(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-01
(54)【発明の名称】GLP-2又はその結合体を含む、代謝性骨疾患の予防又は治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/26 20060101AFI20230221BHJP
C07K 14/575 20060101ALI20230221BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20230221BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230221BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20230221BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20230221BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230221BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230221BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20230221BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230221BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
A61K38/26
C07K14/575 ZNA
C07K16/00
A61P19/02
A61P19/10
A61P1/02
A61P43/00 111
A61K47/68
A61K47/60
A61P3/00
A61P19/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539188
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(85)【翻訳文提出日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 KR2020019069
(87)【国際公開番号】W WO2021133087
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0174117
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515022445
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】チェ ジェ ヒュク
(72)【発明者】
【氏名】リ ジン ボン
(72)【発明者】
【氏名】リ サン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】リ サン ドン
(72)【発明者】
【氏名】キム ミン ヨン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA22
4C076AA36
4C076AA49
4C076AA53
4C076AA94
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB22
4C076BB25
4C076BB27
4C076BB29
4C076CC09
4C076CC21
4C076CC29
4C076CC41
4C076EE23
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF04
4C076FF09
4C076FF31
4C076FF39
4C076FF63
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA19
4C084BA23
4C084DB35
4C084MA05
4C084MA17
4C084MA23
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA57
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA10
4C084NA12
4C084NA14
4C084ZA671
4C084ZA672
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZA971
4C084ZA972
4C084ZC021
4C084ZC022
4C084ZC211
4C084ZC212
4H045AA10
4H045BA09
4H045BA40
4H045BA42
4H045BA56
4H045DA30
4H045EA25
4H045EA28
(57)【要約】
本発明は、GLP-2又はその持続型結合体の代謝性骨疾患に対する予防又は治療用途に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
代謝性骨疾患の予防又は治療のための薬学的組成物であって、
薬学的に許容される賦形剤と、
グルカゴン様ペプチド-2(Glucagon-like peptide-2, GLP-2)とを薬学的有効量で含む薬学的組成物。
【請求項2】
前記GLP-2は、天然型GLP-2又はGLP-2誘導体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記GLP-2誘導体は、配列番号1において1番、2番、30番及び34番のアミノ酸のうち少なくとも1つのアミノ酸に改変が行われたものである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記GLP-2誘導体は、下記一般式1で表されるアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の組成物。
[一般式1]
X
1X
2DGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTX
30ITDX
34(配列番号9)
ここで、
X
1はヒスチジン、イミダゾアセチルデスヒスチジン、デスアミノヒスチジン、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジン、N-ジメチルヒスチジン又はβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジンであり、
X
2はアラニン、グリシン又はAib(2-aminoisobutyric acid)であり、
X
30はリシン又はアルギニンであり、
X
34は不在であるか、リシン、アルギニン、グルタミン、ヒスチジン、6-アジドリシン又はシステインである。
【請求項5】
前記GLP-2誘導体は、
(1)X
1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X
2がグリシンであり、X
30がリシンであり、X
34がシステインであるか、
(2)X
1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X
2がグリシンであり、X
30がリシンであり、X
34がリシンであるか、
(3)X
1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X
2がグリシンであり、X
30がアルギニンであり、X
34がリシンであるか、
(4)X
1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X
2がグリシンであり、X
30がリシンであり、X
34が6-アジドリシンであるか、
(5)X
1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X
2がグリシンであり、X
30がアルギニンであり、X
34がシステインであるか、
(6)X
1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X
2がAibであり、X
30がリシンであり、X
34がシステインであるか、又は
(7)X
1がヒスチジンであり、X
2がAibであり、X
30がリシンであり、X
34がシステインである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記GLP-2誘導体は、下記一般式2で表されるアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の組成物。
[一般式2]
X
1X
2DGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTX
30ITDX
34(配列番号10)
ここで、
X
1はヒスチジン、イミダゾアセチルデスヒスチジン、デスアミノヒスチジン、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジン、N-ジメチルヒスチジン又はβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジンであり、
X
2はアラニン、グリシン又はAib(2-aminoisobutyric acid)であり、
X
30はリシン又はアルギニンであり、
X
34は少なくとも1つの任意のアミノ酸、又は改変が行われた少なくとも1つの任意のアミノ酸である。
【請求項7】
前記GLP-2誘導体は、配列番号2~8からなる群から選択されるアミノ酸配列である、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
前記代謝性骨疾患は、骨粗鬆症(Osteoporosis)、骨減少症(Osteopenia)、関節炎(Arthritis)、歯周疾患(Periodontal disease)、骨形成不全症(Osteopsathyrosis)又は骨軟化症(Osteomalacia)である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、骨の形成を促進するか、骨の分解を抑制するか、又は骨の形成を促進して骨の分解を抑制する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項10】
前記代謝性骨疾患は骨粗鬆症である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、投与時に次の特性の少なくとも1つを有する、請求項10に記載の組成物。
(i)オステオカルシン(Osteocalcin/Bone Gla Protein, OC/BGP)の血中濃度増加
(ii)オステオプロテゲリン(Osteoprotegerin, OPG)の血中濃度低下
(iii)1型コラーゲンC-テロペプチド(C-telopeptide of collagen type 1(CTX-1)の血中濃度低下
【請求項12】
前記GLP-2は、そのC末端が改変されていないか、アミド化されている、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項13】
前記GLP-2は、その生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質が結合された持続型結合体の形態である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項14】
前記結合体は、下記化学式(1)で表される、請求項13に記載の組成物。
X-La-F・・・(1)
ここで、
XはGLP-2(天然型GLP-2又はGLP-2誘導体)であり、
Lはエチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーであり、
aは0又は自然数であるが、aが2以上であればそれぞれのLは互いに独立しており、
Fは免疫グロブリンFc領域であり、
前記「-」は共有結合である。
【請求項15】
前記免疫グロブリンFc領域は、非グリコシル化されたIgG4 Fc領域である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記Fは、2本のポリペプチド鎖からなる二量体であり、Lの一末端が前記2本のポリペプチド鎖のいずれかのポリペプチド鎖にのみ連結されている、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記Lはポリエチレングリコールである、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
前記L中のエチレングリコール繰り返し単位部分の化学式量は、1~100kDaの範囲にある、請求項14に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GLP-2及びその持続型結合体の代謝性骨疾患に対する治療的用途に関する。
