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特表2023-508465粒子および細胞を処理するためのマイクロ流体カートリッジ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】粒子および細胞を処理するためのマイクロ流体カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/26 20060101AFI20230222BHJP
   C12M 1/12 20060101ALI20230222BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230222BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20230222BHJP
   B81B 1/00 20060101ALI20230222BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230222BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230222BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20230222BHJP
【FI】
C12M1/26
C12M1/12
C12N5/10
B01J19/00 321
B81B1/00
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539341
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(85)【翻訳文提出日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 US2020066812
(87)【国際公開番号】W WO2021133897
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】62/954,478
(32)【優先日】2019-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519149537
【氏名又は名称】ジーピービー・サイエンティフィック・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GPB Scientific, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】スケリー,アリソン
(72)【発明者】
【氏名】ガンディ,クシュルー
(72)【発明者】
【氏名】ウォード,アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】バーマーディ,ヤスナ
【テーマコード(参考)】
3C081
4B029
4B065
4G075
【Fターム(参考)】
3C081AA01
3C081BA21
3C081BA23
3C081BA72
3C081CA32
3C081DA03
3C081DA06
3C081DA10
3C081DA12
3C081EA27
3C081EA37
3C081EA39
4B029AA09
4B029BB11
4B029CC01
4B029GB05
4B065AA93Y
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BD14
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4G075AA13
4G075AA27
4G075AA39
4G075AA56
4G075BB05
4G075BB07
4G075DA02
4G075DA18
4G075EB50
4G075EC09
4G075EC25
4G075FA05
4G075FA12
4G075FB01
4G075FB02
4G075FB06
4G075FB12
(57)【要約】
試料中の汚染物質から所定のサイズの標的粒子または標的細胞を精製するためのマイクロ流体カートリッジであって、カートリッジは第1および第2の平面状の支持体を備え、第1および第2の平面状の支持体はそれぞれ、上面および底面を有し、第1および/または第2の平面状の支持体の上面は、1つまたは複数の入口から1つまたは複数の出口まで延びる、少なくとも1つの埋め込みチャネルを備え、少なくとも1つの埋め込みチャネルは複数の障害物を備え、マイクロ流体カートリッジは、第1および第2の平面状の支持体からマイクロ流体カートリッジを組み立てるときに変形されるように構成された、少なくとも1つの空所を備える、マイクロ流体カートリッジが、本明細書に記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の汚染物質から所定のサイズの標的粒子または標的細胞を精製するためのマイクロ流体カートリッジであって、前記カートリッジは第1および第2の平面状の支持体を備え、前記第1および第2の平面状の支持体はそれぞれ、上面および底面を有し、前記第1および/または第2の平面状の支持体の前記上面は、1つまたは複数の入口から1つまたは複数の出口まで延びる、少なくとも1つの埋め込みチャネルを備え、前記少なくとも1つの埋め込みチャネルは複数の障害物を備え、前記マイクロ流体カートリッジは、前記第1および第2の平面状の支持体から前記マイクロ流体カートリッジを組み立てるときに変形されるように構成された、少なくとも1つの空所を備える、マイクロ流体カートリッジ。
【請求項2】
前記第1および第2の平面状の支持体の前記底面は、前記第1の平面状の支持体の底部が前記第2の平面状の支持体の底部に押し付けられるときに変形されるように構成された、少なくとも1つの空所を備える、請求項1に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの空所は、前記少なくとも1つの埋め込みチャネル、前記1つもしくは複数の入口、前記1つもしくは複数の出口、前記複数の障害物、またはそれらの組み合わせの損傷、変位、または変形を防止するように構成されている、請求項1に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項4】
前記少なくとも1つの空所は、前記複数の障害物の損傷、変位、または変形を防止するように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項5】
空所とチャネルの比が1:1である、請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの空所は、全表面積が前記少なくとも1つの埋め込みチャネルの全表面積の少なくとも約90%である、請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの空所は、全表面積が前記少なくとも1つの埋め込みチャネルの全表面積の少なくとも約100%である、請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの空所は、全表面積が前記少なくとも1つの埋め込みチャネルの全表面積の少なくとも約110%である、請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項9】
前記少なくとも1つの空所は、障害物のアレイの反対側の、前記第1および/または第2の平面状の支持体の前記底面に位置決めされた2つ以上の空所に分離されている、請求項1から8のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項10】
前記平面状の支持体は、互いに接合された2層の材料から作製される、請求項1から9のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項11】
前記カートリッジの動作中に流体または試料が前記複数の障害物の上を流れることを防止するために、前記平面状の支持体の表面に接合されかつ前記少なくとも1つの埋め込みチャネルの前記複数の障害物の上面に接合された、障害物接合層をさらに備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項12】
前記障害物接合層は、前記少なくとも1つの埋め込みチャネル中への試料のフローを可能にする、前記少なくとも1つの埋め込みチャネルの前記1つまたは複数の入口に流体連結された1つまたは複数の通路と、前記1つまたは複数の出口の外への流体のフローを可能にする、前記少なくとも1つの埋め込みチャネルの前記1つまたは複数の出口に流体連結された1つまたは複数の通路とを備える、請求項11に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項13】
前記障害物は、前記カートリッジの臨界サイズを定めるように位置決めされ、そのため、試料が前記カートリッジの入口に注がれ出口まで流れるときに、前記臨界サイズよりも大きい前記試料中の粒子または細胞が、前記臨界サイズよりも小さい前記試料中の粒子または細胞から分離される、請求項1から12のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項14】
前記1つまたは複数の出口は少なくとも1つの生成物出口を備え、前記カートリッジの前記臨界サイズよりも大きいサイズを有する前記標的粒子または標的細胞は、前記少なくとも1つの生成物出口に方向付けられる、請求項13に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項15】
前記1つまたは複数の出口は少なくとも1つの廃棄物出口を備え、前記カートリッジの前記臨界サイズよりも小さいサイズを有する前記汚染物質は、前記少なくとも1つの廃棄物出口まで流れる、請求項13に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項16】
前記複数の障害物はダイヤモンド形である、請求項1から15のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項17】
前記複数の障害物は円形または楕円体である、請求項1から15のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項18】
前記複数の障害物は六角形である、請求項1から15のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項19】
前記複数の障害物は、流体フローの方向に垂直な方向に長形であり、そのため、それらの上下長さ(P2)とは異なる左右長さ(P1)を有する、請求項16から18に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項20】
P1は約10μmから約160μmであり、P2は約5μmから約80μmである、請求項19に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項21】
P1は約10μmから約80μmであり、P2は約15μmから約60μmである、請求項19に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項22】
P1は約15μmから約30μmであり、P2は約25μmから約45μmである、請求項19に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項23】
P1は約40μmであり、P2は約20μmである、請求項19に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項24】
P1はP2よりも50から150%長い、請求項19に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項25】
前記複数の障害物は、互いに向き合うが互いに真向かいにはない1つまたは複数の頂点が平行な隙間にそれぞれの側で隣接するように前記隙間中を延びる、頂点を有する、請求項1から24のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項26】
前記複数の障害物は、互いに向き合う頂点が垂直な隙間にそれぞれの側で隣接するように前記隙間中を延びると共に互いに真向かいにある、頂点を有する、請求項1から24のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項27】
前記複数の障害物は、少なくとも、少なくとも1本の縦列になるように配置されている、請求項1から26のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項28】
前記複数の障害物は、少なくとも、少なくとも10本の縦列になるように配置されている、請求項1から26のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項29】
前記複数の障害物は、少なくとも、少なくとも30本の縦列になるように配置されている、請求項1から26のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項30】
前記複数の障害物は、少なくとも50本の縦列になるように配置されている、請求項1から26のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項31】
前記複数の障害物は、少なくとも約60本の縦列になるように配置されている、請求項1から26のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項32】
前記複数の障害物は、少なくとも、少なくとも約50本の横列になるように配置されている、請求項1から31のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項33】
前記複数の障害物は、少なくとも、少なくとも約100本の横列になるように配置されている、請求項1から31のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項34】
前記複数の障害物は、少なくとも、少なくとも約300本の横列になるように配置されている、請求項1から31のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項35】
前記複数の障害物は、少なくとも、少なくとも約600本の横列になるように配置されている、請求項1から31のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項36】
前記第1または第2の平面状の支持体は少なくとも10本の埋め込みチャネルを備える、請求項1から35のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項37】
前記第1および/または第2の平面状の支持体は少なくとも20本の埋め込みチャネルを備える、請求項1から35のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項38】
前記第1および/または第2の平面状の支持体は約28本の埋め込みチャネルを備える、請求項1から35のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項39】
前記第1および/または第2の平面状の支持体は約30本の埋め込みチャネルを備える、請求項1から35のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項40】
前記第1および/または第2の平面状の支持体は少なくとも約50本の埋め込みチャネルを備える、請求項1から35のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項41】
前記1つまたは複数の入口は、少なくとも1つまたは複数の試料入口および少なくとも1つまたは複数の流体入口から構成され、前記少なくとも1つまたは複数の試料入口は、分離壁によって前記少なくとも1つまたは複数の流体入口から分離されており、前記分離壁は、前記1つまたは複数の試料入口から前記少なくとも1つの埋め込みチャネルの前記障害物のアレイを通って前記出口に向かって延び、前記流体フローの方向に平行に向けられている、請求項1から40のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項42】
前記分離壁は、前記複数の障害物の長さの少なくとも10%にわたって延びる、請求項41に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項43】
前記分離壁は、前記複数の障害物の長さの少なくとも20%にわたって延びる、請求項41に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項44】
前記分離壁は、前記複数の障害物の長さの少なくとも60%にわたって延びる、請求項41に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項45】
前記1つもしくは複数の入口、前記1つもしくは複数の出口、またはその両方は、第1のぜん動ポンプ、第2のぜん動ポンプ、またはその両方に流体連結されている、請求項1から44のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項46】
前記第1のぜん動ポンプと前記第2のぜん動ポンプとは直列に流体連結されている、請求項45に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項47】
前記第1のぜん動ポンプと前記第2のぜん動ポンプとは並列に流体連結されている、請求項45に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項48】
前記カートリッジはポリマーから作製される、請求項1から47のいずれか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項49】
前記ポリマーは熱可塑性ポリマーである、請求項48に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項50】
前記熱可塑性ポリマーは、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート、または環状オレフィンコポリマーを含む群から選択される、請求項48に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項51】
前記熱可塑性ポリマーは環状オレフィンコポリマーである、請求項48に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項52】
請求項1から51のいずれか一項に記載の複数のマイクロ流体カートリッジを備え、前記複数のマイクロ流体カートリッジは流体連結している、マイクロ流体アセンブリー。
【請求項53】
前記マイクロ流体カートリッジは積層されている、請求項52に記載のマイクロ流体アセンブリー。
【請求項54】
前記複数のマイクロ流体カートリッジは2つである、請求項52に記載のマイクロ流体アセンブリー。
【請求項55】
前記マイクロ流体カートリッジは並列に流体連結している、請求項52に記載のマイクロ流体アセンブリー。
【請求項56】
前記マイクロ流体カートリッジは直列に流体連結している、請求項52に記載のマイクロ流体アセンブリー。
【請求項57】
請求項1から56のいずれか一項に記載の前記マイクロ流体カートリッジの製造方法であって、前記カートリッジは、前記障害物のアレイが変形されないように、前記第1および前記第2の平面状の支持体の前記底部を互いに押し付けることによって作製される、方法。
【請求項58】
前記少なくとも1つの埋め込みチャネル、障害物、またはその両方は、エンボス加工、ホットエンボス加工、ロールツーロールエンボス加工、または射出成形によって作製される、請求項57に記載の製造方法。
【請求項59】
前記マイクロ流体カートリッジは作製中に紫外線硬化される、請求項57または58のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項60】
試料中の汚染物質から所定のサイズの標的粒子または標的細胞を富化する方法であって、
a)前記標的粒子または標的細胞および前記汚染物質を含む試料を取得することと、
b)i)請求項1から56のいずれか一項に記載の前記マイクロ流体カートリッジの1つまたは複数の試料入口に前記試料を注ぎ、
ii)請求項1から56のいずれか一項に記載の前記カートリッジの前記出口まで前記試料を流し、
iii)前記汚染物質を除去しながら、1つまたは複数または出口から、標的粒子または標的細胞が富化された生成物を取得する
ことによって、前記汚染物質から前記標的粒子または標的細胞を分離することとを含む、方法。
【請求項61】
前記標的粒子または標的細胞は、障害物のアレイの臨界サイズよりも大きいサイズを有し、少なくとも一部の汚染物質は、前記障害物のアレイの前記臨界サイズよりも小さいサイズを有し、標的細胞または標的粒子は、標的細胞または標的粒子が富化された生成物が取得される前記1つまたは複数の生成物出口まで流れ、前記障害物のアレイの前記臨界サイズよりも小さいサイズを有する汚染物質は、もう1つの廃棄物出口まで流れる、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記カートリッジの流量は毎時約400mLである、請求項60または61に記載の方法。
【請求項63】
