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  • 特表-骨髄線維症の治療のための化合物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】骨髄線維症の治療のための化合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/404 20060101AFI20230222BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230222BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230222BHJP
   A61K 31/5395 20060101ALI20230222BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20230222BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20230222BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
A61K31/404
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/5395
A61K31/5377
A61K31/506
A61K31/519
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539641
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(85)【翻訳文提出日】2022-08-13
(86)【国際出願番号】 US2020066762
(87)【国際公開番号】W WO2021133866
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】62/953,654
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】520447673
【氏名又は名称】アクチュエイト セラピューティクス、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ジャイルス、フランシス、ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】マザール、アンドリュー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA511
4C084ZC202
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086BC73
4C086CB05
4C086CB22
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA65
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA51
4C086ZC75
(57)【要約】
【要約】
【解決手段】 本発明は、治療有効量の3-(5-フルオロベンゾフラン-3-イル)-4-(5-メチル-5H-[1,3]ジオキソロ[4.5-f]インドール-7-イル)ピロール-2,5-ジオン、またはその薬学的に許容される塩を、任意に、治療有効量のルキソリチニブなどのJAK阻害剤、またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて使用することができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における骨髄線維症の治療方法であって、
治療上有効な量のグリコーゲン合成酵素キナーゼ-3ベータ(GSK-3β)阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を前記患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記GSK-3β阻害剤が、
【化1】
であるか、またはその薬学的に許容される塩である、方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を約1mg/kg~約50mg/kgの範囲で前記患者に投与する、方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を約5mg/kg~約15mg/kgの範囲で前記患者に投与する、方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、約9mg/kgの前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を前記患者に投与する、方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を28日間の治療サイクルの間、週1回、前記患者に投与する、方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を28日間の治療サイクルの間、週2回、前記患者に投与する、方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を1週間のうち1日目および4日目に前記患者に投与する、方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を前記患者に静脈内投与する、方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法において、治療上有効な量のJAK阻害剤、または薬学的に許容される塩を前記患者に投与する工程をさらに含む、方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、前記JAK阻害剤が、パクリチニブ、モメロチニブ、フェドラチニブ、およびルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩からなる群から選択される、方法。
【請求項12】
請求項10記載の方法において、前記JAK阻害剤がルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩である、方法。
【請求項13】
請求項10記載の方法において、前記JAK阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を約1mg~約50mgの範囲で前記患者に投与する、方法。
【請求項14】
請求項10記載の方法において、前記JAK阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を、
血小板数≧20,000/mLの患者には、1日2回、約5mg、または
血小板数≧50,000/mLの患者には、1日2回、約10mg、または
血小板数≧100,000/mLの患者には、1日2回、約15mg、または
血小板数≧200,000/mLの患者には、1日2回、約20mg、
の量で前記患者に投与する、方法。
【請求項15】
請求項10記載の方法において、前記JAK阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を28日間の治療サイクルの間、1日2回前記患者に投与する、方法。
【請求項16】
請求項10記載の方法において、前記JAK阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を前記患者に経口投与する、方法。
【請求項17】
患者における骨髄線維症の治療方法であって、治療上有効な量のグリコーゲン合成酵素キナーゼ-3ベータ(GSK-3β)阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を、治療上有効な量のJAK阻害剤、またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて、前記患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法において、前記GSK-3β阻害剤が、
【化2】
であるか、またはその薬学的に許容される塩である、方法。
【請求項19】
請求項17記載の方法において、前記JAK阻害剤が、パクリチニブ、モメロチニブ、フェドラチニブ、およびルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩からなる群から選択される、方法。
【請求項20】
請求項17記載の方法において、前記JAK阻害剤が、ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩である、方法。
【請求項21】
請求項17記載の方法において、前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を約1mg/kg~約50mg/kgの範囲で前記患者に投与する、方法。
【請求項22】
請求項17記載の方法において、前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を約5mg/kg~約15mg/kgの範囲で前記患者に投与する、方法。
【請求項23】
請求項17記載の方法において、約9mg/kgの前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を前記患者に投与する、方法。
【請求項24】
請求項17記載の方法において、前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を28日間の治療サイクルの間、週1回、前記患者に投与する、方法。
【請求項25】