【背景技術】
【0002】
グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)は、摂取した栄養分に反応して小腸のL細胞において生成される33個のアミノ酸から構成されるペプチドホルモンである。GLP-2は、小腸、大腸で粘膜の成長を促進し、腸細胞及びcrypt細胞の成長促進及びアポトーシス(apoptosis)を抑制する。また、GLP-2は、小腸で栄養分の吸収を増加させ、腸透過性を低下させる。さらに、胃排出(Gastric emptying)及び胃酸分泌を抑制し、腸血流速度を上昇させ、腸平滑筋を弛緩させる。
【0003】
代謝性骨疾患(metabolic bone disease, MBD)は、様々な範疇の障害が引き起こす骨の奇形を意味する包括的な用語であり、カルシウム、リン、マグネシウム、ビタミンDなどの不均衡により発症し、特にカルシウム不足が代表的な原因として知られている。代謝性骨疾患の例としては、骨粗鬆症、骨軟化症、くる病、嚢胞性線維性骨炎、骨パジェット病などが挙げられる。
【0004】
一方、代謝性骨疾患の代表的な例である骨粗鬆症は、程度に差はあるものの、老年層、特に閉経期以降の女性においては避けられない症状であり、先進国においては人口が高齢化するにつれて骨粗鬆症及びその治療剤に対する関心が高まってきている。骨粗鬆症とは、正常の人に比べて著しく骨の量が減った病態を意味し、体重や機械的な圧力に耐える力が弱くなり、室内で軽く倒れたような軽微な衝撃でも骨が容易に骨折する一般的な代謝性疾患である。
【0005】
人体の骨は吸収されて生成される再現過程を繰り返すが、代謝性骨疾患はこのような骨形成及び骨吸収過程の均衡が崩れて生じるものとみなされる。骨の形成を促進し、骨の分解を抑制することは、骨粗鬆症をはじめとする代謝性骨疾患の治療における重要な治療機序として知られている。よって、骨形成を増加させたり、骨喪失を防止することにより、現在の骨量を維持するための薬物が開発されている。骨吸収を抑制する薬物としては、ビスホスフェート、カルシトニン、エストロゲンなどが用いられており、骨形成を増加させるためには副甲状腺ホルモンが用いられている(特許文献1)。
【0006】
現在まで、グルカゴン様ペプチド-2を用いた代謝性骨疾患治療剤の開発は不十分な状態であるので、治療剤の開発は依然として必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1964376号公報
【特許文献2】韓国公開特許第10-2019-0037181号公報
【特許文献3】国際公開第97/034631号
【特許文献4】国際公開第96/032478号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】H.Neurath, R.L.Hill, The Proteins, Academic Press, New York, 1979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、GLP-2(Glucagon-like peptide-2)を含む、代謝性骨疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、GLP-2又はそれを含む組成物を必要とする個体に、GLP-2又はそれを含む組成物を投与するステップを含む、代謝性骨疾患の予防又は治療方法を提供することを目的とする。
【0011】
さらに、本発明は、代謝性骨疾患の予防又は治療のための薬剤の製造における、GLP-2又はそれを含む組成物の用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明を実現する一態様は、グルカゴン様ペプチド-2(Glucagon-like peptide-2, GLP-2)を含む、代謝性骨疾患の予防、治療又は改善用組成物である。
【0013】
一具体例として、本発明は、GLP-2を含む、代謝性骨疾患の予防又は治療のための薬学的組成物に関する。
【0014】
他の具体例として、本発明は、GLP-2を含む、代謝性骨疾患の予防又は改善のための食品組成物に関する。
【0015】
本発明は、前述した具体例による組成物であって、薬学的に許容される賦形剤と、GLP-2とを薬学的有効量で含む、代謝性骨疾患の予防又は治療のための薬学的組成物に関する。
【0016】
前述した具体例のいずれかによる組成物であって、前記GLP-2は、天然型GLP-2、又は天然型GLP-2配列において少なくとも1つのアミノ酸に置換(substitution)、付加(addition)、除去(deletion)、修飾(modification)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される改変が行われたGLP-2誘導体であることを特徴とする。
【0017】
前述した具体例のいずれかによる組成物であって、前記GLP-2誘導体は、配列番号1において1番、2番、30番及び34番のアミノ酸のうち少なくとも1つのアミノ酸に改変が行われたことを特徴とする。
【0018】
前述した具体例のいずれかによる組成物であって、前記GLP-2誘導体は、一般式1で表されるアミノ酸配列を含むペプチドであることを特徴とする。
【0019】
[一般式1]
X1X2DGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTX30ITDX34(配列番号9)
【0020】
ここで、X1はヒスチジン、イミダゾアセチルデスヒスチジン、デスアミノヒスチジン、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジン、N-ジメチルヒスチジン又はβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジンであり、X2はアラニン、グリシン又はAib(2-aminoisobutyric acid)であり、X30はリシン又はアルギニンであり、X34は不在であるか、リシン、アルギニン、グルタミン、ヒスチジン、6-アジドリシン又はシステインである。
【0021】
前述した具体例のいずれかによる組成物であって、前記GLP-2誘導体は、(1)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がリシンであり、X34がシステインであるか、(2)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がリシンであり、X34がリシンであるか、(3)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がアルギニンであり、X34がリシンであるか、(4)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がリシンであり、X34が6-アジドリシンであるか、(5)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がアルギニンであり、X34がシステインであるか、(6)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がAibであり、X30がリシンであり、X34がシステインであるか、又は(7)X1がヒスチジンであり、X2がAibであり、X30がリシンであり、X34がシステインであることを特徴とする。
【0022】
前述した具体例のいずれかによる組成物であって、前記GLP-2誘導体は、一般式2で表されるアミノ酸配列を含む、組成物であることを特徴とする。
【0023】
[一般式2]
X1X2DGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTX30ITDX34(配列番号10)
【0024】
ここで、X1はヒスチジン、イミダゾアセチルデスヒスチジン、デスアミノヒスチジン、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジン、N-ジメチルヒスチジン又はβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジンであり、X2はアラニン、グリシン又はAib(2-aminoisobutyric acid)であり、X30はリシン又はアルギニンであり、X34は少なくとも1つの任意のアミノ酸、又は改変が行われた少なくとも1つの任意のアミノ酸である。
【0025】
前述した具体例のいずれかによる組成物であって、前記GLP-2誘導体は、配列番号2~8からなる群から選択されるアミノ酸配列であることを特徴とする。
【0026】
前述した具体例のいずれかによる組成物であって、前記代謝性骨疾患は、骨粗鬆症(Osteoporosis)、骨減少症(Osteopenia)、関節炎(Arthritis)、歯周疾患(Periodontal disease)、骨形成不全症(Osteopsathyrosis)又は骨軟化症(Osteomalacia)であることを特徴とする。
【0027】
前述した具体例のいずれかによる組成物であって、前記組成物は、骨の形成を促進するか、骨の分解を抑制するか、又は骨の形成を促進して骨の分解を抑制することを特徴とする。
【0028】
前述した具体例のいずれかによる組成物であって、前記代謝性骨疾患は骨粗鬆症であることを特徴とする。
【0029】
前述した具体例のいずれかによる組成物であって、前記組成物は、投与時に次の特性の少なくとも1つを有することを特徴とする。
(i)オステオカルシン(Osteocalcin/Bone Gla Protein, OC/BGP)の血中濃度増加
(ii)オステオプロテゲリン(Osteoprotegerin, OPG)の血中濃度低下
(iii)1型コラーゲンC-テロペプチド(C-telopeptide of collagen type 1, CTX-1)の血中濃度低下
【0030】
前述した具体例のいずれかによる組成物であって、前記GLP-2は、そのC末端が改変されていないか、アミド化されていることを特徴とする。
【0031】
前述した具体例のいずれかによる組成物であって、前記GLP-2は、その生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質が結合された持続型結合体の形態であることを特徴とする。
【0032】
前述した具体例のいずれかによる組成物であって、前記結合体は、化学式(1)で表されることを特徴とする。
【0033】
X-La-F・・・(1)
【0034】
ここで、XはGLP-2(天然型GLP-2又はGLP-2誘導体)であり、Lはエチレングリコールの繰り返し単位を含有するリンカーであり、aは0又は自然数であるが、aが2以上であればそれぞれのLは互いに独立しており、Fは免疫グロブリンFc領域であり、前記「-」は共有結合である。
【0035】
前述した具体例のいずれかによる組成物であって、前記Fは免疫グロブリンFc領域であることを特徴とする。
【0036】
前述した具体例のいずれかによる組成物であって、免疫グロブリンFc領域は非グリコシル化されたことを特徴とする。
【0037】
前述した具体例のいずれかによる組成物であって、前記免疫グロブリンFc領域はIgG4 Fc領域であることを特徴とする。
【0038】
前述した具体例のいずれかによる組成物であって、前記免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG4由来の非グリコシル化されたFc領域であることを特徴とする。
【0039】
前述した具体例のいずれかによる組成物であって、前記Fは、2本のポリペプチド鎖からなる二量体であり、Lの一末端が前記2本のポリペプチド鎖のいずれかのポリペプチド鎖にのみ連結されていることを特徴とする。
【0040】
前述した具体例のいずれかによる組成物であって、前記Lはポリエチレングリコールであることを特徴とする。
【0041】
前述した具体例のいずれかによる組成物であって、前記L中のエチレングリコールの繰り返し単位部分(moiety)の化学式量は、1~100kDaの範囲にあることを特徴とする。
【0042】
本発明の他の態様は、薬学的に有効量のGLP-2もしくはGLP-2持続型結合体又はそれを含む組成物を必要とする個体に、薬学的に有効量のGLP-2もしくはGLP-2持続型結合体又はそれを含む組成物を投与するステップを含む、代謝性骨疾患の予防又は治療方法である。
【0043】
本発明のさらに他の態様は、代謝性骨疾患の予防又は治療のためのGLP-2又はそれを含む組成物の用途である。
【0044】
本発明のさらに他の態様は、代謝性骨疾患の予防又は治療のための薬剤の製造における、GLP-2又はそれを含む組成物の用途である。
【発明の効果】
【0045】
本発明によるGLP-2を含む組成物は、骨粗鬆症をはじめとする骨関連疾患の治療に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】オステオカルシン(OC/BGP)、オステオプロテゲリン(OPG)及び1型コラーゲンC-テロペプチド(CTX-1)の血中濃度の変化により、GLP-2持続型結合体の代謝性骨疾患治療効果を確認した図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0048】
