(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】スリットのパターンを有する引き伸ばし剥離接着性物品
(51)【国際特許分類】
C09J 7/20 20180101AFI20230222BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20230222BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20230222BHJP
C09J 7/26 20180101ALI20230222BHJP
C09J 7/22 20180101ALI20230222BHJP
【FI】
C09J7/20
C09J5/00
C09J201/00
C09J7/26
C09J7/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540316
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(85)【翻訳文提出日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 IB2020062489
(87)【国際公開番号】W WO2021137135
(87)【国際公開日】2021-07-08
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】リー,チャオディ
(72)【発明者】
【氏名】シア,ユジィ
(72)【発明者】
【氏名】ルドウィグ,ブレット ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】コスグロブ,ディラン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ワルド,ミカエル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,アビ ジー.
(72)【発明者】
【氏名】コウマン-エッゲルト,クリスティーナ ディー.
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA05
4J004AA10
4J004AA11
4J004CB03
4J004CB04
4J004CC03
4J004CC06
4J004CC08
4J004EA05
4J004FA08
4J040CA001
4J040DF001
4J040EK001
4J040JA09
4J040KA04
4J040KA16
4J040KA28
4J040KA29
4J040KA31
4J040KA35
4J040KA42
4J040PA00
4J040PA20
4J040PA42
(57)【要約】
調整可能な機械的特性を有する引き伸ばし剥離接着性物品が提供される。物品は、第1の方向に沿って延び、かつ第1の主面及び第1の主面とは反対側の第2の主面を有する、引き伸ばし可能な支持体を含む。引き伸ばし可能な支持体の第1及び第2の主面の少なくとも一方は、引き伸ばし剥離可能な接着面であり、引き伸ばし可能な支持体は、引き伸ばし可能な支持体上に分布し、かつ引き伸ばし可能な支持体の引き伸ばし時に変形して引き伸ばし可能な支持体を伸ばすように構成された、スリットのパターンを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き伸ばし剥離可能な接着性物品であって、
第1の方向に沿って延び、かつ第1の主面及び前記第1の主面とは反対側の第2の主面を有する、引き伸ばし可能な支持体を備え、
前記引き伸ばし可能な支持体の前記第1の主面及び前記第2の主面の少なくとも一方が、引き伸ばし剥離可能な接着面であり、
前記引き伸ばし可能な支持体が、前記引き伸ばし可能な支持体上に分布し、かつ前記引き伸ばし可能な支持体の引き伸ばし時に変形して前記引き伸ばし可能な支持体を伸ばすように構成された、スリットのパターンを含む、引き伸ばし剥離可能な接着性物品。
【請求項2】
引き伸ばし剥離を容易にするために、前記引き伸ばし可能な支持体の一方の端部に配置されたタブを更に備える、請求項1に記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品。
【請求項3】
前記タブが、前記引き伸ばし可能な支持体の延長部を含む、請求項2に記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品。
【請求項4】
前記引き伸ばし可能な支持体が、ポリマー発泡体、ポリマーフィルム又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品。
【請求項5】
前記引き伸ばし可能な支持体が、約50%~約1200%の長手方向破断点伸びを有する、請求項1に記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品。
【請求項6】
前記引き伸ばし剥離可能な接着面が、前記引き伸ばし可能な支持体の前記第1の主面の少なくとも一部分に配置された第1の引き伸ばし剥離可能な接着層と、前記第2の主面の少なくとも一部分に配置された第2の引き伸ばし剥離可能な接着層とを含む、請求項1に記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品。
【請求項7】
前記スリットのパターンが、前記第1の方向と実質的に垂直な方向に沿ってそれぞれ延びるスリットの配列を含む、請求項1に記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品。
【請求項8】
前記スリットがそれぞれ、前記引き伸ばし時に前記引き伸ばし可能な支持体の開口に変形する、請求項7に記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品。
【請求項9】
前記スリットがそれぞれ、それぞれの前記スリットの両端に一対の穴を含む、請求項7に記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品。
【請求項10】
前記スリットのパターンが、前記第1の方向と実質的に平行な方向に沿ってそれぞれ延びるスリットの配列を含む、請求項1に記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品。
【請求項11】
前記スリットのパターンが、周期的な配置で複数のスリットユニットセルを含む、請求項1に記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品。
【請求項12】
前記スリットのパターンが、厚さ方向に前記引き伸ばし可能な支持体を通ってそれぞれ延びる1つ以上の貫通スリットを含む、請求項1に記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品。
【請求項13】
前記スリットのパターンが、厚さ方向に前記引き伸ばし可能な支持体内にそれぞれ部分的に延びる1つ以上のスリットを含む、請求項1に記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品。
【請求項14】
