IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオプセンス オサケユキチュアの特許一覧

特表2023-508411血液試料からセルフリー核酸を抽出するための方法、自動化システムおよびカートリッジ
<>
  • 特表-血液試料からセルフリー核酸を抽出するための方法、自動化システムおよびカートリッジ 図1
  • 特表-血液試料からセルフリー核酸を抽出するための方法、自動化システムおよびカートリッジ 図2
  • 特表-血液試料からセルフリー核酸を抽出するための方法、自動化システムおよびカートリッジ 図3
  • 特表-血液試料からセルフリー核酸を抽出するための方法、自動化システムおよびカートリッジ 図4
  • 特表-血液試料からセルフリー核酸を抽出するための方法、自動化システムおよびカートリッジ 図5
  • 特表-血液試料からセルフリー核酸を抽出するための方法、自動化システムおよびカートリッジ 図6
  • 特表-血液試料からセルフリー核酸を抽出するための方法、自動化システムおよびカートリッジ 図7
  • 特表-血液試料からセルフリー核酸を抽出するための方法、自動化システムおよびカートリッジ 図8
  • 特表-血液試料からセルフリー核酸を抽出するための方法、自動化システムおよびカートリッジ 図9
  • 特表-血液試料からセルフリー核酸を抽出するための方法、自動化システムおよびカートリッジ 図10
  • 特表-血液試料からセルフリー核酸を抽出するための方法、自動化システムおよびカートリッジ 図11
  • 特表-血液試料からセルフリー核酸を抽出するための方法、自動化システムおよびカートリッジ 図12
  • 特表-血液試料からセルフリー核酸を抽出するための方法、自動化システムおよびカートリッジ 図13
  • 特表-血液試料からセルフリー核酸を抽出するための方法、自動化システムおよびカートリッジ 図14
  • 特表-血液試料からセルフリー核酸を抽出するための方法、自動化システムおよびカートリッジ 図15
  • 特表-血液試料からセルフリー核酸を抽出するための方法、自動化システムおよびカートリッジ 図16
  • 特表-血液試料からセルフリー核酸を抽出するための方法、自動化システムおよびカートリッジ 図17
  • 特表-血液試料からセルフリー核酸を抽出するための方法、自動化システムおよびカートリッジ 図18
  • 特表-血液試料からセルフリー核酸を抽出するための方法、自動化システムおよびカートリッジ 図19
  • 特表-血液試料からセルフリー核酸を抽出するための方法、自動化システムおよびカートリッジ 図20
  • 特表-血液試料からセルフリー核酸を抽出するための方法、自動化システムおよびカートリッジ 図21
  • 特表-血液試料からセルフリー核酸を抽出するための方法、自動化システムおよびカートリッジ 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】血液試料からセルフリー核酸を抽出するための方法、自動化システムおよびカートリッジ
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6806 20180101AFI20230222BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20230222BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230222BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20230222BHJP
   C07K 1/22 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z
C12N15/10 Z
C12M1/00 A
C12M1/26
C07K1/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538992
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(85)【翻訳文提出日】2022-08-09
(86)【国際出願番号】 FI2020050866
(87)【国際公開番号】W WO2021130415
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】20196132
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522250574
【氏名又は名称】バイオプセンス オサケユキチュア
【氏名又は名称原語表記】BIOPSENSE OY
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】マリア ティーロラ
(72)【発明者】
【氏名】ユッシ ペンナネン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェリ-ミッコ プッポネン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029AA27
4B029BB15
4B029BB20
4B029CC01
4B029DG08
4B029GA02
4B029GA08
4B029GB10
4B029HA06
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR66
4B063QR83
4B063QR84
4B063QS12
4B063QS14
4B063QS15
4B063QS16
4B063QS36
4B063QX02
4H045AA20
4H045AA40
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA50
4H045GA10
4H045GA20
(57)【要約】
本発明は、がんの診断、予後およびモニタリング、ならびに出生前スクリーニングを容易にするために、血液試料からセルフリー核酸断片を抽出する方法を対象とする。本発明は、血液試料から血漿を濾過し、好ましくは収率を改善するための細胞の固定および細胞のすすぎも行う第1区画と、核酸の分離を行う第2区画とを含むカートリッジであって、第1区画は中空繊維膜を含み、第2区画は核酸を結合するための物質または電気泳動用ゲルを含む、カートリッジを提供する。本発明は、カートリッジを受けるように適合されたドッキング部位を有する装置を含む自動化システムであって、装置は、カートリッジにおいて血漿濾過プロセスを操作するように適合された手段と、カートリッジにおいて核酸の分離を操作するように適合された手段とを含む、自動化システムを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液試料から核酸断片を抽出するための方法であって、
a)個人から採取した血液試料を提供するステップと、
b)好ましくは固定試薬で試料中の血球を安定化させるステップと、
c)前記血液試料から血漿を分離するために、中空繊維フィルタを用いることにより前記血液試料を濾過するステップと、
d)好ましくはステップc)から得られた血球を含む画分を洗浄液で洗浄し、ウォッシュアウトを回収するステップと、
e)血漿試料中に存在する核酸断片を精製するために、ステップb)で得られた血漿試料、および好ましくはステップd)で回収されたウォッシュアウトを、核酸に特異的な結合物質と接触させるか、または代わりに前記血漿試料、および好ましくはステップd)で回収されたウォッシュアウトを分離媒体中で電気泳動に付すステップであって、前記分離媒体は、核酸断片が媒体中で移動可能かつサイズにより前記媒体中で分離可能であるように調製されている、ステップと、
f)前記結合物質に結合した、または前記分離媒体中を移動した核酸断片を回収するステップと、
g)ステップf)で回収された核酸断片を保存剤または安定化剤と混合するステップと、を含み、
ステップb)~g)は、自動化システムにおいて、血液試料から血漿を濾過するための第1区画と、ステップc)で得られた血漿試料を核酸に特異的な結合物質と接触させるための第2区画とを含むカートリッジ上でで行われるか、または代わりに前記第2区画は電気泳動を行うための手段を含む、方法。
【請求項2】
ステップe)において、前記核酸断片と前記保存剤または安定化剤の得られた混合物は、着脱式容器に保存される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物は前記結合物質に結合した核酸断片を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記核酸断片の長さは400塩基対未満である、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップa)で得られた血液試料は、試料を濾過ステップb)に付す前に抗凝固剤と混合される、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記中空繊維フィルタは中空繊維膜である、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップc)において、血漿試料は核酸に特異的な結合物質と接触する、請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記結合物質は磁性ビーズを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記結合物質に結合した核酸断片を核酸結合色素と接触させるステップと、回収された核酸断片の量を測定するステップとをさらに含む、請求項1~8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップc)における分離媒体は、核酸断片のサイズ選択媒体である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記分離媒体はアガロースゲル等の電気泳動用ゲルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップb)~e)は、自動化システムにおいて、血液試料から血漿を濾過するための第1区画と、電気泳動を行うための第2区画とを含むカートリッジ上で行われ、前記第2区画は電気泳動用ゲルを含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
血液試料から血漿を濾過するための第1区画と、血漿試料を核酸に特異的な結合物質と接触させるための第2区画とを含むカートリッジであって、前記第1区画は中空繊維フィルタを含み、前記第2区画は核酸精製のためのチャンバを含み、前記カートリッジは、該カートリッジ内に封入された核酸に特異的な結合物質を含み、前記結合物質は好ましくは磁性ビーズを含む、カートリッジ。
【請求項14】
前記第1区画は血液試料を受ける手段を含む、請求項13に記載のカートリッジ。
【請求項15】
前記第1区画は、前記血液試料を前記第1区画に封入された細胞固定試薬と混合する手段を含み、前記第1区画は、好ましくは前記血液試料から濾過された細胞を洗浄する手段を含み、洗浄バッファは好ましくは前記カートリッジに封入される、請求項14に記載のカートリッジ。
【請求項16】
前記第1区画は、前記血液試料から中空繊維膜において分離された血漿試料を、前記第1区画に封入された酵素または化学試薬と混合する手段を含む、請求項13~15の何れか一項に記載のカートリッジ。
【請求項17】
前記第1区画は、前記酵素または化学試薬と混合された分離血漿を、前記第1区画から前記第2区画に移送する手段を含む、請求項13~16の何れか一項に記載のカートリッジ。
【請求項18】
前記カートリッジに封入された保存剤または安定化剤と、該保存剤または安定化剤を前記結合物質に結合した核酸断片と混合する手段と、前記核酸断片と前記保存剤または安定化剤の混合物を保存するための着脱式容器とを含む、請求項13~17の何れか一項に記載のカートリッジ。
【請求項19】
核酸結合色素が封入されている、請求項13~18の何れか一項に記載のカートリッジ。
【請求項20】
前記第2区画は、光学的手段により色素に結合した単離核酸の量を測定するために、前記試料または混合物に光線を導くように配置された透明窓を含む、請求項19に記載のカートリッジ。
【請求項21】
請求項13~20の何れか一項に記載のカートリッジを受けるように適合されたドッキング部位を有する装置を含む、血液試料から核酸断片を抽出するための自動化システムであって、前記装置は、前記カートリッジにおいて血漿濾過プロセスを操作するように適合された手段と、核酸に特異的な結合物質を用いて前記カートリッジにおいて核酸精製を操作するように適合された手段とを含む、自動化システム。
【請求項22】
血液試料から血漿を濾過するための第1区画とゲル電気泳動を行うための第2区画とを含むカートリッジであって、前記第1区画は中空繊維膜を含み、前記第2区画は電気泳動用ゲルを含む、カートリッジ。
【請求項23】
前記第2区画における電気泳動用ゲルはアガロースゲルである、請求項22に記載のカートリッジ。
【請求項24】
前記第1区画は血液試料を受ける手段を含む、請求項22または23に記載のカートリッジ。
【請求項25】
前記第1区画は、前記血液試料を前記第1区画に封入された細胞固定試薬と混合する手段を含む、請求項24に記載のカートリッジ。
【請求項26】
前記第1区画は、中空繊維膜において前記血液試料から分離された血漿試料を、前記第1区画に封入された酵素または化学試薬と混合する手段を含む、請求項22~25の何れか一項に記載のカートリッジ。
【請求項27】
前記第1区画は、前記酵素または化学試薬と混合された分離血漿を、前記第1区画から前記第2区画に移送する手段を含む、請求項22~26の何れか一項に記載のカートリッジ。
【請求項28】
前記カートリッジに封入された保存剤または安定化剤と、該保存剤または安定化剤を核酸断片と混合する手段と、前記核酸断片と前記保存剤または安定化剤の混合物を保存するための着脱式容器とを含む、請求項22~27の一項に記載のカートリッジ。
【請求項29】
核酸結合色素が封入されている、請求項22~28の何れか一項に記載のカートリッジ。
【請求項30】
請求項22~29の一項に記載のカートリッジを受けるように適合されたドッキング部位を有する装置を含む血液試料から核酸断片を抽出するための自動化システムであって、前記装置は、前記カートリッジにおいて血漿濾過プロセスを操作するように適合された手段と、前記カートリッジにおいてゲル電気泳動を操作するように適合された手段とを含む、自動化システム。
【請求項31】
血液試料からタンパク質バイオマーカーを抽出するための方法であって、
a)個人から採取した血液試料を提供するステップと、
b)好ましくは、固定試薬で試料中の血球を安定化させるステップと、
c)前記血液試料から血漿を分離するために、中空繊維フィルタを用いることにより前記血液試料を濾過するステップと、
d)好ましくは、分離された細胞画分を洗浄試薬で洗浄し、ウォッシュアウトを回収するステップと、
e)血漿試料中に存在するバイオマーカーを常に精製するために、ステップc)で得られた血漿試料、および好ましくはステップd)で回収されたウォッシュアウトを、タンパク質バイオマーカーに特異的な結合物質と接触させるステップと、
f)前記結合物質に結合したタンパク質を回収するステップと、
g)ステップf)で回収されたタンパク質を保存剤または安定化剤と混合するステップと、
を含み、
ステップb)~g)は、自動化システムにおいて、血液試料から血漿を濾過するための第1区画と、ステップc)で得られた血漿試料を前記タンパク質バイオマーカーに特異的な結合物質と接触させるための第2区画とを含むカートリッジ上で行われる、方法。
【請求項32】
ステップe)において、前記タンパク質と前記保存剤または安定化剤の得られた混合物は、着脱式容器に保存される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記混合物は、前記結合物質に結合したタンパク質を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ステップa)で得られた血液試料は、試料を濾過ステップb)に付す前に抗凝固剤と混合される、請求項31~33の何れか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記中空繊維フィルタは中空繊維膜である、請求項31~34の何れか一項に記載の方法。
