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特表2023-508443レーザ処理デバイス及びレーザ処理方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】レーザ処理デバイス及びレーザ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/08 20100101AFI20230222BHJP
   H01L 33/24 20100101ALI20230222BHJP
【FI】
H01L33/08
H01L33/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539285
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2020087242
(87)【国際公開番号】W WO2021130136
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】1915606
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515113307
【氏名又は名称】アルディア
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】デュポン,ティフェンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ダーノウン,メディ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンナン,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ロビン,イヴァン-クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】デュポン,フロリアン
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241CA04
5F241CA05
5F241CA77
5F241CA88
5F241CB05
5F241CB36
(57)【要約】
【解決手段】本明細書は、レーザ処理のために構成されたデバイス(20)に関し、デバイスは、レーザを通す基板(22)、及び基板にフォトニック結晶(40)を介して夫々接合されている物体(30)を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ(18)で処理すべく構成されているデバイス(20)であって、
レーザを通す基板(22)、及び
前記基板にフォトニック結晶(40)を介して夫々接合されている物体(30)
を備えている、デバイス。
【請求項2】
前記フォトニック結晶(40)は二次元のフォトニック結晶である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記フォトニック結晶(40)は、第1の材料の基層(44)と、前記第1の材料とは異なる第2の材料の格子状に配置された柱状体(46)とを有しており、前記柱状体は、前記基層の厚さの少なくとも一部に亘って前記基層に夫々延びている、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1の材料は、前記レーザ(18)に対して1未満の吸収係数を有する、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第2の材料は、前記レーザに対して1未満の吸収係数を有する、請求項1~4のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項6】
前記基板(22)は、前記第2の材料で形成されている、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第2の材料は、前記レーザ(18)に対して1~10の範囲内の吸収係数を有する、請求項1~5のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項8】
前記基板(22)は、対向する第1の表面(24)及び第2の表面(26)を有しており、前記レーザ(18)は、前記基板を前記第1の表面から前記第2の表面に横切るように構成されており、前記フォトニック結晶(40)は前記第2の表面を覆っている、請求項1~7のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項9】
前記物体(30)と前記基板(22)との間に、レーザ(18)を吸収する層(44)を更に備えている、請求項1~8のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項10】
前記フォトニック結晶(40)と前記レーザを吸収する層(44)との間に配置されて、前記レーザ(18)を通す少なくとも1つの層(48)を更に備えている、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記基板(22)は半導体である、請求項1~10のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項12】
前記基板(22)は、シリコン、ゲルマニウム、又はこれらの化合物の少なくとも2つの混合物若しくは合金で形成されている、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記物体(30)は電子回路を有している、請求項1~12のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項14】
前記物体(30)は、アクティブ層(62)で覆われた三次元半導体素子(52)を有する少なくとも1つの光電子部品(50)を有しており、前記三次元半導体素子は、前記柱状体(46)の内の少なくとも1つと接する基部(53)を有している、請求項3に記載のデバイス。
【請求項15】
前記第2の材料は、元素の周期表のIV列、V 列若しくはVI列の遷移金属の窒化物、炭化物若しくはホウ化物、又はこれらの化合物の組合せであるか、或いは、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、ホウ素、窒化ホウ素、チタン、窒化チタン、タンタル、窒化タンタル、ハフニウム、窒化ハフニウム、ニオブ、窒化ニオブ、ジルコニウム、ホウ化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、炭化シリコン、炭窒化タンタル、窒化マグネシウム、又はこれらの化合物の少なくとも2つの混合物である、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