前記スリットのパターンが、前記第1の主面から前記引き伸ばし可能な支持体内にそれぞれ部分的に延びる1つ以上のスリットと、前記第2の主面から前記引き伸ばし可能な支持体内にそれぞれ部分的に延びるスリットの第2のセットとを含む、請求項1に記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品。
【請求項15】
前記スリットのパターンが階層構造を有する、請求項1に記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品。
【請求項16】
引き伸ばし剥離可能な接着性テープを作製する方法であって、
第1の方向に沿って延び、かつ第1の主面及び前記第1の主面とは反対側の第2の主面を有する、引き伸ばし可能な支持体を用意するステップであって、前記引き伸ばし可能な支持体の前記第1の主面及び前記第2の主面の少なくとも一方が、引き伸ばし剥離可能な接着面である、ステップと、
前記引き伸ばし可能な支持体上に分布したスリットのパターンを設けるステップであって、前記スリットがそれぞれ、前記引き伸ばし可能な支持体の引き伸ばし時に変形して前記引き伸ばし可能な支持体を伸ばすように構成されている、ステップとを含む、方法。
【請求項17】
基材表面からの引き伸ばし剥離可能な接着性物品の引き伸ばし剥離を容易にするために、前記引き伸ばし可能な支持体の一方の端部に配置されたタブを設けるステップを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記タブが、前記引き伸ばし可能な支持体の延長部を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記引き伸ばし可能な支持体が、ポリマー発泡体、ポリマーフィルム又はそれらの組み合わせを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記スリットのパターンが、前記第1の方向と実質的に垂直な方向に沿ってそれぞれ延びるスリットの配列を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記スリットがそれぞれ、前記引き伸ばし時に前記引き伸ばし可能な支持体の開口に変形する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記スリットのパターンが、前記第1の方向と実質的に平行な方向に沿ってそれぞれ延びるスリットの配列を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記スリットのパターンが、前記引き伸ばし可能な支持体を通ってそれぞれ延びる1つ以上の貫通スリットを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記スリットのパターンが、前記引き伸ばし可能な支持体内にそれぞれ部分的に延びる1つ以上のスリットを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記スリットのパターンが階層構造を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記スリットのパターンを設けるステップが、前記引き伸ばし可能な支持体をダイカットすることを含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して接着性物品に関し、より具体的には引き伸ばし剥離可能な接着性物品及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
引き伸ばし剥離接着性テープは、持続的又は一時的な結合用途に広く使用されている。それは、一定の角度で接着剤を引き伸ばすことにより、損傷又は残留物を伴わずに、きれいにかつ容易に除去することができる。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、本開示は、第1の方向に沿って延び、かつ第1の主面及び第1の主面とは反対側の第2の主面を有する、引き伸ばし可能な支持体を含む、引き伸ばし剥離可能な接着性物品について記載する。引き伸ばし可能な支持体の第1及び第2の主面の少なくとも一方は、引き伸ばし剥離可能な接着面であり、引き伸ばし可能な支持体は、引き伸ばし可能な支持体上に分布し、かつ引き伸ばし可能な支持体の引き伸ばし時に変形して引き伸ばし可能な支持体を伸ばすように構成された、スリットのパターンを含む。
【0004】
別の態様では、本開示は、引き伸ばし剥離可能な接着性テープを作製する方法について記載する。方法は、第1の方向に沿って延び、かつ第1の主面及び第1の主面とは反対側の第2の主面を有する、引き伸ばし可能な支持体を用意するステップと、引き伸ばし可能な支持体の第1及び第2の主面の少なくとも一方に1つ以上の引き伸ばし剥離可能な接着面を設けるステップと、引き伸ばし可能な支持体上に分布したスリットのパターンを設けるステップであって、スリットがそれぞれ、引き伸ばし可能な支持体の引き伸ばし時に変形して引き伸ばし可能な支持体を伸ばすように構成されている、ステップとを含む。
【0005】
様々な予期せぬ結果及び利点が、本開示の例示的な実施形態において得られる。本開示の例示的な実施形態のそのような1つの利点は、剛性材料の物品又はフィルムでも、より高い破損強度を有する引き伸ばし可能な材料又はフィルムを得ることである。実施形態はまた、微小構造化設計、すなわち、物品又はフィルム上のカット又はスリットの様々なパターンによって、機械的応答が正確に制御される広範囲のフィルムを提供する。本明細書に記載される実施形態は、引き伸ばし剥離中の引き伸ばされたフィルムの機械的応答の微調整をもたらす。そのような微調整は、引き伸ばし剥離中により一様な歪み場を有するより広い領域を提供する歪み硬化機械的応答特性をもたらし、これにより、高い応力集中による(剥離前面(debonding front)付近の)ネッキング領域における引き伸ばされたフィルムの突然の破壊を防止することができる。フィルム上のスリットのパターンにより、広範囲のフィルム材料を引き伸ばし剥離用途に使用することができ、材料選択の制約が除去される。引き伸ばしフィルムの現在の開発では、そのような機械的特性を実現する化学組成によって主に決定される、独特な機械的特性(歪み硬化など)を有する特定のフィルムのみが目的にかなう。
【0006】
以上が本開示の例示的な実施形態の様々な態様及び利点の概要である。上記の「発明の概要」は、本開示の特定の例示的な実施形態の、図示される各実施形態又は全ての実現形態を説明することを意図するものではない。以下の図面及び「発明を実施するための形態」は、本明細書に開示される原理を使用する特定の好ましい実施形態を、より詳細に例示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
以下の本開示の様々な実施形態の詳細な説明を添付図面と併せて検討することで、本開示をより完全に理解し得る。
【
図1A】一実施形態による接着性物品の側断面図である。
【
図1B】一実施形態による、
図1Aの使用中の接着性物品の側断面図である。
【
図1C】一実施形態による、
図1Bの接着性物品の平面図である。
【
図2】別の実施形態による接着性物品の側断面図である。
【
図3】別の実施形態による接着性物品の平面図である。
【
