(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】既知のオブジェクトパスを使用して、複数の地理的に遠隔にある受信局によって送信器の位置を特定する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 5/02 20100101AFI20230222BHJP
G01S 19/14 20100101ALI20230222BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
G01S19/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539118
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(85)【翻訳文提出日】2022-07-28
(86)【国際出願番号】 FR2020052625
(87)【国際公開番号】W WO2021130463
(87)【国際公開日】2021-07-01
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515349711
【氏名又は名称】サフラン データ システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ギヨー,バティスト
(72)【発明者】
【氏名】ピカール,ヤン
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062CC07
5J062DD22
5J062EE04
(57)【要約】
本発明は、送信器の位置を特定する方法に関する。本方法は、位置特定システムの処理局の処理ユニットによって実施される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信器の位置を特定する方法であって、本方法は、位置特定システムの処理局の処理ユニットにおいて実装され、
地理的に遠隔にある受信局によって取得された信号を受信するステップであり、
前記信号は、各受信局のローカル時間ベースで日付がつけられており、位置特定されるべき送信器からの信号に対応しており、かつ、少なくとも1つの既知のオブジェクトからのものである、
ステップと、
日付がつけられた前記信号に基づいて、
位置特定されるべき前記送信器および前記オブジェクトに関する測定されたTDOA(TDOA_objet_
ij
MES、TDOA_emetteur
ij
MES)、及び/又は、
位置特定されるべき前記送信器および前記既知のオブジェクトに関する測定されたFDOA(FDOA_objet_
ij
MES、FDOA_emetteur
ij
MES)、
を決定する、ステップと、
前記既知のオブジェクトに関する既知のエフェメリス、および、前記受信局の地理的位置に基づいて、
前記既知のオブジェクトに関する理論的TDOA(TDOA_objet_
ij
TH)、及び/又は、理論的FDOA(FDOA_objet_
ij
TH)、
を決定する、ステップと、
前記既知のオブジェクトに関する、前記測定されたTDOA及び/又はFDOAと、前記理論的TDOA及び/又はFDOAとの差異をとることによって、前記測定されたTDOA及び/又はFDOAに影響する残差誤差を決定するステップであり、
各受信局が、ローカルクロックを補正し、または、
前記処理局が、各受信局からの信号の部分のタイムスタンプを補正する、
ステップと、
一旦、前記受信局が、ローカル時間ベースを補正し、かつ、前記処理局が、各受信局からの信号の部分の前記タイムスタンプを補正すると、
測定されたTDOA及び/又はFDOAを使用して、前記送信器の位置を決定する、
ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記方法は、
複数のオブジェクトに関する前記測定されたTDOA及び/又はFDOAに基づいて、前記測定された時間領域または周波数領域の分離の信頼性の指標を決定するステップ、を含み、
前記信頼性の指標は、前記既知のオブジェクトのエフェメリスが前記ローカルクロックの補正に使用できるか否かを決定することを可能にし、特には、前記既知のオブジェクトが操作中であるか否かを決定する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、
前記測定されたTDOA及び/又はFDOAに影響する残差に基づいて、前記ローカル時間ベースの補正に係るデータの数を決定するステップと、
決定された前記ローカル時間ベースの補正に係るデータを各受信局に送信するステップであり、前記各受信局は、そのようにローカルクロックを補正する、ステップと、
を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、
決定された前記ローカル時間ベースの補正を保持するステップ、を含み、