【請求項36】
ステップc)において、血漿試料は前記タンパク質バイオマーカーに特異的な結合物質と接触する、請求項1~35の何れか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記結合物質は磁性ビーズを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記磁性ビーズは、前記タンパク質バイオマーカーに特異的な抗体でコーティングされている、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
血液試料から血漿を濾過するための第1区画と、血漿試料をタンパク質バイオマーカーに特異的な結合物質と接触させるための第2区画とを含むカートリッジであって、前記第1区画は中空繊維フィルタを含み、前記第2区画はタンパク質精製のためのチャンバを含み、前記カートリッジは、該カートリッジ内に封入された、前記タンパク質バイオマーカーに特異的な結合物質を含み、前記結合物質は好ましくは磁性ビーズを含む、カートリッジ。
【請求項40】
前記磁性ビーズは、前記タンパク質バイオマーカーに特異的な抗体でコーティングされている、請求項39に記載のカートリッジ。
【請求項41】
前記カートリッジに封入された保存剤または安定化剤と、該保存剤または安定化剤を前記結合物質に結合した核酸断片と混合する手段と、前記核酸断片と前記保存剤または安定化剤の混合物を保存するための着脱式容器とを含む、請求項39または40に記載のカートリッジ。
【請求項42】
タンパク質バイオマーカーに特異的な結合物質を含む請求項40または41に記載のカートリッジを受けるように適合されたドッキング部位を有する装置を含む、血液試料から核酸断片を抽出するための自動化システムであって、前記装置は、前記カートリッジにおいて血漿濾過プロセスを操作するように適合された手段と、前記タンパク質バイオマーカーに特異的な結合物質を用いて前記カートリッジにおいてタンパク質精製を操作するように適合された手段とを含む、自動化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リキッドバイオプシ診断の分野に関するものである。特に、血流中の循環腫瘍由来の低分子核酸の検出によって促進されるがんの診断、予後およびモニタリングに関するものである。本方法は、母体血液の出生前検査(すなわち、非侵襲的出生前検査、NIPT)のための試料調製にも有用である。
【背景技術】
【0002】
血液から精製される血漿および血清には、自己および非自己(胎盤、腫瘍、移植片)組織に由来する分子が可変量含まれている。例えば、妊娠中、母親の血液には母体DNAおよび胎盤に由来する胎児DNAの両方が含まれている。一方、腫瘍は、循環腫瘍DNA(ctDNA)、循環腫瘍細胞(CTC)、エクソソーム、血小板、マイクロRNAおよびタンパク質マーカーを連続的に血流中に流している。血液試料または他の体液中のこれらの分子シグネチャを検出するプロセスは、リキッドバイオプシと呼ばれる。
【0003】
血液セルフリーDNA(cfDNA)は、ヘルスケア、胎児の状態(性別および異数性)の研究、がんの診断およびモニタリングの補助、心血管および自己免疫疾患の示唆、ならびに身体運動、移植、さらには敗血症を示すための貴重で低侵襲なツールである(非特許文献1)。cfDNAの遺伝的およびエピジェネティックな変化ならびに断片化および単純に量が、cfDNA解析から収集される貴重な情報である(非特許文献1)。
【0004】
しかし、血流中のセルフリー核酸の非自己分率は低く、cfDNA/セルフリーRNA(cfRNA)は通常の血液試料中では長期間安定しておらず、自己DNAが混入するか、または分解される可能性がある。出生前スクリーニングでは、妊娠11~13週において、絨毛栄養膜細胞層のアポトーシスに由来する胎児画分が、母体血漿セルフリーDNAの4%未満を形成する(非特許文献2)。がん患者では、アポトーシスおよびネクローシス細胞の溶解、マクロファージによる腫瘍細胞の消化、または生きた腫瘍細胞によるDNAの直接分泌によってctDNAが放出され(非特許文献3)、全cfDNA画分の0.01から90%の間で変動する(非特許文献4)。このレベルは、腫瘍ステージ、血管新生、負荷、アポトーシス率等の生物学的特徴、およびがん細胞の転移能に依存し、濃度は、患者の血液量に影響する要因に影響を受ける(非特許文献5)。肺がん手術後2日目には早くもctDNA変異頻度(%VAF、変異アレル頻度)の変化が観察された(非特許文献6)。また、変異頻度だけでなく、ctDNAの総量も、治療応答評価のツール、または一次手術後の再発の早期発見のための追跡マーカーとして使用することが可能である。例えば、術後のctDNAの所見から93%の患者における再発が予測され、そのリードタイムの中央値は放射線学的確認の60日前であった(非特許文献7)。また、がん細胞のメチル化状態は正常細胞とは異なり、がん由来のcfDNAの特性に影響を与える可能性がある(非特許文献8)。ctDNAの血流中での半減期は16分~2.5時間であり、ctDNAは腫瘍量を反映する「リアルタイム」なバイオマーカーとなる(非特許文献4、9)。リキッドバイオプシは、組織生検と比較して、完全な不均一性(空間的および時間的の両方で)に関する情報を提供し、サンプリング手順が低侵襲性または完全非侵襲性であり、ならびに治療効果、耐性発現、およびがんの進行を追跡するためにサンプリングを繰り返すことが可能であるという顕著な利点を有する。さらに、リキッドバイオプシは、より安価および迅速な試料調製を形成可能であることが予測されている(非特許文献10)。
【0005】
血液試料からcfDNAを調製するための最初の分析前ステップは、分析の妨げとなり得る赤血球および白血球の分離である。臨床研究では血清が一般的な物質であるが、白血球から放出される野生型DNAの腫瘍以外のバックグラウンドが低いため、cfDNAは通常、血漿から抽出される(非特許文献11)。血漿の分離がリキッドバイオプシ分析を行う際に重要なステップであることはよく知られている(非特許文献12)。血漿試料中に白血球が存在すると、それらは野生型DNAを放出し、cfDNA試料の希釈を引き起こす。現在のcfDNA抽出手順では、血漿の分離は、安定化血液の遠心分離を使用して行われる。血液試料の輸送および保存条件が不適切な場合、細胞が損傷し、DNAおよびDNAヌクレアーゼが放出され、ゲノム野生型DNAの混入およびctDNA含有量の損失または減少をもたらし得る(非特許文献13)。後の血漿単離および処理のために血液試料を輸送するための1つの商業化された解決策は、特定のセルフリーDNA採血管(例えば、Streck Inc.、RocheおよびPreAnalytiXによって提供される)の使用であり、これにより室温(室温;15~25℃)で保存した場合で最大7~14日間試料の安定性を保持できる。しかし、温湿度が管理された輸送は高価であり、凍結により繊細な試料が完全に破壊される可能性がある亜寒帯地域および北極圏では特に重要である。より温暖な地域では、冷却パックを使用することができるが、迅速な輸送がしばしば必要であり、温度の変動が依然としてリスクとなる。さらに、血漿分離のための血液試料の遠心分離は、試料採取の現場でも分析室でも、時間がかかる。血球の破壊により細胞核酸の試料への漏出が引き起されるため、これを避けるため特に注意が必要である。血液の遠心分離は、試料の安定化試薬(EDTAまたはアルデヒド等)および抽出プロトコルによっては、しばしば2つの異なる遠心力で2回行う必要がある。管間の液体移送のたびに、人的エラー、試料の交差汚染、および患者が血液媒介疾患を有する場合、職員に対する潜在的なバイオハザードのリスクが高まる。血漿分離後、試料は下流のバイオマーカー単離のために凍結保存することが可能である。
【0006】
米国臨床腫瘍学会(ASCO)パネルは、KEDTA安定化リキッドバイオプシ管の処理は、ctDNAが通常の白血球DNAで希釈され、DNAヌクレアーゼが放出される可能性がある白血球の溶解を避けるため、採取から6時間以内で、できるだけ便宜的であるべきであると報告している(非特許文献14)。白血球安定化管を使用することで、ctDNAの検出または定量に妥協することなく、処理までの時間について最大48時間、またはいくつかの管ではより長くと、より大きな柔軟性を得ることが可能となる。さらに、ASCOパネルは、採取、取り扱い変数、保存条件、および患者関連の生物学的要因のすべてが、リキッドバイオプシ診断を妨げる要因であると考えられると批判的に述べている。
【0007】
循環cfDNA断片のサイズ分布はしばしば矛盾しており、悪性条件はcfDNA全体のサイズの増加(非特許文献15)および減少(非特許文献16)の両方をもたらすと報告されている。実際、Mouliereら(非特許文献16)は、大腸がん患者のctDNAの最大98%が<400塩基対の断片で構成されていることを示した。非腫瘍由来cfDNAのサイズ分布はより均一であり、<400塩基対の断片がこれらの核酸の約65%を構成していた。したがって、400塩基対未満の短い循環腫瘍由来核酸分子(DNA/RNA)は、がんの診断およびがん治療における薬物応答のモニタリングに有用である可能性がある。
【0008】
CLIAに認証された商業的に利用可能なリキッドバイオプシ検査で観察される低い一致度(非特許文献17)の一部は、試料の取り扱いの問題によるものであり得、これは自動化を用いることで回避できる可能性がある。自動化は現在、試料が順番待ち可能な実験プロセスにおいて、または回収された試料数が、連続的なハイスループット処理が可能なものである場合は、可能である。赤血球および白血球からの血漿の分離は遠心分離によって行われ、これはサンプリングロボットを有する大規模な中心的研究所では自動化が可能であるが、小規模の研究所では正確な手作業および訓練された人員を必要とする。核酸(およびタンパク質)は、例えば磁性粒子または固相フィルタカラムを用いた精製によってさらに単離可能である。このステップは自動または半自動の試料処理装置を用いて行うことが可能だが、かなり高価であり、経済的に使用するためにはバッチ処理が必要である。半自動の血漿分離/核酸抽出の組み合わせは、いくつかの高価なハイスループットシステム(例えばPerkin Elmer社のVanadis Extract)においてバッチモードで利用可能であるが、依然として外部での血液遠心分離が必要である。
【0009】
商業化された完全自動の解決策、特に「試料数が少ない」患者側の状況で使用するためのものはまだ存在しないが、いくつかの実装が文献に記載されている。しかし、これらは依然として手作業による試料の充填および分析物の採取に依存しており、訓練された実験人員を必要とし、試料汚染、損失、取り違えおよび血液媒介疾患の伝播という不要なリスクをもたらす。さらに、これらの方法は限られた量の試料(<5mL血液、<2mL血漿)しか処理できず(例:非特許文献18)、これは希少な変異の検出を考慮すると厳しい制限である。理想的には、リキッドバイオプシの試料処理は完全に自動化され、再現性があり、大量の試料をサポートし、採血後即時の非同期処理開始が可能であるべきである。
【0010】
核酸およびタンパク質の抽出装置には、表面化学のカスタマイズが可能で、流動的または非流動的な磁性処理が簡単であることから、機能化カラムまたは磁性ビーズがしばしば使用される。したがって、磁性ビーズを使用する核酸精製方法は、当技術分野で周知である。自動化装置は、典型的にはプレートまたはチップをベースとし、外部磁石を使用してビーズをプレート内で静止させるか、またはビーズもしくは流体のいずれかをアレイを通じて移動させるかのいずれかである。これらの装置は、複雑な流体移送システムまたは移動可能なロボットのいずれかを必要とし、現在、大量のバッチベースの処理にのみ最適である。
【0011】
先行技術である米国特許第6,802,820号(特許文献1)および第6,802,971号(特許文献2)では、繊維の外面を全血に露出し、繊維壁を通じて血漿を導くことにより、生体内で全血から血漿を分離することが可能な、ユニークで高効率な非対称繊維壁特徴を有する特殊中空繊維膜が開示されている。老廃物、過剰な液体、毒素、および/または他の有害な血漿タンパク質を除去するために血漿を処理した後、処理された血漿は戻されて、患者の血流に再導入される。
【0012】
国際公開第2019/185874号(特許文献3)は、血液および血漿のような血液誘導体から血液由来の細胞外小胞、特に微小小胞ならびにエクソソームおよびエクソマーを枯渇させる、ための中空繊維、特に20nm超の多孔性を有するポリエーテルスルホン中空繊維の使用、ならびに重力濾過を用いてかかる枯渇試料を取得し分析する方法に関するものである。
【0013】
国際公開第2019/136086号(特許文献4)では、生体液から細胞およびその一部、細菌、ウイルス等を分離するための中空繊維膜を有する、単純な接線流濾過ユニットが開示されている。このユニットは、濾過ユニットと流体連通している回収チャンバを含み、真空により装置に生体液が引き込まれ、生体液に含まれる選択された生体物質が生体液の残部から分離される。
【0014】
米国特許出願公開第20040050699号明細書(特許文献5)には、固体基板上の核酸の電気泳動分離を行う際に使用するカセットが開示されている。このカセットは、バッファを流すためのリザーバと、電流を受けるための電極と、基板支持体とを含む。カセットは、外部の流体および電源と接続できるように設計される。電気泳動分離を行う際に使用する装置も開示されている。この装置は、カセットを受けるためのドッキングステーションを有するモジュール構造である。
【0015】
米国特許第5863801号明細書(特許文献6)には、核酸に親和性のある常磁性粒子を用いて、複数の生体試料から核酸を並行操作で自動抽出するためのカセットが開示されている。このカセットは、試料充填用の中空針と、バルブ、ビーズ、洗浄液および核酸抽出液用のリザーバと、分離可能な試料移送ストリップとを含む。カセットは、カセットのためのドッキングスロットを提供する関連装置で操作されるように設計される。
【0016】
欧州特許第2315849号明細書(特許文献7)では、患者の血漿および糞便試料中の循環腫瘍DNA(ctDNA)を定量化する手法が開示されている。この方法では、血漿を分離するために、血液試料を遠心分離に付す。ctDNAの測定が、がんを有する対象、特に手術または化学療法を受けている対象における腫瘍の動態を確実にモニタするために使用可能であることが開示されている。
【0017】
しかしながら、当技術分野において、がんを有する対象の疾患を評価し治療するための個別化された手法を容易にする新規の方法に対するニーズは依然として高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第6802820号明細書
【特許文献2】米国特許第6802971号明細書
【特許文献3】国際公開第2019185874号
【特許文献4】国際公開2019136086号
【特許文献5】米国特許出願公開第20040050699号明細書
【特許文献6】米国特許第5863801号明細書
【特許文献7】欧州特許第2315849号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Meddeb, R., Pisareva, E., Thierry A.R. Guidelines for the Preanalytical Conditions for Analyzing Circulating Cell-Free DNA. Clinical Chemistry (2019) 65 (5) 623-633;
【非特許文献2】Ashoor, G. Syngelaki, A. Poon, L. C. Y. Rezende, J. C., Nicolaides K. H. Fetal fraction in maternal plasma cell-free DNA at 11-13 weeks' gestation: relation to maternal and fetal characteristics. Ultrasound Obstet Gynecol. (2013) 41(1): 26-32.
