(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-01
(54)【発明の名称】マグノロールとスルフォラファン接合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 331/20 20060101AFI20230221BHJP
A61K 31/26 20060101ALI20230221BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
C07C331/20 CSP
A61K31/26
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539765
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(85)【翻訳文提出日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 CN2020139058
(87)【国際公開番号】W WO2021129747
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】201911370139.4
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522257643
【氏名又は名称】シェンチェン チェンシン バイオメディシン リサーチ センター カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョンチー ウー
(72)【発明者】
【氏名】チョン タオ
(72)【発明者】
【氏名】チエン チェン
(72)【発明者】
【氏名】ヨンチャン ツォン
(72)【発明者】
【氏名】チエレン リィウ
(72)【発明者】
【氏名】リーミン リー
【テーマコード(参考)】
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206AA04
4C206JA70
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB26
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB28
4H006AC60
4H006TN90
(57)【要約】
本発明はマグノロールとスルフォラファン接合物、その製造方法及び使用を開示し、前記マグノロールとスルフォラファン接合物は、C25H29NO2S2 (CT-1)、C25H29NO4S2(CT-2)、C25H29NO3S2(CT-3)を含む。本発明は、薬物の組み合わせの原理を利用して、始めてマグノロールとスルフォラファン接合物(CT-1、CT-2、CT-3)を合成している。生物学的評価の結果、前記接合物は、抗腫瘍効果がマグノロール及びスルフォラファンよりも明らかに優れ、広域スペクトルの抗腫瘍活性及び高い創薬性を有し、開発が期待できる抗腫瘍化合物であり、新型抗腫瘍薬を開発するために新しいアイデアや手段を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を有する、ことを特徴とするマグノロールとスルフォラファン接合物。
【化1】
、
【化2】
又は、
【化3】
【請求項2】
マグノロールをテトラヒドロフランに溶解し、水素化ナトリウム及び1,2-ジブロモエタンを加えて、60℃で3時間反応させ、水を加えて抽出し、有機相を乾燥させた後濃縮させ、分離して化合物2を得るステップと、
化合物2をN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、硫化ナトリウムを加えて、25℃で2時間反応させ、PHを1に調整し、静置した後、ろ過し、沈殿を収集して、沈殿をN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、炭酸カリウム及び4-ブロモ-1-ブチルアミンを加えて、25℃で12時間反応させ、反応液を濃縮させたものを、テトラヒドロフランに溶解し、0℃でトリエチルアミン及び二硫化炭素を加えて、次に、25℃で2時間反応させ、水を加えて抽出し、有機相を乾燥させた後濃縮させ、分離して化合物CT-1を得るステップとを含む、ことを特徴とするマグノロールとスルフォラファン接合物の製造方法。
【請求項3】
化合物CT-1をジクロロメタンに溶解し、m-クロロペルオキシ安息香酸を加えて、25℃で1時間反応させ、重炭酸ナトリウム飽和水溶液を加えて抽出し、有機相を乾燥させた後濃縮させ、分離して化合物CT-2及び化合物CT-3を得るステップをさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載のマグノロールとスルフォラファン接合物の抗癌薬の製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬物の技術分野に関し、特にマグノロールとスルフォラファン接合物、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
