(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】干渉計による位置検知
(51)【国際特許分類】
G01S 3/48 20060101AFI20230222BHJP
G01S 5/04 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
G01S3/48
G01S5/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538354
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(85)【翻訳文提出日】2022-06-20
(86)【国際出願番号】 IB2020057436
(87)【国際公開番号】W WO2021136985
(87)【国際公開日】2021-07-08
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519095016
【氏名又は名称】ディーヨーク ロケイション テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086461
【氏名又は名称】齋藤 和則
(72)【発明者】
【氏名】シュッパック、エラン
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA01
5J062BB05
5J062CC14
(57)【要約】
信号処理の方法は、第1の位置で間隔を置いて配置された第1および第2のアンテナ(34)を介して、第2の位置の無線送信機(27,28,30)から送信された出力信号に応答して、それぞれ第1および第2の入力信号を受信し、そして事前定義された一連のシンボルを符号化するステップを有する。
それぞれ第1および第2の相関ピークを識別するために、事前定義された一連のシンボルの1つまたは複数のシンボルに関して、第1および第2の入力信号に亘って時間相関関数が計算され、そして第1および第2の入力信号の第1および第2の相関ピークにおけるそれぞれ第1および第2のキャリア位相が抽出される。第1および第2の相関ピークで抽出された第1および第2のキャリア位相間の差に基づいて、第1および第2の入力信号間の位相差が測定される。測定された位相差に基づいて、無線送信機から第1の位置への出力信号の到着角度が推定される。本発明の一実施形態によれば、位置検知の方法がさらに提供され、その方法は、異なるそれぞれの第1の位置に複数のアンテナを有する複数の固定送受信機と第2の位置にある1つのモバイル送受信機との間で送信される無線信号を受信するステップを有する。それぞれの固定送受信機のそれぞれの複数のアンテナに関連付けられている受信無線信号間のそれぞれの位相差が検出される。それぞれの位相差に基づいて、それぞれの固定送受信機と1つのモバイル送受信機の間のそれぞれの角度にそれぞれ対応する複数の軌跡が計算される。軌跡の交点を1つのモバイル送受信機の第2の位置として識別することにより、送信機の角度と送信位置に基づいて1つのモバイル送受信機の位置座標が検知される。
【選択図】3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号処理の方法であって:
第1の位置で間隔を置いて配置された第1および第2のアンテナを介して、第2の位置の無線送信機から送信された出力信号に応答して、それぞれ第1および第2の入力信号を受信し、そして事前定義された一連のシンボルを符号化するステップと;
それぞれ第1および第2の相関ピークを識別するために、前記事前定義された一連のシンボルの1つまたは複数のシンボルに関して、前記第1および第2の入力信号に亘って時間相関関数を計算し、そして前記第1および第2の入力信号の前記第1および第2の相関ピークにおけるそれぞれ第1および第2のキャリア位相を抽出するステップと;
前記第1および第2の相関ピークで抽出された前記第1および第2のキャリア位相間の差に基づいて、前記第1および第2の入力信号間の位相差を測定するステップと;そして
測定された前記位相差に基づいて、前記無線送信機から前記第1の位置への出力信号の到着角度を推定するステップと;
を有することを特徴とする、信号処理の方法。
【請求項2】
前記出力信号が、無線ネットワーク内の移動局の単一の送信アンテナから送信される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記出力信号が、送信アンテナ間の事前定義された周期的遅延を伴って、複数の送信アンテナから送信され、
前記時間相関関数を計算するステップは、前記周期的遅延に応答して複数の相関ピークを識別するステップを有し、前記位相差を測定するステップは、前記相関ピーク間の位相差の測定値を計算するステップを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記時間相関関数は、自己相関関数および事前定義された参照信号との相互相関関数からなる関数のグループから選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記事前定義された一連のシンボルを含む事前定義されたプリアンブルを有するフレーム構造を指定する無線通信規格に従って、前記出力信号が送信され、そして、前記入力信号の特定のフレームのプリアンブルの少なくとも一部に亘って前記相関が計算される、ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記相関は、前記無線通信規格によって定義される前記プリアンブル内の1つまたは複数の同期化シンボルについて計算される、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1および第2の入力信号を受信および処理するステップは、無線ネットワークのアクセスポイントにおいて、前記無線送信機と前記アクセスポイント間の関連づけを確立することなく、少なくとも前記第1および第2の入力信号を受信および処理するステップを有する、ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記第1の位置および推定された前記到着角度に基づいて前記第2の位置の座標を計算するステップを有する、ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
第1の位置に配備するための無線装置であって、前記無線装置は:
第1および第2のアンテナであって、間隔を置いて配置され、そして、第2の位置の無線送信機から送信された出力信号に応答して、それぞれ第1および第2の入力信号を受信し、そして事前定義された一連のシンボルを符号化する、第1および第2のアンテナと;
処理回路であって、それぞれ第1および第2の相関ピークを識別するために、前記事前定義された一連のシンボルの1つまたは複数のシンボルに関して、前記第1および第2の入力信号に亘って時間相関関数を計算し、そして前記第1および第2の入力信号の前記第1および第2の相関ピークにおけるそれぞれ第1および第2のキャリア位相を抽出し、前記第1および第2の相関ピークで抽出された前記第1および第2のキャリア位相間の差に基づいて、前記第1および第2の入力信号間の位相差を測定し、そして測定された前記位相差に基づいて、前記無線送信機から前記第1の位置への出力信号の到着角度を推定するように構成される処理回路と;
を有する、ことを特徴とする無線装置。
【請求項10】
前記出力信号が、無線ネットワーク内の移動局の単一の送信アンテナから送信される、ことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記出力信号が、送信アンテナ間の事前定義された周期的遅延を伴って、複数の送信アンテナから送信され、
前記処理回路は、前記時間的相関関数において、前記周期的遅延に応答して複数の相関ピークを識別し、そして前記相関ピーク間の位相差を測定するように構成される、ことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記時間相関関数は、自己相関関数および事前定義された参照信号との相互相関関数からなる関数のグループから選択される、ことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記事前定義された一連のシンボルを含む事前定義されたプリアンブルを有するフレーム構造を指定する無線通信規格に従って、前記出力信号が送信され、そして、前記入力信号の特定のフレームのプリアンブルの少なくとも一部に亘って前記相関が計算される、ことを特徴とする請求項8~12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記相関は、前記無線通信規格によって定義される前記プリアンブル内の1つまたは複数の同期化シンボルについて計算される、ことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記無線装置は無線ネットワークの1つのアクセスポイントからなり、そして前記処理回路は、前記無線送信機との関連づけを確立することなく、少なくとも前記第1および第2の入力信号を受信および処理するように構成される、ことを特徴とする請求項8~12のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
