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特表2023-508399車両に音声コマンドを伝達するための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】車両に音声コマンドを伝達するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G10L 15/00 20130101AFI20230222BHJP
   G10L 15/28 20130101ALI20230222BHJP
   G10L 15/22 20060101ALI20230222BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20230222BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
G10L15/00 200J
G10L15/28 230K
G10L15/28 500
G10L15/22 453
B60R16/02 655A
B60R11/02 W
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538970
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(85)【翻訳文提出日】2022-08-23
(86)【国際出願番号】 IB2020062378
(87)【国際公開番号】W WO2021130689
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】102019000025528
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515217546
【氏名又は名称】ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】サントゥッチ,マリオ
(72)【発明者】
【氏名】ディ タンナ,オノーリノ
【テーマコード(参考)】
3D020
【Fターム(参考)】
3D020BA06
3D020BA11
3D020BB01
3D020BD14
3D020BE03
(57)【要約】
本発明に係る方法は、中央制御装置(23)、少なくとも一つの操舵輪(13)、及び操舵輪(13)に作用するための操舵部材(11)を備えた車両(1)にコマンドを付与する方法である。該方法は、操舵部材(11)上のインターフェース装置(21)を用いて、中央制御装置(23)とインターフェース接続されたスマートフォン(5)の音声認識機能を起動するステップを有する。スマートフォン(5)が運転者からの音声コマンドを受信し、音声認識機能を起動することで音声認識した後、スマートフォン(5)は、その処理ユニットを用いて、受信した音声コマンドに対応する命令を選択する。その後、命令が実行される。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央制御装置(23)、少なくとも一つの操舵輪(13)、及び操舵輪(13)に作用するための操舵部材(11)を備えた車両(1)にコマンドを付与する方法であって、
該方法が、
操舵部材(11)上のインターフェース装置(21)を用いて、中央制御装置(23)とインターフェース接続されたスマートフォン(5)の音声認識機能を起動するステップを有し、前記スマートフォン(5)が車両(1)の運転者(2)から音声コマンドを受信し、受信した音声コマンドに基づいて、スマートフォンに予め設定されている複数の命令から命令を選択するように適合された処理ユニット(5A)を備え、
かつ、該方法が、
スマートフォン(5)において、音声コマンドを受信するステップと、
スマートフォン(5)の処理ユニット(5A)を用いて、受信した音声コマンドに対応する命令を選択するステップと、
選択した命令を実行するステップと
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記音声認識機能を起動するステップが、
インターフェース装置(21)を用いて、車両(1)の中央制御装置(23)に、音声認識機能の起動要求を送信するステップと、
車両(1)の中央制御装置(23)を用いて、スマートフォン(5)に、スマートフォン(5)における音声認識機能の起動のためのコマンドを送信するステップと
を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
選択された命令がスマートフォン(5)で実行される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
選択された命令がスマートフォン(5)から車両(1)に送信され、選択された命令が車両(1)で実行される
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記命令が、