レーザを通す基板(22)、及び前記基板にフォトニック結晶(40)を介して夫々接合される物体(30)を備えたデバイス(20)を製造する方法であって、
前記フォトニック結晶を形成して、前記物体を形成する、方法。
【請求項17】
前記フォトニック結晶を前記基板上に形成し、前記フォトニック結晶上に層を堆積させる及び/又は成長させる工程により前記物体を前記フォトニック結晶上に形成する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
レーザを通す基板(22)、及び前記基板にフォトニック結晶(40)を介して夫々接合される物体(30)を備えたデバイス(20)をレーザ(18)で処理する方法であって、
前記基板を通して前記フォトニック結晶をレーザビーム(18)に露出する、方法。
【請求項19】
前記物体(30)を支持体(90)に接合し、前記物体は前記基板(22)に依然として連結されており、前記フォトニック結晶を含む領域又は前記フォトニック結晶に隣り合う領域をレーザ(18)によって破壊する、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、レーザ処理デバイス、及び、このようなデバイスのレーザ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある用途では、レーザを実質的に通す支持体上に存在する物体のレーザ処理を、支持体を通して行い得ることが望ましい。適用例として、支持体に接合された物体、例えば電子回路の分離がある。このため、レーザを吸収する層が、分離される物体と支持体との間に配置されており、レーザビームの焦点がこの吸収層に合わせられ、吸収層のアブレーションによって物体を支持体から分離する。吸収層は、例えば金属層、特に金層に相当する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
物体が電子回路である場合、支持体への電子回路の移送を避けるために、支持体が、電子回路が形成されている基板に相当することが望ましい場合がある。この場合、吸収層は、電子回路の層と共にモノリシックに形成される層に相当する。
【0004】
不利点は、所望の吸収特性を有する吸収層の形成が困難な場合があるということである。これは特に、物体が、層を吸収層上にエピタキシによって堆積させることにより少なくとも部分的に形成される場合であり得る。実際、金属製の吸収層を使用することは一般的に不可能である。そのため、吸収層を除去するために使用されるレーザの出力を上げる必要がある。この場合、吸収層に近い領域、特に分離する物体の一部を形成する領域の劣化の防止が困難になる場合がある。これは更に、特にコスト上の理由又は技術的な実現可能性の理由で、吸収層の厚さが制限される場合であり得る。
【0005】
従って、実施形態の目的は、前述したレーザ処理デバイス、及び、このようなデバイスを使用する前述したレーザ処理方法の不利点を少なくとも部分的に克服することである。
【0006】
実施形態の目的は、レーザビームの焦点を、デバイスの一部を介してデバイスの処理される領域に合わせることである。
【0007】
実施形態の別の目的は、処理される領域に近い領域が処理によって損傷しないことである。
【0008】
実施形態の別の目的は、デバイスを製造する方法が、1つの要素を別の要素に移す工程を有しないことである。
【0009】
実施形態の別の目的は、デバイスを製造する方法がエピタキシャル堆積工程を有することである。
【0010】
実施形態の別の目的は、吸収層の厚さを減らすことである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態は、レーザで処理すべく構成されているデバイスであって、レーザを通す基板、及び、前記基板にフォトニック結晶を介して夫々接合されている物体を備えている、デバイスを提供する。
【0012】
実施形態によれば、前記フォトニック結晶は二次元のフォトニック結晶である。
【0013】
実施形態によれば、前記フォトニック結晶は、第1の材料の基層と、前記第1の材料とは異なる第2の材料の格子状に配置された柱状体とを有しており、前記柱状体は、前記基層の厚さの少なくとも一部に亘って前記基層に夫々延びている。
【0014】
実施形態によれば、前記第1の材料は、前記レーザに対して1未満の吸収係数を有する。
【0015】
実施形態によれば、前記第2の材料は、前記レーザに対して1未満の吸収係数を有する。
【0016】
実施形態によれば、前記基板は、前記第2の材料で形成されている。
【0017】
実施形態によれば、前記第2の材料は、前記レーザに対して1~10の範囲内の吸収係数を有する。
【0018】
実施形態によれば、前記基板は、対向する第1の表面及び第2の表面を有しており、前記レーザは、前記基板を前記第1の表面から前記第2の表面に横切るように構成されており、前記フォトニック結晶は前記第2の表面を覆っている。
【0019】
実施形態によれば、前記デバイスは、前記物体と前記基板との間に、レーザを吸収する層を更に備えている。
【0020】
実施形態によれば、前記デバイスは、前記フォトニック結晶と前記レーザを吸収する層との間に配置されて、前記レーザを通す少なくとも1つの層を更に備えている。
【0021】
実施形態によれば、前記基板は半導体である。
【0022】
実施形態によれば、前記基板は、シリコン、ゲルマニウム、又はこれらの化合物の少なくとも2つの混合物若しくは合金で形成されている。
【0023】
実施形態によれば、前記物体は電子回路を有している。
【0024】
実施形態によれば、前記物体は、アクティブ層で覆われた三次元半導体素子を有する少なくとも1つの光電子部品を有しており、前記三次元半導体素子は、前記柱状体の内の少なくとも1つと接する基部を有している。
【0025】
実施形態によれば、前記第2の材料は、元素の周期表のIV列、V 列若しくはVI列の遷移金属の窒化物、炭化物若しくはホウ化物、又はこれらの化合物の組合せであるか、或いは、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、ホウ素、窒化ホウ素、チタン、窒化チタン、タンタル、窒化タンタル、ハフニウム、窒化ハフニウム、ニオブ、窒化ニオブ、ジルコニウム、ホウ化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、炭化シリコン、炭窒化タンタル、窒化マグネシウム、又はこれらの化合物の少なくとも2つの混合物である。
【0026】
