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特表2023-508545銀及びフッ化物を含有する硬化性口腔ケア組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】銀及びフッ化物を含有する硬化性口腔ケア組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/61 20200101AFI20230222BHJP
   A61K 6/62 20200101ALI20230222BHJP
   A61K 6/60 20200101ALI20230222BHJP
   A61K 6/889 20200101ALI20230222BHJP
【FI】
A61K6/61
A61K6/62
A61K6/60
A61K6/889
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540423
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(85)【翻訳文提出日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 IB2020062514
(87)【国際公開番号】W WO2021137152
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】62/956,008
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/968,115
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ワン,イジョン
(72)【発明者】
【氏名】ルシン,リチャード ピー.
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ジエ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】トン,ティファニー ティー.
(72)【発明者】
【氏名】カレラ ヴィダル,カローラ エー.
(72)【発明者】
【氏名】オクスマン,ジョエル ディー.
【テーマコード(参考)】
4C089
【Fターム(参考)】
4C089AA01
4C089AA06
4C089AA10
4C089BA09
4C089BA10
4C089BA11
4C089BA17
4C089BB01
4C089BC12
4C089BD01
4C089BD05
4C089BE01
4C089CA10
(57)【要約】
銀-フッ化物組成物と硬化性樹脂組成物とを含む、歯科用組成物を記載している。歯科用組成物を用いて歯表面を補修するための方法、及びそのためのキットも記載している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀カチオン源、
フッ化物アニオン源、
ヨウ化物アニオン源又はチオシアン酸アニオン源、及び

を含む銀-フッ化物組成物と、
少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマー
を含む硬化性樹脂組成物と
を含む、歯科用組成物。
【請求項2】
銀カチオンが、前記銀-フッ化物組成物の重量に対して13重量%~17重量%の量で存在する、請求項1に記載の歯科用組成物。
【請求項3】
前記フッ化物アニオンが、前記銀-フッ化物組成物の重量に対して2.25重量%~3.0重量%の量で存在する、請求項1又は2に記載の歯科用組成物。
【請求項4】
0.42:1未満のモル比の、銀カチオン及びヨウ化物アニオンと、
前記歯科用組成物の重量に対して41.2重量%未満の量で存在する水と
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項5】
0.37:1未満のモル比の、銀カチオン及びチオシアン酸アニオンと、
前記歯科用組成物の重量に対して57.1重量%未満の量で存在する水と
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項6】
前記銀-フッ化物組成物の重量に対して45重量%未満の量で水が存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項7】
前記銀カチオン源が、フッ化銀、塩化銀、硝酸銀、ヨウ化銀、フッ化ジアンミン銀、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項8】
前記フッ化物アニオン源が、フッ化銀、フッ化ジアンミン銀、フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム、有機フッ化アンモニウム、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項9】
前記ヨウ化物アニオン源が、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化銀、及びこれらの組み合わせから選択されるか、又は
前記チオシアン酸アニオン源が、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸グアニジン、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸銀、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項10】
前記銀-フッ化物組成物が、ヨウ化銀、ヨウ化アンモニウム、及びフッ化アンモニウムを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項11】
光開始剤を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項12】
前記光開始剤がビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドである、請求項11に記載の歯科用組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1種の(メタ)アクリレートが、以下の式:
(R)(R)C=CH(R)-C(O)-OR (Ib)、
【化1】
、及び
(R)(R)C=CH(R)-C(O)-R-C(O)-R (IIIb)
[式中、
各R及び各Rは独立して、-H又はC1~6アルキルであり、
各Rは独立して、-H、C1~6アルキル、ハロゲン、又は-CNであり、
は、-H又はC1~12アルキルであり、
ここで、前記C1~12アルキルは、1つ以上の-OH、-C(O)OH、及び-O-P(O)(OH)によって任意選択で置換されており、
各Rは独立して、-O-[R-O-]-R-[R-O-]-、
【化2】
、又は
【化3】
であり、
は、-(CH-(CH=CH)-(CH-C(O)-ORであり、
各Rは独立して、C2~8アルキレンであり、
ここで、前記C2~8アルキレンは、C1~4アルキル、-OH、-OC(O)CH(R)=C(R)(R)、又は-OC(O)-Rによって任意選択で置換されており、
は、結合、C2~8アルキレン、-Cy-O-、-Ar-O-、又は-Ar-R-Ar-O-であり、
各Rは独立して、C2~8アルキレン、-Cy-、-Ar-、又は-Ar-R-Ar-であり、
ここで、前記C2~8アルキレンは、1つ以上のC1~4アルキル及び-OHによって任意選択で置換されており、
はC1~12アルキルであり、ここで、前記C1~12アルキルは、1つ以上の-OH、-C(O)OH、及び-O-P(O)(OH)によって任意選択で置換されており、
は、結合であるか、又はC1~4アルキルによって任意選択で置換されているC1~6アルキレンであり、
Cyは、1つ以上のC1~4アルキルによって任意選択で置換されているC3~8シクロアルキレニルであり、
ArはC6~14アリーレンであり、
Arは、結合又はArであり、
各mは独立して、0~12の整数であり、
各nは独立して、1~10の整数であり、
o、p、及びqはそれぞれ独立して、0~4の整数である]
から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1種の(メタ)アクリレートが、以下の式:
C=CH(R)-C(O)-OR (Ia)、
C=CH(R)-C(O)-R-C(O)-CH(R)=CH (IIa)、及び
C=CH(R)-C(O)-R-C(O)-R (IIIa)
[式中、
各Rは独立して、-H又はC1~6アルキルであり、
は、-H又はC1~12アルキルであり、
ここで、前記C1~12アルキルは、1つ以上の-OH、-C(O)OH、及び-O-P(O)(OH)によって任意選択で置換されており、
各Rは独立して、-O-[R-O-]-R-[R-O-]-、
【化4】
、又は
【化5】
であり、
は、-(CH-(CH=CH)-(CH-C(O)-ORであり、
各Rは独立して、C2~8アルキレンであり、
ここで、前記C2~8アルキレンは、C1~4アルキル、-OH、-OC(O)CH(R)=CH、又は-OC(O)-Rによって任意選択で置換されており、
は、結合、C2~8アルキレン、-Cy-O-、-Ar-O-、又は-Ar-R-Ar-O-であり、
各Rは独立して、C2~8アルキレン、-Cy-、-Ar-、又は-Ar-R-Ar-であり、
ここで、前記C2~8アルキレンは、1つ以上のC1~4アルキル及び-OHによって任意選択で置換されており、
はC1~12アルキルであり、ここで、前記C1~12アルキルは、1つ以上の-OH、
-C(O)OH、及び-O-P(O)(OH)によって任意選択で置換されており、
は、結合であるか、又はC1~4アルキルによって任意選択で置換されているC1~6アルキレンであり、
Cyは、1つ以上のC1~4アルキルによって任意選択で置換されているC3~8シクロアルキレンであり、
ArはC6~14アリーレンであり、
Arは、結合又はArであり、
各mは独立して、0~12の整数であり、
各nは独立して、1~10の整数であり、
o、p、及びqはそれぞれ独立して、0~4の整数である]
から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項15】