【非特許文献3】Diaz LA Jr, Bardelli A. Liquid biopsies: genotyping circulating tumor DNA. J Clin Oncol. (2014) 32:579-86. doi: 10.1200/JCO.2012.45.2011
【非特許文献4】Diehl F, Schmidt K, Choti MA, Romans K, Goodman S, Li M, et al. Circulating mutant DNA to assess tumor dynamics. Nat Med. (2008) 14:985-90. doi: 10.1038/nm.1789
【非特許文献5】Kidess E, Jeffrey SS. Circulating tumor cells versus tumor-derived cell-free DNA: rivals or partners in cancer care in the era of single-cell analysis? Genom Med. (2013) 5:70. doi: 10.1186/gm474
【非特許文献6】Mouliere, Florent & Piskorz, Anna & Chandrananda, Dineika & Moore, Elizabeth & Morris, James & Smith, Christopher & Goranova, Teodora & Heider, Katrin & Mair, Richard & Supernat, Anna & Gounaris, Ioannis & Ros, Susana & Wan, Jonathan & Jimenez-Linan, Mercedes & Gale, Davina & Brindle, Kevin & Parkinson, Christine & Brenton, James & Rosenfeld, Nitzan. (2017). Selecting Short DNA Fragments In Plasma Improves Detection Of Circulating Tumour DNA. 10.1101/134437.
【非特許文献7】Abbosh C, Birkbak NJ, Wilson GA, et al. Phylogenetic ctDNA analysis depicts early-stage lung cancer evolution. Nature (2017) 545:446-51.
【非特許文献8】Sina, A.A.I., Carrascosa, L.G., Liang, Z. et al. Epigenetically reprogrammed methylation landscape drives the DNA self-assembly and serves as a universal cancer biomarker. Nat Commun 9, 4915 (2018) doi:10.1038/s41467-018-07214-w
【非特許文献9】Lo YM, Zhang J, Leung TN, Lau TK, Chang AM, Hjelm NM. Rapid clearance of fetal DNA from maternal plasma. Am J Hum Genet. (1999) 64:218-24. doi: 10.1086/30§05
【非特許文献10】Saarenheimo, J., Eigeliene, N., Andersen, H., Tiirola, M., Jekunen, A. The value of liquid biopsies for guiding therapy decisions in non-small cell lung cancer. Frontiers in Oncology (2019) 9:129.
【非特許文献11】Molina-Vila MA, de-Las-Casas CM, Bertran-Alamillo J, Jordana-Ariza N, Gonzalez-Cao M, Rosell R. cfDNA analysis from blood in melanoma. Ann Transl Med. (2015) 3:309.
【非特許文献12】10. R. M. Trigg, L. J. Martinson, S. Parpart-Li, J. A. Shaw. Factors that influence quality and yield of circulating-free DNA: A systematic review of the methodology literature. Heliyon 4 (2018) e00699. doi: 10.1016/j.heliyon.2018. e00699
【非特許文献13】Sisson, B. A., Uvalic, J., Kelly, K., Selvam, P., Hesse, A. N., Ananda, G., … Reddi, H. V. Technical and Regulatory Considerations for Taking Liquid Biopsy to the Clinic: Validation of the JAX PlasmaMonitorTM Assay. Biomarker Insights (2019) https://doi.org/10.1177/1177271919826545
【非特許文献14】Merker JD, Oxnard GR, Compton C, et al. Circulating Tumor DNA Analysis in Patients With Cancer: American Society of Clinical Oncology and College of American Pathologists Joint Review. J Clin Oncol (2018) 36(16):1631-41.
【非特許文献15】Wang, B.G., H.Y. Huang, Y.C. Chen, R.E. Bristow, K. Kassauei, C.C. Cheng, R. Roden, L.J. Sokoll, D.W. Chan, and I. Shih. Increased plasma DNA integrity in cancer patients. Cancer Res. (2003) 63:3966-3968.
【非特許文献16】Mouliere, F., B. Robert, E. Arnau Peyrotte, M. Del Rio, M. Ychou, F. Molina, C. Gongora, and A.R. Thierry High fragmentation characterizes tumour-derived circulating DNA. PLoS One. (2011) 6:e23418.
【非特許文献17】Torga G, Pienta KJ. Patient-paired sample congruence between 2 commercial liquid biopsy tests. JAMA Oncol. (2018) 4:868-870.
【非特許文献18】Hu F., Li J., Peng N., Li Z., Zhang Z., Zhao S., Duan M., Tian H., Lia L. and Zhanga P. Rapid isolation of cfDNA from large-volume whole blood on a centrifugal microfluidic chip based on immiscible phase filtration. Analyst, (2019) 144, 4162-4174 doi:10.1039/C9AN00493A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明によって提供される解決策は、使い捨てカートリッジに基づいており、そこでは、中空繊維膜を用いた圧力補助血漿濾過のための手段およびその後のバイオマーカー抽出のための手段の組み合わせによって、完全に自動化された血液バイオマーカーの単離が可能になる。本発明では、カートリッジに含まれ、細胞分離前に試料に加えられる細胞固定試薬により、細胞ゲノムDNAの血漿への漏出を効果的に最小化する。さらに、分離された細胞画分に対して行われる洗浄ステップにより、cfDNAの収率が最大化される。精製された試料から単離されたセルフリーバイオマーカー(cfDNA、cfRNA、およびセルフリータンパク質)がさらに分析可能であるか、または試料を診断サービスプロバイダに通常郵便で安全に送ることが可能である。バイオマーカーの精製および濃縮においては、磁性ビーズの使用等の結合剤に基づく核酸抽出が好適な方法である。ゲル電気泳動およびフィルタ抽出が代替の実施形態となる。この方法およびカートリッジは、完全に自動化されており、訓練された実験スタッフの必要をなくし、「試料数が少ない」状況において個々の血液試料を安全に処理することを可能にする。その結果、この方法は、即時の試料処理を可能にし、凍結および高温を含むすべての輸送条件に耐える、封入され安定した濃縮核酸試料を提供する。さらに、本方法の再現性は手動サンプリングよりも優れており、一定の高い収率が達成される。
【0021】
したがって、一態様において、本発明は血液試料から核酸断片を抽出するための方法であって;
a)個人から採取した血液試料を提供するステップと;
b)好ましくは、固定試薬で試料中の血球を安定化させるステップと;
c)前記血液試料から血漿を分離するために、中空繊維フィルタを用いることにより前記血液試料を濾過するステップと;
d)好ましくは、ステップc)から得られた血球を含む画分を洗浄液で洗浄し、ウォッシュアウトを回収するステップと;
e)血漿試料中に存在する核酸断片を精製するために、ステップb)で得られた血漿試料、および好ましくはステップd)で回収されたウォッシュアウトを、核酸に特異的な結合物質と接触させるか、または代わりに前記血漿試料、および好ましくはステップd)で回収されたウォッシュアウトを分離媒体中で電気泳動に付すステップであって、前記分離媒体は、核酸断片が媒体中で移動可能かつサイズにより前記媒体中で分離可能であるように調製されている、ステップと;
f)前記結合物質に結合した、または前記分離媒体中を移動した核酸断片を回収するステップと;
g)ステップf)で回収された核酸断片を保存剤または安定化剤と混合するステップとを含み;
ステップb)~g)は、自動化システムにおいて、血液試料から血漿を濾過するための第1区画と、ステップc)で得られた血漿試料を核酸に特異的な結合物質と接触させるための第2区画とを含むカートリッジ上で行われるか、または代わりに前記第2区画は電気泳動を行うための手段を含む、方法を提供する。好ましい実施形態において、カートリッジは、血液試料に由来する小胞、タンパク質または他の生体分子もしくは細片からcfDNAを分離または精製するために、血漿、洗浄した細胞またはステップd)において回収したウォッシュアウトに酵素等の試薬を加える手段を含む、方法を提供する。
【0022】
特定の態様において、本発明は、血液試料から血漿を濾過するための第1区画と、血漿試料を核酸に特異的な結合物質と接触させるための第2区画とを含むカートリッジであって、前記第1区画は中空繊維フィルタを含み、第2区画は核酸精製のためのチャンバを含み、前記カートリッジは、該カートリッジ内に封入された核酸に特異的な結合物質を含み、前記結合物質は好ましくは磁性ビーズを含む、カートリッジを提供する。
【0023】
特定の態様において、本発明は、上記で定義されたカートリッジを受けるように適合されたドッキング部位を有する装置を含む、血液試料から核酸断片を抽出するための自動化システムであって、前記装置は、前記カートリッジにおいて血漿濾過プロセスを操作するように適合された手段と、核酸に特異的な結合物質を用いて前記カートリッジにおいて核酸精製を操作するように適合された手段とを含む、自動化システムを提供する。
【0024】
特定の態様において、本発明は、血液試料から血漿を濾過するための第1区画とゲル電気泳動を行うための第2区画とを含むカートリッジであって、前記第1区画は中空繊維膜を含み、前記第2区画は電気泳動用ゲルを含む、カートリッジを提供する。
【0025】
特定の態様において、本発明は、電気泳動用ゲルを含む上記に定義されたカートリッジを受けるように適合されたドッキング部位を有する装置を含む、血液試料から核酸断片を抽出するための自動化システムであって、前記装置は、前記カートリッジにおいて血漿濾過プロセスを操作するように適合された手段と、前記カートリッジにおいてゲル電気泳動を操作するように適合された手段とを含む、自動化システムを提供する。
【0026】
特定の態様において、本発明は血液試料からタンパク質バイオマーカーを抽出するための方法であって;
a)個人から採取した血液試料を提供するステップと;
b)好ましくは、固定試薬で試料中の血球を安定化させるステップと;
c)前記血液試料から血漿を分離するために、中空繊維フィルタを用いることにより前記血液試料を濾過するステップと;
d)好ましくは、分離された細胞画分を洗浄試薬で洗浄し、ウォッシュアウトを回収するステップと;
e)血漿試料中に存在するバイオマーカーを常に精製するために、ステップc)で得られた血漿試料、および好ましくはステップd)で回収されたウォッシュアウトを、タンパク質バイオマーカーに特異的な結合物質と接触させるステップと;
f)前記結合物質に結合したタンパク質を回収するステップと;
