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  • 特表-溶接装置及び溶接方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】溶接装置及び溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/20 20060101AFI20230222BHJP
【FI】
B23K9/20 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535966
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(85)【翻訳文提出日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2020085279
(87)【国際公開番号】W WO2021122222
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】19218010.7
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, LIECHTENSTEIN
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス シュターツェングルーバー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ドェルナー
(72)【発明者】
【氏名】アレキサンダー シュパイクナー
(57)【要約】
本発明は、溶接スタッドを基板に溶接するための装置及び方法に関する。溶接電流は、溶接スタッドと基板との間の溶接スタッドに印加され、それによって溶接スタッド及び基板の材料が部分的に液化される。次いで、溶接スタッドは、溶接スタッド及び/又は基板の固化しつつある材料に浸漬されて、溶接スタッドと基板との間に一体的な接合を確立する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接スタッドを基板に溶接するための装置であって、スタッドホルダと、前記溶接スタッド及び/又は前記基板の材料を部分的に液化するように前記溶接スタッドに溶接電流を印加するための溶接電流接点要素と、コイルを含むスタッド搬送装置と、前記溶接スタッドの動作の持続時間及び/若しくは速度、並びに/又は前記溶接スタッドの位置を判定するための判定装置であって、前記コイルのインダクタンス又は前記コイルのインダクタンスを表す変数を検出するための検出装置を含む、判定装置と、を備える、装置。
【請求項2】
前記スタッド搬送装置が、前記コイルを有するリフト磁石を含み、前記コイルによって生成される磁場によって前記溶接スタッドを駆動して、前記基板から離れるリフト動作及び/又は前記基板上への浸漬動作を実行する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記スタッド搬送装置が、前記基板から前記溶接スタッドをリフトするためのスタッドリフト装置を含む、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記スタッド搬送装置が、前記溶接スタッド及び/又は前記基板が前記溶接電流によって部分的に液化されるときに、前記溶接スタッド及び/又は前記基板の前記液化された材料に前記溶接スタッドを浸漬するためのスタッド浸漬装置を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
特に前記判定装置を含む、制御装置を更に備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記コイルの前記インダクタンスの設定値又は前記コイルの前記インダクタンスを表す前記変数が記憶されているデータメモリを更に備え、前記制御装置が、前記検出装置によって検出された変数を前記設定値と比較するのに、特にそこから差を形成するのに適している、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記制御装置が、インダクタンス、又は前記検出装置によって検出された前記インダクタンスを表す変数に応じて、前記スタッド搬送装置を制御することを意図している、請求項5又は6に記載の装置。
【請求項8】
前記制御装置が、前記検出された変数に応じて、前記溶接作業の1つ以上のパラメータを制御することを意図している、請求項5~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記制御装置が、前記溶接電流の電圧及び/若しくは電流強度、並びに/又は前記溶接スタッドの動作の速度、及び/若しくは位置、及び/若しくは方向を制御することを意図している、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
