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特表2023-508260アルミナビスマス触媒担体及びその製造方法
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  • 特表-アルミナビスマス触媒担体及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】アルミナビスマス触媒担体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/02 20060101AFI20230222BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20230222BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20230222BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20230222BHJP
   B01J 21/18 20060101ALI20230222BHJP
   B01J 23/644 20060101ALI20230222BHJP
   C01F 7/021 20220101ALI20230222BHJP
【FI】
B01J37/02 101C
B01J37/08 ZAB
B01J37/00 F
B01J32/00
B01J21/18 A
B01J23/644 A
C01F7/021
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022531080
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(85)【翻訳文提出日】2022-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2020083968
(87)【国際公開番号】W WO2021105510
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】19212712.4
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501186162
【氏名又は名称】サゾル ジャーマニー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーメニンク,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ショーネボーン,マルコス
(72)【発明者】
【氏名】イェーガー,アン-カトリン
【テーマコード(参考)】
4G076
4G169
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AA18
4G076AB02
4G076AC07
4G076BA38
4G076BD01
4G076BD02
4G076BF07
4G076CA02
4G076CA36
4G076DA01
4G076FA01
4G169AA01
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA03A
4G169BA03B
4G169BA47C
4G169BB05C
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4G169BB06B
4G169BC08A
4G169BC16A
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4G169BC25B
4G169BC29A
4G169BC39A
4G169BC40A
4G169BC41A
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4G169BC75A
4G169BD01C
4G169BD06C
4G169CA03
4G169CA07
4G169CA14
4G169CA15
4G169DA06
4G169EA01X
4G169EA01Y
4G169EC03X
4G169EC03Y
4G169EC07X
4G169EC07Y
4G169EC08X
4G169EC08Y
4G169EC14Y
4G169EC15Y
4G169EC16Y
4G169EC22X
4G169EC22Y
4G169EC25
4G169FA01
4G169FB14