実施形態は、レーザを通す基板、及び前記基板にフォトニック結晶を介して夫々接合される物体を備えたデバイスを製造する方法であって、前記フォトニック結晶を形成して、前記物体を形成する、方法を更に提供する。
【0027】
実施形態によれば、前記方法では、前記フォトニック結晶を前記基板上に形成し、前記フォトニック結晶上に層を堆積させる及び/又は成長させる工程により前記物体を前記フォトニック結晶上に形成する。
【0028】
実施形態は、レーザを通す基板、及び前記基板にフォトニック結晶を介して夫々接合される物体を備えたデバイスをレーザで処理する方法であって、前記基板を通して前記フォトニック結晶をレーザビームに露出する、方法を更に提供する。
【0029】
実施形態によれば、前記方法では、前記物体を支持体に接合し、前記物体は前記基板に依然として連結されており、前記フォトニック結晶を含む領域又は前記フォトニック結晶に隣り合う領域をレーザによって破壊する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
前述及び他の特徴及び利点は、添付図面を参照して本発明を限定するものではない実例として与えられる特定の実施形態の本開示の残り部分で詳細に記載される。
【0031】
図1】吸収領域を備えたデバイスのレーザ処理システムの実施形態を示す図である。
図2図1のデバイスの吸収領域の実施形態を示す拡大図である。
図3図1のデバイスの吸収領域の別の実施形態を示す拡大図である。
図4図1のデバイスの吸収領域の別の実施形態を示す拡大図である。
図5図1のデバイスの吸収領域のフォトニック結晶層の柱状体の配置を示す図である。
図6図1のデバイスの吸収領域のフォトニック結晶層の柱状体の別の配置を示す図である。
図7図1のデバイスの吸収領域の別の実施形態を示す部分的な拡大略図である。
図8図7に示されているデバイスの断面の部分的な平面略図である。
図9図1のデバイスの光電子部品の実施形態を示す部分的な断面略図である。
図10図1のデバイスの光電子部品の別の実施形態を示す部分的な断面略図である。
図11】フォトニック結晶の柱状体のピッチ対入射レーザの波長の比に応じた、図1のデバイスの吸収領域の吸収の変化曲線を示す図表である。
図12】柱状体の充填率とフォトニック結晶の柱状体のピッチ対入射レーザの波長の比とに応じた、図1のデバイスの吸収領域の吸収のグレースケールマップを示す図表である。
図13】柱状体の充填率とフォトニック結晶の柱状体のピッチ対入射レーザの波長の比とに応じた、図1のデバイスの吸収領域の吸収の別のグレースケールマップを示す図表である。
図14】柱状体の充填率の第1の値でのフォトニック結晶層の柱状体の高さと、フォトニック結晶の柱状体のピッチ対入射レーザの波長の比とに応じた、図1のデバイスの吸収領域の吸収の変化曲線を示す図表である。
図15】柱状体の充填率の第2の値でのフォトニック結晶層の柱状体の高さと、フォトニック結晶の柱状体のピッチ対入射レーザの波長の比とに応じた、図1のデバイスの吸収領域の吸収の変化曲線を示す図表である。
図16図1のデバイスの製造方法の実施形態の工程で得られた構造を示す図である。
図17】製造方法の別の工程で得られた構造を示す図である。
図18】製造方法の別の工程で得られた構造を示す図である。
図19】製造方法の別の工程で得られた構造を示す図である。
図20】製造方法の別の工程で得られた構造を示す図である。
図21】製造方法の別の工程で得られた構造を示す図である。
図22】製造方法の別の工程で得られた構造を示す図である。
図23図1のデバイスを用いて実施するレーザ処理方法の実施形態の工程で得られた構造を示す図である。
図24】レーザ処理方法の別の工程で得られた構造を示す図である。
図25】レーザ処理方法の別の工程で得られた構造を示す図である。
図26】レーザ処理方法の別の工程で得られた構造を示す図である。
図27図1のデバイスのフォトニック結晶層の柱状体の別の配置を示す図である。
図28図27に示されている配置で得られた図11と同様の図表である。
図29図27に示されている配置に従ったフォトニック結晶層のエネルギー密度のグレースケールマップを示す図表である。
図30図1のデバイスのフォトニック結晶層の柱状体の別の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
同様の特徴が、様々な図で同様の参照符号によって示されている。特に、様々な実施形態に共通する構造的特徴及び/又は機能的特徴は同一の参照符号を有してもよく、同一の構造特性、寸法特性及び材料特性を有してもよい。明瞭化のために、本明細書に記載されている実施形態の理解に有用な工程及び要素のみが示されて詳細に記載されている。特に、レーザ光源は当業者に広く知られており、以下に詳細に記載されない。
【0033】
本開示の残り部分では、「前」、「後ろ」、「最上部」、「底部」、「左」、「右」などの絶対位置、又は「上方」、「下方」、「上側」、「下側」などの相対位置を限定する用語を参照するとき、この用語は、特に指定されていない場合、図面の向きを指す。「約」、「略」、「実質的に」及び「程度」という表現は、特に指定されていない場合、該当する値の10%の範囲内、好ましくは5%の範囲内を表す。更に本明細書では、「絶縁」及び「導電」という用語は「電気絶縁」及び「電気伝導」を夫々表すとみなされる。
【0034】
本開示の残り部分では、層の内部透過率は、層から出る放射光の強度対層に入る放射光の強度の比に相当し、入射放射光の光線は層に垂直である。層の吸収率は、1と内部透過率との差に等しい。本開示の残り部分では、層又は膜を通る放射光の吸収率が60%未満である場合、その層又はその膜は放射光を通すとする。本開示の残り部分では、層又は膜を通る放射光の吸収率が60%を超える場合、その層又はその膜は放射光を吸収するとする。本開示の残り部分では、レーザが単色放射光に相当するとみなされている。実際、レーザは、レーザの波長と称される、中心波長を中心とした狭い波長領域を有してもよい。本開示の残り部分では、材料の屈折率は、レーザ処理に使用されるレーザの波長での材料の屈折率に相当する。該当する材料の光学指数の虚数部を吸収係数kと称する。吸収係数は、α=4πk/λの関係に従って材料の線形吸収αに関連している。
【0035】
図1は、デバイス20の処理システム10の実施形態を示す部分的な断面略図である。
【0036】
処理システム10は、レーザ光源12と、光軸Dを有する光学焦点調節デバイス14とを備えている。レーザ光源12は、入射レーザビーム16を焦点調節デバイス14に与えるように適合されており、焦点調節デバイスは収束するレーザビーム18を与える。光学焦点調節デバイス14は、1つの光学部品、2つの光学部品又は3以上の光学部品を有してもよく、光学部品は、例えばレンズに相当する。入射レーザビーム16は、光学デバイス14の光軸Dに沿って実質的にコリメートされることが好ましい。
