(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】ナトリウム金属ハロゲン化物電気化学電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/39 20060101AFI20230222BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20230222BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20230222BHJP
H01M 4/70 20060101ALI20230222BHJP
H01M 4/80 20060101ALI20230222BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20230222BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20230222BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20230222BHJP
【FI】
H01M10/39 D
H01M50/489
H01M4/66 A
H01M4/70 A
H01M4/80 C
H01M10/39 B
H01M4/38 Z
H01M4/58
H01M50/184 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538979
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(85)【翻訳文提出日】2022-08-08
(86)【国際出願番号】 DE2020101085
(87)【国際公開番号】W WO2021129905
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】102019135752.7
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500142051
【氏名又は名称】フラウンホーファー ゲゼルシャフト ツア フェルデルング デア アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】ホフアッカー マルティン
【テーマコード(参考)】
5H011
5H017
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H011AA03
5H011AA09
5H017AA06
5H017BB06
5H017BB11
5H017BB13
5H017BB17
5H017EE01
5H017EE04
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5H029AM15
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5H029CJ28
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5H050AA01
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5H050CA17
5H050CB11
5H050DA04
5H050FA13
5H050FA16
5H050FA17
5H050GA03
5H050GA07
5H050GA27
5H050HA17
(57)【要約】
本発明は、電気自動車の及び他の要求の厳しい定置用途の高性能電池のためのナトリウム金属ハロゲン化物電気化学電池、特に、塩化ナトリウムニッケル電池に関する。本発明により対処される課題は、最大の表面積対断面比を有する集電体(1)を有すること、簡単な方法でそれを製造すること、および、簡単な方法で電池の電極を充填することを可能にするナトリウム金属ハロゲン化物電気化学電池を提供することにある。この問題は、本発明によれば、中心軸(51)の周りにカソード室(21)内で伸長された金属カソード側集電体(1)が、高い導電性を有する金属管(11)から製造されること;セパレータ(3)に押し込まれた集電体(1)の一部において、前記集電体が、集電体(1)の表面積を増加させるための要素(15、16、18、19)を備えた成形管部(11、12)を有すること;及び、充填管(13)として機能する非圧縮管部と圧縮管部(12)の間の移行部において、前記集電体が、充填管(13)を外側に開く少なくとも1つの貫通孔(14)を有し、それにより充填管(13)がカソード(2)の多孔質混合物と第2の電解質(22)のための充填開口部として使用できること、により解決される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウム金属ハロゲン化物電気化学電池であって、
中心軸(51)を有するケース(5)と、
前記ケース(5)の前記中心軸(51)を中心として前記ケース(5)に対して等距離に広がるセパレータ(3)であって、固体の第1の電解質として、アノード室(41)をカソード室(21)から電気的に絶縁及び密閉状態に分離し、且つナトリウムイオンに対しては透過性のあるセパレータ(3)と、
前記カソード室(21)を充填し、金属粉末顆粒と金属ハロゲン化物粉末顆粒との多孔質混合物からなるカソード(2)と、
前記カソード室(21)及び前記カソード(2)の前記多孔質混合物を浸し、ナトリウム金属ハロゲン化物の溶融塩から成る第2の電解質(22)と、
前記中心軸(51)を中心として、前記カソード室(21)内において長手方向に延びて形成された、金属製のカソード側集電体(1)と、を備えたナトリウム金属ハロゲン化物電気化学電池において、
前記集電体(1)は、σ>10
6S/mの高い導電率を有する金属管(11)であり、その金属管は、前記セパレータ(3)内に位置する前記カソード(2)の顆粒の多孔質混合物及び前記第2の電解質(22)中に浸され、且つ、前記カソード(2)の顆粒が侵入せず、第2の電解質(22)のみが侵入することができように、内部が狭められたプレス管部(12)として形成されており、また、前記集電体(1)の表面積を拡大するための要素(15、16、18、19)を外側に有しており、
前記集電体(1)は、浸された前記プレス管部(12)の上方に、前記カソード室(21)を充填するための充填管(13)としての非プレス管部を有しており、前記充填管(13)を外部に開く少なくとも1つの貫通孔(14)が、前記充填管(13)の前記プレス管部(12)から非プレス管部への移行部に存在し、それによって、前記カソード(2)の前記顆粒の多孔質混合物を前記プレス管部(12)の外側のみにおいて前記カソード室(21)内に充填するために、及び、前記カソード室(21)全体に第2の電解質(22)を充填するために、前記充填管(13)が使用可能である、ことを特徴とする、ナトリウム金属ハロゲン化物電気化学電池。
【請求項2】
前記集電体(1)は、前記プレス管部(12)内に、プレス前に前記プレス管部(12)に挿入されたカーボンフェルト(23)を有することを特徴とする、請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項3】
前記集電体(1)は、前記プレス管部(12)内にカーボンフェルト(23)を有し、前記カーボンフェルトは、プレス後において、及び前記プレス管部(12)の押し潰し端部(16)の切削後において、前記プレス管部(12)内に側部から挿入可能であることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項4】
前記集電体(1)は、前記プレス管部(12)に、さらなる貫通孔(14)の形状のパンチ孔を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気化学電池。
【請求項5】
前記集電体(1)は、前記プレス管部(12)に、前記貫通孔(14)内に固定された、金属ストリップ又は金属ワイヤの金属房(15)を有し、前記金属房は、電池の電気化学的プロセスによって腐食されない金属から成り、前記集電体(1)の前記金属管(11)に匹敵する高導電率を有することを特徴とする、請求項4に記載の電気化学電池。
