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特表2023-5082011,4-シクロヘキサンジメタノールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-01
(54)【発明の名称】1,4-シクロヘキサンジメタノールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/149 20060101AFI20230221BHJP
   C07C 31/27 20060101ALI20230221BHJP
   B01J 23/62 20060101ALI20230221BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230221BHJP
【FI】
C07C29/149
C07C31/27
B01J23/62 Z
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539243
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(85)【翻訳文提出日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 KR2020019186
(87)【国際公開番号】W WO2021133137
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0176139
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0183549
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ナムジン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】スン・ウク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・クォン・イ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA08B
4G169BC17A
4G169BC22A
4G169BC22B
4G169BC64A
4G169BC66A
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169CB02
4G169CB70
4G169DA05
4H006AA02
4H006AB20
4H006AB46
4H006AB84
4H006AC41
4H006BA11
4H006BA23
4H006BA55
4H006BB31
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC35
4H006BE20
4H006FE11
4H006FG22
4H039CA60
4H039CB20
(57)【要約】
本発明は、1,4-シクロヘキサンジメタノール(1,4-cyclohexanedimethanol、CHDM)の製造方法に関し、より詳しくは、異性化反応(isomerization)段階を含まなくても、トランス異性体の比率が高い1,4-シクロヘキサンジメタノールを製造する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌機が備えられた反応器にシス異性体およびトランス異性体を含む1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(1,4-cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)、水素化触媒、および水を含む反応溶液を供給する段階;
前記反応溶液が投入された反応器に水素気体を供給する段階;および
前記反応器の攪拌機を攪拌して水素化反応を行うことによって1,4-シクロヘキサンジメタノール(1,4-cyclohexanedimethanol、CHDM)を製造する段階を含み、
前記1,4-シクロヘキサンジカルボン酸は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸および水の総量に対して5~30重量%で含まれる、
1,4-シクロヘキサンジメタノールの製造方法。
【請求項2】
前記1,4-シクロヘキサンジカルボン酸は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸および水の総量に対して7~23重量%で含まれる、
請求項1に記載の1,4-シクロヘキサンジメタノールの製造方法。
【請求項3】
前記水素化反応を行う段階は、230~300℃の温度で行われる、
請求項1に記載の1,4-シクロヘキサンジメタノールの製造方法。
【請求項4】
前記1,4-シクロヘキサンジカルボン酸は、トランス異性体を60重量%以上含む、
請求項1に記載の1,4-シクロヘキサンジメタノールの製造方法。
【請求項5】
前記水素気体は、50~220barの圧力で供給される、