【0037】
デバイス20は、2つの対向する表面24, 26を有する基板22を備えている。レーザビーム18は、表面24を介して基板22に入り込む。実施形態によれば、表面24及び表面26は平行である。実施形態によれば、表面24及び表面26は平坦である。実施形態によれば、基板22の厚さは50μm~3mmの範囲内である。実施形態によれば、図示されていないレーザの反射防止層が基板22の表面24に設けられている。基板22は単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。実施形態によれば、基板22は半導体材料で形成されている。半導体材料は、シリコン、ゲルマニウム、又はこれらの化合物の少なくとも2つの混合物であってもよい。基板22は、シリコン、より好ましくは単結晶シリコンで形成されていることが好ましい。別の実施形態によれば、基板22は、非半導体材料、例えば絶縁材料、特にサファイア、又は導電性材料で少なくとも部分的に形成されている。
【0038】
デバイス20は、表面26に吸収領域28を備え、吸収領域28と接する少なくとも1つの物体30を備えており、物体30は、基板22と反対の吸収領域28の側で吸収領域28に接合されており、基板22から分離されることが望ましい。例として図1には、吸収領域28に接合されている複数の物体30が示されている。物体30は、電子回路、例えば発光ダイオードを含む回路、又はトランジスタ、特にMOS トランジスタを含む回路を有してもよい。図1には、表面26で連続的な吸収領域28が示されている。変形例として、吸収領域28は各物体30と基板22との間にのみ存在してもよく、物体30間に存在しなくてもよい。
【0039】
処理方法では、レーザビーム18が処理される吸収領域28全体を照射するように、処理システム10及びデバイス20を相対的に移動させてもよい。処理中、光学デバイス14の光軸Dが表面24に垂直であることが好ましい。
【0040】
レーザの波長は、基板22がレーザを通すように基板22を形成する材料に応じて選択されている。
【0041】
実施形態によれば、特に基板22が半導体である場合、レーザビーム18の波長は、基板22を形成する材料のバンドギャップに対応する波長より、好ましくは少なくとも500 nm、より好ましくは少なくとも700 nm大きい。このため、レーザビーム18が基板22を横切っている間、レーザビーム18と基板22との相互作用を低下させ得ることが有利である。実施形態によれば、レーザビーム18の波長は、2,500 nmと、基板22を形成する材料のバンドギャップに対応する波長との合計より小さい。このため、大きさが小さいレーザスポットを形成するレーザビームをより容易に供給し得ることが有利である。
【0042】
基板22が半導体である場合、レーザビーム18の波長は200 nm~10μmの範囲内であってもよい。特に、基板22が、1.1 μmの波長に対応する1.14eVバンドギャップを有するシリコンで形成されている場合、レーザビーム18の波長は、略2μmに等しいように選択されている。基板22が、1.87μmの波長に対応する0.661 eVバンドギャップを有するゲルマニウムで形成されている場合、レーザビーム18の波長は、略2μm又は2.35μmに等しいように選択されている。
【0043】
基板22がサファイアで形成されている場合、レーザビーム18の波長は300 nm~5μmの範囲内であってもよい。
【0044】
実施形態によれば、レーザビーム18を偏光させる。実施形態によれば、レーザビーム18を、直線偏光に応じて偏光させる。このため、レーザビーム18と吸収領域28との相互作用を高め得ることが有利である。別の実施形態によれば、レーザビーム18を、円偏光に応じて偏光させる。このため、基板22へのレーザビーム18の伝播を促進し得ることが有利である。
【0045】
実施形態によれば、レーザビーム18は、1つのパルス、2つのパルス又は3以上のパルスの形態で処理システム10によって放射され、各パルスの継続時間は0.1 ps~1,000 nsの範囲内である。パルス毎のレーザビームのピーク出力は10kW~100 MWの範囲内である。
【0046】
図2は、デバイス20の吸収領域28の実施形態を示す拡大図である。本実施形態によれば、吸収領域28は、フォトニック結晶層40及びレーザを吸収する吸収層42の積層体に相当する。実施形態によれば、フォトニック結晶層40は、基板22の表面26と吸収層42との間に配置されている。変形例として、吸収層42は、基板22の表面26とフォトニック結晶層40との間に配置されている。実施形態によれば、フォトニック結晶層40の伝播モードがレーザの波長に対応する。フォトニック結晶層40は二次元のフォトニック結晶に相当することが好ましい。
【0047】
実施形態によれば、吸収層42の厚さは5nm~80nmの範囲内である。レーザに対する吸収層42の吸収率は80%を超えている。実施形態によれば、吸収層42は、窒化金属、半導体材料又はこれらの化合物の少なくとも2つの混合物で形成されている。実施形態によれば、レーザの波長に対する線形状態での吸収層42の吸収係数kは1~10の範囲内である。
【0048】
フォトニック結晶層40は、レーザの波長で第1の屈折率を有する第1の材料の、以下に基層と称される層44を有しており、レーザの波長で第2の屈折率を有する第2の材料の柱状体46が基層に延びている。実施形態によれば、各柱状体46は、表面26に垂直に測定された高さLに沿って表面26に垂直な中心軸に沿って実質的に延びている。2つの隣り合う柱状体の中心軸間の距離を「a」(ピッチ)と称する。実施形態によれば、各柱状体46は実質的に基層44の厚さ全体に亘って延びている。第1の屈折率は第2の屈折率より小さいことが好ましい。第1の材料は、レーザ18の波長で1未満の吸収係数を有してもよい。第1の材料は、半導体化合物の窒化物又は酸化物、例えば酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN) 又は酸化アルミニウム(Al2O3) であってもよい。第2の材料は、レーザの波長で1未満の吸収係数を有してもよい。第2の材料は、GaN などの半導体化合物の窒化物、又はシリコン(Si)若しくはゲルマニウム(Ge)などの半導体化合物であってもよい。フォトニック結晶層40の厚さは0.1 μm~3μmの範囲内であってもよい。
【0049】
図3は、デバイス20の吸収領域28の別の実施形態を示す拡大図である。吸収領域28は、吸収層42が設けられていない点を除いて、図1に示されている実施形態に関して前述した全ての要素を有している。フォトニック結晶層40の柱状体46は、吸収層42に関して前述した材料の内の1つで形成されてもよい。この場合、柱状体46は、以下に更に詳細に記載されるように吸収層42の機能を更に果たす。変形例として、フォトニック結晶層40の基層44は、吸収層42に関して前述した材料の内の1つで形成されている。この場合、基層44は、以下に更に詳細に記載されるように吸収層42の機能を更に果たす。