【請求項6】
前記集電体(1)として、市販のニッケル管、アルミニウム管、又は銅管が使用されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の電気化学電池。
【請求項7】
パンチングされた貫通孔(14)、又は、押し潰し端部(16)、金属房(15)、フィン(18)、又は折畳み金属薄板(19)を有する他のレリーフ形成構造からなるグループからの少なくとも1つの要素を有する、前記表面積を拡大するための要素が、前記集電体(1)に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項8】
金属ストリップ又は金属ワイヤの前記金属房(15)は、ニッケル又はモリブデンから製造されていることを特徴とする、請求項5~7のいずれか1項に記載の電気化学電池。
【請求項9】
金属ストリップ又は金属ワイヤの前記金属房(15)は、局部的な抵抗勾配が、前記カソード室(21)内において最小化されるように、又は前記カソード室(21)の断面にわたって均一に分布するように配置されていることを特徴とする、請求項5~7のいずれか1項に記載の電気化学電池。
【請求項10】
前記金属房(15)に使用される前記金属ストリップ又は金属ワイヤは、電池のより大きい容量を達成すべき場合ほどより短く選択され、及び、電池からより大きい出力を取り出すべき場合ほど最大で前記セパレータ(3)までより長く選択される長さを有することを特徴とする、請求項5~7のいずれか1項に記載の電気化学電池。
【請求項11】
前記集電体(1)の前記充填管(13)の前記非プレス管部は、前記カソード(2)の前記多孔質混合物の充填及び前記第2の電解質(22)の充填の後には、材料結合的に固定された金属円形板(62)又は深絞り部によって閉鎖されていることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の電気化学電池。
【請求項12】
前記集電体(1)の前記充填管(13)の前記非プレス管部は、前記カソード(2)の前記多孔質混合物の充填及び前記第2の電解質(22)の充填の後には、前記充填管(13)の管上端部において押し潰されている、或いは、はんだ付け又は溶接によって密閉閉鎖されていることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の電気化学電池。
【請求項13】
前記集電体(1)の前記プレス管部(12)は、2つの共線方向から平坦にプレスされていることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の電気化学電池。
【請求項14】
前記集電体(1)の前記プレス管部(12)は、前記中心軸(51)の周りに均等にずれた少なくとも3方向からプレスされて星形の断面を形成していることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の電気化学電池。
【請求項15】
前記集電体(1)の前記プレス管部(12)は、第2の電解質のリザーバ(24)として形成される内部空間が、電池の完全充電状態において、前記集電体(1)を完全に濡らすために必要な前記第2の電解質(22)の体積とちょうど同じ大きさになるように、力作用によってプレスされていることを特徴とする、請求項13又は14に記載の電気化学的電池。
【請求項16】
前記集電体(1)の前記プレス管部(12)の下方に、放射状のフィン(18)が配置された金属管(11)が追加されており、前記放射状のフィンは、前記金属管(11)の、接線方向に等距離のスロットに挿入されていることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の電気化学電池。
【請求項17】
前記集電体(1)の前記プレス管部(12)の下方に、放射状のフィン(18)を有する金属管(11)が追加されており、前記金属管は、等距離に折畳まれた金属薄板(19)とその軸対称の折り曲げとから製造されたものであることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の電気化学電池。
【請求項18】
ナトリウム金属ハロゲン化物電気化学電池の製造方法であって、
アノード室(41)を形成するためのケース(5)と、前記アノード室(41)をカソード室(21)から分離するためのセパレータ(3)であって、ナトリウムイオンのみを透過する電気絶縁性の固体の第1の電解質としての、前記ケース(5)に対して等距離に挿入可能なセパレータ(3)と、金属粉末顆粒と金属ハロゲン化物顆粒との多孔質混合物からなるカソード(2)と、前記カソード(2)の前記多孔質混合物を浸すための第2の電解質(22)と、を準備するステップと、
金属管(11)からカソード側集電体(1)を製造するステップであって、前記金属管(11)から、中心軸(51)に放射状に作用する力によって集電体(1)のプレス管部(12)を形成し、その上端において非プレス管部を充填管(13)として残し、前記プレス管部(12)から前記充填管(13)への少なくとも1つの移行部に、前記カソード室(21)の充填のために、前記充填管(13)の出口開口部として設けられた少なくとも1つの貫通孔(14)を設ける、カソード側集電体(1)を製造するステップと、
前記集電体(1)の前記充填管(13)をカソード閉鎖部(61)の中央開口部に通過させるための前記中央開口部を有する前記カソード閉鎖部(61)から電池閉鎖部(6)を製造し、前記カソード閉鎖部(61)を絶縁体接合リング(63)に材料結合的に結合し、アノード閉鎖部(64)を前記絶縁体接合リング(63)に材料結合的に追加するステップと、
前記セパレータ(3)内において、並びに前記セパレータ(3)の周囲に等距離に配置された前記ケース(5)内において、絶縁体接合リング(63)及びアノード閉鎖部(64)からなる前記電池閉鎖部(6)を用いて、ワンステップ接合プロセス並びに接合部位の材料結合的な結合によって、前記集電体(1)を前記中心軸(51)と共線的に配置するステップと、
前記カソード(2)の金属粉末顆粒と金属ハロゲン化物粉末顆粒との前記多孔質混合物を、前記集電体(1)の前記充填管(13)及び前記充填管(13)の前記少なくとも1つの貫通孔(14)を介して、前記集電体(1)の外側のみにおいて、前記セパレータ(3)の内側の前記カソード室(21)内に充填し、続いて液体状の前記第2の電解質(22)を、酸素を排除した状態で充填するステップと、
前記充填管(13)の材料結合的な閉鎖によって、前記電気化学電池を最終的に密閉閉鎖するステップと、を含む、ナトリウム金属ハロゲン化物電気化学電池の製造方法。
【請求項19】
前記カソード閉鎖部(61)と、絶縁体接合リング(63)及び追加されたアノード閉鎖部(64)に材料結合的に結合された前記カソード閉鎖部(61)とから前記電池閉鎖部(6)を製造する際に、
絶縁体接合リング(63)及びアノード閉鎖部(64)からなる前記電池閉鎖部(6)を用いて、前記ワンステップ接合プロセス並びに前記接合部位の材料結合的な結合によって、前記集電体(1)を、前記セパレータ(3)内及び配置された前記ケース(5)内において、前記中心軸(51)と共線的に配置する前に、
前記集電体(1)を、前記カソード閉鎖部(61)の前記中央開口部内に材料結合的に固定する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記カソード閉鎖部(61)と、絶縁体接合リング(63)及び追加されたアノード閉鎖部(64)に材料結合的に結合された前記カソード閉鎖部(61)とから前記電池閉鎖部(6)を製造する際に、
前記集電体(1)を、前記カソード閉鎖部(61)の前記中央開口部内に配置し、絶縁体接合リング(63)及びアノード閉鎖部(64)からなる前記電池閉鎖部(6)を用いて、前記ワンステップ接合によって、前記集電体(1)を、前記セパレータ(3)内に、並びに、前記セパレータ(3)の周りに等距離に及び前記中心軸(51)と共線的に配置された前記ケース(5)内に共線的に配置した後において、
