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特表2023-508350精製FCC及び異性化脱ろうユニットを介したポリプロピレン及び潤滑油への廃プラスチックのサーキュラーエコノミー
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  • 特表-精製FCC及び異性化脱ろうユニットを介したポリプロピレン及び潤滑油への廃プラスチックのサーキュラーエコノミー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】精製FCC及び異性化脱ろうユニットを介したポリプロピレン及び潤滑油への廃プラスチックのサーキュラーエコノミー
(51)【国際特許分類】
   C10G 1/10 20060101AFI20230222BHJP
   C10G 45/58 20060101ALI20230222BHJP
   C10G 11/18 20060101ALI20230222BHJP
   C08J 11/12 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
C10G1/10
C10G45/58
C10G11/18
C08J11/12 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538697
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(85)【翻訳文提出日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 US2020066810
(87)【国際公開番号】W WO2021133895
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】62/952,867
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティムケン、へ - キョン
【テーマコード(参考)】
4F401
4H129
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA27
4F401BA02
4F401BA06
4F401CA22
4F401CA67
4F401CA70
4F401DC01
4F401FA07Z
4H129AA01
4H129BA04
4H129BB03
4H129BC02
4H129BC28
4H129BC35
4H129BC37
4H129CA22
4H129DA04
4H129DA20
4H129GA03
4H129KA02
4H129KA11
4H129KB03
4H129NA22
4H129NA25
4H129NA26
4H129NA30
4H129NA31
4H129NA32
4H129NA35
4H129NA43
(57)【要約】
廃プラスチックをポリプロピレン重合のためのリサイクルに変換するための連続プロセスが提供される。このプロセスは、精製所の操作を統合して、効果的かつ効率的なリサイクルプロセスを提供する。このプロセスは、ポリエチレンとポリプロピレンを含む廃プラスチックを選択し、次いで、廃プラスチックを熱分解反応器に通して、ポリオレフィン廃棄物の少なくとも一部を熱的に分解し、熱分解された流出物を生成することを含む。熱分解された流出物は、オフガス、ナフサ/ディーゼル留分、重質留分、及びチャーに分離される。ナフサ/ディーゼル留分は、精製FCCユニットに通され、そこから液化石油ガスCオレフィン/パラフィン混合物が回収される。Cパラフィン及びCオレフィンは、プロパン/プロピレンスプリッターで異なる留分に分離される。Cオレフィン留分は、プロピレン重合反応器に通される。Cパラフィン留分は、任意選択で脱水素化ユニットに通され、追加のプロピレンを生成し、次いで、得られたCオレフィンは、プロピレン重合反応器に通される。熱分解油の重質留分は、異性化脱ろうユニットに通され、潤滑基油を生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックを、ポリプロピレン重合のためのリサイクルに変換するための連続プロセスであって、
(a) ポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含む廃プラスチックを選択する工程、
(b) (a)からの前記廃プラスチックを、熱分解反応器に通して、ポリオレフィン廃棄物の少なくとも一部を熱的に分解し、熱分解された流出物を生成する工程、
(c) 前記熱分解された流出物を、オフガス、ナフサ/ディーゼル留分、重質留分、及びチャーに分離する工程、
(d) 前記ナフサ/ディーゼル留分を、精製FCCユニットに通す工程、
(e) 前記FCCユニットから、液化石油ガスCオレフィン/パラフィン混合物を回収する工程、
(f) 前記Cパラフィン及びCオレフィンを、異なる留分に分離する工程、
(g) 前記Cオレフィンを、プロピレン重合反応器に通す工程、
(h) 前記重質留分を、異性化脱ろうユニットに通して基油を生成する工程、
を含む、上記プロセス。
【請求項2】
(d)のナフサ/ディーゼル留分を、精製FCCユニット蒸留セクションに直接通す、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ガソリン及び重質留分を、精製FCCユニットから回収する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
汚染物質が、熱分解サイトで除去される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
ポリプロピレン生成物が、重合されたプロピレンから調製される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
(a)で選択された廃プラスチックが、プラスチック分類グループ2、4、及び/又は5からのものである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
重質留分が、FCCユニット蒸留塔から回収され、精製所において清浄なガソリン、ディーゼル、又はジェット燃料へとさらに処理される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記FCCユニットによって生成されるガソリン及び重質留分の量が、リサイクルされた熱分解油で増加する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記異性化脱ろうユニットによって生成される基油の量が、リサイクルされた熱分解油で増加する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
(h)における重質留分を、水素化処理し、次いで、脱ろうユニットで異性化する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
FCC精製ユニットへと流れる、ナフサ/ディーゼル留分の体積流量が、FCCユニットへと流れる炭化水素の総流量の最大約50体積%を構成する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記ナフサ/ディーゼルの流量が、最大約20体積%を構成する、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
廃プラスチックをポリプロピレン重合のためのリサイクルに変換するための連続プロセスであって、
