(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】薄い円偏光子用フィルム積層体
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20230222BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20230222BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20230222BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20230222BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230222BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20230222BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
G02B5/30
H05B33/02
H05B33/14 A
B32B27/36
B32B27/30 102
C08L29/04
C08L67/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539099
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(85)【翻訳文提出日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 IB2020062338
(87)【国際公開番号】W WO2021130673
(87)【国際公開日】2021-07-01
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ハーグ,アダム ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ミカエル エー.
(72)【発明者】
【氏名】トイ,ミッシェル エル.
(72)【発明者】
【氏名】ウィラー,ブリアナ エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ユスト,ディヴィッド ティー.
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
2H149AA18
2H149AB11
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(57)【要約】
フィルム積層体は、コポリエステル樹脂を含有するナフタレンジカルボキシレートを含む配向された第2の層上に配置されたポリビニルアルコールを含む配向された第1の層を備える。配向された第2の層は、0.02未満の面内複屈折Δnxyを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コポリエステル樹脂を含有するナフタレンジカルボキシレートを含む配向された第2の層上に配置されたポリビニルアルコールを含む配向された第1の層を備え、前記配向された第2の層が、0.02未満の面内複屈折Δnxyを有する、フィルム積層体。
【請求項2】
前記配向された第2の層が、100nm未満の面内リターダンスを有する、請求項1に記載のフィルム積層体。
【請求項3】
前記配向された第2の層が、二軸配向されている、請求項1又は2に記載のフィルム積層体。
【請求項4】
前記配向された第2の層上で前記配向された第1の層の反対側に配置された1/4波長リターダを更に備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルム積層体。
【請求項5】
前記1/4波長リターダが、配向されたポリマー材料又はコーティングされた液晶材料を含む、請求項4に記載のフィルム積層体。
【請求項6】
前記配向された第1の層が、ヨウ素で染色されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルム積層体。
【請求項7】
前記1/4波長リターダ上で前記配向された第2の層の反対側に配置されたプレマスクを更に備える、請求項4~6のいずれか一項に記載のフィルム積層体。
【請求項8】
前記配向された第1の層上で前記配向された第2の層の反対側に配置されたプレマスクを更に備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルム積層体。
【請求項9】
前記プレマスクが、ポリエチレンテレフタレートを含む、請求項7又は8に記載のフィルム積層体。
【請求項10】
前記フィルム積層体が、35μm未満の総厚を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のフィルム積層体。
【請求項11】
前記フィルム積層体が、20μm未満の総厚を有する、請求項10に記載のフィルム積層体。
【請求項12】
前記フィルム積層体が、15μm未満の総厚を有する、請求項11に記載のフィルム積層体。
【請求項13】
前記配向された第1の層が、5μm未満の厚さを有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のフィルム積層体。