4G169FB30
4G169FB57
4G169FB63
4G169FC02
4G169FC04
4G169FC07
4G169FC08
4G169FC09
(57)【要約】
本開示は、排出規制用途のための、ビスマスを含むアルミナ触媒担体を調製する方法、本開示の方法によって調製されたアルミナ触媒担体、及びビスマスを含み、技術的効果の改善に導く結晶化度の値が特異的なアルミナ触媒担体を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナビスマス触媒担体を調製する方法であって、
(i)ベーマイトを含むアルミニウム含有組成物、又はシリカ含有酸化アルミニウムを含むアルミニウム含有組成物を提供する工程と、
(ii)ビスマス塩と、窒素を含有する塩基とを含み、pH値が4~9のビスマス水溶液を提供する工程と、
(iii)前記アルミニウム含有組成物の前記ビスマス水溶液との接触を行って、アルミニウムビスマスの中間体を形成する工程であって、
工程(i)の前記アルミニウム含有組成物がベーマイトを含む場合においては、乾燥粉末の形態又は懸濁液の形態の前記アルミニウム含有組成物を前記ビスマス水溶液と混合することによって前記接触が行われて、アルミニウムビスマスの中間体を形成するか、あるいは
工程(i)の前記アルミニウム含有組成物がシリカ含有酸化アルミニウムを含む場合においては、乾燥粉末の形態の前記アルミニウム含有組成物に前記ビスマス水溶液を含浸させることによって前記接触が行われて、アルミニウムビスマスの中間体を形成する
工程と、
(iv)アルミニウムビスマスの前記中間体をか焼して、アルミナビスマス触媒担体を形成する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記アルミニウム含有組成物は、1以上のドーパントを更に含む
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1以上のドーパントは、アルカリ土類金属、遷移金属、希土類金属、又はそれらの混合物の酸化物又は水溶性の塩、好適にはZr又はTiの酸化物又は水溶性の塩を含む
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ベーマイトを含む前記アルミニウム含有組成物は、シリカを更に含む
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アルミニウム含有組成物がシリカを含む場合において、前記シリカの含有量は、シリカ、並びに前記酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、及び/又は三水酸化アルミニウムの酸化物の質量に対し、1重量パーセント~40重量パーセントであり、好適には、1重量パーセント~20重量パーセントであり、最も好適には、2重量パーセント~10重量パーセントである
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記懸濁液は、好適には2:98~20:80の重量比で、前記アルミニウム含有組成物と少なくとも水とを含む
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記アルミニウム含有組成物の含浸は、初期湿潤含浸を含む
請求項1~5いずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記シリカ含有酸化アルミニウムの組成物における前記酸化アルミニウムは、1以上の遷移アルミナ、好適にはγ-アルミナであるか、あるいは、1以上の遷移アルミナ、好適にはγ-アルミナを含む
請求項1~3、5、及び7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
乾燥粉末の形態又は懸濁液の形態において提供されるベーマイトを含む前記アルミニウム含有組成物が、前記ビスマス水溶液と混合される場合において、アルミニウムビスマスの前記中間体を乾燥、好適には噴霧乾燥させて、か焼が後になされるアルミニウムビスマスの中間体の乾燥体を形成する工程を更に含む
請求項1~3、5、6、及び8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
アルミニウムビスマスの前記中間体又はアルミニウムビスマスの前記中間体の乾燥体は、500℃~1000℃、より好適には600℃~900℃、更に好適には500℃~700℃の温度で、0.5時間以上、好適には0.5時間~5時間か焼される