前記処理局は、同様に、各受信局から受信した信号の部分のタイムスタンプを補正する、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、
各受信局によって行われた測定に基づいて、前記既知のオブジェクトの位置を決定するステップ、を含む、
請求項1乃至4いずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記位置は、前記信頼性の指標を決定するために使用される、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記信頼性の指標を決定するステップは、
既知であるが、前記残差の整合性をチェックするには異なる、複数のオブジェクトについて測定された複数のTDOA及び/又はFDOAを、互いに比較することからなり、かつ、
前記ローカルクロックの補正に使用できる全てのオブジェクトを決定する、
請求項2乃至4いずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記受信局は、間欠的に、衛星測位システムから来る信号によって相互に同期される、
請求項1乃至7いずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
位置特定されるべき送信器の位置を特定するためのシステムであって、前記システムは、
請求項1乃至8いずれか一項に記載の方法を実施するように構成された、処理ユニットと、
少なくとも2つの受信局と、を含み、
前記少なくとも2つの受信局は、それぞれ、
ローカル時間ベースを提供するように構成された、ローカルクロックと、
位置特定されるべきオブジェクトから信号を取得するように構成された、第1受信器と、を含み、
前記第1受信器は、さらに、既知のオブジェクトから信号を取得するように構成されており、前記取得された信号は、前記ローカル時間ベースによって日付がつけられている、
システム。
【請求項10】
各受信局は、さらに、衛星測位システムから信号を取得するように構成された第2受信器、を含み、
前記第2受信器は、さらに、前記第2受信器によって取得された信号を復調するように構成されており、そこから絶対時間ベースを抽出し、各受信局の前記ローカル時間ベースを補正する、
請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記処理局は、前記受信局のうち1つで構成される、
請求項9または10に記載のシステム。
【請求項12】
コード命令を備えるコンピュータプログラムであって、
前記命令がコンピュータによって実行されると、
請求項1乃至8いずれか一項に記載の方法を、前記コンピュータに実施させる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オブジェクト、そして、より詳細には、無線周波数波または信号を送信しているオブジェクトの、位置を特定する(location)分野に関する。
【0002】
より一般的に、本発明は、複数のセンサを備え、かつ、地理的に異なる場所で感知される1つの同一の信号の特性に係る多様性を本目的のために使用して、信号の受信、分析、および使用を専用に行うシステムに関する。
【0003】
本発明は、より詳細には、送信器に係るシステムの場所から地理的に遠隔にある受信局の同期化に関する。
【背景技術】
【0004】
信号を送信または受信しているオブジェクトの位置を、遠隔で、正確に特定するために、使用される主な方法の一つは、複数の地理的場所に配置されている複数の局によって受信された信号の1つ、および、この信号の同じ部分の受信日時(receiving dates)における分離(separation)の精密な測定を必要とする。特に、位置特定(location)は、TDOA(Time Difference of Arrival、到着時間差)測定およびFDOA(Frequency Difference of Arrival、到着周波数差)測定を一緒に、または、別個に利用することによって、オブジェクトの軌跡を計算することによって実行される。
【0005】
信号のTDOAおよびFDOA部分を測定するために、各局によってローカル時間ベースで日付がついた(dated)信号が送信され、次いで、TDOAおよびDOAである時間領域(time-domain)および周波数領域(frequency-domain)の分離をそこから抽出するために、例えば、共通処理ユニットにおける時間および周波数の相関によって比較される。FDOAおよびTDOAを測定する別の手段は、例えば、信号の識別可能な要素の受信に係る時間または周波数を、各ステーションによって同時に受信されたものを比較することからなる。文献EP1701177(A2)およびUS2009/189851(A1)は、そうした技術を説明している。
【0006】
信頼性の高い測定を行うためには、各局のローカル時間ベースを全て相互に同期させることが重要である。