前記1種以上の(メタ)アクリレートモノマーが、HEMA、ビス-GMA、TEGDMA、GDMA、GDMAコハク酸塩、DDMA、PEG400DMA、UDMA、HDMA、及びビス-EMAから選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項16】
樹脂変性グラスアイオノマー又はグラスアイオノマーを更に含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項17】
少なくとも1種の酸変性(メタ)アクリレートモノマーを更に含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1種の酸変性(メタ)アクリレートモノマーが、
(R)(R)C=CH(R)-C(O)-OR (Ic)、
【化6】
、及び
(R)(R)C=CH(R)-C(O)-R-C(O)-R (IIIc)
[式中、
各R及び各Rは独立して、-H、C1~6アルキル、及び1つ以上の-C(O)OHによって置換されているC1~6アルキルであり、
各Rは独立して、-H、C1~6アルキル、ハロゲン、-CN、又は1つ以上の-C(O)OHによって置換されているC1~6アルキルであり、
ここで、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、1つ以上の-C(O)OHによって置換されているC1~6アルキルであり、
は、-H又はC1~12アルキルであり、
ここで、C1~12アルキルは、1つ以上の-OH、-C(O)OH、及び-O-P(O)(OH)によって任意選択で置換されており、
各Rは独立して、-O-[R-O-]-R-[R-O-]-、
【化7】
、又は
【化8】
であり、
は、-(CH-(CH=CH)-(CH-C(O)-ORであり、
各Rは独立して、C2~8アルキレンであり、
ここで、前記C2~8アルキレンは、C1~4アルキル、-OH、-OC(O)CH(R)=C(R)(R)、又は-OC(O)-Rによって任意選択で置換されており、
は、結合、C2~8アルキレン、-Cy-O-、-Ar-O-、又は-Ar-R-Ar-O-であり、
各Rは独立して、C2~8アルキレン、-Cy-、-Ar-、又は-Ar-R-Ar-であり、
ここで、前記C2~8アルキレンは、1つ以上のC1~4アルキル及び-OHによって任意選択で置換されており、
はC1~12アルキルであり、ここで、前記C1~12アルキルは、1つ以上の-OH、-C(O)OH、及び-O-P(O)(OH)によって任意選択で置換されており、
は、結合であるか、又はC1~4アルキルによって任意選択で置換されているC1~6アルキレンであり、
Cyは、1つ以上のC1~4アルキルによって任意選択で置換されているC3~8シクロアルキレニルであり、
ArはC6~14アリーレンであり、
Arは、結合又はArであり、
各mは独立して、0~12の整数であり、
各nは独立して、1~10の整数であり、
o、p、及びqはそれぞれ独立して、0~4の整数である]
から選択される、請求項17に記載の歯科用組成物。
【請求項19】
式(Ia)、(IIa)、(IIc)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、及び(IIIc)のモノマーのいずれかのホモポリマー又はコポリマーポリ酸を更に含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の歯科用組成物と、
前記歯科用組成物を歯表面に接触させるように、及び
約250nm~約700nmの波長の光を、前記歯表面の前記歯科用組成物に適用するように、使用者を案内する一連の指示と
を含む、キット。
【請求項21】
前記銀-フッ化物組成物と硬化性樹脂組成物とが、別々の部分として提供される、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
前記銀-フッ化物組成物と硬化性樹脂組成物とが、1剤型として提供される、請求項20に記載のキット。
【請求項23】
歯表面を補修する方法であって、
請求項1~19のいずれか一項に記載の歯科用組成物を提供すること、
前記歯科用組成物を前記歯表面に接触させること、及び
約250nm~約700nmの波長の光を、前記歯表面の前記歯科用組成物に適用すること
を含む、方法。
【請求項24】
前記歯科用組成物を、1剤型組成物として前記歯表面に接触させる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記歯科用組成物を、2剤型組成物として前記歯表面に接触させる、請求項23に記載の方法であって、第1の部分が前記銀-フッ化物組成物を含み、第2の部分が前記硬化性樹脂組成物を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
う蝕症は、細菌によって生成した酸との相互作用から、歯の腐蝕が生じる疾病である。銀塩が抗菌特性を有することは公知であり、フッ化物塩が歯表面を再石灰化することは公知である。銀組成物とフッ化物組成物とはいずれも、う蝕活性の予防及び阻止を支援することが、別々に示されている。
【0002】
フッ化ジアンミン銀は、う蝕による影響を受けた表面を処置するために使用されているが、唾液との反応によってリン酸銀が形成される。リン酸銀は光感受性であり、光に曝露されると永続的に歯を黒色に変色させる。(ジアミン安定剤のない)フッ化銀は水性溶液中で極めて不安定であり、迅速に分解して金属銀を形成する。
【0003】
最近、参照によって公開時の内容が本明細に組み込まれる、国際特許出願第2019/056376(IB)号において、安定形態の水性銀カチオン及びフッ化物アニオンで、う蝕の処置及びう蝕の進行の予防を達成可能であることが実証された。有望ではあるが、溶液の反復的な適用がしばしば必要となる。
【0004】
必要とされるのは、困難な処置計画を必要とせず、かつフッ化物の摂取を減ずることなく、銀及びフッ化物によって歯表面を処置する方法である。本開示は、銀カチオン及びフッ化物アニオンを経時的に放出して、更なる腐蝕を予防することができる、歯表面を再生するための歯科用組成物を記載している。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態では、歯科用組成物を記載している。歯科用組成物は、銀カチオン源、フッ化物アニオン源、ヨウ化物アニオン源又はチオシアン酸アニオン源、及び水を含む銀-フッ化物組成物を含んでもよい。歯科用組成物は、少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーを含む硬化性樹脂組成物を含んでもよい。
【0006】
一実施形態では、キットを記載している。キットは、1)銀カチオン源、フッ化物アニオン源、ヨウ化物アニオン源又はチオシアン酸アニオン源、及び水を含む銀-フッ化物組成物と、2)少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーを含む硬化性樹脂組成物とを含む、歯科用組成物を含んでもよい。キットは、歯科用組成物を歯表面に接触させるように、及び約250nm~約700nmの波長の光を、歯表面の歯科用組成物に適用するように、使用者を案内する一連の指示を更に含んでもよい。
【0007】
一実施形態では、歯表面を補修するための方法を記載している。この方法は、1)銀カチオン源、フッ化物アニオン源、ヨウ化物アニオン源又はチオシアン酸アニオン源、及び水を含む銀-フッ化物組成物と、2)少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーを含む硬化性樹脂組成物とを含む、歯科用組成物を提供することを含んでもよい。この方法は、歯科用組成物を歯表面に接触させること、及び約250nm~約700nmの波長の光を、歯表面の歯科用組成物に適用することを更に含んでもよい。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において使用される場合、「約」とは、所与の値の±10パーセントを意味する。例えば、約10とは、9~11を意味する。
【0009】
本明細書において使用される場合、「アルキル」とは、直鎖又は分枝状の炭化水素鎖を意味する。別段の指示がない限り、炭化水素鎖は飽和している。例えば、C1~6アルキルとは、Cアルキル(すなわちメチル)、Cアルキル(すなわちエチル)、Cアルキル(すなわち、プロピル、イソプロピル)、Cアルキル(例えば、ブチル、イソブチル、secブチル)、Cアルキル(例えばペンチル)、又はCアルキル(例えばヘキシル)を意味する。
【0010】
本明細書において使用される場合、「アルキレニル」とは、二価アルキル基、すなわち-R-[式中、Rとしては((CH)が挙げられ、nは「CX~Y」又は「C~C」によって定義することができ、ここでx及びyは、炭素原子の数を示す整数である]を指す。いくつかの実施形態では、アルキレニル基は、任意選択で置換されていてもよく、すなわち、1個以上の水素が、所定の基、例えば、-OH又はC1~4アルキル等で置き換えられていてもよい。
【0011】
本明細書において使用される場合、「アリール」とは、ヘテロ原子不含芳香族部分を述べている。芳香族化合物は、環状、平面状で、完全に共役しており、ヒュッケル則に従う(すなわち、4n+2個[式中、nは整数である]のπ電子を有する)。例えば、フェニルはCアリールであり、ナフチル及びアズレニルはC10アリールであり、アントラセニル及びフェナントレニルはC14アリールである。アリール基は、非置換であってもよく、例えば、1個以上のハロゲンによって任意選択で置換されているC1~6アルキル(例えば-CF)、C1~6アルコキシ(例えば、-OCH若しくは-OCHCH等)(1個以上のハロゲンによって任意選択で置換されている(例えば-OCF))、又はハロゲン(例えば、I、Br、Cl、F)等の基によって置換されていてもよい。
【0012】
本明細書において使用される場合、「アリーレン」とは、二価アリール基、例えば、-R-[式中、Rは、本明細書に記載の任意のアリール基である]を述べている。
【0013】
本明細書において使用される場合、「シクロアルキレニル」とは、二価シクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシル等を指す。シクロアルキレニルとは、二環式及び縮合シクロアルキル基を含むことを意味し、適切な場合、例えばイソボルニルを含む。あらゆるこのようなシクロアルキル基のサイズは、「CX~Y」又は「C~C」[式中、x及びyは、炭素原子の数を示す整数である]によって定義される。
