(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】一酸化炭素と水素とを含む合成ガスの生成
(51)【国際特許分類】
C25B 1/23 20210101AFI20230222BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20230222BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20230222BHJP
C25B 9/65 20210101ALI20230222BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20230222BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20230222BHJP
H01M 8/0662 20160101ALI20230222BHJP
【FI】
C25B1/23
C25B9/00 A
C25B9/00 Z
C25B9/23
C25B9/65
H01M8/12 101
H01M8/04 Z
H01M8/0662
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524229
(86)(22)【出願日】2020-10-07
(85)【翻訳文提出日】2022-06-22
(86)【国際出願番号】 EP2020078130
(87)【国際公開番号】W WO2021078517
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】102019128934.3
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522140563
【氏名又は名称】フォルシュンクスツェントラム ユーリッヒ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォワ,ゼーフェリン
(72)【発明者】
【氏名】デ ハールト,エル.ジー.ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】アイヒェル,リュディガー-エー.
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021AB25
4K021BA02
4K021BA17
4K021CA01
4K021CA05
4K021DB36
4K021DB53
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB21
5H127AC15
5H127BA05
5H127BA40
5H127BB02
(57)【要約】
本発明は、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを生成する方法であって、
a)メタンと二酸化炭素とを含む原材料ガスを準備するステップと、
b)原材料ガスを、二酸化炭素と水蒸気とを含む中間生成物ガスに変換するステップと、
c)ステップb)で得られた中間生成物ガスを、電解によって、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスに変換するステップとを含む方法に関する。本方法及び本装置(1)によって、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを、バイオガスから特に高い効率で得ることができる。このために、燃料電池(2)でのバイオガスの変換は、電解槽(8)での共電解と、連結されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを生成する方法であって、
a)メタンと二酸化炭素とを含む原材料ガスを準備するステップと、
b)前記原材料ガスを、二酸化炭素と水蒸気とを含む中間生成物ガスに変換するステップと、
c)ステップb)で得られた前記中間生成物ガスを、電解によって、一酸化炭素と水素とを含む前記合成ガスに変換するステップと
を含む
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記原材料ガスは、バイオガスである
方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記原材料ガス中のメタンの割合は、50~65%の範囲内であるか、又は、
前記原材料ガス中の二酸化炭素の割合は、30~45%の範囲内であるか、又は、
その両方である
方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の方法であって、
前記原材料ガスは、2~10%の範囲内の割合で、水蒸気をさらに含む
方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の方法であって、