悪性腫瘍はすでに人間の第2位の死因となっており、現在人間の健康を脅かす重大な疾患の一つである。中国では、天然薬用資源は豊富で、伝統的な漢方薬から活性モノマーをスクリーニングし、そして薬物化学手段を利用して構造修飾と改造を行うことは、新型抗腫瘍薬の発見に対して重大な意義を持つ。
【0003】
マグノール(Magnolol)は、漢方薬である厚朴の主要な成分の一つであり、中度の抗腫瘍活性を有する(非特許文献1)。近年、マグノコールの抗腫瘍機序の研究はこの方面の研究の焦点になり、薬物化学者もマグノコールの構造修飾を行うことによって更にその抗腫瘍活性を増強した(非特許文献2)。
【0004】
スルフォラファン(Sulforaphane)は主にアブラナ科植物に存在し、これまでに発見された自然界で最も高い抗がん・抗がん能を有するイソチオシアネート化合物である(非特許文献3)。両者とも優れた薬用価値を有する。そのため、この2種類の化合物をリード化合物として構造修飾と改造を行い、新型抗腫瘍薬を開発することは、重要な理論的意義と現実的価値がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Lin, S.Y.; Liu, J.D.; Chang, H.C. Magnolol Suppresses Proliferation of Cultured Human Colon and Liver Cancer Cells by Inhibiting DNA Synthesis and Activating Apotosis [J]. J. Cell Biochem., 2002, 84, 532-544
【非特許文献2】Tang, H.; Zhang, Y.; Li, D. Discovery and Synthesis of Novel Magnolol Derivatives with Potent Anticancer Activity in Non-Small Cell Lung Cancer [J]. Eur. J. Med. Chem., 2018, 156, 190-20
【非特許文献3】Springer T.A. Traffic Signals for Lymphocyte Recirculation and Leukocyte Emigration: the Multistep Paradigm [J]. Cell, 1994, 76, 301-314
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の問題を解決するために、本発明の実施例はマグノロールとスルフォラファン接合物、その製造方法及び使用を提供する。前記技術的解決手段は以下のとおりである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様では、マグノロールとスルフォラファン接合物であって、以下のいずれかの構造を有する。
【化1】
【化2】
【化3】
【0008】
第2態様では、マグノロールとスルフォラファン接合物の製造方法であって、
マグノロールをテトラヒドロフランに溶解し、水素化ナトリウム及び1,2-ジブロモエタンを加えて、60℃で3時間反応させ、水を加えて抽出し、有機相を乾燥させた後濃縮させ、分離して化合物2を得るステップと、
化合物2をN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、硫化ナトリウムを加えて、25℃で2時間反応させ、PHを1に調整し、静置した後、ろ過し、沈殿を収集して、沈殿をN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、炭酸カリウム及び4-ブロモ-1-ブチルアミンを加えて、25℃で12時間反応させ、反応液を濃縮させたものを、テトラヒドロフランに溶解し、0℃でトリエチルアミン及び二硫化炭素を加えて、次に、25℃で2時間反応させ、水を加えて抽出し、有機相を乾燥させた後濃縮させ、分離して化合物CT-1を得るステップとを含む。
【0009】
さらに、前記方法は、
化合物CT-1をジクロロメタンに溶解し、m-クロロペルオキシ安息香酸を加えて、25℃で1時間反応させ、重炭酸ナトリウム飽和水溶液を加えて抽出し、有機相を乾燥させた後濃縮させ、分離して化合物CT-2及び化合物CT-3を得るステップをさらに含む。
【0010】
第3態様では、上記の第1態様に記載のマグノロールとスルフォラファン接合物の抗癌薬の製造における使用である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施例で提供される技術的解決手段の有益な効果は以下のとおりである。本発明は、薬物の組み合わせの原理を利用して、始めてマグノロールとスルフォラファン接合物(CT-1、CT-2、CT-3)を合成する。生物学的評価の結果、前記接合物は、抗腫瘍効果がマグノロール及びスルフォラファンよりも明らかに優れ、広域スペクトルの抗腫瘍活性及び高い創薬性を有し、開発が期待できる抗腫瘍化合物であり、新型抗腫瘍薬を開発するために新しいアイデアや手段を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、以下、実施例を利用して本発明の実施形態についてさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0013】