請求項17記載の方法において、前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を28日間の治療サイクルの間、週2回、前記患者に投与する、方法。
【請求項26】
請求項17記載の方法において、前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を1週間のうち1日目と4日目に前記患者に投与する、方法。
【請求項27】
請求項17記載の方法において、前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を前記患者に静脈内投与する、方法。
【請求項28】
請求項17記載の方法において、前記JAK阻害剤またはその薬学的に許容される塩を約1mg~約50mgの範囲で前記患者に投与する、方法。
【請求項29】
請求項17記載の方法において、前記JAK阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を
血小板数≧20,000/mLの患者には、1日2回、約5mg、または
血小板数≧50,000/mLの患者には、1日2回、約10mg、または
血小板数≧100,000/mLの患者には、1日2回、約15mg、または
血小板数≧200,000/mLの患者には、1日2回、約20mg、
の量で前記患者に投与する、方法。
【請求項30】
請求項17記載の方法において、前記JAK阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を28日間の治療サイクルの間、1日2回、前記患者に投与する、方法。
【請求項31】
請求項17記載の方法において、前記JAK阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を前記患者に経口投与する、方法。
【請求項32】
患者における骨髄線維症を治療する方法であって、
【化3】
またはその薬学的に許容される塩の治療上有効な量を前記患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法において、
【化4】
またはその薬学的に許容される塩を約5mg/kg~約15mg/kgの範囲で前記患者に投与する、方法。
【請求項34】
請求項32または33記載の方法において、約9mg/kgの
【化5】
またはその薬学的に許容される塩を前記患者に投与する、方法。
【請求項35】
請求項32~34のいずれかに記載の方法において、
【化6】
またはその薬学的に許容される塩を、28日間の治療サイクルの各週の1日目と4日目に前記患者に静脈内投与する、方法。
【請求項36】
請求項32~35のいずれかに記載の方法において、治療上有効な量のルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩を前記患者に投与する工程をさらに含む、方法。
【請求項37】
請求項36記載の方法において、前記ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩を
血小板数≧20,000/mLの患者には、28日間の治療サイクルの間、1日2回、約5mg、または
血小板数≧50,000/mLの患者には、28日間の治療サイクルの間、1日2回、約10mg、または
血小板数≧100,000/mLの患者には、28日間の治療サイクルの間、1日2回、約15mg、または
血小板数≧200,000/mLの患者には、28日間の治療サイクルの間、1日2回、約20mg、
の量で前記患者に経口投与する、方法。
【請求項38】
患者における骨髄線維症を治療する方法であって、
【化7】
またはその薬学的に許容される塩の治療上有効な量を、治療上有効な量のルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて、前記患者に投与する、方法。
【請求項39】
請求項38記載の方法において、
【化8】
またはその薬学的に許容される塩を約5mg/kg~約15mg/kgの範囲で前記患者に投与する、方法。
【請求項40】
請求項38または39記載の方法において、約9mg/kgの
【化9】
またはその薬学的に許容される塩を前記患者に投与する、方法。
【請求項41】
請求項38~40のいずれかに記載の方法において、
【化10】
またはその薬学的に許容される塩を28日間の治療サイクルの間、各週の1日目と4日目に前記患者に静脈内投与する、方法。
【請求項42】
請求項38~41のいずれかに記載の方法において、前記ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩を
血小板数≧20,000/mLの患者には、28日間の治療サイクルの間、1日2回、約5mg、または
血小板数≧50,000/mLの患者には、28日間の治療サイクルの間、1日2回、約10mg、または
血小板数≧100,000/mLの患者には、28日間の治療サイクルの間、1日2回、約15mg、または
血小板数≧200,000/mLの患者には、28日間の治療サイクルの間、1日2回、約20mg、
の量で前記患者に経口投与する、方法。
【請求項43】
キットであって、
【化11】
またはその薬学的に許容される塩、およびルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む、キット。
【請求項44】
請求項43記載のキットにおいて、骨髄線維症の治療方法においてキットを使用するための説明書をさらに含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年12月26日に出願された、「COMPOUNDS FOR THE TREATMENT OF MYELOFIBROSIS」と題する米国仮特許出願第62/953,654号の利益を主張し、その内容は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、3-(5-フルオロベンゾフラン-3-イル)-4-(5-メチル-5H-[1,3]ジオキソロ[4,5-f]インドール-7-イル)ピロール-2,5-ジオンなどのGSK-3β阻害剤、任意にルキソリチニブなどのJAK阻害剤と組み合わせて骨髄線維症を治療する方法に関するものである。
【0003】
骨髄線維症(MF)は、真の悪性腫瘍と骨髄線維化過剰の混合により致死的である。JAK2阻害剤は臨床的に大きな利益をもたらすが、その疾患修飾作用には限界があり、特に生存期間が短いMFにおいては、他の標的薬剤との合理的な併用が必要とされている。
【0004】
したがって、MFの治療法の改善が求められる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
化合物3-(5-フルオロベンゾフラン-3-イル)-4-(5-メチル-5H-[1,3]ジオキソロ[4,5-f]インドール-7-イル)ピロール-2,5-ジオン(以下「9-ING-41」)は低分子で抗腫瘍活性のある強力な選択性GSK-3β阻害剤である(Pal 2014,Ugolkov 2016,Ugolkov 2017)。NF-κBのダウンレギュレーションにより作用し、NF-κB標的遺伝子であるサイクリンD1、Bcl-2、抗アポトーシスタンパク質(XIAP)およびB細胞lymphoma-extra large(Bcl-XL)の発現を低下させて、複数の固形癌細胞株およびリンパ腫株、患者由来異種移植(PDX)モデルにおいて腫瘍増殖抑制に寄与することができる。NF-κBは、癌細胞において構成的に活性化され、抗アポトーシス分子の発現を促進する。NF-κBの活性化は、化学療法や放射線療法に抵抗性を示す癌細胞において特に重要であり、GSK-3βの阻害により、ヒト癌におけるNF-κBを介した化学療法抵抗性を克服することができると考えられる。
【0006】
9-ING-41は、骨髄線維症などのある種の癌の治療に有用であることが分かっている。
【0007】
したがって、1つの実施態様において、本発明は、9-ING-41などのGSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩の治療有効量を患者に投与することによって、患者において骨髄線維症を治療する方法を提供する。
【0008】
したがって、別の実施態様では、本発明は、治療有効量のルキソリチニブまたはフェドラチニブなどのJAK阻害剤またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて、9-ING-41などのGSK-3β阻害剤またはその薬学的に許容される塩を患者に投与することによって、患者における骨髄線維症を治療する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1A-1Iは、9-ING-41単独またはルキソリチニブ(0.05μM)との併用で、%DMSO(無処置)に対する造血コロニー成長頻度をコロニータイプ別に図示したものである。図1Aは、MF症例1(9-ING-41のみ)を示す。図1Bは、MF症例1(9-ING-41+ルキソリチニブ)を示す。図1Cは、MF症例1(ルキソリチニブのみ)を示す。図1Dは、MF症例2(9-ING-41のみ)を示す。図1Eは、MF症例2(9-ING-41+ルキソリチニブ)を示す。図1Fは、ルキソリチニブのみを示す。図1Gは、正常骨髄(BM):9-ING-41のみ。図1Hは、正常骨髄:9-ING-41+ルキソリチニブ。図1Iは、正常BM:ルキソリチニブのみを示す。コロニーの種類は以下の通りである:CFU-GM=顆粒球/単球(灰色)、CFU-G=顆粒球(黒)、BFU-E=エリスロイド(赤)、GEMM=始原顆粒球/エリスロイド/マクロファージ/単球(青)。データは無処置(DMSOのみ)に対するパーセントで表し、コロニータイプおよび処理別に図示した。エラーバーは標準偏差を示す。データ提供:Terra Lasho,Mayo Clinic,Rochester,MN.