g)ステップf)で回収されたタンパク質を保存剤または安定化剤と混合するステップとを含み;
ステップb)~g)は、自動化システムにおいて、血液試料から血漿を濾過するための第1区画と、ステップc)で得られた血漿試料を前記タンパク質バイオマーカーに特異的な結合物質と接触させるための第2区画とを含むカートリッジ上で行われる、方法を提供する。
【0027】
特定の態様において、本発明は、血液試料から血漿を濾過するための第1区画と、血漿試料をタンパク質バイオマーカーに特異的な結合物質と接触させるための第2区画とを含むカートリッジであって、前記第1区画は中空繊維フィルタを含み、前記第2区画はタンパク質精製のためのチャンバを含み、前記カートリッジは、該カートリッジ内に封入された、前記タンパク質バイオマーカーに特異的な結合物質を含み、前記結合物質は好ましくは磁性ビーズを含む、カートリッジを提供する。
【0028】
特定の態様において、本発明は、タンパク質バイオマーカーに特異的な結合物質を含む上記に定義されたカートリッジを受けるように適合されたドッキング部位を有する装置を含む、血液試料からタンパク質バイオマーカーを抽出するための自動化システムであって、前記装置は、前記カートリッジにおいて血漿濾過プロセスを操作するように適合された手段と、前記タンパク質バイオマーカーに特異的な結合物質を用いて前記カートリッジにおいてタンパク質精製を操作するように適合された手段とを含む、システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、血液試料からの循環低分子核酸抽出のために本発明のカートリッジを使用し、操作するための好ましいプロセスステップを示す図である。
図2図2は、血漿抽出をゲル電気泳動と組み合わせた好ましいカートリッジ構造を示す分解図である。
図3図3は、血漿抽出を磁性ビーズ抽出と組み合わせた好ましいカートリッジ構造を示す分解図である。
図4図4は、ゲル電気泳動を用いるカートリッジ構造の流体工学を示すフロー図である。
図5図5は、蠕動ポンプシステムと組み合わせた磁性ビーズ抽出を用いるカートリッジ構造の流体工学を示すフロー図である。
図6図6は、血漿分離のためのガス圧ポンピングと組み合わせた磁性ビーズ抽出を用いるカートリッジ構造の流体工学を示すフロー図である。
図7図7は、ガス圧ポンピングシステムと組み合わせた磁性ビーズ抽出を用いるカートリッジ構造の流体工学を示すフロー図である。
図8図8は、カートリッジ構造におけるゲル電気泳動装置の組み立てを示す模式図である。
図9図9は、図5~7における受動的混合構成詳細24の代替提示a~dを示す模式図である。
図10図10は、図5~7における流体磁性ビーズ捕捉構成詳細87の代替上面図提示a~fを示す模式図である。
図11図11は、図5~7における流体磁性ビーズ捕捉構成詳細87の代替側面図提示g~kを示す模式図である。
図12図12は、図5~7における機械的ブレード攪拌機容器詳細20の代替構造を示す分解図である。
図13図13は、図5~7における磁性撹拌機容器詳細20の代替構造を示す分解図である。
図14図14は、図2~3における着脱式試料保存容器詳細87の上面図提示を示す模式図である。
図15図15は、試料核酸濃度を測定するための蛍光リーダー構成を示す模式図である。
図16図16は、実施例2に記載の濾過および2段階遠心分離を用いて抽出された血漿から調製された代表的なDNA試料の電気泳動図である。
図17図17は、実施例2に記載の1段階遠心分離を用いて抽出された血漿から調製されたDNA試料の電気泳動図である。
図18図18は、実施例5に記載の磁性ビーズ蛍光測定の蛍光顕微鏡写真である。
図19図19は、実施例5に記載の磁性ビーズ上のDNA濃度の関数として測定された蛍光強度のグラフである。
図20図20は、無作為に選択された4つの試料についての収率を示す図である。細胞洗浄ステップを利用した場合の平均cfDNA収率は、このステップなしで処理された試料に対して155%であることがわかり、試料回収率が改善されたことが実証された。
図21図21は、血漿抽出を磁性ビーズ抽出と組み合わせた別の好ましいカートリッジ設計を示す構造図である。
図22図22は、図21における設計の試料管インタフェースおよびチャネル配置を示す詳細な構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明が解決する課題は、血流からセルフリー核酸またはタンパク質バイオマーカーを単離および保存する効率的かつ簡便な方法を提供することである。本発明は、血漿分離、ならびに好ましくは細胞固定、および細胞洗浄/溶出を、電気泳動分離または固相結合物質の非機械的流体操作による核酸抽出と組み合わせることによって、血液試料から循環核酸/タンパク質バイオマーカーを抽出するための小規模自動化カートリッジで実行可能なプロセスを設計することが可能であることを初めて開示するものである。本方法は、便利な試料採取、自動定量、輸送、保存、ならびに大量の試料からの高収率および単離された核酸の良好な安定性を提供することにより、先行技術における欠点を緩和することを意図する。
【0031】
特に、本発明は;
a)個人から採取した血液試料を提供するステップと;
b)好ましくは、固定試薬で試料中の血球を安定化させるステップと;
c)前記血液試料から血漿を分離するために、中空繊維フィルタを用いることにより前記血液試料を濾過するステップと;
d)好ましくは、ステップc)から得られた血球を含む画分を洗浄液で洗浄し、ウォッシュアウトを回収するステップと;
e)血漿試料中に存在する核酸断片を精製するために、ステップb)で得られた血漿試料、および好ましくはステップd)で回収されたウォッシュアウトを、核酸に特異的な結合物質と接触させるか、または代わりに前記血漿試料、および好ましくはステップd)で回収されたウォッシュアウトを分離媒体中で電気泳動に付すステップであって、前記分離媒体は、核酸断片が媒体中で移動可能かつサイズにより前記媒体中で分離可能であるように調製されている、ステップと;
f)前記結合物質に結合した、または前記分離媒体中を移動した核酸断片を回収するステップと;
g)ステップf)で回収された核酸断片を保存剤または安定化剤と混合するステップとを含み;
ステップb)~g)は、自動化システムにおいて、血液試料から血漿を濾過するための第1区画と、ステップc)で得られた血漿試料を核酸に特異的な結合物質と接触させるための第2区画とを含むカートリッジ上で行われるか、または代わりに前記第2区画は電気泳動を行うための手段を含む、方法を提供する。
【0032】
好ましい実施形態において、カートリッジは、血液試料に由来する小胞、タンパク質または他の生体分子もしくは細片からcfDNAを分離または精製するために、血漿、洗浄した細胞またはステップd)において回収したウォッシュアウトに酵素等の試薬を加える手段を含む。血漿調製物中のセルフリーDNAは、そのほとんどがヒストンタンパク質と結合しており、細胞外小胞に含まれる。DNAの効果的な回収を促進するためには、核酸を放出させるために、適切なバッファ(溶解バッファ)条件下で、タンパク質分解酵素、例えばプロテイナーゼK、または他の無差別性の高いプロテイナーゼでの前処理が必要である。血漿から完全なタンパク質マーカーを回収および精製する用途の場合、適切な界面活性剤および他のカオトロピック剤の形でマイルドな変性条件を適用することが適切である。
【0033】
好ましくは、上記方法のステップd)において回収される核酸断片の長さは、400塩基対未満であり、より好ましくは100~200塩基対である。これは、瀕死細胞からのアポトーシスおよびネクローシスを含む、循環腫瘍DNA(ctDNA)放出に関与することが開示されている生物学的プロセスに合致するものである。断片化されたセルフリーDNAのサイズは、主に約166塩基対の長さであることが示されている。
【0034】
好ましい実施形態において、上記方法のステップa)において得られた血液試料は、試料を濾過ステップb)に付す前に抗凝固剤と混合される。好ましい抗凝固剤は、ヘパリンおよびその誘導体、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)ならびにワルファリン等のクマリン誘導体からなる群から選択することが可能である。
【0035】
好ましい実施形態において、血漿からの細胞の分離を増進し、細胞核酸の血漿への漏出を防ぐために、ステップb)において血液試料に細胞固定試薬が加えられる。「細胞固定」とは、本明細書では、細胞および/または細胞小器官(例えば核)等の細胞内構成要素の構造を維持する技術を指す。固定により、例えば、細胞内構成要素を架橋することによって、その化学的または生物学的構造が修飾される。固定によって、細胞全体および細胞小器官が溶解されにくくなり得る。本明細書において特に興味深いのは、固定によって、細胞核酸も周囲の媒体に放出されにくくなり得ることである。例えば、固定は、白血球からの核DNAが、全血の遠心分離中に血漿画分に放出されるのを防ぐことができる。「細胞固定試薬」または「固定剤」は、本明細書では、細胞核酸を固定し、それによって細胞が斯かる核酸を周囲の媒体へ放出しにくくなる化学的または生物学的試薬等の薬剤を指す。細胞固定試薬は、細胞タンパク質分解酵素およびヌクレアーゼを無効化し得る。固定剤の例としては、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド)、アルコール類、および酸化剤が挙げられる。好ましい細胞固定試薬には、アルデヒド類およびその誘導体(例えばホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド)、アジン類(例えば1,3,5-トリアクリロイル-ヘキサヒドロ-s-トリアジン)またはヘミアセタール類(例えば2,3-ジメトキシトラヒドロフラン)からなる群から選択される架橋固定剤が含まれる。
【0036】
好ましくは、ステップc)で利用される中空繊維膜は、単一の物質相で構成され、その物質は、酢酸セルロース、ポリプロピレンまたはPVDF等の核酸またはタンパク質結合能の低い鎖状の高分子であり、高分子を紡ぐことによって繊維を形成することが可能である。中空繊維膜の製造については、例えば、米国特許第4234431号明細書に開示されている。別の態様では、中空繊維は、混合セルロースエステル、ポリスルホン、プラスチックポリマーまたはそれらの組合せを含んでもよい。別の態様において、中空繊維は、疎水性物質、親水性物質、低核酸結合性物質、または低タンパク質結合性物質のうちの少なくとも1つを含んでもよい。それらは、意図された用途に応じて、約0.5ミクロン~約5ミクロンの範囲の孔径を含んでもよい。それらは、50~500の範囲の多様な密度を有してもよい。
【0037】
別の好ましい実施形態において、上記方法のステップe)における前記分離媒体は、核酸断片のサイズ選択媒体である。媒体の濃度により、DNAの移動に影響を与える媒体の孔径は決定される。媒体の濃度を上げると、移動速度が低下し、より小さなDNA分子の分離が改善される。上記方法のステップe)における任意の電気泳動は、好ましくは、ランニングバッファを充填した容器、容器内に構成される電気泳動用ゲルマトリクス部分、および分離媒体内に構成されるローディングウェル内で行われる。分離媒体は、容器を横切って横方向に延びていてもよい。分離媒体は、アガロースであることが可能であり、またはデンプン、寒天、アガロース、およびポリアクリルアミドのうちの少なくとも1つであってもよい。ランニングバッファは、pH7~pH9のpHを有してもよく、キレート剤としてEDTAを含んでもよい。容器はまた、少なくとも1つの正電極および少なくとも1つの負電極を含んでいてもよい。DNAの移動速度は、印加された電圧に比例し、すなわち、電圧が高いほど、DNAは速く移動する。電気泳動核酸試料調製のための装置およびシステムは、例えば、国際公開第2016061416号に開示されている。上記の方法の好ましい実施形態のプロセスステップは、図1に概略的に示されている。
【0038】
本発明はさらに、カートリッジに電力、圧力(圧縮空気もしくはガス等)および/または真空を提供する外部装置と組み合わせて上記方法を行うように適合された手段を含むカートリッジを対象とする。カートリッジは、好ましくは、2つのコンパートメントまたは層を含み、第1は、血漿分離および好ましくは細胞固定および細胞のすすぎ/洗浄のための、流体工学および液体試薬を含む。第2層は、核酸精製用チャンバまたは電気泳動用ゲル、ランニングバッファ溶液および関連電極を含む。カートリッジはさらに、単離された核酸試料を保持するための手段を含む。ケーシングは、カートリッジを上部、下部および側面から覆い、バルブ、電源、ポンプおよび血液試料管のための開口部を含む。カートリッジまたはケーシングのスケールは、体積が好ましくは150~1500cmまたは150~1000cm、より好ましくは150~500cm、最も好ましくは150~250cmであるようなスケールとされる。スケールの例は、幅10cm、深さ8cm、および高さ2.5cmのケーシング(体積は200cm)である。
【0039】
カートリッジの好ましい構造は、図2、3、21および22に概略的に示されている。ここで、ソケット62または503は、採血管10を受け入れることが可能である。流体区画170および171は、血漿分離のための、およびいくつかの実施形態においては磁性ビーズ核酸抽出のための、構成要素を含む。図2において、31は、電気泳動用ゲルを指す。抽出プロセスの後、核酸試料は、カートリッジケーシング(例えば61または65)に接続された着脱式の部分60またはマイクロチューブ502で容器14に移される。
【0040】
