(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】光起電モジュール
(51)【国際特許分類】
H10K 39/10 20230101AFI20230222BHJP
H10K 30/50 20230101ALI20230222BHJP
【FI】
H01L31/04 120
H01L31/04 130
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539296
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(85)【翻訳文提出日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 FR2020052623
(87)【国際公開番号】W WO2021130461
(87)【国際公開日】2021-07-01
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521000518
【氏名又は名称】ドラキュラ テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベン ドキル,サドク
(72)【発明者】
【氏名】クルション,ブリス
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA11
5F151BA16
5F151CB13
5F151CB29
5F151CB30
5F151DA20
5F151EA09
5F151EA10
5F151EA11
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5F151EA19
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5F151FA07
5F151FA13
5F151FA15
5F151FA21
5F151FA24
5F151GA03
5F151GA05
(57)【要約】
本発明は、ガラス基板又はポリマー材料で作製された基板と、この基板上の少なくとも2つの光起電セル(第1の光起電セル及び第2の光起電セル)とを備える光起電モジュールに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光起電モジュール(10)であって、
●ガラス又はポリマー材料で作製された基板(20)と、
●前記基板(20)上の少なくとも2つの光起電セル(21、22)(第1の光起電セル(21)及び第2の光起電セル(22))とを備え、前記2つの光起電セル(21、22)の各々が、
i.前記基板(20)を覆うインジウム-スズ酸化物(210、220)のカソード層と、
ii.酸化亜鉛又はアルミニウムドープ酸化亜鉛の第1の界面層(211、221)であって、前記第1の界面層(211、221)が、前記カソード(210、220)を覆う、第1の界面層(211、221)と、
iii.前記第1の界面層(211、221)を覆う光起電活性層(212、222)と、
iv.ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムとのポリマーブレンドを含む第2の界面層(213、223)であって、前記第2の界面層(213、223)が、アノードを構成し、かつ前記光起電活性層(212、222)を覆い、前記第2の界面層(213、223)が、連続しており、かつ有機繊維構造及び100nm~400nmの平均厚さを有する、第2の界面層(213、223)と、を備え、
前記第1の光起電セル(21)の前記第2の界面層(213)が、前記第2の光起電セル(22)の前記インジウム-スズ酸化物層(220)と接触している、光起電モジュール(10)。
【請求項2】
前記第2の界面層(213、223)が、100Ω/□~600Ω/□のスクウェア抵抗を有する、請求項1に記載の光起電モジュール(10)。
【請求項3】
前記第2の界面層(213、223)が、5nm以下の粗さRaを有する、請求項1又は2に記載の光起電モジュール(10)。
【請求項4】
前記光起電活性層(212、222)が、ポリ(チエノ[3,4-b]-チオフェンと結合した[6,6]-フェニル-C
61-ブタン酸メチルを含むポリマーブレンドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の光起電モジュール(10)。
【請求項5】
前記基板(210)が、可撓性である、請求項1~4のいずれか一項に記載の光起電モジュール(10)。
【請求項6】
軽スポーツ機器、ベビーカー、包装、特に高級包装、旅行かばん、皮革製品、室内装飾、電子機器、店頭広告パネル、個人用保護具、手袋、玩具及びエデュテインメント、家具、サンシェード、織物、自転車、並びに自動車などの製品上での、請求項1~5のいずれか一項に記載の光起電モジュール(10)の使用。
【請求項7】
1000ルクス以下の放射線下での、請求項1~5のいずれか一項に記載の光起電モジュール(10)の使用。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の光起電モジュール(10)を製造する方法であって、
a)ガラス又はポリマー材料で作製された基板(20)を提供するステップと、
b)前記基板(20)上に2つのインジウム-スズ酸化物層(210、220)を形成するステップであって、前記インジウム-スズ酸化物層(210、220)の両方が、前
記光起電セル(21、22)の各々の前記カソードを構成する、形成するステップと、
c)2つの第1の界面層(211、221)を形成するステップであって、前記2つの第1の界面層(211、221)の両方が、前記インジウム-スズ酸化物層(220)の各々上に形成される、形成するステップと、
d)2つの活性光起電層(212、222)を形成するステップであって、前記光起電活性層(212、222)の両方が、前記第1の界面層(211、221)の各々上に形成される、形成するステップと、
e)2つの第2の界面層(213、223)を形成するステップであって、前記第2の界面層(213、223)の両方が、前記光起電活性層(212、222)の各々上に形成され、かつ前記光起電セル(21、22)の各々の前記アノードを構成する、形成するステップと、を含み、
前記方法は、ステップc)~e)が、各々、デジタルインクジェット印刷によってインク組成物を堆積させ、続いて熱処理することによって実行され、ステップe)で使用される前記インク組成物が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムとのポリマーブレンドを含むことを特徴とする、方法。
【請求項9】
前記光起電活性層(212、222)の洗浄が、エタノール、ブタノール、メタノール、イソプロパノール、及びエチレングリコールから選択される溶媒を使用して、ステップd)とe)との間に実行される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップc)~e)が、