なお、本願で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本願で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本発明に含まれる。また、以下の具体的な記述に本発明が制限されるものではない。
【0049】
さらに、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、通常の実験のみを用いて本出願に記載された本発明の特定の態様の多くの等価物を認識し、確認することができるであろう。さらに、その等価物も本発明に含まれることが意図されている。
【0050】
本明細書全体を通して、天然に存在するアミノ酸に対する通常の1文字及び3文字コードが用いられるだけでなく、Aib(α-アミノイソブチル酸)、Sar(N-methylglycine)、α-メチルグルタミン酸(α-methyl-glutamic acid)などの他のアミノ酸に対して一般に許容される3文字コードが用いられる。また、本明細書において略語で言及したアミノ酸は、IUPAC-IUB命名法に従って記載したものである。
アラニン Ala,A
アルギニン Arg,R
アスパラギン Asn,N
アスパラギン酸 Asp,D
システイン Cys,C
グルタミン酸 Glu,E
グルタミン Gln,Q
グリシン Gly,G
ヒスチジン His,H
イソロイシン Ile,I
ロイシン Leu,L
リシン Lys,K
メチオニン Met,M
フェニルアラニン Phe,F
プロリン Pro,P
セリン Ser,S
トレオニン Thr,T
トリプトファン Trp,W
チロシン Tyr,Y
バリン Val,V
【0051】
本発明を実現する一態様は、グルカゴン様ペプチド-2(Glucagon-like peptide-2, GLP-2)を含む、骨疾患の予防又は治療のための薬学的組成物を提供する。具体的には、前記骨疾患は、代謝性骨疾患であり、より具体的には、骨減少性疾患であるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0052】
本発明の一具体例として、薬学的に許容される賦形剤と、グルカゴン様ペプチド-2とを薬学的有効量で含む、代謝性骨疾患の予防又は治療用薬学的組成物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
本発明における「グルカゴン様ペプチド-2」又は「GLP-2(Glucagon-like peptide-2)」とは、ヒトグルカゴン様ペプチド-2受容体(glucagon-like peptide-2receptor)のアゴニスト(agonist)であり、ポリペプチドの形態、又はポリペプチドに非ポリペプチド部分が連結された結合体(conjugate)の形態の物質を意味する。本発明におけるグルカゴン様ペプチド-2又はGLP-2には、天然型ヒトGLP-2だけでなく、その誘導体(derivative)も含まれ、それらの結合体も含まれる。前記GLP-2は、本発明の薬学的組成物に含まれる有効成分であり、薬学的組成物に薬理学的有効量で含まれるものであってもよい。
【0054】
天然型GLP-2のアミノ酸配列は以下の通りである。
GLP-2(1-33)
HADGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTKITD(配列番号1)
【0055】
本発明における「GLP-2受容体アゴニスト」とは、生体内の又は分離されたヒトグルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)受容体に結合し、天然型GLP-2と同一又は同等の生理活性を引き起こす物質を意味する。例えば、GLP-2アゴニストとしては、天然型GLP-2又はGLP-2誘導体が挙げられる。
【0056】
本発明における「GLP-2誘導体」には、天然型GLP-2と比較してアミノ酸配列に少なくとも1つの差異があるペプチド、天然型GLP-2配列の修飾(modification)により改変されたペプチド、並びに/もしくは天然型GLP-2と同様に代謝性骨疾患の予防、治療及び/又は改善機能を有する天然型GLP-2の模倣体が含まれる。具体的には、前記GLP-2誘導体は、天然型GLP-2配列において少なくとも1つのアミノ酸に置換(substitution)、付加(addition)、除去(deletion)、修飾(modification)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される改変が行われたものであるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
具体的な一実施形態において、本発明のGLP-2は、N末端アミノ基が置換、除去又は修飾されてもよいが、これらに限定されるものではない。本発明のGLP-2は、持続型結合体を作製する際にGLP-2の生体内活性に重要な部位であるN末端に結合が生じるのを防止するために、N末端のヒスチジンのαアミノ基を除去する方法、N末端のアミノ基をヒドロキシ(hydroxyl)基又はカルボキシ(carboxyl)基に置換して合成する方法、N末端のヒスチジンのα炭素及びα炭素に結合されたN末端のアミノ基を除去してイミダゾアセチル(imidazo-acetyl)官能基のみ残す方法、N末端のアミノ基を2つのメチル基で修飾する方法などにより作製してもよい。
【0058】
具体的には、GLP-2誘導体は、GLP-2のN末端の1番目のアミノ酸であるヒスチジン残基のα炭素及びα炭素に結合されたN末端のアミノ基が除去されたイミダゾアセチルデスヒスチジルGLP-2(imidazoacetyl-deshistidyl-GLP-2, CA-GLP-2)、GLP-2のN末端のアミノ基が除去されたデスアミノヒスチジルGLP-2(desaminohistidyl GLP-2, DA-GLP-2)、GLP-2のN末端のアミノ基がヒドロキシ基に置換されたβ-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジルGLP-2(β-hydroxyimidazopropionyldeshistidyl GLP-2, HY-GLP-2)、GLP-2のN末端のアミノ基が2つのメチル基で修飾されたN-ジメチルヒスチジルGLP-2(N-dimethylhistidyl GLP-2, DM-GLP-2)、又はGLP-2のN末端のアミノ基がカルボキシ基に置換されたβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジルGLP-2(β-carboxyimidazopropionyl-deshistidyl GLP-2, CX-GLP-2)であるが、これらに限定されるものではない。以下、GLP-2誘導体の作製に用いられる物質の構造の例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
【0060】
具体的な一実施形態において、前記GLP-2誘導体は、配列番号1において1番、2番、30番及び34番のアミノ酸のうち少なくとも1つのアミノ酸に改変が行われたものであるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
具体的には、前記改変は少なくとも1つのアミノ酸の置換、付加、除去、修飾及びそれらの組み合わせからなる群から選択される改変であり、ここで、付加されるアミノ酸は非天然型アミノ酸(例えば、D型アミノ酸)であってもよく、また、天然型アミノ酸以外に、非天然型アミノ酸の置換であってもよい。前記付加されるアミノ酸配列は、天然型GLP-2に由来するものであるが、これに限定されるものではない。
【0062】
具体的には、本発明のGLP-2の誘導体は、天然型GLP-2とアミノ酸配列において少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の相同性を示すものであり、かつ/又はGLP-2のアミノ酸の1つの残基の一部の基が化学的に置換(例えば、alpha-methylation、alpha-hydroxylation)、除去(例えば、deamination)もしくは修飾(例えば、N-methylation)された形態であるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
具体的な一実施形態において、GLP-2誘導体は、一般式1のアミノ酸配列を含むが、これらに限定されるものではない。
【0064】
[一般式1]
X1X2DGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTX30ITDX34(配列番号9)
【0065】
ここで、X1はヒスチジン、イミダゾアセチルデスヒスチジン、デスアミノヒスチジン、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジン、N-ジメチルヒスチジン又はβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジンであり、X2はアラニン、グリシン又はAib(2-aminoisobutyric acid)であり、X30はリシン又はアルギニンであり、X34は不在であるか、リシン、アルギニン、グルタミン、ヒスチジン、6-アジドリシン又はシステインである。
【0066】
具体的な他の実施形態において、GLP-2誘導体は、一般式2のアミノ酸配列を含むが、これらに限定されるものではない。
【0067】
[一般式2]
X1X2DGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTX30ITDX34(配列番号10)
【0068】
ここで、X1はヒスチジン、イミダゾアセチルデスヒスチジン、デスアミノヒスチジン、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジン、N-ジメチルヒスチジン又はβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジンであり、X2はアラニン、グリシン又はAib(2-aminoisobutyric acid)であり、X30はリシン又はアルギニンであり、X34は少なくとも1つの任意のアミノ酸、又は改変が行われた少なくとも1つの任意のアミノ酸である。
【0069】
具体的には、一般式1又は2のアミノ酸配列のうち配列番号1と同じ配列は、GLP-2誘導体から除外されるが、これに限定されるものではない。
【0070】
具体的には、本発明のGLP-2誘導体は、天然型GLP-2の2番目のアミノ酸であるアラニンのグリシンもしくはAib(2-aminoisobutyric acid)への置換、30番目のアミノ酸であるリシンのアルギニンへの置換、又はそれらの組み合わせを有するが、これらに限定されるものではない。また、前記GLP-2誘導体は、C末端(例えば、33番目のアミノ酸)にチオール基(例えば、システイン)、アミノ基(例えば、リシン、アルギニン、グルタミン又はヒスチジン)又はアジド基(例えば、6-アジドリシン)が導入されるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
GLP-2誘導体の持続型結合体を作製する際に、前述したように導入される基において結合が生じるので、それを用いて結合位置が選択的に調節されたGLP-2結合体を作製することができる。具体的には、GLP-2誘導体のヒドロキシ基、チオール基、アミノ基又はアジド基に非ペプチド性リンカーの一末端が結合され、非ペプチド性リンカーの他の末端に生体内半減期を延長させることのできる物質(例えば、免疫グロブリンFc領域)が結合されてもよい。前記チオール基、アミノ基又はアジド基は、GLP-2にアミノ酸を付加することにより導入することができるが、これに限定されるものではない。前記チオール基はGLP-2にシステイン(C)を付加することにより導入することができ、アミノ基はリシン(K)、アルギニン(R)、グルタミン(Q)又はヒスチジン(H)を付加することにより導入することができ、アジド基は6-アジドリシン(6-azidolysine, AZK)を付加することにより導入することができるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
具体的には、本発明によるGLP-2誘導体は、少なくとも1つの残基がシステイン、リシン、アルギニン、グルタミン、ヒスチジン又は6-アジドリシンであるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