(a) ポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含む廃プラスチックを選択する工程、
(b) (a)からの前記廃プラスチックを、熱分解反応器に通して、ポリオレフィン廃棄物の少なくとも一部を熱的に分解し、熱分解された流出物を生成する工程、
(c) 前記熱分解された流出物を、オフガス、ナフサ/ディーゼル留分、重質留分、及びチャーに分離する工程、
(d) 前記ナフサ/ディーゼル留分を、精製FCCユニットに通す工程、
(e) 前記FCCユニットから、液化石油ガスCオレフィン/パラフィン混合物を回収する工程、
(f) 前記Cパラフィン及びCオレフィンを、異なる留分に分離する工程、
(g) 前記Cパラフィンを、脱水素化ユニットに通して、Cオレフィンを生成する工程、
(h) 前記Cオレフィンを、プロピレン重合反応器に通す工程、
(i) 前記重質留分を、異性化脱ろうユニットに通して基油を生成する工程、
を含む、上記プロセス。
【請求項14】
(f)及び(g)で生成したプロピレンを、プロピレン重合反応器に通す、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(d)のナフサ/ディーゼル留分を、精製FCCユニット蒸留セクションに直接通す、請求項13に記載のプロセス。
【請求項16】
ガソリン及び重質留分を、精製FCCユニットから回収する、請求項13に記載のプロセス。
【請求項17】
汚染物質が、熱分解サイトで除去される、請求項13に記載のプロセス。
【請求項18】
(a)で選択された廃プラスチックが、プラスチック分類グループ2、4、及び/又は5からのものである、請求項13に記載のプロセス。
【請求項19】
重質留分が、FCCユニット蒸留塔から回収され、精製所において清浄なガソリン、ディーゼル、又はジェット燃料へとさらに処理される、請求項13に記載のプロセス。
【請求項20】
前記FCCユニットによって生成されるガソリン及び重質留分の量が、リサイクルされた熱分解油で増加する、請求項13に記載のプロセス。
【請求項21】
前記異性化脱ろうユニットによって生成される基油の量が、リサイクルされた熱分解油で増加する、請求項13に記載のプロセス。
【請求項22】
(i)における重質留分を、水素化処理し、次いで、脱ろうユニットで異性化する、請求項13に記載のプロセス。
【請求項23】
FCC精製ユニットへと流れる、ナフサ/ディーゼル留分の体積流量が、FCCユニットへと流れる炭化水素の総流量の最大約50体積%を構成する、請求項13に記載のプロセス。
【請求項24】
前記ナフサ/ディーゼルの流量が、最大約20体積%を構成する、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
廃プラスチックを、ポリプロピレン及び潤滑油の調製に有用な化学物質に変換するためのプロセスであって、
(a) ポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含む廃プラスチックを選択する工程、
(b) 前記廃プラスチックを熱分解し、ナフサ/ディーゼル留分及び重質留分を回収する工程、
(c) 前記ナフサ/ディーゼル留分を、精製FCCユニットに通す工程、
(d) 前記重質留分を、異性化脱ろうユニットに通す工程、
を含む、上記プロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
世界はプラスチック生産の非常に急速な成長を目の当たりしてきた。PlasticsEurope Market Research Groupによると、世界のプラスチック生産量は、2016年に3億3500万トン、2017年に3億4800万トン、2018年に3億5900万トンであった。マッキンゼー・アンド・カンパニーによると、世界のプラスチック廃棄物量は、2016年に年間約2億6000万トンと推定され、現在の軌道が続く場合、2030年までに年間4億6000万トンになると予測されている。
【背景技術】
【0002】
使い捨てプラスチック廃棄物は、ますます重要な環境問題になっている。現時点では、ポリエチレンやポリプロピレンの廃プラスチックを付加価値のある化学製品や燃料製品にリサイクルするための選択肢はほとんどないようである。現在、少量のポリエチレンとポリプロピレンのみが、ケミカルリサイクルを介してリサイクルされ、このリサイクルされて清浄化されたポリマーペレットは、熱分解ユニットで熱分解され、燃料(ナフサ、ディーゼル)、スチームクラッカー供給原料、又はスラックワックスが生成される。
【0003】
廃プラスチックを炭化水素潤滑剤に変換するプロセスが知られている。例えば、米国特許第3,845,157号は、廃ポリオレフィン又は未使用のポリオレフィンを分解して、エチレン/オレフィンコポリマーなどのガス状生成物を形成し、これらをさらに処理して合成炭化水素潤滑剤を製造することを開示している。米国特許第4,642,401号は、粉砕されたポリオレフィン廃棄物を150~500℃の温度及び20~300バールの圧力で加熱して、液体炭化水素を製造することを開示している。米国特許第5,849,964号は、廃プラスチック材料を揮発性相と液相に解重合するプロセスを開示している。揮発性相は、気相と凝縮物に分離される。液相、凝縮物及び気相は、標準的な精製技術を用いて液体燃料成分に精製される。米国特許第6,143,940号は、廃プラスチックを重質ワックス組成物に変換するための手順を開示している。米国特許第6,150,577号は、廃プラスチックを潤滑油に変換するプロセスを開示している。欧州特許出願公開第0620264号は、廃ポリオレフィン又は未使用のポリオレフィンから潤滑油を製造するプロセスであって、廃棄物を流動床内で熱的に分解することにより、ワックス状生成物を形成し、任意選択で水素化処理を使用し、次いで触媒的に異性化及び分留して潤滑油を回収するプロセスを開示している。
【0004】
廃プラスチックを潤滑油に変換するためのプロセスに関する他の文書には、米国特許第6,288,296号、第6,774,272号、第6,822,126号、第7,834,226号、第8,088,961号、第8,404,912号及び第8,696,994号、並びに米国特許出願公開第2019/0161683号、第2016/0362609号、及び第2016/0264885号が含まれる。前述の特許文書は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0005】
熱分解を介したケミカルリサイクルの現在の方法では、プラスチック業界に大きな影響を与えることはできない。現在の熱分解操作では、品質に乏しい燃料成分(ナフサ及びディーゼル範囲の製品)が生成されるが、その量は十分少ないので、これらの生成物を燃料供給にブレンドすることができる。しかし、環境問題に対処するため、非常に大量の廃ポリエチレンと廃ポリプロピレンをリサイクルするためには、このような単純なブレンドを続けることはできない。熱分解ユニットから生成されたままの生成物は、品質があまりに乏しすぎるので、輸送用燃料に大量にブレンド(例えば、5~20vol%ブレンド)することはできない。
【0006】
使い捨てプラスチックを工業的に大量にリサイクルして環境への影響を減らすためには、より堅牢なプロセスが必要である。この改善されたプロセスでは、廃ポリエチレン及び廃ポリプロピレンプラスチックの「サーキュラーエコノミー(循環経済)」が確立されるべきであり、使用済みの廃プラスチックが、ポリマーや高価値の副生成物の出発原料として効果的にリサイクルされる必要がある。
【発明の概要】
【0007】