車両(1)で機能を実行するための命令、及び
車両(1)からスマートフォン(5)へ情報を送信するための要求
のうちの少なくとも一つを含む
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記スマートフォン(5)が、音声認識が起動されたことの確認を生成するように適合されている
ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記確認が、
スマートフォン(5)とインターフェース接続されたスピーカー(7)を介した音声又は音響信号、及び
スマートフォン(5)のディスプレイ又はそれとインターフェース接続されたディスプレイ上の光学的信号又は視覚的信号
の一つ又は複数を含む
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
選択された命令の実行の確認を、スマートフォン(5)を用いて、運転者(2)に求めるステップを含み、
前記確認が運転者(2)によって提供される場合にのみ選択された命令を実行し、
好ましくは前記確認がインターフェース装置(21)によって提供される
ことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
スマートフォン(5)が、プログラミング工程において、カスタマイズされた音声コマンドを命令文字列に関連付けるように適合されている
ことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
中央制御装置(23)、少なくとも一つの操舵輪(13)、及び操舵輪(13)に作用するための操舵部材(11)を備えた車両(1)と、
操舵部材(11)上のインターフェース装置(21)と、
車両(1)の中央制御装置(23)とデータ交換関係にあるスマートフォン(5)と
を備えたシステムであって、
スマートフォン(5)が、起動コマンドの受信に基づいて音声認識機能を起動するように適合され、前記起動コマンドの送信がインターフェース装置(21)によって制御され、かつ、
スマートフォン(5)が、スマートフォン(5)によって受信され、音声認識機能によって認識される音声コマンドに基づいて、スマートフォンに予め設定されている一連の命令から命令を選択するように適合されている
ことを特徴とするシステム。
【請求項11】
スマートフォン(5)が、複数の音声コマンドを、対応する複数の予め設定された命令に関連付けるように適合され、
前記命令の各々が、スマートフォン(5)上で実行可能な命令、及び車両(1)上で実行可能な命令のうちの一つであり得る
ことを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記予め設定された命令の少なくとも一つが、
前記車両(1)から前記スマートフォン(5)に送信する情報の要求、
前記車両(1)の機能を実行するための命令、及び
前記スマートフォン(5)の機能を実行するための命令
の少なくとも一つを含む
ことを特徴とする請求項10又は11に記載のシステム。
【請求項13】
前記スマートフォン(5)及び前記中央制御装置(23)の少なくとも一方が、音声コマンドによって選択された命令の実行の確認を要求するように構成され、
前記実行の確認が、好ましくはインターフェース装置(21)によって行われる
ことを特徴とする請求項10~12の何れか一項に記載のシステム。
【請求項14】
スマートフォン(5)が、無線接続、特に、ブルートゥース(登録商標)又はWi-Fi接続によって車両(1)の中央制御装置(23)に接続される
ことを特徴とする請求項10~13の何れか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特に鞍型車両、即ち、二輪又は三輪のオートバイやスクータ等の傾斜型車両の運転を容易にする方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
オートバイ、モペッド及びスクータ等の二輪及び三輪の鞍型車両の分野では、運転の快適性と安全性を高める解決策が常に模索されている。
【0003】
ドイツ特許DE102014016827号は、ヘルメットの使用を必要とする車両を運転するための方法を開示しており、この方法では、マイクロフォンがヘルメットに一体化されている。マイクロフォンは、計算能力及びデータ送受信機能を有するモバイル機器、例えばスマートフォンとインターフェース接続され、前記モバイルデバイスはヘルメットと接続されている。ヘルメットを作動させると、モバイル機器によって車両が作動する。このようにして、イグニッションキーの使用を必要とせずに、車両を始動させることが可能になる。ドイツ特許DE102014016827号に開示された実施形態では、音声コマンドもまた、モバイル機器を用いて車両に伝達される。スマートフォンは、車両のための音声コマンドを認識する音声認識ソフトウェアを備えている。誤った音声コマンドの送信を避けるために、車両用のコマンドの音声認識は、一連の音声命令によって、又はヘルメット側の起動コマンドによって起動される。このように、音声認識システムは常にアクティブであるが、運転者が音声認識システムによって起動コマンドとして解釈される特定の音声命令を送信するまで、車両に対するコマンドの送信は抑制され、その後、車両を制御することを意図した音声コマンドが伝達されて処理されることが可能になる。