前記処理回路は、前記第1の位置および推定された前記到着角度に基づいて前記第2の位置の座標を計算するように構成される、ことを特徴とする請求項8~12のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
位置を検知するための方法であって:
異なるそれぞれの第1の位置に複数のアンテナを有する複数の固定送受信機と第2の位置にある1つのモバイル送受信機との間で送信される無線信号を受信するステップと;
それぞれの前記固定送受信機のそれぞれの前記複数のアンテナに関連付けられている受信無線信号間のそれぞれの位相差を検出するステップと;
前記それぞれの位相差に基づいて、それぞれの前記固定送受信機と前記1つのモバイル送受信機の間のそれぞれの角度にそれぞれ対応する複数の軌跡を計算するステップと;そして
前記軌跡の交点を前記1つのモバイル送受信機の前記第2の位置として識別することにより、前記送信機の前記角度と送信位置に基づいて前記1つのモバイル送受信機の位置座標を検知するステップと;
を有する、ことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記無線信号を受信するステップは、前記モバイル送受信機によって、前記複数の固定送受信機から送信された前記無線信号を受信するステップを有し、前記複数の軌跡を計算するステップは、前記固定送受信機から前記モバイル送受信機への前記無線信号の出発角度を計算するステップを有する、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記無線信号を受信するステップは、前記モバイル送受信機から送信された無線信号を前記固定送受信機により受信するステップを有し、前記複数の軌跡を計算するステップは、前記固定送受信機から前記モバイル送受信機への前記無線信号の到着角度を計算するステップを有する、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記固定送受信機は共通平面の近くに配置され、前記位置座標を検知するステップは、前記共通平面内の前記モバイル送受信機の位置座標を計算するステップを有する、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記共通平面が人工構造物内の床である、ことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記複数の軌跡が、前記第1の位置の少なくとも1つから前記共通平面を通って延びる少なくとも2つの射線を含む、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項23】
それぞれの前記固定送受信機の前記複数のアンテナがアンテナ間距離によって分離され、前記複数の軌跡を定義するステップは、少なくとも2つの射線間の角度分離を、前記アンテナ間距離と前記無線信号の波長の比率の関数として計算するステップを有する、ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記複数の軌跡を定義するステップは、前記アンテナ間距離と所与の前記固定送受信機の前記無線信号の波長との間の比が1より大きい場合、前記所与の固定送受信機から発せられる少なくとも2つ射線を定義するステップを有し、前記少なくとも2つの射線間の角度分離は180°未満である、ことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
所与の固定送受信機と前記モバイル送受信機との間で空中を介して送信される無線信号が、少なくとも第1および第2の無線信号を有し、当該無線信号は、それぞれ、前記複数のアンテナの第1および第2のアンテナに関連付けられ、かつ両方とも所与の一連のシンボルで変調され、そして
前記それぞれの位相差を検出するステップは、無線で受信される前記第1および第2の無線信号のそれぞれにおいて、前記一連のシンボル内の所与のシンボルを識別し、前記第1および第2の無線信号間の前記所与のシンボルの到着の遅延を測定するステップを有する、ことを特徴とする請求項17~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記第1および第2の無線信号は、前記第1および第2の無線信号の間の事前定義された周期的遅延を有するマルチキャリア符号化スキームを使用して、同一のデータを符号化し、そして前記遅延を測定するステップは、前記それぞれの位相差の検出に前記周期的遅延を適用するステップを有する、ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記所与の一連のシンボルが事前定義されたトレーニング用の一連のシンボルを含み、前記所与のシンボルを識別するステップは、前記トレーニング用の一連のシンボル内の特定の1つのシンボルを検知するステップを有する、ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記それぞれの位相差を検出するステップは、受信された前記無線信号に基づいて、前記それぞれの複数のアンテナと前記モバイル送受信機との間のチャネル状態情報を推定するステップを有し、前記複数の軌跡を計算するステップは、前記チャネル状態情報から前記角度を導出するステップを有する、ことを特徴とする請求項17~24のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記固定送受信機が少なくとも1つの無線アクセスポイントからなり、前記無線信号を受信するステップは、少なくとも1つの前記無線アクセスポイントから前記モバイル送受信機によって受信された前記無線信号を、前記モバイル送受信機と前記少なくとも1つの無線アクセスポイントの間に関連付けを確立せずに、受信および処理するステップを有する、ことを特徴とする請求項17~24のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記固定送受信機の前記第1の位置のマップを格納するステップを有し、前記位置座標を検知するステップは、前記計算された角度を前記マップに参照して、前記マップに対する前記位置座標を検知するステップを有する、ことを特徴とする請求項17~24のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記マップはサーバ上に格納され、そして前記計算された出発角度を前記マップに参照するステップは、受信された前記無線信号に関する情報を前記サーバに送信し、そして前記サーバにおいて、送信された前記情報を使用して位置座標を計算するステップを有する、ことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1つの受信アンテナを有するモバイル送受信機であって、それぞれ複数のアンテナを有する複数の固定送受信機から、異なるそれぞれの第1の位置で送信される無線信号を所与の第2の位置で受信するように構成される、モバイル送受信機と;
プロセッサであって、
受信した前記無線信号を処理して、それぞれの前記固定送受信機の前記複数のアンテナから受信した前記無線信号間のそれぞれの位相差を検出し;
それぞれの前記固定送受信機から前記モバイル送受信機へのそれぞれの出発角度にそれぞれ対応する複数の軌跡を前記それぞれの位相差に基づき計算し;そして
前記軌跡の交点を前記モバイル送受信機の前記第2の位置として識別することにより、前記出発角度と前記固定送受信機の前記第1の位置に基づいて、前記モバイル送受信機の位置座標を検知する;
ように構成されるプロセッサと;
を有することを特徴とする、位置検知のための機器。
【請求項33】
前記固定送受信機は共通平面の近くに配置され、前記プロセッサは前記共通平面内の前記モバイル送受信機の位置座標を計算するように構成される、ことを特徴とする請求項32に記載の機器。
【請求項34】
前記共通平面が人工構造物の床である、ことを特徴とする請求項33に記載の機器。
【請求項35】
前記複数の軌跡が、前記第1の位置の少なくとも1つから前記共通平面を通って延びる少なくとも2つの射線を含む、ことを特徴とする請求項32に記載の機器。
【請求項36】
前記固定送受信機のそれぞれの複数のアンテナはアンテナ間距離によって分離され、そして前記プロセッサは、前記少なくとも2つの射線間の角度分離を、前記アンテナ間距離と前記無線信号の波長との比率の関数として計算するように構成される、ことを特徴とする請求項35に記載の機器。
【請求項37】
前記プロセッサは、前記アンテナ間距離と1つの所与の前記固定送受信機に対する前記無線信号の波長との間の比率が1より大きい場合に、前記1つの所与の前記固定送受信機から発せられる少なくとも2つの射線を画定し、前記少なくとも2つの射線の間の角度分離は180°より小さい、ように構成される、ことを特徴とする請求項36に記載の機器。
【請求項38】
前記1つの所与の固定送受信機から発せられる前記無線信号は、前記複数のアンテナの内の第1および第2のアンテナからそれぞれ発せられ、両方とも所与の一連のシンボルで変調される、少なくとも第1および第2の無線信号を有し、ここで、前記プロセッサは、前記モバイル送受信機で受信された前記第1および第2の無線信号のそれぞれにおいて前記一連のシンボル内の1つの所与のシンボルを識別し、そして前記モバイル送受信機における前記第1および第2の無線信号の間の前記所与のシンボルの到着の遅れを測定するように構成される、ことを特徴とする請求項32~37のいずれかに記載の機器。
【請求項39】