図2図2A~2Fは、MF(n=2)と正常骨髄(n=1)における9-ING-41のみと治療レベル以下のルキソリチニブ(0.05μM)との併用によるGEMMコロニー頻度の比較(DMSO中の%GEMMによる)である。コロニーは、無処置(DMSO)に対する割合で示される。図2Aは、MF症例1(DMSO、ルキソリチニブのみ、9-ING-41のみ、および9-ING-41+ルキソリチニブ)を示す。図2Bは、MF症例1:DMSO、ルキソリチニブのみ、9-ING-41のみ、および9-ING-41+ルキソリチニブの代表的なコロニー形態をそれぞれ示す。図2Cは、MF症例2:DMSO、ルキソリチニブのみ、9-ING-41のみ、および9-ING-41+ルキソリチニブを示す。図2Dは、MF症例2:DMSO、ルキソリチニブのみ、9-ING-41のみ、および9-ING-41+ルキソリチニブの代表的なコロニー形態をそれぞれ示す。図2Eは、正常骨髄(BM)を示す。図2Fは、MF症例2:DMSO、ルキソリチニブのみ、9-ING-41のみ、および9-ING-41+ルキソリチニブのそれぞれの代表的コロニー形態を示す。写真の大きさは2mm×2mmの領域を表す。データ提供:Terra Lasho,Mayo Clinic,Rochester,MN
【発明を実施するための形態】
【0010】
骨髄線維症(MF)は、非効率的なクローン造血、脾腫、骨髄線維化、および急性白血病への転化傾向を特徴とする骨髄増殖性新生物である(Scheiber 2019)。JAK2、CALR、およびMPLの変異の発見により、MFの主要なドライバーとして活性化されたJAK-STATシグナルに焦点が当てられる。進行したMF患者の治療薬として、2種類のJAK阻害剤がFDAによって承認される。しかし、JAK阻害剤だけでは長期的な寛解には不十分であり、大多数の患者さんにおいて、持続的な疾患修飾効果はあったとしても、わずかなものである。JAK阻害剤への十分な曝露を持続させることは、最適な治療結果を得るための重要な要素であるが、有害事象、特に骨髄抑制により、大多数の患者さんで投与量の減量または中断が余儀なくされる。したがって、直接的なJAK-STAT阻害に依存しない作用機序を有する抗腫瘍剤が、病理学的線維化を解消する薬剤と同様に特に注目される-このアプローチは、MFにおいて最近臨床価値があることが証明される(Verstovsek 2015)。
【0011】
グリコーゲン合成酵素キナーゼ-3(GSK-3)は、代謝、特にグリコーゲン生合成の重要な制御因子として最初に記述されたセリン(S)/スレオニン(T)(ST)キナーゼである(Woodgett 1990)。その後、多くの多様な基質の調節を通じて、癌、免疫疾患、代謝疾患、胸膜線維症、神経疾患などのいくつかの疾患プロセスに関与することが示される(Boren 2017,Farghaian 2011,Gao 2011,Wang 2011a,Klamer 2010,Henriksen 2010)。GSK-3には、ユビキタスに発現し高度に保存された2つのアイソフォーム、グリコーゲン合成酵素キナーゼ-3α(GSK-3α)とグリコーゲン合成酵素キナーゼ-3β(GSK-3β)があり、共通の基質と異なる機能的作用を有する。GSK-3はすべての真核生物に存在する。GSK-3は、Wnt、Gタンパク質共役受容体、受容体チロシンキナーゼに対する細胞応答を含む、多くのシグナル伝達経路の重要な制御因子である。GSK-3は通常、細胞内で構成的に活性化しており、その活性を阻害することで制御される。他のキナーゼとは異なり、GSK-3はプライムされた基質、すなわち他のキナーゼによって既にリン酸化された基質を好む(Doble 2003)。
【0012】
癌においては、癌遺伝子(β-カテニン、サイクリンD1、c-Myc)、細胞周期制御因子(p27Kip1など)、上皮間葉転換の仲介因子(Zinc finger protein SNAI1,Snailなど)を調節するGSK-3βの癌進行における役割が注目される(Doble 2007,Gregory 2003,An 2008,Lin 2000,Wang 2013)。最近では、GSK-3βの異常な過剰発現が、膵臓がん、卵巣がん、大腸がん、グリオブラストーマなどの様々な固形がんにおける腫瘍増殖と化学療法抵抗性を促進することが示され(Ougolkov 2005,Fu 2011,Shakoori 2005,Mai 2009,Miyashita 2009a)、生存を促進する核因子κ-light-chain-enhancer of activated B cells(NF-κB)およびc-Myc経路、腫瘍壊死因子(TNF)関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)およびp53によるアポトーシス機構に差異を与えることにより影響を与える(Liao 2003,Tan 2005)。このように、GSK-3βは、ヒトの悪性腫瘍の治療標的として非常に重要である可能性がある。
【0013】
GSK-3は、もともとグリコーゲン代謝に関わる重要な酵素として報告されたSTプロテインキナーゼであるが(Woodgett 1990,Welsh 1993)、現在ではグリコーゲン代謝から細胞周期の調節や増殖まで、多様な細胞機能を制御することが知られる(Cohen 2001)。GSK-3は、多くの代謝、シグナル伝達、および構造タンパク質をリン酸化することによってその機能を発揮する(Cohen 2001)。また、II型糖尿病、アルツハイマー病、双極性障害、炎症、胸膜線維症、癌など、様々なヒト疾患の病態に関与する(Boren 2017,Pal 2014)。哺乳類のGSK-3には、GSK-3-αとGSK-3β(Cohen 2001)という2つの相同性の高いフォームがあり、どちらもキナーゼ活性を示す(Woodgett 1990)。GSK-3βは、c-Myc(Sears 2000)、サイクリンD1(Diehl 1998)およびβ-カテニン(Hart 1998)などの発癌性分子をリン酸化し、ユビキチン-プロテアソーム分解に導くことから癌抑制因子として考えられてきたが、最近の報告ではGSK-3が癌細胞の増殖と生存を制御する正の因子として働くことが示唆されるようになってきており(Wang 2011a,Wang 2013,Ougolkov 2005,Shakoori 2005,Pal 2014,Bilim 2009,Cao 2006a,Carter 2014,Dickey 2011,Duffy 2014,Gaisina 2009,Hilliard 2011,Kotliarova 2008,Kunnimalaiyaan 2007,Miyashita 2009b,Naito 2010,Ougolkov 2006a,Ougolkov 2008,Ougolkov 2007,Ougolkov 2006b,Shin 2014,Wang 2011,Wang 2011b,Wang 2009,Wang 2008,Zeng 2014,Zhu 2011)、治療ターゲットとしてGSK-3に特化した阻害剤の開発を促される。
【0014】
GSK-3βは、以前、ヒトの膵臓、結腸、膀胱、腎臓がん細胞、および慢性リンパ性白血病における潜在的な抗がん標的として報告された(Shakoori 2005,Bilim 2009,Gaisina 2009,Naito 2010,Ougolkov 2006a,Ougolkov 2007)。最近の研究では、GSK-3βは、神経膠芽腫、神経芽腫、甲状腺、卵巣、大腸、肺および前立腺癌における有望な治療標的でもあることが示された(Miyashita 2009a、Pal 2014,Carter 2014,Dickey 2011,Duffy 2014,Hilliard 2011,Kotliarova 2008,Kunnimalaiyaan 2007,Shin 2014,Wang 2009,Zeng 2014,Zhu 2011,Cao 2006b)。強力なマレイミド系GSK-3β阻害剤である9-ING-41は、化学療法抵抗性ヒト乳癌の標的治療薬の候補として同定された(Ugolkov 2016)。その抗増殖活性は、G0-G1期とG2-M期停止を伴い、そのメカニズムは腎細胞癌細胞株における細胞周期解析から明らかである(Pal 2014)。
【0015】
NF-κBは、最も重要な転写因子の一つと考えられており、その活性化は、ヒトのがんの進行、転移、化学療法への耐性を促進する上で必須の役割を担っている(Aggarwal 2004,Tas 2009)。GSK-3βは、Wnt/β-cateninシグナルを抑制する一方で、NF-κB経路を通じて細胞の生存と増殖を維持するという、この文脈では相反する役割を持つことが証明されている(Shakoori 2005)。最近のデータでは、GSK-3βは、NF-κBを介した抗アポトーシス分子の発現を調節することによって、部分的にヒト癌細胞の生存を正に制御していることが示唆されている(Bilim 2009)。マウスのGSK-3β遺伝子を破壊すると、肝細胞のアポトーシスと大規模な肝臓変性による胚性致死が起こるが、この表現型はNF-κB p65の破壊や核因子κBキナーゼサブユニットβ(IKKβ)遺伝子の阻害と類似する(Hoeflich 2000)。これらの知見は、GSK-3βとNF-κB経路の活性化との関連を示唆し、GSK-3βがヒトの癌の治療標的候補であることを支持するものである。
【0016】
9-ING-41は、抗腫瘍活性を有する低分子強力選択的GSK-3β阻害剤である(Pal 2014、Ugolkov 2016、Ugolkov 2017)。NF-κBのダウンレギュレーションにより作用し、NF-κB標的遺伝子であるサイクリンD1、Bcl-2、抗アポトーシス蛋白質(XIAP)およびB細胞lymphoma-extra large(Bcl-XL)の発現を低下させて、複数の固形癌細胞株およびリンパ腫株、患者由来異種移植(PDX)モデルにおいて腫瘍増殖を阻害する。NF-κBは、癌細胞において構成的に活性化され、抗アポトーシス分子の発現を促進する。NF-κBの活性化は、化学療法や放射線療法に抵抗性を示す癌細胞において特に重要であり、GSK-3βの阻害は、ヒト癌においてNF-κBを介した化学療法抵抗性を克服できると考えられる。
【0017】