c)2つのインジウム-スズ酸化物層(210、220)の各々上に、デジタルインクジェット印刷によって、酸化亜鉛ナノ粒子又はアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)ナノ粒子を含む第1のインク組成物を堆積させ、続いて熱処理して、前記第1の2つの界面層(211、221)を形成することと、
d)前記第1の2つの界面層(211、221)上に、デジタルインクジェット印刷によって、ポリ(チエノール(thienol)[3,4-b]-チオフェン)と組み合わされた
[6,6]-フェニル-C
61-ブタン酸メチルを含むポリマーブレンドを含む第2のインク組成物を堆積させて、前記2つの光起電活性層(212、222)を形成することと、
e)前記2つの光起電活性層(212、222)上に、デジタルインクジェット印刷によって、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムとのポリマーブレンドを含む第3のインク組成物を堆積させ、続いて熱処理して、前記2つの第2の界面層(213、223)を形成することと、によって実行される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
ステップc)~e)の前記熱処理が、70℃~130℃の温度で、1~5分の時間にわたって実施されるアニーリング処理である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
●ステップc)の前記熱処理が、85℃の温度のホットプレート上で3分間、実施され、
●ステップd)の前記熱処理が、85℃の温度のホットプレート上で2分間、実施され、
●ステップe)の前記熱処理が、120℃の温度のホットプレート上で1~5分間、実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記2つのインジウム-スズ酸化物層(220)を作製するステップb)が、真空堆積によって実行される、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
デジタルインクジェット印刷堆積のステップc)~e)が、周囲空気雰囲気下で実行さ
れる、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
第3のインク組成物をデジタルインクジェット印刷によって堆積させるステップe)が、インクであって、20℃で10mPa.s未満の粘度を有し、
-前記組成物の総体積に対して90体積%~98体積%のポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムの溶液と、
-前記総体積に対して2体積%~10体積%の添加剤組成物であって、
○前記添加剤組成物中の全ての添加剤の総体積に対して2体積%~5体積%の界面活性剤と、
○エチレングリコール添加剤組成物中の全ての添加剤の総体積に対して0.8体積%~2体積%と、
○エタノールアミン添加剤組成物中の全ての添加剤の総体積に対して0.4体積%~1体積%と、
○前記添加剤組成物中の全ての添加剤の前記総体積に対して0.8体積%~2体積%のグリセロールと、を含む、添加剤組成物と、を含む、インク、を堆積させることによって実行される、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、光起電モジュールに関し、具体的には、複数の有機光起電セル(通常は頭字語OPC(organic photovoltaic cell)によって称される)を備える光起電モ
ジュールに関する。
【0002】
有機光起電セルは、本発明の意味では、少なくとも活性層が有機材料からなる光起電セルを意味する。
【背景技術】
【0003】
有機光起電セルを有する光起電モジュールは、太陽光発電の分野における真の関心を象徴する。実際、ケイ素、銅、インジウム、ガリウム、セレン、又はテルル化カドミウムなどの光起電セルで一般的に使用される無機半導体に置き換わる可能性が、実現され得るシステムの数、したがって使用可能性を増大させる。いくつかの有機光起電セルを有する市場向きの光起電モジュールの開発が、現在、主要な課題である。
【0004】
近年、有機光起電セルの開発は、それらの実装のためのインクジェット印刷技術の使用を通じて進化している[1]、[2]。更に、2014年に本出願人は、その技術を使用してこれらのセルの層の一部を印刷する、光起電セルを製造するための方法を開発した[3]。
【0005】
当初、多くの研究が、通常、頭字語PEDOT、poly(3,4-ethylenedioxythiophene):PSS、sodium poly(styrene sulfonate)で表される、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムとのポリマーブレンドを含むインクのインクジェット印刷による界面層の実現に焦点を当てた。その後、この分野の研究は、通常、2つの有機材料(一方の電子供与体及び他方の電子受容体)で構成される光起電活性層のインクジェット印刷に焦点を当てた。有機性の活性層としては、P3HT:PCBM(ポリ(3-ヘキシルチオフェン)を表すP3HT、poly(3-hexylthiophene)及び[6,6]-フェニル-C71-ブタン酸メチルエステルを表すPCBM、[6,6]-phenyl-C71-butanoate of methyl)が、従来使用されている。
【0006】
図1に示されるように、現在使用されている通常又は従来の光起電セル1では、例えば、PEDOT:PSSで作製された第1の界面層9は、アノードとして機能し、それ自体が基板に適用されるインジウム-スズ酸化物3(indium tin oxide、ITO)の層に適用される。第1の界面層9の上に、例えば、P
3HT:PCBMに基づき得る光起電活性層5が適用され、この光起電活性層5の上に、第2の界面層6が適用され、第2の界面層6の上に、通常アルミニウム、又はこの層がインクジェット印刷によって適用される場合には銀で作製される不透明な上部電極7が適用され、不透明な上部電極7が、ここではカソードとして機能する。
【0007】
現在、逆構造を有する光起電セルも存在する。従来の構造と比較した主要な違いは、PEDOTT:PSSの界面層が、活性層と、アノードである上部電極との間に位置することである。逆構造の光起電セルは、従来構造の光起電セルよりも良好な空気安定性の利点を有し、更に、概してより高い変換効率を有することに留意されたい。
【0008】
本発明の意味では、光起電セルの変換効率は、所与のスペクトル分布及び強度について
、セルによって送達される最大電力を入射光出力で割った比を意味する。
【0009】