【請求項14】
前記配向された第1の層が、3μm未満の厚さを有する、請求項13に記載のフィルム積層体。
【請求項15】
(a)0.02未満の面内複屈折Δnxyを有するコポリエステル樹脂を含有するナフタレンジカルボキシレートを含む配向された第2の層と、前記配向された第2の層のポリエステル樹脂を含有する前記ナフタレンジカルボキシレートのガラス転移温度よりも少なくとも5℃高い前記ガラス転移温度を有するひずみ硬化ポリエステルの層と、の間に配置された剥離層を含むキャリアフィルムと、
(b)前記配向された第2の層上で前記剥離層の反対側に配置されたポリビニルアルコールを含む配向された第1の層と、
を備える、フィルム積層体。
【請求項16】
(a)0.02未満の面内複屈折Δnxyを有するコポリエステル樹脂を含有するナフタレンジカルボキシレートを含む第2の層と、前記配向された第2の層のポリエステル樹脂を含有する前記ナフタレンジカルボキシレートのガラス転移温度よりも少なくとも5℃高い前記ガラス転移温度を有するひずみ硬化ポリエステルの層と、の間に配置された剥離層を含むキャリアフィルムを準備することと、
(b)前記ひずみ硬化ポリエステル上にポリビニルアルコールを含む第1の層をコーティングすることと、
(c)前記結果として得られるコーティングされたキャリアフィルムを第2の方向に配向させることと、
を含む、フィルム積層体の製造方法。
【請求項17】
前記第1の層をコーティングする前に、前記キャリア層を第1の方向に配向させることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記キャリア層を配向させることが、熱により行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記フィルム積層体を熱硬化することを更に含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記剥離層及び前記ひずみ硬化ポリエステルの層を除去して、前記第2の層を露出させることを更に含む、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記露出した第2の層上に1/4波長リターダ層をコーティングすることを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の層をヨウ素で染色することを更に含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円偏光子に有用なフィルム積層体、及びフィルム積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(organic light emitting diode、OLED)ディスプレイなどの発光ディスプレイは、円偏光子を反射防止フィルムとして利用することが多い。典型的には、円偏光子は、一緒にラミネートされたフィルム構成要素を備え、比較的厚い。屈曲可能かつ巻き付け可能な発光ディスプレイなどの新しいフォームファクタの開発により、より薄いディスプレイ構成要素が必要とされている。従来の厚いフィルム積層体の円偏光子は、屈曲可能かつ巻き付け可能なディスプレイに必要な厳しい曲げ半径に耐えることができない。薄い(例えば、50μm未満の厚さの)円偏光子を作製するための過去の試みは、機械的完全性に問題を有し、かつ曲げ及び折り畳み中にクラック又は破壊するフィルムをもたらした。
【発明の概要】
【0003】
前述の観点から、本発明者は、薄くしかも機械的に堅牢な円偏光子が必要であることを認識している。
【0004】
一態様では、本発明は、コポリエステル樹脂を含有するナフタレンジカルボキシレートを含む配向された第2の層上に配置されたポリビニルアルコールを含む配向された第1の層を備えるフィルム積層体を提供する。配向された第2の層は、0.02未満の面内複屈折Δnxyを有する。
【0005】
別の態様では、本発明は、(a)0.02未満の面内複屈折Δnxyを有するコポリエステル樹脂を含有するナフタレンジカルボキシレートを含む配向された第2の層と、配向された第2の層のポリエステル樹脂を含有するナフタレンジカルボキシレートのガラス転移温度よりも少なくとも5℃高いガラス転移温度を有するひずみ硬化ポリエステルの層と、の間に配置された剥離層を含むキャリアフィルムと、(b)第2の層上で剥離層の反対側に配置されたポリビニルアルコールを含む配向された第1の層と、を備えるフィルム積層体を提供する。
【0006】
本発明のフィルム積層体は、機械的に堅牢であり、したがって、非常に湾曲した、折り畳み可能な、又は巻き付け可能なディスプレイに有用である、35μm、25μm、20μm、15μm、10μm、5μm、又は3μm未満の総厚を有する円偏光子を可能にする。
【0007】
更に別の態様では、本発明は、(a)0.02未満の面内複屈折Δnxyを有するコポリエステル樹脂を含有するナフタレンジカルボキシレートを含む第2の層と、配向された第2の層のポリエステル樹脂を含有するナフタレンジカルボキシレートのガラス転移温度よりも少なくとも5℃高いガラス転移温度を有するひずみ硬化ポリエステルの層と、の間に配置された剥離層を含むキャリアフィルムを準備することと、(b)ひずみ硬化ポリエステル上にポリビニルアルコールを含む第1の層をコーティングすることと、(c)結果として得られるコーティングされたキャリアフィルムを第2の方向に配向させることと、を含む、フィルム積層体の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3A】プロセスに従って作製されているフィルム積層体の断面図である。