【0050】
図4は、デバイス20の吸収領域28の別の実施形態を示す拡大図である。吸収領域28は、フォトニック結晶層40と吸収層42との間に配置されている少なくとも1つの中間層48を更に備えている点を除いて、図1に示されている実施形態に関して前述した全ての要素を有している。中間層48はレーザを通す。実施形態によれば、中間層48は半導体材料、例えばシリコン(Si)、半導体の酸化物、例えば酸化シリコン(SiO2)、又は半導体の窒化物、例えば窒化シリコン(SiN) で形成されている。実施形態によれば、中間層48の厚さは1nm~500 nmの範囲内であり、好ましくは5nm~500 nmの範囲内である。変形例として、2つの層又は3以上の層の積層体が、フォトニック結晶層40と吸収層42との間に配置されてもよい。この場合、積層体の各層はレーザを通す。実施形態によれば、積層体の厚さ全体は1nm~500 nmの範囲内であり、好ましくは5nm~500 nmの範囲内である。
【0051】
吸収領域28の別の実施形態によれば、吸収層42が設けられておらず、フォトニック結晶層40の柱状体46を形成する材料も、フォトニック結晶層40の基層44を形成する材料も、線形モードではレーザの波長で1~10の範囲内の吸収係数kを有しない。
【0052】
吸収領域28の前述した実施形態では、各柱状体46の高さLが0.1 μm~3μmの範囲内であってもよい。柱状体46は格子状に配置されていることが好ましい。実施形態によれば、各柱状体46と最も近い一又は複数の柱状体との間のピッチaは実質的に一定である。
【0053】
図5は、柱状体46が六角形の格子状に配置されているフォトニック結晶層40の実施形態の部分的な拡大平面略図である。これは、柱状体46が平面視で行に配置されており、柱状体46の中心が正三角形の頂点にあり、同じ行の2つの隣り合う柱状体46の中心がピッチa分、離れており、2つの隣り合う行の柱状体46の中心が行方向に沿って距離a/2分偏移していることを意味する。
【0054】
図6は、柱状体46が六角形の格子状に配置されているフォトニック結晶層40の実施形態の部分的な拡大平面略図である。これは、柱状体46が行及び列に配置されており、柱状体46の中心が正方形の頂点にあり、同じ行の2つの隣り合う柱状体46がピッチa分、離れており、同じ列の2つの隣り合う柱状体46がピッチa分、離れていることを意味する。
【0055】
図5及び図6に示されている実施形態では、各柱状体46は、表面26と平行な面に直径Dの円形断面を有する。六角形の格子状の配置又は正方形の格子状の配置の場合、直径Dは0.05μm~2μmの範囲内であってもよい。ピッチaは0.1 μm~4μmの範囲内であってもよい。
【0056】
図5及び図6に示されている実施形態では、表面26と平行な面における各柱状体46の断面は円形である。しかしながら、柱状体46の断面は、異なる形状、例えば長円形、多角形、特に正方形、矩形、六角形などの形状を有してもよい。実施形態によれば、全ての柱状体46は同一の断面を有する。
【0057】
図7は、デバイス20の別の実施形態を示す拡大断面図であり、図8は、図7の面VIII-VIIIに沿った断面の平面図である。図7に示されているデバイス20は、図3に示されているデバイス20の全ての要素を備えている。更に本実施形態では、各物体30は、少なくとも1つの三次元光電子部品50を有する光電子回路に相当し、図7には1つの三次元光電子部品50が示されている。三次元光電子部品50はワイヤを有しており、三次元光電子部品50の他の要素は図7には示されておらず、以下に更に詳細に記載される。各ワイヤ52の基部53は柱状体46の少なくとも1つ、好ましくは複数の柱状体46に載置されている。
【0058】
デバイス20は、ワイヤ52の成長を有利にして基板22を覆うシード構造体54を更に備えている。シード構造体54は、フォトニック結晶層40の特定のパッド46を有しており、追加のシード層又は追加の層の積層体を有してもよい。図7に例として示されているシード構造体54はシード層56を特に有しており、シード層56は基板22とフォトニック結晶層40との間に配置されている。
【0059】
実施形態によれば、フォトニック結晶層40の基層44は、吸収層42に関して前述した材料の内の1つで形成されている。本実施形態では、レーザの吸収は、以下に更に詳細に記載されるメカニズムにより、フォトニック結晶層40のレベルで行われる。
【0060】
物体30の光電子部品50が三次元タイプの発光ダイオードに相当する場合の光電子部品50のより詳細な実施形態が、図9及び図10に関連して記載される。しかしながら、これらの実施形態は、他の用途、特に電磁放射線の検出若しくは測定のための光電子部品、又は光起電力用途のための光電子部品に関してもよいことは明らかなはずである。
【0061】
図9は、光電子回路30の光電子部品50の実施形態を示す部分的な断面略図である。光電子回路30は、フォトニック結晶層40を覆う絶縁層58を更に有している。
【0062】
三次元の光電子部品50は、図9及び図10に概略的に示されている、フォトニック結晶層40から突出しているワイヤ52を有している。光電子部品50は、ワイヤ52の上方部分の外壁を覆うシェル60を更に有しており、シェル60は、ワイヤ52の上方部分を覆うアクティブ層62、及びアクティブ層62を覆う半導体層64の少なくとも1つの積層体を有している。本実施形態では、シェル60がワイヤ52の側壁を覆っているため、光電子部品50はラジアル構成と称される。光電子回路30は、絶縁層58上を延びてシェル60の下方部分の側壁上に延びている絶縁層66を更に有している。光電子回路30は、シェル60を覆って電極を形成する導電層68を更に有しており、導電層68は、アクティブ層62によって放射される放射光を通す。導電層68は、特に光電子回路30の複数の光電子部品50のシェル60を覆ってもよく、そのため、複数の光電子部品50に共通する電極を形成する。光電子回路30は、ワイヤ52間で電極層68上に延びている導電層70を更に有している。光電子回路30は、光電子部品50を覆う封止層72を更に有している。
【0063】
図10は、光電子部品50の別の実施形態の部分的な断面略図である。図10に示されている光電子部品50は、シェル60がワイヤ52の最上部のみに設けられている点を除いて、図9に示されている光電子部品50の全ての要素を有している。そのため、光電子部品50はアキシャル構成と称される。
【0064】