提供されるのは、廃プラスチックを変換するための連続プロセスである。廃プラスチックは、ポリプロピレン重合のためにリサイクルされる。このプロセスは、最初にポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含む廃プラスチックを選択することを含む。次いで、これらの廃プラスチックを熱分解反応器(pyrolysis reactor)に通して、ポリオレフィン廃棄物の少なくとも一部を熱的に分解し(thermally crack)、熱分解された流出物(pyrolyzed effluent)を生成する。熱分解された流出物は、オフガス、ナフサ/ディーゼル留分、重質留分、及びチャーに分離される。
【0008】
このプロセスを石油精製(oil refinery)に組み込むことは、本プロセスの重要な側面であり、ポリプロピレンなどの使い捨て廃プラスチックで、サーキュラーエコノミーを実現することができる。このように、分離されたナフサ/ディーゼル留分は、精製FCCユニットに通され、そこから液化石油ガスCオレフィン/パラフィン混合物が回収される。本プロセスでは、Cパラフィン及びCオレフィンは、異なる留分に分離される。Cオレフィンは、プロピレン重合反応器に通され、ポリプロピレンを生成する。任意選択で、Cパラフィンは、脱水素化ユニット(dehydrogenation unit)に通され、追加のプロピレンを生成する。重質留分は、異性化脱ろうユニット(isomerization dewaxing unit)に通され、基油を生成することができる。
【0009】
精製所(refinery)は、一般に、精製ユニット(refinery units)を通って流れる独自の炭化水素の供給を有している。廃プラスチックの熱分解から生成され、精製ユニットへと流れる、ナフサ/ディーゼル又はワックス状の重質留分の流れの体積は、精製ユニットへの流れ全体(総流量)の任意の実用的又は収容可能な体積%(vol%)を構成することができる。一般に、廃プラスチックの熱分解から生成される留分の流量は、実際的な理由から、総流量(すなわち、精製流量と留分流量)の最大約50vol%とすることができる。一実施形態では、ナフサ/ディーゼルの流量は、総流量の最大約20vol%の量である。
【0010】
とりわけ他の要因の中でも、精製操作(refinery operation)を追加することにより、廃熱分解油(waste pyrolysis oil)又は廃熱分解ワックスを、ガソリン、ジェット、ディーゼル、及び基油などの高価値製品にアップグレードできることがわかっている。また、精製操作を追加することにより、廃熱分解油又は廃熱分解ワックスから、清浄なプロパンとプロピレンを効率的かつ効果的に生成し、究極のポリプロピレンポリマーの生産ができることがわかっている。リサイクルされたプラスチックから、未使用のポリマーと同等の製品品質を備えたポリプロピレン製品に至るプロセス全体において、プラスの経済性が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、廃プラスチックを熱分解して燃料又はワックスを生成する現在のプラクティスを示している(基本ケース)。
【0012】
図2図2は、廃プラスチックのサーキュラーエコノミー(循環経済)を確立するための本プロセスを示している。
【0013】
図3図3は、廃プラスチックのリサイクルに関するプラスチックのタイプ分類を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本プロセスでは、廃ポリエチレン及び/又は廃ポリプロピレンを、未使用ポリプロピレン(virgin polypropylene)にリサイクルする方法が提供され、別個の工業プロセスを組み合わせることによって、サーキュラーエコノミー(循環経済)を確立する。ポリエチレンとポリプロピレンポリマーの大部分は、使い捨てプラスチックに使用され、使用後に廃棄される。この使い捨てプラスチック廃棄物は、ますます重要な環境問題になってきている。現時点では、ポリエチレンやポリプロピレンの廃プラスチックを付加価値のある化学物質や燃料製品にリサイクルするための選択肢はほとんどないようである。現在、少量のポリエチレン/ポリプロピレンのみがケミカルリサイクルを介してリサイクルされ、このリサイクルされて清浄化されたポリマーペレットは、熱分解ユニットで熱分解され、燃料(ナフサ、ディーゼル)、スチームクラッカー供給原料、又はスラックワックスが生成される。
【0015】
ポリプロピレンは、さまざまな消費者向け製品や工業製品に広く使用されている。ポリプロピレンは、機械的耐久性と高い耐薬品性を備え、ポリエチレンに次いで2番目に広く生産されている汎用プラスチックである。ポリプロピレンは、包装、フィルム、カーペットや衣類の繊維、成形品、押出パイプに広く使用されている。今日、使用済みポリプロピレン製品のごく一部のみがリサイクルのために収集されている。これは、上述したリサイクルの取り組みの非効率性と非効果性のためである。
【0016】
図1は、今日の業界で一般的に行われている廃プラスチック燃料又はワックスの熱分解の図を示している。上述したように、一般的に、ポリエチレンとポリプロピレンの廃棄物は、一緒に選別される(1)。洗浄されたポリエチレン/ポリプロピレン廃棄物2は、熱分解ユニット3において、オフガス4及び熱分解油(液体生成物)に変換される。熱分解ユニットからのオフガス4は、熱分解ユニット3を操作するための燃料として使用される。オンサイト蒸留ユニット(図示せず)は、熱分解油を分離してナフサ及びディーゼル5製品を製造し、これらを燃料市場に販売する。重質熱分解油留分6は、燃料収量を最大化するために熱分解ユニット3に再循環される。チャー7は、熱分解ユニット3から除去される。重質留分6は、長鎖の直鎖状炭化水素に富み、非常にワックス状である(すなわち、周囲温度まで冷却するとパラフィン系ワックスを形成する)。ワックスは、重質留分6から分離して、ワックス市場に販売することができる。
【0017】
本プロセスは、廃ポリマーの熱分解生成物流を石油精製操作(oil refinery operation)に統合することにより、熱分解されたポリプロピレン及び/又はポリエチレンの廃プラスチックを大量に変換する。得られたプロセスは、ポリマーの原料(プロパン脱水素化ユニット用の液化石油ガス(LPG)プロパン流、及びプロピレン重合ユニット用のプロピレン)、並びに高品質のガソリン及びディーゼル燃料、及び/又は高品質の基油を生成する。
【0018】
一般に、本プロセスは、ポリプロピレンプラントのためのサーキュラーエコノミー(循環経済)を提供する。ポリプロピレンは、純粋なプロピレンの重合を介して製造される。清浄なプロピレンは、プロパン脱水素化ユニットから製造することができる。また、プロピレンは、石油精製流動接触分解(FCC)ユニットから得ることができ、このユニットはプロピレンとプロパン液化石油ガス(LPG)の混合物を生成する。純粋なプロピレンは、プロパン/プロピレンスプリッター、高効率蒸留塔(PPスプリッター)を使用して混合物から分離される。
【0019】
廃熱分解油及び廃熱分解ワックスを高価値製品(ガソリン、ディーゼル、及び基油)にアップグレードするための、及び、究極のポリプロピレンポリマーの生産のための清浄なプロパン及びプロピレンを生産するための、精製操作を追加することによって、リサイクルされたプラスチックから、未使用のポリマーと同等の製品品質を備えたポリプロピレン製品に至るプロセス全体において、プラスの経済性が実現されている。
【0020】