具体的には、本発明のGLP-2誘導体は、天然型GLP-2の2番目のアミノ酸であるアラニンのグリシンへの置換、及びC末端へのチオール基(例えば、システイン)の導入を含み、より具体的には、N末端の1番目のアミノ酸であるヒスチジン残基のα炭素及びα炭素に結合されたN末端アミノ基が除去されたイミダゾアセチルデスヒスチジンを含み、例えば配列番号2のアミノ酸配列を有するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
具体的には、本発明のGLP-2誘導体は、天然型GLP-2の2番目のアミノ酸であるアラニンのグリシンへの置換、及びC末端へのアミノ基(例えば、リシン)の導入を含み、より具体的には、N末端の1番目のアミノ酸であるヒスチジン残基のα炭素及びα炭素に結合されたN末端のアミノ基が除去されたイミダゾアセチルデスヒスチジンを含み、例えば配列番号3のアミノ酸配列を有するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
具体的には、本発明のGLP-2誘導体は、天然型GLP-2の2番目のアミノ酸であるアラニンのグリシンへの置換、天然型GLP-2の30番目のアミノ酸であるリシンのアルギニンへの置換、及びC末端へのアミノ基(例えば、リシン)の導入を含み、より具体的には、N末端の1番目のアミノ酸であるヒスチジン残基のα炭素及びα炭素に結合されたN末端のアミノ基が除去されたイミダゾアセチルデスヒスチジンを含み、例えば配列番号4のアミノ酸配列を有するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
具体的には、本発明のGLP-2誘導体は、天然型GLP-2の2番目のアミノ酸であるアラニンのグリシンへの置換、及びC末端へのアジド基(例えば、6-アジドリシン)の導入を含み、より具体的には、N末端の1番目のアミノ酸であるヒスチジン残基のα炭素及びα炭素に結合されたN末端のアミノ基が除去されたイミダゾアセチルデスヒスチジンを含み、例えば配列番号5のアミノ酸配列を有するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
具体的には、本発明のGLP-2誘導体は、天然型GLP-2の2番目のアミノ酸であるアラニンのグリシンへの置換、天然型GLP-2の30番目のアミノ酸であるリシンのアルギニンへの置換、及びC末端へのチオール基(例えば、システイン)の導入を含み、より具体的には、N末端の1番目のアミノ酸であるヒスチジン残基のα炭素及びα炭素に結合されたN末端のアミノ基が除去されたイミダゾアセチルデスヒスチジンを含み、例えば配列番号6のアミノ酸配列を有するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
具体的には、本発明のGLP-2誘導体は、天然型GLP-2の2番目のアミノ酸であるアラニンの2-アミノイソブチル酸への置換、及びC末端へのチオール基(例えば、システイン)の導入を含み、例えば配列番号8のアミノ酸配列を有するものであり、より具体的には、N末端の1番目のアミノ酸であるヒスチジン残基のα炭素及びα炭素に結合されたN末端のアミノ基が除去されたイミダゾアセチルデスヒスチジンを含み、例えば配列番号7のアミノ酸配列を有するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
配列番号2~8のGLP-2誘導体を表1に示す。
【0080】
【0081】
表1において、caHはヒスチジンがイミダゾアセチルデスヒスチジンに置換されたものを示し、Aibは2-アミノイソブチル酸(2-aminoisobutyric acid)を示し、AZKは6-アジド-L-リシン(6-azido-L-lysyine)を示す。
【0082】
本発明によるGLP-2誘導体は、上記特定配列を含むペプチド、上記特定配列で(必須に)構成されるペプチドであるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
なお、本願に「特定配列番号で構成される(からなる)」ペプチド又はGLP-2誘導体と記載されていても、当該配列番号のアミノ酸配列からなるペプチド又はGLP-2誘導体と同一又は相当する活性を有するものであれば、当該配列番号のアミノ酸配列の前後の無意味な配列付加、自然発生する突然変異、又はその非表現突然変異(silent mutation)を除外するものではなく、このような配列付加又は突然変異を有するものも本願に含まれることは言うまでもない。
【0084】
具体的には、GLP-2誘導体は、一般式1又は2において、(1)X2がグリシンもしくはAibであるか、(2)X30がリシンもしくはアルギニンであるか、又は(3)X2がグリシンもしくはAibであり、X30がリシンもしくはアルギニンであるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
具体的には、一般式1又は2において、(1)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がリシンであり、X34がシステインであるか、(2)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がリシンであり、X34がリシンであるか、(3)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がアルギニンであり、X34がリシンであるか、(4)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がリシンであり、X34が6-アジドリシンであるか、(5)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がアルギニンであり、X34がシステインであるか、(6)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がAibであり、X30がリシンであり、X34がシステインであるか、又は(7)X1がヒスチジンであり、X2がAibであり、X30がリシンであり、X34がシステであるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
本発明における、天然型GLP-2のアゴニスト、フラグメント、変異体及び誘導体の作製のためのこのような改変には、L型もしくはD型アミノ酸及び/又は非天然型アミノ酸を用いた改変、並びに/もしくは天然型配列を修飾又は翻訳後修飾(例えば、メチル化、アシル化、ユビキチン化、分子内の共有結合など)することによる改変が全て含まれる。
【0087】
本発明における前記GLP-2又はGLP-2誘導体は、生体内のタンパク質切断酵素から保護して安定性を向上させるために、そのN末端及び/又はC末端などが化学的に修飾された形態、有機基により保護された形態、又は末端などにアミノ酸が付加されて改変された形態であってもよい。
【0088】
特に、化学的に合成したペプチドの場合、N及びC末端が電荷を帯びているので、その電荷を除去するために、N末端のアセチル化(acetylation)及び/又はC末端のアミド化(amidation)を行うが、特にこれらに限定されるものではない。
【0089】
具体的には、本発明におけるGLP-2又はGLP-2誘導体は、そのC末端が改変されていないか、アミド化されているものであるが、これらに限定されるものではない。
【0090】
本発明のGLP-2又はGLP-2誘導体は、Solid phase合成法により合成することもでき、組換え法により生産することもでき、商業的に依頼して作製することもできる。
【0091】
本発明において、前記GLP-2は、天然型GLP-2又はGLP-2誘導体に、天然型GLP-2又はGLP-2誘導体の生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質が結合された持続型結合体の形態であるが、これらに限定されるものではない。前記持続型結合体は、生体適合性物質(例えば、免疫グロブリンFc領域)が結合されていないGLP-2又はその誘導体より向上した効力の持続性を示し、本発明においては、GLP-2又はその誘導体に生体適合性物質が結合して半減期が増加したGLP-2又はその誘導体を含む結合体を「持続型結合体」という。本発明において、持続型結合体は、結合体と混用される。
【0092】
なお、このような結合体は、天然に存在しない(non-naturally occurring)ものであってもよい。
【0093】
また、GLP-2の持続型結合体において、GLP-2と生体適合性物質(例えば、免疫グロブリンFc領域)の連結は、物理もしくは化学結合であるか、又は非共有もしくは共有結合であり、具体的には共有結合であるが、これらに限定されるものではない。
【0094】
さらに、GLP-2の持続型結合体は、GLP-2と生体適合性物質(例えば、免疫グロブリンFc領域)の連結方法が特に限定されるものではないが、リンカーを介してGLP-2と生体適合性物質(例えば、免疫グロブリンFc領域)が互いに連結されたものである。
【0095】
さらに、GLP-2の持続型結合体に関する特許文献2は、参照として本願に含まれる。
【0096】
具体的な一実施形態において、本発明のGLP-2の持続型結合体は、化学式(1)の構造を有する。
【0097】
X-La-F・・・(1)
【0098】
ここで、XはGLP-2(天然型GLP-2又はGLP-2誘導体)であり、Lはエチレングリコールの繰り返し単位を含有するリンカーであり、aは0又は自然数であるが、aが2以上であればそれぞれのLは互いに独立しており、Fは免疫グロブリンFc領域であり、前記「-」は共有結合である。
【0099】
より具体的には、XとL、及びLとFは、共有結合により互いに連結されたものであってもよく、ここで、前記結合体は、化学式(1)の順序で、X、L及びFが共有結合によりそれぞれ連結された結合体であってもよい。
【0100】
また、前記Fは、Xに直接連結された(すなわち、化学式(1)においてaが0である)ものであってもよく、リンカーLを介して連結されたものであってもよい。
【0101】
本発明による結合体におけるFは、X、すなわち本発明によるGLP-2又はその誘導体の半減期を延長させることのできる物質であり、本発明の結合体の一部をなす一構成である。
【0102】
前記Fは、Xに共有化学結合又は非共有化学結合により互いに結合されたものであってもよく、Lを介して、Xに共有化学結合、非共有化学結合又はそれらの組み合わせにより互いに結合されたものであってもよい。
【0103】
前記F、すなわちXの半減期を延長させることのできる物質は、生体適合性物質であり、例えば高分子重合体、脂肪酸、コレステロール、アルブミン及びそのフラグメント、アルブミン結合物質、特定アミノ酸配列の繰り返し単位の重合体、抗体、抗体フラグメント、FcRn結合物質、生体内結合組織、ヌクレオチド、フィブロネクチン、トランスフェリン(Transferrin)、サッカライド(saccharide)、ヘパリン並びにエラスチンからなる群から選択されるものであるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0104】
前記エラスチンの場合、水溶性前駆体であるヒトトロポエラスチン(tropoelastin)であってもよく、それらの一部の配列又は一部の繰り返し単位の重合体であってもよく、例えばエラスチン様ポリペプチドであってもよいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0105】
前記高分子重合体の例として、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール-プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸、オリゴヌクレオチド及びそれらの組み合わせからなる群から選択される高分子重合体が挙げられ、前記ポリサッカライドとしては、デキストランが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0106】
本明細書において、ポリエチレングリコールは、エチレングリコールホモポリマー、PEGコポリマー又はモノメチル置換PEGポリマー(mPEG)の形態を包括するものであるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0107】
また、前記生体適合性物質には、ポリリシン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸などのポリアミノ酸が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0108】
さらに、脂肪酸は、生体内アルブミンとの結合力を有するものであるが、特にこれに限定されるものではない。
【0109】
一例として、前記FはFcRn結合物質であり、具体的には、前記FcRn結合物質は免疫グロブリンFc領域であり、より具体的にはIgG Fc領域、さらに具体的には非グリコシル化されたIgG4 Fc領域であるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0110】