更に、上記の高い変換効率は、現在の最先端の光起電モジュールが、外部放射線に曝露される、すなわち、2000ルクスより高い光強度、特に、100000ルクスにほぼ等しい光強度と等価な100mW/cm2の出力を有する露光の光強度に対応する、標準条件AM1.5下での放射線に曝露されるときに確実になることに留意されたい。特に、多数の光生成電荷は、とりわけ蓄積現象を最小限に抑えるために、活性層内の光生成電荷の良好な収集を保証するために、非常に高い電気伝導率を有するアノードの使用を必要とする。特に、多数の光生成電荷は、界面層のレベルにおける蓄積現象を最小限に抑えるために、活性層での光生成電荷の良好な収集を保証するために、非常に高い電気伝導率を有するアノードの使用を必要とする。これが、一般に、逆構造の場合、上部電極(又はアノード)が不透明であり、銀で作製される理由である。この場合、変換効率は、有機光起電セルの場合、15~17%の実験室規模の値に達し得る。しかしながら、工業規模では、製造された光起電モジュールの今の変換効率は、半分以下である。
【0010】
しかしながら、現在の最先端の光起電モジュールは、1000ルクスに相当する0.3mW/cm2の電力未満である屋内放射線下では、効果的に使用することができない。
【0011】
光起電モジュールが屋内放射線に曝露されるときのこの低い変換効率は、特に、現在の最先端の有機光起電セルを備える光起電モジュールが、有機光起電セル、したがって光起電モジュールを形成する層の数に起因する高い直列抵抗、及び不十分に高いシャント抵抗を有し、シャント抵抗が、光強度の低下に伴って減少し続けるという事実に起因する。したがって、これらの抵抗レベルが、現在の最先端の有機光起電モジュールの性能及び充填係数を最適化しない。実際、シャント抵抗は、光起電モジュールのより良好な出力電力及び良好な充填係数のために、十分に大きくなければならないことが知られている。実際、低いシャント抵抗では電流が強く崩壊し、これは、電力損失が高く、充填係数が低いことを意味する。
【0012】
更に、現在の最先端の光起電モジュールの低い変換効率はまた、例えば、液体状態で堆積された材料の逆のフィードバック効果によって引き起こされ得る短絡の生成を回避するために、有機光起電セルの各層が、基板と部分的に接触するように、光起電モジュールの有機光起電セルの各々の異なる構成層の堆積が、千鳥状に基板に適用されるため、光起電モジュールが、高いデッド表面を有するという事実に起因する。その結果、現在の最先端の光起電モジュールは、小さな活性表面を有し、この小さな活性表面が、入射光強度が低いときに十分な光電流の生成を可能にしない。
【0013】
したがって、入射光強度が制限されている屋内放射線に好適な有機光起電セルを備える、現在の最先端の有機光起電モジュールはない。
【発明の概要】
【0014】
したがって、本発明の目的の1つは、先行技術の光起電モジュール、及びそれらの製造方法の欠点を少なくとも部分的に改善することである。
【0015】
第1の態様によれば、本発明は、光起電モジュールであって、
●ガラス又はポリマー材料で作製された基板と、
●この基板上の少なくとも2つの光起電セル(第1の光起電セル及び第2の光起電セル)とを備え、2つの光起電セルの各々が、
i.基板を覆うインジウム-スズ酸化物のカソード層と、
ii.酸化亜鉛又はアルミニウムドープ酸化亜鉛の第1の界面層であって、この第1の界面層が、カソードを覆う、第1の界面層と、
iii.第1の界面層を覆う光起電活性層と、
iv.ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムとのポリマーブレンドを含む第2の界面層であって、この第2の界面層が、アノードを構成し、かつ光起電活性層を覆い、この第2の界面層が、連続しており、かつ有機繊維構造及び100nm~400nmの平均厚さを有する、第2の界面層と、を備え、
第1の光起電セルの第2の界面層が、第2の光起電セルのインジウム-スズ酸化物層と接触している、光起電モジュール、に関する。
【0016】
この第1の態様によれば、本発明によるモジュールは、屋内放射線下で光起電モジュールを効果的に使用することができるのに十分である、14%~21%の変換効率を有する。特に、本発明による光起電モジュールでは、光生成電荷損失が最小限に抑えられ、有機光起電セルの異なる層間の光生成電荷の移動が、光起電モジュールの全体的な安定性を有するように改善される。実際、有機光起電モジュールの一般的な安定性は、有機光起電モジュールの有機光起電セルの各々を構成する異なる層の固有の安定性に依存するが、これらの層の各々の間の界面の安定性にも依存する。更に、本発明による光起電モジュールでは、アノードとしての銀層を廃止し、第2の界面層及びアノードとして使用される単一の層を有することにより、現在の最先端技術で使用されるものよりも少ない界面を備える有機光起電セルがもたらされる。したがって、光発生電荷を失うリスクが低減され、界面酸化を有するリスクも低減される。
【0017】
また、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムとのポリマーブレンドを含む層が、ここではアノードとして使用されており、例えば銀層などの、アノードの役割を担うために従来使用される高導電性材料を含む層は、光起電活性層上に高導電性材料を含む層を直接適用することにより、活性層を通してのこの高導電性材料に基づいて、粒子(例えば、金属銀ナノ粒子)の浸透のリスクがあり、これが、短路をもたらし得るので、使用されていないことに留意されたい。
【0018】
化学反応、通常、酸化は、温度によって活性化され、活性層/金属電極界面で起こり得る。この問題は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムとのポリマーブレンドを含む層からなる電極を活性層に適用する場合には存在しない。
【0019】
更に、屋内放射線の場合、シャント抵抗が、特に有機光起電セルの性能にとって重要であり、充填係数を制限するのは、この抵抗であることは、既に周知である。それゆえ、本発明による光起電モジュールは、50~1000ルクス、特に65%~73%の高く安定した充填係数を有するように、現在の最先端の光起電モジュールよりも高いシャント抵抗と、現在の最先端の光起電モジュールよりも低い直列抵抗とを有する。
【0020】
また、本発明による光起電モジュールは、アノードとしての銀層を備えないため、この光起電モジュールは、先行技術の光起電モジュールよりも低いデッド表面と、より高い活性表面とを有する。
【0021】
本発明の意味では、デッド表面は、光起電モジュールを構成する有機光起電セルの各々の製造のために堆積された層のセットを考慮した、光起電モジュールの全表面から活性表面を引いたものを意味する。デッド表面は、有機光起電セルの各々の間の相互接続の領域に対応し、相互接続領域は、活性表面の外側にある。
【0022】
本発明の意味では、活性表面は、光起電モジュールを構成する有機光起電セルの各々を形成する様々な重ね合わされた層に共通の表面を意味する。活性表面は、電極を備え、したがって、2つの上部及び下部電極の表面によって区切られる。
【0023】