前記集電体(1)を、前記接合部位の材料結合的な結合によって固定する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記カソード閉鎖部(61)と、絶縁体接合リング(63)及び追加されたアノード閉鎖部(64)に材料結合的に結合された前記カソード閉鎖部(61)とから前記電池閉鎖部(6)を製造する際に、
絶縁体接合リング(63)及びアノード閉鎖部(64)からなる前記電池閉鎖部(6)を用いて、前記ワンステップ接合によって、前記セパレータ(3)内において、前記集電体(1)を前記中心軸(51)と共線的に配置し、続いて前記ケース(5)をセパレータ(3)に対して等距離、且つ前記中心軸(51)と共線的に配置する前に、及び、前記接合部位を材料結合的な結合によって固定する前に、
前記集電体(1)を、前記カソード閉鎖部(61)の前記中央開口部内に、材料結合的に固定する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記集電体(1)の表面積を拡大するための要素を、前記プレス管部(12)に、貫通孔(14)の形状において等距離に導入する、請求項18~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記プレス管部(12)の前記貫通孔(14)に、金属ストリップ又は金属ワイヤから成る金属房(15)を挿入する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記集電体(1)の前記プレス管部(12)を、共線的な半径方向の力作用によって平坦に形成する、請求項18~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記集電体(1)の前記プレス管部(12)を、前記中心軸(51)の周りに等しく分布する複数の径方向の力作用によって星形に形成する、請求項18~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記集電体(1)の表面積を拡大するために、接線方向に等距離のスロットに挿入される放射状フィン(18)を、前記プレス管部(12)の下方において金属管(11)に取り付ける、請求項18~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記集電体(1)の表面積を拡大するために、放射状フィン(18)を、折畳み金属薄板(19)によって、前記プレス管部(12)の下方において金属管(11)に作製する、請求項18~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記充填管(13)の閉鎖を、金属円形板(62)を用いた、管上端部の溶接又ははんだ付けによって行う、請求項18~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記充填管(13)の前記閉鎖を、管上端部を押し潰し、最終的に押し潰した前記管上端部の溶接又ははんだ付けによって行う、請求項18~27のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム金属ハロゲン化物電気化学電池及びその製造方法に関する。そのナトリウム金属ハロゲン化物電気化学電池は、中心軸を有するケースと、ケースの中心軸を中心としてケースに対して等距離に広がるセパレータであって、固体の第1の電解質として、アノード室をカソード室から電気的に絶縁し及び密閉状態に分離し、且つナトリウムイオンに対しては透過性のあるセパレータと、カソード室を充填し、金属粉末顆粒と金属ハロゲン化物粉末顆粒との多孔質混合物からなるカソードと、カソード室及びカソードの多孔質混合物を浸し、ナトリウム金属ハロゲン化物の溶融塩から成る第2の電解質と、中心軸を中心として、カソード室内において長手方向に延びて形成された、金属製のカソード側集電体と、を備える。本発明は、好ましくはナトリウム金属ハロゲン化物電池、特にナトリウムニッケル塩化物電池として、電気自動車用、及び要求の厳しい定置用の高出力電池に使用される。
【0002】
上記の電気化学電池は、充電状態において少なくとも1つの金属からなるアノードと、遷移金属及び金属ハロゲン化物(例えば、ナトリウム、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム)からなる、多くの場合多孔質状に形成されたカソードであって、少なくとも動作状態においては液状のイオン伝導用の溶融塩によって浸されたカソードと、カソードと電気接触するための金属製の集電体と、を含む。
【背景技術】
【0003】
蓄電池又は二次電池の従来技術から、ナトリウム金属ハロゲン化物の化学に基づく電気化学電池が、特別に高い出力密度及びエネルギー密度、並びに長いサイクル寿命を有するため、特に電気自動車及び要求の厳しい定置型用途のための高出力電池に使用されていることが、知られている。その際、それは熱電池であり、その場合、アノードは熱によって液化したアルカリ金属(ナトリウム)によって形成され、カソードは、金属及び金属ハロゲン化物(例えば、塩化ニッケル、塩化ナトリウム)から成る多孔質材料を浸す溶融塩によって形成される。2つの電極は、固体の電解質(例えば、270℃以上においてナトリウムイオンを非常によく伝導する、すなわちナトリウムイオンに対して透過性のある、できるだけ大きな「β」相を有するナトリウム-β-アルミナ)として作用する、電気絶縁性のセパレータによって分離されている。そのような電池は電気化学的な自己放電がなく、約90%のエネルギー効率、及び100%のクーロン効率を有する。
【0004】
これに関連して、特許文献1には、ナトリウム金属ハロゲン化物電池用の集電体が記載されており、その集電体においては、集電体の薄板状の形成が電気化学電池の高出力及びコスト削減を可能にするとしている。その集電体は、導電性材料から成る、少なくとも1つの平らな細長いフィンを有し、その支配的な長手方向軸に関して屈曲部を有し、屈曲した上端によって、平らな金属リングに溶接、又は、はんだ付けされている。その金属リングは、電池軸内においてフィンを正確に中心方向に配置した状態において、集電体を電池蓋に取り付けられるようにする。好ましい一実施形態においては、カーボンフェルトのために空けられた中央部を有して、2つの相補的な、スロット付き薄板が交差して配置される。しかしながら、不都合なことに、一方においては、集電体のすべての異なる実施形態において、薄板を金属リングに材料結合的に(粘着結合により)及び正確に結合する必要がある。他方においては、液体溶融塩の貯蔵のために、少なからぬ寸法のカーボンフェルトが金属薄板間に配置する必要があり、その際、そのカーボンフェルトはその位置に限定的にしか固定されない。カーボンフェルト自体が場所をとるため、Na/MCl2電池の蓄電容量が低下してしまう。カーボンフェルトが正確に配置されていないことによって、局所的に異なる電流密度が生じ、異なる厚みのカソード領域に制限され、それによって、電池特性が電池ごとに異なる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0004456号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、表面積対断面積比が最大となる集電体の形成を可能にし、その際、集電体の周囲の電極における電流密度分布を均一にするために、電気化学電池の対称軸に沿った配置、及び、製造技術的に簡略化されたその製造、並びに、電極部品の充填に関してナトリウム金属ハロゲン化物電気化学電池の簡略化された取付けを可能にする、ナトリウム金属ハロゲン化物電気化学電池を実現する新しい可能性を見つけるという課題に基づいている。