【
図3B】プロセスに従って作製されているフィルム積層体の断面図である。
【
図3C】プロセスに従って作製されているフィルム積層体の断面図である。
【
図3D】プロセスに従って作製されているフィルム積層体の断面図である。
【
図3E】プロセスに従って作製されているフィルム積層体の断面図である。
【
図3F】プロセスに従って作製されているフィルム積層体の断面図である。
【
図4】比較例のヨウ素染色PVOHコーティングの拡大写真である。
【
図5】円偏光子の断面の走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、染色ポリビニルアルコール(PVOH)層と、基材と、1/4波長リターダと、を備える非常に薄い円偏光子を可能にする。いくつかの実施形態では、PVOH層は、厚さ10μm未満であり、基材は、厚さ20μm未満であり、1/4波長リターダは、5μm未満であり、薄い円偏光子の総厚は、35μm、25μm、20μm、15μm、10μm、5μm、又は3μm未満である。
【0010】
本発明者は、薄いPVOH層からそのような薄い円偏光子を作製するために、いくつかの問題を解決する必要があることを認識した。例えば、配向されたポリマー材料又はコーティングされた液晶材料を含む1/4波長リターダは、PVOHコーティングに付着しなければならない。PVOHは、典型的には水中で処理され、一方、液晶は、典型的には有機溶媒中にある。また、結果として得られるフィルム構造は、機械的に堅牢でなければならないが、PVOHは、ヨウ素染色及び任意選択的なホウ化中の応力によるクラック及び損傷の影響を受けやすい。加えて、円偏光子の光学性能は、他の層からの複屈折又は染色されたPVOHの偏光効率への乱れによってゆがめられてはならない。
【0011】
薄いPVOH層に機械的完全性を提供するために、本発明は、プロセスを通してPVOHを担持するために、共押出された靭性フィルム層を利用する。この靭性フィルム層は、多くの制約を有する。例えば、それは、キャリア層と共押出することができ、かつ同様のレオロジーを有する必要がある。PVOHは、靭性フィルム層に付着しなければならない。靭性フィルム層は、ひずみ硬化層ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、又はそのコポリエステル)及びPVOHの両方に好適な条件で伸張しなければならない。靭性層は、複屈折をほとんど又は全く有さない必要があり、液晶溶媒に耐える(すなわち、ヘイズ又はクレイズを生じない)必要がある。靭性フィルム層は、PVOH染色プロセスを通して寸法的に安定でなければならない。
【0012】
0.02未満の面内複屈折Δnxyを有するコポリエステル樹脂を含有するナフタレンジカルボキシレートが、靭性フィルム層の必要な全ての制約を満たすことが見出された。複屈折は、樹脂層の屈折率測定値から計算することができる。屈折率は、MD、TD、及びTM方向にMetricon Prismカプラー(Metricon Corporation(Pennington,N.J.))を使用して、典型的には赤色レーザー(すなわち、635nm)を使用して、測定することができる。MD及びTDは面内方向であり、TMはフィルム表面に対して垂直である。TD、MD、及びTMの屈折率は、それぞれ、nx、ny、及びnzとしてラベル付けされる。
【0013】
面内複屈折Δnin:一軸延伸フィルムの複屈折性を測定するために、面内複屈折が使用される。
【0014】
面内複屈折は、直交面内方向での屈折率(nx及びny)の差に関する。一軸延伸フィルムについてより具体的には、面内複屈折とは、延伸方向と非延伸方向との間の差を意味する。例えば、フィルムがTD方向に一軸延伸すると仮定すれば、面内複屈折は次のように表現される。
Δnin=nx-ny=Δnxy
式中、nxは延伸方向(この場合、MD)での屈折率であり、nyは非延伸方向(この場合、TD)での屈折率である。
【0015】
二軸延伸フィルムの場合、面内複屈折は比較的小さく、バランスがとれているときにはほぼゼロの場合もある。その代わりに、面外複屈折は、延伸フィルムの複屈折性をより明確に示す。
【0016】
面外複屈折Δnout:二軸配向フィルムの複屈折性を測定するために、面外複屈折が使用される。
【0017】
面外複屈折は、面内(MD及びTD)屈折率の平均と、フィルムに垂直な方向(TM)の屈折率との間の差に関係する。面外複屈折は、以下のように表現され得る。
【数1】
式中、n
xは、MDでの屈折率であり、n
yは、TDでの屈折率であり、n
zは、TMでの屈折率である。
【0018】
面外複屈折を使用して、一軸延伸フィルムの複屈折性を測定することもできる。
【0019】