銀層がもはやアノードとして使用されないという事実は、より大きい表面積を有する層が適用されることを可能にする。したがって、本発明による光起電モジュールの電力が、改善され、生成される光電流が、増加する。特に、本発明による光起電モジュールは、アノードとして銀層を使用するモジュールの構成と比較して、20~30%大きい活性表面を有する。アノードとしての銀層の排除、及びそのような第2の界面層の存在は、本発明による光起電モジュールが、70%を超える充填係数を有することを可能にする。
【0024】
また、銀層がアノードとして使用されないという事実は、この銀層をアノードとして備える背景技術のモジュールと比較して、より少ない界面、したがって、より良好な安定性及びより低い製造コストを有するモジュールを有するという利点を有する。
【0025】
更に、本発明によるモジュールでは、第2の界面層と、インジウム-スズ酸化物層との間の直列抵抗が低く、それにより、セル間の良好な相互接続が確実になる。
【0026】
好ましくは、第2の界面層は、透明であり、0.6未満の透明度係数を有する。したがって、モジュールの光子吸収係数が増加し、それによりモジュールの性能が改善される。
【0027】
好ましくは、基板は、透明であり、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムとのポリマーブレンドを含む第2の界面層も、透明である。したがって、光起電モジュールの両側に光生成負荷を産生して、光起電モジュールに含まれる有機光起電セルの各々の変換効率を更に改善することが可能である。
【0028】
本発明の特定のモードでは、従来の放射線条件下、すなわちモジュールが、AM1.5の太陽スペクトルに曝露されるとき、本発明による光起電モジュールによって生成される電荷の数は、現在使用されている光起電モジュールと比較して、有利に制限される。現在使用されている、逆構造を有する有機光起電セルを有する光起電モジュールでは、光生成電荷の良好な抽出及びモジュールの良好な動作のために、高い導電率を有する上部金属電極をアノードとして有する必要がある。しかしながら、本発明のモジュールの光起電セルは、この金属電極を含まない。本発明では、各光起電セルにおいて、光起電モジュールが屋内放射線(一般に1000ルクス以下)に曝露されるときに、アノードとして作用し、電荷の抽出及び光起電セルの他の層への電荷の移送の両方を確実にするのに十分な導電率を有するのは、第2の界面層である。したがって、光起電モジュールが、屋内放射線下で最適に動作することを可能にするために、この実施形態では、第2の界面層は、100Ω/□~600Ω/□のスクウェア抵抗を有する。
【0029】
本発明の特定の一実施形態では、変換効率が、更に改善される。したがって、この実施形態では、第2の界面層は、5nm以下の粗さRaを有する。
【0030】
本発明の特定の一実施形態では、光起電活性層は、ポリ(チエノ[3,4-b]-チオフェンに結合した[6,6]-フェニル-C61-ブタン酸メチルを含むポリマーブレンドを含む。
【0031】
本発明の特定のモードでは、光起電モジュールが、異なる物体に適用され得ること、及びモジュールがそれらに適合され得ることが、有利である。したがって、この実施形態では、基板は、可撓性である。
【0032】
第2の態様によれば、本発明は、軽スポーツ機器、ベビーカー、包装、特に高級包装、旅行かばん、皮革製品、室内装飾、電子機器、店頭広告パネル、個人用保護具、手袋、玩具及びエデュテインメント、家具、サンシェード、織物、自転車、並びに自動車などの製
品上での、上記の光起電モジュールの使用に関する。本発明はまた、1000ルクス以下の放射線下での上記の光起電モジュールの使用に関する。
【0033】
第3の態様によれば、本発明は、上記で定義された光起電モジュールを製造するための方法であって、
a)ガラス又はポリマー材料で作製された基板を提供するステップと、
b)基板上に2つのインジウム-スズ酸化物層を形成するステップであって、インジウム-スズ酸化物層の各々が、光起電セルの各々のカソードを構成する、形成するステップと、
c)2つの第1の界面層を作製するステップであって、2つの第1の界面層の各々が、インジウム-スズ酸化物層の各々上に作製される、作製するステップと、
d)2つの光起電活性層を作製するステップであって、光起電活性層の各々が、第1の界面層の各々上に作製される、作製するステップと、
e)2つの第2の界面層を作製するステップであって、第2の界面層の各々が、光起電活性層の各々上に作製され、かつ光起電セルの各々のアノードを構成する、作製するステップと、を含み、
上記の方法は、ステップc)~e)が、各々、デジタルインクジェット印刷によってインク組成物を堆積させ、続いて熱処理することによって実行され、
ステップe)で使用されるインク組成物が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムとのポリマーブレンドを含むことを特徴とする、方法、に関する。
【0034】
この第3の態様によれば、本発明による光起電モジュールの製造のために、一般に銀層、又は特に逆構造を有する有機光起電セルのアノードとして使用される同様の層をアニールするために現在使用されている130℃より高い熱処理を実施する必要はない。熱処理を使用しないことの利点は、有機光起電セルの他の層が、高温によって影響されないことである。例えば、130℃未満のガラス転移温度を有する基板を含む光起電モジュールが、使用され得る。
【0035】
本発明の特定のモードでは、有機光起電セルの層の各々の間の直列抵抗を更に減少させること。したがって、この実施形態では、ステップd)とe)との間に、光起電活性層の洗浄が、エタノール、ブタノール、メタノール、イソプロパノール、及びエチレングリコールから選択される溶媒を使用して実行される。
【0036】
本発明の特定の一実施形態では、迅速、経済的、安定で、かつ容易に再現可能な製造方法が好ましい。したがって、この実施形態では、ステップc)~e)は、
c)2つのインジウム-スズ酸化物層の各々上に、デジタルインクジェット印刷によって、酸化亜鉛ナノ粒子又はアルミニウムドープ酸化亜鉛(aluminum-doped zinc oxide、
AZO)ナノ粒子を含む第1のインク組成物を堆積させ、続いて熱処理して、第1の2つの界面層を形成することと、
d)第1の2つの界面層の上に、デジタルインクジェット印刷によって、ポリ(チエノール(thienol)[3,4-b]-チオフェン)と組み合わされた[6,6]-フェニル
-C61-ブタン酸メチルを含むポリマーブレンドを含む第2のインク組成物を堆積させて、2つの光起電活性層を形成することと、
e)2つの光起電活性層上に、デジタルインクジェット印刷によって、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムとのポリマーブレンドを含む第3のインク組成物を堆積させ、続いて熱処理して、2つの第2の界面層を形成することと、によって実行される。
【0037】