前記第1および第2の無線信号は、前記第1および第2の無線信号の間の事前定義された周期的遅延を有するマルチキャリア符号化スキームを使用して、同一のデータを符号化し、そして前記所与のシンボルの到着の遅れを測定するステップは、前記それぞれの位相差の検出に前記周期的遅延を適用するステップを有する、ことを特徴とする請求項38に記載の機器。
【請求項40】
前記所与の一連のシンボルが事前定義されたトレーニング用の一連のシンボルを含み、前記所与のシンボルを識別するステップは、前記トレーニング用の一連のシンボル内の特定の1つのシンボルを検知するステップを有する、ことを特徴とする請求項38に記載の機器。
【請求項41】
前記プロセッサは、受信された前記無線信号に基づいて、前記それぞれの複数のアンテナと前記モバイル送受信機との間のチャネル状態情報を推定し、そして前記チャネル状態情報から複数の軌跡を導出するように構成される、ことを特徴とする請求項32~37のいずれかに記載の機器。
【請求項42】
前記固定送受信機が少なくとも1つの無線アクセスポイントからなり、前記モバイル送受信機が、前記モバイル送受信機と前記少なくとも1つの無線アクセスポイント間の関連付けなしに、前記少なくとも1つの無線アクセスポイントからの無線信号を受信および処理するように構成される、ことを特徴とする請求項32~37のいずれかに記載の機器。
【請求項43】
前記プロセッサは、前記固定送受信機の第1の位置のマップを格納し、そして前記マップに対する相対的な位置座標を検知するために、前記計算された出発角度を前記マップと参照するように構成される、ことを特徴とする請求項32~37のいずれかに記載の機器。
【請求項44】
前記マップはサーバに格納され、そして前記モバイル送受信機は、前記受信された無線信号に関する情報を前記サーバに送信するように構成され、前記プロセッサは、前記サーバにおいて、前記送信された情報を使用して前記位置座標を計算するように構成される、ことを特徴とする請求項43に記載の機器。
【請求項45】
位置を検知するためのシステムであって:
異なるそれぞれの第1の位置に複数のアンテナをそれぞれ有する複数の固定送受信機であって、前記固定送受信機は、モバイル送信機から所与の第2の位置において送信された無線信号を前記複数のアンテナを介して受信するように構成される、複数の固定送受信機と;
プロセッサであって、
受信した前記無線信号を処理して、それぞれの前記固定送受信機の前記複数のアンテナから受信した前記無線信号間のそれぞれの位相差を検出し;
前記モバイル送受信機からそれぞれの前記固定送受信機へのそれぞれの到着角度にそれぞれ対応する複数の軌跡を前記それぞれの位相差に基づき計算し;そして
前記軌跡の交点を前記モバイル送受信機の前記第2の位置として識別することにより、前記到着角度と前記固定送受信機の前記第1の位置に基づいて、前記モバイル送受信機の位置座標を検知する;
ように構成されるプロセッサと;
を有することを特徴とする、位置を検知するためのシステム。
【請求項46】
異なる、それぞれの第1の位置に複数のアンテナを有する複数の固定送受信機と第2の位置にある1つのモバイル送受信機との間で送受信される無線信号と組み合わせて使用するためのコンピュータソフトウェア製品であって、前記製品は、プログラム命令が格納されている有形の非一過性コンピュータ読取可能媒体を有し、前記命令は、プロセッサにより読み取られると、前記プロセッサに対し、少なくとも1つの前記固定送受信機から、当該少なくとも1つの固定送受信機によって検出された、それぞれの前記固定送受信機の複数のアンテナのそれぞれに関連する、受信された前記無線信号間のそれぞれの位相差を受信するようにさせ、
ここで、前記命令は前記プロセッサに対し、それぞれの前記位相差に基づいて、それぞれの前記固定送受信機と前記モバイル送受信機との間のそれぞれの角度にそれぞれ対応する複数の軌跡を計算し、そして前記軌跡の交点を前記モバイル送受信機の前記第2の位置として識別することにより、前記角度と前記第1の位置に基づいて前記モバイル送受信機の位置座標を検知するようにさせる、
ことを特徴とするコンピュータソフトウェア製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、無線通信システム、特に無線ネットワーク信号に基づく位置特定のための方法に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
この出願は、2019年12月31日に提出された米国特許出願公開16 /731,106(特許文献1)の一部の続きであり、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
携帯電話などのモバイル無線送受信機の位置を検知するための様々な技術が当技術分野で知られている。たとえば、現在、ほぼすべての携帯電話にグローバルポジショニングシステム(GPS)受信機が搭載されており、静止衛星から受信した信号から位置座標を取得する。ただし、GPSは弱い衛星信号に依存しているため、屋内や混雑した都市環境では、たとえあったとしても、うまく機能しない。セルラーネットワークは、セルラー電話機と複数のセルラーアンテナ間で送受信される信号に基づいて電話機の位置を三角測量することもできるが、この手法は不正確で信頼性がない。
【0004】
既存の無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)インフラストラクチャに基づいて、屋内位置決定のための多くの方法が提案されている。そのようなアプローチの1つは、たとえば、Kotaru他による、SIGCOMM ‘15(ロンドン、英国、2015年8月17~21日)で公開された「SpotFi:WiFiを使用したデシメータレベルの位置決定」(非特許文献1)に記載されている。著者によると、SpotFiは、アクセスポイントから受信したマルチパスコンポーネントの到着角度(AoA)を計算し、フィルタリングと推定の手法を使用して、位置決定ターゲットとアクセスポイント間の直接パスのAoAを識別する。
【0005】
別の例として、米国特許出願公開2009/0243932(特許文献2)は、モバイルデバイスの位置を決定するための方法を記載している。この方法は、複数の既知の位置の間で信号を送信し、モバイルデバイスなどの未知の位置のデバイスで信号を受信することを含む。信号には、異なる周波数を持ち、残留位相差のセットをもたらす複数のトーンが含まれうる。モバイルデバイスの位置は、既知の位置と、送信されたトーン間の周波数と位相の差を使用して決定できる。一実施形態では、直交周波数ドメイン多重化(OFDM)信号を、アクセスポイントとモバイルデバイスとの間で使用して、モバイルデバイスの位置を決定することができる。
【0006】
さらなる例として、米国特許出願公開2016/0033614(特許文献3)は、無線通信ネットワークにおけるメインローブおよびグレーティングローブの識別を含む方向検出(DF)位置決定の方法を記載している。受信機は、第1のチャネル周波数で複数のアンテナに関連付けられた無線信号に対してDFアルゴリズムを実行し、DF解の第1のセットを推定する。受信機は、第2のチャネル周波数で複数のアンテナに関連付けられた無線信号に対してDFアルゴリズムを実行し、DF解の第2のセットを推定する。次に、受信機は、第1のDF解のセットと第2のDF解のセットを比較することにより、正しいDF解(メインローブの方向など)を識別する。
【0007】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる、PCT国際出願公開WO2018/055482(特許文献4)は、無線送信機の少なくとも第1および第2のアンテナからそれぞれ送信される少なくとも第1および第2の信号を所与の位置で受信することを含む信号処理の方法を記載している。少なくとも第1と第2の信号は、送信信号間に事前定義された周期的遅延を伴うマルチキャリアエンコード方式を使用して同一のデータをエンコードする。受信した第1の信号と第2の信号は、第1の信号と第2も信号の間の位相遅延の測定値を導出するために、周期的遅延を使用して処理される。位相遅延の測定に基づいて、無線アクセスポイントから特定の位置への第1の信号と第2の信号の出発角度が推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開16/731,106
【特許文献2】米国特許出願公開2009/0243932
【特許文献3】米国特許出願公開2016/0033614
【特許文献4】PCT国際出願公開WO2018/055482
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Kotaru他による、SIGCOMM ‘15(ロンドン、英国、2015年8月17~21日)で公開された「SpotFi:WiFiを使用したデシメータレベルの位置決定」
【発明の概要】
【0010】
以下に記載される本発明の実施形態は、無線伝送の位置および角度を検出するための改善された方法およびシステムを提供する。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、第1の位置で間隔を置いて配置された第1および第2のアンテナを介して、第2の位置の無線送信機から送信された出力信号に応答して、それぞれ第1および第2の入力信号を受信し、そして事前定義された一連のシンボルを符号化するステップを含む信号処理の方法が提供される。それぞれ第1および第2の相関ピークを識別するために、事前定義された一連のシンボルの1つまたは複数のシンボルに関して、第1および第2の入力信号に亘って時間相関関数が計算され、そして第1および第2の入力信号の第1および第2の相関ピークにおけるそれぞれ第1および第2のキャリア位相が抽出される。第1および第2の相関ピークで抽出された第1および第2のキャリア位相間の差に基づいて、第1および第2の入力信号間の位相差が測定される。測定された位相差に基づいて、無線送信機から第1の位置への出力信号の到着角度が推定される。