ステップb)は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)において行われる
方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の方法であって、
ステップb)で生成された電気エネルギーは、ステップc)の前記電解において使用される
方法。
【請求項7】
一酸化炭素と水素とを含む合成ガスの生成のための装置(1)であって、
前記装置(1)は、
- 少なくとも電解質(7)によって互いに分離された陽極(3)及び陰極(5)と、前記陽極(3)に隣接する陽極室(4)とを有する燃料電池(2)と、
- 少なくとも電解質(13)によって互いに分離された陽極(9)及び陰極(11)と、前記陰極(11)に隣接する陰極室(12)とを有する電解槽(8)と
を備え、
前記燃料電池(8)の前記陽極室(4)は、前記電解槽(8)の前記陰極室(12)に接続されている
装置(1)。
【請求項8】
請求項7に記載の装置(1)であって、
前記燃料電池(2)及び前記電解槽(8)は、前記燃料電池(2)によって生成された電気エネルギーが前記電解槽(8)での電解において使用可能な態様で互いに接続されている
装置(1)。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の装置(1)であって、
前記燃料電池(2)の前記陽極(3)及び前記陰極(5)が、入力側で、電気エネルギー用ストレージ(14)に接続されているか、又は、
前記電解槽(8)の前記陽極(9)及び前記陰極(11)が、出力側で、前記電気エネルギー用ストレージ(14)に接続されているか、又は、
その両方である
装置(1)。
【請求項10】
請求項7から9のいずれかに記載の装置(1)であって、
前記燃料電池(2)及び前記電解槽(8)は、ハウジング(15)内に共に配置される
装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスの生成する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一酸化炭素と水素とを含む合成ガスは、重要な有機化学物質の生成に必要な元素である炭素、酸素及び水素を含む。そのため、この合成ガスは、多くの石油化学処理に適しており、例えば、合成燃料、天然ガス、メタノール、ホルムアルデヒドの生成に適している。そのため、この合成ガスは、化石燃料ベースの原料の代替とするのに適している。これは、エネルギー転換にとって重要な一助となる可能性がある。特に、合成燃料は、自動車の設計に大きな変更を必要とすることなく、自動車を環境にやさしい態様で駆動するために使用することができる。
【0003】
したがって、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを生成することが必要とされている。このための方法は、先行技術から公知である。特に、エネルギーを供給すれば、電解によって、気体の二酸化炭素及び水蒸気から合成ガスを得ることが可能である。このプロセスは、「共電解」として知られている。これは、エネルギー(「Power」)から化学物質(「X」)を得るという「Power-to-X」の一部である。この発想は、気候に有害な二酸化炭素を出発材料として使用し且つエネルギーを使用することによって、地球温暖化を緩和する一助となる可能性がある。
【0004】
既知の、共電解によって合成ガスを生成するプロセスは、効率が低く、特に、このプロセスでは水を蒸発させる必要があるので効率が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それを推し進めて、先行技術に関連した前述の問題を少なくとも部分的に解決することが本発明の目的である。特に、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスの生成する方法及び装置を提示する目的とするものであり、この方法及び装置により、効率を向上することができる。
【0006】
これらの目的は、独立請求項の特徴により達成される。本発明のさらに有利な実施形態は、従属請求項において規定される。従属請求項において個々に列挙されている特徴は、技術的に有意な態様で互いに組み合わせることができ、本発明のさらなる実施形態を定義することができる。さらに、請求項において特定される特徴は、本明細書において、本発明のさらなる好適な実施形態を呈示して、より詳細に記載し且つ説明される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを生成する方法を提示する。本方法は、
a)メタンと二酸化炭素とを含む原材料ガスを準備するステップと、
b)原材料ガスを、二酸化炭素と水蒸気とを含む中間生成物ガスに変換するステップと、
c)ステップb)で得られた中間生成物ガスを、電解によって、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスに変換するステップと