溶接スタッドを基板に溶接するための方法であって、
a)溶接スタッドを提供する工程と、
b)前記溶接スタッドと前記基板との間の前記溶接スタッドに溶接電流を印加する工程と、
c)前記溶接スタッド及び/又は前記基板の材料を部分的に液化する工程と、
d)前記溶接スタッドを、コイルを含むスタッド搬送装置によって、固化する前に前記溶接スタッド又は前記基板の液化された材料に浸漬する工程と、
e)前記スタッド搬送装置によって、前記溶接スタッド及び/又は前記基板の前記液化された材料にもたらされる前記溶接スタッドの前記浸漬動作を特徴付ける1つ以上の変数を判定する工程と、
f)前記コイルのインダクタンス又は前記コイルの前記インダクタンスを表す変数を検出する工程と、
を含む方法。
【請求項11】
前記スタッド搬送装置が、コイルを含むリフト磁石を含み、前記溶接スタッドが、前記コイルによって生成される磁場によって駆動されて、前記基板から離れるリフト動作及び/又は前記基板に向かう浸漬動作を実行する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記検出装置によって検出された変数が、前記コイルの前記インダクタンスの設定値又は前記コイルの前記インダクタンスを表す前記変数、特にそこから形成される差と比較される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記スタッド搬送装置が、インダクタンス、又は前記検出装置によって検出された前記インダクタンスを表す変数に応じて制御される、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記溶接作業の1つ以上のパラメータが、前記検出された変数に応じて制御される、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記溶接電流の電圧及び/若しくは電流強度、並びに/又は前記溶接スタッドの動作の速度、及び/若しくは位置、及び/若しくは方向が制御される、請求項14に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、スタッドを基板に固定する(留め付ける)ための装置及び方法、並びにまたそのようなスタッドに関する。
【背景技術】
【0002】
異なる用途において、様々なスタッドを基板(被留め付け材)に固定する(留め付ける)ための多くの既知の装置及び方法がある。例えば、スタッドを基板に接触させて、そこに電流が加えられる。スタッドと基板との間を電流が流れると、直ちにそのタッドは、基板からリフトオフされてアークを形成する。放出されるエネルギーにより、スタッド及び基板の材料が部分的に液化される。次いで、スタッドが、液化された材料に浸漬されてから、この材料が冷却されて固体になる。スタッドは、最終的に基板に接合される。スタッド及び基板の材料を十分短い時間で液化するのに必要なエネルギーを提供するために、非常に高い強度の電流を生成し、対応する定格の電気ケーブルを使用して電流をスタッドに供給する装置が知られている。液化された材料の酸化を避けるため、スタッドと基板との間の接触領域を不活性ガスで取り囲むことが知られている。
【0003】
例えば、建造物又は造船における用途の場合、アイテムを基板に固定するために、アイテムがねじ込まれる様々なサイズのねじ付きスタッドが使用される。例えば、電流の持続時間及び電力などの固定方法のいくつかのパラメータは、ユーザが装置上に設定するべきであり、使用されるスタッドに適合させるべきである。ユーザは、最終的に、目視検査によってスタッドと基板との間の接続品質を評価する。それゆえ、接続品質もまた、ユーザの経験及び能力に依存する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、スタッドの基板への固定(留め付け)がより容易にされ、及び/又は改善される、装置及び/又は方法を提供することである。
【0005】
この目的は、溶接スタッドを基板に溶接するための装置において達成され、装置は、スタッドホルダと、溶接スタッド及び/又は基板の材料を部分的に液化するように溶接スタッドに溶接電流を印加するための溶接電流接点要素と、コイルを含むスタッド搬送装置と、特にリフト動作及び/又は浸漬動作の前、最中、又は後の、溶接スタッドの動作、例えばリフト動作若しくは浸漬動作の持続時間及び/若しくは速度、並びに/又は溶接スタッドの位置を判定するための判定装置であって、コイルのインダクタンス又はコイルのインダクタンスを表す変数を検出するための検出装置を含む、判定装置と、を備える。加えて、装置は、好ましくは、溶接スタッドと基板との間に流れる溶接電流を維持しながら、特に好ましくは溶接スタッドと基板との間にアークを形成しながら、基板から溶接スタッドをリフトするためのスタッドリフト装置を備える。同様に、スタッドホルダは、好ましくは、溶接電流接点要素を含む。