9-ING-41は、骨髄線維症などのある種の癌の治療に有用であることが分かっている。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者における骨髄線維症の治療方法であって、9-ING-41などのGSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩の治療的効果量を患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0019】
いくつかの実施形態では、本発明は、骨髄線維症の治療に使用するための、9-ING-41などのGSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0020】
いくつかの実施形態では、本発明は、骨髄線維症を治療するための、9-ING-41などのGSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0021】
いくつかの実施形態では、本発明は、骨髄線維症の治療に使用するための医薬の調製における、9-ING-41などのGSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0022】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者における固形腫瘍の治療方法であって、9-ING-41などのGSK-3β阻害剤またはその薬学的に許容される塩の治療効果量を、ルキソリチニブなどのJAK阻害剤またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて患者に投与する工程を含む、治療方法を提供する。
【0023】
いくつかの実施形態では、本発明は、骨髄線維症の治療に使用するための、9-ING-41などのGSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩、およびルキソリチニブなどのJAK阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組合せを提供する。
【0024】
いくつかの実施形態では、本発明は、骨髄線維症を治療するための、9-ING-41などのGSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩、およびルキソリチニブなどのJAK阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組み合わせの使用について、提供する。
【0025】
いくつかの実施形態では、本発明は、骨髄線維症の治療に使用するための医薬の調製における、ルキソリチニブなどのJAK阻害剤またはその薬学的に許容される塩と組み合わせた、9-ING-41などのGSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩の使用について提供する。
【0026】
いくつかの実施形態において、本発明は、9-ING-41、またはその薬学的に許容される塩、およびルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩を含む、キットを提供する。
【0027】
いくつかの実施形態において、本発明は、骨髄線維症の治療に使用するための、9-ING-41、またはその薬学的に許容される塩、およびルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩を含む、キットを提供する。
【0028】
いくつかの実施形態では、本発明は、骨髄線維症を治療するための、9-ING-41、またはその薬学的に許容される塩、およびルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩を含むキットの使用を提供する。
【0029】
定義
本明細書で使用する場合、「9-ING-41」は、3-(5-フルオロベンゾフラン-3-イル)-4-(5-メチル-5H-[1,3]ジオキソロ[4,5-f]インドール-7-イル)ピロール-2,5-ジオンを指し、構造を有する。
【化1】
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される塩」は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わずにヒトおよび下等動物の組織と接触して使用するのに適しており、妥当な利益/リスク比に見合った塩を意味する。薬学的に許容される塩は、当技術分野でよく知られる。例えば、S.M.Berge et al.,describe pharmaceutically acceptable salts in detail in J.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1-19に、薬学的に許容される塩が詳細に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の化合物の薬学的に許容される塩には、適切な無機および有機酸および塩基から誘導されるものが含まれる。薬学的に許容される非毒性の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸などの無機酸と、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸またはマロン酸などの有機酸と、またはイオン交換などの当技術分野で用いられる他の方法を用いて形成したアミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンテプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミスル酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヒドロヨード、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオネート、ラクテート、ラウレート、ラウリル硫酸、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、硝酸塩、オレイン酸、シュウ酸塩、パルミチン酸、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、バレレート塩等がある。
【0031】
適切な塩基に由来する塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、N(C1-4alkyl)塩が挙げられる。代表的なアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが含まれる。さらに薬学的に許容される塩としては、適切な場合には、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩などの対イオンを用いて形成される非毒性のアンモニウム、第4級アンモニウム、アミンカチオンのような塩が挙げられる。
【0032】
特に断らない限り、本明細書に描かれた構造は、その構造のすべての異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何学的(またはコンフォメーション))形態;例えば、各非対称中心に対するRおよびS配置、ZおよびE二重結合異性体、ならびにZおよびEコンフォメーション異性体を含むことも意味される。したがって、本発明化合物の単一の立体化学的異性体ならびにエナンチオマー、ジアステレオマーおよび幾何学的(またはコンフォメーション)混合物は、本発明の範囲内である。特に断らない限り、本発明の化合物のすべての互変異性体は、本発明の範囲内である。さらに、特に断らない限り、本明細書に描かれた構造は、1つまたはそれ以上の同位体濃縮原子の存在においてのみ異なる化合物を含むことも意味する。例えば、重水素またはトリチウムによる水素の置換、または13C-または14C-濃縮炭素による炭素の置換を含む本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。このような化合物は、例えば、分析ツールとして、生物学的アッセイにおけるプローブとして、または本発明に従って治療薬として有用である。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「約(about)」または「およそ(approximately)」は、所与の値または範囲の20%以内という意味を有する。いくつかの実施形態では、用語「約」は、所与の値の20%以内、19%以内、18%以内、17%以内、16%以内、15%以内、14%以内、13%以内、12%以内、11%以内、10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、または1%以内のことを指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「治療(treatment)」、「治療する(treat)」、および「治療の(treating)」は、本明細書に記載されるように、疾患若しくは障害、またはそれらの1つまたはそれ以上の症状の逆転、緩和、発症の遅延、または進行の阻害を指す。いくつかの実施形態では、治療は、1つまたはそれ以上の症状が発症した後に投与されても良い。他の実施形態では、治療は、症状の非存在下で投与されても良い。例えば、治療は、症状の発症前に(例えば、症状の既往歴に照らして、および/または遺伝的若しくは他の感受性因子に照らして)感受性の高い個体に投与されても良い。また、症状が治まった後も、例えば、再発を防止または遅延させるために、治療を継続することができる。
【0035】
本明細書で使用する「患者」という用語は、動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトであり、好ましくは少なくとも18歳であることを意味する。