【0014】
本明細書において使用される場合、「グラスアイオノマー」とは、α、β不飽和カルボン酸、例えば、本明細書に記載の(メタ)アクリレートモノマー、及び本明細書に記載の酸置換(メタ)アクリレートモノマーのホモポリマー又はコポリマー、フルオロアルミノシリケート(FAS)及びフルオロアルミノボレートガラスなどの反応性ガラス充填剤、並びに水を含む組成物を指す。ホモポリマー又はコポリマーは、本明細書において、ポリカルボン酸又はポリ酸と称することもある。
【0015】
本明細書において使用される場合、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート化合物又はアクリレート化合物、例えばC(R)(R)=C(R)C(O)O-R[式中、各Rは本明細書に記載される通りである]を指す。
【0016】
本明細書において使用される場合、「AとBとのうちの1つ以上」又は「少なくとも1つのAと少なくとも1つのBとのうちの1つ以上」などの語句において使用される「のうちの1つ以上」という語句は、組成物が、少なくとも1つのA、1つよりも多くのA、少なくとも1つのB、1つよりも多くのB、少なくとも1つのA及び少なくとも1つのB、1つよりも多くのA及び1つよりも多くのBを含んでもよいこと意味する。言い換えれば、この語句は、組成物が、少なくとも1つのAとBとを各々有しなければならないことを意味することを意図するものではない。
【0017】
本明細書において使用される場合、「任意選択で置換された」とは、所与の置換基によって置換されていてもよく、されていなくてもよい基を述べた。置換とは、所与の置換基に対する水素の交換を示す。例えば、アルキル基、例えば-CHCHCHは、ヒドロキシル基によって置換されていても、されていなくてもよく(すなわち、任意選択)、例えば、-CH(OH)CHCH、-CHCH(OH)CH、又は-CHCHCHOH等であってもよい。任意選択の置換の部位は、安定な化合物をもたらすことになる、交換可能な水素を含む任意の箇所である。
【0018】
本明細書において使用される場合、「ポリカルボン酸」又は「ポリ酸」とは、酸性部分を有するモノマーから誘導されたホモポリマー又はコポリマーを指す。例えば、(メタ)アクリレート又は酸置換(メタ)アクリレートモノマーの任意の組み合わせから誘導されたホモポリマー又はコポリマーは、ポリカルボン酸又はポリ酸と考えられることになる。
【0019】
本明細書において使用される場合、「反応性ガラス」とは、水の存在下でポリカルボン酸と反応してヒドロゲルを形成することができる、イオン浸出性ガラスを指す。
【0020】
本明細書において使用される場合、「樹脂変性グラスアイオノマー」とは、α、β不飽和カルボン酸、例えば、本明細書に記載の(メタ)アクリレートモノマー、及び本明細書に記載の酸置換(メタ)アクリレートモノマーのホモポリマー又はコポリマーを含む組成物を指す。ホモポリマー又はコポリマーは、本明細書において、ポリカルボン酸又はポリ酸と称することもある。樹脂変性グラスアイオノマーは、本明細書に記載の(メタ)アクリレートモノマー、フルオロアルミノシリケートガラス(FAS)及びフルオロアルミノボレートガラスなどの反応性ガラス充填剤、並びに水を更に含む。ポリカルボン酸は、任意選択で、酸性部分のうちのいくつかを変性させて、ペンダント(メタ)アクリレート基によって置き換えるか、エンドキャップしてもよい。
【0021】
歯科用組成物
多くの実施形態では、歯科用組成物を記載している。歯科用組成物は、銀カチオン源、フッ化物アニオン源、ヨウ化物アニオン源又はチオシアン酸アニオン源、及び水を含む銀-フッ化物組成物を含んでもよい。歯科用組成物は、少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーを含む硬化性樹脂組成物を含んでもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、光開始剤を更に含んでもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、光開始剤を更に含んでもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、少なくとも1種の酸置換(メタ)アクリレートモノマーを更に含んでもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、少なくとも1種の酸置換(メタ)アクリレートモノマーを更に含んでもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、本明細書に記載の任意の(メタ)アクリレート又は酸置換(メタ)アクリレートモノマーのホモポリマー又はコポリマーを更に含んでもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、本明細書に記載の任意の(メタ)アクリレート若しくは酸置換(メタ)アクリレートモノマー、すなわち、式(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、又はこれらの組み合わせのモノマーのホモポリマー若しくはコポリマーを更に含んでもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、ポリ酸を更に含んでもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、ポリ酸を更に含んでもよい。
【0030】
多くの実施形態では、歯科用組成物は、歯科用組成物が硬化(cured)又は硬質化した(hardened)後、銀カチオン及びフッ化物アニオンを放出することができる。銀カチオン及びフッ化物アニオンの歯表面への浸出は、う蝕の阻止及び歯構造の再石灰化に役立ち得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、銀-フッ化物組成物の重量に対して約13重量%~20重量%の量で存在する銀カチオンを含んでもよい。例えば、銀カチオンは、銀-フッ化物組成物の重量に対して、約13.0、13.25、13.5、13.75、14.0、14.25、14.5、14.75、15.0、15.25、15.5、15.75、16.0、16.25、16.5、16.75、又は17.0、17.5、18.0、18.5、19.0、19.5、又は20.0重量%の量で存在してもよく、前述の値のうちのいずれかの間の範囲の値、例えば、約13.5重量%~約15.0重量%、又は約14.0重量%~約16.75重量%等の量で存在してもよい。銀アニオン源は、本明細書に記載の任意の供給源であり得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、銀-フッ化物組成物は、それぞれ約0.42:1未満のモル比で存在する、銀カチオンとヨウ化物アニオンとを含んでもよい。例えば、銀カチオンは、ヨウ化物アニオンに対して、約0.42:1、0.40:1、0.38:1、0.36:1、0.34:1、0.32:1、0.30:1、0.28:1、0.26:1、0.24:1、0.22:1、0.20:1、0.18:1、0.16:1、0.14:1、0.12:1、又は0.10:1のモル比で存在してもよく、前述の値のうちのいずれかの間の範囲の値、例えば、約0.35:1~約0.40:1、又は約0.22:1~約0.32:1等で存在してもよい。いくつかの実施形態では、銀カチオンとヨウ化物アニオンとは、約0.10:1未満のモル比で存在してもよい。ヨウ化物アニオン源は、本明細書に記載の任意の供給源であり得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、銀-フッ化物組成物は、約0.37:1未満のモル比で存在する、銀カチオンとチオシアン酸アニオンとを含んでもよい。いくつかの実施形態では、銀-フッ化物組成物は、約0.1:1~約0.37:1のモル比で存在する、銀カチオンとチオシアン酸アニオンとを含んでもよい。例えば、銀カチオンは、チオシアン酸アニオンに対して、約0.1:1、0.15:1、0.2:1、0.25:1、0.30:1、0.35:1、又は0.37:1のモル比で存在してもよく、前述の値のうちのいずれかの間の範囲の値、例えば、約0.15:1~約0.25:1、又は約0.1:1~約0.2:1等で存在してもよい。チオシアン酸アニオン源は、本明細書に記載の任意の供給源であり得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、銀-フッ化物組成物の重量に対して約2.25重量%~4.0重量%の量で存在するフッ化物アニオンを含んでもよい。例えば、銀カチオンは、銀-フッ化物組成物の重量に対して、約2.25、2.30、2.35、2.40、2.45、2.50、2.55、2.60、2.65、2.70、2.75、2.80、2.85、2.90、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、又は4.0重量%の量で存在してもよく、前述の値のうちのいずれかの間の範囲の値、例えば、約2.50重量%~約2.70重量%、又は約2.35重量%~約2.85重量%等の量で存在してもよい。フッ化物アニオン源は、本明細書に記載の任意の供給源であり得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、銀-フッ化物組成物の重量に対して約45重量%未満の量で存在する水を含んでもよい。例えば、水は、銀-フッ化物組成物の重量に対して、約45、44、43、42、41、40、35、30、25、20、15、及び10重量%の量で存在してもよく、前述の値のうちのいずれかの間の範囲の値、例えば、約40重量%~約44重量%、又は約30重量%~約35重量%等の量で存在してもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、溶液の総重量に基づいて、少なくとも20重量%の量で存在する水を含んでもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、ヨウ化物アニオンを有する銀-フッ化物組成物を含み、銀-フッ化物組成物の重量に対して41.2重量%未満の量で存在する水を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、チオシアン酸アニオンを有する銀-フッ化物組成物を含み、銀-フッ化物組成物の重量に対して57.1重量%未満の量で存在する水を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、銀-フッ化物組成物は、歯科用組成物の重量に対して約5重量%~約55重量%の重量%の量で存在してもよい。例えば、銀-フッ化物組成物は、歯科用組成物の重量に対して、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、又は55重量%の量で存在してもよく、前述の値のうちのいずれかの間の範囲の値、例えば、約25重量%~約35重量%、又は約20重量%~約45重量%等の量で存在してもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、1種以上の(メタ)アクリレートモノマーは、歯科用組成物の重量に対して約45重量%~約95重量%の重量%の量で存在してもよい。例えば、1種以上の(メタ)アクリレートモノマーは、歯科用組成物の重量に対して、約45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、又は95重量%の量で存在してもよく、前述の値のうちのいずれかの間の範囲の値、例えば、約55重量%~約65重量%、又は約40重量%~約50重量%等の量で存在してもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、光開始剤は、歯科用組成物の重量に対して約1重量%未満の重量%の量で存在する。