【0007】
これを行うために、各局は、例えば、GPS、GLONASS、Galileo、またはBeiDu、といった、GNSS(Global Navigation Satellite System)として知られる1つ以上の衛星測位システムから信号を受信する。具体的に、これらのGNSSシステムは、絶対的な世界時(universal time)、並びに、極めて安定した周波数基準を取り出すことを可能にし、それに対してローカル時間のベースがスレーブ(slaved)される。
【0008】
一つ問題は、ときどき、GNSSシステムへのアクセスがスクランブルされ、劣化し、または、(誤作動または悪意のある行為の後で)利用できないことさえあり、それが、この世界時の喪失につながることである。たとえ、局が、非常に安定したローカルクロックを備えていたとしても、それらはGNSSの喪失からドリフトし、多かれ少なかれ、もはや要求される測定精度を保証しない十分な分離を迅速に結果として生じる。
【0009】
従って、位置特定(location)における連続性を確保するために、特には、重要なアプリケーションが存在する場合、位置特定システム(location system)の十分な運用上のセキュリティを保証することが必要であるため、この喪失に対する所定のレジリエンス(resilience)が必要である。重要なアプリケーションは、例えば、そうしたオペレータに適用可能な規制要件を満たすために、低軌道における衛星コンステレーション(satellite constellation)の軌道のモニタリングであり、特には、空間オブジェクト間の衝突のリスク(結合のリスク)に関する。
【0010】
レジリエンスを有するために、システムのGNSSシステムとの同期は、いくつかのコンステレーション(例えば、GPS、GLONASS、Galileo、BeiDu、等)をサポートすることができるが、使用される信号は、同一周波数帯域だけに集中しており、干渉およびスクランブルに対する共通の脆弱性を引き起こしている。
【0011】
世界時の喪失を緩和するために、各ステーションに対して共通の時間ベースを、ケーブルリンク、例えば、光ファイバを介して、全ての受信局までの長距離にわたり、配布するための準備が成され得る。各ローカル時間ベースは、この共通時間ベースを使用する。
【0012】
しかしながら、自身の手段に基づいたそうしたソリューションは、負担が大き過ぎるだろうし、そして、様々なプロトコルおよびハードウェアの多くの層を横断することが必要な公衆ネットワークの使用は、特に、精度差(differential accuracy)(終端での顕著な時間ジッタ)に関して、良好な性能が得ることができない。
【0013】
ローカルクロックを、DCF77といった、LF(低周波)での時間ベースのラジオ放送にスレーブさせることも、また、考えられるが、これらのシステムの精度は、本要求にとっては不十分である。
【0014】
また、局の時間ベースを互いに対して正確にリセットするための別の手段を有すること、かつ、少なくともそれらの差動ドリフトを制御することが必要である。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、送信器を正確に位置特定するために、遠隔にある(remote)局のローカルクロックの相対的なドリフトを、それらを同期させるといった方法で、非常に正確に推定することを可能にする方法を提供する。使用されるローカルクロックのタイプの機能として、その信頼性は、10日以上、または、それ以上にわたり非常に大きく、それは、絶対時計が存在しないときに、天体(celestial object)のエフェメリス(ephemerides)を正確に使用することができる時間に相当する。
【0016】
この目的のために、本発明は、第1態様に従って、送信器の位置を特定する方法であって、位置特定システムの処理局の処理ユニットにおいて実装される方法を提供する。本方法は、
-地理的に遠隔にある受信局によって取得された信号を受信するステップであり、前記信号は、各受信局のローカル時間ベースで日付がつけられており、位置特定されるべき送信器からの信号に対応しており、かつ、少なくとも1つの既知のオブジェクトからのものである、ステップと、
-日付がつけられた前記信号に基づいて、
・位置特定されるべき前記送信器および前記オブジェクトに関する測定されたTDOA、及び/又は、
・位置特定されるべき前記送信器および前記既知のオブジェクトに関する測定されたFDOA、を決定する、ステップと、
-前記既知のオブジェクトに関する既知のエフェメリス、および、前記受信局の地理的位置に基づいて、
・前記既知のオブジェクトに関する理論的TDOA、及び/又は、
・理論的FDOA、を決定する、ステップと、
-前記既知のオブジェクトに関する、前記測定されたTDOA及び/又はFDOAと、前記理論的TDOA及び/又はFDOAとの差異をとることによって、前記測定されたTDOA及び/又はFDOAに影響する残差誤差を決定するステップと、