【0012】
開示された一実施形態では、出力信号が、無線ネットワーク内の移動局の単一の送信アンテナから送信される。
【0013】
代替的に、出力信号が、送信アンテナ間の事前定義された周期的遅延を伴って複数の送信アンテナから送信され、時間相関関数を計算するステップは、周期的遅延に応答して複数の相関ピークを識別するステップを有し、位相差を測定するステップは、相関ピーク間の位相差の測定値を計算するステップを有する。
【0014】
典型的に、時間相関関数は、自己相関関数および事前定義された参照信号との相互相関関数からなる関数のグループから選択される。
【0015】
幾つかの実施形態では、事前定義された一連のシンボルを含む事前定義されたプリアンブルを有するフレーム構造を指定する無線通信規格に従って、出力信号が送信され、そして、入力信号の特定のフレームのプリアンブルの少なくとも一部に亘って相関が計算される。このような一実施形態では、相関は、無線通信規格によって定義されるプリアンブル内の1つまたは複数の同期化シンボルについて計算される。
【0016】
開示された一実施形態では、第1および第2の入力信号を受信および処理するステップは、無線ネットワークのアクセスポイントにおいて、無線送信機とアクセスポイント間の関連づけを確立することなく、少なくとも第1および第2の入力信号を受信および処理するステップを有する。追加的にまたは代替的に、第1の位置および推定された到着角度に基づいて第2の位置の座標を計算するステップを有する。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、また、第1の位置に配備するための無線装置が提供される。無線装置は、第1および第2のアンテナであって、間隔を置いて配置され、そして、第2の位置の無線送信機から送信された出力信号に応答して、それぞれ第1および第2の入力信号を受信し、そして事前定義された一連のシンボルを符号化する、第1および第2のアンテナを有する。
処理回路は、それぞれ第1および第2の相関ピークを識別するために、事前定義された一連のシンボルの1つまたは複数のシンボルに関して、第1および第2の入力信号に亘って時間相関関数を計算し、そして第1および第2の入力信号の第1および第2の相関ピークにおけるそれぞれ第1および第2のキャリア位相を抽出し、第1および第2の相関ピークで抽出された第1および第2のキャリア位相間の差に基づいて、第1および第2の入力信号間の位相差を測定し、そして測定された位相差に基づいて、無線送信機から第1の位置への出力信号の到着角度を推定するように構成される。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、追加的に位置を検知するための方法であって:異なるそれぞれの第1の位置に複数のアンテナを有する複数の固定送受信機と第2の位置にある1つのモバイル送受信機との間で送信される無線信号を受信するステップを有する方法が提供される。それぞれの固定送受信機のそれぞれの複数のアンテナに関連付けられている受信無線信号間のそれぞれの位相差が検出される。それぞれの位相差に基づいて、それぞれの固定送受信機と1つのモバイル送受信機の間のそれぞれの角度にそれぞれ対応する複数の軌跡が計算される。軌跡の交点を1つのモバイル送受信機の第2の位置として識別することにより、送信機の角度と送信位置に基づいて1つのモバイル送受信機の位置座標が検知される。
【0019】
開示された一実施形態では、無線信号を受信するステップは、モバイル送受信機によって、複数の固定送受信機から送信された無線信号を受信するステップを有し、複数の軌跡を計算するステップは、固定送受信機からモバイル送受信機への無線信号の出発角度を計算するステップを有する。
【0020】
追加的にまたは代替的に、無線信号を受信するステップは、モバイル送受信機から送信された無線信号を固定送受信機により受信するステップを有し、複数の軌跡を計算するステップは、固定送受信機からモバイル送受信機への無線信号の到着角度を計算するステップを有する。
【0021】
幾つかの実施形態では、固定送受信機は共通平面の近くに配置され、位置座標を検知するステップは、共通平面内のモバイル送受信機の位置座標を計算するステップを有する。一実施形態では、共通平面が人工構造物内の床である。
【0022】
典型的に複数の軌跡が、第1の位置の少なくとも1つから共通平面を通って延びる少なくとも2つの射線を含む。開示された一実施形態ではそれぞれの固定送受信機の複数のアンテナがアンテナ間距離によって分離され、複数の軌跡を定義するステップは、少なくとも2つの射線間の角度分離を、アンテナ間距離と無線信号の波長の比率の関数として計算するステップを有する。一実施形態では、複数の軌跡を定義するステップは、アンテナ間距離と所与の固定送受信機の無線信号の波長との間の比が1より大きい場合、所与の固定送受信機から発せられる少なくとも2つ射線を定義するステップを有し、少なくとも2つの射線間の角度分離は180°未満である。
【0023】
幾つかの実施形態では、所与の固定送受信機とモバイル送受信機との間で空中を介して送信される無線信号が、少なくとも第1および第2の無線信号を有し、これらは、それぞれ、複数のアンテナの第1および第2のアンテナに関連付けられ、これらは両方とも所与の一連のシンボルで変調され、そして
それぞれの位相差を検出するステップは、無線で受信される第1および第2の無線信号のそれぞれにおいて、一連のシンボル内の所与のシンボルを識別し、第1および第2の無線信号間の所与のシンボルの到着の遅延を測定するステップを有する。一実施形態では、第1および第2の無線信号は、第1および第2の無線信号の間の事前定義された周期的遅延を有するマルチキャリア符号化スキームを使用して、同一のデータを符号化し、そして遅延を測定するステップは、それぞれの位相差の検出に周期的遅延を適用するステップを有する。追加的にまたは代替的に、所与の一連のシンボルが事前定義されたトレーニング用の一連のシンボルを含み、所与のシンボルを識別するステップは、トレーニング用の一連のシンボルの特定の1つのシンボルを検知するステップを有する。
【0024】
他の1つの実施形態ではそれぞれの位相差を検出するステップは、受信された無線信号に基づいて、それぞれの複数のアンテナとモバイル送受信機との間のチャネル状態情報を推定するステップを有し、複数の軌跡を計算するステップは、チャネル状態情報から角度を導出するステップを有する。
【0025】
幾つかの実施形態では、固定送受信機の第1の位置のマップを格納するステップを有し、位置座標を検知するステップは、計算された角度をマップに参照して、マップに対する位置座標を検知するステップを有する。一実施形態では、マップはサーバ上に格納され、そして計算された出発角度をマップに参照するステップは、受信された無線信号に関する情報をサーバに送信し、そしてサーバにおいて、送信された情報を使用して位置座標を計算するステップを有する。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、さらに少なくとも1つの受信アンテナを有するモバイル送受信機であって、それぞれ複数のアンテナを有する複数の固定送受信機から、異なるそれぞれの第1の位置で送信される無線信号を所与の第2の位置で受信するように構成される、モバイル送受信機が提供される。
プロセッサは、受信した無線信号を処理して、それぞれの固定送受信機の複数のアンテナから受信した無線信号間のそれぞれの位相差を検出し;それぞれの固定送受信機からモバイル送受信機へのそれぞれの出発角度にそれぞれ対応する複数の軌跡をそれぞれの位相差に基づき計算し;そして軌跡の交点をモバイル送受信機の第2の位置として識別することにより、出発角度と固定送受信機の第1の位置に基づいて、モバイル送受信機の位置座標を検知する;ように構成される。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、またさらに位置を検知するためのシステムであって:異なるそれぞれの第1の位置に複数のアンテナをそれぞれ有する複数の固定送受信機であって、固定送受信機は、モバイル送信機から所与の第2の位置において送信された無線信号を複数のアンテナを介して受信するように構成される、複数の固定送受信機を有するシステムが提供される。プロセッサは、受信した無線信号を処理して、それぞれの固定送受信機の複数のアンテナから受信した無線信号間のそれぞれの位相差を検出し;モバイル送受信機からそれぞれの固定送受信機へのそれぞれの到着角度にそれぞれ対応する複数の軌跡をそれぞれの位相差に基づき計算し;そして軌跡の交点をモバイル送受信機の第2の位置として識別することにより、到着角度と固定送受信機の第1の位置に基づいて、モバイル送受信機の位置座標を検知する;ように構成される。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、またさらに、異なる、それぞれの第1の位置に複数のアンテナを有する複数の固定送受信機と第2の位置にある1つのモバイル送受信機との間で送受信される無線信号と組み合わせて使用するためのコンピュータソフトウェア製品が提供される。製品は、プログラム命令が格納されている有形の非一過性コンピュータ読取可能媒体を有し、命令は、プロセッサにより読み取られると、プロセッサに対し、少なくとも1つの固定送受信機から、当該少なくとも1つの固定送受信機によって検出された、それぞれの固定送受信機の複数のアンテナのそれぞれに関連する、受信された無線信号間のそれぞれの位相差を受信するようにさせる。命令はプロセッサに対し、それぞれの位相差に基づいて、それぞれの固定送受信機とモバイル送受信機との間のそれぞれの角度にそれぞれ対応する複数の軌跡を計算し、そして軌跡の交点をモバイル送受信機の第2の位置として識別することにより、角度と第1の位置に基づいてモバイル送受信機の位置座標を検知するようにさせる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明は、以下の実施形態の詳細な説明から、以下の図面と併せて、より完全に理解されるであろう:
【
図1】本発明の一実施形態による、無線位置検出のためのシステムの概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、送信機から受信機への無線信号の出発または到着の角度を導出する際に使用される座標フレームを概略的に示す図である。
【
図3A】本発明の一実施形態による、移動体通信装置の位置を検知するための方法を示す、
図1のシステムの構成要素の概略図による図解である。
【
図3B】本発明の代替の一実施形態による、移動体通信装置の位置を検出するための方法を概略的に示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、複数の送信機または受信機に基づく位置検出のプロセスを概略的に示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態による、位置検出のための方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図6】本発明の別の一実施形態による、無線送信機に関する座標情報を導出する際に使用されるマルチアンテナ受信機の構成要素を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(概要)
都市環境は通常、Wi-Fi(登録商標)アクセスポイントやセルラーマイクロセルおよびピコセルベースステーション送受信機など、無線通信用の固定送受信機の高密度インフラストラクチャによってカバーされる。このような送受信機は、契約者デバイスとの通信をサポートするために無線サービスプロバイダーによって展開される。しかしながら、本発明の実施形態は、モバイル無線送受信機の位置座標、ならびに互いに対する固定送受信機の位置座標を検知する際に、このインフラストラクチャを異なる新規の用途に置く。これらの位置座標は、たとえば、ナビゲーションアプリケーション(特に屋内ナビゲーション)で使用したり、人やその他のアセットの位置を追跡したりする場合に使用できる。
【0031】
以下に説明する本発明の実施形態は、最新の通信アクセスポイントおよび他の固定送受信機が一般に、特定の距離だけ離れて配置されたアンテナの配列を有し、それを介して同じ無線信号の複数のインスタンスを送信し、そしてモバイル送受信機から無線信号を受信するという事実を利用する。モバイル送受信機が特定の位置で固定マルチアンテナ送受信機から信号を受信すると、信号は、とりわけ、配列内の各アンテナからモバイル送受信機までの距離のわずかな違いの結果として、位相偏位される。同様に、モバイル送受信機によって送信された信号を固定送受信機が受信すると、配列内のアンテナで受信された信号は位相偏位される。
【0032】
この距離の違い、つまり配列内の複数のアンテナのそれぞれに関連付けられている(つまり、送信または受信されている)受信無線信号間の位相の違いは、固定送受信機とモバイル送受信機の間の角度の関数として変化する。いくつかの実施形態では、モバイル送受信機は、固定式送受信機からモバイル送受信機に送信される信号の出発角度を検出する。他の実施形態では、固定送受信機は、それらがモバイル送受信機から受信する信号の到着角度を検出する。いずれの場合も、受信機での位相差を検出して処理することにより、固定送受信機に対するモバイル送受信機の角度位置を推定することができる。前述のように、これらの手法は、1つの固定送受信機の1つ以上のアンテナを介して送信され、別の固定送受信機の1つ以上のアンテナによって受信される無線信号の出発または到着の角度を検知する際に、必要な変更を加えて使用することもできる。
【0033】
モバイル送受信機とアクセスポイントなどの固定送受信機との間に双方向通信リンクを確立するには、通常、双方向関連付けおよび認証のプロセスが必要であるが、本発明の実施形態の送受信機は、関連付けを確立せずに、無線信号を検出および処理し、送受信機間の角度を検知することができる。
【0034】
上記の原理に基づいて、本発明のいくつかの実施形態は、異なるそれぞれの位置に複数のアンテナを有する複数の固定送受信機のそれぞれと、別の位置の1つのモバイル送受信機との間で無線信号が送信される場合の、位置検出のための方法を提供する。信号の発信角度を検出するために、信号を受信する送受信機は、各送信機の複数のアンテナのそれぞれから受信した無線信号間の位相差を検出する。代替的にまたは追加的に、信号の到着角度を検出するために、信号を受信する1つまたは複数の送受信機は、各送信側送受信機から受信機の複数のアンテナのそれぞれで受信される無線信号間の位相差を検出する。いずれの場合も、これらの位相差に基づいて、受信機は各送信機と受信機の間の(出発または到着の)1つまたは複数の角度を計算する。(以下で説明するように、特定の位相差は通常、2つ以上の異なる角度に対応する場合がある。)次に、固定送受信機の角度と位置に基づいて、受信機の位置座標が計算される。
【0035】
以下に説明する実施形態のいくつかは、固定送受信機が共通の平面に近接して、例えば人工構造物の床に近接して配置されることを前提としている。「近接」という用語は、この文脈において、本明細書および特許請求の範囲において、平面からの各固定送受信機の距離が、固定送受信機とモバイル送受信機との間の平均距離の10%以下であることを意味するために使用される。モバイル送受信機の位置座標は、この共通平面で計算される。この平面の仮定は多くの都市環境に適用され、固定送受信機とモバイル送受信機を共通の平面に制約すると、位置座標の計算が簡単になる。ただし、代替の実施形態では、この仮定は緩和され、受信機の位置を検知する際に3次元(3D)角度座標が使用される。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態において、モバイル送受信機の位置座標は、各固定送受信機とモバイル送受信機との間の可能な角度に対応する共通平面内の複数の軌跡を定義することによって見出される。軌跡は、上記で説明したように測定された位相差によって定義され、これらの軌跡の交点がモバイル送受信機の受信位置を示す。この方法で導出された位置座標のあいまいさを解決するために、十分な数の固定送受信機からの信号が検出および処理される。
【0037】
上記の実施形態は、モバイル送受信機と信号を交換する固定送受信機(例えば、無線アクセスポイント)の基準フレームに対するモバイル送受信機の位置座標を検知する。いくつかの実施形態では、サーバは、固定送受信機の送信位置のマップを格納し、計算された角度は、マップに対するモバイル送受信機の位置座標を検知するためにマップに参照される。サーバは、たとえば上記のPCT国際出願公開WO2018/055482(特許文献4)に記載されているように、モバイル送受信機によって受信された固定送受信機からの無線信号のそれぞれの推定出発角度のレポートを、異なる位置の受信機から受信することによってマップを構築できる。送信される信号には、それぞれの識別子、具体的にはメディアアクセス制御(MAC)識別子も含まれる場合がある(たとえば、特定の信号を送信するアクセスポイントの基本サービスセット識別子(BSSID)をアナウンスすることにより)。受信機は、これらの識別子を出発角度とともに報告することができるため、各固定送受信機のIDをマップ内の位置に関連付けることができる。
【0038】
特定のエリア内の固定送受信機の位置がマッピングされると、携帯電話などのモバイル送受信機の位置は、固定送受信機から受信する信号に基づいて、エリア内で正確に検知することができる。それ以外の場合は、送信機が属するネットワーク(上記で説明したように)、または固定送受信機がモバイル送受信機から受信する信号と通信する。したがって、この種の固定送受信機のマップは、たとえば屋内や都市の場所で、GPSに依存することなく正確で便利な地理的位置を特定するために使用できる。
【0039】
以下に説明する実施形態のいくつかは、具体性と明確さのために、特に、IEEE802.11ファミリの規格に従って動作する無線アクセスポイントと移動局に関している。しかしながら、本発明の原理は、同様に、必要な変更を加えて、他の種類のマルチアンテナ送信機および受信機に適用され得る。例えば、本発明の代替の実施形態では、出発または到着の角度は、適用可能な規格に従ってデータ符号化および変調方式を使用して信号を送受信するマルチアンテナセルラー基地局に関して測定することができる。本原理のそのような代替の実施はすべて、本発明の範囲内であると見なされる。
