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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】薄い円偏光子用フィルム積層体
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20230222BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20230222BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20230222BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20230222BHJP
   C08G 18/06 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
G02B5/30
H05B33/14 A
H05B33/02
B32B27/40
C08G18/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539100
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(85)【翻訳文提出日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 IB2020062336
(87)【国際公開番号】W WO2021130672
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】62/953,642
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ポングラッツ,アレックス ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ユスト,ディヴィッド ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ミカエル エー.
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
4F100
4J034
【Fターム(参考)】
2H149AA18
2H149AB11
2H149AB24
2H149BA02
2H149BA13
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2H149FA12Z
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2H149FA21Y
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2H149FD31
2H149FD47
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3K107CC33
3K107CC43
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4J034QC08
4J034RA05
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4J034RA13
(57)【要約】
フィルム積層体は、1/4波長リターダと、1/4波長リターダの主表面上に配置された透明な脂肪族架橋ポリウレタン層と、を備える。透明な脂肪族架橋ポリウレタン層は、11~27℃の範囲のガラス転移温度及び0.5~2.5の範囲のタンデルタピーク値を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1/4波長リターダと、
(b)前記1/4波長リターダの主表面上に配置された透明な脂肪族架橋ポリウレタン層であって、11~27℃の範囲のガラス転移温度及び0.5~2.5の範囲のタンデルタピーク値を有する、透明な脂肪族架橋ポリウレタン層と、
を備える、フィルム積層体。
【請求項2】
前記ポリウレタン層上であって前記1/4波長リターダの反対側に配置された、ポリビニルアルコールを含む配向された層を更に備える、請求項1に記載のフィルム積層体。
【請求項3】
前記1/4波長リターダ上であってポリビニルアルコールを含む前記層の反対側に配置されたプレマスクを更に備える、請求項2に記載のフィルム積層体。
【請求項4】
前記プレマスクが、ポリエチレンテレフタレートを含む、請求項3に記載のフィルム積層体。
【請求項5】
ポリビニルアルコールを含む前記層が、ひずみ硬化ポリエステルの層を含むフィルム上に配置されている、請求項2~4のいずれか一項に記載のフィルム積層体。
【請求項6】
前記1/4波長リターダが、1μm~5μmの厚さを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルム積層体。
【請求項7】
前記ポリウレタン層が、4μm~10μmの厚さを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のフィルム積層体。
【請求項8】
ポリビニルアルコールを含む前記層が、5μm未満の厚さを有する、請求項2~7のいずれか一項に記載のフィルム積層体。
【請求項9】
ポリビニルアルコールを含む前記層が、3μm未満の厚さを有する、請求項8に記載のフィルム積層体。
【請求項10】
前記フィルム積層体が、35μm未満の総厚を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のフィルム積層体。
【請求項11】
前記フィルム積層体が、20μm未満の総厚を有する、請求項10に記載のフィルム積層体。
【請求項12】
前記フィルム積層体が、15μm未満の総厚を有する、請求項11に記載のフィルム積層体。
【請求項13】
前記1/4波長リターダが、配向されたポリマー材料又はコーティングされた液晶材料を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のフィルム積層体。
【請求項14】
ポリビニルアルコールを含む前記層が、ヨウ素を含む組成物で染色されている、請求項2~13のいずれか一項に記載のフィルム積層体。
【請求項15】
ポリビニルアルコールを含む前記ヨウ素染色された層上に配置された2~5μmの厚さを有する第2の透明な脂肪族架橋ポリウレタン層を更に備え、前記第2の透明な脂肪族架橋ポリウレタン層が、11~27℃の範囲のガラス転移温度及び0.5~2.5の範囲のタンデルタピーク値を有する、請求項14に記載のフィルム積層体。
【請求項16】
前記ポリウレタン層が、ヨウ素で染色されていない、請求項1~15のいずれか一項に記載のフィルム積層体。
【請求項17】
(a)ひずみ硬化ポリエステルの層を含むフィルムと、