-前記測定されたTDOA及び/又はFDOAに影響する残差に基づいて、ローカル時間ベースの補正に係るデータの数を決定するステップと、を含む。
【0017】
本発明の第1態様に従った方法は、単独で、または、技術的に可能なそれらの任意の組み合わせで、以下の特徴によって完成させることができる。
-本方法は、複数のオブジェクトに関する前記測定されたTDOA及び/又はFDOAに基づいて、前記測定された時間領域または周波数領域の分離の信頼性の指標を決定するステップを含み、前記信頼性の指標は、前記既知のオブジェクトのエフェメリスが前記ローカルクロックの補正に使用できるか否かを決定することを可能にし、特には、前記既知のオブジェクトが操作中であるか否かを決定する。
-本方法は、局によって行われた測定に基づいて、オブジェクトまたは既知のオブジェクトの位置を決定するステップを含む。
-前記位置は、信頼性の指標を決定するために使用される。前記決定は、有利なことに、既知であるが、前記残差の整合性をチェックするには異なる、複数のオブジェクトについて測定された複数のTDOA及び/又はFDOAを、互いに比較することからなり、かつ、前記ローカルクロックの補正に使用できる全てのオブジェクトを決定する。
-本方法は、一旦、前記受信局が、ローカル時間ベースを補正すると、測定されたTDOA及び/又はFDOAを使用して、前記送信器の位置を決定するステップ、を含む。
-前記受信局は、好ましくは間欠的に、衛星測位システムから来る信号によって相互に同期される。
【0018】
第2態様に従って、本発明は、本発明の第1態様に従った方法を実施するように構成された処理ユニットを含み、位置特定されるべき送信器の位置を特定するためのシステムの処理局を提供する。
【0019】
第3態様に従って、本発明は、位置特定されるべき送信器の位置を特定するためのシステムを提供し、前記位置特定システムは、本発明の第2態様に従った処理局を含み、前記受信局は、
-ローカル時間ベースを提供するように構成されたローカルクロックと、
-位置特定されるべきオブジェクトから信号を取得するように構成された第1受信器と、を含み、
-前記第1受信器は、さらに、天体または人工オブジェクトから信号を取得するように構成されており、その挙動(behavior)は予測可能であるか、または既知であり、前記取得された信号は、ローカル時間ベースによって日付がつけられる。
【0020】
各受信局は、有利なことに、さらに、衛星測位システムから信号を取得するように構成された第2受信器、を含む。前記第2受信器は、さらに、前記第2受信器によって取得された信号を復調するように構成されており、そこから絶対時間ベースを抽出し、各受信局の前記ローカル時間ベースを補正する。
【0021】
本発明は、第4態様に従って、第3態様による少なくとも2つの受信局、および、本発明の第2態様による処理局、を備える位置特定システムを提供する。
【0022】
有利にことに、前記位置特定システムでは、処理局が、受信局の1つによって構成されている。
【0023】
本発明は、第5態様に従って、コンピュータプログラム製品を提供する。コンピュータプログラム製品がコンピュータによって実行されると、本発明の第1態様に従った位置特定方法を実施する。
【0024】
本発明の原理は、従って、複数の受信局の時間ベースを互いにリセットすることからなる。自然の、または、人工的な天体からの信号を、無線周波数手段を介して受信することによるものである。それらのオブジェクトは、視認性と配置が共通しており、GNSSコンスタレーションとは独立して知られているか、または、予測可能である。特に、これらは、天体であり得る。その軌跡は、システム自体によって推定される。ここで、これらのオブジェクトは「既知のオブジェクト(“known object”)」という表現で参照される。
【0025】
これを行うために、遠隔にある受信局は、ローカル時間ベースを備えており、非常に安定した周波数で振動しているクロック信号のティック(tick)を数えることによって、日付(date)を提供する。
【0026】
それらは、アンテナおよび無線周波数装置を介して、位置特定されるべき送信器の信号、利用可能な場合にはGNSS信号、および、少なくとも2つの受信局、より良好な精度のためには好ましくは3つの受信局から、視認性が共通する他の既知のオブジェクトの信号を収集する。位置特定されるべきターゲットの信号、および、時間領域および周波数領域の基準ソースからの信号に係るコヒーレント変換および同期サンプリングの後で、デジタル化された信号サンプルシーケンスが、ローカル時間ベースによって日付がつけられる。
【0027】