請求項1に記載の1,4-シクロヘキサンジメタノールの製造方法。
【請求項6】
前記水素化触媒は、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、およびルテニウム(Ru)からなる群より選択される1種以上の金属と、スズ(Sn)、鉄(Fe)、レニウム(Re)、およびガリウム(Ga)からなる群より選択される1種以上の金属をそれぞれ含む、
請求項1に記載の1,4-シクロヘキサンジメタノールの製造方法。
【請求項7】
前記水素化触媒は、ルテニウム(Ru)およびスズ(Sn)を含む、
請求項6に記載の1,4-シクロヘキサンジメタノールの製造方法。
【請求項8】
前記攪拌は、水素気体気泡の単位体積当たりの表面積が15m/m以上になるように行われる、
請求項1に記載の1,4-シクロヘキサンジメタノールの製造方法。
【請求項9】
前記1,4-シクロヘキサンジメタノールは、トランス異性体を63重量%以上含む、
請求項1に記載の1,4-シクロヘキサンジメタノールの製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法で製造された1,4-シクロヘキサンジメタノールを含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互引用
本出願は、2019年12月27日付韓国特許出願第10-2019-0176139号および2020年12月24日付韓国特許出願第10-2020-0183549号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、1,4-シクロヘキサンジメタノール(1,4-cyclohexanedimethanol、CHDM)の製造方法に関する。より詳しくは、異性化反応(isomerization)段階を含まなくても、トランス異性体の比率が高い1,4-シクロヘキサンジメタノールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
1,4-シクロヘキサンジメタノール(1,4-cyclohexanedimethanol、CHDM)は、医薬品、合成樹脂、合成繊維または染料などの原料として広く使用されており、特に環境にやさしいポリエステルであるポリエチレンテレフタレートの原料として利用されている。
【0004】
1,4-シクロヘキサンジメタノールは、シス(cis)とトランス(trans)形態の立体異性体(stereoisomer)として存在するが、より高品質の製品のためにはシスよりトランス1,4-シクロヘキサンジメタノール(trans CHDM)の比率が高いことが要求される。
【0005】
一般的なCHDM製造方法では、トランス含有量が高まるように1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(1,4-cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)の異性化反応を行った後、CHDMに水素化反応する方法、CHDAを水素化反応してCHDMを製造した後、異性化反応してトランス含有量を高めたCHDMを製造する方法などを利用しており、異性化反応を伴うことが一般的である。しかし、異性化反応を追加で行う従来の方法は、工程が複雑であるため非効率的であり、追加の生産費用が必要であって商業的に好ましくないという短所がある。
【0006】
そこで、異性化反応を行わないながらも、高いトランスCHDMの比率を得ることができるCHDM製造方法の研究が行われている。
【0007】
一例として、国際公開特許第2019-046412号では、CHDAの反応時に使用される水素化触媒のスズとルテニウムの比率を調節して、生成されるトランスCHDMの含有量を高めようとしたが、触媒を含む固定層反応器は、反応物であるCHDAの転換で簡単に結晶化が行われ、この時、結晶により触媒の性能が低下して、所望する収率およびトランスCHDMの比率が達成されないという問題がある。
【0008】
また、韓国登録特許第10-1639487号では、単純化された反応器を発明して副産物を最小化しようとしたが、生成物の純度が向上したのとは別に、生成物中のトランスCHDMの比率が満足できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許公開番号第2019-046412号
【特許文献2】韓国特許登録番号第10-1639487号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記のような問題点を解決するためのものであり、反応物である1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(1,4-cyclohexane dicarboxyli cacid、CHDA)の濃度を調節することによって、異性化反応段階を含まなくても、トランス異性体の比率が高い1,4-シクロヘキサンジメタノールを製造する方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記のような課題を解決するために、本発明の一実施形態は、