(b)ひずみ硬化ポリエステルの前記層上に配置されたポリビニルアルコールを含む配向された層と、
前記ポリビニルアルコールを含む配向された層上であってひずみ硬化ポリエステルの前記層の反対側に配置された100μm以下の厚さを有する透明な脂肪族架橋ポリウレタン層であって、11~27℃の範囲のガラス転移温度及び0.5~2.5の範囲のタンデルタピーク値を有する、透明な脂肪族架橋ポリウレタン層と、
を備える、フィルム積層体。
【請求項18】
前記ポリウレタン層が、4μm~10μmの厚さを有する、請求項17に記載のフィルム積層体。
【請求項19】
ポリビニルアルコールを含む前記配向された層が、5μm未満の厚さを有する、請求項17又は18に記載のフィルム積層体。
【請求項20】
ポリビニルアルコールを含む前記配向された層が、3μm未満の厚さを有する、請求項19に記載のフィルム積層体。
【請求項21】
前記フィルム積層体が、35μm未満の総厚を有する、請求項17~20のいずれか一項に記載のフィルム積層体。
【請求項22】
前記フィルム積層体が、20μm未満の総厚を有する、請求項21に記載のフィルム積層体。
【請求項23】
前記フィルム積層体が、15μm未満の総厚を有する、請求項22に記載のフィルム積層体。
【請求項24】
前記ポリウレタン層が、ヨウ素で染色されていない、請求項17~23のいずれか一項に記載のフィルム積層体。
【請求項25】
(a)ひずみ硬化ポリエステルの層を含むフィルム上にポリビニルアルコールを含む層をコーティングすることと、
(b)前記コーティングされたフィルムを第1の方向に配向することと、
(c)ポリビニルアルコールを含む前記層を、100μm以下の厚さを有する透明な脂肪族架橋ポリウレタン層であって、11~27℃の範囲のガラス転移温度及び0.5~2.5の範囲のタンデルタピーク値を有する、透明な脂肪族架橋ポリウレタン層でコーティングすることと、
を含む、フィルム積層体の製造方法。
【請求項26】
ポリビニルアルコールを含む前記層をコーティングする前に、前記第1の方向とは反対の方向にひずみ硬化ポリエステルの層を含む前記フィルムを配向することを更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリウレタン層上に1/4波長リターダ層をコーティングすることを更に含む、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記フィルム積層体からひずみ硬化ポリエステルの層を含む前記フィルムを除去することを更に含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
ポリビニルアルコールを含む前記層をヨウ素で染色することを更に含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記1/4波長リターダ層上にプレマスクを配置することを更に含む、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ポリウレタン層が、ヨウ素で染色されていない、請求項25~30のいずれか一項に記載のフィルム積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円偏光子に有用なフィルム積層体、及びフィルム積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(organic light emitting diode、OLED)ディスプレイなどの発光ディスプレイは、円偏光子を反射防止フィルムとして利用することが多い。典型的には、円偏光子は、一緒にラミネートされたフィルム構成要素を備え、比較的厚い。屈曲可能かつ巻き付け可能な発光ディスプレイなどの新しいフォームファクタの開発により、より薄いディスプレイ構成要素が必要とされている。従来の厚いフィルム積層体の円偏光子は、屈曲可能かつ巻き付け可能なディスプレイに必要な厳しい曲げ半径に耐えることができない。薄い(例えば、50μm未満の厚さの)円偏光子を作製するための過去の試みは、機械的完全性に問題を有し、かつ曲げ及び折り畳み中にクラック又は破壊するフィルムをもたらした。
【発明の概要】
【0003】
前述の観点から、本発明者は、薄くしかも機械的に堅牢な円偏光子が必要であることを認識している。
【0004】
一態様では、本発明は、1/4波長リターダと、1/4波長リターダの主表面上に配置された透明な脂肪族架橋ポリウレタン層と、を備えるフィルム積層体を提供する。透明な脂肪族架橋ポリウレタン層は、11~27℃の範囲のガラス転移温度及び0.5~2.5の範囲のタンデルタピーク値を有する。
【0005】
別の態様では、本発明は、ひずみ硬化ポリエステルの層を含むフィルムと、ひずみ硬化ポリエステルの層上に配置されたポリビニルアルコールを含む配向された層と、ひずみ硬化ポリエステルの層の反対側のポリビニルアルコールを含む配向された層上に配置された100μm以下の厚さを有する透明な脂肪族架橋ポリウレタン層と、を備えるフィルム積層体を提供する。透明な脂肪族架橋ポリウレタンは、11~27℃の範囲のガラス転移温度及び0.5~2.5の範囲のタンデルタピーク値を有する。
【0006】
本発明のフィルム積層体は、機械的に堅牢であり、したがって、非常に湾曲した、折り畳み可能な、又は巻き付け可能なディスプレイに有用である、35μm、25μm、20μm、15μm、10μm、5μm、又は3μm未満の総厚を有する円偏光子を可能にする。
【0007】
更に別の態様では、本発明は、(a)ひずみ硬化ポリエステルの層を含むフィルム上にポリビニルアルコールを含む層をコーティングすることと、(b)コーティングされたフィルムを第1の方向に配向することと、(c)100μm以下の厚さを有する透明な脂肪族架橋ポリウレタン層でポリビニルアルコールを含む層をコーティングすることと、を含む、フィルム積層体の製造方法を提供する。透明な脂肪族架橋ポリウレタン層は、11~27℃の範囲のガラス転移温度及び0.5~2.5の範囲のタンデルタピーク値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】フィルム積層体の断面図である。
図2A】プロセスに従って作製されているフィルム積層体の断面図である。
図2B】プロセスに従って作製されているフィルム積層体の断面図である。
図2C】プロセスに従って作製されているフィルム積層体の断面図である。
図2D】プロセスに従って作製されているフィルム積層体の断面図である。
図2E】プロセスに従って作製されているフィルム積層体の断面図である。
図2F】プロセスに従って作製されているフィルム積層体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、染色ポリビニルアルコール(PVOH)層と、ポリウレタンプライマーと、1/4波長リターダと、を備える非常に薄い円偏光子を可能にする。いくつかの実施形態では、PVOH層は、厚さ10μm未満であり、プライマーは、厚さ20μm未満であり、1/4波長リターダは、5μm未満であり、薄い円偏光子の総厚は、35μm、25μm、20μm、15μm、10μm、5μm、又は3μm未満である。