【0004】
ドイツ特許DE102014016827号に開示されたシステム及び方法は、一連の機能的及び安全的限界と欠点とを有する。
【0005】
特開平05―092788号公報は、車両にコマンドを伝達するための、例えば方向命令器を作動させるための音声認識システムが一体化された車両を開示している。音声認識を仕込む必要があるため、車両が備える音声コマンドを利用できるのは一人の運転者だけである。音声コマンドを使用できる唯一の使用者は、まず、音声コマンドを車両に設定し、車両の内部メモリに格納する必要があります。他のユーザが車両の同じ機能を使用したい場合、最初のユーザが予め設定したコマンドをキャンセルし、自分の音声コマンドを設定する必要がある。従って、この先行技術文献に開示された車両の音声コマンドは、一人のユーザのみが使用することができる。
【0006】
従って、ヘルメットを着用しながら運転する車両、特に傾斜型車両又は鞍乗り型車両に、より効率的かつ安全に音声コマンドを伝達することができるシステム及び方法があれば便利であろう。
【発明の概要】
【0007】
一態様によれば、本明細書は、車両にコマンドを付与する方法を開示する。車両は、中央制御装置、少なくとも1つの操舵輪、及び操舵輪に作用するための操舵部材を備えている。本方法は、操舵部材上のインターフェース装置を用いて、中央制御装置とインターフェース接続されたモバイル機器の音声認識機能を起動するステップを含む。この目的のために、モバイル機器は、車両の運転者から音声コマンドを受信し、受信した音声コマンドに基づいて、スマートフォンに予め設定されている複数の命令から命令を選択するように適合された処理ユニットを備えている。本方法は、さらに、モバイル機器上で、音声コマンドを受信するステップを含む。モバイル機器の処理ユニットを用いて、受信した音声コマンドに対応する命令が選択され、その後、選択された命令が実行される。特に、モバイル機器は、スマートフォンであり得る。本明細書で意図する意味において、「スマートフォン」という用語は、一般に、SIM(加入者識別モジュール:Subscriber Identity Module)カードを備えるモバイル機器を構成するものであり得る。
【0008】
各単一ユーザの音声コマンドを、そのユーザのスマートフォンに設定することにより、複数のユーザが、各々自分のモバイル機器(スマートフォン)を設けて、同一の車両を使用することが可能になる。このようにすれば、スマートフォンが車両に送信する信号は、車両によって常に有効なものとして認識され、車両が運転者から付与された音声コマンドを認識できない(あるいは、誤解する)危険性はない。
【0009】
有利には、モバイル機器は、モバイル機器の所有者の音声の認識を可能にするように、ユーザ固有の音声認識を得ることができるインターネット接続を提供するように適合される。
【0010】
このようにして、音声認識は必要なときだけ起動することができ、誤ったコマンドがシステムに付与されることが防止され、また、スマートフォンによるエネルギー消費を低減することができる。音声認識起動インターフェースをハンドルバーに代表される操舵部材に配置することにより、運転者はハンドルバー等の操舵部材から手を離すことなく、完全に安全に音声認識を起動させることができる。
【0011】
別の態様によれば、本明細書には、中央制御装置、少なくとも1つの操舵輪、及び操舵輪に作用するための操舵部材を有する車両を含むシステムが開示されている。このシステムは、操舵部材に取り付けられたインターフェース装置と、車両の中央制御装置とデータ交換関係にあるモバイル機器、特にスマートフォンとをさらに備える。インターフェース装置は、運転者が操舵部材の制御を維持したまま、即ち、操舵部材における正しい位置から手を動かすことを必要とせずに、操作できるように配置され構成される。
【0012】
スマートフォンは、起動コマンドを受信すると、音声認識機能を起動するように適合されている。起動コマンドは、インターフェース装置の操作によってスマートフォンに送信される。スマートフォンは、スマートフォンによって受信され、音声認識機能によって認識された音声コマンドに基づいて、スマートフォンに予め設定されている一連の命令から命令を選択するように適合されている。
【0013】
例えば、特開平05―092788号公報に開示されているものとは異なり、本発明に係るシステム及び方法は、ユーザによって付与された音声認識を実施するために、モバイル機器(スマートフォン)のハードウェア及びソフトウェア資源を使用することを提供するものである。このようにして、そのコストに影響を与えることなく、車両を制御するための高度な機能を得る他、複数のユーザが、ユーザによってカスタマイズされた音声コマンドを使用して、同じ車両を安全な状態で運転することができるという利点が得られる。