【0042】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、樹脂変性グラスアイオノマー(resin-modified glass ionomer、RMGI)、グラスアイオノマー(glass ionomer、GI)、又はこれらの組み合わせを更に含んでもよい。一般に、GI及びRMGI材料は、重合樹脂マトリックスを形成して歯に結合する、自己硬化及び/又は光硬化のいずれかをした、生物活性歯科用再生材料である。樹脂変性グラスアイオノマーは、本明細書に記載されるものなどの(メタ)アクリレートモノマーを含んでもよく、これには、1つ以上のペンダント酸基を有するもの、すなわち酸置換(メタ)アクリレートモノマーが含まれる。
【0043】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、歯、歯肉、頬、舌、及び口蓋等の障害、疾病、又は状態に対して口腔を保護する、1種以上の活性剤を更に含んでもよい。用いることができる活性剤の例としては、1種以上の他のフッ素含有化合物、例えば、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズ、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化亜鉛、フッ化カリウム亜鉛、フッ化アンモニウム、フッ化マグネシウムカリウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。用いることができる更なる活性剤の例としては、1種以上の増白剤、抗歯石剤、再石灰化剤、第一スズ源、抗菌剤、抗酸化剤、唾液刺激剤、呼気清涼化剤(breath freshening agents)、抗歯垢剤、抗炎症剤、H拮抗薬、減感剤、栄養素、タンパク質、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0044】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、増白剤を更に含んでもよい。増白剤の例としては、過酸化物増白剤、非過酸化物増白剤、又はその両方が挙げられる。過酸化物増白剤としては、過酸化水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の過酸化物、例えば、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化リチウム、過酸化マグネシウム、過酸化カルシウム、及び過酸化バリウム等、過酸化水素グリセリル、過酸化水素アルキル、過酸化ジアルキル、過酸又は過酸塩、過酸化ベンゾイル(benxoyl peroxide)、及び過酸化尿素等が挙げられる。過酸化水素が、最も一般的である。非過酸化物増白剤としては、二酸化塩素、亜塩素酸、及び次亜塩素酸が挙げられる。亜塩素酸及び次亜塩素酸は、典型的には、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の形態、例えば、リチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、又はバリウムの塩の形態である。着色剤、二酸化チタン、及びヒドロキシアパタイトもまた、使用することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は抗歯石剤を更に含んでもよく、これは、多種多様な好適な抗歯石剤であり得る。抗歯石剤としては、例えば、ホスフェート、ポリホスフェート、例えばピロホスフェート、スルホン酸ポリオレフィン、リン酸ポリオレフィン、ジホスホネート、ホスホノアルカンカルボン酸、及びこれらの塩、典型的にはアルカリ金属塩又はアンモニウム塩を挙げることができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、再石灰化剤を更に含んでもよい。再石灰化剤の例としては、例えば、カルシウムイオン、リン含有イオン、又はその両方を放出する材料、例えば、リン酸カルシウム(例えば、リン酸モノカルシウム、リン酸ジカルシウム、及び/又はリン酸トリカルシウム)、ヒドロキシアパタイト、並びに炭酸カルシウム等が挙げられる。カルシウムイオンを放出する材料の例は、水溶性のカルシウム塩、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸グルコン酸カルシウム、酢酸カルシウム、これらの水和物、及びこれらの組み合わせから選択されるものである。ある特定の実施形態では、再石灰化剤は、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、これらの水和物、及びこれらの組み合わせから選択され得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のカルシウム再石灰化塩は、フッ化物放出プロファイルを調節するためにも使用することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、第一スズイオンを更に含んでもよい。第一スズイオン源としては、例えば、ハロゲン化第一スズ、有機第一スズカルボン酸塩、例えば、ギ酸第一スズ、酢酸第一スズ、グルコン酸第一スズ、乳酸第一スズ、酒石酸第一スズ、及びクエン酸第一スズが挙げられる。フッ化物源がフッ化第一スズである場合、これはまた、第一スズ源としても機能することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、抗菌剤を更に含んでもよい。例としては、トリクロサン、8-ヒドロキシキノリン、亜鉛イオン、第一スズイオン、第二銅化合物、フタル酸及びその塩、第四級アンモニウム化合物、サンギナリン、サリチルアニリド、サリチル酸、チモール、オイゲノール、ネオマイシン、カナマイシン、クリンダマイシン、アモキシシリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、メトロニダゾール、及びクロロヘキシジン等が挙げられる。
【0050】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、抗酸化剤を更に含んでもよい。例としては、ブチル化ヒドロキシアニゾン、ブチル化ヒドロキシトルエン、ビタミンA、カロテノイド、ビタミンE、フラボノイド、ポリフェノール、アスコルビン酸又はその塩、クロロフィル、及びメラトニン等が挙げられる。
【0051】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、唾液刺激剤を更に含んでもよい。例としては、クエン酸、乳酸、コハク酸、アスコルビン酸、アジピン酸、フマル酸、及び酒石酸が挙げられる。
【0052】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、呼気清涼化剤を更に含んでもよい。例としては、亜鉛塩、例えばグルコン酸亜鉛塩、クエン酸亜鉛塩、及び亜塩素酸亜鉛塩、並びにα-イオノン等が挙げられる。
【0053】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、抗歯垢剤を更に含んでもよい。例としては、第一スズ塩、銅、マグネシウム又はストロンチウムの塩、ジメチコンコポリオール、例えば、セチルジメチコンコポリオール、パパイン、グルカミラーゼ(glucamylase)、グルコースオキシダーゼ、尿素、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、及びポリアクリル酸ストロンチウム(strontium polyacrylate)等が挙げられる。抗歯垢剤の更なる例としては、バイオフィルム阻害剤、特に、米国特許第8,968,709号(Yang et al.)に記載されているものが挙げられる。
【0054】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、抗炎症剤を更に含んでもよい。例としては、ステロイド、例えばフルシノロン及びヒドロコルチゾン、非ステロイド抗炎症薬剤、例えば、ケトロラク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、ジクロフェナク、エトドラク、インドメタシン、スリンダク、トムルメチン(tomlmetin)、ケトプロフェン、フェノプロフェン、ピロキシカム、ナブメトン、アセチルサリチル酸、サリチル酸、ジフルニサル、メクロフェナメート、メフェナム酸(mefenamic aicd)、オキシフェンブタゾン、及びフェニルブタゾン等が挙げられる。
【0055】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、H拮抗薬を更に含んでもよい。例としては、シメチジン、エチニジン、ラニチジン、チオチジン、ルピチジン、デネチジン、ファモチジン、ロキサチジン、ピファチジン、ラムチジン、ザルチジン、ニザチジン、ミフェンチジン、ラミキソチジン、ロキシチジン、ビスフェンチジン、サフォチジン、エブロチジン、及びイムプロミジン等が挙げられる。