図4A】スリットのパターンが微小構造化ユニットセルの幾何学的配置を有する、一実施形態による接着性物品の概略平面図である。
【
図4C】
図4Aの引き伸ばし可能な支持体の力-変位曲線である。
【
図5A】一実施形態による引き伸ばし可能な支持体のユニットセルパターンを示す。
【
図5B】別の実施形態による引き伸ばし可能な支持体のユニットセルパターンの概略平面図を示す。
【
図5C】別の実施形態による引き伸ばし可能な支持体のユニットセルパターンの概略平面図を示す。
【
図5D】別の実施形態による引き伸ばし可能な支持体のユニットセルパターンの概略平面図を示す。
【
図5E】別の実施形態による引き伸ばし可能な支持体のユニットセルパターンの概略平面図を示す。
【
図5F】別の実施形態による引き伸ばし可能な支持体のユニットセルパターンの概略平面図を示す。
【
図6A】引き伸ばされていない、
図5Aのパターンを有する引き伸ばし可能な支持体の概略平面図を示す。
【
図6B】引き伸ばされた、
図6Aの引き伸ばし可能な支持体の概略平面図を示す。
【
図7A】引き伸ばされていない、
図5Fのパターンを有する引き伸ばし可能な支持体の概略平面図を示す。
【
図7B】引き伸ばされた、
図7Aの引き伸ばし可能な支持体の概略平面図を示す。
【
図8】スリットのパターンを有する実施例及びスリットなしの比較例の応力-歪み曲線を示す。
【0008】
図面では、同様の参照符号は同様の要素を示す。上記に特定した図面は、一定の縮尺で描かれないことがあり、本開示の様々な実施形態を説明しているが、「発明を実施するための形態」で指摘するように、他の実施形態もまた企図される。全ての場合において、本開示は、本明細書で開示される開示内容を、明示的な限定によってではなく、例示的な実施形態を表現することによって説明する。本開示の範囲及び趣旨に含まれる、数多くの他の修正形態及び実施形態を、当業者によって考案することができる点を理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0009】
調整可能な機械的特性を有する引き伸ばし剥離可能な接着性物品が提供される。物品は引き伸ばし可能な支持体を含み、引き伸ばし可能な支持体には、引き伸ばし可能な支持体の引き伸ばし時に変形して所望の機械的特性をもたらすように構成されたスリットのパターンが分布している。
【0010】
図1Aは、一実施形態による接着性物品100の側断面図である。接着性物品100は、Z軸によって示されるように長手方向に沿って延び、かつ第1の主面112及び第1の主面112とは反対側の第2の主面114を有する、引き伸ばし可能な支持体110を含む。第1の主面112及び第2の主面114の少なくとも一方は、引き伸ばし剥離可能な接着面である。
図1Aに示す実施形態では、同じか又は異なる接着性組成物の接着層142及び144が、引き伸ばし可能な支持体110の互いに反対側の主面112及び114に設けられている。接着層142及び144はそれぞれ、剥離ライナー132及び134によって覆われている。引き伸ばし可能な支持体110は、接着層142及び144よりも更に長手方向に延びて、引き伸ばし可能な支持体110が長手方向Zに沿って引っ張られるときに接着性物品100の引き伸ばし剥離を容易にする、タブ115を形成している。
【0011】
引き伸ばし可能な支持体110は、引き伸ばし可能な支持体上に分布し、かつ、Z軸によって示すように、引き伸ばし可能な支持体110の引き伸ばし時に変形して引き伸ばし可能な支持体110を長手方向に伸ばすように構成された、スリット120のパターンを含む。
図1Bは、長手方向に沿った引張力8によって引き伸ばされた、
図1Aの接着性物品100の側断面図である。
図1Cは、引き伸ばし力8を受けた、
図1Bの接着性物品100の平面図である。
【0012】
図1Cに示す例示的な実施形態では、スリット120のパターンは、長手方向と実質的に垂直な横方向に沿ってそれぞれ延びるスリット120aの第1のセットと、長手方向と実質的に平行な方向に沿ってそれぞれ延びるスリット120bの第2のセットとを含む。
図1Bに示すように、スリット120a又は120bの少なくとも一部は、貫通カットである。言い換えれば、スリット120の少なくとも一部は、引き伸ばし可能な支持体110の厚さを通じて延びている。
【0013】
本明細書に記載されるスリットのパターンは、支持体のバルクを厚さ方向に少なくとも部分的に通じて切り込むことによって形成することができる。いくつかの実施形態では、スリットのパターンは、ダイカット加工によって支持体に形成することができ、ダイカット加工では、面にパターンが機械加工されたダイプレート又は回転ツールを、基材(例えば、支持体)の表面と係合してスリットのパターンを形成する切込み機構として使用することができる。切込み機構は、貫通カット又は部分カットを支持体に作る異なる寸法を有してもよい。
【0014】
引き伸ばし可能な支持体は、単層又は多層の構造を有してもよい。引き伸ばし可能な支持体は、例えば、1つ以上のポリマー発泡体、1つ以上のポリマーフィルム、様々な粘弾性材料、剛性材料などを含んでもよい。いくつかの実施形態では、支持体は、例えば、約10μm~約5mmの厚さを有してもよい。いくつかの実施形態では、支持体は、約10ミル~約30ミルの厚さを有してもよい。いくつかの実施形態では、スリットのパターンは、引き伸ばし可能な支持体のコア層に形成することができ、次いで、1つ以上の連続ポリマーフィルム又は発泡体によってラミネートすることができる。
【0015】
引き伸ばし可能な支持体110は、支持体110を長手方向に沿って引き伸ばし可能にする任意の好適な材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、支持体110は、1つ以上の粘弾性コア層を含むことができる。「粘弾性の」又は「粘弾性」という用語は、経時的に材料によって緩和される力の大きさに関連する。本出願では、この緩和は、例えば、圧縮応力の緩和によって測定される。一般に、その試験では、力プローブが、特定の力を測定するまで試料内に配置される。次いで、プローブは、その深さに保持され、時間とともに力がどのように変化するかが測定される。いくつかの実施形態は、時間とともに著しく緩和する。接着剤を粗面に適用することに関連するいくつかの実施形態では、良好な接触を可能にし、かつ接着剤の接触を経時的に維持することも可能にする、粘性流動が好ましい。例えば、弾性が高いが、軟性が高い材料は、最初は良好なウェットアウト(wetout)を有するかもしれないが、経時的には、「跳ね反り」、時間とともにウェットアウトを失う場合があり、これは、粘性流動によって内部応力を緩和できないためである。国際公開第2017/136280号(Cowman-Eggertら)は、単層又は多層の構造を有する様々な支持体を記載しており、同文献は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0016】