熱分解ユニットは、カルシウム、マグネシウム、塩化物、窒素、硫黄、ジエン、重質成分などの汚染物質を含む低品質の製品を製造し、これらの製品は、輸送用燃料のブレンドのために大量に使用することができない。これらの製品を精製ユニットに通すことにより、汚染物質を前処理ユニットで捕捉し、それらの悪影響を軽減できることがわかっている。燃料成分は、化学変換プロセスを備えた適切な精製ユニットでさらにアップグレードすることができ、統合プロセスによって製造される最終的な輸送用燃料は、より高品質で、燃料の品質要件を満たすことができる。本プロセスでは、ワックスを、貴重な基油にアップグレードする。統合プロセスは、プロパン脱水素化ユニット用に、そして最終的にはポリプロピレン製造用に、はるかに清浄でより純粋なプロパン流を生成する。これらの仕様通りの大量生産により、実現可能なリサイクルプラスチックの「サーキュラーエコノミー」が可能になる。
【0021】
精製操作において出入りするカーボンは「透明」(“transparent”)であり、これは、廃プラスチックからのすべての分子が、ポリオレフィンプラントに循環して戻り、正確なオレフィン製品になるとは限らないことを意味するが、それにもかかわらず、精製所に出入りする正味の「グリーン」カーボン(“green”carbon)がポジティブであるため、「クレジット(credit)」と見なされる。これらの統合プロセスにより、ポリプロピレンプラントに必要な未使用供給原料の量は大幅に削減されることになる。
【0022】
図2は、効果的なポリプロピレン生産のために、精製操作をリサイクルと統合した本統合プロセスを示している。図2では、混合廃プラスチックは、一緒に選別される(21)。洗浄された廃プラスチック22は、熱分解ユニット23において、オフガス24と熱分解油(液体生成物)と任意選択でワックス(周囲温度で固体生成物)とに変換される。熱分解ユニットからのオフガス24は、熱分解ユニット23を操作するための燃料として使用することができる。熱分解油は、一般にオンサイト蒸留ユニットによって、ナフサ/ディーゼル留分25、及び重質留分26に分離される。熱分解工程の完了後、チャー27は、熱分解ユニット23から除去される。
【0023】
熱分解ユニットは、廃プラスチック収集サイトの近くに配置することができ、このサイトは、精製所から離れた場所、精製所の近く、又は精製所内にあることができる。熱分解ユニットが精製所から離れた場所にある場合、熱分解油(ナフサ/ディーゼル及び重質油)及びワックスは、トラック、はしけ、鉄道車両、又はパイプラインによって精製所に移送することができる。しかしながら、熱分解ユニットは、プラスチック収集サイト内又は精製所内にあることが好ましい。
【0024】
本プロセスの好ましい出発材料は、主にポリエチレンとポリプロピレンを含む選別された廃プラスチックである(プラスチックリサイクル分類タイプ2、4、及び5)。事前に選別された廃プラスチックは、洗浄され、細断又はペレット化されて、熱分解ユニットに供給され、熱分解される。図3は、廃プラスチックのリサイクルに関するプラスチックのタイプ分類を示している。分類タイプ2、4、及び5は、それぞれ高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、及びポリプロピレンである。ポリエチレンとポリプロピレンの廃プラスチックは、任意の組合せで使用することができる。本プロセスでは、少なくともいくらかのポリプロピレンの廃プラスチックを使用することが好ましい。
【0025】
N、Cl、Sなどの汚染物質を最小限に抑えるには、廃プラスチックを適切に選別することが非常に重要である。ポリエチレンテレフタレート(プラスチックリサイクル分類タイプ1)、ポリ塩化ビニル(プラスチックリサイクル分類タイプ3)及びその他のポリマー(プラスチックリサイクル分類タイプ7)を含むプラスチック廃棄物は、5%未満、好ましくは1%未満、最も好ましくは0.1%未満に選別される必要がある。本プロセスは、適度な量のポリスチレンを許容できる(プラスチックリサイクル分類タイプ6)。廃ポリスチレンは、30%未満、好ましくは20%未満、最も好ましくは5%未満に選別される必要がある。
【0026】
廃プラスチックを洗浄すると、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムなどの金属汚染物質、及び他の廃棄物源からの非金属汚染物質が除去される。非金属汚染物質には、シリカなどの周期表第IV族からの汚染物質、リンや窒素化合物などの第V族からの汚染物質、硫黄化合物などの第VI族からの汚染物質、及び、フッ化物、塩化物、ヨウ化物などの第VII族からのハロゲン化物汚染物質が含まれる。残留金属、非金属汚染物質、及びハロゲン化物は、50ppm未満、優先的には30ppm未満、最も優先的には5ppm未満まで除去する必要がある。
【0027】
洗浄によって金属、非金属汚染物質、及びハロゲン化物不純物が適切に除去されない場合は、別のガード床を使用して金属及び非金属汚染物質を除去することができる。
【0028】
熱分解は、プラスチック材料原料を、熱分解ゾーン内において熱分解条件で接触させることによって行われ、そこでは、供給原料の少なくとも一部が分解され、それにより、1-オレフィン及びn-パラフィンを含む熱分解ゾーン流出物が形成される。熱分解条件は、約400℃~約700℃、好ましくは約450℃~約650℃の温度を含む。従来の熱分解技術は、大気圧を超える圧力での操作条件を教示している(例えば、米国特許第4,642,401号を参照)。さらに、圧力を下方に調整することにより、所望の生成物の収率を制御できることがわかっている(例えば、米国特許第6,150,577号を参照)。したがって、そのような制御が望まれるいくつかの実施形態では、熱分解圧力は大気圧未満である。
【0029】
図2は、熱分解からのナフサ/ディーゼル留分のみがFCCユニット28に送られる本統合プロセスを示している。ナフサ/ディーゼル留分は、供給品質に応じて、FCC反応器又は蒸留塔のいずれかに供給される。流動接触分解(fluid catalytic cracking:FCC)プロセスは、他の精製操作から回収された常圧軽油、減圧軽油、常圧残油及び重質分を、高オクタン価ガソリン、軽燃料油、重燃料油、オレフィンリッチ軽質ガス(LPG)及びコークスに変換するために、精製業界で広く使用されている。FCCは、高活性ゼオライト触媒を使用して、ライザー内の950~990°Fの反応器温度で、数分以下の短い接触時間で重質炭化水素分子を分解する。オレフィン(プロピレン、ブチレン)を含むLPG流は、通常、アルキレートガソリンを製造するため、又は化学製品の製造に使用するためにアップグレードされる。従来のFCCユニットが使用される。
【0030】
精製所は、一般に、精製ユニットを通って流れる独自の炭化水素の供給を有している。廃プラスチックの熱分解から生成され、精製ユニット(ここではFCCユニット)へと流れるナフサ/ディーゼルの流れの体積は、精製ユニットへの流れ全体(総流量)の任意の実用的又は収容可能な体積%(vol%)を構成することができる。一般に、廃プラスチックの熱分解から生成されるナフサ/ディーゼル留分の流量は、実際的な理由から、総流量(すなわち、精製流量とナフサ/ディーゼル流量)の最大約50vol%とすることができる。一実施形態では、ナフサ/ディーゼルの流量は、総流量の最大約20vol%の量である。別の実施形態では、ナフサ/ディーゼルの流量は、総流量の最大約10vol%の量である。約20vol%は、精製所への影響において非常に実用的な量であると同時に、優れた結果を提供し、収容可能な量であることがわかっている。もちろん、熱分解から生成されるナフサ/ディーゼルの量は、精製ユニットに通される留分が、流量の所望の体積%を提供するように制御することができる。脱ろうユニットへの重質留分の流量も、同様に制御及び/又は調整することができる。
【0031】