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記窒素を含む塩基は、アンモニアである
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法により得られる
アルミナビスマス触媒担体。
【請求項13】
(i)80重量パーセント以上の遷移アルミナ系の材料と、
(ii)結晶化度の値CBiが10未満であること、好適には、結晶化度の値CBiが3未満であることに特徴づけられる、1重量パーセント~20重量パーセントの酸化ビスマスと
を含む
アルミナビスマス触媒担体。
【請求項14】
前記遷移アルミナ系の材料は、アルミナ、好適にはガンマ相、デルタ相、又はシータ相のアルミナを含み、選択的には、更にシリカ及び/又はドーパントを含む
請求項13に記載のアルミナビスマス触媒担体。
【請求項15】
(a)50m/g~300m/g、好適には100m/g~200m/gのBET比表面積、及び/又は
(b)0.1ml/g~1.5ml/g、好適には0.5ml/g~1.0ml/gの細孔容積
のうちの1以上の特性によって更に特徴づけられる
請求項12~14のいずれか一項に記載のアルミナビスマス触媒担体。
【請求項16】
酸化ビスマスの分散が均一であり、前記酸化ビスマスは、X線非晶質の状態にある
請求項12~15のいずれか一項に記載のアルミナビスマス触媒担体。
【請求項17】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法によって得られる
請求項13~16のいずれか一項に記載のアルミナビスマス触媒担体。
【請求項18】
酸化触媒用の担体、好適には白金(Pt)及び/又はパラジウム(Pd)を含む酸化触媒用の担体、特に、車両の排出規制の用途のためのディーゼル酸化触媒用の担体としての
請求項12~17のいずれか一項に記載のアルミナビスマス触媒担体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排出規制用途のためのアルミナビスマス触媒担体を調製する方法、本発明の方法によって調製されたアルミナビスマス触媒担体、及び特性が特異的なアルミナビスマス触媒担体に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガスにおける未処理の主要な排出汚染物質は、CO、NOx、未燃炭化水素、及びすす粒子である。様々な成分と貴金属とを含む、排出規制用途のための触媒系は、当該技術分野において既知である。通常、表面積耐火性の高いアルミナ又はシリカアルミナなどの高酸化物に担持された貴金属を含むいわゆるディーゼル酸化触媒(DOC)は、COをCOに変換し、未燃炭化水素をCO及び水に変換する。実路走行排気(RDE:Real Driving Emissions)と、乗用車等の国際調和燃費・排出ガス試験方法(WLTP:Worldwide Harmonized Light Vehicle Test Procedure)とを含む、排気ガスに関する継続的な厳しい立法措置と、より現実的な運転サイクルの導入とにより、上述の触媒系の低温活性は、開発の重要な分野となっている。
【0003】
活性化添加剤及び/又は安定化添加剤(例えば、金属酸化物)の触媒又は触媒担体の材料への組み込みは、それぞれが公知の取り組みである。特許文献1及び特許文献2には、触媒へのBiの添加によるCO及び炭化水素の低温変換について有益な効果が開示されている。特許文献2においては、ビスマスが現場での還元処理により助触媒として添加されることが記載されている。特許文献1では、ビスマスは担体に担持されている。
【0004】
したがって、従来技術は、Biを別個の結晶相として組み込むことを教示している。上述により、促進添加剤の比表面積が小さくなる故に、能動的な貴金属との相互作用の有益性が限定的になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/064498号
【特許文献2】米国特許第7611680号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本開示の目的は、特性が改善された排出規制の触媒に適用可能なアルミナビスマス担体の改良物を提供し、当該アルミナビスマス担体の新規な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1態様によると、アルミナビスマス触媒担体を調製するための方法が提供され、当該方法は、