を含む。
【0008】
一酸化炭素と水素とを含む合成ガスは、本方法によって生成することができる。この合成ガスは、多くの石油化学処理に適しており、例えば、合成燃料、天然ガス、メタノール、ホルムアルデヒドの生成に適している。本方法は、「Power-to-X」の一部である。
【0009】
本方法において、合成ガスは、電解によって、二酸化炭素と水蒸気から得られる(ステップc))。本方法において、電解のための出発材料(二酸化炭素及び水蒸気)は、メタンと二酸化炭素とを含む原材料ガスからの中間生成物として生成される(ステップb)。
【0010】
本方法において、以下の2つの化学的プロセスが互いに連結されている。1つは、中間生成物ガスを原材料ガスから得る(ステップb))ものであり、もう1つは、合成ガスを中間生成物ガスから生成する(ステップc))ものである。これら2つのプロセスは、第1のプロセスの生成物(二酸化炭素と水蒸気とを含む中間生成物ガス)が第2のプロセスの出発材料として使用されるという点で、互いに連結されている。これにより、特に高い効率が実現可能である。これは、特に中間生成物ガスが水蒸気を含むためであり、したがって、電解のために水を蒸発させる必要がない。
【0011】
本方法のステップb)及びc)は、好ましくは、700~900℃の範囲内の温度で行われる。このために、原材料ガスは、好ましくは、ステップa)においてこの温度で準備されるか、又は、この温度まで加熱又は冷却される。ステップb)及びc)が行われている間は、温度は、750~850℃の範囲内に維持されることが好ましい。
【0012】
ステップa)で、原材料ガスが準備される。原材料ガスは、メタンと二酸化炭素とを含む。さらに、原材料ガスは、その他の構成成分、例えば、水蒸気を含んでもよい。原材料ガスは、メタン含量が少なくとも30%、特に少なくとも50%であることが好ましい。原材料ガスは、二酸化炭素含量が少なくとも15%、特に少なくとも30%であることが好ましい。原材料ガスは、メタン含量が少なくとも50%であり且つ二酸化炭素含量が少なくとも30%である組み合わせが好ましい。
【0013】
ステップb)で、原材料ガスが、二酸化炭素と水蒸気とを含む中間生成物ガスに変換される。これは、好ましくは、燃料電池において行われる。燃料電池に、燃料ガスが、原材料ガスとともに供給される。燃料電池は、好ましくは、少なくとも電解質によって互いに分離された陽極及び陰極を有する。さらに、燃料電池は、ガスが陽極室内を陽極に沿って流れることができるよう、陽極に隣接する陽極室を有するのが好ましい。さらに、燃料電池は、ガスが陰極室内を陰極に沿って流れることができるよう、陰極に隣接する陰極室を有するのが好ましい。
【0014】
原材料ガスは、好ましくは、燃料電池の陽極室に導入される。酸素は、好ましくは、燃料電池の陰極に準備される。この目的のために、例えば、酸素、空気。又は、窒素と酸素の混合物が、陰極室に導入されてもよい。
【0015】
酸素は、陰極で還元することができる。
O2+4e-→2O2-(g) (1)
【0016】
この反応式に基づいて、気体の酸素分子(O2)1つは、電子(e-)4つを取り込むことによって2つの酸素イオン(O2-)に変換される。
【0017】
電解質は、好ましくは、酸素イオン(O2-)は透過可能であるが、CO2、CO、H2O又はH2などの気体分子は透過可能ではない。これにより、酸素イオン(O2-)は、陰極室から陽極室へ到達可能となる。結果として、原材料ガスからのメタンを、陽極で、中間生成物ガスに変換することが可能である。
CH4(g)+4O2-→2H2O(g)+CO2(g)+8e- (2)
【0018】
この反応式に基づいて、気体のメタン分子(CH4)1つは、酸素イオン(O2-)4つと反応して、水蒸気分子(H2O)2つと気体の二酸化炭素分子(CO2)1つを生成し、電子(e-)が8つ放出される。
【0019】
燃料電池に関して、反応式(1)及び(2)から、以下のバランスがとれた方程式が得られる。方程式は反応式(1)の両辺を2倍して導出している。
CH4(g)+2O2→2H2O(g)+CO2(g) (3)
【0020】
バランスがとれたこの方程式の右側では、構成成分は、中間生成物ガスの水蒸気と二酸化炭素である。中間生成物ガスは、好ましくは、これらの構成成分のみからなる。
【0021】
燃料電池は電気エネルギーを生じ、これは、燃料電池の陰極及び陽極から取り出すことができる。
【0022】
ステップc)で、(二酸化炭素と水蒸気とを含む)中間生成物ガスが、電解によって、(一酸化炭素と水素とを含む)合成ガスに変換される。これは、電解槽、特に共電解型の電解槽で行われる。電解槽は、好ましくは陽極及び陰極を有し、これらは少なくとも電解質によって互いに分離されている。陽極と陰極の間には、電解質に加えて、さらに層が配置されていてもよい。電解槽は、基体支持型又は電解質支持型であることが好ましい。基体支持型構成としては、陰極がNi・YSZ電極として形成されており、電解質がYSZから形成されており、CGOのバリア層が電解質と陽極の間に挿入されており、陽極がLSCから形成されていることが好ましい。これの代わりに、電解質支持型構成として、陰極がNi・CGO電極として形成されており、電解質がYSZから形成されており、CGOのバリア層が電解質と陽極の間に挿入されており、陽極がLSCFから形成されているのが好ましい。