FCCユニット28は、C /Cオレフィン/パラフィン混合物とC /Cオレフィン/パラフィン混合物とを含む液化石油ガスオレフィン流29を生成する。Cオレフィン/パラフィン混合物は、40で回収され、次いで、プロパン及びプロピレン流は、PPスプリッター31によって分割されて、プロパン32及びプロピレン33の純粋な流れを生成する。プロピレン流33は、ポリプロピレンユニット35に直接供給され、ポリプロピレン樹脂を生成することができる。その後、ポリプロピレンの消費者向け製品を製造することができる(36)。
【0032】
純粋なプロパン32は、プロパン脱水素化ユニット34に供給されて追加のプロピレンを製造し、次いで、プロピレン重合ユニット35で最終的にポリプロピレンを製造することができる。
【0033】
プロパンの脱水素化は、プロピレンを製造するために業界で広く行われている。反応は吸熱反応であり、変換は多段反応器と段間ヒーターによって維持される。ユニットは、典型的には、貴金属(Pt)触媒の存在下で、高温(>900°F)及び低圧(<50psig)で操作される。多段プロセスにより、約85%の純度のプロピレン/プロパン混合物が生成される。この流れは、高効率の蒸留塔であるプロパン/プロピレン(PP)スプリッターに送られる。このスプリッターにより、純度99.5~99.8%の純粋なプロピレン流が生成される。
【0034】
PPスプリッターユニット及び/又はプロパン脱水素化ユニットは、精製所から離れた場所、精製所の近く、又は精製所内に配置することができる。プロパン/プロピレン混合物は、トラック、はしけ、鉄道車両、又はパイプラインによってPPスプリッターに送られる。PPスプリッターユニット及びプロパン脱水素化ユニットは、精製FCCユニットに近接していることが好ましい。
【0035】
ポリプロピレンは、モノマーのプロピレンから連鎖成長重合を介して生成される。チーグラー・ナッタ触媒又はメタロセン触媒を使用して、プロピレンからポリプロピレンポリマーへの重合を触媒し、目的の特性を実現する。これらの触媒は、有機アルミニウム化合物を含む特殊な助触媒で活性化される。工業的な重合プロセスでは、流動床反応器での気相重合又はループ反応器でのバルク重合のいずれかを使用する。気相重合は、典型的には、Hの存在下で50~90℃の温度及び8~35気圧の圧力で行われる。バルク重合は、60~80℃で進行し、30~40気圧の圧力をかけてプロピレンを液体状態に保つ。
【0036】
プロピレン重合ユニットは、原料(プロピレン)をパイプラインを介して移送できるように、精製所の近くに配置することが好ましい。精製所から離れた場所にある石油化学プラントの場合、原料は、トラック、はしけ、鉄道車両、又はパイプラインを介して配送することができる。
【0037】
FCCユニットからのC 30及び重質炭化水素生成物37は、清浄な(clean)ガソリン、ディーゼル、又はジェット燃料にアップグレードするために、適切な精製ユニット45に送ることができる。
【0038】
熱分解ユニット23からの重質なワックス状の熱分解油又はワックス26は、基油脱ろうユニット(一般に、水素化異性化のための貴金属含有ゼオライト触媒を備えた異性化脱ろうユニット38)に送って、優れた粘度指数及び流動点を有する潤滑基油を製造することができる。重質なワックス状の留分の流量は、収容したい量に基づいて、必要に応じて制御及び調整することができる。
【0039】
異性化脱ろうユニット(isomerization dewaxing unit)は、パラフィン系のワックス状の重質炭化水素材料(典型的には沸点約650°F)を、高粘度指数(VI)の潤滑油に変換する。このユニットは、典型的には、供給物の水素化処理セクション、異性化脱ろうセクション、及び蒸留セクションで構成される。
【0040】
脱ろうユニットへの供給物は、好ましくは、水素化処理工程において最初に水素化に供される。この水素化処理(hydrotreating)は、脱ろうユニットの一部として行われる。供給物の水素化処理工程は、窒素含有、硫黄含有、及び/又は酸素含有汚染物質の大部分を除去する。水素化処理工程はまた、オレフィン、ジエン、及び芳香族化合物の一部を飽和させて、脱ろうユニットへの供給物の品質を改善する。分解を回避しながら汚染物質を除去するために使用される典型的な水素化処理条件には、約190℃(374°F)~約340℃(644°F)の範囲の温度、約400psig~約3000psigの範囲の圧力、約0.1hr-1~約20hr-1の範囲の空間速度(LHSV)、及び約400~約15,000SCF/Bの範囲の水素リサイクル率が含まれる。水素化処理触媒には、水素化処理ユニットで従来から使用されているものが含まれ、Ni、Mo、Co、Wなどの金属と、アルミナ、シリカ、又はシリカ-アルミナなどの多孔質担体が含まれる。
【0041】
水素化処理された重質炭化水素は、貴金属、中間孔径のモレキュラーシーブ及びバインダーを含む異性化脱ろう触媒を備えた脱ろう反応器に送られる。この触媒は、好ましくは、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48、ZSM-5、SSZ-32、SSZ-91、SAPO-11、SAPO-31及びSAPO-41などの中間孔径(10員環)のモレキュラーシーブを含む。貴金属としては、Pt、Pd、又はPtとPdの混合物などの第VIII族金属が挙げられる。典型的には、多孔質アルミナ又はシリカを使用して材料を結合し、固定床反応器用の触媒ペレットを生成する。脱ろう反応器の典型的な反応条件には、200℃(392°F)~約475℃(887°F)の温度範囲、約200psig~約3000psigの範囲の圧力、約0.2hr-1~約10hr-1の範囲の空間速度(LHSV)、及び約400~約15,000SCF/Bの範囲の水素リサイクル率が含まれる。異性化脱ろう触媒は、n-パラフィンをイソパラフィンに変換し、それによって得られる油の流動点を低下させ、高VI潤滑油を形成する。
【0042】
異性化脱ろうセクションからの流出物である炭化水素は、蒸留ユニットに送られ、この流出物は、さまざまな油留分、例えば、凡そ650°F以上で沸騰する基油留分、約300~700°Fで沸騰するディーゼル留分、及び約80~400°Fで沸騰するガソリン留分に分離される。ガソリン、ジェット及びディーゼル留分の沸点は、季節や地域の仕様に応じて調整される。
【0043】
サーキュラーエコノミーと効果的かつ効率的なリサイクルキャンペーンのメリットは、本統合プロセスによって実現される。
【0044】
以下の例は、本プロセスとその利点をさらに説明するために提供される。これらの例は、例示を目的としたものであり、限定することを意図したものではない。
【実施例
【0045】
[例1] 商業的供給源からの熱分解油及びワックスの特性
【0046】
熱分解油とワックスの試料を商業的供給源から入手した。それらの特性を表1に要約する。これらの熱分解試料は、主にポリエチレンとポリプロピレンを含む廃プラスチックから、ガスや触媒を添加せずに、約400~600℃、大気圧近くで熱分解反応器内での熱分解を介して調製した。熱分解ユニットは、典型的には、ガス、液体油製品、任意選択でワックス製品、及びチャーを生成する。熱分解ユニットの、熱的に分解された炭化水素を含むオーバーヘッドガス流を冷却し、凝縮物を、熱分解油(周囲温度で液体)及び/又は熱分解ワックス(周囲温度で固体)として収集した。熱分解油は、熱分解ユニットの主な製品である。熱分解ユニットによっては、熱分解油に加えて、別の製品として熱分解ワックスを生成するものもある。
【表1】
【0047】