【0010】
本発明のフィルム積層体は、ポリビニルアルコール層と1/4波長リターダを結合するウレタンプライマー層を含む。驚くべきことに、ウレタンプライマー層は、ポリビニルアルコール層のクラックに抵抗する非常に薄い構造を可能にする。ウレタンプライマー材料はまた、ポリビニルアルコール染色プロセス中の染色に抵抗する。加えて、ウレタンプライマー層は、ヘイズを増加させることなく、多くの液晶ポリマーの侵襲性溶媒を使用することを可能にする。
【0011】
いくつかの実施形態では、ウレタンプライマー層は、100μm、50μm、30μm、20μm、10μm、又は5μm未満の厚さを有する。いくつかの実施形態では、ウレタンプライマーは、4μm~10μmの厚さを有する。
【0012】
ウレタンプライマー層は、米国特許出願公開第2017/0165950号に記載されているものなどの透明な脂肪族架橋ポリウレタンを含む。「ポリウレタン」は、ヒドロキシル官能性材料(水酸基-OHを含有する材料)を、イソシアネート官能性材料(イソシアネート基-NCOを含有する材料)と逐次重合させることによって調製されるポリマーを指し、そのため、ウレタン結合(-O(CO)-NH)[式中、(CO)はカルボニル基(C-O)を指す]を含有する。この用語は、ウレタン結合及び尿素結合の両方が存在する「ポリウレタン尿素」を含むことができる。
【0013】
透明な脂肪族架橋ポリウレタン層は、11~27℃又は17~22℃の範囲のガラス転移温度を有することができる。語句「ガラス転移温度」は、本明細書において、DSCによる開始ガラス転移温度を指し、ASTM E1256-08 2014に従って測定される。
【0014】
透明な脂肪族架橋ポリウレタン層は、0.5~2.5、又は1~2、又は1.4~1.8の範囲のタンデルタピーク値を有することができる。タンデルタピーク値及びピーク温度は、実施例に記載のDMA分析に従って測定される。透明な脂肪族架橋ポリウレタン層は、0.34~0.65mol/kgの範囲の架橋密度を有することができる。
【0015】
透明な脂肪族架橋ポリウレタン層をコーティングし、その後、硬化又は架橋して、熱硬化性ポリウレタン層を形成してもよい。ポリウレタンは、カルバメート(ウレタン)結合によって接合された有機単位から構成されるポリマーである。本明細書に記載のポリウレタンは、加熱されたときに溶融しない熱硬化性ポリマーである。ポリウレタンポリマーは、ジイソシアネート又はポリイソシアネートをポリオールと反応させることによって形成することができる。ポリウレタンを作製するために使用されるイソシアネート及びポリオールの両方は、1分子当たり平均2つ以上の官能基を含有する。本明細書に記載のポリウレタンは、2.4又は2.5超の官能価を有することができる。
【0016】
多種多様なポリオールを使用して、脂肪族架橋ポリウレタン層を形成することができる。ポリオールという用語は、一般に少なくとも2つの末端水酸基を含むヒドロキシル官能性材料を含む。ポリオールとしては、ジオール(2つの末端水酸基を有する材料)、及びトリオール(3つの末端水酸基を有する材料)、テトラオール(4つの末端水酸基を有する材料)などのより多官能性のポリオールが挙げられる。典型的には、反応混合物は、少なくともいくつかのジオールを含有し、より多官能性のポリオールもまた含有してもよい。より多官能性のポリオールは、架橋ポリウレタンポリマーの形成に特に有用である。ジオールは、一般に、構造HO-B-OH[式中、B基は脂肪族基、芳香族基、又は芳香族基と脂肪族基との組み合わせを含有する基であり得、更なる末端水酸基を含む様々な結合又は官能基を含有してもよい]で記述することができる。
【0017】
ポリエステルポリオールは、特に有用である。有用なポリエステルポリオールのうち、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンスクシネート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリヘキサメチレンドデカンジオエート、ポリネオペンチルアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリシクロヘキサンジメチルアジペート、及びポリε-カプロラクトンを含む線状及び非線状ポリエステルポリオールが有用である。特に有用なものは、King Industries(Norwalk,Conn.)より商標名「K-FLEX」で入手可能な、K-FLEX 188又はK-FLEX A308などの脂肪族ポリエステルポリオールである。
【0018】
幅広い種類のポリイソシアネートを使用して、脂肪族架橋ポリウレタン層を形成することができる。ポリイソシアネートという用語は、一般に少なくとも2つの末端イソシアネート基を含むイソシアネート官能性材料を含む。ポリイソシアネートとしては、ジイソシアネート(2つの末端イソシアネート基を有する材料)、及びトリイソシアネート(3つの末端イソシアネート基を有する材料)、テトライソシアネート(4つの末端イソシアネート基を有する材料)などのより多官能性のポリイソシアネートが挙げられる。典型的には、二官能性ポリオールが用いられる場合、反応混合物は、少なくとも1つのより多官能性のイソシアネートを含有する。より多官能性のイソシアネートは、架橋ポリウレタンポリマーの形成に特に有用である。ジイソシアネートは、一般に、構造OCN-Z-NCO[式中、Z基は脂肪族基、芳香族基、又は芳香族基と脂肪族基との組み合わせを含有する基であり得る]によって記述することができる。
【0019】
トリイソシアネートなどのより多官能性のポリイソシアネートは、架橋ポリウレタンポリマー層を形成するために特に有用である。トリイソシアネートとしては、ビウレット、イソシアヌレート、及び付加物などから生成されるものなどの多官能性イソシアネートが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの市販のポリイソシアネートとしては、Bayer Corporation(Pittsburgh,Pa.)からのDESMODUR及びMONDURシリーズ、並びにDow Chemical Company(Midland,Mich.)のビジネスグループであるDow PlasticsからのPAPIシリーズの一部分が挙げられる。特に有用なトリイソシアネートとしては、Bayer Corporationから商品名DESMODUR N3300A及びMONDUR 489で入手可能なものが挙げられる。1つの特に好適な脂肪族ポリイソシアネートは、DESMODUR N3300Aである。
【0020】