本発明は、本発明の非限定的な例示的実施形態を示す説明及び添付図面に従うことによって、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ヘルメットを着用した運転手によって運転される車両を示す図である。
図2図1の車両のハンドルバーの部分図である。
図3】車両及び車両にインターフェース接続されたスマートフォンの構成要素のブロック図である。
図4】音声コマンドによって伝達される命令を生成し実行する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、ヘルメット3を装着した運転者2が運転する車両1を模式的に表している。運転者は、本明細書に記載された方法を実行し、本明細書に例示されたシステムを完成させるために必要な機能性を備えたスマートフォン5を有する。特に、スマートフォンは、図2において符号5Aで概略的に示される処理ユニットを備えている。処理ユニット5Aは、スマートフォン5に処理能力を提供するものであり、音声認識プログラムを実行することができ、かつ、命令及び声紋、即ち音声ファイルを格納することができる。また、スマートフォンには、ゲートウェイ、即ち、車両1に設けられた中央制御装置と通信するための、受信及び送信機能が設けられている。さらに、スマートフォンは、例えばディスプレイ、並びに、好ましくはイヤホン又は別の汎用スピーカを用いて、かつ、マイク、即ち、一般的には音を捕らえるための装置と接続することによって運転者2と通信するための機能を備えている。
【0016】
図1では、スマートフォン5は、運転者2が携帯し、例えばポケットに収容されているように表現されているが、運転者2から容易に見えるように、車両1のハンドルバーに装着することも可能である。
【0017】
スマートフォン5には、運転者2がスマートフォン5と音声でコミュニケーションをとることができるように、マイクが備えられている。また、スマートフォン5には、運転者2がスマートフォン5からの音声情報を聴くことができるように、スピーカが設けられている。スピーカは、イヤホンの形態とすることができる。図1において、参照符号7は、スマートフォン5とインターフェース接続されたイヤホンを模式的に示し、参照符号9は、スマートフォン5とインターフェース接続されたマイクロフォンを模式的に示している。イヤホン7(又は他のスピーカ)及びマイクロフォン9は、有線接続で、又は好ましくは無線接続で、例えばブルートゥース(登録商標)接続によって、スマートフォン5に接続され得る。これらは、ヘルメット3に挿入することができ、又はヘルメットと一体化させることができる。
【0018】
車両1は、一つの前側操舵輪13、又は一対の前側操舵輪13を回転させるための操舵部材を形成するハンドルバー11を備えている。ハンドルバー11は、図2において、運転者2側から見た状態で部分的に示されている。ハンドルバー11は、例えば、速度計、走行距離計、車両灯の警告ランプ等からなる車載計器17を含むダッシュボード15を有し得る。幾つかの実施形態では、図2に模式的に示されているように、ダッシュボードは、スマートフォン5を保持するためのハウジングを有し得、この実施例では、以下に説明する目的のために、スマートフォン5は、そのディスプレイが運転者2に見えるように保持され得る。
【0019】
ハンドルバー11は、運転者2によって保持され得るハンドグリップ11Aを備えている。ハンドグリップ11Aの一つ、実施例では右側のハンドグリップ11Aには、その目的を以下に説明する、例えばボタンやジョイスティック等の形態のインターフェース装置21が関連付けられている。
【0020】
本明細書に記載の方法及びシステムの理解に有用な、車両1及びスマートフォン5の構成要素は、図3において機能ブロックの形態で表されている。より詳細には、図3は、インストールされた音声認識アプリケーション、又はそのオペレーティングシステムに属する音声認識アプリケーションを有するスマートフォンを表すブロック5を示している。詳細は後述するが、好ましくはカスタマイズされた音声コマンドを、車両1及び任意にスマートフォン5のための命令に変換することができるアプリケーションも、スマートフォン5にインストールされている。
【0021】
図3において、参照符号7;9は、接続部6によってスマートフォン5に接続されたイヤホン7及びマイク9を示すブロックを示している。イヤホン7及びマイク9のスマートフォン5への接続は、上述したように、無線であっても有線であってもよい。さらに、車両1には、スマートフォン5とデータ交換関係にある、中央制御装置23が設けられている。車両1の中央制御装置23とスマートフォン5との間の接続は、二重矢印25で視覚的に表されている。好ましくは、接続25は、例えば、ブルートゥース(登録商標)又はWi-Fi技術を用いた無線接続である。しかしながら、有線接続を利用することも可能である。
【0022】