カートリッジの流体工学には、好ましくは、工場充填の密閉された試薬タンクまたは容器、分析計およびプローブ、中空繊維フィルタ/膜、ミキサー、バルブ、ポンプ、ならびに血液試料管を受けるように適合された部位が含まれる。性能上、カートリッジは外部装置から供給される電源および圧力/真空を必要とする。流体工学の好ましい設計を図4~7に示し、以下に説明する。
【0041】
図4~7に示す全ての設計に共通して、コネクタ1は大気圧を指し、コネクタ2は装置によって提供される調整可能な真空圧を指し、51は圧縮ガスまたは濾過空気の形態での調整可能な正圧を指す。さらに、いくつかの実施形態においては、現在模式図において別個の構成要素によって表されている流体バルブが、別個の構成要素として実装されてもよいが、他の実施形態においては、同じタイプのいくつかのバルブが、単一のマルチポジションおよび/またはマルチパスバルブに組み合わされてもよい。一例として、図7の模式図では、次のグループを3つのマルチポジションバルブに組み合わせることが可能である:a)7、22、33、34、35、36、46、49、71,80、81、82、130、131、132、b)46、49、131、132、c)49、132。この手法により、カートリッジおよび装置のフットプリントおよび複雑性をさらに低減することが可能である。
【0042】
別の構成では(図21および22を参照)、すべての空気圧バルブ(22、46、49、131、132)を支持外部装置に組み込むことが可能であり、バルブ130、85および50は1つのマルチポジションバルブに組み合わせることが可能である。試薬空気バルブ(7、33、34、35、36、71、80、81、82、83)は、試薬タンク(15、37~43)の密閉機構に組み合わせた単回使用膜穿孔バルブとして実装することができる。インデックス付きバルブローターヘッド(506)を使用することにより、マルチポジションバルブを操作するための信頼性の高いインタフェースを、カートリッジと装置の間に形成することが可能である。
【0043】
カートリッジへの血液試料管の挿入後、流体工学は以下のように続く(図4参照):外部装置は、カートリッジの置換用空気バルブ73および3を開く。試薬容器11は、細胞固定用の試薬R2を含む。容器19内にはバルブ8を通じて真空があり、それによって血液が管10から流れ、血液試料容器19に移動する間に試薬R2がミキサー16内で血液に加えられる。試料の全容量が19に移送されると(血液管10とミキサー16の間のダクトからの流れは光学的にモニタ可能である)、バルブ72を閉じ、バルブ8を通じて容器19への通常の大気圧を戻す。続いて、中空繊維フィルタ21を用いて血漿を分離する。フィルタ21を通じた容器19の試料の循環は、蠕動ポンプ18によって促進される。バルブ22が閉じられ、23がバルブ9によって真空状態にされた血漿容器20に対して開かれる。したがって、再循環させると、放出された血漿は連続的に容器20に流れる。初めに、最良の濾過条件は、10~15本の平行繊維配列を通して80~180mL/h、繊維の外部真空が20~40mbarであることが発見された。再循環血漿の量が3~4試料量に相当するか、または濾過された細胞が十分に濃縮されている場合(細胞密度は光学フィルタによりフィルタの入力から、血漿品質は出力チャネルの外側から測定される)、収率を増やし、細胞により強く結合した小胞およびバイオマーカーを放出させるために細胞をすすいでもよい。このために、容器70内の試薬R1(2~3mL)が使用される。試薬R1は、バルブ71および72を開くことにより、濾過を続けながら加えることが可能である。
【0044】
濾過およびすすぎの後、ポンプ18はオフにされ、バルブ22は開かれ、バルブ9の真空入口の圧力は100~150mbarのレベルまで上昇し、それによって流れる空気が分離された血漿を容器20の中に引き込む。フィルタ21とバルブ23の間のチャネル中に位置する光学センサーにより、空気が絶えずフィルタを流れることが確認されると、バルブ9から血漿容器20内の真空は解放され、バルブ22が閉じられる。次のステップでは、血漿を前処理試薬に必要な温度(例えば、37~55℃、カートリッジは外部装置の温度制御部に対するインタフェースを含む)まで容器20内で加熱する。次に、容器12内の試薬R3(例えばプロテイナーゼK)を空気バルブ4およびバルブ27を開くことによって加え、その後、ポンプ26によって試薬を血漿中に送ることが可能である。試薬が移送された時点で、バルブ27は、血漿および試薬の混合物をバルブ25およびミキサー24を経由してポンプ26により閉ループで容器へと再循環させることが可能な位置にセットされる。再循環により、試薬および血漿の効果的な相互作用が保証される。前処理が完了すると、容器13内の試薬R4(例えば、バッファ、SDS、マーカーおよび他の賦形剤)を、バルブ27を経由してポンプにより加えることができる。第2試薬処理(任意に異なる温度で)が完了した時点で、バルブ25はフィルタ28に向けられ、それを通って前処理された血漿がポンプで送られ、カートリッジの下部区画上の電気泳動用ゲル充填ウェル29に充填される。
【0045】
電気泳動が完了した際、精製され濃縮核酸試料は、回収ウェルにおいてランニングバッファ中にある。そこから、バルブ6によって容器14を減圧状態にすることにより、回収することが可能である(真空度50~200mbar)。しかし、バルブ6が開かれる前に、空気バルブ7も開かれ、それによって試料は混合チャネル32内で安定化試薬と混ざって核酸試料の室温での保存をサポートする(例えば、緩衝化EDTA、エタノール、プロパノール、PEG等)。実行の終了時に、核酸試料を含む容器CD14を、カートリッジから取り外すことが可能である。
【0046】
核酸抽出に磁性ビーズ技術を使用する別の実施形態において、プロセスは以下のステップに従って行われる:カートリッジへの血液試料管の挿入後、流体工学は以下のように続く(図5参照):外部装置により調節された真空圧を接続部2に供給し、カートリッジの置換空気バルブ73および3を開く。試薬容器11は、細胞固定用の試薬R2を含む。容器19内にはバルブ8によって真空が存在し、バルブ72は管10に対して開かれており、それによって血液が管10から流れ、血液が試料容器19に移動する間に試薬R2がミキサー16内で血流に加えられる。試料の全容量が容器19に移送された時点で(血液管10とミキサー16の間のダクトからの流れは光学的にモニタ可能である)、バルブ72を閉じ、バルブ8によって容器19へ通常の大気圧を戻す。これに続いて、中空繊維膜フィルタ21を用いて血漿を分離する。フィルタ21を通じた容器19内の試料の循環は、蠕動ポンプ18によって促進される。バルブ22は閉じられ、バルブ23が、バルブ9によって真空状態にされた血漿容器20に開かれる。したがって、再循環させると、放出された血漿が連続的に容器20に流入する。はじめに、最良の濾過条件は、10~15本の平行繊維の配列を通して80~180mL/h、繊維の外部真空が20~40mbarであることが発見された。再循環血漿の量が3~4試料容積に相当するか、または濾過された細胞が十分に濃縮されている場合(細胞密度は光学フィルタによりフィルタの入力から、血漿品質は出力チャンネルの外側から測定される)、収率を増やし、細胞により強く結合した小胞およびバイオマーカーを放出させるために細胞をすすいでもよい。このために、容器70内の試薬R1(2~3mL)が使用される。試薬R1は、バルブ71および72を開くことにより、濾過を続けながら加えることが可能である。
【0047】
濾過およびすすぎの後、ポンプ18はオフにされ、バルブ22は開かれ、バルブ9の真空入口の圧力は100~150mbarのレベルまで上昇し、それによって流れる空気が分離された血漿を容器20の中に引き込む。フィルタ21とバルブ23との間のチャネルに位置する光学センサーにより、空気が常にフィルタを通じて流れていることが確認されると、バルブ9から血漿容器20内の真空が解放され、バルブ22が閉じられる。次のステップでは、血漿を前処理試薬に必要な温度(例えば、37~55℃、カートリッジは外部装置の温度制御部に対するインタフェースを含む)まで容器20内で加熱する。次に、容器37内の試薬R6(例えばプロテイナーゼK)を空気置換バルブ33および試薬バルブ44を開くことによって加え、その後、ポンプ26によって試薬を血漿中に送ることが可能である。試薬容器38、39および40からの追加の試薬R7、R8およびR9(例えば溶解バッファ、結合バッファおよび磁性ビーズ)は、置換空気バルブ9を開いたまま、各試薬についてバルブ34、35および36をそれぞれ開き、バルブ44を適切な流れのために調整することによって、ポンプ26の助けを得て順次加えられる。試薬が移送された時点で、バルブ44および45は、血漿および試薬の混合物をバルブ44および45を経由しミキサー24を通ってポンプ26により閉ループで容器へと循環させることが可能な位置にセットされる。再循環により、試薬および血漿の効果的な相互作用が保証される。前処理および核酸結合ステップが完了すると、反応容器20の内容物は、まずバルブ82および9を周囲圧力まで開き、次にバルブ45を調整することにより、ポンプ26で廃棄物容器43に移送される。核酸分子は、永久磁石または電磁石との磁性相互作用を通じて容器20または隣接チャンバ87に保持される静止磁性ビーズ相に結合している。
【0048】
廃棄物除去後、ミキサー24へ流れを導くようにバルブ45を変更し、空気置換バルブ80および9を開くことによって容器41から洗浄試薬R10を導入し、ポンプ26で試薬バルブ44を通じて容器20内に移送する。洗浄試薬の導入後、バルブ44を戻して容器20とミキサー24の間の循環による磁性ビーズの洗浄を可能にし、磁場を除去してビーズを洗浄試薬に再懸濁させる。洗浄後、ビーズは再びチャンバ87または容器20に磁場で保持され、使用済みの洗浄液は、空気置換バルブ9および82を開いた後、ポンプ26でバルブ45を通じて廃棄物容器43に移送される。この試薬R10を用いた洗浄ステップは、同様に1~3回繰り返すことが可能である。次に、バルブ45を廃棄物に対して閉じ、置換空気バルブ81および9を開き、バルブ44を調整して試薬R11を容器42から容器20に流すことにより、第2洗浄試薬R11を容器20に導入する。洗浄試薬R11の導入後、バルブ44を容器20に戻して容器20とミキサー24の間の循環による洗浄を可能にし、磁場を除去してビーズを洗浄試薬に再懸濁させる。洗浄の完了後、ビーズ含有溶液のシステム内循環中に磁場をかけることにより、ビーズをチャンバ87または容器20内に保持する。次に、洗浄試薬は、まずバルブ45を開き、次に置換空気バルブ9および82を開くことによって、ポンプ26で廃棄物容器43に移送される。第2洗浄試薬R11を用いた洗浄は、精製プロトコルの必要に応じて、同様の方法で1~3回繰り返すことが可能である。
【0049】
R10およびR11の両試薬による洗浄が終了した後、磁場によってチャンバ87または容器20内に保持されている磁性ビーズを核酸安定化試薬R12に懸濁させることにより回復させる。この溶液は、まず置換空気置換バルブ7および9を開き、次に試薬バルブ44を開いた後、ポンプ26によって容器15から容器20に移送される。R12が容器20に移送されると、バルブ44を調整してミキサー24と容器20の間を循環させ、磁場を除去して磁性ビーズを溶液に完全に再懸濁させる。次に、置換空気バルブ83および50が開かれて、安定化試薬R12に懸濁したビーズが容器20を出て最終試薬容器14内へ流れることを可能にする。実行の終了時に、保存試薬R12中に核酸試料を含む容器14は、カートリッジの残りの部分から分離することが可能である。
【0050】
核酸抽出に磁性ビーズを使用する別の実施形態において、血漿分離ステップにおけるポンプは、ガス圧送システムに置き換えられる。ここで、抽出プロセスは以下のステップに従って行われる:カートリッジへの血液試料管の挿入後、流体システムは以下のように動作する(図6参照):外部装置により、調節された真空圧を接続部2に、正ガス圧を接続部51に供給し、カートリッジの置換空気バルブ130を開く。試薬容器11は、細胞固定用の試薬R2を含む。容器47内にはバルブ46によって真空が存在し、バルブ150は管10に対して開かれており、それによって血液が管10から流れ、血液が試料容器47に移動する間に試薬R2がミキサー16内で流れに混合される。試料の全容量が容器47に移送された時点で(血液管10とミキサー16の間のダクトからの流れは光学的にモニタ可能である)、バルブ150を閉じ、バルブ46を通じて容器47へ通常の大気圧を戻す。これに続いて、中空繊維膜フィルタ21を用いて血漿を分離する。ここで、バルブ22は閉じられ、23が、バルブ50によって真空状態にされた血漿容器20に対して開かれる。したがって、再循環させると、放出された血漿が連続的に容器20に流入する。フィルタ21を通じた容器47からの血液の移送は、バルブ49を大気圧に開き、調節源51からバルブ46を通じて容器47に正ガス圧(当初は150~250mbar)をかけることによって促進される。これにより、血液試料は、容器47からフィルタ21を通じて第2容器48に移送される。このプロセスの完了は、容器47とフィルタ21の間のラインへの空気の導入を検出することによってモニタすることが可能である。フィルタを通した試料の第1移送が完了した時点で、バルブ46を大気圧に開き、バルブ49を通じて調節されたガス圧を入れることにより容器48を加圧する(200~380mbarの範囲の圧力での第2濾過)。これにより、繊維フィルタ21を通じた血液試料の第2移送が促進される。容器48とフィルタ21との間に直列した光学空気センサーによって検出されるこの逆移送の完了後、バルブ49を大気圧に開き、その直後にバルブ46を調節ガス源に対して開くことで容器47を加圧する(300~450mbarの圧力を使用する第3濾過)。この順序により、フィルタ21を通じた容器48への第3血液の移送が生じる。バルブ46を大気に開いて容器47内の圧力を解放すると流れが止まり、置換空気バルブ71、試薬バルブ85を開き、バルブ49により容器48内に真空を入れることにより、容器70から細胞すすぎ試薬R1を容器48に加えることができる。残存血液および洗浄試薬の両方が容器48に入った後、バルブ85および71を閉じ、バルブ46を大気に開き、バルブ49によって容器48を加圧して(すすぎ濾過260~500mbar)、フィルタ21を通じた血液の第4循環を駆動させる。