【0040】
以下に説明する実施形態のいくつかは、複数の固定送受信機からモバイル送受信機によって受信される無線信号の出発角度の検出に基づく。上記のPCT国際出願公開WO2018/055482(特許文献4)に記載されている技術、および以下に説明するチャネル状態情報の推定に基づく技術を含む(ただしこれらに限定されない)様々な技術をこの目的に使用することができる。これらの実施形態の原理はまた、モバイル送受信機から固定送受信機によって受信される無線信号の到着角度を検出する際に、必要な変更を加えて適用され得る。どちらの場合の角度(出発角度または到着角度)も同様の方法で使用して、モバイル送受信機の位置座標を検知することができる。したがって、本明細書および特許請求の範囲における角度への言及は、特に明記しない限り、出発角度および到着角度の両方を包含するものとして理解されるべきである。
【0041】
(システムの説明)
図1は、本発明の実施形態による、無線通信および位置検出のためのシステム20の概略図である。例として、
図1は、ショッピングモールや通りなど、複数のアクセスポイント22、24、26、…が、多くの場合、互いに独立した異なるWLAN所有者によって展開される典型的な環境を示している。(省略表記「…」は、この説明で特定のタイプのアイテムを列挙する際に使用され、特定のタイプのアイテムの図のインスタンスがそのようなアイテムのより大きなグループの一部である可能性があることを示す。)アクセスポイントによって送信される信号は、システム20によってカバーされる領域内を自由に動き回るユーザ32によって操作される移動局28、30、…の形の受信機によって受信される。
図1の実施形態では、移動局28、30、…はスマートフォンとして示されている。;ただし、ラップトップコンピュータやタブレットコンピュータなどの他の種類のモバイル送受信機、および専用の無線タグも同様の方法で使用でき、以下で説明するように、アクセスポイント22、24、26などの出発点からの角度を同様に検知することができる。
【0042】
代替的または追加的に、アクセスポイント22、24、26、…は、移動局28、30、…によって送信された信号の到着角度、および追加のアクセスポイント27などの他の固定送信機から受信した信号の出発または到着の角度を検知することができる。
【0043】
システム20のアクセスポイント22、24、26、…のそれぞれは、
図1に示すように、2つまたは3つのアンテナ34を持っていると想定される。移動局28、30、…は、それぞれ、単一の全方向性アンテナ36を有すると想定されているが、角度を検出するための本明細書に記載の技術は、マルチアンテナ局によっても同様に実施することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、移動局28、30、…は、アンテナ34から受信した信号を処理して、それぞれのアクセスポイント22、24、26、…からの信号の出発角度を推定し、各アクセスポイントに関する(BSSIDなどの)識別子を抽出する。アクセスポイントの座標フレームの出発角度(
図1でαとマークされている)は、アクセスポイントと移動局が共通の平面に近接していると仮定して、2次元で計算するか、3次元座標システムで計算できる。移動局は、以下でさらに説明するように、必ずしもアクセスポイントに関連付けなくても、これらの機能を実行できる。
【0045】
一方、移動局28、30、…は、インターネット通信の目的で、1つまたは複数のアクセスポイント22、24、26、…に関連付けることができる。代替的または追加的に、移動局は、セルラーネットワークまたは他の接続を介してインターネットにアクセスすることができる。いずれにせよ、移動局28、30、…は、ネットワーク38を介して収集した出発角度データおよびアクセスポイント識別をマッピングサーバ40に伝達する。この情報は、移動局においてバックグラウンドで実行されているアプリケーションプログラム(「アプリ」)により自律的かつ自動的に収集および報告され得る。
【0046】
代替的または追加的に、アクセスポイント22、24、26、…は、移動局の位置を検知する目的で、到着角度データを計算し、サーバ40に通信することができる。
【0047】
サーバ40は通常、プログラム可能なプロセッサ42とメモリー44を含む汎用コンピュータで構成される。ここで説明するサーバ40の機能は、通常、プロセッサ42で実行されるソフトウェアに実装され、光学、磁気、または電子記憶媒体などのコンピュータ可読非一過性有形媒体に格納される。
【0048】
他の実施形態では、本明細書に記載の原理に基づく位置追跡装置は、アセットに埋め込まれるかまたはアセットに取り付けられ、これらのアセットの位置を自動的に追跡する際にサーバ40によって使用される。このようなアセットの非限定的な例には、携帯電話、ロボット、病院のベッド、医療機器、および在庫品目が含まれる。このタイプの正確なリアルタイムの屋内および屋外の位置追跡は、医療関係者の健康を確保し;彼らの作業環境でロボットとドローンを安全に操作し;たとえば保険の適用を目的として、世界中のアセットを追跡し;ショッピングモールやスポーツスタジアムなどの公共スペースの人々へのマーケティングキャンペーンの効果を向上させ;都市環境や駐車場での安全な運転を促進する;など多くのシナリオで不可欠である。
【0049】
(出発と到着の角度を推定するための干渉法)
図2は、本発明の実施形態による、アクセスポイント24と移動局28との間で送信される無線信号の角度を導出する際に使用される座標フレームを概略的に示す図である。アクセスポイントと移動局のこの特定のペアは、純粋に便宜上選択されており、同様の原則が任意のペアに適用される。アクセスポイント24は2つのアンテナ34(Tx1およびTx2とラベル付けされている)を有するものとして示されているが、同じ幾何学的原理が、線形配列に配置された3つ以上のアンテナを有するアクセスポイントに適用される。以下の説明は、特に、アクセスポイント24のアンテナ34から移動局28に送信されるダウンリンク信号46の出発角度に関する。しかし、これとその後の実施形態の原理は、アンテナ34によって受信される移動局28からのアップリンク信号48の到着角度を検知する際に同様に適用され得る。
【0050】
アンテナ34は、配列の軸をアンテナのベースを通る線として定義する。アンテナは、既知のアンテナ間距離 d だけ配列の軸に沿って分離されている。 (配列の軸はアンテナ34を通る線である。
図2に縦の破線で示されている。)たとえば、無線アクセスポイントでは、距離 d は半波長になるように設計されている。たとえば、2.4GHzの標準WLAN送信周波数で λ/2 = 6.25cmであり、ここで、 λ は無線信号の波長である。あるいは、本発明の実施形態における送信機は、より大きなまたはより小さなdの値(およびそれに対応して、アンテナ間距離と波長との間のより大きなまたはより小さな比率)を有し得る。
図2に示すように、移動局28のアンテナ34からアンテナ36への信号の出発角度θは、配列軸の法線に対して取られる。アクセスポイント24から移動局28までの距離がdよりかなり大きいと仮定すると、Tx2からのパス長と比較して、Tx1からアンテナ36(Rxと呼ばれる)までのパス長はd*sinθの差がある。
【0051】
例として、Tx2からRxまでのパスの長さが6.0000m、θ= 30°であるとすると、Tx1からRxまでのわずかに長いパスは6.03125mになる。このパスの差は、90°の位相差に変換される:Δφ= dsin(π/6)=λ/2 * 1/2 = λ/4。位相差は、角度、および伝送波長(または周波数)によって異なる。
【0052】
一般的に、本発明のいくつかの実施形態では、移動局28などの受信機は、出発角度を測定するため、異なる位置にあるいくつかの異なる送信機のそれぞれの、異なる複数のアンテナ34から受信された無線信号間のキャリア位相差(CPD)を測定する。代替的または追加的に、異なる位置にあるアクセスポイント22、24、26、…は、到着角度を測定するために、移動局28からアンテナ34によって受信されるそれぞれの無線信号間のCPDを測定することができる。
【0053】
CPDの測定にはさまざまな方法を適用できる。たとえば、アンテナ34の両方から放射される無線信号が両方とも所与の一連のシンボルで変調されると仮定すると、移動局28は、受信する各無線信号の一連のシンボルの中の所与のシンボルを識別し、所与のシンボルの無線信号間の到着の遅延を測定することによって、CPDを計算することができる。両方のアンテナからの無線信号が、信号間の事前設定された周期的遅延を伴うマルチキャリア符号化方式(OFDM方式など)を使用して同一のデータを符号化する場合、既知の周期的遅延は、位相差の検出に容易に適用できる。CPD、したがって出発角度を測定するためのこの種の技術は、上記のPCT国際出願公開WO2018/055482(特許文献4)に詳細に記載されている。
【0054】
別の例として、受信機は、アンテナ34から送信される無線信号内の事前定義された訓練シーケンスを検出し得、訓練シーケンス中の特定のシンボルが各送信機から受信機に到達する時間を測定し得る。
【0055】