攪拌機が備えられた反応器にシス異性体およびトランス異性体を含む1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(1,4-cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)、水素化触媒、および水を含む反応溶液を供給する段階;
前記反応溶液が投入された反応器に水素気体を供給する段階;および
前記反応器の攪拌機を攪拌して水素化反応を行うことによって1,4-シクロヘキサンジメタノール(1,4-cyclohexanedimethanol、CHDM)を製造する段階を含み、
前記1,4-シクロヘキサンジカルボン酸は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸および水の総量に対して5~30重量%で含まれる、
1,4-シクロヘキサンジメタノールの製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明の他の一実施形態は、前記製造方法で製造された1,4-シクロヘキサンジメタノールを含む組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の1,4-シクロヘキサンジメタノールの製造方法によれば、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を出発物質として異性化反応段階を経ることなく水素化反応を行っても、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の濃度調節を通じてトランス異性体の比率が高い1,4-シクロヘキサンジメタノールを製造することができる。
【0014】
前記製造方法によれば、追加の異性化段階を行わないため、工程が単純化されて経済的であり、製造されたCHDMのトランス異性体含有量が高く、高分子原料として使用時、物性向上を期待することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用される用語は、単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0016】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な形態を有することができるところ、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0017】
以下、発明の具体的な実施形態により1,4-シクロヘキサンジメタノールの製造方法についてより詳しく説明する。
【0018】
本発明の一実施形態では、攪拌機が備えられた反応器にシス異性体およびトランス異性体を含む1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(1,4-cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)、水素化触媒、および水を含む反応溶液を供給する段階;前記反応溶液が投入された反応器に水素気体を供給する段階;および前記反応器の攪拌機を攪拌して水素化反応を行うことによって1,4-シクロヘキサンジメタノール(1,4-cyclohexanedimethanol、CHDM)を製造する段階を含み、前記1,4-シクロヘキサンジカルボン酸が、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸および水の総量に対して5~30重量%で含まれる、1,4-シクロヘキサンジメタノールの製造方法を提供する。
【0019】
水素化触媒の存在下で1,4-シクロヘキサンジカルボン酸に対して水素化反応を行って1,4-シクロヘキサンジメタノールを製造する場合、前記反応生成物で得られる1,4-シクロヘキサンジメタノールは、シス異性体とトランス異性体、つまり、シスCHDM(cis CHDM)とトランスCHDM(trans CHDM)が混合された形態で得られる。
【0020】
従来はトランス含有量が高い1,4-シクロヘキサンジメタノールの製造のために、シス異性体をトランス異性体に変換する異性化反応段階を必ず伴っていた。一例として、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を異性化反応原料として使用して、トランス含有量を高めた1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を得た後、これを再び水素化反応原料として使用してトランス含有量が高い1,4-シクロヘキサンジメタノールを製造したり、原料物質である1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を先に水素化反応させた後に得た1,4-シクロヘキサンジメタノールを異性化反応させてトランス含有量が向上した1,4-シクロヘキサンジメタノールを製造していた。しかし、従来の方法で1,4-シクロヘキサンジメタノールを製造する場合、追加の異性化工程によって工程が複雑であるため非効率的であり、追加の生産費用が必要であり、商業的に好ましくない側面があった。