前記カートリッジの流量は少なくとも毎時約100mL以上である、請求項60または61に記載の方法。
【請求項64】
前記カートリッジの流量は少なくとも毎時約300mL以上である、請求項60または61に記載の方法。
【請求項65】
前記カートリッジの流量は毎時約1000mLである、請求項60または61に記載の方法。
【請求項66】
前記カートリッジの内圧は少なくとも約1.5ポンド/平方インチ以上である、請求項60または61に記載の方法。
【請求項67】
前記カートリッジの内圧は約15ポンド/平方インチである、請求項60または61に記載の方法。
【請求項68】
前記カートリッジの内圧は約50ポンド/平方インチ以下である、請求項60または61に記載の方法。
【請求項69】
前記カートリッジの内圧は約10ポンド/平方インチから約20ポンド/平方インチである、請求項60または61に記載の方法。
【請求項70】
前記試料は血液または血液関連生成物である、請求項60から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記試料はアフェレーシス試料または白血球アフェレーシス試料である、請求項60から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記試料は汚染物質として血小板を含む、請求項60から71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記方法によって前記試料から前記血小板の少なくとも80%が除去される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記方法によって前記試料から前記血小板の少なくとも90%が除去される、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記方法によって前記試料から前記血小板の少なくとも95%が除去される、請求項72に記載の方法。
【請求項76】
前記富化された標的細胞は白血球を含む、請求項60から75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記富化された標的細胞は幹細胞を含む、請求項60から75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記富化された標的細胞は末梢血単核細胞を含む、請求項60から75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記末梢血単核細胞はCD3+細胞を含む、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
遺伝子操作された標的細胞を取得するために前記富化された標的細胞を遺伝子操作することをさらに含む、請求項60から79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記遺伝子操作することは、組み換え核酸で前記標的細胞をトランスフェクトすることまたは形質導入することを含む、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記富化された標的細胞または遺伝子操作された標的細胞は、インビトロでそれらを培養することによって増殖される、請求項80または81に記載の方法。
【請求項83】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞を産生する方法であって、
a)T細胞を含む試料を取得することと、
b)i)請求項1から56のいずれか一項に記載の前記マイクロ流体カートリッジの1つまたは複数の試料入口に前記試料を注ぎ、
ii)前記カートリッジの前記出口まで前記試料を流し、
iii)前記生成物出口から、T細胞が富化された生成物を取得する
ことによって、汚染物質から前記T細胞を分離することと、
c)工程b)で取得された、前記富化された生成物中の前記T細胞を遺伝子操作して、それらの表面に前記キメラ抗原受容体(CAR)を産生することと
を含む、方法。
【請求項84】
前記試料は、血液、アフェレーシス生成物、または白血球アフェレーシス生成物である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記T細胞を前記遺伝子操作することは、前記標的細胞をトランスフェクトすることまたは形質導入することを含み、前記遺伝子操作された標的細胞は、インビトロで前記細胞を成長させることによってさらに増殖される、請求項83または84に記載の方法。
【請求項86】
キメラ抗原受容体(CAR)ナチュラルキラー細胞を産生する方法であって、
a)ナチュラルキラー細胞を含む試料を取得することと、
b)i)請求項1から56のいずれか一項に記載の前記マイクロ流体カートリッジの1つまたは複数の試料入口に前記試料を注ぎ、
ii)前記カートリッジの前記出口まで前記試料を流し、
iii)前記生成物出口から、ナチュラルキラー細胞が富化された生成物を取得する
ことによって、汚染物質から前記ナチュラルキラー細胞を分離することと、
c)工程b)で取得された、前記富化された生成物中の前記ナチュラルキラー細胞を遺伝子操作して、それらの表面に前記キメラ抗原受容体(CAR)を産生することとを含む、方法。
【請求項87】
前記試料は、血液試料、アフェレーシス生成物、または白血球アフェレーシス生成物である、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記ナチュラルキラー細胞を前記遺伝子操作することは、前記標的細胞をトランスフェクトすることまたは形質導入することを含み、前記遺伝子操作された標的細胞は、インビトロで前記細胞を成長させることによってさらに増殖される、請求項86または87に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年12月28日出願の米国仮出願第62/954,478号の利益を主張するものであり、その文献の全体が本願に参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
個別療法のための細胞の調製には、多くの場合に、患者から生物材料を採取すること、採取された材料から特定の細胞タイプを精製すること、および精製された細胞を操作または成長させることが必要である。CAR T細胞療法の場合は、典型的には、遺伝子操作および増殖に適したT細胞調製物を取得するために、大容量の血液または血液由来のアフェレーシスもしくは白血球アフェレーシスの調製物を処理することが必要である。マイクロ流体のサイズに基づく手順は、迅速であり、優しく、汎用性のある、処理の選択肢を提供する。しかし、処理を遅らせかつ精製不良につながる恐れのある、マイクロ流体デバイスの動作中の生物学的デブリの堆積を含む因子がある。それゆえ、より良好な性能のデバイスおよび生物材料を精製できる速度を上昇させるためのより良い方法の開発が極めて興味深い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
サイズに基づく分離のためのポストまたは障害物、細胞のための貯蔵部、他のマイクロ流体の特徴部など、精密な特徴部を有するカートリッジの製造を可能にするように改良された、マイクロ流体デバイスと共に使用するための一定の分離カートリッジを本明細書に記載する。望ましくない混合、望ましくない混合による乱流、およびいくつかの容積式ポンプに起因するデリバリーの脈動する性質を防止するために、一定の長さにわたって延びる分離壁など、複数のレーンまたはチャネルを有する、カートリッジ中で流体フロー(flow)を可能にする、マイクロ流体デバイスと共に使用するための一定の分離カートリッジも記載する。
【0004】
試料中の汚染物質から所定のサイズの標的粒子または標的細胞を精製するためのマイクロ流体カートリッジであって、カートリッジは第1および第2の平面状の支持体を備え、第1および第2の平面状の支持体はそれぞれ、上面および底面を有し、第1および/または第2の平面状の支持体の上面は、1つまたは複数の入口から1つまたは複数の出口まで延びる、少なくとも1つの埋め込みチャネルを備え、少なくとも1つの埋め込みチャネルは複数の障害物を備える、マイクロ流体カートリッジが、一態様において本明細書に記載されている。
【0005】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジは、第1および第2の平面状の支持体からマイクロ流体カートリッジを組み立てるときに変形されるように構成された、少なくとも1つの空所を備える。いくつかの実施形態では、第1および第2の平面状の支持体の底面は、第1の平面状の支持体の底部が第2の平面状の支持体の底部に押し付けられるときに変形されるように構成された、少なくとも1つの空所を備える。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの空所は、少なくとも1つの埋め込みチャネル、1つもしくは複数の入口、1つもしくは複数の出口、複数の障害物、またはそれらの組み合わせの、損傷、変位、または変形を防止するように構成されている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの空所は、複数の障害物の損傷、変位、または変形を防止するように構成されている。いくつかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジは空所とチャネルの比が1:1である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの空所は、全表面積が少なくとも1つの埋め込みチャネルの全表面積の少なくとも約90%である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの空所は、全表面積が少なくとも1つの埋め込みチャネルの全表面積の少なくとも約100%である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの空所は、全表面積が少なくとも1つの埋め込みチャネルの全表面積の少なくとも約110%である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの空所は、障害物のアレイの反対側の、第1および/または第2の平面状の支持体の底面に位置決めされた2つ以上の空所に分離されている。いくつかの実施形態では、平面状の支持体は、互いに接合された2層の材料から作製(fabricate)される。いくつかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジはさらに、カートリッジの動作中に流体または試料が複数の障害物の上を流れることを防止するために、平面状の支持体の表面に接合されかつ少なくとも1つの埋め込みチャネルの複数の障害物の上面に接合された、障害物接合層を備える。いくつかの実施形態では、障害物接合層は、少なくとも1つの埋め込みチャネル中への試料のフローを可能にする、少なくとも1つの埋め込みチャネルの1つまたは複数の入口に流体連結された1つまたは複数の通路と、1つまたは複数の出口の外への流体のフローを可能にする、少なくとも1つの埋め込みチャネルの1つまたは複数の出口に流体連結された1つまたは複数の通路とを備える。いくつかの実施形態では、障害物は、カートリッジの臨界サイズを定めるように位置決めされ、そのため、試料がカートリッジの入口に注がれ出口まで流れるときに、臨界サイズよりも大きい試料中の粒子または細胞が、臨界サイズよりも小さい試料中の粒子または細胞から分離される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の出口は少なくとも1つの生成物出口を備え、カートリッジの臨界サイズよりも大きいサイズを有する標的粒子または標的細胞は、少なくとも1つの生成物出口に方向付けられる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の出口は少なくとも1つの廃棄物出口を備え、カートリッジの臨界サイズよりも小さいサイズを有する汚染物質は、少なくとも1つの廃棄物出口まで流れる。いくつかの実施形態では、複数の障害物はダイヤモンド形または長形のダイヤモンド形である。いくつかの実施形態では、複数の障害物は円形または楕円体である。いくつかの実施形態では、複数の障害物は六角形である。いくつかの実施形態では、複数の障害物は、流体フローの方向に垂直な方向に長形であり、そのため、それらの上下(vertical)長さ(P2)とは異なる左右(horizontal)長さ(P1)を有する。いくつかの実施形態では、P1は約10μmから約160μmであり、P2は約5μmから約80μmである。いくつかの実施形態では、P1は約10μmから約80μmであり、P2は約15μmから約60μmである。いくつかの実施形態では、P1は約15μmから約30μmであり、P2は約25μmから約45μmである。いくつかの実施形態では、P1は約40μmであり、P2は約20μmである。いくつかの実施形態では、P1はP2よりも50から150%長い。いくつかの実施形態では、複数の障害物は、互いに向き合うが互いに真向かいにはない1つまたは複数の頂点が平行な隙間にそれぞれの側で隣接する(flank)ようにそれら隙間中を延びる、頂点を有する。いくつかの実施形態では、複数の障害物は、互いに向き合う頂点が垂直な隙間にそれぞれの側で隣接するようにそれら隙間中を延びると共に互いに真向かいにある、頂点を有する。いくつかの実施形態では、複数の障害物は、少なくとも、少なくとも1本の縦列になるように配置されている。いくつかの実施形態では、複数の障害物は、少なくとも、少なくとも10本の縦列になるように配置されている。いくつかの実施形態では、複数の障害物は、少なくとも、少なくとも30本の縦列になるように配置されている。いくつかの実施形態では、複数の障害物は、少なくとも50本の縦列になるように配置されている。いくつかの実施形態では、複数の障害物は、少なくとも約60本の縦列になるように配置されている。いくつかの実施形態では、複数の障害物は、少なくとも、少なくとも約50本の横列になるように配置されている。いくつかの実施形態では、複数の障害物は、少なくとも、少なくとも約100本の横列になるように配置されている。いくつかの実施形態では、複数の障害物は、少なくとも、少なくとも約300本の横列になるように配置されている。いくつかの実施形態では、複数の障害物は、少なくとも、少なくとも約600本の横列になるように配置されている。いくつかの実施形態では、第1または第2の平面状の支持体は、少なくとも10本の埋め込みチャネルを備える。いくつかの実施形態では、第1および/または第2の平面状の支持体は、少なくとも20本の埋め込みチャネルを備える。いくつかの実施形態では、第1および/または第2の平面状の支持体は、約28本の埋め込みチャネルを備える。いくつかの実施形態では、第1および/または第2の平面状の支持体は、約30本の埋め込みチャネルを備える。いくつかの実施形態では、第1および/または第2の平面状の支持体は、少なくとも約50本の埋め込みチャネルを備える。いくつかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジの1つまたは複数の入口は、少なくとも1つまたは複数の試料入口および少なくとも1つまたは複数の流体入口から構成され、少なくとも1つまたは複数の試料入口は、分離壁によって少なくとも1つまたは複数の流体入口から分離されており、その分離壁は、1つまたは複数の試料入口から少なくとも1つの埋め込みチャネルの障害物のアレイを通って出口に向かって延び、流体フローの方向に平行に向けられている。いくつかの実施形態では、分離壁は、複数の障害物の長さの少なくとも10%にわたって延びる。いくつかの実施形態では、分離壁は、複数の障害物の長さの少なくとも20%にわたって延びる。いくつかの実施形態では、分離壁は、複数の障害物の長さの少なくとも60%にわたって延びる。いくつかの実施形態では、1つもしくは複数の入口、1つもしくは複数の出口、またはその両方は、第1のぜん動ポンプ、第2のぜん動ポンプ、またはその両方に流体連結されている。いくつかの実施形態では、第1のぜん動ポンプと第2のぜん動ポンプとは直列に流体連結されている。いくつかの実施形態では、第1のぜん動ポンプと第2のぜん動ポンプとは並列に流体連結されている。いくつかの実施形態では、カートリッジはポリマーから作製される。いくつかの実施形態では、ポリマーは熱可塑性ポリマーである。いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーは、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート、または環状オレフィンコポリマーを含む群から選択される。いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーは環状オレフィンコポリマーである。
【0006】
試料中の汚染物質から所定のサイズの標的粒子または標的細胞を精製するためのマイクロ流体カートリッジであって、カートリッジは第1および第2の平面状の支持体を備え、第1および第2の平面状の支持体はそれぞれ、上面および底面を有し、第1および/または第2の平面状の支持体の上面は、1つまたは複数の入口から1つまたは複数の出口まで延びる、少なくとも1つの埋め込みチャネルを備え、少なくとも1つの埋め込みチャネルは複数の障害物を備え、マイクロ流体カートリッジは、第1および第2の平面状の支持体からマイクロ流体カートリッジを組み立てるときに変形されるように構成された、少なくとも1つの空所を備える、マイクロ流体カートリッジが、一態様において本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、第1および第2の平面状の支持体の底面は、第1の平面状の支持体の底部が第2の平面状の支持体の底部に押し付けられるときに変形されるように構成された、少なくとも1つの空所を備える。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの空所は、少なくとも1つの埋め込みチャネル、1つもしくは複数の入口、1つもしくは複数の出口、複数の障害物、またはそれらの組み合わせの、損傷、変位、または変形を防止するように構成されている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの空所は、複数の障害物の損傷、変位、または変形を防止するように構成されている。 いくつかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジは空所とチャネルの比が1:1である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの空所は、全表面積が少なくとも1つの埋め込みチャネルの全表面積の少なくとも約90%である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの空所は、全表面積が少なくとも1つの埋め込みチャネルの全表面積の少なくとも約100%である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの空所は、全表面積が少なくとも1つの埋め込みチャネルの全表面積の少なくとも約110%である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの空所は、障害物のアレイの反対側の、第1および/または第2の平面状の支持体の底面に位置決めされた2つ以上の空所に分離されている。いくつかの実施形態では、平面状の支持体は、互いに接合された2層の材料から作製される。いくつかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジはさらに、カートリッジの動作中に流体または試料が複数の障害物の上を流れることを防止するために、平面状の支持体の表面に接合されかつ少なくとも1つの埋め込みチャネルの複数の障害物の上面に接合された、障害物接合層を備える。いくつかの実施形態では、障害物接合層は、少なくとも1つの埋め込みチャネル中への試料のフローを可能にする、少なくとも1つの埋め込みチャネルの1つまたは複数の入口に流体連結された1つまたは複数の通路と、1つまたは複数の出口の外への流体のフローを可能にする、少なくとも1つの埋め込みチャネルの1つまたは複数の出口に流体連結された1つまたは複数の通路とを備える。いくつかの実施形態では、障害物は、カートリッジの臨界サイズを定めるように位置決めされ、そのため、試料がカートリッジの入口に注がれ出口まで流れるときに、臨界サイズよりも大きい試料中の粒子または細胞が、臨界サイズよりも小さい試料中の粒子または細胞から分離される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の出口は少なくとも1つの生成物出口を備え、カートリッジの臨界サイズよりも大きいサイズを有する標的粒子または標的細胞は、少なくとも1つの生成物出口に方向付けられる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の出口は少なくとも1つの廃棄物出口を備え、カートリッジの臨界サイズよりも小さいサイズを有する汚染物質は、少なくとも1つの廃棄物出口まで流れる。いくつかの実施形態では、複数の障害物はダイヤモンド形または長形のダイヤモンド形である。いくつかの実施形態では、複数の障害物は円形または楕円体である。いくつかの実施形態では、複数の障害物は六角形である。いくつかの実施形態では、複数の障害物は、流体フローの方向に垂直な方向に長形であり、そのため、それらの上下長さ(P2)とは異なる左右長さ(P1)を有する。いくつかの実施形態では、P1は約10μmから約160μmであり、P2は約5μmから約80μmである。