【0056】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、減感剤を更に含んでもよい。例としては、クエン酸カリウム、塩化カリウム、酒石酸カリウム、重炭酸カリウム、シュウ酸カリウム、硝酸カリウム、ストロンチウム塩、アルギニン、アセチルサリチル酸又はその塩、サリチル酸又はその塩、コデイン、及びアセトアミノフェン等が挙げられる。
【0057】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、栄養素を更に含んでもよい。例としては、ビタミン、例えば、ビタミンC、ビタミンD、チアミン、リボフラビン、葉酸、ニコチンアミド、ナイアシン、ピリドキシン、及びビオフラボノイド等、サプリメント、例えば、アミノ酸、脂肪作用薬、魚油、多価不飽和脂肪酸、エイコサペンタン酸、ドコサヘキサン酸、コエンザイムQ10、ユビキノン、及びカリウムなどのミネラル等が挙げられる。
【0058】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、タンパク質を更に含んでもよい。例としては、乳タンパク質、過酸化物産生酵素、アミラーゼ、パパイン、グルコアミラーゼ、及びグルコースオキシダーゼ等が挙げられる。
【0059】
多くの実施形態では、歯科用組成物は、(香味剤又は甘味料の担体/溶媒として使用される有機溶媒とは対照的な、)液体担体として機能する有機溶媒を含まない。例えば、ある特定の添加剤は、液体担体としての有機溶媒中の溶液又は分散液として提供され得る。本開示の水性口腔ケア溶液中にいずれかの有機溶媒(液体担体として機能する)が存在する場合、有機溶媒は、歯科用組成物の重量に対して5重量%未満の量で存在する。
【0060】
多くの実施形態では、歯科用組成物は、歯を着色しない。これは、歯科用組成物を1%のリン酸塩溶液と3:1の比で組み合わせ、これを430nm~480nm前後の波長、およそ1500mW/cm(-10%/+20%)の出力を有する青色LED光、例えば商標名3M ELIPAR DEEPCURE-S LED硬化光で市販されている(3M Company(St.Paul,MN)から入手可能)なものに20秒曝露し、混合物が黒色析出物となるかを確認することによって、判定することができる。
【0061】
多くの実施形態では、歯科用組成物は、特に密閉容器内の場合、(ヒトの目で検出可能に)析出することなく、少なくとも1年間貯蔵安定である。したがって、本開示の水性口腔ケア溶液は、追加の水又は唾液と接触するまで、少なくとも1年間清澄(すなわち、透明又は半透明)である。
【0062】
銀カチオン源
いくつかの実施形態では、銀カチオン源は、フッ化銀、塩化銀、硝酸銀、ヨウ化銀、及びフッ化ジアンミン銀のうちの1つ以上から選択され得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、銀カチオン源は、フッ化銀、塩化銀、硝酸銀、及びヨウ化銀のうちの1つ以上から選択され得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、銀カチオン源はヨウ化銀である。
【0065】
フッ化物アニオン源
いくつかの実施形態では、フッ化物アニオン源は、フッ化銀、フッ化ジアンミン銀、フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム、及び有機フッ化アンモニウムのうちの1つ以上から選択される。
【0066】
本明細書において使用される場合、「有機フッ化アンモニウム」とは、式R[式中、少なくとも1つのRは、C~C26炭化水素である]の化合物を述べている。有機フッ化アンモニウムの例としては、3-[オクタデシル(2-ヒドロキシエチル)アミノ]プロピル]ビス(2-ヒドロキシエチル)アミンジヒドロフルオリド(OLAFLUR)、CH(CHCH=CH(CHNH (DECTAFLUR)、又はテトラブチルアンモニウムフルオリド等が挙げられる。
【0067】
いくつかの実施形態では、フッ化物アニオン源は、フッ化銀、フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム、及び有機フッ化アンモニウムのうちの1つ以上から選択される。
【0068】
いくつかの実施形態では、フッ化物アニオン源は、フッ化銀、フッ化ジアンミン銀、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム、及び有機フッ化アンモニウムのうちの1つ以上から選択される。
【0069】
いくつかの実施形態では、フッ化物アニオン源は、フッ化銀、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム、及び有機フッ化アンモニウムのうちの1つ以上から選択される。
【0070】
いくつかの実施形態では、フッ化物アニオン源はフッ化アンモニウムである。
【0071】
ヨウ化物アニオン源
いくつかの実施形態では、ヨウ化物アニオン源は、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、及びヨウ化銀のうちの1つ以上から選択される。
【0072】
いくつかの実施形態では、ヨウ化物アニオン源は、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化ナトリウム、及びヨウ化カリウムのうちの1つ以上から選択される。
【0073】
いくつかの実施形態では、ヨウ化物アニオン源は、ヨウ化アンモニウム及びヨウ化銀である。
【0074】
いくつかの実施形態では、ヨウ化物アニオン源はヨウ化アンモニウムである。
【0075】
チオシアン酸アニオン源
いくつかの実施形態では、チオシアン酸アニオン源は、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸グアニジン、チオシアン酸カリウム、及びチオシアン酸銀のうちの1つ以上から選択される。
【0076】
いくつかの実施形態では、チオシアン酸アニオン源は、チオシアン酸アンモニウムである。
【0077】
硬化性樹脂組成物
多くの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、1種以上の(メタ)アクリレートモノマーを含んでもよい。いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、1~10種の(メタ)アクリレートモノマー、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10種の(メタ)アクリレートモノマーを含んでもよい。いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、1~5種の(メタ)アクリレートモノマーを含んでもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、1種以上の(メタ)アクリレートモノマーは、歯科分野において公知である、任意の公知のアクリレート、ジアクリレート、又はトリアクリレートモノマーを含んでもよい。脂肪族、脂環式、芳香族(アリール及びアラルキル)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ウレタニル、並びにこれらの組み合わせを含めた、様々な連結基が公知である。様々な酸性官能基、例えば、カルボン酸及びホスフェート等が、歯表面への再生材の付着を補助することは公知である。上記の特徴の任意の組み合わせを有する任意の(メタ)アクリレートモノマーを生成するための方法を、当業者は理解している。
【0079】
いくつかの実施形態では、1種以上の(メタ)アクリレートモノマーは、以下の式:
C=CH(R)-C(O)-OR (Ia)、
C=CH(R)-C(O)-R-C(O)-CH(R)=CH (IIa)、及び
C=CH(R)-C(O)-R-C(O)-R (IIIa)
[式中、
各Rは独立して、-H又はC1~6アルキルであり、
は、-H又はC1~12アルキルであり、
ここで、C1~12アルキルは、1つ以上の-OH、-C(O)OH、及び-O-P(O)(OH)によって任意選択で置換されており、
各Rは独立して、-O-[R-O-]-R-[R-O-]-、
【化1】
、又は
【化2】
であり、
は、-(CH-(CH=CH)-(CH-C(O)-ORであり、
各Rは独立して、C2~8アルキレンであり、
ここで、C2~8アルキレンは、C1~4アルキル、-OH、-OC(O)CH(R)=CH、又は-OC(O)-Rによって任意選択で置換されており、
は、結合、C2~8アルキレン、-Cy-O-、-Ar-O-、又は-Ar-R-Ar-O-であり、
各Rは独立して、C2~8アルキレン、-Cy-、-Ar-、又は-Ar-R-Ar-であり、
ここで、C2~8アルキレンは、1つ以上のC1~4アルキル及び-OHによって任意選択で置換されており、
はC1~12アルキルであり、ここで、C1~12アルキルは、1つ以上の-OH、-C(O)OH、及び-O-P(O)(OH)によって任意選択で置換されており、
は、結合であるか、又はC1~4アルキルによって任意選択で置換されているC1~6アルキレンであり、
Cyは、1つ以上のC1~4アルキルによって任意選択で置換されているC3~8シクロアルキレニルであり、
ArはC6~14アリーレンであり、
Arは、結合又はArであり、
各mは独立して、0~12の整数であり、
各nは独立して、1~10の整数であり、
o、p、及びqはそれぞれ独立して、0~4の整数である]
から選択され得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、m+mは12以下である。
【0081】
いくつかの実施形態では、n+nは12以下である。
【0082】
いくつかの実施形態では、n+o+pは0よりも大きい。
【0083】
いくつかの実施形態では、n+pは0~6である。
【0084】
いくつかの実施形態では、oは0である。
【0085】
いくつかの実施形態では、oは1である。
【0086】