本発明の具体的な一例として、前記F(例えば、免疫グロブリンFc領域)は、2本のポリペプチド鎖からなる二量体であり、Lの一末端が前記2本のポリペプチド鎖のいずれかのポリペプチド鎖にのみ連結されている構造を有するが、これに限定されるものではない。
【0111】
具体的な一実施形態において、本発明の持続型結合体は、GLP-2又はその誘導体と免疫グロブリンFc領域が連結されたものであるが、これらに限定されるものではない。
【0112】
本発明における「免疫グロブリンFc領域」とは、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域を除いたものであり、重鎖定常領域2(CH2)及び/又は重鎖定常領域3(CH3)部分を含む部位を意味する。前記免疫グロブリンFc領域は、本発明の結合体の一部をなす一構成である。具体的には、化学式(1)におけるFに相当する。
【0113】
本明細書において、Fc領域には、免疫グロブリンのパパイン消化により得られる天然配列だけでなく、その誘導体、例えば天然配列の少なくとも1つのアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより置換されて天然のものとは異なる配列も含まれる。
【0114】
前記F(例えば、免疫グロブリンFc領域)は、2本のポリペプチド鎖がジスルフィド結合で連結されている構造であり、前記2本の鎖のうち1本の鎖の窒素原子を介してのみ連結されている構造であるが、これに限定されるものではない。前記窒素原子を介した連結は、リシンのεアミノ原子やN末端のアミノ基に還元的アミノ化により連結されたものであってもよい。
【0115】
還元的アミノ化反応とは、反応物のアミン基又はアミノ基が他の反応物のアルデヒド(すなわち、還元的アミノ化が可能な官能基)と反応してアミンを生成し、次いで還元反応によりアミン結合を形成する反応を意味し、当該技術分野で周知の有機合成反応である。
【0116】
本発明のGLP-2持続型結合体の一具体例として、前記持続型結合体は、前記免疫グロブリンFc領域がそのN末端の窒素原子を介してリンカーに連結されたものであってもよい。
【0117】
このような免疫グロブリンFc領域は、重鎖定常領域にヒンジ(hinge)部分を含むが、これに限定されるものではない。
【0118】
本発明における免疫グロブリンFc領域は、N末端に特定のヒンジ配列を含んでもよい。
【0119】
本発明における「ヒンジ配列」とは、重鎖に位置してジスルフィド結合(inter disulfide bond)により免疫グロブリンFc領域の二量体を形成する部位を意味する。
【0120】
本発明における前記ヒンジ配列は、次のアミノ酸配列を有するヒンジ配列中の一部が欠失して1つのシステイン残基のみ有するように変異したものであるが、これに限定されるものではない。
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号11)
【0121】
前記ヒンジ配列は、配列番号11のヒンジ配列中の8番目又は11番目のシステイン残基が欠失して1つのシステイン残基のみ含むものであってもよい。本発明のヒンジ配列は、1つのシステイン残基のみ含む、3~12個のアミノ酸からなるものであるが、これに限定されるものではない。より具体的には、本発明のヒンジ配列は、次の配列を有するものであってもよい。
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号12)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Pro(配列番号13)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号14)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Pro(配列番号15)
Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号16)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号17)
Glu-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号18)
Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号19)
Glu-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号20)
Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号21)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号22)
Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号23)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号24)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号25)
Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro(配列番号26)
Glu-Ser-Lys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号27)
Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号28)
Glu-Pro-Ser-Cys(配列番号29)
Ser-Cys-Pro(配列番号30)
【0122】
より具体的には、前記ヒンジ配列は、配列番号21(Pro-Ser-Cys-Pro)又は配列番号30(Ser-Cys-Pro)のアミノ酸配列を含むものであるが、これらに限定されるものではない。
【0123】
本発明のGLP-2持続型結合体のより具体的な形態において、前記結合体中の前記免疫グロブリンFc領域のN末端はプロリンであり、その結合体は前記プロリンの窒素原子を介してFc領域がリンカーに連結されたものである。
【0124】
本発明のGLP-2の持続型結合体の一実施形態において、前記免疫グロブリンFc領域は、ヒンジ配列が存在することにより免疫グロブリンFc領域の2本の鎖がホモ二量体(homodimer)やヘテロ二量体(heterodimer)を形成する二量体の形態であってもよい。本発明の化学式(1)の結合体は、リンカーの一末端が二量体の免疫グロブリンFc領域の1本の鎖に連結された形態であるが、これに限定されるものではない。
【0125】
本発明における「N末端」とは、タンパク質又はポリペプチドのアミノ末端を意味し、アミノ末端の最末端、又は最末端から1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個以上のアミノ酸が含まれる。本発明の免疫グロブリンFc領域は、ヒンジ配列をN末端に含むが、これに限定されるものではない。
【0126】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然のものと実質的に同等又は向上した効果を有するものであれば、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域を除き、一部又は全部の重鎖定常領域1(CH1)及び/又は軽鎖定常領域1(CL1)を含む拡張されたFc領域であってもよい。さらに、CH2及び/又はCH3に相当する非常に長い一部のアミノ酸配列が欠失した領域であってもよい。
【0127】
例えば、本発明の免疫グロブリンFc領域は、1)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン、2)CH1ドメイン及びCH2ドメイン、3)CH1ドメイン及びCH3ドメイン、4)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、5)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメインの少なくとも1つのドメインと免疫グロブリンヒンジ領域(又はヒンジ領域の一部)との組み合わせ、又は6)重鎖定常領域の各ドメインと軽鎖定常領域の二量体であるが、これらに限定されるものではない。
【0128】
また、本発明のGLP-2持続型結合体の一実施形態として、前記免疫グロブリンFc領域Fは、2本のポリペプチド鎖からなる二量体(dimer)であり、ここで、前記Fc領域Fの二量体とXは、エチレングリコールの繰り返し単位を含有する1つの同じリンカーLを介して共有結合的に連結されている。本実施形態の具体的な例において、Xは、このようなFc領域Fの二量体の2本のポリペプチド鎖のいずれかのポリペプチド鎖にのみリンカーLを介して共有結合により連結されている。本実施形態のさらに具体的な例において、このようなFc領域Fの二量体の2本のポリペプチド鎖のうちXが連結された1本のポリペプチド鎖には、1分子のXのみLを介して共有結合的に連結されている。本実施形態の最も具体的な例において、前記Fはホモ二量体である。
【0129】
本発明の持続型結合体の他の実施形態においては、二量体の形態の1つのFc領域に2分子のXが対称に結合されてもよい。ここで、前記免疫グロブリンFcとXは、非ペプチド性リンカーにより互いに連結されてもよい。しかし、上記例に限定されるものではない。
【0130】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域には、天然アミノ酸配列だけでなく、その配列誘導体も含まれる。アミノ酸配列誘導体とは、天然アミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより異なる配列を有するものを意味する。
【0131】
例えば、IgG Fcの場合、結合に重要であることが知られている214~238、297~299、318~322又は327~331番目のアミノ酸残基が修飾に適した部位として用いられてもよい。
【0132】
また、ジスルフィド結合を形成する部位が除去された誘導体、天然FcからN末端のいくつかのアミノ酸が欠失した誘導体、天然FcのN末端にメチオニン残基が付加された誘導体など、様々な誘導体が用いられる。さらに、エフェクター機能をなくすために、補体結合部位、例えばC1q結合部位が除去されてもよく、ADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位が除去されてもよい。このような免疫グロブリンFc領域の配列誘導体を作製する技術は、特許文献3、4などに開示されている。
【0133】
分子の活性を全体的に変化させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸交換は、当該分野で公知である(非特許文献1)。最も一般的な交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫酸化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、グリコシル化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)、アミド化(amidation)などにより修飾(modification)されてもよい。
【0134】
前述したFc誘導体は、本発明のFc領域と同等の生物学的活性を示し、Fc領域の熱、pHなどに対する構造的安定性を向上させたものであってもよい。
【0135】
また、このようなFc領域は、ヒトや、ウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物の生体内から分離した天然のものから得てもよく、形質転換された動物細胞もしくは微生物から得られた組換えたもの又はその誘導体であってもよい。ここで、天然のものから得る方法は、全免疫グロブリンをヒト又は動物の生体から分離し、その後タンパク質分解酵素で処理することにより得る方法であってもよい。パパインで処理するとFab及びFcに切断され、ペプシンで処理するとpF’c及びF(ab)2に切断される。これらは、サイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)などを用いてFc又はpF’cを分離することができる。より具体的な実施形態において、ヒト由来のFc領域は、微生物から得られた組換え免疫グロブリンFc領域である。
【0136】
また、免疫グロブリンFc領域は、天然糖鎖、天然のものに比べて増加した糖鎖、天然のものに比べて減少した糖鎖、又は糖鎖が除去された形態であってもよい。このような免疫グロブリンFc糖鎖の増減又は除去には、化学的方法、酵素学的方法、微生物を用いた遺伝工学的手法などの通常の方法が用いられてもよい。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc領域は、補体(c1q)との結合力が著しく低下し、抗体依存性細胞傷害又は補体依存性細胞傷害が低減又は除去されるので、生体内で不要な免疫反応を誘発しない。このようなことから、糖鎖が除去されるか、非グリコシル化された免疫グロブリンFc領域は、薬物のキャリアとしての本来の目的に適する。