(i)(a)ベーマイトを含むアルミニウム含有組成物、又は(b)シリカ含有酸化アルミニウムを含むアルミニウム含有組成物を提供する工程と、
(ii)ビスマス塩と、窒素を含有する塩基、好適にはアンモニアとを含み、pH値が4~9のビスマス水溶液を提供する工程と、
(iii)アルミニウム含有組成物のビスマス水溶液との接触を行って、アルミニウムビスマスの中間体を形成する工程であって、
工程(i)のアルミニウム含有組成物がベーマイトを含む場合においては、乾燥粉末の形態又は懸濁液の形態のアルミニウム含有組成物をビスマス水溶液と混合することによって接触が行われて、アルミニウムビスマスの中間体を形成するか、あるいは
工程(i)のアルミニウム含有組成物がシリカ含有酸化アルミニウムを含む場合においては、乾燥粉末形態のアルミニウム含有組成物にビスマス水溶液の含浸をさせることによって接触が行われて、アルミニウムビスマスの中間体を形成する
工程と、
(iv)アルミニウムビスマスの中間体をか焼して、アルミナビスマス触媒担体を形成する工程と
を含む。
【0008】
工程(iii)においては、アルミニウムビスマスの中間体は、工程(i)においてアルミニウム含有組成物がベーマイトを含む場合においては、ベーマイトビスマスの中間体と称することが更にできる。
【0009】
工程(iii)においては、アルミニウムビスマスの中間体は、工程(i)において、アルミニウム含有組成物がシリカを含む場合においては、シリカ酸化アルミニウムビスマスの中間体と称することが更にできる。
【0010】
好適には、アルミニウム含有組成物は、組成物中のアルミニウム含有化合物について、ベーマイトからなるか、あるいはシリカ含有酸化アルミニウムからなる。アルミニウム含有組成物は、例えば1以上のドーパントを更に(シリカ又は別の成分の他に)含むことができる。
【0011】
シリカ含有酸化アルミニウムにおける酸化アルミニウムは、好適には遷移アルミナ(transitional alumina)であるか、あるいは遷移アルミナを含む。シリカ含有酸化アルミニウムは、更に好適には、遷移アルミナとシリカと1以上のドーパントとを含む。遷移アルミナは、ガンマ(γ)酸化アルミニウム、デルタ(δ)酸化アルミニウム、又はシータ(θ)酸化アルミニウムのうちの1以上であり、好適にはガンマアルミナであるか、あるいはガンマアルミナを含む。
【0012】
一実施形態によると、アルミニウム含有組成物は、好適には50重量パーセント以上のシリカ含有酸化アルミニウムを含む。
【0013】
更なる実施形態によると、アルミニウム含有組成物は、好適には50重量パーセント以上のベーマイトを含む。好適には、アルミニウム含有組成物は、1以上のドーパントの有無にかかわらずベーマイト(AlOOH)を含み、更に好適には、アルミニウム含有組成物は、ベーマイトと、シリカと、1以上のドーパントとを含む。
【0014】
シリカがアルミニウム含有組成物において存在する場合、SiOの含有量は、SiO、酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム(aluminum oxide hydroxide)、及び三水酸化アルミニウムの総乾燥質量に対し、1重量パーセント~40重量パーセントであり、好適には1重量パーセント~20重量パーセントである。
好適には、アルミニウム含有組成物は、三水酸化アルミニウムを含まず、酸化アルミニウム又は水酸化酸化アルミニウムのみを更に含む。
【0015】
ベーマイトは、ベーマイト自体と、擬ベーマイトとを含む。ベーマイトは、分子式がAlOOH*xHOであり、xが0~0.5である任意のアルミナとして定義できる。水酸化酸化アルミニウムは、ベーマイトと同一である。アルミナは、酸化アルミニウム及び/又は水酸化酸化アルミニウムを意味すると理解されている。酸化アルミニウムは、Alである。
【0016】
ドーパントは、アルカリ土類金属、Zr、Tiなどの遷移金属、希土類元素、又はそれらの混合物の酸化物又は水溶性の塩にできる。好適には、その含有量は、酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、及び三水酸化アルミニウムの総質量に基づいて酸化物として計算して、0重量パーセント~10重量パーセント、更に好適には0重量パーセント~5重量パーセントである。遷移金属は、好適にはMn、Fe、Cu、Nb、Zr、Ti、又はそれらの混合物であり、更に好適には、Zr、Ti、又はそれらの混合物である。ドーパントは、アルカリ土類金属の炭酸塩、特に炭酸バリウムにできる。
【0017】