多くの実施形態では、m及びnを定義する整数は、近似値であってもよい。例えば、m+m=9は、所与の分子量のための単位の平均数を述べていることもある。いくつかの成分は、m+m=6、7、8、9、10、11、又は12を含み得るが、全体では9という平均値を有し得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、式II[式中、各RはCアルキルであり、Rは-O-[R-O-]-R-[R-O-]-であり、ここで、各mは1であり、各RはCアルキレンであり、Rは-Ar-R-Ar-O-であり、Rは、2つのCアルキルによって置換されているCアルキレンである]によって表されるエトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート(ビス-EMA)を含んでもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、式II[式中、各RはCアルキルであり、Rは-O-[R-O-]-R-[R-O-]-であり、ここで、各mは1であり、各Rは、-OHによって置換されているCアルキレンであり、Rは-Ar-R-Ar-O-であり、Rは、2つのCアルキルによって置換されているCアルキレンである]によって表されるビスフェノールAグリシジルメタクリレート(ビス-GMA)を含んでもよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、式II[式中、各RはCアルキルであり、Rは-O-[R-O-]-R-[R-O-]-であり、ここで、各mは1であり、各Rは、-OC(O)CH(R)=CHによって置換されているCアルキレンであり、Rは-Ar-R-Ar-O-であり、Rは、2つのCアルキルによって置換されているCアルキレンである]によって表されるメタクリル化ビスフェノールAグリシジルメタクリレート(MA-ビス-GMA)を含んでもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、式I[式中、RはCアルキルであり、RはC12アルキルである]によって表されるドデシルメタクリレート(DDMA)を含んでもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、式II[式中、各RはCアルキルであり、Rは-O-[R-O-]-R-[R-O-]-であり、ここで、m+mは1であり、Rは、-OHによって置換されているCアルキレンであり、Rは結合である]によって表されるグリセロールジメタクリレート(GDMA)を含んでもよい。
【0092】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、グリセロールジメタクリレートコハク酸塩(GDMAコハク酸塩)を含んでもよく、ここで、各RはCアルキルであり、Rは-O-[R-O-]-R-[R-O-]-であり、ここで、m+mは1であり、Rは、-OC(O)-Rによって置換されているCアルキレンであり、Rは結合であり、Rは、-C(O)OHによって置換されているCアルキレンである。
【0093】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、式I[式中、RはCアルキルであり、Rは、-OHによって置換されているCアルキルである]によって表されるヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を含んでもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、式III[式中、RはCアルキルであり、Rは、-O-[R-O-]-R-[R5-O-]-であり、ここで、m+mは1であり、Rは-(CH-(CH=CH)-(CH-C(O)-ORであり、ここで、RはHであり、o+qは2であり、pは0であり、RはCアルキレンであり、Rは結合である]によって表されるヒドロキシエチルメタクリレートコハク酸塩(HEMAコハク酸塩)を含んでもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、式I[式中、RはCアルキルであり、Rは、-OP(O)(OH)によって置換されているCアルキルである]によって表されるヒドロキシエチルメタクリレートホスホン酸塩(HEMAホスホン酸塩)を含んでもよい。
【0096】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、式II[式中、各RはCアルキルであり、Rは-O-[R-O-]-R-[R-O-]-であり、RはCアルキレンであり、各mは0である]によって表される1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート(HDMA)を含んでもよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、式I[式中、RはCアルキルであり、Rは、-OP(O)(OH)によって置換されているC10アルキルである]によって表される10-メタクリロイルオキシデシルリン酸二水素塩(MDP)を含んでもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、式I[式中、RはCアルキルであり、Rは、-OP(O)(OH)によって置換されているCアルキルである]によって表される6-メタクリロイルオキシデシルリン酸二水素塩(MHP)を含んでもよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、式II[式中、各RはCアルキルであり、Rは]によって表されるポリ(エチレングリコール)(400)ジメタクリレート(PEG400DMA)を含んでもよい。
【0100】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、式II[式中、各RはCアルキルであり、Rは-O-[R-O-]-R-[R-O-]-であり、ここで、m+mは3であり、各RはCアルキレンであり、Rは結合である]によって表されるトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)を含んでもよい。
【0101】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、式II[式中、各RはCアルキルであり、R
【化3】
であり、ここで、各nは1であり、各Rは-Hであり、各RはCアルキレンであり、Rは、3つのCアルキルによって置換されているCアルキレンである]によって表されるウレタンジメタクリレート(UDMA)を含んでもよい。
【0102】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、ビス-GMA、TEGDMA、GDMA、GDMAコハク酸塩、及びHEMAのうちの1つ以上を含んでもよい。
【0103】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、HEMA、ビス-GMA、TEGDMA、GDMA、GDMAコハク酸塩、DDMA、PEG400DMA、UDMA、HDMA、及びビス-EMAのうちの1つ以上を含んでもよい。
【0104】
いくつかの実施形態では、1種以上の(メタ)アクリレートモノマーは、単一単位のモノマー、例えば、式I、II、IIIによって記載されるモノマーの形態であってもよい。
【0105】
他の実施形態では、1種以上の(メタ)アクリレートモノマーは、繰り返し単位のモノマー、すなわち、1つ(単一)よりも多い単位のモノマーを有するモノマーの形態であってもよい。繰り返し単位のモノマーは部分的に硬化され、2~100個のモノマー単位を有し得る。いくつかの実施形態では、繰り返し単位のモノマーは、1種のモノマータイプを含む。他の実施形態では、繰り返し単位のモノマーは、2種以上のモノマータイプ、すなわち、本明細書に記載の2種以上の(メタ)アクリレートモノマーを含み得る。
【0106】
他の実施形態では、1種以上の(メタ)アクリレートモノマーは、以下の式:
(R)(R)C=CH(R)-C(O)-OR (Ib)、
【化4】
、及び
(R)(R)C=CH(R)-C(O)-R-C(O)-R (IIIb)
[式中、
各R及び各Rは独立して、-H又はC1~6アルキルであり、
各Rは独立して、-H、C1~6アルキル、ハロゲン、又は-CNであり、
は、-H又はC1~12アルキルであり、
ここで、C1~12アルキルは、1つ以上の-OH、-C(O)OH、及び-O-P(O)(OH)によって任意選択で置換されており、
各Rは独立して、-O-[R-O-]-R-[R-O-]-、
【化5】
、又は
【化6】
であり、
は、-(CH-(CH=CH)-(CH-C(O)-ORであり、
各Rは独立して、C2~8アルキレンであり、
ここで、C2~8アルキレンは、C1~4アルキル、-OH、-OC(O)CH(R)=C(R)(R)、又は-OC(O)-Rによって任意選択で置換されており、
は、結合、C2~8アルキレン、-Cy-O-、-Ar-O-、又は-Ar-R-Ar-O-であり、
各Rは独立して、C2~8アルキレン、-Cy-、-Ar-、又は-Ar-R-Ar-であり、
ここで、C2~8アルキレンは、1つ以上のC1~4アルキル及び-OHによって任意選択で置換されており、
はC1~12アルキルであり、ここで、C1~12アルキルは、1つ以上の-OH、-C(O)OH、及び-O-P(O)(OH)によって任意選択で置換されており、
は、結合であるか、又はC1~4アルキルによって任意選択で置換されているC1~6アルキレンであり、
Cyは、1つ以上のC1~4アルキルによって任意選択で置換されているC3~8シクロアルキレニルであり、
ArはC6~14アリーレンであり、
Arは、結合又はArであり、
各mは独立して、0~12の整数であり、
各nは独立して、1~10の整数であり、
o、p、及びqはそれぞれ独立して、0~4の整数である]
から選択され得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、1種以上の(メタ)アクリレートモノマーは、式Ia~IIIaの1種以上の(メタ)アクリレートモノマーについて、本明細書に記載の可変基の任意の組み合わせを含んでもよい。
【0108】
いくつかの実施形態では、1種以上の(メタ)アクリレートモノマーは、2-クロロアクリル酸、2-シアノアクリル酸、又はチグリン酸を含んでもよい。
【0109】
いくつかの実施形態では、1種以上の酸置換(メタ)アクリレートモノマーは、以下の式:
(R)(R)C=CH(R)-C(O)-OR (Ic)、
【化7】
、及び
(R)(R)C=CH(R)-C(O)-R-C(O)-R (IIIc)
[式中、
各R及び各Rは独立して、-H、C1~6アルキル、及び1つ以上の-C(O)OHによって置換されているC1~6アルキルであり、
各Rは独立して、-H、C1~6アルキル、ハロゲン、-CN、又は1つ以上の-C(O)OHによって置換されているC1~6アルキルであり、
ここで、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、1つ以上の-C(O)OHによって置換されているC1~6アルキルであり、
は、-H又はC1~12アルキルであり、
ここで、C1~12アルキルは、1つ以上の-OH、-C(O)OH、及び-O-P(O)(OH)によって任意選択で置換されており、
各Rは独立して、-O-[R-O-]-R-[R-O-]-、
【化8】
、又は
【化9】
であり、
は、-(CH-(CH=CH)-(CH-C(O)-ORであり、
各Rは独立して、C2~8アルキレンであり、
ここで、C2~8アルキレンは、C1~4アルキル、-OH、-OC(O)CH(R)=C(R)(R)、又は-OC(O)-Rによって任意選択で置換されており、
は、結合、C2~8アルキレン、-Cy-O-、-Ar-O-、又は-Ar-R-Ar-O-であり、
各Rは独立して、C2~8アルキレン、-Cy-、-Ar-、又は-Ar-R-Ar-であり、
ここで、C2~8アルキレンは、1つ以上のC1~4アルキル及び-OHによって任意選択で置換されており、
はC1~12アルキルであり、ここで、C1~12アルキルは、1つ以上の-OH、-C(O)OH、及び-O-P(O)(OH)によって任意選択で置換されており、
は、結合であるか、又はC1~4アルキルによって任意選択で置換されているC1~6アルキレンであり、
Cyは、1つ以上のC1~4アルキルによって任意選択で置換されているC3~8シクロアルキレニルであり、
ArはC6~14アリーレンであり、
Arは、結合又はArであり、
各mは独立して、0~12の整数であり、
各nは独立して、1~10の整数であり、
o、p、及びqはそれぞれ独立して、0~4の整数である]
から選択され得る。
【0110】
いくつかの実施形態では、1種以上の酸置換(メタ)アクリレートモノマーは、式Ia~IIIaの1種以上の(メタ)アクリレートモノマーについて、本明細書に記載の可変基の任意の組み合わせを含んでもよい。
【0111】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の酸置換(メタ)アクリレートモノマーは、アコニット酸、シトラコン酸、フマル酸、グリタコン(glytaconic)酸、イタコン酸、マレイン酸、及びメサコン酸から選択され得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、アクリル酸:イタコン酸コポリマーを含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、アクリル酸:マレイン酸コポリマーを含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、ホモポリマー及びコポリマーを調合する際に、参照によって全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第4,209,434号に開示されている、モノマーの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0115】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、ホモポリマー及びコポリマーを調合する際に、KETAC-FIL.TM.(3M)、フジII.TM.及びフジIX.TM.(GC Dental Industrial Corp.)、並びにCHEMFIL.TM.Superior(Dentsply Sirona)など、現在入手可能なグラスアイオノマーセメントに見出される、モノマーの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0116】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、ホモポリマー及びコポリマーを調合する際に、ホモポリマー及びコポリマーが、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用してポリスチレン標準に対して評価される、約5,000~約100,000の平均分子量を有するように、モノマーの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0117】
樹脂変性グラスアイオノマー及びグラスアイオノマー
いくつかの実施形態では、樹脂変性グラスアイオノマー又はグラスアイオノマーは、フルオロアルミノシリケート反応性ガラスを含んでもよい。
【0118】
いくつかの実施形態では、樹脂変性グラスアイオノマー又はグラスアイオノマーは、参照によって開示内容の全体が本明細書に組み込まれる、以下に開示されている任意の反応性ガラスを含んでもよい:Prosser et al.,「Polyelectrolyte Cements」,Wilson and Prosser,eds.,Developments in Ionic Polymers-1,Chapter 5,Applied Science Publishers(London and New York,1983)。
【0119】
いくつかの実施形態では、樹脂変性グラスアイオノマー又はグラスアイオノマーは、参照によって各々の開示内容の全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第3,655,605号、同第3,814,717号、同第4,143,018号、同第4,209,434号、同第4,360,605号、同第4,376,835号、及び同第5,063,257号に記載されているイオン浸出性ガラスなど、任意の反応性ガラスを含んでもよい。
【0120】
いくつかの実施形態では、樹脂変性グラスアイオノマー又はグラスアイオノマーは、参照によって開示内容の全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,090,722号に記載されているゾル-ゲル由来ガラスなど、任意の反応性ガラスを含んでもよい。
【0121】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、浸出性フッ化物から選択される、セメント系で使用するための反応性ガラスを含んでもよい。硬化反応の副産物としてのフッ化物イオンの持続放出は、抗う食性の利益を提供し得る。そのような反応性ガラス粉末の例としては、フルオロアルミノシリケート及びフルオロアルミノボレートイオン浸出性ガラスが挙げられる。
【0122】
いくつかの実施形態では、反応性ガラスは、細かく分割された粒子の形態であってもよく、これは好都合なことに、他のセメントと混合するのに有効である。いくつかの実施形態では、反応性ガラスは、約0.05マイクロメートル~約15マイクロメートルの粒径を有してもよい。例えば、反応性ガラスは、約0.1マイクロメートル~10マイクロメートルの粒径を有してもよい。粒径は、例えば、沈降分析装置又はレーザー回折分析装置を用いて測定され得る。
【0123】
他の実施形態では、FASガラスは、任意選択で表面処理に供することができる。好適な表面処理としては、酸洗浄(例えばリン酸での処理)、ホスフェートでの処理、酒石酸などのキレート剤での処理、又はシラン若しくは酸性若しくは塩基性シラノール溶液での処理を挙げることができる。
【0124】
好適なガラスに当業者は精通しており、多種多様な商業的供給源から入手可能であるが、VITREMER.TM.、VITREBOND.TM.、RELY X.TM.LUTING CEMENT、並びにKETAC-FIL.TM.(3M)、フジII.TM.及びフジIX.TM(GC Dental Industrial Corp.)、並びにCHEMFIL.TM.Superior(Dentsply Sirona)など、現在入手可能なグラスアイオノマーセメントに多くが見出される。好適な酸反応性充填剤は、例えば、Schott AG(ドイツ)又はSpeciality Glass(US)からも市販されている。
【0125】
いくつかの実施形態では、樹脂変性グラスアイオノマー又はグラスアイオノマーは、粉末/液体系又はペースト/ペースト系として調合してもよい。
【0126】
いくつかの実施形態では、酸置換(メタ)アクリレートモノマーを含むアイオノマーは、酸性単位とガラスから浸出したカチオンとの間のイオン性反応に起因して、暗所で完全に硬質化し得る。実際、いくつかの市販のRMGI製品は、歯科用硬化ランプからの光に曝露すると、硬化し得る。
【0127】
いくつかの実施形態では、樹脂変性グラスアイオノマー及びグラスアイオノマーは、カルシウム及びリン酸イオンの放出及び再充填能力を有し、エナメル質及び/又は象牙質表面を再石灰化し、接触している歯構造の酸の攻撃への耐性を上昇させ得る。口腔環境へのイオン(例えば、カルシウム、フッ化物、及びリンのうちの少なくとも1つ)の放出が、歯科構造の天然の再石灰化能力を増強することは公知であり、GI/RMGI材料が提供するカルシウム及びリンの持続放出を使用して、歯の表面における石灰化を増強し、かつ歯科装具による所望の処置時間中に白斑病変(white spot lesion、WSL)を低減、予防、又は補修すること、並びに患者の口腔全体の健康を改善することができる。
【0128】
いくつかの実施形態では、グラスアイオノマーは、下の実施例に示されるように、Vitrebond Plusである。
【0129】
光重合開始剤
いくつかの実施形態では、光開始剤は、ノリッシュタイプI光開始剤であってもよい。ノリッシュタイプI光開始剤は、UV光を照射すると2つのラジカル断片に均等に開裂する。次いで、これらのラジカルは、モノマー単位の重合を開始する。本明細書において使用される光開始剤は、当業者に公知である任意のノリッシュタイプI光開始剤であってもよい。
【0130】
一方、ノリッシュタイプII光開始剤では、UV照射でラジカル形成を開始するためには、水素供与体、例えばアミン相乗剤が必要となる。下に示すように、ノリッシュタイプI光開始剤は、1種以上の(メタ)アクリレートモノマーを首尾よく硬化させるが、ノリッシュタイプII光開始剤はそうではない。