本明細書に記載される引き伸ばし可能な支持体は、接着性物品を被着体の表面に適合させることを支援することができる。いくつかの実施形態では、支持体及び/又は接着性物品は、組織分析によって測定された場合、10秒後に約10%~約100%の圧縮応力緩和(CSR)を有してもよい。いくつかの実施形態では、コア層及び/又は接着性物品は、組織分析によって測定された場合、10秒後に約10%~約80%の圧縮応力緩和(CSR)を有してもよい。支持体及び/又は接着性物品の応力緩和により、ユーザが被着体の表面にテープを適用しているときに、引き伸ばし剥離接着性テープによってより大きな力を加えることが可能になる。いくつかの実施形態では、引き伸ばし可能な支持体は、例えば、約50%~約1200%の長さ方向破断点伸びを有してもよい。いくつかの実施形態では、引き伸ばし可能な支持体は、多層支持体が引き伸ばされて被着体から除去される前に破れないように、十分に高い破断点引張強度を有してもよい。支持体は、被着体からの接着性物品の剥離後に、約0%~50%の弾性回復率を有してもよい。
【0017】
支持体は、所望の特性を有することを可能にする任意の成分を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、支持体は、非限定的に、溶媒重合、分散重合、無溶媒バルク重合、並びに、紫外線、電子ビーム及びガンマ線を使用するプロセスを含む放射線重合(radiation polymerization)などの様々な重合技術によって作られた(メタ)アクリル(コ)ポリマーを含んでもよい。モノマー混合物は、コモノマーを重合させるのに有効なタイプ及び量の重合開始剤、とりわけ熱開始剤又は光開始剤を含み得る。いくつかの実施形態では、支持体は、架橋されているか又は架橋され得るアクリルを含んでもよい。コア層は、架橋性モノマーの添加によって架橋されてもよい。コア層は、1種類の架橋性モノマー又は2種類以上の架橋性モノマーの組合せを含んでもよい。
【0018】
支持体のいくつかの例示的な所望の特性としては、粘弾性、貯蔵弾性率、損失弾性率、ガラス転移温度、及び/又は良好なウェットアウトが挙げられてもよい。いくつかの実施形態では、支持体は、例えば、25℃で約15×103Pa~約2.5×106Paの有効貯蔵弾性率を有してもよい。いくつかの実施形態では、支持体は、25℃で約0.4~約1.2のtanδ(tanδは貯蔵弾性率で除算された損失弾性率である)を有してもよい。いくつかの実施形態では、支持体は、約-125~約40℃のガラス転移温度を有してもよい。支持体は、10秒後に5%~100%の応力緩和を有してもよい。他の実施形態では、コア層は、10秒後に10%~100%の応力緩和を有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される引き伸ばし可能な支持体は、スリットのパターンにより、そうでなければ「剛性」である支持体材料が引き伸ばし可能になり得る、1つ以上の剛性材料で作製することができることを理解されたい。言い換えれば、スリットのパターンを有するフィルムは、構成材料のみではなくスリットのパターンから生じる高度に非線形の応力-歪み挙動を示す高度に引き伸ばし可能な特性を生成することができる。理論に束縛されることを望まないが、基本となる機構は、引き伸ばし中のスリットのパターンの曲げ及び回転によって主に適応されると考えられる。スリットフィルムは、例えば、約10倍に終局歪みを増加させる(すなわち、より大きな有効伸び限界)一方で、例えば、約100分の1に剛性を低減することができる。本明細書に記載されるスリット設計により、例えば、引き伸ばし支持体の破損歪み限界及び歪み硬化特性を含む、スリットなしの規則的なフィルムのいくつかの制約を取り除くことができる。本明細書に記載される多くの実施形態では、スリット設計の支持体又はフィルムの材料は、例えば、非伸縮性/低伸縮性材料及び/又は伸縮性材料、例えば、コピー紙、銅(Cu)、アルミニウム箔、及びポリマー材料(ポリエチレンテレフタレート、ポリジメチルシロキサンなど)を含む任意の一般的な材料から選択することができる。いくつかの実施形態では、支持体又はフィルムは、1種類の材料、又は2種類以上の材料の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態では、フィルムは、単層、又は好適な材料の多層ラミネートであることができる。
【0020】
図1Aに示す実施形態は、別個の接着層を示しているが、いくつかの実施形態では、支持体110自体が接着剤であってもよいことを理解されたい。いくつかの実施形態では、支持体は、感圧接着剤であってもよい。いくつかの実施形態では、支持体は、感圧粘着性に関するダルキスト基準を満たしてもよい。感圧粘着性に関するダルキスト基準は、1Hz、25℃で3×10
5Pa以下の弾性率を有する接着性配合物として定義されている(A.V.Pocius,「Adhesives and Adhesion Technology」,第3版,2012,Hanser Publications,Cincinnati,OH;米国特許出願公開第2011/0179549号、米国特許第7,605,212号及び同第5,719,247号でも参照されている)。感圧粘着性に関するダルキスト基準は、典型的な感圧接着剤の1秒のコンプライアンスが10
6cm
2/ダインであることと記述されている(D.A.Satas(監修),「Handbook of Pressure-Sensitive Adhesive Technology」,1982,Van Nostrand Reinhold Company Inc.NewYork,NewYork)。
【0021】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される接着性物品は、ASTM D3654-82に従って測定された場合、1800分超又は10,000分超の剪断強度を示してもよい。いくつかの実施形態では、接着性物品は、約20~約170オンス/0.625インチ(オンス/0.625インチ=17.86g/cm)又は約45~約80オンス/0.625インチ(オンス/0.625インチ=17.86g/cm)の引き伸ばし剥離を示してもよい。
【0022】
引き伸ばし剥離接着剤及び剥取剥離接着剤の一方又は両方のいずれかを備えるいくつかの実施形態では、接着層142若しくは144又は支持体110の主面は、感圧接着剤であることができる。有用な感圧接着剤の全般的な説明は、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,Vol.13,Wiley-Interscience Publishers(New York,1988)に見出され得る。有用な感圧接着剤の更なる説明は、Encyclopedia of Polymer Science and Technology,Vol.1,Interscience Publishers(New York,1964)に見出され得る。任意の好適な組成物、材料、又は成分を感圧接着剤に使用することができる。例示的な感圧接着剤は、1種類以上の熱可塑性エラストマーを、例えば、1種類以上の粘着付与樹脂と組み合わせて利用する。いくつかの実施形態において、接着剤は感圧接着剤ではない。
【0023】
本明細書に記載される接着性物品に使用できるいくつかの例示的な引き伸ばし剥離可能な接着剤としては、例えば、米国特許第6,569,521号、国際公開第2017/136188号、同第2017/136219号、又は米国特許出願公開第2016/0068722号に記載されるものが挙げられ、同文献はいずれも、参照によって全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、接着層は、1種類以上の炭化水素ブロックコポリマーと、フェノール部分を含み、かつ20~130の水酸基価及び0.5未満の酸価を有する、極性フェノール粘着付与剤とを含む。いくつかの実施形態では、接着剤は、極性フェノール粘着付与剤の少なくとも1種類がテルペンフェノールであることを含む。