実施形態によれば、ワイヤ52は、少なくとも1つの半導体材料で少なくとも部分的に形成されている。半導体材料は、III-V 族化合物、II-VI 族化合物、IV族の半導体及び化合物を含む群から選択されている。ワイヤ52は、III-V 族化合物、例えばIII-N 化合物を主に含む半導体材料で少なくとも部分的に形成されてもよい。III 族元素の例として、ガリウム(Ga)、インジウム(In)又はアルミニウム(Al)がある。III-N 化合物の例として、GaN 、AlN 、InN 、InGaN 、AlGaN 又はAlInGaN がある。他のV 族元素、例えばリン又はヒ素を更に使用してもよい。ワイヤ52は、II-VI 族化合物を主に含む半導体材料で少なくとも部分的に形成されてもよい。II族元素の例として、IIA 族元素、特にベリリウム(Be)及びマグネシウム(Mg)、並びにIIB 族元素、特に亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)及び水銀(Hg)がある。VI族元素の例として、VIA 族元素、特に酸素(O) 及びテルル(Te)がある。II-VI 族化合物の例として、ZnO 、ZnMgO 、CdZnO 、CdZnMgO 、CdHgTe、CdTe又はHgTeがある。一般に、III-V 族化合物又はII-VI 族化合物内の元素は異なるモル分率で組み合わせられてもよい。ワイヤ52は、少なくとも1つのIV族化合物を主に含む半導体材料で少なくとも部分的に形成されてもよい。IV族半導体材料の例として、シリコン(Si)、炭素(C) 、ゲルマニウム(Ge)、炭化シリコン(SiC) 合金、シリコン・ゲルマニウム(SiGe)合金又は炭化ゲルマニウム(GeC) 合金がある。ワイヤ52はドーパントを含んでもよい。例として、III-V 族化合物に関して、ドーパントは、例えばマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)及び水銀(Hg)であるP型II族ドーパント、例えば炭素(C) であるP型IV族ドーパント、並びに例えばシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、硫黄(S) 、テルビウム(Tb)及びスズ(Sn)であるN型IV族ドーパントを含む群から選択されてもよい。
【0065】
シード構造体54は、ワイヤ52の成長を有利にする材料で形成されている。例として、パッド46を形成する材料は、元素の周期表のIV列、V 列又はVI列の遷移金属の窒化物、炭化物又はホウ化物、或いはこれらの化合物の組合せであってもよい。例として、各パッド46は、窒化アルミニウム(AlN) 、酸化アルミニウム(Al2O3) 、ホウ素(B) 、窒化ホウ素(BN)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN) 、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN) 、ハフニウム(Hf)、窒化ハフニウム(HfN) 、ニオブ(Nb)、窒化ニオブ(NbN) 、ジルコニウム(Zr)、ホウ化ジルコニウム(ZrB2)、窒化ジルコニウム(ZrN) 、炭化シリコン(SiC) 、炭窒化タンタル(TaCN)、又はMgxNy の形態の窒化マグネシウム(ここでxは略3であり、yは略2であり、例えばMg3N2の形態の窒化マグネシウム)で形成されてもよい。
【0066】
絶縁層58, 66は、誘電体材料、例えば酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SixNy 、ここでxは略3であり、yは略4であり、例えばSi3N4 )、(特に一般的な式SiOxNyの)酸窒化シリコン(例えばSi2ON2)、酸化ハフニウム(HfO2)又はダイヤモンドで夫々形成されてもよい。
【0067】
アクティブ層62は、単一量子井戸又は多重量子井戸などの閉込め手段を有してもよい。アクティブ層62は、例えば、厚さが5~20nm(例えば8nm)のGaN 層及び厚さが1~10nm(例えば2.5 nm)のInGaN 層を交互に形成することにより得られる。GaN 層は、例えばN型又はP型にドープされてもよい。別の例によれば、アクティブ層は、例えば厚さが10nmより大きい1つのInGaN 層を有してもよい。
【0068】
例えばP型でドープされた半導体層64は半導体層の積層体に相当してもよく、P-N 接合又はP-I-N 接合を可能にし、アクティブ層62は、P-N 接合又はP-I-N 接合のP型の中間層及びN型のワイヤ52間に設けられている。
【0069】
電極層68は、発光ダイオードのアクティブ層を分極させて発光ダイオードによって放射される電磁放射線を通すことが可能である。電極層68を形成する材料は、酸化インジウムスズ(ITO) 、純粋な酸化亜鉛、酸化アルミニウム亜鉛、酸化ガリウム亜鉛、グラフェン又は銀のナノワイヤなどの透明な導電性材料であってもよい。例として、電極層68の厚さは5nm~200 nmの範囲内であり、好ましくは30nm~100 nmの範囲内である。
【0070】
封止層72は、有機材料又は無機材料で形成されてもよく、発光ダイオードによって放射される放射光を少なくとも部分的に通す。封止層72は発光団を有してもよく、発光団は、発光ダイオードによって放射される光によって励起されると、発光ダイオードによって放射される光の波長とは異なる波長で光を放射することができる。
【0071】
第1のシミュレーションを行った。これらの第1のシミュレーションでは、フォトニック結晶層40はシリコンで形成された柱状体46を有し、基層44はSiO2で形成された。柱状体46は六角形の格子状に分散しており、各柱状体46は、直径Dが0.97μmの円形の断面を有する。第1のシミュレーションでは、柱状体46の厚さLは1μmであった。吸収層42は、50nmの厚さ、4.5 の屈折率、及び3.75の吸収係数を有した。
【0072】
図11は、ピッチa対レーザの波長λの比a/λに応じた、吸収領域28の平均吸収率Abs の変化の曲線C1及び曲線C2を示しており、曲線C1は、吸収領域28が図4に示されている構造を有する場合に得られて、曲線C2は、吸収領域28がフォトニック結晶層40を有さず、吸収層42のみを有する場合に得られた。フォトニック結晶層40が存在しない場合、吸収領域28の平均吸収率は略55%である。フォトニック結晶層40が存在する場合、平均吸収率は、比a/λの複数の範囲に亘って55%を超え、比a/λが略0.75であるときには90%に達する。
【0073】
第2のシミュレーションを行った。これらの第2のシミュレーションでは、フォトニック結晶層40はシリコンで形成された柱状体46を有し、基層44はSiO2で形成された。柱状体46は六角形の格子状に分散しており、各柱状体46は円形の断面を有する。第2のシミュレーションでは、柱状体46の厚さLは1μmであった。