アルミニウム含有組成物は、乾燥粉末の形態又はアルミニウムの懸濁液の形態において提供できる。アルミニウム含有組成物がアルミニウムの懸濁液の形態である場合、懸濁液は、好適には2:98~20:80の重量比で、アルミニウム含有組成物と少なくとも水とを含む。アルミニウムの懸濁液は、カルボン酸又はアンモニアなどのpHを調整する添加剤、好適には酢酸などのモノカルボン酸を更に含むことができる。
【0018】
アルミニウムの懸濁液は好適にはベーマイト懸濁液であり、ベーマイトは、最も好適には水熱劣化工程を含むアルミニウムアルコキシドの加水分解によって調製される。水熱劣化工程は、100℃~300℃、好適には120℃~240℃で、0.5時間~30時間、好適には3時間~10時間行われ、時間及び温度は別個に選択される。
【0019】
ビスマス水溶液は、好適には水溶性のBi3+の塩、更に好適には硝酸ビスマス又はクエン酸ビスマス、最も好適にはクエン酸ビスマスを含む。当該塩の陰イオンは、好適には有機酸などの有機化合物である。ビスマス水溶液のpH値は、4~9、好適には6~8である。
【0020】
接触は、(a)アルミニウム含有組成物、好適にはアルミニウムの懸濁液をビスマス水溶液と混合して、アルミニウムビスマスの中間体を形成すること、又は(b)乾燥粉末の形態のアルミニウム含有組成物にビスマス水溶液の含浸をさせて、アルミニウムビスマスの中間体を形成することのいずれかを意味している。アルミニウム含有組成物がシリカ含有酸化アルミニウムであるか、あるいは、シリカ含有酸化アルミニウムを含む場合、工程(iii)には「含浸(impregnation)」があり、アルミニウム含有組成物がベーマイトであるか、あるいはベーマイトを含む場合、工程(iii)には「混合(mixing)」がある。
【0021】
アルミニウム含有組成物の含浸は、当該技術分野で既知の任意の含浸方法によって行うことができ、好適には初期湿潤含浸によって行うことができる。当該方法は、80~100%のアルミニウム含有組成物にビスマス水溶液の含浸をさせるために提供される。「%」は、(添加された液体の体積)/(細孔容積)の比を意味している。
【0022】
アルミニウム懸濁液がビスマス水溶液と混合される場合、当該方法は、アルミニウムビスマスの中間体を、乾燥、好適には噴霧乾燥させて、か焼が後になされるアルミニウムビスマスの中間体の乾燥体を形成する工程を更に含むことができる。
【0023】
アルミニウムビスマスの中間体又はアルミニウムビスマスの中間体の乾燥体は、500℃~1000℃、より好適には600℃~900℃、更に好適には500℃~700℃の温度で、温度とは独立して、0.5時間以上、好適には0.5時間~5時間、好適には3時間か焼される。
【0024】
本開示の第2態様によると、本開示の方法によって調製されたアルミナビスマス触媒担体が提供される。
【0025】
本開示の第3態様によると、
(i)80重量パーセント以上の遷移アルミナ系の材料と、
(ii)結晶化度の値CBiが10未満であること、好適には結晶化度の値CBiが3未満であることに特徴づけられる、1重量パーセント~20重量パーセントの酸化ビスマスと
を含む
アルミナビスマス触媒担体が提供される。
【0026】
遷移アルミナ系の材料は、好適には酸化アルミニウム、シリカ、及び/又はドーパントであるか、あるいは酸化アルミニウム、シリカ、及び/又はドーパントを含むことができる。更に好適には、遷移アルミナ系材料は、酸化アルミニウム、シリカ、及び1以上のドーパントを含む。
【0027】
遷移アルミナ系の材料は、好適にはガンマ酸化アルミニウム、デルタ酸化アルミニウム、若しくはシータ酸化アルミニウム、又はそれらの混合物を含む。
【0028】
遷移アルミナ系の材料は、好適には50重量パーセント以上の酸化アルミニウムを含む。
【0029】
シリカがアルミニウム含有組成物において存在する場合、SiOの含有量は、シリカ及び酸化アルミニウムの酸化物の質量に対し、1重量パーセント~40重量パーセント、好適には1重量パーセント~20重量パーセントである。
【0030】
ドーパントは、アルカリ土類金属、Zr、Tiなどの遷移金属の酸化物、希土類金属、又はそれらの混合物の酸化物にできる。好適には、その含有量は、酸化アルミニウム、シリカ、及びドーパントの総質量に基づいて酸化物として計算して、0重量パーセント~10重量パーセント、好適には0重量パーセント~5質量重量パーセントである。遷移金属は、好適にはMn、Fe、Cu、Nb、Zr、Ti、又はそれらの混合物であり、更に好適には、Zr、Ti、又はそれらの混合物である。
【0031】