【0023】
さらに、電解槽は、陽極に隣接する陽極室を有するのが好ましい。ガスは、陽極室内を、陽極に沿って流れることができる。さらに、電解槽は、陰極に隣接する陰極室を有するのが好ましい。ガスは、陰極室内を、陰極に沿って流れることができる。陽極室又は陰極室又はその両方はそれぞれ、好ましくは、入口及び出口を有する。
【0024】
二酸化炭素と水蒸気とを含む中間生成物ガスは、原材料ガスが電解槽の陰極に沿って流れることができるように、電解槽の陰極室の入口を介して、気体の状態で電解槽の陰極室に導入されることが好ましい。電解槽の陽極と陰極の間に電流が印加される場合、原材料ガスからの二酸化炭素は、以下の化学反応式に従って電解槽の陰極で還元される。
CO2(g)+2e-→CO(g)+O2- (4)
【0025】
この反応式に基づいて、気体の二酸化炭素分子(CO2)は、2つの電子(e-)を取り込むことによって気体の一酸化炭素分子(CO)と酸素イオン(O2-)とに変換される。
【0026】
さらに、原材料ガスからの水蒸気は、以下の化学反応式に基づいて陰極で還元される。
H2O(g)+2e-→H2(g)+O2- (5)
【0027】
この反応式に基づいて、水蒸気分子(H2O)は、2つの電子(e-)を取り込むことによって、気体の水素分子(H2)及び酸素イオン(O2-)に変換される。
【0028】
電解質は、好ましくは、酸素イオン(O2-)は透過可能であるが、CO2、CO、H2O又はH2などの気体分子は透過可能ではない。これにより、酸素イオン(O2-)は、陰極室から陽極室へ到達可能となる。そこで以下の酸化反応が起こることが可能である。
2O2-→O2(g)+4e- (6)
【0029】
この反応式に基づいて、2つの酸素イオン(O2-)が気体の酸素分子(O2)に変換され、4つの電子(e-)が放出される。
【0030】
電子は、電圧源を介して、陽極から陰極に移動することができる。方程式(4)、(5)及び(6)から、電解槽に関する以下のバランスがとれた方程式が得られる。
H2O+CO2→H2+CO+O2 (7)
【0031】
したがって、電解槽によってエネルギーを供給することにより、水蒸気及び二酸化炭素から、水素及び一酸化炭素を含む合成ガスを得ることができる。上記合成ガスは、電解槽の陰極で生成され、電解槽の陰極室の出口を介して排出することができる。
【0032】
さらに、酸素は、電解槽の陽極室で生成され、その酸素は、電解槽の陽極室の出口を介して排出することができる。このように、合成ガス及び酸素は、それぞれ別々に得ることができる。
【0033】
【0034】
「可逆性の水性ガスシフト反応」としても知られているこの反応は、二酸化炭素と水素とが反応して一酸化炭素と水を生成することも可能な平衡反応である。電解により、反応式(4)に基づいて二酸化炭素(CO2)が一酸化炭素に還元され、反応式(5)に基づいて水蒸気(H2O)が水素(H2)に還元される。これにより、反応式(8)における割合が変化し、その結果、化学平衡が崩れる。これにより、水素(H2)及び二酸化炭素(CO2)から、水蒸気(H2O)及び一酸化炭素(CO)の生成を引き起こすことができる。したがって、水蒸気を用いた二酸化炭素の共電解は、二酸化炭素の一酸化炭素への変換が電解中に生成された水素によりさらに助けられ得るため、特に効率的である。
【0035】
反応式(8)のため、合成ガスは、ある割合の気体の二酸化炭素又はある割合の水蒸気又はその両方を含む可能性がある。合成ガスは、電解槽の陰極室の出口から出た後、一方の一酸化炭素及び水素と、他方のその他すべての物質とに分離されるのが好ましい。その他の物質は、主に二酸化炭素又は水又はその両方でありうる。分離された二酸化炭素又は水又はその両方が電解に戻されてもよい。
【0036】
電解槽の陽極室は、洗浄ガスで洗浄されるのが好ましい。例えば、空気、酸素(O2)、窒素(N2)の少なくとも1つを洗浄ガスとして考えることができる。陽極で生成された酸素は、洗浄ガスによって陽極から離れる方へ送ることができる。したがって、陽極における酸素の分圧を低下させることができる。この結果、電解のために陽極と陰極の間に印加される電圧が低下し、これは、エネルギーを節約できることを意味する。このように、洗浄ガスによって、効率を高めることができる。洗浄ガスは、陽極室に導入される前に、700から900℃までの範囲内の温度に加熱されることが好ましい。この結果、電解槽内の熱応力を回避することができる。
【0037】
本方法の好適な実施形態においては、原材料ガスは、バイオガスである。
【0038】