実施例1. マグノロールとスルフォラファン接合物の製造
【化4】
【化5】
【化6】
【0014】
(1)マグノロール(2.66g)10mmolをテトラヒドロフラン100mLに溶解し、系に60%水素化ナトリウム40mmol及び1,2-ジブロモエタン40mmolを加えて、60℃で3時間反応させ、次に、系に水30mLを加えて、酢酸エチル100mLで抽出し、抽出した有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた後濃縮させ、最後に、濃縮させた有機相をシリカゲルカラムにより分離し、淡黄色液体として化合物2(2.4g)6.5mmolを得て、収率は65%であった。
【0015】
化合物2:Rf = 0.8 (石油エーテル/EtOAc, 10:1); 1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.14 (dd, J = 6.5, 2.2 Hz, 2H), 7.11-7.02 (m, 2H), 6.94 (dd, J = 8.6, 4.3 Hz, 2H), 6.07 (s, 1H), 6.04-5.87 (m, 2H), 5.12-5.02 (m, 4H), 4.22 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.45 (t, J= 6.2 Hz, 2H), 3.39-3.30 (m,4H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 152.6, 151.6, 137.7, 137.1, 134.7, 132.5, 132.2, 131.1, 129.3, 129.1, 127.9, 125.8, 117.4, 115.9, 115.4, 114.2, 114.2, 69.6, 39.3, 39.2, 28.6; HRMS (ESI): m/z calcd for C20H2IBrNaO2[M+Na]+: 395.0623, found: 395.0706。
【0016】
(2)化合物2(3.72g)10mmolをN,N-ジメチルホルムアミド100mLに溶解し、硫化ナトリウム25molを加えて、25℃で2時間反応させ、次に、塩酸2mol/Lを加えてPHを1に調整し、静置してろ過し、沈殿を収集して、沈殿をN,N-ジメチルホルムアミド50mLに溶解し、炭酸カリウム25mol及び4-ブロモ-1-ブチルアミン25mmolを加えて、25℃で12時間反応させ、反応液を濃縮させ、反応液をテトラヒドロフラン30mLに溶解し、0℃でトリエチルアミン15mol及び二硫化炭素5molを加えて、25℃で2時間反応させ、水30mLを加えて、次に、酢酸エチル50mLで抽出し、抽出した有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた後濃縮させ、最後に、濃縮させた有機相をシリカゲルカラムにより分離し、淡黄色液体として化合物CT-1 (2.6g)6mmolを得て、収率は60%であった。
【0017】
化合物CT-1: Rf = 0.2 (石油エーテル/EtOAc, 5:1); 1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.24-7.03 (m, 4H), 6.98 (dd, J = 8.2, 4.7 Hz, 2H), 6.01 (dddd, J = 14.6, 10.2, 7.0, 3.3 Hz, 2H), 5.21-4.99 (m, 4H), 4.20 (t, J = 6.3 Hz, 2H), 3.49 (t, J = 6.3 Hz, 2H), 3.41 (t, J = 6.1 Hz, 4H), 2.83 (t, J = 6.3 Hz, 2H), 2.48 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 1.75-1.66 (m, 2H), 1.66-1.56 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 153.0, 151.9, 137.8, 137.3, 134.3, 132.6, 132.4, 131.2, 129.3, 129.2, 127.6, 126.2, 117.4, 115.9, 115.5, 113.4, 69.7, 44.6, 39.4, 39.3, 31.7, 30.9, 29.6, 28.7, 26.3; HRMS(ES1): m/z calcd for C25H29NNaO2S2[M+Na]+: 462.1537, found:462.1770。
【0018】
(3)化合物CT-1(4.39g)10mmolを25℃(室温)でジクロロメタン100mLに溶解し、m-クロロペルオキシ安息香酸11molを加えて、25℃で1時間反応させ、次に、反応液に重炭酸ナトリウム飽和水溶液30mLを加えて、ジクロロメタン50mLで抽出し、抽出した有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた後濃縮させ、最後に、濃縮させた有機相をシリカゲルカラムにより分離し、淡黄色液体として化合物CT-2(1.8g)3.9mmolを得て、収率は39%であり、淡黄色液体として化合物CT-3(2.7g)6molを得て、収率は60%であった。