【0036】
3.例示的な方法と用途の説明
いくつかの実施形態では、本発明は、患者における骨髄線維症を治療する方法であって、グリコーゲン合成酵素キナーゼ-3β(GSK-3β)阻害剤、またはその薬学的に許容される塩の治療的効果量を患者に投与する工程を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、GSK-3β阻害剤は、9-ING-41、または薬学的に許容されるその塩である。
【0037】
いくつかの実施形態では、GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約1mg/kg~約50mg/kgの範囲で患者に投与される。いくつかの実施形態では、GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約5mg/kg~約15mg/kgの範囲で患者に投与される。いくつかの実施形態では、約9mg/kgのGSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩が、患者に投与される。
【0038】
いくつかの実施形態では、GSK-3β阻害剤、または薬学的に許容されるその塩は、28日間の治療サイクルの間、週に1回患者に投与される。いくつかの実施形態では、GSK3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、28日間の治療サイクルの間、週2回患者に投与される。いくつかの実施形態では、GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、週の1日目および4日目に患者に投与される。いくつかの実施形態では、GSK-3β阻害剤、または薬学的に許容されるその塩は、患者に静脈内投与される。
【0039】
いくつかの実施形態では、骨髄線維症の治療方法は、治療上有効な量のJAK阻害剤、または薬学的に許容されるその塩を患者に投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、パクリチニブ、モメロチニブ、フェドラチニブおよびルキソリチニブからなる群より選択されるか、またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩である。
【0040】
いくつかの実施形態では、JAK阻害剤またはその薬学的に許容される塩は、約1mg~約50mgの範囲で患者に投与される。いくつかの実施形態では、JAK阻害剤またはその薬学的に許容される塩は、血小板数≧20,000/mLの患者には1日2回約5mg、または血小板数≧50,000/mLの患者には1日2回約10mg、または血小板数≧100,000/mLの患者には1日2回約15mg、または血小板数≧200,000/mLの患者には1日2回約20mg、の用量で患者に投与される。
【0041】
いくつかの実施形態では、JAK阻害剤またはその薬学的に許容される塩は、28日間の治療サイクルの間、1日2回患者に投与される。いくつかの実施形態では、JAK阻害剤またはその薬学的に許容される塩が、患者に経口投与される。
【0042】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者における骨髄線維症の治療方法であって、治療上有効な量の9-ING-41、またはその薬学的に許容される塩を患者に投与する工程を含む方法を提供する。
【0043】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者における骨髄線維症を治療する方法、治療的効果量のグリコーゲン合成酵素キナーゼ-3β(GSK-3β)阻害剤、または薬学的に許容されるその塩を、治療的効果量のJAK阻害剤、または薬学的に許容されるその塩と組み合わせて患者に投与することを含む、方法である。いくつかの実施形態では、GSK-3β阻害剤は、9-ING-41、または薬学的に許容されるその塩である。
【0044】
いくつかの実施形態では、GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約1mg/kg~約50mg/kgの範囲で患者に投与される。いくつかの実施形態では、GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約5mg/kg~約15mg/kgの範囲で患者に投与される。いくつかの実施形態では、約9mg/kgのGSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩が、患者に投与される。
【0045】
いくつかの実施形態では、GSK-3β阻害剤、または薬学的に許容されるその塩は、28日間の治療サイクルの間、週に1回患者に投与される。いくつかの実施形態では、GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、28日間の治療サイクルの間、週に2回患者に投与される。いくつかの実施形態では、GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、週の1日目および4日目に患者に投与される。いくつかの実施形態では、GSK-3β阻害剤、または薬学的に許容されるその塩は、患者に静脈内投与される。
【0046】
いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、パクリチニブ、モメロチニブ、フェドラチニブおよびルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩である。
【0047】
いくつかの実施形態では、JAK阻害剤またはその薬学的に許容される塩は、約1mg~約50mgの範囲で患者に投与される。いくつかの実施形態では、JAK阻害剤またはその薬学的に許容される塩は、血小板数≧20,000/mLの患者には1日2回約5mg、または血小板数≧50,000/mLの患者には1日2回約10mg、または血小板数≧100,000/mLの患者には1日2回約15mg、または血小板数≧200,000/mLの患者には1日2回約20mg、の用量で患者に投与される。
【0048】
いくつかの実施形態では、JAK阻害剤またはその薬学的に許容される塩は、28日間の治療サイクルの間、1日2回患者に投与される。いくつかの実施形態では、JAK阻害剤またはその薬学的に許容される塩が、患者に経口投与される。
【0049】
いくつかの実施形態において、本発明は、患者における骨髄線維症を治療する方法であって、治療上有効な量の9-ING-41、または薬学的に許容されるその塩を患者に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0050】
いくつかの実施形態では、9-ING-41またはその薬学的に許容される塩が、約5mg/kg~約15mg/kgの範囲で患者に投与される。いくつかの実施形態では、約9mg/kgの9-ING-41、またはその薬学的に許容される塩が、患者に投与される。いくつかの実施形態では、9-ING-41またはその薬学的に許容される塩が、28日間の治療サイクル中の各週の1日目および4日目に患者に静脈内投与される。
【0051】
いくつかの実施形態では、骨髄線維症の治療方法は、治療上有効な量のルキソリチニブ、または薬学的に許容されるその塩を患者に投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩は、約1mg~約50mgの範囲で患者に経口投与される。いくつかの実施形態では、ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩は、血小板数≧20,000/mLの患者には1日2回約5mg、または血小板数≧50,000/mLの患者には1日2回約10mg、または血小板数≧100,000/mLの患者には1日2回約15mg、または血小板数≧200,000/mLの患者には1日2回約20mgという量で患者に経口投与される。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者における骨髄線維症を治療する方法であって、治療効果量のルキソリチニブまたは薬学的に許容されるその塩と組み合わせて、治療効果量の9-ING-41または薬学的に許容されるその塩を患者に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0053】
いくつかの実施形態では、9-ING-41、またはその薬学的に許容される塩は、約1mg/kg~約50mg/kgの範囲で患者に投与される。いくつかの実施形態では、9-ING-41、またはその薬学的に許容される塩は、約5mg/kg~約15mg/kgの範囲で患者に投与される。いくつかの実施形態では、約9mg/kgの9-ING-41、またはその薬学的に許容される塩が、患者に投与される。いくつかの実施形態では、28日間の治療サイクル中の各週の第1日および第4日に、9-ING-41またはその薬学的に許容される塩が、患者に静脈内投与される。
【0054】
いくつかの実施形態では、ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩は、血小板数≧20,000/mLの患者には1日2回約5mg、または血小板数≧50,000/mLの患者には1日2回約10mg、または血小板数≧100,000/mLの患者には1日2回約15mg、または血小板数≧200,000/mLの患者には1日2回約20mg、の用量で患者に経口投与される。
【0055】