【0006】
更なる本発明の有利な態様は、スタッド搬送装置が、コイルを有するリフト磁石を含み、コイルによって生成される磁場によって溶接スタッドを駆動して、基板から離れるリフト動作及び/又は基板上への浸漬動作を実行することを含む。更なる有利な態様は、スタッド搬送装置が、スタッドリフト装置として、及び/又はスタッド浸漬装置として形成されることを含む。
【0007】
更なる有利な態様は、装置が好ましくは判定装置を有する制御装置を含むことを含む。制御装置は、好ましくは、インダクタンス、又は検出装置によって検出されたインダクタンスを表す変数に応じて、スタッド搬送装置を制御することを意図している。制御装置はまた、好ましくは、検出された変数に応じて溶接作業の1つ以上のパラメータを制御することを意図している。制御装置は、溶接電流の電圧及び/若しくは電流強度、並びに/又は溶接スタッドの動作の速度、及び/若しくは位置、及び/若しくは方向を制御することを意図することが特に好ましい。有利な態様は、制御装置が、以前の溶接作業中に検出装置によって検出された変数に応じて、後続の溶接作業の1つ以上のパラメータを制御するのに適していることを含む。その結果、いくつかの状況では、確認されている溶接作業のパラメータの変化を補償することが可能である。その結果、いくつかの状況では、溶接スタッドと基板との間の溶接接続の品質の客観的な評価が可能になる。更なる有利な態様は、装置が、コイルのインダクタンスの設定値又はコイルのインダクタンスを表す変数が記憶されているデータメモリを備えることを含み、制御装置は、検出装置によって検出された変数を設定値と比較するのに適している。制御装置は、好ましくは、検出装置によって検出された変数と設定値との間の差を形成するのに適している。
【0008】
更なる有利な態様は、装置が、判定された変数に関する情報及び/又は判定された変数から導出された情報を出力するための出力装置を備えることを含む。出力装置は、視覚ディスプレイ及び/又は無線送信装置を含むことが好ましい。出力装置によって出力され得る情報は、好ましくは、溶接作業の品質に関する情報、及び/又は溶接作業を改善するための手段に関する情報を含む。
【0009】
この目的はまた、溶接スタッドを基板に溶接するための方法において達成され、方法では、溶接スタッドが提供され、溶接スタッドと基板との間に溶接電流が印加され、溶接スタッド及び/又は基板の材料が部分的に液化されて固化され、溶接スタッドが、コイルを含むスタッド搬送装置によって、固化する前に溶接スタッド又は基板の液化された材料に浸漬され、スタッド搬送装置によって、溶接スタッド及び/又は基板の液化された材料にもたらされる溶接スタッドの浸漬動作を特徴付ける1つ以上の変数が判定され、コイルのインダクタンス又はコイルのインダクタンスを表す変数が検出される。溶接スタッドは、好ましくは、溶接スタッドと基板との間に流れる溶接電流を維持しながら、特に好ましくは溶接スタッドと基板との間にアークを形成しながら、基板からリフトオフされる。スタッド搬送装置は同様に、好ましくは、コイルを含むリフト磁石を含み、溶接スタッドは、コイルによって生成される磁場によって駆動されて、基板から離れるリフト動作及び/又は基板に向かう浸漬動作を実行する。
【0010】
この方法の有利な態様は、検出装置によって検出された変数が、コイルのインダクタンスの設定値又はコイルのインダクタンスを表す変数と比較されることを含む。差は、好ましくは、コイルのインダクタンス又はコイルのインダクタンスを表す変数、及び設定値から形成される。
【0011】
この方法の更なる有利な態様は、スタッド搬送装置が、インダクタンス又は検出装置によって検出されたインダクタンスを表す変数に応じて制御されることを含む。
【0012】
この方法の同様に有利な態様は、溶接作業の1つ以上のパラメータが、検出された変数に応じて制御されることを含む。溶接電流の電圧及び/若しくは電流強度、並びに/又は溶接スタッドの動作の速度、及び/若しくは位置、及び/若しくは方向は、制御されることが好ましい。
【0013】
更なる有利な態様は、後続の溶接作業の1つ以上のパラメータが、以前の溶接作業中に検出されたパラメータに応じて制御されることを含む。
【0014】
更なる有利な態様は、判定された変数に関する情報及び/又は判定された変数から導出された情報が出力されることを含む。この情報は、好ましくは、溶接作業の品質に関する情報及び/又は溶接作業を改善するための手段に関する情報である。
【0015】
以下では、図面を参照して、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】溶接装置を概略的に示す図である。