インターフェース装置21は、符号27で概略的に示される接続手段によって中央制御装置23に接続されている。接続手段27は、専用の有線接続であってもよいし、車両1が備えるCANバスによって得ることもでき、中央制御装置23を、車両1が備える複数の電子制御装置又は電子制御ユニットに接続する。図3では、一実施例として、CANバスは符号31で示され、全体として、かつ累積的に符号39で示されたダッシュボード制御ユニット33、ABSシステム制御ユニット35、エンジン制御ユニット37、及び車両1の他の任意の制御ユニット等の車両の一連の制御ユニットを中央制御装置23に接続する。
【0023】
既に述べたように、スマートフォン5にはアプリケーションがインストールされており、運転者2によって与えられ、音声認識ソフトウェアによって認識された音声コマンドを用いて、車両1に対する命令及び任意にスマートフォン5に対する命令を起動、即ち、選択する。
【0024】
幾つかの実施形態では、スマートフォン5にインストールされたアプリケーションは、一連の命令をユーザに提供することができ、その各々は、運転者2によってカスタマイズされ得る音声コマンドで作動させることが可能である。実際には、アプリケーションの設定又はプログラミング工程において、運転者2は、単一の命令を呼び出し、カスタマイズされた音声コマンドを各命令に関連付けることができる。アプリケーションにおいて予め設定することができる各単一命令は、起動されると、その命令が意図される装置(車両1;スマートフォン5)による動作を実行させる。
【0025】
可能な実施形態では、アプリケーションは、プログラミング又は設定モードを有し、このモードは、単一の命令を呼び出して表示する機能を有し得、ユーザは、スマートフォン5のマイク及び音声認識ソフトウェアを用いて、前記命令に、カスタマイズした音声コマンドを関連付けることができる。このようにして、それぞれがアプリケーション上で予め設定されたコマンド又は命令と関連付けられた音声ファイル、即ち声紋が、スマートフォン5に記憶される。アプリケーションが動作モードで起動され、音声コマンドを受信し、それに関連付けられた命令を実行できるようにすると、ユーザ、即ち運転者2は、スマートフォン5の音声認識ソフトウェアによって認識されると、(設定中に)音声コマンドに関連付けられた命令を起動する音声コマンドを伝達することができる。
【0026】
この動作モードは、ユーザが、アプリケーションによって提供される複数の命令の一つ又は他の命令に関連付けられた、新規の又は又はいかなる場合でもカスタマイズされた音声コマンドを利用することを可能にする。例として、右及び左方向インジケータを作動させるための二つの命令が挙げられ得る。ユーザは、「左折」及び「右折」、又はより短い「左」及び「右」のような、容易に記憶できる音声コマンドを、これら二つの命令に関連付けることを選択し得、又、関連付けする命令と相関する意味を持たない言語的コマンド若しくは音響コマンドでも関連付けることを選択し得る。
【0027】
アプリケーションによって設定された音声コマンドを記憶する必要がなく、むしろ好きな音声コマンドを選択できるという利点の他に、ユーザは、アプリケーションの使用中に所定の言語に制限されないというさらなる利点を有する。従って、異なる言語を話すユーザに対しても、たとえ発音や方言が違っても、同じアプリケーションを使用し得る。唯一有用と思われる条件は、アプリケーションの設定又はプログラミングのための様々な命令が、ユーザによって選択された言語で利用可能になることである。例えば、アプリケーションによって利用可能になった各命令について、様々な言語で書かれた命令をライブラリで利用できるようにすることができる。ユーザは、操作言語を選択することで、スマートフォンのディスプレイ上に、選択した言語による様々な命令を表示することができる。カスタマイズされた音声コマンドに関連付けることができる各命令は、代わりに、言語による説明ではなく、グラフィカルに表示することもできる。例えば、右方向インジケータ及び左方向インジケータを作動させるための命令は、二つのインジケータの一方又は他方が点滅している車両を示すアイコンを用いて表示することができる。アプリケーションによって利用可能となる各命令は、アプリケーションのダウンロード及びインストール時にスマートフォン5にロードすることができるが、例えば、プログラミング又は設定の際に、インターネットを介してオンラインでアクセス可能なライブラリ又はデータベースから各命令を選択することも可能である。
【0028】
アプリケーションの前述の機能及び関連する利点は、本明細書で説明した音声認識起動モードを備えていない、又は異なる音声認識起動モードを備えているシステムでも実施可能である。
【0029】
幾つかの実施形態では、アプリケーションは、車両1のみを意図した命令、即ち、車両1上の機能を作動させるか又は実行させる命令をユーザに提供することができる。他の実施形態では、スマートフォン5を意図した命令、即ち、その起動がスマートフォン5の機能の実行を開始する命令が(命令も)存在し得る。
【0030】