【0021】
しかし、本発明の一実施形態による1,4-シクロヘキサンジメタノールの製造方法は、反応原料である1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の濃度を調節することで、シス異性体をトランス異性体に変換する異性化反応段階を含まないながらも、高い含有量のトランス異性体を含む1,4-シクロヘキサンジメタノールを製造することができるようにした。
【0022】
シス/トランス異性体を有する化合物の水素化反応の進行時、一般的に反応前後に反応物と生成物のシスおよびトランス比率は大きな変化なしで維持されることが予測される。反応物の含有量および反応温度を増加させても、反応速度の向上を予想できるのとは別に、水素化反応による生成物の異性体の比率変化は期待されないことが一般的である。
【0023】
しかし、本発明の一実施例によれば、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の濃度が一定範囲である時、追加の異性化反応段階を含まないながらも、生成物である1,4-シクロヘキサンジメタノールのトランス異性体の含有量が反応原料(反応物)に比べて増加するという予期せぬ効果を確認することができた。これは1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の濃度により異性化速度が変わり、一定の濃度で異性化速度が速くなるによって熱力学的にトランス/シス異性体比率が平衡に到達する時間が短くなるためであるとみられる。
【0024】
より具体的には、本発明の一実施形態による1,4-シクロヘキサンジメタノールの製造方法において、攪拌機が備えられた反応器にシス異性体およびトランス異性体を含む1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(1,4-cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)、水素化触媒、および水を含む反応溶液を供給する。
【0025】
前記1,4-シクロヘキサンジカルボン酸は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸および水の総量に対して5~30重量%で含まれる。より具体的には、5重量%以上、または7重量%以上、または10重量%以上であり、30重量%以下、または25重量%以下、または23重量%以下であり得る。
【0026】
前記1,4-シクロヘキサンジカルボン酸が1,4-シクロヘキサンジカルボン酸および水の総量に対して5重量%未満である場合、反応物と触媒の接触が減少して反応速度が遅くなったり、生成されるCHDM中のトランス異性体の比率が減少する問題があり、30重量%を超える場合、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の溶解度が低くなって生産性が低下し、それによって反応物の結晶および触媒量が増加してスラリーをフィーディング(Feeding)する工程に困難があり得る。
【0027】
この時、反応原料である1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のシス異性体およびトランス異性体の比率に制限はないが、前記1,4-シクロヘキサンジカルボン酸は、トランス異性体の比率が60重量%以上、または62重量%以上、または65重量%以上、または67重量%以上、または70重量%以上であり得、トランス異性体の比率の上限はないが、一例として80重量%以下、または78重量%以下、または75重量%以下であり得る。
【0028】
本発明の一実施例によれば、前記水素化触媒は、活性成分としてパラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、およびルテニウム(Ru)からなる群より選択される1種以上の金属と、スズ(Sn)、鉄(Fe)、レニウム(Re)、およびガリウム(Ga)からなる群より選択される1種以上の金属をそれぞれ含むことができる。
【0029】
好ましくは、前記水素化触媒の活性成分としてルテニウム(Ru)およびスズ(Sn)を含むことができる。より好ましくは、前記水素化触媒の活性成分は、ルテニウム(Ru)およびスズ(Sn)のみからなり、他の活性成分を含まなくてもよい。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、前記水素化触媒の活性成分は、反応物であるCHDAの含有量によりその使用量を適切に制御され得る。具体的には、CHDAに対する水素化触媒の含有量が高いほど反応速度は増加するため、発明の一実施形態によるCHDM製造方法において前記水素化触媒は水素化触媒に対CHDAの重量比が0.01:1以上になるようにする量で添加することができる。
【0031】