受信局は、該当する場合には、受信局のうち1つと共配置され得る処理ユニットと通信する。それらは、追跡される送信器(位置特定されるべきもの)、並びに、基準オブジェクトについて、日付がつけられたこれらの信号シーケンスを送信する。シーケンス間に十分な時間領域および周波数領域のオーバーラップが存在する場合、処理ユニットは、局の各ペアについて、1つおよび同一のオブジェクトまたは送信器からの信号に係る最大の相関を提供する時間および周波数分離を探索することができる。これらの時間および周波数分離(TDOAおよびFDOA)は、従って、各受信局のそれぞれのローカル時間ベースで計算される。天体メカニズムに従って、既知のオブジェクトのエフェメリスが絶対時間ベース(または、代替的に、処理局のエフェメリス)で知られている場合、処理ユニットは、また、同じ局のペアについてその理論的TDOA(および、適用可能な場合は、FDOA)も計算する。
【0028】
局のペアの時間ベースが完全に整合され、かつ、較正されると、それらは絶対時間に対してスレーブされ、次いで、理論的および測定されたTDOAおよびFDOAは、最も近い回復不能(irreducible)誤差に一致することを要する。それらの中には、統計的にゼロであり、かつ、短期効果だけを有する、熱受信器ノイズおよび短期クロックジッタが存在する。
【0029】
中長期的には、TDOA/FDOAの残差誤差、すなわち、測定値と理論値との間の分離は、それがゼロでない場合、以下の寄与およびオフセットによって形成される。
-ローカル時間ベースのドリフト、
-タイムスタンプとローカル時間ベースとの間のバイアス、
-大気伝播および電離層伝搬の拡散、である。
これらのオフセットが、受信したオブジェクトとは独立して、各ステーションに固有であると考えることができる場合、測定されたTDOA/FDOAと理論的なTDOA/FDOAとの間の残留誤差は、従って、局のペアそれぞれの間のこれらのオフセットの差異の推定値を提供し、そして、基準オブジェクトが何であれ、そのエフェメリスは既知である。処理ユニットは、従って、通常のキャリブレーションフェーズで、これらの値を計算する。
【0030】
複数の既知のオブジェクトがあり、そのエフェメリスが既知であれば、推定はより正確になる。しかしながら、エフェメリスが知られていないオブジェクトについて位置を特定する場合には、このタイムスタンプ分離の推定に関連する補正を適用することができる。すなわち、残差を差し引くことができる。それはユニークであり、かつ、補正されたTDOA/FDOA測定は、理論的計算、すなわち、抽出することができるエフェメリスと、必然的に一致するからである。
【0031】
GNSS信号を喪失する、各受信局の時間ベースはゆっくりとドリフトし、数日間残る日付分離(date separation)は、絶対時間ベースで表現されたエフェメリスを正しく使用できるほど十分に低いままである。既知のオブジェクト、すなわち、いかなる操作も経験しない星または静止衛星といった、天体メカニズムによって、エフェメリスが予測可能であるもの、信号を収集し、そして、受信局の時間ベース間のタイムスタンピング分離を引き続き補正するために、それらを使用する。
【0032】
良好な動作セキュリティを保証するために、システムは、複数の既知のオブジェクトを順次に収集するようにプログラムされている。次に、全てのオブジェクトが、日付分離の補正に係る一貫したセット提供しているかをチェックする。所定のオブジェクトが誤った補正を提供する場合、それらは(一時的に)基準のリストとは別にしておく必要がある。静止衛星の場合、このことは、特に、その間に操作が行われたことを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の他の特徴、目的、および利点は、純粋に例示的かつ非限定的であり、かつ、添付の図面を参照して読まれることを要する、以下の説明から明らかになるであろう。
【
図1】
図1は、本発明に従った、位置を特定するシステム(locating system)を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明に従った、位置を特定するシステムの受信局を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明に従った、位置を特定する方法を示している。
【0034】
全ての図において、類似の要素は、同一の参照番号を有している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1に関して、無線周波数信号の送信器3の位置を特定するためのシステム1は、少なくとも2つの受信局2a、2b、2cを含んでいる。
【0036】
受信局2a、2b、2cは、地理的に離れ、分離され、かつ、遠くにあり、そして、これらの受信局2a、2b、2cからの信号を処理するために使用される処理局6を伴うリンク内に存在しており、これらの局それぞれによって受信された1つの信号および同じ信号に係る時間オフセットおよび周波数オフセットを決定し、そして、これらのオフセットに基づいて、送信器3の軌跡、および、従って、その位置を、それらから推測する。これらの時間オフセットおよび周波数オフセットが、導入で説明されたTDOAおよびFDOAである。処理局6は、