【0051】
濾過およびすすぎステップの完了後、チャンバ47および48の両方が排気されて大気圧にされ、最後にバルブ46および49が閉じられて血液試料のいかなる流れも止められる。次に、バルブ22が開かれ、バルブ9の真空入口の圧力は100~150mbarのレベルまで上昇し、それによって流れる空気が分離された血漿を容器20内に引き込む。フィルタ21とバルブ23の間のチャネルに位置する光学センサーにより、空気が常にフィルタを通じて流れていることが確認されると、バルブ9によって血漿容器20内の真空が解放され、バルブ22および23が閉じられる。次のステップでは、血漿を前処理試薬に必要な温度(例えば、37~55℃、カートリッジは外部装置の温度制御部に対するインタフェースを含む)まで容器20内で加熱する。次に、容器37内の試薬R6(例えばプロテイナーゼK)を置換空気バルブ33およびバルブ44を開くことによって加え、その後、ポンプ26によって試薬を血漿中に送ることが可能である。試薬容器38、39および40からの追加の試薬R7、R8およびR9(例えば溶解バッファ、結合バッファおよび磁性ビーズ)は、置換空気バルブ9ならびに各試薬についてバルブ34、35および36をそれぞれ開き、バルブ44を適切な流れのために調整することによって、ポンプ26の助けを得て順次加えられる。試薬が移送された時点で、バルブ44は、血漿および試薬の混合物をバルブ45およびミキサー24を経由してポンプ26により閉ループで容器へと循環させることが可能な位置にセットされる。再循環により、試薬および血漿の効果的な相互作用が保証される。前処理および核酸結合ステップが完了すると、反応容器20の内容物は、まず置換空気バルブ82および50を開き、次にバルブ45を調整することによって、ポンプ26で廃棄物容器43に移送される。核酸分子は、試薬の最後の循環ラウンドの間に可能になった永久磁石または電磁石との磁性相互作用を通じて、容器20または隣接チャンバ87に保持される静止磁性ビーズ相に結合する。捕捉プロセスの長さは、試薬溶液の粘度およびビーズとの化学的相互作用によって決定される。
【0052】
廃棄物除去後、ミキサー24へ流れを導くようにバルブ45を変更し、空気置換バルブ80および50を開いて容器41から洗浄試薬R10を導入し、ポンプ26でバルブ44を通じて容器20内に移送する。洗浄試薬の導入後、バルブ44を戻して容器20とミキサー24の間の循環による洗浄を可能にし、磁場を除去してビーズを洗浄試薬に再懸濁させる。洗浄後、ビーズは再び容器20またはチャンバ87に磁場で保持され、溶液は置換空気バルブ82および50を開いた後、ポンプ26でバルブ45を通じて廃棄物容器43に移送される。この試薬R10を用いた洗浄ステップは、同様の方法で1~3回繰り返すことが可能である。次に、置換空気バルブ81および50を開き、バルブ44を調整して試薬R11を容器42から容器20に流すことにより、ポンプ26で第2洗浄試薬R11を容器20に導入する。洗浄2試薬R11の導入後、バルブ44を容器20に戻して容器20とミキサー24の間の循環による洗浄を可能にし、磁場を除去してビーズを洗浄試薬に再懸濁させる。洗浄の完了後、ビーズ溶液の循環中に磁場をかけることにより、再びビーズを容器20またはチャンバ87内に保持する。次に、洗浄試薬は、まずバルブ45、82および50を開くことにより、ポンプ26で廃棄物容器43に移送される。第2洗浄試薬R11を用いた洗浄は、精製プロトコルの必要に応じて、同様の方法で1~3回繰り返すことが可能である。
【0053】
R10およびR11の両試薬による洗浄が終了した後、磁場によって容器20またはチャンバ87内に保持されている磁性ビーズを、今度は、まず置換空気バルブ7および50、次に試薬バルブ44を開いた後、ポンプ26によって容器15から移送される核酸安定化試薬R12に懸濁させることにより回復させる。R12が容器20内に移ると、バルブ44を調整してミキサー24と容器20の間を循環させ、そこで磁場を除去して磁性ビーズを溶液に完全に再懸濁させる。次に、置換空気バルブ83および50が開かれ、安定化試薬R12中のビーズが容器20から出て最終試薬容器14へ流れることを可能にする。実行の終了時に、保存試薬R12中に核酸試料を含む容器14は、カートリッジの残りの部分から分離することが可能である。
【0054】
核酸抽出に磁性ビーズを使用する別の実施形態において、流体操作はすべて真空とガス圧を用いて行われる。ここで、抽出プロセスは以下のステップに従って行われる:カートリッジへの血液試料管の挿入後、流体システムは以下のように動作する(図7参照):外部装置により、調節された真空圧を接続部2に、正ガス圧を接続部51に供給し、カートリッジの置換空気バルブ130を開く。試薬容器11は、細胞固定用の試薬R2を含む。容器47内にはバルブ46によって真空が存在し、バルブ150は管10かれに対して開ており、それによって血液が管10から流れ、血液が試料容器47に移動する間に試薬R2がミキサー16内で流れに加えられる。試料の全容量が容器47に移送された時点で(血液管10と容器47の間のダクトからの流れは光学的にモニタ可能である)、バルブ150を閉じ、バルブ46を通じて容器47へ通常の大気圧を戻す。これに続いて、中空繊維膜フィルタ21を用いて血漿を分離する。ここで、バルブ22は閉じられ、133はバルブ132によって真空状態にされた血漿容器20に対して開かれる。したがって、再循環させると、放出された血漿が連続的に容器20に流入する。ミキサー135、84およびフィルタ21を通じた容器47からの血液の移送は、バルブ49を大気圧に開き、調節源51からバルブ46を通じて容器47に正ガス圧(当初は150~250mbar)をかけることによって促進される。これにより、血液試料は、容器47からフィルタ21を通じて第2容器48に移送される。このプロセスの完了は、容器47とフィルタ21の間のラインへの空気の導入を検出することによってモニタすることが可能である。フィルタを通した試料の第1移送が完了した時点で、バルブ46を大気圧に開き、バルブ49を通じて調節されたガス圧を入れることにより容器48を加圧する(200~380mbarの範囲の圧力での第2濾過)。これにより、繊維フィルタ21を通じた血液試料の第2移送が駆動される。容器48とフィルタ21の間に直列した光学空気センサーによって検出される逆移送の完了後、バルブ49を大気圧に開き、その直後にバルブ46を調節ガス源に対して開くことで容器47を加圧する(300~500mbarの圧力を使用する第3濾過)。この順序により、フィルタ21を通じた容器48への血液の第3移送が生じ、続いて、容器48からフィルタ21を通じて再び容器47への、先に記載した順序での別の移送が行われる(400~550mbarの圧力を使用する第4濾過)。バルブ49を大気に開いて容器48内の圧力を解放すると流れが止まり、置換空気バルブ71、試薬バルブ85を開き、バルブ46により容器47内に真空を入れることにより、容器70から細胞すすぎ試薬R1を容器47に加えることができる。残存血液および洗浄試薬の両方が容器47に入った後、バルブ85を閉じ、バルブ46によって容器47を加圧して(すすぎ濾過圧250~500mbar)、フィルタ21を通じた血液の第4循環を駆動させる。
【0055】
濾過およびすすぎステップの完了後、チャンバ47および48の両方が排気されて大気圧にされ、最後にバルブ46および49が閉じられて血液試料のいかなる流れも止められる。次に、バルブ22が開かれ、バルブ9の真空入口の圧力は100~150mbarのレベルまで上昇し、それによってバルブ22から流入する空気が分離された血漿を容器20内に引き込む。フィルタ21とバルブ133の間のチャネルに位置する光学センサーにより、空気が常に濾液側のフィルタ21を通じて流れていることが確認されると、バルブ132によって血漿容器20内の真空が解放され、バルブ22および133が閉じられる。次のステップでは、血漿を前処理試薬に必要な温度(例えば、37~55℃、カートリッジは外部装置の温度制御部に対するインタフェースを含む)まで容器20内で加熱する。次に、容器37から試薬R6(例えばプロテイナーゼK)を置換空気バルブ33およびバルブ132を真空に開くことによって加え、その後、試薬バルブ133を予め規定された時間開くことにより容器20内の血漿に試薬を移送する。試薬容器38、39および40からの追加の試薬R7、R8およびR9(例えば溶解バッファ、結合バッファおよび磁性ビーズ)は、各試薬について置換空気バルブ34、35、36をそれぞれ開き、バルブ132により反応容器20を真空にし、バルブ133を適切な試薬の流れのために調整することによって同様の方法で順次加えられる。試薬が移送された時点で、バルブ133を閉じたままにして、ミキサー24を通じて血漿および試薬の混合物を容器20と134の間で循環させる。これは、バルブ132により容器20を大気圧にし、バルブ45を開き、バルブ131により容器134を真空圧にすることによって達成される。逆移送は、バルブ131により容器134を大気圧に開き、バルブ132で容器20を真空にすることによって行われる。混合は、移送ステップを繰り返すことにより、プロトコルで必要とされる限り続けることが可能である。最後の移送の後、試料は容器20内に残る。前処理および核酸結合ステップが完了すると、反応容器20の内容物は、まず置換空気バルブ82、試薬バルブ133を開き、次にバルブ132によって容器20を正ガス圧に調整することによって、ガス圧で廃棄物容器43に移送される。核酸分子は、永久磁石または電磁石との磁性相互作用を通じて、容器20または隣接チャンバ87に保持される静止磁性ビーズ相に結合する。
【0056】
廃棄物除去後、ミキサー24へ流れを導くようにバルブ133を変更し、置換空気バルブ80を開き、バルブ132により容器20を真空圧にし、試薬バルブ133を予め規定された時間開くことにより、容器41から洗浄試薬R10を導入する。洗浄試薬の導入後、バルブ133を再び閉じ、磁場を除去してビーズを洗浄試薬に再懸濁させる。洗浄は、ミキサー24を通じて容器20と134の間で溶液を循環させることによって行われる。これは、バルブ132により容器20を大気圧にし、バルブ45を開き、バルブ131により容器134を真空圧にすることによって達成される。逆移送は、バルブ131により容器134を大気圧に開き、バルブ132で容器20を真空にすることによって行われる。洗浄は、2つの移送ステップを連続して繰り返すことにより、必要とされる限り続けることが可能である。最後の移送サイクルの間、ビーズは磁場をかけることにより容器20またはチャンバ87に回収される。最後の移送の後、溶液は容器20内に残る。
【0057】
洗浄後、ビーズは磁場に保持され、試薬バルブ133、置換空気バルブ82を開き、バルブ132から容器20内にガス圧を入れることにより、洗浄液が廃棄物容器43に移送される。この試薬R10を用いた洗浄ステップは、同様の方法で1~3回繰り返すことが可能である。次に、空気置換バルブ81を開き、バルブ132で容器20を真空圧にし、試薬バルブ133を予め規定された時間容器42に対して開くことにより、第2洗浄試薬R11を容器20内に導入する。洗浄2試薬R11の導入後、バルブ133を閉じ、磁場を除去してビーズを洗浄試薬に再懸濁させる。洗浄は、ミキサー24を通じて容器20と134の間で溶液を循環させることによって行われる。これは、バルブ132を通じて容器20に大気圧を入れ、バルブ45を開き、バルブ131によって容器134を真空圧に調整することにより達成される。逆移送は、バルブ131によって容器134を大気圧に開き、バルブ132で容器20を真空にすることによって行われる。洗浄は、移送ステップを繰り返すことにより、必要とされる限り続けることが可能である。最後の移送サイクルの間、ビーズは磁場をかけることにより容器20またはチャンバ87に回収される。最後の移送の後、溶液は容器20内に残る。
【0058】
洗浄後、反応容器20からの溶液は、まず置換空気バルブ82、試薬バルブ133を開き、次にバルブ132で容器20を正ガス圧に調整することによって、ガス圧で廃棄物容器43に移送される。第2洗浄試薬R11を用いた洗浄は、精製プロトコルの必要に応じて、同様の方法で1~3回繰り返すことが可能である。
【0059】
R10およびR11の両試薬による洗浄の終了後、磁場によって容器20またはチャンバ87に保持されている磁性ビーズを、核酸安定化試薬R12に懸濁させることにより回収する。この溶液は、置換空気バルブ7を開き、バルブ132により容器20を真空にし、試薬バルブ133を予め規定された時間開くことにより容器15から移送される。R12が容器20内に移ると、バルブ133を閉じ、バルブ45を開いてバルブ131および132により過小および過大圧力を調節することにより、容器20と134の間での試料移送を可能にする。磁場が除去されると、バルブ131を真空に、およびバルブ132を大気圧に開くことにより、容器20から容器134へ流れる溶液にビーズを懸濁させる。ビーズを有する保存溶液が容器134に移ると、バルブ132を真空に、およびバルブ131を大気圧に開くことによって、再び容器20に移送される。最後のステップにおいて、置換空気バルブ83、試薬バルブ133およびバルブ132を正ガス圧に開くことによって、ビーズ溶液は最終試料容器14へ移送される。実行の終了後、保存試薬R12中に核酸試料を含む容器14は、カートリッジの残りの部分から分離することが可能である。この容器は、通常のマイクロチューブ、または図14に記載されるような追加の特徴を組み合わせたより高度な設計の形態をとることが可能である。