バイオガスは、バイオマスから得られるガス、特に発酵によって得られるガスを意味すると理解されるべきである。バイオガスは、バイオガスプラントで得ることができ、例えば、バイオマス、すなわち有機材料を、空気がない環境で分解することによって得られる。ここで使用されるバイオガスは、メタンと二酸化炭素とを含む。これら2つの構成成分は、通常、バイオガス中で最も多い構成成分である。さらに、バイオガスはまた、アンモニア、酸素、硫化水素、窒素、水蒸気、水素等を含む場合がある。
【0039】
本方法のさらなる好適な実施形態においては、原材料ガス中のメタンの割合は50~65%の範囲内であるか、又は、原材料ガス中の二酸化炭素の割合は30~45%の範囲内であるか、又は、その両方である。
【0040】
原材料ガス中のメタンの割合が50~65%の範囲内であり、且つ、原材料ガス中の二酸化炭素の割合が30~45%の範囲内であることが好ましい。
【0041】
そのような原材料ガスを用いると特に高い効率を達成できることがわかった。
【0042】
本方法のさらなる好適な実施形態においては、原材料ガスは、2~10%の範囲内の割合で、水蒸気をさらに含む。
【0043】
第1の例では、原材料ガスは、55%のメタンと、40%の二酸化炭素と、5%の水蒸気とから構成される。これにより、ステップb)で、45%の二酸化炭素と55%の水蒸気とからなる中間生成物ガスが得られる。ステップc)で、そこから45%の一酸化炭素と55%の水素とからなる合成ガスを得ることができる。
【0044】
第2の例では、原材料ガスは、60%のメタンと、35%の二酸化炭素と、5%の水蒸気とから構成される。これにより、ステップb)で、43%の二酸化炭素と57%の水蒸気とからなる中間生成物ガスが得られる。ステップc)で、そこから43%の一酸化炭素と57%の水素とからなる合成ガスを得ることができる。
【0045】
この2つの例は、合成ガスの組成が、原材料ガスの組成の影響を受ける可能性があることを示す。所定の組成を有するバイオガスを使用すれば、それから、対応する合成ガスを、本方法を使用して生成することができる。この合成ガスの組成が所望の組成と一致しない場合、例えば、追加の一酸化炭素又は追加の水素を、合成ガスに添加してもよい。結果として、バイオガスの組成の変化にもかかわらず、同じ所望の組成を有する合成ガスを問題なく得ることができる。別の方法として、適切な構成成分を添加することによって、原材料ガスの組成を一定に維持してもよい。
【0046】
本方法のさらなる好適な実施形態においては、ステップb)は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)において行われる。
【0047】
SOFCセルは、固体電解質を有する燃料電池であり、固体電解質の例としては、YSZなどの酸化物セラミック製のものがある。陰極は、例えば、LSMからなる。陽極は、例えば、Ni・YSZ電極の形態である。SOFCセルは、650~1000℃の範囲内の温度で作動させることが好ましい。本方法に関して、SOFCセルは、電解槽と同じ温度で、特に700~850℃の範囲内で作動させることが好ましい。結果として、温度差による熱応力を回避することができる。
【0048】
SOFCセルを用いると特に高い効率を達成できることがわかった。
【0049】
本方法のさらなる好適な実施形態においては、ステップb)で生成された電気エネルギーは、ステップc)の電解において使用される。
【0050】
上に述べたように、本方法では、2つの化学的プロセスが連結されている。1つは、原材料ガスを中間生成物ガスに変換するものであり、もう1つは、中間生成物ガスを合成ガスに変換するものである。本実施形態において、この2つのプロセスは、第1のプロセスで生成された電気エネルギーが第2のプロセスで使用されるという点で、互いにさらに連結されている。
【0051】
ステップb)で生成された電気エネルギーがステップc)の電解に使用されるということは、ステップb)で生成された電気エネルギーだけがステップc)の電解に使用されることを意味する訳ではない。試験では、ステップb)で生成された電気エネルギーは、電解のためのエネルギー要件の約3分の1を賄うことができた。必須ではないが、ステップb)で生成されたエネルギーが全て、ステップc)の電解に使用されることが好ましい。これは、避けられない損失を除いて、いかなる場合にも当てはまる。
【0052】
2つのプロセスが電気的に連結されていることにより、外部電源からの電気エネルギーの必要性は低減する。このことは、本方法の効率を高めることができる。
【0053】
本発明のさらなる態様として、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを生成する装置が提示される。本装置は、
― 少なくとも電解質によって互いに分離された陽極及び陰極と、陽極に隣接する陽極室とを有する燃料電池と、
― 少なくとも電解質によって互いに分離された陽極及び陰極と、陰極に隣接する陰極室とを有する電解槽と
を含む。燃料電池の陽極室は、電解槽の陰極室に接続されている。
【0054】