図2】溶接ガンを概略的に示す図である。
図3】溶接方法のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1では、溶接スタッド20を基板30に溶接するための溶接装置10が概略的に表されている。溶接スタッド20の材料及び基板30の材料は、導電性であり、特に金属である。溶接装置10は、押しボタンスイッチとして形成されたトリガスイッチ41を有する溶接ガン40、溶接ユニット50、第1の電気ケーブル61、接続端子63を有する第2の電気ケーブル62、例えば電力ケーブルとして形成された電気供給ケーブル64、電気通信ライン65、ガスシリンダーとして形成されたガス貯蔵器70、管状ガス供給ライン71、及びガスホース72を含む。
【0018】
第1のケーブル61は、溶接ユニット50を介して溶接スタッド20に電流を供給するのに役立つ。第2のケーブル62は、接続端子63が基板30にクランプされたときに、基板30を溶接ユニット50に電気的に接続するのに役立つ。溶接スタッド20が基板30と接触すると、回路が閉じ、それによって、例えば直流又は交流の形態の溶接電流が、溶接ユニット50を介して溶接スタッド20に印加され得る。この目的のため、溶接ガン40は、図1に示されていない溶接電流接点要素を含む。溶接ユニット50は、所望の電圧及び電流強度で溶接電流を提供するために、例えば電気コンデンサ、サイリスタ、絶縁ゲート電極を有するバイポーラトランジスタ又はパワーエレクトロニクスからの他の構成要素及びマイクロプロセッサを有する関連する制御ユニットも含む、供給ケーブル64からの電流を溶接電流に変換するための図示されていない装置を含む。
【0019】
ガス供給ライン71及びガスホース72は、溶接作業中に周囲領域からの酸素による酸化から接触領域を保護するために、溶接スタッド20と基板30との間の接触領域にガス貯蔵器70からの不活性ガスを供給するのに役立つ。接触領域へのガスの流れを制御するために、ガス貯蔵器70、ガス供給ライン71、溶接ユニット50、ガスホース72、又は溶接ガン40は、バルブ(図示せず)、特に制御可能バルブを含む。
【0020】
溶接ユニット50は、作動要素52を有する入力装置51と、視覚表示要素54及び無線送信ユニットを有する出力装置53とを有する。入力装置51は、例えば、電圧、電流強度、溶接電流の電力及び持続時間、スタッドの位置及び速度など、溶接装置10のユーザにより、溶接装置10で実行される溶接方法のパラメータを入力するのに役立つ。出力装置53は、例えば、溶接方法のパラメータに関する情報、溶接方法又は他の変数の検出された放射に関する情報、溶接作業の品質に関する情報、溶接作業を改善するための手段に関する情報、溶接スタッドの検出された特性に関する情報、若しくは前述の変数から導出される情報、並びに/又は溶接装置10、特に溶接ガン40を洗浄及び/若しくは維持するための推奨事項若しくは指示である情報をユーザに出力するのに役立つ。
【0021】
通信ライン65は、溶接ガン40、特に図1に示されていない溶接ガン40の制御装置と、溶接ユニット50、特に制御ユニット並びに/又は入力装置51及び/若しくは出力装置53との間の通信に役立つ。例えば、この通信により、例えば溶接電流の溶接スタッド20の移動との同期を達成し、又はこれをより容易にするために、溶接作業のパラメータに関する情報の交換が達成される。図示されていない実施例の場合、溶接ガンと溶接ユニットとの間の通信は、無線で、無線通信により、又は溶接電流を搬送する第1の電気ケーブルにより行われる。
【0022】
図2では、基板30に固定するための溶接スタッド20を有する溶接ガン40がより詳細に示されている。溶接ガン40は、開口部46を備えたハウジング42を有し、ハンドル43は、そのハウジング42から突出したトリガスイッチ41を有する。また、第1の電気ケーブル61、接続端子63が基板30にクランプされた第2の電気ケーブル62、電気通信ライン65、及びガスホース72も示されている。溶接ガン40はまた、スタッドホルダ44を有し、その上で溶接スタッド20が溶接作業中に保持される。この目的のため、スタッドホルダは、例えば、(詳細に示されていない)2つ、3つ、4つ又はそれを超える弾性アームを含み、それらの間に溶接スタッド20がクランプ嵌合によって挿入及び保持される。溶接ガン40はまた、溶接電流を溶接スタッド20に印加するための、例えば1つ以上の弾性アームの形態でスタッドホルダ44に組み込まれた溶接電流接点要素45を有する。
【0023】
溶接ガン40はまた、溶接ガン及び溶接ユニット50の様々な構成要素及び装置を制御するための制御装置200を有する。制御装置200は、溶接作業の1つ以上のパラメータを制御することを意図している。この目的のため、制御装置200は、例えば、1つ以上のマイクロプロセッサ、1つ以上の一時的又は恒久的なデータメモリなどの様々な電子構成要素を備える。