また、この実施形態では、好ましくは、ステップc)~e)の熱処理は、70℃~13
0℃の温度で、1~5分の時間実施されるアニーリング処理である。
【0038】
好ましくは、この実施形態では、
●ステップc)の熱処理は、85℃の温度のホットプレート上で3分間、実施され、
●ステップd)の熱処理は、85℃の温度のホットプレート上で2分間、実施され、
●ステップe)の熱処理は、120℃の温度のホットプレート上で1~5分間、実施される。
【0039】
好ましくは、この実施形態では、2つのインジウム-スズ酸化物層を作製するステップb)は、真空堆積によって実行される。
【0040】
現在、酸素及び水蒸気の存在下での化学反応は、光起電モジュールの性能を低下させ、光起電モジュールの充填係数の著しい低下をもたらすいわゆるS字形を生成する可能性がある。したがって、本発明による方法を使用して、本発明の特定のモードでは、デジタルインクジェット印刷堆積のステップc)~e)は、周囲空気雰囲気下で実行される。
【0041】
好ましくは、第3のインク組成物をデジタルインクジェット印刷によって堆積させるステップe)は、インクであって、20℃で10mPa.s未満の粘度を有し、
-組成物の総体積に対して90体積%~98体積%のポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムの溶液と、
-総体積に対して2体積%~10体積%の添加剤組成物であって、
○添加剤組成物中の全ての添加剤の総体積に対して2体積%~5体積%の界面活性剤と、
○エチレングリコール添加剤組成物中の全ての添加剤の総体積に対して0.8体積%~2体積%と、
○エタノールアミン添加剤組成物中の全ての添加剤の総体積に対して0.4体積%~1体積%と、
○添加剤組成物中の全ての添加剤の総体積に対して0.8体積%~2体積%のグリセロールと、を含む、添加剤組成物と、を含む、インク、を堆積させることによって実行され得ることに留意されたい。
【0042】
本発明のさらなる利点及び特徴は、添付の図面及び以下の実施例を参照して行われる以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】従来の構造の光起電セルの概略断面図を表す。
【
図2】本発明による特定のモードによる、光起電セルを備える光起電モジュールの概略断面図を表す。
【
図3】現在の最先端の光起電セルを備えるモジュールと、本発明による特定のモードによる光起電セルを備える光起電モジュールとの間の比較を表す。
【
図4】本発明による特定のモードによる、光起電セルを備える光起電モジュールの概略上面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、先行技術の前述の開示に記載されている一方、
図2~
図4は、本発明を、その範囲を限定することなく例示する、以下の実施例のレベルでより詳細に説明される。
【実施例】
【0045】
製品
●基板が、以下に記載される様々な有機光起電セル21及び22のカソードを形成する
インジウム-スズ酸化物層210及び220で部分的に覆われるように、不連続なインジウム-スズ酸化物層でコーティングされたガラス基板20
●PET(Polyethylene terephthalate、ポリエチレンテレフタレート)又はPEN(Polyethylene 2,6-naphthalate、ポリエチレン2,6-ナフタレート)で作製され、同様に、基板が、以下に記載される様々な有機光起電セル21及び22のカソードを形成するインジウム-スズ酸化物層210及び220で部分的に覆われるように、不連続なインジウム-スズ酸化物層でコーティングされた可撓性基板20
●洗浄溶媒:
○剛性ガラス基板の場合、脱イオン水、アセトン、エタノール、イソプロパノール、及び
○可撓性基板の場合、可撓性基板はプラスチックフィルムによって保護されるため、剛性基板の場合のように洗浄する必要はない。
●第1のインク組成物(
図2の光起電モジュール10の光起電セル21及び22の第1の界面層211及び221)
○実験室で合成された酸化亜鉛ナノ粒子のインクE11、その配合が、実施例1に詳述されている。
○実験室で合成された、GENES’INK社によって販売されているアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)ナノ粒子のインクE12。
●第2のインク組成物(
図2の光起電モジュール10の光起電セル21及び22の光起電性活性層212及び222):
○[6,6]-フェニル-C
71-ブタン酸メチル(商標名PC70BMでNano-C(登録商標)によって販売)とポリ(チエノール[3,4-b]-チオフェン(商標名PV2000でRaynergy Tek(登録商標)によって販売))とのポリマーブレンドE21、
○[6,6]-フェニル-C
71-ブタン酸メチル(商標名PC70BMでNano-C(登録商標)によって販売)とポリ(チエノール[3,4-b]-チオフェン(商標名PTB7-Thで1-Materialsによって販売)とのポリマーブレンドE22、
○溶媒としてのO-キシレン(式C
6H
4(CH
3)
2のオルト-キシレン)、及び
○添加剤としてのテトラリン(1,2,3,4-テトラヒドロナフタリン)。
【0046】
ブレンドE21のPV2000ポリマー又はブレンドE22のPTB7-Thポリマーは、これらの第2のインク組成物中に10mg/mLで存在する。
【0047】
ブレンドE21のPV2000ポリマー又はブレンドE22のPTB7-Thポリマーと、PC70BMとの間の重量比は、1:1.5である。
【0048】
溶媒O-キシレンと、添加剤テトラリンとの間の体積比は、これらの第2の組成物中で、97:3である。
【0049】
第2のインク組成物は、溶媒及び添加剤をポリマーブレンドE21又はE22に添加し、80℃のホットプレート上で、700RPMの速度で撹拌しながら、このブレンドを24時間維持することによって作製される。
【0050】
●第3のインク組成物(
図2の光起電モジュール10の光起電セル21及び22の第2の界面層213及び223):
○商標名IJ 1005でAgfa(登録商標)によって販売されているPEDOT:PSS、又は商標名ORGACON S315でAgfa(登録商標)によって販売されているPEDOT:PSS、
○洗剤/界面活性剤として、Merck(登録商標)によって販売されているTri
ton X-100(式Oct-C
6H
4-(OCH
2CH
2)
xOH、x=9~10、の(4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコール)、
○Merck(登録商標)によって販売されているエタンジオール(又はエチレングリコール、式HOCH2CH2OH)、
○Merck(登録商標)によって販売されているグリセロール(1,2,3-プロパントリオール又はグリセリン、式HOCH
2CH(OH)CH2OH))、
○実験室で産生されるか、又は水のブランド名ELGA(登録商標)でPURELAB(登録商標)classicによって販売されている脱イオン水。