本発明のさらなる課題は、溶融塩の空間的中間貯蔵の機能を集電体に統合することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、本課題は、ナトリウム金属ハロゲン化物電気化学電池であって、中心軸を有するケースと、ケースの中心軸を中心としてケースに対して等距離に広がるセパレータであって、固体の第1の電解質として、アノード室をカソード室から電気的に絶縁及び密閉状態に分離し、且つナトリウムイオンに対しては透過性のあるセパレータと、カソード室を充填し、金属粉末顆粒と金属ハロゲン化物粉末顆粒との多孔質混合物からなるカソードと、カソード室及びカソードの多孔質混合物を浸し、ナトリウム金属ハロゲン化物の溶融塩から成る第2の電解質と、中心軸を中心として、カソード室内において長手方向に延びて形成された、金属製のカソード側集電体と、を備えたナトリウム金属ハロゲン化物電気化学電池において、集電体は、σ>106S/mの高い導電率を有する金属管であり、その金属管は、セパレータ内に位置するカソードの顆粒の多孔質混合物及び第2の電解質中に浸され、且つ、カソードの顆粒が侵入せず、第2の電解質のみが侵入することができように、内部が狭められたプレス管部(圧縮管部)として形成されており、また、集電体の表面積を拡大するための要素を外側に有しており、集電体は、浸されたプレス管部の上方に、カソード室を充填するための充填管としての非プレス管部(非圧縮管部)を有しており、充填管を外部に開く少なくとも1つの貫通孔が、充填管のプレス管部から非プレス管部への移行部に存在し、それによって、カソードの顆粒の多孔質混合物をプレス管部の外側のみにおいてカソード室内に充填するために、及び、カソード室全体に第2の電解質を充填するために、充填管が使用可能であること、を特徴とするナトリウム金属ハロゲン化物電気化学電池によって、解決される。
【0008】
有利には、集電体は、プレス管部内に、プレス前にプレス管部に挿入されたカーボンフェルトを有する。
【0009】
好適には、集電体は、プレス管部内にカーボンフェルトを有し、そのカーボンフェルトは、プレス後において、及びプレス管部の押し潰し端部の切削後において、プレス管部内に側部から挿入可能である。
【0010】
好ましくは、集電体は、表面積を拡大するための要素として、プレス管部に、好ましくは貫通孔の形状のパンチ孔を有する。その際、集電体は、プレス管部に、貫通孔内に好適に固定された、金属ストリップ又は金属ワイヤの金属房を有し、その金属房は、電池の電気化学的プロセスによって腐食されない金属から成り、集電体の金属管に匹敵する高導電率を有する。
【0011】
好適には、集電体として、市販のニッケル管、アルミニウム管、又は銅管が使用されている。
【0012】
パンチングされた貫通孔、又は、押し潰し端部、金属房、フィン、又は折畳み金属薄板を有する他のレリーフ形成構造からなるグループからの少なくとも1つの要素を有する、表面積を拡大するための要素が、集電体に形成されている。その際、金属房は、好ましくは、ニッケル又はモリブデンからなる金属ストリップ又は金属ワイヤから製造されている。
【0013】
金属ストリップ又は金属ワイヤの金属房は、局部的な抵抗勾配が、カソード室内において最小化されるように、又はカソード室の断面にわたって均一に分布するように配置されている場合、特に有利であることが判明している。
【0014】
さらなる有利な一実施形態においては、金属房に使用される金属ストリップ又は金属ワイヤは、電池のより大きい容量を達成すべき場合ほどより短く選択され、及び、電池からより大きい出力を取り出すべき場合ほど最大でセパレータまでより長く選択される長さを有する。
【0015】
好ましくは、集電体の充填管の非プレス管部は、カソードの多孔質混合物の充填及び第2の電解質の充填の後には、材料結合的に固定された金属円形板又は深絞り部によって閉鎖されている。代替的には、集電体の充填管の非プレス管部は、カソードの多孔質混合物の充填及び第2の電解質の充填の後には、充填管の管上端部において押し潰されている、或いは、はんだ付け又は溶接によって密閉閉鎖されていると、好適である。
【0016】
好ましくは、集電体のプレス管部は、2つの共線方向からの力作用によって平坦にプレスされ得る。
【0017】
さらなる有利な一実施形態においては、集電体のプレス管部は、中心軸の周りに均等にずれた少なくとも3方向からプレスされて星形の断面を形成している。
【0018】
集電体のプレス管部は、好ましくは、第2の電解質のリザーバとして形成された内部空間が、電池の完全充電状態において、集電体を完全に濡らすために必要な第2の電解質の体積とちょうど同じ大きさになるように、上記の力作用によってプレスされている。
【0019】
集電体のプレス管部の下方に、放射状のフィンが配置された金属管が追加されており、その放射状のフィンは、金属管の、接線方向に等距離のスロットに挿入されている場合、さらに好適であることが、判明している。
【0020】
別の有利な一実施形態においては、集電体のプレス管部の下方に、放射状のフィンを有する金属管が追加されており、その金属管は、等距離に折畳まれた金属薄板とその軸対称の屈曲とから製造されたものである。
【0021】
さらに、本課題は、以下のステップを有するナトリウム金属ハロゲン化物電気化学電池の製造方法において解決される。その製造方法は、
-アノード室を形成するためのケースと、アノード室をカソード室から分離するためのセパレータであって、ナトリウムイオンのみを透過する電気絶縁性の固体の第1の電解質としての、ケースに対して等距離に挿入可能なセパレータと、金属粉末顆粒と金属ハロゲン化物顆粒との多孔質混合物からなるカソードと、カソードの多孔質混合物を浸すための第2の電解質と、を準備するステップと、
-金属管からカソード側集電体を製造するステップであって、その金属管から、中心軸に放射状に作用する力によって集電体のプレス管部を形成し、その上端において非プレス管部を充填管として残し、プレス管部から充填管への少なくとも1つの移行部に、カソード室の充填のために、充填管の出口開口部として設けられた少なくとも1つの貫通孔を設ける、カソード側集電体を製造するステップと、
-集電体の充填管をカソード閉鎖部の中央開口部に通過させるための中央開口部を有するカソード閉鎖部から電池閉鎖部を製造し、カソード閉鎖部を絶縁体接合リングに材料結合的に結合し、アノード閉鎖部を絶縁体接合リングに材料結合的に追加するステップと、
-セパレータ内において、並びにセパレータの周囲に等距離に配置されたケース内において、絶縁体接合リング及びアノード閉鎖部からなる電池閉鎖部を用いて、ワンステップ接合プロセス並びに接合部位(ジョイント)の材料結合的な結合によって、集電体を中心軸と共線的に配置するステップと、
-カソードの金属粉末顆粒と金属ハロゲン化物粉末顆粒との多孔質混合物を、集電体の充填管及び充填管の少なくとも1つの貫通孔を介して、集電体の外側のみにおいて、セパレータの内側のカソード室内に充填し、続いて液体状の第2の電解質を、酸素を排除した状態で充填するステップと、
-充填管の材料結合的な閉鎖によって、電気化学電池を最終的に密閉閉鎖するステップと、を含む。
【0022】
好適には、集電体の表面積を拡大するための要素を、プレス管部に、貫通孔の形状において等距離に導入する。しかしながら、その要素を、非プレス管部に導入することもでき、及び/又は、プレス又は非プレス管部に、押し潰し端部、金属房、フィン、又は折畳み金属薄板を有する他のレリーフ形成構造のグループからの要素として形成することもできる。
【0023】
プレス管部の貫通孔に、金属ストリップ又は金属ワイヤから成る金属房を挿入することが、特に有利であると判明している。
【0024】
集電体のプレス管部を、好ましくは、共線的な半径方向の力作用によって平坦に形成する。
【0025】
別の代替的な一変形例においては、集電体のプレス管部を、中心軸の周りに等しく分布する複数の半径方向の力作用によって、有利には、星形に形成する。
【0026】
集電体の別の好ましい一実施形態においては、集電体の表面積を拡大させるために、接線方向に等距離のスロットに挿入される放射状フィンを、プレス管部の下方において金属管に取り付ける。
【0027】
さらに、集電体の表面積を拡大するために、放射状フィンを、折畳み金属薄板によって、プレス管部の下方において金属管に作製することが可能である。この折畳み金属薄板は、金属管に巻き付けられる、又はこれ自体が屈曲して管形状の内部空間を備えた物体になる。