比重測定にはASTM D4052法を用いた。シミュレートされた沸点分布曲線は、ASTM D2887法を用いて得た。炭素及び水素のCarlo-Erba分析は、ASTM D5291法に基づいて行った。臭素数の測定は、ASTM D1159法に基づいて行った。炭化水素タイプの分析は、高分解能磁気質量分析計を使用し、磁石を40~500ダルトンまでスキャンして行った。総硫黄は、ASTM D2622法に従ってXRFを使用して決定した。窒素は、修正ASTM D5762法により、化学発光検出を使用して決定した。総塩化物含有量は、修正ASTM 7359法により、燃焼イオンクロマトグラフィー機器を使用して測定した。ナフサ及び留出物の沸騰範囲の酸素含有量は、29~500のm/Z範囲の電子イオン化検出器を備えたGC/MS測定によるGCを使用して推定した。油中の微量金属及び非金属元素は、誘導結合プラズマ原子発光分析(ICP-AES)を使用して決定した。
【0048】
主にポリエチレン及びポリプロピレン廃棄物から供給される選別されたプラスチックの工業的熱分解プロセスでは、熱分解油又は熱分解ワックスの場合のように、比重が0.7~0.9の範囲で、沸点範囲が18~1100°Fの高品質の炭化水素流を生成した。
【0049】
熱分解生成物は、主に炭素及び水素から構成されるかなり純粋な炭化水素である。炭素に対する水素のモル比は、1.7~2.0近くまで変化する。臭素数は14~60の範囲にあり、これは、オレフィンと芳香族化合物に起因して、不飽和の程度がさまざまであることを示している。芳香族含有量は5~23体積%の範囲にあり、熱分解条件がより厳しいユニットほどより多くの芳香族化合物を生成する。熱分解ユニットのプロセス条件に応じて、熱分解生成物は、20vol%半ばから50vol%半ばの範囲のパラフィン含有量を示す。熱分解生成物には、かなりの量のオレフィンが含まれている。試料A及び試料Bは、より高い熱分解温度及び/又はより長い滞留時間などのより厳しい条件下で生成された熱分解油であり、芳香族成分が多くてパラフィン成分が少なく、その結果、H/Cモル比が約1.7で、臭素数が50~60と高い。試料C及び試料Dは、それほど厳しくない条件で生成され、それらの熱分解油はよりパラフィン性であり、その結果、H/Cモル比は2.0に近く、臭素数は約40になる。試料E(熱分解ワックス)は、ほとんどがパラフィン系の飽和炭化水素であり、(分岐炭化水素とは対照的に)かなりの量の直鎖炭化水素が含まれており、臭素数はわずか14である。
【0050】
以下の例2~例5は、輸送用燃料としての廃プラスチック熱分解油の評価を示している。
【0051】
[例2] 輸送用燃料として評価するための熱分解油の分留
【0052】
試料Dを蒸留して、炭化水素の複数の留分、すなわち、ガソリン(350°F)留分、ジェット(350~572°F)留分、ディーゼル(572~700°F)留分、及び重質(700°F)留分を生成した。表2は、蒸留生成物の各留分の沸点分布と不純物分布をまとめたものである。
【表2】

【0053】
[例3] ガソリン燃料用の熱分解油の留分の評価
【0054】
試料F(ガソリン燃料の沸点範囲の熱分解油の留分)について、ガソリン燃料としての使用可能性を評価した。試料Fの炭素数の範囲は、ガソリン燃料に典型的なC5~C12である。
【0055】
熱分解油はオレフィン性であるため、酸化安定性(ASTM D525)とガム形成傾向(ASTM D381)を、調査すべき最も重要な特性として特定した。リサーチ・オクタン価(RON)とモーター・オクタン価(MON)も、エンジン性能のための重要な特性である。RONの値とMONの値は、炭化水素の詳細なGC分析から推定した。
【表3】
【0056】
試料F(ガソリン燃料の沸点範囲の熱分解油の留分)は、品質に乏しいため、自動車用ガソリン燃料として単独で使用することはできない。熱分解油からのガソリン留分は、1440分を超える目標安定性と比較して、試料Fがわずか90分後に不合格となるという点で、非常に低い酸化安定性を示した。熱分解ガソリンは、洗浄ガム(wash gum)の目標である4mg/100mLを超えており、ガムの形成傾向が激しいことを示している。熱分解ガソリンは、参照ガソリンと比較して、オクタン価が低くなっている。プレミアム無鉛ガソリンを参照ガソリンとして使用した。
【0057】
我々はまた、限られた量の熱分解ガソリンの留分を参照ガソリンにブレンドする可能性についても検討した。我々の研究では、燃料特性の目標を達成しながら、試料Fの最大15体積%を精製ガソリンにブレンドできる可能性があることが示された。熱分解ガソリン製品を精製燃料と統合することにより、製品全体の品質を維持することができる。
【0058】
これらの結果は、熱分解油の生成されたままのガソリン留分には、ガソリン燃料としての有用性に限界があることを示している。熱分解油のこのガソリン留分を、ガソリン燃料特性の目標を満たす炭化水素に変換するには、精製ユニットでのアップグレードが好ましい。
【0059】
[例4] ジェット燃料用の熱分解油の留分の評価
【0060】
試料G(ジェット燃料の沸点範囲の熱分解油の留分)について、ジェット燃料としての使用可能性を評価した。試料Gの炭素数の範囲は、ジェット燃料に典型的なC9~C18である。
【0061】
熱分解油はオレフィン性であるため、ジェット燃料の熱酸化試験(D3241)が、最も重要な試験と見なされた。熱分解油のジェット留分そのままである試料Gは、酸化安定性がわずか36分しかなく、純粋な熱分解ジェット留分は、ジェット燃料として使用するには不適切であることを示している。
【0062】
我々は、熱分解ジェット留分(試料G)を、精製所で製造されたジェット燃料に5体積%ブレンドしたものを調製した。このブレンドは、表4に示すように、ジェット燃料の酸化試験において依然として不合格であった。
【表4】
【0063】
これらの結果は、熱分解油の生成されたままのジェット留分はジェット燃料には完全に不適切であることを示しており、熱分解油のこのジェット留分を、ジェット燃料の特性目標を満たす炭化水素に変換するには、精製ユニットでのアップグレードが必要であることを示している。
【0064】
[例5] ディーゼル燃料用の熱分解油の留分の評価
【0065】
試料H(ディーゼル燃料の沸点範囲の熱分解油の留分)について、ディーゼル燃料としての使用可能性を評価した。試料Hの炭素数の範囲は、ディーゼル燃料に典型的なC14~C24である。
【0066】
試料Hには、かなりの量の直鎖(normal)炭化水素が含まれている。直鎖炭化水素は、ワックス状の特性を示す傾向があるため、流動点(ASTM D5950-14)や曇り点(ASTM D5773)などの低温流動特性が最も重要な試験と見なされた。
【0067】
我々は、試料Hを、精製所で製造されたディーゼル燃料に、10体積%及び20体積%ブレンドした2つのブレンドを調製した。しかし、これらのブレンドは両方とも、流動点が-17.8℃(0°F)未満という目標流動点において、依然として不合格であった。
【表5】
【0068】
これらの結果は、熱分解油そのままでは、ディーゼル燃料には完全に不適切であることを示しており、熱分解油のディーゼル留分を、ディーゼル燃料の特性目標を満たす炭化水素に変換するには、精製ユニットでのアップグレードが必要であることを示している。
【0069】
[例6] FCCユニット又はFCC前処理ユニットへの熱分解生成物の共処理
【0070】
表1の結果は、主にポリエチレン及びポリプロピレンの廃棄物から供給される選別されたプラスチックの工業用熱分解プロセスにより、主に炭素及び水素から構成される高品質の熱分解油又は熱分解ワックスが生成されることを示している。良好な選別と効率的な熱分解ユニットの操作により、窒素と硫黄の不純物は十分に低いレベルにあるため、最新の精製所は、有害な影響を与えることなく、熱分解原料の処理ユニットへの共供給(cofeeding)を処理することができる。
【0071】