好ましくは、コポリエステル樹脂を含有するナフタレンジカルボキシレートは、配向されたときに100nm未満の面内リターダンスを有する。リターダンスは、Axometric,Inc.(Huntsville,AL)からの偏光計から測定することができる。コポリエステルを含有するナフタレンジカルボキシレートの例は、混合ジオール置換コポリエチレンナフタレン-2,6-ジカルボキシレート、ポリエチレンテレフタレート-コナフタレン-2,6-ジカルボキシレート、混合ジオール置換ポリエチレンテレフタレート-コナフタレン-2,6-ジカルボキシレート、ポリエチレンナフタレン-2,6-ジカルボキシレート-コビフェニル-4,4’-ジカルボキシレート、混合ジオール置換ポリエチレンナフタレン-2,6-ジカルボキシレート-コビフェニル-4,4’-ジカルボキシレート、ポリエチレンテレフタレート-コナフタレン-2,6-ジカルボキシレート-コビフェニル-4,4’-ジカルボキシレート、及び混合ジオール置換ポリエチレンテレフタレート-コナフタレン-2,6-ジカルボキシレート-コビフェニル-4,4’-ジカルボキシレートである。混合ジオールは、2つの炭素C2~最大10個の炭素C10の直鎖状、分岐状、又は環状の鎖長を有することができる。ジメチルスルホナトリウムイソフタレートアイオノマーなどのイソフタレートも、テレフタレート、2,6-ナフタレンジカルボキシレート、及び4,4’-ビフェニルジカルボキシレートに置換することができる。PENg30として知られるポリエチレンナフタレートのコポリマー(coPEN)は、coPENポリエステルである。製造方法及び材料組成(エステル上の100%ジメチル-2,6-ナフタレンジカルボキシレート(NDC)、ジオールベースで70モル%のエチレングリコール及び30モル%のシクロヘキサンジオール(CHDM))は、例えば、国際公開第2019/032635号に記載されている。PENg40及びPENg50はまた、ジオールベースで40モル%及び50モル%のCHDMを有するcoPENポリエステルであり、また、国際公開第2019/032635号に記載されている。好ましくは、Tgは、染色プロセスの最高温度よりも高い。
【0020】
PENg材料は、伸張に起因する任意の複屈折を「メルトアウト」するために、伸張後に熱硬化又はアニールされる。しかしながら、PVOHは、熱硬化又はアニールされたときに光学性能を失うことが知られている。驚くべきことに、本発明者は、PVOH層中に良好な光学的性質を依然として維持しながら、PENgにおいて十分に低い複屈折を提供するための条件を見出すことができることを発見した。
【0021】
一実施形態では、
図1に示すような共押出多層フィルムは、有用である。多層フィルム100は、配向層102と、任意選択の結合層104と、剥離層106と、PENg靭性層108と、を備える。配向層102は、ひずみ硬化を提供し、配向中にフィルムを支持する。結合層104及び剥離層106は、PENg靭性層108から剥離されると、配向層102と共に剥離するように設計されている。
【0022】
配向層102は、配向された第2の層のポリエステル樹脂を含有するナフタレンジカルボキシレートのガラス転移温度よりも少なくとも5℃高いガラス転移温度(Tg)を有するひずみ硬化ポリエステルの層である。語句「ガラス転移温度」又は「Tg」は、本明細書において、DSCによる開始ガラス転移温度を指し、ASTM E1256-08 2014に従って測定される。
【0023】
好ましくは、配向層102は、PEN若しくは低溶融PEN、又はPETである。PENは、0.48 IVポリエチレン2,6-ナフタレートポリマーとして記載され得る。低溶融PENは、エステルベースで90モル%のナフタレート部分と10モル%のテレフタレート部分とを含む、0.48 IVコポリエステルとして記載され得る。エチレングリコールは、このポリマー中にジオールを含む。配向層は、キャリアビヒクル(支持基材)として機能し、配向及びアニーリングプロセスの両方の間に平坦なフィルムの生成を可能にする。アニーリング後、配向層は、高い弾性及び寸法安定性をもたらすように機能する。好ましくは、配向層102は、染色温度よりも高いTgを有する。
【0024】
結合層104は、任意選択である。結合層の材料(単数又は複数)は、好ましくは、ポリエステルに対して優れた接着性(>300gli)を呈する弾性オレフィン又はオレフィンブレンドである。これらのオレフィンは、他の層と共押出及び共配向が可能でなければならない。例示的な弾性オレフィンとしては、Kraton Corporationから入手可能なKraton G1645及びKraton G1657が挙げられる。これらの材料はまた、SR549M又はPelestat 230などの低レベルの他の材料とブレンドして、物理的特性及び接着特性を調整させる、並びに/又は静電ピンニング性能を向上させることもできる。
【0025】
剥離層(strippable layer)とも呼ばれる剥離層(peel layer)106の材料は、好ましくは、以下の材料:配向層、PENg靭性層、及び結合層と共押出及び共配向が可能なポリプロピレン又はコポリプロピレンのブレンドである。これらの材料の例は、Lyondell-Basellから入手可能なPro-Fax SR549Mコポリプロピレン(7%ポリエチレン)である。これらのポリプロピレンは、剥離層の70重量%以上を構成し、配向層、PENg靭性層、及び結合層と共押出及び共配向が可能なSEBS/SEPSブロックコポリマーのうちの1つ以上とのブレンドである。これらの材料の例としては、Kraton Corporationから入手可能なKraton G1645及びKraton G1657が挙げられる。剥離はまた、配向層、PENg靭性層、及び結合層と共押出及び共配向が可能なオレフィン系帯電防止剤を含有してもよく、これにより、フィルムキャスティングプロセスにおける静電ピンニングを向上させる。例示的な帯電防止樹脂は、Sanyo Chemical Industriesから入手可能なPelestat 230である。剥離層は、PENg靭性層又は配向層に対して約5~40gliの接着性をもたらすように設計されている。