透明な脂肪族架橋ポリウレタン層を形成するために使用される反応混合物はまた、触媒も含有する。触媒は、ポリオールとポリイソシアネートとの間の逐次反応を促進する。ウレタンの重合に使用するために一般に認識されている従来の触媒は、本開示での使用に好適であり得る。例えば、アルミニウム系、ビスマス系、スズ系、バナジウム系、亜鉛系、又はジルコニウム系の触媒を使用することができる。スズ系触媒は、特に有用である。スズ系触媒は、ポリウレタン中に存在するガス放出の量を有意に低減することが見出されている。ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセチルアセトネート、ジブチルスズジメルカプチド、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジマレアート、ジブチルスズアセトニルアセトネート、及びジブチルスズオキシドなどのジブチルスズ化合物が最も望ましい。具体的には、Air Products and Chemicals,Inc.(Allentown,Pa)から市販されているジブチルスズジラウレート触媒DABCO T-12が特に好適である。触媒は、一般に、少なくとも200ppm又は更には300ppm以上のレベルで含まれる。
【0021】
上記のポリウレタン組成物を利用して、図1に示すようなフィルム積層体を作製することができる。フィルム積層体100は、1/4波長リターダ116と、ポリウレタン層120と、PVOHを含む層110と、を含む。いくつかの実施形態では、1/4波長リターダ116は、1μm~5μmの厚さを有し、ポリウレタン層120は、4μm~10μmの厚さを有し、PVOH層110は、5μm未満又は3μm未満の厚さを有する。
【0022】
いくつかの実施形態では、フィルム積層体100は、例えば、以下のプロセスに従って、作製され、使用される。図2Aに示すように、ステップ1において、PVOH層110は、配向層102上にコーティングして、配向することができる。配向層102は、例えば、ひずみ硬化ポリエステルの層であってもよい。ポリエステルは、カルボン酸サブユニット及びグリコールサブユニットを有し、カルボン酸モノマー分子とグリコールモノマー分子との反応によって生成される。各カルボン酸モノマー分子は、2つ以上のカルボン酸又はエステル官能基を有し、各グリコールモノマー分子は、2つ以上のヒドロキシ官能基を有する。カルボン酸モノマー分子は、全て同じであってもよく、又は2つ以上の異なる種類の分子が存在してもよい。同じことがグリコールモノマー分子にも当てはまる。ポリマー層又はフィルムの特性は、モノマー分子の特定の選択によって変化する。ポリエステルの一例は、例えば、ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールとの反応によって製造することができる、ポリエチレンナフタレート(PEN)である。
【0023】
ポリエステル層のカルボン酸サブユニットを形成するのに使用する好適なカルボン酸モノマー分子としては、例えば、2,6-ナフタレンジカルボン酸及びその異性体、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロオクタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸及びその異性体、t-ブチルイソフタル酸、トリメリット酸、スルホン化イソフタル酸ナトリウム、2,2’-ビフェニルジカルボン酸及びその異性体、並びに、これら酸の低級アルキルエステル、例えば、メチル又はエチルエステルが挙げられる。「低級アルキル」という用語は、この文脈において、C1~C10の直鎖又は分岐アルキル基を指す。用語「ポリエステル」には、グリコールモノマー分子と炭酸エステルとの反応に由来するポリカーボネートも含まれる。
【0024】
ポリエステル層のグリコールサブユニットを形成するのに用いる好適なグリコールモノマー分子としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール及びその異性体、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリシクロデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール及びその異性体、ノルボルネンジオール、ビシクロオクタンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,4-ベンゼンジメタノール及びその異性体、ビスフェノールA、1,8-ジヒドロキシビフェニル及びその異性体、並びに、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンが挙げられる。
【0025】
有用なひずみ硬化ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート、混合ジオール置換コポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレン-2,6-ジカルボン酸、混合ジオール置換コポリエチレンナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ポリエチレンテレフタレート-コナフタレン-2,6-ジカルボン酸、混合ジオール置換ポリエチレンテレフタレート-コナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ポリエチレンテレフタレート-コビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、混合ジオール置換コポリエチレンテレフタレート-コビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ポリエチレンナフタレン-2,6-ジカルボン酸-コビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、混合ジオール置換ポリエチレンナフタレン-2,6-ジカルボン酸-コビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ポリエチレンテレフタレート-コナフタレン-2,6-ジカルボン酸-コビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、及び混合ジオール置換ポリエチレンテレフタレート-コナフタレン-2,6-ジカルボン酸-コビフェニル-4,4’-ジカルボン酸が挙げられ、例えば、混合ジオールは、2つの炭素C2~最大C10の直鎖状、分枝状、又は環状の鎖長から構成することができる。ジメチルスルホナトリウムイソフタレートアイオノマーなどのイソフタレートも、テレフタレート、2,6-ナフタレンジカルボキシレート、及び4,4’-ビフェニルジカルボキシレートに置換することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、配向層102は、PEN又は低溶融PENである。PENは、0.48 IVポリエチレン2,6-ナフタレートポリマーとして記載され得る。低溶融PENは、エステルベースで90モル%のナフタレート部分と10モル%のテレフタレート部分とを含む、0.48 IVコポリエステルとして記載され得る。エチレングリコールは、このポリマー中にジオールを含む。配向層は、キャリアビヒクル(支持基材)として機能し、配向及びアニーリングプロセスの両方の間に平坦なフィルムの生成を可能にする。アニーリング後、配向層は、高い弾性及び寸法安定性をもたらすように機能する。いくつかの実施形態では、配向層102は、複数の層を含む。