しかし、一部の熱分解油又はワックスには、依然として大量の金属(Ca、Fe、Mg)及びその他の非金属(N、S、P、Si、Cl、O)が含まれている場合があり、精製所の変換ユニットの性能に悪影響を及ぼす可能性がある。熱分解の場合、不純物レベルの高い生成物は、FCCユニットの前にFCC供給原料処理装置に優先的に供給されるため、その前処理装置によって不純物の大部分が効果的に除去される。
【0072】
図2に示すように熱分解原料全体をFCCユニットに供給するか、そのFCCユニットの前にFCC前処理ユニットに供給することにより、熱分解油及びワックスは、オフガス、LPGパラフィン及びオレフィン、FCCガソリン並びに重質炭化水素成分に変換される。FCCガソリンは、貴重なガソリンのブレンド成分である。重質留分、軽質サイクル油(LCO)及び重質サイクル油(HCO)は、ジェット水素化処理ユニット、ディーゼル水素化処理ユニット、水素化分解ユニット及び/又はコーカーユニットを含む後続の変換ユニットでさらに変換され、満足のいく製品特性を備えたより多くのガソリン、ジェット、及びディーゼル燃料が製造される。LPGパラフィン及びオレフィンは、アルキレーションユニットでさらに処理されるか、乏しいガソリンにブレンドされるか、あるいはリサイクル成分を含む石油化学製品の製造に部分的に使用される。Cプロパン及びプロピレンの混合蒸気は、ポリプロピレンを生成するための貴重な原料である。
【0073】
以下の例7及び例8は、精製変換ユニット(例としてFCCユニットを使用)において、廃プラスチック熱分解生成物を、高品質の輸送用燃料に変換することを実証している。
【0074】
[例7] FCCにおける熱分解油の変換
【0075】
廃プラスチックの熱分解油のFCCへの共処理(coprocessing)の影響を研究するために、試料Aと試料Cを用いて、一連の実験室試験を実施した。減圧軽油(VGO)は、FCCの典型的な供給原料である。VGOを用いた熱分解油の20体積%ブレンドと、純粋な熱分解油のFCC性能を、純粋なVGO供給原料のFCC性能と比較した。
【0076】
FCC実験は、Kayser Technology Inc.製のModel C ACE(advanced cracking evaluation:高度な分解評価)ユニットで行い、精製所からの再生平衡触媒(Ecat)を用いた。反応器は、流動化ガスとしてNを使用する固定流動反応器であった。接触分解実験は、大気圧及び900°Fの反応器温度で実施した。触媒の量を変えることにより、触媒/油の比率を5~8の間で変化させた。ガス生成物を収集し、FID検出器付きGCを備えた精製ガス分析ユニット(RGA)を使用して分析した。使用済み触媒のその場再生は、1300°Fの空気の存在下で行い、再生煙道ガスをLECOに通して、コークス収率を決定した。液体生成物を秤量し、GCで、シミュレートされた蒸留(D2887)とC 組成分析を行った。物質収支により、コークス、乾燥ガス成分、LPG成分、ガソリン(C5、~430°F)、軽質サイクル油(LCO、430~650°F)及び重質サイクル油(HCO、650°F)の収率を決定した。結果を以下の表6に要約する。
【表6】
【0077】
表6の結果は、熱分解油の最大20体積%の共供給がFCCユニットの性能にごくわずかな変化をもたらすだけであることを示しており、最大20%の熱分解油の共処理が容易に実行可能であることを示している。試料A又は試料Cの20体積%のブレンドにより、コークスと乾燥ガスの収量がごくわずかに減少し、ガソリンの収量がわずかに増加し、LCOとHCOがわずかに減少した。これらは、ほとんどの状況で良好である。熱分解油はパラフィン系であるため、試料A又は試料Cの20%ブレンドにより、オクタン価が約3~5低下した。精製所の運用上の柔軟性により、これらのオクタン価のマイナス分は、ブレンド又は供給位置の調整で補うことができる。
【0078】
FCCユニットは、熱分解油を燃料範囲の炭化水素を分解し、不純物を減らし、n-パラフィンをイソパラフィンに異性化する。これらすべての化学的性質により、熱分解油とワックスの燃料特性が向上する。熱分解油を、FCCプロセスユニットを通してゼオライト触媒とともに共供給することにより、燃料範囲内の酸素及び窒素不純物は、窒素(N)が約300~1400ppmから約30ppmに、酸素(O)が約250~540ppmから約60~80ppmに、大幅に減少した。これらすべての共供給生成物の炭化水素組成は、典型的なFCCガソリンの範囲内に十分収まっている。
【0079】
100%熱分解油のFCC操作では、オクタン価の大幅なマイナス分(マイナス分は約13~14)を示した。これは、純粋な100%熱分解油の処理よりも、熱分解油の共処理が好ましいことを示している。
【0080】
[例8] プロピレンの単離又は製造のためのリサイクルされたCの供給と、それに続くポリプロピレン樹脂及びポリプロピレンの消費者向け製品の製造
【0081】
例7に示すように、FCCユニットへの熱分解油の共供給により、リサイクル成分を含むかなりの量のCLPG蒸気が生成する。このC流は、リサイクル成分を含むポリプロピレンポリマーを製造するために、重合ユニットに供給するのに適した原料である。これを達成するために、プロパン及びプロピレンを含むCLPG流を捕捉し、プロパン/プロピレン(P/P)スプリッターに供給して、純粋なプロピレン蒸気(>99mol%)を分離し、プロピレン重合ユニットに供給する。P/Pスプリッターからのプロパンは、追加のプロピレンを生成するために、重合ユニット用に脱水素化してもよい。
【0082】
リサイクルポリエチレン/ポリプロピレン由来の材料を含むポリプロピレン樹脂は、完全に未使用の石油資源から作られた未使用のポリプロピレン樹脂と見分けがつかないほどの高品質を有している。このリサイクルされた材料を含むポリプロピレン樹脂を、さらに処理して、消費者向け製品のニーズに合うさまざまなポリプロピレン製品を製造する。これらのポリプロピレンの消費者向け製品は、化学的にリサイクルされた循環型ポリマーを含んでいるが、それらの製品の品質は、完全に未使用のポリプロピレンポリマーから作られたものと見分けがつかない。これらの化学的にリサイクルされたポリマー製品は、未使用のポリマーから作られたポリマー製品よりも品質が劣る機械的にリサイクルされたポリマー製品とは異なる。
【0083】
[例9] 潤滑性基油を製造するための、異性化脱ろうユニットへの熱分解ワックスの共処理
【0084】
表1の結果は、主にポリエチレンとポリプロピレンの廃棄物から供給される選別されたプラスチックの工業用熱分解プロセスにより、主に炭素と水素から構成される熱分解ワックスが生成されることを示している。この熱分解ワックスから水素化異性化脱ろうプロセスを介して潤滑基油を製造するために、さまざまなプロセスオプションを検討した。
【0085】
熱分解ワックスには、依然として大量の窒素及び硫黄不純物、金属(Ca、Fe、Mg)及びその他の非金属(P、Si、Cl、O)が含まれており、貴金属(Pt、Pd、又はPtとPdの組合せ)及びZSM-11、ZSM-23、ZSM-48、SSZ-32、SSZ-91、SAPO-11、SAPO-31、SAPO-41などのゼオライトを含む水素化異性化脱ろう触媒の性能に悪影響を及ぼす。
【0086】
以下の例10に示すように、脱ろう触媒を用いて純粋な熱分解油を直接供給することによって高品質の潤滑基油を製造する試みは、成功しなかった。熱分解ワックスを水素化異性化脱ろうユニットに直接供給するため、触媒活性を維持するには、共供給レベルを10vol%未満、好ましくは5vol%未満に制限する必要がある。体積パーセントの制限は、ゼオライトの活性に有害な窒素不純物に起因する可能性がある。組み合わせた供給原料の窒素レベルは、5ppm未満の窒素、優先的には1ppm未満の窒素に維持する必要がある。
【0087】