【0026】
図2に示すように、多層フィルム100は、ポリビニルアルコール(PVOH)溶液でコーティングし、乾燥させ、次いで、例えば、任意選択的に熱により、標準的なテンターを使用して、伸張することができる。好ましくは、多層フィルム100は、PVOHでコーティングする前に長さ方向に伸張され、その結果、多層フィルム100は、二軸配向され、PVOHは、一軸にのみ伸張される。二軸配向多層フィルム100は、有益な機械的特性を提供し、その結果、フィルム積層体は、より堅牢であり、引き裂かれる可能性が低い。
【0027】
PVOH層110は、任意の好適な厚さ、好ましくは、配向後5μm未満の厚さであってもよい。いくつかの実施形態では、PVOH層は、配向後、0.5μm、0.8μm、又は1.2μm~1.5μm、2μm、若しくは3μmの厚さであってもよい。PVOH層は、多層フィルム及びPVOH層を一緒に配向することができるように、上記の多層フィルムの上にコーティング又は押し出されてもよい。PVOHフィルムを製造するための一般的なプロセスは、例えば、米国特許第6,096,375号に記載されている。PVOHコーティング溶液は、典型的には、重量ベースで水中に2~20%のポリマーを含有し、好ましい濃度は、典型的には5~15%である。いくつかの実施形態では、PVOHコーティングは、水、PVOH、及び界面活性剤を含む。Kuraray America(Houston,TX)からのKuraray 2899は、好適なPVOHの例である。PVOHは、95~100%、好ましくは97~99.5%の加水分解度を有するべきである。コーティング乾燥重量は、典型的には、平方メートル当たり2~80グラムの範囲である。次いで、PVOHコーティングされた多層フィルムを高温で伸張して、配向されたPVOH層110及び多層フィルム100を作り出すことができる。この温度は、多層フィルム100の構成要素のうちの少なくとも1つのガラス転移温度よりも高いことが好ましい。一般に、温度は、80~160℃である。いくつかの実施形態では、温度は、105~120℃である。伸張後、フィルム積層体は、好ましくは160~220℃の温度で、熱硬化することができる。
【0028】
フィルムは、典型的には、元の寸法の2~10倍に伸張される。フィルムは、元の寸法の3~6倍に伸張されることが好ましい。フィルムは、伸張方向と交差する方向の自然な収縮(伸張比の平方根に等しい)から、拘束される(つまり、伸張方向と交差する方向の寸法の実質的な変化がなくなる)まで、伸張方向と交差する方向に寸法的に弛緩してもよい。フィルムは、長さオリエンタを用いる場合と同様に機械方向に伸張してもよく、又はテンターを使用して幅方向に伸張してもよい。
【0029】
一連のラミネーション/デラミネーションステップを使用して、1/4波長コーティング及び染色のための配向されたフィルム積層体を調製することができる。例えば、
図3Aに示すステップ1では、プレマスク312を配向された多層フィルム300の配向されたPVOH層310にラミネートすることができる。PVOH層310に加えて、多層フィルム300は、PENg靭性層308と、剥離層306と、結合層304と、配向層302と、任意選択のプレマスク314と、を含む。プレマスク312は、PVOH層が染色されるプロセス及び取り扱い全体を通して、PVOH層310を保護する。プレマスク312は、典型的には、ポリエチレンテレフタレートを含む。いくつかの実施形態では、プレマスク312は、例えば、光学検査を容易にするために、光学的に透明である。プレマスク314は、配向層302を保護し、任意選択的に、追加の支持を提供する。いくつかの実施形態では、プレマスク314は、Tredegar Corporation(Richmond,VA)によって提供される。
【0030】
図3Bに示すステップ2では、PENg靭性層308と剥離層306が分離される。キャリア層が除去され、PENg靭性層308が露出される。
【0031】
図3Cに示すステップ3では、1/4波長リターダ316がPENg靭性層308上にコーティングされる。1/4波長リターダは、例えば、ポリカーボネート、ポリエチルテレフタレート、若しくはポリビニルアルコールなどの配向されたポリマー材料から、又はコーティングされた液晶材料から提供されてもよい。好適な材料としては、例えば、米国特許出願公開第2002/0180916号(Schadtら)、同第2003/028048号(Cherkaouiら)、及び同第2005/0072959号(Moiaら)に記載された直鎖状光重合性ポリマー(linear photopolymerizable polymer、LPP)材料及び液晶ポリマー(liquid crystal polymer、LCP)材料が挙げられる。適切なLPP材料としては、ROP-131 EXP 306 LPPが、適切なLCP材料には、ROF-5185 EXP 410 LCPが挙げられ、両方ともRolic Technologies,Allschwil,Switzerlandから入手可能である。いくつかの実施例では、1/4波長リターダは、所定波長範囲内の少なくとも1つの波長における1/4波長リターダであってもよい。