運転を容易にするために有用な、スマートフォン5を意図した典型的な命令は、ナビゲータの起動、目的地の選択、ハイビームヘッドランプのスイッチオン、オートバイの動的セットアップの選択、運転モードの選択、車両のダッシュボードにおける特定のパラメータの表示、言語の変更、時計の設定、インターホンの起動、方向インジケータの起動などのダッシュボードの複合機能の起動であり得、又、スマートフォン5上のアプリケーションに直接関連する機能(表示ページの変更、データを受信するアプリケーションの接続、ビデオの記録、テレメトリデータの記録など)であり得る。
【0031】
典型的には、車両1を対象とする命令は、車両1に対する作用、起動又は動作を引き起こす命令と、スマートフォン5によって運転者2に伝達される車両1に対する情報を要求する命令とに分けることができる。
【0032】
音声コマンドによって車両に付与することが有用であり得る典型的な命令は、右又は左方向インジケータの作動、ポジションランプ・ロービーム・ハイビーム及びヘッドランプのオン及びオフ、ギアチェンジ、運転モードの変更、ヘッドランプ自動点滅(パッシング)、制御システムの設定変更(トラクション/安定制御、ABS、クルーズコントロール等)、ダッシュボード上の表示パラメータの変更、エンプティリクエストまでの距離、ダッシュボード上のデータ表示モード変更(例えば、日中/夜間モード)、テレメトリデータ記録の起動/停止、緊急通報システムの起動等を含み得る。
【0033】
運転者2が車両1から情報を取得できるようにするために有用な典型的な命令は、トリップデータ又は車両に関連する他の情報、例えば、電気車両の場合及び内燃機関を有する車両の場合の両方における燃料空までの距離、旅行中又は特定の時間/空間間隔(最後の1時間、最後の10km等)の平均燃費又は平均速度、ナビゲーション進行中の場合の到着までの距離又は時間、所定の時間におけるルート沿い又は所定の目的地の天候、目的地に到着した際の燃料空までの推定距離、種々の車両制御システムに設定されたレベル等を含み得る。
【0034】
幾つかの命令は、車両の安全性及び運転状況に影響を与え得る。この場合、幾つかの実施形態では、アプリケーションは、付与された命令を確認するよう運転者に要求し、これに失敗すると、その命令は実行されないようにし得る。例えば、トラクション/スタビリティ/ブレーキシステムを解除する場合(又は、それらの作動範囲を制限する設定を入力するいかなる場合も)、クルーズコントロールシステムを作動する場合、又はクルーズコントロールシステムのための設定速度を変更する場合、発進制御を作動する場合、エンジンマップを変更する場合等がある。
【0035】
本明細書に記載されたシステムは、車両1の運転を容易にするために、以下のように構成され、使用され得る。
【0036】
中央制御装置23は、接続部25によって、スマートフォン5が備える音声認識機能を起動させるためのコマンドを、スマートフォン5に送信するように構成され得る。制御ユニットによる音声認識起動コマンドの送信は、インターフェース装置21及び通信回線27によってトリガされ得る。実際には、音声コマンドの使用を希望する場合、運転者はインターフェース装置21に操作し、中央制御装置23がそれに接続されたスマートフォン5に音声認識起動コマンドを送信するようにする。音声認識が起動されると、運転者は、マイクロフォン9によってスマートフォン5に音声コマンドを伝える。スマートフォン5に常駐するアプリケーションは、音声コマンドを対応する命令に変換する。
【0037】
この構成により、スマートフォン5の音声認識を、必要でないときは停止しておき、必要なときだけ起動にすることが可能になる。このようにして、多くの利点が得られる。特に、例えばスマートフォンを通常の電話会話に使用している時や、同乗者と会話している時等に、外部の雑音や運転者の話し声によって音声コマンドが起動される危険性が回避される。
【0038】
スマートフォン5のアプリケーションは、受信した音声コマンドに対応する命令を付与した直後に、音声認識を解除するようにプログラムすることができる。また、音声認識は、起動後所定時間起動したままにすることもできる。
【0039】
インターフェース装置21は、上述したように、例えば、運転の安全性に影響を与え得る場合には、音声認識を作動後に続けて停止したり、付与された音声コマンドを確認したりする等、様々なコマンド又は命令を付与するために用いることも可能である。この場合、実際には、インターフェース装置21は、音声認識を作動し、続けて、スマートフォン5上のアプリケーションによる確認又は許可を要求後に、スマートフォン5によって付与された音声コマンドを用いて呼び出された命令の実行を許可するように順次使用され得る。
【0040】