アルミナビスマス触媒担体のBET比表面積は、50m/g~300m/g、好適には100m/g~200m/gである。アルミナビスマス触媒担体の細孔容積は、0.1ml/g~1.5ml/g、好適には0.5ml/g~1.0ml/gである。
【0032】
本開示によると、活性相(貴金属)と助触媒との間の接触が改善された、不均一性触媒の改良物が得られる。上述は、担体材料の基質における助触媒である酸化ビスマスの均一な分散によって達成され、貴金属への助触媒の接近性が良好となり、触媒全体にわたって助触媒と貴金属との配置が均一となる。実質的にX線非晶質状態の酸化ビスマスは、アルミナ系材料の基質において上述のような均一な分散を示す。
【0033】
酸化ビスマスは、アルミナ系材料の基質において均一に分散される。理論と結びつけられないが、本願出願人は、実質的にX線非晶質状態の酸化ビスマスの小結晶の均一な分散により、有益な特性の複合体が得られると考える。X線非晶質状態は、後述するように結晶化度の値で記載できる。
【0034】
本明細書で用いられるような結晶化度は、以下の方法によって決定される。銅(Cu)のKα線を用いたBiのX線回折(XRD:X-ray diffraction)は、2θ=約28度(P4-21cの空間群における021反射)で最も強い反射を含む。遷移系のアルミナ材料のXRDパターンは、2θ=67度で強い反射を含む。上述の2つの反射の規格化した強度比率(式1参照)は、遷移アルミナ系の材料での酸化ビスマスの結晶化度の尺度CBiとなる。
Bi=[(I28-I24)/(I67-I72)]/mBi (式1)
28:約28度での反射の強度
24:約24度での反射の近くの基線の強度
67:約67度での反射の強度
72:約72度での反射の近くの基線の強度
Bi:Biの質量/(Biの質量+遷移アルミナ系の材料の質量)
【0035】
均一性は走査電子顕微鏡(SEM:scanning-electron-microscope )の断面の画像処理によって測定され、選択的に、遷移アルミナ系の材料、酸化ビスマス、及びアルミナビスマス触媒担体の領域の大きさ(domain size)を明らかにする、エネルギー分散型X線分析(EDX:Energy Dispersive X-ray Analysis)の元素マッピングと共に測定される。
【0036】
表面積及び細孔容積は、カンタクローム(Quantachrome)社のQuadrasorbのような一般的な容積測定装置を用いたN物理吸着により液体窒素の温度で測定される。表面積は、BET理論(DIN ISO9277)を用いて決定され、細孔容積は、DIN66131によって決定される。細孔半径の範囲は、18Å~1000Åである。
【0037】
本開示の第4態様によると、酸化触媒用の担体、好適には白金(Pt)及び/又はパラジウム(Pd)を含む酸化触媒用の担体、特に車両の排出規制の用途のためのディーゼル酸化触媒用の担体としての、前述のアルミナビスマス触媒担体の使用が提供される。
【0038】
次に、本開示を、以下の非限定的な実施例及び図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、比較例1~3と比較した、実施例1及び実施例2で得られた粉末の組成物のXRDであり、Biの結晶化度の違いを示している。
図2図2は、比較例4と比較した、実施例3で得られた粉末の組成物のXRDであり、BiのXRDのシミュレーションパターンと共に、Biの結晶化度の違いを示している。
【発明を実施するための形態】
【0040】
[実施例1]
(ベーマイト及びシリカを含むアルミニウム含有組成物)
3重量パーセントのBiで酸化ビスマスをドープしたシリカアルミナは、本開示により調製された。
【0041】
クエン酸ビスマス溶液は、516gのクエン酸ビスマスを1.7kgのHOに添加することによって調製した。25重量パーセントのNH溶液は、190g添加され、pH7の透明な溶液を得た。クエン酸ビスマス溶液は、ベーマイト及びシリカを含有するアルミナ懸濁液に、酸化物(SIRAL5)によって算出される95:5の重量比で添加した。混合物は、噴霧乾燥され、950℃で3時間か焼された。
【0042】
[実施例2]
(シリカ含有酸化アルミニウムを含むアルミニウム含有組成物)
3重量パーセントのBiで酸化ビスマスをドープしたシリカアルミナは、本開示により調製された。
【0043】
クエン酸ビスマス溶液は、12.2gのクエン酸ビスマスを148gのHOに添加することによって調製した。25重量パーセントのNH溶液は、4.1g添加され、pH7の透明な溶液を得た。クエン酸ビスマス溶液は、5重量パーセントのSiO(乾燥粉末形態)を含む234gのシリカアルミナ(SIRALOX5)に、初期湿潤含浸によって含浸がなさせた。生成物は、550℃で3時間か焼された。