【0019】
化合物 CT-2: Rf = 0.6 (石油エーテル/EtOAc, 1:1): 1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.22 (dd, J = 8.4, 2.3 Hz, 1H), 7.13 (dd, J= 8.0, 2.2 Hz, 2H), 7.01 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 6.93 (dd, J = 16.4, 8.3 Hz, 2H), 6.02-5.88 (m, 2H), 5.16-5.01 (m, 4H), 4.42 (t, J = 5.1 Hz, 2H), 3.45-3.34 (m, 6H), 3.30 (t, J = 5.2 Hz, 2H), 2.66 (t, J= 7.2 Hz, 2H), 1.72-1.65 (m, 2H), 1.60-1.52 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCI3) δ 152.9, 151.5, 137.5, 137.1, 134.6, 132.5, 132.4, 131.1, 129.7, 129.2, 126.1, 125.2, 116.1, 115.8, 112.5, 63.0, 53.5, 53.3, 44.5, 39.3, 39.2, 29.7, 28.4, 18.7; HRMS (ESI): m/z calcd for C25H29NNaO4S2 [M+Na]+: 494.1436, found : 494.1854。
【0020】
化合物 CT-3: Rf = 0.2 (石油エーテル/EtOAc, 1:1); 1H NMR (400 MHz) クロロホルム-d) δ 7.20 (dd, J = 8.4, 2.3 Hz, 1H), 7.16-7.07 (m, 2H), 7.06-6.96 (m, 2H), 6.91 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.04-5.92 (m, 2H), 5.17-5.04 (m, 4H), 4.55-4.32 (m, 2H), 3.49 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.44-3.31 (m, 4H), 3.13 (ddd, J = 13.0, 8.5, 4.2 Hz, 1H), 2.95 (ddd, J = 13.9, 5.5, 3.4 Hz, 1H), 2.71-2.57 (m, 1H), 2.49 (dt, J = 13.3, 7.5 Hz, 1H), 1.81-1.62 (m, 4H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 153.1, 151.8, 137.7, 137.2, 134.5, 132.3, 132.1, 131.1, 129.3, 129.2, 127.4, 125.8, 116.7, 116.0, 115.6, 113.4, 61.7, 51.6, 51.4, 44.5, 39.4, 39.3, 28.8, 20.2; HRMS (ESI): m/z calcd for C25H29NNaO3S2[M+Na]+: 478.1487, found: 478.2287。
【0021】
実施例2. マグノロールとスルフォラファン接合物によるヒト肺癌細胞株NCI-H460の増殖への影響
1. 実験材料
1.1 細胞株
ヒト肺癌細胞株NCI-H460
1.2 生薬、試薬及び器具
ウシ胎児血清(Hyclone)、RPMI-1640培地(Gibco)、DMSO(Sigma)、CCK8キット(大連美崙生物技術有限公司)、トリプシン(Gibco)、SpectraMax 190マイクロプレートリーダ(Molecular Devices)、低速遠心分離機(安徽中科中佳科学儀器有限公司)、クリーンベンチ(上海博迅実業責任有限公司医療設備場)、倒立顕微鏡(Mike Audi)。
【0022】
2. 実験方法
2.1 NCI-H460細胞を培養し、対数成長期まで成長させると、0.25%トリプシンで消化し、1000×gで5min遠心分離し、細胞沈殿を10%FBS含有1640培地で再懸濁させ、5000個/ウェルの密度で96ウェル培養板に接種し、次に、37℃、5%CO2及び飽和湿度の条件下で一晩培養した。
【0023】
2.2 群ごとに6個のマルチウェルを設置し、ウェルごとに以下の条件で薬剤を加えて、次に、24h培養した。
対照群:薬剤無添加群
マグノロール群:マグノロール添加、最終濃度20μM。
CT-1群:CT-1添加、最終濃度20μM。
CT-2群:CT-2添加、最終濃度20μM。
CT-3群:CT-3添加、最終濃度20μM。
【0024】