図3Cでは、1/4波長リターダ316は、1つの層として示されているが、例えば、LPP層、LCP半波長板、及びLCP1/4波長板などの複数の層を含むことができる。
【0032】
図3Dに示すステップ4では、染色ステップにおいて支持を提供するために、プレマスク318が1/4波長リターダ316に追加される。プレマスク318は、典型的には、ポリエチレンテレフタレートを含む。いくつかの実施形態では、プレマスク318は、例えば、プレマスクを除去することなく、欠陥測定又は染料のレベルを正確に測定するための透過率測定を容易にするために、光学的に透明である。プレマスク318は、典型的には、プレマスクを接着するために、感圧接着剤(pressure sensitive adhesive、PSA)層、好ましくは光学的に透明なPSAを含む。PSAは、染色ステップに耐え、かつ除去可能であるように選択される。
【0033】
図3Eに示すステップ5では、プレマスク312が除去されて、染色のためにPVOH層310を露出させる。
【0034】
図3Fに示すステップ6では、PVOH層310がヨウ素溶液で染色されて、吸収型偏光子を形成する。このプロセスは、ヨウ素染色及び(任意選択的な)ホウ化手順を含む。染料浴は、典型的にはヨウ素の水溶液である。いくつかの実施形態では、100重量部の水に対して0.1重量部~0.5重量部のヨウ素の量。いくつかの実施形態では、ヨウ素の水溶液は、例えば、水中のヨウ素の溶解度を高めるために、ヨウ化物と配合される。有用なヨウ化物の例としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化スズ、及びヨウ化チタンが挙げられる。組成物は、例えば、水(例えば、80重量%)、ヨウ化カリウム(例えば、19.7%)、及びヨウ素(例えば、0.3%)を含むことができる。
【0035】
ホウ化浴組成物は、ホウ酸の水溶液である。組成物は、ホウ酸及び/又はホウ酸塩を溶媒として水中に溶解することによって得ることができる。ホウ酸の濃度は、典型的には、100重量部の水に対して1重量部~10重量部である。いくつかの実施形態では、ホウ化浴は、例えば、水(例えば、80重量%)、ホウ酸(例えば、14%)、及びホウ酸ナトリウム(例えば、6%)を含むことができる。
【0036】
染料浴ステップは、典型的には、例えば、約20~50℃の浴温度で約5秒~5分間行われる。いくつかの実施形態では、染料浴ステップは、約30℃で約30~40秒間行われる。
【0037】
任意選択のホウ化ステップは、典型的には、例えば、約40~85℃の浴温度で約15秒~5分間行われる。いくつかの実施形態では、ホウ化ステップは、約65℃で約40~50秒間行われる。
【0038】
ホウ化後、フィルム積層体を水ですすぎ、例えば、70℃のオーブンで5分間、乾燥させることができる。結果として得られたフィルム積層体は、驚くほどクラックがなく、機械的に堅牢である。それらは、反射率を低減するための円偏光フィルムとして使用するために、屈曲可能又は折り畳み可能な表示デバイスなどのデバイスに統合する準備ができている。
【実施例】
【0039】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例に記載された特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。
【0040】
PVOHフィルムを製造するための一般的なプロセスは、米国特許第6,096,375号に記載されている。キャストフィルムは、多くの場合、PVOHへの接着のためにプライミングされてもよく、この場合、プライマーコーティングされなかった。ポリビニルアルコールコーティング溶液は、重量ベースで水中に2~20%のポリマーを含有するべきであり、好ましい濃度は5~15%である。ポリビニルアルコールは、95~100%、好ましくは97~99.5%の加水分解度を有するべきである。コーティング乾燥重量は、平方メートル当たり2~80グラムの範囲であるべきである。次いで、ポリビニルアルコールコーティングされたキャストフィルムを高温で伸張して、配向されたポリビニルアルコール及び配向されたベースフィルムを作り出す。この温度は、ベースキャストフィルムの構成要素のうちの少なくとも1つのガラス転移温度よりも高いことが好ましい。一般に、温度は、80~160℃、好ましくは100~160℃であるべきである。フィルムは、元の寸法の2~10倍に伸張されるべきである。比較例1では、キャストフィルムは、90/10coPENの2層の外層、90%のポリエチレンナフタレート(PEN)及び10%のポリエチレンテレフタレート(PET)からなるポリマー、及びコポリエステルEastar GN071(Eastman Chemical(Kingsport,TN))の内層を有する3層であった。
【0041】