【0027】
好ましくは、配向層102は、PVOH層のTgよりも10℃以上低いTgを有する。PVOH層のTgは、層中に存在する水のレベルに基づいて抑制することができる。語句「ガラス転移温度」又は「Tg」は、本明細書において、DSCによる開始ガラス転移温度を指し、ASTM E1256-08 2014に従って測定される。
【0028】
配向層102は、PVOH溶液でコーティングし、乾燥させ、次いで、例えば、任意選択的に熱により、標準的なテンターを使用して、伸張することができる。好ましくは、配向層102は、PVOHでコーティングする前に長さ方向に伸張され、その結果、配向層102は、二軸配向され、PVOHは、一軸にのみ伸張される。二軸配向の配向層102は、有益な機械的特性を提供し、その結果、フィルム積層体は、より堅牢であり、引き裂かれる可能性が低い。
【0029】
PVOH層110は、任意の好適な厚さ、好ましくは、配向後5μm未満の厚さであってもよい。いくつかの実施形態では、PVOH層は、配向後、0.5μm、0.8μm、又は1.2μm~1.5μm、2μm、若しくは3μmの厚さであってもよい。PVOH層は、多層フィルム及びPVOH層を一緒に配向することができるように、上記の多層フィルムの上にコーティング又は押し出されてもよい。PVOHフィルムを製造するための一般的なプロセスは、例えば、米国特許第6,096,375号に記載されている。PVOHコーティング溶液は、典型的には、重量ベースで水中に2~20%のポリマーを含有し、好ましい濃度は、典型的には5~15%である。いくつかの実施形態では、PVOHコーティングは、水、PVOH、及び界面活性剤を含む。Kuraray America(Houston,TX)からのKuraray 2899は、好適なPVOHの例である。PVOHは、95~100%、好ましくは97~99.5%の加水分解度を有するべきである。コーティング乾燥重量は、典型的には、平方メートル当たり2~80グラムの範囲である。次いで、PVOHコーティングされた多層フィルムを高温で伸張して、配向されたPVOH層110及び多層フィルム100を作り出すことができる。この温度は、多層フィルム100の構成要素のうちの少なくとも1つのガラス転移温度よりも高いことが好ましい。一般に、温度は、60~160℃である。いくつかの実施形態では、温度は、105~120℃である。伸張後、フィルム積層体は、好ましくは160~220℃の温度で、ヒートセットすることができる。
【0030】
フィルムは、典型的には、元の寸法の2~10倍に伸張される。フィルムは、元の寸法の3~6倍に伸張されることが好ましい。フィルムは、伸張方向と交差する方向の自然な収縮(伸張比の平方根に等しい)から、拘束される(つまり、伸張方向と交差する方向の寸法の実質的な変化がなくなる)まで、伸張方向と交差する方向に寸法的に弛緩してもよい。フィルムは、長さオリエンタを用いる場合と同様に機械方向に伸張してもよく、若しくはテンターを使用して幅方向に伸張してもよく、又は任意選択的に、キャストウェブがPVOHコーティングの前に1つの方向に伸張される場合、両方に伸張してもよい。
【0031】
図2Bに示すように、ステップ2において、配向されたPVOH層110は、ポリウレタン層120でコーティングされる。例えば、スロットコーターを使用するなど、標準的なコーティング方法を使用する。典型的には、ポリウレタン層は、溶媒でコーティングされるが、いくつかの実施形態では、100%固形分でコーティングされてもよい。いくつかの実施形態では、PVOH層は、ポリウレタン層の接着を促進するために、プライマー処理又はコロナ処理される。
【0032】
図2Cに示すように、ステップ3において、1/4波長リターダ116がポリウレタン層120上にコーティングされる。1/4波長リターダは、例えば、ポリカーボネート、ポリエチルテレフタレート、若しくはポリビニルアルコールなどの配向されたポリマー材料から、又はコーティングされた液晶材料から提供されてもよい。好適な材料としては、例えば、米国特許出願公開第2002/0180916号(Schadtら)、同第2003/028048号(Cherkaouiら)、及び同第2005/0072959号(Moiaら)に記載された直鎖状光重合性ポリマー(linear photopolymerizable polymer、LPP)材料及び液晶ポリマー(liquid crystal polymer、LCP)材料が挙げられる。適切なLPP材料としては、ROP-131 EXP 306 LPPが、適切なLCP材料には、ROF-5185 EXP 410 LCPが挙げられ、両方ともRolic Technologies(Allschwil,Switzerland)から入手可能である。いくつかの実施例では、1/4波長リターダは、所定波長範囲内の少なくとも1つの波長における1/4波長リターダであってもよい。図2Cでは、1/4波長リターダ116は、1つの層として示されているが、例えば、LPP層、LCP半波長板、及びLCP1/4波長板などの複数の層を含むことができる。
【0033】
図2Dに示すように、任意選択のステップ4では、染色ステップにおいて支持を提供するために、プレマスク118が1/4波長リターダ116に追加される。プレマスク118は、典型的には、ポリエチレンテレフタレートを含む。いくつかの実施形態では、プレマスク118は、例えば、プレマスクを除去することなく、欠陥測定又は染料のレベルを正確に測定するための透過率測定を容易にするために、光学的に透明である。プレマスク118は、典型的には、プレマスクを接着するために、感圧接着剤(pressure sensitive adhesive、PSA)層、好ましくは光学的に透明なPSAを含む。PSAは、染色ステップに耐え、かつ除去可能であるように選択される。いくつかの実施形態では、より厚いポリウレタン層(例えば、25μmより厚い)を利用して、染色ステップにおける支持を提供することができる。
【0034】
次に、図2Eに示すように、ステップ5において、配向層102が除去されて、染色のためにPVOH層110を露出させる。
【0035】