【0044】
[比較例1]
3重量パーセントのBiで酸化ビスマスをドープしたシリカアルミナは、特許文献2の実施例2によって調製した。
【0045】
7.7gの水においてクエン酸ビスマスが1gであるpH値が2.8の溶液を調製した。当該溶液は、5重量パーセントのSiOを含む19.7gのシリカアルミナ(SIRAL5)と15分間集中的に混合し、120℃で乾燥し、微粉末に粉砕し、500℃で2時間か焼した。
【0046】
[比較例2]
4重量パーセントのBiで酸化ビスマスをドープした、ランタンドープ型のアルミナは、特許文献2の実施例3によって調製した。
【0047】
2gのランタン(La)ドープ型のアルミナに、4mlのHO及び1mlの氷酢酸における0.111gの酢酸ビスマスの溶液は添加された。得られたペーストは、室温で60分間機械的に混合され、130℃で2.5時間乾燥され、微粉末に粉砕され、500℃で1時間か焼された。材料は、3重量パーセントのLaを含有した。
【0048】
[比較例3]
3重量パーセントのBiで酸化ビスマスをドープしたシリカアルミナは、特許文献1の実施例3によって調製した。
【0049】
5重量パーセントのSiOを含む40gのシリカアルミナの水性懸濁液は、d90である19μmに湿式粉砕した。次いで、2.1gの硝酸ビスマスの希釈硝酸溶液が添加された。混合物は噴霧乾燥され、500℃でか焼された。
【0050】
[実施例3]
(シリカ含有酸化アルミニウムを含むアルミニウム含有組成物)
クエン酸ビスマス溶液は、3.7gのクエン酸ビスマスを16.1gのHOに添加することによって調製した。25重量パーセントのNH溶液は、1.2g添加され、pH7の透明な溶液を得た。
【0051】
クエン酸ビスマス溶液は、5重量パーセントのSiOを含むシリカアルミナ(SIRALOX5)の乾燥粉末18gに含浸させた。生成物は、550℃で3時間か焼した。
【0052】
[比較例4]
10重量パーセントのBiで酸化ビスマスをドープしたシリカアルミナは、特許文献1の実施例15によって調製した。
【0053】
3.88gの硝酸ビスマス五水和物は、2Mの硝酸に溶解され、5重量パーセントのSiOを含むシリカアルミナ18gに含浸させた。生成物は、105℃で乾燥され、500℃でか焼された。
【0054】
結果は、図1及び図2、並びに表1に概要を示す。本開示によって調製された組成物は、先行技術によって調製された組成物と比較して、Biについて結晶化度が実質的に更に小さいことによって特徴づけられている。
【0055】
【表1】
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2021-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナビスマス触媒担体を調製する方法であって、
(i)ベーマイトを含むアルミニウム含有組成物、又はシリカ含有酸化アルミニウムを含むアルミニウム含有組成物を提供する工程と、
(ii)ビスマス塩と、窒素を含有する塩基とを含み、pH値が4~9のビスマス水溶液を提供する工程と、
(iii)前記アルミニウム含有組成物の前記ビスマス水溶液との接触を行って、アルミニウムビスマスの中間体を形成する工程であって、
工程(i)の前記アルミニウム含有組成物がベーマイトを含む場合においては、乾燥粉末の形態又は懸濁液の形態の前記アルミニウム含有組成物を前記ビスマス水溶液と混合することによって前記接触が行われて、アルミニウムビスマスの中間体を形成するか、あるいは
工程(i)の前記アルミニウム含有組成物がシリカ含有酸化アルミニウムを含む場合においては、乾燥粉末の形態の前記アルミニウム含有組成物に前記ビスマス水溶液を含浸させることによって前記接触が行われて、アルミニウムビスマスの中間体を形成する
工程と、
(iv)アルミニウムビスマスの前記中間体をか焼して、アルミナビスマス触媒担体を形成する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記アルミニウム含有組成物は、1以上のドーパントを更に含み、前記1以上のドーパントは、アルカリ土類金属、遷移金属、希土類金属、又はそれらの混合物の酸化物又は水溶性の塩、好適にはZr又はTiの酸化物又は水溶性の塩を含
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ベーマイトを含む前記アルミニウム含有組成物は、シリカを更に含む