あるいは、熱分解ワックスを、水素化分解ユニットに共供給して、S、N、及びその他の不純物を除去する。水素化分解ユニットは、熱分解ワックスを水素化し、不純物を除去する。水素化分解ユニットの厳しい条件は、組み合わせた供給原料の基油収量を最大化するように調整することができる。水素化分解ユニットへの共供給レベルは、50vol%、優先的には20vol%にすることができる。この場合、体積パーセントの制限は、ユニットの構成と触媒の選択に応じて、金属不純物又はN不純物若しくはP不純物に起因する可能性がある。次いで、水素化分解された熱分解ワックスを含むボトム留分(650°F)を、水素化異性化脱ろうユニットに供給して、潤滑基油を製造する。
【0088】
あるいは、熱分解ワックスを、専用の水素化ユニットに供給し、S、N、及びその他の不純物を除去してから、水素化異性化脱ろうユニットに供給して基油を製造する。以下の例11に示すように、水素化工程は、不純物を非常に簡単に除去する。水素化処理されたワックスは、任意の体積パーセントで、水素化異性化脱ろうユニットに共供給することができる。
【0089】
以下の例10及び例11は、精製変換ユニットにおいて、廃プラスチックの熱分解ワックスを原料として使用し、高品質の基油を製造する不成功ルートと成功プロセスルートを実証している。
【0090】
[例10] 水素化異性化脱ろうプロセスのみを介した、リサイクルされた熱分解ワックスからの基油の製造
【0091】
リサイクルされたワックスからの基油生産の可能性を評価するために、試料E(粗製熱分解ワックス(crude pyrolysis wax))を真空蒸留し、690°Fの留分(試料J)を生成した。100%試料Jを、Pt/SSZ-32/アルミナ触媒を用いたバッチオートクレーブユニット内で、油と触媒の重量比10:1、650°F、800psigのH圧力下で、一晩、水素化異性化した。得られた水素化生成物を真空蒸留し、沸点690°Fの透明な油(試料K)を生成した。これらの試料の特性を表に要約する。
【表7】
【0092】
試料J(廃プラスチック熱分解からの690°Fの留分のスラックワックス)は、100℃で約4.3cStの低粘度ワックスであり、優れた粘度指数169を有している。しかし、スラックワックスにはかなりの量のN(180ppm)とP(32.5ppm)が含まれており、これが、水素化異性化脱ろうプロセスにおいて、ゼオライト触媒の活性を不動態化する。脱ろう油及び蒸留油である試料Kは、粘度指数が162、流動点が12℃を示した。この流動点は、試料Eの42℃から大幅に低下したが、12℃という流動点は、業界の目標である-15℃以下に比べて依然として非常に劣っている。この油は、周囲温度が12℃を下回ると、流動性/油性の特性を失い、油が濃厚又は固体のような材料になるため、高性能の最新の潤滑剤には使用できない。
【0093】
この研究は、廃プラスチック熱分解ワックスから許容可能な基油を生成するためには、熱分解ワックスを、水素化処理又は水素化分解して、N不純物及び他の不純物を低減する必要があることを示している。
【0094】
[例11] 水素化処理とそれに続く水素化異性化脱ろうプロセスによる、リサイクル成分を含む高品質基油の製造
【0095】
試料E(粗製熱分解ワックス)を、NiMo/アルミナ触媒を含む連続固定床ユニットで、反応器温度625°F、圧力1200psigで水素化した。触媒床体積に対して1.5hr-1の液体供給流量及び2500scf/bblのH/炭化水素流量を使用して、ほとんどがワックスである水素化生成物を生成した。この水素化生成物を真空蒸留し、水素化熱分解パラフィンワックス(試料L)として650°Fの留分を生成した。
【0096】
試料L(廃プラスチックの熱分解から作られた水素化ワックス)を、Pt/ZZS-91/アルミナ触媒を含む連続固定床ユニットで、反応器温度625°F、圧力400psigで水素化異性化脱ろうに供した。触媒床体積に対して1.0hr-1の液体供給流量及び2500scf/bblのH/炭化水素流量を使用して、脱ろう油を生成した。この脱ろう油を真空蒸留し、最終的な脱ろう基油製品(試料M)として690°Fの留分を生成した。結果を表8に要約する。
【表8】
【0097】
熱分解ワックス(試料E)の水素化により、高品質の水素化ワックス(試料L)を生成した。試料Lには脱ろう触媒に害を及ぼす可能性のある測定可能な不純物がないため、水素化時にすべての微量不純物が完全に除去される。この例は、主にポリエチレン、ポリプロピレンを含む廃プラスチックから高品質で純粋なパラフィン系ワックスを効果的に製造できること、及び穏やかな水素化が廃プラスチック由来のワックスを精製するための非常に効果的な方法であることを示している。
【0098】
水素化ワックス(試料L)の水素化異性化脱ろうにより、粘度指数135、流動点-35℃、曇り点-17℃の非常に優れた品質の4cSt基油を生成した(試料M)。品質面では、廃プラスチックの熱分解から作られたこの基油は、グループIIIの基油カテゴリーに分類される。試料Kで観察された乏しい特性を考慮すると、これらの肯定的な結果は非常に驚くべきものであった。低粘度(4cSt)の基油は、自動車用潤滑油の成分として広く使用されているため、非常に望ましいものである。
【0099】
例10及び例11は、共供給プロセス構成及びプロセス条件を注意深く選択することにより、ポリエチレン及びポリプロピレン廃棄物の熱分解から得られたワックスから、優れた品質の基油を製造できることを明確に示した。この結果は、廃プラスチックの熱分解ワックスから基油を製造するための好ましい方法は、水素化とそれに続く水素化異性化脱ろうプロセスによるものであることを明確に示している。最終的に製造される基油は、リサイクル成分を含んでおり、この基油の品質は、未使用の粗製油(virgin crude oil)を使用した従来の精製処理によって製造された基油と同等又はそれ以上である。
【0100】
前述の例は、熱分解を介したケミカルリサイクルと、それに続く効率的な統合を介した精製所での熱分解生成物の共供給によって、大量のポリエチレン及びポリプロピレン由来の廃プラスチックをリサイクルする新しい効果的な方法を明確に示している。この統合により、高品質の燃料、潤滑基油及び循環型ポリマーの製造が可能になる。
【0101】
本開示で使用される場合、「含む(comprises)」又は「含む(comprising)」という単語は、オープンエンドの移行語として意図され、指示された要素を包含することを意味するが、必ずしも他の指示されない要素を除外するものではない。「本質的に・・・からなる(consists essentially of)」又は「本質的に・・・からなる(consisting essentially of)」という句は、構成にとって本質的に重要な他の要素を除外することを意味することが意図されている。「からなる(consisting of)」又は「からなる(consists of)」という句は、微量の不純物のみを除いて、記載されている要素以外のすべてを除外することを意味する移行句として意図されている。
【0102】
本明細書で参照されるすべての特許及び刊行物は、本明細書と矛盾しない範囲で参照により本明細書に組み込まれる。上記の実施形態の特定の上記の構造、機能、及び操作は、本発明を実施するために必要ではなく、単に例示的な実施形態又は複数の実施形態を完全にするために説明に含まれることが理解されよう。さらに、上記の参照された特許及び刊行物に記載されている特定の構造、機能、及び操作は、本発明と組み合わせて実施することができるが、それらはその実施に必須ではないことが理解されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から実際に逸脱することなく、具体的に説明されるように実施され得ることが理解されるべきである。
図1
図2
図3
【国際調査報告】