フィルムは、元の寸法の3~6倍に伸張されることが好ましい。フィルムは、伸張方向と交差する方向の自然な収縮(伸張比の平方根に等しい)から、拘束される(つまり、伸張方向と交差する方向の寸法の実質的な変化がなくなる)まで、伸張方向と交差する方向に寸法的に弛緩してもよい。フィルムは、長さオリエンタを用いる場合と同様に機械方向に伸張してもよく、若しくはテンターを使用して幅方向に伸張してもよく、又は任意選択的に、キャストウェブがPVOHコーティングの前に1つの方向に伸張される場合、両方に伸張してもよい。
【0042】
比較例
PVOHフィルムを製造するための一般的なプロセスは、米国特許第6,096,375号に記載されている。
【0043】
ポリエチレン2,6-ナフタレンジカルボキシレート-コテレフタレートを、50pphで第1の二軸スクリュー押出機に供給し、搬送し、溶融し(530F溶融)、混合し、7um媒体の30ディスクフィルタを通過させた。EastarコポリエステルGN071(Eastman Chemical(Kingsport、TN))。
【0044】
Eastman Chemicals(Kingsport、TN)からのGN071を、220pphの速度で第2の二軸スクリュー押出機に供給し、搬送し、溶融し(530F溶融)、混合し、7um媒体の30ディスクフィルタを通過させた。コポリエステルGN071を、3層供給ブロックのコアに供給し、ポリエチレン2,6-ナフタレンジカルボキシレート-コテレフタレートをスキンプレートに供給した。
【0045】
次いで、3層をダイを通して押し出し、冷却されたホイールに対して静電ピンニングによりキャスティングした。
【0046】
フィルムを、89重量%の水、11重量%のPVOH、及び0.01重量%の界面活性剤からなる溶液中でPVOHでコーティングした。PVOHは、Kuraray America(Houston、TX)のKuraray 2899である。界面活性剤は、Air Products(Allentown、PA)から入手可能なDynol 604であった。
【0047】
PVOHコーティングされたフィルムを、283Fの温度で約6.0の伸張比まで横方向に伸張した。最終的な厚さのフィルムは、約72.6umであった。
【0048】
材料を溶媒でコーティングし、統合型偏光子のパス方向に対して45度に方向づけられた光学遅軸を有するPVOH層上でUV硬化した。コーティングされた層は、550nmの波長で138nmの位相差を有していた。(位相差は、Re=(ni-nj)*dにより定義され、式中、ni-njは、コーティングされた材料の光学遅軸と速軸との間の平面内複屈折差であり、dは、コーティングされた層の厚さである)。利用したコーティング材料は、米国特許出願公開第2002/0180916号、同第2003/028048号及び同第2005/0072959号に記載のものと同様の材料であり、直鎖状光重合性ポリマー(linear photopolymerizable polymer、LPP)材料は、ROP-131 EXP 306 LPP であり、液晶ポリマー(liquid crystal polymer、LCP)材料は、ROF-5185 EXP 410 LCP(両方ともRolic Technologies,Allschwil,Switzerlandから入手可能)だった。
【0049】
次いで、1/4波長コーティングを有する配向されたポリビニルアルコールコーティングを、配向されたベースフィルムから除去した。接着剤を有するPETプレマスクを、配向されたポリビニルアルコールコーティングを有する1/4波長層にラミネートし、次いで、配向されたベースフィルムから剥離した。
【0050】
次いで、PETプレマスクを取り付けた配向されたポリビニルアルコールコーティング及び1/4波長コーティングを、ヨウ素系染色溶液で染色し、次いで、コーティングを固定するためにホウ化した。
【0051】
ヨウ素染色及びホウ化手順は、以下の要素を含んでいた。染料浴組成物は、80重量%の水、19.7重量%のヨウ化カリウム、及び0.3重量%のヨウ素であった。ホウ酸浴組成物は、80重量%の水、14重量%のホウ酸、及び6.0重量%のホウ酸ナトリウムであった。染色プロセスステップは、30℃の染料浴温度及び34秒間の曝露を使用した。ホウ化プロセスステップは、65℃の浴温度のホウ化浴温度及び42秒間の曝露を使用した。ホウ化後、試料を23℃の水で24秒間すすいだ後、70℃のオーブンで5分間乾燥させた。
【0052】
乾燥後、PVOHコーティングは、
図4に示すように、繊維に有意にクラックされ、光学フィルムとして使用できなかった。
【0053】
表1に示すように、クラックを防止するために、染色及び乾燥プロセスで多くのプロセス条件を試験した。比較例1の構造では、全てが許容できないクラックを有した。
【0054】
【0055】
実施例
2ミルのLmPEN層、0.25ミルの結合層、0.25ミルの剥離層、及び0.5ミルのPENg層を有する4層の供給ブロックを使用して、実験試料を作製した。
【0056】