【0024】
本開示の接着性物品に使用できるいくつかの引き伸ばし剥離可能な接着剤は、tanδピーク値の動的機械分析によって測定された場合、約-125℃~20℃のガラス転移温度を有する。本開示の接着性物品に使用できるいくつかの引き伸ばし剥離可能な接着剤は、動的機械分析によって測定された場合、25℃で約400,000Pa以下又は300,000以下の貯蔵弾性率を有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、支持体の第1の主面又は第2の主面のうちの少なくとも一方の引き伸ばし剥離可能な接着剤の厚さは、約1μm~約1mmである。
【0026】
いくつかの実施形態では、引き伸ばし剥離可能な接着剤は、損傷を全く又はほとんど伴わない除去を実現するように調整される。そのようにするための例示的な方法及び物品は、例えば、米国特許第6,835,452号及び(本譲受人に付与された)国際出願番号PCT/US2017/048654号に記載され、同文献はそれぞれ、参照によって全体が本明細書に組み込まれる。
【0027】
剥取可能接着層を備える実施形態では、剥取可能接着剤は、例えば、以下の特許出願、すなわち、国際公開第2015/035556号、同第2015/035960号、同第2017/136219号、同第2017/136188号、及び米国特許出願公開第2015/034104号のいずれかに記載される接着剤のいずれかであることができ、同文献は全て、参照によって全体が本明細書に組み込まれる。
【0028】
いくつかの実施形態において、剥離可能接着層は、ゴム、シリコーン、又はアクリル系の接着剤のうちの少なくとも1つを含み得る。いくつかの実施形態において、剥離可能接着剤は、天然ゴムなどの粘着付与ゴム接着剤;オレフィン;シリコーンポリウレア又はシリコーンブロックコポリマーなどのシリコーン;ポリイソプレン、ポリブタジエン、及びスチレン-イソプレン-スチレンコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンコポリマー及びスチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、及び他の合成エラストマーなどの合成ゴム接着剤;及び放射法、溶液法、懸濁法、又はエマルジョン法によって重合することのできるイソオクチルアクリレートとアクリル酸とのコポリマーなどの粘着付与のアクリル系接着剤又は非粘着付与のアクリル系接着剤;ポリウレタン;シリコーンブロックコポリマー;並びに上記のものの組み合わせを含み得る。
【0029】
一般に、引き伸ばし剥離可能又は剥取可能な接着性配合物に有用な任意の既知の添加剤も含まれてもよい。添加剤としては、可塑剤、劣化防止剤、紫外線安定剤、着色剤、熱安定剤、抗感染剤、充填剤、架橋剤、並びにこれらの混合物及び組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、接着剤は、無機繊維及び/又は有機繊維を含み得る繊維又は繊維スクリムで強化することができる。好適な繊維スクリムは、織布、不織布、又はニットウェブ又はスクリムを含んでもよい。例えば、スクリム内の繊維としては、ワイヤ、セラミック繊維、ガラス繊維(例えば、ファイバーグラス)、及び有機繊維(例えば、天然及び/又は合成有機繊維)を挙げることができる。
【0030】
接着層142及び144の外面は、接着性物品100を所望の被着体、耐久消費財及び/又は取付体(例えば、写真フレーム)に固着させるために使用することができる。
図1B及び
図1Cは、接着層142及び144がそれぞれ物体3及び5に取り付けられることを示している。ユーザがタブ115を引っ張って支持体110を方向8に引き伸ばすと、接着層142及び144は、支持体110が被着体表面と実質的に平行に引き伸ばされたときに、被着体から徐々に剥離することができる。
図1Aに示すようにタブ115に元々隣接している支持体110の部分116’を引き伸ばし、接着層132及び134によって元々覆われていた領域から流動させ、
図1B~
図1Cに示すように引き伸ばされ、変形され、剥離された部分16にすることができる。引き伸ばされた部分116は、工程中に硬化するゾーン116a及び硬化したゾーン116bを形成する。支持体110は、引き伸ばし力を除去した後に跳ね返る場合がある。
【0031】
理論に拘束されることを望まないが、本開示は、支持体110が剥離中に、剥離前面で変形及び剥離し続けるのに十分な力を非剥離領域に伝達することを見出した。
図1Cに示すように、線118aが剥離前面である。剥離前面118aの右側の破線枠118bによって示すような領域は剥離されているが、剥離前面118aの左側の領域はまだ剥離されていない。支持体の剥離された部分16を引き伸ばし続けるのに必要な力が、剥離するための力よりも小さいと、剥離領域16は、変形し続け、引き伸ばし支持体の早期破壊をもたらす場合がある。所望の物性を実現するために、引き伸ばし可能な支持体110は、歪み硬化応答を有するように設計された多層フィルムで作製されてもよい。一般的なポリマーの歪み硬化領域は、高度の歪み、例えば、400%よりも高い引き伸ばし比でのみ生じ得る。そのような著しい引き伸ばしは、力を除去した後に危険な跳ね返りをもたらす場合がある。
【0032】
引き伸ばし剥離フィルムを剥離するために、剥離の進行中に歪み平衡(例えば、歪み一様性)を制御することが有用である。剥離領域内の支持体には、ネッキングをもたらし得る、剥離前面付近の応力集中により増加した応力がかかることが見出された。支持体は、本明細書に記載される歪み硬化特性を有していないと大きく変形する場合がある。従来の支持体の場合、その応力-歪み曲線は、支持体材料の機械的特性によって決定され得る。通常、引き伸ばし剥離に適切な歪みレベルを有する好適な歪み硬化支持体/フィルムを見出すことは困難である。特定のフィルム配合物及び構造を調節するために、多くの開発が行われてきた。そのような方法による動作期間(operation windows)は、非常に限定されている。
【0033】
本開示に記載される歪み硬化特性を有する支持体では、支持体が、剥離領域内の支持体を延ばす相当な力(応力)を提供できることが見出された。本開示では、歪み硬化特性を有する引き伸ばし支持体/フィルムが、より良好な歪み一様性をもたらし得、剥離領域から非剥離領域へのより良好な力の伝達をもたらし得ることが示されている。本明細書に記載される実施形態は、特別な機械的応答特性をもたらす。言い換えれば、フィルムは、軟性で高度に引き伸ばし可能(より大きなプラトー領域)であり、歪み硬化応答の最終状態に到達することができる。本明細書に記載される実施形態は、化学組成を変更せずに、フィルムの機械的応答を直接かつ効率的に制御する方法論を提示する。方法論は、例えば、様々な粘弾性又は剛性の材料を含む、広範囲のフィルム材料に適用することができる。例えば、個々のフィルムがその機械的応答において歪み硬化領域を有する必要がない。特に、応力-歪み応答は、本明細書に記載される方法論によって適切かつ効率的に制御することができる。