いくつかの実施形態では、P1は約10μmから約80μmであり、P2は約15μmから約60μmである。いくつかの実施形態では、P1は約15μmから約30μmであり、P2は約25μmから約45μmである。いくつかの実施形態では、P1は約40μmであり、P2は約20μmである。いくつかの実施形態では、P1はP2よりも50から150%長い。いくつかの実施形態では、複数の障害物は、互いに向き合うが互いに真向かいにはない1つまたは複数の頂点が平行な隙間にそれぞれの側で隣接するようにそれら隙間中を延びる、頂点を有する。いくつかの実施形態では、複数の障害物は、互いに向き合う頂点が垂直な隙間にそれぞれの側で隣接するようにそれら隙間中を延びると共に互いに真向かいにある、頂点を有する。いくつかの実施形態では、複数の障害物は、少なくとも、少なくとも1本の縦列になるように配置されている。いくつかの実施形態では、複数の障害物は、少なくとも、少なくとも10本の縦列になるように配置されている。いくつかの実施形態では、複数の障害物は、少なくとも、少なくとも30本の縦列になるように配置されている。いくつかの実施形態では、複数の障害物は、少なくとも50本の縦列になるように配置されている。いくつかの実施形態では、複数の障害物は、少なくとも約60本の縦列になるように配置されている。いくつかの実施形態では、複数の障害物は、少なくとも、少なくとも約50本の横列になるように配置されている。いくつかの実施形態では、複数の障害物は、少なくとも、少なくとも約100本の横列になるように配置されている。いくつかの実施形態では、複数の障害物は、少なくとも、少なくとも約300本の横列になるように配置されている。いくつかの実施形態では、複数の障害物は、少なくとも、少なくとも約600本の横列になるように配置されている。いくつかの実施形態では、第1または第2の平面状の支持体は、少なくとも10本の埋め込みチャネルを備える。いくつかの実施形態では、第1および/または第2の平面状の支持体は、少なくとも20本の埋め込みチャネルを備える。いくつかの実施形態では、第1および/または第2の平面状の支持体は、約28本の埋め込みチャネルを備える。いくつかの実施形態では、第1および/または第2の平面状の支持体は、約30本の埋め込みチャネルを備える。いくつかの実施形態では、第1および/または第2の平面状の支持体は、少なくとも約50本の埋め込みチャネルを備える。いくつかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジの1つまたは複数の入口は、少なくとも1つまたは複数の試料入口および少なくとも1つまたは複数の流体入口から構成され、少なくとも1つまたは複数の試料入口は、分離壁によって少なくとも1つまたは複数の流体入口から分離されており、その分離壁は、1つまたは複数の試料入口から少なくとも1つの埋め込みチャネルの障害物のアレイを通って出口に向かって延び、流体フローの方向に平行に向けられている。いくつかの実施形態では、分離壁は、複数の障害物の長さの少なくとも10%にわたって延びる。いくつかの実施形態では、分離壁は、複数の障害物の長さの少なくとも20%にわたって延びる。いくつかの実施形態では、分離壁は、複数の障害物の長さの少なくとも60%にわたって延びる。いくつかの実施形態では、1つもしくは複数の入口、1つもしくは複数の出口、またはその両方は、第1のぜん動ポンプ、第2のぜん動ポンプ、またはその両方に流体連結されている。いくつかの実施形態では、第1のぜん動ポンプと第2のぜん動ポンプとは直列に流体連結されている。いくつかの実施形態では、第1のぜん動ポンプと第2のぜん動ポンプとは並列に流体連結されている。いくつかの実施形態では、カートリッジはポリマーから作製される。いくつかの実施形態では、ポリマーは熱可塑性ポリマーである。いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーは、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート、または環状オレフィンコポリマーを含む群から選択される。いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーは環状オレフィンコポリマーである。
【0007】
複数のマイクロ流体カートリッジを備え、それら複数のマイクロ流体カートリッジは流体連結している、マイクロ流体アセンブリーも記載されている。いくつかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジは積層されている。いくつかの実施形態では、複数のマイクロ流体カートリッジは2つである。いくつかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジは並列に流体連結している。いくつかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジは直列に流体連結している。
【0008】
マイクロ流体カートリッジの製造方法であって、カートリッジは、障害物のアレイが変形されないように、第1および第2の平面状の支持体の底部を互いに押し付けることによって作製される、方法も記載する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの埋め込みチャネル、障害物、またはその両方は、エンボス加工、ホットエンボス加工、ロールツーロールエンボス加工、または射出成形によって作製される。いくつかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジは作製中に紫外線硬化される。試料中の汚染物質から所定のサイズの標的粒子または標的細胞を富化する方法であって、(a)標的粒子または標的細胞および汚染物質を含む試料を取得することと、(b)(i)マイクロ流体カートリッジの1つまたは複数の試料入口に試料を注ぎ、(ii)カートリッジの出口まで試料を流し、(iii)汚染物質を除去しながら、1つまたは複数の出口から、標的粒子または標的細胞が富化された生成物を取得することによって、汚染物質から標的粒子または標的細胞を分離することとを含む、方法も本明細書に記載する。いくつかの実施形態では、標的粒子または標的細胞は、障害物のアレイの臨界サイズよりも大きいサイズを有し、少なくとも一部の汚染物質は、障害物のアレイの臨界サイズよりも小さいサイズを有し、標的細胞または標的粒子は、標的細胞または標的粒子が富化された生成物が取得される1つまたは複数の生成物出口まで流れ、障害物のアレイの臨界サイズよりも小さいサイズを有する汚染物質は、もう1つの廃棄物出口まで流れる。いくつかの実施形態では、カートリッジの流量は毎時約400mLである。いくつかの実施形態では、カートリッジの流量は少なくとも毎時約100mL以上である。いくつかの実施形態では、カートリッジの流量は少なくとも毎時約300mL以上である。いくつかの実施形態では、カートリッジの流量は毎時約1000mLである。いくつかの実施形態では、カートリッジの内圧は少なくとも約1.5ポンド/平方インチ以上である。いくつかの実施形態では、カートリッジの内圧は約15ポンド/平方インチである。いくつかの実施形態では、カートリッジの内圧は約50ポンド/平方インチ以下である。いくつかの実施形態では、カートリッジの内圧は約10ポンド/平方インチから約20ポンド/平方インチである。いくつかの実施形態では、試料は血液または血液関連生成物である。いくつかの実施形態では、試料はアフェレーシス試料または白血球アフェレーシス試料である。いくつかの実施形態では、試料は汚染物質として血小板を含む。いくつかの実施形態では、本方法によって試料から血小板の少なくとも80%が除去される。いくつかの実施形態では、本方法によって試料から血小板の少なくとも90%が除去される。いくつかの実施形態では、本方法によって試料から血小板の少なくとも95%が除去される。いくつかの実施形態では、富化された標的細胞は白血球を含む。いくつかの実施形態では、富化された標的細胞は幹細胞を含む。いくつかの実施形態では、富化された標的細胞は末梢血単核細胞を含む。いくつかの実施形態では、末梢血単核細胞はCD3+細胞を含む。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、遺伝子操作された標的細胞を取得するために富化された標的細胞を遺伝子操作することを含む。いくつかの実施形態では、前記遺伝子操作は、組み換え核酸で標的細胞をトランスフェクトすることまたは形質導入することを含む。いくつかの実施形態では、富化された標的細胞または遺伝子操作された標的細胞は、インビトロ(in vitro)でそれらを培養することによって増殖される。
【0009】
別の態様では、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞を産生する方法であって、(a)T細胞を含む試料を取得することと、(b)(i)マイクロ流体カートリッジの1つまたは複数の試料入口に試料を注ぎ、(ii)カートリッジの出口まで試料を流し、(iii)生成物出口から、T細胞が富化された生成物を取得することによって、汚染物質からT細胞を分離することと、(c)工程b)で取得された、富化された生成物中のT細胞を遺伝子操作して、それらの表面にキメラ抗原受容体(CAR)を産生することとを含む、方法を本明細書に記載する。いくつかの実施形態では、試料は、血液、アフェレーシス生成物、または白血球アフェレーシス生成物である。いくつかの実施形態では、T細胞を前記遺伝子操作することは、標的細胞をトランスフェクトすることまたは形質導入することを含み、遺伝子操作された標的細胞は、インビトロで細胞を成長させることによってさらに増殖される。
【0010】
別の態様では、キメラ抗原受容体(CAR)ナチュラルキラー細胞を産生する方法であって、(a)ナチュラルキラー細胞を含む試料を取得することと、(b)(i)マイクロ流体カートリッジの1つまたは複数の試料入口に試料を注ぎ、(ii)カートリッジの出口まで試料を流し、(iii)生成物出口から、ナチュラルキラー細胞が富化された生成物を取得することによって、汚染物質からナチュラルキラー細胞を分離することと、(c)工程b)で取得された、富化された生成物中のナチュラルキラー細胞を遺伝子操作して、それらの表面にキメラ抗原受容体(CAR)を産生することとを含む、方法を本明細書に記載する。いくつかの実施形態では、試料は、血液試料、アフェレーシス生成物、または白血球アフェレーシス生成物である。いくつかの実施形態では、ナチュラルキラー細胞を前記遺伝子操作することは、標的細胞をトランスフェクトすることまたは形質導入することを含み、遺伝子操作された標的細胞は、インビトロで細胞を成長させることによってさらに増殖される。
【0011】
本開示の付加的な態様および利点は、本開示の単なる例示的な実施形態が示され記載されている以下の詳細な説明から当業者には容易に明らかになる。理解されるように、本開示は他の様々な実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細は様々な明らかな点で改変でき、それらは全て本開示から逸脱しない。したがって、図面および説明は、限定的ではなく、本質的に例示であると見なすべきである。
【0012】
参照による組み込み
本明細書で言及する刊行物、特許、および特許出願はいずれも、それぞれ個々の刊行物、特許、または特許出願が具体的かつ個別に参照により組み込まれることが示されるのと同程度に、参照により組み込まれる。さらに、米国特許第5,427,663号、米国特許第5,837,115号、米国特許第6,685,841号、米国特許第6,913,697号、米国特許第7,150,812号、米国特許第7,276,170号、米国特許第7,318,902号、米国特許第7,472,794号、米国特許第7,735,652号、米国特許第7,988,840号、米国特許第8,021,614号、米国特許第8,282,799号、米国特許第8,304,230号、米国特許第8,579,117号、米国特許出願公開第10/324,011号、米国特許出願公開第2005/0282293号、米国特許出願公開第2006/0134599号、米国特許出願公開第2007/0160503号、米国特許出願公開第2006/0121624号、米国特許出願公開第2005/0266433号、米国特許出願公開第2007/0026381号、米国特許出願公開第2007/0026413号、米国特許出願公開第2007/0026414号、米国特許出願公開第2007/0026415号、米国特許出願公開第2007/0026417号、米国特許出願公開第2007/0059680号、米国特許出願公開第2007/0059718号、米国特許出願公開第2007/0059781号、米国特許出願公開第2007/0059774号、米国特許出願公開第2007/0099207号、米国特許出願公開第2007/0196820号、米国特許出願公開第2006/0223178号、米国特許出願公開第2008/0124721号、米国特許出願公開第2008/0090239号、米国特許出願公開第2008/0113358号、米国特許出願公開第2014/0342375号、米国特許出願公開第2016/0139012号、米国特許出願公開第2019/0071639号およびWO2012094642はそれぞれ、その全体が本願に参照により組み込まれる。参照により組み込まれている刊行物および特許または特許出願が本明細書に含まれる開示と矛盾する限り、本明細書は、そのようないずれの矛盾材料にも優先しかつ/またはその代わりになるものである。
【0013】
本発明の新規の特徴は特に、添付の特許請求の範囲に記載されている。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的実施形態を記載する以下の詳細な説明および添付の図面を(本明細書では「図(figure)」および「図(FIG.)」も)参照することによって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1A図1GはDLDの様々な動作モードを示す。
【0015】
図2図2は、図1A図1Cに示すものとは別の障害物のアレイを有するチャネルの様々な使用を示す。
【0016】
図3-1】図3A図3Dは、マイクロ流体デバイスで使用できる14本の平行なチャネルの構成を備える、デバイスの実施形態を示す。
図3-2】同上。
【0017】
図4-1】図4A図4Dは2本のチャネルを示す。図4B図4Dは、チャネルの部分拡大図を示す。
図4-2】同上。
【0018】
図5図5は、マイクロ流体チャネルに正三角形の障害物が配設された「バンプアレイ」デバイスの断面図である。
【0019】
図6図6A図6Bは、ダイヤモンド形ポストのアレイを示す。
【0020】
図7図7A図7Cは、2つのマイクロ流体デバイスが組み合わせられて単一のユニットを成す、積層型分離アセンブリーを示す。
【0021】
図8-1】図8A図8Bは、図7に示すデバイスに見られることがある2つのチャネルを示す。チャネルの部分拡大図が図8Bに示されている。この例では、チャネルは、非対称に離間したダイヤモンド形障害物のアレイを有し、G1はG2よりも大きい。ダイヤモンドはオフセットしており、したがって、連続的な横列がそれぞれ、前の横列に対して横断方向にずれている。
図8-2】同上。
【0022】
図9図9は、合わせて「カセット」と称されることがある、ケーシング内側のマイクロ流体デバイスの積層型アセンブリーを示す。
【0023】
図10図10Aおよび図10Bは、試料入口および流体入口を有する、2つの壁で囲まれたチャネルを示す。
【0024】
図11図11は、2つの正三角形ポスト間の正規化した速度のフロー(左パネル)と、2つの円形ポスト間の正規化した速度のフロー(右パネル)との比較である。
【0025】
図12図12は、三角形の障害物(下側の線)のアレイおよび円形の障害物(上側の線)のアレイの場合の、アレイ傾斜角(ε)に対する予測臨界直径のグラフである。
【0026】
図13図13は、隙間長さGへの傾斜角(図の「アレイ傾斜」)の影響を示すグラフである。
【0027】
図14図14は、縁部で囲まれた隙間の側部(side)について表される臨界サイズへの、障害物縁部の丸みの影響(r/Sで表現される)を示すグラフである。
【0028】
図15図15は、三角形のポストを有するバンプアレイ(三角形で示すデータ)および円形のポストを有するバンプアレイ(円で示すデータ)における、粒子速度への、印加された圧力の影響を示すグラフである。
【0029】
図16-1】図16Aおよび図16Bは、6つの層を備える、単一のカートリッジDLD要素の断面図を示し、それら層は、DLDマイクロポスト層が2つ、流体フィーダーチャネルのための空所がクランプル(crumple)ゾーンの層が2つ、端部層が2つである。図16Bは、長形のダイヤモンド形または六角形のポストのアレイからなる非限定的な例のDLD層の上面図を示す。
図16-2】同上。
【0030】
図17図17A図17Cは、デバイスカセット中に装着された2つのDLD要素カートリッジの写真の上面図を示す。図17Bは、デバイスカセット中に装着されたDLDカートリッジの左上から下を見た図を示す。図17Cは、デバイスカセット中に装着されたDLDカートリッジの右上から下を見た図を示す。
【0031】
図18図18Aおよび図18Bは、平面状の支持体の底面図(18A)および断面図(18B)を示す、空所の構成に関する特定の実施形態を示す。
【0032】
図19図19Aおよび図19Bは、平面状の支持体が積層されてマイクロ流体カートリッジを形成するときの、空所に関する代替の実施形態を示す(断面図が示される)。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、主に、サイズに基づくマイクロ流体分離に関し、特に、治療に役立つ細胞の調製におけるDLDの使用に関する。本明細書の文言は、マイクロ流体デバイスの製作(make)および使用ならびに生物材料を伴う分離を実行するためのDLDの使用に関するガイダンスを提供する。
【0034】
本明細書には本発明の様々な実施形態が示され記載されているが、このような実施形態が単なる例によって提供されていることが当業者には明らかである。本発明から逸脱することなく、多くの変形、変更、および置換が当業者には思いつくことができる。本明細書に記載する本発明の実施形態の様々な代替案を採用してよいことを理解されたい。
【0035】
「少なくとも(at least)」、「超える(greater than)」、または「以上(greater than or equal to)」という用語が一連の2つ以上の数値のうちの最初の数値の前に付くときはいつでも、「少なくとも」、「超える」、または「以上」という用語がその一連の数値のうちの各数値に適用される。例えば、1、2、または3以上は、1以上、2以上、または3以上と等価である。
【0036】
「超えない(no more than)」、「未満(less than)」、または「以下(less than or equal to)」という用語が一連の2つ以上の数値のうちの最初の数値の前に付くときはいつでも、「超えない」、「未満」、または「以下」という用語がその一連の数値のうちの各数値に適用される。例えば、3、2、または1以下は、3以下、2以下、または1以下と等価である。
【0037】
定義
アフェレーシス:本明細書で用いるように、この用語は、患者またはドナーからの血液がその成分、例えば、白血球、血小板および赤血球に分離される手順を指す。「アフェレーシス試料」は、この手順の最終結果の生成物である。より具体的な用語は、「血小板フェレーシス」(血小板の分離を指す)および「白血球アフェレーシス」(白血球の分離を指す)である。この文脈では、「分離」という用語は、全血または他の出発物質と比べて特定の成分が富化された生成物の取得を指し、絶対的な純度が実現されていることを意味しない。
【0038】
CAR T細胞:「CAR」という用語は、「キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor)」の頭文字である。したがって、「CAR T細胞」は、キメラ受容体を発現するように遺伝子操作されたT細胞である。
【0039】
CAR T細胞療法:この用語は、CAR T細胞を用いることで疾患または病状が治療される任意の手順を指す。治療され得る疾患には、血液腫瘍癌および固形腫瘍癌、自己免疫疾患、ならびに感染症が含まれる。
【0040】
担体:本明細書で用いるように、「担体」という用語は、存在する化合物または細胞の一部または全部と直接的または間接的に(すなわち、1つまたは複数の中間的な細胞、粒子、または化合物を通して)結合するために調製物に添加される、生物材料製または合成材料製の作用物質、例えば、ビーズまたは粒子を指す。担体は、DEAE-デキストラン、ガラス、ポリスチレンプラスチック、アクリルアミド、コラーゲン、およびアルギナートを含む、様々な異なる材料から製作されてよく、典型的には、1~1000μmのサイズを有する。それらは、コーティングされていてもされていなくてもよく、細胞表面上の抗原または他の分子を識別する親和性物質(例えば、抗体、活性剤、ハプテン、アプタマー、粒子、または他の化合物)を含むように改変できる表面を有してよい。担体は、磁化されてもよく、細胞または細胞複合体にサイズに無関係の二次的性質を与える粒子(例えば、ヤヌス様またはイチゴ様の粒子)を含んでよい。その結果、例えば、粒子は化学的、電気化学的、または磁気的な性質を有することができ、その性質は、磁気分離、エレクトロポレーション、遺伝子移入、および/または特定の分析化学プロセスなどの下流プロセスで用いることができる。粒子は、細胞に代謝変化を引き起こすか、細胞を活性化するか、または細胞分裂を促進することもできる。
【0041】