本方法の上記の特別な利点及び設計特徴を、装置に使用し且つ導入することが可能であり、逆もまた同様である。本方法は、本装置を使用して行われるのが好ましい。本装置は、好ましくは、本方法を行うことを意図し且つそのように構成されている。
【0055】
燃料電池では、原材料ガスを、二酸化炭素と水蒸気とを含む中間生成物ガスに変換することができる(ステップb))。電解槽では、ステップb)で得られた中間生成物ガスを、電解によって、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスに変換することができる(ステップc))。このために、電解槽は、好ましくは、電流電圧源を有し、それによって、電流を陰極と陽極の間に印加することができる。電解槽は、好ましくは、高温電解槽として設計される。
【0056】
燃料電池の陽極室では、ガスは、燃料電池の陽極に沿って流れることが可能である。さらに、燃料電池は、燃料電池の陰極に隣接する陰極室を有するのが好ましい。燃料電池の陰極室では、ガスは、燃料電池の陰極に沿って流れることが可能である。燃料電池の陽極室又は陰極室又はその両方はそれぞれ、好ましくは、入口及び出口を有する。
【0057】
電解槽の陰極室では、ガスは、電解槽の陰極に沿って流れることが可能である。さらに、電解槽は、電解槽の陽極に隣接する陽極室を有するのが好ましい。電解槽の陽極室では、ガスは、電解槽の陽極に沿って流れることが可能である。電解槽の陽極室又は陰極室又はその両方はそれぞれ、好ましくは、入口及び出口を有する。
【0058】
燃料電池の陽極室は、電解槽の陰極室に接続されており、好ましくは、燃料電池の陽極室の出口を電解槽の陰極室の入口に接続することによって接続されている。燃料電池及び電解槽は、燃料電池がいかなる物理的な分離もなく電解槽に移行するように、一体型に設計されてもよい。燃料電池の陽極室の出口及び電解槽の陰極室の入口は、燃料電池の陽極室と電解槽の陰極室の間の接続路として設計されてもよい。接続路は、燃料電池の陽極室、又は、電解槽の陰極室、又は、その両方と一体型で形成されてもよい。
【0059】
本装置の好適な実施形態においては、燃料電池及び電解槽は、燃料電池によって生成された電気エネルギーが電解槽での電解において使用可能な態様で互いに接続されている。
【0060】
接続は、例えば、電線によって形成されてもよい。この実施形態においては、ステップb)で生成された電気エネルギーは、ステップc)の電解において使用することができる。
【0061】
本装置のさらなる好適な実施形態においては、燃料電池の陽極及び陰極が、入力側で電気エネルギー用ストレージに接続されているか、又は、電解槽の陽極及び陰極が、出力側で電気エネルギー用ストレージに接続されているか、又は、その両方である。
【0062】
この実施形態においても、ステップb)で生成された電気エネルギーは、ステップc)の電解において使用することができる。燃料電池により生成された電気エネルギーは、ストレージに蓄電することができる。したがって、電気エネルギーは、生成された直後に消費する必要がない。結果として、エネルギーの損失を回避することができ、この点で効率の程度を高めることができる。
【0063】
電気エネルギー用ストレージは、好ましくは、蓄電池として、すなわち、充電可能な電気エネルギー用ストレージとして設計される。電気エネルギーは、燃料電池からストレージに送られ、ストレージに蓄電することができる。このために、燃料電池の陽極及び陰極は、入力側でストレージに接続されている。ストレージに蓄電されたエネルギーは、電解槽に送ることができる。このために、電解槽の陽極及び陰極は、出力側でストレージに接続されている。入力側で電気エネルギー用ストレージに接続された燃料電池の陽極及び陰極と、出力側で電気エネルギー用ストレージに接続された電解槽の陽極及び陰極との組み合わせが好ましい。
【0064】
本装置のさらなる好適な実施形態においては、燃料電池及び電解槽は、ハウジング内に共に配置される。
【0065】
燃料電池及び電解槽の、本方法と関連する化学反応が起こる領域が、ハウジング内に配置される場合は、いかなる場合でも、燃料電池及び電解槽はハウジング内に共に配置されていると見なされるべきである。ハウジングは、1つ又は複数の部分から構成されてもよい。ハウジングは、開口部を有してもよく、特に、燃料電池又は電解槽又はその両方にガスを供給可能な供給路用の開口部や、燃料電池又は電解槽又はその両方からガスを排出可能な排出路用の開口部を有してもよい。
【0066】
ハウジング内において連結した配置されているため、燃料電池及び電解槽が互いに熱的に結合されており、そのため特に高い効率を達成することができる。燃料電池及び電解槽をともに作動温度にして、その温度に維持することは特に効率的である。ハウジングは、断熱されていることが好ましい。燃料電池と電解槽の間には断熱材がないことが好ましい。
【0067】