しかし、CHDAに対する水素化触媒の含有量が一定水準以上である場合、使用量に対する反応速度の増加効果が微々たるものであり、反応効率性が減少する点を考慮すると、前記水素化触媒は、より具体的には水素化触媒の活性成分対CHDAの重量比が0.01:1~3:1を満たすようにする量で添加することができる。
【0032】
水素化触媒対CHDAの重量比の制御による反応速度の改善効果を考慮すると、前記水素化触媒は、水素化触媒対CHDAの重量比が0.01:1~3:1、あるいは0.1:1~3:1、あるいは0.1:1~2:1になるようにする量で添加されることがより好ましい。
【0033】
しかし、前記重量比に本発明の範囲を制限するのではなく、細部の反応条件、および反応器の種類によって触媒の比率を適切に調節することができる。
【0034】
このような水素化触媒は、担体に担持させて使用することができ、この時、担体としては当業界で知られている担体を制限なしに使用することができる。具体的には、炭素、ジルコニア(ZrO)、チタニア(TiO)、アルミナ(Al)、またはシリカ(SiO)などの担体を使用することができる。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、前記水素化触媒の活性成分としてルテニウム(Ru)およびスズ(Sn)を含む場合、ルテニウム(Ru)およびスズ(Sn)は、前記担体全体100重量部に対して、それぞれ1~20重量部、または1~10重量部、または3~8重量部で含まれ得る。
【0036】
前記担体として炭素を使用する時、特に制限されるのではないが、活性炭、カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、OMC(ordered mesoporous carbon)および炭素ナノチューブからなる群より選択された少なくとも一つを使用することができる。
【0037】
好ましくは、全体気孔中のメソ気孔の比率が高いカーボンブラックであり得、具体的な例において、前記活性炭は、SXULTRA、CGSP、PK1-3、SX 1G、DRACO S51HF、CA-1、A-51、GAS 1240 PLUS、KBG、CASPおよびSX PLUSなどであり得、前記カーボンブラックは、BLACK PEARLS(登録商標)、ELFTEX(登録商標)、VULCAN(登録商標)、MOGUL(登録商標)、MONARCH(登録商標)、EMPEROR(登録商標)、およびREGAL(登録商標)などであり得るが、これに限定されるものではない。
【0038】
ここで、本発明によれば、前記炭素担体で、前記炭素は、全体気孔中の気孔の大きさが2~50nmであるメソ気孔の体積比率が50%以上であり得る。好ましくは、前記炭素担体で、前記炭素は、全体気孔中のメソ気孔の体積比率が70%以上であり、より好ましくは、前記炭素担体で前記炭素は、全体気孔中のメソ気孔の体積比率が75%以上であり得る。
【0039】
この時、前記メソ気孔の体積比率が50%未満である場合には、反応物および生成物の炭素担体内の微視的物質伝達速度の問題があり得、前記気孔の平均サイズが50nm超過である場合には、担体の物理的強度が弱い問題があり得るため、前記の範囲が適している。
【0040】
また、本発明によれば、前記炭素は、比表面積(BET)が100~1,500m/g範囲を含む規則的なメソ多孔性炭素(ordered mesoporous carbon、OMC)を含む。好ましくは、前記炭素は、比表面積(BET)が200~1,000m/g範囲を含む規則的なメソ多孔性炭素(ordered mesoporous carbon、OMC)を含むことができる。この時、前記炭素の比表面積が100m/g未満である場合には、活性金属(Ru、Sn)の高分散が難しい問題があり、前記炭素の比表面積が1,500m/gを超える場合には、メソ気孔の比率が低くなる問題があり得るため、前記の範囲が適している。
【0041】
また、場合によって、本発明による触媒の前記炭素担体は、中間サイズのメソ多孔性以外にマイクロポアー(micropore)を適正な割合で含み、好ましくは全体気孔中のマイクロポアー(micropore)の体積比率が0~25%で、マイクロポアーを含むことができる。この時、前記マイクロポアーの体積比率が25%を超えて含まれる場合には、反応物および生成物の炭素担体内の微視的物質伝達速度の問題があり得るため、前記の範囲が適している。
【0042】
前記水素化触媒が担体に担持された場合、水素化触媒の活性成分の量は担体100重量部に対して20重量部以下であることが好ましく、15重量部以下、または10重量部以下であり、1重量部以上、または3重量部以上であり得る。もし水素化触媒の量が担体100重量部に比べて過度に多ければ、触媒表面で反応が急激に行われ、この過程で副反応も増加して副生成物量が急増する問題が発生することがあり、過度に少なければ、触媒量が不足して水素化反応の収率が落ちることがあるため、前記範囲が好ましい。
【0043】
本発明の一実施形態による1,4-シクロヘキサンジメタノールの製造方法は、攪拌機、原料投入部、金属焼結フィルター、および生成物排出部を含む反応器を利用して行われ得る。
【0044】