【0034】
引き伸ばされた部分116のスリット120のパターンは、支持体110の引き伸ばし時に変形することができる。
図6B及び
図7Bに示すように、スリットはそれぞれ、引き伸ばし時に開口に変形し得る。引き伸ばされた部分116の変形したスリットは、簡略化のために
図1B及び
図1Cに示されていない。
【0035】
図2は、別の実施形態による接着性物品200の側断面図である。接着性物品200は、長手方向に沿って延び、かつ第1の主面212及び第1の主面とは反対側の第2の主面214を有する、引き伸ばし可能な支持体210を含む。第1の主面212及び第2の主面214の少なくとも一方は、引き伸ばし剥離可能な接着面である。
図2に示す実施形態では、同じか又は異なる接着性組成物の接着層242及び244が、引き伸ばし可能な支持体210の互いに反対側の主面212及び214に設けられている。接着層242及び244はそれぞれ、剥離ライナー232及び234によって覆われている。引き伸ばし可能な支持体210は、接着層242及び244よりも長手方向に延びて、接着性物品200の引き伸ばし剥離を容易にする、タブ215を形成している。
【0036】
引き伸ばし可能な支持体210は、引き伸ばし可能な支持体上に分布し、かつ引き伸ばし可能な支持体210の引き伸ばし時に変形して引き伸ばし可能な支持体を長手方向に伸ばすように構成された、スリット220のパターンを含む。スリット220のパターンは、厚さ方向に沿って第1の主面212から支持体210内にそれぞれ延びるスリット220aの第1のセットと、厚さ方向に沿って第2の主面214から支持体210内にそれぞれ延びるスリット220bの第2のセットとを含む。スリット220はそれぞれ、支持体210内に部分的に延びている。言い換えれば、スリット220aはそれぞれ反対側の表面214に到達せず、スリット220bはそれぞれ反対側の表面212に到達しない。
【0037】
支持体110又は210などの支持体は、多層構造を有してもよいことを理解されたい。例えば、支持体は、コア層と、コア層の片側又は両側に配置された1つ以上のポリマー層とを含んでもよい。いくつかの実施形態では、コア層内に少なくとも部分的に延びることにより、スリットのパターンをコア層に形成することができる。そして、1つ以上のポリマー層をコア層上にラミネートして、引き伸ばし可能な支持体を形成することができる。
【0038】
図3は、別の実施形態による接着性物品300の平面図である。接着性物品300は、スリット320のパターンが分布した引き伸ばし可能な支持体310を含む。スリット320のパターンは、より大きなスリット320aのセットと、より小さなスリット320bのセットとを含むことにより、階層構造を有する。より大きなスリット320aはそれぞれ、より小さなスリット320bのグループとグループ化される。
図3に示す実施形態では、スリット320はそれぞれ十字形状を有する。より大きなスリット320aは、例えば、より小さなスリット320bの少なくとも2倍、3倍、4倍又は5倍大きい寸法を有してもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、例えば、パターン120、220及び320など、引き伸ばし可能な支持体上に分布したスリットのパターンは、微小構造化ユニットセルの幾何学的配置を有してもよい。
図4Aは、引き伸ばし可能な支持体110’上のスリット120’のパターンが、微小構造化ユニットセル120cの例示的な幾何学的配置を有する接着性物品の概略平面図である。
図4Bは、(
図4Aに矢印で示すように)支持体110’の長手方向と実質的に垂直なスリットのパターンを含む1つのユニットセル120cを示す。各ユニットセルについて、例えば、カット長l、隣り合う2つのカット間の距離d、及び2つのカット線間の距離hを含む、複数の設計パラメータがある。いくつかの実施形態では、カット長lは、例えば、0.05mm~100mm、0.1mm~50mm、0.2mm~10mm又は0.2mm~5mmの範囲であってもよい。非引き伸ばし状態にあるスリットのカット幅は、例えば、カット長lの少なくとも10倍、20倍、30倍又は50倍小さくてもよい。隣り合う2つのカット間の距離dは、例えば、0.01mm~20mm、0.05mm~10mm、0.1mm~2mm又は0.2mm~1mmの範囲であってもよい。2つのカット線間の距離hは、例えば、0.1mm~2mmの範囲であってもよい。ユニットセルの設計パラメータは、所望の用途に応じて、様々な範囲を有してもよいことを理解されたい。
【0040】
本開示は、ユニットセルの幾何学的構成が接着剤の機械的挙動特性に帰する場合があることを見出した。ユニットセルのパラメータは、調整可能かつ非線形的な機械的特性を有する材料及び構造を設計することにより、本明細書に記載される接着性物品の特性を調節するために適用することができる。ユニットセルは、例えば、直線、曲線、正方形のカットユニットなどを含む様々な形状のカットを含んでもよい。異なるスリットのパターンにより、支持体又はフィルムは、機械的応答特性及び変形形状の大きな多様性をもたらすことができる。
【0041】
本明細書に記載される剥離物品を引き伸ばす独特な特徴的な機械的特性を実現するために、シミュレーション法が、様々なパターンのスリットを含む、かつ/又は、線形弾性及び超弾性の材料の両方を含む異なるタイプの材料で作製された支持体に適用される。
図4Cに示すように、一例として、線形弾性特性を有する
図4Aの引き伸ばし可能な支持体110’の力-変位曲線は、歪み硬化領域を含む高度に非線形的な応力-歪み応答を提示し得る。歪み硬化領域は、層構造(例えば、個々の層の厚さ)、材料特性、微小構造化ユニットの設計(スリット密度、形状など)、又はそれらの組み合わせによって制御することができる。歪み硬化挙動は、ユニットセルの臨界座屈力に関連する。臨界座屈力F
crは、以下の式(1)によって得ることができる。
【数1】
【0042】
引き伸ばし可能な支持体上の長いカット及び高い切込み密度を有するユニットセルの設計は、著しい歪み硬化挙動が望ましい場合の機械的応答をもたらし得る。
図5A~
図5Fは、接着性物品を引き伸ばすための特定の機械的応答を実現するように設計された異なるユニットセルパターンを示す。それぞれの引き伸ばし可能な支持体の長手方向は矢印で示されている。
【0043】
図5Aに示すように、スリットは、長手方向と実質的に垂直な横方向カットの配列を含む。
図5Bに示すように、スリットは、それぞれ長手方向と実質的に垂直な横方向カットの配列と、長手方向と実質的に平行な長手方向カットの配列とを含む。横方向カットは、長手方向カットよりも長い。本開示は、長手方向カットの追加(例えば、
図5Aに対する
図5Bのパターン)が、スリット引き伸ばしフィルムの変形挙動を著しく変更し、横方向の主要なカットのみの場合(
図5A)と比較してより低い剛性をもたらし得ることを見出した。長手方向カットはまた、引き伸ばし可能な支持体又はフィルムの終局的な引き伸ばし性を増加させ得る。
【0044】
図5Cに示すように、スリットは、長手方向と実質的に垂直な横方向カットの配列を含む。各カット/スリットは、両端に更なる穴を追加することを更に含む。理論に束縛されることを望まないが、両端の穴は、スリット両端の亀裂先端応力を解放し、スリット端の時期尚早な亀裂伝播を防止するのに役立ち得ると考えられる。