【0028】
充填管の閉鎖を、金属円形板を用いた、管上端部の溶接又ははんだ付けによって好適に行う。代替的には、充填管の閉鎖を、管上端部を押し潰し、最終的に押し潰した管上端部の溶接又ははんだ付けによって行うことができる。
【0029】
本発明によって、電解質材料内の軸対称の電流分布と、カソード部品の簡素な充填と、技術的に簡単かつ安価な集電体の製造及び集電体の電気化学電池への取付けと、を達成するために、ナトリウム金属ハロゲン化物電気化学電池用の集電体をいかに形成するかの可能性が示される。集電体の表面積を拡大することによって、カソードの金属成分との接触抵抗を減らし、それによって、電池の内部抵抗、或いは電力損失を低減し、性能を向上させることができる。
【0030】
以下、本発明を実施例及び図面を用いてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】部分的にプレスされた、パンチ孔を有する金属管から製造される、本発明によるカソード側集電体の概略的な原理図である。
【
図2】金属ワイヤ房が貫通する丸いパンチ孔を有する、
図1によるカソード側集電体のさらなる実施形態を示す図である。
【
図3】電体の充填管からプレス管部への移行領域において貫通するパンチ孔を有する、
図1のA部の概略的な断面図である。
【
図4】集電体のプレス管部内において金属ワイヤ束を挿入した孔と交差する、
図2において示された径方向平面B内における、カソード室内の電流分布を概略的に示す図である。
【
図5】ナトリウム-β-アルミナ製のセパレータと、ニッケルメッキ銅管製のカソード側集電体とを有するナトリウム金属ハロゲン化物電気化学電池の好ましい実施例を示す図である。
【
図6】好ましくはカーボンフェルトの挿入のために、金属管がプレスされた後において、片側だけ除去された押し潰し端部を有する、本発明による集電体のさらなる実施形態を示す図である。
【
図7】カソード材料の充填後の
図6の集電体の実施形態であって、最終的に充填管の上端が押し潰され、且つ融合された実施形態を示す図である。
【
図8】最終的に充填管の上端が押し潰され、且つ融合された、本発明による集電体のさらなる実施形態であって、金属管の下部プレス管部が、複数の非平行な半径方向から中心に圧し潰されている実施形態を示す図である。
【
図9】
図8による集電体の実施形態の断面図であり、下部プレス管部は、直交する4つの半径方向からプレスされ、そのうちのそれぞれの2つは、管軸に対して反対側に、共線的に向けられたものである。
【
図10】
図8に示す本発明による集電体のさらなる実施形態を示す図であり、最終的に押し潰された管上端部を有する充填管が、下部管部として直交する4つの半径方向から別々にプレスされた金属管に取り付けられ、その際充填管と半径方向にプレスされた金属管との断面の違いが充填開口部のためのパンチ孔を代替する実施形態を示す。
【
図11】充填管、プレス管部、及び放射状フィンを有する金属管を備えた本発明による集電体のさらなる実施形態であって、金属管の内部に第2の電解質のリザーバを備えている実施形態を示す図である。
【
図12】
図11による集電体のさらなる実施形態であり、フィンが等距離に折畳まれた金属薄板によって模造され、及び、金属管が軸対称に折り曲げられた金属薄板によって模造されている実施形態を示す図である。
【
図13】アノード室を含む二重壁セパレータ、並びに、それぞれの集電体を有する内側及び外側のカソード室を有する、
図5に対して拡張した、電気化学電池のダブル電池配置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明によるナトリウム金属ハロゲン化物電気化学電池は、例示的な基本構造において、カソード側集電体1と、ナトリウム塩とさらなる金属ハロゲン化物とからなるカソード2と、固体の第1の電解質として、カソード室21をアノード室41から分離するセパレータ3と、集電体1をカソード室21に混入させる(入れる)第2の電解質22と、アノード4と、アノード側集電体であるケース5と、を含む。
【0033】
図1は、カソード側集電体1の好ましい一実施形態を示す。このカソード側集電体1は、導電性の良い金属(σ>10
6S/m)からなる管状の基体(金属管11)を起点として、カソード室21内においてセパレータ3の中心軸51に沿って延びる下部のプレス管部12と、カソード室21の上方においてカソード材用の充填管13を形成する上部の非プレス管部とに区分されている。プレスされていない最初の金属管11、及び、そのままである充填管13の断面は、円形とは異なる、四角形、多角形、波型模様などに形成可能である。
【0034】
プレス管部12には、完全充電状態において多孔質のカソード2を完全に濡らすために必要な量の第2の電解質22が中間的に蓄えられる。カソード2は、充電中に集電体1の内部から液状の第2の電解質22を補充することができ、その充電の際には多孔質のカソード顆粒の体積が約20%減少する。Na/金属ハロゲン化物電池の電子伝導を良好にし、それによって内部抵抗を低減するためには、集電体1の長さをセパレータ3の基面にできるだけ近づけることが望ましい。そのため、その長さは、セパレータ3の長さの70%よりも明らかに大きいことが望ましく、その際、管状のNa/金属塩化物電池は、有利には、50mm~500mmの間の長さにおいて製造される。蓄電容量は、集電体1の外郭とセパレータ3の内壁との間において多孔質のカソード2によって満たされたカソード室21によって決まる。それによって、特に有利には、セパレータ3の直径が15mm~90mmとした場合、集電体1の直径は4mm~50mmの間において選択される。集電体1に表面積拡大のための要素が取り付けられている場合、以下でより詳細に説明するように、集電体1の外郭の10mm~80mmの適合直径も、セパレータ3の上記の想定直径の際に使用することができる。
【0035】
集電体1の材料としては、ニッケル又はニッケル合金、又はモリブデンも使用することができる。集電体1のより低コストの製造のために、有利には、大量生産から市販されている、例えば銅又は銅合金からなる金属管11が有利に使用される。これらは、とりわけ成形(プレス、パンチング、曲げ)が容易であり、低コストであり、また、非常に高い導電率によって電気化学電池の抵抗が低減される。
【0036】
電池化学の観点から、金属管11を成形し、スロット又は貫通孔14のパンチングの後に、集電体1をニッケルコーティングによって化学的侵食から保護する。例えば、ZnCl2又はFeCl2顆粒を有するカソード2を用いる場合において、銅が第2の電解質22を介して塩と反応してCuCl又はCuCl2を生成する電圧(約2.6V)よりも低い電圧に電池電圧が選択される場合、集電体1は全く銅から成り得る。しかしながら、保護層としてニッケル又はモリブデンの使用は、集電体1を確実に侵食から保護するために、信頼できる手段であり、それによって、アルミニウム管も使用可能である。ただし、電池化学(例えば、CuCl、CoCl2、CrCl2、又はZnCl2)に応じて、他の材料の組み合わせも選択できる。
【0037】
金属管11の(例えばプレス前、プレス中、又はプレス後に)作成された貫通孔14に、例えばニッケル又はモリブデンから成る金属ストリップ又は金属ワイヤの形態の金属房15を追加で導入すると、集電体1の表面積がかなり拡大され、特に平坦なプレス管部12の場合、円筒形の外郭に近似される。また、金属ワイヤの代わりに金属棒(図示せず)も同等に使用することができる。ニッケルの代わりにモリブデンを使用することによって、例えばFeCl2のカソード2を使用した場合の最大充電電圧を高くすることができ、さらに導電率(Mo:18.2・106S/m、Ni:13.9・106S/m)を高めることによって電池の性能を高めることができる。
【0038】
金属房15の線長、その直径、本数、及び向きを変えることによって、カソード室21内のカソード2の、セパレータ3に向かう抵抗低減を非常に均一に行うことができる。
【0039】