図1において、受信局から分離されているが、特定の実施形態において、受信局の1つは、また、処理局であってもよい。
【0037】
位置特定されるべき送信器3は、例えば、衛星であるが、少なくとも2個の受信局によって受信され得る無線周波数信号を送信する限り、任意のオブジェクトであり得る。
【0038】
図1では、3個の局が示されており、2個の局で十分であるが、局の数が多いほど計算の精度はより良好である。
【0039】
図2に関して、各受信局2x(x=aまたはbまたはc)は、位置特定されるべき送信器3から信号を取得するように構成された第1受信器21x、および、1つ以上のGNSSコンステレーション5のうち1つ以上の衛星から信号を取得するように構成された第2受信器23xを含んでいる。
【0040】
さらに、第1受信器21xは、既知のオブジェクト4から信号を取得するように構成されている。具体的に、既知のオブジェクトの処理は、受信局に固有の欠陥(imperfection)の特性パラメータ、および、送信器3の位置特定の精度を低下させることを評価するために役立つので、結果的に、既知のオブジェクト4から来る信号を受信する処理が、同じ劣化を受け、かつ、専用の受信線を介さないことが不可欠である。
【0041】
自然の、または、人工的な天体からの信号は、さらにこれから説明されるように、GNSS信号の欠如を緩和することを可能にする。
【0042】
これらの天体または人工オブジェクトは、例えば、星または他の静止衛星である。以下の説明では、「既知のオブジェクト(“known object”)」という表現がこれらのオブジェクトを示すために使用されている。これらの既知のオブジェクトは、それらのエフェメリスが周知であり、かつ、それらの軌跡が信頼性をもって計算でき、従って、TDOA及び/又はFDOAが予測できるという利点を有する。具体的には、TDOAおよびFDOAは予測可能であるため、予測から得られた測定値および値に基づいて計算された値を比較することによって、位置特定される送信器のTDOA及び/又はFDOAの計算における誤差を評価することが可能である。
【0043】
さらに、放射天体から放出される信号は、その等価温度に関連するノイズであり、従って、その温度が3ケルビンの宇宙放射線(太陽、月、クエーサー、など)に関連して比較的高い場合に検出可能である。地上局は、これらの天体からの距離と比較すると比較的近いので、この天体を仮想的に同一の角度から見ることができ、そして、従って、同じ熱ノイズを受けることになるが、時には、局の相互分離の差異のせいで、わずかにシフトする。
【0044】
従って、2つの信号の相関は、これらの2つの信号が再配置されたときに最大となる。すなわち、広帯域ホワイトノイズの自己相関関数は、実際には、時間0において「ディラック(“Dirac”)」パルスである。従って、ノイズは相関特性を有する(ノイズの自己相関関数のフーリエ変換は、定義によりそのスペクトルを与える)ことが理解されるだろう。
【0045】
図2に戻ると、各受信局2a、2b、2cは、さらに、ローカル時間ベースtlocal2xを提供するように構成されたローカルクロックh2xを含んでいる。さらにまた、受信器21x、23xは、このクロックに時間合わせされる。用語「ローカルクロック(“local clock”)」は、安定した周波数信号を提供し、その立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジにおいて、各受信器による取得のサンプリングをトリガし、時間合わせすることを可能にする、発振器を意味するものと理解される。さらに、クロックエッジのカウントは、各取得のサンプルの一般的なタイムスタンピングを提供する。
【0046】
GNSS信号が利用可能である場合、ローカル時間ベースは、GNSS信号の復調から生じる絶対時間ベースに同期される。この点に関して、第2受信器23xは、衛星測位システム5から信号を取得するように構成されており、そして、さらに、各受信局の各ローカル時間ベースを補正するために、そこから絶対時間ベースを抽出するために、取得された信号を復調するように構成されている。
【0047】
従って、受信局2xは、この絶対時間ベースを使用して、衛星測位システムからの信号によって相互に同期される。GNSS信号が利用できない場合、もはや絶対時間にスレーブされなくないローカル時間ベースは、同期における分離が時間と共に増加するように、全ての受信局に対して弱く、しかし独立にドリフトすることに留意すること。
【0048】
各受信局2a、2b、2cは、また、各受信器21x、23xに接続された受信アンテナA1xも含む。さらに、受信局はそれぞれ、処理局6と通信するための通信インタフェース(図示なし)を含んでいる。
【0049】
取得に関して、各受信器は、従来の無線周波数受信ユニットから構成されている。この受信ラインは、周波数基準にスレーブされた周波数変換器、周波数基準にスレーブされたアナログ-デジタル変換器から導出されるマルチチャネルデジタル化ラインを含んでいる。当業者にとって周知のこの受信ラインは、ここにおいて、さらに詳細には説明されない。