いくつかの実施形態において、本発明は、9-ING-41、またはその薬学的に許容される塩、およびルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩を含むキットを提供する。いくつかの実施形態では、キットは、骨髄線維症を治療する方法においてキットを使用するための一組の説明書を含む。いくつかの実施形態において、好適には、キットに提供される説明書一式は、紙などの書面、またはキットの包装に記載され得るか、さもなければ、インターネット上で説明書を調べるためのウェブサイトのアドレスまたはQRコードなどの適切なコードへのリンクとして提供され得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、腫瘍は、腫瘍のさらなる成長を停止させることによって治療される。いくつかの実施形態では、腫瘍は、治療前の腫瘍のサイズに対して少なくとも5%、10%、25%、50%、75%、90%または99%、腫瘍のサイズ(例えば、体積または質量)を減少させることによって治療される。いくつかの実施形態では、腫瘍は、患者内の腫瘍の量を、治療前の腫瘍の量に対して少なくとも5%、10%、25%、50%、75%、90%、または99%減少させることによって治療される。
【0057】
以下の実施例は、説明のために提供されるものであり、いかなる方法においても本発明を限定するものとして解釈されるものではない。
【0058】
実施例
本発明の方法に有用な化合物には、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第8,207,216号(Kozikowski et al)に記載される9-ING-41が含まれる。
【実施例1】
【0059】
実施例1-骨髄線維症細胞の成長および増殖に対する9-ING-41の単剤またはルキソリチニブとの併用によるex vivo試験
MFの成長と増殖に対する9-ING-41(単独およびルキソリチニブとの併用)の効果を調べるため、未治療のMF患者および正常骨髄の初代細胞を用いてex vivoコロニーアッセイが実施された。この実験は、治療の有無にかかわらず、血液中に存在する幹細胞/前駆細胞の数、大きさ、形態を評価するために設計された。
【0060】
MF患者の末梢血単核球と健常患者の骨髄(コントロール)をDMSOのみ、9-ING-41のみ、または9-ING-41とルキソリチニブの併用(0.05uM)のいずれかの存在下で、サイトカインを含むメチルセルロースに二重にプレーティングした。10日後にコロニーを数え、コロニーの成長頻度、分布、形態を算出した。赤血球系(BFU-E)、顆粒球系(CFU-G)、顆粒球系/単球系(CFU-GM)のコロニーの存在は、9-ING-41添加後も比例して変わらなかったが、MF例では正常と比較してより原始的な顆粒球/赤血球/マクロファージ/単球(GEMM)コロニーの成長が9-ING-41濃度に対して増加し、図1(例えば、図1A、1Dおよび1G)および図2(例えば、図2A、2C、2E)に示す。
【0061】
このことは、9-ING-41によるGSK3β阻害の選択的な原始的増殖効果および/または分化効果を示唆する。図1(例えば、図1B、1Eおよび1H)および図2(例えば、図2A、2Cおよび2E)に示すように、9-ING-41とルキソリチニブ(治療レベル以下-50nM)の併用処理は、用量依存的にこの効果を消去するように思われた。治療濃度以下の0.05μMルキソリチニブ単独(組み合わせ実験用)を用いたコロニーサイズへの効果の比較を図1(例えば、図1C、1Fおよび1I)に示す。
【0062】
驚くべきことに、9-ING-41を添加しない処理におけるコロニーの形態は、9-ING-41を添加した処理におけるコロニーの形態と著しく異なっていることが観察された。MF症例1および2において、無処置(DMSO)およびルキソリチニブのみ(0.05μM)の添加では、図2(例えば、図2Bおよび2D)に示すように、コロニーは互いに類似して見え、正常骨髄と比較して不規則で無秩序であった。細胞を9-ING-41単独で処理した場合、MF症例1および2では非常に大きく、完全に分化した原始的なコロニーの増加が見られ、正常骨髄ではコロニーの大きさがわずかに増加することが観察された。ルキソリチニブと9-ING-41の併用により、MF症例1および2において、原始的なコロニーのサイズと存在が著しく減少し、正常で健康そうなコロニー(目立たない、丸いサイズ、正常骨髄のコロニーと相対的)が出現した。
【実施例2】
【0063】
実施例2-骨髄線維症患者を対象とした9-ING-41の単剤またはルキソリチニブとの併用による第2相臨床試験
目的:
第一項目:骨髄線維症患者における9-ING-41の単剤およびルキソリチニブとの併用療法の有効性を評価すること。
【0064】
第二項目:
1)骨髄線維化に対する9-ING-41の効果を評価すること、
2)脾臓容積に対する9-ING-41の影響を評価すること、
3)9-ING-41の貧血に対する効果を評価すること、
4)骨髄線維症症状評価表(MFSAF)バージョン4.0ダイアリーで評価した症状の合計点(TSS)に対する9-ING-41の効果を評価すること、および
5)9-ING-41の薬物動態および薬力学を評価すること。
【0065】
探索的な目的としては、a)EORTC QLQ-C30質問票によるQOLの測定、b)対立遺伝子負荷(JAK2V617F、calreticulin[CALR]、MPLW515L/K)、c)細胞遺伝子の反応、d)炎症サイトカイン測定、e)周辺血液のフローサイトメトリ、が挙げられる。
【0066】
エンドポイント:
有効性の評価項目は以下の通りである。
1)応答率(RR):改訂IWG-MRTおよびELN Response Criteria for MF(2013)に基づき、完全応答(CR)、部分応答(PR)または臨床的改善(CI)を示した患者の割合と定義される。
2)応答期間(DoR)は、腫瘍の反応が確認されてから病勢が進行するまでの期間と定義される。
3)無増悪生存期間(PFS):試験参加から客観的腫瘍進行または死亡までの期間と定義される。
4)全生存期間(OS):試験開始からあらゆる原因による死亡までの期間と定義する。
【0067】
イベント発生までの期間(DoR、PFS、OS)は、Kaplan-Meier法(中央値、95%CI、イベント数、打ち切り数、Kaplan-Meier図)により要約される。有害事象は、患者がインフォームドコンセントフォームに署名した日から9-ING-41の最終投与から30日後までの期間にモニターされる。9-ING-41を投与されたすべての患者を安全性データの要約およびリストに含める。安全性プロファイルおよび忍容性は、有害事象および臨床検査値異常の種類、頻度、重症度、時期、期間および試験薬との関係によって特徴づけられる。
【0068】
研究デザイン
本試験は、進行性骨髄線維症患者を対象とした9-ING-41の単剤またはルキソリチニブとの併用療法に関するオープンラベル、多施設非ランダム化第2相試験である。治療は、9-ING-41単剤またはルキソリチニブとの併用で、週2回の静脈内注射を行う予定である。
【0069】
試験対象者/患者資格-受け入れ基準
本試験に参加するためには、以下の基準をすべて満たす必要がある。
1)情報の同意書を理解し、自発的に署名することができ、予定された診察、治療計画、臨床検査、その他の試験手順を含むプロトコルの要件を遵守する意思と能力があること、
2)18歳以上であること、
3)世界保健機関の分類による原発性MF、PPV-MFまたはPET-MFの診断が文書化されており、DIPSS plusのスコアが≧4であること、
4)試験参加時に幹細胞移植を受けることが不適格であるまたは受ける意思がないこと、
5)臨床検査機能が、地域の臨床検査基準範囲に応じた所定のパラメーター内にあること(繰り返し実施することができる)。
-絶対好中球数(ANC)≧100/mL、血小板数≧20,000/mL
-トランスアミナーゼ(AST/ALT)およびアルカリフォスファターゼ≦3(MF関連と考えられる場合は≦10×正常上限(ULN))×ULN;ビリルビン≦1.5×ULN(ギルバート症候群を有する患者を除く)
-血清アミラーゼおよびリパーゼが1.5×ULN以下であること、
6)十分なパフォーマンスステータス(PS)を有すること、ECOG(Eastern Co-operative Oncology Group)PS0~2。
7)9-ING-41の初回投与前に、以下のいずれかの治療・処置の最終投与を受けていること(ただし、治験責任医師および治験医療コーディネーターが、患者の安全性を損なわない、または試験の実施に支障がないと判断した場合を除く)、
-化学療法、免疫療法、全身放射線療法、最大14日間、または半減期5日以上(いずれか短い方)、
-全身麻酔による手術-7日間、
8)9-ING-41とルキソリチニブの併用投与を希望する患者は、12週間以上のルキソリチニブ治療を試み、減量/中断を必要とした、および/または不十分な反応であったことが必要である。明らかな進行性の患者は、治験責任医師と治験医療コーディネーターとの合意により、ルキソリチニブ治療の試行期間が12週間未満であっても試験に登録することができる、
9)妊娠可能な女性は、試験開始後72時間以内にベースラインの血液または尿による妊娠検査が陰性であること。また、試験参加期間中および試験治療中止後100日間は、有効な避妊法(ホルモン法、バリアー法、または真の禁欲法)を用いることに同意しなければならない、
10)妊娠可能なパートナーを持つ男性患者は、スクリーニングから試験治療中止後100日までは、父親となることを避けるために適切な予防措置をとり、適切なバリア避妊法または真の禁欲を行うこと、
11)他の治験薬の投与を受けていないこと。
【0070】
試験対象者/患者資格-除外基準
患者以下のいずれかに該当する方は、本試験の対象外とされる。
1)妊娠中または授乳中であると、
2)9-ING-41の成分または製剤に使用されている賦形剤に対して過敏症であることが判明していること、
3)末梢血または骨髄生検で>10%の芽球を有すること、
4)9-ING-41の初回投与後12週間以内に心筋梗塞を発症したこと、
5)治験責任医師または治験メディカルコーディネーターが、試験参加を妨げると判断する医学的・社会的条件を有すること、
6)弱者(例:囚人)の一員であると見なされること、または