電池の性能は、数及びサイズ(ワイヤの長さ及び直径)を最小限に減らし、それによってNa/MCl2電池を貯蔵容量に対して最適化することによって、又は、カソード室21に適合する金属房15の多くのワイヤを使用し、それは、その後、容量の減少をもたらすが性能は増加することによって、大きく影響を受け得る。セパレータ3の近くに到達した金属房15は、また、電子が、もはや(従来技術にしたがった通常のように)互いに接触している個々の金属粒子を経由する経路をとらず、固体としての金属房15のワイヤを介した迅速な輸送を行い得ることを意味する。それは、充電された状態において非塩素化導電性金属の量が減少し、充電又は放電反応が常にセパレータ3から最短距離において開始するためである。
【0040】
実施例として、長さ約300mm、直径5mmの金属管11だとすると、活性表面積(高さ270mmでカソード2と接触している)は約42.6cm2となる。金属管11に13個の貫通孔14を設け、各貫通孔14(充填管13に接する最上部の貫通孔14を除く)にそれぞれ厚さ0.7mm、長さ約32mmの13本のワイヤからなる金属房15を設ける場合、金属房15の表面積はさらに110cm2追加、ワイヤの厚さが1mmの場合さらに160cm2追加となり、高速の電子結合路(ワイヤ)がセパレータ3まで到達する追加の利点を伴う。本実施例による集電体1の形成によって、カソード側集電体1の表面積を5倍(約40cm2から200cm2に)に増加させることができる。金属ワイヤの代わりに、金属薄板ストリップを金属管11に取り付け、接合する、又は押し付けることも可能である。
【0041】
十分な電流耐性を得るためには、金属管11の材料断面を必要条件に適合させる必要がある。
【0042】
金属房15のワイヤ又は金属薄板(場合によっては追加のコーティングを伴う)の、プレス管部12に対する、プレス、広がり又は曲げが、滑り出しに対しての固定のために、又は、接触抵抗を十分に低減するために十分でない場合は、それらを溶接又ははんだ付けプロセスによって固定することが可能である。銅よりも低い導電率を有する材料を、金属房15のワイヤ、金属棒又は金属薄板の基材として使用することもでき、その場合、電池化学、したがって充電電圧を適宜に適合させれば、これらを、例えばニッケル、モリブデンから成る化学的に耐性のある保護層を有するプレス管部12とともに提供することができる。さらに導電率を高めるために、例えば銅又はニッケルから成る基材にグラフェンをコーティングすることができる。
【0043】
プレスされた集電体1の場合に表面積拡大のために使用される金属房15(好ましくは金属ワイヤからなる)の措置は、電流分布が、好ましくは用いられる円筒形のセパレータ3内において、より均質なものになるというさらなる本質的な利点を伴う。なぜなら、プレス管部12の平坦形状から生じる、半径方向の抵抗勾配の差が最小にされる、又は中心軸51を中心としてより均一に分布するからである。このような、円筒形セパレータ3内における、本発明による集電体1の均質化された電流分布を、
図4に定性的に示す。電流分布の同様の挙動が、集電体1用の金属管11の、
図9による星型のプレスによって得られる。さらに、金属管11のプレス形状も、セパレータ3の輪郭に合わせることができる。
【0044】
回転対称のセパレータ3内において生成可能な、カソード室21内の最も均一な電流密度分布は、同様に円形、且つカソード室21の中央に配置された、非プレス金属管11の形態の集電体1によって確保される。この充填管13においては、わずか数ミリメートルの長さのプレス管部12の上部のみをプレスすることが可能であり、それによって、カソード室21の充填のための充填管13とされた領域、及び、同時に、プレス管部12の下方における第2の電解質22のリザーバ24としての集電体1の内部容積を空けておくことができる。そして、管状の集電体1は、最下端領域において、第2の電解質22の溶融塩のみが第2の電解質のリザーバ24に浸透できる程度にプレスして閉塞される。又は、金属管11を最下端領域より数センチメートル上において軽くプレスして、カーボンフェルト23をこのストッパーまで挿入して、例えば顆粒として充填したカソード2の侵入を阻止できる。
【0045】
さらなる一実施形態においては、カーボンフェルト23は、集電体1内の領域Aにおいて長さが数ミリメートルのプレス管部12まで配置され、それによって、カーボンフェルト23が金属管11から突き出る、又は金属管11を閉鎖する。金属管11は、閉じた輪郭である必要はなく、リザーバ24に第2の電解質22が浸透すること、及びカソード2の顆粒が浸入しないことが保証されればよい。そのため、金属管11の中心軸に沿った、又は中心軸を横切るスロットも許容されるが、充填管13において、カソード閉鎖部61から電池外への領域においては許容されない(電池の密閉性が要求されるため)。
【0046】
さらなる一実施形態においては、金属管11は、プレス前に、上部管部である充填管13にのみ空洞が残るように、巻かれたカーボンフェルト23を用いて充填されてもよい。次いで、カーボンフェルト23を有する集電体1は、後にカソード2と接触する金属管11にプレス及び穿孔され、好ましくは、(
図2の実施形態によれば)金属ワイヤの金属房15が取り付けられる。その際、プレス管部12と充填管13との間の移行領域における最上部の貫通孔14は、空いたままであり、すなわち金属房が挿入されていない。それは、この貫通孔14は、(
図3における、
図1の拡大詳細部Aから認識できるように)カソード2の顆粒を充填し、続いて第2の電解質22の液体浸透のために設けられているためである。
【0047】
なお、プレス管部12又は非プレス金属管11は、カソード充填用に設けられた最上部の貫通孔14の下方に、金属房15を含まない少なくとも1つのさらなる貫通孔14を有してもよい。それによって、カーボンフェルト23からの、又は、非プレス金属管11内のリザーバ24からの第2の電解質22が、集電体1の内部から追加的に流出することができ、また、カソード2の顆粒を均一に湿らせる。
【0048】
集電体1の金属管11を平らにプレスする代わりに、表面積拡大のために、金属内において追加の構成(波、溝、刻み目、スロット等)を型付けすることがでる。
【0049】
カソード2の充填プロセスは、
図3に単純化して示したように、金属粉末及び金属ハロゲン化物粉末のプレス顆粒状の注入によって行われる。そのカソード2は、例えば、ニッケル、鉄、アルミニウム、さらには銅、コバルト、クロム又は亜鉛のような、その後の電池の充電中になって初めて金属ハロゲン化物に変換される顆粒状金属粉末と、ナトリウムハロゲン化物、例えば、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム又はフッ化ナトリウムとの混合物とされる。そのとき、カソード2の顆粒は、プレス管部12に当たり、好ましくは、プレスされていない最上部の貫通孔14の2つの開口部によって、横方向にそらされる。良好な流動性のために、充填管13内における貫通孔14の又はさらなる複数の貫通孔14の寸法を、カソード2の顆粒サイズに適合させる必要がある。
【0050】
カソード側集電体1の表面積が大きく形成されるほど、多孔質の金属ネットワーク(例えば、カソード顆粒中の非塩素化ニッケル又は鉄によって形成される)と集電体1との間の接触抵抗がより低くなる。
【0051】
上記の目的のために、直径を拡大した金属管11として集電体1を形成し、その際、金属管11の内部空洞を第2の電解質22のリザーバ24として利用できるようにした場合、その導電性表面積は大きくなるが、不必要に蓄電容量を低下させる虞がある。なぜなら、金属管11の所定の内部容積以上においては、充電プロセスのために必要な量以上の第2の電解質22がリザーバ24に貯まり、カソード2の顆粒のために残されるカソード室21が減少するからである。
【0052】
したがって、本発明は、カソード側集電体1の好適な形として、減少された内部容積及び表面積の拡大、並びに、円筒状に想定されたセパレータ3に空間的に適合した外郭の形状を提供する。貫通孔14と、そこに挿入された、金属ストリップ又はワイヤの金属房15とを有する平坦なプレス管部12によって形成されている好ましい実施形態においては、