より具体的には、最新の無線規格は、アクセスポイントなどの無線送受信機によって送信されるデータフレームのプリアンブルにおいて送信される特定のトレーニングフィールドを指定し、そして移動局が、受信した無線信号のトレーニングフィールドに基づいて、アンテナ34およびアンテナ36間のチャネル状態情報を推定する手順を定義する。たとえば、IEEE 802.11n標準(および802.11ファミリの後の標準)に従って送信されるフレームのプリアンブルには、アンテナごとに1つずつ、高スループットのロングトレーニングフィールド(HTLTF)の複数のインスタンスが含まれる。受信機は、チャネル状態情報{CSI
i,j}の複素数値のマトリックスを計算するためにこれらのフィールドを処理する。これは、各周波数ビン j の各アンテナiのチャネル応答の振幅と位相を表する。選択したビン内の異なるアンテナのCSIの位相成分の差により、CPDが得られる。たとえば、アクセスポイント24に2つのアンテナ34がある(したがって、i = 0,1)と仮定すると:
【数1】
【0056】
さらなる例として、受信機自体が複数のアンテナを有する場合、送信機のアンテナ34のそれぞれから受信した信号を区別する際に段階的検出を適用し、したがって信号間のCPDを測定することができる。
【0057】
CPDの測定方法に関係なく、CPDは干渉計モデルを表す次の式により、出発角度 θ(
図2)に関連付けられる:
【数2】
出発角度とCPDの両方の範囲は[0,2π)であるが、関数関係は1対1ではない:θの少なくとも2つの値が同じCPDに変換される:θが解であると、π-θも解である。2d/λ ≦ 1の場合、考えられる解は正確に2つあり(θ,π-θ)、それらは配列軸と交差する線に沿って互いにミラーリングする(ただし、
図2は、アクセスポイント24から移動局28までから伸びる射線として、単一の解決策のみを示しているが、さらに、配列軸を横切る線によってミラーリングされた2番目の解がある。)2d/λ > 1の場合、送信機から放射される射線を定義する4つ以上の解が可能である(正弦が(-1,1])にまたがる場合、モジュロの引数が2πを超えるため)。解の数は常に偶数である。
【0058】
(CPDを使用した位置検索)
図3Aは、本発明の実施形態による、移動局30の位置を検知するための方法を示す、
図1のシステムの構成要素の概略図である。この方法は、アクセスポイント22、24、および26のそれぞれの位置座標(x
i、y
iとラベル付け)およびBSSIDが、図の(X,Y)軸で示される参照フレーム内で、サーバ40によってすでにマップされていることを前提としている。マップには、各アクセスポイントのそれぞれの方向角(φ
i)、この場合は各アクセスポイントのアンテナ配列の軸の法線の方向も示される。
図3Aの方法では、2次元の基準フレームで出発角度を使用する(上記で説明したように、アクセスポイントと移動局が共通の平面に近接していると仮定する)。あるいは、この方法では、アクセスポイントによって測定された到着角度を使用する場合がある。また、以下で説明するように、いくつかの追加の幾何学的複雑さを伴って、3次元に拡張することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、マップは、他の移動局および/または他の入力データによって以前に行われた出発角度の測定に基づいて構築される。この場合の移動局は、アクセスポイントのそれぞれの識別子とともに、それらの位置および推定出発角度をサーバ40に報告し、サーバはそれに応じてマップを作成する。サーバ40は、アクセスポイントのオペレーターによる協力を必要とせずに、このアクセスポイントマップを作成できる。代替的または追加的に、マップは、ネットワークオペレータによって提供された情報および/または専用の機器を使用して行われた物理的測定値を組み込むことができる。
【0060】
図3Aの実施形態では、移動局30は、アクセスポイント22、24、および26のそれぞれからマルチアンテナ信号を受信する。移動局は、θ
1、θ
2、およびθ
3とラベル付けされた各アクセスポイントのそれぞれの出発角度(または出発方向またはDoDとも呼ばれる)を抽出する。上記の手法をそれぞれの基本サービスセット識別子(BSSID)とともに使用する。移動局30は、ネットワーク38(
図1)を介してこれらの結果をサーバ40に報告し、サーバ40は対応する位置座標を返す。サーバは、アクセスポイントの位置座標および配向角(x
i、y
i、φ
i)を返すことができ、その場合、移動局30は、これらの座標および測定された出発角に基づいて、自身の位置(x
s、y
s)を三角測量することができる。代替的または追加的に、移動局30は、それが推定した出発角度の値をサーバ40に伝達し、次に、サーバ40は、位置座標を計算し、移動局30に返す。
【0061】
さらに代替的または追加的に、アクセスポイント22、24、および26は、各アンテナで移動局30から信号を受信し、これらの信号を比較して、信号のそれぞれの到着角度(代替的に到着方向またはDoAと呼ばれる)および移動局のMACアドレスなどの識別子を抽出する。アクセスポイントはこれらの結果をサーバ40に報告し、サーバ40は、到着角度とアクセスポイントの既知の位置に基づいて、移動局の位置座標を計算して返す。
【0062】
いずれの場合も、移動局30の位置座標は、キャリア位相差(CPD)ベースの三角測量のプロセスによって計算できる:各CPD測定値は、アクセスポイント22、24、26、…、移動局30が近接している共通平面内の2つ(またはそれ以上の)軌跡を画定する。軌跡は、それぞれの配向角(φ
i)と複数の送信機のそれぞれからの測定された出発角度(θ
i)によって与えられる、 φ
i=θ
i+α
i で定義される角度α
iで、マップの固定参照フレーム内のアクセスポイントのそれぞれの位置座標(x
i,y
i)から平面を通って伸びる射線の形をしている。
図3Aに示すように、移動局30の位置座標(x
s,y
s)は、これらの射線の交点に対応する。
図2の場合と同様に、CPD測定値の出発角度への変換のあいまいさは、簡潔化のため
図3Aから省略されている。
【0063】
図3Bは、本発明の代替実施形態による、移動体通信装置30の位置を検知するための方法を概略的に示す図である。この場合、角度α
i、φ
i、およびθ
iは3次元に拡張される。たとえば、球形座標系では、
図3Bに示すように、角度α
iは傾斜成分β
iと方位成分γ
iの両方を持ち、これらは式cos(α
i)= sin(β
i)cos(γ
i)により関係づけられる。この場合、CPD値によって定義される軌跡は、線形射線ではなく曲線の形をとり、これらの曲線の交点は、移動局30の位置を与える。
【0064】
ここで本発明の実施形態による、複数の固定送受信機に基づく位置発見のための方法を概略的に示す
図4および5を参照する。
図4は、領域(AP1、AP2、AP3、AP4と記されている)における固定送受信機52の位置を示す領域の幾何学的
図50であり、
図5は、方法のステップを示すフローチャートである。説明を簡単にするために、
図4は2次元モデルを想定しており、CPD値に対応する軌跡を線形射線として示し、それは移動局により受信される送受信機からの到着角度、または移動局から送受信機への出発角度に対応する。あるいは、この方法は、上で説明した原理を使用して3次元に拡張することもできる。
【0065】
この方法の計算ステップは、サーバ40のプロセッサ42などの中央プロセッサ(
図1)、または移動局やアクセスポイントなどの受信機に組み込まれたマイクロプロセッサのいずれかによって、または複数のプロセッサ間で分散して実行できる。本明細書および特許請求の範囲で使用される「プロセッサ」という用語は、ソフトウェアの制御下で動作するローカルおよび分散プロセッサの両方、ならびに専用のそしてプログラム可能なハードウェアベースの処理ロジックを含む。
【0066】
移動局30などの受信機は、信号受信ステップ60で、マルチアンテナ送信機、たとえばAP1から信号を受信する。あるいは、このステップでは、マルチアンテナ受信機、たとえば再びAP1は、移動局28などの1つの送信機の1つ以上のアンテナからの信号を受信する。受信機は、CPD測定ステップ62で、上記の方法で受信信号のCPDを測定する。受信機は角度計算ステップ64で、上記の式に基づいて、2つ以上の可能な、送信機に関する出発または到着角度を導出する。
図4に示す例では、AP1は、AP1によって送信または受信される無線信号の波長よりも大きいアンテナ間距離 d を持っていると想定される、2d/λ>1。したがって、AP1に対して測定されたCPDは、出発または到着の4つの候補角度を生じさせる。これは、図の平面でAP1から放射される4つの射線(2つの射線のペア、各ペアの2つの射線が180°離れた反対方向を指す)によって表される。
【0067】
正式には、
図3Aに示すように、各射線はマップの参照フレーム内で勾配 a
i=tanα
iを持つ。ここでφ
i=θ
i+α
iである。AP1が既知の座標(x
i,y
i)にあり、受信機が未知の座標(x
s,y
s)にあると仮定すると、各射線は対応する線形方程式y
i = a
i(x
i-x
s)+y
sを定義する。移動局30またはサーバ40(位置検出プロセスが実行される場所に応じて)は、測定評価ステップ66で、測定およびこれまでに組み立てられた対応する方程式が移動局30の位置を明確に解明するのに十分であるかどうかをチェックする。そうでない場合、プロセスはステップ60に戻り、測定と計算が追加の送信機に対して繰り返される。
【0068】