【0051】
試験
●粗さ測定Ra
これらの測定は、原子間力顕微鏡(Brucker(登録商標)からのNanoscope III Multimode SPM、インターミッテントコンタクトモード(又は「タッピングモード」)で使用され、MiKromasch(登録商標)によって販売され、8nmの曲率半径を有するhq:nsc15チップを用いる)を用いて実行され、測定は、本発明による、及び背景技術による光起電セルの異なるサンプルに対して実行された。
【0052】
●層厚測定
印刷層の厚さの測定は、カッターブレード(それにより、堆積物の厚さを有するチャネルを作成する)で作製されたスクラッチにおいて、BRUKERによって販売されているDektakXTスタイラスプロフィロメータによって実施される。これは、一定の接触力を加えて表面をスキャンして、いかなる凹凸も明らかにする先のとがったスタイラスを垂直に移動させることによって、レリーフの変化を測定する接触式プロフィロメータである。サンプルは、所与の速度で、選択された距離にわたってサンプルが移動することを可能にするプレート上に配置される。この特許出願に提示される厚さの値は、サンプルの単一のステップで、6つの異なる点で行われた5回の測定の平均である。測定を行う前に、スキャンされる領域の長さ、その持続時間、スタイラスの力、及び測定範囲が、定義されなければならない。
【0053】
●電気抵抗率測定
この測定は、以下のように、4点法を使用して実行される。
-特徴付けられる層の縁から遠位に位置合わせされた4点を配置し、
-これらの4点は、互いに等距離にあり、
-電流は、電流発生器によって外部点間に生成される一方、電圧は、内部点間で測定される。サンプルを通って流れる電流に対する測定電圧の比が、内部点間のセクションの抵抗を与える。
【0054】
●粘度測定:
流体の粘度は、流体の層の変形又は相対的スライドに対する流体の抵抗によって示される。例えば、毛細管内の粘性流体の流れの間、分子の速度(v)は、チューブの軸で最も高く、壁でゼロに近づくまで減少する一方、層間に相対的スライドが発生し、したがって、摩擦の接線力が出現する。流体中の接線力は、考慮される流体の性質及びその流れのレジームに依存する。
【0055】
使用される粘度計は、ウベローデ型であり、一定温度(本発明者らのケーススタディでは25℃)に維持されたサーモスタット内に配置される。本発明者らは、毛細管の上の小さなタンクの両側に位置する2つの参照マーク(M1及びM2)によって画定される一定の体積Vの流動時間を測定する。
【0056】
●エージング測定:
恒久的な光浸漬下でのエージング、及び85℃での熱エージング
【0057】
●形態の特徴付け:
表面トポグラフィを再現するためのAFM(atomic force microscope、原子間力顕微
鏡)測定、及び材料の結晶特性、並びに層中に存在するナノ粒子のサイズを検証するためのTEM(transmission electron microscopy、透過電子顕微鏡法)。
【0058】
●変換効率
変換効率は、屋内放射線下での発生電力と、入射放射線の電力との比である。内部測定ベンチは、有機光起電セル及びモジュールの特徴付けが実施される絶縁されたエンクロージャからなる。分光計を使用して、(LED、ネオン、ハロゲン、及びコンパクトな蛍光灯などの異なる光源からの)入射光束を、W/m2及びルクス単位で測定する。測定はまた、Keithley 2450ソースメータ(20mV~200V、10nA~1A)を用いて行われる。
【0059】
実施例1:第1の界面層211及び221のための第1のインク組成物E11の第1の実施例を得る
1.1.ポリオール法によるZnOの合成[4]
使用機器:
2つの丸底フラスコ、ブロミンカラム、油浴、アルゴンボトル、シリンジフィルタ、加熱プレート、及び磁気撹拌機、超音波浴、Ardeje A100(登録商標)プリンタ、Ardeje OD100(登録商標)プリンタ、以下のブランドの印刷ヘッド:KONICA(登録商標)、RICOH(登録商標)。
【0060】
手順:
-最初に、2.207gの量のKOHを量って、250mLのフラスコに入れる。次いで、115mLのメタノールを添加する。別のより大きいフラスコに、4.101gの酢酸亜鉛を、撹拌下で210mLのメタノールと共に添加し、次いで115mLの水を添加する。
-次に、この大きいフラスコを、ホットプレート上で、撹拌及びアルゴン下の60℃の油(又は水)浴内に固定する。
-更に、KOHを超音波浴に溶解させ、次いでフラスコに滴下する。
-透明から不透明への色の変化が、観察される。数分後、溶液が、再び透明になる。
-次いで、ブレンドを更に3時間撹拌し、その後、ZnOの白色懸濁液が形成される。
【0061】
1.2 合成ZnOナノ粒子からのインクE11の製造
-実施例1.1のポリオール法から得られた酸化亜鉛ZnOを冷浴中で冷却し、ZnO粒子を遠心分離(12分及び7800rpm)によって分離し、界面活性剤としてエチレングリコールを使用して、ブタノール中に分散させる。
-4mg/mLのナノ粒子濃度を有するZnO粒子のインクE11が、得られる。
-インクジェット印刷前に、インクE11を0.45マイクロメートルのセルロースアセテート(cellulose acetate、CA)フィルタで予備濾過する。
【0062】
実施例2:第1の界面層211及び221のための第1のインク組成物E12の第2の実施例を得る
本発明者らは、GENES’INK(登録商標)社によって販売されているアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)ナノ粒子インクを、以下の方式で使用した:インクジェット印刷前に、インクを最初に室温で2分間超音波浴内に配置し、次いで0.45マイクロメ
ートルの酢酸セルロースフィルタで濾過する。インクE12が、得られる。
【0063】
実施例3:第1の界面層211及び221のための第1のインク組成物E13の第3の実施例を得る
3.1 AZOナノ粒子の合成
この合成は、科学出版物[3]に記載されているものに従って、以下のプロトコルによって行われる。
-酢酸亜鉛、アルミニウムイソプロピレート、及び蒸留水を、無水エタノールを含むフラスコに導入する。
-80℃で30分間加熱した後、エタノール中に分散した水酸化カリウムを、80℃で16時間加熱しながらフラスコに滴下し、それにより、AZOナノ粒子を合成する。
-次いで、これらのナノ粒子を遠心分離によって溶液から分離し、エタノールアミン(ethanolamine、EA)を使用して、アルコール系溶媒中に分散させる。
-この方法により、酢酸亜鉛に対するアルミニウムイソプロピレート前駆体の初期比を変化させること、及び全ての他のパラメータを一定に保つことによって、0%(ドープされていないベースライン)から最大0.8at%の範囲のAlドーピングレベルのAZO
NCナノ粒子(「アルミニウムドープ酸化亜鉛ナノ結晶」の略語)を産生した。
【0064】
3.2 合成AZOナノ粒子からインクE12を製造する方法