図2Fに示すステップ6では、PVOH層110がヨウ素溶液で染色されて、吸収型偏光子を形成する。このプロセスは、ヨウ素染色及びホウ化手順を含む。染料浴は、典型的にはヨウ素の水溶液である。いくつかの実施形態では、100重量部の水に対して0.1重量部~0.5重量部のヨウ素の量。いくつかの実施形態では、ヨウ素の水溶液は、例えば、水中のヨウ素の溶解度を高めるために、ヨウ化物と配合される。有用なヨウ化物の例としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化スズ、及びヨウ化チタンが挙げられる。組成物は、例えば、水(例えば、80重量%)、ヨウ化カリウム(例えば、19.7%)、及びヨウ素(例えば、0.3%)を含むことができる。
【0036】
ホウ化浴組成物は、ホウ酸の水溶液である。組成物は、ホウ酸及び/又はホウ酸塩を溶媒として水中に溶解することによって得ることができる。ホウ酸の濃度は、典型的には、100重量部の水に対して1重量部~10重量部である。いくつかの実施形態では、ホウ化浴は、例えば、水(例えば、80重量%)、ホウ酸(例えば、14%)、及びホウ酸ナトリウム(例えば、6%)を含むことができる。
【0037】
染料浴ステップは、典型的には、例えば、約20~50℃の浴温度で約5秒~5分間行われる。いくつかの実施形態では、染料バッチステップは、約30℃で約30~40秒間行われる。
【0038】
ホウ化ステップは、典型的には、例えば、約40~85℃の浴温度で約15秒~5分間行われる。いくつかの実施形態では、ホウ化ステップは、約65℃で約40~50秒間行われる。
【0039】
ホウ化後、フィルム積層体を水ですすぎ、例えば、70℃のオーブンで5分間、乾燥させることができる。結果として得られたフィルム積層体は、驚くほどクラックがなく、機械的に堅牢である。それらは、反射率を低減するための円偏光フィルムとして使用するために、屈曲可能又は折り畳み可能な表示デバイスなどのデバイスに統合する準備ができている。
【実施例
【0040】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例に記載された特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。
【0041】
【表1】
【0042】
実施例1~2
それぞれ120及び100質量部のPD及びHMDIを、室温でプラスチックビーカー中の10%固形分でトルエンに添加した。これを、均質な混合物になるまで撹拌棒を用いて手で撹拌した。次いで、DTD触媒を150ppmでこの混合物に添加し、最終混合物を完全に混合するまで撹拌棒を用いて手で撹拌した。触媒の量は、KFLEX 188及びDesmodur 3300に基づいた。
【0043】
ウレタン混合物を、スロットダイを介して、目標厚さ7、10μmで10フィート/分の速度の、ポリビニルアルコール及び除去可能なポリエチレンテレフタレート基材からなる移動ウェブにコーティングし、およそ3分間華氏210度のオーブンで熱硬化させた。コーティングをポリビニルアルコール表面上に直接塗布した。
【0044】
実施例3~5
それぞれ110及び100質量部のPD及びHMDIを、室温でプラスチックビーカー中の10%固形分でトルエンに添加した。これを、均質な混合物になるまで手で撹拌した。次いで、DTD触媒を150ppmでこの混合物に添加し、最終混合物を完全に混合するまで撹拌棒を用いて手で撹拌した。触媒の量は、KFLEX 188及びDesmodur 3300に基づいた。
【0045】
ウレタン混合物を、スロットダイを介して、目標厚さ4、7、10μmで10フィート/分の速度の、ポリビニルアルコール及び除去可能なポリエチレンテレフタレート基材からなる移動ウェブにコーティングし、およそ3分間華氏210度のオーブンで熱硬化させた。コーティングをポリビニルアルコール表面上に直接塗布した。
【0046】
実施例6~8
それぞれ105及び100質量部のPD及びHMDIを、室温でプラスチックビーカー中の10%固形分でトルエンに添加した。これを、均質な混合物になるまで撹拌棒を用いて手で撹拌した。次いで、DTD触媒を150ppmでこの混合物に添加し、最終混合物を完全に混合するまで撹拌棒を用いて手で撹拌した。触媒の量は、KFLEX 188及びDesmodur 3300に基づいた。
【0047】
ウレタン混合物を、スロットダイを介して、目標厚さ4、7、10μmで10フィート/分の速度の、ポリビニルアルコール及び除去可能なポリエチレンテレフタレート基材からなる移動ウェブにコーティングし、およそ3分間華氏210度のオーブンで熱硬化させた。コーティングをポリビニルアルコール表面上に直接塗布した。コーティングをポリビニルアルコール表面上に直接塗布した。
【0048】
実施例9~10
それぞれ80及び100質量部のPD及びHMDIを、室温でプラスチックビーカー中の10%固形分でトルエンに添加した。これを、均質な混合物になるまで撹拌棒を用いて手で撹拌した。次いで、DTD触媒を150ppmでこの混合物に添加し、最終混合物を完全に混合するまで撹拌棒を用いて手で撹拌した。触媒の量は、KFLEX 188及びDesmodur 3300に基づいた。
【0049】
ウレタン混合物を、スロットダイを介して、目標厚さ7、10μmで10フィート/分の速度の、ポリビニルアルコール及び除去可能なポリエチレンテレフタレート基材からなる移動ウェブにコーティングし、およそ3分間華氏210度のオーブンで熱硬化させた。コーティングをポリビニルアルコール表面上に直接塗布した。
【0050】
【表2】
【0051】
比較例1~4
9グラムのPEGDA及び0.9グラムのPIを、500mLの琥珀色のガラス瓶中の290.1グラムのMEKに室温で添加した。瓶に蓋をし、全ての成分が溶液中に均一に混合されるまで振とうした。
【0052】
PEGDA混合物を、スロットダイを介して、目標厚さ100、150、200、250nmで50フィート/分の速度の、ポリビニルアルコール及び国際公開第2019/003107号で参照されるものなどの除去不可能な基材からなる移動ウェブにコーティングした。溶媒を、UV硬化前に約2分間、華氏190度のオーブンで加熱することによって、コーティングから除去した。コーティングをポリビニルアルコール表面上に直接塗布した。コーティングの前に、基材表面を250mJ/cmでコロナ処理した。
【0053】
比較例5~7
72.7グラムのPEGDA及び7.3グラムのPIを、500mLの琥珀色のガラス瓶中の120グラムのMEKに室温で添加した。瓶に蓋をし、全ての成分が溶液中に均一に混合されるまで振とうした。
【0054】
PEGDA混合物を、スロットダイを介して、目標厚さ4、7、10μmで10フィート/分の速度の、ポリビニルアルコール及び除去可能な基材からなる移動ウェブにコーティングした。溶媒を、UV硬化前に約2分間、華氏190度のオーブンで加熱することによって、コーティングから除去した。コーティングをポリビニルアルコール表面上に直接塗布した。
【0055】
比較例8~11