図5Dに示すように、スリットは、十字形状カットの配列を含む。
図5Eに示すように、スリットは、
図3のパターンと同様の階層構造に配置された十字形状カットの配列を含む。
図5Fに示すように、スリットは、実質的に互いに直交する傾斜カットの2つの配列を含む。傾斜カットはそれぞれ、長手方向と傾斜する方向に延びている。言い換えれば、傾斜カットはそれぞれ、横方向成分及び長手方向成分を有する。
【0045】
スリットの幾何学的形状を研究及び定義するために有限要素モデルを生成した。Simulia,Dassault Systems(Paris,France)による市販の有限要素モデリングソフトウェアAbaqus CAE/Standard 2019を利用して、計算を行った。三次元要素を使用して、変形可能な構造を定義した。スリットは、材料が開くことを可能にすることによって大局的な応力歪み応答を修正する、Abaqus CAEのシームとして定義した。テストされた材料の機械的応答を表すモデルは、超弾性材料の張力測定値に最も適合する2次多項式として定義されるフィルム材料の構成モデルを使用した。モデルは、X軸に沿った伸びを600%の全工学歪みに変位制御し、他の軸では変形を自由にした。計算精度と解法までの速度とを平衡させるために、個々の幾何学的形状について目的にかなう要素サイズを選択した。モデルは、Saint Paul,Minnesotaの3Mキャンパスにある高性能コンピューティング環境で実行された。
【0046】
シミュレーションでは、引き伸ばされたフィルムの応答に及ぼすスリットパターン(ユニットセル)の影響をパラメータ的に調査した。
図5Aのユニットセルを有する引き伸ばし可能な支持体の引き伸ばし前後における変形形状がそれぞれ、
図6A及び
図6Bに示されている。
図5Fのユニットセルを有する別の引き伸ばし可能な支持体の引き伸ばし前後における変形場がそれぞれ、
図7A及び
図7Bに示されている。引き伸ばしは、矢印で示されるように長手方向に沿っていた。数値計算では、スリットの向き(横方向、長手方向又は角度付き/傾斜)、スリット密度、整列したスリット対湾曲スリットなどを含む、様々な設計パラメータを評価した。全ての数値計算を有限要素シミュレーションによって行った。スリットなしの規則的なフィルムと比較して、スリット設計では、引き伸ばし中に著しい梁曲げ及び回転があり、これにより、
図8について以下で更に説明するように、著しい伸び範囲(歪み軟化)及び最終段階での歪み硬化をもたらすことができる。
【0047】
スリット構造の機械的応答は、例えば、上記の寸法パラメータを変更することにより、スリット設計によって調節することができる。スリット構造により、構造内のカットの密度によって剛性及び破壊歪みを調整することができる。例えば、スリット密度が高いほど、より軟性であり、かつ引き伸ばし可能性が高い。
【0048】
図8は、実施例1(E1)、実施例2(E2)及び比較例(CE)の応力-歪み曲線を示す。実施例1(E1)、実施例2(E2)及び比較例(CE)のユニットセルは、
図8の挿入図に示されている。実施例1(E1)、実施例2(E2)及び比較例(CE)は、スリットのパターンの有無を除いて、同じ支持体フィルムである。実施例1(E1)は、
図5Aに示したようなスリットのパターンを有する。実施例2(E2)は、
図5Bに示したようなスリットのパターンを有する。比較例(CE)は、スリットを有していない。E1及びE2の応力-歪み曲線はそれぞれ、3つの状態、すなわち、(i)CEと同様の初期状態、(ii)第2の軟性状態(プラトー領域)、及び(iii)最終硬化状態を含む。応力-歪み曲線の原理は、Isobaらによる、2016、Initial rigid response and softening transition of highly stretchable kirigami sheet materials,Scientific Reports,DOI:10.1038/srep24758に説明されている。初期状態(i)では、面内変形が支配的である。状態(ii)及び(iii)では、面外変形及び(回転なし及び回転ありの)曲げにより、歪み軟化応答及び歪み硬化応答の特徴がもたらされる。
図8に示すように、スリットなしの比較例(CE)は、小さな伸びで破損する場合がある。E1及びE2の場合、各支持体フィルムは、より大きな伸びを維持することができる。E1及びE2の場合、状態(ii)のプラトー領域は、引き伸ばし中に一様な歪みをもたらし、かつ伸びるフィルムの剥離前面及びネッキング領域の付近での時期尚早な破損を防止することができる、支持体フィルムの機械的応答における歪み硬化の発生を反映する。スリット設計を変更することにより、異なる伸び限界及び力レベルを調節することができる。
【0049】
別段の指示がない限り、本明細書及び実施形態で使用される量又は成分、特性の測定値などを表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されていると理解されるものとする。したがって、反対の指示がない限り、前述の明細書及び添付の実施形態のリストにおいて述べる数値パラメータは、本開示の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。最低でも、各数値パラメータは少なくとも、報告される有効桁の数に照らして通常の丸め技法を適用することにより解釈されるべきであるが、このことは請求項記載の実施形態の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではない。
【0050】
本開示の例示的な実施形態は、本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく、様々な修正及び変更を行ってもよい。したがって、本開示の実施形態は、以下に記載の例示的な実施形態に限定されるものではないが、特許請求の範囲に記載されている限定及びそれらの任意の均等物により支配されるものであることを理解すべきである。
【0051】
例示的な実施形態のリスト
例示的な実施形態を以下に列挙する。実施形態1~15及び16~26のいずれか1つは組み合わせることができることを理解されたい。
【0052】
実施形態1は、引き伸ばし剥離可能な接着性物品であって、
第1の方向に沿って延び、かつ第1の主面及び第1の主面とは反対側の第2の主面を有する、引き伸ばし可能な支持体を備え、
引き伸ばし可能な支持体の第1及び第2の主面の少なくとも一方が、引き伸ばし剥離可能な接着面であり、
引き伸ばし可能な支持体が、引き伸ばし可能な支持体上に分布し、かつ引き伸ばし可能な支持体の引き伸ばし時に変形して引き伸ばし可能な支持体を伸ばすように構成された、スリットのパターンを含む、引き伸ばし剥離可能な接着性物品である。
【0053】
実施形態2は、引き伸ばし剥離を容易にするために、引き伸ばし可能な支持体の一方の端部に配置されたタブを更に備える、実施形態1に記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品である。
【0054】
実施形態3は、タブが、引き伸ばし可能な支持体の延長部を含む、実施形態2に記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品である。
【0055】