【0060】
好ましい実施形態において、走行チャンバ(31)内の電気泳動用ゲル(55)の形態は、円のセクターに相当し(図8を参照)、そのため、広い方の端が、ゲル内で精製および濃縮される5~7mLの血漿試料のための充填ウェル(29)を含む。セクターの形態は、ゲルに対して不均一な電場を作り出し、分子の層流パターンを補償し、それによって移動帯がその形状を保持し、サイズ分離が可能となる。同様の効果は、例えば長方形または三角形のゲルでは、移動帯の形状が著しく広がり、サイズ分離および収率が制限されるため、容易に達成できない。
【0061】
好ましくは、ゲルセクターの先端は、ゲルが、300~600μLの容量を有する、ランニングバッファで満たされた2つのフィルタの間の空間がある回収容器(30)内で終わるように切り詰められる(図8を参照)。回収容器のゲル側には、核酸分子が通過可能なフィルタ(例えば、Whatman Durapore、0.45μm、PVDF)がある。その反対側には、核酸の通過を防ぎ、ランニングバッファに含まれる小サイズのイオンを透過させる別のフィルタがある。このようなフィルタ物質としては、例えば、15nmのフィルタ(Whatman Nuclepore、0.015μm、PC)、サイズ選択範囲20~70kDaのPVDF限外濾過膜またはイオン置換膜(例えば、Sustainion、X37-50)が挙げられる。
【0062】
電気泳動用ゲル中の核酸の平均移動距離は約40mm、好ましいゲルアガロース濃度は0.5~1%、好ましいゲル容量は50~100mL、および好ましいランニングバッファ容量は約200mLである。ゲル上では、150~250V(10~17V/cm)の電圧が好ましくは維持され、ランニング時間は30から60分以下である。電気泳動中、ランニングバッファ(53)はpHの変化を防ぐため、ゲルの両端間で再循環される。これを達成するため、オリフィス56と57との間で液体を移送するために蠕動ポンプが使用され、このためにポンプはランニングバッファを再循環させるために試料チャネルの隣に第2ホースを有する。バッファの流量は10~30mL/分とすることが可能である。適切な活性ランニングバッファの成分には、5~25mMの濃度のホウ酸塩、リン酸塩およびグリシンが含まれる。主に、10~20mMのホウ酸塩バッファが試験に使用されている。再循環バッファまたはゲルはまた、電気泳動中に冷却することが可能であり、それによって、ランニング時間が短縮されるように維持電圧を上昇させることが可能である。
【0063】
ゲル中の核酸の移動は、回収容器の前でゲルを通じて蛍光または吸光度を測定する光学センサーによってモニタされる。実行が完了すると、ゲルの極性が2から200秒間反転し、それによって核酸分子が回収容器の後部フィルタから回収容器内のランニングバッファへと除去され、そこから核酸試料がゲルから汲み出される。
【0064】
特定の実施形態において、本発明は、したがって、血液試料から循環核酸を抽出するためのカートリッジを対象とし、該カートリッジは、無細胞で最小量の細胞核酸を有する血漿を調製するために、血液試料から血漿を濾過するための第1区画を含む。好ましくは、血漿は、細胞核酸の漏出を最小にするために、濾過の前に第1区画内で細胞を固定することによって得られる。また、カートリッジは、核酸抽出を行うための第2区画を含み、ここで第1区画は中空繊維フィルタを含み、第2区画は核酸抽出用チャンバおよび磁性ビーズ等の固相結合物質を含む。好ましくは、前記第1区画は、血液試料を受ける手段も含む。前記第1区画において、好ましくは、カートリッジは、前記血液試料と前記第1区画に封入された細胞固定試薬を混合する手段を含む。
【0065】
別の好ましい実施形態において、前記第1区画は、中空繊維膜において前記血液試料から分離された血漿試料と、前記第1区画に封入された酵素または化学試薬を混合する手段を含む。
【0066】
別の好ましい実施形態において、前記第1区画は、前記酵素または化学試薬と混合された分離血漿を、前記第1区画から前記第2区画に移送する手段を含む。
【0067】
別の好ましい実施形態において、前記カートリッジ、より好ましくは第2区画は、前記カートリッジに、より好ましくは前記第2区画に封入された保存剤または安定化剤と、該保存剤または安定化剤および前記固相結合物質に結合した核酸断片を混合する手段と、前記核酸断片と前記保存剤または安定化剤の混合物を保存するための着脱式容器とを含む。
【0068】
好ましくは、混合の手段は、いかなる機械的な作動も必要としない低コストの受動的流体構造を含み、むしろ、パターン化されたチャネルにおける液体-固体懸濁液の乱流様流動特性を利用するものである。図9は、試薬溶液の臨界レイノルズ数(Re)を克服するために必要な流量を減少させ、中~高粘度の流体における効率的な乱流混合を可能にするために使用可能な代替流体チャネル上面図構成(24a~d)を示す。これらのうち、構成24cおよび24dが最も低い臨界Reを提供するが、その形状はチャネルからの液体および固体試薬の除去効率を低下させる可能性があるため、この点では構造24cが好ましい。構成24aおよび24bは、既存の試薬の除去の容易さの点で妥協点を提供するが、効率的な混合のためにより高い流量を必要とする。
【0069】
さらに、動的な機械的混合を使用することも可能である。回転性撹拌機ブレードを使用する好ましい一構成を図12に示す。ここで、ブレード114は、上部ピース112および下部ピース116を連結することによって形成された閉鎖液体チャンバ20a(図4~7を参照)内で回転させることが可能である。液体はオリフィス117および118を通じて、空気圧は接続部113を通じて移動することが可能である。チャンバは、保持板110によってチャンバ上部エレメントに対して加圧されるエラストマーローターシールディスク111によって環境から密閉されて、囲まれたシステムを提供する。シール111の円形内面は、ブレード114の上部軸受として機能し、容器20a内で回転することを可能にする。ブレード114を保持するシャフトの下端は、チャンバ20a底部の球状凹部115において第2軸受として機能するように球状の突出を有する。ブレードの回転は、シャフト118の上部を通じた装置内のアクチュエータへの機械的な接続によって提供される。
【0070】
あるいは、液体試薬に懸濁された固相物質を操作することによって、動的混合を提供することが可能である。この用途に特に適切であるのは常磁性粒子であり、核酸の固相可逆結合剤として機能するようにコーティング層を含むことも可能である。図13は、好ましいミキサー構成20b(図4~7を参照)を実証しており、永久磁石または電磁石120および125が、液体が接続部123および124を通じて流れることが可能な、板121および122によって形成された容器20b内の粒子含有液相を操作するのに使用される。永久磁石120および125を用いた操作では、一度に磁石の1つを上板または下板121および122上の外側凹部に持ってきて、溶液中の粒子をチャンバ20bの磁石側に引き寄せる。効率的な混合を行うために、磁石120および125を交互にしながら、同時にもう一方の磁石をチャンバから動かすという移動ステップを数回繰り返す。電磁石では、電流が印加される磁石を交互にすることで同様の動作を行うことが可能である。液体および磁性粒子の動的特性に基づいて、混合動作のサイクル速度を調整して、各サイクル中に効率的な物質移送ができるようにすることが可能である。板状磁石120または125との相互作用はまた、液相の置換を可能にするために磁性粒子を容器20b内に保持するための効率的な手段も含む。
【0071】
好ましい一構成において、カートリッジはまた、懸濁相の置換を可能にするために磁性粒子を捕捉および保持するための流体固定具を含むことも可能である。図10は、ビーズ捕捉固定具87(図5~7を参照)の代替上面図構成(a~f)を示し、図11は、固定具87の代替側面図構成(g~k)を示す。図11はまた、磁極の好ましい相対的配向を定義する磁力線の部分図も含む。図10および11からの上面図および側面図の構成の任意の組は、異なる動的特性を有する流体試薬および粒子のための効率的な捕捉形状を形成するために、互いに組み合わせることが可能である。図11のこれらの構成のうち、87jはレイノルズ数の高い流れに最も適用可能であり、87k、87i、87hおよび87gは、Reが減少する流れに対しこの順で適用可能である。図10でも同様に、構成87cは高Reの流れにより適切であり、構成87e、87f、87b、87dおよび87aは低Reの流れの状態のために調整されている。指定された捕捉形状は、固定具への距離を作動させる機構を有する電磁石または永久磁石と組み合わせて使用することが可能である。磁場の除去後の捕捉された物質の放出は、流量を増加させ、および/または固定具を通る流れの方向を繰り返し変更することによって強化することが可能である。
【0072】
カートリッジの好ましい実施形態において、試料物質を含む採取管に直接接続するためのソケットがある(図21および図22の503)。より詳細には(図22参照)、このソケットは、試料の流出を可能にし、同時に管内の圧力変化を補償するために空気の制御された流入を可能にするために試料管セプタムシールを穿刺する針504および505を含む。
【0073】
カートリッジ内の流体チャネルは、任意の適切な設計であってよく、1つまたは複数の相互接続された層中に配置することが可能である。図22に示すように、流体システムの高密度設計および低コスト製造を容易にするために、2つの別個の積層物質層(507および509)を使用してチャネルを形成してもよい。部分的に光学的透明性を有する物質を組み込み、カートリッジ外部ケーシング(508)に適切な切り込みを配置することにより、チャネル内の試料吸光度を測定することによって流体プロセスを観察して、正確なプロセス制御を可能にすることができる。あるいは、非接触型容量性電子センシングを使用して、任意の容器またはタンク(例えば、20、47、48、134)内の試料の現在の容積を測定し、現在のプロセス状態を推測することができる。
【0074】
別の好ましい実施形態において、前記カートリッジ、より好ましくは第2区画は、前記カートリッジに、より好ましくは前記第2区画に封入された核酸特異的色素と、前記色素と前記固相結合物質に結合した、または前記結合物質から洗浄された核酸断片を混合する手段とを含む。好ましくは、前記核酸特異的色素は、二本鎖DNA特異的色素である。この実施形態において、カートリッジおよび/または図14に記載の前記着脱式容器は、好ましくは、色素に結合した単離核酸の量を測定するために、試料または混合物に光線を導くように配置された透明窓(143)を含む。着脱式容器はまた、図21のカートリッジ構成で実証されるように、適切なコネクタインタフェース(501)において通常の実験用マイクロチューブ(502)の形態をとることもできる。ここで、蛍光測定は、片側に透明な窓を備える磁性ビーズ保持領域(87)において同様の方法で行ってもよい。
【0075】
より詳細には、本発明の一実施形態に従えば、着脱式試料移送容器60(図14を参照)は、入口(142)および出口(149)の2つの常開の単動バルブ、液体試料を保存するための容器14ならびに分析のために容器から試料を回収するための2つの針セプタム(144および148)からなる。さらに、試料情報を記録するために、試料容器は、装置と接続するための電気コネクタ面145を有する書き込み可能なデジタルメモリチップ146および手動試料情報のためのペン書き込み領域147を有し、離脱面141に沿ってカートリッジ外部ケーシング(140)から分離可能である。ここで、140は、いくつかの実施形態において、部品61もしくは170(図2)または65もしくは171(図3)を指すことが可能である。
【0076】
試料はカートリッジ内で処理された後、バルブ142を通り測定領域143を横切って容器14内移送される。一実施形態において、試料は液体形態であり、抽出された核酸の濃度は、保存容器への試料移送の流れの間に測定される。別の実施形態において、試料は磁性ビーズに吸着されたままであり、処理装置によって磁石が回収領域143または87の上に配置され、流れの中のビーズがその領域に回収される。その後、蛍光強度測定を行うことが可能である。
【0077】
ここで図15に示す構成によれば、磁石150は測定領域143においてビーズ(151)を保持する。液相試料の場合、151は測定固定具領域143内の体積を指す。次に対物レンズ152が、光源157からの励起光ビームをコリメータレンズ156およびダイクロイックスプリッタミラー155を通じて、エリア143に移送する。得られた試料蛍光は、集束レンズ154によって集光する光検出器153によって電気信号に変換される。適切な励起源としては、発光ダイオード(LED)、レーザー光源、エキシマランプおよびガス放電電球が挙げられる。発光光子は、フォトダイオード、フォトトランジスタ、単一光子アバランシェ検出器、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体検出器(CMOS)または光電子増倍管(PMT)で回収することが可能である。
【0078】
本発明はさらに、上記の任意の実施形態で定義されたカートリッジを受けるように適合されたドッキング部位またはスロットを有する装置を含む血液試料から核酸断片を抽出するための自動化システムを対象とし、前記装置は、前記カートリッジにおいて血漿濾過プロセスを操作するように適合された手段と、a)核酸に特異的な結合物質を用いて前記カートリッジにおいて核酸精製を操作するように適合された手段またはb)前記カートリッジにおいてゲル電気泳動を操作するように適合された手段とを含む。カセットまたはカートリッジに/から、バッファまたは他の試薬を供給および除去する自動化システムと、電気泳動のための電圧の制御された印加については、例えば特許文献5に記載されている。