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルミニウム含有組成物がシリカを含む場合において、前記シリカの含有量は、シリカ、並びに前記酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、及び/又は三水酸化アルミニウムの酸化物の質量に対し、1重量パーセント~40重量パーセントであり、好適には、1重量パーセント~20重量パーセントであり、最も好適には、2重量パーセント~10重量パーセントである
請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記懸濁液は、好適には2:98~20:80の重量比で、前記アルミニウム含有組成物と少なくとも水とを含む
請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アルミニウム含有組成物の含浸は、初期湿潤含浸を含む
請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記シリカ含有酸化アルミニウムの組成物における前記酸化アルミニウムは、1以上の遷移アルミナ、好適にはγ-アルミナであるか、あるいは、1以上の遷移アルミナ、好適にはγ-アルミナを含む
請求項1、、及びのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
乾燥粉末の形態又は懸濁液の形態において提供されるベーマイトを含む前記アルミニウム含有組成物が、前記ビスマス水溶液と混合される場合において、アルミニウムビスマスの前記中間体を乾燥、好適には噴霧乾燥させて、か焼が後になされるアルミニウムビスマスの中間体の乾燥体を形成する工程を更に含む
請求項1、2、及びのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
アルミニウムビスマスの前記中間体又はアルミニウムビスマスの前記中間体の乾燥体は、500℃~1000℃、より好適には600℃~900℃、更に好適には500℃~700℃の温度で、0.5時間以上、好適には0.5時間~5時間か焼される
請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記窒素を含む塩基は、アンモニアである
請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法により得られる
アルミナビスマス触媒担体。
【請求項12】
(i)80重量パーセント以上の遷移アルミナ系の材料と、
(ii)結晶化度の値CBiが10未満であること、好適には、結晶化度の値CBiが3未満であることに特徴づけられる、1重量パーセント~20重量パーセントの酸化ビスマスと
を含むアルミナビスマス触媒担体であって、
前記結晶化度の値C Bi は、銅のKα線を用いた前記アルミナビスマス触媒担体のX線回折パターンと、式1
Bi =[(I 28 -I 24 )/(I 67 -I 72 )]/m Bi (式1)
から決定され、
28 が、約28度での反射の強度であり、
24 が、約24度での反射の近くの基線の強度であり、
67 が、約67度での反射の強度であり、
72 が、約72度での反射の近くの基線の強度であり、
Bi が、Bi の質量/(Bi の質量+遷移アルミナ系の材料の質量)である
アルミナビスマス触媒担体
【請求項13】
前記遷移アルミナ系の材料は、アルミナ、好適にはガンマ相、デルタ相、又はシータ相のアルミナを含み、選択的には、更にシリカ及び/又はドーパントを含む
請求項12に記載のアルミナビスマス触媒担体。
【請求項14】
(a)50m/g~300m/g、好適には100m/g~200m/gのBET比表面積、及び/又は
(b)0.1ml/g~1.5ml/g、好適には0.5ml/g~1.0ml/gの細孔容積
のうちの1以上の特性によって更に特徴づけられ
前記細孔容積は、DIN66131によるN 物理吸着で測定される
請求項1113のいずれか一項に記載のアルミナビスマス触媒担体。
【請求項15】
請求項1~のいずれか一項に記載の方法によって得られる
請求項1214のいずれか一項に記載のアルミナビスマス触媒担体。
【請求項16】
酸化触媒用の担体、好適には白金(Pt)及び/又はパラジウム(Pd)を含む酸化触媒用の担体、特に、車両の排出規制の用途のためのディーゼル酸化触媒用の担体としての
請求項1115のいずれか一項に記載のアルミナビスマス触媒担体の使用。
【国際調査報告】