一例として、前記攪拌機は、ガス誘導式(gas-induced type)攪拌機であって、ガス吸入口、ガス移動通路、インペラ、および噴射口を含むことができる。
【0045】
より具体的には、前記攪拌機は、反応器の上下部方向に備えられ、上部にはガス、つまり、水素気体を遠心力によって吸入するガス吸入口を含むことができる。前記ガス吸入口に吸入された水素気体は、ガス移動通路を通じて前記反応器の下部に移動する。前記反応器の下部に移動した水素気体は、前記攪拌機に備えられた複数の噴射口を通じて反応溶液で噴射、供給されて水素化反応を行うことができる。前記噴射口は、前記攪拌機の下部、側面、または下部と側面の両方に位置することができる。
【0046】
このように、前記ガス吸入口を通じて吸入された水素気体は、前記攪拌機に備えられた複数の噴射口を通じて水素気体を反応溶液内に噴射して混合しながら水素化反応を行うことによって水素化反応速度が上昇することができる。
【0047】
また、前記攪拌機は、インペラを含み、インペラは反応溶液を攪拌するため、気体捕集率(Gas holdup)および単位体積当たりの表面積が上昇することができる。そのために、前記反応器内での水素化反応速度が上昇することができる。
【0048】
前記インペラは、前記攪拌機の回転軸に複数段で配置され得る。
【0049】
または他の一実施形態によれば、前記攪拌機の下端に噴射口を備えたインペラのみが備えられ、追加のインペラは備えられないこともある。
【0050】
回転軸は、外部に備えられる駆動モーターで駆動され得る。
【0051】
前記反応器の下部には反応原料投入部に連結されて反応原料、つまり、テレフタル酸、溶媒、水素気体が投入され得る。
【0052】
一方、前記反応器は、生成物から触媒をろ過する金属焼結フィルター、および生成物排出部を含むことができ、前記金属焼結フィルターは、生成物排出部に連結されて設置され得る。また前記金属焼結フィルターは、前記生成物排出部に連結されて前記反応器外部に備えられることもできる。金属焼結フィルターは、生成物に残留する触媒成分を効果的に濾過することができる。
【0053】
次に、前記反応溶液が投入された反応器に水素気体を供給する。
【0054】
前記水素化反応は、液体状または気体状で行われ得る。本発明の一実施例によれば、前記1,4-シクロヘキサンジカルボン酸は、水などの溶媒に溶解された液状で、水素は気体状態で水素化反応が行われ得る。
【0055】
次に、前記反応器の攪拌機を攪拌して水素化反応を行うことによって1,4-シクロヘキサンジメタノールを製造する。
【0056】
本発明で前記水素化反応条件は特に制限されるのではないが、一例として反応温度は230℃以上であり、300℃以下、または280℃以下、または270℃以下であり得る。反応温度が230℃未満であれば、反応物と触媒の接触が減少したりまたは触媒の活性可能な温度範囲から逸脱して反応速度が低下したり、生成されたCHDM中のトランス異性体の含有量が減少し、300℃を超えれば、副生成物が急激に増加することがある。また触媒寿命にも影響を与え得るため、前記範囲が好ましい。
【0057】
また、反応圧力は、50bar以上、または80bar以上であり、220bar以下、または200bar以下、または180bar以下であり得る。もし反応圧力が50bar未満であれば、反応が良好に起こらず、過度な量の触媒が消耗し、滞留時間が過度に長くなって副生成物が増加するなどの多様な問題があり得、220barを超えれば、工程運転時に過度な電力などのエネルギーを必要とし、また反応器などの設備製作費用が大幅に増加する問題があり得るため、前記範囲が好ましい。
【0058】
前記反応圧力は、供給される水素気体により設定される圧力であるため、水素気体の供給量により調節され得る。
【0059】
水素化反応の間に攪拌工程が行われ、前記攪拌工程の間に速度制御を通じて水素化反応時に反応効率を上げることができる。具体的には前記攪拌工程は、水素気体気泡の単位体積当たりの表面積が15m/m以上になるように行われ得る。より具体的には50m/m以上、または100m/m以上、または150m/m以上、または200m/m、または300m/m以上になるように行うことができる。
【0060】
単位体積当たりの表面積が一定水準、例えば15m/m以上を満足さえすれば、それ以上の範囲では反応速度が水素気体が溶解される速度より遅くて反応速度に大きい影響を与えない。したがって、前記単位体積当たりの表面積が15m/m以上を満足すればよく、上限値は大きく影響がないため、大きく制限されないが、反応器のエネルギー効率を考慮すると、500m/m以下であることが好ましい。
【0061】
一方、前記攪拌工程は、先に説明した反応器の攪拌装置を利用して行われ得る。
【0062】
前記水素化反応条件を全て満たす条件で1~10時間行われることが、工程効率性の面でより好ましい。
【0063】
前記反応後に得られる反応生成物には、シス異性体およびトランス異性体を含むCHDM、溶媒である水、触媒などが含まれており、これを多様な反応の反応物として利用することができる。必要に応じて、前記反応生成物に含まれている副産物、溶媒、および触媒などは精製工程により除去した後に利用することができる。
【0064】