図2の平面Bにおける
図4の断面図から認識できるように、プレスされた束として貫通孔14に挿入された金属ストリップ又は金属ワイヤは、その後の扇状化及び押し潰しによって集電体1の円柱に似た外形に適合させることができる。それによって、カソード室21内における、セパレータ3の径方向における均一な抵抗分布が生じる。
【0053】
金属管11の直径は、カソード2の顆粒の大きさ及び流動性、或いは、充填口として形成された貫通孔14の、守るべき充填時間に必要な直径に応じて決定される。しかしながら、集電体1の表面積拡大のために用いられる貫通孔14はこれとは異なっていてもよい。ワイヤの長さ、直径、本数、及び向きを変えることによって、カソード2内において、非常に均一、且つ正確な抵抗低下が生じ得る。
【0054】
図5は、本発明による電気化学電池の好ましい実施形態を、電池の軸方向断面の概略的な(縮尺どおりでない)図として示している。図においては、電気化学電池の本質的な構成要素が、主要な空間配置において示されており、また、これらは、具体的な実施例によって、特別な電池化学の観点から実施されている。
【0055】
図5による電池の形態においては、カソード側集電体1は、化学的耐性を高めるためにニッケルコーティングされた銅管から製造されている。金属管11の基材として銅又はアルミニウムの使用は、導電率が高くなるため、集電体1の電気抵抗を低減する。薄肉の中空構造体、及び、純ニッケル中実体と比較して製造されたカソード2によって、中空体でない場合に比べて、表面積が大きいにもかかわらず肉厚が小さくなるため、製造コストが低減し、成形(プレス、パンチング)が簡素化される。代替的な一実施形態においては、集電体1は、ニッケルのみによって製造可能である。
【0056】
また、
図5に示す電池構造の代替として、カソード2をセパレータ3の外側に配置することも可能である。その際、カソード2を、専らセパレータ3の外側に、すなわち、
図5の構造と比べて反対に配置する(図示せず)、又は、
図13に示すような囲われたアノード室41を有するセパレータ3の二重壁の実施形態では、国際公開第2018/138740号パンフレットから原理的に知られているように、カソード2をこの二重壁構造の内側及び外側両方に配置することができる。
【0057】
図5によるニッケルメッキ銅管からなるカソード側集電体1は、
図2に示す形状において製造され、セパレータ3の軸と共線的に配置される。セパレータ3は、アノード側集電体として機能するケース5の内部容積を、外側のアノード室41と、内側のカソード室21とに分割するものである。アノード室41には、本実施例においては、アノード4としての金属ナトリウムが充電状態において充填されている。カソード室21は、本実施例においては、集電体1の上部管部、いわゆる充填管13から注入されたニッケル/NaCl(非充電状態)又はニッケル/NiCl
2(完全充電状態)からなる顆粒によって充填されている。カソード室21へのカソード顆粒の迅速な充填を保証し、さらに、低い内部抵抗を実現するために、金属管11及び貫通孔14の断面積を、カソード2の体積及び電池全体の寸法に適合させる必要がある。
【0058】
集電体1のプレス管部12は、
図5の本実施形態においては、パンチングされた貫通孔14に金属ワイヤから成る金属房15が装着されている。表面積拡大のために使用される金属房15は、ニッケル線又はモリブデン線によって構成され得る。貫通孔14は、例えば、金属管11のプレス加工の前に、間に、又は後に、パンチングが可能であり、それによって、例えばニッケル又はモリブデンから成る金属房15によって金属管11を続いて追加充填し、その結果、集電体1の表面積がかなり拡大する。集電体1及びその金属房15に金メッキを施せば、集電体1の抵抗値はさらに低下するも、製造コストは増加する。
【0059】
さらに、固体の第1の電解質としてナトリウム-β-アルミナから製造したセパレータ3の内側のカソード室21は、本実施例においては、テトラクロロアルミン酸ナトリウム(NaAlCl4)からなる液体の第2の電解質22によって充填されている。充填管13の下方の集電体1の内部には、第2の電解質22のみが入り、Ni/NaCl顆粒が入らないようにするために、金属管11は、その内部に、プレス前に金属管11に挿入されて一緒にプレスされたカーボンフェルト23を含む、又は、充填管13の下方におけるプレス管部12の隙間寸法と、プレス管部12の最下端の隙間寸法とが十分小さくされている。
【0060】
電気化学電池におけるカソード側集電体1の取付けは、有利にはワンステップ接合として実施することができ、そのワンステップ接合は、設計に応じて、適切な炉内において異なる気圧及び温度において行われる。そのワンステップ接合においては、セパレータ3と、例えばコランダムからなるセラミック製の絶縁体接合リング63との間のセラミック-セラミック結合、及び、セパレータ3と、電気化学電池の密閉閉鎖のための金属製のカソード閉鎖部61及び金属製のアノード閉鎖部64との間の金属-セラミック結合は、1つの接合ステップによって実現される。このために、金属製の閉鎖部61及び64は、有利には深絞り加工によって製造される。カソード室21を閉鎖するカソード閉鎖部61は、本発明による実施形態の1つを有する、例えば金属房15を含むプレス管部12を有する集電体1が挿入される中央開口部を有し、接合前に、非プレス管部(充填管13)と溶接、又は、はんだ付けされる。別の一実施形態においては、充填管13は、ワンステップ接合の間に、金属製のカソード閉鎖部61にはんだ付けされる、又は接合プロセスに引き続いてようやく金属製のカソード閉鎖部61に溶接される。
【0061】
ワンステップ接合の接合ステップの間において、カソード室21を囲むセパレータ3が、又は、例えばケース5が、その寸法によって炉内における必要な自由空間を決定する。したがって、集電体1のセパレータ3の内側の配置は、必要な自由空間を増加することなく、不都合にはならない。
【0062】
ワンステップ接合の間において、アノード閉鎖部64も、別の、例えば金属製の深絞り部品として、適切な位置において絶縁体接合リング63と結合される。その際、ケース5(アノード側集電体として)もまた、接合プロセスに続いて金属製のアノード閉鎖部64に溶接され、それによって密閉されたアノード室41を形成することができる。カーボンフェルト23が集電体1内に導入されている場合、好ましくはワンステップ組立て又は高温はんだ付けプロセスは、無酸素でのみ行うことができる。そうでない場合、カーボンが酸化してしまうからである。ワンステップ接合に伴う溶接プロセス後において、電気化学電池は、1つの開口部のみ、すなわち、カソード側集電体1の充填管13の開口管端のみ、又は複数の集電体1,1’の場合には複数の開口部を、有する。この充填管13の開口部を介して、カソード2の顆粒混合物は、電気化学電池のカソード室21内に導入される。酸素及び水の排除の下において(例えば真空下又は不活性ガスパージによって)、次いで、第2の電解質が、充填管13の同じ開口部から電池のカソード室21内に液体状において導入される。最後に、電池の開口部は、(例えば、充填管13の管上端部を閉鎖するための深絞り部品又は金属円形板62を用いて)集電体1の突出端において溶接閉鎖される。
【0063】
図6及び
図7に概略的に示す最終的な電池取付けのさらなる一実施例においては、集電体1の充填管13がカソード閉鎖部61から大きく突出しているため、その充填管13を、充填が完了した電池の外側において押し潰して切断し、形成した狭い前額面を直接溶接によって閉鎖することができる。
【0064】
図6及び
図7には、集電体1のさらなる一改良例が示され、その改良例は、カーボンフェルト23を金属管11のプレス後においても金属管11に導入するために使用される。このために、プレス管部12の製造後において、押し潰し端部16が、例えば、切断又はフライス加工によって開口され、それによって、帯状のカーボンフェルト23を、横に切削された押し潰し端部17を介して導入できる。
【0065】
集電体1のさらなる一実施形態を
図8及び
図9に示す。本実施形態においては、金属管11(