「DLD分離を促進するように」結合する担体:この用語は、文脈に応じて、DLD中の細胞、タンパク質または粒子の挙動の様子に影響を与える、担体および担体を結合する方法を指す。詳細には「DLD分離を促進するように結合すること」は、a)結合が特定の標的細胞型、タンパク質、または粒子に対して特異性を示さなければならないことと、b)結合によって生じる複合体のサイズが、結合していない細胞、タンパク質、または粒子に対して増大していなければならないことを意味する。標的細胞に結合する場合は、少なくとも2μm(代替的に、割合で表現すると、少なくとも20、50、100、200、500または1000%)増大しなければならない。治療または他の使用がその意図した使用を満たすために、標的細胞、タンパク質、または他の粒子が複合体から放出されることを必要とする場合は、「DLD分離を促進するように」という用語には、例えば、化学的切断もしくは酵素的切断、化学溶解、消化によって、他の結合剤との競合によって、または物理的せん断(例えば、ピペットを用いてせん断応力を生み出すこと)によって、複合体がそのような放出を可能にし、解放された標的細胞、タンパク質、または他の粒子は活性を維持しなければならず、例えば、治療用細胞は、複合体からの放出後にも、治療的に有用にさせる生物活性を維持することも必要である。
【0042】
担体は「DLD分離を補完するように」結合してもよい:この用語は、DLD分離を促進するのに十分にサイズを増大するかどうかにかかわらず、細胞もしくは細胞複合体の化学的、電気化学的、もしくは磁気的性質を変化させるか、または細胞の1つもしくは複数の生物活性を変化させる、担体および担体を結合する方法を指す。DLD分離を補完する担体は、必ずしも標的細胞に特異性を有して結合するとは限らず、すなわち、それらを特異的にさせる何らかの他の作用物質と組み合わされなければならない場合もあり、単純に細胞調製物に加えられて非特異的に結合が可能になる場合もある。「DLD分離を補完するように」および「DLD分離を促進するように」という用語は、互いに排他的ではない。結合は、DLD分離を補完することもDLD分離を促進することも両方ともできる。例えば、多糖類担体は、その表面に、細胞成長速度を高める活性剤を有してよく、それら担体の1つまたは複数の結合は、DLD分離を促進することもできる。代替的に、結合は、DLD分離を促進するだけでもよく、DLD分離を補完するだけでもよい。
【0043】
試料:「試料」という用語は、本明細書で用いるように、概して、核酸分子または核酸細胞を含有するかまたは含有が疑われる任意の試料を指す。例えば、試料は、1つまたは複数の核酸分子または核酸細胞を含有する生物試料とすることができる。生物試料は、血液(例えば、全血)、血漿、血清、尿、唾液、粘膜排出物、痰、便および涙から取得する(例えば、抽出するかもしくは単離する)ことができるか、またはそれらを含むことができる。試料は、抗凝固薬(例えば、EDTA、EGTA、ヘパリン、クエン酸塩、ACD-A、またはトロンビン阻害剤)も含有する、血液、血液製剤(白血球アフェレーシス生成物またはアフェレーシス生成物など)を含有してよい。生物試料は、流体試料または組織試料(例えば、皮膚試料)とすることができる。いくつかの例では、試料は、全血などの無細胞体液から取得される。いくつかの例では、試料は循環腫瘍細胞を含むことができる。いくつかの例では、試料は、環境試料(例えば、土、廃棄物、外気など)、工業試料(例えば、任意の工業的プロセスによる試料)、および食品試料(例えば、乳製品、野菜製品、および肉製品)である。試料は、マイクロ流体デバイスに入れる前に処理されてよい。試料は、適切には、アフェレーシス生成物または白血球アフェレーシス生成物[例えば、ロイコパック(leukopak)]でよい。
【0044】
標的細胞:本明細書で用いるように、「標的細胞」とは、本明細書に記載する様々な手順が必要とする細胞、または精製、採取、操作などを行うように設計された細胞である。特定の細胞が何であるかは、その用語が用いられる文脈に応じて変わる。例えば、手順の目的が特定の種類の幹細胞を単離することである場合には、その細胞はその手順の標的細胞である。
【0045】
単離または精製する:別段の指定がない限り、これらの用語は、本明細書で用いるように、同義であり、望まれない材料に対する所望の生成物の富化を指す。この用語は、必ずしも生成物が完全に単離されるかまたは完全に純粋であることを意味するとは限らない。例えば、出発試料が、試料中の細胞の2%を構成する標的細胞を有し、手順が実施された結果、存在する細胞の60%が標的細胞であるという組成物を生じた場合は、その手順は、標的細胞を単離するかまたは精製することに成功したことになる。
【0046】
「障害物アレイ」という用語は、細胞または粒子を担持する流体が通過することができるフローチャネルに配設された、障害物の整列アレイと同義語として本明細書では用いられ、そうした整列アレイを指す。障害物アレイは、縦列に(流体フローの流路に沿って)配置された複数の障害物を備える。細胞または他の粒子の通過を可能にする隙間が障害物間に(流体フローの流路に沿って)形成されている。このようなアレイまたは縦列は、1つまたは複数の横列(流体フローの流路に垂直)が繰り返すように配置されている。
【0047】
本明細書に記載するように、「チャネル」または「レーン」は、別々の分離ユニットになるように配置された複数の障害物を指し、そのようなチャネルは、別々のレーンが分離されるように、それぞれの側を壁で囲まれてよい。チャネルは、1つまたは複数の共通の入力部から1つまたは複数の共通の出力部まで平行に延在してよい。チャネルは直列に流体連結されていてよい。
【0048】
決定論的横置換法:本明細書で用いるように、「決定論的横置換法(Deterministic Lateral Displacement)」すなわち「DLD」という用語は、マイクロ流体障害物アレイを通る流路において粒子が決定論的にそのサイズに基づいて偏向されるプロセスを指す。そのプロセスは、細胞を分離するために使用でき、そのことが、概して、本明細書で論じられる文脈である。しかし、DLDは細胞を濃縮するためにも、またバッファー交換のためにも使用できると認識することが重要である(図1参照)。プロセスは、全体的に、連続フロー(DC状態、すなわち、単一方向のみのバルク流体フロー)の観点から本明細書に記載する。しかし、DLDは、振動性フロー(AC状態、すなわち、2つの方向の間で交代するバルク流体フロー)下で機能することもできる。
【0049】
臨界サイズ:障害物アレイを通過する粒子の「臨界サイズ」、「臨界直径」、または「所定のサイズ」は、流体の層流に従うことができる粒子のサイズの限界を表す。臨界サイズよりも大きい粒子は、流体のフロー流路から「押しのけられ」得るが、臨界サイズ(または所定のサイズ)よりも小さいサイズを有する粒子は変位されない。
【0050】
流体フロー:DLDと関連付けて本明細書で用いるように、「流体フロー」および「バルク流体フロー」と言う用語は、障害物アレイを横切る全体的な方向における流体の巨視的な動きを指す。これら用語は、流体が全体的な方向に動き続けるために流体が障害物の周りを移動する、流体ストリーム(stream)の一時的変位を考慮しない。
【0051】
傾斜角ε:バンプアレイデバイスでは、傾斜角は、バルク流体フローの方向と、アレイ中の一続きの障害物の横列のアライメントによって定められる方向との間の角度である(図5参照)。
【0052】
アレイ方向:障害物アレイデバイスにおいて、「アレイ方向」とは、アレイ中の一続きの障害物の横列のアライメントによって定められる方向である。粒子は、隙間を通過し、下流の障害物に遭遇するときに、粒子の全体的な軌道が障害物アレイのアレイ方向に従う場合に、障害物アレイにおいて「偏向される」(すなわち、バルク流体フローに対して傾斜角εで動く)。粒子は、その全体的な軌道がそうした状況下でバルク流体フローの方向に従う場合は、押しのけられない。
【0053】
約:本明細書で用いるように、約という用語は、提示した量の前後10%以内の量を指す。
【0054】
全体的な概要
本発明は、マイクロ流体チャネル中の障害物のアレイを生物試料に通過させることによってサイズに基づく精製が行われる、マイクロ流体デバイスに関する。これは、一部には、流体フローの方向に垂直な障害物の隙間を長くし、流体フローに平行な隙間の長さを小さくすることによって、より迅速に所与のサイズの細胞を処理できるという概念に基づく。
【0055】
上記で論じるデバイスの特徴は、ある範囲の障害物の形状によって実現することができ、その形状は長形であり、最も好ましい障害物はダイヤモンド形または六角形での形状である。六角形の障害物が最も好ましい。というのは、六角形の障害物は、ダイヤモンド形と同じ処理上の利点をもたらすが、デバイスの製造がより簡単であり、より生物付着耐性を有するからである。
【0056】
非対称の隙間を用いると処理量が改善され、デバイスがより長く稼働できるが、平行な隙間を狭めることで、特にエンボス加工、モールド成型または離型に関して、デバイスの大規模生産に関する実用上の課題が生じる恐れがある。その課題は、多角形かつ長形の障害物を用いることによってある程度オフセットした狭い隙間によって軽減することができ、それら障害物は、好ましくは、平行な隙間中に互いに向き合う頂点を有するが、ここで、頂点は互いからオフセットしている(互いに真向かいにあるのとは異なる。図6A図6B参照)。こうした設計は、隙間を狭めるのではなく長くすることによって、平行な隙間を通るフローを減らす(マイナーフラックスとも呼ばれる)。それとは異なり、垂直な隙間の頂点は、好ましくは、互いに真向かいにある。それゆえ、本明細書で開示するデバイスの主な特徴は、垂直な隙間と平行な隙間とが非対称である、すなわち、同じサイズではない、障害物アレイの存在である。間隔を変えることによって、同じサイズ範囲の粒子および細胞を分離するが垂直な隙間と平行な隙間の長さが同じデバイスと比べて、フローに対する抵抗を減らすことが可能である。
【0057】
一部の試料にとって、試料がデバイスに供給(feed)されるときの流体の生物付着および混合は、分離に影響し続けることがある。例えば、アレイの入口での生物付着は、血液またはアフェレーシス試料を早まって第2の流体ストリームに広げることがあり、その結果、白血球の標的細胞生成物が血小板および赤血球で汚染される。試料入口を他の流体用の入口と分離するように位置決めされ、チャネルの途中で終端する、分離壁を使用して、生物付着領域を隔離し、フローストリーム間の接触を一時的に防止することができる。その結果、並行して流れる流体は拡散混合のための時間が限られ、標的細胞または標的粒子の精製を改善することができる。典型的には、分離壁は、試料入口から、マイクロ流体チャネルの長さの10から50%程度の距離にわたって延びるが、壁は、分離に関連する状況に応じてより短くてもより長くてもよい。
【0058】
分離壁の別の利点は、デバイスを通して試料および他の流体を推進するために変動圧力源を用いるときに起こることがある望ましくない混合を低減することである。例えば、デバイスを通して流体を押しやるためにぜん動ポンプを使用してよく、ぜん動ポンプは、閉鎖系環境を維持する、すなわち、試料はポンプの内部に触れることはないがポンプヘッドによって絞られるチューブを通ってのみ動く、という利点を有する。しかし、ぜん動は、フローストリームを混合させる傾向のある通常の圧力サージを生み出すことがある。分離壁が存在すると、その壁はそれらサージのバッフルとして働いて、壁がなければ起こるであろう望ましくない混合が低減される。その結果、改善された分離を実現することができる。
【0059】
本マイクロ流体デバイスの別の特徴は、2つ以上のデバイスが互いに積層されたアセンブリーの一部として使用でき、共通のマニホルドを通して供給できることである。積層されたマイクロ流体デバイスはそれぞれ、1つまたは複数の埋め込みチャネルを有する平面状の支持体を備え、チャネルはそれぞれ別個の障害物アレイを含む。支持体は、典型的には、複数のチャネルを有し、チャネルは、いくつかの例では、支持体の上面および底面の両方に埋め込まれてよい。デバイスに複数のチャネルを用い、アセンブリーに複数のデバイスを用いることによって、大容量の試料をマイクロ流体処理することができる。例えば、本明細書に記載するマイクロ流体デバイスのアセンブリーは、毎時100mL超の試料(例えば、不希釈のアフェレーシス試料)を処理するように設計されてよく、特定の処理目的に応じて、より高い容量(毎時200、300、400または500mL超)が好ましい。
【0060】
総合的には、本発明のデバイスは以下の一部または全部を特徴とする:1)バルク流体フローに垂直な隙間がバルク流体フローに平行な隙間とは異なる長さである、非対称に配置される障害物、2)頂点が隙間中を延びる、長形かつ多角形の障害物、3)互いに対してオフセットしている、平行な隙間のそれぞれの側の頂点、4)好ましくは互いに真向かいにある、垂直な隙間のそれぞれの側の頂点、5)チャネルの途中まで延びる、試料入口を他の流体用の入口から分ける(segregate)1つまたは複数の分離壁、6)分離壁を有するデバイスを通して試料および他の流体を推進する、ぜん動または変動圧力源の適宜の使用、7)各デバイスが複数のチャネルを有する、複数の個々のマイクロ流体デバイスから積層型アセンブリーを組み立てること。
【0061】
特定の実施形態の概要
第1の態様では、本発明は、試料中の汚染物質から所定のサイズの標的粒子または標的細胞を精製するためのマイクロ流体デバイスを対象とする。デバイスは平面状の支持体を有し、その支持体は、典型的には、矩形であり、シリコン、ガラス、ハイブリッド材料、または(好ましくは)ポリマーを含む、分離方法に適合性のある任意の材料製とすることができる。支持体は上面および底面を有し、それらの一方または両方が、1つまたは複数の試料入口および1つまたは複数の別個の流体入口から1つまたは複数の生成物出口および1つまたは複数の別個の廃棄物出口まで延びる、少なくとも1つの埋め込みチャネルを有する。流体入口は(試料入口とは異なり)、場合によっては、「バッファー」入口または「ウォッシュ」入口と称されることもあり、分離の目的に応じて、様々な流体をチャネル中に輸送するために使用されてよい。使用法または文脈によって別段の指定がない限り、「流体」はバッファーでもよく、試薬を含有してもよく、細胞の成長培地を構成してもよく、概して、任意の液体でよく、デバイスの動作およびユーザーの目的に適合性のある任意の成分を含有してよいことが理解される。
【0062】
流体が試料入口または流体入口を通してデバイスに注がれると、チャネルを通して出口に向かって流れ、そうすることで、バルク流体フローの方向が定められる。様々なサイズの細胞または粒子を分離するために、チャネルは、長手方向にチャネルに沿って(入口から出口まで)延びる縦列および横断方向にチャネルを横切って延びる横列に整列された障害物のアレイを含む。障害物の後続の横列はそれぞれ、前の横列に対して横断方向にずれており、そのため、バルク流体フローの方向から傾斜角(ε)だけ外れたアレイ方向が定められる。障害物は、臨界サイズを定めるように位置決めされ、そのため、試料がデバイスの入口に注がれ出口まで流れるときに、臨界サイズよりも大きい試料中の粒子または細胞はアレイ方向に従い、臨界サイズよりも小さい粒子はバルク流体フローの方向に流れ、その結果、分離される。
【0063】
アレイの横列内で隣り合う障害物は、バルク流体フローの方向に垂直な隙間G1によって分離されており、縦列内で隣り合う障害物は、バルク流体フローの方向に平行な隙間G2によって分離されている(図6Aおよび図6B参照)。本デバイスの一特徴は、隙間G2のサイズと隙間G1のサイズの比が1に等しくないことであり、G1は、典型的には、G2よりも幅広い(例えば、10~100%)。アレイ中の障害物はそれぞれ、少なくとも2つの頂点を有し、少なくとも1つの頂点が各隙間にそれぞれの側で隣接するように位置決めされる。好ましい実施形態では、頂点は、互いに向き合うが互いに真向かいにはない1つもしくは複数の頂点が、平行な隙間にそれぞれの側で隣接するようにそれら隙間中を延び、かつ/または障害物は、互いに向き合い互いに真向かいにある頂点が垂直な隙間にそれぞれの側で隣接するようにそれら隙間中を延びる、頂点を有する(図6Aおよび図6B参照)。
【0064】
マイクロ流体デバイスは、典型的には、デバイスの動作中に流体または試料が障害物の上を流れることを防止するために、平面状の支持体の表面に接合されかつチャネルの障害物に接合された、障害物接合層も有する。この障害物接合層は、チャネルの入口およびチャネルの出口に流体連結される1つまたは複数の通路を備えてよく、そのことが、流体のフローを可能にする。
【0065】
概して、マイクロ流体デバイスは、デバイスの臨界サイズよりも大きいサイズを有する標的粒子または標的細胞を、臨界サイズよりも小さいサイズを有する汚染物質から分離するために使用される。標的細胞または標的粒子を含有する試料が試料入口を通してデバイスに注がれチャネルを流体的に通過するときに、標的細胞または標的粒子は、標的細胞または標的粒子が富化された生成物が取得される1つまたは複数の生成物出口まで流れる。「富化される(enriched)」という用語は、この文脈で用いられるように、標的細胞または標的粒子と汚染物質の比が試料よりも生成物で高いことを意味する。臨界サイズよりも小さいサイズを有する汚染物質は大部分が、それらを収集できるかまたは廃棄できるもう1つの廃棄物出口まで流れる。
【0066】
分離の目的は、概して、より小さい汚染物質から標的細胞または標的粒子を分離することであるが、ユーザーがより大きい汚染物質から標的細胞または標的粒子を分離したい場合もある。それらの例では、標的細胞または標的粒子よりも大きいが汚染物質よりも小さい臨界サイズを有するマイクロ流体デバイスを使用することができる。単一のデバイスまたは複数のデバイスにおいて、異なる臨界サイズを有する2つ以上の障害物アレイの組み合わせを分離に使用してもよい。例えば、デバイスは、T細胞よりも大きいが顆粒球および単球よりも小さい臨界サイズを有する第1の障害物のアレイと、T細胞よりも小さいが血小板および赤血球よりも大きい臨界サイズを有する第2のアレイとを有する、チャネルを有してよい。このようなデバイスで血液試料を処理することで、T細胞が顆粒球、単球、血小板および赤血球から分離された生成物の収集が可能になる。障害物アレイの順序は結果に対してさほど重要ではないはずであり、すなわち、より小さい臨界サイズを有するアレイがより大きい臨界サイズを有するアレイの前にくることも後にくることもできる。また、細胞が通過する別々のデバイスに異なる臨界サイズを有するアレイが存在することもできる。
【0067】
複数の生成物の収集のために幅広いアレイおよび複数の出口を使用してよく、例えば、ある出口では単球が、異なる出口ではT細胞が取得されてよい。それゆえ、複数のアレイおよび複数の出口を使用することによって、単一のアレイが使用された場合よりも精製される、いくつかの生成物を同時に収集することを可能にできる。以下でさらに論じるように、互いに積層された多数のデバイスを使用することによって、高い処理量を維持することができる。
【0068】
好ましくは、マイクロ流体デバイスに使用される障害物は、多角形であり、ダイヤモンド形または六角形の障害物が好ましい。それら障害物も、概して、バルク流体フローに垂直なそれらの長さ(P1)がバルク流体フローに平行なそれらの幅(P2)とは、例えば、10~100%異なる(概してそれよりも長くなる)ように長形である(図6B参照)。典型的には、P1は、P2よりも少なくとも15%、30%、50%、100%、または150%長い。範囲で表現すると、P1はP2よりも10~150%(15~100%、または20~70%)長い。
【0069】
マイクロ流体デバイスは分離壁を含んでもよく、分離壁は、デバイスの試料入口からチャネルの障害物のアレイ中に延び、デバイスにおいて試料入口を流体入口から分離し混合を防止する(図10Aおよび図10B参照)。分離壁は、バルク流体フローの方向に平行に向けられ、試料出口および流体出口に向かって延びる。その壁は、チャネルの端部に達する前に終端し、その後、試料ストリームと流体ストリームとが互いに接触することが可能になる。壁は、概して、障害物のアレイの長さの少なくとも10%の距離にわたって延びるべきであるが、アレイの少なくとも20%、40%、60%、または70%延びてよい。範囲で表現すると、壁は、典型的には、障害物のアレイの長さの10~70%にわたって延びる。2つ以上の分離壁がデバイスに存在してもよく、分離の目的に応じて、異なるようにして位置決めされてもよい。
【0070】
容量を処理できる速度を上昇させるために、第1のマイクロ流体に1つまたは複数の積層されるデバイスをオーバーレイすることによって積層型分離アセンブリーを製作することができ、積層される各デバイスの底面が、第1のマイクロ流体デバイスの上面もしくはその上面の障害物接合層と、または、別の積層されるデバイスの上面もしくはその上面の障害物接合層と接触状態にある。試料は、第1の共通のマニホルドを通して全てのデバイスの試料入口に提供され、流体は、第1のマニホルドと同じでも同じでなくてもよい第2のマニホルドを通して流体入口に支給(supply)される。生成物は、1つまたは複数の生成物導管を通して生成物出口から取り出され、廃棄物は、生成物導管とは異なる1つまたは複数の廃棄物導管を通して廃棄物出口から取り出される。概して、積層型分離アセンブリーは、第1のマイクロ流体デバイスと共に2から9個の積層されるデバイスを有する。ただし、より大きい数のデバイスを使用してもよい。さらに、支持体の上面および/または底面は、複数の(例えば、2~40本または2~30本の)埋め込みチャネルを有してよく、標的粒子または標的細胞の精製に使用してよい。
【0071】
積層型分離アセンブリーは、第1のマイクロ流体デバイスの底面および/または積層されたマイクロ流体デバイスの上面に取り付けられる、リザーバー接合層を有してよい。リザーバー接合層は、1つまたは複数の通路がチャネルの入口への流体のフローを可能にする第1の端部を含むべきであり、第2の端部で、チャネルの生成物出口および廃棄物出口へのまたはそこからの流体のフローを可能にする1つまたは複数の通路を含んでもよい。第2の端部は、第1の端部の反対側にあり、流体を浸透させない材料によって分離されている。