79.2グラムのTICTA及び0.8グラムのPIを、500mLの琥珀色のガラス瓶中の120グラムのMEKに室温で添加した。瓶に蓋をし、全ての成分が溶液中に均一に混合されるまで振とうした。
【0056】
TICTA混合物を、スロットダイを介して、目標厚さ210nmで45フィート/分の速度の、ポリビニルアルコール及び国際公開第2019/003107号で参照されるものなどの除去不可能な基材からなる移動ウェブにコーティングした。溶媒を、UV硬化前に約40秒間、華氏165~180度のオーブンで加熱することによって、コーティングから除去した。コーティングをポリビニルアルコール表面上に直接塗布した。コーティングの前に、基材表面を0、250、500、750mJ/cmでコロナ処理した。
【0057】
比較例12~14
79.2グラムのTICTA及び0.8グラムのPIを、500mLの琥珀色のガラス瓶中の120グラムのMEKに室温で添加した。瓶に蓋をし、全ての成分が溶液中に均一に混合されるまで振とうした。
【0058】
TICTA混合物を、スロットダイを介して、目標厚さ4、7、10μmで10フィート/分の速度の、ポリビニルアルコール及び除去可能な基材からなる移動ウェブにコーティングした。溶媒を、UV硬化前に約2分間、華氏190度のオーブンで加熱することによって、コーティングから除去した。コーティングをポリビニルアルコール表面上に直接塗布した。
【0059】
比較例15~18
79.2グラムのAO及び0.8グラムのPIを、500mLの琥珀色のガラス瓶中の120グラムのMEKに室温で添加した。瓶に蓋をし、全ての成分が溶液中に均一に混合されるまで振とうした。
【0060】
AO混合物を、スロットダイを介して、目標厚さ210nmで45フィート/分の速度の、ポリビニルアルコール及び国際公開第2019/003107号で参照されるものなどの除去不可能な基材からなる移動ウェブにコーティングした。溶媒を、UV硬化前に約40秒間、華氏165~180度のオーブンで加熱することによって、コーティングから除去した。コーティングをポリビニルアルコール表面上に直接塗布した。コーティングの前に、基材表面を0、250、500、750mJ/cmでコロナ処理した。
【0061】
比較例19~21
79.2グラムのAO及び0.8グラムのPIを、500mLの琥珀色のガラス瓶中の120グラムのMEKに室温で添加した。瓶に蓋をし、全ての成分が溶液中に均一に混合されるまで振とうした。
【0062】
AO混合物を、スロットダイを介して、目標厚さ4、7、10μmで10フィート/分の速度の、ポリビニルアルコール及び除去可能な基材からなる移動ウェブにコーティングした。溶媒を、UV硬化前に約2分間、華氏190度のオーブンで加熱することによって、コーティングから除去した。コーティングをポリビニルアルコール表面上に直接塗布した。
【0063】
比較例22~25
79.2グラムのPAO及び0.8グラムのPIを、500mLの琥珀色のガラス瓶中の120グラムのMEKに室温で添加した。瓶に蓋をし、全ての成分が溶液中に均一に混合されるまで振とうした。
【0064】
PAO混合物を、スロットダイを介して、目標厚さ210nmで45フィート/分の速度の、ポリビニルアルコール及び国際公開第2019/003107号で参照されるものなどの除去不可能な基材からなる移動ウェブにコーティングした。溶媒を、UV硬化前に約40秒間、華氏165~180度のオーブンで加熱することによって、コーティングから除去した。コーティングをポリビニルアルコール表面上に直接塗布した。コーティングの前に、基材表面を0、250、500、750mJ/cmでコロナ処理した。
【0065】
比較例26~28
79.2グラムのPAO及び0.8グラムのPIを、500mLの琥珀色のガラス瓶中の120グラムのMEKに室温で添加した。瓶に蓋をし、全ての成分が溶液中に均一に混合されるまで振とうした。
【0066】
PAO混合物を、スロットダイを介して、目標厚さ4、7、10μmで10フィート/分の速度の、ポリビニルアルコール及び除去可能な基材からなる移動ウェブにコーティングした。溶媒を、UV硬化前に約2分間、華氏190度のオーブンで加熱することによって、コーティングから除去した。コーティングをポリビニルアルコール表面上に直接塗布した。
【0067】
比較例29
水中の40%の固形分で供給された75質量部のAPETPUを、925質量部の水に添加し、均質になるまで混合した。次いで、混合物を、シリンジを介して手で移動キャストポリエステルウェブ上にコーティングし、#18マイヤーロッドで計量した。続いて、キャストウェブを横方向に伸張し、ウェブがその開始幅の6倍になるまでテンターオーブンで乾燥させた。最終コーティング厚さは、500nm未満であった。
【0068】
比較例30
水中の40%の固形分で供給された125質量部のAPETPUを、875質量部の水に添加し、均質になるまで混合した。次いで、混合物を、シリンジを介して手で移動キャストポリエステルウェブ上にコーティングし、#18マイヤーロッドで計量した。続いて、キャストウェブを横方向に伸張し、ウェブがその開始幅の6倍になるまでテンターオーブンで乾燥させた。最終コーティング厚さは、500nm未満であった。
【0069】
比較例31
水中の40%の固形分で供給された175質量部のAPETPUを、825質量部の水に添加し、均質になるまで混合した。次いで、混合物を、シリンジを介して手で移動キャストポリエステルウェブ上にコーティングし、#18マイヤーロッドで計量した。続いて、キャストウェブを横方向に伸張し、ウェブがその開始幅の6倍になるまでテンターオーブンで乾燥させた。最終コーティング厚さは、500nm未満であった。
【0070】
比較例32
水中の35%の固形分で供給された86質量部のAPCPUを、914質量部の水に添加し、均質になるまで混合した。次いで、混合物を、シリンジを介して手で移動キャストポリエステルウェブ上にコーティングし、#18マイヤーロッドで計量した。続いて、キャストウェブを横方向に伸張し、ウェブがその開始幅の6倍になるまでテンターオーブンで乾燥させた。最終コーティング厚さは、500nm未満であった。
【0071】
比較例33
水中の35%の固形分で供給された143質量部のAPCPUを、857質量部の水に添加し、均質になるまで混合した。次いで、混合物を、シリンジを介して手で移動キャストポリエステルウェブ上にコーティングし、#18マイヤーロッドで計量した。続いて、キャストウェブを横方向に伸張し、ウェブがその開始幅の6倍になるまでテンターオーブンで乾燥させた。最終コーティング厚さは、500nm未満であった。
【0072】
比較例34
水中の35%の固形分で供給された200質量部のAPCPUを、800質量部の水に添加し、均質になるまで混合した。次いで、混合物を、シリンジを介して手で移動キャストポリエステルウェブ上にコーティングし、#18マイヤーロッドで計量した。続いて、キャストウェブを横方向に伸張し、ウェブがその開始幅の6倍になるまでテンターオーブンで乾燥させた。最終コーティング厚さは、500nm未満であった。