【0137】
本発明における「糖鎖の除去(Deglycosylation)」とは、酵素で糖を除去したFc領域を意味し、非グリコシル化(Aglycosylation)とは、原核生物、より具体的な実施形態においては大腸菌で産生されてグリコシル化されていないFc領域を意味する。
【0138】
一方、免疫グロブリンFc領域は、ヒト起源、又はウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物起源であってもよく、より具体的な実施形態においてはヒト起源である。
【0139】
また、免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来のFc領域であってもよく、それらの組み合わせ(combination)又はそれらのハイブリッド(hybrid)によるFc領域であってもよい。より具体的な実施形態においては、ヒト血液に最も豊富なIgG又はIgM由来のものであり、さらに具体的な実施形態においては、リガンド結合タンパク質の半減期を延長させることが知られているIgG由来のものである。一層具体的な実施形態において、前記免疫グロブリンFc領域はIgG4 Fc領域であり、最も具体的な実施形態において、前記免疫グロブリンFc領域はヒトIgG4由来の非グリコシル化されたFc領域であるが、これらに限定されるものではない。
【0140】
また、一具体例として、免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG4 Fcのフラグメントであり、各単量体の3番目のアミノ酸であるシステイン間のジスルフィド結合(inter-chain形態)により2つの単量体が連結されたホモ二量体であってもよく、ここで、ホモ二量体は、各単量体において35番目と95番目のシステイン間、及び141番目と199番目のシステイン間にジスルフィド結合、すなわち2つのジスルフィド結合(intra-chain形態)を有するものである/有するものであってもよい。
【0141】
各単量体のアミノ酸数は、221個のアミノ酸からなり、ホモ二量体を形成するアミノ酸は、全体で442個のアミノ酸からなるが、これらに限定されるものではない。具体的には、免疫グロブリンFcフラグメントは、配列番号31のアミノ酸配列(221個のアミノ酸からなる)を有する2つの単量体が各単量体の3番目のアミノ酸であるシステイン間のジスルフィド結合によりホモ二量体を形成し、前記ホモ二量体の単量体は、それぞれ独立して35番目と95番目のシステイン間の内部のジスルフィド結合、及び141番目と199番目のシステイン間の内部のジスルフィド結合を形成するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0142】
一方、本発明における「組み合わせ(combination)」とは、二量体又は多量体を形成する際に、同一起源の単鎖免疫グロブリンFc領域をコードするポリペプチドが異なる起源の単鎖ポリペプチドに結合することを意味する。すなわち、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD Fc及びIgE Fcフラグメントからなる群から選択される少なくとも2つのフラグメントから二量体又は多量体を作製することができる。
【0143】
本発明における「ハイブリッド(hybrid)」とは、単鎖免疫グロブリン定常領域内に、少なくとも2つの異なる起源の免疫グロブリンFcフラグメントに相当する配列が存在することを意味する。本発明においては、様々な形態のハイブリッドが可能である。すなわち、IgG Fc、IgM Fc、IgA Fc、IgE Fc及びIgD FcのCH1、CH2、CH3及びCH4からなる群から選択される1つ~4つのドメインのハイブリッドが可能であり、ヒンジを含んでもよい。
【0144】
一方、IgGもIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のサブクラスに分けられ、本発明においては、それらの組み合わせ又はそれらのハイブリダイゼーションも可能である。具体的には、IgG2及びIgG4サブクラスであり、より具体的には、補体依存性細胞傷害(CDC, Complement dependent cytotoxicity)などのエフェクター機能(effector function)のほとんどないIgG4のFc領域である。
【0145】
また、前述した結合体は、天然型GLP-2より、又はFが修飾されていないXより効力の持続性が向上したものであり、このような結合体には、前述した形態だけでなく、生分解性ナノ粒子に封入された形態などが全て含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0146】
化学式(1)において、前記Lは、非ペプチド性リンカー、例えばエチレングリコールの繰り返し単位を含有するリンカーであってもよい。
【0147】
本発明における「非ペプチド性リンカー」には、繰り返し単位が少なくとも2つ結合された生体適合性重合体が含まれる。前記繰り返し単位は、ペプチド結合を除く任意の共有結合により互いに連結される。前記非ペプチド性リンカーは、本発明の結合体の一部をなす一構成であり、化学式(1)のLに該当する。
【0148】
本発明に用いられる非ペプチド性リンカーは、生体内タンパク質分解酵素に抵抗性のある重合体であればいかなるものでもよい。本発明における前記非ペプチド性リンカーは、非ペプチド性重合体と混用される。
【0149】
前記非ペプチド性リンカーは、エチレングリコールの繰り返し単位を含有するリンカー、例えばポリエチレングリコールであるが、特にこれらに限定されるものではない。また、当該分野で公知のそれらの誘導体及び当該分野の技術水準で容易に作製できる誘導体も本発明に含まれる。
【0150】
前記非ペプチド性リンカーの繰り返し単位は、エチレングリコール繰り返し単位であってもよく、具体的には、前記非ペプチド性リンカーは、エチレングリコールの繰り返し単位を含むと共に、結合体の作製に用いられる官能基を末端に含むものであってもよい。本発明による持続型結合体は、前記官能基を介してXとFが連結された形態であるが、これに限定されるものではない。本発明における前記非ペプチド性リンカーは、2つ又は3つ以上の官能基を含み、各官能基は、同じものであってもよく、異なるものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0151】
具体的には、前記リンカーは、化学式(2)で表されるポリエチレングリコール(PEG)であるが、これに限定されるものではない。
【0152】
【0153】
ここで、n=10~2400、n=10~480、又はn=50~250であるが、これらに限定されるものではない。
【0154】
前記持続型結合体のPEG部分は、-(CH2CH2O)n-構造だけでなく、連結要素とその-(CH2CH2O)n-間に介在する酸素原子も含むが、これに限定されるものではない。
【0155】
また、具体的な一実施形態における前記結合体は、GLP-2又はGLP-2誘導体と免疫グロブリンFc領域(F)がエチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーを介して共有結合により連結された構造であるが、これらに限定されるものではない。
【0156】
前記ポリエチレングリコールは、エチレングリコールホモポリマー、PEGコポリマー又はモノメチル置換PEGポリマー(mPEG)の形態を包括するものであるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0157】
本発明に用いられる非ペプチド性リンカーは、生体内タンパク質分解酵素に抵抗性のある重合体であればいかなるものでもよい。非ペプチド性重合体の分子量は、0超、200kDaの範囲、具体的には約1~100kDaの範囲、より具体的には約1~50kDaの範囲、さらに具体的には約1~20kDaの範囲、一層具体的には約3.4kDa~10kDaの範囲、より一層具体的には約3.4kDaであるが、これらに限定されるものではない。
【0158】
本発明における「約」とは、±0.5、±0.4、±0.3、±0.2、±0.1などが全て含まれる範囲であり、約という用語の後に続く数値又はその範囲と同等であるものが全て含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0159】
また、免疫グロブリンFc領域に結合される本発明の非ペプチド性リンカーは、1種類の重合体だけでなく、異なる種類の重合体の組み合わせが用いられてもよい。
【0160】
具体的な一実施形態における前記非ペプチド性リンカーの両末端は、免疫グロブリンFc領域のチオール基、アミノ基、ヒドロキシ基、及びGLP-2のチオール基、アミノ基、アジド基、ヒドロキシ基に結合されるが、これらに限定されるものではない。
【0161】
具体的には、前記非ペプチド性リンカーは、両末端がそれぞれ免疫グロブリンFc及びGLP-2又はその誘導体に結合される反応基、より具体的には、免疫グロブリンFc領域のシステインのチオール基と、N末端、リシン、アルギニン、グルタミン及び/又はヒスチジンに位置するアミノ基と、C末端に位置するヒドロキシ基とからなる群から選択される少なくとも1つに結合され、GLP-2のシステインのチオール基と、リシン、アルギニン、グルタミン及び/又はヒスチジンのアミノ基と、アジドリシンのアジド基と、ヒドロキシ基とからなる群から選択される少なくとも1つに結合される反応基であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0162】
より具体的には、前記非ペプチド性重合体の反応基は、アルデヒド基、マレイミド基及びスクシンイミド誘導体からなる群から選択される少なくとも1つであるが、これらに限定されるものではない。
【0163】
上記において、アルデヒド基の例として、プロピオンアルデヒド基又はブチルアルデヒド基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0164】
上記において、スクシンイミド誘導体としては、スクシンイミジルカルボキシメチル、スクシンイミジルバレレート、スクシンイミジルメチルブタノエート、スクシンイミジルメチルプロピオネート、スクシンイミジルブタノエート、スクシンイミジルプロピオネート、N-ヒドロキシスクシンイミド、ヒドロキシスクシンイミジル又はスクシンイミジルカーボネートが用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0165】
前記非ペプチド性リンカーは、上記反応基を介して免疫グロブリンFc及びGLP-2誘導体に連結され、非ペプチド性重合体連結部に変換されてもよい。
【0166】
また、アルデヒド結合による還元性アルキル化で生成された最終産物は、アミド結合で連結されたものよりはるかに安定している。アルデヒド反応基は、低いpHではN末端に選択的に反応し、高いpH、例えばpH9.0の条件ではリシン残基と共有結合を形成することができる。
【0167】
本発明の非ペプチド性リンカーの末端反応基は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。前記非ペプチド性リンカーは、末端にアルデヒド反応基を有するものであってもよく、また前記非ペプチド性リンカーは、末端にそれぞれアルデヒド基及びマレイミド反応基を有するものであってもよく、末端にそれぞれアルデヒド基及びスクシンイミド反応基を有するものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0168】
一例として、一末端にはマレイミド基、他の末端にはアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基又はブチルアルデヒド基を有してもよい。他の例として、一末端にはスクシンイミジル基、他の末端にはプロピオンアルデヒド基又はブチルアルデヒド基を有してもよい。
【0169】
プロピオン側の末端にヒドロキシ反応基を有するポリエチレングリコールを非ペプチド性リンカーとして用いる場合、公知の化学反応により前記ヒドロキシ基を前述した様々な反応基として活性化するか、市販されている修飾された反応基を有するポリエチレングリコールを用いることにより、本発明の結合体を製造することができる。
【0170】
具体的な一実施形態において、前記非ペプチド性リンカーの反応基がGLP-2又はGLP-2誘導体のシステイン残基、より具体的にはシステインの-SH基に連結されるが、これらに限定されるものではない。
【0171】