7)本試験期間中、薬草の服用は禁止される。これらの生薬には、セントジョーンズワート、カバ、エフェドラ(マーフアン)、イチョウ葉、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、ヨヒンベ、ノコギリヤシ、高麗人参が含まれるが、これらに限定されるものではない。患者は、試験治療の初回投与の少なくとも7日前に、カンナビノイドまたはハーブ製剤/薬剤の使用を中止する必要がある。
【0071】
9-ING-41の投与について
9-ING-41は、28日間サイクルの各週の1日目と4日目に、9.3mg/kgの用量で、単剤またはルキソリチニブと併用で投与される。
【0072】
すべての患者は、各サイクルの投与前72時間以内に体重を測定し、9-ING-41の投与量を算出するために使用した以前の体重から>10%の減量または増量がないことを確認するべきである。体重の変化に応じて投与量を再計算することは、地域の慣行に従って決定されるべきであるが、体重が10%以上変化した場合、投与量は記録された最新の体重を使用して再計算されなければならない。
【0073】
9-ING-41とルキソリチニブの併用投与
9-ING-41 9.3mg/kgを週2回、1日目と4日目に点滴静注し、28日間のサイクルでルキソリチニブを
血小板数≧20,000/mLの患者には、5mgを1日2回PO、
血小板数≧50,000/mLの患者には、10mgを1日2回PO、
血小板数≧100,000/mLの患者には、15mgを1日2回PO、または
血小板数≧200,000/mLの患者には、20mgを1日2回PO、
の最低限で、最終耐容量で投与する。
【0074】
ベースラインで血小板数≧50,000/mLのグレード3/4の貧血がある場合、ルキソリチニブの初回投与量を5mgPO1日2回に減らすことができる。試験開始直前のルキソリチニブの最終耐容量が上記用量より少ない場合、医療モニターと協議の上、試験開始時のルキソリチニブ投与量をその用量まで減量することができる。
【0075】
治療サイクル終了後、効果が不十分と考えられる場合は、ルキソリチニブの用量を1日2回5mgPOずつ、最大1日2回25mgPOまで増量することができる。血小板減少症以外の理由で治療を中止する場合、ルキソリチニブの用量を1週間ごとに1日2回5mgずつ徐々に漸減することを検討する。
【0076】
患者は、臨床的に重大な進行性疾患および/または許容できない毒性がなく、かつ治験責任医師が治療から利益を得ていると判断する限り、試験薬レジメンを継続する。また、患者が同意を撤回した場合、あるいは試験終了の場合には、治療を中止することができる(2.7.1項参照)。
【0077】
安全性評価
安全性は、有害事象(CTCAE v5)、バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸数、体温)、身体検査所見、血清化学および血液学実験値、尿検査、心電図、併用薬の使用などを記録・監視することにより、試験期間中に評価される。試験評価スケジュールに詳述されたもの以外に、最良の患者ケアと一致する関連する評価を実施し、試験症例記録用紙に記録するべきである。
【0078】
有効性評価
応答は、2013年改訂版IWG-MRTおよびELN MF応答基準に基づき評価する。評価可能な患者のみを有効性測定の対象とする。9-ING-41の治療を少なくとも1サイクル受けたすべての患者を、応答の評価可能者とみなす。試験評価スケジュールに詳述されているものとは別に、最良の患者ケアと一致する関連する評価を実施し、必要に応じて試験症例記録用紙に記録するべきである。
【0079】
標準治療による評価は、スクリーニング、治療、フォローアップにおいて、疾患の進行が記録される、患者が新たな抗がん治療を開始する、患者が試験参加への同意を撤回する、または患者が試験薬最終投与後12ヶ月のフォローアップ期間を終了する、いずれか先に起こるまで実施される。応答が確認された患者さんには、標準治療に従って、応答を確認するために4~8週間後に評価を受けることが要求される。
【0080】
統計的考察
サイモン2段階最適化モデルにより、有効性に応じて登録する。
9-ING-41単剤療法では、最大10名の評価可能な患者を治療し、応答した患者がいない場合は、試験部門を終了する。それ以外の場合は、さらに19名の評価可能な患者を追加し、合計9名の患者を登録する。29名の患者において4名以上の応答が認められた場合、そのレジメンはさらに検討する価値があると結論づけられる。20%の応答率(対立仮説)を5%の応答率という帰無仮説に対して検証する場合、このデザインではタイプIエラー率0.05、検出力80%になる。
【0081】
9-ING-41とルキソリチニブの併用療法では、最大10名の評価可能な患者を治療し、応答した患者がいない場合は、試験部門を終了する。それ以外の場合は、さらに19名の評価可能な患者を追加し、合計29名の患者を登録する予定である。29名の患者において4名以上の応答が認められた場合、そのレジメンはさらに検討する価値があると結論づけられる。20%の応答率(対立仮説)を5%の応答率という帰無仮説に対して検証する場合、このデザインではタイプIエラー率0.05、検出力80%になる。
【0082】
応答した患者と応答しなかった患者の割合は、ベースラインの分子、細胞遺伝学、その他のバイオマーカー値とともに集計され、診断や予後の特性として評価される可能性がある。本試験は非盲検の第2相試験であるため、すべての安全性および薬物動態パラメータについて記述統計学を利用する。カテゴリー変数は頻度分布(患者数およびパーセンテージ)、連続変数は平均値、標準偏差、中央値、最小値、最大値、事象発生までの時間変数はKaplan-Meier法および推定中央値で集計される予定である。主要目的は、奏効率で評価される有効性を評価することである。DoR、PFS、OSも評価し、Kaplan-Meier法(中央値、95%CI、イベント数、打ち切り数、Kaplan-Meierの数値)でこれらのイベントまでの時間に関するエンドポイントをまとめる予定である。
【0083】
少なくとも1つのAEを経験した患者の頻度は、MedDRA(Medical Dictionary for Regulatory Activities)の用語に従い、身体系および優先用語別に表示される。各AEの詳細情報には、事象の説明、事象の持続時間、重篤性の有無、重症度、試験薬との関係、実施した処置、臨床転帰、およびDLTか否かが含まれる。AEの重症度はCTCAE v5にしたがって等級付けされ、用量制限に分類されるAEはリストアップされる。
【0084】
バイタルサインと心電図は記述統計学で要約される。臨床検査値の経時的な分布を調べるために総括表が作成される。実験毒の分布を調べるためにシフト表が用意されることもある。
【0085】
患者報告による疾患の症状負担は、骨髄増殖性新生物の症状評価フォームの総合症状スコア(MPN-SAF-TSS)を用いて記録される。患者は、スクリーニング/ベースラインおよび投与サイクル開始前の過去1週間における10の症状それぞれについて、0から10までの難易度(難しくない場合を0、想像できる最悪の場合を10まで段階的に難しくする)を記録し、疲労レベルを把握する。患者は、各診察の前に過去24時間の疲労レベルを報告し、0を疲労なし、10を最悪として徐々に悪化する。各スコアおよび合計スコアの記述統計量は、コホートおよび来院ごとに報告される。各訪問時のベースラインからの変化に関する記述統計量は、コホートごとに報告される。
【0086】
特定のバイオマーカーが2値または順序付きカテゴリーとして報告された患者の割合は、コホートごとに報告される。生物学的バイオマーカーと治療反応とのノンパラメトリック相関が報告される。
【0087】
上記で引用した文献は、具体的に組み込まれているか否かにかかわらず、すべて本明細書に参考として援用される。
【0088】
さて、本発明を十分に説明したが、当業者には、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、また過度の実験をすることなく、広い範囲の同等のパラメータ、濃度および条件内で実施できることが理解されるだろう。
【0089】
また、本開示は、以下の態様を包含する。
【0090】
実施形態1.患者における骨髄線維症の治療方法であって、治療上有効な量のグリコーゲン合成酵素キナーゼ-3ベータ(GSK-3β)阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を前記患者に投与する工程を含む、方法。
【0091】
実施形態2.前記GSK-3β阻害剤が、
【化2】
であるか、またはその薬学的に許容される塩である、実施形態1に記載の方法。
【0092】
実施形態3. 前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を約1mg/kg~約50mg/kgの範囲で前記患者に投与する、実施形態1に記載の方法。
【0093】
実施形態4. 前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を約5mg/kg~約15mg/kgの範囲で前記患者に投与する、実施形態1に記載の方法。
【0094】
実施形態5. 約9mg/kgの前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を前記患者に投与する、実施形態1に記載の方法。
【0095】
実施形態6. 前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を28日間の治療サイクルの間、週1回、前記患者に投与する、実施形態1に記載の方法。
【0096】
実施形態7. 前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を28日間の治療サイクルの間、週2回、前記患者に投与する、実施形態1に記載の方法。
【0097】
実施形態8. 前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を1週間のうち1日目および4日目に前記患者に投与する、実施形態1に記載の方法。