以下に、本発明及び技術環境を、図面を参照してさらに詳細に説明する。本発明が、提示される実施形態によって限定されるものと想定していないことに留意すべきである。特に、特段の記載のない限り、図に記載されている事実から部分的な態様を抽出すること、ならびにそれらを本明細書及び図面の少なくとも一方からの他の構成要素及び知見と組み合わせることも可能である。特に、図面、特に示されるサイズ比が概略に過ぎないことに留意すべきである。同一の参照符号は、同一のものを指し、その結果、他の図の説明が、必要に応じて補足の様式で使用されることがある。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】本発明による、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを生成する方法のフローチャートである。
【
図2】本発明による、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを生成する装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図1は、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを生成する方法のフローチャートを示す。本方法は、
a)メタンと二酸化炭素とを含む原材料ガスを準備するステップと、
b)原材料ガスを、二酸化炭素と水蒸気とを含む中間生成物ガスに変換するステップと、
c)ステップb)で得られた中間生成物ガスを、電解によって、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスに変換するステップと
を含む。
【0070】
原材料ガスは、好ましくは、メタン含量が50~65%の範囲内であり、二酸化炭素含量が30~45%の範囲内であり、水蒸気含量が2~10%の範囲内であるバイオガスである。
【0071】
図2は、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを生成する装置1を示す。装置1は、燃料電池2を備えており、この燃料電池2は、少なくとも電解質7によって互いに分離された陽極3及び陰極5と、陽極3に隣接する陽極室4と、陰極5に隣接する陰極室6とを有するSOFCセルとして設計されている。
図1の方法のステップb)は、燃料電池2を用いて行うことができる。さらに、装置1は、電解槽8を備えており、この電解槽8は、少なくとも電解質13によって互いに分離された陽極9及び陰極11と、陰極11に隣接する陰極室12と、陽極9に隣接する陽極室10とを有する。
図1の方法のステップc)は、電解槽8を用いて行うことができる。
【0072】
2つの陰極室6及び12並びに2つの陽極室4及び10は、それぞれ入口16及び出口17を有する。燃料電池2の陽極室4の出口17が電解槽8の陰極室12の入口16に接続されているので、燃料電池2の陽極室4は電解槽8の陰極室12に接続されている。原材料ガスは、燃料電池2の陽極室4の入口16を介して燃料電池2の陽極室4に導入することができる。このように、
図1の方法のステップa)における準備をすることができる。
【0073】
酸素は、燃料電池2の陰極室6の入口16に導入することができる。提示する実施形態においては、酸素は、窒素とともに導入されるが、これは必要ではない。これの代わりに、空気を燃料電池2の陰極室6の入口16に導入することもできる。窒素(又は使用済みの空気)は、燃料電池2の陰極室6の出口17において、燃料電池2の陰極室6から排出させることができる。未変換の酸素も、燃料電池2の陰極室6の出口17から、同様に排出可能である。
【0074】
洗浄ガスを電解槽8の陽極室10の入口16に導入することができ、陽極室10で生成された酸素とともに陽極室10の出口17から排出可能である。提示した実施形態においては、洗浄ガスは、窒素である。ただし、代わりに、洗浄ガスとして、特に酸素を使用することもできる。
【0075】
燃料電池2及び電解槽8は、燃料電池2によって生成された電気エネルギーが電解槽8での電解において使用可能な態様で互いに接続されている。このために、燃料電池2の陽極3及び陰極5は、入力側で電気エネルギー用ストレージ14に接続されており、且つ、電解槽8の陽極9及び陰極11は、出力側で電気エネルギー用ストレージ14に接続されている。
【0076】
燃料電池2及び電解槽8は、ハウジング15内に共に配置される。
【0077】
本方法及び本装置1によって、二酸化炭素及び水素を含む合成ガスを、バイオガスから特に高い効率で得ることができる。このために、燃料電池2でのバイオガスの変換は、電解槽8での共電解と、連結されている。
【符号の説明】
【0078】
1 装置
2 燃料電池
3 燃料電池の陽極
4 燃料電池の陽極室
5 燃料電池の陰極
6 燃料電池の陰極室
7 燃料電池の電解質
8 電解槽
9 電解槽の陽極
10 電解槽の陽極室
11 電解槽の陰極
12 電解槽の陰極室
13 電解槽の電解質
14 電気エネルギー用ストレージ
15 ハウジング
16 入口
17 出口
【国際調査報告】