本発明の一実施形態によれば、前記段階反応生成物の全体重量中のシス異性体およびトランス異性体を含むCHDM全体の含有量は、5~30重量%である。より具体的に、5重量%以上、または7重量%以上、または10重量%以上であり、30重量%以下、または25重量%以下、または23重量%以下であり得る。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、CHDA、水素化触媒および水を含む混合溶液中のCHDAが1,4-シクロヘキサンジカルボン酸および水の総量に対して5~30重量%、7~30重量%、7~25重量%、7~23重量%、または10~23重量%含まれている混合溶液を水素化反応してCHDMを製造する場合、製造されたCHDM全体中のトランス異性体の比率が63重量%以上、または65重量%以上、または67重量%以上、または69重量%以上、または70重量%以上であり得、トランス異性体の比率の上限はないが、一例として99重量%以下、または95重量%以下、または90重量%以下、または85重量%以下であり得る。
【0066】
したがって、本発明の製造方法により最終的に得られる1,4-シクロヘキサンジメタノールは、トランス異性体の含有量が63重量%以上と優れており、追加の異性化工程がなくても、より高品質の製品を製造するための原料として有用に使用することができる。
【0067】
本発明の他の一実施形態は、前記1,4-シクロヘキサンジメタノールを製造する方法で製造された1,4-シクロヘキサンジメタノールを含む組成物を提供する。
【0068】
1,4-シクロヘキサンジメタノールに対して異性化工程なしに直ちに他の工程の原料または反応物として利用するためには、1,4-シクロヘキサンジメタノール中のトランス異性体の含有量が63重量%以上であることが要求される。
【0069】
本発明の1,4-シクロヘキサンジメタノールを含む組成物は、1,4-シクロヘキサンジメタノール中、トランス異性体の含有量が63重量%以上、65重量%以上、67重量%以上、69重量%以上、または70重量%以上と非常に高いトランス異性体含有量を有することができる。また、トランス異性体の比率の上限はないが、一例として99重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、または85重量%以下であり得る。
【0070】
前記一実施形態の組成物は、医薬品、合成樹脂、合成繊維または染料の原料として使用することができる。
【0071】
以下、本発明の理解のためにより詳しく説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。
【実施例
【0072】
<実施例>
実施例1
ガス誘導式(gas-induced type)攪拌機を含む反応器を準備した。
前記反応器に反応物(反応原料)であるCHDA(CHDA中のトランスCHDA比率:68重量%)550g、触媒(ルテニウム-スズ/カーボン触媒、カーボン担体100重量部に対してルテニウム5重量部、スズ5.8重量部を含む)152g、溶媒である蒸溜水2,100gを入れ、5barの窒素で2回パージ、5barの水素で2回パージ実施後、水素雰囲気(約14~15bar)で50rpmで攪拌を実施しながら温度を230℃まで上げた。
反応温度に到達したら、水素を反応圧力である100barまで注入後、攪拌速度を上げて水素気体気泡の単位体積当たりの表面積が300~450m/mを維持するようにして6時間反応を実施した。
【0073】
実施例2
実施例1で、CHDA中のトランスCHDA比率が21重量%であるCHDA 550gを使用したことを除き、実施例1と同様の方法で反応を実施した。
【0074】
実施例3
実施例1で、CHDA中のトランスCHDA比率が21重量%であるCHDA 158gを使用したことを除き、実施例1と同様の方法で反応を実施した。
【0075】
比較例1
実施例1で、CHDA中のトランスCHDA比率が21重量%であるCHDA34gを使用したことを除き、実施例1と同様の方法で反応を実施した。
【0076】
<実験例>
前記実施例および比較例に対して、CHDMの収率、転換率、選択度の変化を計算して下記表1に示した。
転換率(conversion)=反応したCHDAのモル数/供給されたCHDAのモル数
選択度(selectivity)=生成されたCHDMのモル数/反応したCHDAのモル数
収率(yield)=転換率×選択度
[表1]に結果を示す。
【0077】
また、生成物のCHDM中のトランスCHDM含有量は、ガスクロマトグラフィー(Gas Chromatography:GC、カラム:HP-5、検出器:FID)を使用して分析した。
【0078】
【表1】
【0079】
表1を参照すると、CHDAを一定の濃度で含む実施例1~3の場合、水素化反応生成物であるCHDM中のトランスCHDM含有量が68重量%を超えて非常に高いトランス異性体が生成されることを確認することができた。
【0080】
しかし、CHDAを1.6重量%で含む比較例1の場合、生成物CHDM中のトランスCHDMは56重量%のみ含まれ、十分なトランス異性体が生成されなかった。
【国際調査報告】