以上の細胞を24h処置した後、CCK8キットを用いて薬物の腫瘍細胞増殖への影響を検出した。具体的な操作は以下のとおりである。ウェルごとにCCK8溶液10μLを加えて、2h培養し続け、マイクロプレートリーダ450nm波長で吸光度(OD)の値を測定し、対照群細胞の生存率を100%として、他の群の細胞生存率を算出した。
【0025】
3. 実験結果
表1. マグノロールとスルフォラファン接合物のヒト肺癌細胞株NCI-H460の増殖への影響
【表1】
【0026】
表1に示す結果から明らかなように、マグノロールとスルフォラファン接合物CT-1、CT-2及びCT-3は全てヒト肺癌細胞NCI-H460の増殖を顕著に阻害し、かつ、阻害効果が陽性対照薬物であるマグノロールよりも明らかに優れており、その中でも、CT-3は抗腫瘍活性が最も高い。
【0027】
実施例3. CT-3の7種類のヒト癌細胞株の増殖への影響
1. 実験材料
1.1 細胞株
ヒト神経膠腫細胞株U251、ヒト肺癌細胞株H1650、ヒト肝癌細胞株HepG2、ヒト乳癌細胞株MDA-MB-231、ヒト胃癌細胞株AGS、ヒト結腸癌細胞株LOVO、ヒト卵巣癌細胞株OVCAR3。
1.2 生薬、試薬及び器具
ウシ胎児血清(Hyclone)、RPMI-1640培地(Gibco)、DMSO(Sigma)、CCK8キット(大連美崙生物技術有限公司)、トリプシン(Gibco)、SpectraMax 190マイクロプレートリーダ(Molecular Devices)、低速遠心分離機(安徽中科中佳科学儀器有限公司)、クリーンベンチ(上海博迅実業責任有限公司医療設備場)、倒立顕微鏡(Mike Audi)。
【0028】
2. 実験方法
2.1 上記の7種類の癌細胞を培養し、対数成長期まで成長させると、0.25%トリプシンで消化し、1000×gで5min遠心分離し、細胞沈殿を10%FBS含有1640培地で再懸濁させ、5000個/ウェルの密度で96ウェル培養板に接種し、次に、37℃、5%CO2及び飽和湿度の条件下で一晩培養した。
【0029】
2.2 群ごとに6個のマルチウェルを設置し、ウェルごとに以下の条件で薬剤を加えて、次に、24h培養し続けた。
対照群:薬剤無添加群。
陽性対照群:マグノロール群及びスルフォラファンごとに3群。
陽性対照群1:マグノロール添加、最終濃度5.0μM。
陽性対照群2:マグノロール添加、最終濃度10.0μM。
陽性対照群3:マグノロール添加、最終濃度20.0μM。
陽性対照群4:スルフォラファン添加、最終濃度5.0μM。
陽性対照群5:スルフォラファン添加、最終濃度10.0μM。
陽性対照群6:スルフォラファン添加、最終濃度20.0μM。
CT-3群:CT-3群は3群に分けられる。
CT-3群1:CT-3添加、最終濃度5.0μM。
CT-3群2:CT-3添加、最終濃度10.0μM。
CT-3群3:CT-3添加、最終濃度20.0μM。
【0030】
以上の細胞を24h処置した後、CCK8キットを用いて薬物の腫瘍細胞の増殖への影響を検出した。具体的な操作は以下のとおりである。ウェルごとにCCK8溶液10μLを加えて、2h培養し続け、マイクロプレートリーダ450nm波長で吸光度(OD)の値を測定し、対照群細胞の生存率を100%として、他の群の細胞生存率を算出した。
【0031】
3. 実験結果
表2. CT-3による7種類のヒト癌細胞株の半分の阻害濃度(IC50)(μM)
【表2】
【0032】
表2に示す結果から明らかなように、CT-3は7種類のヒト癌細胞の増殖を顕著に阻害し、そのIC50は5.10~8.02μMの間であり、陽性対照薬物であるマグノロール>45μM及びスルフォラファンの18.41~22.47μMよりも明らかに低い。CT-3の抗腫瘍活性は陽性対照薬物であるマグノロール及びスルフォラファンよりも明らかに優れたことを示す。
【0033】
実施例4. CT-3によるヒト肺癌細胞株NCI-H460アポトーシスへの影響
1. 実験材料
1.1 細胞株
ヒト肺癌細胞株NCI-H460
1.2 生薬、試薬及び器具
ウシ胎児血清(Hyclone社)、RPMI-1640培地(Gibco)、DMSO(Sigma)、CCK8キット(大連美崙生物技術有限公司)、トリプシン(Gibco)、SpectraMax190マイクロプレートリーダ(MolecularDevices)、低速遠心分離機(安徽中科中佳科学儀器有限公司)、クリーンベンチ(上海博迅実業責任有限公司医療設備場)、倒立顕微鏡(Mike Audi)、細胞アポトーシス検出キット及びフローサイトメータ(BD)。
【0034】
2. 実験方法
2.1 NCI-H460細胞を培養し、対数成長期まで成長させると、0.25%トリプシンで消化し、1000×gで5min遠心分離し、細胞沈殿を10%FBS含有の1640培地で再懸濁させ、3.0×105個/ウェルの密度で96ウェル培養板に接種し、次に、37℃、5%CO2及び飽和湿度の条件下で一晩培養した。
【0035】
2.2 群ごとに3個のマルチウェルを設置し、ウェルごとに以下の条件で薬剤を加えて、次に、24h培養し続けた。
対照群:薬剤無添加群。
マグノロール群:マグノロール添加、最終濃度10.0μM。
スルフォラファン群:スルフォラファン添加、最終濃度10.0μM。
CT-3群:CT-3添加、最終濃度10.0μM。
【0036】