図4は、ステップ66を何度も繰り返した後の状況を示している。信号を受信し、AP1、AP2、およびAP3からの出発、またはAP1、AP2、およびAP3への到着の候補角度を見つけた後でも、S1およびS2とラベル付けされた移動局30の2つの可能な位置54および56がある。したがって、プロセッサは、ステップ66でさらなる測定が必要であると結論付け、ステップ60でさらに別の送信機または受信機、この場合はAP4、から信号を受信しようとする。これらの信号は、移動局がS1にあることを明確に示している。次に、プロセッサは、位置出力ステップ68で、移動局の位置座標を計算して出力する。あるいは、利用可能な場合は多数の送信機または受信機にわたって信号が収集され、処理されうる。この場合余剰に決定された1組の方程式をもたらすが、これらは測定精度を上げるために使用できる。
【0069】
(到着角度を推定するための相関に基づく方法)
図6は、本発明の一実施形態による、アクセスポイント24などのマルチアンテナ受信機の、移動局および他の無線アクセスポイントに関する座標情報を導出するために使用される要素を概略的に示すブロック図である。以下の説明は、移動局が単一のアンテナを有し、アクセスポイント24のアンテナ34によって受信される出力信号を送信することを前提としている。アクセスポイント24によって実行される分析は、802.11n、802.11acのような適用可能な規格、またはすでに公布され、または将来公布される可能性のある他の規格などにより定義されているように、異なるアンテナによって受信される入力信号はフレームプリアンブルで同一のデータを符号化するという事実に依存する。
【0070】
本実施形態は、出力信号に存在するシンボルの事前定義されたシーケンスを利用する。これらの事前定義されたシーケンスは、例えば、適用可能な規格に従って、移動局28(
図2)などの送信機によって送信される各フレームのプリアンブルに含まれる同期シンボルを含み得る。これらの同期シンボルには優れた相関品質があり、つまり、フレーム上で計算された相関関数には、シャープで明確なピークがある。
【0071】
802.11ファミリの規格のメンバーによって指定された同期シンボルの中で、レガシーのショートトレーニングフィールド(STF)が最初に送信される。このフィールドの正確なタイミングは、短い相関器を使用して検出でき、粗い周波数偏移を推定するのに効果的である。後続のレガシーロングトレーニングフィールド(LTF)には、5倍長い相関器が必要であり、シンボルの位置合わせとチャネル推定にも使用される。以下の説明では、到着角度の相関に基づく推定に使用できる同期シンボルの例としてLTFを使用する。
【0072】
代替の実施形態では、他の事前定義されたシンボルを使用することができる。たとえば、IEEE802.11規格では、セクション17.2.2で、PLCPプロトコルデータユニット(PPDU)で使用するための物理層適合手順(PLCP)プリアンブルについて説明している。PLCPプリアンブルの相関は、到着角度を推定する際にLTFと同様の方法で計算および適用できる。アクセスポイント24の異なるアンテナ34によって受信された入力信号は、時間的にほぼ完全に重なっている。通常のパケット持続時間は約200μsであるが、LTFの非相関時間は、チャネル帯域幅によって物理的に制限される。チャネル帯域幅は、少なくとも20 MHzであり、時間は50nsに相当する。従来のLTFは、64要素の複素数ベクトルの2.5回の繰り返しで構成され、20MHzで合計160の時間サンプルがある。したがって、アンテナ34のそれぞれによって受信された信号とLTF参照信号との間の相互相関は、2つの強いピーク、64サンプル離れた、およびより離れた弱いピークを示すであろう。異なるアンテナ34の(時間領域における)相関ピークの位置は、ほぼ同一である。従来のSTFは、16要素の複素数ベクトルの10回の繰り返しで構成され、20 MHzで合計160の時間サンプルがあり、多くの相互相関ピークが発生する。
【0073】
図6の実施形態におけるデジタル処理回路72は、アンテナ34によって受信された信号間の位相差、したがって到達角度θ(
図2に示される)を抽出するためにこれらの相関特性を利用する。フロントエンド(FE)回路70は、当技術分野で知られているように、最初に各アンテナ34によって受信された信号を増幅、フィルタリング、およびデジタル化し、得られたデジタルサンプルをデジタル処理回路72に渡す。それぞれの相関器74はそれぞれのFEから出力されたデジタル化された信号に相関関数を適用する。例えば、相関器74は、デジタル化された信号の時間シフトされた自己相関を計算するか、またはデジタル化された信号と基準との間の相互相関を計算し得る。後者の場合、相関器74は、フロントエンド70から受信した複素入力に既知の信号の共役を乗算し、そして数十のサンプルにわたって積分する。ピーク分析器76は、相関関数のエンベロープを計算し、エンベロープ内で最大値が発生する時間を検知することによって、相関のピークを識別する。この目的のために、ピーク分析器76は、相関器出力の所与の時間ウィンドウにおけるN個の最も強いピークのエポックを測定し、次にエポックの予想されるパターン、例えば、レガシーLTFの64サンプルのエポックを検知することができる。このようにして、ピーク分析器はシンボルの位置合わせを実行できる。つまり、どの入力サンプルがパケットの第1のシンボルの第1のサンプルであるかを判断できる。(
図6においては、処理回路72は、概念を明確にするために、アンテナチャネルごとに別個のピーク分析器76を含むように示されているが、単一のピーク分析器を複数のチャネルに多重化することもできる。)
【0074】
ピーク分析器76は、トリガーをサンプラー75に出力する。サンプラー75は、エンベロープピーク、つまり最大相関エンベロープの時点で相関値をサンプリングする。位相分析器77は、この時点でサンプラー75から相関サンプルを受け取り、アンテナ34によって受信された信号のキャリア波の位相に対応するサンプルの位相を計算する。この位相計算は、両方のアンテナチャネルに対して実行され、そして加算器78は、位相差を計算する。
【0075】
位相/角度抽出回路79は、この位相差を使用して、2つの信号間のキャリア位相差をラジアンで測定する。
図2に示すように、2つの入力信号間の位相は、経路差 dsinθ による偏移によってオフセットされる。ここで、波長λは2πラジアンに対応する。キャリア位相差は、小さな経路差dsinθを示しているため、位相/角度抽出回路79が到着角度θを抽出する際に使用できる。あるいは、送信された信号内に存在することがわかっている他の適切なシンボルをこの方法で使用して、信号間の位相差を推定し、それによって到着角度を抽出することができる。
【0076】
上記のデジタル処理回路72の構成要素により、アクセスポイント24は、事前定義された規格に準拠する信号の到着角度を検知することができる。複数の送信機が動作している環境(たとえば、無線ネットワーク内の複数の移動局)で位置を検知するために、デジタル処理回路72は、アクセスポイントによって受信された各信号に関与する送信機も識別する必要がある。この目的のために、復調器80は、受信信号内の符号化されたデジタルデータを復号化する。MAC処理回路82は、フレームを送信した移動局を識別するMACアドレスを含む、フレームヘッダからデータを抽出する。復調器80およびMAC処理回路82、ならびにデジタル処理回路72の他の構成要素は、データの受信および送信の目的で当技術分野で知られているWi-Fiアクセスポイントに設置されるものなど、802.11受信機の従来の要素である。本発明の理解に必須ではないアクセスポイントの他の要素は、簡潔化のために省略されている。
【0077】
前述のように、上記の例は主に単一のアンテナを備えた移動局の位置を検知することに関するものであるが、上記の手法は、他のアクセスポイントなどの固定送信機からの信号の到着角度を検知する場合にも同様に適用できる。この後者の場合、例えば、他のアクセスポイントによって送信されるビーコン信号の既知のフォーマットを、相関および位相抽出に使用することができる。あるいは、十分に強い相関特性を有する実質的に任意の既知の信号フォーマットを同様の方法で使用することができる。
【0078】
アクセスポイントまたは他の送信機が複数のアンテナからの出力信号を同時に送信する場合、たとえばIEEE802.11n規格に従って、送信機は出力信号間に事前定義された周期的遅延を適用する。信号の周期的遅延ダイバーシティ(CDD)と呼ばれるこの手法は、相関器74に複数の相関ピークを生じさせる。異なる送信アンテナから受信したそれぞれの信号は、ピーク分析器76により、上記の国際出願公開WO2018/055482(特許文献4)の19~22ページで詳細に説明されているように相関ピーク間の間隔を使用して互いに区別できる。次に、分離された信号の一方または両方を使用して、到着角度を抽出できる。
【0079】
アクセスポイントなどの固定送信機の位置がわかっている場合、受信機は、上記のように、この固定送信機と近くの移動局の両方からの信号を処理して、さまざまな信号のそれぞれの到着角度を検知することができる。次に、位置がわかっている固定送信機からの信号の到着角度を、移動局からの信号の到着角度を較正する際の基準として使用でき、したがって、移動局の位置座標の計算の精度を高めることができる。
【0080】
上記の実施形態は例として引用されており、本発明は、本明細書で特に示され、記載されているものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の様々な特徴の組み合わせおよびサブ組合せの両方、ならびに前述の説明を読んだときに当業者に想起される、先行技術に開示されていないその変形および改変を含む。
【国際調査報告】