【0073】
実施例1~10及び比較例1~4、8~11、15~18、22~25、29~37に対する後続のステップ
次に、1/4波長板を作製した。材料を溶媒でコーティングし、統合型偏光子のパス方向に対して45度に方向づけられた光学遅軸を有するウレタンコーティング上でUV硬化した。コーティングされた層は、550nmの波長で138nmの位相差を有していた。(位相差は、Re=(ni-nj)dにより定義され、式中、ni-njは、コーティングされた材料の光学遅軸と速軸との間の平面内複屈折差であり、dは、コーティングされた層の厚さである。)利用したコーティング材料は、米国特許出願公開第2002/0180916号、同第2003/028048号及び同第2005/0072959号に記載のものと同様の材料であり、直鎖状光重合性ポリマー(linear photopolymerizable polymer、LPP)材料は、ROP-131 EXP 306 LPPであり、液晶ポリマー(liquid crystal polymer、LCP)材料は、ROF-5185 EXP 410 LCP(両方ともRolic Technologies(Allschwil,Switzerland)から入手可能)であった。
【0074】
接着試験方法1の測定
基材、PVOH、プライマー、及びQWPからなる試料を、両面テープ(3M 415(3M Company(St.Paul,MN)))で、直線偏光子及びバックライトの上のガラスパネルにテープ付けした。QWPは、空気に向かって面を上にして向けた。次に、試料を、1mm離れた歯間隔を有する11歯のブレード(Gardco PA-2053(Paul N.Gardner Company(Pompano Beach,FL))など)を使用して、注意深くスコアリングした。次いで、試料を、スコアマークの第1のセットに垂直に再び注意深くスコアリングして、10×10の正方形グリッドを作成した。1インチのテープ(3M 8403)を、スコアリングされたグリッドを完全に覆う様式で、スコアマークに対して45度の角度でスコアリングされたグリッドに押圧した。除去前に、1インチのテープを30秒間適用した。グリッドを直線偏光子を通して視覚的に観察し、保持パーセントを記録した。
【0075】
【表3】
【0076】
接着試験方法2の測定
接着は、試験方法1の修正バージョンを使用して測定した。この方法は、プライマーコーティングが除去可能な基材に適用された場合のために開発された。基材が除去可能である場合、基材とプライマーコーティングとの間の接着は、テープ除去に対して十分ではなかったため、基材を最初に除去する必要があった。更に、接着試験方法1で使用されるブレードは、それを支持するための基材を有さないコーティング積層体を通って引き裂いた。したがって、クロスハッチグリッドをスコアリングするために非常に鋭いかみそり刃が必要であった。この試験方法は、以下のとおりである。
【0077】
最初に、紙ライナー(3M 415(3M Company(St.Paul,MN)))を有する2インチの両面テープを、コーティングされたフィルムの1/4波長板側に機械方向に適用した。次に、除去可能な基材をコーティングされたフィルム積層体から除去し、ポリビニルアルコール、ウレタンコーティング、及び1/4波長板を紙ライナーを有する両面テープに接着したままにした。次いで、紙ライナーを両面テープから除去し、テープ/フィルム積層体をゴムローラーでガラスプレートにラミネートした。ガラスプレートは、直線偏光子(Sanritz HLC2-5618(Sanritz Corporation(Tokyo,JP)))がガラスプレートとバックライトパネルとの間に位置した状態で、バックライトの上に位置した。水性ヨウ素溶液を、綿の先端付きのアプリケータを介してフィルム積層体の露出表面に適用した。フィルム積層体がヨウ素で染色された場合、全ての層が正常に転写したことを示した。フィルム積層体が染色されなかった場合、層の一部又は全てが転写しなかったことを示した。2mm離れて位置し、かつ2.5インチの長さの5本の真っ直ぐな平行線を、ステンシル装置によってガイドされたかみそり刃でフィルム積層体にスコアリングした。寸法が等しく、かつ第1の5本の線に対して垂直に向けられた更に5本の平行線を、5×5の正方形のグリッドが作成されるようにスコアリングした。1インチのテープ(3M 8403(3M Company(St.Paul,MN)))を、スコアリングされたグリッドを完全に覆う様式で、スコアマークに対して45度の角度でスコアリングされたグリッドに押圧した。除去前に、1インチのテープを30秒間グリッドに接着した。除去後、1/4波長板を照明し、欠落したポリビニルアルコールの任意の領域を示すために、グリッドを、ブロック状態から約15度に向けられて拡大鏡に取り付けられた直線偏光子を通して視覚的に観察した。次いで、グリッド領域内の保持パーセントを記録した。完全なフィルム積層体が転写しなかった場合、接着の失敗を示し、同様に記録した。あるいは、グリッドをヨウ素溶液で染色し、直線偏光子なしで視覚的に観察し、グリッド領域内の保持パーセントを記録することができる。
【0078】
【表4】
【0079】
クラック試験方法
キャリア基材を有するPVOH、プライマー、及びQWPを含むコーティング積層体が上記のプロセスに従ってヨウ素染色浴、ホウ化浴、すすぎ、及び乾燥に供された後に、クラックを合格/不合格ベースで評価した。何であれ任意のクラックが存在した場合、不合格と見なされたが、試料にクラックが存在しなかった場合、合格と見なされた。
【0080】
ヨウ素吸収試験方法
プライマーを、PVOHを有さない基材上にコーティングし、上記のプロセスに従ってヨウ素染色浴、ホウ化浴、すすぎ、及び乾燥させた。次に、プライマー層を、黄色について視覚的に評価し、任意の色が観察された場合に不合格グレードを与えた。色が見つからなかった場合、合格と見なされた。
【0081】
【表5】
【0082】
本明細書中に引用している刊行物の完全な開示は、それぞれが個々に組み込まれたかのように、その全体が参照により組み込まれる。本発明に対する様々な改変及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなるであろう。本発明が本明細書で説明されている例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されることは意図されておらず、このような実施例及び実施形態は例としてのみ提示されており、本発明の範囲は、本明細書で以下に記載されている特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図されていると理解されたい。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
【国際調査報告】