マレイミド-PEG-アルデヒドを用いる場合、マレイミド基はGLP-2又はGLP-2誘導体の-SH基にチオエーテル(thioether)結合で連結することができ、アルデヒド基は免疫グロブリンFcの-NH2基に還元的アルキル化反応により連結することができるが、これらに限定されるものではなく、これらは一例にすぎない。
【0172】
このような還元的アルキル化により、PEGの一末端に位置する酸素原子に免疫グロブリンFc領域のN末端アミノ基が-CH2CH2CH2-の構造を有するリンカー官能基を介して互いに連結され、-PEG-O-CH2CH2CH2NH-免疫グロブリンFcのような構造を形成することができ、チオエーテル結合により、PEGの一末端がGLP-2又はGLP-2誘導体のシステインに位置する硫黄原子に連結された構造を形成することができる。前述したチオエーテル結合は次の化学式の構造を有するものであってもよい。
【0173】
【0174】
しかし、上記例に特に限定されるものではなく、これは一例にすぎない。
【0175】
また、前記結合体において、非ペプチド性リンカーの反応基が免疫グロブリンFc領域のN末端に位置する-NH2に連結されたものであってもよいが、これは一例にすぎない。
【0176】
さらに、前記結合体において、GLP-2又はGLP-2誘導体は、反応基を有する非ペプチド性リンカーにC末端を介して連結されてもよいが、これは一例にすぎない。
【0177】
本発明における「C末端」とは、ペプチドのカルボキシ末端を意味し、本発明の目的上、非ペプチド性重合体に結合する位置を意味する。例えば、これらに限定されるものではないが、C末端の最末端のアミノ酸残基だけでなく、C末端周辺のアミノ酸残基が全て含まれ、具体的には最末端から1~20番目のアミノ酸残基が含まれる。
【0178】
一方、本発明によるGLP-2又はGLP-2誘導体を含む持続型結合体には、ペプチド自体、その塩(例えば、前記ペプチドの薬学的に許容される塩)又はその溶媒和物の形態が全て含まれる。
【0179】
また、持続型結合体は、薬学的に許容されるものであれば、いかなる形態であってもよい。
【0180】
本発明のGLP-2もしくはGLP-2誘導体、それを含む持続型結合体又はそれを含む組成物は、代謝性骨疾患の予防又は治療用途を有してもよい。
【0181】
具体的には、本発明の組成物は、代謝性骨疾患の予防又は治療に用いられ、特に、造骨細胞と破骨細胞の不均衡により誘発される代謝性骨疾患の予防又は治療に用いられるが、これらに限定されるものではない。このような疾患の例としては、骨粗鬆症(Osteoporosis)、骨減少症(Osteopenia)、関節炎(Arthritis)、歯周疾患(Periodontal disease)、骨形成不全症(Osteopsathyrosis)、骨軟化症(Osteomalacia)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0182】
本発明によるGLP-2又はその誘導体と、それを含む持続型結合体は、骨形成の促進及び/又は破骨細胞による骨分解の抑制効果を有するので、代謝性骨疾患の効果的な治療剤として用いられる。
【0183】
具体的には、本発明の組成物は、投与時に次の特性の少なくとも1つを示すが、これらに限定されるものではない。
(i)オステオカルシン(Osteocalcin/Bone Gla Protein, OC/BGP)の血中濃度増加
(ii)オステオプロテゲリン(Osteoprotegerin, OPG)の血中濃度低下
(iii)1型コラーゲンC-テロペプチド(C-telopeptide of collagen type 1, CTX-1)の血中濃度低下
【0184】
前記OC/BGP数値は骨形成を示す数値であるので、その血中濃度増加は本発明の持続型結合体による骨形成促進効果を意味し、前記OPG及びCTX-1は破骨細胞分化の抑制及び破骨細胞の活動を示す指標となるので、その血中濃度低下は本発明の持続型結合体による骨分解抑制効果を意味する。よって、これらの特性に基づいて、本発明の組成物又は誘導体は、骨の形成を促進し、かつ/又は骨の分解を抑制することにより、代謝性骨疾患の予防又は治療効果を発揮する。
【0185】
本発明における「骨粗鬆症(osteoporosis)」とは、骨組織の石灰が減少して骨の緻密質が薄くなり、それにより骨髄腔が広くなる病態を意味し、症状が進むにつれて骨が弱くなるので、小さな衝撃でも骨折しやすくなる。骨量は、遺伝的要因、栄養摂取、ホルモンの変化、運動及び生活習慣の差など、様々な要因に影響され、骨粗鬆症の原因としては、加齢、運動不足、低体重、喫煙、低カルシウム食餌、閉経、卵巣切除などが知られている。一方、個人差はあるが、白人よりも黒人の方が骨吸収レベル(bone resorption level)が低いので骨量が多く、骨量は、総じて14~18才に最も多く、高齢になると1年に約1%ずつ減少する。特に、女性の場合、30才以降に骨の減少が進み続け、閉経期になるとホルモンの変化により骨の減少が急激に進む。すなわち、閉経期になるとエストロゲン濃度が急速に減少するが、ここで、IL-7(interleukin-7)の場合と同様に、Bリンパ球(B-lymphocyte)が多量生成されて骨髄(bone marrow)にB細胞前駆体(pre-B cell)が蓄積され、それによりIL-6の量が増加して破骨細胞の活性を増加させるので、結局のところ骨量が減少する。また、短腸症候群(Short bowel syndrome)患者においては、栄養分が十分に供給されないので、骨密度の減少による骨粗鬆症(Osteoporosis)、骨減少症(Osteopenia)、骨軟化症(Osteomalacia)などの合併症が伴う。
【0186】
前記骨粗鬆症のより具体的な種類として、原発性1型骨粗鬆症、原発性2型骨粗鬆症、続発性骨粗鬆症、骨軟化症様骨粗鬆症、閉経又は卵巣切除による骨粗鬆症、短腸症候群(Short bowel syndrome)による骨粗鬆症が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0187】
本発明における「骨減少症(osteopenia)」とは、骨が弱くなるか、骨のミネラル密度(BDM)が正常に比べて低下した病態を意味する。
【0188】
本発明における「関節炎」とは、関節内に炎症性変化が生じた疾患を意味し、骨関節炎、関節リウマチなどが挙げられる。
【0189】
本発明における「歯周疾患」とは、細菌により生じる歯牙支持組織の炎症病態を意味し、歯肉炎と歯周炎に分けられる。発症原因は、不良な口腔衛生状態により口腔細菌がプラークを形成することにある。プラークは、放置すると炎症が生じ、歯茎から出血したり、口臭が生じることもあり、このような症状を歯肉炎といい、歯肉炎が進むと歯周炎になる。歯周炎が進むと、歯磨きなどの弱い刺激でも歯茎から出血したり、腫れることがあり、急性炎症に変化して痛みを誘発することもある。このような炎症は、骨を作る機能を低下させ、骨を吸収する作用を高めるので、歯槽骨が次第に低くなって破壊され、最終的には歯牙を喪失する。よって、本発明による組成物は、歯周疾患、特に歯周疾患による歯槽骨喪失に有用である。
【0190】
本発明における「骨形成不全症」とは、不完全骨形成症ともいう疾患であり、骨の強度が弱く、特に理由もなく容易に骨折する疾患を意味する。
【0191】
本発明における「骨軟化症(osteomalacia)」においては、膝部位に一時的に浮腫と痛みが現れる。原因は、ビタミンD欠乏とカルシウム及びリン酸塩代謝障害であり、胃腸における栄養素の吸収不良、緩和剤の長期使用、太陽光線への曝露不足、妊娠などにより発生する。これは、骨において石灰化していない類骨組織が過剰形成され、骨が軟らかくなって運動障害を起こし、骨のミネラル密度(BMD)が正常に比べて低下する病態を意味する。
【0192】
本発明における「予防」とは、前記GLP-2もしくはその誘導体又はそれを含む組成物の投与により代謝性骨疾患の発症を抑制又は遅延させるあらゆる行為を意味し、「治療」とは、前記GLP-2もしくはGLP-2の持続型結合体又はそれを含む組成物の投与により代謝性骨疾患の症状を好転又は有利に変化させるあらゆる行為を意味する。本発明における「代謝性骨疾患の予防又は治療」には、代謝性骨疾患の予防及び完全な又は部分的な治療が含まれる。また、これには、代謝性骨疾患症状の減少、改善、その症状の苦痛軽減、代謝性骨疾患発生率減少、又は治療結果を向上させる患者の何らかの他の変化が含まれる。
【0193】
本発明のGLP-2もしくはその誘導体又はそれを含む持続型結合体は、骨の形成を促進し、かつ/又は、骨の分解を抑制し、骨量減少を抑制することにより、骨量と骨密度を維持することができるので、代謝性骨疾患の予防又は治療効果を発揮する。
【0194】
本発明における「投与」とは、任意の適切な方法で患者に所定の物質を導入することを意味し、前記組成物の投与経路は、特にこれらに限定されるものではないが、前記組成物を生体内の標的に送達できるあらゆる一般的な経路で投与することができ、例えば腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻腔内投与、肺内投与、直腸内投与などが挙げられる。
【0195】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤をさらに含んでもよい。このような薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤は、非自然発生のものであってもよい。
【0196】
本発明における「薬学的に許容される」とは、治療効果を発揮する程度の十分な量と副作用を起こさないことを意味し、疾患の種類、患者の年齢、体重、健康状態、性別、薬物に対する感受性、投与経路、投与方法、投与回数、治療期間、配合、同時に用いられる薬物などの医学分野における公知の要素により当業者が容易に決定することができる。
【0197】
本発明のGLP-2又はその持続型結合体を含む薬学的組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含んでもよい。前記担体は、特にこれらに限定されるものではないが、経口投与の場合は、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを用いることができ、注射剤の場合は、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などを混合して用いることができ、局所投与用の場合は、基剤、賦形剤、滑沢剤、保存剤などを用いることができる。
【0198】
本発明の組成物の剤形は、前述したような薬学的に許容される担体と混合して様々な形態に製造することができる。例えば、経口投与の場合は、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハー剤などの形態に製造することができ、注射剤の場合は、使い捨てアンプル又は複数回投薬形態に製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル剤、徐放性製剤などに剤形化することができる。
【0199】
なお、製剤化に適した担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、グルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、デンプン、アカシア、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油などが挙げられる。また、充填剤、抗凝集剤、滑沢剤、湿潤剤、香料、防腐剤などをさらに含んでもよい。
【0200】
さらに、本発明の薬学的組成物は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、滅菌水溶液剤、非水性溶剤、凍結乾燥剤及び坐剤からなる群から選択されるいずれかの剤形を有してもよい。
【0201】
また、前記組成物は、薬学的分野における通常の方法による患者の体内投与に適した単回投与型の製剤、具体的にはタンパク質医薬品の投与に有用な製剤形態に剤形化し、当該技術分野で通常用いる投与方法を用いて経口、又は皮膚、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、髄膜腔内、心室内、肺、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、消化管内、局所、舌下、膣内もしくは直腸経路が含まれる非経口投与経路で投与することができるが、これらに限定されるものではない。
【0202】
さらに、前記結合体は、生理食塩水や有機溶媒のように薬剤に許容される様々な担体(carrier)と混合して用いることができ、安定性や吸水性を向上させるために、グルコース、スクロース、デキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸(ascorbic acid)、グルタチオンなどの抗酸化剤(antioxidants)、キレート剤、低分子タンパク質、他の安定化剤(stabilizers)などを薬剤として用いることができる。