【0098】
実施形態9. 前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を前記患者に静脈内投与する、実施形態1に記載の方法。
【0099】
実施形態10.治療上有効な量のJAK阻害剤、または薬学的に許容される塩を前記患者に投与する工程をさらに含む、実施形態1に記載の方法。
【0100】
実施形態11.前記JAK阻害剤が、パクリチニブ、モメロチニブ、フェドラチニブ、およびルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩からなる群から選択される、実施形態10に記載の方法。
【0101】
実施形態12.前記JAK阻害剤がルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩である、実施形態10に記載の方法。
【0102】
実施形態13.前記JAK阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を約1mg~約50mgの範囲で前記患者に投与する、実施形態10に記載の方法。
【0103】
実施形態14.前記JAK阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を、
血小板数≧20,000/mLの患者には、1日2回、約5mg、または
血小板数≧50,000/mLの患者には、1日2回、約10mg、または
血小板数≧100,000/mLの患者には、1日2回、約15mg、または
血小板数≧200,000/mLの患者には、1日2回、約20mg、
の量で前記患者に投与する、実施形態10に記載の方法。
【0104】
実施形態15.前記JAK阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を28日間の治療サイクルの間、1日2回前記患者に投与する、実施形態10に記載の方法。
【0105】
実施形態16.前記JAK阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を前記患者に経口投与する、実施形態10に記載の方法。
【0106】
実施形態17.患者における骨髄線維症の治療方法であって、治療上有効な量のグリコーゲン合成酵素キナーゼ-3ベータ(GSK-3β)阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を、治療上有効な量のJAK阻害剤、またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて、前記患者に投与する工程を含む、方法。
【0107】
実施形態18.前記GSK-3β阻害剤が、
【化3】
であるか、またはその薬学的に許容される塩である
【0108】
実施形態19.前記JAK阻害剤が、パクリチニブ、モメロチニブ、フェドラチニブ、およびルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩からなる群から選択される、実施形態17に記載の方法。
【0109】
実施形態20.前記JAK阻害剤が、ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩である、実施形態17に記載の方法。
【0110】
実施形態21.前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を約1mg/kg~約50mg/kgの範囲で前記患者に投与する、実施形態17に記載の方法。
【0111】
実施形態22.前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を約5mg/kg~約15mg/kgの範囲で前記患者に投与する、実施形態17に記載の方法。
【0112】
実施形態23.約9mg/kgの前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を前記患者に投与する、実施形態17に記載の方法。
【0113】
実施形態24.前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を28日間の治療サイクルの間、週1回、前記患者に投与する、実施形態17に記載の方法。
【0114】
実施形態25.前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を28日間の治療サイクルの間、週2回、前記患者に投与する、実施形態17に記載の方法。
【0115】
実施形態26.前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を1週間のうち1日目と4日目に前記患者に投与する、実施形態17に記載の方法。
【0116】
実施形態27.前記GSK-3β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を前記患者に静脈内投与する、実施形態17に記載の方法。
【0117】
実施形態28.前記JAK阻害剤またはその薬学的に許容される塩を約1mg~約50mgの範囲で前記患者に投与する、実施形態17に記載の方法。
【0118】
実施形態29.前記JAK阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を
血小板数≧20,000/mLの患者には、1日2回、約5mg、または
血小板数≧50,000/mLの患者には、1日2回、約10mg、または
血小板数≧100,000/mLの患者には、1日2回、約15mg、または
血小板数≧200,000/mLの患者には、1日2回、約20mg、
の量で前記患者に投与する、実施形態17に記載の方法。
【0119】
実施形態30.前記JAK阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を28日間の治療サイクルの間、1日2回、前記患者に投与する、実施形態17に記載の方法。
【0120】
実施形態31.前記JAK阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を前記患者に経口投与する、実施形態17に記載の方法。
【0121】
実施形態32.患者における骨髄線維症を治療する方法であって、
【化4】
またはその薬学的に許容される塩の治療上有効な量を前記患者に投与する工程を含む、方法。
【0122】
実施形態33.
【化5】
またはその薬学的に許容される塩を約5mg/kg~約15mg/kgの範囲で前記患者に投与する、実施形態32に記載の方法。
【0123】
実施形態34.約9mg/kgの
【化6】
またはその薬学的に許容される塩を、患者に投与する、実施形態32または実施形態33に記載の方法。
【0124】
実施形態35 .
【化7】
またはその薬学的に許容される塩を、28日間の治療サイクルの各週の1日目と4日目に前記患者に静脈内投与する、実施形態32~34のいずれかに記載の方法。
【0125】
実施形態36.治療上有効な量のルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩を前記患者に投与する工程をさらに含む、実施形態32~35のいずれかに記載の方法。
【0126】
実施形態37.前記ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩を
血小板数≧20,000/mLの患者には、28日間の治療サイクルの間、1日2回、約5mg、または
血小板数≧50,000/mLの患者には、28日間の治療サイクルの間、1日2回、約10mg、または
血小板数≧100,000/mLの患者には、28日間の治療サイクルの間、1日2回、約15mg、または
血小板数≧200,000/mLの患者には、28日間の治療サイクルの間、1日2回、約20mg、
の量で前記患者に経口投与する、実施形態36に記載の方法。
【0127】
実施形態38.患者における骨髄線維症を治療する方法であって、
【化8】
またはその薬学的に許容される塩の治療上有効な量を、治療上有効な量のルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて、前記患者に投与する、方法。
【0128】
実施形態39.
【化9】
またはその薬学的に許容される塩を約5mg/kg~約15mg/kgの範囲で前記患者に投与する、実施形態38に記載の方法。
【0129】
実施形態40 .約9mg/kgの
【化10】
またはその薬学的に許容される塩を前記患者に投与する、実施形態38または実施形態39に記載の方法。
【0130】
実施形態41.
【化11】
またはその薬学的に許容される塩を28日間の治療サイクルの間、各週の1日目と4日目に前記患者に静脈内投与する、実施形態38~40のいずれかに記載の方法。
【0131】
実施形態42.前記ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩を
血小板数≧20,000/mLの患者には、28日間の治療サイクルの間、1日2回、約5mg、または
血小板数≧50,000/mLの患者には、28日間の治療サイクルの間、1日2回、約10mg、または
血小板数≧100,000/mLの患者には、28日間の治療サイクルの間、1日2回、約15mg、または
血小板数≧200,000/mLの患者には、28日間の治療サイクルの間、1日2回、約20mg、
の量で前記患者に経口投与する、実施形態38~41のいずれかに記載の方法。
【0132】
実施形態43.キットであって、
【化12】
またはその薬学的に許容される塩、およびルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む、キット。
【0133】
実施形態44.骨髄線維症の治療方法においてキットを使用するための説明書をさらに含む、実施形態43に記載のキット。
図1
図2
【国際調査報告】