【0072】
図9に示すように、デバイスの積層型アセンブリーは、カセット中への試料および流体の輸送およびカセット外への生成物および廃棄物の輸送を可能にするポートを有する外側ケーシングの存在を特徴とするカセットにおいて支持されてよい。図は、2つの入口ポートおよび2つの出口ポートを有するカセットを示す。しかし、カセットの内外への複数のポートを用いて、いくつかの生成物が本質的に同時に収集されてよい。カセットは、当技術分野で周知されており一般に使用される構成要素がある、システムの一部とすることができることも認識されている。このような一般的な構成要素には、流体フローを制御するための、ポンプ、バルブおよびプロセッサーと、流量および圧力などのシステムパラメーターをモニタリングするためのセンサーと、pHまたは塩分濃度などの流体の特徴をモニタリングするためのセンサーと、細胞または粒子の濃度を判定するためのセンサーと、カセットまたはカセットから収集される材料に存在する細胞もしくは粒子のタイプを判定するためのアナライザーとが含まれる。より概略的には、当技術分野で公知でありカセットに適合性のある任意の装備、処理される材料、および処理目的が使用されてよい。
【0073】
別の態様では、本発明は、標的粒子または標的細胞および汚染物質を含む試料を取得し、本明細書で論じるマイクロ流体デバイスまたは積層型分離アセンブリーのいずれかを使用して精製を実行することによって、汚染物質から所定のサイズの標的粒子または標的細胞を精製する方法を対象とする。精製は、上記で論じたマイクロ流体デバイスのいずれかの1つもしくは複数の試料入口に、または、第1のマイクロ流体デバイスもしくはデバイスアセンブリーの積層されたデバイスの試料入口に、試料を注ぐことによって実現される。特に、積層されたデバイスを使用するときには、入口に試料を注ぐためにマニホルドを用いてよい。次いで、試料は、デバイスのチャネルを通して出口まで流される。概して、標的粒子または標的細胞は、デバイスの障害物のアレイの臨界サイズよりも大きいサイズを有し、少なくとも一部の汚染物質は、臨界サイズよりも小さいサイズを有する。その結果、標的細胞または標的粒子は、標的細胞または標的粒子が富化された生成物が取得される1つまたは複数の生成物出口まで流れ、臨界サイズよりも小さいサイズを有する汚染物質は、もう1つの廃棄物出口まで流れる。しかし、先に言及したように、標的細胞または標的粒子が汚染物質よりも小さく、デバイスが、標的細胞または標的粒子よりも大きくかつ汚染物質よりも小さい臨界サイズを有するように選択される例もある。それらの例では、デバイスの全体的な動作は本質的に同じであるが、汚染物質はアレイ方向に流れ、標的細胞または標的粒子はバルク流体フローの方向に進む。
【0074】
試料は、個人または患者から、特に、癌患者、自己免疫疾患患者または感染症患者から、取得されてよい。ある実施形態では、試料は血液であるか、または血液に由来し(例えば、アフェレーシス試料または白血球アフェレーシス試料)、標的細胞は、樹状細胞、白血球(特にT細胞)、幹細胞、B-細胞、NK-細胞、単球または前駆細胞である。これらの例の汚染物質は、典型的には、赤血球および/または血小板を含む。精製の結果、標的細胞が富化され、試料から血小板および/または赤血球の少なくとも80%(好ましくは90%、より好ましくは95%)が除去された、生成物が得られるはずである。
【0075】
精製された標的細胞が取得されると、それら細胞は、組み換え核酸でそれらをトランスフェクトすることまたは形質導入することによって、遺伝子操作されてよい。次いで、それら細胞は、培地で増殖されてもよく、最終的に、試料が取得された患者の治療に使用されてよい。
【0076】
特に対象となる本発明は、a)T細胞を含む試料を取得し、b)本明細書で論じるマイクロ流体デバイスまたは積層されたデバイスのいずれかの、1つまたは複数の試料入口に試料を注ぐことによって、汚染物質からT細胞を分離し、c)デバイスの出口まで試料を流し、d)生成物出口から、T細胞が富化された生成物を取得することによって、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞を産生する方法を含む。T細胞が回収されると、それら細胞は、キメラ抗原受容体を細胞の表面において発現するように、好ましくは、組み換え核酸でそれらをトランスフェクトすることまたは形質導入することによって、遺伝子操作される。遺伝子操作された標的細胞は、インビトロで細胞を成長させることによって増殖され、試料を提供した患者に治療として投与されてよい。
【0077】
T細胞を含有する試料は、好ましくは、癌患者、自己免疫疾患患者もしくは感染症患者からの、またはHLAが一致した(治療対象の患者に)ドナーからの、血液、アフェレーシス生成物、または白血球アフェレーシス生成物である。細胞は、DLD分離を促進するかまたは補完するように、1つまたは複数の担体に囲まれてよく、次いで、細胞または複合体はDLDによって精製されてよい。本発明は、製作されるCAR T細胞と、CAR T細胞が使用されるCAR T細胞療法とを含む。
【0078】
I.マイクロ流体カートリッジの設計
本開示は、粒子または細胞を精製するためのマイクロ流体カートリッジ(すなわち、デバイス、チップ、カセット、プレート、マイクロ流体デバイス、カートリッジ、DLDデバイスなど)を提供する。本開示のマイクロ流体カートリッジは、DLD方法を用いて動作してよい。本開示のマイクロ流体カートリッジは、ポリマー材料(例えば、熱可塑性プラスチック)から形成されてよく、上面および底面を有する第1の平面状の支持体と上面および底面を有する第2の平面状の支持体とを1つまたは複数含んでよく、第1および第2の平面状の支持体の上面は、1つまたは複数の入口から1つまたは複数の出口まで延びる、少なくとも1つの埋め込みチャネルを備え、少なくとも1つの埋め込みチャネルは障害物のアレイを備え、第1および第2の平面状の支持体の底面は、第1の平面状の支持体の底部が第2の平面状の支持体の底部に押し付けられるときに変形されるように構成された、少なくとも1つの空所を備える。本開示のマイクロ流体カートリッジは、1回限りの使用の、または使い捨てのデバイスでよい。代替案として、マイクロ流体カートリッジは複数回使用のデバイスでよい。マイクロ流体構造を形成するためにポリマー(例えば、熱可塑性プラスチック)を使用すると、廉価でありかつ高度に拡大縮小可能なソフトエンボス加工プロセスの使用を可能にすることができ、空所は、迅速に製造する能力を改善することができ、製造プロセス中の障害物(すなわち、ポスト、DLDアレイなど)への損傷を避けることができる。
【0079】
本明細書に記載するカートリッジは、決定論的横置換法、すなわち、DLDによって動作することができる。図1A図1Gを参照すると、DLDは3つの異なる動作モードを含んでよい。動作モードは、i)分離(図1A)、ii)バッファー交換(図1B)およびiii)濃縮(図1C)を含む。各モードでは、臨界直径を超える粒子は、入る地点からアレイの方向に偏向され、その結果、デバイスの形状の機能として、サイズ選別、バッファー交換または濃縮が行われる。いずれの場合も、臨界直径未満の粒子は、層流状態下でデバイスを直接的に通過し、その後、デバイスから出る。図1Dは、分離モードで使用される14本のレーンのDLD設計を示す。マイクロ流体カートリッジの分離ゾーンの全長は約75mmでよく、幅は約40mmでよく、個々のチャネルはそれぞれ幅が約1.8mmである。図1E図1Fは、プラスチック製のダイヤモンド形ポストアレイおよび出口用の集約型収集ポートの拡大図である。図1Gは、デバイスを用いて白血球アフェレーシス生成物が10PSIで処理されているところを示す。
【0080】
本明細書に記載するカートリッジは、異なるDLDモードまたは生成物結果を実現するために様々な向きに配置されてよい(図2)。図2には側壁(1)および障害物のアレイ(2)を有するチャネルが4本示されている。血液、細胞または粒子を含有する試料は、上部の試料入口(3)を介してチャネルに入り、バッファー、試薬または媒体は、別個の流体入口(4)でチャネルに入る。それらがチャネルの底部に向かって流れるときに、アレイの臨界直径よりも大きい(>Dc)サイズを有する細胞または粒子は、障害物のアレイ方向によって定められた角度で流れ、アレイの臨界直径よりも小さい(<Dc)サイズを有する細胞および粒子から分離される。
【0081】
図3A図3Dを参照すると、カートリッジの実施形態は、マイクロ流体デバイスまたはカートリッジで使用できる、14本の平行チャネルの構成を備えてよい。図3B図3Dは、カートリッジの部分拡大図を示す。この図では、チャネルは、隙間が徐々に小さくなる3つのゾーン(セクション)を有する。カートリッジは、各チャネルの入口に試料を供給する、例えば血液用の、共通の試料入口を有する。バッファー用のチャネルへの別々の入口があるが、それらは、処理目的に応じて、試薬を有する流体、成長培地または他の流体をチャネル中に導入するために使用することもできる。各チャネルの底部には、生成物出口があり、その出口は、典型的には、チャネルの障害物アレイの臨界直径よりも大きいサイズを有する標的細胞または標的粒子を回収するために使用されることになる。個々のチャネルからの出口は、共通の生成物出口に供給し、共通の生成物出口から標的細胞または標的粒子を回収することができる。チャネルの障害物アレイの臨界直径未満のサイズを有する細胞および粒子が出る廃棄物出口も示されている。
【0082】
図4A図4Dを参照すると、カートリッジの実施形態は2本のチャネルを備えてよい。図4B図4Dはチャネルの部分拡大図を示す。チャネルは、徐々に小さくなる直径の障害物および隙間を有するように設計された、3つの部分を有する。
【0083】
いくつかのカートリッジは、図5の断面図に示すように、マイクロ流体チャネルに正三角形の障害物が配設された「バンプアレイ」を有してよい。図では、流体は、「流体」と示した矢印で示すように、左から右の方向に流れる。このアレイでは、正三角形のポストが、流体フローの方向に対して傾斜した、平行四辺形の格子の構成で配設されている。他の格子の構成(例えば、正方形、矩形、台形、六角形などの格子)を使用することもできる。傾斜角ε(イプシロン)は、デバイスが周期的になるように選択される。本実施形態では、18.4度(1/3ラジアン)の傾斜角によって、デバイスが横列3本おきの周期になる。傾斜角εは、アレイ方向が流体フロー方向からオフセットする角度も表す。ポスト間の隙間はGで表され、正三角形の辺の長さはSである。ポスト間を延びる流線が示されており、ポスト間の流体フローを、等しい容積フローの3つの領域(「流管」)に分割している。比較的大きい粒子(アレイの臨界サイズを超えるサイズを有する)は、流体フローが図示の方向にあるときにはアレイの傾斜角に従う。比較的小さい粒子(アレイの臨界サイズよりも小さいサイズを有する)は、流体フローの方向に従う。
【0084】
本明細書に提供されるカートリッジは、図6A図6Bに示すように、ダイヤモンド形のポストのアレイを備えてよい。図6Aは、対称障害物のアレイを示し、ここで、流体フローの方向に垂直な隙間、例えば、隙間1(G1)および流体フローの方向に平行な隙間、例えば、隙間2(G2)は全てほぼ同じ長さである。ダイヤモンド形の障害物は2つの直径を有してよく、一方は、流体フローの方向に垂直(P1)であり、他方は、流体フローの方向に平行(P2)である。図の右側には、平行な隙間が垂直な隙間よりも短い非対称アレイを示す。非対称アレイのG1は対称アレイと比べると幅広いが、隙間G2を小さくすると、アレイの臨界直径が対称アレイの場合と同じになる。その結果、2つのアレイは、試料中の所与の直径の粒子または細胞を分離することに対して事実上ほぼ等しくなるはずである。しかし、G1を広くすると、試料の処理量を高めることが可能になり、チャネルの目詰まりが軽減される。図6Bは、左側に、ダイヤモンド形障害物のアレイを示し、障害物は、上下の直径が左右の直径よりも長くなるように長形である。図6の中間部分には、ダイヤモンド形のポストを示し、ポストは、左右の直径が上下の直径よりも長くなるように長形であり、図の最も右の部分は、左右方向に長形の六角形の障害物を示す。
【0085】
図7A図7Cを参照すると、本明細書に記載するカートリッジは積層型分離アセンブリーを構成してよく、そのアセンブリーでは、2つのマイクロ流体デバイスまたはカートリッジが組み合わせられて単一のユニットを成す。最も上のデバイス(5)は平面状の支持体(6)を備え、その支持体は、様々な材料を用いて製作されてよいが、最も好ましくはポリマーであり、上面(7)および底面(12)を有する。支持体の上面(7)はリザーバーを収容し、リザーバーは、支持体の一方の端部に、試料入口(9)およびバッファーまたは他の流体用の入口(10)を、他方の端部に、生成物出口(14)および廃棄物出口(13)を提供する。各リザーバーは、上面(7)を底面(12)のチャネルに連結する小型のバイア[(9)、(10)、(13)、(14)の内部]を用いて、支持体を通して流体連結される。支持体の底面(12)は多数の埋め込みマイクロ流体チャネル(8)を有し、チャネル(8)はそれぞれ、チャネルによってつながれた障害物のアレイを有する(図1A図1C図2図3B図3D図4B図4D図5図6Aおよび図6B、ならびに図8B参照)。埋め込まれたマイクロ流体層は障害物接合層(15)に接合され、その障害物接合層(15)は、第1のデバイスをシールし、動作中に流体が障害物の上を流れることを防止する。埋め込まれたマイクロ流体チャネルを最上面に収容する、積層体の第2のマイクロ流体デバイス(16)が示されており、デバイス(16)は最も上のデバイスと同じ障害物接合層(15)によってシールされる。長形の開口部(19)を有するリザーバー接合層(18)も示されており、開口部(19)によって、チャネル入口に液体を通すことおよびチャネル出口から液体を通すことが可能になる。リザーバー接合層は、障害物ではなくデバイスの表面に取り付けられることを除いて障害物接合層と同様であり、デバイスの積層体またはマニホルドに供給する1つまたは複数のリザーバーに連結されてよい。積層されるデバイスを位置合わせするために使用される孔(11)が示されている。上述のように、2つの埋め込まれたマイクロ流体面は同じ障害物接合層に面する。代替の構成は、両方のデバイスの上面に埋め込みチャネルを有し、デバイス間の中間層が、下方の埋め込みチャネルには障害物接合層として、上方のリザーバーには分配層として、両方の機能を果たすものである。図7Bは、一緒になって単一のアセンブリーユニットを形成する複数のマイクロ流体デバイスの積層体を示す。この積層体の上部には(上部および底部の両方でもよい)マニホルド(22)があり、マニホルド(22)は、マニホルド入口分配部(24)のための供給部(23)と、マニホルドの生成物出口(27)からつながる導管(28)とを有する。図には示していないが、流体入口(25)につながる供給部および廃棄物出口(26)から流体を取り出すための導管も存在する。図7Cは、ケーシング(21)に搭載された積層型分離アセンブリー(20)を示す。
【0086】
図7に示すデバイスに見られることがある2つのチャネルが図8A図8Bに示されている。チャネルの部分拡大図が図8Bに示されている。この例では、チャネルは、非対称に離間したダイヤモンド形障害物のアレイを有し、G1はG2よりも大きい。ダイヤモンドはオフセットしており、したがって、連続的な横列がそれぞれ、前の横列に対して横断方向にずれている。
【0087】
本開示は、本明細書で、合わせて「複数のカセット」または「カセット」と称されることがある、ケーシング(21)内側のマイクロ流体デバイス(20)の積層型アセンブリーを提供する(図9)。ポート(29)が、ケーシングを通してマニホルド(22)に供給される試料のための供給部として働く。ポート(29)は、マニホルド供給部(23)に連結されており、マニホルド供給部(23)は、マニホルド試料入口(24)を通してチャネルの試料入口に試料を分配する。試料は、注がれると、障害物アレイを収容するチャネルを通って流れ(図3図6参照)、臨界サイズよりも大きい粒子または細胞を有する生成物は、マニホルド生成物出口(27)でデバイスの積層体を出る。次いで、生成物は、マニホルド出口から生成物導管(28)を通って流れ、生成物出口ポート(31)を通してカセット外に搬送される。流体は、カセット中に流れ、マニホルド流体供給部(49)に連結されたマニホルド貫通ポート(51)に至る。流体は、マニホルド流体入口(25)によってチャネル流体入口に分配される。流体はチャネルを通って流れ、臨界サイズよりも小さい粒子または細胞は、大部分がマニホルド廃棄物出口(26)を通ってデバイスの積層体を出る。次いで、それら粒子または細胞は、出口ポート(30)を通して廃棄物をカセットの外に搬送する廃棄物導管(50)を通って流れる。
【0088】
本明細書で提供されるカートリッジまたはデバイスの実施形態は、試料入口(33)および流体入口(34)を有する、2つの壁(32)で囲まれたチャネルを備えてよい(図10A図10B)。試料フローストリームが流体フローストリームと混合することを防止する分離壁(35)がある。分離壁は、障害物アレイ(36)中に延び、約半分の地点で終端する。アレイの矢印は、アレイの臨界サイズよりも大きいサイズを有する標的細胞が動く方向を示す。障害物アレイに入るとまず、標的細胞は、分離壁に達するまで流体フローの方向から離れる方にそらされる。次いで、壁が終端するまで壁に沿って動く。その後、再び、生成物出口(37)でチャネルを出るまでそらされる。障害物アレイの臨界サイズよりも小さいサイズを有する粒子は、そらされず、廃棄物出口(38)でチャネルを出る。図10Bも、試料用入口(39)、試薬用入口(40)、およびバッファーまたは他の流体用の入口(42)を有する、壁(43)で囲まれたチャネルを示す。試料は、入口で入り、障害物アレイ(44)上を流れる。そこでは、アレイの臨界直径よりも大きい粒子または細胞は、反応を受ける試薬ストリーム中にそらされる。分離壁(41)が、試薬入口から障害物のアレイ(44)の途中まで延在し、試薬ストリームをバッファーまたは他の流体のストリームから分離する。この壁は、細胞または粒子を試薬ストリーム中により長い時間にわたって維持し、そうすることで、より長い時間が反応のために提供される。分離壁の端部で、粒子または細胞は、再び、それらを収集できる生成物出口(48)にそらされる。このプロセスの間に、細胞または粒子は、未反応の試薬から分離される。第2の分離壁(45)が、第1の分離壁(41)の端部から廃棄物出口(47)まで延在し、廃棄物出口(47)では、バッファーまたは他の流体、試薬、および小さい粒子または細胞がデバイスを出て、収集されるかまたは廃棄されてよい。第2の廃棄物出口(46)が、試薬、試料中に粒子または細胞が懸濁した流体、および障害物アレイの臨界直径よりも小さい粒子または細胞を取り出すために使用される。それらの材料は回収されても廃棄されてもよい。
【0089】
2つの正三角形ポスト間の正規化した速度のフロー(左パネル)と、2つの円形ポスト間の正規化した速度のフロー(右パネル)との比較を行うことができ(図11)、障害物またはポストの形状の影響を示す。図11の斜線部分は、等しい割合の曲線下面積を表し、三角形の点を越えて流れる粒子の臨界半径(<15%隙間幅)が、丸いポストを越えて流れる粒子の臨界半径(>20%隙間幅)よりも有意に小さいことを示す。
【0090】
図12は、三角形(下側の線)および円形(上側の線)の障害物のアレイの場合の、アレイ傾斜角(ε)に対する予測臨界直径のグラフである。図12の分析はさらに、図11に示す粒子または細胞を変位させる際のポストの形状の影響を示す。
【0091】
図13を参照すると、隙間長さGへの傾斜角(図では「アレイ傾斜」)の影響が示されていてよい。Gは三角形のポスト間の隙間の長さを指し、Gは丸形のポスト間の隙間の長さを指す。アレイ傾斜が増大すると、三角形のポストと円形のポストとの間のアレイの特定の臨界サイズ(D)隙間の長さの差が小さくなる。
【0092】
縁部で囲まれた隙間の側部について表される臨界サイズへの、障害物の縁部の丸み(r/Sで表現される)の影響が図14に示されている。ポストの丸みを増大させると、所与の隙間の長さに関するそのポストの臨界サイズの値が大きくなる。
【0093】
臨界サイズに加えて、異なる形状のポストは、一定の圧力が加えられ得る場合に粒子速度に影響を及ぼしてよい。図15は、三角形のポストを有するバンプアレイ(三角形で示すデータ)および円形のポストを有するバンプアレイ(円で示すデータ)の粒子速度への、加えられる圧力の影響を示す。圧力が加えられる場合は、三角形のポストを有するアレイは、円形のポストを有するアレイよりも粒子速度を上昇させる。さらに、圧力を増大させた際の粒子速度上昇の割合も、三角形のポストアレイの方が円形のポストアレイよりも大きい。
【0094】
図16Aを参照すると、本明細書に記載するカートリッジは、上部および/または底部のシール/ふた1600ならびに分離層1605を備える。その分離層1605は、分離を促進する複数の障害物1620と、流体層1610と、複数の障害物を変形させずにカートリッジの作製を可能にする空所またはクランプルゾーンとを備える。図16Bを参照すると、複数の障害物1620は、流体および細胞が通過できるように構成された隙間1635が形成されるように、横列1625および縦列1630に配列されてよい。障害物は、繰り返す横列間でオフセットしないかまたは最低限のオフセットで積層されるように配列されてよい。図17Aから図17Cを参照すると、より大きい分離またはより高い処理量を実現するために、2つ以上のカートリッジが直列または並列に積層されても連結されてもよい。
【0095】