図1においてのみ記載)の表面積を拡大するために、集電体1のプレス管部12は、中心軸51に対して径方向の4方向にプレスされている。その際、そのうちの2方向が、それぞれ共線的に対向する向きである。それによって、
図9に示すように、プレス管部12の断面は星形となる。
【0066】
さらなる代替的な断面として、星形は3角星形、5角星形、6角星形など(図示せず)も形成可能である。また、
図8には図示されないが、本実施例においては、さらに表面積拡大ために、金属房15を有する貫通孔14、又は、
図11に示すように、金属薄板を伴うスロットも追加的に導入可能である。
【0067】
図10に示す、プレス管部12の星形断面を製造するためのさらなる改良は、まず金属管11を、
図9において見られるように星形に作成し、次に非プレス管部を充填管13としてプレス管部12に溶接することによって行うことができる。それによって、カソード顆粒を充填するための4つの貫通孔14は、プレス管部12と円筒状の充填管13の異なる断面形状よって自動的に形成され、この場合、パンチングを行う必要がない。また、Ni/NaCl顆粒のプレス管部12の内部への侵入を防止するために、集電体1の上部のプレス領域と下部の開口部を十分に小さい隙間寸法に製作すること、又は、密閉のためにカーボンフェルト23を挿入することも可能である。
【0068】
図11に示す実施例によるカソード室21の軸方向に有利に配置された集電体1のさらなる一実施形態においては、カソード室21の充填のために、電気の良導体である金属からなる管状の基体(金属管11)が、下部のプレス管部12と上部の非プレス管部である充填管13とに分割されている。プレス管部12を介して、カソード2を、金属管11内の第2の電解質のリザーバ24に達することなく、貫通孔14を介してカソード室21にのみに充填することが可能である。プレス管部12の下方にある金属管11のスロットを介して、はめ込まれた金属薄板から製造されたフィン18をさらに挿入することが可能である。そのフィン18は、金属管11に溶接、プレス、又は、はんだ付けされる。その際、フィン18は、連続するもの、個別に取り付けられるものでもよく、又は、金属薄板が内側において金属管11の輪郭に適合され、それによって、少なくとも2つのフィン18を形成するように変形されたものでもよい。
【0069】
図12によるさらなる一実施形態においては、フィン18は、蛇腹状に(蛇行して)折畳まれた金属薄板19のみによって形成することも可能である。
【0070】
図12において認識されるように、第2の電解質のリザーバ24の星形又は波形の断面輪郭は、折畳み金属薄板19から形成することもできる。その金属薄板19は、開口した充填管13とプレス管部12とに分けられた集電体1の金属管11に、溶接、はんだ付け、又はプレス付けされる。このために、折畳み金属薄板19は、まずフィン状の構造を有して製造され、次に、内側において、例えば管状として製造された構造に曲げられ、そして、フィン18に結合することができる。1枚の折畳み金属薄板19の代わりに、複数枚の折畳み金属薄板19が、成形のために使用可能である。形成されたフィン18間の隙間寸法は、第2の電解質のリザーバ24にカソード2が侵入しない程度に小さくする必要がある。得られた星形断面輪郭の内寸が金属管11の下部開口部より小さい又は大きい場合においても、それでもなお、第2の電解質のリザーバ24はカソード2の顆粒を含まない状態でなければならない。また、残っている開口部は、例えば金属管11の少なくとも下端のさらなるプレスによって十分に狭く閉じられていなければならず、又は、1つ以上のカーボンフェルト23が導入されねばならない。
【0071】
図13は、電気化学電池の出力を上げるためのさらなる措置を示したもので、それはラジアル二重電池として形成されている。その際、ケース5と、本実施例において二重壁のセパレータ3の外壁との間の空間には、さらなるカソード2’の接触のためのさらなる集電体1’が設けられている。セパレータは、円筒状の環状隙間にアノード4のためのアノード室41を含む。有利には、中心軸51に、非プレス金属管11(
図13に図示せず)として配置された集電体1に加えて使用される集電体1’は、その集電体1’とケース5の内壁との間に第2の電解質のリザーバ24’を形成することによって、カーボンフェルト23の代用を成し得る。他方、さらなるカソード2’顆粒のケース壁への直接接触が防止されると同時に、集電体1’を介して電気接触が行われる。それによって、実際のケース5への電気化学的な腐食要件が低減される。同様に、さらなる集電体1’の形成の際に、その表面積は、すなわち、中心軸51に向かって配置された追加の折畳み金属薄板19を追加することによって、又は、金属薄板自体がケース輪郭と同様の型を有し、中心軸51に向かって配置されたフィン18を形成することによって、さらに拡大させることができる。
【0072】
その際、例えばニッケル製、又は電池化学によってはニッケルメッキ銅製の金属管11として製造され、ケース5の内径よりも小さい直径を有する追加の集電体1’を用いる場合、電気化学的に活性なカソード2’が電気的に接触すると同時に、カソード2’の充填レベルを超えるカーボンフェルト23を必要としないように、さらなる第2の電解質のリザーバ24’を作成することが可能である。ケース5の基部領域に配置されたさらなるカーボンフェルト23’によって、カソード2の顆粒がケース5の壁面に直接接触することを防止する。
【0073】
さらなるカソード室21’の外側領域に配置された、さらなる集電体1’は、基部において縁を折り曲げられた管の代わりに、ケース5の基部領域において折り曲げられた金属薄板ストリップによって形成することも可能である。その際、その金属薄板ストリップは、ケース5の基部に直接結合(例えば、スポット溶接、はんだ付け)され、それは、ケース5とは別の部品を示すか、又はケース5の深絞り加工によって一体に製造される。ケース5に対するさらなる集電体1’の接触抵抗をさらに低減するために、さらなる集電体1’の個々の金属薄板ストリップは、それぞれが追加的に折り曲げられ、そのときケース5の内壁とさらに平坦に接触できるように(図において認識できず)、過剰な長さに製造することが可能である。代替的には、集電体1’を、電池の上部閉鎖領域において、ケース5、又はその閉鎖領域の他の部分に溶接することも可能である。集電体1については、上記したようなすべての変形が可能であることに変わりはない。しかしながら、好ましくは、
図11及び
図12の形態を使用することができる。
【0074】
本発明によって、製造及び組立てが容易な少数の部品から構成された、特に低コストの電気化学電池が提供される。既に電池ができあがって組み立てられ密閉溶接された後において、特に、集電体1の新規な形状は、カソード2の金属顆粒及び第2の電解質22を容易かつ効果的に電池に充填することを可能にする。集電体1を一体に製造し、プレス及び溶接された充填管13によって直接電池間のコンタクトが可能なことによって、接合プロセスを不要とし、更に接触抵抗を低減することができる。集電体1は、分離された内部容積中において、Ni/NaCl顆粒にはアクセスできないが、第2の電解質22によって容易に浸透可能であることによって、カーボンフェルト23の第2の電解質のリザーバ24としての機能が代替され得る。さらに、集電体1の特別な表面積の拡大方法によって、カソード室21における径方向の電流分布の均一化が達成される。
【符号の説明】
【0075】
1,1’ (カソード側の)集電体
11 金属管
12 プレス管部
13 充填管/非プレス管部
14 パンチ孔/貫通孔
15 金属房(金属ストリップ又は金属ワイヤから成る)
16 押し潰し端部
17 切削押し潰し端部
18 フィン
19 折畳み金属薄板
2,2’ カソード
21,21’カソード室
22 第2の電解質
23,23’(カーボン)フェルト
24,24’(第2の電解質の)リザーバ
3 セパレータ(固体の第1の電解質)
4 アノード
41 アノード室
5 ケース
51 中心軸
6 電池閉鎖部
61 (金属製の)カソード閉鎖部
62 金属円形板
63 (セラミック製の)絶縁体接合リング
64 アノード閉鎖部
【国際調査報告】