【0024】
溶接ガン40はまた、第1のリフト磁石として形成されたスタッドリフト装置80と、第2のリフト磁石として形成されたスタッド浸漬装置90とを有する、スタッド搬送装置100を備える。スタッドリフト装置80は、第1のコイル85を有し、第1のコイル85が通電されて、例えば磁場によってスタッドホルダ44の軟磁性材料に磁気抵抗力を加えることによって、スタッドリフト装置80が作動されると、開口部46から後方に離れる力で(図2では上向きに)スタッドホルダ44に作用する。この目的のため、スタッドホルダ44は、例えば、その外周に第1の鉄又は鋼のリング(図示せず)を有する。制御装置200は、スタッドリフト装置80を制御し、特にそれを作動及び非作動させるために、図示されていない信号線を介してスタッドリフト装置80と通信する。
【0025】
スタッド浸漬装置90は、第2のコイル95を有し、第2のコイル95が通電されて、例えば磁場によってスタッドホルダ44の軟磁性材料に磁気抵抗力を加えることによって、スタッド浸漬装置90が作動されると、開口部46に前方に向かう力で(図2では下向きに)スタッドホルダ44に作用する。この目的のため、スタッドホルダ44は、例えば、その外周に第2の鉄又は鋼のリング(図示せず)を有する。制御装置200は、スタッド浸漬装置90を制御し、特にそれを作動及び非作動させるために、図示されていない信号線を介してスタッド浸漬装置90と通信する。図示されていない実施例の場合、スタッド浸漬装置は、スタッドリフト装置がスタッドホルダを後方に動作させると張力がかかり、スタッドリフト装置が非作動となるとすぐにスタッドホルダを前方に動作させる、ばね要素として形成される。
【0026】
溶接ガン40は、溶接スタッド20の1つ以上のスタッド特性を検出するための識別装置220も有する。図示されていない信号線を介して、制御装置200は、検出されたスタッド特性を表す信号を受信し、それに応じて溶接作業の制御を実行するために識別装置と通信する。図示されていない実施例の場合、識別要素は、溶接スタッドのパッケージに取り付けられ、特に携帯電話又は同様の装置により、例えばQRコード(登録商標)又はRFID(Radio Frequency Identification)により読み取られる。
【0027】
溶接ガン40はまた、溶接作業中に溶接スタッド20と基板30との間に印加される電圧を検出するための電圧検出装置231と、溶接作業中に溶接スタッド20と基板30との間に流れる電流の強度を検出するための電流強度検出装置232とを含む。この目的のため、電圧検出装置231は、好ましくは、基板30の電位をタップするための、例えば開口部46に取り付けられた測定用接点を含む。図示されていない信号線を介して、制御装置200は、電圧又は電流強度を表す信号を受信するために、電圧検出装置231及び電流強度検出装置232と通信し、それらをデータメモリの1つに記憶し、以前の溶接作業中に検出装置231、232によって検出されたパラメータに応じて後続の溶接作業の1つ以上のパラメータを制御する。
【0028】
溶接ガン40、特に制御装置200は、溶接スタッドの動作、例えば、リフト動作又は浸漬動作の持続時間及び/若しくは速度、並びに/又は浸漬動作の前、最中、若しくは後の溶接スタッドの位置を判定するための判定装置210を備える。一方、判定装置210は、第1のコイル85及び/若しくは第2のコイル95のインダクタンス、又は第1のコイル85及び/若しくは第2のコイル95のインダクタンスを表す変数を検出するための検出装置250を含む。第1のコイル85及び第2のコイル95のインダクタンスは、スタッドホルダ44の位置、したがって溶接スタッド20の位置により影響を受けるため、溶接スタッド20の位置に関して検出されたインダクタンスから結論を引き出すことが可能である。コイル85、95のインダクタンスを検出するために、検出装置250は、コイル85、95に電流を印加し、定常状態を待機するために所定の期間後に再びオフにされ、それによって、フリーホイールフェーズが始まり、電流が基準値を下回るまで減少する。フリーホイールフェーズの持続時間は、コイル85、95のインダクタンスに比例するため、インダクタンスを表す変数を表す。溶接スタッド20の位置を判定するために、判定装置210は、溶接スタッド20の1つ以上の較正位置において検出された記憶値を使用する。可能な較正位置には、例えば、基板上に配置される前、基板上に配置された後、溶接作業前、溶接作業後などでの、溶接スタッド20の位置が含まれる。
【0029】