同様のデバイスまたはマイクロ流体カートリッジがサブミリメートルのスケールで動作し、マイクロリットル、ナノリットル以下の量の流体を取り扱うので、製造中の主な障害物は、エンボス加工または組み立て中に障害物の損傷または変形を避けている。例えば、チップの取り扱いは、特に平面状の支持体が互いに押し付けられるときに、平面状の支持体に圧力をかけることがあり、次いで、そのことが、平面状の支持体、障害物(すなわち、障害物のアレイ)、および様々な分離レーンの変形または破壊を引き起こすことがある。このような変形または破壊によって、粒子または細胞を精製する際の性能の大幅に低下することがあるか、またはマイクロ流体カートリッジの機能を完全に損なうことがある。製造中および組み立て中の起こり得る変形および不具合を避けるために、他のマイクロ流体のシステムは、製造の進行をより遅くする必要があるか、または低下した性能を受け入れる。
【0096】
一態様では、本開示は、細胞または粒子を精製するためのマイクロ流体カートリッジを提供する。マイクロ流体カートリッジは第1の平面状の支持体を含んでよい。第1の平面状の支持体は上面および底面を備えてよい。デバイスは第2の平面状の支持体を含んでよい。第2の平面状の支持体は上面および底面を備えてよい。上面は、1つまたは複数の入口から1つまたは複数の出口まで延びる、少なくとも1つの埋め込みチャネルを備えてよい。少なくとも1つの埋め込みチャネルは障害物のアレイを備えてよい。第1および第2の平面状の支持体の底面は空所を備えることができる。空所は、第1の平面状の支持体の底部が第2の平面状の支持体の底部に押し付けられるときに変形されるように構成されていてよい。
【0097】
この説明による分離は、平面状の支持体に埋め込まれたチャネルに沿って起こり、チャネルは複数の障害物を備える。この説明のカートリッジには、第1および第2の平面状の表面が利用されてよい。第1および第2の平面状の表面は積層されてよい(例えば、小さい占有面積を維持しながら処理量および分離能力を倍増するスペーサーを用いて、底部と底部または上部と底部)。第1および/または第2の平面状の表面の上面は、少なくとも1本の埋め込みチャネルから約500本の埋め込みチャネルを備えてよい。上面は、少なくとも1本の埋め込みチャネルから約2本の埋め込みチャネル、1本の埋め込みチャネルから約5本の埋め込みチャネル、1本の埋め込みチャネルから約20本の埋め込みチャネル、1本の埋め込みチャネルから約50本の埋め込みチャネル、1本の埋め込みチャネルから約100本の埋め込みチャネル、1本の埋め込みチャネルから約500本の埋め込みチャネル、約2本の埋め込みチャネルから約5本の埋め込みチャネル、約2本の埋め込みチャネルから約20本の埋め込みチャネル、約2本の埋め込みチャネルから約50本の埋め込みチャネル、約2本の埋め込みチャネルから約100本の埋め込みチャネル、約2本の埋め込みチャネルから約500本の埋め込みチャネル、約5本の埋め込みチャネルから約20本の埋め込みチャネル、約5本の埋め込みチャネルから約50本の埋め込みチャネル、約5本の埋め込みチャネルから約100本の埋め込みチャネル、約5本の埋め込みチャネルから約500本の埋め込みチャネル、約20本の埋め込みチャネルから約50本の埋め込みチャネル、約20本の埋め込みチャネルから約100本の埋め込みチャネル、約20本の埋め込みチャネルから約500本の埋め込みチャネル、約50本の埋め込みチャネルから約100本の埋め込みチャネル、約50本の埋め込みチャネルから約500本の埋め込みチャネル、または約100本の埋め込みチャネルから約500本の埋め込みチャネルを備えてよい。上面は、少なくとも1本の埋め込みチャネル、約2本の埋め込みチャネル、約5本の埋め込みチャネル、約20本の埋め込みチャネル、約50本の埋め込みチャネル、約100本の埋め込みチャネル、または約500本の埋め込みチャネルを備えてよい。上面は、少なくとも1本の埋め込みチャネル、約2本の埋め込みチャネル、約5本の埋め込みチャネル、約20本の埋め込みチャネル、約50本の埋め込みチャネル、または約100本の埋め込みチャネルを備えてよい。上面は、少なくとも最大で約2本の埋め込みチャネル、約5本の埋め込みチャネル、約20本の埋め込みチャネル、約50本の埋め込みチャネル、約100本の埋め込みチャネル、または約500本の埋め込みチャネルを備えてよい。上面または第1もしくは第2の平面状の表面は、約28本のチャネル(積層される場合は56本)を備えてよい。付加的な第3、第4、第5、または第6の平面状の表面が、第1または第2の平面状の表面と同様の量の埋め込みチャネルを備えてもよい。
【0098】
マイクロ流体カートリッジは、少なくとも1か所の入口から約50か所の入口を備えてよい。マイクロ流体カートリッジは、少なくとも1か所の入口から約2か所の入口、1か所の入口から約5か所の入口、1か所の入口から約10か所の入口、1か所の入口から約20か所の入口、1か所の入口から約50か所の入口、約2か所の入口から約5か所の入口、約2か所の入口から約10か所の入口、約2か所の入口から約20か所の入口、約2か所の入口から約50か所の入口、約5か所の入口から約10か所の入口、約5か所の入口から約20か所の入口、約5か所の入口から約50か所の入口、約10か所の入口から約20か所の入口、約10か所の入口から約50か所の入口、または約20か所の入口から約50か所の入口を備えてよい。マイクロ流体カートリッジは、少なくとも1か所の入口、約2か所の入口、約5か所の入口、約10か所の入口、約20か所の入口、または約50か所の入口を備えてよい。マイクロ流体カートリッジは、少なくとも1か所の入口、約2か所の入口、約5か所の入口、約10か所の入口、または約20か所の入口を備えてよい。マイクロ流体カートリッジは、少なくとも最大で約2か所の入口、約5か所の入口、約10か所の入口、約20か所の入口、または約50か所の入口を備えてよい。入口は、共通の流体システムまたはデュアル流体システム(1つがバッファー/希釈液用であり、1つが試料用である)によって供給されてよい。
【0099】
マイクロ流体カートリッジは、少なくとも1か所の出口から約50か所の出口を備えてよい。マイクロ流体カートリッジは、少なくとも1か所の出口から約2か所の出口、1か所の出口から約5か所の出口、1か所の出口から約10か所の出口、1か所の出口から約20か所の出口、1か所の出口から約50か所の出口、約2か所の出口から約5か所の出口、約2か所の出口から約10か所の出口、約2か所の出口から約20か所の出口、約2か所の出口から約50か所の出口、約5か所の出口から約10か所の出口、約5か所の出口から約20か所の出口、約5か所の出口から約50か所の出口、約10か所の出口から約20か所の出口、約10か所の出口から約50か所の出口、または約20か所の出口から約50か所の出口を備えてよい。マイクロ流体カートリッジは、少なくとも1か所の出口、約2か所の出口、約5か所の出口、約10か所の出口、約20か所の出口、または約50か所の出口を備えてよい。マイクロ流体カートリッジは、少なくとも1か所の出口、約2か所の出口、約5か所の出口、約10か所の出口、または約20か所の出口を備えてよい。マイクロ流体カートリッジは、少なくとも最大で約2か所の出口、約5か所の出口、約10か所の出口、約20か所の出口、または約50か所の出口を備えてよい。出口は、共通の流体システムまたはデュアル流体システム(1つが廃棄物用であり、1つが富化された標的細胞または標的粒子用である)を供給してよい。
【0100】
2つ以上の平面状の表面を備えるカートリッジは、レーン中の障害物のアレイが小さいことで変形しやすく不具合につながるので、それらを保護するために空所を備えてよい。
【0101】
マイクロ流体カートリッジの空所は、変形するか、曲がるか、膨張するか、折り畳まれるか、またはしわくちゃになる(crumple)ように構成されてよい。空所は、損傷、変位、変形、または不具合から、障害物、チャネル、入口、出口、平面状の表面、またはそれらの任意の組み合わせを保護するように構成されてよい。空所は、損傷、変位、変形、または不具合から、障害物、チャネル、入口、出口、平面状の表面、またはそれらの任意の組み合わせを保護するように構成された、クランプルゾーンを備えてよい。空所の容量は約1立方μmから約10,000立方μmでよい。空所の容量は、約1立方μmから約5立方μm、約1立方μmから約10立方μm、約1立方μmから約30立方μm、約1立方μmから約50立方μm、約1立方μmから約100立方μm、約1立方μmから約300立方μm、約1立方μmから約1,000立方μm、約1立方μmから約3,000立方μm、約1立方μmから約10,000立方μm、約5立方μmから約10立方μm、約5立方μmから約30立方μm、約5立方μmから約50立方μm、約5立方μmから約100立方μm、約5立方μmから約300立方μm、約5立方μmから約1,000立方μm、約5立方μmから約3,000立方μm、約5立方μmから約10,000立方μm、約10立方μmから約30立方μm、約10立方μmから約50立方μm、約10立方μmから約100立方μm、約10立方μmから約300立方μm、約10立方μmから約1,000立方μm、約10立方μmから約3,000立方μm、約10立方μmから約10,000立方μm、約30立方μmから約50立方μm、約30立方μmから約100立方μm、約30立方μmから約300立方μm、約30立方μmから約1,000立方μm、約30立方μmから約3,000立方μm、約30立方μmから約10,000立方μm、約50立方μmから約100立方μm、約50立方μmから約300立方μm、約50立方μmから約1,000立方μm、約50立方μmから約3,000立方μm、約50立方μmから約10,000立方μm、約100立方μmから約300立方μm、約100立方μmから約1,000立方μm、約100立方μmから約3,000立方μm、約100立方μmから約10,000立方μm、約300立方μmから約1,000立方μm、約300立方μmから約3,000立方μm、約300立方μmから約10,000立方μm、約1,000立方μmから約3,000立方μm、約1,000立方μmから約10,000立方μm、または約3,000立方μmから約10,000立方μmでよい。空所の容量は、約1立方μm、約5立方μm、約10立方μm、約30立方μm、約50立方μm、約100立方μm、約300立方μm、約1,000立方μm、約3,000立方μm、または約10,000立方μmでよい。空所は容量が、少なくとも約1立方μm、約5立方μm、約10立方μm、約30立方μm、約50立方μm、約100立方μm、約300立方μm、約1,000立方μm、または約3,000立方μmでよい。空所は容量が最大で約5立方μm、約10立方μm、約30立方μm、約50立方μm、約100立方μm、約300立方μm、約1,000立方μm、約3,000立方μm、または約10,000立方μmでよい。空所は約X立方μmでよい。
【0102】
図18Aは、本開示の平面状の支持体1806の底面1812の非限定的な図を示す。底面は複数の空所1815を備えてよく、ここで示す空所は、平面状の支持体の長さに平行に延在するストリップになるように配置されている。空所は、平面状の支持体の上面に作製された、障害物のアレイもしくは縦列(図示せず)または障害物の縦列によって形成されたレーン(図示せず)の下方を延在する。図18Bを参照すると、平面状の支持体1806の断面図が示されている。平面状の支持体の上面1807は、流体、細胞、および/または粒子のフローを可能にする隙間1835を作り出す、アレイまたは縦列になるように形成された個々の障害物1820を複数備える。平面状の支持体1812の底面に埋め込まれた障害物の下方に空所1815がある。レーンの反対側の空所の面積(長さ×幅)は、レーンの面積(長さ×幅)の少なくとも約80%とすることができる。いくつかの実施形態では、レーンの反対側の空所の面積(長さ×幅)は、レーンの面積(長さ×幅)の少なくとも約90%、100%、110%、または120%、約150%を含むそれ以下とすることができる。
【0103】
一構成では、2つの平面状の支持体の空所は、対称またはほぼ対称であり、図16Aに示すように背面同士が押し付けられている。しかし、図19に示すように、代替の構成が示されている。このような事例では、支持体は、背面同士が押し付けられるのではなく、積層されており、空所は、19Aのように障害物層の上方にあるか、または19Bのように下方にある。
【0104】
空所は2つ以上の空所に分離されていてよい。空所は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個の空所に分離されていてよい。空所はちょうど2つの空所に分離されていてよい。障害物を備える平面状の支持体ごとに、チャネルまたはレーンと空所との間の比が1:1でよい。
【0105】
平面状の支持体は、互いに接合された2層の材料から作製されてよい。層は、接着剤、ポリマー、または熱可塑性プラスチックによって互いに接合されてよい。層は、ポリマーまたは熱可塑性プラスチックから構成されてよい。ポリマー層もしくは熱可塑性プラスチック層または接合材料は、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PT)、ポリカーボネート(PC)、または環状オレフィンコポリマー(COC)から構成されてよい。
【0106】
カートリッジの上部層は、少なくとも1つの埋め込みチャネルの障害物のアレイ、空所、少なくとも1つの入口、少なくとも1つの出口、またはそれらの組み合わせを備えてよい。カートリッジの底部層は、少なくとも1つの埋め込みチャネルの障害物のアレイ、空所、少なくとも1つの入口、少なくとも1つの出口、またはそれらの組み合わせを備えてよい。層は、平面状の支持体が側面、底面、または上面で互いに接合される場所に位置決めされてよい。空所は、互いに接合された平面状の支持体のインターフェースの内側またはインターフェースの外側にあってよい。
【0107】
マイクロ流体カートリッジはさらに障害物接合層を備えてよく、障害物接合層は、カートリッジの動作中に流体または試料が障害物のアレイの上を流れることを防止するために、平面状の支持体の表面および埋め込みチャネルの障害物のアレイの上面に接合されている。障害物接合層は、金属、ポリマー、または熱可塑性プラスチックでよい。障害物接合層はカバーまたはフィルムでよい。ポリマー層もしくは熱可塑性プラスチック層または接合材料は、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PT)、ポリカーボネート(PC)、または環状オレフィンコポリマー(COC)から構成されてよい。マイクロ流体カートリッジは、上部の平面状の支持体の外側に2つの障害物接合層を備えてよい。マイクロ流体カートリッジは、平面状の支持体のための接合作用物質としてカートリッジの中間に障害物接合層を備えてよい。障害物接合層は、チャネル中への試料のフローを可能にする、埋め込みチャネルの1つまたは複数の入口に流体連結された1つまたは複数の通路と、1つまたは複数の出口の外への流体のフローを可能にする、チャネルの1つまたは複数の出口に流体連結された1つまたは複数の通路とを備えてよい。このような障害物層は、埋め込みチャネルの1つもしくは複数の入口または1つもしくは複数の出口に流体連結された、少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約50、または少なくとも約100の通路を備えてよい。
【0108】
マイクロ流体カートリッジは、カートリッジの臨界サイズを定めるように位置決めされた障害物を有してよく、そのため、試料がカートリッジの入口に注がれ出口まで流れるときに、臨界サイズよりも大きい試料中の粒子または細胞が、臨界サイズよりも小さい試料中の粒子または細胞から分離される。各障害物は、それ自体の個々の下位臨界サイズを有してよく、個々の障害物の合計がカートリッジの臨界サイズを定める。カートリッジの1つまたは複数の出口は少なくとも1つの生成物出口を備えてよく、カートリッジの臨界サイズよりも大きいサイズを有する標的粒子または細胞は、少なくとも1つの生成物出口に方向付けられる。カートリッジの1つまたは複数の出口は、少なくとも1つの生成物出口を備えてよく、カートリッジの臨界サイズよりも小さいサイズを有する標的粒子または細胞は、少なくとも1つの生成物出口に方向付けられる。カートリッジは、少なくとも約1か所、少なくとも約2か所、少なくとも約3か所、少なくとも約5か所、少なくとも約10か所、または少なくとも約50か所の生成物出口を有してよい。1つまたは複数の出口は少なくとも1つの廃棄物出口を備えてよい。臨界サイズよりも小さいサイズを有する汚染物質、粒子、または細胞は、少なくとも1つの廃棄物出口まで流れてよい。臨界サイズよりも大きいサイズを有する汚染物質、粒子、または細胞は、少なくとも1つの廃棄物出口まで流れてよい。カートリッジは、少なくとも約1か所、少なくとも約2か所、少なくとも約3か所、少なくとも約5か所、少なくとも約10か所、または少なくとも約50か所の廃棄物出口を有してよい。
【0109】
カートリッジに使用される障害物は、縦列の形状をとってもよく、三角形、正方形、矩形、ダイヤモンド形、台形、六角形、涙形、円形、半円形、上辺が水平の三角形、底辺が水平の三角形でもよい。さらに、隣り合う障害物は、障害物のうちの隙間を画定する部分が、バルク流体フローの方向に延びる隙間の軸を中心に対称または非対称であるような形状を有してよい。障害物は、互いに向き合うが互いに真向かいにはない1つまたは複数の頂点が平行な隙間にそれぞれの側で隣接するようにそれらの隙間中を延びる、頂点を有する。障害物は、互いに向き合う頂点が垂直な隙間にそれぞれの側で隣接するようにそれら隙間中を延びると共に互いに真向かいにある、頂点を有することができる。障害物の位置および形状は、単一のチップ内で変えることができる。任意の特定の要件のために、追加の障害物をデバイスの任意の位置に加えることができる。また、障害物の形状は、デバイス内で異なることが可能である。任意の特定の要件のために、ポストの形状、サイズおよび位置の任意の組み合わせを使用することができる。カートリッジは、ダイヤモンド形または六角形の障害物のみから構成されてよい。
【0110】
障害物の形状は、流体フローの方向に垂直な方向に長形でよく、そのため、それらの上下長さ(P2)とは異なる左右長さ(P1)を有する。P1は長さが約1μmから約160μmでよい。P1は長さが約1μmから約10μm、約1μmから約15μm、約1μmから約30μm、約1μmから約40μm、約1μmから約80μm、約1μmから約160μm、約10μmから約15μm、約10μmから約30μm、約10μmから約40μm、約10μmから約80μm、約10μmから約160μm、約15μmから約30μm、約15μmから約40μm、約15μmから約80μm、約15μmから約160μm、約30μmから約40μm、約30μmから約80μm、約30μmから約160μm、約40μmから約80μm、約40μmから約160μm、または約80μmから約160μmの長さでよい。P1は長さが約1μm、約10μm、約15μm、約30μm、約40μm、約80μm、または約160μmでよい。P1は長さが少なくとも約1μm、約10μm、約15μm、約30μm、約40μm、または約80μmでよい。P1は長さが最大で約10μm、約15μm、約30μm、約40μm、約80μm、または約160μmでよい。P2は長さが約1μmから約160μmでよい。P2は長さが約1μmから約10μm、約1μmから約15μm、約1μmから約30μm、約1μmから約40μm、約1μmから約80μm、約1μmから約160μm、約10μmから約15μm、約10μmから約30μm、約10μmから約40μm、約10μmから約80μm、約10μmから約160μm、約15μmから約30μm、約15μmから約40μm、約15μmから約80μm、約15μmから約160μm、約30μmから約40μm、約30μmから約80μm、約30μmから約160μm、約40μmから約80μm、約40μmから約160μm、または約80μmから約160μmでよい。P2は長さが約1μm、約10μm、約15μm、約30μm、約40μm、約80μmまたは約160μmでよい。P2は長さが少なくとも約1μm、約10μm、約15μm、約30μm、約40μm、または約80μmでよい。P2は長さが最大で約10μm、約15μm、約30μm、約40μm、約80μm、または約160μmでよい。P1はP2よりも約25%から約200%長くてよい。P1はP2よりも約25%から約50%、約25%から約75%、約25%から約100%、約25%から約150%、約25%から約200%、約50%から約75%、約50%から約100%、約50%から約150%、約50%から約200%、約75%から約100%、約75%から約150%、約75%から約200%、約100%から約150%、約100%から約200%、または約150%から約200%長くてよい。P1はP2よりも約25%、約50%、約75%、約100%、約150%、または約200%長くてよい。P1はP2よりも少なくとも約25%、約50%、約75%、約100%、または約150%長くてよい。P1はP2よりも最大で約50%、約75%、約100%、約150%、または約200%長くてよい。
【0111】
