部アセンブリを結合することであって、前記中空管は、(i)少なくとも第1の表面を有する嵌入部と、(ii)前記嵌入部に面し、第2の表面を有する突出部とを有する、ことと、を含み、
前記中空管が偏向されると、前記突出部の少なくとも一部は、前記第1の表面の第1の区分及び前記第2の表面の第2の区分が互いに対向するように、前記嵌入部の中に突出し、前記中空管が偏向及び回転されると、前記第1の表面の前記第1の区分及び前記第2の表面の前記第2の区分が互いに力を加え、したがって、前記中空管の回転に抵抗する、医療用プローブを製造するための方法。
(12) 前記遠位端部アセンブリは、(i)前記中空管の前記長手方向軸線に沿った第1の区分に配置され、第1の局所曲率半径(LROC)によって前記第1の区分の屈曲を制限する第1のサイズを有する、第1のスロットと、(ii)前記中空管の前記長手方向軸線に沿った第2の異なる区分に位置し、第2の異なるLROCによって前記第2の区分の屈曲を制限する第2の異なるサイズを有する、第2のスロットと、を備える、実施態様11に記載の方法。
(13) 少なくとも前記第1のスロットは、(i)それぞれの1つ以上の第1の表面を有する複数の前記嵌入部、及び(ii)それぞれの1つ以上の第2の表面を有する複数の前記突出部を備え、前記嵌入部及び前記突出部は、少なくとも前記第1のスロットに沿って配置される、実施態様12に記載の方法。
(14) 少なくとも前記第1のスロットは、第1の所与の表面を有する少なくとも所与の嵌入部と、前記所与の嵌入部に面し、かつ第2の所与の表面を有する所与の突出部とを備え、前記中空管が偏向されていないとき、前記第1の所与の表面及び前記第2の所与の表面は、互いに力を加えない、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記第1の区分を前記第1のLROCまで、また前記第2の区分を前記第2のLROCまで屈曲させるための制御ハンドルを、前記シャフトの近位端部において取り付けることを含む、実施態様12に記載の方法。
【0084】
(16) レーザ切断技術を使用して、前記第1のスロット及び前記第2のスロットのうちの少なくとも一方を形成することを含む、実施態様12に記載の方法。
(17) 前記嵌入部は、前記突出部の上に嵌合するように成形され、その結果、前記中空管が偏向及び回転されるとき、前記第1の区分及び前記第2の区分は、互いに対して摺動しない、実施態様11に記載の方法。
(18) 前記第1の表面の前記第1の区分及び前記第2の表面の前記第2の区分は、互いに押圧する、実施態様11に記載の方法。
(19) 前記突出部は、長方形、平行四辺形、台形、ドーム、及びピラミッドからなる形状のリストから選択される形状を有する、実施態様11に記載の方法。
(20) 前記遠位端部アセンブリは、ニッケルとチタンとの合金を含む、実施態様11に記載の方法。
【国際調査報告】