【0074】
図12及び図13は、横座標の比a/λ及び縦座標の充填率FFに応じた、吸収領域28の平均吸収率Abs の深度マップをグレースケールで夫々示す。充填率FFは、平面視で柱状体46の面積の合計対フォトニック結晶層40の総面積の比に相当する。例として、円形の断面を有する柱状体46では、充填率FFは以下の関係式[数1]によって与えられる。
【0075】
【数1】
【0076】
図12では領域A及び領域Bを識別することができ、図13では領域B’を識別することができ、これらの領域では平均吸収率Abs が略70%を超えている。領域B及び領域B’は、0.1 ~1の範囲内の比a/λ及び1%~50%の範囲内の充填率FFに関して得られ、領域Aは、0.5 ~2の範囲内の比a/λ及び10%~70%の範囲内の充填率FFに関して得られる。
【0077】
図14は、0.3 の充填率FF及び0.6 の比a/λに関する、柱状体46の高さLに応じた平均吸収率Abs の変化の曲線C3を示す。
【0078】
図15は、0.5 の充填率FF及び0.6 の比a/λに関する、柱状体46の高さLに応じた平均吸収率Abs の変化の曲線C4を示す。
【0079】
曲線C3及び曲線C4は、異なる次数でのファブリーペロー共振に対応する局所的な最大値を示し、図14及び図15には、高さLの対応する値が示されている。実質的にファブリーペロー共振の内の1つのレベルにある柱状体46の高さLを選択することが好ましい。
【0080】
図16図22は、吸収領域28が図2に示されている構造を有するデバイス20を製造する製造方法の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。製造方法は、
- 基板22を製造する工程(図16)、
- 基板22に開口部80を所望の高さLに実質的に等しい深さまでエッチングする工程(開口部80の断面は柱状体46の所望の断面に相当する)(図17)、
- 基板22を覆って、特に開口部80を充填する第2の材料の層82を堆積させる工程(図18)、
- 基板22に達するまで例えば化学機械平坦化(CMP) によって層82をエッチングして、フォトニック結晶層40の柱状体46を形成する層82の一部のみを開口部80に保持する工程(柱状体46を囲む基板22の一部がフォトニック結晶層40の基層44を形成する)(図19)、
- フォトニック結晶層40上に吸収層42を堆積させる又は成長させる工程(図20)、
- 吸収層42上に層の積層体84を形成する工程(図21)、及び、
- 例えばエッチングマスク86を使用して層の積層体84を吸収層42までエッチングして物体30を画定する工程(図22)(図22には1つの物体が特に示されている)
を有する。
【0081】
図23図26は、デバイス20のレーザ処理方法の別の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
【0082】
図23は、デバイス20の製造後に得られた構造を示す。
【0083】
図24は、デバイス20を支持体90に接触させて物体30を支持体90に接合した後に得られた構造を示す。実施形態によれば、支持体90への物体30の接合は、支持体90への物体のハイブリッド分子接合によって行われてもよい。実施形態によれば、支持体90は、物体30の接合位置にパッド92を有してもよい。そのため、物体30がパッド92に接するまで、デバイス20及び支持体90は互いに接近する。実施形態によれば、支持体22に接合された全ての物体30が同一の支持体90に移されるように構成されているわけではない。このため、支持体90は、支持体90に移される物体30に対してのみパッド92を有してもよい。この場合、物体30の一部がパッド92に接するまでデバイス20及び支持体90が互いに接近すると、パッド92の前方にない物体30は支持体90と接触せず、ひいては支持体90に接合されない。
【0084】
図25は、支持体90に移される物体30を基板22から分離すべくレーザ18の通過中に得られた構造を示す。動作中、レーザビーム18の焦点が吸収領域28に合わせられることが好ましい。吸収領域28のフォトニック結晶層40によって、吸収領域28によるレーザ光の吸収を高めることが可能になる。
【0085】
吸収領域28が吸収層42を有する場合、フォトニック結晶層40によって、吸収層42へのレーザ18の光の吸収を高めることが特に可能になる。このため、吸収層42のアブレーションが可能になる。柱状体46又は基層44がレーザ18を吸収する材料で形成されている場合、フォトニック結晶層40によって、柱状体46又は基層44へのレーザ光の吸収を高めることが特に可能になる。このため、フォトニック結晶層40のアブレーションが可能になる。
【0086】
吸収層42が設けられておらず、フォトニック結晶層40の柱状体46を形成する材料も、フォトニック結晶層40の基層44を形成する材料も、線形モードではレーザの波長で1~10の範囲内の吸収係数kを有しない場合、フォトニック結晶層40によって、フォトニック結晶層40及びフォトニック結晶層40の近傍でエネルギー密度を局所的に高めることが可能になる。このため、フォトニック結晶層40及びフォトニック結晶層40の近傍、特に基板22での非線形吸収現象によってレーザの吸収を高めることができ、フォトニック結晶層40のアブレーションが行われる。フォトニック結晶層40が設けられているため、フォトニック結晶層40及び/又はフォトニック結晶層40の近傍、特に基板22で非線形吸収現象が生じ、レーザの強度を低下させることが可能である。
【0087】
基板22が半導体材料、特にシリコンで形成されている場合、基板22がレーザを通すようにレーザの波長を赤外域にする必要が有り得る。しかしながら、市販の赤外レーザは一般に、他の周波数の他の市販のレーザより低い最大エネルギーを有する。フォトニック結晶層40の使用により、赤外レーザを使用してもレーザ切断を行い得ることが有利であり、ひいては、特にシリコンで形成された半導体の基板22を使用し得ることが有利である。
【0088】
図26は、基板22を支持体90から離した後に得られた構造体を示す。支持体90に接合された物体30は基板22から分離されている。
【0089】
前述した実施形態では、柱状体46は規則的な格子状に分散している。別の実施形態によれば、フォトニック結晶層40及び/又はフォトニック結晶層40の近傍でのエネルギー密度の分散を変更するために、柱状体46の格子状配置に欠損部分があってもよい。欠損部分は、柱状体46の格子状配置の場合に柱状体46が設けられないことに相当してもよく、又は、隣り合う柱状体の大きさとは異なる大きさ、例えば円形の断面を有する柱状体の場合には隣り合う柱状体の直径とは異なる直径Dを有する柱状体46が設けられていることに相当してもよい。