制御装置200は、リフト動作前又は浸漬動作後に判定装置210によって判定された溶接スタッド20の2つの位置間の差を導出し、それによって溶接スタッド20と基板30との間の溶接接続の品質を評価するのに適している。加えて、制御装置200は、判定装置210によって判定された変数に応じて、したがってインダクタンス又は検出装置250によって検出されたインダクタンスを表す変数に応じて、スタッド搬送装置100、及び/又は溶接作業の1つ以上のパラメータ、例えば、溶接電流の電圧及び/若しくは電流強度、並びに/又は溶接スタッド20の速度及び/若しくは位置及び/若しくは動作方向などを制御するのに適している。制御装置200は、好ましくは、判定装置210によって判定された、及び/又は以前の溶接作業中に検出装置250によって検出された変数に応じて、後続の溶接作業の1つ以上のパラメータを制御するのに適している。これにより、確認された溶接作業のパラメータの変化を補正するだけでなく、溶接スタッドと基板との間の溶接接続の品質を客観的に評価することが可能になる。コイル85、95のインダクタンスの設定値、又はコイル85、95のインダクタンスを表す変数は、制御装置200のデータメモリに記憶されている。制御装置200は、検出装置250によって検出された変数を設定値と比較し、検出装置250によって検出された変数と設定値との間の差を形成し、且つ後続の溶接作業においてこれを補償するのに適している。
【0030】
溶接ガン40はまた、作動要素152を有する入力装置151と、視覚表示要素及び無線送信ユニットを有する出力装置153とを含む。制御装置200は、図示されていない信号線を介して入力装置151及び出力装置153と通信して、入力装置151によって入力された情報を受信し、又は出力すべき情報を出力装置153に送信する。
【0031】
図3は、溶接スタッドを基板に、例えば溶接スタッド20を基板30に溶接するための方法500を概略的に示している。第1のステップ501では、基板が提供される。更なるステップ502では、制御装置を備えた溶接装置が提供される。更なるステップ503では、溶接スタッドが提供される。
【0032】
更なるステップ504では、例えば、それに続く溶接作業の所望のパラメータに関する情報が、入力装置を介してユーザにより入力される。更なるステップ505では、溶接スタッドの1つ以上のスタッド特性が、識別装置によって検出される。更なるステップ506では、検出されたスタッド特性に関する情報及び/又は検出されたスタッド特性から導出された情報が、出力装置を介して出力される。
【0033】
更なるステップ507では、溶接スタッドと基板との間の溶接スタッドに溶接電流が印加される。更なるステップ508では、溶接スタッドと基板との間に流れる溶接電流を維持しながら、スタッドリフト装置によって溶接スタッドを基板からリフトオフし、溶接スタッドと基板との間にアークを形成する。更なるステップ509では、溶接スタッド及び/又は基板の材料は、特にアークによって生成される熱に起因して、部分的に液化される。更なるステップ510では、溶接スタッドは、スタッド浸漬装置によって、溶接スタッド又は基板の液化された材料に浸漬される。更なるステップ511では、溶接作業の1つ以上のパラメータが制御される。更なるステップ512では、溶接作業中に生成される放射が、検出装置によって検出される。更なるステップ513では、溶接作業の1つ以上のパラメータが判定される。更なるステップ514では、溶接スタッド及び/又は基板の液化された材料が固化し、それによって溶接スタッドが基板に接合される。更なるステップ515では、溶接作業の1つ以上のパラメータ、及びコイルのインダクタンス又はコイルのインダクタンスを表す変数が、1つ以上の検出装置によって検出及び記憶される。溶接スタッドは、好ましくは、基板から離れるリフト動作及び/又は基板に向かう浸漬動作を実行するために、コイルによって生成される磁場によって駆動される。
【0034】
更なるステップ516では、現在の溶接作業中に1つ以上の検出装置によって検出されたパラメータが、データメモリに記憶されたパラメータ又は設定値と比較され、現在の溶接作業中に検出装置によって検出されたパラメータとデータメモリに記憶されているパラメータとの間の差、及び/又はそのような差から導出された情報が出力される。更なるステップ516では、後続の溶接作業の1つ以上のパラメータが、以前の溶接作業中に検出されたパラメータに応じて制御される。更なるステップ517では、情報が出力装置を介して出力される。更なるステップ518では、溶接作業が実行された後、溶接作業の品質評価がユーザによって入力される。更なるステップ519では、ユーザによる入力を使用して、将来の溶接作業の品質を評価する。
【0035】
本発明は、溶接スタッドを基板に溶接するための装置及び方法の実施例に基づいて説明されてきた。記載された実施形態の特徴は、単一の溶接装置又は単一の溶接方法内において必要に応じて互いに組み合わせることもできる。本発明による装置及び本発明による方法は、他の目的に適していることにも留意されたい。

図1
図2
図3
【国際調査報告】