以上の細胞を24h処置した後、細胞アポトーシス検出キット及びフローサイトメトリーを用いて、CT-3による腫瘍細胞アポトーシスへの影響を検出した。
【0037】
3. 実験結果
表3. CT-3によるヒト肺癌細胞株NCI-H460アポトーシスへの影響
【表3】
【0038】
表3に示す結果から明らかなように、CT-3はヒト肺癌細胞NCI-H460のアポトーシスを顕著に誘導し、かつ効果が陽性対照薬物であるマグノロール及びスルフォラファンよりも明らかに優れている。
【0039】
実施例5. CT-3によるヒト結腸癌細胞株SW480の増殖への影響
1. 実験材料
1.1 細胞株
ヒト結腸癌細胞株SW480
1.2 生薬、試薬及び器具
ウシ胎児血清(Hyclone)、RPMI-1640培地(Gibco)、DMSO(Sigma)、CCK8キット(大連美崙生物技術有限公司)、トリプシン(Gibco社)、SpectraMax 190マイクロプレートリーダ(Molecular Devices)、低速遠心分離機(安徽中科中佳科学儀器有限公司)、クリーンベンチ(上海博迅実業責任有限公司医療設備場)、倒立顕微鏡(Mike Audi)、細胞アポトーシス検出キット及びフローサイトメータ(BD)。
【0040】
2. 実験方法
2.1 SW480細胞を培養し、対数成長期まで成長させると、0.25%トリプシンで消化し、1000×gで5min遠心分離し、細胞沈殿を10%FBS含有1640培地で再懸濁させ、3.0×105個/ウェルの密度で6ウェル培養板に接種し、次に、37℃、5%CO2及び飽和湿度の条件下で一晩培養した。
【0041】
2.2 群ごとに3個のマルチウェルを設置し、ウェルごとに以下の条件で薬剤を加えて、次に、24h培養し続けた。
対照群:薬剤無添加群。
マグノロール群:マグノロール添加、最終濃度10.0μM。
スルフォラファン群:スルフォラファン添加、最終濃度10.0μM。
CT-3群:CT-3添加、最終濃度10.0μM。
【0042】
以上の細胞を24h処置した後、細胞アポトーシス検出キット及びフローサイトメトリーを用いてCT-3による腫瘍細胞アポトーシスへの影響を検出した。
【0043】
3. 実験結果
表4. CT-3によるヒト結腸癌細胞株SW480アポトーシスへの影響
【表4】
【0044】
表4に示す結果から明らかなように、CT-3は、ヒト結腸癌細胞株SW480のアポトーシスを顕著に誘導し、かつ、効果が陽性対照薬物であるマグノロール及びスルフォラファンよりも明らかに優れている。
【0045】
実施例6. CT-3による正常なヒト肝細胞の細胞株LO2アポトーシスへの影響
1. 実験材料
1.1 細胞株
正常なヒト肝細胞の細胞株LO2
1.2 生薬、試薬及び器具
ウシ胎児血清(Hyclone)、RPMI-1640培地(Gibco)、DMSO(Sigma)、CCK8キット(大連美崙生物技術有限公司)、トリプシン(Gibco)、SpectraMax 190マイクロプレートリーダ(Molecular Devices)、低速遠心分離機(安徽中科中佳科学儀器有限公司)、クリーンベンチ(上海博迅実業責任有限公司医療設備場)、倒立顕微鏡(Mike Audi)、細胞アポトーシス検出キット、及びフローサイトメータ(BD)。
【0046】
2. 実験方法
2.1 上記の癌細胞を培養し、対数成長期まで成長させると、0.25%トリプシンで消化し、1000×gで5min遠心分離し、細胞沈殿を10%FBS含有1640培地で再懸濁させ、3.0×105個/ウェルの密度で6ウェル細胞培養板に接種し、次に、37℃、5%CO2及び飽和湿度の条件下で一晩培養した。
【0047】
2.2 群ごとに3個のマルチウェルを設置し、ウェルごとに以下の条件で薬剤を加えて、次に、24h培養し続けた。
対照群:薬剤無添加群。
マグノロール群:マグノロール添加、最終濃度10.0μM。
スルフォラファン群:スルフォラファン添加、最終濃度10.0μM。
CT-3群:CT-3添加、最終濃度10.0μM。
【0048】
以上の細胞を24h処置した後、細胞アポトーシス検出キット及びフローサイトメトリーを用いてCT-3による腫瘍細胞アポトーシスへの影響を検出した。
【0049】
3. 実験結果
表5. CT-3による正常なヒト肝細胞の細胞株LO2アポトーシスへの影響
【表5】
【0050】
表5に示す結果から明らかなように、CT-3は正常なヒト肝細胞の細胞株LO2アポトーシスに対しては顕著な誘導効果を有さず、このことから、CT-3は正常な細胞には明らかな毒性や副作用がないことが示されている。
【0051】
結論:CT-3は複数種の腫瘍細胞の増殖を阻害することができ、抗腫瘍活性が陽性対照薬物であるマグノロール及びスルフォラファンよりも優れており、しかも、正常な細胞には明らかな毒性や副作用がなく、開発が期待できる抗腫瘍化合物であり、関連疾患の治療や関連薬物の製造にそのまま利用できる。
【0052】
上記の本発明の実施例の番号は説明するにのみ使用され、実施例の優劣を示すものではない。
【0053】
以上は本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の精神や原則を逸脱することなく行われる全ての修正、同等置換や改良などは本発明の特許範囲に含まれるものとする。
【国際調査報告】