【0090】
図27は、柱状体46の格子状配置で柱状体46が欠いている図5と同様の平面図である。
【0091】
図28は、図27に示されている配置で得られた図11と同様の図表である。略0.53の比a/λで90%を超える平均吸収率Abs が得られる。
【0092】
図29は、0.7 の充填率で比a/λが略0.66である場合における、図27に示されている配置での、表面26と平行であって表面26から0.6 μm離れているフォトニック結晶層40にある面で得られたエネルギー密度を示すグレースケール深度マップである。図29に示されているように、欠いている柱状体の位置でエネルギー密度が局所的に増加している。このため、平均吸収率であっても、エネルギー密度のピークの最大値を特定することが可能である。実施形態によれば、エネルギーのピークの最大値が移される物体30のレベルにあるように、フォトニック結晶層の格子状配置の欠損部分が分散している。このため、レーザ18の位置決め精度が低い場合でも、正確な位置でエネルギー密度のピークを得ることが可能である。欠損部分が設けられているため、吸収が最も高い領域を所望の位置に配置することが可能である。
【0093】
図30は、フォトニック結晶層40の柱状体の配列で柱状体46が他の柱状体より大きい直径を有する、図5と同様の平面図である。パラメータa及びパラメータDに応じて、エネルギー密度分布は図29の形状と同様の一般的な形状を有してもよい。
【0094】
様々な実施形態及び変形例が記載されている。当業者は、これらの様々な実施形態及び変形例のある特徴を組み合わせることができると理解し、他の変形例が当業者に想起される。最後に、記載されている実施形態及び変形例の実際の実施は、上述した機能的な表示に基づく当業者の技能の範囲内である。
【0095】
本特許出願は、参照によって本明細書に組み込まれている仏国特許出願第19/15606 号明細書の優先権を主張している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
【手続補正書】
【提出日】2022-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザで処理すべく構成されているデバイスであって、
レーザを通す基板、及び
前記基板にフォトニック結晶を介して夫々接合されている物
備えている、デバイス。
【請求項2】
前記フォトニック結晶は二次元のフォトニック結晶である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記フォトニック結晶は、第1の材料の基層と、前記第1の材料とは異なる第2の材料の格子状に配置された柱状体とを有しており、前記柱状体は、前記基層の厚さの少なくとも一部に亘って前記基層に夫々延びている、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1の材料は、前記レーザに対して1未満の吸収係数を有する、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第2の材料は、前記レーザに対して1未満の吸収係数を有する、請求項3又は4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記基板は、前記第2の材料で形成されている、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第2の材料は、前記レーザに対して1~10の範囲内の吸収係数を有する、請求項3又は4に記載のデバイス。
【請求項8】
前記基板は、対向する第1の表面及び第2の表面を有しており、前記レーザは、前記基板を前記第1の表面から前記第2の表面に横切るように構成されており、前記フォトニック結晶は前記第2の表面を覆っている、請求項1~7のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項9】
前記物体と前記基板との間に、レーザを吸収する層を更に備えている、請求項1~8のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項10】
前記フォトニック結晶と前記レーザを吸収する層との間に配置されて、前記レーザを通す少なくとも1つの層を更に備えている、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記基板は、シリコン、ゲルマニウム、又はこれらの化合物の少なくとも2つの混合物若しくは合金で形成されている、請求項1~10のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項12】
前記物体は、アクティブ層で覆われた三次元半導体素子を有する少なくとも1つの光電子部品を有しており、前記三次元半導体素子は、前記柱状体の内の少なくとも1つと接する基部を有している、請求項3に記載のデバイス。
【請求項13】
前記第2の材料は、元素の周期表のIV列、V 列若しくはVI列の遷移金属の窒化物、炭化物若しくはホウ化物、又はこれらの化合物の組合せであるか、或いは、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、ホウ素、窒化ホウ素、チタン、窒化チタン、タンタル、窒化タンタル、ハフニウム、窒化ハフニウム、ニオブ、窒化ニオブ、ジルコニウム、ホウ化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、炭化シリコン、炭窒化タンタル、窒化マグネシウム、又はこれらの化合物の少なくとも2つの混合物である、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
レーザを通す基板、及び前記基板にフォトニック結晶を介して夫々接合される物体を備えたデバイスを製造する方法であって、
前記フォトニック結晶を形成して、前記物体を形成する、方法。
【請求項15】
前記フォトニック結晶を前記基板上に形成し、前記フォトニック結晶上に層を堆積させる及び/又は成長させる工程により前記物体を前記フォトニック結晶上に形成する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
レーザを通す基板、及び前記基板にフォトニック結晶を介して夫々接合される物体を備えたデバイスをレーザで処理する方法であって、
前記基板を通して前記フォトニック結晶をレーザビームに露出する、方法。
【請求項17】
前記物体を支持体に接合し、前記物体は前記基板に依然として連結されており、前記フォトニック結晶を含む領域又は前記フォトニック結晶に隣り合う領域をレーザによって破壊する、請求項16に記載の方法。
【国際調査報告】