マイクロ流体カートリッジは、障害物のアレイとして障害物を備えてよい。障害物は、別々のアレイを形成する、縦列および横列に配置されてよい。障害物のアレイは、少なくとも約5本の縦列から約50本の縦列を備えてよい。障害物のアレイは、少なくとも約5本の縦列から約10本の縦列、約5本の縦列から約28本の縦列、約5本の縦列から約29本の縦列、約5本の縦列から約30本の縦列、約5本の縦列から約50本の縦列、約10本の縦列から約28本の縦列、約10本の縦列から約29本の縦列、約10本の縦列から約30本の縦列、約10本の縦列から約50本の縦列、約28本の縦列から約29本の縦列、約28本の縦列から約30本の縦列、約28本の縦列から約50本の縦列、約29本の縦列から約30本の縦列、約29本の縦列から約50本の縦列、または約30本の縦列から約50本の縦列を備えてよい。障害物のアレイは、少なくとも約5本の縦列、約10本の縦列、約28本の縦列、約29本の縦列、約30本の縦列または約50本の縦列を備えてよい。障害物のアレイは、少なくとも、約5本の縦列、約10本の縦列、約28本の縦列、約29本の縦列、または約30本の縦列を備えてよい。障害物のアレイは、少なくとも最大で約10本の縦列、約28本の縦列、約29本の縦列、約30本の縦列、または約50本の縦列を備えてよい。障害物のアレイは、少なくとも約20本の横列から約500本の横列を備えてよい。障害物のアレイは、少なくとも約20本の横列から約30本の横列、約20本の横列から約60本の横列、約20本の横列から約100本の横列、約20本の横列から約200本の横列、約20本の横列から約500本の横列、約30本の横列から約60本の横列、約30本の横列から約100本の横列、約30本の横列から約200本の横列、約30本の横列から約500本の横列、約60本の横列から約100本の横列、約60本の横列から約200本の横列、約60本の横列から約500本の横列、約100本の横列から約200本の横列、約100本の横列から約500本の横列、または約200本の横列から約500本の横列を備えてよい。障害物のアレイは、少なくとも約20本の横列、約30本の横列、約60本の横列、約100本の横列、約200本の横列、または約500本の横列を備えてよい。障害物のアレイは、少なくとも約20本の横列、約30本の横列、約60本の横列、約100本の横列、または約200本の横列を備えてよい。障害物のアレイは、少なくとも最大で約30本の横列、約60本の横列、約100本の横列、約200本の横列、または約500本の横列を備えてよい。複数の障害物のアレイは別々のレーンに配置することができる。第1または第2の平面状の支持体の障害物のアレイは、約10本のレーンから約50本のレーンを形成する。第1または第2の平面状の支持体の障害物のアレイは、約10本のレーンから約20本のレーン、約10本のレーンから約28本のレーン、約10本のレーンから約30本のレーン、約10本のレーンから約50本のレーン、約20本のレーンから約28本のレーン、約20本のレーンから約30本のレーン、約20本のレーンから約50本のレーン、約28本のレーンから約30本のレーン、約28本のレーンから約50本のレーン、または約30本のレーンから約50本のレーンを形成する。第1または第2の平面状の支持体の障害物のアレイは、約10本のレーン、約20本のレーン、約28本のレーン、約30本のレーン、または約50本のレーンを形成する。第1または第2の平面状の支持体の障害物のアレイは、少なくとも約10本のレーン、約20本のレーン、約28本のレーン、または約30本のレーンを形成する。第1または第2の平面状の支持体の障害物のアレイは、最大で約20本のレーン、約28本のレーン、約30本のレーンまたは約50本のレーンを形成する。
【0112】
各カートリッジは、障害物のアレイを、少なくとも1組、少なくとも2組、少なくとも3組、または少なくとも4組備えてよい。平面状の上面はそれぞれ、少なくとも1つまたは少なくとも2つのアレイを備えてよい。カートリッジは、合計で約20本のレーンから約100本のレーンを備えてよい。カートリッジは、合計で約20本のレーンから約40本のレーン、約20本のレーンから約56本のレーン、約20本のレーンから約60本のレーン、約20本のレーンから約100本のレーン、約40本のレーンから約56本のレーン、約40本のレーンから約60本のレーン、約40本のレーンから約100本のレーン、約56本のレーンから約60本のレーン、約56本のレーンから約100本のレーン、または約60本のレーンから約100本のレーンを備えてよい。カートリッジは、合計で約20本のレーン、約40本のレーン、約56本のレーン、約60本のレーン、または約100本のレーンを備えてよい。カートリッジは、合計で少なくとも約20本のレーン、約40本のレーン、約56本のレーン、または約60本のレーンを備えてよい。カートリッジは、合計で最大で約40本のレーン、約56本のレーン、約60本のレーン、または約100本のレーンを備えてよい。
【0113】
マイクロ流体カートリッジの入口、出口、またはその両方は、カートリッジの内および外の流体のフローを促すようにポンプまたはモーターと流体連結していてよい。入口、出口、またはその両方は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のポンプに流体連結されてよい。ポンプはぜん動ポンプでよい。ポンプは、互いに流体連結されていても切り離されていてもよい。カートリッジの入口および出口は、互いに並列に連結された2つのぜん動ポンプと流体連絡していてよい。カートリッジの入口および出口は、互いに直列に連結された2つのぜん動ポンプと流体連結していてよい。
【0114】
マイクロ流体カートリッジは、金属、ポリマー、または熱可塑性プラスチックから作製されてよい。ポリマーまたは熱可塑性プラスチックは、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PT)、ポリカーボネート(PC)、または環状オレフィンコポリマー(COC)から構成されてよい。ある例では、マイクロ流体カートリッジは、環状オレフィンコポリマーから構成される。
【0115】
本開示は、流体連結する複数のマイクロ流体カートリッジを備えるマイクロ流体アセンブリーも提供する。アセンブリーのカートリッジは、積層されても積み重ねられてもよい。複数のマイクロ流体カートリッジは、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、または30個のカートリッジを備えてよい。複数のカートリッジは、直列または並列に流体連結されていてよい。
【0116】
細胞、例えば、アフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって調製される組成物中の細胞は、一端の入口から他端の出口まで流体が流れるチャネルを有するマイクロ流体カートリッジを用いたDLDを行うことによって単離されてよい。サイズに基づくマイクロ流体分離の基本的な原理および細胞を分離するための障害物アレイの設計は、他の文献(米国特許出願公開第2014/0342375号、米国特許出願公開第2016/0139012号、米国特許第7,318,902号および米国特許第7,150,812号参照、これらは、ここで全体が本明細書に組み込まれる)に提供されており、以下の段落にも要約した。
【0117】
DLDの間は、細胞を含有する流体試料は、入口でデバイス中に導入され、デバイスを通って出口まで流れる流体と一緒に運ばれる。試料中の細胞は、デバイスを横切るときに、細胞が通過しなければならない隙間または孔を形成するように位置決めされたポストまたは他の障害物に遭遇する。障害物の連続的な横列はそれぞれ、フローチャネル中の流体フローの方向とは異なるアレイ方向を形成するように、先行する横列に対して変位される。障害物間の隙間の幅、障害物の形状、および隙間を形成する障害物の向きと共に、2つの方向によって定められる「傾斜角」は、アレイの「臨界サイズ」を定める際の主な因子である。臨界サイズを超えるサイズを有する細胞は、バルク流体フローの方向というよりも、アレイ方向に動き、臨界サイズ未満のサイズを有する粒子は、バルク流体フローの方向に動く。白血球アフェレーシス由来の組成物のために使用されるデバイスでは、アレイの特徴は、白血球がアレイ方向にそらされ、赤血球および血小板が引き続きバルク流体フローの方向にあるように選択されてよい。次いで、選択したタイプの白血球を同様のサイズを有する他のものから分離するために担体を用いてよく、その担体は、DLD分離を促進するようにその細胞に結合し、そうすることで、複合体でない白血球よりも大きい複合体にさせる。次いで、複合体よりも小さいが複合体でない細胞よりも大きい臨界サイズを有するデバイスで分離を実行することが可能でよい。
【0118】
II.マイクロ流体デバイスの製作および動作
サイズに基づいて細胞を分離できるマイクロ流体デバイスを製作および使用するための一般的な手順は当技術分野で周知されている。このようなデバイスには、米国特許第5,837,115号、米国特許第7,150,812号、米国特許第6,685,841号、米国特許第7,318,902号、第7,472,794号、および米国特許第7,735,652号が含まれ、それら文献は全て、ここで、全体が参照により組み込まれる。本発明のデバイスの製作および使用に役立ち得るガイダンスを提供する他の参考文献には、米国特許第5,427,663号、米国特許第7,276,170号、米国特許第6,913,697号、米国特許第7,988,840号、米国特許第8,021,614号、米国特許第8,282,799号、米国特許第8,304,230号、米国特許第8,579,117号、米国特許出願公開第2006/0134599号、米国特許出願公開第2007/0160503号、米国特許第2005028号2293、米国特許出願公開第2006/0121624号、米国特許出願公開第2005/0266433号、米国特許出願公開第2007/0026381号、米国特許出願公開第2007/0026414号、米国特許出願公開第2007/0026417号、米国特許出願公開第2007/0026415号、米国特許出願公開第2007/0026413号、米国特許出願公開第2007/0099207号、米国特許出願公開第2007/0196820号、米国特許出願公開第2007/0059680号、米国特許出願公開第2007/0059718号、米国特許出願公開第2007/005916号、米国特許出願公開第2007/0059774号、米国特許出願公開第2007/0059781号、米国特許出願公開第2007/0059719号、米国特許出願公開第2006/0223178号、米国特許出願公開第2008/0124721号、米国特許出願公開第2008/0090239号、米国特許出願公開第2008/0113358号、およびWO2012094642が含まれ、それら文献もその全体が本願に参照により組み込まれる。デバイスの製作および使用を説明する様々な参考文献の中では、血液中に見られる細胞を有する試料に対して行われる分離のためのマイクロ流体デバイスに関して、米国特許第7,150,812号は特に良好なガイダンスを提供し、第7,735,652号は特に興味深い(この点で、米国特許出願公開第2007/0160503号も参照)。
【0119】
デバイスは、典型的にはマイクロスケールおよびナノスケールの流体を取り扱うデバイスが作製される材料のいずれかを用いて製作でき、その材料には、シリコン、ガラス、プラスチック、およびハイブリッド材料が含まれる。マイクロ流体の作製に適した幅広い範囲の熱可塑性プラスチック材料が利用可能であり、特定の用途に活用できさらに調製できる、機械的性質および化学的性質の幅広い選択が与えられる。一態様では、マイクロ流体カートリッジは、ソフトエンボス加工およびUV光硬化によって作製されてよい。
【0120】
マイクロ流体カートリッジ(またはデバイス、カセット、チップなど)は、レプリカモールディング、PDMSを用いたソフトリソグラフィー、熱硬化性ポリエステル、エンボス加工、ソフトエンボス加工、ホットエンボス加工、ロールツーロールエンボス加工、射出成形、レーザーアブレーション、UV光硬化、およびそれらの組み合わせを含む技術によって製作することができる。さらなる詳細は、「Disposable microfluidic devices: fabrication, function and application」、Fiorini, et al.著、[BioTechniques 38:429-446 (March 2005)]に見出すことができ、その文献は全体がここで本願に参照により組み込まれる。書籍「Lab on a Chip Technology」、Keith E. HeroldおよびAvraham Rasooly編、Caister Academic Press Norfolk UK (2009)は、作製方法に関する別のリソースであり、その全体がここで本願に参照により組み込まれる。
【0121】
熱可塑性プラスチックのリールツーリール加工など、高処理量のエンボス加工方法は、産業用のマイクロ流体チップの生産にとって魅力的な方法である。単一チップのホットエンボス加工の使用は、プロトタイピング段階の間は高品質のマイクロ流体デバイスを実現するための費用対効果の高い技術であり得る。2つの熱可塑性プラスチック、ポリメチルメタクリレート(PMMA)および/またはポリカーボネート(PC)においてマイクロスケールの特徴を再現する方法が、「Microfluidic device fabrication by thermoplastic hot-embossing」、Yang, et al.著、[Methods Mol. Biol. 949: 115-23 (2013)]に記載されており、その文献は全体がここで本願に参照により組み込まれる。
【0122】
フローチャネルは、組み立てられたときに、障害物が内部に配設された閉鎖空隙を形成する2つ以上の部品(好ましくは、一方が、流体を追加するかまたは引き抜くためのオリフィスを有する)を用いて構築することができる。障害物は、フローチャネルを形成するように組み立てられる1つもしくは複数の部品上に作製することができるか、またはフローチャネルの境界を定める2つ以上部品の間に挟まれるインサートの形態で作製することができる。
【0123】
障害物は、アレイにおいて、横断方向ではフローチャネルを横切って、長手方向ではチャネルに沿って入口から出口まで延びる、固形物でよい。障害物が障害物の一端でフローチャネルの面の1つと一体化される(かまたはその延長部である)場合は、障害物の他端は、フローチャネルの反対側の面にシールされ得るかまたは押し付けられ得る。小さい空間(好ましくは、小さ過ぎて対象のどの粒子も意図した使用のために収容できない)なら、その空間がデバイスの障害物の構造安定性または関係のあるフローの性質に悪影響を及ぼさない限り、障害物の一端とフローチャネルの面との間で許容される。
【0124】
表面は、その性質を改変するためにコーティングでき、デバイスを作製するために採用されるポリマー材料は、様々に改変できる。いくつかの事例では、湿潤化学処理またはプラズマ処理によって元のポリマーまたは追加のポリマーにあるアミンまたはカルボン酸などの官能基は、タンパク質または他の分子を架橋するために用いられる。表面アミン基を用いてDNAをCOC基板およびPMMA基板に付着させることができる。Pluronic(登録商標)などの界面活性剤は、PDMS調合物にPluronic(登録商標)を加えることによって、表面を親水性かつタンパク質反発性にするために使用することができる。いくつかの事例では、PMMAの層がデバイスにスピンコーティングされ、例えば、マイクロ流体チップおよびPMMAが、その接触角度を変えるためにヒドロキシプロピルセルロースで「ドープ」される。
【0125】
例えば、溶解された細胞によって放出されるかまたは生物試料中に見られる、細胞または化合物のチャネル壁への非特異的吸着を低下させるために、1つまたは複数の壁は、非接着性または反発性になるように化学的に改変されてよい。壁は、ヒドロゲルを形成するために使用されるような、市販のノンスティック試薬の薄膜コーティング(例えば、モノレイヤー)でコーティングされてよい。チャネル壁を改変するために使用してよい化学種の追加の例には、オリゴエチレングリコール、フッ素化ポリマー、オルガノシラン、チオール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、ウシ血清アルブミン、ポリビニルアルコール、ムチン、ポリ-HEMA、メタクリレート化PEG、およびアガロースが含まれる。荷電ポリマーが、逆荷電種を反発させるために採用されてもよい。反発のために用いられる化学種の型、およびチャネル壁への付着方法は、反発される種の性質ならびに壁および付着される種の性質に応じて変わり得る。このような表面改変技術は当技術分野で周知されている。壁は、デバイスが組み立てられる前または後に機能割り当てされてよい。
【0126】
III.CAR T細胞およびNK 細胞
CAR T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞を製作および使用する方法が当技術分野で周知されている。手順が、例えば、米国特許第9,629,877号、米国特許第9,328,156号、米国特許第8,906,682号、米国特許出願公開第2017/0224789号、米国特許出願公開第2017/0166866号、米国特許出願公開第2017/0137515号、米国特許出願公開第2016/0361360号、米国特許出願公開第2016/0081314号、米国特許出願公開第2015/0299317号、および米国特許出願公開第2015/0024482号に記載されており、それら文献は全体が本願に参照により組み込まれる。
【0127】
本開示は、マイクロ流体カートリッジ(すなわち、デバイス、チップ、カセット、プレート、マイクロ流体デバイス、カートリッジ、DLDデバイスなど)と、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞およびNK細胞を含有する場合がある粒子または細胞を精製する方法とを提供する。マイクロ流体カートリッジ(すなわち、デバイス、チップ、カセット、プレート、マイクロ流体デバイス、カートリッジ、DLDデバイスなど)は、本明細書に記載するもののうちのいずれかでよい。記載されるカートリッジを使用すると、下流での遺伝子操作およびCAR T細胞またはNK細胞の産生のためにより純粋なT細胞またはNK細胞の生成物を提供することによって、より効果の高いCAR T細胞またはNK細胞の産生を可能にすることができる。CAR T細胞またはNK細胞を産生する他の方法では実現できない、より効果的なCAR T細胞またはNK細胞が、血小板を除去することによって産生されてよい。
【0128】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞またはNK細胞を産生する方法は、T細胞またはNK細胞を含む試料を取得することと、汚染物質からT細胞またはNK細胞を分離することとを含んでよい。汚染物質は、血小板、または本明細書に記載する他の汚染物質を含んでよい。汚染物質を分離することは、本明細書に記載するカートリッジまたはデバイスのいずれかの1つまたは複数の試料入口に試料を注ぐことと、カートリッジの出口まで試料を流すことと、生成物出口から、T細胞またはNK細胞が富化された生成物を取得することと、富化された生成物中のT細胞を遺伝子操作してT細胞またはNK細胞の表面にキメラ抗原受容体を産生することとを含んでよい。本方法の試料は、アフェレーシス生成物または白血球アフェレーシス生成物を含んでよい。本方法の遺伝子操作することは、本明細書に記載するような遺伝子操作方法を含んでよい。本方法はさらに、インビトロで細胞を成長させることによってCAR T細胞またはNK細胞を増殖することを含んでよい。
【0129】
本明細書のデバイスおよび方法に従って操作できるCAR T細胞療法のいくつかの市販の例には、アキシカブタゲンシロルユーセル、チサゲンレクロイセル、およびブレクスカブタジェンアウトルーセルが含まれる。
【0130】
IV.DLDを使用する分離プロセス
本明細書に記載するDLDデバイスは、細胞、細胞断片、細胞付加物、または核酸を精製するために使用することができる。デバイスを用いる血液成分の分離および精製は、例えば、米国特許出願公開第2016/0139012号に見出すことができ、その文献の教示は全体が本願に参照により組み込まれる。
【0131】
DLD方法によって産生される細胞の純度、収率および生存率は、出発物質の性質、採用される正確な手順、およびDLDデバイスの特徴を含む、いくつかの因子に基づいて変わる。好ましくは、少なくとも60%の精製、収率および生存率が得られるべきであり、より高い割合、少なくとも70、80または90%がより好ましい。
【0132】
一態様では、本開示は、試料中の汚染物質から所定のサイズの標的粒子または標的細胞を富化する方法を提供する。標的粒子または標的細胞を富化する方法は、本明細書の他の箇所に記載するような、任意のカートリッジ、マイクロ流体カートリッジ、カセット、チップ、デバイス、流体デバイス、またはマイクロ流体デバイスを使用する。本方法は、標的粒子または標的細胞および汚染物質を含む試料を取得することを含んでよい。本方法はさらに、本明細書に記載するカートリッジ、カセット、またはデバイスのいずれかの1つまたは複数の試料入口に試料を注ぐことによって、汚染物質から標的粒子または標的細胞を分離することを含んでよい。本方法はさらに、本明細書に記載するカートリッジ、カセット、またはデバイスのいずれかの出口まで試料を流すことを含んでよい。本方法はさらに、汚染物質を除去しながら、1つまたは複数の出口から、標的粒子または標的細胞が富化された生成物を取得することを含んでよい。本方法により、汚染物質から細胞または粒子を精製するかまたは分離する能力が優れたものになり、細胞の収率が増大し、インビトロで生成物を増殖させる能力が改善され、富化された細胞生成物が形質導入または他の遺伝子操作により従順になってよい。
【0133】
本方法は決定論的横置換法の使用を含んでよく、デバイスは、本明細書に記載するように臨界サイズを有し、汚染物質および標的粒子または標的細胞は、異なる臨界サイズを有することに基づいて分離される。本方法は、標的粒子または標的細胞および汚染物質を含有する試料を本明細書に記載するカートリッジ、カセット、またはデバイスのいずれかまで流すことを含んでよく、標的粒子または標的細胞は、障害物のアレイの臨界サイズよりも大きいサイズを有し、少なくとも一部の汚染物質は、障害物のアレイの臨界サイズよりも小さいサイズを有し、標的細胞または標的粒子は、標的細胞または標的粒子が富化された生成物が取得される1つまたは複数の生成物出口まで流れ、障害物のアレイの臨界サイズよりも小さいサイズを有する汚染物質は、もう1つの廃棄物出口まで流れる。本方法は、標的粒子または標的細胞および汚染物質を含有する試料を、本明細書に記載するカートリッジ、カセット、またはデバイスのいずれかまで流すことを含んでよく、標的粒子または標的細胞は、障害物のアレイの臨界サイズよりも小さいサイズを有し、少なくとも一部の汚染物質は、障害物のアレイの臨界サイズよりも大きいサイズを有し、標的細胞または標的粒子は、標的細胞または標的粒子が富化された生成物が取得される1つまたは複数の生成物出口まで流れ、障害物のアレイの臨界サイズよりも大きいサイズを有する汚染物質は、もう1つの廃棄物出口まで流れる。