【0079】
当業者には、本発明の原理は血液試料からのタンパク質バイオマーカーの精製および保存に適用可能であることも理解されるであろう。したがって、本発明はまた、血液試料からタンパク質バイオマーカーを抽出するための方法であって:
a)個人から採取した血液試料を提供するステップと;
b)好ましくは、固定試薬で試料中の血球を安定化させるステップと;
c)前記血液試料から血漿を分離するために、中空繊維フィルタを用いることにより前記血液試料を濾過するステップと;
d)好ましくは、分離された細胞画分を洗浄試薬で洗浄し、ウォッシュアウトを回収するステップと;
e)血漿試料中に存在するバイオマーカーを常に精製するために、ステップc)で得られた血漿試料、および好ましくはステップd)で回収されたウォッシュアウトを、タンパク質バイオマーカーに特異的な結合物質と接触させるステップと;
f)前記結合物質に結合したタンパク質を回収するステップと;
g)ステップf)で回収されたタンパク質を保存剤または安定化剤と混合するステップとを含み;
ステップb)~g)は、自動化システムにおいて、血液試料から血漿を濾過するための第1区画と、ステップc)で得られた血漿試料を前記タンパク質バイオマーカーに特異的な結合物質と接触させるための第2区画とを含むカートリッジ上で行われる、方法も対象とする。
【0080】
一実施形態において、本発明は、血液試料から血漿を濾過するための第1区画と、血漿試料をタンパク質バイオマーカーに特異的な結合物質と接触させるための第2区画とを含むカートリッであって、第1区画は中空繊維フィルタを含み、第2区画はタンパク質精製のためのチャンバおよび前記カートリッジに封入されタンパク質バイオマーカーに特異的な結合物質を含み、前記結合物質は好ましくは磁性ビーズを含む、カートリッジを対象とする。より好ましい実施形態において、磁性ビーズは、タンパク質バイオマーカーに特異的な抗体でコーティングされている。
【0081】
一実施形態において、本発明は、タンパク質バイオマーカーに特異的な結合物質を含む、上記に定義されたカートリッジを受けるように適合されたドッキング部位を有する装置を含む血液試料から核酸断片を抽出するための自動システムを対象とし、前記装置は、前記カートリッジにおいて血漿濾過プロセスを操作するように適合された手段と、前記タンパク質バイオマーカーに特異的な結合物質を用いて前記カートリッジにおいてタンパク質精製を操作するように適合された手段とを含む。
【0082】
本発明の背景を照らすために、特に、その実施に関して追加の詳細を提供するために本明細書で使用される刊行物および他の資料は、参照により本明細書に組み込まれるものとする。本発明は、以下の実施例でさらに説明されるが、これは本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0083】
実施例1
異なるポンピングモードで中空繊維濾過を用いて調製した血漿の比較
2名からKEDTA採血管に血液を採取し、21℃で最大4時間保存した。合計フィルタ表面積1800mmのポリプロピレン(平均孔径<500nm)中空繊維フィルタのセットに試料を通過させることによって、全血から血漿分離を行った。繊維は10本ずつ並列に配置し、繊維の全長は1700mmであった。繊維の外側の血漿区画の圧力は、大気に対して-40mbarであった。全血試料(8~9mL)をフィルタに1または3回通過させ、分離した血漿を回収した。参照分離は、遠心分離(2000g、10分、21℃)により行った。血漿品質は、吸光値(576nmで、EDTA中のHbOについて)を測定し、遠心分離の試料と比較することにより評価した。血液流量は、蠕動ポンプ、シリンジポンプおよびガス圧ポンプ(濾過サイクル数に応じて240~500mbarの正圧)とも120mL/時間であった。分離した血漿の平均収率は、フロースルー試料の細胞間隙に残存するDNAを回収するために使用したその後の任意のすすぎ試薬の量を除くと、遠心分離で血液量の47%、シリンジポンプ(シングルサイクル、比較不可)で16%、蠕動ポンプで41%、およびガス圧ポンピングで42%であった。血漿中の平均A576値は、遠心分離、シリンジポンプ、蠕動ポンプおよびガス圧ポンプで、それぞれ0.890、1.283、2.970および2.242であった。
【0084】
実施例2
cfDNA抽出のための繊維濾過を使用した、抗凝固剤で処理した全血からの血漿の分離
2名からKEDTA採血管に血液を採取し、21℃で最大4時間保存した。合計フィルタ表面積1800mmのポリプロピレン(平均孔径<500nm)中空繊維フィルタのセットに試料を通過させることによって、全血から血漿分離を行った。繊維は10本ずつ並列に配置し、繊維の全長は1700mmであった。繊維の外側の血漿区画の圧力は、大気に対して-40mbarであった。全血試料(8~9mL)をフィルタに3回通過させ、分離した血漿を回収した。参照分離は、遠心分離(2段階、1900g、10分および16000g、10分、21℃、ならびに1段階遠心分離、2000g、10分、21℃の間でcfDNA品質を比較)により行った。血液流量は、蠕動ポンプおよびガス圧ポンプ(濾過サイクル数に応じて240~500mbarの正圧)で120mL/時間であった。調製した血漿試料から市販の抽出キット(Perkin Elmer NextPrep-Mag)を用いてセルフリーDNAを2.5mL試料スケールで単離した。100~350塩基対のサイズのcfDNAの平均収量は、遠心分離、蠕動ポンプ濾過およびガス圧作動濾過で、それぞれ4.50、2.34(52%)および3.60(80%)ng/mL(血漿量に対する相対量)であった。図16の電気泳動図は、濾過試料および遠心分離参照で抽出したDNAの代表的なサイズ分画を示し、下部および上部と表示したピークは装置対照である。ここで、処理間の同様のサイズ分布および類似の濃度から、提案された濾過法は、cfDNA抽出のための2段階遠心分離によって回収したものと同等の品質の血漿を生成することが可能であることを確認するものである。さらに、1段階遠心分離(2000g、10分、21℃)で得られた血漿から抽出したcfDNAを図17の電気泳動図に参照として示すが、下部および上部と表示したピークは装置対照である。このプロットでは、100~350塩基対のDNA濃度が著しく減少しており、1100塩基対付近の余分な断片が明らかである。このことは、抽出プロトコルによってはゲノムDNAの混入および本来のセルフリー核酸の損失につながる可能性がある白血球のキャリーオーバーを防ぐために、2段階の遠心分離プロトコルが必要であることを実証する。
【0085】
実施例3
動的混合システムにおいて磁性ビーズを使用した血漿からのcfDNAの抽出
血漿は遠心分離(2段階、1900g、10分および16000g、10分、いずれも21℃)により調製し、新鮮なまま使用、または-20℃で短期保存もしくは-80℃で長期保存した。核酸抽出プロトコルは、8分間の溶解ステップ(3mL血漿、53℃の100μL溶解バッファ、30μLプロテイナーゼK(>600U/mL))および10分間の結合ステップ(結合バッファは試料に対し比率1.5倍、40μL高カルボキシル化常磁性ビーズ)を含んでいた。1.5mLのW1試薬を用いた第1洗浄を4分間、2回行い、1mLのW2試薬による第2洗浄を2分間、2回行った。混合システムからのビーズの回収は、W2溶液で行った。溶出は流体システムの外側で行った。使用した溶液の組成は以下の通りである:溶解バッファ: 10%SDS水溶液、結合バッファ:3.5M NaCl、15mM Tris-HCl、2mM EDTA、35%PEG6000、0.02%Tween20(pH8.5)、W1:30%塩酸グアニジン60%エタノール溶液、W2:80%エタノール水溶液、溶出液:水。混合および抽出流体システムは、試薬バルブ、ポンプおよび磁性混合固定具からなっていた(図13、システム20b)。抽出収量を、手動試料処理による同じ抽出化学と比較した。血漿の場合、平均収量は、手動および流体抽出についてそれぞれ、血漿に対して1.60および1.24(78%)ng/mLであった。
【0086】
実施例4
受動的混合システムにおいて磁性ビーズを使用した血漿からのcfDNAの抽出
血漿は遠心分離(2段階、1900g、10分および16000g、10分、いずれも21℃)により調製し、新鮮なまま使用、または-20℃で短期保存もしくは-80℃で長期保存した。核酸抽出プロトコルは、8分間の溶解ステップ(3mL血漿、53℃の100μL溶解バッファ、30μLプロテイナーゼK(>600U/mL))および10分間の結合ステップ(結合バッファは試料に対し比率1.5倍、40μL高カルボキシル化常磁性ビーズ)を含んでいた。1.5mLのW1試薬を用いた第1洗浄を2分間、2回行い、1mLのW2試薬を用いた第2洗浄を4分間、2回行った。混合システムからのビーズの回収は、W2溶液で行った。溶出は流体システムの外側で行った。使用した溶液の組成は以下の通りである:溶解バッファ:10%SDS水溶液、結合バッファ:3.5M NaCl、15mM Tris-HCl、2mM EDTA、35%PEG6000、0.02%Tween20(pH8.5)、W1:30%塩酸グアニジン60%エタノール溶液、W2:80%エタノール水溶液、溶出液:水。混合および抽出流体システムは、試薬バルブ、ポンプおよび混合固定具(図9構成24b)ならびに3D捕捉構造(上面図図10、構成87d、および側面図図11、構成87j)からなっていた。流体チャネルの外形は、これらの構造の外側にV字型に切り取られたものであった。抽出収量を、手動試料処理による同じ抽出化学と比較した。血漿の場合、平均収量は、手動および流体抽出についてそれぞれ、血漿に対して1.60および2.15(134%)ng/mLであった。
【0087】
実施例5
品質管理のための蛍光定量を用いたカルボキシル化粒子上に結合した核酸の濃度測定
高カルボキシル化M-PVA磁性粒子(名目直径1μm)を、119塩基対の対照DNA断片を異なる濃度(DNA:COOHの比率1.510-6~2.410-5、dsDNA:ビーズ50~900ng/mg)でコーティングし、得られた粒子の蛍光を80%エタノール水溶液核酸保存溶液中で測定した。使用した蛍光色素はPicoGreen(Invitrogen P11496、試料中の最終希釈度1:200)であり、励起フィルタBP470/40nmおよび発光フィルタBP525/50nmを用いて、マイクロプレート蛍光光度計またはCMOSカメラ付き蛍光顕微鏡をリニアイメージングモードで使用して、強度を記録した。ビーズは永久磁石を用いて測定領域構造に回収した(配置についてはは図14細部143を、代表的な蛍光画像については図18を参照)。蛍光強度は、変性溶液条件下でカルボキシル化ビーズ表面に吸着した抽出核酸の濃度を定量化するのに好適な方法であることがわかった(図19)。
【0088】
実施例6
セクターゲル電気泳動を使用した低分子核酸の濃縮およびサイズ選択
119塩基対のDNA対照断片、ホウ酸ナトリウムランニングバッファ(4.9mMホウ酸ナトリウム、16.4mMホウ酸、pH8.3)およびグリセロール(5%v/v)から、予め濾過した血漿(例えば、架橋デキストラン、セファデックスG-10およびG-50を使用した濾過)を表す合成試料を調製した。最大1.5mLの試料を1%アガロースゲルに充填した(図8に記載の通り構築したゲルランニング装置)。溶出液(1500μL、ランニングバッファと同じ組成)を含む回収ウェルを、陰極側および陽極側にそれぞれ0.45μm Durapore PVDFおよび50kDa PVDF限外濾過膜を使用してゲルから単離した。ゲルに12V/cm(210V)の電界、平均電流27mAで1時間泳動を行った。濃縮物の回収前に、陽極および陰極の電位を3~8秒(210V)または低電圧(5V)で4~9分間反転させた。DNA断片の回収率は65~74%であった。
【0089】
実施例7
cfDNA抽出のための細胞洗浄ステップを含む繊維濾過を使用した、保存剤で処理した全血からの血漿の分離
4名から保存剤入り採血管(Streck cell-free DNA BCT)に血液を採取した。合計フィルタ表面積1800mmのポリプロピレン(平均孔径<500nm)中空繊維フィルタのセットに試料を通過させることによって、全血から血漿分離を行った。繊維は20本ずつ並列に配置し、繊維の全長は1700mmであった。繊維の外側の血漿区画の圧力は、大気に対して-40mbarであった。全血試料(8~9mL)をフィルタに4回通過させ、分離した血漿を回収した。血液流量は、ガス圧ポンピングのために120mL/hとした(濾過サイクル数に応じて100~400mbarの正圧)。さらに、濃縮血球画分を洗浄液(1×PBS中30%グリセロール、pH7.4、容量2.5mL)と混合した後、5回目の分離サイクル、すなわち洗浄ステップを行った。調製した血漿濾液および洗浄画分から、市販の抽出キット化学(Perkin Elmer NextPrep-Mag)を使用してセルフリーDNAを全試料スケールで単離した。洗浄物中のcfDNAのサイズ分画(すなわちサイズ分布)が、細胞洗浄ステップの前に調製した試料画分と一致するようにゲル電気泳動を使用して確認した。無作為に選択した4つの試料の収率を図20に示すが、ここで、細胞洗浄ステップを利用した場合の平均合計cfDNA収率は、このステップなしで処理した試料の画分に対して155%であり、試料回収率が改善されたことが実証された。
【0090】
〔参考文献〕
米国特許第4234431号明細書
国際公開2016061416号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【国際調査報告】