【0131】
いくつかの実施形態では、光開始剤は、商品名Irgacure(登録商標)又はDarocur(登録商標)の群、例えば、Irgacure(登録商標)651、Irgacure(登録商標)819、Irgacure(登録商標)184、Irgacure(登録商標)2959、又はDarocur(登録商標)1173等から選択される。これらの光開始剤は各々、UV光を照射するとベンジオール(benzyol)ラジカルを生成するベンゾイル断片を有する。
【0132】
いくつかの実施形態では、光開始剤は、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンである。
【0133】
いくつかの実施形態では、光開始剤は、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドである。
【0134】
いくつかの実施形態では、光開始剤は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンである。
【0135】
いくつかの実施形態では、光開始剤は、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノンである。
【0136】
歯表面を補修する方法
多くの実施形態では、歯表面を補修するための方法を記載している。本方法は、本明細書に記載の歯科用組成物を提供することを含んでもよい。この方法は、歯科用組成物を歯表面に接触させること、及び約250nm~約700nmの波長の光を、歯表面の歯科用組成物に適用することを更に含んでもよい。
【0137】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物を、1剤型組成物として歯表面に接触させる。
【0138】
他の実施形態では、歯科用組成物を、2剤型組成物、例えば、銀-フッ化物組成物及び硬化性樹脂組成物として歯表面に接触させる。
【0139】
いくつかの実施形態では、適用する光は、約250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、若しくは700nmの波長であり、又は前述の値のうちのいずれかの間、例えば、約350nm~約450nm、若しくは約300nm~約400nm等の範囲内の値である。
【0140】
いくつかの実施形態では、光は約5秒~約30秒の期間、適用される。いくつかの実施形態では、光は約20秒の期間、適用される。
【0141】
多くの実施形態では、歯科用組成物は、本明細書に記載の任意の歯科用組成物を含んでもよい。
【0142】
キット
多くの実施形態では、キットを記載している。キットは、本明細書に記載の歯科用組成物を含んでもよい。キットは、歯科用組成物を歯表面に接触させるように、及び約250nm~約700nmの波長の光を、歯表面の歯科用組成物に適用するように、使用者を案内する一連の指示を更に含んでもよい。
【0143】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は1剤型で提供される。
【0144】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は2剤型で、例えば、銀-フッ化物組成物と硬化性樹脂組成物とで提供される。
【0145】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、静止型混合ユニットを用いて使用される二剤系として提供される。
【0146】
多くの実施形態では、指示は、本明細書に記載の方法を行うように使用者を案内する。
【0147】
多くの実施形態では、歯科用組成物は、本明細書に記載の任意の歯科用組成物を含んでもよい。
【実施例
【0148】
本開示の目的及び利点を以下の実施例によって更に説明するが、これらの実施例に列挙する特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を不当に限定するものと解釈してはならない。これらの実施例は、単に説明する目的のためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意味するものではない。
【表1】
【0149】
調製例A
調製例Aを、以下の手順によって調製した。正確なパーセント量は、下の表に記載する。NHI及びNHFをまず水に溶解させ、次いでAgIを加え、よく混合して溶液を形成した。
【表2】
【0150】
調製例B
調製例Bは、表3に列挙される割合に従って調製した、光硬化性樹脂の組成物であった。
【表3】
【0151】
実施例及び比較例の調製
調製例A及び調製例Bの量を組み合わせて、下の表に列挙される本発明の実施例及び比較例を作製し、各成分及びあらゆる追加成分、例えば光開始剤等のパーセント濃度を報告した。次いで、比較例及び本発明の実施例の組成物を、最大波長450nm及び出力およそ1500mW/cmを有する3M ELIPAR DEEPCURE-S LED硬化光(St.Paul,MN,USAの3M Companyから入手可能)を使用して、青色LED光に20秒曝露した。この硬化光を使用した組成物の硬化(硬質化)を、はい又はいいえのいずれかとして記録した。
【表4】
【表5】
【0152】
フッ化物放出試験
硬化してポリマー性マトリックスになったにもかかわらず、硬化した材料が、歯のエナメル質の健康及び再生に有益なイオンである、フッ化物を依然として放出できることを実証するために、様々な硬化した実施例のフッ化物放出を測定した。Thermo Scientific ORION 4-STAR PLUS pH/ISEメータ及びフッ化物電極を使用した。Sigma Aldrichから入手可能な全イオン強度調整緩衝液II(Total Ionic Strength Adjustment Buffer、TISAB)濃厚溶液を、フッ化物イオン選択性電極と共に使用した。Sigma Aldrich製の、TISAB IIを含む10ppmのフッ化物、TISABを含む20ppmのフッ化物、及びTISABを含む200ppmのフッ化物を用いて、装置を較正した。調製した水中実施例のフッ化物イオン濃度を、フッ化物標準較正曲線に対して計算した。
【0153】
予備硬化させた実施例の組成物を、20mmの直径及び1mmの厚さ/深さの寸法を有する、ディスク形状のテフロン成形型に充填した。成形型の上部と底部との2枚のPETフィルムの間に、試料を挟んだ。次いで、3M ELIPAR DEEPCURE-S LED硬化光を20秒用いて、組成物を光硬化させて、実施例の組成物を硬化/硬質化させた。各ディスクについて、グラム単位の重量を記録した。ディスクを、25mLの37℃脱イオン水に24時間浸漬した。フッ化物イオン放出を、フッ化物イオン測定装置を用いて測定した。硬化ディスクからのフッ化物放出は、μgF/g=(ppm単位のFの濃度)×(mL単位の試料体積)/(グラム単位のディスク重量)によって計算した。硬化ディスクからのフッ化物放出を、各試験試料について3回実行した。
【表6】
【0154】
実施例9-2剤型樹脂変性グラスアイオノマーの実施例
5%の調製例Aと、95%のペースト成分である、市販製品VITREBOND PLUS Light Cure Glass Ionomer Liner/Baseとをよく混合することによって、化学ペースト部分Aを調製した。1%のIRGACURE 819を、99%の液体成分である、市販製品VITREBOND PLUS Light Cure Glass Ionomer Liner/Baseとをよく混合することによって、液体部分Bを調製した。化学ペーストAを液体混合物Bと、混合パッド上で1.5:1の重量/重量比において10秒混合して、本開示のフッ化銀アミン錯体を含むRMGIコーティングを形成した。実施例9の混合物を、3M ELIPAR DEEPCURE-S LED硬化光に60秒曝露することによって硬化させて、硬質化コーティングにした。
【0155】
実施例10-2剤型グラスアイオノマーの実施例
50%の調製例Aを50%のフルオロアルミノシリケート(FAS)ガラスとよく混合することによって、化学ペースト部分Aを調製した。50%水を、50%の3M PHOTAC FIL QUICK Light-Cured Glass Ionomer Restorativeとよく混合することによって、液体部分Bを調製した。後者は、アクリル酸/マレイン酸コポリマーである。化学ペーストAを液体混合物Bと、混合パッド上で1.5:1の重量/重量比において10秒混合して、本開示のフッ化銀アミン錯体を含むGIコーティングを形成した。実施例10のこの最終組成物は、37℃の温度に保つと、2分30秒で硬質化(set hard)(硬化)した。
【0156】
本発明の組成物を歯表面に使用する方法
以下の実施例は、本発明の組成物を歯表面に使用する実施形態を説明するものである。実施例の処置のための試験表面として機能するように、ウシ歯試料を以下の方法で調製した。ウシの歯をアクリル系成形型に保持し、120グリットサンドペーパーで研磨して象牙質を露出させた後、320グリットサンドペーパーで研磨して象牙質表面を平滑化した。
【0157】
実施例11
1滴の上記実施例7の組成物を、調製したウシ象牙質表面に載置し、次いで、3M ELIPAR DEEPCURE-S LED硬化光に20秒曝露することによって、適所で硬化させた。硬化前の実施例7の組成物の当初の色は、淡黄色であった。硬化後に色の変化はなく、実施例は淡黄色のままであった。実施例11は、実施例12に対する審美的利点を実証している。
【0158】
実施例12
1滴の上記実施例8の組成物を、調製したウシ象牙質表面に載置し、次いで、3M ELIPAR DEEPCURE-S LED硬化光に20秒曝露することによって、適所で硬化させた。硬化前の実施例8の組成物の当初の色は、やはり淡黄色であった。しかしながら、硬化後、実施例は暗褐色になった。これは、硬化性マトリックス中のフッ化物源としてフッ化ジアンミン銀を使用することができるが、最終的な状態は、審美的により魅力的ではないことを実証している。
等価物
当業者であれば、日常業務に過ぎない実験法を使用して、本明細書に具体的に記載した特定の実施形態に対する多数の等価物を認識している、又は見極めることができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【国際調査報告】