-実施例3.1のポリオール法から得られたAZOを冷浴中で冷却し、AZO粒子を遠心分離(12分及び7800rpm)によって分離し、界面活性剤としてエチレングリコールを使用して、ブタノール中に分散させる。
-2mg/mLのナノ粒子濃度を有するAZO粒子のインクE12が、得られる。
-インクジェット印刷前に、インクE12を0.45マイクロメートルの酢酸セルロース(CA)フィルタで予備濾過する。
【0065】
実施例4:光起電活性層212及び222のための第2のインク組成物E21及びE22を得る
PT70BMがPV2000と組み合わせて使用されるか、それともPC70BMがPTB7-Thと組み合わせて使用されるかに応じて、それぞれ、インク組成物E21及びE22が得られ、それらの組成が、以下の表1に詳述されている。
【0066】
【0067】
インク組成物E21は、以下のように得られる。
-1ミリリットルのo-キシレン及び60マイクロリットルのテトラリン中で、10mgのPTB7-thを15mgのPC70BMとブレンドする(1:1.5質量比に対応する)。
-ブレンドを、磁気撹拌下で、80℃のホットプレート上に24時間置く。
-印刷前に、インクを0.45マイクロメートルのACフィルタで予備濾過する。
-次いで、印刷層を、85℃のホットプレート上で2分間、熱アニーリングする。
【0068】
インク組成物E22は、以下のように得られる。
-1ミリリットルのo-キシレン及び60マイクロリットルのテトラリン中で、10mgのPV2000を15mgのPC70BMと混合する(1:1.5の質量比に対応する)。
-ブレンドを、磁気撹拌下、80℃のホットプレート上に24時間置く。
-インクジェット印刷前に、E22インクを0.45マイクロメートルのACフィルタで濾過する。
-E12又はE22のインクジェット印刷後、光起電活性層が得られ、この光起電活性層は、印刷されると、85℃のホットプレート上で2分間、熱アニーリングされる。
【0069】
実施例5:第2の界面層213及び223のための第3のインク組成物E31及びE32を得る
第2の界面層213及び223のためのこれらの第3のインク組成物E31及びE32は、以下のように得られる。
●PEDOT:PSSを0.45μmのフィルタで濾過し、
●500 μlのTriton X-100(a)を、9mLの脱イオン水(e)中で、200μlのエチレングリコール(b)、200μlのグリセロール(c)、及び100μlのエタノールアミン(d)と混合し、
●このようにして得られたブレンドを、磁気撹拌下で、50℃のホットプレート上に30分間、次いで磁気撹拌下で室温に20分間置き、
●最初に濾過されたPEDOT:PSSを、撹拌後に得られたブレンドと以下の割合、1mLのPEDOT:PSSに対して脱イオン水中の3つの添加剤のブレンドの30μlで混合し、得られたブレンド(PEDOT:PSSを有する)を、磁気撹拌下で、室温のホットプレート上に少なくとも1時間置き、
●このようにして得られた最終溶液E31を、印刷前に、超音波浴中で3~5分間脱気する。
【0070】
PEDOT:PSS IJ1005が使用されるか、それともPEDOT:PSS ORGACON S315が使用されるかに応じて、インク組成物E31及びE32がそれぞれ得られ、それらの組成が、以下の2つの表2及び表3に詳述されている。
【0071】
【0072】
【0073】
実施例6:本発明による光起電モジュールの実施例を得る
本発明によるOPVセルは、以下の方法に従って産生される。
剛性基板の場合:
●4つの異なる洗浄浴に連続的に浸漬することによって、構造化ITO層を有する剛性ガラス基板を洗浄し、
○浴1:20~40℃の脱イオン水で10~15分間、
○浴2:20~40℃のアセトンで10~15分間、
○浴3:20~40℃のエタノールで10~15分間、
○浴4:20~40℃のイソプロパノールで10~15分間、
●インジウム-スズ酸化物層210及び220の各々上にインクE11、E12、又はE13を印刷し、続いて85℃で5分間アニーリングして、第1の界面層211及び221を得、
●第1の界面層211及び221の各々上にインクE21又はE22を印刷し、続いて85℃で2分間アニーリングして活性層212及び222を得、
●活性層212及び222をアルコール(エタノール、ブタノール、イソプロパノール)で洗浄し、
●第2の界面層213及び223であって、100~400nm、特に約350nmの厚さを有し、第1の光起電セル21の第2の界面層213が、第2の光起電セル22のインジウム-スズ酸化物層220と接触している、第2の界面層213及び223、を有するように、活性層212及び222の各々上にインクE31又はE32を印刷し、続いて120℃で2分間アニーリングし、
●第2の界面層213及び223をアルコール(エタノール、ブタノール、イソプロパノール)で洗浄して、第2の界面層213及び223の導電率を改善する。
【0074】
可撓性基板の場合:
●ITO/PET基板は、両側の2つのプラスチックフィルムによって保護されている。
○この基板は、両面テープで、同じサイズのガラススライドに接着され、
○基板のITO側を覆うプラスチックフィルムが、次いで除去され、
●インジウム-スズ酸化物層210及び220の各々上にインクE11(又はE12)を印刷し、続いて85℃で5分間アニーリングして、第1の界面層211及び221を得、
●第1の界面層211及び221の各々上にインクE21又はE22を印刷し、続いて85℃で2分間アニーリングして、活性層212及び222を得、
●活性層212及び222をアルコール(エタノール、ブタノール、イソプロパノール)で洗浄し、
●第2の界面層213及び223であって、100~400nm、特に約350nmの厚さを有し、第1の光起電セル21の第2の界面層213が、第2の光起電セル22のインジウム-スズ酸化物層220と接触(接触は、
図4に参照30によって示されている)している、第2の界面層213及び223、を有するように、活性層212及び222の各々上にインクE31又はE32を印刷し、続いて120℃で2分間アニーリングし、
●E31又はE32層をアルコール(エタノール、ブタノール、イソプロパノール)で洗浄し、
●得られた光起電モジュールをプラスチックフィルムから引き離す。
【0075】
製造方法の終わりに、以下の有機光起電セル21及び22を備える光起電モジュール10が得られ、光起電モジュール10は、以下の表4に要約されており、光起電モジュール10は、次いで、微細な有機繊維構造を有するアノードとしての第2の界面層213及び223を備える。
【0076】
【0077】
実施例7:背景技術/対照モジュールの実施例を得る
背景技術によるOPVセルを備える光起電モジュールは、以下の方法に従って産生される。
1)ITO基板(Lumtec(登録商標)から購入、15オームsq-1)を、脱イオン水、アセトン、エタノール、及びその後IPA(イソプロパノール)中で超音波処理によって慎重に洗浄し(浴当たり10分)、