実施形態4は、引き伸ばし可能な支持体が、ポリマー発泡体、ポリマーフィルム又はそれらの組み合わせを含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品である。
【0056】
実施形態5は、引き伸ばし可能な支持体が、約50%~約1200%の長手方向破断点伸びを有する、実施形態1~4のいずれか1つに記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品である。
【0057】
実施形態6は、引き伸ばし剥離可能な接着面が、引き伸ばし可能な支持体の第1の主面の少なくとも一部分に配置された第1の引き伸ばし剥離可能な接着層と、第2の主面の少なくとも一部分に配置された第2の引き伸ばし剥離可能な接着層とを含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品である。
【0058】
実施形態7は、スリットのパターンが、第1の方向と実質的に垂直な方向に沿ってそれぞれ延びるスリットの配列を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品である。
【0059】
実施形態8は、スリットがそれぞれ、引き伸ばし時に引き伸ばし可能な支持体の開口に変形する、実施形態7に記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品である。
【0060】
実施形態9は、スリットがそれぞれ、それぞれのスリットの両端に一対の穴を含む、実施形態7又は8に記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品である。
【0061】
実施形態10は、スリットのパターンが、第1の方向と実質的に平行な方向に沿ってそれぞれ延びるスリットの配列を含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品である。
【0062】
実施形態11は、スリットのパターンが、周期的な配置で複数のスリットユニットセルを含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品である。
【0063】
実施形態12は、スリットのパターンが、厚さ方向に引き伸ばし可能な支持体を通ってそれぞれ延びる1つ以上の貫通スリットを含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品である。
【0064】
実施形態13は、スリットのパターンが、厚さ方向に引き伸ばし可能な支持体内にそれぞれ部分的に延びる1つ以上のスリットを含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品である。
【0065】
実施形態14は、スリットのパターンが、第1の主面から引き伸ばし可能な支持体内にそれぞれ部分的に延びる1つ以上のスリットと、第2の主面から引き伸ばし可能な支持体内にそれぞれ部分的に延びるスリットの第2のセットとを含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品である。
【0066】
実施形態15は、スリットのパターンが階層構造を有する、実施形態1~14のいずれか1つに記載の引き伸ばし剥離可能な接着性物品である。
【0067】
実施形態16は、引き伸ばし剥離可能な接着性テープを作製する方法であって、
第1の方向に沿って延び、かつ第1の主面及び第1の主面とは反対側の第2の主面を有する、引き伸ばし可能な支持体を用意するステップであって、引き伸ばし可能な支持体の第1及び第2の主面の少なくとも一方が、引き伸ばし剥離可能な接着面である、ステップと、
引き伸ばし可能な支持体上に分布したスリットのパターンを設けるステップであって、スリットがそれぞれ、引き伸ばし可能な支持体の引き伸ばし時に変形して引き伸ばし可能な支持体を伸ばすように構成されている、ステップとを含む、方法である。
【0068】
実施形態17は、基材表面からの引き伸ばし剥離可能な接着性物品の引き伸ばし剥離を容易にするために、引き伸ばし可能な支持体の一方の端部に配置されたタブを設けるステップを更に含む、実施形態16に記載の方法である。
【0069】
実施形態18は、タブが、引き伸ばし可能な支持体の延長部を含む、実施形態17に記載の方法である。
【0070】
実施形態19は、引き伸ばし可能な支持体が、ポリマー発泡体、ポリマーフィルム又はそれらの組み合わせを含む、実施形態16~18のいずれか1つに記載の方法である。
【0071】
実施形態20は、スリットのパターンが、第1の方向と実質的に垂直な方向に沿ってそれぞれ延びるスリットの配列を含む、実施形態16~19のいずれか1つに記載の方法である。
【0072】
実施形態21は、スリットがそれぞれ、引き伸ばし時に引き伸ばし可能な支持体の開口に変形する、実施形態20に記載の方法である。
【0073】
実施形態22は、スリットのパターンが、第1の方向と実質的に平行な方向に沿ってそれぞれ延びるスリットの配列を含む、実施形態16~21のいずれか1つに記載の方法である。
【0074】
実施形態23は、スリットのパターンが、引き伸ばし可能な支持体を通ってそれぞれ延びる1つ以上の貫通スリットを含む、実施形態16~22のいずれか1つに記載の方法である。
【0075】
実施形態24は、スリットのパターンが、引き伸ばし可能な支持体内にそれぞれ部分的に延びる1つ以上のスリットを含む、実施形態16~23のいずれか1つに記載の方法である。
【0076】
実施形態25は、スリットのパターンが階層構造を有する、実施形態16~24のいずれか1つに記載の方法である。
【0077】
実施形態26は、スリットのパターンを設けるステップが、引き伸ばし可能な支持体をダイカットすることを含む、実施形態16~25のいずれか1つに記載の方法である。
【0078】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、又は「ある実施形態」に対する言及は、「実施形態」という用語の前に、「例示的な」という用語が含まれているか否かに関わらず、その実施形態に関連して説明される具体的な特徴、構造、材料、又は特性が、本開示の特定の例示的な実施形態のうちの少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して、様々な箇所における「1つ以上の実施形態において」、「特定の実施形態において」、「一実施形態において」、又は「ある実施形態において」などの表現の出現は、必ずしも本開示の特定の例示的な実施形態のうちの同一の実施形態に言及するものとは限らない。更に、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施形態では任意の好適な方法で組み合わされてもよい。本明細書ではいくつかの例示的な実施形態について詳細に説明してきたが、当業者には上述の説明を理解した上で、これらの実施形態の修正形態、変形形態、及び均等物を容易に想起できることが、理解されよう。したがって、本開示は、ここまで説明してきた例示的実施形態に、過度に限定されるものではないことを理解されたい。更に、種々の例示的な実施形態が説明されてきた。これらの実施形態及び他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。
【国際調査報告】