【0134】
本方法は、標的粒子または標的細胞および汚染物質を含有する試料を、本明細書に記載するカートリッジ、カセット、またはデバイスのいずれかまで一定の流量または可変の流量で流すことを含んでよい。本方法のカートリッジ流量は毎時約400mLでよい。本方法のカートリッジ流量は、毎時約100mLから毎時約1,000mLでよい。本方法のカートリッジ流量は、毎時約100mLから毎時約200mL、毎時約100mLから毎時約400mL、毎時約100mLから毎時約800mL、毎時約100mLから毎時約1,000mL、毎時約200mLから毎時約400mL、毎時約200mLから毎時約800mL、毎時約200mLから毎時約1,000mL、毎時約400mLから毎時約800mL、毎時約400mLから毎時約1,000mL、または毎時約800mLから毎時約1,000mLでよい。本方法のカートリッジ流量は、毎時約100mL、毎時約200mL、毎時約400mL、毎時約800mL、または毎時約1,000mLでよい。本方法のカートリッジ流量は、少なくとも、毎時約100mL、毎時約200mL、毎時約400mL、または毎時約800mLでよい。本方法のカートリッジ流量は、最大で、毎時約200mL、毎時約400mL、毎時約800mL、または毎時約1,000mLでよい。
【0135】
本方法は、カートリッジ内の内圧を含んでよい。カートリッジの内圧は少なくとも、約15ポンド/平方インチでよい。カートリッジの内圧は、少なくとも、約1.5ポンド/平方インチから約50ポンド/平方インチでよい。カートリッジの内圧は、少なくとも、約1.5ポンド/平方インチから約5ポンド/平方インチ、約1.5ポンド/平方インチから約10ポンド/平方インチ、約1.5ポンド/平方インチから約15ポンド/平方インチ、約1.5ポンド/平方インチから約20ポンド/平方インチ、約1.5ポンド/平方インチから約50ポンド/平方インチ、約5ポンド/平方インチから約10ポンド/平方インチ、約5ポンド/平方インチから約15ポンド/平方インチ、約5ポンド/平方インチから約20ポンド/平方インチ、約5ポンド/平方インチから約50ポンド/平方インチ、約10ポンド/平方インチから約15ポンド/平方インチ、約10ポンド/平方インチから約20ポンド/平方インチ、約10ポンド/平方インチから約50ポンド/平方インチ、約15ポンド/平方インチから約20ポンド/平方インチ、約15ポンド/平方インチから約50ポンド/平方インチ、または約20ポンド/平方インチから約50ポンド/平方インチでよい。カートリッジの内圧は、少なくとも、約1.5ポンド/平方インチ、約5ポンド/平方インチ、約10ポンド/平方インチ、約15ポンド/平方インチ、約20ポンド/平方インチ、または約50ポンド/平方インチでよい。カートリッジの内圧は、少なくとも、約1.5ポンド/平方インチ、約5ポンド/平方インチ、約10ポンド/平方インチ、約15ポンド/平方インチ、または約20ポンド/平方インチでよい。カートリッジの内圧は、少なくとも最大で約5ポンド/平方インチ、約10ポンド/平方インチ、約15ポンド/平方インチ、約20ポンド/平方インチ、または約50ポンド/平方インチでよい。
【0136】
本方法の標的粒子または標的細胞は、幹細胞、血小板、滑膜細胞、繊維芽細胞、ベータ細胞、肝細胞、巨核球、膵細胞、DE3溶原化細胞、酵母細胞、植物細胞、藻類細胞、単球、T細胞、B細胞、制御性T細胞、マクロファージ、樹状細胞、顆粒球、自然リンパ球、ナチュラルキラー細胞、白血球、末梢血単核細胞、CD3+細胞、ニューロン、血小板、癌細胞、筋細胞、または上皮細胞を含んでよい。本方法は、標的粒子または標的細胞を富化して、富化された標的細胞を産生することを含んでよく、標的細胞は、幹細胞、血小板、滑膜細胞、繊維芽細胞、ベータ細胞、肝細胞、巨核球、膵細胞、DE3溶原化細胞、酵母細胞、植物細胞、藻類細胞、単球、T細胞、B細胞、制御性T細胞、マクロファージ、樹状細胞、顆粒球、自然リンパ球、ナチュラルキラー細胞、白血球、末梢血単核細胞、CD3+細胞、ニューロン、血小板、癌細胞、筋細胞、または上皮細胞を含む。本方法の汚染物質は、幹細胞、血小板、滑膜細胞、繊維芽細胞、ベータ細胞、肝細胞、巨核球、膵細胞、DE3溶原化細胞、酵母細胞、植物細胞、藻類細胞、単球、T細胞、B細胞、制御性T細胞、マクロファージ、樹状細胞、顆粒球、自然リンパ球、ナチュラルキラー細胞、白血球、末梢血単核細胞、CD3+細胞、ニューロン、血小板、癌細胞、筋細胞、または上皮細胞を含んでよい。例えば、標的細胞は末梢血単核細胞でよく、汚染物質は血小板でよい。例えば、標的細胞はCD3+細胞でよく、汚染物質は血小板でよい。本方法によって、血小板の90%超を除去することができる。本方法によって、血小板の約50%から血小板の約99%を除去することができる。本方法によって、血小板の約50%から血小板の約75%、血小板の約50%から血小板の約80%、血小板の約50%から血小板の約90%、血小板の約50%から血小板の約95%、血小板の約50%から血小板の約99%、血小板の約75%から血小板の約80%、血小板の約75%から血小板の約90%、血小板の約75%から血小板の約95%、血小板の約75%から血小板の約99%、血小板の約80%から血小板の約90%、血小板の約80%から血小板の約95%、血小板の約80%から血小板の約99%、血小板の約90%から血小板の約95%、血小板の約90%から血小板の約99%、または血小板の約95%から血小板の約99%を除去することができる。本方法によって、血小板の約50%、血小板の約75%、血小板の約80%、血小板の約90%、血小板の約95%、または血小板の約99%を除去することができる。本方法によって、少なくとも血小板の約50%、血小板の約75%、血小板の約80%、血小板の約90%、または血小板の約95%を除去することができる。本方法によって、最大で血小板の約75%、血小板の約80%、血小板の約90%、血小板の約95%、または血小板の約99%を除去することができる。
【0137】
本方法は、富化された標的細胞を改変することを含んでよい。本方法は、遺伝子操作された標的細胞を取得するために富化された標的細胞を遺伝子操作することを含んでよい。遺伝子操作することは、組み換え核酸で標的細胞をトランスフェクトすることまたは形質導入することを含む。遺伝子操作の方法は、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPR-Cas関連タンパク質、相同組み換え、ウイルスベクター、または非相同プラスミドの使用を含んでよい。本方法は、富化された標的細胞または遺伝子操作された細胞を、インビトロでそれらを培養することによって増殖させることも含んでよい。
【0138】
V.技術的背景
「障害物アレイ」デバイスを記載しており、それらの基本的な動作は、例えば、米国特許第7,150,812号で説明されており、その文献はその全体が本願に参照により組み込まれる。バンプアレイは、本質的に、障害物のアレイ(概して、周期的に整列したアレイ)を通過する粒子を分けることによって動作し、その分けることは、バルク流体フローの方向に従う粒子と、バルク流体フローの方向からオフセットした「アレイ方向」に従う粒子との間で起こる。
【0139】
A.分別範囲
マイクロ流体デバイスでサイズによって分離される対象物には、細胞、生体分子、無機ビーズ、および他の対象物が含まれる。分別される典型的なサイズは、100ナノメートルから50マイクロメートルまでの範囲にある。ただし、より大きい粒子およびより小さい粒子も場合によっては分別されてよい。
【0140】
B.容量
デバイスまたはデバイスの組み合わせの設計に応じて、試料を処理できる速度は大きく変わる。好ましくは、デバイスおよびアセンブリーは、1時間に500ml超の試料を処理できるべきである。
【0141】
C.チャネル
デバイスは、1つまたは複数の入口および1つまたは複数の出口を有する、1つまたは複数のチャネルを備えることができる。入口は、試料または未加工の(すなわち、未精製の)流体組成物のために、またはバッファーのために、または試薬を導入するために使用されてよい。出口は、生成物を収集するために使用されてもよく、廃棄物用の出口として使用されてもよい。チャネルは、幅約0.5から100mm、長さ約2~200mmでよいが、異なる幅および長さも可能である。奥行きは1~1000μmでよく、1から500本のいずれかまたはそれ以上のチャネルが1つのデバイスに存在してよい。
【0142】
本明細書に記載する様々な態様の特定の実施形態を、番号を付した以下の実施形態によって例示することができる。
【0143】
1.試料中の汚染物質から所定のサイズの標的粒子または標的細胞を精製するためのマイクロ流体デバイスであって、デバイスは、上面および底面を有する平面状の支持体を備え、上面および/または底面は、1つまたは複数の試料入口および1つまたは複数の別個の流体入口から1つまたは複数の生成物出口および1つまたは複数の別個の廃棄物出口まで延びる、少なくとも1つの埋め込みチャネルを備え、(a)流体が試料入口および/または流体入口を通してチャネルに注がれると、チャネルを通って出口に向かって流れ、そうすることで、バルク流体フローの方向が定められ、(b)チャネルは、長手方向にチャネルに沿って延びる縦列および横断方向にチャネルを横切って延びる横列に配置された、障害物のアレイを備え、障害物は、臨界サイズを定めるように位置決めされ、そのため、試料がデバイスの入口に注がれ出口まで流れるときに、臨界サイズよりも大きい試料中の粒子または細胞が、臨界サイズよりも小さい試料中の粒子または細胞から分離され、(i)横列内で隣り合う障害物は、バルク流体フローの方向に垂直な隙間G1によって分離されており、(ii)縦列内で隣り合う障害物は、バルク流体フローの方向に平行な隙間G2によって分離されており、(iii)隙間G2のサイズと隙間G1のサイズの比は1に等しくなく、(iv)障害物の後続の横列はそれぞれ、前の横列に対して横断方向にずれており、そのため、バルク流体フローの方向から傾斜角(ε)だけ外れたアレイ方向が定められ、(v)障害物は、少なくとも1つの頂点が各隙間にそれぞれの側で隣接するように、少なくとも2つの頂点を有する、マイクロ流体デバイス。2.デバイスの動作中に流体または試料が障害物の上を流れることを防止するために、平面状の支持体の平面に接合されかつ表面に埋め込まれたチャネル中の障害物に接合された、障害物接合層をさらに備える、実施形態1に記載のデバイス。3.障害物接合層は、チャネル中への試料のフローを可能にする、チャネルの試料入口に流体連結された1つまたは複数の通路と、出口の外への流体のフローを可能にする、チャネルの出口に流体連結された1つまたは複数の通路とを備える、実施形態2に記載のマイクロ流体デバイス。4.標的粒子または標的細胞は、デバイスの臨界サイズよりも大きいサイズを有し、少なくとも一部の汚染物質は、臨界サイズよりも小さいサイズを有し、障害物は、前記試料がデバイスの入口に注がれチャネルを流体的に通過するときに、標的細胞または標的粒子が、標的細胞または標的粒子を含有する、富化された生成物が取得される1つまたは複数の生成物出口まで流れ、臨界サイズよりも小さいサイズを有する汚染物質が、もう1つの廃棄物出口まで流れるようにして配設される、実施形態1~3のいずれか一つに記載のマイクロ流体デバイス。5.障害物は多角形である、実施形態1~4のいずれか一つに記載のマイクロ流体デバイス。6.障害物はダイヤモンド形または六角形である、実施形態5に記載のマイクロ流体デバイス。7.障害物は、バルク流体の方向において垂直方向に長形であり、そのため、それらの上下長さ(P2)とは異なる左右長さ(P1)を有する、実施形態5または実施形態6に記載のマイクロ流体デバイス。8.P1はP2よりも少なくとも15%長い、実施形態6に記載のマイクロ流体デバイス。9.P1はP2よりも10~150%長い、実施形態6に記載のマイクロ流体デバイス。10.P1はP2よりも15~100%長い、実施形態6に記載のマイクロ流体デバイス。11.P1はP2よりも20~70%長い、実施形態6に記載のマイクロ流体デバイス。12.障害物は、互いに向き合うが互いに真向かいにはない1つまたは複数の頂点が平行な隙間にそれぞれの側で隣接するようにそれら隙間中を延びる、頂点を有する、実施形態1~11のいずれか一つに記載のマイクロ流体デバイス。13.障害物は、互いに向き合う頂点が垂直な隙間にそれぞれの側で隣接するようにそれら隙間中を延びると共に互いに真向かいにある、頂点を有する、実施形態1~12のいずれか一つに記載のマイクロ流体デバイス。14.試料入口または入口は、分離壁によって流体入口または入口から分離されており、その分離壁は、試料入口または入口からチャネルの障害物のアレイを通って出口に向かって延び、バルク流体フローの方向に平行に向けられている、実施形態1~13のいずれか一つに記載のマイクロ流体デバイス。15.分離壁は、障害物のアレイの長さの少なくとも10%にわたって延びる、実施形態14に記載のマイクロ流体デバイス。16.分離壁は、障害物のアレイの長さの少なくとも20%にわたって延びる、実施形態14に記載のマイクロ流体デバイス。17.分離壁は、障害物のアレイの長さの少なくとも40%にわたって延びる、実施形態14に記載のマイクロ流体デバイス。18.分離壁は、障害物のアレイの長さの少なくとも60%にわたって延びる、実施形態14に記載のマイクロ流体デバイス。19.デバイスの入口および/または出口はぜん動ポンプに連結されている、実施形態1~18のいずれか一つに記載のマイクロ流体デバイス。20.実施形態1~19のいずれか一つに記載のマイクロ流体デバイスのうちの少なくとも2つを備える、積層型分離アセンブリー。21.実施形態1~19のいずれか一つに記載のマイクロ流体デバイスから選択された、第1のマイクロ流体デバイスと、やはり実施形態1~19のいずれか一つに記載のマイクロ流体デバイスから選択された、1つまたは複数の積層されたマイクロ流体デバイスとを備える、積層型分離アセンブリーであって、(a)それぞれの積層されたデバイスの底面は、第1のマイクロ流体デバイスの上面もしくは上面上の障害物接合層と、または別の積層されたデバイスの上面または上面上の障害物接合層と、接触状態にあり、(b)試料は、第1の共通のマニホルドを通して試料入口に提供され、(c)流体は、第1のマニホルドと同じでも同じでなくてもよい第2のマニホルドを通して流体入口に支給され、(d)生成物は、1つまたは複数の導管を通して生成物出口から取り出され、(e)廃棄物は、(d)の1つまたは複数の導管とは異なる1つまたは複数の導管を通して廃棄物出口から取り出され、(f)第1のマイクロ流体デバイスと積層されたマイクロ流体デバイスとは、共通の外側ケーシング内に搭載されてもよい、積層型分離アセンブリー。22.アセンブリーは、少なくとも2つの積層されたマイクロ流体デバイスを備える、実施形態22に記載の積層型分離アセンブリー。23.少なくとも1つのリザーバー接合層をさらに備え、リザーバー接合層は、第1のマイクロ流体デバイスの底面および/または積層されたマイクロ流体デバイスの上面に取り付けられ、第1の端部では、チャネルの入口への流体のフローを可能にする1つまたは複数の通路を備え、第1の端部の反対側の第2の端部では、チャネルの生成物出口および廃棄物出口からの流体のフローを可能にする1つまたは複数の通路を備え、前記リザーバー層の第1および第2の端部では通路は、流体を浸透させない材料によって分離されている、実施形態22に記載の積層型分離アセンブリー。24.1つまたは複数のマイクロ流体デバイスの平面状の支持体の上面および底面の両方が、標的粒子または標的細胞を分離するための障害物を有するチャネルを1つまたは複数備える、実施形態22または23のいずれか一つに記載の積層型分離アセンブリー。25.試料中の汚染物質から所定のサイズの標的粒子または標的細胞を精製する方法であって、(a)前記標的粒子または標的細胞および前記汚染物質を含む試料を取得することと、(b)(i)実施形態1~21のいずれか一つに記載のマイクロ流体デバイス、または実施形態22~24のいずれか一つに記載の第1のマイクロ流体デバイスもしくは積層されたデバイスの、1つまたは複数の試料入口に試料を注ぎ、(ii)実施形態1~21のいずれか一つに記載のデバイス、または実施形態22~24のいずれか一つに記載の第1のマイクロ流体デバイスもしくは積層されたデバイスの、出口まで試料を流し、(iii)1つまたは複数の出口から、標的粒子または標的細胞が富化された生成物を取得することによって、汚染物質から標的粒子または標的細胞を分離することとを含む、方法。26.標的粒子または標的細胞は、障害物のアレイの臨界サイズよりも大きいサイズを有し、少なくとも一部の汚染物質は、臨界サイズよりも小さいサイズを有し、標的細胞または標的粒子は、標的細胞または標的粒子が富化された生成物が取得される1つまたは複数の生成物出口まで流れ、臨界サイズよりも小さいサイズを有する汚染物質は、もう1つの廃棄物出口まで流れる、実施形態25に記載の方法。27.試料は血液であるかまたは血液に由来する、実施形態26に記載の方法。28.試料はアフェレーシス試料または白血球アフェレーシス試料である、実施形態26に記載の方法。29.試料は汚染物質として血小板を含む、実施形態27または28に記載の方法。30.本方法によって試料から血小板の少なくとも80%が除去される、実施形態29に記載の方法。31.本方法によって試料から血小板の少なくとも90%が除去される、実施形態29に記載の方法。32.本方法によって試料から血小板の少なくとも95%が除去される、実施形態29に記載の方法。33.標的細胞は白血球である、実施形態27~31のいずれか一つに記載の方法。34.標的細胞は幹細胞である、実施形態27~31のいずれか一つに記載の方法。35.標的細胞はB-細胞、T細胞、NK-細胞、単球、または前駆細胞である、実施形態27~31のいずれか一つに記載の方法。36.標的細胞は樹状細胞である、実施形態27~31のいずれか一つに記載の方法。37.試料は患者から取得される、実施形態25~36のいずれか一つに記載の方法。38.患者は癌、自己免疫疾患、または感染症を有する、実施形態37に記載の方法。39.精製された標的細胞を遺伝子操作することをさらに備える、実施形態25~38のいずれか一つに記載の方法。40.前記遺伝子操作することは、組み換え核酸で標的細胞をトランスフェクトすることまたは形質導入することを含む、実施形態39に記載の方法。41.遺伝子操作された標的細胞は、インビトロでそれらを培養することによって増殖される、実施形態39または40に記載の方法。42.キメラ抗原受容体(CAR)T細胞を産生する方法であって、(a)T細胞を含む試料を取得することと、(b)(i)実施形態1~21のいずれか一つに記載のマイクロ流体デバイス、または実施形態22~24のいずれか一つに記載の第1のマイクロ流体デバイスもしくは積層されたデバイスの、1つまたは複数の試料入口に試料を注ぎ、(ii)デバイスの出口まで試料を流し、(iii)生成物出口から、T細胞が富化された生成物を取得することによって、汚染物質からT細胞を分離することと、(c)工程b)で取得された、富化された生成物中のT細胞を遺伝子操作して、それらの表面にキメラ抗原受容体(CAR)を産生することとを含む、方法。43.試料は、患者からの血液、アフェレーシス生成物、または白血球アフェレーシス生成物である、実施形態42に記載の方法。44.前記遺伝子操作することは、標的細胞をトランスフェクトすることまたは形質導入することを含み、遺伝子操作された標的細胞は、インビトロで細胞を成長させることによってさらに増殖される、実施形態42または43のいずれかに記載の方法。45.分離は、マイクロ流体デバイスで決定論的横置換法を行うことによって実現される、実施形態42~44のいずれか一つに記載の方法。46.前記試料は、癌患者、自己免疫疾患患者または感染症患者から取得される、実施形態42~44のいずれか一つに記載の方法。47.試料を取得した後に、T細胞は、DLD分離を促進するように、1つまたは複数の担体に囲まれる、実施形態46に記載の方法。48.実施形態42~47のいずれか一つに記載の方法によって製作される、CAR T細胞。
【0144】
本発明の好ましい実施形態を図示し、本明細書に記載してきたが、このような実施形態が単なる例として提供されていることが当業者には明らかである。本発明が本明細書内に提供された特定の例によって限定されることは意図されていない。前述の明細書を参照しながら本発明を説明してきたが、本明細書の実施形態の説明および例示は限定的な意味に解釈されるものではない。ここで、本発明から逸脱することなく、多数の変形、変更、および置換が当業者には思いつく。さらに、本発明の全ての態様は、様々な条件および変数に応じて変わる、本明細書に記載する特定の描写、構成または相対的比率に限定されないことが理解されるものとする。本明細書に記載する本発明の実施形態の様々な代替案を本発明の実施に採用できることを理解されたい。したがって、本発明はこのような代替案、改変、変形または等価物をいずれも包含するものとすることが企図される。以下の請求項が本発明の範囲を定めること、ならびに、これら請求項およびそれらの等価物の範囲内の方法および構造がそれによって包含されることが意図される。
【0145】
本明細書の列挙したどの参照文献も参照により完全に組み込まれる。ここまで本発明を十分に説明してきたが、本発明またはその任意の実施形態の精神または範囲に影響を及ぼすことなく、条件、パラメーターなどの幅広いかつ等価の範囲内で本発明を実行できることが当業者には理解される。
図1
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【国際調査報告】