2)IPA及び0.2%(v/v)エタノールアミン中のZnO(又はAZO)ナノ粒子の溶液を、1500rpmで1分間遠心分離(別名、スピンコーティング)によって堆積させ、80℃のホットプレート上で5分間乾燥させ、
3)PTB7-Th(又はPV2000)及びPC70BMを、10mg/mLのポリマー濃度を有する、溶媒としてのo-キシレン及び添加剤としてのテトラリン中で(溶媒と添加剤との間の比は97:3v/vである)、1:1.5の質量比で混合する。2700rpmで2分間スピンコーティングすることによって、90~100nmの公称厚さを有する層を堆積させ、
4)ポリ(3,4-PEDOT:PSS)(S315)の薄層を、3000rpmの速度で60秒間スピンコーティングすることによって有機層上に堆積させ、次いで、120℃のホットプレート上で5分間加熱し、
5)アノードについては、サンプルをグローブボックス内のMBRAUN蒸発器内に配置し、グローブボックス内で、Al金属電極(100nm)を、マスクを通して2×10~7トールの圧力下で、熱蒸発させた。
6)そのような有機光起電セルを備える光起電モジュールであって、光起電モジュールの有機光起電セルの各々間のオーミック接触を確実にするために、他方に隣接する一方の光起電セルのアノードが、他方のインジウム-スズ酸化物層と接触している、光起電モジュールを作製する。
【0078】
図3は、それ自体が活性層212及び222上に適用された、第2の界面層213及び223上に適用された、例えば、アノードとしての金属層を備える現在の最先端のモジュール(
図3の上部に位置するモジュール)と比較した、本発明による特定の一実施形態によるモジュール(
図3の下部に位置するモジュール)の活性表面積の増加及びデッド表面積の減少を示すことにも留意されたい。
【0079】
実施例8:実施例6及び7で得られたOPVセルの特徴付け
本発明によるOPVセルを備える様々な光起電モジュールは、上記の試験、及び以下の表5のこれらの特徴付けの結果に従って、特徴付けられている。
【0080】
【0081】
本発明によるOPVセルC1~C8は、光起電セルのETL(electron transport layer、電子輸送層)及びPEDOT-PSS材料で作製されたアノード層の両方を印刷する問題が解決されることを示す。特に、そのようなセルは、低放射線、特に屋内放射線に供される場合に有利である。このようにして、いくつかの有機光起電セル21及び22であって、各々が、可撓性プラスチック又は剛性ガラス基板上に存在する第1の透明導電性電極上に印刷された3層からなる、若しくは任意の材料を含まない可撓性プラスチック又は剛性ガラス基板上に印刷された4層からなる、有機光起電セル21及び22、を備える光起電モジュール10を産生することが可能である。
【0082】
本発明は、インクジェット印刷方法に適合し、特に、第2の界面層がそれ自体アノードであるように、第2の界面層へのアノードの適用なしで済ますのに十分な導電率特性を有するPEDOT-PSS溶液を配合することからなる。この配合は、HTL(hole transport layer、正孔輸送層)に伝統的に使用される高導電率PEDOT-PSSを使用して、ETL及びアノード層の両方である層を得ることを可能にする。
【0083】
この配合と組み合わされたインクジェット印刷方法は、材料の電気的及び光学的特性、並びに、特に、実質的に垂直に配向された有機繊維を有する有機繊維非晶質結晶構造の実現を伴う第2の界面層の構造を最適化して、電荷の輸送を促進するために、印刷層の厚さを制御することを可能にする。本発明を使用して作製されたモジュールの変換効率は、現在までユニークなままである。
【0084】
比較:
このようにして、「Margent」(M-silver)と呼ばれる光起電モジュールが製造された。このMargentモジュールは、
図3の下図に示すように、120nmの厚さ及び2.5μΩ.cmほどの電気抵抗率を有する銀系アノードが更に適用されている、上記のいくつかのセルC1を備える。銀を含むセルは「Cargent」と呼ばれ、以前に列挙した試験、及び以下の表6のこれらの特徴付けの結果に従って、特徴付けられている。
【0085】
【0086】
比較として、本発明による、上述のいくつかの光起電セルC1を備える光起電モジュールM1が、製造されている。セルC1(銀なし)は、前述の試験、及び以下の表7のこれらの特徴付けの結果に従って、特徴付けられた。
【0087】
【0088】
これら2つの表(表6及び表7)の助けを借りて、各Margent及びMC1モジュールの挙動が、以下に示すように、異なる光起電性能を有するこれらのCargent及びC1セルと非常に異なることを明確に見ることができる。
【0089】
実際、PEDOT:PSSを電極(C1)として使用する構造では、充填係数は、低放射線(1000ルクス未満)の場合にかなり良好であリ、これは、電荷抽出の容易さ及び低い電荷再結合率に言い換えられる。この場合、開路電圧値並びに短絡電流は、同じ照明条件(1000ルクスより低い放射線)下で銀層を使用するCargentセルで得られるものよりもかなり良好である。
【0090】
更に、C1セルを含むモジュールM1(銀を含まない構造)の光起電性能は、光レベル(光放射)の増加と共に連続的に低下し、太陽スペクトルAM1.5(100mW/cm2)下で非常に低くなり、これは、この構造の使用(屋内条件下のみの効率)の限界を示す。
【0091】
また、Cargentセルを備えるMargent構造の場合に得られた光起電性能は、C1セルを備えるM1で得られたものと比較して、(セルが曝露される光放射に従って)反対方向の傾向があることにも留意されたい。実際、1000ルクスを超えると、Ma
rgent構造で得られた光起電性能は、最大100mW/cm2に達するように改善する。
【0092】
これは、屋内条件下(1000ルクス以下の放射線)での光生成電荷の数が非常に小さく、したがって、それらの収集を確実にするために高導電率電極を必要としないためである。この場合、PEDOT:PSS層は、M1構造のC1セル内で電極機能を実行し得る。より重い照明(1000ルクスより高い放射線)の場合、PEDOT:PSS層は、全ての光生成電荷を輸送及び収集することができず、それにより、その層における電荷の蓄積、及び続いて充填係数の低下を引き起こす。
【0093】
Cargentセルの銀層は、PEDOT:PSSと比較して、その高い導電率に起因して、多数の電荷を収集することができる。Cargentセル内のPEDOT:PSS/銀層界面での電荷損失は、重要な照明(光生成電荷の数が非常に重要である、1000ルクスより高い放射線)の場合、光起電性能に及ぼす影響は少ないが、屋内照明(光生成電荷の数が非常に弱くなる1000ルクス以下の放射線)の場合には、1000ルクス以下の放射線に曝露されたMargentモジュールの性能の低下を説明する全てのものを、より不利にする。
【0094】
参考文献のリスト
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【国際調査報告】