ポリエチレン2,6-ナフタレンジカルボキシレート-コテレフタレートを、475pphで第1の二軸スクリュー押出機に供給し、搬送し、溶融し(530F溶融)、混合し、7um媒体の30ディスクフィルタを通過させた。Kraton G1657(Kraton Corporation(Houston、TX))及びExxon Mobil Corporation(Irving TX)からのPP9074MEDを、それぞれ29及び12pphで第2の二軸スクリュー押出機に供給し、搬送し、溶融し(530F溶融)、混合し、7um媒体の15ディスクフィルタを通過させた。Kraton G1657(Kraton Corporation(Houston,TX))及びExxon Mobil Corporation(Irving TX)からのPP9074MEDを、それぞれ4.6及び33.5pphで第3の二軸スクリュー押出機に供給した。PENG30を、50pphで第4の二軸スクリュー押出機に供給した。
【0057】
第1の溶融トレインが1つの外層を供給し、第2の溶融トレインが第1の溶融トレインに隣接する内層を供給し、第3の溶融トレインが第2の溶融トレインに隣接する内層を供給し、かつ第4の溶融トレインが第3の溶融トレインに隣接する外層を供給したときに、4つの溶融ストリームを4層の供給ブロックに供給した。
【0058】
最外層及び交互の内層、並びに交互の内層の残りが第2の溶融トレインによって供給される。4層をダイを通して押し出し、冷却されたホイールに対して静電ピンニングによりキャスティングし、その後、約250Fの温度で機械方向に約3.3の伸張比まで伸張した。
【0059】
PENG30を、89重量%の水、11重量%のPVOH、及び0.01重量%の界面活性剤からなる溶液中でPVOHでコーティングした。PVOHは、Kuraray America(Houston、TX)のKuraray 2899である。界面活性剤は、Air Products(Allentown、PA)から入手可能なDynol 604であった。スルホン化ポリエステルのプライマー層をPVOH溶液とPENG30層との間にコーティングした。
【0060】
PVOHコーティングされたフィルムを、290Fの温度で約5.0の伸張比まで横方向に伸張し、次いで325Fの温度で熱硬化した。最終的な厚さのフィルムは、約72.6umであった。
【0061】
第2のPVOHコーティングされたフィルムを、PENG押出速度が100pphであったことを除いて、同様の方法で作製した。このフィルムの総厚は、78.9umであった。
【0062】
一連のラミネーションステップを使用して、靭性フィルム層及びPVOHを除去し、液晶1/4波長コーティングの準備をした。ステップ1では、Sun-a-kaken(日本)からの光学的に透明なPETプレマスクNSA33Tを、フィルムのPVOH側に追加した。ステップ2では、剥離層、結合層、及びLmPENキャリア層を除去し、PENgを露出させた。ステップ3では、LPP層及びLCP層をPENg上にコーティングして、アクロマートの1/4波長板を形成した。材料を溶媒でコーティングし、統合型偏光子のパス方向に対して45度に方向づけられた光学遅軸を有するPENg層上でUV硬化した。コーティングされた層は、550nmの波長で138nmの位相差を有していた。(位相差は、Re=(ni-nj)*dにより定義され、式中、ni-njは、コーティングされた材料の光学遅軸と速軸との間の平面内複屈折差であり、dは、コーティングされた層の厚さである)。利用したコーティング材料は、米国特許出願公開第2002/0180916号、同第2003/028048号及び同第2005/0072959号に記載のものと同様の材料であり、直鎖状光重合性ポリマー(linear photopolymerizable polymer、LPP)材料は、ROP-131 EXP 306 LPP であり、液晶ポリマー(liquid crystal polymer、LCP)材料は、ROF-5185 EXP 410 LCP(両方ともRolic Technologies,Allschwil,Switzerlandから入手可能)であった。PENg層は、侵襲的な溶媒n-ブチルアセテートを含有するLCPコーティングプロセスにもかかわらず、LCPをコーティングした後に、ヘイズを有さないままであった。
【0063】
光学的に透明なPETプレマスクをLPP及びLCPコーティングされた側にラミネートして、染色ステップにおける支持を提供した。PVOH側の光学的に透明なPETを除去した。PVOHをヨウ素溶液で染色して、吸収型偏光子を形成した。フィルムを、30Cで32秒間ヨウ素溶液に浸漬し、次いで65Cで42秒間ホウ化タンク内に浸漬し、次いで23Cの水浴中ですすいだ。フィルムを70Cのオーブンで5分間乾燥させた。結果として得られたフィルムは、乾燥後にクラックを有さず、機械的に堅牢であった。
【0064】
SEM断面(
図5及び
図6)を取って、極薄の円偏光子の厚さを測定した。
【0065】
本明細書中に引用している刊行物の完全な開示は、それぞれが個々に組み込まれたかのように、その全体が参照により組み込まれる。本発明に対する様々な改変及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなるであろう。本発明が本明細書で説明されている例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されることは意図されておらず、このような実施例及び実施形態は例としてのみ提示されており、本発明の範囲は、本明細書で以下に記載されている特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図されていると理解されたい。
【国際調査報告】