インターフェース装置21を使用して様々なコマンドを付与するために、インターフェース装置21には、様々な構成要素、例えば、複数のボタンや異なる方向に動かせるジョイスティックが設けられ得る。他の実施形態では、単一のボタンを設けることができ、単一のボタンの場合には、運転者2は、ボタンを一回又は複数回押すことによって、又はボタンを様々な時間で押し続けることによって、例えば、短く押した場合には音声認識を起動し、長く押した場合には、音声コマンドによって付与された命令の実行を可能したり、又は、その逆に設定したりすることによって、様々なコマンドを付与し得る。
【0041】
上述した機能の使用を容易にするために、運転者2には、(例えば、スマートフォン5が車両1のダッシュボード上又はダッシュボード内に取り付けられている場合に読み易い)スマートフォン5のディスプレイ上の光学的信号、又は、好ましくは、イヤホン7を介した音響信号を用いて様々な条件又は要求が通知され得る。例えば、このようにして、運転者2には、音声認識の正しい起動、音声認識の解除、音声コマンドによって付与された命令の実行許可の要求等の条件又は要求が通知され得る。スマートフォン5による(又はスマートフォン5を介して中央制御装置23による)運転者2への通信のために、音声合成装置が設けられ得る。
【0042】
上述したように、運転者2が音声コマンドによって付与できる命令は、車両1に対する動作の実行を生じさせるだけでなく、車両1に対する情報の要求を含む命令とすることもできる。この場合、前記情報は、中央制御装置23によって、スマートフォン5のディスプレイ上のメッセージ、及び/又は、好ましくはイヤホン7を用いて運転者に伝達され得る。例えば、運転者2は、音声認識を起動し、音声コマンドで車両1の燃料が空になるまでの距離に関する情報を要求することができる。音声コマンドは、アプリケーションによって、制御装置に向けられた命令に変換される。例えば、ダッシュボードの制御装置又は他の車載計器を用いて、燃料が空になるまでの距離を検出し、その回答がスマートフォン5に送信される。アプリケーションは、受信した情報を音声通信に変換する。このようにして、ダッシュボードを見るために運転者の注意を道路からそらすことなく情報を提供でき、また、特定の車載計器がないことに起因して表示されないような情報を運転者に提供することができる。
【0043】
図4は、本発明による方法の可能な実施形態をフローチャートでまとめたものである。ブロック101では、運転者2がインターフェース装置21を起動する。中央制御装置23は、音声認識起動コマンドをスマートフォン5に送信する。ブロック102では、音声認識が利用可能かどうかを確認する。このブロックは、例えば、音声認識がインターネット接続を必要とし、この接続が一時的に利用できない場合など、何らかの理由で音声認識が利用できないことを運転者2に知らせることを可能にする。
【0044】
音声認識が利用できない場合、スマートフォン5は、例えば、音声エラーメッセージによって、及び/又はスマートフォン5のディスプレイ上のメッセージによって、運転者2に通知する(ブロック103)。
【0045】
音声認識が利用可能である場合、運転者2は、マイク9によって音声コマンドをスマートフォン5に送信する。
【0046】
音声認識ソフトは、音声が認識されたかどうかを確認する(ブロック104)。
音声が認識されない場合、又はコマンドが、例えば、スマートフォン5に格納され、それぞれの命令に関連付けられた音声トラック又はファイルのいずれにも対応しないために認識されない場合、イヤホン7によって、及び/又はスマートフォンのディスプレイ上で運転者2に通知されるエラーメッセージが生成される(ブロック105)。音声認識機能は停止される。この状況は、例えば、運転者2が不注意に別のスマートフォンを使用している場合、又は環境がうるさすぎて音声認識ソフトウェアが音声を認識できない場合、又はその他の理由、例えば音声コマンドが記憶されていない、及び/又は、車両1及び/又はスマートフォン5に付与できる特定の命令に関連付けされていない場合に起こりうる。
【0047】
音声が認識された場合、アプリケーションは、音声コマンドで起動される命令が、運転者2による確認、即ち実行許可を必要とするかどうかを検証する(ブロック106)。検証が必要でない場合、音声コマンド、即ち、音声コマンドに対応する命令が実行される(ブロック107)。また、アプリケーションは、運転者2に対して、(イヤホン7を介して、及び/又は、スマートフォン5のディスプレイを介して)命令の正しい受信と実行の確認を行うことを要求することもできる。命令の確認は、運転者2が潜在的に危険な命令を車両1に不用意に与えることを防止するために適合された安全システムを表す。
【0048】
音声コマンドが運転者の許可又は確認を必要とする命令を作動させる場合、制御はブロック108に移行し、許可又は確認のために待機する。例えば、インターフェース装置21によって確認がなされた場合、制御はブロック107に移行し、付与された音声コマンドに対応する命令を実行する。実行の確認が得られない場合、ブロック110において、メッセージ(上述したように、音声メッセージ又は視覚的メッセージ)が運転者2に送られ、音声認識が停止される。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】