【0203】
本発明の薬学的組成物の投与量と回数は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別及び体重、疾患の重症度などの様々な関連因子と共に、活性成分である薬物の種類により決定される。
【0204】
本発明の組成物の総有効量は、単回投与(single dose)で患者に投与してもよく、複数回投与(multiple dose)で長期間投与する分割治療方法(fractionated treatment protocol)により投与してもよい。本発明の薬学的組成物は、疾患の程度に応じて有効成分の含有量を変えてもよい。具体的には、本発明のGLP-2又はその持続型結合体の総用量は、1日体重1kg当たり約0.0001mg~500mgであることが好ましい。
【0205】
しかし、前記GLP-2又はその持続型結合体の用量は、薬学的組成物の投与経路及び治療回数だけでなく、患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の重症度、食餌、排泄率などの様々な要因を考慮して患者に対する有効投与量が決定されるので、これらを考慮すると、当該分野における通常の知識を有する者であれば、前記本発明の組成物の特定の用途に応じた適切な有効投与量を決定することができるであろう。本発明による薬学的組成物は、本発明の効果を奏するものであれば、その剤形、投与経路及び投与方法が特に限定されるものではない。
【0206】
本発明における、GLP-2もしくはGLP-2誘導体又はそれを含む持続型結合体が薬学的組成物に薬理学的有効量で含まれるとは、GLP-2もしくはGLP-2誘導体又はそれを含む持続型結合体により目的とする薬理活性(例えば、代謝性骨疾患の予防、改善又は治療)が得られる程度に含まれることを意味し、また投与される個体に毒性や副作用がないか、僅かなレベルであって、薬学的に許容されるレベルで含まれることを意味するが、これらに限定されるものではない。このような薬学的有効量は、投与回数、患者、剤形などを総合的に考慮して決定される。
【0207】
また、本発明の薬学的組成物は、生体内持続性及び力価に優れるので、本発明の薬学的製剤の投与回数及び頻度を大幅に減少させることができる。
【0208】
具体的には、本発明の薬学的組成物は、1週間に1回、2週間に1回、4週間に1回、又は1カ月に1回投与するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0209】
本発明を実現する他の態様は、GLP-2又はその持続型結合体を含む、代謝性骨疾患の予防又は改善のための食品組成物を提供する。
【0210】
前記GLP-2又はその持続型結合体、代謝性骨疾患などについては前述した通りである。
【0211】
前記食品組成物は、機能性食品の形態で用いられる。本発明の組成物を食品補助添加剤として用いる場合は、GLP-2もしくはGLP-2誘導体又はそれを含む持続型結合体をそのまま添加してもよく、他の食品又は食品成分と共に用いてもよく、通常の方法で適宜用いられる。有効成分の混合量は、使用目的(予防、健康又は治療的処置)に応じて適宜決定される。
【0212】
本発明における「機能性食品」とは、健康補助を目的として特定成分を原料とするか、食品原料に入っている特定成分を抽出、濃縮、精製、混合などの方法で製造、加工した食品であって、前記成分により生体防御、生体リズムの調節、疾病の防止及び回復などの生体調節機能が生体において十分に発揮されるように設計、加工された食品を意味する。前記機能性食品用の組成物は、疾病の予防、回復などに関する機能を有する。
【0213】
本発明を実現するさらに他の態様は、前記GLP-2又はその持続型結合体を含む組成物を必要とする個体に、前記GLP-2又はその持続型結合体を含む組成物を投与するステップを含む、代謝性骨疾患の予防又は治療方法を提供する。
【0214】
前記GLP-2又はその持続型結合体、代謝性骨疾患などについては前述した通りである。
【0215】
本発明における前記個体とは、代謝性骨疾患の疑いのある個体であり、前記代謝性骨疾患の疑いのある個体とは、代謝性骨疾患が発症したか、発症するリスクのある、ヒトをはじめとしてマウス、家畜などが含まれる哺乳動物を意味するが、本発明の結合体又はそれを含む前記組成物で治療可能な個体であればいかなるものでもよい。具体例として、骨形成促進及び/又は骨分解抑制が好ましい個体であればいかなるものでもよい。
【0216】
本発明の方法は、前記GLP-2又はその持続型結合体を含む薬学的組成物を薬学的有効量で投与するステップを含んでもよい。好適な総1日使用量は正しい医学的判断の範囲内で担当医により決定され、1回又は数回に分けて投与することができる。しかし、本発明の目的上、特定の患者に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によっては他の製剤が用いられるか否か、具体的な組成物、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食餌、投与時間、投与経路、組成物の分泌率、治療期間、具体的な組成物と共に又は同時に投与される薬物をはじめとする様々な因子や、医薬分野で周知の類似の因子に応じて異なる量であることが好ましい。
【0217】
具体的には、本発明のGLP-2又はその持続型結合体は、総用量が1日体重1kg当たり約0.0001mg~500mgであることが好ましく、1週間に1回、2週間に1回、4週間に1回、又は1カ月に1回投与するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0218】
本発明を実現するさらに他の態様は、代謝性骨疾患の予防又は治療のための前記GLP-2もしくはその持続型結合体又はそれを含む組成物の用途を提供する。
【0219】
前記GLP-2もしくはその持続型結合体、代謝性骨疾患などについては前述した通りである。
【0220】
本発明を実現するさらに他の態様は、代謝性骨疾患の予防又は治療のための薬剤の製造における、前記GLP-2もしくはその持続型結合体又はそれを含む組成物の用途を提供する。
【0221】
前記GLP-2もしくはその持続型結合体、代謝性骨疾患などについては前述した通りである。
【0222】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示するものにすぎず、本発明がこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0223】
GLP-2誘導体持続型結合体の作製
表1の配列番号4のGLP-2誘導体CA GLP-2 RKを改質ポリエチレングリコールであるALD(2) PEG(両末端の水素がそれぞれプロピオンアルデヒド基(3-オキソプロピル基)に置換され、エチレングリコール繰り返し単位部分(moiety)の化学式量が3.4kDaである改質ポリエチレングリコール,日本NOF社)にペグ化させるために、GLP-2誘導体とALD(2) PEGのモル比を1:5~1:20とし、GLP-2誘導体の濃度を5~10mg/mlとして、2~8℃で4~16時間反応させた。ここで、反応は、20mMヘペス(HEPES, pH7.5)とエタノールにおいて行い、還元剤として20mMシアノ水素化ホウ素ナトリウム[sodium cyanoborohydride(NaCNBH3)]を添加して反応させた。反応液は、クエン酸ナトリウム(pH2.0)、エタノールを含む緩衝液と塩化カリウムの濃度勾配を用いたSource 15S(GE, 米国)カラムで精製し、モノペグ化されたGLP-2誘導体を得た。
【0224】
次に、前述したように精製したモノペグ化されたGLP-2誘導体と配列番号31の免疫グロブリンFcフラグメントのモル比を1:2~1:6とし、総タンパク質濃度を30~35mg/mLとして、2~8℃で12~20時間反応させた。ここで、反応液には、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)とイソプロパノールに還元剤としての20mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加した。
【0225】
反応終結後に、反応液は、ビス-トリス(bis-Tris, pH6.5)緩衝液と塩化ナトリウムの濃度勾配を用いてSource 15Q(GE, 米国)カラムに適用し、硫酸アンモニウムとクエン酸ナトリウム(pH5.0~5.2)の濃度勾配を用いてSource 15 ISO(GE, 米国)に適用して精製し、免疫グロブリンFcフラグメントにGLP-2誘導体がポリエチレングリコールリンカーにより共有結合で連結された結合体であるGLP-2誘導体の持続型結合体を得た。
【実施例2】
【0226】
GLP-2誘導体持続型結合体の投与による骨粗鬆症モデルマウスにおける血中オステオカルシン、オステオプロテゲリン及び1型コラーゲンC-テロペプチドの数値変化の確認
実施例1で作製したGLP-2誘導体持続型結合体の投与によるインビボ(in vivo)骨保護効果を測定するために、骨粗鬆症モデルである卵巣摘出マウス(ovariectomized mice, OVX mice, Dae Han Bio Link Co., Ltd.)を用いた。
【0227】
具体的には、オステオカルシン(OC/BGP)は、骨の基本ミネラル成分である水酸燐灰石に親和的に結合するカルボキシ化されたオステオカルシンであり、骨形成マーカーとして、血中に多く存在すると骨の合成が多く起こっていることを示す。オステオプロテゲリン(OPG)は、破骨細胞分化抑制マーカーであり、破骨細胞分化に重要な役割を果たすRANKL(Receptor activator of nuclear factor kappa-B ligand)と競合的に破骨細胞前駆受容体に結合し、破骨細胞の分化を阻害するので、血中に多く存在すると骨分解を抑制していることを示す。1型コラーゲンC-テロペプチド(CTX-1)は、骨再吸収中に破骨細胞により切断されて生じる特定ペプチド配列であるので、破骨細胞活動に比例する。
【0228】
よって、GLP-2誘導体持続型結合体の投与による前記血中オステオカルシン(OC/BGP)、オステオプロテゲリン(OPG)及び1型コラーゲンC-テロペプチド(CTX-1)の数値変化を観察することにより、骨形成及び骨分解に及ぼす本発明のGLP-2誘導体持続型結合体の効果を確認した。
【0229】
まず、7週齢の雌マウス(C57BL/6J mouse)の卵巣を除去し、1週間の回復期を経て、その後群分離して各群10匹ずつの正常対照群(卵巣を摘出せずに皮膚切開及び縫合のみ行ったもの,G1,Sham Vehicle)、卵巣摘出対照群(G2, OVX vehicle)、卵巣摘出後にテデュグルチド(56μg/kg/BID)を投与した群(G3, OVX Teduglutide)、卵巣摘出後にGLP-2誘導体持続型結合体(6237μg/kg/QW)を投与した群(G4, OVX GLP-2)に分けた(本明細書における、GLP-2誘導体持続型結合体の投与量として示した1週間当たり6237μg/kgという数値の6237μgとは、用いたGLP-2誘導体持続型結合体の総質量からポリエチレングリコールリンカー部位を除いた数値、すなわちポリペプチド部位のみの質量を合計した値を示した数値である)。各群にビヒクル(vehicle)、テデュグルチド又はGLP-2誘導体持続型結合体を10週間皮下投与し、その後各群に対して血中オステオカルシン(OC/BGP)数値、オステオプロテゲリン(OPG)数値及び1型コラーゲンC-テロペプチド(CTX-1)数値を測定した。
【0230】
試験の結果、卵巣摘出対照群(OVX vehicle)及びテデュグルチド(56μg/kg/BID)投与群に比べて、GLP-2誘導体持続型結合体(6237μg/kg/QW)を投与した群において有意に血中オステオカルシン(OC/BGP)数値の増加が確認され(
図1の(A))、GLP-2誘導体持続型結合体(6237μg/kg/QW)を投与した群における血中オステオプロテゲリン(OPG)数値は、卵巣摘出対照群(OVX vehicle)と比較して増加する傾向を示し、テデュグルチド(56μg/kg/BID)投与群より有意に増加することが確認された(
図1の(B))。また、GLP-2誘導体持続型結合体(6237μg/kg/QW)を投与した群における血中C末端テロペプチド(CTX-1)数値は、卵巣摘出対照群(OVX vehicle)と比較して減少する傾向を示し、テデュグルチド(56μg/kg/BID)投与群より有意に減少することが確認された(
図1の(C))。
【0231】
これらの結果は、本発明のGLP-2誘導体持続型結合体を投与すると、骨分解減少と骨形成増加の機序により、代謝性骨疾患の予防又は治療的効果が得られることを示唆するものである。
【0232】
以上の説明から、本発明の属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、上記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。
【配列表】
【国際調査報告】