【0050】
このことは、GNSS信号が利用できず、その結果、ローカル時間ベースがもはや信頼できなくなり、そして、誤った日付を提供し、GNSS信号が利用できなくなると直ぐに、ゆっくりドリフトする、事例に関連する。
【0051】
この特定の状況において、
図3に関連して、送信器3を位置特定する方法が、以降で説明される。そうした方法は、処理局6の処理ユニット7において実装されている。
【0052】
少なくとも2つの受信局2a、2b、2cは、位置特定されるべき送信器3からの信号の部分、および、少なくとも1つの既知のオブジェクト4の取得(ステップE1)およびタイムスタンピング(ステップE2)に進む。特に、送信器については信号Semetteur_xを獲得し、そして、オブジェクトについては信号Sobjet_xを獲得する。これらの信号は、各受信局2a、2b、2cのローカル時間ベースを使用して日付がつけられる。
【0053】
これらの信号は、処理局6に送信され(ステップE3)、これらの信号を受信した後(ステップREC)、処理局は、例えば、複数の局からの信号をペア毎(pairwise)に相関させる。そこからTDOAij及び/又はFDOAijを推定するために、信号の同一部分を比較できるようにするためである。TDOAij及び/又はFDOAijは、すなわち、2つの局i,jについて決定された、同一の信号部分の時間領域および周波数領域の分離である(インデックスiおよびjは、局a、b、cを示す)。
【0054】
既知のエフェメリスを持つオブジェクトの使用によって期待される目的の一つは、既知のオブジェクトのTDOA、そうでなければ、既知のオブジェクトのFDOAが使用されると直ぐに、受信局のローカル時間ベースを訂正することが可能なことである。
【0055】
TDOAijに関して、それは、送信器3の信号の同一部分が局iに到達し、そして、局jに到達するのに要する伝搬時間における差異差である。もちろん、これらの時間分離は、GNSS信号の不在を仮定して、不正確であるローカル時間ベースに関して測定される。
【0056】
従って、少なくとも2つの受信局2a、2b、2cからの受信信号のタイムスタンプに基づいて、処理局は、位置特定される送信器、および、既知のオブジェクト(または複数のオブジェクト)に関連する受信信号に対応している、測定された時間分離TDOA_objet_ij
MES、TDOA_emetteurij
MESを決定する(ステップDET1)。もちろん、同様の処理が、FDOAに基づいて可能である。
【0057】
次に、既知のエフェメリス、および、少なくとも1つの既知のオブジェクトに関連して決定された絶対時間ベースに基づいて、理論的時間及び/又は周波数分離TDOA_objet_ij
TH、FDOA_objet_ij
THが、既知のオブジェクトに関連して決定される(DET2)。
【0058】
測定された分離と理論値との差異をとることによって、TDOAに影響を与える時間領域誤差RES_TDOAij(またはTDOA残差)を決定し(ステップDET3)、そして、受信局の時間ベースを補正することを可能にする(ステップE4)。同様に、周波数誤差(またはFDOA残差)が、測定されたFDOA値および理論値に基づいて計算され得る。
【0059】
一つの実施形態に従って、測定されたTDOA及び/又はFDOAに影響する残差誤差に基づいて、ローカル時間ベースの補正のデータが決定される(ステップDET5)。
【0060】
次いで、これらの補正データが、各受信局に送信され(ステップTRANS)、ローカルクロックの日付をリセットする。
【0061】
一つの実施形態に従って、処理局は、残差を保持し、そして、各局から受信した信号部分のタイムスタンピング補正を行う(ステップCONS)。
【0062】
最終的に、受信局が一旦それらのローカル時間ベースを補正すると、測定されたTDOA及び/又はFDOAを使用する送信器3の位置特定(ステップLOC1)が実行される。
【0063】
TDOAに関して、これは、以下の表現を与える。
TDOA_objet_ij
MES=TDOAij
reel+CorrNoise+ΔErrGNSS
ij+ΔErrTshort
ij+ΔBiasCal
ここで、
-TDOAij
reel:測定しようとしている、実際の物理的値。
-CorrNoise:相関雑音、典型的にはAWGN(Additive White Gaussian Noise)(白色のガウス雑音であり、平均がゼロで、かつ、予測可能なエネルギーを持ち、そして、チャネルによって決定される)。
-ΔBiasCal:局の物理デバイスのオフセットによって発生し、較正可能である誤差(装置を通じた伝搬時間、受信器の実際の地理的位置の不確かさ)。これらは数週間のスケールで非常に安定であると考えられ、そして、従って、較正プロセスによって推定されるので既知であると考えられる。
-ΔErrGNSS
ij:GNSS信号の使用によって獲得されるタイムスタンピング誤差における差異(典型的には低く、AWGNタイプの傾向がある)。
-ΔErrTshort
ij:短期タイムスタンピング誤差における差異(GPS補正プロセスによって補償されないため、短期クロックジッタである)。
【0064】
既知のオブジェクトが受信局(公称定格)によって追跡されるとき、その位置、そして、従って、実際のTDOAij
reel値は、伝搬器の最も近い誤差ERR_PROPAG_TDOAijに対して既知であり、理論値TDOAij
THを計算することを可能にする。既知と仮定されている項を削除することにより、従って、TDOAの残差を以下のように定義する。
RES_TDOAij=TDOAijMes-TDOAijTH=ERR_PROPAG_TDOAij+CorrNoise
+ΔErrGNSS
ij+ΔErrTshort
ij.(ここでは、ΔBiasCalが既知であり、そして、除去されていると考えられている)。
【0065】
これらの項の大部分は、低いゼロ平均ノイズによってアプローチされ得るノイズのカテゴリにおいて推定し、かつ、存在することを求めている、ドリフトと比較すると、無視できる強度である。局が一旦公称モード(スタートアップフェーズが終了し、GNSSへ初めてスレーブされ、次いで、GNSSへの連続してスレーブする、等)になると、REF_FREQi(従って、用語ΔErrTshort
ij)のドリフト、および、関連する時間ベースは、非スレーブモードにおけるREF_FREQiの特性にだけ依存する。その特性は、非常に良好な品質であるように選択される。公称モードにおいて(すなわち、GNSSコンステレーションを利用する時間領域同期が動作可能な場合)、既知のオブジェクトの追跡が、従って、受信局のローカルクロックを補正するためにも使用され得るシステムの短期タイムスタンピング誤差(ローカルクロックにおける短時間ジッタによって発生するもの)を推定することを可能にする。本発明の一つの実装においては、既知のオブジェクトを使用する処理ループがアクティブであり、そして、GNSS同期がアクティブかつアクティブであり、かつ、動作可能である場合でさえも、使用される。これらのループは、次いで、ローカルクロックの短期ジッタを補正するためにだけに使用される。
【0066】
GNSS同期がもはや不可能である場合、本発明は、ローカルクロックにおける中期ドリフトおよび短期ドリフトの両方を補償する。
【0067】
説明したように、時間領域誤差の取得は、既知のオブジェクトの追跡に基づいている。従って、それに関する測定の信頼性が極めて重要である。
【0068】
具体的には、これらが静止衛星である場合、これらは、後に、エフェメリスの場合に、それらの軌道が予測不可能であるように、操作フェーズ(maneuvering phase)にあり得る。位置特定される送信器の位置を特定する方法は、基準人工オブジェクトの先行する(および該当する場合は同時の)位置を想定する(ステップLOC2)。
【0069】
従って、位置特定方法は、既知のオブジェクトに関する測定されたTDOA及び/又はFDOAに基づいて、測定された時間分離の信頼性の指標(indicator)を決定するステップを含む(ステップDET4)。前記信頼性の指標は、既知のオブジェクトのエフェメリスがローカルクロック補正のために使用できるか否かを決定することを目的としている。この信頼性の指標は、特に、既知のオブジェクトが操作中であるか否かを決定することを可能にする。
【0070】
もちろん、既知のオブジェクトは、それが天体(例えば太陽)である場合、これらの信頼性の概念には関係がない。具体的に、これらの既知のオブジェクトは、分類され、かつ、容易に識別可能であり、そして、極めて正確なエフェメリスが利用可能である。
【0071】
しかしながら、分類された自然のオブジェクトは、高い信頼性のリセット測定値(伝搬誤差に依存しない)のため、永久的な視認性にない可能性があり(例えば、太陽を既知のオブジェクトとして使用する場合、その視認性は、もちろん昼/夜交替の対象となる)、不変の視認性における人工オブジェクト(例えば静止オブジェクト)の使用は、自然のオブジェクトの視認性のフェーズにおける相対的なリセット(伝搬誤差に従う)において体系的に使用され得る。
【0072】
さらに、かつ、有利なことに、既知のオブジェクトから生じる測定の信頼性は、既知であるが、これらの時間領域残差の整合(alignment)をチェックするには異なる、複数のオブジェクトについて得られた複数のTDOA残差を、互いに比較することからなる。それらは、既知のオブジェクトに依存するように意図されていないからである。これらのオブジェクトのいくつかが他のオブジェクトからあまりにも離れている場合、それらのエフェメリスは信頼できないと推論することができ、そのオブジェクトは局間の同期を維持するために使用できる基準オブジェクトのリストから削除できる。
【国際調査報告】